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1959-03-05 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月五日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       倉成  正君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    高石幸三郎君       綱島 正興君    内藤  隆君       永田 亮一君    永山 忠則君       八木 徹雄君    保岡 武久君       足鹿  覺君    久保田 豊君       栗林 三郎君    實川 清之君       中澤 茂一君    中村 時雄君       西村 関一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         水産庁長官   奧原日出男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月五日  委員五十嵐吉藏君及び横路節雄辞任につき、  その補欠として永山忠則君及び中村時雄君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として五  十嵐吉藏君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農業法人及び北  洋漁業問題)      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    ○松浦委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農業法人問題について足鹿覺君より発言を求められております。この際これを許します。足鹿君。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 去る二月二十四日の大蔵委員会におきまして、私は農業法人の問題について国税庁意見をただしたのでありますが、本日は農林省並び国税庁、また大蔵省当局に対しましてこの問題をただしたいと思うのであります。  二月二十四日の大蔵委員会におきまして、廣瀬委員並びに私の質問に対しまして、金子直税部長はまことに納得のいかない御答弁をされました。この問題についてさらにお尋ねをしたいのでありますが、農地法上の違反の事実をもってして直ちに農業法人を否認し去るという態度は一体税法上どういう点に立脚してさような御主張をなさるのでありますか、その点を伺いたいのであります。
  4. 金子一平

    金子説明員 お答え申し上げます。  農地法の第三条の末項におきまして、農地法の第三条に違反した農地の移転なりあるいは賃貸契約等法律上絶対に無効であるということを書いておりますので、私ども、税の立場から申しますと、やはり一応の法形式の整ったところ所得が帰属する、かように考えて、ただいまお話のございました農業法人から生まれた所得個人に帰属する、かように解釈するのが正当じゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 実質課税否認反証を何に求められていこうとしておるのか。農地法上の違反の問題は、これは課税上とは関係ありません。農地法によって処罰を受けるか、あるいは適当な処置を受けるのでありまして、その問題と実質課税をどう取り扱っていくかということは別個な問題であると私どもは解するのであります。従って、実質課税を否認していかれるその反証は一体何でありますか。どの程度のものを否認し、どの程度のものを認めると言われるのか、その原則は一体どういうものなのでありますか。その点を具体的に明らかにされない限り、私どもとしてはこの問題の解決はつかぬと思うのです。何をもってそういう独断的な解釈を下されるのか、その原則一つお示し願いたいのです。
  6. 金子一平

    金子説明員 お答え申し上げます。  ただいまお話の点でございますが、普通の違法な行為から生じた所得でございましたならば、やはりその行為が取り消されるまでは一応本人に帰属するということも考えられるのでございますが、ただいま問題になっております農業法人につきましては、やはり一応法律形式の上において、あるいは農林省農林行政の上におきまして、賃貸なら賃貸現物出資なら現物出資が認められないということでございますと、やはり課税立場といたしましてもその法律形式なりあるいは国の農林省なら農林省農政方針の上に立っていくのが筋であるかと存ずるのでございます。現在問題になっておりまする農業法人につきましては、これは、実態的に見ますと、やはり、従来の農業経営につきまして法人は一応登記法上有効に成立しておりまするけれども、取引の実態その他から見ましても、従来の農業経営実質的にあまり変ってないというような事情もございますので、やはり個人所得と判定するのが正しかろうという結論を下した次第でございます。  実質課税原則に反するのじゃないかという御指摘でございますが、この点は個々の具体的実例に即して見ていく以外にいたし方がございませんので、これこれの条件を備えるという一般論は必ずしも私の方は立てませんで、やはり実際に即してそれがいいかどうかということで判定していくことになろうかと思うのでございます。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 農業経営実質法人前と法人後は何ら変化がない、その実態としても認定できないというお話でありますが、現実法人の問題をわれわれが考えてみたときに、これは農業経営たるとあるいは個人の他の企業たるとを問わず、その経営内容が直ちに大きく変化するというようなことはあり得ないはずなんです。特に農業の場合はそういうことはあり得ないと思います。ただ、経営状態が非常に近代化され合理化されておるということは、これは事実を示せと言われるならば幾らでもお示しすることはできますが、直ちにそれが外形的に見てどういう変化を起すかというようなことは私はあり得ないと思う。これは他の個人企業の場合が法人化されたといって直ちに見せつけよくなるというわけでもありませんし、工場が直ちに改善されるというはずのものでもありません。ただ、問題は、あなた方が指摘されておられた経理上の問題を指して言われておると思う。あなた方が自民党農業法人化委員会提出をされました二月五日付の直税部意見によりましても、先日も私大蔵委員会であなたにお尋ねをいたしましたときにも、非常に架空性ということを言っておられる。架空性ということは、今言われたような経営実態変化がないというようなことをもってこれを断定するということは理由にならぬと私は思うのであります。問題は、預金通帳がまだ個人の名義であったとか、あるいは帳簿の記載方法に手落ちが若干あったとか、そういう点を指しておられ、また、それを裏づけようとして非常に人権じゅうりんにも通ずるようなむごい調査をおやりになった。これは明らかに行き過ぎだと私は思っておりますが、行き過ぎであるないはあなた方が反省されることでありまして、一般から見て明らかに行き過ぎであります。そのようなことを他の企業に対してもおやりになれば、明らかに農地法上の問題とは別に経理上の問題として当然ある事例だと私どもは大体推定いたします。だから、経理上の問題につきましては若干の問題はそれはなしとは言わぬ。なしとは言わぬが、一応その国家が登記を受理し、その法的な措置が整ったものを農地法上の理由をもって実質課税区原則を否認し去るというがごときは、私は明らかに納得できないのでありまして、そういう点について、農地法上の問題とは全然別個にして、どういうところ原則的に経理上の問題があるのか。また、それは、経理上の問題があるならば、あなた方は出先機関なりにあなた方の立場上正しい指導をしていかれる責任のある立場ではないかと思うのです。間違ったものを、あらを探し出して、そうして追及していきますならば、なかなか法律をもってすべてのものを規制することはできません。納得のある納税ということになりまするならば、お互いがよくそこに話し合っていくというのが、従来あなた方がいつも言われておることでありまして、あなた方自体が、ある一つ方針をきめて、そうして、実質を備えておらぬ、経理上が不備であるというような点から架空性を強調されることは、私は明らかに行き過ぎだと思います。  そこで、一度農林省に伺ってみたいのでありますが、自民党の小委員会に対しまして農林省は二月五日付をもって意見提出しておられます。が、しかし、国会なりあるいは公けの正式の場においてまだ農林省見解として伺ったことはないのであります。その点につきまして一つ明らかにしていただきたいのでありますが、すなわち、昭和三十四年二月五日付農林省農地局管理部が発しております自民党農業法人化対策小委員会提出した意見でありますが、その中に、「有限会社設立登記がなされておれば、有効に設立しているとみるべきである。そこで、農地権利取得法人設立後に行う場合は、当該権利取得につき農地法上の許可がないとしても、当該法人を否認することはできないと考える。これとは異って、農地等を出資して有限会社を設立しようとする場合は、農地法上の許可がなければ、当該設立登記申請の受理がなされないのが通常であろう。しかし、この場合でも申請が受理されて設立されれば、出資者当該出資分の填補をする責任を生じるとしても、当該法人成立自体を否認することはやはりできないと考える。法人に対して法人課税をすべきか個人課税をすべきかは、当該法人が有効に成立している場合には、農地法許可の有無にかかわらず、いわゆる実質課税原則を基準として決めるべきであると考える。」、かような文書を発しておられますが、これに対するところ農林省正式見解を承わっておきたいと思います。
  8. 伊東正義

    伊東政府委員 今足鹿先生がお読みになりましたものは、御指摘の三十四年の二月五日に私の方の管理部の名前で出しておりますが、これはそのまま農林省の正式な見解であります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、明らかに政府の内部に意見の一致を見ていないことがわかると思います。私どもは、農地法上における諸般の問題につきましては、これは日本の農地行政その他及ぼすところの影響が非常に重大なものでありますから、現在登記を完了して正式の手続をとった法人に対しては、まず、実質課税原則を適用して法人課税の適用を行う、そういう一つ見解を国において一致せしめて、しかる後において、農地法上の諸般の問題については、さらに深く、大きく、大きな農業政策重点でもありまするので、解決をしていくべきだ、こういう考え方に立っておるわけであります。で、この間も金子部長は、農林省農地法上における違反あるいは疑義の点からまず出発されてこれを否認されたのでありまするが、今、農林省態度は、農地法上の問題とは別個に、当面この問題に対するところ態度は、正式見解としてお聞きになった通りであります。これはもう御存じ通りであります。とするならば、三月十六日に確定申告を目睫の間に控えて、この問題に対するところの当事者はもちろんのこと、自民、社会両党ともこの問題に対しては特別委合員会を設置して真剣な検討をしておる。しかも、当面する問題については、自民党並びに社会党の特別委員会考え方についても、そう大きな開きは、私は永山さんとも先日話しましたが、ありません。一致しております。いつ自民党がその正式見解を発表されるかは私は関知いたしませんが、少くとも私ども考えておることと異なっておらないということだけは確認いたしております。こういうふうに国会でも問題になり、政党間にあっても事を重大視して問題の処理をしようというときに、政府間においてこれらの問題の処理についてまだ具体的な方針が定まらないということは、事態が緊急を要します関係もありますが、少し怠慢と言うと語弊があるかもしれませんが、もっと真摯な態度をもって問題を発展段階においてこれを見るべきである。そうして、われわれも、農林省が当初報道機関等で発表した意見と最近の考え方とは、相当今お聞きして変っておると申しますか、しかし、よく具体的に検討を開始されて、問題の処理を的確にし、そうして大きな問題は大きい問題として、さらに農政上の問題として検討していこうという態度については、私ども妥当な態度だろうと思うのです。この両者見解調整ということはどういうふうにしてなされようとしているのでありますか。これは大臣にお聞きすることでもございましょうが、あなた方事務当局間においては、金子さんは、この間、「今の、農林省がはっきり言っているというのは、いつ、だれが、どこで言いましたか。」という廣瀬委員質問に対して、「農地局管理部長に私伺っております。」、「いつですか。」、「たびたび会っておりますが、半月前あるいは一月前、二回くらいにわたって今のような話を聞いております。」と答弁しておられるのであります。非常に古い話であり、また、正式な見解が提示をされておらぬときのことでありまして、問題は、農業法人化の問題の現段階というものは、その後急速に発展してきておるという、その現実の認識の上に立って問題を処理されることを私は希望するのでありますが、その点について、三月十六日がもう十日ばかりの間に迫って、どういうふうに御処理なさるお考えでありますか、その点を両者からお伺いいたしたいと思います。
  10. 伊東正義

    伊東政府委員 御指摘でございますが、今日現在の段階ではまだ大蔵税務当局と完全に意見が一致いたしておりませんのははなはだ遺憾でございますが、この問題、日も切迫した問題でございますので、極力大蔵話し合いを続けまして、何とか——どういう結論になりますか、われわれはわれわれの結論を希望するのでございますが、極力話し合いを続けまして、妥当な解決方法を発見したいというふうに考えます。
  11. 金子一平

    金子説明員 今伊東局長からお話のございましたように、私どもも事務的に農林省の方と打ち合せをいたしております。時日も切迫しておることでございますので、できるだけ早急に妥当な結論を出したい、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 それは三月十六日に間に合うようにですか。
  13. 金子一平

    金子説明員 三月十六日までに間に合うように一日も早くということであります。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵省もおいでになっておるようでありますが、この間の大蔵委員会におきまして、答弁を求めてもおりませんでしたが、原主税局長はみずから買って出て、税制上の問題であるから一言というので意見を述べておられますが、今お聞きになったように、両省間においては大体二月十六日に間に合うように十分協議調整をしたい、こういう見解を明らかにされました。それに対して大蔵省はどういうふうな検討をしておられますか。現在のお考え方はどういうお考えでありますか。
  15. 塩崎潤

    塩崎説明員 私どもの所管しておりますところは、先生おっしゃいます通り税制上の問題でございます。個人企業法人企業税負担がどういうふうに均衡しておるか、均衡しているかいないかという点からの発言が、この間原主税局長からなされたと思います。ただいまの質疑応答を聞いておりますと、私ども税法態度につきまして、国税庁の直税部長からその見解が下されたと思います。私どももそのような意見を持っております。まず第一に、私どもは、現行税法におきまして、できるだけ現行法秩序を尊重してその上で課税関係考えるのが税法のとっておる態度だと思います。従いまして、現行法秩序から見まして、それ自体が無効であるかどうか、その判断については議論がございましょうが、そういう判断が下されますと、税法上はその判断のもとにやっていくのが至当ではないかと思います。しかし、税の公平の見地から、たとい現行法秩序がそれを認めておりましても、税制上公平を害するような場合は、また実質判断の規定が働きまして実質課税が行われることは、現行所得税法にも明示せられておるところでございます。この問題につきまして国税庁がとっております二つ角度からの判断は、私は適当ではないかと思っております。現実問題としてどう解決いたしますかについては、今申し上げました税法上の角度から、なお両省間の調整の問題につきまして私ども関与いたしまして、妥当な解決をはかりたいと考えております。  なお、税法上の今後の問題といたしまして、原主税局長も申したと思いまするけれども、今申しましたように、私どもは、個人企業法人企業との間で必ずしも法人企業税負担が軽いとは思いません。御承知通り農業につきましては個人ならば事業税はかからない、法人になりますと事業税がかかる、あるいはまた配当につきましては完全な二重課税調整も行われてないというような点もございます。そんな点がありますので、必ずしも法人企業になりますと税負担が軽いとは思っておりません。また、個人におきましても青色白色との間の税負担の違いがあることは御存じ通りであります。これらを含めまして、私どもは、企業形態法律上の相違によるところ税負担の差異は、できるだけなくしたいと考えております。その第一歩といたしまして、今回の税制改正におきましては、御存じ通り扶養控除引き上げをやるわけでございます。従来基礎控除基礎控除というような格好で引き上げが行われましたが、扶養控除引き上げ重点を置いたということは、いろんな生計費の問題もございまするけれども、今申し上げましたような個人企業法人企業とのバランスの問題、青色白色とのバランスの問題を考えますと、どうしても扶養控除を上げるということの方が、より現在の実態から見て適正ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。しかもまた、このことは、御承知のように、扶養親族の最も多い農家にとって、しかも家族労働の多い農業にとって最も有利な解決方法ではなかろうか、かように私ども考えております。しかしながら、まだ各部面におきまして必ずしも税負担バランスがとれているとも考えられませんので、今後、御承知税制調査会が四月以降設けられますので、そこにおきまして、企業に対する課税のあり方といたしまして根本的に解決したい。と申しますのは、商工業だけでなくて、農業企業でありますから、これに対して控除すべきものはどういうものが適当であるか、あるいは私企業収益に対してはいかなる課税がいいであろうか、あるいは固定資産についての課税はどういうふうに考えたらいいかといったような広範な角度から、なおこの問題は検討いたしたい、かように考えております。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 税制上の問題に関連しても、農林大蔵当局、特に徴税機関としての国税庁農林省との調整についても異議はないという大蔵省の御見解のようでありますから、ぜひそれは早急にやってもらいたいと思います。  どうしても私どもがここで明らかにしておかなければならない点は、この二つの、自由民主党の小委員会提出をされました国税庁税部並び農林省農地局管理部文書の食い違いだけは、まず当委員会において明らかにしておかなければならぬと思います。農地法上の違反の事実をもってするという点については、これは一応別個な問題として今後処理することとして、たとえば農地法六条の場合についても一応の前提を明らかにしておると私は思うのでありますが、かりに農地法上違法の法人ができた、ところが、その所得は、現に耕作をしておる耕作者所得なのか、あるいはその農地所有者所得なのか、いずれにこれが帰属するものであるかということについて、この問題は非常に大きな問題を含んでおると思うのです。たとえば、実質課税原則から言いますならば、詐欺をしようと、どろぼうをしようと、あるいはヤミ行為をしようと、その法律違反を行なった後にそれが明らかになったといたしましても、その所得はやはりその現所得を得た者に対して課税をしていくというのが実質課税原則だということは、この間の委員会でもしばしび金子さんも言っておられる。そうした場合に、事農業の場合において、農地法六条の場合はこの前提を一応明らかにしておると私は思うのでありますが、それがヤミ小作でかりにあったとしても、農業法人の場合でなくヤミ小作であったとしても、それが公然と行われておる場合には、これは農地法上においても是認されておる一つ前提があると私は解釈しております。といたしますならば、農業法人が現に耕作に当っておる、その所有者のいずれがこの所得帰属者であるかということを考えていく場合に、これはやはり、実質課税原則から言って、あなた方の言われる、この法人に対してのみ架空性が強いし、実質法人が備えておらない、経理上の問題があるというような点を指摘して、その農地所有者所得が帰属するんだという断定は、私は間違いだと思う。そういう断定は下し得ないと思う。この点について農林省の御所見を伺っておきたいのでありますが、いかがでしょうか。
  17. 伊東正義

    伊東政府委員 実質課税の問題でございますが、これはわれわれの方よりも国税庁の方が専門でございますが、私らの見解ということでございますので申し上げます。ただいま仮定を置きまして御質問があったのでございますが、そういう場合におきましては、私個人見解になるかもしれませんが、そういう場合にはやはり公然とやった者の所得ということになるだろうと私は考えます。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵省はその点は研究しておりますか。
  19. 塩崎潤

    塩崎説明員 私ども実質課税原則解釈でございますが、足鹿先生のおっしゃった問題につきまして昔からずいぶん議論がございます。たとえば、経済統制違反につきまして、この行為によりますところ所得あるいは収益がだれに帰属するかといった問題がございます。判例も種々な態度がございましたけれども、それが一般的に認められるような状況、あるいはこの行為が無効ではないというようなことが是認されるような場合におきましては、私どもは、その所得実質的に帰属する者に対して課税するという態度をとってきております。しかしながら、今の農地法の問題は、現行法解釈といたしましては必ずしも行為が有効ではなくして無効だという解釈になりますと、私どもといたしましてはそういう解釈に従わざるを得ない。税法は、先ほども申し上げましたように、現行法秩序、他の法律秩序を尊重して、その判断のもとに課税をまず第一義的に考えへそれからなお、課税の公平を害するような場合、特に仮装のような場合に実質課税原則が働く、こういうように私ども考えております。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 この間も申し上げましたが、大蔵省の鳥取県下における農業法人課税上の取扱いについて国税庁税部自民党の小委員会に出した文書によりますと「法人登記は一応なされているが、その内容架空性が顕著であって、農地から生ずる収穫物による所得は、上述のような法律論のほか、実質的には農地所有者である個人に帰属していると見ざるを得ないから」云々「当該農業法人ではなく、農地所有者である個人課税することが妥当であると考える。」という結論を出しておる。そうすると、実質課税原則を逸脱したもはなはだしいではないですか。ただ問題が農地法上に疑義があるから、これはやはり実質課税原則から言って個人に帰属するのであるという建前でもって、個人申告を慫慂され——慫慂というよりもむしろ強要されるような行為が行われておるのです。そうしますと、この問題の調整がつかない限り、問題は処理されないと私は思うのであります。実質課税原則に反すると私は思う。先日、これは聞いたことでありますから必要があれば本委員会に出席していただいて伺ってもいいのでありますが、法制局方面におきましては、農地法上の許可とは無関係、やはり実質課税原則を適用してこの農業法人問題に対する処理をすべきだという意味のことを言われたと私は聞いております。先般は法制局の加藤参事官とか、ごく最近は法制局第一部長の亀岡という人が自民党の小委員会に出席されて意見を求められた際にそういう見解を表明されたと聞いております。これは聞いたことでありますから、もし必要があれば、現実のこの問題とは別個に、その原則の適用の問題に対して一つ見解をよく聞いてみる必要があると私は思うのです。  委員長におかれましても今お聞きのように、どうも実質課税解釈の仕方、その適用の点で食い違いがあるのです。それが一番この問題を紛糾混乱せしめておる点でありますので、できたらそういうふうにお取り計らいを願いたいと思います。  そこで、これは金子さんの言葉じりをとらえてどうこうというわけではございませんが、この間の二月二十四日の大蔵委員会におきまして、鳥取県におけるところ架空性追及のためになされたと見られる広島国税局が行なったいわゆる調査、これは監察調査でなくして課税指導というく立場で行われたものだと私ども承知いたしておりますが、これは明らかに行き過ぎだと私は思う。ここに公式の機関であります鳥取県農業会議が出しました調査てんまつ書なるものを私は読んでみます。これは、昭和三十三年十一月十一日より十五日にわたる間、鳥取県の県下の農業法人六社に対し広島国税局員十五名が調査を実っ施した際の関係者のてんまつを収録したものですが、「国税庁においては法人実態調査を行うものであると言明されておるにもかかわらず、現地においては当初よりとりつぶしを目的として、いやがらせ的な調査手段をとったのみならず、威嚇的な態度をもって個人申告を強要しております。」とはっきり言っておるのであります。ここに、鳥取県の県の地方公務員並びに農業会議の事務局長、それから調査を受けた者が全員そのてんまつを文書にして提出しておりますが、このいずれを読んでみましても、明らかに行き過ぎだと私は思うのです。従来昭和二十七年に一つ法人を設立し、あとの分は三十一年ないし三十二年に設立したものでありまして、二十七年に設立したものは翌年度において更正申告をいたし、それも税務署と協議の上払い戻しを正規に受けております。自来その法人の役員あるいは社員は正当な報酬を受け、その報酬に対しては源泉徴収をすでに支払っておる。これは実態を調べてみたらどうもおもしろくないからいかぬのだということをこの間は言われましたが、とにもかくにも、数年間にわたって、あなた方の出先機関は、正当なものとして指導もし相談に乗り、そうして作り上げたものを、今となって遡及徴収を行うのだというような態度を一貫してとられ、時効の関係等もあって、昭和三十一年、二年に遡及し、あとは、もしこの調査に協力するならば、こらえてやる、しかしそうでなければ情状しんしゃくの余地はないとまで、威嚇的、高圧的な言辞をもって個人申告を慫慂しておられるということは、どの調査を見ましても大体共通した行き過ぎ行為だと思うのです。この点を私指摘いたしましたところが、金子さんは、私は行き過ぎがあれば率直にはっきりすべきであると思いますとのみ言われまして、行き過ぎであったということについては何ら反省しておられないようであります。私はあまりこういうことをくどくどと質問することを好まないのでありますが、行き過ぎ行き過ぎとしてお互いがあやまちを改めることは何ら権威に関することでもありませんし、このような事実を是認されるやのごとき発言が先日の大蔵委員会においてあったことは、私は非常に遺憾に存ずるのでありますが、その後御調査になりましたか、また調査の結果どのように御判断になりましたか、その点を伺いたいと思います。     〔委員長退席、吉川(久)委員長代理着席〕
  21. 金子一平

    金子説明員 ただいま足鹿先生から御指摘の点でありますが、調査は強制調査ではございませんで、任意調査形式でやっておるのでございます。つまり、帳簿を見せていただくのを相手方の同意を得てというやり方でやったのでございますが、先般非常に言葉が足りませんで恐縮であったのでございますが、普通の青色申告の営業者の調査等におきましては、帳簿を一々チェックする、あるいは、現金売りの非常に多いものにつきましては、きょうの現金はどのくらいございますかというような聞き方をやっているのでございます。ところが、何分にも、農業関係の納税者におきましては、従来から標準率課税をずっと続けておりますような関係もございまして、今申しましたような調査には全然なれておられない。また、あまりやってもおらないと思います。特に鳥取あるいは徳島の調査の場合におきましては、先般も申し上げたかと思うのでございますが、その法人実態調査と申しますか、実際の登記面がどういうふうになっておるか、あるいは米の供出面がどういうふうになっておるかというこまかい調査をやっております。まあ普通の単純な所得調査の範囲を越えた調査をやっておりますような関係がございまして、やはり相当納税者の方々に大きなショックを与えたのじゃないか。そういう点から申しますと、やや行き過ぎがあったのじゃないかというふうにあとから反省もいたしますので、この点は一つ十分御了承いただきたいと思うのでございますが、私どもといたしましても、今後こういった調査のやり方等につきましては厳重に一つ第一線の税務官吏にも注意を与えたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、過去の分にさかのぼって課税するのはおかしいじゃないか、従来税務署で認めておったものを、また今ごろさかのぼってやるのは、税務当局のやり方としてはおかしいじゃないかという御指摘の点でございますが、先般も申し上げましたように、実質所得の建前になっております関係上、農地法違反という事実に税務当局といたしましては全然気がつかなかった。それが、徳島でミカンの栽培業者の間にこの法人設立の問題が起りまして、初めて地元で問題として取り上げられるというようなことになりました結果、なるほどそういえば鳥取にもこういうケースがあったなということで、広島の局におきましてもあるいは地元の署においても気がついたというような経緯になっております。そこで、従来税務署がそのままうのみにしたものを、それじゃ時効にかかるぎりぎりまで課税していいのかどうかという問題でございますが、私は、法律論はともかくといたしまして、行政の実際問題としては、かりに個人課税をいたしますにつきまして、三年前、五年前にさかのぼって課税することはやはり妥当でないと思います。ただ、先生もとくと御承知でございますように、課税の問題で一番私ども気を使っておりますのは、課税バランスの問題なんでございます。一方の徳島におきましては昭和三十二年分から課税する、一方鳥取の方はもう全然目をつぶっておるというようなことになりますと、やはりその間に納税者といたしましては納得できない感触を与える。これはわれわれ税務当局立場といたしまして非常につらい点でございます。今度のケースにつきましては、できましたならば鳥取の個人課税をいたしました年度とそろえて課税するようなことを考えたらどうかと現在は考えておるような次第でございますので、ご了承いただきたいと思います。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 十一月十一日に鳥取県東伯郡羽合町上浅津の沢農園の代表者沢静晴氏のてんまつ書によりますと、「税務署員並びに広島国税局員が沢家をたずねて、貴下が法人をやめて三十一年ごろからの分でいいから個人申告をする意思はないか。そうすればこの分は問題にしないしいろいろと署の方も特殊事情をくんで悪いようにしない。」云々、さらに、「もしどこまでも法人で進むと言っても、こちらで個人と認定し、更正決定する。その場合申告によって生ずる加算税とか扶養控除の不認等のいろいろな不利な点が起きるが、そういうことを考慮して、早急に個人申告にされるようという結論を言い捨てて六時過ぎに立ち帰られました。」と言っておるのです。これは明らかに強要とも言える。利害関係をもって、ほんとうに聞かねばこれだぞというふうな態度ととらざるを得ないような、明らかに威嚇的な態度をとっておられる。こういうことが出てきたその原因は、昭和三十三年十二月の十九日にNHKの鳥取放送局を通じて金子さんがこういうことを言っておられる。全文は省略しますが、放送の前段において、「その結果国税庁としては農地法で禁止しておる個人経営の農家の法人組織は認めないという方針を確認し、四国中国以外の国税局でも厳重に調査した上、これらについては今年度から全部個人所得として税金を取り立てることを申し合せました。また昨年度までの税金については国税庁検討し、何年前にさかのぼって税金をとるかをきめることになりました。」と述べ、これについて国税庁金子部長は「農地委員会個人経営の農家が法人組織を作ることを許可してはならないことになっているので、今までに見つかった農業法人はすべてもぐりの法人といえる。しかし登記所は事実を審査する権利がなく、登記申請があれば農地委員会許可書がなくても受けなければならないという矛盾があるので、農林省とも話し合ってこの点を是正してもらいたい」云々と語ったということであなたの談として放送し、これは重要な資料としてこれが流され、非常なショックを関係方面に与えた重大な発言だと思うのです。これは去年末のことでありますから、先ほども両者間で話し合い調整をして十六日までに処理するというお話でありますから、あえてこれ以上は追及いたしませんが、少くとも三十一年度以降のものを個人申告をせしめるのだという基本的な態度をやはり持っておられるような印象を私どもは受けるのであります。そういうことでは問題の処理にはならないと思うのです。現在法人登記を受けてきたものに対しては、農地法上の問題を、今後農林省がどういうふうにこの問題を処理していこう、また国会においてもこれは大きな問題として今後処理をしていくというのでありますから、少くともその問題が解決するまでは、すなわち国家が適法として認めたものに対しては、年限を付して遡及課税をするとかしないとかいうことは、私は是正さるべき筋のものだと思います。そういう見地に立って御調整になるのでありますか、その点はいかがなものでしょうか。
  23. 金子一平

    金子説明員 ただいま御指摘のような点は十分農林省と話し合って考えたいということは、かねがねから私繰り返しております。  それから、御了承いただきたいと思うのでございますが、先生から先般御指摘がございました、今の申告をむしろ強要したという問題でございますが、広島の局といたしましては、弁解申し上げるわけではございませんが、実態調査ということが主眼でございまして、申告を出してもらう、あるいはとってこいというようことは全然局も考えていなかった、ただ向うからいかぬことならばこの際一つ申告を出しましょうかという話があったということを報告では言って参りましたけれども、今お話しのような点が、あるいは話を聞いた当事者としてはそういう感触をもって聞かれたこともあり得ることでございまして、こういった点につきましては私ども今後十分注意いたしたいと思います。  なお、先ほどのNHKの放送でありますが、多少私の話しました内容と違っておる点がございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 これは重大な問題なんですよ、金子さん。農業法人はすべてもぐりの法人にして云々ということは、こういうことが間違って放送されるものではない。公共機関としてのNHKのローカル・ニュースとしてこれは流されておるのですよ。そういう考え方を改められない限りは、私は両者間の話し合いというものはなかなか解決がつかぬのではないかという不安を持つわけです。
  25. 金子一平

    金子説明員 一言だけ追加さしていただきたいと存じます。ただいまの点に関してでございますが、私がNHKの記者に語りましたのは、農地法上無効であるから、従って、その所得法人に帰属するということではなくて個人に帰属すると考えざるを得ない、それから、法人自体を否認するという考えは毛頭ない、これは登記法で有効に成立している以上は法人としてはあくまで形式的には成立しておるものと考える、こういう説明をいたしたのでございますが、その説明が必ずしも十分に相手方に納得できなかったのじゃないかと、今先生のお読み上げになった文章を拝聴いたしまして感じたわけでございます。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 こういう重要な問題に対して口頭でお話しになったようでありますが、少くともあなたの談話を放送したものはこういう形になっておるのです。こういうものが、出先機関をして必要以上に硬化せしめ、そして現地に行ってはつぶす考え方に立って徹底的にやっつける、こういう態度になってきた大きな原因の一つだろうと思うのです。  たとえば、倉吉市志津の進木農園代表者の進木亀寿という人のてんまつ書によりますと、「まず上らせてもらうと座敷へ上り、設立関係の書類はないかと問われたので、倉の中の重要書類と一緒にあるかもしれないと言ったら、自分もついていくと無理に倉の二階まで勝手に上り、設立当時の書類を出したら無理に書類包を解かせ、あれもこれもと土地登記書類、家屋台帳まで家まで持ち帰らせ、それから他に書類はないかと言われたので、日記帳、法人関係支払帳があると言ったらそれを見せと、これもまたあとを追ってきて帳簿かごの中のいろいろな日常の支払帳や裁培法つけ込み帳、六冊も大学ノートを出させ、その際財布の現金まで調べた。」云々というように、いやしくも国が定めた法律に基づく県の農業会議が出したてんまつ書に、かくのごとき——これは相当柔かい表現になっておると思います。私がこの間現地で聞いたものはもっとひどいのです。少くとも公文書に匹敵する書類でありますからこれは相当慎重な表現をしておるものと思いますが、それを読んでみましてもこの程度のものになっておるのであります。そういうことはすべてこの農業法人問題に対するあなた方の基本的な考え方の差異から問題が発生しておると思います。  そこで、塩崎さん、農業法人成りの傾向は、個人経営の場合の税負担法人経営による税負担よりも過重となってきておるところに問題が起きておると思うのです。先ほども扶養控除が上ったりあるいは基礎控除が上ったりするからだんだんその弊害が少くなってくるというお話でありましたが、それは確かにそうでありましょう。問題は、このような個人課税法人課税との不公平をできるだけすみやかに是正していくということが、脱税目的とあなた方が断定されがちな農業法人成りの傾向に終止符を打ち、本来の農業経営の近代化やあるいは合理化の真の共同経営、真の法人の趣旨にマッチする方向を新しく発展さしていくことになると思うのです。従って、問題は、この税法上、農業経営に必要な経費として家族労働報酬の取扱い、この問題を解決していけば、税金対策から出発した法人成りというものについては処理が可能になってくる面が開けると思うのです。そういう点について大蔵省としては現在どういうふうな見解なり方針を持っておられるか、これは一番大事なことだろうと思うのです。その問題を処理されれば、国税庁当局両者の板ばさみになり、あるいは国の行政が二元的な印象を与える結果になったり、そういう問題はおのずから解消していくと私は思うのであります。そういう点をまず根本的に処理解決していくということが必要であり、今両者間の話し合いの根底に、次の段階においてはそういう方向へ行くんだという一つの基本的な線があって初めて両者話し合いも進んでいくのではないかと私は思うわけであります。これは大臣なりあるいは次官なりに伺うべきことではありましょうが、あなたは実務を担当しておられその方面のエキスパートでありますから、一つこの際御所見を承わっておきたいと思います。
  27. 塩崎潤

    塩崎説明員 個人企業法人企業の問題に関しますところ足鹿先生の御意見、私はごもっともだと思います。先ほど申し上げましたように、この問題につきましては四月以降も早急に企業課税のあり方の問題といたしまして根本的に検討したい、こう申し上げておるわけであります。御承知通り白色申告者ならば家族労働のものでも単純な扶養控除しか認めないということがある。青色になりますと、これが専従者控除といたしまして、給与を支給するならば八万円以下の控除を認める、こういうことになっております。法人になりますと、法人経営実態にもよりますけれども家族労働として適当なる報酬金額だけは法人企業収益から控除する。こういう三本建が決定いたしました企業法人等に対しますところ課税方式であります。私どもは、税制実態によって課税すべきである、社会の実態に基いて課税すべきであると、かように考えております。そういたしますと、現在までもだんだん世の中が変って参りまして、違って参るかもわかりませんが、今までのところでは、個人企業、特に農業あるいは中小企業個人企業ところで家族に対しまして給与を払うという慣習は今のところどうも若干擬制に過ぎはしないかという感じが私どもは現在のところいたしております。これがだんだんと個人主義的に分化いたしまして給与を払うという慣習がつきますれば、これは別でありますけれども、現在のところ、私どもの気持といたしましては、まだ給与と見るのは実態に合わないのじゃないか。やはり、所得所得の世帯主あるいは経営者に所属いたしまして、その家族に対しまして何らかの金銭が払われるというようなことが今までの社会の実態ではなかろうか。だんだん進みますと、親子の関係におきましても個人主義が分化いたしまして給与の関係になるかと思いますけれども、今のところは、私どもは、まだそこまでいってないのではないか。しかしながら、今申し上げましたように、青色につきましてはもうすでに給与の控除というものを認めております。しかしながら、青色申告になります条件としては、農業方面において必ずしも容易ではない、こんなふうにも感ぜられますので、さしあたりといたしまして、私どもは、青色白色によるところのこういう家族労働関係の控除のアンバランスはできるだけ直したい、こういう考えを持ちまして、今回扶養控除の額を上げて参った次第でございます。その上げ方におきましても、たとえば配偶者が専従者になって五万円以上の給与を経営者からもらうような場合には、一人目は今まで通り五万円だ、今度の改正によって七万円にしないのだというようなことで、青色申告者と白色申告者のバランスをとって参りたい、かように考えまして御提案申し上げておるのであります。  なお、私どもは、必ずしも法人企業の方が税負担が軽いとは思っておりませんで、今までの課税基準によって単純に計算いたしましても、法人の方が重いような場合がある。今回の農業法人経理の状況を見ますと、むしろ青色申告者になった方が税負担が軽いというような計算例に、私どもの計算ではなって参ります。法人の方が個人企業よりもまだしも純粋の企業でありますから、生計費が分離しておりますので税負担は重くてもいいという考え方が普通に出て参りますので、そんなふうな関係から出ておる点もございます。なお、法人企業になりますと、先ほど来直税部長も申されましたように、普通の個人農業のように標準率課税という制度はとりません。そうなりますと、できるだけ複雑と申しますか、法人らしいところの帳簿をつけていただく、税務署もその帳簿の実態をできるだけ判断いたしまして課税する、こういう制約も出て参るかと思います。なおそれに給与が適正かどうかという判定もある程度加わります。そうなりますと、法人税の二重課税の問題も起りまして、私は必ずしも法人の方が税負担が軽いとは思っておりません。  長々と申し上げましたが、これらの三つの関係について、できるだけ現実の情勢に即し、将来の方向も考えまして、妥当な企業課税のあり方を考えて参りたい、かように考えております。そのときに、一番大きな考える要素といたしましては、先生のおっしゃいました家族労働報酬をどういうふうに見て参るか。私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ給与というような擬制の形をとらなくても大目に見ていきたい、かような気持は今回の改正の趣旨からうかがわれるところではないか、かように考えております。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 事務当局に対するお尋ねは一応この程度で終りたいと思いますが、最後に一点伊東農地局長に伺いたいのであります。  本年一月の十日であったと思いますが、香川県の農業会議会長名をもって、中国、四国の各県農業会議の代表者の結論農林省に、照会状の形式ですか、公開質問状の形式ですか、よく存じませんが、出されておるように思います。これは問題の本質を非常についておる大きな問題でありまして、そう簡単に結論は出ないと私も思いますが、現在その点について御検討の状態はどういう状態でありますか。ただ、一番大事な点は、農地法そのものに修正または手を入れないで、この農業法人化の方向、農業経営の共同化を通じて近代化なり合理化を促進し、経営の零細性を克服、改善をして、そうして生産力の増大をはかっていくという方向については、私は農林省といえども御異存はないと思うのです。その基本的な構想は、これは農林大臣から伺うのが至当であろうと思いますが、直接の担当者として、大体の基本的な考え方——この質問状は非常に問題の核心に触れておる。これ以上の問題は私はないと思うのです。その結論は、結局、近代化をどうして進めていくのか、そのためにどういう措置をとろうとしておるのか、農林省方針を求めておるということになろうと思うのです。その点について、いろいろ民間なりあるいは農業会議なりにおいても、いろいろな見解なり意見が出されておる。最近の言論報道機関におきましても、この問題は非常に大きく取り上げられております。この農業法人化に対して積極的な賛意を表明しない学者等の間にあっても、たとえば東畑精一氏のごときも、法人化なりあるいは共同化を積極的に推進していく場合において、経営と家計を分離して経営内部を明確にしていく、そうするためには法人の場合は強制的にとことんまでやらなければならぬ、従って、そこに新しい道として、経営内容の分析を通じて経営をどう企画していくかというような点に大きくプラスをするであろうという、東畑先生はどっちかというと消極的な態度であると私どもは見ておりますけれども、それにおいてすらもやはりこの法人化の問題に対する評価は適正な評価をしておられると私は思うのであります。  要は、今われわれが問題にしておりますのは、何とかして農業課税の軽減を受けよう、——現行法律が税の公平の原則を逸脱しておるきらいが農業部面において非常に多い、これに対する農民の自発的な創意から生まれたものでありまして、そのこと自体どもは全面的に正しいとは考えませんが、これを一つの起点として、今後の日本の農業のあり方、特に近代化と共同化の面をどう推進し育成していくかというところに問題があるのでありまして、その点に対するところ農林省の基本的な考え方がもしありますならば、この際承わっておきたいと思うのです。
  29. 伊東正義

    伊東政府委員 今香川県が代表になりまして質問状が出ましたことに関連しましての御質問でございますが、これにつきましては、実はまだわれわれ回答を出しておりません。これは、いろいろ研究すべき、農政の基本に触れますような問題がございますので、実は、出してきました人々とも一応了解を得まして、まだ回答はいたしておりません。今御質問のありました基本的な問題でございますが、言われております農業法人化という問題も、実はいろいろございまして、先生のおっしゃっておりますように、いわゆる法人成りの傾向、これは農業だけでなくて商工業も同じでございましょうが、私は、課税の問題に関連して法人成りの問題というのが農業において出てきたのだろうと、発生的には実は考えておりまして、課税の問題がある程度解決されればその問題は解決する。先生のおっしゃいましたいわゆる経営の共同化といいますか、今の農地法の所有制限にも直接触れますような、そういう意味の経営の共同化につきましては、これは非常に基本的な問題でございます。今の農地法でも、実は所有制限は平均して三町でございますが、それ以上も持てるようになっております。二十二年と三十年を比較しますと、五千戸くらいが三町以上にふえております。そういう傾向が今の法律でもできるのでございますが、一般的に、たとえば土地を出資しましたり、そういうような形で、いわゆる土地の所有と経営とを分離していくというような形の問題、これにつきましては農地法全般に触れる問題でございます。単に農地法だけでなくて、これは協同組合法にも非常に関係がございますし、その他の法律にも関係があります非常に大きい問題でございますので、われわれとしましては、経営の合理化をはかっていく面からも、共同化、いわゆる法人というものは、あるいは今の商法上の法人がいいのか、あるいは協同組合的なものがいいのか、そういう検討すべき問題がございますので、われわれの基本的な態度としましては、今度できます制度調査会というものもございますし、そういうところで当然取り上げまして、農林省全部の問題としましてもう少しこれは検討したい、こういうふうに考えております。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 大体事務当局に対する質問はこの程度でいいのですが、あと、農林大臣がおいでになったら、その機会に若干締めくくりをさしていただきたいと思います。
  31. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 永山忠則君。
  32. 永山忠則

    永山委員 ただいまの問題に関連してお尋ねしたいと思うのですが、内閣法制局の方はどうなっておりますか。——それでは、法制局の方がおいでになるまで、ただいま質問されました点について、まだちょっと了解しにくい点がありますところお尋ねいたすと同時に、農林省大蔵省はよく打ち合せてやるということでございますが、もちろん、政府でございますから、内閣法制局等の意見もよくお聞きになってお進めになることであろう、こういうように信じておりますので、この場合内閣法制局の方からの意見も一応聞いておきたいという考え方でございます。  そこで、農林省の方は、徳島の分でも鳥取の分でも、農地法の遠反だという断定を決定づけられておるのでありますが、その点もう少し明瞭にしてもらいたい。違反であると考えられておるというような意味はわかるのですけれども違反であるということについて、決定的な御意見になっておるのか、お伺いします。
  33. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問でございますが、契約の内容が、農地法第三条で、たとえば賃借権を農地について設定しますとか、あるいは全面的な使用収益権を設定します場合には許可が要るのでございます。これにつきまして、許可なしにやっております契約の内容が三条に違反するということでございますれば、これは、われわれの考えとしましては、三条違反であるというふうに言わざるを得ない。将来の問題として、われわれはその契約の内容をどういうふうに考えたらいいかということは検討いたしたいと思うのでございますが、今までの許可を受けませんでやっております、全面的にこの農地を賃借してやっていくような契約を作っておるものにつきましては、農地法上の違反であるというふうに考えております。
  34. 永山忠則

    永山委員 現実において鳥取と徳島は内容が違うのですが、これは違反なりということであるとすれば、どうしても法的処置をせなければいけないんですが、それはどういうわけでやっていないのですか。違反のようであるから善処しなければならぬ、どうも疑義があるというような程度に伝わっておるのですけれども、決定的に違反だからこれをどうしろというような指示がまだないようでございますが、一応県の方を通じて、こういう点は是正さるべきだ、違反考えられるようであるというようなことは言われておるが、違反だからその法人を取り消せとか、その行為はいけないからこれに対する処置をどうするとかいうことはまだやってないのですが、その点はどうですか。
  35. 伊東正義

    伊東政府委員 今の法人の問題につきましては、われわれの方も、実は県を通して契約の内容等正確な報告を今とっております。その上で、われわれとしましては、将来はこういうふうに是正すべきであるというような指導をいたそうというふうに考えております。もし三条違反というようなことでございますれば、契約の内容検討しまして是正の措置をとりたい、かように考えております。
  36. 永山忠則

    永山委員 ですから、結局、違反だから法人を取り消す、違反行為として処罰するということには至っていないのじゃないかと思うのです。要するに、今の御説のように、内容を取り寄せて十分検討する、違反の疑いが十分にある、違反だろうと考えられるから、内容を取り寄せて、それに対して最善の道を講じたいというように受け取れるのですが、違反であるからこれを処分するということに踏み切っておられるかどうか。そうして、処分は、違反であると断定すれば処分せねばいかぬ。その処分方法をどうするか。取り消すのか。
  37. 伊東正義

    伊東政府委員 これは、正確に調査いたしまして、結論を出しまして、三条関係違反であるというふうに結論を得ますれば、われわれの方としましては、将来の問題としまして、契約の内容、たとえば定款の内容を変えるということも当然出てくると思います。たとえば、作業をいたします場合に、動力耕転機を持ちますとかあるいは動力噴霧機を持ちますとかいたしまして作業の共同化をしていくというようなことにつきましては、これは農地法違反とかいう問題は実は出て参らぬのでございます。土地を出資しまして会社を作る、あるいは全面的な賃貸借をするということで問題が出てくるのでございまして、形態としましては農地法許可を要しない法人というものも実は現在あるのでございます。そういう点に是正の措置を考えていきたいというふうに思っております。
  38. 永山忠則

    永山委員 結局、これは違反だから処分するというように決定されるのにはもう少し材料をとってやるということに聞えるわけでございます。私は、その違反なりやいなや、あるいはこの農業法人をどうするかという点については別の機会にお伺いすることにして、きょうはとりあえず税の関係だけにしぼって御質問したいと、こう考えておるわけです。  そこで、その法人関係者は、違反にあらずと、こう言っておるわけです。すなわち、法人に対しては農地法許可をしてもろうてもいいのだ、つまり農地法二条にある「個人」ということにこだわらずに、新しい法人に対しても、既存の法人には三条で農地法許可がされているのだから、新しい法人にも許可してくれてもいいのだ、それを農林省農地法二条によって、自作農あるいは小作農というものは個人だから、会社には許可できぬのだと言う、この二条で個人で縛ってあるから、会社はだめなんだと、こうおっしゃっても、既存の法人には許可されているのだから、この農地法第三条の二の五にある、「第二号に掲げる権利を取得しようとする者」と書いておる、その者は自然人たる個人ということでなしに法人ということも含めていいのであるから、だから農林省個人以外には許可できないという考え方には無理がある、鳥取の方の人はこういうことを言っておるわけであります。さらに、徳島の方の人は、どうも法人には許可できぬ、こういうようにおっしゃるから、それでは、いわゆる生産の共同と販売という行為の請負であって、決して土地の使用収益の権利の譲渡でも設定でもない、そういう請負行為をやるのだ、行為だ、そういう行為に対しては、権利の設定ではないのだから、農地法許可がなくてもいいのだ、だからこれは違反でない、これを一つ行政訴訟に持ち込もう、こういうわけでありまして、これがほんとうに違反であるかどうかということの最後の決定は、その訴訟が起きて政府が決定づけるものであるわけです。その理由をもって農民の方から違反ではないのだということを言うし、さらに、農地法許可をしてもろうてもいいのだということをも言っておるのに、どうもそれは違反の疑いがあるからいけない、こう言われるなら、訴訟しましょうということで、今訴訟提起を計画しているわけです。従って、これが違反であるかどうかは、最後にはその訴訟によって決定づけられるものであって、また、農林省も、実態を調べた上で最後決定をして処置をしよう、こう言われるわけであります。これははっきりしているのです。そこで、大蔵省の言われることに非常な問題が起きる。これは農地法違反であるということを断定づけて、すべての税処置をやろう、ここに問題の焦点がしぼられてきます。だから、その点を違反であるという断定のもとに税の処置をされつつあるのであるか、これを大蔵省に聞きたいのであります。
  39. 金子一平

    金子説明員 お答え申し上げます。徳島の場合でございますと、これは当初果樹の現物出資をやりたいということで定款を書かれまして、知事でございますか農業委員会でございますか、許可申請をして断られた。それは農地法違反になるからだめだということで、結局肥培管理ということで県の方へ御相談になったけれども、これも農地法違反になるからということで許可を得られなかった。その結果、許可を抜きにして、有限会社設立登記をされたというふうに私は伺っておるのでありまして、知事なり農業委員会の方でそういう解釈をとりました以上は、先ほど来申し上げましたような、法律的と申しますか、形式の上に乗っかって私どもも第一線の課税ということを考えていかなければいけないのじゃないか。たとえば農地の贈与なんということが農村では次男坊、三男坊についてよくあるわけでありますが、やはり許可ということが形式的な要件になっておりますので、私どもは、許可を条件にものを考え許可がなければ贈与は無効だというふうなことで、ほかの方でも同じような扱いをいたしているわけでございます。
  40. 永山忠則

    永山委員 要するに、請負行為なのだから農地法許可は要らないのだと言っておるわけです。そうして厳然と法人は存在している。そのことはそれでは農地法許可を要するものであるか、許可がないものはいけないのかどうかということの決定権は国税庁がお持ちですか。
  41. 金子一平

    金子説明員 これは、昨年の、日は忘れましたが、当委員会におきましても、当時農林省当局からこれは違反考えるという言明がございました。それによりまして私どもはやはり農地法違反というふうに考えているわけでございます。
  42. 永山忠則

    永山委員 そこで、当時の情勢によって地元の方は請負契約に変えて農業法人をやっているわけなので違反でないと言ってがんばっているわけであります。これが違反なりやいなやを決定するのは政府なんです。政府がそれを決定せねばならぬものを、税務署の方で、農林省の方の意向も違反のようである、だから違反だということを前提にやるというところに、基本の問題がくずれてくるのです。その基本がくずれていくことであるし、同時に、法人を解散しろ、解散せねばいけないということを税務署が命令したり、そういうように解散を慫慂したり強制したりするということは、これはもう税務署の権限を逸脱しているのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  43. 金子一平

    金子説明員 前の問題でございますが、これは第三条の第四項でございますか、法律違反したものは当然無効だと書いてございますので、最終的に農林省としての御認定があるかどうか、あるいは裁判所としての認定を待つまでもなく、もしそういう事実があれば私は法律上当然無効じゃないかというふうに考えております。  それから、あとの問題でございますが、これは、先生から御指摘のように、法人が無効だとかあるいは解散すべきものだというようなことをもし税務署の方で指示するような事実がありましたならば、これは明らかに行き過ぎでございます。法人の設立が有効か無効かということは、税務署の関与すべき筋合いのものではないと思います。やはりその所得がだれに帰属するものかという認定の問題は税務署であくまでもやらなければなりませんが、御指摘のようなことがあってはいかぬし、また現実にやってはいかぬということをやかましく言っております。
  44. 永山忠則

    永山委員 これが違反なりやいなやということに対しては、今訴訟をして国家にきめてもらうというときに、税務署がこれは農林省もそう言うから違反だということを断定してすべて税の措置をするということ自体誤まりであるし、また、その法人設立違反なりやいなやの問題に全然触れる必要はないのだ。いわゆる所得税法第三条の実質課税主義というものは、法人設立違反であるとかなんとかいう問題には全然関係がない。要するに、法人というものは現存しておるのだ。その法人が違法性のものであるかどうかということについては、登記申請する場合において判断され、あるいは商法上これが違法のものがあるということもあとからわかって取り消されることはあるわけであります。そういうことが違法でないということがわかっておるときに、農地法違反だからその法人は認めないということにはならぬわけであります。要するに、国家が認めた法人というものが存在しておる。これは厳然たる存在を認めておるのだから、それの違法性があるとか、そのものは存在がないのだとか、それは農地法許可がないから所得個人に帰属するとかいうような、農地法の違法の問題には全然触れる必要はないのです。実質課税主義というものは、農地法違反問題にはかかわらない。その法人所得が実際にどういうようになっておるかということが実質課税の本質でなければならない。その法人が利益を亭受しておるかどうかという問題、その法人という名前があっても個人のどんぶり勘定になっておるか、法人がいわゆる利益を亭受しておるかどうかということが実質課税の本質でなければならぬ。厳然たる法人があるし、それを認めておるのに、その法人というものは農地法違反なんだから全然認めないという考え方法人課税を否認してかかるということは実質課税の本質に反しておる。こう考えなければいかぬと思うのですが、いかがでありますか。
  45. 金子一平

    金子説明員 お言葉を返して恐縮ですが、先ほども足鹿先生からの御指摘に対してお答え申し上げましように、私どもといたしましては、合法的な、でき上った法秩序の上に立って課税という問題を考えることをまず第一義的に考えていくべきではないかと考えます。従いまして、農林省の方で農地の移転を許可されておる法人等につきましては、実態法人であるものにつきまして、私どもは当然法人として扱っております。また、今後におきまして、農林省が、今問題になっておりますような果樹園でございますとかあるいは酪農でございますとか、そういうものにつきまして法人として認めていこうという方針が打ち出されました場合におきましては、その農政方針の上にのっかって、その方程式の上に立って法人課税ということを考えてしかるべきだ。ただ、お話のございました現在取り上げられておるものにつきましては、やはり農地が従来個人の手元にとどまっておる、法律的にでございますが、法人に移っていないというような場合におきましては、法律問題としてはやはり第一義的には従来の所有者たる個人所得だということで、法人を否認するとか認めないとかいうことじゃございませんで、所得の帰属の問題として、純粋の税法上の問題といたしましては、私は個人課税をするのが筋合いではないかというふうに考えておる次第でございます。
  46. 永山忠則

    永山委員 私の質問しているのは、農地法関係なしにいくべきではないかということです。どうしても農地法に関連しなければこの問題は解決せぬという考え方であるかどうか。それならば、今言ったように、農地法問題については訴訟で国家がきめなければ、この法人は有効なりや無効なりやはまだきまらぬのです。そうすると、国家の意思がきまらぬのに課税態度をきめてもろうては困るということになる。要するに、農民の方からは、農地法許可をしていいのをしてもろうておらぬという議論があるのでありまして、一切の請負行為だから、これは決して分益小作でもない。権利設定でもないんだ。だからして、請負事業の行為をやる法人なんだ。生産共同事業、販売をやるところ法人なんだから、それは決して農地法違反じゃない。こういうことについて農林省違反だと思うので今調査を進めておるんだ。しかしまだ調査は十分進んでいない。決定してこれをどう処分するかということはきまってないんだ。そこで、農地法の問題へ関連してやるんなら、それがきまるまではお待ちなさいと言うほかないわけである。そうであっても、それがきまってこなければ、お待ちにならなければいかぬのだということなんです。ところが、そうでなしに、これは農地法関係ないんだ。その法人実質課税でいくべきものなんです。すなわち、所得する金はどろぼうした金であっても何であっても——いわゆる法の秩序の前に立ってやるということはこれは正しい行き方でしょうけれども実質課税主義は、法の秩序とかなんとかいうことと離れて、そのものがどろぼうして得た金であろうと何であろうと、実体を所得しておればそれにかけるんだ、こういうことになっておるんです。そこで、それとは離れて、法人の現存を認めておれば、その法人というものが現存して実質法人経理をしておる場合は法人に、しかし、法人の名前であっても個人のどんぶり勘定だから個人にかけるということは、これは実質課税の本質なんです。課税に当って所得帰属の実態を見る。その法人の性格を見るとか、違法性を見るとか、その金の出所がどろぼうしたものか詐欺のものか、あるいは詐欺で法人を作ったものかというようなことには関係なくして、実態を見るのが第三条にある実質課税の問題である、こう考えるのであります。やはり、課税の中心は、農地法とは離れて、法人収益が享受されておるかどうかということ自体を見る、これが所得税法第三条の実質課税主義の本質ではないか、こういうように思うのですが……。
  47. 伊東正義

    伊東政府委員 課税の問題は別として、農地法上の問題でございますが、今先生の御質問になっている全面的な使用収益請負あるいは農地そのものについて賃借権を設定していくというような内容になって参りますと、許可を受けないでやりましたときには、これはやはり農地法上からいきますと違法ということになって参ります。課税の問題は先生のおっしゃる通りこれは全然別だとわれわれは考えておりますが、農地法上はそういうようになっております。
  48. 金子一平

    金子説明員 今農地局長からお話のございましたように、農林省なり何なりの認定というような問題は別にいたしまして、違反の事実があれば、それは法律上そのときから当然無効だと私は考えておりますので、やはり、裁判の結果を待つということでなしに、これは毎年々々の課税でございますから、税務当局といたしましては、はっきりその事実が認識できれば、正しいあるべき法形式と申しますか、法秩序と申しますか、その上に乗って課税していく。実質課税と申しましても、どろぼうによって得た所得課税するというようなことはやっておりません。それは現実問題としてやってないのでございまして、要するに、そういった法秩序のもとにおいてなおかつ所得が別個の人に帰属しておるのだという場合におきましては、やはりその実際に所得を得た人に課税する。これは問題はございましょうが、ただいま御指摘のような点につきましては、先ほど来私どもが申し上げておりますような線で課税するのが課税当局の従来の行き方でございます。
  49. 永山忠則

    永山委員 どろぼうしたものには課税せぬといっても、もともと詐欺をやっても何をやっても自分の収入のふえたものについては税金をかけておるということなんだから、実際上はやっておらぬということはないのであります。要するに、法律違反でやみの行為をやって、やみで米を売って所得を得ておったって、みな課税を受けておるのです。どろぼうよりもまだ悪い行為をしてその人の収入がふとれば、その収入に対して税をとっておるのです。だから、結局、実質課税主義というのは、収入になっておる者からとるということなんであってその収入が違法なりや合法なりやということを認定する権利は税務署にはない。国家にあるんだ。農業法人問題は今訴訟で農地法違反なりやいなやをきめようというのであって、訴訟に負けて、いけないということになれば、われわれは個人で払いましょうと農民は言っておるわけなんですから、それが違法であるから将来処罰されたら困るであろうから一つ恩を着せて個人に今からかけておくぞという考え方は、思いやりはありがたがっておりますけれども実質課税の本質からは逸脱しておる。だから、所得税法三条の二にあるように、所得税はその収益を享受する者に対してかけるのですから、その収益を享受する者は農業法人なんです。法人が存在しておることはわかっておるのですから、その法人が事業をやって、それから給料を払い、そうして収入を持っておるということになれば、実質的に収益を享受しておる者は法人なんです。ただ、法人という名であって法人にあらずして個人でやっておる場合には、個人にかけるということが実際上におけるすなおなる解釈であるとわれわれはとっておりますし、法制局は見えてないようでありますが、内閣法制局の方の解釈も、われわれの今言いますような解釈であることは、われわれの農業法人関係自民党政調委員会で内閣法制局の言葉を十分聞いておるのでありますから、この内閣法制局の解釈を十分一つ検討の上で正しい課税をお願いしたいと考えておるのであります。  なお、この場合、部長さんが、徳島の分は請負の金を九割会社の方がもらうようになっておるから分益小作である、だからこれは許可を要する使用収益の全面的権利の設定だと言われましても、地元農民の方は、小作じゃないのだ、自分みずからの土地を自分で耕してやる関係なんであるから、実質的にも自作をやっておるのであるし、それを全部小作権の設定というような権利の設定をやっておるものじゃない、共同生産、共同販売をやっておるのであるから、共同事業、共同販売という行為自体が会社との契約の内容になるのだから、決して農地法違反ではない、こう言っているのです。しかし、これを農地法により許可を要するということになれば、今申しましたようなものは個人に限定せず既存の農業法人でも許可しておるのだから、これは法人でもこの農地法三条によって許可ができないという法人とは違うというように解釈しておるというように言っておるわけでありまして、訴訟してでもきめたいというような状態であり、政府の方でもまだ決定されず、農民は困難な事情にある、こういうように考えておるのでございますが、この点に対しては別途の機会に農業法人の本質問題として御質問するといたしまして、大臣が見えたようですから、私は一応足鹿君に譲りたいと思います。
  50. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 足鹿君。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 午前中、大臣のおいでになりますまで、農業法人問題につきまして、農林大蔵両事務当局並びに国税庁お尋ねをしておったわけでありますが、最後に農林大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。農業を目的とする法人に対する基本的な方針とでもいいますか、この点について伺い、さらに今までの質疑応答の経過からの点について伺いたいと思います。  農地改革によりまして地主制度が崩壊した。その結果農業生産力は非常な飛躍、発展を見たわけでありますが、残念なことには、農業の零細性というものは解決されないで、むしろ零細性は進んでいく状態になっております。この問題をどう解決していくかということは、今日の農政の一番大きな問題だと言えると思うのです。農地法は地主の制度に対しまして抜本的な解決を加えたもので、これは画期的な問題でありますが、今日の段階におきましては、もはやこの農地法の基本理念とでもいいますか、自作農主義そのものでは、零細性を克服し、日本農業の近代化と合理化、それを前進させていく協同化の問題は解決できない現状だろうと思うのです。こういう点から、最近、各都道府県におきまして、農業を目的とするところ法人が出てきまして、その数は六百をこえておる。ずっと遡及いたしますと、国税庁調査によりましても千を突破しておるわけでございますが、最近におきましては六百。その中で農地法上の問題を持っておりますものが二百ばかりあるわけであります。法人設立の目的はこの税負担の軽減をはかりたいということが主眼であるようでありますけれども、この法人の性格とかあるいはまたその内容ということにつきましては、これは問題はあることにはありますが、とにもかくにも、この重い税金からのがれ、さらに近代的な農業生産力の増大、拡充をはかろうとしておる一つの方向は明らかに出ておると言っていいと思うのであります。農林省が自作農主義を現在の農地憲法として持っておられることに対して、今直ちにこれの結論を求めるということが非常に困難な問題であるということは私どももよく存じていますが、少くとも現在農業法人化の問題をめぐって問題が起きておりますのは、大蔵省側は、農地法違反であるがゆえをもって法人そのものを否認するかのごとき態度をとられ、一つの事例を申しますならば、昭和二十七年に設立をし、自来数仲間法人としての取扱いを受け、その役員あるいは社員におきましては、報酬を受け、その報酬から源泉徴収を税務署に納入をしておる、こういう事例もあるのであります。にもかかわらず、農林省農地法違反をたてにとって、大蔵省は、これを遡及課税として個人申告に切りかえしめることを、相当強要に近い威嚇的な態度をもってやられて、鳥取県あるいは徳島県等において問題が起き、それが端緒となりまして、現在天下の大問題になっておるのであります。それは、ただ単にこの法人が適法になっておるとかおらないとかということよりも、むしろ日本農業の将来のあり方、その指向する方向をこの問題が含んでおるから、あらゆる言論報道機関あるいは学会その他の面において大きく取り上げられておるわけでありまして、この点につきましては農林大臣もよく御存じのことであろうと思うのであります。  そこで、この問題の解決といたしましては、まず当面三月十六日に確定申告の期日が迫った、そこで、もう余日がありませんので、従来設立登記をし、法務局が認可を与えた法人を、農地法上の疑義をもってこれを否認し去るというような国税庁なり大蔵当局態度につきましては、納得できないのであります。この点について先日来大蔵委員会において政府の所信をただし、また本日当委員会でこの問題を取り上げていただいておるのでありますが、午前中の質疑において明らかになりましたことは、期日が切迫をしておるので、国税庁の直税部農林省管理部が出されました意見の食い違いというものについて、両者間でこれを協議調整をして、十六日の確定申告に間に合わせる、こういう言明を午前中農林省並び大蔵当局から聞いたわけであります。  これはこの問題を解決していく上に一歩前進だと思うのでありますが、この自民党法人化小委員会農林省提出いたしました意見、また直税部が同小委員会に出しました意見については長くなりますから省略いたしますが、両者ともその事実は認めておられるのであります。これをどう調整するか。少くとも国が認めた法人に対しては実質課税原則に基いてやるべきものであり、遡及課税をするとか、あるいは年度を画して、ある部分は遡及課税を適用しないがある部分以下は遡及課税をするんだとかいうようなことでは、この問題の重大性にかんがみて処置がつかぬので、農地法上の問題とは別個に、まず現在起きておる事態に対して問題を処理しなければならぬという意見は、午前中の質疑において完全に一致いたし、その点については御言明があったわけであります。  そこで、その点を農林大臣として特に強く関心を払われて、大蔵当局とも十分折衝を遂げられて、法人実態がどうだとか、あるいは経理上の不備があるとかいうような点ではなくして、そういう点があるならばこれは指導によって是正していけばけっこうなのでありまして、現在起きておるものに対しては、少くともこれは実質課税原則から、遡及、個人申告に切りかえて追徴をするというようなことがあってはならぬと私ども思うのであります。そうして、今後の問題については、農林省に対して香川県の農業会議の会長名をもって問題の核心に触れた質問書も出ておることでもありますし、これは重要な問題であるから直ちに検討の結果をここで言うわけにも参らぬという伊東農地局長お話でもあります。私はもっともだろうと思うのですが、その問題はその問題として、私が前段に述べた、現在の段階におきましては、農地法の基本理念である自作農主義に基く運用では零細性の克服ができない、その一つの道として農業法人が生まれてきた、その農業法人一つ課税上の問題で大きく動揺すると申しますか、非常に困難な場面に到達しておる、この二つの問題をどう処理していくかということが一番大きな問題だろうと思うのです。前段の農業を目的とする法人に対するところ農林大臣の基本的なお考えと、それから、三月十六日を前に控えて、両者間で協議調整をするということについて、遡及課税あるいは個人申告への切りかえということはなくして、まずできたものはできたものとして、適法にでき上ったものに対しては実質課税原則からこれを認めていく、こういう態度が私はもっとも重要な態度であろうと存ずるのであります。ところが、私きょう資料を持ってきておりませんが、先日農林大臣は仙台に御出張の際に何かこの問題について談話を発表されまして、ちょっと忘れましたが、どうもわれわれが期待しておったような農林省立場というものが非常に不明確のような印象を受ける談話を発表されておったように思うのであります。新聞でありますからよくわかりませんので、この際その点について、もし御意見がありましたならばあわせて大臣の御所信を承わりたいと思います。
  52. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 まず第一に、農業を目的とする法人の問題でございますが、この農業を目的とする法人といいましても、これを裏返しますと、農地を持ち、かつ農業をする、こういう法人であろう、こう思うのでございますが、実は、法人をして農地を有せしめるかどうか、これを制度上に取り上げるかどうかという問題につきましては、この前も当委員会等におきまして私が簡単ではありましたけれどもお答え申し上げました通り、まだわれわれとしては同意いたしかねております。と申しますのは、農政の重要問題はほとんど土地問題を差しはさんで経済的に発展したことは御承知通りであります。従いまして、上古における土地制度の改革も班田収授の方法をとり均田制をとってやったようなこと、また同時に、その後名田の発達からいたしまして、ついに大名、小名というふうな封建的な土地制度にも来ましたこと、また、明治の産業革命におきまして、それで同時に土地制度をはっきり認めたような沿革から見ましても、これをどうするかということはそう簡単には私は参らぬと思う。従いまして、法人に土地を持たせることを制度化するということにつきましては、農林省としましてはなお十分に検討さしていただきたいと思います。  同時に、次に、いわゆる農業を目的とする法人でございますが、現行の制度の上におきましては、御承知通り、会社法による場合には、これは商法による法人である。それから、民法による場合には公益法人の性格を持っておるのでございます。これはまあ必ずしも適当しておらぬことは申すまでもないことでございまして、かりにこれを民法の法人とすれば、これは公益法人でございますし、片方は営利法人としての商法上の法人でございますが、これは直ちに採用するかどうかもたくさんの問題が起っておるわけでございます。しからば、それと別個に農業を目的とする法人はどうかということにもおのずから発展するわけでございますが、これらは、先ほど申し上げました通り、土地制度そのものと非常に重要な関係を持ちますので、われわれとしましては直ちにこの方針をきめかねるというのが現在の段階であります。かつ、過般やりました農地制度改革におきましても、実は、一族の総有的な関係にあるという土地等も、法人が持っている場合に、一切を解放して、そして事実耕作しておる者にやるというふうなことをいたしたのでございまして、これらの関連を見ましても、この問題についてはいろいろな問題があろうかと思うのでございます。この問題はもうしばらくわれわれに研究の余地を与えさしていただきたいと思います。すなわち、簡単に申し上げるならば、今法人格のものをわれわれがどんどん進めるという意向はないということでございます。  第二段の、現在すでに、有限会社法によるものだとか、そういうようなもので法人が出て参ったという事案もあろうかと思います。この問題につきましては、実は、われわれの方としましても、農地法許可があるからないからということでこの問題を税法判断にするということの当否については、私たちはほんとうは納得しかねます。事実上の運営そのものを見て、そうしてされるのが相当だと思うのでありますが、それらはへ理屈を言うておったのでは片づかぬことなんでございまして、先ほど御提唱のありました通り国税庁農地局調整をするという方向で進ましていただきますならば、具体的にふさわしい結論を得るように努力さしていただきたい、こう思います。しかし、鬼が出るか蛇が出るか、これは非常にめんどうな問題でございますから、そのつもりでとくと両省でやるつもりでございますから、これで御了承願います。     —————————————
  53. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 次に、北洋漁業問題について質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  54. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、先般二月二十七日の当委員会におきまして、外務大臣並びに農林大臣の出席を得て、日ソ漁業問題に対する質疑を行なったわけでありますが、非常に時間も不足でありまして、十分質疑を尽すことができませんでしたので、さらに本日大臣の出席を求めてお尋ねするわけでありますが、先般の委員会において、農林大臣におかれては、現在進行中の日ソ漁業委員会にオホーツク海におけるサケ・マスの漁業の問題について提案を行うべきでないかという私の質問に対して、それは日本の側から見て不適当である、こういうような答弁がなされたわけでありますが、まず、この不適当であるという真意が明確でありませんので、この点について御説明願います。
  55. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは前農林大臣の赤城さんにもその当時の事情をよくお聞きしたのでございますし、かつまた赤城さんも当委員会等にもその当時の事情を御説明になったと聞いておりますが、これは、三十一年の日ソ交渉時代から、向うではオホーツク海のサケ・マスの禁漁を主張するという根強い提案があったわけであります。しかし、その当時は取りきめられないで、昨年の第二回の問題になりました。そこで、これまた強く向うから主張されまして、究極におきまして、サケ・マスについてはその資源の保存の関係からオホーツク海では操業しないということに同意し、同時に、最終的の問題として、一九五九年一月一日からは操業しないかわり、本年つまり昨年は一船団は東に移し、一船団だけにする、こういう了解に達したということでございます。  しかし、この前も御指摘のあった通り、資源の学術的調査が終り、そうしてきたならばいいじゃないか、従って本年といえどもその主張を何もちゅうちょすることはないのじゃないか、これが御趣旨だったと思うのでございますが、御承知通り、日ソの漁業交渉は非常な険しい折衝を重ねており、そして昨年のような結果になったのでございます。本年もこの問題と取り組んで、科学的検討を重ねてやるということについてすでに二十数回の小委員会を開き、さらに十一回の本会議等も開いたわけでございますが、昨年、日本側としましてはつらいことでございましたけれども、一たん協定をいたしまして、魚族保存のためにとらぬ、こういうことにいたしたのでございますから、それを直ちにくつがえして持っていくということは、国際間の信義上の問題もありまして、第一にわれわれといたしましてはやりかねるという問題でございます。第二は、日ソの漁業交渉の経緯から見ますと、やはり相手方のあることでございますので、その出し方についてもその時期方法等を選ばなければならない。これが第二の点であります。第三には、科学的調査ということになっておりますが、昨年も実は相互に調査をいたしたのでございます、現在の段階ではまだその結論に達しておらぬのでございます。同時にまた、第四番目としましては、赤城さんにおかれましても、当時独航船等の問題もあって、これらもあわせていろいろ折衝された経過がございます。そういうふうなことでございますので、今にわかに、まだ準備のない、科学的調査の完了しておらぬ、双方がまだ合意に到達しておらぬ段階におきましてこれを提案することは適切ではない、こう考えております。  従いまして、科学的調査が進み、時期等が熟するに至りますならば、これはまたいろいろお話し合いをするということもあると思っておるのでございますけれども、現在のところ、今申し上げたような情勢であることを御了承願いたいと存じます。
  56. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、この日ソ漁業条約は、御承知通り、一九五六年に締結されて、十カ年の条約期間があるわけです。昨年の取りきめは、御承知通り、一九五九年の一月一日以降は、オホーツク海の条約区域内においては、すなわち領海以外、いわゆるオホーツク海の公海においては漁業を停止する、こういうような重大な取りきめを行なったわけですが、一九五九年以降ということになると、今後も条約の期限一ぱいオホーツク海においては漁業を行わない、こういう前提に立った取りきめであるので、政府としては今後といえども漁業委員会に日本側からこの問題の提案をすることはできないのだというようなことで不適当であると大臣は言われたのですか。
  57. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 先ほども申し上げました通り、一昨年来非常に強硬な向うの申し出があり、昨年漁業交渉の段階におきましても、実は赤城さんとイシコフ大臣との間の話し合いにおきましてもかなり困難な事情があったわけでございます。そこで、オホーツク海のサケ・マスは魚族保存のためにとらない、こういうことを昨年協定したわけでございます。そして、その後日本としましては、科学的な研究調査等もまだ完備しておりませんし、双方で資料等を持ち合うということになっておるわけでございますが、まだソ連をして納得させるような、また日本からも強く主張するような科学的な材料等もそろわぬ段階でございますので、一つには日ソ交渉の非常にきびしいこれらの事情にかんがみて、独航船等の問題を提案するのは妥当にあらず、こういうことでございます。同時にまた、十カ年の期限でございますから、このままでいくならばおのずから十カ年の間オホーツク海におけるサケ・マスはとらないということになるわけでございます。双方の研究、特に日本側でもって科学的研究がだんだん取り進められて、そして相手方を首肯せしむるような資料等が整備しましたならば、これはもちろん新しい提案として出すことは当然のことではありますが、現在のところそういう事情にはない、こういうことでございます。
  58. 芳賀貢

    ○芳賀委員 昨年のとりきめの経緯については、大臣が数回にわたっていろいろ弁明されておる。これはもう国際的にも国内的にも非常に納得しがたい取りきめであったということは周知の事実です。ですから、ここで私は繰り返してその点を指摘する考えはありませんが、ただ、昨年の第二回漁業委員会の議事録によりますと、その第四項には、「科学的調査研究の調整」という事項が記載されております。     〔吉川(久)委員長代理退席、大野(市)委員長代理着席〕  この内容によりますと、「両締約国は、千九百五十八年において別添二の計画に示された科学的協同調査を実施する」ということが具体的に明らかになっておるわけです。それから、オホーツク海の出漁停止はやはりこの委員会できめたのですが、この出漁の停止の問題は条約の付属書の規定によってきわめたわけです。これは議事録の第九項に載っております。ですから、順序といたしまして、第四項で一九五八年以降両国間において科学的な共同調査が行われて、その結果オホーツク海の漁業を当分停止するなら停止するということになるならば、これは理論的にも成り立つといたしましても、こういう共同調査をやるということをきめておきながら、共同調査の結果を待たないで出漁停止をこちらが持ち出してきめたということに対しては、これはもういかに弁明なされようとしても納得させることはできないのですね。従って、この科学調査は昨年から共同調査の形で進められることになったのでありますが、私たちの知っている範囲においては、このような一番重大なオホーツク海の規制区域内の海域における実態調査というものはまだ行われていないわけですね。相互間において交換的な意味において相手方のたとえば漁場の陸上基地とか施設とか、そういうものをただ調査しただけであって、一番大事な漁業資源がその海洋の中においてどういう状態であるかというような調査というものは、おそらく昨年度はやっていないわけです。これは一年間に終るわけではないと思いますが、三カ年計画でやるとしても、これらの調査というものはやはり積極的重点的に進めていかなければならないと考えるわけです。当然、今回の漁業委員会においても、これらの調査原則等の問題、どういうような計画で今年度の調査を行うということについても、これは話し合いが進んでおると思いますが、この点に対しては政府はどういうような考えを持って臨もうとしておられるのですか。
  59. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 実は、その漁業委員会の申し合せによりまして、昨年相互に調査団を派遣して調査をしておる、これが一つです。一つは、国内におきましても調査船を派遣して漁族の資源調査を続行しておる、こういうことであります。現に、一月の十二日から開始されております第三回の漁業委員会におきましても、カムチャッカ地方における内水、つまり河川における資源の関係、さらに海洋における資源の関係、同時にまた漁獲からくるいろんな調査というものは、やはり相互に資料を提供してやっておる、こういう事情でございまして、この調査は組織的にやっておるのでございます。同時に、去年調査もしないで向うの提案をのんだのは納得いかぬということでございますが、経緯は、そのように、昨年は向うの提案を了承して協定に至った、こういうことでございます。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、今年度オホーツク海における両国の共同調査というものを具体的にどうやるかという点は、やはり日本側においても一つの案を持って漁業委員会に代表が臨んでおると思うのです。その内容について、どういう基本的な案を持って共同調査に臨んでおるか、特にオホーツク海に対してはどういう態度でことしは共同調査を進める考えであるか、その基本的な態度内容だけを御説明願います。
  61. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 日ソ両国間の共同に調査いたしまする事項に関しましては、よく、二国間の相互交換だけが共同調査、こういうふうに考えられておりますが、実はそうではないのでありまして、相互交換も一つ内容でございますけれども、同時に、それぞれ分担事項をきめまして、海上及び陸上におきまする調査をいたしておる次第でございます。昨年は水産庁の船を三隻派遣して、そして沖合いにおきまする鮭鱒に関しまする形態学的な生物調査をいたしたのでございますが、今年はさらに一隻船を加えまして、四隻の船をもちまして、しかもその一隻はできる限りカムチャッカの周辺におきまする鮭鱒の状況の調査をいたす、こういうことにいたしておる次第でございます。これが調査をいたしまする内容といたしましては、ただいま申し上げましたように、鮭鱒の形態学的な調査、あるいは血清によりまする鮭鱒の系列の調査、あるいは標識放流をいたしましてその回遊の状況を調査するとか、こんな調査もいたしておる次第でございます。なお、各母船にはそれぞれ水産庁の監督官が乗り込んでおるのでございます。これもまた母船にとりまするものの必要なサンプルを取り上げまして調査をいたしておる次第でございます。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その中の、もうすでに全面禁止区域になってしまったオホーツク海の条約区域内の問題の調査をどう進めるのですか。
  63. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 オホーツク海の中にも政府調査船を進航させまして、そこでサンプルをとりまして、これがデータの科学的な分析をする、こういう態勢でおる次第であります。
  64. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはあくまでも共同調査でなければ意義をなさないわけですね。一方的な調査がいかに科学的に行われても、それは相手を納得させるだけの説得力がないような場合には、これは日ソ漁業会議においてそれほど大きな効果をあげないような場合もあるのです。ですから、共同調査という場合にはあくまで両国の共同の責任のもとに共同の調査を行うという体制をこちらから具体案を示して、特にこのような全く歴史的にわれわれの取り返しのつかないような取りきめを政府がやられたのですから、こういう点に対しては、やはりソ連例からも積極的に、お互いにこの海域の調査をやろうじゃないかというようなことで進まなければ、結論が出ないと思うのです。ですから、本年度においての調査というものは、こういうところ重点を置くべきだと思う。だから、それに対して現在どのような態度で代表が臨んでいるか。
  65. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 調査船によって調査をいたしました事項に関しましては、これは会議の劈頭において相互に資料を交換いたしまして、その内容を分析し合っております。われわれもソ連側の調査船の調査いたしておりますものにつきましては情報を求めておるような次第でございまして、今年の会議段階は、目下まだ資源調査段階までは入っておりません。しかし、その段階におきましては、当然ただいまお話しのような点を含めました相互の協力による調査というようなものを具体的に分担項目をきめて取りきめることに相なろうと思います。
  66. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、この調査においては、こう何年も条約期限一ぱいに調査をやっているというわけにいかぬと思う。少くとも今年を重点にしてどのくらいの時間をかけて——たとえばこのオホーツク海区域において政府として明確な結論を出して信念を持って漁業委員会に臨めるようなことにするためには、大よそどのくらいの時間をかけるつもりですか。
  67. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 オホーツク海の今年からの禁漁に関しまする昨年の取りきめも、最後の協定文にありましたように、オホーツク海において鮭鱒の漁獲をするということがカムチャッカの産場における鮭鱒の増殖に適当な条件を与えることでないということを考慮するということの上に決定を見た次第でございます。従ってわれわれも何ら科学的な根拠を持たないでやったのではないのでございます。その当時把握し得る科学的な知識に基きまして、一応とにかくオホーツク海におきまする公海における操業を停止することが妥当である、こういう結論話し合いました結果である次第でございます。従いまして、われわれの調査も、昨年相互に披瀝し合ったデータをさらに十分検討し得るだけの資料を収集しました上におきましての提案でなければならない、かように考えるのでございます。従って、これに関しましては、われわれとしてもできる限り努力をいたしたいと存じまするが、何年先にどういう提案をするかというふうな見通しを今ここに持っておる次第ではございません。
  68. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、昨年あるいは一昨年の交渉の過程を見ても、政府態度は、漁場問題より漁獲量の問題であるというところに重きを置いているんですよ。漁場が失われてその沿岸の漁民が全く生活の根拠を失うようなことになっても、その漁場は放棄しても、サケ・マスの漁獲量さえ獲得すればいいじゃないか、こういうような、いかに大資本擁護の、政府としては割り切った考えで今まで進んでおるわけなんですね。だから、今水産庁長官が言われたような、これはいつまでかかるかわからぬ、そう言うことは、おそらくこの条約の有数期間内にこちらからオホーツク海の漁業復活の問題を持ち出すような考えは毛頭ないというふうにわれわれは断定できると思うわけなんです。そこで、お尋ねしたい点は、日ソ漁業条約の第一条にも条約区域というものは明らかになっており、また、付属書の一項(イ)の規定で明らかになっておるわけでありますが、これは非常に大事な点でありますから、一応申し上げます。「規制を行う区域は、ナワリン岬より南東に向い北緯五十五度と西経百七十五度との交点に至り、更に南転して北緯四十五度と西経百七十五度との交点に至り、更に西進して北緯四十五度と東経百五十五度との交点に至り、その後南西方秋勇留島に至る線をもって、東及び南より区画される北西太平洋(オホーツク海及びベーリング海を含む。)及び北緯四十五度の線以北の日本海とする。」、これが条約区域の規定であります。この区域の中のオホーツク海の区域というものは、結局出漁禁止ということになったんです。そういたしますと、この条約区域の一番南の線は、北緯四十五度と東経百五十五度との交点からその南西の方向に伸びておるわけです。ちょうど北海道の根室沖の秋勇留島の南端にこの線が来ておるわけであって、これは緯度から言うと北緯四十五度よりまだ南の方ということになっておるわけです。ですから、地図で見ますと、このオホーツク海に面した日本の沿岸というものは、全部もう禁止区域になっておるわけですね。従って、このオホーツク海は領海以外はサケ・マスの漁業は行えないということになるわけでありますが、ソ連の領海は十二海里ということになっておるし、わが国の領海は三海里ということになっておるわけです。ですから、日本の領海三海里を出た場合にはいかなる方法によっても全然サケ・マスの漁業は行うことができないということになると、これは重大問題だと思うのです。昨年までは、このような母船式による操業区域というものをきめて、それ以外は禁止区域ということになっておりました。しかし、日本の沿岸に近い一定の地域については、日本の小型船等による漁撈については、これは禁止区域から除外する、そういう除外規定がつけてあったわけです。ことしの場合には、この昨年の取りきめによって、日本側においても除外規定というものはなくなっているわけです。オホーツク海の海面において三海里の領海以外鮭鱒の漁業はできないということになると、ただ単に母船式の漁業を行えないというのと趣きが非常に違ってくると思うわけです。この点、農林水産全体を担当する農林大臣として、この沿岸における漁民の受ける甚大な打撃あるいは生活の脅威に対して心を痛めておられると思いますが、このような状態をどう考えられるか。
  69. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 昨年の取りきめでもってそういうような結果に相なったのでございまして、これは非常に遺憾でございますけれども、国際協定をいたしたものでございますから、ここしばらくはその線に沿うて、今後の措置に重点を移さなければならぬ、こう考えております。
  70. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ソ連は十二海里ですよ。日本は三海里です。それ以外の公海においては小さいサケ・マス一匹もとることができないという状態は、日本側から提起してこういうようにされたのですね。その前に日本の沿岸漁民の大きな打撃、影響を全く考慮しないで、一万トンの漁獲量さえふえれば漁場を完全に放棄してもかまわない、こういう態度は政治の上においてとるべきでないと思うのです。ですから、これは取り返しのつかない協定をされたわけであります。今年は一九五九年で、そういうことをやったんだから今年一年はがまんするとしても、この条約に規定された日ソ漁業委員会の定例の年次委員会に日本側から具体的な提案事項として提起して、一日も早くこれを復活するようにしなければいけないと思うのです。これは、母船式漁業を従来通り復活するということより、この取りきめによって受ける沿岸漁民の重大なる生活上の脅威をソ連方にも共同調査等を通じて十分認識させてもらって、今後は沿岸漁民の主張と当然の生活権をオホーツクの海面に復活することのできるような交渉を進める必要があると思う。具体的に言えば、出漁の方式等については、本年の委員会でも違反船の問題が指摘されているようでありますが、今後はやはり、沿岸漁民の生活を守り生産を守るという建前で、沿岸漁民の共同組織体である漁業協同組合等を中心として、たとえば三十トンなら三十トン未満で、漁業協同組合が中心となって、責任を持って、そうして組織的な集団的な出漁というものを両国間の取りきめの範囲内において行い得る、こういうことにして、最小限度の漁民に対する人間的な生活の保障をやはり両国間相互の理解と協力のもとで維持する必要がどうしてもあると思うのです。この点に対して農林大臣の御所見を伺いたいのです。
  71. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 いろいろ仰せでございますが、現在の段階では、まだ相互の了解に達しない、ソ連側でもなおこれにつきましては再考の模様がない、こういう実情でございます。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、これはあなたが向うに言わないから通じないのですよ。ソ連側の主張する点も、やはりソ連のこのカムチャッカ東、西等の海域に関係ある漁民の生活を守るためにこういう条約をきめて、相互の働く漁民の生活を守るためには資源の維持増大も必要であるというような建前から言っているわけなんです。ですから、これは向うにも意思が通ずると思うのです。ソ連側においてもソ連の人民である漁民の最低限の生活を守るために主張しておるとすれば、われわれ日本側においても、このオホーツク海沿岸の漁民の最低生活を守るためには、それを守れるだけのサケ・マスの漁業をしなければだめなんだ、そういう主張は、同じ対等の主張であると私は考えておるわけです。日本の場合においては、これは三海里以外の公海においてはもう全然出漁できません。また、この沿岸において、先日も言いました通り、国においても、あるいは北海道庁においても、あるいは沿岸の漁業協同組合等においても、サケ・マスの孵化放流事業等を積極的にやっておるわけなんですよ。従って、北海道においては、この沿岸の孵化放流事業をやっておる河川については、そこへ遡上してくるサケ・マスを漁獲することは積極的に禁止しておるのですよ。そうなると、やはりオホーツク海のこの海域に出かけてサケ・マスをとる以外に生産をあげる方法はないわけなんです、この沿岸においては。そういう事情をどうして向うに伝えないかという点なんです。そのために設けられておる日ソの漁業委員会じゃないですか。資源問題ももちろん大事であるかもしれぬけれども、資源問題というものは、資源を維持増大することによってこの沿岸における関係漁民の生活を維持し、今後生産を増大させるための前提条件として資源論というものは取り上げられておって、これが究極のものじゃないと思うのですよ。この本質を忘れて、今まで消極的に、あなた方政府が、漁場は放棄しても漁獲量さえふえればいい、そうしてそのことによって沿岸漁民を犠牲にしてもかまわない、こういうことはやはり一日も早く改めてもらいたいと思う。もう今度の漁業委員会においても、この資源に関する科学技術小委員会というものは一応検討が終って、そして明日から本会議において、資源関係の報告書の作成も終りますし、いよいよ今度は規制問題、漁業の規制措置の問題等が日程に上ることになるわけです。ですから、この際やはりすみやかに政府としてこの態度を明らかにして、私ども指摘するような点に対しましては積極的に勇敢に会議において交渉を進めるようにされたらいかがですか。
  73. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 いやしくもわが方の利益になることは、あらゆる観点からこれは主張するつもりであります。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 非常に力強い御答弁で、私も意を強うするのですが、それであれば、大臣、この漁業委員会以外に発言の機会はないのですよ。ですから、この漁業委員会において、今大臣のはっきり言われたような態度というものを何らかの形で明らかにしていただきたい。この委員会の席上だけでそう言われても、政府がきめた三人の代表を通じてこれが会議の日程に上らなければ何にもならぬと思うのです。ことし直ちにこれは出漁できないという経緯というものは、一応われわれとしてもやむを得ないとしても、去年の一万トンでことしの分は取引されたとみなした場合においては、やはり両国間の信義の上から言っても今年度は一応がまんするとしても、そのかわり、今年度さらに調査を進めて、そうして、あるいはその調査の結果等をもって、明年度以降のオホーツク海の問題については、これを漁業委員会において取り上げて、特に日本の沿岸漁民が昨年の取りきめによってこのような重大な影響下に置かれておる、それでこの問題はどうしても等閑視するわけにはいかぬので、日本側としてもこのような態度で臨みたいと思うので了承してもらいたいと、条理を尽して話せば、委員会話し合いの場なんですから、道は開けると思うのです。その努力をぜひ進めていただきたいと思うのですが、さらに大臣の明確な所信のほどをこの際明らかにしてもらいたい。
  75. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは、日ソ漁業委員会という場でもって、そして同時に相互に三人ずつの委員を出して折衝するようになっておりますから、その場において、機会を選んで、あらゆるわが方の利益になることは強く主張する、そしてわれわれの主張を貫徹するという一貫した方向でこれに臨みたいと、こう考えております。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ぜひそのように進めてもらいたいと思います。  そこで、具体的な問題ですが、先ほど私が申しました通り、オホーツク海における漁業の再開をはかる場合は、これはまたその母船式を持ち込んでくるということはなかなかこちらからも提起できないと思うのですが、それにはやはり、この沿岸漁民の最低の生産をあげることを通じて生活を守ってやらなければならぬということでいけば、しかも責任をもってその取りきめを履行するということになれば、やはりこの沿岸における漁業協同組合を中心としてこれに責任を持たせる、そういう建前の上に立った、しかもその三十トン程度の小型船を中心にした組織的な出漁方式というものをこちらで具体的に方針を立てて、このような形で今後やっていきたい、そのような提起をされるのが一番妥当であると思いますが、この点についてはすでに検討をされているかもしれませんが、いかがでしょうか。
  77. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今後のわれわれの漁業委員会に対する期待につきましては今申し上げた通りでございますが、しかし、われわれの受けておる情報によりますと、ソ連側はなかなかこの問題につきましては非常に頑強でございまして、そう簡単ではありません。従いまして、この討議項目等の検討も、これは相互に取りきめしなければならぬことであり、今御提案になったような具体的な線を出し得るかということになれば、われわれとしてはまだ出し得るとは考えておりません。今後の推移に従ってわれわれとして努力を重ねなければならぬと、こう考えております。
  78. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 ただいま調査中の北洋漁業問題につきましては、芳賀貢君より本委員会の決議を行いたい旨の申し出がありますが、決議案文並びにその取扱いにつきましては後刻理事会で協議をすることといたします。  これにて暫時休憩いたします。     午後一時四十八分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕