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1959-03-24 第31回国会 衆議院 商工委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十四日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小泉 純也君 理事 小平 久雄君    理事 中村 幸八君 理事 南  好雄君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡本  茂君       鹿野 彦吉君    木倉和一郎君       坂田 英一君    始関 伊平君       關谷 勝利君    野田 武夫君       野原 正勝君    細田 義安君       前尾繁三郎君    板川 正吾君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    堂森 芳夫君       中嶋 英夫君    松前 重義君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 岩武 照彦君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十四日  委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として  松前重義君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  小売商業特別措置法案の一部改正に関する請願  (赤松勇紹介)(第二六五一号)  輸出入取引法の一部を改正する法律案反対に関  する請願赤松勇紹介)(第二六五二号)  中国産生漆輸入に関する請願外三件(小川半次  君紹介)(第二六五三号)  同外三件(大森玉木紹介)(第二六五四号)  同外三件(加藤精三紹介)(第二六五五号)  同外六件(濱野清吾紹介)(第二六五六号)  同外四件(中山マサ紹介)(第二六五七号)  同(大矢省三紹介)(第二八〇七号)  日中貿易再開に関する請願外十三件(中山マサ  君紹介)(第二六五八号) は本委員会に付託された。 同月二十四日  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第一三号) は委員会の許可を得て撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  小売商業特別措置法案内閣提出第二一号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第一三号)  特許法案内閣提出第一〇八号)(参議院送  付)  特許法施行法案内閣提出第一〇九号)(参議  院送付)  実用新案法案内閣提出第一一〇号)(参議院  送付)  実用新案法施行法案内閣提出第一一一号)(  参議院送付)  意匠法案内閣提出第一一二号)(参議院送  付)  意匠法施行法案内閣提出第一一三号)(参議  院送付)  商標法案内閣提出第一五八号)(参議院送  付)  商標法施行法案内閣提出第一五九号)(参議  院送付)  特許法等施行に伴う関係法令整理に関する  法律案内閣提出第一六〇号)(参議院送付)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 これより会議を開きます。  特許法案特許法施行法案実用新案法案実用新案法施行法案意匠法案意匠法施行法案商標法案商標法施行法案特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案及び特許法等の一部を改正する法律案、以上十法案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 私はただいま議題となりました特許関係法案に関しまして、若干の質問をいたしたいと存じます。  御承知のように今次提案をされました特許関係法案は、特許行政上画期的な大改正であります。法案改正準備のために審議会を設けて検討すること六カ年、その答申に基いて法案成案を得るのに二カ年を要して参りました。全文で数百条に上る大きな改正法案でありますから、短時日のうちにこれを審議するということは、非常に困難を感じておるものでありますが、本日はとりあえず本改正案に対する概括的な点を幾つかお伺いをいたしまして、内容については後日またさらに質問をいたしたいと存じます。  そこでまず第一にお伺いいたしたいのでありますが、本日は大臣がおられませんから次官にお尋ねをいたします。特許行政に関する通産省としての方針であります。これは通産大臣はしばしば当委員会通産行政についての基本方針を述べられて参りました。その通産行政の基本的な方針を述べられた中で、産業技術発展にきわめて重要な役割を果しておる特許行政については、今まではほとんど一言も触れなかったのであります。去年十月三十日の所信表明のときに、大臣は初めて工業所有権関係法時代に対応するように改正をしたいということを触れられたのであります。なるほど今回の改正法案は、法律的には時代の変化に即応する面もあることはこれはやぶさかではありません。しかしこの一片の法律改正で、特許行政の実態を時代に即応するように改正することはなかなかあり得ないと思うわけであります。御承知のように特許行政目的は、特許法第一条にもありますように、発明家独占権を与えるとともに、その発明内容をすみやかに公表することによって、新規の発明を刺激する。そうして各産業技術発展をはかる。こういうところに目的があるのでありますが、特許行政の現状を資料によって拝見いたしますと、特許のごときは平均して三年、長いものになりますると、五年も六年もその審議に要しておるのであります。しかも重大な発明産業発展の上に重大な発明ほど非常な長時間をかけておる貴重な発明が、長年間特許庁の倉庫に眠っておる、こういう現象を呈しておるのでありまして、これは産業発達を阻害し、日本産業後進性を改善することになっていない。また最近における処理件数を見ますると、未処理件数が年々累積をしております。大体三十三年度にいたしまして、二年半は未処理件数が余っておる、こういう状態でありまするから、通産省として一体この法律改正を出したが予算も計上してない。しかも機構改革等考えていない。人員も若干ふやしておるようでありますが、大してふやしていない。こういうように法案改正だけで行き詰まっておる特許行政隘路というものが打開できるかどうか、こういう点を一つ大臣のかわりとして次官の御答弁を得たいと思うわけであります。
  4. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 御指摘のように特許制度は新規な発明をしたものに対しまして、一定期間独占権を与える、そうしてその発明を広く公表しまして新規な発明促進するとともに、日本産業発達に寄与するということが目的でございます。そういう観点からいろいろな面で特許行政に対しましてはその目的に沿うていないじゃないか、こういう非難がしばしば繰り返されておりますことは御指摘通りでございます。そこで年々特許に対します審査審議要求が累増しておりますので、政府といたしましては予算をできるだけ多くもらって、そうして人員をふやして審議促進をはかりたい、こういうので年々わずかずつでございますが、人員をふやして参ったことも御承知通りでございます。本年は特にこの問題につきまして特許法改正案を出しますることを予定しておりましたので、かなり大幅の予算要求をいたしたのでございますが、御案内の通り諸般情勢に拘束されまして思うようには行かなかったのでございます。しかし今日までと比較いたしましては、かなりの人員の増も認められまして、予算もこれに計上されましたので、今まで御懸念をいただいておりました点が、多少は促進すると思っておるのであります。しかしこれをもってしてもなおかつ今板川委員の御指摘通りに、未処理件数も相当累積しておりますし、これをもって一気に今日までの懸案が解決するとは思っておりません。しかし今後通産省といたしましてはそういういろいろな世間の批判に対しまして、御要求に対しまして、できるだけその御要求を満たすために、さらに機構改革もし、さらに審議スピード・アップもいたしまして、御期待に沿うように努力いたしたいと考えておる次第であります。     〔委員長退席中村(幸)委員長代   理着席
  5. 板川正吾

    板川委員 今次官が本年度人員も若干ふやし、しかも予算もそれに見合って増加しておる、こういうように説明を聞いたのでありますが、これはどなたでもけっこうでありますが、こまかいことに入りますが、三十四年度予算は三十三年度に比較いたしまして、私の計算では六十万円ほど減っておると思うのでありますが、これは今次官説明されたようにふえておるのでありますか。それとも減っておるのでありますか。この点私の資料と食い違っておりますから、ひとまずお聞きをいたします。
  6. 井上尚一

    井上政府委員 三十三年度歳出予算は四億四千五百五十七万八千円でございましたが、三十四年度歳出予算は四億四千四百九十七万七千円ということで、合計におきましては減っているわけでございますけれども、内容につきましては、たとえば特許公報等外注費が減少した関係等でございまして、実質的には前年と比べて必ずしも減っているというふうには考えていないわけでございます。
  7. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、次官がただいまおっしゃられました三十四年度については予算の点もふやして、そうしてこの特許行政隘路の打開に努めていくということは、若干数字的に間違っておると思うのですが、その点次官はどうお考えになられますか。
  8. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 今のは人員がふえておることを私は申したので、人員がふえれば当然予算もふえると思って常識考えで申しましたが、お説の通り予算面では今長官から答弁した通りで、人員が二十名くらいふえておるということでございます。前言を取り消します。
  9. 板川正吾

    板川委員 この点はいずれまたあとで質問したいと存じます。  次に入ります。この特許法関係法案大正十年のときにも大幅に改正をされて、いわゆる現行法ができたのでありますが、その際に新しい法律施行されて審査審判事務が非常に混乱して、そのために三年間ほど特許行政事務停滞をしておったということを私ども承わっておりますが、今回の法律は四十年ぶり大正十年に匹敵する大きな改正でありますし、しかも改正内容については、たとえば特許法については多項制を採用する、世界公知制を採用する、権利侵害に対する新しい規定を設けた、あるいは実用新案法については、対象を改正した、こういういろいろのたくさんな改正がある。これに対する事務が軌道に乗るのが、なかなか今度も大へんじゃないかと思うのでありますが、大正十年のときのように非常な混乱が起って、そうして特許事務がさらに停滞をする、こういうおそれはありませんか。その点をまずお伺いをしたいと存じます。
  10. 井上尚一

    井上政府委員 今般の法律改正は、今申されました通り相当いろいろな面におきまして、従来の制度を大きく改正しておるわけでございますが、工業所有権制度改正審議会審議にすでに六年を要しましたし、この審議会答申に基きまして今日まで二年あまりの月日を経過したわけでございますが、この間法案作成準備と並行いたしまして、特許庁内部としましては、いろいろ実質的に制度改正に切りかえても混乱を生じないような態勢をできるだけ準備と並行して進めて参ったつもりでございます。本年度人員増加は、わずか二十名でございますけれども、三十三年度におきましての十二名、三十二年度におきましての約百名というふうに、最近着々増員を続けて参った次第でございますが、来年度以降につきましては一そう大幅に人員増加を期待し、かついろいろ資料の充実、整備につきましても、万全を期して参りたいと考えておる次第でございまして、御指摘のように制度切りかえによりまして、つまり新法施行は来年四月一日から施行ということでございますけれども、新法施行後におきまして今申されましたような混乱ないしは事務の渋滞の生じないように、われわれとしては万全の努力と注意を払うつもりでおります。
  11. 板川正吾

    板川委員 この特許法関係法案が議会に提出されましたときに、ジュリストなんかにもありますが、特許方面関係者は、どうもこの法案が突如として出された——もちろんこれは六年間も審議会をもってやって参りましたことでありますから、それが突如ということは当らないかもしれませんけれども、しかし答申案は出たが、あるいはそれに対して特許庁法案決定までのPRというのが、世間的に若干不足しておったのではないか、こういうことがいろいろ新聞投書等にも言われておるのでありますが、こういう点を特許長官はどうお考えになっておるか。そういう批判に対して一つ弁明をしていただきたいと思うのです。
  12. 井上尚一

    井上政府委員 答申法案作成まで、ただいま申しました二年有余の月日を経過しておるわけでありますが、この間におきまして特許実用新案意匠商標筆者法案要綱をば省議決定いたすつど、新聞でも発表して参りましたし、それから東京は言うまでもなく大阪あるいは名古屋、九州というふうな地方まで出かけまして、通産局等が中心になりまして、新しい法案要綱についての説明会も、幾たびか開催してきたような次第でございます。仰せのようなPRはわれわれとしましては、及ばずながらできるだけの努力を続けて参ったつもりでございます。なお最もこれに関係の深い産業界ないしは弁理士会方面に対する連絡につきましては、幾たびか変遷の過程をとって参りましたそのつど、各段階における法案は、すべて弁理士会にも連絡をとって参りましたし、それから重要産業特許に特に関係の深い業者が結成しておりまする団体で、日本特許協会従前事業者工業所有権協会と申しました、この協会とは、ほとんど毎月定例の連絡会議等を開催いたしまして、法案内容については十分緊密な連絡、あるいは報告をし、法案に対する意見等も聴取したつもりでございます。そういった点につきましては、あるいは御指摘のように法案作成過程にいろいろ重要な点で変ったところもあった次第でございますので、すべての点について、必ずしも十分な周知徹底ということまでには参らなかったかと存じますけれども、われわれとしましては、ただいま申しました通り弁理士会ないしは産業界に対しまして、中央地方を通じましてできる限りの周知徹底意見聴取等は行なって参ったつもりでございます。
  13. 板川正吾

    板川委員 この特許法関係の中で大正十年のときに一緒に改訂を見た弁理士法が、今回当然改訂をすべきだと思うのでありますが、この弁理士法改訂をしなかった理由はどういうことですか。
  14. 井上尚一

    井上政府委員 御指摘のように今回もできれば弁理士法改正も間に合えばよいというつもりで、一応準備研究はやりましたわけでございますが、最近数年間におきまして弁護士法あるいは税理士法あるいは公認会計士法等、同種のあるいは類似法律が全面的な改正を見ることに相なりまして、法の形式におきましても近代的になった次第でございますし、また内容も整備されて参りました。そういう関係法律との均衡等から申しましても、弁理士法改正する場合は必ずこの際全面改正でなければならないというふうにわれわれとしては考える次第でございます。今日の弁理士法はただいま申されました通り法文形態もきわめて古く、また内容につきましても最近における工業所有権制度に対する諸般情勢に即応できないようなところもある次第でございます。同時に弁理士は申すまでもなく工業所有権という国民の重要な権利得喪変更に直接携わる業務に関する制度でございますので、この弁理士法改正につきましては関係方面意見等も広く聴取しまして、十分慎重に検討する必要があろうと考えておりますが、いろいろな準備の都合上、どうしても弁理士法全面改正につきましての成案を得ることが、今日まではできなかった次第でございますので、今回は特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案中に、最小限度必要な弁理士法改正を同時に盛り込んだ次第でございまして、今申しましたような意味での弁理士法全面改正につきましては、今後できるだけ研究を続けまして、なるべく早く成案を得るようにしたい、かように考えております。
  15. 板川正吾

    板川委員 そうしますと弁理士法の大幅な全面的な改訂というのは、近い機会に提案をしたい、こういうふうに承知してよろしいですか。
  16. 井上尚一

    井上政府委員 なるべくすみやかに成案を得ることに、われわれといたしましては努力をしたいと思っております。
  17. 板川正吾

    板川委員 それでは次に参りますが、昨年の秋リスボンにおいて、万国工業所有権保護国際同盟会議がありまして、パリ条約の一部改訂が論議されたと伝えられております。そこで論議された中で幾つかあろうと思うのですが、いわゆるサービスマークその他が取り上げられておるのに、今度の改正案になぜこのサービスマーク問題等が取り入れられなかったか、こういう点について一応質問したいと思うのです。それからもし今後これも改正するとするならば、いつごろそういう問題を取り上げるかという点も一つ御答弁願いたいと存じます。
  18. 井上尚一

    井上政府委員 昨年十月にリスボンで開催になりました工業所有権保護国際同盟条約改正会議におきましての最も重要な成果の一つは、サービスマークに関しましての新しい規定条約に挿入になった点でございまして、ただいま御指摘のようにサービスマークという問題は、最近特に世界を通じまして商品のマークとしましての商標法と相並んで、サービスマーク保護必要性というものが、非常に広く関心を持たれることになって参った点は今御指摘通りでございます。この点につきまして条約改正におきましては、各国はサービスマーク保護することを約束する、しかしこれについて登録制度を設けることは必ずしも要しないという趣旨の規定が新たに条約中に入ったわけでございます。今日のわが国の法制としましては・サービスマーク法的保護に関する規定がないかと申しますとそうではなくて、ある程度はございます。すなわち商法中におきます商号に関する規定とか、不正競争防止法という規定、そういうものによりましてサービスマーク法的保護というものはある程度満たされている、かように考えてよろしいかと存じます。しかしながらこの制度について、もっとはっきりした立法化の必要があるかどうかという点につきましては、これは確かに今後研究を要する問題であろうと考えております。言いかえますならば、現行法制としましても最小限度条約上の義務は果すことができるというのが、今日の状況でございますけれども、今後われわれといたしましては、産業界経済界サービスマークに対する関心の度合い、あるいはサービスマークに関する法的保護現実的必要、そういう要請をも十分考慮しまして、もしこれについて一そう強い、一そうはっきりした法制を設ける必要があるというふうな情勢になりました場合には、今申しましたように商標法商法あるいは不正競争防止法、そういったもの全体を通じまして、どのようにサービスマーク立法化について考えていくか、こういう問題について今後至急研究を進めて参りたいと存じておる次第でございます。いつごろその成案を得るかという御質問でございます。この点につきましては、ただいまの段階では必ずしも明確な時期を申し上げることはできないわけでございますが、これは法律ばかりが先ばしりましてもいかがかと存じまするので、産業界経済界サービスマーク制度に対する関心ないしは要請というものを十分見きわめつつ、その必要に応じた立法化考えたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  19. 板川正吾

    板川委員 サービスマークについては、似たような規定商法の二十四条で商号規定されておるわけでございます。商号規定があるからといってサービスマークについては、そうあわてることもないというふうにも理解できるのでございますが、たとえばバス車体なんかはサービスマークの範疇に概念として入るのじゃないか。たとえばある車がサービスがよく、しかも安定した形態であるバスの色と類似なものを持ってきて——特に遊覧バスなんかはそうですが、あれも同じ会社のバスだ、こういうふうに類似車体を作る、ボディの色を塗るということもあり得るのであります。こういう点はやはりすみやかにサービスマークという概念をはっきりさして、そうしてある程度混淆しないようなことをやる必要もあるだろう、こう思っておるわけでありまして、そういうサービスマークが一日も早く取り上げられて論議をし、取り上げられて法制化されることを私は望んでおるわけであります。  次に法律改正の基本的なあり方という点についてお伺いしたいのでありますが、今回の工業所有権関係法案改正は四十年ぶりの、しかも大改正であります。まあ、きたなくなったから大掃除をするというようなのかもしれませんが、これを裏返せば、今まで不十分であった法案のままで長年実施をしてきた、こういうことも言い得ると思うのであります。昔、十七、八世紀時代には、大きい発明というのは一世紀に一回というくらいだそうであります。産業革命なんかそうです。ところが最近は大きな発明が十年間に一ぺんなり、さらに最近は一年に一ぺんというように、科学技術発明というのが非常なスピードを持って参ったと思うのであります。従って、この科学技術発明者権利を守るというような意味法案ですが、これはやはり時代発展のテンポに合わしていく必要があるんじゃないか。従って、悪ければある程度時期を見て、すぐ直すべきじゃないか。三十年も四十年も待って、そして五年も六年も委員会に諮って成案を得て、しかもその委員会答申に基いて二年間もかかって膨大な改正法案を作るというような法の改正あり方というのは、私はそれではかえって産業発展を阻害する結果になる、こう思うのであります。今後はそうあってはならない。やはり時代発展に応じてそのつど改正していくべきだ、こういう考え方を私は持っておりますが、長官考えはいかがですか。
  20. 井上尚一

    井上政府委員 現行法ほただいま御指摘のように大正十年でございますが、その後昭和十五年ごろでございましたか、一度法律改正案を作りまして、国会に提出する運びになった時期があったようであります。ついに法律改正を見ることなく今日まで経過した次第であります。私、結論としまして今の御意見には同感でございます。もっとも工業所有権に関する法律は、国民の重要な権利——特許権実用新案権意匠権商標権という権利得喪変更に関する基本法でございますので、その根本的な、実体的なところが始終変ることは非常に不安定なことになりまして、適当でないかと存じますけれども、法律運用現実の必要に応じまして不便を感ずる、ないしは不適当な点を発見するというような事態に直面しました場合には、これまでのように何十年ぶりに一ぺんというようなことでなく、申さば法律改正について必ずしもおっくうな気持を持たないで、現実の必要に応じて法律運用ないしは部分的な改正ということを、今後は考えていった方がいいのではないか、かように考えております。
  21. 板川正吾

    板川委員 それでは次に参りますが、参議院商工委員会で本案に対する附帯決議が付されておるわけであります。この附帯決議についてお伺いをしたいのでありますが、まず第一にこの附帯決議の一として、「審査審判促進に努め、特に滞積せる未処分出願を一掃するため画期的方途を講ずること、」こういうふうにうたっております。これは今御承知のように非常に出願の未処分案件がありますから、これを一日も早く一掃することは当然であります。私もこれは同感でありますが、この未処分出願を一掃するために画期的な方途を講ずるというお考え、決意、これは一体どういうようなことを考えておるのか、明らかにしていただきたいと思うのであります。たとえばフランス等では、やっておるそうでありますが、公衆審判制度というのですか、一定期間それを公示しておいて、それが違反だということがあれば、それを取り消すというような方法をとっておる国もあるのであります。日本はそれと別な行き方をしているわけでありますが、とにかくたくさんな未処理件数があるわけでありまして、それはなかなか困難な事業でありますから、尋常一様の手段ではこれを一掃するということはでき得ないと思うのであります。ですから一体この画期的な方途というのは、どういうことをお考えになっておるか、その点を一つ明らかにしていただきたいと存じます。
  22. 井上尚一

    井上政府委員 私どもとしましては、最近におきます特許庁審査審判停滞状況にかんがみまして、この参議院附帯決議の趣旨、すなわち審査審判促進をするように、この際できるだけの努力を傾注して参りたいと考えておるわけでございます。画期的方途としていかなる方法を考えているかという御質問でございますが、実は今日の出願の状況、それから人員の充足状況、この両者のアンバランスが長年累積して参りました結果として、今日の審査審判を通じましての非常な未処理停滞の状況が生じた次第でございますが、これを一気に解決する方法、そういう天来の妙案というものは、必ずしも見出しがたいわけでございまして、われわれとしましては、基本的にはじみではございますが、やはり着々として人員増加をはかって参りたいと考えております。審査官、審判官の本官は言うまでもなく、これの補助職員等につきましても人員増加をはかって参りまして、これによって審査官、審判官の能率を大いに向上したいと思うわけでございます。次に、審査官、審判官の数の増加ばかりでなく、われわれとしましてはそれの質的向上と申しますか、能力の強化ということが必要でございますので、その点につきましては新入職員の教育は言うまでもなく、中堅幹部の再研修と申しますか、そういう研修教育ということにつきましても十分意を用いておる次第でございまして、昨年五月以降、特許庁において研修所を設けまして、審査官、審判官の実力の涵養充実に努めておるような次第でございます。なおその方法としましては、研修所におきます教育ということと並行いたしまして、外部の大学、会社あるいは海外への留学、そういう外部に対します聴講生の派遣というような方法もあわせて講じまして、そういう意味から審査官、審判官の実力の向上ということを、十分今後も努力したいと考えております。  なお、そういうふうに研修、教育に意を用いましても、今日の技術の進歩は非常にすみやかでございまして、だんだん高度化し複雑化して参りまする技術のある種の部門によりましては、特許庁審査能力がどうしても不備であることは免れないという分野がないわけではないのでございまして、そういうような特に専門家の協力を要するような部門につきましては、今日すでに十数名の大学教授あるいは各試験研究機関の関係の部長、そういうような外部の専門家の兼官と申しますか、兼官、兼任の制度をあわせてとっておる次第でございます。なおまた電子工学部門につきましては、特に出願も最近非常に多い実情にかんがみまして、電電公社のエキスパートを特許庁に出向さしていただいて、これの協力によって、審査促進をはかっておるというような点もございます。  それから、なお、今申しましたような方法と並行しまして、何と申しましても、やはり資料の整備ということが必要でございますので、この点につきましては、従来にもまして日進月歩、いろんな文献が内外を通じまして広く出て参りますので、審査に遺漏なきを期しますために、そういう関係資料の充実整備に、今後も努めたいと思っております。  なお、この問題に関連しまして、実は今御指摘のような、外国にあるような無審査制度をとってはどうか、あるいは公衆審査と申しましょうか、そういうような方法を進んでこの際考えてみる必要がないかという御質問でございますが、われわれとしましては、長年審査制度をとって参りましたので、この際無審査制度に切りかえるという考えはございません。また世界を通じましても、無審査制度をとっておる国は、フランス等きわめて少数でございます。では、審査制度の前提の上に立って、異常に堆積しておる未処理案件を何かうまく解決する方法はないかという点につきましては、実はある一部の業界の方からは、今ございまするところの異議申し立て制度をもっと活用する意味におきまして、審査官が自分で良心的な結論に達しない場合においても、ある程度審査官としまして疑問が残っても、これを公告して、そうして外部の関係業界からのこれに対する異議申し立てを待つことによって、言いかえれば、すなわちいわゆる公衆審査というその協力によって、問題を解決する方法をこの際はかることはどうかという意見がございまして、私どもも従来相当この問題については慎重に検討した次第でございます。今までそういう審査を、いわばあまり緻密正確でなくて、ある程度疑問が残ってもそれを公告して、そうして外部の異議申し立てによって、不当な権利の設定を防止するという方法をかなり考えてみた次第でございますけれども、特に今日堆積の異常に多い高分子化学あるいはエレクトロニクス関係、そういう分野におきましては、外国人の出願が非常に多いわけでございます。その外国人の出願につきましては、翻訳のまずいのが非常に多い。その翻訳のまずいのと取り組んで、審査官は一々これに照会を出しているわけでございますが、遠隔の地である関係上その往復に非常な日子を要しておる。そういうようなこともこの停滞の大きな一つの原因になっておる次第でございますが、今申しましたように、審査官が一読してわからないというような内容のものを、何らこれに訂正を加えることなくそのまま公告をいたしましても、外部の人がごらんになって、やはり内容を理解することができない。あるいはまた特許制度本来の趣旨から申しまして、新しい技術を公開することに対する報奨としての特許権でございますので、そういう第三者が見てもわからないような技術内容では、これは技術を公開したことにはなるまいということになるわけでございまして、まあ今御指摘のような問題につきましてもできるだけ今後も研究しまして、そういう翻訳のずさんなために理解できないという以外の場合におきましては、できるだけ思い切って公告もし、そうして外部の協力によって公衆審査によりまして、問題の解決の推進を今後も十分はかって参りたいというふうに思っておる次第でございまして、今の板川委員の御意見の点につきましての従来の特許庁研究の結果は、ただいま申しましたようなことではございますが、今後ともなお十分御意見の方法については研究を進めて参りたい、かように考えております。
  23. 板川正吾

    板川委員 資料によりますると、三十一年度の末で未処理件数として、特許関係が八万六十八件、実用新案関係が十二万五千百九十件、意匠登録関係が二万一千二百七十二件、商標関係が三万一千百六十九件、合計で二十五万七千六百九十九件、こういうように非常な未処理件数がございますが、この未処理だけを現在の人数でやるとすれば何年かかるでしょうか。ちょっと私の計算では、特許関係が二・七年、実用新案が二・二年、意匠と商標が大体一年ということになっておりますが、こういうような計算でよろしいのですか。
  24. 井上尚一

    井上政府委員 大体板川委員の申されたところに近いかと存じますが、今おあげになりました数字は三十三年末の未処理件数でございますけれども、別の計算法といたしまして、かりに三十三年の特許処理件数、これは一年間の処理の実績でございますが、これが特許は二万九千八百七件、実用新案が五万六千九十九件、合計いたしますと八万五千九百六件ということに相なりますので、この三十三年の処理件数でもって未処理件数を割りますと、特許実用新案を通じまして二年四カ月ということになろうかと存じます。意匠、商標につきましても、今申しましたのと同じ筆法で参りますと、意匠につきましては今の未処理件数が大体一年分、それから商標が十カ月分ということになろうかと思います。
  25. 板川正吾

    板川委員 こういうように非常に未処理が累増してきた原因は、先ほども言いましたように、そして長官も言われましたが、先願主義をとっておる、そうして先願の中にたとえば外国からの出願がある、そうすると、それが書類の不備あるいは手続上の時間がかかるというふうなことで、外国のやつがはさまると、そのあとから同じ日に出願をしたものは、結局先願主義でございますから、外国の出願者の問題が解決しないうちは、日本のやつもそのあとで倉庫に眠っておる、こういう状態なんでありますか。
  26. 井上尚一

    井上政府委員 そういう状態になるわけでございます。
  27. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、国内で日本人が出す場合ですね、これは同じでもいいのですが、外国の場合は、確かに日本の事情を知らなかったり、翻訳に手数がかかったり、表現が不十分であったり、こういうことで時間がかかると思う。そうすると、非常に事務停滞する原因は、これはやはり外国の出願が非常にじゃましておるという格好になる。じゃましておるといってはおかしいのですが、それに対する対策というのが十分でないということになるわけであります。ですから、そういうためには、たとえば外国関係出願に対する専門の取扱い者といいますか、あるいはたとえば翻訳等については特別の補助要員をつけるとか、そういうようなことで、停滞ぎみな外国人の出願関係をスムーズに運ぶような対策をまず打つべきじゃないかと思うのです。そうするとあとも自然にそれにくっついて先に進むわけでありますから、どうしても一番おそいやつを早く解決するという重点主義をとるべきだと思うのですが、こういう点について対策をとっておられるのですか。
  28. 井上尚一

    井上政府委員 外国人出願が多い部門が特に停滞状況が顕著である、そういう点から申しましても、外国人出願というものが審査促進停滞させておるという原因になっていることは、明らかでございます。しかしながら、外国人出願と申しましても、各技術の分野々々にきわめて広く配分されるわけでございますので、有機合成並びに無機合成化学、電子工学関係ということになりますと、外国人出願のみを扱う審査官というものを別に設けて、外国人出願のみをそこで担当させるというふうなことは、なかなか技術の内容の判断、新規性の有無の判断ということになりますと、やはりおのおのの細分化されておりまする技術の担当官が、これを見るほかないわけでございます。なお、翻訳のまずい点について、何かこれを改善する方法はないかという御指摘でございますが、日本特許庁に対しまする出願としましては、日本文で出して参りましたものが正式の願書でございますので、その正式の願書を特許庁関係官がみずから文章を直すというわけには参らないわけでございまして、これはどうしても、読んで不明なところ、あるいは明らかに間違いであろうと思われるような点は、そのつどやはり出願人に対しまして、補充ないしは訂正を命ずるということをやらざるを得ないわけであります。なお、大ざっぱに申しますと、われわれが審査官の事務処理計画を作ります場合に、外国人出願一件について日本出願は二件に相当するというくらい、大体そういうふうな換算率でもってやって参っておるわけでございます。そういうような点からも、概していえば外国人出願が量的にもまた内容について申しましても、非常に大きくかつむずかしいということが御理解願えようかと思います。
  29. 板川正吾

    板川委員 参議院附帯決議の第一の画期的な方途を講ずる、こういう点を実は聞いたのでありますが、長官説明ではどうも画期的な方途というのはないようでありますね。着々と地道ですが一生懸命やるほかはない、こういうようなお話であります。そうしますとこの附帯決議に対して、どうも私は忠実でないように思うのでありまして、画期的方途ですか、今までになかった方法を一つ考案されること、これは冗談でありますが、特許庁ですから、ないないと言っているのではなくて、その辺の新しい手段を考案されて、一つ画期的な方途発明してもらいたい、こう思うのです。どうもそうでないといつまでたっても、二年半近い未処理が進まないと思うのでありまして、その点を強く要望いたしたいと存じます。  次に附帯決議の二で、「審査官、審判官の増員を行い、併せてその待遇を速やかに改善し、有能なる人材の確保に遺憾なきを期すること」こういうことが決議されておりますが、これは何項目かあろうと思うのですが、これに対して具体的にどういうことを考えていかれるか、やろうとするか、その点を明らかにしていただきたいと存じます。
  30. 井上尚一

    井上政府委員 第一項に関連しまして、先ほど今後の計画を申しますことを省いたのでございますが、今御質問の第二項の審査官、審判官の増員の問題につきましては、われわれが現在持っておりますところの審査審判処理計画というものを一応申し上げなければならないかと存じます。われわれとしましては、三十四年度に始まる今後の八カ年計画というものを、審査審判について一応立案をいたしております。今日の技術家の採用の実際問題といたしまして、一挙に多数の人間をとるということはむずかしいわけでございますので、またそう一挙に大勢の者を採用いたしましても、これの教育ということも必ずしも円滑には参りませんので、われわれとしましては年次別計画を作成しまして、今後数年間に約三百七十五名程度の増員はどうしても確保したい、かように考えておるわけでございます。具体的に申しますれば、これはただいま特許庁として持っておりまする計画でございますが、三十四年度は先ほど政務次官から申し上げましたように、二十名の増員でございますが、三十五年度におきまして八十名、三十六年度は七十名、三十七年度も七十名、三十八年度四十名というふうな増員を考えておる次第でございます。今申しましたのは審査官プロパーでございますが、このほかに審判官としまして十五名、あるいはその他の書記、これはどうしても審査審判を通じまして相当数が必要でございます。そういうような補助職員等をも全部含めまして、三百七十五名の増員計画を作っている次第でございますが、来年度以降この計画の達成につきまして、われわれとしてはできるだけの努力をいたしたい考えであります。  それから次に待遇の改善の問題でございます。これはいろいろな内容があるわけでございますが、特許庁としてはいかんともなしがたい点等につきましては、人事院その他とも交渉いたしまして、今後待遇の改善についてできるだけ努力をする考えでございます。  有能な人材の確保という点につきましては、最近の公務員の給与ベースというものから申しまして、民間と比べて不利でございまして、有能な人材を十分確保することが困難であるという事情がございますことは、板川委員も重々御承知通りでございますが、われわれとしましては、今日の国家公務員制度としてきめられている諸条件の範囲内において、できるだけこういった点につきましても努力をいたしたいと考えております。  なお今日の特許庁における審査官、審判官の待遇の現在の状況としましては、通産本省あるいはそのほかの関係省と比べて決して劣っているものではない、かように考えておるわけでございますが、先刻も申しましたように、最近数年間に新人を多数増員して参りましたし、また今後も毎年多数の者の増員を続けて参りますと、いわゆる人事院できめられまするところの級別定数と申しますか、そういった点につきまして人事の運用上非常に困難を感ずる場合が生じて参りますので、そういうような面で待遇の改善がうまく参らない点につきましては、先ほど申しましたように人事院当局とも今後できるだけ交渉しまして、待遇の問題について万遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。
  31. 板川正吾

    板川委員 審査官、審判官の増員を行う計画として、資料によりますと特許庁整備七カ年計画というものを発表され、三十四年から四十一年までの七年間で三百七十五名を増員して、そうしてこれは四〇%ほどの人員増となりますが、最終の年度の四十一年度では未処理の残が三十四年度特許実用新案二・八年分に対して、四十一年度になれば一・二年くらいにする。あるいは意匠、商標等は一年分あるいは一年半分あったものを〇・三年くらいにする計画である、こういう計画書も拝見しておるのであります。まずこの中で本年度分として二十名の増員でありますが、これは審査官を二十名増員するというのでありますが、実際の審査を担当する審査官あるいは審査補助官あるいは審判官、こういうようなところでは二十人のうち幾人くらいふえるのですか。     〔中村(幸)委員長代理退席、委員   長着席〕
  32. 井上尚一

    井上政府委員 二十名の内訳はこの計画にございます通り特許実用新案関係十二名、意匠関係で八名でございますが、新規採用者はどうしても若い者になりますので、さしあたって審査官の補助者として採用する考えでございます。
  33. 板川正吾

    板川委員 私が調査した範囲では審査官が三名、審査補助官が二名しかふえていない。あとはほかへいってしまうようでありますが、実際これじゃ大して人員増強にはならぬと考えるわけです。ところで特許庁に技術懇話会という団体がありまして、ここで特許庁審査審判事務促進正常化七カ年計画というものを発表され、私どもその資料をいただいておるのでありますが、これによりますと、とにかく七カ年後には、特許出願をしたら少くとも半年くらいで、それをイエスかノーかきめる、こういう態勢にすべきだということが主張されておる。そのためには人員も現在の倍ふやさなくてはならない、こういうことも言われておるのであります。もちろん人員が倍になっても特許庁が赤字を出すということはないと思うのでありますが、この計画と特許庁の計画の三百七十五名の増員というのはあまり差があるのでありますが、どうもこの特許庁要求というのは、御承知のように庁舎自体が官庁の中でも一番ひどい状態で、そういう点ではどうも腰が強くないような感じがするのでありますが、実際は三百七十五名でなくてもっとふやさないと、特許実用新案を四十一年で未処理の分を一・二年分にするということは不可能じゃないですか。これをどうお考えですか。どうも私はこの資料を見てみますと、特実の出願件数は三十三年の件数の横ばいである、こういうふうにしておりますが、この件数を過小に見積って三百七十五名というような形を出しておると思うのでございます。実際私は今までの実績からいっても、これは過小の評価ではないかと思う。私の計算によると、過去七カ年の特許実用新案の伸び工合というのは、二十六年を基点として三十三年度は一・五倍になっておるのです。ですから三十四年度以降七カ年についても、三十三年度を基点とすれば、その一・四倍ないし三倍には伸びるはずだと思うのであります。これを三十三年度と同じように件数を見積って、それで最終の未処理件数を割って一・二年分というふうに出しておる。どうも無理な感じがしまして、この点からいうと私は懇話会の関係者資料の方が正鵠を得ておるという感じを持っておりますが、この点について長官はどうお考えですか。
  34. 井上尚一

    井上政府委員 技術懇話会と申しますのは、特許庁の中におきまする技術関係の職員の団体でございますが、特許庁としまして正式に作りました数字と技術懇話会の数字の間に計画上食い違いがある、その点についての御質問でございます。われわれとしましては計画を作ります以上、できるだけ達成可能なと申しますか、実現可能な案を作ることが必要でございまして、希望ないし理想を追うのあまり、あまり現実から遊離した計画を作りますことは、実際上人員の採用の見通しもつきませず、また数ばかりふえても教育研修が徹底しないというような点も実はあるわけでございまして、そういういろんな諸般の事情を総合的に勘案しまして、特許庁としまして提出しました資料は、関係の技術関係の部長、技術関係の課長をも含めましての幹部として練った、検討しました結果の計画であるということを御承知願いたいと思うわけでございます。なお計画の目標について、四十一年度において、特許実用新案処理が一年二カ月というのは、まだ長くはないかという御質問でございますが、これは一応ごもっともかと存じますけれども、実は工業所有権保護同盟条約におきまして、優先権主張制度というのがございます。それで同盟国の国民はある一国に出願しまして後、一年以内に第二国、第三国へ出願しました場合には、最初の第一国に出願した日にその他の国においても出願したものと扱う、そういう約束、優先権主張という制度があるわけでございます。ですからもし審査期間が短縮されまして、出願後一年以内に権利が確定したとしましても、その一年以内に同じ技術のアイデアにつきまして、外国人から出願がございました場合には、一年遡及いたしまして、その外国人出願の方が、事実上日本にはおそく出願されましても、優先権主張の結果、一年遡及するという関係上、これが逆に先願となりまして、一たん設定された権利がくつがえされるというような事態が生じ得るわけでございます。そうなりましては、特許権というような重要な権利につきまして、かえって混乱を生ずるというふうにわれわれとしては考える次第でございます。そういう一年間の遡及効力が認められておる優先権主張という制度をも考慮しまして、外国におきましても、出願審査につきましての処理計画を作ります場合には、やはり一年とか一年二カ月というところを大体目標にしておる実情でございますので、その点を御了承願いたいと存じます。  それから件数の見通しについて最近の出願の上昇のカーブから考えても、三十四年度以降の出願件数は横ばしておる。特許実用新案について横ばいしておるのは適当ではないという御指摘、これも非常にごもっともな御意見であると存じますが、内容について申しますれば、意匠につきましては、最近の増加傾向がインダストリアル・デザインという考え方の浸透、あるいは産業界におきましての意匠の重要性がますます大きくなって参りましたので、意匠出願につきましては、最近の増加という実勢を考慮しまして、今後の計画にも意匠についてはある程度年々増加していくということを前提として計画を作りましたが、特許実用新案について、一応三十四年以降横ばいという前提を採用しました理由は次の通りでございます。すなわち日本の今の出願は、特許実用新案につきましては、世界第一でございまして、事実米国、英国等を抜いているわけでございますが、出願件数が多いということは、まことに好ましい現象ではございまするけれども、その内容、質的にこれを考えますと、必ずしも世界第一流の出願であるということは言いがたいかと存じます。今日大体特許実用新案等につきましては、出願権利になります率が三五%でございます。米国等におきまして六〇%という合格率と比べますと非常に低いわけでございます。言いかえますれば六五%が拒絶になっており、その六五%の大部分というものが、かつての特許方法にもすでに同じアイデアがあるという理由によるわけでございます。そういうふうな状況でございますので、今日のこの出願件数中には、かなり質的に程度の低いものもある、あるいは従来すでにあったものとダブつたものが非常に多いという実情から申しまして、われわれとしては今後いろいろな方法を講じまして、出願の質的向上に努力をいたしたいと思っております。そういう意味で、言いかえればいつ、どこに、どんな発明がもうすでにあったかというようなことを特許公報の普及によりまして、出願認可は発明者側におきまして、もっとよく調べてもらう、そういう事態に今後改善指導していきたいと思うわけでございます。そうなりますればむしろ出願の質がよくなって、かえってその件数の方は増加しない、そういうことが期待できるわけでございます。そういう点が第一でございます。  もう一つは、先ほど板川委員から御指摘になりました今度の制度改正によりまして、従来一発明出願主義という原則を非常に強く貫いて参りましたが、今度多項性の採用というわけで複数の発明を一出願で扱う、そういう道を新たに開いたわけでございます。この点につきましては五項目、六項目に従来多くの出願にまたがっておりましたものが、今度は一本の出願にまとめられる、そういうケースも相当今後は生じてこようかと思う次第でございます。  それから第三番目の理由といたしまして、先ほども御指摘になりましたように、実用新案制度を、従来対象を型としたのから、今度は考案ということに切りかえるわけでございまして、この実用新案制度改正によりまして、従来は防護目的という必要上、実用新案につきましての不当に多過ぎる出願があったという点が相当あったのではないかとわれわれは考えておる次第でございます。今後制度切りかえによりまして、自分として積極的に権利を取るつもりはないが、第三者が権利を早く取ってしまうと困るという意味で、防衛、防護の目的だけからするところの実用新案登録出願というものが、今度の制度改正によりまして相当減少するということも期待してよいのではないか、かようないろいろな点を勘案しました結果、今後のことでございますので、出願件数がどうなって参りますか、もちろん正確には見通しがつかないわけでございますが、今申しましたような理由で、一応三十五年以降は三十四年度の横ばいという前提に立って計画を作りましたような次第でございます。
  35. 板川正吾

    板川委員 今長官説明の中で、米国では出願件数に対して六五%が権利の設定があるようであります。日本は逆で三五%しかない、六五%は却下されたり、拒絶されたり、あるいは取り消したりしておる、こういうことであります。それでどうも日本では乱願が多いのじゃないかというふうにも私理解したのですが、私もこの法案を担当して、一体過去に幾ら日本出願件数に対して権利の設定ができたか、七十八年間の総計を出してみましたら特許実用新案で三割になっているのです。そうしますと最近三五%はやや質がよくなったのでありますね。だからそれぞれ国民性や歴史もあるでしょうから、私は乱願といって、国民が料金が安いから出しておけば眠っていても権利が守れる、こういうことでやたらに出しておるのだという非難はどうも当らないように考えておるわけであります。ちょっと思い出しましたから申し上げたのですが、話に戻りまして、三十三年度審査官、審判官を採用するときに特許庁では三十一名か技術者を採用予定しておる、ところがいざ採用の段になって、四月一日採用の日限に参りましたら三十一名も予約内定しておった者がわずか一名しか来ない、こういうことを実はちょっと聞いたのでありますが、今年度二十名増員をいたします。停年その他でやめられる方もあろうと思いますから、実際新規採用は三十名か四十名か知りませんが、二十名以上だろうと思うのですが、ことしは内定者が時期が来たならば特許庁に採用に来なかった、そういう御心配はありませんか。
  36. 井上尚一

    井上政府委員 今度は、二十名の予定は、まだフルにはとっておりませんが、大体予定の数に近い人員の採用は可能な見込みでございます。
  37. 板川正吾

    板川委員 次に移りますが、待遇改善をすみやかにするということを決議されておりますし、これについては高碕大臣、あるいは大蔵大臣、行政管理庁長官の山口国務大臣等も参議院における審議に出席をいたしておりますが、この待遇をすみやかに改善するという方法はどういうふうにお考えなんですか。どうやって待遇改善をしようとするか。それから待遇改善をしないと、なかなか有能な人材というものは確保ができないと思うのですが、それは大蔵省あるいは人事院ということもありますけれども、何といっても待遇を改善し有能なる人材を確保しようというには、その主務官庁である特許庁が一番熱心にならなければ、なかなか確保できない。人事院にお義理に働きかけた、こういうだけでは確保が困難だと思うのです。どうしてもこれは首脳部が熱心に熱を持って待遇改善をやって人材確保に努力しなければできないと思うのですが、どういうお考えでありますか、この点をお伺いいたします。
  38. 井上尚一

    井上政府委員 国家公務員の一環としましての特許庁審査官、審判官の待遇の改善ということになりますので、もちろん特許庁だけではできない事柄でございますけれども、御意見のようにわれわれ特許庁としまして、これはきわめて真剣にかつ強力に、人事院、大蔵省当局その他とも十分交渉してみたい、かように考えております。
  39. 板川正吾

    板川委員 待遇の中にあろうと思うのですが、二年間特許庁において高等官待遇を受けた者は無試験で弁理士の資格が得られるという規定があるのでありますが、特許庁のそういう事務をやった方に、そういった資格を与えるということも一つの待遇改善であろうと思うのですが、この弁理士法改正をする場合に、そういう問題はどういうふうにお考えでありますか。
  40. 井上尚一

    井上政府委員 弁理士法第三条第三号にただいま御指摘のような項目が残っておるわけでございますけれども、これは昭和二十五年五月に古い高等官制度が二級官制度に変りまして、その高等官制度が廃止になったわけでございます。ですからこの規定をどうするかということは、そのとき以来実は問題になっておるわけでございますが、現状としましてはもちろん高等官という制度はございませんで、この条項というものは申せば空文ということになっておるわけでございます。こういうような問題が特許庁審査官、審判官の待遇という上に非常に重大な関係を持っておるという点については、私も全く同感でございまして、この点につきましては今後の弁理士法改正の場合に、できるだけ特許庁審査官、審判官の利益が確保できますように十分考慮したいと思っております。
  41. 田中武夫

    ○田中(武)委員 板川委員質問に関連いたしまして、二、三お伺いいたします。  まず今の高等官ということなんですが、今の長官の御答弁のように、高等官という官職はすでになくなった、今日死文にひとしいことになっているわけです。今特許法その他工業所有権に関する法律法案改正を出しているときに、それに最も関係の深い弁理十法、その中にそういった戦争以前の資が残っておる、それをなぜ一緒に改正しようとしなかったか。
  42. 井上尚一

    井上政府委員 先ほど申しましたように、弁理士法と同種の法律、すなわち弁護士法及び税理士法、公認会計士法、そういうような同様の性質の法律が、最近着々改正を見て参った次第でございまして、弁理士法が形式も内容も古い形のまま今続いておることは、まことに適当でないわけでございます。この点につきましては、われわれもなるべくすみやかに弁理士法改正につきましても成案を得るように、今後努力するつもりでございますが、弁理士法改正の問題としましては、この部分だけ取り上げて一部改正としてこの際考えるということは、ただいま申しましたような関係からいって、非常にむずかしいわけでございまして、どうしても同種の法律との平仄の関係、均衡の関係、そういう点をも考えつつ、弁理士法全面改正の一環としてこの制度について、今後研究を加えたいと思うわけでございます。最近の同種の法律の傾向としましては、資格の特例というような問題はだんだん厳格化する方向にございますし、また試験制度という点につきましても、やはりそういう同種の法律との均衡を考慮しながら改正考える必要があるわけでございまして、そういうような事情でわれわれとしましては部内の要望もあり、第三条の問題につきましてだけでも、できれば切り離して改正をいたしたいということは、ずいぶん考えたわけでございますけれども、今申しましたような事情で弁理士法全面改正をすみやかに行い、その機会にこの問題もあわせて解決するということにならざるを得なくなった、そういう状況でございます。
  43. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私の質問に対しての答弁は簡単でけっこうです。おっしゃるように公認会計士法あるいは弁護士法、こういうのと弁理士法は、すなわち職務称号を与えるという点においては同一のものであります。しかし現に今工業所有権関係法を大幅に一度に改正しようとして十の法案を出しておられるわけです。それならそれと最も関係の深い弁理士法、それがそういうちょっと見ただけでも時代錯誤的な規定がある、それをなぜ一緒に検討せられなかったか。そういう点から考えましても、新しい発明とか考案を審査する特許庁の頭がどうも古過ぎる、そういう考えを持たざるを得ません。私はあらためて質問しますから、そのときにまた申し上げたいと思います。  もら一つ板川委員審査官、審判官の資格その他についての質問に対して関連して伺いますが、まず審判官とか審査官、こういう人たちは上司のすなわち長官あるいは部長等の命令を受けて職務を執行するのかどうか、その点をお伺いします。
  44. 井上尚一

    井上政府委員 審判官につきましては、審判は合議体によってこれを行うというのが法文上明記になっておるわけでございます。審査官につきましては出願等について審査官をして審査をやらせるということが規定されておるのでございます。上司の命を受けてやるかどうかという点につきましては、審判官と審査官につきましてはこの間おのずから性質、程度の違いがあろうかと思います。
  45. 田中武夫

    ○田中(武)委員 程度の違いはあるかどうか、そういうことじゃなしに、いわゆる独立して審査審判を行うのかどうか、審査審判を行う場合に上司の命令によって行うかどうか、いわゆる許可、不許可の決定の場合に独立して職務を行うかどうか、この点です。
  46. 井上尚一

    井上政府委員 審判官については独立してこれを行うということがはっきり申せようかと思います。それから審査官につきましてもある程度職務の独立性は認められておるということが申せようかと思います。
  47. 田中武夫

    ○田中(武)委員 審判官は独立して職務を行う、そうして審判官の職務を遂行するに当ってちょうど裁判所における裁判官に対する除斥と同じように審判官の除斥をすることができる、こういうことにもなっている、また審判官の審判に基いて与えられた工業所有権は絶対的な一つ権利として付与せられる、こういう点を考えた場合に、これはむしろ行政官というより司法官に近い職務執行であり、その内容である、こう考えますがどうでしょう。
  48. 井上尚一

    井上政府委員 審判官につきましては司法官に近いということが申せようかと思います。審査官につきましては、審判官と同一に律することはできないかと思います。
  49. 田中武夫

    ○田中(武)委員 審判官にだけ、それではしぼって申し上げましょう。おっしゃったように司法官と同じように、それに準ずる仕事をしている、こういうことは長官もお認めになったと思います。それでは司法官に対して憲法その他裁判所法等によってその資格あるいは身分の独立ということが法律上行われております。ところがこれは参議院の方で若干の修正がありまして、このたび政令で定めるという程度のことは修正になった。だがしかし、原案提出の際には、この審判官について何らの規定が盛られていなかったのは何ゆえか。
  50. 井上尚一

    井上政府委員 審査官、審判官を通じましての地位の保障、資格に関しましては、法律上何らかの条項を設けるということを、われわれとしては考えていたわけでございますが、法文の作成の過程におきまして、いろいろ関係各省間で見解の一致を見ることができなかった次第でございます。そういう事情で法文上明文を設けることができなかった次第でございますけれども、参議院の修正によりまして、審査官、審判官の資格について政令でこれをきめるという条項が加わることになりましたことは、非常にけっこうなこととわれわれとしては考えております。
  51. 田中武夫

    ○田中(武)委員 長官がおっしゃるように、審判官の職務の内容及びその執行に当りましては司法官に準ずるというか、むしろ行政官より司法官に近い仕事をしている。これはお認めになった事実である。先ほどおっしゃいましたように、その審判の結果、与えられる権利は、工業所有権として絶対的な権利を付与せられる、こういう法律的な効果を持っている。あるいは裁判官と同じように除斥に関する規定もある、あるいは秘密の漏洩に関しまして一般行政官よりも重い罰則が課せられる、こういう点から見まして、私は司法官に準ずるこういった立場、任務を持っているものではなかろうか、司法官にあってはそういう身分の独立は法律できめられている。今のお話では、そういうことを長官考えておったのだが、各省間の意見の一致を見なかったために、こういうことでありますが、意見の一致を見なかった関係各省というのはどういう関係においてどういう意見が出たのか、あなたが最初独立の条文を入れたいと考えておったその原稿をお出し願いたい。
  52. 井上尚一

    井上政府委員 この審査官、審判官についての資格に関する規定を設けるということについて、その実態については関係各省間に別段意見の相違はなかったのであります。立法技術の点について見解がなかなかまとまらず、そういう事情で一応この法文上条文を設けることができなかったというふうに了承願いたいと思います。  なお審判官と審査官は同じく特許庁の職員でございますけれども、この間性質は相当違うわけでございまして、これを同一に律することができないことは、先刻申し上げた通りでございます。
  53. 田中武夫

    ○田中(武)委員 僕は審判官だけにしぼって申し上げた。私は今関連質問ですし、あらためて私の質問の時間のときに掘り下げてみたいと思います。だが今長官も言われたように、最初は審判官について独立の規定を入れたいと考えておった、こういうことですから、どういうような条文を入れようと考えておられたか、資料としてその文書を出していただきます。
  54. 井上尚一

    井上政府委員 これはただいま申しました、現在参議院の修正で入りましたのと同様な文言でございます。
  55. 田中武夫

    ○田中(武)委員 考えておったと言って、それを出せと言ったら、参議院で修正したものと同じだ。それなら政令で定める、それだけですか。それじゃ政令で定めるという以上、あなたがその原案を出される、こういうことであるなら、その政令の内容があらかじめ考えられておるはずである。その政令の内容についてお示し願いたい。
  56. 井上尚一

    井上政府委員 政令の内容につきましては、次会に配付いたしたいと思います。
  57. 板川正吾

    板川委員 順序として参議院附帯決議を、私もうちょっと明らかにしたいと思います。第三の、「設備、資料、備品等を充実するとともに、執務環境の改善及び執務能率の向上をはかること、」こういうことを決議されておるのでありますが、この中で特に資料の問題、先ほど長官も言われました、資料を充実するということが大切だというのであります。ところが、この資料に対して、どのくらい資料費として計上しておるかというと、本年度二千七百万円ですか、こういう状態であります。しかしこの間私特許庁へお伺いをして、資料の係の方と話したのですが、とにかくイギリスのある年代の資料が不足しておる。その不足した資料を補充したい。補充したいにも、四千万円くらいの費用がかかるんだ、こういうふうに承わったのです。じゃ、そういうふうに資料を充実するのかと思うと、その半分ちょっとくらいしか計上していないというのはどういうことなのか、こう思うのであります。  それから、この設備、備品は当然でありますが、執務環境が、特許庁は外見はちょっといいらしいのですが、中に入りますと、終戦直後、二、三年後の焼けビル程度の内容であります。あれでは長く勤務しておると、健康上にもよくないし、仕事の能率も上らないと思う。件数が多くて非常に仕事の能率の向上が叫ばれておるときに、執務環境が悪いということは、まことに目的と逆行しておるのでありますが、この執務環境の改善を、長官はどういうふうにお考えになっておられるか、この点お尋ねをいたしたい。
  58. 井上尚一

    井上政府委員 まず、特許庁としましての資料の充実整備の問題につきましては、二つの内容がそこにあるかと思います。と申しますのは、資料の収集、整備ということが一つ、もう一つは、集められました資料をこまかく各技術の分類別にこれを整理しまして、これが能率的に審査の用に供せられるような状態にこれを整理をする、そういう問題になろうかと存じます。私どもとしまして資料の問題を考えます場合には、以上の両者を含んでいるつもりでございまして、さように御了承願いたいと思います。  なお、それから、英国の特許明細書の欠号分、これらを入手するには四千万円くらい必要である、これはただいま御指摘通りでございますが、実はこれをどうして計上していないかという点でございますが、工業所有権保護同盟条約におきましては、同盟各国間においては、その資料を相互に交換することができるという建前がございまして、われわれとしましては、現在二十数カ国と特許公報等の交換を行なっているわけでございます。この英国からの欠号分につきましても、日本特許公報の交換として、向うから無償でもらえないかということで、これまでいろいろ交渉を続けて参りましたので、われわれとしては、できれば無償でこれを入手することを考えていました関係上、これを予算要求としまして、ここに本件が必ずしもこれまで表面化して参らなかった、それが事情でございます。  それから環境の改善整備についてどう考えているかという御質問でございますが、この点につきましては、ただいまの特許庁の建物は、もっぱら特許庁用として建てられた建築物でございますが、今日通産省全体としまして非常に狭隘でございますので、今の特許庁の一部に通産本省の関係各局が同居しておるありさまでございます。今後近い将来に、もし通産省用としまして新たな庁舎に移転するというような経緯がございました場合には、現在特許庁の中に同居しています関係の各局が出ていくというような事態が期待されるわけでございます。そういう機会におきましてわれわれとしましては、今のあの中は、まことにきたないという御指摘通りでございますが、この点につきましてできるだけ改善整備したいと考えております。
  59. 板川正吾

    板川委員 もう一点、最後にお伺いをしたいのですが、今度の改正法の中で大きく注目されておるのは、出願料を二倍にするということであります。この出願料等を二倍にしなくちゃならぬという理由はどういう点でありますか。
  60. 井上尚一

    井上政府委員 今度の料金改定の問題としましては二つの事柄が含まれておるわけでございまして、一つは、ただいま御指摘出願手数料の引き上げという問題でございます。もう一つは、特許料、登録料等の引き上げの問題でございます。便宜上後者の方から申しますが、現在、特許料、登録料等につきましては、第一年目、二年目、三年目、四年目というふうに各年次別にこの料金がきめられているわけでございますが、特許について申しますと、第一年目の特許料が五百円でございます。それから実用新案意匠等につきましては、それの第一年目の登録料が三百円でございます。申すまでもなく、特許実用新案、そういう非常に強力な独占権としましての料金、言いかえれば特権料というものが、年額五百円、三百円であるということは、今日の経済情勢から申しまして、いかにもこれは低過ぎるではないかということは言えようかと存じます。もちろん今日の経済情勢におきましては、経済の発展に応じまして、特許権、実用新案権等の経済的価値というものが、当然必然的に増大しておるわけでもございますので、そういった点を考えまして、今回二倍、すなわち特許については一千円、実用新案については六百円というふうに二倍にこれを改定したいという考えでございます。  なお、出願手数料につきましては、特許の場合は一千円、実用新案の場合には六百円、意匠は四百円というようなことになっておるわけでございます。この点につきましても、独占権としましての特許権、実用新案権等を与えるかいなかの前提としましての国の審査要求する、その要求手数料といたしまして千円、六百円とかいうものは、今日の経済情勢としまして、これも決して高いとは申せないのでございます。まあそういうような点を考えましてわれわれとしましては、むしろ今日これを二倍程度に引き上げるということが適当ではないかと考えておりますが、もちろん同時に、これと並行いたしまして特許庁としては、特別会計ではございませんけれども、料金改定によりまして相当収入増加があるわけでございますので、この点につきましては大蔵省方面とも今後十分折衝しまして、そういう増収の機会に特許行政の人的、物的両面の強化という方向に、これが投入になることを期待し、かつそういう方向に努力をいたして参りたい、かように考えております。
  61. 板川正吾

    板川委員 まあ特許なり実用新案なりが、権利の設定ができれば、これはもちろん安いものであろうと思うのです。あるいはそれによって権利が確保されるということなら安いものであろうと思いますが、六五%は先ほど言いましたように設定できない状態になっておるわけですから、従ってその料金が急に二倍になるというのは、やはりそういう意味からいえば痛いという声も私は当然だろうと思う。ただその関係者国民として、二倍になってもいい、その金がほんとうに国民へのサービスのために、特許出願をする人のサービスのために使うなら、これは場合によっては二倍になっても三倍になってもやむを得ない、こういう気持になると思うのです。ところが予算を見ますと、どうも特許庁の歳入は結局国民サービス機関であるので、国家がこれに対して支出していいと思うのでありますが、どうもいつももうかっておる、こういうふうに見えるわけです。三十二年度、三十三年度、それから三十四年度年度別の数字を簡単に一つ説明をしていただきたい。
  62. 井上尚一

    井上政府委員 三十二年度について申しますれば歳入が四億四千百一万九千十八円、歳出が四億一千三百二十八万六千円、かようになっております。三十三年度は、これはまだ見込みの数字でございますけれども、歳入が四億七千三十八万一千五十二円、これに対しまして歳出が四億四千五百五十七万八千円、かようになっております。三十四年度は、先ほど申しましたように歳出が四億四千四百九十七万七千円に対しまして歳入は、これは見積りでございますが、約八億五千五百万ということに料金改定の結果といたしまして、大幅の増収を見る見込みでございます。
  63. 板川正吾

    板川委員 そうしますと三十二年度で約三千万、三十三年度で二千五百万、特許庁が独立採算制をとったら黒字ということになりますね、そうして三十四年度は四億一千万黒字、こういうふうになりますが、どうも納得ができないのは、料金を上げて、そしてそれが国民サービスとして返されるなら、これはやむを得ないと思うのですが、国家が特許料金をピンはねして、利益を受けるということは、まことにけしからぬと思うのでありまして、これをもうちょっと、先ほど附帯決議にもありましたように、待遇の改善とか、あるいは施設の改善とか、そういう方面に投入するならば、われわれもある程度納得するのです。そうでなければ、これは料金値上げを見送って、来年度おやりになったらいかがでしょうか。
  64. 井上尚一

    井上政府委員 三十二年度、三十三年度におきまして歳入が歳出を上回っておるということは、まさに今御指摘通りでございます。われわれとしましては歳入が多いのではなく、歳出がむしろ少いのであるということを常に申しておるわけでございまして、これは外国、米国、英国、ドイツ等の各国の出願件数あるいは特許庁予算、それから定員というようなものと比べて申しましても、わが国としましては予算の規模が非常に小さく、また定員も件数と比べて日本特許庁の定員は非常に少いというのは、遺憾ながら現在の実情でございます。三十四年度におきましては、法案が通過することになりますれば、御可決願うことになりますれば料金がそういうふうに改定になり、歳入がふえるわけでございますけれども、この点につきましては三十四年度予算の問題としては、われわれ、大蔵省当局に対してこの法案審議の経過に徴しましても、この三十四年度の問題として歳出の増加を大幅にここに確保することができなかったことは、まことに遺憾でございますけれども、大蔵当局としてもこの料金改定によります歳入の大幅増加という事実については、十分了解しておるところでございますので、御指摘の点についてはわれわれとしては責任を持って、来年度以降においてはぜひ人員増加その他いろいろ物的資料、設備の改善拡充に十分な努力をして、大きな歳出予算の確保をいたしたい。そういうことによって今日国民の強い要望であるところの審査審判促進という要請にこたえたいと考えておる次第でございます。
  65. 板川正吾

    板川委員 この法案提案されることは、二年も前から答申を受けて一生懸命やっておったので、わかっておると思うのです。法案提出されることはわかっておる。しかもその法案は、内容からいって一部修正がありましても、全体としてはこれは通る可能性を持っておる。こういうことは大体お考えであったと思うのですが、そうしますと料金が、従来ももうかっておったのですから、従って今度二倍になるとすれば大幅にもうかってしまう。こういうことは当然原案提出者の特許庁としても考えないはずはないと思うのです。ところが、先ほども次官があやまりましたけれども、三十四年度の、本年度予算は昨年より六十万でもともかく減っておる。一方において料金を上げて、どんどんもうかってきて、独立採算制であれば大いにもうかってくるときに、なぜ三十四年度特許庁予算が六十万でも前年より下ったのですか。今度の法律改正について、学者間の説には、どうも徹底しない、一つの原則に踏み切ったかと思うと、他の原則の方にふらついておる。何か両岸的な——もっとも岸さんがそういうのですからしようがないと思うのですが、どうも徹底しないという批判が多いのです。そういう点からいうと、この金額の面でも、私はどうも原案提出者としてはまことに徹底しないじゃないかと思う。もうかっておって、料金を二倍に上げて、さらに大幅にもうかるのに、本年度予算は昨年よりも減っておる原案を承知しておるということが私は納得できない。それから大蔵省も承知しておるということは、今申されましたが、大蔵省が承知しておったならば、なぜいま少しがんばってこの予算を、もう少しですから——四億といえば、大きいといえば大きいけれども、これは飛行機一台の値段ですからね、何とか話をすればできないはずはない。もし本年度いずれ臨時国会——この国会のあと臨時国会が開かれると思うのですが、来たるべき臨時国会に、あるいは予算を補正して大幅な増額をして、先ほどの附帯決議の趣旨に沿うように努力をしてもらいたいと思うのですが、こういう点に対して、長官としてはどういう見通しをお持ちでしょうか。
  66. 田中武夫

    ○田中(武)委員 ちょっと議事進行。ただいまの板川委員質問に対して、井上長官が答弁するのに先立って、議事進行で発言を許していただきたいと思います。と申しますのは今板川委員指摘したように、今まですでに特許庁は歳出と歳入を見た場合に黒字を続けておる。そこに今度の料金値上げによって四億何千万円の黒字を出している。一体政府特許事務というか、工業所有権の付与を企業と考えて、もうけることを考えておるのかどうか、従ってこの問題につきましては、特許庁長官意見でなく、大蔵大臣通産大臣意見を求めたいので、直ちに出席を求めたいと思います。大蔵、通産両大臣に出てもらわなければ、長官の答弁では何にもならぬ。
  67. 板川正吾

    板川委員 それでは、私は別な意味大臣にお伺いしますが、先ほどの点について、長官として可能の範囲で答弁願いたいと思います。
  68. 井上尚一

    井上政府委員 先ほど申しましたように、三十三年度と三十四年度との比較の点につきましては、一応トータルの数字は減っておるような形に見えますけれども、実質的な内容としましては、人件費その他物件費等については悪化していないわけでございまして、むしろかえって充実しているわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。  それから歳入と歳出との関係でございますが、この点につきましては、われわれとしましても従来いろいろ努力をいたしたわけでございますが、本年度予算編成の時間的関係で歳入に見合うべき歳出の予算を組むことができなかったことをまことに遺憾に存じておる次第でございますが、先ほど申し上げましたように、来年度以降の問題としまして、われわれとしましては十分な努力をいたしたい、かように考えております。
  69. 板川正吾

    板川委員 出願審査準備といいましょうか、スピード等について諸外国の例をちょっと参考に教えていただきたい。それはいろいろ審査の形式もあろうと思うのですが、諸外国では願書が完備しておった場合に、特許関係等では大体どのくらいの日程で、権利を設定したり拒絶したりするのでありましょうか。その点を一つ参考までにお伺いをいたします。
  70. 井上尚一

    井上政府委員 外国におきまする出願から権利設定、処理に要する期間がどれくらいになっているかという御質問でございますが、最近の新しい資料を残念ながらわれわれ持ち合せておりませんが、今から二、三年前でございますが、そのときにはアメリカにおきましても非常に長期な、三年とか三年半とか四年とかいうふうに、出願から処理までに非常な時間を要していたわけでございます。これはもちろん各国において制度の違い、その他程度の違いはございますけれども、これは終戦後今日までに技術の発展に伴う出願件数増加に対しまして、各国特許局を通じまして人員増加がこれに並行して伴わなかった、その結果、各国特許局が審査の長期化ということに悩んでいたわけでございます。そういうような事態に直面しまして、米国では先年審査促進計画というものを作りまして、人員の大幅な増加を行い、そうしてその後着々と事態の改善に努めつつ今日に来ておるような次第でございまして、これは言いかえれば一両年前までは、各国とも大体日本と同様な悩みを持っていた、そういう苦しい状況にあったが、計画の樹立、そして実行によりまして、最近着々改善を見つつあるということでございますが、去年十月にリスボン条約改正会議がございまして、各国の特許局の関係者が会合しました機会に、私としましてはそういうことを二、三聞いてみたわけでございますが、われわれとしましては、今日の状況は、もちろんこれは大いに改善を要するものとは考えておりますけれども、部門によりましては、各国と比べて日本の方がはるかに悪いということでもないかと存じます。問題はむしろ今後の計画の確定と今後の実行力のいかんによりまして、各国の改善の状況が変ってこようかと存じます。
  71. 田中武夫

    ○田中(武)委員 次の議事との間に時間的な余裕があるそうですから、つなぎの質問をいたします。私の本番はあらためて行いますから、これをもって私の質問が終るということではないということをあらかじめ申し上げておきます。  まず最初にお伺いしたいのですが、今回の工業所有権関係の十法案改正提出の動機といいますか、それは工業所有権制度改正審議会答申によって云々、こういうことでございます。そこでまずお伺いしたいことは、この審議会のメンバーを一つ明らかにしていただきたい。と申しますのは、かつて独占禁止法の改正に当りましても、これは政府は取り下げましたが、独占禁止法の改正審議会を作ったそのメンバーを見たときに、すでに出される結論がわかっておるような友の会といったような顔ぶればかりを審議会のメンバーとして任命をして、その答申によって、とこういうことです。何々の改正とか制度改革というようなことで審議会を作られる、そのメンバーを見たときに、すでにその結論がわかるような顔ぶればかりであるというならば、政府あるいは官僚の考え方に反対しないような人ばかりを選ぶというのが今までの行き方である。たとえば社会保障制度審議会を見ても、売春対策審議会を見ても、出されてくる結論をもって、いかにも民主的にこの結論を得て、その答申に基いて法改正をやるのだというような、政府がそういう審議会の隠れみのに隠れて、そうしておのれの野望を達成しようというのが今までの行き方である、そういう点からこの審議会のメンバーについてお伺いをするわけです。
  72. 井上尚一

    井上政府委員 先般御配付申し上げました資料中に、工業所有権制度改正審議会委員名簿というのがございますので、恐縮ですが、それによってごらんをいただきたい。
  73. 田中武夫

    ○田中(武)委員 朝の理事会で申し上げたように、一かかえもあるような資料をいただいて、その資料を全部目を通すだけでも数日を要します。従って私がここで明らかにしておきたいことは、資料を全部見てしまうまでは三日や四日ではこんな法案審議できない。私はその資料をまだ見ておりません。一々名前を要求しておるのではないのであります。階層別にお答え願います。大企業関係が何名、中小企業関係が何名、あるいは学者関係何名、そのうちどういう意見の人が何名、あるいは弁理士関係の人が入っておれば、その人が何名、あるいは町の発明家関係、こういう人の関係何人、こういうように階層別の何を出していただきたい。名前を見ただけではわかりません。
  74. 井上尚一

    井上政府委員 工業所有権制度改正審議会委員の本委員の数は三十四名でございまして、臨時委員が十一名、専門委員が三十三名、合計七十八名となるわけでございます。この階層別という御質問でございますが、この工業所有権制度といいます制度は、御承知通り全く無色の制度でございますので、その制度改正審議会委員の構成の場合におきましても、別に利益代表というような観点から階層別というような配分を考えるような考えをしなかったわけでございますが、内容といたしましては、産業界関係、それから関係各省、それから大学方面、言いかえれば学界ということになります。それから関係各省と申しましたが、行政官庁以外に最高裁判所、それから弁護士会代表、弁理士会代表、大体そういうような構成でございます。
  75. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私が伺っておるのは、法改正に当って政府は大ていの場合審議会といったものを作ってその答申に基いてやる、こういうことで、いつも審議会の隠れみのに隠れてやるというようなことが今日の傾向である。独占禁止法の改正のときにも、独占禁止法が改正せられて一番関係の深い消費者関係の代表が何人入っておるか、こう聞いたときに、詳細に調べていくとだれもなかった。たとえば農林中金の理事長が農民代表であったり、そういう答弁があった。あのときはたしか前尾さんだったか、水田さんだったか、どっちか忘れたが、私もいわば消費者の代表であるというばかな答弁をしたわけであります。私がこの法案審議に当りまして、内容的なことは別といたしまして、まず感じられることは、この膨大な法案の中で一条々々われわれが見ていくというのは相当時間がかかる。そこで、こういった中にまぎれ込んで思わぬところに伏兵があるということです。たとえば、特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案の第四条で、独禁法の九十六条と百条の二条を削除するため改正するような法案が出ておる。こういうことを見のがすことはできないと思う。私はこういうことをお伺いしておるのです。独禁法との関係については後日伺いますが、今このメンバーを見ましたが、このメンバーの中で一体中小企業関係の代表というものはおるのかおらないのか、どうもおるような感じがいたしません。あるいは町の発明家といいますか、そういった人たちの代表もおらぬ。私がこの法案審議に当ってまずその態度のバツク・ボーンとして考えたいことは、こういう改正によって中小企業、あるいは財政的に恵まれないところの町の発明家に対して、どのような結果を与えるかということであります。ところが、不幸にしてこのメンバーの中にはそういう人が盛られていない。また関係者意見を聞くのに六年間とか八年間とかかかったそうですが、その間逐次意見を聞かれたことがありますか、お伺いいたします。聞かれたならば、どういうときに、どういった人から、どういったことの答申を受けたのか、それを明らかにしていただきたい。
  76. 井上尚一

    井上政府委員 この制度改正審議会委員中には日本商工会議所、あるいは発明協会の代表者というものが入っておるわけでございまして、今御指摘のような方面としましては、発明協会というのは非常に歴史の古い、全国的に組織を持っておる団体でございまして、今御指摘のような方々は、この発明協会の直接間接の参加構成員である、かようにわれわれは考えているわけでございます。それから日本商工会議所につきましても、御承知通り日本商工会議所の中には、大企業と同時に中小企業の問題も並行して公平に扱われておる、そういう団体でございますので、私どもとしましては、そういう考え方でこの審議会の構成がなされたものであると考えておる次第でございます。  それからこの審議会答申に基きまして、法案作成過程においてどういう方面にどういうふうな説明をし、意見を問うたかという点につきましては、先ほど板川委員からの御質問に対しましてお答えを申しましたように、各特許実用新案意匠等の法案要綱が、正式に通産省としまして決定のつど、これを新聞に発表しますと同時に、各地へ出かけましてその説明会を開いたわけでございますし、また、法案作成の各段階におきましては、常に関係の団体、すなわち発明協会、特に弁理士会につきましては、法案作成幾変遷のありました各段階の途中におきまして法案弁理士会に送りまして、十分緊密な連絡をとったわけであります。なお、送ります以外に、弁理士会幹部と特許庁の幹部とは随時連絡会を持っておるわけでございまして、そういった機会に意見の交換は十分行なったわけでございます。なお、東京の弁理士会のみならず近畿弁理士会等にも再三おもむきまして、向うで説明会をやり、あるいはいろいろ意見を聞いた次第でございます。そういうふうに、われわれとしましては及ばずながらできる限り関係各界に法案ないしは要綱内容については御説明を申し、そしていろいろ各方面意見、反応というものを聞いた次第でございます。特に実用新案の問題につきましては、これの存続期間を中心としましていろいろ議論が沸きましたので、われわれとしましては、中小企業四団体に対しまして文書でもってこれの意見を問うたというようなこともあります。大体そういうような経過になっております。
  77. 田中武夫

    ○田中(武)委員 ただいまの御答弁は、かつて独禁法のときに、通産大臣が私も消費者でございますと言ったのと同じ答弁だ。日本商工会議所の会頭が中小企業の代表とあなたは考えておるのですか。かつての帝国発明協会の後身である日本発明協会が、町の発明家といいますか、その人たちの意見を代表する機関だとあなたは考えているんですか。そういう答弁をする限り、私はあなたの考え方自体すでに間違っておることを指摘したい。まず商工会議所ですが、商工会議所の会頭の意見を聞いたからといって、町の中小企業のおやじさんの意見が盛られておるとあなたは考えておるのですか、いかがですか。
  78. 井上尚一

    井上政府委員 私は会頭個人、会長個人を申しておるつもりではないのでございまして、日本商工会議所の中におきましては、中小企業対策委員会等も設けられておるわけでございまして、組織といたしましては、日本商工会議所という機構組織というものは、大企業の問題のみを考えておるというふうには私は理解していないわけでございます。発明協会につきましても、発明協会という組織が、ただいま申しましたように全国に各地方の支部を持ちまして、その傘下に多くの中小企業著をメンバーとして持っている、そういう大きな機構、組織としましての代表者として、この委員に加えられているということで申し上げた次第でございます。
  79. 田中武夫

    ○田中(武)委員 なるほど日本商工会議所ですから、字を読めば日本の商工関係の組織のヘッドだ、従ってそれらの人の意見を聞く、こういう形式的な考え方、これが私は官僚的な考え方であり、岸さんの考え方だ、こう思うのです。だれが考えても、たとえば今外務大臣の藤山さんは元の会頭だ、あの人が中小企業の代表だなんてそんなばかなことをだれも考えませんよ。発明協会にしてもそうでしょう。事務所が特許庁の中にあるのでしょう。そしてその中の事務を牛耳っておるというか、それを握っておる人たちは特許庁官僚の上りばかりでしょう。いわば特許庁の御用機関なんです。そういうところが発明家の代表だなんて考えていますか。そのほかにまだ町に、名は知られていないですが、ほんとうの町の発明家のそういった任意な協会があることはあなたは御承知だと思うのだが、そういった御用機関、事務所が特許庁の中にあってそしていつも連絡をしておる、その人たちの意見を聞くなら、あなた方の思う通りにできますよ。そういうことでもって関係者の多くの意見を聞いた、そういう考え方自体が私はおかしいと思う。いかがですか、日本発明協会のほかに、町の発明者の団体があるのかないのか、お伺いします。
  80. 井上尚一

    井上政府委員 中小の発明者の団体が東京にございますことは承知しております。しかしこういう委員政府審議会の人選としましては、やはり何と申しましても歴史も古く、規模も大きく、そして東京ばかりでなくて全国に支部を持ち、傘下にも多数のメンバーを擁しておる発明協会というような団体が、この代表として加えられるということは理由のあることではないか、かように考えておるわけでございます。
  81. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私の聞いたところでは、その日本発明協会以外の発明家の団体、この人たちが特許法改正についてどういうようになっておるのかと聞きに行ったときに、絶対秘密主義をとって聞かせなかった、こういう事実があります。そういうことについては、あすの参考人を呼びました席上において長官お立ち会いの上で明らかにしていきたいと思います。日本発明協会機構についても明らかにしていきます。それではきょうの質問はこれでおきます。
  82. 板川正吾

    板川委員 関連質問が入りましたけれども、以上私は概括的な質問をいたしましたが、次にあらためてまた各条にわたっての質問をいたしたいと存じます。以上をもって私の質問を終ります。     —————————————
  83. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 この際参考人出頭要求の件についてお諮りをいたします。ただいま議題としております特許法案関係法案について、理事の方々の要望もありましたので、明二十五日参考人に御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次に、ただいま決定をいたしました参考人の人選等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  86. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 小売商業特別措置法案及び商業調整法案の両案を一括して議題とし審査を進めます。この両法案は、小売商業特別措置法案外一件審査委員会において審査された議案であり、去る三月二十日同小委員会審査報告書が提出されました。この際同小委員長の報告を聴取することにいたします。小売商業特別措置法案外一件審査委員長小平久雄君。     —————————————
  87. 小平久雄

    ○小平(久)委員 小売商業特別措置法案外一件審査委員会における審査の経過並びに結果につきまして、簡単に御報告を申し上げます。  当小委員会は、政府提案小売商業特別措置法案及び日本社会党提案商業調整法案の両案につき、慎重な審査を行う目的をもって去る二月二十六日に設けられ、以来九回にわたって会議を開き、綿密な質疑を行うとともに、懇談の形式により各小委員意見の調整をはかって参りましたところ、三月二十日に至り、ようやく結論を得まして、ここに御報告申し上げる運びとなったのであります。  すなわち、小委員会においては、小売商業特別措置法案につきお手元に配付いたしました要綱のごとく修正を加えるべきものと決定をいたしたのでありまして、その大要を御説明いたしますと、第一は、法律の題名を小売商業調整特別措置法とすることであります。  第二は、消費生活協同組合に対する員外利用の許可及び措置命令に関する規定、すなわち原案の第三条及び第四条については、これと同趣旨のものを消費生活協同組合法において規定することに改め、かつ措置命令について若干の修正を加える点であります。  なお、これに伴い、購買会に対する措置命令についても所要の修正を行なっております。  第三は、小売市場の許可について、貸付のみならず譲渡についても許可を要することにするとともに、許可の基準につき、過当競争のおそれがない場合に限り許可するという趣旨を明らかにした規定を設けることであります。  第四は、指定区域内で指定商品の小売業を兼営する製造業者または卸売業者は、都道府県知事に届出を要するという規定を新たに設ける点であります。  第五は、あっせん、調停等は、物品の流通秩序の適正を期するという観点に立って行うことにするとともに、字句の修正を行うことであります。  以上が決定事項の大要でありますが、これに基きまして小委員会において修正案を起草いたしました。  修正案は、お手元に配付してありますが、本委員会におきましては、何とぞ小委員会の修正案の通り修正議決されんことをお願い申し上げます。  なお、商業調整法案につきましては、提案者より撤回の手続をとる旨の発言がございましたことを申し添えます。  以上御報告申し上げるとともに、修正案を提出いたした次第であります。
  88. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 この際お諮りをいたします。ただいまの小委員長の報告にありました通り商業調整法案につきましては、提出者より成規の手続により撤回の申し出があります。これを許可することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、同案は撤回を許可することに決しました。  次に、先刻の小委員長の報告にありました通り、現在小売商業特別措置法案に対し修正案が提出されておりますが、原案並びに修正案につきましては、すでに質疑も十分尽されていると存じますので、質疑を終局することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次に、原案並びに原案に対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、通告がありませんので、これを行わず直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。これより順次採決をいたします。  まず小売商業特別措置法案外一件審査委員長より提出された修正案について採決をいたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  92. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 起立総員。よって本修正案は可決をされました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決をいたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕 まる長谷川委員長 起立総員。よって本法案は、小委員長提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。  なおただいま議決をいたしました法案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  この際、田中武夫君より発言を求められております。これを許可いたします。田中武夫君。
  94. 田中武夫

    ○田中(武)委員 ただいま議決になりました小売商業調整特別措置法案につきまして、通産大臣もお見えでございますので、この際一言希望を申し上げておきたいと思います。と申しますのは、修正の段階におきまして、われわれは仮称ですが小売商業調整審議会、こういったような常設の機関を設けて、これがあっせん調停をやるだけでなく、たとえば労働問題に労働委員会があり、農業問題に対しまして農業会議所または農業委員会があるごとく、小売商その他の商業問題について、これが調停あっせんだけでなく、なお進んで振興政策についてのいろいろなことについて審議し、あるいはこれに関係通産省あるいは都道府県知事のところに意見を述べたりするような、いわば労働委員会あるいは農業委員会と同じようなものを希望したわけでございますが、予算等の関係でこれをわれわれはあきらめたわけです。しかし政府にあっては、先ほど申しましたように労働問題について労働委員会あり、農業問題については農業委員会があるというように、小売商業問題につきましては商業調整審議会というような行政委員会ないし審議会を作るよう、一つ格段の努力を今後検討していただきたい、こう希望を申し上げます。
  95. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 この際二時まで休憩をいたします。     午後一時十四分休憩      ————◇—————     午後一時十五分開議
  96. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。     午後一時十六分散会      ————◇—————