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1959-02-18 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十八日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 大野 市郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       倉成  正君    佐藤洋之助君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       高石幸三郎君    内藤  隆君       永田 亮一君    濱地 文平君       三和 精一君    八木 徹雄君       保岡 武久君   茜ケ久保重光君       角屋堅次郎君    神田 大作君       久保田 豊君    實川 清之君       中澤 茂一君    中村 時雄君       西村 関一君    松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         主幹)     長谷 好平君         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         食糧庁長官   渡部 伍良君         林野庁長官   山崎  齊君         水産庁長官   奧原日出男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部食品課長) 筒井 敬一君         通商産業事務官         (企業局産業施         設課長)    川原 英之君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君         農林漁業金融公         庫副総裁    伊藤  博君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    楠見 義男君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月十八日  委員栗林三郎君辞任につき、その補欠として茜  ケ久保重光君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五八号)  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第五九号)  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第九九号)  農林水産行政基本施策に関する件  農林漁業災害に関する件  食糧に関する件      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産行政基本施策及び来年度農林関係予算について大臣に対する質疑を続行いたします。神田大作君。
  3. 神田大作

    神田委員 きのうの大臣開拓に関する答弁でございますが、機械開墾やその他のことで相当適切な施策をやっておると言っておりますけれども、予算面を見ましても、公共関係で約三億三千万、非公共でもって一億一千万、この程度しか三十三年度から比較いたしますとふえておらない。一体日本食糧の確保並びに過剰な人口のはけ口としての開墾事業、あるいはまた次三男対策としての開拓に対しまして、こういうような貧弱なことでもって、あなたが言うように相当な効果をあげるというようなことは、大臣説明はもっともらしいことを言っておりますけれども、実質においてはまことに私たちから言わしむればどうにもならぬ予算じゃなかろうか、こう考えておるのですがいかがでございますか。
  4. 三浦一雄

    三浦国務大臣 きょうは手元に資料もおあげしてあると思いますが、この程度で決して満足するわけじゃございませんけれども、前年に比較しましてある程度の前進が期待できる、これによってとりあえずの措置はとる、たとえば不振地区建設工事の問題であるとか、あるいは融資面等につきましても、従前はほとんど打ち切られているような姿でございましたから、これを前進させて参りたい。御指摘になりました通り、これをもって満足すべきことだとは考えておりませんが、とにかくかような考え方でもってだんだん前進させていきたいと思います。
  5. 神田大作

    神田委員 いつでも大臣答弁はそういうふうに適当なことを言ってその場を逃げようとしておりますけれども、私は、日本農業の将来を考えた場合に、このような開拓事業の渋滞というものは許せないと思うのです。これは、いわば三浦農相の最初からの大きな理想としても、日本農業をどうするかというような場合において、狭い国土をどれだけ可耕地にして、そこへ次三男を入れ、あるいはその他の今あり余っておるところの人口をそういうような開拓方面に向けていくということは、これは国策として非常に大事なことです。これは日本農業の柱でなくちゃならぬ。この日本農業の柱でなくちゃならぬ開拓事業に対して——予算も一千億からふえているんですよ。農林予算も五十五億からふえているのですよ。そういうときに、このような零細なふえ方でもってあなたはごまかそうとしても、それはわれわれとしてはそういう言葉を信ずるわけにはいかない。これは三浦農相といたしましてもこの日本農業の大きな柱である開拓事業に対しまして熱意がない、何らこれに対して新しい構想も持っておらない、いわば今までのありきたりなことをただやっているに過ぎない、新開地を開拓してそうして大きな日本農業の進展をはかろうとする熱意に欠けておると私は思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  6. 三浦一雄

    三浦国務大臣 開拓関係予算につきましても、出入りがございますけれども、やはり三億三千万円程度の増額も期待し、それから、同時に、これに関連する非公共事業等につきましても一億一千四百万円程度融資もある。融資も合せますと相当な伸びでございますから、やはり当面の問題としてこれでやろう、これをさらに拡大するということにつきましては今後十分に努力いたしたい、こう考えております。
  7. 神田大作

    神田委員 この問題で時間をとるわけにはいかぬから、この問題はあとでまた徹底的に究明していきたいと思います。  特にきのう石田委員からも質問があったような天災融資法によるところの災害資金貸付の問題につきましても、現在十二億に対しまして一億三千万程度しか決定しておらない。そのために肥料や農機具そのほか営農上非常な支障を来たしておるのでございますけれども、あなたたち答弁は善処するという一言に尽きる。これは善処するでは済まされない。これは貸付の当事者に立っておるところの農林中央金庫農林省考え方というものが食い違っておるのでございますからして、この調整をして、せっかく天災融資法に基く融資ワクを決定しておきながらそれを融資しない現実をよく究明して、そしてこれに対して万全の措置をしなければならぬ。特に、前の委員会等におきましても災害資金振興法によるところの営農改善資金に借りかえるようなことを強く要望しておるにもかかわらず、これができない。中金ではがんとしてこういうような災害資金営農改善資金に借りかえることを拒否しておる。こういう問題についてあなたは今後どのような努力をされるか、またこれに対しましてどういうような対策を持つか、お尋ねいたします。
  8. 三浦一雄

    三浦国務大臣 きのうも若干説明申し上げたのですが、開拓関係につきましての融資は非常に手おくれ、こう申しますか、整備されておらぬ。それも結局経済的な基盤が弱いものでありますから、そこで、今度保証制度を拡大しまして裏づけをして参るという措置をとって参るわけでございまして、やっぱり裏づけがありませんと、たとい中央金庫等でありましてもスムーズにいきませんし、また公庫融資等につきましても円滑にいかないという事情にかんがみまして、この金融裏づけをするというので信用保証制度等も拡大して予算措置も講じたわけでございます。これを前提にして、同時にまた、各金融機関等につきましては、今の調整をしつつ、その問題を強力に、行政といいますか、指導的ななにをしてとり進めて参りたい。私もこの事情につきましては各省から具体的に聞いておるのです。前の日石田さんからも御指摘がありましたが、極力その調整をして、春肥等にはことに困らないようにしたい。  具体的には農地局長から説明させますから……。
  9. 伊藤博

    伊東政府委員 問題は二つでございまして、天災資金ワクがあるがまだ一億数千万円しか貸してないという問題と、天災資金営農資金に借りかえる問題とありますが、後者の借りかえの問題でございますが、これは現実に四十億くらい借りかえが終っておりまして、来年もさらに四十億くらい借りかえるという前提予算を組みまして、この利子補給も一億四千万円ばかり三十四年度予算に計上しておるような次第でございます。この点につきまして、中金等と打ち合せまして、今後スムーズに借りかえをしていくということは考えております。  もう一点の天災資金の問題でございますが、これは先日も御答弁いたしましたが、実はワクに対しまして出ておりますのが一億七千六百万くらいでございます。これにつきましては、中金とも話しまして、過日私の方の課長中金に一緒に出まして、そういう問題の県に行って具体的に当るということをしまして、その後二県ばかり解決したものもございます。個々の問題としまして取り上げまして、いろいろなネックがあればそれを一つ一つ消していくというようなやり方で、なるべく来年の春肥その他に間に合うようにということで今努力中でございます。
  10. 神田大作

    神田委員 天災融資法に基いて損失補償制度がありますけれども、現在天災融資法による災害資金政府損失を補償した額は一体幾らです。これは一つ事務当局から。
  11. 須賀賢二

    須賀政府委員 ちょっと調べますから、しばらくお待ち下さい。
  12. 神田大作

    神田委員 では先に進みます。今度は林野の問題についてお尋ねしますが、一体林野庁では膨大な国有林管理しておりますけれども、この膨大な国有林管理に対しましてとかくの風評をわれわれは聞いておる。これを一々申し上げるいとまがないのでありますけれども、この膨大な国有林野林産物売却あるいは保安林の買い入れ、整備、そういう問題について、われわれとしてはこの際抜本的な検討を加えなければならぬと考えておるのですが、一体こういうような膨大な林野売却というものはどのような方法でなされておるか、お尋ね申し上げます。
  13. 三浦一雄

    三浦国務大臣 林産物の売り払いでございますが、これは公売原則になっておるわけであります。しかし、林野地元との密接な歴史的ないろいろな沿革等もございまして、そこで、一面において公売原則になっておりますけれども、かせぎ用の資材であるとか、あるいはまた公共用林産物等につきましては、公共団体等随意契約で売るという制度が開かれておるわけでございます。たとえば薪炭林であるとか、あるいはまた加工、建築をするとか、あるいは災害時に際して公共団体林産物を売り払う場合には、これは随意契約でもってやる。いわゆる特売の形式でやる。この二つの道が開かれておるわけでございます。これを運用しておるわけでございます。
  14. 神田大作

    神田委員 それでは林野庁長官にこまかい点をお聞きしますが、一年に売り払われる国有林野林産物が、特売制度で売られるものが幾ら、あるいは指名入札等によって売られる、いろいろ方法があると思うが、その種類別によって金額をあげてもらいたいと思います。昭和三十三年度でも、三十二年度でもけっこうです。
  15. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 国有林産物の売り払いにつきまして概括を申し上げます。  昭和二十八年度からの数字を簡単に申し上げますと、立木による売り払いにつきましては、二十八年度におきましては、総体の六七%が随意契約によって売り払われまして、あとの三三%が公売指名入札によって売られたのでありますが、漸次これが随意契約による売り払いが減少いたしまして、本年度におきましては五二%に減少するというふうになっておる次第であります。  一方、直営生産で生産します素材について申し上げますと、昭和二十八年度におきましては、総量の六三%が随意契約によって売り払われたのであります。自後漸次減少をいたしまして、本年度におきましては四五%が随意契約によって売り払われておるというふうな形に推移しておるのであります。  昭和三十二年度におきまして随意契約によって売り払われました直営生産素材について金額を申し上げますと、百四十三億七千万円、それから、立木につきましては、同様に随意契約によって売り払われましたものが六十一億六千万円、合計いたしまして二百億円強という状態になっておるわけであります。
  16. 神田大作

    神田委員 大臣にお尋ねしますが、五百億からの一年の売払代金があるのですが、そのうちの大体六割からはなはだしいときは七割が特定業者との話し合いによってその人に払い下げておるということなんです。それから指名入札とかいう競売によっておるものが三〇%内外だという。金額にすると二百億から三百億の金が、いろいろの因縁来歴があるというようなことを理由にして特定業者取引されておるというような問題が起きています。こういう膨大な金がどういう形でもって特定業者話し合いによって売られているかというような問題について、あなたは大臣として、こういう問題について深く研究をし、その取引実態を調べたことがあるかどうか。また、これらに対してあなたの方で現在行われておることがどういうふうにして行われておるか、その実情を知っておりますればお答え願いたいと思います。
  17. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私はだいぶ前の当時のことは若干調査もし知っておりましたが、最近の事情はそれとは大差はないと思いますけれども、詳しいことは林野庁長官から説明させていただきます。  これは御承知通り、林政の上におきましては、山川沼沢の類は公私これをともにする、昔から、林野の利益は公私ともにこれをやる、こういうことできていることは御承知通りです。同時に、国有林成立沿革を見ますと、御承知通り、これは従来の藩有林国有に合せて参った。そしてやはり地元が非常に密接な関係があるものでございますから、地元のかせぎを見てやるということから、前期の国有林野法等につきましても特定の立法をしておったわけでございます。今日ではその伝統を改めつつ改正はしてきておるのですけれども、その線が残っておる、こういうことでございます。要するに、この運用そのものが適正を期せなければいけませんから、これにつきましては厳正に運用して参りたい、こういうふうに思う次第であります。
  18. 神田大作

    神田委員 大臣は口先だけの話でごまかしております。一体、適正な運営をしようというようなことは、適正な運営を知らない人が——大体、あなたは、数年前のことであるから今もそうであろうと、いうようなことで、五百億からの国有林野が勝手に地元林野庁の役人によって特定地元業者となあなあでもって取引されておることをずっと前からあなたたちは知っておりながら、これらの特売制度の欠陥というものに対しまして深く研究もしないし、これに対して現実どのように行われておるかということを大臣がよくわかっていない。そうしてどうして適正な運用をあなた方監督者としてできますか。そういうことをどうして見ることができます。これは大臣の大きな責任であります。今後私は一つ一つの問題についてそれを指摘しますが、そういう場合に、大臣は、そういう問題を適切に判断し、これに対しましてどのような関心を今日まで持ってきてこの林野行政を見てきたのか。あなたは歴代の長官にまかせきりじゃないですか。あるいは出先の官吏にまかせっきりで林野行政をやってきたのではなかろうか。もしそうでなかったならば、現在の実情等をもっとよくわかっておるはずです。そこに非常な弊害が行われておるということを知っておるはずです。これに対して大臣の責任ある答弁を私は求めます。
  19. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は、現在の国有林野法の適用によりまして、同時にまた国有財産並びに会計法等の制約のもとに、適正な運営をしておると確信をしておるのですが、しかし、たくさんの中には過去におきまして会計検査院等の指弾を受けた点がございました。これらは前轍にかんがみましてこれを厳に改めていくということの基本方針でやっておりまして、林野庁農林省特別官庁として成立しておりますが、その運営につきましては、私、注意を怠らないつもりであります。
  20. 神田大作

    神田委員 いわゆる特売制度というものは現実においてはどういう形で行われておるか、このことを長官から説明を聞いて、それからまた大臣にお尋ねをしましょう。  一体現実にはどういうケースでどういうふうにして、膨大なる国有林野特売あるいは特定指名入札という形はどのようにして行われておって、そうして一体だれがそれを認可し、だれがそれを査定し、そうしてどういうふうな取引がなされておるか、それを御説明願います。
  21. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 国有林野におきまする随意契約による売り払いにつきましては、会計法並びに予算決算及び会計令の定めるところによってやっておるわけであります。  先ほど大臣からもお話しいたしましたように、公共、公益のための必要なもの、あるいはまた地元の零細な農山村民の自家用並びに農閑期のかせぎ用として必要な薪炭林というようなものは、もちろん随意契約で売り払っておるわけでありまするが、これらのほかにも、国有林は、成立の当初から、その利用開発市場開拓というために、随意契約によって産物を売り払って参ったのでありまして、それによりまして、地元製材業等木材産業を育成発展させますとともに、一方においては国有林自体も安定した販路を維持するということになって参ったのであります。また、地方によりましては、そこに必要な国有林業務のための労務の供給源もそこから得て参ったというような歴史的な経過をたどっておるのでありますが、こういうような関係からいたしまして、こういう依存関係というものに急激な転回を与えますことによって、中小企業でありまする地元製材工場、あるいはまた地元の零細な木工業というものの資材関係に動揺を来たし、その企業というものはもちろん、その地域の経済にも大きい変化を招くというようなことが憂慮される事態も考えられるわけでありまして、こういう地元工場工業に対しましては、必要最小限度のものを随意契約によって売り払うという制度を現在とっておるわけであります。  第二の場合といたしましては、天然生広葉樹林の伐採に伴いまして生産されますブナその他の低質でしかも小径というような木材はまだ市場性が必ずしも確立されているという状態ではないのでありまして、それらのものを売り払います場合には、それを原材料とする企業の育成あるいはまた融資という点も考慮しながら売り払いを進めていかなければならぬのであります。また、このことは林力増強前提条件ともなるのでありまして、このような場合には安定した状態資材供給を続けることが必要であるという見地から随意契約で売り払いを考えたのであります。また、日本産の広葉樹といたしまして海外市場開拓しておる、いわゆるインチ材、合板というようなものがあるわけでありますが、その海外市場を保持し、なお今後発展させていくというようなためには、安定した輸出を継続する必要がございますし、これらを生産する工場はその資材につきましても安定した計画を持つ必要があるわけであります。このような国の見地から見まして、要請される必要な原木を確実に供給していくというためには、どうしましても適材をやはり随意契約によって売り払っていくことが必要なのであります。こういう場合にも随意契約を適用するわけであります。  なおまた、択伐作業というような方法で伐採する場合、残ります立木の保育あるいはまた森林管理という面から、林業の専門的な知識、技術というものを持つ者を相手方として売り払う必要があるという場合もあるわけであります。  以上のような場合が、随意契約により売り払うおもな場合であるのであります。  その次に、随意契約をいたしますその権限につきましては、ほとんど全部が営林局長あるいは営林署長権限によって売り払われておるわけであります。それから、売り払い予定価格の決定につきましては、少くとも月一回定期的に市場取引実態調査するわけであります。それは、営林局署に専任の担当者を置きまして、市場価格について信用のある取引業者及び経験者というもの数名を直接対象といたしまして、聞き込みあるいは仕切書あるいは契約等を見せてもらいまして、取引条件品質取引価格数量等調査するわけであります。また、当該市場に丸太の市売り市場というようなものがあります場合は、その出来値と品質数量等調査しますほかに、適当な量を計画的に国有林としても市売りに委託販売するというような方法をとりまして、その結果を調査するわけであります。また、最近の公売結果があります場合は、その落札価格等をもととするわけであります。以上のような方法によりまして調査いたしました結果を基礎といたしまして、調査した取引に対しての数量というようなものを加えて加重平均するというような方法をとりましてこの市場価格というものを見出すという方法をとっているわけであります。この場合、市場関係を同じくする営林署におきましては、その調査結果をそれぞれ持ち寄りまして、その大きい方向に誤まりのないような調整を行い、また、必要な場合にはそれぞれの資料に基きまして営林局におきまして調整も行うという方法をとって価格の適正を期している次第であります。
  22. 神田大作

    神田委員 それで、特売制度というものは普通一般市価よりもどのくらい安く売られているか。時間がもったいないから、簡単に答弁して下さい。
  23. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 最近の状況を簡単に申し上げますと、昭和三十三年度、本年度の第一・四半期、第二・四半期実績について調査をいたしたのでありますが、東京営林局におきましては、予定価格公売結果との差額は四%ないし八%になっておりますし、長野営林局におきましては六%ないし一〇%という程度落札価格が高いという状況になっております。随意契約におきましても、この予定価格よりもやはり四、五%は高いという線を基準にして売り払いを行なっているわけでありまして、最近の状態といたしましては、随意契約により売り払います落札価格等にはほとんど差がないという状態になっているように考えております。
  24. 神田大作

    神田委員 長官、間違いないかな、その答弁は。
  25. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 先ほど申し上げました東京長野の両営林局につきましては、実績を精細に調査した結果でありますので、誤まりはないと思っております。
  26. 神田大作

    神田委員 実際には特売というのは業者が非常に歓迎している。これは業者としては相対でもって話し合い、私の調査いたしまするところによると市価よりも二割ないし三割は必ず安くこれは売られている。そういうふうに安く特定業者等とあなたの方の営林局長あるいは営林署長との間において随意契約できるところに特売の特質がある。そういうように、市価よりも安く、営林署長あるいは局長の権限によってそういうような特定業者と結ばれるところに問題があるのです。この問題について、もう私が言わなくてもわかると思うが、ここにおいていかなる問題が起きてくるか。一年に二百億からの材木を売るこの大国有林の実力者が、材木を売ったり買ったりしてそれを加工して暮しを立てているところの木材業者との間において、あるいはパルプ業者との間において、市価よりも二割も三割も安く契約するというような、そういうような特権制度があるのです。ここが問題です。それを言葉の上であなたはごまかそうとしているが、そこが問題だ。これに対して、あなたはそういうことが行われることが十分わかっているのだろうと思うのでございますけれども、今の答弁ではそれをあなたは率直に吟味していない。そういうところにごまかしがある。そういう答弁は私は納得できないから、いま一回答弁してもらいたい。
  27. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 先ほど申し上げました東京長野の両局については数字につきましては実績調査した結果でありますので、われわれとしてはもちろん誤まりはないと確信しておるのであります。先生が御指摘になりましたような随意契約と落札という面におきます価格の差というものは、結局、要は市場価格というものの適正な公正な把握ができるかどうかということにかかるように思うのでありまして、われわれといたしましても、この価格の適正な、客観的な価格というものを把握することには今後なお一そう努力を払うべきであるというふうに確信いたしまして、その機構なりやり方についても検討を加えて進みたいと考えておる次第でございます。
  28. 神田大作

    神田委員 私のところにたくさんの投書が来ております。これは一々名前をあげて言うことはこの次の委員会にしまして省きます。今長官が何かもっともらしい答弁をしておりますけれども、現実においては競争入札はとにかく競争して相当せり合ってやるから市場相場と匹敵するような相場で入札されるでしょう、しかしながら、特売の場合はこれよりも二割か三割安く相対でもって取引されておる。だから、これを特売でもって安く買った業者がもうけて、そして今度競争入札をやって高く買っても、前のやつでもうけておるから、高く入れても損をしないというので、また競争入札でもその業者が取っておる。特売でも、国有林関係が密接になってきますから、取引がたび重なると、また特売でも持っていくというふうに両方獲得しておるような現実は各所に見られることなんです。これは、われわれしろうとが言うよりも、専門家である長官はもう十分わかっておるわけでございます。種類あるいは年数やその他のいろいろの条件によって木というものは相場が違う。目のあるやつであれば一石一万円も二万円もするやつがある。あるいは節のあるやつであれば一石三百円か五百円しかしないというような場合もあるし、名木ともなれば容易な価格じゃありませんし、雑木であれば二束三文に売れるというように、木は非常に価格の差があるものなのであります。しかも、山奥にあって、それをあと幾らに売ったからといって査定のしようがない。調べようがない。そういうような非常にあいまい模糊としたものを、地方の署長あるいは営林局長権限によって特売制度でもってこれを特定業者話し合いで売買させるということを長い間ずっとやっておりますか、私はそこにたくさんの欠陥が生まれてきておると思う。そこにまた権力主義も出てくるわけであります。局長や署長に取り入った者でなければ特売にありつけぬというようなことになって、そこで、営林署は神様である、営林署にさえ取りつけばもう一財産も二財産もできるというような場合も出てくるわけであります。そこに権力が生まれる。そこにいろいろの不正の温床が出てくる。こういうふうに私は考える。これが何年から始まったか私は知らぬ。知らぬけれども、長い間のそういう弊害、そういう権力主義というものを、今日までそろっと、いわゆる林野一家——国鉄一家という言葉があるが、国鉄一家以上に緊密なものを林野一家は持っておって、そして現在まで林野庁のそういう特殊権力というものは民間業者を非常に恐怖させておると同時にまたありがたがらせておると私は思うのでございますけれども、ここに大きな特売制度におけるところの欠陥がある。特売制度における、地元業者の育成とか、そういう面においてもなるほど貢献はあったでしょう。あったろうけれども、一面非常な弊害もある。しかし、私は、特売制度を全部なくせ、あるいはこういう方法にかわる特売制度の欠陥を補うような方法がありますれば、私はあえてこの制度をなくしろとは言いませんけれども、しかし、今回この林野庁の売り払い制度というものを根本的に検討して、そしてこれに対しまして是正を加える時期が私は来ていると思う。こういう問題に対しまして大臣はどのようなお考えを持っておるか、お尋ねいたします。
  29. 三浦一雄

    三浦国務大臣 先ほど来林野庁長官からもお答え申し上げました通り特売随意契約の一つの形態ではございますけれども、廉売するという制度じゃないことは御説明申した通りであります。従いまして、価格決定について合理性を持つということが一番肝心な点でございます。同時にまた、随意契約する場合に特定の者だけを見るということじゃいけないことも、先ほど説明通りだと思いますが、この価格決定なりそういうことについて合理的な結論を得る組織なりあるいは機構なりにおいて改善を加えつつ、こういうふうなことの適正を期するということが大切でございまして、神田さんが御指摘になりましたような、つまり常住ふだんにこの問題の適正を期するということで取り進んで参りたいと考えます。
  30. 神田大作

    神田委員 大臣、これは非常に大きな問題でありますから、この際国有林野の売り払い制度に対しましてもっと突っ込んだあなたの見解を私は表明してもらいたいのであります。価格の合理性をどうするか、あるいは売り渡し制度は根本的にどういくべきかというような問題について、ただここでおざなりの答弁だけでは済まされない問題でありますので、これはあとでも結構でございますけれども、あなたのこれに対するしっかりとした考え方を私は一ぺん聞いておかなきゃならぬと思う。同時に、地元産業育成というような美名のもとに、これは特定業者だけに利潤を追求させておる。しかも消費者である一般大衆はそのような恩恵に浴しておらぬ。国民の財産である国有林野というものが、特定業者林野庁の権力主義と結びついたそういう者たちが膨大な利潤を上げるということは許されない。この根本的な問題を、あなたはずいぶんわかっておるにもかかわらず、政府当局は今日までこれに対しましてメスを加えず、改善をはからなかったということは、まことに責任重大であると思うのでありますが、このことに対しましてあなたはどのような決意を持っておられるか、お伺いします。
  31. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今後抜本的にも検討し、そうして改善を加えたい、こういう考えでございます。
  32. 神田大作

    神田委員 いま一つ、保安林の整備というようなことでだいぶ予算も載っておりますが、保安林の買い上げを各所でなされておるようでございますけれども、この保安林の買い入れは、どういうふうな方法で、あるいはどのような条件のもとになされておるか、簡単に長官から説明願いたい。
  33. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 保安林の民有管理国有林に買い上げます事業は、昭和二十九年から始まったのであります。二十八年に大きい災害がありまして、治山治水対策要綱が決定され、それに基きまして二十九年に保安林整備臨時措置法が生まれたのでありますが、これによりまして保安林の買い入れの仕事を始めたのであります。当初の計画におきましては全国の重要な水源地帯、上流地帯の民有保安林を国で買い入れまして、これの治山事業あるいは造林事業、また管理、経営を厳密にやっていくという面から、第一期計画といたしまして十カ年間に五十万町歩を買うという計画で出発したのであります。その五十万町歩につきましては、林野庁でそれぞれの河川流域の上流地域を選びまして、これを概括の場所ごとに決定いたしまして、中央森林審議会の意見を聞きましてこれの買い入れ決定をする。いわゆるこの地域から順次に——地域でもそれぞれ重要度がありますので、その中から集中的に保安林を買い入れていくという計画で進んで参っておる次第であります。
  34. 神田大作

    神田委員 保安林買い入れの実際の問題でありますけれども、保安林を五十万町歩買い入れる、それは水源資源、治山治水の上から大切なことでありましょう。しかしながら、これを実際に買い入れる場合に幾ら価格でもって買い上げるかということが問題である。この民間からの保安林買い入れの価格というものをどういうふうにして決定し、だれが裁断を下してこれを買い入れるのか、お尋ねをいたします。
  35. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 買い入れ価格の決定につきましては国有林を売る場合にも同様でございますが、まず土地価格の決定につきましては、大蔵省の財務局あるいは税務署、それからその方面の堪能な学者、学校というふうな面からそれぞれ地価の見積りを聴取いたしまして、それを算術平均するということによって地価の決定をするわけでございます。立木、用材につきましては、もちろん売る場合と同様に全地域につきまして毎木調査を行い、薪炭林につきましては標準地調査という方法をとりまして、それぞれ、用材につきましては樹種別の石数、大きさ、薪炭につきましても所要な樹種別の石数といったものを出すわけでございます。それをもとといたしまして、生産される木材なり木炭のもより市場におきます市場価格調査いたしまして、これはもちろん売り払います場合にも同様な調査をしておるわけでありますが、それをそれぞれ適用するわけでございます。それからいわゆる立木から丸太への利用率、伐採時に搬出するに必要な経費というものを控除いたしまして立木価格を決定する、それで、立木と土地価格を合せたものをもとといたしまして買い入れるという措置をとっておるわけでございます。
  36. 神田大作

    神田委員 それは最終的にだれが決定をしますか。
  37. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 これの価格の計算、それから最終価格の決定は営林局長がやるわけでありますが、もちろん林野庁にもその内容の概要を連絡いたしましてその認可を得るという手続をとっておるわけでございます。
  38. 神田大作

    神田委員 この保安林を買い入れる場合に幼齢林をだいぶ買い入ておるようでございますけれども、この幼齢林を買ったので、治山治水あるいはそのほかの保安林買い入れの目的に沿わない場合があると思うのでございますけれども、なぜこの幼齢林をたくさん買っておられるか、お尋ねをいたします。
  39. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 保定林の買い入れにつきましては、事後の管理、経営という面からいたしまして、非常に分散的に小面積をぽつぽつ買うということではその目的を達しないのでございまして、現在の方針といたしましては、孤立団地におきましては二百町歩以上というような基準を作って買い入れておるわけでございまして、その中にお話のような幼齢林の介在する場合もあるわけでございますが、林野庁といたしましても、たとえばその買い入れる保安林原野があるいは伐採跡地であるとかいう場合ももちろんあるわけでございますが、管理という面から、それの保育その他の仕事を林野庁としても十分にやって、この保全効果を早急に発揮させるという努力をする考えでやっておるわけでございます。
  40. 神田大作

    神田委員 すると、長官はできれば幼齢林ではない水源涵養林としての成果をなすような成木林を買うというのが本質であるか、それとも幼齢林を買うのがいいのであるか、どっちです。
  41. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 林野庁といたしましては、造林地というものを買うということは、その趣旨において優先するといいますか、購入の順位が高いというふうには考えてないのでありまして、天然林あるいはまた未立木地というようなものに対しましても同様な考え方でこの買い入れをするというふうに考えておるわけでございます。
  42. 神田大作

    神田委員 天然林等を買う場合は、伐採した跡を買うのか、それとも天然林そのままを買うのが、効果的なのか、どっちです。
  43. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 これは現に森林がそこに繁茂しておるというところにつきましてはそのままの状態で保安効果が期せられるわけでございまして、もちろんこれを買うことが望ましいのでありますが、あるいは伐採跡地あるいは未立木地というようなものも、必要な地域は買いまして、それに国が十分な造林その他の施設をして保安効果を早く発揮させていくということも必要だと考えておるのでございまして、両者についてそういう区別は考えてないというのが現実でございます。
  44. 神田大作

    神田委員 これはあるところの話でありますが、三町歩ぐらいの水源涵養林に適したところがあるのです。ところが、この山林の所有主に、何百年あるいは何十年というような天然林あるいは造林木を切らせて、材木になるものは材木にする、丸太は丸太として出す、薪炭林は薪炭として出して、その跡ほとんど坊主のようになった山から、まだ細い幼木しか立っていないものを、営林署が次々と切らせては買い、切らせては買いしている。この山の所有主は、昭和初年に農民から安く買い上げて、そうして、現在におきましては、パルプ材、用材として、あるいは薪炭林として山林を売り、膨大な利潤をあげ、もうけておる。そのあとまた、保安林整備法に基いて、営林署が細い指ぐらいの木をそこから買い上げている。つまり、所有主の方は太い木を売ってもうけ、今度はまた営林署に、細い材木にならぬものを売ってもうけている。このように、何十年、何百年たたなければ保安効果を持たないような山を営林署が買っておるわけであります。これはどういうわけですか。どういう観点に立っておりますか。
  45. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 具体的な場所をお示しになりませんから、問題がはっきりいたしませんので、その場所についてどうということを申し上げるわけには参らぬのでありますが、保安林の伐採につきましては保安林であるということに伴う施業制限がはっきりそこに設定されておるのでありまして、その施業制限の範囲内におきまして伐採するということは、保安林行政上からこれをとめるという筋合いのものではなくて、それを伐採し、さらに次の段階におきましてよりよい山をそこに作り、保安効果を高めていくということが、経営としての当然あるべき姿だと考えておるのでありますが、伐採されましても、あるいは伐採されなくても、大体土地の価格には変りないのであります。立木につきましては、非常に小さいものであるならば、小さいものとしての価値評価しかそこに生まれないわけでありまして、そういう間にそれぞれ現実に応じた評価、価格算定というものが行われるということになるわけであります。
  46. 神田大作

    神田委員 あなたがこの答弁でそういうことはまことにまずいことである。それは業者に莫大な金をもうけさせることである。営林署としては何十年も裸山のままで治山治水などと言っておる。まことにこれは不都合なことであると答弁するわけにはいかないから、今あなたが言ったようなことで言いのがれておりますが、実際は大へんなことである。そのためにこの所有者というものは膨大な利潤をもうけ、その間において、あっせん役として仲に立ったと称して、これを選挙に利用しておる。時間がないからこれを深く追及するいとまがないのを非常に私は残念だと存じておりますが、週刊読売にも出たことは皆さんもすでに御存じでしょう。「金脈を抱いて立候補した役人」、いかにこの山林関係業者とそういう関係が緊密に選挙と関係しておるかということをここによく書いてあります。これを見ましたか。
  47. 三浦一雄

    三浦国務大臣 近ごろ週刊誌がたくさん出ておりますが、数々ありますものですから、見ておりません。
  48. 神田大作

    神田委員 長官も見てないことははなはだ残念でありますから、あとで一つ見てもらいたい。今度栃木県において知事選挙が行われた。この選挙に御存じの通り前々々の林野庁長官の横川君が立候補いたしましたが、とにかく豪勢な選挙をやったことは衆目の認めるところであります。ところが、あるところへ行って、あなたたち特売をしてやると言って——立候補いたしました横川君自身が言ったか、あるいはそれを取り巻いている者が言ったか、私は言明を避けますけれども、とにかく、横川さんを知事に当選させれば特売でもって材木を安く買える、あるいはまきを安く買える、あるいは落葉・採草地も便宜をはかってもらえる、だから一つ頼むというようなことが公然と行われておった。そういうふうに、とにかく、林野行政、それに携わっておるところの役人の皆さんが、そしてそれを取り巻くところの山林業者との間にそのような因縁関係が深く結ばれておる。そこに汚職と疑獄の濃いにおいがしておることは事実であります。現にこの問題について告発をしておる者もありますが、これは時間がありませんからあとにいたしますが、このように林野行政が大きな疑惑に包まれておる。この疑惑に対しまして、大臣といたしまして読んだことはない、見たことはないなどといっておりますが、これは必ずこういう話はあったと聞いておるにちがいない。しかしながら、こういう国の五百三十億からの材木の売り払い、何十億からの保安林の買い入れ、これにからむところの利益者と、それからその権限を持つところの権力者、この権力をかさに着るところの一つの権力政治というものが行われておる。このことに対しまして大臣は責任を持ってこれが改革とこれが究明をされることを私は強く要求しておきます。大臣答弁を聞きます。
  49. 三浦一雄

    三浦国務大臣 国有林の林政の根幹は、やはり、重要な国有財産を扱っておるものでございますから、綱紀を粛正し、いやしくもそこに過誤のないようにということは一貫した考え方でございまして、従来、前期の明治憲法時代からも、この点は非常に大切に考えておったわけでございます。同時にまた、今後といえども、国有林行政等につきましては、綱紀を粛正し、そうしていやしくも過誤のないようにするということは根本のことでございます。私は、業務の刷新改善はもとより、今後かようなことがいやしくも起きないように、制度上なりあるいは機構上なり、あらゆる面に必要な改革をなすべきことはこれをするということで、御指摘になったような心配のないようにやるということについてかたい決心を持って進みたい、こう考えております。
  50. 神田大作

    神田委員 それでは、この問題はあとで詳しく御質問申し上げることにいたしまして、あとただ一点だけ畜産関係の点についてお尋ねいたします。  畜産問題について、畜産の振興をはかると言っておりますが、この畜産の振興を阻害する大きな原因をなしておるのは飼料の問題だと思う。この飼料の問題について改善がはかられない限りにおいて、農家の畜産を振興するといっても、農家ではなかなかそういうわけにはいかないのでありますけれども、この飼料の問題等における一番大事な問題は輸入飼料の問題あるいは安定法に基くところの払い下げの問題等でありますけれども、この問題を見ますと、輸入飼料は指定業者でないと取り扱われないと私は思うのでございますけれども、こういう指定業者はどのような業者を指定しておるか、これをお尋ねします。
  51. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 大臣にかわって事務的に御答弁を申し上げます。飼料需給安定法において取り扱います飼料は輸入飼料でございます。その品目はフスマを初め法律に基いて指定をいたしましたものでございまして、御承知だと思います。それを払い下げますのは、数年前からの当委員会の御意見等を尊重しまして、実需者団体を中心に払い下げ方の相手方を制限する要がある、この制限は飼料用に特になるべく明確なルートで払い渡すための必要があるという意味でそうしてあります。八団体のはずであります。全購連、開拓連盟、日鶏連、全畜連、それから、飼料保税工場がありまして、その会がございますので、その会であります。全国の飼料保税工場会であります。
  52. 神田大作

    神田委員 一番あとでおっしゃったのがよくわからないのですが、それは日本飼料株式会社であるかどうか、尋ねます。
  53. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 違います。
  54. 神田大作

    神田委員 それでは日本糧穀株式会社でありますか。
  55. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 違います。
  56. 神田大作

    神田委員 それではあなたが一番しまいに言った会社はどういう性格のものですか。
  57. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 輸入飼料に使いますものは、たとえばトウモロコシ、小麦でも、その他の用途のものと関税が違います。飼料用にする場合は、関税の関係からいたしまして、安くするために税法上の保税工場を持っております。その工場はいろいろな飼料を作っておりますが、工場全体が税法から監督を受けて、配合飼料を作る保税工場を持っております。全購連もそういう工場を経営をしていく場合があります。そういう工場の全国的な団体であります共同購入機関であります。
  58. 神田大作

    神田委員 それは、共同購入機関というのは表面だけであって、実際においては株式会社としての性格を持っておるものとわれわれは考えるのでありますが、その会社の責任者、取扱い数量、全体的なパーセンテージ、それをお尋ねします。
  59. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 この保税工場会は、会社の性質を持っておるとは思いません。個々の工場がおのおのの経営体を独立させまして、それの共同機関で社団としてやっているわけであります。その代表者は河田師郎という人だと思いますが、取扱い量は全購連より相当下回るくらいであると思います。ただしこれは配合飼料用に限るということに指定したつもりであります。
  60. 松浦周太郎

    松浦委員長 神田君、簡潔に願います。
  61. 神田大作

    神田委員 この実態あとで詳しくお尋ねしますが、河野一郎氏が社長をやっておった会社と関連を持っておると私は思うのでございますが、いかがでありますか。
  62. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 売買自由の取引の時代ですから、あるい、工場会としてはないかと思いますが、工場会の会員の中には関係があるといいますか、商取引ないしはあっせんとか委託とかいうことがあるかもしれません。工場会との関係で、何と申しますか、先生がおっしゃいまする意味がよくわかりませんが、全区面的な関係があると申しますか、工場会そのものと直の取引を経常的に常時いつでも必須事項として行なっておるような関係はないと思います。そういうことは、購入者——飼料の払い下げ団体となっておりますものが、輸送を頼むとか、その他の業務を頼むとかいうことは、頼む方の自由にしてあるわけであります。
  63. 神田大作

    神田委員 今言われた河田師郎君という人は、もと河野一郎氏の秘書をやっておったかと思うのですが、この関係につきましては時間がかかりますから後刻質問いたしますが、特に実需者という団体に払い下げると言っておりますけれども、実際は実需者のような仮面をかぶった営利会社がこの飼料の輸入の中に入っておって、そうして市場の操作をやっておるというようにわれわれは考えるのでありまして、これを改善しない限りにおいて、飼料は低廉に農家の手に入ってこないと私は考えます。この点について、あなたは農家の立場を守って飼料行政をやるつもりか、あるいは業者の利益を守るための飼料行政をやるつもりか、これは非常に大事な問題でありますけれども、この点について一点だけお尋ねして私の質問を終ります。
  64. 三浦一雄

    三浦国務大臣 飼料を必要とする農家の利益を考えてやっていきたいと思います。
  65. 松浦周太郎

    松浦委員長 それでは、関連質問として、簡潔にお願いしますが、茜ケ久保重光君。
  66. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 神田委員林野庁関係の質問に関連して、一言だけお伺いします。  神田委員の御質問の要点は、随契ないし特売に関して特殊な業者に非常な利益を与える、従って、いかぬという質問でありました。その通りであります。林野庁長官も申しましたように、特売の中には、付近の住民と申しますか、いわゆる零細業者を一応育成するという意味もありまして、一がいに否定はできないわけでございます。ただ、私どもが心配するのは、そういったいわゆる林野庁長官答弁をしたような山林の付近の零細業者を助けるという名目で、これが特売ないしは随契をすることの一つの理由になって、裏でいわゆる特殊な業者ないしは大企業家に非常に莫大な随契なり特売をするという実態が起っているところに問題があると思うのです。そこで、私が山をよく回りまして感じましたことは、現在の国有林というものは日本の山林の大部分であると思っておりますが、山に参りますと、山の中に住んでおりながら、その住んでおる諸君が全然山の動きを知らない。ひどいのになりますと、なたを腰に下げ山に入ったというだけで盗伐という疑惑をかけられてひどい目にあっておるという実態もあります。現在の日本の山林行政、特に国有林野行政において、その付近に住んでおる、しかも山の中に住んでおる農山村の諸君が、全然山の恩恵に浴しないで、むしろ官有林の迷惑をこうむっておるというのがたくさんある。そこで、私は、農林大臣並びに林野庁長官に、御希望と申しますか、申し上げたいのですが、現在私は神田委員指摘した随契ないし特売については絶対反対であります。こういうことはやってはいかぬ。しかし、付近の製材業者あるいは零細業者に対して価格の面においてある程度安いのはよいと思います。そういうことはやってもらいたい。と同時に、その官有林の中ないし付近に住んでおる農山村の住民に対して、いわゆる官有林の利用、ないしは下草の刈り入れとか、古木の枯れたものの、伐採とか、ないしは枝木なんかの刈り取りによって、燃料補給とか、それを一部まきなどに売って生計を立てる、こういうような温情のある山林行政は今のところないと思います。ところが、きょう質問をすれば、農林大臣はぜひそういう御期待に沿いたいとおっしゃるに違いない。また林野庁長官もそういう方向でいきたいとおっしゃる。けれども、末端の営林局営林署の担当官ということになりますと、非常に非情と申しますか、自分の職責上やむを得ぬ点もありましょうが、あなた方のそういう温情ある取扱いが逆に出て参りまして、むしろ今言ったように恨んでおるという形が出ておる。こういう実態でありますが、これは農林大臣は古い農林官僚出身でありますから、おそらく実態は御承知だと思います。そこで、私は、神田君の質問に関連して、こういうような実態を御承知ならば、何かこれに対して、いわゆる今指摘した国有林ないし国有林の付近に住んでおる農山村の諸君の要望にこたえるような方法を十分御検討願うなり、また実施していただきたいと思うのですが、農林大臣はこれに対してどういうお考えですか。
  67. 三浦一雄

    三浦国務大臣 実は、国有林野法制度にも、今御指摘になりましたような制度が設けてあり、これを適切に運用することが大切だと思います。昨今、改正になりまして、われわれの知っておる当時とは変って参りましたが、従前でありますと、部分林の制度とか委託林の制度等がありまして、その委託林にも二つございまして、一つは簡易委託、これは下草をとるとか枯木をとるとかの非常に軽度な入会を認めておったのであります。今日では、共有林野と称して、地元の生活並びにかせぎ等に役立つようなことをしているわけでございます。山の中にいて国有林野の利益を受けない、そういう手きびしい御批判でございますが、世話するためにかえってまた弊害を生じている実例も私はかなり知っているわけでございます。さようなことでございますので、今の制度を活用しまして、国有林所在の住民等につきましては、生活の面において、たとえば枯損木等を払い下げしましてたるまさを割らせる、あるいはこれに林産物等を利用しましてかせぎの多い仕事をきせるということもございますから、いずれ御視察の際にはその方面のこともごらんを願いたいと思いますが、かようにしているわけであります。これを徹底させることが必要だと思います。  先ほど特売の問題につきましてもいろいろ御批判がありましたが、やはり、地元の産業を見るという面では、一がいに制度上これを廃止ずるというようなわけにはいかない、そういう面があろうと思うのでございます。従いまして、今後これらの現に認められておる制度を活用しまして、地元の福祉増進に現実に寄与するようにしていきたいと考えます。  なお、国有林の非常に多い地帯におきましては、従前の施設等もありますけれども、これを再検討し、同時に地元経済事情をよく調査させまして、今の制度等をもっと拡大強化するようなことを今林野庁でもしておりますから、御期待に沿うように努めたいと考えております。
  68. 松浦周太郎

    松浦委員長 保岡武久君。
  69. 保岡武久

    ○保岡委員 黒糖の問題につきまして、二、三お尋ねいたしたいと思います。  今般、政府では、国内で消費されます砂糖その他の甘味資源全面につきいろいろ御検討されまして、大体国内糖資源の保護に主眼を置き、輸入糖をできるだけ減少せしめようという大きな方針のもとに、テンサイ糖の保護育成を初め、国内糖資源の保護のためのいろいろな対策を樹立されつつありますことは、まことに喜ばしいことと存ずるのであります。農林省の方で立案されました「甘味資源の自給力強化総合対策について」という書類によりますと、将来十年の間には、国内の砂糖の消費量を大体百五十二万トンと想定し、そのうちの七十五万トン程度を国内資源に仰ぎ、輸入を七十七万トンに圧縮することになり、テンサイ糖四十万トン、カンシャ糖二十万トン、その他結晶ブドウ糖十五万トンの生産を十五年後に確保することが大体の目標としてきめられているようであります。この点に関しましては、農林大臣から畑作振興と関連してテンサイ糖については先般いろいろ御説明がありましたが、カンシャ糖、すなわちテンサイ糖の半分の二十万トンを今後確保しなければならぬところのカンシャ糖、あるいはまた結晶ブドウ糖について御説明をいただかなかったということは、いささか遺憾に考えるのであります。  現在、カンシャ糖と申しましても、サトウキビからとる砂糖というのは、鹿児島県の南部の諸島、すなわち種子島、奄美大島、それと沖縄に生産されているのでありますが、特に奄美大島のカンシャ糖は現在黒糖でございます。これは鹿児島県の種子島もやはり同じなのでありますが、このカンシャ黒糖の主産地でありまするところの奄美大島は、御承知のように終戦後二十八年までアメリカに占領されておりまして、二十八年の十二月二十五日に再び祖国に復帰いたし、政府といたされましては、奄美群島復興特別措置法によりまして、荒廃された国土の復興ということに今全力を尽しておる最中であります。復興計画は十年計画になっておりまするが、ちょうど五年目になり、あと五年間で奄美群島の民度を大体本土並みに引き上げていくという方針で復興計画が着々と進められておることは御承知通りであります。  この奄美群島の農家におきまする一番大きな生産物は、サトウキビからとるところの黒糖でありまするが、従来その黒糖につきましては相当に大きな税金が課せられております。従来の砂糖消費税法によりますと、黒糖は大体一たる百斤が一つの基準になっておりまするが、一たる百斤につきまして四百円も消費税をとり、その他容器の制限が非常に厳格でありまして、小さいれんがみたいなおみやげ用に供する砂糖は、黒糖という成分においては何ら違わないのでありますが、これが税金になりますと一斤十七円五十銭というような高い税金でやっておる。この黒糖は、今まではそうでもなかったのでございまするけれども、文化の度合いが非常に高くなって参りますると同時に、また経済上の変動もありまして、黒糖そのものではもうすでに一般消費市場においてだんだん需要が減退して参ってきておるという実情にありまするけれども、奄美群島といたしましては、どうしてもこの黒糖に依存して農家経済を確立していかなければならないことはせっぱ詰まった問題になっておりまするので、この黒糖に対するところの税金というものは農家の非常に大きな負担となって参っておる。従来この砂糖消費税につきましては減免の要求がきわめて大きかったのであります。  私は、この黒糖の問題を申します際に、農家がサトウキビを作ってごく簡単な操作によって黒糖を作った、その黒糖に税金をかける、言いかえると、農産物に税金をかけるということは、まことに不合理ではないか、一体そういう例が日本本土においてあったかどうかということを従来非常に疑問に思っておるものでございまするが、これは、おそらく、砂糖が従来外国においてできておりまして、輸入する関係上、国内におきまして生産される砂糖にも国際的に若干の消費税、砂糖の税金を課さなければならないというような制約に基くものじゃないか、かように思っておりまするが、今日ずいぶん事情も変っておりまするので、この農産物に対して、しかも農民がサトウキビを耕作し、そのサトウキビをごく簡単な操作によって黒糖に製造する、その黒糖に税金をかけるということははなはだ不合理ではないかと思うのでございまするが、現在この点につきまして大臣はどういうお考えを持っておられるかをまず承わっておきたい。
  70. 三浦一雄

    三浦国務大臣 奄美群島の産業振興の問題でございまするが、これは立地的に非常に災害が多かったりあるいは土地が少いというような条件にありますことはわれわれもよく承知しておるわけでありますが、できるだけの配慮をいたしまして振興に寄与いたしたいと思うのであります。同時に、御指摘通り主要農産物は黒糖でありますが、だんだん黒糖そのものの消費が減って参りました。同時に、昨今におきましては、砂糖の保護対策については実は相当改善を加え、また今度は消費税等も大幅に減ずることになりまして、そしてテンサイ糖等とのにらみ合せにおいて改善したわけでございます。  黒糖につきましては、関係の者から今今後の取り扱いについて説明させることをお許し願いたいと思います。
  71. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいまの大臣のお話を少し補足さしていただきます。お話のように、西南諸島の主要産業としての砂糖の問題は、農林省としましても非常に注視をしておるのであります。今回の税制改正で、従来大阪、東京等の砂糖の取引所でいろいろな問題になった点を改正いたしまして、黒糖の取引に有利になるようにということを考えました。すなわち、第一点は、糖度八十六度を九十度まで上げる。それから消費税は六百グラム当り四円を三円に引き下げました。それから、さらに、今十七円五十銭かかっておった分は四円二十銭になることになりました。そういうふうにして第一段の手を打ちました。しかし、これはやはり、日本の消費者の食生活の向上によりまして、もっといい砂糖ということで、どうしても西南諸島におきましても分みつ糖でやっていただいた方がいいのじゃないかというふうな考えが前々から唱えられております。それも、今回は、テンサイ糖なり結晶ブドウ糖と同様な観点から、関税をうんと引き上げ、消費税は六百グラム二十八円を六百グラム十二円六十銭に引き下げることによりまして、輸入糖との競争力も、分みつ糖生産をいたしますればできる、こういうめどができました。そこで、その前提に立ちまして、今後南西諸島のカンシャ糖の育成を、畑作改良の面から、また製糖業の面から取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  72. 保岡武久

    ○保岡委員 今、れんが糖が十七円五十銭が幾らになったと言われましたか。
  73. 筒井敬一

    ○筒井説明員 ただいまのお話でございますが、今までの八十六度以下の含みつ糖、これが十七円五十銭であったわけでございます。それが、いわゆる現実に言いますと再製糖関係、これは四円二十銭になったのでありますが、黒糖は、たる入れの分が従来は四円であったやつが、今度は、たるをはずしても、そしてある程度棒状になっても、三円になっております。
  74. 保岡武久

    ○保岡委員 私が今大臣にお尋ねいたしましたのは、黒糖のごとく、農家がサトウキビを栽培して、その農家が直ちにまたごく簡易な操作によって黒糖を作っている、その黒糖に税金をかけるということは不合理じゃないかということをお考えにならないかということをお尋ねしておるのであります。
  75. 三浦一雄

    三浦国務大臣 税金がないことは好ましいのでありますが、砂糖の対策の一環としてこれはやむを得ないことだろうと思います。しかし、課税をだんだん軽減するという方向に努力して参ったことは御承知通りでございます。
  76. 保岡武久

    ○保岡委員 輸入糖のごときものを原料といたしまして、それを非常な高度の企業形態によって白糖を製造するというような場合に、それに対する税金ということは、国の財政上の問題等もありましょうから、これは一種の工業生産物に対する課税でもありまするし、国の財政政策の上で税金をかけるのも、これは別途な考え方からうなずけると思うのでございますが、黒糖のごときは、ほんとうの農産物、操作のごときはごく簡単なものであります。サトウキビを絞って、それを煮沸して濃縮して冷却したというだけであります。これに対して税金をかけることについては、私ども非常に疑問を実は持っておるものでございますが、大体大臣のお気持もわかりましたから、この程度にいたしたいと思いますが、これが奄美群島の現在における主要な産物でありまするがゆえに、従来の消費税は非常に農民経済を圧迫しておったわけであります。先ほど申しましたように、永年これが軽減についての要望が強かったので、今度やっと、テンサイ糖を自立させる、テンサイ糖保護育成のために、国内における砂糖の税金が、これは砂糖といっても分みつ糖の問題でございますが、分みつ糖の税金が二十八円が御承知のように十二円六十銭に軽減された。そのかわり関税が八円八十銭から二十六円二十一銭にずっと引き上げられた。その間国の財政上の収支は一向変らない、同額というような格好になっておると思うのでございますが、こういう際に、わが奄美群島あるいは種子島その他の黒糖の生産地におきましては、分みつ糖については従来半減以下になっておる、要するに二十八円が十二円六十銭になったのでございますから、ずいぶん減額されたのに、奄美群島を主産地といたします含みつ糖である黒糖につきましては、わずかに一斤四円のものが三円にしか下っていない、こういう印象を強く持っておるわけでございますが、それについての御所見を承わりたい。
  77. 三浦一雄

    三浦国務大臣 黒糖の特殊性にかんがみまして、今後の減免税につきましては、なおよく事態を検討しまして、そうして軽減をするという措置を講じたい、こう考えます。
  78. 保岡武久

    ○保岡委員 私どもは、従来の一斤四円を三円に下げるということは、何だか申訳的に下げたというような感じがいたしてしかたがない。もっとも、これは長い間砂糖消費税という大きな城郭によりまして固められていた問題でございまして、今度ようやく政府の皆さんの非常な御努力によりまして、——私はあえて御努力と申します。農林省におかれましても、大蔵省におかれましても、相当な御努力の結果こういうふうに砂糖消費税の一角が変ってきたということになっておりますので、非常な御努力の結果だとは思うのでございますけれども、しかしながら、先ほど申しましたように、黒糖というものは、ほんとうに農産物のちょっとした延長物であるというような意味でもありまするし、一般の大きな工業生産に基くところの分みつ糖とはだいぶ事情も違ってくる。ですから、この際四月が三月に下ったということでは、どうも私ども納得ができない。残念ながら政府が国会に提案されておる案に対しては賛成ができないのです。これは別にまた修正その他についていろいろと国会においても御相談申し上げたい、かように考えておりまするが、これにつきましては一つ農林省におかれましても、奄美群島並びにこの黒糖を作っているところの住民の経済力なり、あるいはまたこれに生活を依存している住民の気持なり、こういったものを勘案されまして、この際何らかの御努力をお願い申し上げたい、かように考えまして、一応この問題の質問はこれで終りたいと思います。  次に、黒糖は現在におきましては奄美群島その他南西諸島の非常に大きな産物であり、農家がこれに依存している度が非常に高いわけでございますが、先ほど申しましたように、いわゆる含みつ糖、黒糖というものは、もうすでに経済事情の変動その他によりまして需要が減っております。そのために値段もきわめて低廉に相なっておる。特に、増産と申しますか黒糖の生産期におきましては、これがまた思わざる下落をするという場合が多いのでございます。そうなりますと、もうほんとうに元手にもいかない。農家はそのために年々窮迫をきわめまして、その他のいろんな原因もございまするが、畑にある間にキビを売らなければならぬというような、いわゆる青葉売りをやっている現状でございます。そういう現状でもありまするので、この際農産物価格安定法等の適用を黒糖についてしていただくことが非常に必要だと思うのでございますが、それらについてのお考えを承わりたい。
  79. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 黒糖の農産物価格安定法を適用する問題につきましては、従来いろいろ論議されておりますが、まだその実現に至っておりません。これは、一つは、奄美大島の農業をどういうふうにするかということについて、南方連絡事務局ができて以来いろいろ検討されまして、相当の資金が投入されております。さらにまた、お話がありましたように、黒糖ではやはり商品価値が伸びないのであるから、もっと高度な分みつ糖産業にした方がいいのではないか、そうしますればむしろ開発銀行等の金のあっせんによって製糖事業を振興した方がいいじゃないか、こういうことで今検討しております。ただ、農産物価格安定法に入れますと、政府あとで消化できるという状態になっていなければいけませんから、そういう点もあわせて考えて結論を出さなければならない、こういうふうに考えまして、この点は十分検討さしていただきたいと思っております。
  80. 保岡武久

    ○保岡委員 今お答えになりました分みつ糖に移行していくという問題は、また今後の南西諸島のいわゆる二十万トン増産という問題にからんで参りますし、きわめて大きな問題でありますので、ちょっと後ほどに譲りたいと思いまするが、黒糖の生産がしからば分みつ糖に移行することによってなくなるかということはこれは奄美群島その他南西諸島の地理的な条件から、どうしても全部を分みつ糖に持っていくなんということは不可能なんです。やはりある程度の含みつ糖は残るということを前提として考えていかなければ、南西諸島の黒糖対策というものは成り立たぬと思う。その意味におきまして、やはり、どうしても含みつ糖、すなわち従来の黒糖として残っていく部面が相当ある。この残っておる部面に対する政府の保護をどうするかという意味合いにおきまして、先ほど申します砂糖消費税の低減の問題と同時に、やはり価格の維持という問題、すなわち農産物価格安定法の適用等のことは真剣に政府としても考えていただくべき問題だ、かように思っておるわけですが、この点を伺いたい。
  81. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 ただいま申し上げましたように、やはり、政府がかかえた場合に、その処置、そういう問題で慎重に検討を要するということで、まだ踏み切れないので、検討させていただきたいと思います。
  82. 保岡武久

    ○保岡委員 はなはだ時間がたって恐縮でございますが、もうしばらく……。  今、私、需要がだんだんと低減してくるということを申しましたが、しかしながら、分みつ糖に移行いたしますと、ある程度需要とにらみ合う程度の生産に将来は落ちついていきはせぬか。しかし、先ほど申しましたように、生産時期には非常に下落する、そういうような状況もありますので、価格安定法の適用ということについては、別に生産時期のピークのときにいろいろ措置をしていただけば、あとはまた値段の回復もあるという問題等もあります。これは、農家がそれだけ裕福でありまして、手元に高くなるまで持っておる、要するに生産時期に全部手放さなくてもいいという経済上の力があるならば別です。これはまた後ほど触れたいと思いますが、奄美大島その他の南西諸島の経済団体、農業協同組合等がきわめて零細、脆弱で、そのために、農家のせっかくのそういう産物を農業協同組合等を通して売却するということがほとんど不可能なのです。これは、農業協同組合の脆弱、すなわち資力等がまるで問題にならないという点から、農家は泣く泣く青葉売りをしなければならないという実情にあります。言いかえますと、南西諸島全体にわたっての経済力が貧弱なために、今のような生産時期に相当数量がまとまりますときに価格が下落するという実情にありますので、こういう実情は一つ政府におかれましても十分に把握されまして、適切な御対策をぜひ講じていただきたいということを、特にお願いしておく次第であります。  そこで、次に、今後二十万トンのカンシャ糖を国内砂糖甘味資源のために確保するという政府の方針が大体きまっておるわけでありますが、二十万トンを確保するということにきましてはよほどの御努力を要する、施策を要するというふうに考えておりますが、大体どういう施策で臨もうとしておられますか。
  83. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 三十万トンのうち、十四万トンは琉球、六万トンを南西諸島に期待しておるわけでございます。現在三万トン余りが南西諸島でできますから、現在の量を倍にするという考え方であります。これは、御承知のように、製糖業者で南西諸島の砂糖開発について協会を作りまして、開発計画を研究し、作成しております。それをもとにしまして——これは大体、御指摘のように、十二月前後は含糖量の関係で分みつ糖に移行できないような時期でもあるように聞いております。しかし、どうしても南西諸島の砂糖としては分みつ糖にいかなければならないというふうな計画を尊重いたしまして、南西諸島で六万トンという計画を立てております。これをやりますには、やはり財政資金で相当な援助をしなければいけない、こういうふうに考えまして、奄美開発には従来農林漁業からも出ておりますが、分みつ糖をやるといたしますならば、やはり開発銀行の長期資金をそういうものにあっせんしなければならない、こういうふうに考えます。
  84. 保岡武久

    ○保岡委員 製造工場の誘致等につきましては、今お話しになりましたようなことは非常に大事だと考えておるわけでありますが、さらに、現在のサトウキビの栽培技術の問題、肥培管理その他の指導の問題、これはよほど徹底をする必要がある。徹底すれば必ず今お話しになりましたような目標は達成し得る。達成すること自体があの貧弱な貧困な農家の所得を増進するゆえんにもなるわけでございます。その点につきまして政府施策よろしきを得るならば、必ず政府の御要望に応じ得るだけの力を持っているというふうに考えておるわけでございますが、特に試験研究等のごときは、あるいは試験研究に基くところの栽培指導等が非常に大事だと思うのでございますが、現在においてはほんとうに徹底した指導機関がないと考えております。従って、奄美群島のどこかにその強力な試験研究機関等をお設けになる御用意がありますかどうか。
  85. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは先ほど申し上げました砂糖の製造業者の協会でいろいろ研究されており、その主体をなすのは、やはり南洋委任統治で砂糖を栽培した経験者が中心になっておるのでございます。従って、これをどういうふうに持っていくかということについてはその方々の意見を取り入れてやっていかなければならぬだろうと思います。その中に、やはり砂糖の栽培技術の向上、あるいはそれが土壌改良までいくだろうと思いますが、そういうことも取り上げなければならないだろう、こういうふうに考えております。ただ、何と言いますか、奄美が復帰してからもう五年になるわけでございますが、ほかの制度の整備に忙殺され、農業関係は、私どもの係員も行っておりますし、あるいは農業金融公庫の前の総裁山添さんが行かれていろいろ研究されて、帰って農林省にも御報告をいただいておりますが、砂糖の生産改良の研究については農林省としてもやらなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  86. 保岡武久

    ○保岡委員 奄美群島の中で特にサトウキビ栽培の盛んな徳之島には、県の貧弱な若干の試験地等がありますが、これを活用していただくような方途にお進め願いたいと考えております。  砂糖問題は大体以上で、農林省におかれましても、大臣を初め、あの南冥の島々の問題でございますが、非常な決意を持って努力しておられることには、私といたしましても非常に満足する次第であります。今後とも一つよろしくお願いしたい。  なお、同じく奄美群島の問題でございますが、やはり亜熱帯の地帯という特殊な地帯でございますので、その立地条件を活用する意味におきまして、二、三年来。パイナップルの栽培が行われておるわけでございます。昭和三十六年あたりから相当な果実ができまして、パイナップルのカン詰の製造も十万箱くらいになる次第であります。本年約一万六千箱くらい生産高がある。再来年になりますと十万箱くらいの生産高になるという程度に進んでおるわけでございますので、今後鹿児島県なり、また南西諸島の大きな産業になってくるのでございます。日本の国土の中にパイナップルが栽培され、またパイナップルカン詰ができるということは私は非常に喜びに思うのでございます。ただ、ここで注意すべき点は、台湾なりあるいは沖縄にも相当パイン事業が発展いたしておりまして、沖縄におきましても相当量今明年のうちに増産される、結局日本の需要をだいぶ満たしていくというような実情にありますので、現地のせっかくの事業に着手しております農民といたしましては前途非常に心配しておるという面もありますので、それについて何かお考えがありますか。
  87. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 パイナップルも琉球を含む南西諸島については砂糖に次ぐ適産物であると思います。これは御指摘のように、沖縄の方が少し早く、もう来年には六、七十万箱できるのじゃないと思います。大島で十万箱できれば。パイナップルの需要は大体フルになるのじゃないか。一方台湾から貿易協定の関係で今まで相当な量が入ってきております。今後は、国内生産を補うものとして、私どもそれらも同じ内地のものと考えておりますので、それを含めまして貿易との調整をはかって、国内の産業の維持という観点から解決していきたい、こういうふうに考えております。
  88. 保岡武久

    ○保岡委員 この問題は、農林省の指導育成という問題と、もう一つは、通産省との関係、輸入と密接な関係があると考えておりますので、そこら辺に将来御留意を願って、できるだけ南西諸島にこの事業が発展して参りますように政府の御配慮を願いたいと考えます。  以上申し上げましたような農家のいろいろな振興策が講ぜられておるわけでございますが、何分その中心になるべき、根幹になるべき農業協同組合が先ほど申しましたように非常に脆弱なんです。これに対しましては何とか特別な対策政府としては独自に考えていただきまして、そうしてこの農業団体がもっと活動できるようにして参らなければならぬと思っておりますが、従来農林省から十分な施策がまだ徹底しておらないように考えるのでありますが、この点について御所見を拝聴したいと思います。
  89. 須賀賢二

    須賀政府委員 奄美大島の農業協同組合の育成の問題でございますが、これは、ただいまお話のございましたように、われわれの方といたしましても必ずしも十分に手が回っておらないと思います。現地の状況その他を十分私の方も調査をいたしまして、今後その方向にできるだけの努力をいたしたい、かように考えております。
  90. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ちょっとこの際私から……。  保岡さんの御質疑を通じまして、私、非常に重大に考えますことは、この西南地区における今後の開発の問題でございます。復興臨時措置法等がございまして、そのラインではだんだん進んでいくとは思いますけれども、今お尋ねの、たとえば黒糖の問題、あるいはパイナップルの問題、さらに協同組合等の育成等の問題は、要するに西南地方における農業の基本的な問題に関連するわけでございます。つきましては、われわれの方としましても、この臨時措置法の運用上の実態をもう少し検討しまして、そうして来年度等の予算等の運用につきましても、それに即応してできるだけのごめんどうを見るように進めて参りたいと思いますから、その点を一つ私から申し上げます。
  91. 保岡武久

    ○保岡委員 ただいま大臣からきわめてあたたかいお気持の御所見を拝聴いたしまして、ありがたく思います。  最後に、水産関係についてお聞きしておきたいと思うのでありまするが、このたび国際捕鯨取締条約から政府が脱退されることにおきめになったようでございまするが、従来の条約上の制限によりまして国内で漁期がきわめて不利な状態に置かれておりました南西諸島地域につきましては、条約脱退有効後もやはり条約の制限の趣旨を踏襲されては、はなはだ不公平なことになると思っておるわけでございます。これについての政府のお考えを承わりたい。
  92. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 政府は去る二月の六日に捕鯨条約からの脱退を、脱退の発効前の事態によっては取り消すことあるべしという留保つきで、通告をいたしたのでございます。その発効は七月一日からでございます。しかし、政府が脱退の通告をいたしましたのは、捕鯨の規制の上においてフリー・バンドを持ちたいということではございませんので、好むと好まざるとにかかわらず対処していかなければならない南氷洋捕鯨の国別割当の会談におきまして、すでに脱退の通告をいたしましたノルウエー、オランダとの間に不公平のない立場に立って十分論議をかわしたい、こういう趣旨に出る予防的な措置でございます。国別割当の問題がどういう結論に相なりましょうとも、やはり、鯨の資源は御承知のごとく、南氷洋におきましても、また北太平洋におきましても、非常に危険な状態にあるのであります。従って、これの規制に関しまする新しい条約関係というものがおそらく関係国との間に発生して参るのではないか、こんなふうに考えておるのでございます。  そこで、今漁期の問題についてのお話がございましたが、奄美大島で今操業いたしておりまする捕鯨船は小型捕鯨でございます。大型捕鯨及び小型捕鯨につきまして、御承知のごとく、その捕獲し得る鯨の種類を区分いたしまして規律をいたしておるのでございますが、小型捕鯨の対象になっておりまするミンク及びマッコウ以外の歯鯨、これに関しましては、実はミンクについては条約の規定によりまして御承知のごとく六カ月の制限がございます。しかしこれは一月の十五日から六カ月の制度を今日しいておりますが、マッコウ以外の歯鯨については全然漁期の制限はいたしておりません。従って、小型捕鯨自身の問題についての御懸念はさしあたりないのではないかと思うのでございますが、問題は、将来大型捕鯨が奄美大島に進出した際の漁期の問題に触れてのお尋ねかと、かように存ずるのでございます。  実は、大型捕鯨に関しましては、西南地方に割合に早く来遊はいたすのでございますけれども、しかし、これは非常に広範な来遊の範囲を持っておりまして、日本近海及びさらに広く北太平洋が大型捕鯨の対象漁期についてはプールされておる、かように考えてしかるべきではないかと思うのであります。従いまして、今の条約の趣旨におきましても、年間を通じて、御承知のように、マッコウについては八カ月、それからミンク以外のひげ鯨については六カ月、しかもこれを継続してやらなければならぬ、千海里離れました鯨体処理場については別な漁期を定め得るけれども、その範囲内においては一つの漁期で規律していかなければならない、こういうことに相なっておりますのも、やはり鯨の非常に広い回遊の範囲からきました規制であろうか、かように考えるのであります。従って、今後新しい条約関係等におきまして十分研究はいたしたい、かように考えておりますが、今直ちにお尋ねのありましたような漁期についての自由を日本がここで発揮するというふうには考えておらぬ次第であります。
  93. 保岡武久

    ○保岡委員 一般的なお考えからすれば今のお説でけっこうだと思うのでありますが、しかしながら、奄美群島、南西諸島のあの貧弱な漁業の関係から、目の前にそういう鯨がたくさん泳いでいるのに、全く手をこまぬいてそれを見ないふりしている、あるいは沖縄方面からはどんどん来てそれを取っていくのだというような不公平にならないように、特別な措置をこの際ぜひともとっていただきたいということを強くお願いいたしまして、私の質問をこれで終ります。
  94. 松浦周太郎

    松浦委員長 實川清之君。
  95. 實川清之

    ○實川委員 せんだっての新聞に、土地区画整理事業について農林大臣と建設大臣の間に覚書が取りかわされたというようなことが出ておりました。そういう事実がございますか。もしそれが事実といたしますれば、その覚書を取りかわすまでに至りました経緯と、その覚書の内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  96. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農地局長から御答弁申し上げます。
  97. 伊藤博

    伊東政府委員 大臣にかわりましてお答え申し上げます。  覚書は、建設省の計画局長と農林省農地局長との間で二月九日に土地区画整理事業の運用に関しまして覚書を作りました。作りました動機でございますが、これは、本国会に建設省より土地区画整理法の改正案が上程されるにつきまして、私の方といたしまして、農地行政を担当します立場から見ますと、この法律に非常に関連がございますので、一つ法律が上程される際には法律の運用その他についていろいろ話し合っておきたいというようなことから、あの覚書を作ったわけでございます。  覚書の内容でございますが、これは、区画整理が農地に非常に関係が深いのでございますが、従来ややもすれば連絡を欠くようなことがございましたし、そういう現象が実は最近現われたこともございましたので、一つ事前にいろいろ打ち合せをしたらどうかというような趣旨からいたしまして、まず第一点といたしまして、区画整理事業が行われます団地が十万坪以上であり、その中に、農地法で農林大臣が許可をする権限があります面積が五千坪以上でございますので、団地十万坪以上のうちに五千坪以上の農地が集団しておるというようなところでこの土地区画整理事業を行います場合には、建設大臣はあらかじめ農林大臣の意見を聞いてもらうというようなことにいたしております。それで、建設大臣あるいは都道府県知事、市町村長、行政庁が行います区画整理事業の場合には、建設大臣がまずこれを都市計画事業として取り上げまして都市計画事業審議会に付議するわけでございますが、その付議する前にまず一つ農林大臣の意見を聞いてもらいたいというのが一点でございます。  それから、もう一つは、住宅公団が都市計画事業、区画整理事業を行います場合に、その決定なり認可をする場合には、一つ建設大臣に農林大臣の意見を聞いてもらうというのが第二点でございます。  それから、これは覚書ではございませんで、法律の内容になりますが、従来都道府県、市町村というような地方公共団体が行なっております事業につきましては、この決定なり認可をする場合には、実は関係の区域に小作地があります場合だけ農業委員会の意見を聞いたのでございますが、これはもっと広げまして、農地があります場合には全部都道府県の農業会議の意見を聞いてもらうように、これは法律改正の中に織り込んでおります。  それから、そういう事前の建設、農林両省で話し合いがつきました所につきましては、農地法の運用についてもなるべく都市計画という目的に合致した運用をすることにいたしております。  それから、次の点といたしまして、そういう土地区画整理事業を行いますことによって減歩というような問題が出て参るのでありますが、こういう減歩がありまして残存します農家が農業経営上に支障を来たすということがあっては困りますので、代替地については十分なあっせんをしてもらうということが覚書の一点になっております。  それから、最後に、これは小作人の保護のことを考えまして、小作をしている人につきましても、損失を受けませんように、合理的な基準によって小作人の損失補償もするというようなことを内容にしました覚書を、両局長間で実は取りかわした次第であります。
  98. 實川清之

    ○實川委員 ただいま局長のお話によりましても、従来この土地区画整理事業をめぐりまして建設省と農林省の間にいろいろと意見の相違と申しますか紛争のあったことは事実のようでございますが、最近までの農林当局の農地政策を見て参りますと、農地法制定当時の精神がだんだんと次々にくずされまして、今ではほとんど手をあげているというような感じも実はいたすのでございます。御承知のように、四十万町歩の開墾ができて、その反対に三十万町歩が工場敷地あるいは宅地その他の関係で農地がつぶれておる。しかもこの農地転用の問題は最近ますます拡大されておるように考えられます。この農地転用の問題につきまして、大体、農林省といたしましては、どういう場合には転用を認め、どういう場合には認めないというような、転用の基準なり、あるいは条件というようなものをお持ちになっておりますかどうか、それを伺いたいと思います。
  99. 伊藤博

    伊東政府委員 農地転用につきましては、昭和二十七年に転用基準というものを作りまして、なるべく農地の転用によりまして農業生産に支障を及ぼさないようにという見地から、この基準を作ったわけでございます。これにつきまして、たとえば、いろいろ問題になっております競馬場でありますとか、あるいは競輪場、ゴルフ場、こういうものについては農地転用を認めない、それから、どうしても国民生活の安定上必要だと思われるものについては、これは考えていくが、その場合にも、農地転用をされる農民の保護の問題、あるいはそれが実際に転用目的に使われるかどうかということの観点から、十分な監督をしていくというような転用基準を設けているわけでありますが、この転用基準につきましてはいろいろ問題がございますので、実は、農地局におきましても、新しい観点から転用基準を作ったらどうだろうというようなことで、今検討いたしております。まだ案は申し上げかねるのでございますが、基本的な考え方といたしましては、農地転用につきましては、長期経済計画におきましても、農地の壊廃は年一万五千町歩ということに実はなっております。われわれといたしましては、国民経済の発展上どうしても必要な、たとえば工場敷地でありますとか、あるいはいろいろな公共施設その他につきましての転用の目標が大体経済計画で一万五千町歩ということになっておりますので、これに合せまして物事を考えていったらどうだろうということで、その場合にもなるべく生産力の高いような農地等につきましては転用は避くべきじゃないかという考えで、今考えておりますのは、国の投資が非常に多く使われたというような、非常に生産力の高いそういう農地につきましては、なるべく転用は避けていきたいというような基本的な考え方で、今二十七年の基準の再検討をいたしております。
  100. 實川清之

    ○實川委員 この転用問題は非常に大きな問題でございます。ただ、その場合私が心配いたしますのは、今局長の御答弁によりましても、いろいろと検討はいたしておりますが、まだ発表する段階でない、要するに、私どもから言わしめるならば、農地転用の基準は現実にはないのだというような感じがいたすのでございます。たとえば、これは前に建設委員会でも問題になっておったようでございますが、千葉県松戸市において、松戸市の大体北方に当ると思いますが、相当広い面積の競輪場が農地をつぶしてできております。それからすぐ隣接地帯に九州製罐の工場ができるということで相当建築が進んだことがございますが、この場合には農林省の方で不許可をいたしております。つまり、同一地区において、土地の生産性あるいはその他の関係からいたしましてもほとんど同一条件の隣接した二つの地区において、一つの場合においては認め、一つの場合においては不許可になっておる。これなど明らかに転用の基準がない。むしろ政治的な配慮によって、ある場合においては許可せられ、ある場合においては不許可になるというようなでたらめなことが公然と行われておる。今度の松戸市の金ケ作の住宅公団の問題等にいたしましても、私どもから見まするならばきわめて納得のできない点が多いのでございますが、金ケ作の問題につきましてはあとでまた御質問いたします。大体この住宅公団の市街地建設の幾つかの計画が日本全国にはたくさんあったはずでございますが、これらについて農林省に従来協議があったかどうか、協議があってそれを認めなかったような事例があるかどうか。言葉をかえて言いまするならば、住宅公団の計画を全面的に今まではうのみにしていたのじゃないか、かように考えますが、その点はいかがですか。
  101. 伊藤博

    伊東政府委員 住宅公団の関係でございますが、事前に協議があったかどうかという問題でございますけれども、たとえば金ケ作の問題等につきましては、事前に実は協議がございました。そのほかの、ずっと前の地点におきましては事前の協議なしに行われた。これは法律上実は事前の協議を要するとなっておりませんので、協議なしで行われたものが多いということからいたしまして、先ほど申しましたように、ある農地が団地としてあるものについては、必ず事前の協議をするというふうに今度から法律を改めるということにしたのであります。
  102. 實川清之

    ○實川委員 それじゃ、ちょっとお伺いしますが、住宅公団が市街地建設の場合におきましては全然その農地を無条件でつぶしても差しつかえないというような規定があるのですか。
  103. 伊藤博

    伊東政府委員 これは住宅公団と農地法の関係でございますが、住宅公団が農地法の許可を受けないでやれますことは、公園を作るとか、あるいは道路を作るとか、公共用の施設をやる場合で、その場合には許可は要りませんが、そのほかは許可が要ります。
  104. 實川清之

    ○實川委員 この住宅公団が市街地を建設する場合におきましては、公団法と土地区画整理法を大体使っておるようでございますが、特に、その中で、土地区画整理法を農地の場合に持ってくるということは私は非常に不適当ではないかと考えております。土地区画整理法は元来市街地の区画整理のために作られたものでありまして、従って、これを農地の場合に拡張解釈することは現在の農地法の建前から申しましても非常に矛盾が多いわけでございます。また、そのために従来建設省と農林省の間にいろいろと意見の相違があり、また取扱い上厄介な問題が生じたのだろうと思います。また、金ケ作その他における農民と公団との紛争も、実際問題としてはそういう点に問題があるからでございまして、従って、土地区画整理法を純農村地帯に引用するということは、私は非常に間違いだと考えておりますが、その点について局長の御意見を承わります。
  105. 伊藤博

    伊東政府委員 これは非常にむずかしい問題でございますが、最近の都市の発展というようなことからいたしまして、土地区画整理の最初の問題としましては、ほんとうに純粋の都市といいますか、そういうところに行われていたものだと思うのでありますが、都市の発展につれて農地との関係が実は出てきたわけでございます。私どもとしての現在の考え方といたしましては、土地区画整理法が農村で行われているというようなことはいかぬという立場をとりませんで、これは都市近郊の土地区画整理になりますと当然農地も入って参りますので、これは土地区画整理法でやってもらっても差しつかえないが、その場合にそれから起きます弊害はなくしていくというような立場をとりまして、先ほど申し上げましたように、事前に十分に協議しまして、それは農業生産にも極力支障のないようにしていくというふうな考え方をとりまして、事前の協議ということにしたわけでございます。
  106. 實川清之

    ○實川委員 ただいまの局長のお答え、実は私には受け取れないのでございます。もちろん、私どもの立場からいたしましても、だんだんと人間がふえ、住宅が不足している、従って、どこかに家を建てなければならぬ、あるいはまたある程度いろいろの条件を具備いたしました市街地を建設する場合におきましてはこれは当然農地も一部かかるだろうと思います。しかしながら、その場合におきまして土地区画整理法というものを適用すること自体が間違いで、そういう場合には、むしろ別個の法律を作って、その法律によってそういうものをやっていくというようなことにしなければ、この犠牲は全部農民が負担しなければならないと私は思う。特に、今回の金ケ作におけるような場合におきましては、明らかにこの法律の矛盾が出ておるわけでございます。農林省は、ただいま、そういうようなものを施行した結果農民に大きな犠牲を負わさない、必じ跡始末をするというふうなお話でございますが、金ケ作の場合におきましても何ら手を打っていないということははっきり言い切れるのでございます。たとえば土地区画整理法の場合におきましては、あれは土地を商品と考えるという考え方から出発していると思います。区画整理ができて、道路ができ、あるいはまたガス、水道が引っ張られる、いろいろな施設ができる、従って地価が値上りする、地価が値上りするから土地の所有者は受益をする、受益をするからある程度の減歩を負担してもいいのではないか、あるいはある程度の工事費を負担してもいいのではないかという立場に立って、減歩を認め、あるいはその工事費の一部も農民が負担するような建前になっております。しかしながら、実際の農業というものを考えました場合に、農民が土地を商品として適当な値段がきたら売り放してもいいというなら問題は別でございますが、少くとも農林行政を担当させておる農林省といたしましては、お百姓が土地を商品化して手放すようなことを奨励することはおそらくあるまいと思います。そういたしますれば、お百姓はあくまでも土地が生命線でございますから、その土地が減歩されたり何かしたのでは、農業経営に非常に支障を来たすというような点で、減歩などを認める前提としての、つまり地価が上って受益をするということが前提となってそういうことになっておるわけでございますから、従って、これは農業経営という立場から見ますと問題にならないと思います。従って、局長にお伺いいたしたいの、今のままの土地区画整理法をそのまま農地に適用することは間違いじゃないか、その点をあらためてお伺いいたします。
  107. 伊藤博

    伊東政府委員 御質問でございますが、今の段階におきまして、先ほど申しましたが、私どもは、この法律を忠実に履行することによりまして弊害を排除していきたいというふうに考えております。立法論といたしましての問題は将来の検討問題にいたしたいと思います。
  108. 實川清之

    ○實川委員 それでは、金ケ作の問題に関連をいたしましてお伺いするのでありますが、あそこの農家経営の場合、二、三の事例を拾ってみますと、小島要造という農家がございます。土地の所有面積が五千二百八十九坪で、そのうち四千九百四坪が農地でございます。その農家が、減歩の結果、所有地が三千七百六十四坪、それから地区内の耕地におきます減歩がありますから、残面積が三千四百七十五坪というように減って参ります。それで減歩面積はこの場合におきましては合計千五百二十五坪になっておりますが、農家経営という建前からいきますと、算術計算的に三割減というわけには参らないのです。いろいろの角度から計算いたしまして、この農家の場合におきましては経営の場から見ますと四六%の収益の減になるというような計算が出ております。従って、減歩は三〇%かもしれませんが、経営という立場から見ますと、減歩率の多くなればなるほど、その被害率と申しますか、農家経営に与える打撃の程度は累増いたしております。そのような観点から申しますと、単に減歩されて困るのみならず、それ以上の被害がある。ある一定以上の減歩になりますと、農家経営が立たないというような結果が出て参ります。ところが、この減歩の扱い方にいたしましても、きわめて不親切と申しますか、農民の立場あるいは農家経営というようなものを全然無視してやっております。こまかいことは金ケ作の問題については別に機会を得て御質問いたしたいと考えますので、きょうは、覚書の問題を中心に、ただ例として引用するわけでございますが、そのように農家経営に与える影響というものはきわめて大きい。ところが、その跡始末については公団におきましても、農林省におきましても、あるいは建設省におきましても、何ら考慮されていない。そのことは、私今度金ケ作の現場を見まして、ちょうど占領軍が占領地を横行濶歩するような姿であるというような感じがいたしたわけでございます。大根は除去する、建物のすぐ軒下まで道路を作ってしまう、家のまん前から、三尺、五尺も低いところに道路が通っている。これではとうてい住める道理はございません。あるいは立木は勝手に撤去され、そうして一方的にきめられた評価に従って代金が支払われるというようなむちゃな状態が金ケ作の現状でございます。土地区画整理法の名のもとに公々然と農地をつぶしても差しつかえないというようなことになりますならば、今後都市近郊の百姓は安んじて農業を営むことはできないと考えます。この点につきまして農林当局にもう少し腹を据えた農業政策をはっきりときめていただかなければ、われわれとしては困るわけでございますので、この点について御意見を伺いたいと思います。
  109. 伊藤博

    伊東政府委員 金ケ作のお話でありますが、これは実は昭和三十一年に東京近郊の住宅地帯としてあの事業がやられるということがきまりましたときに、農林省としましては、そこに建てます建設事務所に農地転用許可をしたわけでございます。これは三十一年でございます。その後事業が進みますにつれまして——実は、あそこの関係者は、農民が三百四十名、二百三十九名ですか、ございましたが、現在まだ三十九名ばかり反対者がおられます。ほかの人は賛成ということを言っておられます。この問題につきまして、いろいろ新聞紙上等にも出まして、私どもも非常に心配いたしまして、実は昨年の暮れに農林省からわざわざ現地に調査に行きました。その結果、今先生がおっしゃいましたような、たとえば公団が事業をやります場合に、残存する農家の農業経営に対する親身な配慮に欠ける点が若干あるのではないかと思います。今御指摘になりました宅地の中に道路が通っておるという問題もありましたし、水田を畑地に換地いたしましたり、畑を山林に換地するというような問題も若干ありましたので、具体的な一人々々につきまして調査しまして、公団にこういうところはもう少し直したらどうだということを、実は農林省としても申し入れをいたしております。金ケ作の問題は非常に問題になったのでございますが、こういう問題が今後起きませんように、われわれとしましては、先ほどの事前の協議ということを十分活用しまして、残存する農業経営者の経営の安定をはかっていくということには真剣に努力をいたしたい、こういうふうに考えます。
  110. 實川清之

    ○實川委員 今お伺いいたしますと、昨年の暮れに現地へ視察に参りまして、それでいろいろ公団側の行き過ぎかあったということを発見したように伺いましたが、そのこと自体が、あなた方が農地行政について何らの熱意を持っていないというように私は考えております。金ケ作の問題はすでに三年も前から事々に公団側と農民側との間に何回か流血の闘争を繰り返しているのです。従って、昨年の暮れあたりにのこのこ行って、それでようやく現地を見たようなべらぼうな態度だから、今の農地行政は守れないのです。あなたは、この事前協議を生かして、それで農地を守るんだ、あるいはまたむちゃなことはさせないのだということをおっしゃるが、そのように基準も何もない、——しかも弱腰だ。そのような農地局の考え方でこの事前協議を活用できますか。私は全然期待することができません。  それから、この第三項に、減歩の結果農業経営に非常に重大な支障を来たすものには土地の代替地のあっせんをするということが書かれてありますが、これなんかも、文句を見てみますと、代替地をあっせんするように努力するものとすると適当に逃げておりますが、たとえば、金ケ作の場合におきましても、一たんは話し合いがある程度まで進みまして、適当な代替地をくれるなら応じてよろしいというようなところまでいったのでございますが、結局、最後に、それでは代替地はどこにあるのだ、どういう土地だということを具体的に示してもらいたいと言ったら、そんなことは示せないということで決裂いたしております。このように、代替地を求めようとしてもなかなかない。あるいはまた、ありましても、いろいろの条件が合わないというようなことで、代替地あっせんということは、私は実際の問題としては非常に困難だと思います。従ってあなた方も適当に努力するものとするという工合に逃げていらっしゃいますが、これでは百姓のためにならないのです。なぜはっきり代替地を必ず責任を持ってあっせんするということを言い切らせないのですか。  それから、あなた、二百何十名のうち現在残っておるのは三十数名だというようにお話しになりましたが、なるほど算術的な形の上から見ますればその通りに違いございません。しかし、今残っておる連中は、ほとんど大部分の耕地があの地区内にあるか、あるいはまた、もっとひどいのは住宅から耕地すべてがあの地区内にあるというような、あの耕地を取られるか取られないかが、その農家経営にとって致命的な打撃を持つ農家だけが現在残っておるわけでございます。遠くの方から出張ってきて三畝や五畝持っていたような関係者、あるいはまた、非常に劣等な土地で、適当な買い手があったら売ってほかに買いかえようというようなことを考えておった農家、つまり、その市街地造成とその農家の農業経営との間の関連の程度によって、最後までがんばる者、あるいはまた途中で適当なところで妥協したというような者が分離されたわけであります。たとえば、十六万坪の宅地が住宅公団の直接の用地になって参るわけでございますが、その中に現在残っておる三十数名でなお十二万坪という関係耕地を持っておるのです。ほとんど二分の二の耕地はこのわずか三十数名の連中が持っているのです。この一事をもちましても、二百何十名の関係者があって、今残っているのは三十数名で、こいつは頑迷不霊な訳のわからぬがんこな者だとお考えになることは実情ときわめて遠いことでございまして、私は、そういう点につきましても、個々の農家の経営の場、それにどのような影響があるか、なぜこの連中ががんばっておるかということを具体的に検討して、その上に対策を立ててもらわなければならないと思います。この点について御意見を伺います。
  111. 伊藤博

    伊東政府委員 先ほど答弁が少し足りませんで、誤解をお与えしたかと思いますが、昨年十二月に調査に参りましたのはちょうどこの関係の方々が見えまして、ぜひ見てくれというようなお話の結果だったのでございますが、この問題は従来から非常に経緯がございまして、昨年の六月でございましたか、建設委員会その他とのいろいろ話し合いがございまして、調停案を作って県から関係者に出したらどうかというような動きがございまして、いろいろな関係者の方々とも御相談をしまして、県が実は中心になりまして調停案を作って関係者に示すというようないろいろな努力を実はして参ったわけでございます。その結果がまだ解決をしませんで、昨年のような事態になりまして、われわれも行って参ったのでございますが、今お話しになりました最後の点の、今反対者についてどうするかというお話でございますが、この方々につきまして、実はわれわれ現場に参りましていろいろ調査したわけでございます。一人々々農業経営がどういうことになるかという調べを実はいたしたわけでございます。その結果、公団のやり方につきまして、今の方々につきまして親身になっての配慮が欠けているところがあるんじゃないかということもございましたので、われわれといたしましては、たとえば減歩の問題、あるいはどういうところに代替地を求めたらいいかというような問題につきまして、もう少し考え方を直したらどうだということを実は公団に申し入れをしたような次第でございます。
  112. 松浦周太郎

    松浦委員長 簡潔に願います。
  113. 實川清之

    ○實川委員 簡潔と申しましても、これは将来の農地行政にいろいろ影響のある問題でございますから、もし時間がなければ、別の機会にあらためてまた質問し直しますが、一応この問題を切りをつけておきたいと思います。  私どもの考えといたしましては、今まで申し述べましたように、土地区画整理法を農地に持ってくるということ自体に非常に問題がある。これらの点につきまして、農林省としましては、今後、立法措置によるか、あるいはその他適当な方法によるか、いずれにいたしましても、十分農民の利益を考えてもらわなければならない。たとえば金ケ作の問題にいたしましても、あとのことについて十分農業経営に支障のないように配慮を加えるというようにおっしゃっておりますが、現在までの時点におきましては、農林省は、あの農家に対して何らの配慮も加えていない。むしろあなた方が内諾を与えた結果あのような悲惨な状態を惹起したので、むしろ責任は同意を与えた農林省にあるんじゃないか、かようにも考えております。従って、その後の農業経営が立つように、場合によりますれば代替地のあっせんもほんとうにやってもらわなければならないし、あるいは耕地面積が減ったなら、減ったような形で農業経営が立つように配慮を加えてもらわなければ、今のままでは農家は立てないと考えております。特に、私が非常に不愉快に考えておりますのは訴訟も現在提起されておりますが、まだ法律的にきわめて不確定な状態のもとにおいて、しかも警察官がいつも動員されて、警察権力で農民の抵抗を押えておる。そのようにむちゃくちゃなことをやって既成事実を作り、それで、納得をしない、妥協に応じない農民は頑迷不霊なやつだというようにきめつけておるのが今までの公団側の態度であり、農林省であり、あるいはまた建設省の態度であったと思います。このようなことではだれが一体百姓のために彼らを支持して彼らの主張を通してやるか。少くとも農林行政を預かっておる農林省とするならば、もっと農民の声を真実に聞いてやって、その立場で建設省なりあるいはまた住宅公団といろいろ折衝をしていただくのがりむしろ当然じゃないか。ところが、今までの態度は、むしろそういうような強引なやり方を支援するようなやり方が農林省の行き方であって、この点は今後十分お考え願いまして、農民が農業経営を安心してやれるような形にしていただきたい、かように希望申し上げまして、この覚え書きに関する問題はこれをもって打ち切りたいと思います。  なお、金ケ作の具体的な問題につきましては、いずれ適当の機会に本委員会におきましてあらためて御意見を伺いたいと思います。
  114. 松浦周太郎

    松浦委員長 以上をもちまして、農林水産行政に関する基本施策及び農林省関係予算についての総括質疑は終了いたしました。  午後は二時三十分より再開し、石田委員農林漁業災害に関する質疑、並びに公庫開拓森林法律案三件の審査に入ることとし、これにて暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時五十六分開議
  115. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより再開いたします。  農林漁業災害に関する件について調査を進めます。  石田委員より工場汚水による魚類被害問題について発言を求められております。この際これを許します。石田宥全君。
  116. 石田宥全

    石田(宥)委員 水産庁長官に伺います。本年の一月二日の夜中でありますが、阿賀野川上流四十キロの地点にある昭和電工鹿瀬工場、これは御承知のように石灰窒素が主でありますけれども、その他酢酸ビニールの原料等の製造をいたしておりまして、そのカーバイドかすなどが相当量堆積してあったものが崩壊をいたしまして、それがために民家等にも相当被害を与えたのでありますが、特に下流四十キロにわたる魚族が全滅をしたのであります。この河川では、かつて昭和二十八年、三十年、三十一年と年々アユが全滅をいたしておったのでありますが、そのつどその原因をいろいろな角度から調査をいたしましたが、どうしてもその原因が確認できなかったのであります。そしてついに今日に及んだのであります。しかも、そのカーバイドかすの堆積については魚族に与える影響甚大である点にかんがみて、県知事よりしばしば、これが崩壊することのないように、また河川に流入するおそれのないように処置すべき旨の警告を発しておったのであります。しかるに、今回これが大量の決壊を見て、今申し上げまするような四十キロにわたる河川の魚族が、相当毒性に強いところのナマズであるとかドジョウであるとかヤツメであるとかいうようなものまでも全滅いたしました。それがために、翌三日の朝は、ほとんど河面がふたになって流れると言えば大げさなようでありますけれども、そういうような状態が起った、私、ちょうど正月で自宅におりましたら、隣ぶれで、阿賀野川を流れた魚をとっても食べてはいけないというふれが出てきた。それで、それまで知らなかったのでありますが、何事であろうと思って出てみますと、それぞれ、子供であるとか、中にはおとなが出て参りまして、大きなのは二尺もあるコイなどがまじっておりまして、大きな肥料を運ぶかごでかついで持ってくる、そういう状況に接したのであります。ついにこれが海にまで流されて、海岸に打ち上げられたのは、これはあとで係官が調査したのでありますが、全部それを拾って肥だめにぶち込む、こういうような状況が起ったのであります。従って、従来のアユの被害などは一時的な現象でありますけれども、今回の被害は一時的な現象ではないのではないか。この毒性が果して一時的なものであるかどうか、あるいは下流に沈澱しあるいは付着して、今後さらに相当期間影響を及ぼすのではないかということも実は心配いたしておるのでございますが、水産庁は、今日まで、アユがしばしば全滅をしたような場合において、私も水産庁に相談に行ったこともありますけれども、ほとんどこれに対する積極的な措置をいたしておらないのであります。御承知のように、水産庁は沿岸漁業に対しては漁業協同組合の組織についての指導をし、この漁業協同組合は年々巨額な経費を使って放流をいたしております。阿賀野川でも、サケ、マスはもちろん、アユも放流し、あるいはコイ、ヤツメ等も相当量放流をして参っておるのでありますが、こういう問題について幾ら放流をし協同組合の組織を充実して参りましても、全く九仭の功を一簣にかくものであると言わなければならないのであります。この種の問題は、私は単に阿賀野川だけの問題ではなかろうと思う。現に小さな問題としては全国的に起っておるのでありますが、こういう問題について、水産庁として、直接にあるいはまた通産省を通じて適切な措置を講じておるかどうか、こういう問題に対して積極的にいかなる対策をとっておるか、まずこの点を伺いたいと思います。
  117. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 阿賀野川の河川漁業において占めております地位は、私は相当高い評価をいたしておるのでございますが、少し古い統計によりますと、年間に四万以上の漁獲をあげておる数字をわれわれ農林統計からつかんでおるのでございます。そうしますと、これは金額にいたしましてもおそらく二千万円近い金額が毎年この河川から漁業によって漁獲されておる、こういう状況にあろうかと思うのであります。そこで、こういう問題が発生いたしました際に、水産庁は一体どういう措置を講じておるか、こういうお尋ねに関しましては当面の応急の措置と、将来にわたる抜本的な措置と、二つに分けて考えなければならないと思うのであります。常にその際起ります問題は、損害の賠償と魚族資源の回復という問題でございます。また、同時に、流されました有害物の沈澱等による将来の被害、こういう三つの点にわたりまして、水産庁は、従来こういう問題が起りますたびごとに、県側からの連絡を受け、県側からこれが解決についての相談にもあずかり、また必要があります場合におきましては水産庁自身の技術者を派遣させまして、技術的な汚濁の状況等の解明について協力をさせる、こんなふうなことをやって参っておる次第でございます。阿賀野川の件に関しましてはまだ、県側からの報告を受け取りまして、いろいろこれが被害の程度及び今後の資源の培養等についての相談にあずかっておる、こういう段階になっておる次第でございます。今後の恒久的な問題といたしましては、再びこういう災害が起らないような十分なる保障を工場の施設等によって確立していくことが必要であろうかと思うのであります。それにつきましても、私は、過般成立いたしました水質汚濁に関する二つの法律の具体的実施、及びその実施の処理におきます水質保護のためのよき行政慣行の確立に努力をいたして参りたいと考えておるのでございます。  なお、現場は雪が非常に深うございまして、河床の状況等についての調査ができないような状況にあるようであります。その状況が改まりますれば、直ちに県とも打ち合せまして、被害の今後の継続の程度についての調査も十分いたしたいと考えております。
  118. 石田宥全

    石田(宥)委員 大いに積極的な関心を持っているような御答弁ですけれども、先ほど申しましたように、従来アユの被害は年々起っていたのです。ところが、そのつど本庁から出かけて行くというようなことは全然ない。県にまかせている。そうすると、県としては、工場誘致等の関係があって、工場側に対してやはり思うことが言えない、要求すべきことも十分要求し得ないといううらみもあって、それがために、死んだアユを持ってこさせていろいろ解剖したこともあるのですけれども、なかなか明確なきめ手がない。そしてついに今日に及んでいるわけです。これは二年や三年のことではなくて、相当長年月被害を受けている。しかし、水産庁は一度でも現地に出かけて行ってこれを検討するというようなことはやっておらないのです。莫大な金を投じて放流などは指導しているけれども、それが全滅しても、いまだに調査官が行っていない。雪などがあったにしても川の中はいかようにでも捜査ができる。それがまだ出かけていない。今日、もう二カ月になりますよ。そういうことではこの問題の解決は非常に困難になるのですよ。特に、さっき申しましたように毒性が出ていることだけは明らかなんだから、危険物をいじっているのだから、堆積しているのだから、県の農林部としては知事名をもって危険防止の警告を発しておる。ことに、毒性についてはその通りであるし、それから堆積したカーバイドかす等については、これは崩壊すれば人家その他に悪影響を及ぼすので、県の土木出張所からもその点については警告を発しておったわけです。数回警告を発したのにもかかわらず、こういう問題を起しておるのです。私は一々小さな問題にまで水産庁が調査官を派遣して対策を立てろとは言わないが、事態が明瞭なのであるから、みずから工場側に対して警告を発するなり、あるいは直接指導監督の任にある通産省に対し何らかの申し入れをするなり、そして毒性を発しておる工場の責任者に対してもしかるべき対策を立てるような措置をとるべきであったのではないか。それを怠っていたのではないか。何らかの措置も講じておらなかったということですか。
  119. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 ただいま、現地の河床の状況等を調べるには、隆雪等の関係で不便でございますので、県の方からも、雪解けを待ってもう少し基本的な調査をしたい、こういう連絡を受けておるのでございます。われわれは、工場、事業場が水質を汚濁することについて十分に責任を自覚しておらなかったということについて、長い間われわれとしても憤りを感じておったのでありますが、幸いにいたしまして、過般の法律によりまして、この問題についての体制は工場、事業場関係者におきましても十分に把握いたした、かように思うのであります。本件の場合におきましても、本州製紙の場合のごとき両者間の対立関係はない次第でございまして、目下県があっせんをいたしまして、工場側と漁民側との間の損害賠償につきましての話し合いを進めつつある、こういうふうな状況にあるのはせめてものことである、かように存ずるのでございますが、さらにその話し合いを一方において努めさせますと同時に、将来の被害の継続というものに対する見通しを立てまするための技術的な協力については、県側とよく打ち合せをして、その要請によってわれわれとしても善処いたしたい、かように考えておるわけであります。
  120. 石田宥全

    石田(宥)委員 本件の場合は、会社側でも被害を与えた事実を確認いたしておるわけでありまして、損害賠償についても、以前の被害の場合と違いまして、以前には被害を与えた事実を承認しなかったので非常にむずかしい問題が起ったわけでありますけれども、本件については被害を与えた事実を確認いたしておるわけでありますから、従って損害賠償の責任というものが明瞭になると考えるのでありますが、こういう場合にはやはり会社側で損害賠償の責任を負うべきことは明らかだと思うのです。それから、同時に、先ほど申しましたように、毒性に強い種類のものまで親も子ももらほとんど全滅しておるわけでありますから、従って、ここ数年間相当な費用を投じて培養しなければならないという事態が起っているわけでありまして、現実に与えられた損害の賠償はもちろんであるが、さらに今後の培養についての責任も会社側が負うべきものであると思うのでありますが、この二つの点について水産庁としての考え方を承わっておきたいと思います。
  121. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 こういう事態が起りました際におきましては、当面の損害のみならず、さらに孵化放流等の資源の将来の培養についての責任も負うというのが通常のことでございます。たとえば、富士フィルムが酒匂川におきまして悪水を流しましたような事件が起りました際におきましても、死滅いたしました稚アユをさらに放流するということについては、会社側におきましても、会社側の出します補償金の中にはそういうようなものも全額算入をいたしまして、あの補償金を県があっせんして取りきめた、こういう経緯でございます。
  122. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、さらに、さっき長官からちょっとお話がありましたように、せっかく水質汚濁防止法が成立をいたしましたが、今後阿賀野川あるいは信濃川等にもやはり水質汚濁防止法の適用がなさるべきものであると思うのでありますが、その点について意見を伺いたいと思います。
  123. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 水産資源という観点から見ました場合においては、阿賀野川は当然非常に高い地位を占めている、かように考えております。ただ、水質汚濁防止法によります指定区域の指定に関しましては、水産の観点も非常に大事な要素でございますし、衛生その他の観点等をも総合いたしまして、経済企画庁におきましてこれを取り上げて決定していく、こういうことに相なっているのでございます。まだ明年度取り上げる河川についての具体的な結論は出ておりません。なお今後われわれとしても十分研究をいたしたい、かように考えております。
  124. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほどもちょっと触れたように、やはり県当局の工場誘致その他の関係等がありまして、とかく水質汚濁防止法等の運営などについても怠りがちになるのではないかということを考えるので、これは水産庁で十分一つ今後積極的な御配慮を願いたいと思うのです。  直接の水産庁長官の方はその程度にいたしまして、通産省の産業施設課長さんに伺いたいと思います。  先ほどここで申し上げましたような実情で、最近は至るところに化学工場が地方にも分散いたしまして、私どもの近所でも、たとえば村上の日本化学工場等は煤煙を出しておりまして、煤煙のために水田の苗代まで被害を受ける、桐の木などは全部だめになる、お茶もだめになる、煤煙の及ぶ範囲の桑を食べさせた蚕が全部死んでしまう、こういうような被害を起しているわけです。農林水産物に及ぼすこういう近代化学工業というものの悪影響は至るところに出ているわけなのでありますが、そういうものについて通産省として何らかの配慮がなされてしかるべきだと思うのでありますが、私どもの知っておる範囲ではどらも放任主義をとっておられるように見受けられるが、何らかの特別な措置がなされているのかどうか、これをまず伺っておきたいと思います。
  125. 川原英之

    ○川原説明員 ただいま石田先生からお話のございましたように、最近におきまして、廃水の問題あるいは煙害の問題ということが方々でいろいろ論議いたされておりますことは事実であります。従来、われわれといたしましても、こういうことが決して好ましいことであるとはもちろん考えておりませんし、できるだけこういうものを防ぐように努力いたして参りましたわけでありますが、従来の法制的な体制から申しますと、水に関しましてはなかったわけでありますが、先ほど水産庁長官からお話がございましたように、廃水に関して先般国会におきまして水質保全法と、それから工場関係につきましては工場排水法という二つの法律が成立をいたしまして、この方の取締りをやる体制になって参りました。ただ、われわれといたしまして、廃水にいたしましても、今後、この法律をもとにいたしまして、今回のような被害を起すことのないように十分努力をいたしたいと思います。また、法律の建前から申しますと、一応先ほど水産庁長官から御説明のございましたように、具体的に各水系を指定いたしまして、それを逐次実施していく段階にございますけれども、そのほかのものにつきましてももちろんそういうふうな努力は十分いたして参るつもりでおります。  なお、排煙の問題でございますが、これは、政令上の関係につきましては、従来とも鉱山保安法によりましてこれを取り締っておるわけであります。その他の排煙一般につきまして、もちろんこれについては今後十分検討を続けまして、これは因果関係が非常にむずかしい性質のものでありますし、範囲が非常に広範にわたりますために、いろいろまだ検討すべき余地があると思いますが、十分検討をしていきたいと思っております。
  126. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点は通産省の方の責任だと思うので、事前に報告を受けられたかどうかわからないのですが、私どもをして言わしむれば、はなはだ怠慢であった。毒性を発散するような工場については特別な考慮がなさるべきなんです。これは非常に怠慢だったと思うのですが、本件はすでに起った問題ですから、あなたの責任を追及しても仕方がないと思います。先ほど申しましたように、すでに県から、崩壊したために人家その他に及ぼす被害もあり得るし、また川に流れては魚族が死滅するおそれもあるという警告を発せられておったにもかかわらず、それが対策を講じなかったということは明瞭に会社側の責任なんです。こういうことは、法規で明瞭なものがあるないにかかわらず、やはり通産省としてはそれくらいのことは——これは本件だけではありませんよ。全国的に意を用いてしかるべきではないかと考えるのです。  そこで、時間の関係もありましてこまかなことは申し上げませんが、先ほど申しましたように、会社側も本件についてはその被害を与えた事実を確認しております。しかしながら、被害の額になると、水産庁長官が言われたように、今死んだ魚の補償の問題と今後の培養の問題という二つのケースに分れて、それをどの程度に見るかという点ではかなり問題が残ると思うのです。実は最近折衝に入っておるわけでありますが、沿岸全部の協同組合の方では、この二つを合計いたしまして七千五百九十九万九千円という数字を出しておるのです。ところが、会社側では、千五百万という数字で、かなり強硬な態度をとっておるわけです。そうなりますと、なかなか裁量がむずかしくなる。そこで、いよいよ妥結ができないという場合に、これが損害請求訴訟ということになれば、やはり一方は大きな財閥、一方は沿岸の漁民、これじゃ相撲にならない。実は、今まででも、さっき申しましたようにアユがしばしば全滅した場合も、訴訟をやろうかというところまでいっておるけれども、あるいはその毒性の検査を徹底的にやろうかという話が出ても、遺憾ながら金がないためにそれをやっていないのです。そうしてまたここで大きな額の食い違いができておるが、裁判をやる経費がない。結局漁民は泣き寝入りということになるおそれが十分にあるわけなんです。そういうことになるとはなはだ気の毒な事態になりますので、すでに事態はきわめて明瞭でありますから、これはやはり、あなたの方の立場から、会社側に対して、その数字的な基礎や何かについても誠意をもって漁民側の要望に応ずるように警告を発する責任があるのではないかというふうに考えるのですが、どうですか。
  127. 川原英之

    ○川原説明員 今回の阿賀野川の事件に関しまして、ただいまお話がございましたように、現在紛争処理の交渉の過程にあるようであります。双方の計算の基礎がいろいろ食い違っていることは、今お話がございました通りに私どもも聞いているわけでありますが、われわれといたしまして、この種紛争の処理につきまして、基本的には、加害者及び被害者側の相互の話し合いでできるだけ話がつくようにすべきであるし、またそういうふうになることが非常に望ましいと思うわけであります。これはこの問題とは直接関連はございませんけれども、そういう趣旨をもちまして先般成立いたしました水質保全法におきましても、和解の仲介——本質的には双方の話し合いをもって解決していく、ただ、その話し合いが十分意を尽し納得が双方いくようなラインで進められるように、そこに仲介制度を設けたのでありますが、現在、本件につきましては、新潟県の方で仲介者となられまして、双方の話し合いが、これも水産庁長官の方からお話がございましたように、まずそう激しい対立なしに進んでいるように聞いております。私どもといたしましては、この双方の計算額の基礎につきましていろいろ食い違いがあるという点はもちろん双方で十分お話し合いを進めるべきでありますし、また、そういうふうな原因・結果がはっきりいたしました限りは、当然それだけの賠償はいたすべきものだと思いますけれども、具体的な金額の問題につきまして、われわれも十分その計算の基礎等をなおさらに調べたいと思いますが、この計算の基礎についてなお今後の双方の話し合いができるだけ円滑にいくようにわれわれとしても努力いたしたい、かように存じております。
  128. 石田宥全

    石田(宥)委員 顧みて他を言うような水質汚濁防止法の運営のことは今伺わなくてもいいのですが、さっき申し上げたように、一方は財閥なんです。一方は漁民です。金がないために訴訟はできないのです。それでいつでも泣き寝入りしているのです。そして今度また金額の食い違いがあるといって、今ここで七千五百九十九万何がしが妥当な金額かどうかということは私も断定できません。しかし、会社側が、千五百万円だ、これ以上は一文も出せないといってけつをまくられたときに、漁民はどうするか。その場合に、あなた方は、やはりあなた方の立場において、工場の指導監督の責任の立場において、その数字について検討を加え、そして妥当な解決点を見出すように側面的に努力をされなければならない。その数字の検討の後でしょうけれども、会社側が誠意をもって臨まない、それがために解決が困難だという場合においては、やはり会社側に対して譲歩を勧告するということが当然じゃないですか。
  129. 川原英之

    ○川原説明員 紛争の解決は、現在両者の間において話し合いをしているわけでありまして、私どもといたしましては、やはり両者の話し合いで十分解決ができるだろうと思います。もちろん、会社側に対しましても、この問題に関して十分誠意をもってお話し合いに当るようにということは、これまでも再三言っておりますし、そういうような気持に全然変りはございません。
  130. 石田宥全

    石田(宥)委員 円満に解決ができるであろうと思うというのは、どういう基礎でそれを言われるのですか。何を標準にそういうふうに考えられておるのですか。
  131. 川原英之

    ○川原説明員 私の言葉が少し過ぎたかと思いますが、なお現在新潟県の仲介によりまして両者の交渉が継続中でございますので、われわれといたしましては、十分誠意をもってこの交渉を進めるようにということを会社の方にも勧めておる次第であります。
  132. 石田宥全

    石田(宥)委員 ちょっと大臣に一言。あなた今出席になりませんでしたけれども、ことしの一月二日の晩に阿賀野川上流四十キロの地点の鹿瀬の昭和電工鹿瀬工場のカーバイドかす等の堆積したものが相当量崩壊のため流出しまして、四十キロに及ぶ河川の魚族が全滅したのです。これはかつてはアユなどがしばしば全滅をしておりましたけれども、なかなかその原因が明らかでないために、損害補償の問題が難航して、ついに損害を補償するということがなかったのですが、今度はあまりにも明瞭なものだから、会社側ではその被害の実態を是認しておるわけです。それで、今損害補償の交渉に入っておる一わけでありますけれども、ただいまお聞きになったと思いますが、通産省の当局は、そういう毒性の廃液やかすを出すような工場に対して特別の注意を払っておらないということをここに明らかにしておるのです。通産省は通産省の立場がありましょうが、農林大臣としてはこれは全国至るところにある事例でございますので、工場を至るところに作る、近代化学工場がどんどんできるのもけっこうでしょうけれども、それがために農作物や水産業に対して重大な打撃を与えるような問題については、やはり大臣の立場において通産省に対してしかるべき措置を講ずるように厳重な申し入れをする必要が、今後再びこういうことを繰り返さないために必要であると思うのですが、一つ大臣の所見を伺いたい。
  133. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農林漁業に対しまして重大な脅威を与えるべき危険な施設等につきましては、実情をよく把握しまして、そして通産省等にも十分注意を喚起するばかりでなく、具体的な措置を講ずるように、農林省としてはいたす考えでございます。
  134. 松浦周太郎

    松浦委員長 この機会に政府当局の方々に警告を申し上げますが、大臣の場合は閣議その他他の委員会に呼ばれるというようなことがありまして既定の時間に来れないことが多いだろうと思いますけれども、局長以下の方々は、この委員会をおいてはほかに大して出席されることはないと思うのです。委員諸君が非常に勉強して三案をきょうあげてしまおうという意気込みでやっているのに二、三の人の出席が遅かったために四十分もきょうはおくれたんです。われわれは二月中にあげてしまおうと思っているのですけれども、今後こういうことが続くのなら、とてもそれはできませんから、早くやってもらいたかったら一つ精勤をしてもらいたい。
  135. 田口長治郎

    ○田口委員 関連して川原課長に少しお伺いしたいと思うのですが、今石田委員の発言を聞いておりますと、この阿賀野川の問題は今回に限らず常習的に被害を与えているような印象を受けるのでございます。しかして、今回さっき申されましたような被害が起りましたということは、話を聞いておりますと、一体通産省ではこの工場に対してどういう除害装置をさせておるのか、その点がどうも疑問なんです。あなたの手元にありますそういう工場に対する除害設備の概要を一つ御説明願いたい。
  136. 川原英之

    ○川原説明員 今回の阿賀野川の昭和電工工場の事件につきまして、実はこの堆積いたしました廃水を沈澱させて処理いたしておりますが、その沈澱池の堤防が、それまで引き続きました降雨で亀裂を生じまして、そこから、中にためてあります、まだ十分固まりません泥土の部分が流出をしたという事件だろうと思います。本工揚といたしましては、従来廃水の処理といたしまして、大体沈澱池に蓄積をいたしまして、これが河川に流入しないように、そのための施設をやっておったわけでございますが、これが不幸にして決壊をいたして今回の事件が起ったということは、私どもといたしましてもはなはだ遺憾でありますが、実は、この堆積揚そのものが従来の除害施設であったわけであります。
  137. 田口長治郎

    ○田口委員 この種のり被害は、ある程度の除害をやりまして、その除害設備が完全とまでいかないために徐々に被害があるという場合におきましては、その被害は局部的でございます。で、沈澱物を堆積して、その堆積した場所の設備が不完全である場合における被害は非常に大きな被害になってくる。言いかえますと、むしろ沈澱物を堆積させるその場所の設備がきわめて完全でなければいけないわけなんです。前者の場合はいつも被害はありますけれども局部的の被害で、そう大したことはない場合が多いのです。さっきからの話を聞いておりますと、その一番大事な施設が抜かっておる、こういうふうに考えられるのでありますから、これは一つ通産省でもう一度再調査されて、大事な除害設備の完璧を期させる、こういうことをぜひやってもらわなければならぬと思う。  それから、さっき課長答弁を聞いておりますと、何か川を指定して、言いかえますと公共用水域の水質保全に関するあの法律によってというようなお話がございましたが、あれは、御承知通りに、今全国で、この種の問題が三百七、八十件ぐらいあると思いますが、その三百七、八十件のうちであの指定によってやれるものはわずかに一年に五件か六件でございますから、あの指定によって水質を保全することはちょっと話が合わないと思うのです。従って、私らの希望としましては、この工場排水の規制に関する法律を活用していただいて、そうして通産省自体の責任において除害設備を完璧にしてもらう、こういうことが必要でないかと思うのでございますが、その点についてどういうお考えでございますか。
  138. 川原英之

    ○川原説明員 お答えを申し上げます。ただいま御質問がございました点は、先般成立いたしました水質保全法は、水域を指定して、それに対する水質基準をきめる、その水質基準をものさしにして具体的な廃水の処理をはかっていくという建前であるが、それでは非常に手ぬるいので、直接通産省の責任において除害施設を促進すべきではないかというお尋ねであるかと思います。もちろん、われわれといたしまして、この種の事件が起りませんように極力今後指導をし、かつ注意をいたして参りたいと思いますが、法律的には、一応のものさしができたところでやるということが原則でございますけれども、もちろん、工場排水法の三条におきましても、何人も水質を保全する義務を負っております。その一般的義務の範囲内におきまして行政的な指導はいたして参りたいと思います。
  139. 田口長治郎

    ○田口委員 どうも答弁がはっきりいたしませんが、この公共用水域の水質の保全に関する法律では、阿賀野川なんかの問題はとうてい間に合わないのでございます。私自身から申しますと、この水質の基準ということも、実際にはなかなかできにくい。やってみてもこれは基準にならないと思う。従って、河川に水を流す場合に、その流れるところまで水をきれいにするほかに方法はない。今度の阿賀野川の事実というものは、これは水質の基準以上に明白な被害を与えておる事実があるわけなんですから、さような水を工場から出せないようにまず第一にしなければいかぬ。かかる見地から、これはどうしても工場排水等の規制に関する法律で何とかしてもらわなければ、幾たびも同じことを繰り返す、こういう結果になるのでございますから、その点は一つ通産省としてもある程度の責任を持って、一方の法律で、こういう顕著なるところは処置をしてしまう、学術的に基準を出す。それ以上に、今度の場合は生物に対する被害ということについてははっきりした一つの事実なんですから、こういう事実のあるところは、これはもう基準ができるとかできないとかいう問題でなしに、急いで処置してもらわなければ困るのでございますが、もうちょっとそこらをはっきり御答弁願いたい。
  140. 川原英之

    ○川原説明員 今回の阿賀野川の事件に関しましては、なお十分工場の現状につきましても調査をいたしまして、要すれば、こういう災害を二度と繰り返さぬように、施設その他処理の方法等につきましていろいろ検討いたしたいと思います。
  141. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいまの問題に関連しまして、実は私の方にも非常にたくさん例がありまして弱っておりますので、農林省と通産省の方に二、三重要な点についてお尋ねをいたしたいと思います。  私の方でも、今の阿賀野川と同じように、狩野川という川がありますが、この上流に金山が一つありまして、これから出る毒水によりまして、ときどき——これは相当りっぱな貯水池を作ってあります。しかし、水が出ると、これが溢水をしてくるわけなんです。もう一つは、大きな酒の工場がありまして、同時にここではペニシリンを作っている。こういう関係で、イモの廃液が出て、アユやそのほかの魚がほとんど死滅をしてしまう。ときどき薬品の廃液が出まして、これでまたすべてのものが死んでしまうという例が、ほとんど毎年のように繰り返されるわけであります。また、もう一つの例は蒲原の日本軽金属の工場から出ます弗化水素、これがずっと昔からあの辺の農産物に対して非常な被害を与えておる。ところが、これも、そのときそのときの政治家等が参画をしましていいかげんな解決をして、いまだに基本的な解決がつかないのであります。さらに、もう一つ大きな問題は、あそこに今度田子浦港というのができまして、富士は御承知通り日本の製紙センターみたいになる。ところが、各工場から出てきます製紙の廃り液、これがあそこの田子浦から原浦一帯の海岸へ潤井川という川に沿って出まして、海岸から約一キロくらいの間、私も行って現場を見たのですが、いわゆるヌクと称するものが、多いところは約二丈、海中に始終沈澱しておるわけです。海水はほとんど全部色が変っております。こういうものですから、この間には漁が全然なくなっている、こういう問題です。これは戦前からあった問題ですが、これとても、今度さらにここに旭化成その他の工場ができて、あそこが駿河湾の臨海工場地帯ということになる。そうすると、あらゆるそういうものが出て、あの一帯の漁師というものは、今でも漁ができないのが、話にならなくなる。そのうちで今の静岡県の知事が漁業組合長をしております田子浦だけは一応話し合いがついて補償がついた。ほかのやつはほとんど全部その場その場わずかな金を臨時にやって、片づかない、こういう状態です。  私どもの方にもこういう問題が現実にありますが、特に私は水産庁の長官にお聞きします。こういうことに対して、私ども、水産庁のあなたの方の係の課長さんにもお話ししたことがありますが、こういうものに対して今までほとんど積極的な方針も何もなかった。実態もわかっておらない。出たとこ勝負で、出てくればそのとき県にまかせて、そして少し問題が大きくなれば何とかこそくなことをしようという態度が私どもにはよく見受けられたわけです。今度は水質関係の二法もできたことですからそういう消極的な態度ではなかろうと思いますが、水産庁並びに水産庁長官にお聞きしたいのはこういう水質汚濁の問題が今お話のあったように三百幾つあるという、これの被害の場所その他全国的な実態の正確な調査ができておるのかおらないのかという点が一つ。それから、水質二法の出た現在と、出ない以前とは違うかもしれませんけれども、これらに対します処理の具体的な方針の検討なり何なりができておるのかできておらないのか。また、現実には問題の大小にもよって違いましょうけれども、大体においてこういう問題で一番困るのは被害の程度なり何なりの算定がなかなかつかないわけです。おそらく、加害者である会社側は、たとえば相当の被害があるといったって、実際に調査のしようがないのです。それからまた、工場で出たいろいろの有毒ガスその他によって農産物に被害を与えても、工場側ではほとんど調査の能力は持っておりません。従って、被害者である農民なり漁民なりの被害申告と、やはりはっきりするのは、今の段階では県を中心とした行政機構がはっきりした算定をする以外になかろうと思う。ところが、こういうことについても今まで農林省としてはほとんど何らの指導もしておらなかったように私どもは見受ける。しかも、多くの場合において、県のごときはこういうことに対して非常に間違った指導が多いわけです。一例をとってみますと、たとえば蒲原の軽金属の問題で県自体がミカンの被害を算定しましたが、非常に詳細な調査をやった。その調査をやったのが約九百万です。ところが、最近調停案を出して参りましたけれども、その調停案の内容は、ミカンの被害がある部落に対して百二十九万しかしていない。みずから被害の調査をして、これこれの被害があるということを確認しておりながら、出してくる数字は今のようなけたはずれの数字を出してくるという実情です。しかも、その被害の調査も、一年々々送って送って、送り切れなくなった場合にようやっとやるという状態です。これは静岡県の特例かもしれません。しかし、おそらく全国そういう例が多いのではないか。これらについての具体的な指導、——そういう被害が現実にあった場合に、この被害に対して県なり国なりがとういうふうな調停なりあっせんをするのか。それから、今被害防止についていろいろな施設をしろということで法律で一応基準ができたわけですけれども、これがなかなか実際にはできない。たとえば東洋醸造という酒会社に問題が起きて、何か千二百万ばかり防止施設をさせたのです。ところが、これは何もきき目がありません。その当時の学界のえらい人にいろいろ御苦労を願ってやったのですが、きき目がないということで、どうしても被害防止の方法がない。また、蒲原の軽金属のごときは、煙突一本について完全に弗化水素をなくなすということになると七千万円以上かかるわけです。そうしますと、五本なり七本なりあります煙突一つ一つについてこの装置をすることは、膨大な資金が要るわけです。こういう問題はそう簡単に被害の防止施設ができない。そういう場合には当然相当長期にわたって被害が出て参るわけですから、やはり損害補償なり何なりのことをしてもらいたい。  まず、こういう点について、農林省として、農漁民の非常に弱い立場のものを保護するという立場から見て、今までどのような措置をとってきたか、また今後どういう措置をおとりになるつもりか、これをまず水産庁の長官から聞き、さらに、通産省の方からも、これらについての考えがあるならお聞きいたしたい、こう思うわけです。
  142. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 水質汚濁の被害の全国的な調査があるかということに関しましては、精細なものではございませんが、しかし、全国的にどういう事件がどこで起っておるかという調査は持っております。なお、お時間をいただきますれば、資料として提出することは差しつかえございません。  それから、この水質汚濁の問題について具体的にどういうふうに処理するか、こういうお尋ねでございますが、われわれは工場、事業場が、水質を汚濁して被害を起すということについての防止の責任の認識を持ってない、かつ、被害が出ましたことについても賠償についての責任観念を持ってない、そういう状態をぜひとも打破しなければならないということで、かねてから、御承知のごとく、水質汚濁防止についての立法というものの必要を叫んで参っておったのでございますが、そのことに関しましてはもう繰り返して申し上げません。そこで、あの法律ができましても、全国の河川が今すぐ一せいに解決ができる、工場、事業場が全部悪水を流さないようになるというものでは決してございません。従って、一方におきましてはあの法律の厳正な適用に努めまするとともに、他方におきましては、まだ指定地域になり得ない状態にありまするものにつきまして、個々のケースに応じました対策を講じなければならないのじゃないか。法律の上におきましては、それらに関しまする届出の報告だとか、あるいはまたあっせんだとか、和解の仲介、そんなふうな規定がある程度にとどまるのでございますが、ただ、実際問題として、それらの工場、事業場の悪水の流出に対しまして、必要なる指導、勧告をする、こういうことは常に気をつけなければならないことではないか、かように考えておるのでございます。  今までどんなふうにやってきたか、こういうことに関しまして、残念ながら法制的な権限を、一部の法律を除いては、特に一般の工場、事業場については持ち合せておりません。従って、ただいま申し上げましたような指導あるいは勧告、また紛擾、紛糾が起りました際の仲介等によりまして、それぞれ善処をいたして参ったのでありますが、しかし、これは局面を糊塗したというおしかりをいただくのも、私は、まことにやむを得ないものがあるのじゃないか、かように考えるのでございます。また、そういう事態が起りました際におきましては、常にわれわれは、やはり県、さらに水産庁等の行政機構が間に立って、そして両者の間をあっせんするということが一番実際的な解決方法ではないか。訴訟等によって争うことは、これはもうおよそ迂遠なことであります。そういう意味で、常に県がその問題の渦中に立ち、その際においていろいろ水産庁に対して具体的な解決の方式についての御相談をいただいてきたというのが今までの体制であるのであります。  そこで、幾ら被害防止施設をしても、完全に除害をするということは、施設によっては非常に困難ではないか、やはりそこに賠償ということも併行しなければならぬじゃないか、こういうお尋ねでございますが、これは私らもまさしくその通りに考えております。あの水質汚濁に関する法案の立案の過程におきましても、やはり賠償なりあるいは除害施設なりの設置の義務は工場、事業場の開設者が負っておるのでございまして、そして、それで防ぎきれない損害に対してはこれは、一方において除害施設をするとともに、必要なる賠償はやはり考慮さるべきであるというふうなことが、質疑の過程においても論議されましたような次第であります。
  143. 川原英之

    ○川原説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。通産省といたしまして、今回成立いたしました二つの法律によりまして、従来欠けておりました工場に対します廃水の規制並びに取締りということを行えるわけでありますが、従来は、鉱山に関しましては鉱山保安法、下水道関係では下水道法というようないろいろな法律がございまして、その分だけは従来も規制をいたしておったわけであります。ただ、その基準が非常に不明確でありましたために、いろいろ問題が起ったようでありますが、その点に関しまして、先国会におきまして保全法が成立いたしまして、その保全法を受けまして工場排水法ができ、その運用によりまして今後極力この廃水問題の解決に努力いたしたいと、われわれといたしましては考えておるわけであります。
  144. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 大臣にお尋ねいたしますが、水質保全に関する二法の適用はなかなか基準が困難かと思うのであります。今の状態ではあの基準に必ずしも触れないで、しかも実害は相当ひどく及ぼしている個所が相当多いわけであります。これに対する行政措置といたしまして、農林省といたしましては、はっきり、防止についてはこう、防止がもし不可能な場合にはこう、それから、それに対する損害の査定調査等については、当事者同士では話がつきっこありません。どうしても第三者の立場に立ち公正な立場に立つ行政官庁が、地方の県を含めて、はっきりした調査をして、その調査に基く査定でなければ、今各地でやっているようなことではいけない。もちろんそれだけでは問題は解決いたしません。複雑な要素が入って参りますけれども、とにあれ、万人が納得するような公正な被害調査なり査定なりというものが明確に立たなければ、この手の問題は、私は幾つか扱ったことがありますが、なかなかうまく参りません。ところが、今、県あたりの態度を見ますと、みずから調査をいたしましても、その調査をみずから否定して、全くへにもならないような政治的な額によって妥結しなければならない。その額というのが、多くの場合において、農民あるいは漁民の側の立場をほとんど無視して、会社側の立場に立っている場合が多いのであります。従って、農林省としては、今の二法の実際の施行という面で、あの二法の範疇に入らないようなものについても、これは連関をしてはっきりした行政指導の方針を立てて、そしてこれを早急に全国の知事なり何なりに徹底させる、あるいは工場側にも徹底させるということをやることが具体的にぜひ必要だと思います。この点について大臣はどんなふうに具体的にお考えになっているかということが第一点。  もう一つ水産庁長官にお伺いいたします。静岡の場合には、つまり潤井川を中心とする元吉原から原浦にかけての一帯の問題、そうして、もう一つの問題は今言ったような蒲原の軽金属を中心とする富士川町一帯の煙害の問題、これらについて、県と十分打ち合せをされまして、合理的な解決を早急にはかるように特段の指令なり調査なり指導なりをしてもらいたいと思う。もうすでにこの問題は二カ月も三カ月も——大へん話が飛びますけれども、私のところに相談に来ましたのは今の天皇が国体でもってあそこへ行まするという際に、あの農民たちは蒲原の軽金属へ行幸になるのを、むしろ旗をおっ立てて、何回となく、何年となく交渉したのにきいてくれぬというので直訴という考えで実はむしろ旗の用意もして、それでもというので私のところに相談に来た。そして私も知事に言って、君も困るだろうし、またそんなことをしても困るだろうから、一応とめるから、責任を持って解決してほしいと言ったんですが、それから二年たってようやっと、ふつつかな、きわめて不公正な調停案というものを県が出して、農民たちはそれを承知しない、こういう段階になってきておるのです。ですから、この二点については、大臣なり長官なり、農林省のそれぞれの担当から、早急に、合理的な解決をはかるように、県側に対しまして、あるいは業者側に対しまして一つ指導してもらいたいと思う。さきの全般的な問題については大臣の具体的な、抽象論でない、はっきりした決意なり見解をこの際伺っておきたいと思います。
  145. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今久保田委員からお尋ねになりました点でございますが、今度の水質の二法につきましても、国会を通過していよいよ実施の段階に入っているわけでございますが、実はこの制定の過程におきましてもいろいろ御議論のあったことは私もよく承知をいたしておりますし、それから関係省におきましていろいろ論議の間にも問題は残っておりました。従いまして、この法律の整備を一段と前進すべきじゃないかと私は思います。従って、そういう方向につきましては、われわれも努力して参りたいと思います。  それから、第二に、今御指摘になった事例から見ましても、この二法では私は救うことができない問題があると思う。農林省等におきましても、かつて四阪島の煙害問題等の非常に苦い経験を実は持っておる。あの際、うちの専門家を動員しまして煙害を調査し、そして会社側と長年にわたって調査研究した結果、とうとう亜硫酸ガスを排除して、そうしてその問題を解決したような経験も持っておるわけです。ことに、この軽金属の弗素ガス等につきましては、こういったなお困難な問題があろうと思います。従いまして、こういう面になりますと、現行の水質汚濁の二法だけでは私は解決できないと思う。それから、同時に、損害の算出等につきましても、先ほど石田委員からも御指摘のありました通り、訴訟でやったらいいじゃないかということは実は解決にならぬことは、われわれもよくわかっております。そうしますと、この制度をどういうふうな制度にとるか。実は、あの土地制度調査会等におきましては、事情を調べるほかに、ある程度の基準を設け、そうして調停等の案も作るような若干の仕組みは持っておるのでございますが、これらの問題は従来ともただ裁判でもってやればいいんだということではいかないのでございまして、これは新しい機構等も考えざるを得ぬじゃないかと思うのであります。同時にまた、これは私見にわたってはなはだ恐縮でございますが、賠償等の問題も、一面に、ただ単に犠牲を払わせるというだけではいけませんから、大所高所から見る場合には、国がある程度の賠償の負担もするというくらいに制度を高めない限りはこれらの困難な問題は解決がつかないと思うのでございます。私は、そういう観点に立ちまして、ただいま久保田委員の御指摘になりました点を、法律制定の過程におきまして、さらにまた実行の面におきまして、各省とも協調をはかって、そうして前進するように懸命に努力いたしたい、こう考えております。
  146. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 ただいま御指摘のありました静岡県の二つの地域につきましての問題の今後の推進につきましては県と十分打ち合せをいたしたいと思います。     —————————————
  147. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に、食糧に関する件につきまして質疑の通告があります。この際これを許します。田口長治郎君。
  148. 田口長治郎

    ○田口委員 私、この機会に農林大臣食糧配給の問題についてお伺いいたしたいと思うのございます。  御承知通り東京都では米穀小売業者が、中小企業団体の組織に関する法律によりまして商業組合を作って、そうしてそういう方法で苦境を打開したい、こういうような活発な動きが一部分にあるのでございますが、一面におきまして、消費者の立場から主婦連はこれに対して極力反対をしておるのでございます。こういう動きがありますところに、昨日の新聞では、当局に商業組合の設立の出願をしてしまった、こういう問題があるのでございますが、私どもの見解によりますと、この団体法九条の不況要件だとかあるいは過当競争だとか、そういうようなことは、この米穀小売商に限って全然認められないものでございますから、団体法によって商業組合を設立して苦境を克服しよう、こういうような動きは非常におかしいのじゃないか。御承知通り、小売業者は、食糧管理法によって、供給される数量価格品質もはっきりと厳格に規制をされておる、そうしてマージンも適正に保護されておる、こういうようなことでございますから、この団体法によって商業組合を作るということは、筋から言ってもおかしいことでありますし、もし商業組合を作って団体交渉その他をやるというようなことになりますと、これは配給の秩序を混乱することになってしまう。しかるにそういうような動きがあるというのでございますから、この点につきましては、大臣からはっきりした方針を明らかにされておくことが、全国の食糧配給の秩序を紊乱させない最も重要なことではないか、かように考えまして大臣に質問する次第でございますが、当局に今出願しておる問題につきまして、農林省といたしましてはどういうような処置に出られるか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  149. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今御指摘になりましたような動きがあると聞いておりますが、農林省といたしましては米麦その他主要食糧でございますが、販売業者食糧管理法によって販売業者登録制度を採用いたしております。従いまして、この業者の数もいわば限定されておる、それから売り先も買い先も安定したものでございまして、同時にまた公定価格によって運営されておる、経営も維持されることになっておるということでございまして、マージンも、いろいろ議論がございますけれども、ちゃんと必要なものを確保してございます。従いまして、こういう事情でございますから、中小企業団体組織法の第九条のいわゆる商業組合の設立要件が示しておりますような過当競争があるとか、かつ一般的に不況状態であるという判定をいたすことはすこぶる困難であります。従いまして、これが設立を認可することは妥当でないと考えております。  なお、この立法上の過程におきまして、この解釈等につきましては、当時法制局等における法律解釈といたしましても、かような事態の場合におきましては団体組織法の第九条の要件には該当しない、該当しない場合には設立を認可すべきでない、という見解も同様でございますから、かような方針をとっております。同時に、同じ業態のものにつきまして各種の組合等のありますことは、運営上非常に支障を来たし、ともすれば政令二途に出るというようなことになっても困るものでございますから、従前におきましてもこの事態を予想しまして内面的指導をしておったのでございます。かような事態になりましたが、今申し上げたような態度をもって処していきたい、かように考えております。
  150. 田口長治郎

    ○田口委員 この問題に対する大臣答弁は私らの考えと全く同じでございまして、さような方針でお進みにならなければいかぬと考えておるのでございますが、問題は、今商業組合の設立を東京都知事に提出をしておるのでございます。私の記憶によりますと、この種の許可に対しましては、農林省と通産省は一県内の許可でございますとこれは府県知事にまかしてある、二県以上にまたがった場合に農林大臣あるいは通産大臣がこれを処置する、こういうようなことに団体法はなっておると思うのでございますが、今東京都知事に出願されておるこの問題を農林省としてはどういうことで処置されるか、その点を一つはっきりさしていただきたいのでございます。
  151. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 お話のように都道府県内の認可は都道府県知事がやることになっております。ただ、その認可をするにつきましては、それぞれ主務官庁に伺いを立てております。今までもそういう意味で私の方がこれを処置しておったのでございまして、研究を重ねておったのでございます。二、三日前に申請書があらためて出たということを聞いておりまして、私の方でもこれについてはさらに詳細について報告するように東京都の方に連絡させております。
  152. 田口長治郎

    ○田口委員 今食糧庁長官答弁によりますと、本省に対して会議をする、こういう手続になっておるから、その会議の請求があった場合は農林省本来の方針によって処置する、こういうお考えであるということに承知してよろしゅうございますね。——それでは、はっきりしましたから、私の質問はこれで終ります。     —————————————
  153. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案開拓融資保証法の一部を改正する法律案及び森林開発公団法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査に入ります。  この際参考人出頭の要求の件についてお諮りいたします。すなわち、ただいまの議題といたしました三案について、農林中央金庫理事長楠見義男君を参考人と決定し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、参考人よりの意見聴取は質疑によって行いたいと存じますので、さよう御了承願います。  なお、念のために申し上げますが、農林漁業金融公庫より清井総裁及び伊藤副総裁にも説明員として御出席願っておりますので、その点もお含みの上御質疑を願いたいと存じます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。茜ケ久保重光君。
  155. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 端的に質問いたしますから、一つ簡潔な御答弁をお願いいたします。  農林大臣大臣就任以来、あなたは開拓地を視察になったことがありますか。
  156. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私の郷里などでたくさん開拓地がございますので、しばしば視察はいたしております。
  157. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 農地局長は。
  158. 伊藤博

    伊東政府委員 私も、会計課長をいたしておりましたので、開拓地は回っております。
  159. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 開拓融資保証法の一部改正法律案という法律案も出ておりますが、現在の開拓地に入っている諸君が、この資料を見ましてもかなり金を借りておりますが、もうすでに償還期限が来て逐次償還をさるべきものがあると思うのであります。その償還の状況について、農地局長から、簡単なものでよろしゅうございますから、いいとか悪いとか、あるいは。パーセントがわかっておればその。パーセントを御説明願いたい。
  160. 伊藤博

    伊東政府委員 私からおもに政府資金についてお答え申し上げます。  政府資金と申しますと、開拓者資金融通特別会計から出しておるお金でございますが、これらにつきまして概算申し上げますと、開拓者資金融通法で貸しました累計は大体百九十億くらいでございますが、今残高で残っておりますのは大体百五十億でございます。このうち延滞いたしておると見られるものが約二十億くらいであります。  それで、この償還の状況でございますが、これは実は最近に至りまして悪くなっております。三十一年のころは六〇%くらい、三十二年のころは五〇%くらいというように、だんだん落ちて参りまして、現在は三〇数%くらいじゃないかというふうに思われまして、最近国から特別会計で貸しております資金の償還の状況は若干悪くなっておるというのが現状であります。
  161. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 農林大臣、あなたは、約十五万戸の開拓農民の現在当面しておる生活状態はどういうものか御存じですか。これは抽象的でけっこうでありますが、これに融資をされることになりましても、また今後の償還につきましても、現在当面しておる開拓農民の生活実態というものを御承知になっていないと、これはとんだ結果を来たすと思います。従って、農林大臣が今大臣として十五万戸の開拓農民の生活をどのようにお考えになっておるか、端的にお伺いいたします。
  162. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ごく特殊ないい例もございますけれども、一般的には私は憂慮すべき状況だと思っております。
  163. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 そういう御認識の上に立って御質問申し上げますが、私、最近、これは群馬県を中心としてでございますけれども、開拓地をかなり歩いたのでございます。非常に悪いということよりも、もう人間以下の生活にあえいでいる諸君が非常に多いのであります。私の調査したところによりますと、電灯のないのはまだいい方でありまして、あるところなどは、井戸水が全然なくて、約二キロの地点を毎日炊事あるいは入浴等の用に供するために水くみに通っておる、こういった状態があるわけです。まあこれは非常にひどい例でありますけれども、一般的にほとんど現在の開拓地の諸君は人間以下の生活にあえいでいるのであります。これは私は政治的な責任も大きなものだと思う。これは今の岸内閣の責任とは申しませんけれども、日本のいわゆる敗戦後の、何と申しますか、無統制な開拓政策等に責任があると思うのであります。この問題についていろいろ問題がございますけれども、本日は資金の面だけについて申し上げますが、そういう状態の中で一番私がひどいと思った例は、今電灯もないようなところに、しかも水をくむのに二キロも毎日主婦ないし子供たちが通うような、そんな苦しい実態の中で一番困っておるのは入植当時政府から五万円相当の——これは現金でなくて農機具を主体にして貸してもらった。これは本人の意思ではなくて、入植と同時に五万円相当の農機具を貸してもらった。中には全然その入植地においては使用のできないようなものもあった。しかしまあ政府の方から貸していただくんだからというので借りた。これがたまたまその据置期間が切れて、今や償還の時期に来ている。県から非常な強い督促を受けておる。しかし実際は全然今現金で返還する能力どころか生活にも困っておるという実態の中で、その悲痛な叫びは、私どもは返さぬとは言わぬけれども、実際には使いものにならぬような農機具を貸してもらって、そのままほうっておいたものも相当ある、そういうものを今ここに期限がきてやんやん催促されることは、自殺でもしろといわれるのと同じだ、何とかならぬものか、返さぬとは言わぬけれども、ある程度延期するなりしてほしいということです。あるいは欲を言えば、私どもから言えば、そういう実態調査した上で、その貸したものが、もちろん全部ではなかろうけれども、一部にしても使えぬようなものがあった場合には、調査をして、いわゆる帳消しするとか、そういう形も出てくると思うのでありますが、とりあえずは一つ無利子と申しますか、償還の延期ができることが一番望ましい。この資料によると、政府でも何か償還延期の法案の提出の予定があったようでございます。従って、私の質問の要点は、いわゆる現実に困っている開拓者の資金返還について、現政府としては何か特別の措置をしていただく用意があるのかどうか、もしないとするならば、法律的なものができないならば、特別な措置をもってそういったことがやり得る可能性と申しますか、あるいは方法があるか。この点について、政府の意向を農林大臣から、具体的な問題について農地局長から一つお願いします。
  164. 三浦一雄

    三浦国務大臣 使いものにならぬ何らユーティリティのない農機具を当時の事情で貸しつけたという設例で御指摘でございましたが、私は絶無じゃないと思うのです。お話の通り、これは追って今御指摘のありましたように精査しまして、そして一段落つけなければならぬとは思います。同時に、先ほど農地局長から概括的に御説明申し上げたのでございますが、焦げついております債権等もあるわけでございます。ことに、この法律等でも関連して御審議いただかなければなりませんが、できるだけのことをして、あるいは借りかえするとか、延期の措置をとるとか、あるいは別途に保証法を作るというふうなことで改善したいという熱意で進んできておるわけでございますが、今の物でもって借りましたものの措置、あるいは償還困難という問題については、ただいまのところすぐに消却してしまうというようなことについての特別の立法の用意はございませんけれども、なおよく実態調査しまして、そして、現在の運営上やっておりますものでとうてい措置し得ないというようなことになりまするならば、いろいろまた考え直さなければならぬ、かように存じております。
  165. 伊藤博

    伊東政府委員 今の御質問の点でございますが、終戦直後時代に不良な農機具等を貸したということがございまして、これはその後できるだけ取りかえるということもやったのでございますが、あるいはまだそういう漏れがあるかもしれないのでございます。  で、今の御質問でございますが、実は、来年度予算におきましては、国の債権の償還の率の問題でございますが、三十二年度には、大体その当時に償還がされるであろう金額の七〇%くらいは入ってくるだろうというような前提で実は特別会計の予算は組みました。しかし、これは、先ほど申し上げますように、おそらく三〇数%くらいの実績だろうと思います。来年度におきましては、そこを勘案しまして、大体三十四年度に調定になります分につきましては元金の三〇%くらいしか入らぬじゃないかというようなことを前提にいたしまして、ことしと同じ率で参りますと二十数億の償還というものを特別会計に組むべきでありますが、それはそうでなく三〇%くらいじゃないか、この三〇%という数字は年次によって若干違いますが、大ざっぱに申し上げまして三〇%くらいしか返らぬじゃないかということで、十億足らずのものしか返ってこないかもしれないというような前提で実は予算は組みまして、なるべく実情に合わしていきたいというふうな予算にいたしました。  法律の問題でございますが、これは、われわれといたしましては、三十四年度予算前提といたしましては、現在国の債権の管理等に関する法律という法律がございまして、これを弾力的に活用いたしまして、履行の延期を認めていくというようなことを個々の場合によってやっていきたいということで、現在北海道等につきましては若干そういう手続を進めておるというふうな実情でございます。
  166. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大蔵省の主計官が見えておるそうですから、この際伺っておきたいと思います。今農地局長からも答弁があったんですが、具体的に現実に困り抜いておる。県の係官は政府の方から県に対してやんやの催促があるもんですから責任上どうしても、現地に行って、幾ら貧乏していようとも、開拓農家に対してえらい催促をする。私、ちょうど偶然その実態に接したのでございますが、おそらく係官といえどもこの回収についてほとんど回収不能であるということは承知しながらも、自分の職責上強い催促をするということで、一家ほとんど泣くような状態でとりすがっておる姿を見たのであります。これは政治的にも非常に問題でありまして、もちろん、貸した金を回収するという意味においては、いろいろな規制があって、これを返さぬでもいいということは言えないにしても、実情がそういうことであるし、農林大臣農地局長もこれは肯定されているように、貸したものが現金ではなくて五万円相当の農機具である、しかも全然使いものにならない農機具もあったという実態の中から見ると、今償還に当面している開拓農民にこれ以上のきつい催促はできぬと思う。してはいかぬとは言わぬけれども、そこで、何らかの法的措置ができなければ、あなた方の実際の運営の面において——農地局長は特別な措置をするということをおっしゃっているし、北海道の一部においてはすでに実施しているとおっしゃっていますけれども、内地におきましてもそういうような困っている例はたくさんあるんです。従って、たとえばここに新しい保証法をお作りになっても、借りたくても借りられない。こういうものができて借り得る開拓農民は仕合せでありますが、しかし、毎年借りたものがそういうふうに焦げついておって生活が苦しいという中で、新しくまた金を借りればやや生活の安定の方法もあると思いながらも、とても借りられないという実態、そういうことがありますから、大蔵省としても、今農地局長のお話と同じような何らかの措置ができるかどうか、また、できなくとも、早急に当面の問題を解決するだけの温情ある取り扱いができるかどうか、この点をお伺いします。
  167. 高木文雄

    ○高木説明員 先ほど農地局長から御答弁がございましたように、開拓者資金融通特別会計の予算を組みます際にも、だんだん債権額に対する償還の見込み割合を落してきております。それは、私どもといたしましても、ほかの債権と違いまして、開拓の場合には特に戦後間もなく引き揚げてこられた開拓者の場合には、現在と比べますと補助金も十分行っておりませんし、弾力性のある運用をしなければならぬという気持は私どもも持っております。ただ、実際の運用につきまして今御指摘がありましたような事実、どの程度無理をしてとってくるかというようなことにつきましては、はなはだ申しわけない次第ではございますが、私どももまだ十分調査していない点もあるかと思いますので、どの程度きつく、どの程度ゆるくやるかということにつきましては、今後とも検討していきたいと考えております。ただ、全般の開拓の問題といたしまして一つの大きな問題は、現在ではもうすでにある借金さえ棒引きをすればある程度何とかやっていかれるのだ、こういう状態になっておりますれば、そういう方法もあり得る、全般的にかなり広範囲にそういう方法をとるということもあり得るのでありますけれども、一方ではまだまだどんどん貸していかなければ営農が安定しないような状態にございますので、そこで、これから貸しますことを前提に考えますと、貸したものを返さないでもいいのだという気持を持たれても因りますので、その辺のところはどの程度の手綱の締め方をしていくか、実は私どもも必ずしもはっきりしためどを持っていないような状態でございまして、たまたま地区別に振興計区画も漸次できていきつつございますので、そういったものを見まして今後とも運用上考えていきたいと考えております。
  168. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 ただいままでの御答弁を聞いておりますと、農林省も大蔵省も大へん理解のある答弁で、非常に好感を持つのでありますが、ただ、実際現地に行きますと、今あなた方の答弁のような趣旨がどうも県庁の係官の諸君に徹底しておりませんから、どうしても無理がいく、これはやむを得ぬと思うのです。それは、係官の諸君も、職務上、ある程度のものが回収できなければ、やはり上司に対して自分のいわゆる勤務評定もよくないでしょう。これはあなた方得意の勤務評定があるから。しかし、それにしても、今の農林大臣並びに農地局長主計官の気持は、それをとらぬでもいいとは言えないでしょう。もちろん回収に努力すべきであるということは当然指令しなければならぬけれども、実際現地に行ってみれば、あって払わぬものか、なくて払えぬものか、わかるのだから、そこのところの取扱いについて十分なる含みのある指示をしていただきたい。私ども決して現地へ行って払わぬでもいいとは言いません。農林委員会でこういう答弁があったのだから、一つ手心を加えてもらいたいというくらいのことは言いますけれども、払わぬでもいいとは言いません。そこで、あなた方がそういう手続をする場合、なるたけその気持が第一線で直接開拓農民と接触する係官に十二分に理解できて運営ができるような方法をぜひ講じてもらいたい。そうでないと、新しく貸す面等につきましてもいろいろな支障を来たすと思うのであります。一つこれについて、そういった文書によって、あるいは今言ったように、はっきりは言えないだろうけれども、何らかそういったあなた方の気持をくんで一線の係官が処置できるような措置をしていただきたいと思うが、農地局長と高木主計官のこれに対する態度をはっきりしていただきたい。
  169. 伊藤博

    伊東政府委員 今の点でございますが、北海道は実は現在の法律である程度棒引きが行われたということを申し上げたのでありますが、これにつきましては、北海道の財務局の方へも大蔵省の方から一応基準ができまして連絡が参りましたので、そういう手続が進んだわけでございます。内地につきましては、どういう場合にやるかというような基準の問題がありまして若干おくれたのでありますが、来年度予算、現在御審議願っておるのでございますが、約三〇%の償還という考え方が一応お認め願えれば、そういうことを頭に置きました基準を財務局の方へも流して参りまして、極力今の法律を弾力的に運営したいと思います。
  170. 高木文雄

    ○高木説明員 財務局につきましては、ただいまの農地局長の御答弁通りでございまして、農地局とよく連絡いたしまして、必要があれば書面をもってそういう趣旨を伝えたいということをお約束いたしたいと思います。
  171. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 開拓の資金のことではございませんが、農林大臣開拓関係について一言お聞きしたいと思います。  それは、農林大臣のお回りになっている開拓地はいかがか存じませんが、私どもの承知しております開拓地には、まだ無電灯地区が非常に多いのでございます。そこで、貧乏しながらもせめてラジオくらいは聞けるようなことでなければ相ならぬと思う。ところが、現実にない。井戸のないのは特別なんですが……。そこで、どこに参りましても、今聞くことは、資金の回収に対する問題と、電灯を何とかつけてもらいたいということが多いのであります。これはもうこれ以上言うことはございませんが、開拓地を中心とした僻村——既存の部落もそうですが、無電灯部落の解消について、農林大臣は何か積極的にこれを解消する措置をおやりになる御意思があるかどうか、この点一つ聞きたい。
  172. 三浦一雄

    三浦国務大臣 実は、私、六月から農林省を引き受けさせていただいたので、その前まではあなたと同じようなことを頼み込んで歩きまして、現実の問題としてぶつかっております。先ほども神田さんからだいぶおしかりをこうむったのでありますが、来年度は電灯の設備等も進めたい。このほかに、道路さえないところもございますので、その建設を進めたいと思っております。同時に、これをやります場合に、ただ予算だけで助成してやるということではいけません。そこで関係の省とも折衝しまして推進して参ったのでございますが、今後ともそのことにつきましては十分に配慮して参りたい、かように考えます。     〔委員長退席、大野(市)委員長代理着席〕
  173. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 農林大臣の御熱意はわかります。しかし、その御答弁だけでは解消しないのであります。私はこういうことを考えている。それは、とても補助金や特例等ではできませんから、これは開拓農家の一番近い電柱のところまでは国と電灯会社が折半の負担において建設する。自分の自宅に引き込むところ、内線はもちろん本人負担でもけっこうですが、補助があればなおけっこう。どうしても私の今までの見当によると、開拓農家の軒先の電柱までの費用はこれを国と電力会社が折半の負担をしてやるという、これはできれば特別法でも作ってやらなければ、大臣幾ら熱意をお持ちになっても、補助金とか特例等ではできません。できれば私は同志諸君に諮って議員立法で法案の提出も可能と思うのでありますが、たとえば議員立法でも出した場合に、農林大臣はこれが実現に全力をあげて御協力いただけるだけの御決意があるかどうか、お伺いしたい。
  174. 三浦一雄

    三浦国務大臣 その問題につきましては、だいぶ技術的な関係もございますし、来年度予算の編成とも関係を持ちますから、一応政府委員からその経過を一つ説明させていただきます。
  175. 伊藤博

    伊東政府委員 無灯火村の解消の問題でございますが、これは単に開拓地だけでなくて山村関係その他まだだいぶございます。今年度からは山村の無灯火村解消の予算も実は新しく入りましたし、開拓地につきましても六千万が八千万になるというようなことで、少しずつは実は予算として増額いたしておりますが、まだ完全なる解消というところまでは遠いものでございますので、われわれとしましては予算の増額ということに今後とも努力したいと思いますが、今御質問のありました電灯会社と国が負担の問題等につきましては、そういうふうに非常にまだ問題がございましょうと思いますので、もう少し検討させていただきたいと思います。
  176. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 そこで、私は今開拓地を中心とした無電灯部落について伺ったわけですが、その戸数は今何戸ありますか。
  177. 伊藤博

    伊東政府委員 内地の農村では、無電灯部落が、開拓地の関係だけでいきますとまだ三割ございます。北海道がまだ六割残っております。北海道の方がまだその点ではおくれているというような状態でございます。
  178. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 芳賀君。
  179. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今同僚の茜ケ久保君から質問がありましたが、まず、農林大臣に、今年度開拓行政に対する、大まかな点でいいですから、特異性、どこを重点的に指向していくかということについてお尋ねします。
  180. 三浦一雄

    三浦国務大臣 開拓地の関係でございますが、来年度どういうふうな施設をしょうか、こういうことでございます。実は午前中に神田さんの御質問に対しましてもお答え申し上げ、同時に資料等も差し上げてございますが、まず、開拓関係公共事業費等を見まするならば、前年のなには六億三千七百八十……。
  181. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大筋だけでいいです。
  182. 三浦一雄

    三浦国務大臣 一応計数は政府委員から説明させますから……。
  183. 芳賀貢

    ○芳賀委員 基本的な方針でいいです。
  184. 三浦一雄

    三浦国務大臣 計数は別にして、第一に、先ほど来御意見のありました通り、当初緊急開拓等でやりましたところにつきましては、基本的な建設工事等は非常に立ちおくれておる。そこで、建設事業を拡大してこれを補ってやりたい。道路がなかったり、今電灯のこともありましたが、さような基本的な施設の欠けているところがございますから、このことでできるだけのことをしていきたいということが第一の問題でございます。  それから、第二の問題でございますか、開拓地の営農指導を強化するということで所要の予算を増額しております。それから開拓融資の保証を拡大したということでございまして、これは政府の資金の会計を八千万円拡大して参っております。それから開拓関係の賞金も融資方面において増大して参っておる。  かようなことによりまして、手おくれになっておりますものを極力進めて参る、こういうことであります。  同時に、新規の問題といたしましても、今まで根釧なりその他パイロット・フアームを作ったのでございますが、これを岩手県方面にもなお拡大して参る。これも開拓政策の一環でございまして、さらにまた、大規模のものとしての開墾干拓等もございますが、これらを中軸にしてこれを推進して参りたい。  特に来年度におきまして考慮を払ったのは、既存の設備並びに施策の行き届いてない方面に手をつけていきたい、こういうことで来年度予算を編成し、その方向によって取り進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  185. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私どもの判断では、従来と変る点は、新規入植を極端に押えているんですね。結局既入植者の安定をはかるというところに一つの特異性があると思うのです。そういう場合に、既存の入植者の総合安定対策を講ずるという新しい方針を確立する場合、単に開拓融資保証法に基く中央保証協会に対する八千万程度の増資が行われる、それ以外にも予算的にはありましょうが、この程度施策で果して既入植者の経済的な安定対策が進められれるかどうか、非常に疑問に思うわけなんです。この点に対してもう少し……。
  186. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は開拓につきまして非常に手おくれであるということは痛感しております。従いまして、既存の開拓地等につきましても、もっと各般の事項について推進いたしたいと考えたのでございますございますけれどもこの程度にとどまったことは、自分としても非常に遺憾だと思っております。今後といえども、農林省としましては、全力をあげまして既存の開拓地の不振地区等を解消するように努力いたしたい、こういう考えでおります。
  187. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど伊東局長から、開拓関係の各種資金の回収状況が最近になって急に成績が悪化しておるというような説明があったわけなんですが、そうなりますと、単に今回の法案だけの改正でなくて、開拓関係全般の金融体系についても、やはり総合的に検討して、改善すべきものはするというところにいかなければ、時期を失するのではないかと思うのです。
  188. 三浦一雄

    三浦国務大臣 昨年度におきましても、開拓地の選定、その計画等につきましては、特別開拓地区という観念を取り入れてやっております。そうして振興計画等も立てておるのですが、その振興計画を進める上に一番の必要な点はやはり資金でございます。額につきましてはいろいろの御批判がありますけれども、その資金の融通をなめらかにするために、信用保証制度を拡大して、これに応じてやるということも一環として進めるわけであります、すなわち、一面においては開拓地の指導機構につきましても整備し、同時にそり振興計画を推進する、同時に、それを裏づけする資金面につきましても、今申し上げましたようなことに進めて参る、具体的には一面においては建設式事等も進めて参るということでやりたいという考えであります。ただ、そり量等につきましては、いろいろ御指個がございましたが、その点は来年度はこの程度で進めて参る、かようなここであります。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、これ以外の、たとえば開拓者資金融通法もありますし、それから、今お話のあった開拓営農振興法に基く資金、あるいは災害関係のいわゆる天災融資法に基く資金がある。また現在審議しておる融資保証法に基く短期資金とか、いろいろあるわけです。だから、それぞれに一つの特色と任務があるわけですが、それらのものを一心ここで検討した場合に、すべて順調にいっておるとは思えない。ですから、農林大臣の立場において、各開拓者資金別に、どういうところに問題があるかということを一応重点的にお述べ願いたい。
  190. 三浦一雄

    三浦国務大臣 なおそのほかに来年度は自作農創設資金等も拡大しております。御指摘のあった通り、これらの諸資金等の融資方面におきましても、これを総合して施策するということでございますが、対象としていかなる開拓地を選ぶか。これは調査もいたしておりますし、検討を重ねて、緊急の度合いを考えまして総合的に重点的にこれを施行していきたい、かようにいたしたい考えてございます。
  191. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣はよくおわかりにならぬようですから、局長から今の私の質問についてお答え願いたい。
  192. 伊藤博

    伊東政府委員 御質問でございますが、今の農林大臣の御答弁を補足させていただきます。  大臣の御答弁にありましたように、今振興計画を作りまして、今これは知事が承認をする段階になっております。大体対象になりますのは十万戸のうち七万五、六千戸が承認になったというようなつ格好になっております。  来年の予算につきましては先ほどお話しになりましたように、新規入植につきましては千七百戸ということにいたしておりますが、極力既入植者につきましてこれが対策を講じたいということで重点を置いて考えたわけでございます。この不振地区対策につきましては、金融の面ももちろんでございますが、まずわれわれが考えますことは建設工事のおくれというものがやはり開拓地の営農振興をいたします場合の最も大きなガンでなかろうかというふうに考えまして、建設工事の促進ということにつきましては重点をかけてやっていきたいということで、来年度予算公共事業の中で、建設工事につきましては、全般的な開拓関係では建設工事だけで約四億五千万ぐらいの増加でございますが、不振地区対策としましては、今年は三十二億でございますが、来年は三十九億ということにしまして、大体七億くらいの増加をはかりまして、建設工事の促進、おくれを取り戻したいと考えております。たとえば、すでに工事の終ってしまいましたところに、飲料水の問題でありますとか、あるいは畑灌水の問題でありますとか、そういう問題を解決する開拓地改良でありますとか、あるいは道路をつけますとかいうような工事もあわせて進めていきたいというふうにまず考えております。  次に、資金の問題でございますが、これは先ほどちょっと申し上げましたが、開拓者資金融通特別会計の中で、ことしは預金部資金からの借り入れは十八億でございましたが、来年度は二十八億というふうに大幅にふやしまして、基本営農資金にあわせまして振興資金を来年度は大幅に融資をしていきたいと考えております。今年度の資金は、特別会計の中で参りますと、三十三年は二十七億の貸付でございますが、来年度は二十二億というように資金源もふやしまして、この融資をはかっていきたいというのが一点でございます。  それから、農林漁業金融公庫の中に資金がございます。今年度十二億ということになっておりましたが、これも十五億にふやしまして、土地の基礎条件の整備のほかに、いろいろな共同施設も作っていくというようなことを考えております。  それから、先ほどからお話の出ております中央開拓融資保証協会の出資を増すことも考えておるわけでございます。  それから、債務条件緩和の問題につきましては、先ほども御答弁いたしたのでございますが、この特別会計に計上いたしました償還も、昨年よりはだいぶ償還率を落しまして、昨年のままで参りますと二十二億くらいのものを計上するはずでございますが、これを十億足らずということで、償還も実情に合わしていくというような対策をとっております。そのほかに、災害関係で借りました営農資金を、開拓営農振興臨時措置法に基きます改善資金に借りかえをやるということにつきましても、大体今年度、来年度を合せて四十億くらいのものは借りかえになるだろうという前提で、利子補給も一億四千ばかりの利子補給を計上いたしております。そのほかに、大臣の御答弁にもありました自作農資金につきまして、実は今年の当初は五億であったのでございますが、来年度は十六億五千というように、大体当初予算の計画でいきますと三十三年度の三倍ぐらいの自作農資金の貸付を考えまして、高利な資金を借りている人の借りかえをするというようなことも考えまして、振興計画で予想しております三十四億というような借りかえにつきまして、個人の負債でございますが、これは来年度中に一挙に借りかえを終ってしまうような資金面の手当も実は考えて予算の御審議を願っているわけでございます。  資金面については以上でございますが、そのほかに、営農指導員をさらに五十名増しますとか、そのような営農指導関係につきましても手を打ちまして、そのほか、先ほど御質問のありました電気の導入でありますとか、あるいは住宅の問題等いろいろ万全の策を講じたいというようなことで、来年の開拓については考えております。  要するに、新規入植につきましては、大体機械開墾地区でありますとか、モデル地区、あるいは干拓地区のようなところに限定して考えまして、極力新規入植者の対策を講じたいというのが、来年の開拓関係予算を組みました基本的な考え方でございます。
  193. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 関連質問として、倉成委員
  194. 倉成正

    ○倉成委員 開拓の問題については芳賀委員その他からいろいろお話がございましたが、要するに、私の考えでは、開拓地の基盤が非常に弱いということが根本の問題でございます。それと同時に、入植者の素質の問題、あるいは組合の運営の問題、あるいは制度そのものの問題等、いろいろあるかと思いますが、今日の実態を私の経験から申しますと、営農計画、あるいは振興計画、償還計画を立てましても、これと実際は非常に離れておる。もっと端的に申しますと、農林省が立てられたいろいろな計画は大蔵省に説明をするために立てられたというような場合も往々にしてあると思うのであります。ですから、根本的には、やはり、開拓地の問題を既入植の開拓地と将来の開拓地とに分けて既入植の対策を考えますならば、抜本的にこの実態を正しく把握することが一番緊要のことではないかと思います。具体的に申しますと、資金の償還の問題はほとんどマラソン金融であります。次から次にいろいろ理屈をつけておりますけれども、前の資金の償還を新しい資金で借りかえていく、それを書類の上でつじつまを合わしていくというのが、今日の開拓金融の全部とは申しませんが、大部分の実態ではないかと思います。従って、先ほど農地局長からお話がありました振興計画を立てられますときに、やはり実態に即したことをやられて、うみを出してしまう、どうしてもいけないものは、やはり開拓地として成り立たないということで、この人たちをほかの方面に振り向けるぐらいの対策を講じないと、なしくずしの現在のやり方では、今日の開拓政策というものは決して成功しない。これは私ども実務をやりまして、開拓地の再建に取り組んでやった体験から申し上げておりますので、大臣もぜひこの意見を参考にしてやっていただきたいと思うのであります。もちろんなしくずしにやっていくことも必要でございますけれども、やはりこれは抜本的に考えていかなければいけない段階に来ていると私は考えますが、一言御所見を承わりたいと思います。
  195. 三浦一雄

    三浦国務大臣 開拓の問題は、これは非常に困難な問題でございまして、ことに基礎条件の劣悪な方面にだんだん入っていくということでございますから、基本的にはやはり、営農方針を完備するということ、それから生産性を高めて参る、そうして収入の水準を高める、こういうことにいかなければならないと思います。私なども開拓につきましては実はいい体験を持っております。なかなか困難な事情もございますけれども、やはり強靱な指導をもちまして村を作るようにしていきたい、こういう考え方で、御意見の点は非常によく尊重して今後の施策に反映させていきたい、かように考えております。
  196. 倉成正

    ○倉成委員 大臣の御答弁で一応尽きていると思いますが、私の特に強調申し上げたいのは、実態を十分把握していただくということです。これはいろいろ書類の上では実態調査ができておるようでありますけれども、どうも説明のための実態調査ということになりがちでありますから、そういうことの絶対ないように、実際都合の悪いことでもはっきり表面に出さないと、開拓の問題というものは解決できないと思いますので、その点特に御要望を申し上げておきます。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 具体的にお尋ねいたしますが、開拓営農振興法昭和三十二年にできたのです。五カ年間に振興計画を立てて、そうして不振開拓者を健全化する、最低の人間的生活を開拓者にやってもらうというのが開拓営農振興法のねらいなんです。今までの大臣や局長の答弁によると、大体振興計画も順調にいっているわけなんですね。
  198. 伊藤博

    伊東政府委員 振興計画につきましては、先ほど申し上げましたように、対象農家は約十万戸になるのでございますが、振興計画の承認がありましたのはまだ七万七千くらいのものでございます。あとの二万数千戸につきましては、まだ振興計画が知事の承認の対象になるという段階には至っておりません。これは三十四年の三月三十一日が提出期限でございますので、その間にほとんど全部が出そろって、知事の承認を受けるということになろうかと私は思います。  この振興計画につきまして、私ども自作農資金につきましては三十四億ということを予想しておるのでございますが、それにつきましては来年度公庫からの自作農資金で大体これは解決するだろうということを申し上げたのでございますが、そのほかの振興資金等につきましては実は、三十三年度について見ましても、七〇%くらいの償還があるだろうと見ておりましたものが、おそらく三〇数%に落ちるというようなことになりますと、これを財源に貸付を予定しました額が約六億ぐらいはおそらく貸付不能になるかもしれない。こういうものが出ますと、来年三十三億くらい予定しておりますものを足してみましても、また三十四年度まで全部考えましても、当初の計画よりは若干おくれるというふうなこともございますので、これはまた三十五年度に解決せねばならぬということでございます。そういう問題もございますので、振興計画が全部がうまくいっておるというふうには私は申し上げかねるのでございます。この点につきましては、今後もわれわれは期間内に何とか振興計画を十分に活用しまして開拓者の営農の安定をはかりたいというふうに考えておりますが、今後まだわれわれとしては十分努力すべき余地は残っておるわけでございます。
  199. 芳賀貢

    ○芳賀委員 結局、営農改善に踏み出す初歩的な段階で一番障害になるのは、やはり焦げついた借入金の処理なんです。これは振興法上によってもたとえば災害関係の固定した分はこれはほとんど借りかえ措置が行われたと思うのです。それから次は、結局開拓者資金融通法等に基く政府資金の条件の緩和とか、政府の思い切った積極的な債権に対する処理というものは全然やってないわけなんですが、そういうものは障害にならないのですか。
  200. 伊藤博

    伊東政府委員 今の御質問の点でございますが、先ほども御答弁いたしましたように、政府の特別会計から貸し付けいたしております金の償還の問題でございますが、これにつきましては、われわれは三十四年度予算におきましては、前回も御説明いたしましたように、償還の率をだいぶ落していこうと考えております。これはわれわれ実情に合わした落し方をした計画ではなかろうかというふうに考えておりますが、約二〇%ということにいたしまして、特別会計を御審議願っておるわけであります。これの措置といたしましては、予算は今までそういう措置をとりまして、法律的には、現在ございます国の債権の管理等に関する法律という法律がございまして、これで履行延期もできるということになっておりますので、具体的な問題としてこれを取り扱ったらどうだろうということで、実は北海道につきましては、ある基準を作りまして、現在すでに一億数千万円の履行延期の手続がとられたわけでございます。内地につきましても、これは来年度予算が大体今申し上げましたような考え方で組まれておりますので、同じように弾力性のある基準を考えまして、内地の方もその解決をはかって参りたい、こういうふうに考えております。
  201. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の特別会計のかっての資金の運用、これは全く実情にそぐわないのです。しかも、当年度に七〇%も回収を予定して、それを貸付の大きな原資に充てる、こういうやり方は世界に例がないと思うのです。それを今年は三〇%くらいに引き下げる、これはやや実情に即したように是正したというものではなく、何もこれは善政のうちに入らないでしょう。問題は、償還年次に達してなお償還不能のものが固定化していっているのです。結局、そういうものは、たとえば国の法律の債権管理法なら管理法の規定に照らして思い切って処理するということにしなければ、十年間にわたる国の開拓行政の失敗の跡始末をやる場合に、政府資金に対しては高利貸しのような考えで債権の放棄も何も全然できない、そうして、民間とかあるいは系統融資に対しては、条件緩和とか、その方へしわ寄せさせるというようなやり方は間違っていると思うのですが、農林大臣、いかがですか。
  202. 三浦一雄

    三浦国務大臣 それは改善しなければならぬ、こう考えております。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、具体的にどういうふうに改善するのですか。債権管理法だって今まで一億数千万円しかそれに該当させていないでしょう。積極的にやるとすれば、これは法律があるからいつでもやれるのですよ。どういうふうにやるお考えですか。
  204. 伊藤博

    伊東政府委員 具体的な方法論の問題でございますが、先ほど先生の御質問の中にありました、当年度に貸したものを一部当年度から取るということはございません。基本営農資金でございますと五年の据置、振興資金でございますと三年の据置期間がございますから、当年度に貸したものを当年度に取るというのでなくて、現在問題になっておりますのは、だいぶ前に貸付をしました資金でございます。まだ一億数千万円くらいしか具体的にはないじゃないかという御質問でございますが、実はこの問題については開拓者の方々ともいろいろ相談をしているのでございますが、現実の問題として動き出しましたのが最近のことでございまして、北海道が第一番でございますが、内地等につきましてもそういう手続がとられれば、農地局としては内地の方でも三十三年度に七億くらいのものはそういう履行延期ができるのではないかということを実は予定しているのでございますが、まだ開拓者の方からはそういう手続が内地の方ではとられぬということもございまして、若干おくれておりますが、われわれとしましては、何とか現在の法律を活用いたしまして、当然履行延期をしなければならぬというような状態開拓者につきましては、個々に当りまして、今後の運営でできるだけ解決していきたいと考えております。
  205. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、お尋ねしますが、管理法に基いて大蔵大臣と農林大臣が打ち合せをされて、大蔵大臣から農林大臣に対して、このような方法によって国の債権管理法の規定の中で開拓者の特別会計より貸し付けた分に対しては処理するというような基準が明らかになっているのです。これは農林大臣が合意したわけですが、合意する場合、このような内容でうまく処理できると思って合意したものであるか、もうできないとわかり切っていて、形式的にやってみるという程度でこれは承諾したものか、その辺の経緯はどうなっておりますか。農林省並びにあわせて大蔵省の高木主計官にお尋ねいたします。
  206. 伊藤博

    伊東政府委員 北海道の関係でございますが、これは大蔵省と話し合いをしまして、これが第一回目の例でございますので、これは相談してやったわけでございます。われわれとしましては、これで全部が解決するとは考えません。内地につきましても、これを参考にしまして、もう少しこの基準を緩和するところがあれば緩和をしていくということでやりたい。もしもそれができれば、当然北海道のものも直していくというようなことにしたいと思っております。これにつきましては今度の予算が三〇%くらいという予定にもなりましたので、この基準につきましても、できるものであればもう少し緩和するところは緩和をしてやっていきたいというふうに、今後大蔵省とまた折衝したいというふうに考えております。
  207. 高木文雄

    ○高木説明員 三十四年度の問題といたしましては、ただいま御指摘にありました基準よりは緩和することができるのではないか、と申しますのは、先ほど来お話のございましたように、償還金を当てにするところを減らしまして、資金運用部からの資金の供給をふやしましたから、償還期限の延長をまかないますのに基準をゆるめてもやっていけるだろうと思います。具体的には相談を受けてからでないと——今農地局の考えておられました案はまだ承知いたしておりませんので、具体的にはお答えできません。
  208. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、お尋ねしますが、当時きめられた基準、ほとんどこれは厚生省関係の生活扶助、そういう生活困窮者の扶助基準と大体似通った線に押えてあると思うのですが、一・四倍ということになっておるのです。ですから、開拓者が最低の生活をして、その収益の中から借入金の返済に充てられるという、その生活の最低限というのは果してどのくらいがいいと思うのですか。管理法に適用する場合の基準というのがありますね。どの程度の最低生活レベルを認めて、そうして債権管理の対象にするかしないかということは、これは人道上から見ても重大な点だと思います。
  209. 伊藤博

    伊東政府委員 今の御質問の点でございますが、今までやっておりますのは一・四倍というような基準で一応やったわけでございます。今、内地のものにつきましてはこれは数字はちょっと申し上げかねますが、それをもう少し上げてというようなことでやっていきたいということで今大蔵省と交渉いたしております。
  210. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは具体的に、大体の見通しとしては一・四倍をどのくらいまで上げるお考えですか。
  211. 伊藤博

    伊東政府委員 われわれの原案としては、一・七倍というような数字で大蔵省と話しております。これにつきましてはまだ最終的な話し合いはついておりません。
  212. 芳賀貢

    ○芳賀委員 高木さん、御所見はどうですか。
  213. 高木文雄

    ○高木説明員 私だけの担当でございませんので、ちょっと今ここでお答えいたしかねます。というのは、開拓者資金融通法以外に、たとえば厚生省からの厚生資金であるとか、母子福祉資金であるとか、いろいろなものの貸付金がございまして、これはやはり、債権管理法である程度の免除なり猶予なりをやっていくという場合には、開拓者についても御指摘通りいろいろ問題はございますが、たとえば母子だけの家庭で、借りたけれども今は返せないという場合にどうするかというときに、開拓者は何倍になっておるのだが、母子の方はどうだとかいうような問題もございますので、やはりある程度、機械的なバランスではいけませんけれども、そういった各種の貸付について、どうせ絶対的な公平なバランスというのはむずかしいと思うのでございますけれども、ある程度のバランスを考えなければなりませんので、その方の専門の人の意見も聞きまして、できるだけのことはいたしたいというふうに考えます。
  214. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点については、農林大臣からもお聞きしたい。とにかく、この政府施策によって入植させて、十年一日のごとく努力して、それで負債が累増していく。振興計画の適用を受けて、そして一番重圧になっている特別会計の資金に対しては、緩和の規定の適用を受けようとしても、やはり基準が問題なんです。十年がんばって、生活困窮者と同じところまで落っこちなければ緩和してやらぬというようなことでは、全く血も涙もないと思うのです。こういう点は今まで気がつかれなかったかもしれぬが、これは大きな問題だと思うのです。特に、新規入植者を一応押えて既存の入植者の安定施策を進めるという場合においては、こういう問題は早く解決する必要があると思います。ことに、振興計画を立てる場合においても、その最低の基準というものはあるわけですね。ですから、そういうものとの見合いの上に立っても、これらの基準というものは速急に、是正してしかるべきだと思いますが、どらですか。  特にあわせて山口さんにお尋ねしますが、これは北海道が一番重いのですね。一番早く北海道が取り上げられたような実情から見て、この融資関係はあなたの所管ではないとしても、北海道開発事業の中における開拓行政というものはあなたが大体所管している点もあるのですが、こういう点に全然注意を払わないで大演説ばかりぶっても、なかなか開拓は進まぬと思うのです。お尋ねします。
  215. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ごもっともな御意見でございまして、今両当局から事務的な折衝の段階をお話ししたのでございますが、合理的結論を早く得て改正したい、こう考えます。
  216. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 だんだん御説を承わっておる間に、いろいろ教えられるものがあります。なお十分一つ御趣旨に沿うよう努力いたします。
  217. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に参考人の楠見さんにお尋ねしますが、先ほど来お聞きの通り政府当局においては、現在の開拓金融全般にそれほどの大きな欠陥がないということをあえて述べられておるのですが、中金の立場から見て、理事長の楠見さんのお考えを参考までにお聞きしたい。
  218. 楠見義男

    ○楠見参考人 開拓関係につきましては、農林中央金庫といたしましては、実は限度一ぱい協力をしておるつもりでございます。しかし、それにはやはり今申しますように限度があるわけでございます。私は私見を申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、先ほど芳賀さんあるいは倉成さんからお述べになりました開拓金融について、総合的にこれを見なければならないし、それからまた、倉成さんがおっしゃいましたような実態を十分に把握して、従来のようにマラソン金融的なことをやっておったのではこれは解決がつかない。開拓についてはちょうど今重大な転換期に入っておると思うのです。特に将来の開拓者と最近のパイロット・フアーム等で見られる開拓者との間を拝見いたしますと、非常に感慨無量のものがございます。この際、開拓政策というものを根本的に検討していただかなければ、従来のような事務的な施策ももちろん必要だと思いますけれども、このようなことを従来通り続けておりましたならば、百年河清を待つがごとし。私は、開拓金融について農林中金としてはできるだけのことはやっておりますが、つくづくそういう点を感じておるような次第でございます。
  219. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、災害関係の資金は、天災融資法等がほとんどあなたのところの資金に依存しておるのですが、ああいう不可抗力な災害によったところの災害融資等は、果してその系統金融に依存したやり方がいいか、むしろそれは政府制度金融の中へこれを取り入れていって適切にやった方がいいかということは、これはやはり一つの論点だと思うのですが、そういう全体を総合した考え方に立った場合に、今後の一般の農林金融もそうでありますが、特に開拓金融の場合のあり方、そういう点についてお考えがあればこの機会にお聞かせを願いたい。
  220. 楠見義男

    ○楠見参考人 その点はただいま申し上げました通りでありまして、芳賀さんから、先ほど、開拓関係についての資金の種類をおあげになって、それに対する総合的な必要性をお述べになったわけでありますが、資金の点だけではなしに、これはまた私見で恐縮でありますけれども、担当機関と申しますか、こういうような点についても総合的にこれをやるということでなければならぬ。災害融資関係につきましても、これは従来も農林省とも十分に協力、協議を常に続け、できるだけ私どもとして協力できる分野は協力し、また具体的事例に即して取り扱って参ったのでありますが、これらの点についてもやはり基本的に総合的に考える必要があり、またもうその時期に来ておるのではないか、こういうように感じております。
  221. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一点お尋ねしておきますが、開拓営農振興法と、それから天災融資資金との関係です。法律によって結局災害資金融資法の方へ切りかえるという措置がとられているのですが、何年の分までのものをという明確なあれがないのです。ですから、中金の方は昭和三十何年度分までの災害資金についてはこれを振興法の方に肩がわりできるというような理解に立って処理されておるか。これはやはり昭和三十三年度災害融資等もあまり順調に流れていないというようなわれわれの調査も行われておるわけなんですが、その点について農林省との間において完全な意見の一致が行われておるのかどうか、いかがですか。
  222. 楠見義男

    ○楠見参考人 だんだんと農林省の方とも御協議を進めて参りたいと考えております。ただ、災害資金を改善資金に乗りかえていくという場合に、改善資金の方は、御案内のように、また先ほど来芳賀さんがお触れになりましたように、われわれは具体的に開拓者の償還計画と申しますか償還財源を実は洗いざらいあげて計画を立てておるわけであります。しかもなお、今問題になっておりましたような生活保護法との関係、こういうふうな問題があるわけであります。従って、私どもは、これを乗りかえていく場合に基本的には先ほど申し上げたような考え方に尽きるわけでありますが、ただ漫然とそれを乗りかえて、そうして問題の解決を五年先、十年先に繰り延べていく、こういうことではいつまでたってもだめではないかというような気持を私どもは持っております。そういう意味から、政府の履行延期の問題でありますとか、あるいは積極的にその地域に生産力を高めさせる方法を講じさせるとか、あるいは根本的に組合経営のあり方と申しますか組合のあり方について改善を考えていただくとか、こういうことを、いろいろな問題を提起いたしまして、農林省と十分に協議を続けて参りたい、かように考えております。
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点はもう少し態度を明らかにされたらどうですか。あわせて農林省の方はどういうような考えでございますか、あまり遠慮されておると、やはりそれに甘んじて、これはこういう解釈になるというように開拓者自身もそういう判断を行う場合もあると思うのです。ですから、この機会に農林省中金との間において統一した見解をここで明確にしてもらった方がいいと思います。
  224. 三浦一雄

    三浦国務大臣 楠見さんのお話を聞いておりますと、もっと根本的に立て直せ、こういうことですが、これはごもっともでございます。しかし、金融を担当する方面では、その事情をよくくんで、また事情に適切な金融をやってもらわなければ、両々相待っていかぬのでございますから、そこで、その意見を接着させろということでございますが、往々にして具体的な場合この意見が拝格をするといいますか、意見がしっくりしないために、金融措置もいかない。大綱についてはおそらく変りがないと思うのですが、具体的な組合もしくは開拓地等につきましては、往々にして所期の効果を果さないというか、非常に困難であろうと思うのであります。基本的にはわれわれとしては別に意見が変っておることはないと思います。具体的な事情の判断なら、それに対して事実それの可否になりますと意見が異なっておるということが現実運営の面において困難なことではないかと思うのでありますが、御指摘になりました通り金融機関と政府の指導との間に扞格のないように今後していきたいということは、もう当然のことだと思うのでございます。
  225. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうじゃないと思うのです。営農振興法に基いて振興計画を立てる場合に、その計画の中に従来の開拓者の災害資金を乗りかえていくわけです。その場合どの陣営で扱うかということが問題になるのです。昭和三十三年のものか、四年のものか、——三十二年から計画は五年間で立てるということにはなっておるのですが、計画の終期で災害資金の方から乗りかえることが可能であるか、その点なんです。
  226. 伊藤博

    伊東政府委員 農地局の見解を申し上げます。私どもの方といたしましては、三十四年度につきましても同様に、改善資金に借りかえするということは、金融機関とそのつど相談いたしましてやっていきたいというふうに考えております。損失補償の問題もございますが、大蔵省当局とも相談の上そういうことでやっていきたいというふうにわれわれは考えております。
  227. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは振興計画ができて認定された分に対しても三十四年を当てはめていけるということですか。
  228. 伊藤博

    伊東政府委員 今の点は、三十四年の三月三十一日に計画ができるわけでございますが、われわれといたしましては、計画の変更といいますか、そういう考え方でやっていきたいというふうに考えております。
  229. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなると振興法がある限り続いていくということになるわけですね。計画変更、計画変更ということで……。
  230. 伊藤博

    伊東政府委員 今大蔵省とわれわれは事務的に話しておるのでございまするが、最初の方は十年の期間延長ということになりますが、その次の年は九年というふうにしますか、それから八年というふうにしますか、その辺のところは、延長する期間を短縮いたすというような方法も考えながら、金融機関とそのつど相談の上で借りかえを行うかどうかということをきめていきたいというふうに考えております。
  231. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の点は、十年間で、最初の五カ年間だけに利子補給損失補償がつくわけですね。ですから、いつまでたってもそれでは災害資金の償還が順調にいかない分に対しては振興計画の変更ということで常に取り入れていく、そういうように一般の開拓者に理解させてもいいわけですか。
  232. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 まだ大蔵省と十分詰めてはおりませんが、大体振興計画は五年で完成して黒字転換になっていく、こういうことになりますので、その間における災害等で振興計画の達成が非常に困難になってくる、こういう事態が三十四年以後にも起るだろうと思います。そういう点においては、大蔵省ともよく相談して、計画が計画通りいけるように、大体改善資金を借りかえる、こういうような処置を講じたい、こういうことで、今農地局長からもお答え申し上げたように、永久に続かないように、借りかえ期間を最長十年とすれば、三十四年から十年にして、三十五年から借りる場合は九年にする、それから三十六年に借りかえる場合は八年にするということで、一応三十四年から十年間でそういった計画達成に支障のあるものは借りかえて計画達成をやる、そういうような考え方で大蔵省と折衝しておる、こういうことであります。
  233. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では楠見さんも大体そういうような判断でおられるのですか。
  234. 楠見義男

    ○楠見参考人 基本的には、先ほど申し上げましたように、それでは私どもの方は困ると言っているのです。そんなことをやっておったんじゃいつまでたっても開拓問題は解決しないのじゃないか。だから、根本的にこの問題は解決の方途を見つけていただきたい、こういうことを実は希望いたしておるわけであります。原則論は私の方はそういうことでいきたいと思いますが、具体的になっていきますと、個々の問題で、あるいは農林省政府の方から相談を受けて協議に応ずるということはあり得ると思いますけれども、しかし、根本的にはそういうふうな考え方を私は持っているわけであります。
  235. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点は早急に関係機関の意見を統一して当委員会等にも明らかにしていただきたいと思います。それから、資金関係の次に建設工事が非常におくれておるということも、開拓不振の大きな原因の一つをなしておるわけですが、その建設工事の既存開拓地における残事業分というのは、総体でどれくらいになりますか。またそれを今後何カ年間の計画で完全に完成させるというのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  236. 伊藤博

    伊東政府委員 建設工事でございますが、国営分の開墾工事につきましては、現在継続いたしておるのが五十七地区ございます。そのうちで要振興地体に関係いたしますのは五十三地区でございます。また、代行開墾建設と申しまして、これは都道府県に委託しておる分でございますが、これが数にいたしまして、継続中は五百八十八、そのうちいわゆる要振興地区に関係のありますのは四百六十八地区ございます。  それで、国営でございますが、これは総事業費が、今申し上げました関係いたします五十三地区で二百七十三億という総事業費でございますが、現在まで進んでおりますのは約六〇%でございまして、百六十二億ということになっています。これの完成でございますが、残年量にしますと、大体まだ五年くらいは残っています。  それから、代行開墾でございますが、これは総事業費が百八十二億ございまして、今までに八十億ばかり使っており、四三%くらいが完了することになっております。これは今の国営よりはおくれまして、残年量は大体七年になっております。  このほかに、いわゆる補助開墾といいますか、開拓改良とか、開拓地の付帯事業というものがありますが、これは大体残年量で参りますと五年ないし六年くらいの事業が残っております。
  237. 芳賀貢

    ○芳賀委員 継続事業の方を、たとえば国営は五カ年、代行は七年で完了する、これは確固たる見通しがあるのですか。希望的観測は五年ないし七年で完了させたいというのか。これは農林大臣から在任中にお答え願います。
  238. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これは農地局の計画として最小限度この年数で完成したい、こういうことであろうと思います。これは間違っておればまた訂正させます。われわれとしては、すでに立ちおくれておるのですから、できるだけこの計画を縮めまして実現したい、こう考えております。
  239. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、農林省の考えではなくて、これは政府としての方針だというふうに解釈していいですね。
  240. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これはどうもやはり予算関係もありますから、さようなことではかえって誤解を生じますから、最終的には農林省の計画としてそういうふうに進めたいということで御了承を願いたいと思います。
  241. 高木文雄

    ○高木説明員 開拓につきましては、かねて非常に問題でございますので、私どもといたしましては、ただいま農地局長のおっしゃいました残年量の年数でございますれば、その程度で何とか終るようにしたいという気持でおります。ただ、問題は従来から努力して参ったのでございますが、実際に工事を施行いたしますと逆に工事費が増加する場合が出て参りますので、そういうことがないようにしていかなければなりませんけれども、現在の段階では今農地局長からお話のありました程度の年数で何とか処置できるのではないか。これはただいま農林大臣のお話の通り予算の問題でございますから、私から、何といいますか、お約束というわけには参りませんけれども、私どもが仕事をしております感じから申しますと、そのくらいはいけそうだという気持でおります。
  242. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、それでは、不振対策が終るまでは新規入植を押えるという方針でいくと、あと五年ないし七年は積極的な開拓振興というものは期待できないわけですね。
  243. 三浦一雄

    三浦国務大臣 本年は新規のものは千七百と押えたのでありますけれども、残存の事業量はすみやかにこれを解消して早く片づける、同時に、日本の国民経済の上から、さらに農山村の実情から見ますと、開拓は進めなければなりませんから、新規の事業を押えることなしに拡大して参る、こういう所存であります。
  244. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その新規を取り上げるのもいいのですよ。新規を積極的に取り上げれば、いろいろ地方との結びつきで政治的なプラスになる点はあるとしても、継続事業に対する熱意を失っておっては、これは開拓の業績というものは上らないと思うのです。だから、明確に方針を立てて、新規を並行してやるということでなくて、継続事業を五年のものを三年にするとか、七年を四年に詰めて、これも速急に完了させてから、新しい構想で今後の開拓事業を進めるということでいかなければ、今のようなだらだらした考えでやっていったのでは、これはもう何百年たってもだめだと思いますが、どうですか。
  245. 三浦一雄

    三浦国務大臣 財政的な関係もありましょうから、両者を調整しつつ進めたいと思っております。
  246. 芳賀貢

    ○芳賀委員 山口長官にお尋ねしますが、今の建設工事の分についても、北海道は一番事業量が多いので、従って、継続関係の残事業も相当残っておると思うのです。ですから、これらの処理は、今農林大臣からは国全体の方針についてお述べになりましたが、特に特殊性を持った北海道の地域のこれらの建設工事の完成に対しては、どういうようなお考えで進むのですか。
  247. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 既入植者の問題及び今の継続事業の年限を短縮するということはもちろんでありますが、私といたしましては、何としても開拓の根本は、開拓地の道路とか、あるいは水路とか、客土とか、こういった面に、今年度予算に示された通り、相当力を入れておるつもりでありまして、その点は、この開拓事業のうちで、建設工事費を約一割、開拓事業費の補助費を約三割増額いたしまして、別に道路事業のうちに二億二千万円を計上いたしまして、営農不振な開拓地の幹線道路を整備する等、重点的にその促進をはかる考えであります。ただ、今年度北海道の予算開拓関係でお気づきの点があろうと思いますが、約三千八百万円減少しておりますが、これは主として入植戸数を減したのでありまして、私は北海道開発庁長官に任命されて以来、各地を相当つぶさに視察をいたしました。その結果、本州から見るとまだ北海道には非常に開拓の余地が残されているように思われる方もあるようですが、私の見るところでは、北海道は、まず、すでに入植した人々の生活条件なり、それを満たさない限りにおいては、かまどにいたずらになま木をくべるように幾ら燃したところで、先の方々の生計が貧困ではおもしろくないというので、極度に新規入植ということを押えていきたい、こういう観点に立っておるようなわけでありまして、だんだんお説の通り、最近ではパイロット・フアームを中心とする新しい農業の経営の方式からいたしましても、すでに入植した人々の方が、十年、十五年と入植しながら、非常に貧困の度を増していくというような状態でありますので、こういった方々の生活条件をこれからどんどん改善し向上するということに努めて参りたいと思いますので、お説の通り、この経費の継続年度をさらに短縮するというようなことには多大の関心を持っておりますし、また今後とも努力を続けていきたい、こう思っておるようなわけであります。
  248. 芳賀貢

    ○芳賀委員 具体的にもう一点お尋ねしますが、北海道開発庁予算の編成要綱の中で開拓問題に触れてあるのですが、その一つに、既入植者の営農安定をはかるため開墾建設事業及び入植者の諸施設の早期完成に努める、これはやはり、農林大臣が述べられた既入植者の建設工事の継続分、これを速急に完成しなければならぬという表現だろうと思うのです。それで、北海道の場合は、国営、代行の継続事業の残事業分が金額でどのくらいあって、それを短期に完成するというのですから、何年間に処理されるお考えであるか、その方針に基く昭和三十四年度の継続事業費分に対するその決定予算額はどのくらいか、その点をお述べ願いたいと思います。
  249. 長谷好平

    ○長谷政府委員 それでは、ただいまの御質問にお答え申し上げます。  北海道関係開拓事業費の国営開墾におきましては、総事業費で百二十四億ばかりございます。代行開墾におきまして九十二億でございます。この総事業費は、もっぱら大蔵省と従来の総事業費を改定いたしたいと存じまして折衝中でございますが、まだ未確定なものではございます。それを前提といたしまして、現在まで予算がつきましたのは、国営開墾で四十三億、代行開墾が三十億、計七十三億ほどでございます。それを、本年度二十四年度におきまして予算がつきましたのは、国営開墾におきまして七億四千三百万円、代行開墾におきまして五億八千万円ほどついております。私たちは、この予算が今後もちろん増大していくと思っておりますので、当然、お話のように七年ないし五年というふうに完成いたしたいと存じておりますが、最悪の場合、本年度予算が横ばいだと考えましてそういう計算をいたしますと、大体千年くらいかかるということに相なって参ります。これはもちろん先ほど申しましたように総事業費の改定ということを前提といたした数字でございます。
  250. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうなるとおかしいじゃないですか。国全体の建設工事の分は国営五年、代行七年でこれを完了させる、大蔵省の主計官も大体その考えでおるというのに、北海道の場合にはあと十一年ないし十二年かかるということになると、開発庁予算というのは、開拓事業というものはもう全く放棄してしまったのですか。開拓関係食糧増産対策費の一環で切り離すことができないからやむを得ず北海道開発予算の中に書かれておるということになるのか、どうですか。
  251. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 ただいまの食い違いという点は、私の方では第二次五カ年計画を一応目安として、大体第二次五カ年計画の中においてそれらの問題は処理し解決していかなければならぬ、こう私は考えております。
  252. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたは考えても、今長谷主幹の説明でいくと、ことし決定した予算では、あなたは一〇%ないし一〇何%ふえたと言って喜んでおられるが、この程度予算では、あと国営で十一年、代行で十二年程度かかるということになるのです。そうすると、農林大臣の方針から見ると、あなたは倍の時間でのんびりやりたいというようなことになるのですが、ここらに大きなズレがあると思うのですが、いかがですか。
  253. 長谷好平

    ○長谷政府委員 ただいま説明いたしましたのはことしの予算が今後全然伸びないということを仮定した計算でございまして、当然今後予算はふえていくものと考えておるわけでございます。それで計算いたしますと七年ないし五年で完成するわけであります。
  254. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、開拓事業の中で北海道分だけが開発庁所管ということになっているのですが、農林省と開発庁との間における一貫性というものはないのですか。たとえば、事業全体を進める場合、開拓事業の場合には北海道が相当のウエートを持っているわけなんです。そういう地域がことさら建設事業についても取り残されておる、開拓者の生活実情も特に内地府県よりも困窮をきわめておるということになりますと、農林省と開発庁の所管事項が違うというようなことによって取扱いが変ってくるわけですか。
  255. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今関係官が異なって説明したから、かような計数も出るのでございますけれども、私、北海道の開拓はやはり強く推進しなければならぬという信念でございます。従いまして、農林省関係のものと北海道開発庁の関係は、やはり緊密な連絡をとりまして、どっちもパラレルに進行していくということを期待しております。
  256. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国の食糧増産対策に大きな転換が来たのですよ。ですから、農林省だけが早くも切りかえて、北海道開発庁が昔のままでゆうちょうにやっておるということになりますと、ますますズレが出てくると思うのです。私は、ことしの北海道開発予算の内容を検討すると、たとえば道路であるとか特定港湾であるとか、そういうような公共事業のいわゆる建設省所管の面は相当ふえているんです。道路整備費だけでも四十数億円ふえておりますが、農林省関係の、特に食糧増産対策関係はほとんどストップの状態に置かれておるわけです。ですから、そういうような中で、農林省と開発庁の一貫した計画の実行ということに欠けている点があれば、これは大きなマイナスになると思うのです。ですから、北海道開発の事業の中でこういう食糧増産対策関係というものが軽視されるということになれば、やはり機構上の問題であるけれども、そういうことであれば農林省が直接これを取り扱って処理した方がかえって重点的にこれらのおくれを取り戻すことができるのではないかというふうに考えておる北海道の住民も多いわけです。それらについて両大臣の所見を明らかにしてもらいたい。
  257. 三浦一雄

    三浦国務大臣 北海道のことにつきましては、芳賀さんよく御承知通り、拓植関係、北海道開発計画に即してわれわれは計画を進めているわけでございまして、これは、私たちとしましては、それが完全に推進されることを期待しております。さようなことでございますから、内地と北海道の間に間隔がないように、そうして皆様御審議になりました北海道開発計画が如実に実現することをわれわれは期待しております。
  258. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 ただいま御指摘の点でありますが、農林予算について一般のグラフで見ますと、多少本州に比して減額されておるかに見られるのでありまして、この点は私も予算編成当時農林省、大蔵省とも折衝いたした次第でありますが、これは例の八郎潟の干拓事業その他の問題等で、そのために北海道の予算が多少伸び悩んでおるというようなふうに一般にとられておりますが、しかし、一般予算においては、決して北海道がままっ子扱いにされたり、あるいは農林省予算と比して一つも遜色があろうとは思っていないのであります。また、御指摘の、農林省と北海道開発庁との間には、すべて一貫しておるものであって、寸分食い違い等はあるべきはずはないと私は思っております。
  259. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実際問題として食い違いがあるんですからね。それで、問題は、予算の編成のときには北海道分は北海道開発庁が予算を編成して獲得する、決定した分、今度は農林省に移しかえをして、農林省の責任で事業を行う、こういう変則な形になっておるんですね。そういうことであるならば、最初からもう農林省と開発庁が国全体の開発事業の中において検討して、そうして北海道に対してはことしはどういうような方針で望むということを会議して、開発事業費の予算面における両者の配分を調整してやるということの方がむしろいいのじゃないですか。
  260. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 これは議論の分れるところでございますが、私は、理想的に言うならば、北海道開発という建前から申せば、むしろストレートに北海道開発の予算は開発庁にまっすぐいただいて、そうしてさらに開発庁が直接事業を実施する、こういうことがわれわれの一番望むところでありまして、これについては、私もいろいろ、現在といえども、片一方私は行政管理庁の長官もいたしておりますので、こういうふうな機構の面においても多少の意見を持っておるような次第でありまして、できることならば北海道開発の将来のためにはこれを開発庁に一まとめにして、そうしてどんどん仕事を進めていくというようにはからいたいものだという熱意を私は持っておるような次第であります。
  261. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今行政管理長官もやっておるというお話が出ましたが、その点については、歴代の行政管理長官は、むしろ北海道開発庁という機構を整備して今の時限に適合したように組織等についても改編しなければならぬというような方針を明確にしておる。この点に対してもあなたはだいぶ角度が違っておるように思われますが、この点はきょうの法案審議とはそれほど直接の関係がありませんので、今後の課題として、またいずれ機会を見てと思いますが、農林大臣はどう思っているのですか。
  262. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これは、いろいろな沿革、歴史的な結論として現在こうなっていると思うのです。従いまして、われわれとしましては両者間の調整をはかって、そうして所期の目的を達する。いやしくも個人的な意見をこの際開陳するのは適当じゃないと思います。
  263. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは個人じゃないですよ。あなたは国の農林水産関係全体の行政担当の責任者なのですから、単純に考えれば、その出先を一つ北海道に持っているというふうに考えてもいいのですよ。どっちも国務大臣だから遠慮があるとしても、やはり、今後強力な施策を発展させるという場合には当りさわりがあるからとか、個人的な見解を述べられぬとか、そういうことでは農林行政というのは後退していくのです。ですから、この機会に、特に本日問題になっておる北海道の開拓行政等に対しては農林省という大所高所からも十分検討を下して、大体の結論が出たら御報告願いたいと思います。
  264. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私の用語が不穏当だったのですが、個人と申しましたのは、農林大臣は農林大臣ということで、いわば行き過ぎかもしれませんが勝手な議論ばかりするということは不適当である、こう考えましたものですから、さように申し上げたのでございます。日本全体を総合してやらしていただけるならば、私はこれに越したことはないと思います。しかし、北海道につきましては、明治初年以来の開拓の歴史と沿革等がありますから、これはやはり尊重しないと、北海道民が受け入れるわけはないと思いますので、私は現行の機構においても必ずしも成果を上げられないものじゃない、こう考えております。
  265. 芳賀貢

    ○芳賀委員 楠見参考人等お急ぎのようですから、その関係を一点だけお伺いしますが、先ほど災害資金の問題が出ましたので、この機会に、漁業関係災害融資についてですが、これは非常に回収の面においても好ましくない状態をたどっておるわけです。これは中金の楠見理事長も十分御承知の点だと思うのですが、たとえば北海道に一例をとってみましても、十勝沖の震災以降毎年のように災害が起きまして、それらはほとんど天災融資法以外はそのつどの特殊立法によって災害資金措置が講じられて、国あるいは地方自治体の利子補給損失補償措置を講じられてきておるのですが、この内容は非常に不振になっておるわけです。それで、もうすでに償還年次を終っていわゆる延納分となっておるのが相当多額の金額に上っておるのですが、これらの点については、災害融資の一つの使命からかんがみまして、直接これを扱っておる中金はこの問題をどのように判断されておるか、お尋ねします。
  266. 楠見義男

    ○楠見参考人 災害融資の問題がございます。特に、これは少し言葉が適当でないかもわかりませんが、災害融資には、全部が非常に興奮をしておりますから、従って、できるだけ迅速にその融資を取り扱わなければならないということで、ずいぶん私ども実際に金融をいたします場合においても無理な点もあるわけであります。しかし、これが具体的に補償の段階になって参りますと、その当時の緊迫感あるいはその他の感情が非常に薄らいで参りますために、災害融資をした当時と違った考え方、極端に言えば冷淡過ぎるような考え方でこの跡始末が講ぜられる。そのために、私どもは実は、損失の補償を受けられると思って提案いたします案件につきましても、相当大部分が補償を受けられない、いわゆる善管義務と申しますか、善良なる管理者の注意の点で問題になりましたり、組合あるいは組合から借りた個人の他用途への流用等々の問題について、そこまで善管義務の要求を受けまして、非常に処理上当惑をいたしておることが多うございます。幸い開拓関係については、特殊事情等も認められたことと存じますが、ある程度その点が緩和されましたけれども、水産関係については依然非常に困難な問題が多うございます。それが結局また損失補償を伴う融資についてわれわれをしてティミッドにならせる一つの理由ではないか、こういうふうに考えるわけであります。従って、損失補償を伴う災害融資については、やはりその趣旨にかんがみて改善すべき点が多々あるのではないか、こういうふうに存じております。
  267. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、現在十勝沖の災害融資以外五種類の災害資金が漁業関係については出ていますね。この分に対して、三十三年十二月末現在によると延滞金総額が九億六千万くらいになっていますね。それにさらに期限がまだ到来しておらぬ分を入れると、大体十億六千五、六百万円という金になるわけなんです。ですから、こういう分に対して、これは国もそうでありますが、特に市町村が補償の任に当っているものがあるのです。たとえば災害のそれぞれの法律の規定をこえた程度に補償をしておるような町村もあるように見られておるのですが、現実の問題としてこれらの災害資金の処理を一体どういうふうにしたらよいか。ただ、中金の一般資金にこれを切りかえるということになると、非常に高金利なことにもなりますし、今までの日歩四銭の延滞金の問題等も出てくると思うわけなんです。ですから、できれば条件として現在までの災害融資の規定に基くような取扱いで、これらの延納分の処理をするような方法等についても何かお考えがあれば聞かしていただきたい。
  268. 楠見義男

    ○楠見参考人 具体的な問題になって参りますと、今お話もございましたが、大体、一般資金でかえられるものについて、またそれについて償還の見通しも可能である、こういうようなものについては、それに乗りかえるとか、また具体的の事例に即して条件緩和をするとか、いろいろ具体的な案件ごとに処理をいたしております。しかし、そういうことをしても、もう船がないとか、あるいは債務者がやめてしまったとかいうようなことで、どうしても損失補償の問題に取り上げなければならないという案件もお話のごとく相当ございます。これは結局先ほど申し上げましたように国の損失補償に待つ以外にはないわけでございます。しかもその点について私どもとしては非常に不満なところがありますので、これは水産庁等ともよく連絡申し上げて、その実現をはかっていきたい。それから、地方によりましては、国の補償が行われなければ、従ってそれ以下の補償も行われないというような案件等もままございます。従って、これはまず今申し上げましたようなところで処理していきたい、こういうふうに考えております。
  269. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大蔵省の高木さんにお尋ねします。今中座されておったので十分わからなかったかもしれませんが、ただいま質問している点は漁業関係災害融資に対する問題なんです。それは十勝沖震災以降、たとえばオホーツク海やカムチャッカの暴風の災害、それから二十八年の六、七月の暴風災害、二十九年五月の暴風災害、二十九年の十五号台風災害、三十年の十月以降の天災融資法関係、この六種類の漁業災害資金の償還の実態が非常に好ましくないわけです。相当多額の延納分も出ているわけです。延滞した場合は当然これは規定によって相当高い日歩の延滞金の徴収等も行われるわけです。ですから、この処理については、関係漁業協同組合や漁業者はもちろん、補償の任に当る地方公共団体等も相当苦慮しているわけです。国もやはり一斑の補償はするわけなんですが、これに対して大蔵当局としては何らかの打解策について検討されているかどうか、いかがですか。
  270. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御指摘の点につきましては、昭和二十五、六年以降三十年ぐらいまでの融資につきましては、結果的に見ますと償還成績が悪うございまして、それがために損失補償金額もきわめて多額に上っております。その後の状況を見ますと、詳細な数字は持ち合せておりませんが、私どもの感じておりますところでは、貸付の際に十分に慎重な取扱いがなされているのではないかと思いますが、結果は漸次よくなってきているのではないかというふうに考えます。特に天災法に乗りかえまして単独立法で処置しないことになりました時期からあとの分につきましてはその前に比べますとかなり償還の成績がよくなっているのではないかと思っております。  そこで、何か別の制度を考えたらどうかというお話でございますが、災害融資につきましては、これまでの私どもの持っております感じでは、災害関係でございますから、当然毎年貸付の額が非常に変動が大きくなりますので、制度金融と申しますか、国の出資なり、資金運用部資金からの資金の供給前提とするところの融資方法をもってしては、なかなかうまく片づかない。と申しますの、出資はもちろん当初から予算に予定しておかなければなりませんし、資金運用部からの貸付にいたしましても、財政投融資計画で大体年間の見当をつけております関係がございまして、そういった制度金融災害金融をその年に乗っけていくということは事実上非常に困難でございます。従いまして、いろいろ御指摘のような欠陥もございますし、先ほど開拓について御指摘になりましたような問題もございますけれども、現在のところではどうも当年度災害につきまして臨時応急に処置いたします方法といたしましては系統金融にお願いするより方法がないのじゃないかというふうに考えまして、昨年でございましたか、開拓につきましても漁業につきましても、もう一ぺん災害制度を考え直したらどうかという御意見が各方面から寄せられましたけれども、そしてそれについて検討はいたしてみましたけれども、ただいま申し上げましたような事情で、現在のところ現行の制度でいくのが一番早く処置ができる方法ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  271. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、具体的な措置はまだちょっと見当がつかぬというわけですね。
  272. 高木文雄

    ○高木説明員 現在の中金の、と申しますか、系統金融にお願いしてやって参りますいわゆる天災法方式と申しますか、そういった方式よりももっといい方法が現在の段階では見当らないということでございます。
  273. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、天災融資法ができた以前の——以前は災害のつど特殊立法ができておるのですから、その分の延滞金が相当額あるわけなんです。ですから、それを救済するということになると、その当時の法律の中でこれは借りかえ措置なんかはできないわけですね。結局、技術的に可能かどうかわかりませんが、たとえば、現存する天災融資法等に、それらの前身であったそれぞれの法律の災害資金の償還がいろんな理由でできなかった分をまとめて乗りかえるというような措置は考えておられぬですか。
  274. 高木文雄

    ○高木説明員 私の承知しておりますところでは、漁業関係の単独立法で処理と申しますか、貸し付けられましたもののうちの延滞になっております分は、現在ほとんど償還が不可能だ、乗りかえれば返せるというようなものよりは、償還が不可能なものがほとんど大部分だと聞いております。従いまして、それらにつきましては相当な額に上りますけれども、法律に規定されたところに従いまして、損失補償をもって処理をするという方法をとっております。ただいま芳賀委員から御指摘になりましたように、もう少し待っておれば返せるけれどもというものの額が相当ございますれば、あるいは何かほかの方法を考えることも一案かと思いますけれども、私ども承知いたしておりますのでは現在延滞になってしまった分はほとんどのケースが償還不可能のケースだ、極端な例を申しますと、災害復旧で直しました漁船が次の災害でまたやられました場合、災害復旧で借りました金は組合には償還したけれども、組合が他に転用して、その組合が今なくなっておるというかなり極端な例がございますが、償還はほとんど不可能だというのが大部分でございますので、これらにつきましては農林中央金庫からのお申し出に基きまして、財務局の職員を現地に派遣いたしまして、認定の上で損失補償することにしております。現に、三十三年度の補正予算第2号でございましたか、二、三日前に本院で御審議願いました補正予算にもその分を計上しておるような次第でございます。
  275. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体了解しましたが、それでは、償還不可能の分については、それが延滞になっているわけですから、当然法律に基いて損失補償措置を講ずる、ただ、手続等においておくれておる分に対しては中金と事務的な処理を進めて、そうして不安のないように解決されるということですね。
  276. 高木文雄

    ○高木説明員 ただ一点お断わりいたしておきますが、損失補償のお申し出のありますうちで、中金と私どもと若干意見の相違がございまして、個別に申し上げるとこまかくなりますから省略いたしますが、金融機関としての善良なる管理者としての注意を全うしてなおかつ延滞になった場合に損失補償の対象になるわけでございますが、その場合に、中金としてどの程度、延滞にならないように、あるいは償還不可能にならないように指導されたかという点で若干意見の食い違いがありまして、その分については私どもとして損失補償金を支出するのは不適当ではないかというので、金額を詳細覚えておりませんが、一部損失補償をしないということにしておるものはございます。従って、この分につきましては中金の内部で御処理願うよりほかに方法がないのでございまして、その金額幾らであったか、今ちょっと記憶しておりませんが、それは私どもとしてはやはり中金の方で御処理願いたいというふうに考えております。
  277. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは中金ともあろうものが善意な管理者としての任にたえられなかったなんということは考えられないのですが、楠見さん、どういう場合ですか。
  278. 楠見義男

    ○楠見参考人 具体的な問題でこまかくなりますから大へん恐縮でございますが、先ほど申し上げたように、災害があった、それで、これは早く助けて救済の資金を出さなければいかぬじゃないかということで、たとえば組合を信用して出すとか、あるいは市町村長の証明を信用して出すとか、そういう事例がずいぶんございます。もしそういうことをいたしませんで、先ほど申し上げたように、五年も十年もたったあとで、今日冷静な頭で見れば、それは、農林中金の係員が具体的にその村へ行って、そうしてどこの造船業者に船を注文したか、その船ができたかを調べて、できたから金を貸す、こういうようにすべきだということは言えますが、こういうことをやっておったのでは、現在の人員では災害融資等が二年も二年もかかります。従って、それは五倍とか十倍の人員を北海道なら北海道に向けなければできない。従って、ある程度は連合会なり組合なり市町村長の証明を信用してやる。ところが、たとえばこれは極端な例でありますが、市町村長が、具体的に楠見なら楠見という人間が被害を受けた、こういう証明をお出しになって、それによって組合を通じて融資する、ところが、その市町村長の証明が間違っておったということが五年、六年の先になってわかる。これは農林中金が善良なる管理者の注意を怠っておったじゃないか、こういうことを言われますと、私ども、災害融資については、一方では災害融資だからこれは出さなければいかぬじゃないかという道徳的と申しますか圧力が非常にあるわけでございます。同時に、先ほど申し上げたようなことで出すわけでありますが、後ほどにそういうことになって、もう中金損失補償を要求してもだめだ、あるいは今高木主計官からお話がありましたように、組合には返済した、しかし組合が他の資金に流用しておったとかということで、これは善良な管理者としての注意を欠いておった、こういうことが具体的にあるわけなんであります。それでは困る、善良な管理者の注意といっても、そのときの状況に応じて常識的な限度というものがあるのだから、ぜひそれをやってくれないかということを今大蔵省に盛んにせっついておる、こういう状況でございます。
  279. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その問題はまたあとで機会を得て詳しくお尋ねしますが、ただ、損失補償をやる場合、国だけが全部損失補償をやるのなら問題はないのですが、財政的に非常に困窮しておる町村の財政の中から予想外の損失補償をしなければいけない、こういう事例が多く出てくるわけなんです。そういう場合において、中には財政再建の指定を受けておる町村もあるということにもなるわけです。これらについてはきょうは自治庁が来ておりませんので、来ておらぬのに聞くわけにいきませんが、そういう地方財政のこれらに対する配慮はどうしなければならぬかというような点については、農林大臣、大蔵省当局においても全く無関心でわからぬということはないと思うのです。そういう点に対しては、町村に対して、たとえば財政的に国がどういうような配慮をその後においてすべきであるかということを伺いたい。
  280. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御指摘になりましたオホーツク海沖の震災とか、その他単独立法で処理をされましたものにつきましては、比較的事故が多いのでございまして、そこで、その結果損失補償額が多くなっております。ただ、幸いと申しますか、そのころの特別立法では、私の記憶では市町村あるいは都道府県に負担がかかることはなかったと思っております。その後、天災法の関係になりますと、これは損失補償なり利子補給なりの場合に、都道府県、市町村の負担が出ることになっております。これらは幸いにしてその後極端な損失補償を必要とするような延滞はございません。だいぶ減ってきております。従って、都道府県、市町村に非常に大きな額の負担がかかるような——多少はございますけれども、金額としてはそう大きな額の負担がかかるような事例はそう多くないのではないかと思っております。ただし、たとい少いといたしましても、それが起った場合に財政的にどう処理をするかということにつきましては、私の承知いたしております限度では、現在のところ地方交付税の中の特別交付金によって処理するという建前をとっているはずだというふうに考えます。
  281. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点はわかりましたが、委員長に申し上げますけれども、いずれ自治庁長官の出席を求めて、この点について尋ねたいと思います。  それで、最後に農林省当局のお考えを聞きたいのです。特にこれは漁業協同組合に対する関係とか、それから漁業者に対する関係。漁業協同組合の場合には、この災害資金以外で相当大きな固定化の負債をしょっておるわけです。そういう実情農林省は知りながら、漁業協同組合等に対しては何ら再建整備とか整備促進の措置を講ずる意思がないのですね。昨年の委員会等においても私から質問したのですが、何らかの立法措置を講じて、不振の漁業協同組合の整備促進とか、あるいは、沿岸の零細漁家に対してはやはり農業改良普及事業に準じたような、そういう制度化が必要でないか。これに対しては、当時もちょうど楠見さんが参考人に来て、大体私の意見に同意されたのです。ところが奧原水産庁長官は、漁業は農業実情が違うからして、そういうような立法化は今のところは要らない、——要らぬということは心配がないという意味なんですが、一年たった今日、全く事情が深刻になっておるわけなんですが、これらの問題等についてはどういうように水産行政の中で考えておられるのですか。
  282. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 私は、現在の漁業協同組合の実態から見まして、新しい再建整備というものの必要がまことに緊要であるということから、不断にその実現に努力をいたしておるのでございます。ただいまその必要なしというお話がございましたが、何かそういうふうな誤解を招きましたとすれば、あるいは私の言葉が足らなかったのかと存ずるのであります。現在沿海漁協は四千百出資組合がありますが、その中でほんとうに総合的な経済協同組合として動いておりますのは千で、約八百見当の組合が赤字組合でございます。これらの経営を軌道に乗せていくということが非常に大事なことでございます。そのためには、農協についてすでにとられておりまする利子補給あるいは合併奨励等の措置も必要かと思いますが、さしあたり昨年からわれわれが力を入れておりますることは、巡回及び駐在指導の強化、これによりまして相当の成果を上げておりまして、幸い、明年度予算におきましても、指導の強化については今年度の五割増の予算の承認をいただいたような次第であります。しかし、私は、これをもってしてはきわめて不徹底、不十分なのでありまして、やはり漁協を総合的に振興させるためにはどうしたらいいかという基本的な観点に立ちました新しい再建整備というものをぜひやらなければならない、かように考えておるのであります。漁業制度調査会の今年じゅうに出します中間的取りまとめにおきましても、ぜひそういう線に即応した結論を求めたい、かように考えておるのであります。その上におきまして漁協の実態に即した再建整備のやり方をぜひ展開いたしたい、かように考えております。
  283. 芳賀貢

    ○芳賀委員 災害資金関係はどうですか。
  284. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 災害資金に関しましては、先ほどからお話が出ましたように、昭和二十六年から二十九年までの三十八億ばかりの融資の中で、過去三年間に四千三百万円、これは今年度の補正で一億四千万円、この補償をいたすことに予算の計上を見たのでございます。二十六年から二十九年までの間におきまして災害融資をいたしましたものにつきましては、これは、実は、融資を受ける組合の側におきましても、その組織あるいは機能、また特に気がまえの点において、借りねば損だという気持もあったということは否定するわけにはいかないと私は思う。相当なる案件が、先ほどからお話が出ておりますような目的外使用というような形でこげついてきたということは、まことに指導の不徹底を申しわけなく思うのであります。そこで、今私が申し上げておりまする新しい再建整備というものを最も要望いたしておりますのは、やはり北海道のあの不振漁場地帯の協同組合であります。ぜひそれらのものの機能を一そう堅実化しますためにも、これらの組合についての再建整備というものをぜひやらなければならない。それとともに、かねがね沿岸漁村の総合振興ということに力を入れておるのでありますが、これらの地帯につきましても、今年度根室周辺海域に取り上げましたと同じようなものを引き続き実行いたして参りたいかように考えております。
  285. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで、不振組合の整備強化の問題、あるいは水産業の改良普及事業の問題、ことしの予算を見ると、この二点については、農林省としては要求はされてありますが、中身はほとんど期待に沿わぬようなことになっておりますが、特にこの不振組合の整備強化等については、肝心の利子補給等の要求はゼロになっております。こういうことでは、今長官の言われたような問題の解決もできないと思います。ですから、すでにわれわれはこのことを予見して、やはり何か立法化の必要はないか、そういう根拠を作らなければ具体的に財政的な措置を通じてこれらの再建強化はできないのではないかということをわれわれ指摘しておったのですが、今の段階においてもやはり立法化の必要はないというような考えで臨まれておるかどうか。いかがですか。
  286. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 私は、ただいまお話のありました水産に関する普及事業につきましては、これは普及の体制、すなわち専門技術普及員、地区の普及員、この二本立の体制を予算の上におきまして今後逐次拡充していく、こういうことによって間に合うのではないか、かように考えておる次第であります。しかし、再建整備の問題につきましては、利子補給等の問題も重要なる一環であろうと思いますが、これらも当然立法措置を講じなければできない問題ではないか、かように考えております。
  287. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、農林漁業金融公関係ですが、これは改正点は至って簡明ですから内容的には疑義はないわけなんですが、そこで、お尋ねしたい点は、ことしの政府からの出資が七十七億出されておる。そのうちの七億円は一般会計からの出資分として、しかも造林事業出資分ということで出資がなされておるわけです。これは全く今までの公庫に対する政府の出資形態とは趣きを異にしておるわけですね。どういうことで産投特別会計から七十億の出資、一般会計から造林事業出資金という形で七億の出資をされたか、その理由を農林大臣にお尋ねいたしたい。
  288. 三浦一雄

    三浦国務大臣 産投からと一般会計からとの関係でございますが、一般会計から出したのでございますけれども、これは御指摘のように三十三年の森林収入の増を見返りにいたしまして増資したのでございますが、その事情林野庁長官から説明いたさせます。
  289. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 農林大臣の先ほどの御説明を補足して申し上げたいと思います。  昭和三十三年度におきます国有林野事業特別会計、今の見当でいきますと約十億円の歳計剰余金がある見通しであります。かつまた損益計算上の利益も十億円をやや上回るという程度に利益金が出るという見通しになるのであります。この十億円を一般会計に繰り入れまして、広く民有林の林業振興に寄与さすべきであるという考え方に基きまして、そのうちの七億を公庫に出資いたしまして、民有林の造林に対します費用に、非常に無理があった融資条件の改正用に充てたいという考え方でやった次第であります。
  290. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の聞いておるのは、今までにない異例なことなのですね。現在までは一般会計からの出資と産投からの出資ということで出資は出ておるわけですね。それが今年度に限ってだけ造林事業出資金ということになると、公庫の性格上にも影響があると思います。政府の出資が、何々の出資、何々の出資ということになれば、問題があると思うのです。そういうことになれば公庫法の改正も必要になってくるのではないかという疑義も生ずるのです。農林大臣はどうお考えですか。
  291. 三浦一雄

    三浦国務大臣 一般的に申し上げまして、一般会計から繰り入れるものと産投から繰り入れるものは、従前の例もありますから、これでよかろうと思うのです。ただ特に七億を増額した実際の経緯を申し上げたのでございまして、制度上からいくならば別に過誤はないと思っております。
  292. 芳賀貢

    ○芳賀委員 出資ですから、これは何も限定した出資というのはないと思うのです。国が公庫に出資するのですからね。その場合に、ひもつきにして、この分は造林に、この分は開拓にというような出資形態というものは、今まではなかったのですね。だから、今回そのような措置を講じられたというのは一つの新例になるわけですね。ですから、今後の国からの公庫に対する出資については、このような一つの新例に基いて、用途を指定した出資をやるようになるかどうか。いかがですか。
  293. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これは、出資は出資、それから今度公庫の資金の拡充は拡充と、おのずから法律的には別個だ、こう考えております。
  294. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し具体的に……。
  295. 三浦一雄

    三浦国務大臣 公庫の資金の増大は、産投からと、それから一般会計から繰り入れてやるということでございまして、これと別にその因果関係が法律的にあるわけじゃありません。ただ、公庫の資金を増額したのでございますから、そのうち造林の経費を拡大した、こういうことになるわけでございます。
  296. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それならいいのですよ。七十七億の出資増になって、ことしの資金運用の中で特に造林事業に重点を置いて、その分に対しては重点的な資金ワクの拡大をはかるというようなことでも差しつかえないのじゃないですか。
  297. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は今申し上げた通りであろうと思います。
  298. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは私の言う通りだという意味ですか。
  299. 三浦一雄

    三浦国務大臣 増資は増資、七十七億の増資。同時に、七十七億のうち公庫として運用の面におきましては造林を特に拡大してこれをなにした、こういうことになろうと思うのでございます。
  300. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、そうじゃないのですよ。ことし出資されたのは七十七億ですから、国庫からは毎年のように出資が行われておるのですから、だから出資がそれだけ増大したのですね。だから、絶対の出資金とか、借入金とか、回収分とか、そういうような原資の構成の中で、運用面では特に造林事業に対しては重点的に貸付条件等の変更も行なってその貸付ワクもふやすという従来のやり方で差しつかえないのじゃないですか。
  301. 三浦一雄

    三浦国務大臣 さようでございまして、従って、別に変ったことはないと思います。特別だ、特例を開いたというわけではなかろうと思います。
  302. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言うのは、大蔵省の三十四年度予算説明書の中には、明らかに、七十七億のうちの七億分というのは、これは造林事業出資分であるということが特に明記されておるのですね。それで私はお伺いしたので、農林大臣の今の答弁通りであるとすれば、それでいいわけなんです。  次にお尋ねしたいのは、今回の改正は、公庫法の中の別表の一部を改正して、造林事業関係の金利については据え置く、据置年限が二十カ年になって、返済年限が十五年、こういうような改正だと思うんですが、この際お伺いしたい点は、この公庫融資全体を通じて、たとえば別表の中の一部だけを改定する場合においても、全体の各種類別公庫融資の内容というものを検討して、そうして是正すべき点は同時に一斉に是正する必要があったんじゃないかと考えますが、いかがですか。
  303. 三浦一雄

    三浦国務大臣 別表の改正につきましては御意見があろうかと思いますが、来年度はとりあえず今の造林の方面につきまして是正した、こう考えております。
  304. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは公庫総裁の清井さんにお尋ねしますが、実際運用されて、その別表に示した金利とかあるいは償還年限等と、あるいは業務方法書や要綱等に基く実施の内容を対照した場合において、やはり全体に是正する点があると思うのですが、いかがですか。
  305. 清井正

    ○清井説明員 ただいま御質問の点でございますが、私個人のことを申しちゃ恐縮でございますが、公庫考え方といたしましては、現在法律で規定されている範囲内において貸付を実行いたしているわけであります。個々の問題につきましては私まだ十分検討いたしておらないのでございますが、特に一部のものにつきましては貸付条件を多少変えてもらいたいというような意向もあるようでございます。しかし、それをさらに政府に向ってこういうふうにしてもらいたいということまではっきり申し上げる段階にはまだなっていないのじゃないかというふうに私考えておるのでございますが、今後、直接金融をいたす立場におきまして、金融を受ける方々の御意向を十分伺いまして、必要があれば政府の方に向いましてもその考え方を申し上げたい。しかし、ただいまのところこういう具体的なことについてどういうふうにしたいという考えはまだまとまっておらない次第でございます。
  306. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私のお尋ねするのは、別表というのは言うまでもなくこれは最高の利率や償還年限をここにうたってあるわけですね。実行については業務方法書とか要綱に基いてやっておる。ですから、別表とその実施の内容を比較してみると、どの種類に対しても別表より相当下回った条件で貸し出しが行われておる。しかし、この据置年限等に対しては別表よりもきつい条件で貸し出しが行われておるのが多いわけですね。ですから、公庫の本来の精神から言えば、できるだけ貸付条件を低くして、いわゆる制度金融としての実を発揮する場合においては、別表なるものは実際に実行している姿に合せるような是正というものは、ある時期においては必要でないか。これは最初は、昭和二十八年ですか、議員立法でできた法律なんですが、実際政府としてこれを運用されて、そういう点に気がつかれておると思う。単に造林融資だけの別表の改正でなくて、どうしてこの際全体の公庫融資の内容に対して厳密な検討をなされぬのか、その点をお尋ねするわけです。
  307. 三浦一雄

    三浦国務大臣 まだ全面的な改定の必要が現在のところ熟しておらぬ、こういう考え方です。いろいろ金利を下げてくれというようなことで一般的な希望はありますけれども、それだけで改定するわけには参りまん。造林の方は、五カ年の据え置きでもって、そしてすぐに償還年限と、これでは造林に合わないのですね。そこで、これだけは造林に合うようにいたしたいというので、今回の改正をしたい、こういうことでございます。すなわち、二十年たちますと利用間伐ができる、そうしますと、二十一年、二十二年後になりますとその果実から償還できることになります。これがほんとうに造林資金としての実情に即するというので、これは改正をしたい、こういうわけでございます。全面的な改正の段階にはまだ達しておらぬ、こういうことでございます。
  308. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただ、この法律ができたたとえば昭和二十八年当時と現在では、農政上においてもあるいは経済的な条件の中においても違うのですよ。相違点が相当出ているわけですね。この法律ができた当時は、保守党の政権下においても、われわれの判断では現在よりは数倍積極的な農政というものが展開された。保護政策も今よりは相当強かった。現在、それが全く後退してしまって、補助金制度等もこれを完全に捨てて、融資一点張りの政策がとられておるわけですね。ですから、融資に重点を置くという場合においては、やはり重点を置いた意義が生ずるように金利体系や何かを是正していかなければならぬと思う。そういう配慮も努力も何もしないで、造林資金だけが実情に合わぬで、あとは何も改正の必要がない、そういう不勉強なことでは困ると思うのですがね。どうですか。
  309. 三浦一雄

    三浦国務大臣 具体的な条件についていろいろまた御指摘がございますると研究いたしたいと思いますが、ただ一般的に改正するということは現在の段階ではございません。
  310. 芳賀貢

    ○芳賀委員 経済局長どうですか。
  311. 須賀賢二

    須賀政府委員 公庫融資条件につきましては、個々の対象業種につきまして、現行のものよりも緩和の希望等はいろいろあるわけでございまするが、現段階におきましては、今回造林関係融資条件を改めまする点以外につきまして、特に具体的に取り上げる段階になっておりませんので、今回は小部分だけの改正にとどめたわけでございます。
  312. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば、事例をあげると、最低は三分五厘というのもあるでしょう。小団地の土地改良事業資金等は三分五厘の融資ですね。中にはまだ七分五厘くらいのも現存しておるわけです。ですから、同じ公庫融資の中で七分五厘と三分五厘というような相違のあるような融資が行われておるということは、これをすなおに了承できないのです。きょう時間がないから一つ一つについての論議はできないのです一が、そういう点はどう考えておりますか。補助金を打ち切って融資に切りかえるという政策の中で、こういう貸出利率の引き下げということが最近の貸し出し対象になった新しい種目については講ぜられておるが、それ以前のは昔のままで放置されておる。非常にアンバランスになっておるのです。こうなると、金利の安いものは重点的な融資であって、高いのは重点的でないというふうに解釈してもいいわけですか。
  313. 三浦一雄

    三浦国務大臣 小団地の非補助につきましては、三分五厘の道は先年から開かれておる。またこれは非補助の小団地の事業の促進上必要であると考えてやってきたわけでございます。同じ類型のものであってこれを改正するかどうかということは、現在のところまだ改正の時期に来ておらない、こういうことでございます。
  314. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、農林大臣農林省の方針を通じて公庫の貸し出しの金利コストを下げないでおくから、従って資金構成の中においても不合理なものが現われてきておるんですよ。これは本来からいくと全部を国の出資によって運用すべきなんですよ。ところが、最近はだんだんその出資分が減って借入金に依存しておるというような傾向をたどっておるわけです。そういう傾向が去年よりも今年の方がはなはだしいんですよ。そういう傾向を是正するためにも、まず積極的に貸し出しの金利とか条件を改善するということをやれば、それに公庫の資金コストを合せるような努力を当然しなければならないから、借入金よりも出資金を主体にしてやっていかなければならないということに変ってくると思うのです。やらないでいれば、資金構成というものは、だんだん、今年より来年、また再来年というふうに、全く借入金だけに依存した公庫の資金運用が行われると私は危惧しておるのです。そういう心配はないですか。
  315. 三浦一雄

    三浦国務大臣 公庫の資金の構成についてのお考え方はごもっともだと思います。われわれとしましては、できるだけ一般の繰り入れを拡大しまして、そして金利を低下するということは否認いたしません。しかし、これらといえども全体の関係があるものですから、にわかに低金利に全部直すというわけにはいきません。従って、原資の構成並びに諸条件の改定は関連したものでございますから、有機的に考えてこれが改善の道を講じたい、かように考えております。
  316. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ものの順序ですが、資金構成を改善することによってコストを下げることができるでしょう。そうすれば従って貸出条件も改善できるということになるんですよ。ところが、今の政府は資金構成を改善するという意欲がないんですよ。これは毎年の出資と資金構成の内容をそちらから御説明願えばわかるのですが、そういう意欲がない場合の方法というものは、むしろぎりぎりのところまで条件を改善して、結局資金構成についても出資金中心でいかなければこの実行はできないのだというふうな態度に出なければ、ものの解決というものはできないのです。相手を見てやらなければこれはできないのです。これは老婆心ながらむしろ方法を教えるようなものですけれども、そういう意味において、この公庫の各貸出金の内容について、別表の改正で押えれば、またその以内で事務方法書や要綱で貸し出しを行うことになると思うのです。その方がいいじゃないですか。
  317. 三浦一雄

    三浦国務大臣 無利子の資金をこれに投入しますれば、利子の高い資金を持ってくるよりは有利でありますことは、教わらなくてもこちらでもわかっております。しかし、同時に、本年も七十七億入れたのでございます。この分量がつまり不十分だ、その努力を払わないじゃないか、こういうお話だろうと思うのでありますが、これは、われわれとしましてはできるだけ拡大に努力いたしたい、こういうことでございます。
  318. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、これは経済局長でも総裁でもいいですが、三カ年間の資金構成の推移がどういう方向に向っておるか、出資金と借入金の累計と、その資金構成のパーセンテージはどっちにウエートをかけておるかということを、答弁を通じて明らかにしてもらいたい。
  319. 須賀賢二

    須賀政府委員 最近の公庫の原資構成につきまして、出資金の比率が若干ずつ低下をいたしておりますことはただいま御指摘通りでございます。昭和三十二年度は出資金が四十五に対しまして借入金が五十五、それから三十三年度は出資金が四五・一に対しまして借入金が五四・九、三十二年、三年はほぼ同じでございまするが、三十四年度は出資金が四二・七%に対しまして借入金が五七。三%になっておるわけでございます。できるだけ出資金を多くいたしまして公庫の原資構成をよくいたしますことはもとより望ましいことでございまするが、財政投融資全体の計画によってきまって参りますことでございますので、本年はこのような構成に相なったわけであります。     〔大野(市)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、このような構成になっておりまするが、借受者に対しまする負担関係につきましては十分考慮いたしまして、二十三年度の資金運用利回りは五分五厘五毛になっておったのでございまするが、三十四年度では今回の業種別貸付計画及びそれに適用いたしまする利率によりますると五分五厘三毛になるわけでございますので、前年度より〇・〇二だけ下るわけでございまして、原資構成の内容によりまして借入者に負担をかけるような運用方法は考えておらないわけであります。公庫の業務運営の合理化等によりまして、経費の面等につきましてもできる限りの調整をはかって参っておるようなわけであります。
  320. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の答弁は、これは何も経済局長の手柄で金利が五分五厘三毛になったんじゃないですよ。こういうような資金構成が悪化しておる中においてこの程度貸付ができるんですからね。これをアンバランスを是正していけば、まだまだこれは条件を改善することは可能でしょう。いかがですか、不可能ですか。
  321. 須賀賢二

    須賀政府委員 もとより原資構成の出資金が多くなりますれば原資コスト全体が下るということはもちろんでございまするが、この点は先ほども申し上げましたように財政投融資の全体の計画できまって参ることでございまするので、本年度は先ほど申し上げましたようなことによって運用して参りたいと思っております。
  322. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、ただいま財政投融資関係はこういうふうに出資金が少くなってくるということですが、ことしの政府の財政投融資計画は昨年より一千億以上ふえて五千億をこえておるわけです。もしも農林水産業の面に対する財政投融資計画というものが相当重要視されれば、こういうことにはならないはずなんです。軽視されればこういうことになるわけですね。一般予算の面についても、財政投融資の面においても、これは両方から農政というものが軽視じゃなくてもう放棄されるような状態というものに対して、農林大臣は甘んじておることができるわけですか。
  323. 三浦一雄

    三浦国務大臣 予算の増額につきましても、投融資の増額につきましても、御指摘のように拡大して参りたい所存であります。しかし本年度はこの程度にとどまったことは私として遺憾でございますが、農林省としましては今後とも努力すべきものと考えております。
  324. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特に、出資関係においては、昨年は八十億でしょう。ことしは七十七億ですから、三億減ですね。借入金については預金部資金と簡易保険の資金からそれぞれ五十億ずつ借入金がふえておるわけですね。回収金は去年よりも四十億円見込みが減っておるというのはどういう理由ですか。前年度の百六十億に対して、ことしが百二十億ですね。
  325. 清井正

    ○清井説明員 回収金につきましては、昨年の当初は百五十億を実は見込んだわけでありますが、その後繰り上げ——これは約定によって償還されるものと繰り上げ償還をされるものと両方あるわけでありますが、主として繰り上げ償還の回収金が思うようにいかなかったもので、その後約十五億ばかり回収金が減って参りまして、ただいまの見込みといたしましては、昨年度の回収金といたしましては約十五億減の百三十五億になったもの、こういうように私ども考えております。明年度予算につきましては、今年が実績として百三十五億見込まれるわけでございますが、それを十億ふやしまして百四十五億円回収金があるものと想像いたしまして運用して参るようなわけであります。むろん、これは年度がたっておりまするから、ある程度の回収金があることは当然でありますが、三十三年度実績がちょっと下ったようなことでございますので、それを見合いまして、三十四年度は百四十五億、こういう回収金の見込みを立てておったわけでございます。
  326. 芳賀貢

    ○芳賀委員 林野庁長官にお尋ねしますが、ことしの七億の出資関係は先ほどの説明通りですが、今後もこのような形で国有林野特別会計の中で剰余金等については一般会計に繰り入れ、その中からまたたとえば公庫なら公庫にひもつき出資のような形をとる、今後継続的にこういうことを考えておられるのですか。
  327. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 特別会計といたしましては、歳計剰余金がふえ、しかも損益上の利益金が出るという場合におきましては、その限度内におきまして極力一般民有林の振興に寄与するような方向で進みたいというふうに考えておるのでありますが、それを今後一般会計に繰り入れるという方法でいくべきか、あるいはまた特別会計法の改正等を行いまして、特例できめられたものに出資するとかその他の方法でいくべきかという点は、早急に検討したいと考えておる次第でございます。
  328. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の答弁ですが、結局、国有林野特別会計の剰余金は繰り入れをする場合は森林基金に繰り入れるか一般会計に繰り入れるということになるわけですね。ですから、直接は現行法規のままでは公庫に出資するなんということはできないのですね。今も現行法の改正等も考えておるということですが、今後はその方向に向ってすっきりした形にしていきたいというような御意思ですか。
  329. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 その点につきましては、今後関係方面とも十分折衝いたしまして、困難な問題ではあるかと思いますが、やはりできればすっきりした方法でいきたいというふうに希望しておるわけであります。
  330. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、別表の改正がこのように行われた場合、内容的に、実行する場合に、たとえば補助造林とか非補助造林の区別もありまするし、それから森林組合とか農協の系統組織あるいは地方公共団体等に対する貸し出し、あるいはパルプ会社とか個人の造林者、こういうふうに対象が変ってくると思うのですが、たとえば業務方法書に予定される貸し出し条件というものは、今回の別表の改正によってどういうふうに実行される御意思か。これは総裁の考えによるわけですがね。
  331. 清井正

    ○清井説明員 この具体的な内容につきまして、この七億円に相当するものをどういうふうに貸付を実行するかということにつきましては、これは私どもなお農林省当局とよく相談をいたしまして、今後その内訳等につきまして十分御相談を申し上げなければならぬ問題でございまして、今私の方からこのうちどの程度をこういう方面に回すということはちょっとお答えできない状態であるのであります。ただ、貸付条件につきましてはこれは、ただいまのお話もございました通り、今回の改正の趣旨が、造林に対する融資の償還について償還期限なり据置期間が短か過ぎるということで、これは実情に合うように御訂正になるというようなことでございますので、その趣旨に沿うて私どもは実行いたして参る、こういうふうに考えておるのであります。
  332. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 今回の新しい改正された融資条件によりまして融資いたしたいと考えておりまする対象は、森林組合とかあるいは農業協同組合等がみずから直営で行います造林、あるいは農協等がその山村民の組織というものとの関連におきましてそういう組織に貸すということを前提にして責任を持って公庫との関係におきましてやるというふうな対象のものに対しまして、この新しい融資制度を適用するのを趣旨としておるのでありまして、その場合、大会社あるいは輪伐経営等ができます大所有者に対しましては、二十年据置というふうな制度の貸し出しはいたさないという考え方方法書を定めていきたいというふうに考えておるわけであります。
  333. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今回の出資ですが、結局非補助造林に重点が置かれるように結果的になるわけなんですが、そうなると、たとえば小団地等土地改良の場合、あの六十五億円の基金を設けて、その金利だけで三分五厘の利子のものを作るというような形と、大体類似していると思うのです。これは直接出資にいたし、向うは基金にしているわけですね。ですから、大臣にお尋ねしますが、方向としては、造林関係についても補助金をだんだんなくして非補助のいわゆる融資に重点を置いていくお考えですか、どうですか。
  334. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は、森林資源の培養は大切ですから、助成は依然やっていきたいと考えております。同時に、この造林資金を今度創設いたしましたにつきましては、実施上低利の造林を進めていく余地もあるのでございますが、助成造林と、それからこっちの方の造林資金による造林とあわせて進めるという方向にいきたい、こう考えております。
  335. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、公庫融資関係があるわけですが、自作農創設資金の運用についてお尋ねしたいと思います。  現在の自作農創設資金の内容は、金利についても以内ということになっていないのです。五分ということに限定しておるわけですね。以内になっておれば、実情に応じて、あるいは公庫融資全体の均衡の中で、たとえば四分とか三分五厘に下げることはできるけれども、現行法はもう利子は五分ということにきまっておるのですから、これについては政府が改正案等を出さない限り、法律改正を行われない限り、この自作農創設資金の金利引き下げはできないわけなんです。ですから、そういう点に対して改正の御意思があるのかないのかというのが一点。  その次はこの貸し出しの内容ですね。業務方法書によると最高二十万を限度にしておるわけですね。そうなると、毎年のように自作農創設資金のワクが拡大されて、三十四年度は百億になるわけですが、この最高二十万円という限度は完全なる自作農を育成する、維持させるという場合においては、あまりにも少きに失すると思うのですよ。ですから、これらの点に対しては、当然限度の引き上げ、この是正を早急に行う必要があると思うのですが、この二点についてどのように考えていますか。
  336. 三浦一雄

    三浦国務大臣 自作農の金利の五分は、これは当分のうち据え置かざるを得ないと考えております。同時に、二十万円の限度でございますが、来年度も百億、本年よりは三十億程度増額しますけれども、この資金の需要が非常に多いものでございますから、まだこの限度では二十万円等の制限は置かざるを得ない、こう考えております。自作農創設の本義からいくならば、二十万円と制限せずにいくのが好ましいのでございますけれども、資金のワク等から考えまして、この制度で当分いきたい、こう考えております。
  337. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、政府自身としては改正の意思がないわけですね。国会の意思等が発動されて改正する以外に、政府は改正の意思がない、その点だけは明らかですね。
  338. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいまのところ、予算等の制約がございますから、これでいきたい、こう考えております。
  339. 松浦周太郎

    松浦委員長 丹羽兵助君。
  340. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 私は農林漁業金融公庫法の一部改正につきまして、時間の都合もありますから、ほんとうに簡単にお尋ねいたしたいと思います。  この改正の要点は、第一点は資本金の増額でありますが、それについて、出資金の七億円については芳賀委員から詳細お尋ねがございました。私は、この産業投資特別会計からの出資金七十億円、これに中心を置くわけではありませんが、これに関連してお尋ねをいたしたいと存じます。昨日本委員会におきまして、この改正法案について質疑するため資料を求めまして、本日資料の御提出をいただきましたので、この資料に基きまして、先ほど申し上げたようにきわめて簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  公庫の資金でありますが、先ほど資金構成ということについて大臣の御発言もあったようでありますけれども、特にその資金についてお尋ねをしたいのですが、そのうちでも、公庫の資金は、一般会計の出資金と産業投資特別会計の出資金と、特に創立当時の見返り資金及び復金並びに開発銀行からの継承金による出資金とでありますが、この最後に申し上げました継承による出資金であります。二十六年には一般会計と産投会計、二十七年から三十年までの四年間一般会計からこの出資金が出ており、三十二年度以降は産投会計出資金がおもになっておりまするが、公庫の出資金のうちに見返り資金及び復金資金並びに開銀資金が二十六億二千六百万円というふうにこれを見ております。そうして今までに返還されたものはずいぶん上っておるのでございまするが、その点について一つお尋ねをしたいのであります。特に貸付金の残高の内容についてでありますが、貸付金と申しますか、資金になるものの残高の内容であります。見返り資金の二億三千何がしと、開発銀行がわずか、復金が六億八千七百万円、合計、この資料によりますと九億三千万円、十億近い公庫運用資金となるべき金がまだ取り立てていない。先ほど総裁の御説明貸付金の回収金の金額を言っておられる。私の申し上げるのは、公庫法の第四条の一項にある三十二条から入ってくるこの引継金であります継承金が十億近く残っておるのですが、この回収の不能というのですか、資金となるというもので回収不能になるだろう、こういうように見られる金額は今後どれくらいと見ておられるか、その点をお尋ねしたいと思います。
  341. 清井正

    ○清井説明員 ただいま御指摘の点でございますが、お話の通り二十六億二千六百万円を承継いたしたのでございますが、そのうち回収及び消却がありまして、ただいまのところは九億三千三百万円残高としてあるわけであります。もっともこの中には返済の期限が来ないために当然残高として残っておるものもございますけれども、大部分は延滞になっておる状況にあると考えておるのであります。そのうち、特にいわゆる見返り資金の分は、金融機関が全額保証している関係もございますので、大体今後これは返済される見込みがあると思うのでございますが、一番問題になりますのは復金関係の資金でありまして、ただいま六億八千七百万円ばかり残っております。これは漁船が一番金額が多いのでありまして、塩業あるいは林道等ございますが、これは復金が貸し付けたもので、相当年限もたっておりますから、そのときの事情もありまして、一件々々調べてみますと相当むずかしいものもあるようでございます。従って、幾らかという質問に対してはっきりお答え申し上げられませんけれども、この六億八千七百万円のうちの相当金額はいわゆる債権回収にむずかしい問題があるんじゃないか、こういうふうに率直に考えておる次第でございます。
  342. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 そこで、私のお尋ねしたいのは、ただいまも出ましたように、復金分の回収がきわめて困難だと同時に、復金分の消却は非常に多く見ておられますが、これは今まで処理されておるのですか。消却金の内容ということをこまかに御説明いただくわけにいきませんでしょうか。世間でとやかく消却金については政治的な圧力が加わっているというようなお話も聞かれぬわけではありません。その消却の基礎というものは、いわゆる会社でいいますならば損金になるわけです。それが今日一番復金分において多い。何を基礎にして消却をしておるか。当然これは基金になるものです。損益として見られるものではない。当然受け入れて基金となるものが、消却金として落してある。その点は一体何を基準にして——もしおわかりにならなかったらまた後日でけっこうでありますが、その基準と、どの程度、どの会社からこれだけ大額の金を取り立てずして消却せられたか、その点をはっきりしていただきたい。
  343. 清井正

    ○清井説明員 御質問の点がございましたが、これは、実は、復金資金を引き継ぐ際に、相当これは将来取り立てが困難になることもあり得るということを考えまして、当時四億三千万円の消却財源をいただいておるのであります。私どもといたしましては、むろんこれは最後の備えでございまして、貸付金についてはできるだけ回収をはかっておる。そして、できるだけ消却を少くするということはむろんでございます。しかし、その後毎年度決算をいたしますときに、私どもとしては、それぞれ一件々々この債権を当りまして、どうしてもこれは消却をしなければ何としてもこれ以上追及することができないという問題につきましては、私どもの案を具して、これは消却をいたすべきであるということで、政令に基きまして大蔵大臣の承認を得ることになっておるのであります。私どもといたしましては、この表にございます通り、復金関係で二億一千六百万円消却をいたしておるのでございますが、一々これは年度の終りに各金融の出先機関から資料を取りまして、まず第一に、一件々々につきまして、これは抵当権を設定し担保、保証人があるのでございますから、抵当権を設定しておるものにつきましては抵当物件を処分しておるかどうか、保証人をとっておるものについては保証人に対する債権の追及が済んでおるかどうか、抵当も始末した、保証人の追及も済んだ、もう何もないというときには、最後に当該債務者に対してさらに追及して、取り得る余地があるかどうかということを調査しておるわけであります。そうして、その場合においても信用調査をしまして、その結果、取り得る見込みがあるのに、いい加減にというと語弊がありますけれども、追及を免れるということになっては相ならぬから、われわれといたしましては徹底的に調べて、担保、保証人、最後に債務者の資力、信用ということを客観的調査に基いて調査いたしまして、どうしてもこれは消却せざるを得ないというものにつきましては、その案件と金額とを算出いたしまして大蔵大臣の承認をとります。その承認に基いた結果消却をいたしておる、こういう経過になっております。それがそのうちの二億一千六百万円ということになっております。私どもといたしましては、むろん消却というのは最後の最後でありますから、貸し付けたものにつきましてはできるだけ債権を回収することに全力を注ぐのは当然であります。今後復金資金につきましては相当むずかしい問題があるように考えておりますけれども、私どもといたしましては、なお残が相当ございますので、できるだけただいまのような方法を講じまして資金の回収に努めて参りたい、こういうふうに考えております。
  344. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 なぜ私が総裁にそれをお尋ねしておるかということはこの公庫の基金としてせっかく譲り受けるものが、ただ紙切れをもらっただけで、納まってこない。しかもそれを消却金としてどんどん落していくことになりますと、あの法四条の出資金の確立ということはできない。紙切れの出資金になる。その他のものは現金が返っても、継承金だけは次から次へと落していく。しかもその落した額は国民に対してはっきりしてない。あなたは大蔵大臣の承認を得ておると言われるけれども、それは承認を得ておられるかどうか存じませんが、当然そうでしょうけれども、これは国民の血税であって、きわめて大切なものである。それが、あなた方の一方的な考え方で、たとえて申しますならば、今回収能力のないと認めたものはというお話がございましたが、そしてまた保証人の話も出たのですが、今日形の上においては会社が解散したとかあるいはその他の事情で消却金で落された向きもある、また落されようとする向きもあるかもしれませんが、保証人について見れば、相当な資格があって、返し得る資力を持っており、能力のある人もある。あなたの御説明なら、当然これは消却金として落すべきでないのに落されておる事実を私どもは聞かぬわけではないのです。だからして、もう少し消却金の問題については厳重におやりになると同時に、もっとはっきりした筋立てたもので消却しないと、これは市中銀行が金を貸して取り立てのできないという性質のものとは違う。国民の税金を借りておるのですから、この国民の税金を借りておる処置については十分厳重なる処置をとっていかないと、私は国民から大きな疑惑を持たれるもとになってくると思うのです。そこから、世間でときどき、公庫の資金というものは入らない金が入ることになって、それが資金になっておるというような、そしてときどき資金の点については法律の改正をしていかなくちゃならぬ、こういうことになって参りますから、その点をはっきり、ほんとうに今あなたのおっしゃったように消却を認めていいものか。  そしてまた、一点お尋ねしておきたいの、これは公庫の欠損金として認めていくものではない。決して公庫の業務による欠損金として認めるものではない。明らかに資金を国家から出資していただくべきものが入ってこないということになってくるのですから、消却金として認めていくことは、それはあなたのような方法でいかれるならばこれを認める分があっていいかもしれませんが、これは欠損金として見ていかれるというおそれが多分にある。そういうことになったら大へんだと思いますが、その点を一つお尋ねをしておきたい。
  345. 清井正

    ○清井説明員 御指摘の点十分承わりましたのであります。ただいま申しました通り、安易にこれを消却するということは考えていないのであります。従来ともそのつもりでやって参っておりまして、ことに、ただいま御指摘のあった通り、本人の追及の問題等のときも、ただ客観的に金がありそうだからどうだとか、なさそうだからどうだということではいけないので、やはり興信所その他の客観的な信用調査もする必要があるということで、そういう準備もいたして、ただいま調査をいたしておるのであります。そういうようなことで、なおかつどうしてもということになって初めてこの消却の問題が起ってくる、こういうことでございますが、御趣旨は今おっしゃる通りであります。今後消却につきましては細心注意を払いまして、できるだけ債権の回収に全力を払うということに専心していきたいと考えております。ただ、最後の消却の問題でございますが、一応毎年度々々々消却金額というものを掲げまして、ただいま二十数億消却財源があるのでございます。やるといたしますればその部分から回すということになるのであります。これは毎年度年度一定の金額を消却基金として積み立てをいたしておるのでございますから、消却いたす場合はその中から回すということになると思います。要するに、ただいまの御趣旨はよく拝承いたしました。今後この問題は慎重にいたしたい、かように考えております。
  346. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 もう一度お尋ねいたしておきまするが、今まで消却金とせられたもの、また総裁から今御説明のありました、あらゆる角度から調査して、そしてこの消却金として落さなくてはならない、こういうものが出てくると思うのです。その出て参りましたとき、また出て参りましたもの、これに対して、今まで普通の融資を受けた何千、何万、何十万という数多いものとか、またそれと同時に運用の上から出て回収不能のはまた筋が違うでしょうが、当然ここの基金となるべきものが入ってこない、こういう金ですから、しかも数はきわめて少い、いろいろ世間の疑惑を持たれるおそれがあるのですから、こういうような消却をせられたもの、また将来するものは、公けにせられる責任、必要があると思いまするが、いかがでしょう。これは性質が違うのです。普通の借りた金が返せなかったものと違うのであります。それで、そういうものは少くとも委員会くらいには公表せられるべきものだと私は考えまするが、いかがでしょう。それから、その他のこまかいものについては延滞金をとったり利息をとっておいでになりますが、これにも引き続いて延滞金をとったり利息をとっておられるかという二点だけを重ねて承わりまして、委員長からの御注意もありますから、質問をやめたいと思います。明確に御答弁を願いたい。
  347. 松浦周太郎

    松浦委員長 答弁は簡潔に願います。
  348. 清井正

    ○清井説明員 この中のもので具体的に消却するときに公表する方法をとってはどうかということでございますが、それはやはり債権債務の関係でございまして、消却をいたすいたさぬということは微妙な問題だと思うのであります。従って、これをあらゆる形におきまして外へ出すということについては、ちょっと私はいかがかといった感じがいたしております。従って、私どもといたしましては、今後単独でやるわけではないのでありまして、大蔵省にお伺いを立てて、大蔵省の承認を得てやるというような手続もあるようなわけであります。私どもといたしましては公表をいたすということをとらず、私、責任を持ってこの処置について慎重を期して参りたい、こう考えておる次第であります。
  349. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 これの利息、延滞金はどうしていますか。
  350. 清井正

    ○清井説明員 これについても同様の措置をやっていかなければならぬと思っております。
  351. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 現在とっておりますか。
  352. 清井正

    ○清井説明員 現在とれるものについてはとっておるのであります。
  353. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 債権債務の関係でこれは公表すべき筋合いのものでないのでそういうことは差し控えたいという、そのあなたのお気持はわかる。しかし、これは債権債務じゃなくて——債権債務として現在どれだけだれが借りておるか、またどれほどの負債があるかということを天下に知らしめる必要はない。しかしながら、国家の税金で融資されたものが、事情があって返されない、そのために多くの人を救うために基金として回ったものが予定通りに入ってこないというような点、こんなのは氏名を天下に公表しても何らあやまちはないと思う。当然だと思います。そういうことをなさらないから、世間では、これにいろいろ政治的な圧力が加わって納めなくても済むのだ、そういうように解釈されておる。私はこれを出されても法律違反でもなければ人権を侵すものでもないと思う。現在借りておるものの、その内容を暴露しろと私は言わない。いよいよ回収不能として消却をなさるとき、本人もそれを承知するでしょう。本人が承知をするのだから、その承知した金額とその氏名を天下に知らしめるのに何らちゅうちょするところはない。それを重ねて承わりたい。
  354. 清井正

    ○清井説明員 重ねてのお話でございまするが、私どもの取扱いといたしましては慎重を期して参りたいと思いますので、ただいまのところは、公庫の責任におきまして大蔵省と相談をして処置して参りたい、かように考えております。
  355. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連して……。  楠見さんにちょいちょい来ていただくのも気の毒ですから、この際ちょっとお尋ねしておきますが、きのう当委員会において問題になった例の三十億の調整勘定、これを補正予算政府は組んでいるわけであります。それに対して、現在その三十億がどうなっておるか、それから、補正予算に組む経過、これをあなたの知っている範囲でいいですから……。つまりあの果実を農林漁業団体のものに使うという前提条件があったと聞いております。それに対して、現在その三十億自体の調整勘定はどうなっておるか、その経過、それから今後一体あれをどうするのが一番いいかというあなたのお考え、これを一つ聞かしていただきたい。
  356. 楠見義男

    ○楠見参考人 調整勘定は、大体政府の方の御方針では、本年の二月末をもって閉鎖をしたい、こういうようなお気持のようでございます。従って、今日まで、計算は正確には申し上げられませんけれども、大体三十三億程度のものが出るのではないかと思います。私どもとしましては、御案内のように、金融機関再建整備法に基いて政府から三十八億の金をお借りしたのでありますから、それにできるだけ近い金が出れば一番いいわけであります。二十三億程度しか出ないとすれば、あとの五億はまけていただく、こういうことになるわけであります。その使い万の問題でありますが、私どもとしては、借りた金をお返しするのでありますから、それをどういうふうにお使いになるかということは、これは政府の御一存でなされることだと思うのであります。ただ、しいて希望を申し上げさせていただければ、戦争中に相当戦時国債を持たされたとか、あるいは満鉄債その他の外地債を政府の勧奨によって持たされたとか——持たされたという言葉は適当じゃありませんが、持ったとか、そういうことによって相当の痛手を受けたわけでありますから、従って、もともと農林中央金庫は、産業組合中央金庫の当時から、農業団体が預金もし、また出資もしてできた金庫であり、それが再建整備に当って出資も全部飛んでしまったというようなことでありますから、この金は、私どもとしては農林漁業のために使っていただきたい、こういう希望は申しております。なお、私は、個人的には——これはこういうことを言う権利も何もないのでありますが、個人的には、そういうような金であるから、農林関係において、今まで農林政策の上でうまくいかなかったこと、あるいは開拓等の問題もありますが、これは言葉は適当じゃありませんが、政府の政策の上において捨て子になっているこういうようなものに集中的に出すことがいいのではないか。これは農政学者じゃないのですが、農政関係者として、個人的な希望は申しております。しかし、いずれにいたしましても、政府の方でおきめになることでありますから、われわれとしてはただ単に希望を申し上げるにすぎないのですが、農業関係団体としては、今申し上げたようなことから、農林漁業のために、特に教育事業であるとか、あるいは国際関係が非常にひんぱんになってきたのだから、国際関係の費用に使うとか、あるいは農協を健全にするために検査事業を振興するとか、こういう事業の方面に使っていただきたい、こういうことを要望はいたしております。
  357. 中澤茂一

    ○中澤委員 農林大臣に伺いますが、どういうふうに使うつもりか。あなたの大蔵省折衝において、これを今後補正予算に組み込まれたら、どういうふうにするつもりか。
  358. 三浦一雄

    三浦国務大臣 この使い方でございますが、農業団体では、これを公庫の原資に入れまして、その果実を使わしてくれ、こういうふうな要望がございます。それは、この前も御説明申し上げたように、再三いろいろ折衝いたしましたのですが、これを換骨奪胎して、一般の予算から今の研修その他の経資を増額するということで今回取りきめまして、その前段の三十億そのものを、大蔵省では、充当したと、こう言うのでございましょう。同時に、後段の利子の運用について、十分じゃございませんでしょうけれども、相当の額を研修あるいは教育の推進等々に使う予算に計上しておる、かような経緯になっております。
  359. 松浦周太郎

  360. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は、午前からいろいろ、農林漁業の金融の問題を中心にいたしまして、あるいは開拓融資の問題、あるいは農業、水産各金融のそれぞれの関連の問題について非常に熱心な討議が行われて参ったわけでございまして、この問題は農政の問題としては非常に重要な問題でございますから、私も少くとも一時間以上のいろいろな質問をいたしたいと思いましたし、幸いきょうは農林漁業金融公庫の方の総裁、あるいは農林中金の方の理事長等もおいででございますので、そういう点についての中金あるいは公庫側の意見等も徴したい、かように考えておったわけでございますが、同僚議員の御意向をそんたくいたしまして簡単に数点について本日は御質問申し上げたいと思います。  まず最初に、参考人もおられることでございますから、御承知の農林漁業金融再編成の問題について、これは数年来いろいろ論議をなされて参りまして、農林省においても農林漁業金融改善協議会等で一つ年間いろいろ審議した結果、中間報告として農林漁業金融についての考え方を出されておることも御承知通りでありますし、また、一方、農業団体といたしましても、農協中央会等において、農協組織強化審議委員会等において、農林金融の交通整理案、こういうふうなものもいろいろ出されておるわけでございますが、政府といたしましては、私どもが農業団体の意向を受けてすみやかに成立をさせたいと考えておりました農業基本法等の問題について、農林漁業基本問題調査会、こういうことで今後二年間取り組むような方針を出されておるわけでございますけれども、おそらく、農業金融等の問題については、そういうところでも、もしこの調査会ができるということになりますれば、じっくり取り組まれることだろうと思います。  そこで、参考人の清井さん、楠見さんにお願いしたいのでありますが、先ほど来申し上げましたことと関連をいたしまして、農林漁業金融再編成の問題について、過去の経験等から率直にこの機会に要約してざっくばらんな意見を承わりたいと思います。
  361. 楠見義男

    ○楠見参考人 御案内のように、農林金融再編成の問題は前からあったのでありますが、具体化して参りましたのは、昨年公庫が支店を設置するということになったのに関連しまして、公庫と金庫の業務というものをどういうように調整するかということが一つ。もう一つは、農業共済の仕事がだんだん伸びまして、結局四、五年先には責任準備金が千億になるであろう、そうすると、この千億の責任準備金をどういうように運用するか、これは農業共済が始められた趣旨にかんがみてできるだけ低利に長期に雄大還元をすべきである、そうなってきた場合に、この資金運用といわゆる組合における信用事業というものとの調整を、今日にして将来を考えて大きな方向づけをしておかなければ、将来悔いを残すような混乱を生ずるであろう、こういうことから、いわゆる農林漁業金融の再編成問題が起ったことは御承知通りであります。私どもはぜひその問題を解決していただきたいということで政府にもお願いをして参ったわけであります。と申しますことは、結局公庫がだんだんと支店がふえてくる、これは私はまたいろいろな意味があると思うのでありまして、直接公共的な仕事であるとか、あるいは前の総裁の言葉をかりますと救貧的な仕事であるとか、そういうようなもの、あるいは新規の育成すべき産業であるとか、そういうようなものについて、ちょうどアメリカにおきでまするFHAと同じような機能を持って、直接的に責任を持ってやっていくべきであるということになって参りますと、ここにいわゆる組合金融との調整の問題と申しますか、交通整理の問題が出るわけであります。そこで、そういう観点から、今お話がございましたように、農林省に農林漁業金融改善協議会というものができまして、今までのところは、資金の性格から、あるいは種類から見た交通整理が一応中間的な報告として出ておるわけでありますが、今申し上げました、そのそれぞれの金融を担当すべき機関の間における今日あるいは将来の動向を見て交通整理をする必要があるということで、その問題が残されております。一方、今お述べになりました農協においてやはり交通整理の問題が出ておるのでありますが、その主要な点は、先ほど来申しますような直接原因のほかに、農林中金の民主化の問題、これは、ごく簡単に申しますれば、現在役員が官選になっておりますのを公選にしよう、こういうことがかねて懸案になっておりまして、その二つの問題が関連して農協中央会で取り上げられておるわけであります。私どもは農林中金の民主化の問題は、これは多年の懸案であり、平たく申せば大勢である、こういうように考えておるのであります。これを実現するに当っては、これだけが解決することによって農林金融の問題がすべて解決した、こういうようになることが非常に憂慮せられるので、そのことは大事であるが、それと同時に、かねてからの懸案の交通整理の問題もあわせて一挙に解決して参ろうということで、政府方面に対しましても、あるいは農協方面に対しましても、各方面にそのことをお願いしておるようなわけであります。  どうか、この問題は、今お述べになりましたように、農業基本法においていろいろ御審議になることと思いますけれども、しかしまた、この金融の問題は一方では非常に重要な問題でありますので、十分慎重に御検討を皆さんの方におかれましてもお願いいたしたい、こういうように今日私は考えておる次第でございます。
  362. 清井正

    ○清井説明員 ただいま楠見理事長からお話がございましたが、私は実は公庫の仕事をお預かりしてからわずかしかたちませんので口幅ったいことを申し上げるわけにいかないのでございますが、私も大体楠見理事長と同じような方向に考えておるのであります。具体的にどうこうということを申し上げる自信はございませんけれども、やはりこの際農業金融界における公庫としての立場を十分徹底するような措置を、せっかく調査会もできるといたしますれば、それとの関連において農林金融の再編成という意味合いから再検討していったらいいのじゃないかということを大体考えておるような次第であります
  363. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま清井さん、楠見さんの方からそれぞれ見解の表明があったわけでございますが、大臣は農政の基本方針の中でも、第一次産業と第二次産業、第三次産業との所得の較差、あるいはその他経済の非常な較差等について、今後これをどうするかということを真剣に考えなければならぬ、こういうふうに言っておられるわけですが、そういう問題を考える場合の一つの重要な問題は、申し上げるまでもなく、農林水産関係金融問題をどうするかということにあることは当然でございます。そこで、今お述べになりましたことと関連をして、本年度の農林漁業金融の問題についての基本的な方針をどういうふうに大臣はお考えかを、簡単に一つ要約してお述べを願いたいと思います。
  364. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今楠見理事長から御発言がありましたもののうち、中央金庫の民主化等についての素案等もだんだん御相談に相なっているようなことでございます。ただ、金庫自体としても最終的な考え方じゃない、こういうようなことでございますが、これを取り上げて検討中であります。同時に、先ほど来申しました通りに、農村の金融制度等につきましても協議会等で取り上げておりますから、この線に沿うて改革のメスを入れたい、こう考えます。同時に、基本問題との関連でございますが、基本問題につきましてはもとより基本的な事項を取り扱うのでございますが、金融問題につきましても、取り急ぎますものはなるべくすみやかに成案を得て解決をしていきたい、こういう考え方で進んでおります。
  365. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 基本問題についていろいろお尋ねをすると時間がかかるわけでございますけれども、農業金融あるいは漁業金融、あるいはまた、林業金融というように申し上げていいかどうかわかりませんけれども、まあ林業金融というものを含めて、今のところではどういうところにウイーク・ポイントがあるか、端的に大臣から御意見を伺いたい。
  366. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は、農業金融の方は、多年関係の方々が努力せられまして、そして組合金融等は拡大して参った、同時に中央機関である中央金庫も順調に拡大し成長してきた、こういうことでございまして、この面につきましてもなお改善、改革の方向もありましょうが、しかし、われわれが実見しますところ、何と言いましても金融問題で手薄な方は水産の金融でございます。この問題、あるいは水産関係の独立した金融機関を持ちたい、こういう要望もあり、あるいはまた水産銀行というふうな構想もあったりしておりますが、この面についての最大の欠陥と申しますことは、資金の吸収確保ができないという面にあろうかと思うのでございます。これは、ただ単に組合の結成を待ち、その資本の集積を待つわけに参らぬ、こう考えております。従いまして、将来、われわれが基本問題を考える場合に、やはり広義の意味での国家投資というものが強い地位を占めるものと思うのです。従いまして、今後の方向としましてはにわかに予断はできませんけれども、われわれは精細な検討を重ねて、この方面につきましては国家の財政もしくは準ずべき投資の拡大に一つの方向を持っていきたいというように考えます。  それから、林業の関係でございますが、これは一面においては非常に投資並びに金融等の問題につきましては膨大な資源を持っておりますにかかわらず、実際は行き届かないことは御承知通りであります。この面につきましても、従来の金庫あるいは公庫の機能だけでは日本森林資源を改造する、内容的にその構造等を変えて、ほんとうに国民経済にふさわしい拡大した林業の発展のためには十分でないと考えますから、これも、今水産金融について大体の考えを申し上げたように、そっちの方面に拡大し、そうして一つの整備したものがほしい、かように考えるわけでございますが、これらをいかなる国民経済ワク内で、同時に他の産業との関連においてこれを解決するかということは重要な問題でございますから、基本問題等の調査研究に当りましても真剣に取り組みたい考えでございます。
  367. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 当面審議の焦点になっております農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案、この改正の骨子としては造林融資というところに焦点を合わした一部改正ということに相なってきていると思いますが、しかし、先ほど来お伺いした問題と関連をして、新しい昭和三十四年度の農林水産関係金融はどうあるべきかということから考えて参りますと、私は、これでもって今日の農林水産関係の苦難な問題に対処する農林漁業金融の一環としての役割を果せるかどうかということは、きわめて大きな疑問じゃないかと思います。同時に、昭和二十四年度農林漁業金融公庫の貸付予定計画表を見ました場合に、土地改良あるいは林業漁業共同施設及び新規用途事業、さらに、小団地農山漁村の総合から、私どもが今後審議の対象になります一つの問題である開拓関係あるいは寒冷地農業振興等、こういうものを含めて、それぞれ貸付計画の予定案が出されておるのでありますが、この中で後ほどわが党の提案の問題と関連をする法案等もありますけれども、本日はそういう方面にわたる審議については省略いたしたいと思いますが、そういう関連の問題から考えましても、この一部改正という問題については、長期、低利の資金を農林水産関係に投じていく、こういう前提に立って考えます場合には、業務方法書の関係からいたしましても、先ほど芳賀委員が触れられたように、根本的に検討しなければならぬ問題がありますし、資金全体の総ワクという面においても、やはり財政投融資関係における農林水産関係の財政投融資はわずかに八%程度にとどまっておるという現状から申しましても、これはやはり根本的に考えなければならぬのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、問題の焦点が林野融資ということにしぼられておりますので、この点について若干簡単にお伺いしたいと思うわけでございますが、先ほども芳賀委員の方から質問されたわけでありますが、その問題に関連して、さらに国有林野事業に対する民有林の協力ということが強く叫ばれております。同時に、特別会計関係についていろいろと財政的な余裕を生じてきておることは周知の事実でございますけれども、今後、造林融資等については、説明書によりますと、十五年ないし二十年にわたって剰余金の一部を造林融資の資金に支出したい、こういう方針のようでございまするが、こういう場合に、今日まで国有林野事業の盛り立てのために国有林野関係の職員あるいは従業員等がせっかく汗水流して努力をしてきて、そして黒字を生ずるようになった。ところが、時代の要請から見て国有林野の民有林協力だというふうなことで、国有林野自体の経営の実態というものを見た場合にこの問題がその犠牲になるというふうなことがあってはいかぬじゃないか。やはり、特別会計の全体の予算の中で、一方全体の要請に応ずるような民有林協力も考えなければなりませんけれども、同時に、やはり国有林野事業で働いておる人々の給与、労働条件、あるいは福祉方面、特に山に働く方々の実態というものは、私どももときどき参りますけれども、やはり大都市や中都市、あるいはまた農村等の生活環境とは違って、相当に逆境にあるわけでございますから、そういう方面に対するいろいろなあたたかい考慮というものが当然考えられなければならぬじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、この点について大臣並びに関係林野庁長官からお考えを承わりたいと思います。
  368. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私からまず大綱について申し上げます。今度その財源として七億——その他にも充てておりますが、その程度出てきておる、それを単に造林資金の拡大に充当しておるが、こういうようなことをするくらいならば、もっと林野の職員の待遇その他の改善に、こういうお尋ねだろうと思うのですが、私も実は林野関係のことについてかって業務の担当もしたこともあるのでございますが、沿革的に森林管理は待遇は悪うございます。逐次だんだん直してきておりますけれども、まだ他の三公社五現業等に比較するならば低位にあるということは免れざるところだと思うのであります。私としましては、念願として、少くとも他の方とバランスがとれるように逐次レベル・アップして参りたい、こういう所存であります。同時にまた、当面の問題でございますが、あるいは手当の不足であるとか、あるいは旅費等について足りないという面もありますので、これは来年度予算等に相当改善をいたしまして、逐次この方針で強化して参りたいということをこの際申し上げておきます。詳細は林野庁長官から説明いたさせます。
  369. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 定員内職員約二万五千、労務者七万ないし十万の雇用をしてこの事業をやっておるわけでありますが、労務者等につきましても、逐年各面にわたる改善も徐々には進んでおりますけれども、一般民間労務の賃金その他に対しまして、国有林の労務者はかなり優位にあるというふうにわれわれも考えておる次第であります。今後ともそういう者の厚生面その他の面につきましては十分な努力を払いたいと考えておる次第であります。
  370. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林金融林野金融、あるいは漁業金融の中で、大臣は漁業金融方面が特にウィーク・ポイントだとおっしゃられたのでありますが、私もその通りだと思います。同時に、実際にこの漁業の方面における団体の信用事業等の経過を見ましても、農業団体と相当にまだ懸隔のある実態にあるわけでございまして、しかも、農林水産金融に依存する度合というものは、特に沿岸漁業等零細なる漁民の場合にはきわめて熾烈である。しかし、同時に、信用度等も非常に薄いために、実際に高利な金を借りなければならぬというふうなきわめて困難な状況にあることは、私どもも環境からして承知しておるわけでございます。従いまして、農林水産金融の問題については、やはり中央で、こういう大都市の中で頭で考えるのではなしに、現実農業金融の問題、あるいは漁業の金融の問題、山林の金融の問題等についての真実を精査して、どういうところに重点を金融面として注ぐべきか、——これは私は総括質問のときにも、やはり農家の場合でも漁家の場合でも、それぞれ経営別に見ましてもいろいろ大小がある、従って、農林水産金融の場合には基本的に階層別金融ということを考うるべきじゃないか、ここにやはり一つの大きな欠陥があるのではないかということを指摘したわけでございますけれども、そういう問題から考えてみますと、私は、やはり、今日農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案提出するに当っては、そういう金融部面におけるウィーク・ポイント、あるいはまた、それがどういうふうに対象に均霑をしておるかという実態から見れば、どこに不足があるかというような点から根本的に検討すべき段階に来ておると思うのでありますが、その点について大臣の所信を伺っておきたい。
  371. 三浦一雄

    三浦国務大臣 階層別に対象を考えてこれを改善するようにという御意見でございましたが、これはある意味では私はもっともだと思います。ただ、日本農業、漁業の実態を見ますと、これはもう全体が中小企業以下の関係のものでございますから今のような制度をとっておるのでございますが、しかし、その資金自体につきまして、よく事情に合うように分析し、それに対応するような施策を今後展開することは必要だと思いますから、金融制度の改善にはそれを十分に加味してやって参りたいと考えております。
  372. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 せっかく楠見さんがおいででございますから、問題は少し焦点からそれるかもしれませんけれども、今国民年金の実施の問題が出て参っておりますが、これがやはり将来農業金融の問題に重大な関係を持ってくることは御承知通りでございます。大体国民年金の対象の多くは農民、漁民でありますから、今後の国民年金の実施ということと関連をして、農業金融の立場からどういう点を要望しておられるか、簡単に承わりたいと思います。
  373. 楠見義男

    ○楠見参考人 国民年金の問題もさることでありますが、すでに現在われわれの目前には農林水産業団体職員の共済年金の問題もございます。これも数年先には相当膨大な資金量になるわけでございます。この運用につきましては、できるだけ窓口を一元化して、すなわち、具体的に申しますと農林中金を窓口にして、そうして農村に還元するというようなことを考えたいと思っております。今の国民年金の問題になって参りますと、やはりこれは、単協であるとか、あるいは信連であるとか、あるいは中央で申しますと中金であるとか、こういうところを十分連絡をとって密にしていただきまして、そうしてできるだけこれは地方還元の方に回していただきたい、こういうことでやっていきたいというふうに希望いたしております。
  374. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、これは総括質問の際に質問がなかったわけでございますけれども、今後の農林水産の政策を実施する場合に、農家、漁家、あるいは山林関係者等を考える場合に、農業労働者というのはきわめて数としては少いかと思いますけれども、漁業労働者、あるいは山林労働者、特に山林の場合には国有林野事業に従事する民間の山林労働者、こういう人たちの問題を農政の包括した中でどうやるかということを私は考えなければならぬと思う。これは単に労働問題でなしに、やはり農林水産全般の問題の中で考えなければならぬと私は思うわけでございます。そうしますと、そういうことに農林水産金融としてどう考てえいくか。これはもちろん助成、補助等いろいろな問題が他にあるわけでございますけれども、同時に、農林水産金融として、公庫なり中金なりがそういう農業労働者なり漁業労働者、山林労働者に対して、そういう者の経済的、社会的地位を向上するためにどう寄与していくか、こういう点について今後の問題として私は真剣に検討してもらいたい、こういうふうに私は考えるわけでございますが、大臣の所見を一つ承わりたいと思います。
  375. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ことに山地におきまする労働者の人たちの問題でございますが、これは御指摘になりました通り非常に重大だと考えております。従いまして、林野庁の業務の運営の面につきましても、ただ単に国有林所在の森林労働者だけを考えずに、広くこの問題を考えるようにということで、林野庁にも御苦労願っているわけでございますが、同時に、この人々に対する金融問題でございますが、これはもう角屋君よく御承知通り、地方の投資者、企業者等のいわば搾取に甘んじているようなことでございます。従いまして、これらの人々の組織化をはかって参りたい。組合等を結成し、そしてそれを対象にしてだんだん育成するの方途を講ずるのほかはなかろうかと思うのでございます。これらの面についても工夫をこらして参りたいし、同時に、漁村の労働者、つまりこれの就労の問題については最も困難な問題がございますが、農林省としましては、海岸地帯でございましても、いやしくも農地の開発あるいは改良等の仕事があります場合には、その漁村方面にも寄与するように考えつつあるわけでございます。これらにつきましても、困難ではありますが、組合の結成等によって組織化をはかり、そしてそれに対して心やりのある融資等の道を開いて参りたい、かように考えております。
  376. 松浦周太郎

  377. 赤路友藏

    赤路委員 簡単に一点だけ公庫総裁にお尋ねします。現在の承継分の回収不可能、これが当初引き当てとしてとった四億三千万円をオーバーしたときにはどういうふうにするつもりなのか、その点を一点伺いたい。
  378. 清井正

    ○清井説明員 その点につきましては、先ほど丹羽先生の方からもお話がございました点でございますが、当初四億三千万円の消却財源を保有しておったわけでございます。ただいまは二億ちょっとでございまして、なお若干残っておりますが、これらについても、やむを得ず消却を実施いたしましてなおこの四億二千万円の金額を超過するようなことがかりにあるといたしますれば、その場合は公庫全体の消却積立金がただいま約二十数億ございますので、その一部をこの消却の方に使って参るということになるのじゃないか、こういうふうに実は考えておるのでございます。
  379. 赤路友藏

    赤路委員 そこに問題があるのです。これが公庫本来の業務でやられたものならそれでいい。これは公庫本来の業務じゃない。承継しておる。それを公庫本来の消却積立金でまかなっていくという考え方、そこに問題があると私は思う。これは当然公庫の責任のものではない。一応回収することを委託されている。だから、この四億三千万円からオーバーした場合は、これは当然、開発銀行から引き受けたのだから、開発銀行が出すなり、あるいは政府の方で補てんすべきものである。そこのところが非常に問題だと思う。その点はすっきりしておかなければいけないと思うのですよ。
  380. 清井正

    ○清井説明員 御趣旨の点は考えさしていただきますけれども、ただまいの私の考え方といたしましては、なるほど御趣旨はよくわかるのでありますけれども、やはり債権の回収は公庫の責任としてやっておるわけでございますから、できるだけこの四億三千万円の中でおさめるべく努力しなければならぬことは、先ほど御説明申し上げた通りであります。かりに超過いたしました場合は、たまたま公庫に消却積立金があるのでそれを使う、こういうふうに実は考えておるのでございます。いずれにいたしましても、これはしばらく先の問題でございますので、その間十分われわれとして検討して参りたいというふうに考えております。
  381. 赤路友藏

    赤路委員 十分検討するというお話ですから、これ以上は追及いたしません。しかし、これは十分考えてもらいたい。実はきょう銀行局長を呼んでおきたかったのです。そして銀行局長の意見を十分聞きたいと思ったのですが、総裁がそういう考え方で、やはり困ると私は思う。そこのところは明確にしていただきたい、こう思います。  それから、先ほど来の丹羽委員からの質問でほとんど尽きておりますので、多くは申し上げませんが、消却した分が二億一千万円になっておりますが、この消却した分に、丹羽君が言ったように相当いろいろな風評があるわけですね。内容については言えないというお話があったが、これは再考してもらいたい。私はそういうような風評をやはりこの際一掃するというお考えの上に立っていただかなければならぬと思う。この点を私はもう一応——おそらく答弁を求めても同じ答弁をするだろうと思うが、そういう答弁でなしに、もう一度よく考えて、この内容について明確にしていただきたい。それでなければ、きょうはこれを上げろというても上がらぬかもしれぬ。それをがんばれば……。これはもっと時間があれば丹羽君が突っ込んで言うべきはずだった。私はここで答弁を求めませんが、再考していただきたい。再考してもらえますか。それだけ言ってくれたら、上げましょう。
  382. 清井正

    ○清井説明員 その点は先ほど丹羽委員に御説明申し上げた通りでございまして、私といたしましては、公庫の責任において大蔵大臣なりの承認を得て善処いたして参りたいと考えております。
  383. 赤路友藏

    赤路委員 それは意味がないのです。公庫の責任において善処するといっても意味がない。そういうあれがあるから、そこで私ははっきり申し上げますが、公表していかないのならば、あえて公表せよとは言いませんが、少くともこの委員だけにでも、秘密会議でもいいから出してもらいたい。プリントにしろとも言わぬ。少くともこういう理由でこれは落したという理由があるはずですから、また落した債務者もわかっているはずです。いろいろな関係もありましょうから、あえて公表しろとも言いませんが、ここで秘密会議ででも出すだけは出したらいいでしょう。出せぬということはないはずです。
  384. 松浦周太郎

    松浦委員長 それでは秘密会その他の問題については理事会で相談して、清井総裁の方に申し入れることにいたします。
  385. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは承継債務でしょう。承継債務の不能償還分でしょう。これを公庫法による公庫が消却するということは、財政法上疑義があると思う。これは研究してみなければいかぬと思いますが、一般欠損補てんはやるべき筋のものだと思いますが、これは疑義があると思います。財政法上絶対に疑義がないという確信を持っておりますか。
  386. 清井正

    ○清井説明員 ただいまのところ、私の考えでは間違いないと考えておりますけれども、なお御趣旨の点もありますので十分研究して参りたいと思います。
  387. 松浦周太郎

    松浦委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  388. 松浦周太郎

    松浦委員長 速記を始めて。
  389. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいま赤路さんから御発言のありました点は、当局としまして慎重に考慮しまして、そしてお申し出に沿うようにいたしますから、さよう御了承願います。
  390. 松浦周太郎

    松浦委員長 ただいま審議中の三案のうち、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について、他に質疑はございませんか。——なければ、本案に対する質疑はこれにて終了いたします。  次に討論に付しますが、討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  391. 松浦周太郎

    松浦委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次にお諮りいたします。ただいま可決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  392. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  他の二案に対する審査は明日に譲ることといたしまして、本日は、これにて散会いたします。     午後八時十三分散会      ————◇—————