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小牧委員 私は日本社会党を代表いたしまして政府原案に
反対の討論をなさんとするものであります。
本法案にいうところの専科大学はいわゆる大学でもないし、また高等
学校でもない。すなわち本法案の七十条の二におきまして大学に準ずる
規定をいたしておる反面、本法案第七十条の三におきましては「専科大学の学科に関する事項は、前条の
規定に従い、監督庁が、これを定める。」として、高等
学校と類似の
規定をいたしております。また専科大学の年限も二年または三年、あるいは五年または六年という全く新しい制度であります。すなわちこれは明らかに現行の六・三・三・四の教育体系を根本から乱すものであると考えるわけであります。しかるに従来の本
委員会における文部省のいろいろな
答弁を聞いて参りますと六・三・三四制度の基本は守るとたびたび
答弁をしておられる。これとこの新しい制度とは全く矛盾しておるといわざるを得ません。六・三・三・四制を守るというのは、ただ
答弁の際の口先だけの表現にすぎない、かように考えるわけであります。
第二、もしかりに腹の中には六・三・三・四制の体系を変えるという意図があるとするならば、これはきわめて重大な問題である。今の
学校制度が生まれましてからわずかに十年くらいしかたっておりません。もしこれを変えようとするならば、いろいろ
意見がありますように、根本的に統一的に教育体系、教育制度を研究して、的確な見通しと全体の構想というものが確立して初めてこれに着手すべきであると私は考えます。決して軽々しくこれを変えてはならない。そういう意味において私は政府、文部省の
態度はきわめて軽率であると考えるわけであります。
第三点は、さらに本法案の七十条の三は、専科大学の教科につきまして国家基準を強化する方向がとられておる。そうしてこれが今の大学にまで及ぼされていく危険性を考えざるを得ません。政府が思うような勝手な教育が行われる教育制度を、この法案によって巧みに切り開いていこうとする意図が明らかであります以上は、私たちは民主教育を守るために絶対にこれに納得し得ないのであります。
第四点、専科大学の設置基準の構想を
委員会の質疑応答においていろいろ聞いて参りますと、短期大学の設置基準とほとんど同様のものであり、ほとんど変っておらない。また大学の
目的もほとんどこの法案の中に含まれておる。今さら専科大学を新しく設ける必要は全然認めることはできないのであります。むしろ短期大学を十分発展させる方向にこそ
全力を傾倒すべきである。先ほど堀
委員の
質問もありましたが、今の短期大学のどこが悪いのか。特に女子教育につきましての短期大学の必要性というものは一般の広く認めておるところであります。また短期大学の現在の入学率も就職率も良好であることは、前の国会中この
委員会における清瀬一郎氏の質疑応答を思い起すならば、これはきわめて明白であります。さらに現在の国立大学や短期大学の
施設設備がきわめて貧弱であって、一名駅弁大学とさえいわれております今日、早急にこれの充実をはかっていかなければならないにもかかわらず、文部省が新たに専科大学を設けるということは、私は誤まりであると思う。また設けてみましても、現在でさえ大学の
内容が、財政的裏づけができないためにきわめて貧弱である。そうなりましたならば、新しく生まれて参るであろう専科大学の
内容も、これは必然的にさらにそれ以上の貧弱な
内容にならざるを得ない。むしろ私は有害無益であると考える一人である。
第五、ただいま同僚
西村君からも
質問がありましたが、技能者養成
施設に関する四十五条の二の
規定は、本来の
学校教育の特質を失わせまして、企業が
学校教育の場に介入してくる道を大きく開いて、ただその責任だけを
学校教育にしわ寄せをしてくると考えます。今回の法案の
内容が政府の
答弁にも明らかなごとく、日経連の
答申と全く同じであるということは、私は決して偶然の一致ではなくして、明らかに大資本の
利益に合致するためにこの法案が作られたのであるということを雄弁に物語っていると言えると思うのであります。
法案がさらに技能者養成の
施設を文部大臣が
指定する方向に
規定したことは、今も
お話のありました
通り、さらに教育の中央集権化を推し進めることにもなるであろうし、反面
教育委員会の権限を犯すこととなりまして、これでは越権といわざるを得ないのであります。また単位を履修したかどうかをきめるのは、これは教員の仕事である。これを文部大臣がきめると同じような結果になる
規定を設けましたことは、
学校教育法と教育基本法の精神に私は明らかに違反するものであると言わざるを得ません。
第六、専科大学新設の大きな理由といたしまして、文部省は、現在の短期大学がきわめて不安定であり、暫定的なものであるから、これを恒久化したい、安定したものにしたい、これは緒方
局長も前の
灘尾文部大臣もたびたびそういう
答弁をされた。しかし実際には短期大学の新設は法案によりますとことしの三月末限りしか認められない
内容となっておりまして、既存の短期大学は当分その存続を認めるけれども、まず国立の短期大学から専科大学に切りかえていって、順次私立短期大学もこれにならって専科大学に切りかえていくことを期待しておる、こういう
答弁もされた。これによって明らかなように、既存の短期大学は好むと好まざるとにかかわらず早晩廃止される運命にある。これでは、現在の短期大学を先ほど申し上げた
通り不安定であるからこれを恒久化したい、安定化したいということとは、はなはだしく相違いたしておる。全く詭弁にすぎないと私は思うのであります。これはちょうど他人に、あなたを健康にしてやりたい、長生きをしていただきたい、こう言いながら、うしろの方からその人の首を締めているようなものである。
第七点は、短期大学から専科大学への切りかえの基準につきましても、前の国会からの
答弁をいろいろ考えてみますと、きわめて不明確であります。基準が不明確である、はっきりしておらない、こういうことが現在の短期大学の
関係者に非常な不安、動揺を与えておることはまぎれもない事実であります。緒方大学
局長の前の国会の
答弁の記録を私はあらためて調べて参りましたが、国立はとにかくといたしましても、それ以外の公立や私立の短期大学の専科大学への切りかえは困難であろうとあなたは
答弁をいたしておる。もし疑問があるならば速記録を読んで下さい。従って現在の公立や私立の短期大学は、財政上その他いろいろな点で苦しんでおります現在、そのような不安動揺を来たすのは当然でございますが、その責任はあげて文部省にある。私は文部省がその責任をとるべきであると考えます。
第八点、私立短期大学協会はこの法案に強く
反対をいたしております。あなた方も
御存じの
通りです。また与党の内部におきましても、相当強い
反対がありますことを私は知っております。これもまぎれもない事実である。これはなぜかというと、実際この法案の体系を見ても筋が通らないからである。このあとで与党の方の討論が行われるでありましょうが、自民党の
反対される方々も、以上の理由で私どもとともに当然この法案に
反対するのが正しいと私は思うのでありますが、いざ採決となりますと、表面切って
反対をされないということは、まことに残念であります。従って衆議院の段階におきましては、とにかくこの法案に不満ではあるが一応このまま何とかほおかむりをして衆議院を通しておいて、そうして参議院の方に移ってからこれを修正して、何とか短期大学が永続できるようにしたい、こう考えておられるようであり、橋本文部大臣もなるほど表面
答弁の上ではこのようなことを明白にはされておらないのでありますが、大体腹の中にはそういうことを考えておられるのではないかと私は思う。しかしながらこの法案は、ただ単に短期大学さえ永続できれば専科大学が生まれてもそれには
反対はしなというような、簡単な安易な問題ではないと私は思う。ここに私は与党内部の
反対論の限界があると思う。かりに大学、短期大学、今度の専科大学の三本立が実現するということになりますと、先ほど来私が申し上げる
通り、文部省がたびたび
答弁されたように、現行の六・三・三・四制を守るというこの問題は根本から崩壊することは明白であります。また三本立になりますと、この法案の
内容の体系自体が支離滅裂になってくる、これは堀
委員も指摘した
通りであります。これは文部省と岸内閣の無定見を暴露する以外何ものもない結果になると思う。
要するに
結論を申し上げますが、私どもはこの大事な教育制度の変革については、だれしもきわめて慎重でなければならない。現在の大学や短期大学や高等
学校は御承知のように民主的な完成教育を目ざして作られたものでございます。従ってそれらの正しい発展と充実に努力をして、この制度は堅持されなければならないと信じます。本法案による専科大学は、いろいろ質疑の過程でもわかります
通り、いびつな中途半端な人間を作ることになります。大資本の団体である日経連の要求するようなあいまいな制度や間に合せの技術者によって、わが日本のほんとうの科技術の発展ということは私は絶対に期待し得ないと思う。
こういう意味によりまして、私はこの法案に断固
反対をいたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)