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1959-04-01 第31回国会 衆議院 大蔵委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年四月一日(水曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 石野 久男君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君       奧村又十郎君    鴨田 宗一君       竹下  登君    西村 英一君       福永 一臣君    古川 丈吉君       毛利 松平君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       竹谷源太郎君    廣瀬 勝邦君       山下 榮二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局接収貴         金属監理官)  池中  弘君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一八〇号)  接収貴金属等処理に関する法律案内閣提出  第二五号)(参議院送付)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一八一号)  金融に関する件      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び接収貴金属等処理に関する法律案の三案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 大臣がお見えになるまでの間、少し為替の問題で局長にお尋ねしたいと思います。三十四年度の上期の外貨予算が二十三億九千八百万ドルということでございましたが、この前のときに私はちょっとその問題に触れてただしたかったのですけれども、ちょうど時間がございませんでした。今度の外貨予算というものは、西欧における通貨交換性回復してから初めてのわが国外貨予算の決定でございまして、そういう意味で、貿易為替の面についての施策というものは非常に重要な転換期に立っていると思うのです。このたびの外貨予算で特に西欧通貨交換性回復したということとの見合いで、わが国貿易あるいはまた為替の面におけるところのそれに即応する施策というものは、どういう形でこの外貨予算の中に織り込まれておるのかということを、この際局長から一つ率直にお話しいただきたい。
  4. 酒井俊彦

    酒井政府委員 三十四年度の上期の外貨予算につきまして、西欧交換性回復以後の各国貿易為替自由化という傾向に対してどういう措置をとっておるか、というお尋ねだったと思いますが、まず、貿易面におきましては、これは、西欧各国におきましてもそういう機運はありますものの、実際には以前とそう変った貿易自由化というところまでは進んでおりません。もっともドイツ等は相当進んでおるわけであります。しかし、日本為替管理西欧各国に比べて相当厳重な管理になっておりますので、できれば相当の品目をいわゆるAA制自動承認物資に入れたいということで種々検討いたしました。ただ、日本といたしましては、最近の国際貿易状況後進国その他外貨のないところに対して輸出を促進いたしますために、相手の物を買ってやらなくちゃいかぬというような点もありまして、必ずしも安いところから自由に買うというふうなわけにも参らぬものが相当ございます。また、国内態勢につきましても、今一挙にそれをはずしてしまいました場合に、非常に業界に混乱がくるということが予想される物資等もございますし、この上期予算におきましては、それほどめざましい貿易関係自由化というものは進んでいないというふうにお感じだろうと思います。例を申し上げますと、今AA品目の中で十三品目ばかり、ポンド地域に対してはAAであるけれどもドル地域のものは割当制だというようなものがございます。その一番大きなものは、鉄鋼原料であるくず鉄でございますとか、あるいはフィリピンの木材でありますとかいうようなものがございます。これらは、たとえば鉄鋼にいたしますと、AAにしますとアメリカ市場に殺到する、そうすると、また、かつてアメリカ市場で問題を起しましたような、日本が非常に価格をつり上げる、ことに西海岸で非常にむちゃくちゃな買い方をするというような問題もありますので、そこら辺の調整をとり得る態勢を作ってからやる必要がある。これは今すぐにはできないとしても、できるだけ早い機会にそういう態勢に持っていこうという話になりまして、とりあえず、上半期では従来のままになっておりますが、現在その十三品目のうちでAA制に持ってきましたものは三品目であります。それから、そのほか今まで割当物資でありましたものをさらにAA制に持ち込みましたものが、二十七品目だったと思います。まあ金額は割合に小さいものでございますが、そういうものをAA制にいたしております。  それから、貿易外予算につきましては、まず第一に、指定通貨範囲を拡大いたしました。これは、西欧各国交換性回復いたしましたので、本日からイタリア・リラ、オーストリア・シリング、デンマーク・クローネ、ノルウエー・クローネ、ポルトガル・エスクードというものを指定通貨に加えまして、こういう通貨で取引をする場合には、標準決済として認めていくという方向をとったのであります。  第二に、雑送金と申しますか、これは、外国へ出ております者が現地で病気になったという場合の医療費でございますとか、あるいは貿易関係の手数料でございますとか、そういう簡単なものは為替銀行限りで許可してよろしい、というふうに簡素化をいたしたわけであります。  それから、第三に、商社交互計算組織を十五社ばかり認めたわけでございます。これは、日本商社海外活動がなるたけ自由に行えるようにということで、支店を出しておる以上はそういう交互計算を認めて現地で活発に動けるようにしたいということでありまして、そういう交互計算を認める商社範囲を拡大いたしております。  その次に、これも貿易外でございますが、わが国が将来自由化を進めていきます場合に、これは、大臣からも先般お話がありましたように、まず第一に、現在ございます非居住者円預金、これは封鎖されておる円預金でありますが、将来円為替などということを考えて参ります場合には、当然そういうものも整理が必要であります。そこで、この際そういうものをできるだけ処理して参りたい。ただ、現在日本にあります非居住者円資金といいましても、駐留米軍日本で使う必要があって円を持ち込んでおるとか、あるいはIMFが日本に持っておる円であるとか、あるいはこちらにあります在外公館が日常の経費に使うための円であるとか、そういうものが大部分でありまして、これはさらにドルなり何なりに交換するという問題になりません。それから、資本勘定の、資本移動関係の非居住者円預金と申しますのは、西欧各国でも一応押えております。まだまだ自由に資本の出入りを認める、ことにホット・マネーが出たり入ったりするということを認める状況にはございません。これらも問題にならない。それから、映画蓄積円でございますが、これは若干昨年の十二月に処理いたしまして、現在十二億くらいたまっております。映画蓄積円各国ともまだ手をつけておりませんし、いろいろ問題がありますので、これを除いております。そういたしますと大体残るものが四十二、三億の金でございます。そのうち基準をゆるめて送らしていいというものが、おそらく三十数億対象としてはあるだろうと思います。ただ、これをいつ送らせるか、またその内容がどんなものであるかという個々のケースに従って検討しなければいけませんが、少くとも経営勘定から生まれたようなものについてはこの際整理してしまいたい、かような意味で非居住者円預金整理ということを大体一千万ドル程度、これをどのくらい使いますかわかりませんが、ワクとしております。  それから、一般渡航範囲でございますが、これは従来渡航を相当締めて参りましたけれども、しかし、実際に見ておりますと、学者の方であるとか、その他相当窮屈でございますので、その辺を少しやわらげたい。それからまた旅費の単価でございますが、これは階級別にいろいろございました。しかしながら、実際問題としてそれが実情に即しない場合もございますので、一応最低二十五ドルくらいのところまではよろしいという格好にしたわけであります。したと申しますか、これからそういうふうにしたいという希望で、今検討いたしております。もちろん公務員については旅費法がありますので、旅費法によって認めるよりいたし方ございませんが、それ以外の人については、自分で行かれるという場合は、ある程度そこをやわらげる。これは二十五ドルになりますか、何ドルになりますか、少し多く見たいというようなことでやっております。  それからあと個人送金につきまして、今まで郵便局の窓口限りで五十ドルまでは自由に送れたわけなのであります。この限度も相当引き上げたいというようなことも考えております。  貿易外につきましての自由化方向に伴う第一段の措置としてはかようなことでございますが、しかしながら、これはさしあたりできることでありまして、もちろん今度下期の予算編成までにさらに自由化方向に進めるように、いろいろな問題を検討いたしたいと思っております。
  5. 石野久男

    石野委員 今お話しになりましたことは、大体発表されて新聞やその他に出ておることであります。問題は、こういう上期の予算編成の中で、わが国貿易政策あるいはまた為替問題に関するいろいろな諸政策を、西欧諸国通貨自由化に伴う態勢に対してどういうふうに対応させるかというところに、一番問題があると思うのです。貿易を振興させて、国際収支のバランスをより有利に拡大させようとするならば、どうしてもやはり西欧における今度の通貨交換性に即応する新しい態勢を相当積極的に考えなければならぬということは、先般来の質疑応答の中でも、当局も認めておるわけであります。しかし、今度の場合は、本年の下期における外貨予算と比較してみましても、いわゆる自由化方向というものは、割当予算の中においては、そんなに前進しておるわけではない。そうしますと、世界貿易態勢の中で変ってきておる新しい態勢に即応する芽というものがそう出てないと思うのです。もちろん今お話しになりましたようないろいろな点でも若干の前進はあるとしても、それは非常に微々たるものである、こういうふうに私ども思うわけです。この際政府としては貿易為替管理態勢をどういうふうに自由化方向へ転換さしていくかという根本的な考え方が、ぜひわれわれとしては一つ聞いておきたいことである。また、その基本的な考え方を前進させるについての態勢を整備するのに、今当面どういうことをしなければならぬとお考えになっておるか、そういう点を、これは大臣から聞かなければならぬことだと思いますけれども局長の方から一つできるだけお答え願いたいと思います。
  6. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお話の趣旨でございますが、今期といいますか、上期の予算におきまして、貿易面その他でそれほど画期的な色が出ていないじゃないかということは、これは事実であろうかと思います。しかしながら、政府態度といたしましては、三月の二十日ごろでありましたか、関係閣僚の間で一応は自由化に対する態度というものの基方本針をきめたわけでございます。そこにはっきり大体方向を打ち出しております。われわれといたしましては、今回は急にそういう態勢はとれませんでしたが、常時自由化方向に向って努力をしていく。その基本的な問題といたしましては、一つは各国内産業国際経済に太刀打ちできるような態勢体質改善と申しますか、そういうものを至急にやらなければならぬ。現在見ておりますと、非常に商社過当競争をしておる。安売り競争をするとか、いろいろ弊害がございます。また、外国から物を買います場合に、やはり過当競争で非常に値をつり上げているとか、そういう過当競争が非常に多いのでございます。これを何とか過当競争が起らないようにまず持っていく。それから、同時に、現在の商社活動のもとになっております各企業資金等につきましても借入金を相当いたしております。もちろん、商業活動でございますから、借入金が非常に多くなるのは当然でありますが、それにいたしましても、かなり資本内容を充実して、ある程度競争にたえ得るという措置を講じていく必要があるのじゃないか。同時にまた、国内産業の問題につきましては、これは農業問題その他非常にむずかしい問題がありますけれども、そういう点について為替管理はだんだんゆるめるけれども、それに対して関税政策をどうとっていくか。これは、為替管理がなくなれば、そういう問題は関税政策というもので処置していくわけであります。そういうことにつきましても、これから至急検討する必要があるのじゃないか。要するに、態勢が整わないから自由化ができないということではなくて、自由化するのだという前提のもとに、そういう基本的な問題は一つ一つ片ずけていきたい。そしてできるだけ早く自由化をしていきたい。下期におきましては、さらに、たとえばAA制品目を拡大するとか、そういうことを目ざしまして国内態勢を整備するとか、同時に国内企業体質改善をする、おおむねそういうような気持でやっておるわけがあります。
  7. 石野久男

    石野委員 過当競争をなくしたり、あるいは資本内容を充実させるとか、あるいは為替管理の問題を排除して、なるべく関税方向で十分に管理していくという形、あるいはまた下期にAA制の拡大をさせるとか、羅列されるすべての問題としては一応妥当なものですが、そういうような問題を実際に具体的にやっていこうとすると、たとえば本年度予算の中でそれが果して政策として出てくるだろうかという問題が、すぐ私たちの考えなければならぬ問題になってくると思うのです。それで、たとえば過当競争をそれでは具体的になくしようとする場合に、それは為替管理の上からいきましても、あるいは貿易管理の上からいきましても、どういうふうな処置をなさろうとお考えになっておるか、その点を一つお答え願いたい。
  8. 酒井俊彦

    酒井政府委員 その辺の実際の技術的なやり方は、これは通産省の所管に属しますが、私ども考え方では、為替管理でそういう態勢を作るということははなはだむずかしいと思います。やはりそういう意味で、産業政策といいますか、まっ正面に産業政策の面で、たとえば組合法でありますとか、そういう体系でもって過当競争を防止していくということが最終的なねらいじゃないか。為替管理過当競争を防止するとか、あるいは過当競争があるからできないということでなくて、もう少し産業政策を確立していただきたいということを要望いたしておるわけであります。
  9. 石野久男

    石野委員 今の話は、裏を返して言いますと、為替管理の面で、いろいろな、たとえばAA制というような形からくる貿易の面での輸入管理とかいうことは、もうなるべくそれを本筋にしないで、むしろやはり産業態勢の中で、その充実と整理の中から、そういう面が具体的に輸出入の面で出てくるように、こういうことの意味でありますか。
  10. 酒井俊彦

    酒井政府委員 われわれとしてはそういうふうに希望をいたしております。元来、為替管理の性格から申しまして、これは国際収支がひどく変動しないように、国際収支面管理をやっておるわけでありまして、どうしてもやはり実体的には、そういう今おっしゃったようなことで、国内態勢を整えていかないと、為替管理だけということでは工合が悪いのではないか。もちろんこれは理想論であります。それから目標論であります。そのほかに、さっきちょっと申し上げましたが、実は最近各国貿易交渉をいたしましても、後進国において、あるいは先進国でもそうですけれども、お前の方がこれだけ買ってくれればおれの方はこれだけ買うというような、非常に双務主義的な主張がかなり多いわけであります。お前の方が買わぬのなら割当もしないし、関税を上げるぞというようなことで、これは、輸出振興という立場から、ある程度為替管理の方でも考えざるを得ない部面が若干出てきておりますが、これは国内態勢だけではなかなか処理のむずかしい面だと思っております。
  11. 石野久男

    石野委員 今の後進国との貿易日本では非常に重要だ。そこで双務的な貿易をしなければならぬという実情は当然出てくることであります。東南アジアなんかも緊急の問題としてそういうものが出てきておる。双務貿易をするという場合に、それを為替の面で規制していくのか、それともやはり貿易そのもので規制するというお考えであるのか、どういうようなお考えですか。
  12. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これは、為替管理の面におきましても、そういう作用をやはり考えていかなくちゃいけないのであります。たとえばAAの問題にいたしましても、ほんとうに正常化ということを考えれば、もう少しAA自由化を進めて、適当な時期に一番安いところから引っぱってくれば、これは日本経済にとって一番いいということはその通りなのでありますが、そういうふうにAAにしておきますと、とかく後進国で物価の高いところというような国からは、物がなかなか入らないということがございます。これは政府貿易でありますれば別でありますが、御承知のように日本貿易は、大体商社ペースと言いますか、民間貿易でありますから、ワクは作っておきりましても、非常に自由にいたしますと、やはりわきの方から買ってくるというような傾向もございますので、ある程度為替管理の方でも考えなければいかぬと思います。同時に貿易面でも多少そういうことを考えて、貿易商社なり何なりが政府に協力して下さる、こういうような態勢が一方では必要かと思います。
  13. 石野久男

    石野委員 日本貿易並びに為替の上におけるところの自由化方向というものは、早晩は自由化を確保しなければならぬと思っておりますけれども、今のお話でしますと、貿易構造自体がやはり後進国との間にウエートを非常に大きく持っておるという事実からしますると、なかなか日本貿易為替自由化ということは期待しにくいという事情が出て参ると思うが、どうですか。
  14. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これは将来に属することでございまするので、私もこうだと断定はできませんけれども、しかし、世界的な傾向といたしまして、AA制等においてもそういう主張でございますが、そういう双務的な貿易はいかぬということで進んでおりますし、日本の最大の輸出先でありますところの北米とかあるいはヨーロッパあたりでは、それほど厳格なことは言っておりません。従ってできるだけ自由化を進めたい。これには外交交渉その他いろいろな手が必要だと思いますけれども、ただいきなり今すぐにいろいろなものを大幅に自由化するについては、そういう障害がある。しかし、障害があるからやらぬのだということではなくて、やることを前提として障害をどうして取り除いていくかというふうな考え方で、私ども進んでおるわけであります。
  15. 石野久男

    石野委員 やることを前提としてこの障害を取り除いていくということは非常にけっこうなんですが、先ほどから私が聞いておりますることは、日本貿易あるいは為替自由化の問題を、だらだらとその可能性が出るまで待っておるのか。それとも、西欧におけるところの貿易自由化の線がもう世界的な傾向になってきておるし、今はその効果というものは十分に出ていなくても、早晩それが非常に激しい形で貿易競争を生み出してくるだろうということは、目のあるものならば、だれでもわかっているわけです。ですから、先ほど局長が言われたように、西欧におけるところの自由化の問題は、そんなにまだ影響は出ていないからというようなお話があったけれども、これは今の時点ではそうであっても、おそらく、今年下期あたりになれば、西欧のそういう事情が、世界貿易の上では、貿易競争の上で相当重要な問題になってくると思うのです。従って、われわれが今一番政府に期待するものは、こういう態勢について、日本がやはり貿易管理の問題なり為替管理の問題を依然として続けていくのか。それとも、やはりその障害を排除しながら、自由化方向へ進むのだというけれども、それが二年先、三年先ではだめなんだから、やるのならば本年中とかあるいは来年初めくらいまでにそれをやらないと、貿易競争の上でとても太刀打ちができないのじゃないかという心配をわれわれは持っているわけです。ですから、政府がそういう問題についてどの程度の腹がまえをしているかということを、われわれとしては知りたいわけです。それを十分にここで知ろうとすると、日本貿易構造の中からくる後進国とのつながりや何かから出てくる必然的な相互貿易関係というものは、貿易自由化の問題とかち合ってくるわけです。そういう問題を政府としてはどういうふうに処理していくかという基本的な考え方、方針というものは、これはもちろん為替の面あるいは通産関係におけるところの問題等はありますけれども、特に為替管理やあるいは貿易管理の問題で、直接の省になっておる大蔵省の為替局のあなた方の任務として、これははっきりした態度を示されないと困るんじゃないか。これはひとり議会の中の問題だけじゃなしに、日本全体としての国際収支改善する観点からしても、また国内産業態勢体質改善という問題を論議する上においても、大体そのめどがなかったら、おそらくやはり歩調が乱れてくるだろう、こう思うので、私はそういう点を聞いておるわけです。だから、政府考え方としては、障害を排除しつつ自由化方向に努力するんだというけれども、それはいつまでもだらだらと待っているんじゃなくて、もう早急にそうしなければならぬというふうに考えているのか、それとも自然の成り行きにまかしておくという考え方なのかということを、はっきりしていただきたい。
  16. 酒井俊彦

    酒井政府委員 結論から申しますと、あとの方でございまして、だらだらやったのでは間に合わない。つまり、西欧通貨交換性回復というものに伴って、また最近の情勢から貿易が必然的に自由化方向をたどるでありましょう。そういたしますと、国際的な激甚な輸出競争考えられるわけであります。そういう意味におきまして、日本としてはこれは早急に態勢を整えなくちゃならぬという気持でおります。態勢が全部整ってからやるというのでは、これはもうおそ過ぎますので、いつもたとえ話でやられるのですが、とにかくある程度為替の方で着物を脱いで、涼しい風をからだに当てて、そうしてそれに順応して商社がまた真剣に考えていくというような方向をとっていくことが必要なんじゃないか。ほうっておけば現状というものがある程度続いてしまうわけでありますから、それでは諸外国に対して非常におくれをとるという意味におきまして、私ども結論あとの方を考えております。なお、それにつきまして、私の方では為替管理法根本改正専門委員会を設けておりまして、ここで自由化に伴ういろいろな問題も論議していただいております。今年中くらいには何とか為替管理法全体の体系を改めて、そういう世界情勢に耐え得るような態勢を作りたい、かように思っております。
  17. 石野久男

    石野委員 政府は今為替管理法改正を全面的にやろうとしておる、そうして本年中にはその態勢を固めたい、こういうふうに言われたが、それは積極的にやらなければならない改正だと私は思うのです。それで、そういうふうな観点からして、上期の予算は、こういう形で、ほとんど外貨予算の中で自由化方向というものは三二%くらいしか持たれないような事情でありますが、下期の予算態勢としては、少くとも自由化方向というものは、その予算の中でどの程度のパーセンテージくらいまで予算を割り振る心がまえを持っておられるか、為替局長はどういうふうにお考えになっておりますか。
  18. 酒井俊彦

    酒井政府委員 貿易の貨物予算の方は通産省の所管で、はっきりした数字は申し上げられないと思いますが、これは、私どもの当局といいますか、政府部内ではまだまとまっておりませんけれども、さらに鉄のスクラップでございますとか、木材でございますとか、ぜひ早急に態勢を整えて、下期からは自由化をしていきたい。それがどのくらいの割合になるかということにつきましては、下期の生産活動がどうなって、所要の輸入原材料がどのくらいかという計算が、私どもまだはっきり伺っておりませんので、自由化率がどうなるかということはわかりませんけれども、われわれとしてはそういう気持を持っております。ただし、これは通産省あるいは外務省、運輸省、いろいろ関係の各省の御意見があることでございますから、私どもはそういう気持で各省をなるべくそっちへ引っぱっていきたいという態度で、これから下期までまた努力をいたしたいと思っております。
  19. 石野久男

    石野委員 貿易自由化されていくという形は、外貨予算割当をこういうふうにしている限りにおいては、それはやはりなかなか困難なんでございますから、実際割当しなくても、自由に使えるようにするというのが一番よろしいと思うのです。為替管理法改正がどういうふうになっていくかわかりませんけれども、おそらく下期にまた外貨割当をしなければならぬだろうという事情だと私は思っております。そうすると、そういう中でほんとうの自由化が出てくれば、割当なんかしなくてもいいわけなんですから、割当をしている中で少くとも自由化方向を一日も早くかちとろうとすれば、相当程度のパーセンテージをやはりAA制の方へ持っていく形にしなければ、前進しないだろうと思うのです。幾ら気持だけそうあったって、三〇%か四〇%くらいで、AA外貨割当がそういうところでいっているのだということでは、とても日本貿易自由化されるような形は出てこないだろうと思うのです。少くとも下期あたりになれば半分以上とか三分の二くらいのものは、そういう形での外貨割当態勢が出てこなければ、日本貿易自由化への競争態勢というものは出てこないのではなかろうか、こういうふうに思うのですが、実情からいいまして、政府としてはそういうような考え方をお持ちになっておられないのかどうか。今の点から見ると、どうも、そういう着想は、口先では自由化自由化だと言っているけれども、実際にはほとんど予算割当の中にも出てきていないし、そしてまた、一面からいいますると、通産省と大蔵省の為替当局の間には、やはりいろいろとこの割当についての意見の相違もあるようでございます。その割当に対する意見の相違というものは、為替の方では世界の大勢に即応しようとするし、体質改善の面も強調するということから、通産省の方ではなかなかAA制の踏み切りをしないという態勢がある。これは内閣の持つ全体としての産業政策なり貿易政策の問題とかち合ってくるのですけれども、今の実情からすると、やはりどうしても世界の大勢に歩調を合せていく形で国内体質改善というものをやらなければ、関税の障壁を作ったり、あるいは為替管理態勢の中で日本国内産業を守っていくというようなことでは、とても競争力が出てこないように思うわけです。私は、この際、大蔵当局としては、そういう問題についての基本的な考え方をここで明確にしておいていただいて、そういう態勢の中から自由化方向を進めるようにしていただくことが大事だと思うので、下期におけるところの外貨予算の中で、自由化方向を打ち出せるという態勢ができるとするならば、少くともAAに対する関心というものはもっと高い程度に示されなくちゃいけないのじゃないかと思うのです。もちろん、今の段階では、為替局の方でもいろいろな資料を持ってないと思いますけれども、少くとも方向つけをそういうふうに持っていこうとするならば、為替局自体においても、局長はそういう方向に対する積極的な意欲というものを出しておかなければいけないのじゃなかろうか、こう思うのです。そういう立場から局長の私見でよろしゅうございますから、全体としての日本自由化を進めていく上において、どのような外貨割当態勢を持っていくかという考え方だけは聞かしておいてもらいたいと思います。
  20. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お話は全くわれわれも同感なんでございまして、実は三十四年度上期の予算を編成いたしますときに、もう少し自由化ができぬかということで、だいぶ御相談いたしまして、通産省の方も、さっき申しました関係閣僚の了解された基本方針というものに基いて、下期までにはもっとやろう、しかし今すぐという態勢では困るんだということで、下期に相当自由化を進めようという意欲を持っていらっしゃるはずでございます。そこで、基本的な考え方としては、石野委員のおっしゃる気持と、われわれはちっとも変っていないのでありますが、これがスヶージュールを、どういうふうに、いつごろまでに何パーセントというようなことになりますと、われわれとしては、できるだけ早い時期に自由化の率を大きくしたいということで、すでに上期予算のときにもずいぶんお話をいたしたわけでありまして、さらにその話を続けまして自由化を進めたいのですが、これを下期には何割とかいうことは、まだ私として申し上げられる段階にないわけであります。
  21. 石野久男

    石野委員 今為替管理法改正を意図しておる政府考え方としては、早急に為替管理方向を排除して、全然ドルの自由を確保するというような考え方に基いて、そういう為替管理法改正という考え方を持って進んでおられるのか。それとも、その為替管理法改正の基本的な考え方をどういうところに置いて作業をなさっておるのですか。その点簡単に一つ御説明願いたい。
  22. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これは、為替管理法の第二条にございますように、随時検討して実情に応じて緩和をしていくということが、為替管理法方向でございます。しかし、為替管理法は、貿易管理をはずしてしまうか、あるいは貿易管理をやるかというようなところは、やはり実情を見ながらやっていく必要がありますので、法律自体としてはどちらでも動けるようになっております。問題は政令以下のところでありますが、できるだけ自由化に、それから手続の簡素化という方向に持っていきたいと思っております。しかし、当面全部はずすということでやるかというと、これは実際問題としてまだ残るものがありますし、最後には資本移動の統制が残ると思います。為替管理法としてはどういう場合にも対処できるような方向改正考えております。専門委員会ではその政令以下のところの御議論もいただいておりますが、大多数の委員は、やはり手続を簡素化し、また世界の大勢に沿ってこの際できるだけ自由化をするような方向考えようじゃないかということで、今検討が進んでおるような次第であります。まあ為替管理全体をなくすることは理想ではありますけれども、現実の事態で一挙になくすというわけにも参りませんので、中身としては漸次緩和して、最終的にはそこにいけるような態勢改正考えておるわけであります。
  23. 石野久男

    石野委員 ことしの国際収支の見通しについて、大体上期、下期を通じて一億六千万ドルくらいの黒字が出るだろうという予想を立てておられるようでございますが、この予想は、一応西欧通貨自由化の問題や、それからただいまお話のありました後進国との貿易の双務的な諸関係、そういうものを織り込んでなさっておることと思いますけれども、特に西欧通貨自由化に基いてくる貿易面でのいろいろな変化といいますか、わが国関係する諸国における変化というものがいろいろ出てくるのじゃなかろうかと思います。ことに、最近の双務関係で、ブラジルの問題であるとか、あるいはフランスとの貿易の問題がなかなかうまくいかないとか、あちらこちらでいろいろな問題が出ておるわけであります。そういうような予想しない方面で各所に出てきている事態を考えますと、貿易の予測はやはりいろいろな点で相当トラブルが出てくるのじゃなかろうかと思いますけれども、そういう全般的な見通しは今為替局の方ではどういうふうに見ておられますか。
  24. 酒井俊彦

    酒井政府委員 実は、そういう要素を加味いたしまして、国別にも商品別にも積み上げて、一応の検討はいたしたわけであります。ブラジル等の問題は昨年暮れ以来の問題であります。そういうこともやはり考慮に入れましてやっておりますし、ことに交換性回復が行われましたのは昨年の暮れでございますけれども、この見通しを立てましたのは、今年になってから一月の中ごろでございまして、大体そういうこともばく然と織り込んでやっております。ただし、実際の経済というものはどういうふうに動くか、ことに国際経済になりますと、これがびたりと一千万も違わないで動くということはあり得ないわけであります。大体の方向として、企画庁の作りました輸出が三十億で輸入が二十九億ということは、国別、品目別に積み上げておりますので、今のところは大体それで進んで、一億六千万ドルくらいの黒字になるのではなかろうかと思っております。
  25. 石野久男

    石野委員 予算を組む前に、減収や何かの通産省がまとめた線からいうと、案外輸入の意欲は伸びていないのだということがいわれておるわけです。この見通し——今まで業者は、それぞれ思惑もあったり、あるいは自分の安全性を確保する意味において、そうやっておるのだと思いますけれども、最近においてやはり生産が相当上昇しておる過程が見受けられるわけですが、在庫の面でもだいぶ漸減してきておるというところもあります。そういう中で生産がずっと伸び、在庫も減ってくるということになると、必然的に、すでに通産省がとりまとめたもの以上に輸入の量が出てくるのじゃなかろうかという見通しを持つわけです。こういう見通しは当然外貨予算国際収支の面に影響を及ぼしてくるだろう、こう思いまするが、最近の政府の発表しておる統計なんかから見ると、生産の増強が相当に上昇しておるという面、為替管理の面から見ておりまして、輸入との関連性ではどういうふうにごらんになっておられるか。輸入が増加するということについての危惧を持たなくてもいいとお思いになっておるかどうか。
  26. 酒井俊彦

    酒井政府委員 大体そういうことも考えの中に入って積み上げた数字でありまして、実は、生産が一〇%程度もしふえたとしても、今の二十九億で十分間に合う、国際物価が若干上っても間に合うという程度に、ワクとしては組んであるわけであります。一応二十九億という数字であれば問題ないと思います。なお、最近におきましては、おっしゃるように、輸入意欲というのはあまり出てきておりません。若干AA物資につきまして出てきておりますが、全般的にいいましてそれほど買い急ぎという傾向はありません。しかしながら、これがこの夏ごろから下期にかけてどういう変化をするかということは、国際経済の見通しとからんで非常にむずかしいことでございますが、今の程度のテンポで進むということであれば相当ゆとりがあるということで、国際収支も、また今度の予算も組んであるわけでございます。新聞等で「たっぷり予算」と書いてありますが、そういう意味でかなり余裕のある予算を組んで、しかもなお一億六千万の黒というわけでございます。
  27. 石野久男

    石野委員 国際収支の面で特に輸出の問題でございますが、今たっぷり予算だということですが、大体外貨がありますからたっぷり予算が組めたんだと思うのです。問題になるのは、これからやはり輸出が予定通りに相当伸びるかどうか、という問題にからんでくるだろうと思います。私は、東南アジア等後進国に対する輸出の問題は、双務的な関係でどうしても輸入をしなければならないということもありますので、これは今後も相当やはり問題を残すと思います。その間東南アジアの貿易の問題を考えますと、一面では中共の問題が非常に大きいわけです。私はこの中共との貿易関係は、今ここで為替局長にそういうことをいろいろ話すのは、ちょっと問題が大き過ぎるかと思いますけれども、中共とかあるいは朝鮮とか、こういうところの貿易の問題に関連して、特に為替の問題だとか、あるいは貿易の問題における管理が、最近両国の間でいろいろ問題になっている。特に朝鮮の場合になりますと、北朝鮮の場合は、全然ノータッチの関係で、無視された形になっているのが実情なのです。今朝鮮との取引は、業者の方では非常に望んでおるのでございますけれども、こういう問題について、大蔵省関係では北朝鮮の貿易の問題についてはどういうような見方をしておるのですか、一つ為替当局の立場からのお話をお聞かせ願いたい。
  28. 酒井俊彦

    酒井政府委員 なかなかむずかしい問題でございます。中共あるいは北鮮ということの問題でありますが、この面で貿易ができるならば、われわれとしてあえて為替管理法でこれを阻止しようということはございません。御存じのように、第四次でございましたか去年の中共との民間協定ができましたときにも、為替管理の面では取引はよろしい、日本為替銀行がコルレス契約を結んでこれをやっていくということには異存はない、という態度できたわけであります。ただ、基本的に貿易の問題がああいうふうになっておりますので、これはわれわれよりももっと高いレベルでの話であるので、その辺は私からお答え申し上げるのは適当でないと思いますが、貿易ができるということは、これは望ましいことでありまして、そういう際にはやはり貿易がスムーズにいくような手続だけはいつでもとれると思っております。
  29. 石野久男

    石野委員 為替とかあるいは貿易管理の問題について大臣に聞きたいことがあるのですが、大臣がまだ参っておりませんで、参られるまでちょっと事務当局に聞いておきたいのですが、為替自由化させようとする場合に、当然金準備と外貨の保持という問題が出てくるわけです。この前私はどの程度あるか、どの程度必要とするかということを聞いたのですが、それについて返事がなかった。しかし、イギリスにしても、どこにしても、大体その国が通貨自由化を確立しようとする場合には、やはり所要の金準備なりあるいはドルの保有というものがなければならないと思う。日本の場合、たとえば外貨保有高というものが、通常の国際信用を確保するのに、今の段階でおれば、五億ドルなら五億ドルを割ると信用をなくするという状態は常識的に持たれておるわけですが、わが国が今通貨自由化をしようとするのには、当然国内の産業の態勢を確立するとか、過当競争を防止するような諸情勢を確立するとかいうことも大事でございますが、そういうような金準備あるいは外貨ドルの保有について、全然わからない、どの程度あったらいいかわからないでは、これは困るのではないかと私は思うのです。為替局の方では、そういうような通貨自由化の問題について、少くとも外貨ドルはこのくらい程度、それから金準備についてはこの程度のところまではという目標くらいは示させないと、全体としての気持がわき立ってこないと思うのです。為替局長は当面の責任者なんですが、そういう問題について、少くとも今日の倍くらいにならなくてはならないとか、どの程度くらいというところの目安はあるだろうと思うのですが、それを一つざっくばらんなところを話していただけませんか。
  30. 酒井俊彦

    酒井政府委員 これはまたおしかりを受けると思うのですが、どれだけ持っていなくてはならないということは、日本経済が安定して成長していく、その間に乱高下がなくて着実に伸びていくということであれば、これは理論的にいえば現在やってやれないかというと、そういうことはないと思います。しかしながら、例の神武景気のように、ああいう景気が国内で起ってきますと、一年間で七億ドル近く保有外貨が減って参ります。ですから、基本的に国内態勢が整っておれば、ある程度持てばいいんじゃないか。しかし、将来に向ってのそういう非常に安定した成長というものが確保されないとなりますと、かなり多くのものを持っておりましても、なかなかそこは乗り切れない。安定して向上して参ります場合には、ほんの一時の赤字というようなことであれば、日本経済の信用さえあれば借金でもしのげますし、またIMFに今度増資の法律をお願いしておりますが、あれが通りますと、第二次準備として二億五千万というものがさらに加わって参りますからよろしいわけでございますが、われわれとしては、日本としては幾らという数字は申し上げにくいのであります。今の程度ではまだちょっと少い、もう少しためた方がいいんじゃないか、というふうに申し上げるより仕方がないかと思います。  御参考までに申し上げますと、ちょうどイタリアが、これは昨年の三月二十日の調べでございますが、イタリアの貿易額が、輸入量が大体三十六億ぐらい、それに対して金外貨準備十五億持っておりまして、最近一年間をとりますと、輸入量が三十一億五千万ドルございまして、金の保有が二十一億四千万ドル、これらは、イタリアは五七年につきましては四二%、最近は六八%ほど持っております。それから、西独は、これは非常に特殊な国でございまして、大体七五から八五くらい金ドル準備を持っております。しかし、一方英国を見ますと、昨年の三月の末におきまして、一年間の金ドル準備と貿易を比較いたしますと、一四%ということになっております。しかも、英国の場合は、スターリング・エリアというものをかかえておりまして、全体の金融を見ておるという状況にございますので、西独あるいはイタリアと若干事情が違うかと思いますが、その程度になっております。それから逆の例を見ますと、フランスあたりを見ますと、貿易額は最近五十六億の貿易をやっておりまして、金ドル準備は日本と同じ程度の九億六千万ドル程度になっております。もちろんフランスにつきましては例のEMAがございます。ドイツあたりも相当バックし、IMFもバックするという特殊な事情がございまから、九億でも今度の措置に踏み切れたわけでございます。日本の場合には、EMA的な組織がなくて、共同体が全力をあげてそれをバックするというような背景がないので、若干変っておりますが、フランスは今日本の持っておるくらいの金ドル準備を持っており、貿易は五十億から六十億、まあ倍程度ということでやっておるわけでございます。最近の日本は、すでに御説明申し上げましたが、三月の上旬におきまして金ドル保有額が全体で九億四千六百万ということでありまして、今後一年間の輸入の見込みに比較しますと二十九億、大体三分の一というような格好になるかと思います。     —————————————
  31. 早川崇

    早川委員長 次に、金融に関する件について質疑の通告がありますから、この際これを許します。山本勝市君
  32. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 地方財政と民間事業育成に関連して、地方自治体の公営事業に対する起債認可の方針について、大臣の所見を伺っておきたいと思います。  今日、地方財政が地方債の利子負担から非常な困難に陥っているという実情は申し上げるまでもありませんが、こういう関係で、いよいよ地方財政を困難に陥れるような起債はできるだけ押えていく方針のように、かねがね承知しておるのでありますが、問題は、地方自治体が、財政的な理由もあって、事業をやり、それを起債に仰ごうという動きが非常に強いと思う。そこで、その起債が認められるか認められないか、認められるとすればどの程度まで認められるかということについて、大蔵省でどうなるだろうというので、しばしばわれわれは陳情を受けるのであります。自治庁の方では認められておっても、大蔵省が協議を受けた場合に、大蔵省としてそれがどこまで認められるかということが疑問になっておるので、そのことは地方自治体としてもいろいろ事業計画を立てる上に問題になっておるようであります。それから、同時に、地方自治体の公営事業が財政上プラスになるというような場合においては、民間企業との間に、競合関係と申しますか、問題が起って参るわけであります。  そこで、この際承わりたいのは、民間企業としてやらせるのは不適当だ、公営でやるのが性質上当然だというような事業について、しかもそれが、財政的に申しましも、地方財政に負担をかけないというようなものを許可していくということについては、これは問題はないと思いますけれども、ただ、そういう事業であるだけに、民間でやらしてもりっぱにやっていける。これを財政的な収入をねらって国家なり地方自治体がやるという場合に、民間事業の育成と衝突する場面がある。この場合の大蔵大臣の起債認可の方針でありますが、具体的な例についてはお答えは困難だと思いますけれども、方々に例がありますので、一例を申しますと、ことに大臣の専門の方面で申しますと、四国—中国間にフェリボートを作る問題で、かなり地方自治体と民間業者との間にいろいろ競合関係が起っているようであります。それが、大蔵省の方針がはっきりいたしますれば、かえって円満に問題がはかどるというような実情にあるようであります。しかし、これについてどうということは大臣として答えられないと思いますけれども、そういう例がたくさんありますから、一般的、抽象的な形でけっこうでありますから、民間事業と競合する場合における、公営事業を起債でやるという場合の許可方針を承わっておきたいのであります。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大蔵省でやります起債の認可というのは、事業の認可があって、その所要資金を手持ちでやるか起債でやるかという場合に申請がくるのでございますから、事業の認可を受けた後に、認可があるのに起債をやらないというか、起債の点、資金調達の面で、事業の認可があったにかかわらず、事業の遂行ができないようにすることは、これは政治的な問題としてよほど慎重に考えなければならぬと思いますが、基本的な問題といたしまして、政府あるいは公共団体がやります事業と民間でやる事業との競合をいかにするかという問題が、起債より以上の先決の問題としてあるのであります。私は長い間運輸省におりましたが、いわゆる地方バスの問題、これなどは民間でやり得る事柄でございますが、地方団体がやるとか、あるいは県営でやるとか、あるいはまた国営のバスをそこへ出してくる、こういうような問題で民間との非常な競合をしばしば起す。そういう場合に運輸省では一体どんな扱いをしてきたか、今後どういうようにしていくかということを私申すわけではございませんが、私は長い間監督行政をやって参りましたが、そういう場合に官業なり公共団体なりがいわゆる民業を圧迫するということは、避けなければならないと思います。そういう意味で、基本的な一つの方針を取っております。従いまして、国鉄のバスが進出するという場合におきましても、そのバスが進出する場合の目的は非常に限定されておる。単絡線とか、あるいは現在ある鉄道線の補強であるとか、そういうものに限っております。しかし、地方の住民から申せば、どうしても民間は営利に走るし、鉄道ならサービスがいいから出てくれ、こういう要望が強いが、なかなかそれに沿わないで、やはり民業の圧迫にならないような考え方でやっていきたい。あるいはまた、最近は、市の財政が必ずしもバス事業を営むことによってそう利益が上るものではないのでございますが、地方団体などでは、それをやることによって財源が確保されるような考え方を持って、民間をして十分その路線の整備をなし得るにもかかわらず、その種の計画がしばしば行われておる。しかもそれには政治的背景などがあって、なかなか公共団体の企業欲というか、強い要望が出ておる。しかしながら、運輸省においては、私どもがいたときと今日と少しも変らない一貫した方針としては、民業でできるものは民業でやらせるといいますか、民業優先的な考え方をする。優先と言うと語弊がありますが、少くとも民業を圧迫しないということを第一段階にして考えておるようでございます。だから、そういう立場に立って、民間とそれから地方団体の経営とが競合した場合に、おそらく民間の企業に理解を持っていく、これが運輸省の一貫した基本方針だろうと思います。ただ、民間の場合に、民間では必ずやれるとかように申しましても、あるいは公共企業体でやる方がいいとか、あるいは地方団体がやる方がいいとか、こういうような議論はあるだろうと思いますが、地方団体がやるというような場合においては、その事業の範囲は相当限定されるのが本筋だろうと思います。かように考えて参りますと、起債云々の問題も解消して参るだろうと思います。何といいますか、そういう事業の性格から見まして、やはり民業に十分理解のある、これを優先的に扱うような気持が必ずあるだろう。公共団体が非常な無理をしてやる今の起債云々の場合は、これは明らかに無理がかかるのです。もう資金調達の要がないというのならよろしゅうございますが、今後の事業経営によってその企業を跡始末するというような場合がありますので、その扱い方は一そう困難になる、かように私は考えております。大蔵当局といたしましては、この起債の問題は、事業の免許というか、認可というか、許可があった後に初めてくる問題でございますから、その際に認可があったものを、起債の免許をしないで、そうして事業経営を不能にさすということは、これは政府の意図が二重になることでございますから、よほど慎重に扱わなければならないことだ、かように私考えますが、本筋の第一の段階では、その事業のあり方、これが民営では目的を達しない、地方団体のみでやることが適当なのか、そういう点を十分考えていかなければならぬ。もしも事前に私ども相談を受けますならば、事前にはこの種の起債に内諾を与えるようなことももちろんいたしませんし、その計画はあまり適当ではないということを私自身ははっきり申し上げて差しつかえないことだ、かように考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねいたしますが、外貨予算割当が発表になったわけですけれども、この中で貿易自由化という問題がどのように現われているかということが非常に問題になるわけであります。西欧通貨自由化ということが発表になってから、世界貿易が非常にその方向に前進しているわけでありまして、上期の予算がああいう形で出た。その内容をずっと見て参りますと、どうも政府貿易自由化ということに非常に留意しているようであるけれども、実質的には少しも前進していないのではないか、ほんとうに貿易自由化ということを考えるなら、為替あるいはまた貿易政策の中で、具体的にどういうふうにその形が現われてこなければならぬかということを、私たちとしては考えるわけです。そこで、政府がほんとうにそういうことを考えるならば、もっと積極的な線が出てこなければならぬのに、こういう形になったのはなぜかということをわれわれ考えますと、世間ではたっぷり予算だというようなことを言っておる。たっぷり予算だというのに、全然自由化方向が出てこないということは、その内容にいろいろ矛盾があると思うのです。それは、われわれが昨年の国際収支から見てみますと、輸入が、全然伸びないというより、むしろ縮小して、その形の中で黒字が出たわけです。本年もまた輸入の伸びがあまり伸びていない。生産意欲は非常にあるのに、しかもまた在庫が正常化してきているのに、いわゆる輸入財、これに対する輸入意欲というものが出てこないのはなぜかということになれば、これは日本のその方面の業者の方々や、あるいは関連する人々が、早くいえば一昨年のあの異常な外貨の流出ということに関連した不況が出て参りまして、そのことにこりていて、あつものにこりてなますを吹くというような形が、今年度の輸入意欲減退というような形で出ているのではないかと思うのです。本質的にこういう問題が具体的にやはり生産の中で解消されるということになれば、輸入の増強ということは、本年度の外貨の上期予算を作るときに出された線よりも、案外もっと大きなものが出てくるだろうと思っております。しかし、この問題はどういうふうに見るかは別といたしまして、政府としては、やはり世界貿易自由化、あるいは為替自由化方向に即応する態勢を今積極的に考えているとするならば、それを具体的に進めるのには、どういう基本的な考え方を持っているかということを、私たちはたださなければならないわけです。本年度の上期の予算にその傾向があまり出ていないが、大蔵大臣は、為替自由化あるいは貿易自由化というものを、どのように熱意を持って考えておられるか、またそれを実現するために、今具体的にはどういうようなことをお考えになっているかということを、この際一つ聞かせていただきたい。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま石野さんがお尋ねになりまするように、西欧諸国において通貨交換性回復したということ、これはもうはっきりした事実でございます。またこの通貨交換性回復した諸国におきましても、今日貿易政策について非常な激変を生じておるとはまだ考えられませんが、御指摘になりますように、当然為替貿易自由化方向へ一歩も二歩も踏み出していくものだ、こういうことはもう十分その見通しがついておるのでございます。この前提を私ども考えて参ります場合に、好むと好まざるとにかかわらず、われわれもその方向に対する準備を進めていかなければ、一そう激化するであろう国際競争にわれわれはひけをとるということになる。これはもう非常にはっきりして参ることでございます。そこで、そういう意味の準備は、私どもといたしましては、非常な熱意を持って、今日においてもうすでにその準備を進めなければならないという段階でございます。そこで、先ほど来お尋ねがあったそうでございますが、三十四年度の外貨上期予算を作るに際しましてどういうような工夫をしたか、あまり大したものが工夫されていないではないか、こういう御指摘でございますが、事務当局から詳細に御説明いたしましたように、程度は低いことでございますが、それぞれ必要なる処置はとって参ったように私は確信をいたしておるのでございます。この貿易外貨予算の面でとにかく具体的に出てこなければならないものは、やはりAA制の拡大だろうと思います。AA制の拡大の点につきましては、努力いたしましたものの、今日の状況ではなお国内経済も十分の態勢が整っておりませんで、今回きわめて少数の物資についてAA制にこれを取り入れるということをいたしたのであります。同時にまた、割当制ではございますが、輸入におきましても比較的その予算を十分にとってございます。こういう点が今後の為替貿易自由化方向に必ず役立つだろう、こういうことも一応想定いたしておるのでございます。そこで、わが国の輸入する物資のうちで一番大きなものは、過去においては何と申しましても食糧でございます。食糧が大きな部門を占めておる。あるいは原綿、原毛あるいは鉄くず、あるいは石油、こういうような重要物資がそれぞれあるわけでございます。これらのものについて、やはり一部においては非常に積極的に原綿、原毛についてのAA制をとったらどうか、あるいはくず鉄を全部AA制にしたらどうか、こういう議論もすでにあるのであります。こういうものを割当にしておく限り、どうも日本為替貿易自由化というようなことを言っているけれども、それは意味をなさないのだ、こういう点を指摘している者もあります。同時に、先ほど来言われている、こういうものをAA制にすれば、過去のようにまた外貨が一時に流出する危険がある、こういうことで大蔵当局は非常にティミッドなんではないか、こういう御批判もあり指摘もあることだと思います。私どもは今回の外貨予算を作るに当りまして感じたのでありますが、大蔵事務当局は非常に積極的であった、むしろ私自身が相当ブレーキをかけている、こういうようにもとれるほど——これは率直に申し上げます。私はなぜさようなことを申しておるかと申しますと、今の通産関係なりあるいは農林関係等においては、国内産業に及ぼす影響が非常に大きいのでありまして、そういう意味態勢が実はとれておらない。なお今後どういうようにしていくが、これは実は非常に大きな問題でございます。石野さんも御承知のように、外貨割当を生産ベースでやるとか、あるいは消費ベースでやるとか、その間の非常な激烈な競争もございますし、工夫をしなければならない点が非常に多いのであります。そういう点を今後機会あるごとに整備いたしまして、大きく為替貿易自由化方向に乗り出していく、こういう準備をしなければならない。ようやく企画庁を中心にいたしまして関係省のものの考え方は一応ただいまのところそろって参りまして、激化するであろう国際競争にひけをとらない諸準備を進めていく、この基本的な構想、この考え方だけはただいま一致している状況でございます。
  36. 石野久男

    石野委員 とにかく、今の情勢では、事務当局の方では非常に自由化方向を積極的になにしているけれども大臣国内のいわゆる産業態勢というか、諸般の事情を勘案して、それにブレーキをかけていると言われている。先ほどから日本貿易あるいは為替管理を解いて自由化させるのには、いろいろな問題があるけれども国内の産業体質改善というようなものも必要だということも言われておりまして、また、後進国との間におけるところの双務貿易態勢がある限り、なかなか困難な問題もある、こういうふうに言われている。私は、日本貿易あるいは貿易為替自由化方向というものは、早急に自由化させることができないような事情にあるのかしらというふうにさえ思うほど、お話はなかなか困難な問題がたくさんあるということでございまして、政府はほんとうにこの自由化の問題について早急にそれを達成しようというふうに考えておられるか、それとも、そうは考えているけれども、実際には後進国相手の貿易もあり、国内の経済の態勢もこうであるので、口には自由化ということを言うのだけれども、実際は自由化できないのだというのか、その辺のところを一つはっきりこの際聞かしていただきたいと思う。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは政治あるいは経済のあり方で、同様なことが言えると思いますことは、一つの目標をきめましたのに、ぐんぐん引っぱっていく熱意と努力がないと、これは実現するものではないのでございます。私が一番心配いたしておりますのは、準備態勢ができないからといって今のままで推移いたしますならば、必ず国際競争の場に臨んで非常に不利をこうむる事態が起るであろう、そうすることが日本の伸展していこうという経済に悪影響を及ぼすものである、かように実は判断いたしておりますので、あらゆる努力を注ぐ決意でございます。ただ、問題は、さように考えるならば、下期外貨予算を組む際には、AA制はもっと大幅に広がるかと言われますと、それこそ、まだこれからの四カ月か五カ月の間に、それじゃ全部の態勢を整えることが可能かということでございますが、これはなかなか困難でございましょう。しかしながら、どうしてもただいま申すような方向で強く推進して、諸準備を怠らないようにいたさなければならない、これはもう議論の問題ではなくして、そういう時期に当面しているのではないか、こういうことを私は強く感じております。
  38. 石野久男

    石野委員 貿易自由化の問題は、先ほどから大臣が言われるように、どうしてもやらなければならぬ仕事であるし、またそれをやらなければ、日本貿易を伸ばすことはどうしてもできないということは、はっきりしているわけです。それで私がきょうお聞きしたいのは、そういう方向ははっきりしているけれども、実際にはやりにくいという情勢日本にはあるわけであります。そういう日本体質の問題だとか、あるいは諸外国との関係問題等、いろいろな困難な問題をどういうふうに打開していくかということをやはり本質的に考えませんと、自由化の問題は幾ら口先だけで言っても進まないだろう、そういうふうに思うので、私はここでそういう問題についての打開の方策を政府についてお聞きしたいと思うのです。先ほどから言われておるように、自由化をやろうとしても、実際に日本体質は、それに対応するようになっていないし、準備態勢もない。しかもまた、諸外国との関係では、どうしても双務的な貿易をしなければならぬ面があります。そういう点を改善するのに、まずこの双務的な貿易をしなければならないという情勢について、どういうふうに態勢を対応させるかということ、それからまた、通貨自由化を確立するために、金準備だとか、あるいは外貨をどのように確保していくかという問題、あるいはまた、それらの問題に関連して、今起きてくるところの通貨自由化貿易自由化をやるということによって、急にそれをやれば、日本国内における態勢に混乱を生ずるであろうということも、先ほどから言われておるのです。そういうような問題を整備するについて、三、四の重要な問題について、一つ一つ考え方一つ聞きたいと思うのです。  まず最初にお聞きしたいのは世界自由化を進めておるときに、日本貿易構造の面から見ますると、どうしても、一面においては、やはり双務的な貿易をしなければならないという態勢があるわけでございますが、そういう問題を解決するのに、どういうような考え方を持っておるかということ、それから、第二番目には、金準備とかあるいは外貨の確保をどの程度にまで準備することによって、自由化がほんとに進んでいくかという問題、第三番目には、そういう情勢の中で、それじゃ国内態勢を確立するのに、言いかえれば体質改善ということをよく言われておるのですが、体質改善の問題についてどういうふうにお考えになっておるかということでございますが、第一番目の、特に日本の国が後進国との間の貿易をどうしても前進させなければいけないということから、そこでは必然的にやはり双務貿易というものが出てくるわけであります。双務貿易関係自由化の問題と関連しながら解決しようとするのには、どういうような施策をお考えになるかという点について、簡単に一つ基本的な考え方だけをまず最初にお伺いしたい。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは双務的であることはやむを得ません。しかし、できるだけ広域貿易という考え方一つ取り入れなければならぬ、その意味では、第三国間との貿易というものの道も開いていいことじゃないか、こういうように思います。  それから、後進国に対しましては、やはり長期にわたっての後進国との貿易ということを考えていかなければいかぬ。こういう意味では、後進国が経済を開発し発展していく、そうして十分双務的にまかない得るようなものにする。その力をつけるということになりますと、いろいろクレジットだとかあるいは延べ払いだとか、こういうような問題を当然考えていかなければならぬ、かように思います。
  40. 石野久男

    石野委員 そういうふうに長期にわたるところの貿易態勢を確立するためには、どうしても後進国に対して経済的援助の態勢などを確立することが非常に大事になって参りますが、そういう態勢を確立しようとするのに、今の日本の持っておるところの外貨の保有というものが、それを十分にこなしていくだけの力があるかどうかという問題、それは今度の国際通貨基金に対しての増資の問題などから関連しまして、IMFとかあるいは世銀等というような形から出てくる援助の態勢等も出てくると思いまするけれども、そういう態勢で十分後進国に対する経済援助の態勢、長期貿易計画に対する態勢を確立するところの可能性の問題について、政府はどういうふうに見ておられますか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろんIMFやワールド・バンクの機能というものもこういうことに役立ちますが、やはりその前に、わが国自身の力というものが、ただいま申しますような、後進国に対する経済開発の直接の基盤というか、力でなければならぬ、かように考えます。そこで、外貨なりあるいは金なり、そういうものの保有の適正であるかどうかという問題になるわけでございます。過去における外貨の短期間における多額の流失というようなことを考えて参りますと、わが国の経済の底が浅いとかあるいは弱体だとかいうようなことが懸念されるのであります。しかしながら、経済そのものが着実に伸展していく、その方向をたどっております限り、これは私は必ずしも金額の多寡にはよらない、こうも考えてしかるべきじゃないか、こういうようにも思うのでございます。問題は、国内経済のあり方、これが着実な歩みをするかしないか、こういうところにやはりポイントを置くべきじゃないか、かように考えております。
  42. 石野久男

    石野委員 国内経済の態勢がそれに対応するような態勢を持たなければならぬということは、当然のことなんですが、もうこの国会が始まって以来、特に三十四年度の予算が編成されましてから常に強く言われておることは、国内の経済の体質改善ということです。政府はこの国内経済の体質改善せなければならぬということを盛んに言っておりますが、現在の日本の国の体質がどういう点に弱いものがあるのか改善しなければならない面は明確に言ってどういう点なのかという点は、はっきりしていないと思うのです。こういう点については、政府はそれでは日本の国の経済の体質の持つ弱点はどういう点にあるというふうにお考えになっておられましょうか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろございますが、一つは産業構造そのものも基本的な問題として取り上げていかなければならぬことだろうと思います。大企業と中小企業、あるいは農林漁業、こういうような関係、いわゆる一次産業の面におきましていろいろ工夫を要するものがあるだろうと思います。また、いわゆる生産部門だけについて見ましても、戦後の国内産業が技術的に相当おくれておるということもございますから、そういう面でも、積極的にスピード・アップして、国際技術水準に追いついていかなければならぬ、こういうことももちろんポイントだと思います。あるいは産業基盤強化という意味で道路や港湾等の問題もございますが、もう一つはやはり大企業と中小企業、あるいは農村、そういうものの関係をもっと調整する必要があるんじゃないか。私は、しばしば申し上げておりますように、競争対立の面もあるが、同時にそれが相互協力の面もあるんだということを絶えず申しておりますが、こういう点を十分生かしていきたい、こういうこともこの構想のうちの一つにございます。また、ただいま申し上げますような点は、主としていわゆる産業政策の面に属する事柄が多いと思いますが、私の所管といたしましては、金融政策の面、金融機関のあり方等についていろいろ注文をつけておるというのが現状でございます。
  44. 石野久男

    石野委員 日本の経済の体質改善するという問題はきわめて重要な問題であって、それのつかみ方いかんによっては、その目的を達成するかどうかという点で、目的とは全然違った方向へいってしまう危険もあるわけでございます。従って、やはりこの体質をどういうふうに改善するかという問題については、体質の弱点がどこにあるかということが非常に重要だと思うのです。今言われましたように、産業構造におけるところの二重構造だと言われるような、そういう問題の改善の問題などはやはりおのずから政府全般の問題になってこようと思いますけれども、しかし、当面日本の国の経済の中で基本的に体質的な弱点だと言われるのは、やはり一面においては非常に進歩した産業の能力を持っているものがあるにもかかわらず、一面では、非常におくれたものがあって、そういうものの関連性からくる国の富の偏在というものなんかも、必然的に日本の経済力を低下させる大きな原因になっていると思うのです。私は、今言われたような技術の面だとか、あるいは金融機構におけるところのそういう問題に関する整備の問題のほかに、国の富がアンバランスに配分されているという点なんかについての問題のつかみ方というものが、非常に重要だと思うのです。こういう問題がもう少し積極的に伸びやせんと、実質的にはやはり経済力が跛行的になってしまいまして、総力としての力になってこないのじゃないかというふうに考えるわけです。  それと、もう一つは、貿易構造の中にやはり必然的に体質を弱化させるような一つの面が出てきやせぬかということも考えるわけです。私は、むしろやはり貿易の中におけるところのいわゆる採算のとれる貿易という問題をもう少し真剣に考えないと、積極的な自由化方向を打ち出そうとしても困難じゃないか、こういうふうに思うわけなんです。そういう面で、二重構造の改善という問題と同時に、貿易の構造の中におけるところの、今日の日本の持っている弱点はどういう点にあるかということを、これはやはりはっきりつかまなくちゃいけないのじゃないかと思うわけですが、今政府としては、そういう問題はやはり大蔵当局の問題じゃないと言われれば、これは仕方がありませんけれども、そうではなく、やはり通産の問題であろうと何であろうと、少くとも為替の面で貿易管理をしていこうという一つの大きな任務を持っておる大蔵当局としては、そういう問題についての一つのはっきりした観点を持っていなければいけないんじゃないかと思うのです。従って、大臣は、日本貿易構造の面において持っているよさと悪さというものについて、今為替の面で貿易管理していこうとされておる大蔵当局は、どういうようなお考えを持っておられるか、特に大臣はそれをどういうふうにお考えになっておるかということについて、その基本的な問題についてお考えを、簡単でいいですから……。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろんこの貿易の面においていろいろ問題がございます。金融、税制の面においてもすでに問題がございますから、それぞれの機関があり措置がとられておるということもございます。非常に卑近な例をとって申しますれば、外貨そのものについてこれと取り組んで参ります場合に、いわゆる割当制AA制に変えるというような場合に、いわゆる割当の場合には、商社べースだあるいは製造メーカー・ベースだというようなことを言っておりますが、これなどが、もうすでに将来の為替自由化方向ということを考えた場合に、もう一つの大きな問題になっておる。今までの管理機構から申しますと、かような方法もやむを得なかったと思います。しかし、これを急速に変えますことは、今までの経営の方法を基本的に変えることでございますから、非常な影響がある。そういうことでまだ踏み切りかねているというのが実情でございまして、まあ先ほどちょっと触れたような次第でございます。
  46. 石野久男

    石野委員 今年上期の外貨割当の線では、自由化方向を示すものだといって、いわゆるいろいろな海外渡航の問題であるとか、個人の送金の問題であるとか、あるいは非居住者外貨についての円の送金の問題であるとか、いろいろなことをやっておりますけれども、これは微々たるものでありまして、やはり基本的にはこのFA制をAA制に変えるということになってこようと思うのです。大臣が先ほどから言っておるように、FA制をAA制度に変えるということの可能性の問題が、今日本の現状においてどういうものであるかということが、非常に重要になってくると思うのです。この点で私は、先ほどから下期の予算の中にどういう形でそれが出てくるかということをお聞きしておりましたが、しかし、実際にはやはり時代の動きとともにそれは解決するのだという御答弁しかいただけないわけなんです。しかし、事実問題としまして、自由化の問題というのは、そんなに長く時期を待っていることはできないと思うのです。私は、少くとも、下期の予算あたりには、相当程度やはりそういう面の踏み切り方が出てこないといけないんじゃないか、それでなければ、国際競争の中で貿易を伸張させるということは非常に困難だろうと思うわけなんです。そういう点でAA制にFAを切りかえるという問題は、大蔵当局では相当程度積極性があるのだけれども、実はやはり国内の産業のいろいろな保護の体制を考えるとそれはできないのだ、こういうことを言っておられる。しかし、事実問題として、為替管理とか貿易管理の面で国内産業を守っていこうというやり方は、もう今の時期では非常におそいんじゃないか、おくれをとるばかりになるんじゃないか、こう思うわけなんです。こういう点で、もっと積極的な施策が、通産当局との間に政府としては行われないといけないと思う。大蔵当局としては、こういう問題についてどの程度の積極性を持って通産当局とやはり折衝されていき、そして自由化方向を積極的に展開するのに、どういうような施策をとろうとしておるかということについて、いま一度大臣考え方を聞かしてもらいたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはもう基本的な問題でございますし、それはどうしても取り上げていくということで、先ほど非常に熱意のある、その決意のほどをお示しいたしたつもりでございます。一例をとって申しますと、たとえば原綿そのものにプレミアムがついている、こういうような事態を許しておく筋のものではないと思います。これは非常にティピカルな悪例でございます。しかしながら、現状におきましては、とにかくこの原綿一俵についてプレミアムがついているのが実情でございましょう。しからば、紡績事業というものは非常なブームを来たしておるのかというと、必ずしもそうでもない。こういうところにいろいろ工夫を要するものがあるわけです。ところが、一面本法で為替貿易自由化ということを強く進めましても、相手国におきましてはずいぶん困る問題も実はあるのでございます。過去におきまして、日本がアメリカに対して非常なくず鉄の買い占めをした。その結果アメリカのくず鉄相場が非常に狂って、アメリカ自身も非常に迷惑をした、こういうことがある。逆に、日本自身は、買いあさりをした結果、国内にうんとストックを持ってしまって、それが非常なガンになった、こういうことにもなる。かようなことを考えてみますと、AA制の拡大あるいは為替貿易自由化と申しましても、国内産業の面で規制のとれることが必要でしょうし、相手国に対しても十分理解のできるような方法でなければならない。そこで、業界そのものに果して懸念されるような過当競争の状態が起るか起らないかということなんです。いわゆる過当競争をいたしますと、相手国も迷惑すれば、国内においてもいろいろなまずい結果が起る、こういうことにもなるだろうと思います。その業界自身も、こういう意味では、お互いがみずからの首を締めるようなことは望ましくないというので、それぞれ工夫もし、自粛自戒するような方法もとるわけでありますが、景気が上向きのような状況の場合だと、なかなかブレーキが思うようにかかるものじゃない。そこらに一部の危険を伴っておるわけであります。しかし、それは非常な極端な例を申せば、そんなことをいつまで言っておったって間に合わぬのだ、もうそういうことをしいられるだろうから、早く踏み切る以外に方法はないのだ、こういうような議論もあると思いますが、私ども責任者といたしましては、やはり角をためて牛を殺すようなことはしたくない。だから十分な準備をする。政府自身が準備をするばかりでなく、業界においても積極的に、一応の方向は示されておるのだから、その方向においての諸準備を怠りなく一つやっていただきたい、こういうことを合せて申しておるような次第でございます。
  48. 石野久男

    石野委員 今のような事情でありますると、府政が幾ら自由化方向を期待しておりましても、国内のいわゆる商社だとかあるいは産業陣営だとか、諸般の経済的な関係から、それはやはりすっきりした自由化方向はなかなか出にくいというふうに理解してよろしゅうございますか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 他の例をとって申すと、いわゆる戦後というか、戦時中というか、統制をいろいろやりまして、価格の面でマル公が全面的にあった。しかしながら、マル公を比較的影響の少いものからどんどんはずしていった。そうして、この国会では、私どもの所管の酒についてもマル公を撤廃していくとか、こういうような方向になっている。こういうことで、順次影響度の少いものからAA制を拡大して参ると、最後に詰まってくる。そうすれば全部はずせるような時期になるだろうというふうに思います。そこで一面において、非常に大きなポジションを占むるものについて、やはりそういうものも取り上げたらどうだろうか。たとえば木材であるとか、あるいはくず鉄であるとか、あるいは原綿と羊毛とは一つ考えなければならぬでしょうが、そういうものだとか、そういうものがあるわけでございますが、今の状態で一番おくれると考えられますものは、原綿、原毛はなかなかおくれるのじゃないかという感じがいたします。これはやはり、受ける方の日本国内における商社というか、メーカーも非常に多数であり、さらにまた中小企業がこれにつながっておる。こういうことであり、先ほどわが国の産業のアンバランスということを言われたと思いますが、紡績事業はわが国産業においても非常に大きい部分を占めておるのでございますから、そういう点十分見通しを立てないと、そこまではなかなかいかない。こういうことだろうと思います。だから、何と申しますか、だんだんむずかしいだろうと言われないで、やはりこれはそういう方向に無理をしてでも進めていくということにならざるを得ない、こういうふうに思います。
  50. 石野久男

    石野委員 無理をしても進めていかなければならぬけれども、実質的にはやはりなかなか進めにくい事情があるということがはっきりするわけなんです。そういう事情があるということは、結局西欧通貨自由化を中心として出てきた世界貿易自由化という問題が早急に伸びていくということを考えますと、それはどうしても政府としては何か手を打たなければいけないのじゃないか。手を打って、FA制をAAに変えていくというやり方を具体的に出さないといけないのじゃないかと思うのです。その具体的に出すことが二年も三年も先では、とてももう追っつかないだろうという懸念をわれわれは持つわけです。先ほどから、大臣は、西欧通貨自由化というものはまだそう影響は出ていないということを盛んに言っておられますけれども、私どもの感じでは、おそらくこれは相当近いうちに激烈な経済競争が出てくるだろう、こういうふうに思うわけです。もちろん考え方の違いもあるかどうか知りませんが、しかし、そのことは具体的な貿易の中で出てくることでございますので、私は、口先だけで自由化々々々と言っておっても、実質的に態勢を整えるような施策が行われないと、具体化してこないということを心配するわけです。私どもは、ただここで自由化の問題を論争するだけが問題じゃないのでございますから、むしろ具体的にその自由化方向を打ち出すような政府の積極的な考え方をこの際聞きたいわけです。先ほどから、為替管理法改正の問題なども論議に上っておる、というようなことを言っておりますが、そういう為替管理法改正の問題なんかについても、相当程度政府の意図的な指示と指導が行われないと、こういう問題は解決しないのじゃないかと私は考えますけれども、そういう問題について、政府はどういうふうにお考えになっておりますか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申した通りでございまして、やはり目標をはっきりさしてぐんぐん引っぱっていかなければならぬ、意図的な指示が必要だ、かように考えます。  そこで、通貨交換性回復しての為替貿易自由化という方向でございますが、各国ともまちまちでございます。先ほどの非居住者のその国の通貨を解除するという問題にいたしましても、これはわが国の場合で考えますと円の問題でありますが、これなども、実は金額がただいまのところ少ないからといって、軽く見るような筋のものではないのであります。これはやはり影響は非常に大きいということを前提として考えておかなければならないように思います。ことに、通貨交換性回復した国におきましても、こういうような凍結通貨とでも申しますか、そういうものは多く映画関係等からきておりますが、映画関係のものなどにつきましては、各国ともなかなかそう自由にはしていない、こういうことはございます。また、産業の面においても、原材料でその国の産業の基本をなすようなものについては、なかなかそう簡単に非常に早急には解決は見ないだろう、こういう見通しだけはつくのでございます。しかしながら、私どもといたしましては、先ほど御説明いたしましたように、一俵について幾らというようなプレミアムがつく、こういう状態は望ましい状態ではない。そういう意味では、これは工夫して参らなければならぬと思います。昨年は、企業整備といいますか、織機の買い上げその他でずいぶん御審議をいただき、御高見も拝聴いたしましたが、いわゆる紡績関係の仕事というものは、あれほど大企業から中小企業まで全部がある。そういうようなところに非常なむずかしさがある。それが、冒頭に御指摘になりますような日本産業の特殊性といいますか、二重構造、そういうふうに表現されるような根本的の問題がある。かように考えますと、私ども非常な熱意は持っておるわけですが、おそらくそういうものが最後に残るものではないだろうか、こういう感じが強くいたしておるのでございます。
  52. 石野久男

    石野委員 自由化の問題は、ただ一つ金の準備がどうあるとか、あるいはドル貨をどのくらい保有するかという問題だけでも解決しないので、それはやはり国内の経済の体質との関連性だとか、あるいは諸外国とのいろいろな通商上の関係などがみんな関連してくるわけです。しかし、結論的にいいますと、先ほど言われるように、自由化はしたいけれども、実は原毛等におけるプレミアムがつくような事情だということになって参りますと、そういうような問題をどういうふうに解決するかということが非常に問題になってくると思うのです。私は、全般的な問題では、大臣はうまくあっちこっちに逃げてしまいますから、当面の問題として、たとえばそういうプレミアムのつくような問題について自由化への方向つけをしようとする場合に、それじゃ具体的に政府はそういう問題をどういうふうに解決する考え方でおられますか、その点一つ聞かしていただきたいと思います。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今割当制の各貨物の品種につき、それぞれの影響度等を勘案して、順次範囲を拡大していくという方法をとっております。同時に、そういう方法が全体の動向を示すものでございますから、おくれております業界についても、一そう熱意のある指導が必要になってくるのでございます。そこで、やはり商社だとかメーカーだとかいう、この関係を一応取り上げることがまず第一ではないかと思います。もう一つは、為替取扱い銀行もいろいろございますが、これらの間の相互の競争などにつきましても、やはり調整をはかるようにしていくことが必要じゃないか。いろいろ工夫することは多いようでございます。一言にしてなかなか言いがたしというところでごいます。
  54. 石野久男

    石野委員 自由化方向というのは、大体為替管理を排除し、貿易管理も排除するという形に進むのがほんとうの姿なんです。ところが、実際には国内態勢やあるいは過当競争の実態等を見ますと、むしろそれを何か管理しなければならないような実情にあると思う。ここに政府の今一番大きな難点があり、矛盾点として解決しなければならぬ大きな問題があると思うのです。だから、私は、先ほどから言うように、自由化方向は、世界的な情勢の中で一日も早く確立しなければならない方向だけれども、国の態勢というものは、むしろそれとは逆に、過当競争が行われ、あるいはある物品についてはプレミアムまでついて、非常に混乱させるような事態が出ているというような事情でありますから、当然為替管理の問題やあるいは貿易管理の問題と国内産業政策の問題との関連性をどういう方向で解決するかということが、この自由化の問題をわれわれが意図する以上非常に重要な問題であり、はっきりさせなければならない問題であると思うのです。そういう問題について、大蔵大臣は、先ほどから、もう自由化方向は近々の問題だから急ぐのだ、こう言っておきながら、片方ではそれを押えるような、むしろ管理態勢を強化しなければならぬというようなことを言っておるということになると、問題はあっちこっちしていて、全然これは合わないわけです。それじゃ政府考え方というものはどこにあるか、ちっともわかりゃしない。そういう点で、私は、そういう問題を解決しつつ、自由化方向を企図する政府の方針をここではっきりさしてもらいたいというのが願いですから、そういう点で一つ明確に答弁していただきたいと思います。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん基本的には産業政策の問題になります。これが一点です。同時にまた、取り扱いの簡素化なり、あるいは簡明化ということが問題でございます。いわゆる為替に関する規定がこんなに山をなすような、そんな手続の煩瑣なものでは、いわゆる自由化方向にはおよそ縁遠いものだ、これは簡素、簡明なものにしていくということで、そういう意味の準備もいたしておるわけでございます。
  56. 石野久男

    石野委員 為替管理法改正を意図されて、そしてその為替管理法方向から自由化方向を打ち出したい、こういうのが政府の今の考え方だということを先ほど聞いておったわけです。ところが、今のように、手続を簡素化するんだということでごまかされてはいけないと思うんですよ。手続を簡素化するには、手続をしなければならぬような事態がたくさんあるということになると、自由化方向は、口では言うけれども、実際には逆行しているということになりますので、そういう意味において、ほんとうに自由化方向をねらっておるならば、政府としては一つの方針が出てこなければいけないし、施策が出てこなければならぬというようなことを私は思うわけなんです。ここでは別にどうこう言うわけじゃないけれども、やはり日本貿易を増進させて、国際収支改善しようとする意図を持つ以上は、世界の大勢におくれてはいけないということだと思う。おくれてはならないから、そこで自由化方向をわれわれはまたとらなければいかぬし、場合によれば通貨交換性を早急に確立していかなければならぬ。政府は、本国会が始まって以来、通貨の健全性を確立するということを常に言っておるわけです。そういうことを考えますと、私は、やはり、自由化方向と、そういう産業の態勢と、あるいは通貨自体の問題とか、あるいはそれの準備態勢の問題とか、一連のものを総合して一つ方向づけというものをはっきり出してこなくちゃならないのに、片方では自由化を言うのに、片方では管理態勢を——それは手続は簡素化するのだと言うけれども、実は数多く重なってくるというような事態があって、これは論理の矛盾があるわけです。それでは全然方針が出てこないということになるので、私はこの矛盾をどういうふうに解決するかということをはっきり言ってもらえば、あとは質問を打ち切りますよ。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今為替手続の簡素化ということを申しましたが、これはいわゆる通貨交換性回復する前に、そういうことを考えて準備をいたしました。しかしながら、同時に、これは手続の簡素化にあらずして、内容を整備して、そして為替貿易自由化方向に便するようにしよう、こういうことをかってこの前の委員会等でもお話をいたしたと思います。そういう意味で、大蔵省は、自由化に対する必要なる準備として、強力な委員会を設け、今実務担当者の人たちの意見を聞いて、そういう方向で準備を進めておるということでございます。また、産業の面におきましては、企画庁におきましても、もうすでにその方向に踏み切っておりますし、また通産省も実情を十分勘案し、通産省自身が、指導的立場において、この為替貿易自由化が全面的に展開された後における国際競争にひけをとらないような準備を今日から進めておるという状況でございます。
  58. 石野久男

    石野委員 どうも大臣の話は、そういう方向だということはよく言うのだけれども、実際には管理態勢を強化せなければならぬものがたくさんあるので、どうもやはり論理の矛盾があって、政府の言う自由化というものは口先だけであって、事実の問題としても外貨予算の中にも自由化方向は出ていないわけですよ。出ておっても、本年度下期の予算と三十四年度の上期の予算の中に出ておるところの予算の中のパーセンテージから言えば、それは大して前進をしておりはせぬ、実際は。二十何パーセントが三十数パーセントになっておるけれども、実勢から言うと、すでに下期の予算では三十何パーセントを自由化方向で持っておるわけですから、上期の予算の中には少しも前進というものはないのですよ。私は、特にこの貿易自由化という問題は、外貨割当を排除する態勢でなければならぬと思う。その態勢が出てこなければ、幾ら自由化自由化だと言っても、どうにもならぬ。口先ではどんなことを言っていようと、貿易はやはり世界的におくれてくるという結果が出てくるだろうし、今予想されない以上のやはり貿易競争の中でおくれをとっていくだろうということを憂えるので、私は、やはりそういう態勢をはっきり確立するための明確な指針をここで持っていかなければならぬのじゃないか、ということを言っておるのです。その方針がないなら、ないと言ってもらえばけっこうなんです。あるなら、はっきりとあるということを言ってもらえば、私はそれで納得するわけなんですよ。この点を大臣ははっきり言ってほしい。大臣は、一方では自由化を言い、一方では、プレミアムがつくものがたくさんあって、できるだけ手続は簡単にするけれども、やはりそれは押えていかなければならぬのだとはっきり言っているのだから、これはやはり矛盾しておるのだ、そういう態勢をどういうふうに統合し、一つ方向づけを持たしていくのかということを私は聞いておるのです。政府にそういう施策がなければないでいいのですよ。あるならあるとはっきり言ってほしい。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどからあると申しておるわけで、私は、大体事務当局から十分説明したから、御了承がいっておることだと思っていたのでございます。三十三年の上期におきましては、外貨割当制と自動承認制とのパーセンテージをとってみますと、全体の七五%が割当制、承認制が二五%、今回は、三十四年度の上期予算額においては、割当制のものが六七%、そうして自動承認制のものが三三%、こういうように実はふやしておるのでございます。今回は綿くず、綿ボロ、それからホップ、解体用船舶、コプラ、ゲルマニウム、あるいはカーボンブラック、ペニー、農医薬品、大体合計いたしまして二十一品目AA制に取り上げました。これは非常な拡大でございます。ことに今お示しいたしましたうちの綿くずだとか、綿ボロだとか、あるいは解体用船舶だとか、こういうようなものは、それぞれAA制になりました結果、過日も新聞に出ておりましたが、関西では、船舶解体、これが今なかなかブームだというような新聞記事が出ておるほど、模様が変ってきております。こういう点を御披露いたしまして、今の基本的な方針を着々進めつつある、この実情を御了承いただきたいと思います。
  60. 石野久男

    石野委員 三十三年度の下期の実態を見ると、当初のAA制予算は三億三千万ドルで、それからFA制のものが十二億四千二百万ドルになっているわけですね。それが公表されたのが七億七千四百万ドル、片方は三億ドル、それから確認されているのが四億八千七百万ドル、片方のAA制が一億八千万ドルということになっているわけです。実際に確認された線からいいますると、三十三年度の分は、下期におきましては、FA制の問題では三割ちょっとでありますが、AA制の問題は五〇%をこえているわけですよ、確認された線では。そういう実態で、三十四年度の中で若干の前進はあったといいましても、三十三年度の下期外貨予算の実態から見ていきますると、もうすでに実勢はそういう態勢が出てきていると思うのです。実を言うとAA制の方がずっと伸びてきているのですね。ですから、そういう実態を見ますると、三十四年度の予算の中に出てきている若干の前進というものは、その実勢から見ると大したことはない。言うほどのことはないと言いたいわけだ。私は、むしろそれが具体的に出るのなら、もっとパーセンテージは上へ上らなければいけないということを言っているわけだ。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、二十一品目というものは新たにAA制にとったのでございます。だから、三十三年度の際にAA制の金額がふえたという事実について、今回の予算額といたしましては一応三三%を見ているということでございますが、品目として二十一品目拡大されたという事実、これだけははっきりしたものでございますから、御了承いただきたい。
  62. 石野久男

    石野委員 二十一品目が拡大されたと言いますけれども、この品目は全体としては重要度の大きいものじゃないですね、実を言うと。これはほとんど排除された微弱なものばかりで、一番のねらいどころははずれちゃって、大魚がどこかへ行ってしまって、ざこばかり揚げて形を整えたということなんで、実質的には前進ということには私はならないと思います。しかし、それは二十一品目、それだけ切りかえたのだから、その点は認めるけれども、実際に大宗をなすものが抜けているということは、どうしてもわれわれとしては見のがすことはできないと思います。だから、私はやはり政府の努力の方向はよくわかりますけれども、しかし、方向は出ておっても、実勢はやはり大きなものはまだ残っているわけですし、それで、しかもそのことが日本貿易の中では非常に大きなウエートを持っているということになりますると、AAとFAとの関係は、もっと、逃げているもの、また今度拾い上げることができなかったものへ、どういうふうに前進するかという具体的な問題になってくるわけです。その具体的な問題になると、国内態勢だとか、あるいは産業構造の問題に関連してできないという事情があるわけでしょう。そういうところで、自由化方向に意図的なものをどういうふうに進めていくかということを、私は政府の方針として聞きたいということを先ほどから言っているわけですから、もう二十一品目については私はわかっておりますから、あと残ったそういう問題をこれからどういうふうにしていくかということに関連して、先ほどから、自由化方向と、それを引っぱっているような国内態勢との調整をどういうふうにして前進させるか、そういう基本的な考え方はどこにあるかということを、大臣からはっきり言ってもらえばいいわけです。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどから申しましたように、ちょうどマル公撤廃と同じように、着々と拡大していくということでございます。
  64. 石野久男

    石野委員 自由化方向については、率直に申しますと、政府がそういうふうに考えてはおるとしても、実は足を引っぱるようないろんな情勢があって、なかなか早期に自由化ができないというのが実態だろうと私は思います。だから、みんなを安心させたり、あるいは世界情勢におくれてないのだという、態勢だけを示すゼスチュアとしては聞けましたけれども、実際にそれを進めるという方針なり施策というものが、今の大臣の答弁の中から何も出てきていないと思う。私はこれではやはり日本貿易がおくれていくだろうと思う。早くいえば政府にそれだけの施策がないということになる。無策の中で成果を上げようとしても非常に困難だから、一つ政府は大いに勉強して、その態勢を確立するためにやってもらいたい。これは口先だけじゃなしに、具体的にはそういう困難な事情があるということについて、それにメスを入れるような政府の方針が出てないことは、非常に遺憾なことだと思います。これでは、日本国際貿易上の収支を黒字にすると言っておりましても、実を言うと、それは非常に消極的な黒字なんです。積極的に拡大生産をしようという意味における黒字だとは私は思いません。こんなことで日本の建設はできっこありませんから、これはどうしてもやはり政府にもう少し勉強してもらわなくちゃいけないと思います。  大臣の時間もないようでございますが、接収貴金属の問題で大臣一つ聞いておきたいことがあるのです。それは、ほかではありませんが、接収貴金属の問題は、長いこと本国会でも問題になっておることなんです。接収貴金属というのは、御承知のように、米軍が来て日本の貴金属を接収したことについての跡始末の問題でございますが、これは戦争中の問題として論議されている案件なんでございます。戦争が終って後、連合国占領軍が日本に入ってから接収した問題ではございますが、戦争に関連する問題であるだけに、われわれとしては、非常に重要だと思って、この際大臣にお聞きしたいのですが、接収貴金属と、戦争中、いわゆる戦争に協力された方々から政府機関によって回収されました貴金属との関連性は、どうお考えになっておるか。今は接収貴金属を返還するという問題で非常に論議が出ておるわけでございますが、国民の立場からしますれば、われわれは、接収貴金属と戦争中の回収貴金属との関連性は、同次元において見なければならない問題だというように考えておるわけです。ところが、接収貴金属の問題だけは、当時政府が軍の圧力によって強制的に回収した問題とは全然切り離したような形で、論議が進められていくということになりますと、問題のつかみ方が非常にバランスを欠くことになって参りまして、きわめて不公平になるだろうと思うのです。政府は、この接収貴金属に対するいろんな法案を出されておる際でございますので、この戦争中に回収された貴金属と、占領軍が来て接収した貴金属との関係を、国民の場においてわれわれが見る。その見方についてどのようにお考えになり、これをどう取り扱っていこうとお考えになっておるのか、この点を大臣から伺いたい。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いわゆる回収と申しますか、供出と申しますか、戦争中に軍の慫慂によって民間から出したもの、あるいはみずからそういう計画があるということで供出したもの、こういうものは交易営団が扱ったものだと思います。そこで、それらについては一応そのときに代金が支払われております。しかしてまたそれが使われておる向きもあるわけであります。今日交易営団が保有しておる分については、今回の法律ができ上りましたならば、それを国に帰属さす、こういう処置をとろうとするものであります。今回、それ以外のもの、いわゆる接収と申しますか、代価が払われないで、占領国において行われたものについて、これを返してもらいましたから、そこでこれの処置として今回の法律を出し、国に帰属するもの、また旧所有主に返すもの、こういうように考えておるわけでございます。今回は、インフレの後でございますから、金額的には非常な相違がある。どちらかといえば、国難に当ってみずから進んで協力した人たちが、当時の安い値段で片づけられる、その後接収という状況において持っていかれた、それは返される、この方は非常に得があるじゃないか。こういう感じが一部には残っておろうと思いますが、接収そのものが、ただいま申すような状況で占領軍から接収され、占領軍が日本政府に返してきた、こういうものでございますから、それを全部国の所有にするということは、接収の原因等から見まして不適当なる処置があるだろう、かように考えますので、今回の法律によりまして、明白なものはそれぞれに返していくという処置をとりたいと存ずるわけでございます。
  66. 石野久男

    石野委員 当時軍の名によって供出したものは一応代金を払っておる、ところが、接収されたものは、その当時何も代金を払っていないのだから、これはやはり返さなければならないというお話でありますが、賀屋さんが、参議院のわが党の平林委員に対する答弁の中で、こういうことも言っておるわけです。供出されたものの中には、それがどういうふうに使用されたかわからないものがたくさんある。しかも、その中で、たとえば当時下請作業をやるとか、あるいは生産事業をやる人々に払い下げをしたか、あるいは無償支給をしたかわかりませんが、それを使用したかどうかもはっきりわからないものがある。そういう形があるということをはっきり言っておるわけです。そういうものは、結局占領軍が来て接収された貴金属の中に入っておるかもわからないわけです。そういうことになって参りますから、接収された貴金属というものは、逆説的にいえば、供出をした貴金属を政府なり軍なりが払い下げをするとか、あるいは無償支給をするという形で使用しておったものを、今度占領軍が来て接収された、こういう形になっておるものがあるかもしれない。そういう形が出てきておるわけです。従って、私たちとしては、戦争中に供出を要求されたときは、あのときの国民的な感情からすると、貴金属を持っておる者は一切がっさい出さなければならなかったわけです。出さないと強制的にやられたわけです。それを出さないでおったものが、今度は占領軍が来たときに接収される対象になったともいえるわけです。早くいえば、戦争中に当時の軍の供出要求に対して非協力であった者が、そういう貴金属を持っておったということになるかもわからない。そういうものが今度は占領軍が来たので接収された、そしてそれは返してやるのだということになると、国民の立場から見ますと、非常にバランスがとれない、取扱いが非常に不公平になってくる、こういうふうにわれわれは考えるわけです。従って、供出された貴金属と接収された貴金属が、ただ代金が払われたとかどうとかいう問題ではなくなると思うのです。もしそういうことでいくならば、接収されたものについても、同次元の形でその当時の金額で払って、現物は現実にもし渡すとすれば、非常に高い時差の価格が出ておるわけです。従って、今日その接収された貴金属を返還された者は非常に大きな利益を受けるわけです。供出した者は、現物は全然返ってきていないのだから、その当時の安いもので払われ、しかも戦時中ですから非常に苦しい生活をし、戦後はそれらのものはほとんど何にも役に立たないで、かえってその人たちの生活は苦しい目にあっておるという事態があるので、この接収貴金属の返還という問題については、非常なバランスのとれない不公平なやり方をすることになるとわれわれは思うわけです。そういう点について、政府は別に何とも考えておりませんですか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的には、戦時中の供出については代金が払われた、また接収の場合にはその代金が払われておらない、こういう基本的な問題がございます。そこで、戦時中の供出という場合においては、これは泣く泣く出した人もございましょうし、あるいはみずから進んで出した人もございましょうし、供出の実態というものはいろいろだろうと思います。しこうして、接収の場合も、これがいわゆる隠匿物資であるかのような印象を持たれますが、接収された個人のものというのが全部が全部隠匿物資ではない。これは十分御理解をいただきたいと思うのでございます。これは会社が持っていたものだとか、あるいはその他、個人の場合においても、業務用に持っていたというようなものが多かったようでございますから、そういう実態について、接収の際における旧所有主の大部分はどういう状況であったか、こういうところを考えてみますと、これが強権により無償でやられた、こういうことでございます。もう相当時間がたっておりますから、その十三、四年の間にはいろいろな変化も生じてきている。その状況のもとでございますから、今言われますような点は、これは一部当てはまるものもあるだろうと思いますが、総体といたしましては、供出したときありましたものは、いわゆる隠匿物資という烙印のもとに処理考えては相ならないものだ、かように私どもは実は考えておるのでございます。参議院において平林委員からもいろいろそれらの点についてのお話がございました。ことにこの法案については、委員の皆様方もほとんどお変りのないような状況で、長い間国会で審議をいただき、そのつど不幸にして成立を見ておらない。毎回伺いますことは、ほとんど同様のことであります。今回ようやく参議院を通過して、衆議院に回付されたのでございます。かって衆議院では一度通過したこともございます。そういうような事情もよく勘案のうちにお入れをいただいて、事態は、期間が長く経過すればするほど、この種のものは非常に扱い方、解決の仕方がしにくくなる、こういう点も一応御了承の上で御審議をいただきたい。私が申し上げたいのは、供出の場合の事情というか、その持ち主の気持なり、あるいはその時分特に同情するのは、供出をしないと非国民、あるいは時には売国奴というような非難まで受けることもあっただろう、こういうふうに考えます。そういう期間には出さなかったものが、占領後において接収という形で残った。いかにもそれは隠匿物資が主体であるかのような印象を持たれます。ところが、そういうものじゃなくて、業務用のものが大部分であるということもよく御了承おき願って、公平な処置を一つつけさしていただきたい、かように思います。
  68. 石野久男

    石野委員 接収になった貴金属というものは別に隠匿物資ではないのだ、それはそれぞれ業務上の所有として持たれておったものだということについて、私は全部が全部そういうふうにばかりは理解できませんけれども、あるものはやはり隠匿されたものもあると思います。あるものは業務用として正当に持っておったものもあると思います。しかし、その正当に持っておった業務用の貴金属というものは、書類上の処理はどういうふうになっておったか知りませんが、当時ほとんど軍関係の仕事をしておったと思います。私もやはり当時軍関係の工場に働いていたことがありますが、その当時はほとんど官給材料として、軍からどんどん貴重な貴金属などを支給されておったというような事実も見ておるわけであります。やはりそういうようなものが軍なり政府なりから官給材料というような形で出ていたとすると、その官給材料なり何なりというものは、ほとんど供出物資であったということもまた言えるわけであります。国が所有しておったものもあるでしょうけれども、また供出した物資をインゴットにして渡したものもあるだろうと思います。従って、私は、接収された貴金属の内容をなすものは、本来的にその人の所有であるものと、あるいは、そういうようにして、政府が、供出対象物として自分が所有しておったものを官給した、そういうようなものもあるだろうと思います。きわめて不明瞭な内容を持っておるものだと思うのです。たまたま戦争の終ったころにおけるところの事務的処理が不十分であり、当時は虚脱状態にありまして、日本政府なり軍関係のそういう問題に対する跡始末はほとんどできなかったことは事実でございますから、従って、やはり自分のところに官給品も持っておっても、それは実を言いますと「持ち得」ということになってくるわけであります。従って、すべてがそうでなくても非常に不明確な線で所有しておったものが、たまたまそれが接収されて、接収から返還という形になってきたことによって、その人に返されるということになりますと、その所有の経緯に関するいろいろな疑義を全然解消せずに本人の所有に帰することになると、不労所得にもなってくるというわけであります。こういう点は、戦争の責任を全国民が持たなければならぬという時期において、一方においてその戦争の過程の中における供出要請によって出した人々と、それから、一面においては、軍関係の仕事をやっておったとかなんとかというようなことで、有利な態勢におった人々との間に非常にバランスを欠いてくる。ことに当時軍関係の作業をしておった人は、その他の人々に比べますると、非常に各般におきまして優遇されておったわけです。生活の面から、経営の面から、一切の面から優遇されておった。そういう優遇されておった者が、戦争が終った後において、なおかつこういう接収貴金属の返還というようなことで、また一そう強い二重の優遇を受けるというようなことになってきた。これはきわめてバランスを欠くことになってくるわけであります。だから、接収貴金属の取扱い方の基本的な考え方としては、今日の時点において考えるのではなくて、やはり私は、戦争が行われておった当時におけるところの国民全般の立場において、この問題の考慮が払われなければいけないというように考えるので、今政府が出されているような考え方については、非常に疑義を持つわけでございます。特に一九五二年四月五日に向うから通達のありました覚書でございますが、これはスキャッピン七四四三のAに関連して「貴省は平和条約発行後裁判により確定された私人の利益を調査し補償する計画及び私人所有の財産であることが判明した個々の物件を返還する計画を立てることを認められる」こういうように言われている。その次に、「貴省はさらに平和条約の発効に伴って起ってくるであろうすべての関連事項の処理のために必要な準備をすることを認められる」こういう第二項の項目があるわけです。この際の「平和条約の発効に伴って起ってくるであろうすべての関連事項の処理」ということは、ただ接収貴金属だけの問題じゃなかろうと思うのです。だから、こういう意味からいいますると、戦争中のいろいろな事案が、講和発効に伴って、それの跡始末として出てくる問題でございまするから、やはり必然的に当時の供出物資などについての問題も出てくるわけでございます。それらの問題はこの法案の中には全然考慮されていない。私はこれは非常に片手落ちだと思うのです。だから大蔵省がこういう問題を当然のこととして考えるとするならば、やはりただ占領軍による接収の問題だけじゃなしに、戦時中における供出物資に対して、今日の政府が、国民に対してどういうふうにその代価を処理していくかという問題を考えなければいけないと思います。もし供出物資に対する問題点はすでに当時の代価で支払っておるのだからということならば、私は、今日の段階において不公平の出てくるような処理の仕方をしないで、接収物資については当然その当時の時価なら時価で算定したものだけを返せばいい、ということにもなってこようかと思います。現物は貨幣価値の移動、物価の移動等によって非常に違ってきておりますから、こういう問題を同時的に取り上げることは非常に私は不公平だと思うそういう意味で、これは政府が、スキャッピンに関連するところの、向うの言っていることをどういうように理解しておるかというと、それと関連して、いわゆる供出物資と接収物資との間の関連性というものを、もう少し明確に、国民の納得のいくような線で処置することが必要であろうと思いますので、やはり大臣にこの問題についての考えを聞かしていただきたい。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 接収当時の状況等については先ほど私も申しました。あまり石野さんのお説と違ってはいないだろうと思いますが、詳細は事務当局から説明させたいと思います。  なおまた、この御審議をいただいております法案のうちにも、十分考慮した規定があるやに伺いますから、この点も事務当局から説明させたいと思います。  それから、先ほどの、昔の金額だけ払ってやったらどうだ、こういうお話でございますが、これは憲法上、憲法違反にもなるのじゃないか、やはり現物そのものを返すのがほんとうの建前で、現物を返す必要がない場合においてのみ代価という問題になる、こういうふうに思いますので、これは憲法上の問題として、そう御結論のようにはならない、私はこういうふうに思います。少し接収当時の状況なり……。
  70. 石野久男

    石野委員 接収当時の事情は、非常にむちゃくちゃな強引なやり方をしたということは、われわれよく知っているわけです。議事録を読んでおりますからわかります。
  71. 早川崇

    早川委員長 だんだん時間があれしましたので、一つ……。
  72. 石野久男

    石野委員 今の、接収貴金属で現物のあるものは憲法上返さなければならぬということだと、現物のないものはもう代価でやればいいのだという建前ですね。これはもちろん、一面非常に真理のようでございます。しかしまた、他面からいうと、戦争という一つの異常な事態の中で起きている問題については、やはりその当時の国民の立場というものは、憲法の立場や民法上の立場というものを無視された形で供出を要請されたわけです、率直に申しますと。あの当時、やはり憲法や民法上の立場を守ってそれを拒否すれば、あなたが先ほど言ったように、非国民だとか国賊だとかいうようなことで、それはできないような事情になっておる。ほとんど自分の意思でないような形で取り上げられたという事態を、むしろこの際は、やはりそれに対して補備していくようなやり方をしていくのが、あたたかい施策じゃなかろうか。戦争が終ったんだから、戦争中のことを考えるなというような情けないやり方をここで政府がやるというなら、これは別でございまするけれども、しかし、もし、この戦争の責任を、政府、それから国民全部が同時的に取り上げて、そしてこういう接収貴金属の返還の問題を解決しようとするならば、やはり同時に、当時ほとんど憲法や民法上のすべての私有権の問題を無視された形で、権力的に強奪されていたような物資に対しては、正常な憲法上の立場からするところの処置と、あたたかい手当をしてやるということが大事である、私はこう思うのです。特にこの際大臣考えてもらわなければならぬことは、この接収貴金属の返還を受けるような人々というのは戦争が終った後においても、事業を行なったり、あるいはその生活の態様というものは、案外裕福だ、と言ってはいけませんけれども、まずまず正常な形での営みをなしておった人だと思います。しかし、戦争中に供出をしいられた人々というのは、多くの人々は、もう戦争が終ったときに塗炭の苦しみにあえいでいる人だと思うのです、実を言いますと。むしろ、そういう形からいえば、社会政策的な面から見まするならば、この戦争中に供出をしいられて、戦後非常に苦しい生活にあえいでいるものを、こういう問題が出たときには救ってやるべきが、情のある施策じゃなかろうか。そして逆に、戦争が終った後も相当程度こういう貴金属を保有して、相当な営みをなしておるような人々というのは、戦争の責任を公平に分担してないともいえるのです、率直に言いますと。そういう人々に対してはむしろ社会政策的には逆に——逆にと言ってはいけませんけれども、優先的に供出をしいられた人々の方へ施策を向けて、こういう人々に対してはなるべくがまんしろよというようなやり方をするのが、むしろ公明な政府のやり方でなかろうかとさえ思うので、憲法上の問題で、私有権は絶対のものであるから、現物があるものはどうしても返さなければならぬ、現物のないものはほっといてもいいんだというやり方は、きわめて無責任だというふうに思わざるを得ないのですが、そういう点は、政府はどういうようにお考えになっておりますか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政治をいたします場合に、あたたかい政治をするということはよくわかります。しかしながら、権利義務の関係になって参りますと、いわゆる政策的だとか政治的だとかという考え方では、なかなか判断のつかないものでございます。やはり権利義務の関係は、そういう意味政策的に扱うことは本筋ではないだろう。ことに国の責任というような場合になって参りますと、やはり権利義務の関係でそれを処理するということは当然のことではないか、かように考えております。
  74. 石野久男

    石野委員 その権利義務の関係は、政策的な問題とはまた違うというお話でございますが、もちろん私有権は絶対のものだということからすれば、供出した品物がなくなったか残っているかという問題は、その所有者本人の意思とは全然関係がありません。政府がやったことなんです、率直に申しますと。しかし、当時供出した人々がいろいろな意味において強制されたということになって、それは不服であるから返還を求めるということになれば、政府はそれに対応しなければなるまいと思うのです。そういうことになって参りますと、現物をなくしてしまったのは、本人じゃなくて、政府にその責任があるということになれば、政府はその場合にどういうような責任をとりますか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 戦時中の供出の場合は、それが強権を用いたとかどうとかという議論はございますが、とにかくこの代価が払われ、そこで所有権は移っておるわけでございます。従いまして、権利義務の関係はこれで解消しておる、かように考えてしかるべきじゃないかと思います。問題は、かような供出のものと、それから戦後における接収のもの、この関係でございますが、この意味では、これは載然と分けざるを得ないものであるということを、先ほど来申し上げておるのでございます。そして、これはいろいろ強権を用いたとか用いなかったとかいうことでございますが、これは貴金属の供出だけでない。戦時中におけるいろいろな強権は各方面に行われております。しかし、それぞれのものが、その際において所有権が当時の法律で正当に移っておるという場合においては、国自身が処分する権利を持っておる、かように考えてしかるべきではないかと思います。そこで、接収の場合におきましてはこれとは違う。占領軍によって接収され、しかもそれを返された、こういうことでございますから、その処置は別途の扱い方を受ける、こういうこと、これはもう供出の場合と区別されるということは理の当然だろうと思います。
  76. 早川崇

    早川委員長 石野君、だいぶお約束の予定の時間が過ぎておりますから、結論的な御質問を願います。
  77. 石野久男

    石野委員 まだ序論だから、これからずっと聞かなければならぬことがたくさんあるのです。  私は今の大臣の話をそのまま肯定するのじゃないのですが、たとえば一面それをよしとしても、接収されたものの中には供出された品物が入っている可能性があるわけです。実際問題として供出されたものが入っている可能性がある。そういうことになりますと、その供出されたものを接収された当時の所有者に返すということになりますと、所有権が移転しているからということでなくて、現物があって、その現物を返してくれということになって、その本人は当時の金で強制的にやられたんだから、私はそのもらった金を返しますから現物を返してくれということになるならば——これが供出された内容は、実を申しますと、供出物資は国と個人との間には当時の売買行為に一応なるかもしれませんが、そういう強制されたものを正当な売買の形なりあるいは拒否する態勢政府に対して要求が出て参りました場合に、その品物が接収貴金属の中に入っているということになれば、その接収貴金属は当然その当時の所有者に返すということについては、これは非常に疑義が生ずる。こういう問題からしますれば、この接収貴金属をそのまま本人に返してしまうということは、非常に不合理だといわなければいけないと思うのです。そういう点からも、この接収貴金属をその所有者に返すということについては、憲法上その所有者であるからというだけで理解するのは、非常につれない政治のやり方じゃなかろうかと思うのです。政府はやはりそういう点についてのあたたかいものの考え方というものはないのですか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ちょっとわかりかねておりますが、いわゆる供出したもの、その代価を払われたもの、それがいわゆる公益営団と申しましたか、それに所管しておりますものは政府に帰属するのでございます。今回の法律が通りましても、それを供出者に返すということはいたしません。そこで問題は、いわゆる接収したものについての問題が残るわけでございます。接収したものに対しては何らの代金が払われておらない。そこで、接収したものについての区分が出て参りましたら、これは返すべきものは返す、こういう処置をとろうというのが今回のものでございます。そういう意味の手続上におきましても、何でもかんでもというわけじゃないのです。十分確認した上でないと返さないようになっておるのでございます。
  79. 石野久男

    石野委員 供出された物資は、政府が所有権を移転さして自分のものになっているから返さないんだという、その方針はよくわかりました。それはいい悪いは別です。しかし、私の言いたいことは、この問題は、一番冒頭にも申しましたように、率直に申しますと、戦争行為を通じて出てきた一連の問題なんです。そしてそのために接収金属というものは占領軍に接収されたわけです。しかも、政府は、一面においては供出された物資を政府の所管に持っておって、政府が、その所管している物資を、その当時の軍需工場なりあるいは軍の作業をしている人々に、その物資を官給したり何かしている場合がたくさんあるわけなんです。私の言いたいことは、率直に申しますと、この接収金属を返すということによって、それが貨幣価値的にその物価の変動がなくて同じであれば、問題はそう大して大きく出てこないと私は思います。それは、供出した人も接収された人も、同時限においてものを解決するのと同じになるからです。しかし、事実はそういうことでなくて、物価の変動は非常に激しいものがある。何百倍というような価値を持ってきている実態になっている。片方供出された人は強制されて供出した、その人たちは今日その物価変動の過程の中で非常に生活の苦悩を訴えておるという実態がある。その場合には、所有権は全く本人の意思でなく、移転された形で、強制供出された形で自分たちの正当な所有権というものを無視された形になっておるわけです。片方では、その供出された物資を、政府が官給品なり何なりして、今接収された人々に与えておる。そういうものを今度は接収されたのだ。その接収を返還すれば、ここでは非常に物価の変動した中で、現実においてはやはり当時と比較すれば非常な利益を受けるわけになるのだから、この問題が、私たちにとっては、非常に接収貴金属の扱いについて問題になってくる点だと思う。それだからこそ、私たちは、その点を非常に重要視しなければいけない、こういうように考えておるわけなんです。従って、私は、政府が言うように、その人たちの所有権だから返すというだけで考えられないような、時代の変遷に伴うところの物価価値の変動が与える影響というものを、国民全般の立場で、しかもそれが戦争行為の中で出てきた一連の関連性だというふうに把握しますと、そのまま政府の言うように聞きとれないものがある。先ほど申しましたように、大蔵省に対しては、それは私人所有の財産であることが判明した個々の物件を返還する計画を立てようと言っておるわけなんですが、それに引き続いて、平和条約の発効に伴って起ってくるであろうすべての関連事項の処理のために、また必要な準備をしよう、こういうことになっている。だから、私は、この際におけるところの供出物資の問題について、これは平和条約が発効したことによって出てくるであろう関連事項だと、実際において私は考えるわけであります。そうすると、この問題に対する処置をどういうようにお考えになっているかということを先ほど聞いたわけですが、その問題についての御答弁がなされていないので、それではその点について一つ政府考え方を聞かせていただきたい。
  80. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今お尋ねの点は事務当局から説明させますが、先ほどの接収供出の問題で、他の例で申し上げてみたら、もう少し御了承いただけるのじゃないかと思います。これは戦時中に家屋を軍が買ったものがきっとあるに違いない。それから同時に、占領軍が参りまして、家屋を接収した例が幾つもございます。これは、接収解除と同時に、家屋の場合は接収当時の所有者にみな返しておるということであります。戦時中に軍が徴発買収いたしました家屋は、それはもう国の所有になったから、あるいは爆撃で焼けたから、こういうことだろうと思いますが、やはり接収いたしましたもので、その現物が残っておれば元の者に返してやる。土地あるいは家屋など、戦後非常に高騰いたしておりますが、それはそのままそのものを返してやる。戦時中に買収いたしましたものとの問に、非常な不公平がある、こういうことも御指摘の通りだろうと思います。確かに不公平なものが生じてはおると思いますが、やはり扱い方としては、ちゃんと現物がございますれば、接収解除と同時に、旧所有主に返すというのが建前だろうと、かように私は思います。
  81. 早川崇

    早川委員長 本日はこの程度にとどめ、散会いたします。     午後四時四十六分散会