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1959-03-19 第31回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 押谷 富三君    理事 小山 長規君 理事 坊  秀男君    理事 山下 春江君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       内田 常雄君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    鴨田 宗一君       進藤 一馬君    竹下  登君       西村 英一君    濱田 幸雄君       福井 順一君    福田  一君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山本 勝市君       石村 英雄君    春日 一幸君       久保田鶴松君    田中幾三郎君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山下 榮二君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   北島 武雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局証券課         長)      松井 直行君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十九日  委員竹谷源太郎辞任につき、その補欠として  田中幾三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  竹谷源太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行べの加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一八一号)  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  この際委員長より申し上げますが、本委員会委員でありました故山村庄之助君の死去に対しまして、大蔵委員会といたしまして弔電並びに花輪を贈りたいと存じますので、御了承願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  3. 早川崇

    早川委員長 去る十七日付託されました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官山中貞則君。     —————————————     —————————————
  4. 山中貞則

    山中政府委員 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十七年八月、わが国国際通貨基金及び国際復興開発銀行加盟して以来、この二つ国際機関わが国経済発展に著しく寄与したのでありますが、ひとりわが国に対してのみならず、戦後世界経済復興発展のためにこれら両機関が果しましたその役割はまことに偉大なるものがあります。  しかしながら、最近の世界経済及び国際貿易の急速な発展に比し、これら両機関資金量は十分とはいいがたく、わが国を初めとして加盟国の一部は、ここ数年来、これら両機関資金充実必要性を提唱してきましたが、昨秋ニューデリーにおける第十三次年次総会において、全加盟国の総意に基きこれら両機関資本増加の方針が打ち出され、昨年十二月の両機関理事会において、それぞれ資本増加に関する決議の草案が作成されました。この草案によれば、全加盟国について国際通貨基金においては一律五割、国際復興開発銀行においては一律十割の増資のほか、特に戦後において顕著な経済発展を遂げました日本ドイツ連邦共和国、カナダの三国について特別の増資を認めることとなっているのであります。この草案に対し本年二月二日までを期限として加盟国総務賛成投票が行われたのでありますが、この賛成投票はワシントン時の一月三十日に至り、国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定規定に基く多数、すなわち国際通貨基金については五分の四、国際復興開発銀行については四分の三にそれぞれ達したことが確認されました。ここにおいて、わが国といたしましては、国際通貨基金においては二億五千万ドル、国際復興開発銀行においては四億一千六百万ドルの追加出資を行うことを要する事由を生ずるに至ったものであります。この結果、これら両機関に対する出資総額、それぞれ五億ドル及び六億六千六百万ドルとなることになった次第であります。  従いまして、この法律案により追加出資についての規定を設けるとともに、これに伴いまして、この追加出資額の払い込みの財源に充てるため、日本銀行所有金地金のうち、大蔵大臣の指定するものにつき、日本銀行にこれを再評価させ、これによって生じた再評価益全額国庫に収納することにいたしました。次に、これに関連いたしまして、昭和二十七年の加盟時における出資に当り、政府日本銀行から帳簿価額で買い上げた際の金地金買上価額とその金地金を当時の金管理法規定に基く価格により評価した場合の価額との差額についての処理を行うことといたしました。また、政府国際通貨基金から外貨買い入れ取引を行うに当りまして、国際通貨基金に対し、円現金を支払うかわりに無利子の交付国債によってこれを行うことができることとし、これに伴いましてこの国債発行、買い戻し、償還等に関する所要の規定を設けることといたしました。  以上が本法律案提案理由及びそのおもな内容であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたす次第であります。
  5. 早川崇

    早川委員長 これにて提案理由説明は終りました。  本案に対する質疑次会に譲ります。     —————————————
  6. 早川崇

    早川委員長 次に、税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。春日一幸君。
  7. 春日一幸

    春日委員 私は先日の本委員会において、証券業者投信兼営するということについての弊害、不合理性等について、るる政府の所見をただしたのでございます。これを要約いたしますと、すなわち、委託会社として受益者利益をはかる立場と、それから証券業者として自己利益を上げる立場とが、当然にこれは競合するであろう、すなわち、受益者利回りそのもの証券業者立場というものは、一方がよくなれば一方が悪くなる、これはまさしく二律背反の原則の上に立つものだから、こういうように相反する傾向にあるものを同一人格の中にこれを許しておくということは結局将来錯乱を生じてくる基をなすであろう、だから政府はこれに対して当然緊急の措置を講ずべきであるという主張をいたしたのでございまして、大臣もまたそれに対する弊害を認められて、適当な措置をとらねばならぬというような意思表示等もございました。本日私は、さらに、この面において、その不合理性それから弊害の面について、いま一歩突き進んで問題を明らかにいたしたいと存ずるのであります。  そこで、まず第一番にお伺いいたしたいことは、証券投資信託における委託会社免許基準、これは現在法律ではどういう限界を示しておるか、これを一つ伺いいたしたいのであります。
  8. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 まず御質問の御趣旨は、法律上の免許基準ということでございますから、法律の条文から申し上げますと、証券投資信託法の第七条に免許基準という条項がございまして、その第一は、「免許申請者人的構成及び有価証券への投資経験及び能力並びに証券市場状況等に照らし、当該免許申請者証券投資信託委託者としての業務を行うにつき十分な適格性を有する者であること。」その第二は、「証券投資信託委託者としての業務の収支の見込が良好であること。」こういうことが積極的な二つ条件になっております。なお、これに続きまして、いわゆる消極的適格条件というものが一、二、三、四というふうになっておりますが、その適格条件といたしましては、資本の額が五千万円以上なければならない、それから申請者法律または証券取引法規定によって罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終った後、あるいは執行を受けることがないようになってから五年を経過していなければならないというふうな適格条項がございます。こういうふうに最低の法律基準があるわけでございますが、私どもといたしましては、この点につきましてさらにいわゆる実行上の基準を定めまして、先般来春日委員が御指摘になりましたような種々の証券投資信託公益性並びに今日の日本の社会、経済の情勢に照らしまして、さらにただいま読み上げましたような法律基準を若干強めまして、これに対し先般お答えを申し上げましたような社内におけるチェック・アンド・バランスの機能が十分発揮できるようなことをさらにつけ加えて、免許をいたしておるような次第でございます。
  9. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、大体の証券投資信託における委託会社免許基準というものは、第四条関係では資本金が五千万円以上の株式会社であれば、これはだれにでも許すことができる、しこうしてその免許基準というものは、今申された七条関係で、証券会社有価証券投資に関する経験能力、それからその販売機構投信委託会社としての業務を営むに十分なその適格性についての条件、こういうようなものを具備しておれば、だれにでも許していい形になっておるのですね。  そこで、私がお伺いをいたしたいことはこの法律の第四条の第二項の関係と第七条との関係で、あなたの方へ今まで免許申請があったことがあるかということですね。すなわち、今までの証券会社以外のものであって、資本金五千万円以上の資本構成、そうしてその七条の免許基準適格性を持ったもの、これは必ずしも証券会社でなくてもいいわけです。新規に会社を設立してもいいわけです。そういうようなエキスパートなどが出てきて、そうしてそれだけのブランチを持って、そうして投資信託がやれるという機能を備えたものならば、だれにでも投資信託免許を与えてもいいという法律関係になっておる。従って本日までそういうような免許申請があったかということをお伺いしたい。
  10. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。今日まで証券会社以外のもので免許申請をいたしたものはございません。
  11. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、一つ明確にいたしておきたいことは、証券投資信託法の中では、証券会社兼営という関係について一条一項も触れていないと思うが、この関係はいかがでありますか。
  12. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 証券会社兼営ということについては、仰せの通り何らの規定はございません。ただ、ただいま読み上げましたように、証券売買に関する経験の点から、事実上そういうことになっておるわけでございます。なお、証券業者投資信託委託会社兼営するということにつきましては、証券取引法四十三条の規定によりまして、大蔵大臣の承認によることになっておることは申すまでもありません。
  13. 春日一幸

    春日委員 そこで、私は民法第百八条の双方代理禁止原則証券会社投信兼営との関係について、疑点を明らかにいたしておきたいと存ずるのであります。  そこで、まず第一点にお伺いいたしたいことは、この証券投資信託約款によりますと、受益者がその財産運営を信託するに当りましては、大体これこれの条件であなたに信託する、こういう形になっておると思うのです。これは私としては有権代理とみなすべきであると思うが、この点はいかがでございますか。
  14. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 法律問題でございますので、慎重に研究させていただきたいと思いますが、私どもの今までの一応の見解を申し上げますと、ただいまのところは証券会社証券投資信託委託業務兼営しておるわけであります。この委託会社受益証券を買うすなわちお客様との関係は、受益証券売買に当る、こういうふうに理解をいたしております。もとより委託者であるところの証券会社受託者であるところの信託銀行との間には信託契約が行われておる、こういうふうに理解いたしておるのであります。ただいま、春日委員から、代位契約であるか任意契約であるかという点の御質問でございますが、この点はしばらく研究させていただきたいと思っております。
  15. 春日一幸

    春日委員 私はこの問題は相当重要な問題ではないかと存ずるわけでございます。と申しますのはこの投資信託関係の各会社発行の勧誘の書類だとか、あるいは約款条項をずっと検討してみますと、ここに受益者委託会社受託会社との関係表示規定の中にその条件が明確に示されておる。われわれはかくかくの条件のもとにおいてこの財産運営委託会社に委託する、こういうことでありますから、これは明らかに有権代理であると私は理解せざるを得ないのであります。そうすると、こういう形になってくると思うのです。民法の百八条の自己契約または双方代理禁止規定というもの、御承知の通りこれは「何人ト難モ同一法律行為付キ其相手方代理人ト為り又ハ当事者双方代理人トルコトヲ得ス」とあるわけであります。従いまして、法律原則としてこの種の行為を許していないのであります。なぜこういう規定があるかというと、これは当事者のいずれか一方だけの利益に偏重するおそれがある点を顧慮して、こういう制限があるわけであります。この項は正当に解釈しなければならないと思うのです。そういたしますと、これは申すまでもなく百八条の前段禁止、何人といどえも同一法律行為、すなわち証券売買行為において、その相手方代理人となることができないわけでありますから、これは、現在の投資信託が、要するに一つ証券会社の中の証券部信託部と両方を同一人格でやるのでございましょう。そうすると、信託部の方では、信託された財産受益者にかわってその権限を行使する、代理行為契約に基いて執行しておるわけですね。そうして、その執行されたところの株券、財産運用売買があるでありましょうが、売買相手方同一人格者の中におる証券部である。すなわちこのことは、信託された要するに受益者行為代理と、それから証券売買するというその証券部行為は、私、この民法第百八条が明らかに禁止しておるところの、何人といえども同一法律行為について相手方代理になってはならぬ。法律違反する行為といものは私は無効であると思う。私が冒頭にお伺いをいたしましたの、この法律関係の中で証券会社にそういう業務免許してもいいか悪いかということが、一行隻句もそこに表示されていないということと関連をいたしまして、これは重大なことである。一言で言うならば、証券会社にこういうよらな事業、すなわち投資信託事業というものの免許を与えたということは、民法第百八条に違反をする法律違反免許であると思う。そういう疑いが少くともあると思う。さらに、一歩進んで言うならば、そういう法律違反に基いて執行されておる一切の業務契約は無効である、こういうような論理が、多少飛躍するかもしれない、あるいはまたすでに既成事実化されておりまするので、これはあるいは異様な説をなすようにあなた方は考えられるかもしれないけれども法律をそのままに解釈いたして参りますると、そういうような関係になってくるのではないかと思う。だから、私は、諸外国例等についても、これによって調べてみたのでありまするが——大蔵大臣、聞いておってくれますか。これは重要なキー・ポイントですから、読書をやめて聞いてもらわなければならぬ。私はこの関係は非常に重大な関係であると考えましたので、アメリカ投資会社法等についても、その事例をどういう骨組みになっておるかを調べてみた。そういたしますると、アメリカ投資会社法では、投資会社役員の過半数がある証券会社特別関係人によって占められている場合はその証券会社取引をしてはならない、こういうことなのです。投資会社役員関係している会社販売会社にしてはならない。これは投資会社投資政策証券会社利益及び販売会社利益に奉仕するように定められることを禁止いたしておる。外国はこういうような形によってこの民法第百八条の精神法理を貫いておるのですね。だから、私が特に強調したいことは、この投資信託法というものが制定される当時には、私は、相当この問題について、昭和二十六年でありましたか、論議がされたこととは思いまするけれども、しかし、ことさらにそういうような証券会社にこういうことを許すとかなんとかというような結びつきですね、これについては法律は何にも積極性のある表現をいたしていない。これを解釈していけば、民法の建前があって、そういうところに免許を与えてはならぬということは、当然の解釈として私は出てくると思う。アメリカだってその通りやっておるのです。同一経済行為について相異なった執行がされるということは、よほど特別の事情のある場合に限られる。実際の話、いいことはいい、悪いことは悪いのです。だから、そういうように考えて参りますと、有権代理であればこれは明らかに違法行為である。法律違反免許を与えておる。法律違反免許によって行われておる一切の契約は無効であるという論理も、あながち乱暴な理論の組み立てであるとは言いがたい。この点について公正取引委員会坂根君は何と判断されておりますか、ちょっと意見伺いたいと思います。
  16. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいま春日先生からの御質問でございますが、その法律論は、私の方でお答えするよりも、主管省の大蔵省の方から聞いていただきたいと思います。
  17. 春日一幸

    春日委員 それでは、この問題は技術的な問題よりも、やはり高度の政治的な問題でもあろうと思いますし、特にアメリカ事例等も私が今ここで申し述べました通りでありますから、そういうような判断を加えて一つ大蔵大臣から御答弁願いたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの御議論は、私どもこうして伺っておりますと、一応そういう問題の疑点というか、論点のあるところはよくわかるのであります。先ほど何を読んでおるかとしかられましたが、一応は伺っておったのであります。そこで、この法律を制定いたしました当初におきまして、二十六年時分にどういう経過であったか、事務当局の話を聞いてみますと、当時もただいま御指摘になったような点について問題があったのであります。しかし、この法律自身民法規定にも反しないという結論を出し、同時にまた、投資信託を始めるとすると、現在やっておる証券会社に許す以外にないという結論であったというのが、当時の経過であります。私事情をつまびらかにいたしませんが、お話を伺い、また自分自身でも疑問に思うところから、率直な意見として申し上げますならば、戦後の新しい証券取引制度を確立して、新しい制度を導入いたしましてまず経験がまことに浅いということ、これが一つの問題だと思います。従いまして、いろいろ実質上における弊害その他の影響等については、実際問題を見てそれに対する対策を立てるということが当然だと思う。そういう意味では、まことに経験が浅いということ、それから同時に現存する証券会社をしてその事業を扱わす以外に方法はないと申しましたことも、わが国証券市場特殊性から見まして、これまたやむを得ない、こういうことであったろうと想像するのであります。しかし、前回の御意見伺い、また大蔵当局自身も考えておりますように、方向としてはやはりそれぞれ分離する形の方向にいくものではないかと実は考えておるのであります。ただ、かように申しますと、春日委員と私どもの感じは時期的の相違が相当あるように思います。しかし、今日証券業界においても、やはりこの投資信託の今後のあり方については、いろいろ実質的にも研究しておる際でございますし、また私ども政府としても、この投信の持つ経済的な力というような点を考えて参りまして、今後のあり方についても工夫をしておるところであります。ただ一応論点としての御指摘は首肯いたしますが、当時の詳しい法理論は私つまびらかにいたしませんが、二十六年にもこういう議論が事実あったそうでございますし、結論としては民法にも抵触しないという結論を出し、また当時証券業者をしてやらすことが、結局実際問題としてはそれ以外に方法はないという結論であったというその一事を御披露いたし、ただいま申し上げましたように新しい制度でありますから、経験に基きまして今後それらについての工夫をこらしていく、こういうことでありたいものだと思っております。
  19. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大蔵大臣からお述べの大筋の点につきまして、若干法律的に補足をさせていただきたいと思うわけであります。先ほどの御指摘民法百八条の規定は、これはいわゆる自己契約または双方代理禁止するところの規定でございますことは、あらためて申し上げるまでもございません。そこで投資信託契約でございますが、これは、先ほど申し上げましたように、委託会社信託銀行との間には信託契約が行われておるわけでございまして、どこまでも証券売買受託会社であるところの信託会社証券会社との間に行われるわけであります。問題は、しかしながら、委託会社が事実上証券会社に対してさしずをしておるという点において、実質的に民法の百八条の精神からいってどうであろうかというふうな御疑問かと思うのでありますが、この点は、ただいま大蔵大臣のお述べのように、証券投資信託法制定の際に議論のあった点でございますが、いろいろわが国事情等も考えまして、第十七条というふうな規定を設けることによりまして、委託会社信託会社との間の関係が公正に行われる、しかもその売買価格等市場における一種の公定価格によって行われるというふうな規定を入れることによりまして、さような法律的な疑義を解消してこの法律が作られておる、こういうことを補足して申し上げておきます。
  20. 春日一幸

    春日委員 さっきの正示さんの御答弁は私の質問の的とちょっとずれております。と申しますのは、委託会社受託会社との代理行為に対する契約があるかないかという問題ではない。その前の、たとえばその受益者、大衆が委託会社に百万なら百万の金を証券売買することによってその利益をおさめてくれ、こういうことを委託するわけですね。その約款の中において、これは有権代理の形式をとっておるものと私は理解する。その委託会社が、今度は受託会社との関係ではなくして、その委託会社の内部であるところの証券部証券売買をやるわけですね。信託部証券部からそれを買うでしょう。その場合が民法第百八条の前段禁止条項に抵触しないか、この点を申し上げておるのです。この点はいかがです。
  21. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。  私のお答えは、いわゆる運用の面についていきなり答えたものでありますから、設定の場合のことについて触れなかったのでございますが、設定の場合におきまして、いわゆる委託会社であるところの、具体的に申し上げますと投資信託部証券部との間に売買はないのであります。設定の場合には、受益証券を売りましたところの、それによって得た収入は全部まず信託会社受託をいたしまして、その信託会社証券会社との間において初めて証券売買が行われる、こういうことになっておるわけであります。
  22. 春日一幸

    春日委員 けれども、それは事実上委託会社受託会社にさしずをするでしょう。だから、売ることも買うことも委託会社の指令によってそのことが成り立つのですから、そこでその問題がコンバインされてくるのです。私はそのことを言っているのです。その関係はいかがです。
  23. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 その点については先ほどお答えを申し上げたわけでありますが、これは、表面的には、どこまでも別個の人格者の間の当事者がいわゆる別個の人格を持っておる信託会社証券会社との間の売買でございますから、百八条には抵触いたさないわけであります。しかしながら、事実上指令する点に疑義があるというふうな点が議論がございまして、証券投資信託法の十七条というふうな規定ができまして、この指令につきまして、どこまでもそれが市場価格によって公正に行われるというふうな一種の別の保証がなされておる、こういうことをお答え申し上げたわけであります。
  24. 春日一幸

    春日委員 この問題は公取委員長にまた関係を持ってくると思うのでありますが、これはさきに昭和三十一年でありましたか、二十九年でありましたか、公取が不公正取引基準の告示をいたしております。みずから優位な立場を利用して相手に対して不利な取引をしいるの行為、こういうものは明らかに不公正取引である。これは審問審決で処断されなければならぬ関係になってくる。だから、委託会社が、みずから優位な立場にあることを利用して、言うことを聞かなければ、そういう受託会社との契約はどうでもできるのでありますから、みずからが優位な立場にあることを利用して、相手方にすなわち受託会社に不利な取引をしいる結果になってこざるを得ないのであります。だから、私は、民法とそれから独禁法といろいろな関係において、法律上疑義というものは払拭されない。これは明らかにそうだ。  それから、私は大蔵大臣前段の御答弁の中で特に御注意を願いたいことは、これは立法される当初にはこの問題に触れて論議はされたけれども民法上の違反の疑いはないという結論を得た、こうおっしゃっておる。ところが、その当時の法律は、証券投資信託法という独立した法律である。いいですか。そうして、その法律の中に、証券会社にこの投資信託免許を与えるということは、兼営を許しておるということは、法律の条文の中に一条一句も出てない。だから、その法律限りにおいては民法に抵触するものではない。しかし、その行政行為により、証券会社証券投資信託業務免許するというこの瞬間から、民法に抵触する、あるいは違法、違反する疑義、こういうものが、その瞬間から、その免許という行政措置を契機として、そこに発生するのだ。この点を大臣十分御銘記を願いたいと思うのだが、この点いかがでありますか。証券投資信託法においては、兼営という言葉については何ら積極性をうたってないから、その法律自体においては民法上の疑義はないけれども兼営を認める瞬間から、委託会社受託会社との関係において民法上の疑義を生じてくるのではないか、こういうことです。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この投資信託法自身に禁止規定がはっきりあると、もう問題はないと思います。許してもいいとか、許してはいかぬという規定がない。だから、そういう意味では、ここで実際に行うことをどうするかということで、この民法第百八条に対するものの救済規定が信託法十七条、こういうことで法律的な通念を表わしておる、かように私考えておるのであります。
  26. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 関連して。  今双方代理民法百八条の議論が出ましたが、信託行為によって信託された財産は、これは委任になるのですか、受託会社のものになるのですか、大蔵省はどういう解釈をとっておりますか。
  27. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。受託会社の所有でございます。
  28. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 民法百八条をもっと飛躍して、自分のものになったものを自分で売買するということになるので——双方代理という二つ人格代理関係ですね。そうでなしに、自分のものになったものを自分でやっておるということは、これは第百八条をもっと飛躍した、一人で取引をしておるということに法律上なるのじゃないですか。
  29. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。受託会社と申しますのは信託銀行でございます。証券会社委託会社でございます。
  30. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今春日委員の話を聞いていると、一つ会社の中に証券部受託部とがあるようなふうに聞えるのですけれども人格が違っておるなら、この議論はまだ少し研究しなければならぬ。人格が違っておるなら、今の百八条の双方代理規定を使わなければならぬですけれども、そうでないなら、これはまた別の議論から発足しなければならぬ。そこで、それではこの双方代理一つ人格が一人で双方から代理権をもらって取引をやる法律行為禁止したのが百八条です。この考え方は商法の七十五条、これは合名会社の社員と会社との取引、この規定であります。合資会社については百四十七条でこの七十五条を準用する。取締役が会社と商取引をする場合には二百六十五条によって禁止されておる。ですから、先ほど私が質問したように、一人の者が一人でこの契約をするということは法理上ないわけですから、人格が別であっても、代表者が双方の会社の代表になっておるということがもしあったら、それはどういうことになりますか。
  31. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほどお答えを申し上げたのですが、先ほど来の春日委員との質疑応答の趣旨は、証券会社委託者でありまして、信託銀行受託者である、そしてこの信託財産は、信託契約に基きまして信託会社の所有に帰しておる、その所有者であるところの信託会社証券会社との間に売買が行われておるのであるが、これは委託会社であるところの証券会社の指令を受けておるというふうな意味におきまして、実質的に民法の百八条の精神からいってどうであろうか、こういう御趣旨の御質問でございます。この点については、私どもお答えを申し上げました通りに、証券投資信託法の十七条の規定がございまして、指令についての制限があるということが第一点。それから第二に、まだ申し上げなかったのでございますが、証券投資信託法の各条項におきまして、春日委員指摘のように、証券会社に兼業させるということをまっこうからうたった規定はございませんが、六条、七条を読んで見ますると、こういうふうな適格性を持ったものは現実に証券会社以外にはないことは、先ほど来お答えを申し上げた点からいってもおわかりかと思うのであります。もう一つは、証券取引法の四十三条におきまして兼業承認の規定がございまして、この規定によって兼業の承認を与える、こういうことであります。
  32. 春日一幸

    春日委員 正示さん、そういうばかげたことを言っておられるが、それはだめです。と申しますことは、この証券投資信託法という法律が審議されるときには、証券会社兼営せしめるのだというような条文については一条もない。もしもその条文があるなら、当然今この民法百八条の排除規定か何かがあるわけなんです。あるいはまた、百八条との関係において、さらに必要なる条文がずっとここに挿入されてきてしかるべきである。ところが、この法律は四条の関係と七条の関係において、何人といえども、五千万円以上の資本金を持って、そしてその構成メンバーが証券取引のエキスパートであれば、そうしてその能力がありさえすれば、これを許す、こういうことになっておる。何も積極規定がないのです。ただその当時の情勢としては便宜的な手段として、今大臣が言われた通り、ほかに適格者もないであろう。だからスタートのときの一つの便宜手段として、ああいうような兼営免許を与えられておるわけなんです。だから、それに対する法律上の疑義は目をふさいだまま本日に至っておるのです。しかしながら、今や投信というものが二千何百億というような膨大な設定を終って、またこれの受益者の数も何十万という多きに達してくれば、そうしてこれがまた棒高にずっと株が上っていくのだから、将来おそるべき破綻の事柄をも予想すれば、今にして法律上の疑義を解く、すなわち、受益者利益を保護する立場において、何らかの的確なる規制措置というものが必要になってきておる。大臣も今その方向に向って研究を進めておるとおっしゃっておるのだから、現状というものは完全無欠だというような詭弁を弄して答弁を糊塗するということではなくして、病根があるなら、その病根に向ってメスを進めるという政治家的良心、行政官的誠実を持ってこの問題に対して答弁されなければ何にもならぬですよ。そこで、この際、私は委員長に申し上げますが、民法百八条とこの投信兼営の問題は、どうも民法違反をするのではないか。あるいはその疑義があるように思えてなりません。ただいまエキスパートであり、わが党の法規対策特別委員長であるところの田中君からも、疑義があるということが指摘されておる。だから、私は、この際、これが果して違法な許可ではないかどうか、無効の契約になるような疑いがないかどうか、民法学者を本委員会に参考人としてお招きいただいて、この問題に対して学者の専門家的立場から疑義を氷解したいと思いますので、後日そのようなお取り計らいを願いたいと思います。この点について委員長の御見解をお伺いいたします。
  33. 早川崇

    早川委員長 よく春日委員の御趣意了承いたしました。
  34. 春日一幸

    春日委員 そういたしますると、民法上の論議につきましては、後日民法学者を一つ委員会に参考人として御出頭願うことによりまして、これはわれわれの推測やしろうとの判断ではなくして、有権的な解釈というものをここで出していただく、こういうことにいたします。  いずれにいたしましても、実際問題としては、これは兼営を許しておりまする限りにおいては、これにつきましては当事者の誠実なる職務執行の保証がない。何も法律当事者が誠実に受益者利益を確保するということに対する職務執行の保証はない。それからまた大蔵大臣の監督権というものについても限界があります。現にあなたの方の監督行政を指摘してみるならば、名義貸し、これなんかは、あなたの方が監督しておりながら、名義貸しをめちゃくちゃにして、四大証券の名義貸しも、検察権が介入することによって初めて明らかになったではないか。あなた方は、証券の監督行政をやっておったら、検察権が入る前に、少くとも行政監督によって、そのような違法行為はすべからく摘発して、公正なる運営を確保していかなければならぬ。だが、あなた方は検査をやっても監督をやっても、何もちゃらんぽらんで、何の成果も上っていない。この間中外証券について佐藤委員質問いたしましたけれども、これまたしかり。これに対してあなたの方は免許を与えておいて——免許を与える条件は、確実な会社でなければ与えられない。与えておいて、やってみたら七億何千万というような膨大な借金がある。今一千数百人の人々が、ほんとうにトラの子の財産をなくして、泣きの涙で、保全経済会の二の舞いだ。あなた方は何をやっておる。従いまして、こういうような問題は、結局は当事者に誠実なる職務執行の保証が法律上ないということと、一つは、大蔵省で、あなた方がかわってだれがなっても——正示さんだけがだらしないというのではない。あなたはずっと昔から誠実な人だけれども、だれがやっても、人間の行為をこえておる事柄が付託されておるので、やり得ないことなんです。従いまして、こういうような情勢下においては、少くともこの投信兼営というものは不当であると断ずべきであって、不当であるならば、これは、大蔵大臣が今述べられたように、可及的すみやかに是正されなければならぬと思う。そういうわけでありまするから、これはしょせん是正されなければならぬ。  そこで、私はこの際、ついででありまするから、是正の場合の心がまえ、是正とはすなわちその兼営の分離ということに相なるのでありましょうが、分離する場合においても、特に御留意を願わなければならぬことは、その取引先の制限であります。私が今冒頭に申しましたように、米国の投資会社法で明らかに規制しておることは、投資会社役員の過半数がある証券会社特別関係人によって占められておる場合は、その証券会社との取引禁止しておる。投資会社役員関係しておる会社売買してはならぬ、販売会社にしてはならぬ、こういうような規定があるのでありまするから、分離する場合の立法、これをただ分離して、二つの統一人格資本的、人的に支配下にあるものに対して同じような売買行為を許しておくということでは、ただ形式だけを直して、実体の改善は何らはかられないという形になるから、この点についても大蔵大臣は十分配慮を加えられて、万全の措置をとられたいことを強く要望しておきます。  私は、この際、いやみではありませんけれども、特に大臣に伺っておかなければ問題の核心が明らかにならぬと思うが、これはたしか本年の三月初頭であったと思うが、二・三の大新聞に報道されたところによりますと、やはりこの投信兼営の問題は弊害があるという立場から、大蔵省は投信兼営分離の方向へ研究を進めておる。そして分離すべき旨四大証券会社に対してサゼスチョンを与えたというような記事が載っておりました。自主的に分離するのか何か、そういうような方向に向くようにサゼストされたというような記事が載っておりましたが、そういうような事実がありましたか、ありませんでしたか。この点についてお伺いいたします。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 このことにかかわらず、全般につきまして絶えず研究をいたしております。それがサゼストといわれる程度のものかどうかは別でございます。私は、この機会に、せっかくいいお話が出ておりますから、基本的な考え方について率直に申し述べてみたいと思うのであります。先ほど来の私の答弁のうちにも出ておると思いますが、何といっても経験の浅い日本証券市場あり方でありますし、また同時に株の絶対量は非常に少い日本でございますし、また社債等にいたしましても量は非常に少い。あるいはまた市場そのものもアメリカやイギリスなどに比べて非常に小さく弱いものであります。そういう点もやはり考慮に入れて改善をはかっていく、しかも、目的はどこまでも正しい、また実勢力に伴う証券あり方というものを育成していくのが、取引所なりあるいは証券業者に私どもが希望する点でございます。そういう場合には、ただいま申し上げるような特殊性を十分勘案して、いわゆる理屈だけは通ったが、実際の取引に非常な支障を来たすというようなことに相ならないように、絶えず非常に気をつけておるのであります。従いまして、先ほど来のいろいろのお話にいたしましても、私ども、ただ学者の議論なりあるいは研究室の御議論としては、ほんとうに拝聴に値するものがございます。しかし、生きておる経済界に対しての問題として、直ちに結論についての断を、どういうような意見を持っているかということのお尋ねでありますと、やはり大蔵当局としては言を左右にする。これは、ただいま申し上げるような、生きている経済界に対する問題でございますから、そういう意味で慎重になるといいますか、せっかくのお尋ねに対しても答えが不十分だ、こういうようなおしかりを受けるかと思いますが、その点は御了承いただきたいと思うのであります。また、政府自身がいろろい検討しておるばかりでなく、業界そのものにおいても絶えず工夫し、いろいろの研究をいたしておるのでございます。こういう点では、証券取引あるいは社債等の取扱いが真に経済発展に寄与するという観点に立って、業界もただ利潤だけを追っているものでないということは、やはり理解してやっていただきたい、かように思うのでございます。
  36. 春日一幸

    春日委員 業界がほんとうに公共性を保ち、公益性の上に立って運営をして、みずからの利益というものを全然顧慮せずして、大衆の利益だけをはかってやっておるというなら問題はないのですよ。ところが、中外証券なんか、私はその事業に対する影響をおもんぱかって、そういうスキャンダル的なことは一言隻句といえども述べていない。現実問題として私は申し上げるが、そういうような資料はこのトランクの中に一ぱい入っている。どうかつするわけではありませんよ。私は、そういうあなたと同じような深甚なる配慮のもとに、オーソドックスな議論を進めておる。もちろんいいことはいい、悪いことは悪いということで、本委員会は、国民から信託されておるその責任において、悪いことは是正していかなければならぬ。理論的には悪いと思うけれども、それは学者的な、あるいはまた研究室の中のアカデミックな理論であって、実際には適用できがたいというようなことを大蔵大臣が言って、一体あなたの責任が果せると思うのですか。こういうような制度が悪ければ悪いということで直さなければ、一波万波を呼んでずっと悪い影響を各方面に与えていく。だから、そういう問題は気づいたら直さねばならぬ。そこで、あなたも、その投信兼営の問題は弊害があると思うが、ただ春日大臣との間の開きは時間的の問題であると言われておる。だとすれば、私があなたに伺ったことは、結局こういうことだ。本年の三月三日ですか、ある大新聞が報道したところによりますと、これは分離した方がいいという自主的な措置について勧告をされたことがあるやに報道されておる。だから、そういうようなことを勧告なさった事実があるかないか、そのことを伺ったのです。御答弁願います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 具体的にまだそこまではいっておりません。
  38. 春日一幸

    春日委員 それでは勧告か措置か自主的な規制か、いずれにしても分離する方向へあなたは踏み切っておられるのか、この点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろ研究しておる段階でございます。
  40. 春日一幸

    春日委員 その点は含蓄ある御答弁として、これ以上追及しないことにいたしておきますが、ただ問題は、保全経済会のように、傷口がザクロのように開いてからでは何もできないということです。われわれは、第十五国会以来、本委員会において、しばしばこういうような問題を取り上げております。われわれが思い起すことは、かつて保全経済会が問題になったときに、早く処理しなさいということで、時の銀行局長河野君に対してしばしばわれわれは警告を発した。一年たち二年たっても、今あなたが答弁されたように、研究中である、何らかの措置をとらねばならぬという答弁を繰り返しておったが、果せるかな破綻を生じた。その結果どういうことになったか。私は、ほんとうに前例をよく考えられて、後にその轍を踏むことのないように、この問題については十分戒心されて、すみやかに必要なる措置をとられんことを強く要望いたしておきます。  そこで、七つの問題の中の二つが済んで、今度三つ目に入るわけでありますが、まず取引所の中立性の問題についてお伺いをいたします。現在取引所で直接売買されているものは、売買高全体の何パーセントに当りますか、これを伺います。
  41. 松井直行

    ○松井説明員 今の御質問の趣旨に沿いました場内取引と場外取引というものの数量の均衡から申し上げますと……。
  42. 春日一幸

    春日委員 質問したことだけ答えて下さい。現在取引所で直接売買されているもの……。
  43. 松井直行

    ○松井説明員 場内取引を一〇〇としますと、場外取引は大体一〇%程度であると思います。
  44. 春日一幸

    春日委員 それでは、私この際伺いますが、取引所で直接売買されておるもの、たとえば東京なら東京証券取引所の場内において直接売買されているもの、それはどのくらいですか。売買高全体の何パーセントですか。
  45. 松井直行

    ○松井説明員 直接売買という意味を、証券業者が、自分が一方の売り方、買い方に立っていないという意味に解しまして、バイカイ以外の数字が四〇%で、バイカイが大体六〇%前後になっております。
  46. 春日一幸

    春日委員 それはわれわれの調査しました資料も大体そういうことになる。直接取引売買されているものは、売買高全体の大体三五%、それから他の六五%は、これはバイカイという形式で、主として四大証券で行われておる。そういたしますと、これではまるで取引所は単なる値つけの場所に堕落し去っておるのじゃないか、こういうきらいがある。なぜこのような不自然な結果になってきたのか。これについて政府は何と見ておりますか。四大証券のバイカイが六五%である。そして直接の取引がその半分であるというようなことは、異様なことだとは思わぬか。どうしてこんな結果になってきておるのか。これについてのあなたの方の分析とその理解を伺いたい。
  47. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま春日委員のおあげになりました数字は東京証券取引所の数字かと思いますが、私どもの調べによりましても大体五割八分八厘、これは時点が少し違っておるかと思います。二月中の東京証券取引所のこれがいわゆるバイカイという取引でございます。このバイカイという取引についてのただいまの御質問でございますが、これはいろいろとこの取引方法についての功罪は議論のあるところでございます。しかしながら、わが国の実情から申しまして、われわれとしては今日やむを得ざる問題としてこれを認めておるわけであります。いわゆる取引所の業務規程の中において、その規定があるわけであります。しかしながら、このバイカイというものがどういう意味においても認められておるかというと、そうではないのでありまして、いわゆるバイカイの中にはつけ落ちバイカイあるいは値つけバイカイというふうな、今日取引所においてはこれを違法として禁止をしておるようなものも、従来一つの仕法としてあったわけであります。さようなものはこれを禁止しておるわけでございますが、そういう特殊のものを除きました正常なるバイカイにつきましては、先般の御質問にもございましたように、わが国におきまして、沿革的また今日の実情から、証券業者がブローカー業務とディーラー業務とを兼ね行なっておるということ、これが根本の理由でございますが、そういうふうな点がございまして、金融機関投資信託、一般顧客の大量注文に対しまして、証券業者が売り向いあるいは買い向うというふうなこともやむを得ざる一つ方法である。これによりまして、むしろこういうものを規制することが、需給の適合の範囲を非常に狭小にすることによって、かえって価格の形成が不公正になっていくというふうな弊害とあわせ考えますならば、こういうこともある制限のもとにおいてはやむを得ないことである、これが私どもの見解でございます。
  48. 春日一幸

    春日委員 この問題については、われわれも異様なことに思いまして、いろいろと分析をいたしてみました。今正示さんの御答弁もありましたが、大証券では結局このバイカイはどういうような場合にやってくるか、またそのバイカイの率というものがどうしてこんなに高まってきたか、いろいろ調べてみた。そういたしますると、バイカイは、結局店の客に株券を分譲する場合、それからまたこれを引き取る場合、それから買った株券を投信に組み入れる場合、それから投信同士のコロガシ、こういうような結果として、投信兼営する場合においては今のこのコロガシと組み入れ、この二つのことを入れて、結局はバイカイ行為というものが必然的にかつ不可避的に旺盛ならざるを得ない。この結果どういう弊害が生じてくるかというと、大証券中心主義の運用によって、気ままな株価操作が行われるということになる。六五%の取引がバイカイによって行われておるという現実は四大証券中心主義の運用によって、気ままな株価操作が行われる。二つには、取引所が、これらの過当的なボスの支配によって、彼らの都合のいい方向へ利用されるきらいがある。かくして国家の公器たる取引所の中立性が侵害され、その機能の上にも絶大な影響をもたらすであろう、こういうことは当然心配されなければならぬ事項として、政府の方においても十分配慮があってしかるべきである。  そこで、私は公正取引委員会にお伺いをいたしますが、元来言うなれば取引所は中央銀行の中立性と同じように運営上の公正なる中立性が維持されなければならぬと思うが、この大原則について、何か公取の方において別の御意見がありますか。
  49. 坂根哲夫

    坂根政府委員 それは春日委員指摘通りかと思います。
  50. 春日一幸

    春日委員 従いまして、その使命は、証券の公正なる流通の確保、二つには価格決定の自然なる調整機能の確保、これは論ずるまでもないことと思う。それから三つに、投資家を保護するための取引所の機能というものが、他の何者にも作為的に侵されないように、不可侵の原則というものが確立されておらなければならぬ。しかるに、現状においてはどうであるか。問題は現状です。その原則は今問題のないところであろうが、その機能を確保する使命というものは、これまた私が今申し上げたように三つの条件に集約されると思うのだが、しかるに、その現状はどうであるかといえば、四大証券による取引所の独占的傾向がはなはだしく強い。結局は、東京に、東京証券取引所のほかに、この四大証券を含めて証券取引所が五つあるようなものだ。これでその大目的を達成することができると思いますか。公正取引委員会はどういうふうにこれを見ておりますか。少くとも三五%だけは証券取引所によって値つけをしておいて、そして現実には六五%というものがそのバイカイによって四大証券みずからの手によって操作をされている。取扱い量においても額においてもこういう結果になってきておる。これでもって果して取引所の使命それから任務が果されておると思うか、公共の利益がこれによって確保されておると思うか、これに対して公取の御研究になっておりまするところを一つお示し願いたい。
  51. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまの問題は証券取引所の中立性の問題でございますが、それは春日先生の御指摘通りであろうかと思います。そしてこれが四大証券のボス的支配に踊らされているという御指摘については、私どもまだそういう事実の調査をしたこともございませんし、これについては証券取引法の監督の問題からも来る問題であろうかと思います。しかし、先日来春日先生の御意見を伺っておりますと、結局帰一するところは、四大証券会社がその証券取引の面においてかなり独占的な地位を持っておる、そこに問題が胚胎しておるという工合に、私は御意見を承わったのでありますが、こういうように四大証券会社が併存して競争をして、みずからの能力をもって証券取引の分野で伸びていくということは、現行の独禁法では押えるわけにいかないわけであります。これは、私から説明するまでもなく、独禁法の権威であられる春日先生のよく御承知のところかと思います。しかし、もし、この四大証券会社の間に、いわゆる独禁法で規定しておりまする共同謀議に類するような行為がありとすれば、それは研究の対象になろう、こう考えております。
  52. 春日一幸

    春日委員 あなたの方には広範な権限が与えてある。ところが、給仕から委員長まで加えて定員が百六十何名で、混濁の経済現象に対してこれを把握し、そして違反事項に対してことごとく摘発する能力がないという慨嘆は、私どももしばしば聞いておるところだから、いわんやこういうマンモス的な一つの仕組みを百六十何名の諸君によってやるということは無理かもしれません。けれども、問題がありと見たら、少くとも公正取引委員会は、経済検察庁たるの立場に立って、警告を発するなりあるいは調査をするなりすべきだ。こんなことを見のがしておいて、今まで何もやっておらぬから知らぬというような答弁を、少くとも坂根君のような有為な少壮の公取の事務局長がそういうぐうたらな答弁をするようなことでは、私はほんとうに落胆ぜざるを得ない。政府がぐうたらでも、少くとも公取だけは健全だということで、これはけしからぬと思うので近く調査のメスを加えようと思っとるくらいのことは、この際答弁ができぬのか。私がずっと二日間にわたって長時間これを論じておることは、だてや酔狂で言っておるわけじゃない。政府機関と国会とが協力してとにかく問題点を是正しよう、こういうことでやっておるのです。あなたは今四大証券市場独占支配の傾向、株価というものが不当に操作されておるというこういう傾向、そうして公衆の利益がはなはだしく侵害されておる、あるいは侵害されるに至るおそれがあるという、こういうような指摘に対して緊急に調査を開始する意思はないか、この点を伺いたい。
  53. 坂根哲夫

    坂根政府委員 証券取引の問題につきましては、昭和二十六年でございますか、たしか私どもで一応証券取引の現状を調査したことがございまして、そのときも、四大証券のオリゴポリーといいますか、寡占というものが考えられたのであります。しかし、それは法律上、現行独禁法ではどうにもしようがない。これは先ほど申し上げた通りであります。なおかつ、春日先生が先日来から御指摘になりましたような問題が相当重要視されてきているということでありますれば、これを調査すること、しかし調査の結果が直ちに独禁法の問題と結びつくかどうかということは今申し上げられませんが、調査することはやぶさかでない、こう考えております。
  54. 春日一幸

    春日委員 独禁法、不公正な取引禁止、こういうような法律に照らして、今四大証券がやっておるところのこれらのバイカイ行為、しかも、その量というものも、質というものも、現実に取引所で行われておる額の倍になっておるというこの事態にかんがみ、私は、公正取引委員会の方に対して、独禁法に照らしてこれに違法行為はないか、これをすみやかに調査されることを強く要望いたしておきます。  ついては、私は大臣に強く要望いたしたいのでありまするが、政府は、このような弊害を、実情にかんがみまして、少くともこのバイカイ取引についてはある程度の法改正をして、何らかの規制を加える必要があると思うが、この点についての大臣の御見解はいかがでありますか。このバイカイ取引がこのようなカーブを描いてずっと進んでいくならば、あるいは将来この六割、たとえば六五%というものが七五%になり八〇%になっていったら、一体何としますか。だから、私はある限界において、株式の——証券取引所の権威とその機能を確保することのためには、現在のバイカイ取引量というものが著しく増大し、実質的には取引所が東京に五つもあるような異様な現象がここに現われてきておる。これに対して何らかの是正の措置を講ずるの意思はないか、この点を伺いたいと思います。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 このバイカイ取引につきましては、絶えず注意を喚起いたしておるのでありまして、現在におきましては取引所自身自主的に絶えず注意し、また規制を加えておる次第でございます。
  56. 春日一幸

    春日委員 私は、以上で七つの問題の中でまだ二つしか済んでおりません。バイカイ証券の問題、証券取引所に関する問題、この管理機構をまだやらなければなりません。証券是正の問題、証券金融に関する問題をやりまして、あと大蔵省の無定見なる管理行政、そこから来たるところのさまざまな弊害、答弁のいかんによってはスキャンダルもばらす、そういうことになっておしまいになるのでありますが、そういたしましたら、ことごとくこれは中途半端になりますから、次の機会に継続の質問をお許し願うことにいたしまして、本日は私の質問はこれで終ります。
  57. 早川崇

    早川委員長 石野久男君——石野君に申し上げますが、中途半端になっても、一つ十二時半ごろまでに参議院の都合で打ち切りますから、御了承願います。
  58. 石野久男

    ○石野委員 打ち切られては困ります。留保いたします。  私は、非常に時間がないようでございまして、質問が中途半端になると思いますけれども、時間のあるだけ一つ大臣から簡潔な御答弁をいただきたいと思います。  先般の三月三日の本委員会において、わが党の平岡委員から西欧通貨の交換性の回復という問題に関連しての質問がありました。しかし、それに対する大臣の答弁が十分でなかったと思いますので、私はその点について特に掘り下げた質問をしたいと思います。  今回の西欧における通貨の交換性回復という問題については、大臣は、平岡委員に対して、欧州諸国の通貨の交換性は回復したが、各国の貿易の基本的な考え方は変化ないという御答弁でした。しかし、われわれの見解では、この十四万国にわたる交換性の回復ということ、そして貿易の自由化への方向というものは、非常に大きな、これらの国々における貿易に対する基本的な変化がその中に内包されておる、こう思うわけです。特に大臣も御承知のように、これらの十四カ国の中では、スイスとかスエーデンまたは西ドイツはもう本格的に居住者交換まで認めているというような実態になっておりまして、これはもうむしろ貿易の自由化が真剣にここでは論議されておると思います。西欧諸国が通貨の交換性回復をしたということは、少くとも為替管理の障壁を破って、貿易を円滑化して、自国の国内経済を有利に発展させようとする積極的な意図に基いて行われたと思うのでありまして、これは決して大臣の言うように基本的なものの考え方が変ってないのだというふうに軽々に見のがすべきものではないと思います。大臣は、平岡委員質問に対する答弁の中では、基本的に変化はないといいましても、しかし、それを受け入れる側におきましては、当然影響のあることは見のがせないということを言っております。しかし、基本的に変化はないというような考え方を大蔵大臣が持っておられるということにつきましては、非常にわれわれはその見解の内容に疑義を持ちますので、私は、この機会に、この西欧諸国におけるこれらの通貨の交換性の回復が世界の貿易の上にどういう影響を与えてきておるのか、また特にわが国が直接関係する東南アジア諸国に対して、これらの問題はどういうふうに影響を及ぼしてくるだろうかという問題、それから、日本にはこのことはどのように影響が出てくるかという問題について、あまり長い答弁は必要でありませんから、基本的なものの考え方を一つこの際聞かせていただきたい。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通貨の交換性を回復したというか、欧州各国が同時にこれを実施した。これが、ただいま石野さんでは、基本的に変化がない、こういうふうに聞き取っておられますが、ただいままでのところ直ちに通貨の交換性回復の結果としては現われておらない。しかも為替貿易の自由化の方向には大きくこれが踏み出したのだということは、はっきり申しておるのでありまして、あるいは表現が不十分であり、かような誤解があったのかと思いますが、石野さん御自身もこれは幾多の問題を内蔵しているとおっしゃる。この内蔵という表現が、今私どもが申しておるこの通貨の交換性を採用したが、それで直ちに貿易自由化の面に影響を及ぼしているものが具体的にまだ出てきてない、こういうことを申しておるのであります。それはもう内蔵しておるとおっしゃる通りです。これは今後の為替貿易の自由化の方向に大きく踏み出しているその一つの準備だということはいえるのであります。また、同時に、欧州各国におけるコンモン・マーケットの結成、これが一そう活発な活動をする。この通貨の交換性はそういう意味では非常に役立っているということなどを考えて参りますと、今の為替貿易政策について、正面切っての政策転換というものは出てはおりませんが、これから先の傾向というものについて、私ども十分対策を立てていかなければならぬということで、全然何も変りがないから涼しい顔をしていていいというものでないことだけは、同じような気持で私どももいる、かように思います。
  60. 石野久男

    ○石野委員 変化がないということじゃなしに、大体変化が出てくるというふうに考えているという御答弁ですが、私はその通りだと思います。そこで、私が先ほども尋ねましたように、これが今すぐ、交換性を回復してからまだ二カ月、三カ月で具体的に変化がこないことは、常識としてだれでも考えられることなんです。問題は、貿易政策をとるに当って、それがどういうふうに世界の貿易の上に影響を与えるか、特に日本関係する東南アジア等についてはどういうような影響を与えてくるだろうか、それから日本の貿易自体においてどういうふうにそれが受け取られなくちゃならないかという問題が非常に重要なわけです。私がこれから聞こうとすることは、これらの問題に関係して、先般お話がありました円為替の導入を前進しなければならぬという問題をどうするかということ、特に為替管理、貿易管理の問題をどうするかという問題、そういう点で四点ほど私は聞きたいわけなんです。  そこで、先ほど私からも質問しましたように、世界の貿易にはどういうふうに影響するだろうかという大体の政府の見解、特に東南アジア等にはどういうふうな影響が出てくるだろうかという問題について、一つ御所見を承わりたい。
  61. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 先般の西欧諸国の通貨の交換性回復によりまして、基本的には先ほど石野先生がお述べになり、また大臣もその通りだというお答えがありましたように、これから各国ともだんだん貿易の自由化、為替制限の緩和という方向に移っていくものと思います。今度の交換性の回復に見られましたように、今後、世界経済につきましては、一方でそういうふうに協調ということが非常に重んぜられてきております。その中心として欧州の共同市場というようなものがございますし、こういう点から見れば、世界経済に対して将来長きにわたって発展していくという好ましい傾向があり、同時に、一たん通貨の交換性を回復いたしました以上、その為替相場を維持するための絶大な財政金融上の努力ということも、各国ともとると思います。つまり国内経済を正常化して輸出を伸ばしていくという策をとってくるものと思われます。そういたしますと、さっきの協調性ということの反面に、激烈な輸出競争というものがやはりそこに予想されるのじゃないか。従って、これに対しては、日本といたしましても、一方におきまして、西欧の通貨交換性の回復というのは、世界経済全体から見まして、世界貿易が拡大していくという意味において非常に好ましい方向に動くということはもちろんでありますが、一方において、各国が強い経済の体質というものを作り上げまして、競争場裏に非常に強く出てくる。これに対しては、わが国としても、各国の輸出競争力に耐えるだけの体質の改善をして基礎を作っていくということが、今後われわれが進めていかなければならない一つの大きな政策だと思います。  これの特に東南アジアに対する影響でございますが、長期的に見れば、さっき申し上げましたように、今度の措置が究極的には自由化の方向を向いているということでございますので、世界全体の経済が大きくなって、従って東南アジア等の原料供給国にもいい影響は与えると思いますけれども、しかし、さればといって、各国の輸出競争が特に東南アジア方面においても強くなる以上、これに負けないだけの措置日本としても十分にとる必要がある、さように考えております。
  62. 石野久男

    ○石野委員 各国に与える影響として、とにかく世界の貿易市場に非常に大きな輸出競争が出てくるということになりますと、当然、わが国における貿易の問題としても、従来通りの考え方であってはいけないということになるのは必然であります。そういう建前から、先般の平岡委員質問の際にも大臣もはっきり認めておりますように、わが国においても、当然のことながら円為替の導入の問題が出てくるわけでございます。この円為替の導入を前進せねばならぬということについての政府の考え方は今検討中だ、というような答弁でございました。しかし、とりあえず為替の自由化、非居住者の円資金解放、基本的には通貨としての円の価値安定をはからなければならない、こういうようにおっしゃっておるわけであります。そういう観点から、各国の信用を日本円に対して確保するということになりますると、その準備態勢というものが当然ここでは必要になってくる。いずれの国も、通貨の交換性を確保しようとするときには、外貨ドルの確保、あるいはまた国内における金準備の態勢をそれぞれ準備しておるわけです。わが国におけるそういう問題に対する対処の仕方として、現在円の価値安定をするために所要のいわゆる外貨ドルというものは大体どの程度に予想されるのか、また金準備はどの程度に必要であるかということについて、これは正確に計算はなかなか出にくいと思いますけれども、しかし、少くとも今日西欧における通貨の交換性というものが出て参りますと、それはただ時期の過ぐるままに待つことはできない喫緊の問題になっておると思います。政府としてもおそらくこの問題には早急に手を打たなければならないということになっておると思います。これを、政府としても、そうではないんだ、もっとしばらく時期を見ようということならば別でございますが、それではとても日本の貿易を確保することはできないだろうと思います。私は、この際、政府としては、そういう円の価値安定のためにとるべき、日本の持つ外貨ドルはおよそどの程度に予想されるのか、あるいはまた金準備はどのくらいのところまでしていこうというような構想は当然持っていなければならないが、それについての政府の考え方を一つ承わりたい。
  63. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 わが国が円為替の方向に踏み出すために、どれくらい外貨保有をしておったらいいかというお話でございましたが、これは実は今先生のおっしゃったように明確な基準がございません。要するに世界貿易の中で円が信用を得るにはどの程度持っておればいいかということでありまして、日本の財政金融政策一般が非常に正常化しまして、貿易が将来に向って伸びつつあるという状況にあります場合には、割合に少い金額でもできるわけでございます。しかしながら、いつもそういう状況にあるわけではございません。御承知のように、三十二年度におきましては一挙に巨額の保有外貨を失ったというような事態もございます。そこで、今後の国際収支が確実に上向いておるか、あるいは下向きになるおそれがあるかというような点が、相当決定的なポイントでございます。ただ、現在の外貨保有額は、二月末ですでに御承知のように九億三千八百万ということでございますけれども、今度西欧で交換性を回復いたしましたイタリア等にいたしましても十三億か十四億持っておるはずでございます。まあどれだけ持ったらいいかということははなはだむずかしいのでございますが、現在の九億ドルで満足していいかということになりますと、これはまだ満足すべき状態ではない。しかし、どこまでためるのかということは、国内の問題とも関連しまして、ただ外貨さえたまれば、国内はどんなに不況になっても問わないということはございません。その辺のかね合いで徐々に保有外貨を充実していくことが必要だと思います。  その中で、第二のお尋ねの金の問題であります。これは金を持つかドルを持つか、さしあたりは御承知のように同じでございます。IMFの規定によりまして一トロイ・オンス三十五ドルというのが公定相場になっておりまして、その公定相場を基礎して各国のドル相場はきめられておりますから、金もドルも同じ基準になっております。しかし、世界各国の慣習からいきまして、金を全然持たぬということもいかがかと思いますので、最近若干日本銀行が金を持つようになりました。これも幾ら持ったらいいかということはなかなかむずかしい問題でございます。一がいに金は何割ぐらいということは申し上げられないと思います。
  64. 石野久男

    ○石野委員 金と外貨ドルとの関係がどういう比率になるかということについては、これはわが国が円為替を実施しあるいは通貨の安定性を確保する上については、この比率はほとんど同じようになりますから、そう問題でないということは私はよくわかるのです。問題になるのは、総額どの程度のものが必要であるかということになると思うのです。先ほどイタリアの場合を十三億ドルとか言っておりましたけれども、たとえばIMF統計月報の一九五九年一月号によりますと、イタリアの場合でも、五七年の七月には十四億三千二百万ドル持っておることになっております。そのほかに別な資料からつけ加えられるものを合計いたしますと、一九五八年は、これは不確定資料ですけれども、大体二十二億ドルというような数字が出ておるわけです。日本の場合今ドルあるいは金の準備の総額は大体どの程度になっておりますか。それからまた、イタリアの経済規模と日本経済規模との関係からして、当然金なりあるいはドルの持ち高が違ってくると思うのです。そういうような比較の中で、大体わが国ではどの程度のものを持たなくちゃならないかも当然政府としては予想ができるわけですし、またその予想を持たなければ、西欧の通貨交換の回復ということが出てきているときに、政策は出てこないと思うのです。大まかでいいですが、大体そういう各国との相対的な関係の中で見込まれる金準備並びにドルの総額的な面ではどの程度のものになるか、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  65. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 イタリアについては先ほど十三億と申し上げましたが、その後どんどんためていることは事実でございます。ただ、ヨーロッパ諸国におきましては、EPUにかわりましてEMAという組織ができまして、このEMAの組織の中にファンドができまして、各国の通貨準備に困難がありました場合に、クレジットを互いに与え合うという機構が一方にあるわけであります。日本としては、それに対して、そういう機構の中に入っておりません。そういう違いはございます。ただ、今回、先ほども提案理由をここで御説明申し上げましたように、IMF、世銀の増資が今度確定いたしました。これが、世界経済に対して、そういう短期的な資金不足に対する緊急の調整作用をするというような点も考えられますから、手持ち外貨だけで全部まかなわなければならぬということでもございません。また、日本経済が将来も非常にしっかりしているということになれば、外国からのクレジットも相当できるはずでありまして、こういうものを考えまして幾らになるかということは、はなはだむずかしいのでありますが、少くとも、現在のところでは、まだ円為替に踏み切るようなそれだけの準備がなかろうという感じがいたします。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へんむずかしいお話でございますし、それが金額的に明示ができれば非常にいいということで、金額が幾らになればどうかというお尋ねは一番わかりいい話でございますが、ただいま為替局長からお話をいたしましたように、問題は非常に多額のドルを持っておりましても、経済自身が下向線をたどっておる場合だと、これは意味のないことになるのでございますし、また今の保有外貨そのものが多額でなくても、経済の基盤が非常に強固であり、国際的に信用があり、将来発展が着実に期待できるような状況であれば、別に私は心配は要らないものだと思います。そこで、大事なことは、金額よりも経済の持つ実勢力というものをいかに判断するかということに尽きるのではないかと思っております。  そこで、総体で申しますと、最近の出来事で私どもが一番気にいたしておりますのは、過去一年の間に五億ドルも引っ込んだとか、また五億もこれが回復するとか、こういう点が実は非常に心配なのです。だから、今の十億に足らないうちに、ただ非常なドラスティックな処置をとりますことは影響が大きいのではないか、こういう意味で実は慎重に考えておりますが、私どもは、金額が十二億になればいいとか、あるいは十四億になればいいとかいうことでなしに、経済の実態を十分に見きわめて、しかる後にそれぞれの処置をとって参りたい。従いまして、金額そのものとしては案外少い状況においても、積極的な方法をとってもいい、抽象的にはそういう結論になるのだと思います。  問題は、現在の経済そのものに対する自信なり確信なりをどう持つかということであります。これは昨年のなべ底景気を経過しての経済でございますから、まだ半年程度の経過、ことにまた三十四年度の予算を作っている今日、非常な確信を持ったお話をすることはいかがかと思いますが、世界的な信用が非常に高度になり、またその辺では普遍的な評価を伝えているような状況でございますし、今日の状況から見まして私あまり心配はいたしておりません。ことに、今三十四年度一年を経過すれば、きっと外貨保有額はふえて参るだろう。今の経済企画庁の黒字としても一億六千万ドル程度の金額を予想いたしておりますし、今後の経済の拡張いかんによっては、この金額がふえることはおよそ考えられても、ちょっと減ることはあまり心配はない状況にありますので、そういう点、特に各方面の意見を十分聞いて、最終的には結論を出して参りたいと考えております。
  67. 石野久男

    ○石野委員 外貨ドルをどれだけ持つか、あるいは金準備がどれだけあるかということにかかわらず、国内経済の態勢がどれだけ実勢力を持っているかということの方が大事だと思います。これは私も同感だと思う。しかし、それだからといって、外貨ドルあるいは金準備が皆無であっていいというわけではございません。おのずからそこには相関的な関係としての実際の所要の額が必要になってくると思う。欧州の場合は、先般いわゆる通貨の交換性が回復されたことによりまして、従来持っていた決済同盟というものが通貨協定の形に変ってきている。通貨協定の形の中で、これらの諸国はおのおの国内の体質改善を要請されるような事態も出てきているし、しかもそれを相互に援助し合うという体制が出ているわけであります。為替局長が言っているように、日本は今日の場合そういう体制を持っておりません。しかも、経済の場にしましても、日本経済の実態がほんとうに底力のあるものであるかどうかということについては、非常に不安があるわけです。輸出の面では若干の安定性は出てきているかに見えますけれども、輸入の面ではまだまだ不安定なものがあるといわなければならぬ。特に昨年来の輸入の実態を見ますと、多分に国内経済の政策的な面においてこれを抑制されたという傾向、これは政府自身もよくおわかりだろうと思う。本年度の経済の動きの中で輸入がどう動くかという問題は、非常に重要になってくると思います。私はやはり日本経済の実態というものは、欧州十四カ国諸国が置かれているような環境とは非常に違っている型で、非常に困難な道を歩んでいるのではないかと思います。従って、そういうような輸出の面、特に輸入の面におきまする不安定性というものに対するどれだけの確信を持つかということと、それからそれと連関して日本がやはり通貨の交換性に踏み切っていく、貿易の自由化の方向へ踏み切っていくという問題との関連性は、非常に緊密であります。政府は、先般来、世界もそういう動きになっているのだから、日本もそういう方向にいきたいということを言っておるけれども、実勢としては、そういうことはできないような事態がそういう経済の内包的な事情の中で出てくることも、懸念しなければいけないわけであります。やはり言葉の上でやるのだ、やるのだと言っても、実際に力がなければできっこありませんから、そういう問題についてどうするかということになってこようと思うのです。そこで、私が先ほどから言ったように、大体日本経済の実態からいって、どの程度の金準備の高が必要であり、また外貨ドルの必要性があるか。また、今日われわれが見るところでは、本年の二月末におけるところの外貨の保有高は八億三千五百万ドルだ。それから金準備は一億ドルちょっとこえておる程度であって、十億に満たないわけであります。しかも、先ほど言ったように、輸入の面では非常に不安定なものがあって、国際収支の上に非常な影響がくるかもしれないという懸念があるということになりますと、どうしても、大臣が言うように、金準備はどれだけあるかとか、あるいはドルがどれだけあるかというよりも、むしろ経済の実態の方に力があるのだ、というふうに逃げてしまうことはできないのです。実際問題を言うと、逃げるだけの体質を持っていないのです。むしろ西欧諸国よりは一そう強く金準備あるいはまた外貨保有の側に依存しなければ、通貨の交換性とかあるいは貿易の自由化ができないというような実態にあるとするならば、むしろこの外貨保有あるいはまた金準備というものに非常に重点を置いて考えない限り、日本経済の実態からは貿易自由化とか通貨の交換性とかいう問題は出てこないのではないか、こういうふうに思うので、大臣の先ほどの答弁は非常に巧妙に逃げていこうとするけれども、逃げる道はないと思う。もう一度一つ……。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的には先ほどのことでよろしいのです。これは御賛成をいただいたというか、そういった見方があるだろうと言われる。問題はわが国金融というか、財政が、非常に一国の独立した格好である、どこからも援助を受けない、こういう格好だと、今石野さんの御指摘のように、やはりドルを持つとか、あるいは金を保有するとか、こういうことでなければならない。先ほど、欧州におきましてはEMAの組織ができて、これでお互いに協力するとか援助するとかいうことで、この各国の通貨の交換性が維持されるのだ、こういうことを発言いたしましたが、日本の場合には、こういうEMAのようなものはございませんけれども、これにかわるものとしては、IMFの機構が直ちに働いてくるのであります。近く御審議をいただくようになっております出資の問題なども、そういう意味には必ず役立つ。過去におきましてIMFがわが国金融をささえてくれた、これはすでに御了承の通りでございます。私どもは、今後の扱い方といたしまして、わが国経済が世界的な評価の高くなったということで、先ほどは抽象的に申しましたが、これは一体何かといえば、IMFあたりの機能に参加すること、さらに持ち分が多くなること、こういうことが不事の場合におきましてわが国に対するささえになるのだ、こういうことと実は感じておるのであります。
  69. 早川崇

    早川委員長 石野君、お約束の時間が過ぎていますから、御質問中ですけれども、この次に一つお譲り願えませんか。
  70. 石野久男

    ○石野委員 委員長のお話でありますが、これは話中途になっておるし、私は、先ほど言いましたように、まだこの問題のほかに貿易管理の問題とか、あるいは今一番問題になっておる国内経済の実勢の問題について、体質改善の問題などは当然これに関連して聞かなければならない問題です。そういうことでありますから、一応切りのいいとろで切りますから……。
  71. 早川崇

    早川委員長 参議院の都合その他いろいろ都合がございますから……。
  72. 石野久男

    ○石野委員 IMFで日本の世界的な信用を確保し得られるということは、一応従来のなにから見て私たちも肯定はできるものがあると思います。しかし、その問題と、今日通貨の交換性の問題あるいは貿易自由化の問題の日本経済自体の持つ力の問題との関係は、そう簡単に依存するだけのものではなかろうと思うのです。そんなことじゃとても貿易政策の確立はできないと思う。むしろ、政府としては、IMFのささえはあるけれども、本質はやはり日本の国内経済の態勢の中にあるんだという考え方にならなければいけない。ことにIMFの援助する態勢は、こちらの資金をそこへ入れるということに依存してその度合いが出てくるのでございますから、その資金を入れるということは、日本経済力自体の問題になってくるわけです。貿易の面からいいましても、本年度の貿易計画の中で、国際収支の中からそう膨大なドルがたまってくるとは思っていないのであります。出たところでせいぜい一億ドルか二億ドルくらいしか出てこないんじゃないか。十億も二十億も出てくるわけじゃありません。そうなってくると、この問題については、相当踏み切った貿易政策なり、あるいは国内態勢におけるところの政策がそこに裏づけられないと、問題は解決しないのであって、言葉の上だけで自由化の方向へ進むなどと言ったってナンセンスだ、こういわざるを得ないと思う。従って、大臣の言われるIMFがささえてくるというようなことは、全く他力依存であって、そこには貿易政策も何もなくなってくるんじゃないかといわなきゃならない。そういうふうに考える。だから、私の聞きたいことは、IMFにささえられる面はささえられる面でよろしいけれども、それではとてもだめだから、その足りないところをどういうふうにするかという問題をここではっきり聞きたい、こういうことを先ほどから言っておるわけですから、その点について……。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それは、先ほど為替局長から申し上げたように、多ければ多いほどいいでしょうが、それかといって、少いからといって、今の国際競争に手の打ちようがないというようなものではないものなのです。問題として申し上げる点はその点なのであります。だから、経済そのものが上向いておりますと、将来に対する信用があるという場合においては、場合によれば必要に応じて十分の見きわめをつけて準備を進めることがあり得る。この点を申し上げておるのであります。ただいま、一国だけでその点をまかなっていくという考え方には非常に無理がある、日本のように特殊的地位にある国にとりましてはそこに無理がある、そういう場合のEMAにかわるような機構として、世界的の機構であるIMFというものがあるのでありますということを実は申し上げておるのであります。これは非常にむずかしいポイントでもございますが、今日欧州諸国において通貨の交換性を採用しておる際、おれの方の準備は十五億ドルなければいけないとか、二十億ドルなければいけない、こういって石橋をたたいておるわけにはいかないんじゃないか、こういうところに十分の経済の見通しを立てて、しかる上で処置をとるべきでないか、こういうことで、なるほど数学的というか、経済学者の議論としては、この程度でいいとかいう数字は出てくるだろうと思いますが、政治の面においては、必ずしもそれにとらわれるわけにいかぬということを申し上げておるわけであります。
  74. 石野久男

    ○石野委員 欧州の貿易の自由化の方向が大体本年の年央以降は出てくるだろうというのが一般の観測であった。それが年初め早々に出てきたということの理由としては、少くとも欧州の経済力が相当程度にこれらの国々において充実してきているということが、一つの大きな原因であろうと思います。同時に、外貨ドルあるいは金準備が相当程度にその国々において充実性が出てきておるということからきているのです。それに、あそこでは、特にEPUが行き詰まってしまって、そうしていわゆるEMAの形に変ってこなければならないような事情もあって、事情はそこに内包されておるわけです。日本の場合は、IMFに依存するということは、もちろんそれに相当するようなものであるけれども、それ自体は、やはり日本経済力の反映として出てくるものなのです。いわゆる投資する、そこへ資金を投入することによって援助の態勢が上ったり下ったりすることになるわけですから、必然的に日本経済の実態というものがどうあるかということがここに出てくるわけです。従って、私は、諸外国におけるところの金準備あるいはまたドルの保有高というものが相当大きな要因であったということであるだけに、日本におけるところのこれらのものがどの程度のところまでいかなければならぬ、またどの程度の目標を持たなければいかぬということが明示されないと、経済活動なりあるいは貿易活動というものは十分に出てこない。それが出てこないのに、ただその方向を向け向けといったって、できっこありません。そのことは必然的に貿易の面では非常に手落ちになってくるということが考えられるので、われわれだけが一人ほうり出されてしまうという形が出てくるから、私はその点について政府の考え方を聞いておきたいというわけです。
  75. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体の政府の考え方は先ほどで尽きたように思いますが、もう一つ事例をとって申し上げれば、石野さんの非常に端的な御要望、それだけでないことはおわかりだろうと思う。たとえば、フランスの金融状態なり財政状態、これは非常な疑問を持たれておる国なんです。しかし、これが相当の支援、借金をすることによってやはり交換性を回復している、こういう一事が、フランス自身が欧州の共同マーケットの一員として一つの役割を持っておる。そういう意味で、相互の援助といいますか、協力のもとに交換性を回復する、こういうことがあるわけでございます。だから、そういうことも念頭に置いて今後の処置は考えていかなければならないということを、実は申し上げたいのであります。これは協調の面を強力に出して参りますとあまり心配は要りませんが、交換性を回復したにもかかわらず、国際競争の激甚ということを考えて参ります場合には、借金によって交換性を回復した国あたりの今後の経済政策なり財政政策は非常に問題だろうと思う。これをどんなふうにまかなって参りますか、そういう意味でコモン・マーケットとしての一つの悩みがある。同じ歩調のものばかりじゃない。それが全部がイギリスやドイツやスイスのような国ばかりならいいのですが、非常な弱みがある。それをコモン・マーケットという一つの構想のもとにお互いに支援し合う、こういうような考え方でもあるわけであります。だから、先ほど来申すように、いろいろの問題を内蔵し、為替の自由化、貿易の自由化の方向に踏み切ってはおると申しましても、そういう意味でまだまだ問題が多いわけであります。一国が交換性を回復する、こういう場合に、それはもう自力、しかも蓄積によってそれだけの力をかち得てどこからも心配なし、こういう国柄であることが一番望ましいに間違いございません。しかしながら、そういう場合だけでもなかなかいかない。一時的ないろいろな必要も感ずる、こういう場合に、欧州においてはEMA、また世界的にはIMF、こういうものの協力を求める。それかといって、国際社会全体がそういう方向に動いておる場合に、一つ取り残されて非常は不自由な思いをするというわけにもいかない、こういう一つの問題があるわけでございます。
  76. 石野久男

    ○石野委員 時間がないからここで切っておきますけれども、今言われるように、欧州の共同市場化の問題の中で、特に今度は通貨協定というようなものが出てきておる中でのフランスなどのように、十四万国の中で足並みがそろっていない実情があるから、それは一がいに平面的なものの見方はできないということは、われわれもわかつているわけです。それじゃ、フランスが平価切り下げをやったから、日本の場合、やはりフランスの例にならって平価切り下げをするのかという問題も出てくるわけです。そういうことにもなってきまずから、そうでないとするならば、実際に日本の通貨の交換性というものと貿易自由化というものは追い詰められた形でやらなければならぬようになってきている事態において、われわれはどういう態勢を持たなくちゃならぬかということは、基本的に考えておかなければならぬ問題だということで、私は先ほどから聞いている。ただ、ここでは、その方向を持っておるのだということだけでは政策は出てこないから、少くとも政府にはそういう政策について、こまかいことは言えなくとも、大まかなところくらいは言われないと、貿易業者にしても生産業者にしても、国際収支の面でどういう動きをするかという方向が出てこない。ばらばらではとても国の政策が出ませんから、私は聞いておるわけです。特に通貨交換が欧州においてああいうふうに行われてきますと、ドルの交換性というものは非常に自由になってきますから、私が先ほど来言っている東南アジア諸国、後進国においては、相当程度ドルの自由交換という問題を契機といたしましてドル物資がそこに入っていって、貿易量が大きくなってくるということが出てくるのです。そうなれば、当然日本の円の進出というものは非常にむずかしい問題が出てくるわけです。これはあとでまたもう一度聞かなければならぬことになりますが、それらの問題に入るについては、当然のことではありますが、日本の通貨交換あるいは貿易の自由化の方向に踏み切る態勢がどういう状態においてなされるか、ということをはっきりしなければならないので、私は聞いておるわけです。きょうの大臣の答弁では、やっぱり巧みに言葉でごまかされる傾向があるのだが、もう少し私は掘り下げなくてはいけないと思っております。これに対する……。
  77. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 財界なり貿易業者に非常な影響があるからはっきりしろ、こういうことをおっしゃいますが、なかなかお尋ねの意味の方向でのはっきりはむずかしい。しかしながら、当然近く本年度の外貨予算を作らなければなりません。この外貨予算を作って参りますと、政府の考え方が幾分かそれに出て参ります。これで今後の貿易業者なりあるいは国内の産業人に対しましても一つの指針を与えるであろう、かように期待をいたしておりますから、その点を御披露しておきます。
  78. 石野久男

    ○石野委員 それでは、最後に一言だけ聞かしてもらいたいと思いますが、今の通貨交換あるいは貿易の自由化の方向へ踏み切ろうとするときに、私が聞いておるように、幾ら幾らのドルを持たなければならぬとか、金準備は幾ら幾らにしなければならぬということを、政府がここではっきりしにくい事情は大体わかる。わかるけれども、しかし、大体の構想、たとえば昭和三十四年度における国際収支に対する貿易計画が円滑に進んだ場合に、果してその態勢が出てくるかどうかという問題、こういう見通しくらいははっきり出るはずです。今度の政府が持っておるところの貿易計画の線が確実にそのまま実行されたら、ほんとうに自由化の方向が進んでいくだろうか、あるいは通貨交換が出る可能性を持つだろうかというようなことについて、大臣はどういうように考えますか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だいぶ次を急いでおられるようでありますから、外貨予算が出て参りますときにまたあらためていろいろお教えを願います。
  80. 石野久男

    ○石野委員 私は今すぐ外貨予算の問題を聞きたいわけなんです。だから外貨予算をどういうふうな方針で組まれるかというような問題と当然関係してくるわけです。私の質問は時間がないからこれで打ち切らなければならないのですが、この問題は、当然外貨予算が今月末ごろまでに出るだろうと思う。そういう問題について国会としても十分関心を持っておるわけであります。出てしまえばどうにもならない。出るまでに、これは委員長にぜひお願いするわけでありますが、この次の委員会には、この問題をトップに継続的に質問さしてもらうということで、きょうの私の質問を終ります。
  81. 早川崇

    早川委員長 この際御報告いたしますが、ただいま本委員会において審査中の揮発油税法の一部を改正する法律案に対しまして、運輸委員会より、揮発油税等の引き上げについては、その経済に及ぼす影響は甚大なるにかんがみ、慎重に考慮されたい旨の意見の申し入れがありましたので、これを印刷してお手元に配付いたしておきましたから、御了承を願います。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十四日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時五十一分散会