○久保田(豊)
委員 ただいまの問題に関連しまして、実は私の方にも非常にたくさん例がありまして弱っておりますので、
農林省と通産省の方に二、三重要な点についてお尋ねをいたしたいと思います。
私の方でも、今の阿賀野川と同じように、狩野川という川がありますが、この上流に金山が一つありまして、これから出る毒水によりまして、ときどき
——これは相当りっぱな貯水池を作ってあります。しかし、水が出ると、これが溢水をしてくるわけなんです。もう一つは、大きな酒の
工場がありまして、同時にここではペニシリンを作っている。こういう
関係で、イモの廃液が出て、アユやそのほかの魚がほとんど死滅をしてしまう。ときどき薬品の廃液が出まして、これでまたすべてのものが死んでしまうという例が、ほとんど毎年のように繰り返されるわけであります。また、もう一つの例は蒲原の
日本軽金属の
工場から出ます弗化水素、これがずっと昔からあの辺の農産物に対して非常な被害を与えておる。ところが、これも、そのときそのときの政治家等が参画をしましていいかげんな解決をして、いまだに基本的な解決がつかないのであります。さらに、もう一つ大きな問題は、あそこに今度田子浦港というのができまして、富士は御
承知の
通り日本の製紙センターみたいになる。ところが、各
工場から出てきます製紙の廃り液、これがあそこの田子浦から原浦一帯の海岸へ潤井川という川に沿って出まして、海岸から約一キロくらいの間、私も行って現場を見たのですが、いわゆるヌクと称するものが、多いところは約二丈、海中に始終沈澱しておるわけです。海水はほとんど全部色が変っております。こういうものですから、この間には漁が全然なくなっている、こういう問題です。これは戦前からあった問題ですが、これとても、今度さらにここに旭化成その他の
工場ができて、あそこが駿河湾の臨海
工場地帯ということになる。そうすると、あらゆるそういうものが出て、あの一帯の漁師というものは、今でも漁ができないのが、話にならなくなる。そのうちで今の静岡県の知事が漁業組合長をしております田子浦だけは一応
話し合いがついて補償がついた。ほかのやつはほとんど全部その場その場わずかな金を臨時にやって、片づかない、こういう
状態です。
私どもの方にもこういう問題が
現実にありますが、特に私は水産庁の
長官にお聞きします。こういうことに対して、私ども、水産庁のあなたの方の係の
課長さんにもお話ししたことがありますが、こういうものに対して今までほとんど積極的な方針も何もなかった。
実態もわかっておらない。出たとこ勝負で、出てくればそのとき県にまかせて、そして少し問題が大きくなれば何とかこそくなことをしようという態度が私どもにはよく見受けられたわけです。今度は水質
関係の二法もできたことですからそういう消極的な態度ではなかろうと思いますが、水産庁並びに
水産庁長官にお聞きしたいのはこういう水質汚濁の問題が今お話のあったように三百幾つあるという、これの被害の場所その他全国的な
実態の正確な
調査ができておるのかおらないのかという点が一つ。それから、水質二法の出た現在と、出ない以前とは違うかもしれませんけれども、これらに対します処理の具体的な方針の検討なり何なりができておるのかできておらないのか。また、
現実には問題の大小にもよって違いましょうけれども、大体においてこういう問題で一番困るのは被害の
程度なり何なりの算定がなかなかつかないわけです。おそらく、加害者である会社側は、たとえば相当の被害があるといったって、実際に
調査のしようがないのです。それからまた、
工場で出たいろいろの有毒ガスその他によって農産物に被害を与えても、
工場側ではほとんど
調査の能力は持っておりません。従って、被害者である農民なり漁民なりの被害申告と、やはりはっきりするのは、今の段階では県を中心とした
行政機構がはっきりした算定をする以外になかろうと思う。ところが、こういうことについても今まで
農林省としてはほとんど何らの指導もしておらなかったように私どもは見受ける。しかも、多くの場合において、県のごときはこういうことに対して非常に間違った指導が多いわけです。一例をとってみますと、たとえば蒲原の軽金属の問題で県自体がミカンの被害を算定しましたが、非常に詳細な
調査をやった。その
調査をやったのが約九百万です。ところが、最近調停案を出して参りましたけれども、その調停案の内容は、ミカンの被害がある部落に対して百二十九万しかしていない。みずから被害の
調査をして、これこれの被害があるということを確認しておりながら、出してくる数字は今のようなけたはずれの数字を出してくるという
実情です。しかも、その被害の
調査も、一年々々送って送って、送り切れなくなった場合にようやっとやるという
状態です。これは静岡県の特例かもしれません。しかし、おそらく全国そういう例が多いのではないか。これらについての具体的な指導、
——そういう被害が
現実にあった場合に、この被害に対して県なり国なりがとういうふうな調停なりあっせんをするのか。それから、今被害防止についていろいろな施設をしろということで法律で一応基準ができたわけですけれども、これがなかなか実際にはできない。たとえば東洋醸造という酒会社に問題が起きて、何か千二百万ばかり防止施設をさせたのです。ところが、これは何もきき目がありません。その当時の学界のえらい人にいろいろ御苦労を願ってやったのですが、きき目がないということで、どうしても被害防止の
方法がない。また、蒲原の軽金属のごときは、煙突一本について完全に弗化水素をなくなすということになると七千万円以上かかるわけです。そうしますと、五本なり七本なりあります煙突
一つ一つについてこの装置をすることは、膨大な資金が要るわけです。こういう問題はそう簡単に被害の防止施設ができない。そういう場合には当然相当長期にわたって被害が出て参るわけですから、やはり損害補償なり何なりのことをしてもらいたい。
まず、こういう点について、
農林省として、農漁民の非常に弱い立場のものを保護するという立場から見て、今までどのような
措置をとってきたか、また今後どういう
措置をおとりになるつもりか、これをまず水産庁の
長官から聞き、さらに、通産省の方からも、これらについての考えがあるならお聞きいたしたい、こう思うわけです。