運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-25 第31回国会 衆議院 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十五日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席小委員    小委員長 山本 勝市君       内田 常雄君    奧村又十郎君       押谷 富三君    鴨田 宗一君       小山 長規君    濱田 幸雄君       古川 丈吉君    細田 義安君       山村庄之助君    久保田鶴松君  小委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉國 二郎君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      細見  卓君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         大蔵事務官         (国税庁税部         所得税課長)  志場喜徳郎君         大蔵事務官         (国税庁税部         法人税課長)  坂野 常和君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    竹村 忠一君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十五日  小委員夏堀源三郎君同日小委員辞任につき、そ  の補欠として小山長規君が委員長の指名で小委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 細田義安

    細田委員長代理 これより会議を開きます。  税の執行に関する諸問題について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。山本勝市君。
  3. 山本勝市

    山本(勝)小委員 物品税関係の方は来ていますか。まだ来ていませんか。それでは……。
  4. 細田義安

    細田委員長代理 それでは、都合によりまして説明員の到来を待って山本先生にお願いいたすことにしまして、奧村又十郎君。
  5. 奧村又十郎

    奧村小委員 私は、ごく短時間ですが、ちょうど主税局調査課長が見えておられますから、本年度収入予算の中の貯蓄控除減税予算額についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。実は貯蓄控除制度については、私個人としては、あまりにまずい政策であるから大反対をしてきたのであります。また、こういうことは実行しても実効も上らぬということで、昨年度通常国会ではずいぶん反対したのでありますが、政府はこれを強行した。ところが、一年もたたない間に、あまりにも無残な実情になったので、一つ政府みずからこの点を白状してもらいたいと思うから、調査課長に数字をつきとめてお尋ねいたします。去年初めて貯蓄控除制度を実施したときには、銀行相互銀行、信用金庫あるいは地方の農協の預貯金あるいは株式あるいは生命保険といったような預貯金に至るまで貯蓄減税をやるということで、その減税額が六十六億という予定である。実績ははなはだふるわずでありましたが、昭和三十四年度においてはその貯蓄控除制度を実施するについてどれだけの減税になるか、政府はことしの予算の中に幾ら減税として見込んでおられるか、まずお尋ねいたします。
  6. 細見卓

    細見説明員 ことしの予算貯蓄控除額税収の減として見ておりますのは六億六千——先ほどお尋ねがございましたので、やや蛇足になろうかと思いますが、過去の実績ともあわせて御説明申し上げてみたいと思います。  三十三年の実績をもとにいたしまして三十四年のいろいろな税収を見込むわけでありますが、残念ながら、貯蓄控除につきましては、当初スタートいたしました四月、五月というのはかなりすべり出しがよかったわけでありますが、その後必ずしも伸びが芳ばしくなくて、金額で申し上げますと、四月が四億程度、五月が約九億程度、六月で十三億程度、七月になりまして十六億、この程度金額貯蓄額として対象になってきたわけであります。ここにごらん願いますように、伸びが四月、五月というのは一応倍々というような格好で伸びてきたのですが、その後はずっと伸びがとまりまして、八月ごろになりますと十四億、九月で十四億というようなことで、ほとんど伸びが期待できないというような状況にあります。
  7. 奧村又十郎

    奧村小委員 実績はまたあとでお聞きします。
  8. 細見卓

    細見説明員 ことしは六億六千万を見込んでおります。
  9. 奧村又十郎

    奧村小委員 六億六千万のうち、申告所得税におけるところの見積りの中に記載された貯蓄控除減収見積り幾らになっておりますか。
  10. 細見卓

    細見説明員 一億三千万です。
  11. 奧村又十郎

    奧村小委員 それから、源泉徴収では幾らですか。
  12. 細見卓

    細見説明員 約五億三千万です。
  13. 奧村又十郎

    奧村小委員 ほかにはありませんか。
  14. 細見卓

    細見説明員 ございません。
  15. 奧村又十郎

    奧村小委員 それではお尋ねいたしますが、去年の予算を見ますと、給与の方の、つまり源泉徴収の方の貯蓄控除による見積りは四十億見ております。これが五億、約一割余りに減った。それから、申告所得額の方では、これまた三十三年の見積りとずいぶん減っておりますが、どうですか。去年の見積りは、法律に基いて、たしかこの制度による貯蓄増加が千七百億を見積ったのですが、六十億余り減税であった。ことしの貯蓄控除見積りは去年と比べると約一割余りですが、その見積り根拠お尋ねいたしたい。法律がある以上法律執行しなければならぬのですが、法律が変らずに見積りがこんなに減るということは、政府がこの法律法律通りに実施する熱意を失っておるという証拠なんです。それでは政府は怠慢ということになる。だから、私は去年はこれに反対したけれども、きまった法律政府が実行する熱意がないというならば、政府はむしろこれをことしは廃止する提案をするなら話はわかる。提案もしないで見積りだけは減らしておくということは、明らかに政府の怠慢です。この見積り根拠お話ししていただきたい。
  16. 細見卓

    細見説明員 お答えいたします。ことしの予算見積りましたのは、先ほどちょっと申し述べておきました。私どもとしては、税収はどうなるであろうと最も可能性の多いところで一応見込むわけでありますが、一月—五月間、それから七月—十一月、つまり六月とか、十二月とかいう特別のボーナスその他がない月に、大体月十五億程度のこの制度による貯蓄増加額がある。つまり十カ月で百五十億というものを見ております。それから六月、十二月におきましては、やはり勤労者その他にも収入がふえるときでありますので、このときはかなり多くなると見まして、六月に約三十億、それから十二月に約四十億程度、合計いたしまして口数で年間三十万、金額で二百二十億程度のものを見ました。これが累計になりますので三百五十三億、約六十四万件ぐらいのものに本年中になってこようか。従いまして、三十四年度の純減収分としましては、ことしふえまして二百二十億の三%、六億六千万、こういうふうに見ております。
  17. 奧村又十郎

    奧村小委員 それでは、最近までの減税額実績はどうなっておりますか。
  18. 細見卓

    細見説明員 先ほどちょっと申し上げましたので、一部分重複いたしますが、四月には口数で五万七千件、金額が四億三千万円、五月が六万八千件で金額が約九億円、それから七月が三万七千件で約十六億円。
  19. 奧村又十郎

    奧村小委員 そういうのはまたあとで資料で……。最近の合計でけっこうです。
  20. 細見卓

    細見説明員 最近十月までの実績で申し上げますと、口数で約二十三万件、八十三億程度になっております。これは貯蓄額でございます。従いまして、減税額は、八十三億の三%と見ますと二億五千万くらいになります。
  21. 奧村又十郎

    奧村小委員 それでは、大体予想に反して、去年予算減税額約六十億を見たものが、実績でいくと十月まで半年分で約二億円余、だから年度に引き延ばしても予算の一割にも達しない。そこで、政府はあきらめて、たかだか去年の実績程度でことしは貯蓄控除をやろう、こういうことでありますから、政府の大体の真意がわかりますが、今、間税部長がお見えになって、山本さんが御質問になりますから、あと詳しいことはもう一度……。減税株式その他及び金融機関ごとの区分をお尋ねして、最後に、大きな角度からの政府のお考えは本委員会において大蔵大臣に答弁を求めて、このときは一萬田さんにもぜひきてもらって、これを取り上げることにして、私の質問をこれで終ります。
  22. 細田義安

  23. 山本勝市

    山本(勝)小委員 私の質問はごく簡単なんですが「物品税法の第六条の中に「第二種又ハ第三種ノ物品販売ヲ業トスル者ニシテ原料労務資金等供給シテ第二種又ハ第三種ノ物品製造委託スルモノハヲ受託者製造シタル物品製造者ト看倣シ当該物品ハヲ委託者製造シタルモノト看倣ス」こういう現在の規定があるわけでありますが、これが今度の改正案で少し改正になっておるようであります。問題は、この委託者製造業者とみなすというみなしの税でございますが、これがいろいろトラブルを起しておるというふうにわれわれは訴えを聞いております。それで、私が伺いたいのは、実際にトラブルを起しておる状況を承わりたいのですが、御承知通り日本のこれまでのこういう業界のしきたりといいますか、ごく零細な業者が多い。その零細な業者に対して、戦前におきましては、そういう零細業者金融において、卸屋が非常に大きな働きをしておった。そのために零細業者が生活をしていけたという実情にあったのでありますが、戦後卸屋が実力を失ってきたために、そうかといって、ほかに庶民金融というものも、なかなかこれにかわるべき十分なものができないというので困っておったのです。それで、昨年でありましたか、私は予算委員会通産大臣質問をいたしましたときに、やはり通産大臣は、何とかしてこういうもとの習慣とい、いますか、卸屋金融面で助けていくという方式を助長していきたいという弁答でありました。ごもっともなことだと思います。なかなかこまかいですから、とても政府が公式のもので一律画一的にやったってうまくいくものではありません。ところが、この物品税法第六条で資金融通する、あるいは前渡しして品物を作ってもらったという場合に、そのメーカーはりっぱに独立して自分の計算でやっておるのですけれども、この資金供給を受けたということから——あるいは原料の場合もありましょう。労務の場合もありましょうけれども、これは資金を助けたというものをメーカーとみなし、そこへ物品税をかける、こういうことが事実あって、そうなりますと、税の上で庫出税になっておる場合に、実際に作っておるメーカーにかければ、たとえば千円のものならば千円に税率をかけた税でいいのに、今度は卸屋メーカーとみなすということになると、それにさらに二割なら二割のマージンを加えた千二百円に対して税率をかけた税金を取られる、ここに非常に差ができてくるというので、そこがトラブルのもとになっております。だから、これまでそういうことがあったのだと思いますが、それが今度の改正によってそういう点は救われるのか救われぬのか。これを読んでみて、われわれ、実際に当っておるのでないから、救われるものか救われないものかよくわからぬのですが、どうもこれだけでは救われないのじゃないか、やはりトラブルを繰り返していくのじゃないか、こういうふうに思うので、この点を伺っておきたいと思います。
  24. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、物品税法の第六条第四項いわゆるみなす制度規定適用につきましては、いろいろやっかいな問題がございます。まあ物品税法のいろいろの規定がございますが、その中でも六条四項の規定適用ということは、実際課税の際におきまして最もわれわれの苦労をいたしておるところでございます。ただ、大きな物品税課税の建前から申し上げますと、やはり小さな製造業者をつかまえてそこで課税いたしますよりも、そういう業者原材料であるとか資金であるとかいったものを供給している販売業者の方が比較的資力もありますし、その方を把握していく方が確実であるという場合が多いわけでございまして、なるほど資金という点もありますけれども、この資金でも、単に前渡資金を提供しておるとか、あるいは設備資金供給をしているとかいうことではなしに、物品税課税対象品目であるその物品原材料を購入するための資金供給しているという場合に、われわれとしましては、解しておるわけでございまして、そういう点からいたしますと、単に問屋が前渡資金を出しておるというだけでは六条四項にはならないわけでありまして、そういう点からいたしますと、われわれとしましては、困難はありますけれども、現在のところ比較的おっしゃるほどトラブルは起きておらないと思っております。ただ、実際の実情を見ますと、ときどき六条四項の適用をすべきにかかわらず、今までしてなかったという事例が間々起きて参ります。しかし、このごろの販売業者の中でこういうふうな適用を受けるのは百貨店であるとか大卸業者の場合が大部分でございまして、私どもとしては、それほどトラブルを起しておるとは思いません。  それから、今度の改正内容と申しますの、販売業者自己商標だけをその製品につけるということを指示してメーカー製造させる、こういう場合もこの六条四項の適用を受ける場合に該当させようというわけでございます。問題は、この自己のみの商標という場合ですね。文字通り自己のみでございますので、多少でも他の商標のものを作っておれば、六条四項の適用にはならないことになるわけであります。販売業者自分のところの商標だけをそのメーカーに作らせておるということになりますと、やはりそういう販売業者課税した方が課税がうまくいくのではないかということを考えて、このような改正をお願いしておるのでございます。現在の実情からいたしますれば、それでうまくいくのではないか、かように思っておる次第でございます。
  25. 山本勝市

    山本(勝)小委員 おそらく、私は、こういうふうにした方が便利な点がどこかにあって、それでこういう規定を作ったところが、そうでないところがそれにひっかかってきて、そこにトラブルが起るのではないかと思うのです。現にある業者が来ての話では、自分のところはこれは巻き添えを食ったのだという説明を、やはり国税庁ですか、国税局ですか、そこの一部の人から聞いたことがある。そういうことを実際に言っておる者がある。それで、何でも大きな薬屋とかそういうようなものは、何がしという大きな薬屋自分のものを作らしておるというようなときには、それはもうだれが考えてもその人のものだけを作っておるのでありますが、そうでなしに、やはり一種の独立した、小さいながらも自分業者として事業を営んでおる。従って、他の方面では独立事業者として認められておる者が、それが実際に資金が足らないというので、原料代とかその他のものを融通してもらうというために、もっぱら——融通してもらえば、そこへ品物がいくということは自然起りますけれども、しかし、必ずそこのものでなければならぬという——独立してやっているにかかわらず、そこで税を納めようとしてやっとるところへ、税務署がやってきて、そうして帳面を調べて、お前のところはメーカーじゃない、これは君のところに資金供給しているところがメーカーだ、こういってやられた実例もある。これは困るんだ、こう言う。私のところへ、主として聞いたのは人形屋だが、おそらく零細な、しかも独立した業者の方の多い部門、元来独立しておる、しかし小さい事業者、小さい職人ですね。こういう者は銀行へ行ったってなかなかそう借りられないし、やはり多く取引しておるところから融通してもらう。これは非常に私は好ましいことだと思うし、ほんとうの経済の安定ということはこまかく考えますと、やはりそういうものがあって安定していくのであって、そこをはっきりと何かそこへとばっちりのいかぬ方法考えなきゃならぬのじゃないか。たとえば、独立な零細業者がたくさんあるような部門は、カッコでもしてこれから除くとか、何かの方法をしないと、便利なことがあるためにそれをやっていくと、徴税便宜上からそういうようなことになりはしないか。これは一緒に何とか解決したいという気持で、先ほど申される通り、第六条のこの規定というものは、なかなか第一線の方が苦心をしておるということ、間税部長も言われるし、われわれも聞いておる。何かそこを除くような方法はないか。
  26. 泉美之松

    泉説明員 お話のような人形製造するというような場合、これはもちろん独立して製造業を営んでおるわけでございますが、お話のように、資金が少いということで原材料なり資金なりを販売業者の方から提供を受けて製造しておる場合が相当多いと思います。私、狭い経験の範囲でございますけれども人形業者の場合には、あまり実はトラブルを聞いておらないのでございます。というのは、人形業者の場合には、それほど六条四項を適用しておらない。お話のように独立業者実態がありますので、資金を受けているといっても、概して前渡金でございまして、原材料購入資金といったものではない。前渡金が多いわけでございます。そういう意味で、前渡金の場合にはこの資金供給の中に入れない解釈をとっております。人形の場合にはそれほど多くはないように聞いております。ただ最近、電気器具機械につきまして相当六条四項を適用すべき場合が多いのでございます。御承知のように、デパート特選テレビとかいうようなものを売り出しております。これは、三越なら三越高島屋なら高島屋という名前の特選テレビになっております。これはそういうデパート原材料なり資金供給いたしまして作らせておる場合でございます。     〔細田委員長代理退席山村(庄)小委員長代理着席〕 この場合は六条四項を適用いたしておりますが、人形の場合にはあまり六条四項を適用した例は少いと思っております。従って、それほど問題は起しておらないと思うのでございます。お話のように、本来独立業者が多いという場合を除くかどうかということになりますと、やはり製造委託の契約の内容によって、これは六条四項を適用すべきか、それとも、六条四項でなくて、普通の製造業者として課税をしたらいいか、いろいろ実態があろうと思うのでございます。要は、その業態あるいは取引、原材料資金供給実情に応じた課税をしていくのがけっこうだと、私どもは思うのでございます。そういう意味からいきますと、画一的に、ある業態は全部六条四項を適用しない、ある業態は六条四項を適用するんだというわけには、なかなかいかないのではないかと思うのであります。やはり同じ業界の中におきましても、その販売業者製造業者との結びつきとの工合を十分確かめまして、その結びつき工合から見て、製造業者課税するよりも販売業者課税する方が適当であるという場合には、六条四項を適用するというふうにしたらいいのではないか、私どもはかように考える次第でございます。
  27. 山本勝市

    山本(勝)小委員 そういう運用でやっていく、トラブルは少いと言われましたけれども、やっぱり私のところへ、これは困るからということを言ってくるところも、少くはあるが、ときどき起るのではないか。そういう場合には、税務署によっていろいろ扱いが変ってくるおそれもあります。だから、原料資金供給し、そうして委託して、かつ自己のみの商標を表示すべきことと、全部の条件を何かそろえた場合に、これは委託者——第一、委託という言葉が私は不明瞭ではないかと思うんですよ。注文したものはみな委託なんです。品物を不特定の者を目的に作ったもの以外はだれかの注文を受けて作ったやつは、みな注文者委託者なんです。これがやはり問題です。われわれが何かたんすを作ってほしいと言ったら、こっちがメ—カーになってしまうのか。トラブルが起るのはそういうところでやはり起ってくるんだと思うんです。はっきりともう自分のものだけを作らしておって、商標をつける、つけないにかかわらず、自分の命令、ものの規格で、そのほかのものは作ってないというときには、作らしておる人が、これは製造業者とするということは当然だと思います。少くとも独立してやっておる者が金の融通を受けた、あるいは原料買い入れで金がないからというので融通を受けたという場合に、融通した者がメーカーだ。従って、物品税がそうでない場合よりも高くなるというようなことは——だから、現に、人形屋などは、人形だけにとどまらぬかもしれませんが、人形などはそんなに対象になってないと思うんだと言われるなら、そういう対象になってないと思うものは除くのが、法律としては当然じゃないか。何かそこに方法考えられないか。
  28. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、原料労務資金あるいは商標というものを全部ということになりますと、これはまたなかなかむずかしいと思うのでございまして、やはり原料なり資金にも、先ほど繰り返して申し上げましたように、単に一時的な融通を受けたということは入らないのであります。原材料購入資金であるとか、あるいはその製造業者の株を取得しておって、ほとんど一手買い取りになっておるといったような場合をさしておるのでございます。  それからまた、製品を全部ということになりますと、ほんの何パーセントかをよそに供給することによって免れるということも考えられるわけでございまして、これは、お話のように、法律で規制することはなかなか私は困難なのではないかと思うのでございまして、やはりその業態々々、それと販売業者製造業者との間の結びつき工合を十分確かめてやっていくということがいいのではないかと思います。ただ、お話のように、そういうふうにしていけば、税務署によって扱いが異なって、業者の間にアンバランスが起きるという心配はございます。従って、この業者の間にアンバランスが起きないような取扱い統一という点につきまして、私どもは平素十分配意いたさなければならないのでございまして、そのようにできるだけ各税務署扱いを同じようにするように、各税務署に、こういう場合には六条四項を適用する、こういう場合には適用しないという六条四項の適用事例をできるだけ流しまして、取扱い統一をはかっているような次第でございまして、お話のように、同じ業界内におきましても、販売業者製造業者結びつきはいろいろ違っておりますので、ある業界は全部適用せぬとか、ある業界には適用するということは、なかなかむずかしいのではないかというふうに感じております。
  29. 山本勝市

    山本(勝)小委員 しかし、部長、もう一ぺん考えてもらいたいと思うのです。原則としては製造課税なんだから、製造課税原則を破って、こういうみなす税を作るのですから、その例外規定というものを、厳格に、はっきりした形で、これだけはみなす税とみなすということにきめるべきであって、その例外としてきめた条文があいまいで、今度は原則のところまで食い込んでくれば幾らでも食い込んでこれるというような規定の仕方は、非常に間違いだと思うのです。ただ徴税上便利ということは考えなければなりませんけれども徴税便宜ということは、そもそも製造課税になっておるものを製造課税でも、小売り課税でも、税率に全然関係がなければいいのですが、同じものについて税率に違いを生じてくる。そして、しかも税務署扱いでもいろいろ差も生じ得るトラブルというのはそうなんです。一般に必ずそうなってきまっておればそうトラブルにならないけれども、そうではないつもりで、一般原則でやっておったところが、その例外の方を適用された。これは、私は今度の改正案について、最後にほかの点も含めて、少し修正案を出そうという考えを持っておる。その場合に、原則をくずすような例外規定が、これがかえって紛淆のもとになるというふうなことは避けたい、こういうのですから、それで、国税庁当局としても、仕事のしやすいように、いずれにしても、それは税法ですから、多少の不便はどっちへころんでもあるでしょう。しかし、あなた方が実際ねらっておる——だれが見ても、これは工場は別になっておるけれども、しかし、この人の仕事によって、この人の計画で、この人の仕事を通常しているだけだ、実施労働をやっているだけで独立業者とは認められぬ、従って事業税も何も取っておらぬ、そういうふうな何かはっきりした場合があるでしょう。そういうときは別ですけれども、しかし、一方では独立業者としてやっておりながら、一方では便宜上独立者と認めないで、そういうほかのものを納税義務者に認めるということは、私も考えてみるが、一つ考えてみて下さい。それで、これは今度改正する機会ですから、もう少し「又ハ」というような言葉を、「又ハ」じゃなしに「及ビ」とした方がもっとはっきりするか、これはここですぐどうということは答えられぬでしょうけれども、あるいは最後に皆さんが原則的にそういうものは相手にしてないというものをカッコをしてそれを除くということにするか、これは方法はいろいろあるだろう。少くとも原則に対する例外規定を設けておいて、その例外規定がばく然としておるために、原則のところまで食い込んできて混乱を来たすというようなことは避けてほしいと思う。これは一つ考えてみてほしいと思うのです。  それから、もう一つ、これも私が自分修正案を出すときの一つの参考に聞いておきたいのですが、この物品税の品種別というものがずっとありますが、この品種の中に美術品という品種を設けるということが妥当ではないかというふうに考えるのです。それは、美術品という概念は世の中にりっぱに存在しておる。それをまた特別に扱う営業までも成り立っておる。ところが、こつの中に、美術品という品目はこれまでも出てきてないし、今度も出てきてないのであります。私は、美術品として世の中に現に存在し、営業も存在しておるという品目は新たに加えるべきだと思うが、加えた場合に、その中にはどういうふうなものが大体入ってくるかというと、俗にいう美術商が扱っておる書画骨董というものも大体入ってくるでしょう。書画骨董という概念は大蔵省の概念であって、実際は、そういうものは美術商は美術品として扱っておるのであって、骨董品だから、ただ珍しいからというので扱っておるのではない。それから、陶器のようなものでも、日常われわれが使う陶器のほかに、だれが見ても美術品として扱うべき陶器というものがある。漆器にもあるし、こういうものは、この概念がないために、従来の扱い方から見ると奢侈品、ぜいたく品、あるいは娯楽品、それから実用品、日用品といったような概念で扱ってきておるために、この美術品というものはどの中に入ってしまうかというと、どっちかというと奢侈品の中に入ってしまう。あるいは一部分は娯楽品の中に入る。少くとも奢侈品として考えられやすい。事実考えられてきたと思うのです。そうなりますと、どういうことになるか。奢侈品というものは、これをなるべく押えつけていくということが国の方針でもあったろうし、税法の上にもそれが現われてきておる。一方、美術というものに対しては、振興するというか、少くとも製作技術を落さぬように、そして育成振興していかなければならぬという国策があるわけであります。ですから、あの戦争中ですらも、美術品に対しては、その製作技術というものを落さぬために、特別な保護措置がとられておったような実情なんです。ところが、今日日本が世界で、美術の国というか、芸術国民として認められておることは御承知通り、世界のどの国に比へても日本は芸術的な国民だ。というのは、芸術作品というか、ことに美術の面で音楽などはよそにすぐれたところがありますけれども、美術の点では世界的に一流の国と認められておるのであります。その美術はどうしてここまできたかというと、これは、簡単に申しますと、封建諸侯の保護によって、長い間、つまり何百年という封建時代が続いて、そして諸侯がこれを保護した。その育成の力で、日本の漆器にしても、陶器にしても、あるいは絵画、日本画にしても、そういう非常なレベルを保つことができたと思いますが、その美術が、封建諸侯がなくなってしまいますと、今度はだれがこれをささえていくかというと、これはお金を持った人がささえていく以外に、需要がなければ、もうどうにもならぬ。そこで、お金を持った人がこれを買うんだというので、奢侈品だとか、担税力のあるところにはかけるんだというこれまでの方針だけで割り切っていきますと、なるべく重い税をかけねばならぬ。重い税をかけていくということは、これは美術を振興するというよりも、これまですでにあるレベルのものを——封建諸侯の力であるところまで達しておったものを、今度は物品税によって押えつけて、低下さしてしまうという働きをするし、もう実際そういうふうにいいものは高い。高いものは税率も非常に高い。ですから、これをやみに流すとか、ないしはなるべく作らぬようにする。正直なものは物品税のかからぬようなものだけにいくということで、美術振興という点からいえば逆効果を来たす。ですから、私は、どうしてもここで新しく書画骨董などという概念でいきますと、今言う重い税をかけて、こういうものはよろしいのだ、またこういうものはなくてもいいんだという結果になるし、逆に美術は振興せんならぬ。芸術というものは、これを理解しない人から見たら、つまらぬものでしょう。遊びごとでしょう。けれども、人生は短かし芸術は長しというギリシャ以来の伝統、芸術の力というのは非常に大きなものです。これは、科学技術といえども、私は根底に横たわるものは芸術だと思う。むしろ正しい人世のほんとうに底に横たわるものは、私は芸術だと思う。これは世界的にもそう見られておる。どこでも芸術というものを非常にたっとんでいる。こういうのですから、私の考え——少し長うなりましたけれども、私はこれで東京の芸大の校友会の会長をやっている。それまであまり理解しなかったところの美術学校や音楽学校へ行ってだんだん聞いてみると、ああいう連中は、税のことなど知らぬものですから、ただもっぱら芸術的創作に精進をしておる。ですから、私は、ここで美術というものを税の上でこういう扱いをしていかないで、むしろ逆に振興させるために、一つ新しく美術品という品目を設けて、そして税率の上でも安くする。     〔山村(庄)小委員長代理退席、押谷小委員長代理着席〕あるいは、美術というのは、すでにでき上った国宝になっておるようなものだけを文化財として保護してみましても、そんなことでは美術は振興しない。やはり美術家の卵というものを育成していかなければならぬ。だから、彼らがほんとうに欲を離れて、世俗を超越した、そういう創作精神で作られた、美術芸術品の創作意欲で作られたようなものは陶器といわず漆器といわず、絵画、彫刻といわず、こういうものはほんとうは税をなくしてしまっていいんだ、ほんとうの日用品は税をなくしてしまうべきものだと思いますが、同時に、こういう高いもの、だから日用にはならないけれども、しかしそれ以外にささえようがないということでありますから、物品税の上では、もう最低の扱いをするために、少くとも書画骨董という感覚と、美術品という感覚とは、感覚がまるで違うのです。そういうものを設けたいと思うが、これは国税庁よりも主税局に聞くべきことだけれども、こういう考え方に対して長官としてどういう所感を持たれるか。これは吉國君に話したら、なるほどそれも一理あるというので、少し頭が動きかけているのだけれども……。
  30. 泉美之松

    泉説明員 山本委員の御高説、拝聴いたしました。なるほど美術品という概念はあるのだろうと思いますが、現在の物品税課税品目の書き方からいたしますと、やはり書画骨董、あるいは室内装飾用品であるとか、陶磁器、漆器等、物それ自体をつかまえまして、だれが見てもこれは陶磁器だ、これは漆器だ、これは室内装飾用品だとわかりやすい形で規定されておるように、私どもとしては思っておるのでございます。美術品ということになりますと、非常に概念が抽象的になりまして、何がそれに入るのだということは、なかなか解釈上、ことに税務官吏が取り扱う上におきましては、むずかしいのではないかというふうに感ずるのでございまして、こういう今まであります書画骨董、室内装飾用品、陶磁器、漆器、そのほかにもずっと茶道用具とか香道用具なんかにも全部美術品はあるわけなんだと思うのでございますが、そういう概念と対立する概念として、美術品という規定はなかなかむずかしいのではないかというふうに感ずる次第でございます。
  31. 山本勝市

    山本(勝)小委員 国税庁はそういう答えかしらぬが、主税局は見えていますか。——主税局はよそへ呼ばれてこないので、どうにも質問にならぬが、しかし、少くとも今表面に現われたものを、物それ自身を出しておるけれども課税対象を選ぶ場合、それから税率を選ぶ場合、税率幾らにするかというときの標準は、物それ自身できめておるのではなくて、これは実用品的のものであるとか、あるいは奢侈的なものであるとか、あるいは娯楽嗜好的なものであるとかいう、一定の標準によってきめたことは確かです。それはむずかしいでしょう。むずかしいけれども、少くともその標準を適用してやっていることは間違いない。その中に、美術という、人世にとって、また国としても非常に大切な一つの標準が欠けておるということは、これは国税庁の長官も認められるでしょう。しかし、そういう課税対象を選んだり、税率を選んだりすることは、国税庁の知ったことじゃない、こういうことになるのかもしれぬ。だから、あなたに答弁を求めるというような意味質問ではないのですよ。しかし、同じ税を扱っているのですから、参考のためにどうか。しかし、そういうようなことをしてきては絶対困る、われわれの方では実施面で反対するというようなことでは困るが、そんなことはないでしょうな。
  32. 泉美之松

    泉説明員 われわれは現実に課税を行う立場からいたしまして、今度の改正案に入っておりますように、現在陶磁器、漆器あるいは室内装飾品、書画骨董、それから囲碁用具、茶道具、香道具、華道具、こういったものは製造課税でありまして、今まで税率が違っておったのであります。それではどうも工合が悪いから、今度は小売課税にして、大体同じような税率のところへ持っていったらということで、今度の改正案ができ上っておるわけでございまして、そういう意味で、従来よりは執行面において割にやりやすいのではないか、今まで製造課税税率が違ったよりは、小売課税税率を同じようにした方が、うまくいくのではないかというふうに思っておるのでございます。ただ、書画骨董につきましては、特に書画など、先生のおっしゃるようになかなか課税がむずかしいということはよくわかっております。が、そのほかの品物につきまして、今度の改正案というのは、執行上今までよりも相当楽になるというふうに感じております。
  33. 山本勝市

    山本(勝)小委員 それなら、もう一つ聞きますが、聞くところによると、書画骨董の税率を今度下げるということについて、国税庁に猛烈な反対があるということを私は聞き込んでおるのです。そういうことは国税庁はやはり発言するのですか。
  34. 泉美之松

    泉説明員 それは私が反対しておるということではございません。税率の決定は主税局でございまして、私どもはその執行面を担当しておるわけでございますから、さようなことを申し上げるわけはございません。
  35. 小山長規

    小山委員 国税庁に、執行面のことで、物品税関係で少し伺ってみたいことがあるのですが、今度物品税改正法案が出てきましたところが、ゴルフの道具屋の連中が参りまして、これは製造課税よりも小売課税の方がいいのではないかという意見を出してきておるのであります。というのは、ゴルフの道具というのはヘッドとシャフトとグリップ、大体この三つに分れるのですが、それはめいめいの製造業者が作っておって、そのグリップなりシャフトなりヘッドを完全に蔵出しのところでつかまえてあればいいけれども、実際はつかまえておらぬらしい。しかも、あれは簡単に組み立てられますから、それを組立業者が組み立てたものをあめ屋横町に持ってきて売っている。そうすると、正規のゴルフ道具屋と称せられる人たちは対抗できない。対抗できないものだから、やむを得ず、あめ屋横町から現品を買ってきて、同じ値段で美津濃なら美津濃で売っておる。そういう方法でやっとあめ屋横町と対抗しておる状態であるから、そこで、これは、製造業者販売業者もそろって、ぜひこの際小売課税にしてくれないかという陳情に来ておるのです。国税庁の実際の取扱いとして、どっちの方がいいのだという点をお考えになったことがあるのか、また、今までのやり方として、製造課税の方がいいのか、小売課税の方がいいのかということについて、御意見があれば伺っておきたい。
  36. 泉美之松

    泉説明員 お話のゴルフ用具につきましては、従来比較的製造業者というものがきまっておりまして、われわれとしては、その製造業者を把握することによって、課税は相当できておるというふうに考えておるわけでございますが、お話のように、部分品で課税しなければならないような場合がありまして、それがあめ屋横町の方へ流れるといったような事例は、かなりあるように聞いてはおります。そこで、製造課税がいいか小売課税がいいかという点につきましては、いろいろ庁内でも論議があったのでございますが、現在までの製造業者の把握の程度からすれば、しいて小売課税に移さなくても、現在の製造課税のままでよろしくはないかという結論で、今回の改正の中には小売課税にする方に入っておらないのでございます。一応検討はいたしました上で、そのように考えております。
  37. 山本勝市

    山本(勝)小委員 最後に一つ伺ってみたいが、だれが見ても美術品と認められる芸術的な意欲で作られた陶器の作品、これが一体どのくらいやみに流れておるというような見当ですか。
  38. 泉美之松

    泉説明員 私どもといたしましては、そういう点はわかりかねるのでございます。
  39. 山本勝市

    山本(勝)小委員 これは、私が調べたところでは約一割しか税がとれていない。そうして、外国人がやって来ても、もう日本にはよい作品がないのかと言っている。各国とも、フランスのセーヴルにしても、フランスではセーヴルの陶器の保護のために非常な力を入れております。そして日本は陶器においてはフランスの対抗国になっております。やって来ても一向店にない。それならないのかというと、あるのです。店に並べれば物品税がかかるから、店には並べないで、要するにほんとうの陶工といいますか、日用品ではなしに、われわれが壁にちょっとかけた皿を見ても心が清まるようなのがありますよ。これは芸術心のない人にはわからないけれども……。そういうものはみんなそんな店に出さないでやみに流れてしまう。聞くところによると、何か富本憲吉はへんくつだからこのごろは作らないという説と、実際は作っているけれども流れているという説とがありますが、業者自身でも作らないというふうにいわれているくらいです。これは物品税関係です。大体ああいう芸術的な創作意欲で作ったものを、そういう芸術ということを少しも観点に置かないで扱われたら、これはもうそんなところに行かないでみんな逃げてしまう。書画骨董の場合には大体八割脱税している、こう私は見ているのですが、脱税している業者をつかもうと思っても実際はつかめない。音のするものなら、あそこで買ったということがすぐわかります。ピアノを私の家で買ったとき、税を何とかのがれる方法はないかと思って苦心したのですが、国会議員をやっておって脱税なんかしてはいけないと思って私は正式に払いました。何しろ音がするから、今までないところから音がし出すからすぐわかるのです。しかし、音もにおいもしない骨董、美術品なんというものは容積の小さいものですから、これのやみを防ごうと思えば、もう民主主義生活というものを根本的に破壊する覚悟で、どんな家でも、この家は相当にありそうだというところに乗り込んでいって、押し入れをあけたりして調べることもできますが、そんなことをすれば人間生活というものは実に殺伐たるものになってしまいますから、そういうことでなしにとるという方法がないかどうか。これは私美術商の扱っているいわゆる書画骨董について議論しておったところが、これは私の知らない世界であったのだけれども、この間陶器の美術品を見せられて、なるほどそうだと思った。まだ知らないが、おそらく漆器の方にもそういうものがあるのではないか。ですから、これは国税庁の長官に言うべきことではない。吉國君が来られたから吉國君に相談すべきことなのだけれもど、やみに流れておるものはどのくらいあるということくらいは、国税庁も見当がつくだろう。つかぬとすると、とにかく一割のものだけが税を納めて、あとの九割のものは納めていないということは、税の上から言っても非常に不公平なものなのです。それを、そうではない、民主生活を破壊しないでとれる方法があるというなら、美術という観点を除いて考えれば、とっていいと思う。美術品でなくても何でも、一割のものだけがとれる、あとはとれないなんというのは、税務署国税庁が国民から憎まれるのは、そういうところに大きな理由があると思いますが、私の質問はこの辺でやめておきます。
  40. 奧村又十郎

    奧村小委員 私は、先週の委員会から引き続いて、青色申告の更生決定について違法として裁判所の判決を受けたことについての御質問を続けていたしたいと思います。この点は、研究すればするほど、どうも国税庁の従来のやり方には私は非常な誤まりがあると思いますので、当委員会で十分お尋ねして、一応事実は事実として確認した上は、本委員会に取り上げて、大蔵大臣政府として正式なはっきりした態度をきめていただいて、御答弁をいただきたいと思う。  そこで、東京地方裁判所における鵜殿何がしの告訴のことについては先週お尋ねしたのですが、これと同じような事件が各地に起って、違法処分、違法の判決を受けておるわけであります。その資料を国税庁御当局からいただいて、それを読んでみて、実は私は驚いたのです。     〔押谷小委員長代理退席山本委員長着席〕 これは意外なものを見たのですが、横浜地方裁判所に松島何がしなる者が、この青色申告に対する更正決定の理由付記についての違法処分として告訴している。青色申告の更正決定について全然理由が付記してないというので告訴した。これは当然違法なりとして、国税庁の方は負けております。そこまではよろしいが、その第一審で負けたものを、国税庁がそれを不服として東京高等裁判所に控訴しておるというのは、これはどういうわけです。控訴する以上は、理由をつけなくとも違法ではないんだということを抗弁しておるようなものですが、この控訴の理由というのはどうも常識から判断できぬのですが、これはなぜ控訴したのですか。控訴したんなら、控訴するいわゆる理由を付記しなくてもいいんだという解釈が成り立つんですか。その控訴の理由を一つ承わりたい。
  41. 金子一平

    ○金子説明員 今御指摘の点でございますが、おそらく、理由を付記しなければいかぬという規定が、訓示規定であるか、効力規定であるかという法律問題がやはり学説上ございます。そりういった点についての争いをしたわけだろうと思っております。
  42. 奧村又十郎

    奧村小委員 そうしますと、法律の条文上理由付記は訓示規定であるからして、法律上理由付記は要らぬ、こういう解釈ですか。
  43. 金子一平

    ○金子説明員 実は先生御承知のように、理由付記の効力につきましては、学説上は、行政法学者の周におきましてはいろいろ議論がございます。あるいは訓示規定であるから効力には影響がないんだという考え方、あるいは理由がなければ当然無効だという考え方、それから無効とまではいかないが、これは違法であって、あとで取り消されてもいたし方ないんだ、こういうような考え方がございまして、学説上も結論が出ていないような現状でございます。そういった点を、高裁でこのケースにつきましては争ったというふうに私は伺っております。
  44. 奧村又十郎

    奧村小委員 一たん裁判所で違法なりとして判決を受けたんですよ。それに承服せずに、これは理由付記は要らぬのだといって控訴をなさるというやり方、これは国税庁全体がそういうお考えであろうと思うのですが、法律上の問題と行政上の問題とは——青色申告をお勧めになるについては、法律上はこのようになっておるので、帳簿に基いて具体的にここの計算に誤まりがあるという理由を付して更正決定をするので、それ以外は更正決定はしないのだ、それほどあなた方は帳簿を尊重し認めていくのだといって青色申告を全国に勧めて、現に現在でも年に二万ずつ青色申告がふえてきておる。にもかかわらず、国税庁が、理由付記は訓示規定で、いよいよ裁判になればそんなことは付記しなくてもいいのだといって、一たん判決されたにもかかわらず、なお強情に控訴するということが、全国の青色申告の納税者に対してどんな印象を与えるか。そのようならそのように、今後、青色申告納税者に、それは訓示規定であるから、してもいいけれども、しなくともいいのだということを知らせてあげなけりゃならぬ。個人の裁判とは違って、国税庁が控訴した以上は、国税庁あるいは大蔵省全体の方針であります。これは、すると大蔵大臣の方針としてこういう控訴をやったのですか。それなら大蔵大臣に一ぺんこれは根本の方針としてお尋ねしなければならぬ。その点重ねて伺いたい。
  45. 金子一平

    ○金子説明員 行政上の問題といたしましては、先般の当委員会においてお答え申し上げました通り、私は、やはり相手方に、はっきり具体的な理由、金額等を書いて、十分納得できるようにするのが正当であろうかと思います。ただ、法律問題といたしまして、先ほど来申し上げておりますような点がございますので、今までその点についての結論が出ていなかったということで、このケースにつきましてはおそらく高裁まで持ち込んだ。先般の当委員会におきましても申し上げておりますように、付記の脱漏というようなことは、行政問題としては全くおかしいのでありまして、この点につきましては、今日各税務署に対しましても、こういった間違いを二度と起さないように、これは厳重に注意をいたしておる次第でございます。ただ、このケースにつきましては、あえて弁解するわけではございませんが、いろいろ手違いがあったようでございまして、理由が抜けておった。それで高裁でこういった判決がございました以上、私どもといたしましては、再びこういった間違いを起さないように十分に注意してやっております。
  46. 奧村又十郎

    奧村小委員 これはぜひ一つ本委員会で取り上げなければならない。今の御答弁は重大な答弁です。
  47. 山本勝市

    山本委員長 金子部長にちょっと聞くが、その控訴は取り下げたのですか。
  48. 金子一平

    ○金子説明員 この問題は、昨年の十一月に判決が出ておりまして、判決通り考えております。
  49. 山本勝市

    山本委員長 それに控訴したというのですか。
  50. 金子一平

    ○金子説明員 控訴審の話です。控訴審の判決にこちらは服しております。
  51. 奧村又十郎

    奧村小委員 この控訴審の判決に服するのですか。あるいは最高裁まで持っていきますか。
  52. 金子一平

    ○金子説明員 これは先般の委員会で申し上げたのでありますが、東京高裁の判決に服しております。
  53. 奧村又十郎

    奧村小委員 第一審で、これは明らかに違法として無効として判決を受けたものを強情に控訴したということを、私は問題にしておるのです。そこで、第一審において、あるいは控訴審において、大蔵省、国税庁の方の裁判所における申し立て、この青色申告に対する理由付記の規定というものは訓示規定である、だからこれはつけぬでもいいんだ、こういうことを言うておるのです。裁判所で言われたことをそう取り上げることも私はいかがかと思うが、国会において、この税法を今審議しておるわれわれの前で、これは訓示規定であるから、政府はこれに従う必要はないということをおっしゃっている以上は、これは私はここで取り上げなければならぬ、大蔵大臣がそういうお気持であるかということをはっきり明確にしておかなければいかぬ、かように思いますから、この点についてはもう一つなお突っ込んでお尋ねをいたしておきたいと思う。  大体賦課課税の時代なら今の理由は成り立つかもしれない。昭和二十一年までの旧税法の場合は、賦課課税ですべて政府に責任があって、政府が決定するのでありますから、それは訓示規定であったかもしれない。しかし、申告納税である以上は、納税者と政府というものは対等の立場にある。間違えばお互いに裁判で争う。その場合に、納税者は税法によって納税の義務を負わされ、また間違えば刑罰も受ける。懲役にも入れられる。政府においては、こういう規定があるが、訓示規定であるから政府は場合によっては従わぬでもいい、申告納税においてはそういうことがはっきり言えるのですか。政府は申告納税制度というものを育成する腹がまえがあるのかどうか。政府は、昔ながらの賦課課税の気持をいまだに持っておるということをはっきり今露呈しておられる。これは重大な問題です。それをお考えの上でお話しになったのですか。
  54. 金子一平

    ○金子説明員 今御指摘の点につきましては、従来るる申し上げておりますように、私どもといたしましては、極力申告納税制度あるいはまた責色申告制度の育成という点につきましては微力を尽しておるつもりでございます。ただ、法廷で争いになりました場合の論点は、これはやはりいろいろ学者の間で解釈の仕方もあるものですから、行政論とは別に法律論として争ったというような状況でございます。行政の実際に当りましては、極力相手方に納得のいくように理由を付記さしておることは、先般の委員会でも申し上げた通りであります。
  55. 奧村又十郎

    奧村小委員 第一審で負け、第二審で負け、これははっきり違法として政府はそれに服しているのでしょう。服したならば、その誤まりであったということをすなおに認めて、そのような御答弁があれば、われわれもそんなにしつこく言う必要はないが、いまだにこれが訓示規定であるというふうなことに固執されるというならば、これはわれわれは当委員会においても取り上げなければいかぬ。そこで、委員長にお願い申し上げますが、申告納税の現行法でいきますれば、政府だけが、これは訓示規定であるから、法律に書いてあっても従う必要はないというふうなことが合法であるかどうか。本院としてもそういうことがいえるかどうか。これは、裁判所とは別に、衆議院の法制局長を当委員会に呼んで、衆議院としての解釈を聞きたい。あるいは内閣法制局としての解釈も一つ質問したいと思いますから、次の委員会のときに両法制局長を当委員会にお呼び願いたいと思う次第であります。
  56. 山本勝市

    山本委員長 ごもっともで、その通り取り運びますが、政府としても腹をきめてもらわなければいかぬのではないかと思います。
  57. 金子一平

    ○金子説明員 ただいまの奥村委員の御指摘の点でございますが、ちょっと私言葉が足りなかったかもしれませんが、今日におきましては効力規定として考えております。争った当時の問題は別といたしまして、今日におきましては、やはり訓示規定ではないのだ、効力規定だということで判決にも服しておりますし、またさような指導もいたしておりますから、重ねてこの点を明確に申し上げます。
  58. 山本勝市

    山本委員長 それならば、奥村君、今のことではっきりすれば法制局を呼ぶ必要はないな。
  59. 奧村又十郎

    奧村小委員 今の釈明がありましたから、両法制局長を呼ぶことは一つ保留しておきます。  それでは、重ねてお尋ねいたしますが、今の問題につきまして裁判所へ申し立てるまでには、再調査あるいは再審査の申し立てがあったのですか、この点をお尋ねいたします。
  60. 金子一平

    ○金子説明員 当然税法規定に基いて再調査なり審査なりの請求があったと思います。
  61. 奧村又十郎

    奧村小委員 再調査の申し立てを受けた税務署長は、少くとも申告納税制度である今の税法を知っておられるならば、この再調査を申し立てられたときに、なるほど青色申告に対しての更正決定に理由が付記してない、これは納税者の言うことはもっともだ、こういうことで受け取って、十分の調査をし、納税者を納得させなければならぬ。また、納税者は、そういう手続がなかったからなお再審査を申し立てた。再審査においては税務協議団の審査を経ておる。税務協議団には、税務官吏の中でも相当年功を経た優秀な官吏もたくさんおられる。そういう方々の御協議を受けても、なおかつ青色申告に対しては理由付記は要らぬということでこれを却下しているということになると、これは国税庁全体がこういう青色申告には理由付記は要らぬというような考えを持っておられるように思う。また、ここまでいくまでには、本庁に相談があるはずだ。それらの各段階においてどうしてこういうことを強情に押し切ったのでしょうか、その事情を一つ承わっておきたい。
  62. 金子一平

    ○金子説明員 今御指摘の点でございますが、再調査の段階におきましてはこの点をはっきりしなかったようでございますが、審査の段階におきましては理由を追加しております。ただ、理由の追加が少しおそかったということでございます。今日の段階におきましては、こういったケースの取扱いは、もうはっきりと割り切って事こまかに書かなければいかぬというふうに指導いたしておりますが、おそらく、当時まではまだこういった問題につきまして争いがなかった関係で、つい見過ごしたというふうに私は考えておりますので、こういったことを繰り返さないように、ほかの問題につきましても同様でありますが、十分注意して参りたいと思っております。
  63. 奧村又十郎

    奧村小委員 私が特にここで取り上げているのは、これは氷山の一角ではないかというふうに思うのです。というのは、裁判所へ申し立てるまでには、税法に基いて再調査、再審査の手続を経る。だから、少くとも再審査の段階には、納税者を納得させなければ訴訟にいくということを十分御承知であるからして、なぜ納得させなかったのか。理由を付記してないということは全くまずいことに違いないのに、税務協議団の協議がありながら、協議団全員それにも気がつかなかった。それほど不親切ということが、いかに税務行政というものがおざなりであるかということを、ここにはしなくも露呈しておると思う。従ってこれはこれだけの問題じゃない。どうもすべてがおざなりでないかということで、あえてしつこくお尋ねをするのでありますが、その事情については、この資料においては明確でありませんから、一つお願い申し上げます。再調査に対する税務署長の処置、再審査の際における処置、つまり再審査の——これは確かに却下したのでしょうが、そのときの理由及び税務協議団にだれだれが協議団としておったのか、そのときの記録というものを、十分親切に資料を整えて、そのときの事情のわかるように資料を御提出願いたいと思います。
  64. 金子一平

    ○金子説明員 承知いたしました。
  65. 奧村又十郎

    奧村小委員 その次に、これはまことに微に入り細をうがって恐縮でありますが、私は、根本論として、もうこの段階にきたら、青色申告に対する更正決定のやり方は、国税庁として一つ根本から出直すべきだ、こう私は考えるのです。もし私の説がいれられるものとするならば、今度の法人税法、所得税法規定改正いたしまして、青色申告を取り消しする場合の要件として、理由付記の条文を入れなければならぬ、そういう法律改正をいたしたいと思いまするので、そのための一つの前提としても十分今回の問題をお尋ねいたしたいと思いますので、まことに恐縮でありますが、委員長、もう二十分ばかり質問をお許し願いたいと思います。  政府からいただいた資料の二ページ、今度は京都の地方裁判所の判決によりますと、これは、理由付記の中には損金計上、市民税を否認するとか、あるいは事業税を否認するとか、みな具体的にはっきり書いてありますので、私はこれならりっぱだ、こう思って見てみますと、その中に三十三万円の仮払金がある。ところが、納税者の方は、この仮払金というものは何を意味するのですか、こう税務当局にお尋ねしたところ、明確な御答弁、特に帳簿に基いての明確な説明がない。そこで、この三十三万円の仮払金につきましては、これは何か売り上げが脱漏しておるというふうな意味のことが論議されておるのですが、具体的に指摘されておらぬというので、裁判所といたしましては、仮払金以外の項目については、これは法律通りにきちっと書いてある。仮払金についてはしかも判然といたしておらぬというので、処分の内容といたしましては、これはやはり無効処分、理由付記が不十分であるという判決がおりております。  次いで、同じような問題ですが、四番の奈良の地方裁判所、これは青色申告の更正決定について、売上金が少な過ぎる、製造原価が多過ぎる、経費が多過ぎる、所得金額が少な過ぎる、こう書いてある。これじゃだれが見たって青色申告に対する理由付記とは考えられぬのでありますが、これはやはり裁判所で否決されておる。  それから、今回の鵜殿何がしの先日からの問題、これは一応書いてありますが、売買差益率と申し、あるいは記帳額が低調であって基本金額を修正する、これは納税者にとって理解ができないということで、これも無効、こういうことでありますから、青色申告に対する更正決定というもののやり方について、この程度の理由付記では法律上無効なんだ、こういう判決であります。これに対しまして、政府としてはその判決に承服しないというのですか。全面的に控訴して争うか。先ほども、全然理由をつけなくとも、それでもいいのだ、訓示規定だからいいのだとして控訴した政府のお考え方でいけば、何をか言わんやで、どういう理由付記であろうと、何か字が書いてあれば親切だ。訓示規定なんだから納税者がそんなに文句を言う筋はない。そういうことですべて控訴すべき立場になる。そういう観点からなさるのか。先ほどの御答弁では、もう今の理由付記のなかったやつは政府が悪かったとして、承服して考えていくということであれば、そこに態度が変ってこなければならぬ。態度が変ってくるとすれば、一々これらの裁判について承服するのか、控訴するのかということになるが、その政府の態度をお尋ねしておきたいと思います。
  66. 金子一平

    ○金子説明員 先ほどおあげになりました全然理由付記のない場合でございますとか、あるいは売り上げが過少であるとか、経費が過大であるとかいうことだけの抽象的な記載ではやはりいけないと思います。そういう意味合いにおきまして、行政上の問題といたしましては、できるだけ具体的に、間違っておる個所なり金額なりを相手方に納得のいくように書いてやるように指導しておることは、前に申しました通りでございます。ただ、東京地裁の現在問題になっておりますケースにつきましては、今そのよって来たる理由を一通り聞いております。法律的に見て果してこれが法定の要件を備えておるのか、あるいはこれでも違法を免れないのか、そこら辺は法律的には問題だろうと思います。先生に差し上げました資料の一番最後であると思いますが、六ページに、最近最高裁の判決が——これは再調査並びに審査決定の場合の理由付記でございまして、直接青色の更正の理由付記の場合ではございませんけれども、同じような再調査なり審査の場合の理由付記に関する判決例といたしまして、昨年の八月に出た判決でございますが、審査決定の場合におきましては、これは裁判上の判決ではないし、訴願の裁決でもないので、一々証拠によってよって来たるゆえんを具体的に書く必要はないのだ、要するに、相手方にわかるように、付記の申し立て事項を個別的に明示して、かくかくしかじかの認定に達したという点を明らかにされれば足りるのだ、というような考え方も出ております。そこら辺は、私どもといたしましては、これは法律的にはっきりさせた方がいいのではないかというふうに考えまして、一応控訴いたしたいと考えておる次第であります。
  67. 奧村又十郎

    奧村小委員 今再調査審査の理由付記に関する判決例あお話が出ましたが、これは私もよく見せていただきましたが、お説の通りだと思います。しかし、これは税法規定が根本から違うのですから、理由付記は条件になっておりません。もちろん再調査、再審査決定の理由付記は要りますけれども、更正決定に対する理由付記は要らぬので、しかも税法の明文に財産の増減あるいは取扱量の増減その他によって推定することができると書いてあるのですから、これは問題にならない。私はそういうことを問題にしておりません。しかし、だんだん青色申告がふえてきた以上は、この青色申告に対してはやはり法規通りに厳密にやるかどうかということが問題であります。結論的にお尋ねいたしますが、そうしますと、資料をいただいた三番の京都地裁の判決、奈良地裁の判決、東京地裁の判決——東京地裁の判決、鵜殿何がしに対しては控訴するということをおきめになったが、これは大蔵大臣は御承知になっておられるのですか。どうせ本委員会で取り上げられれば大蔵大臣の御所見を承わらなければならぬので、その点お尋ねしておきます。それから京都と奈良は控訴するのかどうか、ちょっとお尋ねいたします。
  68. 金子一平

    ○金子説明員 東京地裁のケースにつきまして、東京国税局長が現在被告になっておりますが、東京国税局長の名前をもって争うことになりますので、まだ大臣のお耳には入ってないかもしれません。大臣にも御報告いたしたいと思います。それから、その他のケース、たとえば京都地裁のケースにつきましては、先生も御指摘いただきましたように、仮払金というのがわけがわからぬということで、あとは事こまかに書いてございますが、この辺もやはり一つ問題があるんじゃないかということで、一応控訴いたしておる現状でございます。奈良はちょっと私今ここで結論を聞いておりませんので、いずれ御報告申し上げたいと思います。
  69. 奧村又十郎

    奧村小委員 東京地裁については控訴しておるが、これは局長名で控訴しておるので、大蔵大臣にはまだ御相談をかけておらぬ、こういうことでありますが……。
  70. 金子一平

    ○金子説明員 ちょっと、まだ控訴期間が満了していないと思いますので、近日中に控訴することになるのだろうと思います。
  71. 奧村又十郎

    奧村小委員 これは一つ国税庁としてもお考えいただきたい。これは、東京地裁の場合だけでなしに、京都でも、奈良でも、あるいは横浜地裁では大へんな失態を演じているので、青色申告に対する根本的な態度をおきめになっていただきたい。こういう事例について大蔵大臣としてこの際国会に対する態度を明確にしていただかなければならぬので、後日本委員会で概括して大臣の御所見を承わりたいと思いますから、そのおつもりで御協議しておいていただきたいと思います。  そこで、ちょっとお尋ねいたしますが、青色申告の更正決定についても、所得税と法人税については税法規定がいささか変っております。所得税と法人税と同じような更正決定のやり方はないはずであるし、また、理由付記も同じように法文に書いてあるわけがない。やり方が多少違うわけである。これは、所得税と法人税の性格から、また、課税対象の性格から、違うのが当然であると思う。その点は行政上どのようにやっておられるか、お尋ねしておきます。
  72. 金子一平

    ○金子説明員 書き方は多少変っておるかもしれませんが、更正決定のやり方自体は全然変ることがない、かように考えております。
  73. 奧村又十郎

    奧村小委員 私どもこの所得税法、法人税法を審議した場合は、相当変っておった。また、変るのが当然だと思って議了したのです。というのは、一番大事なところは、御承知のことと思いますが、所得税法の方は四十五条でしょう。四十五条では「更正をなす場合においては、その帳簿書類を調査し、その調査に因り、所得の計算に誤があると認められる場合に限り」こういう書き方です。しかし、法人税の方は、三十一条に「その帳簿書類を調査し、その調査により課税標準又は欠損金額の計算に誤があると認められる場合」、法人税の場合は理由付記にはならないと明確に書いてある。裁判上においても所得税と法人税において取扱いが違わなければならぬ。そこまでお考えではないのかどうか。
  74. 金子一平

    ○金子説明員 表現が、課税標準と一方は言い、一方は所得と言っておりますが、結局同じ面を別な表現で書いておるだけでございますから、この点は全く同じに考えていいじゃないかというふうに思います。
  75. 細見卓

    細見説明員 課税標準というのは、積立金課税があるから所得をかけないわけです。法人税の場合はテクニカルな問題だけです。
  76. 奧村又十郎

    奧村小委員 そういたしますと、これも最近ですが、同族会社の給与否認について東京の裁判所に訴訟があって、これも残念ながら国税庁が敗訴になっておるそうです。同族会社の行為、法人の従業員であるが、従業員の妻が数万円の給与を取っておったところが、大体妻の給与は一般に月九千円までなんだという更正決定をやったのです。しかし、妻といっても、その妻の働きによりますので、経験を経た女であれば、相当の力がある。それを、ただ一般の標準はこうだ——しかも一般の標準というのは何をさすのかというと、これは国税庁の調べでありましょうが、国税庁の調べというものが果して裁判においてそれほど認められるかどうかということにもなるので、これに対して敗訴しております。これはやはり控訴しますか。この点もちょっとお尋ねしたい。
  77. 金子一平

    ○金子説明員 同族会社の企業につきましては、実は、これはやはり各会社の実態によって、あるいは今先生御指摘のような家族の方々の仕事っぷりによって、非常に給与の認定がむずかしい。たしか、昨年の当委員会におきましても、国税庁において基準を設けて、それによってやったらどうかというような御意見も出ておったのでございます。やはりこれは、その会社会社の個々の特殊性なり、あるいは同業者との権衡の問題なり、会社の活動状況なり、いろいろな点において差が出てくるのは当然でございまして、私どもといたしましても全国的に一律にやろうという気持は持っておりません。やはり具体的にその給与が妥当であるかどうかという点から判断を下すべき問題であろうかと思います。今の御指摘の判決につきましては、内容を十分念査して、控訴するかどうかをきめたい。まだ態度を決定いたしておりません。
  78. 奧村又十郎

    奧村小委員 ただいまの同族会社の給与否認については、これは全国的に同じような事例が多いと思いますので、その態度をどのようにおきめになるかということも、全国民の注視の的であろう。また当委員会としてもとりわけ重大に見ておりますから、なるべく早く態度を御決定になり、またそれに対する——実は私どももただ新聞報道程度承知しておるので、もう少し明細な資料をいただきたい、その上でまたお尋ねを申し上げたい、かように存じます。  本日の質問最後の締めくくりといたしまして、これは先週から申し上げておるのですが、実際にこう突き詰めてみると、青色申告に対しての更生決定は法規通りにやろう、裁判所が許容するようなことでいこうというと、これはまことにもってめんどうなことになり、またよほど優秀な税務官吏の人数がふえていかなければ、現在の税務能力ではこれは明らかに私は無理と思うのです。そこで、あまり無理なら、法律改正するか何かお考えがなければならぬ。これをこのままでいくと、まだまだ私はこういう間違いが起ってくると思う。そこで、その一つの焦点になるのは、青色申告を取り消して更生決定をするということが、現行法でいけば、今の税務行政の実態に合ってくると思う。というのは、裁判に現われたものでも、あるいは再調査、再審査で出たものでも、要するにその青色申告当該帳簿に基いた差益率であっても、あるいは一般的な差益率でありても、一つ一つの項目に基いての訂正の理由というものは、これはなかなか書けるものじゃないので、仕方なしに一般的な差益率とか、標準率とか、ある程度これはやむを得ぬと思う。ということは、売り上げ漏れはあるに違いない。あるには違いないけれども、そんなものを毎日見ているわけにはいかぬ。しかし、いつ幾日幾ら幾ら脱漏しておるというような、そんなことを税務官吏に指摘せよというても、これは無理です。そういうことを考えますと、やはりこの帳簿には脱漏があるということをまず指摘して、それによって青色申告を取り消して、そしていわゆる普通の申告と同じように更正決定をやることは、税法上許された税務当局のなさるべき方法だと私は思う。しかし、親心から青色申告を指導奨励してきているから、不十分とは思うけれどもこれを認めて、法律に基いた更正決定で理由づけをしようというから、みずから無理なことを押しつけられているので、その点は税務当局は大へんお気の毒だと思う。ところが、またうわさによりますと、私の言うことを先に実行しておる税務当局もある。これは理由づけがめんどうだから、いっそ取り消してかかって、言葉は悪いが、そうこまかく理由を書かずに更正決定をやった方がやりやすいというので、すでに実行しておられる向きもある。これは私もまだ十分確認しておりませんが、ここにおられる志場所得税課長の、「財政」という雑誌にお書きになられた文章によっても、そういうことがある程度推量される。そうしたならばどうですか。この際そういうふうなことにある程度踏み切って、もう法人の方も七割五分も青色申告になって普及しておるのだから、何でもかでも認めてやるということよりも、この際あまりひどいのは取り消して、そして税務行政上もやりやすいようにやっていかれるようにすべきであると思う。もしそういうふうに御方針をはっきりされるとするならば、私は、今提案中の所得税法、法人税法の一部を改正して、青色申告を取り消すということの道を開いていくべきだと思う。もちろん道は開かれていますが、ただ一つの懸念は、それはいい、そんならぼんぼん取り消していって更正決定にかけておけばいいということになることです。青色申告を取り消す場合には、その取り消し通知に理由を付記しなければならない。これをしておかなければ、今度は取り消された者としては、まるでやみ討ちにかかって文句は言えぬということになるから、取り消すについては当然理由があるに違いない。それは法律はちゃんと規定しておるけれども、取り消す通知にその理由をつけなければならぬということを法律に明記することによって、今度は不当に取り消された者が税務当局に異議を申し立てさられる道を開くことになるから、その意味においてはやはり条文改正をしなければならぬ、かように思うのです。今すぐその御方針を明確にお述べいただくことは無理かもわかりませんが、次の委員会までには一つその方針を明確にしていただきたいと思います。きょう御答弁があればけっこう、なければ、これをもって私の質疑を終りたいと思います。
  79. 金子一平

    ○金子説明員 先生からお話のございました、青色申告を取り消す場合の理由の付記の問題でございます。御承知のように、青色申告の取り消し、これは任意裁量の行為ではございません。法定の条件が備わったときに初めてできる覊束された行為でありまして、しかも、一定の場合、たとえば帳簿が備えつけてないとか、あるいは取引の全部または一部を隠蔽、仮装して記載するとか、そういった具体的な条項を法文にはっきり掲げておりますので、要するに相手方にどれによってやったんだということの説明がわかれば、私はそれでいいじゃないかというふうにも考えております。  それから、不当取り消しに対して異議の申し立てができないじゃないかという先生の御心配でございますが、取り消しという行政処分に対しては、一カ月以内に異議の申し立てができることになっております。
  80. 奧村又十郎

    奧村小委員 言葉を重ねて恐縮ですが、ただ、その異議の申し立てをする場合に、取り消しの理由が明記してあれば、その理由に対する反駁をもって異議申し立ての理由にできますが、ただばく然と取り消すといわれた場合には、今度は納税者の側で異議を申し立てる場合の理由がつけにくい、こういう点がありますから、その点が問題だ、かように思います。  それから、幸いに調査察部長がおられるのですが、何も直税部関係だけでなしに、調査査察においても、青色申告の納税者に対しての調査査察において、白色の申告者と全く同じ取扱いをなさっておられるように思う。そこで、私は、それなら青色申告をまず取り消しておいて御処分なさるべきであるが、取り消しをせずに処分をしておられる。これも、それは今までそういうふうにやってきたとおっしゃるかもしれぬが、税法においては、やはり納税者も法律を守らなければならぬが、政府も守らなければならぬ。政府の守るべき仕事、これは青色申告を取り消さなければならぬけれども、かわいそうだから温情をもってというのは、答弁にはならぬと思う。これはいかにも青色申告ではないということが国家公務員として明らかであったら、取り消すべきことは取り消さなければならぬ公務員の義務があるはずです。それをせずに、白色と同じような取扱いをしておる。そういうことについては次の委員会で一つ具体的に例をあげて申し上げたいと思いますが、そういう傾向はありませんか。
  81. 竹村忠一

    ○竹村説明員 奥村先生の御指摘になりましたようなことは原則としてはございません。原則といたしましては、青色申告を取り消しましてから更正決定をやっております。ただ、若干の場合におきましては、特に特定の場合にはそうしないというようなことも、ごく少数でございますがございます。
  82. 奧村又十郎

    奧村小委員 それでは、次の機会に、具体的な実例をもってまた御答弁をわずらわしたいと思います。
  83. 山本勝市

    山本委員長 国税庁にお願いしておきますが、法律にきまっておるから、どうしてもそれを実行しなければならぬという立場に置かれておるわけです。しかし、今出たのも一つの案でありますが、実際面に当っておられて、それで苦心した結果、結論としては納税者が納得して納められるにはどうしたらいいかということを、ただ執行者の立場でなく、立法者の立場になって考えて、その意見をわれわれの方へもまた主税局の方へも出してほしいと思います。これは今取り消してやったということも一つの案ではあるけれども、それはそれでまた大きな弊害を持ってくるだろうと思う。ただどこに一体原因があるか。税率が高いところにあるのか、あるいは、僕がこの前にも言いましたように、同族会社という似て非なる法人というようなもののためにそうなったのか。そうすると、似て非なる法人というものはだんだん認めないようにしていくのも一つの案であるが、そうすると、今度は法人というものがやりきれぬということでは困るから、法人でないというようなものの非合理的な性格をある程度認めて、そうしてそこの土地の顔役は顔役らしい生活をしていけるだけの余裕を置いて税をとるとか、その税もこれくらい収入があるといって、一々全部とってしまったら、もう顔役としての体面も保てない。顔役なんか無視して——それは悪い顔役もありますが、実際にやっぱり社会の大きなフアンクションを果しておるような人もある。どうもそこに実体と法制の食い違いがあるのではないかという感じがして仕方がない。その点はわれわれと同じ気持で考えてほしいと思います。
  84. 金子一平

    ○金子説明員 慎重に検討いたします。
  85. 山本勝市

    山本委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三月四日午前十時より開会することといたします。  これにて散会いたします。     午後零時四十五分散会