○松尾(泰)政府
委員 東南アジアに対する輸出でありますが、今お示しの
通りに、昨年度は決して好調ではなかったのであります。われわれの数字によりましても、去年の一月から十一月までの十一カ月をとってみましても、五七年に比べて五八年は約六%ばかり全体としては減っております。もちろんふえた
地域もあります。シンガポールに対しましては二割ばかりふえておる。その他台湾、フィリピン、タイ国等に対しましてはふえておりますが、自余の国に対しましては減っていることは御指摘の
通りであります。これは今御指摘の中にもありましたように、一口に言えば東南アジア
地域の外貨不足でありますが、外貨不足を来たしたおもな原因といたしまして、要するに第一次物産と申しますか、農産物、鉱産物というものの価格が非常に下落をしたということに起因をいたしておるのであります。この東南アジアとの貿易が減少したということは日本だけの現象ではございませんで、世界貿易全体を見ましても、欧米の先進国と東南アジアとの貿易も同様の推移をたどったのであります。非常に不幸なことだと思います。
それから中共の東南アジアに対する進出の問題でありますが、昨年度の日本の東南アジア向け輸出に対しまして、中共の昨年度の東南アジア向け輸出がどの程度影響したかというと、これは影響は決して軽視はいたしませんが、ここ数年間東南アジアに対する輸出は非常に伸びて参りましたが、昨年は実は足踏みをしております。一昨年くらいが大体ピークになっております。もちろん今後どういうふうに変化いたしますかわかりませんが、昨年度と、たしましては中共の東南アジア進出が日本の輸出入に、その前に比べて非常に影響したというわけではなかろうというふうに判断しております。従って主たる原因は東南アジア諸国の経済的な問題、すなわち外貨不足に問題に主として起因していると思うのであります。今後の対策でありまするが、
先ほど御指摘の中にありましたように、かなり外貨不足の面は数字的にも表われておりまして、減少いたしましたが、最近のところは大体下落の傾向がとまりまして、やや横ばいというか、増加の方向に向っている気配でもありまするし、日本といたしましては、何分地理的にも近いのでありますし、また物質的に見ると相互補完的な
関係になっておりますので、まず第一には、われわれはできるだけ東南アジアの物を輸入することによって、向うに購買力をつけていく。それによって日本に輸出を持ち込むということがまず第一ではなかろうか。東南アジアから買う物の中にも、たとえば米をとってみますと、日本の三年続きました豊作の
関係もありまして、一時よりは輸入はもちろん非常に減っては参っておりますが、その中におきましてもかなり努力をして、台湾にいたしましても、タイ、ビルマにいたしましても、まず米等の東南アジア産の物を輸入するということが、輸出振興の最も大きな対策ではないか。口に経済協力、経済協力ということを言われますが、何百万ドル、何千万ドルのクレジットの供与よりも、より以上に輸入ということが重大ではなかろうかと
考えておるのであります。しかしながら輸入の方式の面から見ますと、東南アジアから輸入を特に促進するということになりますと、またその他の国からの輸入との間につきまして、若干優遇を与えたり、一方には優遇を与えなかったりという面が出てくるわけでありまして、それらが貿易の自由化に一部反してくるわけであります。ガットの精神に一部反するところが出てくるかと思います。その辺のところはやり方にもよりますので、国際的な非難をこうむらざる範囲内において、できるだけ東南アジアからの輸入を優遇していくということで、まず輸出を伸ばすということが先決ではないか。
第二は、大臣も
先ほど触れられました資本財の輸出であります。数字上明白に表われておりますように、東南アジアの輸入の傾向というものは、消費財から重工業製品に転換をしつつあるわけです。これはそれらの諸国の工業化に伴う当然の変化といいますか、現象であろうと思うのであります。従いまして、従来の消費財重点の東南アジアの輸出から、重工業製品にいかなければならぬわけでありまして、重工業製品の輸出ということになりますと、これは一番にぶつかるのは先進諸国との競争の問題であります。従って、もちろん重工業製品の品質をよくする。また宣伝をよくして、日本の機械がいいのだといういわゆるPRを積極的にやると同時に、買いやすくいたしますために、延べ払いの問題を十分
考えていかなければいかぬわけです。延べ払いの方法につきましては、これも日本が先頭を切って甘くするということもいかがかと思うのであります。これは各国とも競争
関係にありまするので、欧米先進国のやり方を見ながら、それに手おくれにならぬような緩和の方式をとっていくべく今努めておるわけであります。とかく役所の許可基準ということになりますと、一たんきめますとそれを変更するのに若干長くかかる。
通産省だけでもできませんので、
関係官庁との折衝もありますので、いろいろかかるのでありますが、われわれは、常時ドイツその他ヨーロッパ諸国の延べ払いの
状況をよく見ながら、それに負けをとらぬようにやっていくつもりであります。これは延べ払いのやり方の問題でありますし、幸いにして三十四年度は輸出入銀行の融資能力もかなりふやされたのであります。輸出等におきまして約七百数十億の融資ができることになっております。三十三年度に比べましては、三百六十億円ばかりの融資額がふえておりますので、一応さしあたりわれわれは、それで延べ払いを積極的にやり得るだろう、こういうふうに
考えております。
第二の問題はクレジットの問題であります。延べ払いも一種のクレジットではございますが、直接向うに金を貸して、その金で日本品を買わせるというやり方、これは先刻大臣からも御
説明がありましたが、現在のところは、円クレジットという形式のもとにインドに五十万ドル与えておるわけであります。これは若干動きがおそかったのでありますが、ほんとうに動きますのはことしになってから、これから動くであろう、こういうふうに思います。それから延べ払いの方式をとるにいたしましても、一種のクレジット・ライン的なものを設けて、向うが安心してそのワク内までは賢い進んでくるということも
考えられる。これにつきましては、三千万ドルのいわゆる延べ払いクレジット・ラインがついておることは御承知の
通りであります。この点につきましては非常に
通産大臣の御努力にあずかったのでありますが、パキスタンその他の
地域につきましても、
現地政府の要請を見つつ、われわれといたしましてはできるだけそういう方式も合せていこうじゃないか、こういうふうに
考えておるのであります。クレジット問題はこちらからクレジットをやるやるという性格のものではないのでありまして、従ってこの辺のところは非常にデリケートではございますが、輸出の増進のためには、要請があればある程度そういうことも
考えていくという態度でなければならぬ、こういうふうに
考えております。
あれこれごたごた申し上げましたが、東南アジアとして構造的に持ついろいろの問題もあります。またある
地域によりましては、政治的な不安の問題等もありまして、あの
地域はもう少し延べ払いもし、クレジットも供与して輸出を伸ばすべきだという
地域にもかかわらず、各国ともあまりその国のやり方が信用できないということで、みなすくんでいるというような
地域も実はあるわけであります。国々によって非常に事情が違いまして、やり方も一律にいかぬと思うのであります。われわれは相手国の
実情を見ながら、できるだけ輸出の促進に努めて参りたいと思っております。三十四年度におきましても、アジア全体といたしまして、十三億ばかりの輸出を目標にいたしております。三十三年度に比べまして、一割強の輸出増進をいたしたいと期待いたしておりますが、われわれといたしましてはできるというふうに確信をいたしております。何分輸出目標というものは、
先ほど来いろいろ御議論がありますように、科学的に証明することは非常にむずかしいことなんでありますが、私
どもといたしましては達成はできる、こういうふうに
考えております。