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1959-03-18 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十八日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 大野 市郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 赤路 友藏君 理事 石田 宥全君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       今井  耕君    倉成  正君       田口長治郎君    高石幸三郎君       綱島 正興君    永田 亮一君       八木 徹雄君    保岡 武久君       足鹿  覺君    角屋堅次郎君       金丸 徳重君    久保田 豊君       高田 富之君    中澤 茂一君       中村 時雄君    松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         食糧庁長官   渡部 伍良君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      伊藤 俊三君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   大和田啓気君         農 林 技 官         (水産庁生産部         漁港課長)   林  真治君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月十八日  委員栗林三郎君辞任につき、その補欠として金  丸徳重君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月十七日  水産物小売業者育成に関する請願  (濱地文平紹介)(第二三二三号)  同(山手滿男紹介)(第二三二四号)  同外三件(天野公義紹介)(第二四九一号)  同外六件(新井京太紹介)(第二四九二号)  同外二件(濱野清吾紹介)(第二四九三号)  同外一件(濱田幸雄紹介)(第二五一〇号)  同(星島二郎紹介)(第二五四〇号)  同(鍛冶良作紹介)(第二五六一号)  牛乳学校給食事業補助単価引下げ反対に関す  る請願羽田武嗣郎紹介)(第二三五五号)  鹿児島県下の配給精米価格引下げに関する請願  外一件(池田清志紹介)(第二四六五号)  中央卸売市場足立分場魚類部敷地拡張促進に関  する請願外二件(天野公義紹介)(第二四九  四号)  同外五十八件(新井京太紹介)(第二四九五  号)  同外二十一件(濱野清吾紹介)(第二四九六  号)農業基本法制定促進に関する請願助川良  平君紹介)(第二五〇九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁港法の一部を改正する法律案起草に関する件  酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六九号)  飼料需給安定法の一部を改正する法律案(芳賀  貢君外十三名提出衆法第四一号)  農林水産業振興に関する件(米の予約減税問  題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  漁港法の一部を改正する法律案起草の件について調査を進めます。  本件につきまして、田口委員より、各位のお手元に配付いたしてありますような草案提出されております。この際草案趣旨について提出者説明を求めます。田口長治郎君。     —————————————
  3. 田口長治郎

    田口委員 漁港法の一部を改正する法律案草案趣旨について簡単に御説明申し上げます。  漁港の種類には第一種から第四種まであって、その位置、規模、利用度等の別に応じ格づけが行われ、その費用についての国の負担及び補助についてある程度格差を設けているのでありますが、その中にあって、利用範囲全国にわたる七十八港を第三種漁港といたしておるのであります。  しかしながら、さらに、このような第三種漁港の中にありましても、漁獲物水揚高の多寡、国民経済に対する寄与の度合いから見て、おのずから、そこには、漁港としての機能、役割において頭角を抜いており、今後の漁港対策一般漁港と全く同一に律するわけには参らないと思われるもののありますことも否定しがたいところであろうかと存ずるのであります。このことにつきましては、去る第二十八回国会における本会議漁港整備促進等に関する決議にもあるところであります。これらのことにかんがみまして、この際、第三種漁港のうち、水産業振興上特に重要なものを特定第三種漁港となし、この種の漁港については、漁港整備計画の国の基本方針である整備計画に基き、施行者の意見を尊重しつつ、農林大臣みずからが総合的判断もとにさらに高度の技術的要因に考慮を払ってその修築計画を定めることが適当であると思料し、お手元に配付しております法律案を起草することといたした次第であります。  何とぞ、委員長におかれては、この案を委員会提出法律案としてお取り上げ下さいまして、本委員会成案として御採択あらんことをお願いする次第であります。
  4. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいまの草案について発言があればこれを許します。  なければお諮りいたします。漁港法の一部を改正する法律案草案を本委員会成案決定し、これを委員会提出法律案とするに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  5. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  米の予約減税問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。石田宥全君
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 政府は、本年度予算米価決定当りまして、昭和三十年度より実施されて参りました予約減税廃止し、予約減税該当分米価加算をするという方式をとったようでありますが、このことは、表面的に見ると、予約減税なるものがいわゆる富農政策であって一部の富農にのみ恩恵を与えるものであるが、これを廃止してその減税該当分米価加算することの方が農民一般に及ぼす好影響ありとして予約減税廃止したようであります。しかしながら、この予約減税なる租税特別措置法は、昭和三十年度に実施をされた当初からいろいろ問題のあるところでありまして、単なるその他の租税特別措置法とは趣きを異にしておる。すなわち、予約減税というものは米価の一部である、こういう明確な決定もとに今日まで行われて参ったのであります。ところが、今申しまするように、表面的にこれをながめて見ますると、富農政策廃止して農民一般にこれを均霑させるということはいかにも筋が通るように聞えるのでありますけれども現実にこれを見ました場合に、それがために農民に対しては大幅な増税を招来する。政府は、減税の公約に基いて、初年度五百億減税と言っておりますが、増税分もありますので四百十七億の減税をいたしました。しかるに、農民に対しては、予約減税廃止に基きまして四十五億ないし五十億の増税を招来するという結果になる。米価の方を見ますならば、米価にそれを加算すると言いながら、昨年の決定米価一万三百二十三円と比較いたしますと、本年の予算米価は一万二百五十円でありますから、米価の面においては七十三円下落をしておる。そうすると、予約減税廃止したということによって四十五億ないし五十億の増税をもってし、一面においては、米価にその分を加算をすると言いながら、実は米価の面においても七十三円の引き下げをもって報いておる、こういう結果に相なるのであります。これは、政府はどういう解釈をし、どういう理屈を立てられるかわかりませんけれども現実の事実は今申しました通りなのでありまして、私どもはとうてい承認することのできない点であります。しかし、この点は後ほど大臣が出席された上でこの政治的な問題についてはいろいろ質疑をいたしたいと思います。  先般、政府が見ております減税分、いわゆる予約減税分二十三億の内容についての資料提出を求めたのでありますが、食糧庁からこれに対して資料提出されました。この資料についての質疑をまず長官に行いたいと思いますが、一ページの所得税十五億、地方税八億、計二十三億というものが、予約減税廃止に伴う増税分というものを平均税率をかけてこれをプラスしておかなければならないものを、二十三億で出した。これは当然予約減税廃止になるのだから増税になる。増税になるところの平均税率をこれにプラスしておかなければならないと思うのであるが、それをやっておらないという点は一体どういう見解なのであるか、これをまず一つ伺いたい。
  8. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 所得税予約減税廃止した場合に十五億円ふえるということは、こういうふうに御説明申し上げたらいいのではないかと思います。農家の米の生産量、それに見合う必要経費、こういうものから農家所得金額を算定いたしまして、それから税制改正に伴います扶養控除の引き上げなり、あるいは税率改正、こういうものを考慮いたしまして、その上で、所得税を納める農家数なり所得税額が幾らになるか、こういうことを算定いたしまして、その上で、予約減税がありとすればどれだけの予約減税による課税額の減少があるか、こういうことを算定いたしまして、その結果、所得税を納める額が平年ベースで三十億、そのうち、もしかりに従来の予約減税と同じ制度を踏襲するとすれば所得税減税額が十五億になる、こういうふうに考えておるのであります。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうもそれじゃわからないのです。今長官が言われたような数字を出すには、耕作面積階層別農家所得階層別農家の集計を出して、そこからこの数字を出さないと、これはほんとうの数字は出ないでしょう。総つかみ勘定で出るはずはないですよ。ところが、この資料には肝心のそれが入っていないのです。だから、今長官の答弁されたようなそういう数字がこの資料の中からは出てこない。一体食糧庁は、そういう経営面積階層別、それから所得階層別資料があって、それに基いてこれを計算されたのですか。
  10. 大和田啓気

    大和田説明員 お答え申し上げます。差し上げてございます資料の三ページをごらんいただきますと、所得税法改正した場合に、予約減税ある場合と、予約減税廃止、七十五円米価加算の場合との総所得のそれぞれがございます。予約減税ある場合は、納税人員三十八万で、総所得が千百四十八億、予約減税廃止及び米価加算の場合は、納税人員が四十四万で、総所得が千四百九十五億、この総所得の相違が三百四十七億でございます。この三百四十七億の内訳は、四ページで、予約減税廃止及び米価加算による所得増加額のところで、三十八万人についての総所得金額増加と、それから予約減税廃止により課税対象となる者六万人についての総所得金額とが区分けして書いてございます。引き続き課税対象となる者三十八万人につきましては、予約減税廃止米価の七十五円プラスによるいわゆる農業所得伸びといいますか、総所得金額伸びを一一・一%というふうに計算してございます。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 私の質問に答えていないのですよ。私はそんなことを聞いているのではないのです。経営面積階層別所得階層別資料、それがなければこの計算は出ないのですよ。だから、その資料があってこれを計算したのか、なくてつかみ勘定でしたのかどうか、こういうことです。
  12. 塩崎潤

    塩崎説明員 お答え申し上げます。ただいま企画課長が御説明申し上げましたところの資料三ページの表は総体的に書いてございます。しかしながら、その背後にありますのは、石田委員指摘階級別所得階層別分布状況がございまして、これによりまして税額計算した、こういうことになるわけでございますが、その階級別分布状況は、全体的な階級別分布、特に予約減税との関係におきまして今まで適用を受けました農家がどの程度階層別分布をなしておるかにつきましては、私どもは三十年分のサンプルから推測いたしまして階級別表を作りまして、これに基きまして税額計算いたしましたのがこの表でございます。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうすると、食糧庁は、大蔵省から計算数字をもらって、その数字うのみにして出したのだ、こういうことなんですか。
  14. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 徴税の実態大蔵省主税局のものをもとにする以外にはないのでございます。それをもとにしまして、それについて検討を加えて、それでよろしいということで採用しております。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは問題なんですよ。第一、大蔵省は、予約減税というようなものについては、臨時税制調査会調査等によって早くからこれは廃止しようとして努力している。ところが農林省はなかなか賛成しがたくて今日まで及んでいるわけなんです。だから、大蔵省の出す資料が果して公正なものかどうか、僕らは疑いなきを得ないのです、だから、大蔵省資料農林省資料というものとでは、やはりおのずからそこに別個の見解がなされなければならない。それを、予約減税廃止の際に当って大蔵省見解を、その内容的な数字を検討しないで、その結論だけをうのみにしてこの問題を取り入れたということは、どうも私どもは納得がいかない。まあしかし、そういう取扱いをしたということならば、これははなはだ遺憾であるけれどもあとでいろいろな結論が出て参りますから、次の質疑に入りましょう  そこで、二ページの別紙ですが、別紙に入りまして、「昭和三十二年度課税実績基礎として現行所得税法予約減税のある場合の納税義務者、総所得金額及び総税額を推計すれば納税人員は六十万人」と言っているのですが、この六十万人という数字一体正しいのかどうか。私どもは、これは六十万八千人と実は記憶しているのですが、この点は間違いありませんか。同時にまた、この計算数字的な過程、どういうふうな過程でこれを計算したかということ。総税額四十二億というのは、この配付された資料では四十九億になっているのですが、これは今四十二億と訂正されたのですが、それの計算過程を、明細を伺いたい。
  16. 大和田啓気

    大和田説明員 お答えいたします。三十四年度課税見込み現行所得税法もとでやりますと、人員は五十九万七千人でございまして、そうして総所得金額が千七百九十五億、一人当りにして三十万円とちょっと出るわけでございます。扶養人員は五・一一となっております。ここに書いて資料として差し上げた通でございます。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうすると、これは三十四年度で見ているということですが、あとの方は三十五年度で見ておるんですね、この点だけを三十四年度で見たわけですか。
  18. 大和田啓気

    大和田説明員 予約減税廃止に伴いますものを米価加算いたします場合に、所得税の分と地方税の分とを一括してやる必要がございます。御承知のように、三十四年度地方税は三十三年産米予約減税によってすでに免税されております。従いまして、三十四年の所得税減税はやるといたしますと約十五億になるわけでございますけれども、三十四年度ベース所得税予約減税廃止米価に乗せますと、総額が二十三億ではございませんで十五億程度になります。従いまして、石当り五十円にしかなりませんので、地方税所得税とを含めて両方を米価に乗せるために、私たちは平年ベース計算をいたしました。従って、三十四年度ベース計算をいたしますと、所得税減税額が約十五億で、地方税の分はもうすでにやっておりますからゼロということになっております。従って、本年分でありますと、所得税の分が十五億、地方税の分が八億で、合計二十三億ということになります。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは、今度は所得税法改正が行われたのであるから、三十四年ベースは一つの参考として出されるのはいいけれども、やはり平年度における計算はここに乗せるべきではないか、こういうことなのですよ。三十四年度をここへ出してきて、そうして今度は地方税の方を三十五年度の平年ベースでやる、そうするとそこに一貫性がないという問題が起るんじゃないか、こういうことなのですよ。
  20. 大和田啓気

    大和田説明員 一貫性がないという御指摘をあるいは受けるかもわかりませんけれども、もし三十四年べース一貫性を持たしてやりますと、予約減税廃止による米価は五十円になります。これは米価の算定上はなはだ不得策でございますので、あえて平年べースでやったわけであります。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 では、その次に入りまして、三ページでさっきちょっと触れられたようだけれども、総所得の千七百九十五億、六十万人というこの算出過程ですね。それから予約減税ある場合に、三十八万人で、一人当り三十万四千四百円ですね。これの計算過程をもう少しはっきり説明してもらいたい。
  22. 大和田啓気

    大和田説明員 それでは、先ほどから総所得階層別の御質問がございますので、現行法予約減税ある場合といたしまして、人員なり所得なりを階層別に申し上げます。  ラウンドで申し上げます。まず、二十万円以下が、人員で六万九千、所得で百五億、税額で九千万円、二十万円をこえて三十万円未満の分が、二十五万一千人で、所得が六百四十九億、税額が九億五千万、それから、三十万円をこえて四十万円以下のものが、人員で二十万六千人、所得で七百三億、税額で十四億五千万でございます。四十万円をこえまして五十万円未満のものは、人員で五万五千人、所得で二百四十二億、税額で十億でございます。五十万円をこえて七十万円未満の層が、人員で一万五千人、所得で八十三億、税額で五億四千万円でございます。七十万円をこえて百万円未満のものが、人員で千三百人、所得で十億、税額で一億千万円でございます。さらに、百万をこえまして二百万未満のものが、人数で二百人ほど、所得で二億七千万、税額で四千万円ほどでございます。それから二百万円以上のものが、人員で五人、所得で千五百万、税額で三百万、以上合計いたしまして、人員で五十九万七千人、所得で千七百九十五億、税額で四十二億でございます。  それから、改正所得税法もとにおける平年べース予約減税廃止前を申し上げます。二十万円以下が、四万六千人、所得で六十五億、税額で約二千万円、二十万円をこえて三十万円未満のものが、人員で十六万七千人、所得で四百二十六億、税額で三億でございます。それから、三十万円をこえて四十万以下でございますが、これは人員で十万、所得で三百五十億、税額で四億一千万、それから、四十万をこえて五十万以下でございますが、人員で四万八千人、所得で二百十一億、税額で四億二千万、それから、五十万をこえて七十万以下のものが、人員で一万五千人、所得で八十二億、税額で一億七千万、七十万をこえて百万円以下のものが、人員で千三百人、所得で十一億、税額で八千万円、百万円をこえて二百万以下のものが、人員で二百人、所得で二億七千万、税額で三千四百万、二百万をこえるものは、人員で五人、所得で千五百万、税額で二百万程度でございます。合計いたしまして、人員で三十七万七千、約三十八万、所得で千百四十八億、税額で十五億、以上でございます。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 その次に、扶養控除の問題ですが、扶養控除はここでは十五万二千九百円、これは扶養家族数からこれを計算すると、三・七六人になっているわけですね。これは一体どこから数字を出してきたかということですが、主税局資料に基いて計算をしますと、これはそれぞれ階層別で違いますけれども全国平均で六・六人になっているのですね。そうすると、これから経営者一人を除きますから五・六人ということになる。ところが、ここの計算では三・七六人の計算になるのですよ。扶養家族の数をこのように少く見た根拠は一体どこにあるのか。
  24. 塩崎潤

    塩崎説明員 お答え申し上げます。現行法で十二万五千七百円となっておりますのは五・一人と計算しております。五・一人の扶養家族が、改正法によりまして、特例廃止前の十五万二千九百円というものが四人という計算でございます。廃止後は四・三、こういうふうになっておりますが、そのまず扶養人員は、私どもがさき申し上げました階級別所得階層別から扶養人員を私どもは算定いたしまして、これに基きまして税法上の扶養控除金額計算して適用いたしております。で、十五万二千九百円が四人とぴしゃっとならないのは、今度の改正法によりますと扶養控除につきまして種々の制限がございまして、たとえば、配偶者に五万円以上の所得がある場合には、一人目の控除金額は必ずしも七万円にならないで現行通り五万円とする、こういうふうな規定がございます。その関係で少くなった点があるわけでございまして、こういうふうな数字となって現われるわけでございます。なお、おそらく農家の世帯でございますので、石田先生の頭にあるのはもう少し数が多いのではないかというお気持だろうと思います。多くなりますと、むしろ、私ども計算では、税負担がどうなりますか、なお計算する必要があろうと思いますけれども、今度の所得税法改正が、扶養人員の多い者を救済するのがその一点、第二点は、御承知通り、先般来ここでも問題になりました農業法人のように、家族労働の多い者でしかも青色申告ができない者を救済するという意味が加えられております。そういう関係で、扶養人員が多い者が相当失格となりますので、結果といたしましては農家におきましてもこんなような人員となって現われる、こういうところでございます。
  25. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは階層別に違いますし、それからなるほど扶養控除を引き上げられたといっても、やっぱり扶養人員というものはそういう数字になるはずはないと思うのですよ。これはあなたの方から出た資料でも、たとえばずっとこまかく見ると、一町未満は五人、二町未満は六・一人、二町以上は六・七人、これは超早場地帯ですが、早場地帯では、一町未満は五人、二町未満は六・九人、二町以上は八・一人ですよ。平均が七・四人ですよ。それに、普通の地帯では、一町未満が五・六人、二町未満が六・五人、二町以上は七・八人、平均では六・一人でしょう。それを全国平均で見ても、やはり六・六、こういう数字になるのですよ。だから、それを、今御説明のように、五・一人、四人、四・三人、こういう数字が出るのはおかしいと思うのですよ。
  26. 塩崎潤

    塩崎説明員 個別的に計算いたしましたただいまの一町以上とかあるいは二町以上の数字はさようになるかと思います。全体の予約減税総額計算をいたします際には、私ども総体計算をせざるを得ない。そういう場合には、農家の中で、先ほど申し上げましたような、たとえば配偶者が五万円以上の所得を受けるような者がございますると、こんなような計算になります。総体計算の結果と個別計算の違いが今先生の言われたところの差異だろう、かように思っております。
  27. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、次に、善引課税所得ですが、六万六千五百円、それから四万三千五百円、こういう計算になっておるのですが、これは差引課税所得というものはゼロになる計算ではないかと思うのですがね。これはどうですか。この計算は間違っていませんか。
  28. 塩崎潤

    塩崎説明員 総所得金額が三十万四千四百円でございます。それから基礎控除の九万、それから扶養控除の十五万二千九百円、生命保険料控除の一万二千六百円、社会保険料控除の五千八百円、これを差し引きますとゼロにはならない。これが課税所得で、これに対しまして税率適用になるわけでございます。どういう計算か、先生のおっしゃる意味はちょっとわかりませんので、もし御質問があればお答えいたします。
  29. 石田宥全

    石田(宥)委員 まあ、こっちもよく計算してみます。そこで、その次の算出税額の問題ですが、この計算に基いても、税額は、現行税法予約減税のある場合で八千二百円ですか、これでは税率は一二・三四%、それから改正法の場合の五千二百円、これは一一・九五%、それから予約減税廃止及び米価加算の場合は一二・三一%ですね。農家経済実態調査では、これは三十二年度は一六・九五%くらいになっておるはずだと思うのですがね。これは農家経済実態調査なんだから、むしろ農林省関係の人たちがつまびらかなはずなんですが、これをこういうふうに税率をずっと低く見ておるのはこれは一体どういう含みがあるのですか。
  30. 塩崎潤

    塩崎説明員 税額計算の複雑な例で非常に技術的になりますが、若干お答えいたしたいと思います。先ほど現行法におきまして先生が申されました一一%程度、これは、御存じの通り現行法では、課税所得五万円以下一〇%、二十万円以下一五%、こういうふうになっております。今度の改正法におきましては十万円以下一〇%というふうに改正いたしております。それが第一点でございます。それと、もう一つは、先ほど申し上げましたように、扶養控除が大幅に上りますと、課税所得がぐんと減りまして、実効税率が下って参ります。これによりまして税率が変ってくるわけでございますが、しかし、一方、ここでは平均計算いたしておりますので、単純四万三千円の課税所得が残りまして、本来ならば一〇%の課税所得について適用になるわけでございますけれども、この一〇%というものは、累次平均税率適用になりますと、平年度には一〇%より上回って出て参ります。それが廃止前ならば一二%、廃止後ならば高く出ますので一二・三%、こういう点でございます。  それから、ただいま三十二年度税率はもう少し高かった、実効税率と申しますか、課税所得に対する税額の割合は一六・九五%、こういうお話でございます。これはおそらく三十二年度税法と今度の三十四年度改正税法との違いに基くものであるということをまず御認識願いたいと思います。三十二年度に大幅に減税いたしましたけれども基礎控除にいたしましても扶養控除にいたしましても、そのときは基礎控除が一万円、扶養控除が一万円の引き上げでございました。これは初年度でございましたので四分の三にいたしておりました。それからまた、税率も、あのときは、三万円以下一〇%、八万円以下一五%、八万円から十万円まで二〇%という非常に累進度の早い税率でございまして、非常に高かったわけであります。これを先ほど申し上げました五万円以下一〇%、二十万円以下一五%に直したわけでございますが、この税率適用区分も、三十二年度は初年度でございましたので画一的に四分の三、こういうふうにいたしたわけでございます。従いまして、三十二年度課税所得に対します実効税率が高かった、この関係でこういった数字が出ておるわけでございまして、私どもが特に作為いたしましてこの税額を少な目に見たということは全くございません。
  31. 石田宥全

    石田(宥)委員 課税の対象農家がずっと減れば税率は高くなるということが常識じゃないですかね。それがずっと下るというのはちょっとおかしいと思うのです。
  32. 塩崎潤

    塩崎説明員 私どもは、先ほど申し上げましたように、階級別計算いたしておりますので、特に作為したつもりはございません。そこは、所得伸び、あるいは階層、これによると思います。必ずしもそういうふうにはならない、こういうところであろうと思います。
  33. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、資料の四枚目ですが、註のところの予約売り渡し分七〇%、保有分三〇%というのは、僕らの記憶では、昭和三十年度三千百万石と見た場合にこういうパーセンテージが出たので、平年作の場合、特に今度の三千二百万石とした場合のパーセンテージは変ってこなければならないと思うのです。農家の保有分というものはもう動かないんだし、そうして収穫量がずっと上っておるんだから、おのずから、保有分は据え置きで、それから売り渡し分というものは七〇%を上回らなければならないはずだと思うのですが、これはどういう資料算出されたんですか。
  34. 大和田啓気

    大和田説明員 予約売り渡し分七〇%、保有分三〇%の率は、実は三十二年の徴収実績による数字でございます。
  35. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、もう一点。前のところと関連あるわけですが、対象農家の六万人増という計算、これはずっとみな関連しますので、もう少し詳しく説明していただきたい。
  36. 塩崎潤

    塩崎説明員 先ほど申し上げましたように、三十二年度から減税いたしておりますけれども、私どものところには三十二年ごろからの課税所得階級分布がございます。それに対しまして、所得が、現在失格者になっておりますけれども所得が一割一歩平均上りますならばどういうふうに課税対象人員に浮き上ってくるかということを計算いたしましてでき上りましたのが、この六万人という数字でございます。階級別に一々試算いたしまして六万人という計算をいたしているわけでございます。
  37. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、地方税の方に入ります。地方税では、総括的に見ますと、市町村民税の第一方式、第二方式、第三方式、これについての資料は出ておりますけれども、現在の市町村民税の所得割というようなものは、この第一、第二、第三方式に準拠するものよりは、むしろ第二方式のただし書きが圧倒的に多いはずなんです。ところが、この第二方式のただし書きの試算が全然出ていないのです。これはどういうわけです。
  38. 大和田啓気

    大和田説明員 差し上げております資料の五ページをごらんいただきますと、市町村民税の所得割でイとロとございます。ロの「第二方式又は第三方式採用市町村」、この中にただし書きの分が含まれております。従いまして、徴収率、課税所得に対する税率の 〇・〇三一%というのは、第二方式の本則とただし書き、第三方式の本則とただし書きとをすべて含めての数字でございます。
  39. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうなると、正確な数字が出てこないのですがね。そこで、五ページの都道府県民税の所得割の課税の標準、これは市町村民税に対して一定割合となっておるわけですが、ここでは、あとの試算のところで一億一千万の数字を出す際に、標準税率を百分の八%、こうしておるのですね。ところが、実際は百分の十%というのが普通の県の取扱いですよ。百分の八%というのは、特別富裕県か何か特殊の事情のある県でないとこういう低率の課税をやっておらないわけですが、これは一体どこからとられたのですか。
  40. 大和田啓気

    大和田説明員 都道府県民税は、御承知通り所得税額に対する百分の八が標準税率でございます。標準税率の百分の八を適用している府県が大部分でございまして、百分の八をこえますものは、私の記憶している限りでは青森県と山形県だけで、それもたしか九%にはならない程度数字だと思います。百分の八というものは決して過小の数字ではございません。
  41. 石田宥全

    石田(宥)委員 今ちょうど資料を持ち合せておらないのですけれども、百分の八が大部分だという考えは、あとでよく資料を調べます。  それから、徴収率を〇・九三にしておるのですね。これは大蔵省的な立場からの見解ではないですか。農民的な立場から徴収率を九三%にする、そうすると一体農民は百円賦課されて九十三円納めればよいという理屈はどこから出てくるのですか。そういう理屈がありますか。
  42. 大和田啓気

    大和田説明員 今度の予約減税廃止に伴います所得税地方税とを、国、地方庁と農民との全体の関係米価に振りかえているわけでありますから、国と地方庁との関係予約減税によって税収に関係する分二十三億をそのまま米価に振りかえたわけであります。
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは答弁になっていないですよ。それは税金を徴収する理事者の立場になれば、中に未納のままになって切り捨てをしなければならないようなものが若干出てくるということはあり得るかもしれないけれども、納める農民の立場に立って、九三%納めればいいのだというようなことは、いかなる角度からも許さるべき議論じゃないのですよ。これはあとにもずっと出てきますが、一つ大きな問題です。  それでは、次の市町村民税の所得割の問題に移ります。ここで十五億円かける〇・一〇一、これは所得税を納める農家の第一方式は非常に少いのです。それで一割以上の算定をしたということはどういう基準からこれを持ってきておるか。
  44. 大和田啓気

    大和田説明員 第一方式を採用しております市町村の数は三十三年七月現在で全体の十四%でございます。そうして所得割の額でここにございますように一〇・一%でございます。絶対数で申し上げますと、三千六百七十七の市町村の中で五百十一市町村でございます。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは標準税率を百分の二十にしておるのだが、実際は制限税率は百分の二十四でしょう。制限一ぱい取っておるというのが大部分の町村じゃないですか。おそらく百分の二十二、それから百分の二十三くらいが圧倒的に多いはずだと思うのですが、どうですか。これはどこから資料を持ってきたのです。
  46. 大和田啓気

    大和田説明員 御指摘のように、県単位で見ましても百分の二十をこえている県がございますけれども、三十三年度分の所得割額の実績で出ておりますのは一八・六%でございます。百分の二十をこえておるところもございますけれども、大部分の県は百分の二十を割っておりまして、平均で一八・六%であります。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 その基礎数字はどこから持ってきたものかというのです。
  48. 大和田啓気

    大和田説明員 自治庁が出しておりますところの市町村税課税状況等の調べでございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、その次の策二方式または第三方式採用の市町村は、これにただし書き方式を加えてあるということですが、これはちょっとおかしいのですね。かなり内容が違ってくるはずなのですから。それはそれとしていいでしょう。そこで、この場合に、さっきの〇・一〇一というものがかなり自信のある数字だとおっしゃ  る。そうすると、十五億というものにこの税率をかけ、そうしてこういう数字になるということも考えられる。この場合、その次の〇・〇三一、これは一体どういう根拠でどこから持ってきた数字です。
  50. 大和田啓気

    大和田説明員 この三・一%は、六ページの註(4)に書いてございますように、昭和三十五年度と申しますか、平年度における平均税率でございます。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはやはり自治庁の実績ですか。
  52. 大和田啓気

    大和田説明員 詳しく申し上げますと実績ではございません。三十五年にここまで常時納まるであろうという見込みでございます。三十三年度の実績はこれより若干高く三・四%程度です。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 第二方式では制限税率が七・五%、こういうことになっている。第三方式は一五%の制限率で、この場合にも農家経済実態調査では三・九九%程度だと思うのですが、これは非常に開きがあり過ぎるじゃないですか。
  54. 塩崎潤

    塩崎説明員 ただいま制限税率のお話が出ましたが、技術的なことになりますので、ちょっと私から申し上げますと、七・五%あるいは一五%の制限税率という意味は、第二方式、第三方式におきます制限税率というものは課税所得部分に対する上積みの最高制限税率でございます。三・一%、あるいは三・四%という大和田企画課長の申されました数字、今石田委員の申されました三・九九%の数字というものは、総所得に対する税額の実効税率でございまして、制限税率とは趣旨が違うわけでございます。この七・五%と三・一%あるいは三・四%の差とは関連がない、——関連がないことはございませんが、実効税率の最高の、たとえば所得税の最高税率は七〇%となっておりますが、それは五千万円超七〇%というように、課税所得金額に対する上積み税率でございますので、その点は第一方式の制限税率とは違うということを御理解願えれば仕合せかと思います。
  55. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体資料に基く質疑はこの程度にいたしまして、次に米価算定についての基本的な問題について長官に伺いたいと思います。ただいま資料に基く質疑過程において明らかでありますように、食糧庁はこの予約減税の内容的な問題についてはほとんどつんぼさじきにあったと言っても過言ではないが、私どもは、表向きから言えば、最初に申し上げたように、予約減税分米価加算するということは、ちょっと聞いたところいわゆる一般農家に均霑させるということはいいようであるけれども、事実の計算では増税が行われた上に、米価はむしろ昨年より——長官は、一万二百五十円は予算米価である、こう言われると思うけれども、しかし、予算を編成する場合における算定の方式というものはそう簡単にくつがえさるべきものではない、少くとも食糧庁長官としてはそれを動かすことはできない性質のものであると考えるのでありますが、どうですか。
  56. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 予算米価はあくまでも予算編成のときの仮試算でございます。最終的には六月に米価審議会で三十四年産米米価決定されることになりますから、これは本年がこういうことになっておるというわけでありませんで、昨年度も、予算米価は一万二百円で、米価審議会では一万三百二十三円、こういうふうにきまったのでございます。予算編成上いろいろな予算米価をきめることができると思います。たとえば前年きまった通り予算米価によるのも一つの方法であるし、本年は、過去の実際の米価、それにパリティを加算して、その他の加算額を出す従来の方式によって予算米価を出しております。これが実際の米価をきめるときに非常に制約的な働きをなす、こういうふうに私ども考えておりません。
  57. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは大臣にも伺わなければならぬ問題でありますけれども、算定方式については、予算米価はパリティ方式でいくと言っておるのです。その後、農林大臣は、パリティ方式に生産費及び所得補償方式を加味してやる、こういう表現を用いておる。そうなると、結局政治米価で、つかみ勘定で今日までやってきた、それをまた繰り返すということを言っていると同じことだと思うのですよ。これは政府に全く誠意のない態度なんであって、すでに、生産費及び所得補償方式によって米価を算定すべしということは、昭和三十年来、米価審議会の毎年繰り返された答申なんです。その中には、必ずしも生産者団体やあるいは生産者代表の意見だけでなくて、むしろ財界の代表、あるいは学者や政治評論家等もこの点を強く支持して参っておる。しかるに、政府は、昨年の八月ですか十月ですか、生産費及び所得補償方式をとるにはかくかくの問題点がある、こういう文書を発表されておる。これは生産費及び所得補償方式に対する挑戦だと私どもは言わざるを得ないのです。それじゃ、パリティ方式に問題点はないか。同じことじゃないか。昨年もパリティがどんどん下ってきて、今年もまた、今、やはりぼつぼつ下りつつある。そういうときに、一体、パリティ方式で米価を算定するということであるならば、少くともパリティというものの構成を変えなければならないはずなんです。二十三項目、百六十九品目という農業パリティの組み方を組みかえをしなければならぬはずなんです。これはしろうとでもわかっておるのですよ。ここ数年来、二、三年来の物財投下量が著しく増高して、肥料や、特に農薬の投下量が著しく増大をしておる。それから、生産資材も生活物資もかなり内容的に変化をしておるわけなんです。そのことが、今のパリティだというと数字の上に現われてこないのです。だから、それを米価の中に公平に見て現われるようにするには、このパリティの組みかえをすべきなんです。それを、せんだっての当委員会における食糧庁長官ども、きわめてあいまいにしておるのじゃないですか。丹羽委員質問に対して、御指摘通りこれは法律できまったのでありまして、私の方ではこれを変える考えは持っておりません、こういう答弁をしておる。不届き千万ですよ、これは。常識判断でわかっておるでしょう。今僕が申し上げたように、それならば、かりにパリティ計算と生産費及び所得補償方式を加味した米価を作るにしても、そのパリティというものの組みかえをやって、その上に立って米価を算定することが、これがもう当然の責任じゃないですか。もう会期今日に及んで、法律の改正案をこれから出すといっても、これは間に合わないでしょう。これは政府の怠慢と言わざるを得ない。そういうふうに、なすべきことをなさず、尽すべき手段方法を尽さないでおいて、そうして今日つかみ勘定で政治米価でいくというこの態度というものは、私どもはどうしても承認することはできないのですよ。今日の時点において長官はことしの米価というものを一体どの程度に考えておるか。また、方式については、大臣も出先で新聞記者会見などで放言をしておるから、これは大臣にもよく聞いてみなければならぬが、長官長官なりで、もうすでに大体の腹はきまっていなければならないと思うが、どうですか。
  58. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 米価決定について、生産費及び所得補償方式を採用せよという米価審議会の決定は御指摘通りでございます。この点については、先般来各委員会大臣が、その米価審議会の決定を尊重するように検討を加えておる、こういう御説明を申し上げております。その通りでございまして、私どもの方では、事務当局に対して、大臣から、生産費及び所得補償方式を採用するように研究せよ、こういう命令を受けております。ただし、今すぐ採用いたしますという返事は申し上げてございません。もう少し検討させていただきたい、こういうことを申し上げておるのでございますから、大臣としましては検討中という答弁になっておるのが事実でございます。なぜすぐ採用するということを言えないかといいますと、先ほど御指摘がございましたように、生産費及び所得補償方式をとるにつきましてはいろいろな問題がございまして、たとえば自家労賃の評価にしましても、一体何を目安にして評価したらいいか、こういう問題は、立場々々によって意見が違ってきます。しかし、法律には、「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうことがございまするので、その場合に、今の自家労賃の評価にしましても、あるいはその他の各項目の評価にしましても、あるいはまた生産費ということになりますと、これを調べるには、どうしても過去の実績をもとにして将来を推定するか、あるいは特定の適正規模経営というものをもとにして計算をして生産費を決定するか、その二つの方法くらいが通例用いられるものでありましょう。それにしましてもいろいろな問題もございますから、先ほどお話がありました、農林省が「生産費及び所得補償方式についての問題点」というのを昨年の秋出した。それは、こういう問題があって、これをどうしたらいいかということを、米価審議会の審議の過程においてもいろいろ注文がございましたから、問題点はここだ、これに対して米価審議会の委員の方の御意見を承わりたい、こういうことであれを出したのでありまして、私どもの方で生産費及び所得補償方式を採用することについては結論を出しかねておるのであります。そういう問題は、米価決定の理論的の問題か、あるいは米価の絶対額の問題か、こういう問題とも関連するのであります。これは非常にむずかしい問題で、ある一定の約束に基いて計算した結果が出ますれば、それが従来の米価なり農家の希望なりに関係なしにそれでいい、こういうものではないと思いまして、あくまでも、従来の経過なりあるいは農民の希望なり、こういうものもやはり考慮に入れなければならない。法律の第三条二項の規定はそういう趣旨であろうと思います。従いまして、先ほど申し上げましたように、私の方では、事務の能力の最大限を発揮しまして、生産費及び所得補償方式が採用できるように、米価審議会までには結論を出したいと鋭意努力しております。  それから、第二に、パリティ方式を採用するにしても、パリティを計算する場合の品目の相違が相当あるから、それを考慮すべきではないか、こういうことはごもっともでございまして、これはどうしてもそういうことをやらなければいけないと思います。ただ、パリティをとっているときの基準年次をどうするかという御質問が先般丹羽委員からあって、その点はこの法律を改正しなくても政令を直すことによって処置ができる、こういう意味のことを申し上げたのでございまして、今のパリティの構成品目についての検討をしない、こう申し上げたのではございませんから、その点は御了承願います。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 少くとも、生産費及び所得補償方式をとるかとらないかは最終段階できまるとしても、その中の問題点である地代の部分だとか、あるいは労賃部分であるとかいうような大きな問題点はもうわかっておるのですよ。そういう問題について、地代というようなものについては、これを法定小作料にするか、あるいは実納小作料にするか、あるいは理論的な地代論というような議論もあるからそういう算出の方法をとるか、また、労賃部分にしても、かつては米価審議会においても、これは生産工場であって三十人以上の労働者を使うところの労働者の平均賃金ということを主張して参りましたが、それはきわめて困難だということから、全都市全工場労働者の平均賃金というように変ってきておるようです。そういう点で問題点は明らかなのであるから、それについていろいろな試算をもうすでにやっておると思うが、その問題点について試算をして、そうして、好ましいことは、米価というものは、年々政治的にきめることでなしに、算術計算でもうだれが計算をしても今の麦価のように結論が出るという姿が一番好ましい姿なのです。そこで、問題点のその要素については、これは政策的に結論をつけておけば、あとは算術計算して米価というものが出る、こういう姿が望ましいと思うのです。そういうふうな構想のもとにいろいろな試算が行われてしかるべきであると思うのでありますが、問題点の中でさらに問題になるような点がなお残っておるのですかどうですか。
  60. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、労賃の評価の問題、あるいは地代の問題、あるいは生産量をどう押えるか、こういう問題、これはいろいろな方式がございます。それをいろいろ組み合せて最近の米価に合わすようにしたらいいじゃないか、こういう御趣旨ではないかと思いますが、とにかく、算術的に出すのには、ことしはこういう評価をしたけれども、来年はこういう評価にしなければいかぬ、こういうことでは工合が悪いのではないか。どうしても、一定の方式をきめますれば、それによってはじける、こういう方式を見出さなければなりません。そうしますと、地代につきましても、ただいま御指摘になりました三方式の一体どれをとったらいいのか、あるいはその平均をとったらいいのか、とにかくそれをきめなければならないわけです。それをきめた以上は一定の期間はその方式でいくということにしなければならない。それで、私どもの方で、過去の生産費を調査いたしまして、いろんな問題点について、こういうふうなことでこういうふうにとったらどうか、こういうふうなことをやってみましても、今までの計算では出てきた絶対額が十分御満足がいただけるような試算がまだ出てきません。さらに検討を加えましていい結論に到達したい、こういうふうに考えております。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 もとへ戻りまして予約減税の問題ですが、これは当時私も三十年の米価決定に参画をしたのでありますが、この予約減税石当り千四百円というものの基礎数字長官も大体御承知だと思うのでありますが、この内訳を申し上げてみると、予約格差が百円です。実は予約格差を米価審議会では二百五十円で答申しましたのです。その二百五十円の予約格差で答申したのに対して、当時河野農林大臣でありましたが、予約格差は百円にしてくれ。それから、もう百円の相当分、百円を税額に相当するように計算すると、これは五百円になる。ここで予約格差二百五十円の答申を、二百円にして、百円は予約格差にして、百円は税金引き当て分とする、そうすると米価五百円に該当して、それから昭和二十九年までの各種奨励金の減税に相当する実質的なもの、この非課税分八百円、これが千四百円の基礎なんですよ。従って、千四百円を課税対象からはずすという法律上の措置というものは、もう明確に米価該当分なんです。そういたしますと、この米価該当分を除くということになりますと、これは地域的に若干の差はありますけれども農家に対しては非常に大きな増税になってくる。それで先ほどの資料に対する質疑を行なったわけですが、これはほとんど大蔵省の当局の説明であったわけで、食糧庁長官の方はほとんど御承知ないような格好なんですが、こういうことでいきますと、今までの農民の既得権である米価の部分が削除されて、そして米価は下げられて逆に増税になる。幸いにして所得税法の一部改正が行われるから、所得が四十万から五十万程度の者はある程度救われることになるけれども、五十万円以上ということになると、米価は下げられ、全然所得税法改正の恩典にも浴さない、そういう結果になるわけですね。ですから、今長官の答弁によると、三十四年度米価というものにはこれから取り組むんだ、こういうことですから私は、その際に今私が申し上げた点を十分考慮されて——少なくとも当初は予約減税該当分は基本米価に入れるということであったわけです。その後どういう都合か、政府もこれは基本米価に入れないで、基準米価のプラス・アルフアとして百七十五円という計算をされて、せんだって長官説明されたようですが、これはあくまで米価の一部分だ。だから、予約減税分米価加算をして、一たん基準米価というものがきまったのならそれに対するプラス・アルフアとして今後ずっと温存されるべき性格のものとして取り扱っていくべきであろうと考えるのですが、どうですか。
  62. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 結論的に申し上げますとお話の通りでございます。私の方で初めから予約加算以外のことで予約減税をやめようというつもりは全然ございませんでした。ただ、そういう問題が起きたときに、そういうふうに米価の中に織り込まれてはわけがわからなくなるじゃないか、だから困るんだ、こういう意見がほかの方でたくさんありましたが、私の方で、もしかりに、先ほど来試算をして御説明いたしましたように、予約減税をやめてそれに相当する分を加算した方が大多数の農家に得であるならば、それはあくまでもそういうものとして将来も扱うということでなければ、簡単にこういう問題を処理することはできない、こういう意味で取り組んでおるのでございます。従って、その際には、最初にお話がございましたように、そもそも予約加算決定の由来から、むしろ現在の食管制度を健全化するためには予約制度をもっと推進しなければならない、そうなれば予約加算の額をふやした方がいい、こういう当初の議論に返ってきたのでございます。額はちょっと違いますが、四年間の経過で、私の方としてはむしろもっとラウンドで二百円なら二百円の方がすっきりする、こういう意見も出したのでありますが、税の見合いということでございますから、七十五円というものを加算いたしまして、合計百七十五円はあくまでも加算分、この点は大蔵省も苦心してこの問題に取り組んでおるのでございます。
  63. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 足鹿委員の関連質問を許します。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 最初に、先ほど予約減税資料説明を聞いたのですが、大蔵省にちょっと伺います。去年もこれが問題になって、去年は一応流れた。そのときに、私きょう資料を持っておりませんが、大蔵省から資料をもらったと思うのですが、その昨年の場合と、本年の示された二十三億という数字は変わりはありませんか。昨年と対比してどういう状態ですか。昨年の資料があったら簡単に対比して説明していただきたい。
  65. 塩崎潤

    塩崎説明員 ただいま、昨年提出いたしました資料は持ち合わせておりませんけれども、おそらく、足鹿先生のおっしゃられるのは、昭和三十三年度におきますところの租税上の特別措置による減収額一覧と今度の減収額との関係だろうと思います。私どもは、御存じの通りに、毎年毎年適用されますこの税法によって計算いたしておりますので、そういう関係の違い、それと、もう一つ違いが出るといたしますれば、所得の見方によるところの違い、かようだと思いますが、私どもの基本的な考え方といたしまして、基礎数字が変わるはずはない、こういうふうに思っております。なお、今数字を確かめまして、あとで御説明申し上げたいと思います。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 あとで一つその点をお示し願いたいと思います。  それから、先ほどの事務当局に対する石田君の質問は大体尽きておると思うのですが、一、二点補足的に伺っておきたいのです。  生産費・所得補償方式は検討中、こういうことなんですが、私どもがはたから見ておりますと、パリティが下った、従って一万二百五十円ちょっとをパリティから算定した場合には下るかもしれぬ、そこで一万二百五十円を目途として所得補償方式に切りかえたらどうかというふうに受け取れるのです。生産費・所得補償方式というものはそういう事務当局の申請によってきめられるべき筋合いのものではないと思う。あくまでもこれは、私ども米価審議会におったころに、学界その他で権威ある方式が検討され、正式な答申となって、その算定方式というものはちゃんと明らかに成規のものができておるはずです。ですから、当然、一つの算定方式ができますならば、それが一万二百五十円になろうが、一万五百円になろうが、それによって、一万一千四百六十円、われわれの計算でいけばそういうことになる筋合いのものだと思う。下ったときの配慮ということについてあなた方の心がけというものはわからぬではありませんよ。ありませんが、元来生産費・所得補償方式なるものはそういう一つの筋を立てた原則だと思うのです。それを、一万二百五十円が怪しい、これは何とかというような意図がもしあると、その生産費・所得補償方式たるやどうもいかがわしいもののようにわれわれは思う。ときによって、右に行き左に行き、上ったり下ったりする。あくまでも一つの米価の目標をきめておいて、それを中心にあなた方は従来作業を営んでおる。これは何と言われてもそうなんです。それを私は案ずるのです。苦心される点はわかりますが、生産費・所得補償方式は、あくまでも予算米価にとらわれないで、やはり原則を貫く、権威あるものを打ち立てていく、こういう筋道のものでなければならぬと思いますが、その点の基本的な態度はどうですか。
  67. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 生産費・所得補償方式によれば、農業団体等から、一万一千四百八十円、こうなるのだ、こういう要求がございます。昨年も米価審議会に農林省は、パリティ方式で計算したもの、八〇%バルク・ラインを引いた生産費のものを出しました。それは生産費方式によると九千三百三十五円という数字が出ております。その関係を考えてみますと、農業団体等で出されたのは、調査農家戸数も少ないし、その分布も必ずしも適正であるというわけにはいかないだろう。私の方では、二千数百戸の農家を、これは農家の各態様に散布しまして調べております。それをもとにしまして、正直に言いまして、できるだけ農家に有利になるような労賃の評価であるとか地代の評価、そういうものを勘定に入れましても、八〇%バルクでは九千三百三十五円にしかならなかったので、八〇%バルクでいきますと、量でいきますと、大体調査農家生産量の九割程度を占めますから、それ以上のものをバルクの中に入れるということもいかがかと思いまして八〇%をとったわけです。そういうわけですから、御指摘のように、生産費及び所得補償方式で一定の約束のもとに出たものを、先ほど石田委員もお話がありましたように、算術的に計算して出たものでそれでいい、こういうことでは済まされないのではないかと思います。先ほど申し上げてありますように、法律にも、「其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こうしてありますから、政治米価というお話がございましたけれども、そもそも物価はある特定のところできめるというわけにいかないのが本質じゃないかと思います。それを政府が特定のところできめるというのでありますが、生産者の立場、消費者の立場、両方の妥協で、普通の政府がタッチしなければきまるものを政府が介入してどこかで線を引きますからそういう物価がきまるという、経済原理上の観点もこれは無視するわけにいかない。それを政治的解決、こう言われるのではないかと思いますけれども、どうしてもそれを離れては結果は出し得ないんじゃないか、こういうつもりでいろいろ苦慮しておるのであります。計算通り出てそれでいいのだといえば、こっちは気が楽なのですが、そういうことにはいかないと思うのです。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 そこで、まず一応生産費・所得補償方式というものについて現在検討中々々々の一点張りで石田君の質問に答えておられるのですが、その内容ですね。どういう算定方式に基づいて現在検討しておるのですか。いろいろ案があるのですか。自家労賃の算定とか、これは一番大きな要素ですが、バルク・ラインのとり方の問題もありましょうし、私が一番遺憾に思いますことは、米審が昭和二十四年にできてから今日まで十年の経過をしておっても、あなた方は、いつも米審から答申をされておって、やるやると言いながら今日まで資料の整備を怠っておるのです。で、どういうふうに——今二千三百戸の調査をやっておるのだと言っておられますが、二千三百戸をもって類推するということは無理が生じてくるのです。従ってそこにバルク・ラインの問題が出てくる。ですから、調査農家をもっと広げていくということ、その調査資料を充実整備するということ、それが、一面において統調その他で措置がとられて、そしてその基礎の上に立って生産費及び所得補償方式というものが打ち立てられなければならぬはずなんです。従来、それはやりたいが、その調査資料が足らないというのがあなた方の逃げ口上だった。これは米価審議会の長い記録をとって見られればその一語に尽きるのです。どういうふうに整備しておりますか。
  69. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私の方では、先ほど申し上げましたように、二千数百戸、年によって多少違うのでありますが、二千三百戸から二千五百戸の間になると思います。の間の生産費をとっております。それを全農家を生産費の順に配列いたします。そうしますと、生産費の最低は二千円台から最高一万五千円台まで出てくるわけです。これには非常にいろいろな理由がございます。これは地方によって非常に集約的なところはコストがよけいかかっている。それからまた、農家によっても、非常に粗放な農家は反収は少ないけれどもコストは少ない、こういう状況になっております。そこで、昨年度計算いたしましたのは、それを八〇%のところで上下二・五%の範囲で農家を選定しまして、百数十戸の農家がいわゆる八〇%ラインの農家、それを五%の幅で農家数を出しております。それが百数十戸になります。それの平均生産費をもとにしまして、それに地代の評価、労賃の評価、資本利子の評価、いろいろな問題を最も有利になるように、ただしそれは常識の範囲内で、——たとえば製造業の労賃といってもピンからキリまでございます。製造業全規模の労賃をとってみましても、九千三百三十五円にしかならなかったのでございます。これではとうてい満足を得ることはできない。さらに、このバルク・ラインに並ぶ農家の数を、その実態を累年比較してみますと、同じ農家がバルクの線にとどまるのは非常にわずかでございます。ことし八〇%のバルクの中に入っておった中で、来年も八〇%のバルクの中に入る農家は一割か二割の間くらいしかないわけです。ですから、農家は年によっても生産費が非常に違ってくる。生産費そのもののとらえ方、これに問題もあるのでございます。抽象的には、かかったものをペイする方式だから、生産費及び所得補償方式は非常に合理的なようでございますけれども、いざ実際にこれを計算しようということになりますと、非常にむずかしい問題があるのでございます。そういう問題を、やはり先ほど来お話がありますようにある目標をきめてそれに合わすように計算するのだというようでは、私どもも非常に満足できないのであります。ある一定の理論に基づいて、その上で考慮事項というものを考えなければいけないのでございますが、そういう計算方式そのものに、やはりもっと学者なら学者、あるいは生産者なら生産者の得心のいけるような説明のできる資料を整えなければならない、こういうふうに考えております。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 長官、私の聞いているのは、その資料は充実整備しましたかというのですよ。どういうふうに整備しておるか、それがあればそれをいただきたい。従来あなた方が生産費及び所得補償方式というものに切りかえができないという一つの大きな理由はそこにあったのですから、だから、ことしからやりかえようということになるならば、充実整備した資料はどういうものか、これは大事な問題ですよ。それはあくまでも公開をして、そして、農業団体や農民団体またはわれわれも重大関心を持っておるわけですから、その資料に基いてやらなければ、これは恣意性が強いものだ、こう言われることになる。それを私は聞いておるのですよ。
  71. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは、問題をはっきりするためには、やはりもっと詳しく資料に基いて御説明した方がいいと思いますから、資料を準備します。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、大臣がおいでになったから、もう一点。生産費・所得補償方式で一本筋を立てる、しかしそれだけでいいとは私は言っておらぬ。その際はあくまでも総合米価主義を貫くのですか。その点だけは、大事な点だと思いますから……。どうするのですか。
  73. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ちょっと、総合米価主義というのは、よくわからないのですが……。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 今までわれわれは、いろんなパリティで一応出して、それに早場米とかあるいは予約奨励金とか、午前中から石田君が問題にした予約減税七十五円は加算するというのや、そういうようなものを一切がっさい含めて、いわゆる総合米価とわれわれは解しているのです。従来、あなた方も総合米価主義だとよく言っています。だから、この生産費・所得補償方式に切りかえた場合には、総合米価主義でいくのかいかぬのかということです。
  75. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは、特別価格でありますと、申し込み加算金とか、等級間の格差、これは当然考えなければいけない。むしろ、最近の問題になっておりますのは、たとえば終戦直後モチについて非常に加算をつけております。ところが、最近ではモチを食べていただけないので非常に弱っている。従って、こういうものはもうモチ加算をやらなくてもいいのじゃないか。そのかわり、早場農業経営の改善から、早期栽培の米の早場の奨励金をつけるとか、あるいは、やはり消費者の嗜好から言って、味の問題を加味した格差、そういういろんな問題は、将来とももっと検討を加えて、つけるものはつける、出すものは出す、こういうふうにしたいと考えております。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林大臣に伺いますが、政府は、昭和三十年来とり来たったところの米の予約減税廃止する方針であると言われておるのでありますが、この租税特別措置法というものは、数年前からこれを整理するという意見が大蔵省を中心にして行われておる。ことに、臨時税制調査会等が数回にわたってこの点を答申をいたしておるのであります。しかるに、本年度の税制の改正もとにおいても、なお二十種類以上で八百億以上の減税が行われております。予算委員会等における論議の中を見ましても、それがために、九州の炭鉱主は、五億九千万円納税しなければならないところを、この特別措置のために一億九千万円でよろしい、以下そういうのがたくさん出ておるわけですが、こういうふうに大企業や大産業に対する特別措置法は温存され、農民に対する、特に農民予約減税というものは、ほかの産業の減税と趣きを異にいたしまして、先ほど来長官にいろいろ質疑をいしたのでありますが、石当り千四百円を課税対象からはずすというこの措置は、昭和三十年からこれが適用されたものでありまして、予約制度を行うに当って、予約格差二百五十円という米価審議会の答申が行われましたが、ところが、そのうち百円は予約格差とし、それから、あとの百五十円を、これを百円にしてもらいたい、百円というものを税金の額で百円ということにしてほしい、こういうことで、それが米価五百円に相当するということで、これで六百円、さらに、昭和二十九年までのいろいろな奨励金が、これがやはり税の対象外とされておったわけでありまして、それが八百円、それで千四百円ということになっておりまして、千四百円というのは全く米価の一部だ。その米価の一部である予約減税を本年から廃止に踏み切ったということは一体いかなる理由に基くものであるか。政府は、予算委員会等の答弁においては、どうも予約減税の恩恵に浴する者は一部の富農層だけだ、ことに所得税法改正が行われるとますます部分的なものになるから、部分的な者に与える恩恵をやめて、全農家にこれを均霑させるのだ、こう言っておられます。ところが、理屈はどうあろうか知らないけれども予約減税をやめたことによる農民増税は四、五十億になる。政府は七百億減税と言うが、ことしは五百億。しかし、これをよく正確に計算をすれば、四百十七億の減税を行なっております。一般の国民に対しては四百十七億の減税をやっておいて、農民に対しては、四、五十億の増税をする。その分はそれじゃ米価にどれだけプラス・アルフアしているかというと、米価の方は、昨年の決定米価は一万三百二十三円で、大臣承知通りですが、今年の予算米価は一万二百五十円ですよ。そうすると米価の面においては七十三円下っているのですね。国民一般に与えられた減税の恩典に浴さずして増税になり、米価はプラス・アルフアするといいながら実は七十三円ダウンしている。こういうことで、予約減税廃止に踏み切られた理由は一体どういうことなのか、大臣の所見を伺いたい。
  77. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 石田君のお尋ねでは増税になっておるとおっしゃいますけれども、当局の方では、減税になっておる、こういうことでございまして、それらの説明は先般来長官等から説明してあると思いますが、そういう観点に立っているわけでございます。
  78. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはあとでよくお聞きになるとわかりますが、地方税税率等は全く実情に沿わないし、はなはだしきに至っては税金は課税額の九三%見ているのです。百円の税金の徴収令書がきたところへ九十三円納めてそれで済むなんていう一体日本の徴税の方式がありますか。これは一事が万事ですよ。それで、予約減税の内訳の答弁というものは、ほとんど大蔵省当局がやっておるのです。それほど農林省は不勉強なのです。この大蔵省からあげられた数字だけにみな乗ってこれをやっておる。大蔵省に引きずられたものと言っても過言ではないのです。これは、もちろん、予約減税の措置というものは、昭和三十年から三十二年までですか、これは議員立法で行われてきておる。昨年と一昨年分が政府提案で行われたけれども、これは、一つ大臣は再検討をして、そうして場合によったら議員提出立法で温存するように大いに努力する責任があると思うのですがどうですか。
  79. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ただいまのところは、原案の通りにとり進めたい、こう考えております。
  80. 石田宥全

    石田(宥)委員 これはあとでよくお聞き下さい。そこで、予約減税分米価にプラスする、こういうお話ですけれども、実は算定方式が今日まだ明らかでないのです。それで、予約減税該当分を基準米価にプラス・アルフアとして温存するのだ、こう口先では言えるけれども現実にそれが行われるかどうかということは、米価算定方式が確立しない限りナンセンスなんです。だから、先ほど私が指摘したように、七十五円は予約減税該当分米価にプラスしたんだ、こういう説明をしておるけれども、去年の決定米価よりも本年度予算米価は七十三円低くなっておる。かくのごとくに、その米価に該当すべき予約減税分が雲散霧消してしまう。米価値下げになってしまう。一体、それでいかなければならないんだという理由は私はないと思うのです。先ほど申し上げたように、大企業の方はどうですか、租税特別措置法で八百億もちゃんと減税をやっておるじゃないですか。しかるに、農民の方だけはそれをなくしてしまう。いかに自民党が資本主義の政党で大企業に迎合しなければならない政党だとしても、あまりにこれは露骨じゃないですか。露骨過ぎますよ。この米価というものは農政のシンボルなんです。米価のきまり方が、農政にどの程度力を入れているかということの一つの標準になるのです。  そこで、次に伺いたいのでありますが、算定方式で今いろいろ議論が行われておる。大臣も、この委員会に出たり、あるいは予算委員会に出たり、また地方の新聞記者会見などで、いろいろなことを言っておる。当初は、パリティ米価でいきたい、こう言っておる。あとでは、パリティ米価に生産費及び所得補償方式を加味してやりたい、こう言っておる。ところが、二月二十八日の名古屋における新聞記者会見では、近代的進歩的な算定方式をとる、こういうことを言っておる。一体近代的進歩的な算定方式とは何ぞや。これは全国民の注目するところなんでして、その内容をお聞かせ願いたい。
  81. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 地方に出ました際に、往々にしてこの問題を質問されます。ところが、率直に申し上げますと、農林省等におります記者団はよく事情を知っており、大臣よりも知っておるくらいですから、打てば響く程度の了解があるのですけれども、地方の方々になりますと、必ずしもこれがよく了解されておらぬということで、私は口が下手なものですから、説明もどうか知りませんけれども、往々にして、われわれの説明さえ正しく了解を受けないために、御指摘のような誤解を生ずることもあろうかと思うのでございます。私は別段新しいことを申し上げたのではないのでありまして、まず端的に申し上げますと、生産費・補償方式を採用せいということであるが、これを採用するかどうかということをよく尋ねられるわけであります。これは、新潟県に参りました際にもそうでございますし、先般群馬に行ったときもさようでございました。そこで、これは米価審議会等でいろいろ御論議があって、これを採用するようにという御決議もありますけれども農林省はこれを取り入れないと従来言うてきておる、しかし、同時に、取り入れない理由は、この算定方式等につきましても、理論上あるいは実際的に各データをとるという場合においても未熟なものがあるから、従いましてそれは取り入れないということであったが、この算定方式自体をもっと実行的に考えると、調査研究をも進めなければならぬということで、当局においてこれは進めておる、そうして、結論が出るならば、これらもとり進めてだんだん実施に移したい、こういうことで私は一貫しておるのでございます。いわゆる近代的進歩的というふうな表現はいたしておりませんことをまず御了承いただきたいと思います。
  82. 石田宥全

    石田(宥)委員 大臣は、就任以来、米価決定についての算定方式は生産費及び所得補償方式によるべしという要求に対して、特に米価審議会の答申に対してはそれを十分取り入れるように努力をしますと、こう言っておる。ところが、昨年の八月か十月か、はっきり記憶はないのですが、生産費及び所得補償方式をとるにはかくかくの難点があるといって、実は六ヵ条で二十三項目くらいの生産費及び所得補償方式に対する挑戦状のようなものを出しておる。これを否定せんとする意図のもとに文書が発表されておる。これは大臣承知になっていますか。
  83. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 事務当局に調査を命じておりますから、事務当局はそれぞれについて調査研究しているものと私は了解しております。
  84. 石田宥全

    石田(宥)委員 ところが、生産費及び所得補償方式については今申し上げたように多くの問題点があるということを指摘しながら、予算米価決定するに当ってはパリティ米価によるということをきめておられる。ところが、パリティというものは今日の時点においては実情にそぐわないものになっておるのですね。パリティの構成そのものに問題がある。二十三項目、百六十九品目というものの構成が変ってきておる。これは数年前から問題になっておるのですよ。たとえば農薬の投下量が非常に多くなっておる。肥料の投下量も多くなっておる。農機具の負担量が過重になっておる。これらのものがパリティの中に入っていないのですよ。だから、ただ一定年次を基準にして、それの上昇、下降というものだけであって、本質的なものは含まれておらない。それでは一体なぜパリティの構成を変える努力をしないか。ここに問題がある。生産費及び所得補債方式はなかなか難点があるから取り入れられないと言う。ではパリティについてはそういう問題点があるにかかわらずそれを是正しようと少しも努力しておられない。これは怠慢ですよ。そうでしょう。一体農林大臣は三十四年度米価というものをどこへ持っていくつもりなんです。その近代的進歩的な方式をここにお示し願って、それで一つやってもらいたい。
  85. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今の問題でございますが、これは、三十四年度に援用するパリティの係数等を出す場合に、すでに事務当局に検討を命じておりますから、それは参酌されて相当なものになると思っておるわけであります。同時に、怠慢だとおっしゃいますけれども、これは実は数度変えるわけではないのでございまして、来年、三十四年度に出します場合には、今御指摘になった点も補正し、これを整備して出す、こういうことに御了解願いたいと存じます。
  86. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは、予約減税の該当分ですが、この分は、今までの経過から見ると、明らかに消えてなくなっておるのですよ。プラス・アルフアすると言っておるけれども現実に消えてなくなっておるのです。だから、これは全然切りはなして米価決定して、その上にこれをプラス・アルフアする、こういうことだけは堅持すべきであると考えるのだが、一体どうですか。大臣はそれを言明できますか。
  87. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これはすでに食糧庁長官からるる説明があったと思いますが、将来にわたってもとる、こういうことでございます。
  88. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、政府は、米の統制は存続する、こういう建前をとっておりますね。しかし、統制は存続するといっても、実はこれは農民にも責任はありますけれども、もう前年来秋田、山形、新潟の一部においては政府に売り渡すよりも安くやみ売りを相当量行なっておるわけです。一体これはどこから来たものか。御承知通り、これは、農民が課税の重圧を免れんために、政府に売り渡すよりも安いことを承知の上でやみ流しをしておるのです。ところが、今度予約減税というものがなくなり、そして予約格差というものもなくなるとすれば、そういうところからこの統制をくずしていく、こういう危険があるのです。だから、私は、そういう面から言っても、この予約減税該当分というものはあくまで米価の外ワクで温存すべきものであると思う。この点は大臣もはっきり認識しておいてもらわなければならないと思うのです。そうでないと、口先だけで統制を存続しますなんて言ったって、それは政府だけの責任でないとおっしゃるかもしれぬけれども、事実はそこから墓穴を掘っていって統制をくずす結果になる。こういう意味で私はこの問題は非常に重要だと考えるのです。  それから、次に、さきに食糧庁長官は、時期別格差等についても検討を加える必要があるということを答弁されておるのでありますが、この時期別格差の問題は予約減税との関連においてもきわめて大きな問題であります。九月三十日までの分については石当り二千円、十月一日から十月十日までに売り渡したものについては石当り千八百円というふうに、非常に大きな額が課税対象からはずされておるわけです。この時期別格差というものは、食糧事情が窮迫した際において早出し米として歓迎する、その奨励だけでは決してないのです。これは積雪寒冷単作地帯等に対する保護政策として生まれたものです。しかるに、昨年これをずっと縮小しようとした。しかし農民の反撃にあって、これをまた一応もとへ戻しているわけですが、これについては一体大臣は従来通り温存する方針を堅持していけるかどうか、御意見を承わりたい。
  89. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 昨年の経緯は今おっしゃったようなこともございましたが、本年はやはり従前の通りなことにして取り進めたい、こう考えております。
  90. 石田宥全

    石田(宥)委員 以上申し上げたような点について、食糧庁長官ともいろいろ話をしたから、大体の構想はわかったわけでありますが、その結論としては、政府はまだ何らその腹案を持たないということです。白紙の状態だということを長官は明らかにしておるわけです。この白紙の状態のもとにおいて、これからおそくとも六月上旬くらいに、少くとも植付開始前に決定をするという建前のわけです。今の予約制度というものは今のところ全く白紙の状態だということは、農民に対して非常な不安の念を与えておるわけです。一体いつごろまでに米価算定の基礎的な構想がまとまるのか、見通しはどうですか。
  91. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 米価の問題につきましては、これを出して下さる農民諸君にあらかじめ予告する制度はとっておらぬのでございます。ただ予算米価につきましては御承知通りの一応のめどを立てておって、六月に米価審議会の議を経て最終的に決定するものでございますから、それまでには、法令の規定もありますので、従来の資料を整備して出す、こういう段取りになるわけでございます。今のところまだこういう案を出すというところまではきまっておりません。
  92. 石田宥全

    石田(宥)委員 今日の時点では明らかにすることは無理かもしれません。そこで、先ほど足鹿君からの質疑の中にもありましたように、年々の米価は、パリティ米価にしろ、あるいはパリティ米価に生産費及び所得補償方式を加味するにしろ、いずれにしても、一応のめどをきめて、そしてその資料に合せるように整備するというのが——これはいい悪いは別ですよ。別だが、それも一つの政治でしょう。そこでそういう措置をとられるのです。一体、三浦農林大臣は、三十四年度米価というものはどの程度が適当であるとお考えになりますか。大よそのめどというものをもって資料の整備をされなければならないが、どの程度にお考えですか。
  93. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これはどうも軽々に予断すべきじゃないと思いますから、その時期に材料等を整備しまして、そして、従来の米審の経緯、同時にまた皆様の御意見も十分に参酌して、そして整備した上に六月に提案するということでなければ、これは慎重を欠くと思います。そういう意味で、ただいまのところ、どれくらいがいいかということは、放言すべき時期ではないと考えております。
  94. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 足鹿委員質問に対する塩崎税制第一課長の答弁がまだ保留されております。用意ができましたらお答え願います。
  95. 塩崎潤

    塩崎説明員 足鹿先生に留保いたした答弁を補足させていただきます。昨年の三月三十日に国会に提出いたしました租税上の特別措置による減収額のうちに、予約減税関係数字が出ております。これは国税だけでございますが、二十億円というふうに提出してございます。なお、そのときの地方税の見込みでございますが、地方税資料につきましては提出はございませんでしたので、国税の面におきましては、当時の税法で当時の予算上の課税所得の見積りによりますところの予約減税による減収額は二十億、こういうふうに出したわけでございます。これが先ほど来問題になっておりますところの改正後の十五億の減収額の国税に匹敵するものでございます。
  96. 足鹿覺

    足鹿委員 そうすると、去年と五億差があるのですね。そのときに、地方税は出ておりませんが、その推算でいきますと地方税は幾らになりますか。
  97. 塩崎潤

    塩崎説明員 私どもの所管ではございませんので、なお詳細に自治庁と打ち合せまして御答弁した方がよろしいかと思いますので、なお自治庁と連絡いたしてみます。
  98. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、その上でけっこうでございます。  農林大臣に、今同僚の石田君から質問がありました点について、一点だけ伺っておきたいのです。従来の米価審議会の運営というものが、消費者米価をきめる場合、また予算米価について、米価審議会の意見を公式にもあるいは非公式にも求める機会があったのです。大体暮れの十二月になって米価審議会が開かれた事例は従来ずっと記録に残っております。私どもも経験があるのです。ところが、いつの間にか、その消費者米価問題も事前の公式非公式の会合もなくなったし、予算米価との関連においても米価審議会の意見を徴するというようなこともまた流れてしまった。これは、先ほど長官は、予算米価には別に拘束されぬと、まことにいとも軽げに言っておられますが、なかなかそう軽いものではない。これが結局非常な重みですべてを支配するくらいなものなんです。予算米価をきめる際に、消費者米価とあわせて、米審を開くべきではないか。正式の委員会が開けない場合は、懇談会を開くとか。米価審議会の運用をこのごろ政府は非常にきらっておる。国会議員が入ってうるさいとか、いろいろなことを言って逃げてばかりおる。それではいかぬのです。やはり、ある制度はある制度として、その運用に全きを期すべきものだと思うのです。現在算定方式が問題になっておりますが、私は、米価審議会の運営によって決定方式の足らざるところを補うべきだと思う。大体、日本の米価決定は、非常にずさんで、政府当局の意の通りになるきらいがある。そういうものではないと思うのです。やはり、この決定方式というものに対しても一段と検討を加えて、それが直ちに実現ができるならば、米価審議会その他の運営によってこれを補完すべきものではないかと私は思うのであります。そこで、大臣は、六月ごろにやるかそれまでにやると、至ってのん気なことを言っておられますが、そういうものではない。米価決定方式とにらみ合せて、やはり米審という正規の機関は尊重さるべきである。その運用についても十分配慮さるべきだと思うのです。私が聞きたいのは、決定方式について何らかの考え方を持っておられるかどうか、その有無。それがないとするならば、米審その他の運用によってこれを補完していく構想ありやなしやという点を伺っておきたい。私は、この決定方式についてもっと突っ込んで検討をすべきものだという立場からこの御質問を申し上げておきたい。
  99. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 御質問決定方式というのは、予算米価決定方式でございましょうか。
  100. 足鹿覺

    足鹿委員 そうです。
  101. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 わかりました。理屈は私決して申し上げませんが、予算の編成は、これは政府の責任でございますから、各般の事項を十分に取り入れて予算を組んでいるということは申すまでもございません。ただ、従来先例としてあった、こういうことでございますが、いかような事由で立ち消えになってきたか、これまた私よく存じません。私も一度米審の委員をしたことがございますけれども、そういうことをしたことはございません。次に、これは米審の運営とも関連することでございますが、私、昨年相当苦境に立ったから申し上げるわけではございませんけれども、運営自体は、やはり相当考えなければなるまいか、こう思います。従いまして、ほんとうにこれが純粋の米審の審議にいく、正しい意味での皆様の学識経験が如実に出るように、しかも非常に異様な環境にしないような運用も期待するわけでございますが、運用上のことにつきましても、今の問題等につきましてもなお考究して、そして前進するようなことにいたしたいと考えております。(「進歩的だ」と呼ぶ者あり)進歩的だということでありますが、その意味は立ちどまらないようにしていきたいということを申し上げたのを、そう取られたんだろうと思いますが、あわせてこの点を御了承願いたいと思います。
  102. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開することとして、これにて休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  103. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  酪農振興法の一部を改正する法律案及び飼料需給安定法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を続行いたします。永田亮一君。
  104. 永田亮一

    ○永田委員 昨日の質問の残りを少しばかり続けてみたいと思います。  十九条の三のところでありますが、組合等が当事者となる契約等についての勧告の点でありますが、農業協同組合あるいは農業協同組合の連合会が生乳なんかの取引契約の当事者の一方となって協約を行う、この問題でありますが、生乳の販売について乳業者と団体協約を結ぶ、この点は、個々の農家は今まではどうしても乳業者に比べると不利な立場にあった、個々別々の力は弱い立場にあったと思われるのでありまするが、そういうときに、この生産者の有利になるように生産者の地位を高める必要がある、こういう点から見て、こういうことは望ましいことだと考えるわけであります。それで、これからあと酪農がだんだん盛んになって参りまして、生産者が増加してくると、勢いこういうケースがふえてくると思うのであります。この場合に、この初めに出された、いわゆる最終案としてわれわれが見せてもらったものでは、この生乳の取引契約または団体契約を締結したり変更するための交渉を乳業者に申し入れた場合に、農林大臣あるいは都道府県知事がその交渉応諾を勧告するということであったようでありまするが、それが、出されたものを見ると、特別に必要がある場合というただし書きのような条項が入っておるのであります。だいぶ初めに考えられておったのと比べると後退をしておるようでありまするが、この間の事情はどういうことになっておるのでありますか。後退した理由について御説明を願いたいと思います。
  105. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 十九条に関する永田先生の御質問にお答え申し上げます。  あの作成に当りましてのいろいろの研究につきましては、前進、後退ということを考えませんで、近き将来を見通しする限りにおいては、現状では何が一番適当であろうかということを考えまして、あわせて法文の技術的な点の整備をしてもらったにすぎないのであります。しかし、その間のことを申し上げますと、前は、御指摘の場合の点もございますが、むしろ、牛乳の生産者を直接または間接の構成員とする農協または連合会というふうにしておりましたのを生乳の生産者を直接又は間接の構成員とはするが、その構成員、つまり農家という意味ですが、組合員である農家の生産する牛乳の販売事業を行うもの、これはあっせんでも委託でも買い取り販売でもいいのでありますが、その事業を行う農協が行うことが適当であろうということに変えた点であります。これは條文の点のことでございますが、漫然ともとのように、素案のようにいたしますと、九州では乳価問題、取引問題に問題がないが、九州の連合会が北海道の問題について交渉し得るように見えるというようなふうにも見えるから、やはり、横割は別として、系統組織がある、一応少くとも下部から上位までの系統的な構成を持った牛乳の販売を行う農協が適当であろう、現在やっていなくても、交渉の前にまたは交渉に当ってその販売事業を行うものということにするのがいいと思うのであります。事実は全販連等もそういう研究をしておられるわけであります。  第二点は、御指摘の、「生乳等の取引の公正を確保するため特に必要があると認めるときは、」というのは、本来一応自由取引のための自主交渉を原則としておりますので、万一意見が合わなくて紛争の生じた場合は、従来より拡大した紛争のあっせんまたは調停の規定を二十条以下に規定して、目的を穏当に達しようと思っておりますので、そこでいたずらに勧告を出すことも、とにかく、生産者団体が言ってこられたときに、受ける乳業者に対してのみ勧告を出す規定をとっておりますので、そこで、牛乳の公正を確保する上においていたずらに乳業者が拒否するというような場合を中心に書けば、これがなくても紛争のあっせんのときは動き出せる、こういう意味で適正を期したつもりでございます。この規定は、生産者団体やその連合会が共同販売する売買の取引契約を結ぼうとする場合と、共同販売を団体がじかにいたしませんが、構成員のために団体協約を締結して数量とか価格とか受け渡し場所とかその他の条件を協約し得るように、そして締結した場合はまたその変更を交渉する場合についてのことを規定する趣旨でございます。参考にいたしましたのは中小企業団体法等でございまして、中小企業と大企業との間には——かりにこれを企業を乳業といたしますと、乳業を行いまする農協も乳業者でありますが、中小企業団体法が農協に適用するかいなかは問わずして、乳業者間には同種の規定もございます。多少食い違いますことは、これは交渉に応ずる旨を勧告することで、中小企業団体法はそうではありません。締結に関して勧告できるということでありますが、それらの理由でございます。
  106. 永田亮一

    ○永田委員 その特に必要があると認めたときに農林大臣または都道府県知事が勧告をしても、乳業者の方でそれに応じない、ボイコットした場合にはどうされますか。
  107. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 そういう場合は、取引自体を強制的に取引させることを行政官庁がやることを意図いたしておりませんので、勧告をするのでありますが、聞かないものがありますと、生産者及びその団体が納得をしない場合は乳価の紛争になる、こういう取引に関する紛争になるわけでございます。そうしますと、二十条以下でこれを発動し得る、こういう考えでおります。
  108. 永田亮一

    ○永田委員 それでは、その二十条についてちょっと御質問申し上げますが、紛争のあっせんまたは調停、これが当事者の申請によって知事が行うものとされておる。しかし、重大な影響があると認めたときは、農林大臣がみずからやるか、または中央の生乳取引調停審議会の意見によってやるというふうに書かれておるのでありますが、今までこの酪振法ができてからずっと見ておりましても、なかなかこれがうまく行われておるようには見えないのであります。この法律が制定されたのは二十九年でありましたが、間もなく二十九年の秋ごろに乳価値下げが行われ、これに対して酪農民があっせん申請を行なった。千葉県とか栃木県とか、だいぶあったようでありますが、しかし、地方でこれを調停する自信がない、また乳業者のあっせんのボイコットもあって、こういうものが一つも行われておらなかったように記憶しておるのであります。それは、きのうも申し上げましたけれども、地方では解決ができない。酪農業が非常に全国的に大きく発展して参りましたために、地方の工場長なんかではとても権限がなくて解決ができない。結局東京へ持ってきて大会社などでも重役会にかけてやらなければはかどらない、こういう状況でありまして、そのために地方のあっせんというものは行われなかったようであります。去年の秋の不況のときにも、またあっせん申請を茨城県とか香川県とかだいぶ行なったようでありまするけれども、やはり同じようなことでやっておらないようであります。従いまして、こういうことは地方の調停を第二義的なものに考え、予備的なものにして、知事の具申によって中央の調停を第一義的に考えていったらどうかと思うのでありますが、こういう点について御意見を伺いたいと思います。
  109. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 御指摘の点は二点の問題があると思いますが、これは、生乳取引に関しまする契約が円滑にまとまるか、双方にそう不満がなしに妥協にしろ円満にまとまるかという問題は、生産者側、乳業者側、また、乳業者が製品にする上について、あるいは販売に関する、それをとりまく経済事情等、強弱とか、日本の経済事情とか、そういう問題がいろいろあると思いますが、もう一つは、やはり制度の建前の問題があると思います。従来は、発達の過程で、乳業会社がなるべく小単位に、普及奨励をするかわりに取引を個々または小さいまとまりで、その間で取引をしようとしておったことなどもあったり、また、直接代金授受をするときに、一般の規格がきまって相場が定期的にでも立つというような状況にまだありませんし、伝統もございまして、事実問題、経済事情がそこまでいっておらなかったこともあると思いますが、逐次これは業界の認識とまた制度の改正をもって慣行を積み重ねて解決をしていくべきものと思うのであります。  今回は現行法の不備をできるだけ実情に即しながら強化しようとしたことでございますが、第一点は、従来は、都道府県知事が、紛争の事件が起きるごとにあっせん委員を任命しまして、その人をしてやらしめるということになっております。あっせん委員は公正である人であればあるほど、候補者名簿が事前に用意されましても、何となく逃げがちのようでございます。昨年の夏以前を申しますと、私どもに来ておる報告は全国に六件法規で取り上げたことがあります。まとまりましたのは神奈川が一件だそうでございます。事実上はいろいろあったと思います。それを今回は知事にやらせまして、知事であれば常置的に必ずおってその職務を執行できる。委員の任命を辞退できないというふうにできるのではないだろうか。あわせて、知事があまり片寄ったことをやってはいけませんので、予算もととのいまして、都道府県ごとに生乳取引調停委員会を置いて、そこの意見を聞いてやることにいたしました。  その次の点は、大メーカーが全国的な組織をもちまして各地の酪農家から生乳を買いましても、実情は、目下のところは、同じ会社が地区ごとに違う乳価を操作して一応集まっておるのであります。その程度がどの程度でよいかということはいろいろ問題があると思いますけれども、乳製品を必要とする地域とか大都会に近い市乳を中心とする地域で、同じあるAという会社が乳業会社でありましても、あるいは全酪連でありましても、大体において地域格差がある程度ついておるのであります。従いまして、その大メーカーの全国的なものを相手とする場合でも、紛争が都道府県内に起きる場合においては、まず第一は、これは単なる知事というよりは法に基く国の機関としての知事だと私どもは解釈しておりますが、知事がまず片づけてくれる、努力をしてくれる。従来はあっせんと調停との間が多少不明確でありまして、案を具してこれでやってまとめてもらいたいというときを調停といいまして、案を具さない場合をあっせんといっておるのが、必ずしもそうしなければならないわけではありませんが、最近の法律の文例のようだという内閣法制局の御意見もございましたので、あっせんと調停を分けながら以上のような措置をとりましたが、さらに、一次的には知事があっせん調停をするのがよいと同時に、むやみに弱くてはいけませんので、農林大臣が知事に向って必要があるときには助言、資料の提示、その他必要な協力をする規定を置きまして、この法文においても、本省が都道府県知事が行うものをあっせん調停において協力をする、こういうふうにしておるのであります。地方自治法等によりますと、これは国の機関の知事とありますので、やるべきことをやらないのは、別途本省大臣から、やるようにという訓令というか指示といいますか、それをいたすつもりでございます。そういうふうに考えますと、農林大臣は、知事の努力を待ちまして、そのあとで知事が片づけ得ないことを処理するということと、一県内以上に影響が大きくて、特にここに規定してありますように、生乳取引の不安定、酪農の不安定、そういうような広範囲な影響を及ぼすときに、中央で取り上げる、中央で取り上げますときには農林大臣の責任においてやるのでありますが、これもまた予算を付してありますが、中央生乳取引調停審議会の意見を聞いてまず行うか行わぬかをきめる、大臣が行うようにきめましたならば、知事は、従来やっておった措置を、資料その他は提供しなくちゃいけませんけれども、自分があっせん調停することをやめさせる、そうしまして、中央であれば適当な調停員を設け得て、常時不即不離の立場において大臣の責任において調停員をして行わしめますことができるので、中央生乳取引調停審議会委員のうちの三名を、これは公平を期するためであることは昨日申し上げた通りでございますが、三名を調停員として指名をして調停を行わしめる、この場合は大臣がおるけれども調停員に行わしめる、調停員に大臣は行わせねばならぬ、そういう規定にして強化をしたつもりであります。  御提案を申し上げておる趣旨と、御審議をいただいておりまする御質疑に対する説明はそういうわけであります。
  110. 永田亮一

    ○永田委員 知事があっせん調停をした後になおうまくいかない、そのときに農林大臣が出てくるわけでありますが、その間の期間が明確でないようであります。     〔吉川(久)委員長代理退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕 知事がやってみたけれどもいつまでもだらだらとなかなか解決しない、こういう場合に、この法律の中に、知事があっせん調停をしたけれどもうまくいかない場合には、ある一定の日を限って、一定の日時がたったら自動的にこれは中央でやるのだ、こういうふうにきめたらどうですか。
  111. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 それも御意見かと思いますが、ある程度仮払いが続きましても、あとで当事者間で満足できる協定ができるならばそれに越したことはない。しかし、紛争が生じておりますから、それがあっせんでまとまるかあるいは調停案をのんでがまんをしながら現状を是認する、将来を期する、そういうことになるわけでありますが、取引自身は、たとえば受乳の拒否ですとか、これは生乳の性質がそうでありますが、わざと腐りやすい状態において知事があっせん調停をしない、こういうことはよくないと思います。これはやはり情報を知事からは必ずとり、業界からは御要望を聞くわけでございまするので、地方庁の事情もあることでございましょうが、裁判上の措置でありますとか、あるいはある権利義務を時効で消滅させるとか、そういうことよりは、やはり一時紛争が起きても、長期に合理的に公正に取引をしてもらう仲であることも考えまして、あまり期限を明確に切りますと、また、その期限がどういう期限で、一カ月、二十日ということはどういうわけだということにもなりますから、運用でよろしくいきたいと思っております。
  112. 永田亮一

    ○永田委員 それでは次に移りますが、酪農振興基金の問題をちょっと伺って終ります。この酪農振興基金法ができたいきさつは御承知通りでありますが、最近の酪農の目ざましい発展につれまして、需給の一時的不均衡という問題がたびたび起きてきた、乳価が過度に低落をするとか、受乳を拒否するとか、乳代の遅払い、こういうことが起きてきたのでこの基金を作る、そして乳業者や生乳の生産者に対して資金の融通の円滑化をはかる、それでもしこの基金に余裕があれば消費宣伝までもやろう、こういうような目的でこの酪農振興基金法ができたわけであります。このたびの改正を見てみますると、われわれが初めに作ったこの設立の性格からだいぶ離れてきておるのではないか、融資保証のみを業務とすべきものがその上にいろいろのことをやろうという考えのようであります。製品を買い上げたり保管したり売り渡したり、ここで拡大をするということはどうかという意見が非常に多いようであります。こういうような融資保証以外のいろいろの仕事をするのであれば、別の何か機関を作って、これに基金が必要な資金の債務保証を行なって援助をするというのがいいのじゃないか、こういう意見が非常にあるのでありますが、こういうことは、たとえばアメリカのCCCのようなものにまかせるとか、あるいは現在の農産物価格安定法でやるのがいいか、こういう点と関連して当局のお考えを聞きたいと思います。
  113. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一には、御審議をいただいておりまする酪農振興基金に関しまする規定は、第二十四条の四でございまして、これは、予算案でも御審議をいただきましたように、一般会計予算では三十四年度は七万五千石相当分の乳製品を金利倉敷を政府補助で計画的に保管をするという予算が計上してあるわけであります。時の事情に応じまして、一般会計予算では足りないときは予備費等の措置を講ずることが生ずるかもしれないことはもちろんであります。しかし、いろいろ案を変えたので、研究中の案を仄聞されたためかと思いますが、二十四条の四は、乳製品の買い取り、保管、売り渡し等の措置の買い取り、売り渡しの行為を実は今回は規定してございません。国が保管計画を立てまして、保管の計画を立てるときは、これは基金にも事前に意見を聞くが、業界事情あるいは乳製品事情等だんだんわかるようになってきておるから、国の保管計画を定めた場合は金基に通知をいたしまして、通知したならば、それがよりよく確実に実行できますように、その保管計画実施のために必要な債務保証計画を作成して農林大臣提出をしなければならないということを規定しておるのであります。この義務を与えておりますが、この債務保証計画を立て、また計画を実施する業務は、御指摘通り、過般国会の御審議をいただきまして同法案ができました際のまさに運転資金の債務保証であります。それで御質問のなにがございました点は、いささか私どもの手落ちでありましょうが、そういう解釈であります。  第二には、もし買い取り、売り渡し等のことが要る事態があり、またそれが適当でございますれば、法律をもって基金であっても改正をして、民間出資等に影響がないようにする、運転資金の手配がつくとか、政府出資額が従来の方針とそう変らない、変っても国会の御決議がいただける、そういう場合で法律をもってすれば、その方法は悪いことはないのじゃないか。ただ、債務保証機関に、消費宣伝をするのが従来の業務であるのに、買い取り、販売等のことをさせる機能を与えれば、基金でなくて別個の機関の方がよいのではないかということになりますと、これは仮定の議論でございますが、そういう意見も立法論としては立ち得るのじゃないだろうか。私はどちらでなければならぬということはないと思いますが、買い取り、売り渡し機能に関することは今回御審議を得べく改正案に載せておらないのでございます。
  114. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 久保田豊君。
  115. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 まず農林省当局に、お答えはなるべく簡便にお願いをしたい。非常にお教えをいただいてありがたいが、少し冗漫過ぎる。私どもも御質問する以上は法案も一通りは読んで承知をしておるわけですから、そういうところの重複は避けて、こちらの質問の要点に簡潔にお答えを願いたいことをお願いいたします。  最初にお尋ねをいたしたいのは、私ども聞くところでありますが、今度の酪振法の改正は、一部改正案でありますが、相当基本的に酪振法の構想を変えるようなものであり、なかなか画期的なものである。農林省としては、失礼だが割合によくできた方だと思う。同時に、これは完全なものでありませんが、一点はっきりしておきたいと思うのは、三十三年の十月二十八日に農林省の省議決定をした今後における酪農総合対策の構想、こういう構想のうちで特に法律の改正をする面を大体これにまとめたもの、それから、それを予算化すべきものについては本年度の予算に大体盛ってあるもの、こういうように聞いておるが、この点をまず第一にお聞きをしておきたいと思います。
  116. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 原則においてその通りでございます。構想として農林省会議で省議決定しましたものは、その中にもありますように、計画施策・措置のそれぞれの性質においてできるだけ適時に具体化し実施に努める、なお情勢に応じて変る場合もあり得るかと思いますが、一貫して流れる考え方は以上のようでございます。
  117. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そこで、この酪農総合対策の構想並びにこれに連関した法案の基本的な問題については最後にまとめてお尋ねをいたしたいと思います。そこで、最初にまずこの法案のおもな問題点について一つ一つお尋ねをして参りたいと思います。  まず第一に、今度の改正案の第二章の二の十八条の問題であります。つまり、今までは、酪農の国の基本計画なりあるいは府県の基本計画を実際に具体化する一番の基本は、各町村別の酪農経営の改善計画というものを立てる、これが一応の体系としての一番出発点になろうと思う。そこで、この点についておもな点をまず第一にお尋ねしたいと思う。これは、十八条の一項の一に、酪農経営の改善をはかるための計画を作成する、とあって、「その区域内における乳牛の飼養頭数及び飼養密度、その区域内の農用地の利用に関する条件並びにその区域内で生産される生乳の販売に関する条件が省令で定める基準に適合する市町村」、これをこの酪農経営改善計画を立つべき町村として多分指定になることだと思います。この「省令で定める基準」というものの抽象的な要素はここに載っておるが、どういうものを具体的に省令にしていこうかと、この点が私は出発点になろうかと思う。これはどういうふうに考えているのか、具体的に考えているならば、一つ説明を簡便に願いたい。
  118. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 十八条一項の一号の「省令で定める基準」は、三事項、及びを入れれば四事項ございますが、飼養頭数、飼養密度、その区域の農用地の利用に関する条件並びにその区域内で生産される生乳の販売に関する条件が頭数で言いますと、一応町村内において百頭ぐらい飼っているところというのを御提案申し上げまして、諸先生方の御批判をいただきまして、その後学識経験者その他よく実情がわかるようにしまして、適当なものにしたいと思っております。そこの密度の点は、おのずからこの市町村の能力とか指導能力とか、農協がその仕事の中心に入ってもらいたいという意図を表わしておりますので、それに応じて出てくるものと思っておるわけでございます。農用地利用に関する条件は、現行の集約酪農地域——言いかえますと、昨日御説明申し上げました、むしろ今後に期待せられる酪農開発地域としての適地だというようなところだと思いますが、それよりは平坦部、都会地にだんだん近くなってくるような場合もありますので、農用地利用の基準は現行の集約酪農地域よりも少くてよいんじゃないか、やむを得ないじゃないか、現状と飼料の自給強化の可能性とを考えればよいんじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。生乳の販売に関する条件は、この計画を作成する場合に立ててもよろしいし、従来の生産者の共同販売等に関しまする事業をさらに一層改善強化しようという場合でもよろしいし、今後この計画作成、実施に当って、共同集荷をやっていくようというようなことが関係農協等におきまして酪農生産者のためになるような販売条件があればよいのじゃないか、こういうふうに一応思っておるのであります。その市町村の地域は、従来の集約酪農地域の中もあれば外もある。おそらく、私どもの気持で、あと回しか除いてもよいのじゃないかと思うのは、都会にくっついた畑を持たない搾乳業者、濃厚飼料ばかりやって搾乳してすぐ牛を売り払ってしまうというような業者とか、十年ぐらい先でないと密集した集約酪農地域にならないというようなところはあと回しにしたらどうかというような気がいたしております。
  119. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点は、全国状況が非常に違いますから、一律に法案の体裁だけを作るというわけにはいかないと思います。しかし、従来の集約酪農地帯は別といたしまして、戦後行われたいわゆる酪農指導のやり方が、結果を見ますと、よくいっているところもある。しかし、下手をすると非常に変動が多くて悪くいっている場合が多いわけです。そこで、こういう点については、特にその地域のいろいろの条件というものをよほど正確につかんでやりませんと、牛を入れたおかげであとが困るという問題が大体において非常によけい出てくるわけです。ですから、この点については、政令で法案の条文をどういうふうに整備するかということが一つあると同時にこれの適用については、集約酪農地帯にも何といいますかABCDというふうに態様を変えておるようですが、そういういろいろの点を十分考えてやることと、とにかく、売る条件というものが整備をしていなければ何にもならぬわけです。こういう点を十分考えた上でこの第一項の第一号ですか、これを具体的にやるということが、今度の酪振法を実行する場合にまず必要な条件だと思う。そこで、今のお話では非常に抽象的で、百頭がいいか何頭がいいかということはなかなかそう簡単にいかぬだろうと思います。特に、今後酪農を伸ばさなければならぬ地帯というふうなものは、むしろ都会地の近くは今お話のありました通り搾乳業者で、この基本計画といいますか改善計画に乗らぬことが多いわけですが、従来やってみたけれどもなかなかうまくいかぬ、伸びもしないし縮みもしない、しかも処分ができなくて困っているというところも相当ある。さらに、今後伸ばさなければならぬのは、農民の立場から見れば、主として山村地帯等については相当伸ばさなければならぬ。しかし、これらは相当条件を整えてやらなければ、これが出ると、この改善計画の取り合いみたいなものが無批判に出てくる。これを下手にのむとあとが大へんなことになろうと思いますので、この点については、政令の作り方あるいは政令の運営について格別に慎重な用意をしてもらいたいということを、まず第一点お願いしておくわけです。  それから、その次に、同じような問題になりますが、今ちょっとお話がありましたが、私ども農林省から聞いたところだと、これは非常に広範にわたる計画のようです。大体聞いたところでは、これの指定をするのは大よそ千五百市町村くらいだ、このうち本年度七百八十町村を改善計画地域に指定をするということですが、これは今言ったような諸条件を十分に検討されてきめたのか、私はこれがちょっとはっきりわからない。大体町村の数は御承知通り町村合併によって三千六百くらいしかない。その三千六百のうちかれこれ約半分近いものを、短期にしかも資金その他いろいろの条件の裏づけがないのに早急にやって、そうして立てたようなこういう改善計画は意味があるかどうか。おそらくは、これの補助金なり資金がつけば、土台のないのにあわを食ってこれにみんな飛びついてくるという結果になりはせぬかということを心配するわけです。特に、私は、もう少し慎重にやってもらいたいと思うのは、今言ったことし七百八十町村やるというのは予算書にも載っておるが、それに対しまする指導費といいますか、総額において六百六十万です。そのうち地方へ出すのは三百十万、そうすると、七百八十町村になれば一町村四千円くらいじゃないですか。五千円にならない。これは直接の事務指導費でしょうけれども、そのほかに資金その他いろいろあるにいたしましても、こういう貧弱な財政的な——おそらくこれは事務指導費でしょうけれども、そういう裏づけでやるということは少し無謀じゃないかというふうに私は考える。  もう一つは、これは基本の問題になりますが、酪農のこういうふうな安定計画を樹立すること、あるいはこれを実施する場合の指導体制というものは、現地にはほとんどできておらない。しかも、御承知通りばらばらです。町村でほんとうの酪農指導のできるような技術屋がおるところはほとんどありはしません。そして、今の改良普及員あたりでは、酪農担当の技術屋はおりますけれども、担当区域が非常に広い上に持ってきて、ほとんど酪農指導を実施する力を持っていない。その上に持ってきて、ほかにいろいろ獣医やなんかもおりますけれども、これとてもこれからやるいわゆる安定計画にいうような酪農計画をやろうというふうな実力のある者はほとんどありはせぬ。そういうときに、こういう非常に見てくれはりっぱですが内容の貧弱なことをやるということは、法案そのものも問題でしょうが、法案そのものに対する問題はあとにいたしまして、私は少し無謀ではないかと思う。この点については、予算もきまったというか、もうすでに一応整備されておることですから、変更は無理かとも思いますけれども、もう一度検討する必要があるのではないか。おそらく畜産局長の頭の中には、例の新農村計画の頭がそのまま残っているのではないかういうふうに思うが、この点はどうですか。
  120. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 あとの問題から先にお答えをいたしますが、新農村の事業が予算を計上して行われ出したりしましたことが残っておると思いますが、酪農には酪農に合うように勉強いたしまして考えたつもりであります。あわせまして開拓地や北海道の農業振興の点を考えまして、あとは、予算と、この法律の実行のこと、あるいはその三十四年度の規模のことでございますが、計上の畜産予算としまして、一応事項をあげました各助成費等、正式の予算書に出してありますのはお話の通りでありますが、かねて改良普及員、その特技員、専門技術員の増員、これは、畜産の実情に即しまして、先生お話しの通り、特段に畜産関係のものの増置をはかっております。また、畜産の専門でなくても、畑作改善、水田酪農等については、それぞれの普及員にも知識が普及できるような講習会等もやっているわけであります。その他あれこれ加えまして、酪農の技術及び経営の指導体制の強化は、農林省全体を通じましては昨年度は五千万円でありましたが、ことしは一億一千万円を計上してあります。畜産の予算は何となく見にくいようにできておりますが、畜産局に計上してある予算のほかに約三割がよその局に出してあるわけであります。  それから、七百八十の問題でありますが、初めて法律案と制度を考えて予算を要求する際に、初めてのことでございますから、先生指摘の点、全くなしとはしません。注意して今後やります。しかし、乳牛の飼育の状況等、畜産緊急政策などもいろいろと検討しまして、千五百か千四百五十くらいを四、五年に、まあ四カ年と思っておりますが、目標にやるのがいいのではないだろうか。そのうち来年度予算に計上しましたものは、集約酪農地域の中で市町村別に相当研究が積んであるものがその八割以上実はございまして、それをどうするかを考えてあとの地区にわたれば、初年度の運用は割合よくいくのではないかと思います。と同時に、市町村長が、法案にもありますように、酪農を行う農業者、また農業協同組合の意見を聞きまして協議をして立てるわけでありまして、農業委員会、畜産会等もそれに関係し、他の団体も関係するわけでございますので、まだすっきりした技術指導体制特に経営の問題に対する指導体制、下から盛り上る自主的な問題、こういうものにいろいろ農研グループや四Hグループの御尽力もお願いしなくちゃいけませんが、一町村を一地区にしなくちゃならぬとも思いません。町村合併後は乳業経営をしておる農家は普及率が六・五%くらいが現状ですから、まとまっておるところはまとまっておりますが、まとまって指導計画を立てて、価値のあるところは一町村の中にA地区とB地区とあってもいいんじゃないかと私は思っております。それこれいろいろ考えて案を出しておりますが、御指摘の点でなるほどと思います点は、全力をあげまして運用で遺憾なきを期したいと思います。
  121. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点は非常に大事な点ですから、出発点がぐらついていますと、あと迷惑するのは百姓だけですから、特にこの点は慎重を期してやっていただきたいと思います。  そこで、その次に、酪農経営改善計画そのものについて第二項に大体において九つばかりあげてあるわけです。これらの項目の中で、特にこういう酪農経営改善計画の場合に重要だと思われるものがいろいろこの中に入っておるのかもしれないが、書いてないので、特に念のために聞いておきます。たとえば、共同集乳の施設であるとか、あるいはその他いわゆる酪農経営を村全体として計画的に進めていく場合に一番拠点になるべき共同施設、ないしはそれに相応するようなもの、こういうものを特に除いたのはどういう意味ですか。何か意図があってそうやったものか、あるいは偶然にこれを落したものか。私は一番大きなそういう環がこれにはないように思うわけです。入っておればいいですよ。入っておればいいが、どうも文章を見たら抜けておるので、そういうのははっきり条文の中へ明示しておいた方がいいのではないか、私はこう思うのです。この点はどうなんですか。
  122. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 明示してあります。十八条の二項の四号を見てもそうでありますし、集約地域においてはすでに承認指定制度あるいは届出制度、今回の改正案では集約酪農地で生産された牛乳を継続的に販売することが可能な周辺の地域の指定地域というものの酪農事業施設、この酪農事業施設は、生産者の集荷共同販売施設も入りますし、資本主義的な企業体の乳製品製造業者も入るように現行法もなっておりますので、計画においても計画事項として書くと同時に、他の方でもそういうことは書いてあるわけです。
  123. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その施設の点に書いてあることは私も承知しておるわけです。特にここの一項から九項までに改善計画において書かれる事項、その中に特にそれを抜かしたのはどういう意味かということを聞いているわけです。
  124. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一にお答えを申し上げましたように、第十八条第二項の四号の牛乳の販売、処理、加工に関すること、そういう意味でございます。
  125. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 わかりました。
  126. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 あわせまして、地域を指定する基準について、御指摘がありましたように、第一項の一号ですが、区域内で生産される生乳の販売に関する条件というのは、生産者はもっと共同販売処理、共同集荷輸送の合理化をはかってもらいたい、こういうことを思っておるわけです。
  127. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ここにいろいろの事項が大体九つばかり書いてありますが、このうちで、大体酪農経営者の意見その他農協等の意見を聞いてこういう計画を町村長が立てるということですが、立てた計画は——立てる過程そのものも問題ですが、立てた計画は個個の酪農者に対してどういう関係を持ってくるのかということです。町村でこういう一つの改善計画を立てますね、これを各個々の経営者に対してどういう関係を持たせるつもりか。もっと具体的に言えば、計画そのものの内容のまとめ方も問題ですけれども、そうして立った計画が個々の酪農民に対してどういう規制力なりどういう具体的な義務——といっても、法律上のむずかしい意味じゃありませんよ。これはどうせ指導ということでやることでしょうから、私はそうむずかしいことは言いませんけれども、今度は酪農者の立場から言えば、計画は立ったけれども、その実行なり、あるいはその計画に乗って酪農者がたとえば牛をふやしていったりした場合に、その効果というものが保証されないということでは計画はやれないわけです。これを実行する、つまり牛をふやしたりするという場合には導入資金を借りてやるということになりましょうけれども、そういう点について、ただ架空の計画を立てたって意味がないと思います。ですから、実効があるかないかということは、そういう計画の立て方そのものと、立てたものを個々の各農家がこれをどういうようにかみ合せておるか、つまり保証です。実行に対する保証は各農家についてどういうふうに立てるつもりでおるのか。その点について、中央はどう、県はどう、市町村はどうということがなければ、これは経営者から言えば不安でしょうがない、こういうことになろうと思いますが、この点はどういうように考えておりますか。
  128. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 まず、市町村長が農業者の意見を聞いて立てる計画と市町村農業者との関係を申し上げます。計画は、先ほど御指摘もありましたように、法文に七つ掲記してあるのでありまして、八、その他酪農経営改善に必要な事項も限定せずに書く、それに必要な資金や借入金、償還方法も書いていただきたいと書いてあるわけでございますが、個々の農業経営と市町村が立てます計画との間は、農家は自分が責任者として経営をしておる経営について市町村が改善計画を立ててもらうための発案者で、そうして全部発案しなくちゃいかぬということはないと思います。しかし、いけないと思うときは、適当でないと言える。それから受益者だ。ここに書きますものは、各農業者が行うべき一つ一つの具体的なことを書く場合と書かない場合とがあると思います。各戸の農業経営に対しましては、農業者の意見を聞いて、おおむね経営改善に資するような共通分母に当る条件を書くのがいい。それは、公共事業で草地改良、自給飼料増産計画を立てることもありますし、乳牛の導入その他のこともございますし、牛乳の販売処理についてのこともございますが、個人が飼育管理等において行いますことは、個人が行うことに対して受益をするような事業をたれがするかを書くことでありまして、中には、品質改善でありますとか、経済能力検定でありますとか、予算でも新年度は計上してありますような県の事業をこの計画区域に適用させようとする事業も含みます。また、市町村が公共事業で行う事業もあるほかに、農協や農協連合会が自分で行いまする事業も農協の協議を経て書く、そう考えております。
  129. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の御答弁はわかったようなわからないようなことなんですよ。個々の農家は、計画の立案という面では、発案をして、自分はこうしたいということをみな申し出て、簡単に実際的に言えば、それを一つうまくまとめるんだ、こういうことでしょう。従って村でまとめたものの実行については、受益者としてそれぞれが受けるのだ、村なり町村では共通の事項については共通の事項としてこれをやはり規定して計画の中に入れる、こういうことですね。そうすると、発案をしたものの実行については、もちろん経営の責任は当然各人が負うにきまった話です。しかし、かりに、たとえば牛を入れたいという人が、どうしても導入資金を借りたい、何年に幾ら借りたいといったら、この借りる本人はもちろんそうだけれども農民は一人一人では借りられない。その場合には村なり農協が責任を持って借りてくれるのですか。そして、たとえばかりにその年の乳量が出た、それで三頭で六十石あるという場合には、これらの販売に対しては、もちろん状況は違ってくるだろうと思うが、村の方が、責任を持ってくれるのか。こういう点がはっきりしないと、なかなかやれない。  それから、もう一つ、今のお話でわかるのですが、最近の農村計画でもそうですけれども補助金がある程度ある。共同でもっていろいろの施設をやる。ところが、施設をするには補助金だけではいけないから資金も借りなければいけない。その資金はどこで個人がどう借りているのかわからない場合が多いのです。そして、とにかく、ああいう施設ができた、こういう施設ができた、ところが、借金があるものはどうなるのだろうか、こういうのが一般の今の実情です。これは、中央や県からごらんになれば、この資金はこういうふうになるといって、こういうふうにして債権者がきまって、最後の支出をする人はだれかということはわかっているでしょうが、末端にいくと、そういう点がみなぼけてしまう。そういうことになりますと、この計画自体が非常に一人一人の者にとっては困るようなことになる。従って、これについては、いずれこの経営改善計画についても政令その他でいろいろはっきりした実施要領というものをきめられることと思うのですが、そういう点を明確にしてやらないと、この計画そのものはうわついたものになってしまいはせぬかということが考えられるので、この点を一つ、どう考えておるか、もう一回あらためてお聞きします。  それから、もう一つ、このうちで、すべて重要な問題ですが、特に重要だと思われるのは、この六号の草地改良事業、そのほか七号の「草地の造成、改良及び保全、飼料作物の作付その他自給飼料の生産並びに飼料の購入に関すること」、こういう事項があります。これは非常に重要な事項であります。ところで、これで問題になるのは何かというと、これは前の規定をそのまま準用するということになりますから、公示をして二十日間に文句がなければ、これを承認したものとして実行していくということになるでしょうけれども、さて、かりに、たとえば草地改良をやった、開墾してそれを草地にしたとか何とかいう場合に、この使用収益関係はどうなるのですか。この関係をだれがどう調整するのかということがはっきりしないと、非常に困るわけです。この点についてはどういうように考えておるのか、これを一つ明らかにしてもらいたい。  それから、もう一つ、それに連関して、この六号、七号等で農協等が草地改良をやる場合に、これは小さな問題になりましょうが、あとでもう一度触れるつもりですが、自己資金がなくて借入金でやるという場合は、これはごく低利のものでなければ草地改良なんというものは実際にものになりませんよ。そこで、どうしても、こういう場合には、この場合のみならず、県がやる場合でもそうでしょうけれども、例の三分五厘のいわゆる土地改良資金、こういうものを積極的にこれに導入するということは当然な話であると思う。そういう点がなければ、草地改良なり何なりということはなかなか農協あたりがやるものじゃない。こういう点を考えておるのかどうか、この点をお尋ねします。
  130. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 第一の点で、前の質問に対する補足にもなりますが、市町村の計画は、県、市町村を通じまして、農林省からも法としては逸脱しない範囲の要綱、法施行の省令等は出せるわけでありますから、これは出すつもりでございます。すなわち、画一でない点などは特によく気をつけようと思います。また、計画を実施する段になりますと、ちょっと条文を飛ばしましたので読みにくいかと思いますが、従来は酪農振興計画の実施について補助をする、またそれに必要な資金等のあっせんをすると規定してありましたものを、それをも削除しないで統合いたしまして、うしろの方に、酪農経営改善計画の実施については国は助成補助をする、第二十四条の五でございますが、国は予算の範囲内において酪農経営改善計画の実施に関する経費を補助することができる。その他の必要な奨励事項も行います。第二項にそれが書いてありますが、さらに、計画を立てる段階においても、県は指導と援助の措置をとりなさいと書いてあります。そういうところで、だんだんなれなければいかぬ点もあるかと思いますが、努力工夫を重ねながらやろうと思います。計画が県の指導を受けて、国や県独自のいろいろの予算、資金等の措置とか、技術指導の措置においてうまくいっておるものは優先的に補助をする。あるいは政府資金の援助、あるいは技術指導、畜産界の能率指導、衛生上の指導、こういうものをするのがいいと思います。ただし、計画を初年度に何百頭といってきめた場合に、予算上きまっているときに、個々の事業はそこだけしかやらないというようなことはしないようにしたいと思っております。特に草地改良等はそうしようと思っております。家畜導入の点を例にお引きになったと思いますが、これは、計画でも、個々の農家が農協を通じまして利子補給の場合でいく場合、中小農対策の場合で二割補助でいく場合、開拓地や北海道農業振興の場合はそれと照応しなければなりませんが、それぞれに分けて計画を立てていただきたい。その他政府がまだ用意しない場合は、次年度のこともあるから、たとえばさっきの計画の事項の八号の「その他酪農経営の改善を図るために必要な事項」のようなところに入れていただきたい。そういうようにしようと思います。  第二点は、最も重要な草地改良、自給飼料の増産のことでございますが、現行法でも、都道府県と市町村が酪農振興計画すなわち現行法の集約酪農地域に関する酪農計画に関しまして草地改良、自給飼料増産をする規定の中で、草地改良事業の計画を立てて、計画を公表して、二十日間で異議がないものと認める、その維持管理は条例で定めてもらいたい、定めるべしと書いてあります。今回は、実情に即しまして、県は、予算でも計上してありますが、大規模な草地改良の事業を起したらいいだろう、市町村以下は、農協及び同連合会も含めまして、むしろ経営改善計画の方にくっついた方がいいだろう、その改善計画は、集約酪農地域である場合は、その集約酪農地域の酪振計画に適合してもらいたいとしてあるわけでございますので、それがないところは単独に経営改善計画が出てくるわけでございますが、それについては、まず第一は補助事業でございます。補助事業も、従来国の補助率が三割でありましたものを三分の一に上げまして、面積も四カ年で今後十万町歩ぐらい、草地改良事業、特に高度集約牧野事業——牧草栽培みたいなものでありますが、来年度は一万二千町歩を計画いたしまして、約七、八割増加いたしております。  なお、農協の行う場合でも、農協の自己資金ではだめだから、低利長期の資金を予定しておるか、それでなければいけないのじゃないか、三分五厘の土地改良資金の中にそれを入れたらどうかということでございますが、新農村関係に入っておる小団地事業の中には、牧野開発や草地事業などももちろん入っております。それから、三分五厘の問題でございますが、私どもは、今回、三分五厘をも、これから始める事業では無利子の農業改良資金を使うといいんじゃないかということを考えまして、その方で計上して無利子にしたいと思っております。資金ワクがなくなった場合とか、時期を急いで自分で早くやろうという場合はまた別に考えたいと思いますが、草地改良事業と自給飼料増産の事業は、北海道では各種の草地改良、自給飼料増産事業があり、内地でもいろいろな自給飼料増産施設がありますが、公庫資金では昨年度一億五千万円用意したものを一億九千万円用意しており、農業改良資金は三十三年度千百万円用意してありましたものを約一億、——九千八百万円でございます。そういうふうに用意いたしておる次第であります。  もう一つ、権利の使用収益関係は、市町村は条例できめてもらいまして、農協関係は規約でしかしようがないと思いますが、規約で定めていただきたい。その場合は、都道府県と市町村が条例で定めると書いてある条文を準用する、こういうように書いてありますが、どうしてもいやだというお方はそこを避けるべきだと思います。しかし、使用収益をだれがどうやるかということはそこできめて、なるべく安い使用料を受益者である酪農民が払いましたり、あるいは維持管理の規定をみんなで協議して規約で作ったり、補助を加えたりして条例を作ってもらいたい、こういう考えであります。
  131. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 いや、そこなんです。条例なり規約で一応きめても、地主はその場合はこの条例、規約そのままで使用料なりあるいはある意味においての小作料ですが、そういうものを取ればそれでもってあと文句は言えないというのですが、そこなんですよ。最初のうちはいいです。だんだん軌道に乗ってきて、共同牧場とか何とかいうことになる。そうなってくると、地主の方が根性を出して、小作料をよけいよこせ、それでなければおれの方は取り上げるということになる。それを防止するのに、今言ったように、いわゆる規約なりあるいは条例でもっていくのはいけないのじゃないか。まだそういう事例はわからない。多くの場合は、私どもが接した場合は、そういう共同でやりたいところがあるけれども、なかなか地主の方が承知しないものだからやれないというので、村の方も農協も手は出したいけれども、地主が承知しないから手がつかないというところが比較的多いわけです。そういう場合にそれを承知して計画する、これは二十日間ぐらいでいいでしょう。文句が出なければやってしまう。やってしまっても、所有権をなにしておる以上は、そこから必ず文句が出てくると私は思う。これは何とか——なかなかむずかしい問題です。むずかしい問題だが、町村の条例なり規約だけで片がつくのか、あるいは、それにもう少し具体的な、これは法律の改正というまではいかないでしょうけれども、何らかの措置をとられないと、この計画というものはうまくいかないのじゃないかというふうに考えるので、この点を何か考えておるのかということを伺っておくわけです。
  132. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 その点は、本年度補助予算と政府低利資金を融資する条件であらかじめ確認してやりたいと思いますが、そういうものについてどのくらい強くやり、強制力をもってやる事態に現在あるか、また、やる場合は立法論としてどういうふうにやるかということだと思います。耕地であれば農地法の問題、土地改良法の問題と同じ問題があると思います。畜産には牧野法と改良法とがございます。それらも時間の許す限りは研究をいたしましたが、目下早急に全国広範に考えなければいけないほどのこともないかと一応思います。しかし、やるべきことをやっていない、やるほど進展していないから起きていない、そういう御意見もその通りかと思いますが、それらの経験も考えまして、これは草地改良事業法とでもいうべきものを将来は考えまして、御指摘の点についても、補助あるいは政府融資の条件ばかりでなしに、適正を期するようなことが必要かと思うのであります。その点は事実相当研究中でございますから、御了承を願います。
  133. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 研究中だということですから、研究をしてもらうよりほかしようがないのですが、一つ真剣にやってもらいたいと思う。まだ事案があまりないというのは、事案はあるのだけれども、あまり手がつかないから、実際には事案として出てこないのです。やりたいところはたくさんある。あるけれども、地主の方が承知しないということから事案が出ないのです。だから、暫定的な措置としては、県なり——中央がやるというわけにはいかないでしょうから、県なりがつまり契約の当事者になって、地主から相当期間一定の条件でこれは市町村が借り上げて、これに対して適当な対価なり何なりをやって、そうしてさらにそこを利用するところの酪農者から一定の使用料を取るなり何なりしてやるというふうな、一応現在のところは農地法のワクの中での行政措置をもっと強力にやる、しかも、行政機関というものを通じてあっせんをして、——あっせん的なというか、契約の当事者に村がなるということでもなければうまくいかないのじゃないか。将来は、今言ったように、もっとこの点についてはっきりした法制的な裏づけをしなければ、私は日本の酪農というものはその点で大きくぶつかると思うので、この点は一つ研究を願いたいということです。  この問題についてはもう一点だけですが、私が申し上げたいのは、今のように計画が全体で千五百にも及ぶ、もちろん今の集約酪農地帯も含めてでしょうが、千五百町村にも及ぶということになると、相当広範なものになると思う。従って、これの市乳地帯、原料乳地帯にも、これに対するところの特別なものの考え方というか、計画の立て方、進め方というもの、あるいは国の援助のやり方というものをもうすでに考えてやる必要があるのじゃないか、それでないと、市乳地帯ももちろん問題は簡単ではないが、しかし原料乳地帯はなかなか問題が出てくると思いますので、この点も一つ注意をしていただきたい、こう思うわけです。  その次に、もうすでに同僚議員も触れられましたが、十三条の問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  つまり、酪農事業施設の設置、変更についての行政的な規制を非常に強くしよう、こういうわけですね。このうちで、この集約酪農地帯よりさらに周辺の地帯に指定地域を拡大して、ここにおける酪農施設というものを行政規制をしよう、大体こういう基本の構想にこの法案がなっておるわけです。そこで、まず第一にお聞きしたいのは、ここで言っておるところのいわゆる酪農事業施設というのは、これはどんなものをさしておるのかということを、具体的に御説明願いたい。
  134. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 なま乳の集荷施設、飲用牛乳の処理施設、乳製品を作る施設、そういうものであります。
  135. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうするとなま乳の集荷並びに飲用牛乳の処理、それと乳製品の製造施設、こういうわけですか。そうすると、その範囲というのはどういうものですか。たとえばクーラー・カーあたりも施設のうちに入るのですか。あるいはクーラー・ステーションとか、あるいは最近発展をし出してきているバルク・クーラーですか、ああいうものも全部含むのですか。酪農事業施設というものの範囲、これは政令できめますか。どの範囲のものか、ここがわからないのです。
  136. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 恐縮でございますが、酪農事業施設に関する条文は、改正案の中で追加したばかりではなしに、すでに現行法にあるのであります。その解釈と同じであります。現行法は、酪振法の施行規則、二十九年に出しております農林省令第五十一号第九条に掲げてあるものであります。「法第十四条第一項の省令で定める変更は、左の表の上欄に掲げる施設についての相当下欄に掲げる設備の設置、更新、改造又は廃止とする。」、そして、集乳所につきましては、貯乳槽、冷凍機械、クリーム分離機、牛乳濃縮機、そういうのが設備であります。飲用牛乳処理施設につきましては、貯乳槽、冷凍設備、牛乳殺菌機、びん詰機、冷蔵庫、そういうのが設備であります。クリーム及び脱脂乳製造施設につきましては、貯乳槽、クリーム分離機、冷却設備、冷蔵庫。バター製造施設につきましては、貯乳槽、クリーム分離機、チャーン、連続式バター製造機または冷蔵庫。チーズ製造施設につきましては、貯乳槽、チーズパット、プロセスチーズ製造用溶融釜、または熟成室。れん乳製造施設につきましては、貯乳槽、荒煮機、濃縮機、れん乳冷却機、無糖れん乳用滅菌機。これが設備であります。粉乳製造施設につきましては、貯乳槽、荒煮機、牛乳濃縮機または乾燥機とあります。なお、補足いたしますと、政令第六条にもその根拠に関する規定があるのであります。
  137. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 昨日の永田さんの質問でもこの点にちょっと触れられておったのですが、集約酪農地帯が現在七十二ですか五ですかあって、この集約酪農地帯というのは、平均にはいかないでしょうが、町村の数にしますと、ほぼ一地帯がそれぞれ数ヵ村くらいにわたるものが多いのではないかと思うのです。その周辺の地帯といいますと相当の数に上りはせぬかと思うのですが、大体予想としてはどのくらいの範囲にわたる見込ですか。
  138. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 夏のような、正常の場合は牛乳が減って消費がふえるというような時期は、京浜地区へ岩手県から一部は牛乳が来ることがございますが、そういう時期の特別な場合を除きますと、栃木の隻約酪農地帯などは、現在三あってことしも二地域追加しようと思っておりますが、あすこには集乳施設があるだけで、前は十五石、最近は二十石がほぼ普通です。それをトラック——石油を輸送するようなトラックをもって通常板橋とか葛飾とか神奈川の方とかへ搬出しておる状況であります。その地域内には乳製員の製造設備は那須を除いてはありません。それを考えますと、合理的な飲用牛乳の処理販売、乳製品の製造販売、それから、消費者の値段と生産者が取得する所得とを考えまして、適当な場合はどっちかを、その地域指定のために消費者の値段が上りまして牛乳生産者の手取りが減るということがないように、自然経済条件の範囲を指定したらいいのじゃないかと考えておりますが、現在は、集約酪農地域で、集荷場までは生産者から一時間と私は記憶しておりますが、そこへ集めまして、それから農家またはその集荷場から乳製品の製造所までは輸送時間として二時間の範囲内が集約地域で、家畜を導入したり、牛乳の処理施設、酪農事業施設をしたりしないように今してあります。現行法はそうであります。時代のいろいろな変化に応じて違う場合もあると思いますが、それを目安にいたしまして指定するのがいいのじゃないかと考えております。
  139. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお答えで抽象的なあれはわかるのですが、この法案を作るときには、大体どのくらいの町村がこの周辺の指定地域になるくらいの見当は大体つくでしょう。どのくらいになります。今後集約酪農地域がふえていく、その周辺が全部指定地域になっていくということになると、都会のごく周辺等は別としまして、改善計画等々もダブってきまして、相当の町村というものは周辺地帯で規制を受ける地域へ入ってきはせぬか、こういうふうに思うわけです。ですから、具体的に、今後の集約酪農地帯の指定計画、そういうものもにらみ合せてみて、どのくらいの地域が入るか。現在はなるほど集約酪農地帯には約四〇%くらいの牛なりあれがあるわけですね。しかし、三十四年度になりますと、ふえていきますから、これがおそらく五〇%幾らかになるわけですね。将来はおそらく集約酪農地帯がおもな乳牛の飼養地帯になろう。それにさらにその周辺を相当広範に指定するということになると、こういう地帯についてはほとんど指定地域に入ってしまうのではないかと思われるが、今の段階で具体的にどのくらいの町村を指定する計画か。これの具体的な検討は一応終っておると思うので、そういう計画がすでにあるならば知らしてもらいたいと思う。
  140. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 町村数で表わすことは表せるのですが、町村といっても、地形の状況とか、南北に長いか東西に長いかはわかりませんので、関係条文にありますように、「当該集約酪農地域に係る」事業施設でありますので、当該集約酪農地域に生産された牛乳が、消流と言いますか、消費に向って流通する過程のその周辺地域という意味でありますから、先ほども申しましたような、生乳が販売価格等に影響なしに合理的に輸送される範囲がいいじゃないか。今の現行指定集酪地域のその周辺にいろいろなものがありますと、その集酪地域の中の酪農の発達を阻害することも生ずるのでありますから、そういう意味で、また、そう行政的にひどい規制をするのではございません。案は、届出をして下さい、そして当該集約酪農地域に悪影響があるような地域外の酪農事業施設の適正配置には、そのために関する限りの勧告をして、これを聞いて下さい、勧告がいいから受け入れられる場合で、事業施設を設ける人が予期しないような場合には、やはり国や都道府県が援助すべき道義があると思う、そういうつもりであります。
  141. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その地域はどうも今のお答えじゃはっきりしないわけだが、大体結局最も合理的に販売のできる地域ということですね。そうすると、これは大体において工場を中心にしてやっていこう、こういうことでしょう。そこで、やはり問題が私はこれには相当あると思うのです。第一に、現状では、大体七十五の集約酪農地帯のうちで、中心工場が七十四資料ではあるわけですね。その内訳を調べてみますと、大企業といいますから、これはおそらく明治、森永、雪印、協同だろうと思うが、これが六十三ですよ。それから中小企業が九つ、農協系統が十一ということになっております。大体においてこうなってきて、そして、さっきからお話のように、行政規制も届出にしてもらい、特殊な場合において勧告をする、こういうことになっておりますが、しかし、結果においては——今あなたは非常に善意をもってやっておられるからいいが、結果においては、私はこういう大企業の集約酪農地帯のみならずその周辺に対する経済支配力というものを強くするという結果に必ずなるのではないか、この心配が相当多いわけです。特に、最近の大企業の傾向は、みずからの名前ではなくて、こういう周辺の地帯の中小企業の小さな酪農業といいますか乳業をだんだん系列化してきております。そうすると、形はいろいろであっても、こういう地帯についての大企業の支配力というものは非常に強くなり過ぎやせぬか。今のあなたのあれでは、そう大して大きな行政規制をするわけではない、場合によってはむしろ援助しなければならぬという場合もあるというふうなことですが、結果としては、私は大企業のこういう集約酪農地帯を中心とする一つの経済支配力というものを強化するという結果に終らざるを得ないというふうに思うが、この辺はどう考えていますか。
  142. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 法文の範囲内においてどの程度までできるかということになりますと、久保田先生のおっしゃるようなふうに見えることもあるかと思いますが、私は、これをそういうふうに読まないで御審議を願うとありがたいと思っておるのですが、まさに久保田先生が今おっしゃる反対をこれでやろうと思っておるのです。この方がむしろ主であります。しかし、集酪地域と酪振計画とを立てております限りは、この計画を変更する——必要あれば変更しなければなりませんが、変更せずにそれが立っておれば、現行法規ではそうなっておりますから、それに支障を来たしては酪農の振興にならないのではないか。あわせまして、改正案は、当該集約酪農地域における生乳の生産者から当該生乳を買い受けて乳業を行う者は、きのうも申し上げましたように、生産者団体が組合員のものを処理、加工することは地域内でも地域外でも乳業者扱いをしております。酪農振興基金においてもそうでございます。これは両者意見が一致し利害が一致する場合でありますから、この場合にはほとんど配置適正化の勧告ということがあまりないのじゃないか。むしろその御希望に応じて援助するとか、どっちがいいだろうかというような経済性といいますか、消費者のため、生産者のため、あるいは過当競争が起るとかして成り立たないとか、施設を作ってすぐ取り払うとか、そういうようなことをやめることをおもに考えております。それだけじゃないということを言われるとそうだろうと思いますが、そこで、相当な範囲に活動する場合、届出事項、勧告、こうして、施設の配置に適正な場合、この施設とは当該集約酪農地域にかかるものであります。そういうふうであります。そうすると、残っております問題は、生産者団体以外のいわゆる営利主義の企業体による乳業者の集約酪農地域の工場のいわゆる集乳所、これがむやみに設置してあってその他を押えるのではないかという問題が残るかと思いますが、それは、現在集約酪農地域内でも中心工場というような通常の名称はありますが、既存の設備があれば、他の業者があってもよろしいし、農協の施設があってもよろしいし、政令では、現行法では、乳製品は百五十石、市乳酪農地域は六十石という基準がありますが、それ以上のことは自由であります。承認制度とありますが、何もどっちを差別することはない。乳牛を飼う農業と牛乳を処理することがマッチして健全に発達するがいいということをねらっておるだけであります。それも、なお必要ならば、ある時期からは、中心工場制度を望みますとか、複数制度を置きますとか、公取委員会等によく話しまして、実質上の地盤協定を、テンサイ糖工場とテンサイの栽培、集荷面の区分のようにするとか、そういうことも必要でありますと同時に、内外に差をつけるべからざることは、もちろんそういう運用はしないように、集酪地域における承認制度というような許可に当るような強い制度とは差をつけまして、届出と勧告をするだけであります。そういうふうな趣旨でございます。
  143. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点ですが、私は、こういう行政規制、届出、それに対する勧告、これはそのものとしては悪くはないと思うのであります。ただ、この基本ですが、今私がお話しましたように、七十四の中心工場のうちで、六十幾つかが大企業だ。それがさらに周辺を支配するということでは、これはいけない。しかも、今の大体の乳業界の傾向というものは、こういう集約酪農地帯では、市乳もある程度生産しますけれども、乳製品の場合はだんだん集乳所になってきております。そして、たとえば平塚で——私どもは静岡とかその辺ですが、平塚とか志村へ持ってくる。そこで五百トン処理とかあるいは千トン処理とかいう格好にして持ってきて、向うは集乳機構になっておる。私はだんだんそうなってくると思うそこで、私の申し上げたいのは、そういう傾向と、なお、この集約酪農地帯には小さな市乳市場というものが周辺にゴマのようにくっついている、こういう点がある。従って、こういう行政規制を置く限りにおいては、ここでは生産者の団体が持つ少くとも集乳ないしは第一次処理——第一次加工と言ってもいいでしょう。そういう程度のものは除外すべきではないか、そうして、こういう農協を中心とする集乳ないしは集荷あるいは第一次のそういう処理の工場、こういうものを集約酪農地帯にどんどん作っていくことがいいのだ。それでなければ、それに対する政府が保護と援助を与えなければ、これは農協の共同集荷体制なんてできませんよ。ですから、現在ある大工場の持っているこういう中心工場のごときは、政府があっせんをして将来はどしどしその地帯の農協なり何なりに譲るべきです。少くとも集乳という範囲においては譲るべきだ。それ以上の高度の加工とか乳製品工場というのは大企業にやらせてけっこうだ。そうしなければ、いつまでたっても生産者と大乳業とが対等の立場で健全な取引関係を確立するという基礎はできない。そういう構想でこの行政規制があるならいいが、これは最後にまとめて御質問したいと思っておりますが、そういう基本点がこの法案なりあなた方の基本構想には抜けておるのですよ。そこに私は心配を持っておる。ですから、今あなたは、非常に善意というか、生産者の立場を重く見て、そして流通機構に一つの秩序を立ててむだをなくしていこう、あるいは過当競争が起った場合には、一面いいようだけれども、結果において生産者が損をするから、この中心工場なりをある程度の規制をすることによってこの流通過程を合理化しよう、こういうお考えでしょうが、しかし、その裏に、大資本と大乳業と生産者の共同施設というものが対決といいますか、力の関係を変えていくという基本の裏づけがなければ意味をなさないと思うのです。こういう点が抜けておるわけです。そこで、私は、この法案としては最低限少くとも生産者団体の行う集乳あるいは第一次処理といいますか、乳製品まで作るという意味でもありませんけれども、そういうものについてはこれを自由にやらせるということの方が本則ではないかと思うのですが、こういうふうに変える御意思はないかどうかということです。
  144. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 基本精神は久保田先生と意見に差はありません。明確でないとおっしゃいますのは間違いであります。なぜかと申しますと、先ほどから御質問もありましたように、第一条の目的にも書いておりますが、従来は、酪農振興計画の中には、単に生乳の集荷組織という言葉が書いてあり、共同販売とか団体交渉とかいうことは書いてありません。そこで、経営改善計画の中には、特に集乳という言葉を避けまして、先ほど御指摘申し上げましたように、生産、販売、処理ということを書いて、生産者の計画を立てていただきたいということを書いておる。また、共販及び団体交渉をしようとする場合に乳業者が断わってはいけないから、交渉に応ずるように勧告するぞと書いてある。さらには、乳製品の金利、倉敷を酪農全般のために政府負担して計画を立てるのでありまするけれども、そのうちの「乳業を行う者」の中に足りないことがあるといけないというので、従来の法律及び酪農振興基金法には、生乳の処理、加工をする者が乳業者、こう言っておりますが、第十九条の三に共販や団体交渉について書くほかに、二十四条の四の中におきましては、乳業を行う者とは、乳業を行う者に乳製品の製造を委託する——自分が設備を持って処理、製造、販売をしなくても他人の設備を借りることによって製造を委託する農協及農協連合会を含むと明記してある。この線を通じまして各条文も御解釈願いませんと、やはり御指摘の方が間違いだと私は思います。
  145. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 次会は明後十九日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会