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1959-03-25 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十五日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       小川 半次君    亀山 孝一君       藏内 修治君    齋藤 邦吉君       田邉 國男君    中山 マサ君       亘  四郎君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坂田 道太君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         労働政務次官  生田 宏一君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二十日  委員田邉國男辞任につき、その補欠として中  村梅吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員山田彌一辞任につき、その補欠として小  枝一雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小枝一雄辞任につき、その補欠として山  田彌一君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員古川丈吉辞任につき、その補欠として田  邉國男君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十九日  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第一  八三号)  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一八四号) 同月二十三日  クリーニング業法の一部を改正する法律案(大  石武一君外九名提出衆法第五七号) 同月二十四日  結核医療法案坂本昭君外九名提出参法第九  号)(予) 同月二十日  食肉販売業者環境衛生同業組合連合会設立認  可促進に関する請願岡崎英城紹介)(第二  六二八号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第二六七六号)  同(福田篤泰紹介)(第二七四二号)  同(中村三之丞紹介)(第二七七二号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(岡  崎英城紹介)(第二六二九号)  同(川島正次郎紹介)(第二六三〇号)  同(佐野憲治紹介)(第二六三一号)  同(中村高一君紹介)(第二六三二号)  同(野口忠夫紹介)(第二六三三号)  同(細田義安紹介)(第二六三四号)  同(増田甲子七君紹介)(第二六三五号)  同(森本靖紹介)(第二六三六号)  同(山崎始男紹介)(第二六三七号)  同(高田富之紹介)(第二七三八号)  同(田中正巳紹介)(第二七三九号)  同(中原健次紹介)(第二七四〇号号)  同(平岡忠次郎紹介)(第二七四一号)  同(青木正紹介)(第二七六四号)  同(天野光晴紹介)(第二七六五号)  同(橋本正之紹介)(第二七八六号)  同(濱田幸雄紹介)(第二七六七号)  精神薄弱児(者)対策促進強化に関する請願(  楯兼次郎紹介)(第二六三八号)  国立箱根療養所戦傷者入所料国庫負担に関す  る請願中村時雄紹介)(第二六三九号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(中  村時雄紹介)(第二六四〇号)  同(三和精一紹介)(第二六四一号)  同(山口喜久一郎紹介)(第二六七八号)  保健所の強化に関する請願外二件(中村英男君  紹介)(第二六四二号)  同外三件(坂田英一紹介)(第二七三三号)  同外九件(加藤鐐造君紹介)(第二八〇五号)  酒癖矯正院設立等に関する請願増田甲子七君  紹介)(第二六四三号)  同(門司亮紹介)(第二六四四号)  同(杉山元治郎紹介)(第二七三四号)  同外二件(本島百合子紹介)(第二七三五  号)  同(床次徳二紹介)(第二七七一号)  同(片山哲紹介)(第二八〇四号)  酒害対策事業推進に関する請願増田甲子七君  紹介)(第二六四五号)  同(門司亮紹介)(第二六四六号)  同(杉山元治郎紹介)(第二七三六号)  同外一件(本島百合子紹介)(第二七三七  号)  同(床次徳二紹介)(第二七七〇号)  同(片山哲紹介)(第二八〇三号)  薬事法の一部改正に関する請願森本靖君紹  介)(第二六四七号)  同外一件(坂田英一紹介)(第二七二一二  号)  同(小松信太郎紹介)(第二八〇六号)  はり、きゆう及びマッサージの保険取扱いに関  する請願岡崎英城紹介)(第二六七七号)  同(片山哲紹介)(第二八〇二号)  動員学徒犠牲者処遇改善に関する請願(井手  以誠君紹介)(第二七三〇号)  同(三池信紹介)(第二七三一号)  血圧国家管理法制定に関する請願森本靖君紹  介)(第二七四三号)  療術の禁止解除に関する請願北澤直吉君紹  介)(第二六八号)  同(保岡武久紹介)(第二七六九号)  はり、きゆう術の科学的研究所設立に関する請  願(片山哲紹介)(第二八〇一号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 三月二十四日  戦傷病者のための単独法制定に関する陳情書  (  第四四一号)  元満州及び北朝鮮地域遺骨処理に関する陳情  書(第四四八号)  身体障害者の無きよ出国家年金制度実施に関す  る陳情書  (第四五九号)  中小企業退職共済制度法制化に関する陳情書  (第四六〇  号)  戦没者遺族処遇に関する陳情書  (第四九四号)  年末等の失業対策事業費増額に関する陳情書  (第四九五  号)  ハンゼン氏病の国民年金制度適用に関する陳情  書  (第四九六号)  国民年金制度実施等に関する陳情書  (第四九七号)  国民健康保険財政確立に関する陳  情書(第四九八  号)  中小企業退職金共済法案に関する陳情書  (第五〇五号)  酒害対策事業推進に関する陳情書  (第五二三号)  結核医療費国庫負担増額等に関する陳情書  (第五三〇号)  石炭鉱業合理化臨時措置法による炭鉱買上げに  伴う離職者対策に関する陳情書  (第五三一号)  戦没者遺族年金支給に関する陳情書  (第五三二号)  戦没者遺族処遇等に関する陳情書  (第  五四一号)  母子福祉予算増額等に関する陳情書  (第五七〇号)  社会保険総合的対策樹立に関する陳情書  (第五七一号)  結核予防費国庫補助増額に関する陳情書  (第五七  二号)  失業対策事業資材費国庫補助増額に関する陳情  書(  第五七三号)  長崎県下の労務賃金引上げに関する陳情書  (第五七四  号)  戦没者遺族扶助範囲拡大等に関する陳情書  (第  五七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  社会福祉事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第六六号)(参議院送付)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一六八号)  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第一  八三号)  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一八四号)  中小企業退職金共済法案内閣提出第一一六  号)      ――――◇―――――
  2. 大坪保雄

    大坪委員長代理 これより会議を開きます。去る二月三十六日付付託になりました船員保険法等の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。まずその趣旨説明を求めます。坂田厚生大臣。     —————————————
  3. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま議題となりました船員保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  政府は、つとに国民生活改善向上を目ざしまして社会保障施策推進に努力して参ったのでありますが、幸い昨年末成立いたしました新国民健康保険法等による国民保険昭和三十六年度には実現の見通しとなり、また近く発足が予想されております国民年金制度の創設を待ちまして、社会保障制度の中核をなしております社会保険の体系も一応形が整うこととなるのであります。これに伴い、今後は既存社会保障施策内容を充実するとともに、各制度間の調整をはかり、均衡を得た形において社会保障発展をはからなけれどならないと思うのであります。しかしながら、既存の諸制度は独自の沿革とそれぞれ特殊な事情に基きながら発展してきたものでありまして、個々の社会保険適用対象給付内容財政状態等には相当の相違がありますので、政府といたしましては、社会保障制度審議会を初め関係各方面の意見を十分拝聴して慎重に検討して参る所存であります。今回特に船員保険法等社会保険に関する四法律の一部改正案一つ法案として提出いたしましたのは、右に述べました趣旨からさしあたって調整のための一歩を踏み出すという意味合いにおきまして、右の四法律について保険料国庫負担等財政面を検討して、とりあえず所要改正を行うため四法を何時に御審議願うことが適当であろうと考えた次第であります。  この法律案要旨といたしますところは、まず船員保険法の一部改正につきましては、第一に、老齢年金及び職務外死亡の場合の遺族年金の額を増加して給付内容改善を行なったことであります。すなわち老齢年金定額部分二万四千円と報酬比例部分とからなっておるのでありますが、この報酬比例部分について、現行法では平均標準報酬月額の百五十分の一に被保険者であった期間月数を乗じて算出しておりますのを、平均標準報酬月額の千分の八に被保険者であった期間月数を乗じて算出するように改めることによりまして、実質的には報酬比例部分について二割の増額を行おうとするものでありまして、これに伴い老齢年金の半額とされておる遺族年金の額も同様に増額いたすことになります。なお、この年金額増額は、現在すでに老齢年金等給付を受けておる者にもこれを及ぼすことといたしております。  第二に、保険料率を改定して保険財政健全化を期したことであります。船員保険長期給付部門につきましては、厚生年金保険と何様修正積立方式をとっており、本年がちょうど五年ごと保険料率の再計算の年に当っておりますので、長期給付部門所要財源について再計算を行いました結果、厚生年金保険における第三種保険者すなわち坑内夫と同様千分の七を引き上げるとともに、財源に余裕のある疾病給付部門について千分の一、失業保険部門について千分の三の保険料率の引き下げを行うことといたしましたので、総計において、失業保険適用を受ける者の保険料率は千分の百六十九、適用を受けない者の保険料率は千分の百五十八となり、それぞれ千分の三あるいは千分の六の保険料率引き上げとなるわけであります。  第三に、失業保険部門給付に関する国庫負担金について所要改正を行なったことであります。すなわち失業保険法同様船員保険法による失業保険金支給に要する費用については、現行の三分の一の国庫負担率となっておりますのを四分の一に改めるとともに、収支不足の場合における国庫の補てんについても、失業保険法におけると同様の措置を講ずることとしたのであります。  なお、今回の改正にかかる船員保険保険料率及び国庫負担率は、いずれも暫定的なものでありまして、長期給付部門保険料率につきましては次の再計算時、失業保険部門保険料率及び国庫負担率につきましては昭和三十八年三月末日までに再検討いたすことにしているのであります。  次に失業保険法の一部改正につきましては、第一に、保険料率現行千分の十六から千分の十四に引き下げ、労使双方負担をそれぞれ千分の一ずつ軽減したことであります。第二に、保険給付に要する費用に対する国庫負担の率については、現行の三分の一を四分の一に改めることとし、毎会計年度において、保険収支不足が生じた場合には、従来の国庫負担率すなわち、三分の一相当額に達するまで国庫が補てんすることといたしたことであります。なお、この場合の保険収支計算は、一般失業保険日雇い失業保険ごとに別建として行うこととするとともに、一般失業保険においては過去六カ月ごとにその保険収支不足が生じた場合保険料率引き上げを行うべきことが義務づけられておりますが、この義務規定を削除することといたしました。  なお、失業保険国庫負担割合及び保険料率改正はいずれも暫定的なものでありまして、改正後の国庫負担割合及び保険料率は、昭和三十四年度から昭和三十六年までの三年間の収支の実績に照らして検討し、その結果に基いて、おそくとも昭和三十八年三月三十一日までに所要改正の手続をとるべきものといたしました。  第三に、日雇い失業保険保険金受給要件である待期に関する規定改正したことであります。日雇い失業保険保険金は、通算して六日または継続して四日失業した後の失業日について支給されることとなっており、またこの待期日数保険収支の状況により増減する制度となっておりますが、これを固定した制度に改めるとともに、その日数を一日短縮して通算五日、継続三日とし受給要件の緩和をはかることといたしました。  次に、日雇労働者健康保険法の一部改正につきましては、従来の療養給付費及び家族療養費についての国庫負担率四分の一を十分の三に引き上げるとともに、傷病手当金及び出産手当金支給に要する費用についてもこれと同様の国庫負担率に改めたことであります。これにより実質的には国庫負担額は相当な増額となりますので、収支均衡の予想される本制度健全化に資することとなるわけであります。  最後に厚生年金保険法の一部改正につきましては、第一に、標準報酬等級区分を最低三千円から最高三万六千円までの二十等級に改め、これにより標準報酬を被保険者報酬の実態に合わせることとしたことであります。  第二に、基本年金額増額して給付内容改善を行なったことであります。現行基本年金額定額部分二万四千円と報酬比例部分とから成っておりますが、この報酬比例部分について、現行法では平均標準報酬月額の千分の五に被保険者であった期間月数を乗じて算出しておりますのを、平均標準報酬月額の千分の六に被保険者であった期間月数を乗じて算出するよう改めることによりまして、実質的には報酬比例部分について二割の増額を行うとともに、現に老齢年金等給付を受けておる者にもこれと同様給付額引き上げることとしたのであります。  第三に、保険料率引き上げたことであります。現行厚生年金保険財政方式はいわゆる修正積立方式をとっており、五年ごとに行われる再計算の結果に基き、漸進的に本来の保険料率引き上げることとなっておりますが、ちょうど本年がその再計算の年に当っておりますので、将来の給付予想額及びこれに要する財源等について再計算を行なった結果に基きまして、今回は第一種被保険者すなわち一般男子及び第四種被保険者すなわち任意継続保険者につきましては、現行保険料率千分の三十を千分の三十五に改めることにより千分の五を引き上げ、第三種保険者すなわち坑内夫につきましては、現行保険料率千分の三十五を千分の四十二に改めることにより千分の七を引き上げることとしたのであります。  なお、この保険料率は本年六月一日から昭和三十九年四月三十日までの暫定料率でありまして、この間において行われる再計算の結果に基き改定されるべきものであります。  以上がこの法律案提案いたしました理由並びにその要旨でありますが、政府はこの法律案の成立によりまして、これら社会保険財政について均衡のとれた運営が期待できるものと考えているのでありますが、なお、各制度全般を通じての均衡ある発展をはかるため、給付内容各種年金制度間の通算調整費用負担等に関する基本構想につきましては、妥当なる結論を得るよう、今後とも一層検討を続けて参る所存であります。何とど慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 大坪保雄

    大坪委員長代理 以上で説明は終りました。  なお、本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 大坪保雄

    大坪委員長代理 次に、去る三月四日参議院より送付され、本委員会付託になりました社会福祉事業法の一部を改正する法律案議題とし、審査に人ります。  まずその趣旨説明を聴取いたします。坂田厚生大臣。     —————————————
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま議題となりました社会福祉事業法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、精神薄弱者援護施設を経営する事業を第一種社会福祉事業に加えることをその内容とするものであります。  精神薄弱者福祉施策は、従来児童福祉法により十八歳未満の精神薄弱児童対象とする収容施設及び通園施設を設置し、その保護厚生援護を行なってきたのでありますが、昭和三十四年度予算案において新たに十八歳以上の精神薄弱者対象とする公立施設に対して国庫補助の道が開かれることとなり、これを機会に成人の精神薄弱者に対する福祉施策を強力に推進していく所存でありますが、そのためには、すでに第一種社会福祉事業とされている精神薄弱児施設を経営する事業精神薄弱児通園施設を経営する事業と並びまして、十八歳以上の精神薄弱者を収容しその保護更生援護を行う精神薄弱者援護施設を経営する事業を第一種社会福祉事業に加え、これを法の規制のもとに置いて、健全な運営発展をはかるための指導監督及び助成を行う必要があると考える次第であります。  以上がこの法律案提出する理由であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  7. 大坪保雄

    大坪委員長代理 以上で説明は終りました。  なお、本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  8. 大坪保雄

    大坪委員長代理 次に、去る十九日付託になりました医療法の一部を改正する法律案議題とし審査に入ります。  まずその趣旨説明を聴取いたします。坂田厚生大臣。     —————————————     —————————————
  9. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま議題となりました医療法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  国民保険の達成を目睫の間に控えて、これがための基礎的条件整備の一環として、医療機関適正配置が緊急の施策として要望せられておることは御承知の通りであります。医療機関適正配置施策は、一方において無医地区その他医療機関不足する地域において、これが新増設をはかることを要請するとともに、他方医療機関に対する需要がすでに十二分に満たされている地域においては、これが新増設規制してその乱立を防止することを期待するものであります。特に近時一部大都市等において国家的ないしは公的性格を有する病院が、当該地域医療需要と無関係に、いわば非計画的に設置されまたは増設される傾向にあることにかんがみ、かような傾向を是正すべき必要性は早くから痛感されていたところであります。  右のような情勢に対処し、政府はこの際医療法改正して、三公社、労働福祉事業団を初めとし、都道府県、市町村その他公的医療機関開設者国家公務員等各種共済組合健康保険組合等が開設する病院について、その新増設等により当該地区病床数が一定数をこえるようになる場合には、開設等許可を与えないことができるようにいたしたいのであります。もちろん真に医療機関適正配置をはかるためには、単に公的性格を有する病院のみならず、私的医療機関をも含めてこれが総合的規制を行うことが望ましいのでありますが、現段階において直ちに私的医療機関規制をもあわせ行うことは、必ずしも適当でないと考えられますので、この点につきましては近く設置を予定される医療制度調査会において慎重な討議が行われることを期待し、本法律案においては特別の措置をとることをいたしておりません。なお国の開設する医療機関につきましては、その新増設等に関し三公社等と同様各主務大臣厚生大臣に協議するよう閣議決定されております。  本法律案による規制を行う場合の地域の選定、地域別必要病床数算定等の基準は厚生省令で定めることになっておりますが、厚生大臣が右の省令を定めるに当っては医療審議会意見を聞いてその適正を期さねばならないこととなっております。また、都道府県知事は、病床の新増設等許可を与えない処分をする場合は、都道府県医療機関整備審議会意見を聞かなければならないこととし、その処分適正化をはかることといたしております。  なお、右のほか本法律案においては、この法律の施行に伴う必要な経過措置を定めるとともに、病院開設許可に関する規定整備等をはかっております。  以上がこの法律案提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  10. 大坪保雄

    大坪委員長代理 以上で説明は終りました。  なお、本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  11. 大坪保雄

    大坪委員長代理 次に、去る十九日付託になりました消費生活協同組合法の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。  まずその趣旨説明を聴取いたします。坂田厚生大臣。     —————————————
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま議題となりました消費生活協同組合法の一部を改正する法律案提案理由について御説明申し上げます。  消費生活協同組合及び消費生活協同組合連合会の行う共済事業につきましては最近急激にその発展を見せておりますので、組合員の利益の保護共済事業の健全な発展を確保するため、この事業に対する規定整備することとし、共済事業執行基本となります点を規約で定めることとするとともに、これが規約の設定、変更及び廃止は行政庁の認可を受けなければならないこととし、共済事業指導監督強化いたしますほか、この事業の健全な運営をはかる上に最も重要な責任準備金の積み立てを法定化することとしたのであります。  以上がこの法律案の概要でありますが、何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  13. 大坪保雄

    大坪委員長代理 以上で説明は終りました。  なお、本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。  午後一時まで休憩いたします。     午前十一時二十九分休憩      ————◇—————     午後三時十分開議
  14. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  中小企業退職金共済法案議題とし、審査を進めます。質疑を行います。大原亨君。
  15. 大原亨

    大原委員 前の委員会におきまして五島委員からもお話がございましたが、そのときにいろいろと御答弁があったのですが、答弁が不明確でありますので、その点に関連いたしましてなお御質問いたします。  労働協約就業規則、それとこの退職金共済政府案による退職金につきまして、いろいろと競合する場合があると思うのです。矛盾を来たす場合があると思うのです。そういう場合に、一連の労働関係法規があるのですが、そういう点について、この法案を作られた基本的な考え方をまずお伺いしておきたいと思います。
  16. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 退職金法を作る方法といたしましては、前回もお答え申し上げましたように労働協約による場合、あるいは退職金規定による場合等、方法があるわけでございますが、この法案はその退職金というものをかりに協約できめた場合に、その退職金をどういう方法で積み立てていくかという一つ方法を作っていこうというのが、この法律案のねらいであるわけであります。従いましてかりに十万円の退職金支給するという協約があった場合に、そのうちの五万円をこの法律によってやるという場合も考えられまするし、それから協約によって定められた退職金を完全に全部この法律制度においてやるという場合も考えられる、それは一切労使の話し合いによってきめられるべきものであるというふうに考えております。
  17. 大原亨

    大原委員 第十条、第十四条にもございますが、「被共済者がその責に帰すべき事由」こういう表現が二、三カ所に使ってございますね。「その責に帰すべき事由」という場合に、依願退職、本人の都合で退職した場合を全部含んでいるのかどうか。
  18. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十条の第三項にございますように「被共済者がその責に帰すべき事由により退職し、」という場合は、自己都合によって退職する場合とは区別しておるわけでございます。「その責に帰すべき事由」というのは、たとえば事業場内において盗取、横領等の刑事犯があったという場合、あるいは事業場内において賭博、風紀紊乱等の行為によって職場規律を乱して他の労働者に悪影響を与えた、あるいはその経歴を詐称した、あるいはまた正当の理由がなくて長期にわたって無断欠勤したというような、その被共済者の責任に帰すべき事由と思われるような場合でございまして、そういったような責めに帰すべき事由がなくて、単純に自己の都合によって退職するという場合とは明瞭に区別しておるわけでございます。
  19. 大原亨

    大原委員 これは通算のことに関してですが、第十四条に、その「責に帰すべき事由又はその都合によるものでないと労働大臣が認めたときは、労働省令で定めるところにより、前後の退職金共済契約に係る掛金納付月数通算することができる。」こう書いてございますね。第十条の場合もそうなんですけれども、本人の都合による場合は第十四条では明らかに除外されるのですね。それからこれは同一企業でないから、いろいろ何があるでしょうけれども、しかし第十条の場合は自分の都合で退職する場合、それが入っているのですか、入っていないのですか。
  20. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十四条は掛金の月数通算の場合でございまして、御承知のように退職金というものば本来同一企業において長期に在職した者に対する一つ措置として考えられるべきものでございます。従って一つ以上の他の企業にわたって通算するということは、退職金の本来の性格から考えまして例外となるわけでございます。従いまして第十四条におきましては、その例外の場合におきましても通算することが適当であろうと患われるような場合に限りまして通算制を認めようという規定でございますので、その通算する場合をしぼる条件として、自己都合の退職の場合と被共済者の責めに帰すべき場合は通算しないという考え方に立っておるわけでございます。これに反しましてこの第十条その他の規定の場合におきましてば、そういった例外的の場合にしぼる場合と違うのでございますので、自己都合の場合は当然退職金給付の資格者になるわけでございます。
  21. 大原亨

    大原委員 ちょっと角度を変えてお尋ねするのですが、たとえば同一企業内で共済契約をやる場合に、この法案によりますと、事業主が従業員のだれとだれには適用するが、だれには積み立てばしない、あるいは金額につきましてもだれには何日やるが、これには一口しかやらない、こういうふうに事業団との共済契約において事業主の一方的な意思によってきまるようになっている。この問題は労働協約とかあるいは就業規則の精神に反するんじゃないですか。
  22. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二十五条におきましてそういった場合のためを考慮いたしまして、不利益取扱いの禁止に関する規定を設けておるわけでございます。すなわち、「中小企業者は、退職金共済契約に関し、従業員に対して不当な差別的取扱をしてはならない。」という規定を設けてあるわけでございますが、これは民間で現在行われております退職金の実情を見ましても、比較的長期にわたるものについては厚くかけてやるというような差別のあるのが通例でございまして、そういった場合は不利益取扱いにはならないというふうに考えておるわけでございます。しかしながらその従業員が労働組合合運動をやっておるからかけないということは明瞭に第二十五条の違反になりますし、それと同時に当然労働組合法上の不当労働行為になるわけでございます。従いまして原則として同一職場において働いておる場合に、正当な理由なくして不利益の差別待遇をしてはならないというふうに第二十五条で規定しておるわけでございます。
  23. 大原亨

    大原委員 この法の趣旨は同一職場における従業員は差別待遇をしてはならぬという原則の上に立って、そして全員加盟させる、これは法の趣旨であって、罰則適用一つの判断の基準になるのですか。
  24. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 全員加入の問題は、強制加入の建前を採用するかどうかという問題と関連する問題でございます。私どもがこの法案の立案に当りまして、その点についてもいろいろな角度から検討いたしたわけでございますが、強制適用制度を採用いたしませんで、任意適用という建分に踏み切りましたのは、御承知のように現在各種の社会保険制度におきましても、五人未満については強制適用制度を採用いたしておりません。これはなかなか採用しにくいという事情があるからそういうふうになっておるわけでございます。この法案におきましては、御承知のようにその適用対象事業場は五人未満というようなきわめて零細な事業場も、むしろそこに重点を置いて考えておるわけでございますので、この法案の実施を考えました場合に強制適用という建前をとることは非常に困難であり、かつ無理があるという考え方、判断に立ちまして、任意適用という建前に立ったわけでございます。それで任意包括という問題があるわけでありますが、これは言うまでもなく、この退職金制度というのは比較的長期にわたって同一事業場に在職した者に対する制度であるわけでございます。ところで実際の職場で働いておる人の実情を見ますと、老齢になりまして、もう一、二年で退職するという者もございますし、あるいはまた女子等に多く見られるように結婚までの一、二年間働こうという者も相当あるわけでございます。そういった本来比較的長期の退職者を対象とする退職金制度から考えまして、この制度に本来なじまない、こういった短期就職者あるいは老齢者というようなものを一括して加入させるということは実益も少つうございますし、あるいはまた制度の運用上適当でもないのではないかという判断に立ちまして、この原案のような考え方に立ったわけでございます。
  25. 大原亨

    大原委員 実益の問題、法案内容がインチキとはいわぬけれども、非常に貧弱だ、そういうことのために、裏がえせば一般的な包括的な軍用をいたしましても意味がないというような答弁でありますけれども、これはあとで一つその問題を集中的に御質問いたしますけれども、ただ今のお話の中で、三十人未満の商業あるいは百人未満の工業というのがありますね、これは五人未満については当然私どもは社会保険制度をこれ以前に、前提として、まず順序としてやるべきであって順序を誤まっているという考え方でありますけれども、そういう人々を対象としておる中で、しかも三十人あるいは百人というふうな限界点を設けておられるわけですが、しかもその中で事業主が口数においてもあるいは人間の対象においても自由選択できるようなそういう制度対象といたしまして、しかも国が補助を出しておる、そういうようなことは労働協約就業規則趣旨からは反しておるのじゃないですか、これは労働大臣にお尋ねしたい。
  26. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 五人未満の事業所に対してほかの保険等がやっておりますことは今官房長が申し上げた通りでありますが、私どもはやはり社会保険社会保険として別な目的を持っておると思います。しかしながら中小企業に働く、ことにサービス業等で三十人未満、それから工業で百人未満、そういうところに働いておられる人々にやはり働くためにも、先行きの楽しみを持たす、同時にまた永続して勤務をして、そうしてこれらの人々に将来楽しみを持ちながら働いてもらうということのためには、やはり現在任意で百あまりやっておるようでありますが、ああいうものをやはり政府がしっかりした骨を入れて、それに信頼のできる機関を設けて退職制度を設けてあげるということは零細な中小企業及びそれに従業する人々双方に非常に利益になることだ、こういう考えでやっておることであります。
  27. 大原亨

    大原委員 今の労働大臣の答弁は非常に政治的な答弁で、非常に不確実ですからまたあとで申し上げます。  今の官房長の御答弁の中で、非常に聞き捨てがたい点があるのですが、それは中小企業に勤めておる場合には年寄りとか、婦女子なんかはやらぬでもいいという趣旨ですね。婦人労働者に対してはやらぬでもいいという趣旨ですね。あなたは三つあげられたけれども、そういう立法の趣旨ですか。
  28. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 私の言葉の足らぬ点があったかと思いますが、私が申しておるのは老人とか女子に対してこの制度適用する必要がないということを申し上げたのではございません。先ほども申し上げましたように、退職金というのはいうまでもなくある程度の期間にわたって在職した者に対する制度でございますので、本来短期しか予定しておらないというものについては、制度として本来なじまない、それからもう一つ言葉が足らなかったのでございますが、この法案におきましては退職金のカーブを引いておるわけでございますが、この法案におきましては大体四年において掛金の元金、それから五年半で掛金の元利合計に達するように退職金のカーブを引いておるわけでございます。従いまして二年とか三年でやめる場合には掛金の元金よりも低い退職金しか支給しないという建前をとっておりますので、そういった一年あるいは二年というような短期で退職する人につきましては、むしろこの制度に入っても実益が少いのではないかということを申し上げたのでございます。
  29. 大原亨

    大原委員 中小企業の零細加工業その他にいたしましても、工業にいたしましても、商店とかあるいは旅館等のサービス業にいたしましても、日本では、半失業者がそこに入っているから、職業的にそういう層が実に多いわけですが、そういう人々の仕合せを考える——サービス業なんかはほとんど女子あるいはそういう人々です。この法案趣旨は、そういう人々の立場を保護するという趣旨じゃないんですね。大臣が趣旨説明で話をされたこととは逆なんですね。日の当らぬところとか気の毒な人にはきめのこまかい、行き届いた施策をやるというて、なかなか宣伝しながら老人とか婦人なんかについては、こんなものはほっとくんだという意見じゃないですか。
  30. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 繰り返しお答えいたしますが、本来比較的長期に在職する者に対する制度である退職金制度という建前からいいまして、あらかじめ一年とか半年、あるいは一年半というような短期間しか在職しないということがわかっておるものにきましては、本来退職金制度にはなじまないんだ、その例といたしまして、もう退職が目前に迫っておる老人、あるいは引用が悪いかもしれませんが、われわれの周囲においてもしはしば見受けられますように、学校を出て嫁に行くまで一年あるいは二年程度勤めよう、初めからそういった期間を限定して就職するようなものは、この制度にはなじまないということを申し上げておるわけでございます。私どものねらいは、大臣がしばしば申し上げておりますように、日の当らない中小、零細企業に働く人に対して、あたたかい手を差し伸べてやろうということであることは、言うまでもないのでございまして、ただいま先生が御指摘なさいましたように、サービス業等におきましては、女子の従業員が非常に多いわけでございます。そういったあらかじめ期間を限って就職するような人でなしに、五年、十年、あるいはそれ以上長きにわたってそういう職場で働いていこうという人々は、当然この制度の本来の対象として考えておるわけでございまして、この制度の実施によってそういった人々が安心して、少しでも長くその職場で安定して働ける、こういった条件を作りたいというのがこの法案のねらいであるわけでございます。
  31. 大原亨

    大原委員 三十人未満の商業の中で婦人労働者が占めている率をお話し願いたい。
  32. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいま調べましてお答え申し上げます。
  33. 大原亨

    大原委員 それじゃ、立法者の趣旨としましては、東京電力なんか、結婚したら六カ月後にはやめいと言ったのですが、その趣旨に賛成なんですか。
  34. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 私どもはもちろんそういったことは考えておりません。
  35. 大原亨

    大原委員 なじまない、そういう条件の人について、それは主として対象じゃないというのですが、そういう人をなじませるのが法律ではないですか。内容においても私は大問題があると思うのですけれども、そうではないのですか。
  36. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 繰り返しになりますが、たとえの引き方があるいは適当でないかもしれませんが、たとえば、一年たって結婚する、一年間ある場所で働こうというような人につきましては、この退職金という制度になじまないということを申し上げているわけでございます。それからもう一つ。繰り返しになりますが、この法案退職金カーブにおきましても、一年未満のものにつきましては退職金支給しないという建前をとっておる。また、民間で任意積み立てでやっております百三十七団体の実例を見ましても、大体の団体におきましては、二年以内の在職者に対しては退職金支給しないという建前をとっておるのが通例でございます。そういったことを申し上げているのでありまして、女子に対してこういった制度適用すべきでないというような考え方は全く持っておりません。
  37. 大原亨

    大原委員 ちょっと資料が出るまで何ですが、実際には非常に短期間しか就職しないのだ、そういうことを想定して、従業員の中で差別扱いをする立法をして、一部の常業政策、事業政策の上から考えてみて、やった方が都合がよいという人に対してこれを制限加盟にしておきまして、それに対して国の補助をやっていく、こういうシステム、これは法案の実益の問題とも関連し、内容とも関連いたします非常に重大な問題があると思うのですけれども、こういうことは、労働協約とかあるいは就業規則その他そういう労働条件の一番大切な問題に対する労働者の権利を制限するではないですか。労働大臣、どうですか。
  38. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 趣旨は官房長が申し上げておりますような趣旨でありまして、やはりそういうサービス業でいえば、三十人未満のようなところに働いておられる人々も、安定した立場で働いていただくことが双方とも利益である。大原さんも御存じのように、たとえば、この近くにあります料理屋などへ行ってみましても、六年も七年も働いておった女中さんがやめるときに、よくやってくれたということで五千円くらいなものをやっておるというような話を、働いておる人々からしばしば聞くのであります。そういうことでは困るのであります。従って、ある程度長期に働いている人がおやめになるときには一定の退職金がもらえるというふうな安定した、しかも将来に楽しみを持って働いてもらうというふうにしてあげることが、そこに働いておる労働者の保護にもなりますし、また事業を経営されておる人々も安心してともに仕事をやってもらえる、そういうことを助成することが必要である。しかしながら、きわめて短期に結婚までの間他人の飯を食って社会の勉強をしようといったような限られた女性たち、この人々にかりに退職金というふうなものを考える場合には御承知のように、われわれがどのように計算いたしましても、やはり長期に働かれた人々にある程度の金額に達するもの、しかも一〇%の国庫補助をすら出して退職金支給するというカーブをとってみますと、上の方がずっと低くなってしまいます。これはいたし方のないことであります。そこで、今まで社会通念としてはこの辺のところはよかろうというようなことで五年以上ということが言い出されておりますので、これは比較的社会の常識的なことではないか。しかし、きわめて短期に働かれる人々を、そういうものはどうでもいい、こういうことを言っておるのではありませんが、少くとも事業団というものを設けて、永続して働いた人々にはそれだけ多く退職金をやりたい、これは一般の社会通念でありますから、そういうふうな期待を裏切らないようにするためには、やはり長期に積み立てをして、それを運営して、その利子等も計算をしてあの程度のカーブを作ってみたわけであります。私どもの趣旨は今申し上げましたようなことで、比較的長期に働いてくれる零細企業の人々に対する退職金という制度は、みんなが期待しておることであるから、その常識的なカーブというものをとってみるときには、やはり一定限度勤めた人々からだんだんに上昇カーブを作っていくというふうな退職金のあり方が一番妥当ではないか、こういうのが政府本案を策定いたしました精神であります。
  39. 大原亨

    大原委員 私の質問にお答えいただかなかったのですが、私が申し上げておるのはこういう趣旨なんです。つまり権利としてこれを保障しておかないと、こういう問題についてはどこかにしわ寄せがくるのです。従来員に対する差別扱いで、こっちの賃金を下げておいて、こっちで退職金の積み立てをやっていくとか、そういう経営政策に一方的に使われましたり、どこかにしわ寄せがくるのです。ですから、そういうシステム自体というものが、非常に大きな労働協約とか就業規則の、そういう労働者保護の立法の趣旨からいって反しておるのじゃないか。こういうことを私は申し上げておるのです。実際問題としてそこで矛盾を起すのじゃないか、そういう点について私は言っておるのです。たとえばこれは罰則がない、いわゆる従業員に対して公平にやらなければならないというふうに、たび重ねて言葉ではいっているけれども、それは一つの倫理規定であって、何らこれには拘束性や罰則はない。そういう底が抜けている法案を作りましても、趣旨はいいかもしれませんけれども、実際上従業員の生活を安定さして、雇用を安定させるということとはおよそ縁遠いのじゃないか。罰則の点を含めてお話を願いたいと思います。
  40. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、労働基準法の第三条におきましては、労働者の労働条件の最も基本となります賃金、労働時間につきまして均等待遇の条項がございます。すなわち「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という規定がございます。御承知のように労働基準法におきましては、労働者の最低条件を厳守させるという建前から、相当きびしい罰則を設けまして強行しておるわけでございますが、この第三条については罰則がないわけでございます。この第三条との平仄といいますか、バランスからいいましても、この法案における第二十五条の差別待遇禁止の取扱いについて罰則を設けないというのは、ある程度首肯できることではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから先ほど大原委員から御質問のございました百人未満の事業場における男女別の構成比の点でございますが、三十年の七月の地域別等就業調査によりますと、三十人から九十九人の規模におきましては男が六九・四%、女が三〇・六%となっております。それから十人から二十九人につきましては男が六八・八%、女が三一・二%、五人から九人の規模におきましては男が六五・一%、女が三四・九%、こういうことになっております。
  41. 大原亨

    大原委員 それではもう一回あらためてお尋ねするのですが、十人未満あるいは三十人未満の工業、商業のそういう対象労働者に対する法の適用については、婦人や老人について、これは当然入らないだろうということを予想しておるのではなくて、全部に適用する、こういう建前の法律だと考えてよろしいですか。
  42. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 私どもといたしましては、当然一つ事業場において、こういう制度に入る場合に、正当の理由がなくして差別待遇するということは望ましいことではございませんので、当然その従業員全部が加入することが望ましいというふうに考えておるわけでございます。
  43. 大原亨

    大原委員 それでは法律の建前といたしまして、たとえば任意包括制というふうな法の建前をもって、たとえば普通の退職金規定では大きな事業場に対しましても、除外例はあるわけですけれども、そういう任意包括制というふうな、法律のその条文だけに関しましては、あなたがいわれる内容についてはっきりとそういう立法をすることが当然だと思うけれども、それをとらなかった理由はどういうことですか。
  44. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 現在の各種社会保険法律におきましては、御承知のように強制適用ということを前提といたしまして、強制適用が実施しにくい零細な事業場については、これに準ずる制度として、任意包括制度というものを採用いたしておるわけでございます。この法案におきましては、この法案を立案する前に、御承知のような各界の代表の十五人の委員の方に委嘱いたしまして、全般についていろいろと御検討をいただいたわけでございますが、その際に、強制適用あるいは任意包括制度というものの採用につきましても、種々検討をいただいたわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、最も肝要であるところの各種社会保険制度において強制適用が実行されにくいという現状において、この制度をにわかに強制適用とすることは実行上無理があるという結論であったわけでございます。従いまして、任意包括の制度におきましては、やはり強制適用ということを前提といたしまして、これに準ずるような考え方であるわけでございますので、そこまで踏み切らないで、とりあえず任意制度ということで出発することが適当であろうという判断の上に立ってこの法案が作られたわけでございます。
  45. 大原亨

    大原委員 それではちょっと観点を変えましてお尋ねするのですが、やはり労働条件でございますので、支払い能力にももちろん制限を受ける関係からもそうなると思うのですけれども、賃金について最低賃金制を実施するということが、この問題についてはむしろ前提であって、そうしないと、食える賃金を保障しておかないと、できるだけ賃金で生活を保障するという建前でそういう賃金の労働条件の問題を考えないで、今度は一方においては退職共済というふうなものを、中味は後に指摘するようにいろいろ問題のある、そういう問題を出していきますと、やはり賃金の方にしわ寄せがくると思うのです。従ってそういう点から、そういう制度を前提としてそういう問題を論議した場合に、初めて実益のある、安定する——実益があるということは安定する法律の体系となり得るのじゃないか。この点については労働大臣のお考えを承わりたい。
  46. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説の通りに、賃金というものはやはり労働条件の一つであります。また本制度も一種の労働条件であります。そこで別な観点に立って賃金だけのことを考えますと、やはり最低賃金というものは、ほかの角度から考えても必要である。従って政府は最低賃金法を提出いたして、できるだけ各業界において最低賃金制度というものをできるだけすみやかに各方面に実施していただくことをわれわれは大いに期待をしておるわけであります。従って退職制度があるから、賃金についてはそういうものを加味して低い賃金で人を雇い入れるというふうなことは、われわれの最も反対しなければならない事柄でありまして、やはり退職金のあるなしにかかわらず、最低賃金制というものはぜひ促進して参りたい、こういうふうに考えております。
  47. 大原亨

    大原委員 言葉としてはちょっと整ったようなんですけれども、しかし政府の最低賃金制というあの方式でやりましたら、私の計算では、ちびりちびり条件を整えたら五百何十年かかる。しかもその内容が業者間協定を中心としたものであることは間違いない。最低賃金の方は、そういうふうに業者を中心としたものであって、しかも退職金法案というのが業者の経営上の観点から、こういう点が主となっておると思う。そういう問題については、趣旨だけがよくても実益がないものになるのじゃないか。こういう点においては、実のある最低賃金を逐次実施していく。あるいは政府の方ではいろいろ御見解を持っておられると思うのですけれども、私どもの考えでは、この政府案の最低賃金というのは、非常にこれは最低賃金の生活保障の趣旨に合わないと思うのだが、しかし、少くとも最低賃金をやっているところのそういう事業場において、この問題について、政府一つのそういう総合施策を進める上においてやるというのなら趣旨が合うけれども、こっちはやっておいて、こっちは実がない。最低賃金は……。こっちについても、非常に中途半端なものであって、しかも実際の勤務の実態と、そして給付の実際とが合わない。こういうふうなことであれば、やはり年寄りとか、あるいは婦人とか零細な五人未満の、そういう非常に救済の手を伸べなければならぬような事業場が放擲される結果になるのじゃないか。特に今の五人未満の事業場等において放擲される結果になるのじゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、これはまたあらためてあとで御質問いたすといたしまして、では五人未満のそういう事業場に、やはり最低賃金制と同じように、社会保険を完全に実施するような法律や手だてや、あるいは裏づけをする政治的な、財政的な、そういうことがこういう問題を取り上げる先決条件じゃないか、この問題はいいといたしましても、そういう先決条件があるのじゃないか、そういう点について、今官房長は御答弁になりましたけれども、そういう足りない点を社会保険の問題について、これを完全なものにしておく、そういう点を先行すべく、そういう条件の上に立ってやるべきじゃないか、そういう点について、労働大臣の御意見をお尋ねします。
  48. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 社会保険ができるだけ多くの人に均霑できるようにしたい、これはもう、およそ政治を心がける者の理想であると存じます。しかしながら、実際に五人未満の事業場で、先年改めていただきました失業保険等を見ましても、やはりああいうようなやり方が現在においては実情に合う、これはもう大原さんもよくおわかりの通りでございます。それからまた労災保険等でも、やはり特に危険だと思われるような、必要があると認められるようなものに対しては強制加入の制度もとっていく、従って事務的には非常に大きな組織が必要になるかもしれませんが、やはりなるべく多くの人々に社会保険が均霑し得るように努力をしなければならない、この御趣意についてはわれわれは賛成でありまして、できるだけそういう方向に政府は努力をすべきであると思っております。
  49. 大原亨

    大原委員 今の問題を、もう少し今度は観点を変えて、法律内容について御質問したいと思うのですが、これは労働大臣に御質問いたしたいと思うのです。今、官房長が御答弁になりましたように、中小企業の平均勤続年数は非常に短かいわけです。三年平均というように通常言われている。つまり、三年未満の人が四九・四%もあるというのです。そういたしますと、この政府のシステムによりましたら、一年まではかけ捨てですけれども、四年までは元金に足りない金額、それから六年未満は銀行の積立預金、定期預金等に足りない金額、七年から五%の国庫補助がある。大臣は一〇%の補助、一〇%の補助と言われるが、これは十年以上であることは御承知の通りであります。実態は、そういう勤続年数の実態というか、生活の実態から出ておるのです。安定性がないということも一つの生活の実態です。そういう実態から出ておりまして、しかも法案内容というものは、権利として保障しているのだ、それを妨げておるのじゃないといいながら、実際上労働条件に対して支払う金の中で退職積立の方へ回した。そういう中におきまして、しかもそういうふうに勤務の実態とは離れておるわけです。三年未満が実態だ。女子だったら一年平均というのが三十人未満の商業事業場等の実態だ、しかもこの法案内容というものは、そういうふうに六年動続いたしましても、そこでもらう金は銀行へ定期預金をしたよりも少い、こういうことについては、私どもはいろいろこの間も公聴会のときに話したのですけれども、他方へ行って、商店の人とか旅館の人なんかに聞いてみたら、そういうことはわかって、実際に商工会議所その他からも出ておるけれども、これはあまり実益がないのじゃないか、そういう点について、実益のない法律だと思うのですが、労働大臣はどうお考えになりますか。
  50. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 しばしば政府委員からも申し上げておりますように、この法律の目的の大きな一つのねらいは、やはり中小零細企業が安定して、一定の労務の供給を受けて、その経営が成り立っていくように、それがまた成り立たなければ、どんないい制度を設けようとしても、やはり賃金も払えなければ、退職積立も不可能である。従って比較的長期に、そしてよい労働を安定した形で供給を受けて、その零細企業が維持できていくことが必要であります。従って今この法案を出します前に、自主的に百余りやっておるものを見ましても、やはり一定の年限以上の勤続者に退職金支給する、これは日本の常識であります。一年かそこらでおやめになる人に退職金というのは、よほど何かの好意を持ち、そういう立場でやられるものは別でありますが、(「公務員は一年でやっておるじゃないか」と呼ぶ者あり)そこで、私はやはりこの法律が目的としておるところは、比較的長期に安定した労務の提供を受けて零細企業が存続していくということが前提でありますから、やはり長期に勤めた者に対しては、それだけよけいに多くのものを支給できるという、やはり一定のカーブをとって、これを楽しみに働いていただくことが従要なことでありまして、従ってわれわれは現益の段階において、中小企業の退職金制度を考慮する場合においては、まず政府案の程度のカーブがきわめて妥当なものではないか、こういうふうに理解いたしておるわけでございます。
  51. 大原亨

    大原委員 労働大臣、こういうことなんですよ。実際には従業員の勤続年数は半分が三年未満である。その人に対しまして退職金の積立金はやはりやるのですね。やっていくのです。やっていきますと、やはり全体としては、中小企業というものは非常に狭い視野の範囲で経営をいたしておりますから、こっちを減らしてこっちへと、いろいろ操作することになる。実際には勤続年数はそういうふうに短かいので、元を取れるのは大体七年くらいになりまして、そういう元が取れるような案を作っておきりまして、それで退職金だけを制度として設けて共済するのだといったって、実際はそういう実態に即さないのではないか。趣旨はいいけれども、実態に即さないような法律を作ったのでは、法の迷宮に重大な支障があるのっではないか。そういう点を言っているのです。それはカーブができるのはいいのですよ。国家公務員は一カ年やれば、地方公務員だって大体一カ月分くらいの退職金があるわけです。しかもはっきり受益者が労働者だというふうに政府趣旨にありながら、そういう法の体系においてやっておきながら実際には、そういうふうに掛金をかけましても、そういう勤務の実態から非常にかけ離れたような劣悪な条件の、そういう法案を作られたのでは、これは私は作られたあとにおいて大問題になるんじゃないか、そう思うのですが、官房長どうですか。
  52. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 御指摘のように、この法律案におきまして掛金の元金に達するのが四年、元利合計に達するのが五年半、それから国庫補助金がつくのが七年以降五%、十年以降一〇%というのが原案でございます。これは確かに御指摘のように中小企業の勤続年数の実態から見ますと若干食い違いがあるように私どもも感じております。そこで私どもの統計から見ますと、百人未満の事業場における平均勤続年数が約四年になっておるわけでございます。そこでこの退職金制度が任意適用でございますので、先ほど来から申し上げておりますように、初めから短期しか就職しないというようなものが除外されていくというような点を考えますと、大体平均勤続年数は五年程度になるのではないかというふうに見ておるわけでございます。そこで労働省としましても、当初原案におきましては五年以降からり国庫補助をつけるというふうに考えて、大蔵省ともそれは数回にわたって折衝をいたしたのでございますが、こういった任意適用制度国庫補助金をつけるというのは初めてのことでもございますので、労働省の主張がなかなか通りにくかったわけでございます。そこで結論としまして、七年以降、十年以降ということで落ちついたわけでございますが、この点は確かに先生御指摘のように若干実情と食い違っておる点もございますので、漸次この点はできるだけすみやかにこういった実情に合うように改善して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  53. 大原亨

    大原委員 時間がだいぶ迫りましたけれども、もう一つだけお伺いしたい。あとで御答弁を分析をいたしましてまた聞きたい。運官についての審議委員会を設けて、組織労働者の大半を入れて、労働者側の意向をぴしゃっと反映するようにしなさい。もちろん経営者の代表も入れたらよろしいでしょう。三者構成でもよろしいでしょう。そういう意見がしばしば出ておるのですから、政府の方もほおかむりでなく聞いてもらいたい。一応念のためにお聞きしておきます。
  54. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この点につきましては前回の委員会において大臣からもお答え申し上げたのでございますが、事業団において行う仕事は、御承知のように退職金を定められた別表に従いまして支給するという定型的な業務であるわけでございます。従って厳密な意味においての運営審議会というものの必要がないのではないかという考え方に立って、原案には載っておらないわけでございますが、先般国会を通過いたしまして実施いたしております労働福祉事業団の例にもございますように、実際上の措置といたしまして労、使、公益の関係者から参与というような形式において参加していくように軍用して参りたいと考えておるわけでございます。
  55. 大原亨

    大原委員 十条の三項には、自己の責めに帰すべき事由により退職したときに減額されるということがあるんだが、その判定については何ら労働者に発言権がないのです。一つだけ取り上げたってそういうことがつかれるのです。だから制度上労働者に対して発言権が保障されない、既得権を剥奪するような、労使対等の原則に反するようなものは絶対に承服することばできません。一応これでやめておきます。
  56. 園田直

    園田委員長 次会は明二十六日午前十時より開会することにして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五分散会