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1959-06-10 第31回国会 衆議院 大蔵委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年六月十日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 押谷 富三君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       鴨田 宗一君    進藤 一馬君       西村 英一君    福田  一君       福永 一臣君    古川 丈吉君       細田 義安君    毛利 松平君       山本 勝市君    久保田鶴松君       春日 一幸君    松尾トシ子君       廣瀬 勝邦君    山花 秀雄君       山下 榮二君    横山 利秋君       山本 幸一君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      佐々木庸一君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      半田  剛君         日本専売公社副         総裁      石田 吉男君         日本専売公社販         売部長     冠木 四郎君         日本専売公社生         産部長     駿河 義雄君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月二日  委員内田常雄君及び福永一臣辞任につき、そ  の補欠として吉田茂君及び石橋湛山君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員石橋湛山君及び吉田茂辞任につき、その  補欠として福永一臣君及び内田常雄君が議長の  指名委員に選任された。 同月四日  委員藤枝泉介辞任につき、その補欠として山  田彌一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山田彌一辞任につき、その補欠として藤  枝泉介君が議長指名委員に選任された。 六月十日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として横路  節雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月二日  一、厚生保険特別会計法等の一部を改正する法  律案内閣提出第一六七号)  二、所得税法の一部を改正する法律案佐藤觀  次郎君外十二名提出衆法第六号)  三、所得税法の一部を改正する法律案平岡忠  次郎君外六名提出衆法第五九号)  四、税制に関する件  五、金融に関する件  六、外国為替に関する件  七、国有財産に関する件  八、専売事業に関する件  九、印刷事業に関する件  一〇、造幣事業に関する件  一一、補助金等に係る予算の執行の適正化に関  する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  専売事業に関する件      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  専売事業に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 専売事業に関する質問をする前に、最近茨城で非常に大きなひょう害がございまして、そのために約四億五千万くらいの農産物の被害が出ているので、その問題に対しての大蔵省意見を聞きたいのですが、大蔵省の方からはだれも来ておりませんから、あとで伺うことにいたしますが、その四億五千万円くらいの災害のうち、最も大きいのが葉タバコでありまして、約三億円くらいになるという見通しでございます。従って、この葉タバコ被害に対して、専売当局の方でどういうような手当をするかということについて、一応所見を承わりたい。
  4. 駿河義雄

    駿河説明員 六月の四日に茨城中心としまして関東方面に大きいひょう害がありまして、耕作者の方に非常に気の毒に考えておるわけであります。被害程度につきましては目下詳細に調査中でありますが、ただいま公社の方でわかりました程度でありますと、茨城県における被害は、収穫皆無の分が六十二ヘクタールであります。それから、九割から七割くらいのだいぶひどいところが二百十五ヘクタール、七割から三割くらいのところが四百七十七ヘクタール、三割以下のところが三百十七ヘクタールで、合計千七十一ヘクタールくらいに推定されておるわけであります。なお詳細は調査中でありますが、被害の金額としましては、公社でただいま予想しておりますのは一億五千万円程度じゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。  被害対策といたしましては、降ひょうのありました直後から、現地に駐在させております耕作指導員、あるいは公社の出張所に置いております技術員を動員いたしまして、善後処置を講じておりますが、たとえば、被害圃地の消毒をいたしますとか、あるいは硫安とかその他の気付け肥をするとか、土寄せをするとか、また、被害程度によりまして、回復見込みのありますものは、一たんしんを切って新たに芽を出させてやるとかいうことで、被害最小限度にとどめるようにしておりますし、回復見込みのないものは、現地の農林省の出先の方とも相談いたしまして、今の時期でありますれば、カンショなどは大体普通作とれると思いますので、カンショを、若干おくれましても植え付けておくというようなことをしまして、収穫皆無の方にも被害がなるべくありませんような方法をとっておるわけであります。なお、そういう公社常置技術員で不備のところは、臨時指導者も雇って対策しております。  若干収穫皆無の耕作者の方もあろうかと思いますけれども、その方々につきましては、法律できまっております災害補償金の申請をしていただきまして、被害実地調査が済み次第、可及的に早く災害補償金を差し上げる、こういう用意をしておるわけであります。
  5. 石野久男

    石野委員 被害対策につきましての一番重要な問題は、いろいろな措置をなさるということも大事ですけれども、それと同時に、調査のときに、現地でこれだけの被害があったということと、当局の査定によるところの被害との間の食い違いが相当大きく出るはずです。いつもそういうことが出てくるわけです。現状では、県の方で調べたものによりますと、被害総額は、大体二億九千六十五万というような数になっておるわけであります。今当局からの話によると、一億五千万くらいだ、こういうように、約半分くらいの数字になっておる。こういう問題はもう少し正確に調査をしていただくことを私の方で切に希望いたしまするし、それから同時に、こういうような災害を受けた方々で、あと手当ができ得ないような事情がたくさん出てくると思うのであります。そういう場合についての処置というものは、非常に緻密にやってもらいませんと、農家等が非常に困るだろうと思いますから、そういう点特に注意して、早急にその処置をしてやってもらいたいと思います。ことにタバコの場合でありますと、もう一ぺん植え直すということは非常に困難だろうと思いまするから、従ってやはり全面的に作付もできなくなるし、収穫皆無——二割、三割というようなことであっても、実質的には収入が出てこないというような事態農家には発生すると思いますし、そういう点は一つ生産部の方でもしっかり調査してもらいたい、こういうふうに思うわけです。そういう点に対しての現地調査一つ十二分にしてもらうように特に希望したいと思います。
  6. 駿河義雄

    駿河説明員 ただいま石野先生から御質問のありましたように、現在におきます被害調査は十分しておきたいと思います。ただタバコにおきますひょう害とか霜害とか申しますのは、災害直後に見ましたより、非常にタバコ回復率の強いものでありますので、実際岡山県等で数年前ひどい災害がありましたが、手入れのいかんによりましてはもともとになったものもだいぶありますので、その辺収穫皆無になりますか、また手入れして相当収入になるかという見通しについては、現地常置指導技術員、その他臨時に雇いましたもので十分調査しまして、見きわめをつけましていたしたいと思いますが、大体被害後一週間か十日たちますれば、このタバコはものになるかならぬかという判定がはっきりして参ると思いますので、御趣旨のように調査もいたしますし、被害回復に努力いたしたいと思います。
  7. 石野久男

    石野委員 今回の茨城における被害は、ただタバコだけじゃなくして、陸稲、小麦、大麦、ビール麦、裸麦、これらのものはほとんど収穫期を前にして全部壊滅しちゃったものでありますし、その他やはり菜種だとか大豆、果樹、蔬菜などというものは非常に大きい被害があるわけです。こういう被害については大蔵当局の方でいろいろな手当をする問題がありますので、この問題については、大蔵当局の方からだれかが来ましたときに、あとでもう一度お聞きしたい、こう思うわけです。タバコ被害については一つ早急に善処してもらうように、特にお願いしておきたいと思います。  それから、副総裁がおいでになっておりますので、この際専売事業に関しましての若干の御質問をいたしたいと思います。  最近新聞紙上等では非常にたばこ品切れの状態が出てきているというようなことが伝えられておるわけです。その実態はどういうふうになっておるのか、一つこの際お聞かせいただいて、それらのものに対する処置、あるいはなぜそうなったかというような問題についての御意見を承わりたいと思いますが、まず、たばこ品切れということがよく宣伝されておりますけれども実態はどういうことになっておるのか、現状在庫量がどの程度になっておるのかということなどについて、詳細に説明願いたい。
  8. 冠木四郎

    冠木説明員 まず最初に私から、最近の在庫状況、それからまたどの程度品不足になっておるかというような点につきまして、御説明申し上げたいと思います。  五月末の在庫で申しますと、たばこの中で刻みたばこはたくさんストックがありますので問題ございませんが、両切りたばこにつきましては、土曜日の超勤ができませんためにだいぶ減少して参りまして、五月末の在庫といたしましては、両切りで全体の数量か約三十六億本程度になっておりまして、日数にいたしまして大体十二日分近い在庫になっております。こういうような在庫では需給関係相当苦しいのでありまして、公社といたしましては、この少い在庫で、できるだけ品物を切らさないで、消費者の方に御迷惑をかけないようにということで、輸送の面につきましても、できるだけ輸送期間を短縮するというような方法を講じまして、また輸送の回数も多くしまして、少い在庫でできるだけ円滑に供給していくという配慮をいたしておりますが、それでも、ある地方によりましては、一部の品物が若干不足しまして、品切れするというようなところが若干起っておるように聞いております。東京あるいは大阪等におきましては、今のところまだそれほど店頭の品切れということは起っておらないように思っておりますが、一部の地方におきましては若干そういうところが発生しておるというふうに考えております。
  9. 石野久男

    石野委員 今専売局の方では、正常な在庫量というものを、需要の面を勘案いたしまして、幾日分ぐらいあれば正常な在庫量という形になるとお考えになっておるのか伺いたい。
  10. 冠木四郎

    冠木説明員 正常な在庫といたしましては、私どもが考えておりますのは、大体二十五日分から三十日分ぐらいあればいいんじゃないか。少くとも二十五日分ぐらいはほしいというように考えております。
  11. 石野久男

    石野委員 その二十五日分の在庫量が今十二日分になっておる。その主たる原因は、先ほどのお話によりますと、超勤ができないからだというようなお話でございますが、その超勤ができないということが、そういう大きい原因になっておるかどうかということは、これは非常に大きな問題だと思うのであります。当局組合の間でもその問題を中心にしていろいろ論議が展開されておるやに聞いておりますが、この点については、労務関係問題等を含めまして、専売事業運営について非常に重要だと思いますので、私は、十二日分の在庫量しかなくなってきているという事情と、今またお話の中には東京大阪等では不足はしていないのだけれどもいなか地にいくと不足しているようだというお話でございますが、その理由はどういう理由なのか、輸送関係でそうなるのか、それとも、たばこ名柄によりまして、そういう事態が出てきておるのかという問題があると思うのです。いなかの方で非常に不足を来たしておるというのは、どういう事情都会地とそういう差が出てきておるのでありますか伺いたい。
  12. 冠木四郎

    冠木説明員 公社といたしましては、できるだけ品物が偏在しませんように、一部の地方では不足し、一部の地方では余っているというようなことのないように、できるだけ品物の偏在を防止するように、回送面等につきまして細心の注意を払ってやっておるつもりでございますが、やはり全国に公社出先が五百幾つかございますが、これがあるいは回送が若干おくれるとか、また近くの工場生産予定ほど上らない、そのためにその工場から受け取ります地方が若干不足するというようなことが起ってくるわけでございまして、こういうような点につきまして、今後もできるだけそういうことのないように、公平にいくように努めて参りたいというふうに考えております。
  13. 石野久男

    石野委員 都会地では不足していないけれどもいなかの方で不足しているということについては、名柄関係相当あるだろうと私は思っております。ところが、今のお話によりますと、工場所在地におけるところのたばこ生産予定通り上らないというようなお話でございますが、当局では、今正常な業務の運営をするに当って、一日のたばこ需要量というものを大体どの程度に見ておられて、それに対する生産計画はどういうふうになっておるかということを一つここで明確に示してもらって、その中で特に強調されておる超勤という問題がその生産計画の中の重要な要素になっておるのかどうかということも、やっぱりここではっきりお聞かせ願いませんと、問題の正確な解決の道が出てこないのではないかと思います。まず第一に、一日の需要量はどの程度に見積っておるか、現状持っておられる設備と一日の生産計画がどうなっており、生産見通しはどうなっておるのか、その生産が実際予定通り上っていないのか、そういう点を一つ数字の上でこの際知らせてもらいたいと思います。
  14. 冠木四郎

    冠木説明員 本年度販売計画といたしましては、これは両切りだけでございますが、両切り需要年間大体千百二億本程度と見込んでおりまして、これは、一日当りにいたしますと、大体三億本ちょっとになります。これに対しまして、製造予定といたしましては千百二十四億本を予定いたしております。これは需要よりも二十二億本ほど多くなっておりますが、これは昨年度からの労働紛争のためにストックがだんだん減少して参っておりますので、本年度といたしましてはもう少しストックをふやしたいということで、需要量よりも多い製造を見込んでおるわけでございます。  なお、この千百二十四億本のうち、大部分のものは定時間作業でまかなわれるわけでございますが、定時間作業でまかなえない分が大体五十九億本程度見込んでおりまして、これは全体製造数量の約五%程度に当るわけでございます。ただ最近のストックが非常に減少して参っておりますので、この超勤もできるだけ取り上げてやりたい、そうしなければ需給が安定しないというふうに考えておりますので、十二月ごろまでにできるだけ調整をするというようなことで、この五十九億本の超勤による増産を見込んでおるわけでございます。
  15. 石野久男

    石野委員 今専売公社におけるところの製造設備という問題を考えますると、組合なんかで言っておりますのには、相当設備はあるんだけれども、今それを稼働させていないものが大きいということを言っておるわけです。そうして、実際に生産計画需要の面とを勘案しますると、当局予定しましたところの数量は十二分に生産されている。ところが需要の面が案外に増大してきているのだ。その需要の面も当局予定した以上に伸びておるということをよく言われておるわけです。そういうことのために不足が来ているということになれば、これは見通し相違から来ていることであろうと思うし、もう一つ設備相当稼働でおるというようなものについて、これを公社経営の上からいきますると、どういうふうに処置するか。未稼働設備はもう取り払ってしまうつもりで、それを稼働させるという処置をとらないのかどうか。こういう問題がこの際やはり重要な問題になってくるかと思うわけなんです。組合の方からの話などを聞きますると、むしろそういうふうに未稼働にあるものを稼働させるようなことをすれば、これらの問題も解決がつくのじゃないかということを端的に言っているわけなのでございますが、それは事実と違うのでございましょうか。どうなんですか。
  16. 石田吉男

    石田説明員 現在の機械設備で未稼働のものはございますが、それは御承知かと思いますけれども工場の中に機械がありましても、それをフルに動かすものではございませんで、年間の途中で解体手入れを行います、そのための予備としてあげてあるものでございまして、欠勤率が大体予定した程度でございますれば、現在ある設備十分余裕があるわけであります。ただ近年欠勤率がだんだんふえて参りまして、そういうことで生産能率がだいぶ落ちておりますが、組合の方に言わせれば、おそらくその未稼働部分を全部動かすだけ人員を入れたらどうか、こういうことになろうかと思います。ところが、ただいま販売部長から御説明申し上げましたように、大体五%くらいのものは超過勤務でまかなっておる。たばこ需要というものを年度当初に見込みましても、その通りにはなかなか参りませんので、あるいはよけいになることもあり、少くなることもある。そういうものはある程度超過勤務によって調節していく。たとえば現在あります解体手入れの分までもかりに全部人をつけたといたしますれば、一ぱいフルに稼働すればむしろ製造の方が余ってくる。見込みが少し違ったような場合には一部工場を休まなければいかぬという事態も起り得ますので、そういう人のつけ方というものは事業運営としてないわけであります。そういうような関係で、組合の申しておるのもどういう申し方をしたか存じませんが、新聞などで組合意見として出ておりますところは、かなり大げさに組合の方が言っておるというような状況でございまして、正常な超勤が行われておりますれば、そう在庫が窮屈になることはないというふうな現状でございます。
  17. 石野久男

    石野委員 どの工場でも、どの企業でも、機械の修理あるいは補修するために若干の予備を持っておるということは私どもわかります。けれども、それが全設備のうち二割にも及ぶというようなことは、どこにおいてもまずないと思うのです。今私どもの考えるのは、若干のそういうものがあっても、それが稼働設備全体といたしまして二割にも及ぶということになっては、むしろ経営負担はその方が非常に大きいのではないかというふうに考えます。たとえば、たばこを巻く機械巻上機にしますと、約千百台あるうち九百台しか稼働していないのだ、二百台が遊んでおる、こういうこともいわれておりますし、包装機装置機なんかにいたしましても、やはり六百七十台のうちこれも二百台くらい遊んでおる、こういうふうにいわれております。これは、人員をつけて生産過剰になることの危険よりも、むしろこういう設備を遊ばしておくことの負担の方が大きいというふうにわれわれは見るわけであります。経営の面からいけばこういう点を考慮してやるべきだ。  もう一つは、従来のたばこ売れ行きを見ますれば、たばこ売れ行きは案外伸びておるわけであります。少くなっていないわけであります。伸び縮みがあるというけれども、伸びの方が大きくて縮みの方が少い。特に縮みのある、需要が減少しておるというものは、銘柄によっても若干の相違はあるわけでありますけれども公社経営方針とも相当関係があると思うのであります。そういうことを考えますと、むしろ、組合が言っておるのは誇大に言っておるというよりも、経営の中における生産計画需要見通しの違い、あるいはまた設備稼働、未稼働の比率の問題等について、やはりもっとシビアに考えなければならぬ問題があるようにわれわれは考えます。こういう点が論争になったりするのですが、私たちの見るところでは、千百台のうち二百台遊んでおる、あるいは六百七十台のうち二百台遊んでおるというようなことは、経営の上から見れば経営者側の責任ではないかと思うわけであります。むしろ生産計画が順調に進んでおるかどうかという問題の方が重要なのでありまして、労働者の側では一応計画されたものだけは生産しておると言っておる。事実上本数としては出ておる。ただ不足しておるのは需要に対する見通しのそごから出てきておるというように、われわれは資料で見るわけでありますし、予算に計上されておる面でもそういうふうになっておるわけでありますから、総裁としては、謙虚な気持で、公社経営を十分やるという建前からすれば、経営の中でも設備稼働の問題をもっと真剣に考えて——二百台遊んでおるから全部人をつけろということを言っておるわけではないと思う。超勤を必要としないように、超勤を置くということよりも、むしろそれに対して当然見込まれる人員を配置することが、設備稼働することの策としては、それの方が経営者としては有能だというふうに見ることができるのではないでしょうか。その点副総裁はどういうふうに考えておりますか。
  18. 石田吉男

    石田説明員 非常に簡単なことしか申し上げませんので、御理解がむずかしいかと思いますが、組合の申しておる数字はかなり過大であります。ただいま私の方に手持ちの数字がございませんが、その他、たとえば今度の労使紛争のもとになりましたのは、単に人員をふやすということよりも、ある程度機械化できるものは機械化して能率を上げていくということが必要でございまして、そういう面で工場内部機械化をはかろうとしたところが、それが労使紛争の発端になりまして、昨年の夏ごろから今日まで、いろいろな問題で定時間の作業すらできなかった事情がございます。従いまして、単に人をふやすとかあるいは設備をふやすとか、そういうことだけでなしに、内部作業合理化をはかり、あるいは機械化をはかって、能率を上げていくという面もあるのでございまして、年度当初の計画にはそういうものも見込んでおったわけでございます。これは昨年度もそうでございます。ところが、労使紛争解決しなかったために、そういう機械化その他もおくれているとか、いろいろな事情が中に入っております。ただ単に機械が多いとか少いとか、人員が多いとか少いとか、そういう単純な問題ではございません。ところが、幸いにして、かなり根本的な問題について、長い間紛争を続けておりました労使関係も話がつきまして、先月の月末から今日までほとんど連日徹夜で交渉を続け、公労委のあっせんもお願いしたりいたしまして、ようやくけさ話がまとまり、ただいま協定案文を作成中でございます。それでもう一時間ぐらいのうちにその協定の調印ができますと、それに基いて六月分の超過勤務の協約もできるというふうなことで、今まで組合の方で超勤をやらなかったという事態がここでなくなるわけでございます。従いまして、もう数時間で、先ほど販売部長の申し上げました在庫見込みというものが、超勤ができてくれば平時の正常な状態に戻りますので、だいぶ変ってくるかと存じます。
  19. 石野久男

    石野委員 労使の間の話し合いがついて調印ができるというのは、非常に喜ばしいことだと思います。私はやはりそういうことが労使の間で十二分に論議されていくことを非常に喜びますとともに、今後ともそういうふうにしてもらいたい。ただ、経営の面で、公社運営の中で、需要生産との関係計画に乗せる場合に、あらかじめ超勤をその計画の中へ入れるということがいいか悪いかということ、これが非常に重要だと思います。われわれの経験からしますと、超勤というものはコスト高になるわけなんです。決してコストが安くなるわけではありません。従って、経営を上手にやられるということを考えまするならば、超勤などを、当初の計画において、割増しの賃金をつけてまでやられるということは、経営者の無能力を物語っているものだと思います。むしろ、そういうことを考えないで、需要見通しを十分にして、ただ超勤の出る場合は、これは需要見通し違いからくる需要増というものに対して超勤が要求される、そういうことであれば、組合の方としても決して反対はなかろうと私は思うのです。しかし、生産の初期の計画の中に、そういう超勤を含む計画などをするということであるとすれば、これはやはり、労働者だけでなくして、国会自体として、われわれとしても、それは反対せざるを得ない。そういうコスト高につくような生産公社の皆さんにお願いするようなことでは、せっかく税金で運営している企業体としてはよろしくない、こういわなければいけないのであって、超勤を拒否したということの最大の原因は、やはり需要生産との見通しについてそごを来たしたことが重要な原因だと思うのです。従って、販売部長が言われたように、超勤を拒否されたから数量が減ってきたというのではなくて、もうすでに計画通りの生産が行われている、だけれども需要が増加してきているから生産少いのだというふうに問題をつかまえませんと、これは非常に大きな誤解を招くし、またそのことのために、労使の間の紛争が、よけいに紛争のうず巻きを大きくしていくのだと思うのです。この点については本質的な考え方を聞いておかなければいかぬと思いますが、副総裁はどういうふうに考えますか。
  20. 石田吉男

    石田説明員 労働紛争のないことを前提にいたしまして生産計画を作りますときは、ただいま申し上げましたような超過勤務の時間を非常に多くするというふうな計画ではございません。平時の生産が、紛争のためにその通りに上らない、あるいは機械化なりその他の合理化が進まないということのために、昨年度からそういう事態があったのであります。それが、今年度に入りまして、不足分を超過勤務相当たよらなければならぬという格好になったのでありまして、当初の計画自体はそういうものではございません。  それから労働組合の方で超過勤務をいやがっているというふうにお考えのようでございますが、こういう紛争のないときでありますと、むしろある程度超過勤務は労働組合の方でも希望しております。従いまして、今度の超過勤務をやらないというようなことは、紛争の中に起った一つの労働組合の対抗手段として出ておりますので、平時の場合でありますと、こういう無理なことにはならぬのが通常の状態でございます。従いまして、私ども、むしろこういうふうな紛争のあるたびに品切れが起ることは困るので、やはり従来と多少考え方を変えまして、超過勤務にあまり依存するような計画はもっと修正していこうと、大体お話の線のように考えております。
  21. 石野久男

    石野委員 当局の方の、生産需要との関係見通しを的確につかむということは、公社運営についての一番基本的な問題であるので、この点については、販売部長さんは、やはり当面それの前線の責任者でございますから、十二分に把握してもらいたいと思います。同時に、労働者の側からしましても、超勤を拒否するというようなことは、副総裁が言われるように、常時そういうことをやっているのじゃないのです。やはり公社計画の中で、需要が過大に出ましたときには、喜んで超勤にも参加しておるわけであります。ただそれができないという事情の中には、労務行政の中で出てきているいろいろな問題点があったと思います。そういうことに対する十二分の解決ができないから、拒否という形が出ているわけです。そういう点について、新聞なんかで当局談や何かで出ているように、あたかもそれが労働者側の責任であるかのような言い方は、これはお互いに慎しまなくちゃならないのじゃないか、こういうように私は思います。幸いにもきょうそういう問題の解決ができて、今後労使の間で生産計画通り進んでいくということについては、これは慶賀にたえませんから、そういう点は、今後慣行上の問題としても、一つ十二分に当局の方では考えてもらいたい。それと同時に、そういう紛争があるからというので、すぐ超勤の業務命令を発するとかなんとかいうようなことを、今度原さんが来てから盛んにやるようでございますが、こういうようなことは、きょう原さんがおいでにならないので、その問題は当人にお聞きすることはできませんけれども、あなたの方でも、むしろ労働者をかたきのように思っての労務行政は、これはやめなければいけない。むしろ、運営の中で、労使がお互いに話し合いの中で解決するような方策をとっていくことが、サービスする一番大きな原因になるだろう、こう思いますので、そういう点は十二分に考えてやってもらいたいと思います。  それから、私は、専売事業の中で、特にたばこの銘柄の問題について、これは生産関係の問題と、それからまた需要者の側の立場からして、非常に大きな問題があると思います。公社としてはなるべく利益金の上る銘柄をたくさん生産するということを望むと思います。しかし、実際の需要者の側からしますと、なるべく自分の口に合うものと同時に、やはり安くつくものをということで、需要の傾向がそういうものの中に集中的に現われておる思います。そういうように需要者の側で持っているたばこの銘柄に対する希望については、販売計画の上からいきましても、生産計画の上からいきましても、十二分に考えなくちゃならないと思いますが、公社運営の中で、そういう公社の収益金を上げるということと銘柄との関係を、副総裁はどういうように考えておられるか、この際御意見を聞かせていただきたいと思います。
  22. 石田吉男

    石田説明員 御質問の趣旨はわかるのでありますが、非常にお答えしにくい問題かと思います。結局どういう銘柄を作るかという考え方としましては、できるだけ消費者需要するようなものを作っていくことが、一つの基本になる考え方だと思います。一方からいいますと、従来ある程度の財政収入が上っておるわけでありますが、それが下るような銘柄の作り方はやはりできない。それで両方の考え方を具体的にどうやって調和していくかということを考えながら、そこでやって参る。これは主として新しい製品を作る場合の考え方でございます。それから現在ある銘柄につきましては、これは売れるものはできるだけ作っていくということでございまして、先年問題のありましたように、特殊銘柄を特に押えて、それの製造をやらないとか、そういうことは現在はいたしておりません。売れるに従って作っていくというきわめて自然な形をとっております。
  23. 石野久男

    石野委員 銘柄の問題についてはやはり消費者需要者の側における希望というものを——これは需要者の方は別に意見専売局の方に出すわけではございませんので、売れ行きの問題がそれを示すと思うのであります。そういう点で十二分に考えていただいて、需要の多い銘柄を新品種にかえるために削減していくというようなことは、なるべく避けてもらうように、この際希望しておきたいと思います。  専売の事業につきましての労務関係問題等について、いろいろまだ問題がありまするけれども、幸いにきょう双方で話し合いがついたということを聞きましたから、それは非常にけっこうなことだと思うのであります。問題は、今当局労働者の側における紛争中心として、いかにもたばこ品切れが間近にきているような宣伝が行われまして、ところによりますと、需要者の側で相当たばこの買い占めなどもやられているというようなことも、うわさに聞いておるわけであります。こういうようなことではますます生産を混乱させるでございましょうし、運営の上にも支障がくるだろうと思うのであります。そういうことのないようにする見通しとその決意のほどを、私はこの際当局から聞かせていただいて、そういう販売面におけるところの混乱が生じる事態があるのか、そういうことはないのかということをはっきりとお示し願いたい、こういうふうに思います。
  24. 石田吉男

    石田説明員 今日労使の間で話し合いが成立いたしますれば、さしあたり問題になっております超過勤務というものも労働組合側で円滑にやってくれると思います。そうしますれば、現在在庫が非常に減っておりますが、これが、そう速急にというわけには参りません、一カ月の間で超過勤務をやる日というのは幾日もございませんので、しかし、それだけに、次第に在庫の方もふえて参る。それからもう一つは、長い間労使の間がかなりもめておりましたが、今度おさまりますと、かなり根本的な問題について落ちつきが出て参りますので、工場全体の雰囲気といいますか、そういうものも非常に安定して参りまして、そういう面からも生産の増加ということも期待されます。従いまして、今後におきましては、絶対にということはどういうことになるかわかりませんので申し上げかねますが、しかし、通常の場合でございますれば、品切れを起すというふうな事態は参らない、かように現在の見通しを申し上げて差しつかえなかろうかと思います。
  25. 石野久男

    石野委員 わかりました。なるべくそういうふうに一つ円滑に、販売の面での混乱が生じないようにしてもらいたい。今副総裁からも言われたように、当局労働者との間に超勤の問題が解決するのでということがございました。しかし、私どもずっと見て参りますと、いつも当初計画よりも需要数量が多くなってきているのが実情だと思います。たとえば、昭和三十三年におきます当初計画は、販売計画において約千九十一億本だったと思うのです。そのために製造の面では千八十一億本の計画をしたわけです。しかし、実際には、販売の実績として出たのが千百二十億本ということで、約三十億本だけ多く売れているわけです。ことしもやはり相当大きな計画ができておりますけれども需要がどんどんふえていく。そういうことになりますと、これをいつも超過勤務でまかなうということは、経営の上からいってもよくないと私は思う。そういうふうな需要増が出てきているということになれば、当然のこととして未稼働設備稼働させるということ、それから人員を若干増加させるということ、それは、先ほど副総裁が言われたように、未稼働機械を全部フルに動かせということはわれわれも言いませんし、労働者側も言っていないと思うのです。しかし、当然こういうふうに需要増が見込まれるものに対する人員の増加あるいは未稼働機械稼働に転換させるということは、設備を有効に使う意味から言っても非常に重要だと思いますので、この点は一つ公社経営の立場に立って、そういうような考え方をこの際持ってもらうことが非常に大事だと私は思います。そういう点について最後に副総裁の考え方だけを聞かせていただきたい。
  26. 石田吉男

    石田説明員 先ほど言葉が足りなかったので、はなはだ失礼申し上げましたが、ただいまお話しのような考え方、これももちろん必要でございます。なお、そのほかに、たとえば刻みがだんだん売れなくなってきておりますので、刻みの工場両切り工場に転換する。これはそういう事情を見て、時期を繰り延べてやるとか、あるいは何と申しましても工場の中の設備合理化、あるいは手作業でやっておりますものを、簡単なものでもとにかく機械化して参る、そういうような内部合理化機械化、あるいは巻上機の回転数、これは古いのはおそいわけでありますが、それをもっと早く、それ以上に回転数の多いものを入れるとか、そういうようなことを着々とやっておるのでございますが、お話のような点もあわせてそういう中に含めまして、今後そういうふうにやって参りたいと考えております。
  27. 石野久男

    石野委員 公社の方の問題については、従来生産需要の面において今日までこんなに混乱したことはなかったと思います。特に原さんが公社に入られてからその問題が非常に大きくなったということは、これはわれわれにとっても非常に重要な問題だと思っております。一つ総裁としても、今後労務行政の上における生産販売面に対する混乱が公社運営の中から出てくるようなことのないように注意してもらいたいと思います。まあ専売関係の問題はそれでけっこうであります。
  28. 石田吉男

    石田説明員 はなはだ失礼でありますが、一言だけ申させていただきたいと思います。実は原職員部長の名前が出ましたが、いろいろのお考えもあろうかと思いますが、たまたまそういう紛争の盛んな時期に原君が職員部長に就任しておったということでありまして、原君個人がどうこうということはおっしゃっていただきたくないのです。そういう意味合いにおいて、一言だけそういうことではございませんということを申し上げさせていただきたいと思います。
  29. 石野久男

    石野委員 佐藤次長が参っておられますので、主計局にちょっとお尋ねいたします。実は大臣か次官にお尋ねしたかったのですが、主計局長もおいでにならないそうですから……。  先般六月四日に茨城の方で非常なひょう害がございました。そのために農産物が非常に大きな被害を受けておるわけであります。その被害対策といたしまして、県当局からの要望もすでに大蔵当局にも出ておると思いますが、この問題については先ほど専売の方にもいろいろお聞きいたしまして、ダバコの被害も大きいので、早急に処置をしてもらわなければならないということをお願いしたのですが、そのほかにバレイショとか陸稲、果樹、蔬菜その他大麦、小麦、ビール麦等、こういうものの収穫期を前にして全然収穫皆無というような状態になっておるという実情があるわけであります。そういうようなことで善後処置として大蔵当局にいろいろ予算的な措置をお願いしなければならないものが多うございます。特にひょう害を受けたものに対して大災融資法を発動して、被害農家に対して営農資金の貸付とか、貸付金の償還延期の処置をお願いしたいことや、あるいは被害農作物の病虫害防除の薬剤または防除器具並びに樹勢回復用肥料等の購入費に対する助成措置、また農業災害補償法に基くところの仮払いの早急実施の問題、あるいは農業所得税の減免とか、県に対する特別交付税の交付の問題、こういう問題などがありますし、また農家自体に対する自作農創設維持資金の増額融資措置の問題等、いろいろと問題があるわけであります。こういう問題について一つ大蔵当局はこの際早急に善処していただきたいと思うわけであります。それらの問題について当局の御意見をこの際承わっておきたいと思います。
  30. 佐藤一郎

    佐藤説明員 ただいまお話がございましたように、茨城県等から、去る六月四日の降ひょうによる災害について諸種の措置を講ずるように、御要望を承わっております。目下農林省においてその数字を取りまとめ中でございまして、農林省といたしましても、今のところ、どの程度対策を講ずべきかということを、正式に私の方へまだ話してきておりません。いずれ農林省から数字のまとまり次第お話があると思うのでありますが、目下のところでは、まだ正式のものではありませんから、私たちの感じを申し上げますと、いろいろなただいま御指摘になりましたような措置がございますが、従来の降ひょうについては相当の大規模のものが三十年、三十一年にございましたが、いろいろの御要望のうちで、たとえば予算による助成措置であるとか、そういうようなものは従来講じてきた例が実はございません。天災融資法等についてこれを発動したというようなことはございます。これらはいずれも数字が具体的にまとまりまして、被害の額が大体わかりましたところで、それに応じまして一体どの程度の措置を講ずべきか、これを考究したい、こういうふうに考えております。
  31. 石野久男

    石野委員 数字が明確に出なければ問題を論ずることはできないわけでございますが、一つ数字が明確になりましたら、早急にその処置をしていただきたいと思います。相当被害も大きいわけでございますし、事実上、あと作をするにしても何にしても、ちょっと時期的にもなかなかうまくいかない時期でございますから、やはりこの点については、従来がどうあろうと、そうする方がよろしいという判定が出ましたときには、予算的な措置や何かをしていただく。それをしなくてもまかない得るものでありますれば、それはよろしいのでございます。一つ善処方を、この際特に大臣の方にも伝えてもらって、やっていただきたいと思います。
  32. 早川崇

    早川委員長 横山君。
  33. 横山利秋

    ○横山委員 大臣のおいでを願ったわけでありますが、なかなかお忙しいと見えまして、やむを得ません。やや事務的にわたるかもしれませんが、当面の経済問題について二、三お伺いをいたしたいと思うわけです。  最近のデノミ論争ほど世間に混迷を与えたものはないと思います。総理大臣や経済企画庁長官はどう勘違いしたか知らぬけれども賛成論の方に回り、大蔵大臣と幹事長は反対論の方に回っている。けれども、結果としては、閣議でデノミはやらぬというふうに一応きまったようであります。しかし、そのきまったきまり方、きめた人たちのものの判断の仕方にも、またまちまちなところが見えるようであります。従いまして、私は、デノミそれ自体が今妥当であるかいなかというよりも、デノミ論争をする人たらの経済に対するものの見方という点について、実はお伺いをしたいのでありますが、その御本人たちがいらっしゃいませんので、かわりにあなた方に基礎的な点を一、二聞きたいと思うわけであります。  第一は、政府は、フランスのデノミに対して、正式にフランス大使館に対して調査をさせておるそうでありますが、事実でありますか。
  34. 西原直廉

    ○西原説明員 今デノミの話がいろいろ新聞等で出たりいたしまして、われわれ事務当局といたしましては、一応勉強はすべきことでございますので、フランス大使館の方に、どういうふうに一体経過が進んでいるか、またどういうことでこういうことが行われたかということの調査を依頼いたしました。一部フランスでどういうふうなことが行われたかということは、私の方でも若干資料を持っておりましてわかってはおりますけれども、もう少し詳細を知りたいと思いまして、そういうことを依頼したわけでございます。
  35. 横山利秋

    ○横山委員 そこからもう一つ問題が発生していくわけでありますが、政府はアフンスのデノミに対して非常に関心と注意を払い、その状況について研究を怠らずにおるということから、さらに第二段として、デノミを今回やらないときめた根本理由は一体何であるかということであります。つまり反対論、賛成論と閣僚の中にもありましたデノミ論争について、条件が整えばやるという観点に立っておる人と、それからもう全然今日本においてデノミはする必要がないんだという判断をしておるやに考えられる人があるわけでありますが、政府が今デノミをやらないときめた原因理由というものは何であるか、一つ簡明にお伺いしたいのです。
  36. 西原直廉

    ○西原説明員 われわれといたしましては、いろいろなことにつきまして御質問もございましょうし、そういうようなことで、フランスのことなんかも、研究と申しますか、資料は、常に整えておく必要がございますので、そういうことをいたしておるわけでございます。最近デノミネーションの問題がいろいろ起りまして、その理由としていろいろいい点もおあげいただいておるようであります。たとえば、この際そういうことの方が通貨に対する尊重の観念を強めるのじゃなかろうか、あるいは、そのけた数が少くなるから、それで計算なんかも簡単になり、帳簿なんかも簡単に済むのじゃないかとか、いろいろ利点をおあげになっておられるようであります。しかし、デノミネーションにつきましては、新聞でとやかく出ましたように、いろいろな誤解や不安というようなものが今のところやはり国民一般の間には消えないようであります。また、一体利点としておあげになっていただいておるようなことが、事実ほんとうにそういうふうにあるのかどうかということについても、これは両方論議があるわけであります。そういうような観点から、現在政府としてはデノミネーションは行わないという方針を閣議でも了解された次第でございます。
  37. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると、今度あなた自身にお伺いするわけですが、あなた自身としても、このデノミそれ自体の理論的問題については賛成していらっしゃるわけですか。つまり理論的には賛成であるけれども、現実的にはいろいろな問題があるから今やらぬのだ、こういう意見のように拝聴しますが、そういうことですか。
  38. 西原直廉

    ○西原説明員 私自身もデノミネーションはその必要がないという考え方でございます。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 それは理論的な問題でございますか。現実的な問題でございますか。
  40. 西原直廉

    ○西原説明員 それは現実的にそういうことでもありますし、今言われておるところから見て、理論的にもそういうことで正しいというふうに考えております。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 あなたと総理大臣や経済企画庁長官を比較しようとは思わないのですけれども、しかし、政府のおもだった人の中に、デノミというものは条件さえ許せばそれはやるべきであるが、今は条件が整わないから、それはやっぱりやらないことにしようという意見が、いろいろ探ってみますと、大きなウエートを占めておるように思うのですが、あなたはそうは思わないのですか。たとえば、岸内閣総理大臣は、最初、経済も非常に安定してきたようであるから、やるならばやってもいいということを言ったし、企画庁長官も、慎重ではあるけれども、やるべきだという意見もあったようです。それから、佐藤大蔵大臣の話を慎重に聞いてみても、絶対いかぬと言うておるのではないような気がするわけですが、その点あなたはどうもえらいきっぱりちゃんとしたお答えのようでありますけれども、政府がきめた態度というものは、理論的にも現実的にもデノミネーションというものはやるべきではないということなんでございましょうか。
  42. 西原直廉

    ○西原説明員 デノミネーションについてはいろいろの条件とか何とかがあると思うのでありますけれども、今の日本の現状においては、理論的にも現実的にもこういうものは必要がない、こういうふうに考えられるわけであります。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 とうとうあなたはちょっと傷口をのぞかした。今の日本の現状であればという前段があなたとしても入るのでしょう。そうすると、今の日本の現状とは何ぞということに今度はなってくるわけなんです。今の日本の現状というものが、まだデノミネーションに対する理解が乏しいとか、あるいは経済がほんとうに安定していないとか、あるいは平価切り下げをする条件が整っていないとか、こういういろんな問題があるから、あなたは理論的にも現実的にも必要がない、こういう意味ではないんですか。
  44. 西原直廉

    ○西原説明員 なかなかこれは、お話の点もいろいろあると思いますが、理論的と申しますか、それは議論も起っている以上、それぞれの人の考え方の問題というので、いろいろ考え方が違うだろうと思うのです。私といたしましては、いろんなことを言われている点についても、こういう面はこう言われていても、こういうことがあるというような点から考えまして、理論的にも必要がない、こういうふうに思うわけです。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 何を言っていらっしゃるのかちっともわからない。つまり、私の聞いておることは、政府がデノミをやらないということをきめたことは、日本においてはデノミが必要でないというふうにきめだことか、日本の経済の現状においては適当でないときめたことか、どちらであるかということを聞いておるのです。あなたは日本の経済の現状においては適当でないというふうに最終的にお答えになったような気がするが、間違っていますか。
  46. 西原直廉

    ○西原説明員 なかなかどうも言葉のあれで、私は日本の現在のこういうような状態その他から考えまして、また理論的にも当てはめて考えてみて、デノミネーションは必要ないというふうに考えるわけです。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 これはそうあなたにしつこくお尋ねしてもむだなような気がしますが、要するにあなたもデノミということそれ自体を抹殺するといいますか、徹底をして反対をするといいますか、そういうことでもなさそうであります。要は日本の経済の現状がそれに適当でないというような受け取り方をするわけですが、それでは日本の経済の現状をどう見るかという点について、三人の大臣、それから幹事長、こもごも違った見方をしているようでありまして、その違った見方の上に立って、最低共通線として、今はまあやらないことにしようということにきまったようであります。そこで、今の経済の見通しをどういうふうに見るかということであります。通俗的に今の経済は、V字型から少し沈静状態といいますか、安静状態といいますか、というふうになって、先行きはそう暗くはないと一応いわれているわけであります。これは大臣お見えになりませんが、政府側としてはどういうふうに見ておるのでありましょうか。経済企画庁の月例報告を見ますと、簡単に言いますと順調に推移しているという一言をもって冒頭を飾っておるわけでありますが、その政府の見た公式の今日の経済の見通しについて、要約して承わりたい。
  48. 村上孝太郎

    ○村上説明員 ただいまデノミネーションに関連されまして、景気の動向と申しますか、日本経済の将来をどう見るかというお話でありますが、私は、先ほど理財局長から言われたデノミとの関係における日本経済の諸条件という問題とは、これはちょっと別だろうと思うのであります。ただ、日本経済が、三十二年の引き締め以降、相当景気の谷といいますか、不況とまではいかないにしても、一つのリセッションの過程を経まして、昨年の下半期からだんだん上向っておる。その状態が今後一体どうなるかというふうな御質問といたしますと、これは大蔵省だけで景気の予測をつけるわけではございませんけれども、現在手元でわかっております三月あるいは四月までのいろいろな経済指標をとってみますと、たとえば景気に先行するといわれる鉱工業生産指数とか、あるいは出荷指数とか、そういうふうなものは依然として順調に伸びております。従って、今後この傾向が一体どこまで続くかというふうなその見通しにつきましては、いろいろこれらの諸条件との関係もありましょうけれども、現在の前提が変らない限りにおいては、私は、数量的に穏やかな景気上昇過程が続いていくものだろう、こういうふうに考えております。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 現在の状態が変らなければ数量的に穏やかな景気上昇が続くと言われます判断は、経済企画庁の月例報告とそう大差はないようであります。そこで、問題になりますのは、一部の経済論者の中にまだ潜在していわれております過熱論であります。このまま推移するとなれば、さらに設備投資が非常に強くなっていって、過熱の危険ありということがいわれておるわけでありますが、この前提として、過熱とは一体何だということを一方定義してかからぬと、あなたと私の間に意見が食い違うと思うのでありますが、いわゆる経済の危機だと一応いわれる過熱とは何であるか、どういう状態であるか、政府側としてどう考えておられますか。
  50. 村上孝太郎

    ○村上説明員 これはなかなかむずかしい問題でありまして、われわれが普通に過熱論議をしておりますときには、一般的には、数量的なバランスのとれた経済の発展に対して、いわば価格的な景気と申しますか、バランスのはずれた、たとえば生産が実情を上回って非常に焦慮の気配を見せるとか、あるいは設備投資が実際の経済の需要をオーバーして、単なる思惑というようなことから非常に設備の拡張を急ぐとか、あるいは生産の上昇を見越して思惑輸入をするとか、そうしたいわばバランスのとれない経済の膨張といいますか、そういうようなところあたりを一般に過熱というふうに呼んでおるのだろうと私は了解しております。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 少し意見があるのですが、しかしあなたの言う過熱とは、今の経済の状態からいって、過熱状態に陥るとしたら、どういうことから危機が来る危険性があるとお考えですか。
  52. 村上孝太郎

    ○村上説明員 経済の諸条件というものは、与えられた条件が同じでありましても、それに反応するいろいろな他の諸条件なり、あるいはこれを受ける経済界の人々の心理の動きから、きわめて複雑な相関作用を起すわけでございますから、どれだけの条件が必ず過熱になるというふうなことをここで申し上げることは困難であろうかと思うのでありまするが、最近における過熱の論議というふうなものは、三十四年度予算におきますところの予算とか、財政投融資の規模とか、あるいは政府の民間に対しまする散超の資金というものが、金融の正常化に使われずに、これがいわば思惑というか、銀行の貸し出し競争あるいはさらに企業の設備投資競争というふうなものに、相関的な作用を起して異常化するというふうな危険を言っておられるのだろうと私は思います。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 過熱及び過熱に至る危険性をそういうふうにお考えであるとするならば、私は結論的に言うのですけれども、過熱の心配は今の状況においてはあまりないというふうに判断してよろしいのではないかと思いますが、いかがですか。
  54. 村上孝太郎

    ○村上説明員 これは現在において過熱の心配が全然ないと断定するわけにもいかない。あるというふうにも言えない。なぜかといいますと、経済というものは、先ほど申し上げましたように、一つの条件が正常に受け取られれば正常な進歩のもとになるわけでございますが、異常に受け取られれば、それが異常化の原因にもなるわけでありまして、たとえば設備投資が、現在経済企画庁で計画しておりました五%減というふうな予想が、いろいろなアンケートを見ますと、これは企業家側だけの考え方でありますけれども、一八%というような非常に大きな設備投資を企業家はことしの経済で考えておるとか、もっともこれは現在自主調整とかいろいろな業界自体の自粛機運も高まっておるようでありますから、どういうふうに処理されるか今後の過程にあるわけでございまして、そういう面から申しますと、現在いろいろな論議がかわされているものの中に種はある。全然種がないとも言えないし、またその種が必ず開花するとも言えないのじゃなかろうか、こういうふうに申し上げるほかないと思います。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 そういう言い方をすればそれは切りのない話なんです。ですけれども、そういう言い方をしておったのではお互いに責任が持てない話なんですから、私は絶対論をいつも言っておるのではないのです。相対的に過熱の危機があるかいなか、またそれは避けられるものであるかいなかという点を、政策をも含めて政府の所信をただすという格好になっておるのですから、その意味でお返事を願わなければ、あるとも言えない、ないとも言えない、そういうことでは話にはならぬと思うわけであります。  それから、あなたの今の設備の問題、一八%増加になったけれども、自主調整をやっているから、これはある程度差がある。私も差があると思うのだけれども、しかし、過剰設備の問題については、ずいぶん最近やはり人によって意見が違うのであります。経済白書がおととしでしたか出ましたときに、たしかここにもありますけれども、第一幕は在庫調整、それだけでは景気は安定はしない。第二幕、過剰設備というものは必ず危機を通らないならば景気は安定しないという有名な言葉でございましたけれども、これはもののみごとにはずれたような気がするわけです。そういう過剰設備、危機というものも通らずに、すでに今言うように一八%の設備投資が始まっておる。始まっておるものを、自主調整はするにしても、どうも設備投資が加速度的にふえていくというふうな気がする。しかし、ふえていくからそれが非常な危機にみんな指摘しているかというと、それは危機にあまり指摘していないというところに、今の経済の見通しを、右からにしても左からにしても、たとえば池田・大來論争、ああいうものを取り上げてみても、それが重大な危機になるというふうにだれしも言っていないような私は気がするわけです。政府の見通しというものは、そういう点ではずいぶんはずれているわけです。私が今冒頭にあなたに聞きましたのは、これからの見通しはどうか、現状はどうかという問いに対して、あなたは数量景気の穏やかな上昇が続くというお話でございましたが、それは一体現状を判断しておるのですか。それとも今質疑応答のあったことを含めて、ここに当分、たとえば今年度以内そういうものが続くという見通しでありますか。もう少し長期的な展望を一つ説明を求めます。
  56. 村上孝太郎

    ○村上説明員 ここ一年くらいの景気の見通しができるということになりますと、私ども大へんなものでありますが、先ほど申し上げましたのは、現在ここ当分の間の景気の見通しをするというのには、まだ資料が不足といいますか、タイミングとして時期は悪いと思っております。というのは、たとえば、御存じのように、四月の国際収支を問題にしまして、ある筋では、どうもこれは輸入がだんだんふえてきて国際収支が従来のようにあまり順調でないぞ、と警告をしておる向きもあるようであります。くず鉄の輸入が非常に大きい。それから今申し上げたような設備投資の問題もありますけれども、これらはすべてまだ現在その資料だけで判断するのには不十分な程度のものであろう。たとえば四月の国際収支だけをとって、先行きの国際収支の悪化とかあるいは良化を判断し得るというならば、これは神様であって、まだここ二、三カ月過ぎを見てみないと、最近の生産の上昇カーブというものが国際収支にどういう影響を与えるかということは、まだ私はわからぬと思っております。  それから、一八%の設備投資の拡張がすでに着手されたとおっしゃいますけれども、私はまだ着手されたとは思ってないので、これがあなたのおっしゃるように一〇%とか六%とかいうふうな適度なものに押えられれば、それが日本の経済に決して得になるとは私は思わない。昨年の見込みでは設備投資は五%減だと考えたけれども、これが五%から六%程度の増があるならば、その程度のものは、現在の日本の国民経済で伸び得ないものではないわけでありますから、景気の将来にとってそれはいい要素にはなっても、過熱の原因になるとは私は思っておりません。従って、今おっしゃいますようないろいろな先行きの見込みをどういうふうに判断するかと言われましても、ここ二、三カ月は、先ほど申し上げましたように、前提となる条件といいますのは、そうしたいろいろな過熱の種になるようなものが醗酵しないで静穏に推移するならば、景気の上昇過程は現在通りにいくであろうということを申し上げておるわけでありますが、それが右になるか左になるかということは、ここ数カ月のいろいろな経済指標の動きを見ないと、上昇過程に転じましたまだ門口でありますので、あまりはっきりしたことは申し上げかねる、こういうふうに言うよりほかなかろうと思います。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっとついでに伺っておきますが、今下村・大來論争の中の焦点になっておりますものの中に、設備投資と産出効果の問題があるわけであります。私もしろうとですからあまりわからないことです。わからないことですけれども、問題が設備投資を本年もやれば来年はそれに匹敵するような産出効果があるかいなかということは、これは、経済企画庁なりあるいはあなたの方でそろばんをはじくときに、実に大きなそろばん上の問題だと思う。こういうことが何回も何回も論争を重ねられておる。それが直接われわれの政治には関係はないようでありますけれども、政府がよく国会へ確実なる資料として提出をしてくる数字の基礎的な根拠が、こういうことによって実はきめられておるということを考えますと、必ずしもこれは二人の論争だというばかりにも参るまいと思う。政府としてはこの設備投資と産出効果の問題をどういうふうに理解しておるのか、政府はどのくらいに見ておるのかという点についてお伺いをいたします。
  58. 村上孝太郎

    ○村上説明員 大來、下村両氏の論争が、産出効果は一方は一に近いと言い、一方はそんなにいかないと言っておりますが、政府は一体どっちに判定を下したかということは私ちょっと存じておりません。従って、それが一体どんなふうにわれわれの経済政策に影響を与えるかということは、ちょっと私としては御答弁しかねるのであります。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 そういう言い方ではないのです。私の言い分をあなたはわかっていて逃げておられると思うんだけれども、これは下村、大來氏がやっているから差しさわりがあるように思うんだけれども、しかし、私が今まで述べたような設備投資というものは、どんどんさらにふえていく過程にある。ふえていく状況というものが経済効果としてどういうふうに現われるかということは、これはきわめて重要な問題です。ですから、下村さんがどう言った、だれがどう言ったということを抜きにしてでもお伺いをしたいのは、設備投資を本年一かけたら、来年はそれはどういうふうに産出効果が出てくるかということをすなおに私は聞きたい。そういう意味で一つ答弁をお願いします。
  60. 村上孝太郎

    ○村上説明員 国民経済計算をいたしますときに、来年度のたとえば国民の総支出が幾らになり、それから輸出が幾らになり、輸入が幾らになる、さらに政府の支出が幾らになるというふうな計算をいたしますときには、そういうふうな単なる計量経済学的な簡単な数式でやっておらぬと私は思っております。これは詳しくは経済企画庁の方から答弁すべきだと私は思っておるのですが、たとえば昭和三十四年度が国民総生産が六・一%増加する。約六千二百億円ばかりの増加になりますが、その中で千七百億円ばかりが政府支出の増加であり、三千四百億円ばかりがたしか国民総支出の増加こういうふうになっておったと思うのですが、この三千四百億円の国民総支出の増加というような計算、あるいは政府支出の増加、あるいはさらに国際収支の輸出が幾らになるというふうな問題は、これは、たとえば国民の総支出であれば、現在の国民の消費性向というものがどういうふうになっておるのか、従って来年は減税その他でどういうふうになるというふうな、もっと下から積み上げた計算を私はしておるのだろうと思います。ことしの設備投資が幾らあったから、その産出効果が幾ら来年度の国民経済計算に現われるというふうな、そういう数式的な計算はしておらぬ、私はこういうふうに思っておりますが、これは詳しくは経済企画庁からお聞きを願いたいと思います。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 問題の焦点をおはずしになるけれども、それはあなたの言うような言い方もあるでしょう。やり方もあるでしょう。しかし、設備投資がどういうふうに経済に影響を与えるかということは、ストレートにあなたの方としてもお考えにならぬはずはないと私は思う。しかし、時間もございませんから、お答えが願えなければ願えないでけっこうです。少し問題をそらしますけれども、最近の株高について理財局長にお伺いをいたしたい。どうして株がこんなに上るかという論争というか、疑問というか、もう一年余りも過ぎておりまして、おおよそ最大公約数的な答えは出かかっておるのではないかと思います。それに対して、従って対策としても政府側としてはできておると思うわけです。今まで本委員会でいろいろな議論はいたしましたものの、あらためて株高の原因対策について、政府側の所見を公けに一つ伺いたいと思うのであります。
  62. 西原直廉

    ○西原説明員 最近と申しますか、ここ一年くらいの株の動向、その原因等についてのお尋ねでございますが、株は昨年の六月ごろに平均のダウが五百七十四円ということでございましたが、ことしの一月早々の平均ダウ指数が六百七十一円くらい、ごく最近、九日には八百十四円というふうに上ったわけでございまして、その間株価の自律調整とでも申しますか、反落も見られましたが、ここ一月くらいをとってみますと、ほぼ上げ続けの様相を呈しております。御指摘のように、全体として考えてみますと、テンポは少し急速に行き過ぎているような観がないでもないというふうに考えられます。このような株価の上昇の結果、株式の利回りということをやはり問題として考えなければならぬかと思いますが、その利回りの水準が、たとえば東証の二百二十五種の予想平均利回りということでとってみますと、ことしの初めが約四分八厘でございましたが、この六月八日の数字で考えてみますと、約四分二厘くらいの利回りに下りてきているわけであります。従いまして、株価と申しますか、株価の位置自身が、いろいろな一般の金利と比較いたしまして、なかなか高水準にあるというふうに考えられるわけでございます。  このような株価の強調のおもな原因につきましては、世間でいろいろと議論があると思いますが、一般的に考えてみますと、国際収支が過去一年非常によく続いて参りました。そういう面も特に基調といたしまして、日本経済自身として一般的に明るい見通しがある。これは今横山先生からいろいろ御指摘がただいまあった通りでありまして、国内的に考えてみますと、特に株のもとであります会社の企業のこの三月の決算が予想よりも非常によかった。さらに現在経済は上向きの状況でありますので、九月期の業績もあるいは一そうの伸びが見られるのではなかろうか。そういうようなことがやはり国内的には一般に基調になっている。また、国際的に考えましても、世界経済の動向は昨年の暮れくらいから上向きに転じてきておりますので、そういうような点で株価というものは最近一般的に強調を呈しているというふうに見られるわけであります。  こういうことに対しまして、政府といたしましても、この株式市況の動きについて手放しで楽観しているものではございません。できるだけこの株価の公正な形成、それから円滑な流通、投資者保護という観点に立ちまして、証券市場の健全な動きがあるように念願しているのであります。いやしくも人気的な要素が一部にでも起りまして、ひいてはこれが累積的に過当投機化と申しますか、そういうようなことにでもなるような傾向がないように、厳に慎しまなければならないと考えております、このような意味で、当局といたしましては、今後の市況の推移並びに投資家の動向について、重大な関心を持って注視している次第であります。  そういうようなことで、私どもとしては、一般投資家といたしましては、この不安定な短期資金によって投機的利潤を得ようとするような態度をなるべく控えると申しますか、決してそういうことをしないようにしていただきたい。どこまでも自己の責任と判断で、安定した資金で長期投資を行うという態度を堅持してもらいたいというふうに考えております。事実、株は一般の投資家が投資として買われるものでありますので、一般投資家のそういうような健全な考え方ということを、非常に私どもとしてお願いしたいというふうに思っております。それから、この仲立ちをいたしますと申しますか、証券業の方々に対しては、結局投資家に株式の勧誘をするという立場にあるわけでありますので、このような事態を十分認識していただいて、健全な市場秩序の維持に心がける、また一般投資家の堅実な投資を勧奨するという、そういう勧誘と申しますか、勧め方をしてほしいというふうに考えているわけであります。  なお、証券市場の基本的なあり方につきましては、事実問題として、一つは株が絶対的に需給アンバランスであるというような点もあるかと思います。そういうような点で、企業の自己資本の充実とか、あるいは一般投資者の保護を一そう徹底するためにとるべき方策などについて、もう少しよく調査審議するようにしたいと思います。近く証券取引審議会を再会することにいたしたい考えでございます。  概略でございますが……。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 今の冒頭のお話によれば、国際収支の見通し、日本経済の状況、会社の決算の状況等が株高の原因であると思われる——これならば、何も株だけの問題ではなくて、一般的なお話でありますが、なぜ株だけがそういうふうな特異な現象をもたらしておるのかという点については、説明が少し足りないように思います。それからその対策として二つの面について話が出ました。一つは当面の状況、もう一つは、今最後に、少し時間が短かくてよくわかりませんでしたが、証券市場の基本的な問題として、株が少いという意味でしょうか、そういうことをおっしゃったのですが、さしあたりの問題として、承わるところによれば、大証券や中小証券を個別に呼んで話をしていらっしゃるそうですが、大蔵省として証券会社にどういうことを指導しておるのか。当面の問題と、それから根本的なあり方について、いま少し具体的に聞かせてもらいたい。それから、もう一つ、最後に話があった証券取引審議会なるものについては、私不敏にしてよく知らないのですが、これは法律によってできておるものであるかどうか、どういう仕事をこれからやろうとするのか、それを一つ御説明を願いたい。
  64. 西原直廉

    ○西原説明員 株価の強調の原因といたしましては、やはり一般的な経済の動向と申しますか、基盤というものが基本的なものだと存じますが、それと同時に、日本におきましては株自身が非常に少い。株への投資と申しますか、投資をしたいという意欲と申しますか、その量に比較いたしまして株自身が相当少いということが、株が割合に高いという最も大きな根本的な原因じゃないかと考えます。たとえば、これは戦前のあれでございますが、昔は、全体の七割が自己資本であり、三割が借り入れ資本であるというのが、概略の数字でございましたけれども、最近ではむしろその比率が逆になっているというところにも、株自身としての需給関係からいきますと、一つの問題があると思うのであります。  ごく最近の証券界との話のあれでございますが、こういうように株が上って参りましたのは、非常に不健全なる投資によるのか、あるいは証券業界として勧誘なり投資等についてどういうような考え方を持っておるか、そういうことを私どもとして十分知っておきたいという感じがいたしましたので、この月曜日からきょうまで三日間、四つの証券会社についてそういうような点を調査し、いろいろ事情を聴取いたしたわけであります。その際、私どもの方といたしましては、ただいま申し上げましたように、投資家というものは、不安定な短期の資金で投機的な利潤を含むような投資をするということではなしに、安定した資金でやってほしいということがこっちの方針である、また証券業者としてもそういうような意味で健全な投資を勧誘するようにしてほしいということを、よく注意しているわけであります。  最後に、証券取引審議会でございますが、これは、証券取引法の第七章に「証券取引審議会」という章がございまして、その第百六十五条に、この証券取引審議会は「有価証券の発行及び売買その他の取引に関する重要事項に関し調査審議させるため、大蔵省の附属機関として、証券取引審議会を置く。」というふうに規定されております。つまり有価証券の発行及び売買その他取引に関する重要事項についての調査審議の機関でございます。委員は十三人、学識経験のある者のうちから大蔵大臣がこれを任命する、こういうことになっております。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 お話を承わりますと、株高についての大蔵省としての積極的な手段というものは今日見当らないように思うのですが、それとも積極的になすべきではないという対策なのでありましょうか。あるいはしばらく静観をするというのが基本的な態度でありましょうか。ものの考え方をずばりと一つ、株高についての基本的な考え方を聞かせてもらいたい。
  66. 西原直廉

    ○西原説明員 どうも、ずばりというのはなかなかむずかしいあれでございますが、長い目でと申しますか、基本的には、増資と申しますか、株の供給量をふやす、今の証券の実態といたしまして、証券の需給関係がアンバランスになっているというところに、非常に不安定と申しますか、あれがあると思いますので、基本的な考え方といたしましては、証券をもっとふやすということに重点を置きたいというふうに思っております。  それから、当面の株価の動向につきましては、これはいろいろのあれがあると思いますが、私の方としては、重大な関心を持って事態を厳重に注視しているということでございます。
  67. 早川崇

    早川委員長 ちょっと委員長から質問しますが、証券をふやすというのは、具体的に、たとえば税制の面で考慮するとか、そういう具体策は持っておられませんか。
  68. 西原直廉

    ○西原説明員 具体的に税制でどうこうということは今あれでございますので、そういう点については税制調査会とか何かで検討していただくということにしているわけでございます。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 百年河清を待つといいますか、もう手はないといいますか、そういう感じに受け取られるのですが、私の解釈なり委員諸公のそういう受け取り方について間違いがございますか。つまり、株をふやすということ、そういうどえらいことは政府の手でできそうもないですよ。それから重大な関心を持って静観をする、何かとってつけたような言葉でございますが、そういう受け取り方をしてよろしゅうございますか。
  70. 西原直廉

    ○西原説明員 株価が、何といいますか、非常に投機的だというふうに感じられるとか何かいうふうなことであれば、そういうことに対して政府として全然打つ手がないというわけではないのであります。これはもう先生がよく御存じのところだと思います。ただ、私どもとしては、現在としては重大な関心を持って動向を注視している、こういうことでございます。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、それ以上はどうも大臣においでを願うよりほかないようでありますが、ただ私がいささか意見を申し上げておきたいのは、私も、今日の株高の原因の中に、非常に悪質な、あるいはまずいものがあるということをことさらに言うつもりで質問をしておるのではないのですから、それはいいのですけれども、それにしても、今の政府側の御答弁がやや手はないという印象を与えておるような気がいたしますから、それでは政府としては少しおかしいではないかということを申し上げたいわけであります。  もう一つ、二つでありますが、次へ移ります。六月中に信託を分離するということ、六月中に初認可をするということが先般の四月の暮れの日本経済新聞に伝えられております。投資信託の分離ですね。統合して新しい会社を作るように大蔵省が行政指導をしておる。その解説が非常にこまかく野村構想云々として出ておりますが、あれからすでにもう一カ月有半たって六月に入っておるわけですが、投信の分離につきましてはさまざまな問題を包蔵いたし、あるいは業界内部の再編制の問題も含んで、非常に各所でやかましいことであります。伝えるところによりますと、大蔵大臣としてもこの分離についてなみなみならぬ熱意を持っており、それ相応に相当行政指導をやっておるという話があるのでありますが、政府として分離問題について今日の状況についての説明を求めたいと思うのであります。
  72. 西原直廉

    ○西原説明員 ただいまの御質問は、投資信託を、証券会社と申しますか、投資信託の部門を分離するということと存じますが、これは、大蔵省といたしましては、投資信託は、できるだけ分離のできる準備ができ、できるものから早く分離をしてほしいという考え方をとっております。そのことは、先般投資信託協会の大会がございましたときに、大蔵大臣からもお話しいただいたわけでございます。ただいまお話が出ました投資信託の分離の準備の状況でありますけれども、今お話がございましたように、いろいろな問題、検討すべきことがいろいろございまして、まだ今月分離が行われるという状況にはとてもいってはおりません。そういう状況でございます。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 当時の新聞なり、その後の情勢を見ますと、大蔵省の分離の原則は、第一に、分離した信託部門を統合して二つ以下の新会社を作る、第二番目に、新会社は既存の信託専業銀行の信託業務とあくまで同じ性質のものを行わせ、証券投資信託の業務を特に中心としないこと、証券金融や証券信託をしない、特別なものにはしないという二つの根本方針をもって進んでおるそうであります。これは新聞で伝えるところでありますが、一体分離についてはいろいろな問題があると思うのであります。ほんとうに資本的にも人間的にもきっぱりちょんと分離が一体できるものであろうかどうかという問題もございましょうし、分離の手続や分離後の委託会社、証券会社の営業のいたし方についても、やはり相当問題があろうと思うのでありますが、こういう点については、大蔵省として、ただ分離々々ということばかりでなくて、一つの方針があろうと思う。どういう方針をもってそれぞれの証券会社なりそれらの関係のところに臨んでおるのか、大蔵省の分離に対する基本方計は何なのか、それを明らかにしてもらいたいのであります。
  74. 西原直廉

    ○西原説明員 ただいまのお話の点は、信託部門を分離し、それに投資信託的なことも一緒にというようなことが出ておりました新聞のあれかと思いますが、今お話しのように、投信分離につきましてはいろいろな技術的な点があると思います。これにつきましては、いろいろ投資信託を兼営しておることによっての弊害があるというふうに考えられる点から、投資信託部門というものを分離して独立のものにしたいというのが基本的な考え方でございますので、大蔵省といたしましては、それがどういう形になるか、それは個個の会社なり何なりのいろいろの考え方もあろうかと思います。そういう投資信託を兼営しておることによる弊害を除くということで、投資信託分離をやることに方針としては考えておるわけであります。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 これは一つあらためてお伺いをすることにいたしましょう。  時間がございませんから、最後の問題を要点だけお伺いしておきます。賠償の問題であります。これは今お伺いしたものかどうか、少し疑問がありますけれども予算的な問題から伺っておきたいと思うのであります。今度妥結をいたしましたヴェトナムの賠償は、本年度予算とどういう関係になっておりますか。外債課長お見えになっておりますか。
  76. 半田剛

    ○半田説明員 ヴェトナムの賠償につきましては五月十三日に調印されました。近く国会に提出されると思いますので、もちろん国会の承認はまだでございますが、予算としては本年度予算に見てございます。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 本年度予算の中の賠償の費目の中で支出されるということですか。
  78. 半田剛

    ○半田説明員 さようであります。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 本年度はどのくらいでございますか。
  80. 半田剛

    ○半田説明員 御承知の通り通常賠特会計といっております賠償等特殊債務処理特別会計の中の賠償の項目の中に見てございます。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 本年上皮はどのくらいの支出が予定されて今度の協定が成り立っておるかということを聞いておるのであります。
  82. 半田剛

    ○半田説明員 ヴェトナム賠償といたしましては、もちろんまだ調印したばかりでございますが、この協定によりますと、年額として第一年度三十六億円ということになっております。一応の積算根拠としてはそれで見ておるわけでございます。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 三十六億円というのは、私不敏でありますが、本年度予算の中で予備費的な性格で挿入されておるのでありますか、ヴェトナム賠償として予定されておるのでありますか。
  84. 半田剛

    ○半田説明員 主計局からお答えした方がよろしいかと思いますが、便宜お答えいたします。もちろんヴェトナム賠償としてだけではございません。その他の項目として、その中の積算として見ておる次第であります。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 そういう調子でいきますと、たとえばビルマが再検討条項を今度適用して申し入れをしておるわけでありますが、その再検討条項によってどういう話がまとまるかは別としても、ヴェトナム式にいけば、本年度でも予算の中でかなり計上し得る状況になっておりますか。
  86. 半田剛

    ○半田説明員 これはちょっとこちらとしては今のところわからないという状態でございます。今まだちょっと申し上げる段階ではないと思っております。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの申し上げる段階ではないという意味は、幾らくらいになるかわからないから申し上げられないという意味ですか。どういう意味でわからないとおっしゃるのですか。
  88. 西原直廉

    ○西原説明員 主計局でないと、ちょっと私どもの方でははっきりいたしません。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 それではちょっと先に伺っておくけれども、外債課における所管事項はどういうことなのですか。きまったことを支払うという格好になるわけですか。
  90. 半田剛

    ○半田説明員 外債課の外債の意味は、対外債務または渉外債務と申しまして、非常に名前は広くなっておるのですが、一言で申しますれば、大蔵省としての賠償問題の窓口ということになっております。御承知の通り、賠償実施に関しましては、日本政府としては、外務省に賠償部というのがございまして、それでこの賠償問題はそれぞれ為替の問題、予算問題等大蔵省でも関係することが多いのでございますが、その窓口という意味で外債課というのがございます。具体的に申し上げますれば、そのうちよくあるノーマルな定時的な仕事としては、賠償実施事務の幹事会というのがございます。これは外務省の賠償部が司会者と申しますか、それでやっておりまして、そのときに出席していろいろな事務的なことを相談して、そして予算の問題は主計局、あるいは通常貿易等の関係につきましては為替局というふうに、それぞれ所管のところに連絡し、大蔵省としての意思をきめまして、外務省その他に連絡するというのが外債課の職務でございます。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 それなら何も私が質問していることについて答えられないはずはないじゃありませんか。あなたの方が賠償、外債の全部の窓口であるならば、その資金が一体どういうふうになっておるかくらいお答えができないはずはないと思います。私が先ほど質問したことに返事ができませんか。それではこういうふうに聞きましょう。ヴェトナム賠償に支出する賠償費ですが、その予算は本年度幾らになっているのですか。その支出予定はどういうことになっているのですか。わかりませんか。
  92. 半田剛

    ○半田説明員 ただいまの御質問は、ことしのいわゆる賠特会計全体の内容でございますか。それとも……。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 ヴェトナム賠償に支出されるその費目です。
  94. 半田剛

    ○半田説明員 それは、先ほど申しました通り、賠特会計の賠償費のその他という項目になっております。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 それは予算は幾らですか。
  96. 半田剛

    ○半田説明員 それは今のそのうちの一部がヴェトナムでございますが、ほかのものとも合せて五十三億だと思います。ほかのも合せて一緒に入れてございます。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 私にはちょっとよく意味がわからないのですけれども予算を編成いたしましたときには、ヴェトナム賠償というものは想定に上っておらなかった。それが五十三億で、ヴェトナム賠償が妥結をしたら、とたんにそれが支出できるということ自身が少しおかしいと思うのですが、その他という項目というのは本来何が予定されておるのですか。ヴェトナム以外に五十三億の内容は何が予定されておったのですか。
  98. 半田剛

    ○半田説明員 ちょっと今手元に資料がございませんので、調べておきます。
  99. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、次にもう一つお伺いしますが、聞くところによれば、これは私もやや不確かな話でありますが、おとといもらった「日本の財政」の中でわからないところがあるのです。「タイの特別円について三十年に協定ができ、五十四億円に相当するポンド貨を五年間に分割払いすることになった。この支払いは三十年から開始され、本年度の十一億円の支払いをのこすのみである。このほかこの協定でタイ国に対して、九十六億円の投資またはクレディトの形式による経済協力を行なうことが約束されたが、まだ具体化していない。」その具体化していないという言葉の意味が、何か、聞くところによりますと、これは無償だ、いや無償ではないのだ、貸すのだという点がはっきりしないために、そうなっておるのだという話を聞いたのでありますが、このタイの問題について外債課長は御存じでありますか。
  100. 半田剛

    ○半田説明員 ただいまの先生の御質問は、タイ特別円に関する日本国とタイとの協定の第二条のことを言っておられると思います。この第二条には御承知の通り、「九十六億円を限度額とする投資及びクレディットの形式で、日本国の資本財及び日本人の役務をタイに供給することに同意する。」という規定がございます。それについて、今先生の御質問は、まだ具体化しておらないというお話だと存ずる次第であります。
  101. 早川崇

    早川委員長 横山君、これはなかなか問題がありますから、あと柳谷君が質問をお待ちになっておりまりすし、どうですか、一つあらためて論じられたら……。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 半田さん、それは私の読んだのを逆にオウム返しに言っておるわけで、私の聞いておることにちっとも答えていない。その具体化していない原因は、聞くところによると、こういうことだそうだがどうなんだ、あなたは知っておるのか、なぜ具体化していないのかということを聞いておるので、知らなければ知らぬでよろしい。
  103. 西原直廉

    ○西原説明員 これは特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定で、「日本国は、両国間の経済協力のための措置として、合意される条件及び態様に従い、九十六億円を限度とする投資及びクレディットの形式で、」云々この具体化しておりませんのは、その合意される条件及び態様としてのプロジェクトと申しますか、そういうものがなかなかございませんので、そういう点でなかなか具体化されていないわけであります。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、局長、こういうふうに解していいのですか。九十六億円の投資またはクレジットの形式による経済協力という条項の解釈に双方に争いがあるのではなくて、それをどういうふうにやるか、その内容についての争いだけなんだということでございますか。私の言っていることがわかって返事して下さいよ。
  105. 西原直廉

    ○西原説明員 私どもの方の解釈は、第二条にはっきりしておりますように、「両国間の経済協力のための措置として、合意される条件及び態様に従い、九十六億円を限度額とする投資及びクレディットの形式で、日本国の資本財及び日本人の役務をタイに供給することに同意する。」こういうことでございます。こういうことでもう何年となくときどきこういう計画はどうだとか、いろいろな話なんかがございましたが、なかなかお互いの間でうまく適合するものがない結果、今までこういうふうになってきて、今のところまだ最終的なケリといいますか、プロジェクトがなかなか適当にならないという状況であります。
  106. 横山利秋

    ○横山委員 重ねてお伺いしますが、私の方ではこういう解釈をして進めておりますが、こういうことをおっしゃるのですが、向う側はその解釈に誤まりがなく間違いもないか、それを聞いているんです。それをはっきりおっしゃればいいんです。
  107. 西原直廉

    ○西原説明員 これはタイ国と日本との間で締結しました協定でございます。協定の条文がこういうことになっておりますのですから、私としては、向うとしてもそういうふうに、協定の条文通りにあれするものだ、こう思うのであります。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 そういうあなたの意見を聞くのではない。向うもそう言っておる、同じベースに立って、何をやろう、もらおうという話で、そういう事務的に限定された話なのか。それとも根本的に争いがあってまとまらないのかということを聞いているんです。あなたの意見を聞いているんじゃない。
  109. 西原直廉

    ○西原説明員 これは、先方からも、ときどき事務的に、こういうプロジェクトでどうだろうかというふうに考えたりしていっておりまして、それを検討いたしますと、お互いのこういう解釈に、大体そういうところにおいてはその間違いがないように私は思っております。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 これはあらためてもう一ぺんやりたいと思いますから、賠償問題については、これで私一応中断をいたします。いろいろ御質問が少し中途半端になりましたけれども、また機会をあらためて質問することにして、私の質問を終ります。
  111. 早川崇

    早川委員長 次に、税制に関する件について調査を進めます。押谷富三君。
  112. 押谷富三

    ○押谷委員 だいぶ時間が経過いたしておりますから、簡単に質問をいたします。  学校法人、宗教法人等の公益法人の設立寄付行為の寄付に対する贈与税、並びに公益事業、たとえば社会福祉事業とか、そういうふうな公益事業に対する寄付につきましての課税問題についてお尋ねをいたすのであります。  第一に学校法人でありますが、学校法人の設立に当りましては、その設立寄付行為の寄付について、公益法人の性格上贈与税の対象からはずされていく、免税処置がとられていくことはまことにけっこうなことでありますが、これと全く軌を一にいたしております各種学校、たとえば洋裁学校でありますとか割烹学校であるとかいった準学校法人と称する分でありますが、これにつきましての寄付行為について、やはり贈与税の対象に最近取り上げられて、これは全国一律ではありませんがある地方においては、現に贈与税の対象となって税金がかけられているという向きがあるやに聞いております。各種学校にも相当大きな設備を持つりっぱな学校があるのでありますが、学校法人と準学校法人との間におけるかような取扱いを異にいたされている関係につきまして、政府の御意見を伺いたいと思います。
  113. 原純夫

    ○原説明員 お話は、学校——まあ学校にはれっきとした、というとちょっと語弊がありますが、普通の学校と、今お話しのような各種学校——料理学校、洋裁学校というようなものもございます。そういうようなもの、あるいは宗教法人あるいはまた図書館、美術館というようなものもございましょう。そういう公益的な目的に寄付をいたします場合の所得税並びに贈与税の問題でございます。所得税といたしましては、財産の贈与がある——まあ金で贈与のときは問題はありませんが、現物で贈与するという場合に、そのときの時価によって譲渡が行われたとみなされまして、譲渡所得税がかかることになっております。それから、贈与税は、もちろん贈与すれば贈与税がかかるということになっておりますが、租税特別措置法の四十条というので、そういう贈与についてある条件を設けまして、民法の三十四条の公益法人に対する贈与の場合には譲渡所得税を免除するということになっており、また贈与税の方の分は、相続税法で、そういう場合には贈与税がかからないということになっておるわけです。その条件といいますのは何かと言いますと、概括して言いまして二つございます。一つは、当該法人の事業活動によって文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与することが著しいということが第一、第二は、贈与または遺贈によりまして所得税の負担を不当に減少させることになる、あるいは相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果になってはいけないという二つでございます。  そこで、お話の学校でありますが、学校教育法の第一条の普通の学校につきましては、大体そういう二つの条件は満たされるだろうということで、実際の扱いにおいても、例外なしにこれは承認いたしております。しかし各種学校になりますと、洋裁学校、お料理学校といいましても、場合によって、自分で教えるその家を法人のものだというて寄付をすることになりますと、これは、公共性という意味でも、やはり公共性の度合いにおいてはるかに低い。それからまた、税との関係で、ただいま申した不当に減少するというおそれが多く出ますので、そういうものは承認できないという法律になっております。その境目につきましては、文部省あるいはまたいろいろなこういう学校法人の方々の実情を聞いてやっております。なるべく法律の趣旨に合いますように、実際に公共性が顕著である、そうして個人的な性格がないということを、いろいろな角度から見てやっております。今後も十分慎重に取り上げて参りたいと思います。  ただいまお話しの、最近になってということは、実はこういう経緯がございます。これは前からあった法律でありますが、そういう法人を作られて、その法人に寄付をされたときに、すぐに承認申請をされますと、どんどんできるわけなんですが、実は戦後のごたごたというようなことがありまして、すぐに申請をされてないというのが、ずっと申請がとまったようななにがあります。それで、お出し下さいということで出していただいて、一括処理を始めたような形になっておりますので、最近申請並びに処理がおくれて、そのたまりを今はきつつあるという状態でございます。従いまして、基準等についても、ある意味では実情を伺いながら、今具体的な線をだんだん固めておるというところで、お話の趣旨も、そういう際に慎重にやれという御趣旨だと思います。私ども全然そういう気持で慎重を期しておりますので、御了承を願います。
  114. 押谷富三

    ○押谷委員 宗教法人の話も出たのでありますが、実は宗教法人もやはり同じ悩みにありまして、これも設立寄付行為の場合でありまして、多くの宗教法人が設立の際に寄付行為をいたしておりますが、これも最近に至りまして、もう五年の時効がかかるというぎりぎりに至って贈与税がかかってきて、今全国的な問題にもなっております。これは全国的にかかっておるのでなくて、ある地方々々によってかかっておるというので、これを宗教団体が取り上げまして、この問題をどうするかということで騒いでおりますが、今局長のお話を伺いますと、これらの公益法人の公益の度合い、高度の公益性かあるいはそれまでの公益性がないかということが、一つの基準のようにも考えられますが、学校法人は公益事業として学校法人の認可があり、宗教法人は宗教という公益の目的をもってなされている法人として認可がある。いずれもその事業の性格は公益性を認められまして、公益法人としての認可があるのですから、その認可によりまして大体公益性の度合いというものは認定ができると思うのです。  そこで、私が聞いているところはちょっと違うように考えるのですが、贈与税の対象になりましたのは、その定款の解散の場合における財産の処分ということが、税務署関係においては非常に重要視いたされまして、解散の場合において、法律の規定に従って同じ目的の法人にそれを譲るかあるいは処置をしなければ国家に帰属するということが、非常に大きく取り上げられておる。こういうようなことをいっているのですが、宗教法人のような場合において、本部あるいは本山といいますか、そういうようなところに帰属するという定款もありますので、実は定款例をただいま集めておるわけです。資料が集まりましたら重ねてお尋ねはするつもりでありますが、解散の場合における財産処分ということと、相続税の脱税ということとの関連性から、贈与税の対象になっているというようなことを聞いているのですが、さようなことについての当局の御意見はいかがでございますか。
  115. 原純夫

    ○原説明員 ただいま申し上げました二本の柱の一つである、個人的な支配がないという条件をいろいろな角度から見ます場合に、たとえばその公益法人の理事者が、寄付者または親族で大部分占められているということではいけません。また、その公益法人から月給をもらう人、学校なら先生などがみな親族というのはおかしいではありませんか。また解散の場合に財産がどうなるかわからない、自分のところへ戻すかもしらぬということでは、これはどうにもならぬ。やはり同じ公益目的に将来も続けられる保証のあることが必要だと思います。  それで、具体的なお話の、今のお寺の場合に、お寺が宗教法人になり、解散の場合は、本山といいますか、大もとの寄付になる。それは条件としてはやはり同じ公益目的に続いて供されるということでありますから、差しつかえなかろうと私は思います。
  116. 押谷富三

    ○押谷委員 これにつきまして、私も資料を集めて、また重ねてお尋ねはいたしますが、一つ至急御研究を願い、御善処いただきたいと思います。  いま一つ。社会福祉事業でありますとか、そういう公益事業に寄付をした場合において、その寄付に対する課税の関係でありますが、これもいろいろ問題を含んでいると思うのです。税制調査会等においても御研究になると思いますが、これについての御意見を伺っておきたいと思います。
  117. 原純夫

    ○原説明員 公益事業に寄付をした場合に、ただいままで申し上げたのは譲渡所得税と贈与税の関係でありましたが、そのほか、法人が寄付した場合、法人税法上の損金に見るかどうか、それから、個人が寄付した場合に、所得税法上の控除金額にするかどうかという問題がございます。前者、つまり法人の場合につきましては、利益の一定割合、それから資本金の一定割合というものを画して、それまでは寄付金は損金に見ます。しかし、公益上のもので大蔵大臣の指定を受けた寄付金については、それ以外で損金に見るという制度がございます。個人についてはそういう制度はございません。  法人の指定のやり方については、ただいま贈与税と譲渡所得税でお話のありましたような基準という角度で、いろいろ問題が起きております。個人の場合については、ただいま制度はございませんが、これについて検討を要望するという声が相当強く、特に早川委員長からも、先般来強く御要望を受けております。今回発足した税制調査会の検討項目の一つとして、私ども検討いたして参りたいというふうに考えております。なかなかむずかしい問題ではございますが、検討いたして参りたいと思っております。
  118. 押谷富三

    ○押谷委員 だいぶ時間が過ぎたししておりますから、この問題につきましては、少し資料をそろえた上で重ねてお尋ねをすることにいたします。
  119. 山本勝市

    山本(勝)委員 ちょっと、今の原さんの話で、非常にむずかしい問題だということがありましたが、その法人の場合と個人の場合と別にしてきたというのは、何が特別な根拠があったのでしょうか。寄付が個人の場合には損金で落せないという……。
  120. 原純夫

    ○原説明員 その辺は、理論的に割り切ってお答えするのがなかなかむずかしいと思います。かなり沿革的なものではないかということ、それと、この個人の所得税の場合は、例の税の公平論といいますか、所得が三十万の人と百万、千万の人と並べてかける場合に、所得が大きくなればなるほどそういう寄付もされるわけですが、そういうものを控除項目として認めるかどうかということは、公平論と真正面に向き合う度合いが強いのじゃないか。法人の場合は、もちろん大きな法人もありますが、法人というのは、個人と違って、かなり多くの株主からなっている。そしてそこで得た所得の中から出ていくという感じが、今のような個人の所得の多寡に応じて公平を保つというところと、若干はずれるといいますか、間接になるようなところもあって、沿革的にこういう制度があるのじゃなかろうか。おそらく、こういう制度は、かつて法人税率その他の税率が非常に安いときに、例の重要物産免税という制度があって、この制度は税の公平論からいって非常に議論が多く、制度としてどうかというような議論も多かったものですけれども、そういう時期に割合気楽にそういうものがあって続いているという面もあろうと思いますし、また一面文化、公益目的促進という政策の面からは、非常にけっこうだということでやっているのだろうと思っております。
  121. 山本勝市

    山本(勝)委員 今度の税制調査会の一つの大きな題目に取り上げるというお話でありますから、私はその際頭に置いてほしいと思うのですが、社会事業とかあるいは慈善事業とかいうものは、やはり魂が入っていなければ意味がないのでありますが、魂の入ったほんとうの慈善事業というようなものを、だんだんと国家自体がやるために、個人はやらなくなるということで世の中が非常にあじけなくなっていると思うのです。ですから、法人がやる場合よりも、むしろ個人がやって、初めてそこに受ける者とそれを出す者との間に魂が通うというか、世の中が非常に殺風景になってきておる状況でありますから、もう少し個人の間に心のつながりを必要とする。だから、個人こそむしろそういう慈善事業というようなものを奨励していく、それでできないところを国家が補っていくのだという考え方が必要でないか。そういうものは必要ないのだ。全部国家が引き受けてやるのだというふうな考え方とは逆に、ほんとうの人と人とのつながりで、そういう個人の寄付行為というものをむしろ奨励していくという観点を一つ持ってほしい。これは味けない世の中を、もう少し味けなくない、魂のつながった、友情の通った世界にしていくという観点、その観点を入れて、検討の場合に御考慮願いたい。これは私の希望です。
  122. 早川崇

    早川委員長 ちょっと委員長からも希望を申し上げておきますが、たしかに今山本委員の言われたことは、アメリカの税制においては採用しておるのですから、やはり個人の寄付する事業の性質だと思うのです。その寄付が非常に社会をよくするという性質の場合には、全部免税ということでなくても、アメリカのように五割を控除するとか、そういう考慮が必要だと思いますが、一つ主税局長、むずかしいというそういう形容をのけて、ピュアーにわれわれの進む方向をしんしゃくして、政府としても意見をまとめていただきたいと希望しておきます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十二分散会