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酒井政府委員 三十四年度の上期の
外貨予算につきまして、
西欧の
交換性回復以後の
各国の
貿易為替自由化という
傾向に対してどういう
措置をとっておるか、というお尋ねだったと思いますが、まず、
貿易面におきましては、これは、
西欧各国におきましてもそういう機運はありますものの、実際には以前とそう変った
貿易の
自由化というところまでは進んでおりません。もっとも
ドイツ等は相当進んでおるわけであります。しかし、
日本の
為替管理が
西欧各国に比べて相当厳重な
管理になっておりますので、できれば相当の
品目をいわゆる
AA制、
自動承認物資に入れたいということで種々検討いたしました。ただ、
日本といたしましては、最近の
国際貿易の
状況が
後進国その他
外貨のないところに対して
輸出を促進いたしますために、相手の物を買ってやらなくちゃいかぬというような点もありまして、必ずしも安いところから自由に買うというふうなわけにも参らぬものが相当ございます。また、
国内の
態勢につきましても、今一挙にそれをはずしてしまいました場合に、非常に業界に混乱がくるということが予想される
物資等もございますし、この上期
予算におきましては、それほどめざましい
貿易関係の
自由化というものは進んでいないというふうにお感じだろうと思います。例を申し上げますと、今
AA品目の中で十三
品目ばかり、
ポンド地域に対しては
AAであるけれ
ども、
ドル地域のものは
割当制だというようなものがございます。その一番大きなものは、
鉄鋼原料であるくず鉄でございますとか、あるいはフィリピンの木材でありますとかいうようなものがございます。これらは、たとえば
鉄鋼にいたしますと、
AAにしますと
アメリカ市場に殺到する、そうすると、また、かつて
アメリカ市場で問題を起しましたような、
日本が非常に価格をつり上げる、ことに西海岸で非常にむちゃくちゃな買い方をするというような問題もありますので、そこら辺の調整をとり得る
態勢を作ってからやる必要がある。これは今すぐにはできないとしても、できるだけ早い機会にそういう
態勢に持っていこうという話になりまして、とりあえず、上半期では従来のままになっておりますが、現在その十三
品目のうちで
AA制に持ってきましたものは三
品目であります。それから、そのほか今まで
割当物資でありましたものをさらに
AA制に持ち込みましたものが、二十七
品目だったと思います。まあ金額は割合に小さいものでございますが、そういうものを
AA制にいたしております。
それから、
貿易外の
予算につきましては、まず第一に、
指定通貨の
範囲を拡大いたしました。これは、
西欧各国が
交換性を
回復いたしましたので、本日からイタリア・リラ、オーストリア・シリング、デンマーク・クローネ、ノルウエー・クローネ、ポルトガル・エスクードというものを
指定通貨に加えまして、こういう
通貨で取引をする場合には、
標準決済として認めていくという
方向をとったのであります。
第二に、
雑送金と申しますか、これは、
外国へ出ております者が
現地で病気になったという場合の
医療費でございますとか、あるいは
貿易関係の手数料でございますとか、そういう簡単なものは
為替銀行限りで許可してよろしい、というふうに
簡素化をいたしたわけであります。
それから、第三に、
商社の
交互計算組織を十五社ばかり認めたわけでございます。これは、
日本の
商社の
海外活動がなるたけ自由に行えるようにということで、支店を出しておる以上はそういう
交互計算を認めて
現地で活発に動けるようにしたいということでありまして、そういう
交互計算を認める
商社の
範囲を拡大いたしております。
その次に、これも
貿易外でございますが、
わが国が将来
自由化を進めていきます場合に、これは、
大臣からも先般
お話がありましたように、まず第一に、現在ございます非
居住者の
円預金、これは封鎖されておる
円預金でありますが、将来円
為替などということを
考えて参ります場合には、当然そういうものも
整理が必要であります。そこで、この際そういうものをできるだけ
処理して参りたい。ただ、現在
日本にあります非
居住者円資金といいましても、
駐留米軍が
日本で使う必要があって円を持ち込んでおるとか、あるいはIMFが
日本に持っておる円であるとか、あるいはこちらにあります
在外公館が日常の経費に使うための円であるとか、そういうものが大部分でありまして、これはさらに
ドルなり何なりに交換するという問題になりません。それから、
資本勘定の、
資本移動関係の非
居住者円預金と申しますのは、
西欧各国でも一応押えております。まだまだ自由に
資本の出入りを認める、ことにホット・マネーが出たり入ったりするということを認める
状況にはございません。これらも問題にならない。それから、
映画の
蓄積円でございますが、これは若干昨年の十二月に
処理いたしまして、現在十二億くらいたまっております。
映画の
蓄積円は
各国ともまだ手をつけておりませんし、いろいろ問題がありますので、これを除いております。そういたしますと大体残るものが四十二、三億の金でございます。そのうち基準をゆるめて送らしていいというものが、おそらく三十数億対象としてはあるだろうと思います。ただ、これをいつ送らせるか、またその
内容がどんなものであるかという個々のケースに従って検討しなければいけませんが、少くとも
経営勘定から生まれたようなものについてはこの際
整理してしまいたい、かような
意味で非
居住者円預金の
整理ということを大体一千万
ドル程度、これをどのくらい使いますかわかりませんが、
ワクとしております。
それから、
一般渡航の
範囲でございますが、これは従来
渡航を相当締めて参りましたけれ
ども、しかし、実際に見ておりますと、学者の方であるとか、その他相当窮屈でございますので、その辺を少しやわらげたい。それからまた
旅費の単価でございますが、これは
階級別にいろいろございました。しかしながら、実際問題としてそれが
実情に即しない場合もございますので、一応最低二十五
ドルくらいのところまではよろしいという格好にしたわけであります。したと申しますか、これからそういうふうにしたいという
希望で、今検討いたしております。もちろん公務員については
旅費法がありますので、
旅費法によって認めるよりいたし方ございませんが、それ以外の人については、自分で行かれるという場合は、ある
程度そこをやわらげる。これは二十五
ドルになりますか、何
ドルになりますか、少し多く見たいというようなことでやっております。
それから
あと、
個人送金につきまして、今まで
郵便局の窓口限りで五十
ドルまでは自由に送れたわけなのであります。この限度も相当引き上げたいというようなことも
考えております。
貿易外につきましての
自由化の
方向に伴う第一段の
措置としてはかようなことでございますが、しかしながら、これはさしあたりできることでありまして、もちろん今度下期の
予算編成までにさらに
自由化の
方向に進めるように、いろいろな問題を検討いたしたいと思っております。