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1959-02-13 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 大野 市郎君 理事 吉川 久衛君    理事 丹羽 兵助君 理事 本名  武君    理事 石田 宥全君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       金丸  信君    笹山茂太郎君       田口長治郎君    高石幸三郎君       永田 亮一君    松岡嘉兵衛君       三和 精一君    保岡 武久君       足鹿  覺君    神田 大作君       久保田 豊君    栗林 三郎君       實川 清之君    中澤 茂一君 出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君 出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         食糧庁長官   渡部 伍良君         林野庁長官   山崎  齊君         水産庁長官   奧原日出男君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局参 松岡  亮君         事官)         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月十三日  委員高田富之辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長の指名で委員に選任された。 二月十三日  理事日野吉夫君同日理事辞任につき、その補欠  として芳賀貢君が理事に当選した。     ————————————— 二月十日  国用製糸業者への原料繭流通措置促進に関する  請願小川平二紹介)(第一二七一号)  八千種における農地取上げ反対等に関する請願  (大西正道紹介)(第一三三五号)  大中之湖干拓に伴う造船業者被害補償に関す  る請願西村関一紹介)(第一三三六号)  水産物小売業者育成に関する請願岡良一君紹  介)(第一三八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  農林水産行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任並びに補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、理事日野吉夫君より辞任いたしたき旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、理事補欠選任に関しましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松浦周太郎

    松浦委員長 御異議なしと認めます。よって、芳賀貢君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 松浦周太郎

    松浦委員長 それでは、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  前会に引き続き、農林水産行政基本施策及び来年度農林関係予算について、大臣に対する質疑を続行いたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。實川清之君。
  6. 實川清之

    實川委員 大臣に御質問いたします。農林大臣は、本委員会の冒頭の所信表明におきまして、最近における農林水産業生産は、技術改良発達と投資の増大によりまして生産が非常に伸長いたしておる、その結果、輸入食糧が引き続き減少し、外貨の節約等に寄与するところが大きかった、さらにまた、国内購買市場安定の有力な要因となって国民経済成長的発展に大きな役割を果しているというように申されまして、保守党農政成果を自画自賛されておるわけでございますが、しかし、このような現象的な形で現在の農業状態をお考えになることは、非常に皮相のきわみでありまして、たとえて申しますならば、昨年一年間、繭糸価格の問題、あるいは乳価の問題、その他一般農産物価格下落の問題で非常に問題が起ったわけでございます。つまり、農産物価格のほとんどが軒並みに下落をしている。さらに、最近におきましては、昭和二十五年に、一農家当り平均九千四百四十二円の負債があったわけでございますが、これが昭和三十一年には四万三千六十七円に増大いたしております。すなわち、農家負債が毎年累増いたしておる、あるいは兼業農家の数が非常にふえておる、同時にまた、農家就業構造が非常に劣悪化いたしておることは御承知通りでございます。あるいはまた、階層分化が非常に進行いたしまして、特に中、下層農家において貧困が累積しておるというような事実が見られるわけでございます。あるいはまた、これは大臣自身も御指摘になっておりますが、農業生産性の総体的な停滞と、農家所得総体的低下、特に他の産業との比較におきましてその較差が増大してきておる、あるいは外国農産物の圧迫の問題、過剰人口の滞留の問題、いろいろ農村実情をしさいに検討いたしますと、ただいま申し上げましたようないろいろの問題が伏在いたしておるわけでございます。従いまして、現象的に、農業生産が伸びたとか、あるいは所得がたとい若干でも増加いたしておるというような、表面の現象的なことのみをとらえまして、農業内部に拡大いたしております矛盾の進行に目をそらすというようなことは、はなはだ私どもの納得のいかない点でございます。極端に申しまするならば、日本農業は現在非常な危機に直面しておる。内部的に崩壊の危機に瀕しておるというようにも考えられるわけでございまして、この農業の現実に目をそらしまして、相変らずのその日暮らし的な農政に終始されることは、私どものはなはだ遺憾とする点でございます。日本農業実態農林大臣はどのように認識され、その認識のもとにどのような基本的な構想をお持ちになるか、その点について最初にお伺いいたしたいと思います。
  7. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいまの御質疑のことでございますが、私たちがそこに解説いたしました要点は、たとえば、二十六年度の第一次産業の総所得は、一兆一千二百八十四億円、その翌年は一兆二千百七十七億、それから、その翌年の二十八年は一兆二千六百六十六億、それからまた、三十年は一兆五千七十五億、こういうふうになっておりまして、絶対的にはこれがふえておりますことはもう申すまでもございません。それから、三十二年、昨年のことでありましても、一兆五千三百四十五億、こういうふうに絶対的には生産増高いたしております。しかしながら、率直に、われわれはこれをただ強調するばかりじゃございませんので、非第一次産業所得と比べますと、こちらが低下しておる。すなわち、二十六年度の比率をとりますと、非第一次産業所得国民所得のうち七五・一%を占めており、第一次産業農林水産業の占める比率は三四・九%だったわけであります。ところが、これがだんだん逓減して参りまして、三十二年にはその比率は、第一次産業の方は一八・三%、非第一次産業の方は八一・七%、こういうふうに変ってきております。かようなことでございますので、われわれはこの実情はどうしても看過できないということでございます。すなわち、第一次産業、第二次産業、第三次産業がバランスのとれた発達をして成長をして参りますということは、国民経済上も非常に大切なことでございまして、かような現象になっている場合でございますので、われわれとしましては、第一次産業をもっと興隆させまして、そして他の産業との間に較差のないようにして参りたい、これが第一の所存であります。  ところが、その較差をなくするということに着眼しまして、今後われわれとして考えなければならぬことは、やはり農林水産業生産の地位を高めるということであろうと思うのでございます。なかんずく農業につきましては、その農業成長させるところの条件としまして、耕地の非常に寡少であるということも、申し上げるまでもございません。他の国々に比較しまして非常に少い。かようなことでございまして、これがいわば日本の宿命的な事実だろうと思うのでございます。しかしながら、これとても、どうも土地外国から輸入するわけに参りませんし、従いまして五百十万ヘクタール足らずの耕地でございますけれども、これを質的に改善して参る。すなわち深く耕すと同時に、また、その生産力が増書するようにしなければならぬということが第一の要件であろうと思うのであります。これあるがゆえに、長期的な観点に立ちまして、長期の見通しのもとに、土地改良農業施設改善等をはかって参りましたゆえんはそこにあるわけでございます。  そこで、三十四年度の予算の策定に当りましても、従前にとりきたったこの施策を拡大強化して参るということで、土地改良その他農業施設拡充につきましては、今年度絶対量がふえました大部分というものをここに傾注をしたということもその一つでございます。  第二には、従来は、ともすれば生産拡充施策に急であり、農家生活向上という方面につきましては十分でなかったのでございますが、この支えとしては、御承知通り、わが国におきましては、主要農産物等につきましても、これは価格支持政策をとっておる。米麦その他重要農産物等につきましては価格支持政策をとっておるわけでございまして、これまた七一%程度はこの価格支持政策によって支持しているという現況でございますが、これにつきましても、私たちは現状をもって足れりとは考えておりません。現在、米麦中心としての支持価格政策をとっており、大豆、菜種あるいはテンサイ等につきましてもかようにとっておるのでございますが、しかし、この間にありましても、ただいま實川さんも御指摘になりました通り、時々事情変遷が出て参ります。すなわち、昨年当委員会等でも強く御論議のありましたところの繭の問題、酪農等の問題につきましては、遺憾ながら昨年の需給事情の激変に伴い、われわれ、従来の政策を一部改訂しまして、新しい事態に対処するの道を講じたのでございましたが、これとてもやはり、将来の長い見通しをとる場合において出さなければならぬということで、これはあえていたしたのでございます。今後、この価格支持政策等につきましても、時代に即応しまして改善の方途を加えて参りたい、こう考えております。  第三番目は、よく言われることでございますが、この限度でもって流通措置は足れりとはいたしません。ことに、蔬菜、果実等の問題につきましては、まず第一に大都市における中央卸売市場改善・同時にまた生産地における一つの指導的な立場市場に出荷する場合の一つの調整的な指導も加えつつ、この道を改善するということに進みたい考えでございまして、そのために市場に関する調査会の法案も御審議を願っているわけであります。同時に、三十四年度におきましては、従来手を触れておりませんでした林産物、特に木炭、さらに、同時に、水産業大衆魚といわれるものの価格支持政策等もとって参りまして、新しい線を引いたわけであります。これらの問題を確実につかんで、そしてこの施設の拡大をはかって参りたい、かように考えております。すなわち、ただ単に現象的な生産増強に幻惑されることなく、実質的に見て農業経営の安定を期待しつつ行政を進めて参りたい、かように考えております。
  8. 實川清之

    實川委員 ただいま大臣のお答えにもございましたが、現在進行しつつある農業内部のいろいろな矛盾点につきまして、確かに一応の手は打ってあると私は考えます。     〔委員長退席吉川(久)委員長代   理着席〕 ただ、それは、まんべんなく農林水産関係のいろいろの問題点について手を打ってあるだけでありまして、それを抜本的に解決する、あるいはまた基本的な問題について場合によると手を抜いておるのじゃないか。三十四年度の予算を私どもが拝見いたしまして感ずることは、第一に、重点がなくて、ほとんど総花式こま切れ予算であるような感じがいたすのでございます。さらにまた、日本農業の今後の発展方向というようなものを正しくつかみまして、その観点から、問題の大小なり、あるいは軽重なり、先後の関係というものをただしまして、それに沿って政策が立体的に立案されていないというならば、そういうようなものを混同いたし、あるいは無視したみそくその予算であるというようにも考えられるのでございます。あるいはまた、もう少し申し上げまするならば、現に起っておる問題、あるいは問題化したような問題自体に対しましての応急対策的に、事後処理的な、おざなりの予算である、かようにも考えられるのでございます。このような予算の組み方、このような農政打ち出し方でございましては、いつまでたっても日本農業は大した前進もなく、いつも相変らず農民は生かさず殺さずの状態に置かれるのじゃないか、かように考えられるわけでございます。  徳川時代農政が、いわゆる百姓は生かさず殺さず、あるいはまた、百姓とゴマの油はしぼればしぼるほどとれるというように言われたのでありますが、今日の農政資本あるいは独占資本の要求する農業政策というものを考えてみますと、第一は食糧原料を安価にしかも豊富に供給させるということが独占資本一つのねらいでございます。農林大臣所信を伺いましても、各種の農産物生産の問題につきましては非常に施策を講ぜられ、またその成果も上っておるわけでございますが、先ほどもお話にございました流通あるいは価格の問題につきましては、きわめて不十分ではないか。ただいまも、いろいろ御答弁にございましたけれども、それは一応やっておるということは認められますが、抜本的にこれらの問題の解決についてきめ手がない。ただできた問題をごまかすためのその場限りの政策のような感じがいたすのでございます。今日農民が牛乳の問題について、あるいは繭の問題につきまして、その他一般農産物価格の問題で非常に困惑しておることは御承知通りでございますが、これらの施策がきわめて不十分な印象を受けるわけでございます。  第二に考えられます点、今日の日本独占資本の要求といたしましては、零細な独立の小企業としての自作農主義を堅持するという点にあろうと思います。これは確かに、貧困組織のないばらばらな六百万の農民、小農が存在すること、独占資本収奪のためにはきわめて格好の場所であり、同時にまた、保守党票集め対象としても、もってこいの場でございますが、このようなことは逆に農民立場から申しますと、非常に不利な条件でございます。御承知のように、自作農中心主義は、家族労作によるくわ、かま農業基礎を置き、封建的な日本家族制度経済的な基礎をなすものでございます。このような自作農中心政策によりまして、今後の日本農業発展が期待できるかといいますと、これはできないわけでございます。むしろこの自作農中心主義農政を克服することが日本農業発展を約束するものだと、私はかように考えております。農林当局は、最近問題になっております農業法人化の問題につきましても、農地法をたてにとりましてきわめて否定的な態度をとっておられるようでございますが、むしろ、日本農業発展のためには、このような態度こそが、実は農業発展を阻害する大きな問題となって将来現われてくるだろう、現に問題になりつつあるわけでございます。この自作農主義の結果は、労働生産性向上が閑却されまして、土地生産性の問題だけに力点が置かれる。あるいは多肥、労働多投の農業技術となり、農業生産近代化一つの壁となって現われておるわけでございまして、私どもは、このような自作農主義を堅持する今日の独占資本農業政策に対決していくことが、初めて日本農業発展を約束されるものだと考えております。  第三点といたしましては、独占資本農村支配の支柱といたしまして、山林地主あるいはまた旧地主等考えておるようでございます。その具体的な例といたしましては日本では御承知通り農家当り平均経営面積は八反歩程度でございまして、しかも経営面積町歩以下の零細農家が全体の七〇%以上を占めております。また、農村には、二、三男の問題とか、あるいは半失業状態にさらされている多数の過剰人口をかかえておるわけでございますが、その半面、開墾可能面積が、農林省から出されました書物を見ましても、百万町歩以上あるというように書かれております。このように開墾可能地がありながら、最近におきましては、未墾地の開放はほとんどストップの状態でございます。先ほど大臣も、日本農業耕地寡少だ、しかし外国から土地を輸入するわけにもいかないから、質的改善をはかってその埋め合せをするのだというようにおっしゃられましたが、これは百万町歩開墾可能地——これは最小限度の数字だろうと思いますが、そのようにたくさん持っておる。そういう問題を全然手がけないでおいて、日本農地が狭いというようにおっしゃられるのは、どうもわれわれには理解の参らない点でございます。あるいはまた、最近旧地主の運動の一つといたしまして、解放農地補償の問題が大きく展開されておりますが、これと対応するように、今度の国会にも農地問題調査会の設置の問題が提案されるようでございますが、このような点を考えますと、どうも最近の三浦農政は、このような独占資本農業政策をそのまま踏襲しておるのではないかというような感じがいたすわけでございます。  もちろん、独占資本といえども、低米価原料を確保する、あるいはまた国内市場を確保するというような必要から、ある程度農民に対する保護政策をとらなければならないわけでございますが、それはサル回しがそのサルにえさを与えたりあるいは赤い着物を着せるということでございまして、今日の独占資本農業政策は、その程度保護政策であり、農民収奪のための保護であって、真に農業あるいは農民を生かすゆえんではないというように考えるわけでございます。  要するに、今までの農業政策の根底が、その対象として農産物生産ということは考えておったけれども、一歩を進めまして、農家経済なり、あるいは農民生活をよくするというような点についての積極的な施策がなかったと考えられるわけでございますが、この点につきましても、先ほど農林大臣は、生産数量増高のみならず農家経済の問題についてもいろいろ手が打ってあるとおっしゃられておりますけれども、それらの点につきましては、私どもから申しますならばきわめて不十分な問題であり、むしろ本格的に取り上げなければならない多くの問題を、ことさらにとは申し上げませんが、逸脱しておるのじゃないか、かように考えるわけでございます。これらの点につきまして大臣の御所見を承わりたいと思います。
  9. 三浦一雄

    三浦国務大臣 第一の点は、食糧その他の原料を安いようにして、そっちの方の、いわば独占資本の方の要望にこたえている政策をとっているじゃないか、こういう御非難でございます。私は、就任以来、米価の点につきましても、下げてはおりません。若干の改訂をして、これをむしろ高くしております。同時に、他の支持価格をとりましたものも、地方の実情に応じて調整をして参ったことは、決して農産物価格につきまして値下げをするというような方向には行っておりません。  それからその次に、従来農林省自作農中心政策を展開してきたが、もう実態に合わぬじゃないか、これはむしろ農業法人等のような構想のもとに転換するの意図はないか、こういうお尋ねでございます。この問題につきましては、私は二つに区分して考えたいと思います。一つは、現在いわゆる農業法人として非常に問題になってきておりますものは、商法の法人であって、有限会社形態でもって現に営まれつつある問題でございます。一つは、特殊法人創定等であって、こういう問題にもだんだんかかわるのでございましょうが、これにつきまして申し上げますが、現在の農地法は、みずから耕す者はその土地を所有し、そして経営するということを本義として、終戦後に農地改革等も断行したことはそこにあろうと思ったのでございます。これは歴史的に見れば非常な進歩的な一つ措置であったと思うのでございますが、日本自作農創定主義ではもはや生産力その他の向上は期待できないのだ、こういう御批判でございます。自作農創定が、農地改革によって拡大せられることによって、生産力の拡大したことも、同時にまたその農家におきまする経済向上のあったことも、これまた否定はできないと思うのでございます。  さて、農業法人の問題でございますが、今出ておるわけでございますからこれを申し上げますと、商事会社でございますが、農業商事と見るかどうかは別問題といたしましても、この会社を組成しておりますところの株式の譲渡であるとか、あるいは持ち分の譲渡というものは全く自由でございまして、加入、脱退等も本人の意思によりどんどん変って参る、同時にまた、営利法人たる組織関係上、定款の変更でも、会社組織変更でも、これまた自由にいくわけでございます。これは、やがては不在地主になったり、数個の会社を支配するという形態が生まれてきたり、ために土地兼併の弊害も生じ得ることが考えられるのでございます。同時にまた、会社とのなには現在のところでは、請負契約になっているということでございますが、会社から受ける利益の分配の問題、小作の問題との関係を一体いかように理解すべきかということもあろうかと思います。同時にまた、会社がかりに保有し得る限度をどう考えるか。法人組織によりますと、現行の自作農創定維持のために一応標準としております内地三町歩程度のことについては、なかなか保持はできまい、かようなことも言われておるわけでございます。これは、歴史的に見ますと、土地制度は幾多の変遷をして参っております。同時にまた、時の要請に従いまして制度化されたものも、各自の能力の差によって直ちに差異が生じてきたり、さらにまた分配問題等もそこに予期せざる事態を生じてきておることもありますので、私たちとしましては、なお十分に研究を重ねて参りたい、今にわかに農業法人制度を恒久的なものとするということについては消極的な態度でございます。ただし、農業経営につきまして共同化を推進するということはこれは一貫して取り来たったことでございまして、これを協同組合により、あるいは共同施設拡充ということで年来農林省では基本的な政策として取り行なってきているところでございまして、このことはおのずからまた別個な問題でございまして、法人という、特に制度化ということについて、今後なお一そう研究をさせていただきたい、こう考えております。  それから、その次の、山林地主あるいは旧地主を非常に尊重してきているではないか、同時にまた、今度開かれます農地買収者の問題の調査会につきまして、補償するような考えがあるかどうかということでございますが、これは補償を建前としておりません。あの調査会は、とにかく終戦後に行われました大きな社会的改革でございましたから、御承知のようにいろいろな問題が生じている、その実態を見きわめる、そこで、貧乏な、ことに転落して農村においても一つ社会保障対象にまでなりかねまじき状態にあったり、あるいは諸所に不公平な問題があって、これらが一つの社会問題になるということもありますので、これらを特に究明して実態を把握してみる、同時に、これらに対する何らかの措置を必要とするかどうかということについても、なお学識経験者の冷静な、客観的な判断をも得るということでございまして、そうして、補償するというふうなことを建前としてはおりません。同時に、農林省としましては、今前段に申し上げたような限度でございますならば調査の必要があろう、こういうふうに考えておるわけでございます。同時にまた、未墾地は、一応の概定したものでございますと、対象として五十万町歩程度は今後力を尽していきたいと考えておるし、なお拡大します場合には百万町歩程度未墾地も想定されると思いますが、これらの土地につきましては、農地としましても非常に劣位なものになることは否定できません。しかしながら、近来の科学並びに技術を導入しまして、そうして、たとえば寒冷地におきます根釧の原野のごとき、あるいはその他の地帯につきまして機械開墾等を推進しておるのでございますから、この方はなお来年度の予算等にも取り上げてございますから推進するつもりでございます。そうして、人口を膨大にかかえております農山村の二、三男等の移住等につきましても、それの一助にもするし、また海外の移住等につきましても所要の措置を講じて、これらを推進したい、こう考えております。
  10. 實川清之

    實川委員 ただいま大臣は、自分の就任以来米価を上げた、価格対策についてもいろいろ手を打ってあるというようなお話でございましたが、確かに米価が若干上った。多分二十五円でしたか幾らでしたか、今忘れましたが、その程度のことはございましたが、しかし、それはやっただけのことでございまして、それで一体農民が救われるかというと、決してそうはならないだろうと思います。また、農業法人化の問題につきましても、もちろん、私ども農業近代化なり、あるいは農業生産性向上というような命題を解決するのに、法人化だけを考えておるわけじゃございませんで、法人化も農民自体から考え出された一つ方向である、これをやはり尊重して、その芽を伸ばすようなことは考えられないか。もちろん、現行法の建前から申しまするならば、これは否定的な答えになるだろうと私は考えますが、そういうことではなしに、農業発展考えます場合に、そのような芽ばえをどうして農林省は伸ばしてやらないかという点でございます。  次に、これは予算編成の問題とは直接は関連がないのでございますが、農政の基本となるような問題二、三についてお伺いをしたいと思うのでございますが、第一に、政府は、土地資源の開発と土地利用の高度化、効率化のために、土地の自然的条件あるいは社会経済的な条件を科学的に調査しまして、土地の利用区分を設定し、これらの地区に対しましては優先的に開発利用の計画を立て、実施する考えはないかどうかという問題でございます。これは先ほど未墾地の開放の問題でも申し上げましたが、北海道はもちろんまだたくさん今後開発可能な地域があるようでございますが、内地におきましても、たくさんそういう地域があるわけでございます。もちろん、治山治水といったようなものとの関連においてこれは総合的に考えなければならない問題ではございますが、それはそれにいたしましても、なお相当利用し得る余地がたくさんあるわけでございます。特に、日本農業が今後畜産の方向に大きく転換するだろうというようなことを考えますと、従来主穀農業としては利用できない土地も、相当今後におきましては利用できる可能性もあるわけでございまして、そういう点について、国が国の責任においてそういう問題を調査研究し、それらの土地を有効に生かすような方途を講じていただきたい。そういうような手をとっていただきたいと思うのでございますが、これらの点についてはどうお考えになっておりますか。
  11. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいま御指摘のような趣旨をもちまして開拓を進めて参りたい所存であります。同時に、本年度はそれに関する調査費等も相当増額しておりますから、これはぜひ各地方に適地を選びましてその施策を前進させたい、かように考えております。
  12. 實川清之

    實川委員 次に、農業近代化共同化の促進の問題でございますが、農業近代化の前提としましては土地条件の整備の問題が一つあろうかと思います。土地改良事業とか、あるいは牧野の改良というような問題は、すべて極端な申しようをするならば、全額国庫負担においてやってもらえないか。もしそれができないとするならば、最小限度、補助率の大幅の引き上げと無利息の金を融通してこれらの事業をやっていただきたい。これは一つの例でございますが、敗戦によって日本経済は完膚なきまでに打ちのめされたわけでございますが、その復興の陰には仮借なき強権供出による農民の汗と涙があったはずでございます。その代償としてでも、国は土地改良事業くらいは国費をもってやる義務があるのではないか。特に、日本農家のように零細で経済力のない農家の場合でございますと、現在の補助率ではとうていその負担にたえない。土地改良事業等の必要はわかっておっても、なかなか手が出ないというのが実情だろうと考えられます。農林省調査によりましても、少くとも土地改良事業をやらなければならない面積が六百万町歩以上もあるといわれておりますが、現在のようなこま切れ予算ではとうていこれはまかなえないわけでございます。実は、私の村でも河川改修をやっておりますが、これはわずか二、三問の川幅の一またぎの小さい川でありますが、昭和二十九年から着工いたしまして、いまだに四分の一くらいしかできておりません。この進度でいきますと、あと十年あるいは十五年というような長年月がかかるわけでございまして、これは事務費その他金利負担とかいろいろ経済的にもロスが多いし、また経済効果も上らない。百姓もいやになってしまうのが現状でございます。そのようなことは農林省でも最近はいろいろと是正の方途を講ぜられておるようでございますが、このような形の土地改良事業ではとうていこの六百万町歩以上にわたる大事業は完成できないのではないか、百年河清を待つような形になるだろうというように考えられます。  次に、農業機械化の推進の問題でございますが、この問題につきましても若干の手はもちろん打たれてございます。しかし、現実には、皮肉な申しようをするならば、今の機械化推進はメーカーとセールスマンの力で推進されているというように私は考えております。農業近代化のいま一つの側面として共同化の問題がございますが、今のような形の農業では、今後なかなか生産性向上もできないし、あるいはまた農民所得の増大を考えることも非常に困難な条件があるわけでございます。やはり、今後の日本農業一つ方向といたしましては、共同化方向が必然的な方向だと私は考えておりますが、その場合、共同化のにない手といたしまして、現在の農協組織を強化し、さらにまた農協の下部組織といたしまして部落組織を確立する。そして共同事業あるいは施設に対する助成、低利資金の積極的な融通その他の施策を講ずべきだと考えておりますが、このような農業近代化共同化のために調査研究機関を設置しまして、先進農場を作るようなお考えはございませんか。これらの問題についてお伺いをいたしたいと考えております。
  13. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農業機械化の問題は、第一に、協同組合等を利用しまして、機械の導入あるいは資金を供給するとか、あるいは優良品種を奨励するということが手始めであります。これをもって足れりとせず、だんだん発達して参りまして、まず、畜産関係におきましては、草地の改良、牧野の改良等につきまして機械を導入するということで、まだスケールは小さいのでございますけれども、府県に国有の機械等を貸付して、これをどんどん進めております。来年度の構想としましては、特に畑地の農業経営改善のためにホイール・トラクターあるいはクローラー・トラクターというものを買い入れまして、これを使用させて畑地の生産力の増強を期待する、こういうふうにだんだん進んで参っております。これを統轄して一つのトラクター・センターのごときものをやるかどうかということでありますが、これらは今までの施設の経験に徴しまして発展的にだんだん取り進めて参りたい所存でございますが、現在のところ、直ちにトラクター・センターのごときものを置くという施設まではまだ整備しておりません。十分研究を重ねつつ、地方の実情に応じて展開していきたいという考え方でございます。
  14. 實川清之

    實川委員 それから、今年度は、多分南米だろうと私は思いますが、農業移民を約一万人送出するというようなことでお考えになっているようでございますが、私は戦前満州移民の仕事に関係いたしたのでございますが、満州移民は、国策として、そのために拓務省というような一つ行政機関までできて大々的に取りかかったわけでございます。しかし、その満州開拓の結果は、御承知通り敗戦によって惨たんたる結果に終ったわけでございますが、今回南米等に農業移民をするというような場合におきましても、どうも国の力の入れ方、あるいは国の責任の持ち方がきわめて不十分ではないか。まず外交的にもその相手国との間に十分な取りきめがなければならないのではないか。今やられておりますのは大体海外協会とかあるいは拓植連というような形で送出の実務をやらしておるようでございますが、これはきわめて微力な団体でございまして、とうてい安心してこれらの移民の線によって海外に行くというようなわけには参らないだろうと思います。今度の予算を見ましても、農林関係は送出の方の仕事を担当しておって、出先の方は外務省の所管になっておるようでございますが、送出だけに力を入れて、何も知らない内地の青年を向うに送る。向うでは惨たんたる目に会ってひどい生活をしなければならないというようなことでは、これはなかなか思うようには参らない。そういうような意味におきまして、送出の仕事もきわめて大事でございますが、同時にまた、向うの受け入れ体制なり、あるいはその他の指導面等についてのこまかな対策がないと、この仕事は大々的にやればやるほどかえっていろいろ大きな失敗が出てくるのじゃないかというような心配がされるわけでございます。特に私お伺いいたしたいのは、拓植連を作りまして、それにいろいろの心配をさせておるということでございますが、現在の農協法の正面の解釈からいきまするならば、農業協同組合が海外移民のことをやるということ自体が、私は非常に無理なこじつけ解釈ではないかと考えております。なぜあのようなけちな団体を作って、それに農業移民の仕事を担当させるのか。なぜ国が本格的に責任を持って国の力で安心して海外に雄飛できるような体制を作らないのかという点が、私のお伺いしたい点でございます。  また、このような農業移民によりまして人口問題をどうこうというようなことをお考えになっておるようでございますが、私は、満州移民の経験を見ましても、あれだけ大がかりにやって、しかも前後十年の時間をかけておりますが、それでもやっと百万足らずの人間しか送れなかったというようなことを考えますと、人口問題の解決というようなことには、一助にはなるかもしれませんが、なかなかこのようなことでは現在の日本の人口問題の解決にはならないのじゃないか。ただ、このようなことをしまして、日本の青年も安心して海外に出ていける、そして向うには十分安定した生活のできるところがあるのだというような希望を持たせることは、青年対策としても非常にけっこうだと思います。従って私はこの問題に反対をいたすのではございませんが、なぜ国がもっと責任を持って本格的に送出から受け入れの関係全般の体制をととのえないのかという点が私のお伺いしたい点でございます。
  15. 三浦一雄

    三浦国務大臣 体験に即された非常に有益なお話でございまして、傾聴いたしました。実は、昨年の八月に、この基本的な問題をどう扱うかということで関係庁の間に話しまして、農業移住振興対策というものを一応取りきめたのでございますが、その線に沿いまして、国内におきまする対策と国外に対する対策の大綱をほぼ了解し合ったのでございます。この移民を促進する場合、機構等におきましても、實川さん御承知通り、オランダ等ではこれは厚生省で多分やっているはずでございます。イタリアはまた別のところでやっておるということで、外務省自体がいいのかどうか、これは疑問があろうと思います。しかし、窓口は一本ということで外務省で扱っておるのですが、さりとて、国内にいろいろ問題がございますので、農林省も極力これに協力するという体制にしているわけでございます。  それで、まず来年度のことでございますが、勇躍して行きますためにはやはり青年の人たちの了解が大切なものでございますから、来年度の予算におきましても、海外派遣の方途として、青年たちが南米の現地に行って調査、視察してくるという経費等も計上してございます。この人たちが実地を見てきましたならば、相当役立つべきものじゃないかと思います。同時に、従来の終戦後の送出を見ますと、二万八千人程度行っておるそうでございますが、実は先ほど御指摘にありました通り、いよいよ期日に間に合わなくなってきますと、その日に間に合う者を連れて行くというような非常な安易な方法をとったために、実績を上げられなかった弊害も出ているようでございます。そこで、来年度の施設としましては、海外移住の指導の専任職員を設置することにしまして、そうして所要のところに専任の職員を送る考えでございます。同時に、実務に当る地方における海外協会の強化等もいたしております。同時に、農林省としましては、この線に沿いまして、移住者の募集、選考、訓練等の組織化をはかっていく、そうして移住訓練所等も設置されるような運びにだんだんなって参りました。もとよりこれだけでは不十分でございます。同時に、拓植連のことでございますが、この農業拓植協同組合の設立もだんだん出て参りました。これは海外移住の先進地におきましてだんだん出て参ったのでございますが、これらは農業協同組合組織として必ずしも許されないというものじゃなかろうと考えております。しかし、乱に流れないように、指導監督はしなければならぬと思います。同時に、国内での一番問題は、御承知通り、出て行きますといいましても、家屋敷をどう措置するか、負債等をどうするかということは、離れて行く村自体についてもいろいろ措置しなければならぬものがございますから、それらの配慮もする。同時にまた、行く人たちも力を合せて海外に同じ土地の人々がいるところができればこれに越したこともないということで、その方面に期待を持ってだんだんこれらの組合が出ておるわけでございますが、なお、融資等に対する資金を安定させるために、農業拓殖基金というものの創定を来年からするということにしております。これは一つの保証責任を持ってやるということにしております。  それから、同時に、国外の対策でございますが、一番の重点は、移住地を早く取得するということであろうと思います。第二点は、現地における営農指導組織を強化するということであろうと思いますが、これは実は機会あるごとに私から外務当局にも迫りまして、同時にまた、海外移住会社等に対しましても強くこれを要請しておるわけでございます。われわれの方としましては、必要に応じては技術陣営も供出するにちゅうちよしないということに進んでおりますが。農林省関係予算は、まだ一億二千八百万程度でございまして、外務省の二十億七千万のものは海外移住協会に対する出資等の経費ということになっております。  御指摘通り、海外移住の問題もまだ強く進みませんために、人口問題などの解決などという大きなことは言われぬと思います。しかし、有為な青年たち、もしくは有為な農民の人たちが海外移住するならば、一つの安住の地を得られるということにも相なるわけでございますから、私たちとしましては、これはまじめに堅実にこの指導の適切を期したい、かように考えております。
  16. 實川清之

    實川委員 外地での受け入れの問題ですが、土地あるいは営農指導というようなことももちろん大切でございますけれども終戦後の開拓政策のように、とにかく土地を設定してやって、そこにおっぽり込んでおく、それをくわ、かまでぽつぽつ開墾していく、そのうちに資金がなくなって土地を捨てて夜逃げをするというような形の政策を外地でとられますと、内地ならば夜逃げもできますが、南米あたりでそんな状態になりましたのでは、これは非常に気の毒なわけでございますので、できれば今北海道の根釧原野でやっておりますようなああいうような方式で受け入れ体制を確立する、そのためには、私は、やはりこの事業は、特に農業については理解のないはずの外務省にまかせておくよりも、農林省が国の内部もあるいは送出先の仕事も一貫してやられることがかえって移民については親切な行き方じゃないか、かように考えております。これは希望でございます。  次に、農協の問題でございますが、今度農林省では農協の自治監査制度を強化するような措置を講ぜられておるようでございますが、確かに、農協の現状から申しますと、監査機能の充実をはかるということは必要なことでございまして、私もそのこと自体には異存はございませんが、しかし、監査というものの性質から申しまして、これはすでにでき上った事実に対する処置でございまして、今後の経営なりあるいは組合の運営というような点につきましてはもちろんけつこうでございますが、ただ監査だけをいかに充実いたしましても、問題は解決しないのじゃないか。むしろ農協経営が現在困難に当面いたしておりますいろいろの条件を排除してやる、そのことの方がかえって農協としましては発展するのじゃないか。たとえて申しまするならば、農協の行なっておる営農指導事業に対する政府の助成、あるいはまた農協の合併促進のための政府の援助というようなものが先行いたしまして、そして農協が強化されることが前提でございます。そういうような意味で、自治監査の機能を強化するということだけではむしろ足りないのでありまして、こういう点に対する農林省の御見解を承わりたいと思います。
  17. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農協自体の自治監査のことでございますが、従前の産業組合の発達しました場合におきましても、やはり農林省では産業組合監督官の制度も置き、同時に組合側としましてはみずから業務の適正を期する、これはやがて組合員の結束を固めその信頼感を高める、同時にまた組合経営の基礎を固くするゆえんのものでございましたから、そうしてきたわけでございます。現在もその方針を踏襲しましてやっておるのでございますが、農業協同組合側におきましても、やはり事態の進展に伴いましてこの法を強化して参りたい、同時にまた、これに伴いまして経営の衝に当る人たちの研修といいますか教育と申しますか、そういうような方面につきましてもあわせてこの事業を監督したい、こういうことに応じまして農林省もこれに対する対策を立てたわけでございまして、若干の経費等も計上したわけでございます。ただいま御指摘になりました営農指導に関する問題、さらに合併促進に関しまする国の援助等につきましては、十分に考究を重ねて対処して参りたい、かように考えております。
  18. 實川清之

    實川委員 最後に一つ、事務的な問題になるのでございますが、今度農業委員会農家台帳を整備させるような方針のようでございますが、その農家台帳はどのような内容の台帳を整備させるのか、その点がもしわかりましたら、お伺いしたいと思います。  それから、農業委員会農家台帳を整備させる目的と、その台帳をどんな方面に使うのかという点もお伺いしたいと思いますが、私の聞くところによりますと、農家台帳の整備とあわせまして、耕地図の作成あるいは部落組織の強化等の問題を考えておるようでございますが、農業委員会農家台帳を持たせ、あるいはまた耕地図を持たせ、部落組織を結びつけるというようなことができました場合の農業委員会は一体どのような役割を果たす団体になるのかという点がわからないので、その点についてもお伺いしたいと思います。  この農家台帳の問題でございますが、現在農業協同組合の側におきましても、この点につきましては政府からの補助も受けておるわけでございますが、総合事業の活動促進のために、その根本といたしまして農家台帳の整備を農協でもやっておるわけでございます。そういたしますと、農協でも台帳を作る、農業委員会でも台帳を作る、二つの団体がそれぞれこのような仕事をやっていきますと、末端における農家が迷惑をするんじゃないか。あるいはまた、なぜそのような競合したようなことを二つの団体にやらせるのか。少し勘ぐりますと、数年前の農業団体再編成のときに問題になりました農業委員会の性格の問題でございますが、これは戦前の帝国農会の再現を考えているのではないかというようにも考えられるわけでございまして、これらの点についてお考えを承わりたいと思います。
  19. 三浦一雄

    三浦国務大臣 この台帳の整備なり耕地図の関係松岡君に説明させていただきます。  後段の問題でございますが、農業団体再編成の場合もいろいろの問題があったことは私も陰ながら聞いておるわけでありますが、これはどうも私の意見にわたって恐縮でございますが、御承知通り日本の従来の農会といいますのは、あれは明治初年に、西欧諸国の、いわゆるドイツ語でランデスカンマー、ああいう形態を私は採用したのではないかと思います。これはフランスの方にもありまするし、そういうようなことである程度発達したことは御承知通りであります。同時に、しかし英国の方の形態では協同組合の方で終始してきたと思うのでありますが、日本では二つの構成をとってきた、こういうことでございます。そうして、いわゆるランデスカンマー、農業会議所というような方では公益的な面を扱ってきた、それから事業的な方面は協同組合でやってきた、大ざっぱに言ってこういうような傾向であったろうと思うのです。ところが、戦争中に農業団体再編成が行われまして、一緒に大合同して農業会というものを作り上げたのでございますが、さらにまた反転して占領政策当時に分離してきたような沿革にもなってきたように思うのであります。これをどうするかは、われわれだけの考えでやるべきことじゃありませんが、双方の分野等につきましても、現在では今御指摘になった面ですらいろいろ出てきております。これは法律でもって統制するとかそういうことには参らぬと思いますが、双方の基本的な性格を守りつつ、やはり両者の調整をとるべきことじゃないかと思うのでございます。十分に留意しまして、検討を重ねて、両者のそご間隔のない、おのおのその分に応じて農村方面に寄与するようにしていただきたいということだけ一言申し上げておきます。
  20. 松岡嘉兵衛

    松岡説明員 ただいま御質問にありました農家台帳を作る目的でございますけれども農業委員会に関する法律によりまして、農業委員会の仕事といたしまして、農村振興計画を推進するという事業がございます。これは、たとえば新農村建設計画とか、各種の立法によります振興計画等も含まれると思うのでありますが、その振興計画の推進に必要な資料を整備したい、こういうことでございます。少し具体的に申し上げますと、今度の農家台帳の整備は、大体新農村計画で考えております農林漁業地域ごとに振興計画を作るに必要な、農家のいろいろな土地の状況であるとか、あるいは家族労働の構成であるとか、そういうもののカードと申しますか、台帳を作りたいということでありまして、こういった目的でありますので、農協等で行われておりますものと必ずしも重複するものではない、かように考えております。それから、耕地台帳も同じような目的で考えておったのでありますけれども、実は準備が不十分でありまして、今回は予算に計上いたしませんでした。
  21. 實川清之

    實川委員 これは私の方の県の実例でございまして、まだ確定した問題ではございませんが、動きとしてあるので、その程度でお聞き取り願いたいのです。農業委員会が県下の全農家から賦課金みたいなものを徴収いたしまして、その集まった金を、県の会議と、郡の協議会と、それから町村の農業委員会と、この三者で分けて使う。その金はどんな方向へ使うかと申しますと、農政活動の資金にするというような名目のようでございます。こういうようなことをやり、それから、今申し上げましたようないろいろのことを総合いたして考えますと、どうもこれは団体再編成当時の構想を地で行って、既成事実を作った上でそういうような方向へ追い込むんじゃないかというような懸念もいたされるのでございますが、ただいまの大臣の御答弁のように、両者の職能をはっきりさして競合のないようにしたいということでございますから、これ以上は申し上げません。私どもといたしましては農村内部にいろいろの団体がたくさん作られて、それらが同じような仕事をやって、お互いに勢力を分散するということは、そうでなくとも農民自体の政治的成長が非常に低い現段階におきましては、農民のためにそのような状態はきわめて不幸だと考えておりますので、団体を乱造されるようなことのないように一つ御注意をいただきたいと思います。  それから、ただいま参事官の御答弁によりますと、台帳は振興計画の遂行上必要な資料を調達するのだというようなお話でございますが、振興計画はもう三年も前から行われておりまして、今さらこれがなければどうにもならないということでは、はなはだ手おくれな感じがいたしますが、それはそれといたしまして、農協でも大体同じような仕事をやっておるわけでございます。今参事官は農協の台帳とは性格が違うからダブるようなことはないとおっしゃいましたが、どんなものができるかは、私まだ拝見いたしておりませんので、わかりませんけれども、おそらく農家台帳として考えられる幾つかの要素というものは、農協で考えても農業委員会考えてもそう大きな違いのあるはずはないと思います。もし御入用ならば農協の農家台帳をお貸ししてもいいのです。そういうようなむだな金を使っていくことは、私たちどうかと考えております。それより、もっと基本的な方向に国費を使われることの方が農村振興になるんじゃないか。どうもこの農家台帳の整備につきましてはすっきりとした印象を受けないのでございます。  時間もだいぶ切迫いたしておるようでございますから、以上申し上げまして、私の質問を打ち切りたいと思います。
  22. 三浦一雄

    三浦国務大臣 例の団体再編成にからんでの各種団体の問題でございますが、これは非常に重要なことでございますから、申すまでもありませんが、農林省といたしましても、よく慎重な態度をもって臨みたい、決して相互摩擦の激化しないように細心の注意を払っていきたい、こう存ずる次第でございます。
  23. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 大野市郎君。
  24. 大野市郎

    ○大野(市)委員 農林大臣が当委員会において所信を表明されまして、特に、農林漁業の生産性所得の増加がすでに進行しておるが、ただ他産業との較差があるので、今後の国民経済成長の中で経済の均衡ある発展をはかって農漁民の福祉の増進を期するということは農政の究極の目的であるとともに国民経済質的改善に資するものであると申されておるのは、全く同感でございます。そして、その所信の具体化として重点を三つあげられたことも、まことに時宜に適したものだと思います。生産基盤の整備強化と経営の健全近代化、それから価格の安定と流通機構の整備、これは全く具体化としてはその手で入っていかるべきものと私も思うのであります。ただ、ここで、他産業との較差の問題あるいは不均衡の問題は、わが国だけでなくて、どの国でも、世界各国でこれは農業の原始産業の本質からして問題が出て悩みがあるわけですが、わが国だけが、よその国と比較しましても、人口の四割からが農業関係者であるということが非常に後進性と言われるところだと思うのです。そういう現実の日本のギャップがありますだけに、このせっかくの御所信の遂行に当ってもずいぶんといろいろ問題が起きてくるはずであります。特に、五年間の年率の差をとってみましても、生産性で他の工業が一割も毎年も伸びておるのに、片方の農業は二分三厘の伸び率というようなことを見ますと、われわれは非常に焦燥の感にかられるわけであります。ただ、ここで生産性所得という言葉を並べますけれども、わかり切ったことでございますが、生産性向上ということで所得が増加する理屈でありますが、ややもすると、政策を誤まると豊作貧乏というので、この並べ方が思ったようにいかないこともあり得るのであります。ほんとうの意味での所得の増加ということになれば、やはり生産性向上のほかに流通機構の整備ということが大きなテーマになってくるはずであります。この流通機構の整備という問題は、しばしば指摘されますように、わが国の農政方向を見ますと一番劣っておる部門であるように思われるのであります。  そこで、御質問申し上げたいのでありますが、農家所得の増加を考えられるとともに、国民経済の上での消費者の立場というものが必ずついて回るのでありますから、たとえば農業保護政策をとりますに当っても、この点が一つの制約事項になって参っておると思います。その意味で、関税とかあるいは輸入制限とか、あるいは補助金をつけるとか、価格の支持制度を取り入れるとか、世界各国とも共通にいろいろ農業保護政策を実施しておるのでありますが、そういう消費者の立場という一つの制約事項がわだかまっておりますから、私は、所得の増加はこれによってはむずかしいので、所得の維持が精一ぱいだと思います。大臣は、農業保護政策、特に支持価格制度というようなものを取り上げた場合に、その保護をする限度というものがあると思うのですが、この点に対しての御意見を承わりたい。
  25. 三浦一雄

    三浦国務大臣 支持価格制度をとって、そして農業の大きなささえをしていくということは、各国によってみな事情が違いますが、アメリカのごときは、これは膨大な国費を出しまして支持しておることは申すまでもございません。アメリカにおいても、財政上の負担が非常に大きいものですから、今年はアイゼンハワー大統領もさらに教書を発しまして、その問題についての再検討を要請するような事態でございます。われわれも、米麦を初め主要農産物につきまして支持価格制度農村の方においてもっと進めたいということでございますけれども、一面においては国費の増高に制約せられ、そして思う通りにならぬということに相なって参ります。従いまして、われわれの方としては、後に御審議をいただくわけでございますが、肥料二法案等を出しまして、肥料等のような重要な農業生産資材につきましては、価格政策としては、これを低廉にし合理化を期待しておる、一面これを下げて参ったようなことも一つの現われだろうと思います。従いまして、一面においては生産増高すると同時に、その生産の過程における生産費の低減ということも大きなねらいと見なければならぬと考えるのであります。同時に、消費者を保護するという面ももちろんあります。先ほど實川さんからは、独占資本保護に急であるというふうな御表現でございましたけれども、われわれは、消費者との関係におきましてはやはり消費者の生活、エンゲル係数等を見まして、そこの調和をはかるということはやはり価格政策の大切な点でもあろうと思いますが、しかし、ただ単に価格政策だけでいきませんことは御承知通りであります。従って、われわれといたしましては、土地改良農業施設改善等は、国費を投じて、その投資の拡大をやって、その方面に寄与する、同時に、農業資材等につきましても、今のような基本的な問題は、まあ肥料のごときでございますが、これを取り上げてコスト引き下げの施策を増強する、同時に、支持政策をとる場合におきましてもその配慮はしますけれども、やはり、今後の農業政策の傾向としては、私は、もっと農家の収入の拡大に前進したい、こう考えております。
  26. 大野市郎

    ○大野(市)委員 そういうような工合で、一つの消費者の立場というものの隘路があるので、保護政策だけにたよることのむずかしいところは、われわれもその通り了解しているのでありますが、そこで、生産向上のために生産基盤の強化が取り上げられて参ると思います。特に、その生産性向上の行き方に対しましても、戦前にわずかに品種の改良とか施肥量の増加とか、あるいは土地改良ももちろんあったけれども、主として土地生産性の追求だけが戦前の状況であった。ところが、戦後になりますと、非常に機械化が入ってきて、脱穀調製などの作業、加工過程の程度から、進んで耕耘作業、病虫害の防除作業などの農耕過程の機械化に進んだということが言われています。事実そういう方向が見られるのでありますが、結局ようやくここで農作業条件の改良など労働生産性の引き上げが注目されて、それが正しい歩み方だということになったようであります。  そこで、農作業の合理化、近代化が進めば進むほどに、実は、實川氏も指摘されましたが、農業技術発達と経営規模との間の矛盾が出てきたのだと思います。生産性向上をはばむ要素として、経営規模の適正化の問題がここに出てくるわけでありますが、先ほどの農業効率の問題もそれにもちろんもとが出ておると思います。ここでお聞きしたいのは、その意味で零細農家とか兼業農家がまず問題になりますが、私は、兼業農家実態について、兼業農家が戦前のわずか四割から逆に六割五分も大きくなったという数字だけで、日本農業実態兼業農家実態に入った場合に、悲観だけしておるべき要素であるかどうか、むしろ、いわゆる経営規模の適正化という問題からとらまえた場合、この内容についてもやはり検討を要するのだと思うのであります。  その一つの例証といたしまして、ちょうど一月十九日でありましたか、朝日で、経済企画庁の最近の国民生活白書を資料として「兼業農家は文化的」という大見出しで実は報道が載っておったわけであります。これは従来言われた内容と逆の報道でありますので、それを申し上げながら御見解を承わりたいのであります。つまり、農業を従といたします第二種兼業農家の諸君の実際上の電気器具とか娯楽品の使用状況は筆頭になっておる、一番たくさん取り入れておらるる、その次が農業を主とする第一種兼業農家であって、ほんとうの専門の農家はどんじりに控えておるという、実はこういう消費の形態が列記されておったのであります。私どもが自分の近隣を見ましても、おやじさんが農家で、子供さんが教育を受けて鉄道に勤めて相当いい給料でおられる、残った奥さんがほんとうの小さな部分を飯米に耕やし、蔬菜の自給をして、大へん豊かに中流階級の暮らしをしておらるる、そういうのを見たりするわけであります。そういうものが特殊なものであるか、あるいは、第二種兼業農家実態というものの中に、相当数すでに家族の基幹労働力が自発的に他の産業に移行しておって、しかもその家庭は裕福にしておらるるというものがあるのじゃなかろうか、というふうなことを実は思っておるわけでありますが、兼業農家実態に対して大臣はいかなる御見解をお持ちでありましょう。
  27. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農林省農家経済調査によりましても、農業収入と農業外の収入のあれが相当事情が変ってきております。ことに労賃、俸給等の収入のウエートも非常に多くなってきておるわけでありまして、これは一つの傾向であろうと思うのであります。純然たる農業経営を営んでおる者を農家であると理解する場合におきましては、非常に制限されたことになります。しかしながら、そういう理屈を言っておるわけにいきませんから、今後の農業政策方向といたしましては、その農村に包括されております第一兼業、第二兼業というのを、全体を包括して考えざるを得ないと思うのであります。一つの統一的な農村を見るわけなのでありますから。日本はドイツ等と違いましてすぐに工業方面の雇用に転用できない。御承知通り、ドイツ等はすぐに転用して、そうしてそっちの方面に安定した雇用を得られる、こういうことがあるのでございますが、これが日本にはないのでございます。しかしながら、今後の行き方といたしましては、本来の農業を営む人はもちろんでございますが、できるだけの雇用を農村の方に持ってくるということに着眼せざるを得ないと思うのであります。そうしますと、これは実は農林漁業のワク内だけでは片づきません。広く国民経済全体のものとして考えなければなりませんが、そういうふうにいきたいものだと思うのであります。しかし、その場合でありましても、日本の工業労力の雇用におきましてもなかなか困難な事情がありますから、まことに至難なわざでございますけれども、それは別といたしまして、考え方といたしましては、この農業上の収入を上げるというほかに、他に雇用を求めて、その方面についての収入もカバーしていくということを、抽象的でございますけれども、そう考えつつ、今後農業政策の転換、少くとも基本的な考え方としてはさようにだんだん取り組んで参りたい、かように考えております。
  28. 大野市郎

    ○大野(市)委員 私が兼業農家実態をお聞きいたします意味は、ただ悲観的に、農家貧困に陥る過程においての兼業農家零細農家というふうにこれをごらん願うものか、その内容においては実は国の力で他産業に誘導して産業構造を変えるべきでないかという一つ構想がありますので、そういうことで、たまたま自発的な動きと合致する部面が相当な農家戸数、兼業農家戸数の中であるのではなかろうか、こういうふうに考えますので、それを一つの経営規模の適正化という形で農業生産性向上にも積極的にむしろ踏み込んでこれを指導される、もっと極端に言いますと、挙家離農までこれらが進展するような形にいった方が、あるいは一部順々でありましょうけれども農家の経営構造の改善ということになるのではなかろうか、こんなふうに思うので、これに対する御意見を伺ったのですが、もう一回お伺いいたします。
  29. 三浦一雄

    三浦国務大臣 経営規模の拡大は、これはもう理想としては取り進めなければいけませんが、現在制約した形では土地所有も限界がありますのは御承知通りであります。しかし、一割程度の者はその限界を持っているということであり、他の者は持たないということであれば、これはもっと拡大して適正規模のものを持たしたい、これが第一、第二の兼業の問題でございますが、先ほども私は答えたのでございますが、現在の雇用の構造を変えてしまう、あるいは就労の構造を変えてしまうという意味で、これは他の工業その他の産業に転換し得る方途を求めなければならない。それをできるだけそっちの方に転換するということが必要であろうということは認めます。従いまして、その面でいきますと、ただ単に農政のワク内でなくて、もっと広い視野の上に立って、その方策と待って進めなければならない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  30. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それでは、今度は零細農の問題でありますが、零細農の解消策について簡単に御意見を承わりたい。
  31. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農業の成立する要件としましては、土地は絶対的だと私は思うのであります。そこで、今までのなには、三千七百万ヘクタール程度土地はありますけれども、その七割以上はいわば山岳地帯である。そして耕地としては五百十万ヘクタール程度耕地しかない。そこで、先ほども實川さんからのお尋ねの際にお答えしました通り農林省は、さしあたり、今後開拓すべき対象として五十万程度の予定地は持っておる、この方面に逐次開拓の余地を進めていきたい、こう申しておったのでございますが、何せ、これをかりに百万町歩にいたしましても、日本の過大な人口をかかえております客観情勢におきましては非常に困難な問題であろうと思うのであります。そのいわゆる零細農業と申します零細農家というカテゴリーは、結局、土地のない、耕作する土地がないということであり、そこばくの土地を持ち、従って他の自由労働として出る労賃その他によってささえられておる階層を御指摘になると思うのでございますが、これは非常に私は困難な問題だと思います。しかし、同時に、いやしくも耕地を持つならば、その耕地が改良せられ、そして地方を維持し、できるだけの生産性向上さして寄与するというのは、一つのやっぱり考え方であり、政策であろうと思うのであります。第二段には、現在もいわゆる地目増反なるもので相当進めておるのでございますが、いやしくも寸尺の地といえども開拓し、これを利用できるならばこれを利用するということにあろうかと思うのであります。三番目に、兼業農家と同時にやはり労力その他のものを他の雇用に転用するならば、これをできるだけその方面に持っていくという広い国民経済の視野から、この政策を推進していくということでなければならないかと思うのであります。同時に、先ほども海外移住の問題等で触れられたのでありまして、日本の人口問題に寄与するなどというふうなことにはなかなか参りませんけれども、いやしくも有為な考えを持ち、そうして自力を持って新しい境地を開いていくというならば、その方面にもこれはできるだけの指導をいたしまして持っていくということが大切なことでなかろうかと思うものであります。
  32. 大野市郎

    ○大野(市)委員 零細農の解消策は、実際なかなか限られた国土でむずかしいことだと思いますが、その中で、先ほども問題になりました農業法人問題が出てくるわけであります。實川氏に対する御答弁で農政の基本的なお考えは承わっておりますが、私ども、この問題は単なる法律論だけでふたを締めておくわけにはいかないのではないかと思うのです。それで、現にこの委員会でも去年の春から始まった話でありますし、わが党内においてもこの農業法人化の問題に対しては委員会もできておるようであります。それだけでなくて、その農地法の問題を扱う農業委員会の代表である農業会議所の会長会議が九日にあって、それぞれ要望事項も取りきめて動き出しておる実態でもございます。特に、われわれ聞いておりますと、たとえばその要望事項の中でも、農地法の除外例として農業法人を法制化してくれ、ただし農地法の基本精神である自作農主義のワクの中ではずれないように作業はしてほしい、それから、根本的には所得税法を改正して農家の家族俸給を経費として認めるように、それから、そのことはなかなかむずかしいかしらないが、実現するまでは、とりあえず今できておる農業法人を他の一般法人と同じような取扱いにしてもらいたいという要望であると聞いておるのでありますが、私は、農業会議所のその要望事項を承わりましても、所得税法の改正で農家の家族俸給の経費算入という問題を取り上げましても、たとえば、現行税法の中で簡易青色申告の制度がございまして、農家ではこれを活用して、いわゆる申告の活用によって効果をあげておる農家も見ておるのであります。この点については、いろいろ見解があると思うので、結論的にはわれわれはこの委員会で発言を保留せねばならないのですが、現実に活用しておる諸君もありますなどで、従来の指導方針を一切がっさい御破算にして家族俸給を全部経費に落せということに対しての問題では、やはり意見を私は持っております。それから、さらに、農業法人化の理由を聞きましても、いろいろあるようでありまして、たとえば、一番納得のいくのは、均分相続による農地の分散を防止するためにはとかくそういう法制でカバーできないかということは、私は非常に危惧すべき一つの理由だと思います。あるいは、経営面積の制約がある、零細農家農業技術面の適用の立場から広く一緒に仕事ができたらという経営面積の制約を避けたいという考え方からの理由も、私は現在の法規のワクを越えてこれはやはり正しい一つの進め方のように思うわけであります。それから、今度は農業の帳簿の記入がむずかしいからというので、それらを一緒になってやれば分業でやられる、そうすると経営の合理化ができるという実利論もあるわけであります。あるいは、もっと端的に、生産共同化がほしいのだからやるのだ、あるいは、そういうことによって、合理化による資金の蓄積ができるから、自分で農業近代化ができるじゃないかというような付加した議論も一緒にあるようでございますが、私は、あげたそれらの理由はいろいろ十分な根拠があるように思うのであります。特に、すでに六百二十八もできておって、しかも大体内容は果樹園がおもにやっておられるというのですから、これは先ほど大臣からもお話がございましたが、自作農維持の精神から言って、分配のときに能力の差、努力の差で問題が起きる可能性があるからという御意見も承わっておりますが、これは私も同感でございます。だから、果樹園のような形で、いわゆる田植えやその他のような非常に限られた時間に集約労働を注がねばならぬというふうな労働条件と違う、農業の中でも園芸あるいは果樹園というふうな分野にこの農業法人の芽が出たということは、やはり分配問題、それから努力、能力というふうなその要因になる部分に対する異論があるせいじゃないかと憶測をしておるのでありますが、何はともあれ、ここで騒ぎが大きくなっておりますので、私は、農業法人については、法律論にとらわれないで、大臣としてもいま一歩この問題に対して、経営規模の適正化をねらうという意味で、場合によれば農地法の三町歩などという限度はあるいはもうすでに狭いものかしれないのでありますから、こういう点で果敢な一つの着想を御研究願い、御発表願うべきじゃないかと思うのであります。ですから、私は、経営規模の適正化は、機械の導入、農作業の変化をしておりまする今日の状況においては、三町歩では少くなったのではないかと思います。この点に対する大臣の適正規模の限度についての御意見を承わりたいと思います。
  33. 三浦一雄

    三浦国務大臣 問題は、適正規模と同時に、また今後の経営形態としての農業法人の御意見でございました。私は、法律論にとらわれているのではなくて、法律制度に採用しまするならば、それから流れて出る経済的作用が大きいから、にわかにこれを採用し切るわけには参らぬ、こう申しておるのであります。ことに、土地制度変遷というものは、人類の発生的な変遷と同様に幾多の変遷をしてきておる。素朴にこれを考えましても、土地所有権は法人が持っておる、耕す者はその社員たる農民、こうなりましょうが、その場合に、しからば小作契約であるかどうか。今のところは実態を見ますると請負ということになっておるそうでございますが、その請負の場合におきましても——こまかい議論は、きょうは私は大野さんと討論をするつもりではございませんから、あれですが、そういう意味で、この請負契約から見た場合での報酬は、果して現行で予想しておる小作の関係とどうなるか。これはやはり公平の原則から見て判断しなければなりませんが、そういうこともあろうと思います。同時にまた、均田制をとった場合におきましても、その働く人によって甲乙を生じ、やがて負担が変ってくる。また土地変遷にも歴史的にいろいろな事実もあるわけであります。こういうようなことで、ただ単に私が法律論にとらわれてこの問題を拒否するわけではありませんので、それらの影響がどう出てくるか。つまり、私たちはせっかく戦前にありました小作制度を改革してここまで持ってきた現段階でございますから、これらを十分にしんしゃくしてなお討究を重ねたい、こういうことでございまして、決してわれわれが研究調査をおこたる意味ではございません。農林省にもう少し冷静に客観的にこの問題を研究する余地を与えていただきたいと思います。従いまして、今にわかに農業法人論賛成であるとか、制度化するということは、私は、もう少し慎重に勉強したい、こう考えますから、御了承いただきたいと思います。
  34. 大野市郎

    ○大野(市)委員 農業法人の問題は、引き継いでいろいろ議論が出るところだろうと思いますので、どうぞ御研究を願いたい。われわれも一つ保留してさらに掘り下げる時間を将来持ちたい。  今度は、方面を変えまして、先ほどから、何としても狭い国土なんだから、それをやり繰りしながら零細農の解消、産業構造の改革にいかねばならぬ、こういう御所存であります。そこで、実は、長期観測をいたしました場合に、ただいま、本年度予算でいけば、食糧増産費は戦後最高に組んでいただいて四十四億の増加というようなことで、われわれとしても、それは多い分に越したことはありませんし、一応喜んでおる一人でありますが、この場合に、十五度の傾斜を前後にして日本の国土を一応色分けされて、とにかく現在では耕地、牧草地ともに十五度以下の土地は二割七分しかないんだというふうに発表されておりますが、あの狭いイギリスでさえも、耕地が三〇%に牧草地五〇%の、八〇%を農用地にしておる実態などを見ますと、これは後ほど御質問したいと思います食糧構造の問題とも関係するでしょうが、十五度以上のところにせめて牧草地としてさらに大きな地域が開拓できるものであれば、長期観測をした場合の将来の日本農業の姿というもので一つの希望がわいてくると思うのでありますが、一体、この狭い国土の農地の拡張策として、ただ十五度というふうなことで線を引かれないで、あるいは予算がないからできないんだというふうなそういう制約を離れて、長期観測に立った場合の日本の狭い国土開発の大きな一つ大臣所信があったらお漏らしをいただきたい。
  35. 三浦一雄

    三浦国務大臣 私は、このたび調査会の法案も出して、そうして、日本農業政策は一応再検討し周到な調査のもとに大転換をすべき時期であるというので、御審議をいただいておるようなわけでありますが、これはまだわれわれとしては結論を持っておりません。非常な困難な事情がございます。それから、農業だけの観点では解決できない問題があるわけでございますから、いずれ調査会等で主要なものは取り急ぎ進めていただくということにします。しかしながら、大観しまするに、やはり、私は、従来の財政投資といいますか、国の投資というものに非常に期待しなければならぬと思うのであります。飛躍したものをするのでなければ日本農政が立たぬような事態にだんだんなっておると思います。  さて、国土の利用のことでございますが、今御指摘になりました通りでありまして、デンマークでは七二%の土地を使っておる。それからイギリスにおいては七九%、約八〇%は農用地に使っておる。日本ではわずかに一七・五%、こういうふうに統計に出ておるというようなことでございます。同時にまた、このパーセンテージだけで言えないことは、御承知通り英国などは牧畜するために世界一いい草を持っておる。日本ではあんな草は立地的には得られないということです。これら日本の非常におくれている点もあります。素質が悪いのですから、従って日本ではその点はマイナスのファクターだろうと思います。しかし、そういうふうな事情があるからというので手をつかねているわけに参りません。同時にまた、われわれの国土の開発は、平坦な、しかも川のうるおいのあるところからだんだん開かれて参ったと思うのでございますが、これは専門家でございませんからわかりませんが、しかし、山から丘陵地帯、同時に平坦部にわたる一貫した農業のやり方を考えなければならぬというのがやはり学者にもございまして、そういう意味から申すならば、立体的に日本土地を利用するということが本質的に必要であろうと思うし、日本農業政策の行き方は、逆でございますけれども、平坦部から丘陵地帯、山岳部ということになっておるわけでございます。私は、そういう意味から申しまして、森林あるいは牧野、丘陵地帯、草地あるいは平坦部の肥沃の土地等も全体を見て、そうして土地利用の区分を考え、その集約度を高めるということを、学問的にも試験研究にも、さらにまたこれを実地に応用する中間的な試験研究も、あわせてとり進むべきものだと思います。従来網地振興というようなことが非常に言われておりましたけれども、これまた非常に進みませんでした。来年度等におきましても、私は決してこれをもって足れりとはしていませんが、この方面についての試験研究なり、あるいはまたどういう方向へ持っていかなければならぬかということで、大きい線だとは決して申しませんが、小さい線ではありますが、新しい線を引き出したと思います。これをやはり拡大し、さらにまた、日本の今後の農業のあり方を、基本的な考え方が打ち出されたならば、それを拡大して、そうして立体的にこれを利用するということにして、十七%以上の土地の利用を高めるということに配慮しなければならぬと思いますし、同時に、その線がかりに許されるとするならば、開拓あるいは干拓、土地改良等もその基本線に沿うて長期的な観点に持っていって、そうして、当初に申し上げました通り、国家の投資等にも拡大して持っていきたいものだ、こう考えておるわけでございます。
  36. 大野市郎

    ○大野(市)委員 やはり土地の利用の問題でありますが、農地の利用の方法についてのことであります。経営の健全な近代化を重要なテーマにしておられますからもちろんお気づきと思うのでございますが、近代日本人の食生活というものがすっかり変ったと言われております。特に、戦前と比較して、米は二割も食べ方が減った、小麦類は倍ほどになるが、大豆、果実、肉、卵、牛乳などが非常な増加をしておるのは御承知通りであります。特に、その食べ方もそうですけれども国民の栄養摂取量の変化というものを、実は今回三十七年度完結という形で長期計画を発表されましたので、たまたまそれを見ましたら、三十一年と三十七年の比較で、カロリーで二千百四十三が二千二百、蛋白質が六十五・一グラムを六十八グラムに伸ばしたい、脂肪は二十三・九グラムを三十グラムに伸ばしたいというような工合で、摂取カロリーの方はそうでもないけれども、蛋白、脂肪の摂取量は非常に増加させるという計画を立てておられます。しかして、私のもう一つ気がつきますことは何かというと、食べ方の問題になりまして、熱量のとり方が、われわれ日本人は穀物から七割もとってしまうのが、英国やドイツでは三割しか穀物から熱量をとらぬというような形で、蛋白、脂肪で栄養素の補給をしておる。そういう根本的な違いはありますけれども、結局、国土が狭くて、開発するにしても十五度の傾斜で一つの線が農業の原理から引かれるというようなことになっておりますと、これはだからだめなんだというのでは飢え死にせなければならぬわけでありますから、そういう意味で、農政の本旨としてはこの変化に適応する農政があるはずだ、こういうふうに思うときに気がつきますのは、一体、外国との生産高の比較を見ましても、とにかく日本では米麦で総生産額の五割八分も出てしまって畜産は一割二分だ、ところがイギリスなどでは穀物は九%しかしないで畜産は六割八分もやっておるのだということを見ますと、とにかく草資源の利用ということに切りかえるならば、相当に体位の伸長にも牛乳を飲んで現実に子供たち成長しておる姿を見ておりますときに、われわれとしてはいわゆる作付種類の変更というような問題が将来の農政の大きな課題になるのじゃないかと思われるのであります。こういう点に対してまず出てくるのが水稲の問題になると思います。何でも昭和五十年にはとにかく米麦で自給自足のできるようにやりたいのだというふうな構想も聞いておりますけれども、とにかく、人口の増加の将来を考えたりしますと、水稲の将来というような問題でも、将来の農政でこれは大きなファクターになる。私は、もちろん、日本の気候、風土から、水田が適作であり、現在の農家自体の経営の安定の保障のためにも水稲の将来に一まつの不安もあってはならぬというふうに思うものですけれども、ほんとうに長い農業の政治というものを考えるときには、そういうことはあっても、相当大胆に作物の種類の変更という問題で取っ組まにゃならぬ時代が来るのじゃないかと思うのですが、こういう点に対しての大臣の長期的な観測、御見解をお聞きしたいのであります。
  37. 三浦一雄

    三浦国務大臣 大野さんのお考えは、私は非常に傾聴いたします。と申しますのは、今の農業政策のことでございますが、われわれは、国民性と申しますか、国民の食生活と申しますか、その内容の変遷は認めざるを得ないと思います。だんだん変化してきております。ただ、しかしながら、理想的な傾向にはまだ伸びておらぬというのに現実に非常に困難さがある。昨年来当委員会等からも非常に激励、かつまたひどい御批判を仰いだ乳製品等の問題もあるわけなんです。理想的に言うならば、これは、乳製品をとり、同時に粉食にするならば、日本農業の構造そのものも、それから生活そのもののなにも非常な変化をすべきものだと思うのであります。そこで、して参った。ところが、それは前の戦争中の非常に困ったときには若干の食生活変遷もあったけれども、やはり、元へ返ると、何千年から食べていたお米を食べたいということになり、米の増産に伴ってその方面の消費が増大してくる、かようなことでございますので、これは、一面においては、食生活改善と申しますか、生活改善を、長い目で、そうして堅忍不抜のなにでもって指導しなければならないのじゃないかと思います。英国におきまして、長い間、子供たちの栄養を考え、そうして学校給食等をしたというのも、それらの事由はあったと思うのでございますが、われわれは、この食生活の内容をだんだん変えて参る、それに対応する施策をとるということは、日本国民全体の将来を考えて同感でございまするし、それに対応して農業政策等も配慮しなければならぬ、こう考えております。
  38. 大野市郎

    ○大野(市)委員 そこでもう一つお聞きしたいのでありますが、これは実は、昨年の暮れに発表された経済計画で、農業成長率を年率三・三で押えて、米麦換算三十七年度に七百六十一万石の増産計画を立てるのだ、そうして、平年度が輸入米百万トンもあるので、これを六十二万トンに縮小してやりたいという計画の発表がありました。金高では、実際の食糧消費の増額がありますから六億三千四百万ドルが六億六千八百万ドルというような工合で額ではふえておるようでありますけれども、いわゆる輸入食糧の削減ということを眼目にして増産をしておられるようであります。ところが、ここで、三十一年の二月の十五日に立てられた長期計画で、実は資料を取ってみましたらこういう矛盾があるのです。米麦ではそういう大へんいい制度をとったけれども、畑の蛋白質と言われる大豆の生産の問題で逆に輸入がふえる計画になって、元も子もない計算が出ちゃった。今度の新長期計画の内容についての詳細なデータを持ち合せがないのでお聞きしたいのでありますが、三十一年の二月のときの計画では、食糧自給度の測定では、三十五年度に米麦で従来の七九・八%であったものを八一・四%に伸ばす、大豆は五二・四%の自給率であったものを逆に四割四分に減らすという想定があって、しかも、輸入金額では、米麦合計で四億一千五百万八千ドルのものを三億六千百万ドルに減額するから、五千四百万八千ドルの輸入金額の減少を来たす、しかし、大豆ではわずかに四千八百一千万ドルの輸入であったものを大幅に伸ばして一億四百万ドルに輸入金額を想定してある。そうすると、せっかく米麦で五千万ドルを減らしたのに、大豆で五千六百万ドルふやすということになって、せっかくの総合食糧観点から言うならば元も子もないところの長期計画が当時あったのであります。今度はよもやそんなばかげたことはないと思いますが、このデーターが手元にありませんので、承わりたい。
  39. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ちょっと計数にわたりますから、官房長から説明いたさせます。
  40. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 新長期経済計画におきまして大豆の増産あるいはその自給率についてどのような計数的な考えを持っておるかということにつきまして、私からごく簡単に御説明いたしたいと思います。  御指摘の点につきましては、ひとり米麦ばかりでなしに、お話の中にもございましたように、今後の食生活、あるいは食糧消費の構成といいますか、パターンといいますか、そういうふうな消費の傾向に応じて総合的な食糧の自給化をはかりたいということを骨子にいたしておりますので、米麦ばかりでなしに大豆につきましてももちろん増産の計画を一応立てているわけであります。計数的に申し上げますと、三十一年の基準時に対してまして、作付面積といたしましては八・五%の増を見込み、増産量といたしましては、三十一年の基準三百五十六万石に対しまして、五百四十三万石、百八十六万石の増ということに計画をいたしておるわけです。ところが、先ほど先生のお話の中にもありましたように、蛋白資源の増ということを今後の食構成の変化として相当高く織り込まなければならない。動物性の蛋白ばかりでなしに植物性の蛋白についてもふえる。これは、最近の食構成から言いまして、だんだんやはり大豆に対する消費増というものも相当ふえるのじゃないか。この計算では、今後一人当りの消費の伸びが、大豆については二割以上、二二%の増をするであろう、こういう見込みを立てておりますので、そういうことで、需要が相当にふえる。従いまして、需要が、たとえば加工用で考えてみますと、三十一年の七十五万トンから、輸入需要量としては三十七年に百十一万トンにふえる。従って、生産量としましては、さっき申しました五百四十二万石、つまり六十九万九千トンと増加いたしましても、なお輸入量としては相当ふえざるを得ない。こういうことから、今お話しになりましたような数字が出てきておるのだろうと考えるのであります。考え方におきましては、米麦と大豆についても全然変りなく、むしろ大豆は食構成の変化も織り込みまして需要増を見、米については、むしろ今の一人当りの米の消費カロリーは横ばいに考える、大豆はむしろ二割もふやす、こういうふうな計画を立てて、国内の生産もできるだけ上げる、なお需要がふえるために輸入がふえる、こういうふうな計画になっております。
  41. 大野市郎

    ○大野(市)委員 御承知のように、内地の大豆は〇・九石くらいしかとれておらぬのでありますから、これがとにかく倍の二石にまでなるということは、そう篤農家でなくても、手の入れ方で可能であると言われておるのであります。ですから、その意味で、内地の増産計画を立てられるならば、とうとい外貨の節約もいたすことが可能でありますので、その点に対する配慮が足らぬのじゃないかと私は心配するのであります。この点に対して大臣の御見解を承わりたい。
  42. 三浦一雄

    三浦国務大臣 大豆は特殊な作物でございまして特に重要であることは御指摘通りであります。本年の予算にありましても、その重要なかような作物についての優良品種を確保してそれを推進するという試験研究も取り進めて参りますから、今御指摘のような方向にわれわれは極力改良を進めて、できるだけ増産をして参りたい、こう考えております。
  43. 大野市郎

    ○大野(市)委員 実は、国内の増産もお願いをいたしたわけでありますが、もう一つ承わりたいのは、輸入大豆の割当の問題であります。これは御承知のように、国産大豆は、自己消費を除けば、ほとんどとうふ商が買っております。輸入大豆に対して比較的高い値段の大豆を、一番庶民的な食べものであるとうふに実はほとんど吸収されておる。しかも毎年それが買付が足らないで輸入大豆の割当をとうふ業は受けておりますが、それでも消費に足らないで、実情は、外国から——特にアメリカ産大豆は、油向きで蛋白質が不足であるというようなことで、大手筋の油業者にほとんど流れます関係から——これはほんとうに蛋白分が少いのかどうか、価格との関係はどうかというのを調べますと、内地産の大豆と価格差が一割以上あります場合に、その含有蛋白量の不足をカバーしても間に合うところのいわゆる経済原価になっておるのであります。だからして、油屋さんに割り当てられた外貨割当の大豆をとうふ屋さんが、トン一万円の差がつくと言っておりますつが、なまで割り当てられた大豆を、手数料と言いましょうか、自由価格と言いましょうか、それを受けておるという事実をわれわれは聞いておるのであります。そうすると、とにかくほんとうに油にしてしまうなら別でありますが、油にしないで、割り当てられたものを横流しして、そういう金で外貨割当の利ざやかせぎをするということになるわけであります。私はこれが事実であることを承知しておるのですが、そういうような不合理をいつまで続けられるおつもりですか。よもや大臣は御存じがないだろうと思うが、この点に対してお伺いをしたい。
  44. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 大豆の国産と輸入との用途は、御指摘のように、大体はとうふには国産が一番多い。それから、みそ、しょうゆ。みそ、しょうゆの方は、最近は輸入の方が値段の関係で多い。そこで、今の横流しの関係でありますが、御指摘のような事態がございます。そこで、一体製油原料なり、みそ、しょうゆの原料なり、あるいはとうふの原料なりの需要の算定が非常にむずかしいのであります。非常に相場の開きがあるときには、輸入の割当をよけいとって、それを横流しにして利ざやかせぎをしよう、こういうような現象が起りますので、私の方ではその用途にほんとうに向くようにという需要の算定に非常に苦心しておるのであります。これは、一つは、今の輸入大豆と国内産大豆の価格の相違と、やはり国内産大豆の生産状況、出回り状況、これに非常に関係がございますので、結局豆業者のほんとうの自発的な自粛に待っていただかない限り、とことんまで私の方で実態をつかむことは今のところむずかしいのであります。そういう事態が起りましたときは、それぞれの団体に注意いたしまして、次の割当に際して一定の操作をする、こういうことも考えております。
  45. 大野市郎

    ○大野(市)委員 長官も横流しの事実を御確認なさっておられるのでありまして、国内産の量の動きにつれて行政上むずかしい点もあるという御弁解でございますが、内地産の、農家の諸君のせっかく作られたものは、ただいまもお話しの通りに、ほとんどとうふ屋さんが消費しているわけです。それはいわゆる庶民が食べておるわけです。ですから、そこに安い材料が行くならば、十円とうふはできるのです。十円とうふの製造ということで、安い材料を与えて、安いものを作らせるのがほんとうであると思いますので、大臣、長官もお認めのことでありますから、業界の実情も資料をそろえて、また当委員会なりその他であるいは御相談する時期があると思いますが、その節には一つ率直に庶民の消費財の安くなるということを条件にして適正な実需割当をされるように要望いたします。  それから、もう一つ承わりたいのでありますが、濃厚飼料の手持量の問題であります。私は昨年飼料需給審議会の委員をいたしておりましたので、昨年の審議会に出まして御注意申し上げたのですが、これが直っておらぬようです。というのは、その当時、昨年でありますが、八万トンほどふすまの在庫があったために、会計検査院の検査によって、過当な手持量というのでおしかりがあった。そこで、おびえてしまって、昨年の計画においては手持ち一万トン前後でふすまの操作をするような需給計画があったので、私は当時、これは違う、とにかく国内産その他の大きな量に対して、八万五千トン持っていたからといっても、果して業界の値のつり上げに対してこれを牽制できるかどうか疑問にさえ思う量であるのに、それを会計検査院に手持ちが多いからと言われて、ふるえ上って一万トン台に手持ちを減らすなどということでは、大臣の御所見の中にも濃厚飼料の手持ち操作によって価格の低廉化をはかるということがあるにかかわらず、これでは絵にかいたもちになると思うのです。この点、こまかいことでありますから、御実情はなかなかお耳に入らぬと思いますが、これはどういう形で会計検査院と話をつけられたか、また手持量は今日においてはどういうふうにしておられるか、濃厚飼料価格低廉の方法としては重大なポイントだと思いますから、承わりたい。
  46. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 濃厚飼料の、特に政府が飼料需給安定法に基いて取り扱います飼料の在庫の点と、過去の在庫が八万五千トンあったかというお話でありますが、その際における会計検査院の指摘に対する取扱いをどうしたかということでございますけれども、本件に関しましては、過去の飼料審議会において大野先生から、検査院の指摘内容が方法として適当じゃないという御意見があったかと私は漏れ聞いておりますが。まず、過去の検査院の在庫八万トンをこえた場合の指摘に対しましては、濃厚飼料を全量政府が取り扱っておるのではなくて、輸入飼料を中心にして、同種類の、あるいは代替性を持つ国内生産の自由販売のふすまの需給操作を左右する操作力を持つということをもって本旨にしているのであるから、在庫は適当な範囲ならば多ければ多いほどよろしいのだという見解を農林省から説明いたしまして、了承を得て、その程度の在庫が悪いことはないということになりまして、問題はなくなったと聞いております。二十四年度の濃厚飼料の政府取扱いの需給計画の作成に当りましては、その関係は全然考えませんで、むしろ前年の三十三年度の在庫に関する実数よりはるかに豊富にいたしまして、そして飼料の需給操作力を政府がたくさん持つように、また飼料の市場価格が畜産物の価格となるべく照応いたしますように、特に配慮をいたしたつもりでございます。  ふすまの例が出ておりますので、ふすまで申し上げますと、三十三年度の年度初めの在庫量は二万一千トンでございましたが、三十四年度の期の初め、すなわち三十三年度末の在庫は七万トンにいたしております。現実にはすでに政府は現在これ以上保有いたしております。あわせて、買い入れも、前年度十万六千トンでございましたのを十四万二千トンにいたしまして、売り渡しは、飼料自給の促進と同時に、しかしまだその緒につく度合いが少いのでありますから、この点に配意いたしまして、前年度十万二千トンでありましたものを、十七万二千トン、七割増しにいたしまして、期末の在庫は、前年度二万五千トンでありましたのを四万トンにいたしておるのでございます。  これは政府の食管会計が扱いますが、政府の価格損失補てん金との関係で多少のことも考慮いたしましたが、在庫については根本的にこういうように考えております。濃厚飼料の相当分というか、政府が取り扱う量を多くすることと、在庫を多くすることで、この在庫の目安はすべて三カ月分を確保する、従来は一部三カ月分になっておりましたものを、すべて三カ月分に計上いたしております。あわせまして輸入ふすまは全量政府が取り扱う。昨年は政府と民貿と並び存しておったわけであります。今度は全量を取り扱うようにいたしておるわけであります。その他についても同様の措置をとっておるものがございますが、従来より政府操作を弱化したもの、在庫及び売り渡し等において弱化した点は一つもございません。
  47. 大野市郎

    ○大野(市)委員 それから、やはり、長期計画によりますと、三十七年度にはパルプ材の需要が四割五分も上ると算定されたのでありますが、なかなか材料がすぐに伸びないだろうということで、いわゆるポプラの問題でありますが、イタリアのポプラを普及させると、あるいは十年以内で伸びてしまって、しかも農家の庭先で植えることができる、平地でも植えられるというふうないろいろな点が研究されておるようであります。このイタリア産のポプラの普及というものは、パルプ材の将来の需要のためには手っとり早くて、農家収入にもなるいいものであると思いますが、その現在の奨励の方法、将来はどうされるか、簡単でけっこうですからお答え願いたい。
  48. 山崎齊

    ○山崎(齊)政府委員 お話の通り、ポプラの生長は非常に早いのでありまして、その用途も、バルブとかベニヤとかマッチの軸等に適しております。林野庁といたしましても、これを推奨するという点から考えますと、気候風土を非常に異にしておる関係から、そのポプラにつきましての育苗あるいは造林保育、病虫害、風害等についての基礎的な研究が必要と考えまして、昭和三十三年度から各府県の試験機関を使いまして現地適応試験を実施しておるという段階にあるのであります。林野庁といたしましては、約十年くらいの長期の継続の計画によりまして、これの適応性についての確固たる基礎を出したいというふうに考えておる次第であります。
  49. 大野市郎

    ○大野(市)委員 以上で終ります。
  50. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 午前の会議はこの程度とし、暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕