○松尾
委員 私は、ただいま上程されました
所得税法の一部
改正案並びに
租税特別措置法の一部
改正案に対し、日本社会党を代表し簡単に反対の討論を行うものであります。
昨年の五月、総
選挙における自民党の
公約の大きな
一つの柱は、七百億円の
減税でありました。ところが、この
減税の内訳は、昭和三十四
年度の
予算において、
初年度五百三十三億、平
年度七百十七億円で、表面上数字のつじつまは合っておりますが、
国民生活の実態の収支に照らしてその
内容を検討しますと、
減税の目的に反している点が多々あるのであります。すなわち、税金の問題は、それのみを切り離さず、各家庭の生計費を軽減して末端における個々の生活に実質的効果を及ぼすものなりやいなやを、厳正に判断しなければなりません。
第一に申し上げたいことは、今なお税金が生活費に食い込んでいるということであります。すなわち、昭和三十三年七月の平均世帯の四・五六人の家庭の家計支出を見てみますと、総理府統計局の統計によっても、一ヵ月二万七千六百四十円生計費がかかっている。これを標準の五人世帯の年支出を計算すれば、三十六万三千六百八十円と相なるのでございます。このたびの
所得税改正によっても、
課税査定額は標準世帯で三十二万七千九百円となっておりますので、税金が生活費に食い込んでいることが明確に実証されます。すなわち、日本社会党が三十六万円まで
減税にせよと主張している点はこのあたりにあるのでございます。
第二に申し上げなくてはならないのは、物価の値上りと
減税との
関係であります。日常生活に深い
関係を持っているものを取り上げてみればおわかりになりますように、私鉄運賃並びにガス料金、バス料金、公営住宅、授業料、食塩、小麦粉、入浴料、理髪代、クリーニング代というように、それらのものはすでに上ったか、あるいはこれから上ろうと
予定しているものであります。
減税に恩恵があるといたしましても、
減税の恩恵を受ける者は百万人に満ちませんけれ
ども、物価の値上りの影響で苦しむものは九千二百万人の全
国民であるということを忘れてはならないと思うのであります。
次に、
租税特別措置法の
改正について一言申し上げます。
今回、
政府は、預貯金等に対する特別
措置、配当
所得に対する源泉徴収税率の軽減、証券投資信託に対する源泉徴収の税率等、十三項目にわたって
改正を加えておりますが、決して大きな改革ではありません。大規模の設備投資に次ぐ設備投資を行い、企業の系列化をはかって今日の繁栄を再びほしいままにしたのは、
一つは
政府の財政投融資であり、もう
一つはこの
租税特別措置法であったと思うのであります。日本社会党は、かねてから一千億円に余る
租税特別措置法による法人税等の恩恵に対し鋭いメスを加えて参りました。このごろになってから
政府はようやくこれらのものに手をつけ出しましたが、これは特別
措置の整理というのは名ばかりでありまして、むしろ整理、
改正をする以外のものは固定化し始めたのではないでしょうか。戦後特別
措置法により数千億円の
租税が軽減されておりましたが、果してそれだけの効能があったかどうか疑わしいと思うのであります。これらの大金が社会保障につぎ込まれておりましたならば、りっぱな社会保障
制度の確立を見たことであろうと思うのであります。私は、このような小手先の資本家本位の
租税特別措置法の整理にとどめず、日本社会党の主張するような大幅な整理の段階が来たことを確信を持って言うものでございます。
以上、簡単に両案に対して反対の
理由を申し述べ、私の討論を終りたいと存じます。(拍手)