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1959-03-20 第31回国会 衆議院 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    小委員長 山本 勝市君       内田 常雄君    奧村又十郎君       鴨田 宗一君    川野 芳滿君       田邉 國男君    竹下  登君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   北島 武雄君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    川瀬 健治君  小委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉國 二郎君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十日  小委員奧村又十郎君同月十九日委員辞任につき、  その補欠として奧村又十郎君が委員長指名で  小委員に選任された。 同日  小委員押谷富三君及び古川丈吉君同日小委員辞  任につき、その補欠として竹下登君及び田邊國  男君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員竹谷源太郎君同月十九日委員辞任につき、  その補欠として竹谷源太郎君が委員長指名で  小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第一七八号)  税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 竹下登

    竹下委員長代理 これより会議を開きます。  税の執行に関する諸問題について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。山本勝市君。
  3. 山本勝市

    山本(勝)小委員 たびたびお伺いしております物品税法改正の中の第六条四項の、自己のみの商標表示すべきことを指示して物品製造せしめた販売業者製造業者とみなす、この解釈問題で、先般いろいろな場合を仮定して、この場合はどうか、この場合はどうかということをお尋ねして、お答えもありましたけれども、なお研究を願っておいたので、実はその答えを今日いただきたい、こういうわけであります。その前に、十一日の当委員会における吉國さんの説明の中にある言葉を、あらかじめちょっと申し上げておきたいと思うのですが、私が「自己ミノ」という意味お尋ねしたのに対して、吉國さんはこういうふうに答えておるのです。「ただいまのお尋ねでございますが、「自己ミノ商標表示スベキコトヲ指示シテ」「製造セシムル」ということでございまして、たとえば、この物品についてこういうものを作れ、それにはおれの商標だけつけろ、お前の商標はつけちゃいかぬ。つまり、製造を命じた方が、自分製品としての形で作れということを命じたものでございますから、」云々というのがあります。それからさらに、別のところでございますが、百貨店の場合を尋ねましたのに対して、「この場合にその表示をあらかじめ命じて作らして入れてくる、」場合に当てはまる、「あらかじめ」という言葉がここに入ってきておるのであります。  そこで、この間私がお伺いいたしました数項目の一番の問題点といいますか、実際執行上非常な混乱を来たしはしないかということを憂えます点は、「自己ミノ商標表示スベキコトヲ指示シテ」そして物品製造ぜしめた、こういう点であります。この意味がはっきりしない。ただいま読みましたように、たとえとしてあなたが言われた「この物品についてこういうものを作れ、それにはおれの商標だけつけろ、お前の商標はつけちゃいかぬ。」こういうように指示したときは、これははっきり指示して製造業者の意思を拘束した、だから命じた者が、その通りやってきた製品については、自分製造業者とみなす、この点はよくわかる。そうではなくて、指示しないにかかわらず品物を作って持ってきた、その中からこれはよかろうということで受け取った場合に、自己のみの商標表示しろと指示した、そして作らしたということに当るか当らぬかという問題であります。そいうことを申し上げて、この前の質問に対するはっきりした政府解釈を伺っておきたいと思います。
  4. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまのお尋ねの前に、この間の私の御回答のうち、ちょっと釈明をしておきたいと思います。前段の、はっきり商標表示を命じて、自分のものはつけてはいかぬ、こちらのものをつけろ、これは一番明白な場合だということを申し上げたわけであります。あとの「あらかじめ」ということを申し上げたのは、あのときの御質問は、百貨店商品のでき上ったものを見て、それではこれがよかろうから、これにマークをつけて持ってこい、こういった場合だと思います。その場合表示をして製造せしめるというのはどの段階表示指示させるのか、というお尋ねだったと思いますが、私は、そのときに、「あらかじめ」ということではあるけれども、商品商標をつけることによって、そのものとしての製造が完了するという段階が考えられる。従ってその商標をつけて初めてその商品としての注文価値をなせば、これは「あらかじめ」ということになるでありましょうということを申し上げた記憶があるわけでございます。前提がちょっと欠けておりましたので、一つ補足申し上げておきます。  そこで、この間の御質問の点に移りたいと思いますが、元来この六条四項の商標指示規定は、販売業者であるもの、もちろん製造業者でもかまわないわけでありますが、当該商品については、販売の地位に立つものか、自分商標だけを付して、あたかも自己製造した物品のごとき形態販売をしようとする場合に、事実上の製造行為だけを他の業者にやらしておる、こういう場合を想定しておるわけでございます。法律表現としてそれを表わしたのが「自己ミノ商標表示スベキコトヲ指示シテ」という表現をとったわけであります。ただ、この商標表示することを指示するということは、その形態を言っておることでありますから、その指示の仕方、それは契約のやり方なり契約の履行を通じて判定すべきものであることは、法律上当然であると思います。そこで、問題は、個々の場合にはいかになるべきかということだと思いますが、本来、現在の商標法から申しますと、他人商標をみだりに自己製品につけることは違法行為になるわけでございます。他人商標自分が作ったものに付するという場合には、他人指示があるか、他人承諾があるか、少くとも暗黙承諾がなければ、他人商標をつけられる筋合いのものではない。そういう趣旨から申しまして、通常の場合は、他人商標をつけてそれをその人に引き渡すという行為は、製造だけは自分がして、しかしその商品に対する製造上あるいは販売上の全責任商標権者が負うという場合に限っておると解釈するのが当然だと思います。これが現行の商標法における解釈である。従いまして、その場合には、原則として商標権者製造責任を負うものであるというふうに考えるべきでございましょう。ただこの商標がくっついている、くっついてないということだけでは、先般もお話がございましたように、他人製品を購入してそれに自分商標を勝手につけたという場合等を考えると、いささか問題がございますので、製造をする際に、商標契約なり指示なりに基きましてその製造段階に付せられるということを条件にして、この法律構成をとったというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  そこで、この間お尋ねのまず第一点は、下請業者販売業者に無商標見本を呈示した上、商標については何らの指示を与えられずに発注を受けたのであるけれども、その製造業者が、製造物品に、いわばサービスとして甲の商標をつけて持っていった、この場合どうだというお尋ねがあったわけでございます。これにつきましては、そのとき私が申し上げましたのは、普通は商標を勝手につけるということはできないはずです。サービスとしてつけたと申しましても、本来甲がそれをつけて持ってこいということでなければ、商標法違反をするわけでございますから、通常は、その場合暗黙の何らかの契約があるべきだろう。純粋に、違法行為ということも無視して、全く甲は知らなかったという場合が、まあまれにあったといたしますと、問題かもしれませんが、普通の場合は、そういう形態をとれば、おそらく甲は、乙の暗黙指示なり同意なりを受けて、その商標を付したと考えるのが通常でありましょう、ということをお答え申したわけであります。  それから、第二番目は、乙が既製の物品に甲のみの商標表示して同物品の買い入れを甲に依頼し、甲がこれを承諾したので、乙はそれに基いて一定量の商品注文に応じて作って、これを甲に持っていったという場合、これが第二のお尋ねだったと思いますが、この場合は、先般局長も御答弁申し上げましたが、本来甲としては、注文する場合に、すでにでき上った製品を見、そこに自分商標がついておるということを見て発注をしておりますから、その契約内容としては、そういう形のものを作ることを前提にしているという意味で、これはまさにこの条件に当てはまるものであろうということを申し上げたわけでございます。この場合も、実は見本を持っていく前に勝手に商標をつけていくということは、本来あり得ないはずでありまして、それは商標をつけた案を持っていったにすぎないのだろうと思うのであります。そういう意味で、その案を承認してこれによって作れという指示があった、こういうふうに考えるべきだろうというのが、局長お答えであったろうと思います。  それから、第三番目は、乙——あるいは甲乙が逆になっておるかもしれませんが、お尋ねは、乙が販売者甲のみの商標表示した見本を甲に呈示をして、甲はその見本色彩形態等についていろいろ意見を言って、こういうふうに直すようにという注文をした。そうして乙は、これに基いて、その直すべきところを直して、新たにそれに合致する見本を持っていって、再び甲に呈示した上で売買契約が成立をした、そうして注文を受けて作ったという場合、この場合は、なるほど甲は商標については何も言わなかった、しかし色彩形態デザイン等について注文をつけた、その注文を満たして持っていった、そうしたらそれでよろしいということになったというわけですね。たしかそういうお尋ねであったように——私の記憶違いであればあとでまたお答えしますが、そういう設例であったと思います。この場合は、甲はその商品の上に商標がくっついておるということについては、当然のこととして注文条件に加えておる。ただ、その他の部門について幾つかの変更を命じておるわけでございますから、これもまさにこの条件に当てはまるものだというふうに考えるわけでございます。  それから、第四番目は、甲から商標表示指示を受けて製造した物品に、乙が商標のほか独断で自己の名による特製の表示をして甲に納入した場合、この場合は、なるほど甲と乙との間の契約指示からいえば違反かもしれませんが、明らかに乙の自己名義による表示がありますから、これにつきましては、今回の第六条第三項の新しい商標表示規定適用がないかと考えられます。  それから、乙が甲のみの商標表示した見本を甲に呈示し、甲は、同見本色彩形態について取引変更を勧めたが、発注はしなかったところ、乙は自発的に見本を改善して、これを甲に呈示した後売買契約が成立した。この場合は、やはり三と同じように、その商標表示については、甲乙間に指示があったと認められる場合に含まれるというふうに解釈いたします。  なお、これらの点は、実を申しますと、契約形態が千差万別でございますし、わが国におきましては、商標法規定等につきましてもかなりルーズな慣習があるようでございます。その点を私どもとしても十分注意をいたしまして、判定する際には十分な実態判断をいたしたいと思います。さらに、こういうケース十分検討いたして——基本的には今申し上げましたような解釈になるかと思いますが、さらに十分な検討を経た上で具体的処置をいたしたいと思いますし、さらに、この規定適用いたしますにつきましては、再々申し上げておりますように、本来こういう形態製造が行われております場合には、課税標準の点で相当な問題がございます。課税標準について、抽象価格という観点から、具体的な製造価格よりも相当大きな変更を加えて課税標準としなければならないような事態、そういうようなときがまさにこの六条三項の規定適用さるべき場合だと思いますから、そういう点も十分に勘案し、その上でこれらの解釈を確定していく必要があるかと思います。適用に当りましては、前々から申し上げておりますように、十分な判断をして、この六条三項の適用を受け得べきものである旨の通達をして、その上で実際上適用していこうと思っております。さらに具体的ケースについて十分検討をいたしたい。今お尋ねの点についてもさらに深く検討をして、もっと正確な意味確定解釈を作り上げる、これも通達その他の形で明らかにいたしたいと思っております。
  5. 山本勝市

    山本(勝)小委員 これから十分検討されるということでありますから、きょう最終的な解釈を要求はいたしませんが、これはかなりむずかしい問題だということは、私はそう思いますが、おそらく、政府の方でも、具体的な場合になるとむずかしい問題があるということは御了解だと思うのです。原主税局長答弁の中にはこういう言葉もあるのです。「従来の規定も、また今回の改正も、その骨格とするところは、経済上の実体的な製造者として世の中に存在するのはどちらかという点を見ようということであります。」こういうことで、この注文した者と製造した者との関係が、「実体的」という言葉が不明瞭ですけれども、実質的に一方はただ命令を受けて作業しただけだ、そういうような場合もだれかの説明に出てきている。そういう場合、はっきり命じた方が資金も出してやる、原料も出してやる、あるいは商標指示する、デザインも与える、そのかわり作ったものは、途中の過程においては形はどうであろうとも、責任は実質的に親工場か負うておるというような場合があったとしたら、形式上のがれておればこれは不都合だということはわかります。しかし、これはみなし税でありますから、実際は製造業者でない者を法律上の解釈製造業者とみなすというのでしょう。製造業者製造業者でないかが不明確である場合には、みなすというよりも、むしろ推定で、その場合は販売業者メーカーと推定するという言葉を使うのでしょうが、みなすという以上は、そうでないものをそうだとみなすということでありますから、一種の例外的な規定だと思います。メーカーというものはほかにおることをはっきり認めておる。これは、この原主税局長言葉からいくと、そういうのではなくて、形はメーカーだけれども実質的なメーカーではない、ほんとうは販売業者自身メーカーだ、実体的に世の中製造業者として存在しておる、こっちのはその命令を受けてただ労働しただけだというように解釈できますけれども、しかし、法律上の文句からいけば、みなすということは製造業者でないということははっきりしておる。はっきりしておるが、しかしこの際は製造業者とみなす、こういうように法律上の解釈はなるらしい。私は法制局でいろいろ研究してみた。そうすると、一方で製造業者があるということを知っておって、製造課税になっておるものを小売課税に変えたのじゃないでしょう。相変らず製造課税であるにもかかわらず、製造者でないとわかっておるが、製造者とみなしてこっちにかけるというのですから、これは非常に例外なものだ。例外なものであれば、はっきりしていないと、広げれば幾らでも広がるような解釈のままでは、非常な例外規定幾らでも範囲が広がっていくというようなことでは、法律として困りゃせぬかと思う。今吉國さんがおっしゃったことでも、その解釈なら、百貨店はよろず百貨を売っておるのですが、よろず百貨がその百貨店商標だけをつけておった場合、これは製造というマークをつけておればのがれっこないのです。そうでなしに、ただ百貨店マークをつけている場合に、これは全部その中に包括されるというふうにも私は解釈されると思う。例外以外は全部ひっかかるというふうにもとれる。つまり百貨店実態というものは、だんだん調べてみますと契約書も作っていないらしい。ただ信用でお互いにやっているのだが、その場合に、品物を作って持ってきて、いよいよ受け取るときでないと契約しない。しかしマークをつけて持ってきている。それを暗黙のうちに指示した——指示という言葉を厳密に解釈しないで、暗黙のうちに指示したものと認めるというふうなことになったり、それから、先ほど言った通り、マークをつけたときをもって製品製造が完成したときと解釈するとかいうふうなことになってきますと、それは非常に広がってくる。しかし、これは委員会でのお話ではなかったけれども、原さんにしても、吉國さんにしても、百貨店は、調べてみたところが、これを適用するようなものはほとんどない、全然ないということは言わなかったが、ほとんどないようだということも聞いている。私は争うために言うのじゃないのです。一方で実際調べてみたところが、かかるものはないと言うけれども、今の説明をそのまま当てはめていくと、ひっかかるというか、少くとも不安を持つ。そこにこの法案というものが——これは理由があってやられたに違いない。何か根拠がなくてこういうことを企てられたとは思いません。どうしてもここのところが不満だというので始められたのでしょうけども、その点は委員会であまり具体的に聞くのも御迷惑だから聞きませんけれども、しかし、こういうふうなばく然たる形でやりますと、今度は悪影響を持ってくるというので、もう少し私は検討する要があると思う。  次に、これも無理なら答えていただかぬでもいいのですが、私は、二月二十五日でしたか、この日でしたかあるいはその次の日でしたか、三つの問題を中心に御検討願いたいということをお願いしておいたのです。それは各税務署ごとで取扱いが不平等になりゃしないかということです。それについては慎重を期して、税務署長というのじゃなしに、国税局で扱ってあらかじめ通知をしているから、それで納得の上に実行するように慎重を期したいという御答弁でありましたが、第二、第三の点です。零細業者がかわいそうだからということでこの法案を始めたということが、原主税局長言葉の中に、先ほど申しました言葉に続いてあるのです。しかし、その零細業者そのものが、逆に情があだになって、物品税から自分たちは免れたかわりに、仕事から離れてしまったというようなことが起りゃしないか。現にそういう痛切な陳情を受けているのです。これに対してもそういうことのないように慎重にやっていくということでしたが、ただ慎重にやっていくということだけでは答弁になかなかなりにくい。その点は、実は中小企業庁の方へも、中小企業庁としていかなる影響を及ぼすかを研究してくれ、研究した結果を大蔵省の方へ連絡してくれということを要求しておいたのですが、ありましたか。
  6. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまの零細業者の点は、国税庁でも、現在、実は本日も消費税課長会議を開いて、具体的な問題を研究しておりますので、具体的に調べて、いずれもう最近の機会に報告して参ると思います。この間も申し上げましたが、零細業者の点は確かに仰せのような問題があるわけであります。ただ、その際も申し上げましたように、実は大ざっぱに調べてみますと、販売業者と申しましても、この六条三項の規定適用になる販売業者は、実は本来は製造業者でありますが、当該物品については仕入れてくるために販売業者の形をとっておるものが多いのであります。百貨店のような場合の例外はございますけれども、大部分は本来自分製造している。自分のところで製造するよりも、他に出した方が、技術的にも、あるいはコストの点から申しましても有利である、ということで出しておる場合が多い、そのためにたまたま税が安くなっておるという場合が相当多いのであります。中には、極端な例外として税金だけが安くなる。その税金課税標準をもし引き上げられて同じことになれば、下請に出しても同じだ、損得なしというものもあり得るわけであります。これは明らかに税のためにそういう形態をとっておるということになります。この間も申し上げましたが、そういう税を安くするためにだけやっておるという場合まで考慮に入れて何かするということになると、相当問題があるということを申し上げたわけであります。その点につきましては、国税庁とよく連絡をいたしまして、実際の形態を洗ってみまして、その点の解釈を考えたい。また、実行につきましても、そういう調査をしながら、直ちに衝撃がいくような形にせずに考えていくことも、考慮に値するものであろうというふうに、実はすぐにお答えができませんのは大へん申しわけないのでありますが、元来これは実際に当って調べてみなければならぬ問題でありますので、若干時日をかしていただきたいと思います。
  7. 山本勝市

    山本(勝)小委員 それから、第三点は、実は物品税法改正でかなり大幅の改正をやったのですか、その中に多年懸案になっておったアンバランスを是正するというので、ある種の品物は大幅な税率引き下げをやったのであります。それで、やる前にも、ずいぶん全国からわれわれのところへ、むだなことですけれども、娘さんたちがはがきをたくさんよこしました。これはよこしたからといって一々読むこともできませんけれども、とにかくたくさんよこしたということは事実です。それで何年かの問題で下げたのですけれども、今度は別の形でごそっと値上りをするということになりますと、事実上大衆をだましたような結果になる。これは、政治的に、そういう誤解を引き起してはまことに政治家として好ましくない。それを心配しておったのですが、それに対して、吉國さんは、そういう抜け道をやっておるのを今度は防ぐ、そういうのは、業者の全部ではなくて、ごく一部であるから、物価には影響しないという答弁で、それならけっこうです。けっこうですけれども、まあしかし、いろいろ調べてみますとそうじゃない。ひどく上る。これは従来安く作らしておったものの全体の数量がどれくらいになるかということの問題になります。ごく少数のものがやっておったのを押えるなら上りませんけれども、しかし非常にたくさんの割合を占めておった場合には上ると思う。ひどいのは倍くらいになるというふうなことを、組合から何か書類でいってきております。これは私は実際はどうなるか知りませんが、かりに倍になるということがあったら、それこそ今私が申しましたような非難を受ける。これは絡対に上らぬということもおそらくいえないでしょうが、どうでしょうが。
  8. 吉國二郎

    吉國説明員 この前も実は申し上げましたが、今度の六条三項の規定適用になるという業界は、ある程度限られてくるだろうということを申し上げたわけです。たとえば、化粧品であるとか電気器具業界等に、そういうものがある程度あるということを申し上げたのでありますが、問題は、今御指摘のありましたのは、口紅等税率が半分になったところが、逆にその課税標準が上ったがために、それがオフセットされてしまうじゃないかというお尋ねであったわけでございます。これは、実はすでに御承知と思いますが、昭和三十二年の政令改正以来、いわゆる一定率というものを適用してきております。これは小売価格新聞紙等表示したものにつきましては、その小売価格に対して課税標準として課すべき価格を何割という法定をして、その法定したものに基いて納めるという制度ができておるわけであります。これは一種の抽象価格をさらに徹底した考え方であります。この一定率というものを化粧品についても適用しておるわけであります。この一定率を見てみますと、化粧品の場合は、大手のものはほとんど一定率適用を受けておるわけであります。この一定率に対して、今仰せられましたような形をとっておりますのは、またそれよりぐっと低いわけであります。その一定率を作ります際に、私どもも意外に低い業者があるということに驚いたわけであります。口紅などの例をとってみますと、名前を申し上げますといけませんか、たとえば大手筋の有名な化粧品屋などは、みずから作っておりますので、一定率のちょうど一ぱいまでくるわけでありますが、その中に、二、三それからはるかにはずれて、一定率適用すると損してしまうというのが出ております。今の制度では、その一定率適用しようとする者は、大臣告示で名前を告示することになっておりますが、一定率適用を希望しない者は告示しないでおりますので、そういう業者は依然として低い税率で報告をしておる。そういう点から申しますと、一例でありますが、口紅などの場合は、大多数の商品については一定率適用になっておって、通常課税標準適用されておる。例外的に課税標準価格が今のような形をとるために低くなっておるというのが実情のようであります。もちろん、こまかいものをいろいろ洗ってみますと、ただいま仰せのように、かなり多くのものがそういう形をとっているんじゃないかという御心配がおありかと思いますが、今度の引き下げをいたしました一番大きな対象である口紅について見ますと、先般私が申し上げましたように、なるほど特定の業者のものの課税標準価格はかなり上るがために、税率が半分になっても税額は半分に減らない、あるいは減るはずのものが半分くらいになったという結果が出るかもしれないと思いますが、大多数の業者につきましては、この半減の効果がそのまま出て参ると思います。その点で、ある商品については値上りせざるを得ないかもしれませんが、総体の商品標準としては、やはり税率が下った通り下げてくれれば下げ得るという状態にあると私ども思っておりますが、なお個別に商品について検討いたしたいと思います。
  9. 山本勝市

    山本(勝)小委員 値上りするかしないか、私も自信がないので、これはただ上るようなら困るということだけですが、先ほど、吉國さんの答弁の中で、商標の問題で、商標というものはこういうものだというお話がありましたが、私は、商標というものは、生産者としての商標もあり、加工者としての商標もあり、また販売業者としての商標もあるんだと思う。そこで、百貨店の場合などは、これは生産者としての商標などというものがあったとしたら、たまたまの例外的なものであって、百貨店というものは販売業者なんです。だから、百貨店商標というものは、これはメーカーとしての商標じゃなくて、販売業者商標だと私は常識的に考えます。また、世間も、百貨店製造業者であるとは考えていない、あれは販売業者としての商売人だと考えている。ですから、商標というものを一つだけつけておれば、世間はそれを生産者として認定するというが、そうではなくて、商標法の中にも生産、加工、販売云々と書いておりますので、そのそれぞれについて商標が持ち得ると私は思う。つまり全然生産をしない人は商標を持てないが、販売だけやっておっても持てる。だから、販売者としての責任はそれは消費者に対して負いますけれども、しかしそれは生産者としてということではない。法律で無理に男は女だと認めてやるのだということにしてやるなら別ですけれども、見なしたからそういうことになるのであって、普通の常識から申しますと、それは無理だと思うのです。  それから、もう一つ、あるメーカー自分のところでも作っておる、しかし一部分を安く出しておるということを申されましたが、実際に私がいろいろ研究したところでは、自分のところで作るものと、それから小さな零細業者の家内工業、手工業的なところへ出しておるものとは、品物は違うのだというふうに私は見ている。それは、名前は同じでありましても、自分のところで作るのは主としてマスプロ、つまり大会社がマスプロでやるものは自分のところで作っておる。しかし、小さい業者にやらす方が、かえって品物もよくできるし、そこで適切なものを小さいところへ出しておる。これは一般的にそうだと思うのです。特別に、つまり税をのがれるためにやるような場合は、私は研究してないが、それはないとは言えないでしょう。ないとは言えないでしょうが、しかし、私の調べたところでは、同じ名前はついておるが、ある種の型の物は自分のところで作る、他の型の物はよそで作らせる、こういうことになっておるのではないか、これが一つの点。  重ねて質問だけ先にしておきますが、これはどう思うかということと、それからごく零細な家内工業、小工業というものは、やはりそれぞれ一つの特徴があるんですよ。だから、特に特徴があるから、その特徴のところへそれが持っていかれておるのだ。なるほど安いには安いけれども、その安い高いということは何を標準にして安い高いというかという問題、これは労賃の高い安い、あるいは物価が高い安いというのと一諸であって、同じ物がよそで高く作られておる、にもかかわらずそこだけが特に安く作られておるというのなら、これは特別にそこが安いということは言えますけれども、しかし、同じような条件業者がどこへ行っても大体同じような値段でやるということになれば、それはつまりノーマルな値段であって、それを特別に安いということは言えぬのであります。  それから、最後に聞いておきますが、これははっきりした言葉で一つ答えてもらいたい。よろず百貨を売っておる百貨店品物というものは、その百貨店のみのマークをつけて販売しておるというものは、大体この適用を受けるのか受けないのか。例外はあり得るでありましょうが、原則的に対象になるのかならぬか、この点を一つお答え願いたい。
  10. 吉國二郎

    吉國説明員 百貨店商標販売商標ではないかという点、確かにごもっともだと思います。現在の商標法では、なるほどいろいろな意味商標が持ち得るということをいっておりますが、その商標自体の区別は商標の中に表われる形になっておりません。たとえば、これは販売商標であるとか、あるいはこれは製造商標であるとか、あるいはこれは保証商標であるということは書いてなくて、むしろそれが製造商標がついておる、あるいは製造者表示があり、そしてそれにさらに売りさばき人の商標がついている場合には販売商標という解釈をとられる、そういう意味で区別ができるということになりますので、そこで何もないところに商標がついておれば、普通は製造商標というふうに考えられるというのが今の解釈でございます。そういうところに一つの問題かあるわけでありまして、ただ、先生のおっしゃいますように、百貨店の場合はむしろ販売業者であることに間違いないのだから、三越と書いてあれば販売商標ではないかという常識的な解釈もあり得ると思うのでありますが、その辺はさらに法律的な点を掘り下げてみたいと思います。  それから、自分のところで作る物とよそに出す物は性質が違うのじゃないかという点、これは確かにそういう点はございます。もちろん、先ほども申し上げましたが、自分のところで全然同じ物を作っておって、一部を出しておるという例もございます。しかし、自分のところで作るよりも、手工業的なもので、むしろ下請に出した方がより有利だというものは、自分のところでは作らずに出しておるという例もあるわけであります。また、そういう場合には、その次のことにも関連いたしますが、零細業者特有の製品になる可能性があるわけであります。そういうものにつきましては、むしろこういう制度が適用になったからそれでは自分のところで作ろうといって、親会社が契約をやめてしまうこともない。これはやはり特色として残っていくのじゃなかろうか。むしろ、私どもはそういう特色のあるものが買われて場合には、先ほどおっしゃいました、この規定があるために、零細業者が非常に損してしまう、注文を失ってしまという危険は、そういうものの方がかえってないであろう。同じ物を作るのに、自分も作り相手方も作っている、税金が安いからといってこっちに作らせておくというものの方が、危険が多いと思います。  それから、安い高いはどう判定するかというお話でございますが、これは、先ほどおっしゃいましたように、同種の製品が全体として安く売られておるのだという場合は、物品税法本来の考え方から申しますと、製造業者通常の卸売の形態で不特定多数の者に提供した場合に生ずるであろう価格というものが、物品税法の原則であるわけでございます。そういう形で、その商品が本来安い価格で売られておるのだということになれば問題はない。低いということはいえないわけです。しかし、反面に、なるほどこういう特色のある製品を作っておるけれども、中小業者ことに零細業者の場合は宣伝もできないし、従って販路も開けない。従って、いい物は作るのだが、自分では売りようがない。そこで力のある、販売も宣伝力もあり、名前も売ておって、その商標を利用することによって高く売りさばけるという場合に、こういう形がとられると思うのでございますが、その場合には、まず物品税法で予想しております製造業者通常の卸売の形態で、一般の不特定多数の者に商品を提供した場合という条件価格製造業者のところでは出て参らぬわけでありまして、その製造業者から商標指示した販売業者のところに行って、その販売業者があたかも製造業者であるかのような形において、今の物品税法抽象価格規定適用される条件が満たされる、つまりその買い入れた販売業者が、いわば卸売の形態において不特定多数の者に初めて持っていくということになるわけでありまして、そうなりますと、その宣伝の費用であるとか、あるいはその商標が今までできたところによるいろいろな償却であるとか、そういうような一般管理費的なものは当然相当な価格に上りますから、最初の製造業者が作った裸の価格にそれがプラスされて、たとえば百円で作った物が、その商指標示者のところへいけば、それが二百円で売られて、それがまた普通の卸売の通常価格であるという形態になるのが典型的な場合じゃなかろうか。そういう場合には、まさに製造者の百円という価格は、一般の通常抽象価格の観念から申しますと低過ぎるのであって、その場合は二百円でなければならぬ、こういうことになるのであります。そこで、安い、低いという問題は、そういう観点から見る場合に、この商標指示をしておれば、多くの場合は、販売商標指示した商標権者が売るときの通常価格課税標準価格たるべきものであるということになるだろうと思います。それがつまり、普通の場合は、製造、それから中間の卸、小売と三段階になるわけでございますが、商標指示した場合には、まず商標権者のところに直接総量がいくわけです。ここで初めて製造業者は一般の者に対して通常形態で総量を売りさばくという格好になりますから、一段階多いわけです。従ってその課税標準価格はどうしても低くならざるを得ないというのが普通の形じゃなかろうか。百貨店の場合は、確かに、そういう段階から申しますと、いきなり小売段階になるという点で、若干形態の差異があるかもしれない。従って、その場合には、課税標準としては、百貨店販売価格から小売マージンを差し引いたところで、たとい製造とみなされても、課税標準は七割ということになるわけであります。  百貨店の場合にどうなるかということのお尋ねでございますが、百貨店の場合、先ほど私どもが、百貨店の場合はあまり適用がありませんと申したのですが、しかし実際はたくさんついているじゃないかというお話でございました。確かに、ワイシャツとかなんとかは、三越なら三越の商標だけつけているというのがあるわけです。実は私ども調べましたのは、課税物品について調べたわけですが、課税物品ではあまりない。と申しますのは、かなり現在の課税物品でございますと、物自体課税されておるのは上等なものになって参りますから、やはりメーカーならメーカーの名が通っておりませんと価値が少い。むしろ、百貨店の名前がつくよりは、メーカーの名前がついて出た方が価値が多いという場合が多いわけでありますので、割に課税物品では少いということを申し上げたわけであります。この百貨店の場合であっても、この規定にぴったりと当てはまるように、百貨店指示をして、そうして製造段階から入れてくるという場合は適用があり得ると思います。ただ、百貨店の場合、多くはあとから商標をつけるという例が多いようでございますから、実際上は、適用のある場面は少いと思いますし、また、課税物品では、実際調べてみてもきわめて少いということは申せますけれども、理論的には、百貨店は全然はずれるということは言い得ない。ただ、先ほど仰せの販売商標という点は、さらに法律的にも十分な検討をいたしたいと思います。
  11. 山本勝市

    山本(勝)小委員 いろいろ聞いておると質問が出るのですが、きょうはこの辺でやめますけれども、今の零細業者が作っておる場合、それは確かに特に安くできるというので作っておる。ですから、親工場が自分で作るといっても、それは作れば損になるから、大体仕事はあると思います。そのかわり、経済的な力関係で、今度物品税が上っただけ零細業者の方へ押しつけてきて、もっと安く作れと言うことを心配しておる。それに応じないということならそこへ頼む意味はないから、今度は、そんな信用のない、腕だけを持っている人でなくて、ほかへいくから仕事かなくなる。応じようと思えばまた一そう安くたたかれる。この点を心配しておるので、御注意を願いたいのです。  もう一つ、商標というのは、一つの権利であって、義務じゃないと私は思う。だから、先ほど言ったように、メーカーがほかにおっても、よそのものはそこへつけられぬわけだ。だから、ほんとうならほんとうの生産メーカー自分がつけるはずだけれども、それは権利であって、何も義務ではないのだから、自分がつけない方が有利だと考えれば、つけないで販売業者に渡して、販売業者販売だけの責任で売ってもらう、こういうことが当りまえのことであって、原則的に申しますと、そういう場合に二つの商標をつけるというようなことはむしろあり得ないことなんです。販売業者が別な包装でやるということは別にしまして、その品物自体に固定的な商標を二つつけるというようなことは、これは実際両方とも損になりますからしないのであって、この適用を受けないために生産者が商標をつけるわけだと言うけれども、それは商標権というものは権利ですから、何も届けてなくてもいいし、届けておっても必ずしもつけなくてもいい。義務ならばこれは必ずつけなければならぬ。つけなければ、それはほかの商標をつけた者をメーカーと認める。ですが、権利の場合は違うのではないか。これは答弁をいただかなくてもいいが、とにかく問題が非常にたくさんあるということで、なお一そう御研究願いたいと思います。私は、そういう質問を留保して、この点はきょうはこれで終ります。  なお、つけ加えて申しますが、主税局の吉國君と泉君がおるが、この間の泉君の答弁は明らかに食い違っているのです。ところが、聞くというと、それはちょっと言葉が足りなかったので、実際は食い違っておると思いませんなんていうことを言いますけれども、そういうことを役人はよく言いますが、実際だれが読んでもこれは食い違っておるのです。だから、そういうようなことは、お互いの仲ですから、確かに食い違いですからあしからずと言えば、それで済んでしまうことだ。それはあんたがそう言ったと言うわけじゃないけれども、どうもそういうようなことがあるから、そういうことなしにお願いしたいと思う。  私のこの問題についてのきょうの質問はこれだけにします。     —————————————
  12. 竹下登

    竹下委員長代理 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。山本勝市君。
  13. 山本勝市

    山本(勝)小委員 私は、実は、酒団法がこの小委員会に付託されて、各方面からいろいろな声を聞きながら、厳正公平な結論を出したい、こう思って苦心をしておるのであります。それで、他の委員諸君がらもたくさん質疑の通告がございます。従って、私も、それらの御意見を承わった上で、自分の考えもまとめたいと思っておるのですか、しかしその過程で二つばかりお伺いして参考にいたしたいと存じます。これは吉國さんの方も関係があるのです。だから両方で一つ研究してほしい。  第一点は、今回の改正の趣旨は、たびたび説明を聞きましたように、物統令による今のマル公というものは、今日の情勢から見て、いつかははずさなければならぬという前提の上に、この改正案を出されたようでありますが、それに対して、マル公ははずさぬようにしてもらいたいという声と、かりにはずしても、今の程度のものでよろしいから早く通してもらいたいという、両方の声がやかましく聞えてくる。私は、こういう点を一つ伺って、自分の考えの参考にしたいと思うのですが、マル公をはずした場合、価格が変動を来たすということは、少くとも価格に動く幅ができてくるということ、これはお認めになるかどうか。つまり、今のマル公は、法律上は確かに最高価格であって最低価格ではない。しかし、実際にこれまでの国税庁の取扱いは、この価格以下に売らないようにこれは酒税確保の要求からでありましょうが、そういうふうに実際的に指導してきたのかどうか。この二点を国税庁の方に先に聞いておきましょう。酒税確保の目的から、これまでの最高価格、実際は同時に最低価格のような意味を持つこの価格を標準に売ってもらいたい、これ以下には下げないようにという指導をしてきたのかどうか。
  14. 泉美之松

    ○泉説明員 御承知のように、物価統制令に基くマル公は古くからずっとあるわけでございます。その間に経済情勢が非常に変化しております。従って、お話のように、戦後酒の窮屈な当時におきましては、マル公というものは最高価格として押える。また、消費者の利益をはかるという意味で、最高価格として押える。従って、また、生産者の方でも、実際問題として生産が少くて消費需要が多いから売れるわけでございますから、マル公で当然売るというようなとこでやってきておったわけでございます。これが、二十九年以降、需要に対しまして、米の制限その他がだんだん楽になりまして、生産がふえてくるに従いまして、その生産量を販売するについて、必ずしもマル公通りに売れない業者が出てくるということが起きたわけでございます。そういうふうに、経済情勢の変化に応じまして、マル公価格意味も違って参っております。国税庁の指導といたしましても、当初はマル公で販売するということを指導して参っておりましたが、漸次生産がふえるに従って、マル公だけでは販売できない。そういうことから、マル公から五円引きでも、それは正常取引といえるんだというようなふうに、だんだんとやわらいできておるということが事実でございます。
  15. 山本勝市

    山本(勝)小委員 私の質問をあなたはちょっと誤解しておるようですが、酒のなかったときは、それは最高価格ですから、これ以上げてはいかぬ。上げたいのをむしろ押える役割をしておった。しかし、今度は、酒がだんだん豊富になってきた場合に、下ってくる方は自由にしておったのか、そうじゃなくて、なるべくその値段から下らぬようにという行政的な指導をしておったのかということです。だから、いろいろ情勢がどうなったということよりも、実際指導しておったのは、その点はどうかということです。
  16. 泉美之松

    ○泉説明員 実際は、先ほど申し上げましたように、マル公で売るのが正常取引であるというふうに申しておりますが、だんだん経済の実勢から見てマル公では売り切れないという事態が生じてきましたために、マル公で売るのが原則だけれども、マル公から少しぐらい引いておっても、それがあまり激しくない限りは、正常取引である。まあ正常取引に努めなさいという指導をして参ったわけでございます。
  17. 山本勝市

    山本(勝)小委員 マル公で売るのがほんとうだと言っておるけれども、言ったというのは、業者が言ったのじゃなしに、国税庁が言っておった。最高価格であるにかかわらず、それより下げないで売るべきだと言っておった。しかし、そう言っても、実際下るのを防ぎ切れぬようになってきた、こういうことですが。指導としては、マル公を下がらぬように指導してきたことは事実かどうか。
  18. 泉美之松

    ○泉説明員 さようでございます。われわれといたしましては、酒税の確保の見地から、マル公で売れるだけ売ってもらうということで指導して参っておりますか、経済の実勢上なかながマル公で売り切れなくなってきておるというのが実情でございます。
  19. 山本勝市

    山本(勝)小委員 それは、やはり、マル公が最高価格であるにかかわらず、国税庁で最低価格のように取り扱ってきたということは事実だ。それは酒税確保という観点からそういうことを指導してきたわけですから。法律の条文上からいえば、最高であって最低じゃないのに、事実上最低として扱ったということは、酒税を満足にとりたい、こういう点に目的があったわけですか。
  20. 泉美之松

    ○泉説明員 さようでございます。
  21. 山本勝市

    山本(勝)小委員 そうしますときに、今度マル公をはずした場合に、私は酒税の確保がうまくできるかどうかということに一つの不安を持つわけです。国税庁が従来その最高価格を最低価格のように見て、酒税確保の必要上、とにかくこれより上げても困るが、下げても困る、こういうことは酒税確保の上からどうしても必要という技術的な必要があるから、法律は最高価格であるのに、最低価格としての取扱いをしてきたのだろう、こう思うんですよ。そうすると、今後この価格が上っても下っても、酒税確保に対して技術上不都合を生ずるおそれはないか。価格が暴落などすれば困るが、暴落しないまでも、相当な幅で上ったり下ったりするという余地がある場合には、酒税確保ということに困難を来たすことはないか、あるか。これまではあるから、それでそういう最高価格を最低価格扱いにし、最高価格でもあり最低価格でもあるという扱いをしてきたのに、今後はそういうものじゃなくなって、動いても酒税確保には不都合がないのだということが言えるのかどうか。言えるとすると、どうもこれまで僕はそういう法律にそむいたような扱いをした意味が少しわからないので、何か新しい理由でもって不都合がない、こういうことが言えるかどうか。
  22. 泉美之松

    ○泉説明員 私どもの指導が今申し上げましたようにやってきたことは事実でございますが、先ほど申し上げましたように、最近の情勢はだいぶマル公から下回って売られる傾向にあるわけでございます。それからまた、申し上げておかなければいけないのは、マル公で売れないとすると酒税確保ができないかどうかという問題は、なかなかぎりぎりの線は——マル公通りで売れなくても、多少そこに幅があることは、利潤もありますからおわかりと思います。問題は、それではマル公からどれだけ下った場合に酒税確保上不安があるかという問題になってこようと思います。今後の経済情勢からいたしますれば、新しい価格制度で申し上げますと、基準価格といったような価格が出ました場合に、基準価格から多少その上下——上下と申しましても、実際問題としての上の方はなかなか生じないのではないかと思いますが、下へ下る場合に、下の幅は現在もある通り今後も起るだろうと思います。しかし、その幅が大きくなるということは、酒税確保上非常に支障がありますので、やはりそういう場合には、協定価格制度、あるいは大蔵大臣の酒税保全勧告、あるいは保全命令ということで、値下りが大きくなることを防ぐという必要があろうと思うわけであります。マル公でなければ酒税確保はできないということは、私はなかなか言い切れないと思います。やはり利潤部分がありますから、その利潤部分に多少食い込むということがあっても、それによってすぐに酒税確保はできないということは言い切れません。しかし、酒税の場合には販売価格に対して相当大きなウエートを占めておりますから、値幅がありましても、その値幅はそう大きなものではない、そう大きく下るようなことがあっては酒税確保に困る。そういう意味で、今度基準価格を中心といたしまして、協定価格あるいは酒税保全命令の関係を打ち出しておるわけでございます。今度の新価格制度によって、現在の実態と同じように多小値幅があると思いますけれども、その値幅が大きくならぬようにしたいというのが、私どもの念願でございます。
  23. 山本勝市

    山本(勝)小委員 今度の法案政府が出しておるのですから、これで何とかなる、答弁はそういうふうになると思いますが、私は実はどっちに傾いてもいない公平中正で言っておるのです。それで私はこういうふうに考えるのです。大蔵省の諸君も、業界の諸君の言うことにも、私はちょっと納得のいかぬ点があるのです。経済の講義をするわけじゃないけれども、経済的な合理性を貫くためには、やはりいいものは価格が高くなる。悪いものは安くなる。これが必要だということは、私は一般原則としては確かに認めるのです。ところが、価格が動くということがなぜ意味を持つか。悪いものは下る、あるいは需要供給の関係で上ったり下ったりするということが非常に大きな意味を持つ。これは市場経済における一つのバロメーターです。それはなぜ意味を持つかというと、生産が自由であって、この価格の上り下りに対して、その生産をそこに適用さしていくことができるという条件があれば、これは確かに価格が動かないといけない。寒暖計が、寒くても下らぬ、暑くても上らぬような寒暖計を作ったんでは、これは役に立たぬのだから、市場経済の破滅です。価格はどうしても動かなければいけない。それを固定さしておくということは、全く硬直化してしまって、経済は歪曲してしまうと思うのです。ただこの場合に、だんだん研究してみると、生産が自由でない、生産というものが計画的に決定されてしまっておるという条件の上に、価格だけが動くような機構にするというところに、市場経済的なものの考え方と両方がチャンポンに入っておって、それで両方がうまくいかぬ。市場経済の機能も動かぬし、それから計画的なものも目的を達成できないというふうなことになるおそれがある。だから、生産をあくまでも自由にしていくというなら別ですが、生産はあくまで計画的な生産でいくということであれば、価格は、これまでは法律上最高価格ですが、これはむしろ最高価格とか最低価格というふうなものでなくて、固定価格にしてしまったらどうか。価格をフィックスしてきめてしまう。ちょうどだばこがピースは幾ら、バットは幾ら、光は幾らときまっている、あるいはタクシーの料金を小型は六十円、中型のは八十円、超特級のやつは百円というのもあります。そういうふうにきめてしまう。これによって、最高でも最低でもない、プライスをフィックスしてしまう。これが一番両方の平仄が合うんじゃないか。そうして世の中の情勢が変ってきた場合には、固定価格そのものを情勢に応じて動かしていく、こういう考え方でないと、どうも——市場経済機構のバロメーターという価格機能というものも十分果させたい、しかし生産の方は固定してしまうということになると、私はどうも、水と油みたいなものが一緒になって、両方がうまくいかぬのではないかと思うのですが、これについて、主税局長はそういう考え方はどう思われるか、伺いたい。
  24. 原純夫

    ○原政府委員 初めにお話しになった価格の役割、価格を通して需給が吻合され、価格を通して、企業の改善といいますか、競争が行われる。そこで、供給者の側の競争と需要家の側の選択というものがあるということが、価格というものの非常に大きな機能だろうと思っております。戦争中ないし戦後のような非常に条件が詰まった場合においては、もうそういう価格の機能というものはあまり発揮できないということでありましたが、今や経済一般にわたって、価格の機能を十分に発揮するというような情勢か参っておるのではないか。しかし、その中でも、後段で言われましたように、生産が限定されるならばどうというような事態がまだ酒には若干あります。清酒について主原料である米の使用量は規制されているという一点であります。それ以外の酒類については、原料は規制がありませんから、生産を一定にせねばならぬという条件はないわけです。そこで、それを分けて考えなければならぬ。生産を一定にせねばならぬという条件がない場合には、これは全面的な自由競争というものが働き得る態勢であるわけです。そこで、その自由競争をどの程度やらせるか。その結果価格の面に破綻がくることがあっては困るというのが、その面における問題だ。つまり、主原料の規制のない場合、生産の規制のない場合には自由競争が行われざるを得ない。その場合には、酒税の確保、それと表裏する業界の安定という見地から、どこで乱れを防ぐかという問題がある。  それから、生産が一定にされざるを得ないという清酒の場合はどうかという問題になります。清酒についても、米の供給が、近ごろは、農林省がこれしか割当できないというのを、一生懸命引っぱり上げるというよりも、率直なところが、業界がもうこの辺でというようなところで、清酒業界でも、米の供給は、実際上は非常に足らぬというよりも、かなり飽和点といいますか、業界の一部にはもう米をふやしてくれるなという声が出るような状況でありますから、その条件が非常に弱くなってきています。しかし、かりに弱くなってきていないとして、価格が固定化するかどうかという問題でありますが、私はそういう条件でも価格の固定化は必ずしも絶対の結論ではなかろうと思う。一定の供給量という場合においても、その供給量の中で、より能率的な企業が栄えて、より非能率な企業が落ちるという働きは当然あるべきだ。酒の行政においてしばしば指摘され非難されますのは、酒は免許制度である。特に清酒は、権利石数というものがありまして、毎年々々同じ原料石数をもらう。そしてそれで作る。作ったものは、総供給量が押えられているから、大体はけるようにできている。そこで、競争も少い。改善も少い。また地域的な需給のアンバランスもあるわけです。西の方は今申した権利石数が割合多いものだから、西の方では余っている、東の方では足らぬということで、かなり経済の実体に矛盾したような現象が出る。やはりそこでも価格を通して優秀なものが伸びていくという働きをさせるべきではなかろうか。  それから、原料の配分にしても、単に権利の上にそのまま与えるということでなくて、優秀なものに与えていくということを入れませんと、業界の合理化、改善ということができない。もちろんこれはそういう単純な気持だけでやってはいけないと思います。十分過去の経緯を考えながらやらなければいけませんが、私は、業界の安定をはかるという意味で、権利免許というようなものを尊重する基調を持ちながら、やはり競争の要素、合理化の要素というものは、そういう態勢のもとでも入れる努力をしなければならぬということを年来思って、やってきておるつもりであります。
  25. 山本勝市

    山本(勝)小委員 私が聞いたのは、最高、最低というような限界的な価格じゃなしに、一定の価格にフィックスしたらどうかということです。生産の方を統制というか、限定しておる場合には、最高価格、最低価格、あるいは基準価格なんというのじゃなしに、はがきとかたばこのように一定の値段にして、どこへ行ってもその値段というふうにする。もちろん種類によって違いますよ。ピースと光を同じにせいというのじゃないのです。そこで、味とか、あるいはアルコール度とか、いろいろな点等から見て、ABCDでも何でもいいから、種類を何通りにでも分けて、この酒は幾ら、この酒は幾らときめて、それでやっていく。それが守れるか守れぬかという問題でありますが、生産の方を野放しにしたらもちろん守れませんし、かりに統制しておりましても、その数量をやたらにどんどんふやしていったら——それは需要に比べて多くすれば下ってきますし、少くすれば上ってきますが、アンバランスが生じてきます。そのアンバランスをないように、生産と需要との均衡点はほぼこのくらいのところにあるというところが適正な価格である。その適正な価格を自由にするまで固定したらどうか。自由にしたら別ですが、これをタクシーみたいにしてしまったらどうですか。
  26. 原純夫

    ○原政府委員 先ほど申し上げたように、私はそういう場合でも価格を一定にしてしまうということは必ずしも望ましくないと思います。一定にしても、とうてい守れるものでない。現に、先ほど間税部長から申しましたように、はなはだ筋は通らないですけれども、マル公というものを割っては売らないでほしいという気持でおっても、実際には酒の銘柄、品質によりまして、市場、消費者が評価をする。また卸屋さん、小売屋さんが評価をするというような意味で、マル公より高いのはありませんけれども、やはりグレードで若干ずつ下ったのが出るわけです。というのは、そこに選択が行われ、判断があるわけです。ですから、いい酒も悪い酒も一本の価格にしてしまえということは絶対にできない。やはりあるマージンで広がり、かつ広がったものが各企業の努力がどうなるか、つまり大いに努力する企業はいい条件でよりよいものを出すということになれば、それはだんだん上っていき、品質の悪い酒はだんだん下っていくというようなことがあるんじゃないか。やはりフィックスしてしまうというのは、実際においてはできないというふうに思います。できるのは、需要の五、六割しか供給がない、一生懸命みんな買う、この値段だ、これ以上売ってはいかぬといえば、それより安く売るばかはないという、こういうような場合ですね、かつてのような。あるいは実際上マル公にフィックスされる場合はあるけれども、今のように、原料米も、業界が、これでたくさんだ、ふやしてもらっては困るというような状態にきておるときには、需給自体か大体バランスがとれている時期ですから、そこでは、一本の価格に固定するのはどうも少々無理ではないかというふうに私は考えます。
  27. 山本勝市

    山本(勝)小委員 それは自由にしたときの方が変化に適応できるし、うまくいきましょう。しかし、そうはできない事情のもとで、たとえばビールならビールは全国どこで買っても百五十円とか百七十円とか、こういうことは私は必ずしも不可能じゃないじゃないかと思う。悪い酒は安い。つまり悪い酒を作れば価格を落してしまう。何かのマークをつけて、この酒は幾ら以上に売ってもいかぬし、幾ら以下に売ってもいかぬ、幾らで売れ、こういうふうにこれはしろうと考えですけれども、何しろ小委員長でむずかしい問題がたくさんあるのですから、考えなければいかぬ。それでしろうとの経済の考え方ですが、自由経済と計画経済をチャンポンにした場合はどうもうまくいかぬ。だから、とにかく計画経済的な精神をどうしても貫くということであれば、むしろそれの方か徹底しておるのではないか、はっきりしておるのではないかと思う。そこで、初めて、私は、最高価格であるにかかわらず、国税庁が実際の扱いで最低価格のように、それより高くも売らぬ安くも売らぬというように扱っておる理由は、無理なしに了解できるように思うのです。これはしかしさらに一つ考えてもらいたいと思います。もう一つ、私が第二に伺ってみたいのは、どうもいろいろな団体が幾つかあって、判こを並べて陳情を出してきますが、それぞれのものが事情が違うということ、広く言って酒という概念の中には入るのでしょう。酒という概念の中に入るには入るけれども、そういう一般普遍概念の中に無理に入るというだけであって、実際品物が違う。品物が違うから、生産条件も需要条件もまるで違う。さらに、洋酒のように全く自由になって、今度の改正なんというものはもう痛くもかゆくもないような団体もある。これを一括して適当な結論を出そうというのは、これは数字の問題でもなかなかそういう問題は解けないのじゃないか。大ざっぱなことを言って、いいがげんな、寄せて半分に割るようなことをやれば別ですが、まるで違った問題から一つの答えを出す。そこで私はこういうことが考えられる。つまり統制をはずしてくれというのが全体の意向であれば、はずしてもいい。あるいは、そうでなくて、大体業界によってまず清酒なら清酒というものだけを分けて考える。ビールや洋酒と一緒に考えないで別に考える。そして清酒の生産及び需要というものは現在違うのですから、分けて対策を考える。(「ビールと洋酒は別だ。それが十ぱ一からげだから矛盾が多い」と呼ぶ者あり)私は奧村君の入れ知恵で考えたのじゃなしに、しろうとの考えというものは存外公平なんです。どうも私は、違った問題を一緒にして一つの方程式で解こうとしておるのじゃなかろうかと思うのですが、そういう感じはしませんか。
  28. 原純夫

    ○原政府委員 おっしゃる通り、清酒について他の酒類と違う事情があるということは確かであります。それはもう私どもも承知の上でございます。従いまして、このマル公問題、またマル公がないあとの新しい価格への推移という場合にも、具体的な適用上、態度に違いがあるということは明瞭であります。ただ、それが、たとえば他の酒類については今回の法律案適用してよろしいけれども、清酒については適用なりがたいという意味の真反対の違いかどうかということになると、必ずしもそうではない。やはりおそらく時期の問題、またやる場合の——やる場合というのは、マル公を廃止して新しい価格体系に移る場合のいろいろな準備措置、あるいは並行措置に若干の差が出てくるという問題ではなかろうかというふうに思っております。
  29. 山本勝市

    山本(勝)小委員 少くとも、主税局長は、問題は特殊性を持っておって違うということは認められる。そういう違った問題を同じように扱うということは、扱えぬこともないと言われたけれども、違った問題を同じ方程式で解こうということは、酒の問題ではなくて、一般抽象的にも、違った問題を同じ方程式で解くということは無理です。これは認められるでしょう。
  30. 原純夫

    ○原政府委員 もちろんおっしゃる通りでありますが、違った問題の解き方が永久に全然違う方式で解くことになるかどうか。つまり清酒については永久にマル公でいくのである、他の酒類についてはこういう新しい価格体系でいくのである、ということになるかならぬかという問題だろうと思うのです。
  31. 山本勝市

    山本(勝)小委員 そういう問題じゃないのです。別に分けて一つこの問題を考えてみたらどうかと言うのです。
  32. 原純夫

    ○原政府委員 私どものお願いしている法案は、もし分ける必要があるというふうならば、新しい価格体系を清酒についてはすぐには適用しないような運用をすることでいいのではないか。現に今お話しの、ある雑酒につきましては、すでにもう七、八年も前にマル公からはずれておるわけです。今後雑酒以外の酒類もマル公がなくなる、新しい価格体系に移るということになる。私はおそらく清酒の問題も時期の問題だと思います。これはまた非常に国際条件が変るというようなことで、食糧事情が苦しくなり、また全般に規制が加わるということになれば別ですが、今の態勢が続く限り、これはやはり時期の問題だというふうに思います。従って、清酒については、新しい価格体系に移る時期は一番おくれるだろうと私は思いますが、要するに時期の問題だというふうに思っております。
  33. 竹下登

  34. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 この酒団法の改正案の通過を政府は非常に急いでおられるように見受けられますが、しかし、これは非常に重大な法律改正でありますから、これから私は本腰を入れて十分政府の真意を承わりたいと思う。  まず、冒頭に申し上げたいことは、戦前戦後を通じて酒類業界の安定というものは、何としてもマル公制度によって貫かれてきたもの、私はかように思う。これは政府ではどう考えておられるか知らぬが、マル公制度によって業界が安定している。諸種の統制ははずれたけれども、マル公制度があるがために、消費者に対してはマル公でもって酒類が供給されてきた。ここに私は大きな業界安定の骨組みがあると思う。これを政府が近いうちにはずそうとしている。それならばその後の酒税の確保、業界の安定はどうするかということのために、政府は酒団法の改正を用意してこられたが、私どもとしては、政府改正案でとうてい業界の安定、ひいては酒税の確保は望めない、安心できぬと思うのです。そのいろいろな事情また不安をこれからお尋ねいたしたいのですが、私の質問の前にすでに山本委員からお尋ねがありましたように、酒類業界と申しても、清酒、ビール、しょうちゅう、それぞれにいろいろの事情があり、違うのです。ビールはわずか四社で、見方によっては独占企業体のようなものです。清酒は四千軒以上もある。しょうちゅうについていえば、わずか十社でもって生産石数の八割を占めており、あとの百三、四十社で残りわずか二割をやっておる。いうならば、清酒はほとんど全部中小企業で作られておる。ビールの二割は中小企業者であるが、八割の石数は大企業が作、ておる。こういう実態についてはまたぼつぼつ御答弁を願いますが、こういう業態が種々雑多であるものを一つの法律規定し、酒税も確保し、業界も安定させようというような、そんな欲ばったことを政府が期待なさっても、これは無理じゃないかという私は非常な不安を持つ。つまりこれは中小企業団体組織法と酒類業団体法とを比べあわせてみれば一目瞭然です。酒類業界取引方法や協定などというものは、独占禁止法から除外される。独禁法から除外されるのは、酒類業団体が酒団法によって除外される。それなら酒団法の中にはどういうものがあるかというと、大企業もあり中小企業もある。本来は中小企業団体組織法によって守られるべき業界の安定が、大企業もその中へ一緒に加わって守られるような、そこにまず大きな矛盾が一つある。また、業界の安定だけでなしに、酒税の確保ということが加わっておるから、これまた大きな矛盾で、酒税の確保をするためには数量の制限はできない。価格を安定させなければ業界は安定しない。この矛盾を一体どう解決するか。それから、山本委員のおっしゃるように、自由をなるべく残しておきたいが、しかも統制がなければいけない。その自由と統制をいかに調和させるか。調和はできていない。まあ木に竹をつないだようなところが各所にあるのですね。また、大企業と中小企業ということは、言葉をかえていえば、今度は生産者と卸業者小売業者との利害の対立、これはどうしてもどうにもならぬ利害の対立がある。だから、これをどうしろと言われても、これは私が大蔵大臣になってもちょっと十分な案はつかぬです。しかし、これを解決する努力が私はまだ政府に足りない、こういうふうに法案を読んでみて思うのです。こういうことでありますと、まるで生産、卸、小売、これをたとえば今度は再販売価格の維持契約をしようというのは、これも独占禁止法から排除してこれを入れようとなさるが、これは下手をすると、まるで生産者が小売価格をきめるのですからして、生産者はきついのには違いない。そうすれば小売業者のマージンというものは押えられる。だから、この法案を見ると、ライオンとネズミを一つのおりの中に入れて仲よくさせていく、こういうねらいも含まれているので、果してそれがそのようにうまくいくかということも十分お尋ねをしてみなければならぬ。うまくいかなければいかないように、どうしたらいいかということもやはりこの審議で速記録に残しておいて、今後この法律が実施される場合の業界の一つの指針にしなければならぬ、かように私は思うのであります。従って十分の時間がいただきたい。その審議の要綱はあとからお見えになったからお配りしますが、これをとっくり一つ聞かしていただきたい。ここにもありますように、中小企業団体組織法との関連性について、通産省の中小企業局長なり公正取引委員会から政府委員に来ていただいて、この関連性も十分聞かしていただきたい。従って、これは委員長にもお願い申し上げますが、十分の質疑の時間を与えられたい。     〔竹下委員長代理退席、小委員長着席〕 特に、要求政府委員は、委員長の手元にも差し上げましたように、大蔵大臣初め、今お見えの政府委員のほかに、公正取引委員会の事務局、それから通産省の中小企業局長らをこの委員会に御出席願って、これは午後一つお尋ねを申し上げたいので、十分の質疑の時間を与えていただきたいと思うのです。  これに関連してまず政府お尋ねいたしたいのは、これほど重要な法律案を、政府はそれほど実施を差し急いでおられるのなら、なぜもっと提案を急いでされなかった。たしか国会に提案されたのは三月の四日ですか。御承知の通り、当大蔵委員会においては税制改正案その他六十数件もの重要法案をかかえて審議に励んでおる。従って、三月へ入ってこういう法案をお出しになっても、とてもこれは十分な審議ができない。それから、私の考えでは、税制改正案につきましては、これは直接昭和三十四年度の予算に関連がありますから、三月三十一日までにはぜひ国会を通過させなければならない、かように思う。しかし、この酒団法の改正案は直接予算に関連いたしませんから、何もこの三月三十一日までにぜひ両院を通過させなければならない、こういう理由は私はなかろうと思う。従って、政府におかれても、国会においての十分な審議の機会を与えるということについては一つ御協力が願いたい、かように思うので、この提案のおくれた理由と、それから提案がおくれながら、しかも通過を急ぐ理由、これをまず一つ明確にせられたいと思います。
  35. 原純夫

    ○原政府委員 実は大へん意外な御質問なんです。率直に申し上げまして、そうおっしゃられることはない約束になっておるわけであります。(奧村小委員「そんな約束はない」と呼ぶ)それは、この問題につきましては、すでに昭和三十一年ごろからいろいろ議論がありまして、私の記憶いたしておりますだけでも、三十一年の臨時税制調査会が、はっきりと答申案において、マル公というものは時代おくれであるから、新しい価格制度というものを考えなさい、そうしてそこで業界の合理化、それから消費者の方も考えなさいということを言っております。その後昨年の懇談会にもそういうなにがありましたが、現に御質問者の奧村さん自身、昨年三月の本委員会において、物価統制令というものは新憲法時代には合わない古くさいものである、むしろ、酒税の確保のため、業界の安定のためには、あの酒類業団体法がある、もういいかげんに物価統制令という戦前の遺物のようなものにたよらないで、団体法に基いてそれをなさったらどうですかということを、まだそういうことを三、四箇所言っておられます。それで私どもは鞭韃を受けたわけであります。それで、おくれた、おくれたと言われますけれども、この問題に関する審議というものは、非常に前から業界にも問いかけておりますし、中でもやりましたし、国会の筋にもいろいろ申し上げてあります。いずれにいたしましても、この問題はいわば長年の問題で、非常に練ってきております。最終提出いたしましたこの法律案は、相当いろんな面から手当をするといういろいろな手だてのできるような形になっております。若干与党にも相談がおくれましたのは、まあ率直に申して私としては非常にいい法案になったと思いますが、非常にいい法案というのは、今お話しの公正取引委員会あるいは法制局その他に酒類業、酒税というものの特殊性を十分わかってもらって、それだからこういう手だてができたということを説くのにも時間がかかったという経緯がある。問題としては非常に前から議論をしております。業界とはもう昨年の春、例のしょうちゅう問題で、現在のマル公制度というものはいかに業界の安定を害するか——先ほどは安定するとおっしゃいましたけれども、昨年の春は、これによって蒸留酒業界はどういうことになるかという危地に追い込まれた、というような事実もあります。そういうようななにを受けて、昨年の七月には酒類八団体に研究を要請しておりますし、また十月にさらに本件に関する具体的な問題点をあげまして、八団体に検討を頼んでおる。さらに、中間的には、昨年の十二月に八団体に改正案の構想を説明しておる。その後、その際説明しました構想よりもはるかに都合のいいような——都合がいいというと語弊がありますが、万全のものにするために一月が費されたというようなことでありまして、本法案がおくれた事情についてはそういうことですが、ここまで来るのには相当長きにわたり、かつ関係方面にも——まあどこまでいっても十分だとは言い切れないかもしれませんけれども、相当意見は出していただいて練ったつもりでおります。もちろん、なお練らんならぬという御趣旨はわかりますけれども、少し率直に申し上げ過ぎて、あるいはおとがめのある点がありましたら、お詑びせんならぬ点があるかもしれませんが、あまりお責めにならぬようにお願いしたいと思います。
  36. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 いつも原主税局長は非常に温厚なお方で、私もひそかに御人格に信頼しておったのですが、ただいまは、どうも私の言葉じりをおつかまえになって、しかも与党内の事情までも委員会にさらけ出して言われるということにつきましては、まことに私はこれだけは残念に思います。私も、政府委員の御答弁言葉じりをつかまえてぎゅうぎゅう締め上げていくということについては、これは人後に落ちぬつもりでありますが、なるべくきれいに、柄の悪いことは慎しまねばならぬと思っておりますのに、今度は、政府委員の方から、私のしゃべったことの言葉じりをつかまえて逆襲されるということは、私は国会議員になってから今度が初めてであります。それは速記録をごらんになっていただけばわかりますが、なるほどマル公は、これは物価統制令に基準を置いておるから再検討しなければならぬということは申し上げた。しかし、ただ単純に、それだからマル公をはずせということには私は結論はいかぬと思う。むしろあの速記録を初めから終りまでごらんいただけば、私の真意は、現在の酒団法そのものは、行く行くマル公廃止後の業界安定に対処するための唯一の規定であるからして、どうぜマル公の寿命は短かいんだから、酒団法というものを法律の通りにもっと実施せられて、業界安定を期せられたい、何どきマル公が廃止になっても安心なように、酒団法でもって業界を安定してもらいたい、それからして、酒団法が生まれて七年たっても、かなり乱売競争があっても、いまだに協定価格一つできないということでは、こんな状態でマル公が廃止されたら、これは大へんじゃないか、こういう意味を私は申し上げたのであって、あとのことはどうとなれ、マル公だけ先にはずせ、そんな意味で申し上げたことは断じてないので、これは一つあしたにでも、今晩のうちにもう一ぺん速記録を読み直して、一つ御答弁——これは訂正を願いたいくらいに思うんです。  それから、与党へも早くからお話があったそうですが、与党においてもいろいろと問題があった。と申しますのは、昨年の臨時国会において、マル公を廃止するかどうかという議論のときに私は申し上げた。もしマル公を廃止するとすれば、現行の酒団法だけではできぬのだから、現行酒団法を改正しなけりゃならぬ、従って、急いでこのマル公を廃止するならば、去年の臨時国会に、あるいは通常国会冒頭にこの酒団法改正案を御提案にならなければ、準備はおくれるじゃないかということで、政府の真意をただしたところ、いや、まだそこまで考えておらぬ、こういうことだった。そこで、それじゃこの通常国会の再開冒頭にお出しになるかというと、これもお出しにならぬので、われわれ大蔵委員の中では、これじゃマル公廃止はかなりおくれるんか。私どもはマル公廃止の前に酒税の減税をしなけりゃならぬ。その酒税の減税が行われないということが私どもは非常に不満であった。そこで、準一級酒の構想を持ち出して、減税にかわるわけではありませんが、せめて業界の実情に合わした施策をとられたい、こういうことをこの委員会で申し上げて、大蔵大臣の言明を得たいと、ここまでの準備をしておった。ところが、二月の月に入ってからお出しになった。しかも、党の政調会にお出しになったときは、わずか一ページに要綱が書いてあった。そこで、私は、そのとき、こんな要綱でかいつまんで書いてあって、これは何ですか、これは酒団法の現行法を読み返し、あるいは中小企業団体法と読み比べて、とても意味がわからない、もっと丁寧に親切に法案の内容を詳しく御説明をして下さらなければ審議ができないからというので、出し直しをしていただいた。そうして、条文にまとめて持ってきていただいたのは、それから十五日あとでした。いずれにしても、これから質疑だけは十分にやりましょうや。
  37. 山本勝市

    山本委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時五十七分開議
  38. 山本勝市

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  39. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 私は、酒団法並びに酒団法改正案と独占禁止法の中の規定との関連、あるいは中小企業団体組織法との関連などにつきまして、公正取引委員会の事務局長、並びに、通商産業省の中小企業庁長官がお見えでありませんので、そのかわりに振興部長と、それから主税局長お尋ねをいたしたいと思います。  それでは午前中の質疑の続きをいたしたい。まことに恐縮ですか、主税局長はまことに御答弁が上手で、非常に丁寧な御答弁ではあるが、どうも要領がよ過ぎて、肝心のこっちのお尋ねしたことは的をはずしておられるので、ちょいちょいそういうことがあるので困るのです。私が午前中お尋ねしたのは、提案が非常におくれたにかかわらず、この酒団法改正案を至急通過させなければならぬ。特に予算関係の税制改正案などの緊急重要法案が大蔵委員会にまだ山積しておるのに、予算に関連していないこの法律案をそんなにお急ぎになっても、実際上として委員会の運営上なかなか困難であるが、それほどお急ぎになる理由があるのか、その理由が明確であれば、政府の御方針にわれわれも順応して、できるだけ審議を進めて修正するなり何なりして、早く国会を通過させたい、かように思うので、その理由をお尋ねしたのですが、局長の御答弁は非常に御丁寧であったが、焦点だけはずれておったと思う。どうぞこれからもお尋ねした要点だけは、つぼをはずさぬように、もしつぼをはずれておるとまた再質問をやらなければならぬので、時間がそれだけ経過して政府の意図にも合わぬということになりますから、そのつもりで明確に御答弁願いたい。
  40. 原純夫

    ○原政府委員 この改正法案の提案がおくれましたことは、私は大へん恐縮だと思っております。しかしながら、本件につきましては、いわば数年来しきりに、その必要を言われてきたところでありまして、実質的には関係者の間で相当議論が出ておる。これは国会関係も含めていろいろ論議の出てきたことでありますので、大へん押し迫った時期にお願いして恐縮でありますけれども、極力審議を急いで上げていただきたいと思います。特にそれを強くお願いいたしますゆえんは、いつも従来のマル公に乗っかった価格制度というものが、いわば時代おくれになっておるということを言われることを久しくなっておりますし、それとうらはらをなす酒の需給というものは年々ゆるんできている。そのために、昨年は、蒸留酒関係でむしろマル公で相当業界は乱れたというようなこともありますし、最近はいろんな酒類について値くずれというような現象がやはり相当ひんぱんに起ってくるというような状況であります。新しい仕組みをしいて、そうして新しい器に新しい時代の経済を盛るということは、ぜひ速急にそういう備えをぜんければならぬ時期だと思っております。もちろん、そうかといって、この法案が通りましたらすぐにマル公を一斉に廃止するというような性急な考えは持っておりません。十分慎重に、移行の際の準備も整え、また摩擦も少いようにいたすつもりでありますけれども、法律的な備えをしておくということはぜひ必要であると思いますので、先ほど申しましたように、至急御審議をいただいて、ぜひ成案になりますようにいたしたいと思う次第でございます。
  41. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 この点は大事な点でありますが、どうも、あなたの御答弁では、残念ながらわれわれを納得させるだけの理由に乏しいから、そこをようお考えになっていただきたい。重ねてお尋ねいたしますが、今の御答弁では半月や一月ぜひ急がなければならぬという理由は何ら見出せないから、それじゃ実はわれわれも困るのです。というのは、予算に直接関連する税制改正案などでありますならば、これは四月一日施行のものであれば、これがもし審議がおくれて法律にならぬということであれば、さしずめ予算の執行に穴をあけるわけです。ところが、この酒類業団体法の改正案は、業者取引形態に関し、あるいは価格協定に関しての法律案でありますから、本来ならば政府法律をもってそうあれこれすべきものでもない。業界の実情は業者が一番よく知っておるので、業者が盛り上ってほんとうに納得していただけるものならば一番けっこう。ところが、その業界がこの案に十分納得しておらぬ。一部の業界では、この法案の内容をよく聞かせてもらって、修正すべきところは修正さしていただいて、十分慎重審議を願いたいという要望がたくさん来ておる。それにもかかわらず、この国会は、実質上はこの三月一ぱいで、四月に入れば自然休会に入る。わずか一週間か十日のところで十分な審議はなかなかしにくい。もっと詳細に審議すべき税制関係の法案があるのじゃないか。そうすると、この一週間か十日のところで審議を強行して法律にせにゃならぬ差し迫った理由があるのですか、こういうお尋ねです。その理由としての一部のお話では、それはマル公は時代に合わぬ——合わぬことは去年からの議論の焦点でした。しかし、といって、政府はマル公廃止を今すぐやれというわけじゃない。これについては、業界においても、たとえばビールなどにおいては昭和三十五年の秋までマル公廃止は待ってもらいたいということを公式に言うておられる。ビールですらそういうことを言うておるのですから、清酒などはもっと延ばしてもらいたい。そうであるならば、ここ一週間や十日にマル公廃止を前提とするような法律案を今ここで法律にしなければならぬということはない。また値くずれがある、乱売競争がある、それがほんとうならば、私はこれからお尋ねしたいと思うのだが、それなら、この団体法を今改正しなくても、現行団体法で協定価格を大蔵大臣に申請して、価格協定をやって業界を安定させる道もある。しかし、その協定価格の実施が行われておらぬということは、事実は値くずれがないのか、あるいは法律がほんとうに執行されていないのか、どちらかであるわけです。とすれば、何もこの法律改正をしなければ値くずれに対処できないというわけではない。これも今お話しの法案通過を取り急ぐ理由には当てはまらぬ。今の御答弁では、おそらくどなたにも納得のいくような御答弁とは思えぬのですが、どうですか。
  42. 原純夫

    ○原政府委員 おっしゃるように、値くずれ現象というものはぼつぼつ出てきております。だんだんよけい出てくる趨勢にあるのは御存じの通りであります。清酒あたりでも相当ひどい値くずしをある地域ではやるのが出てきております。そういう際にどうするか。マル公というものの、いわば因習的なといいますか、伝統的なマル公に乗っかっている心理というもので引っぱっていけるかというと、法律的には、マル公というのは、これ以上の値で売ってはいけない。安く売る分には何の制約もない値段であります。くずれ出したら何のささえにもならぬのです。心理的なささえだけです。現在その場合にわれわれが対処するのに持っておる手だてというものは、お話の協定価格ないしこれに付随する、勧告、命令というものでありますが、われわれの今回お願いいたしておりますのは、そういうものだけでは不十分であるから、協定価格ができる前においても、酒の業界には基準価格というような制度を置いて、政府も乗り出して、そうして酒の価格の適正なレベルにおける安定を願うという態勢を作りたいというのが、今回の改正法案の本旨であります。お話の通り値くずれが随所に出てくる。そしていよいよ血を血で洗う争いということになりますれば、マル公制度というものは、何らその場合のささえにならない。法律的な意味はない。その協定価格というものも、業界ですらすらできるかというと、これは、実際の商売で御存じの通り、なかなかむずかしいものであります。決してこれがあるからよろしいということで、安穏としておれないと私ども思うわけであります。そういたしますと、やはり基準価格を一つの中軸とし、いよいよの場合に協定価格あるいは勧告、命令というような制度を配したところの新しい態勢というものを一日も早く作りたいという気持であります。おっしゃる通り、それは今半年、一年あるいは一年半、どのくらいの期間か知りませんが、新しい制度をそのままフルに働かすという状態がすべての酒類についてくるかどうかということは、私は疑問だと思いますけれども、しかし、もう審議の時間がないからこれを次の機会に送るというのは、私どもとしては、どうもそれでは遺憾な場合が起った場合に困るのではないかというふうに考えます。かつ、本件につきましては、先ほど申しました通り、何年来各般の調査会、懇談会で方向的には指摘され、国会においてももう一年半くらいの間論議され、具体的な案といたしましても、昨年の中ごろ以来、関係者がいろいろ練って、今回も提案いたしますまでにいろいろ関係方面に十分御連絡し、練るという期間も相当ございましたので、それらを通じてお考えいただいて、ぜひ早くこれを上げていただきたいというふうに考えます。  なお、今回の改正法案は、新しい酒についての価格制度を作るというのが一番大きな問題でありますけれども、そのほか、時間的に若干迫られておる問題として、計量法の関係のメートル法施行に伴う改正というものが、これは事柄としてはオーダーは小さいですけれども、やっぱり今年の一月からメートル法になる。酒の関係は税法の関係があるから三月一ぱいまでは待っていただいておるということが、四月からちょっと変なものが残っているというようなことになりますのも困る点もありますので、短かい時間でありますが、ぜひ一つ十分審議を尽されて、結論を出していただきたいと思います。
  43. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 言葉じりをつかまえちゃいかぬと思います。午前中から続いてやっておりますが、だいぶ苦しそうな答弁です。しかし、これは大事な点ですから、われわれも一週間ほどのところで税制改正案その他こういう法案を無理に通そうとすれば、委員会運営にいろいろな問題が起ってくる。それでもなおかつこれを通そうとするには、よほどの理由がなければならぬ。そこで、メートル制が実施になるからこの改正案を法律にしなければ困るということですが、そう思うて私も法律を読んでみたのですが、それはどこが変るのですか。急ぐ理由なんですか。読んでみると、ただ「石数」と書いたものを「数量」と書き直しただけです。それだけがやっぱりそれほどお急ぎになる理由ですか。ほかに何か理由がありますか。
  44. 原純夫

    ○原政府委員 それは形式的な——形式的と言っては悪いのですけれども、序列の低い、大きな問題ではありませんと申しました。私は決してこれは大きな問題だとは思っておりません。しかし、第一の本論の問題は大きな問題であるし、そしてまた、極端に言いますれば、今後値くずれが出ます場合に、協定価格でやれと言って安穏としておれるかどうか。私はやっぱり協定価格でやれと言って安穏としておれぬと思います。何らか役所が乗り出して、基準価格はこれだと言って旗を振らなければいかぬというのが、酒という業界における重い税負担その他を考えて、われわれがとるべき態度ではないかと思いますので、そういう法案をお願いしているのです。ぜひお願いしたいと思います。  メートル法の方は、序列は小さいですけれども、やはり日本の計量単位が新しくなって、石とか尺とかいうものがなくなったというときに、この団体法にはまだ残っているというのもいかがなものかと思うというだけです。それは御判断にまかせます。  なお、審議期間の問題についてはただいまからは一週間くらいとお感じになるかもしれませんけれども、本法案が提案されましたのは三月四日でありますし、五日には本委員会で提案理由も読み上げてお願いいたしておるということで、今までの間割に御審議が少かったというような点もお考えいただいて、ぜひ一つスピード・アップしていただきたいと思います。
  45. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 それでは、私は質問を次に移したいと思います。しかし、ただいま主税局長の御答弁に、実は一番これからお尋ねしたい問題の焦点があると思います。と申しますのは、かなり業界には値くずれがある。乱売競争がある、ところが、現行の酒団法で協定価格を作らせて、それで業界安定をすべきであるが、どうもうまくいかぬから、その酒団法を改正して、いわゆる基準販売価格とか、何とか価格とか、いろいろまた新たにやろう、こういう趣旨の御答弁であったように思う。そこに私は根本の議論の焦点を合わしていきたい。というのは、酒団法ができてすでに七年たっておって、値くずれや乱売競争の場合には、業者が自主的に数量協定なり価格協定なりなさって、自主的に業界を安定なさい。特に去年酒団法を改正して、業界安定という酒団法の目的を新たに加えた。いわゆる酒税の確保だけじゃない。業界の安定のために酒団法を修正して業界に与えた。だから、七ヵ年の間にそういう乱売があり、あるいは乱売のおそれがある、不況に襲われるおそれがあるといえば、もうきょうまでにせめて協定価格の申請があり、それに対する認可がなければならぬが、それがない。一体それはどういうわけか。それをきわめて、現行法にどこに誤まりがあるか、それから出発して改正をなさるならばいいけれども、ほんとうに政府はこの現行法を執行しようともしておられぬように私は感じる。また、業界も、せっかく業界みずから業界安定ができる酒団法を与えられながら、業界がこれになついていかない。食いついていかない。こういうことでは、その上にまた酒団法を改正しても屋上屋を架することになるから、そういうことを私は去年から議論してきた。そのことを主税局長もおっしゃったので、その議論に移っていきたい、こういうわけであります。  それじゃ、せっかく——公取の方や通産省の方もおられますが、これは中小企業団体組織法によって、通産省所管の中小企業団体がすでに協定価格や数量協定をかなりやっておられるはずでありますから、これと比べて酒団法業者の自主協定がなぜ伸びないのか、この比較対照をしたらこの事情がわかってくるのではないか、私はかように思うので、その点をお尋ねいたしたい。  しかし、そのお尋ねに入る前に、現に協定価格が一件も許可されたことがないということを政府は先日答弁しておられる。先日、川野委員からの質問に対して、山口県、大阪府から協定価格の申請が出されようとしたが、小売業者の反対などがあって不許可になった、こういうことです。そうすると、こういう状態があっても、小売業者が反対したから許可しないとかいうふうなことであれば、今後とも現行法では、不況乱売があっても、生産者、卸業者小売業者全部そろって賛成がなければ、協定価格に対しての許可が与えられぬというような趣旨になるのです。それじゃ、将来ともこんな法律があっても協定価格の実施はとうてい見込みがないというようなことになるのですが、そこの事情が一番私は大事と思うので、なぜ不許可になったのか、重ねてもう一ぺん事情をお尋ねいたします。小売業者が反対すれば、その小売業者の反対だけでこれはもう許可はできないものかどうか、そこらの辺もつけ加えて御答弁を願います。
  46. 泉美之松

    ○泉説明員 大阪の卸の価格協定につきましては先般お答え申し上げました通りでございますが、もちろん私どもは小売業者が反対するというだけの理由で許可しないということを言っておるのではないのでございます。その節申し上げましたように、十七銘柄についてやることはなかなか困難だという見通しで、しかし、まあせっかくの卸売業者の方のお話でございますから、協定とまでいかなくても、この酒団法に基かないところの自主的な申し合という形で一応やってごらんになって、その結果を見ながら協定に移るかどうかということを検討いたしましょう、それじゃそういうふうにいたしましょうということで、関係者の方が御納得の上で、今はそういう自主的な申し合せで実行いたしておるのでございまして、従ってまだ不許可ということを言ってはおらないのでございます。その自主的な申し合せの結果を見ながら、今後協定に移すかどうか、十七銘柄では無理かどうかということの検討をいたしておるのでございます。
  47. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 おそらく、私は、通産省の方であれば、中小企業育成の立場から、なるべく中小企業団体組織法の精神のもとに、中小業者の団結のもとに業界安定をやらしていこうというので、積極的に指導育成をなさっておられることと思うのです。そこで、大蔵省におかれても、酒類関係の中小企業がかなり乱売などで値くずれがはなはだしい、またそういうおそれがあるという場合、何しろ業者法律にうといものですから、この法律の精神に基いて、むしろ積極的に、特に乱売のはなはだしいところなんかは協定価格を申請させて、自主的な協定で自主的に業界を安定するように、業界団体を御指導なさるべきであると思うのです。それがなされていないというところに、私は非常に心細い思いをするのです。そこで、主税局長お尋ねいたしますが、ただいま御答弁にもありますように、酒類業界にも地方により部分的にはかなり値くずれ、乱売の事実がある、またそのおそれがあるということをおっしゃっておられる。それならば、現行法に基いて部分的にでも協定価格を実施したいという業界からの大蔵省に対する認可の申請というものが現在ありませんか。また、なければむしろ積極的に、特に値くずれのはなはだしいところには協定価格を実施すべく、そういう議決をするように、実施するように、大蔵省から御指導なさる御意図はありませんか、その点をお尋ねいたします。
  48. 原純夫

    ○原政府委員 その意図は大ありであります。この団体法の現行法でも、協定とうらはらの政府の勧告というのがありますし、酒税保全のための勧告ができる、それからいよいよの場合は命令を出すことができるようになっているということは、現行法でもそういうかまえでおりまするし、また改正法においてはなおさらそういうかまえなわけです。つまり、マル公というのはどうせ時代おくれのものであるから、いずれやめにゃならぬ、やめたあとにおいては、政府は基準価格というものを立てて、ここに一応支柱を置く、そして業界をそれを中心にして安定してもらうように考える、いよいよそれがくずれていくというような場合には、もちろん、協定価格というようなものについて、政府側も、この法律意味の勧告でなくても、行政的に勧告的な態度でやるということであろうと思います。現在でもそういうようなかまえで、いわゆる正常取引、正常取引ということを政府業界もあげてやっておりますのはそういう現われでありまするし、大阪あたりでの例は、たまたまかなりぎりぎりと十七銘柄全部を一本の値段でやり切れるかどうかというあたりに相手方の危惧があったというようなところから、すぐに協定価格までいかなかったということでありまするが、これはやはり協定価格を作る場合のその協定価格のワクの問題、強さの問題、いろいろチェックをしていかなければなりませんので、これで認可が出ておらぬということで腰がまえが反対なんだということにはおとりにならずに、腰がまえはまっすぐそっちに向いているというふうにお考えいただきたいと思うのであります。
  49. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 主税局長から大へん心強い答弁をいただいたので、私は大いに満足しております。しかし、これは立法の立場の主税当局はそうお考えになっても、これを実施される方の国税庁の方——国税庁長官もおられるから、長官や間税部長にお尋ねしますが、主税局長の今の御答弁の御趣旨のように実施官庁の国税庁長官業界を指導しておられますか。それなら、たとえば値くずれなどのひどいところには、自主的に協定価格をきめて認可を受けるようにしたらどうか、というふうな勧告をなさった事実がどこか一ところでもありますか。実は、業界からの話を聞きますと、そんな協定価格を申請したって、どうせ認可してくれぬのだからだめじゃ、というようなことをよく聞かせられるので、業者の言うことがほんとうなのか、お役所の言うことがほんとうなのか、この際ここで確かめておきたいのですが、国税庁の方で主税局長の御答弁のようなあたたかい気持で御指導しておられるか、御答弁をわずらわしたいと思います。
  50. 北島武雄

    ○北島政府委員 先日川野先生の御質問に対してお答えいたしましたように、酒団法に基く各種の協定の認可につきましては、最悪の事態に至らないうちに、そのおそれのあるという場合には、できるだけ早期にそういう方向へ持っていきたいと思います。今までそういう例があるかというお話ですが、価格につきましては、現在東京、徳島で協定を作るよう話し合っているようでありますし、また、価格以外の各種の規制につきましては、たとえば酒類の販売数量の規制につきましては、御承知のように、しょうちゅう甲類、合成清酒、添加用アルコールにつきましては、二十八、九年ごろから現在まで販売数量の規制をいたしております。それから、酒類の生産数量の規制、これは、しょうちゅう乙類につきまして、昭和二十九年酒造年度以降鹿児島県に、それからまた宮崎県及び熊本県の人吉組合におきましては三十一酒造年度から現在に至るまで、こういう規制を実施いたしております。また、酒類の取引条件の規制につきましては、清酒、合成酒、しょうちゅう、雑酒、添加用アルコール、それぞれ数年前より現在まで実行いたしております。それからまた、卸売酒販組合関係につきましては、ビール以外の全酒類につきまして、昭和三十一年七月から現在に至るまで、全国的に酒類の取引条件の規制を行なっております。このうちのあるものにつきましては、国税庁におきまして積極的にお勧めいたして、こういう条件の規制もするように勧奨申し上げた、こういう事実があるのであります。
  51. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 ただいまの御答弁によりますと、数量の規制とが取引方法の規制はかなり行われておるようですが、価格協定の認可においてはいまだ一件もない。この勧告と申しますか、慫慂と申しますか、それは東京の豊島区で話し合ったことがあるという程度にとどままるように今受け取ったのです。特に清酒などですと、九州方面はかねてから乱売で、そのために一部業者が倒産したということも聞いておるのですが、そういう方面において価格協定をお勧めになったという事実はありませんか。
  52. 泉美之松

    ○泉説明員 先ほど長官がお答えいたしましたのは、東京都全体の卸酒販組合の方、それから徳島県の卸売組合の方でございますので、御了承いただきたいと思います。それから、そのほかにも、御承知だと思いますが、高知県の一業者が非常な安売りをしましたので、局の方から御指導いたしまして、そういうことをしないようにとめさせた事例もございます。お話の九州地方は、特に清酒の需給関係におきまして、供給が需要に比較して比較的多いという事情がございます。その点で私ども今後大いに努力しなければならないとは思っておりますけれども、現在までのところ、そういう協定を結ぶということについて、まだ指導するという事績はございません。ただ正常取引を励行するようにという指導はずいぶんいたしましたし、現在も行なっております。
  53. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 現在の酒類業界の実情からいきますと、大体、せっかく酒団法が制定されておるにかかわらず、酒類業界がこの酒団法に基いて自主的に業界を安定させようという意欲に乏しいから、これはお役所だけの責任じゃどうにもならぬので、その点は、私どもも事情はよくわかっておるが、この際業界もよほど反省しなければいかぬと思っております。しかし、この際特に私申し入れておきたいのは、正常取引を進めておりますという御答弁ですが、正常取引をお進めになるについて、どうも酒類業者が頭からお役所におぶさって、正常取引、正常取引と言いながら、実際は業界みずから協定価格も作らず数量協定もせず、結局はどうするかというと、税務署のお役人の手にすがっておるというような実情です。そうすると、税務署の方でどうなさるかというと、そこらを歩いて、清酒などで申しますと、規格があるかないかというので、そこらの小売店から酒を引っぱってきて蒸留して規格を見てみたり、あるいはやたらと店屋に入って帳簿をひっくり返して、ちょっといやがらせ的なことで、乱売しているところをいやがらせするのです。これは確かに正常取引の効果は上るかもしれぬが、それでは少し行き過ぎと申しますか、お役所としてちょっと誤解される向きもありますから、私は、そういうことをなさるまでに、やはり業界みずから協定価格を作り、業界が協定価格を守るべく過怠金を徴収したり、業界が努力しなければいかぬ、そういうふうに、まず業界責任を負わせるように大蔵省がもっと御指導なさるべきだ、かように思いますが、これは私の意見として答弁は求めません。  そこで、この酒団法は、現行法においても、また改正案においてはなおさら、独占禁止法、いわゆる私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に対する大きな除外規定であります。また、中小企業団体組織法における調整規定なども、これは大きな除外規定であると思いますので、この独占禁止法と酒団法との関係、あるいは中小企業団体組織法との関係をお尋ねしていきますれば、酒団法の今回の改正案が独禁法から見て公正なものかどうかということが明らかになろうと思いますので、その点をこれからちょっとお尋ねをいたしたいと思うのであります。  公正取引委員会の事務局長お尋ねいたしますが、酒団法の規定に基くところの価格協定その他のいわゆる調整規定、あるいは今度の改正案には、その上に再販売価格維持の契約とか、また新たに独禁法除外規定がたくさん入るわけです。こういう規定については独占法の適用除外でありますが、適用除外のどの条文に基いてこれはお認めになっているのですか。
  54. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 適用除外のどの条文といいましても、酒類業のこっちの法律の中において、先ほどから問題になっております自主協定がこの業界において特に必要であるという理由があるからして、この法律において独禁法の適用を除外する、こういう建前になっております。
  55. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そういたしますと、今政府が御提案になっておられる酒団法の改正案全体が独禁法の除外規定として、この酒団法改正案によって認められておるのだ、こういう御答弁ですか。
  56. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 これは酒団法の九十三条に独占禁止法との関係が規定してございまして、それは先ほど来から問題になっております各種の協定行為、その行為について法定条件を備えておれば独禁法の適用を除外する。それから、再販価格の維持契約についても、その法定条件を備えて大蔵大臣が認可なさるものについて、公正取引委員会が同意しなければなりませんが、協議を受けて同意して初めてそれが適用除外になる、こういう工合に考えていただきたいと思います。
  57. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 酒団法九十三条の規定によって独禁法を除外する、こういうことでありますが、これは大事なことでありますから重ねてお尋ねいたします。そうなりますと、今度の酒団法改正案の四十三条に基いて大蔵大臣の認可を得たならば、それでもって独禁法除外が認められる、こういうことになるのですか。
  58. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 それは、大蔵大臣が認可をしようとするときは、九十四条でございますけれども、あらかじめ公正取引委員会の同意を得なければならないので、私どもの方が同意をしたものについては適用除外になる、こういう工合になっております。
  59. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そうしますと、いかに酒団法の改正案が通過しても、調整行為とか協定規定なんというものは、一々大蔵大臣を通じて公正取引委員会の許可を得なければ効果は生じない、こういう趣旨に了解いたしますが、それでよろしゅうございますか。
  60. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 私どもの同意を得て大蔵大臣の認可がある、こういう工合にお考え願いたいと思います。
  61. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 中小企業団体組織法における調整規定の趣旨も、今お尋ねしたようなことに対する御答弁と同じ規定になって団体法が動いておる、こういうように承知しておりますが、その通りですか。
  62. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 酒団法の場合とその点は全く同様でございます。
  63. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そこで、振興部長お尋ねしますが、中小企業団体組織法の制定以前には、御承知の中小企業安定法が昭和二十七年に制定されて、間なしに酒類業団体法ができたのです。その酒団法というのは、中小企業安定法の精神をかなり組み入れておるのです。ところが、中小企業安定法が初めての法律で、最初いろいろもたもた苦しんだけれども、だんだん業界の不況に対処するために中小企業団体組織法にまで発展して、近ごろは協定価格とかあるいは数量協定その他がかなり進んできておると思うのです。そこで、大蔵省の方もこれを見習って、もう少し酒類業者の中の中小業者に対しては御指導なさるべきだということを、先ほども私申し上げておるのですが、その審議のために参考までにお尋ねしたいのです。中小企業庁の方で認可された調整規定、つまり数量協定なり、価格協定なり、取引方法なりの概略がわかるようなものがありましたら、御答弁をわずらわしたいと思います。
  64. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 ただいま私手元に資料を持っておりませんので、大体のことだけを申し上げたいと思いますが、私どもの方で認めております団体法に基く組合は、約三百三十ほどございます。そのうち、組合はできておりますが、まだ事業活動の調整をやっていない、つまり調整規定の認可を受けておりません組合が、約一割か一割五分程度ございます。その他の組合は全部事業活動の調整をやっておるわけでございますが、この調整事業の内容といたしましては、やはり一番多いのは、生産数量に関する調整活動とか、あるいは設備の制限とか、そういうものが一番多いわけでございます。それで酒団法の場合と団体法の場合でちょっと違っておりますが、団体法の場合は、価格に関する調整事業は、第一段の生産数量の調整とか、あるいは設備の調整その他をやりました上で、なおかつ業界の安定ができないというような場合に、第二段の措置として価格に関する調整行為が認められておるのでございます。この価格に関します調整は、現在までのところ非常に数が少いのでございます。全部で約五つ程度と覚えておりますが、その程度のものが価格に関する調整事業を現在実行いたしておる次第でございます。
  65. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 お説のように、酒団法との相違は数量協定が先にくるべきものだ。私も全く同感に存じますが、今聞き漏らしましたが、数量協定なりあるいは設備の制限は何件ほど認可されましたか。
  66. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 はっきりした数字を持っておらないのでございますが、六割ないし七割は数量の方の協定を実行いたしております。それからその一部は設備の方の制限も行なっておる、こういう実情でございます。
  67. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 大体そういう協定を認可なさるには、公取の同意がなければならぬのですが、そういう場合は、公取の方で同意を拒否されたようなことは今までありませんか。
  68. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 公取の同意を得られなかった場合というのは、いまだかつて一件もございません。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 それじゃ、公取もこういう中小業者の自発的な協定に基く業界安定を進めておられるのでありますが、それからいきますと、大蔵省の方は、申請も出ぬ先に認可をしないだろうというような印象を業者に与えぬように、くれぐれもお願いしておく次第であります。  そこで、公取の事務局長さんにお尋ね申し上げますが、この通産省の中小企業団体組織法と酒団法と並べてみますと、酒団法は、御承知の通り中小企業者だけでなしに、大企業者もかなりまじって、中には大企業者だけの組合もある。しかも、生産、卸、小売全部含めて、呉越同舟と申しますか、午前中も意見が出たのですが、大きいのも小さいのもごちゃまぜに一律に一本の法律で調整しようというのだから、根本に矛盾があるのです。その矛盾が酒団法の改正案で改正できるようには思えぬので、われわれはここに苦心をしておる。これは政府もおそらく苦心をなさると思うのです。そこで、お尋ね申し上げるわけでありますが、中小企業団体組織法は、何と申しましても中小企業者を重点に置いてあるわけです。いわゆる三百人以下の従業員を擁する事業場を主体にして、これが三分の二以上を占めなければならぬというような趣旨でできておるわけです。ところが、酒団法は、独禁法を除外しようとすれば、これは中小企業団体組織法と同じ精神でいかなければいかぬが、一方に酒税確保という大使命があるために、やむを得ず大企業も中に含めて独禁法を除外しよう、こういうふうに無理ながらそこへ話が入り込んでおる、こういうように私は思うのです。しかし、この無理を解決するには、やはりその業態に応じて、もう少し規定を細分しなければ、ビールも清酒もしょうちゅうも合成酒も一緒くたの法律でというところに矛盾があるので、これは公取として特にお考えいただくべきじゃないか。たとえて申しますと、ビールは、御承知のように、四社で全生産石数をまかなっておるわけです。これはどう考えても中小企業者とは言えません。これの数量協定とか価格協定とかということが独禁法の除外を受けるというのは、しろうと考えではちょっと了解に苦しむのですが、どうですか。公取がこれを御了承になるというのはどういう事情でしょうか。
  70. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの御質問の中にございましたように、国が酒税の保全ということに重きを置いて、酒の取引が非常に正常状態でない、そのために酒税がとれないということから、ここに法定要件を満たす協定を認可しようとなさるものですから、これについては、独禁法上、その法定の要件が満たされている限りは、これは適用除外をする、こういう工合に考えております。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 しかし、一方に業界安定の目的も達成しなければならぬというので、協定価格の制度を認めていこうということであります。そういうことであれば、たとえば清酒とかしょうちゅうなどはそれに特に該当するわけでありますが、しょうちゅうの場合、現在酒団法の中に石数議決権という規定があります。つまり三分の二以上の多数による議決でなければ効果が生ぜないという調査規定です。その規定だけでなしに、三分の二以上の数のほかに、その組合員の製造する石数もまた二分の一をこえなければならぬという規定を入れたのです。そうなりますと、これは中小企業の多数によるところの安定ということが、むしろ造石数の多い人の利害によって縛られてしまう、こういう非常に大きな矛盾をここにはらんでおるわけです。これなんか公取が御了解になるというのは、いかにもおかしいように私は思うのです。そうでなくても、しょうちゅう業界はだんだん独占傾向が強くなりまして、現在では十社でもって八割生産をしておる。残る百三十社でもって二割の生産をしておる。実際いうならば、むしろ百三十社の中小業者のしょうちゅうの組合というものに重点を置いて、これの活動を促進してやる。中小企業団体組織法ではそういうふうな行き方でいっておる。酒団法ではこれが全然さかさまになっておる。しかし、その上におって公正取引をにらんでおられる公取はこれでいいものですか。私はこの際法律改正をせねばいかぬと思うのですが、どうですか。
  72. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 しょうちゅう業界の実情は、今先生の御指摘のような傾向にあると思いますけれども、ここでこの法律によって認められて認可される協定は、消極要件といたしまして、その協定が不当に差別的であってはいかぬという要件が一つ入っております。ですから、その協定の仕方に差別的な内容を盛っておれば、大蔵大臣は当然認可しないという建前をとられる。私どもの方も、大蔵省から協議を受けたときは、その条件を生かして協定内容が公平であるということでこれを認めていく、こういう工合に考えております。
  73. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 通産省の方で中小企業団体組織法に基く調整規定、これは生産者、卸業者小売業者いろいろあるでしょうが、その組合々々で販売価格なりあるいは買入価格なり数量なり、それを独自の立場で協定をきめて認可を受ければいいので、その間生産者と販売業者あるいは小売業者との間の、生産業界ごとの話し合いはなくとも、協定というものは単独で受けられる、かように私は法律を読んでおるのですが、その通りですか。
  74. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 ただいま御質問の通りでございます。ただ生産業者と卸業者との間の問題は、別に組合交渉という制度がございまして、その組合交渉で両者の調整をはかっていけるように考えております。
  75. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 さて、酒団法の提案者はおられますか。
  76. 山本勝市

    山本委員長 今主税局長は、参議院の方で法案が通過するので、ちょっと向うへ行きました。
  77. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 今中小企業団体組織法の方では、組合協約と申しますか、今の御答弁言葉では組合交渉ということでありましたが、要するにその組合協約によって業界の安定を求めることができる、こういうことになっておる。それならば、酒類業界においても、たとえば小売酒販、卸酒販あるいは製造業者との間に値くずれその他不況のおそれもありますしまた不況もありますから、団体協約の話し合いもあり得ると思う。また、そういう御心配があればこそ、再販売維持契約規定までも今度お入れになるのですから、そういうことなら、いっそもう一歩進んで、今の中小企業団体組織法と同じように、団体協約といいますか、組合協約と申しますか、その規定を酒団法の改正案にお入れになるべきであると思うのであります。また、公取もそのようにお進めになった方が、むしろ中小企業を育成するには本来の趣旨であると思うのです。これができないのなら、よほどここに矛盾があると思うのですが、これは両方から御答弁を承わりたいと思います。
  78. 泉美之松

    ○泉説明員 お話のように中小企業団体法の方にあります組合交渉あるいは組合協約の制度を酒類業組合法の方に入れるかどうかという問題につきましては、先年中小企業団体法ができたとき以来、いろいろ検討いたしておるのでございますが、組合交渉という制度につきましては、いい面もあるわけでございますが、逆に悪い面も出てくるおそれもあるのではないかという点から、私どもといたしましては、中小企業団体法によるところの制度がどういうふうに運用されていくだろうか、その成り行きを見ながら、これを酒類業組合法の方に取り入れるかどうかということを慎重に検討したい、こういう気持で今日まで至っておるのであります。
  79. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 今の国税庁の方では団体協約と申しますか、組合協約の規定を入れるにはいい面もあるが悪い面もある。そこで中小企業庁の方の中小企業団体組織法の実施のやり方を見て、うまくいったらそれをまたちょうだいして見習うと、なかなかうまい御答弁を言うておられるのですが、どうですか、組合協約は今までかなり行われて、それを認可した事例はたくさんありますか。中小企業庁の方から承わりたい。
  80. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 昨年の四月一日から団体法が施行になりまして、そのあと団体法に基いて正式に組合交渉をやり、それから協約を結んだという事例はございません。事実上話し合いをやっておる事例は相当あると思っております。これは、私どもの方に出て参りませんので、よくわからないわけですが、事実上の組合交渉、それから組合同士の約束ということはございますが、法律に基くものはいまだ一件もございません。
  81. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 事実上の組合協約はあるというが、それはお調べになっておられますか。もしここで御答弁がいただけるような資料があれば、非常に参考になってけっこうなのですが……。
  82. 川瀬健治

    ○川瀬政府委員 現在調べましたものは持ち合せがございません。
  83. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 それじゃ、組合協約の規定は、一ぺん通産省の実施のお手並みを見てから、酒団法改正をまた次の機会に考えていただくべきじゃなかろうかと思いますので、この点はこれで打ち切っておきます。  今度は、再販売価格維持契約規定を今度の酒団法改正案に組み入れたことについて、お尋ねいたしたいと思います。  公取の事務局長に伺いますが、独禁法の二十四条の二の再販売価格維持契約規定によってすでに実施せられておる再販売価格の維持契約はどういうものがありますか。参考のために伺っておきたい。
  84. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 二十四条の二で指定をしました商品は相当あるわけでございます。再販価格を実際上実施している件数は、キャラメル、医薬品、化粧品等の一部が再販価格の維持契約をやっておりまして、あとは染毛料、歯みがき、家庭用石けん、雑酒だとか写真機、ワイシャツ、こういうものは、商品の指定はしておりますけれども、現実に再販価格の維持契約は行なっておりません。
  85. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 今お述べになりましたような主として日用品や写真機など、こういうものは再販売価格維持契約ができるという指定を公取の方でなさった、こういうわけですね。そこで、維持契約価格の内容は、認可なさったものは化粧品一つということですか。
  86. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 二十四条の一項を読んでいただきますとよくおわかりになると思いますが、これは、商品を指定いたしまして、その指定された商品業者が再販売価格を決定して契約を結んだというときには、認可ではなくして公取に届け出るわけであります。そして、これを届け出て、この再販契約を維持するためにする正当な行為について独禁法を適用除外する、こういうことになっておりまして、それをやっておるのが化粧品の一部である。もう一つ薬品の中で大正製薬がやっておられる。それだけでございます。
  87. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 これは日本で初めてこういうやり方をなさったのですから、これを模範と申しますか、モデルにして、酒団法を今度改正して実施しようというのですから、先に実施した事例をよく承わりたいのですが、これは化粧品なり大正製薬の生産者が、たとえば幾ら幾らと卸売するから、それをまた幾ら幾らで中央卸をやって、末端では消費者に幾ら幾らで売りなさいということを生産者がきめて認可を受けるのですか。届出するのですか。それから届出すればそれはもう自然と認められるのですか。たとえば不当な値段であれば、それはそういうわけにも行きますまい。やはりそういうのは認可でなければならぬのですが、そういう点はどうなっていますか。
  88. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 届出をしましたときに、われわれがのそ届出を受けるだけでございます。しかし、その行為が、ただし書きで、一般消費者の利益を不当に害することとなる場合、それから、その商品販売する事業者がする行為であって、その商品を生産する事業者の意に反してする場合、こういう場合は独禁法の適用を除外しない、こういうことになっております。
  89. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 酒団法の今度の改正案では、大蔵大臣の認可を経なければならぬということになっておるので、そうすると独禁法よりも酒団法の方は規定がきびしい、こういうふうになってくるのですが、立案者がおられぬが、おわかりになっておる人はちょっと御答弁を願います。
  90. 泉美之松

    ○泉説明員 お話のように、独占禁止法の場合におきましては、再販売価格維持契約は届出だけでいいことになっております。それは、その前提条件として、再販売価格維持契約を結べる商品を指定する際に一定の要件がありまして、日常の商品であるとか、あるいは独占的なものでないといった前提条件があった後、それを公正取引委員委員会の方で指定されて、それに基いて再販売価格維持契約を結ぶ、それでその価格が不当であれば、あとになって不公正取引だとかいうようなことで、それがいけないという措置をとることになっております。この酒類業組合法の方におきましては、酒はいろいろ競争関係にあります。それからまた、ことにビールなどにつきましては、先ほどお話がございましたように、四社でやっておるといったような点がございまして、ビールについて再販売価格維持契約を結ぼうとするには、独占禁止法の方では困難なものだと思うわけでございます。しかし酒類業組合法の方ではこれで結ぶようにしたい。それについては、やはり単なる届出制では他の酒類との競争関係からいたしまして適当ではない。やはり価格については大蔵大臣が責任を持って認可して、消費者に不当に不利益を与えないようにしなければならない。かような趣旨から、酒類業組合法の方では認可制をとっておるわけでございます。
  91. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 今のビールもしょうちゅうも酒も一緒くたに酒団法で規定しようという矛盾が、私はここに出ておると思うのです。と申しますのは、独禁法からいけば、ビールなどに再販売価格維持契約なんか許すべきものではないということになる。それを今度は酒団法ではビールも許そう。その矛盾を解決するために、大蔵大臣の認可、こういうふうにおっしゃるのですが、独禁法では当該商品について自由な競争が行われておるということが大原則です。ところがビールは自由な競争といえるか。四社しか作れぬ。新たにビールを作りたいといったって、なかなか大蔵大臣が認可せぬ。そういう独占的なものが再販売価格維持の契約をするということは、事実は独禁法の非常な違反になると思うが、どうですか。公取は、もしこの酒団法改正案が通過して、大蔵大臣がビールを維持契約に指定するという場合には、さっそく同意なさるおつもりでこの法律案に御同意になったのですか。
  92. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 この法律案でビールの再販価格をすぐ認めるか認めないかということは、今それを独禁法の点から見て、非常にむずかしい、あるいはやさしいということは、ちょっと私から申し上げにくい点もございますが、再販価格の維持に関する契約規定は、大体独禁法の再販価格維持契約規定をまねて、しかも酒税の保全のために必要だということでお入れになりたいということで相談を受けましたものですから、それなら差しつかえない、こういうことでこの法案に同調したわけであります。
  93. 山本勝市

    山本委員長 ちょっと私聞きますが、独禁法というものは経済の憲法みたいなものだ。それから、酒税の確保ということは、それに比べれば、私は非常に軽いもんじゃないかと思う。重さが違うもんじゃないかと思う。それで、酒税の確保というようなことさえあれば、今度独禁法はどんどん除外していけるというような実際の取扱いであると、これは大きな問題になりはせぬかと思うのですが、そういう点もう少し検討の余地はないですか。
  94. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 それだけでなくして、先ほど間税部長もお答えになっておりましたが、大蔵大臣の認可に際して消極要件がついておりまして、その消極要件を十分吟味することによって、今山本委員長のおしやった問題も解決されてくるんじゃないか、こう考えております。
  95. 山本勝市

    山本委員長 それから、ついでだけれども、再販売価格というものは指定しておっても、割合実行してないようですが、実行しておるのは大正製薬の製品と、それから化粧品もたくさんありますが、そのうちの幾つかでしょう。これはやはり非常に困難な事情があるのでしょうが、うまくいっておるんでしょうか。それをちょっと、簡単でいいですから……。
  96. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 商品指定をしてくれという申請は業界からずいぶん参りまして、指定は、今の大前提であるところの競争が自由に行われること、一般日用品であるということの前提でいたしますが、業界内部の話し合いがなかなかおつきになりにくいというように私どもは伺っております。それが一つと、それから再販価格維持契約適用除外の規定がここにありまして、消費組合であるとか農協だとか、こういう組合のところは、これは再販価格適用除外にしておりますから、そういうところはどんどん安く売っておるわけです。そうすると、周囲の小売店が、再販価格をやっても、そこからくずれてくるというような実情もあるように聞いておるわけであります。
  97. 山本勝市

    山本委員長 そうすると、現在の大正製薬やそれを実施しておるところは完全にいっておりますか、もうすでに二つやっておるというところは。それも形だけで、実際は守られていないのですか。
  98. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 その点はまだ実態的にフォローして調査しておりませんが、今やられておるのはある程度うまくいっているんじゃないかと考えます。
  99. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 政府委員にちょっとお尋ねしますが、この再販売価格維持契約は、実際酒類以外にはまだそう軌道に乗っておるように思えぬ。今の公取の御答弁によってもそう思えぬのですが、一体こういう規定を入れたこの法律案が通過して、さしずめこの法律に基いて再販売価格維持契約の指定をする酒類は何ですか。その予定を一つ……。
  100. 泉美之松

    ○泉説明員 これにつきましては、先ほど公取の事務局長がおっしゃいましたと思いますが、酒類をまず指定するときには、公取の方に協議することになっております。それが一つ。それから、さらに、その指定に基きまして再販売価格維持契約を締結する。それを承認するときにまた公取の同意が要る、こう二段がまえになっております。  指定しようという酒類といたしましては、目下のところ洋酒、ビールを考えておりますが、そのほか場合によっては清酒特級酒なども再販売価格維持契約ができるのじゃないかと思って、検討を進めております。
  101. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そこで、困ったことになってきた。私は、こんな法律規定を入れたところで、酒類の中にこんな再販売価格維持契約を指定するような適当なものはそんなにたくさんないと思う。御答弁によると、洋酒、ビール、それから特級酒ですか。特級酒は御承知のように制限価格をなくするのですから、こんな規定を入れなくたって、独禁法に別に抵触することはなくなると思う。それから洋酒はすでにもうマル公ははずれておるので、そんなにあわててこんな法律を入れにゃならぬこともない。どうですか。洋酒なんというものは、これこそ価格はまちまちですので、そして酒税確保のためというたって、税率は比較的低い。三リットルで六百円一律でしょう。一番のねらいはビールでしょう。ビールは一番不適当ですよ。独占的な傾向が一番強い。第一独禁法の自由な競争が行われていない。大蔵省は今後どんどんビールの製造の認可をなさるつもりならそれはわかる。公取の事務局長さんは、ビールなどさしずめ認可を申請なさったって、とても同意できそうもないようなお口ぶりです。それはまた法律を読んでみたって認可できそうなはずはない。そういうできもせぬことを法律に書いで今から用意をするということが理解できぬのですが、御答弁があれば伺いたい。
  102. 泉美之松

    ○泉説明員 洋酒につきましては、すでに独占禁止法の方で再販売価格維持契約が締結できる商品名に指定されておるのでございます。従って、今回酒類業組合法の方で、この制度を作ったら酒類業組合法の方でも指定したいという考えでおるわけでございます。なるほど、お話のように、洋酒につきましては現在マル公は撤廃されております。従って、マル公との関係からいけば、必ずしも特に新しく価格指定をやらなければならぬ必要があるかどうか、それは問題があろうかと思いますが、洋酒業界は、御承知のように、ごく大きなメーカーを中心といたしまして、ピラミッド型の構成をとっております。そこで、一番ピラミッドの頂点になりますところの業者価格をくずすと、あとのピラミッドの下積みの方の業者に非常に影響が大きいわけでございます。そうしますと酒税の確保に差しつかえが起きる。従って、ピラミッド型の頂点にある業者は、できるだけ価格の維持に努めてもらいたい。そういう意味では、そこの頂点にある数社が再販売価格維持契約を締結するということは、洋酒業界の酒税の確保、またひいては業界の安定ということに大いに役立つのではないかというふうに思っております。  なお、ビールにつきましては、なるほど業者は四社でございますが、その間競争は相当激烈でございまして、四社間の競争は相当あるわけでございます。そういう意味では私どもは必ずしも不適格なものとは思っておりません。ただ、ビールの生産は、技術的にも設備資金的にも相当多額な金を要しますものですから、簡単に製造ができにくいという事情はありますけれども、四社以外に免許しないという方針を持っておるわけではございません。この点御了承いただきたいと思います。
  103. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 ビールについての今の御答弁について、どうですが、公取の方は今の御答弁で満足できますか。公取の使命であるところの公正取引を確保するという使命がそれで全うせますか。公正取引を維持するためにはいわゆる私的独占を排除しなければならぬ。不公正な取引、不当な取引を押えなければならぬ。その私的独占というものは、事業者同士が通謀したり協定したりして不当に価格をつり上げたりしやしないかということですが、ビールは、四社でもって話し合いをして、協定価格を作ったり、あるいは再販売維持契約を作ったりということが非常にしやすい。こういうものを公取が認めるということになれば、これは独禁法の精神というのは根底からくずれてしまう。公取はそれでよろしいですか。
  104. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの問題は独禁法にとっては非常にむずかしい問題でございまして、これは、ビールのみならず、たとえばガラス事業においては旭硝子と日本板硝子、こういうような格好、これは、最近のはやり言葉でいえば、いわゆる寡占といいますか、オリゴポリー、少数独占の事業があります。しかし、少数独占の事業がおのおのの力で競争していることは、全体的に見れば社会的にはなるほど少数独占の状態だといえますけれども、法律的には、二社なり三社なりの巨大企業が、ある事業分野にあってこれが競争しているということになれば、これは独禁法の問題にはなりません。そこで、今御指摘のその少数独占の会社が共同謀議をするということになれば、これはまともに独禁法の問題になる、こういうことになっています。独禁法の母法であるアメリカの反トラスト法でも一番頭を悩ましているそういう産業界のあり方については、これでは押え得ないという建前になっています。
  105. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 先ほど委員長の言われたように、独占禁止法というものは経済の大原則であって、そう除外規定や除外の法律をたくさんこしらえたのでは、大原則がどこかへいってしまうじゃないか、こういう御説に私は大賛成です。それからいきますと、洋酒は独禁法によって再販売維持契約の指定を受けておるというのでしょう。そのように、ビールもあるいは特級酒も政府はそういう再販売維持奨約が必要というなら、酒団法の規定でなしに、独禁法の規定で維持契約の指定を受けたらそれでよかろうと思う。今の白紙委任状——同意を得るといいますけれども、どうせこれは形式的なものでしょう。公取もそう何もかも大蔵省へ城を明け渡さずに、再販売維持契約規定は酒団法に入れずに、やはり公取が指定なさる、こういうふうにいかれるのが私はよかろうと思うのですが、公取の御意見及び立案者の主税局長の御意見、両方承わっておきたいと思います。
  106. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 これは、今御指摘のように、あるいは独禁法の再販価格の維持契約の条項でやられても可能であろうかとは思います。しかし、二十六年の酒団法ですか、そのときにすでに協定価格の独禁法からの適用除外規定を作っているわけです。従って、再販価格というものの実態が独禁法自体にも適用除外をしているのであるから、それがどちらの法の規定をされても実態的には一向差しつかえないのじゃないか。ただし、今同意は形式的であろうとおっしゃっておられましたが、私どもはこの同意は非常に厳密にやるつもりでおります。
  107. 原純夫

    ○原政府委員 これを独禁法の体系でやるかどうかということはもちろん議論のあるところでありますが、御案内の通り、酒という商品は非常に多額の税を負担するものとして生産され販売されるものである。私ども税の当局としては、税が確実に入るということについては非常な関心を持つわけです。そういうような意味で、通常商品と違うということから、もうすでに数年前からこの協定価格を酒団法に入れていただいて、今回もお願いいたしております。格好は基準価格というような他の商品に例のないことをやろうということでありますので、そういう経過とまた事柄の実態からいって、酒団法に規定するのをお認め願ったという次第でありまして、これはやはり酒という商品実態を特にお考えいただいてこういうことになったというふうに御了解願いたいし、またそういう線で先ほどお話しの大いに協定を勧告しろというような線であれば、やはり一種の特殊な商品群としてお考えになる意味から、こういう形を御是認願えるのではないかと私は思うのでございます。
  108. 山本勝市

    山本委員長 ちょっと私関連して伺いますが、私は、今言った経済における競争というのは、経済という立場から見れば生命だと思う。だから、その経済の生命を維持するために公取というのが置かれておる。そして、業者からは反対がありましても、独禁法というものを日本だけでなしに作っておるのだ。ですから、経済という立場からいえば、競争というものを維持していくということを日夜忘れぬようにしなければいかぬと私は思う。  もう一つ、社会的な面から、経済は競争だけれども、社会的な合理性といいますか、社会的な関係も考えていかなければならぬ。そこで、そういったような、たとえば社会的な面からいろいろ保護すべきものもありましょう。しかし、競争の面だけはやめさせる、一種の独占を形成させるということで保護するのでなしに、競争はさせる、しかしその他の面で保護していくというか、負担をかけない。簡単に申しますと、独占を形成さすことによって、競争をやめさすことによって保護するのじゃなくて、税金の方などはむしろ軽くすべきだ。競争はさせる。それを税金の方はうんと負担をかけて、税金を確保するというために——これは一例ですよ。税金だけじゃありませんが、外部で非常な負担をかけておいて、今度はそれを確保するというか、になっていかせるために、競争は困るからといって、今度は競争の方をなくして保護していこうということは、これは酒の場合だけじゃありません。一般的にポイントが逆じゃないか。つまり競争は確保していく。しかしその他の面で、競争を阻害していない点で保護していく。突っかい棒をしてもよろしい。ところが、ほかの点で負担をかけておいて、競争の方を緩和して、それで一つその負担をになっていかせようということは、これはこの法案に直接関係して申し上げるのではないですけれども、よほど考えていってほしい。つまり生命を失うようなことになるおそれがありはせぬか、こういうことです。これは、この法案だから反対という意味じゃなしに、一般的な考え方として御感想を聞いておきたいと思います。
  109. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの山本先生の御意見は、私ども全く同じような意見を持っております。しかし、山本先生の御専門であられるエアハルトの、いわゆる自由主義論の彼の反カルテル論も、ドイツの現実の産業構造においては、かなり骨抜きの独禁法ができざるを得なかったということは、やはり山本先生のおっしゃる理念は理念として正しいと思いますが、現実に当てはめるときは、そこに応用する原理は多少の修正が必要じゃないか、こう考えておりまして、その修正はもちろん先生の御注意の通りに行き過ぎてはなりませんけれども、ある程度の独禁政策の理念の修正された型で独禁の法律の体系ができ上っていく、こう考えざるを得ないのではないかと思っております。
  110. 原純夫

    ○原政府委員 ただいまの小委員長お話は大へん重要な点でありますので、私どもとしての意見を申し上げさせていただきます。率直に申し上げまして、小委員長の意見を徹底していきますと、その終局は酒税負担否定論ということになると私は思うのであります。もわろんそういう考え方があると思います。およそ私企業の自由な活動を税というものはやはり制約を加えますし、税が乗っかればそれだけ危険負担も大きくなるというようなことでありますから、完全な、障害が一番少い形で私企業を行うということになれば、税はゼロまで否定されるということになるわけです。その点、私どもは、やはり酒類というものは、その嗜好性のゆえに税をかける物資としては、各国とも最も間接税の体系の中では好適な対象である。たばこと並んで重い税をかけておる。現在の日本の税も重いですけれども、英、米、仏、独、そういう各国の税負担に比べるとまあまあというところであって、おっしゃるように単純にこれを排除することによって、この業界を救うというか、安定させるという考え方では、私は財政収入の主軸の一つである酒税収入の将来か非常に心配だという感じがいたしますので、その辺は、やはり財政需要の総体の中において、酒税でとれないのなら何かで国民が負担しなければならぬ、そういう税体系における他の代替的な課税の可能性、その限界というものをあわせて考えなければならぬ問題である。私はそこにはなかなかむずかしい判断が要るのじゃないか。率直に申せば、やはり酒は相当負担をしていただかなければならぬのだから、おっしゃるようなすべての障害を排除した条件における完全自由競争ということを理念として酒の業界に当てはめるということは、現実問題としては、かなりといいますか、まずむずかしいのじゃないか、そういう感じがいたします。その辺は十分お考えをいただきたいと思います。
  111. 山本勝市

    山本委員長 今の点ごもっともですが、私の言いたいのは完全自由競争をやらせろと言っているのじゃないのです。独占を形成しなければたえられぬような負担をかけるべきじゃないだろう。問題はそこなんです。つまり税のみならずいろいろな負担をかけていって、その負担をになわせるためには、経済の生命である競争を——これはもう完全自由競争というのはあり得ないのです。しかし、独占を形成しなければ負担できないというところまで荷物を負わせておいて、その荷物を運ぶためには独占を認める、こういうことをもし一般的にやっていったら、これは経済というものはもう生命を失うし、また公取なんというものは要らぬようなことになってしまう。しかもそれは私は私的独占だけではないと思うのです。私的であれば独禁法にひっかかるようなものを、公けの政府の勧告、行政の勧告などでやったり、単独立法でやればそれは違法にならぬのだという、そういうルーズな考え方で、私的にやれば独禁法にひっかかるという——経済の生命を失わせるようなことを、たまたまある省が勧告に基いてやったとか、法律でやれば差しつかえないのだというような、そういうまことに軽はずみな考え方でもし進んでいったら、私は日本の独禁法の適用で大きな穴はそこにあると思うのです。こういうことをやるから結局もう独禁法緩和——緩和というのは、緩和しなくても、各省の勧告でやったやつは除外される。単独立法であれば除外される。どんどん除外されるなら、独禁法そのものを緩和した方が手っとり早いではないかということになってきておりはしないか。これはもう一ぺんあなたのお考えを——そういう傾向はないですか。
  112. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの山本委員長のお説は、要するに現在の独禁法体系があって、それで単独法によって適用除外がふえてきておる。あるいはまたある省の行政勧告によって事実上の独占が行われておる。これはおかしいということでございますが、私どももそれはそうであろうと思います。しかし、単独法でやるという考え方には、政府という一つの公けの建前からこれを監督するわけでございまして、その形態はあるいは独占でございましょうが、しかし、政府の公益の立場における監督があるということによって、いわゆる独占とすれば、その独占の弊害を最もミニマムにするという作用をしておるわけであります。そのミニマムにする作用をわれわれと協議をしてやっていきたい。現実の単独法の適用除外の場合はそう考えておるわけであります。
  113. 山本勝市

    山本委員長 さっきエアハルトの話を言いましたが、あれはエアハルト自身が出した原案が骨抜きになった、事実はそうなんでしょう。しかし、それはエアハルト自身がやむことを得ず妥協したのであります。やむことを得ず妥協したのであって、たとえば政府原案がいろいろの陳情によって妥協したというのとよく似寄ったような関係で言ったので、私は具体的にはそういうことが起るのは仕方ないと思うのですけれども、やはり精神だけは一つしっかりしておいてほしい。  奧村君どうも失礼しました。
  114. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 私は、ここで、大事なことですから、これはどうしても公取の明確な御答弁を一ついただいておきたいと思う。再販売価格維持契約を指定する場合は、当該商品について自由な競争が行われておること、これは大きな条件、しかも一般消費者により日常使用されるものである、この二つの要件。     〔小委員長退席、川野小委員長代理着席〕 そこで、酒団法のこの改正案で再販売価格維持契約規定が入りましても、大蔵省からこれを認可するための同意を求められた場合に、公取の立場をここで明確に一つ言明しておいていただきたいのですが、商品について自由な競争が行われるということは、たとえば製造販売などを新たに事業を開始したいという場合の免許なども自由に与えられる。大体免許制度というのはおかしいのですけれども、免許が自由に与えられる、だれでも自由に競争ができるということが条件であります。ところが、たとえばビールなどは、今もお話しのように、非常な設備もかかるからこの免許はできない。そういうように自由な競争が非常に制限されておるのです。そういう場合に同意は与えられぬということは、ここではっきりなさらぬと誤解を生じますから、そこで主税局長にちょっとお尋ねしておきます。公取の言明のある前にちょっと私は申し上げますが、非常に高率な税を負担しておるからこういう問題は起るのですが、そこでわれわれは減税がマル公廃止の先にこなければならぬのではないか。ところが、主税局長は、日本のこういう課税は諸外国と比較してそんなに高くないような今お話ですが、たとえばビールについて言いますと、ドイツにおいてはビールは日本の税の一割しかかかっておらぬ。これは主税局もお調べになったはずです。一割しかかかっておらぬので、ドイツではまるでお茶を飲むようにビールを飲んでおる。従って、たしかビールの製造については許可制があったかなかったか、ともかくビールの醸造をやりたければだれでもできるような制度になっておるように私は三年前には調べておる。そのように税が低ければ、だれでも作れる。従って自由な競争ができる。こういう場合なら、再販売価格維持契約を作ってもいいでしょう。それは公正な取引ができますからいい。しかし、日本はドイツのビールの課税の十倍もかかっておるから、それじゃいかぬということになる。結局、先ほど山本さんのおっしゃるように、独占的な傾向が強うなる。そういう場合に、この再販売価格維持契約を結ばしたら、それこそ独占的な傾向がなお強くなる。だから公取の方はなかなか同意が与えられぬということになるから、やはり税は重過ぎるので、できるだけ政府としても下げたいのだということくらいは、ちょっと言葉を添えておいていただけると、われわれも納得できる。税の重いのは当りまえだと言われるから、ついこっちもそう言わざるを得ぬ。税が重いために、新たにビールを作ろうという者の認可ができない。先日も、ほかの委員会で、ビールなんかどんどん許可すればいいじゃないか、日本では大学が各府県に一つずつできたくらいだから、ビール会社も各府県に一つくらいできてもいいじゃないかという意見も出ておる。それを新たに認可しないという状態なら、やっぱり自由の競争は避けられておるわけだ。というのは、税が高率過ぎるからそうやたらと製造の許可もできない、こういうことです。それなら、そういう場合には再販売価格維持契約というようなものは許可すべきでない、こういうことでありますから、今のような状態であれば、大蔵省から再販売価格維持契約の認可の同意を求められても、公取は同意が与えられぬ、こういう公取の態度をはっきりここでお示しを願いたいと思います。
  115. 原純夫

    ○原政府委員 税が非常に重いから公正な競争ができない、まず税を下げるのが先だ、そういうお話でなくて、酒税は重いから、何とか下げぬかというお話であれば、私は決して重いことを否定いたしませんし、全般的に国民の税負担は軽減して参りたい。その一環として、いつまでも直接税、所得税だとばかり言っている時代ではなくなってきつつあるということは、私は最近たびたび申しております。ただ、この関連で、税が重いと公正な競争ができないからまず下げろということになりますと、さっきの酒税否定論の色彩を非常に濃くしますので、そこはやっぱり若干ずつ下げていくのがせいぜいのことであって、通常商品のように税が少いというようなことにはなかなかいけないのじゃないか。やはり相当な税負担はしていただかなければならぬ。やはり今重いという現実の判断に立って、他の間接税あるいは所得税、法人税等との比較をしながら、税負担の軽減をはかる場合にどういう序列を与えていくかという問題としてこれを考えたいと思っております。
  116. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ビールの再販売価格の同意を求められたときに、公取はこれに同意するかどうかということを言明せよというような御趣旨の御質問でございましたが、私どもの役所の建前は委員会制度でございまして、委員会の決定によってこれを行うわけでありまして、一事務局長がここでイエス、ノーを言うわけにはいきませんが、前提として考え方としては、今奧村先生の御指摘なさったように、自由に競争が行われておるということはどうしても考えざるを得ないエレメントであろう、こう考えております。
  117. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 私は常々公取がちと大蔵省にやられておりゃせぬかと思っておるから、たまには公取の応援もしておきたいと思う。というのは、酒団法を読んでみますと、どうも大きいものがますます強くなって、小さいものがますます弱められる傾向が強いから、せめて公取にそれを押えてもらわなければいかぬ、こういう意味で申し上げた。どうして大きいものが強くなって小さいものが弱められるかということは、これからまたいろいろ論議の中で聞いていただくつもりであります。ただいまの御答弁で一応は了承しておきますか、今の御答弁なら、いっそ再販売価格維持制度はやはり公取の責任として、何も酒団法にこんなものは入れない方がいいということで、公取が最初から相手にならぬ方がよかったということをつけ加えて申し上げておきます。  それから、中小企業団体組織法と読み合せてみると、先ほども申し上げましたように非常に問題が明確に現われてくるのです。今度酒団法改正には基準販売価格規定を入れろ。これは何のためにこういう規定をまたあらためて入れなければならぬのか。この規定を入れるために、今度は協定価格の認可を受けようという場合には基準販売価格を不当に下回った価格の売買がある場合という規定になりますから、協定価格の認可を受ける段階が一段階ふえてきた。     〔川野委員長代理退席、委員長着席〕 そういうふうに見ますと、現在でも、中小企業団体組織法と比べると、協定価格が結びにくいのにかかわらず、なおまた結びにくい規定をたくさんお入れになる、こういう不安を私は思う。基準価格はおそらく全国的におきめになるのでしょうが、再販売価格維持契約というものは、これは生産者と卸と、小売段階でいわば縦の協定、それから協定価格はいわば販売業者あるいは生産者、横の価格協定、縦と横の協定の上になおまた基準価格を作り、また制限販売価格を作る、こういうふうにずいぶんいろいろな制度を入れ込められるから、中小企業団体組織法のように、ただ一本の協定価格というすらっとした規定じゃなくなるから、今まで七年間協定価格が順調に進められておらぬのに、こういうものをやったら、なお私は協定価格が結びにくくなると思う。この不安を私は特に持つのであります。そこで、再販売価格維持契約で、生産者と卸と小売との間に契約ができた場合、それと今度協定価格との間に、つまりそごを来たす場合も考えられますね。その場合は、協定価格はその再販売価格維持契約の部分だけは除外されるのですか。その関係はどうなりますか。縦と横との価格協定がどちらかくずれるのですか。
  118. 吉國二郎

    吉國説明員 再販売価格維持契約小売段階もしくは卸売段階の協定価格が重複した場合というお尋ねでございますが、再販売価格維持契約は、御承知のように別に不況条件も何もない価格であります。協定価格は一定の不況条件——今度はだいぶ緩和いたしました。今むずかしくなったとおっしゃいましたが、逆にむしろ緩和しております。緩和した条件ではございますけれども、一定の不況条件が生じた場合の価格でございます。従いまして、これ以上下り得ない価格という形になって参りますから、その再販売価格維持契約と協定価格とが両方あった場合に、おそらく協定価格の方が低い価格になる。その協定価格は、それ以下に下り得ないという価格でございますから、おそらくその上で売るということについては、協定違反も何もない。従って、再販売価格維持契約で売っている限りは協定違反にはなり得ないということで、両者並立し得るものだと思います。
  119. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 今の御答弁で、かなり政府の意図するところはわかりました。再販売価格維持契約は不況条件がないのでありますから、どうしても協定価格よりは上回る。しかし、それを反面からいえば独占的な価格になりやすいということになりますから、一面は安心でありますか、一面は不安がなお深くなるわけであります。それならば、基準販売価格というものはどういう目的で作られるんですか。これは酒税の保全のためにということは提案趣旨にも出ておりますが、酒税の保全のためならば、制限販売価格もあるのですから、協定価格もいわば最終的な酒税保全のための規定であり、また最後には勧告も命令も出せるのですから、基準価格は何も酒税保全のためのみにこれは入れるべきものじゃないと思うので、もう少し基準価格を作る目的をはっきりさしていただきたいと思います。
  120. 原純夫

    ○原政府委員 けさほど来、マル公公定価格の問題から話が出ましたのですが、公定価格は今としてはもう時代に合わない。これはだれも認めるところだ。しかし、一方、酒というものは非常に重い税を負担しておって、業界も大へんであるが、政府も税がうまくとれるかどうかということを非常に心配しておる。そうなると、その酒の生産なり流通なりについて、いろいろな仕組みを考えるのは当然であるわけです。その仕組みの一つとして、価格面で今回考えました中心が基準価格であります。これはまあいってみれば、公定価格はもう時代おくれだといって排斥しながら、やはりそれの特っておった価格支持力というものには、われわれ非常に魅力を感ずる。それをとっておきたいという気持はあるのです。しかし、それを公定価格だといって純真な小学校の生徒に公定価格説明するならば、これより高く売っちゃいけないんだよ、あまり高く売ったら買う方が迷惑する値段なんだよ、というようなことになる。ところが、実際にはそれより安く売っちゃいかぬというようなことを、けさほど役所も答弁するような時代になっておる。それではいけません、堂々とやっていただきたいということが年来いわれた趣旨であり、いわれた趣旨は必ずしもそういう支持価格というよりも、やはり競争による消費者の利益、またそれは生産者の向上もあるという線を強く要望されたことなので、それはやりますが、やはりこういう重い税を負担する物資であってみれば、いわゆる定価売り的な気持を業界も持っていかないと、なかなかうまくいかないというような要望もあるわけです。その要望をそれに真正面から答えて、これならそうだとはっきり言えるのをとろうというのが基準価格であります。マル公というのは、いかにも実質上そうだそうだといわれながら、法理的に洗ってみると、そんな性格は一つもないわけです。まやかしなわけです。まやかしはやめて堂々たる制度でいこうというのが基準価格の本旨であり、また、今申しましたような意味で、われわれが酒税の保全、業界安定のためにこういうのを望んだということであります。
  121. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そこで、政府の意図するところは大体はっきりいたしました。基準価格は、マル公の持っておったような価格支持力と申しますか、マル公を撤廃すれば、はっきり価格の基準を支持した方がいい、業界もそれを望むということでありますので、それを置くんだ、こういうことですから、趣旨はよくわかりますが、それならマル公を廃止せずにそのまま残しておけばいいじゃないかと申しますと、いや、マル公は物価統制令に基くものであるから、物価統制令という戦時中のあの印象を拭払するためにと、こういうことですから、それだけなら、物価統制令に基いたマル公のかわりに、今度は酒団法に基いたマル公と同じような性格のものを基準価格に置いておこう、残しておこう、こういう趣旨ですね。
  122. 原純夫

    ○原政府委員 今まで、マル公が、本来そういう意味を持っていないのに、人々が持っていると間違って思っておる性格があるわけです。その性格は、もういよいよ血で血を洗う販売競争の際には、もろくもくずれ去るものであります、しかし、マル公においては、人々は一種のイメージと申しますか、マル公にそういう捨てがたいよさというものを認める。法律的にはマル公には何の効力はない。われわれは、そのよさというものは酒類業界のために必要である、また酒税確保のためにも必要であると思います。で、今は何の効力もないマル公にそれを感じておる。そういうことではいけない。ほんとうに法律的にささえになるような形のものを持つべきだ。また堂々とやるという意味でもですよ、マル公を墨守と申しますか、マル公制度を墨守していることは、そういう業界の安定のためにはいいけれども、反面、最近の日刊紙あるいは週刊誌をごらんになっても、マル公というものが、業界の競争を押えておるというような角度ではけなされるわけですね。これ以上で売ってはいけないんだ、安く売ってくれるのがいいはずなのが、これで押えておるというのは困るというようなことで、これは基準価格にもある性格ですけれども、マル公というものは本来やるべきでないファンクションをやっているということに非難があるわけです。そうすると、非難ははっきり受けましょう、しかし、業界安定、酒税確保のためにそれは要るのですから、やらしてくれと言うた方が、国民は、どうせやられるにしても、より男らしい態度と思ってついてくるだろう、こういうわけです。
  123. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 そこで、基準販売価格も、これは大蔵大臣が適正な原価あるいは適正な利潤をはじき出しておきめになる。だから、これはマル公をきめるのとほとんど同じ趣旨になってしまうと思うのです。ところが、この自由主義経済の建前で、価格というものは需要と供給との関係によってきまるのが大原則なんで、従って、需要者と供給者、つまり生産者、卸、小売販売者が自分の物に自分の値をつけるのは当然なんで、そういう私的な取引の中へ政府が介入して、何ぼが原価であって何ぼが適正なマージンであってと政府が値段をつけるということは、この自由経済の建前においてはなるべくすべきでない、好ましくない、こういう建前でおる。従いまして、大蔵大臣が、酒類業者価格を、たとい基準販売価格でもこれをきめるということは、お役人の方々が商売人のふところの中に入って、そろばんをはじいて、卸のマージンは幾ら小売のマージンは幾らということはわずらわしい。それは今まで国税庁もわずらわし過ぎて、おととし、去年は手をあげて、もうそんなことは困りますということで、マル公廃止の一つの原因になったのだろうと思います。しかし、そういうわずらわしいことを政府がまた法律に基いておやりになるということでありますから、大へん御苦労なことでありますが、これは、自由経済の時代において、また独占禁止法などの法律が存在する際において、なるべくなら避けなければならぬ。避けねばならぬのに、なおかつこの法律を入れようというのには、よほどの理由がなければならぬ。それは酒税の確保という理由だけなんですかということでさっきお尋ねしたのですが、しかし、これ以上はどうも議論になりますから、尋ね方を変えていきます。  そうすると、基準販売価格というものをお出しになる場合は、マル公と同じような価格になると予想されますが、そうなりますか。
  124. 原純夫

    ○原政府委員 大体マル公と同じようなことだと思います。しかしその効果が違ってきます。マル公はこれをこえて売っちゃいけないということですが、基準販売価格というものは、これは基準である、従って、酒なんかでは御案内の通り銘柄が幾つもあり、やはり実力相場というものがございますから、これは基準であるけれども、いいのは高くなり悪いのは安くなるという、一種の序列といいますか、格差がある程度やはりつくだろうと思います。基準という概念の中には、そういう格差も認めるということが予定されているとお考えいただかなければいけないと思います。従いまして、昨年の春あったような、これときめたから、これより一文も高く売っちゃいけないというようなことがないですから、経済の実態の許し得る幅の中では動けるという融通性があるわけです。しかし、やはり心棒は通っておるというようなことで、市価の安定には大きく寄与するという考えであります。
  125. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 それでは、せっかくお尋ねしたこの問題の締めくくりだけをして、私の質疑はきょうのところは一応打ち切りたいと思います。  そういたしますと、もう時間もありませんから、主税局長から簡潔に私のお尋ねしたことに御答弁願いたいのですが、基準販売価格は、現在マル公のある酒類については全部この法律施行とともにお出しになるのかどうかということが一点。それから、協定価格の認可を申請しようという場合には、基準販売価格を不当に下回った価格取引がある場合、こういう条件付でありますが、そうすると、基準販売価格が出ていなければ協定価格の認可申請ができない、こういう理屈になってきます。そういうふうになっていると、協定がなおさら結びにくくなるという不安が出ますが、そういう点はどうですか。この二点をお尋ねします。
  126. 原純夫

    ○原政府委員 まず法律改正が成立いたしました場合に、すぐに基準販売価格を設けるかどうかというのは、私どもそういうつもりはございません。たびたび申しますように、新しい価格体系に移る、つまりマル公を廃止するということについては、各酒類別に十分な検討をし、それに対応するいろいろな準備もしてやらなければなりませんから、やはり相当時間がかかるだろうと思います。基準販売価格というものも、観念的には、マル公があっても基準販売価格を置いて差しつかえないわけですけれども、ある間重ねて置くということもなかろう、廃止する前後にそれを考えればよろしいのではないかと私は思います。なお、その間四十二条の協定の条件としての「基準販売価格を著しく下廻る等の事態」というのは、これは読みようでありますが、これは一種の例示的なことではなかろうかと私は思います。かつ、その下にいって「不健全となっており、又はなるおそれがある」となっておりますので、その間は基準販売価格がなくてもこの条文は読める、この法律の基準販売価格規定自体で定めることができる、そういう権能を与えるということになっておりますので、一貫して読みますれば、なくても協定価格はできるというふうに読んで差しつかえないと思います。
  127. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 中小企業団体組織法にしても、酒団法にしても、今までは協定価格によって業界の安定を守るという趣旨であり、従って、協定価格というものは業者がみずからきめて役所の認可を得る、つまり価格をきめるのは業者自身がきめる。ところが、今度のこの基準販売価格というのは、強力な拘束力はないとは申しますものの、今の国民大衆に対する指示力と申しますか、精神的な力というものを持つと私は思うのです。つまり、政府がそういう価格をきめるということは、マル公の場合はあったのですけれども、マル公が撤廃されて、なおかつほかの法律政府価格をきめるということは、酒団法以外にはないように思う。従って、これは独禁法においても公正取引を監視する立場から問題にさるべきであると思いますが、公取としてこういう規定を入れることについては、どういう理由でお認めになったのですか。
  128. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいま主税局長からお話しになったような趣旨をわれわれは了承したわけであります。
  129. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 ほかに何か例がありますか。
  130. 原純夫

    ○原政府委員 マル公以外に、物価統制令以外でいろいろ価格をきめるという例はほかにも相当ございます。たとえば臨時肥料需給安定法による硫安、繭糸価格安定法による繭糸、農地法による小作料、地代家賃統制令による地代、家賃、それから各種運送事業法による港湾荷役の料金あるいは通信料金、その他ここにありますだけで、こういうもので三ページくらいございます。
  131. 奧村又十郎

    ○奧村小委員 まだほかにもいろいろ質疑が残っておりますが、きょうはこれをもって終ります。
  132. 山本勝市

    山本委員長 本日は午前、午後にわたって非常に熱心に審議をしていただいて、問題点は非常に明らかになったと思います。なお質問者がありますけれども、きょうはこの程度にとどめて、来たる二十五日に開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時九分散会