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1959-03-13 第31回国会 衆議院 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十三日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席小委員    小委員長 山本 勝市君       足立 篤郎君    奧村又十郎君       古川 丈吉君    細田 義安君       春日 一幸君    久保田鶴松君       竹谷源太郎君    横山 利秋君  出席政府委員         国税庁長官   北島 武雄君  小委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉國 二郎君         大蔵事務官         (国税庁間税部         消費税課長)  今泉 一郎君         大蔵事務官         (国税庁協議団         本部長)    田宮 良策君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 三月十三日  小委員竹谷源太郎君同月十一日委員辞任につき、  その補欠として竹谷源太郎君が委員長の指名で  小委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  税の執行に関する件      ――――◇―――――
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。  税の執行に関する諸問題について調査を進めます。  質疑の 通告がありますので、これを許します。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今回政府から入場税法改正案が出ておるのでありますが、聞くところによると、この入場税率が下るということを見越して、映画館等入場料金を、改正税法によって軽減せられるであろう金額だけすでに上げておるのです。そうして、新しい改正税法が施行になった場合は、税率が下って税金が減った分だけ下げていこう、こういう意図のもとにこのようなことが行われておるといううわさがあるのでありますが、国税庁はお聞きになっておりますか。
  4. 北島武雄

    北島政府委員 消費税課長から御答弁申し上げます。
  5. 今泉一郎

    今泉説明員 まだそういううわさを、はっきりしたことは事実かどうかは存じませんが、ちらほらそういううわさも聞いております。
  6. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この入場税は、利用者が負担する建前において、それを軽減するということになれば、その利益はあげて利用者に帰せらるべきものであるというのが理論上の本旨でございますので、この点十分誤解のないように、実態を調査し善処せられるよう希望いたします。  それから、次は、入場税法第四条第二項の純音楽、純オペラ、純舞踊、雅楽、文楽、能楽、それからスポーツ、そういうものをもっぱら研究発表するところは軽減税率適用されておるのでありますが、このスポーツを催すというような場合に、相撲あるいはプロ野球プロ・レスリングというようなものはこの軽減税率適用になっておるのであるか、それとも第四条第一項の第一種の本来の税率適用になっておるのであるか、これをお尋ねいたします。
  7. 今泉一郎

    今泉説明員 やはり第二項が適用になっております。
  8. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、野球の選手なんかは、これからは一千万円以上出してはいかぬというようなことを協定しようなんてうわさもありますが、プロスポーツという場合はそのように非常にもうかっておる。ところが、この軽減税率適用にならない演劇演芸その他のいろいろな催しがあるわけでありますが、これが従来は演劇以外は映画と同じ税率適用されておる。今度の改正税法によれば、演芸音楽その他の見せものは、演劇と同じ扱いを受けるようにはなったけれども、この第二項の軽減税率よりは高いわけなんであります。どうもこれは区別する理由が非常に乏しくなってきたように思います。そこで、私は、この第四条の第二項と第三項は区別を廃して、すべて、この第三項のいわゆる演劇演芸その他見せもの等一緒に、第二項の方の税率適用するように改める方が妥当ではないか。と申しますのは、この純とか不純とかいう区別は第一つきません。税法適用上の実際の税の執行上にも非常に障害があり、出先の判断できめられてしまうということで、いろいろ弊害も生ずることになってくるというような問題もありますが、本質的に見て、映画は、一たん演出しますと、それを写真にとり、録音をして、何百本、何千本と複製ができて、外国に輸出もできるというわけで、マスプロができる性質の芸能であります。しかし、第三項、第三項のなまものは一ぺんでなくなってしまう。一ぺんで、その一回の演出で、それをまかなう収入を上げないと経営ができない。こういう特殊なもので、いわば人間の精神並びに肉体労働結晶をそこに一回だけしか演出できない、こういう種類のものでありますから、映画とは当然区別せらるべきものであり、しかも、この内容については、あるいは音楽とか、あるいは所作とか、せりふとか、いろいろな出しもの、こういう区別はありますけれども、これはいずれもが人間の真剣な労働結晶でございます。しかしてそれは複製はできない。しかも、それをやるために、長い間の訓練、努力と勉強が必要である。しかも、いずれを見ましても、なかなか経営が困難である。経営が困難であるなら、それをカバーするたけ入場料金を上げればいいわけでありますが、それは経済上の原則で、高ければ人が入らない。収入が少い。安くしなければならない。安くしてなるべく人が入るようにして、しかも入場税というものを考えつつその値段もきめなければならないというところで、当然経済上の入場料金には限界がありますから、その一番いいところで入場料金をきめておるようでありますが、それでみな非常に困難で、たとえば芝居についていいましても、俳優を一人養成するのに何年間、何十年間かかる。一回一カ月間の演出をやるのに、一カ月も二カ月も勉強努力して、一回やったあとすぐ次に移らなければならぬ。この点は、その他の見せものにしても、あるいは浪花節でも、薩摩びわであろうと、寄席の落語であろうと、みな同じでありまして、しかも、いずれも、それらの人々はほんとうの労働者で、非常に苦労して――好きでやっているといえばそれまででありますが、しかし、これは人間心持を浄化し、文化を進め、あるいは対外関係などでは国際間の親善を増したり、人間のいい品性を高めるいろいろな重要な文化的役割を持っておる。また、人間は、働くとともに、一面において楽しみつつ、いい芸術に触れて心持をよくし、次の労働への休養をとり、リクリエーションにもなる、大きい意味で、これからの人類の進んだ文化生活に重要な役割を演ずる、こういう観点から、見せもの川原こじきという観念でなしに考える必要もあり、またこれらを助長育成していく必要があると考えます。  私は、前の臨時国会国立劇場を作るという案が出ておりまするが、これも非常にいいことであるが、その前にその劇場演出すべきいい内容を育成しなければならぬという意味で、演劇大学のようなものをまず設置して、そして劇場の中でいわゆる優秀な芸術をまず作るべきであるということを質問主意書で主張をし、政府も十分検討して考えたいということを答弁しておるのでありますが、どこの国の例を見ましても、そういう演劇その他の発達をはかるために国立養成機関を持たない国は、文化国家ではほとんどありません。ないのはアメリカ合衆国だけです。これは民間資金が豊富でありますから、民間の膨大な資金でたくさんの養成機関があります。その他のヨーロッパ各国などは優れた養成機関をたくさん持っておる。日本はそういうもの国家は力を尽しておりませんが、本来芸術味の豊かなところでありますから、民間でやってきてはおるが、民間の財力が乏しいので、援助する機関もない。そこで、そういうことに熱心な、好きな人たちが一生懸命苦労してやっておる。芝居などの内容を見ますと、どこの劇団でもみな非常な赤字で、一ぺん興行をやれば損をする。しからば、損をどうりして埋めておるかというと、テレビやラジオに出演して、その出演料演出をした演劇の損失を補てんしてやっているというような気の毒な状態でございます。そういう観点から、もう第四条第二項と第三項を区別する理由はない。そういう観点映画とその他と二つ入場税を分けたらどうか。映画は先に申しますように複製ができ、マスプロができる。またこれを経営している大資本の力もありまして十分やっていける。その他のもの寄席芸人から浅草あたり人たちあるいは高級な歌舞伎に至るまで、いずれも非常な困難と戦いつつ経営しているわけなので、それらをまとめて第二項と第三項は一つ軽減税率適用する、こういうふうに分けた方がいいんじゃないかと私は考えるのですが、国税庁はどうお考えであるか、あ尋ねしたい。
  9. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま仰せの点は、入場税についての非常に基本的な問題でございます。仰せ通り入場税の対象を興行形態によって区分するということは、非常に重要なことであると思います。入場税につきまして、特殊な問題として考えられるのは、第一に、今仰せになりました興行形態の問題でございます。主観的には興行形態の問題があると思いますが、第二に客観的な問題として、消費者入場者という面がもう一つあり、さらに入場税は御承知通り非常に沿革的な問題がございます。この三つの点をあわせ考えまして、今回の改正法を作ったわけでございますが、実は、入場税につきましては、政府部内におきましても、毎回の税制調査会において非常に論議がございまして、今仰せになりましたなまの催しもの複製のきく映画との取扱い区別すべきであるという議論も当然出て参りました。また、各国の例を見ましても、これを無差別にやっておりますところと、明らかに区別しているところがあることは、御承知通りでございます。イギリスにおきましては、一九四六年でございましたか、初めて映画となまのもの区別して税率適用した。そのときには、映画スポーツとその他の演劇と三本立にいたしたわけであります。一九五六年でございますか、このときに大幅に演劇その他を緩和いたしまして、昨年はついに演劇を全部非課税にいたしまして、映画だけ残したというのがイギリスの例でございます。イタリアにおきましても、演劇につきましては最高二〇%くらいの税率でございますが、映画については五〇%まで税率がある。一方ドイツ等におきましては、これもまた一律になっておる。これは、その実例が示しますように、入場税が持っておりますそういう二つの問題、一般的に申しますれば二つの問題、つまり興行形態に着目するか、あるいはそれを見ておる入場者欲望充足という点を強く着目するかということによって、差が出て参ると思うのでございます。  従来、日本入場税法においては、最初は御承知通り一律の税率で出発をいたしました。その後漸次入場料金に対応した階級別税率適用する方向に向って参りました。戦後に至りまして、戦後の改正法においてはまた一律に税率適用する方向に変って参りました。従いまして、日本税法では、どちらかと申すと、主観的な問題と客観的な問題を料金ということに求めてきたような傾向があるわけでございます。しかしながら、その後昭和二十九年に、御承知のような段階税率刻みがまた復活をいたしました際に、今のこの問題が必ずしも料金では解決できない。すでにそれまでには、芸術的なものを特に奨励するという意味で二〇%の軽減税率ができておりましたために、段階税率差別をつけて参りますと、かなり矛盾がはっきりして参ります。と申しますのは、映画のようなものでございますと、かなりこまかく刻んで段階税率適用いたしましても、元来が料金かなり安く落せる性質ものでございますから、実質上はあまり平均税率としては高くならないわけでございますが、演劇等について、入場料金をいかに切り下げても、一定額以下には切り下げられない。それで同じ平等な税率適用されておるようであっても、実際適用されておる税率は常に高い税率であるという問題がはっきりして参ります。その関係で、二十三年には演劇についてはこれを映画とは区別して取り扱うべきである、その場合にも、純演劇というもの区別して、純演劇は純音楽並みにすべきであるという改正案も考えられたわけでございますが、演劇そのものを純と不純とに分けることも非常に困難であるということから、従来純音楽等について適用されておる二割という税率は、かえって問題を複雑にするので、むしろ映画等に比べてなだらかな段階で、しかも最高入場料金に対してもあまりきつくならないようにということで、今の第三項ができたわけでございます。実際問題として調べてみますと、映画等の場合は、フィルム代までを含めまして総体製造費が総収入額に対して二〇%以下でございますが、演劇あるいはその他の演芸にいたしましても大体六〇%ないし七〇%というところで、確かに動員力の点が大きく違っておることは事実でございます。そういう意味におきまして、今回の改正法は、映画映画以外ということにほぼ近い形ではございますが、若干今申し上げました要素の少い競輪、競馬といったようなものはこれを残しまして、その以外のなまのものを一切演劇と同一の税率にしたという形で、解決をはかったわけであります。純音楽との関係は、純音楽あるいは純舞踊、その他の舞踊との比較でございますが、これは演劇税率適用いたしますと、三百円まではともかく二割でございますから、第三項と第二項、少くとも三百円の料金までは同じでございます。従いまして、あまり下げてどちらであるかという区別をきびしくやらなくても、結論は同じであります。結局区別をする。この中で出て参りますの、三百円をこえた部分でございますが、従来はこの三百円をこえた部分につきまして、もし純でないという判定を受ければ、二割の税率が五割になるというところで、非常にいわば深刻な問題があったわけでございます。今度は三割で、一割だけの差でございますので、それほどこの判定によって大きな影響があるということでもない。かたがた、今の軽減税率二割頭打ちと申しますものについての批判は相当あるわけでございます。今仰せられました通りプロスポーツなどで二千円も三千円もとっておる。これが上までいっても二割で頭打ちというのはひどいのじゃないか。あまりにこまかく刻めば、さっき申しましたような矛盾が出て参りますが、大きな刻みであれば、三割くらいの税率はむしろあってしかるべきではないかという強い議論もございます。私どもは、むしろ映画演劇等のなまのもの区別する基準といたしましては、料金が必然的に高くなるということを考慮に入れまして、従いまして、高い税率適用区分を、映画の場合はかなり下の方で刻んでもいい、その他の場合にはかなり高いところで刻みまして、結局平均税率適用はほぼ同じようなところに持っていけば、大体において公平なものになるのじゃなかろうかという意味におきまして、映画とその他のなまのものも、少くとも最高税率は同じにする、しかし、その適用税率刻みは、なまのものをずっと上に引き上げまして、大体において平均税率はほぼ総体としては同じ程度に持っていこうということで、改正案を作ったわけでございます。従いまして、実を申しますと、この二項の税率も、できれば三項の税率に統合する方がより合理的ではなかろうかという感じもあったわけでございますが、一ぺん与えたら、一つの奨励として与えた軽減税率でございますので、これを今直ちに取り上げてしまうというのも無理があろうかというので、形としては若干ごたごたいたしますが、二項、三項を残して、そして実質的には先生がおっしゃったような趣旨の実現をはかるということを目途としたわけでございます。
  10. 竹谷源太郎

    竹谷委員 まあ第二項を第三項に上げてしまうというのは反対ですが、逆に第三項を第二項にくっつけたらいい。第三項を第二項に持っていけは、税額でどれだけ影響があるのですか。もしお調べがあったなら……。第三項を第二項の軽減税率に低めてしまうということになれば、税額にどれだけの影響がありますか。三百円以上の部分ですね。一億か一億くらい影響しますか。
  11. 吉國二郎

    吉國説明員 資料を見ておりますから……。
  12. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それでは、今の資料あとで届けていただきます。  それから、第三項の改正案が出ているわけです。その中で「演芸音楽又は見せ物」というのを演劇の下に新しく加えたのですね。だから、演劇以外のものも軽減される。演芸、見せものその他ここに「もっぱら催す」として、「もっぱら」は、前の演劇を「もっぱら」の「もっぱら」をそのまま使っているのですが、これを「もっぱら」とすると、それじゃ演劇演芸音楽、見せもの、これをごっちゃにしてやった場合にはこれは「もっぱら」にならなくなるのかどうか。あるいはその演劇なり演芸の間にインターバルのような形で映画をちょっとやるというような場合に、これは「もっぱら」でなくなるから、映画の高い税率をとる、こういうことになって、それをただ十分なり二十分なり舞台装置を転換する間をちょっと埋め合せるためにインターバルが入ったからといって、これを「もっぱら」でないというので映画の方の税率適用するということになると、非常に不合理な結果になるので、「もっぱら」という意味の解釈を承わりたい。「もっぱら」がどうしても少しでもほかのものが入るといかぬとすれば、これは「主として」というような言葉にでも今度改正するときに直す方が妥当ではないか。第二項の方は特別軽減税率を用いているのですから、厳格にするのは当然であります。第三項の方は軽減税率以外は全部というのであるから、その場合は主体性がどこにあるかということを主眼にすればいいので、「もっぱら」よりも「主として」の方がよかったのではないかと思いますが、御見解を承わります。
  13. 吉國二郎

    吉國説明員 先ほどお尋ねの点、ざっとしたことでございますが、三百円以上の部分税額は大体現在で七、八億ございますが、そのうちの相当部分が実は二〇%の軽減税率適用分になっておりますから、仰せ演劇等を三百円以上二〇%とすることによる影響はおそらく一億前後。それから、ただいま仰せの「もっぱら」の問題でございますが、これは演芸演劇音楽、見せものを併演しておりましても、それらを含めての「もっぱら」という考え方でございます。     〔小委員長退席細田委員長代理着席〕  従いまして、演芸演劇とを一緒にやっておる、しかしその他映画は入っておらないという場合は「もっぱら」に入るということになります。それから、映画が入っておりますような場合は、今仰せのようなごく例外的な、たとえば連鎖劇のような意味映画が背景に使われておるという場合は、当然「もっぱら」ということになります。それから映画をつなぎにごくわずかやるという場合は、実務上の取扱いとして、むしろ「もっぱら」ということに解釈すべきではなかろうかという考え方を持っております。これを「主として」といたしますと、時間で割るとかいろいろな問題が出て参りまして、紛争を巻き起すおそれもありますので、いわば常識的なと申しますか、解釈問題で先生がおっしゃいました主体性というものを十分判断していくという考え方でございます。
  14. 細田義安

  15. 奧村又十郎

    奧村小委員 税の執行に関する小委員会、この当委員会として過日来更正決定の実情、とりわけ青色申告納税者に対する更正決定やり方をいろいろ調べておりましたところ、中には、納税者が再調査あるいは再審査を要求し、それらに対する政府やり方になお不満があるとして訴訟を申し立てる、裁判の結果第一審で負けておる、あるいは最高裁までいってしかも負けておるというふうなのも出ておるので、その間において再審査段階では法律に基いて協議団協議をしておるはずです。その協議の場合に、税務署国税局のやったことが誤まりであれば、そこで救済しておらなければならない。協議団がうのみにしておるということであれば、結局裁判所で無効になったり、負けたりするわけであります。大へんみっともないことが起っておるので、一体この協議団というものはどういう仕事をしておられるのかということを、この際お尋ねしなければいかぬ。これは御承知シャウプ勧告に基いて、たしかこの協議団というものができた。特に申告納税制度を育成するについては、納税者の正当な権利を守るためにも、税務執行を公正にやるためには、協議団納税者とそれから税務署なり国税局の中へ入って税務執行を公平にやらせる、こういう意味では、協議団活動というのは、申告納税育成のために非常に重大な役割があるはずです。そういうことからして、そのような活動協議団がしておるのかということを、特に協議団本部長にお越しいただき、また国税庁長官なり主税局の担当の方も一つお聞きいただいて、協議団のあり方を少し伺ってみたいと思うのであります。  さて、そのように協議団というものをわれわれが取り上げて調べてみますと、せっかく申告納税制度に伴ってできたものではあるが、法制上からいくといかにもまま子扱いで、協議団というものは、国税局国税庁の中で、すみっこによほど遠慮し気がねをして、大して仕事もできぬような態勢でおられるように思う。法制上こんなことでは協議団は十分の活動ができぬと思う。一体協議団法制上どの法律に基いて確立されておるのですか。私の見た範囲では、大蔵省設置法の三十九条とあと政令にまかされておる、こういうふうに思うのですが、これではまことに心もとないものだと思う。どういうことになっておりますか。これは長官本部長の両方にお伺いしたいと思います。
  16. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまお話のございましたように、協議団制度シャウプ勧告によりまして昭和二十五年のたしか七月に創設されたのでありますが、その際の考え方といたしましては、御指摘がありましたように、原処分庁納税者の間に立って、いわば税のアンパイアというような考え方で公平に審議をして、納税者権利をできるだけ守る、こういうふうな考え方でできたわけでございます。税法の構成といたしましては所得税法法人税法等のそれぞれの実体法の中に、国税局長審査決定をする場合――却下の決定以外の場合でありますが、その場合には協議団協議を経なければならぬ、こういうふうな規定が実体法にございまして、その実体法を受けまして、組織規程といたしましては、大蔵省設置法の中に国税庁付属機関として国税庁協議団、それから国税局付属機関として国税局協議団を置く、こういう格好になっておるわけでありまして、さらに具体的には、国税庁協議団及び国税局協議団令という政令がありまして、その政令によってさらに詳細を規定しておるわけであります。お話のございました国税庁なり国税局付属機関というのはおかしいじゃないか、こういうお話が第一点にあるかと思いますが、もともと審査請求というのは訴願法訴願でありまして、訴願といたしますと、下級の行政庁のなした行政処分に対して異議ある人は、上級行政庁訴願をして、そして上級行政庁判断をするわけです。これは納税の場合に当てはめてみますと、審査請求という形で国税局長に出てきます。国税局長は、その訴願の裁決、審査決定をする場合に協議団協議を経なければならぬ、こういうふうに法律上義務づけておるわけでありまして、国税庁及び国税局付属機関という格好でございますのは、現在の訴願制度建前からきておるわけであります。
  17. 田宮良策

    田宮説明員 ただいま長官からお話のございました通り趣旨で、協議団というものが設立されているわけでございますが、先生の御質問の要旨は、まず協議団付属機関として非常に狭い権限を持たされているのではないかという御質問かと思いますが、なるほど、協議団は、法律的には国税庁なり局なりの付属機関といたしましてやはり機構上の制約を受けることは、これは事実間違いのないことだろうと思いますが、ただいま長官からお話がありましたように、内容かなり程度独立性を持たされているわけなのでありまして、運営の面でかなり自主的な判断をいたしまして、その判断を局長なり長官なりに通していただいているというのが実態であります。その点だけつけ加えておきます。
  18. 奧村又十郎

    奧村小委員 それじゃ、私としては、この国税庁なり国税局協議団が非常に受け身の立場で、つまり納税者から再審査の要求がなされたときに初めて協議が始まる、こういうことが趣旨である。それなら長官にお尋ねいたしますが、五万数千人の税務職員の税務仕事が適正に行われておるかどうかということについては、税務職員に犯罪などがあった場合は監察官などが動くでしょうが、そういうことじゃなしに、税の調査などに――税務官吏にも行き過ぎがあるでしょうし、調査漏れあるいは調査の過大もあるでしょうが、そういう場合の是正は、これはやはり、法制上は、再審査の請求を受けたら協議団が行うことになっていると思うのです。しかし、それであるにかかわらず、協議団は非常に受身になっておる。ところが、今のお話協議団令を見てみますと、第一条の一項の三号に「国税庁長官又は国税局長が、内国税の賦課徴収に関する処分についての審査決定に当り、特に協議に付した場合において、当該協議を行うこと。」つまり納税者審査請求があった場合だけでなしに、国税庁長官国税局長が、重大な、つまり処分についての審査決定、これはやはり長官だけでは判断がしにくい、協議団にも一ぺん相談をかけよう、こういうこともあるというふうに令ではちゃんときまっておるのですが、そういう協議はなされますか。特に先日来お話しした青色申告の取り消しの処分とか、あるいは告発の処分とか、そういうことについては、局長や長官判断だけではなしに、協議団協議に付するという趣旨がここに書いてあるのですが、そういう運営をしておられるのかどうか。
  19. 田宮良策

    田宮説明員 お答えをいたします。  ただいま奥村先生からお話しの団令でございますが、団令の第一条の第一項には、所得税法、法人税法、相続税法、資産再評価法の規定による協議を行うこととございまして、徴収に関しまする異議の申し立てというのが入っておりませんが、その点を第二点でうたっておるのでございまして、お話のありましたように、協議団は、審査の請求を受けまして、あるいは第二項によりまして徴収などの審査決定をやります場合に、命を受けまして、協議に付された場合に協議決定をするという、きわめて受け身の立場にあることはお話通りでございますが、そういうことでございますので……。
  20. 奧村又十郎

    奧村小委員 本部長は初めてですか。あまりこの国会にお出ましにならぬから、答弁も大へんだろうと思いますが、直接お尋ねしたことだけをはっきりお答えいただければありがたいと思うのです。  この二項のいわゆる「賦課徴収に関する処分についての審査決定に当り、特に協議に付した場合において」、こういうことは今までありませんかということです。
  21. 田宮良策

    田宮説明員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、徴収の差し押え、あるいは公売処分に異議がありました場合には、国税徴収法の規定で審査の請求ができることになっております。この場合には、別に協議団協議に付すという規定はたしかなかったと思っておりますが、そういう場合に、これは、現行の取扱いといたしましては、この二項で協議団協議に付するようになっております。それをうたっておるのでございまして、それ以外の事例といたしましては、現在のところ皆無に近い状況であります。
  22. 奧村又十郎

    奧村小委員 この協議団令の規定の趣旨は、今の御答弁の趣旨じゃない。もっと協議団を活用しようという趣旨だから、今徴収だけを言うておられるが、賦課徴収で、これは賦課も含めておる。徴収だけの狭い意味じゃないはずと思う。要するに国税局長なり国税庁長官がこういう行政上の処分をできるだけ妥当にしようという場合に、協議団に相談をかけようという、長官や局長の協議団に対する考え方、あるいは活用の仕方、それがここに書いてある。ところが、協議団にこういうことを相談をかけると、つい事がめんどうになるから、なるべく協議団はすみっこにやっておけという運営のしぶりじゃないか、こういうことを私はお尋ねするので、すなおにその通りならその通りとおっしゃっていただければそれでいいのです。
  23. 北島武雄

    北島政府委員 まず国税庁協議団及び国税局協議団令は、大蔵省設置法に基くものでございますので、設置法の方の協議団の規定を見ていただきますと、「国税庁協議団は、国税庁長官に対する内国税に関する審査の請求について、所得税法その他の法律に規定する協議を行う機関とする。」それから国税局協議団についても同じような規定があるわけでありまして、審査の請求について、法律に規定する協議を行う、こういう建前であります。ただ、おそらく政令の方では、ただいま田宮君からお答えいたしましたが、国税徴収法に基く審査の請求につきましては、協議団協議を経なければならぬという規定がございませんので、それを補完する意味におきまして、そういうものについても、国税庁長官または国税局長審査決定に当って特に協議した場合においては、その協議を行う、こういうふうにしてあるのだと私どもは解釈いたします。
  24. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま関係の事項でございますので、ちょっと御説明申し上げておきますが、御承知のように協議団の規定を入れております。審査の規定は直接税は全部入っておりますが、間接税につきましては、御承知のように間接税の再調査審査の請求は、一括して国税徴収法に規定しておるわけでございます。従いまして、間接税につきましては、賦課に関する異議につきましても、法律上は協議団の規定がないのであります。そこで、この協議団令で、実質上間接税及び徴収に関する異議申し立てについても、協議団を参加させるように扱っていこうという趣旨なので、今度の国税徴収法の改正におきまして、一般の直接税の場合と同様に、協議団の議を経ることを要するというふうに改めましたので、今度は一貫して協議団が活用されるということになるのであります。
  25. 奧村又十郎

    奧村小委員 ただいまの御答弁で私は満足いたします。そのような間接税も含めて協議団を活用しよう、こういう意味でありますから、趣旨としてはまことにけっこうですが、ただ問題は、現実にはそのように協議団を十分活用していないじゃないか。私は議論を言うのではない。現実の問題を言うのです。たとえば今御答弁になった間接税の賦課徴収処分について、今まで協議団に何か協議があった事実がありますか。
  26. 田宮良策

    田宮説明員 きわめて事例は少うございますけれども、間接税関係につきましても、審査の請求を受けまして協議をやった例はございます。ちょっと数字は持ち合せておりませんが、審査の請求が少いわけです。
  27. 奧村又十郎

    奧村小委員 私は第一条二項の問題についてはもっと活用しなければならぬと思う。たとえば調査査察の結果告発処分をするという場合などは、告発の前には、再審査段階協議を経ておるはずである。ところが再審査を経ずして告発しておるものもある。そうなると、告発した以上は、協議団あとから協議を経ても取り返しがつかぬ。だから、そういう意味において、やはり告発処分などをなさる場合には、国税局長あるいは国税庁長官はあらかじめこの第一条二項に基いて協議団協議を経なければならぬ、こういう趣旨でこの規定が活用されるべきだと思うのですが、そういう協議は今まであった事実はありませんか。
  28. 田宮良策

    田宮説明員 ただいまのお話でございますが、告発をされるような事案につきましては、ことに査察関係にあると思いますが、査察関係の事案が審査の請求に出ておりますと、われわれの方の取扱いといたしましては、俗にたな上げ事案と称しておりますが、査察の結果を待ちまして協議決定を行う、こういうことで、その査察の状況、推移を見てやるという取扱いになっております。ですから、告発になるような状況になります場合に、告発をした方がいいのかどうかというような点につきましては、協議団は実は全然関与していないような状況であります。
  29. 北島武雄

    北島政府委員 奥村先生の御質問に対して完全にはお答えできないかもしれませんが、協議団は、もともと審査の請求について国税局長審査決定をする場合に、協議団協議を経るという仕組みでありまして、普通の国税局長の行政の処分につきましてすべて関与するのではございません。審査の請求に限られる。納税者その他国税事務所長等の処分に対して不服なるものは再調査をし、それからさらに審査決定になるわけであります。納税者側の異議の申し立てを待ってやるわけでありまして、ただいまのように積極的に国税局長等が告発するという場合に、協議団協議に付すべきものではないわけであります。
  30. 奧村又十郎

    奧村小委員 だから、私の申し上げるのは、今の御答弁にありますように、当然告発されるものには再審査段階を経ておらなければならぬ。その際に協議を経ているのだから、その後告発という問題も起ってくる。ところが、間々再審査段階を経ずに告発という処分が行われることもあるのです。そうなると、協議団というものが宙に浮いてしまうということを申し上げるのです。というのは、先日来これはずいぶん議論を重ねたのですが、今の申告納税の立場から行きますと、告発とかあるいは訴訟とか裁判所へ申し立てるということになれば、これはもう最終段階になって、納税者税務当局とが五分と五分で争うということです。そこへ持ち出すまでに、税務行政の内部で、いわゆる再調査あるいは再審査段階で、なるべくなら円満に解決をつける。これが私は税法趣旨であると思う。告発といえば、いわば納税者を罪人扱いで裁判所べ突き出すのだから、そこへ行くまでにはどうしても協議団協議を経なければいかぬという建前にすべきである。従って、告発はあらかじめ協議団協議を経なければならぬ、こういうのが私は当然と思うのですが、そういう運営がなされておるか。
  31. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまのような運営はいたしておりません。協議団は、もっぱら審査の請求について国税局長審査決定をする場合に、協議にあずかるわけでありまして、その他のことについては関係いたしません。ただし、審査の請求がございませんでも、納税者側の苦情がございます。協議団には他面苦情相談所の使命もになわしております。審査請求としては、あるいは期限を経過したような問題、その他税務執行上の諸般の苦情につきまして、協議団本部は同時に苦情相談所の役目を持っておりまして、納税者のお申し出によりまして、その苦情相談事務を扱っておるわけであります。ただ、それ以外の事務につきまして、国税局長なり国税庁長官協議団本部に積極的に他の仕事を負わせるということは、ただいまの建前では考えておらないであります。
  32. 奧村又十郎

    奧村小委員 それではその点はわかりましたが、国税庁に設置された協議団と、各地方の国税局に設置された協議団との関係はどうなりますか。協議団本部長から各局の協議団に何か指図とか連絡とか、そういうような仕組みになっておるのですか。どうも、法制から見ると、局の協議団は局長に通ずる、本庁の協議団長官に通ずるので、局と本庁の協議団同士の指図とか連絡とかいうもの法制上はできないような建前になっておるが、これはどういうことですか。
  33. 田宮良策

    田宮説明員 お話通り国税庁協議団国税局協議団は、それぞれ庁あるいは局の付属機関でございまして、上下の関係はございません。ただ、国税庁協議団では、現実に審査請求を受けまして、審査に当っておりますのは、国税庁長官納税地指定をやっております。この納税地指定に対する異議の申し立てに対しては、国税庁協議団が扱うということになっておりますが、この上下の関係につきましては、それならそれぞれ庁、局の付属機関だから、全然関係がないかと申しますと、ここに団令にもありますように、庁の協議団は局協議団の運営に関する連絡、調整に関する事務に当る、こういうふうにあります。実際は上下の関係がないわけでありますけれども、実際の事務運営に当ってのいろいろな問題点につきましては、現実に局の協議団を区処しておるというのが、現実の姿であります。
  34. 奧村又十郎

    奧村小委員 それではほかの委員諸君も御質疑がありますから、私は一番お尋ねしたい要点をお尋ねいたします。しかし、今の御答弁ですと、果してこれは本部長から御答弁いただけるのかどうかわかりませんが、一ぺんお尋ねだけして、もし本部長でお答えができなければ、東京局の協議団にでも御紹介をいただきたいと思います。それは横須賀税務署管内の納税者で松島いそ子さんの昭和二十五年分の青色申告に基く所得税の確定申告に対して、横須賀税務署長が更正決定をした。ところが、青色申告の帳簿であるにかかわらず、法律に規定してあるごとく更正決定理由付記がしてなかった。そこで、当然、納税者としては、何のために更正決定を受けたか根拠がわかりませんから、横須賀の税務署長に再調査を申し立てた。ところが、税務署長は、これに対しては再調査に対して、要するに理由付記の必要はないということで、相手にしなかった。そこで再審査したのです。東京国税局長あてに再審査を申し出た。ところが、どういうあやまちですか、税務協議団協議を受けたはずでありますが、こういう納税者に対する通知が出ておるのです。それは、審査の請求は棄却いたします。協議団協議を経て下記の通り申し上げます。その理由は、あなたの経営の状況その他を勘案して審査しますと、横須賀税務署長の行なった更正処分には誤まりがないと認められますので、審査の請求には理由がありませんと、頭から税務署長のやったことを誤まりがないとして決定し、通知を出したのです。二度とも却下になったので、納税者としては、これではおさまらぬというので、ついに裁判所に申し立てた。第一審の裁判で、これは法律違反でありますから、結局税務署のやったことは間違いであるというので、この更決定は無効と判決になった。ところが、これは無効で、国税庁国税局税務署も、これは法律違反だからまずかったということで、そこで反省すべきであるのに、なおまた今度は控訴したのです。まずかったら、反省してそれで服すればいいのに、なぜ控訴したか、控訴するには控訴する理由がなければならぬ、どういう理由で控訴したのですか、こう言ったら、それは法律にあっても、それは訓示規定であって、税務署はそれに対して服する必要はない、そういうばかなことを言うて控訴した。控訴においてまた当然無効になった。今度は国税庁長官もこれに服することになったから、まあこれ以上は取り上げませんが、これはあまりに納税者をばかにし、国税当局みずから税法をばかにしたことになる。税務当局が税法を踏みにじって、納税者だけに税法を守れといったって、これは無理だ。そこで、問題は、済んだことはあまり言いたくないが、再調査、再審査、第一審、この各段階において、関係の方々がみな法律違反を承知の上でうのみにしたというこんな制度なら、再調査も再審査意味がない。そこで、一番責任があると思うのは協議団ですが、このときの協議団はどなたが協議して、横須賀税務署長が明らかに法律違反を行なったことは間違いないのに、どうしてこういう決定をなさったのか、その事情を承わっておきたいと思います。
  35. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまの松島いそ子さんの事件につきまして、私が知っている範囲においてお答え申し上げますが、本件は、まずこれは所得金額から申しまして、その当時の国税局調査官の所掌限度であったわけです。国税局調査官が調査いたしまして、その調査に基いて税務署決定した。そうなりますと、一応はこれは審査の請求ということになります。再調査の請求ではなく、審査の請求ということになるわけです。実は、審査の請求を納税者の方は出したということになったのですが、実は当時、あとで調べてみますと、日曜日に税務署に届いたようでありまして、初めはあとの書類がどうなったかわからなかった。これは非常に不手ぎわなことでありますけれども、今から八、九年前のことでありますからあれですが、審査請求書が実は税務署では見当らなかったわけです。それから一年何カ月かたちまして、徴収関係で督促状を出しましたら、いや自分は審査請求をしているからという話がありました。そこで実は税務署側もびっくりしまして、いろいろ国税局も入って調査いたしましたところ、守衛のメモによって、やはり日曜日に税務署に届いたということがわかったわけです。そこで、協議団といたしましても審査請求事案として取り扱うということにいたしたのでありますが、その当時までに納税者との間にやはり感情上のそごがあったようでありまして、結局納税者の方は裁判所に訴訟を提起された。そして協議団調査に参りましても、いや、もうすでに裁判にかけておる、訴訟しておるから、あなた方の調査には応ぜられないということで、書類ももちろん自分のところにはない、弁護士さんのところにいっているということで、調査を拒否された。そういうことが何回かたび重なって参ったのですが、そういたしますと、実は青色申告でございますと、審査請求しておりますと滞納処分ができないわけでございます。そのうちに時効の期限が近づいてきた。五年近くなったわけであります。そうすれば、何とかしてこれを調査いたしまして決定しないと、時効にかかってしまう。そこで協議団でもさらに最後的に弁護士さんに打ち合せて調査の申し出をし、さらに御当人の方に申し出たのですが、結局最後まで拒否された。そうなりますと、協議団としては実地について調査するすべがなかった。一方、時効の期限が近づいてきたということで、やむなく棄却の決定をいたしまして、そうして時効を中断した、こういうことなんでございます。
  36. 奧村又十郎

    奧村小委員 まあ一応御答弁ですが、本部長はその答弁と……。
  37. 田宮良策

    田宮説明員 そのままでございます。
  38. 奧村又十郎

    奧村小委員 大体先ほどの御答弁で、東京局の協議団とは直接の関係がないのだから、本部長に続いてお尋ねしたって仕方がないと思うが、しかし、今のお話でいきますと、再審査段階納税者調査に応じなかった。そうすると納税者が悪いということなんですが、昭和二十五年分の所得税の再審査決定通知が昭和三十二年で、五年間もおくれて裁判が始まったのでしょう。裁判が始まったのは昭和三十年ですよ。裁判が始まって二年もしてから審査決定通知が行ったというの、そういう事情はすべて納税者が悪かったということですか。
  39. 北島武雄

    北島政府委員 私は何も納税者が悪かったと申すわけではないのですが、実は審査請求として扱うまでの間におきまして、多少いざこざがあったようであります。そこで、協議団としても、果して審査請求があったのかどうかということの確認について迷っておったのですが、結局局員が横須賀税務署に参りまして詳細に当時のことを調べましたところが、守衛さんのメモの中に記録してあった。そこで審査請求は出たということになりまして、協議団活動が始まったのですが、そのときにはすでに訴訟が出ておりまして、そうして納税者の方のところに参りましても、もう訴訟しておりますから、すべて訴訟で片づけましょう、書類も自分のところにはないということで、一応拒否された。それからさらに何回も調査のため連絡しようとしたのですが、今のようなことで調査できない。最後にだんだん時効の期限が近づいてくる。御承知通り審査請求中の滞納処分はできない。滞納処分は督促状を出しませんと時効中断になりません。そこで審査請求を終結する意味において、ほかに資料がないものですから、実地の調査もできないということで、協議団としては万やむを得ず今のような棄却の決定協議をいたした、それに基いて棄却し、督促状を出して、そこで初めて時効が中断された、こういうことでございます。
  40. 奧村又十郎

    奧村小委員 それでは、私の時間は経過したと思いますし、なお協議団本部長にお尋ねしても、どうもこれは責任ある御答弁を得られない問題が多いと思いますから、今お尋ね申し上げました横須賀税務署管内の問題、それから京橋税務署管内で、いわゆる同族会社の給与否認の審査請求に対するその後の裁判、これもやはり無効裁判が出ておりますが、そういう問題、もう一つは小石川税務署における鵜殿何がしの裁判の問題、これはすべて審査を経ておるので、その審査の状況をお尋ねしたいが、これは東京の国税局所属の協議団の方に次会に御出席をいただいてお尋ねをいたしたいと思いますので、私の質問はこれで終ります。
  41. 田宮良策

    田宮説明員 ただいまの奥村先生お話、庁の協議団といたしましては、先ほど局の協議団を事務連絡その他の面で所掌すると申し上げましたが、実際今の事案を責任を持って処理いたしましたのは、これは東京の国税局協議団でございますから、それでないと明確な詳細なところはわからぬと思いますが、私の方でも、実はそういう問題のありました事案につきましては、東京の担当の協議官を呼びまして、実情を聴取いたしております。なお調査の足りない点につきましては追及する場合もあり得るわけでありまして、ことに事後監査という問題を現在庁の協議団としては取り上げておりまして、どうも事前の指導ということは権限上できませんけれども、審査決定の行われました後のものを事後に監査をいたしまして、この審査決定に重大なる誤謬があったという判断がつけば、これは是正の措置をとらせることも考えておるわけでございまして、まだ例はございませんが、そういう事後監査制度によりまして、ことに各局がそれぞれ付属機関として協議決定を行なっておりますと、必ずしも統一のある審査決定ということも行えない面も出てくるのじゃなかろうか、やはり庁としてはそういう統制といった面を負担の公平の面からはかっていく必要があるということで、そういうこともやっておりますが、今お話しの松島いそ子さんの事件、それからたしか和洋商事だと思いましたが、あるいは小石川の鵜殿さんの事件、これは協議団としてどういうふうな調査方法をとったかということにつきましては、私も、最近ではございますけれども、担当協議官から事情を聴取いたしております。松島いそ子さんの件につきましては、先ほど長官お話しになりました通りでございまして……。
  42. 奧村又十郎

    奧村小委員 ちょっとせっかくですが、時間も経過しておりますし、ここ五分や十分では十分の御答弁は得られぬと思いますから、その点は後日にお願いします。
  43. 細田義安

    細田委員長代理 山本勝市君。
  44. 山本勝市

    山本(勝)小委員 先般来二回にわたって質問をいたしました物品税法第六条の第四項、新しい改正法における第三項に関してでありますが、だんだんとわかって参りましたけれども、なおはっきりしない点がありますので、重ねてお伺いをいたしたいと思います。できれば私としてはきょうは最後の質問にいたしたいと思うのでありますが、「第三種又ハ第三種ノ物品ノ販売ヲ業トスル者ニシテ原料、労務、資金等マ供給シテ第二種若ハ第三種ノ物品ノ製造ヲ委託シ又ハ自己ノミノ商標ヲ表示スベキコトヲ指示シテ第二種若ハ第三種ノ物品ヲ製造セシムルモノハ之ヲ」「製造者ト肴倣シ」云々ということであります。私は主税局及び国税庁に検討を願いたい問題を提起しておきたいと思うのです。これは質問の前に問題を提起しておきたいのですが、第一点は、この法の施行に当って、その製造せしめた者と実際に製造した者との具体的な結びつきというものが千種万態であると思うので、そこでよほどはっきり基準を設けるということは非常に困難だという、先般国税庁の方の答弁の中にもありました。具体的に見ないとなかなかあらかじめ基準をきめることはむずかしい。それだけに税務署ごとに取扱いが別になってくる、あるいは国税局ごとにも取扱いが別になってきて非常な不公平になる。それが紛糾の種になるおそれが十分にある。こういうふうに思うので、そういう不公平を来たすおそれはないかあるかという問題、あるということになれば、どうしてこれをなくすかということを、不公平をなくするように十分なる用意をしてもらわなければならぬ。それは今度の新しい改正の商標云々という改正以前からすでにあった。従来の第六条第四項の適用というものは、これは先般の間税部長の話でも、実際物品税の取扱い上非常に困ることが物品税には多いと考える、その中でも、実際面において非常に困る条文なんですということもはっきり答えておるんです、これまでにすでに。商標の問題に入る前から物品税にはいろいろむずかしい問題があるが、この第四項というものは絶えずむずかしい問題になるのですということを、はっきり言っておるくらいです。ですから、これは、どうしても今度の商標問題等を含めて、これまでの委託生産の場合の規定についても、私はあらためて取扱い上の不公平というものがないように、両者を含めて検討してもらいたいということです。  第二は、この新しい改正によって零細小企業者――小メーカーでありますが、これの事業生活に重大な打撃を与えるおそれはないかあるかということを問題としているわけであります。もしありということであれば、それがないようにするにはどうしたらいいかということを、私はこの法案が通過する前に検討してもらいたい。零細業者に重大な影響を与えるということであれば、これはもう大きな問題でありますから、それを与えない方法を一つやはり考えていかないと、ただある一方的な一面的な理由だけでは、波及するところの結果は知らないということでは、どうにもいけないと思います。  それから、第二点は、この商標規定を適用するために、当該品物が非常な値上りを来たし、非常な増税の結果になりはしないかという点であります。もしそういうことでありましたら、これもやはり問題として、それをどの程度まで、かりに値上りを来たしてもこの程度なら認められるだろう、あるいは値上りを来たし、従って事実上増税を来たすならば、これは避ける方法を考える、この三つの点であります。  これを重ねて申しますと、この法案の取扱い上、税務署ないし国税局間に不公平な取扱いの起らぬようにする措置を考えてもらいたい。第二は、零細メーカーに対して重大なる打撃を与えない方法を考えてもらいたい。第三は、その品物があまりにひどい値上りを来たし、そうして増税になるというような場合にはこれまた相当考慮を要するのじゃないかと思うのであります。それを問題として提起しておきたいのです。たとえば、この第三に申しましたこと、なぜそういうことを言うかというと、化粧品、口紅が、従来政府当局、税務当局から見れば、その課税価格が九百六十円になるべきところが、今までのところでは二百十五円というような非常に安いことになって、それに税がかかっておるということになっておる。これは直さなければいかぬと思います。直さなければいかぬと思いますが、しかし、口紅についてはポマードその他との均衡上値下げをしたことは御承知通りです。税率を下げた。税率を下げておいて、今度、これまで取るべきものを取らなんだというのでうんと取ったら、その取ったしわが中小零細業者の負担になる。そこで、負担にならなかったら、今度は製品の値上りになって消費者が非常な負担をせにやならぬ。こういうことになりましたら、両方ともやはり相当問題点だと思います。これは程度問題ですけれども、長年要求をして、頼まれたのかどうか知りませんけれども、全国の若い娘さんたちから口紅を下げて下さいというはがきがわれわれのところへ山ときた。ようやく今度税が下ることになったというので非常に喜んでおったところへ、今度は商標規宗が加わって納税義務者が変ったために税がうんとふえた。メーカーにこれ以上打撃を与えられぬということになれば、製品の値段を上げてきて、今度娘さんたちがあぜんとするようなことになっても、これは非常に政治上の大問題でないかと思うのです。つまり下げた当該品が下げてあれば問題がない。そういうことになると、人をだましたことになる。片方で下げたようなことを言っておいて、裏へ回ってうんととった、こういうふうな非難を受けることは少くとも避けなければならぬと思うのです。そういう意味で、実はこの三点について一つ御検討を願っておきたいと思います。  それで、この条文の意味をはっきりしておかぬといかぬと思うのですけれども、先般申しました通り、まだ新しい改正案については政府国税庁の中にも確かに研究問題はあったと思います。私はあえてその矛盾などの追及ほいたしませんが、しかしそれが確かにあることはお認めだろうと思います。これは吉國君が頭を下げておられるが、速記録に頭を下げたことは現われませんから、承認したなんということは言いませんけれども、しかしこれは過去の速記録をごらんになればわかるのです。そこでこれははっきりしておきたい。「自己ノミノ商標」というのは、ある一つの品物に二つの商標がついておるか、あるいは一つの自己のみの商標がついておるか、こういう意味なのか、あるいはそうではなしに、ある独立メーカーがあって、それがある特定の人の指示を受けて、そうしてマークをつけて作っておる、のみならずまたほかの人の注文も受けてそれも作っておる、あるいは自分自身でもそういうマークをつけないで別に売っておる、こういうふうな場合もなにからはずれるのか、はずれないのか、まずその点をはっきり終局的な答えを聞いておきたいと思います。
  45. 吉國二郎

    吉國説明員 お答え申し上げます。  その前に、ただいま御注文になりました三点については、私どもも十全検討いたしたいと思います。ただ、最後の点でございますが、税率の点は確かに仰せ通り口紅を今度半分に下げた。それが逆に全面的に上るということになると大問題でございますが、ここに申し上げました例は非常に異例のものでございます。ほかのものは自分で作って、本来九百円ぐらいの課税標準で出しておるのでございますが、ある会社がこういう形で非常に不健康な課税を受けておるという実例でございますので、せっかく下げた税率が相殺されてしまうということは、総体においては決して起りません。ただ問題は、いかにも仰せ通り三〇%は高過ぎたので、それをくくるためにこういう合法的な方法をとった業者が若干あった、そのために有利な地位を得ていたといたしますれば、むしろ今度は税率を下げた場合に正しい姿に置き直して、正しい競争に持っていく方がいいのじゃないか、口紅全体がそういうふうにやっているわけはありませんが、その点だけちょっと申し上げておきたいと思います。  それから、ただいまのお尋ねの点の自己のみの商標を指示して――最初にこの趣旨を申し上げておきたいと思うのでございますが、これは「自己ノミノ商標ヲ表示スベキコトヲ指示シテ」「製造セシムルモノハ」という言い方をいたしておりますのは、これを総合して申しますと、当該商品について自分の商標をつけさせて、そうして製造せしめる。製造せしめて、その販売に当っては自分が製造者としての立場で売っおる。つまり全部引き取りまして、全部自分の責任において販売をするという態勢でやる場合を指称しておるわけです。ですから「自己ノミノ商標ヲ表示スベキコトヲ指示シテ」「製造セシムルモノ」、これが一つの思想でございます。従いまして、商標指示という形をとって、実際上は、その製造といっても、技術的な製造だけをやる、製造販売という技術過程における段階は、自分が責任を持ってやるというものをさして言っておるわけであります。  そこで、お尋ねの自己のみの商標指示というのは、当該商品について言うのか、あるいは当該の命ぜられた製造者、具体的な製造をなすものを一体として言うのか、つまり、たとえばあるまゆ墨ならまゆ墨を作っている業者がございまして、それに資生堂なら資生堂、あるいはキスミーならキスミーという会社が、自分のところの製品を、作れ、そうして名前はキスミーならキスミーだけつけろ、あるいは資生堂なら資生堂だけのマークをつけろ、お前のところのマークをつけてはいかぬ、そうしてできたものはおれのところへよこせということを言っておる場合、これは前の方の考え方でございます。あとの方の考え方は、資生堂が、もっぱらおれのところの品物として表示したものしか作ってはいかぬぞ、あとは一切作るなという形でやった場合、どっちをさすのかというお尋ねだと思いますが、これは前者をさす意味でございます。当該商品につきましては、その商標だけをつけさして、その商標のついたものは全部引き取って自分の名前で販売する、たまたまその人間がほかの会社から同じようなことを受けた、そうしてほかの会社へ渡したという場合には、そのものについては他の会社の製造ということになります。こういう趣旨であります。しかし、実際問題といたしましては、泉間税部長がこの間申しましたように、そういう形態をとっておる場合は、大部分が一対一になるという結果になることが多いと思います。今私が申しました方々から請け負っているというような事例はおそらく例外だろうと思います。これは余談になりますが、まゆ墨のようなものは、化粧品といたしましては製造段階が非常に厄介なわけであります。こまかい黒い粉が散りまして、おしろいなどと一緒に作った日には、たとい場所を変えておりましても、工場が一つであればうまくいかぬというので、まゆ墨製造だけ車門にやっているものができております。それにみな注文する。まゆ墨などは実際問題といたしましては、製造加工料と申しますか、製造費が非常に安くて、結局名前が入るがために、初めて流通価格に相当する額が出ておるものでありますから、まゆ墨製造業者の段階でもし課税をいたしますと、実際問題として非常に不均衡な結果になるおそれがある。そういう特殊な例外の場合には、幾つかの委託者と申しますか、製造を指示する者が幾つか混合してぐるという場合も想像されるわけです。大部分の場合は、おそらく商標を指示をしておるような状態であれば、一種の下請子会社という形になります。当該商標のものだけを作るという結果にはなっておると思いますが、法律の思想は、あくまでも当該商品について二つの商標がついていない、製造を命じたものがその自分の商標だけを表示するという命令をして、そうして製造さして引き取っていくという過程を指示しておるわけでございます。
  46. 山本勝市

    山本(勝)小委員 こういう改正をやろうというのには、何かねらいがあって、どうしてもやらなければならぬという原因があったのだろうと思う。あなた方の方は、当初のここのところをやらなければいかぬということが頭にくる。われわれは、そうではなしに、それが一般的に法律となってきた場合のことを考える。ですから、だんだんここのところをほんとうに取らなければならぬということを今後説明してもらいたいのです。今いろいろ何とか言いましたけれども、たとえば、一例を申しますと、たんすならたんすというものは昔からあって、決して三越とか高島屋がたんすを発明したのではありません。しかし、三越に入れたものは三越のマークをつける、緑屋に入れたら緑屋のマークをつけるというふうにしておるのです。しかも、たんすを作るためには、何百年来技術が継承してきてできたものです。それはりっぱな業者でもあるし、資金も自分でやっており、一切がっさい自分でやっておるのですが、しかし三越なら三越のマークをつけている。同じものを高島屋に入れたときは、高島屋は自分のマークをつけておる。これはほかにも私は例はあると思いますが、具体的なたんすの例などはそういうものなんです。ですから、三越のマークをつけておるからこれは三越のメーカーと見るのだというようなことになって、かりにたんす業者はたくさんのところに同じものを売っておっても、三越にいったものについては三越のメーカーだ、高島屋にいったのは高島屋のメーカーと見なすのだ、こうなるかどうかということは問題です。どうですか。
  47. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまたんすの例が出たのでございますが、三越その他にたんすはもちろんいっておりますが、先生がおっしゃいましたように、たんすはいわば昔からの伝統的製品であり、三越が作っておるから信用があるとかいう問題ではございませんものですから、実際はたんすなどはマークは入っておりません。これは実はそういうお話がありましたので、実は調べてみたのですが、たんすなどは、やはり一般商品としても、流通が製造者のいかんにかかわらず担保されておるものでございますので、実際上はそういうことはないわけであります。一番多いのは、やはり何と申しましても、メーカーによって初めて信用が安心してできるという品です。このごろJISマークその他できて参りまして、どうしても電気製品でございますとか、化粧品とかいうメーカーの信用といいますか、メーカーの製造を信用するというような形のマークが入っておるのが多いようであります。たんすなどは入ってないようであります。
  48. 山本勝市

    山本(勝)小委員 それはあなたが知らぬ。たんすにマークをつけたのです。ところが、三越に持っていったら、三越にいかぬというので返される。返されたものをマークをはずすのを忘れてまた高島屋に持っていった。そこで、高島屋に三越のマークのついたものが出た。それは外側につけると格好が悪いから、金具のところにつけるとか、あるいは内側につけておるのだから、取るのを忘れてトラブルを起したということから、一般的には現在つけないようにしている。それは僕の方がよく知っているのだ。しかし、それはたんすというものがたまたま一般的でないからというので、この法案は簡単にやるわけにはいかぬ。私は、最初にも申しましたが、こういう場合ならはっきり理由があると思う。親工場というものがあって、実際は親工場がデザインを作り、そうして資金もめんどうを見る。生産についての責任ももちろん自分が見る。こういうときには、そこで作っているのは単なる労務者として仕事をしておる、労働をやっておるだけであって、それはメーカーとはいえない。職人みたいなものですから、企業者とはいえないと思う。そういう実態がある場合に、それは親工場をメーカーと認めるということは、これはただみなすだけではなしに、当然だと思うのです。しかし、原料も何も全部自分でやっておる、作ってしまうまでは自分のものであって、半製品はもちろんのこと、完成しておりましても金を払うまでは自分のものだ、渡す渡さぬはだれのものかというとわしのものだ、それがメーカーではなしに、こっちの方がメーカーだということは、そこに私は非常に問題を起すもとがあると思う。企業者としてりっぱに独立性を持ち、全責任を持って製造しておる。だから悪い品物は絶対――自分が持っていっても、こっちのマークをつけておる方から、こんなものは受けておらぬといったら、よろしい、引き取りますといってやってくる。しかし、ほんとうにメーカーでなしに、言いつけ通りやっておるならば、半製品であろうが何であろうが、所有権はこっちのもの、こっちは仕事をしているだけですから、賃金をもらってやっているようなものです。原料を提供され、あるいは資金を提供されてやっているようなものは、これは加工をやっているのであって、そういうものをはっきり区別しないと問題が起るのではないか。現にマークを指示して製造せしめると書いてありますが、製造せしめてからマークを指示した場合はどうなりますか。製造したものにマークだけ指示した。だから、製造したものに対して、見てなるほどこの品物は私のところで責任をもって売れるから、私のところのマークをつけてくれ。これは指示して製造せしめたのではなくて、製造せしめたものにマークを指示した。これはどうですか。
  49. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいま仰せになりました通り、この商標指示の規定は全面的に働くかという点は、先ほど申し上げましたように、表示して製造せしめるという言葉の意味に含まれてくる問題でございます。今製造したものに表示した場合はどうかという問題がございましたが、これはやはり製造行為というものをどこで押えるかという問題でございまして、その表示が製造の一条件になるような意味の表示でなければ問題にならぬのじゃないか、こういう非常に微妙なところだと思いますが、要するにこれの趣旨は、商標権というものがあります以上、その注文した物件に商標をつけるといって商標をつけた以上は、販売については、商標権の専用使用権でも持っていない限りは製造者はそれをほかに転売することはできない、そういう意味の商標指示を意味しておるわけであります。ここでこの条文全体から予想されること、一般の卸なり何なり、卸すための注文を受けておるのは、まさに商標を指示した人間だ。製造者は一般の注文は受けておらぬという態勢を予想しておるからこそ、商標を指示して製造せしめるということでございます。従いまして、その商標を指示するという行為が、いわば製造者が他に販売するという意味ではなくて、その者に注文された分だけは全部引き渡すのだという前提で商標を付するということであれば、いつつけるかという問題は、むしろその製造行為自体の解釈の問題になってくる、こう考えるわけです。
  50. 山本勝市

    山本(勝)小委員 そうすると、商標をつけるということが製造のうちに入るのですか。
  51. 吉國二郎

    吉國説明員 この法案の趣旨から申しまして、商標をつけて、それによって完全に製造物が他に販売される、要するに注文者に帰属せざるを得ぬという形になる限りは、やはりその表示が一つの製造の段階に入るのであるという解釈になると思います。
  52. 山本勝市

    山本(勝)小委員 今吉國君はそう言いましたけれども、私はこれはもっと研究の余地があると思います。法文の文字解釈から言いますと、指示をして製造せしめた者ということであって、製造の過程においては指示は行なっていない。たんすの場合には昔からそういう組織ですから……。こういうのはほかにもたくさんあると思うのです。たとえば、自分のところに品物を持ってきて、自分のところで商標をつけたという場合に、そこに名前を書いただけで、それが製造業者、それまで全部やった者は製造業者じゃない、こういうことになりましょう。そうしないとなかなか税は取れないということになるから、税を取る以上そういうふうにせざるを得ないというふうに、だんだん徴税上からなってくるかもしれない。しかしそこに抜け穴もできてくる。その抜け穴を防ぐために、今度大へんな無理をして、実際は大へんな問題を起してくると思うのです。それから、先般私が申しましたが、製造業者が人の品物に自分のマークをつける、二つついているときはこれに当てはまらぬということであります。その自分のマークというのは商標として届け出てさえおけば、これは受け付けるのでしょう。おそらく私のうちの商標ですと届け出ればいい。それをあなたの方で研究したのは、判然とそれがついておる場合はこれは適用しないという意向のようでありますが、判然と、こういう意味がまたばく然として、大きいとか小さいとか――これはスムーズにいく場合にはそんなこと起りませんよ。しかし、先ほど言ったように、中小メーカーが自分の生きるか死ぬかになるというようなことになりますと、品物のあまり多く目立たぬようなところに、目立たぬけれども外側でないといけないので、外側に、MKならMKあるいはMというマークをつける。そしてMという商標を届け出ておけばいい。そのときにMというのをマークとして認めないといっても、Mという商標として届け出ておるのですから……。あなた方の言う天下に向ってこの人が作ったんだということをはっきり消費者に向って言っておきながら、実は税務署にだけは自分が作ったんでないということは不合理だ、こういう点は私もよく了承できるのです。ですから、単なる商標というのではなくて、製造という言葉を書くか書かぬか。芝浦なら芝浦製造と書くか。あるいは単に芝浦と書いておくか。そして特に製造と書いておる場合には、天下に製造したのですといっておるのですから、それが責任をとるということは、中小企業に対する弊害その他も考えなければなりませんけれども、理屈の上から、製造しましたといって、いや私は製造していないということはごまかしになります。しかし、ただ自分は保証人だ、消費者に対する責任は、連帯保証であって保証人でやるのだけれども、これは連帯保証か――あるいは単なる保証でもいいのですが、そういう意味の場合には製造と書いたのとは少し違ら。百貨店の場合には、百貨について明らかに工場を持つなんということは常識上考えられません。ただ三越なら三越、高島屋なら高島屋が保証している。そんな悪い品物を扱うわけはないから信用しておる。その信用たるや何十年おそらく何百年という間にたくわえた信用なんです。急に新聞広告なんかで出たような信用ではないのです。長年の信用というもの消費者も信用する。本人も作ったとは言っていない。それに類するようなことが芝浦に――別に僕は頼まれたわけじゃない、公平に言っておるのだけれども、そういうことをやって、すみっこのところに、裏側なら裏側に、M製造とかY製造とか、あるいはメイド・インなんて英語で書くと普通の人は知らぬから、メイドだれだれ、バイだれだれと書いておっても、それでものがれるかのがれぬか、これは適用するかしないか、それはどうですか。
  53. 吉國二郎

    吉國説明員 自己のみの商標と申しましたのは、百貨店の場合はちょっとあとにしまして、普通の場合、たとえば製造業者である。実際普通製造しておる――東芝の場合がいい例でございますが、東芝がマークをつけまして、ほかのマークは全然ついていない。つまり製造者であろうと推定されるマークがついていない場合は、普通の製造の商標と受け取られるのは当然であるわけであります。しかし、そのほかに何々製造所という名前が入っておれば、これは東芝が商標を保証するという意味の選択を示した商標であるということは、これは明らかにわかる。つまり商標の使用というものが、一つくっついておるときと、二つくっついておるときとで、初めて保証であるか何かはっきりするわけでございます。そういう意味で、自己のみの商標を指示さしておるということは、相手に製造であることも示す意図がなければならぬはずです。そういう意味で特に限った。二つついておりますれば問題なし。そのつき方がどうかということでございますが、たとえばラジオを作れば、ラジオの内ぶたの裏側にくっつけておく、いわば東芝のある部門でこれを作りましたといってくっつけておる場合がたくさんございますが、あれと変らない。それを一々見て判断する人はないわけであります。そこで、このついておる商標が、少くとも製造の意味を持つ商標でないと判断されるためには、やはりほんとうの製造者の商標なりあるいは氏名なりが買う人にはっきりわかっておる。そのわかり方の程度はいろいろな形があると思います。これは余談になりますけれども、酒の場合でも、たとえば合成酒の場合、これはちょっと弊害があるかもしれませんが、御承知のように、前は合成酒というものを赤地に金色で合成酒と書いた。ほんとうの名前は新清酒と書いた。そうすると、買う人は、合成酒を見ても赤いだけで金色が見えないということで、よく問題を起したことがございますが、そういう微妙なことが起ると思いますけれども、少くとも商標がくっついておるということがはっきりわかれば、問題なしということになると思います。
  54. 山本勝市

    山本(勝)小委員 百貨店は百貨を扱っておるのですが、百貨を扱っておって、それが大部分事実上小売課税のようなことになりはしないかということになると、これは非常な大変革になるわけです。しかも、製造メーカーのところで税務署に届け出るということになったら、百貨について大変なことになります。実際は自分が作っているのではないのだが、そういうのはどうなりますか。
  55. 吉國二郎

    吉國説明員 百貨店がみなそういうことをやっておるといたしますと、これは大問題だろうと思います。ところが、実は実際に各デパートに当って見てもらいましたのですけれども、商標を単独でつけておる、しかもいかにも製造と見られるような形でついておるという例は各百貨店に商品で一つか三つしかないのであります。ずっと調べてみますと、化粧品の中に幾つかありました。事実少いようでございます。もちろん包み紙や何かは別でございますから、紙をぺたっと張ったとしても、商標指示とはいえないのであります。もちろん化粧品なんか張らざるを得ませんから、その表示自体が普通に張られるわけです。かりに三越という紙をぺたっと張ってみても、これを商標表示とは見られない。そういう面から見まして、百貨店の場合はきわめて数が少いようでございます。それから、その場合に、各百貨店がもしかりにそういうことが多いといたしまして、各製造所でみな百貨店の名で申告するということになると大問題でございますが、これは未納税移出を認めまして、百貨店の蔵置場に入って百貨店が販売したときに申告させるという手段をとるべきだと思います。というのは、こちらも製造所と見るわけでございまして、製造販売という責任を持っているのは百貨店だと見るわけです。移出についても、製造所から持ってくるときは蔵置場に持ってくるものとして未納税移出にする。そうすれば、百貨店が各地で申告する必要はなくなるわけです。やはり百貨店の場所でやられるという扱いを当然すべきだと思っております。ほかの場合におきましても、製造者とみなされたものについては蔵置場に持ってきて、そして申告ができるという扱いにすべきであろうと思っております。  最初の検討を御要求になりました執行を十分に公平にやるという点も、今のような幾つかの問題がございますから、これを十分に検討いたしまして、そして実際この規定を適用する必要があるのは、製造ということ自体が、経済的に見た場合に当然製造である。しかるに、特殊な迂回路をとるがために、あるべき課税標準と非常に違っておるというときには、やはり公平上適用すべき性質の規定でございますから、そういう点をよくにらんで公平な扱いをする必要があると思います。国税庁の問題ではございますけれども、当分と申しますか、この規定を適用するに当っては、国税局が統一的に扱う。さらに国税庁がこれを統一的に指導してやっていくように扱っていただきたいと私たちも思っております。いろいろの問題がございましょうが、それについては、実際的にはそういう実態的な判断を下して、間違いなしということで相手も納得する態勢で、初めてこの規定を適用していく。ですから、みなすとは書いてございますけれども、その実態がはっきりするまでは、互いにわからぬわけでございます。実態がはっきりしてからあとの問題として処置をいたしていくという、運用上の考え方をとるべきだと思っております。
  56. 山本勝市

    山本(勝)小委員 国税庁長官どうですか。これを、そういう不公平にならぬように、実態をつかんで納得する形になって適用する、また統一的に国税庁が全国的にでこぼこのできぬようにやるという腹を持っているのですか。
  57. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまの先生吉國君の応答を聞いておりまして、非常にデリケートなむずかしい問題だという感じがいたしました。執行に当っては非常にむずかしいのでありますが、ただいま吉國君が申しましたように、十分税務署により、また国税局によって不権衡を来たすことがないよう、国税庁において主税局協議の上統制いたします。それから、不権衡のないようにいたす場合におきましても、できるだけ零細な小企業者に対して重大な影響を与えることのないようにする、そういう観点から権衡を保つというつもりでやっていきたいと思います。
  58. 山本勝市

    山本(勝)小委員 その点は、当事者に通告をしてから適用する、通告しないでぽんとやるということはないという約束はできますか。
  59. 北島武雄

    北島政府委員 よく検討させていただきます。いずれにしても無理のないようにいたしたいと思います。
  60. 吉國二郎

    吉國説明員 今長官がおっしゃいました通り、この点はさらに実行通達をせねばならぬ段階が参ると思いますが、現在の六条四項の適用につきましても、こういう事情でこちらは製造所、こちらは受託者という立場になりますよという通知を出しまして、そうして申告をもらっておるというやり方をしておりますので、今度は商標指示の場合も同様な判定の問題があります以上、通知をしてから適用するということにしていただきたいと私どもは思っております。
  61. 山本勝市

    山本(勝)小委員 さっきの百貨店の問題でありますが、百貨店には適用されるような対象は今まで調べたところではあまりないというようなお話であったのであります。しかし、あった場合は、未納云々というので、今度は全部かかってくるような不安もちょっと持たれる。実際百貨店の場合に特選というのがあります。特製じゃなしに特選ということは、文字通り持って来た品物の中から特に選んだのであって、メーカーでないということを表示してある。これはどうですか。
  62. 吉國二郎

    吉國説明員 これは、商標法におきましても、商標の意味は、選択を意味しておる場合、証明を意味しておる場合、それから販売のための商標である場合もあり、製造を意味する場合もある。この商標は何のための商標だということは、普通は表示してないわけであります。そこで、商標だけをつけておけば、普通製造、販売その他全部含めた商標と考えるわけであります。おそらく特選といえば、これは十分突っ込んでおりませんが、これは選択という意味の商標であるということは出てくるんじゃなかろうかという感じはいたします。いたしますが、なお研究してまたお答えいたしますが、私の今の感じでは、これは少くとも製造の商標という意味を表わしてないんじゃないかという感じがするわけであります。
  63. 山本勝市

    山本(勝)小委員 あまり早く結論をきめて言わぬ方がいいと思いますが、実際に常識上製造していないというのが百貨店の場合などは通念でしょう。作っておる場合は特別なる場合でです。デザインを与えてこれを作ってほしい、そういうことはあり得ると思いますが、これもきわめてまれな例外であると思います。普通は、あっちこっちにすでに存在しておる製品の中から、たくさん見本を出さしてみて、この品物のこのメーカーならばまあ信用が置ける、だから自分の信用と両方協力して、メーカーは腕を持っておるが信用がない、こっちは信用はあるが腕はない、この腕と信用とを結びつけて、そうして両方ともうまく立っておるわけです。このときに信用を与えた方だけをあくまでメーカーにしようということは無理があるのです。その無理を生ずるのは、信用を与えたものをメーカーと認めるからだ。だから、製造と書いておれば別ですけれども、もし適用する場合は、これは製造と書かせる。書いてない場合はこれは一がいにそら言えぬでしょうけれども、常識上もメーカーは別におると考えられておるような場合に、むしろそこへくるようなことは……。  それから、これも研究してもらいたいが、これではきょうはなかなか済まないが、小売の広告費というのがありますが、小売は、売るために非常に苦労する。小売をするために要した広告費は、これはメーカーのコストと見るかどうか、これはどうですか。
  64. 吉國二郎

    吉國説明員 また話が戻りますが、先ほどの特選というのは、普通メーカーでつけておらない。三越特選というので、三越がつけるのが普通でございますから、おそらく特選の場合は適用にならぬと思います。  それから、今の小売の販売のための広告、ここでこの規定が考えておりますことは、製造者が製品を売り込むためのいろんな宣伝、広告、たとえば仁丹といえば、同じ物を持って行っても仁丹とはまるきり違うという意味の、そういうものが吸収されるべきである、かような意味を持っておるわけでありますから、一般小売のための宣伝というものがコストに入るということは、もとより考えてないわけであります。ですから、また変な話になりますけれども、たとえば三越が問題になるといたしましても、その場合に、課税標準の中に入ってくる場合は、販売のためのコストであるものはマージンの中に含まれますから、マージンの三割控除――今度の場合なんか三割でいいかどうか問題がありますけれども、三割控除の中で、そういうものは排除されます。一般販売の小売としての立場の宣伝広告費というものはこのコストの中に当然入ってこないわけでございます。
  65. 山本勝市

    山本(勝)小委員 おそらくはかもそうじゃないかと思います。百貨店の場合、想像するに、脱税目的によって特に安く作らしておるというようなことは、そういう天下の信用をもって立っておるようなところにはないと思います。ところが、この法案を作った根本は、脱税目的でやっているのを防ぐために出発したというふうにも聞いておるのですが、そこが非常にむずかしい問題が起るところである。はっきり脱税目的でそういうことをやっておるものを取るというなら、これはだれも反対はないと思うのですよ。これはどうですか。脱税目的という、それをやっておるかどうかが今後の判定の大きなる基準になるかならぬか。あるいはもしそれが出発点であり、それが目的ならば、それをはっきり基準の中に、実際国税庁取扱い基準のときに、これは脱税目的かどうかということを入れるのも一案だと思うが、どうですか。
  66. 吉國二郎

    吉國説明員 これは、一つには、物品税のいわゆる製造価格というものは、この定義によりましても、いわゆる抽象価格制度、一般の製造の場合は、一般の通常の卸売の形態において、不特定多数の者に対して提供したものに対して付さるべき価格というものを言っておりますが、正確に申しますと、今のような形で商標指示でやっている場合も、このメーカーが製造指令者に引き渡すときの価格がたとい百円であっても、それがそのメーカーの商標がついてメーカーから卸売する場合は五百円で売れるのだという場合は、ほんとうをいえばメーカーが百円で出すものに五百円で課税してもいい。むしろすべきものだ。ところが、実際は、このメーカーは製造するといっても事実行為だけで、その五百円で売れる実力がないからこそ、これを自分が甘受して、商標をつけて百円で渡す、そういう意味で、これを製造者として五百円で課税することは経済的事実にマッチしない。むしろその五百円で売っていく商標指示者を本来の製造者と見て、また五百円として妥当な課税標準で課税していく方が筋でないかということが、この規定の本来の趣旨でございます。ところが、そういうことが行われるのは、多くの場合は――多くの場合と言っては語弊があるかもしれませんが、相当の場合にこういういわば税の裏をかいて、弱い者に押しつけて税を安くしょうという意図でやられていることがあると思います。その場合に、税務署が小さなメーカーに出かけていって、抽象価格だからこれを五倍というようなことはやれぬだろうということになるわけであります。そういう意味から申しますと、先生がおっしゃいましたように、脱税目的という限定をすること自体は、この規定からいうとちょっと狭過ぎる感じがいたしますが、少くともこの規定を適用する妥当な課税標準価格で課税し得るという態勢に持っていくことが必要であるかどうか。これはこの規定を適用することによって初めて課税標準として妥当であり、またそれを払う人として妥当な姿であるという形になるときを目ざしてやるべきだという意味で、表現は違うと思いますが、かなりその点の限定はできるのではないかということで、私どもは検討しておるわけであります。
  67. 山本勝市

    山本(勝)小委員 中小零細業者にしわ寄せがきやせぬかということを業者が心配してきている。親工場から何か圧力を加えたんじゃないかということを、本心聞いてみると、絶対そういうことはない。これは疑いない。結局今度の改正で税金が上り、納税者が変るために、上った分は必ずメーカーのところへ経済上の力関係でしわ寄せがくる。それをこっちが応じないでがんばったら、もうお前のところへ注文しない、安いからこそ作らしたのではないか、安くないならむしろ自分のところで直接作る、こういうことになって、親切がかえってあだになるということを訴えてきているのです。この力関係というものは、これは物品税の転嫁問題でいつも起るのです。経済上の力のバランスというか、あらゆる力の総合的な関係において、価格とか利潤とか労賃とか、すべてきまってくるのです。賃金が安いから法律で上げてやろうというようなことをやったって、実際はそれなら雇わぬよと言って失業してしまうという、かえって賃金を上げてやることが悪い影響を持つのと同じような関係が起り得るのです。これをどういうふうにして防ぐか。あるいは一つの方法として、今度税が上るが、メーカーのところへはこれまで通りの値段で出せるような何か方法はないものか、あるいは何かいい方法は考えられませんか。そこに及ばぬようにするにはどうしますか。及ばぬように十分注意しますと先ほど長官は言いましたが、十分注意しますだけでは片がつきません。まず常識上考えて、ある親工場がある種類のものは自分で作り、他の種類のものは下請の小さい工場に出している。そしてマスプロでやるものは自分のところでやれば有利だから、自分のところでやっているが、マスプロでないようなものは下請に出した方がいい。ところが、この下請に出すのは安いからであって、安くないということになったら、それはそんなところに出さなくても、自分で直営でやった方がいい。これは何か名案があるのですか。
  68. 吉國二郎

    吉國説明員 この税の方で経済関係、契約その他を規制することはなかなかむずかしいのです。今度入場税改正法案では若干そういう面が出ておりまして、入場者と入場館との契約を間接に税を重くすることによって規制しようとする意図が出ておりますが、あれは入場税という特殊な形態であるからできるわけで、物品税についてそれをやるということはなかなかむずかしいと思います。それは議論になるといけませんけれども、実際問題として、下請に出す場合に税が安くなるから、そのために安く上るというだけでやっておるとすると、これはやはり税の体系としては是正しなければいかぬことだと思います。もちろん、下請に出すということは、工場の規模なり、あるいは労賃の差なり、いろいろな問題を考えて、実体的に有利であると判断をしてやっておるのが普通だと思います。それにうまい工合に税が安くなるという要素が乗っかっておるというのが、実態だと思います。税の差だけが有利だということのためにやっておる場合は、私はかなりこれは問題だと思います。これは、税の公平という点から、何ぼ何でも見のがすわけにいかない。しかし、下請に出すということの有利さというものは、そのほかに必ずあるであろう。追加された税の分は少し有利さは減るかもしれないけれども、有利さは必ずあるはずなんです。それがまた中小企業のいいところじゃなかろうか、存立するゆえんじゃなかろうかというふうに私は思います。お前らは何もしないで無責任だと言われると困りますが、私はそういう面は見のがせない面があると思いますし、長官の言われたのも、適用する際に時期等いろいろ選択をして、インパクトのできるだけ少い形でやっていこうという趣旨で言われたんだと思うのでありまして、契約をこちらから勧告して落すなよということを言っても、万やむを得ないことがあると思いますけれども、私の申し上げたいのは、税のためだけにやっておる、税の差だけが有利だというだけであれば、見のがすわけにいかぬという感じがいたします。
  69. 山本勝市

    山本(勝)小委員 細田さんに長い間迷惑をかけまして申しわけないので、これでやめますが、小山長規君もなかなか問題だと言い、先ほどは坊君も来てなかなか問題だと言っておりましたが、私も、中小企業庁の連中も同じ政府の中ですから、税さえ取れればいいというわけではない。私はあたなの方でもよく事実を研究して、主税局と話してくれと言っておきましたけれども、それを打ち合せて、もしどうしても名案が出なければ、新しい条項だけでも実際の適用を延ばすような方法を考えたらどうか、そう急いでやって、やりかけてからごたごたするより、かりに法律はそうなっても、実際の適用は簡単に発動しないというようなことにした方がいいのじゃないか。こういう法案こそほんとうに税の方で練らなければならぬので、ただ陳情があったからどうとかこうとかというような問題ではない。問題の性質が違うと思うのです。これで終ります。
  70. 細田義安

    細田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十八日開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時四分散会