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1959-03-10 第31回国会 衆議院 商工委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 中村 幸八君 理事 南  好雄君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       綾部健太郎君    岡部 得三君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       木倉和一郎君    關谷 勝利君       高石幸三郎君    中井 一夫君       野原 正勝君    福井 順一君       前尾繁三郎君    山手 滿男君     早稻田柳右エ門君    渡邊 本治君       伊藤卯四郎君    板川 正吾君       今村  等君    内海  清君       大矢 省三君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    中嶋 英夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         議     員 西村 直己君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐藤 京三君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十日  委員菅野和太郎君、中垣國男君、濱田正信君、  福田赳夫君、鈴木一君、永井勝次郎君及び水谷  長三郎君辞任につき、その補欠として福井順一  君、高石幸三郎君、綾部健太郎君、早稻田柳右  エ門君、伊藤卯四郎君、滝井義高君及び多賀谷  真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員福井順一君、高石幸三郎君、綾部健太郎君  及び早稻田柳右エ門辞任につき、その補欠と  して菅野和太郎君、中垣國男君、濱田正信君及  び福田赳夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  輸出入取引法の一部を改正する法律案反対に関  する請願今澄勇紹介)(第二一一九号)  同(大西正道紹介)(第二一二〇号)  同(片島港君紹介)(第二一二一号)  同(黒田寿男紹介)(第二一二二号)  同外二件(下平正一紹介)(第二一二二号)  同外五件(中澤茂一紹介)(第二一二四号)  同外四件(原茂紹介)(第二一二五号)  同外四件(松平忠久紹介)(第二一二六号)  同(吉川兼光紹介)(第二一二七号)  小売商業特別措置法案の一部改正に関する請願  (今澄勇紹介)(第二一二八号)  同(大西正道紹介)(第二一二九号)  同(片島港君紹介)(第二一三〇号)  同(黒田寿男紹介)(第二一三一号)  同外三件(下平正一紹介)(第二一三二号)  同外四件(中澤茂一紹介)(第二一三三号)  同外四件(原茂紹介)(第二一三四号)  同外四件(松平忠久紹介)(第二一三五号)  同(吉川兼光紹介)(第二一三六号)  小売商業特別措置法案の一部修正等に関する請  願外一件(今澄勇紹介)(第二一三七号)  同(内海清紹介)(第二一三八号)  同(片島港君紹介)(第二一三九号)  同外一件(下平正一紹介)(第二一四〇号)  同外一件(西村力弥紹介)(第二一四一号)  同(芳賀貢紹介)(第二一四二号)  同外二件(原茂紹介)(第二一四三号)  同(松平忠久紹介)(第二一四四号)  同(吉川兼光紹介)(第二一四五号)  日中貿易再開の決議に関する請願田中  稔男紹介)(第二一四六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七五号)  輸出品デザイン法案内閣提出第一三一号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 これより会議を開きます。  小売商業特別措置法案商業調整法案硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法の一部を改正する法律案並びに石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、右四法案を一括して議題といたし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。渡邊本治君。
  3. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、若干御質問をいたします。  今回の改正は、納付金に関する規定を一年延長することによって、百万トンの買い上げ増ワクを行うことにしておるわけであります。そこでまずお尋ねしたいのは、今回の措置法に伴う失業者の数並びに要退職者の数を、どの程度見込んでおられるか。さらにこれらの失業者に対する対策について、どのような計画を立てておられるかという点であります。これらの点がポイントでありますから、この際明確にお答え願いたいと思います。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今回の措置によりまして、百万トン増加することによって大体七千五百人の失業者が出ることになるわけでございます。この七千五百人のほかに——大体においてこれが一番よけい出るのが九州地方九州地方でございまして、その方面におきましては約五千人出る。ところが九州地方におきましてはすでにもう三十三年の十一月末現在において、五千八百七十人という失業者が出ておるわけでありますから、これと一緒にからんで、この失業対策を考えなければならぬ、こういうことに相なっておるわけでございます。それにつきましては、これも通産省だけの話ではとてもいかないというので、建設省なりそれから農林省なりとよく話しまして、その上にまた労働省における失業対策の方と一緒に講じまして、大体の数字は、これで対策の見込みはついておるわけでありますが、詳細のことにつきましては、政府委員から説明いたします。
  5. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大臣からただいま申し上げましたように、今回百万トン分買い上げるのでございますが、そのうち約六十万トン分は、昨年の八月までに、一応事業団買い上げてもらいたいということを申し出てきたものでございます。大体九州地区が約三十万、それから宇部、北海道、平各地区がほぼ十万トン程度ずつという格好になっております。残りの四十万トンにつきましては、これはまだどの炭鉱が申し出るかということは、必ずしもはっきりしないのでございますが、大体われわれは最近の石炭事情等から見まして、四十万トンのうちの大部分、三十万トン以上のものが大体九州に集中するのではなかろうか。大体九州の方で四十万トンすでに申し込んでおります。六十万トンに相当するものの炭鉱に働いておる従業員の数が二千三百名程度でございますが、それに今後四十万トン新しく申し込まれるもののうちの大部分、三十万くらいはくるとすると、大体二千六百名から二千七百名近いものが九州では出はせぬか。そうすると、大体九州だけで五千名近い人間が一応事業団関係で離職するということになる、そういうふうな計算になるわけでございます。これに対しまして、労働省の方で今までの統計等から調べました、炭鉱離職者の中で、職業安定所に職を求めに来るという人間の割合が、過去において大体二〇・五%ということになっておりますので、労働省計算では、約千名の人間について対策を講ずるということをすれば、今度の百万トンに関する失業者は、大体問題が解決するのではなかろうかということで、三十三年度の予算に比べまして、三十四年度公共事業費あるいは一般失業対策費等を合せました場合に、大体千百名程度は、三十三年度よりもふえる分で吸収できるという計算になっておりますので、一応現在の見通しのもとにおきましては、百万トン買い上げに伴う失業者の問題というのは、大体吸収し得るのではないか、そういうふうに考えております。
  6. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 ただいまの御答弁で若干問題と思いますの、要対策者の算定の仕方が約二〇・五%といっておられる点でありますが、これはどのような根拠に基いて二〇・五%とされたのでございますか、その点をちょっと……。
  7. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十二年の失業者離職者が大体一年間に約一万九千名あった。そのうち職業安定所に職を求めに来たという方が、大体五千八百名程度ということで、これは大体今までの統計を見てみますと、離職者数と、それからそれが新しく雇い入れられる再雇用数、それとが、そのときそのときの事情によってだいぶ違いますが、大体今までの数年間の統計からいいますと、全体の離職者の二〇・五%、これは地域によって違いますが、職業安定所に来ているのは、二万九千名に対して五千八百名が来たということから、大体その程度数字を準備すれば足りるんじゃないかという労働省の方の御意見というものに従っておるわけでございます。
  8. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 一般的な算出のやり方であるとするならば、今回の措置による失業者について、この方法を当てはめることが適当かどうか、はなはだ疑問に思います。と申しますのは、今日北九州におきましては、すでに滞留しておる失業者は一万数千人にも上っておる状況でありまして、今後出てくる失業者につきましては対策を要する者が三〇%にも四〇%にも上るものでないかと心配でならないわけであります。二〇%程度で大丈夫という確信があるのかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  9. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは通産省だけの問題じゃございません、政府全体の問題なので、各省連絡を密にして、こういう計算をしたのでございますが、もう少し申し上げますと、今申し上げましたのは、かりに一万人の失業者が出れば、そのうち大体二千名が職業安定所に来る、こういう統計になっているということを申し上げたのでございます。しかし今回の百万トンの買い上げということについて考えますと、大体この国会で御審議願いまして、最もうまくいって来月早々から、それが施行されるということから考えましても、それからいろいろ炭鉱と協議をしたり、あるいは実際の調査をしたりということで若干時間がかかる。その上で買い上げるかどうかという契約がなされるわけでございます。それで、買い上げがいよいよきまりまして、離職すると、それから六カ月間は、大体今までの例によりますと、失業保険のある間はほとんど職を求めに来てないというのが実際でございます。従いまして、百万トンだけの失業者というもの、これはむしろ大部分が三十五年になって来る。一部の方はあるいは今年の秋ぐらいからぼつぼつ出るかもしれませんが、三十五年くらいからむしろ主として職業安定所等職業を求めに来られるのじゃないか。従いまして、理屈からだけ申し上げますと、百万トンに関する限りは、千人分の仕事、これを今年の秋ぐらいから準備すれば、大体間に合うといったような計算になるわけでございますが、ただいまお話にございました、現在滞留している失業の数というもの自体、それがわれわれ労働者から聞いております数字ではまあ昨年の十一月末で五千八百名程度というふうに伺っておりますが、あるいは若干多いかもしれぬといったような点等もございますので、現在の滞留している人間を含めて、年度当初の四月から一応千人以上の者が吸収できるといったような事業計画を組むということによって、現在滞留している人間も吸収するという方面にも弾力性を持たせようというふうに考えているわけでございます。
  10. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 北九州、特に筑豊地区におきましては、失業者増加のためでありましょうが、犯罪件数がふえて、福岡県全体では今年度は昨年度に比して約二千件も減っておるのにもかかわらず、筑豊地区においては逆にふえておるばかりか、凶悪犯罪が多くなっておるのであります。社会不安はいよいよ深刻になっておる状態であります。従いまして今後のこの失業対策について、地元は非常に心配しておるわけであります。政府は今回の処置に伴う失業対策については、閣議了解を行う等万全を期しておられるようでありますが、どうか今後この失業者発生状況に注意を怠ることなく、場合によっては、公共事業の繰り上げ実施とか、また失業対策事業費地元負担が、今年度より四億円以上も増加することが予想され、これをどう処理するかが非常に心配されておりますので、交付金の増額をはかるとか、適時適切な対策を講ずるに万遺憾なきを期していただきたいと思うのであります。  以上の点について政府の決意のほどを明確にしておく必要がありますので、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  11. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ごもっともでありまして、特に北九州筑豊地区における問題は、先ほど申しました通り相当数失業者が出ておる上に、さらに今度百万トンの整理について、ここにかれこれ五千人近くの人間が出ると予想されておる、こういうことでありまして、これは政府といたしまして、とりわけ重大関心を持ちまして、ひとり通産省だけの問題ではなく、各省とも打ち合せました結果、大体今日まで事業費といたしまして、北九州におきましては三十三年度において四十五億五千七百万円であったものを、今回七十九億三千八百万円という事業費に、これは建設省農林省、運輸省、通産省合計いたしまして、そういうふうになっておるわけであります。従いましてこれでこれだけの公共事業を実行いたしますと、ここに少くとも失業者は四千三百七十一人吸収できるという数字が出ておるわけであります。これがためには地方負担額も相当ふえるわけであります。地方負担が非常にふえてもまた困るわけでありますので、この点は大蔵省ともよく話し合いをつけまして、できるだけ地方負担負担しやすいように方針を持っていきたいということで進めたい、従いまして十分この対策は講じていきたいと存じております。さよう御承知を願いとうございます。
  12. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 今回の措置による買い上げワクの追加は百万トンだけでありますが、私は石炭鉱業合理化を促進するためには、百万トンといわず一定の限界がくるまで、非能率炭鉱はどんどん買い上げていくべきではないかと思うのであります。そのためには現在買い上げ基準となっておる線を、もっと引き上げてもいいのではないかと思うのです。つまり品位に能率をかけた数字合理化実施計画で定めた基準の六〇%のものを買い上げているわけでありますが、これを七〇%か七五%まで引き上げることを考えてもいいのではないかと思うのであります。それとともに納付金規定もさらに延長してもいいのではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  13. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 渡邊先生の今のお話、六〇%を七〇%なりあるいは七五%に引き上げて、すみやかに体質改善をはかるべきではないかとおっしゃられる御趣旨は、私まことにごもっともであろうと存ずるのでありますが、御承知のように、現在の買い上げを御決定いただきましたとき、大体われわれが非能率炭鉱と考えておりましたものが、ほぼ六百万トンばかりあったわけであります。今までに三百三十万トンというワクになっており、今回ここに百万トンお願いいたしますと、四百三十万トンで、大体当時の非能率炭鉱と思われるものの七割以上が一応買い上げられる、こういうことになるわけでございます。残りの三割弱のものにつきましても、これは自分の努力でもう少し基準を上げるというふうに努力して上ってきつつあるものもございますし、またもう炭量が尽きたというような関係で、事業団買い上げに適しない、あまりにもひど過ぎて適しないというものもあったというようなことから、われわれといたしましては大体全体の七割程度の非能率炭鉱を買えば、業界体質改善ということがほぼ目的を達し得るのではないか、そういうふうに考えたわけでございまして、それは先生の今御指摘の第二の問題の納付金を上げたらどうかという問題と関連するところでありますが、結局納付金が、これは各企業がそれぞれ出炭能率に応じて出すということになっておりますので、一方において炭価を一銭でも安くしなければならないという要請に直面しているといったような事情をも勘案いたしますと、この六〇%をすぐ七〇%に上げて、そしてそれだけよけい業界負担させるということ、あるいは納付金期間そのものを延ばすということによって業界負担をふやさせるということは、炭価をできるだけ下げなければならないという経済的な要請と、どのように調和するかということにつきまして、もう少し慎重に検討してみたいと考えておりますので、今の御趣旨の点につきましては、石炭業界全体の体質改善といった大局的見地から、今後慎重に検討させていただきたいと思います。
  14. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 この合理化法目的は、結局は合理化によって炭価を引き下げることにあると思うのであります。この目的のために政府が現在までやってきたことは、非能率炭鉱買い上げだけだと申してもよいと思うのでありますが、私は合理化促進のために政府が打つべき手は、他に幾らも考えられると思うのであります。私はこの二、三の点についてお伺いしたいと思います。  まず第一は、需給計画についてであります。政府合理化法に基いて毎年度需給計画を立てるわけでありますが、この政府計画なるものが、あまりにも信頼の置けないものであります。本年度について申しますと、当初五千六百万トンの生産計画を立てていたのでありますが、途中で五千三百五十万トンに改定し、さらに今日では四千六百万トンに減産するよう生産制限を勧告する始末であります。業界は当初の政府計画の線に沿うべく増産態勢を講じたにもかかわらず、実勢は一千万トンも計画が狂ってしまったわけで、このために今日のような深刻な不況に突入する事態に立ち至ったのであります。いわば政府を信頼したあまり、とんでもない羽目に陥ってしまったと申しても過言ではないと思うのであります。石炭合理化にとって最も大事なことは、計画生産体制をとることであり、合理化法に基いて定めた生産計画については、やはり政府責任を負うべきだと思うのであります。本年度のように生産計画が狂ったことについて、政府景気沈滞による需要の減退だけに責任を転嫁して、しりぬぐいは石炭業界だけに押しつけているのでありますが、政府は何らの責任を感じていないのですか、または感じているか、この点をお伺いいたします。
  15. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十三年度石炭需給見通しが大幅に狂いました点につきましては、これはわれわれこの衝に当っておるものといたしまして、はなはだ見通しを誤まった点につきまして、は十分に責任を感じておる次第でございます。ただここで一書だけ言いわけめいたことをお許しいただけますならば、今回の狂いましたうちの約半分と申しますか、当初の計画に対しまして四百万トン近い狂いというのは、これは三十三年度異常豊水、特に十月以降の下期あたりにおきましてすら、すでに二百万トン以上当初の計画に比べて電力石炭消費が減っている、言いかえれば雨がよけい降ったということで、二月のごときは平年度に比べて一六五%といったような大きな雨が降ったわけでございます。天を恨むというわけではございませんが、この雨の、四百万トン近いものがなければ石炭業界というものは、非常に今の不況ということにならないで済んだのではないか、こう思っておるわけでございますが、しかしこの四百万トンの電力石炭需要を除きましても、その他一般産業伸びにおきまして、当初四・五%程度三十三年度は三十二年度よりも鉱工業生産伸びるだろうと思っておりましたのが、実際はほとんど〇・七%の横ばいというような格好で推移せざるを得ないといったようなことのために、特に電力、窯業とかあるいは鉄鋼といったような石炭をよけい使います産業伸びが、当初の予定に比してあまり多くなかったというようなことのために、やはり四百万トンばかりの需給見通しを狂わしたということは、われわれ産業の行政に当っております者が先が見えなかったということでございまして、そのために各方面に御迷惑をかけていることは、はなはだ申しわけないと存じておるわけでございます。そこでわれわれといたしましては、御承知のように昨年の五月の末に閣僚懇談会で取りあえず九十三億の融資ということを行なって、増加する貯炭の圧迫を回避しようということで、日本銀行等を通じ、一般金融界協力を求めて今日に至ったわけでございますが、その後今のように見通し狂い等から、石炭市場は好転するどころか、ますます悪くなりつつございますので、政府といたしましては、さらに大蔵当局並びに日銀当局等を通じ、あるいは直接金融界に現在仰いでおる貯炭融資を今後ともさらに継続するということをやっていただきたいということ、並びに今後近く発足を見るというふうに考えられております新昭和石炭会社に対しましても、十分な金融をつけるようにということを、直接間接にお願いしている次第でございまして、主として金融という面を通じて、当面の石炭業界の苦境を突破するというように努めていきたいというふうに考えております。
  16. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 昨年、アランスのソフレミン調査団を招いて、わが国の石炭鉱業のあり方について診断をしてもらったのでありますが、その調査報告書の中に、石炭鉱業合理化にとって需給の安定が最も必要であり、そのための政策として、あらかじめ定められた出炭計画のもとで発生した貯炭については、一定の数構内で貯炭補助金を出すこと、と勧告しておるのであります。政府は若干でも責任を感じるとすれば、この補助金政策も当然考えてしかるべきだと思うのでありまするが、いかがでございましょう。
  17. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 補助金を出したらどうかという先生お話でございますが、御承知のように補助金は国民九千万全体の税金から出すということにもなりますので、結局補助金を出すということにいたしますと、当然それに伴って、ある程度配当制限だとか、あるいは炭価の公正であるとかいったよらな何らかの意味における国家統制を加えるということをせざるを得ないのではないかと考えております。現在のようないわゆる自由企業の形態のもとにおいて石炭を生産いたしております際に、そういう非常の場合の補助金といったようなこととの関連において、政府コントロールを加えるということが、ほんとうに石炭業全体の発展のためにプラスになるかどうかといったようなこと等については、われわれはさらに慎重に検討したいと思っております。御承知のようにヨーロッパの国が大部分国営あるいは強力なるカルテル構成というものでございますので、ソフレミン勧告等国営というようなことが、ある程度頭の中にあって、そういうことになっているのじゃないか、そういうふうに考えられるわけでありまして、補助金を出すということによる石炭需給関係の安定と、それからそれに伴う自由企業としての自由なる活動が抑制されるというデメリットの比較較量ということにつきましては、今後慎重に検討して参りたいと思います。
  18. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 補助金政策が好ましくないとすれば、需給調整機関を設立して、これに政府財政投融資をすることはできたはずだと思うのであります。数日前大手炭鉱によって貯炭会社がようやくにしてでき上ったのでありますが、政府資金的援助は何らありません。私は時期的に考えても、半年か一年前に政府業界協力を得て、需給調整機関の設立を推進すべきであったと思うし、また資金的にも当然政府がめんどうを見るべきであったと思うのでありますが、そのような努力をなされたかどうか、伺っておきたいと思います。
  19. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まことにごもっともな御質問でございまして、われわれも何らかの意味における需給調整機関というものを作って、大手、中小の炭全部を有機的にプールして、非常の場合に備えるといったような機関の創設ということにつきましては、従来もいろいろと研究して参りましたし、また今後も研究しなければならないと、こう思っております。しかし現実を見ますと、御承知のように現在非常に貯炭が膨大であると申しておりますが、生産業者についてみますと、大部分大手の業者でございまして、中小の方の炭、これももちろん春に比べまして、六、七割ふえておりますが、しかし大手が三倍になったというのに比べますと、絶対量も少いし、ふえ方も少い、言いかえますと、中小の方は大体売れる程度に掘っているということで現在までおやりになっておりますし、今後も需給のバランスということが爆発してくずれるということがない限り、大体売れる限度に掘っていくということで、この危機は一応乗り切り得るのではないかというふうに考えられます。一方非常にたくさんの貯炭を持っております大手自体が、自分らの力で何とかこの危機を切り抜けたい、それについては政府の方でも、間接的に、資金的に、民間金融機関から金を借りるということについて援助してもらいたい、そうすれば自分らはわざわざほかの方々のお力あるいは政府の金といったものを特別当てにしなくても、大体今回の危機は乗り切り得る自信がある、そういう決意を再々示されましたので、われわれといたしましても、現在のような自由企業のもとにおける一番の原則は、まず業界が自分で自分を救うという努力をすることであると、こう感じましたので、この新昭和石炭の発足並びに今後の発展というものに非常に期待をし、今後とも必要な資金の確保ということについて、直接間接の援助をしていきたい、こう思っておりますが、さらに将来の問題といたしましては、石炭のような地下産業というものの特性等から見まして、何らかの意味需給調整機関を作るということの方が、不時の需給の急変に対する最も望ましい処理の方法ではないか、こういうふうに考えられますので、この点につきましては、特に慎重に迅速に一つ研究してみたい、これは御承知のように、結局炭価とのかね合いの問題あるいは財源の確保の問題等いろいろむずかしい問題がございますが、石炭鉱業の特質という点から見るならば、伸縮自在というわけにいかない本質を持っておりますので、そういう点特に考慮いたしまして、できるだけすみやかに結論が出るように努力していきたい、こう思っております。
  20. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 次に、非能率炭鉱買い上げ資金についてでありますが、これは業者自体が納付することになっておることは御承知の通りであります。業者自体の金で同業者の炭鉱買い上げておるのであって、政府の援助は何ら受けているわけではありません。ところが他の産業には政府が多大の援助を行なっている例が幾つもあるのであります。御承知のように通産省所管の法律に、繊維工業設備臨時措置法という法律がありますが、この法律によって過剰織機の買い上げを行なっており、政府は一台につき二万七千円、総額にして三十三年度は七億円の補助金を支出しておるのであります。三十四年度の予算にも同じく七億円を計上しておるのであります。繊維織機は糸べん景気の際、業界が無計画に増設競争を行ったために過剰となったものでありまして、むしろ業界責任に帰すべき点が多いと思うのであります。いわば政府がしりぬぐいをしてやったのだと申しても、過言ではないと思うのであります。石炭の場合は、政府業界要請した生産計画があまりにも狂ったという政府責任に帰すべき点が多いことは、前にも述べた通りでありまして、当然炭鉱買上資金については補助金を考えてもよいのではないかと思うのでありますが、この点、いかがお考えでしょうか。
  21. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 織機の場合でございますが、織機の場合は、御承知のように、繊維工業設備臨時措置法、あれに基いて新設が一応禁止され、それから中小企業団体法だったと思いますが、それに基いて登録制をとっておる。そして法律上それだけは一応オーソライズされたというような形のものが、その後の国際競争、あるいは輸出に及ぼす影響といったような面から、国でオーソライズして登録したものでも、どうもそのままじゃ多過ぎるということで、一部分をとにかく待機するということによって業界全体の体質改善、並びに今後の国際競争に及ぼす悪影響を避けようといったような趣旨から行われたものでございまして、この点につきましては、石炭鉱業のように全然自由に始め得るといった態勢のものを買うというのとは、若干性質が違っております上に、石炭以上にこの織機の場合は業者が零細でございまして、しかもその不況の期間というようなものも非常に長く続いておるといったようなことから、特にその法律との関係、あるいは零細性、あるいは輸出に及ぼす影響といったような面を考慮いたしまして、半分程度の国費を出すということにしたわけでございます。  石炭については国費が出ておらないというお話でございますが、お言葉を返すようでございますけれども、確かに大体年間の事業団の収入十六億ばかりのうちの主力の十億程度は、これは業界がトン二十円ずつの納付金を出しておられますが、残りの六億ばかりは、御承知のように、開発銀行、あるいは中小企業金融公庫の金利、これを開発銀行については二分五厘、それから中小企業金融公庫については三分一厘を従来から負けてもらって、そして公庫あるいは開発銀行に納めるべき分を事業団に回す、納付させるということにいたしておりますので、大きな意味から申しますと、そういう政府機関に納めるべき金利を事業団に納めさして、それで買い上げるということは間接的に申しますと、それだけ政府の金をやはり石炭鉱業体質改善のために出しているというふうになっておる、かように考えます。
  22. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 また、テンサイ糖についても保護政策をとっておりますが、これは輸入原糖の精製による砂糖に比して国内テンサイ糖が高いために、食管会計で買い上げ、これを精製業者に安く売り渡しておるわけでありますが、これによる食管会計の赤字は年十五億円に上るということであります。つまり十五億円を補助しておるというわけであります。  さらにまた、今国会に提出されて目下審議中である塩業整備臨時措置法案という法律がありますが、この法律を大臣は御承知でございましょうか。
  23. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 テンサイ糖の問題につきましても、織機の問題につきましても、今度の塩業の整理の問題につきましても、この点につきましては、大要は私承知いたしております。
  24. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 この法律は非能率な塩田を買い上げようとするもので、まことに簡単な法律でありますつが、法律の趣旨石炭鉱業合理化臨時措置法とほとんど同じのものであると思います。しかるに、買い上げに要する費用はほとんど九〇%は政府の予算でまかなうことになっております。昭和三十四年度の予算には三十七億円を計上しておるのであります。さらに三十五年度には五十億円を予定しておるということであります。大蔵省が提出しておる法案であるから、五十億円は間違いなく計上されることになりましょう。しかも、この法律によって従業員には一年分の退職金を支払うことになっておるということであります。石炭の場合は離職金はたった一カ月分で、しかも政府の援助は何ら受けていないのに比べると、何というはなはだしい懸隔かと驚くほかはないのであります。私は、所管が大蔵省と通産省と違うからというて、あまりにも不公平なやり方だと思うのでありますが、この点、大臣はどうお考えでございましょうか。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私石炭と食塩とを同一視することは、ちょっとむずかしかろうと存じますことは、食塩の方は全部政府の専売になっておりまして、これは売っただけは必ず買う、しかも値段をきめて買う、こういうふうなことになっておったものを、今度整理することになる、整理する方法については、大蔵省の所管であるからきわめて楽だというふうなことで、今御指摘のような工合に、石炭から見ると、私どもが見ても相当手厚い整理の仕方だと感ずるわけなんでありますが、そこのところは需給関係におきましても相当違いがあると存じます。しかし、いずれにいたしましても、食塩が日本国民の生活上必要であると同様に、この組織が国家組織であったとか、あるいはこれが民間の自由企業であったとかいうことによって、そんな大きな差異が生ずるということは、私は必ずしも正しいとは存じません。従いまして、こういう点につきましても、私は通産大臣として十分主張すべき点は主張したいと存じておりますが、そういうふうな点については今後十分検討していきたいと存じております。
  26. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 私はこのような例から見て、炭鉱買上資金について政府が援助することも、また貯炭補助金を支出することも何ら不可能ではないと思うのであります。石炭は国の最重要産業でありながら、以上の例から見ても、何ら特別の援助を受けないどころか、かえって逆に特別な冷遇をされておるとしか見えないのでありまして、全く理解に苦しむのであります。要は、政府と申しますより、通産大臣通産省石炭局長石炭に対する熱意とカに欠けるための結果だというほかはないと思うのであります。熱意があるのなら、今後どういう方法を講ぜられるか、お伺いいたします。
  27. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほども申し上げたと思うのでございますが、国で補助金を出すといったような場合に、そのうらはらといたしまして、価格でありますとか、あるいは会社の利益処分でありますとかいうものに、相当強い国家統制というようなものが加えられておるということが、大体裏づけというようなことになるわけでございます。従いまして、単に炭価の統制をする、あるいは石炭会社の配当を制限するというようなことを考えるということにつきまして、場合によって価格差補助金というようなことも考えなければならないかと思われますが、しかし、今の段階におきましては、当面の危機を何とかして切り抜けなければなりませんので、これは先ほどから申し上げておりますように、主として金融というルートを通じて、とにかく破滅的な混乱に陥ることを防ぎながら、需要期に臨んでなしくずしに危機を解消するという以外にないと思っておりますが、補助金を出すとか、あるいは何らかの格好で法的な需給調整機関を設けるといったようなことにつきましては、今後の石炭をどういうふうに持っていくことが、日本産業にとって一番いい方法であるかといった根本方針ともにらみ合せた上で結論を出したい、そう思っております。
  28. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 さらに私は加算納付金についても伺いたいと思うのであります。開銀の石炭に対する貸し出し金利は加算納付金を加えると九分になっております。中小企業金融公庫は九分六厘となっておるのであります。もし政府石炭に対する熱意があるとするならば、加算納付金を含めて六分五厘に下げるということはできないのかどうか、お伺いいたします。
  29. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 開銀の金利は原則として九分でございますが、一部の特に重要産業というものにつきまして六分五厘ということで、この六分五厘は非常に緊急な整備を要します特定機械でありますとか、あるいは船舶といったものに認められておるわけでございます。われわれといたしましては石炭もできるだけ低い金利にすることは望ましいと思いますが、一応金利体系というものから考えますと、あまりにいろいろな政策的金利ということは望ましくないというのが現在の金利政策の基本になっておるようでございますので、一応九分というふうになっているものを、この法律によって納付金を納める期間だけは、特に臨時的に六分五厘に下げていただくというような格好で今進んでいるわけでございますが、この納付金というものがなくなりましたあとは、われわれといたしましてはそれをもとの原則の九分に戻すというようなことでなしに、現在のままの六分五厘そのものずばりというものが、石炭鉱業界の享有できる金利になるように全力を尽していきたい、こう考えております。
  30. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 電力、鉄、造船、合成コム、機械等は六分五厘であります。石炭は加算納付金を加えて九分でありますが、業者が負担しているのが九分であることに間違いはないのでありますから、今日の深刻な不況を切り抜けるために、ぜひ若干なりとも金利引き下げを実現するよう努力してもらいたいと思います。大体開銀の金利が一般に九分だというのは、今日においては高過ぎると思うのであります。住宅金融公庫の一般貸付でさえも五分五厘であります。開銀金利の引き下げについてぜひ御協力を願いたいと思うのでありますが、加算納付金の率は政令で定められておりまして、開銀については千分の二十五、中小企業金融公庫については千分の三十一と定めております。しかも聞くところによると貸し出し金利が変れば加算納付金の率も同時に六分五厘との差まで引き下げるということを次官会議できめているということでありまするが、これは事実かどうかお伺いいたします。
  31. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 はなはだ申しわけありませんが、当時のいきさつをここにつまびらかにいたしませんので、至急調べまして御返事申し上げます。
  32. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 中小企業金融公庫の利子を四月から三厘引き下げることになっておるそうですが、そうすると、加算納付金を二分八厘に引き下げるということになるのですか。どうですか。
  33. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ただいまのような次官の間の覚書というようなものがあったかどうかということは、私先ほど申し上げましたように、つまびらかにしないのでございますが、しかし片一方の金利が下ったというので、それだけ事業団の方の経費が少くなっては困るからというようなことになっても工合が悪いので、われわれといたしましては、一応九分六厘が九分三厘に下るという場合には、当然その下った分だけ事業団に入る金利が減って、そうして業者の負担は従来と変らないというふうに考えております。どうもいういろいろどくど申しましたが、大体現在業者の方で負担しております六分五厘は変えなくて、事業団に入る方の三厘相当分だけを下げて、そうして一応今後の事業団の収支計算というものを立てていきさたいというふうに、現在は考えております。
  34. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 次に、中小炭鉱金融について伺いたいと思うのでありますが、ソフレミン調査報告は、中小企業金融公庫の貸付限度を五千万円に引き上げ、金利も七分程度に引き下げること、また市中銀行借り入れ利息を六分五厘をこえて会社が支払った場合は、そのこえた分は政府が会社に払い戻すこと等の勧告を行なっておるのであります。このような考え方はどうでございましょうか。
  35. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在の中小企業金融公庫の貸出額三千万円を五千万円にふやすということにつきましては、通産省といたしましてかねて大蔵省の方に強力に申し入れ、その実現を要望したわけでございますが、大体最近の見通しでは、ほぼ非公式には了解点に達したといったような段階になっておりますので、いずれ近く実現し得るものというふうに期待いたしておりますし、今後ともさらにこの線で早期実現について努力をしていきたい、こう思っております。  それからなお中小企業炭鉱に対する金利の特別措置といったようなことにつきましては、全体の金利体系といったようなものとの関連におきまして、できるだけ中小企業負担が少くなるといった方法で、今後研究し、努力して参りたいと思っております。
  36. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 現在の貸付限度、三千万円、利子は加算納付金を加えると九分六厘でありますが、中小炭鉱とて合理化資金を必要としていることは申し上げるまでもないのでありますが、政府大手に対しては貯炭融資のあっせん等は行なったにもかかわらず、中小炭鉱についてはほとんど放任の状態でないかと思うのであります。中小炭鉱石炭の生産量は、全体の三分の一を占めておるにもかかわらず、政府関係金融機関からの融資は約三十分の一であります。このような中小炭鉱の味方としてできておる中小企業金融公庫がありながら、融資条件は市中銀行並みあるいは市中銀行以上に厳格でありまして、いわば金融公庫はあってないかのごとく、絵にかいたもち同然であり、全く期待を裏切っておる状態であります。市中銀行ベースに乗らないものでも、公庫でめんどうを見るというのが筋ではないかと思うので、ぜひ融資条件の緩和、貸付限度の引き上げ、金利の低下等について努力を願いたいと思うのでありますが、この御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
  37. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私どもといたしましても、中小企業にできるだけ安い金利で金が貸してもらえるということは私ども自体非常に熱望しておることでございますので、今後とも中小企業の金利というものは、できるだけ低くなるようにせっかく努力していきたい、こういうふうに考える次第であります。全体のいろいろな金融機関との関連等もございますので、よく大蔵省あるいは省内の担当の企業局あたりにも連絡をとった上でやっていきたいと考えております。しばらくかすに時間をもってさせていただきたいと思います。
  38. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 次に重油の輸入制限についてお伺いいたしますが、先日大臣石炭鉱業連合会の武内会長に対して、重油を来年度も五十万キロリットル切ると言われたのでありますが、今年度も下半期において計画に対して五十万キロリットル切ったのでありますが、来年度は昨年の実績から切るのであるか、それとも今年度並みの輸入にとめるという意味か、それとも来年度計画を今年度の何パーセントかアップさせて、それから切るという意味であるか、そこのところをはっきりお答えを願いたいと思います。
  39. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 結局石炭需給計画を根本に立てていかなければならぬ。これはもう原則として一番大事だと存じます。重油の方も同様にやはり需給計画を立てていくということにいたしておりますが、御承知のように昨年つまり三十三年度におきましては、下半期に五十万キロリットル無理して切ったわけであります。それでは来年度は三十三年度の割当と同じくらいの数量にして、それからまた切るのか、こういう御質問のようでありますが、そうはいかないと思います。来年度の油の需給計画というものを完全に立てまして、その完全に立てたものの中から、特に石炭のために、石炭の消費に振りかえる。こういうようなことのために五十万キロリットル切るか、あるいは上期、下期通じて百万キロリットルにするか、その辺のところを考慮して、少くとも比率におきまして石炭に対する問題は切っていきたい、こう存ずるわけであります。
  40. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 私は今年度の実績からさらに五十万キロリットル切るのでなければ、何ら効果がないと思うのであります。私は国内エネルギー産業の育成のために、もっと油を切ってもよいと思うのです。そして石炭が保護され、立ち直ったときにこそ、初めて自由に競争さしてもよいのであって、それまではあらゆる保護政策をとるべきだと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  41. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 石炭の側から見れば、そういう意見は立てたいと思うのでありますが、実際の政府の施策といたしますと、石炭の価格は重油の価格との間に相当の隔たりがあるということは、根本の問題であります、そらすることによって、日本の全体の産業に大きな影響を来たすと困る、こういうことも考えなければなりませんから、単に石炭だけの立場から、そういうふうな議論を立てることはできませんが、できるだけ石炭業者の立場も尊重いたしまして、そして重油の方をある程度切っていく、こういう方針で進みたいと存ずるわけであります。
  42. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 最近の新聞によりますと、石油の供給は世界的に過剰となり、このため世界的に石油の値下げ競争が激化しておるということで、アメリカにおいては国内石油生産業者が国際石油資本に対抗して、石油輸入制限処置の強化を要望しておりますし、石炭業界は石油のこのような値下げ競争によって著しい圧迫を受けて、非常な不況に追い込まれているようなわけであります。このための対策として、去る二月末全米石炭政策会議を結成し、政府のとっておる石炭政策は、石油輸入と原子力政策のために不公平な立場に置かれておるとして、石炭擁護政策を要望しておるのであります。三月八日の新聞によりますと、欧州各国におきましても、石炭の過剰貯炭をかかえており、輸入エネルギー削減等を要望しておると伝えております。このように今日国際石油資本の攻勢によって、国内資源産業が非常な打撃を受けておるので、国内産業育成のため、さらに強い処置を講じなければならないという動きは世界的になっておるのであります。わが国の石炭はアメリカ、ドイツ等に比べて採掘条件が悪く、従って外国エネルギーによる圧迫はより強いものがあります。聞くところによりますとアメリカの石炭は欧州への輸出が減少し、炭価も値下りをしておるということでありますから、このアメリカ炭が日本に大量入ってくるおそれもあるのであります。これらのことを考えますと、さらに強い石炭育成処置を講ずる必要があると思いますが、大臣はどのようにお考えでありましょうか。
  43. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく世界全体の石炭鉱業が、今非常な危機に瀕しておるということは事実でございまして、これは一方におきまして油業者の攻勢ということと、それからもう一つは石炭鉱業に対する経営方法についての議論等がいろいろ起ってきておる結果、今日の事態を来たしておると思いますが、同様に日本もその波にあおられておるわけであります。従いまして日本といたしましてもこの際石炭鉱業に対する従前から来た攻勢なり、あるいは今後の問題等も考えまして、日本の石炭鉱業をどういうふうにして世界的の荒波から守っていくかということを考えねばならぬということ、十分考えておるわけでありまして、それには一に重油対策というものと並行的に考えていきたいという考えで進んでおるわけであります。
  44. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 さらに石炭制限でありますが、石炭制限はコストの上昇を招いて経営を悪化し、不況の深刻化、さらに生産制限へと、不況の悪循環を招くおそれがあるのであります。大臣も御承知の通り石炭鉱業というのは、地下何千尺の下で働くという特殊な産業でありますので、弾力性に乏しいために、石炭産業にとって石炭制限ほど最も困難で最も愚劣な手段はないと思うのであります。しかし今日の事態では石炭制限もあるいはやむを得ない事情にあると、一応は認めるのでありますが、石炭制限だけにたより切ってしまうことは、まことに危険であると思うのであります。ぜひこの際一つ並行して他の政策、たとえば事業団財政投融資をして貯炭買い上げさすとか、また幸いに今できておる昭和石炭株式会社、あの会社に低利融資でもして、今百万トンというておりますが、それをさらに百万トン、二百トンも買いとってもらって、その石炭はどこか海底貯炭でもしておいて、そしてわが国の経済は波がありますので、ここ一年二年のうちには石炭がどんどん必要な時期もくると思います。その折にその貯炭を払い出して使うというようなことをするか、また重油を一時的にでも大量に切るとか、いろいろな処置をとる。また開銀金利の引き下げその他有効な処置を早急に検討してもらいたいと思うのでありますが、この点をお伺いいたします。
  45. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は石炭鉱業が今日通産省関係におきまして一番重要な、一番困難なる仕事と存じます。私はもっと簡単にこれは片づくものだと思って甘く見ておったわけでございますが、だんだん研究すればするほど、むずかしい問題にぶつかっております。今日世界の形勢がそういうふうになってきておるわけでありますから、この際どうしても来年度計画といたしましては需給計画を完全に立てて、それから需給調整機関というものを強力に作って、それによって根本の方針を立てていかなければならぬと存ずるわけでありますが、そういう点につきまして、ただいま渡邊委員の御指摘になりましたような点は十分考慮に入れて、今後進んでいきたい、こう存じておるわけであります。
  46. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 最後に今後の石炭政策について政府に要望しておきたいと思いますのは、今日の石炭不況は単に一時的のものではなく、もっと根本的なところに病源があるのではなかろうかと思うのでございます。いわば今日石炭にとっては危急存亡のときに際しておるのであって、この際抜本的の石炭政策が立てられなければ、ついには破局に立ち至るのではないかと思うのであります。ソフレミン調査報告の結論として、国の施策も不十分であると同時に、経営者は計画的なことや経営への介入をきらう自由主義の観念にとらわれて、石炭鉱業が直面せんとする破局に気づいていないものが多いと警告し、またさらに今日の経済拡大の時期において適切な政策を行えば、石炭鉱業にとって、また発展のための絶好のチャンスでもあると述べておるのであります。私は全くこれに同感でありまして、この際ぜひ根本的政策を打ち出すべきだと思うのであります。ことにソフレミン調査報告の勧告のうちに、鉱区の合併譲渡によって石炭採掘の共同化をはかるという点、また中小炭鉱開発事業団の構想等は、ぜひ取り上ぐべきだと思うのであります。鉱区の調整は権利に関係がある問題だから、なかなか困難だという意見が強いようでありますが、ことに北九州においてはそんなことを言っておる場合ではないのでありまして、国の資源を合理的に開発するという大前提の前には、やる気さえあればやれることと思うのであります。これらの処置によって老朽化しておるといわれる北九州の炭田も、再び生き返ることは可能だと信じておるのであります。要はソフレミン調査報告や、欧米諸国の石炭政策等を十分に参考の上、考えられる構想を十分研究して、これを実行に移すかどうかにかかっておると思うのでありまして、すみやかに官民の最良の識者を集めた強力な調査研究機関を設立して、その機関によって石炭政策を打ち出し、業界政府、国会が力を合せてこれを推進していくことが急務であると思うのであります。要すれば合理化法を根本的に改正して、石炭総合政策を織り込んだものにすることを考える必要があると思うのであります。とにかく以上のことを提唱して、政府の奮起を促して私の質問を終りたいと思いますが、このような機関を設けることについて、大臣の所見があれば最後に承わっておきたいと思うのであります。
  47. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 抜本的に石炭政策を立て直す必要があるということは、私は渡邊委員と全く同感でございます。それがためにはやはり現在行われております日本の鉱業法というものが非常に欠陥がある。これを根本的に変えていく必要があるということを痛感したのであります。鉱業法の審議会等を十分活用いたしまして、石炭鉱業をこの中に取り入れまして、どういうふうにすればいいか——今ある人たちが大きな鉱区を持って、それにつばをつけておいて、これをそのまま自分の所有権のごとく言っておる。一方には悪い山をみなが寄ってつつきまくって苦労しておる。こういうふうなことはあり得ることじゃないかと思うのですが、そういう点からやはり根本的に変えていく必要がある。こういうことによって日本の石炭鉱業は、ある程度生き返るであろう、こういうふうな感じがするわけであります。御趣旨は私どもも十分取り入れまして、急速にこの問題は解決したいと思っております。
  48. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 伊藤卯四郎君。
  49. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これから数点にわたって高碕通産大臣にお尋ねするのでありますが、まず私はこの質問をするのに当って非常に残念に思っておることは、私が数年前から主張をしてきておることが、現実に今日の炭鉱というか、石炭界に深刻な状態として現われております。政府も周章ろうばいをして、この対策をどうするかという意味において、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正をして、そうして新たに百万トンの石炭に該当する炭鉱を買いつぶそうということをいたしてきておるようであります。ところがこの一部改正法律案を出すに当っても、政府はこれで日本の石炭鉱界、石炭等を健全化、安定化さすことができるという確信を持って、この法案を出してきておるとは私は思わないのであります。ただ貯炭が一千万トン以上もあるし、炭鉱が非常な深刻な状態に陥っておるから、そこでまあ窮余の一策としてこれは出してきておるのであって、まことにそういう点より見ても、私ははなはだ遺憾に思っておるのです。さらに高碕通産大臣とも私は毎年のごとく、石炭の問題については討論をいたしております。さっき同僚諸君の中から、お前は石炭屋のようじゃないか、お前が石炭問題に出てこないはずはないという冗談も言われて笑ったのですが、それほど私はこの問題を、同じようなことを繰り返して討論しなければならぬことを非常に遺憾に思っておる。しかしながらやむを得ないからまたやるわけですが、さっきから渡邊同僚委員政府側との間において討論をされましたけれども、どうも納得できないというか、全く何とかして法案を通す間だけ要領よく言いのがれて、通しさえしたらこっちのものだというような考え方で答弁しておるように思われるので、誠意と確信を持っておらぬことを私は非常に遺憾に思っておる。  私が第一にお尋ねするのは、需給対策等についてですが、わが国の石炭鉱業を真に合理化して石炭生産のコストを下げるというのは、もちろん下げるといったところで、炭価が高いといったところで、これは私の見るところでは、炭鉱屋が利潤追求のためにのみ、今日の炭価が高いとかなんとかいわれているとは思っておらぬ。これはやはり石炭採掘に必要なるところの諸資材すべてが高いので、従って炭価も高くならざるを得ないというのが現状であるから、炭価を相当下げようとするなら、能率を上げて炭価を下げることも一つであるが、しかしそれに必要なるところの大部分を、生産に要するもろもろの資材関係、輸送関係、そういうものをあわして検討しなければ、私は政府といえども炭鉱経営者に炭価を下げろということを、おそらく言い得ないと思う。こういう点等について、一体炭価を下げるということをどういうようにお考えになっておるのかという点についても伺っておきたいのであります。  さらに重油との競合エネルギーとして石炭を対抗させようということのようでありますが、現在、炭価の変動が非常に激しいというか、ちっとも安定しておらぬのです。従って、この対策を立てるといったところで、確信のある具体的な対策を立て、これを業者に強制をしてやらすようなこと、高碕通産大臣といえども私はなかなかできないのじゃないかと思うが、その点について一体どういうようにお考えになっていますか。これこれは油と対抗さすために下げさすということについて、確信がありますか。確信があるなら、一つその方法なり、そういう確信についてお聞かせ願いたい。  それから石炭の市況を安定せしめるためには、さっきも意見が出ていましたけれども、まず石炭需給関係政府責任を持つということが、やはりその根本にならなければならぬと思うのです。さっき石炭局長が、諸外国においてはそれぞれ計画というか統制というものをやっておるから、業者にいろいろ警告というか、調整、要請というものができるのだという意味のことを言っておられたようですが、アメリカ初め世界のいずれの国に行っても、こういう石炭なり基幹産業というものを野放しにしておるところはありませんよ。やはりいずれの国でも、こういう産業に対しては、計画なり統制なりというものを行なっているのです。だから、こういう自由放任の形で野放しにしておって、出たとこ勝負でやっていこうというのは、日本以外に私はないと思う。こういう点も相当根本的に考え直さなければ、私は石炭問題の動揺激しいこの状態は解決できないと思うのです。そのためには現行法のような合理化法とともに、やはり石炭需給安定をはかっていく法律制度というものを作らなければ、これはやれぬのです。さっき通産大臣は調整機関のようなものを作るということを言われたのであるが、私はその通りだと思う。そこで高碕通産大臣、ほんとうにそれはおやりになりますか。あなたとこの問題でも長年押し問答してきておるようだけれども、ここであなたがおっしゃったことが、一向法律制度として実現していない。法律を通す間だけ、また質問をのがれる間だけ、要領よくこの国会の終るまでやればいいんだ、どうもそれ以上のことには考えられない。だから、やっぱり一国の国務大臣であるし、しかも産業経済に対する主管大臣であるから、今日まで顧みてこれじゃいかぬということをお考えになったら、今あなたのおっしゃったように需給関係に対するそういう調整機関あるいは法律なり制度を作るというなら、もっと私は勇気を持ってやるべきだと思うのです。どうもあなたがおやりになったのを、私はまだ一回も見たことがないんですがね。だから今度はほんとうにおやりになるのかどうか、その点も一つここではっきりその信念を伺っておきたい。あなた、ここだけやると言ってやらなかったら、そのときには、はなはだ残念だけれども、高碕通産大臣は通産大臣の資格なしといって、不信任案を出さざるを得ないということにもなります。われわれの方もそういう気持でおりますから、大臣もやはり主管大臣として、大臣の生命をかけて、おれは答弁しているのだというようなことで、一つやっていただきたい。これは諸外国でもうやっていることですから、私は何も日本だけの問題じゃないと思うので、たとえば肥料工業などを見ましても二本建になっておることは御存じの通りです。現在は需給安定法と合理化法の二本建で、肥料の合理化をして、そしてコストを引き下げていることは御存じの通り。石炭もその必要が全くそこに来ておると私は思うのであります。石炭鉱業を健全化するためには、一時的な貯炭対策のみではだめだと思うのです。やはり根本的に解決せなければ将来の安定はあり得ないと思う。そこで将来の安定方針と現在の不況貯炭対策とをあわせて石炭の問題の解決をするということでなければ、同じことを繰り返していくことになる。それから現状の救済もできないと私は思う。何かどこかに動乱でも起ってなにすれば、これは別だけれども、そんなことなんぞもう期待できません。だからやっぱり日本の国内自体で対処して、将来に対する方策を立てるということでなければならぬと思うのであるが、この点について大臣はどういうようにお考えになっておるか、ほんとうに責任を持てるあなたの所信を一つお聞かせ願いたい。
  50. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問の点でございますが、今回提出いたしました正石炭鉱業合理化臨時措置法だけによって、私は石炭がどうこうなるというふうなことは考えておりません。しかしこれは一つの手段だ、一部分だということだけは、一つお含みおきを願いたいと思いますが、やっぱり石炭は抜本的に政策を変えなければならぬということ、その根本になるものとして、どうしても鉱業法というものを根本的に変えていかなければならぬ、私はこういうふうな感じでおるわけなんでございます。これはさっそく今度進めることに相なっておりますが、伊藤委員のおっしゃったごとく、誠意も確信もない、こういうことですが、誠意は持っておりますけれども、実際を申しますと確信はないわけでございます。これだけははっきり申し上げておきたいと思います。どういうふうな方法でやっていくかということになりますれば、どうしてもやはり一人当りの採炭律をもっとふやしていくということにせなければ、これは原価は下っていかない。今のところ十四トンくらいでありますが、これは少くとも二十トン以上に持っていかなければならぬということは、根本の問題だと思いますが、同時に、この資材だとかあるいは抗木だとかいうふうなものも、できるだけ安く下げていくということは、やはり原価を引き下げるということの根本であるというふうに思います。そこで、それにつきましても、需給計画というもの、これは政府だけでやったって、政府というものは頭がないのでありますから、これは実際家の、つまり今日石炭業に従事されておる方々の御意見を主体に置きまして、それに政府がよく入りまして、そうして需給計画というものを間違いなく作る。需給計画を作ったその結果、政府がやったものであるから、政府責任だから、政府はしりをぬぐえということも、私は無理だと存じますから、これはどうしても需給計画は業者と政府一緒になって、共同の責任で立てるということをやっていきたい。同時に、いかに需給計画を立てておっても、変転きわまりなき経済状態でありますから、そのときにあるいは雨がよけい降ったとか降らなかったとかいうふうなことによっても、また需給が違うわけでありますから、それにはやはりすぐに発動し得る力を持っておる需給調整会というのを作って、それは政府と民間と一緒になってこの需給調整をするというふうなことも考えていかなければならぬと存じておりますが、そういうふうにあの点この点いろいろな点をよく一緒に考えまして、それを急速に石炭鉱業のために立案していきたいというのが、今日の政府の考えでございます。決して一時的に言いのがれに言うわけではありませんで、今日の石炭鉱業がいかに日本の国のために必要であるかということ、並びに現在におきましては特に石炭鉱業は困難な状態になっておる、一番悪い状態になっておるわけでありますから、このときこそこの石炭問題を根本的に抜本的に解決する案を立てて、それが必要であれば、これを法制化するということも必要だと存じておりますが、今回提案のこの臨時措置法のごときはその一部分でありますから、さよう御承知願いたいと存ずるわけであります。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣が、今、需給調整ということを、どうしてもやらなければならぬと言われた、その意味は何ですか。政府から生産量を指示する、その商品については政府責任を持つという意味においての権威ある調整ということを言われておるのですか、その点はどうです。
  52. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その点がつまり需給調整会でやることでありまして、この程度のものを政府責任においてある程度持たすとか、あるいはこれを民間でどうやるかということをやるのが、需給調整会の仕事なんでございます。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 高碕大臣はいつも二日目に、鉱業法を改正しなければ何事もやれぬようなことをおっしゃるが、鉱業法を改正しなくったって、やろうと思えばやれるのであります。あれは昔の鉱業法でありまして、あの鉱業法の精神というものは、いわば所有権というか、そういう一つの明治時代の観念においてあれは作られたものでありまして、新しく現代の日本において産業経済関係をどうしてやっていくかということを、国家国民のためにやろうとされるのには、何もあの鉱業法があったって何でもやれるのです。ですから、鉱業法の改正をしなければならぬということは逃げ口上であって、そういうことは、それは鉱業法を知らない人に言うことであって、私は鉱業法があるからそれを改正しなければ何事もやれぬというようなことはこれはお取り消しになった方がよかろうと思います。このことで議論をしておると時間つぶしになりますから、やめます。  それから先ほど石炭局長が、雨が降ったから去年は大へん貯炭になったんだと答弁されたが、雨は去年降ったのじゃなくて、四年も五年も前からずっと雨が降っておるので、そこで電力会社には石炭の準備金というのが今幾らありますか、おそらく三百億、四百億になっておるでしょう。だから、そういうことでごまかしちゃいけません。雨が何も去年よけい降ったわけではなくて、雨はずっと降ってきておるから石炭の準備金が三百億、四百億も前からできてきておるわけじゃありませんか。そういうことでごまかしちゃだめです。それから貯炭大手のみにあると言っていましたが、中小にはない。これは一体どういう見解を持っておられるのですか、それを一つお聞かせ願いたい。
  54. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 雨の点でありますが、確かに渇水準備金は三百三十億ばかり九電力会社において積まれておるというふうに承知いたしております。ただ、三十三年度の当初電力需給計画を立て、あるいは国の鉱工業の見通しを立てるというときには、実は過去十五年間の平水ということを基礎にいたしまして、千三百七十万トン程度石炭がたかれるという計画が立てられたわけでございます。ところが、現実にはそれが平水でございませんで、上期においてすでに百六十万トン、十月、十一月におきまして約百二十万トン、それから一月、二月におきまして百万トンというように、それだけ平水より以上に雨が降ったということで、確かにこれは非常におかしな現象でございますが、毎年平水でなしにある程度豊水になっておる。そこで今度はわれわれの方といたしまして、この平水というもののとり方がおかしいので、今後の需給計画を立てるときに、ある程度豊水べースというふうなことを頭に置いて石炭需給計画を立てる方が間違いないのではないかというふうなことを考えまして、大体来年度は五%程度の豊水というものを前提にして、石炭の区需給は見た方がいいんじゃないかというようなことで、石炭あるいは石油の来年度需給数字というようなものにつきまして、今作業をいたしておるわけでございます。この点確かに毎年雨が降っておるのでございまして、しかもそれが毎年々々、最近十五年間をとると、何パーセントかずつふえているという格好になっておる。これあたりは、今後の需給計画を立てます上に、今までのあやまちと申しますか、統計から見ると、確かに十五年の平均をとれば、大体これくらいの数だというのですが、毎年それくらいふえる。しかも十五年間に平水を割ったのが一カ年くらいしかないというふうに承知いたしておりますが、そこらあたりを見て、今後ともできるだけ間違いの少いものにやりたい、こういうふうに思っております。  それから、石炭がもっぱら大手にあって中小にないということを申し上げたのでございますが、大体現在石炭業者の貯炭と称せられるものは約四百五十万トンございますけれども、そのうち百万トンばかりのものは、販売業者が市場で持っているというものでございます。大体大手の生産業者が、一月の末でございますが、三百一万トン、これは三十三年の三月に比べまして百九十五万トンふえております。大体百万トン程度あったものが三百一万トンと三倍近くになったわけであります。中小の生産業者が六十五万トン、これは三十三年の三月に四十一万トンでございましたので、約六割ばかりふえているわけであります。それから販売業者が九十四万トン、これは三十三年七十七万トンで、約二割近くふえているということで、統計的に見ますと、大手の生産業者が三百万トン、それから中小の生産業者が六十万トンということで、そのふえた率を見ましても、片一方は約三倍になり、片一方は六割程度の増加にとどまっているということを申し上げただけでございまして、現在の段階で一番こわいのは、ダンピング等による炭価の暴落ということでございますが、そのダンピング等による炭価の暴落を避けるためにはここに一番市況を圧迫しております大手の三百万トンというものが持ちこたえられるということになりますれば、一応の危険は回避し得るのではないかということで、われわれといたしましてはまず一番の主力を大手貯炭が、今後も円滑に持ち続けられるように信用をつないでいくということに努力したいと考えたわけでございます。
  55. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 局長は私が尋ねたことを答弁しておられない。大手貯炭が多くて中小がなぜないのかということについて私は尋ねたのです。そこで、局長はなられたばかりだからこれは御存じなかろうから、私が政府委員にかわって一つお教えをいたします。これは今局長が言われたように、中小がダンピングすると炭価がくずれてくるというところから、大手が中小の炭を買い取ったのです。それぞれ大手が、三井が幾ら、三菱が幾ら、明治が幾らというので中小の炭をみんなずっと買い取ったのです。買い取ったために中小の方は貯炭がなくなって、大手の方は貯炭ができておる。だからそういうことをやはり政府の方で御存じなくては、これは石炭対策が立たぬのじゃありませんか。もう少しやはりその実情に即して勉強されて、そして法律案をお出しになるなり対策を立てられるなりしなければ、私はほんとうの生きたものにはならぬと思うのです。そういうことを言って、なられたばかりの局長を私がとっちめてみたってこれはしようのないことですから、より以上申しませんが大体そういうことです。  私がさらに尋ねようとするのは、石炭は何ゆえこういう深刻な状態になって一千百万トン以上の貯炭になってそれが動かないのかということですが、これはさっきからずっと議論をされてき、また私が先ほどお尋ねしたように、石炭需給の安定がされておらぬというところにあるのであって、やはり合理化計画目的を達成するための絶対条件は重油と石炭との調整というか、その両方の合せた量を政府が完全に掌握して、そして総合エネルギー対策としてどうするべきかということを常にガラス箱の中に入れて見ているような形でお立てにならなければならぬはずである、ところが石炭より油が安ければ油がどっと入ってくるといったようなことで、全くもう出たとこ勝負という以上に何もやっていないのです。しかもその出たとこ勝負のこの苦い経験から、次の段階をどうするべきかということをお考えになっておるかといえばそれもない。政府はしばしば石炭を主として油を従としてやるということを絶えず発表されておる。高碕通産大臣も旅行先などで、これを何回か新聞に発表されておるのを読んだことがありますが、総合エネルギー対策としての計画の上からいえば、政府のこのエネルギーに対する一つの立て方というものは全く無為無策です。一言にして言うならば、もうその言葉に尽きておる。こんなことでは、法律案を出してきたり、それから政府責任においてなんていって、ここで論議をする相手として、政府ははなはだもってたよりにならぬということを私はいわざるを得ない。そこでやはりさっきから申しているようなことで、そういう総合エネルギーの対策を立てて、そして将来、かくして必ずやるということを明らかにされなければならぬはずです。ところがまだきょうから質問が始まったばかりであろうから、だんだんそういうことについて責任がある明確な点を、今後発表になるのかどうか知りませんが、一つ私はそういう点を明らかにしてもらうまで、漸次質問をしていきますから……。  そこで政府が非常に失敗しておるのです。というのは、たとえば自由民主党というかあるいは経済企画庁というか、そういうところで長期経済計画というものを立てて新聞にもずいぶん発表され、またこの商工委員会でも愛知通産大臣のころから、しばしばこの石炭問題でも発表された。何ですか昭和五十年になると七千二百万トンなんといって、昭和五十年のことまで発表になったことがある。そして去年昭和三十三年には五千六百万トン、必ず生産、消費の責任を持つと言われた。ところが実際に当っては御存じのように去年は五千万トンしかやっていませんよ。政府のいう通りに五千六百万トンも出したら、これはえらいことになるだろうというので、業者は相当の自粛をして五千万トン、ところが五千万トンしか出さないのに千百万トン貯炭になっている、もし政府のいう通りに五千六百万トン出したらどうなるのです。おそらく十七、八百万トンの貯炭になるじゃありませんか。政府は五千六百万トン、しかし実際業者は五千万トンしか出しておらぬ、それで千百万トン貯炭になっている、実際に消費された石炭四千八百万トン、こういうことでしょう。こういう数字の出し方ははなはだ甘いじゃないか。政府はそれだけ生産させたら消費の責任を持つのか。甘かったら訂正して業者にもそれを示せと言ったけれども、甘くありません、必ず石炭はそれだけ消費されるものと政府は確信を持っております、こういうことを言った。ところが現実は今のような状態でしょう。これらについて政府は、何かさっきから聞いておると、こういう間違った点においては、相当責任を感じておるということを言われておるが、責任を感じておるというのは具体的にどういうことですか。その責任を感じたというなら、その当時の大臣なりあるいは企画者なり、あるいは政府責任者なりというものが責任をとってやめるということですか。これはただここで言葉のごあいさつとして責任を感じていますというだけですか、どっちですか。そういう点についてはっきりしていただきたい。
  56. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 五千六百万トン、これは一応三十三年度が始まります前に、大体このくらいが生産の一応の目標になるのではないかといって掲げた数字でございますが、これはその後一応正式には石炭鉱業審議会の議を経まして、三十三年五千三百五十万トンというものが、政府として一応正式に掲げた目標であります。これはしかしあくまでも一応の当時の経済情勢等の見通しからすれば、このくらいの生産をしても大体需給がケッチするであろうということで立てた一つの目安でございまして、必ずこれだけをどういう方法で掘れというようなことまで強制するといったようなものでないことは申し上げるまでもないのでございますが、しかしいやしくも政府の方で大体このくらいの生産があってもいいだろうといったような目安を掲げた以上は、それからくる業界の御迷惑というようなものは、できるだけ最小限度にとどめるべきであるといったようなことから閣僚懇談会その他等を通じ、さらにその後も機会あるごとに大蔵当局あるいは日銀当局を通じて見通し等がかなり狂って、そうして思わざる貯炭ができそうだが、それについては一つ十分なる貯炭ができるように金融をしてもらいたい、あるいは三月の末に返すという約束で借りておるけれども、これはしばらく返せないので、もうしばらく一つ貸してもらいたいというようなことで、破滅的な格好になる混乱を防ぐということに努力して参りましたのは、一応政府といたしましても、今のいわゆる責任と申しますのは、見通しが違ったことに対する混乱というものを最小限度にとどめるために、できるだけの努力をしなければならないという意味で、われわれは責任を感じておるというふうに申し上げたのであります。
  57. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私、何も責任をとってみんなおやめなさいと言っているのではない。しかし責任を感じておるということは、具体的にやはりそれが現われてこなければ、国民また直接の関係者は、政府や役所の言うことを信頼しなくなると思う。そこで政府の見込み違い、できもしないようなことを机上のペーパー・プランのようにして、それを国会で答弁したり、また国民に発表したりして、そうして業者を刺激してやらして、こういう貯炭になっているのだから、やはり少くとも貯炭に対する処置の方法を責任をもってある程度やるか、やめるか、貯炭に対する責任をある程度政府がとるか、どっちかやらなければならぬというのが、私は責任を感じておるという具体的な現われだと思うが、高碕大臣、いかがですか。
  58. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 責任をとってやめるということは簡単なことでありますが、そう簡単にはできないものであります。いかに大臣がやめたって石炭は減らないわけであります。だから責任をとるということは、これはだれがやったとしても、そのあと始末をするということが責任をとることでございますから、政府は決して責任をとらずにほっちらかしておくわけではありませんで、その方法といたしましてはお言葉を返すようでありますが、昨年度下半期においても、ある程度重油を調整して、重油五十万キロリットルを切ったようなわけであります。同時にこれによって起る貯炭につきましては、政府の力の及ぶ範囲におきまして、貯炭金融を援助するということをやっておるわけですが、この二つぐらいの程度で御勘弁願わなければいけないかと思うのです。しかしやはり根本においては、先ほど伊藤委員のおっしゃったように、重油との調整ということが、総合エネルギー対策からいって、石炭のためには一番簡単だと私は思っておるわけでございますが、それにいたしましても、やはり経済現象を全然無視するわけにいかぬというわけでありまして、特に重油が昨年来運賃の暴落によって、また重油業者の経済攻勢によって非常に安くなってしまったということが、一つの原因になっておるわけであります。一カロリーが一円幾らしておった油が石炭と同様九十八銭ぐらいになってしまったということになりますと、ここにまた計画狂いが来たということも一つの現象でございますから、といって重油はいつまでもそういうふうに安い原価で入るかといったら、そうでもない。またいつどういうふうな工合に運賃の変遷によって変るかもしれませんから、そういうふうな点を考えますと、あれやこれやを考えなければならぬのでありまして、一つの方法でこれを規制するということもできないわけでありますから、そこでこの調整をするにつきましては、政府だけでなくて、民間の力も借りて、調整審議会等も作って考えていかなければならぬ、こう思っているわけであります。
  59. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今高碕大臣の言われたように、先ほども私申しましたように、何も責任をとっておやめなさいと言っておるのではない、そんな無責任なことじゃいかぬと思う。やはりよって起った貯炭を解決してやる、そこで貯炭の解決についてそれぞれ業者の方からも、かくしてもらいたいということもあります。また労働者側からも貯炭処置の問題についてはやはりいろいろ意見を申しております。従って責任をとるという意味は、当面の千百万トンからある貯炭を、どのように政府がこれを処理してやるかということが、私は当面一番緊急な問題だと思う。そこで貯炭の処理問題について、政府はどのようにしてこれを解決をしてやろうとお考えになっておるか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  60. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 貯炭の処理、これが当面の石炭不況の一番大きな問題だ、こういうふうに存ずるのでございますが、御承知のように、先週大手十八社によります新昭和石炭会社という、民間の出資に基いて民間銀行から金を借りて貯炭を行うことを本旨とする会社の発起人総会が開かれまして、大体四月六日には登記手続を終えるということに相なっております。実はわれわれ昨年来、たとえばこれはほんの一方法でありますが、現在の納付金といったようなものを見合いにして、業界全体で需給調整の機関を作ったらどうかといったような案も作って、いろいろ各方面の意見を聞いたこともございます。われわれといたしましては、とにかく何らかの格好において、需給調整的な機能を営む機関というものを作るということによって、石炭の急激な需要の変動というものを防止するということ、それは長い目で見ましても、石炭の特性から見てぜひ必要であるし、また当面考えられる貯炭の増加というものに対処する面でも、一番効果的であろうというようなことから、業界全部が総力をあげてこの貯炭問題と取り組むといったようなことについて、いろいろな面から示唆をしてきたわけでございます。はなはだおこがましいような言い方でございますが、われわれといたしましては、今日新昭和石炭会社がとにかく発足の運びになったということにつきましては、これは昨年の夏以来いろいろ役所の方でとにかく需給調整機関というものを大手、中小一緒という案もあるだろうし、あるいは現在最も貯炭をかかえて苦しい立場にある大手大手だけでやるというならそれでもよいし、何らかの格好で、できるだけすみやかにとにかく過剰貯炭を凍結するといったような機構を設立すべきであるということを言って参ったわけでございますが、それが今回の新昭和石炭の設立というようなことにも、かなり私どもはプラス的な要素になっているんじゃないかというふうに考えておる次第でございまして、われわれといたしましては現在約手百万トン貯炭がございます。これがあるいは上期中に不需要期にさらに百万トン程度業者で持たざるを得ないという格好になるかもしれない。現在よりもふえないというのであれば、大体現在の金額をころがしておくということで、一応問題が何とか処理できるわけでございますが、今後ふえるということも予想されるというようなことを考えまして、このふえる分につきましては新昭和石炭会社で大体百万トンあるいはそれ以上ということになるかもわかりませんが、抱かせるといったような方向で、とにかく現在当と面している最大の苦難を乗り切るようにやっていきたいというふうに考えておりまして、現在のところは大体金融機関等の話し合いは 一応五十億というものを銀行から借りて百万トン程度というふうになっておりますが、さらに政府のあっせんその他でこの金をふやし得るということであるならば、さらにいろいろと政府としても努力することによって百万トンというふうに限定せずに、さらにそれ以上の貯炭もここで凍結できるといったような方向に努力していきたい、そういうふうに思っております。
  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 率直に言うと、新昭和石炭の方で、現在の貯炭処理に対して具体的な案を作って政府に相談をしてくれば、それを受け入れて解決してやる用意あり、こういうことですか。
  62. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 とにかく新昭和石炭の方で五十億の金を調達してこれでやりますという格好で言ってきた場合、もちろんわれわれの方としてはそれによって新しい需要期に入るまでの間凍結するということは一番望ましいことでございますので、新昭和石炭計画を出してきた場合には、役所として当然それに賛意を表し、さらに積極的に進めるという方向で援助していきたい、こう思っております。
  63. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも役人の答弁というのは、要領よく言っておかなければあとでつかまれるからということもあるのかもしれぬが、資金を五十億円調達してきたというのでなくて、政府の力によらなければ調達できないのだから、その調達について政府は積極的に協力をしてやる、こういうことですか。はっきり言って下さい。
  64. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 その通りでございます。
  65. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その点はわかりました。  そこでさらに、今度百万トン新たに炭鉱を買いつぶされるわけですが、現在の段階においての見通しでは、これで一応非能率炭鉱と見られるものはなくなる、こういう見通しですか、この点を一つ伺っておきます。  それからこれだけ買い取れば、大体においてあとは炭価の問題についても政府計画通りに安定化し、経営も健全化することもできる、こういう一つの見通しの上に立って、今度新たな百万トンの買いつぶしをやろうとしておられるわけですか。
  66. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど申し上げたかと思うのでございますが、大体合理化法施行当時、われわれが非能率炭鉱と考えております——大体平均の六割以下の能率あるいは炭価の非常に高いといったようなものが約六百万トンあったわけでございます。それを今回増額措置をここでお願いいたしまして四百三十万トン買い上げることにいたしますと、大体七割ちょっとのものを買うことになるわけでございますが、残りの二割幾ら、三割弱につきましては、その中で御承知のように炭量がほとんどなくなって終結に近いといったような関係で、わざわざ業界全部が金を出し合って買うに値しないといったような山もございますし、あるいは現在は悪いけれども、企業努力によってもう少し能率を上げ得るといったような山もございますので、大体四百三十万トン程度まで買えば、一応の目的は達し得るのではないかと考えておるわけでございます。これにつきましては先ほど渡邊先生の御質問にもございましたように、やはり二割幾ら残るのならばその分を買い上げるとか、あるいはもう少し買い上げ基準を上げて、この際もう少し積極的に体質改善をはかったらどうかという御意見も当然あろうかと存ぜられますので、これにつきましては、それに伴う炭鉱業者の負担といったようなこともあわせ考慮いたしまして、今後どうするかということは、さらに慎重に検討していきたいと思っておりますが、法律制定当時の考え方というようなことから行きますれば、大体四百三十万トン程度買えば、こういう方法による体質改善ということは大体行くのではないか、そういうような見通しでございます。  それからなお、それだけやれば炭価が下るかというお話でございますが、これは先ほど大臣から申し上げましたように、われわれの石炭の基本計画によりますと、四十二年度にはとにかく一応二十三トン半まで能率を上げたいということで、六千九百万トンという目標数字を掲げているような次第でございますので、今後四十二年までの間に大体基本計画によりますそのときの労務者が二十四万五千人程度でございますので、五万人くらいの人間が何らかの格好で、ほかの産業に吸収されるということが望ましいと思っております。われわれといたしまして、四十二年——まだ七、八年ございますが、その間にできるだけ二十三トン半の能率を上げるといったような関係に、一つ炭鉱合理化を漸進的に進めていくことによって、将来は石油とも対抗できるところまで値段を下げるところへ持っていきたいと考えております。
  67. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 現在の買取事業団に、もう百万トンを新たに買い取らせればもう使命は終ったということだけではなくて、これは私の意見を加えた質問になりますが、現在の事業団を改組というか、そういう形にして、もっと積極的に非能率炭鉱を買いつぶしていく、従ってざらに改組した事業団が、開発というか、そういう生産的な面も、買い取った鉱区の整理等もやって、そういう方面に携わり、そして石炭需給調整をする事業もあわせてやる。そうすれば、従って買い上げられたところから今度は、前の分を合すと三が人ぐらい失業者が出てくることになりましょうが、そういう諸君もこの事業団のもとにおいて——いわば公的なこの機関のもとにおいて、なれた坑内労働に吸収されることになる。さらに石炭が不足をして緊急を要する場合には、積極的にこの事業団機関も出産をする。さらに不況になって、石炭が過剰になった場合には、これらが一つの調整をする機関の役割も勤める、こういう一つのものをこの石炭界の中にも、国のそういう一つの公的な機関として持っておれば、私は石炭の安定化あるいは健全化の安全弁になると思う。そうしてさらに炭価の問題もそこで調整もできる。さらに失業者の吸収もできるというようなものでもせめて持たなければ、今のような野放しでは、これは毎年ということはないが、何年おきにか繰り返えされてくる。石炭の状態を見ますと、よくなったときは非常に突発的に現われてくる。それから不況の場合はずっとこれが長い、こういうのが石炭界の過去の歴史じゃないかと私は見ておる。私は何も炭鉱屡を弁護する意味じゃないが、炭鉱経営者の状態を私どもが長い目で見ていきますと、炭鉱で金をもうけて、そして非常な巨億の富を作った者というのは、私はほとんど見たことはない。ある場合には山を売って、その金は取って、山をやらなくして、金を持っておる人は何人か知っておる。けれどもずっと一生をかけてやっておる炭鉱経営者を見ると、私は炭鉱屋でやりながら巨億の富を作った炭鉱屋というのは見たことはない。従っていかに危険作業であって不安定であるかということを知るのです。だからそういう点から見ましても、今私が意見を加えて大臣にお尋ねしようと思うようなことをお考えになれば、大臣がさきに需給調整の何らかの機関を作りたいと言われるのに、最も役立つ一つの方法ではないかということを考えるのですが、大臣のこういう点についての調整と言われる意味を含んで、こういうことについてどういうような構想があるか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  68. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま伊藤委員の御指摘になりました事業団を改組して、これにある程度の調整の機能を持たしてやったらどうか、こういうのは私は確かにとっぱな一つの案だと存じております。現在政府といたしましても、事業団は買い取ったあの非能率炭鉱をもう少し総合的にこれを一本に考えていったときには、相当の価値があるものだとこう私は思っておりまして、この調査を今命じておるわけなのでありますが、そういうようなことになりますれば、ある程度この事業団の組織を変えまして、そこで失業者の一部も吸収することもでき得るだろうと思っておりますが、政府の直接の息のかかったそういうような公共的の団体をもって、それに調整の機能を持たすということにつきましては、十分私は検討いたしたいと存じておりまして、確かに私はこれは一つの名案だと存じております。
  69. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そう同調されたよらな意見を大臣が吐かれたからといって、もうしばしば大臣にひっかけられておるから、なかなか私もそうすなおに喜ぶわけにはいかぬ。しかし私が今申し上げたことと、大臣が今おっしゃったこととを合して大臣の方で一つ需給調整についての案をお作りになって、私どもにお示しを願いたい。  さらに開発上の点について伺っておきたいのですが、現代の合理化の法律によって、未開発地域を積極的に開発するということも、もちろん大事だと思います。それからその鉱区の調整というか、そういうこともお考えになっておる、小さな鉱区があまり分離、対立しておることもどうかと思うので、こういう点もやはり統合されるということもわれわれはよろしいと思います。そこで未開発地域の開発を計画的にということと同時に、古いつまり老朽炭田の合理化というか、そういうことをやられる必要がある。これは私が高碕通産大臣にしばしばお話を申してきたことがあるのですが、老朽炭田の鉱区の整理統合というか、そういうことが最も大事だと思うのです。そこでせっかくこの事業団が鉱区を買いつぶしていく。そうすると今度事業団が四百万トン以上も炭鉱を買いつぶしていけば、従ってそれらに隣接する鉱区とを合せれば、おそらく何億トンかの石炭があるであろうということがよく言われておるわけです。そういう膨大な地下資源というものを眠らしておくということは国家的見地からも、もったいない話でありますから、従って老朽炭田の鉱区の整理統合をして、これを計画を立てて大きく開発をするということが考えなければならぬ点じゃないかと思う。というのは私が先ほど申し上げたような点とあわせてこういう点を、ぜひあわせて立てておくべきじゃないかと思うのですが、この老朽炭田の鉱区の整理統合等について、大臣はこの前私は賛成ですというようなことをたしか雷われたような気がするが、買い取りがだんだん拡大していけば、こういう問題もおのずからそういう買い取ったあとの膨大な鉱区、何億トンという石炭が埋蔵しておるものをどうするかということについての対策も一つ考える必要がある。それからまた老朽炭田を個々ばらばらにやらせておくということは非能率的でもあり、災害もそのために多く起るわけであるから、やはり能率化するために、災害を防止するためにも、私は当然これは考えなければならぬ点であると思うのであるが、この点についていま一回はっきりした点を伺っておきたいと思います。
  70. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は老朽炭鉱にいたしましても非能率炭鉱にいたしましても、これが個々に置かれておると非常に非能率になり、老朽になる、こういうふうな場合も相当あると思っておりまして、これを総括的に一本に考えていけば、相当利用する道があるような気もいたしまして、その点は石炭局長に対して十分これを研究しろというので、研究を命じておるわけであります。ただいかにしても老朽炭坑はどこまでも老朽で、老人で使いものにならぬ、かたわ者だけを連れてきても仕事にならぬ。これを合わして幾らか力になる者を見つける、こういうことをやっておるわけでありますから、そういう目当てがつきますれば、伊藤委員の御指摘のごとく事業団をその経営の衝に当らすということはいい考えだと存じておりますので、そういう方面に十分の検討を加えたいと存じます。
  71. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その他石炭政策の問題について、まだだいぶ伺いたいことがあるが、時間の関係等もあろうし、また同僚各位からの質問もだんだんされていくと思いますから、政策の問題については一応この程度にしておきまして、あとは買い取り炭鉱から出てくる失業者の処置の問題について、何点かを伺っておきたいと思います。  昭和三十年に買い取り炭鉱合理化の法律が制定されましてから、離職者が非常に多くなり、御存じのように至るところにどうすることもできないというような悲惨な状態が現われておりますが、政府はあの当時法律を作るときは、失業者の問題については政府責任を持って就労さす、こういうことを非常に強く言われたのであるが、そこで一体政府が報告を受けておる限りにおいて、政府機関において就労を地域別にどのくらい、あっせんされたか、それを一つ具体的にお知らせを願いたいと思います。
  72. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 昭和二十九年のあの不況対策で、石炭合理化法をやりましたときには、相当の失業者が出る、それはあの付近の北九州におきましては鉄道建設事業に相当数就労させるという固い約束で実行を始めたのであります。その当時いわゆる神武景気のために一人も来てくれない、かえって減った、こういうのがあの当時の実情だったのであります。その後だんだんふえて参りまして、三十三年の十一月末には、あれやこれやの人が集まって北九州だけで五千八百七十人、これだけの失業者が停滞しておるということも事実でございます。その後者地方でどういうふうな方法でやっておるかということでありますが、一応政府委員から説明いたします。
  73. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今大臣から申し上げましたように、この前の法律を作りましたとき自体におきましては、北九州におきます川崎線の建設でありますとか、その他マル石という制度を設けまして、職業安定所に申し込んできた人間のうちで、石炭離職者を最優先的に採用するようにということをやったのであります。ところが御承知のように三十一、三十二年という年、いわゆる神武景気と称せられましたころ、石炭全体で逆に約二万人雇用がふえたというようなこともございまして、地元におきましてはせっかく石炭からの離職者を採用しようということで計画しておりましたが、実は石炭からの申し込みはほとんどないということで、やむを得ず他の人間を持ってきてそれに充てるというようなことをやってきさたわけでございます。しかし政府といたしましては三十一年以来石炭合理化に伴う対策といたしまして、昭和三十一年度は全体で公共事業費、一般事業費合せまして三千三百四十七人、三十二年度は五千九百人、三十三年度は七千二百人というものを建設省、運輸省、農林省労働省その他で吸収するという計画を立てて、今まで実施してきたわけでございまして、三十四年度、来年度につきましても北九州におきましては七千六百名程度というものを、各省関係公共事業費、一般失業対策費に吸収するということで、予算の御審議をお願いしておるわけであります。
  74. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今、川崎線のことをおっしゃったが、大体国鉄の鉄道建設あるいは建設省関係の事業、そういうところには炭鉱から出てきた失業者を使わぬのです。みな自分で持っておるのを持ってきて使うのです。なぜ使わないかというと、炭鉱失業者は、坑内から出てきた者はやはり外の太陽に当ったり、外の空気に当ったりすると、からだが非常に変化するので、なかなか思うように働けない。そういう点等もあるので、川崎線などにはほとんど炭鉱から出てきておる失業者を使っておらない。なぜ使わぬかというと、能率の点があるからという。ですから政府機関においてそういうふうに使わぬのです。今局長がおっしゃったようなことは、どういう報告が来ておるか知らないが、国鉄関係とか、建設省関係の、あるいは直接もしくは大きな請負に渡しておるところは、そういう炭鉱から出てくる失業者は使いません。私はここに調べを持っておるから、あなたの答弁いかんによってはそれを示しますが、ただ何かこの法案を通すために、一応出てくる失業者の吸収率を合せておかないと、委員会において通してもらえないのではないか、こういう点等もあるので、何とかかんとか言って、うまいことその数字を合せて、それでこの法案を通す。法案が通ったらあとはもうとにかく知らぬというようなことが、大体今までやってきておる悪い例です。だからそういう大きなところは炭鉱から出てきた者を使わないということは、きわめてはっきりしていますから、伊藤お前はそう言うけれども、これだけ使っているじゃないかということならお示し下さい。私の方も一つその具体的な数字を出しますが、そういうところから福岡県の特に炭鉱地区においては、全国で失業者が一番多いという数字が出ている。これは何かというと御存じのように、この間の三百万トン買い取りのうち七割強ですか、それは福岡県で買い取りしておる。従ってそういう離職者の行き場がないから全国で一番失業者が多い。これはもう論より証拠、働く場所がないということを証明する一つです。そういう点から地元の市町村などはこの対策にはほんとに困っておる。さらに炭鉱がつぶれていく。失業者をかかえておるというところから、その関係の市町村、自治体の財政の上からも非常に窮しておる。これはもう政府の方に、この地元の市町村などは、ずいぶん陳情しておると思うから、特に大臣あるいは石炭局長なども御存じであると思う。だから単に法案を通すために何とかかんとかと言いのがれだけで答弁されるということはおやめになって、ここ、ここに正確に就職をさせるということをはっきりしてもらわなければ、私は承知できぬのです。というのは、たとえば、一つの町に買い取られた炭鉱地区ですが、今の一つの町に千六百人からの失業者がどうすることもできないでおるところもあるのです。まことに深刻なんです。こういう状態ですから具体的に示されなければ、私はうまいこと言われたって、どっこいそれに乗るわけにいかぬということです。それから市町村も失業者に職を与えるということ、あるいは生活保護家庭に転落をしてくる者などで、非常に自治体が窮しておるということは御存じです。だから失業者の問題、自治体の生活保護家庭がふえていく問題、そういうことなどもあわせて、今度の買い取りについて、一体どのように対策を立ててこれらを解決してやろうとしておられるか、この点を一つお聞かせ下さい。
  75. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 われわれといたしましては、福岡県における、特に筑豊地区を中心とする公共事業といったもので、一体どれだけの人間が吸収できる見込みか、また今まで吸収したかということを各省ごとに御検討願いまして、そして少くとも今回の百万トンの買い上げに見合う分というものは、一応これで十分に吸収できる自信ありという確信のもとに各省から出していただきましたものを集計して、法案提出の裏づけとしたわけでございます。たとえば先ほど先生お話にございました川崎線にいたしましても、三十三年度は四十名使っているというふうにわれわれは聞いております。四十名使っておりますが、今度の国鉄の方からの連絡では、三十四年度では九十六名程度使う、大体百名近く使うつもりだということで、こまかな数字になりますが、川崎線では五十六名三十三年よりはふえるというような計算を、一応いたしておるのであります。以下各地点ともそういったような格好で、各省からの二十三年度に吸収した人間、三十四年度に吸収する見込みの人間というものを総計いたしまして、大体今回の百万トンに見合う分は優に吸収できるという、それぞれの省の確答を得た上で、この法律を出すということをやったわけでございます。御承知でございましょうが、先ほども申し上げましたように百万トンの買い上げをいたしますが、そのうち六十万トンというものはすでに申し込みをしてきているわけでございます。これは早く法律ができないかということで、それを待って、どうにか一応営業を続けているといったような格好はやっておりますが、これらの炭鉱につきましては、放置しておきました場合には、結局買い上げなくても、あるいはつぶれざるを得ないということになるのではないかということが心配されるものが多々あるわけでございまして、われわれといたしましては、つぶれるというよりは、これは計画的にむしろ事業団買い上げるということの方が、地方の鉱害処理の問題にいたしましても、あるいはそこから発生する失業者につきましても、全然賃金未払いのままで踏み倒されるといったようなことなしに、一応未払い賃金も代弁されるといったようなことから見て、どうも今の石炭事情から見てつぶれざるを得ないというようなところにまで追い込まれているという炭鉱につきましては、この際事業団買い上げてやるということの方が、より事態の収拾はうまく行くのではないかということをあわせ考えまして、各省の事業別予算というもので吸収できる人数というものは、大体満足し得る状態になったというところで、この法案を御審議願っているわけでございます。
  76. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 局長は、ほうっておけばつぶれるから買い上げて救済してやるのだという恩恵的な点で、この失業問題をごまかしてしまおうとされるようであるが、なるほど業者の方は買い上げられればそれで借金も払える。あるいはあと片づけもするということになろうが、しかし労働者の方は全く働く場所を失ってしまうのである。これは明日から生活に困るわけである。そこでやはり明日から生活のできるようにするということが、労働対策として私は重要だと思うのです。ただつぶれる、業者が困っておるから、買い上げ申請してきたからこれを買ってやる、そうすると業者の救済になるじゃないか、業者の問題はそれで解決できるかもしれぬが、労働者はたった一カ月分くらいの離職金をもらって、それで一体あと仕事はなかなかないということになったらどうします。このことをもっと真剣に考えてもらわなければならぬ。それから今、川崎線で三十三年度に四十人の労働者を使ったということですが、あの大きな工事に四百人というならともかくも、四十人とは何です。これは使ったうちに入りませんよ。あの大工事に対して四十人。そこで私はやはり国鉄の関係建設省関係、一つの国家機関のそういう事業についてはやはり通産省労働省と話し合いをして、あるいは建設省と話し合いをして、とにかく炭鉱から出てきた失業者を優先的に使わなければならないぞというくらいの誠意のある努力は、やはりしてやるべきだと思う。ただ文書交換をした、それでもう努力はしたのだというにしては、あまりに深刻であると思う。だからやはりもっと責任を持ってこの労働者の就労の問題についてはやってもらわなければ、これは納得できません。  そこで、今度の百万トンの買い上げについて、それぞれ働かすと言われておるが、場所と工事と、それから出てくるものに従って、順次どういうふうに当てはめていくかという数字を一つ出して下さい。
  77. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体千名ばかりの人間が、一体どこに吸収されるかというお話のようでございますが、まず築豊関係公共事業というもので三十三年度は六百四十二名吸収いたしておりますが、それを三十四年度は八百十八名ということで百七十六名ふやす……。(伊藤(卯)委員「工事はどこどこの何をやるのです。ただ公共事業なんて抽象的なことを言ったってわけがわからない。」と呼ぶ)これはたとえば一番金額的にも大きいのは、遠賀川の改修といったようなもの、あれにつきましても昨年は実際に吸収したのが百名ちょっとだと思いますが、来年度は全体で三百名くらいとりたいというようなことで、この詳細につきましては一応資料で提出させていただきたいと思います。  それから、なお各省大体の地区はそういうふうになっておりますが、さらに詳細な地区別というものについては、あるいは若干の変動が今後あるかもわかりませんが、一応資料で提出させていただきたいと思います。
  78. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私が先ほどお尋ねした、国鉄関係なり建設省なりそれから公共事業、いわゆる国家機関等においてその離職者を就労させるということについて、優先的に使わなければその工事をやらせないというぐらいに、各役所との間、あるいは役所から請負人との関係などに、通産省として責任を持ってやるということは、どうです。
  79. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は私は深刻に考えて、この提案をいたします前に運輸大臣、農林大臣、建設大臣とよく話しまして、地域におきましても筑豊炭田の近くで収容する、しかもそれはどうしても今回整理した人間を優先的に採用するということを条件としてやってくれということを、十分に打ち合せた結果——これは折衝に相当の時日がかかったのでありますが、今日この数字が出たわけであります。この前の二十九年のときも、私は経済審議庁長官をしておりまして、あの川崎線の問題につきましては、特に石橋通産大臣、それから三木運輸大臣との間にいろいろいきさつがありまして、三木運輸大臣は、これは石炭合理化のためにやるのならば別の予算を組め、こういうふうなことをやかましく言った結果、あの川崎線は鉄道の普通の予算でない、つまり別の予算を大蔵省からとったわけでありますから、当然あちらには石炭失業者が吸収されていると私は思っておったわけでありますが、先ほど申し上げましたような結果になったわけであります。今回は私はこれは特に強く要望しておるわけでありまして、各省におきましても、通産省関係つまり石炭合理化によって出たところの失業者は優先的にとるということは、はっきり申し上げておるわけでありますから、さよう御承知願いとうございます。
  80. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今高碕大臣は、川崎線の場合には買い取り炭鉱から出てくる離職者のために促進さしたのであるから、特に予算もとってやったとおっしゃるが、それだけ努力をされて炭鉱から出てきた失業者を、四十人とは何ですか。二万人から出て、福岡県だけでも一万二、三千出ていますよ。それだけ予算をとってやるためにやられたといって、四十人とは何です。大臣が予算をとられたのは大いに多とするが、そこにあなたの目的に沿うように就労さした人間は四十人、ことしは今局長の説明によると九十人という。それじゃ予算をとってやったって、現実にあなたのお考え通りに生きていかぬじゃありませんか。
  81. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど大臣からも申し上げたのでございますが、あの新線の建設を始めて、そして炭鉱労務者を採用しようといったときには、むしろ炭鉱の方が景気が上向きまして、ほとんど申し込んでこなかったというふうに、私ども聞いているわけでございます。それが三十一年、三年の好景気には、御承知のように全国で二万人の炭鉱労務者が逆にふえているわけでございまして、失業者が当然出ると思って予算を準備したところ逆に二万人ふえた、ほとんど職業安定所にも来なかったということで、実はわれわれ、労働省の方からはどうも石炭はせっかく手を広げておったのに来ないじゃないかというような、むしろ文句を受けたようなことすらあったわけでございます。たまたま三十三年度はそういう事情で問題にぶつかっておる、こういうことでございます。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 全く、コンニャク問答という話があるが、それ以上ですよ。まあこういうことを政府側と論争したところで、これは全くのれんに腕押しというか、コンニャク問答みたいなもので、明らかに解決点にはならぬのですが、これが明らかにならぬと、この法律はなかなか通りませんぞ。そこでその点についても大いに意見がありますが、私はそれを省くことにします。  この買いつぶした炭鉱からの離職者の離職手当の問題ですが、家族を抱えて、借金も払わなければならぬ、どっかに行くといえば、荷作りをして、家族を連れていかなければならぬ、あるいは他県に職を探しに行く、あるいは郷里にでも帰るというのでは、炭鉱労働者の一カ月分の金では動けません。やはりみずからも他県に行って職を探すとか、郷里に帰って農業でもやるとかいうのなら、もう少しこの手当が出なければならないのだが、結局何の希望もなく、また目当てもなく、動くに動かれぬというので、廃墟になった炭鉱の社宅の中に悲惨な状態で動けないでおる。そして帰するところは生活保護家庭に落ち込んでいくというのが関の山なんです。局長、買い取った炭鉱の跡へ今度行ってごらんなさい、それは深刻ですから。従って買い取り炭鉱離職者に、君たちも一つ他県に行って、何か自分の目当てのあるところに行って職を探してくれ、その旅費もある、それから家族を抱えて転居もできる、こういうふうにするためには、今の炭鉱労働者の低い賃金の一カ月分では、これは動けません。大臣どう思いますか。わずか一万円足らずや二万円そこそこの金で、自分の職を探しに行くだけも精一ぱいで、あと家族を連れていくことはできない。こういうことですから、やはりもう少しこの離職手当というものを増額して、みずからも職を探しに行く余裕を与えてやる。これはもう過去三年間に二万人近く出た失業者の実績から見て、あまりにも深刻さが明らかになっているのですから、こういうことについてもっと考えなければならぬと思うが、離職手当の増額問題について、今度はそういう点においては相当考えていますか、どうです。
  83. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御指摘のように、ただいまは離職金として大体一カ月分というものを支給しておりますが、今後はこの一カ月分の離職金のほかに、今先生御指摘のように、他県に働きに行くといったような場合にはさらに一カ月程度の金を、それは名目はいわゆる帰郷旅費という格好になりますか、移転旅費という格好になりますか、名目はいずれにいたしましても、さらに一カ月程度プラスして支給するというような方向でやりたいというふうに考えております。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は離職者の働く場所というものは、国が予算さえつければ、幾らでも炭鉱地区にあると思います。たとえば北九州の一例を私は申し上げるのであるが、大臣も御存じのように常磐炭鉱に低品位炭による火力発電を起しました。これは初めの予期以上の成果を上げております。そこでこの成果にかんがみて、今度北九州の方にも、この低品位炭による火力発電を作ろうという計画が進められております。だから、こういうものはやはり離職者失業対策の上から見ても、それからまた炭鉱界の不況を打開してやる立場から見ても、きわめてこれは重要でかつ緊急なことであると思うので、こういう点において、大臣は相当関心を持って、積極的に、これは一年でも早く、それらの工事が進められるように努力すべきであると思うが、こういう点、買い取り炭鉱離職者の問題と炭界不況の問題を打開するために、そういう点について大臣どうお考えですか。
  85. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 北九州における低品位炭の利用につきましては、これは失業問題を離れても重要な問題と存じまして、これは九州電力会社が一方やりますと同時に、場合によっては電源開発会社をしてこれをやらしめる、こういうふうなことで今計画を進めておるわけであります。従いまして、それができますれば、こちらの方に失業者を注入するということもできますが、そういうことよりも、やはり何としてもこの際、あの失業者を吸収するには、政府事業である建設省公共事業、あるいは道路公団、あるいは農林省の干拓とか治山だとか造林関係、あるいは通産省といたしましては、工業用水の問題とかそれから鉱害の復旧、こういうふうな問題の方に、これを優先的に持っていくということをやってもらわなければ、これはとても、将来のことをあまり依存できないわけでありますから、差しあたりの問題といたしましては今回、これを北九州における公共事業の方に優先的に持っていくということを強く今度は主張して、実行に移していきたい、こう存じておるわけでありますが、もちろん伊藤委員のおっしゃったような工合に、将来の北九州における低品位炭の利用ということは、並行的にやる考えであります。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その事業、工事について三、四点、私が考えております点を、時間の関係もありますから一緒に申し上げて、そしてこれに対する責任のある具体的な答弁を願いたいと思うのですが、たとえば国鉄の鉄道建設においても、地元側から、ぜひやらなければならぬ、たとえば篠栗線というか、こういうものももう何年か前から強く陳情されております。あるいはその他炭田地区においての国鉄の鉄道建設の問題もあります。こういうものをやはり繰り上げてやらすというか、そういうところに就労の場所を作ってやろうとするなら、これは通産大臣が運輸大などと話し合いをしてやってもらえば、私は相当促進するのじゃないかという気がいたします。  それから、鉱害の復旧工事の点はこれはもうわれわれが長年にわたって同じようなことを繰り返し繰り返し言っておることですが、農地の復旧なり家屋の復旧なり道路、河川の修理復旧なり、こういう工事は、私はおそらくは何百億円の仕事を緊急にやらなければならぬものがあると思う。これは単に失業者のために働き場所を作ってやるというのではなく、あるいは国家としては、干拓工事をやって食糧増産をはかろうというほど、この食糧国策は重要な問題とされておる。そうすると、農地の復旧というのはそういう意味において非常に一挙両得というように役立つものがある。それから河川の修理にしても、これらをやらなければ、せっかく農地を復旧したけれども、川床が高くなって、水が流れないから、これで困るという問題題もある。これはそこに佐藤鉱害課長がおられるから一番御存じで、局長にも十分その話はしてあるものと思うし、また大臣も御存じだと思うのですが、この買い取り炭鉱地区内に、どうしても国策としてやらなければならぬ緊急なそういう復旧工事が、何百億円というほどあると思う。しかもこの中には、鉱業権者が行方不明なものがあり、鉱業権者はわかっておるけれども、無資格になっておって負担はできない、これは国でやらなければならぬというところから、法律の一部を改正して、国がやるようになっている。だから、こういうのについて予算をつけてやるならばもうきわめて身近に働き場所はたくさんあるのです。ところが、鉱害復旧においては三十三年度、三十四年度と、それは二階から目薬程度ふえておるというにすぎない。そこで、今度、この離職者を就労さすために、それから食糧増産をするために、農地の復旧、家屋、道路、河川、こういうものをするために、一体どのくらい今度の百万トン買い取りに関して必要な予算を裏づけされておるのか。予算をつけてなかったら、これはもうてんで問題にならぬ。そこで、一体こういう復旧工事に対してどれだけの予算を裏づけして、それから整理された炭鉱のきわめて近くに、その工事をやる——この工事をやれといったって、二時間も三時間もかかって行かなければならぬようなところでは、これはなかなか行けといったって実際上行けないので、そこで買いつぶした炭鉱の近くに河川工事も修理もある、農地の復旧もある、あるいはその他の工事場所もたくさんあるわけですから、そういう機動性のある働き場所というのを作ってやるということについて、どのようにお考えになっておるかという点が一つ。  それから、福岡県だけでも、あのボ夕山と称するピラミッドみたいなものが何千とありますが、あれが雨風のたびごとに流れ出してくるので、河川は埋まる、美田はそのどろ水のために埋まってくるということで、非常な損害を受けておるため、ボタ山を地すべり法案の中に入れて防止し、災害の復旧をするということになっている。だから、もうこれらの法律がちゃんとできておるのであるから、これらに対しての手当というものは当然やるべきなんです。これをやればまた相当の働き場所もあるし、これも単に失業者を働かすばかりじゃなくて、国策としてやらなければならぬという緊急な工事、事業なんです。こういうことについて一体どういうような対策を立てて、今度の百万トン買い取りの離職者の諸君を、こういうところにも当てようとしておられるのか、この点もあわせて伺いたい。  それから、これはもう数年前から言い続けてきたことだが、一般炭による完全ガス化の事業、これはドイツでもソビエトでも非常に成功してきておるようです。そこで、特にこの炭鉱というのは、御存じのようにガスはほとんどないといっていい。だから、こういう地区に、一般炭による完全ガス化の事業というものが起されるということになれば、これは石炭の問題を解決するためにも、また失業者を働かすという問題についても、非常に緊急な重要なことだと私は思うわけです。こういう点について大臣は一体どういうようにお考えになっておるか。だから、やろうとすれば、今申し上げたように、もう身近に国としてやらなければならぬ重要な緊急な事業、工事があるのです。従って予算の裏づけがありさえすればこれはできるのです。従って今度の百万トン買い取りについてどれだけの予算を増額してどういう緊急な工事をやろうとしておられるか。これはこの買い取りから出てくる離職者の問題を解決するためにあわせて緊急な問題でありますから、この点については一つ十分責任のある具体的なその計画なり考えをお聞かせ願いたい。
  87. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まず篠栗線の問題は、国鉄の調査線に決定したと承知しておりますので、運輸大臣お話いたしまして、これは優先的にとってもらうということにいたしていきたいと思っております。  それから失業者の吸収は、やはり身近の方から解決することが大事だ、こう存じまして、今回の予算におきましても鉱害復旧費を八億二千万円とっているわけなんでございます。特にこれはこの福岡県に多くとりまして、ほかの方を全部福岡の方に回すということにいたしたわけであります。こういうふうなつまり炭鉱の整理等もしなければならぬという考えから、この約一億六百万円近くを特に福岡の方にとったわけでありますが、これでもとても足りない、これではようやく九百六十人しか吸収できないわけでありますから、どうしてもこの予算は皆様方の御尽力によりまして、来年度はもっと十分にとっていきたい、こういうふうに考えるわけでございます。これにやはり重点を置いていきたい、失業対策といたしましては鉱害復旧というものに重点を置いていきたい、こういう方向で進めたいと存じております。  それから同時に、今一般炭の問題について、完全ガス化の問題のお話がございましたが、これは私は非常に大事なことと存じまして、一般炭の新用途の開拓ということを、今度の石炭合理化のためには必要だということを感じまして、石炭局長の方にその研究を命じておるわけなんであります。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今私ちょっと聞き漏らしましたが、八億二千万ですか。
  89. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 八億二千三百万円です。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは三十四年度に作られた五億三千万円のほかに新たに八億円ですか。
  91. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 鉱害復旧につきましては御承知のように三十三年の見通しが大体九億九千二百万、これは全国でございます。それが三十四年度は一応十一億三百万ということで、全体で一億一千百万程度ふえたわけでございます。今年度から新たに名古屋地区の亜炭というものの鉱害、これは最近被害がしょっちゅう起っておりますので新しく対象に加えられまして、大体その方に千五百万円程度、今年度三十四年度には予定いたしております。そういう事情にございますので、これから千五百万円引きますと、増加分は大体一億足らずという合計になるわけでございますが、この全体で亜炭を別にいたしますと、全体で九千六百万円ふえたというのに対して、ほかの地域、これは継続事業その他でやはりどうしても三十四年度にやらざるを得ないといったようなもの等もございますので、非常に切りにくいわけでございますが、むしろほかのところは若干押えまして、福岡県は一億六百万昨年よりもふやして八億二千三百万にした、従いまして昨年度に比べましてふえた増加分は、全部福岡県というふうに重点的に使用するということによりまして、全体で九百六十人の石炭からの離職者を吸収したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この十一億というのは、民間と国家予算とを分けるとどうなりますか。
  93. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 このうち五億三千四百万が国であります。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 五億三千四百万というなら、今度の三十四年度に組まれた予算そのままじゃございませんか。
  95. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この十一億というものは、今度の三十四年度の事業量でございます。三十四年度の事業量が十一億三百万、それに対する政府の補助というものは五億三千四百万、昨年は全体が九億九千二百万で、政府の補助が五億ちょっとだったと思いますが、大体三千万ばかり昨年より政府補助金としてはふえているという格好であります。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この五億三千四百万というものは当初予算に組まれたものであって、百万トン買い取りの問題というものは、これはこの中に入っておらぬのじゃありませんか。百万トン買い取りが出て失業者が七千なり幾らふえてくるということになれば、それだけ工事量をふやさなければならぬのであるから、従って五億三千四百万にプラス国家が何億か出すということでなければ、七千人の失業者を就労さすところのものが出てこぬじゃないか。そんな予算の裏づけのない失業対策をやろうというのですか。
  97. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど冒頭に申し上げたのでありますが、大体百万トン買い上げまして全国で出る失業者が七千五百人程度、その中で大体福岡地区は多く見て五千人、こういうふうに考えております。これは現在までにわかっております約六十万トン分に相当するもので、福岡に二千三百人おりますので、残りの四十万トンのうちの大部分が福岡に集中するというふうに考えまして、大体五千人くらいが今度の百万トン買い上げ措置で福岡で離職するのではないか。このうち労働省計算で、大体二割程度人間というものを、政府関係事業というもので見なければいけない、そういう担当省の意見等を十分勘案いたしまして、そうして三十四年度の予算というもの、これは一応総ワク的に大体十一億ということで、まだ詳細な配分ということは必ずしもできておらないわけでございますが、大体鉱害関係へ八億二千三百万やる、そのほか各省で四十五億というトータルの事業量を七十九億までふやすという予算措置が可能である、そうすれば大体年間を通じて千百人程度人間が昨年よりもよけいに吸収できるということで、この法案の御審議をお願いしておるわけでございます。われわれといたしましてはこの鉱害復旧だけでなしに、ほかの各省のいろいろな事業をあわせて見ます際には、少くとも今年度、この百万トンで発生いたします失業者というものについては、数字的に十分な裏づけになるし、また先ほど申し上げましたように、現実にこの百万トンから出てくる方は、これはむしろ主力が再来年になると思われますので、それまでの期間におきましては、現に滞留している方々の吸収ということも効果的な力をいたすのではないかというふうに確信をしておるわけでございます。
  98. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも局長が答弁されているのは話が回りくどくばかり言っておられるが、もっと率直に一つ答弁して下さい。私の言っているのは、この五億三千四百万は、三十四年度の鉱害復旧費の国庫の負担分、それは百万トンを買い取って七千人失業者の出る以前のものである。そこで今度百万トンを買い取って七千人の失業者が漸次出てくる。それから今なお過去の三百三十万トンのうちの失業者もたくさん残っておる。それから今申し込みの分がまだあるから、これも漸次出てくる。合せて百万トンの分も出てくるのであるから、従って五億三千四百万だけであるならば、百万トン買い取りの七千人の失業者の分がちっとも考慮されてないじゃないかというのです。それなれば、新しい工事、新しい働き場所ができないから、一体そういう人々をどこへどうして就労さすのか、こういうのです。だから三百三十万トンの分の残りがまだあるのです。その上に百万トンの分も出てくる。そうするのについては、新たな予算を何億かっけてもらわなければ、この吸収ができませんということを、はっきり言ったらどうですか。そうすれば、おそらくこれは大臣だって賛成だろうから、自民党の各位だって賛成にきまっていますよ。そうすれば国会においてもまた話し合いの上で、そういう予算等の問題については、立法機関のお互いが協力をして解決の道もあるわけです。あなた方だけではできない点もあろうから、そういう点を率直に言われたらどうです。そうすれば法案を通すについて、これこれのものを裏づけしなければ法律を通しても、あとにまた問題が残るから、そこで法案を通すためには、これだけの予算をつけなければならぬということが当委員会にでも出てくれば、あなた方が相当不安とされている問題は解決するじゃありませんか。それを率直に言ってみなさい、回りくどく言わないで……。
  99. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この法律がいよいよ国会に出されましたのは、確かに時期的には予算が国会に提出されたあとという格好になっておりますが、われわれ通産省といたしましては、とにかくこの百万トンという形でやるかどうかは別といたしまして、三十三年に比して三十四年は相当の失業者が出ざるを得ないであろうというようなことも考慮して、昨年よりも一億の予算をとにかくふやすという交渉をしていただいたようなわけでございます。もちろんこれだけでわれわれは十分だとは毛頭思っておりません。ただ念のために申しますと、一応現在おります滞留者、それもひっくるめ、今度出てくる百万トンというものもひっくるめて、労働省計算していただきますと、大体七千六百名程度人間が要対策者ということになるわけでございまして、この七千六百名に対しましては、各省の現在北九州に組んでございます予算を施行すると、大体吸収できるということになっておりますので、ここへ出したわけでございますけれども、今後さらに石炭不況が深刻になるというようなことから、これだけの予算では十分ではございませんので、われわれといたしましては、今先生からのお話もございましたが、足らぬ部分というようなものは、今後あらゆる機会を通じて、さらに追加して出していただくというような方法について努力したい、こういうふうに考えております。
  100. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 局長の答弁は、一億幾ら一億幾らと言っておるが、事実上において今度ふえたのは去年から比べると二千幾らか三千万じゃありませんか。それを一億幾らと言うのはどういうわけでしょうか。あなたは民間の分も加えてそう言うが、国の出し分は去年五億ちょっと、今度は五億三千四百万なんだ。国の予算がふえたのは二千五百万でしょう。それを一億幾ら一億幾らと言って、何かそういうことで全体を麻痺させるようなことをあなたは言ってはいかぬじゃないか。
  101. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 発言の方法がはなはだまずかったので訂正させていただきますが、もっぱら事業量で昨年と比較しておりましたので、一億ということを申し上げたのでございまして、国家予算ではお説の通り二千五、六百万程度しかふえておりません。これはわれわれとしてはなはだ残念なのでございまして、今後あらゆる機会に、もう少し増額するということについて努力していきたい、こう思っております。
  102. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 局長がかぶとを脱いだからこの程度にしておきます。あなたはそういうことですぐ答弁をごまかして、法案を通したら、あとは野となれ山となれというのではけしからぬと言っておるのだ。もっとはっきり言って、それでやれぬというなら、この法案についても、予算についても、国会に審議権があるのであるから、それはお互いの審議権の上において当然解決されてくる問題である。それを何かごまかして、この場さえのがれればよいということは許されません。従って大臣もお聞きの通り、そういう二千幾らの予算ではこれはどうすることもできぬのですから、大臣、この法案を通すに当って出てくる失業者の問題、前のも残っているのですから、そういうことについて、この法案を通すまでに大蔵大臣との間にも十分話し合いをされて、そうしてこの就労計画に伴って、どうしてもこの法案を成立さすために、これこれの予算は必要であるという上に立って折衝され、予算の裏づけをされる意思があるかどうか、この点一つ高碕大臣はっきりして下さい。
  103. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 本法案を提出いたした趣旨につきましては、北九州地区における公共事業に対する事業費はどれくらいあるか、その事業費によって失業者を吸収するということの計画を立てるにつきまして、これはすでに建設省農林省、運輸省とよく打ち合せました結果、ここに完全な数字ができたから本法案を提出したのでございますが、さらに今後出る失業者等につきましては、あらためて別に通産省関係といたしまして、鉱害復旧というものは非常に重大な問題と存じますから、これはこの次の予算につきましては、皆さんの御尽力によりまして、大蔵省と十分折衝して、もっとよけいとりたいと思っておりますが、今回この法案を通過さしていただきますにつきまして、現在の予算をこれで変更するということはなかなか困難だと存じますが、現在のところこの事業費で大体見当がつくわけでございますから、よろしく御援助願いたいと思います。
  104. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうもはっきりしないが、それじゃ大臣失業者の吸収に努力するというお考えですか。追加予算においてやられるということですが、これをあいまいにしておくから今の二万幾ら出たのも、依然として政府においてはさっき局長が言ったように、七千幾らがあらゆる機関で大体就労したと言っておるが、そうするとあとの一万三千人はどうしておるのですか。そういうことが残っているじゃありませんか。それから今度百万トン加わる、これが出てくるでしょう。漸次これらについては予算の追加でもして、そうして工事量をふやしてやりますということなら話はわかりますけれども、それらの点を明らかにしないで、ただ失業者を何とかそろばんの上ではじいて建設省と話し合いをするというだけじゃ——金をもらわない労働はないのですから、金をもらう労働なら予算がつかなければ工事はありません。ですからその点を、大臣失業者の出てくるに従って予算を追加して、工事量をふやして就労の点においては責任を持ちます、こういうことですか。もっとはっきりして下さい。
  105. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の計画を立てますにつきましては、北九州公共事業の全体の事業費というものをにらみ合せまして、その事業費からやればこれは優に吸収できる、こういう正確な数字が立ったものでありますから、ここにこの提案をしたわけであります。私は必ずしもこの計画を実行するために、追加予算をとらなければならぬとは感じておりません。しかしながら必要があれば、そのときに考えたいと存じます。
  106. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今のような答弁では私は非常に不満である、従ってその問題が明らかにならぬ限りは、われわれは簡単には了解できませんけれども、時間の関係で、きょうは一応私の質問を終っておきます。しかし不満であるから、まだやるかもしれません。     —————————————
  107. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 引き続き輸出品デザイン法案及び工場立地の調査等に関する法律案の両案を一括して議題として、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。板川正吾君。
  108. 板川正吾

    ○板川委員 私は輸出品デザイン法案について、三点ほど補足的な質問をいたしたいと存じます。  この特定貨物の品目でありますが、当面五品目を予定しておるとこの問答弁をされた。この五品目別になぜ輸出入取引法による共同行為、それから輸出入取引法の第二十八条による大臣の規制命令、こういう措置目的を果すことができないか、なぜ困難か、この理由を品目別に具体的に簡単に答弁を願いたい。時間もございませんから、簡単でけっこうであります。特にサラダ・ボール業界では特定貨物に指定される理由がないということで反対をしております。この点を局長はどう考えるか、また五品目以外に、次にどのような雑貨を指定することが予想されるか、この点について質問をいたします。
  109. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 なぜ輸出入取引法に基く協定でやれないか、こういう御質疑かと思うのでありますが、先般も御説明申し上げましたように、まず輸出入取引法に基く意匠協定によるのが最善の策であるということを申し上げたのでありますが、なおアウト・サイダーの規制をする場合におきましては、取引法の二十八条によりましてアウト・サイダー規制命令を出すという道ももちろん考えられる。ただ、しかしながら、輸出入取引法による場合は、いずれもまず第一の条件といたしまして、業者間の協定というものができなければならぬわけでありまして、協定ができて初めて輸出入取引法二十八条によるアウト・サイダー規制命令という順序になるわけであります。ところが、先般も申し上げましたこの五品目につきましては、業者の協定ができにくいということなんであります。その理由につきましても、一般論を申し上げたのでありまするが、一言に申し上げますと、メーカーと、それから輸出業者によりまして、デザイン問題に対する関心が若干違うのであります。メーカーは比較的関心が強い、輸出業者は関心が薄いのであります。また業種によりまして、専門商社が少い。ちょっと少しずつ何でもやるという、いわゆる何でも屋が多いような業種につきましては、どうしてもデザイン問題に対する熱意が少いために協定が成立し得ないのであります。従来も繊維の一部、あるいは陶磁器のかなりの部分について取引法による協定ができておりますが、これらはいずれも専門商社が比較的多い。従いまして、メーカーと直結した専門商社が、メーカーの希望もあり、デザインに対する関心が非常に強いということで協定ができたのでありまするが、先般も申し上げました五品目については、いずれも専門商社が非常に少くて、何でも屋が扱っている比率が非常に多いために、雑貨輸出組合の中におきましてのそれぞれの商品部会におきまして、部会における協定の成立が非常に困難であるということで、取引法のべー「スによる意匠協定というものになかなか乗ってこないのであります。従いまして、そういう商品が今度の輸出品デザイン法案の特定貨物に最もふさわしい商品ではなかろうかということで提案申し上げたのであります。サラダ・ボールにつきましては、一般的な事情は今も申し上げた通りでありますが、比較的日本の特産品と申しますか、そういう特産品的な格好になっておりますので、外国の工業所有権とか、あいるはデザインの侵害という問題が比較的少く、国内の業者相互間の侵害の問題が多いということで、ほかの商品と若干事情が違うわけでありまするが、業界としては、今御指摘がありましたが、われわれの調査では、この品目指定に対しまして強い反対があるということは聞いておりません。大体希望するという意見が多いというふうに聞いておるのであります。  それからこの五品目以外にどういう品目を考えておるかということでありまするが、今のところはっきりとしたアイデアは実は持っておりません。
  110. 板川正吾

    ○板川委員 サラダ・ボール業界では反対していることはないという、ただいまの説明ですが、二月十五日の日本経済新聞の報ずるところによると「同法案の閣議提出前日に開いたサラダ・ボール業界の聴聞会では「現在の通産省の説明では絶体反対だ」と業界代表のケンマクはものすごかった、そのおもな反対理由を述べてみると次の通りだ。サラダボールを特定貨物に指定しなければならない理由がない。やりやすいからと天下り的に決められては困る」こういう反対の空気があるということを報道されておりますが、こういう事実はないんですか。
  111. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 本法案の制定につきましての反対ではなしに、この新法下におきまする運用について、若干の意見のあったことは事実なのであります。たとえばこの審査人がどういうふうなやり方をやるか、あるいはどういうところからその審査人が選ばれるかというふうな具体的な現実の運用の問題につきまして、懇談会の席上若干意見があったようであります。こういう法案の制定につきましては全然反対がなかったということであります。
  112. 板川正吾

    ○板川委員 特定貨物に指定されるということについてのサラダ・ボール業界では反対はない、こういうふうに解していいですか。
  113. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 反対であるという意思表示は全然ないようであります。
  114. 板川正吾

    ○板川委員 本法案に対する反対の声というものを聞きますと、結論からいえば金がかかってめんどうくさい、こういうことに尽きるようであります。この金がかかってめんどうくさいという批判に対して通産省としてはどういう考えをもって本案を立案したのか、一つお聞かせ願いたいのです。それからその金がかかるということでありますが、これは補助金が少いということ、それから認定手数料が高いこと等が、やっぱり議論になっておるようでありますが、こういう声に対してどういうお考えを持っておるか、明らかにしていただきたい。
  115. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 確かに何もやらないという場合に比べまして、若干の手続上のめんどうくさいことがあったり、費用もごくわずかではございますが、負担がかかるということはございますが、ただ先般も御説明申し上げましたように、今度の制度そのものが国際信用の維持と、輸出秩序の維持というような点から見ますると、ある程度やむを得ない最小限度のものと考えるのでありまして、その程度の犠牲はある程度忍んでいただかねばならぬじゃないかと思っております。しかしながら手続は非常に繁雑になる、時間がかかるというような点につきましてはこれは極力事務の簡素化、迅速化につきましては、認定機関を十分指導監督をいたしまして、さようなことのないように、輸出の機を失しないというふうに指導して参りたいと思っておりますし、従来からやっております例を見ましても、そういうような事例もあまり起っていないようでございます。また手数料の点につきましては、先般も御説明申し上げましたが、できるだけ安くやるということで、業種によって違いましょうが、千分の一くらいの程度を考えておるのでありまして、これくらいならば、そう重い負担を課したことには相ならぬかと思っております。それから補助金につきましては雑貨デザイン・センターにつきまして、三十四年度は、かなりの補助金を計上されておるのでございます。
  116. 板川正吾

    ○板川委員 もう一つお伺いしたいことは、認定機関となる雑貨意匠センターでは、この業務をやる上について登録の審査会を当然設けると思う。登録業務の認定をするこの登録審査会が公正に運営できるかどうかということは、この法案運営上重要なことであろうと思うのであります。現在私ども調査によりますると、工業所有権によって意匠法、実用新案法による登録手続をすると、したとたんに大体類似な模造品がすぐ出る。要するにデザインを盗用されておるそうであります。登録をしたら、これはもう盗用されるものと思ってよろしい、こういうのが業界の常識になっておるそうでありますが、この登録審査会がそういうことのないような、果して公正、確実な運営をされ得る見通しがあるかどうか、その点について一つ伺います。
  117. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 この登録審査会につきましては、いずれ省令、政令によりまして、こまかく審査人の資格等をきめるわけでございますが、根本の問題は意匠法等によりますと、登録の申請をしましてから決定までに、最短でも三カ月くらいかかるというようなことで、その間第三者が盗用をするという問題が起ってくるのかと思うのでありますが、今度のわれわれの新法による場合におきましては、大体数日、われわれが今理想といたしておりますのは、登録の申請があってから決定まで三日、四日でこぎつけるというように考えておりますので、そういう問題はないのではないかというように考えております。
  118. 板川正吾

    ○板川委員 最後に一つ。これは大臣が久しぶりにおいでになりましたから大臣にお伺いしたいのですが、雑貨の輸出は、輸出の総体の一割近くを占めておりまして、非常に重要な輸出品目だろうと思うのであります。そうしてこの雑貨は、主として零細な中小企業者の手によって作られておる。将来も中小企業の振興の上からも雑貨の輸出という点については、通産省として真剣な対策をしていただきたいと思うわけでありますが、大臣としてこの雑貨輸出に対する所信を、この際承わりまして私の質問を終りたいと存じます。
  119. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 雑貨を製造する人たちは、主として中小産業特に零細企業の方が多いわけであります。これは日本の輸出商品として外国に出ます上において、その日本の力というものは外国よりもよほど強いわけでありますから、この中小企業者の力をもっと強くして、そうして雑貨の輸出を振興するということは中小企業に対する対策としても、また輸出振興の上におきましても、日本として最も重要なる点だと思いまして、通産省といたしましては十分この方面には今後力を注いで行きたいと思います。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に本法案について一言お伺いいたしたいと思いますが、本法によって申請をする。同時に意匠法によって申請を出しました場合、まず本法の方が早くきまるわけなんですが、先ほどのお話のように、意匠法だったら二、三カ月かかる。本法の方で認定がなされた。ところが二、三カ月後で意匠法の場合に他の模倣であったというようなことになった場合、その場合にはこちらの最初やった、本法によってやった認定はどうなるのですか。あるいは逆に、今度こちらの本法の方では同時に出したが、本法の方ではだめだと言われた。ところが意匠法の方ではこれが通ったということになれば、これによって輸出が機会を押えられたということになります。それらにおける損害等の問題についてどうお考えですつか。
  121. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 同時に特許庁への方の登録と、それからいわゆる認定機関への登録と同時にやった場合の問題でありますが、このデザイン法の登録には、登録を受けて認定もされて輸出した。ところがあとで特許庁の方ではそれが新しい意匠ではないということで登録を受けられなかった、却下された。この場合はもしほかの意匠権の侵害をしておるということでありますれば、本法による登録が間違っておったということで取り消しの対象にもちろんなるわけでございますが、そういうことは実際問題として、十分特許庁の方と特定貨物につきましては意匠の登録があるかどうかということを、こちらに連絡をしておりますから、そういう事態は実際として起らないのではないか、そういうふうに考えておるのであります。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 実際の場合は起らないだろうというものが、かりに一件でもあった場合に問題になると思うのです。何か一つ考案した、それによって輸出をするために、早く認定を受けるため本法による認定をした、一方永久にこれを工業権化せんがために特許庁の方へ意匠法によって申請した、こういう場合があり得ると思う。この法律の目的は、輸出するためにともかく拙速をたっとぶ、こういうことが趣旨だろうと思う。そういうことでなかったらこの法律の意義はないと思う。一方特許庁の方はできるだけ綿密にそういうことのないように調べていく、だがこれは時間がかかる、輸出というような特殊なものであるから、本法によってむしろ拙速でもそれをたっとぶのだ、そういうことが本法の趣旨であろうと思うのです。そうなった場合に、本法では許可になった、だが特許庁の方で綿密に調べた場合に、それは他人の意匠をある程度取り入れたものであるということがあり得ると思う。そんなときに、もし一方で本法によって認定はなされておったが、特許庁の方で却下せられたというような場合は、当然効力を失うだろうと思うのでありますが、その効力は遡及するのかどうかということです。それから今度は逆にあなたの方で認定の誤まりか何か知らないが、ともかくこれは模倣だと思って認定をしなかった。ところが特許庁の方でよく調べて、いやこれは値するということで認可した、こういうような場合に、それは本人から言うならば、輸出の機会を失ったということになると思うのです。そういうような場合における損害ということに対してはどういうことになるのか、それを聞いているのです。そういうことはあり得ないと思うという勘だけではどうもおかしいと思う。あり得ることは考えられるのですから……。
  123. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 これは非常にいろいろな問題を一緒に御質問になっておりますので、まぜて一つお答えをいたします。要するに問題、デザイン法による認定機関の類似判断、それから特許庁の類似判断との相違から起ってくる問題ではないかと思うのであります。たとえば甲が意匠権を有する意匠と類似の意匠を乙が申請をしましても、認定機関では許可をしないから意匠権侵害の問題は生じないと思うのでありますが、ただその類似の判断に、人間のやることでありまするので幅があろうかと思うのであります。そこで特許庁であれば類似と判断したであろう意匠を、万一認定機関がこれは類似でない非類似である、こう判断して認定して輸出をさせる場合もあろうかと思うのであります。この場合は、その意匠権は国内法でございますので、輸出してしまえば取締りの対象に実はならないのでありますが、しかし輸出といえども国内にそれを製造したり販売したりした業者があったはずであります。従ってその限りにおいては意匠権の侵害という問題が起ってきますので、それは意匠権の遂行といいますか、権利の実施はあくまでも追求をし得るかと思うのであります。従いまして甲は乙の意匠権の侵害ということで、裁判にも訴えて、救済措置を求め得るわけでありますが、ただ認定機関のやった行為につきましては、別段権利を設定したということでも何でもないわけでありまして、かりに認定機関が認定をしなくても輸出業者としますれば、そういうことをやろうとすれば可能であるわけでありますから、認定機関のやった行為がすぐ損害賠償の対象になる、こういう性格のものではないわけでありまして、だれの権利も認定機関としては侵害をしておらぬわけであります。従ってこれはただ単なる行政措置の問題でありますので、権利侵害というような問題が起らない、従って損害賠償の責任は認定機関は負わない、こういうふうに解釈いたしております。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 輸出だから向うへ出たものはかまわぬ。しかし国内でこれを作る者が甲乙丙とある。甲が初めてそれを考えて、この法律による認定、登録の申請をする。そうして同じ甲が特許庁の方へ意匠法による工業所有権の申請をした。ところが本法による方は早く認定が下るわけです。登録が済むわけです。それで輸出した。その後今度特許庁の方で十分調べた結果、他人の意匠権侵害であった、こういうことで却下された場合に、この登録の効果はどういうことになるのですか。こういうことなんです。
  125. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 今ちょっとその論点がはっきりしないのでありますが、同一人が両方に申請した場合でありまして、特許庁におきまして登録を受けられなかった。従ってこれは少くとも乙か丙かわからぬが、だれかがもうすでに登録をしておるのだ。従ってそれは受けられなかった。(田中(武)委員「いや、それだけじゃない、公知の事実であった場合もそうだよ。他人が所有権を持っておるということが公知の事実であった場合でも、意匠法で登録はできぬよ。」と呼ぶ)認定機関が登録した場合には、これは有効でありまして、もしもその甲なら甲が認定機関の認定を受けて輸出した。それが第三者の権利の侵害にもしなっておれば、第三者は当然意匠権なら意匠権ということで、その権利の行使はできるはずであります。従ってそれはそれとして別段何ら差しつかえがないということで、権利の遂行をやればいいわけであります。その認定機関としては独自の行政判断でそれを登録をし、認定をいたすわけでありまして、何ら損害賠償の責任はありません。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 私が一つのこういう意匠を考えた。そこで本法に基いてこの登録申請をした。同時に意匠法に基いて特許庁へ意匠登録を申請した。ところが本法に基くところのものは早く認定が下るから、これの認定を受けて輸出をした。その後二、三カ月後になって、これが他人の権利侵害であった場合はこの人から損害賠償を私に言ってくるでしょう。しかしこれは公知の事実であったということなら、これも却下になるわけです。そういうような場合、あるいは他人の権利を侵害した——たとえば松尾という人の権利を侵害した場合に、その人がその事実を知らなければ、損害賠償をやらない、そういうような場合に、この登録を受けた私のこの法律によるところの登録は有効か無効か、こう言っておるのですよ。
  127. 松平忠久

    松平委員 議事進行。——これは一つの特許庁とよく答弁の打ち合せをしてきて下さい。こんなものをここでもってぐずぐずやっておったって、時間ばかりとってしょうがない。そこで、明日までに特許庁との間によく答弁の打ち合せをして、はっきりわかるようにしてもらいたい。
  128. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 本日は、これにて散会いたします。明日は午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開きます。     午後二時二十一分散会