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1958-12-23 第31回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十二月二十三日(火曜日)     午前十時二十分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 中村 幸八君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       岡部 得三君    岡本  茂君       加藤 高藏君    鹿野 彦吉君       菅野和太郎君    木倉和一郎君       中井 一夫君    西村 直己君       濱田 正信君    細田 義安君       南  好雄君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         中小企業庁長官 岩武 照彦君  委員外出席者         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    馬場 靖文君         専  門  員 越田 清七君 十二月十九日  輸出入取引法の一部を改正する法律案反対に関  する請願石山權作者紹介)(第一四九号)  小売商振興のための法律制定に関する請願外十  一件(池田禎治紹介)(第一五一号)  日中貿易再開に関する請願久保鶴松紹介)  (第一五二号)  中小企業等災害対策制度化に関する請願(助  川良平紹介)(第一五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小売商業特別措置法案内閣提出第二一号)  商業調整法案水谷長三郎君外二十三名提出、  衆法第一三号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 これより会議を開きます。  小売商業特別措置法案及び商業調整法案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。逐次許可をいたします。中井一夫君。
  3. 中井一夫

    中井(一)委員 私はただいま上程の小売商業特別措置法案につきまして質疑をいたすものでございますが、おそらく五時間はかかると思いますから御了承を願います。  政府本案提出せられるに至りました背景は、中小企業問題の重要性にある、よってその一般的な対策をまずもって明白にいたしておくことは、本案審議基礎的前提として必要であると信ずるのでございます。従って私は、この際委員長に特に本案自体以外、中小企業の根本的な基礎問題についても政府の所信をただすことをお許しいただきたいのであります。  わが国の商工業国民経済の過半を動かしておるのみならず、実に過剰人口のたまり場とせられておる、その現状は、今や単に経済問題ではなくして、すみやかに解決されねばならない社会問題である。これを政治上大企業組織労働者、また農民に比すれば、金融税金社会保障、その他あらゆる面において不当に冷遇されていることはあらためて心すまでもありません。これがため本年春の総選挙におきまして、われら自由民主党は、中小企業保護育成国民に公約をいたしたのでありますが、本法案がその実行の一方策として提出せられましたことよきわめて適当であります。ただし市場乱設防止方法につきましては、原案によってはその目的を達することはできないと信じますから、その点のみは真の許可制に修正する必要がある。従ってこの修正を付しまして本法案の一日も早く成立することを期待いだす次第であります。  本法案の規定せんとするところは、生活協同組合購買会及び生産業者卸売商行き過ぎ是正、並びに小売市場乱設の助止にとどまるのでありまして、小売商保護育成のためには、なお多くの方策実行を必要とすることはもちろんでございます。現に政府は、本年の六月第二十九回特別国会におきまして、その中小企業対策として、一、組織化の推進、二、金融円滑化、三、税制の改正、四、設備近代化、五、経営及び技術指導、六、輸出振興、七、共済制度の確立、八、小売商業保護育成等の項目を列挙せられまして、その実施を天下に声明せられたのでありますが、本国会こそはこれを実現すべき最適の場であると信ずるのであります。  もとより、以上各施策につきましては、予算の裏打ち、他省との折衝等の必要もありますが、予算については、すでに昨日、今日、大蔵省の内意も判明したのでありますから、この際通産省といたしては、大蔵省に対しいかなる決意を持って臨まれんとするか、明らかにせられたいのであります。  ただいま大臣閣議中のために御出席がありませんから、一般方策大臣出席の上に譲り、長官に対し、まず右予算折衝経過を伺います。私はあくまでも中小企業保護育成念願とするものであり、通産省の御活動に対しては協力し、推進したいと思っておるのでありますから、そのつもりで打ちあけてお話しを願います。
  4. 岩武照彦

    岩武政府委員 御質問の予算折衝経過でございますが、実はきょうの午後四時から臨時閣議におきまして蔵省原案の提示があるそうでございます。われわれ事務当局がその概要を大体了知いたしまするのは、おそらく夜半になるのじゃないかと思っておりますが、今までの大蔵省当局と折衝いたしました経過概要等につきまして、われわれ知り得ていることを御報告いたしたいと思います。ただこれは正式に大蔵省の諸君と話したわけではございませんので、あるいは口うらでありすとか、あるいは新聞等に現われておりまする大蔵省議の断片的な記事等からの推察でございますので、あるいは間違うかもしれませんが、大体お話ししてみたいと思います。  先日申し上げました一般会計の中の設備近代化補助金でございますが、これは本年度計上額六億、明年度要求額は四十億でございますが、いろいろな点から察しますると、大体本年度計上額程度大蔵省原案に載ってあるのではないかと期待いたしております。別段の確証があるわけではありませんが、ただこの補助金につきましては、検査院批難事項等が数件現われております、いずれも目的外の用途に使用しているという点、あるいは大蔵省の出先の財務部等の報告が、どうも普通の金融機関から融資を受けられるにかかわらず、この補助金を出しておるというふうなことを、先方の事務当局指摘をいたしておりまするところから見ますと、大幅に一挙にふやして内示してくるということは、ちょっと期待しにくいかと思っております。しかしわれわれとしましてはこの近代化補助金制度は、現在の中小企業対策の上で特におくれておりまする中小企業者設備並びに技術的レベルを向上さすほとんど唯一の有力な方法でごじいますから、ぜひとも今年度以上に増加するよう努力したいと思っております。  それから信用保険公庫出資金の問題でございますが、このうちで融資基金出資年度計上額二十億に対しまして、明年度二十億の増額の出資要求いたしております。これは御案内のように各地の信用保証協会低利長期貸し出しをいたしまして、その信用保証協会がこれを金融機関に預託いたしまして、一つには中小企業向け融資の増加、二つには保証ワクをふやし、さらには保証協会自体経理改善策としまして、保証料引き下げるという一石三鳥の効果を持っている資金でございます。これは全然認めないということはないと思いますが、その金額等につきまして、まだわれわれも十分察知することができませんので、本席ではただ大蔵省方面としてかなり理解があるようだということを御報告するにとどめたいと思っております。保険基金の方の要求額三十億円は、いろいろの情勢上かなりむずかしいようでございます。  それから技術指導費、つまり都道府県あるいは市の試験研究機関設備を新しくしたり、その技術指導業務を強化するという関係補助金でございますが、今年度は六千万円で七カ所の試験研究所に出しております。明年度二十二カ所に増加し、かつこの技術指導員という制度を特に設けまして、その人件費補助をはかるというふうなことを考えておりますが、これは都道府県あるいは市なべて中小企業方々にかなり評判のいい費目でございまするので、大蔵省査定がどうなるか、ちょっと見当つきませんけれども、おそらく、今年度程度は少くとも見てくるのではないかと思っております。これはもちろんそんなことでは足りませんので、さらに増額させたいと思っております。  それから診断事業相談所事業活動等につきましても申し上げましたが、その辺のところの経費は、これは一種の経営費的な経費でございますから、これまた大体今年度に近いものは内示されてくるのではないだろうかと思っております。ただこの両費目とも今年度はかなり対象をふやすとか事業の量を大きくするとか、あるいは補助率を引きげるとかいうことは考えておりますが、その辺につきましては若干大蔵省方面には異論があるだろうかと思います。  輸出振興費でございますか、これはあまり大きな金額でもございませんので、これも若干見込みがあるだろうと思っております。  それから今年度新規になりますが、中小商業基本調査費、これは前回の委員会におきまして少し詳しく申し上げましたが、二千二百万円要求しております。これも新規事業とはいえ、昨年度中小工業の方の基本調査と相伴うものでありますから、これまた新規事業ということで要求通りということはないだろうということは想像しておるわけでございます。あるいはわれわれの方の期待が甘いのかもしれませんが、しかしこれは査定いかんにかかわらずぜひ復活要求で所定の仕事をやるようにいたしたいと考えております。  それから中央並びに地方中央会補助事業でございますが、これはいろいろ農林関係中央会等権衡等もございまするので、これまたある程度金額は計上されて内示されてくると思っております。  それから協同組合共同施設補助金でございます。これまた長年協同組合共同業を推進するにあずかって力のあった経費でございまするし、現在もかなり方々要求がございまするので、これはある程度原案で内示されるだろうと思っております。もっとも費目は本年度計上額が一億円でございまするから、これか大幅にふえるということは、ちょっと期待しにくいと思っております。  それから財政投融資でございまするが、この方も一般会計と同じようにわれわれの推測ないし期待というところがございまするので、的確のことはわかりませんが、大体申し上げますと、商工組合中央金庫、つまり一商工中金金利引き下げのために産業投資特別会計から出資三十億円を強く要求しております。これにつきましては先般来大蔵大臣談話等から見ますると、政府関係中小企業金融機関金利をぜひ引き下げるように努力したいというふうな談話が、たびたび新聞紙上に出ておりまするので、これまたある程度配意はなされていることと思います。ただ金額につきましてまだ的確にわかりませんのと、金利引き下げになりまする経理状況等につきましていろいろ意見の分れるところがございまするので、これはおそらく復活要求で、こういうふうなかなり商工中金経理面にも触れたデータで応酬しながら、増加して参りたいと思っております。目標としましては、長期貸し出しは一律に九分八厘、短期の方は日歩五毛下げまして二銭六厘ということにしたいと考えております。  それから中小企業金融公庫の方の融資、つまり資金運用部からの貸付金額がかなり減るのではないかというふうな情報がありまして、実はわれわれ非常に憂慮しております。と申しまするのは、本年度に比べまして明年度は若干この回収金がふえやせぬかということと、それほど大きくこういう長期設備資金を貸し出さなくてもいいのじゃないかということと、この二つの点を大蔵省事務当局指摘しておりますので、前回申し上げましたごとく四百億近い資金運用部貸付ということは、どうも困難なような情勢でございます。これにつきましては前回申し上げましたが、明年度中小企業金融公庫資金運用部から借り入れております方の返済額が相当ふえまするので、前年と同じような貸付金ですと、かえって融資の元になる原資が減るのではないかということすら憂慮されるような状況でございまするから、これは何とかいたしましてある程度融資計画の拡大ということを目標にいたしまして、復活要求をしたいと思っております。  国民公庫の方は情報かよくわかりませんので、単なる推測にとどまりまするが、この方は若干運用部からの融資ワクも、ふえるようでございますが、あまり大きいことは期待できないようで、結局中小企業金融公庫同様、かなり苦しい資金需給状況になるのではないかというふうな予測をしております。いずれにいたしましても、以上申し上げましたことは現在の段階におきまするいろいろな予測なり期待なり織りまぜて申し上げたのでございまして、今晩の原案内示を見ませんとはっきりしたことは申し上げられませんが、今大体予想しておりますところは、以上のようなことでございます。
  5. 中井一夫

    中井(一)委員 来年度予算につきましては歳出一兆四千億円、財政投融資五千十億円と説明されておるのであります。もとより財布一つ要求は多数でありますから、政府要求者要求通り財布の口を開くことのできないことは申すまでもありません。しかし中小企業の問題というものは全く差し迫った、政治問題というよりは社会問題というべきものでございますから、ただいま長官の御説明によります要求予算は、われわれとしては全く最低のものである。われわれの念願にはきわめて遠いのでありますけれども、それさえも通るか通らぬかわからぬということは、きわめて心細い限りであります。何とぞ最善を尽されんこと願います。これより直ちに問題の小売商業特別措置法案自体についてお伺いをいたします。  まずお伺いしたいのは、購買会並び消費生活協同組合、この両者実情でありますが、この二つのものに対する通産省認識いかん、これらの事業活動小売商業者のそれと比較して、いかなる差異ありや、特に明らかにしたい点は、購買会生協との二つが、一般小売商に比べて国家からいかなる特典フェイバーという言葉が当るのでありますが、そういうものを受けておるか、この点をまず明らかにしていただきたい。
  6. 岩武照彦

    岩武政府委員 購買会の方は現在の大きな事業会社がその従業員福利厚生のためにやっておる事業でございまして、特別にその事業に対して税制、その他のフェイバーはないようでございます。ただ会社によりましては、購買会事業に従事しております者の人件費でありますとか、あるいはその資金金利とか、輸送費というふうなものを、一般会社経費によって負担しているところかかなりあるようでございます。そうしますと、結局供給価格におきまして市価に比べて若干安くなる。いろいろなやり方があるようでございますけれども、一律には申せませんが、一割前後、はなはだしいのになりますと、二割をこえて安くなっているというところもあるようでございます。全国的な売上高を見ますと、三百五十七購買会売上高を調べてみますと、昭和三十年におきまして二百四十億円余りでございます。  それから消費生協の方は、これは消費生活協同組合法によって設立されている組織でございます。御承知のように職域ごと組織しておりますものと、地域によって組織されておるものと二つございまするけれども、これにつきましては税制上の特例としましては、法人税一般法人に比べまして安く、税率は二八%でございます。一般法人は御承知のように三八尾、特別法人におきましては三三%であります。それから事業上得た利益の留保に対しまして、出資総額の四分の一までは法人税をかけないというふうな恩典もございます。それから印紙税登録税等免税になっております。地方税の方では住民税村民税といったものは免税、それから事業税一般法人に比べまして低いようであります。八%程度かと思います。一般法人は一二%程度かかっております。その他課税標準につきまして、固定資産税あるいは不動産取得税等におきましてごくわずかな範囲ではございまするが、何か課税標準特例もあるようであります。それからこれは国の予算上の措置でございまするが、生活協同組合に対しまして、国の予算から都道府県を通じまして消費生協に対しまして貸付が行われております。これは共同利用施設に対してでありますが、その貸付に対して国が半額の補助を行なっております。今年度におきましては予算がわずかでございます。九百万円程度予算でございます。  大体以上が両者に対しまするいわゆるお尋ねのフェイバ一ということになるかと存じます。  なお、御参考までに申し上げますると、現在消費生協は九百余りございますが、そのうちで企業事業あるいは供給事業のいずれか一つ、あるいは双方とも、みな行なっておるのでありますが、員外利用を行なっているものは大体三分の一程度あるように言われております。
  7. 中井一夫

    中井(一)委員 今の特典のほか、市町村民税免税になっていることを、私は特に指摘をしておきます。  さらに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の第二十四条の二によって、生協定価より安い価格販売をすることができるという趣旨特典を与えられている。この点も相違なしと御認めでございましょうか。
  8. 岩武照彦

    岩武政府委員 現実には定価市価よりかなり安い値段で売っているのが多くの場合の実例のようでございます。
  9. 中井一夫

    中井(一)委員 ただいまの御説明を承わりましても、生協特典は、実にありがたいほどであります。また購買会にしましても、結局事務所も事務費人件費もその資本も、みな会社がまかなっておるということでありますから、これは一般商人か苦労をして朝から晩まで働いても働いても食うていけない実情とは雲泥の差であります。従って率直に申せば、これら二つのものが員外に対してどんどん商品を売るということになるならば、小売商人はこれと競争することができないことは明らかであります。生協にしても購買会にしても、おそらく生産者価格卸売価格そのもので売っても差しつかえないほどであるにかかわらず、小売商人は何としても商売のために要る資金の利息と諸費用、ことに税金はきわめて高いのでありまして、その間をくぐり抜けつつ、ようやく良いものを安く売り、しかも一家の生活をしていかねはならぬ、まことにこれは気の毒な状態にある。私は何ゆえにこの実情にかかわらず、購買会生協を擁護せねばならぬという議論をする者があるのか、実に不思議に思うのであります。ここに政府がこの法案によりまして購買会並び生協行き過ぎを押えんとする趣旨は、まことに時宜を得たものだと信ずるのであります。  そこでこれに関連いたしまして伺わればならぬことは、百貨店の問題であります。さきの国会におきまして、私がこの委員会で強く論議をしたことは、百貨店行き過ぎ、特に月賦販売に関する日信販との結合による行き過ぎ、これによる小売商業者の脅威ということでありましたが、これによって政府は、大臣並びに局長の名をもって石貨店協会自粛の勧告をせられたのであります。その後この問題は、いかに解決をせられたのであるか、この機会に承わりたいと存じます。
  10. 岩武照彦

    岩武政府委員 主管局長が参っておりませんので、私かわりまして申し上げたいと思います。九月に大臣名並びに企業局長名をもちまして百貨店側に対しまして、いわゆるクーポン制自粛ということを要望したわけであります。その内容は、新しいクーポン制による販売を行わないということと、もう一つは現在行なっているものについても、その内容について自粛をすることという二点でございまして、それにつきまして百貨店側の方でも若干の自粛案を検討されたようでございますが、まだ結論に到達しておらないようであります。他方現在のクーポン制も、これは特殊の、月賦販売の変形というふうにも見られますので、各方面におきまして、いろいろ月賦販売制度はいかにあるべきかということについての議論がございますので、通商産業省としましては、中にございます企業合理化審議会流通部会におきまして、月賦販売制度はいかにあるべきかということを検討してもらっております。ちょうど最近議題がその百貨店クーポン制の問題に参りまして、かなり活発な論議もあるようでありますが、まだ実は結論を得ておりません。現在のクーポン制がそのまま月賦販売制度問題そのものでございますかどうか、これはちょっと議論があるようでございますが、いずれにしましても中小企業庁としましては、現在の百貨店のあのクーポン制やり方はあまり好ましくないのではないかと思っておりまして、担当の企業局の力ともいろいろその改善方について協議を重ねております。
  11. 中井一夫

    中井(一)委員 この問題は大臣出席の節にいたすこととし、本法案につき質疑を進めます。  第二条によりますと、「中小小売商事業活動影響を及ぼし、その利益を著しく害すると認めるときは、主務省令で定めるところにより、その購買会事業を行う者に対し、従業員以外の者に購買会事業を利用させることを禁止することができる。」ということになっているが、第三条の消費生協の項につきましては、「中小小売商事業活動影響を及ぼし、その利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、」とあるのでありまして、購買会については「おそれ」という言葉がないが、生協については「おそれ」という言葉が特にある。これはどういう区別があるのでありますか。
  12. 岩武照彦

    岩武政府委員 これは法律上きわめて技術的な差別でありまして、購買会の方は、これは員外利用については許可を受けないでやっているわけでございます。そこで利益を著しく害すると認めるときというのは、現在員外利用させておって利益を著しく害しておるということと、さらにあるいは現在はないけれども、将来著しく害するおそれがあると認めるときというのを一つ合せて表現しているためにこういうことになったわけであります。この内容は、今申し上げましたように、現在の問題と将来のおそれ両方含めております。  それから消費生協の方は、これは許可を受けて初めて員外利用かできるわけでございますから、許可を受けない前に現在すでに悪影響を及ぼしているということは法律的には考えられないことでありますから、それで将来のおそれがある場合というふりにしたのであります。いずれにしましても趣旨は同様でございます。
  13. 中井一夫

    中井(一)委員 第五条の小売市場許可の問題に入って伺いますが、第五条にいう「政令で指定する市」とはいかなる市をさすか。また同条に「政令で定める物品の全部」という言葉がありますが、その定める物品とはいかなるものをさすか伺いたい。
  14. 岩武照彦

    岩武政府委員 初めの方の指定する市でございますが、これは現在小売市場がたくさん乱立しております地域を指定する予定でございます。横浜市、名古廃市、京都市、大阪市、神戸市、そのほかにあるいは将来そういうふうになるおそれがきわめてある地域がありますれば、これもあわせて指定したいと思っております。ただ今中しましたのは、いわゆる五大都市という市でございますが、その近辺等もあわせて、市の区域につきましては、指定する必要があるかもしれません。正確に五大都市区域に限るというわけではありません。状況によりましてその近辺の市の区域を含めるということもまたあるのであります。  また「政令で定める物品」とありますが、これは御承知のごとく、小売市場におきましては、通常ほとんど全部の場合、大体中に入っております店の相当部分、三分の一程度生鮮食料品販売しておるところもあるようでありますが、そういうふうな生鮮食料品につきましては、野菜、魚、肉というようなことで、政令できめたいと思っております。つまりそういうふうな食料品販売しておりますことが、通常集団店舖と違って小売市場というふうにいわれております特殊の販売形態をなしておるものと思っております。
  15. 中井一夫

    中井(一)委員 その他この法案には「政令で定める」という言葉が所々に出ておりますが、すみやかに法案通過の後、政府が規定せられんとする政令内容を、書面をもって御提出、お知らせ願いたいのであります。  そこで小売市場許可という問題自体につきまして伺うのでありますが、この許可の対象になるのは何かということであります。第五条によりますと、結局市場開設者が市場商人に対してその店舗を貸し付けるその契約が対象になるものと思われますが、それ以外には、取締りあるいは規制と申しますか、市場乱設防止のために考えられておるところの事項はないのでありますか。
  16. 岩武照彦

    岩武政府委員 初めの政令規定事項の問題は承知いたしました。できるだけ早くお配りしたいと思っております。  それから許可の対象は、御指摘のごとく貸付契約でございまして、貸付契約の通りに貸付契約を結んでもらうということによって、この規制を間接的に行いたいと思います。
  17. 中井一夫

    中井(一)委員 そうでありますと、世間は本法案を見て、これは市場乱設防止法ではなくて、市場乱設奨励法だという批判をいたすのも、無理はないと思われるのであります。この法案をお作りになるについては、中小企業庁がいろいろ御努力になりましたことは、私の深く敬意を表するところでありますが、市場の開設の実情というものは、断じて開設者が出店者に店舗を貸し付けるということだけではないのであります。むしろ今日行われておる行き方は、建築者が市場を作りまして、その一店舖一店舗を小売商人に売ってしまう、もしくは出店者が互いに相寄って市場を作るというやりかたでございます。従って貸付契約だけが規制せられて、その他の行き方は規制せられないということになりますと、この法案をすり抜けて、市場新設の目的を達するように事柄を進めることは何でもないことであります。それならばかえってこの法案の出たがために、それらの脱法的行為を教えるようなものであり。それでは結局乱設の防止よりも乱設奨励の結果を来たすおそれがある。この点に企業庁はお気づきにならなかったのでありましょうか。伺いたいのであります。
  18. 岩武照彦

    岩武政府委員 先日もちょっと申し上げたのでございますが、現在市場が各地で乱設されておりまする状況を経済的に見ますと、そういう建物を作り、これを小売商に賃貸することによって建物の設置者が過大な利益を得るということにあるのではないかという点から、そういうふうに貸付契約を調整しまして、権利金でありますとか、あるいは売上高の歩合によります貸付金だとか、あるいは不当に高い貸付契約等を押えようというふうに考えて、その結果こういうふうな建物を設置しようという企図を持つ場合がかなり減少するだろう。こういうふうに考えた次第でございます。御指摘のように分割してやります建て売りの場合、あるいはたな子の共有の場合等は、この規制の対象にならないわけでございます。もっとも目的乱設の防止でございますから、通常の営業の許可というふうに、正面からこの市場開設者を規制して参る方法かあるかと思いますが、これは現在の法律制度のもとにおきましては、常業の自由ということとかなり抵触するようなきらいもございまするので、この点はやむを得ず避けまして、この貸付契約の調整によりまして、できるだけ乱設を防止して参りたい、こういうふうに考えた次第であります。
  19. 中井一夫

    中井(一)委員 私はさらに根本的な問題が無視されておると信ずるのであります。元来市場の乱設の阯止が必要だという声が大きくなってきたわけは、家主が市場内の商人を搾取するために起ってきたのではありません。その真因は、市場の商人が朝から晩まで家族総出で、それこそ労働基準法なんというものを眼中に置かず、八時間労働くそ食らえと一生懸命に働いた結果、ようやくよい物を安く売ることができ、それによって付近の顧客が集まり、その市場の繁栄を見ることができるようになった、それを、あの市場ははやるからというので、そのごく近くへ新市場を建て、そうして他人の努力の結果をそのままちょうだいしようとする者が出てきた、これはかなわぬ、何とか押えてもらいたいというのが、この問題がやかましくなった原因であります。これは当然の叫びである。一つの繁栄せる市場にやってくる顧客は、距離の関係等からしてその数は大体きまっている。従って、その近所へ同じような市場ができれば、商店の数は倍になるけれども顧客の数は依然として同じである。その結果は、その商店当りの売り上げ、収入が半減することは明らかである。ここにいわゆる過当競争が起り、ここにまた食うためにやむ得ず、不正なる販売方法も行われる。やがて結果は、市場商人の共倒れ、ひいては顧客、一般消費者、大衆の公共の福祉のためにも捨てておけない事態が起る。これがこの乱設防止の問題がやかましくなってきたわけであります。従って、もし政府法律を制定して乱設を防止せんとするならば、ここにこそその対象を求めなければならぬはずであります。しかるに出てきたものはこの法案でありまして、その内容、また今の長官の御説明によりますと、市場開設者と小売商人との間の契約は、なるほど一定の条件内に規制をせられるから、それは育ちに新市場の出店商人の保護利益になる。そうすれば、そんな都合のよい市場なら幾らでも新築してくれろ、おれたちは勉強して盛んにやるぞ、こういう結果になることは明らかではありませんか。すなわちごの法案乱設奨励法案といわれるわけなのであります。この点について、政府は何とお考えになっておるのであるか。その点をお伺いいたします。
  20. 岩武照彦

    岩武政府委員 御指摘のような事態が起るかどうか、これは先ほど来お話がありましたような共有によりまする店、の相互によりまする設置とか、あるいはまた分割する建売りとかいう場合でありますれば、あるいは若干新設の小売市場ができる危険性もあるかと思っておりますが、通常の権利金をとるとか、あるいは売上高歩合をとるというふうなやり方をやっております小売市場は、おそらく新設できないのじゃないかと思っております。と申しますのは、やはりかなりの権利金を徴収いたしまして、早く投下資本を回収したいというのが、市場開設業者の多くの希望であろうと思います。現に、一人の人で数個の市場を開設しているというのもかなりあるようであります。われわれといたしましては、既存の粒々辛苦いたしました小売市場の繁栄を願うものではございますが、同時に消費者の要望もございましょうから、やはり合理的な経営形態で、あまり近接しないところで小売市場を設けるというようなことが、もしこの法律の範囲内で小売業者の利益になるような方法でいきますれば、これを無理に抑えるということはどうかと思っております。できるだけ適正な配置で新しい小売市場ができるということは、これはあるいは消費者の問題のみならず、中に入っております小売商の問題としても、適切なことかと考えております。ただ、脱法的に既存の小売市場を打倒する目的で、この法律をくぐりまして、近辺に作ってむちゃくちゃな競争をやるということは、何とかして避けたいと思っております。
  21. 中井一夫

    中井(一)委員 この第五条のうちに、先ほどお伺いしましたが、「政令で定める物品の全部」というのは、生鮮食料品、すなわち野菜、魚類、肉類、この三つの物品をさすということでございました。そうすると、この三つの物品を売る商店のないもの、またはその一つ二つのものは売られておっても、三つともそろうていないもの、そういうところならば、いわゆる小売市場としての許可を必要としないと思われるのでありますが、そうであるとすれば、いろいろな問題が起ります。  まず考えられることは、初め市場を開始するときには、三つのものが売られておったから許可を得た、しかしその後になって、それらの商店がなくなり、または三つのうちの一つ二つが欠けたというような場合には、その市場を一体どういう形に見るのであるか。  さらにまた初めこれらの物品の商店はなかった。そうして事実上のいわゆる市場ができてしまったが、その後になってこれらの商店がその市場内で開店をするに至った、そういう場合においてその市場をどういうふうに見られるのであるか。従ってまた許可、不許可等の問題をいかに関連して考えてよろしいか、この点について伺います。
  22. 岩武照彦

    岩武政府委員 現在の小売市場を見ておりますと、魚、野菜、肉、いわゆる生鮮食料品を大体店の数にいたしまして「三分の一程度まで売っている場合か非常に多い。しかもそういう店は一つ小売市場内に少くとも二軒ないし三軒、多い場合には四、五軒ある場合もあるようであります。つまりこういう品物を主体といたしまして、生活必需品をまとめて消費者に供給するという組織小売市場であり、またそれが消費者の魅力だろうと思っております。そこで御質問ありましたように、初め二つしか売らなくって、つまり自由に開設して、あとで三つ売った場合はどうするかというお話でございますが、これは三つを売るに至ったときからひっかかる、この法律によります許可が要ると考えております。逆の場合は、これはいわばこの法律の初めには許可を受けて三つとって、途中一つが脱落するというようなのはめつたにないとは思っておりますが、故意にそういうふうな店を脱落さすということになれば、これはおそらく小売市場としての魅力を持たなくなる、お客がつかぬだろうと思いますが、この法律関係から言いますれば、まあ自由営業といいますか、自由店舗になる、こういうふうに解釈いたしております。
  23. 中井一夫

    中井(一)委員 そういうことになると、これはもう全くザル法であって始末がつかぬと思うのです。なぜならば、三十軒でも四十軒でも市場の中に店を出させておいて、そうしてその後に問題の魚屋、八百屋、肉屋等を入れる、そこで初めて小売市場としての形態を整えたからその許可を必要とするということになりますと、それは一体どうなるのでしょう。しかもこの法案のねらいとするところは、市場開設者と市場小売商との間の契約の規制にあると言われるのだから、あとでできた三軒のために、その以前に市場の中で店を開いておる数十軒の小売業者と市場開設者との間にすでに結ばれておるところの賃貸借契約に対して、いかなる影響を及ぼすことができるのであるか、これは大問題だと思うのです。三人あとで入ってきた、そのため今まで永年の間、平静の状態で家賃を払い、家賃をとってきた、それがあらためて検討されて高いの安いのと、言われる、それがもし高過ぎると認定されると、これは市場としての存在を許されないという結果になるのではありませんか。これは民法の原則にも反しむしろ大へんなことだと思うのでありますが、こういう場合を予想しておられましょうか。この点をお伺い申します。
  24. 岩武照彦

    岩武政府委員 先ほど来生鮮食料品、つまり三品目があることが市場の魅力だというふうに申しあげておきました。やはり初めから肉、魚、野菜をそれぞれ数店舗そろえて開設するのが通常の場合だろうと思っております。そのうちの一つあるいは二つが欠けますと、やはり消費者もその市場に寄りつかなくなる、別の店を探すということになるんじゃないだろうかと考えております。通常のあり得る場合を考えて規定したのでございますが、今お話のよりに、いわば脱法的に、初めは二種類の商品しか売らないような商店の構成にしまして、あとから入れていくというふうな場合になりますれば、やはり同じ貸付契約の条件で店子に家賃その他を請求することになりますけれども、既存のものも許可を受けていただくということになるだろうと思います。ちょうど今まで店が九つあって、あと一つふえて十になるという場合に、この法律の適用を受けるという場合と同じになると思います。
  25. 中井一夫

    中井(一)委員 御説明では納得はできませんけれども、そういう疑問だけをここに掲げておきまして、先ほど御説明のうちにあった営業の自由、あるいは消費者の要望ということに関する御意見を伺います。  市場の乱設を規制するということは悪いことではない、しかし消費者の一要望も考えて、そうはならぬのだという趣旨のお説明がありました。しかしながら日本の中小企業、ことに小売商実情というものが、全く上げも下げもならない実情にあるということは、今さら申し上げるまでもないのであります。従ってこれらの人々に対する政治上の施策は、おざなりではいかぬのである。全く深刻な社会問題と考えてでなければ、ほんとうの施策は立つものではない。少くとも私は通産省ことに中小企業庁においては、そこまで割り切っておられるものと今まで信じておったのでありますが、この際になってもなお長官自身から、消費者の要望等も考慮してという言葉が出ますことは、はなはだ中小企業問題に対する情熱に欠けるところがある、またそれが、この大問題解決の心持であってはならぬと思うのです。もとより消費者の立場も大切ではありますが、それをそんなに強くお考えになるならば、購置会、生協に対する規制などはおやりにならぬ方がよい。元来生協の建前というものは、ずいぶん以前に制定せられた産業組合法の伝統を引いてけておるものであります。産業組合法りてもそもの考えは、物資の流通は生産者より直接消費者へというのがスローガンであった。その点では、かつての農林当局及び関係者の考え方は徹底しておった。商人、小売商を中間搾取業者と呼び、こういうものがあるために、農民は高い物を買わされ、困るのだ、従って、物資の買い入れには、商業者の介在を排斥し、「卸値で生産者より直接農民へ」これができれば、農民の生活は万歳だ、そういうよう考え方から、あの法案は作られたのであります。昭和の初めのことでありますが、当時農林省からされたポスターには大きな菜っぱが描かれ、その上にこれを食うているたくさんな油虫が書いてあり、菜っぱは、すなわち農民だ。油虫は、すなわち小売商人だ、菜っぱの存在の安全を期するためには、この油虫を取り去ることが産業組合の目的一つなんだ、こういうようなポスターまで作って産業組合の発展、強化のために宣伝をしたものであります。私は当時その。ポスターを国会に持ってきて、当時の中島商工大臣に突きつけ、同じ政府の一省たる農林省が小売商の撲滅を公然と天下に宣言しておるのに、商業の本家たる商工大臣が何ゆえこれを黙過しておるか。そんなことなら商工大臣をやめるがよい、あなたには商工大臣たる資格がないと面罵したことを記憶いたしますが、その流れの考え方が、いまなおわが国各方面に残っておることは、今日ますます、苦況にあるわが国中小商業者のために、私は残念でたまらぬのであります。この小売商に対し政府が保護し育成せぬとするならば、日本国の基礎たる中堅階級というものは没落するより道がない。現に没落しつつある。国家のためにこれほど憂慮にたえぬことはない。願わく、ば、消費者の要望も大切なことではありますが、少くとも中小商工業の味方たる中小企業庁においては、はっきりと割り切って小売業者のために、擁護の情熱をそそいでいただきたい。長官もまた思いを新たにせられる必要があると信ずるのであります。  次に営業の自由の問題についてでありますが、今日私は長官との問に憲法論を上下しようとは思いません。しかし現時わが国におきまして、いわゆる営業の自由を法令もしくは取締規則等をもって制限をしておるところのものは枚挙にいとまはございません。法典を見れば片っ端からあるといってもよいのであります。私の手元にとりあえず取り調べましたものでも、ここで読み上げることができぬほど多数あるのでありますから、御参考のため後で御一覧を願います。しかし一例を申せば、最近環境衛生法などという法律ができまして、飲食店はもとより理髪屋さんや、クリーニング屋さんの仕事にも適用せられ、取締りを受けるとともに、その営業については一種の保護を受けることになっております。ことに浴場につきましては、浴場の新設は都府県知事の定むる条例によって、既存の浴場との間に一定の距離を置かねばならない、それ以内においては、新設を許さない、こういうような法律規則ができておるのであります。もしこれがいわゆる公衆衛生上の見地からのみで、できた規制であるならば、新設せんとするふろ屋が、既存のふろ屋よりも設備その他の点においてよりよく衛生的であって、一般公衆衛生のために歓迎すべきである以上、どんどん許可せられてしかるべく、ここに初めて環境衛生法の目的を達することができるはずであります。しかるにこの法規によって定められた許可の条件は、そんなことを対象とはせず、ただ既存の浴場と新設の浴場との間に一定の距離がなければ、新設の浴場を許さぬとなっているのみであります。およそ衛生らしくないことが許可条件となっておるゆえんは、結局浴場の乱設を防止するということにほかならない。乱設を防止することによって、既存の浴場者との過当競争による混乱をなくする。その結果は、やがて保護された既存の浴場常業者は、自分の施設等をも改善をし、よい浴場としていくことができるであろうということをねらいとして、この法規はできたものである。この一例によっても、小売市場につき、なぜ憲法問題を心配したり、常業自由なんというむずかしい問題を考える必要があるだろうか、私は不忠議で大らぬのでありますが、一応この点に関する御所見を承わっておきます。
  26. 岩武照彦

    岩武政府委員 私も憲法の法律的な専門家でもございませんが、憲法二十二条の公共の福祉という条件のもとに、職業選択の自由というものを認めているわけでございます。公共の福祉の解釈につきましては、これはいろいろ議論もあるかと思っておりますが、大きく言いますと、たとえば安寧秩序であるとか、あるいは衛生安全あるいは大きな力による弱小者の圧迫というふうな点が、今までの成文法におきましては、一応公共の福祉という解釈のもとに常業の自由を制限し得る場合のように考えられております。本件のように、数が多くて過当競争になって、その結果小売市場のサービスが落ち、あるいは営業継続が不可能になるというふうな場合が、公共の福祉に当るかどうかということにつきましては、これはかなり議論があるかと存じております。ありていに申しますと、市場開設者、これは法律的に言いますれば、おそらく不動産の賃貸業者ということになるのではないだろうかと思っております。建物所有者でかつそれを分割賃貸いたしまして小売商に提供しておるということでございますれば、その不動産所有者あるいは賃貸業者の乱立、そういうことが公共の福祉と、どういうことになるかという議論を諦めて参りますと、御指摘ございました公衆浴場のような場合とは若干違うかと思っております。公衆浴場の場合は、乱立競争いたしまして、定められております衛生あるいは安全の基準を守れなくなる。従ってその結果浴場利用者に衛生上の不便ないし不安を与えるということになるかと思います。ちょっとこの小売市場の場合とは若干ケースが違うのではないかというふうに見ております。われわれ中小企業庁の立場から申しますと、御指摘のように過当な運業ということをできるだけ調整したいということはもちろん考えております。そのために一体どうしたらいいかということで、実はいろいろ日夜頭を悩ましておりまして、その一つの現われが例の中小企業団体法の特定の場合におきまする設備等の制限の問題になってくるわけでございます。まだ端的に製造業におきましてもあるいは物品販売業におきましても、営業自体を数を整理するために許可制にするということは、実はあまり例がないことでございます。今の申し上げました憲法上等の問題から考えますと、われわれもそういうことは考えてはみておりまするが、どうも踏み切りにくいというのが偽わらざるところでございます。
  27. 中井一夫

    中井(一)委員 長官の御説明を聞いておりますと、長官実情を御承知ないと申さざるを得ぬのです。市場をそういう見方でごらんになっては、市場の本体はつかめません。実は私ども自由民主党におきましては、小売市場許可制にすべきことが党議で決定しておる。よってこの点を修正し、許可制を明定することにしたいと考えておるのであります。しかしお話を聞きますと、まずもって中小企業庁自体の認識を改めていただかねばならぬ必要を痛感いたしましたから、この機会に私の信ずるところをお聞きをいただきたいのであります。  小売市場はいわゆる一般商店と非常なる差を持っておる、この点が、法律で規制せねばならない重要なる根拠であると信じております。それは言葉をかえて言えば、憲法にいうところの公共の福祉に関しておるからであります。なぜならば、小売商が点々として町に存在をいたしておりまする際は、その存在は一店々々として個々独立の立場にありまするし、これへ来るところの顧客も、また一度にいわゆる来集するものではございません。その実情はきわめて個人的であり、平静であり、決して群集的なものでないことは明らかであります。これを市場の実情に比すれば、非常なる差異があることがわかる。すなわち市場は一つの大きな建物内に、または隣接したる大きな建物の中に、多数の小店舖が軒をつらねております。しかもその隔ては壁でなく、板張りのところさえあるのであります。これは正に小売商店の大集団です。ここに、個々の小売商の存在と異なりたる様相があります。またこれへ来集する顧客は、その数は実におびただしく、市場によっては、一日に何万という大衆が、昼または夜、時を同じゅうして集まり来たるのであります。  この状態が個々の商店に対する来客の状態と異なることまた明らかであります。この群居、群集の状態に個々の場合と異なりたる、いわゆる公共的様相が現われてくることは申すまでもありません。さらに具体的に申しましょう。まずその市場の建築自体が大衆の来集するのにふさわしい堅牢性安全性を持っておるかを、考えねばなりません。一たび火災が起きた場合に、それを防止しまた群衆を避難せしむる用意はいかにあるか、市場内にある上下水道、便所、塵芥集去の施設その他衛生上の設備を特に考える必要がありましょう。いわんやその中に伝染病等が起りました場合には、個別の小売商店に起りたる場合と異なることも明らかであります。また大衆が一時に寄り集まるのでありますから、時には争闘も起りましょう。その他大衆を対象とすべきいろいろな事態に対して、すなわち公共の安全、一般の安寧秩序ということを考えざるを得ないことも明らかであります。それならば、市場の問題をもって個々の商店のあり方と同様に考えることが、根本的に誤りだということがわかるではありませんか。つまり、市場というものにはいわゆる常業上の問題も大切であるけれども、市場という特殊の状態にあるがゆえに、憲法にいわゆる公共の福祉に直接関連しているということは、きわめて明白なりと信ずるのであります。それならば先ほど来お話のありました、憲法にいう公共の福祉の見地よりする常業の自由の規制を、なぜこの市場についても考えることができないのであるか。これに気のつかれない企業庁に対し私はきわめて遺憾の意を表しますとともに、この問題のためにたびたび論議をしても、今なお了解されない政府の法制局の頑迷には驚かざるを得ないのであります。あらためてお考え直しを願います。  私は実は通産省、特に中小企業庁に対して、この問題を解決する考え方の根拠を、憲法にいうとこるの公共の福祉という問題に持っていかれたくはないのです。わが国の中小企業がいかに困難な状態にあるか、特に同業過多に悩んでおる小売商を保護するということは、われわれ日本の将来を思う者の第一になさねばならぬことである。この見地に立って、市場の問題もお考えをいただきたい。その情熱と信念があって初めて日本何千万の小売商人は希望を持ち、通産省に信頼の念を抱くことができると思います。ついては私の取り調べて参った営業または事業等り訂可または制限の例を申し上げて御参考に供しましょう。  「一、国民の保健、衛生の観点から一定の能力、技術を要するため資格が要求される場合   医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師、薬剤師、保健婦、助産婦、看護婦、診療エックス線技師、歯科技工師、美容師、理容師、クリーニング師  二、国民の保健、衛生の観点から相当の施設を有することが要求される場合   食品衛生法による飲食店常業、喫茶店営業、菓子製造業等病院、診療所、助産所の開設、旅館業、興業場、公衆浴場、水道事業、幕地、納付堂又は火葬場  三、その他業務の性質上一定の技能が要求される場合の資格の限定   自動車運転の免許、通訳案内業、旅行あっ旋業、弁護士、税理士、公認会計士、海事代理士、計量士  四、特に公共的色彩が濃厚であるために一定の設備、資産、能力等が要求される場合   銀行、信用金庫、信託業、保険業等の金融機関、証券業、自動車運送事業、船舶運航事業、航空運送事業、商品取引所、証券取引所、博物館  五、危険物を取扱う業務又は製品について特に安全性が要求される場合   火消楽類の製造、販売、高圧ガスの製造、販売、武器等の製造業、航空機製造事業、毒物劇物の製造業及び販売業  六、犯罪の予防、犯罪の捜査の観点から業務を規制する必要があるもの   風俗営業取締法による風俗常業(待合、料理店、カフェー、キャバレー、ダンスホール、まあじゃん屋、ぱちんこ屋等)古物常業、質屋営業  七、中小商業の保護のため百貨店業  八、過度の競争の防止文は供給過剰の防止が許可制一つの理由とされているもの   中央卸売市場における卸売業、自動車運送事業、船舶運航事業、航空運送事業、航空機製造事業  九、輸出貿易の振興のため登録に一定の基準を必要とするもの   一定の輸出業者—経理的基礎、経験、能力を要求せられる輸出向軽機械製造業者——設備その他の生産条件が一定の基準に達していることを許可条件とする。  その他   酒税の確保のため酒類の製造、販売」  ことに百貨店業を特に規制する理由はどこにあるか。力の強い百貨店が力の弱い小売商を圧迫することは国家全体のためにならぬという趣旨に外ならない。この趣旨がなぜ小売市場の問題に準用されないのであろうか。実に不思議にたえないということを申し上げて、質疑を次の問題に進めます。  次は許可権者の問題であります、法案によると、小売市場開設の許可権は府県知事にあるとされております。この点は永年政治問題となっておる五大都市と府県との関係に及びますが、政府が昨年の第二十六国会でお出しになった小売商業特別措置法案においては、本案のごとき許可制ではなく登録制となっておりましたが、それの主管者は府県知事であることを原則とするが、政令で指定する市すなわち五大市等については、その市長に許可権が与えられておった。登録制の場合には市長が権限を持ってよいとせられたのに、なぜ本案においては府県知事にせられたのであるか、場合によっては市長に与えてもよいとせられるか、そのことを御伺いいたします。
  28. 岩武照彦

    岩武政府委員 前回の政府案は無制限登録という制度をとっておりました。ただそういう市場の所在を確認する行政行為しかやっておりません。従ってそれはどちらでもけっこうなわけだったと思います。本案のように許可制ということになりますと、これはある程度権力的な要素も入りますので、別の考えをとった方がいいじゃないかということに考えておるわけであります。五大市、いわゆる地方自治法で特に指定しております市の区域の問題につきましては、こういうふうな市民の生活と密接した関係の仕事につきましては、いわゆる五大市に権限を譲った立法例もいろいろございます。本案におきましては、一つは先ほど来指定地域の点で申し上げましたように、いわゆる五大市の隣接の地域等も一応包括して指定することも考えております。またそういうふうに隣接地域と一体として考えました方が御指摘ありましたような市場の乱設防止という見地からは適当かと存じまするので、そういう点を考えますると、都道府県知事の方が適当じゃないかというふうに考えたわけであります。  もう一点は、現在いわゆる五大市におきましては市の直営あるいは委託事業でありまするいわゆる公営小売市場がございます。かなり数もあるようでございますが、そういうふうに自分で直営ないし委託等を行なって経営しておりまする主体が自分で許可するということは、法律的には不可能ではございませんか、実際的には純民営等との競合などのことがございますれば、あまり適当で大いだろう。少くとも外部から公平を欠くような目で見られることもあるのではないかというふうな配慮からいたしまして、都道府県知事というふうに見た方が適当と思いまして、このような原案にいたしたわけでございます。
  29. 中井一夫

    中井(一)委員 そのお話を聞きますと、さらに掘り下げて伺わねばなりません。長官は府県はみずから公設市場的な事業等を経営していないとお考えになっておるのですか。  私は元来、市が市設市場を有することは実質的にはむしろ許可権者として行政を担当する適格を示すものと信ずるのでありますが、形犬論としても申請者が同時に許可権者である事例は少くありません。現に五大市の市長にそのような権限を与えられた例も多々あり、各種の福祉施設や火葬湯の設立は知事にも市長にも認められている。府県立病院、府県営埋立事業等は、また事業とその許可権が府県に帰一している実例であって、しかも弊害はない。しかるに府県知事にはこれを可とするが、五大市の場合には否とするというとは私は断じて承服いたしがたいのであります。
  30. 岩武照彦

    岩武政府委員 さようでございまするから、法律的には不可能でないと申し上げたわけでございます。ただこういう市場の経営等につきましては、先ほどいろいろ申しましたように、民営との競願等のこともございましょうから、でき得れば公営の経営主体でないところで許可した方が、あるいは公平にいくということもあるかという見地でございます。それからもう一つは、やはりもっと広い見地からこういう問題を処理する必要がある、こういう二点からこのような原案にした次第でございます。
  31. 中井一夫

    中井(一)委員 それは非常におかしい御意見です。大体現存の公設市場を市が経営しているということは、かつて第一次の欧州大戦争出時、生活必需品の物価が非常に暴騰し、市民の生活が困ったので、暴騰を抑えるために、特に人口の多い五大市は市場を公設し、無家賃その他の特典を市場内の商人に与えて、安く売らしめ、これによって市内一般の物資の価格の暴騰を押えんとしたのが、公設市場開設の根本なんです。ところが今日では事態は逆です。物資は多過ぎ物価は安過ぎて困っているのかその現実でありますから、事実五大市においては、公設市場はわずかに残っているというのが実情であります。しかるにこれを取り上げて、市長に権限を与えれば、弊害でも起るかのようにおっしゃるならば、同じ問題は、府県知事には一層多く起り得るはずであります。それに市長ではいかぬが知事ならよいとせられることは、全く理由のないことであります。  ただこの問題は歴史的に府県と五大市との間に存する懸案に関係があるのでありまして、愚かにも五大市は府県知事の有する権限十六項品を市長に譲り受けることによって、その中宝たる特別市制を地方自治法から削除してしまったのであります。しかし、五大市が市場の存在を最も必要とする都市であり、また市長がその事情を一番よく知っておるという関係からしても、その許可の権限を五大市長が持つことが最善であり、かつ決して弊害はないと、信じますから、その点について長官は特に御再考あらんことを希望いたしておきます。  大臣出席されましたから大臣にお伺いをいたします。  私はまず中小企業に対する政府の機構について御所見を伺いたいのであります。すなわち中小企業問題はわが国現在の大問題であることは政府国会も、特に大臣は常に声を高くして仰せられるところでございますが、その主管官庁である中小企業庁の構成を見ますと、わずかに二部八裸の小官庁にすぎません。こういう貧弱な陣容をもって果してわが国刻下の政治、経済、社会上の大問題である中小企業問題解決のために、十分なりとお考えでありましょうか。事情は違いますけれども、現にオランダやベルギーにおいては、その長官を内閣における大臣として、中産階級省という名前で同様な問題に積極的な活動をしておる不実があります。わが国においても、中小企業がほんとうに大問題であるとお考えになるならば、その重要性にかんがみて、これを中小企業省に昇格せしめる。省への昇格が時期尚早ならば、中小企業庁を拡大強化されて、国家的問題解決にふさわしい陣容を整えられることが必要であると思うのであります。中小企業保護育成はすでに自由民主党が天下になした公約であり、特に私があなたにこれを申し上げるゆえんは、あなたこそ、ほんとうに日本の通商産業の実情をよく御承知であり、深い同情と理解があるお方であると確信いたしますので、初めに掲げて御所見を伺うのであります。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説まことにごもっともでございまして、日本の現在の経済繁栄につきましては、輸出振興ということをやかましくいっております。この点から見ましても、現在輸出しておる商品の五〇%以上が中小工業でできており、かつ下請業を入れますと、少くとも七、八〇%は中小工業の手において行われておる。またこれに従業いたしております従業員の数から申しましても、これまた非常に大きなウエートを持っておるのであります。その上にこれに従業しておる人たちは、大工業において整理をされた人たちがしょっちゅうそこへ流れ込むので、労働対策から申しましても、非常な市要性を持っておる。またこれの賃金制度等におきましても、大工業では、ある一つ組織を持っておりまするけれど、も、これはみな個々別々であるからいろいろな業態にあるとか、同時にまた中小工業は力が一致していないものでありますから、海外における市場の調査とか、あるいは技術の向上とかいうふうなことは、各自てんでんではできないわけでありまして、少くとも通商産業省の仕事の大部分は、中小企業というものを中心にして考えていかなければならない。従いまして大企業を考える場合におきましても、中小企業というものを考えずに指導できるものではない、こういうふうな感じを持ちまして、私は自分の考えとすれば、通商産業省は大体は中小企業省だという考えで進んでもよいだろう。大企業は捨てておいても各自で相当実行に移せるけれども、国の産業を伸ばしていくとか、国の政治を行うということについては、全部これは中小企業を中心にして考えていく必要があるだろう。私はこういうことを心の中に置いているわけであります。そこで今のお説のごとく、いかにも中小企業庁の構成が小さくて二部八課である、こういうふうなことで十分であるかという御質問でございますが、重要性は十分感じておりますから、これに向って集中するようにし、そうして組織がこれで足らぬということであれは、御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。お説のごとく、今日まで私は五十年間実業界おりましたが、そのうちの四十年間というものは、ほとんど中小企業者として立った人間でございまして、それがいかに困っているかということを、私は身をもって体験しているわけでありますから、この際皆様の御協力によりまして、政府の方針等もそれによって進めていきたいと考えております。
  33. 中井一夫

    中井(一)委員 切に大臣の御奮闘、御尽力を期待いたします。  お話の中にもありましたが、何としても中小企業の問題、ことに小売商の問題は同業者が多過ぎるということが根本の問題ではありますが、一つ組織、団結がないことが重大な難点と信じます。それがため政府はさきに中小企業団体組織法を提出法律はできたけれども、その後、この法律がどの程度中小企業者のために力となったか、実績の上から見て、疑いなきを得ぬのであります。もとよりトラストあるいはカルテルという一連の考えについては、消費者の立場、営業自由という観点から、これを抑制していくという考え方は原則としては間違ったものではありません。しかし一面勤労者に対して、団体協約権、罷業権まで法令で確認をした、この事実を考えてみると、無力なる中小企業者の立場はあまりにも気の毒ではないか、しかもこれを保護育成する道は、ただただ政府の理解と情熱とのほかにはありません。従って、中小企業団体組織法の施行後その結果はいかがに現われておるか特に指摘したいのは、商工組合を作るに必要な条件、いわゆる不況条件等があまりにも厳格に過ぎるのではないか、もっとこれを緩和して、商工業者が団結をしやすいように法律の改正また行政上の措置をすみやかに、かつゆるやかにすることについてお考えになってよいときと思います。この点御所見をお伺いいたします。
  34. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 さきに中小企業団体法が制定を見たのでございますが、最近の情勢では、この中小企業の安定のために、さらにこの組織を強化する必要があるということは痛切に感じておりまして、組織を強化するということは、いかにして団体行動をしやすいように行政指導をするか、またそういうふうに法規も考えるということは全くお説の通りでありまして、その方針に向って進みたいと思います。
  35. 中井一夫

    中井(一)委員 第二に、金融関係であります。これについて本日大蔵省は各省に本国会に対する予算を内示せられました。中小企業庁長官から承わると、相も変らず重点的に取り扱われていないということは明らかです。ただいま通産省要求しておられるものだたけは決して多いとは思いませんが、せめて要求だけは確保をしていただきたい。私も微力ながら大蔵省へ働きかけておりますが、大臣も部下にのみおまかせにならず、みずから陣頭に立って大いに御奮闘を願いたいのであります。  この際、大臣にお伺いいたしたいのは、中小企業金融は、その限度が少額で、利息も安くない、その手続があまりにもむつかしく、官僚的であって、実際の間に会わない、という庶民の声を何とお聞きであるか、政府金融機関はもとより、市中一般銀行に対しても政府の打つべき手ははなはだ行き届いていない。ごとに一般市中銀行は、小さい中小商工業者大衆から預金を引き上げておきながら、金はこれらの人人には貸さないで、大きなところにの入貸しては、どえらい貸し倒れを起す、この実情はあまりにも不当であります。  政府金融界の王座におる前日通銀行に対し、強力に働きかけて、その金を中小商工業者にも貸し出すことができる方法をお立て下さることはできまいか、大臣の所信をお伺いいたします。
  36. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、中小企業として一番の差し迫った問題としておりますことは、金融を緩和することと、金利引き下げでございまして、政府といたしましても、さきに信用保険公庫出資金を増すとか、今回商工組合の中央金庫の政府出資を増して、できるだけ金利を下げるという方針、あるいは中小企業金融公庫融資額をふやすというようなことで、どうしてその金利は開発銀行並みに持っていく、この方針を堅持して進んでおるわけでございますが、どうも政府出資にいたしましても、あるいは融資にいたしましても、私どもの要求通りにはなかなかいれられないという現状でございます。この点につきましては、皆さんの御尽力を得まして、できるだけ私どもの考えておりますことが実現し得るように御後援を願いたい、こう存ずるわけであります。一般市中銀行も昨年来非常な金融梗塞をしておりましたが、本年は金融は相当緩慢になっておることと、それから市中銀行の状態を調べますと、中小商工業に貸しておる貸付というものは、かえってその危険率は少いのでありまして、危険率はむしろ大口の貸付にある、こういうふうな実情もわかっておるのでありますが、ただ取扱いがあまりに小さくて手数かかかる、こういうふうなことでなまけておる、こういうふうな点もあるようでありますから、これはよく地方銀行たり一般銀行に対して御趣旨に沿うように勧告もし、勧誘もしてみたい、こう存ずる次第でございます。
  37. 中井一夫

    中井(一)委員 大臣は、ほかの会議にお出ましの必要が起ったようでありますので、大臣に対する質疑はきわめて簡単に、大綱のみについて進めることにいたします。  次は税制関係でありますが、元来中小企業者にかけられておる事業税は、根本的に考え直す必要があると信じます。なんとならば、元来事業税の性質は、都道府県住民が、都道府県から受けるサービスや施設による利益に対する報償として支払うべき税金である。それならば同じ立場にある農民はこれを払っていないのだし、また給与所得者の負担に比べると、税額の点において非常な不公平がある。また法人と個人企業間の不均衡についても改正せらるべき問題がたくさんある。しかしさしあたり事業税の負担の軽減は、今日中小商工業者の切望しておるところであります。しかもそれは自由民主党公約の一つである。  大臣の所信をお伺いいたします。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説の通りどうしても中小企業税制を改正、しなければならぬ、個人事業税におきましても基礎控除額は現行十二万円になっておりますが、これを今度は十五万円に引き上げるということをやりたいと思っております。同時に免税点二十万円を新設することにいたしたい、こういうことで今せっかく検討いたしておるわけでありますので、できるだけ農民と同じような工合の税率の軽減のできるように進みたいと思っております。
  39. 中井一夫

    中井(一)委員 次には輸出貿易に関するものであります。日中貿易が中断したことはきわめて残念なことであります。政府の静観はさることながら、これはこのままでは済まされぬ問題だと思います。これについてはあらためて政府の御所見を伺うことにしますが、この際第四次貿易協定の中断による関係業者の損害に対する補償問題をいかにお考えになっておるか。また今春広州、武漢において開催された日本商品展示会による出費のうち、中国側に対する負債は、わが国の威信のためにもすみやかに解決すべきものでありますが、この機会に、その間の経過を明らかにしていただきたい。
  40. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日中貿易が今日の状態にあるということはまことに遺憾でございまして、いたずらに政府は静観しておるわけでなく、どうかしてこれを早く解決したいということで努力しておるのでありますが、すでに起りました現在において、この間の商品見本市の損害の問題につきましては、最初政府は運賃を補償するという考えで進んでおりしましたが、現地において輸送費、倉敷料その他の費用で相当な価額に上っておるものはそのまま据え置いて、商品を引き揚げてきた、こういうふうな結果を聞いたのでありますが、これは国際信義上はなはだおもしろくないという考えから、政府といたしましても予備金のうちの一部分及び通産省が持っております費用の一部分をさきまして、五千五百万を支出することにいたしまして、現在の見本市のあとの負債の問題は解決したわけであります。  なお、これによりまして、この中共貿易途絶のための損害ということにつきましては、関係者からいろいろ申し出はありますが、ただいまのところ政府はこれについては補償し得る方法またはその金額等についてもほとんどまだ見込みがつかない、はっきり申しますとそういう状態であるわけでございす。
  41. 中井一夫

    中井(一)委員 最後にお伺いしたいのは百貨店法の改正問題です。本年の九月に、百貨店日信販との月賦販売契約が、結局小売業者に対して非常な影響を及ぼすということから、通産省大臣並びに局長の名をもって、百貨店協会に対し自粛の勧告をせられた。この勧告はもとより百貨店法による勧告ではありませんけれども、実質は同じことです。しかるにさきほど長官から承わると、その勧告に対していまだ何らの解決が見られていないということであります。きのう、きょうの新聞は東京三越百貨店の売り上げは、一日に三億に達しておるということである、大いに売り、大いにもうけることは悪いことではないけれども、一人でもうけなくてもいいじゃないか。売りたくても売れない小さい商人が、日本に数知れぬほどあるのでありますから、こういう場合に、強過ぎる者を抑えて弱過ぎる者を擁穫することは、政府の強い決心と施策によってまさになすべき政治であります。力の弱い労働者に団体協約権を認め、ストライキ権さえ与えられたのも、その趣旨にほかならぬと私は信じます。何ゆえに百貨店等に対する施策が徹底を欠くのでありましょうか。日信版と百貨店との契約取引の問題について出された大臣局長の勧告は、形式こそ百貨店法上の勧告ではないが、実質はそれと同一であります。それが聞かれないようなことならば、お出しにならない方がよろしい。一たび出した以上は、通産省大臣局長の名誉にかけてもこれを徹底せしめるのでなくては、申しわけがないではありませんか。私はこの責任はきわめて重大だと思います。何ゆえに勧告に沿うように彼らを抑えることができないのであるか、これを承わりたい。
  42. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 さきに政府から百貨店に出しました勧告につきましては、百貨店側におきましてもこれにこたえる用意があるという意向は表明しておるのであります。ただその内容等につきましては、これは各方面にいろいろ議論がございまして、よほど公正を期していかなければならぬ、こういうことのために、産業合理化審議会の流通部会というのがありまして、それにかけまして割賦販売制度全般についての検討を、今加えられておるわけであります。政府のやっておりますことははなはだ手ぬるい、なまぬるいというお考えもございますでしょうけれども、こういうようなことにつきましては、一応勧告を出した以上は必ずこれを実行せしめるという決意はちっとも変っておりませんが、それを実行するためには十分慎重を期したい、こういうことのために今検討しておりますことを御承知願いたいと思います。
  43. 中井一夫

    中井(一)委員 それゆえ私は、百貨店法改正の必要を痛感するのです。百貨店法の規定によれば、勧告が聞かれなかった場合に制裁する規定がない。それだから彼らはその強力を頼んで、通産省をばかにし、大臣局長を無視して、九月から十二月の今日に至るまで、何らの誠意を示さないことは、実にふらち千万であります。私は強者に対し弱者を擁護することが民主政治の恨本義と信じますがゆえに、国会として、また政府百貨店法を改正して百貨店が勧告を聞かぬときには、通産大臣はその常業を停止することかできることに進められるのが当然だと思います。しかし問題は、政府の御決心が先決であります。  大臣の御決意を承わりたい。
  44. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私どもは、百貨店政府の勧告をばかにしているというふうな感じは持っておりません。それにつきましては、先ほどお答え申しました通りに、十分慎重に検討して、そうしてごの勧告がいれられないというときにはしかるべき方法をとっていきたい、こう存じておりますが、ただいまさしあたってこの法律を改正して、それだけの強権を発動するということは考えていないわけであります。
  45. 中井一夫

    中井(一)委員 私はなお、中小商工業者及びその従業員の退職金、健康保険、最低賃金制度、また東南アジア各国に対する賠償に、わが国年産の物資を充てる問題、並びに中共との貿易競争その他につき、大臣の御所信を承わりたいのでありますが、私の質問は中食ぬきで前後三時間に及びましたから、本日はこの程度で打ち切り、さらにまた機会を見て質問を進めたいと思います。
  46. 長谷川四郎

    ○長谷川委員長 次会は公報をもって御通知申しげますが、明春二十日を目途として会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十三分散会