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1959-03-25 第31回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十五日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長代理 理事 平井 義一君    理事 岡崎 英城君 理事 高瀬  傳君    理事 高橋 禎一君 理事 前田 正男君    理事 受田 新吉君       今松 治郎君    小金 義照君       綱島 正興君    富田 健治君       橋本 正之君    保科善四郎君      茜ケ久保重光君    石橋 政嗣君       石山 權作君    柏  正男君  出席政府委員         総理府総務長官 松野 頼三君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房賞勲部長) 吉田 威雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君          厚生政務次官 池田 清志君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      小山進次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局国有財         産第二課長)  市瀬 泰藏君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 三月二十四日  恩給法の一部改正に関する陳情書  (第四四〇  号)  召集旧軍人関係恩給加算制復元に関する陳情  書  (第四四四号)  建国記念日制定に関する陳情書  (第四四五号)  同(第四  四六号)  同(第  四六七号)  同  (第四六八号)  同(第  五二〇号)  紀元節復活等に関する陳情書  (第四四七号)  自治省設置に関する陳情書  (第四六九号)  同(第五三八号)  都市計画行政自治庁所管とする案に反対の陳  情書  (第四七三号)  旧軍人関係恩給加算制復元に関する陳情書  (第  五一九号)  同  (第五三六号)  寒冷地手当増額に関する陳情書  (第五二一号)  金鵄勲章年金及び一時金復活に関する陳情書  (第五三七号)  国民の祝日に関する法律の一部改正に関する陳  情書(第  五四〇号)  は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出第四  九号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一二九号)  国の防衛に関する件      ――――◇―――――
  2. 平井義一

    平井委員長代理 これより会議を開きます。  内閣委員長所用のため外出されましたので、委員長の指名によりまして私が委員長の職務を行います。  国の防衛に関する件について調査を進めます。質疑を許します。茜ケ久保重光君。
  3. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 具体的な問題について一、二お伺いいたします。国有財産第二課長にお伺いしたいのですが、最近だいぶアメリカ軍施設が返還されまして、地元ではかって民有地であったり、民間施設であったものが、それぞれ旧軍に接収されたりあるいは終戦後の財産整理関係で、税金の対象として国に所有権が移ったり、あるいはまたアメリカ軍が進駐して接収したというような形で、かつての民有地であったり民有施設であったものが、現在は国有に変っておるというものがたくさんあるわけです。それがたまたまアメリカ軍の撤退によって、いわゆる国に返還されつつあるわけでありますが、かつて民有地ないし民有施設であったものに対しては、地元なりあるいはかっての所有者は、今日のこの経済情勢から、これに対する期待が非常に大きいわけです。ところが具体的には、私どもが心配しておったように、いつの間にか防衛庁使用ないしは防衛庁施設等転換されつつある。これは私ども従前から非常に心配だったので、大蔵省に対しましてもしばしば進言をし、要望しておったわけであります。それに対して大蔵省当局もたびたび言明されたことは、決してそういうものは防衛庁に無条件に渡さない。地元要望なりあるいは地元住民希望によって、それぞれ適切な処置をしたい。たとえば具体的には学校用地とか、あるいは特殊な施設転換するとか、または農地に解放する、そういったなるたけ現地住民の意思に沿うような処置をしたいということであったのでありますが、しかし残念ながら具体的な事実を一つ一つ検討して参りますと、なかなか大蔵省当局がかって言明されたようなことではなくて、逐次防衛庁転換されつつあるのが実情であります。非常に遺憾であります。そういった中で、これは特殊な例としてかっての有名な相馬ヶ原においては、これは大蔵省と農林省の非常な努力で、地元農民期待には遠く及びませんが、百数十町歩の国有地農地転換されたということは、まことに喜ぶべき現象であります。近くこれは返還なり調整ができるようでありますが、こういうことは現地農民といたして、政府の施策に対するいい感じを持っておる。これは特殊な例でありますが、そこでそういった見地から最近群馬県下で問題になっている点がありますが、それはかつて中島飛行機が所有しておりました大泉工場並びにかって試験飛行を行いました付属飛行場、これが米軍の長い間の駐留によって遷延されておりましたが、最近になってこれが返還されまして、返還されたのはいいのでありますが、どうもこれがまたさらにそのまま防衛庁に引き継がれる可能性が出てきたので、現地の諸君は非常に心配しておる。去る二月の群馬県議会におきましても、満場一致これが一つ地元使用を許可されて、民間工場なりその他の施設にしたいという決議をしておるはずであります。ところが残念ながらこれまた具体的な点はわかりませんが、防衛庁への転換が相当進んでいるものと伺うのであります。この点につきまして大蔵省当局の全般の一般的なことに対する見解と、さらに具体的には大泉施設がどのように現在管理されているか、また近くどういうふうにされる意向であるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  4. 市瀬泰藏

    市瀬説明員 一昨年以来米車提供しておりました施設がかなり日本側に返還されて参っておりますが、この返還された施設のうちで、民有あるいは公有に属するものはおのおのその所有者に返されておりますが、国有のものにつきましての処理方針は先ほど御質問がありましたように、大蔵省としましては慎重に考慮を加えた上で、国有財産適正処分という方向で当っておる次第でございまして、国の需要、たとえば防衛庁であるとか、あるいは文教施設であるとか、そういう国側需要と、それから産業界要望あるいは地元側要望等も十分考慮いたしまして、その転活用計画を定めておるわけでございまして、たとえば昨年の十二月末現在で返還されましたおもな百四十八件について申し上げますと、大体八十二件は処理方針がきまりました。六十六件が未定になっておりますが、きまりました八十二件のうちでは、たとえば官庁施設になったものが二十八件、公共団体施設になったものが十件、住宅施設になったものが十二件、産業施設が五件、飛行場施設が五件、演習場施設が十一件、教育施設が三件、その他八件というふうに分けられておりまして、面積におきましては演習場関係土地がかなり多うございますので、八十二件の土地二千九百七十七万坪のうち二千二百七十二万坪は演習場になっておりますが、建物で申しますと八十二件、三十五万坪のうちで、演習場関係は一万三千坪、飛行場関係は六万八千坪で、これを除きました約二十七万坪程度のものは官庁用あるいは公共団体用教育施設用産業施設用等の用途に充てておる次第でございます。  さて第二の御質問群馬県の大泉地区のことについて申し上げますと、先ほど御質問がありましたように、この施設につきまして防衛庁は、陸上自衛隊あるいは海上自衛隊使用したいという希望は申し出ております。しかしながら、私ども大蔵省といたしましては、防衛庁計画を長期的に御説明を伺いまして、その長期的な見通しのもとに立ってにらんでおるわけでございますが、現段階大泉地区防衛庁部隊が進出する必要性はそれほど了解されないのでございます。大蔵省としましては、それほど切実な要望があるというふうに判定するわけには参らない状態でございまして、逆にただいまお話のございましたように、群馬当局あるいは地元大泉当局におきまして、相当企業誘致に御熱心の傾向が見受けられます。またこれに対応しまして、民間企業でもこの施設を転用したいという強い要望もございまするので、大蔵省といたしましては大体その方向処理を進めてしかるべきかと考えておる次第でございますが、なおよく事情を検討いたしまして、最終処理方針を定め、国有財産地方審議会に諮りまして決定を見たい、こう考えておる次第であります。
  5. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ただいまの大蔵省当局の御答弁によりますと、地元意向に沿いたい、防衛庁計画にはあまり積極性を持たないという御答弁のようです。そこで防衛庁経理局長にお伺いしますが、これは先般、やはりこの地域に対して輸送部隊か何かの常駐部隊を作りたいという意向を一ぺん表明されておったのでありますが、その後防衛庁当局においては大泉地区に対してどういう計画とどういう意向を持っていらっしゃるか、その最近の情勢をお伺いしたいと思います。
  6. 山下武利

    山下(武)政府委員 御承知のように防衛庁はまだ建設の途上でありまして、いろいろと施設を要することが多いわけでございます。新しく施設を建てるということになりますと、膨大な国費を要することでもありますので、米軍施設解除になりましたところを、ことに国有施設であるような場合におきましては、できるだけこれを防衛庁の方に使わしていただきたいということで、大蔵省当局にもお願いをして参っておるところでございます。今、お尋ね大泉地区はまだ提供解除になっておりませんので、はっきりしたことを申し上げる段階ではないわけでありますが、米軍提供解除になりました後におきましては、防衛庁といたしましては陸上及び海上部隊を置きたいということを昨年来予算折衝とも並行いたしまして、大蔵省の方にお願いを申しておるとこであります。現在持っております計画は、陸上自衛隊につきましては現在豊川におります建設大隊三個を中心といたしまして約四千名ばかりの部隊海上自衛隊につきましては航空機の整備並びに教育中心といたします部隊約二千七百名、これを大泉地区に置きたいという計画を持っておる次第でございます。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 管財局の方にお伺いします。大泉施設は大体かっての工場施設飛行場施設に分れておるわけですが、工場施設の方の現在の坪数とそれから建物坪数、それから飛行場坪数、これは今資料がありましたら御説明願いたい。
  8. 市瀬泰藏

    市瀬説明員 ただいま工場施設と申されました方は土地が全体で二十八万三千坪余りございますが、このほとんど全部が民有でございます。それから建物は約六万坪ございますが、これは全部国有でございまして、ただいまは米軍提供中でございますので、この民有地調達庁を通じて借り上げまして、そして米軍提供している次第でございます。それから飛行場地区でございますが、ここは十八万二千坪余り土地がありまして、これは国有でございます。
  9. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 近く県としても、先ほど指摘したように県議会でも防衛庁施設でなくて民間施設として地元発展に寄与してもらいたいということで決議をしておりますので、迫って県並びに地元あげておそらく大蔵省並び防衛庁にもそれぞれ陳情なり折衝があると思うのですが、冒頭にも指摘しましたように非常に狭い国土で人口も多いし、いろいろな意味でうごめいている日本現状がら、そういう特に平坦地の、しかも人口が相当膨張しつつある状態の中で、それほどりっぱな施設があるにもかかわらず、これが防衛庁施設となりますことは、いろいろな意味地元発展を阻害し、また日本人全体としての仕合せのためにも不幸な面が出てくると思う。防衛庁は私どもは徹頭徹尾反対でありますが、どうしても必要ならば私どもはある程度国費が要るとしても、もっと違った地点に選定されて、いわゆる全般的な日本産業経済発展とか、あるいは日本人のそういった意味仕合せを守る立場も考えてもらわなければいかぬと思う。そういった意味でわれわれは特に今大蔵省で発表されましたように、膨大な施設と、膨大な地域、しかもかなりりっぱな施設のようであります。こういったものがそのままいわゆる非生産的な防衛庁施設になることはとても了承できない、そういう意味地元としても非常な熱意をもってこれが民間への放出を期待し、またこれを強く要望しておるわけであります。先ほどの大蔵省当局の御言明で非常に意を強くするのでありますけれども、ただしかし私どもがしばしば当面することは、国会でかなり良心的な答弁かありながらも、そのことがいつの間にかいわゆる政府間における防衛庁大蔵省折衝の過程で、いわゆる国会での言明とは反対な事実が出てくることが多いのであります。これは非常に残念でありますが、しかし私は大泉だけではなくて、今後またさらにたくさんの施設か返ってくるのでありますが、こういったことに対して大蔵省はやはり今申しましたような見地から、また先ほど大蔵省から言明されましたような態度を堅持されて、ぜひ大きな観点から民間、そして地元への優先的な、しかも積極的な払い下げなり施設転換お願いしたと思う。一つそういう点でとりあえず、先ほども言ったように相馬ヶ原における国有地農地転換という思い切ったことを、現在の政府としてはかなり思い切った処置をされて、現地でも非常な好評を博しておるということもありますので、ほかの点もそうでありますが、大泉のただいまの施設に対しては地元要望をぜひ一つ積極的に取り入れていく。国会答弁と具体的な事実がぜひ一致していくように、一つ格段努力をしてもらいたいと思うのでありますが、その中で大蔵省当局のこれに対するはっきりした態度をお伺いしておきたいと思います。
  10. 市瀬泰藏

    市瀬説明員 大泉地区につきまして先ほど全般的な考え方を申し上げましたが、実際の問題といたしましてはこの施設を有効適切に活用できる企業がどう現われてくるか、それから何と申しましても非常に大きな施設でございまして、先ほど申し上げましたように二十八万坪の土地の上に六万坪の国有建物がございます。これはしかも半分以上は終戦後、終戦処理費等によりまして新築した建物でございまして、これだけの施設活用できる企業があるかどうか、一社でまかなえなければこれを二分割、三分割して考えなければならないという問題もございますが、企業誘致という線ではすでに一昨年来内閣におきまして、駐留車労務者関係のために作りました特需等対策連絡協議会、昨年それが改組されまして中央駐留軍関係離職者等対策協議会専門委員会におきまして、企業誘致の問題は大泉地区におきましても考慮されておる次第でございますので、この辺とも十分連絡をいたしまして、転活用に万全を期したいと思うのでございます。ただ私ども危惧しておりますのは、あんまりにも大きな施設でありますので、全部転活用可能かどうかという点にあるのでございます。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ただいまの御答弁のように非常に膨大な施設でありますから、これが簡単に民間で消化ができるとは限りません。これについては私どもとしても協力いたしまして、ぜひ国に迷惑をかけないような形において、これが有効に使用されることに努力したいと思っております。そういった意味一つ防衛庁も、あなた方としては非常に垂ぜんおくあたわざる施設だと思うが、こういうように、今私も指摘し、また大蔵省答弁したように、また別な面から見ますと民間企業発展の基礎でありますから、一つ今あなたのおっしゃったように七千人に達する膨大な部隊が移流するというのでありますが、そうなりますと、また今度はそれを中心地方のいろいろなトラブルや混乱等も予想されますので、一つ防衛庁としては、これはぜひ他にそういったところを物色されて、大泉については、きょうの委員会限りにおいてあきらめてもらって、たまには防衛庁民間企業の発達や民間要望にこたえて、一つ防衛庁の腹のあるところを見せてもらいたいと思う。そういう意味でこれは私は強く、防衛庁は少くとも大泉の基地に関しては、もうきょう限りあきらめるという態度を堅持してもらいたいということを要望して、私の質問を終ります。     —————————————
  12. 平井義一

  13. 受田新吉

    受田委員 今度の厚生省設置法改正の最も主要点は、国民年金法の施行に伴う年金局設置である、かように了解するのであります。この改正点の第一の問題点について、私きょうは特に政府の意図するところを明らかにしておきたいのであります。昨日衆議院本会議国民年金法が通ったわけでございますが、私はここで、社会労働委員会における国民年金法案審議の巻き返しを全然考えておりません。しかし設置法に関する重要問題点については明らかにしておかなければならないのです。  そこで具体的にお尋ねしますが、この国民年金という制度政府政府なりに今回実施されんとしておるのでありますが、この国民年金制度という社会保障制度の最も大きな柱を打ち立てられるに当りまして、国民年金構想ですが、この構想を昨年以来、一年間の間によほど苦労されたと思うのですけれども、大体こうした社会保障制度の大きな柱の根底をなす所得保障医療保障との関係は一体どう考えておられるのかどうか。これは単に一定の所得を与えるのみで、国民社会保障は確立するわけはない。病気になったときの医療費保障、もう一つ教育を受けんとする人に対する教育保障、こういうそれぞれの面の総合的の検討が必要だと思うのですが、その総合的検討を加えて後の国民年金制度提案であったのでございますか。
  14. 池田清志

    池田政府委員 受田委員からのお尋ねでございますが、設置法においてお願いを申し上げておりますることは国民年金局を作りますることや、医療制度調査会を作りますることや、あるいはまた省内の事務の配分をいたしますることなど、いろいろお願いを申し上げておりますが、その中におきまして、年金局を作るということが、御指摘のように最も大きな事柄であるわけであります。さらにお尋ね国民年金法提案するに当りまして、医療保障生活保障との関係をどういうふうに考えて出発したかというお尋ねでありまして、これはまことに同法案の根本をなす事柄であります。御承知のように医療保障生活保障ということは、社会保障強化のための大きな柱であめるわけであります。私ども政府といたしましては、この二つの柱を大きく打ち立てるということから進発しておりますことはすでにおわかりの通りでありまして、医療保障の大きな柱といたしましては、今国会において昨年の十二月御承認をいただき、成立をいたして、本年の一月一日からすでに実施をしておりまする国民健康保険法がそれであると考えます。生活保障の柱といたしましては、御指摘のような国民年金法の問題でありますが、これを提案するにつきましては、社会保障審議会意見も十分これを参考にいたし、その他の方々の御意見も拝聴いたし、また社会党から何年かにわたって御提案になっておりまする社会党のお考え等をも参考にいたしまして、政府はこれを成案をいたして、お願い申し上げておるところであります。従いましてこの政府の案におきましては、あるいは御満足を得ていない点が数々あろうかと思うのでありまするけれども、私どもといたしましてはスモール・ビギニングと申しましょうか、まずこれで進発いたしまして、これから後におきましてだんだんに改めていきたいという態度をもって臨んでおりますことを御理解いただきます。
  15. 受田新吉

    受田委員 今回こうした構想のもとに所得保障の一環として国民年金制度を置いたということでありますが、今回の厚生省設置法の中に示されている年金局構成とその定員、その具体的な内容と同時に、そういう構成定員を置くに至った理由、すなわちどういう事務員をもってこれだけの人間が要るか、こういう役所を置くか、市町村ではどういう政令で定めるところによって費用を出して、そして仕事をさせるのが、府県との関係はどうするのだという概要をお示しいただきたいと思います。
  16. 池田清志

    池田政府委員 今お尋ねの詳しいことにつきましては他の政府委員からお答えをさせますが、本省におきまして国民年金局を設けることは絶対必要なことであるわけであります。昨年の夏以降でありましたか、設置法におきましていまだお認めをいただかない前から、同法案提案につきまして準備をいたしまするために、小山事務局長以下三、四十名の者を集めましてこれに努力をさしていただいております。幸いにいたしまして同法が成立いたした後におきましては、もう御理解の通り事務量が相当ふえるということも御案内でありまするので、私ども厚生省といたしましてはどうしてもこれをお認めいただきたい、こういうことでお願いいたしております。なお府県におきましても、国民年金課というものを置くことをお願いいたしておりまするし、また最末端の郵便局あるいは市町村につきましても、それぞれの事務量を配当いたしましてこの事務を担当していただく、こういう仕組みに相なっております。
  17. 森本潔

    森本政府委員 ただいま御質問の点でございますが、本省におきましては年金局設置いたします。年金局定員局長以下六十名でございます。内部の課の機構はもっぱら行管当局折衝中でございますが、大体四課ないし五課を置く予定でございます。課の仕事としましては、一応庶務的なものが一つ、それから無拠出年金業務を所管する課が一つ、それから拠出年金業務を所管する課が一つ、それから今後年金通算等の問題がございますので、あるいは制度改廃等の問題がございますので、さようなことをいたします調査室と申しますか、そういう仕事をする課が一つ、それからいろいろな年金数理統計の問題もあります。数理と申しますか、統計と申しますか、そういう業務を所管する課が一つ、大体今申しましたような四課ないしは五課になるかもしれませんが、その程度の規模を考えております。  それから地方におきましては、各府県に千七百四十名の国家公務員を配置いたすことになっております。従いまして通常の各府県におきましては課を設けます。それから東京都のような大きなところにおきましては部を設置して、その下に二課あるいは三課を設ける必要があると思います。それから地方におきます業務の仕方は、府県年金課がございまして、その下に社会保険出張所というものがございます。将来拠出か始まりました場合には、社会保険出張所を通じまして年金の掛金の徴収をいたしたいと思っております。無拠出段階におきましてはこれは動きませんが、拠出制が始まりますとそれを使うことになります。それからその下に市町村事務を委託する予定でございます。市町村につきましては、所要の経費を大体受給者一人当り五十円程度事務費を考えておりますが、その事務費を委託して、該当者調査でありますとか、その他所得調査をしたいと思います。なお拠出制が始まりますと、さらに仕事が加わりまして、定員増加等もあろうと思いますけれども、ここ当分の間無拠出制の間は今のような機構で間に合うと思います。なお年金支払いにつきましては、郵便局事務を委託して支払い事務をいたしたい、かように考えております。
  18. 受田新吉

    受田委員 そうすると、スタートする場合の職員は本省が六十名で地方が千七百四十名、残りは市町村に委託する。そこで問題が起るのであります。まず厚生省としては、三十六年の三月末までに公的年金国民年金との調整のための事務を進めておきたいということでおりますが、一年間たった間に一応の構想だけはできておると思うのです。公的年金国民年金調整をどうするかという構想がなくして、国民年金がスタートするということはあり得ぬことです。どういう構想を持って公的年金国民年金調整されようとしておるのか、この構想を伺いたい。
  19. 池田清志

    池田政府委員 国民年金法が成立をいたしますと、現在すでに行われております他の公的年金法との調整の問題が当然に起って参るのであります。今回の法案におきましては、その調整をいたしますという根本は書いておりますが、法文上具体的なことが示されておらないのでありまして、この点は質問等が今までも盛んに行われたところであります。私どもといたしましては、ただいま御指摘のように、昭和三十六年の三月末日までにこのことは法律をもって定めます、こういうことで御説明を申し上げておるのであります。その構想等につきましては、現在いろいろと研究しておる段階でありますので、どういうふうにいたしますということのお答えができませんところを御理解願いたいと思います。
  20. 受田新吉

    受田委員 一年間の準備期間をかけて調査されたことですから、国民年金公的年金との調整についての一応の構想ですね。こうするという具体策じゃない。構想は持っているはずなんです。このアイデアのないところに、こういうものの具体化ははかれないわけなんです。一年間かかって、たとえば恩給その他の各種の共済組合法等との調整をどうするかという問題は、さしあたり、この国民年金法案をながめてみましても、直接関連する取扱いをされているのです。そういうものは差し引くことになっているのです。だから具体的に今から検討するのではなくて、公的年金を無視した形でもうスタートしているのじゃないですか。
  21. 池田清志

    池田政府委員 今のお尋ねでありますが、先ほど私が御説明申し上げましたように、すでに目下研究中である、こういうことでございまして、どういうふうにするというお示しができない段階でありますけれども、幸いに研究をしております者から研究しておる者の構想といたしまして御説明させます。
  22. 受田新吉

    受田委員 この構想の中には、もうあなたの方では公的年金国民年金は併給するのでなくして、公的年金を受くる者は国民年金の受給を停止する、またこの対象の中に入らない、こういうことになるのです。だからあなたが今から研究するのでなくして、もうりっぱに実践しておるじゃありませんか。研究ではなくしてその一歩を踏み出しておるのです。いかがです。これはあなたの答弁に間違いがあると思うのです。
  23. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま受田先生が御指摘になっております問題は、受田先生がおっしゃる通りでございまして、若干今までの説明に不十分な点がありましたので、現在の事態をやや正確につかんでいただけなかったと思います。簡単に申しますと、通算、調整はどうしてもしなくちゃいかぬ。これをいたします方法として、今日まで論議せられている考え方は二つございます。一つはおよそ日本国民であります以上、どういう人に対してもこの国民年金法を適用する。従ってその結果出て参りますことは、受田先生御指摘のように、そういう方法で調整をいたします場合におきましては、現在公的年金制度に加入いたしております人々は、公的年金制度からのほぼ従前に近い年金の支給を受ける、あわせて国民年金の方からも別な支給を受ける、こういう筋道に沿った調整の方法に相なろうと思います。  それからもう一つの方法といたしましては、それとは別に公的年金制度で守られている人々は、公的年金制度で守られている内容をより充実することによって、結果的には国民年金の実が上るようにしよう。その場合に出て参ります間隙は、公的年金制度のそれぞれの年金制度できめている受給資格期間を満たさないで出ていった人々をどうするか、こういう問題になるわけでございます。これを解決する方法といたしまして、昨年の九月に内閣社会保障制度審議会が答申しております方法は、いわゆるじゅずつなぎ年金と称せられるものでございまして、日本国民が一生の間にいろいろの年金制度を渡り歩いた場合には、それぞれの年金制度からそれぞれおった期間に応じただけの年金給付を受けるという筋道に従って、それらのいわばこま切れになった年金を合成いたしました年金を、六十なりあるいは六十五になった場合に受けるようにする、そういう筋道に沿って通算、調整の問題を考えるようにという、こういうような答申があったわけでございます。  現在政府案のとっております国民年金法における立場は、どちらかの方法で必ず解決をつける。もし社会保障制度審議会が提案をいたしておりますような方法で最終的な解決をつけるといたしますならば、国民年金法の適用対象に公的年金の適用者を入れないという建前をそのまま貫いていって、もっぱら両者の調整措置をきめるという別立の法律を共通法として作る、こういうことになるわけであります。そうでなくて前段のような解決方法になります場合には、一たんはずしました適用を、今度は全部に及ぼすという解決になるわけでございます。この三つの解決のうちのどれをとるかということにつきましては、これはもう受田先生よく御存じのように、実に技術的にむずかしい解決を要する問題がありますので、それらの問題を関係各省協力をいたしまして解決した上できめたい。どちらの道をとるかという点がきまっておりませんので、法案の第七条に特に第三項を設けまして、将来にわたる適用関係についてはさらに検討して別に法律をもって処理さるべきものとする、こういうことにしておるわけでございまして、この規定は現在考えられております通算調整の方法のうちのどちらをとるかということについて、まだ確定的な態度をきめかねる事情であるということに基いて設けられておるものでございます。
  24. 受田新吉

    受田委員 小山さんはとにかく初代年金局長になられるでしょうが、小山さんの今の御説明で一応の構想はもう出ておるわけです。つまり前段と後段、社会保障制度審議会の答申によればじゅずつなぎ方式という形が考えられる。結局今あなたの方として考えられたのは、その後者の制度を前提として考えていく方が無難であるというような形になっているのではないかと思うのです。今回の措置をながめましてもそういう印象を受けるのですが、スタートはそういう後者の方に一応のウエートを置いてスタートされたと了解してよろしゅうございますか。
  25. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、確定的にどちらの道をとるかというふうにまだきまっておりません。事の成り行きから申しますと、どちらかといえば各種の年金制度はなるべくそのままの形で存続させつつ、相互の調整を工夫していくことによって、それぞれの年金制度の内容を充実させていこう、こういうふうな考え方に近い考え方で全体の検討が進んでいるという点は、御指摘通りでございます。
  26. 受田新吉

    受田委員 問題にされることは現在の公的年金の将来ですね。厚生省としては国民年金、純粋な社会保障制度の推進という立場からは公的年金はずっと将来にわたってはやめて、国民年金一本にするのが適当であるとお考えかどうか、これは長い将来の目から見て。
  27. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この点については私どもほんとうに現在のところまだどちらともきめておりません。もちろん全然白地のところに制度を作るのでありますならば、これは一本の制度にすることが望ましいわけでございますけれども、すでにそれぞれの制度が発達をして参っておりますし、それぞれの制度にはやはりそれぞれの制度の成り立つだけの事実上の特殊事情というものがあるわけでございますから、現在厚生省中心に各年金制度を受け持っております所管省が共通に考えておりますことは、何とかしてお互いの年金制度の間に一つの共通の目標というものを持って、その共通の目標からながめまして、現在の年金制度の至らないところを直していく、たとえて申しますならば、従来の被用者年金の系統で発達して参りました年金制度の場合には、遺族給付を受けるためには相当長期の在職期間を必要とする。そのためにある職場に勤めまして二、三年でなくなるといったような場合、あるいは五、六年でもそうでございますが、遺族給付が受けられなくて非常に不幸な事例が生じている。こういうような遺族給付については何か共通の目標を持って、最短の資格期間というものを考えていくようにしたい。障害給付についてもまた同様でございます。そういうふうに何か共通の目標を持って、実質的には一つ年金制度になったのと同じようなところに発達をさしていきたいかように考えておるわけでございます。
  28. 受田新吉

    受田委員 厚生省公的年金の研究においては、厚生年金はもちろん御管轄として十分検討しておられると思いますが、そのほかの公的年金については研究不足のお役所であろうと私は思うのです。そこでたとえば恩給法、共済組合法、この二つの法律を見ても、今回国会審議されておる共済組合法、国家公務員の場合ですね。この法律を見ても恩給法の適用を受ける者は、これは横すべりするわけです。そういう場合の措置においてもなかなかデリケートな問題があるわけです。保険数理検討の仕方についても、そして国家管掌か組合管掌かという問題についても、なかなか議論が多い。非常に複雑多岐に分れておる。公的年金の性格をまとめようとするのには、容易ならぬ決断と努力が要るわけです。それをさらに公的年金国民年金一つに適当に調整して、共通点をできるだけ大きく求めていこうという努力は、もう一歩大きな困難があるわけです。  そこで本論に入るわけですが、この年金法の第四条、年金額及び保険料額の調整という項、この項は国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が起った場合には、それに調整が加えられるという規定です。これはその次の掛金の場合も同じことです。掛金の第二項の方は五年ごとに再計算がされると書いてあるのですが、これは結局そのときの物価その他の国民生活の水準が変ることによって、年金額も保険料も変るということを規定したのかどうか。つまり経済の実勢に応じて年金額と掛金は変るという原則を確立した規定かどうかということです。
  29. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 御趣旨においては先生のおっしゃる通りでございます。
  30. 受田新吉

    受田委員 公的年金の法規にはこういう規定がないわけです。従って退職当時の俸給が基準にされて年金額が規定されるわけです。ずっと前に非常に物価の安いときにやめた人は安い、その後どんどん物価が上昇してからやめる人は高い金額になっておっても、前の人はそのまま据え置かれるというのが、これが法律の建前になっておる。たまに調整措置がされても焼け石に水の措置しかされない、こういうことになっておるわけです。そうするとこの国民年金の規定と一般の公的年金の規定には、この点においても非常に大きな差異が生ずるわけです。これはお考えになられたわけでしょうか。
  31. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 先生仰せの場合は、大きく分けまして二つあり得ると思います。一つはいわゆるインフレーションみたいなものがあった場合に、すでに受給権が発生しておって、もらっておる年金額がおよそ意味をなさぬようになった場合にどうするか、こういう問題であろうと思います。この問題についてはおよそ政府が責任を持って強制適用の建前をとります社会保険であります限りは、形はいろいろあろうと思いますけれども、とにかく実質的には政府がそのときの情勢に適応するように解決をしていくということがやはり原則であろうと思います。程度、方法等については、それぞれの制度の事情によりまして必ずしも一様には参らぬと思いますけれども方向はそういう方向調整さるべきものだと思っております。  それからもう一つは、徐々に向上していく生活水準の上昇に対応してどうするのか、こういう問題であろうと思いますけれども、この点は同じ年金制度でも国民年金のような給付においてフラット制をとります年金と、それから報酬比例方式をとります年金との間には若干違いがあり得ると思います。報酬比例方式をとっております年金制度におきましては、生活水準の上昇に応じまして当然給与の水準は上るはずでございますので、自動的に年金額もふえて参る。そうするとたとえば厚生年金のように最高の標準報酬を押えているというようなことがありますれば、これをはずす、はずさぬということで論議をする余地はありますけれども、最高の標準報酬を押えないで、自動的に給与の何%というふうにしてあります制度の場合におきましては、国民年金が悩むところの生活水準に対応して年金額を調整するという問題は実は制度自体で自動的にほぼ解決できるような仕組みになって参りますので、この点は報酬比例方式をとっている制度の方がより進んだ解決方式をそれ自体のうちに持っている、かようなことになっておるわけであります。
  32. 受田新吉

    受田委員 私のお尋ねしている点は、インフレの進行あるいは普通の形において徐々に上っていくような場合、あなたが今おっしゃった報酬比例方式の場合、徐々にベースアップその他で基本給が上り、それに連なる年金額が決定されるということになると、ベースアップする以前にやめた人は、おそくやめた人と比べて年金額が低いわけです。そしてインフレとかなんとかいうのを抜きにしてでも、普通のベースアップ方式で給与が上っていく場合に、そのやめる時期によって常に金額の差がある。それで早くやめた者は非常に低いところにおる、こういうことになるわけです。その後においてベースアップされたからといって、早くやめた人の方が自動的に上る規定が法律に書いてないのです。ところがあなたの出された政府案の方には、そういう調整がとれるように書いてある。だからやめる時期のいかんによって、金額が変らない前にやめた人はいつまでもそのままに置いておくわけじゃないのでしょう。あなたの方のこの案は先へ行ってずっと前に受給権が発生した受給者と、現在やめる人と、受給金額は同じのような形に考えるものじゃないのですか、そこをちょと……。
  33. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 今受田先生がおっしゃった問題に即して申し上げますならば、この規定は生活水準の上昇に対応して調整する分は、そのときに被保険者である人々の年金額でございますので、すでに受給権が発生してもらっている人々の年金額までさかのぼって引き上げるということは、生活水準の上昇との関係においてはまず原則としてはあまり起らない。そういう問題が起きるのは非常にはなはだしい物価水準の動きというものがあったとき、これはこういうような考え方の案でございます。
  34. 受田新吉

    受田委員 そういう解釈でありますと、ちょっと問題があると思うのです。「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」年金の額はとあるのですから、その年金の額は、たとえば十年前に、六十五才に達して四万二千円もらった。十年後には徐々のインフレの進行等によって一般物価は倍になる。こ訓れ考えられることですね。そのときには国民生活の水準がその倍になって、四万二千円が八万四千円になっておる。しかし十年前にやめた今七十五才の老人が、依然として四万二千円もらうということになるのでしょうか。そこをお答え願いたい。
  35. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 第四条の主として考慮いたしております問題は、現在被保険者である人々の受けるべき年金額についての問題でございます。しかし先生がおっしゃるように十年の間にもし非常にはなはだしい物価水準の動きがあった。小さいインフレともいうべき大きい動きがあったということになりますれば、おそらく現在被保険者である人々が受けるべき年金額の調整に対応して、経過措置としてまたしかるべき方法が考えられなければならぬ、かような関係に相なろうと思います。
  36. 受田新吉

    受田委員 この法律を忠実に読むときは、その年金の額が変動後の諸事情によるための調整が加えられるということになっておりますので、年金の額が変るということは、そのときまだ保険料を払っていた人も、すでに受給権者になっておった人も、同じように年金の額が変るという解釈の仕方はできると思うのですが、そうでなくして、これは年金をもらう段階において、ちょうどその場に当った人が物価水準で変動するということの意味にこれを作られたわけですか。
  37. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 第四条が意図しておりますぎりぎりの内容は、先生のおっしゃる後段の方でございます。それはこの制度が現在のところ完全積み立て方式をとっていることから、さような解釈に相なるわけでございます。しからば先生がおっしゃったような、別の場合の調整措置をこの規定が禁じているかといえば、決してそういうわけではないのでございまして、そういう場合におきまして積み立て方式のほかに、そのときの事情によって一部賦課方式も入れる、もちろん相当多額の経過措置としての国庫の財政的な援助も入れる、こういうことをいたしまして、そのときまでにすでに受給権が発生して年金を受けている人々の年金額を調整するということは、そのときの事情に応じて当然検討され考慮さるべきものだと思っております。
  38. 受田新吉

    受田委員 そうすると第四条の一項の規定は、すでに受給権の発生しておるものの年金額の調整は一応原則としては対象にしておらぬ、かように了解してよろしいですか。そういうことになりますと、たとえば今日二十五才で初めて保険料を払い込んで、六十五才になって受給権が発生する人の場合を考えて、四十年先で、不安定な状況で、貨幣価値がどのように下落するかわからない立場で、毎月百円とか百五十円とかいうきまった金を払う人には、よほどの勇気が要ると思うのですね。やめるときの情勢が、すでに受給権が発生するとそれから先は動かないのだ、六十五才の人が百まで生きても六十五才のときの年金額が原則で動かぬのだ、こういうことになってくると私は非常な不安があると思うのです。この問題については、年金額は受給権の発生したものに対しても移動するという形で、それが自然に調整されるという形に考えておかれないと、国民生活の水準に即するという意味からは非常に不都合なことになりませんか。法律に私が申し上げた法の解釈を盛るような形にしておく方が、その点においては国民年金の性格に合うのじゃありませんか。
  39. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 生活水準の上昇は漸次的に出て参るのが一般の例でございますので、実際のあり方を総合してみますと、五年ごとの財政の再検討の際に、その間にどの程度の生活水準の上昇があったか、五年前に持っていた年金意味と、五年後に持つべき年金意味との間にどういう違いが出てくるかということが検討されて、そのつど必要があれば年金額が改訂をされる、こういうことになると思いますので、原則的な場合としては十分生活水準の上昇には対応し得るものと考えております。ただ先生は、生活水準の上昇とあわせて、物価水準の下落とでも申しますか、それを絶えず頭に置いておられるわけでございますけれども、一応年金制度においてこの問題をどう考えるかということは、これはもう永遠の宿題になっておるわけでございますが、この制度では物価水準のそうはなはだしい下落というものは一般的には前提にしない。それがあった場合には当然そのときの事情において調整を考える。これはどの年金制度でも同様だと思いますが、さように考えているわけでございます。現に私どもがイギリス、アメリカ等の長期にわたる物価水準の変動を検討してみましたところ、物価水準としては、イギリス、アメリカはこの間の第二次世界大戦の当時において若干の移動がありました程度で、そう動いておりません。従って正常の経済的な発展のもとにおきましては、物価のやや微弱な動きはあり得ても、そう激しい動きはないという前提をとってスタートをして差しつかえあるまい、かように考えておるわけであります。
  40. 受田新吉

    受田委員 現に、これは一例を公的年金恩給法にとりますが、恩給法受給者の中で、あるいは扶助料の受給者の中で、まだ年額一万円に足らない扶助料をもらっておる人がおるのですよ。長期にわたって国家の公務に服しておる人の奥さんが、月に千円にも足らないような、今度の国民年金の無拠出年金にも足らないような、年額一万円にも足らぬ扶助料をもらっておるという事例がたくさんあるのです。それをごらんになられてもわかるように、物価の上昇に伴う国民生活の水準の変動に応じた措置が公的年金ではやられてない、そうした実態がたくさんあるわけです。今度の国民年金の支給に当っては、長期にわたって国家の公務に従事しておる人の奥さんが、一万円にも足らぬ公務扶助料をもらっておる、あるいは普通扶助料をもらっておる、そういう人はその分だけは国民年金から差し引かれるのじゃないでしょうか。どうなっているのですか。
  41. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 そういう方には、先生のおっしゃる通り、この援護年金とあわせて、少くとも援護年金の額だけはお手元に届くようにいたしております。
  42. 受田新吉

    受田委員 その援護年金の額というのは今の扶助料ですか。その場合の調整はどういう形にしますか。それから一万円の場合と一万五千円の場合と二万円の場合と段階があるわけですが、具体的にその調整をお示し願いたい。
  43. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 もしその方が援護年金の老齢年金を受けられる方であって、その人の受けておりまする恩給が一万円であったりということになれば、二千円だけ援護年金として差し上げる、こういうことになります。
  44. 受田新吉

    受田委員 総額においてはちっとも国民年金の恩典はないわけですね。
  45. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 恩典と申しますとちょっと語弊がございますが、二千円だけは援護年金として差し上げる、あとの一万円は従来通り恩給として受けていただく、こういうことになります。
  46. 受田新吉

    受田委員 そうすれば、結果的には国民年金制度がしかれてもちっとも恩典はないわけです、それをもらっていなくても一万二千円もらえるのですから。そうでしょう。そのような公務扶助料、普通扶助料をもらっていなくても当然一万二千円もらえるのですから、二千円を差し上げるなどというそんなごまかしでなく、国民年金が施行されても、扶助料をもらってももらわなくても同じことになるという御答弁を願いたいのです。
  47. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この問題は基本的な問題でございますが、国民年金制度が企画されまする当初から、現在恩給なりあるいは年金をもらっていない気の毒な方がたくさんある、こういう方々に何とか年金を差し上げるようにいたしたいという趣旨で立案されておりますので、結果的には、先生のおっしゃるように、現在の段階では、ほかの制度で恩給なりあるいは年金を受けておられる方々には御遠慮を願う、こういうことになっておるのでございます。
  48. 受田新吉

    受田委員 そうした問題がしばしば起るほど、公的年金の実態も容易でないのです。そうして私的年金調整をはかろうとしたって、何ら実際上の利益のないような形に追い込まれておる。ここに一つの問題があるわけなんです。そういうものに対する経過措置を何らかの形でとって、それを漸次統合する努力がされていない。ただ二千円というのは、結局はほんとうにごまかしなんです。そういう意味で、時の流れ、経済の動きに応じて犠牲者になってきている人がたくさんあるわけです。その問題が国民年金の場合には救われておらなければならぬわけですね。あなたの今のお説でいくと、堤氏のお説じゃないが、全く民間保険の経営者と同じことなんです。そういうことになると、国民年金は非常にさびしいものになるけれども、私は、国民年金と私的年金との調整については、ある程度構想を打ち出して、ごく少額の部分の公的年金を受ける者に対する経過措置のごときはある程度講じてでおくという配慮が必要じゃなかったかと思う。そうした問題については一切目をつぶって、全然もらっていない人の場合を考える、こういうことを今言うておられるわけですが、これは厚生省として、特にあなたの方は、今まで厚生年金保険というあなたの方の所管の分しか扱っておられないので、ほかの公的年金検討が十分できておらぬのです。さっき申されたような標準報酬方式の最高がきまっておるような厚生年金と違うのです。そのほかのものは、厚生省の所管以外はきまってないのですから。従来の厚生省というのは、物事を慈善事業と考えようという形になっており、一方は権利として考えようという形になってでおるので、そういうところに食い違いができたわけですから、そういうものは今度の国民年金制度を作られるときに、国民の権利として国家に要求する権利を認めたものと慈善事業的な性格を持つものとの調整、今度の国民年金との比較検討というようなものを、もっと高い観点から十分御検討いただいて、二年間を待つまでもなく、すでに今日までにある成案を私は持っていただきたかった。事務がずいぶんお忙しくて手が回らなかったと思うのですが、そういう基本構想を持って出発されないと、社会保障の最も大きな柱の国民年金というものに対する一つの不安があり、また四十年先に、不安定のままで今から百円、百五十円かけたって、実際に事務をやられるときになってみたら掛金がかからぬというような事態になってくると、厚生省政府は面目をはずすわけですから、その意味においては、政府国民に納得してもらえるような一つのりっぱな対策を用意して当っていただかなければならぬと思う。  それからこの法案の中に、遺族年金あるいは扶養家族の加給、こういうようなものの萠芽もある程度あるわけですが、受給権の停止という場合、たとえば重大な犯罪を犯したとかいうようなものは全然考慮しない、それは国民年金の上からは停止条件の中に入らない、停止はいかなる場合でも、そういう場合にはやらない、公的年金の持つ停止条件の中には考えない、そういう御方針ですか。
  49. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま先生が仰せになった問題は、この年金法案では二つ出て参るわけでございます。一つは、年金給付を受けるについて、その直接の原因となったような事項を故意に生じさしたような場合には年金を支給しない、これは従来一般の公的年金でとられている原則と同様でございます。それからもう一つは、援護年金につきましては、現在監獄とか労役場等に拘禁されている人々には、その間援護年金の支給を停止する、かようにいたしております。
  50. 受田新吉

    受田委員 援護年金だけですね。ほかの一般の年金の方はどうなのです。援護年金だけ停止して、一般の国民年金の方は停止しない理由はどこにあめるわけですか。
  51. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは当然掛金を納めて、それに対応する一定の期間のうちに一定の給付を受ける、こういう仕組みにしておりますので、監獄、労役場にいるいないということは関係させるべきではないという考え方から、さようにいたしておるのでございます。
  52. 受田新吉

    受田委員 援護年金の場合にそれを取り上げている理由はどうなのですか。
  53. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 援護年金は、申し上げるまでもなく全額国費をもって支出する年金でございますので、どうしてもこういう場合には、こういったような制限がある程度加わることは当然だと思っておるわけでございます。
  54. 受田新吉

    受田委員 全額国庫という今のような公的な年金の性格のものは、今までそういう措置をとられておるのです。その二千円分の援護年金の場合、今私が例をあげた場合ですが、二千円分の援護年金——もし援護年金の対象にならないで、国民年金の対象になる場合、無拠出の場合、これはどういうことになりますか。
  55. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 今申し上げました援護年金というものが無拠出年金でございます。その場合には監獄、労役場にいる間だけ支給を停止する、出てくればあげる、こういうふうにいたしておるわけでございます。
  56. 受田新吉

    受田委員 牢獄におる間だけ停止する、それ以後は停止させない、それは全額負担であるというところに差別をつけることには、私また非常な問題があると思うのですが、国民年金が同じスタートをしておるときに、無拠出制度、援護年金ということになると、監獄に入るときには停止する、それから拠出すれば停止しない。拠出といっても国庫は半分負担しておるわけですから、半分負担した場合には監獄へ入っても出すが、全額負担すれば出さぬという根拠は——出さぬのならみんな出さぬ、出すなら出す、半分なら半分の責任というものを示す必要があると思う。そこの分別が明らかでないのですが、いかがでしょう。
  57. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 全額国費でまかなっております無拠出年金である援護年金については、こういう考え方もあるのであります。およそその人の生活が公けの施設とか何かによって維持されているような状態にある場合には、援護年金はその期間だけ出さなくてもよろしい、こういう議論もあるわけでございます。そういうふうな議論を徹底させて参りますと、たとえば療養施設に入っております場合とか、あるいはらい療養所に入っておりますような場合にも、すべて支給停止をするということにならざるを得ないわけでありますが、それはどうも実際論として少し無理があるということで、社会通念から見てその間停止されても仕方があるまいと思われるような、監獄、労役場にいる間というものだけ支給停止をする、こういうことにいたしておるわけでございます。
  58. 受田新吉

    受田委員 なるべく審議を促進する意味で、私は深追いをしません。  そこでさらに機構の問題ですが、六十人の本省の職員、千七百四十名の地方国家公務員、この職員を算出した基礎、事務量定員とをどういうふうに結びつけられたか、その具体的な説明をしていただきたいと思います。
  59. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 地方の千七百四十人の算出の基礎になりましたのは、明年度から実施いたします無拠出年金制度を都道府県を通じて処理させる場合に、事実上必要とされる事務量をもとにいたしまして出したものでございますが、従来の社会保険で行なっておりまする経験、あるいは引き揚げのいろいろな仕事処理する場合に得ました経験というようなものがもとになってきめられたのでございます。そから本省の六十人というのは、本省におきましては明年度から援護年金の実施事務のほかに、国民年金制度全部についての企画及び実施を進めて参らなければなりませんので、それをもとにいたしまして、とりあえず明年度において必要とされる人間ということをもとにして定めたものでございます。
  60. 受田新吉

    受田委員 とりあえず必要とされる人間——再来年度はまたどれだけ要るかということは今未検討で、とにかく場当り的に本省に六十人、地方に千七百四十人、現状は場当り的な人員配置ということになる。率直に申して、将来の総合的、継続的計画ということはわからないで、さしあたり場当り的にしかならないということになるのでしょうか。
  61. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 場当り的というわけではないのでございまして、明後年以降におきまして、先ほど来先生の問題にしておられますところの通算調整の方法がどうなるかということに応じまして、厚生省でどの程度人間を用意しなければならぬかという問題が違って参るわけでございます。その点に今後動く因子が一つございます。それから同じようなことでございますが、数理の計算等を続けて参るということになりますと、それに応じて若干人間の増加を考えなければならぬ。そういう意味合いにおきまして、明後年度以降は人間がふえなければならぬ因子がある。それからもう一つは、三十六年度から拠出制年金制度による保険料の徴収を開始いたしまして、本格的に動き出しますので、その方面にさらに補強が必要になって参る、こういうような事情になっておるのでございまして、内部的にはこのような場合におよそどの程度の人間が要るかということは検討されておりますけれども、もちろんこれは何と申しましてもわれわれの希望というものが中心になっておりますので、われわれはそうは思いませんが、客観的な立場から見ましたならば、どうしても多過ぎる人数に落ちつくという傾向がございますので、まだ申し上げるような段階にはなっていないわけであります。
  62. 受田新吉

    受田委員 この千七百四十名の中に、調達庁の職員を百名、農林省の統計関係する職員を百名というように、他省から融通する。農林省などは、そのために百人は減員になっているというような、いわば他省からの人員かき集め方式による国民年金構成というような形になっておると私は思うのです。こういうような形でなくて、もう少し筋を通して、たとえば農林省の人を百人やめさせなくても、農林省は農林省でそのまま置いて、適材者がおれば統計の方の専門家を適宜に転出させるという方針でやっていけばいい。何かそこに無計画で、各省の人員整理にかこつけて、向うの方はもっけの幸いだというので、人を減らすというような形に利用されている傾向がある。これは利用されているとは思いませんか。
  63. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 私どもは利用されているとは毛頭思っておりません。しかし他方において、いろいろな事情からいいまして職場を離れるという事情に置かれる人で適当な人であるならば、喜んでふえる方においてお迎えすべきである、かように考えております。
  64. 受田新吉

    受田委員 この問題は、厚生省が利用されている傾向があるというのは、この年金局ができる機会に人員を整理しようという形に利用されるおそれがある。むしろ厚生省は、そういう他省の人員を減らしてまで厚生省の方をふやすというような、そういう犠牲者を自分の方に引き受けたくないという形で、人員を適材に集めるということなら筋が通ると思う。これはあなたとしては初めそういう結果になったことを、内心では遺憾に思っておられると思うのですが、各省にわたる人材を吸収するという形で出発をされるのか。特に国民年金などの社会保障には、相当大きな期待国民に持たれているのですから、こういうところへ来る職員は非常に希望を持って来ると思うのです。ですからあなたの方は犠牲者がないというように努力されなければならぬと思う。  もう一つ、これは地方の場合ですが、私各県の事情を一々聞いておるのですが、これはあなたの方の国家公務員地方の配分にかこつけて、地方の人員整理をその方へ適当に転用させようという動きもあるのです。だから地方はその分はふえるのではなくて、その分は減っていくという形にされてくる。こういうことも地方の人員整理にかこつけて、国家公務員たる地方職員が振り落されるということではいけない。これも純粋な形でなければならない。国民年金というものがスタートにおいて汚れてはならないというふうに指導されておりますかどうか。
  65. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 仰せの通り話し合いを進めております。それから受田先生のお言葉でございますが、私どもほんとうに必要な人員を要求して、さしあたり必要なものを計上してもらったわけでございます。ただたまたまよそにお気の毒な人ができたならば、それはやはりふえる場合にまず優先的にそういう人たちをお迎えする。これは私どもとしては当然な態度だと思いますので、これは他省との関係におきますことはもちろんでございますが、さらに省内においても、あるいは府県との関係においても、人物は十分厳選しなければならないと思いますが、態度としては喜んでお迎えするということでいきたいと思います。
  66. 受田新吉

    受田委員 最末端の町村の問題ですが、町村に今のように一人当り五十円という単価で計算されておりますが、こういう形で実際に事務ができますかどうか。私は町村事務の実態をよく知っておる一人でございますが、調査はなかなか容易なことではない。たとえば遺族年金であるとか、厚生省所管の戦傷病者の調査でも、または未帰還者の調査でも大へんな事務量であって、これに報いる金額は少いということになっておるのですが、この計算は実態に即しての計算でしょうか。まあこれで一応やってもらって、そのあとで適当に調整しようというアドバルーンの意味なのか、お答えを願いたい。
  67. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 この費用は、現在実際に市町村国民健康保険をやっております実情をもとにいたしまして、算出をしているのでございまして、ある程度のゆとりを見ているつもりでございます。しかし実際にやってみて足りない場合におきましては、もちろん明年度以降十分検討するつもりでおります。
  68. 受田新吉

    受田委員 これは実際にやってみられると、相当むずかしい問題にぶつかると思うのです。そうして国民年金に支障が起るということになると、厚生省のお立場が非常に濁ると思います。従ってスタートに当っては国民年金制をしくという構想のもとに、思い切った措置をとることが必要だと思います。  まだ千鳥ヶ渕の戦没者の墓苑の問題かありますが、ほかの方の質問もありますので、これは明日にいたします。     〔平井委員長代理退席、受田委員長代理着席〕
  69. 受田新吉

    ○受田委員長代理 次は恩給法の一部を改正する法律案を議題として質疑を許します。平井義一君。
  70. 平井義一

    平井委員 賞勲部長にまずお尋ねいたしますが、金鵄勲章を授与された者が昭和十五年四月二十九日まで年金をもらえたが、その後は一時金になって参りました。どういうふうな経過でそうなったのか、また今日金鵄勲章を受けた者の人数をお知らせ願いたい。
  71. 吉田威雄

    ○吉田(威)政府委員 金鵄勲章年金は制定以来ずっと続いてきたのですが、昭和十六年に従来の金鵄勲章の年金を廃止いたしまして、従来の年金を一時金にいたしたのであります。その理由は、当時金鵄勲章年金の意義というものが正確に了解されませんで、あたかも普通の恩給と同じように解されてくる傾向があった。それで金鵄勲章年金は当時の考えとして、どこまでも勲章に伴うところの恩賞でありまして、恩給のごとき給与的な色彩を持ったものではない。これは年金の形で給付されますために、実際上恩給のようなものと混同されておった。こうした事情のために年金の増額運動等も当時、あるいはその以前からございましたので、こうしたことが考え方としておもしろくないということで、昭和十五年四月二十九日以後の分につきましては年金として給付することを廃止いたしまして、一時金として給付するということになったのであります。  そこで現在金鵄勲章の年金を授与された者はどのくらいあるかと申しますと、これは御承知のように昭和二十一年に年金が廃止されましたので、届出等がございません関係で正確な数が実はわかっていないのでございまして、推定で一万五、六千あろうかと思います。廃止当時一万七、八千ありましたが、従来受給しておられました方々は大体高齢の方々がおられましたので、相当減少していて、あるいは一万五、六千を下回っているかもしれません。
  72. 平井義一

    平井委員 総務長官にお尋ねしますが、金鵄勲章年金授与の復活ができないのは憲法第十四条によるものでありますが、今日文化勲章を授与された者に年金を支給される道が開かれておる。これは憲法十四条としてどういう関係になっておると思いますか。
  73. 松野頼三

    ○松野政府委員 御承知のように文化勲章の受章者が、直ちに年金を受給する者と一致はいたしておりません。本年も文化勲章は五名でございましたが、年金受給者は十名でございました。このように人員においても必ずしも一致しておりません。すなわち文化勲章をもらう資格者の選定というものと、文化功労者年金を受給する資格者の認定というものは、おのずから二つの別のものが実施されておりますので、過去におきましてもそういう運営で文化勲章直ちに年金という考えにあらずして、二つの法律と二つの選考によっておのおの違った方々がその範疇に入っておられます。しかしもちろん文化勲章をもらった方も年金の中に入っておる。年金をもらった方が直ちに文化勲章受章者にあらずという差はございますけれども、一応選考の基準は別々な範囲でやっております。
  74. 平井義一

    平井委員 昨年の内閣委員会で前今松総務長官は、この金鵄勲章年金を受けた旧軍人に対する所遇については、十分検討の上すみやかに処理をしたい、何とかこれを解決いたしたいという答弁をいたしておりますが、松野総務長官に対して何がこの点引き継ぎがあったかどうか、お尋ねいたします。
  75. 松野頼三

    ○松野政府委員 昨年四月四日の本委員会において、政府から実は恩給問題についての項目がたくさん出ておりますが、その中に金鵄勲章受給者の軍人に対する所遇改善についてという項目が一つあったという記録を引き継ぎのときにいただきました。その後この問題につきましては金鵄勲章のみならず、恩給総体的な中において当然検討すべきものだというわけで、今日もその思想は変っておりません。なお検討を続けておるわけでありますが、いかにせん当時の恩給法の完全実施があと二年間かかりますので、その二年間の推移を見て、この問題はどれ一つ考えましても相当重要な問題でありますので、一つ一つというよりも、その恩給の完全実施を目標にいたしたあとにおいてこの問題は当然研究すべきものだというので、今日も変らず検討を続けております。
  76. 平井義一

    平井委員 金鵄勲章を授与されておる軍人は大がい恩給をもらっておるわけでありますが、金鵄勲章を授与されながら恩給の恩典に浴しないという人がどのくらい推定されますか。これは賞勲部長から……。
  77. 吉田威雄

    ○吉田(威)政府委員 先ほど申し上げましたように、金鵄勲章を授与された人であって、従来年金を受給しておられた方で、終戦駐留軍の指令によりまして、これらの年金は軍人恩給と同時に停止されたわけであります。この人数は先ほど申し上げました一万五、六千……。
  78. 平井義一

    平井委員 質疑応答はやめまして、私の質問だけ簡単に質問いたします。いろいろな問題がありましょうし、これはもう憲法十四条で廃止になっておるとすれば、これは恩給から切り離して、何かの方法でこの人たちを助けるということを検討しておりますか。具体的な案があれば、まず松野長官にお尋ねいたしたい。
  79. 松野頼三

    ○松野政府委員 金鵄勲章の受章者及び受給者は、過去におきましては相当日本の国家的目的のために大いに功労された意味で、こういう特別な栄典が与えられておるということは歴史の示す通りであります。憲法が変りまして、非常に大きな変革により、金輪勲章そのものが廃止になり、それと同時にこの年金も廃止になった。しかも憲法には新しく条文が制定された。こういう大きな変革のために、私個人で考えますと、相当の高齢者であり、しかも日本の歴史の一ページとしては大きな功績をたたえられた方が、今日時代の変りによって非常に不遇な立場におられるということは、個人の立場からいって見のがしてならないことだと存じますが、さて立法として政府が考えますときには、憲法の制定により非常に立法技術においては苦労するところでございます。従ってもしこの問題を取り上げるといたしますならば、金鵄勲章そのものは廃止されておりますので、何らかほかの意味でこの方々に対するものを制定する以外には、金鵄勲章という言葉あるいはそれに付随する年金という言葉では、憲法の建前上政府としてはなかなか立法ができない。ほかの意味を含めてその方々に対する所遇を考えるならば、私は道かないとは申しません。金鵄鶏勲章そのものという言葉で端的にいきますと、各種の条文にぶち当るのではなかろうか。従って何らか国家的行事について多年の功績があって、非常に老齢でしかも国民として模範とするに足るという意味ならば、これは憲法の条文とはおのずから別な意味が出てくるだろう。そういう考えで、私個人としてはいろいろ実は案をめぐらしておりますが、いかんせん、ほんとうのところ検討中そのものでありますので、まだ案を示すわけには参りませんが、私ども構想を言えとおっしゃれば、こういうことは一つ構想にはなり得るだろう。しかしそこまでいくかどうかということは、各種の問題がまだございますので、私の気持としては、ほうっておいていいのだという断定まではむずかしいのではなかろうかと思います。
  80. 平井義一

    平井委員 今日自衛隊という昔の軍隊にひとしいものができておるが、これがいかに訓練をしても、皆さん御承知通り国民から崇拝される模範的なりっぱな自衛隊になり得ない。これはなぜかといえば、幾ら功績を立てても何ら勲章がない、しるしをもらえない。それならおれたちもなまけようじゃないかというようなことで、今日の自衛隊が、いまだに社会党の皆さんから、これならよかろうというところにいっておらぬ。それで私は、昔の金鵄勲章に値する勲章を非常に功労のあった者にはやる、こういうようなことがなければ、自衛隊はできてもりっぱな自衛隊になり得ないと思う。この点を松野総務長官も十分考えていただきたい。今日自衛隊を作るならば、また自衛隊の発展をこいねがうならば、やはりそのような何か表彰する方法を講じなければ、これはほんとうに日本を守るというような信念が生まれてこないと思う。そこで、先ほども松野長官が言ったように、これは昔の金鵄勲章復活でなくてもいい。御承知通り日清、日露の戦いに行って金鵄勲章をもらった人は、皆さんのところにも陳情に来られておるでしょうけれども、はがきが山ほど来ておるが、老齢でいつ死ぬかわからぬ。しかも子供は死んで孫と二人住んでおる、何とかわれわれを救うてくれないかといっておる。生活を保護するという意味においても、これはほんとうのことを言えば今国会で私は決定してもらいたい。そうしなければ、恩給法改正などは与党の私が反対しなければならぬ。こういうことを考えましたときに、すみやかに決定をして、こういうふうな方法をとるということを内閣が示していただかなければならぬ。日清、日露は決して侵略戦争じゃありません。世界のどの人に聞いても、日清、日露戦争は侵略戦争といっておらない。社会党は戦争は侵略戦争だと銘を打たれておるが。この七十五才以上、しかも国会陳情に来る人は八十才を過ぎておる。われわれは年寄りを立てる意味においてもこの人たちを救わなければ、いろいろな法律ができても人情的な法律ができない。こういう法案は私は社会党も大賛成だと思いますが、決して金鵄勲章の復活じゃございません。困った年寄り、かつては日本のために功労を立てた人ですから、是が非でも、まだ国会はしばらくあるのでありますから、この国会中に一つこういうことにしたい。八十才以上だから、もうあすにも死ぬかもしれない。しかもたった一万五、六千人だから、今国会でぜひともこういう方法で助けてやろう。あるいは十年間に助けてやろうとか、五年間ことしから幾らかずつやろうとか、十年間、年一万円ずつやっても十万円です。年に二万円やっても五年間で十万円です。そういう方法を松野長官のときにやれば、松野長官はほんとうの話極楽へ行くのです。人間的にこれだけの功徳は私はないと思う。これは人を助ける意味においても、また政治を行う上においても、是が非でも今国会でけじめをつけていただきたい。あの陳情者、あの老人の姿を見たときに、どうしてもけじめをつけてやらなければならぬという気持に迫られるのでありますから、是が非でも今国会の末までには松野総務長官から、こういうふうにしたという御返事を私はぜひ聞きたいと思います。その上において恩給法改正に私は賛成するかせぬかを決定いたしたいと思います。一つその信念、お気持を聞かしてもらって私の質疑を打ち切ります。
  81. 松野頼三

    ○松野政府委員 おっしゃるように、私自身においても、この問題は精神的には非常にお気の毒だと真に思っております。同時に極楽に行けるかどうかそれはわかりませんが、この会期中に恩給法改正という問題も出るかもしれませんけれども、なるべく私の立場といたしましては、たくさんの項目が並んでおります。その一つ一つどれを見ても理論があることで、一つを取り上げるならば他の理論に波及しはしないかという心配が私の立場であります。しかしながら金鵄勲章も平井委員のおっしゃるように非常に大きな問題でありますから、この国会中にもなお検討を続けまして、結論が出ましたならばさっそく御報告を申し上げます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員長代理 この際私から政府質疑を一言しておきます。今の問題に関連して、死亡者に対する現行位階勲等制度の基準というものを伺いたいのですが、鳩山元総理に大勲位が授与された根拠はどこにあるか、お示しを願いたいと思います。
  83. 松野頼三

    ○松野政府委員 今日、死亡者だけに位階勲等の授与、叙勲を実施しておりますが、これはやはり過去におきます実績に相応して、過去の基準そのままではございませんが、過去の基準にある程度終戦後の、いわゆる今日の生存者の叙位叙勲が廃止されましたあとの功績に従って叙位叙勲を実施しております。鳩山一郎氏は昭和二十一年、いわゆる叙位栄典制度というものが変りました以前に、勲章としましては勲一等をお持ちであったということと、その後における功績によって基準をきめております。過去におきまして持っておられたり叙位叙勲に、プラス新憲法下における功績を加味いたしまして、実は今回は菊花大綬章を贈ることが妥当だと考えました。新憲法になりましてからの鳩山先生の功績は相当大きなものがございました。総理大臣もお勤めになり、日ソの問題を解決され、しかも議会においては最高の永年勤続議員でもございましたし、その功績をたたえるならば、過去におきましても勲一等をお持ちでございましたから、当然その上位として大勲位菊花大綬章というものを差し上げた、こういうわけでございます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員長代理 いま一つ、現行叙位叙勲は、議員でありあるいは官僚であるというような、生前の地位による功労というものに重点が置かれているかどうか。これを一つ答弁を願いたい。
  85. 松野頼三

    ○松野政府委員 一応叙位及び叙勲の戦前にお持ちであった位階勲等を基準にいたしております。ただし戦前に位階勲等を全然お持ちでない方でも、その功績まことに多大であめる、当然その方の地位として、過去におきましては位階勲等をお持ちでないにしても、今日ならば当然この程度の位階勲等をお贈りすることが妥当だという方には、過去の位階勲等にとらわれず実施した例もございますが、一応過去においての位階勲等をお持ちの方は、過去における位階勲等を基準にして、戦後における国家に対する功績を加味して今日やっております。従ってややもいたしますと、過去におきます位階勲等が、ある程度官僚の方が高位高官におられまして、民間の方か過去におきましては非常に低かったために、今日その方々に加味いたしますとある程度の不均衡があることは事実でございます。しかし一応過去におきます位階勲等を剥奪するわけに参りませんから、過去におきます位階勲等は当然個人の固有の経歴としてお持ちでありますから、その上にプラス新憲法下における功績というものに加味する以外は今日はございませんので、それを一番妥当だと思ってこれをその通り実施しております。従って議員の方でもあるいは都道府県の議員の方でも、あるいは知事におきましても副知事におきましても、ある程度の差別はつけておりますが、やはり今日議員としては国会議員を最高の功労者というふうに認めて計算をいたしております。
  86. 受田新吉

    ○受田委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十八分散会