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大和田説明員 きのうも御
説明いたしましたけれ
ども、従来の
統計調査部の
生産費調査とか、それから食糧庁でやっておりますところの
生産費及び
所得補償方式による
米価の
算定につきましては、
農家が使うところの
資金に対して、安全確実な利回りということで四分の
利子をつけて処理をいたしております。これは
生産費調査を
農林省で始めましたのがたしか
昭和六年だったと思いますが、そのころは
資本利子をつけるということはございませんで、戦争中かあるいは戦争直前にようやく
資本利子をつけるようにいたした経過がございます。
議論すれば切りがない、めんどくさい
議論がつきまとっておるわけでございます。そこで、この考え方は、
借り入れ資本あるいは
自己資本ということではなくて、
農家が経営で使う
資金といいますか、それをわがものと考えて、それを
農業に使わないで何かほかの安全確実な用途に使ったら幾ら利回りがつくであろうかという観点から処理をいたしておるわけでございます。
生産費及び
所得補償方式による場合もこの
方式を採用いたしました経過は、
一つは、
生産費調査においてそういうことを長い間やっていたということと、もう
一つは、建物、農機具その他償却費が
生産費調査においてございます。この場合に、建物、農機具等の
資本利子がかかりますところの原価は、買ったときの値段ではなくて、毎年新しく調達すれば幾らかということ、それから減価償却を引いておるようなわけで、大農具あるいは建物につきましては、買った最初あるいは作った最初に比べまして相当ふくらんでおるわけです。従いまして、それに四分の
利子をかけるわけでございますから、
資本利子が実態よりはふくらむということが一点ございます。もう
一つは、
生産費及び
所得補償方式ということで、昨年におきましても
農業の日雇い
賃金で
評価いたしますところの
家族労賃は大体一日三百二十円
程度でございますけれ
ども、昨年とりました
方式によりますと一時間当りの男女込みの
賃金が六十三円四十銭でございます。従いまして、それを八時間でやりましても五百円ぐらいになるので、三百円前後のコストとして見れば三百円前後の
家族労賃を
都市と
均衡させる意味で新しく付与するわけでございますから、その五百円に対して
資本利子を見るというのは理論的になかなか筋が通らない点があるわけで、私
ども再
検討をいたしております。それにも四分をつけるから——四分という
利子そのものは多少は低いという感じもいたしますけれ
ども、固定資産を
評価がえするということと、それから
現実に金を払っていない
家族労賃に対して
利子を見るということで、四分が適当ではないかというふうに従来はやっておったわけでございます。
ことしは、多少趣きを変えまして、自己
資金と借り入れ
資金というものを分ける考えをとったらどうかというふうに考えております。ところが、そういうふうに考えるといたしまして、私たちが持っている
資料といたしましては、御承知のように、
農家経済調査と、それによるところの
農家の
資金動態調査以外にはございません。経営がどの
程度の借入資本によって動かされているかということを的確に把握する
資料は手元にございません。
農家経済調査から導き出されましたところの
農家資金動態調査によりますと、一番新しいのが三十二年でございますが、
農家への流入
資金の総額、一年間に現金が
農家に入ってきた総額は六十二万八千円ほどでございます。そのうち
農家が借金をして現金が入ってきたものが四万五百円ほどでございます。この
農家の借入金は、
農家が何に使うために借りたかという
調査がございます。
農業資金が一万五千六百七十六円、農外
資金が二千二百三十円、生計
資金が九千八百七十一円、その他が一万二千円ほどでございますが、
農家資金の借入金の比率、
農家に入ってきた現金に対する借入金の比率というのは六・五%でございます。しかし、これは私が前にも申し上げましたように、的確な
資料として使うほどの精度はございません。しかし、
資料としてあえて使おうとすればそういうふうに使えるという
資料がそこに
一つあるわけでございます。それから、もう
一つは、
農業経営費と
農業資金としての借入金との比率を見ますと、現金としての経営費は十一万五千七百九十九円でございます。これはきのうも、
パリティの新指数の組みかえのときに、二十五、六年のときの
農家の支出というのは経営と家計とを含めて十七万五千円
程度で、それが三十二年は三十四万円くらいにふくれているということを申し上げたと思いますけれ
ども、三十二年の経営費を現金として把握をいたしますと十一万五千七百九十九円です。そして先ほどの
農業資金としての借入金一万三千二百八十八円という
数字がございます。
農業資金としての借入金は、全体では一万五千六百七十六円ですけれ
ども、そのうちで二千三百八十八円は土地の購入
資金でございますから、土地の購入
資金というものは片方で地代として見ておりますので、
利子をまた見るとダブって見ることになりますから、それを除きますと、現金としての経営費が十一万五千七百九十九円で、
農業資金としての借入金が一万三千二百八十八円です。従いまして、現金の経営費と
農業資金としての借入金の比率を見ますと一一・五%になります。これもある意味で推定の
数字でございます。先ほど申し上げた
農家資金のうちで借入金の比率は六・五%、経営
資金について言えば現金に対して一一・五%でございます。
従いまして、
資本利子を今年の
米価で見る場合に、
農業経営資金を
二つに分けまして、借入金によるものと自己
資金によるものとを一対九で分けました。その
数字は
農業団体の
数字と同じでございます。そうして、借入金につきましては、これも先ほど申し上げましたけれ
ども、
農家経済調査に基く
資金動態調査によると、
農家が借りている
利子というのを
平均いたしますと大体七分五厘と八分との間にございますので、その
程度の
利子を見ることがいかがかというふうに現在考えております。それから、自己
資金の分につきましては、従来は
郵便貯金の四分でございますけれ
ども、
郵便貯金ばかりではなしに、
農協の半年の
定期、これが五分六厘でございます。一年の
定期が六分一厘でございます。それから
農林債券の利回りが六分六厘
程度でございますが、そういうものに対して
農家がいろいろ
運用するものと想定いたしまして、五分五厘というふうに押えたらどうかというふうに考えております。まだ
結論を申し上げているわけではございませんけれ
ども、その
程度に考えております。
そして、問題は、今までは四分ということで自家
労働の費用に対して
資本利子を見ているわけでございますけれ
ども、自家
労働というのは元来コストとして見れば
農業日雇い
賃金にイコールと言わなくても近い
数字でございましょうから、それに新しく
都市均衡労賃で五、六割プラスして加わるわけでありますから、これはコスト
計算の外の世界、いわば
生産費計算の外の世界でありますから、それに
資本利子をつけるという
議論がどう考えてもございませんので、
自家労賃については
資本利子をつけないことが正しいのではないかというふうに考えております。
従いまして、
結論を申し上げますと、昨年全部について四分で見ましたのと、今度の新しい
方式は、
数字は正確にはじいておりませんけれ
ども、ことしの
資本利子の方がかなりの額、と言うと言い過ぎでありますが、多少は
資本利子の額がふえるというふうに考えております。
以上でございます。