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1959-03-10 第31回国会 衆議院 内閣委員会各省設置法改正案等審査小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)     午後零時三十六分開議  出席小委員    小委員長 岡崎 英城君       倉成  正君    綱島 正興君       前田 正男君    石田 宥全君       受田 新吉君    木原津與志君       高田 富之君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      吉田 信邦君         総理府総務長官 松野 頼三君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君  小委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十日  小委員高橋等君、富田健治君、飛鳥田一雄君及  び石橋政嗣君同日委員辞任につき、その補欠  として綱島正興君、倉成正君、石田宥全君及び  高田富之君が委員長指名で小委員に選任され  た。 同日  小委員綱島正興君、倉成正君、石田宥全君及び  高田富之君同日小委員辞任につき、その補欠と  して高橋等君、富田健治君、飛鳥田一雄君及び  石橋政嗣君委員長指名で小委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業基本問題調査会設置法案内閣提出第  九三号)      ————◇—————
  2. 岡崎英城

    岡崎委員長 これから会議を開きます。  農林漁業基本問題調査会設置法案につきまして、審議を進めることといたします。  質疑を許します。綱島正興君。
  3. 綱島正興

    綱島委員 ただいま提案になっております農林漁業基本問題調査会設置に関してでありますが、基本問題というこの「基本問題」の限界ですね。一体どういうところに基本を置かれるか。もっと具体的に申し上げますれば、調査範囲は、国民経済の中における農林漁業の問題の調査であるか、それから国際間における日本国民経済の中における問題であるか。これが今後一番大きな問題になってくると思いますから、審議室長ではちょっと無理かもしれぬと思うけれども、お答えを願いたい。
  4. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 農林漁業基本問題として考えておりますのは、今お説のように直接には国民経済の中におけるわが国農林漁業基本問題を確立していきたいということでございますが、同時にそのことは現在の国際経済のもとにおける日本経済、その中における農業ということに当然相なろうと思います。そういう意味において基本問題を検討いたしたいと思います。
  5. 綱島正興

    綱島委員 そこで伺いたいのでありますが、私ども注意をいたさなければならぬことは、御承知通り農業というものについては各国いろいろな基本政策を大体持っておる。日本のうちにはいろいろな言をなす者がこのごろございます。あるいはアメリカあたりでも農業保護政策が過ぎておる。そこでこれをどうしたらいいかという議論もある。日本でもあらゆる部面からと言うてよいくらいに、農業保護政策については再検討を加えなければならぬ。その再検討を加えるという意味はどうかというと、あまり保護政策が過ぎておりはせぬかというような議論をなす者が非常に多いのであります。これらについての提案者のお考え方いかようなお考え方でございましょうか。
  6. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 お説の通りいろいろと保護政策を加えて参りました。しかし保護政策だけですべての問題が解決するわけでもございません。また保護政策にもおのずから限界があると思います。従って今回の基本問題の調査会といたしましては、単なる保護政策だけではなくて、さらに基本的に解決できる問題がありはしないか、そこらに調査研究を進めて参りたい、こう考えております。
  7. 綱島正興

    綱島委員 提案の理由でもう少し明らかにしておきたいことは、なるほど保護政策だけではいかぬようだから他の検討もしてみたい。言葉のやりとりからいえば、なるほどそういうこともあろうかと思われますが、一体概念というものはそれが何らかの事実をはっきりするのでなければ、これは言うも言わぬも同じになる。私がお尋ねしたいことは、事が明らかになるような概念を伺いたいのです。世の中が乱れてくると概念を粗略にする。何でも勝手ほうだいに言うて、意味も何もないことをやりとりする、こうなるので、ことに公けの機関等においてはそのことはあまりよくない。これはわかることを言ってもらいたい。そこでさらに端的にお尋ねをいたしますが、日本は御承知通り保護政策の中で生産補助をいたしたり、価格補償をいたしたりして、農業保護をやっております。一体そのうちで、いろいろ非難が日本の中で起ってきているのは、生産補助金の使い方が適正でないのではなかろうかという議論が会計検査院から出てきたり、大蔵省から出てきたり、いわば部外者議論でございます。もっと端的にいえば、しろうと議論でございます。農業というものは一体どんなものか、ろくに知りもせぬような者がそういうような議論を多くいたすので、この際農業とは何ぞやという問題に少し深入りするために、私はかような議論をいたしておる。またそれが明らかにならぬ限り農業基本問題と言ったって、概念さえわからずに基本を明らかにしようというのは、これは思わざるもはなはだしい。そこでこの立案者に私は伺わなければならぬことは、一体どういう必要でこういう法律案を出されるのか。これは聞かぬでもわかる。各国でやっておるのを日本がおくれておる。ただいままで見ると、大体農業については非常にごまかしの政策がある、やかましく言われるから仕方なしにやってきた、こういうような政策が多くて、妥当な線での政策は非常に少いと見ておる。  そこで農林大臣に伺いますが、この法案をどうきめるかということは審議の結果でございましょうけれども提案で意図されておるところは、大体今のアメリカみたいなシステム、つまり価格補償システムに重点を置いておる、生産補助政策を基礎としてやっておる西ドイツ、これはドイツ時代からやっておる。こういう点について実は日本の類型は、日本独自の立場もございましょうが、大体どっちの範疇に入るものだというお考えで御提案であるか、その点を一つ伺いたい。
  8. 三浦一雄

    三浦国務大臣 この問題は実は農業基本的な問題でございます。今お説の通りアメリカにおける価格支持政策、これはアメリカ国情をもってしてはいろいろの困難があったけれども、一貫して貫いてきた政策でございます。同時にまたニュー・ディール以来これを堅持してこられたのであります。西ドイツ等の関係はこれはまた御了承の通りでありますが、最近小倉技術会議事務局長が行って参ったのでありますが、スタートはどうも価格補償政策をしてほしい、こういうことが非常な強い要因になっておったようでござ います。ところが実際問題になりますとなかなかとりにくいということで、ドイツでも検討された結果、そこでこの問題はむしろ今お説の通りの方式にだんだん切りかえてきた。すなわち生産性を高めてその方面農業政策をやって参ったということが実情らしく思われます。同時にドイツにおきましては、これも御承知通り、これを工業方面に転換しまして容易にこの問題を解決した、こう思われる節があるわけであります。御承知通り日本農村構造というものは、膨大な人口を控えて、これに対して農業を成立させるすなわち三大要素の土地そのものが非常に少い。ドイツにおきましては相当広大な土地を持っておるにかかわりませず、農村にあるところの人口工業方面にどんどん切りかえ、そして工業を発展させて、その方面雇用政策を推進していく、そして少い農業人口をもって農業生産を上げておる、こういうことが見のがすことのできない事情でございます。わが国としましては御承知通り今いわばどっちも不徹底のままではございますけれども、併用の形になっておるわけです。この問題は実は農林省としまして、併用していくか一方に傾くかということの可否は容易にきめかねるものでございますが、農業基本問題としての取り組み方は、十分に日本国情を見て同時に今後発展させなければならぬ。日本農業につきまして忌憚のない意見を求めて、そしてわれわれとしては取り組みたい、こう考えておるわけでございます。いずれを是としいずれを非とするということは、現在のところは予断せずに、まっしぐらに調査研究の成果を待ちたい、こういうことが現在のところでございます。
  9. 綱島正興

    綱島委員 大体目的とされておるところは、補助政策価格補償政策といずれかということはきめていない、こういう御意見でありますが、妥当だと存じます。だがわが国ドイツなどと違って考えていただかねばならぬことは、農業人口の転換するに妥当なるコースがあるか、これが問題であります。農業人口の率というものも、御承知通りドイツなどの二倍に近いパーセンテージを占めておる。御承知通り西ドイツは元来工業地帯でございまして、そしてこの地帯は戦後著しく工業の発展を見ておりますので、人口吸収も割合に楽である。それからドイツの非常に高度化した工業というものは、ヨーロッパにおいても商品のはけ口というものが日本から見れば非常に楽であるし、ことにフランスとの間にあの協定をいたしましたところから、関税の障壁等も非常に楽になっている。農業地帯をたくさん持っておりますフランスに対するドイツ輸出可能性というものも、日本よりも非常に楽であります。日本工業製品はけ口というものは、精密工業では日本の特殊なレンズでございますとか、あるいは特別な繊維工業でございますとかいうもの以外は、大体精密度においてはなかなかアメリカに及ばない。だといって、それでは日本の非常に進んだ工業をそのまま東南アジアのどこやらかで利用し得るかというと、これも市場を発見することは困難であるということで、日本農業労働力というものをいかように処理するかということについては、日本の置かれておる国際間における経済事情から参りまして、非常に困難なことが予想されるのであります。一面からいえば、日本農民所得というものは、他の所得に比べて非常に低位でございます。ただいま中小企業所得ということが非常に問題になっておりますが、中小企業所得パーセンテージの半分が農業所得でございます。これは総所得数字ではございません。一人当りの所得数字でございます。そこで日本の非常に低位にある農家経済をそのままに温存することは、近代国家の本旨である国民所得水準を大体均等にするという考えに全く離反している。ことには私はこの際どうしても内閣などで御注意を願わなければならぬことは、アメリカは膨大なる価格補償の結果、アメリカさえ困ってきたのだ、アメリカ経済力をもっても困ったのだ、こういう議論であります。これはよく聞いておいてもらいたいと思う。審議会人たちなんかはよくこれをやる。それは全くしろうとしろうと耳で聞いた議論です。アメリカなどは人口は一三%しかございませんけれども、現行の予算を見てごらんなさい。アメリカ合衆国の予算日本円に換算して大体二十五兆円であります。そのうちの十五兆円が軍事予算であります。残りの十兆円が全部の内政予算であります。そのうちの二兆九千億円が農事予算で、それは何かというと試験研究は多少あるけれども、全部価格補償です。人口は確かにわずかに一三%、そうしてそれだけの補償をしても、農民労働力に対する値というものは工場労働力パリティではないのです。それでも十六対十二でございます。あれだけ補償しても足らないのです。この基本法でまず明らかにしておきたいことは、近代産業における農業というものは一体どういう地位占むるか経済的価値から見込んで割に合う産業であるかどうか、こういうことをまず伺っておきたいのであります。
  10. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今御指摘になった点でございますが、今御指摘になった点を正確に把握するという資料で作り上げられてはございませんけれども農林省その他の統計が出ましたのを見ましても、第一次産業、第二次産業、第三次産業等国民生産における地位から見ましても、格差が非常に目立っておる。それからまた趨勢として、他産業との関連において、農業所得パリティがだんだん下っておるということでございます。こういうふうにしていったならば、これはもう十年足らずでほんとうに救うべからざる地位に落ちばせぬか、こう憂えるのでございます。ただ今まで急激に来なかったのは、往年の昭和初めごろにありました第一次欧州大戦のあとにきた農業恐慌に際しまして、日本がひどい農業恐慌に襲われたことは御承知通りであります。当時は更生運動などを展開しまして、自力でやるということでわずかに抵抗してきたわけでございますが、今日では幸いにしてその後いろいろ立法せられ、予算化してきましたところの、不十分であるとはいいながら農産物価格支持政策等がありまして、そうしてこれがささえになっておる。米麦に関しましてもいろいろ議論はございますけれども、当初は国民最小限度食糧を平等に与える。よくいわれることでございますけれども、乏しきを憂えずひとしからざるを憂うということで、みなに平等に、最低の食糧の保障をするという性格で発達しましたところの食管制度も、今日ではもう一歩進みまして価格支持政策等に非常に役立っておるわけでございます。こういうような経過をたどって参ったのでありますから、統計面を見ますと大体農業収入の七割方はこの制度ささえになっておる、こういうことになっておるのですが、しかし計数はそうであるのですけれども、実質的に農業経営内容等を見たり、あるいは農家経済そのものを分析してみますと、ほんとう水準には達しておらぬということでございますから、われわれとしましてはこの問題を深く掘り下げて、抜本的な問題をこの際どうしても確立しなければならぬ、これは今日の要請だろうと思うのでございます。この際におきましても、先ほども触れました農業人口の問題、さらに土地問題等関連しましても、これはひとり農林省ワク内ではなかなか解決できぬ問題でございます。ことにわれわれ農村における就労のコンストラクション、構造等を見ましても、容易ならざることになっておるし、ある程度の改善を加えることにしましても、やはり広い国民経済の視野から見直してやっていかなければならない。ことに結論的な、ある程度の希望になるかもしれませんけれども、相当拡大した国家投資、国の財政支出を予定してでなければ、この問題等も解決の曙光は見出せないということでございますので、われわれとしましては土地利用の区分なり、さらにまた同じ土地利用度につきましても、今畑地等につきましても若干の施策は取り進めてきましたけれども、これをもってしてはとうてい現状を満足し得ないと思うものでございます。さような見地から、われわれとしましては土地利用区分、さらにまたそれを高度に利用し得る限界はどうか、さらにまた人口農村に保有し得るためにはいかよう施策を講ずるか、さらにまたこの農村人口を他に移すとするならばどういう方策をとるかということを、やはり国民経済全体の関連におきまして正しい認識を得てこれに対処していこう、これがやはり大きな眼目であろう、こう考えるわけであります。
  11. 綱島正興

    綱島委員 ただいま農産物輸入というものが毎年大体二十億ドル、多いときはそれを少しこえております。三十億ドル前後の国民輸入のうちの六〇%を占めております。これまでは大体日本自給度を高めていけるだろう。農業自身で高められないもの、たとえば綿花、こういうものについては、必ずしも農業が進むだけではいけないだろうし、化繊等の発達と相待ってこの問題を解決していかなければならぬでしょう。しかしながら農業自身で解決せなければならぬ問題は食糧の大体六億ドル、飼料の一億ドル、それから砂糖の一億二、三千万ドルのうちの半分、羊毛の三億二、三千万ドルのうちのこれも半分、皮革の四千万ドルのうちこれは全部、こういうものを大体日本国民経済の中でどうしても農業生産せなければならぬ。これが大体どのくらいの計画ならどうなるか、どのくらいの人口ならこれがやれるか、こういう問題をやはり御研究にならなければならない、この委員会としてはやらなければならぬと思っておる。  それからもう一つ問題になりますことは、先ほどお触れになりました日本農業人口の問題であります。なるほど日本では、大体十四、五億ドルの、これから狭めていけるだけの生産農業自身で追い込まなければなりますまい。たとえば食糧と申しましても、無限大にこれが必要なものであるか。大体農業製品というものは非常に限界がございまして、そうたくさんは要らない。アメリカのごとく、保護してみると、二年半分もできて、捨ててしまわなければならぬ、これに補償をしていかなければならぬ、こういう矛盾が出て参りますから、農業生産補助政策というものは、おのずから国民経済において必要なる限度、すなわち現在経済において輸入されておって、しかもその措置が可能なる範囲、こういうことにとどまるものだと思う。大体農生産品というものは、原料品は格別として、そのうちの主要なるものである砂糖であるとか、その他の食糧というものは、工業が発達するから欲望もそれについて発達するものではない。これには非常に限度があります。工業製品というものは、今まで少しであったものが巨大なる需要がふえている。一体農業生産必要量農産物の必要度というものは、実は非常に限界がある。従って黙っておけば工業力生産によって、その所得を増すにつり合った所得というものが形成されないという基本問題、これが農業保護政策をしなければならぬ第一番の問題、需要度における問題。第二番は、先ほどちょっと申し上げたように、農業生産というものは機械力利用度が非常に少い。他の産業のようには機械力利用というものができない。現にアメリカ農村でも、生産度というものは十七、八倍よりなっていない。十七、八倍にしかならない工業というものは、一つだってありはしない、何だってありはしない。とにかく何万倍に及んでおる。ところが農業は、日本では天正から今までに二倍二分ぐらいまでにしかなっていない。農民の一人の生産量が二倍二分ぐらいまでにしかなっていないが、工業では、日本幾ら工業がだめだといっても、製鉄業一つをとってみてもおそらく十万倍になっている。機械力利用によっての生産度の増額ができないということが第二番である。これが農業基本的に別に扱わなければならぬゆえん。第三番目は何かというと、どうしても計画生産ができないということ。なるほど災害補償はやって参りますけれども計画生産というものはほとんど農業ではできない。他の産業はストライキがない限りはみな計画生産ができるが、農業にはそれができない。この三つの点が致命的な農業の欠陥であって、特に国家政策を待たねばならぬゆえんだと思う。先ほどお話しになりましたように、第一次世界戦争後に非常な農業危機に及びましたのは、これは過剰生産のためであり、アメリカでも一九二六年、七年、八年と非常な豊作をやりましたが、一九二七年のごときは、農村相手銀行は全部破産した。アメリカは御承知通り銀行破産などはおろか、不渡り手形さえないのに、これが破産した。農業相手銀行はほとんどみな破産してしまった。こっけいなことは大蔵省が、地方銀行がいかぬということで、アメリカ農業恐慌による破産地方銀行だったからいけなかったという解釈、これは実に失礼だが、大蔵省の方がおいでになるかもしれないけれども実情にうといこと千里の差で、ちっと役人も勉強してもらわなければならぬ。そこで、どうしてもこれは自由経済のままでは農業というものは置かれない。アメリカのように企業自由の法則はいかなる場合においても死守するという国柄においてさえも、農業だけは別にやらなければならぬというので、いわゆるカルタの巻き直しをしようという政策をやったのであります。ニュー・ディール政策である。そこで私どもはこの法案提出に当って伺わなければならぬのは、農業というものは特別産業であるから、これは絶対に国の補助価格補償とを併用するのでなければ、日本実情においてはできないものという踏み切りをつけておられるかどうかということであるが、一々大蔵省に頼んで、わけもわからない大蔵官僚の、百姓のことなんか知りもせぬ者がホワイトカラーでテーブルの上で査定する、こういうことが許されるならば、日本農業というものはやっていかれない。先ほど申し上げたように、工業界における労働力吸収度合いは、西ドイツのそれのようなふうにはいかれない実情日本にはある。そこで泣いても苦しゅうても、しょうがないから農村に縮こまっておらなければならぬような国民経済の置かれている事情がそこにある。それらをあわせて、一体農業人口の問題、農家生産、生計の問題等を併用してお考え下さる御意思かどうか、これが一番伺いたい点で、これが今まで申し上げたことの到着点である。これがないならば、この基本法案というものはあっても何にもなりはしない、捨てた方がよろしいと思うが、こういうことを予定されているかどうか、これを伺いたい。
  12. 三浦一雄

    三浦国務大臣 先ほど来の説明等にも不十分な点がありましたけれども、御指摘のことが基本的な目標であろうと思います。同時にまたこれらを解決するためには、従来のようなスケールの小さい国の財政投資もしくは財政規模ではとうていやれないだろう、こういう予想を持っております。これはただ単に農林行政ワク内ではできませんから、真に日本農業を立て直し、農山漁村を立て直すという意味をもちまして、実は規模も大きく、同時に根本的な問題としてこの問題に取っ組んでいきたい、これが今回の最大の眼目でございます。
  13. 綱島正興

    綱島委員 第一条、第二条はこのくらいにしておきまして、第三条に「調査会は、委員三十人以内で組織する。」とございますが、この委員の選定でございます。大体ジャーナリストなんぞのように上っつらでものを知っておって、込み入った底光りのする調べをしていない者を、えてして政府委員にする。これは調査会で準備をなさるそうですからよく聞いておいて下さい。農業なんというものを何も知らぬゆえに大胆な議論をする。知らぬゆえに聞く方もほんとうのように錯覚をする、こういう委員選び方をするかどうか。委員については専門の知識を持っておる、少くとも感覚を持っている、そして百姓というものの味のわかっている、からだに百姓を身につけておるような者を委員に選ぶか。またそれは何も言えぬ、ただ降参しておじぎしているだけではだめです。議論もする、味もある、経験もある、そういう者を選ぶ意思かどうか。この三十人の選び方によっては、農業基本法というものは調査をやってもますます迷宮に入って、何の答えも得ないというものになりはしないか。一にかかって委員選び方が問題でございます。農林省古手官僚ならよかろうというふうに考えてはいかぬ。古手官僚もいいかげんなものだ。そこでこの委員というものを一体どういう標準で選ばれるか、これは審議室長に伺います。
  14. 吉田信邦

    吉田(信)政府委員 もちろん御説の通りでございます。農業について十分な感覚を持っている者でなければならないと思います。ただこの問題につきましては、大体農林省に主として御推薦いただき、あわせて他の官庁からも御推薦をいただき、そして適切な人事をいたしたいと思います。ホワイトカラーというお話もございましたが、決して単なる浅薄な理論だけで処理するような考えは毛頭ございません。この点は農林省とも十分相談してきめたいと思います。
  15. 綱島正興

    綱島委員 私はこれでよろしゅうございます。またいずれあらためて伺うことにいたします。
  16. 岡崎英城

  17. 石田宥全

    石田(宥)小委員 基本的かつ総合的な問題について綱島委員から突っ込んだ質問が行われ、また農林大臣よりこれに対してほぼ当を得た答弁が行われております。ただ私がはなはだ不満なことは、農林漁業政策としての範囲においての問題ではないということをただいま大臣が言われたわけで、その通りなんです。ところが委員会は総理府に置くが、その事務は農林省に置くように承わっておるのでありますが、同時にまたきょうの委員会でも農林大臣が出て御答弁になるが、実際は農林大臣の所管の範囲内で片づかない問題があまりにも多い。というよりは、むしろ農林省の所管の中では解決し得ざる問題を解決しなければならないという段階にあることは、今農林大臣の答弁の通りなんです。しかるに総理府からも長官も来ていない。他の大臣も出ていない。ここで議論を進めることははなはだ本意でないのです。この点については、いずれまた後に機会を得てやらなければならない問題であると私は考えるのであります。しかしながら一応もう少し各論的な問題について御質問を申し上げたいと思うのであります。政府はすでに今日まで農業なるものがいわゆる劣勢産業であって、科学技術の振興、発達とマッチしていけない、その劣弱さというものをよく認めておりますし、そしてそのことはすでにあらゆる統計の面に明らかになっておる。先年作られた長期経済計画の中にも、農林業部門の計画が入っておるわけです。そういたしますと、もはやそういう面における調査というものはほとんどもうでき上っておるのではないか、こう考える。従って今度設置されます調査会というものは、従来のような長期計画的な結論をつけることであってはならないと思うのでありまして、もっとやはり高い視野に立って、国全体の責任を明らかにするところの、いわゆる農業憲法的な結論をつけなければならない。すなわち西ドイツ農業基本法やあるいはイギリス農業法のような性格を持ったものでなければ意味がないので、政府はやはりそうした農業憲法的な性格を持つ、農業基本法的なものを結論として打ち出そうという御意思ではないかと思うのでありますが、その点を明確にしておいていただきたいと思うのであります。
  18. 三浦一雄

    三浦国務大臣 率直に申し上げまして、それが今度のねらいどころでございまして、ただわれわれの方としましては控え目に表現しておる。それらの問題が片づかずには今後の真の農業政策は立たぬ、こう考えておるわけであります。同時に先ほど石田さんからもお触れになりました運営の問題でございますが、農林省部内で片づけ得るもの、農林省部内で作案し得るなら、これは何も内閣審議会に持っていかずともでき得る。ただしかし一例をあげますと、水の問題にいたしましても、ひとり農林省だけでは片づきません。さらにまた雇用問題等を取り上げましても、農林省だけでかりに取りきめるといたしましても何らの権威を持たぬのでございますから、これら国民経済の面におきまして、他産業との関連、あるいは外国との貿易の関連、さらにまた深く他の政治行政の面にわたって影響を持つものは、ほんとうに高い見地から審議会等で見てもらうということにいたしたい、こう考えるわけです。同時にまた農林省が事務的な作案をするということになっておりますが、何といたしましても最大の希望を持ち、情勢を傾けてやるのは農林省でなければなりませんから、ここで非常にドラスティックな案もできませんし、あるいは他から見たならば、おそらく気違いじみた考え方を持たなければならぬかもしれない。これをだんだん突破しまして初めて政策になるのでございまして、これらはわれわれ多年農林省予算を組み、法律を立てる場合におきましても経験しておるところでございます。でございますから、もう一ぱい農林省ではそれらのことについての立案もし、そして突破をして、最後には国民経済全体の視野から、同時にまた基本的な問題を求めて推進していきたいというのが念願でございます。
  19. 岡崎英城

    岡崎委員長 御質疑中でありますが、皆様の御了解をいただきまして一時休憩し、午後二時より開会いたしたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時十七分間議
  20. 岡崎英城

    岡崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。石田宥全君
  21. 石田宥全

    石田(宥)小委員 総務長官がお見えになりましたので、お尋ねいたしますが、わが国農業が置かれておる地位と申しますか、最近の動向を見ますると、他産業と著しき懸隔をもって、平たく言えば非常に引き離されて参っております。農業生産も若干上っておりますけれども、ここ数年間の数字を見まするに、農業生産の伸びというものは、二十五年から七年を基準といたしましては、一二七・三程度にしか伸びていない。ところが物財投下量になりますると、一六六程度に上っておる。農機具のごときは四百何十%というふうに伸びておるわけでありまして、この勢いをもっていたしまするならば、日本農業の前途というものは暗たんたるものがあるということが憂えられる次第であります。しかも政府輸入農物物等に対する規制措置を怠っておる面もあり、農業の今後の発展というものについて特別の措置をとっておらないようであります。この点については、後ほどその項目ごとに伺いたいと思うのでありますが、少くとも農業というものは他産業とマッチしていけない弱さを持っておる。科学技術の進歩発達に伴っていけない。オートメーション化し、産業合理化が他産業においてはどんどんと進んでおるにもかかわらず、農業は依然としてやはり一株々々腰を曲げて植えなければならないというよつうな立ちおくれをいたしておるのでありまして、こういうふうな産業に対する措置というものについて、今日まで全く不十分そのものである。そこで私どもは少くとも国内食糧の自給というものを目途とし、農業そのものの発展的成長と同時に、農民生活の安定向上ということを基本としたところの農林漁業政策でなしに、国家的な見地から、日本経済全体の見地から、農業というものの格付を行わなければならないのではないか。農林漁業の問題については、農林漁業の各種の統計に基いてすでに相当程度のデータが出ておりまするし、また経済長期計画の中にも農林漁業部門の計画も挿入されておりますように、ある程度のものは出ておると考えられるのであります。従ってここに先ほど農林大臣から伺いますと、今度のこの調査会の使命というものは、従来の農林政策というようなことでなしに、それよりもっと高い見地から国民経済全体の視野から見た日本農業の格付を正当にする。いわゆる農業憲法的なものを作ることを目途としておるということが率直に述べられたのでありますが、この調査会設置法案提案される過程において、この点についてどのような見解のもとにこの提案をなされたのであるかということを、まず承わりたいと思います。
  22. 松野頼三

    ○松野政府委員 今回の調査会基本設置の目標は、ただいまおっしゃったごとく、今までの農業そのものにおいて解決できなかった場面が非常に農業は多い。近代的な科学工業が進歩するに従って、なおこの傾向は顕著に現われておることは、過去における経済統計が示しております。本年予算委員会提出いたしましたいわゆる国民経済の伸びの中にも——昨年は幸い豊作でありましたから二・七という成長率を示したにかかわらず、昭和三十四年というものは二・七は期待できないというふうに、だんだん国民経済の伸びの度合いに応じて農業生産というものが、その度合いについていけないということは、必然的に農業そのもの以外に、日本経済全般の問題として、これは解決されなければならない問題が今日非常に内在しておると存じます。一番顕著なものは、日本農業基本的性格あるいは農家人口というもの一つ考えて参りましても、農業そのものにおいて農家人口の増大を吸収しようということは、零細化をなお零細に進めるという悪い結果は現われましても、直ちに農業だけの処理ではできない。そういうふうな大きな場面一つ考えて参りましても、これはやはり相当大きな基本的構想を立てて、輸出入の問題から、あるいは経済の中に占める農業の問題から、すべて解決しなければならないというのが今回の基本的な、総理府に設置いたします調査会法案設置の理由であります。簡単に申しますれば、ただいまのようなものが提案の理由でございます。
  23. 石田宥全

    石田(宥)小委員 一昨年農林省農業白書なるものを発表いたしたのでありますが、これは日本農業の診断書ともいうべきものでありまして、私どももこの農業白書の示すところはほぼ正しいものである、正当に評価しておる、こう考えておるのでありますが、結論的には五つの問題点を指摘しておるのであります。この五つの問題点の指摘について長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  24. 松野頼三

    ○松野政府委員 五つの問題を正確にただいま記憶しておりませんが、一番大きなのは零細化が非常に目立ってきたということと、もう一つ農家所得が非常に減ってきたということが、その五つの中で一番大きな場面を占めておるように記憶しております。零細化が非常にふえてきたことは、これは農地法とか、すべての農業法の、農業だけにおける法律の規定にも関係いたしますが、それだけでは解決いたしません。要するに農家人口というものが非常に過大にふえてきた。戦争前におきましても相当の農家人口が都市に流出しておりましたが、ある時期にはこれが逆に逆流してきた。最近また多少都市人口の方に農村から流出の傾向はありますけれども、やはり相当なものが農村に、潜在失業者という名前か、あるいは潜在不完全な農業者という名前で今日内在しておることは事実でありますので、この方向を解決することが零細化の問題の一番大きなかぎではなかろうか。五つの問題のうちで私はいわゆる農家所得の低減ということと零細化ということが、私の念頭に、それはたしか昨年の三月ごろの農業白書じゃなかったかと思いますが、そう私は記憶しております。
  25. 石田宥全

    石田(宥)小委員 そういたしますと、日本農業の格付というものを正当にいたしますと、農林大臣の所管としての農政の範囲内においては、それに対する対案としての政策はほとんど行い得ないとわれわれは判断をいたしておるわけでありますが、今の長官の答弁によりますと、やはりそういうことが明らかにされておるわけでありますが、本調査会設置されまして、本調査会が相当大幅に国民経済全体の上において、日本の政治全体の上において、他の各省、特に予算との関係等において、かなりの大幅な予算措置等を要求する結論が出されることになることが予想されるわけでありますが、そういう場合においては、政府の責任においてその結論を尊重してやる用意があるのかどうか。
  26. 松野頼三

    ○松野政府委員 農業もいわゆる農林省所管だけの場面では、御承知のごとく相当な前進をしております。私は今日日本農業政策というものは、後退にあらずして、毎年前進しておると信じております。信じておるにかかわらず、その方向、その結果がある程度頭打ちになった。また他の場面にこれがぶつかってきた。それを排除するために、今回視野を広めて総合的な対策を立てるべきだという基本問題に触れてきたと私は考えております。毎年おそらく石田さん御承知のごとく、どの農業生産を見ても、特に価格において一時的に下ったものもあるかもしれませんが、生産そのものの基本は、毎年財政投資もふえておりますし、予算におきましてもふえております。また生産量においても技術においても前進をしております。にもかかわらず、所得及び基本的な問題が解決されないというところに、今回基本問題調査会というものを作るべき時期がきたのではなかろうか。従って農林省そのものの働き以外に大きなものの頭打ちを解除しない限り、私は農業基本問題は解決できないという意味で、本年はちょうどその時期に到達したときと思いまして、英断をもって政府調査会を作ることにいたしたい。調査会にはおそらく各界の人が入ってくる。各界と申しますと、輸出入の問題もございましょう。税金の問題もございましょう。あるいは農林省との河川の問題も出て参りましょう。治山治水の問題も出て参りましょう。そのほかに、やはり流通場面としての大きな交流及び商業関係にも入って参りましょう。そういうものをやはり解決しない限り、農林省所管だけでは今日の農業問題は解決できない場面がたくさん出てきたという意味で、今回作ります以上、これはわが党の生命をかけても、あるいはわが党の政治力をかけても、保守党としてはやるべき時期だ、こう考えておりますので、これは非常に大きな決心で作りました。時期はあるいは本年が最高の時期だと考えましたし、またやる以上は本年がそれを達成する最高の時期だ。これ以上財政投資及び農業投資をしても、ある程度から回りの時期が近いうちにくる。そう考えますので、このから回りをなくすために、より以上効果的に日本農業を進めていきたいという意味で、政府は相当英断を持っております以上、私はこの答申というものは最高限に尊重するつもりでおります。
  27. 石田宥全

    石田(宥)小委員 聞くところによりますと、三十名の調査委員でありますが、これは学識経験者ということになっておりまして、国会議員はこれに参加をさせない方針であるということを承わっておるのでありますが、午前中には綱島委員がやはりこの点を指摘をされておるのでありますが、大よそ学者とかあるいは官庁の古手であるとかいうような人たちだけの委員会になりますと、政府の諮問のままに引きずり回されて、ほんとうの使命を果し得ないうらみもあると思うのであります。この点は流布されておりますように、国会議員を入れないところの委員を委嘱する方針に間違いないのですか、どうですか。
  28. 松野頼三

    ○松野政府委員 国会議員を入れなくて政府の御用学者ばかり入れると、政府の思う通りになり過ぎる、と同時に国会議員の方が入られますと、国会議員の方の発言がいかにも明確で、しかも指導力があり、おのずから国会議員だけがリードするのも悪例になりますので、両々相待ちました結果、いずれ農林委員会及び予算委員会等において政府としてはこの問題を議論していただく場がございますので、その素案を作る意味においては、国会議員という資格においてはこの際お入れせずに、いわゆる広い民間者の民間独自の構想をもってまず答申していただいて、その上で政府案を練って、それから国会議員の方に審議していただくという段階を経ることの方が、より以上広い視野ができはしないか、そう考えますので、あえて国会議員を締め出す意味ではございませんが、国会議員の方はおのずから国会議員として審議していただく場を設ける方が、より以上丁重であり、審議が慎重にできるのではないか。国会議員を絶対入れないのだという排除よりも、私はそういう感じでおります。ただ学識経験でございますから、あるいは非常に森林関係の権威のある方が日本じゅうにおらない、たまたま国会議員の中におられるという場合には、国会議員という資格にあらずして、そういう学識経験という意味で入っていただくかもしれません。従って国会議員というそのワクというものは、この委員会には設けませんでした。おのずから学識経験という意味で、非常に高邁な方がおられるならば、そのときには国会議員にあらずして学識経験者として入っていただくかもしれませんけれども、今回はその方がより以上いいのではなかろうかという考えで、国会議員を除外したわけでございます。
  29. 石田宥全

    石田(宥)小委員 この点は意見になるわけでありますからこれ以上申し上げませんが、ややもすると従来の学識経験委員という者だけで委員会が構成されますと、政府の意のままに動くようなことになり、同時にまた促進する上においても、あまり好ましくない考え方であると思うのであります。  そこでもう一点伺いたいのでありますが、実は自民党とされましては昨年の八月以来、農業基本法調査会というものを設置されて、農業基本法というものをずばりで国会に提案しようという意図のもとに、だいぶ準備を進められたようですが、やはりいろいろな隘路等があって、与党の責任において提案するわけにいかないということで、これを調査会設置法案というところへ持っていかれたように承わっておるのでありますが、先ほど長官が述べられたように、農業問題は全く壁に当っておると言ってもいいような現状にあるのでありまして、今後二カ年もかかってその結論をつけて、それから手を下すというようなことになると、全く手おくれの感があるのであります。同時にまたいろいろな問題が起って参りましたときに、政府農林漁業関係においては、すべてその困難な問題を目下調査会において調査審議中であるからということで、その陰に隠れていたずらにその責任を回避、遷延しようとする結果を私は憂うるのでありますが、それらの経過をここでできるならば明らかにしていただく方が、法案審議の上にいいのではないかと思いまして、この点を一つお尋ねいたします。
  30. 松野頼三

    ○松野政府委員 任期は一応二年間ということにいたしましたが、二年間というのは二年目に答申をしていただきたいという意味ではございません。一年でも半年でも、より以上答申が早く出れば、私の方はその答申に従って順次行いたい。しかし農業基本問題でありますから、あるいは農地の問題が一年で解決しても、山の問題は一年からあとにずれるかもしれない。かりに答申が出ても、その具体的なものを全部作り上げるために、やはり一年ぐらいの予備的な年限があってなお促進するという必要があるかもしれません。私の方は、二年目に答申をいただきたいという意味で二年間にしたわけにあらずして、できるだけ一年間に答申をしていただいて、あとの一年はその立法及び諸般の準備にあとからプッシュしていただきたいという意味で二年としたのであります。初めは一年でよかろうじゃないかと私も考えましたが、やはり法律の通過とかあるいはその成果まで、あとあとまでこの調査会というものがプッシュしていただくためには、相当時間がかかるということがあり得ると思いまして、一応二年という年限をつけたわけで、もちろん二年目に答申していただきたいという意味の二年ではございません。一年間に答申をしていただいて、なお具体化にあと一年を御援助願いたいという予備的なものがあと一年で、二年目という感じでこれを作ったわけではございませんので、できるならば一年間に御答申をいただきたいという気持には少しも変りがありません。その辺はどうか運用において御了解を願いたいと思います。
  31. 石田宥全

    石田(宥)小委員 先ほど伺ったように、法案提出の過程における事情を明らかにしていただきたい。
  32. 松野頼三

    ○松野政府委員 これは政府から御答弁するのはいかがかと存じますが、政府、与党一体の意味で、私が承知しておりますわが党の運営を御説明申し上げますと、わが党も農業基本法という大問題に取り組んだことは事実でございます。取り組んでみて非常に大きな障害があることにまたぶつかったことも事実であります。なぜかと申しますならば、農林関係法案だけをいかに改正しましても、農業には税制改正やあるいは財政投融資における長期的な投資を必ず期待されております。いわゆる毎年々々に区切った問題は、これでは困るのではないか。そうすると、これはやはり特別会計とか財政法という問題にぶつかるのであります。そういうふうにいろいろやってみて、農業関係だけの法案では農業基本法は何ら効果はないというふうな大きな壁にぶつかりました結果、今度わが党におきましても農業基本問題調査会ということを大きく取り上げて、農業基本法よりもその根本的な農業基本問題調査会というものを、今回わが党に設置した理由もそこにあるわけで、農業関係だけの法案では間に合わないという大きな壁も実はございますので、農業基本法の前にいかなる問題があるかという、より以上大きな視野で今度わが党も発足いたしました。同時に政府も、今回農業基本問題調査会というものをまず発足させた結果、農業基本法という法律案が必要だということが出て参りますれば、それに応じて審議されるものだと存じますので、農業基本法だけでは、多少間口がある場合には狭いかも存じませんので、もう少し基本問題を調査した結果、その法律案、あるいはその必要性というものを具体化していかないとなかなかできないという、逆な場面からわが党も方向を変えたと、私はこう与党の動きを承知しております。
  33. 石田宥全

    石田(宥)小委員 農林大臣に伺いますが、農林業は直接の関連があるわけでありますが、漁業になると、御承知のように北洋漁業から東シナ海の漁業の問題やら、あるいは西南太平洋の問題やらで、これは国際関係も伴っており、なかなか大きな問題でございますので、これらの問題を総合して一つ委員会にするということは、なるべく近い将来にその結論を出したいという考え方に沿わない結果になるのではないかと思うのでありまして、この点について政府の意図が那辺にあるか、私どもは了解に苦しむのでありますが、いかなる理由でこれを一本の委員会にされたのであるか承わりたい。
  34. 三浦一雄

    三浦国務大臣 仰せの通り、現在の日本の水産業の現状はまさにその通りでございます。すなわちわれわれとしましても、いわゆる南船北馬と申しますか、北の問題あり、南の問題ありということで、忙殺されているような現況ではございます。しかしながら漁業省のようなものを作ってこれを別個にするという形態を考えることも一つの道かもしれませんが、この場合においての一番基本的な欠陥は、しからば漁村そのものに住んでいる人たちの生活の面、経営面をどうするかということになりますと、これはなかなか分離しては考えられぬのでございます。そういうようなこともございますので、今度のこの調査会におきましては、農林漁業に共通の重要問題はここでやはり締めくくりをするということにならなければ事態に即応しない、こう考えるわけでございます。当面の問題は、先ほど総務長官も御答弁になりましたように、これは一日として停滞するわけに参りません。これらはその事態に応じて、われわれとしては積極的な手を打つ。同時にまた渉外的な面におきましてなお考えなければならぬ点が多々あるわけですが、これは当然外交問題ともなり、同時に日本の貿易、経済にも触れるものでございますから、農林漁業の共通の重要問題は、やはりこの調査会をもって基本的な考え方を打ち出していただくということにすることが、むしろ適切ではなかろうかと考えているわけでございます。
  35. 石田宥全

    石田(宥)小委員 私どもは本調査会設置に当って、少くとも従来の調査研究範囲において基本法そのものずばりで提案されるのが適切であり、政府の責任であると実は考えておるわけでありますが、とにかく今日の時点においてこの法案提案をされたわけであります。  次に、私は基本的な問題の数点について伺いたいと思うのであります。まず最初に農林白書に示されておる五つの問題点がありますが、そういう点を総合して考えましても、日本農業の零細性というものがかなり大きな問題の一つであると思うのであります。農林統計によってみますと、五反から一町というのが圧倒的に多くて三三・八%程度でありまして、二町から二町五反というのはわずかに二・三%にすぎない、こういう数字が明らかなのでありまして、この経営の基盤である農地の問題が何といっても一番大きな問題であると思うのであります。ところが政府は本法案提案すると同時に、農地被買収者問題調査会というものを同時に提案をされております。この点は私は非常に大きな矛盾の存するところであろうと思うのであります。すなわち昭和二十六年ごろから旧地主の諸君が団結をいたしまして、当初は農地改革は憲法違反であるということで訴訟を起し、これが二十八年に、その買収並びにその対価は適法であるという最高裁判所の判決が下されますと、次に今度は、反当十万円の補償金を政府に要求するという運動に変って参りました。この運動が進むに従いまして、その連鎖反応として全国至るところにやみ小作料がどんどんと引き上げられて参りました。地主の土地取り上げは香川県、石川県等を初めといたしまして、全国各地に非常な深刻な争いを引き起しまして、香川県のごときは流血の惨事まで引き起すというような事態が起ったのであります。今国会に政府がこの法案提案されましたことは、さらに一そうその勢いを助長いたしまして、農地改革の成果と逆行するような傾向を助長しておることは、これはいなめない事実であります。一時政府が農地補償は行わないということを言い切っておりました当時、ちょっと運動が停滞した時期もございましたが、政府が本法案提案をなされるに及んで、がぜんまたその勢いを挽回いたしまして、全国の旧地主の団体が先ほど申しましたようなやみ小作料をどんどん引き上げていく。また本年はちょうど小作契約の改訂の時期にも当りますので、土地取り上げの紛争が各地に起っております。そのような、先ほど農林大臣並びに長官の答弁されておることと全く逆行するような法案提案されたことは、われわれの了解に苦しむところでありますが、これは考え方によっては、自民党としての一つの選挙政策で、大いに旧地主のきげんをとることによって、党勢を拡張するというような軽い意味にも考えられないことはないのでありますけれども、一たびこの法案が通って、農地被買収者問題調査会の発足に当りますると、さらに複雑な問題が起って、平和な農村をまた混乱の状態に陥れるおそれが多分にあると思うのであります。これは長官の責任において提案されておるのでありまして、それらについての所見をお伺いしたいと思います。
  36. 松野頼三

    ○松野政府委員 今回たまたま同時に提案をするような時期になりましたけれども、これはあえてこの問題と関係はございません。なお単独立法という意味で、単独の提案理由にしたのは、基本問題と被買収者の問題とは別個だという意味で、総理府設置法の中に入れずに、別にこれを提案した理由は、全然関係がないということであります。ただおっしゃるように、今日農村において相当な不安と社会問題が存しておることは事実でございますから、そういう不安をいつまでもいつまでもほうっておくということは、かえって農村における不安を助長するようなことがあっては大へんだから、今回この調査会法案を作って、そうして世間の不安を一掃して安定を求めようという逆な意味でございます。相当長い間旧地主の方の運動があったことは私も承知しております。しかしこれは常に一方的に宣伝されて、とみに先鋭化する場合もなきにしもあらずでありました。またこれをいつまでもほうっておくと、常にこういう問題が出てくるということで、今回は特に注意しまして、法律の名前も、御承知のごとく農地問題という言葉を避けまして、農地の被買収者に対する問題の調査会というように、名前を非常に限定しましたのは、農地問題に触れないのだという意味で、農地問題ということを避けて、被買収者に対する対策の調査会でありますという、言葉を特に注意したくらいでありまして、既存の自作農あるいは過去に行われました農地改革、今日の農地法というものをくつがえすものにあらず、不安なからしむるという逆な意味で、今回出すことがよりいい時期であろう、こう考えたわけでありまして、選挙の年だから出したわけでは断じてございません。ちょうど日本農業基本問題に取りかかるこの時期に、過去の古い紛争をこの際一掃したいという意味であって、新しいものを出発させるために、過去の古いものをこの際整理したいという意味であって、ちょうどうらはらであるかもしれませんが、問題そのものは非常に善意な意味でございますので、そういうふうに御解釈いただいて——この調査会法案が出るならば、かえって農村は安定するであろう、またいたずらに過激な旧地主の運動もこの際これで落ちつくであろうという意味があるわけであります。農地法には触れません。従って農地問題という言葉を避けた、しかも被買収者に対する社会問題が確かにあるならば、これを調査しよう、対策はその結果においてどういう結果になるか、そこまでは政府は関与しておりませんので、そういう非常に善意な意味で出しましたので、今後農業基本法あるいは農業基本問題調査会とは少しも矛盾いたしません。より以上明確になるのではなかろうかと私は考えて、二つの案を別々に出したわけであります。少しの関連もなく別々に出したわけであります。
  37. 石田宥全

    石田(宥)小委員 なかなか上手な御答弁で、ややもするところっと参りそうな感じがするのでありますけれども、なかなかそうではないのであって、私がさっき申し上げまするように、ほとんどあきらめておったところへ被買収農地問題調査会設置法案が出されますると、再び旧地主の団体が非常な勢いを得て参りまして、そのことが連鎖反応的にいろいろな問題を起しておることはこれは長官御承知通りなんでありまして、再び混乱を引き起すことになるのではないか。農地というものを離れてとおっしゃるけれども、地主団体が活発に動き出せば、やはり農地の問題についての紛争を引き起すことは、これはもう言うまでもないことでありまするし、また旧地主の生活面等の社会問題としての調査であるかのごとき答弁をなされておりまするけれども、その点をもし御調査になるということであるならば、農林省農業基本問題調査会というものが昭和三十年以来設置されておりまして、すでにその集計は、十冊か十一冊目ぐらいの集計が出ております。その中で数字的に統計が示しておりまするように、旧地主はおおむねその耕作面積も大きいし、また兼業をする場合といえども、地方の農村の公共団体の役職員になったり、その他きわめて有利な兼業をしておるのであって、一面においては山林等も相当面積所有をしておるという点で、一般の農家に比較するときわめて生活程度は高い、有利な地位にあるということは、これはもう統計が明らかに示しておるところであります。従ってこれ以上の調査というものは、私は必要がないのではないかと考えるわけでありますが、一体今の長官の答弁は、旧地主の補償要求運動というものに対して、これに終止符を打ってこれを断念させるための措置だ、こういうふうにも聞えるのでありますが、そうなんですか、どうですか。
  38. 松野頼三

    ○松野政府委員 終止符を打つということよりも、今日やはり農村において旧地主というものと自作農というものが、農地を対象にお互い相争うような場面があってはならない。しかしながらある一部の場面においてはそういう現象が現われることもありますので、そうではないのだ、そういうことをするのではなしに、今日は農地法というものが厳然としてある以上、それ以外の方法でこの問題を調査するから、暫時そういうような方向の動きをするなという意味の終止符であって、補償するかしないかということは、調査会の結論を待つわけであります。もちろん、今日実は百七十数万戸の問題が出ております。百七十数万戸の農地の地主の統計も出ておりますし、生活様式も同様な数字が出ております。そういうものを持ち寄った上で、この調査会で生活面においての議論が出るならば、その統計がいろいろ議論の対象になりましょうし、どういう議論が出るかは調査会そのものが議論していただくことであって、政府が今日補償統計数字によってやるわけには参りません。少くともそういう不安をなからしめる意味で、調査会で言いたい方は全部自分の意見を言い、また聞きたい方も聞く。そうして調査会そのものの機能においてこの問題が解決されることが、今日農村に論争を導くことを避けるには一番いい道である、そういう気持で今回農地被買収者問題調査会法案というものを出したわけであります。そういう争いがあることは事実でありまして、そういう争いが農村にあっては、いつまでも農村建設にはじゃまにはなっても、建設的意見は出て参りませんから、お互いに相争うようなことがないように、この際調査会というものを作って最終的な結論をここで出してもらいたい、そういう意味であって、補償するかしないかという結論は今日私が予測すべきものでもなければ、どういう結論が出るかということは、すべての統計がございますから、その数字を出していただいて、そこで議論することが一番いいことだと存ずるのであります。これは政府自身がやるにもなかなか問題が大きく、またお互い同士なかなかできないこともありますから、第三者的意味でこの調査会を作ることがより以上円満な解決の道であると考えて、被買収者に対するこの法案を今日出したわけでありますが、この調査会法ができまして、以来被買収者に対する問題が取り上げられるということ自身が、紛争を避ける一つのいい機関がここにできたということになると私は考えているのであります。そういう意味で、農村の自作農の方に不安を与えるような政府の方針ではございませんし、といって社会問題があることもいなめない事実でありますから、農村に混乱を避けるためのそういう調査会というものを作って、ここでやっていただくことの方が、より以上今後の農業政策の推進になるのではなかろうかと考えておるのであります。そうしてこの問題をどう処理するかをここで最終的に御答申をいただきたいと思っております。
  39. 石田宥全

    石田(宥)小委員 長官の答弁によってますます農村に混乱を来たさしめるような感じを与えるのでありまして、はなはだ遺憾でありますが、政府の責任において補償というようなものを行わないということを、歴代の農林大臣並びに総理大臣が言明をしてきているのであるから、やはりこの調査会の結論というものは、農地補償は行わないという結論を出すように努力するのだという意図のもとに設置される調査会であるならば、まことに割り切った提案の仕方であってけっこうであると思うのでありますが、今の長官の御答弁からすると、どうも農村の紛争に火をつけるような感じを与えるのであります。  そこで、さらにもう一つここでつけ加えてお尋ねいたしますが、今の政府はいわゆる政党内閣で、政府と与党とは表裏一体の立場に置かれている。この問題に限りませんけれども、長官の意図いかんにかかわらず、党で一つの結論を出されれば、その内閣というものはやはりある程度党の結論に従わなければならない立場にあると思いますが、どうですか。
  40. 松野頼三

    ○松野政府委員 農村に不安を起さないために今回作ったのでありまして、あるいは私の言葉が足りなかったために不安があるようにお聞きになったと思いますが、私の本心は、農村に不安や紛争を巻き起さないために作ったというのが本心であります。なお補償をするかしないかということは、一応歴代の農林大臣補償しないということを明言されておりますから、当然調査会に今までの政府の方針というものは明示いたしますが、それを縛ってしまって調査会に委託することは、調査会そのものの運用としてまずいからあえて言わないだけで、方向としては、おそらく各農林大臣補償しないとおっしゃっていることは事実ですし、農林大臣ももちろんその席に御出席いただきますから、各大臣の意見というものは当然調査会審議の議題に上ることは事実であります。しかし調査会の結論をその方向に出せと、御用的に束縛的な意味調査会の運営はできないのであります。その結論を私がここで申し上げるのは即断だという意味でただいま御答弁申し上げたのでありますから、その辺の不安がないように調査会というものを作るのであります。ただいま言葉が足りずにして、あるいは賢明な石田委員のことですからより以上深くおとりになったかもしれませんが、私の本心を申し上げますと、紛争があってはいけないから、そうして多年の紛争があることも事実でありますから、この際その紛争を最終的に解決したいという意味で、被買収者の調査会法案というものを作ったのであります。もちろん各大臣も御出席いただくのでありますが、農林大臣が議会において御言明になったことは調査会において再び御言明になることと、これは私は常識的に考えます。しかしそうかといって、最初に結論を縛った調査会というものは政府としては置くわけに参りません。基本問題の調査会で大蔵大臣が先に意見を述べることは御自由でありましょうが、財政支出はこれ以上しないのだというワクをはめての農業基本問題の調査会は、これは発足できません。同様にこれはそういう意味で申し上げたのであります。これは私はより以上不安、紛争がないように、あるいはそういう運動が常に農村にはびこらないように、中央においてこれを置くことが一番妥当であると考えたわけであります。これが社会保障だけで解決しろというならば、政府の厚生大臣あるいは政府の今日の行政でできると存じますが、それ以上に精神的な問題もございましょう。それ以上にいろいろな問題もございましょうから、調査会を作って十分議を尽していただくという意味で、今回作ったわけであります。  それから政府と党の問題でございますが、もちろん党と政府は一体でございますから、党の意も十分尊重しなければなりませんが、ただ政府政府の立場というものがあります。党だけでできるなら党だけで私はいいと思います。しかし党の立場と政府の立場はやはりおのずから違う立場があるために、政府はこれを置く以上は、党の意見はそんたくいたしますが、盲従するわけに参らない点があるわけであります。それは党の方でも政府の立場を御理解いただかなければならない場合もあるのですから、そういう意味で今回、党の決定に政府はすべて盲従という意味ではなしに、党の意見はそんたくいたしますが、同時に政府の立場も党は尊重するということで、一体だと思います。党できめたから政府は盲従しろという御命令は私はいただいておりません。この趣旨を体してやれということを私はいただいておる。私の方の調査会の方も、政府の立場はこうですよと党に諮って、もちろん党も政府の立場は了承するということで今日の提案になったわけであります。盲従でなくて、どちらも対等の立場で理解しながらやるのが、政府の運営の方針であります。
  41. 石田宥全

    石田(宥)小委員 よくわかりました。党と政府の関係はその通りだと思うのです。そこでこの問題は党の方でやはり被買収農地問題について小委員会設置されて、どうも綱島委員ども参画されたようでありますし、また政府の方でも参考人としていろいろな意見を述べられたようでありますが、長い間慎重審議の結果の結論として答申が行われております。これは松野長官御承知だと思うのでありますが、それによりますると農地の売買に際して、当初の買い入れ価格と売却価格の一定の差額を税金で徴収し、そうしてその税金で旧地主の救済的な措置をはかるのが妥当であるという答申が行われておるのであります。これはもちろん、さっきるるお述べになりましたように、党の決定即政府の決定というものではないことは十分承知をいたしておりますが、党の態勢として、長い間慎重審議の結論として出された答申でありますると、政府は相当にこれを尊重しなければならないところの義務があり、責任があると私は考えるのです。そうなりますると、その答申がなければ、今の松野長官の答弁は、まだ釈然とはしませんけれども、やや及第点でちょうだいすることができるのでありますけれども、そういう党の小委員会の答申という裏づけがはっきりしたものが出ている以上は、この問題をどうも長官の答弁通りにはいただきかねるのであります。同時にそこに紛争を大きくし、大きな疑惑を生んでおる大きな原因があると考えまして、私はこの問題をお尋ねいたしておるわけであります。おそらくこれは税体系の上から、税制上から見ても妥当なものではないであろうと考えまするけれども、とにかくそういう関係がありまするからには、これはやはり全国の農民が非常に注目をし、かつ憂慮にたえない問題の一つでありまして、この農林漁業基本問題調査会設置と時期を同じうしてこれを提案されたということは、農業基本法を目途としての調査を進めるに当って、これに逆行するところのそういう法案を同時に出すということについて、私は非常な疑いを持ちまするので、ここでこの問題を質問いたしたわけであります。
  42. 松野頼三

    ○松野政府委員 党の決定かどうか知りませんが、そういう案があることは、私もかつてその委員会に出ておりまして拝聴をいたしました。しかしそのときの理由はこういう理由からであります。毎年々々多額の財政資金を投じて農地保全をやるにかかわらず、逆にある年では十万町歩、少くとも八万町歩から十万町歩という農地が年間つぶされる。こういうことはいいことでない。逆な農地保全の意味で、こういうつぶれ地を何とか防ごうじゃないか。これはおそらく石田委員の売買にあらずして、農地以外に転用したときのお話だと聞いておりますが、農地を変えて地目変換をして、他のものに高い価格で売買したという例が非常にふえている。毎年農地の土地改良あるいは干拓、開拓というので多額の財政資金を使いながら、逆に十万町歩も毎年農地がつぶれるということでは、日本農業の保全はできない、農地の保全はできないじゃないか。そういうものには何らかの制約をしようじゃないかという案が初め出まして、そのときにそれではこれに対して今後農地保全の意味で不当な所得に対して課税をしようじゃないか。これを大蔵省で一般財政に注ぎ込んでは惜しいことだから、これを農業問題に使おうじゃないかという案がありました。そういうふうな経過は私は聞いております。しかしそれが直ちに旧地主の補償になるかならぬかということは、党としても決定しておりませんし、また党が決定してこれを押しつけたとか、また私は押しつけられた覚えはありません。そういうような意向がたまにはあった、こう考えております。出発点はそういう意味農業を愛するがゆえに、農地を保全するがゆえに、そういうつぶれ地対策から初めは出たのでありますから、その辺の経過は御了承いただきますようお願いいたします。
  43. 高田富之

    高田委員 先ほどの御答弁の中で一つだけ関連して質問したいと思うのです。これは農地被買収者問題調査会農林漁業基本問題調査会の二つの法案についての質問に対する御答弁なんですが、政府の方では補償はしない、こういう方針は始終繰り返してお聞きしている通りでございますので、その通りと確信しておりますが、そういう結論を持っておりながら、一方には調査会というものを作って、そうしていろいろ議論をさせ、時間をかげながら、最後には政府考えている通りの方向へ持っていって、結局納得さして補償はしないということに持っていくというのが、おそらく政府考え方だと、ただいまの御答弁では思う。なぜそんな回り道をするのか、結局今問題になってわいわい騒いでいるから、調査会の方で冷却の時間をかけて鎮静していく、こういう意味調査会を作る、こういうことです。そうしますと私ども、また石田さんが伺っておりますのも、要するにここに出されている農林漁業基本問題調査会というものは、何の目的で、何を調査するために出したかということを明確に聞きたいので、いろいろ質問しているわけなんですが、ただいまの非常に御上手な御答弁でいきますと、私は調査会の方も基本問題の方も意図されていることがよくわかるような気がする。それは党内でもすでに自民党の方では、基本法の問題をずいぶん熱心に御研究になって、学者なんかの意見を十分集められた基本法というものについての、相当明快な結論を出されるところまで行かれたに相違ない。先ほどの御答弁では……。そうしますと、もしそれをやるとなりますと、財政方面では莫大な投融資、莫大な予算を計上しない限りそれはできないにきまっているのです。だから明確です。政府の方針は、農林漁業関係に対してはどの程度の財政をさき得る余地があるかということは、国全体の予算から見まして、当然結論は出ている。それはすでにここ数年間の予算の組み方を見て明白なんであって、これは政府全体の、国政全体の見地から見ると、農林漁業に対する政府の力の入れ方というものははっきりしておると思うのです。だから一方には、党内にもそういう政府考えているワクを打ち破らなければならぬような大問題を持ち上げてきたし、農業団体でも農業基本法を作れ、今にして根本問題に取り組まなければ、毎年々々農業はジリ貧じゃないか。農林大臣みずから言われる通り、十年先には救うべからざる状態になってしまうのですから、事はきわめて重大なんですね。そこまで来ているために、世論は承知しないのですよ。政府みずからが抜本的に農業に対して考え方を変えてもらわなければしょうがない。それには国をあげてうんと予算を、少くとも今までの国全体の予算の二割なり三割を農業の大転換と躍進のために使えという押え切れない声が出てきているのです。といって、これを真正面からやるということになると、政府は大へんなことになる。何とかしてこの声を二年間くらいの間に鎮静させなければならないので、政府の方針はきまっているけれども、今これを押しつけるのはどうしてもまずい。だから、今法案は出せないのです。農業基本法というものを出したら大へんなことになってしまう。そのために調査会というものを出して、何を調査するのか、結果がどうなるかということについて自由に討論させるわけです。討論をさせるのだが、結論については、現状からあんまりはみ出すようなことは——ちょっぴりくらいはともかくとして、だめだというワクが当然かかっていると思う。ですから、この基本問題調査会というものがどうもはっきりしない。これは農地の被買収者の問題と同様に、世論に対するゼスチュアあるいは鎮静剤、時間かせぎ、選挙対策、こういう疑いを故意に持つわけじゃないが、自然に持たざるを得ないのです。今までの御答弁からしても……。ですから、はっきり言えばそういう何かごまかし的なことは非常にまずいのじゃないか。だから両方とも、基本問題調査会も被買収問題調査会の方ももっと率直に政府は——今までだって農林大臣は一生懸命日本農業の振興のためには全力をあげてやってこられているのですから、今さらあらためて考え直して、これから心を入れかえて倍の予算を組みましょうというわけにはいかないのですから、正直に、もっと具体的に、たとえば調べるならこういうことを調べる、こういうことをこの委員会へ諮問するというようなことが明確に出て、諮問の結果によっては財政措置もできるのだというところまで具体性のある出し方をしてもらわないと、この法案が何のために出されたかということが再びわからなくなるのです。だから、先ほどの被買収者問題に対するあなたの御答弁そのものも、旧地主さんが聞いたら非常に怒ると思うのです。全然僕らをばかにした法案を出したということになる。この法案についても同様です。そういう疑いを実際に受けますよ。持たざるを得ない。そういう疑いを持たれた場合に、あなた方はいいえ、そんなことはございません。もしここで結論が出れば、農業関係はかりに今の倍くらいの予算を組んでも農地の新たなる造成をやるとか、零細経営の解消のためにこれこれの手をもってやるとか、そういうようなことまで腹ができてやろうというならば、何を諮問するかということは言えるはずだと思うのです。ですから私はここで聞きたいのは、そういう考えかどうかということと、もしそうでないというならば、この調査会に具体的に何を諮問するのですか、具体的にどういうことをテーマとして出すか、具体的に、列挙的に、例示的に御説明を願いたい、こう思うのです。
  44. 松野頼三

    ○松野政府委員 政府の方針は、非常に明確になっていると思います。被買収問題に対する問題は、過去における一つのこれが整理の調査会である。農業基本法は、今後日本農業の発展のためのスタートの基本問題の調査会である、こう二つはっきり割り切っておるわけで、従って内容において、ある場合とある場合と、それは日本農業の置かれた今日から、農業基本問題を調査してスタートしょうというものと、過去における長い間紛争のあった被買収者問題にこの際終止符を打つために調査会を作ろうというものと、おのずから問題は明確になっていると私は存じます。列挙的にどういうことをやるかというならば、さしあたり今日の生産数量というものがふえながら、農業所得というものは必ずしもそれについてこない。また日本における今日労働力の問題、あるいは日本農村人口の問題、あるいは日本の輸出入の関係、こういうものがおのずから列挙的にあがってくることは、すべて本年の予算を通じまして、日本農業の置かれた計数的なものは出ておりますので、こういうものがまず基本問題としての調査の対象になって、しかる後にその壁を打ち破るためにどうするのかという問題が出てくるのは、基本問題調査会の結論だろうと思います。いろいろ諮問いたします以上、閣議決定して列挙的にこういうことを諮問しますということはできますけれども、今日提案前にありましては、さしあたりそういう閣議決定に参りませんので、この案が通過いたしましたならば、直ちに諮問して、列挙をして明確に諮問するつもりでおります。同時に被買収者問題は、過去における長い間の社会問題が今日あることは事実でございますので、これを各種のデータほとんどそろっておりますので、それを出した上でどういう調査とどういう御答申をいただくかということは、おのずから別な問題だと考えて、政府の方針は二つとも明確にその線でやり得ると私は存じます。
  45. 石田宥全

    石田(宥)小委員 被買収農地問題調査会設置の方に質疑が移っておりましたけれども、本論に立ち返りまして、先ほどちょっと伺いましたように、日本農業の弱さの一つとして、しかも大きな要素である耕地が非常に狭いという問題、いわゆる過小農経営だという問題でありますが、日本の農耕地並びに採草放牧地等、総体の総面積に対する比率というものは、世界各国に比較いたしましてきわめて低いのであります。農林省の総計によりましても、現在約六百万町歩の既耕地でありますが、さらに五百万町歩程度の開発の余地があるという数字を示しておるわけであります。この問題こそ、過小農経営の問題の解決点でもあり、同時にまた農村人口問題の解決の一つでもあるわけであります。ところがこの問題に対する政府の最近の態度を見ておりますと、開墾、開発等に対してはきわめて消極的な態度をおとりになっておられるのでありまして、はなはだ遺憾にたえないのであります。政府はかくのごとき問題こそは、農林省だけの一つの強い方針を打ち出されるならば、必ずしも基本問題調査会の結論を待たずしてやり得る問題の一つであると思うのでありますが、農林大臣はどうお考えでございますか。
  46. 三浦一雄

    三浦国務大臣 耕地拡大につきましての石田さんのお考えでございますが、私は日本の過小農の形態を拡大するという方向につきましては、大体お説を賛同するにやぶさかではございません。しかしながらこの予定されております、五百万町歩と御指定になったのですが、われわれの方としましては、この五百万町歩そのものを直ちに拡大耕地の対象として考えるかどうか。これは御承知通り、林野土地あるいは公益的な制限をしているような土地、それを全部合せたところでございまして、これを要するに分析しますと、そう簡単にし得るかどうかということが問題になるわけでございます。実は農林省としましても、アメリカの各財団等から、農業開発につきましては相当いろいろの援助を受けております。技術的な協力等も受けておりますが、実は今農村省といたしまして耕地の質問改善で最も頭を悩ましている問題は畑地でございます。しかもこの畑地たるや、傾斜地であるとか山岳部方面の畑地ではなくして、平坦部の畑地でまだその緒についていないのでございまして、今農林省が現実に取り組んでおるのは、この平坦部に属する畑地をいかに改良し、いかにこれを生産性を高めていくかということに今取り組んでいるわけでございます。やがては今のようないわゆるアルペン地帯、山岳地帯に対する農業の開発のすべきことは、西ヨーロッパ方面におきます開発の実情に徴しても当然の帰結になるわけでございますけれども、これらの諸産業との観点において、ことに広大なる林野を持っておる、その林野とても広漠たる利用のできない地帯もあるということ、同時にまたりっぱな林地帯を持っておるのでございますけれども、現在の林地の保有しておりますところの森林資源等におきましても不十分であります。今しばしば国会方面でも御提唱になります通り、この林地を改良して、そうして日本の全産業に役立つ林業の施設をすべき時代である、施業方針等も大転換すべき時期であるというふうにいわれているわけでございますが、これらの関連をもただ単に耕地拡大の見地のみをもってするわけには参らぬ、こう思うのであります。この広大なる地帯になりますと、日本の最も重要な治山治水の問題にも近接して、非常な影響も出て参ります。これら一つつかまえましても、やはり国民経済の視野に立ちまして、広範な政策調査、そして正当なる結論を持たなければならぬと考えておりますがゆえに、これらの問題等につきましても、今後は農地の部門として基本的な考え方を一応押し通していきたいというのが現在の考え方であります。  なお先ほど高田さんが、この調査会に隠れみののように隠れはせぬかという御議論でございますが、われわれのスケジュールとしましてもさようなことはいたしておりません。しかし大体これの運営は内閣等とも御相談をしなければならぬと思いますけれども、御承知通りドイツにおきます農業法の制定の過程におきましても、まずドイツ農業の分析が前提でございます。同時にまたドイツ国民経済における農業地位、同時に他産業との関連いかようにあるかという、その分析から始まっているのでございまして、われわれの持っておりますものを全部さらけ出して、そうして国民経済の視野から見てもらうと同時に、われわれの目ざしているものを、逐次その材料を整備しまして、そうしていかよう農業があるべきかという基本的な考え方等をとりまとめいただきまして、第二次的には土地改良の問題、さらにまた生産性の向上の問題、さらにまたこれを生産、流通、消費の過程においていかようにするかということに掘り下げ、そうして結論を持ち出すというふうな運営にしていくのが当然の帰結だと考えますが、今直ちに具体的な農地改良を五百万町歩にすることはどうだというふうな、従来の行き方とは異なった運営をして参りたい。間々価格決定の際に具体的な計数を出して学識経験者の意見を問うているのでございますが、先ほど申し上げましたような心持をもちまして、この基本問題の調査会の運営に当り、そうして所要の効果を得たい、こう考えているわけでございます。
  47. 石田宥全

    石田(宥)小委員 農林大臣の御答弁されたその態度が、今日の農地に臨む政府の態度であることは明らかであります。農地法がそのまま現存しておるにもかかわらず、これもまた旧地主の団体の動きとも関連いたすのでありますが、開墾適地であって、やはり地主団体の妨害等のために開発できない農地がもうすこぶる広大な面積であるのでございまして、私の調査したところなどでは、かつては水田であったところに植林をして今杉林になっておるのでございますが、そこを下の方を調べて見ると、やはり水田としての畦溝畔の跡がそっくり残っておる、そういうようなところでさえ地主団体が強いと買収ができない。また一たん買収いたしましても、これを農民側が開墾開発するべく売り渡しの要求をしたのに対して、某県の係官のごときは、自民党のある県会議員の意向を聞かなければ売り渡すことができないというようなことを言った事実もある。そういうようなことで政府買い上げ農地は、これを開墾開発のために農地に売り渡しを拒否し、あるいは開墾適地であるにもかかわらず、買収をあえてしないという農地政策になって現われておるのであります。今大臣の答弁されたその態度がそっくり下部末端まで浸透しているといわなければならない。だから農地問題というものはなかなか片づかないのであります。  私はそこで伺いたいのでありますが、さっき松野長官が言われたように、年々膨大な農地がつぶれて壊廃しております。これはまことに遺憾千万でありますが、少くともこれに対しては、売買した場合その差益を税金で徴収するというような消極的な措置でなしに、国土総合開発の見地に立って、農地の利用区分というものを早急に設定すべきではないかと考えるわけであります。しかしそれはまだ手をつけておられないようでありますから、それについては農林大臣意見を伺うにとどめますが、農林省は一昨年、昨年と二カ年にわたりまして農地の転用基準を作るということで、若干の予算が計上されておったわけでございますが、本年度はその予算が継続してついておりません。これはどういう理由によるのであるか。承わるところによると、転用基準というものについては事務的にはある程度の段階まで進んでおるが、もう少し上の方でこれを審議し、検討しなければ発表できない段階だということも承わっておるのでございますが、農地転用基準の問題についての進行状況はどの程度になっておるか、承わりたいと思います。
  48. 三浦一雄

    三浦国務大臣 予算関係とそれから今の問題もですが、官房長から一応説明いたさせます。
  49. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま御指摘になりましたのは、農地転用基準についての調査費の予算のことであろうと思いますが、農林省におきましてはすでに農地の転用についての一般的な基準というものは作っておりまして、それに基いて転用の一般的指針といたしておるのでございます。たとえば土地改良をやった地帯については原則として転用を認めないとか、あるいは生産力の高いようなところは避けるとかいうような、一般的な基準は示しておるのでございますが、しかしその後におきまして農地の転用問題がだんだんやかましくなり、また各地においてそういう例がございますので、何らかの形におきまして一般的な基準を作ることは、もう少し精緻なものができないだろうかということで、正確な数字は覚えておりませんが、たしか全国にわたって六十カ所くらいの範囲で、具体的な地域につきましていかなる基準が立ち得るかということを、二年間にわたりまして調査してみたのでございます。現段階におきまして農地側から見ました転用基準につきましては、いろいろ検討いたしておるのでございまして、具体化する段階にもあると思いますけれども、しかしただ問題は、最近におけるごとく工場の進出が各地に行われます場合に、ひとり農地だけの側から果してこれを規制し得るかどうかというような問題もございますので、農林省としては農地側における一つの基準というものについては、引き続き検討いたしておるというのが現状でございます。
  50. 石田宥全

    石田(宥)小委員 私は政府の農地法の運営について、さきに大臣が答弁されたようにきわめて消極的な態度であるということを遺憾といたしまして、この質疑を申し上げたわけであります。  さらにもう一点、これは大臣にまあ警告と言っては大げさでありますけれども、申し上げておかなければならぬのでありますが、農地法についての訴訟事件がずいぶんだくさんあるのです。ところが農地局では訴訟事務の担当官がたった一人しかいないのです。私がやかましく言ったら去年から二人にされたようですけれども昭和二十八年ごろからの訴訟事件が一向進行しておらない。その当時の紛争は訴訟事件が一つ片づきますと類似の事件が全部片づくのです。ところがそれがなかなか裁判が進まない。その進まない理由というものは、やはりそこに何か政治的な意図がどうも伏在しておるように思われるのです。そういうことで農地法の運営上、実は地方公共団体は因っておるのです。全国の訴訟事件をわずか一人や二人でさばけるものじゃないのです。大臣はよく農地法を守るということを言われますけれども、農地法の建前を守るにはやはりそういう罰則の適用のような問題について、締めるところは締めてかからなければたががゆるんでしまって、そういうところが突破口になって農地法がくずれるという結果になると思いますので、この点はついででありますので大臣に一つ警告をしておきたいと思うわけであります。  それから次に農業人口の問題でありますが、私は時間の関係がありますからいろいろな統計資料などはここに持ち出しませんが、少くとも日本農業人口というものはこれは多過ぎる、そして従来の農村というものはどうも余剰労働力のプールにされておる。いわゆる資本主義社会においてはこれは避くべからざることであるかもしれないけれども、余剰労働力のプールにされて、必要がなくなれば全部これを農村に送り返す、必要に応じて農村から引っぱり出して使うというような傾向があることは、はなはだ遺憾であります。この問題については前に綱島委員も言及されたようでありますが、今日農村には膨大な潜在失業者がおるわけであります。この問題を処理するのに、やはりこれは農政面だけで処理できる問題ではありません。私はごく大まかな数字で五百万町歩云々と申しましたけれども、それはいろいろ内容的にこまかく分析すればなかなか問題があって、それほど多くの農村人口を吸収できるとは私も考えておらないのでありますが、問題は今日の日本工業というものがいたずらに大都市偏重で、東京、大阪、名古屋というところにのみ偏重してしまいまして、地方にはあまり行かない。これについては政府が高い見地から地下資源と輸送の関係、あるいは労力の関係、そういうような各般の条件を勘案して工場の地方分散をして、そこに就労の道を与えるということも一つの解決の方法であろうと考えるのであります。こういう面についての政府考え方を承わっておかなければならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  51. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ちょっと補足さしていただきますが、農地開発につきまして私は五百万町歩というふうな問題と取り組む場合にも問題がある、こう申し上げたのですが、そうしましたら石田さんは直ちに、これは地主の反対があるからやれないだろう、お前たちの力ではそれはやり切れぬだろう、こういうふうな御質問でございますが、私の方はそういう意味ではございません。おっしゃる通り社会党は土地利用区分をやる、こういうふうになっておりますが、この観念と考え方については変りはございません。しかしこれが、つまり、先ほど申し上げました通り日本は平坦部の畑地の経営等についてはまだ相当残されておる問題もある。アメリカ等におきましては山地の畑地経営そのものについて、もう少し日本は経常的な面を開発する必要がある、それに対して援助さえもしてくれるという提唱があるわけでございます。われわれはその利用区分におきましても、なお近代的な科学とそれから技術の粋を尽して検討していきたいということでございまして、もしそれだけの適地がありますならば、それこそ突破口を求めまして、土地の拡大にはわれわれは何もちゅうちょすることはございません。このことを一つ補足させていただきます。  それから第二に、農地の訴訟の問題でございますが、御承知通りこれはいわゆる農地委員会等でやってきたのでございますが、これはどうも農林省の公式の決定をまだいたしておりませんから、若干三浦の私見が加わることをお許しを得たいと思います。私は現在の農地委員会等の制度では、何か不十分な事態になってきたのではないかと思うのであります。というのは、家事裁判その他の問題につきましても、実は調停裁判等におきましては公正にものを見、判断するに練熟した裁判官が介入して、この問題をだんだん進めてきているのが趨勢であります。過去の小作関係等におきましても農林省には小作官等も置き、同時にまた裁判所等におきましてもこの処理を相当にやったこともあるのでございます。現在の農地関係の紛争等も、実は地主、小作双方ともに非常に難渋している問題は、現実に私どもも経験しているところでございます。さようでございますから、これをむしろ調停裁判の形態に持っていくの可否、同時にその場合にどういうふうに配慮しなければならぬというのは検討に残されておりますけれども、私は将来農地等の紛争につきましてはさような構想を兼ね加えまして、そうして公正にかつ妥当な解決をするような仕組みを考えたい、こう考えておりますことを一言申し添えておきたいと存じます。これはなお検討を要しますから……。  第三番目の、農村における人口問題としての工業の分散化でございますが、これは私はしごく賛成であります。われわれはかねて各地帯の総合開発を提唱し、北海道の開発計画はもちろん、東北開発、その他特に開発事業を促進しましたのもその一環でございまして、これはぜひともそういう方向に持っていかなければならぬ。これらの問題になりますと、やはりただ単に農政のワク内だけでは片づきませんので、これは国策としてぜひとも取り上げて、具体的にこれを実現するように配慮して参りたいと思うのであります。同時に特定の地域に至りますならば、包容している資源を開発することによって、ただ単に農業の開発を促進するばかりでなく、両々相待って、地方の開発し得るところもたくさんあるのでございますから、この問題は石田さんの趣旨に賛成し、具体的な方策を取り進めて参りたい、こう考えております。
  52. 石田宥全

    石田(宥)小委員 予定の時間が参ったようでありますから、あと簡単にお伺いいたします。長官に伺いたいと思いますが、もう長官も農林業の専門家でいらっしゃいますから詳しい説明は抜きにいたしますが、農林漁業関係というものは、先ほど申しましたように特別の産業でありまして、いわゆる金利コストの問題ですが、ほかの産業のような利率で資金などが出ておったのでは、農業は立っていかないことは明らかなんです。やはり農林漁業関係は全く別の経済計算で、別ワクの資金を作らなければならないと考えるのであります。先般も農林委員会で、寒冷地の畑作振興の問題で、社会党は五分五厘の長期資金の法案を出した。ところが政府案は七分で出された。そうしてそれを今度自民党の委員と社会党の委員両者で五分五厘に修正をした、ところが大蔵大臣が大へん憤慨されて、何か党内で紛争が起ったというようなことを聞いておるのでありますが、そういうことでは日本農業は育たないのです。どうしても農業金融というものは、全く別ワクでこれをやらなければ、将来やっていけるものではないと私は考えるのでありますが、この点についてまず一点お尋ねします。  それからもう一つは、今の貿易関係における為替の三百六十円レートの問題でありますが、これは終戦後の農産物等を相当輸入に仰がなければならないような情勢のもとにおいては、あるいは適切であったかもしれませんけれども、この三百六十円レートというものは、輸入は非常にしやすいが、輸出はしにくい。ことに農林水産物についてそのことが強く感ぜられるのでありまして、適当な機会においてこれをもう少しゃはり実態に即するように引き上げる必要があるのではないかと考えるものでありますが、いかがでしょうか。
  53. 松野頼三

    ○松野政府委員 第一の農業における金利ですが、もちろん日本農業生産性は非常に乏しい。農業生産性の非常に高いアメリカでも、大体農業金融の金利は四分程度が標準になっておると私は承知しております。しかし日本農業金利はまだ相当高額で、六分程度ではなかろうかと私は総合的に考えます。そのために今日金利が日本農業に非常に負担をかけておることは事実であります。そこで議題の、つい先般の五分五厘の問題ですが、ただ日本の金融コストが高ければやはり金利というものは高くなるので、コストはうんと引き下げて、預金金利はうんと高く、貸し出し金利は非常に安いということが理想ではありますけれども日本の金融を総体的に見たら、これは永続性のあるものではないと思います。従ってやはり預金コストによって金利を下げていくという方法がなければ、この問題は永続性がないのではなかろうか。またこれに投資するものがなくては意味がないのであります。従って政府は、なるべく資金のコストを安くするために、資金運用部資金のほかに、一般財政資金あるいは産業投資の金を注ぎ込んで、総体の金利を安くしたいという意味で、実は毎年下げるように努力しておりますが、一つの例として公庫を見ましても、やはりまだ相当資金コストそのものが高いものですから、貸し出し金利が一般的に下らないのをまことに残念に思っています。これはそういう根本を直していかなければ——そこ一つだけ取り上げて高いか安いかと言えば、日本の金利は安くありません。高いのです。しかしもっと低くするためには、やはりコストそのものを下げていかなければ、この問題は解決しないのではなかろうか。同時にただいまの貿易の問題もございますが、御承知のごとくこれをきめましてから相当年月がたっております。しかしあの想定をいたしますとき——つい先般エアハルトですか、来ましたときにもその議論が出ました。いろいろな意見もございましたが、一番私の耳に残っておりますのは、日本生産性から三百六十円をきめた。生産性から考えて参りますと、この三百六十円というのは確かに一つの疑義がある。しかしその当時は先を見越して三百六十円をきめたのであって、ちょうど今の経済が一番いいのだという議論をする財政通の方もおられまして、いきなりこれがいい悪いはなかなか私は議論がしにくいだろうと思うのです。従って今日の政府の方針では、三百六十円を堅持しても今の経済情勢ではよろしいというように一応その方向というものはきまっております。これは一面を言うならば確かにそうであります。しかし他面に、輸入するものと輸出するものと一つを例にとってみると、これにもいろいろ議論があると私は思います。しかし経済全体としては、今の場合まだ変更するという方向は一つ議論になっておりません。これは私が答えるにはあまりに大きな問題です。三百六十円を変えるべきかどうかという議論がいろいろございます。ございますが、まだ動かすべきだという方向は出ておりません。従って輸出の品物別に今後対策を立てて金利を変えるという方向へいくより方法はない。私ども輸出品については特別な金利を設け、ある場合にはリンク制を設げて輸出の伸長をはかるとか、個々には対策をとっておりますけれども、為替そのものに関して今の制度でよいということはまだ一度も政府議論したことがございません。
  54. 石田宥全

    石田(宥)小委員 三百六十円のレートの問題は、お説のように、立場々々でいろいろ考え方があると思うのでありますが、私ども農林漁業関係を見た場合に、これを痛切に感じており、やはり検討を要する問題の一つであろうと考えるのであります。なお農林漁業関係資金の金利の問題は金融その他制度関係から全面的に再検討の時期がきておるではないかと考えますので、これは調査会ができましたとき調査会の中で議論をされると考えますが、もう一点伺っておきたいと思うのであります。それは農業保護政策の一環として、輸入農産物に対する関税の問題であります。  政府は今国会において、砂糖輸入関税引き上げの措置をとられました。これは日本のテンサイ糖を保護する建前から当然の措置であろうと思うのでありますが、これをやはり農産物一般に及ぼす必要があるのではないか。たとえば大小麦のごときものを考えてみましても、支持価格制度一本でこれをやることはきわめて困難である。支持価格一本でやりますと逆ざやの現象が起りまして、なかなかこれを擁護し切れない。これに関税という一つの障壁を設けて、その上に立っての支持価格制度でなければいけないのではないか。ことに補作振興等を考えた場合に、何といっても畑作の大宗の大小麦に相当なウエートを置かなければならないと考えるのであります。その他にいたしましても、農産物についてはやはり今回設けられたような関税の障壁を必要とするのではないか。またできる限り輸入制限を必要とするのではないか。最近政府部内で問題になっておるやに承わるのでありますが、米麦等の主食はかなり国内で増産されて参りまして、四、五年たったら自給自足できるのではないかといつわれている。四年豊作が続いたのでありますが、日本の品物を売るために、どうしてもビルマとか越南方面の外米を輸入しなければならないということであります。やはり日本産業を保護し貿易を伸展させる上において、多少の考慮は払わるべきであると思いますが、程度が少し過ぎますと、国内農産物価格の暴落ということが必然的に起ってくるし、ことに米の統制の問題等にもひびが入ってくることは当然の成り行きであると考えますので、日本農業を守っていこう、農民の生活の安定をはかろう、安定的な成長を農業の面にはかろうというならば、できる限り農産物輸入は制限を加え、同時に関税というものを設ける必要があるのではないかということを、これは基本的な問題の一つとして考えておるわけでありますが、これについて一つ大臣の所見を承わりたいと思います。
  55. 三浦一雄

    三浦国務大臣 第一の米の問題でございますが、これは東南アジア諸国との間に経済協定等もいたしておりますが、特に昨年はどの地帯も豊作ということでありました。従って日本に対する要望も相当各方面からありましたけれども、御承知のような事情でございますので、外国からの米の輸人等は極力経済協定の線にとどめまして、そして多くのなには認めておりません。最近においてタイ等からもその要望があったのでございますが、これはむしろ原料として使われる砕米を若干とりましただけで終っております。なおそのほかに貿易関係から申しますならば、イタリアとかスペイン等がありますけれども、これはむしろ強くこちらから要求をいたしまして、米の買付によってやるという操作はいたしておりません。このことをまず申し添えておきたいと思います。  関税の問題でございますが、特にわれわれとして重大な関心を持ちますものは麦類だろうと思います。何しろ現在日本の麦の消費等も相当に多い。従って約三百万トン以上にわたる三麦の輸入をいたしておるわけでございますが、これは現在の状況におきましては、どうも需給の関係からにわかにこれをチェックするわけに参りません。しかしわれわれの考えとしましては、少くとも大麦等の粒食をもって農村その他で使いますものについては、もっと生産性を高めて参りたい。小麦におきましても同様でその方向でいっておるわけでございますが、現在の価格制度をもってしてもなかなか容易ではないこともわれわれ了承しております。ただにわかに関税を高くしまして、そして国内の物価等につきましてもこれは如実に出てくるものでございますので、これは基本的にもう少し考え直した上に価格政策と、それからそれらの問題をどう調整をとるかということは、今後なお十分に検討した上に、むしろ農家経済に役立つような方向を求めていきたい、かように考えております。
  56. 石田宥全

    石田(宥)小委員 大へん予定の時間を経過して恐縮でありましたが、他に質疑の予定者があるようでありますから、以上で私の質疑を終ります。
  57. 岡崎英城

    岡崎委員長 倉成君。
  58. 倉成正

    倉成委員 午前中から綱島君その他からいろいろ御質疑がございましたが、私から二、三の点について総務長官並びに農林大臣にお尋ね申し上げたいと思います。  まず第一は、諸外国の農業政策の例を見るまでもなく、大体国家がある程度強い介入を農業についていたしておる。なおそのやり方は西欧諸国と後進の資本主義国とでいろいろ型が違っておる。また同時に共産主義の諸国ではいろいろ型が違っておる。日本の場合には日本の置かれておる社会的あるいは経済的条件から、日本的な農業政策がなければならないということは当然でございます。産業政策として農業考える場合に、豊富低廉な農産物国民に供給するということは非常に強い要請でございまして、戦後の日本農業政策はこの立場を強くとってきたと思うのであります。ところが昨年の蚕糸あるいは酪農の問題ではっきり現われましたように、また先ほど松野総務長官からお話がありましたように、農民は非常な努力をして生産を上げてきておるにもかかわらず、価格が下落をして、農民所得が非常に少くなってきた。従って働く農民がその農業をやろうという意欲を非常に失ってきた。この点をどうするか。もっと端的に申しますれば、正直者がばかを見ない、農民が一生懸命働いたならば生活はよくなっていくのだ、こういう目標をはっきり与えるのが、基本法の大きな課題でなければならない。従って国民経済的な立場から考えるのと、農民自体の幸福というか、生活を考えていくという二つの立場は、究極において一致すべきものかもしれません。少くとも政策として打ち出す場合には、そのいずれを強く念頭に置いてこの基本問題調査会設置するかということが、非常に大事な問題ではないかと思いますので、この点について総務長官のお考えをまずお伺いしたいと思います。
  59. 松野頼三

    ○松野政府委員 私は基本問題調査会提案者として考えますならば、農家所得の増大を第一にはかるべきだということがまず基本法の第一だと思います。しかし農業所得だけが上って、他の産業に悪影響を及ぼしてもいいではないかという単純な議論にもなりません。農業所得の増大につれて日本の消費水準も上るでしょうし、そういう関連がたくさんあるものだ、こういう考え方でまず農業所得の増大、二倍ばかりに引き上げたいということが、調査会発足の第一として取り組むべきものだ。それに付随して人口の問題あるいは流通の問題、生産性の問題、輸出入の問題というものが当然関連して参りましょうが、少くとも農業所得を二倍に引き上げるという方向から、基本問題をこの調査会調査していただきたい、こういう考えで私は提案いたしたような次第であります。
  60. 倉成正

    倉成委員 農業所得の増大ということを非常に強く考えておられるということを承わって、私も非常に力強く感ずるわけでございますが、農業所得の増大がどのような形でされていくかということが、また同時に基本的な問題の一つと思います。農民が人間らしい生活をしないで非常にみじめな生活、たとえば農家の主婦たちが過酷な労働をいたしまして、そして母親としての務めを十分しないで農業所得だけ上る、こういう上り方の農業所得の増大では意義がないと思いますので、農業所得を単に上げるということだけではなくして、農民ほんとうに人間らしい生活をし、しかも農業所得が上っていく、こういう農民的な立場に立った考え方についてどのようにお考えになるか、もう一度お伺いしたいと思います。
  61. 松野頼三

    ○松野政府委員 今日国民所得の中で占めます人口割、所得割を比例いたしますと、農業は確かに非常に低い地位にございます。勤労者は一万六千円というのが月給の平均かと存じますが、年額にして約二十万、これは一人の勤労者でありますが、大体家族が今の消費水準の家計調査を見ますと四・二くらい、農家の場合は大体六・七、まず家族人口の比率が農家の方が相当多い。しかも農家所得が年額にいたしまして総体的に三十万、一人割にいたしますと相当所得の低いことはすべての統計で実は明らかであります。それをどうして高くするかということはまず第一に生産性を高めること、第二番目には価格の安定をはかることであります。日本農業の一番の弱体は、生産性は諸外国に例を見ないほど高い生産水準を維持しながら、所得水準が非常に低いところに問題があるだろうと私は存じます。しかし食糧は不足だというのですから、どう考えても、不足な食糧を作る農家というものは所得がふえていいのにかかわらず、非常に低い地位にある。これが一つの問題ではなかろうか。そのためには流通の問題がありましょうし、あるいはそれに対する消費との計画性というものも出て参りましょう。これは酪農に一番いい例を見られる。せっかく生産しながら製品にならずに、中間でだぶつくという場面も出て参りましょう。そういうことを総合するならば、所得生産の間に相当ロスがあるのではなかろうかということも一つの案として考えまして、そういうものを一つ基本的に調査していただきたい。従ってやはり農家所得水準を向上することを目標にあらゆる生産性の問題、流通の問題というものをかみ合せて、日本農家の生活水準を上げて参りたい。そしてこれが人口割でいいますと諸外国にないほど、全人口の四四%強ぐらいございますが、これだけの人口国民所得水準というものを維持するならば、日本国民所得も総体的にふえるのだという総合性を考えて、この調査会というものが議論されるであろうと、私は制約はいたしませんが、そういう気持でこの調査会法案提案しているわけであります。
  62. 倉成正

    倉成委員 農家所得を上げていくということについては、お説の通りと思います。ただ松野長官が今意識してか意識されずしてか申された農家所得を上げていきたいというお話の中に、問題の中心があるわけであります。日本農家所得農業からだけ出るのではなくして、その四割を農外所得によっております。六五%が兼業農家であり、三五%が専業農家であるというのは、農林白書でも明らかにされた通りでございます。従ってこういう零細な、農外所得によって生活をしておる人たちをどうするかという問題が一つと、それから専業でやっておる農家でも、先ほどちょっと触れましたように、農家の主婦たちがかなり苦労して過酷な労働をやっている。これは特に島嶼の農業について、ほとんど女子の労働にたよっておるという事実があるわけでございます。もちろん農業自体が家族的な農業の姿を呈するというのは一つの方向かと思いますけれども、そういったものを含めて、人間らしい農民の生活を確保していく、こういう方向に基本問題調査会基本的な目標がなければならないのではないか。これについての御所見を伺いたい。
  63. 松野頼三

    ○松野政府委員 倉成さんのおっしゃる通り日本農家の労働時間を計算しますと相当過酷であるし、特に婦女子というものが、養蚕あたりになるとほとんど婦女子の労働力によって維持されていると言っても過言でないように、実は教養時間とかあるいは修養時間というものが狭められていることも事実であります。これは生活そのものからいえば、必ずしも幸福なものではなかろう。しかも兼業がだんだんふえてきて、一部の者は臨時的な労務者になり、一部の者は俸給生活者になり、あるいは一部の者はいわゆる団体の所得によるということ自身が、私は健全な農業の姿ではないと思う。できるならば専業農家が、みずから農業を営んで生活し得るというのが、ほんとう農業のあるべき姿だと思います。しかし残念ながら専業農家はだんだん減って参っております。これも農業そのもので解決できないので、いずれこの調査会でそういうことも当然やっていただくことになると思いますが、兼業がだんだんふえてきておるこの現状は見のがしてはならない、農業の衰微的傾向だと言っても私は過言ではないと思います。それを早く専業だけの農家所得で生活ができるようにすべきだということが、今度この調査会でやっていただく基本問題ではないかと考えております。
  64. 倉成正

    倉成委員 ただいまの点については、多少議論の余地があるかと思いますけれども、次の問題として、この基本問題調査会は、基本と名をつけた以上、綱島委員からもお話のありましたように、どうしても長期的な政策を目標としなければならないことは明らかでございますが、長期的という場合に、これをどのくらいの期間をとるかということが、今後の調査会の運営に当って非常に大事なことになってくると思います。たとえば新長期五カ年計画というのがございまして、五カ年の計画もある意味では長期であるし、あるいは三十年、五十年後の日本農業のあるべき姿を考えるのも長期計画になってくる。どこに焦点を合せるかということは非常に大事な問題と思いますので、この点について調査会設置の際のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  65. 松野頼三

    ○松野政府委員 調査会そのものは、一年くらいで答申をいただいて、二年以内でこの問題の答申を完了していただきたいという意味で二年間の年限をきめました。しかし答申案の内容いかんによっては、相当長期的なものが出てくるかもしれません。しかし一応政府におきましても、すべての経済政策が五カ年計画というものに合せておりますので、今後の問題はやはり一応その五カ年計画に第一の段階は合せることが妥当ではなかろうか。十年先ももちろん見込んだ上でございましょうが、一応五カ年計画が第一段階に着手すべき基本ではなかろうか。そういうふうに考えておりまして、五カ年で完了するということは日本農業としては考えられませんが、しかし一応経済五カ年計画の中における農業所得の向上ということがまず議論になりましょうから、私はそれに歩調を合せるような答申の出ることが、現実とマッチするのではなかろうか、こう考えております。
  66. 倉成正

    倉成委員 五カ年計画というと非常に実施的な意味を強く含むと思いますが、それでは基本問題を検討する場合に、あまりに短か過ぎるような感じを抱くわけです。これはもちろんいろいろ議論の分れるところでございましょうけれども、少くとも農業の問題、山林をも含め、あるいは今日または今後近い将来において問題となろう果樹の問題をとらえましても、少くともこれが成木になるには相当の年月を要するし、また果樹の樹齢というものは、ミカンを例にとりましても六十年以上です。そういうことを考えますと、五カ年の短期計画を当面の目標とするのはいささか妥当を欠くのではないかと思いますが、この点については総務長官並びに農林大臣の御答弁を伺いたい。
  67. 松野頼三

    ○松野政府委員 おっしゃる通り農業問題の解決が最終的にいつごろつくかというと、それは五カ年でつくものはおそらく非常に少いと思います。もちろん長期的な問題として政府として取り上げるときには、一応五カ年計画の中に入れて、まずその中の第一段階として五年、第二段階として五年、さらに第三段階として五年——もちろんこれは相当長期的な問題で、できるならば今後いつまでも続くような基本的な、日本の憲法のように農業一つの憲法となるような基本的な答申を出してもらうには、相当の年月を要すると思いますが、現実的に着手するときには一応のめどというものを経済計画の中に入れますと、五カ年というのが一応の第一段階ではなかろうか、かように考えます。もちろん五年で済むものは非常に少いのではないか。しかし二十年計画ということでほうっておいてはいけませんので、やはり促進する意味において、五年ごとに計画と現実とを合せながら、より以上に計画に合せるように進めるのが妥当ではないか。こういう意味で、一応五カ年において計画と実行とを合せながら、計画におくれないようにやっていきたい、こういうことであります。
  68. 三浦一雄

    三浦国務大臣 総務長官と意見の扞格はございません。御承知通り現在の企画庁の総合計画等におけるエネルギー並びに農業等は、長期にわたった見通しを持ってやるということになっておりますから、今総務長官のおっしゃる通りの見通しのもとに策定さるべきものと思います。同時に実施の場合になりますと、やはり十年計画とか十五年計画ということになりますと、ほんとうに力強く実施できないことになろうと思いますので、いわゆる予算を伴うような実施的なことは五年くらいでもって切って、そして強く推進していくことが妥当だ、こういうように考えております。
  69. 倉成正

    倉成委員 大体お気持はよくわかったわけでございますが、新長期計画を五カ年計画で進められた場合の農業部門を検討してみますと、やはりその五カ年計画を実施する場合の前提となる基本的な考え方が非常に欠除しているというのが、この五カ年計画を見た場合の一つの問題点ではないかと思います。昭和三十三年に始まり三十七年に終るいわゆる五カ年計画、従ってやはり実施計画は五年を目標とすることについては私も賛成いたしますけれども、しかしその前提として考える場合には、これは何カ年が妥当であるかということは議論を差し控えたいと思いますけれども、さらに長期の計画について基本的な考え方を明らかにするということが大切かと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。  なお次の問題として、先ほど石田委員からもお話がありましたけれども農業の問題は非常に範囲が広い。松野長官から御指摘ありました人口の問題、流通の問題、低所得の問題、そのほか食管の問題にいたしましても、現在やみ米が相当流通しておるということは公然の事実であります。なお百億以上の金を使いながら、共済制度が現地の農民に評判が悪いというのも事実であるし、農業の金利が高い。あるいは農業団体の問題、あるいはあとでちょっと触れたいと思いますが、農林省の機構自体の問題、いろいろ考えて参りますと今日は問題が山積いたしておるような気がいたします。これらの問題を先ほどちょっとお話がありましたが、一応列挙して諮問するというお話でございましたけれども、これは列挙し出しますと、いずれが重くいずれが軽いかということは非常に議論がございますが、やはりどうしてもこれはある程度焦点を合せてやらないと、委員三十名の方が幾ばくかの予算をお持ちになりましても、これはなかなかむずかしい問題ではないかと思いますが、どういう点に重点を合せていくかという問題の御検討はなさっておるかどうか、もう一度お伺いしたいと思います。
  70. 松野頼三

    ○松野政府委員 この法案通りましてから閣議にはかりまして、諮問案というものを決定するわけで、まだ決定の段階に至っておりません。しかしこの法案提出いたします以上、何を諮問するかという構想がなしには諮問も提案もできません。構想といたしましては、やはり日本経済に占める農業所得の低廉の問題と農業所得の位置の問題ということと、それから日本の社会問題としての農業人口の問題というようなことがまず焦点になると私は考えて、そして基本的に日本農業をいかなる地位に、いかなる方向に持っていこうとするかということが諮問の一つの構想だと思います。
  71. 倉成正

    倉成委員 今の問題と多少関連するわけでございますが、現在の農業並びに農民の生活、あるいは農家の状態をどのように認識するかという問題が、一番大きな問題の出発点ではないかと思います。一昨々年農業白書が出て以来、いろいろな角度においての統計資料はあるようでございますけれども農業というのは御承知のように農林省の机の上で、いろいろ統計資料が出てきた実態と、現実の末端に参りました場合の実態とでは、非常に違うのでございます。非常に地域差がある、また地帯別ないろいろなそういった現実の動きというのは、この机の上の数字とは実感としていろいろ異なる面があるわけであります。従ってそういった現状認識のための資料が、果して現在整っておるかどうかという問題、これは一つ農林大臣からお答えいただきたいと思います。
  72. 三浦一雄

    三浦国務大臣 農林白書を出しましてからすでに年月がたっておるわけでございますが、実は農林省としましては統計調査事務所等も持っておりまして、これは常時地方の経済事情農林漁業全体にわたって相当の資料を持っておるわけでございます。これを十分に活用してもらうということが第一であります。第二にやはり経験職というものが非常に大切なことでございまして、農林省設置されまして以来すでに一世紀の年月を経ておるわけでございます。さようでございますから、それらの各般の資料も十分に利用していただくということも大切であろうと思います。それから今度は調査会の運用の面でございますが、専門の人のためには専門委員制度も実は予想してあります。それからさらに臨時委員制度もとってある。本委員人たちは大体三十人、さらに専門委員並びに臨時委員等も準備しておりますから、これは地方々々によってはそれらの人材を簡抜して、その人たちのあらゆる力をこの際にこれは利用すると申しますか、それを生かしていくということは必要であろうと思うのであります。たとえば北海道の事業でありますならば、北海道において農業の経験を持ち、意見を持ち、同時にまた相当の見識を持っている人もあるわけでございます。そういうような人たちを簡抜してこれに応じさせる。あるいは九州の場合には九州方面にその人材を求めるということで、両々相待って、事情の把握と同時に、この検討を怠らなければ相当の成果を上げ得る、両々相待っていくべきものだと考えております。
  73. 倉成正

    倉成委員 ただいまの大臣の御答弁で、末端の事情について十分な配慮を払うというお話でございますが、この点は特に現状をいかに認識するかという点で大事な点でございますから、格段の御努力をお願い申し上げたいと思います。  なおこれらの素材を整備し、審議会に提供し、また審議会のいろいろな議論を整理していくのは事務局の役割でなければならぬ。この事務局というのはよほど真剣にこれと取り組んでいかなければ、この機能を全うすることはできないと思うのでありますけれども、事務局についてどういった運営をお考えか、また農林省の現在の機構とこの機構の関連をどういうふうにお考えになっているか、お伺いしてみたいと思います。
  74. 三浦一雄

    三浦国務大臣 事務局の方は一面においては簡素なものを考えております。膨大な人ばかりが能ではありません。従いまして現在の予算では、審議官と参事官を置くことになっており、相当の増員を期待できます。同時にこの問題と取り組む場合に、農林省の部局長全部に諮りまして、この問題は農林省としては当面の最大の課題であるので、十分に協議してもらいたいという了解のもとで発足したわけであります。従いまして今度事務局を作ります場合にも、部内の人材を簡抜してその衝に当らせ、同時にまた各部局もこれに対しましては相当の協力と関心を持っております。そういうような方向に持っていくつもりでございます。ただまだ今のところ分課その他のこまかいことはきめておりません。これは何と申しましても農林省部内のものはこれにこぞって賛意を表し、これの方向に向うということでなくては、あそこでもってぶつかり、こっちでもって後退するということではいけませんので、そういう配慮のもとに取り進めて参りたい、かように考えております。
  75. 倉成正

    倉成委員 事務局の準備については現在いろいろ準備中であられるようですから、これ以上申し上げませんけれども、事務局と相待って、農林省の機構そのものについて、やはり相当再検討をお加えになる必要があるのではないか。と申しますのは、現実の農業というものは、戦後非常に大きな変革を来たしております。たとえば蚕糸業一つをとりましても、現在の蚕糸局の機構は、戦前の機構と大差ないというような状態でありますけれども、蚕糸の農業生産に占める比率はすでに三%に過ぎない。そういうことをいろいろ考えて参りますと、膨大にふくれ上った農林省の機構を、農村あるいは日本農業の実態に合せて整備していくということが、この事務局の整備と相待って、やはり現実の農政を推進するために非常に大事なことではないか。この点には相当勇気と決断が要りますが、こういった点について農林大臣はどのようなお考えをお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。
  76. 三浦一雄

    三浦国務大臣 これは基本問題の検討と、それから対策の立案に伴いまして、当然いたさなければならぬものと考えております。一例をあげますと、林野庁というようなものを持っておりますが、これは膨大な下部機構を持って国有林の経営に当っておる。しかし一面におきましては国有林の経営に熱心のあまり、日本全体の林政について手薄になるという傾きがないかといわれますと、これは反省せざるを得ない点があるわけであります。こういう点も十分に考えなければならぬと思います。御承知通り従来は農務と山林と水産、こういうようなものが今日のような膨大なものになってきた歴史的な経過もあるわけでございます。これらはやはり簡素にして能率を上げるような仕組みにしなければ、渋滞することは当然であります。しかし同時にまた角をためて牛を殺してもいけませんから、これは緩急をよく考えて、基本的な問題の調査の進行に伴いまして整理していきたいと思っております。
  77. 倉成正

    倉成委員 時間がないようでございますから、最後に一点だけお尋ねしたいと思います。この審議会の答申が出て参りました場合に——これはどのような答申が出るかということは今後のことでありますけれども、やはり先ほどからもお話がありましたように、かなりの財政投融資をこれにしなければならないというようなことが出てきた場合に、政府は勇断をもってこの裏づけをする用意があるかどうかという問題について、いま一度松野長官の御見解をお伺いいたします。
  78. 松野頼三

    ○松野政府委員 もちろん政府としては勇断をもってこれを尊重するつもりでございます。
  79. 倉成正

    倉成委員 これで終ります。
  80. 岡崎英城

    岡崎委員長 本案に関する小委員会の質疑はこの程度といたしまして、残余の質疑は本委員会に譲ることといたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十二分散会