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1959-02-25 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十五日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 助川 良平君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       倉成  正君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       高石幸三郎君    綱島 正興君       永田 亮一君    濱地 文平君       松岡嘉兵衛君    八木 徹雄君       保岡 武久君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    久保田 豊君       栗林 三郎君    實川 清之君       中村 時雄君    西村 関一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         林野庁長官   山崎  齊君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  森本  修君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月二十五日  委員金丸信辞任につき、その補欠として小枝  一雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小枝一雄辞任につき、その補欠として金  丸信君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第五九号)  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第九九号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第九七号)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  松浦委員長は本日も都合により出席できませんので、指名により私が委員長の職務を行います。  開拓融資保証法の一部を改正する法律案森林開発公団法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  昨日に引き続き質疑を行います。質疑の通告がありますのでこれを許します。栗林三郎君。
  3. 栗林三郎

    栗林委員 私は開拓融資保証法の一部改正について若干お尋ねをいたします。昨日来神田委員あるいは西村委員あるいは角屋委員等からそれぞれ質疑がありましたが、重複すると思いますけれども、なお二、三の点についてお尋ねしたいと思います。  現在保証制度加入しておる開拓者戸数及びその利用度等について一つ御説明願いたいと思います。
  4. 伊東正義

    伊東政府委員 現在入っておりますのは、開拓者が十六万戸のうちで十一万一千ぐらい入っております。大体パーセンテージにしまして八四%ぐらいになっております。それから、入っている人でこれを利用しておりますのが、九万戸足らず、八万八千戸ぐらいの人が利用いたしております。これは入っている人から見ますと約八〇%ぐらいが利用しているというのが昭和三十四年六月の大体のわれわれの推計でございます。
  5. 栗林三郎

    栗林委員 そうしますと、まだ相当多くの開拓農家でこの制度加入しておらないものがあると思いますが、これらの加入しない理由はどういう理由でしょうか。
  6. 伊東正義

    伊東政府委員 まだ入っておりませんのが三万数千戸ざごいます。これが入っておりません理由でございますが、まだ農協その他の規模が小さいというような関係で、まだこれに入りましてこの制度利用するという段階に至らぬものがございます。われわれとしましては、こういうものをなるべく引き上げまして、全部が加入しましてこの制度利用できますように実は指導いたしておりますが、まだ若干残っておりますので、今後とも、この制度加入しますように指導なりをしますとともに、営農の改善をはかりまして、この制度利用ができるまでに持っていきたいというように考えております。
  7. 栗林三郎

    栗林委員 末加入農家に対しては今後いろいろの方法を講じて、そうして加入を勧めると同時に本制度の恩典に浴せしめるような手段を講ずるというような御答弁でありますが、現在の時点において約四万戸の開拓農民がこの制度利用することができないとするならば、これらの農家自己資金肥料等購入ができるのでしょうか。
  8. 伊東正義

    伊東政府委員 それらの農家につきましては、開拓農協を使っておるところもございます。その他自己資金あるいは個人借入金等を使いまして肥料購入をやっておるというものもございます。もちろん開拓農協を使いませんで総合農協制度を使いましてやっておるものもあろうかと思います。いろいろ理由はあろうかと思います。
  9. 栗林三郎

    栗林委員 この制度は大体基金の六倍の保証が得られるという建前になっておるようでありますが、そうしますと、現在においてのこの利用倍率といいますか、これが果して六倍の率まで到達しておるのかどうか、それを一つ詳しく御報告願いたいと思います。
  10. 伊東正義

    伊東政府委員 利用倍数でございますが、これは業務方法書で六倍ということになっております。なっておりますが、現実の姿は大体四・六倍くらいの数字になっております。
  11. 栗林三郎

    栗林委員 そうしますと、この制度を十分に運用されておらないということになると思いますが、なぜ六倍の倍率まで利用ができないのか、その原因はどこにあるのか、これについて一つ答弁願いたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東政府委員 これが六倍満度に利用できない理由でございますが、これは、たとえば北海道をとって考えてみますれば、北海道でありますと冬作の肥料を使わぬというようなことで冬分借り入れはしないというようなこともございまして、倍数から落ちているものもございます。また、金融の面でいきまして、実は延滞金等がございまして求償権を行使する、いろいろの事情が出て参りますと、そういうところになかなかまた金融機関として融資しにくいというような面もございまして、実は六倍にならぬところもございます。しかし、私ども、こういう保証なりあるいは保証保険というようなものから見ますと、たとえば漁業等も、四倍まではできるというようなことになっておるのでございますが、これも一・六倍くらいしかございません。ほかの制度に比べてみましてそう悪くはないんじゃないかと思っております。しかし、今後ともこれはなるべく満度に近いところまで利用できますように指導はいたしたいと思っております。
  13. 栗林三郎

    栗林委員 延滞金等関係でそれが資金ワクからはずされて、それだけ保証限度が下げられる、こういうお話でございますが、そうしますと、延滞金はどのくらいあるわけですか。
  14. 伊東正義

    伊東政府委員 今まで代位弁済にいたしましたのはたしか累計して一億六千万くらいございます。そのうちでまだ求償権残高が残っておりますのは九千万、一億足らずくらいのものはまだ求償権等で金がとれないで残っております。
  15. 栗林三郎

    栗林委員 金融機関延滞金があるためにその分から保証限度をそれだけはずすという、そういう業務上のことも私ども理解できないわけではございません。しかし、この場合の業務はおもに農林中金があずかっておる、かように承知しておりますが、しかし、農林中金は普通の純然たる金融機関とは違うと思うのです。従って、もう少し農業政策なり開拓政策、特に開拓事業については、これは格別の考慮が払われてよいのではないか。少くとも農林中金金融政策農林省が行う農業政策と相マッチするようなやり方をする必要があろうと思うわけです。従って、かりに延滞金が一億あるにいたしましても、その分は保証限度をそれだけ引き下げる、こういうようなきびしいやり方では、これは農林中金は普通の銀行と何ら性格を異にしない、ほんとうに金融機関としての使命しか考えていない、かように考えられるわけです。かりに延滞金がありましても、農林中金の持つ特殊性、それと農林省開拓農政をマッチせしめるような強力な指導なり強力な方法によって、この場合延滞金があってもこれを保証限度ワクから下げる、こういうようなことのないような措置はとれないものですか。
  16. 伊東正義

    伊東政府委員 この保証制度だけでありませんで、開拓関係融資につきまして農林中金とは常に協議をいたしましてわれわれやっております。御質問の点もよくわかるわけでございますが、中金金融機関としての立場もございまして、今申しましたように今まで満度になっておらぬのでありますが、今後、この点につきまして、この融資保証法だけでなくてほかの開拓者金融問題で中金の援助を受くるところが非常に大きいものがございますので、われわれといたしましても、今おっしゃいました点は十分注意いたしまして、よく中金と今後とも相談してやっていきたいと思います。
  17. 栗林三郎

    栗林委員 さらに少し幅を広げて開拓行政について関連してお尋ねしたいと思いますが、昨日来質疑の中心は開拓者負債整理に関する問題であったように伺っております。しかし、当局の答弁によりますと、開拓者諸君が聞いてもとても満足する答弁にはならないと思うわけでございます。くどいようですが、私からも端的に二、三の点をお尋ねしてみたいと思います。  現在営農振興臨時措置法によりまして若干の救済措置あるいは振興措置はとられておるように伺っておりますけれども、その実績は実にりょうりょうたるものであろうと思います。そこで、まず、この臨時措置法によりますと、今までの負債借りかえということが一つあったと思います。それから、もう一つは具体的に積極的な振興対策、これが振興計画となって予算化されておるのでございますが、何といたしましても開拓者重圧になっておるのはこの負債でありますから、この負債整理にもっと抜本的な対策を立ててやらないと、いかにその他の積極的な振興対策を立ててやりましても、これは私は水泡に帰すると思う。ところで、この臨時措置法によりまして災害関係資金借りかえは若干行なっておるやに伺っておりますが、それは事実でしょうか。もし事実だとすれば、現在どの程度災害資金借りかえが行われておるか、これを承わりたいと思います。
  18. 伊東正義

    伊東政府委員 すでに大体三十億程度のものは借りかえを終っております。それから、さらに、残っております十億、それから三十三年度天災資金のうちからどのくらい借りかえになりますか、われわれは大体四十億ないし五十億の間くらいの金額を想定いたしまして、来年の予算ではそれらの利子補給としまして一億四千六百万という利子補給予算を実は計上いたしております。
  19. 栗林三郎

    栗林委員 そうしますと、災害資金でない一般政府資金、これはきのうの御報告ですと百七十億と言われましたか、約百七十億に上るこの政府資金借りかえ等については、この臨時措置法によってはあらためて償還期限延長をやるとかあるいは新たに据置期間を設けるとかいうようなことは現行法ワク内ではできないものでしょうかできるものでしょうか、これを一つお伺いしたい。
  20. 伊東正義

    伊東政府委員 これは別でございまして、政府資金につきましては開拓者融資特別会計がございます。それから貸しているわけでございます。これについての履行延期とかいうような問題につきましては、別な法律体系でございまして国の債権管理等に関する法律という法律がございます。これに基きまして一定基準を作りまして、その基準履行を延期するというようなやり方は実は今やっております。この臨時措置法とは別でございます。
  21. 栗林三郎

    栗林委員 この臨時措置法が制定される当時、開拓者の皆さんから、災害資金だけの借りかえはこれによってできるとしても、一般政府資金借りかえ措置はできないのだから、何とかそれができるような内容が織り込んでもらいたいという要求があった。それに対して、政府は、それをしなくても債権管理法がある、この債権管理法をうまく運用すれば、それによって履行延期等のいろいろな措置がとられるから、こういうようなお話があったと私どもは聞いておるわけでございます。これに基いて北海道では若干の借りかえの手続が行われたと聞いておりますけれども、その間の事情について詳しく御報告願いたいと思います。
  22. 伊東正義

    伊東政府委員 今の御質問の点でございますが、北海道につきましては、実はこれはまっ先に取り上げたわけでございます。内地につきましては現在措置をとりつつございます。実は、一定基準を設けまして——国債権管理等に関する法律という法律がございますが、これに基きましていろいろ基準を作りまして、その基準に合った人につきましては、長いものは十年間延長する、あるいは七年間、五年間というように期限を切りまして期限延長をいたすということになります。それから、その間の延納の利息はとらぬ、もとからの利息は払ってもらうが、延納するための利息はとらぬというようなことをいたしまして、通牒を出しまして、北海道につきましては北海道知事財務局長、それから内地につきましては各農地事務局長と出先の大蔵省財務局長と相談してやっていくという措置を実はとりました。これによりまして、北海道については一億数千万のものが履行延期になっておるというのが現状でございます。内地につきましては、実はつい最近からこの基準の話し合いがつきまして始めましたので、まだ実績としましてはわずかでございまますが、見通しとしましては、われわれは、そういう手続を経て出てくれば、三十三年度には七億ぐらいのものが内地でも履行延期になるんじゃなかろうかというように今考えております。三十四年度につきましては、基準も若干ゆるめまして、もう少しこの範囲を拡大しまして履行延期がとれますようにやりたいというので、三十四年度につきましては今大蔵省と相談をいたしております。
  23. 栗林三郎

    栗林委員 政府資金償還収納状況は、私どもの手元にある資料によりますと、二十九年まではいろいろな施策もあったと思いますが、いずれにしましても、二十九年までは非常に良好であったような数字が出ております。それから、三十年からずっと回収率が落ちまして、三十二年は私ども数字ですと三六という数字が出ておるわけですが、これは間違いないと思いますが、こういうように急速に回収状況が悪くなっておるわけです。こういうような状況とにらみ合せて、もっとスピードのある抜本的な債権整理方法を講じないと、これは大へんなことになると思うのです。それだからこそ、開拓者方々は、昨年も大会を開き、その後数度にわたって国会その他政府筋にも切実な陳情が行われておると思うのでございます。そこで、私は端的にお尋ねするのですが、こうした開拓者叫びは誇張された叫びと受け取っておられるのか、そのものずばり切実な声として受け取っておられるのか、少し宣伝が入っておる、誇張された宣伝として受け取っておられるのか、この点を一つ端的に承わってみたいと思います。
  24. 伊東正義

    伊東政府委員 開拓者の人々の正しい声にはわれわれも耳を傾けております。でありまして、今先生がおっしゃいましたように回収率はずっと落ちておりますので、三十三年度予算ではそれを七〇%というようなことに考えまして予算を組んだのでございますが、その結果償還がございませんので、おそらく開拓者に貸しますことができなくなるのが六億ぐらいございます。これでは償還を過大に見積って開拓者貸付ができなくなるということにもなりますので、来年度につきましては、三〇%に下げまして実情に合ったような償還予算を組む反面、預金部資金借り入れを十八億から二十八億というように増しまして、振興資金につきましては本年度よりもかなり大幅にふえた、大体二十三億でございますか、そういうものを組みまして、実情に合ったような、開拓者の声も聞いてそれに一部こたえられるようなことにしたいという考え方で三十四年度予算を組んでおります。
  25. 栗林三郎

    栗林委員 三十三年度の現計で、振興対策資金調達の中で回収金はどれだけ予算の上では調達されておったのですか。
  26. 伊東正義

    伊東政府委員 三十三年度予定は約十四億でございますが、おそらくそのうち六億数千万のものは入ってこないのではなかろうかというふうに考えられまして、それだけ貸付が減るということになりますので、来年度はそれを十億足らず——ことしの率で参りますと二十二、三億になるはずでございますが、それを十億足らずしか入ってこないのではないかというような前提で来年は予算を組みました。
  27. 栗林三郎

    栗林委員 そうしますと、二十四年度特別会計の方では、その回収金は大体三〇%見込んでの予算ですか。大体のところでよろしゅうございます。
  28. 伊東正義

    伊東政府委員 大体でございますが、年度によって三〇もあり二〇もありというようないろいろ区別はございますが、総体的に考えますと約三〇%ということにいたしまして、三十三年は七〇でございますが、三〇というふうに下げまして償還を見込んでおります。
  29. 栗林三郎

    栗林委員 三十三年までは振興計画を立てて手続をされた農家が六万戸と聞いておりますが、きのうの質疑にもありましたが、期限である今年の三月三十一日までには、残り四万戸、当初予定の十万戸の手続は完了する見込みですか。
  30. 伊東正義

    伊東政府委員 現在まで出ておりますのは大体七万七千戸でございます。あと残りの二万三千余のものはこの三月までに出てくるだろうというふうにわれわれは考えております。
  31. 栗林三郎

    栗林委員 個人負債の点についてお尋ねしますが、大体、開拓者関係個人負債のものは、これは推定ですから確実な数字は申し上げかねるのでありますが、四、五十億に上っておる。しかもいずれも高利負債と聞いておるわけです。従って、これらの借りかえにつきましても格段の御配慮が必要であろうと思うわけです。これに対応する資金としては自作農資金があるわけですが、三十三年は五億程度と聞いておりますが、三十四年は一体どの程度資金手当考えておられるのか、自作農資金のうち開拓者に割り当てられる資金はどの程度予定されているか、その点をお伺いいたします。
  32. 伊東正義

    伊東政府委員 今おっしゃいました個人の借財、借入金については、われわれも大体先生と同じくらいの金額考えております。これに対しまして、ことし実は当初は五億でございましたが、現在、つい最近にも五億五千万円県に配分いたしましたが、その前に二億というようなこともございまして、総計でたしか十二億五千万円くらいになっております。それから、三十二年がたしか五億でございましたが、来年は、当初計画は今御審議願っております予算農林漁業金融公庫資金計画の中では十七億足らずのものを予定しておりまして、振興計画で出て参ります個人負債はわれわれ三十四億くらいに予定しておるのでございますが、これは来年の自作農資金で一挙に解決するようにしたいということで、来年は当初から十七億足らずのものを自作農資金開拓者に出そうというふうに考えております。
  33. 栗林三郎

    栗林委員 この際開拓者政府資金その他の負債整理一つ抜本的に解決する具体的な施策を立てる意思がないか。たとえば開拓者資金融通法を根本的に改正する、その改正の要点は、政府融資資金貸付残高及び現在までに調定された年賦償還金の未納、未済額の全部を一括して借りかえ措置を講ずる、それから、七年あるいは十カ年の据置を認め、それを含めて二十年年賦償還というような長期借りかえにこれを改正するという、こういうような内容融通法を根本的に改正する意思がないかどうか。それから、第二は、開拓者災害資金についても、開拓者資金融通法によってこれまた長期低利資金を貸し付ける、こういうように一つ資金融通法を抜本的に改正する御意思がないかどうか。あるいは別個に新たなる立法措置を講じてこれらの開拓者負債整理に積極的な施策を立てるというような御構想がないかどうか。きのう以来承わっておることでありますけれども、ただいま、開拓者のあの叫びが誇張した叫びでない、真実そのものの切実な願いであると受け取っておる、こういう局長の御答弁でありましたから、この際もっと明確な態度、方針を明らかにして開拓者諸君を安心させてやっていただきたいと思うわけですが、一つこの点について明確なる御答弁をお願いしたいと思います。
  34. 伊東正義

    伊東政府委員 二つございまして、天災資金その他の資金開拓者資金融通政府資金借りかえる考えはないかという御質問でございますが、これは実はいろいろ研究すべき問題だとは思っております。今のままの制度でいいのか、あるいはもっと公庫を活用したらいいのか、あるいは政府資金というものが災害の場合に実情に合うのかどうか、これはいろいろ検討を要する問題だと思っております。実は、先般この委員会大蔵省からも出席いたしまして、天災資金政府資金でやることは実情に合わぬので、当分はそういう考えはないという答弁大蔵省はいたしております。この点、われわれといたしまして、一体、今の中金だけの活用でいいのか、あるいはもっと公庫を活用したらいいのかというような問題につきましては、もう少しこれは検討を要する問題ではないかというふうに考えております。  それから、もう一点の根本改正のことでございますが、これは毎々御答弁いたしているのでございますが、われわれとしましては、先ほど申し上げました国の債権管理等に関する法律というものを弾力的に活用いたしまして履行延期をやっていくということでどうであろうか、もう一つそれに関連しまして、先ほど御答弁いたしましたように、政府資金償還実情に合ったように償還率を下げてみるという手段を三十四年度に講じておりますので、これでやってみまして、そのあとで、振興計画とにらみ合せて、どういうふうにしたらいいかということもさらに検討してみたいと思います。
  35. 栗林三郎

    栗林委員 この負債の一本化あるいは据置長期償還借りかえてもらいたいという要求開拓者側から当然出ているわけでございますが、特に各県の知事会においても大きくこれを取り上げて満場一致これを採択して政府に強く要望している事実もあるはずであります。それですから、開拓者の問題は何も一党一派にとらわれている問題ではないので、開拓者の中には、あるいは自民党の方々がいろいろとお世話をしていることもございますし、社会党のわれわれの方でもいろいろと連絡がございますので、それらに関してはイデオロギーを超越してできるだけの協力を寄せている、こういう状態でございます。それですから、開拓者の方方が負債重圧のために困るからこれを何とかしてくれという切実なこの願いというものは、そのまますなおに受け取ってやってよいと思うのです。ただいまの局長答弁によりますと、現行法規あるいは現行の諸制度を何とか運営して、その中で開拓者のそうした希望及び要望を達成させたい、こういう御答弁でありますけれども、私はその場のがれの答弁だと思う。現行法規現行のいろいろな制度のもとにおいては、このワク内ではこれらの問題はとうてい解決するものとは考えられません。解決するわけがないのです。ですから、もっと抜本的な対策を立てる必要があると思うのです。この点について私は次官にお尋ねしたいと思うのですが、たとえば三十年年賦で返すとかあるいは十年の据置を認めるとか、そういうような具体的な答弁でなくてもよろしゅうございますが、とにかく、現行法規現行制度のもとではこれを抜本的に解決することができないということだけはもうはっきり御答弁願ってもよいと思うのです。何らかの具体的な措置を講ずる、あるいはそういう方法検討するという程度のお答えはぜひ私どもとしては希望するわけなんです。特に開拓者諸君はそれを希望しておると思うのです。今この場で三十年の年賦償還にせよとかあるいは利子を無利子にせよとかいうことに対する答弁は、これは無理だと思いますけれども、もう少し明確な政府態度一つお示し願いたいと思うわけでございます。これは一つ次官の方から御答弁願いたいと思います。
  36. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいま栗林委員の御質問に対しまして局長から御答弁申し上げましたことは、決しておざなりの答弁をいたしておるのではないのであります。われわれといたしましても、栗林委員のお言葉の通りに、これは開拓者ばかりではないのでありますけれども、当面開拓者の問題は決して一党一派の問題であるとは考えておりません。ことに、一口に開拓者と申しましても緊急にいわゆる緊急開拓で入った人たちと、その後かなり整備されたときに入りました人たちの間にも相当の懸隔があるのであります。それらの点及び開拓者全体としての農業経営、生活状態等につきましては、私どもも大体承知いたしております。従いまして、何とかこの安定対策を講ぜなければなりませんが、当面ただいまの問題といたしましては、現有の法制をできるだけ運用の妙を発揮することによりまして開拓者のためをはかって参り。しかしながら、だんだんお説の通りに開拓者の問題につきましてはいろいろ検討せなければならない問題があるのであります。具体的にどうこうということはきょう申し上げかねますけれども、しかしながら、問題点をつぶさに検討いたしまして、この後善処いたしたいと考えております。決しておざなりで申し上げておるわけではございません。
  37. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 他に質疑はございませんか。——なければ、これにて両案に対する質疑は終了いたします。  次に両案を一括して討論に付しますが、討論の通告もないようでありますので、直ちに採決いたします。  まず開拓融資保証法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  38. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案通り可決すべきものと決しました。  次に森林開発公団法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  39. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま可決いたしました開拓融資保証法の一部を改正する法律案について久保田豊君より発言を求められております。この際これを許します。久保田豊君。
  40. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいま可決されました開拓融資保証法の一部を改正する法律案について附帯決議をつけたいと思うわけであります。御提案をいたします。  まず案文を朗読いたします。    開拓融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、引き続き経営の不振と生活の不安定に悩む開拓者の現状を率直に認め、開拓政策の今日までの在り方について徹底的な再検討を加えるとともに、開拓融資一般に亘り思い切った改善を施し、これを簡易かつ強力な制度に再編成すべきであるが、当面、開拓者が返還に苦しんでいる政府資金については、その将来における合理的な償還を確保するため、できるだけ近い機会に、現在数口乃至十数口に及ぶ各種融資金整理統合を行い、これが償還期限延期等、条件の緩和につき所要の措置を講じ、もって開拓営農振興計画の達成にいかんなきを期すべきである。  右決議する。   昭和三十四年二月二十五日        衆議院農林水産委員会  案文は以上の通りでございますが、これの趣旨を簡単に説明をいたします。  御承知の通り、昨年開拓に関しまする新しい法律ができまして、それによっていろいろ資金等の整備はいたしておりますけれども、まだまだ現在のところではとうていあれだけによりまして振興計画なり何なりによりましてやっても実情とずれております。しかも、既入植開拓農民の経営、生活実態はあの程度のものではとうていこれを救うことはできないというのが今日偽わらざる実情だと思うのであります。政府のこれに対しまする見方は、いろいろの見方がありますけれども、第一に、まず実情にはっきり即しておらないということが言えると思います。さらに、この償還計画その他につきましてもまだまだ不十分な点がありまして、いたずらに現行法律にとらわれるようなところが多いわけであります。こういう点で、もっと抜本的な現状の認識をはっきりいたしまして、一つこれに対してまず当面この資金関係について抜本的な措置をとることがぜひ必要であります。それだけではなく、基本的には、類型の新しい創造、適用の問題、あるいは建設関係その他の促進の問題等、問題は非常に多いわけでありますが、とりあえずの問題といたしましては、何としてもこの借金の整理等も政府資金あるいはその他の資金一般にわたりまして徹底して実行し、少くとも開拓農家が今後いろいろの計画を立てましてもやっていけるような態勢にすることが必要かと思うわけであります。そういう意味におきまして以上の附帯決議を提出したわけでございます。  なお、連関いたしまして、でき得るならば政府ないしはわれわれ当委員会といたしましても、これらにつきましては特別の調査ないしは検討等をいたしまして、政府みずからがこういう問題について積極的に取り組んで参ると同時に、われわれ委員会としても、これを促進し、あるいはしりをたたいていく必要があろうかと考えるわけであります。これらの点については、問題が広範にわたりますので、この決議案は載っておりませんけれども、こういう趣旨を含めまして、一つぜひこの附帯決議案を御可決あらんことをお願いする次第であります。
  41. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 お諮りいたします。附帯決議を付すべしとの久保田豊君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  42. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、ただいまの附帯決議に対し政府の所信を求めます。石坂農林政務次官
  43. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいま全会一致をもちまして開拓融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を御可決になりましたが、この附帯決議の趣旨は十分に尊重いたしまして、この御趣旨に沿いますように努力いたします所存でございます。
  44. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次にお諮りいたします。ただいま可決いたしました両案の委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  46. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に、内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 農業災害補償法の一部改正法律案につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  ただいま提案されております改正法律案内容は家畜共済に限定されておるようであります。その問題もあとで触れますが、共済制度一般につきまして、従来の経緯等にかんがみまして、昨年一月一日実施せられました農作物共済の大幅改正に基く実施状況等について最初にお尋ねをいたしたいと思います。  私どもは、先般の改正が抜本的なものでなくてその一つの方向を示したものにすぎない、しかしながら制度の前進のためには相当の効果が期待し得られるものとしまして附帯決議を付して賛意を表したことは、御存じの通りであります。その後制度改正の実施状態を見ておりますと、その制度改正の趣旨は必ずしもよく普及されておりません。末端の農民は全くその制度改正実情も知らないままに引きずられて今日に至っておるというのが、残念ながら実情のようでございます。これらのことは、一面において事業の休止あるいは解散の議決等が各地に続発しております。数はまだわずかではございましょうが、この制度に対する農民の不信といいますか不満は各地で爆発寸前の様相を呈しておることは、政府もお気づきであろうと思います。ただ、私どもは、それにかわるべき対案を持たずしていたずらにこれに拍車を加えることは正しい態度でないと考えて隠忍自重しておるにすぎません。従って、現在のそういった矛盾が表面的には氷山の一角であるということに政府は反省されまして、少くとも昨年一月一日実施、公布を見ましたその方向をさらに大きく踏み切って制度改正に踏み出していかなければ、非常に重要な事態を巻き起すのではないかと案じられるのであります。年間百十数億の巨費を投じ、農民から歓迎されない、不満続出というような農業政策をこのままに放任することはできないと考えるものでありまして、そういう点におきまして、政府は、この制度実施に伴う一年間の実施状況にかんがみて、どのように今後対処していかれる御所存であるか。これは農林大臣にお尋ねすべきことでありましょうが、他の委員会との関係もあるそうでありますから、また締めくくり的に適当な機会に御出席を願ってさらにお尋ねをいたしますが、この案の審議に入る大きな前提としまして、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  48. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいまの足鹿委員の御質疑に対しましては農林大臣からお答え申し上げることが適当だと思いますが、足鹿委員御指摘の通り他の委員会に出席しておりますので、私から一応御答弁申し上げます。  御説の通りに、農業災害補償制度につきましては、実は数年来検討を続けまして、制度改正を行い、ようやく実施いたしたわけであります。御説の通りに、改正制度につきましては、制度的にも、また運用の点から申しましても、いろいろ御意見のありますことは十分私ども承知いたしておりますが、何分改正制度の実施の実績等もまだ実は十分判明していない今日であります。改正制度の実施状況等を慎重に検討いたしまして、本制度についての今後のあり方を検討いたしたいと考えております。さしあたりにおきましては、この運営面におきまして一そう改善を加えることに主眼を置いて参りたいという考えでおります。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 あとで大臣から伺うことにいたします。  そこで、昭和三十二年、第二十六国会におきまして、制度改正の際に当委員会がいろいろな附帯決議を付したことは御存じの通りでありますが、たとえば基準反収の問題にしましても、評価の精度の向上の問題にしましても、無事戻しの制度検討、それに基く整備拡充の問題、あるいは過般の九州災害で起きました植付不能、あるいは蚕種の掃き立て不能を収穫皆無として取扱うかいなかというような問題についても、現実の問題として起きておるが、何ら政府はこれに対するところの検討もせず、また具体的な対策も十分でないと思うのであります。そういう点について、特に基準反収の点、評価がえが制度化され法制化されても、その精度向上に対する具体的な措置、また、無事戻し制について、これは低被害地の農民あげての要望でありまして、これに対する具体的検討、また今述べました植付不能または掃き立て不能に対する具体的な措置、これはあと数段ありますが、前段四項の問題は非常に重要だと私どもは思いまして、政府もまたこれに賛意を表せられて具体的検討を約束せられておるにもかかわらず、きわめて遺憾に存ずるような結果になっておりますが、この点経済局長から一つ一つ政府のとられた措置をまず伺いたいと思います。
  50. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 農災法一部改正の御審議をいただきました際に、当委員会におきまして付せられました附帯決議につきましては、われわれといたしましてもできる限りの措置をとって参ったつもりでございます。ただいま御指摘になりました四つの項目につきましては、第一に基準反収の問題でございますが、これは、最近の特に水稲につきまして実際の反収が累年の豊作で非常に高くなっておりますること等の関係におきまして、農家の実感と制度の建前との間に若干の隔たりが出て参っておる実情でございます。ただ、三十三年度から、御承知のように、基準反収の算定方法はできる限り直近年次の資料を基礎といたしまして算定をすることに改めたわけでございます。三十四年度におきましても、その方法を踏襲いたしまして、できる限り農家の実感に近づけて参るように努力いたしたいと考えておるわけでございます。損害評価会につきましては、これは過般の法律改正の際に必置の機関といたしたわけであります。これに基きまして損害評価の適正化をはかるよういにたしたわけでございますが、三十三年産の水稲について見ますると、その実施の結果も、初年度でありました関係等もありまして、損害評価方法その他につきまして、必ずしも新制度に無事戻しを出さない。また、特に去年の秋の場合には各種災害が累発いたしましたような関係もございまして、各共済連合会における評価にはかなり苦労をいたしたわけでございます。ただ、結果から見ますると、三十二年度以前の状態に比較をいたしまして、若干評価の結果が改善をされておるように見られる数字も出ておりますので、われわれといたしましては、さらに新制度が円滑に適用されますように今後努力して参りたいと考えておるわけでございます。  無事戻し制の問題につきましては、これを制度として持ち出しまして大幅に改善をいたしますことは、保険設計全体にも関係を持って参りまする問題でもございまするし、また農家の負担あるいは財政負担等にも関連をいたします問題でございますので、現在の段階では前回の法律改正の際に改めました以上にこれを修正する具体案まで到達いたしておりません。さらに検討いたしたいと思っております。ただ、無事戻しができる状態にありますにもかかわらず組合の実際の業務状況がそれを実施しておらぬというようなものにつきましては、これを督励いたしまして、すみやかに実行させるように指導いたしたいと考えております。  植えつけ不能の問題は、昨年の九州の旱魃と関連をいたしましていろいろ検討をいたした問題でございまするが、これも現在の補償の方法を改めるにつきましては保険設計を若干手直ししなければいけない問題でございます。昨年はすでに引き受け後であったのでございまして、事後的にこれを手直しをいたしますことは、技術的にも非常に困難な問題でございましたので、結果的には昨年の九州災害の植えつけ不能については特別措置をいたしておりません。ただ、今後の問題としては十分に検討さしていただきたいと存じております。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 最初の基準反収の点をもう少し掘り下げてお尋ねしたいと思うのであります。聞くところによりますと、昨年度において全国平均反当り八升の引き上げになっておると聞いておりますが、その各都道府県別の資料は用意してありますか。どういうふうにでこぼこを調整されたか。とにかく、ところによっては一斗ないし一斗五升の基準反収の引き上げが行われたということも聞いておりますが、平均してみますと八升にすぎない。制度そのものが非常にまずい。また実施運用面について一番最大のガンはこの基準反収の面である。元来が、収穫に対する収穫保険の性格を持たずに、生産費の一部を補償するという建前を現行制度はとっておるところに、さらに基準反収を国の指示数量というものに基いてこれを限度に押えておる。そこに農民が大きな不満を持つ原因がありますし、また、従来、水増し評価等による農民の自発的な防衛と申しますか、できるだけ自分たちに有利に運用をさせたい、それを幹部が制し切れずして、各地に不祥事件が評価をめぐって起きておる。今一番問題になっておるのはすべてこの点にあると思うのです。資料を拝見をした上で伺いたいのでありますが、これに対する対策はいろいろあろうかと思いますが、全国各地からのいろいろな要請を私聞いてみますと、国が一つの方向に押えるのではなくして、市町村組合単位あるいはある地域を区切って標準田のようなものを作り、その標準田の実収反収というものを基礎にしてその年における基準反収をきめていくということを各地で言っております。それは私相当具体的な案ではないかと思います。ただ是正する是正すると言われるけれども、事務的な立場においても何ら是正の成果が十分上っておらないところに、この制度に対する不信をさらに大きくしているゆえんがあろうと思うのでありまして、これは事務当局としては御答弁が困難な問題であろうと思いますが、大臣がおいでになりませず、いたし方がありませんから、少くともどのような努力を払われたか、この矛盾を今後どう解決していこうというのが、もう少し一つ考え方を具体的に提示願いたいと思います。私は今一つ案を提示申し上げたわけでありますが、それに対する御意見もあるいは御批判もあろうかと思いますが、とにかくこのままほうっておいたのでは問題の一番焦点が解決つかぬのであります。どうされる御所存でありますか。
  52. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 基準反収につきましては、先ほども申し上げましたように、制度の建前から割り出しております数字農家が実感的に考えておりますものとの間に食い違いがあるということでございます。この点はなぜそういうような状態に相なるかという点につきましては、われわれの考え方といたしましては、一つ基準反収というものに対する考え方の違いがあるのではないか。私ども基準反収として考えておりますのは、通常の気象条件、生産条件等におきましてその土地に見込まれます収穫量を基準にして損害の評価を行う、その基礎数字としての基準反収ということに考えておるわけでございます。農家考えております反収は、いわゆる希望反収あるいは期待反収と申しますか、相当好条件の年の収量を基礎に置いて考えておられる場合が多いのじゃないかと思います。それから、もう一つは、近年作柄が非常に好調でありまして、少くともこの数年をとりますと実際の実収反収というものが非常に高い数字になるというようなことから考えまして、考え方がうまく折り合わないかと思うのでございます。そういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、三十三年度基準反収から計算方式を改めまして、従来相当古い年次にさかのぼりまして趨勢値計算をいたしておりましたものを直近の五年ばかりに短縮いたしまして、最近の生産水準の上昇が十分織り込まれますように改めた次第であります。この点につきましては、統計調査部の基準反収とも関連をいたします問題でございますので、過般来統計調査部の方ともいろいろ打ち合せをいたしまして、昭和二十四年につきましては、昨年度実施をいたしました方法を踏襲いたしまして、計算方法その他につきましてはさらにしさいに検討いたしまして順次引き上げて参りたい、かように考えております。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどお願いしました資料はもらえますか。
  54. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 府県別の資料は今手元にございますから、農業保険課長から……。
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 もとのものと、新しく指示したものと、最高はどの程度まで是正をされましたか。
  56. 森本修

    ○森本説明員 ちょっと数字的なことを御説明申し上げますと、昭和三十二年産の水稲の基準反収は全国平均で二石二斗四升、三十三年産が三石三斗二升ということで、御指摘のありましたように約八升引き上ることに相なっております。それを地帯別に見て参りますと、大体大幅に引き上りましたのは東北地方が相当大幅に引き上げをいたしております。各県別に申しますと、たとえば秋田県でございますが、三十二年産が二石三斗七升、三十三年産が二石五斗五升ということになっておりますので、一斗以上引き上げと相なっております。それから、山形県も同様でございまして、三十二年産が二石五斗五升、三十三年産が二石七斗九升ということで二斗以上の引き上げということに相なっております。次に大きく引き上りましたのは四国地方でございまして、たとえば香川県におきましては、三十二年産が二石三斗、三十三年産が二石四斗三升ということで、これも一斗三升引き上りをいたしております。その次は北陸地方でございまして、北陸地方におきましては、新潟県が、三十二年産が二石四斗二升、三十三年産が二石五斗二升というふうな引き上げに相なっております。大体地帯別に見まして大きく引き上りましたのはそれらの地帯でございます。     〔吉川(久)委員長代理退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 それはあとで資料でいただきたいと思いますが、今御説明になったように、県によっては相当の是正がなされたことは私も認めますが、その結果運営されてみても、なおまだ災害なかりせばの反収には相当の開きがあると思う。この問題を解決することは、いろいろ他の農産物価格政策との関係もありまして、私もそう簡単に割り切っておるものではありません。が、最近の農業生産力の発展向上、特に水稲面における躍進的な事例のあることは御存じの通りでありまして、この問題については、国の指示ということによって規制を加えるということに私は一つの問題の大きな重点があろうと思うのです。これを今後どう是正していくか。大体、この制度は共済だと言う。あるいは都合が悪くなると保険だと言う。また大きくは国家補償だという。そのときそのときに向いたような性格を前面に押し立てておるところにも大きな問題があるのでありまして、これは大臣がおいでになりましたら基本方針として伺いたいと思いますが、少くとも保険の考え方が根底に相当強くあることは否定できません。そうすれば、国が統調の資料に基いて反収を指示するということは、私は間違いだと思うのです。特に自由選択制というものをこのたびは実施しておるのでありまして、そういう面から言いましてもまことに矛盾の多いものだと言わざるを得ません。統調の資料も公表ができませんし、また国の指示がそれに基いて行われる。どこに農家の自主性といいますか組合の自主制があるか疑いたくなる。具体的な運営上の矛盾はそこからみな発生しておる。農家は、賦課金も掛金も、出す腹は一緒でありますから、そういうことはかかり合わない。しかし、いざ災害のときに受け取る金額が予想外に少い。そこからくるこの制度に対する不満の爆発だろうと思う。いろいろ問題はありますが、この問題を解決しなければ、とうていどのような制度改正をしましても運営面で行き詰まると言わざるを得ないのでありまして、そういう点について先ほど私は一つの提案を行なっておりますが、市町村別に、あるいは旧市町村別でもけっこうでしょう、合併前の組合別でもけっこうでしょう、一つの標準田のようなものを作って、それに基いて一つの地域における基準反収を算定していき、農家の自主性、災害なかりせばの考え方が反映するような点を考慮すべきではないかと思うのです。それもできないということになれば、国の行う指示反収というものを取りやめるか、もっと実収に近いものをどういうふうに組み入れてくるかという工夫を事務当局としてもなされなければならぬはずだと思います。ただいま御説明のあった点について、大きいところを言われましたが、少いところはほんの形式に終っておる。従って、平均八升というようなわずかな基準反収の是正にしかならぬ。こういうことではこの制度の今後の発展はあり得ないと思うのでありまして、そういう点について、政務次官はただいまの問答をお聞きになりましていかように政策上の問題としてお考えになるでありましょうか。もう少し強い御決意をこの際お聞かせ願えればよかろうかと思います。
  58. 石坂繁

    石坂政府委員 ただいま足鹿委員からいろいろ御指摘になりましたが、足鹿委員のお考えの線も確かに一つ考え方であろうと思います。しかし、政府といたしましては、国の指示を今直ちにやめるというわけには参らないと思います。一面、政府といたしましては、再保険者としての立場上、また全国の公平な損害の認定をしなければなりませんので、その審査を行わざるを得ないのでありますが、審査の実情が次第に国の認定と近づいて参っております。今後も、共済団体の評価基準の向上あるいは統計調査部との連絡の緊密化等によりまして、一そうこの損害評価を適正化するようにいたしまして、第三者の資料も見てこれが裏づけられて、実質的には農業団体の自主性が尊重されて参りますように指導して参りたいと思います。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも方針を変えられないようでありますので、それはあとの問題にしまして、これに関連して、昨年の制度改正によって新しく道が開けたのは自由選択制の問題であろうと思います。これは基準反収と緊密な関係もありますし、あるいは掛金にも関連をする農家負担の問題もありまして、非常に重要な問題だと思うのです。当初私どもは、この前の改正で、上を八に押え下を二にすべきだということを強く主張いたしましたが、これはあくまでも七、五、三だということを堅持されて参りました。ところが、趣旨を伝達される過程において、上をとる場合には著しく掛金負担が増高する、それをおそれて農家は最低の三を選ぶ趨勢が出てきた。そこで、あわてて、これでは困るというので、中途において四を挿入することにして了解を求めてこられた事実は御存じの通りであります。私どもは、私どもが指摘したことが正しかったことをその一事をもって見ても大体確信をいたしますが、現在は七、五、四、三という選択の四段階を設けられた。ところが、実際におきまして全国的にはどういう選択になっておりますか、その資料を一つ伺いたい。私の出身の県におきましては、三の階級をほとんど大部分が選び、まれに四または五を選んでいる傾向を示しておりますが、全国的にはどういう傾向を示しておりますか。その七、五、四、三別の選択の内容一つ御提示願いたい。一応口頭で大勢を御説明願って、あとで資料としてこれを御提示願いたいと思います。最初にその点をお願いします。
  60. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 共済金額の実際の選択状況でありますが、全国ベースとしましては、三十三年産の水稲につきまして実際に選択をされました金額の平均は、石当り共済金額でございますが、三千三百九十八円でございます。地区別に若干の幅がございますが、一番高いのが北海道で四千五百四十三円、低いのは東北でございまして二千八百七十三円であります。その他の地区は関東から九州にかけまして大体三千五百円見当のところに相なっております。なお、この資料は、三十三年水稲の共済金額選択のその他の状況等も合わせまして、別に資料で用意をいたして差し上げたいと思います。
  61. 足鹿覺

    足鹿委員 政務次官、今お聞きのように、大体石当り一万円を標準にしてこの制度は発足しているわけですが、三千三百九十八円を平均として農家が選んでいるということは、この制度に対する農家の無言の不信と抵抗の現われだとも言えると思うのです。この程度のもので、かりに三割の被害と見た場合に何ほどの共済金が受け取れるかというと、ざっと見て二百円ないし三百円というものだろうと思うのです。そうした場合に、果してこれが農業の再生産に役に立つのか、その所得補償の一部にもならぬと思うのです。こういう事態を現実に起したものは一体どこにあるのか、これは真剣に反省されなければならぬと思うのです。私どもは、当初、農家の経営単位別に個人意思に基いて八、七、五、四、三、二といくべきだということを主張したわけです。ところが、事務の上からできるとかできぬとか、その準備がとても大へんだとかいうことで、結局、山場地帯と平場地帯、あるいはA地帯とB地帯というようなその地域性に従ってほとんど画一的に二つの段階に分けられて、部落別にもこの問題を解決する熱意と努力を怠ったところにも大きな原因があろうと思うのです。元来、保険の線を進めていくという考え方であるならば、当然農家の自分の判断に基いて選択せしむることが選択制度を採用した基本であることは、これは間違いないと思うのです。にもかかわらず、一市町村を二地区程度に区分して、農家意思というものは全く無視されている。従って、農家も、最初の作付前における組合との契約の場合には、それは安いのがよろしかろう。しかも、この趣旨が普及しておらない、また普及する熱意を欠いておったために、結局安易な方向へずるずると行ってしまった。その結果はどうか。昨年の稲作においては部分的な災害が相当あったようであります。飯米にも事欠くというような農家もあったようでありますが、残念ながら、三千三百九十八円、三千円を前後して契約をしておる。従って、反当に直してきわめてわずかな涙金にも至らぬ、そういう状態であって、これまたこの制度に対するところの不信は大きく増高されておるのが現状だと思うのです。思うに、私どもが申し上げたのは抽象論ではなくして、最初に思い切って若干の事務費を計上し、末端組合がその気になり、農民の協力を求められるならば、農家単位に選び得る。これは筆数を調査し、あるいはいろいろ困難な問題もあったでしょうが、少くとも初年度においてその努力を怠らなかったならば、あと一つのでき上ったものを補正していけばできるのであって、そのことに対しても、いやこれはとても事務的にはさばき切れぬとか、何らこの制度に対しての具体的な熱意のないところから、当然予想されるような結果がこの制度改正の上に現われてきております。これに対してどう対処されるつもりでありますか。現在のように組合を二つ程度に区分していく自由選択制というものは、このまま放置すれば非常な欺瞞性の強いものだと言われても仕方がない。名は自由選択であるが、二つに限って農家をそれに押し込めていく、農家意思を十分に尊重することもできないということになろうかと思うものでありまして、そういう点について、全国平均が三千三百九十八円石当りを約三分の一の農家が選んでおるということは、これは重大な問題だと思います。このまま放置して、また契約初年度三十四年度が始まろうとしておりますが、どういう反応を農家がこれに示してくるか。このものに対するところの何らかの改善の対策を講ずべきものであると思う。これは別に法改正を必要としない。農家単位に持っていけばその方針にいけるわけでありまして、ただ初年度におけるその準備と努力は異常なものがあることは私もよく知っておりますが、それをまず乗り切るべきではないかと思うのです。その点について、基準反収との関係もこれは大きく関係してきますが、どのようにこの問題を解決されようとしておるのか、これでいいとお考えになっておりますか、三十四年度はどういうふうに対処される御所存でありますか、その点を伺いたいと思います。
  62. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 三十三年度の水稲につきまして、実際に引き受けました共済金額が非常に低かったということは、ただいま御指摘の通りでございますが、これは、先ほども御説明申し上げましたように、特に東北の地方等におきまして選択金額が非常に低かったというような面が非常に影響いたしておるわけであります。昨年度の実態を振り返って見ますと、累年の豊作等で共済金額選択の際の考え方が、農家としてもやや楽に考えたような面もあったようでございます。現に、昨年度の場合は、東北地区等におきましては、実際に引き受けが終りましたあと災害が発生いたしました場合に、その引き受け金額をより高く修正してもらいたいというような動きも一部に見られたのでございます。これは申し上げるまでもなく制度上できないことでございますが、事後的にはそういうような感じを持ったような向きもあるわけでございます。従いまして、昨年の場合は、ここ近年の良好なる作柄との関係においてこういうような選択が行われたというのが、実際問題としての選択に影響をいたしました要素であると思うのでございますが、本年以降の問題といたしましては、昨年の経験等からも考えまして、農家に適正な金額の選択をしてもらいますように、さらに関係団体、府県当局等を通じまして十分なる指導・調整をはかって参りたいと考えておるわけでございます。  なお、農家単位の引き受け等の問題は、これは過般の法律改正を御審議いただきました際にもいろいろ検討をされました問題でありまして、その際、われわれの方の考え方も、その当時の当事者から詳しく御説明申し上げておるわけでございます。われわれといたしましても、単にこの問題だけでなく、現在の農業災害補償法の全体を通じまして、こういう場でお答えをいたします場合、あるいは技術上の問題等を取り上げまして御説明申し上げる場合がいろいろなケースについて多いわけでございますが、現在われわれの心がまえといたしましては、技術上困難である問題はもちろん多々あるわけでございますけれども制度全体がいろいろな角度から批判を受けております点については、謙虚な気持で十分反省をいたし、また検討いたしまして、できる限り実行可能な部分につきましては工夫改善を加えて参りたいという心がまえで対処いたしておるわけでございます。ただいまの引き受け方法等につきまして、三十四年度から直ちにどのように改めるというところまで申し上げることは、現段階では困難でございます。ただいま申し上げましたような心がまえでこの問題につきましては対処して参りたい、かように考えております。
  63. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもその程度の御答弁では、どういうふうにお考えになっておるのか——私は、事実を誇示したり、ただあなた方を追及して窮地に陥れるというような考え方では言っておらぬ。私は、三十四年度が実際この制度自体崩壊か再建かの岐路だろうと思うのです。これに対して事務当局としては相当内部的な検討が進められておることも私は若干聞いておりますが、少くともこういう方向に向って検討を開始しておるとか、あるいは今後大きくこの制度をどうすべきかということについて、昭和二十八年には制度改正審議会を設けて中間答申を行い、相当この制度に対する検討は、学者あるいはその他の保険業界の権威、いろいろな人の意見を集約したものもあるはずです。それらの経過を考えてみましても、どうも政府の熱意が足りないんではないか。末端へ行ってごらんなさい。たとえば私のところにはたくさんこの制度に対するところの末端からの声が届いております。これはある県のある支部で職員会議を開いて、私に、こういう考えをお互いの共同討議の結果持っておるということを言ってきておりますが、それは「最低共済金額を選択するため、賦課金より掛金が下る現象を生じ、農家に役職員共済の感を与えている」、こういう感想を自分たちが討議して申し出てくるような矛盾にもうぶつかっておる。そして、「農家より不満の声が強く、また職員自身現制度に矛盾を感じ出したため、他に転職し、市町村移譲を急ぎ、また退職になれば現制度反対の第一線に立つと漏らす職員のあること」というふうなじかな声を皆さん方はもっとお聞きにならなければ、各連合会長が集まってきて会議を開いて、そしてあなた方の方針を指示し、また意見を聞いて散会という程度では、実際の末端の職員や農家の気持というものはおわかりになっておらぬと私は思うのです。まだたくさんいろいろな不満を訴えてきたものがありますが、冗長にわたりますから私はあえて一々申し上げませんが、そういう段階ではないと思うのです。農林大臣になるべくすみやかに御出席を願いまして、私は、こういうことについて、大きな農政上の一本の支柱ともなるこの制度が、巨額の経費を使いながら、農民が一向これを歓迎しない、この厳粛な事実というものにもっとこたえていく新しい方向を示さなければならぬと思うのです。どうしてもそれに政府が踏み切らないということでありますならば、農民団体がとっておるところのいわゆる解散、業務停止の寸前まで追い込んで、そして事実上においてこの制度改正に踏み切らざるを得ないような一つの農民運動としてわれわれは展開せざるを得ません。国会でいかように論議し、いかようにわれわれが真摯な態度実情を申し上げても、これに対して政府は何らみこしを上げない。静観の態度をとって変らない。昭和二十九年の中間答申から三十二年まで、この問題が起きて抜本改正が必要だと叫ばれましてから五年目、ようやく三十二年に一部の改正改正の方向が一応出たという程度で、その結果がまた、今まで私が指摘したような現実になっておる。とするならば、今後この問題に対して政府が熱意を持たぬ、農民もこれに大きく期待しないということであるならば、私どもは、この制度を崩壊し去るということに対しては、かわるべき代案も持たずして崩壊せしめることはよろしくないという基本的な立場に立って、一つの農民運動の立場からもこれに対して強い抵抗を今後起さざるを得ないと思います。そうなまやさしい問題ではないと思うのです。もっと政務次官は大臣にもよくこの実情を御報告願いまして、午後御出席を願うときには相当の答弁の用意をされて御出席を願いたいと思います。でないと、事務上の問題をどう局長に尋ねましても、今御答弁になったような程度だろうと思います。しかし、事務当局としても少し熱意が足らないのではないかと私は思う。いわゆる連合会や中央団体の考え方は私もよく聞いておりますが、とにかく、何か改革をあまり好まない。むしろ現状に若干の手を加えていくというような、改革を積極的にみずからが音頭をとってやるというような気魄と熱意にも私は欠けておると思います。そういうことで、末端二万の職員はもう希望を失っておる。どこへわれわれが国政調査に行きましても、農家からは不満を聞く、職員からは、自分たちの身分はどうしてくれる、——本年度予算を拝見しますと、わずかに一人当り四百五十円のベース・アップを一応計上されたにすぎない。この前もあなたとの放送討論会の際に申し上げましたが、農業学校を出て技術員の資格も持っておる職員が、自分は誤まってこの制度に熱意を感じて入った、ところが十年勤めて八千八百円の俸給に甘んじておる、こういうことではいかに熱意を持っておってもこれ以上進むわけにいかぬから他へ移りたい、こういう希望を持っておることをあなたにも申し上げたと思うのです。なるほど共済基金の職員のベースの平均は比較的いいというようなことを言う人がありますが、それは、連合会は全額国庫負担でありますし、他のものとの比較においてはそう著しい差はないと思いますが、末端の給与水準の面からいきますと全くお話になりません。そういうところからだんだん、当初熱意を持っておった職員が他に転職をしあるいはやめて、今度はこの制度に対する批判の第一線に立つとさえ決意をしておる者も続出しておる現状であります。制度そのものもおもしろくない、運営の衝に当る第一線職員がだんだん批判的になって熱を失う、一体これでいいのでしょうか。百数十億の巨費を投じて、こういう状態に彷徨しておっていいでありましょうか。その点を政務次官は午後大臣とよくお打ち合せをされまして、これに対する少くとも来年度当面運営上においてなすべき最大の対策と抜本改正に対する政府の所信をお打ち合せ願って、責任のある御答弁をお願いしたいと思います。  午前中の質疑を打ち切ります前にちょっと資料を要求しておきます。前にもいただいたことがありますが、現在の解散議決組合数、事業休止議決組合数、それから、県連合会は県連合会、末端は末端の職員の待遇の資料、それから、午後市町村移譲の問題について触れたいと思いますので、市町村移譲の最近の実情、その資料をできれば午後の再開の劈頭に御配付を願いたいと思います。  午前中の質疑は一応これで終りたいと思います。
  64. 石坂繁

    石坂政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、この制度は数年来検討の結果によりまして改正はいたしました。改正いたしましたものの、制度的にも、運用の点から申しましても、いろいろ御意見のあることも承知いたしております。なおまた、先ほど来足鹿委員からいろいろ問題点を指摘せられたのであります。従いまして、この制度につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、当面の問題といたしましては、運用の面に一そうの改善を加えることを主眼としてやっておりまするけれども、しかし、本制度の今後のあり方につきましては十分検討いたしたいと存じております。なお、しかしながら、足鹿委員の御要望もございますので、午後大臣とも十分打ち合せをいたしまして、できるだけ足鹿委員の御要望に沿うように、大臣の出席を求めるつもりであります。
  65. 足鹿覺

    足鹿委員 ちょっと念のために申し上げます。今申しました資料と、それから、さっき課長が口頭でお読みになった各都道府県別の基準反収、その資料がいただけるでしょうか。
  66. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 とりあえずととのいますものだけ至急提出いたします。ただいまの資料も用意いたします。
  67. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  68. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。足鹿君。
  69. 足鹿覺

    足鹿委員 午前中にお願いしました資料をただいま拝見したわけですが、時間がありませんので、これについて簡単に御説明をお願いします。
  70. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 資料はとりあえず一部だけ足鹿委員の手元に差し上げましたが、今印刷をいたしておりますので、届き次第配付をいたしますから、しばらく御猶余願いたいと思います。  ただいま差し出しました資料に関しまして簡単に御説明いたしますと、一つは、三十三年産の水稲ブロック別石当共済金額、これは先ほど申し上げましたように全国平均では三千三百九十八円ということに相なっておるわけでございます。地方別には、北海道が四千五百四十三円、これは平年より上回っております。去年より下りましたのは東北が下っております。北陸が下っております。その他若干……。  それから、その次は、解散議決組合数の一覧でございますが、これは青森県以下十県ばかりにつきまして合計三十二ございます。解散動向または事業休止状態を示した組合数は合計いたしまして七十二でございます。  なお、この表は昭和三十三年十一月二十八日に都道府県に照会をいたしまして、三十四年一月三十日までに報告のありましたものを取りまとめたものでございます。一部未報告の県がある模様でございます。  水稲の基準反収は、けさほど御説明申し上げましたように、三十二年は全国平均で二石二斗四升、それが三十三年は八斗引き上げまして二石三斗二升に相なっておるわけでございます。その府県別の数字は、お手元のただいま差し出しました資料によりましてごらんを願いたいと思います。  次に、市町村に対する共済事業の移譲状況調でございますが、これは三十四年の一月二十五日現在で八十二でございます。関係県はここにありますように約二十県ばかりございますが、月によりまして若干の多い少いはございますが、全国的にかなりの増加をいたして参っておるわけでございます。なお、これは農林省から都道府県に照会をいたしましたことに基きまして各府県から回答して参ったものでございます。なお、各府県ごとの個々の組合の名称、それから移譲をいたしました理由につきましては、法律に移譲をいたします場合の規定がございますが、その規定によりましてどの条項に該当するものであるかということが、各組合別にお示しをいたしてあるわけでございます。  以上簡単でございますが……。
  71. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま資料の御説明をお聞きしたわけでありますが、特にこれから市町村移譲の問題についてお尋ねをしてみたいと思います。市町村移譲の問題は昨年一月の法改正中、これは画期的ともいうべき点の一つだったと思うわけであります。大体、都道府県連合会の指導と申しますか、態度と申しますか、この点については必ずしも積極的な態度を示しておらない。どちらかというと、私どもが地方へ行って、そういうことがあったのかという場合によく出合うのでございます。周知徹底を欠いておる。組合員はもちろんのこと、組合の理事者ともいうべき方々でも、そうかというような実情があるのでありますが、にもかかわらず、ただいまの御説明によりまして、去年の四月一日現在四つの移譲を見たものが、月々に累増しまして、本年の一月二十五日に八十二組合を数えるに至った。今後もまだこの傾向は強まっていく、拡大されていくということは言って差しつかえないと思うのであります。どちらかといえば都道府県連合会は好まないというような態度を示しておるところがあるように私は見受けております。にもかかわらずこういう傾向にあるということは、先ほども述べましたように、末端の組合運営の第一線に働いておる専任職員あるいは専任役員というような人々は、最近のこの農災の不人気、農民からのうけが非常に悪い、従って運営もなかなか健全にならない、待遇はもちろんのこと将来の身分の保障もない、前途に光明が認めがたいという点から、末端に行きますと市町村移譲を非常にこいねがっておる。むしろ早くやってもらいたいという場合が多いのであります。これは積極的に推進すべきものであると私どもは思うのであります。今までの組合が不健全運営が多かった。これは一つの折り目をつけて、けじめをつけて気分を一新し、農民に臨む態度も、また農民から受ける印象も、ここで一つ線を引いて新しく権威のある組合運営に切りかえるのだということにならないと、今まで十数年続いた、どちらかというとだらしのない運営が多かったものに対しての信用回復は、私は困難だと思うわけです。これはこの趨勢をさらに拡大していく自然的な勢いもありますが政府としてはもっとこれを強く推進して、公営的な性格を多分にこれに織り込む、そういう性格に切りかえていく必要があると思うのでありますが、その点について、これもまた農林大臣の御所見を承わらねばならないことでありますが、末端の役職員も望み、また農民もこれに賛意を表しておるのだから、——ただ、若干の都道府県連合会に、煮え切らない、そのことを好まざるかのような態度も見えぬではない、そういう点はありますが、さようなものを顧慮することなく、もっとこれを強く推進して、公営的な性格を強く出し、特に賦課金の国庫負担、そして農民負担を軽減する、そういう方向に進めるべきものであろうと思いますが、この点について政務次官の御所信を承わっておきたいと思います。
  72. 石坂繁

    石坂政府委員 解散問題につきましては、従来の組合の運営の点から、いろいろ末端においての状況を指摘されまして、むしろ公営的性格を持たせて市町村に移譲する方が適当ではないか、こういうふうな御意見であったのでありますが、農林省といたしましては、この制度を最も円滑に運ばせ、かつまた将来の事業運営が健全に行われて、この制度の趣旨を最も生かしますためには、組合の運営を積極的に指導いたしまして、その経営の完全運営をはかりたいと考えております。従いまして、農林省といたしましては、解散動向を示しておる組合については市町村にこれを移譲するということにつきまして、将来の事業の運営の円滑健全化を考慮いたしますときに、必ずしもこれを勧奨することも適当だとは考えていないのであります。従いまして、足鹿委員の意見とは反するかもしれませんけれども、私どもはむしろこの後の組合のこの制度の徹底をはかりまして、その運営に万全を期したいと考えておるのでございます。かように申しますと、そう言いながら農林省としては実際には何もやっていないじゃないか、こういうようなおしかりを受けるかもしれませんが、午前中からだんだん申し上げております通りに、今日のところ、運営の面に重点を置きまして、できるだけ成果を上げるように努力いたして参りたいと考えております。
  73. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 共済事業の市町村移譲について政府としてさらに積極的な考え方をとったらどうかという趣旨のお尋ねでございますが、市町村移譲に関します基本的な考え方といたしまして、一定の条件に該当する組合について組合員の自発的な意思の表示と市町村の意思とが合致をいたしました場合にこれを移譲するという建前をとっておることは御承知の通りでございます。移譲の模様は、先ほど申し上げましたように数においては一月の終り現在で八十二組合に達しておりますが、なお今年秋ごろまでには若干の移譲組合が出てくる見込みでございます。移譲後の組合の業務運営の状況等につきましては、私どもの方でも事例的に調査をいたしておりますが、まだ移譲後日数も浅うございますし、必ずしも一つの固まった方向といいたしましての移譲の効果を確実に把握するということが困難のような事態にあるわけでございます。さような状況でもございますので、この問題につきましてはさらに移譲後の組合の業務運営の実態等も十分把握いたしまして判断をいたしたいと思っておりますので、それまでの間はおおむね従来の考え方で進めて参りたいと思っております。ただ、ただいま御質問の中にもありましたように、あるいは連合会の意向とかそういうようなものによりましてこの移譲の動向が支配をされるというようなことのないように、私どもの方でも十分指導していきたい、さように考えております。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 まだ移譲後時間が経過しておらないのでありますから、ただいまの御答弁もやむを得ないと思いますが、私の言っておるのは、やはりこの際、制度に対する農民の信頼感、また業務運営の健全化、そういう面から一つの何か折り目をつけるという意味において推進すべき方向を法的にもあげたわけでありますから、やはり踏み切るときには踏み切るという積極的な方針を持って指導していけば、勢いこの後における業務運営にもその結果として期待し得るものがあるのではないか、そういうふうな考え方に基いて言っておるのであります。しかし、実績から見ましてよく判断をしてみなければならぬというお考えも、また事務当局としては実際そういう点もあろうと思いますから、とにかく、私はこの点については強く公営化の方向を目指して市町村移譲を積極的に推進すべきであるということを強く要望いたしておきたいと思いますが、特にその際各地で見る実例は、市町村に受けるのは優秀な組合、いい組合なら市町村は受けるが、悪いのはごめんだこういうような事例も間々あるように思われます。ところが、実際はやはりそういうものに対して市町村移譲をすみやかに行なって、そして組合の健全化をはかる必要があるのではないかと思うのです。でありますから、そういうものについてはやはり指導監督条項が今度の改正によって強まっておるわけでありますから、その組合の診断はあなた方の手によって行われておるわけであります。その診断の結果、検査結果に基いて、当然これは移譲によって健全化すべきだ、そういう一つの判断のもとに、知事のあっせんと申しますか、この推進に当り組合側と市町村側の協議がととのわない場合でも、都道府県知事がもっと積極的なあっせん活動ができ得るような道を具体的に開いて、そうしてこれを一定年限間に、たとえば二年なら二年、三年なら三年を目途として移譲を完了していくというふうなことが好ましいではないかと思うのです。ただ、行くものは農民の自発的意思に基いて行きなさい、それもじゃまはせぬ、悪くはないでしょう、今のも今のでいいでしょうというような、そういうなまぬるいというか決断のない態度をいつまでも続けることは許されないのではないかと思われます。私の見たところでは不振組合が拒否される現状があることを指摘して、それらに対しては特に移譲による健全化ということにもっと力を入れるべきではないかと思います。不振組合とは結局賦課金の徴収なり掛金の徴収がうまくいかないという場合が多かろうと思います。また、今までの運営がだらしがなかったために非常に財政的な行き詰まりがきており、不正事件で表には出ておらぬが、実際ふたをはぐってみると、使い込み事件等のあるのも相当あります。そういうようなものについては、やはりこの機会にそれを洗って、荒立てるという意味ではなくして、それの実態を明らかにして、その上に立って市町村移譲に切りかえ、組合員の信頼を受けるように努め、また組合運営を権威あらしめていくということが、私は必要であろうと思うのです。要するに、一定の方針を持ち、年限を定めて、むしろ優秀組合よりも不振組合に重点を置いてその市町村移譲を積極化すべきであるというふうに私は考えるのであります。根本的に私の意見と違っておれば違っておるとおっしゃっていただいてけっこうですが、私はそう大きなあやまちは犯しておらぬと思いますけれども、その方向についての政務次官の御判断を一つ承わりたいと思います。
  75. 石坂繁

    石坂政府委員 先ほど、行政庁といたしましては移譲の問題を勧めるということが必ずしも妥当であるとは考えませんというふうに申し上げたのであります。今足鹿委員の指摘されました通りに、不振の組合について一々検討いたしますと、事実上事務執行面の不健全による点等も見受けられるのであります。従いまして、こういう組合に対しましては、役職員の教育、業務の執行を整備いたす等によりまして組合の運営の改善をはかって参りたいと考えております。なおまた、解散の動向を示しておる組合ないしは事業運営の円滑を欠く組合に対しましては、それぞれの事情検討し、配慮いたしまして、府県連合会の協力のもとに個別的に指導を徹底いたしまして、農家の理解と納得によりまして再び事業が健全化しますように、一そうの努力を払っていきたいという考えを持っております。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも私の聞いておることにまともにお答え願えないので、まことに残念でありますが、それでは、現在の八十二の移譲組合の場合に、その常勤役職員の身分上の問題で、市町村職員に移譲になるわけですね。そうした場合には、勤務年数の通算制の問題等についてはどういう実情に現在ありますか。また、あなた方はどういうふうにこれを処理されておるか。その問題についても一つ御説明願いたい。
  77. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 市町村に移譲をいたしました職員の年金給付通算の問題でございますが、現在、市町村職員自体の長期給付制度につきましても、一般的には、一般吏員については市町村職員の恩給組合、雇用員については市町村職員共済組合、また一部の市においては市町村職員共済組合の適用除外を受けておるものがあるというような、きわめて複雑多岐な体系となっておりまして、この内容は必ずしも統一されておるとは申しがたい実情にあります。農林当局といたしましては、これら事業移譲をいたしました市町村の移管職員の身分安定の措置に関しまして自治庁当局と協議を続けておりまするが、自治庁当局といたしましては、地方公務員退職年金制度が以上申し上げましたようなきわめて複雑多岐な体系となっておりますので、これを整備いたし改善を行うという必要にかんがみまして、現在地方制度調査会に諮問をいたしまして、近くその答申が行われる段階になっておるわけでございます。この答申を待ちまして根本的な改正が行われる予定でございまするが、この事業移譲をいたしました職員の通算の問題につきましても、その際あわせて処理をいたすべく、目下自治庁当局と協議を続けておるわけでございまして、通算を要するという実態の認識につきましては、自治庁当局におきましても相当強く理解をしてもらっておると私どもは承知をいたしておるわけであります。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 大体いろいろ手続上の問題等をめぐって研究され、自治庁とも打ち合せをして確信があるようでありますので、その点はさらに強くはっきりとした姿において解決されんことを要望いたしておきたいと思います。ただ、先ほどの政務次官の御答弁では、おぼろ湯につかったようなもので、出もならず入りもならず、いかにも市町村移譲の問題は道を開いておいたからやりたければやれ、そうでなければそれでもいいと言わんばかりの御答弁でありますが、少くともこの方向を法改正によって踏み切ったというのは、従来の組合運営の実績にかんがみて相当思い切った方針が出ておるわけでありまして、その点については、くどいようでありますが、よく検討されまして、少くともその道を開いた以上、どっちつかずの中途半端な態度を長く続けられることはよろしくないと思います。御善処あらんことを除ねて要望し、また御所見を承わっておきたいと思います。
  79. 石坂繁

    石坂政府委員 移譲に関する基本的の態度といたしまして、先ほどから私なり局長が申し上げております通りに、組合員の総意と市町村の意思の合致した場合に移譲する、こういう態度をとっておるのであります。しかし、足鹿委員のだんだんの御所見も吐露されたのでありますが、われわれといたしましては、かような問題を含めまして制度全体につきまして十分に検討いたしたいと思います。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、市町村移譲の問題は御善処になるそうですし、全体としての関連もあるそうですから、この際この程度で終りまして、次の問題に移りたいと思います。  共済事故原因の再検討の問題でありますが、これは、最近地方の組各で要望し農民も要望しておるのは、病虫害に対する防除、未然防止、この問題に対すを熱意が非常に盛り上ってきております。御存じのように、農薬の進歩発達というものは非常に目ざましいものがありますし、またその防除方法なり手段につきましても非常に長足の進歩を遂げて、普及も進んでおるように思います。現在の事故対象は、旱魃、冷害、水害、病虫害というふうになっておりますが、元来この制度はややもすれば惰農奨励的な面に通ずるということを従来よく言われておった。そのことは、こやしもあまりやらぬ、病虫害の防除もほうっておく、そうすれば常に共済金がもらえるというような場合があって困るというような声も聞いておるのであります。全体がそういうものとは断定できませんが、ほんの局部的な場合が多いようでありますが、とにかくそういった面もないことはない。そういう面から、最近の農業技術の中でも病虫害の未然防止あるいは発生の場合における防除という面は著しく情勢が変ってきておると思うし、むしろ病虫害防除は農業技業の一環であって農業技術に連らなるものであります。防除を徹底すれば必ず増収が期律できる、そういうことはもはや定説になっておりますが、この際、むしろ病虫害を事故原因から除いて、そうして防除共済の面をもっと強く制度的に打ち出す必要はないか。悪いところを是正するという面が制度の抜本的改正一つ大きな柱になりますが、新しき農業情勢の推移に照らしてみて、そしてこの新しい面を開拓するということが必要な段階になってきやしないかと思うのであります。いわゆる天災と病虫害防除は不即不離の関係にあってだめだという議論も一部にあります。それも確かに議論でありましょうが、しかし、病虫害は天災とは異なると思うのです。従って、これらの問題については、むしろ農家の所得を病虫害から守っていく、生産を守るという意味から、農業技術の一環をさらに広めて徹底していくという観点に立って、病虫害の防除面をもっと強い制度化の方向に踏み切って、そしてこの制度が農民からもっと喜ばれるような運営になることを私どもは期待するし、現地もそういうことを期待しておるように思います。そういう点について、現に連合会によっては、その地域によって異なりますが、若干自分たちの創意によって手をつけておるところもあるやに聞いておりますが、その点についてはどういうふうに御検討になっておりますか。事故原困からとりはずすということはなかなか重大なことでありまして、そう安易に割り切ることも困難と思いますけれども、やはり一つの問題点たることを忘れてはならぬと思うわけであります。その点いかようにお考えになっておりますか、承わりたい。
  81. 石坂繁

    石坂政府委員 病虫害は、御承知の通りに、風水害、旱害、冷害等の災害と併発する自然災害の性格を持つ場合もあり、農薬及び防除技術が進歩いたしました現段階においてもなお農家に相当の被害を与える災害でございまして、最近の共済事故発生の状況より見ても、病虫害を共済事故から除外いたしますことは、なおこれは慎重な検討を要するものと考えております。また、病虫害は多年共済事故と競合して発生する点もございますので、病虫害を分離して損害を評価することは、技術上から見ましてもよほど困難であります。  そこで、病虫害に対する防除共済の点でありますが、この防除共済は他の自然災害に対する共済事業とおのずから性質を異にいたしております。防除行為による費用を損害補償の対象とするために、制度の仕組については慎重な研究を要するものと考えられます。また、料率の算定、損害認定の方法等につきましても、長期間の資料を整備いたしまして検討を行う必要があると考えております。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣を至急お呼びいただきたいのでありますが、この防除共済の制度化の問題についてはもっと真剣に検討されることを私は望みたいのです。制度自体が、収穫を補償する、従って所得を補償していくという考え方とはよほどほど遠い、生産費の一部を補償するにすぎない現制度下にあって、一番大事な面は病虫害防除だろうと思うのです。他の天災に基くものにつきましては、当然、農林省のみの問題ではなくして、国土保全なり災害の大きい立場からの防除ということが伴わなければこれは解決のつかぬ問題でありますが、病虫害の面におきましては若干原因を異にしておると私は思うのです。そういう面についてはもう少し突っ込んだ研究をされて——市町村においても自発的にいろいろと工夫をこらして検討していろいろなことを実施しておるわけであります。そういう事例もお調べになっておると思いますが、もっとこの病虫害防除の制度化の問題については特に研究を遂げられて積極的に乗り出していただきたい。どういうふうにすればいいかという問題につきましては、たとえば無事戻しの問題に関連をいたしますが、無事戻し金を従来は総掛金の十分の一ですか、今度の改正で六分の一になったと思うのですが、そのものをかりに小さく細分して農家に還元しましても、それは微微たるものであって、ほんの気休め程度に過ぎないと思います。従って、そういう場合には、それらを一つの元として防除共済の財政的な資金の一部にこれを活用するとか、いろいろな方法があろうかと私は思うのであります。なんとなしにこの制度そのものが非常にいたんだ道具のように方々でこわれかかったりしておるにもかかわらず、これに対する真摯な立て直しということが一向にはかどらない。一面やっかいな存在とも言い得る面がありますが、一つ一つ問題を処理していく以外には方法はないと思うのです。そういう面は、ただ単に病虫害は天災に原因するものだというような一点張りの御答弁では、私はおさまらぬのじゃないかと思うのです。もっと、そういう公式な答弁ではなくして、私が今述べたような観点から、農家が歓迎し、農家がその結果を喜ぶような方向に運営を新しく切り開いていくということにならなければならぬと私は思います。これは農業技術の一環であるという観点から私は再検討を主張したいと思うのでありますが、さらに、あらかじめ予定されたような答弁ではなしに、やはり御同感なら御同感として、政治的に次官の踏み切った御答弁を私は期待しておるわけでありますが、一々経済局長に相談しなくても、あなたの考え方でこの点もう一応御答弁を求めておきます。
  83. 石坂繁

    石坂政府委員 病虫害対策ということは農業生産の上から重大な関係を持つものであります。従いまして、御承知の通りに、農林省といたしましても、別途、共済という関係でなしに、畑作振興の大きな柱として、畑作の線虫防除等の方法も講ずることにして、それに関連する昭和三十四年度予算もできております。しかるに、今当面の足鹿さん御指摘の防除共済の問題につきましては、先ほども一言いたしました通りに、長期間の資料を整備いたしまして十分検討をいたさなければならないのでありますから、われわれも、一そう資料を備え、この点につきましては十分に検討いたしたいと思います。
  84. 足鹿覺

    足鹿委員 畑作改善の問題と関連してというお言葉がありましが、畑作改善の問題になりますとなかなか大きな問題になりますし、現在病虫害防除で問題になりますのは、水稲の場合、倒伏に基くウンカの発生というようなこと、長目に多肥をやった軟弱成長の場合にイモチ病が発生しやすいとか、いろいろの関連条件があるわけです。そういう場合に、私が先ほどから言っておりますように、これは農業技術の一環といたしまして、倒伏はある程度技術上において防止し得る問題であり、また、軟弱成育の問題につきましても、それは農業技術の上においては解決がついておるわけでありまして、ほかの水害とか旱害とか冷害とかいうような問題とは趣きを異にしておるのでありまして、畑作の場合における土壌のネマトーダの対策費が本年度予算で若干組まれておることは私もよく承知いたしておりますが、それとは若干性質を異にしておると思いますので、私はその点だけは一応御注意申し上げておきたいと思うのです。で、農作物の場合はみなが強制加入ではございませんから、今問題として取り上げておらぬわけでありますが、水稲、麦の場合におきましても、やはり今申し上げましたように農業技術上の問題と言っても差しつかえない問題でありますから、これが防除が徹底をすれば、年間四百五十万石の減収だといわれる大きな減産防止の面から言っても、増収政策に通ずるわけでございまして、そのことは農家経済の上にも寄与しておりますし、国家の食糧増産政策の面から言いましても、消極的な政策ではなくして積極的な意義をこれは持っておると思うのです。そういう点から、これはほかの問題ではありますが、農薬の価格の問題あるいは使用法の問題、あるいは機具器材の問題等に対してもっと関心を持った、そして共同化の方向を持った防除政策の遂行ということが私は必要だろうという前提に立ってこれを申し上げておるのでありまして、これはこの際これ以上申し上げませんが、御検討をもっと進めてもらいたいと思います。この点は検討するということでありますからこれ以上触れることを避けたいと思います。  それから、このごろ地方を歩いてみますと、賦課金、掛金の強制徴収の権限が今度の改正によって強化されたというところから、方々で評判の悪いこの制度が差し押えまでやるということはけしからぬという声があるのでございますが、現在農林省にはこの賦課金、掛金の強制徴収を実施したことについての何らかの資料がございますか。あったら一つお聞かせを願いたい。
  85. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、私どもの方でも断片的にそういう話を聞いたことがあるわけでございますが、ただいま傾向なり動きを具体的にとりまとめて御説明申し上げるほどの材料が備わっておりません。さらに調べまして、材料が入手できましたときに、あらためて後日の機会にお答え申し上げることにいたします。
  86. 足鹿覺

    足鹿委員 これは、一方においてその成果が上りつつある場合にそういう強制手段がとられるということは運営上必要なことであろうと思うのです。一方において改善の事実が上らないにもかかわらず、そのような農民負担の点について強権を発動していくというようなことが、偏向して片一方だけ釣り合いをとらずに進みますと、非常に問題を惹起しやすいと思いますが、まだ十分資料がないそうでありますが、これは早急に一つお調べを願いまして、組合経営の健全化の問題と重大な関係があろうと思いますので、至急取調べの上私どもの方にも資料として御配付を願いたいと思います。  それから、今度の法改正によりまして零細経営農家に対して認意加入の道を開いたことは御承知の通りでありますが、その結果を調べられたものがありますか。
  87. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 これは、零細農家が何戸現在の共済制度から離脱したかという把握の仕方は非常にむずかしいのでございますが、加入戸数から引き受けをいたしました共済戸数の動向から大体その傾向が読みとれるのでございますので、それによりまして御説明を申し上げたいと思います。昭和三十二年の水稲の引受戸数は全国合わしまして五百六万四千戸であったのでございますが、昭和三十三年に水稲で引き受けました戸数は四百九十二万五千戸になっております。従いまして、この差が約十三万七千ばかりあるわけでございますが、これは全部零細農家が離脱したことによるものということは申し上げられないわけでありますけれども、この減少いたしました戸数のかなりの部分はこれに該当するものではないかというふうに観測をいたしております。
  88. 足鹿覺

    足鹿委員 これは相当大きな制度改正によって変化が起きつつあると思います。少くとも十三万七千戸というものが減った。これは、従来は一律強制加入のものが、零細規模経営農家の対象から自分の意思によって除いた。これは大きな筋だろうと思います。こういうふうに道を開けば、それぞれ農家意思は非常に緩慢ではありますがやはりそれを受け入れて自分の判断でそのことを処理しておると思うのです。そういう意味から、私はいつも申し上げておることでありますが、次官にもよくお聞き願っておきたいと思いますことは、現在強制加入を米と麦に限定した。ところが、麦作の場合でも入植地帯は災害多発地帯として除外をしておる。ところが、戦後入植が終ってからでも十年になんなんとしておる現状、それでなくても午前中もこの附帯決議を開拓営農問題について付して法案が通過をいたしましたが、開拓地に対する適用は現在までもない。そういう点も私は一つの矛盾だと指摘したい。また、日本の農業の状況から見まして、地域性が非常に濃厚だと思う。九州の場合は菜種を作る、関東の場合は麦が畑作または水田裏作の中心をなしておる、あるいは都市周辺においては果樹蔬菜がその経営の中心をなしておる、北海道においては豆類がその経営の中心をなしておるというふうに、非常に地域性が濃いのであります。ところが、米と麦には強制加入で国の再保険措置を講じておりますが、北海道の豆類だとか、あるいは九州方面の菜種だとか、その他都市周辺におけるところの経営の実態に即するようなものを任意共済としてやろうとしても、再保険措置が講ぜられないために一ぺんでぺしゃんこになる。それは、昭和二十八年における九州の菜種の任意共済の事例についても、いまだに当時の焦げつきが三千万円もあってどうにもならぬ、この処理をするにもなかなか融資の道すらも開けないというようなまだ現状であるわけであります。従って、この強制加入の問題は、一番普遍性のある、地域性のない水稲なら水稲、米なら米に限定して、他の麦とか菜種とか、あるいは北海道等の大豆とか、都市周辺におけるところの園芸、そういうようなものについては、これを任意共済にして、そのものに対して国が再保険措置を講じていけば、日本の農業経営の地域性に即応したこの制度の運営が行われるのではないかということを私どもは従来からも主張し、現在でもその考え方の間違いでないことを現実に北海道の豆類の問題あるいは九州の菜種の問題を通じて見ましても痛切に感じておるのです。従って、こういう問題に対しては、明らかに矛盾が指摘されるのみならず、的確に現われておると思うのです。この制度自体を全部を任意加入しろと言うのではない。米についてはこれを強制加入制度はあくまでも堅持し、他の重要農産物につきましては任意共済にこれを切りかえ、農産物の地域性と農家経営の実態に即するように国が再保険措置を講ずるならば、この制度はもっと生き生きと実情に即応した軍営ができると思うのです。これはそう異論のない話だと私は思うでありますが、保険設計でどうなるかということは、われわれは事務官でありませんからわかりません。わかりませんが、少くともこの制度が実態に即応してもっと農業経営に密着した制度として発達するためには、少くともそういう点が考えられなければならぬと私は思うわけでありますが、そういう点について、保険設計の面やあるいは考え方の面で、それぞれ次官なり局長から一つ方針をお聞かせ願いたいと思います。
  89. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 麦、菜種、大豆等につきまして、任意加入制の問題と、国が再保険の措置を講ずるという問題についての御指摘でございますが、麦につきましては地方的にかなり様子を異にしておりまして、現に主産地におきましては相当高率の引き受けをいたしておるわけでございます。そのような実態でもありますと同時に、麦は米に次ぐ最も重要な作物でございまするので、私どもの現在の考え方といたしましては、今後も任意加入制はとらない方針で考えておるわけであります。この点は、任意加入といたしました場合、従来の共済制度に対する考え方の基調になっておりまする国庫負担の理由づけ等の問題につきましてもいろいろ議論の出てくる問題でもございまするし、また、麦につきましては、実態から考えましても、任意加入でない現在の制度を続けていって差しつかえなかろうかというふうに考えておるわけであります。菜種、大豆等、いわゆる地方的な作物につきましては、任意共済は一部において実行いたした経験もあるのでございますが、これは、御指摘のように、国で再保険措置を講じませんとなかなか制度の運営がうまくいかないということは、過去の経験からも十分に感じとれるわけであります。従いまして、この点につきましては十分検討を続けて参りたいと考えておるわけであります。現に、大豆につきましては、昨年来予算措置を講じまして、北海道におきまして試験的に資料の収集をやっておるわけであります。これらの資料が整理をいたして参りますれば、それらのものをもとにいたしまして、さらに検討して参りたい、かように考えております。
  90. 足鹿覺

    足鹿委員 麦を除く他の重要農産物について検討しておるということでありますが、これは、関東地方においては麦は畑作の中心であり、また裏作の中心でもあろうと思うのです。しかし、北方農業の場合は全く異なってくる。また、西南地区、西日本の場合におきましても、これは政府が出しておる資料に基きましても、必ずしも関東におけるような麦の実情とは違います。麦の重要性を私は否定しておるのではない。その重要産物の地域性というものを重視していくべきではないかということを指摘しておるのでありまして、もし麦を強制加入からはずした場合に非常に困るというような事態があれば別でありますが、別に国が再保険措置を講じて、強制加入と同じような内容になれば、麦の加入が著しく減ずるということはなかろうと思うのです。麦自体が二十万町歩も最近減少しておるということは、これは、政府の価格対策なり、畑作の輪作体系上における麦作の研究が足らない、そういうところから麦が、減反しておるのでありまして、それと一連の関係があるのであります。そういう点で、私は麦を決して軽視しておるのではないが、しかし、その地域的な性格をもっとこの制度に組み入れて、農業経営に密着するような運営にすべきことを私は力説しておるわけでして、その点についてはもっと農業情勢の推移に適合して検討されんことを特に強く指摘して、この点は終りたいと思います。  それでは、家畜共済の問題が具体的問題として残っておるわけですが、組織、機構上の問題について一つお尋ねをしてみたいと思います。現在の組織、機構は、中央におきまして農林省特別会計、共済基金、これは任意団体でありますが全国共済協会、この三つに分れておる。ところが、都道府県連合会の運営の状況を見ますと、昨年末政府からいただいた資料によりますと、赤字連合会と黒字連合会が半々というような大体の趨勢にあるようであります。もしこの制度が真に農民の全国的な共済機関としての性格が中心だとするならば、都道府県にいろいろな赤字が出たり黒字が出たりというようなことはあってはならぬと私は思うのです。第一、低被害地の県において主として赤字が出る、そして被害激甚の地において黒字が出るというような、むしろ逆な現象が見られるのであります。そういうことは、何か現在の組織、機構上において、共済という一つの性格の面からいきますればどうもおかしいと思うのです。現在この制度は非常に複雑な制度になっておりまして、その運営も、法律そのものも、さらにこまかくいろいろな機構に組み立てられておりまして、ちょうど精密機械のようでありまして、なかなかその実態がつかみにくい。もっとこれを簡素化していけということは、これはもう地方へ出たときの強い要望です。とにかく、私どもがこの問題に取り組んでみても、容易に理解しがたい、全く手のつけようがないという場合もあるわけであります。そういう面をなるべく是正いたしまして、組織、機構をもっと簡素なものとして体系化する方法はないかという観点からお尋ねをしたいのでありますが、今申しましたように、共済基金なるものを、三十億の出資、国家と連合会の十五億ずつの負担で作ったのはよほど前のことでありますが、その程度の基金を今必要とするのか。政府機関としては農林金融公庫があり、最近は国の資金によらず自己まかないのできる農林中金あり、また農業共済関係の運転資金等も最近は豊富に出ておる現状であります。農林金融の全面的な立場から考えなければ一がいには言えませんが、何か農林省は、一面において監督権を持ち、特別会計を持ち、非常に強大な組織を持っておる。話に聞きますと、正規の公務員は課区長以下わずかであって、あとはほとんど常勤的非常勤労務者ですか、何か定員外の身分も非常に不安定な職員が数百人おって特別会計の運営に当っておる、そうしてその運営も官僚的な面が強く出て相当非能率的な面も顕著であるという批評も私聞いております。そういうものが積り積って結局農民負担に重なってき、あるいは農民負担を軽減しようという場合にそれが支障ともなるわけであります。そういう面から、もっと中央、地方における組織、機構を再検討すべき段階に来ていはしないか。そして、現在農業共済協会がございますが、これは全くの任意機関であって、しかも各都道府県連合会から資金を集め運営に当っておる。どうもわれわれには解せない機構上の矛盾を持っておるように思うのであります。協会を正規の業務指導機関にして、農林省は監督権だけを持つ、そして特別会計等はむしろ中央機関に集めて、そして基金は農林漁業金融公庫の中に別ワクを設けるとか、あるいは業務を農業関係金融機関に委託するとかいうふうにいたしていきますならば、まだまだ簡素体系化の上に資すべき点がありはしないかと思うのです。現在十五億円の農民出資が基金に行われておりますが、これは自己資金の利回り等を考えれば四十億以上の運営になって回っておるという話も聞いておりますが、事実上どうか存じませんが、もっと、この基金の現在のあり方、その運営の問題、いろいろ考えていかなければならぬ点があろうかと思います。聞けば農業共済協会は今度の農業団体職員共済組合の基金にもその職員は加入しておらぬ。しかも、その存在の立場というものは、この農業共済制度については農政上の重要な役割を果しておる。また連合体のかなめ役として機能を果しておる。にもかかわらず、その身分は全くの任意団体の職員として放任されておる。そういうことがあり得るでありましょうか。どうも現在の組織、機構上においてなお再検討されなければならない面が出てきておるのではないか、そういうふうに私は思います。ついででありますから申しますと、先ほど述べた連合会段階においては、ある災害頻発地帯の連合会は黒字だ、西日本の低被害地は赤字を持っておる連合会が多い、そういうことは矛盾とはお考えにならないですか。ほんとうの全国的な農民の共済機関だとするならば、お互いが平等の立場に立ってその結果が運営されなければならぬ。にもかかわらず、府県区域の大小、あるいは事業分量等によって、その運営の間には赤字の出る連合会と黒字の出る連合会があっていいでしょうか。むしろ、交通機関やいろいろな点から見まして、もはや連合会を必要としない段階がきているのではないか。むしろ中央に一本つける。都道府県の傘下にある組合は、私どもの鳥取県でいきましても、従来百八十くらいの組合が五十幾つに再編成されておる。そのものになお連合会があり、支所があり、出張所がある。一体そういう複雑な機構を必要とするのかどうか。私はそういう段階がきておると思うのです。それらがみんな農民負担にほかならない。あるいは国家負担が、当然農民負担の軽減に持っていける金をそういうところへ使っておる場合もあろうとも言えます。そういう点から考えてみまして、これは少し乱暴な意見かもしれませんが、やはり末端組合が大きくなったわけでありますから、これを中央と直結していくのに、一つの都道府県なりある一定の区域を区切って連絡機関なりあるいは中継機関が出ていけばけっこうやれるのじゃないか。それはすなわち機構の簡素化に通ずるし、一面経費の軽減ということも運営によっては生まれてくるのではないか。どうも、十数年前のアメリカ占領時代において向うさんの意思が相当に入ってできた制度が自来十数年を経過して日本の農業情勢や各般の方面に大きな変化がきておるにもかかわらず、このものは依然として旧態依然たる姿を持っておるというところに私は問題があるのではないかと思います。意見が非常に多くなりまして恐縮でありますが、少くとも組織、機構上の問題についても、ここに何らかの実情に即するような考え方を行なっていかなければならぬ。市町村の組合を合併させる、そうすると必ず予算の場合に事務費の削減問題でいつもあわてさせておる。町村で合併をしたのはその組合のためによかれかしと思ってやられたことでしょうが、結果的には国の事務費負担を軽減するために町村組合を合併したと言われても弁明の余地がないような実情に地方組合を追い込んでいる。そういうことが私はあっていいかと思うのです。こういう問題全体を通じて再検討をして、組織、機構上もっと簡素にして強力な改正をし、しかも体系を新しく建て直していく必要がありはしないか、そういう点を痛切に感ずるわけでありますが、政府においてはこの点についてどういう態度をもって臨んでおられるか、また、これからやろうとしておられるかを伺いたい。
  91. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 現在の農業共済実施の機構につきまして、いろいろ具体的な問題を御指摘になりましてのお尋ねでありますが、われわれといたしましては、現在の農業共済の職務をもっていたしますと、たとえば保険のような問題のごときも、一応県段階で危険の分散をはかりまして、通常の災害は県段階においてカバーをするというような保険設計になっておるわけでございます。従いまして、そういう仕組みから言いますと、連合会機構というものをやはり設けて運営をして参る必要があると考えております。また、共済基金の問題につきましても、御承知のような経過によりまして、実際の保険金の金繰りの関係からこういう機構が生まれたわけでございまして、現在はその目的に従いまして相当量の活動をいたしておるわけでございます。いずれも現状に即して考えますとそれぞれ機構的には動いているわけでございますが、ただいま御指摘の問題は、今後の農業共済制度全体をひっくるめまして、どのようにこれを効率的に、また簡素強力な機構に整備統合して運用して参るかという、制度自体とからんでおります。基本的な問題に直結しておる事柄であると考えるわけでございます。従いまして、われわれといたしましても、現機構のもとにおきましてさらに効率的な軍営をはかって参りますことはもちろんでございますが、今後制度の基本的な検討を進めます段階におきまして、その機構の問題につきましてもあわせて十分検討をして参りたい、かように考えております。
  92. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、具体的に尋ねると、事務的には結論は検討はしておらぬ、制度改正全般の問題として何でも考えるということで、重要な問題を追及しますと、制度改正全体の問題として検討したいと言われる。しかも、私どもがこの問題の改正を熱心に迫ると、微温的な態度で終始し、そして、いよいよ実施になったものを見ればその欠陥が明らかに現われておる問題についても、事務的対策を講ぜずして、何か制度全般の大改正をやらんとと言わんばかりのような御答弁でございますが、一方において、それをやるのかといえば、それについても確信がない。ほかの問題についてはどうか知りませんが、このようなこんにゃくみたいな問答をすることは私も初めてであります。もっとやるならやるようなかまえをやはりお示し願いたいと思うのです。これだけ国の巨費を使いながら、実効が上らぬといわれ、解散や事業休止が続出しておる。それをお認めになっておる。しかし、何か具体的な問題に入ると、非常にむずかしいから制度改正の全般としてやるのだと言われるのでは、私としてもどうも質問をしましても張り合いがないのです。成案がないならないで、現状でいいのだという、そういう確信もない。一体どうしようというのですか。大臣はなかなかおいでにならぬのでありますが、あなた方がそこであらかじめ用意された模範答弁集をここでやっておっても発展がないように思うのです。委員長、どうしたものでしょうか。こんな無定見な話はないですよ。
  93. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 暫時休憩します。     午後三時二十二分休憩      ————◇—————     午後三時二十七分開議
  94. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 再開いたします。  足鹿覺君。
  95. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣がおいでになったようでありまので、この際、農業災害保障法の一部を改正する法律案につきまして、制度全般の問題について御所信を承わりたいと思うのであります。  大臣もすでにご存じのように、昨年一月一日から相当幅のある制度改正が実施されましたが、その制度の趣旨の普及は必ずしも徹底しておりませんままに一年を経過いたしまして、大体米の結末はつき麦の結末がつけば一応一カ年間の実績は判明いたすのでありますが、そういう意味においては、十分なる結果を得ずしてこの制度を云々することもどうかと思いますが、制度改正にもかかわりませず、地方におきましては、制度の持つ欠陥、また運営上の欠陥、いろいろな点から考えまして、事業の休止あるいは組合の解散議決というようなものは、すでに解散議決が三十二、事業休止状態を示しているものが七十二という状態にあり、これはほんの永山の一角とも言えると思うのです。また、一面、制度改正によって市町村移譲の特例が認められた。これは、政務次官なり事務当局にお尋ねいたしますと、今まで八十二の市町村移譲がすでに完了している。こういう実情にあるのであります。また、この制度に対する農民のふんまんは随所に爆発しておりますし、二万の末端で働いておる常勤役職員は、身分の不安定と現在の待遇条件の悪い点から、だんだん人材が離れていく。おっても、この仕事に対する情熱をだんだん失っていく。いろいろな面から見まして、この制度に対しましては重大な危機とも言える段階が来ておると思うのです。崩壊かあるいは再建かという一つの岐路に農災制度は立っておると私は思うのです。この際五年かかってようやく、ちょっと不徹底な改正ではありましたがやってきた。それも中途半端なために、成果を上げず、未来に希望を失っておる。一体どうするのかという点を、一々条項をあげて三時間近くお尋ねしたわけですが、やはり根本問題になりますと大大臣の御所信を承わる以外にはない。事務当局なり次官ではどうしても答弁がいただけないというので、ご出席を願ったわけであります。  そういう経過から見まして、この制度を今後どう進めていくか、国家補償の面に進めていくのか、あるいはその内容としては、現在の生産費の一部を補償するのではなくして、収穫保険、いわゆる農家の所得を補償していくという保険を中心とした考え方に持っていくのか、また、事業運営の機関として、市町村移譲を積極的に進めるのか進めないのか、こういう大きな基本的な問題になっておるのであります。御存じのように、本年度予算においても百十数億を計上し、あってはならぬことでありますが、災害の場合には自動的にまた予算が多くなってくるというこの法律独特の機構もございまして、日本農政上においては農村における一つの社会保障とも言うべき一面を果す重大な任務を持っておりながら、その成果が十分に上がっておらぬ。これに対しては、かつて制度改正審議会を作って、そしてほとんど結論に近い中間報告を出し、制度改正に踏み切るべきことを政府に進言したのにもかかわらず、政変その他いろんな関係で、この問題が今日までまだ未解決のままで、抜本改正がそのまま放置されておる。私どもは、かわるべき代案なくして直ちにこの制度をくずすということは、農民のためにも農村のためにもならぬので、少くとも制度の前進のために今日までがまんをして建設的に協力してきましたが、もう限度一ぱいだと思うのです。これに対して政府が思い切った態度をもって抜本改正に臨まれないとするならば、私どもは私ども考えをもって、一つの農民運動の立場からこの問題に対しては徹底的な批判を下し、そして、国会において戦うのみならず、日常の場面において私どもはぶつかる用意を持っておる。そういう私どもの強い意思もあながちおわかりにならぬことはなかろうと思うのです。巨費を費しながら、こんな成果の上らない制度というものはございません。家畜共済の死廃の場合には、わずか五千万や六千万をめぐって大蔵省とその金額を争わなければならぬというような事態も起きておるが、制度全体としては常に百億をこしておる。こういう制度はないと私は思いますし、大臣も多年の経験からよく御存じのはずでございますが、これに対して、どのような基本方針をもって臨まれるか、まずその一般についての大臣の御所信を承わりたいと思います。
  96. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 農業共済制度の問題でございますが、私のなには、久しく実際に触れておりませんから若干私の認識に不足な点もあろうと思います。しかし、その点は御了承の上に、私見が若干まじるかもしれませんが、お許しを得たいと思います。しかし、将来の方向はぜひ生み出したいと思っております。  私は、この日本の共済制度のスタートは、やはり相互主義のもとに進んでいくということが健全であったと思います。しかし、ただ単に関係者の農民の相互組織で経済効果を期待するというだけでは足りない。それで、政府がこれに対して同時に相当な財政的支出もし、その発表を援助する、こういうことでだんだん進んだと思うのであります。同時にまた、これらの制度というものは、諸外国等におきましても非常に長い間の年所を経て長い間の経験で積み重ねられてだんだん出てくることも御承知の通りであります。従いまして、私たちは、この制度自体が今日ご指摘になっております通り非常に困難な事態がありますけれども、これらの困難なこと、同時にまた若い経験を積んでだんだん浄化され、これがよくなるものと期待しているわけでございまして、そういう意味で、私はこの制度をやはりどこまでも国並びに関係者の努力によって改善し、それを発展させなければならぬと考えるわけであります。つきましては、過般制度改正の審議会等によって御答申も得たということで、ございまして、その御答申の線に沿うてまだ解決の方途を強く打ち出されておらぬだろうと私も思います。  そこで、今後の問題でありますが、私は、今までの創設した当時の考え方、同時に期待しておった進め方ということについても考え直さなければならぬだろうと思います。しかし、やはり関係者の農民の努力と、同時にこれに対する政府の協力ということで、相互に力を合せるということでこの制度の発展改善を期待するのでありますが、これは別としましても、今後私の考え方としましては、今度この審議会等から答申のありました事項を実際的な問題としてこれを具体的に検討し、そして前進させるように努力いたしたいと考えます。  さらにまた、御指摘になりました通り、この制度自体の運営は非常に困難な問題が随所に出てくるから、これに対して常時調査を続行し、それに対処してこれを改善するということがなければこの制度は生きていかぬだろうと思うのでございます。実は来年度等におきましてこの審議会等の経費は盛ってございませんけれども、既定の機構、既定の予算等を運用しまして、そして、審議会によって御答申のありました事項の検討と、この実現に前進させるという意味での検討を重ねると同時に、ご指摘のありました諸問題についての調査を一そう進めるということについては私の考えをはっきり申し上げて差しつかえなかろうかと存じますが、まずこの点をお答え申し上げておきます。
  97. 足鹿覺

    足鹿委員 この制度を健全化し、前進させるというお気持はわかったわけでありますが、今の御答弁の中で、制度審議会が五年前に中間答申をしたその当時とはまた情勢が相当変ってきているだろうと思うのです。その間にいろいろな経過はあったわけでありますが、去年の一月一日から実施をされました制度改正は、少くともこの窓口だけは一応あけておるのです。だが、それが不徹底だという点があるわけです。で、今一番大臣の御答弁願いたいのは、現行制度を大幅に根本的に改正して前進させようというお考えのようでありますが、その場合に、現在すでに一月末で八十二の市町村移譲の実績が出ておる。これをある一定年限を切って市町村移譲を完了せしめるという何か一つの方向があるのかといえば、それはまだはっきりしないという御答弁です。それは反対なのかというと、反対でもない、市町村なり組合の協議ととのった場合はそれでよい、要するにぬるま湯につかったような御答弁しかいただけないのです。今大臣のおっしゃるような五年前の答申というものは、この間の改正の際に相当組み入れられておる。しかし、新しい情勢がここに生まれてきておる。今までの事務当局との質疑応答をお聞き願いますとよく御理解願えると思うのであります。少くともそのための予算はないが、何か研究調査をするために必要な措置を講ずるというような意味にただいまの御答弁を聞いたわけでありますが、部内においてもそれぞれの立場でおやりになっていると思うのでありますが、もう少し権威のある、三十三年一月一日の法改正の結果はもう大部分、九割までは出ておるのです。麦の結果がわからぬというのが逃げ口上でありますが、麦の結果はそう重要な部門ではないと思います。水稲の結果が出るまでは、私どももこの審議は水稲の結果が出るのを待って審議に入るべきだというので今日まで待っておったわけであります。大体水稲の結果は出た。従って、大臣の今言われる常時調査をする云々ということは、何か権威のある官制によらなくとも、この前の調査会も官制によっておりません。それでけっこう熱心な審議を半年続けて結論らしいものに到達する。政変その他いろいろな関係で最終答申というものにならぬままに今日に至ったわけです。ですから、新しい段階に即応して、この制度を維持しながらしかも抜本改正をやるのだというなら、それに対応する必要な措置をおとりにならなければ、この問題は処理できないと思うわけであります。その点についてもう少し具体的に明確な御答弁をいただきたいと思います。
  98. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 私はどうも過去の審議会等の事情等を詳しく実はまだ承知いたしておりません。が、私は、これが創設以来十数年、ものによっては二十年、三十年近くなるものもありますし、ここで相当に学識経験を持ちまた実際の衝に当る人たちの意見を聞き、抜本的にちょうど見直す時点にも来ている、こう思います。でございますから、今年は直ちに法定の審議会等を設置するわけには参りませんけれど、これはとくと考究して、そのような措置をとりたいと考えます。これが第一。それから、第二には、法定の審議会その他は別といたしまして、すでに皆さんからもいわいろ御意見の御開陳もあったのでしょうし、同時にまた、審議会その他からも中間的な案だとは言いながら御答申があるならば、これは省内に特に農業保険を中心としての何らかの機構を設けまして、そうして具体的にこれが進みますように配慮していきたい、こう考えます。二つでございます。一つは、根本的な改正はもっと意図していきたい。第二、当面の答申あるいは具体的な問題についてのなにを権威づける組織を持って改善の道を講じて参りたい、こういうことでございます。
  99. 足鹿覺

    足鹿委員 大体、御答弁の趣旨が、何らかの機関を作って権威のある検討を加え、でき得る限りすみやかにこの制度根本改正に対応したい、こういう御趣旨のようでありますので、その点は了としまして、なるべくすみやかに踏み切っていただきたいと思います。いつまでもこの問題を優柔不断に、今まで事務局が考えておられるような態度では、私は済まされぬ段階が来ておると思うのです。第一、来年度の水稲の契約期はもはや間近に迫ってきておりますし、その場合に今のような状態では、これはもう問題になりません。非常な困難に遭遇される。少くとも、今はそうであるが近き将来においてこうだという一つの方向が明示されない限り、なかなか農民の協力と納得は得られないようなむずかしい段階に来ておると私どもは思うわけです。それが、先ほども述べましたような、政府からいただいた資料によっても裏づけられておる、そういうふうに思います。そういう点では、従来の制度改正審議会は官制によらないものでありましたが、今度だって必ずしも官制による必要もない。必要な答申が得られればそれでいいのでありまして、ただ、その構成なりには十分配慮されて、従来のようなイージーな態度を続けるのでなく——現状を守るというような考え方が中央なり都道府県連合会の中にもあるように思うのですが、そういう点については十分批判されてしかるべきものだと私ども思います。そういう措置が一方に講ぜられて、初めて、この困難な来年度の保険の契約にしましても一応推進ができると思うのです。でない限り、私どもも、この問題についてはもう最終段階だと思うので、もうこれ以上この制度がどうしてもうまくいかぬ、当局も熱意がないというならば別途な方法をもって対処せざるを得ないというふうに思いますので、くどいようでありますが、この点を特に申し上げておきたいと思います。  家畜共済の問題は、大臣の現在の立場において御決裁になったものであり、当局をして立案せしめられたものでありますから、一つ伺っておきたいと思いまするが、最近の農作物共済が不評判だ、従来辛うじてこの制度は家畜共済によって農民の人気をつないでおったと言ってもよろしかろうと思うのです。ところが、今度国会に提案をされました、現在私どもが審議をしておりますこの農業災害補償法の一部改正についてでありますが、病傷の国の二分の一負担が実現しておりません。死廃の面におきましても二分の一、全部ではなくしてそのうちの一部を残して国がこれを見るという形になっておる。乳牛の加入問題につきましては奨励金という形で別途な取扱いをしておるというふうに、非常に割り切れない中途半端なやり方がやられております。これをもしこのままでおやりになるならば、せっかく今日まで農作物の共済に比して比較的まあまあという運営を続けてきたこの家畜共済も、またもや大きな難関にぶつかりますことは火を見るよりも明らかなことだろうと思うのです。何ゆえに病傷、死廃の縦割り二分の一国家負担ができなかったのか、その点について、大臣のとられた措置、また今後お考えになろうとしておる点を一つ伺いたいと思います。同様の轍を踏んではならぬと思うからです。
  100. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 私からまず、事務段階におきまして今回の経緯をたどりました経過を御説明申し上げます。  今回の家畜共済の国庫負担方式の改善につきましては、ただいま御指摘でありましたように、死廃部分につきまして、従来最低共済金額の二分の一に相当いたします掛金を国の負担としておったのでありますが、今回はそれを実際の共済金額に対応いたしまする掛金の二分の一を負担することになったのであります。なお、それだけでは乳牛につきまして十分手当ができませんので、乳牛につきましては、さらに加入奨励金を加えまして、今回予想されまする料率改訂によりまして農家の負担がふえまする分を半分だけ救済をするということにいたしたわけでございます。特に乳牛につきましてさような措置をとりましたのは、乳牛の共済事故の模様はここ数年来かなり変化をいたしておる。今後におきましてもなお農家の飼養管理あるいは酪農事情等によりましてある程度動いて参ることが予想されるわけであります。従いまして、乳牛につきましては現段階におきまして制度的に一つの固まったものに固めますことがやや困難な状態にございまするので、今回の、今年の四月以降の料率期間、いわゆる四年間につきましては、申し上げましたような措置によりまして、保険料の国庫負担と加入奨励金の支出と両方の措置によりまして、農家の負担を軽減することにいたしたわけであります。  病傷部分につきまして国庫負担がついておりません点につきまして御指摘がございましたが、この点は、われわれも、今回家畜共済の国庫負担方式を改善いたしまする案の立案の過程におきまして、重点を置いて検討いたし、また交渉いたした問題でございます。しかしながら、病傷部分につきましては、死廃の部分と違いまして、事故の性質等もある程度異なっておりまするし、言葉を変えて申し上げますれば、病傷部分につきましては農家の側におきまして相当善良なる管理者の義務をも果してもらわなければならぬというような面もあるのでございます。さような事故の質に関する議論等も種々ございまして、いろいろ折衡検討いたしました結果、今回の場合は病傷部分につきましては国庫負担をするということにはならなかったのでございます。死廃部分につきまして、ただいま申し上げましたような方法によりまして、保険料の国庫負担及び加入奨励金の支出、この両方の処置によりまして、料率改訂によって農家の負担が増高すると予定されますものの約半分を救済することにいたしたわけでございます。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 私が聞いておるのは、経過はもちろんでありますが、あなた方も御存じのように、現在の家畜共済の赤字というものは、その大部分が病傷部分の赤字なのです。死廃は、病気の早期発見あるいは一般の疾病予防という点が非常に進んできまして、医薬の発達ももちろんでありますが、だんだん少くなってきておる。むしろ、農民負担の軽減をはかってやらなければならず、また現状が赤字であるから手を加えなければならぬのは、死廃よりも病傷の分にむしろその必要があるのです。それを抜いて、なぜ病傷をやめて死廃の方に転じられたのか。それが何十億の予算を要するならともかくも、仄聞すると三億から三億余あれば実情は縦割り二分の一でいける。それから、死廃の点を上限である程度押えておる。これは六千万円前後といわれておる。従って、このものを通じまして四億円内外の程度でこの制度がすっきりと縦割り二分の一という点で割り切れるにもかかわらず、むしろだんだん死廃事故の少くなっていくものをカバーして、一番当面必要と思われるものを抜かしておるというところに今度の法律改正の問題があるという点を指摘しておるのです。それをお認めになれば、当然そこから手をつけなければならぬはずじゃないかと思うのです。たとえば、私は鳥取ですが、鳥取県の場合は全部共済組合の一本診療です。島根もそういう実情にあるわけです。非常にまじめにやっておる。資料によれば、黒字の連合会というものは北海道ほか二十三連合会、赤字のものは長野ほか二十一連合会で、ほぼ半々、全体で約一千万円程度の支出超過になっておるようであります。ところが、黒字の連合会の診療は、ほとんど共済組合の診療所扱いのところが黒字になっておる。そうして赤字連合会の場合は開業医扱いが圧倒的に多いということを資料は示しておるのです。先ほども道徳的の道義上の問題を局長は指摘なさいましたが、乱診乱療ということについては、共済の直接経営しておる場合においてはあり得ないのです。何もかも一緒にしてもらっちゃ困るのです。むしろ、そういう実態に基いてやられるならば、そういう面に乱診乱療になるような現在の実態を改善すべきことにまず手をつけるべきじゃないですか。にもかかわらず、今度家畜診療所は模範診療所を作る、従来普及を欠いたところに作ると言われますが、一県二つづつ、そして十県分でたった二十カ所、そういうところでお茶を濁す、一カ所三十万円、六百万円のわずかの経費をもって、乱診乱療になるような点は手をつかねて見ると同様な措置をしておきながら、全体としては病傷の面において乱診乱療になる面もなきにしもないというようなことで、まず死廃に手をつけるというようなことは、むしろ施策が逆ではないですか。農作物の場合と同じようなあやまちをまたここで繰り返そうとしておる。こういう状態になったことから、一体どういう結果になっておるかということは私どもは大体想像にかたくない。こういうことはあってはならぬと私は思うのです。少くとも現在必要としておるものにもっと重点を置いた施策を講ずるならばいいが、それをほったらかしておいて、なるべく軽費負担で済むような面からやっておる。しかも、死廃の問題につきましては病傷の掛金で支出をまかなっておるような実情になっておるのです。これは御存じのことであります。そういう実情をお知りになりながら、特に縦割り二分の一ならいいですが、乳牛の場合にしましても、五%未満、一〇%未満、一〇%以上ということで一つのランクを設けて、そうしてこの掛金率をきめる。そして、農家の自由選択の意思を、上限を切って、一つの保険金額に制約をつけていく。何でもそういうやり方です。水稲の場合も同様でありましょう。少くとも全収穫量に近い八、七、五、四、三、二といくべきだというのを、七、五、四、三というランクに切っていかれたと同じように、一つのものに制約を加えている。必要ならば必要のようにそれに向って財政的な集中措置を講ずるならば、大蔵当局といえどもそういうことがわからないはずはない。経済効果、経済効果ということが最近よく言われますが、事実死に金を使うようなことの方が多いのではないですか。財政負担を伴わない面をまずやっていく、そして必要な面はわかっておってもそれには手をつけることはできぬ、そういう確信のないことでは財政当局自体も動かせないのは当然だと思うのです。そこにもっと勇気のある何か方針を貫くだけの確信がある政策を展開せずして、どうして財政当局は肯定しましょうか。そういう点で、一歩後退また後退して、すべての点が中途半端になっておる。最近の農林行政を見てもそうであります。そういう点を私は指摘しておるのでありまして、ただいま言われたような道義的な面を心配されておりますが、これははっきり資料が示しておるように、診療所でやっておるところにはそういう赤字はないのです。ちゃんと歴然と出ておるのです。まず、そういう面に対して重点施策を講ずるならば、当然診療所の整備という面に向っても一面施策の手が差し伸べられなければならない。それも形ばかりです。そういうことでは問題の処理はできぬと私は言うのであります。それに対する御所信はどうでしょう。
  102. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 病傷につきまして国庫負担方式をとらなかった理由につきましては先ほど申し上げた通りでございますが、今回の家畜共済の国庫負担方式を検討いたします場合に、この点はわれわれとしても最も重点的に検討いたした問題でございまして、結果は先ほど来説明しておりまするような考え方に一応今回の段階では固まっておるわけでございます。ただ、病傷に対する国庫負担の今後の問題といたしましては、今回の乳牛につきましても、加入奨励金につきましては、現在提案いたしておりますものでごらんをいただきますように、病傷について実質的に国で一部の金を出しておるわけであります。従いまして、今後の問題として、病傷事故に対する国の負担の方法というものは、今後事故率の推移等をしさいに検討いたしまして方針をきめて参らなければならない問題でございます。今回は、先ほど申し上げておりますような方法によりまして、乳牛の病傷部分だけにつきまして処理をいたしたいわけでございます。  なお、病傷につきまして何がしかの形におきまして国が負担をいたしますれば、当然、いわゆるモラル・リスクと申しますか、事故率をできるだけ軽減をして参らなければならない措置が伴いませんと、制度の健全なる運営ができないことは当然でございます。この点につきましては、すでに昨年来家畜の病傷事故対策はいろいろな角度からわれわれとしても進めておるわけでございます。具体的には、診療の伝票等も十分チェックをいたしまして、過度の診療になっておりますようなものにつきましては事後的に制裁をいたしまして是正の措置もとっておりまするし、また、診療所の整備等も、ただいまの御指摘のように必ずしも十分ではございませんが、予算措置も講じまして順次整備して参り、さような面から病傷事故の発生防止についてなお今後施策を進めて参りたい、かように考えておるわけであります。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣にお尋ねしたいのですが、今お聞きのような答弁なんです。私が今申しましたのは、大体病傷部分が三億円余り、死廃は頭を切ったというのでこれが約六千万円程度、乳牛につきましては、二百円でありますから、三十六万頭で七千二百万円くらいです。合せますと五億円弱の問題です。その乳牛の加入奨励金二百円ももちろん病傷の一部をなすということはよくわかります。だからこそ、どうして一つの体系的な縦割りにならなかったのか。これだけの財政負担の問題、しかも道は開けておるものがどうしてやり得なかったのか。これを今後どう処置するかということは、事務当局としては答弁ができかねようと思うのです。たとえば実施を少し延べて、予算を伴うことでありますから、その間に何らかの措置を講ずるとか、予備費支出ということも事業の性質上できないとすれば、これに対しては手を打つべき所管大臣として政治的な大きな問題だろうと私は思うのです。そういう点については何かお考えはないでしょうか。
  104. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 乳牛に対する加入奨励金は、実質的には病傷の費用の多い乳牛に着眼して整理されて今度実施されたものと思うのです。これは一番逆選択が多く、そうしてモラル・リスクの多いことは御承知の通りであります。従いまして、まず乳牛そのもの加入奨励金の名目でもって加入者に援助の力を与える、これが病傷対策として一つの働きをなすということはやはり一つ考え方であろうと思うのであります。第二段に、しからば病傷全体に拡大した国家の援助そのものは、これは国家が負担すれば好ましいのでございますが、私はどうも病傷の発展のいろいろなプロセスにつきましてまだ詳細な検討を自分みずからいたしておりませんからなにですが、大体、出発以来、料率の算定等もどうも危険を測定せずに、便宜主義で危険をカバーする事項等に拡大してきているような発展的な過程もあるのではないかと思う。もしもこの病傷等について周到な手当をするということであれば、現在の保険料そのものが一体妥当かどうか。死廃と同時に病傷の手当をするということをカバーするというなら、果して従来の保険料自体の測定かどうかということについても私は若干の疑いを持つわけでございますが、これはしばらくおくとしても、傷病等につきましては、最もその危険が多いものに着眼して具体的な手を打つことが妥当であろうと思います。将来、傷病等につきましてなには、一面保険のワク内において解決すべき問題もありましょうが、一般的に家畜の保健衛生の問題等も関連して施策するのが当然の帰結じゃないかと思いますから、両面にわたって考慮すべきことじゃないかと考えております。ただし、共済のワク内で考える場合におきましては、傷病を加味した場合の料率の算定なりあるいはこれに対する国家の助成というものは、必要の程度を勘案しつつ実施すべきものと考えております。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも大臣の御答弁局長答弁を一歩も出ておらぬと思うのです。ちゃんと、そういう保険設計の面とかいろいろな点は、大臣も今申されたように、そう私が指摘した点と違ってないのです。総額で何ほどにもならないのです。当初農林省はその計画を立てて、中途において挫折しているのですよ。そこまで申し上げまいと私は思っておったのですが、財政当局との折衝に失敗したのだ。そこからこういう妙ちきりんな格好になってきておるのです。だからわれわれが政府でもないのにこんなに心配をしておるわけですから、当然それに対しては大臣としての今後のこの事態に対応される何らかのお考えがあってしかるべきではないかということを私は聞いておるのです。局長の御答弁と同じような、ちょっと表現の変ったようなことではなくて、何かそこには方法はないものかということを、大臣の所信として伺っている。直ちに具体的なことがないならば、この矛盾は総額のワクの上においては五億円前後のものだ、何とかこれについては方途を講じなければならぬ、それについてあなた方はむしろ委員会に協力を求められ、これを打破していかなければならぬ当面の責任者でないかという意味のお尋ねをしておるわけです。その点をもう少しはっきりお願いしたい。
  106. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 よく御趣旨はわかりました。往々財政的な関係をもちましてわれわれが期待することが実現できないことははなはだ遺憾でありますが、当委員会等の御意見も尊重しまして、今後予算の策定等につきましても十二分に留意をして前進させて参りたい、こう考えております。
  107. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、私も長時間になりましたので、この家畜問題についてはまだ同僚議員からも質問通告があるようでありますから、もう一点だけお尋ねをして私の質疑を終りたいと思います。  今のような家畜共済の措置でこれがまず出発をするということになりますと、最近、地方の実情を見ておりますと、家畜共済に入ったりなんかするよりも、自分たち内輪で、牛講だとか——従来からありますね、ああいうものを思いついていて、乳牛の場合は酪農資本がそれに獣医師等の関係で結びつく、そういう関係で、農民の互助組織ともいうような講の形式あるいはその他の形式でもって、乳代からちゃんと会社が引いておくといっ掛金を掛けたかわからぬからもうちゃんとそれでできておるというふうにして、一つの互助機関が各地に生まれておる。今のようなこういう制度に出発いたしますと、そういう傾向を助長し、これに拍車をかけるような結果なしとはしないと私は心配するわけです。この制度に対する農民の不満が現にそういう方向に走りつつある。そういうことも十分考えられて、早急にこれに対する何らかの措置を講ずべきだと私は思う。特にその点を指摘して、速急に今後に処せられるように希望いたしたいと思います。  大体家畜共済については以上で終りますが、最後に、農林大臣におかれましては、先ほども御決意のほどを承わりましたが、政府部内におけるこの災害補償法全般の現行制度に対する抜本改正を方途とした、いわゆる政府内部の機関かあるいは法制によらざる一般を参加せしめる機関かは存じませんが、それを考えたいということでありますが、地方選挙もある、参議院の選挙もある、従ってその時期は私は相当早く手をつけられんことを期待するのであります。そこまでまだお考えになっておらぬと思いますが、その点について一応御構想があれば御所信を承わりまして、この問題につきましてはまだいろいろ申し上げたいことがありますが、午前中なり午後おいでになるまでにすでに言い尽しておりますし、これを繰り返すことは時間の空費だと思いますので省略をいたしますが、十分真剣な態度をもって踏み切られんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  108. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 答弁要求されておりませんけれども、一言申し上げておきます。今のいわゆる講による共済でございますが、これはわれわれもよく存じております。過去におきましても、あるいは万人講とかえびす講であるとか、牛講、馬講という講による組織があるわけでありまして、特に中国方面では講のありますことは承知いたしております。しかし、これは経済的な機構として完備しておるものじゃないということで、共済制度までだんだん発展してきたのでございます。要するに、経済的な面におきまして家畜の所有者なり耕作者にその安定を与えるという組織的なものにこれを整備し発展させたいというのから出発したのでございますから、その精神を貫くために、困難があってもどこまでもこれの改善を維持していきたい所存であります。同時にまた、これらの共済制度あるいは各種の災害に対する国家のいろいろな保護政策につきましては、ただ単にこれを選挙対策ということにいたすような考えはございません。われわれとしましては、まじめに制度の改善をはかりたい、こういう所存でございますから、農林省の見解をこの際披瀝しておきます。
  109. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 芳賀貢君。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 足鹿委員から詳細な質疑がありましたので、私は家畜共済の部門に限定して農林大臣にお尋ねします。  第一の点は、今回の改正は、死廃病傷一元化の基本的な理念から見ると、これは間違った改正であるというふうにわれわれは考えております。どういう理由でゆがんだような法改正を試みられたのか、その点をお答え願いたいと思います。
  111. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 芳賀さんの御指摘の点だと間違ったということでございますが、私たちは、段階的にこの措置は必要であった、かつまた現在の措置としてはやむを得ざる一つの施設であったと考えております。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、三十四年度の家畜共済関係予算の決定に基いてこのような法律改正をやられたから内容がこうなったのじゃないですか。当初に家畜共済の一元化を基本にした法律の充実を考えた場合においては、こういうことにはならなかったと思うのです。予算関係でこういうものになったのか、最初からこういうものを意図して改正されたのか、その点をさらにお尋ねいたします。
  113. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 私から事務的な角度から若干お答えいたします。  御指摘のように、死廃病傷一元化の趣旨から考えて、今回の国庫負担方式の改善は必ずしも合理的ではないではないかという御趣旨でありますが、この点は、先ほど来申し上げておりますように、病傷につきまして国庫負担を考えますにつきましては、いろいろ検討を要する問題がございまして、今回の場合は、死廃部分についての国庫負担をふやし、乳牛について一部病傷部分を見るという形におさまったわけでございます。従いまして、病傷に対しまする国庫負担方式の方法につきましては、今回の場合はこういう形をとったわけでございます。なお今後の問題といたしまして十分検討いたしまして十分検討いたしたい、かように考えております。
  114. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 理想的な形態からいきますと不十分ではございますが、改正一つの段階としてはこの程度に今回はとどめたのでございます。将来はもっと改善して参りたいと思います。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法律を一回きめると、それをまた取り下げて改善するのはなかなか至難であるということは、農林大臣も多年の経験でおわかりと思うのです。ですから、むしろ、こういう間違った改正をやるのであれば、たとえば時間的にもう少しこれが将来に延びても、死廃病傷の一元化の体制の上に立った改正を試みる必要があると思うのです。たとえば第十三条二項のこの条文は、共済掛金の一部国庫負担の点をここで明記しておるわけですね。ですから、それはあくまでも第百十四条の家畜共済金額に対する国の掛金負担をどうするかということになっておるわけです。百十四条の規定は、死廃病傷共済についての共済金額、これから算出されたところの掛金の問題がここに規定されておるわけであって、結局、十三条の二の規定というものは、死廃病傷全体の共済金に対する掛金の国の負担部分というものを明記するためにできた条文のわけですね。それを今までも特に死廃のみに限ってやってきたのですから、この点を改正するとすれば、やはり死廃病傷を含めた国の掛金負担を明らかにするという改正をやるのが当然だと思うのです。ですから、それをなぜおやりにならなかったのかということをお聞きしておるわけです。
  116. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 百歩を進めなければ十歩進むことをはばむというわけには参りません。やはり、現在の段階では、乳牛についての助成の措置をとりましても一つの前進でございますから、われわれはこれをいたしたのであります。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第百五十条の二項が新設されたわけですが、これは、表面だけ見ると、共済に加入した乳牛に対して加入補助金を交付するということになっておるのですが、詳細にこれを検討すると、組合員に対して補助金を交付するということではなくして、組合員が加入しておる共済組合に対して掛金の一部としてこれを交付するということになっておる。そうなると、これは実質的には傷病分に対する掛金の一部を補助金という形で国が負担する内容のものであるのか、その点はいかがですか。
  118. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 重点は、先ほど来経済局長が説明申し上げたことに着眼してそれをやるということであろうと思います。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、思うでなくて、大臣が命令して改正をやらしたのですから、法律の書き方はどうあっても、実質的にはこれは傷病分に対して加入補助金に名をかりて掛金の一部を国が負担するという性質のものであるかどうかということを聞いておるわけです。
  120. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 本条項を立案いたしました考え方として御説明申し上げますが、これは、先ほど来申し上げておりますように、乳牛につきまして病傷部分に対する保険料の国庫負担を現段階において制度化いたしますにつきましてはなお問題があるわけでございます。従いまして、今回改訂をされまする料率期間中の措置といたしまして、第百五十条の二に書きましたような補助金の制度によってまかなっていくことにいたしたわけでありまして、その趣旨におきましては本料率期間中の措置であるということが一応前提になっておりますが、病傷部分につきまして国で実質的に負担をするという趣旨はその意図に出ておりますことは、もちろん御指摘の通りであります。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、この補助金なるものは、病傷分に対する掛金というような意味で国が負担しておる、ですから実質的には補助金でなくて病傷部分の国の掛金負担分に対する一部負担、そういうことなんですね。
  122. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 これが恒久的な制度になります場合は、死廃部分の負担方式と同様に国で保険料を負担するという形に相なる性質のものでありますが、先ほど来申し上げておりまするように、本料率期間中だけの措置でありまするので、補助金という形に相なっておるわけであります。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、四年間に限ってこれでいく、この料率期間の四カ年間については病傷分の掛金一頭二百円ずつを国が負担していく、こういうことなんですね。
  124. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 この百五十条の二で「国庫は、当分の間」と表現いたしておりまする趣旨は、この当分の間という期間は、本料率期間中、いわゆることしの四月以降の一料率期間中という趣旨を表わしておるものと関係者の間では了解をいたしておるわけであります。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、これは病傷分の掛金の負担かそうでないかということを聞いているのです。
  126. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 病傷部分の掛金の一部を補助金の形において支出をするわけでございます。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では負担じゃないですか。この点は非常に大事な点ですから、もしこれが大蔵省の圧力に屈して、十三条の三項で一元化の解決ができないから百五十条の二でこういうふうにやったということならば、その気持は大体わかるわけです。ですから、これは病傷分の掛金について国が些少ではあるけれどもこの新条文で一料率期間中負担することにするのだ、そういうふうに明確にしておいてもらいたいのです。
  128. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 これは国庫負担ではございません。あくまでも制度といたしましては補助金の交付でございます。ただ、本料率期間中は必ずこれを出すということと、それから、補助金の交付ではございまするが、実際の加入頭数によりまして必要額だけは予算的に支出をするという了解は十分ついております。補助金の形でありましても、加入者の側に御迷惑をかけるということはないと考えております。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、役人の仲間同士の話し合いじゃなくて、いやしくも国の法律として規定するんですから、だから、一般の共済に加入する農民に端的に明瞭に理解されるような答弁をしてもらわぬと困るのですよ。この答弁いかんによっては、こういう新条文はむしろ必要はなくて、農林省ができないとするならば、われわれ議会の力で、十三条の二にはっきりとこれは病傷分を入れて改正をしてあげてもいいわけです。だから、現段階では力が足りないからしてこの掛金の一部負担ということでこの新しい条文を作ったんだということをここで正直に言われればわれわれとしても了解する点もないわけではないのですが、その点は農林大臣の責任で明らかにしてもらいたいと思います。
  130. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 御好意はよくわかりますが、負担とすると書かれても、政府としては御同意できません。ですから、やはり補助金として処理していくほかはございません。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは、表面は補助としてあるからわかりますが、実質的にはこれは組合員にかわって国が掛金を負担して、そうして当該共済組合に交付するということになっているから、これは当然負担とみなすべきだと思うのですが、どうですか。
  132. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 制度上から言いますと、負担とする場合と助成金とする場合と格段の相違がございますことは申すまでもございません。現在の段階では、補助金として処理して参りたい、こういうことです。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、たとえば病傷分の掛金の二分の一を国が負担した場合においては、どの程度の負担になるか、お答え願います。
  134. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 病傷に対しまして国が二分の一を負担いたします場合、一応考えられまする負担の方法としては、いわゆる直接費の部分だけの負担という考え方が一つ出てくると思いますので、これはいわゆる薬代というか材料費でございます。それを二分の一負担いたしました場合は約三億程度国庫負担になると思います。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 直接診療部分を負担した場合が三億、それから補助金のような形で出すのは大体七千二百万ですか。
  136. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 大体七千万円程度でございます。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると、わずか二億足らずの差しか出ないと思うのです。せっかく法律改正をやられても、三億さえ出せばそれでもうすっきりして万事これは解決するわけです。農民もこれによって安心して、全頭加入ということ、全戸の農家が家畜共済に入れるというようなところまでいけると思うのですがね。こういうような情ないやり方だけでは、だんだん共済制度というものが死んでしまうと思うのです。ですから、この点は、一料率期間だけはこれでいくということでありますが、では、その次の段階には果して完全なる死廃病傷の一元化の上に立った掛金の二分の一国庫負担というところまでいかなければならぬというお考えがありますか。いかがですか。
  138. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 病傷を対象にして考える場合でも、一番危険の多いものにこの際着眼して、乳牛に着眼しているということでございまして、理想的に言えば、全部それは持てばそれに越したことはありません。けれども、この制度の運用に当りましては、やはり緩急に応じて善処するということが妥当であろうと考えております。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは理想ではないですよ。政府が死廃病傷一元化の構想を持って実験をやって、もう実験期間が過ぎて、やはりこれはやった方がいいというような考え方の上に立ってこの一元化をやって、そうしてこの一元化の上に立った共済の規定が設けられておるわけです。そういう場合においては、当然、掛金の国家負担の面においても、これは縦割り二分の一でいくのが当然じゃないですか。何も現実とかけ離れて、理想はそうだという問題ではないと思うのですよ。現実にやらなければならぬことができないというところに、政府の努力の足らぬ点があるわけです。理想じゃないですよ。今の現実の段階において、この点はこれを機会に根本的に改正するのが当然だと思うわけです。しかし、この一料率期間はこのような形でいかざるを得ないということであれば、その次のいわゆる時限においては、これはほんとうのものに改正するという、そういう目標を持ってかかる改正を行われたのかどうか、その点はどうなんです。
  140. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 芳賀さんは当然だとおっしゃいますが、それは好ましいことでございます。しかし、こっちは段階的に取り進めていくということにいたしたのでありますから、その点はどうも遺憾ながら意見は一致しないと思います。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、今の段階はこのような間違った改正をやられるのですが、これは、局長も言われた通り、この料率期間中これでいくというわけですから、暫定的なものなんですよ。ですから、その次の時期にはほんとうのものに改正するという考えが今からあるのかどうかということをお尋ねしておるわけです。
  142. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 どうも、本質的なものだと、こうおっしゃるけれども、私はこれは量の問題だと思う。ボリュームの問題ですよ。だから、全体の百パーセントはしないけれども、今日では一部前進させたということでございますから、将来は事態によって改善の道を講じて参りたい、こういう所存であります。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 百歩譲って今の段階はこの案でいくとしても、この次の段階にはちゃんとした死廃病傷一元化の上に立った掛金の国家負担どいうものをやるという目標でこれを改正をやられたかどうか、そこを聞いているのですよ。おそらく次の料率期間に入れば——三浦さんが幸いにしてそれまで大臣をやっておられれば非常にいいわけですが、かわる場合もあるけれども、現在あなたが責任者だからして、この次の段階にはこの家畜共済の精神に立脚した改正をやるという熱意があるかないかぐらいは明らかにされたらどうですか。
  144. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 将来のことまでいろいろ御研究でございますが、それはまあしばらくおいて、当局としましては、常に改善を重ねていきたいということは、これは一致した考え方であると思うのですけれども、今日の段階ではこの程度の改善にとどめたい。不十分ではございますけれども、一歩進めた、こう考えておりますから、将来はまた、先ほど申し上げました通り、逐次成案を得て善処していきたい、こう考えておるわけであります。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは経済局長答弁と違うのですよ。経済局長は、足鹿委員に対しても私に対しても、ほんとうはこの機会に根本的な改正をやりたかったけれども予算的ないろいろな都合等もあってこのような変形したものになってまことにざんきにたえないという意味の答弁をしておるのですよ。あなたはもうこれでけっこうだというようなことを言っているのですが、この点は、経済局長、どうなんですか。
  146. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ちょっと……。  これでもって満足しているとかということは申したはずはありません。経済局長が苦心てここまでやってくれたんですから、私はこれを多としております。しかし、同時に、財政等の関係があって、率直に申し上げてこれに制約等を受けております。従いまして、今申し上げた通り、逐次改善するということは一貫した態度でございますから、将来これをいわゆる負担にせよと言われましても、これは現在のところそのことは申しかねますから、われわれとしましては、この家畜共済制度を改善するということだけは申し上げておきたい、こう思います。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 経済局長のお考えはどうなんですか。私たちはあなた方をいじめているのではないのですからね。気の弱いところを鞭撻して質問しているのですから、率直に答弁してもらわぬと困る。
  148. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 私の申し上げように多少食い違いがあるような御質疑でありますが、こういうものは、やはり、交渉の過程におきましては、いろいろ徹底をした考え方から、順次財政の都合なりその他の事情によりましてある線にきまって参るわけであります。従いまして、われわれといたしましても、今日の段階におきましては、ただいま提案をいたしておりまする国庫負担ないし奨励金支出の方法による以外にないと思います。いろいろ御指摘のありますように、今後の問題といたしましては、できる限り制度として十分整いましたものに持っていきますように努力していきますことは、これは申し上げるまでもないことであります。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、それに関連するわけでありますが、共済団体に対する一般事務費の国庫公付金の状態は、三十四年度はどういうことになっておりますか。
  150. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 三十四年度におきまして事務費関係予算措置をとりましたのは、人件費部門において若干の給与引き上げをお願いする、これは、従来共済関係団体の職員の給与が他の農業関係団体の給与に比較いたしまして比較的低位に据え置かれておりましたので、それを漸進的に改善をいたしますために若干の給与引き上げをいたしたわけであります。このための予算増額が約八千万円程度であると考えます。その他こまかいものが若干ございますが、一つの項目といたしまして、麦の損害評価の実測をやりまする経費といたしまして約五千万円程度増額をいたしております。それから、先ほどの家畜診療所の整備も新しく項目として加えるわけであります。この予算が約六百万円。おもなものはそのようなものでございますが、なお詳細には調べましてお答え申し上げます。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国庫の交付金の関係都道府県に対する配分方針なんですが、これは、昭和三十二年の三月十五日付の農林経済局長通達によって、「農業共済団体の事務費は農業共済団体の行う事業及び業務に伴う各種事務の質及び量を測定し、その基礎の上に立って適正額が定められるべきであり、且その適正事務費を基礎として国庫負担金の適正な額及び農家負担の公正妥当なる額が求められるべきである」、こういうような意味の局長通達が出されておるわけでありますが、現在の配分方針はこのような基本的に示された方針に基いて関係都道府県段階に配分されておるかどうか、その実態はどうなっておりますか。
  152. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ただいま御指摘になりました点でございますが、実際の配分方法といたしましては、昭和三十三年度におきましては、交付実績割として前年度交付額の八五%相当額を交付する、そのほか均等割を若干つける、さらに事業規模割を前年度に比べて若干増加するというような方法によっておるわけでございます。なお、今後は、この配分方法等につきましてもいろいろ検討を要するものがございますので、種々工夫をしてみたいと考えております。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の御答弁では、この局長通達に基いて実際は行われておらない点もあるように受け取られるわけですが、たとえば連合会の事務費の国庫負担金の交付等の問題についても、これは事業区域並びに事業量、事業経費率等を一つの根拠にして交付額がきめられておるように考えられますが、こういう点はこの通達と比べて適合しておるかどうか、いかがですか。
  154. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 さきに出しました通牒では、一応配分の考え方、基準を示しておるわけでございまして、それの実際の計算、割付方法につきましては、年々若干の工夫改善をいたしておりますが、特に最近年次の配分方法といたしましては、事業規模割を増加いたしますように配慮いたしておるわけでございます。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、組合の事務費の国庫負担金の交付が行われるわけですが、都道府県別の交付額というものは、われわれが一見しても非常に不均衡になっているような点があると思うのです。この点は、今局長が言われた、たとえば事業分量等に対しても今後是正していくというようなお話でありましたが、たとえば一組合当りの交付額というものはどういうような均衡の上に置かれておりますか。
  156. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 一組合当りの計算の基礎といたしましては、交付実績割が前年度の八五%、それから均等割が二万円、あと一五%を事業規模割で計算をいたしておるわけでございます。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、今やっておられるようなことでいくと、結局国の負担の交付額がたとえば都道府県あるいは組合別に非常に実情に沿わないような配分が行われておる場合、過大であるというようなことはないとしても比較的無理のないような配分が行われておる組合はいいのですが、非常に実情に沿わない過小な交付が行われておるという場合は、これは当然当該組合の運営上組合員の負担増加という形でやらなければならぬということになるわけですね。そういう点は十分都道府県あるいは末端の組合等の実情を調査してもらえばわかると思うのです。国の交付額と、それから組合員の負担額というものはどういうような率によって組合の運営が行われておるかというような点は、これは事務当局として毎年その報告を徴したり実状調査をやられればわかると思うのですよ。詳細な実例は私はここで指摘しませんが、そういう点がだいぶ見受けられるわけですね。ですから、この点はやはり、先ほど私が申しました三十二年の局長通達の線がまだ時間的に徹底して行われていないというようなことであれば、すみやかにこれを改善されて、その交付の不手ぎわによって組合が組合員に非常に過重な負担をしょわしていかなければならぬような弊害というもは、すみやかにこれは解消されるようにしてもらいたいというふうに私は望んでおるのですが、この点に対しては早急に是正される御意思があるかどうか、いかがですか。
  158. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 先ほど説明をいたしました中で、漸次改善を加えて参らなければならないと思います点は、事業規模割によりまして交付をいたします割合を順次拡大をして参るということが、組合の現実の事業規模に合せて国が事務費を補給をするという方向に合うのではないかと思うのでございます。三十年、三十一年、三十二年と順次その点は改善に努めておるわけでございまして。特に三十二年と三十三年では、三十二年では事業規模割が五%であったのでありますが、三十三年にはこれを一五%に改めたというような手直しをいたしております。ただ、これは、短かい時間の間にあまり急激にやりますと、個々の組合にいろいろ衝撃的に影響を与える格好になりますので、ただいま御指摘になるような点は十分留意しながら、漸次改善に努めて参りたい、かように考えております。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に筒単な事例を一つ申し上げておきますが、たとえば北海道の分については、昭和三十三年度北海道の連合会において、組合に賦課した金額が七千七百万円になっておるわけですね。そうして、これに対して国が組合事務費の国庫負担分として交付した金が五千五百万円ということになっておる。ですから、国の負担金よりも北海道の徴収しておる金額の方が四割以上もこれを上回っておるというような内訳になっておるわけですね。こういう例はあまりないと思うのですが、これらの点についても、今局長の言われた答弁からいくと漸次是正されると思うのでありますが、十分運用の面にも注意されて、今後期待されるような共済組合の運営が実現されるように、これは大臣からも十分注意していただきたいと思うのであります。
  160. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 今までの配分につきましては局長から説明の通りですが、適正を期するようにとくといたして参りたいと思います。
  161. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 本日の議事はこの程度とし、次会は明二十六日午前十時三十分より開会することとして、これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会      ————◇—————