○
井上政府委員 私どもとしましては、最近におきます
特許庁の
審査、
審判の
停滞状況にかんがみまして、この
参議院の
附帯決議の趣旨、すなわち
審査、
審判の
促進をするように、この際できるだけの
努力を傾注して参りたいと
考えておるわけでございます。
画期的方途としていかなる方法を
考えているかという御
質問でございますが、実は今日の
出願の状況、それから
人員の充足状況、この両者のアンバランスが長年累積して参りました結果として、今日の
審査、
審判を通じましての非常な未
処理の
停滞の状況が生じた次第でございますが、これを一気に解決する方法、そういう天来の妙案というものは、必ずしも見出しがたいわけでございまして、われわれとしましては、基本的にはじみではございますが、やはり着々として
人員の
増加をはかって参りたいと
考えております。
審査官、
審判官の本官は言うまでもなく、これの補助職員等につきましても
人員の
増加をはかって参りまして、これによって
審査官、
審判官の能率を大いに向上したいと思うわけでございます。次に、
審査官、
審判官の数の
増加ばかりでなく、われわれとしましてはそれの質的向上と申しますか、能力の強化ということが必要でございますので、その点につきましては新入職員の教育は言うまでもなく、中堅幹部の再研修と申しますか、そういう研修教育ということにつきましても十分意を用いておる次第でございまして、昨年五月以降、
特許庁において研修所を設けまして、
審査官、
審判官の実力の涵養充実に努めておるような次第でございます。なおその方法としましては、研修所におきます教育ということと並行いたしまして、外部の大学、会社あるいは海外への留学、そういう外部に対します聴講生の派遣というような方法もあわせて講じまして、そういう
意味から
審査官、
審判官の実力の向上ということを、十分今後も
努力したいと
考えております。
なお、そういうふうに研修、教育に意を用いましても、今日の技術の進歩は非常にすみやかでございまして、だんだん高度化し複雑化して参りまする技術のある種の部門によりましては、
特許庁の
審査能力がどうしても不備であることは免れないという分野がないわけではないのでございまして、そういうような特に専門家の協力を要するような部門につきましては、今日すでに十数名の大学教授あるいは各試験
研究機関の
関係の部長、そういうような外部の専門家の兼官と申しますか、兼官、兼任の
制度をあわせてとっておる次第でございます。なおまた電子工学部門につきましては、特に
出願も最近非常に多い実情にかんがみまして、電電公社のエキスパートを
特許庁に出向さしていただいて、これの協力によって、
審査の
促進をはかっておるというような点もございます。
それから、なお、今申しましたような方法と並行しまして、何と申しましても、やはり
資料の整備ということが必要でございますので、この点につきましては、従来にもまして日進月歩、いろんな文献が内外を通じまして広く出て参りますので、
審査に遺漏なきを期しますために、そういう
関係の
資料の充実整備に、今後も努めたいと思っております。
なお、この問題に関連しまして、実は今御
指摘のような、外国にあるような無
審査制度をとってはどうか、あるいは公衆
審査と申しましょうか、そういうような方法を進んでこの際
考えてみる必要がないかという御
質問でございますが、われわれとしましては、長年
審査制度をとって参りましたので、この際無
審査制度に切りかえるという
考えはございません。また
世界を通じましても、無
審査制度をとっておる国は、フランス等きわめて少数でございます。では、
審査制度の前提の上に立って、異常に堆積しておる未
処理案件を何かうまく解決する方法はないかという点につきましては、実はある一部の業界の方からは、今ございまするところの異議申し立て
制度をもっと活用する
意味におきまして、
審査官が自分で良心的な結論に達しない場合においても、ある程度
審査官としまして疑問が残っても、これを公告して、そうして外部の
関係業界からのこれに対する異議申し立てを待つことによって、言いかえれば、すなわちいわゆる公衆
審査というその協力によって、問題を解決する方法をこの際はかることはどうかという
意見がございまして、私どもも従来相当この問題については慎重に検討した次第でございます。今までそういう
審査を、いわばあまり緻密正確でなくて、ある程度疑問が残ってもそれを公告して、そうして外部の異議申し立てによって、不当な
権利の設定を防止するという方法をかなり
考えてみた次第でございますけれども、特に今日堆積の異常に多い高分子化学あるいはエレクトロニクス
関係、そういう分野におきましては、外国人の
出願が非常に多いわけでございます。その外国人の
出願につきましては、翻訳のまずいのが非常に多い。その翻訳のまずいのと取り組んで、
審査官は一々これに照会を出しているわけでございますが、遠隔の地である
関係上その往復に非常な日子を要しておる。そういうようなこともこの
停滞の大きな
一つの原因になっておる次第でございますが、今申しましたように、
審査官が一読してわからないというような
内容のものを、何らこれに訂正を加えることなくそのまま公告をいたしましても、外部の人がごらんになって、やはり
内容を理解することができない。あるいはまた
特許制度本来の趣旨から申しまして、新しい技術を公開することに対する報奨としての
特許権でございますので、そういう第三者が見てもわからないような技術
内容では、これは技術を公開したことにはなるまいということになるわけでございまして、まあ今御
指摘のような問題につきましてもできるだけ今後も
研究しまして、そういう翻訳のずさんなために理解できないという以外の場合におきましては、できるだけ思い切って公告もし、そうして外部の協力によって公衆
審査によりまして、問題の解決の推進を今後も十分はかって参りたいというふうに思っておる次第でございまして、今の
板川委員の御
意見の点につきましての従来の
特許庁の
研究の結果は、ただいま申しましたようなことではございますが、今後ともなお十分御
意見の方法については
研究を進めて参りたい、かように
考えております。