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中井(一)
委員 長官の御
説明を聞いておりますと、
長官は
実情を御
承知ないと申さざるを得ぬのです。市場をそういう見方でごらんになっては、市場の本体はつかめません。実は私ども自由民主党におきましては、
小売市場は
許可制にすべきことが党議で決定しておる。よってこの点を修正し、
許可制を明定することにしたいと考えておるのであります。しかしお話を聞きますと、まずもって
中小企業庁自体の認識を改めていただかねばならぬ必要を痛感いたしましたから、この機会に私の信ずるところをお聞きをいただきたいのであります。
小売市場はいわゆる
一般商店と非常なる差を持っておる、この点が、
法律で規制せねばならない重要なる根拠であると信じております。それは
言葉をかえて言えば、憲法にいうところの公共の福祉に関しておるからであります。なぜならば、
小売商が点々として町に存在をいたしておりまする際は、その存在は一店々々として個々独立の立場にありまするし、これへ来るところの顧客も、また一度にいわゆる来集するものではございません。その
実情はきわめて個人的であり、平静であり、決して群集的なものでないことは明らかであります。これを市場の
実情に比すれば、非常なる差異があることがわかる。すなわち市場は
一つの大きな建物内に、または隣接したる大きな建物の中に、多数の小店舖が軒をつらねております。しかもその隔ては壁でなく、板張りのところさえあるのであります。これは正に
小売商店の大集団です。ここに、個々の
小売商の存在と異なりたる様相があります。またこれへ来集する顧客は、その数は実におびただしく、市場によっては、一日に何万という大衆が、昼または夜、時を同じゅうして集まり来たるのであります。
この状態が個々の商店に対する来客の状態と異なることまた明らかであります。この群居、群集の状態に個々の場合と異なりたる、いわゆる公共的様相が現われてくることは申すまでもありません。さらに具体的に申しましょう。まずその市場の建築自体が大衆の来集するのにふさわしい堅牢性安全性を持っておるかを、考えねばなりません。一たび火災が起きた場合に、それを防止しまた群衆を避難せしむる用意はいかにあるか、市場内にある上下水道、便所、塵芥集去の
施設その他衛生上の
設備を特に考える必要がありましょう。いわんやその中に伝染病等が起りました場合には、個別の
小売商店に起りたる場合と異なることも明らかであります。また大衆が一時に寄り集まるのでありますから、時には争闘も起りましょう。その他大衆を対象とすべきいろいろな事態に対して、すなわち公共の安全、
一般の安寧秩序ということを考えざるを得ないことも明らかであります。それならば、市場の問題をもって個々の商店のあり方と同様に考えることが、根本的に誤りだということがわかるではありませんか。つまり、市場というものにはいわゆる常業上の問題も大切であるけれども、市場という特殊の状態にあるがゆえに、憲法にいわゆる公共の福祉に直接関連しているということは、きわめて明白なりと信ずるのであります。それならば先ほど来お話のありました、憲法にいう公共の福祉の見地よりする常業の自由の規制を、なぜこの市場についても考えることができないのであるか。これに気のつかれない企業庁に対し私はきわめて遺憾の意を表しますとともに、この問題のためにたびたび
論議をしても、今なお了解されない
政府の法制局の頑迷には驚かざるを得ないのであります。あらためてお考え直しを願います。
私は実は
通産省、特に
中小企業庁に対して、この問題を解決する考え方の根拠を、憲法にいうとこるの公共の福祉という問題に持っていかれたくはないのです。わが国の
中小企業がいかに困難な状態にあるか、特に同業過多に悩んでおる
小売商を保護するということは、われわれ日本の将来を思う者の第一になさねばならぬことである。この見地に立って、市場の問題もお考えをいただきたい。その情熱と信念があって初めて日本何千万の
小売商人は希望を持ち、
通産省に信頼の念を抱くことができると思います。ついては私の取り調べて参った営業または
事業等り訂可または制限の例を申し上げて御参考に供しましょう。
「一、
国民の保健、衛生の観点から一定の能力、
技術を要するため資格が
要求される場合
医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師、薬剤師、保健婦、助産婦、看護婦、診療エックス線技師、歯科技工師、美容師、理容師、クリーニング師
二、
国民の保健、衛生の観点から相当の
施設を有することが
要求される場合
食品衛生法による飲食店常業、喫茶店営業、菓子製造業等病院、診療所、助産所の開設、旅館業、興業場、公衆浴場、水道
事業、幕地、納付堂又は火葬場
三、その他業務の性質上一定の技能が
要求される場合の資格の限定
自動車運転の免許、通訳案内業、旅行あっ旋業、弁護士、税理士、公認会計士、海事代理士、計量士
四、特に公共的色彩が濃厚であるために一定の
設備、資産、能力等が
要求される場合
銀行、信用金庫、信託業、保険業等の
金融機関、証券業、自動車運送
事業、船舶運航
事業、航空運送
事業、商品取引所、証券取引所、博物館
五、危険物を取扱う業務又は製品について特に安全性が
要求される場合
火消楽類の製造、
販売、高圧ガスの製造、
販売、武器等の製造業、航空機製造
事業、毒物劇物の製造業及び
販売業
六、犯罪の予防、犯罪の捜査の観点から業務を規制する必要があるもの
風俗営業取締法による風俗常業(待合、料理店、カフェー、キャバレー、ダンスホール、まあじゃん屋、ぱちんこ屋等)古物常業、質屋営業
七、
中小商業の保護のため
百貨店業
八、過度の競争の防止文は供給過剰の防止が
許可制の
一つの理由とされているもの
中央卸売市場における卸売業、自動車運送
事業、船舶運航
事業、航空運送
事業、航空機製造
事業
九、輸出貿易の振興のため登録に一定の基準を必要とするもの
一定の輸出業者—
経理的基礎、経験、能力を
要求せられる輸出向軽機械製造業者——
設備その他の生産条件が一定の基準に達していることを
許可条件とする。
その他
酒税の確保のため酒類の製造、
販売」
ことに
百貨店業を特に規制する理由はどこにあるか。力の強い
百貨店が力の弱い
小売商を圧迫することは国家全体のためにならぬという
趣旨に外ならない。この
趣旨がなぜ
小売市場の問題に準用されないのであろうか。実に不思議にたえないということを申し上げて、
質疑を次の問題に進めます。
次は
許可権者の問題であります、
法案によると、
小売市場開設の
許可権は府県知事にあるとされております。この点は永年政治問題となっておる五
大都市と府県との
関係に及びますが、
政府が昨年の第二十六
国会でお出しになった
小売商業特別措置法案においては、
本案のごとき
許可制ではなく登録制となっておりましたが、それの主管者は府県知事であることを原則とするが、
政令で指定する市すなわち五大市等については、その市長に
許可権が与えられておった。登録制の場合には市長が権限を持ってよいとせられたのに、なぜ
本案においては府県知事にせられたのであるか、場合によっては市長に与えてもよいとせられるか、そのことを御伺いいたします。