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1959-03-19 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君    理事 丹羽 兵助君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    倉成  正君       佐藤洋之助君    田口長治郎君       高石幸三郎君    永田 亮一君       野原 正勝君    濱地 文平君       八木 徹雄君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神田 大作君    久保田 豊君       栗林 三郎君    中澤 茂一君       松浦 定義君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         林野庁長官   山崎  齊君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      伊藤 俊三君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    昌谷  孝君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部油脂課長) 馬場 二葉君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月十九日  委員和精一君及び西村関一辞任につき、そ  の補欠として野原正勝君及び栗林三郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員野原正勝辞任につき、その補欠として三  和精一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六九号)  飼料需給安定法の一部を改正する法律案(芳賀  貢君外十三名提出衆法第四一号)  農林水産業振興に関する件(農林水産物の貨  物運賃問題)      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭に関する件についてお諮りいたします。先般来調査して参りました農業法人関係に関する諸問題についてその参考意見を聴取するため、現地の関係者並びに学識経験者参考人として来たる二十七日の午後一時より本委員会出頭を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。  なお、参考人人選等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 松浦周太郎

    松浦委員長 農林水産振興に関する件について調査を進めます。  農林水産物貨物運賃に関する問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。松浦定義君。
  6. 松浦定義

    松浦(定)委員 私はこの際運輸大臣にちょっとお尋ねいたしたいと思いますが、最近、国鉄当局におかれましては、経営の収支の悪化だとか、あるいはまた運賃体系を合理化するのだとか、こういうような意味貨物運賃改定をおやりになるような御意見をお聞きしたのでありますが、どういう考え方でそれをおやりになるのか、あるいはまた、その必要性をどういう意味でお感じになっておられますか、この方針について承わりたいと思います。
  7. 永野護

    永野国務大臣 すでに御承知のように、国鉄運賃国鉄運賃法でそのきめ方の大きなワクはきまっております。それによって運賃がきめられておるのでありますが、改正後の品物の負担力に関する変動、経済界のいろいろな情勢の変化に伴いまして業体の能力がだいぶ変って参るようなことがありまして、増徴にならない範囲内において、ワクは動かさないつもりでありますけれども、そのワク内において改正すべき点を認めておるのであります。しかし、それをどういうふうに変えていくかということは、これは非常に専門的のことになりますので、御承知通り貨物等級専門委員会を設けまして、それに各界の学識経験者を委嘱いたしまして、その審議を今やっておるのでございますけれども、まだそれの結論が出ておりません。詳細なことは国鉄の当事者の方がよく知っておると思いますけれども、私どもはまだその報告を受けておりませんので、それが果してどういうふうな審議になっておるか、承知いたしておりません。あまり遠くないうちにその結論が出るやに聞いております。いずれにいたしましても、今の等級の差を動かしてみましたり何かするようなことになりますと国会議決が要ることでございますので、その原案ができましたならば、運輸省といたしましては十分に検討いたしまして、その意思を決定するつもりであります。
  8. 松浦定義

    松浦(定)委員 ただいまのお説ですと、今まだその結論が出ていないので今直ちにという意味ではないというお話のように承わりますが、先ほどお話しになりましたように、最終的には国会承認を必要とする、これは等級改定の場合にもというようなお話でありましたが、やはり等級改定の場合においても国会承認を得るという手続をおとりになりますのか、その点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  9. 永野護

    永野国務大臣 さようでございます。たとえば今の十三階級を十階級にするとかいうようなことがかりに起るといたしますれば、国会承認を得る、こういうふうに考えております。     〔委員長退席吉川(久)委員長代理着席
  10. 松浦定義

    松浦(定)委員 私どもが聞いております範囲では、運賃改定については財政法の三条ですかによって国会承認を得るが、等級改定の場合においてはその要がないといったようなことを事務当局等で言っておるという話を聞いておるのですが、今の大臣お話ですと、両方とも当然国会議決を得るということになるのですが、もしそういうことでありますならば、おそらく、近いうちということになりますと、四月に改定して五月ごろから実施したいというふうに一部で私どもは聞いておるのでございますが、そうだとすれば、今大臣お話しになるような形でなしに、資料としてでも当然国会提出されてもよかるべきものだと思うのですが、実施はいつを目途にして大臣はおやりになっておるのですか。
  11. 永野護

    永野国務大臣 この運賃の問題は非常に大きな影響のある問題でありまして、軽々に取り扱いかねるのでありますから、この委員会におきましても慎重に審議をしておられるのであります。大体の予測から言いまして、そう時間はかからないうちにできそうだという見通しも聞いておりますけれども、それが何月ごろに出てくるというような見通しは、今はっきりとついておらないことが実情でございます。もっとも、これは御承知通り国鉄総裁諮問機関でございますので、運輸省から申しますと間接でございますから、その諮問専門委員会の経過のことは国鉄側からお答えした方が適当ではないかと考えております。
  12. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は時間の制約を受けておりますので二、三の点だけお聞きして、あとは野原委員から御質問があろうと思いますが、今のお話で明確にしておきたいのは、運賃改定はもちろんのこと、等級改定についても国会承認を得るんだということが明確になったことと、さらにまた、当委員会にあるいはまた関係委員会おいても慎重に審議を必要といたしまするので、そう近くに急にやるということでなしに、時期としては、ある程度慎重審議をする時間を置かなければならぬというふうに解釈してもよろしゅうございますか。
  13. 山内公猷

    山内(公)政府委員 等級の問題につきまして私からお答え申し上げます。  第七条第二項によりまして、貨物等級が現在十二等級特別等級等級ございますが、これを整理をいたしまして十等級にする、また八等級にするというのは法律改正を要します。ただ、物資につきまして等級の変更をいたしますものにつきましては、この法律の第九条によりまして、適用に関する細目は日本国有鉄道で定めるとありまして、これは法律改正を要しないわけであります。その点大臣のお答えに補足いたしておきます。大臣が今おっしゃいましたのは、等級を少くするとか、あるいは等級の数をいじるという場合を申されたわけでございます。
  14. 松浦定義

    松浦(定)委員 ただいまのお話は私は大臣説明を要求しておるのに、あなたの方で勝手に説明されておるのであって、私は大臣説明通りに了承して進めていくが、しかし、話の過程におきまして、最終的にそういう結果になろうとも、重大な問題でありますので、国会承認は得ていただくことが当然であろう、こういうふうに考えて、この問題を進めていきたいと思います。  次に、今時期の問題とかあるいはその内容についてのお話がありましたが、先ほどお話にありますように、この運賃改定というものは、国民生活に非常に重要なものである。でありますから、特に特別の物資に限っては従来まで特別割引等が行われて参ったのでありますが、今のお話でありますと全般的な改定のようにお聞きしたのであります。従って、お聞きいたします中で、そのうちにおきます国民生活と非常に重大な関係のありますものの特別割引等制度については、従来通り変えないで進められる御方針であるかどうか、この点を一つお聞きいたしたいと思います。
  15. 永野護

    永野国務大臣 先ほども申しますように、まだ原案ができておらないのであります。従いまして、その原案をどう扱うかということは、全く拘束なしに、最も適当と思う、つまり国民生活上に及ぼす影響考えましてわれわれは検討して参りたいと思っております。従いまして、その原案ができますまではしばらく御猶予願いたいと思います。
  16. 松浦定義

    松浦(定)委員 今のお話ですと、まだその原案ができてないということでありますが、国会承認を得るならば、国会は御承知通りにおそらく四月一ぱい、五月の七、八日で終るわけなんです。しかも、ことしは四年目に一回の地方選挙がありますし、参議院議員選挙もございますので、こういう重大な時期を考えるならば、もっと前にこういう結論を出さなければならない。でありますから、先ほどお話になりましたように、運賃制度調査会なんというものに諮問されて、その結論について御検討になっておるようでありますが、今資料がまとまっておらぬということは、調査会からの答申がまだはっきりしたものが出ていないということを意味するのでありますか。どういうわけでありますか。
  17. 永野護

    永野国務大臣 先ほども申しましたように、この調査会あるいは専門委員会国鉄機関なんでございまして、私どもは、その国鉄機関答申に基いて、国鉄意思を決定いたしましたところで、理屈の上からいきますとそのとき初めて運輸省は知るわけであります。でありますから、この調査会が現在どういう研究程度であるかということは、直接その機関を持っております国鉄側でありませんとわかりかねるわけです。
  18. 松浦定義

    松浦(定)委員 ただいまの運輸大臣お話でありますと、国鉄関係があるということでありまして、当然でありますが、幸い国鉄総裁がおいでになっておりますので、国鉄側の現在の御意見一つお伺いいたしたいと思います。
  19. 十河信二

    十河説明員 委員会調査はきわめて精細にやっておられます。貨物委員会のほかに専門委員会というものもできておりまして、各業種の代表あるいは官庁の専門家というふうな方々がお集まりになって、種々な角度から検討されております。今その過程にあるのでありまして、われわれのところへもまだ結論が参っておりません。ただいまいろいろお話に出ておりますのはその委員会なりあるいは専門委員会なりの審議過程のメモといいますか、そういうようなものについての話じゃないかと思います。私どもも、この結論を得まして、答申を待って種々検討を加えたい、こう考えております。
  20. 松浦定義

    松浦(定)委員 運輸大臣もそういうようなお話をされ、国鉄総裁もそういうのんきなことを言っておられるのであります。しかし、先ほど申し上げましたように、国会承認を得るということになるならば、少くとも四月一ぱいくらいに結論を出して承認を得なければ、五月は参議院議員選挙もございますし、あるいはその次でありますと特別国会等でしかその承認が得られないわけです。実施の時期が八月でも十月でもよいというならば別でありますけれども、私どもの聞くところによりますと、四月に承認を得て五月から云々という話ですが、そういうことは事実無根であるからまだまだゆっくりやるのだということであるならば、またそれは資料に基いて十分お聞きしなければならぬと思うのです。国会承認を得るということは、先ほど運輸大臣からもお話があってはっきりしておりますので、この点、実施の時期のめどを大体いつごろに置いて今お話しのような進め方をしておるのか、一つ総裁の方から明確にしておいていただきたいと思います。
  21. 十河信二

    十河説明員 委員会の当初の予定は、なるべく早くという国鉄からのお願いで、本年の五月中くらいには答申ができるだろうということであったのであります。ところが、いろいろ議論が出まして、昨日も別な委員会でお答えいたしたのでありますが、なお一、二カ月おくれるではないかというふうな現在状態であります。いろいろ御意見の出ております中には、あるいは急速に実施のできるものもありましょうし、あるいはできないものもあるかもしれない状態でありますから、今からいつ実施するというふうなことを概括的に申し上げることは困難かと存じます。
  22. 松浦定義

    松浦(定)委員 それでは、まだ内容が十分でないのと、国会承認を受けるということになれば四月一ぱいにお出しにならなければ不可能ということが明確になっておりますので、次の特別国会あるいは秋の臨時国会等までゆっくりやるということになると思うのであります。しかし、その場合におきましても、今の調査会の方からの中間発表というか、そういう中を聞いてみますと、従来行われておりました重要物資特別割引制度は廃止したいというようなことを諮問されておるようでありますが、そういう点についてはどういうお考えでおられますか、お聞きいたします。
  23. 十河信二

    十河説明員 今営業局長が見えておりますから、営業局長からお答えいたさせます。
  24. 磯崎叡

    磯崎説明員 私からお答え申し上げます。  ただいまの松浦先生お話の中に中間発表ということがございましたが、委員会あるいは調査会あるいは専門委員会といたしまして、今まで一年半でございますが、約百回近くの会を開いておりますが、発表いたしたことは一ぺんもございません。その点何か間違いではないかというように考えます。これは長い期間をかけるものでありますから、審議しているうちにいろいろ前のことを取りまとめましたことはございますが、それを外に発表したことは一ぺんもございません。  それから、もう一つ割引の廃止について総裁から諮問したというようなことでございますが、そういう具体的なことについて総裁の方から諮問いたしました事実は全くございません。ただ、貨物運賃制度あるいは旅客運賃制度全般の改善ということについていろいろ御意見を承わったわけでありまして、具体的にどれをこうという問題を総裁から諮問したようなことはございません。
  25. 松浦定義

    松浦(定)委員 先ほど運輸大臣から、たとえば等級の一級から十二級というのを十級までとするとか、あるいは十三級まで一級加えるとか、こういうお話がございましたので、当然そちらの方ではそういう内容についても諮問されたではないかとお聞きしたのですが、そういう内容についてまだ何ら触れていないというふうに考えてよろしいのですか。
  26. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまのお話は、多分昨年の暮れに貨物部会としてまとめられました中間的な意見についての問題ではないかと思いますが、それは、やはり貨物部会として現在の等級をどうしたらいいかというようなことについて論議された結果、あるいは等級を減らしたらいいのじゃないか、あるいは特別等級をふやしたらいいのじゃないか、そういうふうな御意見でございます。それを現在具体的にどうするかということにつきまして、貨物部会としては、なかなか専門的なことがわからないので、専門委員会を多数お願いいたしまして、専門委員でもって論議していただいておるのでございます。
  27. 松浦定義

    松浦(定)委員 私は、これは北海道生産の主要な地位を占めておる、あるいは消費の面についても相当のものが出て参っておるのでありますが、昨年もこの問題が出ましたときに、これはやはり、むしろ生産者側ばかりではなく消費者の問題でもあるのだということを申し上げたのですが、私は、この運賃改定の前に行われるところの問題として、当然そうしたことが十分検討されなければならぬと思うのであります。従って、北海道の場合、特に今問題になっておりまする青函擬制キロというものが改正されないということになりますと、なかなかその問題は解決できないと思うのですが、今度この改定をおやりになる場合に、青函擬制キロというものについても当然お考えになる御意思があるかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  28. 磯崎叡

    磯崎説明員 一応その点につきましても委員会相当議論が闘わされておりますが、まだ先ほど申しました通り具体的な御結論は出ておりません。
  29. 松浦定義

    松浦(定)委員 おそかったもので時間がありませんから、私はただこれだけにとどまるわけですが、特に、この問題につきましては、農林漁業物資というものが非常に重大な影響を受けるものでありますから、こうしたものに対する現在の制度の中で行われている特別割引制度については、やはり全体の運賃改定とは別に、これは従来でも問題になっておるわけでありますから、運輸当局、あるいは国鉄当局においても十分一つこの点を御検討していただきたいと思うわけであります。  以上で次の委員に譲ることにいたしたいと思います。
  30. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 丹羽君に関連質問を許します。丹羽兵助君。
  31. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 先ほど松浦君のお尋ねで、大臣は、事こまかに、今回の、あるいはまた将来考えられておりまする運賃改定について、運輸省として、また運輸大臣としての方針というか、お立場を明らかにせられました。まことに私はその方針が明らかになったことを感謝しておるのでありますが、これに答えて国鉄当局は、全く運輸大臣答弁と違った——全くとは申しませんが、ある程度の考えの違ったような答弁をしておられる。重ねて大臣答弁を私が繰り返す必要はないと思いますけれども大臣は、運賃改定によって等級改正も当然これは国会承認を得る、そういう方針で進みたいとあなたの方針を明らかにせられたわけでありますが、これについて国鉄当局は、内部的のことは、こちらで勝手にやるのだ、等級を十のものを八にするとか、あるいは十一にするということについては国会承認を要するかもしれないけれども内容についてかまうのはこっちの勝手だというような方針を述べておられまするが、これは全く聞き捨てならぬ。少くとも国鉄運賃改定して国民生活に大きな影響を与えるものが、一現業たる国鉄当局が、大臣の許可を受けずというか、大臣考えを全然無視して、大臣考えを入れずして、何かの条例にあるとか……。私ども条例のあることは知っておりまするが、今度大臣はここにそれを明らかにせられておる。自分の方針として、運輸大臣として、こうしていくことが国民生活の安定をすることであり生産を増強することである——松浦君の言われましたように、私どもひとり生産者だけのことを考えていない。あくまで国民全体の消費の面から考えて、大臣はそれを言っておられるにかかわらず、国鉄がそれを否定するような答弁をしておられるということは聞き捨てならない問題だ。もっと大臣からこの点をはっきりさして、国民に安心を与えていただきたいと思うのであります。私はよもや大臣先ほど速記録に残っておるのを取り消されるようなことはないと思う。違った答弁をなさるはずはないと思う。これが一カ月とか二カ月、数年たったころにおいてなら、大臣方針は変るかもしれませんが、まだ先ほど答弁からわずか十分か十五分の間に大臣答弁が変るとは私ども考えませんが、そういうようなことは困るのですから、この点をはっきりとしておいていただきたいと思います。
  32. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 丹羽君に申し上げますが、先ほど山内鉄道監督局長答弁についてのお話と思いますが、国鉄ではなくて、運輸省鉄道監督局長でございます。
  33. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 では、委員長から御注意がありましたようにその内容を訂正してお尋ねしたいと思います。
  34. 永野護

    永野国務大臣 これは速記録でございますから、速記録を見まして精細にお答えすべきことかもしれませんけれども、私はつい十分か十五分前のことですから忘れるわけはございませんが、私は、等級の数を今十二というのを十にするとかというふうに申し上げて、等級を動かしますときは法律が要る、すなわち国会の議に付さなければならないという点だけを申し上げたつもりでおるのであります。これは速記録を見ればよくわかることでございますから、はっきり、速記録を見まして、その点を明確にしたいと存じます。これは速記録を見ませんとわかりませんが、少くとも私はそう申し上げたつもりでお話をしておるのであります。
  35. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 大臣はその等級改正のことについてというつもりで述べたと言われまするが、おそらくこの委員会で今の大臣の御答弁やお考えを聞いた者は、さような表現はしておられない。私は速記録ははっきりしておると思うのです。大臣答弁はそういうお気持であったかもしれませんが、お気持がそのように表現されていない。私ども聞くのはあなたの口から出たその言葉だけをとらえておると思うのです。でありまするから、私は国鉄だと思いましたけれども、同じ政府部内において、大臣考えと反することを一局長が述べられるということは心外なんです。だから、そういう気持で言ったんだからということは私は承知しかねる。もし委員長において取り計らわれるならば、そういうようなお気持であったにしろ、あなたの表現がそのように現われているかいないかということを、休憩でもして、速記録をながめてから、一つ審議を進めていただきたい、こう思うのです。さようお取り計ういを願います。
  36. 永野護

    永野国務大臣 私もそれを希望いたします。言ったか言わぬかということに問題がしぼられておりますから、私の記憶では、記憶といってもつい今のことですかう、忘れるわけはございませんが、私はこういうふうに申し上げたと思っておるのであります。それが速記録にそう出ておらなければ、つまり速記録局長答弁と私の答弁が違えばいけませんけれども、私は違っておらないと考えておりますから、速記録に基きまして、もしも速記録が御指摘の通りであれば、それはまことにけしからぬ話だと思います。
  37. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 私は、与党の一人として、大臣の言葉じりを拾おう、それで議論をしようなんというような考え方はないのです。それで、あなたが、あくまで私はそういう気持で言ったので、速記の上にどう載っておろうとも、そういう考え、そういう気持で言ったのであって、失礼な言い方かもしれませんが、表現の仕方が足らなかった、こういうことなら私は了承しても何ら問題ないと思うのですが、おれはこういう気持で言ったんだから、速記録にどう載っておろうともそういう気持であった、先ほど言ったのは速記録にはどう載っておろうともそういう気持で述べたんだとがんばられるならば、一度速記録を十分調べて、そうしていかにあなたがどんな気持で言われようとも、われわれ聞く者がそう聞かれるようにしゃべったということは、発言なさったということはあなたに責任があると思うのでございます。だから、今あなたが速記録をながめてから速記録を云々と言われるならば、私はあくまでやってもいいのですが、私はそう聞いていない。おそらくここにおられる同僚議員も聞いておられると思う。だから、今事あらためて、先ほど速記録はどうなっておろうが、そういう気持で言ったので、言葉が足らなかったとか、私の方針はこうだ、こういうことなら私は了承します。しかし、あなたがそこまで出られるならば、大臣としてどんな腹の中であろうとも、国民の前でしゃべったことがもし出ておったならば、五分や十分後に修正するというようなことはできぬでしょう。五分や三分たって、先ほど言ったことは間違っておったというようなことは大臣として言えるはずはないと思う。だから、先ほどは言葉が足らなかったので、今の私の質問に対して、こういう気持であるという点をはっきりせられるならば、私は与党の議員としてそうそれにこだわるものではない。
  38. 永野護

    永野国務大臣 私の心持は、ただいまの御質問と違っておらないと思います。そういうふうに考えておるのであります。私は、今申し上げましたようなふうに答えたつもりでございます。それはどうしてもそう思っておるのでありますけれども、しかし、皆さんがお聞きになって違っているとおっしゃいますと、私は、どうもそんなことはあり得ない、こう思うのでありますけれども、もしもかりにそうなっておりましたら、それは私の言葉が非常に不十分なことであって、少くともそういうふうに誤解されるような表現をしたことは非常に私の手落ちだ、こう考えております。従いまして、私の心持は先ほどからるる申し上げておる通りでありますけれども、その表現がまずくて皆様方にそういう誤解をお起しになるような言葉の使い方を私がしておったといたしますならば、それは私の本旨でないことで、まことに遺憾千万だ、こう考えております。
  39. 吉川久衛

  40. 野原正勝

    野原委員 私はこの際国鉄運賃改定の問題に関しまして十分意を尽したいと思いますが、ただいま問題になりました、丹羽君からいろいろと疑問の点が出ましたが、このことをまず先に明らかにしておきたいと思います。  実は、ただいま資料としてもらいましたこの国鉄側資料でございます。この中に、第七条の貨物運賃改定に関する国鉄側意見考え方が載っております。この中にはっきりしておるのです。つまり、永野運輸大臣がおっしゃったことは、これはむしろ率直な意見として私は敬意を表しておる。非常にいい意見だと思います。これに対して何も国鉄側も矛盾したようなことを言っておりません。ただ、今山内鉄道監督局長意見が多少違ったようでありますが、今私がいただきました資料を、関連のある問題だけ読んでみます。「しからば将来等級表の全面的改訂を行わんとするときはどうするか、もし賃率表を動かすことなくして全般的改訂を行うものとすれば、それは各貨物間に著しい増減が生じて、合理的な等級表が出来ることは考えられない。即ち貨物等級表は商品学的立場によって分類され格付されているので、そのような変更は等級表の自殺的行為ともいうべきであろう。従ってそういう場合には常に賃率表の改訂を必要とするから、等級表そのものは国会審議を必要としていなくとも、そういう改訂の内容国会審議会の対象となる機会が必ずあることとなる。」ということが、本日私の請求によって国有鉄道が出された資料に載っておるのであります。でありますから、すでに国鉄側では当然これは国会の御審議をいただくという気持でこういう資料が出ておるのですから、運輸大臣お話しになったことは何も矛盾がない。むしろ堂々と運輸大臣としての責任においておやりになってよろしい、そう思うのであります。もし、いやしくもこれほど大きな問題を一国鉄総裁諮問機関である運賃改定調査会答申をしたからといって、それをうのみにするというふうなことがもしあれば、それこそ大きな政治的責任である、政府の立場において許されないことだ、私はかように考えております。  さて、私は、これから運輸大臣並びに十河国鉄総裁一つお伺いしてみたいと思うのであります。  まず、国鉄運賃改定という問題は、産業経済全般にわたって及ぼす影響というものはまことに大きい問題であります。従って、これは改定をする場合においても慎重の上にも慎重を期してもらいたい。これは、その点から見れば、今日国鉄総裁諮問機関として運賃改定に対する調査会を設けられて、いろいろと時間をかけ百回以上の委員会を開かれて御審議をしておられることはまことにけっこうなことであります。これは今までいろいろと不合理もありますので、その点を合理化して、この際ほんとうにりっぱな運賃体系というものを作られることは、私はけっこうだと思います。これは大いにやっていただきたいのでありますけれども、いやしくも国鉄というものは国民のものである。従って、公共的なものであると同時にいわば独占的な企業でもある国家の大きな機関としての性格というものを考えるべきである。この運賃改定というものによって生ずるところの、わが国の産業経済に対する大きな影響というもの、これを十分考えていかなければならぬ。経済界の混乱が起るようなことがあってはならぬと思う。特に、弱小な中小企業であるとか、あるいは農林漁業のような産業というものに対する影響というものを考えるときにおいては、十分なる配慮を必要とする。これは国鉄側で出したのではないとおっしゃっていますが、先般貨物協会から出ておる中間報告というものがあるのであります。その中間報告なるものを拝見いたしまして、これは容易ならざる問題であると考えましたことは、すでに中間報告に示されておる幾つかの内容、これは深刻な今後の大きな問題をはらんでおる。今回の中間報告によりますと、上位等級を引き下げて逆に下位等級を引き上げるような一つの案が出ておる。もしこういうことがなりました場合、国鉄の企業的採算主義というものによって、公共的使命というものを忘れる。そうして、独立採算制というものを強調するあまり、ほんとうに国民経済全般のことをもし忘れて、単なる合理主義という名のもとに改定をやるというようなことがあるとすれば、これは断じて許すことはできない、さように考えておるのであります。運賃制度調査会なるものの中間報告にすでにこういうような意図が明らかに出ております。これに対しましてはわれわれ重大なる関心を持っておるわけであります。万一にも国民生活に不可欠な農林水産物資等の大幅な値上り等があるならば、暴挙であります。これは、最近ようやくにして安定を取り戻しておる、わが国の経済が安定成長をしておる過程において、この経済を混乱に陥れることが一つの要因になる。私はそういう点から見てこの際この問題を明らかにいたしたい。  そこで、私は、今回の改定の趣旨というものが、国鉄側あるいは運輸省側のいろんな意見等を聞いても、またこの調査会の目途を見ましてもはっきり示してありますように、必ずしも運賃の増収を目途としてやっておるのではない、あくまでも合理化のためにやるのだ、今までの不合理をただすために行うところの措置であるということをおっしゃっておる。運賃改定はすでに三十二年の初めにやっておる。一三%の引き上げはしておる。事実は約一六%くらい上げておるようでありますけれども、とにかく運賃の値上げはすでにもう一応の段階において済んでおる。あとはその当時運賃を合理化そうという案があったようでありますが、それがなかなかできなかった。そのために、いずれ機をあらためて時間をかけて運賃改定に乗り出すという決意をもって現にやりつつあるわけです。そのこと自体は私はけっこうなことだと思うのでありますけれども、元来の目的が合理化にあるのであって、運賃の増収を考えておるのではないということをはっきり言明しておられる。運賃の料率を合理化するというようなお考えで進めておるということであるならば、そんなにあわてる必要もないと思う。やはり時間をかけて十分国民の代表機関である国会の議を尽すことが当然であるということを私は考えるのであります。もし万が一にも国鉄運賃改定に対して合理化の名において幾分かの増収をもくろんでおるとすれば、増収をしなければ国鉄の経営がやっていけないというような事態にあるのかどうか、その点まず一つ国鉄の経営の現状をお話しいただきたい。私ども、ただいま国会審議しております資料を拝見いたしまして、三十四年度の国鉄の経営状況というものを見ましても、一応黒字になっておる。差引利益八十億円が国有鉄道の会計として計上されております。でありますから、必ずしも赤字になっているわけではない。すでに八十億円の利益がはっきりと計上されており、衆議院で審議いたしましてこれは通過した。こういうのでありますから、もしも改定するとしても、それは単なる合理化だけであって、何ら運賃の増収ということを考えておるのではないということは、もうすでに説明通りだと思うのであります。しかしながら、この国鉄の今日の経営の実態というものは、国鉄合理化五カ年計画でいろいろと合理化を進めておられるようでありますが、その過程においていろんな必要な資金もございましょう、それに対してはいろんな手当もしておると思いますけれども、もしもそういう国鉄をやっていく上において運賃改定を急がなければならぬような事態にあるのかどうか、その辺を一つ明らかにしてもらいたい。運輸大臣並びに国鉄総裁から経営の状況等をお伺いいたしたい。
  41. 永野護

    永野国務大臣 国鉄内容自体の説明国鉄総裁からお答えするのが適当ではないかと思います。ただ、国の政策といたしまして、運賃改定の問題が非常に大きな影響国民生活に与える点につきまする野原委員の御主張は全く同感でございます。軽々に扱うべきものではないと存じております。具体的の扱い方につきましては、答申案が出まして、それに基いて国鉄が何らかの意思決定をいたしまして運輸省にその承認を求めてきますときに、私どもはそういう心がまえでその国鉄の申請を扱うつもりでおります。  今国鉄が具体的に一体どういう状態にあるかということにつきましては、国鉄の当局者から説明をしていただきます。
  42. 十河信二

    十河説明員 国鉄の最近、特に三十三年度の収支の状況を見ますと、すこぶる寒心にたえないものがあります。当初の国会承認を得ました予算に対して百八、九十億ないし二百億程度の収入減になる情勢にあります。これは財界の消長によって起った現象であります。われわれは、極力努力いたしまして、合理化、経費節約をやって、この状態を何とかして改善したいと努力いたしておりますが、遺憾ながら今日は非常に苦しい状態にあることは事実であります。この点はありのまま御報告申し上げます。  今度は運賃制度調査会の問題でありますが、これにつきましては、先刻お話の中にありましたように、前年運賃改正をお願いいたします際にもこのことをあらかじめ検討いたしました上でお願いすべきであったのでありますけれども、それが間に合いませんで、それで、遅れて、一昨年の十月から約二年間くらいかけて十分に検討して——これは国民の皆さんの利害に及ぼす関係でありますから、どういうふうに改正すべきかということを十分に検討してもらおうじゃないかということで、この委員会を設けたのであります。お話の中にありましたように、増収を目的とする意思は毛頭ありません。ただ、経済界の情勢の変動によりまして、負担力のあったものがなくなった、あるいはなかったものが負担力が出てきた、いろいろな商品の間に運賃負担の不公正が出てきたというふうな状態を何とか合理的に修正していこうじゃないかというのがこの委員会の目的であります。従って、これは国鉄自身の利害ということよりか、むしろいろいろな商品、いろいろな業者の間の利害関係が複雑な関係に立つのじゃないか、こう考えます。それゆえに各方面の代表者の方々に委員になっていただきまして、貨物部会のほかに専門委員会をいろいろと設けまして、目下検討中であります。先刻申し上げましたように、五月一ぱいくらいには結論が出るかと言っておりましたが、いろいろ御意見がたくさん出て、どうも五月一ぱいにはちょっとむずかしいのじゃないか、一カ月か二カ月おくれるのじゃないか、あるいはそれ以上おくれるかもしれませんが、今日の状態はそういう状態であります。私どもの意図は増収を目的としてやるということじゃないということは当初から申し上げておる通りでありまして、その点は少しも変更はございません。
  43. 野原正勝

    野原委員 ただいま永野運輸大臣並びに国鉄総裁からのお話がございました。運賃の増収を目途としたものではない、しかし国鉄の経営は実は正直なところ苦しいという率直なお話でございました。私どももその点はよく拝察しております。しかしながら、私は、国有鉄道というものの性格からいたしまして、やはり、苦しいならば国家が国の予算でめんどうを見るのがほんとうだと思う。どうも今までの国鉄に対する措置というものが果して一体どうであったか。いろいろな資料で私見たのでありますが、資本金は昭和二十八年度以降八十九億にとどまっております。一銭の増加も出資もしてない。これだけの大きな事業がありながら、これに対して最近は一銭の財政支出もしてないというところに問題があると思う。固定資産が二兆一千四百六十四億といわれておるが、今ではふえておる。しかも昭和三十年の四月に資産再評価をなすった。そうして、その当時までは年間の償却がかれこれ三百三十五億程度であります。ことしの三十四年度の予算を見ますと、減価償却に五百十八億計上しておる。しかも、事業費が二千七百十億で、利子及び債務取扱い費が百八十六億。全体で三千四百十五億という支出の予算、それに予備費五十億を加えて三千四百六十五億という国鉄の支出の中で占めておるものは、まず利息が百八十六億、減価償却に五百十八億を見ておる、こういうような内容で仕事をしておる。旅客収入が千九百三十一億ことしは計上しておる。貨物が千五百九億、雑収入が百五億。政府会計から七百万というまことにこっけいなものであります。全部で三千五百四十五億でつじつまが合っておるわけでありますが、差し引き八十億の利益という勘定になっておりますけれども、ことしの国鉄の資金計画を見ますと、事業収入三千五百四十五億円、それから固定資産の売却、これは国有鉄道の持っておる資産を売却するのが約八億、それから政府会計から受け入れはわずかに三千五百七十万円、けたが三けたばかり違っております。それから資金運用部の借入金が二百六十五億、鉄道公債が三百四十五億、四千百六十四億で国鉄の建設も進め、事業もやっていく内容のようでございますが、私は、こういうような国鉄というものに対する国の財政政策というか、これにまず問題があろうと思う。国鉄があれほどの大きな仕事をしており、しかもこれは国鉄総裁が大へんお話しになっておられるむしろ非常に誇りにしておられる営業の状態、世界に冠たる一つ国鉄の経営状態で、これはすでにできるだけの合理化もしておることだというふうに考えておる。りっぱに業績を上げておりながら赤字ができる。そういう点で、合理化はもちろんまだまだ余地はありましょう、大いにやってもらわなければならぬと思うが、しかしながら、これほどの努力をしてりっぱに仕事をしていながら、どうも思うような経営ができない状態にある。下手をすると赤字ができるというような事態のままで、赤字ができるとやむを得ずそのしわを運賃の方に持っていく。旅客運賃の方はあまり上げますと大きな国民の抵抗にあいますので、貨物の方へしわが移っている。貨物の方もどこへ一体しわを持っていくかということになると、明らかに上の方を下げて下の方を上げるという中間報告でそういう案が出ておる。そうすると、だれが一番困るのかということになると、一番苦しんでおる農林水産関係あるいは中小企業、特に木材のごときはこれはまことに死活の問題に相なるわけです。こういうことになるので、国鉄がその経営の改善をそういう末梢的なこうやくばりの対策でもっていったのでは、どこまでいったところで合理化はできない。むしろ、この際運輸大臣は、大きな政治力で、われわれの方も大いにお手伝いしますから、一つそうした国鉄に対するいろいろな財政政策という観点から国鉄の強化を強力にやってみる気があるのか、それとも、今まで通り状態で、国鉄はまず自まかないで、あくまでもやれ、もし赤字ができたら運賃を上げさえすれば何とかやっていけるであろうというようなことで、突っ放してあまりめんどうを見ないでいくという御方針であるか、その点を一つ明確にしてもらいたい。
  44. 永野護

    永野国務大臣 私も就任以来国鉄のあり方を基本的に考えておりますが、かなりの不合理があるように思います。つまり、公共企業体であるという公共性と、独立企業体であるという採算性との間に非常な矛盾があるわけでありまして、今日までの私の勉強の程度では、両方に不徹底になっておりまして、これは乱暴な言い方かもしれませんけれども、国家企業の弱点と私企業の弱点とをそのまま背負って歩いておるような感じがするのでありまして、むしろ考え方によっては国家企業にもっと徹した方がよかったのではあるまいかとすら考えるのでありますが、同時に、もう少し私企業的な経営に徹すれば、今野原委員のおっしゃったようなこと、政府出資ということを必ずしも考えなくてもやる余地があると私は考えておるのであります。企業体でありながら手形を出して物を買うこともできなければ、入った金はみな取ってしまう、入ったら今度出すときは一々大蔵省の御許可を得なければいかぬというような制約を受けておりまして、独立企業体としての機能を発揮さすということは、言葉は悪いかもしれないが足をしばって走れというような注文のようにも受けとれる節があるのであります。まだ研究が十分でございませんから、こうしたならばいいという、少くもすぐ野原委員の言われるように運賃のところにすぐ逃げ込まなくても考える余地はいろいろあるかと思います。これは将来の国鉄のあり方を根本的に考える時期が来たのではないか、こういうふうな考えを私は今持っておるのであります。将来ともその意味におきまして十分なる検討を続けまして、野原委員のおっしゃるようなしわ寄せをすぐ運賃のところへ持っていくということでなくて、何かやることはありはしないか、こういうふうに考えております。
  45. 野原正勝

    野原委員 運輸大臣にもう一点だけお伺いしておきます。私はこの際ぜひとも大臣に御決意を願いたいと思いますことは、やはり、国鉄は国家のものだという点と、それだけに、公共企業体であるが、国の大きな政策として、やはり運輸大臣の責任下において合理的な合理化も進め、そうしてまた運営もやらす、そうしてまた、運賃改定等については、これは国鉄だけにまかせるわけにはいかない問題だから、従って、これはあくまでも運輸大臣の責任で大所高所からやっていくという必要があるだろうと思う。それには、やはり、内閣の閣僚の一人として当然やってもらわなければならないのは、国鉄が今日当面しておる合理化あるいは建設の計画、そういうものに対してもっともっと国家が大きな財政的な保障を与えるということです。これは財政投資の形でもよろしいし、あるいはまた融資の問題でもよろしい。とにかく、私どもが調べる範囲では、最近のいろんな、たとえば電源の開発だとか、あるいは電力資本であるとか、輸送部門においても海運あるいは日本航空、あるいはその他のいろんな機関に対して開発銀行その他を通じまして相当大きな投融資がなされておる。政府からことしは五千億に上るところの財政投融資がなされておる。この中でわずかに国鉄の方が資金運用部から二百六十五億、鉄道公債が三百四十五億というように、まことに少い。国鉄の二兆数千億という大きな資産と、これほど大きな事業をやっているものに対しては、あまりに少い。これはもちろん予算委員会質問する事項でありましょうけれども国鉄というものはすでにりっぱに一人立ちのできた青年だ、だからお前のところは一人で歩けという意味合いだろうと思います。とかく、政府の立場からすれば、国鉄というものはほんとうの長男に相当する嫡子であります。目の中へ入れても痛くないほど大事にして育ててきたものであり、むしろ国と運命をともにする、国そのものなんです。ところが、最近におきましては、国の財政計画などを見てみますと、ややもすると、これはたとえばおかしい話でありますけれども、自分の親戚の子供をかわいがったり、あるいはまた自分の好いた人の子供をむやみにかわいがってみるというような傾向があるんじゃないか。今度の国鉄運賃改定という問題の中に、もしも今までの政府の財政的な措置が十分でなかったために国鉄が苦しまぎれに運賃改定などというような合理化の美名のもとにそういうことを考えておるとするならば、これは今までの国鉄に対する考え方というものについてやはりわれわれも考えなければならぬ。運輸大臣としてはこの点を一つ十分御研究をいただきたい。別に答弁は求めませんけれども、その決意で運輸行政全体を責任を持ってやっていただきたい。特に運賃改定の問題はあなたの責任でありますから、これは国鉄総裁からいずれ相談がありましょうけれども、やはり国会で堂々と審議をさして、そうしてみんなの意見を聞いた上で決定する、そういう御方針で、決意でお進みいただきたい。
  46. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 それでは、大臣、今の質問に対して御決意を述べて下さい。
  47. 永野護

    永野国務大臣 野原委員のお説は一一ごもっともです。できるだけ御趣旨に沿うように努力して参りたいと思います。ただ、私どもの行政当局といたしましては既定の法律ワクの中で動く以外に方法がない。従いまして、立法論といたしましては、私自身にもいろいろな意見があるのでございますけれども、それは国会の御決意によってきめることでございまして、私どものような行政当局といたしましては、立法論をいたしましても何とも仕方がないことであります。先ほど申しますように、立法論をいたしますれば、単に運賃問題だけでなくて、国鉄の運営のあり方の基本に触れて考えるべき問題がたくさんある、こう考えておるのでございますけれども、これは全部立法論になるのでありまして、行政当局としては手の届かないところでございます。しかし、そのワクの中でできるだけ野原委員の御主張に沿うように万全の努力を尽していきたいと思います。
  48. 野原正勝

    野原委員 十河総裁に伺いたいと思います。あなたが国鉄のことについてお話しになったことが出ております。「現在の国鉄は非常に物的設備が不完全であるにもかかわらず、世界の驚異といわれる輸送をやっております。」という書き出しで、「旅客について見れば、イギリス、フランス、ドイツの三国をあわせただけの輸送量を、その三国の七分の一の設備でこなしています。また貨物では、イギリスが日本の二倍の線路と十倍の貨車を使って、ちょうど日本と同じ量の貨物輸送をやっています。日本の貨車の運用効率が三〇%ぐらいになっているということは、そんなことが可能なのかと驚異の目を見張られるほどで、人間の能力の限界までの能率をあげているといっても過言ではないと思います。」とある雑誌に出ておりますが、私もりっぱに国鉄を経営しておる総裁に対して大いに敬意を表するわけです。そこで、これほどのりっぱな成績を上げておりながら赤字が出るということはまことに不思議だ。なぜ赤字が出るか。運賃はどうか、運賃だってそんなに安いとは思いません。一体どういう点でこういうことになっておるか。諸外国の国鉄というか、鉄道事業に対する政府の投資とか、融資とか、そういう財政的な措置というようなものについて国鉄ではいろいろ比較検討されておると思うのでありますが、そういうような観点から日本の国鉄に対する政策がまだ不十分であるとあなたはお思いになっておるかどうか。実は、あなたのところの石井さんという常務理事が運輸審議会の公聴会で話されたという言葉、「これは国家投資の問題でありますが、この点につきましては、これは一つのイデオロギーの相違であろうかと思いますが、私どもは国家財政にゆとりがあるということではないけれども国鉄に対しての国家投資というものがどうも十分にやっていただけないということはまことに遺憾だ」というような意味のことを申されておる。おそらく国鉄側にはいろいろな点で御不満があろうと思う。その不満を、国がめんどうを見ないからといって、一番苦しがっている農村の人やそういうところへしりを持っていって、弱体な連中からは金を取り、政府に頭を下げて金を出せということを一言も言わぬというような態度では、これは国鉄を預かる者としてはいかぬと私は思う。まず国鉄総裁の腹がまえをお聞かせ願いたい。
  49. 十河信二

    十河説明員 お話にありましたように、政府の投資、政府の出資の足りないということはその通りだと思います。私は就任以来毎年そのことを政府に要望いたしまして、できるだけ政府の出資を多くしてもらいたい、何とか政府が出資をしてもらいたいということをお願いいたしております。また建設審議会等におきましてもそういうことをお願いいたしておりますが、建設審議会でも非常な御同情をいただきまして、何回か決議をされてきたのであります。その決議を後援といたしまして政府に要望を続けて参りましたが、遺憾ながら、私の微力、その目的を達することができないでおることをざんきにたえないと存じております。  国鉄のあれにつきましては、さっき大臣からもお話がありましたが、いろいろな問題があるので、公共性と企業性と両面を持っております。公共性の方は、国民から、政府から、各方面からどんどん要望があって、国鉄はそれを実施させられるのであります。企業性の方は、さっき大臣からもお話のあったように、手を縛り足を縛って、われわれの自由の活動ができないようになっております。ごく最近に起った一例を申し上げますと、たとえば、駅を設置しろという駅設置の申し入れが無数にあるのでありまして、毎年そのうちの最も急を要するものから取り上げて幾つかずつ駅を設置しております。その際に、駅を設置すれば付近の土地は騰貴するということは当然予想される。その場合に、国鉄は必要な土地以上には一坪も土地を買うことはできないのであります。会社はその付近の土地を買い占めてえらいもうけをしておるのであります。われわれは指をくわえてじっとそれを見ておられなければならない。そうして、会社が買い占めをするために値上りをする高い土地を、これは必要やむを得ないのですから、どうしても買収しなければならない。  そういうふうなことで、二万キロの路線を持っておりますが、大ざっぱに申し上げますと、そのうちの一万五千キロは赤字であります。その赤字は昭和三十二年には約三百五十億ございます。そのうちの約半分は直接の経費をも支弁することができないという状態にあるのであります。これは、経費の分担、収入の分け方等、非常に複雑困難な問題がありますから、正確に申し上げるわけには参りません。われわれ経営者として大見当をつけてみますと、その一万キロが赤字であるが、そのうちの約半分が直接の経費も償うことのできないというような状態にあるのであります。  そこで、どうすればこの赤字を減すことができるか、あわよくば赤字を黒字に転換したいといって、今赤字線区の合理化というものを盛んに検討いたしまして実施しておるのであります。これに対しても、いろいろな方面、あるいは労働問題から、あるいは地方問題から制肘がありまして、国鉄はこうすればこれだけ経費が浮いてくるという見込みが立っておっても、それを十分実施することができないのであります。一昨年十月から東北本線の貨物の集中駅制度というものを実施したのであります。これは国民の皆さんに何ら御不便をかけることなくして国鉄の経営費を浮かせようというのでやったのであります。約五百両の貨車が浮いてきたのであります。それだけその貨車をほかへ利用することができる。これは経費の軽減になる。これを実施するに当りましても、非常な苦労をいたしたのであります。毎年収入が百億増加するといたしますと、その収入を百億増加するために、これに伴って相当の経費が要るのであります。ところが、毎年人件費が百億くらいずつずっと増加しております。これはわれわれがいかんともすることのできない不可抗力によって増加するのであります。たとえば、仲裁裁定によって、どうしても仲裁裁定に服従するのほかないということでありますと、これはわれわれの力でどうすることもできない。そういうふうな関係で、毎年百億ずつ収入が増加するが、人件費だけが百億増加すれば、この収入の百億増加に伴う経費をまかなうことができないのであります。それで、その上にさっきお話しのように利子が年々増加して参ります。毎年約三十億以上ずつ利子が増加するのであります。この利子負担をどうするか。これらのことをすべて経済界の発展、収入の増加と合理化、経費の節約によって生み出さなければならない。これは容易なことじゃないのであります。そこで、先刻お読み上げになりましたように、たとえば貨車の使用効率といいますと、われわれのところでは大体三〇%程度になっております。アメリカは合理化の最も進んだ国でありますが、その国の最も合理化の進んでおる、経営の優秀であるといわれておるアメリカのペンシルヴェニアの社長に、先年私アメリカに参りましたときにお目にかかったのであります。ペンシルヴェニアの社長は、自分のところは効率が一〇%である、どうだ優秀だろう、アメリカ全体は五%だ、そういうことを私に自慢せられておった。従って、私の申し上げました三〇%というものは彼らから見ると非常に驚異的な数字である。金力のとうてい及ばぬところではないか。そこで、私どもは、この財政をどうすれば安固にすることができるかということについて日夜苦慮しておる。今申し上げますように合理化をどんどんやっております。しかし、それだけではとうてい追っつかない。労多くして効少いのであります。  そこで考えたのが、近代化、輸送力の増強ということ、これにはいろいろの御意見もあるようでありますが、たとえば東海道で「こだま」という電車を走らした。列車だと大阪に行って日帰りができないのでありますが、電車だと日帰りができる。電車に空気バネができましたので、お客さんがあまり動揺を感じないで楽な旅行をしていただけるということになったものですから、電車をやってみたのであります。その成績は大体予想以上の成績でありまして、この電車を走らせるために投資をいたしました金が、ごく大ざっぱに申し上げますから正確な数字ではありませんので御了承を願いますが、大体十億投資をいたしました。そうして年間の収入が十二、三億あります。これに要する経費が、営業費が二、三億、それゆえにこの列車は非常にもうかる列車であります。しかしながら、この列車を走らしたために、若干は他の列車のお客をこちらに移した。従って、これを走らせなくとも得られる収入がこれらの収入に計上せられておるという点もありますから、正確なことはわかりませんが、これは相当もうかる列車であります。  そこで、東海道が三十七、八年ごろになると行き詰まる。この行き詰まりをどうして救済するか。これは非常な根本問題であります。これが行き詰まると全国に影響を及ぼすのでありますから、そこで、東海道に新しい複線を一つ作りたい。この複線を、一番投資が少くて、一番輸送力が多くて、一番安全、迅速、確実な輸送のできる方法を案出しようじゃないかということが今回提出してあります東海道の広軌新幹線の計画であります。これも相当収入を増して、昭和五十年までには投資も全部償却して、そうして現在東海道の収益の二倍以上を上げることができるという見込みであります。  そういうことをやって、何とかして国民の皆さんに御迷惑をかけないで国鉄の財政を安固にしたいということを日夜苦慮努力をいたしておるような次第であります。
  50. 野原正勝

    野原委員 総裁から大へん長々と御答弁をいただきましたが、この無形の御努力に対しては敬意を表します。しかし、やはり国鉄の性格から見まして、今もるるお話しのように、採算という点から見れば赤字であるような新線の建設も、やはり鉄道審議会等の決定によってなされるわけです。そしてまた、現に赤字であるところを黒字に変えていくように経営の合理化をはかったり、いろいろな努力が当然伴うわけです。そういうことは当然国鉄がいかに国家的機関、公共的性格のものであるかということの説明だと私は思う。ことほどさように重要なものであり、国家の公共的な性格というものが持たれてやっておる事業でございますから、それが運賃改定というような問題になりますと、やはり何としても公共的性格というものの上に立って考えなければならないという点から、単なる実費主義というふうなことはいけない。今までの運賃改定等の様子を見ておりますと、いろいろな過程を経て料率の改定が行われた。あるいは長距離の運送の価格の逓減が行われるとか、あるいは減トンの措置が行われるとか特別等級を作るとか、等級割当等も普通等級で十二等まで、特別等級が二十一から二十三までの三等級、全部で十五になっておる。こういうような仕組みになって、いろいろな内容を見ておりますと、その中での修正がなされておる。こういうものをできるだけ簡素化して合理化するというねらいで今日調査会でいろいろと結論を急いでおられる。すでに中間報告が出たという段階である。しかし、私どもは、国有鉄道というものがことほどさように公共的性格のものであるという点から考えましても、これは単なる採算主義だけでいったのではいけない、国鉄運賃の値上りという問題は非常に影響するところが重大だ、場合によれば日本の産業がこのために非常に大きな動揺を来たし、ある部門においては壊滅的な打撃を受けるということをおそれるのであります。たとえば木材の関係で言いますと、木材資源というものはすでに御承知通り非常に地域が偏在しております。北海道であるとか東北地方あるいは九州、中央から見ますと比較的遠距離の地帯に資源があるのであります。そういう資源が送られてくる場合において、どうしても距離が長くなるというようなものに対して、もし遠距離の逓減制というふうなものがあまり考慮されないということになりますると、これはもう直ちに非常な混乱を生じ、打撃を受ける。木材は御承知通り非常に重要な建設の資材として、国鉄自体でもまくら木その他たくさん使っておられまするけれども、東京におきましてのいろいろな建設すべてが木材資源というものにたよって建設されておると言っても過言ではない。そういう大きな産業がこの運賃改定によって非常な影響を来たすということが心配されるわけであります。私どもは、冒頭にも申し上げましたように、この運賃改定というものがあくまでも合理化の目的のためになされるというのであれば、やはり合理化目的を達成するということに重点を置くべきであって、その改定の結果多少の運賃の増減はあり得る、それはあり得るが、どの程度までは許されるかという問題を考えてみると、およそそれは上下ともせいぜいのところが五%以内でなければならぬと思う。一割も二割も合理化の名のもとに運賃が値上りになったというような事実がもしあれば、これこそ大へんなことだと思う。もちろんそういうことはゆめにも考えていないと思う。まして国会で十分審議を尽す機会を与えていただけると私どもは思いますので、その際にまたその問題を取り上げてみたいと思いますけれども国鉄側は、むしろ、ほんとうに今後の経営の合理化をなすってりっぱな国鉄を経営するというならば、やはりいろいろな面での赤字やその他が生ずる場合においては、これはまずだれに相談するよりも自分のおやじさんに相談する、政府に相談する、そうして政府の財政の方でまかなってもらう。何の遠慮が要りましょう。総裁はるる努力したと言うが、あなたお一人ではなかなか容易でない。われわれも、おそらくこの農林委員会などは全員が国鉄総裁をバックして大いに協力する決意でありますから、何の遠慮も要りませんので、そのしわだけは絶対に農村には寄せないというような決意で改定考えてもらいたい。  まあいろいろこまかなことで質問したい点もございますけれども、私はあえてあまりこまかなことに触れません。ただ一点お伺いしたい点は、どうも、国鉄のというか運輸当局のというのかわかりませんが、いろいろな計画等を見ますと、非常に片寄っておる。たとえば東海道線の「こだま」の話しがありました。これは大へんけっこうなことでありますけれども、あの「こだま」をやったほかに、この間の新聞で見ますと、またえらいものを作られる案がある。三月七日付の日本経済に出ておりますが、賀屋さんの帰国談というのが載っておる。賀屋さんはどういう資格で行ったのか、私はわかりませんけれども、あの方は巣鴨を出てこられて今代議士をしておりますが、あの方の談です。東京—大阪間を三時間で走る新幹線を三十四年から始めて三十九年に完成するという案で、アメリカから一億二千万ドルの外資導入について了解を得た、それでこれに対しては国鉄の自己資本から三百億を出す、——そんなに出すだけの金があるのですか。それから、政府資金は一千億を出すのだ、そうしてこれを三十九年には完成をする、すでに三十四年度に三十億円が建設費として計上されたという。これは日本経済を見て私も、なるほどおもしろいことをやる、三百億も自己資本を出すぐらいだから国鉄はだいぶこのごろ経営がいいのじゃないかと思った。ただいまお話を聞きましたら、どうも三百億なんという金の御準備がないようであります。自己資本三百億を出すというなかなか勇ましい、これは賀屋さんの談というのでございまして、十河総裁の談じゃございませんからなんですけれども、とにかくそういう案がある。しかもこれは、私が実におかしいと思いましたことは、この新幹線完成の暁は、その経営は公社かあるいは民間経営にゆだねるというような案も出ておるわけです。もうかるような線を別の民間会社に払い下げをするとか、あるいは公社を別に作ってやるとか、国鉄というりっぱな嫡子がありながら、またそういう妙なものを作ろうという案はないとは思いますが、そういうようなことをやった場合は、国鉄総裁は賛成をしますか。国鉄近代化五カ年計画というものが進められており、今日その線にのっとっていろいろなすっておられるが、われわれは、むしろ、大きい観点から見た場合には、今日京阪神地区とかこういう人口稠密な地域に非常にたくさんの施設が行われて、北海道とかあるいは東北という方面においては非常におくれておるのだから、せめて一日も早く東北本線の複線化をやってもらいたい、あるいは不便なトンネルばかりたくさんあるような地域については電化をしてもらいたい、あるいはディーゼル・カーでもいいから動かしてもらって、できるだけ輸送力を増強してもらいたい、大衆の便利をはかってもらいたいというきわめて控え目な要求をお願いをしておるのであります。それさえなかなかできないやさきに、またこういうような弾丸鉄道を作るとか、弾丸道路を作るとか、ことしは一兆円の予算とそれからあれほど押し切ってガソリン税の値上げをやろうなどというような案もあるわけですが、一体そういうときに国鉄は道路ばかりよくなればいいと思っておるのか。この点、大きく国鉄総裁としましていかような決意で臨まれるか。簡単でよろしゅうございますから、御決意のほどを承わりたい。
  51. 十河信二

    十河説明員 私は、党とのこと、あるいは政府の関係のことは答弁いたしかねます。東海道線につきましては、先刻も申し上げましたように、全国の動脈中の動脈で、ここが行き詰まると全国の輸送が行き詰まって、東北から荷物を持ってきてもそれを運べなくなる。それでありますから、東海道線、そういう一番輸送力の行き詰まっておるところへ輸送力をつけるような施設をどんどん進めていきたい、こう考えております。  それから、電化、ディーゼル化は、全国にわたって、電化をすることが有利なところは電化をする、そうでないところはディーゼル化をするということで今進めております。現にディーゼル動車を持つこと国鉄は世界一でありまして、世界一の安い運賃で世界一ディーゼル・カーをよけい持ってやっておる。そういうことで御期待に沿うように私も極力努力いたしますから、今後ともどうぞ御声援を願いたいと存じます。
  52. 野原正勝

    野原委員 いろいろとわき道にそれましたから本筋に戻しますが、要するに、今回の運賃改定の問題で国鉄調査会を設けてやられるということはいいわけでありますが、調査会のメンバーを見ておりますと、どらも一番大事な農林関係からの委員というものは二十五名のうちたった一人でございます。しかもたった一人の方が途中で不幸なことに相なるというふうなことでかわられたというような事態があるわけで、おそらく農林関係物資等の輸送についての十分なる意見がなされなかったのじゃないかというふうにも考えておるわけです。でありますから、貨物等級審議会においていろいろな調査をなされたと思うのでありますが、私は、この鉄道貨物運賃の制定に関しましては、十分やはり農林物資等が及ぼす社会生活上の影響国民経済全体に対するいろいろな影響等を考えてやっていただきたい。特に、木材であるとか、あるいは水産物、あるいは農産物というものに対しては、従来もいろいろそういった特殊的な事情というものを考えた料率が適用されておるわけであります。もし今までの考え方と少しでも違ってそういうような農林水産物資に対する運賃の過重負担というものがあるというふうなことは絶対に許されないことだと思うのです。先ほど申しましたように、少々のでこぼこはやむを得ない。少々のでこぼこというのはどの程度に考えているか、私は、少々というからにはせいぜい二、三%だろう、まあ五%くらいまでは仕方がないかもしれぬ。しかし、一割も二割も上げて少々でこぼこを直したなどということでは、これは非常に影響するところが大きい。一体どの程度を目途として運賃改定をなさろうとお考えになっておるか、その点一つ総裁のお考えを伺いたいと思います。
  53. 十河信二

    十河説明員 私の方は、現在の収入が増減ない程度で、その中で公平にあんばいしてもらいたいということをお願いしておるのであります。従って、各業者、また委員の足りないところは専門委員という方々がたくさんいらっしゃいますから、それらの方々が御研究になって、どの程度なら公正であるかということをおきめいただいて、それによってわれわれは実施していきたい、こう考えておりますから、そういう御心配になる不公平なことは私はないものと信じております。
  54. 野原正勝

    野原委員 ただいまの総裁の御答弁で、農林水産物資等についてはあまり大きな変動は考えてないという御意見と承わりまして、やや安堵したようなわけでありますけれども、しかし、ややもすると事務当局の案というものはときに私どもが心配しておるような事態の案が出るかもしれない。たとえばある物資においては一割五分あるいは二割というような無謀な値上げ案がときによって起る場合がある。そういうような案を初めから作らせないように、ただ単に委員会に十分議を尽さして答申を持ってきてくれというのでなく、不断に総裁意思というものが委員会に反映して、事務当局に対しても、やはりそういう点について慎重に委員会の運営ができるよう、一つ考えてもらいたい。その点は、営業局長が来ておられますから、営業局長としてこれは当然十河総裁と同じ御意見だと思うのですけれども、そうした大幅の運賃の値上げというものはいかなる物資についても考えてはいないという点を、一つ考えを承わりたい。
  55. 十河信二

    十河説明員 この委員会は初めから御案内の通り国鉄の御用委員会じゃない。国鉄の御用委員会であっては皆さんの御満足がいかないのじゃないか、こう思いますから、われわれは、委員会にお願いして、委員会お互いの間で公平な御意見の交換をせられて、公平なところできめていただきたいということをお願いしておるのであります。これだけにしてくれとか、これ以上にしちゃ困るとか、どの行をこうしてくれ、こちらの行はこうしてくれというふうなことは、私たちは差し控えてお願いしないことにいたしております。そのことを御了承おきを願いたい。
  56. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいま総裁が御答弁した通りでございます。
  57. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連。  公平ということをおっしゃるけれども、公平の基準というものは一体どこに考えておるのですか。われわれは、実は、去年もここへ副総裁に来てもらって、農林水産物を値上げしてはいかぬという話し合いをして、一年は政策運賃を暫定的にやりましょうということで、われわれも了承したわけなんです。公平の原則というものは私は経済の原理だと思うのです。農林水産物の現在の収入というものは、他産業に比べて三分の一しかないのですね。農業基本法の問題は今政府与党も取っ組んでいるし、あるいは社会党も農業基本法の問題には取っ組んでおりますが、農業収入というものは経済原理の公平な基準によらなければいけない。他産業の三分の一しか収入のない農林業をどう引き上げるか、生産性向上も考えねばいかぬ、あるいは他の面でも考えねばいかぬ。しかし、今その三分の一という厳たる基準があるのですから、農林水産物運賃は他運賃に比べて三分の一であるべし、それよりか高いものは引き下げるべしというのが私の基本的な考え方なんです。総裁よりか営業局長に具体的に御答弁願いたい。
  58. 磯崎叡

    磯崎説明員 御指名によりまして御答弁いたします。やはり、私の方から申しますと、輸送というものは距離に関係いたしますので、先生のおっしゃった運賃の絶対額だけでは——一キロ運ぶのと十キロ運ぶのとは運賃に相違を来たすことは、これはやむを得ないと思います。
  59. 中澤茂一

    ○中澤委員 では、一体今回の等級問題について農林水産物運賃をどの程度上げようというお考えなんですか。
  60. 磯崎叡

    磯崎説明員 私の方といたしましては、先ほど総裁から申し上げましたように、どの程度上げるということは今全く腹案を持っておりません。ただ、調査会及び貨物等級審議会の御審議の結果を待った上で、その御意見を拝聴した上でわれわれとしてはいろいろ考えていく、こういうふうに思っております。
  61. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういうことは私はおかしいと思うのですよ。それはよく皆さんは審議会だとか委員会だとか言って逃げてしまう。そうすると、結局は、国会が終ったあと、知らない間にぽかっと上げるのですよ。そういう卑劣な手段はわれわれは絶対許さぬと思うのですよ。だから、営業局長自体が何らの腹案もなくて、審議会がどうすればおれはそれによってやるんだというような考え方はおかしいと思う。そして、国会が開会中はあのやろうどもがうるさいから黙ってろ、国会が終ってからぽんと上げろ、いつもこれをやるじゃないですか。審議会の意見は大体こういうふうにまとまってきている。だから、われわれとしてはこの程度のものは等級変更を考えなければいかぬという腹案があるはずです。それがなかったら営業局長は勤まらないからおやめ願ったらいいですよ。
  62. 野原正勝

    野原委員 私も中澤君の意見に全く同感でありますが、国会に対する先ほど永野運輸大臣答弁から見ても、また、先ほどいただいた国有鉄道側の資料の中で見ましても、これは当然国会にかけなければならないというような御意見が出ておりますから、まさか、その意見を否定するというか、勝手に——ただいま中澤君の質問のありましたような、国会の空白なときをねらって勝手にきめるというようなことはよもやあるまいと考えておるわけです。また、個々の運賃の問題はきょうは触れませんが、やはり先ほど来いろいろ議論がありましたように、合理化のための運賃改定、従ってこれは何ら改定によって従来の赤字を補てんとするとかあるいは増収を考えるという意味のものでないという点からしましても、従来の国鉄がとってきた公益的性格から見ても、やはり農林物資等に対してははなはだしい値上げは絶対にやらぬという総裁のお考えもありますので、これはどういうふうな答申をなされるか知りませんが、その答申を取り上げる場合には、きょうのこの委員会における発言等については十分責任を持って対処していただきたい。私どもは、この運賃問題ということは、これは単に農林水産という問題だけでなく、やっと安定して今日ようやく国をあげて経済界も非常ななべ底からどうにかはい上る気配になってきた、安定的成長期の段階になってきた日本の経済の将来のために、この際国鉄運賃改定というものはできるだけ慎重に、しかも、個々の品目についても、まずどうしてもでこぼこを直すという意味においてのことであってもこれは五%をこえるようなことがあっては絶対にいけないと考えておりますので、その点を十分考えていただきたい。いろいろと質問もございますけれども、あまり時間も長くなりますので、この程度でやめますが、きょうの委員会で議を尽せなかった問題については、あらためてまたこの問題が取り上げられたときに十分御検討をいたしたい、そのことを保留いたして、私の質問を終ります。
  63. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時より再開することといたします。  これにて休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  64. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  酪農振興法の一部を改正する法律案及び飼料需給安定法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を続行いたします。久保田豊君。
  65. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 昨日に引き続いて法案の重要な点について御質問を続けたいと思います。  きのうの最後の質問では、集約酪農地帯の中心工場ないしは酪農事業施設、さらに周辺の指定地域の新設、変更等に対する行政規制というものが、結果においては大企業の地域独占といいますか支配力を強くするということになりはしないか、こういう点を質問いたしたのでありますが、これに対しては、生産者の立場を法案全体の中で大いに考えておるから、ここだけ見てもらっては困るのだ、ここだけ見てもらってそういう批判をされることは誤まりであるという御答弁があったわけですが、どうもそれだけでは納得ができない。昨日も指摘いたしました通り、現実に七十四の中心工場のらち、きのうは六十三と申し上げましたが、大体において五十三のようでございます。五十三の大企業のものが中心工場になっており、それから中小企業のものが九つ、農協系統のものが十一、こういう構成になっており、しかもこの周辺の指定地域までいろいろの施設が、要するに規制はその強いものではないにしても、届出なりそれに対する勧告なりということでもってある程度の行政規制を受けることは明らかであります。この点がどうもまだはっきりしない。これを特に入れた意味は、抽象的にはいわゆるそういうところにおける流通機構の合理化をはかる、こういうことでしょうけれども、逆にそれが大企業のつまり地域独占力というものを強める結果になると思わざるを得ない。これに対する運用面で何か別に考えておるならばそれを聞きたい。私どもは、この規定は、全然なくてもいかぬ、ある程度あることがいいと思うし、特に二石や三石の小さなものがたくさんその中にできて、これがそのときどきの目先のきかない場当りの高い乳価を出したりなにかすることは、短期で見れば酪農民の利益のように思われるけれども、大きな目から見れば決して利益ではないのだから、そういう意味においてはある程度の規制をすることはいいとしても、これを今のままにしておいては、運用のいかんによってはこれは逆になる危険があると思うので、この点について運用面なりあるいは政令面でどういうふうにやるつもりかということをもう少し明確にしなければ、私はこの点がなかなか納得できない。この点をもう一応御説明願いたい。
  66. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 昨日に引き続いての補足的御説明を申し上げます。十三条の関係についてでありますが、法文に即して申し上げますれば、「当該集約酪農地域に係る酪農事業施設の配置を適正なものとするために」、この何が適正であるということだと思うのです。その規制を、運用面において法の執行上に必要な省令、大臣の通達等によって明瞭にするのがあるいは適当かと思うのです。その参考になりますのは、当然全文を読んでいただけばいいと申し上げました意味は、昨日いろいろと生産者団体に例をとって申し上げたのですが、第三節の従来からある「集約酪農地域における集乳施設及び乳業施設」、これにおいても同じことがある。条文の数が変っておりまして、改正案の十条、現行法の十二条でございますが、都道府県知事がその施設を承認しようとする場合には要件がある。その要件は、「酪農事業施設の設置場所がその事業の合理的な経営に適する立地条件を備えていること。」、その施設は「効率的であり、且つ、その能力が当該集約酪農地域における生乳の供給量に応ずることができるものであること。」、以下三号、四号とございますが、この集約酪農地域にかかわる周辺の指定地域の酪農事業施設について適正を期して行うものであるという点は、久保田委員の御指摘になりました御趣旨も当然そういうものになると思いますけれども、念のために明瞭にするのがいいと思います。
  67. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私がこの点をしつこく聞くのは、この前お聞きしましたように、集約酪農地帯というのが現在は相当広範です。大体今までの七十五の指定地域だけでも全国土の面積から言うと大体三一%をすでに占めておる。それにさらに今後ことしのうちに十一の地域が指定になる計画があると聞いておる。それに周辺の地域が加わると、その周辺の地域のとり方いかんによってはほとんど県全体が集約酪農地域あるいは指定地域になってしまう。そういうところで今やっておるのは大資本の施設がおもである。これを中心にして、あとのものを、程度はありますが規制をするということになると、どうしても相当広範にわたって大資本の地域独占の力が不当に拡大される心配がある。酪農施設の地域的な合理的配分といっても、これはお役人が頭の中で考えたものだということになると思う。この点についてはよほど運用をうまくやってもらわなければいかぬと思う。かといって、今申し上げたように、反面において、今の乳業もしくは酪農施設のように二石、三石、五石というふうなものが三千も三千五百もあって、これがいろいろのことをやっているということは、これまた酪農を発展させる一つの基礎条件ではないと思う。この調整をどうするかということであります。この点を一つ十分に考えてやってもらいたい。  そこで、私は、こういう周辺の指定地域という制度はむしろとった方がいいのではないか、こういう制度を作らない方がいいのではないか、それから、かりに作るとしても、この周辺の指定地域ないし酪農業約地域にしても、農協の行う、生産者団体の行う集乳その他の施設については行政規制を行わないということの方が本則ではないか。もっと一歩進んで言うと、こういうところにできている大資本の諸施設というものは、少くとも集乳ということに関する限りは農協団体に移管させていくのが本則ではないか。しかも、今実態は、だんだんそういうところにできているものが加工施設というよりも集乳施設に変りつつある。そして大きなものが消費地にどんどんできて、そっちは集乳所になっておる。こういうふうに、日本の乳業のあり方が、今までの歴史的な経過の中でやむを得ませんけれども、末端の集乳機構まで大資本が握っているというところに、私は不安定ないろいろの矛盾の出てくる一番大きな要素が具体的にあると思う。そうではなくて、これからどんどん発展させる中で、こういう集乳段階までのものは農協に握らせる、そうして最終的な加工段階あるいはその第二次加工その他の多角経営をする方向へ大資本の力を向けていく、そして農協による自主性というものによって施設を強くしていくことがこれからの酪農の流通体系の基本を改めていく根本だと思う。     〔吉川(久)委員長代理退席、石田(宥)委員長代理着席〕 この根本の観点を抜いて、単に現在ある——現在あるのは、どっちにしても大企業のものが中心になっておる。これを中心にして、これを規制していこう、合理化していこうというところに私は根本の誤まりがあると思う。この問題は法文上の解決はなかなかむずかしいと思います。そうは言いながら、片方においては、農協の施設というものはほとんど未発達の状態にありますから、いきなり法文を切りかえればすぐにいくというわけじゃありませんが、少くとも政府の行政指導その他においては、こういう措置、方向というものを明確に出していくことがぜひ必要だと私は思う。あるいは法文の問題というよりは、むしろ政令あるいはそのほかの行政指導の面で強くこれに期待をせざるを得ないと思いますが、この点について重ねて当局の見解を明らかにしておいてもらいたい。
  68. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 生乳の生産のみならず、集荷、さらには販売、処理、加工におきましても生産団体が共同事業の形において事業を伸ばしていくのが望ましい、そういうことについての方針は、農林大臣としましては当然現在でも持っており、今後も持っていくつもりでございます。御指摘にもありましたように、ただ、急に生産が増加し消費が増加するときに、事業をいたします事業体が無理な施設をしてまた破産してもいかぬと思うのであります。経済連が、一時、早く乳業施設を持って、途中で整備統合でやめたこともございますので、これはやはり着実に自主的なことを基礎にやるべきだと思います。しかし、御指摘の方向づけるという精神においては変りはございませんし、この法文の運用も、昨日申し上げましたようにしか行わないものであることは間違いない、こら申し上げてけっこうと思います。ただ、指定地域はやめた方がいいじゃないかとか、生産者団体の酪農事業施設に関してはこの対象から除いた方がいいじゃないかという御意見については、今後を期待するお気持に関しましては私ども別に異議はございませんが、法文といたしましては賛成を申し上げかねるのでございます。また、現在の集約酪農地域における乳業施設を持つ企業体資料で提供しました通りでございますが、この関係法文の「当該集約酪農地域に係る酪農事業施設の配置」云々の「係る」というのは、集約酪農地域としてすでに指定してあるところに、たとえば大メーカーの乳業施設が承認になっておりましても、他の施設もある基準を越えれば存在も増設もいいという制度でありますと同時に、「地域に係る」というのは、地域について、そこで生産された牛乳を処理する酪農事業施設という解釈でございまして、酪農地域にある同じ企業体がその周辺の地域に新たに酪農事業施設を設けるという解釈ではございません。別のものが置く場合、むしろその方が原則だ、そういうふいに思っておるのでございます。  それから、勧奨の場合でございますが、届出というのは、届出という行為については義務的に強いのでございますが、内容的にはひどい規制のことではないと思う。届出することについての規制は強いのでございますが、ああせよこうせよという企業の経営とか配置とかいうことではございませんので、その施設の適正な能力の配置というような、むだを排除する適正規模化に持っていく、そういうようなことについては勧告という緩和したものでございますので、以上申し上げたところで、大かた久保田先生の御意見のようにやっていけると考えております。
  69. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体わかりましたが、そこで、届出をする、これに対して都道府県知事が勧告をする。勧告を聞かなかった場合はどうなります。
  70. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 よく研究して、適正な勧告をしまして、よく聞いてくれるようにする。しかし、御質問に答えなければいけませんので法律解釈を冷厳にいたしますれば、聞かなかった場合は法的な効果は生じない、行わせる義務は生じない。しかし、勧告を出したことにつきましては、昨日も申し上げましたように、政府は、こういう事業施設については、特に奨励したいものについては補助とか融資とかいうようなこと、あるいは取引の文書化、公正取引に関する勧告の制度がすでに現行でもあるのでございますが、そういうものについては助成していこう、勧告の内容でそれをそのようにやろう。そのようにやろうとすることを例をあげて申しますれば、必ずしも予期はしていなかったというような場合は、助成をする道義的な義務をもちまして運用のよろしきを得るということになる。
  71. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 問題も多うございますから、これ以上は追及しませんが、くれぐれも繰り返して申しますが、こういう制度をとることが大乳業の地域独占を強めるような方向にならないように運用上一つ注意してもらうということ、それから、特に生産者の団体が集荷その他のために共販体制を整えるというためにするような施設については、これも野放図でいいというわけではございませんで、一定の誤らないような指導をしつつやることはこの勧告の制度を利用することによってできると思いますが、こういう点については、特に自由というか、十分な活動、そういうところへ食い込める、あるいは地歩を占め得るような指導援助ということが必要だと思うのであります。この点をはずさないように運用面で注意していただくようにお願いしておきます。  次に、十九条の二についてちょっとお尋ねをいたすわけです。生乳の取引契約についての約定ですね。これは非常にいいことですが、なぜこれは最初の三十日というのを約定期間に限ったのか。これはむしろ全期間とするのがほんとうではないか。もちろんその期間の長短によっていろいろ違いますが、その間に事情が変ってきて、特に価格その他について契約の内容を変えるということ、これはあり得ると思いますが、そういうものも含めて、私は最初の三十日だけに限定したというのはちょっとわからぬわけですが、これは何か特別の理由があってこうしたのかどうか、この点をまず第一にお伺いします。
  72. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 要らざることでございますが、先ほどの御質問は、その通りよく注意いたして運用することにいたします。現に、乳業者の側の団体からこの規定を削除してくれという反対も実は私どもに来ておるほどでありまして、そういう弊がないようにこの規定を置こう、これが御審議、可決願いたいと思っておる趣旨でございますから、以上のように補足をさせていただきたいと思います。  第十九条の二は、一応自由契約についての契約の場合、なま乳という性質にかんがみまして、酪農、乳業のなるべく長期な、継続した安定もはかり、特に生産者等が不利を受けないような条件をだんだんと作っていこう、こういうことでございまして、どのくらいが適当かはいろいろの意見が出てくるのであります。しかし、出発するに当りましては、現在生乳取引が行われておるいろいろのケースがありましょうが、その大半を占めておる商取引の慣行をまず基礎に置きまして、その慣行以下のもの、たとえば三十日ごとに乳価をきめておるということがございますと、三十日までは、生産者の努力も、また乳業者が自粛をされまして契約に応ずることも自然できることを期待していいじゃないか。十あるうち八つもそう行われている場合はいいじゃないかということに一つ着眼をしてみたのであります。この十九条の二の第一項は、価格ばかりでございませんで、生乳取引の契約の契約期間のことでございますが、現在の取引の大半は、たとえば取引をしようということについては一年とか半年とか契約いたしまして、数量については三カ月を大体きめておるのがその大半を占めておるのであります。価格についてはこれを一カ月ごとに変えるような慣行が一般的であります。そこで、第二項に規定しておりますことを生かす趣旨とあわせもちまして、契約は少くともまず最初に三十日以上をこえるものときまっておるならば、価格や数量その代金の受け渡し方法、そういう価格に関する一番重要な事項は少くとも最初の三十日はきめておかなければいかぬ。そうして、二項で、それを変えようとする場合は三十日前に申し出て公正な取引ができますように。これをこまかく御説明申し上げますれば、なるべく紛争が行われないようにということとか、両者の主張がよく通りますように、生産者側に不満があれば、他に売る機会があるかないか、販売努力をしたり、委託加工したりする努力をする余裕なしに値段がきめられることはいけない、そういうふうに一項、二項あわせてその意味を出そう、そうして特に生乳取引で重要な価格関係の諸事項の約定の最小限度を規制いたしまして、生産者乳価を特に守り、また乳価の適正化をはかり、契約の明確化を現行法の文書化の義務とあわせまして講じよう、こういうふうにしたわけであります。
  73. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体の御意図はわかりましたが、そこで、その第二項の、「省令で定める一定期間前までに」——つまり、約定のできていない部分について一定の期間前というのはどのくらいか、どういうふうにこれを考えているのですか。
  74. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一項で三十日と考えましたので、その三十日も、「少くとも」、こうつけてありますが、第二項の一定期間も約定予告期間は三十日以上です。
  75. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それで大体わかりましたが、私は、これにもう一つ——実は今の段階ですぐ入れられるかどうかは別問題ですが、今言ったように、大体一年間でもって契約をし、あるいは乳量については三カ月とか、あるいは価格については一カ月とか、こういうのが実際の商習慣です。しかし、これは今のところですよ、こういう法律になってはっきりすれば多少の効果はありましょうけれども、必ずしも今のような商習慣というものは生産者に対して実際には有利になっていないわけです。だから、今後こういう規定があれば多少役に立ってくるということにはなろうが、一番問題になるのは、なかなか紛争調停までは持っていけない、しかしなかなか問題が片づかない、当事者同士の約定が片づかないという際のいわゆる継続的な、そのきまらない間の措置規定、救済規定というものが必要じゃないかと私は思うのです。たとえば、三十日できめて、価格についてどうしても約定ができなかった、その交渉がまとまらないとか、あるいは交渉がまとまらなかった結果、ついに三以降のいろいろの問題になってきて紛争とかなんとかというようなことになったら、その期間は何によってどうするかということです。これの規定がないというと、実際には安心はできないのです。これは価格だけでなく、あるいは受乳拒否の問題なんか特にそうです。そういう問題になってくるので、これに対しては法文ではっきりできればすることが一番いいと私は思います。しかし、おおむねできないとすれば、具体的にはどういうふうな行政指導をしていくか、これを一つ、何か対策があるならばお聞かせいただきたい。
  76. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 法律制度としてはなかなかむずかしい点の御指摘でございますが、目下法文を用意してやるのは十九条の三以降、すなわち、組合等が当事者となる契約等についての勧告と、二十条以降の紛争のあっせんまたは調停が、そのつもりで御審議をお願いいたしておるのでありますが、不法不当な干渉にわたらない限りは、その間に家畜の導入も、酪農振興計画も、共同施設の整備資金の援助も、生乳取引の文書化についても、いろいろ関係するところが多いですから、指導措置でやりたいと思いますが、反面、そういうことは、やはり生乳を生産販売する生産者は自然的に性質上弱い立場にあります。小生産者であるという経済的な規模の点からもあわせまして弱い立場にありますから、やはり自主的に努力をされて、力も強くして交渉してもらうことを本義にすべきものだと思いますが、反面、それを逆に裏から言いますと、不当に受乳の拒否をいたしましたり、不当に話をまとめないで、交渉を受け付けないで、一方的にきめた代金で仮払いする等については、内容をよく審査の上、集約酪農地域で適当な施設を承認して順位を争わせることが適当であるかどうか、たとえば集約酪農地域の中心工場は相当独占性を持っておるわけでありますから、そういう場合については硬軟両用の条件を付して指導をして、片方が悪い場合はそれをよく抑制することが弱い方を強くする、そういうことも研究をいたしつつあるのであります。
  77. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どらも話が非常に抽象的でよくわからぬのですがね。私の言うのは、かりにこの値段でもって約定ができないという場合には、全約定のどのくらいのものは仮払いとして払わなければならぬとか、あるいはそれの何パーセントは補償しなければならぬとか、あるいは受乳拒否はこういう条件がなければある一定の期間はできないとか、こういうことは私は法文ではなかなか今の段階ではむずかしいと思うのです。それで、行政指導でやるよりほかないと思うのですが、これをやらないと、実際は、理屈はどうであれ現実は、片方は大乳業で、しかも中心工場で独占をしておる、片方の小さな連中はうじゃうじゃして、ほうっておけば腐ってしまうからどうにもならぬということで、しかも交渉はなかなからまくいかぬ。救済の解決規定はこれからありますけれども、これがその通りはうまく実用できないのが実際です。しかも農協は施設その他をほとんど持っていないから自分で処置できない。こういうことですから、いやでもおうでも片方の言うことをのんでせざるを得ないということになるわけだから、こういう点についてはもっと具体的なそういう点の欠陥の生産者の救済の行政指導の方針なり何なりを立ててやったらどうか、こういう点なのですが、そういう点はどうですか。
  78. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御意見のほどはわかりますが、現在の生乳価格が地域ごとにまた季節別にかなり変っても、それでそう不当ではないという状況でありますから、牛乳、乳製品の規格取引やあるいはそれ以上のいい近代的な取引ができるようなことになっておらぬ事情です。販売価格の形成がどんなふうにされておるか、それらの事情を見ますと、酪農の生産、乳製品の販売量、消費の面を通じまして、産業構造といいますか、構造がなお整備されて後初めて久保田先生の言われるようことができると思うのです。それまでには、やはり業界も役所も国会の御審議もみな勉強し合いまして、早くそういうふうに持っていくようにすべきだと思いますが、何を幾らにせよというのはちょっとできないかと思います。しかし、緊急事態が生じて明らかに酪農の発達を阻害したり、取引の混乱を生じたりするような場合は、予算措置を講じまして緊急措置を講じたい。あるいは、自主的に、香川県の経済連が他の企業の工場を使いまして、生産者の生乳を買って委託加工してやっておったことがあります。それでも数百万円損したようでありますが、それらの点を業界の方が、国が措置する。たとえば血税の妙な使い方にならぬような考え方をいたしますれば、そういうことを事実上予算、融資等においてやっていけると思います。幸いにして酪農振興基金も出発いたしておりまして、民間出資に対しましては政府出資の五億は比較的まだ多いのです。余裕があるという意味でございます。それらを農協に対してそういう場合にも運転資金、滞貨融資、処理するための融資、債務保証、損失補償、これらができるわけでありますから、それの指導は適切にいたしましてやろうと思っておる次第であります。
  79. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうも今の御答弁は私の質問していることとピントがはずれておる。私の言うのは、乳製品になって滞貨になった、そういうのではなくて、日常のいろいろの段階の中で生産者と乳業者との中でなかなか話がつかないという場合が多い。また、ついても、生産者の方が不利になるというのが今の実情です。そういう条件の中でなかなか約定ができないという場合の暫定的なつなぎの保証というもの、保証というと言い過ぎかもしらぬけれども、これを何とか一つ行政措置として考えてほしい、こういうわけです。そういう意味ですから、これは非常にむずかしい問題です。むずかしい問題ですが、そのつなぎがないとなかなか問題はうまくいかぬですから、この点を考えてくれというわけです。ずっと全国的な段階になって、基金を利用して製品のたな上げをする段階とか、あるいは各酪農協が生乳をやらなくて自分のところで加工してそして損をしたというのは、これは実際にはよくよくの際でなければやりませんよ。そうでない段階において何らかの指導ができれば、これを一つ具体的に考えてくれ、こういう意味ですから、希望だけ申し上げておきます。  その次に、十九条の三の契約等についての勧告ですが、この中で、「生乳等の取引の公正を確保するための特に必要があると認めるときは、その乳業を行う者に対し、その生乳等取引契約又は団体協約の締結又は変更の交渉に応ずべき旨の勧告をすることができる。」とありまして「特に必要があると認めるときは」とあるのですが、この「特に」という字を入れたのは何か意味があるのですか。
  80. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 まず当事者で誠意をもって交渉をやって下さいという意味ですが、御承知通り、農家が乳牛を飼います場合でも、その生産した牛乳が売られる先をおおむね一定しませんと、乳牛は飼えないものです。そこで、どのくらい有利、不利かという条件が出て参りますが、取引が予定され、取引されることになっておるのが普通と見ていいのではないか。そこで、この場合は普通の売買よりは共同売買をする取引の契約、荷を取り扱わないがその取引についても団体協約の締結交渉、そういう交渉をしようとするときに、特別の取引の形態の場合お勧めしたいのですが、取引の形態としては、特別というと悪いのですが、そのうちの種類の一つの形でございますから、特に必要があると認めるときにということにしたのであります。
  81. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、これはいわゆる団体協約的なものの場合に限る、こういう意味ですか。もう一度その点をはっきりして下さい。
  82. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 団体協約という意味は、生乳等の取引の契約、これはまことに文字はわかりにくいのですが、現行法の前の方にそう書いてあるのです。これはなまの牛乳やアイスクリームもこの中に入っておるのですが、それを生乳等と言っておりますが、それを売買する契約、それを農協、農協連が売主になってやることでございますので、委託または買い取りによる売買契約のことです。その下の、または生乳等の取引契約に関する団体協約の締結または変更というのは、自分が委託または買い取りで相手から代金を受け取って売るという共同販買の交渉でなしに、組合員が荷物を渡し代金を受け取るが、その値段は団体的に組合員はこの地域では幾らだ、受け渡し場所は工場渡しか集荷渡しか、そういう契約をして、組合員が違った契約をしてもその団体協約によるのだということが農協法に書いてありますから、そういう契約をする。その両方でございます。
  83. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それはわかりますが、あとの方の「生乳等の取引の公正を確保するため特に必要があると認めるときは」と、その特にという言葉を入れたのに何か意味があるかということを聞いておるのです。
  84. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 勧告をしなくても取引の公正を確保し得るようなときには、別に勧告する要もありませんし、それから、団体協約をするというような場合には、特に——それに限りませんけれども、特に日本の関係法規、及びそのもとになるであろうと思われる慣行、この慣行はそう明瞭ではございません。労働関係の場合とか、その他にたくさん出ておりまして、労働問題の場合の経験のように、これは慣行を積み上げて初めてよく行われるものです。そこで、団体協約を組合または組合連合会が締結しようとして交渉を申し入れることにしましても、組合員との関係では、多数決できめましたからとか、総意できめましたからとか、こういう人々は除くのかとかいうことがございますから、それらをよく考えて、組合員の中にもいろいろな規模の人もあり、いろいろな出資を持っている人もありますから、団体協約はよく見きわめて、生乳等の取引の公正を確保するために特に必要があるとき、こういう意味を現わしただけでありまして、そう特別な意味は持っておりません。
  85. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点この点についてお伺いしておきたいのは、ここで言う農協もしくは連合会というのは、法人農協、あるいは専門農協であっても法人になっておるのはもちろんでしょうが、今のお説のように団体協約ということになりますと、いわゆる今一般に多い非出資の畜産組合とか酪農組合も適用になりますかなりませんか。
  86. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 農協組合法に基く場合で、しかもその法律の第十条第一項第十一号による場合でなければ適用になりません。
  87. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点は、今の実情から言うと、総合農協ないしは出資農協——総出資というのは八百しかなく、実際には非出資の専門農協が三千をもっと上回る。これはいろいろ問題がありますけれども、それが団体交渉等をやる場合には、大体においてこの規定の保護は受けない、こういうことになるわけですね。ここに一つ問題は残りますけれども、今の段階ではやむを得ないと思いますから、この点はそれ以上には触れません。  その次の、「紛争のあっせん又は調停」の点ですが、これはすでに前の質問者が触れておりますが、二十条の「生乳等の取引の公正を確保するため必要があると認めるときは、」というと、これはやはり知事が認定するという意味でしょうね。申し入れがあっても知事が必要なしと認めれば調停をしないという意味ですか。この点はどうなんです。
  88. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 これも先ほどの質疑にやや似てますが、法律的に字で書いてない場合はどうだと言われれば、認めないときはそうでございます。しかし、取引の公正を確保する要あるかどうかは、やはり、単なる主観ではなしに、情勢の客観的なものがございますし、昨日申し上げましたように、知事はなお行政上の範囲内で農林大臣の監督も受けるべきものでございますので、故意に認めないとか、必要があるのに認めないということは行わせないものと書いてあるつもりであります。
  89. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これは文章の問題ですが、特に「認めるときは」というふうにしなくても、必要があるときはということにして客観性を持たした方が、大体において法の運用はうまく行きはしませんか。これはまたあとで政令を作ったり手続を作ったりするのでそれで押えれば、ここの文章がどうなろうと同じことですが、結局その間のことは生産者団体なりの力関係できまると思いますけれども、特に「認めるときは」というと、何か知事がそういうふうに認めたときはやるが認めないときはやらないという危険が非常にあるわけですが、こういうことはあまり知事のそういう点を強くし過ぎたような感じがするわけです。  あとは大体きのういろいろ御説明がありましたが、その次の点は、二十四条の農林大臣の行う紛争の中央調停とでもいいますか、中央調停等の関係ですが、これはきのうもお話がありましたけれども、なるほど中央がいろいろ地方地方に対しましての援助とか助言とかその他いろいろのあれはしております。ですから、必ずしも中央調停と地方調停との連携が切れているわけではない。しかしながら、構想全体とすると何としても調停が中心であって、そして二十四条は中央調停をやる場合の条件が少し厳格過ぎはせぬか。二十四条にあるように、四つあると思う。「当該都道府県知事からの申出があった場合」、これは当然そうでしょう。こういう構想から言えば、当該府県知事の申し出がなければ中央調停は開始されないということになる。これが一点。「その申出に係る紛争と同種の紛争が他の都道府県においても発生しており、又は発生するおそれがあり、」、こういうのですから、一県だけで起ったというのではだめだ、こういう第二の条件がある。第三には、「これらの紛争のなりゆきによっては広範な地方にわたり生乳等の取引関係に重大な悪影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、」、これまた解釈のしようによると非常にめんどうなことで、こういう重大なる影響、しかも広範なる地域、そういうことは農林大臣の認め次第によってはどうにでもなることであって、しかもその場合「中央生乳取引調停審議会の意見を聞き、」、こういう四つの条件が整わなければ中央調停は開始にならないということですね。これでは中央調停を発動する機会はほとんど実際にはなかろうと思う。どうしてもこれは中央調停を発動する機会がほとんどないような法構成になっていると思う。ところが、一方実情はどらかというと、これはすでに御承知通り、大乳業の支配力が強くなって、大乳業の地方ブランチというものは、ほとんど今日では収乳機関化しており、特に生産者団体との関係におげば単なる収乳機関のような格好になって、その権限が小さくなってきている。あるいはそうでない中小乳業の場合でも、御承知通り、そういうものが大乳業の下請団体のような性格を非常に持ってきているということですから、大乳業の地方ブランチの責任者というものはほとんど権限がない実情にある。しかし、反面においては、御承知通り、現に六社協定というものが実際に行われているじゃないですか。これは独禁法違反です。しかしながら、事実上六社協定というもので、地方々々によっては中央協定とは違いますから一律ではありませんけれども、しかしながら、ちゃんとそれができておる。もちろん、その間においては、六社協定がある反面、それぞれの大乳業間の競争はあるに違いない。従って、今の裏の奨励金あたりもいろいろ違ってきているようであります。しかしながら、六社協定があるという状態の中で、こういうふうに中央調停がほとんど発動できないような格好にしておいて、地方でやって、そうして中央から大臣がいろいろな援助をし助言をし、あるいは人を派遣してやる、こういう態勢でも片づかないと思う。こういう六社協定その他に相当するような大きな問題については、中央で片づけなければ、地方ではある面においてはできますけれども、基本点については具体的な紛争調停がつくはずがない。ですから、私が第一にお聞きしたいのは、こういう地方調停から中央調停——中央調停はほとんど飾りものみたいというと言い過ぎですが、発動しにくい状態になっておるが、この点をどうしても改める必要があると私は思う。そうして、今言った六社協定その他のような全国にわたる大きな問題については、一般的な基準といいますか、紛争調停の基準というものは、中央の農林大臣が、大乳業その他それぞれの団体がありますから、ここでもってはっきり打ち出す必要がどうしてもあると思う。この前提なくしては地方調停がうまくいくはずがありません。私は、これはどうしてもやる必要があると思いますが、こういう点についてはどうお考えですか。
  90. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 久保田先生も御質問の中の前半にお認めになりましたように、今回の改正案では、紛争のあっせんまたは調停については、都道府県知事を単なる地方庁の長と見ておりません。国の機関の地方の委任事務を行う者と考えて、農林大臣との連携を保たしめて行わしめるようにしておるわけでありますが、行政機関が中央と地方で活動する場合には、久保田先生はそうおっしゃっていないと思いますけれども、まず第一は、やはり知事と大臣がいずれも一つのことが同時にできるという制度はよろしくないと思います。まず第一はだれがやり、二番目はだれがやる、この事項はだれがやり他の事項はだれがやる、こういうことが必要だと思いますが、およそ生乳の取引に関する紛争は北海道から鹿児島に至りますまでの相当な区域において影響がございますから、全般的に地方々々で、敏速でなければいけませんが、片づける努力をして、その上に積み上げるのが現状に最も適しておると思っておるのであります。また、六大メーカーというお話ですが、六大でも四大メーカーの一つでも、六大メーカーなるがゆえに大臣というのも、他の乳業との関係で、ある県、ある地区では大乳業のブランチと地方メーカー、農協と一緒に競争しながら仕事をしておることもございますので、その関係はおのずからあるのであります。中央からまずマル公のようなものをきめておいてから地方へこれを浸透させ実行させる場合はその方法をとらなければなりませんが、今回はそれをとっておらないのであります。とるのがまだむずかしいと思うのです。そこで、大臣との連携のもとに知事にやらせるのですが、知事があっせんまたは調停をしてくれと言ってきた場合、少しの努力をしただけですぐ大臣に持ってくるようでは実情にも即しませんし、知事に万全の努力をさせるのも適切とは思いませんから、知事にまず最大限度の努力をやらすように考えたい。それから、紛争の当事者の双方の同意がなければ、あっせん・調停の申請が双方からなければ取り上げないという方法もあるかに思いますが、それはとらなくて、これは一方だけでよろしいということが書いてありますから、たとえば生産者団体の方からだけ申し入れられればいいと思うのです。大メーカーでも県内だけで片づくこともあるから、そうする要があると思う。そういう知事の努力と、地方々々で固めてくるということを前提にしましてそれから農林大臣が行うということにしたわけでございます。  なお、調停をいたします場合に条件を付してありますものは、御理解を願いましたのとはむしろ反対の傾向が強いように立案をしていると御理解を願いたいのであります。それは、知事が努力して自分で片づかないときは当然申し出るべきものである、申し出がなければまたこれは訓令を発し得るのであります。それは大した制限ではないと思います。むしろ知事に努力させる意味であります。その種の紛争が他の府県においても現に発生しておるということばかりでなしに、他県に発生するおそれがある場合、なお紛争の成り行きによっては広範な地方にわたって——広範なという字を強調して御理解願ったようでありますが、取引に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるというときでよろしいとしてありますことは、現に紛争があるときは数県に限るんだ、重大な影響を及ぼしたあとでなければいかぬのだ、そういうことでなしに取り上げるようにという意味の立案であると御理解を願いたいと思うのであります。
  91. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 安田局長気持ではそう立案されたつもりでも、あなたが変れば、これの解釈次第ということになる。こういうことになると、理想から言えば、一定の期間に県の調停が成立しなかった場合には、その期間経過後においては両当事者の一方の申請によって中央がやるようにするのが私はほんとうに意義があると思う。  それから、もう一つは、「広範な地方にわたり」と、こういう抽象的な言葉でなく、これが二県にわたった場合にはこれは大臣が調停することができるというふうにする方が実情に合っておるのではないかというふうに思うわけであります。これは、今も御説明がありましたけれども、各企業の形態が、酪農が発展してくるに従って企業の内容が変ってきておる。地方は全く無力な収乳機関的な立場になっており、大企業の系列下になっておる、そうして大企業との間にはカルテル行為がどんどん実質上に行われてきておる。こういう段階で、なるほど生産者団体との間に競争その他があり、また、今のように酪農の地方的な条件の相違というものが非常に大きい際には地方で片のつく問題もないわけではありませんけれども、大局から見れば、やはり、中央本社の意向で、あるいはカルテル団体の政策、方針というものによって問題が片づくよりほかにない。それを県でもって一生懸命やってやり抜いた上でなければ中央に持ってくるなと言っても、これは無理な話だと私は思う。事態が一般的にはそうなりつつあるのですから、むしろ地方調停をもっと気楽に中央調停に持ってこれるようにしなければならぬと私は思う。大臣は忙しい、しかし、それにはそれを受けて立つような機構もあるわけでありますから、一々大臣が言うわけではないのでありますから、実際にはそうした方がいいし、またそうしなければこの調停の効果というものはほんとうに出てこないと思う。書いてある文章は、そういうふうとは違った、もっと生産者の立場を考え、国の行政機構の分布というものを考えてやったという御説明ですが、私はこの点はできればもう一歩進めて修正をしてもらいたいと思うが、これは当局としてすぐ修正に応じますということは言えないでしょうが、そういう実態から言って、当局としてこれにこだわる必要はなかろうと私は思うが、この点はどうなんですか。
  92. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 よくいろいろの面から研究いたしまして、また現状から研究しまして、今回の改正案はこれがいいと思っておりますので、遺憾ながらそういう御意見には賛成ではございません。
  93. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の立案当局としては賛成いたしますと言うわけにはいかぬでしょうが、せっかく調停制度を作って、前のような全く内容のないものから進展させてこういう体制をとった以上は、実態に合うように改めていく必要があるということを、これは私の意見でありますから、これ以上は申しませんが、この点を一つ頭に置いて、われわれはもし修正ができればしたいと思う。もしできない場合においても、そういう点を十分に含んで、今後の運用を円滑にやるように、目的を十分果すように運用の面で御研究、御努力を願いたいということを申し上げておきたいと思います。  その次は二十四条の四です。これは国内産の牛乳並びに乳製品の消費の増進、特に、まず第一に私は保管等の問題についてお聞きをいたしたいと思う。これは現状から言えばやむを得ないところもあると思います。たとえば、今の乳業資本の大体の施設の状況や実力の点、あるいはこれに対処する——対処するというと語弊がありますけれども、これと対立する生産者団体のこの点についての立ちおくれというような点から言えば無理もないと思いますが、二十四条の四、これはまた安田局長はそうじゃないと言うかもしらぬが、なるほどカッコ書きがしてありまして、農協等の立場も十分認めております。認めておるが、どうも全体としては私はここではやはり今の乳業者本位の保管体制であるというふうに思うわけです。これは、こう言えば、決してそうじゃありません、おそらくそういう返事があると思うが、どうもやはり、全体としてはこれはやむを得ない点もある、そういうふうに思われるが、その点はどうですか。
  94. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 「乳業を行う者」というのは、現在は現在、一年後は一年後、乳業をそのとき行う者について、おのずから曲げずに実情をそのまま鏡に写すがごとく見るべきものでありますが、さらにカッコをつけて、すでに御説明申し上げましたように、委託製造をする場合の農協と連合会を含めて注書きを加えたところで御解釈を願いたいと思います。
  95. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点についても問題はありますが、これはあとの問題にします。  ここでもう三点ばかりお聞きしたいが、特にこの過剰のもので保管をするものが学校給食用ということになると、バターと粉乳だろうと思う。この二つに限った理由はどこにあるかという点を一点お聞きしたい。もう少し幅を広く見ていいのではないかという点が一点。その場合の保管についても、これは保管の価格が落ちてくる。これは買い取りでありませんで単に保管だけですから、これは非常にむずかしい問題になろうと思うけれども、保管する場合の基準というものはどこに置いてあるのですか、価格基準ですね。これは、保管をして、それによって市場の圧迫の材料をとれば自然に値が上ってくる、こういうことでしょう。これは、私どもから言えば、実際は、ほんとうに生乳価格の維持ということに役立てるならば、これは単なる保管ではなくて買い上げなりなんなりということが理想でしょう。そうして、しかもその買い上げの場合においては、今の農産物価格安定法のように、たとえばイモの澱粉のように、一定の生産費を償ら価格、これを原料にしたもの、こういう換算でやるのが私は理想だと思う。これはなかなか今のところいかないが、それにしても、そういう点は運用の面でどういうふうにやっていくつもりなのか。そうして、特に学校給食用の品物に限った理由というのはどこにあるのか。これによって実際にこの程度の保管で乳価の安定というものができるのかどうか。この点を一つお聞きしたい。
  96. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 二十四条の四は、お話通り、乳製品を必要がある場合におきまして政府の援助のもとに計画的に保管することを規定しておるものでございますが、その以前に、酪農振興基金制度によりまして、業界は、農協から中小メーカーから大メーカーにおきましても、滞貨融資等を受けて、国の援助におきまして自主的にやるべきものと思う。その次には、政府が金利、倉敷を負担しまして、計画的な保管をすべきものと思うのであります。その制度を規定したものでございますが、保管すべき乳製品を学校給食に向けるだけにしたのはなぜかということは、計画保管して国が国費を使うような場合には、何しろこの学校給食は現状におきましても百万石をこえる輸入脱脂粉乳を使っております。逐次減らして参りますが、見通しましたところその需要の量がまだ非常に大きいのであります。どうせ使うならば、腐敗品とか腐敗のおそれあるものを保管すべきではございませんで、使用できるものは保管の補助をすべきでございますから、その余裕のある用途に向けて使いたい。すなわち、最も効果があり、社会的に毛価値があるというところへ使いたい。その余地は、まだ日本の乳業・酪農の現状から言えば、十分である、こういう認識でございます。それだけではだめだという事態になりますれば、それはまた違った用途を願ったり、違う機構、制度考えるべきだと思います。  次に、学校給食用に向けるからというので、乳製品がバターと粉乳に限られるのじゃないかというふうになると思いますが、それは、まず第一は、飲用の牛乳の消費は、この二十四条の四の保管をしないで、学校給食に計画的に通年的に政府が援助をして消費せしめたいと思っておるのでございまして、二十四条の三はそれでございますから、飲用牛乳は必要なかろう。そうすれば、特に保管すれば乳製品であろう。牛乳は、あらかじめ計画を立てて、政府はこういう計画で保管をしますよといって、品種、数量を掲げますれば、いろいろのものになりますが、メーカーの手においてそれに相応した生産ができる性質がございます。毎日毎日乳製品が種類別に製造されるわけでございます。そういう価値とあわせまして、牛乳からは、一のバターと、他は脱脂粉乳になるわけでありますが、これはバター一に対して二の粉乳ができる。そうしますると、製品に対する措置によりまして、なまの牛乳の方へ効果を及ぼすことは、学校給食に使い得る性質のものがちょうどそれである。そうでないものの例を申し上げますと、腐敗を防ぐために砂糖をたくさん入れました練乳なんというのは、砂糖の価格維持のために保管をしておるようなものであります。そういうような意味におきまして、学校給食に使う性質のものは、保管をするのに適した乳製品であり、それはまた、生乳の価格低落の維持をしましたり、酪農乳業の事態に最小の措置をもちまして最大の効果を上げ得るもの、そういうふうに考えておる次第でございます。
  97. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私が特に学校給食というものを問題にしたのは、なるほどバターと粉乳ということもあるでしょうが、学校給食ということになれば、たとえばことしの予算で見れば大体七万五千何石分でしょう。そういう程度では、これからの波のひどいこの乳業界のバランスというものはとれないのじゃないか。ですから、これは、もっとバターと粉乳、こういうことでありますればいいですが、特に学校給食ということになると、片方において予算の制約というものもあるわけです。計画的にやって七万五千石程度のものを保管をして、これで果して生乳の価格の維持ができるかどうか。だから、この点については、数量には制限なしに、つまり、バターなりそういう粉乳ならば無制限にやるのだ、無制限じゃないでしょうけれども、まあこういう意味ですから、少くとも乳価維持のできる程度のものをやるというこういう考え方が、その場合の予算措置等と結びついてどうなるかという点です。  それから、もう一つ、量によりましょうけれども、バターにしましても、あるいは粉乳にしましても、御承知通り大体においてそう長持ちしない。そうすると、これでもって買い上げたものは、いやだって学校給食に相当早く回さなければならぬ。そうすると、生乳の方がそれだけ押えられるのじゃないか、そうすると、そういう面から見て、特に生乳の価格維持という需給調整の役割が非常に制限をされるのじゃないか、こういう心配があるから私は特に聞いたわけですが、その関係はどういうふうにやるつもりですか。
  98. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一は、二十四条の四の計画保管については数量的制限があるかということでございますが、数量的制限はなしで、どのくらいの数量であるかは、この条文に書かれた通りの目的の場合において、この条文に摘記したように、事態を放置すれば乳業の経営を著しく阻害したり牛乳・乳製品の需給の均衡を失したり、生乳の取引価格の低落のおそれがある場合、それを防ごうという場合でございますので、規定しましたことに関しまする限りは、数量的制限のない制度をまず法律で作っておきたい、こういうことであります。その制度を作ります場合には、二十四条の五で国の助成が要ります。従いまして、予算の計上の仕方によって制限が出てくるじゃないと言われればまた制限かもしれませんが、これは、法でまず制度を開いたときに、運用に当りまする政府が一番必要と認める場合にその必要の予算額を計上し、また支出するのでございますから、どの制度にもつきまとうことでございまして、少くとも本案は、制度を数量的制限なしに開くこと、必要な場合でございますが、数量的制限なしに開くこと、それに対する助成とを書き分けて作っておきたい、そういう趣旨でございます。  また、三十四年度の予算につきましての御質問だったと思いますが、飲用牛乳で三十二万四千石分を学校給食に充てまするほかに、生乳換算七万五千石分の乳製品を学校給食用にまず向けよう、そのほかに、それと重複してもよろしいのですが、七万五千石分の計画の保管用意をしておこう。それを通常予算においてまず計上をしておこう。それを、他の場合と同様に、予算編成期におおむねこの程度ではどうだろうかという見通しのもとにおいての予算を計上しておきますが、当然に、牛乳の生産とか、経済事情とか、その価格事情等の変化は年度内に予想されますので、二十四条の四の制度をまず開いておきたい。事態で必要がある場合は、たとえば災害予算でも同じだと思いますが、昨年の夏以降の乳価措置においても同じだと思いますが、今回は法的制度を整えておいた上の予備費支出もするということにしました。七万五千石でまず一応の予算を計上しておけばいいんじゃないかということで、このようになっておる次第でございます。
  99. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 まだ多少問題があるようでありますが、だいぶはっきりしましたから、あとの問題は触れないでおきます。ただ、先ほどの、大体において保管を業者にさせるという点、特に大メーカーにさせるという点、この点はいきさか不安があるわけですね。今度は調査規定等も相当強化されますから、ある程度はいいと思います。なるほど、保管数量は明確に、業者の場合でも補助金を出しますから、そうなるでしょう。ところが、その保管数量以外に、業者の持っているものが正確につかまらない場合というふうなことになりますと、昨年の例のように、これは必ずしも乳価の維持のてこにならないという危険が相当あるのではないかというふうに思うわけです。というのは、昨年にしましても、私どもふしぎでしょうがない。九月ごろ、大体において生乳換算で七十万石、年末には百万石程度のストックがあるといって、あれだけの大騒ぎをして、そうして乳価の買いたたきをやっておった。そうして、ことしの三月ごろから今度は乳が足りなくなった。なるほど生産も少くなったには違いないが、少くなりそうだというので裏奨励金をあっちこっちで出し始める。そうかといって、昨年末から今日までの間に百万石近くの乳製品のストックがそう簡単に売れてしまったとは考えられない。そうすると、あのときに何かそこで業者らしいからくりをしたんじゃないか。そのからくりが結局農林省にはつかまらなかった。ですから、一ぱいかけられたという感じがするわけです。今度は調査相当にはっきりして——調査にも問題もありますけれども、そういう危険がありませんと言えばそれまでだが、この業者だけに保管をさせるという点については、やはり問題がありはせぬか。私は、将来はやはり、こういうものについては、これは大してむずかしい加工じゃありませんから生産者団体の第一次加工みたいなことになりますが、あるいはその団体なり、それらの発言権の強いようなものにだんだん保管をさしていくということ、あるいは、それができなければ、国の統制力の強く作用する基金に保管業務をさせるとかいうこと、同時に、この保管をする場合でも、生産者団体は今日非常に弱いわけですから、そういう生産者団体が業者の買いたたきその他に対抗するために委託加工したようなものを優先して扱うというふうなことは、これは法律で書かなくてもけっこうですが、そういう扱いをしていくべきじゃないかというふうに思うのです。その点はどういうふうに考えますか。
  100. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 保管する者とその優先性、また酪農振興基金そのもので保管すべきでないかというような点であると思いますが、保管をさせます者は政府の保管計画に従う業者でありまして、業者というのは、御指摘のように大メーカーはもちろん入ります。それを逸しますと乳製品については効果が薄い点もあると思いますが、中小企業の協同組合、全酪連、あるいは全販連その他の経済連、それに、さらに、るる御説明しましたように、委託製造する場合も含んでおる、こういうふうにして、実態をよく見きわめまして、御指摘の点を留意してやろうと思っております。  また、酪農振興基金で保管すべきではないかという点がございますが、過般の国会関係法案を御審議可決していただきまして、十一月の初めに政府出資と民間出資と同額、すなわち五億と五億を予定した御審議もあったわけです。それに新らしい保管業務を加えますと、自分で保管する場合は買い取り保管するという意味だと思いますが、その運転資金の手配とか、民間出資がその業務であまり影響を受けないように、だれが出資しようと今の経済社会ではよく配慮しなくちゃならぬとか、あわせまして、その経費等を予算で計上しなくちゃいけませんですが、この国会に御審議をお願いしておりますのは、酪農振興基金の設立状況、予算編成期、法案の作成時期を通じまして多少のアンバランスがありまして、予算に計上してないものは、その要が必ずしもなくて、まだ方法がある場合はそれによらなくてもいい。あわせまして、酪農振興基金は、農林省が乳業界の状況を在庫その他において必ずしもよくわからない恨みもあったような場合には、業者に一々運転資金と設備資金の債務保証をする機関でございますので、しかもその債務保証の相手及び出資者は大中小メーカー、農協をともに含んだものでございますので、その意見を聞けばよけい政府はよくわかるだろうというので、その趣旨をこの法案にも盛ったのであります。あわせまして、計画保管を業者をして行わせるのでありますから、金融がつかないといけませんから、本来の酪農振興基金の業務であるところの必要な債務保証と保管計画専門に執行させることを期待しておるのであります。その他必要に応じてはなお今後そういう事態が生ずるかもしれませんが、目下はこれで出発しまして、いきなり買い取り保管の制度でない方がいいという点も考えた次第でございます。
  101. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私は現時点においては今の局長の御答弁通りだと思う。特に農林省の立場から言えばそういう考えになると思います。これはやってみなければわかりませんけれども、将来の問題としては、私はぜひ基金に買い取り保管の道を開いていくということが本則じゃないかというふうに思いますので、この点は一つ十分に今後の問題として研究をしておいていただきたいと思うのです。  それから、最後にもう一点お伺いしますが、二十五条の「報告及び検査」ですね。「この法律を施行するため必要があるときは」という、これはどういう意味ですか。特にこういう文句を入れた意味、これはどういうような具体的な内容ですか。御承知通り、業者は、特に大乳業は報告や検査をいやがっているわけですね。今までのところ、農林省は、調査規定はあったけれども、ほとんど調査をしなかったのか、し得なかったのかわかりませんけれども、してなかった。これだけでうまくいくのかどうかという点が心配になるわけですが、特にこういう文句を入れた意味は具体的にどういう内容か、御説明願いたいと思います。
  102. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 現行法をまことに相済みませんが、あわせて見ていただきますと、お答えになると思うのでありますが、現行法は、大臣または知事は「この法律を施行するため必要があるときは、生乳の生産者又は集乳事業若しくは乳業を行う者から必要な報告を求めることができる。」ことが書いてあります。次に、「生乳等の取引の公正を確保するため必要があるときは、」「事業所等に立ち入らせ、業務の状況又は帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。」、第一項の「この法律を施行するため」という方が広くて、第二項の「生乳等の取引の公正を確保するため」の方が狭い意味で書いてあるのでございます。それを、この際、ほかの拡充事項もありますが、この法律に書きました各条の各規定を執行するため必要があるときにはいつでもできる、広範囲にしたつもりでございます。そしてまた、その調査権の内容を、報告を求めることができるというだけでなしに、報告を求めることも、職員をして事務所、事業所に立ち入らせることも、業務の状況もしくは帳簿書類その他の物件を検査させることもともにできる、そういうふうに拡大をしたのでございます。さらに、「牛乳又は乳製品の生産、集荷、保管又は販売」として改正案を付しておるわけでありますが、現行法は「生乳」とだけありましたり「生乳等の取引の公正」としてありますのを、牛乳と乳製品全体と、かつまた生産、集荷だけでなしに保管、販売を行う者に対してと、こういうことでございます。なお、別途予算では、主要六事項を中心にいたしまして、二百八十六万円の調査費も計上いたしまして、遺憾なきを期そうとしておるわけであります。
  103. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると、今度の方が非常に調査範囲が広くなった、強くなった、こう理解をするわけですね。実際に調査をする人間は、本省について言えばどのくらいおるのですか。
  104. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 調査し得る人間は、本省では三十人くらいはいると思います。なお、それが監督者になりますれば、専門家を雇っていい。経理内容等は未熟な役人よりはかえって専門家を雇ってしないといけない場合もあると思います。在庫一つにしましても、米や麦のように、年一回生産して、ある一定時調べるようなことと違いまして、極端に申し上げますれば、三百六十五日生産され販売されて流れていくものでございますので、相当専門知識も要るから、その必要もあると思います。なお、本省以外に都道府県には御承知の畜産課、商工課の関係者相当おりますから、相当できると思います。また、酪農振興基金の職員等は、金融保証業務等においてなれておりますから、これを本条の職員そのものと認めることはできませんが、必要に応じてはその専門知識、経験、材料等も使い得るもの、——穏当な正当なふうに使えば使えるので、調査能力は昨年の夏以降よりは相当拡充しておる、こういうふうに考えております。
  105. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 特にその点を私どもお聞きするのは、酪農、特に乳業に対するいろいろの調査資料というものは、私どもが手にする限りは、ほかの企業について比べると非常にラフなんですね。ですから、ほんとうに知りたいことは、この前要求していただいた資料なんかでは、全然ほんとうの企業の勘どころというものはわからない。しかも、大乳業の場合は非常に経営が多角的であります。環境も、乳というものを扱うだけだけれども非常に複雑なんです。そういう環境を正確につかまないと、正しい行政指導というものはなかなかできないんじゃないかということです。  それから、もう一つは、とにかく、今までの日本の酪農というやつは、政府よりはむしろ乳業資本の——植垣さんがよくいばるように、政府の御厄介になったんじゃないんだ、おれたちがやってきたんだというくらい、大体において乳業資本中心の酪農体系です。ところが、これが今大転換をしようとしておるわけですね。しかも、この乳業資本の資本動向といいますか、資本内容といいますか、営業内容といいますか、そういうものをよほど的確につかまなければ、正しいあれが出てこないのじゃないか。こういう意味において、強権的な調査一つ十分やらなければいかぬし、今までとかく農林省の場合は調査の規定があったにもかかわらずこれをやらなかった。業者の方もいやがっている。これを徹底してやるように、そういうことのためにじゃまになっては困る、こういうことからお聞きしたわけですが、まあ大体法文とすればこの程度よりほかには書けないのではないかというふうには思うわけですが、これの運用も一つ十分注意してやっていただきたいと思います。  それから、最後の点ですが、二十四条の三には、「国は、国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進」について「援助を行う等必要な措置を講ずるものとする。」、こう言って、かなり積極的な規定を置いてある。ところが、その次の二十四条の五の助成ということになりますと、国が助成をするものは、そこに書いてあるように、「予算の範囲内において、第三条第二項の酪農振興計画の実施、酪農経営改善計画の実施、第二十四条の三の学校給食に係る措置の実施及び前条第一項の乳製品の保管計画の実施に要する経費」、こういうことの四つに限られている。特に一番大事な流通の合理化とかあるいは集団飲用等に対する補助を出すということが一つも載ってない。これは何か特に意図があってこうしたのですか。どういう意味ですか。
  106. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 二十四条の三の「国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進」云々でございますが、これを法文化するのは、書いてしまったあとではこれだけでございますが、実はなかなか苦心したのです。そして、政府あるいは都道府県が自分の事務費、庁費をもちまして援助をすることもございますので、補助金とか融資その他のあっせんをするとかいう措置以外もまず含めたいというのが二十四条の三でございます。あわせまして、補助と書いてありますが、二十四条の五は、はっきりと書いて、同じ補助のうちでも、義務的と申しますか、義務的な補助と、それから、奨励を受けるあるいは補助を受ける相手が受け取る金でなしに、指導業務を行うときの指導の受益者というような意味で、あるいは中金の資金をあっせんするというような意味での援助でありますが、補助金の中でも奨励的な補助金というのと少し違っていた方がいいんじゃないか。そういう意味で、前者は助成補助金とか国の予算や資金に関係しましても二十四条の三の方が広く、助成の二十四条の五は義務的な意味を表わしたいと思ってその一項を書いたのです。融資のあっせんその他は、だから奨励措置と書いている。そういう意味であります。
  107. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大体法文についての直接の御質問はこれで終ったわけですが、基本の問題について三、四御質問をしたいと思います。  今まで大体この法文の各条にわたっておもな点をお聞きしたわけですが、まあ今までの酪振法に比べると、私は、非常ないろいろな欠点はありますが、一つの前進だと考えるわけです。しかし、もちろんこれだけで酪農がうまくいくわけじゃありません。いろいろな点において私はまだ大きな基本問題についての抜けた点が相当あるのではないかというふうに思うわけです。——これは法文そのものでなく政策の問題に連関をいたしまして。その一点は、この酪農経営改善計画のところでもちょっと私は御質問したのですが、各個人のといいますか、これは全体としてもですが、各個人のやる酪農経営の基本に関する施策というものがどうもはっきりしていないように私は思うのです。これは、言うまでもありません、生産者乳価を下げるということが一つの目標でしょう。下げながら、しかも農家の経営が安定する、つまり、もっていわば手取りがよくなる、こういうことでいくよりほかないと思うのです。これはある意味においては矛盾した二つの命題を解決しなければならぬ、こういうことです。これをやらなければならぬ。しかも非常な零細経営のもとでやらなければならぬ。この難問をどういうふうに解決するかということが、私はやはり酪農政策の一番根本の問題になると思うのです。こういう点については、遺憾ながら、これは法文にはなかなか表わしにくい点でしょうが、この点についてはほとんど触れていないといううらみがあるわけです。そこで、私はこの点について一つお伺いしたいが、結局、私は、乳価を下げながらしかも農家の手取りをよくするというには、大きく言えば二つの問題に帰すると思うのです。一つは、私は、牛乳の生産費は、これはあなたの方からもらった三十一年度の統計資料、これは非常に大ざっぱなものですが、これを見ますと、牛乳一升の生産費が、三十一年度では総生産費が、第一次生産費が五十八円八十一銭です。そのうち、十二円六十銭、二二%が労力費です。それから飼料費が三十三円二十六銭、これが五五%になる。それから乳牛の償却、これは施設を含めたものと思いますが、これが七円六十銭で一三%、その他が五円三十五銭、これが一〇%、こういうことになっております。そこで、やはり一番問題になるのは、これは私が言うまでもないことですが、何としても飼料費を下げるよりほかには実際には手がないわけですね。その飼料費を下げるには、これは自給飼料よりほかにはない。これはわかりきった話です。ところが、その自給飼料の造成ということには、かなり最近では政府としても積極的な手は打ってきておると思いますけれども、乳牛の発展の度合に比べると、自給飼料のあれというものに対しては非常にまだ何と言いますか徹底した政策が行われておらない。ですから、乳牛はどんどんふえておるが、これを裏づけていくところの自給飼料というものは、いいところはある程度いっていますが、しかし、大部分のところは非常な立ちおくれをしている、こういうのが実態だと思う。その原因はどこにあるかといったら、これに対する政府の確固たる制度的な裏づけといいますか、これがないことに私は根本の原因があると思うのです。端的に結論を私の考えを言いますが私は、少くともこれに対しては、今の土地改良に対して政府がとっておるような確固たる、少くとも国営のものについては六割なり六割五分なり、あるいは県営段階のものについては五割なりなんなり、あるいは団体営のものについては三割なり四割、そしてその残についてはこれこれの安い金融をする、こういう点をはっきり制度として打ち立てなければ、私はこの問題は片がつかないと思う。この点が何かまだまだびくびくしたような自信のないようなやり方であるところに草地改良が根本的に進んでいかない一つの原因があると思うのです。この点と、もう一つこれを裏づけるものは、私は、何といっても国土全体の土地利用計画といいますか利用区分を、これはなかなか立たぬでしょうが、早急に立てて、それに今の確固たる助成制度というものを裏づけて、これを実行するということでなければ、すべてがうまくいかないと思います。これは一朝一夕になかなかできることではありますまいが、これは局長に聞くのは少し気の毒かと思いますので、次官に私は特にお聞きしたいと思いますが、少くとも日本の酪農を中心にして日本の農業の骨格を変えるのだというふうな大きなキャッチ・フレーズを出しながら、まだ草地改良なり、そういうものに対して確固たる国の助成制度が確立していない。それを裏づける土地の利用計画が立っていない。こういうことの上に牛をふやせ何をしろと言ってみたところが、うまくいくわけはない。この点は、私はこの改善計画なり基本計画なりを実施する上において基本の問題であると思うので、これに対して政府は一気に行くことはできないかもしれないが、こういうはっきりした意図があるのかどうか、これをはっきりお答えいただきたいと思う。
  108. 石坂繁

    ○石坂政府委員 ただいま御指摘の点は、まさにその通りであります。酪農振興を進めておりながら、当然それと随伴していかなければならぬ、むしろ先行すべきであると思える自給飼料の対策がおくれておりまして、従いまして、今御指摘のように、乳価を下げる、生産費を下げるということが十分でなかったことは御指摘の通りであります。そこで、政府もおそまきながら自給飼料の確保のために草地改良事業等の計画を樹立推進いたしておりますが、今何でも百三十七万町歩くらいの牧野を利用して酪農の振興に資したいと考えております。従って、高度集約牧野あるいは牧野の改良等を近年進めて参っておりますが、何分にも、この全国的かつ総合的な計画というものはなかなかむずかしい問題であります。久保田君御指摘の通りに、十分この点の必要を認めておりますから、近年逐次その方向に進んで参ってはおりまするけれども、もちろんまだ十分とは考えておりません。従いまして、今後その方向に向って十分努力いたすつもりであります。これを制度化するという点を御主張になりましたが、法制化する問題につきましても、もちろん十分検討の上でなければ、直ちにこれに着手するということも事実上困難な面があろうと思います。十分努力いたす考えであります。
  109. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点は総合対策の構想の中にも一応あるのです。ただ、この中に、草地造成なり牧野造成に対する確固たる補助制度なり何なりのあれがないのと、いろいろここに三やその他にあげてありますけれども、はっきりした土地利用計画を策定していくというあれがないわけです。これは全国的になかなかむずかしいと思いますが、少くとも片方において集約酪農地帯あるいは経営改善地帯をこれからどんどん作っていこうというのですから、これに合せてそういう制度をはっきり立てていただきたい。これがやはり私は酪農を今後安定させ発展させる一番の基礎だと思う。この点について、ざっくばらんに言いますと、どうも政府の態度はへっぴり腰だ、これを申し上げているわけですから、このへっぴり腰の点を何とかもう一歩前進をさせるようにお願いしたい、こういうわけです。
  110. 石坂繁

    ○石坂政府委員 見方によりますと久保田君のような見方もあろうかと思いますが、二面また、従来あまり手のつかなかったものを今日の段階まで進めて、この草地改良及び自給飼料増産のための事業の計画的拡充という方針も御承知のように立てております。従いまして、見方によりますと大きな前進だとも言えると思います。必ずしもへっぴり腰というわけでなしに、十分の熱意を持って進んでおるつもりでおります。
  111. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これ以上言いましてもしようがありませんが、とにかく、この点はまだ政府は不徹底ですよ。もっと徹底をして——これはなかなか畜産局ひとりにやれと言ったってできない仕事です。ですから、農林省は全体として少くとも土地改良に取り組むくらいな腹でこの問題に取り組まなければだめだということを申し上げているのです。それ以前のいろいろ都合のよさそうなことはこれにも書いてありますよ。けれども、この程度ではだめだということを申し上げているのですから、この点は十分御検討をして善処願いたいと思います。  もう一つは、乳価を下げながらしかも農家経営を安定させるには、私は、何といっても、今までのような農家の牛の入れ方じゃだめだと思う。少くとも1戸当り三頭ないしは四頭あるいは五頭飼わなければ、実際には合うはずがありませんよ。農林省からもらった「酪農の現状と問題点」という資料にもはっきり出ている。これはもうその通りです。三十一年度を見ると、五頭飼っている場合は、実収入が四万二千百四十五円、労働収入が一日当り八百五十円になる。三頭の場合は、一万九千九十六円で、二百四十七円、こうなってだんだん落ちていっております。そして、一頭の場合はどうかというと、一日の労賃収入が二十円ですよ。こういう格好ではやれるわけがない。御承知通り、今の日本の牛の飼養技術でも、大体一人三頭飼える、こういうことだと思います。ですから、こういう点で、草地の造成なり改良なりと、その基礎の上に少くとも牛を三頭以上は飼うような規模へ持っていかなければ、今までの一頭や二頭——今平均一頭七分のようですが、こういう線でなければだめだと思う。それじゃそれはうまくいくかというと、草地改良が非常に進んで計画的にいけば、ある場所においてはできるでしょう。しかし、一般論としてはそうはできないと思う。零細経営の基礎の上にこれをやるには、やはり酪農部面における協同系統でやるより仕方がないと思う。この面における着想というものがほとんどないのじゃないか。私は、農家から見た安定計画の一番の基本はここにあると思う。こういう点を農家の立場から見て、共同の施設なり指導機構なりとあわせて、何によって酪農が安定できるかということをもっと突っ込んで政策化する必要があると思う。あるいは必要ならばある面においては法律化することなくしては日本の酪農の安定的発展というものはあり得ないと思う。私はこの点は政府としてはもっと突っ込んでやるべきだと思うのです。現実に割合に経営が大きくて五頭とか七頭とか十頭とか飼っておる連中は安定しておる。相当程度乳価が落ちてもたえていける。ところが、一頭や二頭の連中はすぐに突っぱってしまう。もちろんこれには技術の進歩やその他いろいろな問題が入ってきますけれども、そういう形において共同化なり、あるいは外国のように大きくはできますまいけれども、そういう線を草地化の基礎の上にやっていくことがぜひ必要ではないかというふうに考えるのですが、農林省のお考えはどうか。この問題については一つ局長の方からお聞きしたいと思いますが、どうですか。
  112. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 基本の考え方と、酪農経営の拡大、農家の安定、乳価安の状況、方策というような点につきましてはお話通りだと思います。ただいま政府にも五カ年計画が立っておりまして、年次別の明確な計画ではありませんが、三十七年度を目標としました総合計画の中に畜産の計画もございまして、乳牛の計画もあります。御承知のように、農業部門では一番順奉すべきものとしまして、三十一年度基準で二一二でございましたか、二倍以上にしようとする計画でございます。昨年までは、この計画を、乳牛頭数においても牛乳生産量においてもやや上回りつつあったわけでありますが、経営の内容がしっかりしておらない。指導体制もあれば技術指導もありますが、あわせて農家自身のどういう規模の方が飼われ、どういう階層のどういう技術を持っておられる方が飼われるか、地域はどうかとか、いろいろ複雑な問題がございまして、長期計画の目標は簡単で指標だけを書いたものでございますけれども、乳牛頭数とか牛乳の生産量とかいうものをおおむねこれを達成するように、あるいはこれを突破するように持っていくと同時に、飼料も濃厚飼料は逓減しながら安定さして、自給飼料は、牧野面積においては今後四年間に、高度集約的にした牧草栽培的なもので約十万町歩をふやしたい。自給飼料畑も、昨年までは二十八万町歩ぐらいありましたが、長期計画の家畜の必要量の生産費逓減の飼料の給与から見まする限りにおいては五十万町歩ぐらい要りますので、少くともこれも十万町歩にふやしたいということで、これをお話のように具体化していきたい。その第一歩としまして、ことしは予算でも四カ所計上しまして、国営直轄の、調査でありませんで事業をする設計を国費でやりまして、当然これは、二年目三年目に実行に移りますというと、ただいまの高度集約牧野の三割補助程度のものでありませんで、土地改良の県営事業ぐらいの補助態勢をとりまして、これに権利調整と事業執行面を加えた、たとえば草地改良事業法とでもいうべきものを、農地制度のような土地の配分、利用、権利調整等の中でも考えまして、それを研究しようと思って、研究、かつ部分的には立案中であるのであります。それの実現を急ぎますと同時に、乳牛の導入そのものも、まさにお話通りでございまして、今日本全国平均はやっと飼養農家が一・六から一・八頭ぐらい、農家の普及率は六〇・五%ぐらい、そんなものでありますから、これを四カ年には、長期計画とにらみ合せますと、平均的に見ると、内地は東北の広大な地域を、経営規模のあるところは除きまして、農業地の利用できるところを除きまして、二頭にはしなければならぬ、北海道は三頭ないし四頭にしなければいかぬのであります。過般北海道の農業振興について当委員会の御尽力を願いましたのもその一助だと思いますが、それをさらに三十七年度以上の計画を持ったり、その先を見通しますと、まさに久保田先生のおっしゃいます通りでございまするから、零細規模の人には中小家畜の導入制度などのこともさらに今後も考えまして、無畜農家は有畜化をはかり、すでに酪農をやっておる方は頭数を増加させる、経営規模が適切でないのは共同化をはかるように持っていきたいと思っております。単に口先の言葉でなしに、過般の伊豆の災害地でも、十五部落については、私ども畜産局は、その対策に、農林省全体の災害復旧の農業経営について、畜産を入れたり牧野飼料を利用する点において、その案を具体的に、萌芽でございますけれども打ち出したことはあるのでありますが、それを農家の畑作中心、また水田、酪農両方考えまして、お話のように特段の勉強と努力と具体化をはかりたいと思っておる次第であります。  土地利用区分につきましては、農林水産技術会議におきまして、どういうふうにやったらいいかという利用の基準調査を目下やっておりまして、やはり各方面の専門家がこれを考えますと、第一次産業と第二次、第三次産業の土地の利用もありますが、農林と畜産との間においても、その基準の作成と同時に、これを制度化したり計画化したり予算化したり、事業法化したりすべきもの、こういうふうに考えておる次第であります。
  113. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点は、だれが考えたって特別にいい点があるわけじゃありませんから、おそらく私は同じようなことになると思います。ただ、それを積極的にやるかやらないかという点が違いがあるわけです。いろいろお考えになり、それに一歩踏み出そうということでありますから、それをさらに、いろいろな困難はあろうと思いますが、一つ前進をさせるように格別に御努力、御企画をお願いしておきます。  それから、その次の基本問題ですが、これは、今度の法案の中にも、消費の拡大、流通の合理化というようなことが特に法文化された点は大進歩だと思う。しかし、この裏づけが、私はこれまたきわめて不徹底、消極的ではないかというふうに思うわけです。そこで、学校給食ですが、ことしは大体生乳換算の四十万石、これも今までの惰性で余ったものを学校給食に回そうじゃないかという観念がやはり抜けていないように思う。これはどうも一気にはいきますまい。特に金の関係がひっかかってきますから一気にはいきますまいが、少くとも、農林省としては、今大体外国から——アメリカから持ってきているものが約二万トン、これを少くとも三年くらいには全部内地もので置きかえる、そうして全体に学校給食をやれば、正確な勘定は知りませんが、生乳換算で二百万石程度のものは学校給食だけで確固たる消費市場というものが新しくできるのではないかと私は思います。これを少くとも五カ年計画くらいで完全に実施するという裏づけといいますか、計画、企画を持って進まれるということが第一だと思うのであります。  それから、集団飲用についても、いろいろ予算面で多少の宣伝費程度のものはあるようですけれども、一番集団飲用を進めるに必要な、いろいろの、たとえば消費場における冷蔵庫、これに対する補助とかなんとか、こういうふうな積極面がほとんど——これは法文からは集団飲用を大いにやるということになっておりますけれども、こういう点も不十分じゃないか。これとても、やりようによっては、ここでもって百五十万石ないしはその程度の新しい市場は必ず開拓できる。これも、私は、計画的に実施をするという面について比較的やり切ったことはやるが、積極性が十分ないというふうに思うわけです。こういう点について私は特に今後骨を折ってもらいたいと思う。いろいろお骨折りにはなっておるが、なかなか大蔵省が銭を出さぬというところが落ちだろうと思うが、この点については、やはり、もっと酪農の重要性なり食生活の根本的改善という点から見て、農林省全体として、畜産当局なりが積極的な態度をとるべきではないかというふうに思いますが、この点については、次官、どういうふうに思われますか。
  114. 石坂繁

    ○石坂政府委員 ただいま御指摘の点は、われわれも従来の努力が足らなかった点をお言葉によっても反省させられるわけでありますが、しかし、お手元にもお配りいたしてありますように、昨年の十月二十八日に今後における酪農総合対策の構想——これはこの通りの遠大かつ広範な一応の計画であります。私は、昨年来畜産局といたしましては相当努力をして参ったと実は思っております。しかし、御指摘の点は、われわれも十分にその点を含みまして農林省全体として積極的に努力せなければならぬと考えているような次第でございます。
  115. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点、この流通の合理化ですね。今の消費の拡大という問題は、一つは流通の合理化につながる問題です。この点について私は特に農林省に強くお願いをしておきたいと思うのは、流通の合理化は、何といっても広い意味の農協です。農協の共販体制といいますか、これを徹底して助成をするということなくしては、これは完成をするはずはありません。ですから、少くとも、私は、農協の行う共販運動といいますか共販事業については、共販に対する、たとえばクーラー・ステーションであるとか、あるいはバルク・クーラー、こういうものの、共販を行い得るような施設については、少くとも今のように安い金を援助してやるくらいでは、とても今の農協はやれないと私は思うのです。この点についても、これはちょっと例が悪いかもしれぬけれども、少くとも土地改良について政府が腹をきめたくらい本気になって、三割なり四割なりの徹底的な補助をし、これに対して安い金利をつけてやるとか金融をつけてやるとか、あるいは、これについては少し無理かもしれませんけれども、私は、今まで乳業者が押えておった範囲あるいは大乳業会社が支配しておった分野を移管をさせるくらいの腹をきめて、政策をとっていくのが当然だと思うのです。これは、さっきも言いましたように、日本の乳業というものは、大乳業会社が中心になってやっていますから、村の末端の集乳システムまで全部片っ方が握っている。ですから、それに対して生産者は共販をやりたくても、部落の入口から押えられているのですから、これはうまくいくわけがないのです。農林省の資料を見ますと、今までのように二百万石、三百万石程度ならいいのですけれども、最近のように、年々百万石も、もっとふえていく、こういう段階になると、乳業資本は、施設ばかりに金を食ってしまって、その方の借金がよけいになるから、結局無理な買いたたきをやるということになってくると思う。どうしても、生産者が乳業資本と対等の立場に置かれ、しかも流通の合理化をするという点については、この農協のやります共販事業については今までとは全く考えを変えた積極的な政府の補助なり保護の政策をとって、今現在のところ乳業資本の支配下に立っている少くとも集乳部面というものは、これは何年かの間に農協のものに切りかえて、移させていくというくらいの積極政策はぜひ必要だと思うのです。高度の加工段階や販売段階というものは、これは今の乳業資本がやっていってけっこうだろうと思います。——大体態勢が今そうなってきているわけですから。私は、この点について政府はもっと透徹した認識と政策をとるべきだと思う。その際、もう一つは、学校給食と集団飲用という面は、少くとも農協と直結の流通というか、消費の段階に直結の制度をぜひ打ち立てる必要がある。これは相当無理がありましょうけれども、この無理を農協も勇んでやれるように、政府もこれに対して積極的な援助、補助を当然やって参る。必ずこれについては大乳業が大きな反対をしましょう、中小乳業も反対しましょうけれども、これなくして乳価の安定も流通の合理化もないと思う。私は、この点について、政府は想を新たにして、決意を新たにして立ち向うべきだと思う。それに対して農協幹部の方からわれわれのところに言ってきますが、言ってくることは、みんな小手先の、ざっくばらんに言えば、何とか少しぐらいというようなことですから、これはいくわけがない。作る方の連中、酪農家の連中から言ったら、危なくてついていけない。この点について、政府はもっと透徹した認識と新しき事態に対する政策というものを持ってもらいたいと思う。これも困難な仕事ですが、この点についてはどういうふうにお考えになっておるか、これも次官と局長からお答えをいただきたいと思います。
  116. 石坂繁

    ○石坂政府委員 流通の合理化の点から、農協の共販態勢に対する助成を徹底的に積極的にやれという御意見、なお、学校給食と集団飲用を農協を通してやれという御意見でございます。これらの点は十分に検討すべき問題であると考えます。
  117. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 これも、現在の農林省は従来よりも、先生のおっしゃるように相当踏み切っておるつもりでありますが、予算の計上などにおきまして、また、意識を当の農協また経営者団体の間によく一般的ならしめる努力におきまして、まだ十分じゃないところがあります。施設の補助等は、予算も要求しましたが、実は取れませんでした。公庫資金では数億の金を取れておりまして、現に十三、四カ所、来年度に向いまして農協の共販の施設の低利長期の融資を具体化するようにやっておりますが、政府部内でも、流通過程の補助金を出すことはなかなか実は反対が多いのであります。また、農協の間でも、施設の補助はいいのですが、総合農協と専門農協等との法規のむずかしい問題もあるようであります。中央会の一楽君とか、全販の石井会長とか、全農連とか、農民組合の方とか、主婦連の方とか、いろいろお話も申し上げていますが、補助を通じても無用な干渉を農協運動にしてくれるなという意見もないわけでありません。しかし、通観しまして、米麦等に比べまして、かろうじて卵と豚肉との共同販売を手がけているような全販あるいは経済連の状況でございますが、牛乳等は御指摘の通りでございます。畜産物全体についてもそうでございます。一そうその方向へ意識をよく統一することをひんぱんにやりまして、実情に即するようなやりようがあると思います。法人格を持たない酪農協はすみやかに解消して、ばらばらに飼っておる普及率の少い畜産などのところは専門農協でもいいというくらいに踏み切ってでも、まず農協でやることが望ましいと思います。これは、そう政府から方針をおろしてやることでもございませんし、最近は、全販連も、共販というかどうかわかりませんが、共販またはそれに準ずる取扱いをして、生産者団体が生産者の生乳を系統組織で取り上げようという非常な熱意を持ってやっておられますので、物心両面を通じまして、歩調をそろえ、かつ援助するようにいたしたいと思います。
  118. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点は、やはりこれからの酪農をほんとうに健全に発展させる基礎条件だと思います。今農協系統から言うと、いや総合農協だ、やれ専門農協だといって、それぞれ自分の立場をやるためにごたごた言っておりますが、末端の農協なり農民を見ますと、私は、こういう点について、農協をどっちをどうするかという問題はありますけれども、これに対して政府が明確なしかも強力な補助なり保護の体制を作るということでなければ、なかなかここ数年の間に——日本と外国とは逆なのですから、均衡のある酪農体制というもの、流通体制というものはなかなかとれないのじゃないか、そのことが非常に酪農経済全体を不安にしておる大きな要素だと思いますので、この点については特に御研究願いたいと思うわけです。  それから、今出ました農協の問題ですが、これは実際にはむずかしいですね。総合農協の共販というのは、最近始めたばかりで、まだなかなか軌道に乗っていない。専門農協は、その方じゃ腕達者が多いわけだけれども、金融の基礎が不十分であって、なかなかうまくいかない。それぞれなわ張りを持ってやられている。こういうことで、困ったことですが、しかし、私は、ぜひこの点についても、非常に困難な問題でしょうが、政府はこの辺で特に総合農協と専門農協、これの関係をどう調整するかということの基本策をもう出すべき段階に来ているんじゃないかというふうに思うのです。というのは、御承知通り、商品作物が非常に進んできて、この先端を切って牛乳などその一番典型的なものだと思います。こういう点から見て、今までの総合農協一点張りではいかぬことも明らかです。総合農協の新しい改組にするか、あるいは専門農協を育てて、しかも、これと総合農協とを何らかの形において統一をするというか、協調させるというか、何らかの形においてもう方針を確定すべき時期だと思うのです。特に乳業についてはこの点が必要である。今局長からお話がありました通り、非出資組合をだんだん出資組合にやっていく、これも専門農協にするか総合農協の中に含めていくかということは非常に大きな問題だと私は思います。この点も今すぐ結論を出すというのは無理な話です。しかし、ほうっておけば、今の共済連ですか、何ですか、あれみたいな、保険の取りっこでけんかをするようなことになって、これは決して私は酪農民の全体の利益にはならぬと思う。ぜひこの点についても、むずかしい問題ですが、一つ研究を始めていただきたい。その第一歩として、やはりこの酪農の場合には一つ問題があると思います。特に商品作物の場合はどこでも問題があると思いますが、一定の規模を持たなければ実際は商品取引はやっていけないわけです。ですから、これは原料乳の場合と市乳の場合とは違って参ろうと私は思いますけれども、どのくらいの、三十石単位がいいのかあるいは五十石単位がいいのか、あるいはどういう単位がいいのか、こういう一つの経済単位というものが、それぞれの地域、それぞれのところによってあると私は思います。今のように非常に小さな専門農協や何かで財政的な基礎がはっきりしてなければ、これはいやだって違った形において——今まではほとんど出資農協がないのですから、これはいやだって下請のいわゆる特約組合になってしまいますよ。ですから、これをやって少くとも生産者の立場を確固として守っていくものには一定の規模が必要である。この規模の問題と今の農協改組の問題とをどう調整するかという問題も一つの大きな問題だと私は思うのです。こういう点も含めて早急に少くとも酪農部門についてはある程度の方針というものを明確にして整理していかないと、だんだん困ることになるのではないかというふうに考えます。現状としては、あるものを、出資組合、非出資組合にかかわらず、特に今度の改善計画等には、いろいろ町村と必ずしも一致しませんけれども、参画させる必要があろうと思いますけれども、この点については私はそろそろ政府としては方針を出すべ幸時期に来ておるというふうに思いますが、この点については、局長、どう思いますか。
  119. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 きわめて先生が明確にこうやれと方針をお教えになれないのじゃないかと思うほど、私もお答えがむずかしい。各地各様の場合もありますが、やはり、酪農の商品性、腐敗性、買手売手の強弱というような事情からも見まして、特に農協によります生産者の共同生産、共同販売、共同処理加工、団体交渉等は望ましいが、その取扱商品として酪農品は一番適切な取扱商品であると思います。総合農協であるか専門農協であるか、また市乳地帯か乳製品地帯かということや、経営規模などを考えて、酪農審議会等の御意見もよく聞きまして、この揚でなくまた他日お教えを願いたいと思います。
  120. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 これで大体私の質問を終りましたが、最後に、私は繰り返して申しますが、この法律は確かに前進であることは間違いない。しかし、運用上のやり方によりますと、そう言うと安田局長は非常に憤慨するでしょうが、下手まごつけば大資本の独占力を強くする結果になりかねないと思うのであります。どうか一つそういうことのないように。特に、私は決して大資本、大企業をつぶしてしまえとかいじめろということは考えておりません。しかし、日本の酪農の発展をする過程が大体乳業資本というものを中核にしてだんだんと育ってきた。それが今大きく今度は一つ転換をする時期です。大体そういう点で私は決して大乳業の立場というものを無視するものではありません。しかし、今のような大乳業の支配力を無理に大きくしておるという形を援助しておるような法律の形については、これは意味はありません。どうか一つ、こういう点についてはもちろんのことでありますけれども、あらゆる意味において大転換期に立っておる酪農生産民の共同の力を強めて、そういう中でもって酪農の合理化というもの、発展というものを着実に地につけていくように運用されることを特にお願いいたしまして、私の質問を終ります。     〔石田(宥)委員長代理退席、吉川(久)委員長代理着席
  121. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 神田大作君。
  122. 神田大作

    ○神田委員 大体久保田委員から問題点が指摘されたようでありますから、私は簡単に局長答弁の徹底しなかった点を一つお尋ね申し上げたいと思いますが、酪農振興上において流通の合理化の問題が非常に大事なことでありますけれども、この流通の合理化の点において非常に消極的である。たとえば、この前、夏の乳価の値下げの問題のときに、一円乳価値下げの問題につきましてだいぶ論議をして、ついに畜産局長の転任というような問題が出ましたけれども、そういうように、非常に大事な流通面についてどうしてもっと積極的な方策を講じなかったか、この点についてお尋ね申し上げます。
  123. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 法律案に関しましては、御指摘の点があると思います。なお研究を進めまして補足したいようなこともございます。ただ、御了承願いたいのは、酪農振興法の現行法が、集約酪農地域の制度を中心にしまして、生乳取引の公正化を中心にして紛争処理を知事にやらせるのに限って運用して参りましたので、酪農経営についてもそうでありますが、特に乳業から販売業あるいはその前の集荷等におきまして、まだ資料的な基礎も、久保田先生御指摘のように、十分でないものがございます。その資料の整備とか、実態を整えまして、あるいは金融面、予算面、制度面に努めることがあるかと思いますが、法律上案を具してするまでに至っておらない部面があると、こういうように考えておる次第であります。
  124. 神田大作

    ○神田委員 これは、生乳の価格と、それから一般市場に流れておる小売価格の開きというものに対して、生産者は、何かやはりその間におけるマージンに対して大きな不満を持っておると思う。こういうだれでもわかる四円五十銭かあるいは五円程度の乳が、一たん業者の手に渡ると十五円で売られていく、そういう流通過程におけるマージンに対して素朴な農民は非常な不満を持っておりますが、こういうようなことの合理化に対して適切な手を打つべきであろうと思うのでございます。今度の法案では、酪農振興法というものはそういうものでないから、それに手をつけられないと申しておりますけれども、そういう流通過程における不合理さを徹底的に合理化する努力をすべきであろうと思うのであります。こういう問題については、農林省としては今後何らかの方法をとる考えがあるかどうか、お伺いします。
  125. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 先ほど申し上げましたように、いろんな関係の経済統計を一そうよく把握しなければいけませんが、流通過程における機構の体質といいますか、そういうものもなお研究調査をしなければならぬと思いまして、来年度予算は相当調査費も計上をいたして、これを実行するつもりであります。  なお、生乳取引につきましては、生産者のところから消費者に行くまでに、今は特約取引や特約的な経済機構が多いことはまことに遺憾でありますが、これをより近代化して合理化するようなことを目途としながら、経済圏と申しますか、牛乳の流通圏というようなのを、そう画一に設けられませんけれども、押えながら、調査と指導と行政とを——やがてはこれを制度化していくのがいいというので、私どもは農林省、地方庁とも打ち合して努力中であるわけでございます。また、なまの牛乳や乳製品でも、食品衛生法等の適用もございますが、農産物の取引としまして正常な規格で取引がされるということも重要なことと思っておるのであります。現在農産物資規格法において生乳、乳製品の相当分について規格がきまっておりますが、業界の取引の実情がこれに合っておらないことも相当わかって参りました。また、乳牛の飼育管理によりまして、あるいは脂肪率とか細菌の度合いとか等において経営改善、品質改善が行われておることもございますが、二十七年当時きまったままになっておりますので、同法によります規格はやや実情に即せない、検討を要すると私は思っております。なお、これは、新しい立法なり法の改正を要しませんで農産物資規格法とその調査会によって適正を期することでございますので、その方のことをやりたいと思います。  なお、牛乳の生産から消費に至りますまでの金融の問題でありますが、補助の必要な場合は補助もありますが、大乳業資本でも、年々増設をしなければならない日本の発達しつつある酪農に対しての設備資金に、比較的高利で短期のものを借りまして、自己資本にもよらず、他人資本によってこれをやっているのが非常に多いのであります。一般食品工業の利潤率よりは、乳製品の大メーカーの会社でも低いように一応統計が出ておるように思います。正確さはわかりません。それらの点で金利の問題あるいは金融の問題が非常に重要じゃないかと思われます。それは販売業者におきましてはまた一そうそうでございまして、中小企業問題、雇用の問題としても重要なことでありますが、農家の手を離れるときの三倍——二倍半になって消費者に渡るというようなことが、飲用牛乳について言えばよく例に引かれますが、それらの点と、今後調査の整備と実態をもちまして、大メーカーには大メーカー、中小メーカーには中小企業協同組合、農協には農協、消費形態は消費形態に応じた措置として、おのおの端的にその対象に合いますように流通過程に補助、金融の法制制度をととのえていくべきものと思います。行政措置でやることも多いので、今後国会の開かれているときに御審議をいただくということを待たずして、年中努力を続けたいと思っております。
  126. 神田大作

    ○神田委員 非常にむずかしい、しかも大事な問題でございますので、この問題は当局の構想ができましてからまたお尋ねを申し上げたいと思います。  次に、今度の改正法案の大事な部分として、集約酪農地域内における施設はもちろんでありますが、その地域以外に指定地域を作って、それに乳業施設あるいは集乳施設をする場合、知事に届け出をするというようなことでこれを規制しようとしておるようでございますが、第三節にも、「集約酪農地域に係る集乳施設及び乳業施設」というように新しくしてあります。今までは「集約酪農地域における集乳施設及び乳業施設」となっておりまして、「係る」と「おける」との違いによって、指定地域にたとえば農業協同組合等においてそういう施設を作るのを何か牽制するような意味にもとれ、運用の仕方によってはかえって独占価格あるいは独占資本の圧力を強めるような意味合いがあると思うのですが、こう問題について、先ほど久保田委員にも答弁されたようでございますが、不徹底であると思いますので、この点、もう一回御答弁願いたいと思います。
  127. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 恐縮でございますが、ただいま事務局の方と話し合っていたので聞き漏したこともあるかと存じますが、酪農施設の問題だと思います。独占資本の方を強めて、生産者団体の共販体制とか共同処理、加工体制を弱めるおそれが運用であり得るではないかということだったと思いますが、そういうことはございません。むしろその逆で運用するようにこの法律の規定も解釈して、運用もそうするつもりでございます。
  128. 神田大作

    ○神田委員 運用いかんによりましてこれはどちらにでもなると思う。その点、当局は、そういう独占資本の圧力を弱める方へ持っていくというような言明であるが、これについては運用面における特段の注意が肝要であると思います。  次に、これも問題になりましたが、第十九条の三に、「特に必要があると認めるときは」とありますが、どうして「特に」というものを入れたかということについて久保田委員からも質問がありましたが、何かどうもはっきりしない答弁でございましたが、こういう「特に」という文字を入れることによって非常にあいまいになってくると思うのでございますが、この点はいかがでございます。
  129. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 法制局の専門家が文などよく検討して作ったことでありますが、そういうことで、前に久保田先生にお答えを申し上げました通りでございます。
  130. 神田大作

    ○神田委員 久保田委員には、「特に」ということに対しまして、意味がないというようなことを言っておりますが、それはどうもおかしなことで、意味がなければ「特に」ということをつける必要はないと思うのですが、いかがです。
  131. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 そういう意味がないというふうに申し上げたのではございませんので、これは自主的に取引をしていただくのを前提にしまして、生乳等の取引契約その契約に関する農協の方の規定に基きまする団体協約の締結、変更の申し込みをした旨の申し出がありましたならば、乳業者の方へ、生産者団体から申し入れがあったことに応じて一方的に勧告をするのでございますから、念のために「特に必要がある」と書いたのでありまして、制限的とか抑制的とかいう意味ではありませんと申し上げたのでございます。
  132. 神田大作

    ○神田委員 第十九条の三ですね。「団体協約の締結又は変更のため交渉をしたい旨の申込をし、かつ、その申込をした旨を農林大臣又は都道府県知事に申し出た場合において、生乳等の取引の公正を確保するため特に必要があると認めるときは、」ということになっておるのだから、特に必要があるかないかによって、勧告ができない場合がある。勧告したくないと思えば、特に必要がないということでもって勧告しない。実際は農業協同組合としては必要である、あるいは生産者として必要である、こう思っていても、農林大臣やあるいは知事が特に必要がないと認めれば、勧告をいつも逃げておれるということになるから、「特に」ということには大きな意味が持たされる。解釈のしようによっては、そういう生産者団体の意思を踏みにじることになると思うのだが。
  133. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 そういうふうに解釈する意味で御提案申し上げておるのでございませんので、牛乳取引は一応契約自由の原則で取引されるということを前提にして、それをいかに法的に調整するかということについての規定を書いたのでありまして、自主的に交渉ができることはむしろ望ましいということと、かつまた、団体協約の締結、変更ということ自身は、農業協同組合法に規定がございまするが、やはりまだ十分なる条件を整備してない点もあると思うのです。農協の組合員と組合との関係でございますが、そこで、そういう事項について農協側から申し出があったときに、乳業者の方に向って、片一方の申し出を聞いて、一方的に他方に勧告を出すのでございますから、必要があることをよく慎重にやれという意味でございます。
  134. 神田大作

    ○神田委員 今度の改正の主眼点は、乳価の上るときはもちろん問題ないと思う。乳価が下ってくる場合において、大乳業会社がいつでも逃げ腰になり、そうして協約の締結を拒否する場合が多いわけです。そうして、好意的なあっせん等に対しましてもけってきたのが事実だろうと思う。そういう不備を是正したいというのが今度の法律改正の趣旨でありますから、こういうような申し出に対しまして、勧告をして、なるべくそういう団体協約の締結を推し進めていこうというのが私はこの法案の大きな目的だろうと思うのでありますが、こういうように、「特に必要がある」というように「特に」という文字を入れると、これは、大臣や知事が、そういう大きな乳業資本家の圧力に屈して、そうして締結を勧告することをしぶらせる場合が出てくると私は思うので、非常に大事なことだろうと思う。だから、何も「特に」ということはことさらつける必要はなく、締結はなるべく推し進めていって、そして生産者の立場というものを守ってやろうというような法案の趣旨でありますならば、この「特に」ということをことさらここに入れる必要はないのじゃなかろうか、こう考えるのですが、いかがです。
  135. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御意見も伺いましたが、先ほど申しましたような事情であると同時に、中小企業団体法等においてもこういうような条文で、これに類似の条文に関しましては「特に必要がある」というのは日本の法令の比較的新しいものの文例でございます。
  136. 神田大作

    ○神田委員 そういう文例であるというように言われて、意味がそうないというようにおとりになるなら、しいてこれ以上申し上げません。  それと同じような問題で、やはり先ほど質疑されたように、「重大な悪影響を及ぼす」という文字が第二十四条にありますが、この点も先ほど説明を聞きました。聞きましたけれども、これも、「重大な悪影響を及ぼすおそれがある」というように最大の言葉を使って、なるべく紛争の調停に農林大臣が決定をしないように逃げておるようにこの条文では見えるのですけれども、この点は、これほどきつい言葉にしておいたならば、私はこの紛争の処理というものができないのじゃなかろうかと思うのでございますが、いかがです。
  137. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 先ほど申し上げました通りに、そういう意味ではございませんのと、行政機関あるいは大臣生産者の方に悪くやるだろうという心配がかりにありますれば、反対の方でも、恣意的に勝手にやることも——法律というものは、両方を押えて、目的に即しては積極的でなくてはいけませんが、適法と適正というのが行政機関の行う使命だと思います。それについては、国会が国政の調査をなさいましたり、批判をなさいましたりされますし、あわせて世論もありますし、客観情勢というものもございますので、こう書けばこっちの方に不利じゃないかというのは、やはり反対があると同時に、法文としてはこれでいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  138. 神田大作

    ○神田委員 それは、世論がそういうことを許さぬということを言われますが、だいぶ世論が高まっても、それを押し通してきた事実はたくさんあるのです。これはもう枚挙にいとまないのです。そういう世論の影響によってそういうのを是正するということになりますと、経済的に非常に微妙な立場に立っておる取引の問題でございますからして、世論が支配するまで待っておったのではどうにもならなくなってくるのです。そういう問題を未然に防ぐために法律というものはできておるので、特に酪農振興法改正案の趣旨は、生産者の立場を守る意味合いにおきましても、そういう紛争をなるべく早く調停に持ち出すというのが、私は法の趣旨だと思うのです。そういう意味からいたしましても、これは重大な悪影響を及ぼすか及ぼさないかということを認定することにも非常に問題があると思いますけれども、「悪影響を及ぼす」だけならまだいいけれども、「重大な悪影響を及ぼす」ということになると、これが紛争の調停を拒否する大きな理由になってくるからして、私はこういうことは酪振法の趣旨に反すると思いますが、いかがですか。
  139. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 重大な悪影響と同時に、おそれがあるときでも発動できる、こういうように弾力的にこの規定は妙を得ておると思います。
  140. 神田大作

    ○神田委員 今までの実際問題とすると、こういう問題は大資本や力のあるものに押されがちでございまして、それを守るために酪振法の規定というものは作らなければならぬ。そういう意味合いからいたしまして、なるべく紛争調停に入らないことの理由づけられるような法文の規定の仕方は、どうも生産者側からいたしますれば非常に不利益なことである、こう考えるのであります。この点、あなたはそういうことはないと言っておりますけれども、重大な悪影響ということになりますと、この重大なという表現の仕方は現実にどういうことを意味するのか、それをお尋ねします。
  141. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 広範な地方にわたりまして、生乳の取引の関係者が自己の経営及び経済に重大な影響を及ぼすおそれがありまして、また国全体の経済から見まして紛争がありますこと、紛争の内容、その程度が大きい、悪い影響を及ぼすおそれがあると思うときであります。
  142. 神田大作

    ○神田委員 一地方、一都道府県における紛争に対しましてはこの規定は適用しないようでございますが、こういう一地方、一部分の場合はどういうふうにしてこれを処理するつもりでありますか。
  143. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 一つの県内におきまして、生産者はもちろん多数ありますが、生乳の関係者側が一人でありましても多数でありましても、一都道府県内で片づけ得る場合は、また影響がその程度であります場合は、まず国と連絡をとって、国の協力を受ける体制を持った国の機関としての都道府県知事が、この法律に基いて紛争のあっせんと調停をしなければならない。そうして、それを前提にいたしますから、その一県内の紛争が片づかなくて、一県の紛争でも他の都道府県に紛争を発生するおそれがある場合、現に発生しておる場合、両者を含めまして、その成り行きが広範囲に重大な影響を及ぼすおそれがある場合は、農林大臣が処理することを決定するという解釈であります。
  144. 神田大作

    ○神田委員 そういうような規定は、私どもとしては局長答弁ではどうも満足じゃない。そういうような紛争に対しまして調停を拒否する一つの大きな理由にされるおそれがありますので、この条文に対しましては、局長答弁は満足できないのでありますが、いつまでやっておってもしようがないから、先に進みたいと思います。  次に、私は、畜産の振興に非常に重大な関係のある飼料の問題でちょっとお尋ねしたいと思います。過般私はやはりあなたにお尋ねを申し上げましたが、輸入飼料の実需者団体の中に、実需者でない会社があると私は思うのでございますが、飼料保税工場会あるいは中央飼料元売協同組合連合会というようなものは、私は実需者団体じゃないと思うのですが、どうしてこういう実需者団体でないものを実需者団体として、そうしてここへ実需者八団体として輸入飼料の取扱いをさせておるか、お尋ねします。
  145. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御質問は、飼料需給安定法によります指名競争入札並びに随契によって政府の持っておる輸入飼料を払い下げる団体のことと思いますが、法によりますところの政府所有輸入飼料売り渡しの指名競争入札または随契見積り合せの参加資格者としてきめておるのでございまして、実需者団体であるものが一つの適格性を持っておる、また実需者団体に準ずるようなものも適格性を持っておる、その他も、実績の関係等で、需要者の立場から——家畜を飼っている農家という意味ですが、飼料の購入をする側の立場から見まして適当なものの範囲内におきましては、不必要でないものは差しつかえないと思うのであります。実需者団体という定義に当てはまるかどうかは別として、契約の見積り合せ参加資格者としてはそうしておるわけでございまして、飼料保税工場会は配合飼料を作るものでございますから、その配合飼料の原料の実需者とも言い切れますし、適当な需要者であると考えておるわけであります。かつまた、その企業状況、設備、資本、経営等は、古くからありまして、尊重すべき実績も相当ある、こういう意味でございます。中央飼料元売協同組合は、飼料用大豆として入れましたものだけについてのようでございますが、大豆輸入で飼料用の大豆を扱う実績もございまして、かつまた、先生御指摘の実需者団体だけでは養畜農家に行き渡らない部分がございまするから、最終消費者の農家へ、商人系統で、制限的でございますが、一部取り扱わせるのも、商人系統でありましても実績を持っておったものに限り、ほどほどの程度でございますが、入れてあるのも悪いことではないという意味で、参加しておる状況になっておるのでございます。
  146. 神田大作

    ○神田委員 飼料需給安定法は、やはり、実需者団体によって、ともすれば高くなる飼料を安く払い下げて、そうして有畜農家を守るという建前でありますが、こういうように、飼料保税工場会あるいは中央飼料元売協同組合連合会というような営利を目的としておる会社に、国家が関税を安くし、外貨を割り当てて、そうしてこういう会社に利潤を得させるということは、法の趣旨に反することでありますし、非常に私は飼料需給安定法の精神を踏みにじっておると考えますが、いかがですか。
  147. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 飼料需給安定法の現行法は、先生のおっしゃるような実需者団体に、かつその系統ルートを通じてのみ安く売れとは規定いたしておらないと思っております。むしろそうでない場合もある。そういう場合もある。そうでない場合を申し上げますと、日本に海外から小麦が二百万トンをこえて入ってきまして、製粉会社に行きまして、そのふすまが一般に販売されまして、農家へ行く量というのは、来年の想定量でも五十五万トンくらいあるわけです。輸入飼料は、ふすまにおきましては十七万トンくらいを計画いたしておる。輸入操作によりまして、かつ価格差補給金によりまして、政府が売り渡すときの基準価格を立てまして、法の趣旨に基いて、畜産の経営の安定に資するように、一般のふすま全体の需給調整を、価格をこまかいマル公制度とか、特定ルートだけの配給による配給制度とかを通ぜずに操作をするのも、その趣旨の一つになっておると思います。その方が影響が広範囲で有効であることもあります。また、実需者団体でも、御承知のように、何段階制もあって、現実の一番末端農家に渡る価格がいつでも安いとは必ずしも限らない場合もありまして、適当な競争がある場合もいい。また、農協の系統の場合でも、御存じのように、社団法人北海道飼料協会というものを見積り合せ参加資格者として認めておりますが、これは、北海道経済連とか、北連とか北海道の養鶏連でむしろ円滑に販売されるようにと期待しておるので、やはり現実的に適切な方法が適法な範囲内でいいのだ、こういうふうに思っております。
  148. 神田大作

    ○神田委員 これはそういう場合もあるかもしれないけれども、私は、飼料需給安定法の基本的な精神は、飼料を安く畜産農家に渡し、そして有畜農家の生活の安定と畜産の振興をはかるというのが趣旨だと思う。だから、そういうような解釈には私はあまりどうも賛成はできない。しかも、この実需者団体によってそういう畜産農家の安定をはかるというような意味合いにおきまして、特に私は実需者団体に扱わせるということがうたってあるのだと思いますけれども、最近のいろいろの統計によりますと、この実需者団体の扱いよりも、この飼料保税工場会の扱いとか、そういうような営利的な立場に立っておるものの扱い方の方が半数をこえておると見ておる。これでは、私は、畜産農家の安定のための需給安定法ではなく、いわゆる畜産飼料業者あるいは畜産業者のための飼料需給安定法になってしまうのじゃないかと、こう思うわけですが、この点いかがですか。
  149. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 取扱い量の全体から見ますと、配合飼料工場は需要もございますので、三割くらいのようでございますが、かりに全購連と比較しますれば、やや同量に近い。全購連も配合飼料工場を持っておるわけでありますから、かりに農業関係団体を見ましても、全購連と日本養鶏連もあり、全畜連もあり、全酪連もあり、開拓農協もあるので、これは先生がおっしゃるように単純にいかない。まだ配給機構の問題とか価格の問題とか流通の問題とかありまして、現状に照らして法に規定しておるところにそう全く逸脱しておるものじゃないと思います。日本の商品の販売は、株式会社の取り扱うこととか、そういうことを何も否定しておりませんので、それを適正に配給して、不適正なときは、同法の六条の三でありましたか、別の規定で、買った人に売り渡しの条件も付し得る。また、今でも、この見積り合せするものは、配給計画を出してもらって、配給先をきめながら、予定を立てながら、取扱いの価格も、政府から直接買った者は約二%以内の手数料しかとってはいけないという条件をつけてやっておりますので、差はないと思います。
  150. 神田大作

    ○神田委員 統計の数字の問題や、あるいは実需者団体と差はないというような答弁に対しましては、これは飼料需給安定法が実際に上程になってから詳しく御質問申し上げたいと思います。  いわゆるこの輸入飼料のうち飼料に適さないようなものに対しまして、食糧庁は検査をするようでございますが、この輸入飼料の検査というようなことは、だれがどういうふうにしてやっておるか。食糧庁から来ていますね、お尋ねします。
  151. 昌谷孝

    昌谷説明員 食糧庁は飼料の需給計画に従いまして輸入をいたすわけでありますが、その際輸入業者と買い入れの契約を結びます。その契約に基いて検収・受け入れをやるわけです。その検収・受け入れをいたします場合に、その各港におります食糧庁の出先の検査官が検収・検査をいたすことになっております。
  152. 神田大作

    ○神田委員 その検収は実際にはだれがやりますか。お尋ねします。
  153. 昌谷孝

    昌谷説明員 食糧庁の当該港事務所検査官がやっております。
  154. 神田大作

    ○神田委員 穀物検定協会というものがあって、これにまかせておるのではないですか。いかがです。
  155. 昌谷孝

    昌谷説明員 穀物検定協会は、輸入飼料の検査を受けます側が、検査を受ける準備をいたしますために荷口をそろえますとか、その他受検の態勢を整えるための必要な手続、それをみずからの手で行います場合もありますが、一部検定協会に委託をしてやっておる場合もあると思います。食糧庁の検査は食糧事務所の出先の諸君をもってやっております。
  156. 神田大作

    ○神田委員 それで、飼料に不適格だと思われるものに対しましてどういうような処置をとっておりますか。
  157. 昌谷孝

    昌谷説明員 買い入れ規格の点で飼料としての必要な規格を定め、それに基いて受け入れをしておりますので、その規格にはずれましたものがたまたま発生をいたしました場合、契約に基いた値引き措置を講じて買い入れる場合もございます。
  158. 神田大作

    ○神田委員 その場合、いわゆる瞬間タッチ方式ということで、その場でもって処分をやっておりますか。
  159. 昌谷孝

    昌谷説明員 えさ用として輸入いたしましたものが、先ほど申しましたように、契約規格にはずれました場合は適当な違約金なり格下げをして買い入れをいたしておりますから、今御指摘のような瞬間タッチというような、つまり政府が買ってすぐ業者に渡すことは、——飼料については値引きをして買い、また普通製品よりも値引きをして売るということで処理をいたしておりますので、御指摘のような買い方あるいは売り方をとった例は、私はないと承知いたしております。
  160. 神田大作

    ○神田委員 これは、飼料に不適格であったというようなものに対しまして値引きをして売る、その値引きをされた飼料が市場に出て、そうして、検査を通った、いわゆる実需者団体とかあるいは八団体の手を経てやったのと同じように市場に出回っておる、こういう事実があるのです。
  161. 昌谷孝

    昌谷説明員 買いまして、そういう規格のはずれましたものは、もちろん通常の規格と合ったものと同じ値段では売れませんから、そういうものは、現在の飼料需給安定法による売却をいたします場合、政府の方でもそれ相応の品質に応じた安い値段で売ることはいたしております。しかし、売る対象は、やはり畜産局の方でお定めになりました売る対象を相手として売っております。それ以外に、飼料需給安定法によって輸入いたしましたものを畜産局の方で御指定になりましたもの以外に売るというような事例はございません。
  162. 神田大作

    ○神田委員 飼料の検査、たとえば輸入飼料をもととして配合飼料にしたというようなものに対する検査機構というものはどういうふうになっておりますか。
  163. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 飼料の品質改善ということだと思いますが、それに関する法律がございまして、本省の飼料課の分室で、これは肥料のように検査所として目下独立するまでに至っておりませんが、そこの職員が指導しまして、配合飼料などについて規格の登録制をとりまして、登録飼料には内容分の保証票を貼付させることとしております。また、関係職員をして随時事業場等に立ち入りして現物を収取さして、分析して、栄養分が足りないとか、また別に同法に基いて飼料としては不適格な異物混入がしてある場合には、たとえば麦がらというようなものですが、そういう取締りをしております。最近でも、分析したり、配給上の指導をしたりするほか、発見されたひどいものは摘発して検察庁に告発しております。
  164. 神田大作

    ○神田委員 この問題は、わずかな人数でもってこういう検査をしているのだろうと思いますが、各地に不正飼料の横行が見られて、そのために畜産業者は非常な迷惑をこうむっている部面がたくさん見られますが、こういうこまかい点も時間の関係であとで例をあげて指摘したいと思いますが、きょうこの飼料問題で私が言いたいことは、こういうような全購連、全養連、あるいは全酪連等の実際の実需者団体とともに、営利を目的としているところの保税工場会とか、あるいは保税工場会と結んでいるといわれるところの日本糧殼株式会社とか、同じ人が経営しておって、そうして片方において実需者団体に指定され、片方において今度は輸入業者として飼料の取扱いをして膨大な利潤を得ておるといわれております。この問題は飼料需給安定法の精神に反する問題でなかろうかと考えますので御質問申し上げたのでありまして、この点については、飼料需給安定法の一部改正法案が近く上程されますから、そのときに詳しくまた質問したいと思います。  最後に、食糧庁の方からも参っておりますので、やはり、えさに関係がありますが、中小製油業者の全国組織であるところの日本油糧工業協同組合連合会というものがありますが、いわゆる日油連と称しておりますが、これもやはり大豆を扱っておって、飼料としても回ってきておるのでありますが、この問題等について簡単にお尋ねをしたいと思いますので、率直な御答弁を願いたい。  外貨割当による輸入大豆、菜種の割当について、最近この日油連の割当に対しまして、国会議員が口をきいたためにこの割当が変更されて非常に増加したということがありますが、そういう事実があったかどうか、お尋ねします。
  165. 昌谷孝

    昌谷説明員 そういう事実はございません。
  166. 神田大作

    ○神田委員 この輸入大豆、菜種の割当というものは、一体どういうふうにしてやっておるか、お尋ねします。
  167. 昌谷孝

    昌谷説明員 まず、外貨予算に基きましてやっておりますことは一般の物質と同じでございます。  大豆の場合には、その期の外貨予算のうち、半分を、食糧庁の長官が発表いたします実需者、いわゆる内需者と申しますが、実需者割当、残りの半分は商社に対する割当、いわゆる商割、この商割と実需割と半々というのが輸入大豆の割当の原則でございます。  菜種の場合は、これは、定期的にと申しますか、年々当初から計上して計画的に輸入するという性格のものでございませんで、本来は国産菜種で十分とれますればほとんど菜種は輸入する必要がないというような頭でわれわれは仕事をしております。たまたま菜種の作況が思わしくない、菜種の油あるいはかすの市価が非常に高騰する、あるいは菜種のみに依存しております工場の原料が枯渇して操業度が著しく悪い、そういうような事例が起ります場合に、補充的に、ごくわずかではございますが輸入をいたしております。従いまして、そういった意味合いで、これは臨時的に、たまたま昨年、ことしと二年続きましたが、あくまで臨時的に入れておる趣旨でございます。これにつきましては全量を業者の発注書つきで輸入しております。
  168. 神田大作

    ○神田委員 三重県に割り当てられた菜種の数量が、二百二十トンくらいのやつが四百トンに増加して割当のし直しをされているようでございますが、これはいかがですか。
  169. 昌谷孝

    昌谷説明員 菜種につきましては、今申しましたように、全量需要者に対する割当をいたしております。御指摘の点は、その需要者間のさらにまたこまかい割当でございます。臨時的に入れましたこと、それから、先ほど申しましたような趣旨で輸入をいたしておりますこと等の事情がございますので、昨年入れましたとき、全体の輸入量の八割を中小業者の団体であります日油連の傘下工場に割り当てまして、残りの二割をその団体に加入しておりません個々の業者のうち希望のありますものに、国産菜種を扱った実績等を基礎といたしまして、個別の割当をいたしました。本年におきましても、そういった割当について、中小企業の団体から、八割というものをまず天引きして割当をもらいたいという強い要望がございました。そういった団体に割当をいたしまして、団体内の配分はそれぞれの組合員の実績等を基礎にして団体が自主的に配分いたしておるのが現状でございます。今後そういうことが毎年毎年行われるということになりますと、そういう割当方法をとった結果として、協同組合の組合員がもらいます分と、協同組合員以外の人のもらいます分との間にかなりの断層がございまして、組合員の方が、結果において割のよい割当を得ております。今後相当期間継続的にこういう輸入が行われるといたしますれば、そういう便法で処理することは必ずしも適当でないと考えて、今後の輸入方式につきましては、大豆等の場合と同じように、全工場の分を処理実績によりまして食糧庁が一つ一つの工場の割当をきめ、それの合計分を団体に割り当てるというふうになるべきであろうということで、研究はいたしております。  それで、ただいま御指摘の三重県の菜種の組合でございますが、これは今申しました中小企業の協同組合連合会の元メンバーで、何年か前に組合の方で除名の処分をいたしておるように聞いております。そこで、割当の点で申しますと、これは員外でございますから、個別の割当ということになるわけでございます。先ほど申しましたように、個別の割当にいたすことは、かなり組合員としての割当をもらう場合に比較いたしまして不利でございます。昨年もそういたしました。またことしもそういたしたわけでありますが、連合会の員外利用という形で配分することを食糧庁が勧奨したわけであります。御指摘の数量につきましては、組合で組合間の配分をいたす場合の配分がございますし、また、その場合、全体の組合員に割り当てられた額の中の員外利用については、組合としてはかなりきつい割当の線を出したようでございます。組合内部の問題でございますから、員外利用ということで私どもが勧奨をいたした経過もございまして、当事者の方からの御不満の御陳情もわれわれの方に参りましたので、本来なら組合で自主的にきめていただくことでありますけれども、なるべく員内と員外の間において著しい断層のない方が円満に解決するだろうという趣旨で、増量を勧告いたした次第であります。そういう経過をとりまして若干の増量が行われたように承知をいたしております。
  170. 神田大作

    ○神田委員 あなたは先ほど、僕が増量されたかいかがかと言ったら、そういうことはありませんと言って、今は増量されたということを認めておる。いやしくも国会委員会でそういうようなことを誤まってあるいは故意にそれを隠すようなことを答弁していいと思いますか。
  171. 昌谷孝

    昌谷説明員 先生が先ほどお尋ねになりましたのは、国会議員の、何と申しますか、あっせんとおっしゃいましたか、言葉はちょっと忘れましたが、国会議員のそういった指示あるいはあっせんによって数量が変更したという事例があるかというお尋ねでございましたので、私どもはそういう趣旨で割当の変更の措置等をした事実はない、さように御返事申し上げた次第であります。
  172. 神田大作

    ○神田委員 事実増量したのは間違いありませんね。
  173. 昌谷孝

    昌谷説明員 本来組合で割り当てるべき組合間の配分の問題でございまして、組合が適当に御処理をなさるわけでありますが、そういったいきさつのある組合でありましたので、特にあまりお気の毒な扱いにならぬようにという私どもの方も口添えをして、組合の方に多少考え方を変更していただいたという事実はございます。
  174. 神田大作

    ○神田委員 多少ではない。二百六十トンから四百何トンであります。ほぼ倍に増量されてるわけですから、多少という言葉は当らないだろうと思います。数量をはっきり言って下さい。
  175. 昌谷孝

    昌谷説明員 組合の方の最初の配分原案は二百六十トンであります。これは、昨年のやはり員外利用で割り当てられました量から見まして、ことしは全体の輸入量がふえておるのに見合いまして、多少同じ員外ではあってもふやし方が足りないのではないかという観点から、結論的に決定いたしました量は、私どもは四百トンというふうに両者から報告を聞いておりますから、間違いないと思いますが、四百トンということで両者の話し合いがついたと思います。
  176. 神田大作

    ○神田委員 二百六十トンから四百トンになったのを多少と言いますか。そういう実際のことを言わないような答弁の仕方は非常にまずいと思うのです。もっと正直にありのままを答弁してもらいたい。  それで、日油連に一括割当した場合に、個々に行く数量というものは食糧庁の方へ届け出るとかあるいは承諾を得るとか、そういうことがあるのかどうか、お尋ねします。
  177. 昌谷孝

    昌谷説明員 割当を受けました総量の組合別配分が執行機関理事会で決定をいたしますと、食糧庁長官の方に、各組合員別、また員外利用があれば員外を含めまして、各対象別割当数量の報告を聴取することにいたしております。
  178. 神田大作

    ○神田委員 初め三重に二百六十トン割り当てたのを四百トンに変更しなくちゃならぬというような、非常に油脂行政をゆがめるようなそういう団体に、どうしてこの大事な油脂の輸入割当というような権限を与えなければならないか、その点お尋ねします。
  179. 昌谷孝

    昌谷説明員 二百六十トン組合で割り当てることにきめたということは、組合の執行機関がそういう原案を出したわけでございましょうから、一応それはそれで協同組合の精神に沿ってやっておることでありますから、一応の尊重はいたすべきかと思ったのでありますが、組合員内——かりにこれが当該組合が除名等のことがなくて引き続き組合員内であったとすれば、もらうであろう量というのは当然それよりも多い量が予想をされますので、なるべくそれに近づけるということが好ましかろうという勧奨をいたしたわけであります。本来はそういう勧奨を私どもがいたすのもいかがかと思われる。本来は団体内部の配分の問題でございますけれども、何さま、経過がありまして、除名というような措置をとっておりまして、除名処分を受けた当事者はその除名処分が有効でないというような反発をしておるというような紛争過程の状況でございまして、そういった関係を考慮いたしまして、多少そういった勧奨をいたしまして両者の主張の差を縮めることに努力した次第であります。そこで、このような中小企業の組織いたしました団体、協同組合連合会でございますので、輸入業者との輸入の商談、あるいは輸入いたしましたものの秩序ある配分、あるいは運送その他加工の方針等をその協同組合においてお互いの利益をはかりながらやって参るという趣旨の法律に基いた組合であります。在来はその組合に一括割当をいたしております。と申しますのは、そういった精神でいたしておりますことと同時に、同じ油糧の原料としての大豆の場合には、個別工場の割当基準となるべき諸要素が、比較的対象工場も少い関係もございまして、比較的私の方で正確につかみ得る状況でありますので、内部配分については、一たん割り当てられましたものを共同購入という形で一括割当を受けておるという状況であります。菜種も、今後引き続いて毎年輸入が行われるというような事態が予想されますならば、十分の割当資料を整備いたしまして、大豆が現在とっております割当に近い方法で割当をいたす、そして、その場合でも、やはりその組合員が個々にもらいます分を一括して連合会が内示を受け、発注をする、そして組合員に共同購入の形で配分をするという姿は、協同組合の本来の精神から望ましいことであるというふうに考えます。
  180. 神田大作

    ○神田委員 それは、国家のとうとい外貨をもって輸入するものを日油連に割当、輸入をまかしておくのに、日油連のそういうような行為に対してどのような監督をし、どのような指導をしておるか、お尋ねします。
  181. 昌谷孝

    昌谷説明員 団体一括発券の場合、あるいは個々の発券の場合に限りませんが、輸入されました油脂原料を使いました操業の結果につきましては、各県の食糧事務所に各工場から操業の報告書を聴取いたす、その他一般の組合あるいは輸入外貨の一般の監督方式に準じた監督をいたしております。
  182. 神田大作

    ○神田委員 その監督の責任者はだれか、そして、どういうふうにやっておるのか、ちょっとお尋ねします。
  183. 昌谷孝

    昌谷説明員 協同組合法に基く協同組合の連合会でございますから、法律に基いた監督権限は、農林物資でありますれば農林省が持っておるわけであります。それから、輸入原料の操業の状況というものは次の期の割当の基礎等にも利用いたすわけでありますので、そういった工場の操業の状況につきましては、私ども食糧庁といたしまして、そういった割当行政をいたしておりますから、各県の食糧事務所に各工場の方からそういった操業の報告書を提出させる、そういう方法で監督をいたしております。
  184. 神田大作

    ○神田委員 この日油連といういわゆる中小企業団体法に基く組合、それに勤めておって実際の実権を握っておるところの志田という専務が、新たに日本油糧株式会社という営利会社を作って、外貨の割当と輸入は日油連がやる、実際の経済行為は日本油糧株式会社がやって、二重の手数料をとっておる事実があるが、これは知っておるか、お尋ねします。
  185. 昌谷孝

    昌谷説明員 協同組合が一括発券を受けました場合のあとの現実の売買、配分等の事務処理、そういうふうな組合の代行機関があることは承知いたしております。これは組合の自主的に決定することとして、私どもはそういうふうな状況を承知はいたしております。
  186. 神田大作

    ○神田委員 これは特殊法人としての日油連であって、営利会社としての日油連ではない。特殊法人といいますか、あるいは中小企業団体法に基くいわゆる公益的な法人でありますけれども、一応表にはこれを出しておいて、裏には同じ人が会長をやっておる営利会社を作って、そうしてこれが取扱いをやるということは、油糧行政として果して妥当であるかどうか、あなた方は妥当と認めるかどうか、お尋ねします。
  187. 昌谷孝

    昌谷説明員 組合員の組合活動の方法として、いろいろのやり方があると思いますが、その方法の一つとして、むしろ組合がそういったある特定部分の経済行為をある特定の会社に委託をするというようなやり方も、間々例のあることであります。これがよいことであるか悪いことであるかにつきましては、組合員が御判断をなさっておきめなさればよろしいことであるというふうに考えます。
  188. 神田大作

    ○神田委員 これは組合員がきめる前に、監督官庁としてのあなたの見解を私は聞いておるのです。これをあなたはどう思いますか。
  189. 昌谷孝

    昌谷説明員 組合が正規の組合の意思決定の方法を十分講じまして、正当にきめたことであれば、私は適当であると思っております。
  190. 神田大作

    ○神田委員 これは非常に重大な問題であります。少くとも日油連の監督官庁である農林省の責任者が、こういうような二重的な取扱いをさせて、しかも手数料を二重にとって、高い価格で組合員に配給されておるということを、妥当であるかのごとき答弁をされるということになりますと、これは非常に問題があとに残ると思います。この問題についてはなお私は検討を加え、あとの機会に御質問を申し上げたいと思いますが、それでは、こういうようなやり方は、協同組合法によるところの役員の競業禁止という規定にひっかからないかどうか、お尋ねをいたします。
  191. 昌谷孝

    昌谷説明員 組合の利益と反することをやっております場合は、そういう趣旨において好ましくないということが言えるかと思いますが、組合が、組合自体の経済能力と申しますか、事務処理能力の足らないところを補う一つの手段としてそういう便法を講じておりますことは、本来の組合の精神から言えば、もちろん組合が組合自体として必要な事務能力を備えるというふうに育つことが一番組合の精神に合致することであることは私も疑いませんが、遺憾ながらそこまで組合の事務処理能力が十分ないといった場合に、そういった下請代行的なものを使うということも、現状においては、組合員の総意によって行われることであれば、やむを得ないことではないか、さように考えております。
  192. 神田大作

    ○神田委員 片方においては日油連といういわゆる中小企業団体法に基くものを作り、同じ人が、同じ事務員を使って、営利の株式会社を作って、二重の手数料をとって、トンネル会社のようなことをやって、利益の収得をしておるというようなことは、これはあなたたち監督しておるのだからはっきりわかるだろうが、これをあなたが公然と認めておられるとすれば、重大な問題だと思いますから、これは今後詳細な検討を加えて責任の追及をしなければならぬと思うのでありますが、あなたはそういう点において差しつかえないとはっきり答えることができるのですか。
  193. 昌谷孝

    昌谷説明員 組合内部の配分手続あるいは組合に割り立てられましたものの組合員への配分あるいは調達の問題でありますが、本来は、そういう組合員の総意によって決定されたところに一応おまかせをして、私どもはなるべくよけいな口出しをしないということでやっておりまして、これは最善ではないけれども、まずやむを得ないのだというふうに私どもは理解をいたしております。もし先生の御指摘のような非常に不都合な点があるといたしますれば、十分に組合員の意見も聴取いたしたいと思っておりますが、組合員の総意により、組合員の議決機関によりそういうことをやっております現状においては、一応適当だというように考えておる次第であります。
  194. 神田大作

    ○神田委員 このような問題は、事実を私は明らかにして、この問題の不当性というものを近い機会に指摘しておきたい。部長がそう言うならばそういうふうにしたいと思うのでありますが、日本油糧株式会社が昭和三十年四月に創立したときに、その当時の農林省の責任者は、日本油糧株式会社を作らなければこの油脂の配給というものが円滑にならない、これは農林省当局の意向であるというような毅然たる方針でもってこれを作らせたということを聞いておるのでありますが、そうであったかどうか、お尋ねいたします。
  195. 石坂繁

    ○石坂政府委員 日本油糧協同組合のことに関して先ほどからいろいろ御質疑がありましたが、実は私もこの連合会のことを詳しく存じませんし、いわんや三重県の菜種の配給増加の点等も一向存じなかったわけでありますが、農林省がこの協同組合の監督者の地位にあるということでありますれば、私どもとしても、事実を詳細に調べて、なお法律関係等も十分検討いたしまして、あらためてお答えを申し上げたいと存じます。
  196. 神田大作

    ○神田委員 次官の答弁にあるように詳細な御検討を願いたいと思います。実は、これは、中小製油業者が、一括して日油連に割り当てられて、その割当方法とかいろいろの点において非常な不満と不当性があるのでありまして、これは全国的な問題に今なろうとしておるわけであります。この点について、監督官庁であるところの農林省は、この実情を詳細に御調査願いたいと思います。  部長にお尋ねいたしますけれども、日油連傘下の中小製油業者が日油連にも手数料をとられ、日本油糧株式会社の方からも手数料をとられて、そうして農林省が直接に配給するところの大工場よりも単価において一割から一割二分高いものでこの払い下げ飼料を受けておるというように、同じ輸入の菜種あるいは大豆が、大工場には安く配給され、中小企業には、こういう日油連という団体があって、それでもって、非常に権限を持った人が、あそこにはどれだけ、ここにはどれだけやるというようにして割当をして、そこに対しまして非常な不平と不満がある。しかしながら、文句を言うと割当が少くされるというので、文句も言わないで、へいへいしながら、ごきげんをとりながら割当を受けなければならない。割当数量一トンを受けると三千円、あるいは金額はちょっと忘れましたが、とにかく、今内地の菜種とカナダの菜種の価格というものは三割か四割くらい違うでしょう。ですから、輸入菜種を一トンよけいもらうのにも業者の利益というものは莫大に違ってくる。そこで、割当数量をどれだけにするかという権限を持つ者は非常に大きな権限を持って業界に君臨しておるわけであります。こういうわがまま勝手なことをやっておると称されておる日油連に対して、監督官庁である農林省がそういうようなあいまいな態度では、中小工業者の利益を守る立場に立つべきあなたたち、あるいはひいては消費者の立場を守るべきあなたたちが、非常に疑惑の目をもって見られざるを得ないと思うのでございます。こういう点について部長はどういうふうにお考えになりますか。
  197. 昌谷孝

    昌谷説明員 中小企業を守るための組織としてあります協同組合連合会、それが中小企業の利益を守っていないというような事例があるようでございますれば、まことに申しわけもないことであり、また法の本来の精神にも沿わぬことでございます。その点は、協同組合が協同組合としてそういった点を内部的に十分吟味をし、あるいは成長をし脱皮をしていくということが本来の法の精神であろうと思うのでございまして、私どもも、そういうふうな成長を遂げますように十分指導監督をいたしたい。なお、そういった指導監督をすることはもとよりでありますが、割当の方法につきましても、先ほど申し上げましたように、菜種の輸入というものが半恒久的に今後年々行われるということでありますれば、工場個別の割当を私どもの方で材料をそろえて積み上げまして、それを共同購入という形で組合が扱うというのも、組合員外との調整というような点から考えましても一つの方向であろうかということで、現在そういった割当基準を作成するに必要な資料の整備、またあるべき割当基準の検討ということに現に着手をいたしております。そういった点で御趣旨に沿って参りたいと思います。
  198. 神田大作

    ○神田委員 恒久的であるか半恒久的であるか、あるいは臨時的なものであるかわからぬけれども、少くとももう数年続いておって、しかも割当数量によって業者の死活問題になるようなこういう問題を、トンネル会社を作って二重の手数料をとって、しかも割当をする権力者というものが非常な大きな力を握るという、こういうものに対して農林省があいまいな態度をとって今日までおったことに対して、私は非常な不満を感ずるのであります。特に申し上げたいことは、先ほど三重の組合の人が除名されたと申しましたけれども、この除名された理由は、日油連の経営内容がまことにずさんである、しかも不公平であるというので、監事の立場に立っておる者が監査の承認をしない、あるいは監事の承認を得ない事業報告書が農林省に提出されておるにもかかわらず、農林省は何らこれに対して監督をせず、指導の態度をとらないでこれを見過ごして、そうして今日のような事態に追い込んでおるところに対しましては、私は大きな責任問題があると思うのであります。安く買えるべき中小企業者が大工場よりも高いものを売りつけられて、また、これには、農林省の指定した数量よりもよけいにいわゆる目こぼれ輸入と申しますか、昭和三十二年度においては千二百トンくらいありましたが、これが千三百四十トンか五十トンになったと思うのですが、この目こぼれされたものを会社が適当に処理し、そうして利潤を上げているということも言われておるようでありまして、こういうように幹事の方が監査を承認しないものまでも農林省は——あなたたちは責任者なのだから、こういうことは全部わかっておると思うのだ。わかっておるにもかかわらず、それを見て見ぬふりをして今日までずさんに放任したという責任は、私は重大だと思うのでありますが、あなたたちが、この点を、政務次官が言ったように今後調査して、それに対する結論を出して善処するというならば、私の方でも今後この問題を調査いたします。とにかく、聞くところによると、この日油連は一億円からの利潤を上げているというようなことも言われておるのでありまして、こういう中小企業にのっとる会社を使って営利会社をやり、そこから莫大な利潤を上げておる、そして中小企業者を泣かしておるということ、あるいはひいては消費者に高い油を売っているというようなことになりますと、これは重大な問題でありますからして、今後この問題につきましてなお徹底的なる調査と追及をすることを保留いたしまして、本日の私の質問を一応終りといたします。
  199. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま審議中の両案のうち、酪農振興法の一部を改正する法律案について、他に質疑はありませんか。——なければ、これにて本案に対する質疑は終了いたします。  次会は明二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十六分散会