○奧村小
委員 この酒団法の
改正案の通過を
政府は非常に急いでおられるように見受けられますが、しかし、これは非常に重大な
法律改正でありますから、これから私は本腰を入れて十分
政府の真意を承わりたいと思う。
まず、冒頭に申し上げたいことは、戦前戦後を通じて酒類
業界の安定というものは、何としてもマル公制度によって貫かれてきたもの、私はかように思う。これは
政府ではどう考えておられるか知らぬが、マル公制度によって
業界が安定している。諸種の統制ははずれたけれども、マル公制度があるがために、消費者に対してはマル公でもって酒類が供給されてきた。ここに私は大きな
業界安定の骨組みがあると思う。これを
政府が近いうちにはずそうとしている。それならばその後の酒税の確保、
業界の安定はどうするかということのために、
政府は酒団法の
改正を用意してこられたが、私どもとしては、
政府の
改正案でとうてい
業界の安定、ひいては酒税の確保は望めない、安心できぬと思うのです。そのいろいろな事情また不安をこれから
お尋ねいたしたいのですが、私の
質問の前にすでに
山本委員から
お尋ねがありましたように、酒類
業界と申しても、清酒、ビール、しょうちゅう、それぞれにいろいろの事情があり、違うのです。ビールはわずか四社で、見方によっては独占企業体のようなものです。清酒は四千軒以上もある。しょうちゅうについていえば、わずか十社でもって生産石数の八割を占めており、
あとの百三、四十社で残りわずか二割をやっておる。いうならば、清酒はほとんど全部中小企業で作られておる。ビールの二割は中小企
業者であるが、八割の石数は大企業が作、ておる。こういう
実態についてはまたぼつぼつ御
答弁を願いますが、こういう業態が種々雑多であるものを一つの
法律で
規定し、酒税も確保し、
業界も安定させようというような、そんな欲ばったことを
政府が期待なさっても、これは無理じゃないかという私は非常な不安を持つ。つまりこれは中小企業団体組織法と酒類業団体法とを比べあわせてみれば一目瞭然です。酒類
業界の
取引方法や協定などというものは、独占禁止法から除外される。独禁法から除外されるのは、酒類業団体が酒団法によって除外される。それなら酒団法の中にはどういうものがあるかというと、大企業もあり中小企業もある。本来は中小企業団体組織法によって守られるべき
業界の安定が、大企業もその中へ一緒に加わって守られるような、そこにまず大きな矛盾が一つある。また、
業界の安定だけでなしに、酒税の確保ということが加わっておるから、これまた大きな矛盾で、酒税の確保をするためには数量の制限はできない。
価格を安定させなければ
業界は安定しない。この矛盾を一体どう解決するか。それから、
山本委員のおっしゃるように、自由をなるべく残しておきたいが、しかも統制がなければいけない。その自由と統制をいかに調和させるか。調和はできていない。まあ木に竹をつないだようなところが各所にあるのですね。また、大企業と中小企業ということは、
言葉をかえていえば、今度は生産者と卸
業者と
小売業者との利害の対立、これはどうしてもどうにもならぬ利害の対立がある。だから、これをどうしろと言われても、これは私が大蔵大臣になってもちょっと十分な案はつかぬです。しかし、これを解決する努力が私はまだ
政府に足りない、こういうふうに
法案を読んでみて思うのです。こういうことでありますと、まるで生産、卸、
小売、これをたとえば今度は再
販売価格の維持
契約をしようというのは、これも独占禁止法から排除してこれを入れようとなさるが、これは下手をすると、まるで生産者が
小売価格をきめるのですからして、生産者はきついのには違いない。そうすれば
小売業者のマージンというものは押えられる。だから、この
法案を見ると、ライオンとネズミを一つのおりの中に入れて仲よくさせていく、こういうねらいも含まれているので、果してそれがそのようにうまくいくかということも十分
お尋ねをしてみなければならぬ。うまくいかなければいかないように、どうしたらいいかということもやはりこの審議で速記録に残しておいて、今後この
法律が実施される場合の
業界の一つの指針にしなければならぬ、かように私は思うのであります。従って十分の時間がいただきたい。その審議の要綱は
あとからお見えになったからお配りしますが、これをとっくり一つ聞かしていただきたい。ここにもありますように、中小企業団体組織法との関連性について、通産省の中小企業
局長なり
公正取引委員会から
政府委員に来ていただいて、この関連性も十分聞かしていただきたい。従って、これは
委員長にもお願い申し上げますが、十分の質疑の時間を与えられたい。
〔
竹下小
委員長代理退席、小
委員長着席〕
特に、要求
政府委員は、
委員長の手元にも差し上げましたように、大蔵大臣初め、今お見えの
政府委員のほかに、
公正取引委員会の事務局、それから通産省の中小企業
局長らをこの
委員会に御出席願って、これは午後一つ
お尋ねを申し上げたいので、十分の質疑の時間を与えていただきたいと思うのです。
これに関連してまず
政府に
お尋ねいたしたいのは、これほど重要な
法律案を、
政府はそれほど実施を差し急いでおられるのなら、なぜもっと提案を急いでされなかった。たしか国会に提案されたのは三月の四日ですか。御承知の通り、当大蔵
委員会においては税制
改正案その他六十数件もの重要
法案をかかえて審議に励んでおる。従って、三月へ入ってこういう
法案をお出しになっても、とてもこれは十分な審議ができない。それから、私の考えでは、税制
改正案につきましては、これは直接
昭和三十四年度の予算に関連がありますから、三月三十一日までにはぜひ国会を通過させなければならない、かように思う。しかし、この酒団法の
改正案は直接予算に関連いたしませんから、何もこの三月三十一日までにぜひ両院を通過させなければならない、こういう理由は私はなかろうと思う。従って、
政府におかれても、国会においての十分な審議の機会を与えるということについては一つ御協力が願いたい、かように思うので、この提案のおくれた理由と、それから提案がおくれながら、しかも通過を急ぐ理由、これをまず一つ明確にせられたいと思います。