運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-05 第31回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月五日(木曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 加藤 鐐造君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    加藤 高藏君       鹿野 彦吉君    木倉和一郎君       坂田 英一君    始関 伊平君       中井 一夫君    野田 武夫君       野原 正勝君    板川 正吾君       今村  等君    内海  清君       大矢 省三君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    鈴木  一君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       水谷長三郎君  出席政府委員         中小企業庁長官 岩武 照彦君  委員外出席者         参  考  人         (青山学院大学         教授)     向井 鹿松君         参  考  人         (全日本小売商         団体連盟理事         長)      高橋 貞治君         参  考  人         (五大市小売市         場総連合会会         長)      坪上 和一君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会専務         理事)     中林 貞男君         参  考  人         (全国商店連盟         専務理事)   三浦 正義君         参  考  人         (日本石炭協会         専務理事)   佐久  洋君         参  考  人         (大阪府商店街         協同組合連合会         会長)     田中 鋳三君         参  考  人         (全日本農民組         合連合会常任委         員)      沼田 政次君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 二月四日  石油資源開発五箇年計画に基く国家投資増額等  に関する陳情書外十二件  (第二五一号)  同(第二九九号)  石油資源開発株式会社所正安資金全額国家投  資に関する陳情書  (第二五二号)  小売商業特別措置法案成立促進に関する陳情  書  (第二五三号)  繊維不況対策等に関する陳情書外二件  (第二五四号)  私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法  律の一部改正反対に関する陳情書  (第二五五号)  昭和三十四年度中小企業関係予算拡大等に関す  る陳情書外一件  (第二七一号)  同  (第三二  〇号)  日中貿易再開に関する陳情書  (第二九八号)  日中貿易再開による漆輸入に関する陳情書  (第三〇〇号)  中小企業金融公庫等に対する財政投融資増額に  関する陳情書(  第三一九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小売商業特別措置法案内閣提出第二一号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第一三号)      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  小売商業特別措置法案及び商業調整法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、両法案につき参考人方々出席されておりますので、まず参考人方々より御意見を承わることといたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。この両法案は、今国会において当委員会審査しております諸法案の中においても、特に重要なる法案でありまして、審査に万全を期したいため、提出者質疑を行うばかりでなく、学識経験者並びに実務に携わっておられる方々の御意見をも伺うべく、本日御出席お願いいたした次第であります。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願いを申し上げます。ただ時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べいただきます時間は、大体お一人十五分程度にしていただきたいと存じます。なお、後刻委員からの質疑がございますが、その際に十分お答え下さいますようお願い申し上げます。念のために申し添えておきますが、規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさいます際は、委員長許可が必要でありますし、委員に対しまして質疑はできないことになっておりますから、あらかじめお含みおき願いたいと思います。  それでは、これから順次参考人の方方に御意見をお述べいただくことにいたします。青山学院大学教授向井鹿松君。
  3. 向井鹿松

    向井参考人 商業関係法案につきまして、意見を述べる機会をお与え下さいましたことに対しまして、委員長その他委員諸君に対して厚く御礼を申し上げたいと思います。ただいま聞きますと十五分に限られております。私、おとといから盛んに法案を読んでみましたが、非常に複雑して、頭の悪い関係か、どうも両法案の比較が非常にこんがらがっておりまして、各案につきまして一々その影響を話しておる時間がないと思いますけれども、私は非常に及ぶ影響が深刻だと思っております。時間がありません関係で、総論的なことを申し上げまして、あるいは何のお役にも立たないかもしれませんが、そういう観点から個々法案について見れば、自然に回答は出てくると存じております。もし時間がありましたれば、個々について意見を申し上げることといたしまして、最初全般論の、私の大きな気持を述べるだけにとどめたいと存じます。  まず第一に、私は十四才のときから商業学校に入りまして、何十年間終始この問題を扱っておりまして、商業特に小売商業に関しましては、心からの理解と同情を持っておるつもりであります。ことに、そういう気分的な問題じゃなくして、これから就職問題がだんだんやかましくなって参りますけれども、小売業界というものは、このふえにふえる人口に対して大きな職域を提供いたしますので、そういうような、真剣勝負でやらなければ自分が倒れるのだというような気持でやる職域、これは日本民族精神の今後の立場からいいまして、非常に大事な職域、しかも比較的小資本でできる、こういうものを開放しておくということは、社会経済全体の上から申しましても、またわれわれ民族の将来から申しましても、ぜひなくてはならないことだと思います。特に生産というものは、これから自動式機械ができますと、人は比較的には要らなくなります。商業特に小売商業だけは、口数に比例して、と申すと語弊がありますが、まず大体取引口数に比例して仕事がふえて参ります。機械によってたくさん作る、従来人が作っておったのを大機械作り出すようになると、比較的人は要りません。がしかし、小売商業では一人に一つずつ売るのに一人を要すれば、二人に一つずつ売れば、二倍の時間なり、または人が必要となります。一つ取引に人が一人ずつかかっておらなければなりませんので、あり余る人口を収容する職域としてはまことに重大なもので、われわれが保護防衛しなければならぬものであると深く信じております。そういう意味合いにおきまして、外国では、小売商業というものを一つの倫理問題として、気の毒な小さい人たちのためにというような意味で問題が取り扱われております。けれども、それと同時に、日本経済の将来に対してはなはだ大切なものだ、この問題につきましては、私はだれにも熱意において劣らぬつもりであります。ただ問題は、それではどうすれば、われわれの将来に対して大切なとにろを温存すると申しますか、保護育成すると申しますか、それができるか、問題はその手段方法にあるのではないかと存じております。ところが、これから私は皆様にとってはあきたらない議論を申し上げますけれども、私はそういうような熱意を持っております。  ただ現在の考え方に対して同調できかねる点があるのであります。それは以前よく商権擁護と申しておりましたが、このごろはそういうことを言う人はないと思います。商業はおれたちの権利だ、もうそういうことを言う人はないと思いますが、それでも現にこの法案の中の一部にありますように、業務分野確立あるいは適正な流通秩序の維持という言葉が使われておりますし、業務分野確立ということは、おそらく生産、卸、小売消費者順序を経よ、卸は卸、製造製造小売小売消費者消費者、人の領分に進出するな、各自それぞれ独自の立場があるので、この順序で物を流せ、そういうことを言うのではないと思いますが、文字の表面を見ますと、いかにもそういう印象を与えておるのであります。私はこの点に非常な不満を感じておりますので、文字の上では業務分野確立、適正な流通秩序——政府案を見ますと、ちょっとこれがやわらかになっていまして、非常に円熟した言葉が使われて、正常な秩序を阻害する、まことに老巧と申しますか、まことに婉曲な、差しさわりのないような言葉が使われておりますけれども、ほかの法案にははっきりと流通秩序ということが書いてあります。これがありますと、消費者に接触する部面というものは小売商のなわ張りなんだ、独占なんだ、だれもここへは入り込んではならないんだというようなことを言っておるのではないと思いますけれども、そういうような感じを与えておるのであります。私は、ここはおれの分野だ、これはけっこうなんです。しかし、人は入っちゃいけないというようななわを張ることは、これは一応考え直していただきたい、こう考えておるのであります。  御承知のように経済生きものでありまして、時代とともに違って参ります。私、老人でありますが、私たち子供の時分には、小売商の半分以上は生産者でありまして、生産する小売でありました。げた屋さんがそうであります。くつ屋さんがそうであります。今でもとうふ屋さんその他が残っております。お菓子屋さんは、浅草へ参りましてもまだ小売屋さんがお菓子を作っております。これは昔は手工業者はみな同時に小売をやっておりまして、大量生産をしておらなかったのであります。それが大量生産世の中になって一カ所に生産が集中される。消費者というものがばらまかれておりまして、生産の機構が違い、消費者の状態が違って参りますと、生産者が直接売るというようなわけには参りません。そこで小売ができ、また小売消費者生産者に卸、こういうようにして、おそらく明治の終りごろから大正の初めにかけまして、機械生産物式のものにつきましては、大体におきまして、おそらくそうであろうと思いまする流通秩序とでも申しますか、製造、卸、小売、それから消費者という順序で、まず大体において変ってきたのであります。  けれども、今日になってみますと、事情はまた著しく違ってきております。と申しますのは、こういうことを言うのはどうかと思いますが、以前はいわゆる売手市場時代で、物は作りさえすればよろしいのだ、作った物はみなほかの人に分業でやってもらうのだ、それで売れるのだ、われわれは作りさえすれば、問屋さんがすぐ持っていってくれるのだ、これはもうおまかせしよう、これでよかったのでありますけれども、大量生産になって、みなが競争しなければ売れなくなると、よろしく願いますと言って、卸、小売に頼んでおきましても、なかなか自分のところの品物だけを売ってはくれません。これは製造業者から見れば、まことに残念なことだろうと思いますが、自分品物はいいのだから売りたいと思いましても、問屋なり小売業者は、一番売れる品物利益になる品物を扱いますから、どの生産者が作った物がいいからといって、その品物を売ってくれません。言いかえれば、この道を通っていったのでは、おれの製造ができない、おれの品物は売ることができない、売れない、こうなって参りますと、大きな生産設備をすれば、どうしても何とか考えてみずから消費者に売りつける、あるいは小売商と手を組んで一緒にやる、あるいは独自にやる、いろいろな手を考えるだろうと思います。そうせざるを得ない羽目になっておる。言いかえれば、買手市場時代になってしまったのであります。小売業者、卸業者は決してある生産者品物を売る義務はないのであります。ところが、製造者となれば、どうしても売らなければならないのであります。一方売ってくれないとすれば、どうしても何とかみずから方法をとらなければなりません。いわゆるこの道を通っていったのでは——この道は制度みたいになっておりませんので、独自の売り方を考えなければならぬ。これも私はここ十五年、二十年の間における新しい一つの配給の方法の変革だと思っております。  それから私がもう一つ申し上げたいのは、これも商業者方々に対してははなはだお気の毒ですが、商業者はわれわれ消費者のために存在するので、消費者小売商のために存在するのではないのであります。もし私たちが付近から買えば千円で買わなければならぬ物を、他から八百五十円で買うことができるとするならば、それをお前いけないぞといってとめられることは、われわれとしては非常に苦痛なのであります。私たちはもちろんなるべく楽な生活をしたい。これは不法な行為、不正な競争によってやるならいけませんけれども、小売業が小さくても、大きく取り扱って、そうしてサービス、その他を切り捨ててやれば、アメリカでは二割、三割といいますけれども、まあ一割、一割二分くらいなマージンで売ることは必ずしも困難ではない。一日に十売るか、一日に一万売るかということによってマージンは違って参ります。ですから、そういうような合理的な方法によって直接消費者に接触する道があるとするならば、私は、これじゃいけないというにとは、どうかと思うのです。ただサービスも同じ、やり方も同じ、しかも、それにもかかわらず、大きな資本の力で排除しようとする、これは私は断固として排撃しなければならぬと思っております。問題は、公正な競争、正当な経済秩序によっていっておるのか、あるいは、あそこは製造をやっておるのだ、あの会社は直接接触しなくても何でもないのだ、ただ金があり余るから、ああいうことを手遊びでやっておるのだというようなことがあるとするならば、私は絶対排撃しなければならぬと思う。そういうようなのは幾らもあります。世の中が違って参りますから——これはおもしろい話ですけれども、一九三〇年から四〇年まではディスカウントハウスというものは非常に不公正な方法だといって排撃されたのでありますが、今ではあれは正当なものだといわれているのであります。初めのうちは、どうしてもそういうような非難を受けます。  ただ問題は、その一つ一つについてどう判断するかということが非常にむずかしい問題であります。非常に錯綜しておりまして、消費者利害があり、製造業者利害があり、卸商利害があり、小売商利害があります。それを一方的に、これもいかぬ、あれもいかぬと、こう法律で裁断されるということは、私は非常に影響が大きいと考えます。死んでおるタイは三枚にきれいに分けられます。心臓を取り出すこともできましょう。けれども、生きているものの心臓を取り出すことは——これは心臓は取り出せますが、ほかのものが参ってしまいます。ですから、一刀両断的に法律でおやりにならないで、そこはよほどゆとりを持たしてもらわないと、非常な危険が伴うのであります。時間がありませんから、一例だけ申しますと、たとえば社会党案には生協消費者を切ることができるようにしてありますが、政府案では調停をさそうというように、非常にやんわりと盛っておられます。これは一例なんでありますが、法律できっちりと切っていくか、一カ所へやんわりと持っていって、そこで事情を聞いてやるか、そういうところに、私はものの取り扱いの妙味が出てくるのではないかと思います。  それから、ごく一例として申し上げてみたいのは、購買会及び生協員外販売の問題であります。購買会の方は問題はないのでありますが、生協の場合はわれわれ消費者のためなんであります。先ほど言いました千円の物を八百五十円で買えるとすれば——というのは、ディスカウントハウスというようなことを言ったのでありますが、そういうような購買会、これは政府としては、消費者生活を楽にする——私は消費組合運動ができるかどうか断言はいたしませんが、私は生協はいいと思います。けれども、ほんとうにそういう精神があって消費者のためにやろうとするならば、政府はこれを助長すべきであって、押えつけるべきではないと思う。そうして大いに拡張するようにしてやりたい。それには、これは問題でありますが、員外販売一つの手と考える人もありましょう。また実際問題として、出てくる品物商売なんでありまして、犯罪でないのでありますから、これはいかぬと言われたら、民間の商売というものはできるものではないと思います。それでは、これからどうして消費組合消費者のために発展するようにしてやるか、しかも小売商利益を害しないというような線をどこに引くか。下手なお医者さんに下手にメスを入れられたのではたまらないと思います。そういう意味において、あまりこまかいところとか、あるいは断然と法律でおやりになるということは、実際の問題が非常に錯綜しているだけに、簡単に切りますと、筋を切ってしまって、足が動かなくなるかもしれません。消費者は高いものを買わなければならなくなるかもしれません。  時間がありませんので、個々のことは残念ながら申し上げられませんが、そういう意味合いにおきまして、政府案社会党案には相違が相当はっきりしておる。一方は両断的で、一方はやんわりといっておる。まだこまかい点にメスを入れようとしている点があります。私はそういうような考え方を持っておりますが、経済というものは生きものであって、あまりに大きなメスをふるって、やれば犯罪扱いということはどうかと考えられますので、それだけ申し上げまして、総論的なことを終ります。
  4. 長谷川四郎

  5. 高橋貞治

    高橋参考人 ただいま委員長から御紹介いただきました全日本小売商団体連盟高橋貞治でございます。通常、全日商運と略称いたすものでありますが、全日本小売商団体連盟は、昭和三十年に、当時問題となっておりました百貨店法制定運動の直接推進母体百貨店対策小売商連盟全国連合会を発展解消しまして結成されたものでございます。  幸い先生方の御理解と御尽力をいただきまして、百貨店法昭和三十一年に成立いたしまして、戦後ただ一つ小売商保護法として期待されたわけでございます。しかしながら、百貨店法はその内容が、私ども小売商要望いたしましたものと比べまして、百貨店規制の諸規定が具体的に示されず、おそらく脱法的行為の横行するであろうことが予見されたのでありまして、今日起きております百貨店法強化改正の声はやがて全国的に大きなものとなり、全日商連といたしましても、再び先生方にその改正お願い申し上げなければならない時期がすでに参っておるのではないかと考える次第でございます。  この問題は本日の課題ではございませんので、あらためてお願い申し上げさせていただきますが、百貨店法制定されました直後、全日商連といたしましては、第一に百貨店法の厳格な実施を見守る仕事と同時に、小売商事業活動を圧迫している外的条件の排除のため、第二段階といたしまして、小売商振興法制定お願いしようという考えを、全国業界代表者が集まりまして相談したわけでございます。中小企業庁等からもいろいろ御助言をちょうだいいたすことができまして、その当時内閣諮問機関として設置されました中小企業振興審議会に、「小売商安定振興に関する当面の要望」と題します小売商当面の問題解決策につきまして、全日商連より要望書提出したのでございますが、その要望の中の小売商振興法制定に関する章の内容が、ほぼ全面的に審議会の受け入れるところとなり、答申に盛り込まれたのでございます。これが内閣提出小売商業特別措置法案出発点でございまして、自来全日商連として、百貨店法強化改正とともに、振興法の実現につき、全国小売商の輿望をになってお願いを続けてきたのであります。  昨年来請願等をいたしまして、特別措置法商業調整法に対しまして意見を申し上げて参りましたところは、すべて三十一年に振興審議会に御意見を申し上げましたものと同じ立場に立つものであり、いわゆる振興法に関する小売商項目要望は、これにその後の小売業界の事態の推移により新しく出て参りました問題若干を付加したものなのであります。八項目要望と申しますのは、すでに先生方御承知下さいます通りでありますが、第一に小売商登録制実施すること、第二に大メーカー小売直売行為制限禁止、第三に卸問屋小売兼営制限禁止すること、第四に公私設小売市場許可制、第五に大資本によるマーケットチェーン経営制限禁止、第六は購買会規制、第七に消費生活協同組合行き過ぎ是正、そうして第八に流通段階における諸紛争、なかんずく小売商事業活動に関する紛争解決のため、都道府県知事あっせん権を認めると同時に、話し合いの機関として、商業調整審議会の設置であります。  去る昭和三十三年十一月十五日付をもちまして関係方面提出いたしました「小売商振興法案小売商業特別措置法案商業調整法案)に対する要望書」と題する要望書の中にお願い申し上げた通り、私ども小売商は、本日私が意見を求められております措置法案商業調整法案、いずれの法案につきましても、その内容に不十分さを感じ、小売商が現在提起いたしております問題解決のために万全の備えがあるものとは残念ながら申し上げ得ないのでございます。小売商業特別措置法案商業調整法案のいずれにおきましても、内容として盛り込まれておりませんでした登録制実施と大資本によるマーケットチェーン経営規制は、小売商にとりましてまことに重大な問題なのであります。特にマーケットチェーンの問題は、百貨店法による増新設規制規定強化という百貨店脱法行為等をふさぐ側面からの規制だけではなくて、大資本による小型連鎖店経営そのもの規制の照明を当てる必要がどうしてもあるのであります。  ここで、いわゆるスーパーマーケット問題について付言させていただくならば、私ども小売商が特に法律による規制お願い申し上げておりますのは、決してスーパーマーケットそのものではないということであります。スーパーマーケットをどのように定義づけるか、種々議論がなされておりますが、これはもともとアメリカにおける小売形態の一発展形式であり、これを日本のそれに当てはめること自体あまり意味のないところでありまして、セルフサービス方式等スーパーマーケット経営方式をいろいろと日本の実情に合せ取り上げつつあるのが日本の現状であります。問題は、スーパー方式そのものセルフサービスそのものの採用に問題があるのではなしに、大資本がそうしたアメリカ経験を十二分に活用しつつ、小型連鎖店マーケットチェーン経営という方法を使って、本格的に小売業界進出を開始したというところにあるのであります。百貨店という、いわば商業界巨砲大艦主義時代がターミナル・デパート方式に変り、今日では大資本小売業界進出方式が、マーケットチェーン方式に変りつつあるということであります。百貨店法同様、立法趣旨はよいが、時期がおそかったということのないよう、この点についての小売商の叫びに耳を傾けていただきたいと存ずる次第であります。  メーカー、卸の小売行為につきましては、小売商要望は、これが全面禁止ではなく、問題の多い地域または業種の限定された範囲でお願いしているのでありまして、不況下の今日、流通格段階での事業活動は下へ下へとしわを寄せて、みずからの立ち直りをはかる努力が行われており、ますます私どもは規制の必要を感じている次第でございます。  小売市場につきましては、大阪並びに神戸の代表から詳しく申し述べることと存じまするが、全日商連も、これらの方々の主張とともに、その全面的かつ直接的許可制の御採用を願う次第です。  次に、生協購買会問題でございますが、ここで私どもの基本的立場をぜひとも申し上げさせていただきたいと存じます。私どもは、世上いわれる生協購買会問題という二者を一からげにした扱いには賛成いたしておりません。両者は似て非なるもの、本質的にその性格、質が異なるものであると存じます。従いまして、両者をはっきり区別し、それぞれ異なる態度をもって問題解決に当りたいと存じます。購買会は、いかに現実の問題として勤労者の皆さんの実質賃金の一部となっていようとも、これは経常政策の一環として行われているものであり、無人格、無税で全く野放し状態であります。これに対しましては、人格を持たせ、税を課し、独立採算制をとらせていただくことがぜひ必要であります。また生協につきましては、これが撲滅論を唱えるものでは決してありません。税についても、小売商の事業協同組合と同様の扱いであり、その理念自体に対しましては、小売商は挑戦するものではありません。しかし、小売商生協に負けずに消費者の身になり、サービスに徹するには、あまりにも今の小売商は税が重い等の悩み、苦しみがあることを忘れないでいただきたいと存じます。生協がその理念を離れて商業主義に堕するとき、小売商業界における生協の役割は、大資本マーケット小売商に与える影響のそれと何ら変るところはないのでありまして、私ども小売商は、生協行き過ぎ是正を求めておるのであります点を御理解さるべきと存じます。この点の小売商の主張は、ただいま申しました範囲を出ないものであり、むしろ控え目な主張であると申すことができると存じます。  さて、最後に商業調整審議会制度でございますが、これは中小企業振興審議会の答申にも盛られました主張であり、特別措置法の中にこの制度が御採用にならなかったことは残念であります。当事者同士の話し合ということは、いつの場合にも必要であり、ただ野放しということではなく、法律の裏づけを持った公けの土俵で話し合うということは、民主主義のあり方からしても全く異論のないところと思っていたのであります。  大へんにぶしつけでございますが、不満足な気持をそのまま申させていただきました。どのような法律制定されようとも、八項目内容そのものは、小売商にとりまして当面どうしても解決しなければならない間近な問題でありまして、この問題解決のためには、それぞれの問題ごとに小売商の努力、運動が続くということにつきましては、小売商の決意と窮状を御賢察賜わりたいと存じます。  この法案も国会に提出されましてからすでにまる二年、足かけ三年も経ており、八項目の問題点はそれぞれますます深刻の度を加えております。私どもは、できます限りより充実した法律を求めるものでありますが、同時に、今国会で必ず日の目を見るということも、また必須の課題として、法律の早期成立を念願するものであります。昨年春の国会で、次期国会で必ず通そうという委員会の御決議をいただき、特別国会は法案提出されないまま臨時国会も見過ごされ、今日に至っております。何とぞ今国会に、将来の全面的解決の足がかりとしても、必ず法律制定が実現されますよう、ひたすらお願い申し上げる次第でございます。以上であります。
  6. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、五大市小売市場総連合会会長坪上和一君。
  7. 坪上和一

    ○坪上参考人 私は、ただいま御指名にあずかりました五大市の小売市場総連合会会長の坪上でございます。国会並びに政府の皆様方に小売商の擁護育成につき格段の御配慮をいただき、まことにありがたく、小売市場の問題に関しまして、私より直接切実なる意見をお聞き下さいますことを、早く厚く御礼を申し上げます。  私は、まず重要な数点につきまして意見を申し上げたいと思うのでございますが、その説明はあとに回しまして、まず政府提出小売商業特別措置法案は、生活協同組合、購買会並びに生産、卸業者の行き過ぎ規制と、小売市場の乱没防止をはからんとせられるものであります。実に私ども永年の待望の法案でありますから、今国会におきましては、ぜがひでも成立させていただきたいのでございます。ただ小売市場につきましては必ず御修正をお願いいたしたいのでございます。すなわち政府原案は、市場の開設者と出店者間の契約を規制の対象としてあります。これによって開設者の搾取を押え、出店者の利益を擁護せんとするものでありますが、これでは小売市場の乱設を防止することができず、かえって乱設を容易にするおそれがありますから、市場の規制につきましては、商業調整法案のごとく、市場自体の新設を規制することを内容とする許可制に御決定をお願いいたすものであります。  そして、これには三つの理由がございます。その一つは、小売市場にはきわめて大きい公共性があるということであります。すなわち御承知のごとく、市場は広大な建物の中に多数の商店舗が隣接密集しておりますので、ともに毎日ほぼ一定の時間に数千または万をこえる多数の大衆が自由に来集し、雑踏をきわめるところでありまして、その混雑は実に百貨店、映画劇場以上のものがあります。その実情は、独立せる一軒々々の小売商店に一人々々の顧客が出入りする状態とは全然異なっております。ここに公共的な特殊性が大きく存在することは当然でありまして、公共の安全、公衆の衛生等の見地から、市場建物の堅牢性、火災その他の災害に対する設備、通風採光、上下水道の設備、大小便及び塵芥の処理はもとより、伝染病に対する用意に至るまで、いわゆる公共の福祉に関係するところきわめて甚大でありますので、市場の建設は元来個人の自由に放任すべきものではないのでございます。  その二は、市場についてもわが国中小企業に共通せる過当競争の弊害がもはや看過するにとができない実情にあることであります。すなわち、既存の市場における出店者が、家族店員総出で朝から夜まで働き通すことによりましてようやくよき品を安く売ることができ、これによってその市場の好評を博し、多数の顧客を吸収することができるようになりますと、突然その市場の近所に市場を新築し、労せずして他人の努力勉励の結果を収奪せんとするのが、そもそも市場乱設問題の真相であります。その結果、市場の出店者は二倍になりますが、顧客の数は距離等の関係よりしまして決してにわかに増加するものではなく、依然としてもとの通りでありますから、結局各出店者の売り上げは半減して共倒れとなり、ひいては苦しまぎれに不正の営業をなさざるを得ざるに至り、ついには顧客たる一般大衆に迷惑をかける事態も発生いたすのでありまして、その原因は一に過当競争にあって、その結果は公共の福祉をも害するに至るわけであります。  しこうしてこの際特にお聞きをいただきたい一事がございます。すなわち生鮮食料品店その他平均二十五店舗からなる一つの市場の小売店が、全体としてその経営が成り立つためには、その周囲に一定の住民人口、少くとも一万一千人の存在を必要とするということでありまりして、この事実はすでに五大市の調査によって確認をせられているのであります。しこうして終戦前においては、五大市ではその一市場当りの人口はおおむね一万二、三千人でありましたところ、現在におきましては九千ないし五千に減少しているのでありまして、その原因は住民が減少したためではなく、市場が乱設せられたためであることは、また五大市の調査報告によりまして明瞭でございます。これは同時に格小売店舗当りの顧客の減少、従って売り上げの減少、各商店経営の困難を示すものでありまして、この点は先はど諸先生のお手元に差し上げました統計によりましても御推察が願えると存ずるのであります。  その三は、政府原案によれば、その許可は有名無実にひとしく、狡猾な市場開設者は容易に脱法行為によって市場の開設ができるということであります。すなわち政府原案によれば、市場の開設はその市場内に生魚、青果、生肉の三営業商店のそろうて存在するときに限り開設の許可を必要とするも、しからざる場合は許可を要せない、しかし開設後右三営業商店がそろうて存在するに至らば、このときあらためて許可を必要とすると承わりました。これでは開設当初には右三営業の出店者をそろえないことによって無許可にて市場を開設し、後日に至りこれをそろえることは容易なことでありますから、このときにあらためて許可を受けねばならぬと言われましても、そのときには、たとい開設者と出店者との間の契約その他に不当があって不許可となりましても、すでに開設された市場を閉鎖することは断じてできません。何ゆえならば、元来市場開設者の不当な行動によって何も知らぬ出店者の営業ができなくなるというがごときことは、筋の通らないことであるのみならず、市場の閉鎖は多数小売商人の営業とその生活をも奪うことになるからであります。従って、結局は政府原案によっては刻下の急務たる市場の乱設とその弊害とを防止、救済するにとはできないと信ずるのであります。従いまして、以上申し上げましたごとく、市場の公共性に対応し、かつその弊害と過当競争による出店小売商の共倒れを防止してその生活の安定を期するためには、市場の新設による乱立自体を規制するほかには道はないと信ずるのでございます。  しこうしてこれが規制方法につきましては、終戦前府県取締令において定められていたごとく、また浴場の新設の許可について昭和二十三年七月制定せられた公衆浴場法のごとく、市場の新設の許可には既存市場より五町以上の間隔を必要とするよう規定せられることが、現状におきましては最も適当であると信ずるのであります。  これにつきまして、政府提出小売商業特別措置法案によりますと、小売市場の開設者が小売営業をなす出店者に居舗を貸与する場合の貸借契約を対象とし、その内容について規制せんとするに過ぎないようでありますが、これでは、第一に、今日普通に行われている建売業者による建設や、出店者の共同出資等の方法による市場建設の場合等、最も規制されねばならない場合が除外されておるのみならず、第二には、規制される契約の内容は、開設者の搾取を抑制して出店者の利益を擁護せんとするにありますから、それでは出店者の開店営業を容易ならしめ、従って市場の新設を刺激し、かえって乱設を促す結果となり、乱設の防止を目的とする本案元来の趣旨に反する事態を生ずることは明らかであります。よって、この点はぜひとも御修正下され、商業調整法案のごとくに御決定をお願いいたす次第でございます。  なお、政府原案によりますれば、市場新設の許可権は知事が持つことになっておりますが、日本中にて市場の存在いたしますところは、主として大阪、京都、名古屋、横浜及び神戸の五大都市でありまして、これらの大都市はその他の中小都市とは異なったる特別の地位を有しておりますのみならず、市場については古くから最も深い理解を持ち、その市民生活に直接せる使命の重要性を認めて、各市とも現に市場に対する専門の行政機構を設置し、常に市場の動向を研究し、かつ、その指導育成に努めておる次第でありますから、市場新設の許可権は、五大市に限り、その市長に持たせられることが行政の実際上最も適当であると信ずるのでございます。  なお、つけ加えて申し上げますが、最近急に非常な勢いで各地に開店をいたしつつあるスーパーマーケットは、全く市場同様のものでありまして、その大なるものは百貨店にもひとしい内容を有しており、付近小売商に対する圧迫は相当のものでありますので、過当競争を抑制する必要の現地より、これが規制につきましても至急御配慮をお願いいたしたいのであります。  終りに、私どもが長年待望いたしておりました小売商業特別措置法が一日もすみやかに成立いたしますとともに、市場新設の許可につきましては、調整法規定通りに御修正下さらんことを特にお願いいたしまして、私の陳述を終ります。
  8. 長谷川四郎

  9. 中林貞男

    ○中林参考人 私、ただいま御紹介を受けました日本生活協同組合連合会の中林と申します。貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。私は生活協同組合の立場から、きょうの問題について少しく意見を述べさせていただきまして、諸先生方の御賢察を得たいと思っている次第でございます。  まず、最初に出し上げておきたいと思いますが、今度の小売商業特別措置法という問題をめぐりまして、私たち生活協同組合の者と小売商人の方たちとの間に非常な対立がある、あるいはまた、通常、生活協同組合と小売商業というものは絶対に相いれないものだとかと、いろいろのことをいわれるわけでございますが、先ほど高橋さんがおっしゃいましたように、小売商人と生活協同組合は、どのようにして消費者のため、利用者のためになるかということで、激しい競争はいたしますけれども、私たちは、小売商人の人たち生活協同組合は絶対に相いれない対立物だという考えは毛頭持っておりません。私たちは、小売商人の方と生活協同組合は共存できるライバルであるというふうに考えております。むしろ小売商人の人たちと私たちは相携えて、先ほど高橋さんがおっしゃいましたように、今日の日本において流通秩序がなぜ乱れているか、なぜ小売商人が食えないのかという問題について真剣にお互いが取り組んで、問題の根本的な解決に向っていきたいというふうに考えているわけでございます。と申しますのは、先ほど小売商人を代表しておっしゃいました高橋さんが、小売商業団体としての八項目の要求というものがあるのだ、その八項目の要求が政府小売商業特別措置法の中で満たされていないという御不満を強くお訴えになりました。私たちは、やはり高橋さんがお訴えになりましたように、今日の商業界流通秩序を乱しているのは、百貨店その他大資本小売市場への進出、あるいはまた巨大なメーカーが直接販売網を掌握して小売の方に進出してきている、あるいはまた卸売が小売を兼営する、そういうところに基本的な問題があるのであって、それにメスを入れない限りは、絶対に小売商業は救われない、また今日の流通機構の問題は解決しないというふうに考えております。従って私たちは、もっと率直に申しますと、小売商業団体の人たちと率直にいろいろと話し合っております。そうして相ともにいろんな問題の解決をやろうということを言っております。先ほど高橋さんも、生協購買会とは違うんだ、生活協同組合を何でもかんでもいじめてしまえということは小売商業団体も考えてない、ということをはっきりおっしゃいましたが、私たちは事務当局の人あるいはまたまじめな商業団体の人たちとは、この問題をどうしていくかということについて、真剣に話し合っているということを申し上げておきたいと思います。  そういうような立場に立って考えますと、今度政府でお出しになっているところの小売商業特別措置法というのは、いろいろな点は高橋さんがお述べになりましたから私は簡単にしますが、たとえば百貨店法ができたが、百貨店法の脱法によって百貨店が、たとえば東横が東光ストアを出すとか、あるいはまた高島屋がユー・トップ・ストアというものを出すとかいうような問題なり、あるいはまたスーパーマーケットなり、あるいはフード・センター、そういうような問題は小売商人の問題じゃないんだという形で、それらの問題には目をおおって、そうして問題の根本的な解決をことさらに避けて、ただ小売商人同士の間だけで問題を解決するというような立場で、この問題をお考えになっているというところに一番大きな問題があり、さらに私は、小売商人と生活協同組合というものを、この法律によってことさらに対立させて、けんかさせる意図があるんじゃないだろうかということを非常に残念に思う次第でございます。そういうような点につきまして、国会の御先生方によく一つ御賢察をいただきたい。そうして私は、この小売商業特別措置法は、今日の政治の貧困なり、特に商業政策における貧困さというものを、ただ生活協同組合などにしわ寄せすることによって問題を糊塗している、というふうに断言せざるを得ないと考えるわけでございます。そういうような点につきましては、社会党の先生方は、商業調整法の問題には、かなりはっきりといろいろの見解をお取り入れになっているわけでございますので、商業調整法を中心にして、もっと私は今日の流通機構の問題を考えるようにしていただいたらどうだろうかという工合に考えるわけでございます。  特に生活協同組合の問題については、先ほど向井先生も、生活協同組合は消費者の自主的な組織だから、これは伸ばさなくちゃいけないということをおっしゃいましたが、私は一昨年ヨーロッパに行きまして、国際協同組合同盟の本部で、西ドイツのイギリスの進駐軍の経済最高顧問をしていた人が、現在国際協同組合同盟の常勤の役員をしているわけでございますが、そのワトキンズという人に会って、いろいろ話をしましたところが、ヨーロッパにおいては、独占資本の横暴というものをコントロールするために、保守党であろうと、労働党であろうと、生活協同組合を育成しているんだ、保守党の立場でも、生活協同組合というものを育成しなければ、独占資本の横暴をたしなめて、経済秩序というものを維持できないんだ。そのことを私が日本の実情を説明しましたときに、日本政府の人、特に保守党の方々にもっと生活協同組合の持っている意義というものを十分理解していただく必要があるんじゃないか、そうして、そのような消費者の組織を法律なり権力によって取り締るということは、ヨーロッパにおいてはヒトラーの時代にしかなかった、従ってそのことを保守党の先生方にも、よく生活協同組合の持つ役割を御了解願う必要があるんじゃないかということを、イギリスで言っておりまして、その後西ドイツ、フランスと各国回りましたが、同様なことを私は言われたのでございます。私はそのとき、こちらにお見えになっておりますが、社会党の水谷先生あるいは自民党の幹部の方にも、そのことを私の私信で実は向うからお訴えしたわけでございますが、そういうふうに生活協同組合の持っている役割というものを、もう少し日本においても真剣にお考えいただきたいということを、私は特にお願いいたしたいわけでございます。  そうしまして、生活協同組合の員外利用ということがよくいわれるのでございます。私たち日本生活協同組合連合会といたしましても、この問題については、私たちも員外利用ということはできるだけ自粛しなくちゃならないということで、私たち機関では、そういう立場でいろいろの指導方針というものを実は検討しているわけでございます。ところが、ただ皆様方に十分お聞き取りいただきたいと思いますことは、やはり事業機関でございますので、員外利用を絶対に取り締ろう、やめようと思っても、一日に一人や二人はどうしてもまぎれ込む人がある。たとえば東京大学の中にある生活協同組合は、模範的な員外利用の規制をやっている。これは東大の教職員が利用している組合でございますから、最も模範的に規制をやり、そうして員外者は利用してはいけないということをやっているわけでございますが、どうしても一人や二人目こぼしが出る。しかし、そういうことは、経済事業の場合においてはやむを得ないことじゃないだろうか。従って、農業協同組合においても、漁業協同組合においても、中小企業等協同組合においても、森林組合の協同組合においても、あらゆるそういう組合においては、むしろ法律で積極的に員外利用を二割ないし五割を認めて、そうしてそこをうまく実際的に指導していくというやり方をとっているわけでございます。従って私たちは、この際むしろ生活協同組合に、他の法律にあるところと同じく二割の員外利用を認めて、そうして私たちがルーズな形でやられる危険性がある点を何とかうまく指導していくようにやらしていただきたい。私たちが員外利用ということで一番困りますことは、たとえば北九州なり方々で私らが困りますのは、商人同士がけんかして、そうして一方の商人が生活協同組合という看板を簡単に掲げてやったりする事例が今まであったのであります。そうしてそういうような生活協同組合は、もう生活協同組合の精神も何も理解しないのですから、じゃかじゃかと員外利用をやる。しかしそれは、商業政策の一つの貧困というところからそういうような問題が起きてくるわけでございまして、従って私たちはこの二、三年来、そういう問題については非常にきびしく地方へ言っていっているわけでございます。従って、そういうような員外利用というものは、またいかがわしい組合というものは、だんだん今日できにくくなって参っているわけでございます。  ところが、一昨年でしたか、東京大学生液協同組合で、そのような員外利用の規制をやかましくやっているときに、たまたま税務署の方から、東大生協は員外利用をやってるじゃないかということを言われて、そんなにとはありませんということを学校当局も協同組合側も言った。しかし、やっている、そうして税務署の人が、おれが行って買ってきた。そういうような形で、組合員でない者が意識的にもぐり込んで、そして買ってきて、おれは員外者だけれども買ってきた、それだから、この組合は員外利用をやっているのだということで、税金の問題をからませようとしたのですけれども、そのことは、学校当局の証明また伝票その他もはっきりして、それは間違いであるということで、税務署の方がそれは悪かったという問題が、二、三年前にあったわけでございます。従って、やはり経済の実際の問題ということを無視して、ただ員外利用を締めさえすればいいという形でやるということになりますと、むしろ今のような弊害が私は出てくるというふうに考えるわけでございます。従って、員外の利用の問題につきましては、今申し上げましたような形で、私たちは員外利用はできるだけやらない、また協同組合の立場からは、生協の組合員のために私たちは作っているわけでございますから、私たちも員外利用は避けていきたいというふうに考えているわけでございますが、たまたま生活協同組合の組合員になりたいが、生協というものはどういうものかということを十分知りたいというような方もあるわけでございます。そういうのはウェーティング・メンバーといって、普通は準組合員、近く組合員になる人として、それは認めていくというのが外国のすべての例でございます。従って農協なり漁協なりその他では、そういう意味から員外利用というものを法律ではっきりと認めて、二割なり五割なりということになっているわけです。従って生活協同組合についても、私はむしろそういうようなことをお考えをいただきたいという工合に考えるわけでございます。  従って、そういうような点から、小売商業特別措置法の問題を少しく申し上げてみたいと思いますが、あの法律の中で、四条の二号に、組合員証を提示しない者には利用させてはいけないという言葉があるのでございます。ところが、生活協同組合は、御主人であろうと、奥さんであろうと、組合員としてその家族の者はみんな利用できることになっているわけでございます。従って、奥さんが日常のいろいろなものを買いものにいらっしゃるし、また御主人もいらっしゃる、子供さんも朝出しなに学用品などを買うということになっているわけでございます。ところが、組合員証を提示をした者でなければ利用させるにとができないということになりますと、家族全部にそれでは組合員証を出しておくのか。そうなりますと、組合員証の乱発ということが起きまして、むしろ私たちの正しい指導の面からいったら問題を起すのじゃないか。それからまた職域なりの組合におきましては、昼休みとかあるいは退庁時にたくさん殺到するわけです。従って昼休みとか退庁時においては、おつりを出したり、いろいろな品物を計算するのも大へんだ。このあたりは実情をごらんいただきましたならば、諸先生方に十分おわかりいただけると思うのでございますが、そういうような実態でございまして、従って昼休みとか退庁時に、一々組合員証を見せなければ品物を売ってはならないというようなことにしますと、職域なりの組合においては実際の仕事ができないという問題がまた起きて参るわけでございます。従って私たちは、員外利用をやらないという立場でわれわれは自主的にやって参るつもりでおりますし、またやっておりますので、そういうような点を一つお考えいただき、実情に沿わないような形で、組合員証を提示しなければならないというような点については、私らは絶対御承服申し上げるにとはできないというふうに考えているわけでございます。  それから四条の三項で、利用券を持っている者でなければ事業を利用させてはならないということになっているのでございますが、生活協同組合は原則として現金売りをやているわけでございます。中には、掛売りをその中に幾らかいろいろな必要上まぜているところもあるわけでございますが、しかし直接、現金で生活協同組合は自由に買いものができないというような形にこの法律でなるといたしますと、この点につきましては、日本銀行法の第四章の銀行券のところで、「日本銀行ハ銀行券ヲ発行ス前項ノ銀行券ハ公私一切ノ取引二無制限ニ適用ス」、いわゆる日本銀行の発行している日本銀行券は、日本国内において公私の取引において無制限に強制通用力を持っているわけでございます。私はそれらの点からいっても、この第四条の三項というものは非常に問題があるのではないか。私たち法律に詳しいいろいろな方に調べてもらっているわけでございますが、その点になりますと、これは日本銀行法との関係において非常に疑義がある、これは公けの問題に、これだけ取り上げて行政訴訟なりいろいろなことをしても十分成り立つのじゃないか、この点に非常に疑義があるということを私たち法律的にも伺っているわけでございます。  それからまた、生活協同組合は利用券を持たなければ事業を利用させてはならない。そうしまして、全部掛売りということになりますと、生活協同組合は品物の仕入れにそれだけ資金が要るということになります。ところが政府のこの案によりますと、ただ現金売りというものに対して規制を加えて、その資金の手当については何も考えていない。生活協同組合は、現在年間約三百億と私たちは見ておりますが、その生活協同組合の取引に、利用券を持っていなければ利用させてはならないということになりますと、資金の問題からいっても非常に問題があると思いますし、また生活協同組合の現金売りということは、これは国際的にも現金売りということでみんなやっているわけでございますし、私たちは労働者や家庭の一つ生活指導、いわゆるむだな浪費を省くという点からいっても、当然これは現金売りでいくのが望ましいというふうに考えているわけでございます。ところが、この法律によりますと、それらのところに私は非常に問題が出て参るという工合に考えるわけでございます。従って四条の三項というのも、私たちはこれは絶対に了解するわけにはいかないというふうに考えているわけでございます。  それから生活協同組合の員外利用ということが非常にいろいろといわれるわけで、また生活協同組合は小売商人の方たちに非常に圧迫を加えているということをいわれるのでございますけれども、皆様方も御存じかと思いますが、現在生活協同組合の全国の年間の売り上げというものは、小売全体の売り上げのほんの〇・九%、一%にも及んでいないのが日本生活協同組合の実情であるわけでございます。ところが、イギリスにおいては生活協同組合は小売全体の一三%、スエーデンでは一五%、フィンランドでは三三%という工合で、ヨーロッパ各国では、もっともっと政府もそれから保守党も革新党も、みんなで生活協同組合を育成していこうという立場でおいでになりますし、生活協同組合はそのような一つの発達をしているわけでございまして、日本の現状は、まだまだ生活協同組合は立ちおくれているという工合に私たちは考えますので、国会の諸先生方にもそれらのことをお考えいただきまして、生活協同組合を無理に押えるということよりも、この際生活協同組合を伸ばし、そうしてどのようにして流通秩序確立していくかということを積極的にお考えをいただけないだろうか。  それから生活協同組合の員外利用ということをやかましくいわれますので、私たち政府のいろんな数字によって、そして最近四年間の統計をとってみましたところが、員外利用といわれるのが八・四%である。員外利用は生協の売り上げのわずか八・四%にしか及んでいない。そしてまた生活協同組合がそんなに小売商人の方たちを圧迫しているかどうかということについて、もっと具体的に東京都における一番大きな生活協同組合であります石川島造船の生活協同組合について調べましたところが、昨年の十一月の石川島造船の給料の支払い総額が二億一千万であって、そのうち生活協同組合の十一月の売り上げは三千三百三十五万、石川島造船の払った給料のわずか一五%。それから十二月は年末手当などがありましたから、石川島造船の総支払いが六億二千万、それに対して年末十二月の生活協同組合の総売り上げは四千四百八十五万で、七・二%しか石川島造船ではやっていない。そうして石川島造船の労働者について、どういうところを利用しているかということを調べましたところ、これはむしろ生協立場で考えますと、非常に残念なことだと私らは考えるわけでございますが、石川島造船の従業員の最近三カ月におけるところの利用度を調べてみましたところが、給料に対して生活協同組合の利用度が九・九%、それからデパートで買いものをしたというのが二二%、そうして小売で買ったものが六八%、従って石川島造船の労働者も、やはり自分の近くの小売の店で品物を買うのが六八%もいる。生協で買ったのが九・九%だという具体的な私たちの調査による数字が出ているわけでございます。  従って、生活協同組合を規制しなければならない、規制しなければならないというような形ではなくて、小売商業振興ということを真剣に考える場合には、どうすることが最もいいのか。先ほど小売商業団体の方もおっしゃいましたような点などに、もっと国会の諸先生方に真剣にお考えをいただいて、そうして流通秩序確立をはかることが望ましいのではないだろうか。  そうして生活協同組合は、先生方にこの機会にお願いをしたいと思うのでございますが、政府はどれだけ生活協同組合の保護、育成、助長をやっているかといえば、ほとんどやられていない。四、五年前から生協に対する貸付金の制度がありますが、それも毎年削られて、三十四年度予算では、わずか八百万円、中小企業その他に対する補助なり助成のための予算なんというものは非常に莫大な金が出ているわけでございます。それと比較しましたならば、生協に対する政府の施策は日本においてはむしろ非常に立ちおくれている。そうして今度の小売商業特別措置法を見ますと、生活協同組合法では、他の一般の同種の事業を行う者との間において原則として機会均等が認められているわけでございますが、その生協法の十一条の機会均等の原則もこれによって侵される。そうして生活協同組合は、生活協同組合法という母法によって保護監督されているわけでございますから、やはり生活協同組合の問題は母法によって保護監督されていく、問題があれば生協法の中で考える。これは諸先生方はいろいろな事業と御関係になっていると思いますので、おわかりをいただけるかと思うのでございますが、役所が共管になるといろいろ不便なことがたくさんあるということは、実際のお仕事をやっておいでになる諸先生方には十分おわかりをいただけると思うのでございます。そういう点から考えまして、この法律通りますと、生活協同組合法という母法があるにかかわらず、今度小売商業特別措置法というものによって生活協同組合をしゃにむになわで縛ってしまおうということになるのではないだろうか。けさの日経を読みますと、昨日の小売商業特別措置法の審議において、員外利用の問題で、厚生省の社会局長と中小企業庁の長官との間に意見の食い違いがあったということが日本経済新聞に出ております。やはり共管になりますと、そういうような問題がありますし、また小売商業特別措置法政府が出すという形までにはいろんな無理があった。その無理なところが、昨日の政府の間の意見の食い違いにもなっているのであって、それについて、私が先ほどから申し上げました通り、また先ほど小売商業団体の方がおっしゃいましたように、いろいろの点からいって、今日の小売商業特別措置法というのは、流通秩序確立していく、小売商業振興という名を使っても、絶対にこれによって小売商人も救われるものではなく、むしろそれによって生活協同組合はがんじがらめにされ、せっかく小売商業団体の方と私たちとがいろいろと話し合って、経済生きものでございますから、われわれは自主的にどうやっていくかという話し合いをしている。それなのに、むしろ小売商人の人々と生活協同組合をけんかさせて、そうして肝心の大資本の問題があるところを目をおおってしまっているところに一番問題があると思いますので、現在出されております小売商業特別措置法については、われわれば絶対反対であります。国会におかれましては、商業調整法を中心にして、どうして商業秩序確立していくかということを一つ真剣に御検討をいただきたい。幾ら小売商業特別措置法のようなものができましても、生協法律によっていろいろと監督されておるわけでございますが、最近見ますと、いろいろな団体が物を売ったり、あるいはあっせんしたりして、流通秩序を乱すような行為がいろんな形で行われているわけです。そうしますと、法律で監督されている団体はいろいろ縛られるが、法律で監督されてない団体は、いろいろむちゃくちゃのことをやっても取り締まることができないというような形にもなって参りますので、そういうような点を国会の諸先生方に十分お考えをいただきまして、私たち立場を御賢察願いたいということを申し上げまして、私の公述を終えたいと思います。
  10. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で参考人方々の一応の意見の開陳は終りました。  次に質疑の通告がありますので順次これを許可いたします。ただし時間の都合がありますので、一人大体十分程度にやっていただかないと通告だけ間に合いませんので、あらかじめ御了承の上御質問を願います。中井一夫君。
  11. 中井一夫

    ○中井(一)委員 この質問の順序は、元来田中委員が冒頭にされるはずであったのが、特に私にお譲りいただきましたので感謝の意を表します。  私は主として小売市場の問題について伺うつもりで、おったのでありますが、ただいま中林生協専務理事の御公述を承わっている間に、中林さんは、生協問題が今日やかましくなったゆえんについて根本的な誤解を持っておられることを発見いたしました。それは生協のためにも、また日本小売商問題のためにも、さらに通産省、厚生省の行き方についても重大なる影響を及ぼすものと思いますから、中林さんの誤解を指摘いたしまして、かつ御所見を伺いたいと思います。  御公述の中には、わが国の生協小売商、一般流通の関係等につき、傾聴に値すべき御高見を承わりました。しかしながらそれらの御意見は、実は的をはずれているということを申し上げねばならぬのであります。なぜかならば、生協の活動を小売商側が抑える——言葉に従って言うと、無理に圧迫するというようにお考えになっておりますが、そんなことは断じてございません。お言葉の中にも生協の員外利用は、その自粛をやかましくいうていると申された。問題はそこにある。生協は一般小売商のごとく商売としておやりになるものではない。消費者のためではあるが、それは限られた組合組織の中においてのみなさるべきものであり、国家もその点を重視して税金を減免しその他、保養や、特典を与えておるというのが、問題の根本なんであります。商人は事業税その他税金攻勢で閉口しておる。また借金の金利が高い。いろいろな点においてあえぎあえぎやっておるというのが今日の実情でありますから、生協がもし員外にどんどんお売りになるなれば、国家から受ける保護や特典を御辞退になって、商人と同じに素っ裸の立場に立っておやりになるべきであります。それなら小売商人たちも、生協さんの員外進出は困るというような悲鳴はあげない、生協は多くの特典を国家から与えられていながら、しかもなお員外に商売をなさろうとする。これでは小売商はあたかもよろい、かぶとをつけたさむらいに対して素町人が無手で争うと同じようになってかなわぬから、どうぞ生協さん、お手やわらかに願いたいというのが、この問題の起っておる根本なのであります。願わくばこの点を誤解なさらぬよう、社会党の方も同じでありますが、保守党といわれるものにおきましても、生協の国民生活に対する重要性を忘れておるものでは断じてございません。生協にわかれては、もっと勉強をされて、そうして会員をみずから募って、会費をおとりになって、その会員のためによいものを安くお売りになるようにすべきである。このことはちゃんと生活協同組合法第九条に定めておる。すなわち「組合はその行う事業によって、その組合員及び会員に」一般の国民にとは書いてないです。「最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない。」と書いてある。何も小売商人がやかましく言うのではない。国家の国法がちゃんときめておる。それを守らずに商人たちと同じように一般大衆に対しても、どんどんとお売りになるから、小売商はそれではかなわぬ、それは法律違反だというのであります。私ども保守党の立場でありますが、社会党の方にも心あるものは、まことにその通りだと言うておられる。願わくばこの点をお忘れなく、われわれの言うところの根本はあなたが今ここでとうとうとお述べになった趣旨とは違う。これだけを申し上げて一応御所見を承わります。
  12. 中林貞男

    ○中林参考人 今中井先生から員外利用のことで御指摘を受けたのでございます。中井先生には私も神戸でお会いしたこともありますし、いろいろ生協のことで中井先生は御存じなのであります。私が申し上げましたことは、われわれはどんどん員外利用をやってもいいという考えは毛頭持っておりません。私も私たち日本生活協同組合連合会では、員外利用のようなものは好ましくないから、自粛していかなくちゃならないということを申し上げたわけでございます。ただその員外利用を押えるというために、この法律にあるようにがんじがらめにしてしまうということは、生きものを殺してしまうことになるということを申し上げたわけでございまして、私たちはむちゃくちゃに員外利用をやろうという考え方は毛頭持っておりません。また中小企業等協同組合、農協と、税金その他の点においては、私らは同じような待遇を受けてやっている。それから金融の面についても、生活協同組合は特別の金融機関政府によって与えられていない。そういう点については、小売商人の方たちと全く同じ立場に立っているので、同じ立場に立って私たちは私たち流通秩序確立をやって参りたい。従って員外利用の点は決してむちゃくちゃにやっているということが正しいんだということを、私は申し上げたわけでございませんので、よろしくお願いします。
  13. 中井一夫

    ○中井(一)委員 私の意見と同じ意見をお持ちになることを発見いたしました。(笑声)まことに御同慶にたえません。ただ、現に起きました有名な問題は、米子市における生協行き過ぎに対する小売商人の倒産、恐怖という問題がございますから、将来ともそのお心持を堅持せられて、どうぞあまりお手ごわいことをなさらぬようにお願いをいたします。  さて小売市場総連合会長の坪上さんにお伺いいたします。御承知と思いますが、百貨店法がしかれるにとがわかりますと、百貨店法がしかれれば、百貨店の新増設が禁止される。それだから法律ができるまでに新増設をしようという運動が起って、にわかにわが国の百貨店は新増設がなされた。従って世の中では、百貨店法百貨店新増設規制法律であるにかかわらず、百貨店の新増設を奨励する結果を来たしたと申しておるのでありますが、このたび小売商業特別措置法商業調整法の二法案提出され、将来小売市場の新増設が規制されるということがわかってから、わが国のあちこちに小売市場を新増設する運動が起りつつあるということでありますが、その事実を御承知になるならば、ここで御披露をいただきたいのであります。
  14. 坪上和一

    ○坪上参考人 百貨店は御意見通りに、非常に盛大にやっておるのであります。われわれといたしましては、今の百貨店スーパーマーケットの行き過ぎを取締ってもらい、一日も早くわれわれ小売商の問題を解決していただきたいと思います。
  15. 中井一夫

    ○中井(一)委員 それではあらためて質問をいたしましょう。  本国会で小売市場新増設の法律ができるというので、最近京都、検浜あたりに多数の市場が新しく作られようという勢いが起っておることをお聞きになりませんか。
  16. 坪上和一

    ○坪上参考人 ただいま名古屋、横浜、また神戸にもそういうことのあるのを耳にいたしました。その理由は、今小売商業特別措置法案が国会で審議中である。これがもう近々のうちに国会を通過して法律として現われる、その前に早く市場をこしらえておけばいい、今のうちだというようなことで、いろいろ計画をしておるということを聞いておるのであります。それで各都市々々でそういうことは研究し、調べておるわけであります。大体は名古言屋、横浜、京都、こういうところでございます。
  17. 中井一夫

    ○中井(一)委員 三十くらい計画が現われてきたということをお聞きになりませんか。
  18. 坪上和一

    ○坪上参考人 そういうことは現に今五大都市の各代表者から耳にしています。
  19. 中井一夫

    ○中井(一)委員 それから戦前における市場の数と戦後における現在の市場の数、これを五大都市についてもしおわかりになるならば、この際御披露いただきたい。
  20. 坪上和一

    ○坪上参考人 ただいま中井先生から御質問の五大都市について昭和十年と現在と区分けをして申し上げます。  横浜、市場の数は戦前、昭和十年は五十二、現在では百二十六、名古屋が戦前は百七、現在は二百八十三、京都は戦前が八十三、現在は百十一、大阪は戦前が二百二十、現在は三百十、神戸が戦前は七十四、現在は百五、市場の数はかくなっておるのであります。
  21. 中井一夫

    ○中井(一)委員 その結果一市場あたりの人口数というものが戦前より戦後に至って非常に減小した、こういう結果になったのでございますが、その数は、先ほどあなたから各委員にお配りになりました口述書のうち、市場当り人口数変動の実状という表題の統計が出ておりますが、この通り相違ございませんか。
  22. 坪上和一

    ○坪上参考人 あの通り門違いありません。
  23. 中井一夫

    ○中井(一)委員 この数字はきわめて簡単でございますから、一々の質問応答を省きまして速記録につけ加えをお願いいたしておきます。いずれにいたしましても各都市において市場の乱設、ことに名古屋市のごときは、これがために小売商の過当競争で実に非常な困難と弊害を生じておる、一日も早くこの法を制定してもらいたいという熱烈な希望があるということを申し上げて、坪上さんに対する私の質問を終ります。
  24. 長谷川四郎

  25. 田中武夫

    田中(武)委員 まず最初に、私各参考人の御意見を聞いておりまして、向井参考人を除く他の参考人の御意見によって、わが社会党提出商業調整法の方がよりいいのだというような御意見が出たことに対しまして、意を強くいたすと同時に、先ほど中井先生がおっしゃいましたが、百貨店法の欠陥は指摘せられている通りでありますので、先日私たちが提案いたしました百貨店法改正に対しても、自民党、政府ともに考えていただきたい、かように思うわけであります。  次に、時間がありませんからまとめて一人々々御質問いたします。まず向井先生にお願いいたします。向井先生の御意見を聞いておりますと、率直にいって小売商業特別措置法というものはあまり必要でないといったような御意見のようにも承わったわけなんです。つきましては、今日の小売商のいわゆる経営困難の原因、これがどういうところにあるのか、そしてそれを除くためにはどういう措置が必要であるのか、一つ承わりたいと思います。  同時にもう一点は、先生もおっしゃっておりましたが、消費者に接触する面は小売商独占場であるという考え方は賛成できない、こういうふうに言われておりましたのですが、そうしますと、この小売商業特別措置法案の中におきまして、先ほど中林参考人からも一言参考意見が述べられておりましたが、いわゆる生協規制に対しまして、消費生活協同組合法にそういう指導監督の規定があるにかかわらず、またこちらの方の小売商業特別措置法案においてもそういったと同じような監督をするということは、私望ましくないと思うのですが、そういうような点について学者としての御意見を承わりたいと思います。たとえば消費生活協同組合法十二条第三項には、員外利用はしてはいかぬ、もちろんただし書がありますが、そういう規定があります。百条にはいわゆるその違反に対する行政罰が課せられることになっております。ところがこの小売商業特別措置法案にも、四条に同じような趣旨の規定がある、あるいは二十六条ですか、同じような罰則の規定がある、こういうようなことは重複する、こういうように考えます。従って私どもといたしましては、消費生活協同組合規制消費生活協同組合法によって行うべきである、二元的に行うべきでない、こう考えておりますが、いかがでございましょう。
  26. 向井鹿松

    向井参考人 御質問の一点から、ちょっとお答えになりますか、どうですか、非常にむずかしい問題で、私は、小売商の今日困っている原因は非常に複雑いたしておりましょうが、一番大きい原因は、だれしも入りやすい業種である。従って小資本であまり経験がなくても、何か適当な職がないと、では一つたばこ屋でも始めよう——たばこは規制されていますが、お菓子屋でも始めようか、何を始めようか、わっしょわっしょと一番、人が流れ込みます。ことに就職が困難になって参りますと、ことに老齢のわれわれみたいになりますと、自然そういうところへいく。ですから学者はこれを人口のはきだめだということを申しております。私はこれが一番大きな原因だと思っております。これをとめるのに方法が二つあるのじゃないか。一つ許可制をしく。許可制と申しますのは、この人ならば大丈夫小売商をやれる、経験もあるという資格ですね。つまりしろうとがやれば大てい数年で倒れます。ですからなるべくこの人ならばやれるというような人に限る。そしてごみためじゃないのだ、きれいに掃除をしよう、こういう行き方が一つある。もう一つは数を限定する。人はかまわないのだ、数を限定しよう、大体こういうような二つの形があると思います。私は資格によってやった方がいいのじゃないかというように考えておりますけれども、非常にむずかしい問題ではありますが、だからといって放任しておいていいということは、私は毛頭思っておりません。ただ先ほど申し上げましたように、私はこれをはっきり申し上げたいのですが、こういうことを思っています。自分のところの仕事小売をやらなければ自分のところの商売はやっていけないのだ、あるいはそれをやることによってのみおれのところの仕事は成り立つのだ、こういうのは事業上相関連している。言いかえれば労働的につながりがある。言いかえれば筋肉、神経がつながっているのだ、つまり小売するということと製造するということとくっついているというのがあります。そういうのは当然やらすべきものだ。しかし自分のところは、たとえて言えば交通が本職なんだ、しかし金が余っているから、しかも場所があるから小売をやろうというような式のやり方は、営業的に、労働的に職務的に何ら関係がないのであります。私は仕事の上で一貫したものは、これはやむを得ないのだ、こっちを切ればこっちも切れるというものはやむを得ないと思う。しかし手遊び、あるいは資本が余っているからというようなやり方、あるいはだれが見ても不公正な取引をやっていて、何もあんなことをしなくてもいいのだ、こういうものは断固として制限していいのだと私は思います。たとえば弘済会といいますか、物資部といいますか、鉄道が二割の運賃で、国家の交通機関を利用して物資を運送さしております。私は何十年間もこれに反対して、ここ四、五年前にもその質問をしたことがある。一昨日ですか昨日、役所で聞いたところ、それは最近やまったということを承知しておりますが、ああいうようなことはいかにも不公正だと私は思います。それではある特定の場合に、私の言葉でいえば神経がつながっていて、これをやらなければこっちもいけないのだ、それをやれば生産も成り立つし消費もそれでいいのだ、こういうのか、あるいは不公正な取引をやっているのか、あるいはそういうことをやる必要もないのに大資本の力でやっているのだ、本職は別にあるのだ、こういうようなものをどこで区別するのか、私はそこにむずかしさがあるので、一片の法律で書き切れないのじゃないか、こういうように考えております。ではそれを一々判断する方法はというと、私は今即答に困りますが、私は基本的にはそういうように考えております。  それから第二点は、私は行政上どうということを今ちょっと申し上げかねるのでありますが、職能的に関連あるものなれば、やはり同じところ——つまりこれは物の配給に関係するのだといった場合には、配給全体を考慮すべきもので、所管によってこれは何の系統だからというと、同じものを違ったところで統制するようになる傾向ができるのではないか。やはり公正にこの物を売るのだというなれば、流通全体を見てやる方が公正なものができるのではないだろうか、こういうふうに私は考えております。つまりこれは自分の所管だからといってやったのでは、ちぐはぐでやれないのではないか。たとえば私取引所のことを申しますが、農産物は農林省の所管だ、製造関係はこれは通産省の所管だといって、では取引所の行政を一つにやれるかというと、別にやろうというのではないが、やれないと思います。別の何か相談する機関とか、調整する機関がついて統一した運動をやらなければいけなくなるだろう。言いかえれば職能を同じくするものは——戦争中はそうじゃなしに物資関係で、ずっと縦に行政を切っております。そのかわり横に切ったときに連絡はとれないという結果が生じます。統制をとる上からは、機構的にはっきり物を伝達するのがよいのですが、社会的に物の流れを最もよくするには、やはり一つの物は一つで行政をやった方がよくはないか、こういうように考えております。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 いろいろと御意見伺ったのですが、帰するとにろ小売商の経営難の原因の一つは、いわゆる小売商が失業のプールと申しますか、そういうようなところから起ってくる。もう一つはものことの規制は一元的にやるべきである、こういうことであったと思います。あとは時間の関係があるので申しませんが、そういたしますと、それに関連して次に高橋さんにお伺いいたしたいのですが、先ほど申し上げましたように、いわゆる小売商八つの非願があります。この中でまず第一には小売商登録制、こういうことがあがっておりますが、これは今向井先生がおっしゃったことにも関連してくると思います。だが不幸にして本法案にはこのことが入れられていない。以下八つの項目を見ました場合に、われわれが提出いたしております商業調整法にはまず第五点の大資本によるスーパーマーケットの制限または禁止、これは百貨店法改正において行おうとしておって、すでにその一部改正法案は本委員会提出をいたしております。そういたしますとこの中で私たちの感じと違うところは、いわゆる生協の問題だけでありまして、これはわれわれが主張いたしておりますように、一方生活協同組合法によって規制すべきである。こういう点を除きますならば、わが社会党の商業調整法は皆さんのこの八つの悲願に対しほとんど何らかの答えを出しておる。こういうようにわれわれは自負いたしております。しかるに政府案はこの八つの中で、こういうたとえばどうかと思いますが、小売商を中心にとりまして、それから下という言葉が適当かどうかわかりませんが、下の部面、すなわち消費者に対する部面、これに対しては強く規制がなされておる。すなわち小売商と同列とも考えられるべき小売市場に対しては、ちょっと間の抜けたような規制の仕方で、それから下の消費書に対する面では強く規制がなされておる。だがしかし上と申しては語弊がありますが、資本に近い方の面に対しては全然ほおかぶりだ。すなわち第二点のメーカーの直売、及びその小売行為。あるいは第三点の卸問屋規制の問題、こういうことについては全然ほおかぶりの面である。同時にまた第八点の紛争解決機関、こういうことにも具体的な規定が入れられていない、こう考えてみました場合に、われわれは皆さん方のお願いというか、悲願に対して率直にお答えをしておるが、政府はそれにこたえていない、私はかように考えておるのであります。ここに現政府の中小企業政策の一環が現われておる。すなわち上の者、資本に対してはほおかむりであって、小売商を救うんだと言いながらも、やっていることはただ消費者を押えている、消費者の面に強く当る、こういう面だけ上っていると考えるのですが、これは中小企業庁がおるからといって、別に遠慮は要りません。率直に一つあなた方の両案に対する感じを述べていただきたい、このように思うわけでございます。
  28. 高橋貞治

    高橋参考人 ただいま先生から御質問があったのでありますが、われわれ全国小売商は、あくまでも八つの願いはぜひ全部貫徹させてもらいたい、これが一貫した方針でございます。そこで、今仰せになりました商業調整法の方には、よけい数多くわれわれの希望が入っているように思いますが、われわれの主張はあくまでも八つ貫徹させなければだめなんだということで通しておりますので、何とぞ一つこの面で自民党さんとまた社会党さんと御相談願いまして、八つ全部完全に通りますように御配慮願いたいと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 御期待に沿うよう一つ努力はいたしたいと思います。  次に坪上さんにちょっとお伺いしますが、あなたがさっき参考意見を述べられたときに、鮮魚、青果、精肉ですか、この三つがなければ市場として認めないといいますか、何か政府の方ではこの三つがあるやつだけ規制しようとしている、こういうようなことをおっしゃったのですが、そういうことはこの法律のどこを見ても書いてないのですが、そういう情報はどこから得られたのか、一つそれをお伺いします。同時に、岩武中小企業庁長官に、そういうようなお考えを放府あるいは中小企業庁はお持ちになるのか、一つお伺いしたいと思います。
  30. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 年末の御審議のときに、そこに指定してある政令の中身は、どういう商品を指定するのだという御質問がございましたので、こういう商品を指定する予定だということを申し上げたことでございますので、公けのことでございます。坪上さんもそれからお聞きになったと思います。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 中井委員の質問の途中で私は中座したから、それを聞き漏らしておったと思うのですが、そのことについては私疑問を持っています。しかしきょうはここで触れません。あらためて本法案の審議の際に問題にいたしたいと思います。これは坪上さんにお伺いしたいのですが、どうもなにですから、これはちょっとやめたいと思います。  最後に、それでは中林さんに一つお伺いします。それから向井先生にやはり中立的な立場から御意見を伺った方がいいと思うのですが、先ほど中林さんの参考意見の中にもありましたが、また高橋さんの参考意見の中にもありましたが、いわゆる経営者が従業員に対して福利施設だという名目で行なっておるところの購買会と、いわゆる法律規制によって指導監督を受けてやっておる消費生活協同組合と同じようにしているということに対しては、私ちょっと疑問を持っておるし、高橋さん自体もそれは違うんだということをお認めになっておると思います。そういう点につきまして向井先生はどういうようにお考えになっておるか。それから中林さんには、この四条の三項でしたか、先ほどもお話がありましたが、いわゆるこの利用券でなければ売っちゃいかぬ。こういうことは日本銀行法のいわゆる通貨の強制通用力の制限である、違反である、こうおっしゃっておられますが、私もそう思うわけです。そこでこれも向井先生に一つお伺いしたいと思うのですが、そういうようなにとは法律的にどうか、これは学者としての立場からお伺いしたいのです。  それから中林さんには、こうなってくると聞くことがなくなってしまったのですが、もう一度この点について生協としては購買会との違いの点をはっきりと言っていただきたいことと、第四条の各項によらなければ、これが実施されるようならばもう生協としての機能を果せないという点、簡単でいいですからもう一回やってもらいたいことと、それから先ほど私申し上げました生活協同組合法十二条三項に、すでに員外利用についての規制規定があり、その違反については百条において行政罰の規定があると同じようなことがこの四条とそれから二十六条にある。そうすると、もしかりに違反した場合、両方からの罰則規定が適用になると思うのですが、そういうことになると大へんなことになると思うのですが、そのようなことについて生協としてはどのようにお考えになるか、それを一つ伺いたい。同時に岩武長官に、罰則が二つある、このときにはどっちが優先するのか、許可を受けずに員外利用をやった場合、消費生活協同組合法の第百条に、もうすでに行政罰の規定がある、ところが今度また同じようなことを四条でうたって、それに違反した場合は二十六条に同じような行政罰がある。これは両方課されるようなことになるのか。あなたは裁判官でないからわからないかもしれないが、どんな考えでこの規定を設けられたのか。
  32. 向井鹿松

    向井参考人 最初の質問からお答え申し上げます。購買会生協と員外利用の点でどう違うのか、これは私ははっきり違うのじゃないかと思っておるのであります。購買会の場合には、私の理解するところでは、会社あるいは職域の従業員なんでありますから、これは拡張する余裕も何にもないのであります。それだけでいいのであります。しかし生協というものは、これは何と言いますか、生協人たちは、一つの空想ですけれども、将来消費者共和国を作って、消費者がすべて小売も卸も製造もやってしまって、消費者の支配する社会を作ろうという空漠たる考えを持っている人もあります。しかしそれは別にしまして、そうでないまでも、生産者は入れないで消費者だけでやろうという非常に大きな理想を持っておるのですから、どうしても多くの人を獲得しなければならない。購買会はちゃんと限られて、その職場におる人のためにというのですから、外の人を入れることは全然ないのであります。けれども、一方の場合は、できるだけ会員を獲得して大きくなって——大きくならないと大きな事業ができません、小さい五十人や六十人のもので製造もやろう小売もやろうとなると、なかなかやれません。だから事業的に成り立たすためには、理想を言わなくても、どうしても獲得しなければ安いものはできません、安いものは売れません。ですから、なるべく獲得しなければならない。員外利用をやることはいけない、これははっきりしておる。これはもう議論はないと思います。といって獲得はしなければならぬ、ふやしていかなければならぬ。また何とかしてふやす方法を考えなければならぬ。ただふやす方法として員外利用を利用していいかどうか、その点は非常に……。私はもし売らんかな主義で大いに販売してやろうというならば、これは断じていけないと思います。けれども、これは人間でありますから、なるべく自分品物を安く消費者に売ろうとするならば、なるべく大量を扱わなければならぬ。そうすると新会員を作らなければならぬ。それにはどういう方法がいいか、やむにやまれぬところの一つ方法に対しては、何か道を聞いて、そうしてまた生協の方にも案を考えていただいて獲得していく、そういう人々に売る。だからこの人を入れようとするときにやるやり方として、多少のゆとりと申しますか程度は、これは生協をやる人の立場からすれば、ほんとうに生協を盛り立てて消費者の役に立つようにするためには何かほしい、そういうことであります。ただそれは員外販売を無制限に許すという理屈にはならぬだろうと思う。といって一口もやってはいけない、目こぼしもいかぬ、犯罪があるというような立場で取り締られてはこれも困ると思う。その辺は一つ……。(笑声)なかなかこの法律はやりにくいだろうと思います。  それから日本銀行法との関係ですが、これは私お聞きしておったのですが、なぜそうなるかよく理解できませんでした。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 中林さんにお伺いする前に、今の向井先生の言われたことに対する御所見をあわせて言っていただきたいと思います。
  34. 中林貞男

    ○中林参考人 今の田中先生の御質問は、生協と賦買会の問題と、それから利用券などによってやるところの員外利用の規制の問題と、それからそれと関係して罰則などでダブってやられるという三点についての御質問かと思いますが、私たち生協購買会というものは質的にも全然違う、購買会はやはり経営者の福利施設として行われているものですが、長く申せば時間がかかりますから簡単に申しますが、やはり日本も職場などにおける福利施設は労働者の自主的なものにまかすべきだ、払うべきものは賃金としてきちんと払って、そうして福利施設は福利施設として労働者の自主的なものにまかすべきだ、外国もみんなそうなっておりますし、戦後日本アメリカやイギリスなどの調査団が参りましたときに、日本の炭鉱やその他で膨大な間接費を福利施設に使っているという点について、外国の経営者の視察団も、これは労使関係の明朗化といっても、近代化といってもおかしい問題じゃないかということを指摘しているということを、私ら労働省その他で聞いております。従って購買会というようなものは、もはや過去の時代の遺物だ、従って機能的にいいましても、今向井先生がおっしゃいましたように購買会一つの企業組合として、従って採算その他は経済の法則に基いて経営されるかどうかといえば、やはり本体である企業のもとに保護されてやっているという点において一般の経済の原則の点に立っても問題があるのじゃないか、従って購買会というものは、できるだけ生活協同組合へ切りかえていくことが正しいのじゃないか。最近大企業などでも経営者の側でも、だんだんそういう方針がとられてきたのじゃないか、労働組合はもちろん、生協にいくべきだという考えを総評関係も全労関係も皆さんお持ちだというふうに考えております。従って生活協同組合は自主的なものでございますから、やはり経営に当っては経済の法則に従ってやらなくちゃならぬので、むやみな安売りだとかいろいろなことはできないわけです。従ってやはり生活協同組合は経済の原則に基いてやらなければならない、そういう点は一般の企業と同じような形で私たちはやっていかなければならない。従っていろいろな点で購買会生活協同組合は違っているわけでございますが、たまたまよく会社の保護というものがありますから、購買会の値段が非常に安かったりする場合があるわけですが、そういう場合によく生協購買会を混同されて、生協に対する非難を受けることがあるのは、私たちは非常に困るという考え方を打っております。  それから員外利用の規制の問題につきましては、今向井先生がおっしゃった通りであって、私たちも員外利用はよろしくない、やはり生活協同組合は組合員のものだから、組合長によって利用されるようにしていかなければならないということが、先だっての私たちの役員会でもやかましく討議されたわけでございますが、やはりこれから組合員になろうとする人があるわけです。またわれわれは組合を拡張していかなければならない。その場合にやはり準備組会員と申しますか、ウォーミング・アップのような形で、組合員になる人をどうしても認めていかなければならない。今向井先生がおっしゃったような問題が、いわゆるウェーティング・メンバーというふうに外国などでは言われている問題です。従ってこの小売商業特別措置法のような形で、利用券を持っている者でなくちゃ売ってはならない、あるいはまた購買券を持っている者でなくちゃならない——いわゆる経済の事業機関の原則、生きものである生活協同組合の原則を無視した規制のやり方をやられますと、生きものですから、生きものが伸びようとする、発展しようとするのを押えてしまおうとする。あるいはまた利用券についてもしかり、利用券についても、これは日本銀行法の第二十九条ではっきりと、日本銀行券は「公私一切ノ取引ニ無制限ニ通用ス」ということになっているわけでございますが、その点について法律上も非常に問題がある。従ってこの第四条の二号、三号におけるような、生きものであるということ、並びに日本の他の法律を無視したような規制の仕方というものに対しては、私たちは絶対反対である。そうしてまた生活協同組合は母法である消費生活協同組合法によって厚生省の指導監督のもとにあるわけです。従って生きものである生活協同組合が二つの官庁によって監督されるということは、いろいろな点に矛盾が出てくる。今の罰則の点においてもそうでしょうし、日常の指導監督においてもいろいろ問題が出てくるのであって、私たちは四条のような規制ということについては、あくまで反対であるし、またそういうことは困る、生きものが生きていけなくなるという考えを持っております。
  35. 長谷川四郎

    長谷川委員長 永井有。
  36. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は高橋さんにお尋ねいたしたいと思います。  業界の新聞によりますと、昭和三十一年から二年の一年間に全国で商店が六万八千店ふえておる。従業員が二十七万三千五百六十人ふえておる。三十三年はこれを上回った七万以上の店がふえておる。戦後十年間に従業員だけで五百万人ふえておる。こういうように年々膨大な数が小売商の中に流れ込んできておるし、それだけ店がふえておる。こういうような実態の上に立って、今度政府が提案されました小売商業特別措置法というものに、どのような効果を皆さんが期待しておるのか。この特別措置法が通ったらこれで小売商が救われると考えておるのか。またあなたが八項目からの要望事項がある、その一つもこれに載っておらないというようなこの措置法に対して、業界でどの程度の期待をかけておるのか。こういうことを伺いたい。  百貨店法が通るときも私はあなたに、あなたは通してくれと言うが、これは通したって既成業者の擁護であって、小売業者の擁護になりませんよと言ったら、あなたはそれでも通してくれ、こういうようなことで、実施してみたらおわかりになるのだが、こう言った。その通り、今日あなたが供述されておる。あるいは団体法ができる当時もずいぶん騒いで通したのです。現在実施されてから相当時間がたっておるのですが、その効果をあなたはどのように評価されておるか、これもあわせて伺いたい。そうしてこの小売商業に何ほどの期待をかけておるかということ、これを伺いたい。  それからこの問題を考えますときに、向井さんからお話のありましたように、全体に仕組んで動いているそのものの中から、小売商業だけをとって、これを振興安定させるというようなことをやろうとしても、これはなかなかむずかしい問題だと思う。やはりその問題の背景には、金融問題をどうするとか、税金問題をどうするとか、あるいは貿易の問題をどうするとか、技術の問題をどうするとか、こういう各般の問題を総合的にずっとしぼってきて、そうしてその中で小売商業というものの特殊性をどういうふうに生かして安定させ、日本の実情に合うような形にするかというような総合的な基盤を持たなければ、ぽかんとだしぬけに小売商業というものを持ってきて、そこで何とかしろといっても、これはできっこないと思うのですが、そういう問題に対する総合的な評価なり判断なり、あるいは日本小売商店の現在置かれている位置というものをどういうふうに理解され、そしてその位置をあるべき姿において安定させ、それから製造から消費へのサービスを十分にやるためには今後どうあらねばならぬと考えておるのか、この点について簡単に項目的でいいですから一つお示し願いたい。
  37. 高橋貞治

    高橋参考人 ただいまお話がございまして、一応現在百貨店法自体、なるほどこれはざる法であり、非常に弊害が多いということは当初から大体思っておりましたが、率直に申しまして東京都下に百貨店法がなかったらどこにもできるのだ、それでないよりましだということで自民党の先生方、社会党の先生方の御尽力でできたことに対しましては感謝しておる次第です。現在は百貨店法の問題ではございませんが、現在百貨店法には非常に不備がございますので、これはまた百貨店法強化改正お願い申し上げたいと思っております。  それからもう一つ先生のお尋ねでございまして、日本小売業者は通産省の調べによりますと現在百四十五、六万、百五十万と申しております。家族従業員を入れて約七、八百万がこの小売業に従事いたしております。なおまた産業合理化審議会で今後二百六十五万、三百万近くの失業人口、あるいは農村の二、三男等も出てくる、大企業のメーカーが非常にオートメーション化して、この面でも人間が余ってくる、これにつきましては登録制人口をはっきり登録しておきまして、そして政府におかれましても国会におかれましても、はっきり小売業者の業態をつかんでいただいて、そして施策をやっていただきたい、こういうことが一応八項目にあるわけであります。今後小売業者がますますふえて参りますと、生活水準が下って参ります。朝の八時から夜の十一時まで商売をやり、またその後に帳面をやる。ほとんど寝るひまもないというこんぱいな状態にあるわけであります。これは登録制等によりまして適宜な施策をぜひ一つ先生方お願い申し上げたい、こう考えております。  それからまた抜けておりましたら、あとから御注意いただいて申し上げますが、団体法の点でございます。これはメーカー方面におきましては、現在三、四百ができておりまして、一応団体法に基く安定する業者の姿というものは一面出ているようであります。問題は一般の小売業者商業者の面でございまして、特に商業の面であります。団体法に基き小売商が商工組合を作るという面は、みな気持は持っておりますが、二分の一以上なくてはいかぬとか、あるいは調整を発動する場合には四分の三以上になければいかぬとか非常にむずかしい、小売商業者にはつきにくい法になっているようであります。現在私も東京におきまして繊維を一丸といたしました紹介を作っております、数は約八千、九千といっております。この中には注文業者、加工業者は除いてやっておりますが、なかなか業者は忙しくて、これはいいとはわかっている、また幹部が努力いたしますれば団体法の効果でございます組合交渉、あるいは組合交渉の中に入りますが、卸とか製造面に対します代金の支払い方法をきめる、あるいは廉売等の問題を組合交渉によって卸並びに百貨店とも交渉する、これは努力によってできるわけでございますが、今お話申し上げた通り、二分の一の数とか努力しなければならぬという点がなかなか——やはり現在は小売商業は不況のどん底、なべ底状態でございまして、たとえば月五十円の分担金をいただくのも、これだけ出すよりもいっそのこともうちょっと資本の方に回す、およそ一年計算するとどうなるとか、こういった計算がまだまだございまして難儀いたしているわけでございます。団体法も確かに運営と指導者の努力いかんによりましては、先ほど申し上げました通り卸面あるいはメーカー面、製造——メーカー製造も同じでございますが、デパートその他の団体と交渉しましたら、だんだんと改善されていく効果があると思っておるのでありますが、現在は小売業界においては遅遅としてできないと思っております。(永井委員小売商業特別措置法案に対して業界はどのような期待をかけているか」と呼ぶ。)これは大事な面でございますが、百貨店法も今申し上げた通り一応の安心感と申しますか、非常にざる法でございますが、しかしこれがあるためになかなか百貨店ができないのだという安心があるわけであります。これと同じように、今の措置法の問題でございますが、われわれ八つを要望しているわけであります。八つはどれもみな大事でございます。しかしこのうち全然できなかったらば、——すでに三年かかって先生方お願い申し上げているのですが、いろいろな事情がありまして、いまだにできなかったわけであります。私の方としましては、八つ全部完備いたしませんければ大体においてわれわれの希望の線に近くならぬと思っております。しかしこれが全然できない場合は困るわけです。一つ一つ解決していきたい、なろうことなら全部解決さしていただきたいと思いますが、関連の問題もございますので、われわれの率直な気持を一々御説明申し上げれば、ある程度御了解いただけると思いますが、省略いたします。
  38. 永井勝次郎

    ○永井委員 時間がありませんから……。やはり高橋さんにお尋ねいたしますが、お話を伺いましても、小売商業関係の人の今日当面している困難な事情がどこにあるか、その重点は業者自体の過度の競争、業者が非常に多いことが基本問題だということなんですが、消費者八軒か九軒に商店一軒というような現在の割合で、だれがどのような神わざで手を使ったって業界の安定を得る道はない。基本的にもう少し恒常的な面に手を染めていかなければ問題の解決はないことははっきりしている。そういう分析に立ちますと、この小売商業がこの法律の中にうたっている問題は何かといえば、これは購買会の対策、それから消費協同組合に対する対策、業界外の問題としてこの二つを取り上げている。業界内の問題としては小売市場の問題、それから製造業者及び卸売業者と小売業者との関係、この二つに分れている。これが現在小売業者に対する方策として取り上げられている。根本的に業界が当面している困難な問題に触れていないわけです。外回りの方、くつの裏からかいている程度のことです。だからその程度に評価されている。皆さんが皆さん方の団結をここで固めて、これから一つずつ戦い取っていくのだ、こういうお考えならいいが、これが出ればこれで小売商業は安定したのだ、こういう安堵感を持つ、そういう業界に対する一つの欺瞞政策というものがここにあるわけです。これは非常に大きな誤まりを来たすと思うのです。先般エアハルトが日本へ来て、ドイツはどうやっているかということ、ドイツでは税金の面には政治は触れない。だから高い税金はかけない。それから日本では高い税金をとって、一たん政府のふところにその税金を入れてから、重要産業にこれを補助金や助成金としてやる。吸い上げる面にも与える面にも、両方政府が参加して、政府のやり方でやっておる。ドイツではもう高い税金はかけないのだ、そうして補助の面にも金をそう出さないのだ、だから大企業も中小企業も対等の立場競争できる条件がある。日本ではかえって大企業の方には租税特別措置法で税金を安くしてやる。中小企業の方から高い税金を吸い上げて、与える方では中小企業からはしぼった税金を大企業の方へ補助金や助成金でどんどんやって、中小企業にはほんのスズメの涙ほどしか出してない。それだから根本問題は、中小企業が過度の競争で困っているにもかかわらず、ここに安定しない経済的な条件、政治的な条件、こういうものがあるのです。そういうものに触れていく方向をとらなければならぬ。少くも法律の性格として、そっちの根本問題に触れる態勢をとらないで、外回りの方だけ生協購買会だ、こんなことをやたらに項目を並べたって問題にはならない、こう思うのです。ですから、あなた方は指導者の立場にあって、この法律一つ段階としてこれを理解しておるのか、それともここで一安心できるのだ、こういうふうにやっているのか、指導の上においてまた今後の小売商業対策としてあなた方はどういうふうに考えておるか、その点を一つ伺いたい。
  39. 高橋貞治

    高橋参考人 今先生からお尋ねございました、政府の案では四つ程度だ、これで満足して運動をやめるのか、またそれでいいのかという御質問のようでございますが、この面に対しまして、先生も御承知の通り百貨店法通りましたからといって、そのまま小売商はうっちゃっておりません。あくまでもこれはだんだんと組織を強化いたしまして、百貨店法改正全国小売商は一丸となっております。それと同じように、一応われわれは小売商だけの立場で意のあるところを八項目に並べましてお願いしてございますが、審議の過程におきましてどういう格好になりますか、これはあくまでも八項目お願い申し上げますが、できた案が不満足なものでありました場合、これは八項目貫徹、またその後の情勢の変化によりまして数がふえてくる場合もございますが、あくまでもわれわれは小売商といたしまして先生方に御理解いただく一つの案として八項目、あるいはまた追加になるかしれませんが、これは終生あげて貫徹するまで運動を続けるつもりであります。
  40. 長谷川四郎

    長谷川委員長 始関伊平君。
  41. 始関伊平

    始関委員 時間がございませんので簡単にお尋ねをいたします。  私は高橋さんにお伺いいたします。今日、日本の中小商業の問題、小売業の問題といたしまして、いろんな形における大資本の進出という問題がある。なおまた最も根本的な問題といたしまして、日本の過剰人口を反映した小売業の過剰という問題がある。これについては、許可制あるいは登録制というお話がございましたが、そういうことにいたしますと、これは日本の人間一人々々その職業を政府がきめてやるといったようなことをあわせてやらなければできない問題なんで、なかなか大へんな問題です。とりあえず、不十分だけれども、一つここに出ました法案を成立させていきたい、こういうお立場だと思います。今度の案が、二つ出ておりますが、政府案社会党案と取り上げております事項はほぼ同じだと思うのですが、その取り上げ方、解決の仕方がいろいろ違うわけなんです。先ほど高橋さんのお話の中で八つおあげになりましたのですが、実は政府案でも社会党案でも、その八つの中で生産者あるいは卸売業者が小売を兼営するという場合の規定がかなりたくさんある。特に社会党案には条文の数からいきますと、その点に一番重きを置いているように思うのです。そこでその考え方でございますが、卸売の中で一番数の多いのはいわゆる小卸なんですね。これは大体営業の規模からいいましても、卸売だけじゃやっていけない、大部分のものは小売業を兼営する、こういう立場にある。使用人も大体卸売も小売も共通だし、設備も分れておる場合もあるだろうけれども、分れてない場合も相当ある、こんなふうに了解いたします。なおまたこういった小卸の小売兼業の場合は、たとえばどっかの市にあるそういう商人が、同じ市内の比較的近いとにろにある小売人に売るというような関係がございまして、安売りをするというようなことがあると、ほかの同じ地域内の小売人から一斉に排撃を受ける、こういったような事情にあるように私どもは承知いたしておるのでございます。それから卸の方の小売兼業というのは数も少いし、比較的問題ないと思うのでございます。そこで兼業の場合の小売業者との調整の方法でございますが、この点は政府案社会党案とだいぶ違っておる。政府案は問題が起りましたごとにケース・バイ・ケースでやるということなんだが、社会党案においては業種、地域を指定する、それからその指定された業種なり地域なりについては事業拡張の禁止がございましたり、あるいは設備の拡張の禁止ないしは脱法行為禁止といったような非常にややこしい規定がたくさんあるのでございますが、私は今日卸、小売関係等の実情から見まして、この社会党案というのは法律の条文に書いてみますといかにもりっぱだけれども、これは実情に合っていない、こういったようなことをやりましても、これはややこしいだけで、また時と場合によりますと、知らぬ間に罰を受けるというようなことであって、これは今日のいろんな関係の実情から見まして、私どもは適当でないと、こう思うのでございますが、この点につきまして御意見を簡単に伺いたいと思います。
  42. 高橋貞治

    高橋参考人 お答え申し上げます。実は卸、小売の問題で、これは実情を申し上げますと昨年の暮れから非常な大きな問題になっております。たとえて申しますと、東京におきましても横山町あるいはまた岩本町にも卸の場所があるわけです。大みそか近くになりますと、お歳暮を贈るとか、いろんな面で多くの消費者が直接にあそこに買いに来る、これが非常な問題になりまして、都の全日商でもこれの特別委員会を作っております。また大阪におきましても、後ほど公述なさる方がこの実例のお話を申し上げると思っておりますが、非常に昨年から強く深刻になって参っております。また御存じと思いますが、高級品の、たとえば既製服なども月賦で各会社へ売るわけでございますね。その場合に、卸は小売を通じないで直接会社へ持ってくるわけです。そしておれのところは卸だから安い、要するに下手な小売は買わぬ方がいいぞというので、東京並びに大阪、名古屋方面で相当問題が起きております。これは八つとも全部大都市でございますが、この点は今御質問いただきましたので特にお願い申し上げますが、職域とかあるいは地域で限定していただきたい。この面は仙台とか地方に行きますとそんな大きな問題はないようでございます。製造、卸の場合、産地直接の場所にあるわけでございます。これは非常に大きな問題になっておりまして、百貨店法強化改正に並んで、流通秩序の確保と、卸屋さん、製造屋さんはどんどんと小売に進出する、こういう面は、ほんとうにいい機会でございますから、私から申し上げる機会を得ましたことをありがたく御礼申し上げるのでございますが、だんだん問題が大きくなりまして、これは必ずまた全国で大会とかすったもんだの問題が起きてくるのじゃなかろうかと思っております。これは職域か地域で限定していただきますと、そんな全体の卸屋さんとか製造屋さんには影響がないと思います。仙台方面にいきますと、割に卸の方面の小売侵害はないのが実情でございます。もう一つは大メーカーでございます。現在はそうございませんが、やがて小売まで経営する。化繊などはどんどんいたしまして、これから小売業者もどうも内容状態があまりよくないから、直営あるいは名前をかえてそういった小売店を出す、こういうことはまだそうございませんが、今後ふえてくるのじゃなかろうかと思っております。職域、地域でどうしてもこの卸が小売——あめ屋さんか何かは製造小売でございますが、こういった業種指定あるいは地域指定は、仙台とか北海道とか、特に影響のないところは地域を御指定いただく、こういうようなことで一つお願い申し上げたいと思っております。
  43. 始関伊平

    始関委員 今おあげになりましたような事例というものは、場所的に申しましても、きわめて局限された個所であり業種であるけれども、職域指定の方があなた方としては望ましい、こういう御意見でございますか。
  44. 高橋貞治

    高橋参考人 ぜひ一つ
  45. 始関伊平

    始関委員 今の点で向井先生いかがでございましょう。
  46. 向井鹿松

    向井参考人 合この点で先ほど私が再三申し上げましたように、メーカーが今日のように競争して、そうして自動式になりまして品物がどんどんできるといった場合に、ほんとうに生産過剰になりますと商品をどうして売るだろう。先ほど言った小売屋さんが売ってくれるかというと、必ずしも売ってくれないのであります。こういう点で、つまり物は作ったが物の流れる道が半分ふさがれた場合に、いかんともしようがないのでございます。私はこういうことを一刀両断的に法律規制するのはどらかということを先ほど来申し上げた。それではどうするのだ、私は、これは小売業者には悪いけれども、道はあるのではないかと思うのであります。それは法律でやらないで、業者が団結すれば、これは政治とか法律に持っていかないで、もしそういうように卸屋さんが直接消費者に与えるようなことがあれば、堂々と、困るじゃないか、それがどうして公正だと、私は理屈を言えば、その不公正か公正かということはわかると思う。私は今はっきり申し上げられませんが、イギリスでは、業者の自発的の団体がりっぱにそういうものをチェックしている。そうしてそういうものは、業者団体が、おれたちは困る、何とかしてもらわければ困る、お前そんなことをやるなら、お前のところから買わないぞ、これがあってやるなら、これはケース・バイ・ケースでほんとうに不公正なものはやりません。またそれでも、合理的におれのところは安くなるのだ、またそれではおれのところは困るのだというところは、やりましょう。しかしこれは世論の方もありますし、その意味で私は政府案の調停云々というのは非常に含みの多いものである。あれもああいうふうに法規的にやるのは私は気分的にはどうかと思いますけれども、とにかく私たち日本は、どうもやっぱりお上のないがつかないとやりにくい点があることは、私も十分察しております。けれども業者がほんとうに目ざめてこのように非常な変革を生じておる。その変生に即応して自分たちもやるような方向にいかないと、先ほど申しましたように、これはやりましてもなかなかやれるものではない。私は団結は非常にけっこうだと思う。それを経済的に規定して、お前たち、そういう不公正なことをやるなら、おれは君のところの品物は買わないぞというようなことを、今もやっておられるかどうか知りませんよ。法律でやりますと、結局何といいますか、先ほど来事業家が資本の力で押える、私はこれはほんとうにけしからぬと思います。しかしそれを政治に持っていきますと、今度は金力でやっていたのが権力でやるように肩がわりしただけなんで、業者自身の自発的なことにはいつまでたっても解決がつかない。ただ支配する力が金権から官権といいますか、政権といいますか、それに肩がわりしたという格好になるのであります。私は、どうしても業者がほんとうに目ざめて、生産機構、購買の点もほんとうに違ってきておりますから、早くそういうふうに各自はやり、同時に一つ団結してその力を経済的の方に向けてやっていただけば、全面的な調整がいくのではないか、そういう工合で、これは社会党の方に悪いのですけれども、あの規定の仕方よりも、調整とかあっせんとかいうものは気に入らないが、その方がはるかにいいのではないかと思う。これは私の気分であって、そうせよとかなんとかいうものではありません。そういう気持を持っております。私一番同情しております商業者の方に対して、非常に酷なにとを申し上げますが、それはあしからず一つお願い申し上げます。
  47. 始関伊平

    始関委員 もう一つだけ伺います。今度は高橋さんにお伺いしたいのですが、消費生活協同組合の問題でございます。これはもう消費者の組織としてやっていかなければならぬ、それから員外利用はよくない、この辺までは何人も異存のないところのようでありますが、自主的な規制にまかすという建前には、政府案社会党案も実はなっていない。法的に規制しろという立場をとるといたしまして、通産省の方の案は、員外利用はいかぬというのではなくて、場所によりまして小売業者がいないところは無制限にやってもいい、しかし特定の地域においては員外利用は禁止する、こういう建前です。社会党案の方は、二割というものを限って、二割以内は自由だ、二割以上はいかなる場所でも絶対にいかぬ、こういう建前のように思うのです。先ほどいろいろお話が出ましたが、員外利用の取締りは、実際問題として非常に困難だという向井先生の御意見もあったのでありますが、法律の建前として二割まではいいという建前をとることは、さもなくてさえ困難な取締りを、いよいよ困難にするのではなかろうか、従ってまた無制限に実際行えるようなものもあるだろうと思います。それから同時に、ある場所は必ずしも二割に限定する必要はないので、無制限にやってもいいような場所もあろうかと思いますが、この辺の規定の仕方につきまして、小売業を代表してちょっと一言簡単でけっこうでありますから御意見を拝聴したい。
  48. 高橋貞治

    高橋参考人 生協の問題でありますが、大都市におきましては、割合生協よりも百貨店の方の影響が大きいわけであります。どちらかと申しますと、チケット団体等の方も午後にあがるようでございますけれども、こういった地方においては、非常に生協影響があるわけであります。どうしたらいいかという点をお尋ねのようでございますが、これは八項目全都に影響がございますので、あれを一つ規制を願いたい、こういうお願いをしてございます。いずれもこれは大事でありまして、これは何とかしていただかなければ困るということなんでありまして、これをどうする、どうしてくれとか、そういう面はどんな気持かということをお尋ねになるのでございますが、これは一つよく自民党さんと社会党さんで御相談の上、われわれをお助け願いたいと思うわけであります。
  49. 始関伊平

    始関委員 これでおしまいでありますが、今度は坪上さんにお尋ねをしたいのでありますが、先ほど小売市場の乱設の防止ということを非常に御主張になられた。それで、五大市においては、市長に許可の権限を与えろ、こういう御意見でございましたが、乱設防止ということになりますと、五大市では御承知のように、自分で市営のものも相当あるようなんで、自分でやるものについて自分許可権を持っておりましたのでは、乱没防止という趣旨に合わない、こう思うわけです。もう一つは、一つの市と隣りの市とくっついておりますと、片一方が乱設防止をしようと思っても、隣りの市で認めてしまえば、目的を達しないというにとになりますので、この点は市長はやはり不適当なんで、知事にやらした方が、あなたのおっしゃる乱設の防止という目的には沿うのではないか、どうもそうでなければいかぬと思うのですが、もう一ぺん簡単に御意見をお聞かせ願いたい。
  50. 坪上和一

    ○坪上参考人 乱設防止について、市長に権限をお渡し願うことが適当だろう、こういうことを先刻申し上げたわけであります。大体小売市場は、これがどんどんでき上って、神戸あたりでももう三十七、八年になるわけです。その間、大体市の方でいろんな行政上のお世話を願っておったわけです。先刻ちょっと申し上げた通りに、衛生面にせよ、防火面にせよ、下水、水道からもうすべてのことを市の方にお願いして、それで市と協調して今日までやっておったのでございます。それで県なら県にこれをかえるとすれば、またその監督の地位にある方が新しくなって、またそういう人を要請せにゃならぬということになるということから、これが過当だろう。それでなければならぬと、われわれはどこまでも主張するものではない。われわれは今市場が乱設されて困っておる、一日も早く何とかしてもらいたいということで、おととしの一月からこちらへ参って、中小企業庁なんかに一番先に飛び込んで一日も早くやっていただきたいということを、もう足かけ三年間こうして通ってお願いしておったわけであります。別に、われわれはどうしても市長でなければいかぬ、県でなければいかぬという意味じゃないけれども、今での慣例、今までいろいろ御相談申し上げて、そして市の方に非常にお世話になってやっておったから、それが当然じゃなかろうかということでやったのですから、どうぞ……。
  51. 長谷川四郎

    長谷川委員長 勝澤芳雄君。
  52. 勝澤芳雄

    勝澤委員 時間もありませんので、簡単に高橋さんと中林さんに質問をしてみたいと思います。  先ほどからの話の中で、高橋さんにまずお伺いいたしたい問題は、小売商業の振興の根本は一体どうしたらいいか。この問題が先ほどからいろいろと質疑の中でも出されましたし、また向井先生からもいろいろ意見が出されました。そこで、やはり失業者のたまり場になっている、こういうことがいろいろ言われている。失業者のたまり場にならないように、小売にはある程度ワクをきめてふやさない方がいい、こういう意見も出されておりました。失業者がどこから出てくるかと言えば、働いている労働者からであります。農村の二、三男の問題であります。ですから、農村の二、三男とそれから首を切られた労働者と、それから零細な商業者というものは、今の政治の中では同じ立場に置かれていると思うのです。これは相対立するものではないわけです。ですから、労働者を首切らぬようにしてくれという要求は、小売商の人が小売がふえては困るという要求に私はつながっておると思うのです。農村の二、三男対策をやってくれという要求というものは、小売商をふやさないでくれという要求につながっておると思う。それがこの法律の中を見てみると、いかにも何か小売商業振興という立場で問題を取り上げずに、何か弱い者同士を対立さして、そしていかにもこれが小売商業振興だ、こういうふうに出されておるわけです。政府の方は、保守党は、御案内のように、金を出す、資金を出す、あるいは税金を特に零細な人たちには少くする、こういう点には中心を置かずに、法律を作ることは金に関係はありませんから、幾らでも皆さんの御希望に沿うような法律作りましょう、別に政府は痛くもかゆくもありません、こういう形でこの法律というものは出されている。今日小売商業を振興しなければならぬ一番根本の問題は、失業者の問題でありましょう。また当面大きな問題というのは、税金なり金融の問題でありましょう。税金、金融の問題というのは、今の小売商人の方々から言わせるならば、この法律にばかり目がくらんでいて、どうもそちらの方にあまり目がいっていない。きのうも共立講堂に参りましたら、御案内の織物消費税に大反対している。あれだけ集まったら、選挙がありますから、これはむろん社会党もと反対ですけれども、自民党の中ですらこれには反対でありますと、こう言っているわけです。今が税金のことをやる一番いいときなんです、あるいは皆さん方の金融をふくらます一番いいときなんです。なぜならば選挙があるからです。そのために、かつての中小企業の代表者の方々が出ると、こう言われるときですから、これをやらずに、この法律によっていかにも小売商人がよくなるというふうに見られているということに、根本的に誤まりがある。とにかく、外見上小売商人を守るというふうに書かれておるけれども、実際には百貨店あるいは大企業、メーカー、卸売、こういうものについては実にこれはあってなきがごとき法律です。ただ一番この中で中心になっているのは、生協、これだけをがんじがらめにきめて、そうして対立させている法律なんです。今皆さん方が御意見の中でも言われておりますように、この法律について一番問題になるのは、生協だと私は思うのです。今この御意見を聞いておりましても、生協がいろいろの法律的な税制上の恩典がある、こう言われている。しかし中林さんの説明を聞いてみますと、何も恩典がない。片一方から言わせれば、ですからそれを是正しなければならぬ。その一つの例として、米子の事例を言われた。これは三年前、五年前から言われたことですが、これは私はその地域だけのもので十分話し合いができると思う。社会党も自民党さんも、一つ話をして何とかいい案を作ってくれと言われております。ですから、生協さんもそれから小売商団体も十分話し合いをして、こういう小売商業振興というものでごまかされないようにしてもらいたいと私は思う。そういう立場からこの問題を考えてみますと、やはり何と言いましても、これは向井先生はどうも反対だと言われておりましたけれども、経済秩序の問題だと思う。経済秩序の問題から考えてみると、やはり小売商人の方々が自主的に解決をする。自分たちが売っている商品はどこからくるかといえば、製造から卸を経てくるわけですから、やはりその問題を考える。それからもう一つの問題は、小売商人の方々というのは、大資本、大企業と対決のできるような形で、やはり協同化なり何なり変った形のものを考えて、そのためには金融とか税金とか、こういう方面に中心を置くのが当然であって、やはりそこに力を置くのが、小売商業の振興のための中心だ、こういうふうに私は思っている。それについての御意見をまず承わりたいと思います。  それから、時間もありませんから続いて中林さんにお尋ねをいたしたいと思うのです。先ほどから員外利用という問題が大問題になっている。私も実は昨年の十二月二十四日に、この商工委員会の調査団として、横浜それから各地の市場やあるいは生協等を見て参りました。まあ暮れでしたから、自民党の方々は、大へん熱心なようでしたけれども、一人も参加いたしません。商工委員会といっても、社会党の委員だけで見て参りました。そこで石川島の生協へ行っていろいろ聞いて参りましたが、行き過ぎも何もない。むしろ売り上げや何か見てみますと、石川島の人たちは、生協がありながら、小売あるいは百貨店に行っている、こういう事実というものは、やはりいろいろと考えなければならぬ問題でしょう。また私は今日まで不思議に思うことは、生協だけが員外利用ができていない。私の調査したところによりましても、農協は二割の員外利用ができる、漁協は五割の員外利用ができる、あるいは森林組合にも事業協同組合にもあらゆる団体において、員外利用ができておるわけです。一体どういうわけで生協だけが員外利用というものが禁止をされておったのか、ここの歴史がやはり私は不思議だと思う。そういう点につきまして、どういうわけで生協だけが員外利用というものが禁止されておるのか、むしろ私は員外利用をして、行き過ぎというものを、実質的な形で両者が話し合って、お互いに今の生協の中でいためつけられておる者が話し合って、共存共栄していく、そうしてお互いに足らないところは助け合っていく、こういうことがいいんじゃないか、こういうふうに思うのであります。そういうことからなぜ一体員外利用というものが今日までなおざりにされておったか、こういう点について中林さんにお尋ねしたい。
  53. 高橋貞治

    高橋参考人 一応現在出ております特別措置法でございますが、これだけでは決してで小売業者は振興しない、これはおっしゃる通りだと私ども考えております。そこで全日商におきましても、税の特別委員会というものを作っております。これにおいて、あるいは昨日出ました物品税、また基本的な税、税もいろいろわれわれ考えてみて、われわれの知らぬ面において不合理な面があるという点も発見いたしまして、今、特別委員会を開いております。最後の結論が出ますならば、またそういった面で大蔵省方面、また先生方にもお願い申し上げたいということをやっております。なおまた税あるいは金融面でございますが、これはまた中央会あるいはそういった中小企業団体を通じまして、特に企業庁の方も通じましてお願い申し上げて、絶えず努力をやっております。しかしながら、先ほどお話がございましたが、組織を作ろうと思っても遅々として組織が強化されませんので、とりあえずほんとうに困っている問題は法律お願い申し上げようというので八項目ができたわけでございます。今申し上げた通り、そのほかに百貨店法強化改正も二、三年前から自民党さん、社会党さんにもお願い申し上げまして、われわれも原案を持っておるわけでございます。あらゆる面におきまして、この振興措置法に小売商を振興させるということがたくさんございますが、何分にも全国日本小売商を保護する法律といったら、今百貨店法だけなのでございます。われわれの申し上げ方が足りなかったという面がございまして、非常に小売商は置きざりを食っておるという線が出ておるわけでございますが、今仰せの通り、まだまだ金融面でも十分に検討してお願いする、また税の問題でも中を調べますと、小売業者の事業税におきましてもそうでございますし、また大企業に特に税金を安くする面もあるようでございまして、この面も検討せんければならぬじゃないかと思っております。どうか今申し上げた通り、とりあえず振興法の八項目を、あくまでわれわれ小売業者は今国会で法律にさしていただきたいと思っておるわけでございますが、また御質問で違っておりましたら一つお聞かせを願いたいと思います。
  54. 中林貞男

    ○中林参考人 今勝澤さんからの立法の経過その他から員外利用の問題がなぜ生協だけにおいて禁止されておるかという問題でございます。私は消費生活協同組合法の制定のときからずっと関係をしておりまして、特にこの立法に当って、厚生省あるいは司令部、あるいは当時は芦田内閣で小野孝さんが厚生委員長をしておいでになったと私は思っております。この小野孝さんとも何回もお会いして逐条的にも御相談したわけですが、当時生活協同組合で員外利用を禁止する、ただし書きでこれを認めるという、許可を得て認めるということになりましたのは、むしろ今日問題になっておりますように、生活協同組合を育成するという立場から二割とか何とかというにとで、がちっとしてしまうよりも、やはりウェーティング・メンバーを、さっき向井先生がおっしゃいましたような形で、また私たち生活協同組合は考え方としてやはり組合員のための組合ですから、建前は員外利用はやらないという建前が、私どもも建前としては正しい。しかしながら生活協同組合を伸ばしていくという場合には、それは例外的なただし書きで認めていただくというふうにあった方がいい。従って、その当時立法の中心でいろいろお骨折りをいただきました小野孝さん並びに厚生省との間で、私たち話し合いましたのは、ただし書きで、いわゆるウェーティング・メンバーのようなものは当然として、事業機関としてそういうようなものは当然差しつかえないのだという解釈で、そうして正しい協同組合員の考え方を、むしろ良心的に貫いておいた方がいいだろうという形で、員外利用は禁止する、しかしただし書きでああいう規定をしてそれを認めていくというふうにした方がいいだろう。ところがその後非常に政治的な形でそれが扱われまして、現在小売商業特別措置法という法律の中では生協をがんじがらめにしてしまう。立法当時の、私たちと当時の国会の先生方並びに厚生省の人たちと良心的にいろいろ話し合った考え方が全部踏みにじられまして、小売商業特別措置法では生協をがんじがらめにする。そうして、よく米子のことが問題になるわけでありますが、米子で員外利用をやっておると盛んにいわれますが、一昨年の春、公開経営研究会が主催しまして、全国商業者の代表も集まって、私もそこにあいさつを述べに行ったわけでございますが、米子の問題は生協に問題があるのではなくて、米子の商業者の方に問題があるということは、当時公開経営研究会にお集まりになった全国商業者の代表の間で結論が出た問題でありまして、米子は戸数が、市が二万で、周辺を入れて三万、しかし米子の組合員は現在一万三千人おるわけです。組合員が一万三千人といいますと、二万の戸数に対して過半数をもう組織しておるわけです。従って、暮れにも私は米子に行って参りましたが、米子に大ぜいの人が来ておりますが、これは全部組合員であるわけです。行ってみたら、いかにも員外利用をやっておるようでございますが、そういうような形で、いろいろ誤解されて喧伝されておる面がたくさんあるということを諸先生方にむしろ御了解をいただいておきたいというふうに考えております。
  55. 中井一夫

    ○中井(一)委員 ただいま生協の問題について、私どもは生協はその特典として税法上その他につき、一般小売商人よりはよほど利益ある待遇を国家から受けておると信じておるのに対して、生協専務理事の中林さんからはそうでないという御趣旨のお話があり、後には実はそうだということをお認めになったように思いましたから、私はあえて言葉を返さなかったのでございますが、ただいまの御質問によりまして、この点が特典なきものとして御了解になっておるようでありますから、特典があるのだということだけを明らかにしておきたいのであります。  そこで、昨年の十二月二十三日、私がこの点について生協と一般小売商との間には、国家よりの特典につき、いかなる差異があるかということを、岩武中小企業庁長官に質問いたしたに対し、同長官から、かような答弁がございました。すなわち「消費生活協同組合に対する税制上の特例としましては、法人税が一般法人に比べまして安く、税率は二八%でございます。一般法人は御承知のように三八%、特別法人におきましては三三%であります。それから事業上得た利益の留保に対しまして、出資総額の四分の一までは法人税をかけないというふうな恩典もございます。それから印紙税、登録税等は免税になっております。地方税の方では住民税、市町村民税といったものは免税、それから事業税は一般法へに比べまして低いようであります。八%程度かと思います。一般法人は一二%程度かかっております。その他課税標準につきまして、固定資産税あるいは不動産取得税等におきまして、ごくわずかな範囲ではございまするが、何か課税標準の特例もあるようであります。それからこれは国の予算上の措置でございまするが、生活協同組合に対しまして、国の予算から都道府県を通じまして消費生協に対しまして貸付が行われております。これは共同利用の施設に対してでありますが、その貸付に対して国が半額の補助を行なっております。今年度におきましては予算がわずかでございます。九百万円程度の予算でございます。」、かように公式に、政府の発表がありましたことは、当日の速記録によって明白でございます。  この点は私が研究して得たる結果と同様でございますから、決して生協が一般小売商人に比し国家より特別なる恩典を受けていないなどということはございません。事実はかくのごとき状態にあるということだけは、この機会に明らかにしておきたいと思います。
  56. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には長い間貴重な御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。  午前中はこれにて休憩し、午後は二時より開会いたします。     午後一時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時二十六分開議
  57. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。小売商業特別措置法案、及び商業調整法案の両案について、引き続き参考人方々より御意見を聴取することといたします。この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はきわめて御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。この両法案は、今国会において当委員会審査しております諸法案中でも、特に重要な法案でありまして、審査に万全を期するため、提出者質疑を行うばかりでなく、実務に携わっておられる方々の御意見をも伺うべく、本日御出席を願った次第であります。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ下さいますようお願い申し上げます。ただ時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べいただきます時間は、大体お一人十五分間程度にしていただきたいと存じます。なお後刻委員からの質疑がございますが、その際に十分お答え下さいますようお願いをいたします。念のために申し伝えておきますが、規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさいます際には、委員長許可が必要でありますし、委員に対して質疑はできないことになっておりますから、あらかじめお含みおき願いたいと存じます。  それではこれから順次参考人方々に御意見をお述べいただくことにいたします。全国商店連盟専務理事三浦正義君。
  58. 三浦正義

    ○三浦参考人 全国商店連盟の三浦でございます。私ども小売商立場からの意見は、午前中にも高橋参考人からるる述べたことでございまして、私といたしましては簡単に現在の私どもの希望を申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、この両法案が第二十六国会より審議されながら、今日なお日の目を見ていないのでございますが、私ども小売業者といたしましては、常にこの法案提出されて両党の提案者からの理由説明にも十分に表現されております通り、非常に困難な状況に直面しておる。特に若干数字をもって申し上げますならば、三十二年末の小売商の総数は百四十八万五千店舗となっておりまして、従業員数は三百九十七万二千人、これに店主並びに家族が仕事をしておるものも加えますれば、いわゆる総商業人口は一千万をこえるのでございまして、この数字はまさに全人口の一割何分にあたる膨大なものでございます。戦前の最高を見ましても、昭和十五年に四百三十八万、それからすでに商業人口は七百四十万、三百万も増加しておる。これらは小売商が非常にもうける分野であって、だれもかれもが喜んでこの分野に流入していくというものでなしに、全く戦後の人口の増大あるいは領土の減少といったふうな面から、やむを得ずこの部門にむしろ失業人口が流入してくるというふうな形になっておりまして、一昨年でございましたか政府の発表した政策の中にも、完全就業の一環として、小売部門で二百数十万を雇用せしめるといったふうな線も打ち出されておったのでございますが、そういう点から見ましても、この小売商がいかに過当競争の中に没入しておるかということがはっきりわかり、またこれがゆえに政府でも社会党でもこの法案を出していただいたものだとわれわれは、確信しておるのでございます。しかしながらこの法案両方を通じて見まして、われわれが希望しておりますところの諸種の要望を十分に満たし得るものであるかどうかという点から見ますれば、若干不満の点が——若干どころか十分にあるのでございます。特に私どもがお願いいたしたいのは、いわゆるこの部門においては、これという歴代政府の施策にほとんど見るべきものがなかったにもかかわらず、全人口の一割以上がここで生活しており、さらに二百数十万もこの中へ投入して、日本のいわゆる人口問題あるいは雇用問題を解決していこうという重要なる部門である。かつまた国家的、社会的に見ても、この附属を崩壊せしめないで存続維持せしめることは、国家社会のためにきわめて重要なことである。従ってこの法案は、両法案とも、大資本家や労働組合といったふうないわゆる他の勢力や力のバランスをお考えになる前に、この膨大なる階層の人口をどう処理するかという主体性を小売商に置いた法案にしていただきたい。そういうお立場からこの法案が作られたものであり、またその審議の過程においてもその基本線をくずさないで持っていっていただきたい。将来小売商というものをどう持っていくか、現状はどうなっているか。私はせっかくここにいただきました資料によって勉強させてもらおうと思いましても、たとえばこの資料の数字でも昭和二十五年以後の数字は出ていないものすらあります。非常に重要な第一ページの数字でさえその程度の調査しかできていないような現状でありまして、その現状から出発して一体いかなる施策が立つであろうかということを非常に憂えるものであります。私どもは、最初に申し上げたとにろの、たとえば小売商登録制であるとか、あるいは許可制であるとかいうことも、その必要の有無さえだれにもわからない問題ではないかと憂えるものであります。  さような見地におきまして、私どもは何とか私どもの要望通り法案を作っていただきたいという気持は十分ございますけれども、といって現在のいわゆる国家全般の状況から見て、果して小売商のみ要望が一ぺんに通るとも考えられません。そこで私は両党の先生方お願い申し上げたいのは、現在の段階においては、少くとも小売商全部が痛切に要望しているところは、何とか今国会でこの小売商業特別措置法案を日の目を見せてもらいたい。ここを足がかりにして私どもの立場を切り開いていきたい、こういう希望に燃えておるのでございます。従いまして特に政府案で触れておりますところの生協並びに購買会規制については、この法案がいかにも征伐法のごとくに見えますけれども、この一つでさえ実現したとしても、私どもの要望の一端はかなえられるのでございまして、全国生協の発展ぶりは、去年一年だけでも百十組合ぐらい増加しております。またある都市、たとえば熊本県の水俣等におきましては、全市の総売り上げの約半分近いものを生協で売っておる。あるいは購買会のようなものもそういったような形になっております。私どもの現在の立場は、一方においては、百貨店等の大資本によって圧迫を受け、一方においては購買会並びに労働組合等の経営する生協の組織の挾撃を受けておるのでございますから、そのどちらかからでも順々にはずしてもらわなければ、とても耐えていけないのだという観点から、ぜひ今国会では完璧なものとまではいわないにいたしましても、法案の実現を希望する方が、もはや急務という苦しい前場にあることを訴えまして、そのように御処置願いたいと希望するものでございます。  なお数字的な問題につきましては若干資料を持っておりますのでお答えをいたしますが簡単に御要望を申し上げておきます。
  59. 長谷川四郎

  60. 佐久洋

    ○佐久参考人 日本石炭協会専務理事の佐久でございます。この小売商業特別措置法案及び商業調整法案に関連して、若干の意見を申し述べさしていただきたいと思います。私がこれから申し上げますのは、炭鉱の購買会立場からこの法案についての意見を申し上げますので、あらかじめ御了承を願いたいと思います。  前に、昭和三十二年に小売商振興法案という名前で呼ばれたものがございまして、この法案購買会規制に関しまして相当強い規制をいたしたように記憶しております。たとえば販売品目の限定であるとか、購買会の設置の場所の制限であるとか、あるいは市価と同一価格において販売しなければならぬというようなことでありまして、これらをかりに実現されたとしますれば、とうてい現在の炭鉱購買会事業活動を行うことができないことになるわけでありまして、炭鉱側としてもそういう内容ではなかなか納得ができなかったのであります。     〔委員長退席、南委員長代理着席〕 そこで業界といたしましては、各関係方面に対して炭鉱の購買会の特殊事情をずいぶん御説明を申し上げまして、あくまで実情に即した解決をおはかり願うようにということをお願いして参ったのであります。その後小売商業特別措置法案の名前で本国会に御提案になられたこの法案内容を拝見いたしますと、各種の点で相当に緩和をされて参りました、ただこの法案の中で特に注意を呼び起す点が一、二点ございます。それは員外利用の禁止方法に関する規定でございます。炭鉱の購買会といたしましては、従来も員外の者が利用をすることを防ぐように、員外者の利用がないようにということについては相当厳重な注意をして参ったのであります。これは御承知のように、炭鉱は場所的にも購買会を利用する者はほとんど従業員とその家族に限定されておりまして、員外者であるか、あるいは内部の者であるかという識別はきわめて容易でありまして、従いまして特に従来といえども従業員であるというようなことを証明するための特別のものを発行するというような方法を講じなくても、員外者の利用を防ぐ実は十分にあげられて参ってきております。この法案におきまして証明書を発行して員外者の利用を禁止する実をあげようとしておりますが、かりに証明書を発行するということにいたしますと、一つの家族で一枚ではとうてい足りないわけであります。家族の数に応じて数枚発行しなくてはならぬということもありますし、また証明書を紛失した場合には、そのつどまたその証明書の発行を、し直さなくちゃならぬというような問題もあります。さらにまた現実の購買会内部における売買を見ますると、大体時間的に昼休みとか、あるいは夕刻とか、集まる時間は非常に片寄っておるわけであります。その際多数の購買者が来るのに一々証明書を提示するということもなかなかめんどうなことであります。従来の実績から考え、なおこのめんどうな点を考えてみますると、証明書を発行するということは、決して事態をさらに一歩改善するということにはならない。むしろ繁雑さを増すだけに終るのではないか、かように思うわけであります。  次に利用券制度の点の規定でございますが、利用券によって物品を購入するというやり方は、戦前にすでに炭鉱においては経験済みであります。戦前におきましては、利用券という言葉は使っておりませんが、炭鉱の購買会では山券、あるいは金券と通称されておりました。この金券利用によって炭鉱購買会としては相当売り上げが増すのであります。これは実績がそれを示しておりますが、反面また弊害も相当多くあったわけであります。その一例として申し上げますと、従業員が現金を使わないために、つい余分なものを買ってしまう。その結果月末の家計面で相当の無理が生じる事例がしばしばあった。またきわめて少ないケースではありましたが、炭鉱購買会だけに通用するその金券を町の者が買い集めまして、今度は一般の市価よりも安く購買会品物を相当まとまって町の者が買い取るというような弊害も出たのであります。さらにまた購買会といたしましては、この金券制度が、あとで整理をするのに時折間違いを起したり、なかなか手数がかかったりというような弊害もございます。あるいはまた購買会としましては、利用度が相当に増すとともに、現金は月末でなければへりませんので、商品の仕入れに伴った資金面での困難があったという実例もございます。こういうような関係がいろいろ戦前に経験されまして、次第にこの制度は廃止されました。今日におきましては購買会の経理面の独立採算制という制度とともに、現金買いが大部分になったのでありまして、これをさらに利用券制度というものを規定して、そういうやり方をとるということになれば、以前の弊害でだんだんに改善されたことに対して、またこれを逆行するということになろうと思います。利用券制度によりますると、購買会の売上額が増しまして、かえって町方の小売商の方には金が流れないという結果にもなるのでありまして、こういう点は小売商を保護しようとする趣旨と、若干結果において違ったことになるように思われます、現在、冒頭に若干触れましたが山炭鉱の購買会経営については、町方の小売商との摩擦を極力避ける方法を講じて参っておりますので、事炭鉱に関しましては、地元の小売商との紛争というものはないと思っております。御承知のように、炭鉱を始める場合には、ほとんど山野あるいは田畑というようなところから仕事を始めますので、やむを得ず従業員の生活必需品などを提供する購買会というものを作らざるを得ないのであります。そこで、だんだんと事業が拡張するに従って従業員もふえる。そこで小売商もだんだんに興ってくるというような一つの歴史的な過程を持っておりまして、町方の小売商と炭鉱の購買会というものは比較的共存共栄の実を上げておると私は考えておるのであります。  従いまして、この法案を検討いたしました結論を申しますれば、この法案でなければ問題の解決がされないということは現実にないと思いますし、またかりに員外者の利用を禁止する、あるいは利用券制度を実施するというような方法をとりましたとしても、先ほど来申しましたような繁雑さ、あるいは趣旨と違った結果が出るというようなことになりますので、私の立場から申し上げますると、小売商業特別措置法案の証明書の条項と利用券に関する条項は、削除するのが至当であろう、かように考えるのであります。  以上簡単でございますが、炭鉱購売会の立場より、この法案についての御意見を申し上げました。
  61. 南好雄

    ○南委員長代理 次に田中鋳三君にお願いいたします。
  62. 田中鋳三

    田中参考人 私はただいま御紹介いただきました大阪府商店街協同組合連会の田中鋳三でございます。大阪府商店街協同組合連合会は、中小企業等協同組合法によりまして設立されました、大阪市を含めまして、府下全体の小売商、専門店、市場等の協同組合の連合体でございます。従って、私はその立場において陳述をさせていただきます。  われわれ小売商業者は、国民経済の発展を期するにおきまして、きわめて重要な役割をになっておるにもかかわらず、現在国の施策は何一つ見るべきものがない。またわれわれは、同業者の過剰による激甚な競争と、一方大資本百貨店等の圧迫、生産業者、卸業者等の小売販売行為による小売専業者への圧迫、あるいは生協、購買全等の進出によりまして、小売商業者はますます日ごとに窮乏の一途をたどっておるのでございます。これがため、前に述べましたようないろいろな事柄を排除調整して、小売商の公正な競争の場を与えていただき、小売商の活動の分野を確保していただくことが、小売商振興の大前提であります。     〔南委員長代理退席、委員長着席〕  なおまた、われわれ小売商業者、特に零細小売商業者は、企業というよりも、むしろ生業という形態を持った小売商が多いのでありまして、日本小売商の問題は、経済政策の立場からでなく、また人口の問題とも深い関連をもっておるのでございます。これらの点を十分御了察いただきまして、われわれ小売商業者の保健育成に最善の手を差し伸べていただきたいのであります。  このときに当りまして、私どもの待望久しかった小売振興のための政府案として、小売商業特別措置法案社会党案として商業調整法案を国会に御提出げさいましたことは、私たちの最も喜ばしい限りでございまして、諸先生方に深く感謝の意を表する次第でございます。しかしながら、これらの法案を拝見させていただきまして、われわれ小売商業者として基本的に考慮していただき、また希望をいれていただきたい諸点がございますので、これからそのうちのおもなる事柄を申し述べさせていただきます。  まず第一に、生産者、いわゆるメーカーの直売その他小売行為は制限または禁止をしていただきたいのでございます。メーカーメーカーとしての本来のあり方があるはずでありますから、小売分野にまで進出して、流通秩序を乱し、小売商を圧迫するような行為禁止または制限をお願いしたいのでございます。たとえば元歌舞伎座を改造いたしまして大阪市に現在できました千日デパートのごときは、小売商の立体的な商店街の形態であるということであったのでございますが、生産者、卸売業者が名義を変えまして、直売を行なっている現状でございます。これらの業者のうちの約半分以上が、生産業者または卸業者によって占められておるのでございます。  第二に、問屋小売兼営禁止または制限していただきたいのでございます。問屋小売兼営は卸売価格によって小売することになりまして、小売商を圧迫することになりますので、この行為もあわせて制限、禁止をされたいのでございます。たとえば大阪では、御承知のごとく船場の丼池あたりの繊維問屋でございます。それから梅田近辺の繊維問屋、それから東京では、御承知のように先ほど高橋さんのお話にもありましたような横山町の繊維問屋、こういったような問屋街の小売行為が、現実に小売商の経営に直接影響を与えておるので、こういう点を十分御推察いただきまして、禁止または制限を加えていただきたいと考えるのでございます。なぜ問屋がかくまでたくさん小売をしておるかと申しますと、実は私は大阪の駅前で雑貨商をしております。ところがちょうど私の借家がこの繊維街にございまして、それを繊維問屋さんに貸しておるわけです。そこがちょうど既製服屋さんでございまして、私が家賃をもらいに行きますと、暮れあたりはしろうのお客さんで一ぱいなんです。それで実は寸法を直せというお客さんが非常に多いわけです。小売商が参りまして品物を仕入れるときは、寸法を直せという小売屋は全然ないのでございます。ところがしろうとの悲しさ、自分に合うやつを買わんがために参りますから、そでが長かったり、すそが長かったりしますので、それをしきりに直せということを言う。私のところも実はズボンとか洋服を売っておるのですが、われわれそう言われたときには、町に直し屋というのがございまして、こういうものを縮めたり伸ばしたりするところがございます。それに私のところも出しておったのでございますが、昨年の年末あったりは、出してもなかなかその順番が回ってこないということで、やむなくミシンを一台買いまして、そういう人を一人入れまして、急場の間に合わしたような始末でございます。ところが、なぜそういう直し屋がどうして仕事が多いかと申しますと、いわゆる繊維問屋の既製服屋さんで小売したやつが寸法直しに全部そこへ参るのであります。それが山と積まれておる。これをもって卸屋さんの小売行為が非常に大きいものであるということを私は痛感したわけでございます。その一例をただいま申し上げたわけでございます。  第三に、大資本によるスーパーマーケットの新設、増設は、これまた制限ないしは禁止をしていただきたいのでございます。百貨店資本や私鉄資本によるスーパーマーケット、いわゆる廉売市場でございますがこれは大資本による小売商の圧迫であり、百貨店法の網をくぐった百貨店資本の暴力で、いわゆる周辺の小売商の経営に著しい影響を与えるものでありますから、このようなマーケットの新設、増設を禁止する条項を私は設けていただきたいのでございます。  第四に、購買会の開設を許可制とし、消費生活協同組合の取扱い品は、狭義のいわゆる生活必需物資に限定し、員外利用は厳に規制していただきたいのでございます。購買会または共済組合は、本米従業員の福利厚生施設でありますから、その経営は極端な廉売主義をとっておりまして、しかも任意の施設であるためにその影響は周辺小売商、いわゆる商店街に甚大な影響を及ぼし、その周辺の小売商は成り立たなくなるのでございます。購買会の設立は許可制とし、員外利用を禁止していただきたい、これもあわせてお願いしたいのでございます。  また生活協同組合は、消費者みずからの購買組織でございまして、それが市街地のまん中に売店を設けまして、デパートと同じようにどんどん商品を売っておるところがあります。しかも不特定多数の一般消費者に対しても員外販売をやっているとにろもありますので、このような生協のあり方を禁止し、また原則的に員外利用販売を制限し、または禁止していただきたいのでございます。  以上、いずれも一応法案に盛られておるのでありますけれども、現在の法案ではやわらかい規定で、隔靴掻痒の感がありますので、強く禁止、制限をしていただきたいのでございます。  次に私設、公設の小売市場の新設、増設はぜひ許可制としていただきたいのでございます。政府原案では、小売市場の賃貸契約の許可制となっておりますが、このような方法では、現在われわれが悩んでおります乱売、過当競争を抑制することはとうていできないのでございます。今大阪におきます小売市場の現状を簡単に申し上げますと、昭和三十三年四月現在の大阪府下の公、私設市場の数は五百十二、うち大阪市内に三百二十六市場、衛星都市その他を合せまして百八十六市場があります。昭和二十七年に三百二市場があったものが、その後市場の乱立が激しくて、年平均四十三市場が開設され、しかもそれが大阪市と隣接都市の周辺に数多く設立せられております。しかも衛星都市と接続する大阪の七地区、いわゆる東淀川、旭、城東、東成、生野、東住吉、住吉区の各区でありますが、これだけで百五十七市場が存在いたしまして、大阪市内の市場総数三百二十六に対して、実に半数近くが衛生都市との境界に接して設立されておる現状でございます。これらの地域においては、市場の乱立がいわゆる過当競争によって、やはり室店舖が現在そろそろできておる現状でございます。さらにこれらの地域においては一市場当りの世帯数から見、いわゆる経済上必要とする最小限度の世帯数は、一つの市場で三千世帯と申されますが、その世帯の基準をはるかに現在下回って、市場業者は大へん経営が苦しく行き詰まっております。以上の実例に徴しましても、大阪におきましては、小売市場は飽和点に達しておるように思います。さらにこれ以上小売市場を何ら規制することなく放置するときは、いたずらに乱売、過当競争を助長するのみでなく、従来あります商店街に及ぼす影響もまた甚大であります。こうした状態を御洞察下されて、許可制を採用していただいておりますことは、まことに感謝にたえないのでございますが、その規制方法が、政府案におきましては建物の貸付契約の許可制となっておりますが、これではますます増加の傾向にあります小売市場の乱立を抑制することができないのみならず、かえって市場乱立の機運を助長し、法の裏をかく貸付契約、いわゆるやみで権利金を取るということに小売市場がなりまして、かえってわれわれを苦しめるのでございまして、われわれといたしましては、小売市場の開設の許可制をぜひお願いする次第でございます。  なお、小売市場の乱立、過当競争は、さきに申し述べましたごとく、特に大阪においては大阪市と隣接衛星都市との地域に顕著でありまして、大阪市のみを切り離して解決は困難であります。従って、われわれ業者にとりましては許可権は広く府県において統一的に指導監督せられることを強く望むものであります。  以上述べました諸点、特に小売市場の許可事項に関しましては、小売業者立場を十分御考察下さいまして、本通常国会におきましてすみやかに法案を通過させていただくよう御尽力を賜わりますことを切にお願いいたしまして、私の意見といたします。
  63. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に全日本農民組合連合会常任理事沼田政次君。
  64. 沼田政次

    ○沼田参考人 私は全日本農民組合連合会の役員の一人でございますが、実は御提案になりましたこの二つの法案につきまして、不勉強からでもございましょうが、農民の立場からいたしまして、というよりは、むしろ消費者の人として申し上げたい、こういう気持でお話を申し上げてみたいと思うのでございます。いろいろ実際的な知識もございませし、先ほど申しました通り研究も深くしておりませんので、具体的なお話はできかねるのでございますが、私は大体この小売商の問題を三つの観点から眺めてみたいと考えております。  第一は小売商自体の問題でございます。今日小売商の皆さんが非常に困っておられる事情というものは十分承知しているわけでございますが、その基本的な原因がどこにあるかと考えますると、やはり、これは何と申しましても小売商の組織的な力が弱いところに一番大きな原因があるのではないか、こう考えるわけでございます。そういたしますとするならば、この組織の力の弱い小売商をいかにして守るかということになりますと、より強いものの小売商分野への進出を防ぐ、これが最大の眼目でなかろうかと思うのであります。  たとえば、百貨店法がしかれましたけれども、しかし百貨店小売商に対する脅威はなくなってはおりません。あるいは先ほどからお話のございました通りメーカー小売分野への進出、卸売の小売分野への進出というようなものも一つの大きな問題になっているわけでございます。そういう点から考えまして、やはり今日小売商の方方として一番問題にするのは、小売商の諸君よりももっと大きな資本を持ち、取引上有利な地位にあるものの進出を防ぐということに最大の眼目が置かれなくちゃならぬのじゃないか、かように私どもは考えておるのでございますが、そういう意味から申しますと、小売商の皆さんよりは、さらにもっと弱い組織の力しか持たない消費者にしわを寄せるということは、これは見当違いでなかろうかと思います。あるいは、一つの配給機関として社会的な意義を持っておりまする生活協同組合にほこ先を向けるということも、これまたお門違いでなかろうかと私ども思うのでございまして、やはりこれは何といたしましても大きな資本からの脅威を防ぐ、そういうところに現在の段階においては力点を置いて御立案をせられるのが最も望ましいことであると、私は考えざるを得ないのでございます。  生協の問題でございますが、この法案では購買会生協とを全く同じに取り扱われておるようでございます。しかし購買会の性格と生協の性格とは、かなり違っておると思うのでございまして、たとえば、購買会が設けられておりますのはほとんど大きな企業とか、あるいは官庁とかいうものが背景になって購買会ができております。従って、これを利用しておりますのはどちらかといえば、比較的所得の恵まれた人たちがより多く利用しておるのではないか、あるいは少くとも、恵まれたといわなくとも、安定した所得を持っておる人たちがこれを利用しておるのでございます。生協はそれに反しまして、いわゆる町の消費者が少しでも中間の利潤を排除したいという気持から、自主的に作りましたところの購買機関でございますので、性格において全くこれは違っておる、こういわなければならないのであります。ところがこの特別措置法案の条文を見ますと、この購売会と生協とを全く同一に取り扱われておる、同一に取り扱われておるだけではなく、及ぼす影響というものは生協の方にむしろ強いのではないか、こういうふうに考えるのでございます。と申しますのは、購買会はもともとその成り立ちから申しましても企業の内部、会社の内部あるいは官庁の職員、そういう人たちに奉仕する一つの福祉施設としてできておるのでございますから、員外利用とかそういうものをもともと予想してかかった仕事ではないのでございます。ところが、生協の方になりますと、はっきり申しますとこれら興外利用がなければうまくいかない。日本消費組合の発達が非常に未熟でございますので、商人の方が一時損をしても相手方を倒す、こういう自由競争の悪いところを発揮いたしまして、競争を買って出ますような場合には、やはりそうした組合員としての訓練が十分行き届いておらない現在の日本の組合員の意識では、すぐ商人の方に流れていくという傾向があるわけでございます。従いまして、生協といたしましても、常時ある程度の一定の需要というものを確保いたしますためには、そうした二割程度の員外利用というものはどうしても必要になって参ると考えるのでございます。農業協同組合その他の協同組合においても二割の員外利用を認めているということは、そこから来ておるのではないかと考えるのでございますが、そういう点で購買会生活協同組合とを同一視しているところに、一つの認識の誤りがあるのではなかろうか、かように考えるものでございます。  そこで、この禁止措置の問題でございますが、購買会の方は当然やってはならないものに対してこれを押えるというだけのものにすぎない、員外利用というものは購買会としては本来やるべき筋合のものではない、それを押えるということでございます。ところが、生協の方は法律の上では原則としては員外利用を認めておらないが、許可があれば員外利用をしてもよろしいということになっておるのでございますが、その員外利用というものをこの際未然に「その利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、」この許可をしないような措置をとろう、こういう第三条の規定が出ておるのでございます。購買組合の場合はやったならば押える、消費組合の方はすでに予想をして、員外利用というものを絶対に禁じてしまう、こういう条項がございまして、そういう点から申しますと、購買会生活協同組合との性格の相違からいたしましてもそうでありますし、またこの条文の表面の解釈からいたしましても、生協の方により強い影響を与えるような条文になっておるということを考えざるを得ないわけでございます。  さらに、第十五条を拝見いたしますと、メーカーとの紛争に対して、あるいは卸売業者との紛争に対し、あるいは「中小小売商以外の者の行う」というのでありますからして、ここに農協とかあるいは生活協同組合とかいうものが入ると思うのでありますが、これを並べましてそうして調停、あっせんの対象としておるわけでございます。ところがメーカー小売業に進出することを押える規定はございません。卸売業者が小売分野に進出することを押える規定も現在の法律ではございません。ただ、あるのはこの法律案におきまして購買会生協とに対して、必要があれば員外利用を禁止するということが前の方に具体的に規定をされておるわけでございます。従って購買会生協を対象とする紛争をあっせん、調停する場合には、ちゃんと具体的な基準が法律の上に出ておるということになりますから、これはきちんとそれで押えることができる。ところが生産業者や卸売業者との紛争の場合には、小売業の領域に進出してはいけないという規定はございませんから、勢いあっせん、調停というものは政治的な解決ということになるだろうかと思うのであります。従って、現実の場合におきまして、結局小売業者はそういう大資本の場合にも少しかなわないという情勢が出てくるおそれがあります。そういう点から申しまして、生産業者や卸売業者の場合には、別に具体的な法律上の押える規定というのを持たない、しかし購買会なり生協の場合には、ただ一人の員外利用をやった例を持ち込まれましても、れれでもって直ちにこれを押えるなり、あるいは罰則を加えられるということになりまして、この点から申しましても、この法律のねらいが非常に見当違いをされておるのじゃないか、こういう印象を受けるものでございます。そういうことで、要するにこの法律案が、大資本その他、小売商が最も圧迫を感じている方向に向って小売商を保護するという考え方から出発しておらないところに一つの欠陥があるのじゃないかという気持が私どもするわけであります。  第二の問題といたしましては、私は、この小売商の問題を考えまするときに、やはり流通機構全体を合理化する、適正化する、そういう広い見地に立ってこの問題を処理していただくことがけっこうではないかと思うのであります。私ども農民なりあるいは消費者立場からいたしまして、現在の小売業者のあり方が決してけっこうだという印象は受けておりません。たとえば農家が牛乳を売ります場合には、一升四十円そこそこで買い取られていく。それが市場におきましては一合十四円なり十四円五十銭なりで売られておる。あるいはまた野菜などが去年あたりは非常に高くなったと言われますけれども、農民が小売市場に持って参ります、するとその市場のすぐ目の前の八百屋さんで光っている値段の三分の一くらいにしかならない。あるいは鶏の卵にいたしましても、現在東京都内におきましては十四円から十六円もしておりますが、しかし農民が庭先で買い取られる値段は十円そこそこである。今日専業で鶏を飼うならば、千羽飼わなくちゃ成り立たないと言われておりますが、この千羽の鶏が一日に六割産むといたしまして六百の卵ができる。この六百の卵を小売屋さんが売れば、ちょうど千羽を飼っておる農民の収益とほとんど同じになるわけであります。厳密に計算いたしますと、現在のところ鶏一羽飼って年間五百円くらいの利益しかありません。そうなりますと、朝から晩まで少しも目を離さずに高い飼料を与えて鶏を飼っておる農家の骨折りと、その鶏の産んだ卵を店頭に並べて売る小売商の収益とを比較して考えますときに、いかにも農民は割の悪いものだ、こういう感じが強くいたすのでございます。小売商立場からいたしますれば、それ相当の理由があるのは十分承知するのでございますが、とにかく今日の流通機構という問題が、もう少し政策の上においても大きく取り上げられなければならないと私どもは考えております。しかしそれが十分に取り上げられておりませんのは、やはり消費者の力が弱いからである、こういうふうに私ども考えております。  そこで消費者から言わせれば、百貨店は掛値なしで、しかも気がねなしに買うことができて非常に便利であります。また小売商も違った意味で、すぐ家まで出て参りましてサービスをしてくれる、配達までしてくれる、そういう点で非常にまた便利でございます。また生活協同組合は生活協同組合で、小売商などが地方的に非常な暴利をむさぼるような傾向にある場合に、これを牽制する意味からいっても、ああいう組織というものはあった方がよろしい。私が住んでおる神奈川県の大和市の場合は、駐留軍のアメリカ兵がたくさんおるせいかいたしまして、私去年東京都内からそちらに引っ越したのでありますが、小売の値段が二割も確実に東京都内よりは高いのであります。そういう場合に消費者が自主的に生協のような組織でも作って、そしてやりますならば、牽制もきいて、多少消費者としての立場が楽になるのではないか、こういうふうに考えておりますときに、私ども消費者といたしましては、百貨店なりあるいは小売業者なりあるいは生活協同組合というものが、それぞれの特徴を発揮しながら、お互いに牽制すると言っては悪いのでございますが、消費者に最もよくサービスする形をとっていただくことが一番望ましいと考えるわけでございます。そうした意味生活協同組合は、聞くところによりますとその販売量においてはまだ一%にも足らない、こういうことでございます。従って私どもは消費者立場からいって、もう少し生活協同組合の組織をむしろ伸ばしていただきたい。国の目からいたしましてもあたたかい手を差し伸べていただきたい、かように考えるわけでございまして、せめて生活協同組合の販売量が全体の五分なりあるいは一割にもなりますならば、そうした意味消費者にとっては非常に望ましい形であると考えるものでございます。そうした意味から申しまして、一部に、たとえば生協小売商人とのいざこざが非常にあるところもあるということは聞いておるのでありますけれども、しかしそれはケース・バイ・ケースで御処置いただきまして、法律規定いたしまして全国的に生協の行き方を押えるというようなことは少し行き過ぎである、個々の問題としてそれを解決すれば十分に解決できる、かように私ども考えておる次第でございます。  第三は、私は消費者立場というものをやはり強く考えていただきたい。小売商関係のある法律をお出し下さるにいたしましても、いついかなるときでも消費者立場をお忘れいただかないようにお願いしたいと考えるわけでございます。実は消費者立場というものは一番弱い。小売商が弱いと申しましたけれども、消費者立場というものは一番弱いのでございます。消費者という階級があるのかどうかということをいわれますけれども、しかし一定水準以下の所得しかない者や、あるいは得所の固定しておるような人たちにとっては、やはり収入というよりはむしろ支出の方が大きな利害関係を持っておるわけでございますから、そうした弱い消費者のために、こうした商業関係法律をお出し下さるにいたしましても、絶えず一つ御注意を払っていただきたい。そういう意味から申しますならば、単なる都道府県知事やあるいは調停員の調停、あっせんというようなことでなしに、やはり消費者代表というものを正式に加えた調整機関というものを常時設けていただきまして、絶えず流通関係が適正に行われるような仕組みを考えていただきたい、かように考えておるような次第でございます。  なお市場の問題でございますが、この点はあまり研究いたしませんので、多く申し上げることはございません。ただこの法案においては、市場の中の小売商人との間の契約関係を公正にするとか、あるいは市場以外の小売商人との間にいざこざができた場合にあっせん、調整をするというようなことが考えられておるようでございますけれども、先ほど他の参考人が申しました通り、やはり今一番の問題になっておるのは数が多過ぎて困っておるところがあるということでございますから、やはりこれは数の制限にまで踏み込まなければ徹底したものではないのではないか、かように考えするのであります。たとえば十の店舗ということを一つの標準にしておりますが、九つにして二つに分けた場合にはどうなるか、あるいは権利人を二人、三人にしたらどうなるかということになりますと、文字通りこれは抜け穴が出て参るわけでございますので、そういう点で数の制限まで踏み込まなければ徹底したことにならないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。  以上いろいろと申し上げましたが、要するに小売商を保護するためには、小売商より強い勢力の進出に対して防ぐことが主眼でなければならないこと、それから消費者立場から申しますと、生協というものはやはりもっとあたたかい目でもって育ててやっていただかなければならないのではないかということ、さらに消費者立場を守る立場に立つところの常設的な調整機関を設けて、流通機構全体がよくなり、消費者も喜び、小売商も喜ぶといった、そういう施設をしていただきたいのでありまして、県知事のあっせんなどは、乳価の問題で、私ども農民団体が身にしみて痛切に感じておりますように、ほとんどこれは役に立たない問題であります。どうぞそういう点を十分御考慮の上、この法案について適切なる御審議をいただくことをお願い申し上げまして、はなはだ僣越なことを申し上げましたが、以上をもって私の公述を終ります。
  65. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で参考人方々の一応の御意見の開陳は終りました。  次に質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。小林正美君。
  66. 小林正美

    ○小林(正)委員 まず最初に三浦さんと田中さんにお尋ねしたいと思うのでありますが、お説のごとく現在の小売業者というものは自分たちと質の違う異質のもの、すなわち百貨店であるとか、あるいはメーカーであるとか、問屋であるとか、ないしは購買会生協、そうした方面からいろいろと圧迫を受けておる。もう一つ自分たちと同じ仲間であるところの同業者、過当競争という形で非常な苦しい状態におるということで、大へん困っておられることはよくわかるのであります。そこで三浦さんが先ほどお話になりました登録制の問題でありますが、私も登録制をしくということは大へんけっこうなことであって、これは小売業者の実態を把握する上において、どうしても必要だと思っておりますが、さらに突き進んで聞きたいことは、登録制を設けて小売業者の実態が把握されたその後に、たとえば三浦さん自身は非常に厳格な計画性を持たせた小売商のあり方というものを想像なさっていらっしゃるか、ないしは一応登録制は設けたけれども、実際はもう自由放任の形でほうっておくのだというようなお気持でお考えになっておるのか、登録制というのは言葉ではきわめて簡単な言葉でありますが、この問題を将来どういう工合に持っていこうとなさるか、一つ小売業者立場から率直にあなたのお気持をお聞かせいただきたいと思います。
  67. 三浦正義

    ○三浦参考人 農民の場合を例にとってみましても、何反あるいは何町という土地がなければその一家族の形態というものは維持できない。従って農村の二、三男問題というものはいろいろな意味で問題化してくるのでございますが、同様に小売商の場合でも一店当り何十人の消費者というものが配分されておるようなことがきわめて望ましいのでありますが、これは数字的にも、また実際問題としても非常に困難な問題でございます。同時に過当競争であるとか、あるいは小売商が過剰であるというようなことを申しましても、たとえば百貨店が何十万人に何店舗が理想だとか、いろいろ説はございますけれども、果して確固たる数字がどういうところから出されているのか、私まだ不勉強でわかりませんが、いずれにいたしましても現在の小売商というものがどういう状態になっているかということが、ほとんど的確につかまれていない。ここに私は政策の根本の貧困というものが原因しているのではないかということを痛切に感ずるのでございます。たとえばこのいただきました小売商関係資料という表を見ましても、これの第一ページの産業別就業者数の推移というのは昭和二十五年というのが最新である。今から八年も前の資料で一体今日の小売商をどういうふうに措置するかというふうなことは、私は問題を的確に把握する上において大へん不都合じゃないかと考えるのでございまして、先ほど農民団体の方のお説がございましたが、農業には実にりっぱな統計が的確にできておりますので、小売商についても、まず第一にそこから出発すべきであるということが当面の気持であります。同時に将来その数字がどういう状態になっていくかということが浮き彫りにされてくるのであります。人口何万に対して繊維業者が幾らある、あるいは食堂が幾らある、いろいろの面がはっきり出てきたときに、それに対してどういう手を打つかということは、そのときの情勢できめていくべきものだと思っております。
  68. 小林正美

    ○小林(正)委員 わかりました。私もその点は同感でありまして、そういう意味合いにおいて登録制要望しておられるということはわかりました。  次に佐久さんに一つ御質問したいのでありますが、購買会の問題が出ましていろいろ御説明がございました。炭鉱のようなああいうきわめて辺境の地において新しく鉱山を設けて、それから人を集めて仕事をするという場合に、購買会を会社の直営で持たせるということは、これはよくわかるのでございますが、たとえば鉄道の購買会であるとか、あるいはまた割合に町に近いところの工場などにおける購買会が、いろいろ問題を起しておるというようなこともございますので、私は参考人の選び方が少しまずかったのではないかという感じがするのでありますけれども、購買会全体について一つ私の考え方を申し上げたいのですが、われわれ率直な気持で申し上げるならば、生協というものは購買会とは根本的に違っておる。生協というものはこれはできるだけやはり育成をして将来発展をさせていきたい、ただしそれが著しく周辺の小売業者に圧迫を加えるという場合はおのずから別でございますれども、全般的にはやはり生協というものは育成すべきものではないか、かようにかんがえます。  ところが購買会というものは、これは大体給与の一種の変形とでも申しますか、悪い言葉で言うならば給料のごまかしであることも言えるのでございまして、これは僕らとしてはできるだけ一日も早くむしろ解消すべき性格のものではないか、こういう工合に考える。できれば購買会は将来どんどんとその地区の、いわゆる従業員の仲間が作るところの生協に発展さすなり、ないしは別個の企業体を作って独立採算制でやらすなり、いろいろそういった方法を講じないと、炭鉱の場合は比較的少いと思うのでありますが、他の工場においては周辺の商店街ときわめて大きな摩擦を生じておるということは十分御承知の通りだと思うのであります。たとえば値段を非常に安く売っているとか、員外者に非常にたくさん利用させておるとか、もうこれについて問題が生じておることは枚挙にいとまないような状態でありますが、炭鉱だけの購買会ということに限定せずに、やはりあなたがそういう全般の購買会というものを一つ頭に描いて、将来どうしたらいいか、今のままでいいとお考えになるか、その点お尋ねいたしたい。
  69. 佐久洋

    ○佐久参考人 ほかの業界関係購買会をどういうふうにするか、非常に難問でお答えをいたしかねるのでございますが、まあ私が申し上げられるのは、先ほど来御説明申し上げましたように、炭鉱購買会を中心にしてのお話しかできないわけであります。ただ炭鉱につきましても、お話のように廉価販売をするとかいうようなことで、一部賃金にかわるような考えのもとに運営された時代も過去においてはございます。最近はまあ一つの経営の合理化と申しますか、購買会の独立採算制というような方法をとって参っておりますので、特別に大きく廉価販売をされておるという購買会はないように思います。  それから生活協同組合、これは私も不勉強で的確なことを申しかねるのでありますが、炭鉱の購買会におきましてもだいぶ生活協同組合に転換と申しますか、形を変えて参ってきておるようであります。運営の面で多少問題があるところもあるようでありますが、大勢としては私はそういう移り方をしていくのではないか、かように思っております。
  70. 小林正美

    ○小林(正)委員 田中さんにお尋ねいたしますが、一つずばりお答えいただきたいと思うのですが、社会党はいろいろ中小企業の立場を守るために、単にこの法案だけでなくて、たとえば諸官庁で一般の品物を買う場合もなるべく中小企業から品物を買えとか、あるいはメーカー問屋小売をやらぬ方がいいとか、百貨店法の現在の内容をもう少し改正して、ほんとうに小売業者を守るような法律を作れということをいろいろ言っていることは御承知の通りでありますが、そういうものをあわせて頭の中に入れながら、この政府提案の小売商業特別措置法案と社会党の商業調整法案と一体どっちがいいように思われるか、一つ遠慮なしに御答弁を願いたいと思うのです。
  71. 田中鋳三

    田中参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。一番いいのは、大体両方のいいところをとっていただいてこしらえていただくのが、一番いいと思います。
  72. 小林正美

    ○小林(正)委員 私は両方合せてもいけないと思うことは、これは登録の問題が抜けております。この登録問題が抜けておるのは、両方とも——これは私個人の見解ですから少しまずいと思いますが、今の御答弁非常に上手にお話になったのですが、たとえば小売、市場の問題にしましても、あるいは兼業の問題にしましても、この二つに限定してお尋ねいたしますが、どっちがいいでしょう。
  73. 田中鋳三

    田中参考人 問屋小売兼業は、これは絶対禁止ということでお願いしたい。先ほど申し上げましたように問屋がそういう兼業を全然してはならないということでお願い申し上げたい。  それから市場の規制問題でございますが、市場もいわゆる建物の規制ということでなく、市場開設を許可制にするという点で、一つお願いしたいと思います
  74. 小林正美

    ○小林(正)委員 小売市場の問題については、一切ゼロで、社会党が一点勝ちということになります。そこで今の製造業者または卸売業者の少売業兼業という点については絶対反対だという気持、よくわかるのであります。しかしながら現実に政治を行う上において、そういうところにまた別途な案も出てくるとは考えられません。そうすると社会党案か自民党案かということになるのですが、この上と下の二つ、つまり政府が考えているような調停案と、社会党が考えておるところの商業調整審議会を設けてこれを審議するというやり方について、どっちがいいと思いますか。その点お考えを伺いたい。
  75. 田中鋳三

    田中参考人 お答えいたします。卸売業者の兼業につきましては、われわれ小売といたしましては先ほど申し上げましたように、私個人の考えではやはり全然禁止をしてもらいたいということ以外に、現在何も考えておりません。その点一つ先生方と御相談をいただき、よろしくお願いしたいと思う次第であります。
  76. 長谷川四郎

    長谷川委員長 永井君。
  77. 永井勝次郎

    ○永井委員 三浦さん、田中さん、沼田さん、三人にそれぞれ簡単でいいですからお答えをいただきたいと思います。  小林君から話がありました通り小売段階における流通秩序の維持及びその安定対策については、政府からは小売商業特別措置法案、社会党からは商業調整法り案が出ておるわけであります。そして表現された言葉の中では大同小異なところもありますけれども、法案全体からこれを要約しますと、この両法案がどっちを向いているかという姿勢が大体わかると思います。性格の違いというものがおのずからはっきり出てきておると思うのです。それで先ほど田中さんからは両法案のいいところをとってというお話がありましたが、何がいいか何が悪いかという基準が問題なのです。そこでこの両法案についてどういうふうに評価されておるか。政府案のどこがいいのだ、社会党案のどこがいいのだ、それから両法案についてどこが悪いのだ、こういうことを項目的でよろしいですから、御三方から簡単に伺いたい。
  78. 三浦正義

    ○三浦参考人 私は最初に申し上げました通り現在の小売商というものに対しまして、やはり大資本の力による攻勢と、一方大組織の力による攻勢とこの二つがこの法案内容と構成する二本の柱になってくると思うのであります。従ってこの両法案を見てみますと、自民党と申しますか、政府案の方は大資本の攻勢の方にやや力が弱い、また社会党案によりますれば大組織に対する力が若干抜けているのではないか、こういうふうに私は考えておるのでございます。大組織と申しますものは、たとえば労働組合であるとか、そういったような数の力と申しますか、そういう一つの組織力による圧力をはねのけるといいますか、圧迫を排除するという点に、この法案の重点が置かれなければならなかった。あとのいろいろな問題はたくさんございます。両方とも十五条も二十条もございますが、それは調整機関であるとか、やや付加的な問題でありまして、この二本の柱のどこに重点を置くかということは、すなわち言いかえれば今日どの力により多く小売商影響され、また困っているかという問題に密着するのでございます。その点から申し上げますと私どもは率直に申し上げて生協購買会の方はある都市は極端にひどく影響を与えるところもある。ほとんど影響を与えてないところもある。たとえば地方小都市では釜石市であるとか、あるいは熊本の水俣市であるとか、福岡であるとか、特殊なところは大きな影響を受けておるところもあります。また一方大資本による影響と申しますのは大都市に偏しておりまして、これを一挙に解決するということは困難とも思われますけれども、田中さんの説のように、そのいわゆる根本思想の調整というものが必要だと私は思うのであります。具体的に申し上げれば、個々の問題について、総体としてはわれわれの要望をより多くかなえているものは、やはり社会党の案に多く盛られておるのであります。従って大勢力を二つに分けてみて、大組織に対する対抗力と、大資本に対する対抗力と、この二つを解決してもらわなければ、他のいろいろの問題はやや枝葉末節に類するものでなかろうか、それは技術的な問題でなかろうか、かように考えております。
  79. 田中鋳三

    田中参考人 この問題は実はわれわれのための法案先生方に御審議をいただいておりますので、結果的にこの法案を読ましていただきまして、先ほど三浦さんがおっしゃいましたように、ただどちらがわれわれの要求をよけい盛られておるかと申しますと、やはり社会党案の方が何かはっきりしているように思うのであります。しかしながら先ほどのお話もありましたように、やはりわれわれはいわゆる百貨店等の大資本による圧迫をある程度排除したいという考えでお願いいたしましたのと、それからわれわれ自身の過当競争、そういう面からお願いをしておりましたのでございますので、先ほど私が申し上げましたときには規制々々ということを申し上げましたが、結果におきましては、結局その規制ということを十分に御考慮をいただきましたならば、この法案内容が十分われわれに受け入れられるのではないかという考えでおるわけであります。
  80. 沼田政次

    ○沼田参考人 お答えいたしますが、率直に申し上げますと政府案につきましては、少くとも生協に関する限り、私は賛成いたしかねる、根本的に間違った考え方で立案されておると、はっきり申し上げたいと思うのであります。さらにその他の点につきましても不徹底であるという意味におきまして賛成いたしかねるのでございます。社会党の出しました調整法案につきましては、私はこれといって悪いところは指摘する点はないと思いますが、ただやはり通らないのでは何にもならないのでございまして、結局通りいい形でもって、一つ成立できるようなことをお考え願いたいと思います。さらにまたこの二つの法案をひっくるめまして考えますことは、やはりこうした小売商業の調整ももちろん必要でございますが、これだけ切り離して急いで通すということではなく、百貨店法についてもまだ検討すべき必要もございましょう。あるいはまた生協の問題につきましても、積極的に員外利用くらいは農協並みに認めるということを考慮していただくことも必要でございましょう。そうしたものをあわせて一緒に通していただけるならば、これは非常にけっこうだ、かように考えております。
  81. 永井勝次郎

    ○永井委員 そこでお尋ねをいたすわけですが、小売商業の問題は午前中にも話をしたわけですけれども、小売商業のここに出した法案の限界で解決できる範囲というものは非常に狭小なものだし、取り上げられているものは末梢的なもので、もっと隠れている、地下にもぐっている大きな力というもの、そういうものの土台から、あるいは税金の面、あるいは金融の面、あるいは貿易の面、あるいは技術の面、そういった広範な経済あるいは政治の分野のいろいろなものから、土台から築き上げてきて、その中からしぼって小売商業という特殊な分野に、職域における問題の解決、こういうふうにしぼってこなければ問題の解決にならぬということはもちろんでありますから、そういうことを考慮に入れながらお尋ねするわけですが、やはりこの問題で取り上げているのは、この購買会をどうするとか、消費生活協同組合をどうするとか、こういう非常に目先にちらつく問題だけを取り上げている。しかしちらついてはいるが、その経済的な影響というようなものを取り上げてみますと、実質的には大したことではない。そうしてことに小売商業の当面している対象というのは消費者でありますから、少くとも消費者はどうなってもいいんだという前提には立たない以上、消費者消費者自身で一つの消費生活確立していくという活動分野があってもよろしいのでありますし、もちろんそういう消費者の自主的な活動分野というものがなければならないわけでありますから、そういった意味において、消費生活協同組合の助長育成ということは、これはもうどうあろうと、小売商業方々の好むと好まざるとにかかわらず、この必要性というものは国際的な分野においてやはり推進されなければならぬ、こう思うのであります。それはそれとして、そういう末梢的な問題を項目的に並べても、小売商業分野を解決するそう大した大きな力はない。大きな力は何かといえば、やはり業界自身の中に内在するとにろの過度の競争、この問題が宿命的な問題であるとともに、最も大きな問題である。そういう問題を解決しますためには、どうしたってこれは小売業者自身の経済的な活動分野において解決できる問題というよりは、もっと先の問題、政治的な解決を必要としなければならない問題が、ここにたくさんあると思うのであります。その政治的ないろいろな問題を解決するためには、どういう力が必要かといえば、これはやはり小売業者自身の共通の利害の上に立った団結の力以外にはない。それじゃこの過度の競争という現実が、利害の共通の上に立った統一闘争、統一の戦いができるかといえば、統一の戦いができない宿命的なものをここに持っている。こういうところにそれが原因となり結果となって、そして今日保守党政権の中で大企業だけが独占化の方向へどんどん助長育成されていって、その反面中小企業はごみだめのようにほったらかしになって、そこにうごめいている。そこへまたどんどん流れ込む、それがまた過度の競争を激化していく、こういう結果になって、税金は高い、金融は詰まるわ、大企業はどんどん押し込んでくるわ、下からは流れ込んでくるわ、上からは大企業が有利なところにどんどんささってくる、こういう政治的な条件が今ここへできてきておるのであります。そこでそういう条件に立って小売関係のお二人、田中さんと三浦さんにお伺いいたすわけでありますが、こういうような問題を政治的に解決する——経済的な問題解決の前に、経済活動の前に、私はその前の問題として政治的な解決を必要とするいろいろなもの、税制の問題とか、金融の問題とか今言ったようないろいろな問題、そういう問題が解決してこなければいかないのでありますが、それに対しての業界の自主的な態勢というものができるのかできないのか、統一闘争というものができるのかできないのか、一番当面しておる皆さんが同業者同士が一番仲が悪いのではないか、一番熾烈に対立する関係にあるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでありますか、伺いたいと思います。
  82. 三浦正義

    ○三浦参考人 大へんむずかしい問題を提示されたのでございますが、一つ消費者階層というものに対する小売商のあり方というものをどうするかという問題、前段の問題はそれのように存じましたが、私は全国民が消費者階級であると思うのです。大会社の重役もあるいは農民も店舗の御主人も——商人の売っているものは、厳密な意味でいえば、自分生活に直接使用するようなものはきわめて少い、洋服屋でも毎日洋服を着かえて着るわけではございません。ほんとうの生活必需品というものは、消費者立場に立っておるのでございまして、そういう点から小売商消費者とが対立するという考え方で、ものことを考えたくありません。要するに国民経済という立場に立って、小売商のあり方をどうきめていくかということは、国民全体にいかに利益であるかというような形において、この問題をとらえていただかなければ、消費者小売商というものがまっこうから衝突しておるというような考え方は、私にはとうてい理解できないのでございます。  それから第二の問題として、こういう問題を政治的に解決していくために百五十万もの小売商が何をぼやぼやしているのか、果して団結できるかどうか、その団結の力で解決できるのかできないのか、こういう見通しについての御質問のように承わりましたが、実は農民にいたしましても労働者にいたしましても、その必要が痛切に迫ったときにはそういうことになるというふうに私は感じます。まさに今全国小売商はその必要に迫られつつあるように存じております。その機運はまさに至って、たとえば昨日のわれわれの税金に対する大会にいたしましても、東京におきまして最も大きな会場を二つも借り上げなければ大会が行われない、あまり人が集まり過ぎて困るというような状況でございまして、そういう機運がまさにいろいろな方面から、ひしひしと迫ってきつつありますので、そういう方向に十分自主的態勢を整え得る状況が客観的に作られつつある、作っていただいておるというふうに考えております。
  83. 田中鋳三

    田中参考人 私はこの問題につきまして、今まで団体の長といたしまして始終考えて参ったのでございますが、何さまわれわれ小売業者はいわゆる隣同士が商売がたきであるという先ほどの先生の御説にもございましたように、それがひいてなかなか団結の方にいかない、これは事実でございまして、それを打破するためには、やはり何か一つの共通点を見出さなければならぬ。ところが現在ではなかなかその共通点がないのでございまして、しいて言うならば先ほど三浦さんが申されましたように税金という面で、それが今度の大会のように好成績に終ったということになるわけでございますが、どちらにいたしましてもわれわれは日々その目先々々の問題だけしか見えない。そこで私たちも将来のことを考えますときには、先ほど登録制のお話がありましたように、自分ら自体を十分知ることが必要である、自分らが自分を認識することが必要である、まずこれが先決だと言うて、われわれは業界を指導しておるのでありますが、そこまでにはなかなか参らない。それには先ほど申されましたような登録制というようなことで、いわゆる小売商自体の体質を十分に把握することが先決問題ではないか。そういたしまして後に一つの目的に向って進んでいきますならば、必ず全国的な統一ができるだろう、こう確信を持っておる次第です。
  84. 永井勝次郎

    ○永井委員 そこで私は税金の問題一つを考えましても、たとえば個人事業税で減税になった、そうしたらこっちで減らしたかわりに、こっちの方へすぐ物品税を持ってくる、それから所得税なら所得税で税率を下げた、そうすると今度はこちらの方で所得をふやして、低い税率でも実際の納税額は下げないようにやる、そうして国の歳入のワクは昨年に比べて千何百億ふえているのだ、それだけは国の方で何らかの形によって税金を取るわけです。だから一面で税金が下ったといい、一面で歳出ワクがふえたという、ここに国民が納めなければならぬワクがふえておるのだということがはっきりするし、その中で技術的にいろいろな操作が行われる。そこでやはり中小企業の皆さんは非常に過度の競争で、同業者がなかなか団結できないような宿命的な一つの条件を中に持っている。そういう宿命的な条件を中に持っているものだから、手近なところからもこれが敵に見え、あるいは生活協同組合が動き出すと、あれは敵だとすぐにそこに問題を向ける、購買会——これは別ですが、すぐにそういうふうに向ける。そういうことでその問題に鞅掌して、ほんとうにその問題の陰に隠されている、中小企業として政治的に対立し、経済的に対決していかなければならないほんとうの相手を見失いつつあるのではないか、当面の問題に鞅掌して、そういう目標を失っていっているのではないかということを必配するのであります。でありますから、たとえば物品税なら物品税という旗のもとには歩調が合いますけれども、その次に、税全体におけるところの分析においてはどうかということになると、これはもうぼけてくる。あるいは金融の問題一つにしても、百貨店問題一つにしても、百貨店法という法が一つできますと、その内容がどうあろうと、その法律的な効果がどうなろうと、まずそれに飛びつく、こういうようなことで混迷しているというのが中小企業の、ことに小売商業の皆さんの実態ではないかと思うのです。そこで、こういう社会党の案、政府の案、こういうふうに問題が出されたときどうであるかというと、指導者であられる小売商業者の皆さんには、共通の一つの達成しなければならぬ政治目標、経済目標というものがあるに違いない、その目標の尺度でどの程度——これはこうだ、これはわれわれのものではない、これは内容は少し弱いけれども、しかしわれわれの考えている方向だ、性格はこうだ、こういうふうに分析して、ほんとうに正しいものを伸ばして、正しからざるごまかしの羊頭狗肉のものはこれをけ飛ばしていくだけの分析力と、それだけの一つの取捨選択する政治力というものを自主的に持たなければ、ただ団結だ、団結だと言って、どこに向って団結するかわからない、目標のない団結ということで混迷してはならない。そういう意味においてたとえば退職金の問題にいたしましても、いろいろ中小企業の皆さんをごまかす羊頭狗肉の法案がたくさん出てくると思う。これに当って政治活動の前に政治的な問題として解決しなければならぬ問題があるのではないか。だからどうか皆さんはそういう面においてはっきりしたものを一度分析して、そうしてつかんで、指導者はこれをもとに行動の方向を間違わないように、一つ団結をかたくしていかれることが、やはり今日これだけ戦い取ったものを、あしたはこれを踏み台にしてさらに大きなものを戦い取るだけの力になっていく、こう思うのであります。そういう意味において、私たちは、あなた方が中小企業の指導者としての立場において、今後の中小企業運動における一つの心がまえ、それから現状のもたもたしている政治的な一つの情勢に対して、政治的解決というならば、その本質的なものは選挙以外にはないのでありますが、そういうような問題に対してどういうようなお考えを持っているか伺いたい。
  85. 長谷川四郎

    長谷川委員長 お述べになりますか。——ないそうであります。  大体質疑は終了いたしました。参考人方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べ下さいましたことはまことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。     午後三時五十七分散会