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1959-03-10 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十日(火曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       奧村又十郎君    加藤 精三君       亀山 孝一君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    志賀健次郎君       武知 勇記君    谷川 和穗君       中山 マサ君    二階堂 進君       古川 丈吉君    八木 徹雄君       山下 春江君    山田 彌一君       松澤 雄藏君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君    山口シヅエ君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 臣 世耕 弘一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      小山進次郎君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十日  委員川崎秀二君、藏内修治君、志賀健次郎君、  寺島隆太郎君、山田彌一君及び多賀谷真稔君辞  任につき、その補欠として加藤精三君、奧村又  十郎君、八木徹雄君、松澤雄藏君、武知勇記君  及び水谷長三郎君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員奧村又十郎君、加藤精三君、武知勇記君、  八木徹雄君、松澤雄藏君及び水谷長三郎君辞任  につき、その補欠として藏内修治君、川崎秀二  君、山田彌一君、志賀健次郎君、寺島隆太郎君  及び多賀谷真稔君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)  国民年金法案内閣提出第一二三号)  国民年金法案八木一男君外十四名提出衆法  第一七号)  国民年金法施行及び国民年金と他の年金等と  の調整に関する法律案八木一男君外十四名提  出、衆法第二六号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これより会議を開きます。  児童福祉法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  本案につきましてはすでに質疑を終局いたしております。これより討論に入ります。  別に討論もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  3. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま河野孝子君より、児童福祉法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議提出されました。本動議について趣旨説明を聴取いたします。河野孝子君。
  4. 河野孝子

    河野(孝)委員 本法案に対して、自由民主党及び日本社会党党共同提案による左記決議案提出したいと思います。まず決議案を朗読いたします。   児童福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案  今回骨関節結核にかかっている児童に対する療育の制度を設けることは極めて時宜に適したものであるが、政府はすみやかにこのような制度骨関節結核以外の結核にかかっている児童にも拡大するよう適切な措置を講ずべきである。  本法案はきわめて適切な政策であると認めるものでありますが、しかしながら一般に結核児童入院治療については、これを成人患者の中に一緒に入れておくことは、好ましくない影響を受けることが多く、治療上のみならず、その精神的、情操的の面からも適当でないので、これを成人患者から区別して児童専門病床を設け、これに適した環境のもとに療養させることが必要であるといわれております。また児童心身発育の途上にあるという特殊事情から、医療のみならず適切な生活指導及び教育についても、医師の許す範囲内で行うことが不可欠のものであって、これを欠くときは身体的には治癒しても、精神的には児童育成にとって最も注意しなければならない劣等感を植え付けたり、社会生活に対する適応性に欠けるなど、その健全な育成についての重大な障害を残すことになるのであります。このような児童特殊性にかんがみ、現在国立療養所においては四十七カ所約一千九百床、少年保養所としては八カ所、約千二百床、その他の療養所においても若干のものが小児専門病床を設け、治療生活指導教育を一体的に行なっておりますが、これについては地元その他地域社会社会的要望であり、またその積極的な協力によって実現を見ているようなわけであります。しかしながらこれらの施設は、病床数にすれば三千床程度に過ぎず、入院治療の必要な児童の数と対比すれば非常に少いのであり、今後早急にこのような体制を持った療養所を整備していくことが考えられなければならないのであります。現在全体的な結核病床としては、その既設病床にいわゆる空床を生じつつある状況でもありますので、これらの小児病床の確保については病床調整転用等により十分その目的とするものが達成できるのではないかと思われます。  他方医療費の問題として結核児童療養に当っては、費用負担の面で、一つ障害のあることを注意しなければなりません。すなわち成人患者の場合には健康保険のような職域保険では被保険者として全額保険の給付が行われる道がありますが、児童の場合は最も条件のよい場合でも、被扶養者としてその半額が給付されるにとどまるのであって、全体として見ても児童自己負担成人患者に比べて多額になり、これが入院治療一つの支障となっているものと考えられます。このような観点から見ても、本改正案のような制度は、入院治療の必要なすべての結核児童に適用しなければならないものと思われます。  さらに本改正案は、主として児童福祉立場から考えられたものと思われますが、結核対策観点から見ますと、初感染期にある児童に対して強力な感染防止発病防止対策を打ち立てることはもとより必要でありますが、不幸にして発病した児童に対してはすみやかに適切な治療を加え、完全に治癒させておくことは、青年、壮年期における発病防止に役立たしめる点で重要であります。ことに児童小児結核成人に比べて治癒しやすいものでありますから、治療費用及び期間の点からも児童の時期に適切な医療を加えることは得策であると考えられます。  以上のような趣旨からすみやかにこの制度をすべての結核児童に対して適用するようにいたしたいというのがこの附帯決議案提案理由であります。何とぞ皆様の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  5. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 本動議について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  6. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 起立総員。よって児童福祉法の一部を改正する法律案に対しましては、河野委員動議のごとく附帯決議を付することにいたしました。  この際厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣
  7. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまの御決議はわれわれといたしまして十分尊重いたしたいと思います。
  8. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 なお本案に関する委員会報告書作成等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。
  10. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 次に内閣提出国民年金法案並びに八木一男君外十四名提出国民年金法案及び国民年金法施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案一括議題として審査を進めます。  質疑を行います。堤ツルヨ君。     〔田中(正)委員長代理退席委員長着席
  11. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は国民年金についていろいろな大臣にたくさんお伺いいたしたいことがございますけれども質問に入ります前に、私たちは厳粛な選良でございますので、日本社会党立場からこの法案審議を通じて一言速記録に残しておきたいことがございます。それはまじめな二、三の議員には失礼でございますから、お差しさわりがあったら恐縮に存じますけれども、去年の五月二十二日に非常にきびしい衆議院の選挙を経て出て参りました私たち選良が、一番大きな責任期待を持って臨んでおりますこの通常国会に、ことに与党の二大公約一つであるところの減税と国民年金、このうちの国民年金法案を御提出になり、これを審議いたします過程に入りまして、これで数日にわたっておりますけれども、全く国会議員として国民の前に恥じなければならない醜態を見せつけられております。これはただいまも児童福祉法の一部を改正する法律案を通過させるに当って、かり出されたところの議員おいでになりましたけれども、重要な国民年金審議するに当っては、与党方々は全部御返席になり、(「そんなことはないぞ、冗談じゃない。」と呼び、その他発言する者あり)かり出された人々のほとんどが御退席になり、まじめに審議をなさらなければならない方々が御出席になりません。私たちはこういうことを考えますときに、国民が大きな期待を持っておりますこの法案が、いかなる過程において審議をされたかということを国民の前に明らかにいたしましたときには、おそらくそのでき上った貧しい法案を、この審議過程を通じて国民はうなずくものがあるだろうと思うのであります。政府は、与党は何とかして一日も早く通過させたいという御意向のようでございますけれども、私たち社会党をまじめに審議をいたしたいと存じますので、皆様方、ことに与党方々は、私は今日以後もまだ数日審議を要しますけれども、まじめにこの国民年金に向って審議、御研究、いろいろな面でお互いに歩み寄り、話し合いなさることを切にお願いいたしたいと思います。  なぜ私がこういうことを申し上げるかと申しますれば、私の方の八木委員が二日にわたって質問をいたしました。八木委員はまじめな勉強気でございますので、相当広範にわたって大臣に御質問審議をなさり、なお小山審議官を通していろいろな説明を承わりましたけれどもほんとう国民が願うところの修正はできそうにない御答弁ばかりでございました。何とかしなければならないという考えを深くいたしております。お聞きになっておる委員の中には同じことを二回も三回もいやだとおっしゃる御意見の方もございますけれども、しかし実際これが末端で実施されますときにはいろいろな問題が一ぱい起って参りまして、かつてのあの遺族援護法また今日の恩給法に見ますところの、たくさんの取り残された人や苦情が一ぱい生れてくることは明らかでございますので、こうした問答も非常に大切だと思いますから、あるいは八木委員質問と重なる面があるかもしれませんけれども、私はこの点を大臣並びに政府委員の方に御了承をいただきたいと思うのでございます。  さて私はここにおいでになりましたならば総理にお聞きしたいと思いますけれども、御就任早々厚生大臣一つ社会保障に対するところの根本的な大臣理念をもう一度はっきり聞かせていただいて、私の質問に入らしていただきたいと思いますので、どうぞ一つお聞かせいただきたいと思います。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 社会保障理念という問題は、これは非常にむずかしい問題でございまして、歴史的に考えましてもあるいはその国々によりましても、いろいろ考え方があろうかと思います。また学問的に申し上げましても、これはいろいろの見方があるかと思うのでございますが、しかし私どもが今回御提案申し上げております年金、いわゆる所得保障というものが、やはり社会保障一つの重要な柱の一つであるというふうに考えております。この前の八木委員並びに滝井委員の御質問にもお答え申したわけでありますが、その所得保障、いわば、基本的な条件と申しますか、それは何かというようなお尋ねにもお答えを申し上げました通り、この所得保障というものをやるについては、どうしてもその前提といたしまして医療保障というものを考えなければならない、こういうふうに思います。医療保障基本的な条件は何かと言うならば、これは国民保険を私たちがやっておる、しかもその国民保険の中におきまして医療整備の問題もございましょう、あるいはまたさらに進みましては、その中におきまして特に長期療養を要するところの結核というものが今日の段階に問題になってくる、さらに進みましてはそれが成人病というようなところへ発展をしていかなければならない、そうしていわゆる長期の病気というものをなるべく国民の一人々々に負担をかけないで、これを国があるいは積み立てた金によって保障をしていこう、こういう考え方がその内容になって参ります。さらにまた医療保障前提といたしましても、あるいはまた所得保障前提といたしましても、衛生行政と申しますか、公衆衛生行政というものまでも私は社会保障の中に含まれるというふうに考えるわけでございまして、そういった意味からわれわれといたしましては、国民保険制度社会保障の中の一つの柱と考え、さらに今回御提案を申し上げている国民年金というものを二つの柱と考えておる、こういう考え方で、社会保障というものを私たち考えていきたい、かように考えるわけでございますが、もう一つお答えを申し上げたいのは、日本のような特殊の状況におきましては、かりに国民年金につきまして拠出制度基本とし、また結果的には無拠出年金考えていくという建前から申しましても、あくまでも将来において起り得べきとにろの老齢あるいは障害、あるいは母子家庭というものに対しまして、そういうような予期せられる事態に対しまして、自分の所得があるときにこれを積み立てていくという、この基本的な考え方によって国民年金制度というものを私たちが打ち出しておる、その考え方からいたしましても、そういうような拠出制基本的な考え方はあるわけでございますが、日本のような状況におきましては、やはりもう一つそれに、社会保障について考えなければならないのは、法的扶助の面じゃなかろうかと言えると思うのでございまして、その法的扶助という意味において、たとえば生活保護法であるとか、あるいは社会福祉三法の充実ということがあわせ考えられなければ、社会保障ということを日本の場合においては言えないのじゃなかろうか。つまり社会保障というものの中に私どもとしましては法的扶助をも含めて考えていく、こういうことになろうかと思う次第でございます。
  13. 園田直

    園田委員長 ちょっと堤委員に申し上げますが、あなたが出席要求されておる大蔵大臣は、衆議院参議院大蔵委員会、それから自治庁長官は、衆議院内閣参議院の地方に出席のために、今出席に至りません。なるべく早く時間をやりくりして出席してくれるように要求をいたします。  経済企画庁長官出席をいたしました。他の大臣出席を促すようにいたしますから、そのつもりで出席大臣になるべく質問されるようにお願いいたします。
  14. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 企画庁長官は何時までという制限はお持ちでありましょうか。
  15. 園田直

    園田委員長 午前中はいいそうですから……。
  16. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは長官にはしばらく待っていただきまして、ただいま厚生大臣の御答弁をいただきましたけれども、私にはもう一つはっきりいたしません。今日の国民実態というものをお互いに広く見渡しましたとき、政権をとっていらっしゃいますところの政府方々、ことに厚生大臣総理大臣のお考えが、日本国民生活実態に即した社会保障というものを根本的な正しい理念の上に立ってお立ていただかなければ、せっかく金を使っていただいても、これが水泡に帰すと思うのでございます。今度お出しになりました国民年金法案をいろいろ検討して参りますと、一体政府はどういうふうに社会保障というものを考えておられるのだろうか、共同連帯責任において困った人たちと手をつないでいくとか、所得能力を持たなくなった国民の各階層に対してどういうふうに政策を打ち出していくとか、いろいろな面から検討いたしましたときに、私はどうも政府方々がただ公約をしたから、申しわけ的に国民年金法案を出しておられるのにすぎないのであって、確とした信念に立って社会保障百年の計をお立てになっていられないように拝見できる節があるのでございます。厚生大臣は御就任早々でございまして、この案がおできになってからおなりになったことは私どもは百も承知いたしておりますから、むしろ前の橋本厚生大臣に御質問申し上げ、岸総理に直接公約責任者としてお聞きしたいと思うのでございますけれども総理大臣もお出になっておりませんし、厚生大臣もいろいろな事情でおかわりになって、坂田厚生大臣になられましたけれども、非常にお苦くて、私たちが御期待申し上げてよいところの新しいセンスをお持ちになっていらっしゃる厚生大臣でございますので、私は社会保障に対しましては、やはり閣内で一番しっかりした意見をお持ちになって、そうして時の財政事情や、今までの行きがかり上面子にとらわれるとにろの官僚の人々の言に左右されるところなく、率直なあなたの御意見をこの国民年金の中に通されてこそ、大臣に御就任になったあなたの歴史において、日本政治史の上に残されることができると思うのでございます。こういう気持で御期待申し上げておったのでございますけれども八木委員との質問を通じて当然私たちに御同調いただかなければならないような大事な数カ所を修正しようというというような意見をお持ちになっていられないばかりでなく、どうも少し理念を疑わなければならないような節々がありましたので、私はこういう御質問を申し上げたのでございます。どうもただいまの御答弁ではもう一つ的確に大臣意向をお伝え下さるような御答弁をいただいておりませんので残念に思いますけれども、これ以上申し上げないことにいたしますが、今の国民実態、なまのからだを持った国民実態、そうしていやでも年をとっていくところのわれわれの人生、好まなくても父を失った母子世帯弧児、さらに働きたくても仕事のない失業者仕事はあっても働くからだのない身体障害者、こういうものを考えて参りましたときに、無拠出百十何億の予算を持って出て参りました、さしずめ政府のおっしゃる援護年金対象というものを見ましても、これを十倍近くに考えてもらわなければほんとうにやったということができないと思うのでございます。私たち立場から申しますれば、力のある人ができるだけの力を公的に出して、そして手をつないだプールの中で力のない人を引っぱり上げていくという、この理念の上に立って社会保障というものを打ち立ててもらいたい、こういう気持でおったのでございますけれども、どうも厚生省が御要求になりました三百三十億何がしの予算さえも、援護年金だけについても三分の一に削られたというような始末でございまして、むしろやったというところの名目さえ立てばよいのであって、ほんとう社会保障のねらうところの、やらなければならない良心的な眼目というものがはずれておっても、ただこうやくを張ったように申しわけ的なものを出せばいいというような臭気がふんぷんといたします。私はこういうことについて、たとえば厚生省は私たち考えておる三分の一くらいしか要求していらっしゃいませんが、その要求額を三分の一さらに削られておる。従って常識で考えただけでも十人に一人ぐらいは取り上げてもらえるけれども、あとの九人は捨てられなければならないというような、さしずめの無拠出年金対象方方——拠出は別といたしましても——これだけを考えてみましても、非常に政府の良心を疑わざるを得ないところがあるわけです。従って私はくどいようでございますけれども、私たち考えをそこまで押しつけるのは別といたしまして、一つ政府が、厚生省が御要求になりました三百何がしが百十億に削られましたその過程理由を一応御説明願いますと同時に、減らしたことについての大蔵大臣見解、圧縮せざるを得なかった総理大臣見解、それから削られた側の厚生大臣見解、この三者の立場から一つお聞きいたしますと同時に、企画庁長官立場においてもこれをどうお考えになっておるのか、一つお聞かせいただきたいと思います。
  17. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 事実の問題でございますので、私からお答えいたします。  ただいまのお話に厚生省が三百何がしを要求して三分の一に削られた、こういうふうなお考えに基くいろいろの御発言があったのでございますが、これは事実と相違しております。私どもが来年度予算要求いたしましたのは、大体全部の費用をまじえまして二百億足らずでございます。これは半年分の援護年金支給費と、それから予算要求の当時にいろいろ考えておりましたかなり大がかりな事務機構を予想した経費でございまして、平年度に直しまして援護年金分だけを考えますと、大体三百五、六十億程度のものであったのでございます。従って正味を申しますと、その半分の百八十億程度、こういうことであったのでございます。今回決定をいたしました予算は、この半年分をとりあえず明年度においては四カ月分だけ実施するということになりましたので、基礎が若干違っておる。従って平年度で比べますと、大体今回提出をされておりまする予算案によりますと、およそ平年度で三百五億からあるいは十億くらいに伸びると思っておりますが、このくらいのものと三百六十億程度のものとの違い、かようなことに相なるわけでございます。どういう点が違って参ったかと申しますと、違いはすべて、いわゆる所得制限というものの違いでございます。一つは本人の所得がどのくらいあった場合に支給を受けられないものとするかという点でございまして、これで若干この違いが出て参りました。  それから第二の違いは、世帯所得をどのくらいに考えるかということの違いでございまして、当初厚生省要求いたしましたのは、世帯所得百万程度というものを頭に置いて要求をいたしておりましたが、最終決定が五十万程度ということになりましたので、その違いが出て参ったわけでございます。感じといたしましてはそう決定的に違ったものではない、かような感じ落ちつき方でございます。
  18. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 小山さんとしては、あとあと差しさわりがある、厚生省としてはあまりほんとうのことを言うと困るというので、むしろ援護していらっしゃるのではないかという御答弁のように拝聴いたしますが、私は厚生省が御要求をしていらしたのはもっと違ったものだと認識をいたしておるわけなんです。所得制限の問題にいたしましても、それから世帯所得の問題にいたしましても、まあその辺で変ってきたとおっしゃいますけれども、たとえば実施の開始の問題だとか、あるいは年令の問題だとか、金額の問題だとか、そうするとその問題では初めから今実際出していらっしゃる通りの案しか厚生省自体はお持ちになっておらなかったのでございますか。橋本厚生大臣のころからです。
  19. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 ただいまお話しになりました老齢援護年金支給開始年令、これを七十才とする点、及び傷害援護年金支給対象をおよそ身体傷害者福祉法による等級の一級及び二級に限る点、さらに母子援護年金につきましては十六才未満の子供を扶養している母子世帯に限るという点、それから金額を、母子年金及び老齢年金につきまして基本額を千円とし、母子援護年金につきましては第二子以降の子供について二百円を加算するという点、並びに傷害援護年金につきまして千五百円とする点、これは終始同じ要求を続けて参りました。私が申し上げるまでもなく、社会保障制度審議会の答申がそれでございまして、答申がありまして与党及び政府におきましてこの問題の検討を始めました当初から、無拠出制年金については、社会保障制度審議会の答申をそのまま受け入れてやろうじゃないかということで考えられて参りましたので、変化がなかったのでございます。ただし実質におきましては、社会保障制度審議会の答申では、無拠出年金支給対象を二百四十万程度と押えており、金額も平年度で三百億を割る程度のものを答申しておりますが、これが明年度において支給対象二百五十七万、平年度におきまして支給金額三百五億あるいは十億程度、かようになっているのでございます。
  20. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 社会保障制度審議会の答申というものについては、そのつど私たちも拝見いたしております。しかしこの答申の文章全体を拝見いたしておりますときに、ニュアンスとして、非常に幅の広い面を考慮して、いろいろな点から努力されたということが書かれてはありますけれども、しかし、答申をなさった方々の中には、もっともっと違った意見人々もたくさんあったはずでございます。けれども、そういう面にいっては割と盛られておらなくて、むしろ政府に都合のよいような答申案の結論を出して、政府がこれをよりどころとされたということについては、審議会の委員の一人である八木委員からも、この間ちょっと触れられたと思うのでございます。しかし、そうした進歩的な良心的な人々意見もあったということを勘案に入れたときに、厚生省自体としては、長らく厚生省が所管なさっておられるところの国民全般というものを見たときに、厚生省が出しておられる白書を基盤といたしましても、この審議会の答申程度を出ないものに——ややその総額が五億出たからとか、人数にして十万ちょっとまだ厚生省の方がましだとかいうような、そういう気休め的な考え政府がこれと取組まれるということは、私は非常にけしからぬと思うのでございますが、初めから、大蔵省あたりから、大きなものを出しても金は出ないぞというような、一つがんと金づちを頭に食らっておられたようでございますので、もしもらえなかったときには困るというので、非常に遠慮をしいしいおやりになったのじゃないかと思うのです。そういう点は橋本元厚生大臣に聞いてみたいと思うのですけれども坂田厚生大臣、私たちは非常に不満といたしております点が多いので、こういう言葉になるのでございますが、厚生省というものへお入りになりまして、対大蔵省との関係、それから他の経済企画庁だとか、いろんな日本の台所の財布を担当なさる出す方の側と厚生省の側あるいは労働省の側というものは、私たちの目から拝見いたしておりまして、ことに文部省というところなどは非常に弱いのでございますが、いろいろ法案審議をしていく過程において、大臣は、なるほど厚生省は十分な予算を満足に取ったのだとお思いになったか、一つ私が大臣にかわったのだから、前の大臣は言いにくかったかもしれないけれども一つここのところで五十億がんばってこようというような気持になられるようなことがあるのじゃないかと思うのですが、いかがでございますか、今日までの過程において。
  21. 坂田道太

    坂田国務大臣 私就任早々でございまして、すでに私が厚生大臣になりましたときに、百千億という総額はきまっておりましたので、私はこの中におきまして、もし私に許された範囲内において国民のためになることがあるならばというようなことを考えまして、いろいろ努力をして参ったわけでございます。その中の一つを申し上げますると、たとえば援護年金の場合におきまして所得制限がございます。その中の均等割の、大体十三万円程度以上の所得のある場合においては御遠慮願うということになっておるわけでございますが、たまたまこれが、老齢者の場合、たったお一人である場合においては、少いながらもまあまあ何とかやっていけるとしましても、この方が子供たちを扶養していかなければならないというような場合におきましては、この苦しい度合いというものがもっとひどくなるということを考えまして、実は子供一人につきまして一万五千円、もし子供たちが三人ございましたならば四万五千円、つまり十三万円が一つの限度ではございますけれども、それを加えましたところの十七万五千まで、それ以上の所得のある場合には御遠慮を願うというようにいたしたようなわけでございます。これも一つの例でございますし、たとえば生活保護法の適用を受けておられる方々に、国民年金が実質的に及ばない。生活保護法の建前からいたしまするならば、年金がつきましてその金が入り、これに対して収入認定をいたすというようなことでございまするならば、われわれがかねがね考えておりまする国民年金を全国民に及ぼすという趣旨にも当てはまらないのではないかということを考えまして、その額等についてはいまだ大蔵省と決定はいたしておりませんけれども、しかしながら、この老齢加算あるいは母子加算あるいは障害加算というものを認めるということだけは、閣議了解を得ておるような状況でございます。この与えられました百十億の中において、許す限りの国民の、ことに低所得者層に対するできるだけのことをいたしたいということは考えておりますし、将来におきまして、私の力によってそういう方々に、いろいろ所得制限等がだんだん緩和されていくという努力をいたしたいというふうに、実は私は考えておるわけでございます。ただ、何を申しましても、全体の予算につきましてこれはきめられたものでございますので、今直ちにこれを変更するというわけには参らぬかと思いまするけれども、将来におきまして、私は国のために努力をいたしたい、かように考えますし、当初厚生省の方におきまして、前橋本大臣等がお考えになられましたのも、たとえばこの年齢開始が七十才であるとか、あるいは支給金額老齢年金の場合において千円であるとかいうような基本的な問題については、これはちゃんと社会保障制度審議会の答申もあったことでございますから、その通りにきまっておったと思うのでありますが、所得制限等につきましては、やはりこれでは十分ではないというふうに橋本前厚生大臣もお考えになって御努力になったと思うわけであります。しかし日本の今日の財政状態を考え合せましてこういう御決定になったわけであります。しかしこの所得制限等については、将来におきまして財政がよくなった場合においては、この制限を緩和していくということに対しまして努力を惜しむものではございません。
  22. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣の御答弁は、援護年金の場合、事務費も含めて許された百十億のワクの中で努力できることをしていきたい、またしてきたと申しますけれども、私の申しますのは、実際援護年金支給を始められまして末端の町村にいきましたときに、ボーダー・ライン層といいますか、ほんとにわずかしか違わない層が一ぱい捨てられて、なるほど社会党が質疑の際に言ったが、どうしてもこれは実際の面からいうと、隣近所を見渡したときに、この人は捨てておけないという母子世帯やらいろいろなものが出てくるわけです。そういう場合に、厚生大臣の今のお気持からいえば、そういう捨てられた人々のために補正予算を組んででも後日追加してもらうような努力を閣議でなさるか。私は百十億のワクの中で言っているのではない。そうでなしに、これ以外のものを獲得してでもそういう人たちにこたえなければならぬというくらいの気がまえを持っていらっしゃるでしょうか。今日までのとにろは一応今の御答弁で満足——的は合っておりませんけれどもこれははずすといたしまして、いかがでございますか。
  23. 坂田道太

    坂田国務大臣 実は衆議院予算委員会が終ったばかりでございますし、ただいま参議院予算がかかっておるような状況におきまして、補正予算を今私が出すなんというようなことはちょっと言えないのじゃないかと思います。しかしながら私が先ほどお答えを申し上げました通り、これらのことにつきましては、所得制限等は漸次緩和をしていきたいということからお聞き取りいただけば、私が何を考えておるかということは、賢明なる堤さんはおわかりだろうと実は思うわけであります。
  24. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 お立場上それ以上の言葉が使えませんでしたら、私もこれ以上の言葉を求めませんけれども、これは実際援護年金を実施した場合には、町村でてんやわんやになることは確かでございます。ここで八木委員と問答になりました過程におきましても出たように、ほんとうに苦労してぎりぎりの生活をした人が六十五才まで生きるのと、週に一回温泉につかっている金持ちの年寄りが、余生を送られて八十まで生きなされるのと、いろいろな例を見ますときに、せめて苦労した人々が六十五才で死なないうちに年金を差し上げてほしいというのがほんとうでございます。六十九才で老いぼれた人と、七十でしゃんとした人とあって、その七十でしゃんとした人が恵まれた環境の中にあってもらえ、六十九の人がこじきに等しい生活をしておられ、しかも所得能力がない環境の中で苦労していらっしゃるのを見たときに、これは七十才というところに大きな矛盾ができるということになれば、徹底的に考え直さなければならない問題が私たち国会議員立場として出てくるわけであります。さしずめ私どもの身辺からでもこういう問題は、遺族援護法恩給法の実施を見てみましても一ぱい持ってこられるわけです。これをどう解決するかということは、やはり貧困ならざる政治によって救うよりほかはないのでありまして、私はどうしても早晩やり直さなければならぬ問題が出てくると思います。  なお援護年金についての老齢、母子、身体障害者の各三つに分れてのこまかい質問は別といたしまして、今度は拠出年金の方について質問いたしたいと存じますが、その前に世耕さんにお尋ねいたします。  拠出の方は別といたしまして、さしずめことしの十一月から援護年金という名の老齢、母子、身体障害者方々への年金支給なさる、その総額が百十億というのでございますけれども、これは厚生省自体が非常に御遠慮なさって、そして大蔵省からもらえそうなものを、大蔵省の省内の空気を探りながら、遠慮しいしいお出しになって、やっとおとりになったものですけれども、大きな公約をなさった政府与党立場からいたしますれば、これは非常に国民をばかにした法案でございまして、私たちはもっともっと実質的に出さなければならぬ人がたくさんあるのであって、百千億という額はけしからぬということを言っておるのでございます。そのときに今日の経済企画庁長官立場において、この百十億というものをどういうふうに考えていらっしゃるか。これも厚生大臣と御就任が一緒でございましたから、あるいは問題があるかもしれませんが……。
  25. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。先ほどからいろいろ御高説を拝聴いたしております。男性の議員の方の気のつかぬこまやかな愛情のこもった諸般の問題についての御説明を承わって、私は実は率直に申しますが、感激いたしておるのであります。政治はこうあるべきだ、現在やっております日本の政治が完全無欠というわけにいきません、至るところに欠陥があります。これを是正する、特にあなた方のような女性の立場からこの抜けたところを指摘していただくのが、この議会での一番大きな問題だ、かように考えて私は傾聴いたしております。決してこれはおせじじゃございません。そういう意味からただいまの厚生大臣とのやりとりのお話は全く同感であります。同感でございますが、ただ予算面から、日本の財政の面から見て、果してこの運営が妥当であるかどうかということに対しては、これは政府も反省しなくてはならぬことが多かろうと思います。それを金高にして幾ら振り当てたらいいかという緩急そのよろしきを得るということは、やはり財布を握っている者の責任において解決しなくちゃならぬと思いますが、御趣旨はよくわかっておりますから、私の立場経済企画庁長官として長期計画の中には——結局計画それ自体は人なんです。いかに国民の生活を安定し、そうして幸福な平和な生活をするかということが根本であれば、当然社会保障の問題も、同時に日常の生活も考えなくちゃならぬ大きな問題だと思います。具体的な問題は、数字の点をもし計画的にお話せよとおっしゃるなれば事務当局から説明いたしますが、趣旨は全く同感であるということをお答えいたしたいと思います。
  26. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると実際と照らし合して、経済企画庁長官立場として非常に少いということをお認めになった。だから今後は御努力なさって下さるのですね。
  27. 世耕弘一

    世耕国務大臣 社会保障ばかりではなしにすべての点について私は不満足だと思っております。現在の日本の政治のあり方、経済のあり方は不満足だと思っております。この点に関しましてできるだけ努力をして御期待に沿いたい、かように思っております。
  28. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 企画庁長官の御答弁は、お人柄がりっぱでございますからごまかされるのでございますけれども、どうも私がほんとうに答えていただきたいところは答えていただいておりませんけれども、これ以上失礼しないことにいたします。  その次に厚生大臣企画庁長官とにお聞きをいたします。保険料の問題でございますが、全国民対象として、これは二十才から五十九才までみんなが百円納める。さしずめ四十を過ぎたような人たち保険料を納める期間が少うございますから、百五十円というものが書かれておりますけれども、根本的には四十年間みんなが百円納めるという建前をとっております。この間からの八木委員との質疑応答を通じて聞いておりますと、所得のない人、困る人、保険料の納められない人はできるだけいろいろな操作をして、あるいは納めた期間が足らなくとも、いろいろな事情があって納められなかった人があった場合には、情状酌最をして減額の形で年金支給するとか、あるいはできるだけみんなに年金が渡るようにする。この間からの答弁を聞いておりますと、ほんとうに納められないような人でも救っていくんだというニュアンスを出していらっしゃるわけです。ここで大臣政府のおえら方がお答えになるときにはそうでございますけれども、実際は末端の窓口に行きますとこれが逆なんです。できるだけいかにして取り立てるかということにいかなければ、特別会計はプールはうまくいきません。従って役場の窓口や係官が窓口で国民になさるのは、ここでお答えになった志と反するものができてくるわけなんです。納められない者もできるだけ取り立てる。そしてやらないぞやらないぞという方針に出てくるわけなんです。これは今までから見ておって官僚のなさることは全部そうです。それは暗にそういう指令がやっぱり厳密にいえば大臣から出ておるわけなんです。うまいことお答えになりますけれども、この法案全体を見てみますと、四十年間無事安泰に保険をかけられるところの階層は四十年後に三千五百円という最高の額をもらえるけれども、しかし保険料を納められない人になればなるほど老後は安定を求められない。力のない人に限って逆比例して守れないということになるように、法律全体はやっぱりなっておる。大臣あたりは逆にお答えになっておりますけれども、そうじゃないのです。実際の窓口では、納められない力のない人はいじめ抜かれたあげく、これはやらぬぞというところに持っていかれる。日本の官吏のやることはきまっておる。百円みんな公平におとりになる、この精神がやっぱり先ほど社会保障理念を聞いた理由なんです。たとえば極端に申しますれば、住友のだんなさんが納めなさる百円の保険料と、月十日くらいしかない三百六円のニコヨンの階層の納める百円と同じにプールしておいて、そして中途半端にしか納められなかった人は減額ということが書いてありますけれども、実際はやらない方に持っていく。納める力のある人々にこの恩典を吸い込んでしまう。といたしますと、これは保険料を納める力の少い人が、楽々とゆうゆうと納めておる階層の上持ちをすることになる、こういう点はどうして一律百円ということをお考えになっておるか。社会保障制度審議会の答申は有業者百円、無業者五十円ということになっておる。いや、その所得をつかむのに困難だ、その機構をなかなか作っていくことができない、実態把握を誤まる危険があるのでどうのこうのとかお答えになっておりますけれども、私ども社会党の立場から言わしむれば、大体大別して国民を三つくらいの層に分けて、納められない人とそのボーダー・ラインのところ、それから五十円ぎりぎりの人、それから百円の人、さらに特別の金を出す人をもう一つ設けて、それくらいな段階にして、事務機構を設けなくてもできるような段階を設けて、力のある人がプールにたくさん金を入れちゃって、ない人は少ししか入れないけれども、与える年金は同じだということにならなければ、社会保障制度理念に合致しないことになる。ですからこれは非常に大事なところだと思うのです。百円均一というのは、私たちはどうしても納得がいかないのです。たとえば、私は大阪に近いですが、大阪の道修町のまん中の薬屋の金持ちのだんなさんや奥さんの生活を見ていますと、二号さんを置いて、御隠居さんは毎週歌舞伎座へ芝居を見に行ったり、温泉へ行ったりしてゆうゆうと暮らしておる。しかしそのうちに、いわゆるでっちといわれる人がたくさんおって、ぼんさんたちがたくさんおって、住み込みで二千五百円の給料をもらっておる。道修町あたりへ行けばこれくらいが実態です。そうすると、その道修町のぼんさんも——変な関西言葉になりましたからきれいにいたしますけれども、これが二十一才になるとやはり保険料を百円納めるということになります。この御寮はんの百円と二千五百円で住み込みのでっちさんの百円を同じようにプールして積み立てちゃって、これを基金として半額国庫で出してやるのでしょう。こんな不公平な社会保障というものを持ってこられるから、社会保障の根本理念を聞きたいと私は言うのです。これはもう徹底的に直さないと、おそらく国民の九九%が納骨しない百円均一だと思うのです。これに対してお考えをお聞かせ願いたい。
  29. 坂田道太

    坂田国務大臣 実際この国民年金制度がうまくいくかいかないかということは、拠出年金基本としてこの年金を組み立てております私どもといたしましては、実際に国民方々保険料を払う能力があるかどうか、少くとも低所得者層においてこれを払い得る能力があるかどうかということが、やはり一番の問題でありますし、またその徴収というものがうまくいかなかったならば、年金財政に破綻を来たして、結局その給付もうまくいかない、あるいは将来において給付を高めるというようなこともできない、こういうことになろうかと私は思います。しかしながら、それをフラット制にやるか、それとも各段階に分けて、金のある人とない人というふうに数段に分けてやるかという問題は、やはりこれは別の問題ではないかと思うのです。やり方としましては、各国におきましてもいろいろ方法はあると思いますけれども、こつの額が非常にわずかである、たとえば三十円であるとか五十円であるとかいうような場合に、しかしながらその支給内容というものはその必要に応じてきめられていくということであるならば、私はフラットでも何ら差しつがないと思います。少くとも金を持っておられる方々というものは、むしろ国庫負担の形においてこれを出していくという考え方を貫くならば一向差しつかえないのではないか、本来はその百円が妥当であるかどうかというところに実は問題があるのではなかろうかというふうに思うのでございまして、この額が非常に少い場合において、やはり必要に応じたところの給付内容を持ったものが返ってくる、こういうようなことであるならばいささかもフラットであること自体に問題はないのではなかろうかというふうに私は考えます。たとえばイギリスにおきましても、ベヴアリッジ案を見ましても、たしかフラット制でやって全部一律にこれを納める、そしてまた一律にフラットで給付内容がきめられております。ところが今日のイギリスの状況におきましては、このフラット制で納めます額については問題がない、保険料については問題はないけれども、給付内容について、これはいささか少いのではないか、こういうような議論が戦わされておるということを私は聞いておるわけでございます。そういうような意味から考えまして、私は、二十才から三十四才まで百円、三十五才から五十九才まで百五十円、この点が妥当であるかどうかというにとでいろいろ研究をいたしました結果、この程度ならば妥当である、しかも、なお、御承知のように、低所得者層においてこれができない、あるいはうちが貧乏でどうしてもこれを納められないという場合におきましては、二十五年からずっと小刻みにいたしまして、大体十年最低限保険料を納めていただくならば、少くともこの年金はもらえる、こういうことにいたしまして、大体国民全体について考えてみましても、三割程度の分は、払う能力が非常に困難な人たちというものをあらかじめ予定をいたしてこの法案を立案しておる、こういう配慮をいたしておる次第でございます。
  30. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。厚生大臣は技術面で御答弁しておると思います。私は精神面でお答えいたします。  精神面でお答えいたしますと、あなたのおっしゃることは全くその通り。私はこの間役所でも言ったのですが、役人の多くは二二が四という数字は知っておるが、二二が五とか三とかいう数字は知らぬ。すなわち社会面においても同様な誤差がある。その誤差をあなたがつつかれておるのだろうと思う。その誤差までも計算に入れて正確な政策ができたら、それは満点の対策だ、かように思う。この点についてあなたのおっしやる精神はぜひ生かして政治面に盛っていきたい、かように考えております。その程度で御了承を願いたい。
  31. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 誤差の方が多ついのでございまして、われわれの人生は二二が四とうまくいく場合言は十人に一人もないのです。ほとんどの人がいっておらないところに人生の悩みがある。それをやはり政治の中に盛っていかなければ、個人の力ではどうにもならない段階だと思うのです。従ってそれを私は聞いておるわけなんですけれども厚生大臣はお人柄がやさしくて上手に答弁をなさる。この間からの八木さんに対する答弁なんかを聞いておりますと、上手にお逃げになって、ちっとも的が合わないのです。こちらの聞き方が悪いのかもしれないけれども、今の厚生大臣答弁はわからないのです。皆さんおわかりになったかもしれませんが……。企画庁長官は、精神面ではその通りと言われるが、精神面が生きないのだったら政治というのは要らないんじゃいないでしょうか。
  32. 世耕弘一

    世耕国務大臣 私は、国民年金の問題について、技術面の数字を基礎にして論議なさることは関係当局と厚生大臣お答えをお聞き願いたいということを申し上げた。私は、精神面のお答えを申しまするなれば、あなたのおっしゃることは全く同感だ、こう申し上げた、御了解を願いたい。
  33. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は小山さんにお答えをいただくことを好まないのです。というのは、小山さんはヴェテランでいらして、その専門家になっていらっしゃるから、必要でないところまで頭が働くのです。そうすると全く世間から離れた意見になってしまっているのです。ですから、私は、大臣企画庁長官はおなりたてでしょう、そのぴっとしたところをお聞きしたいのです。法律というのは、そのぴっとした、ぴかっとくるものを文章の中に生かせばいいのですから。ひねってひねつてひねり回して、こうなったからここへきたというのは、あなた方の言いわけです。そういうのは聞きたくないのです。小山さんのお答えになることはわかっています。大臣答弁のどこが足りなかったというのは質問した私が一番わかっておるのだから、時間かけてお答えしていただく必要はありません。ですから大臣の御答弁は私の質問に対する答弁になっておらないということだけを申し上げて、御勉強を願いたいと思います。  そこで、私たちほんとうに十万人に一人選ばれて国会に出てきておりますが、国民実態というものをもっと把握して審議しなければいけないと思うのです。というのは、どういうことかと言いますと、これを、全国民対象とするけれども、今の諸制度対象となっておらない人ということになりますと、町村におけるところの零細な商店街、町工場の人々、組合の組織さえも作れないところの一人々々の力の零細な人々、それから農村へ行けば、平均農家反別は六反ということになっておりますが、この六反を持っておる農家というものは農村では豊かな方なんです。実際は二反、三反の畑地をたてとして暮らしておる農家が、どこの村落に行きましても、疎開した人なども入れまして、このごろでは半数以上もあるのではないでしょうか。そういうことを考えましたときに、農村の現金収入を、百姓の人々がこの制度ができましても、ふところにどれだけの金が入るかということを、まじめに考えなければならない。私は忙しくて、あまりラジオを聞く時間もありませんけれども、この間ちょっとひなりましたら、婦人の時間にこういう放送をしておりました。どういうことかといいますと、実際あった話ですが、東北へ古着の商人が行くわけなんです、たびたび行って顔なじみになっているあるおばあさのところに行きましたところ、そこの五年生くらいになる孫が、こたつの中へ突っ込まれてふうふう言っている。赤い顔をしているから、おばあさん熱があるのじゃないか。——おばあさんはもちろん熱があることは知っているのです、なぜ医者に連れていかないのかと言ったら、おばあさんは黙って返事をしない。そこで商人は、やはり三年くらい前にこの子の姉がこういうような高熱を出して死んだのを思い出して、おばあさんはこのまま子供を殺してしまうのではないかとふっと危険を感じたものですから、その子供に座ぶとんを巻いて医者に走ろうとした。そうしたらそのおばあさんは商人の服を握って、行かんどいてくれ、実はあなたに教えてほしいのだが、この子の死体検視料と、今医者へ行って熱を下げるために打ってもらう注射代とどちらが安いのか。——率直に言いますれば、死体検視料の方が安かったら安い方で済ませたいというのが、おはあさんの率直な気持なんです。というのは子供を医者に連れていくだけの金がないということなんです。これは医療保障の問題になると考えますけれども、一応被保険者ではありますが医者へ行かない。保険料は納めておりながら実際にはかからない。これはしばしば社会党の各委員質問しているところなんです。私はこれが農村の方々の五〇%の実態ではないかと思います。現金を持ってないのです。そういうことになりますと、これはさいぜんの話ではありませんけれども、金持の御隠居さんや御主人の百円と、農村の二、三反百姓の、子供の給食費はおろか、鉛筆代や画用紙代、あるいは修学旅行にもついていけない人々のことを考えてみたときに、これを守らなければならないのは厚生省なんです。この人たちに最もこたえなければならないのは、この国民年金法案なんです。そういうことを考えますときに、実際にこの百円というものは妥当でないという結論を出しておりますから、皆さん方にこういう質問を申し上げるのですが、これはどうしても考え直す必要がないのですか。将来は何とか考えたいという御意向がおありになりますか。もう一度伺っておきたいと思います。
  34. 坂田道太

    坂田国務大臣 確かに堤さんの御指摘になりましたように。農村等におきましては、私も農村出身でございますだけによくわかるわけでございまして、なかなか現金収入はないというところを私も承知いたしております。でございますので、普通の場合でございますと、御承知のように非常に技術的になるかと思いますが、スタンプ方式をいたしますけれども、信用農業協同組合等に全部の世帯が加わっておられるという特殊のところにおきましては、別な方法におきまして個人徴収をいたすというようなことにおきまして、一応これが納入しやすいような便宜をはかっておるわけでございます。しかしこの百円をただいま変えるかどうかというお尋ねでございますけれども、この点につきましてはただいまのところこの百円程度でいきたいというふうに考えております。将来におきまして一般の経済状況等も改善をされまして、年金財政状況がよくなりました場合におきましては、考えてみたい、検討をいたしてみたいというふうに思っております。
  35. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は厚生大臣に申し上げておきますけれども、初めから精神を貫いていくということが大切なんです。特別会計をお組みになりますときに、初めの人がたくさん負担したとか、あとの人がうまいことをしたとかいうような制度であってはならないのであります。こういう点につきまして社会党の案を御勉強になっていただいたと思いますけれども、自民党の方々の中には、社会党の社会保障制度は簡単なものですよ、税金を取るんですからね、税金を取ってよいのなら、自民党は何どきでもやりますよというようなことを立会演説なんかでいいかげんなことを言う人もありますけれども、社会党で出している、お宅の方でいいますところの保険料の百円、百五十円という問題は、年金制という形で均等割五、所得割三、資産二という割合でカに応じて一つ取っていこうというものを出しているわけなんです。やはりこういう正しい考え方の上に立って特別会計というものをだんだん積み立てていくという気持になってもらわないと、非常に貧乏な人が百円取られて金持ちと同じように負担しているけれども、三十年、五十年後には特別会計の性質上貧乏人に負担がもっと重くなったとか、いや軽くなったというようなことでは国民全般に対して不公平なわけです。これは今まであらゆる制度を見ますと、発足当時に誤まった点がありますと、あとからこうやくの継ぎ張りをしなければならぬ、あちらこちらの弥縫策を講じなければならぬようになってくる。ですから、これは八木委員も触れたのでございますけれども、この際実施までにまだ期間はあるのですから、その間に一つ面子にとらわれないで百円、百五十円均一を訂正してもらいたいと思うのですが、これはいかがですか。
  36. 坂田道太

    坂田国務大臣 やはり原則といたしましては、この保険料というものは四十年にわたって納めなければならないということになるわけでございまして、これはあまり変更をいたすというようなことであっては、保険料を納める人の立場から考えても悪影響を及ぼすだろうと考えるのでございます。やはりこれは一貫したものでなければいけないというふうに思いますので、そこでこの際百円並びに百五十円というものが妥当であるかどうかということについては、われわれの方でも非常に慎重に実は検討いたしたわけでございまして、日本のただいまの財政経済の状態であるならば、現実的に申し上げましてこの程度は納められる。そしてまたこれだけのものがなければなかなかあれだけの給付内容というものも持ち得ない、こういう結論に達したわけでございまして、ただいまこれを検討するということは考えておりません。
  37. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 どうもお答え申し上げることが堤先生の波長に合いにくいという御印象でございますが、少し問題の焦点を明らかにしたいと思います。先ほど来いろいろおっしゃっておられまする保険料の拠出能力の問題は、過般滝井先生がお取り上げになった問題と全く同じ問題で、これは非常におっしゃる通り大切な問題でございます。私どもも立案に当って非常に努力した点でございまして、端的に申しまして、ほかの国にない、かなり特殊な存在であるところのボーダー・ライン階層というものを拠出制年金制度でどういうふうに扱っていくかということが御心配になっている問題であるわけでございます。これは私と同様に実は先生方も非常にお悩みになっている問題でございまして、これは先生方の案の内訳について正確にお話を承わらせていただいた上での判断ではございませんけれども、大体両方とも一致しております点は、およそ予定される被保険者の中の二割五分から三割程度人々については、一般に定めらたところの保険料を取ることが無理であろう、こういう判断は両者に共通しているようでございます。私どもはそういう判断からいたしまして、先ほど来いろいろ御指摘になっている保険料のフラット制度の関係上、これについては免除の措置をもって臨む、免除の運用の仕方についてはできるだけこれを客観的な基準に基いて行うように、明年一ぱいさらに実態を調査いたしまして、具体的な基準をきめていく。しかし、いずれにしても三割程度人々については保険料の納入を強制する態度で臨むべきでない、かような判断をしているわけでございます。  それから先生方の案におきましては、これらの人々のうちでも、納められる人々については納められる限度で納めてもらったらいいじゃないか、逆に、今度所得能力の非常に多い人々からはよけいに納めてもらう反面、ボーダー・ライン階層に近い、もしくはそれに属する人々からもできる限度において保険税の納入を求めていく、こういうお考えでございます。これはいずれもあり得る考え方でございまして、その意味で、その点の問題は同じわけでございます。結果としては、その階層の人々には少くとも無理な保険料はかからぬという点は全く同じになっているわけであります。私どもがただ申し上げたいことは先生方の案のようにお考え願うことが理想であるということは、私ども過般の八木先生の御質問に申し上げた通りでございまして、理想ではあるけれどもそれをやるための道具立てというものは先生方がお考えになるほど容易なものじゃない。これはイギリスのような先進国でも音を上げて、できないという結論を出している問題なのであって、今の段階で私どものごときができるというようなことを言い切る具体的な条件がそろっていない。従ってこれは一つ五年なり十年の時間をかしていただきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  38. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 小山さんのおっしゃること非常によくわかるんですがね。しかしそれは国民から取ろう取ろうとなさるからそうなるんです。常識的に当然免除の対象とし、そして保険料を納めなくてもよろしいと見なさなければならない層に対しては、社会保障理念によってすっぱりと政府が国庫の負担なり、また違うような方法によって連れていくという観念に立ったら、そんな大きな事務機構を設けなくたって把握できます。けれども官僚の方の頭というのは、この間もちょっとお答えになったでしょう、とにかくこの年金がうまくいくかいかないかは徴収料が集まるか集まらないかということが生命線だとおっしゃったでしょう、大臣ですかだれですが。それがちらりと出ているんです。だからそのことは、いかに部下に集めることを督促なさるかということが、火を見るより明らかなんです。免除する場合なんかはできるだけ切っていけ、これも免除してやらぬ、これもやらぬということにしていって、集める方は厳にやろうとなさる。これはここで言っておきますが、将来見てごらんなさい。お宅の末端でやることはきまっているんです。私に言わしむれば金をこしらえることばっかりお考えなんです。集めることばっかりで、免除の方へは、あなた方がお思いになっているようなあたたかい志は決して末端には届きません。官僚機構というのはそうなっているんです。それを憂えるわけなんです。国民の三割程度というものを見込みまして、そしてその三割というものは大体免除の線に持っていけるように大きな、寛大な心で、事務処理の面でそれを下へ流すつもりだとおっしゃるけれども、これはやっぱり特別会計をやっていこうというなら、保険屋と同じ量見でいかなきゃだめですから、一つ国民を見たらだますかごまかすかして、取り立てなきゃ損だという精神に立って社会保障と取っ組んでいらっしゃるからそういうことになるのです。そんなもので、重箱のすみっこをようじでつっつかんならぬような階層まで取り立てなくたっていいじゃないですか。私たちに言わしむれば、その精神がないからそうなってくると言いたいのでありまして、小山さんの事務的な立場からの御説明は一応今までのしきたり上わかりますよ。わかりますけれども、しかし国民年金という画期的なものと取り組むに当っては、頭を切りかえてもらわないといかぬと私は思うのですが、大臣いかがですか。
  39. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点は実は先ほどから私がお答え申し上げておる通りでございまして、堤さんと私全く同感でございます。それゆえにこそ、ただいま小山審議官が申し上げた通り、三割程度の、拠出能力が非常に困難な方々というものを予定しておるわけでございまして、その方々に対してはなるたけ強制をしないという建前をとっていくわけでございます。しかしながら、基本的には、拠出制度というものをやります以上は、やはり自分の老後は自分の所得がある時代において非常に無理してでも出していく、こういう考え方がなかったならば、年金制度というものは打ち立てられないのだ、そうしてその年金制度というものを打ち立てられなければ給付内容というものも改善されないのだ、こういうような考え方から申しますならば、一面におきまして、そういうような気の毒な三割の階層の方々にはわれわれは親心を示すけれども、一面におきましてかけられるところの能力があって故意にかけない、こういうようなことがあっては先ほど冒頭に御指摘になりましたような社会連帯の考え方というものの本質を侵すおそれがある、この点だけが社会保障の非常な意義があると私は思うのでございまして、この画もやはり同時に強調していかなければ年金制度というものはうまくいかない。従って年金制度というものはわれわれが制度を打ち立てただけで、これが完成するものとは考えておりません。国民方々人々々が社会保障に対する正しい認識を持っていただきまして、かつこれに御協力をいただいて、そして今仰せの通り社会保障という連帯の考え方国民各自が持っていただきますことによってうまくいくものだと考えるのでございます。従いまして、イギリスにおきましてもあるいはニュージーランドにおきしまても、その他年金制度とかあるいは社会保障制度が割合にうまくいっているところにおいては、そのような国民的な御協力というものがあって、初めてあのようにうまくいっているだろうと私たち考えておるわけでございまして、全く堤先生の御指摘になりましたことと、その点におきましてはわれわれは完全に一致いたしておるわけでございます。しかも、小山審議官が申し上げました通りに、社会党さんがお出しになっておられる案におきましても、大体二割五分か三割程度のそういう困難な方々対象考えておるわけでございますので、これから先の運用の問題でございます。しかしながら御注意というものは十分承わりまして、末端の行政において御指摘になりますような困った事態が起らないように努力いたして参りたいというふうに考えております。
  40. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私たちと同じ考えなら同じような方法でやってもらうとほんとうに目的を達すると思うのですけれども大臣としてもお苦しいところでございましょうから、その点はこれでやめておきます。  それでは厚生大臣企画庁長官にもう一言お聞きいたしますが、それでは国民みんなが百円ないし百五十円——百五十円の方は別ですけれども、二十才になった人が五十九才まで四十年間保険料を納付する、この期間の問題について——人間というものはこのように長期間同じ調子で一生送っていけるものではないのでありまして、長期にわたって百円均一を完全に納めることを建前としたこの法案に対しまして、四十年間という問題に対して厚生大臣はどういうふうに根本的にお思いになっていらっしゃるか。これは企画庁長官にもお聞きしたい。
  41. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点におきましても私たちいろいろ検討いたしました結果、大体四十年間ぐらいを適当だというふうに決定をいたしたわけでございます。たしか、社会党さんにおかれましても三十五年間だったと思いますが、私どもといたしましてもこれは四十年間程度が適当である、こういうふうに考える次第であります。
  42. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。国民年金法が成立以前に長期計画を発表いたした関係から、これまでの長期計画の中には具体的な案は出ておりませんでした。ただ、当然提案されるであろう、成立するであろうという予想から、さしあたっての財源をどこに求めるかということを討議いたしました結果といたしまして、政府の振りかえ支出の中で一部まかなっていこう、こういう考え——そのときの振りかえに該当すべき金額と申しますのは、三十年度でちょうど五千五百四十二億円ございます。これを基本にして計算してみますと、三十七年度には七千二百十億円という振りかえ支出の財源がございます。その内訳と申しますのは、社会保障あるいは国債関係の支出の関係がありまして、それで一応やり繰っていけるんじゃないか、こういう大体の案で出したのでございますが、今後はこの法案が成立した以上、具体的な計画を進めて、長期経済計画の中に織り込んでいくという方針に立っておるということを申し上げておきます。
  43. 坂田道太

    坂田国務大臣 補足して御答弁を申し上げたいと思います。  第一に、一般的にこの年齢の間であるならば所得が得られておるだろう、つまり、二十才になるならば所得活動に入る、こういうふうに考えられます。それからまた、六十才の場合におきましても、大体日本の場合においては、やはり所得活動があるものと考ええられる、こういう考え方から四十年間ということに一応決定いたしたわけであります。もちろん学生等の場合においては問題がございましょうけれども、一般的に申し上げますとそういうようなことが言えるんではなかろうかということで、四十年間と決定をいたしたわけであります。
  44. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、特別会計というものが非常に調子がうまくいって、財政が確立してきましたときにでも、やはり四十年間というものは将来堅持していくべき建前のものだと思っていらっしゃるかどうか。
  45. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点はその通りでございます。
  46. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 企画庁長官にお尋ねいたしておりますのは……。
  47. 世耕弘一

    世耕国務大臣 せっかくでございますからお答えいたします。先ほど私が二二が四というのと誤差の問題を申しましたのは、具体的に申し上げれば、今あなたがおっしゃっていた金持の百円と貧乏人の百円と金の価値が違うんじゃないかということが結局私の言いたい誤差ということなんです。そこの誤差をなくするということが政治の理想でなくちゃならぬ、(「そこに政治の貧困がある」と呼ぶ者あり)その政治の貧困を生かしていくところにわれわれの努力が必要である。あなたのおっしゃるいわゆる女性としてのあたたかい政治理論は、私は感激してお聞きしておくというこを申し上げておきます。
  48. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 だいぶ時間が立って、委員長から御忠告がございますので、企画庁長官に、厚生大臣にお待ちを願って恐縮でございますけれども、お聞きいたしたいのでございます。  四十年間納めました暁に、完全に納めた人がもらう老齢年金の最高は、政府与党の案が三千五百円なんです。私たちの案はこれと違いまして、倍なんです。社会党は常にべら棒なことを言って、自民党に反対しさえすれば国民の支持が得られると思っているんだといういうようなひやかしを、まじめな審議もしないでおっしゃっておる。けれども、私たちもこの案を出しますからには、政策審議会において慎重に専門的な検討をして、日本の経済の成長率というものをまじめに検討して、四十年先七千円という案を出しておるわけです。その数字に自民党さん案と私たちの案とあまりにも開きがございが、この問題に対して企画庁長官、御勉強願ったでしょうか。
  49. 世耕弘一

    世耕国務大臣 数字の点は今のところ申し上げにくいと思います。ただこの際申し上げたいのは、理想案として、私は社会党の案をとっていきたいと思います。しかしながらいずれにいたしましても金が問題なんです。日本の経済の成長というものがすべてを解決するんじゃないか。そういう意味におきまして、日本の経済の基礎を確立せしめ、いかなる負担にも耐え得るような国民経済に持っていきたいというのがわれわれの長期計画の根本であるということを御了解いただきたいと思います
  50. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 数字の上に立ってもらわなければならない。企画庁長官の御答弁は、あまりそろばんをはじいてお考えになっておらないように思うのです。精神面の御答弁はよくわかりますけれども、数字の上に立った御答弁をしていただかないと、理論闘争ができないのです。まことに恐縮でございますけれども、私、時間を差し上げますので、社会党から今度出しております案を勉強していただきたい。一、二時間かけたら読んでいただけると思います。経済の成長率のそろばんの上に、四十年後の老齢年金七千円というものを出したが、それに対して企画庁長官は、長官立場上こういう理論を持っておるから社会党の案はだめだとか、社会党の案に何年先自民党の案が合流できますとかいうことを聞きたいのです。どの委員会にもお出ましになり、忙しい大臣で、私たちの案もまだおそらく御勉強になられておらぬだろうと思いますが、政府としては、大事な国民年金法案でございますから勉強していただきまして、もう少し数理的な根拠の上に立って、企画庁長官として、厚生大臣とは違った数字的な御答弁をいただきたいと思います。
  51. 世耕弘一

    世耕国務大臣 ちょっとお答えいたします。四十年先のことまで計算しなくちゃならぬのですから、不用意に答弁したくないと思います。それともう一つは、四十年後の日本の社会というものを考えたときに、非常に変化があることも想像しなくちゃならぬ。ただ、今申し上げろという御要望であれば、現在の状況において申し上げるより仕方がない。現在の状況において申し上げるとすれば、今厚生大臣答弁した以上に申し上げることはできない、こうお答えするより仕方がないのであります。勉強しろという忠告に対しては、十分勉強もいたしますし、また、現在の形において答弁しろというなら、数字は事務当局から御答弁申し上げた方がかえって御満足いくかと思いますから、事務当局から答弁させていただきます。
  52. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 企画庁長官に申し上げます。九千万国民の大きな台所を預かって政治をするには、やはり長期にわたってある見通しを持たなければ大臣責任は果せないと思うのです。あしたのことを言えば鬼が笑うという俗な言葉がございますけれども、それと同じ意味で、四十年後のことは簡単に答えられませんというようなニュアンスの言葉をおっしゃったように思うのですが、今日までの経済の歴史、伝統の上に立った企画庁としての数字的データがあるべきはずだと思うのです。将来はどうなるかわからないけれども、今の数字の根拠の上に立てば四十年後にはこういうものが出てくる。従って、国民年金支給額はこうあつてしかるべきだ、社会党案は今こう出しているが、将来はどの辺にいくべきだということをやはり大臣ともなれば言ってもらえると思うのです。
  53. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答いたします。お聞き漏らしになったのではないかという感じがいたすのですが、最初に私はお答えしたつもりであります。それはこの法案ができる前に実は長期計画をいたしておりますので、長期計画の中にそのこまかい数字を織り込んでいなかったということをお断わりしたい。それについてはさらに企画庁は今日長期計画を立てておりますが、まだ具体案を差し上げるところまでいっておりません。はなはだ残念で申しわけございません。ただこの法案が出るだろうということを予測いたしまして、その当分の手当をどうするかという問題については、三十年度の振りかえ支出の財源の中からやりくりするように三十七年度までの計画ができております。その三十七年度の振りかえ支出の金額というのは七千二百億の中でこの財政の扱いをする、ごく大ざっぱでありますが、一応こういう見通しを立ててきておるわけであります。そのこまかい数字についてお聞き願いたいのでございましたら、事務当局から御説明を申し上げます。
  54. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 自民党は去年の五月二十二日の衆議院の選挙に御公約になったのですが、それ以前にも社会保障の面については、やはり鳩山さん時代から触れていらしたと思うのです。従って長期経済計画の中にこれが入れてないということはふまじめといいますか、でたらめといいますか、私はうなずけないと思うのです。長官、この際まじめにこれを織り込んでいってやり直すという建前の上に立ってお考え直しを願いたい。
  55. 世耕弘一

    世耕国務大臣 一応数字について事務当局から御答弁いたします。
  56. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいま大臣からお話がございましたように、現在政府で持っております長期計画は、一昨年の暮れに閣議決定になりまして、その計画を作るときにはこの年金制度はやるという建前になっておりましたが、どの程度の大きさのものかということが、まだ事務的に判明いたしませんで、長期計画——三十七年度まででございますけれども、その中の財政の支出の大きなワクを考えたわけでございまして、行政消費と行政投資と振りかえ支出と三つの分類に分けて支出の規模を考えた中で、この振りかえ支出というのが年金等いわゆる振りかえ所得の支出を含みますから、これを大ざっぱな見当で、一般の財政規模の伸びよりはやや大きく伸ばす、国民所得に対する比率をやや引き上げるという形にいたしまして、かりにある程度の規模の年金制度が入っても、長期計画の財政の考え方の線に沿うように一応準備したわけでございます。先ほど四十年の問題がございましたが、実は私は私どもとしましては一昨年の計画の中にも触れておるわけでございますが、十五年ないし二十年の少し長い日本経済の見通しの作業をやらなければならぬということになっておりまして、これはまだ準備中でございますけれども、結局国民所得なり国民総生産が十五年、二十年後にどのくらいになるか、経済の成長率が現在の成長率を維持できるか、あるいは将来ある程度低下すると見るか、これは非常に議論の多いところでございまして、世界各国のそういう見通しの例を、従来いろいろ集めて目下検討しておるわけでございますが、二十年くらいの例は各国たくさんございますけれども、四十年となるとほとんど世界に例がございません。非常に長期の経済変化を含みますから、あまり信頼する教字をはじくことができない。この年金制度につきましては、おそらく国民の生活水準が上って、経済規模が何%かの規模で成長いたしますと、一人当りの所得も上昇いたしますし、そのほかに物価水準の変化という問題もございます。これは長期的に見ますと、世界各国ある程度インフレといいますか、物価の水準の変化がございますので、厚生省の方から私ども伺うところでは、将来国民の一人当り所得が相当向上してくる、平均の生活程度が上って参りますれば、やはり給付の基準等も変える必要が出てくるのじゃないか。あるいはインフレーション——これはなるべくない方がいいわけでありますが、一般の物価水準が変動して参りました場合にも同様な問題が起り得る。ただ四十年にわたっての正確な経済の見通しというものはできませんので、一応数字は現状から変化がないものとしてはじいておって、それが今のように所得が上って参りますれば、その状況に応じて修正を加える、そういう計算の建前になっておると私どもは承知しているわけでございます。
  57. 坂田道太

    坂田国務大臣 申し落しましたけれども、大体所得の能力のある年齢というものを、二十から六十までにいたしたということがその理由一つでありますのと、もう一つは、何を申しましても少い金額でそして高い給付をということを頭に置かなければ、年金制度はうまくいかないというような考え方からいたしますれば、やはり三十年よりも四十年ということがいえるわけで、その点から考えて実は四十年にいたしたわけであります。
  58. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 御答弁いただいたことに対して、また私の方からもう一度お尋ねいたしたいこともございますが、もはや十二時四十五分でありますから、ここで一応打ち切りまして、私の質問はなお続けさせていただくように委員長にお願いをいたします。
  59. 園田直

    園田委員長 午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  60. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民年金関係三法案に対する質疑を続行いたします。堤ツルヨ君。
  61. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣に引き続いて御質問をいたしますが、先ほどの百円並びに百五十円の問題は時間の関係で最後の念を押させていただけませんでしたけれども、大いに精神を入れかえられまして、そして御検討願って、私たちの要望でなしに、国民ほんとうに願う社会保障制度というものに持っていくように努力をしていただきたいと思うのです。大臣立場といたしましては、今のところあれ以おっしゃれないでしょう、了承はいたしませんけれども、仕方がないとして、一応次に移らせていただきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、従来の公的年金制度との調整、整理統合、この問題については二年間の期間に勢力をするという言葉が盛られてあるだけなのでございますけれども、しかし私たちがここ二、三日間地方へ帰って参りましても、この国民年金制度というものが上程されておりまして、今公的制度の適用を受けておる人たちが関心を持っておりますことは、どういうふうに整理統合、調整をされるのか、うっかりやってもらうとあの案なら逆にひどい目にあって、できない方がましなんだから、このままにしておいてほしいという声が非常に強いのです。これは小山さんにもお助け願ってもけっこうでございますから、大体整理統合、調整はこうした基本線で、大体これぐらいな骨組みで整理統合、調整に持っていきたいと思っておるというような案がなければ、こういう言葉は使えないと思いますから、一つそこをはっきりしていただきたいと思います。
  62. 坂田道太

    坂田国務大臣 何を申しましても、年金制度を始めまして、現在あります公的年金制度との調整、これをやらなかったならば実際年金を受けられる方々が不安をお持ちになるということも当然のことでありまして、いわばこの調整をどうするかということは非常に大事な問題であると思います。従いまして、私どもといたしましても、三十五年度中までにはこの具体案を作りたいというふうに考えておるわけでございまして、そのことははっきりとこの法案にも明文をもって、やらなければならないように規定をいたしておるような次第でございます。ただ御説の通り、そのやり方等によりましては非常に困ったような事態も起りかねないのでございますから、これを十分慎重に検討すという意味からも、やはり社会保障制度審議会等に諮問をいたしまして、この答申の結果をも待ちまして、そうしてりっぱな調整案をこさえたいというふうに考えておるようなわけでございます。先般八木委員の御質問にも、その方式等につきまして各種の方式をお示しいただきましたが、それらも参考にいたしまして、原案を作成いたしたいというわけで、おそらくこの内容等について今お答えはできないのではないかと思います。
  63. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 審議会の答申案を見ても、審議会の人もこの問題は非常に困っていらして、たくさんお寄りになっても、今のところ二年や三年でこの案が出そうなような皆さんの構想がないように、私は拝見する。今、大臣の御答弁を聞いておりますと、やはり審議会に諮問をして、審議会をよりどころとして持っていきたいという構想だけであって、持っていらっしゃらない。ベテランの小山さんがお立ちにならないところを見ると、これはちょっと壁に突き当っているのじゃないかという感じを受けます。そういたしますと、これは非常に無責任なことになりますが、どういうことでしょう。
  64. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 前会八木先生の御質問の際に、大臣からお答え申し上げた通りの経緯でございますが、先ほど堤先生が仰せられましたように、将来国民年金制度と他の公的年金制度との調整考える場合におきましても、常に二つのことが念頭に置かれなければならぬと思っております。一つは、調整をすることによって、制度がいろいろばらばらになっているというだけの理由で、国民のうちに年金が受けられなくなるような者がなくなるようにするということが一つでございます。それからもう一つは、御指摘のように、整理統合合をすることによって、それぞれの年金制度が今まで持っておりました内容が、悪くなるというようなことがあってはならぬということでございます。  そういうような基本的な原則を頭に置いて考えます場合におきまして、将来の年金制度を被用者も自営業者も一本にまとめた国民年金制度という形で処理するか、あるいは制度としては、被用者の系統に属する年金制度と、被用者の系統に入らない年金制度である国民年金制度とを並立さしておきまして、両者の間に調整をはかることによってこの問題を解決するか、どちらの道をとることが適当であるかということにいって、実は今なお審議会においても大きく意見が分れております。それでこの点にいっては、実はこの間も申し上げたように、どちらかというと、八木先生とかあるいは私たち考えている考え方は、社会保障制度審議会では少数説でございまして、一般の意見は、この際、やはり被用者年金の系統のものとしからざるものとは別立にしておいた方がよろしい、そして通算の方法を考えることがよろしい、これが大体今日までの結論でございます。従って私どもとしては、この結論に従って何とか通算の方法を講ずることによって、国民のうちに、制度が分れ分れになっているために年金が受けられなくなる者がないようにいたしたい。  その具体的な方法としては、先ほど申し上げましたように、社会保障制度審議会でじゅずつなぎ年金というものを一つ提案しております。これについては、技術上むずかしい点はいろいろございますけれども、うまくこれが解決いたしますれば、確かにそれぞれの年金制度における過去の期間が全部生き、これから実施される国民年金の期間も完全に生かされるという特徴がありますので、何とかこれをもとにして解決していきたい。その解決をいたします時期は、おそくも次の拠出制年金の発足時期であるところの三十六年四月一日までにいたしたい。残る問題は、あのじゅずつなぎ年金の方式によりましては、この前も申し上げたことでございますが、現在被用者の妻になっておる人々に対する遺族年金なりあるいは傷害年金というものが、十分に整っていないという点をどうするかという問題が残るわけでございます。その問題をどういうふうにするかということについては、今日までのところ社会保障制度審議会におきましてもまだ何らの対案が示されておりませんけれども、この点はやはり来年度の問題として早急に検討してみようじゃないか、こういう考え方社会保障制度審議会の中にも非常に強くございまして、私どももこれらの人々一つ相談をしながら、何とか通算問題を解決するときに、あわせてこの問題にいって対案をまとめたい、かように考えているわけでございます。
  65. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この間八木委員も触れられましたように、徴収をうまくやっていかなければならないとか、非常に目ざめた一人々々の自主的な協力がなければうまくいかないというような点を御問答になりましたが、その通りでございます。ところが国民の協力ということになって参りますと、二十才以上の全国民対象として出したからには、今公的扶助をいろいろと受けておる人たちも納得のいくところの協力ができる体制が立てられなければ、とにかくそのうちに考えるから、そのうちに整理統合していくんだから、かけるものだけ先にかけよと言ったって、これは今までかけたものがかけ損になりはしないかとか、でこぼこをどうしてくれるとかいうことで、既得権とこれからの問題のつなぎ合せということになると、金額の問題よりも制度自体の今後の確立しないいろいろな要素に対して不安を持って、二十才以上の国民を強制的にやっても金が入らないことになる。そうすると、これは徴収はおろか、もっと精神的な協力体制もできないということになると、国民全体を対象にした国民年金ということは言えない。やはりこれをお出しになるからには、整理統合、調整ということについて、不満足ではあるけれども、大体の骨組みがこの中に盛られておるというものでなければ無責任きわまる、私はこう思うのですが、大臣、その辺いかがでございますか。
  66. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点はまさにその通りでありまして、できるならばこの法案に盛りまして、そうして御審議をわずらわしたかったわけでございますが、ただいま小山審議官から申し上げました通りの経過でございまして、今日提出できなかったことをまことに遺憾に存じておる次第でございます。しかしながらとにかくこの法文におきましても、これをやるということははっきり明記いたしておりますので、すみやかに制度審議会におきましても御審議を願うし、またわれわれの方におきましてもこれに対する考え方をまとめまして、そうして一日も早くそれを国民の前に明らかにして、この拠出制度が実施されます場合において、徴収等についても御協力を願う体制を整えなければならないというふうに考えておりますし、現在公的年金制度を受けておられます方々に対してもそのようなことを明らかにするにとが、やはりこの国民年金制度国民のものにしていくということの上に大事なことだと考えておるわけでございます。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大臣にもう一つお尋ねしておきますが、この国民年金特別会計というものを一応プールを始めまして、そうしてみんなが入れ始めて整理統合の段階に入っていった際に、今までの公的年金制度を受けておる人たちが積み立ててきた会計がおのおのございますね、こういうものは将来どういうふうに持っていくべきだと大臣考えておりますか。
  68. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点につきましては、具体的には今申し上げましたような経緯において結論を得ておらないわけでございますけれども、やはり現在ございますところの公的年金制度については、そのおのおのができましたところの目的なりあるいはまたその改革なりがあるわけでございます。またそれらの年金にお入りになっておる方々が、多年積み重ねられてこられましたところのお金というものに対しましては、十分これを尊重いたしまして、そして掛捨てにならないような考えで参らなければならない、そういうような考え方で原案を作りたい、かように考えておる次第であります。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、今までの公的制度対象となっておる人たちの積み立てた財政的なものは、建前として一般国民年金の中に——これは一つ一つ性格も違いますからいろいろ分析しなければなりませんが、大体の建前としてはこちらの中に一緒にほうり込んでしまって、という考えですか。
  70. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 先ほど来申し上げている言葉の中に、調整という言葉を使って統合という言葉を避けてきた理由も、ただいま先生御指摘の点がありますので避けて参ったわけでございますが、果して将来国民年金と他の公的年金とを形の上で完全に統合した一つのものにすることができるかどうか、あるいはいいかどうかということ自体が非常な問題でございます。それでこれを統合するということは財政面から見ますならば、同時に特別会計においては従来積み立てた金もその通り一本にしていく、こういうことになるわけでございますが、かりに統合し一本にするということになるといたしましても、その際におきましては、統合されるすべての制度についてあまりひどい損益の立たないように調整をしていかなければならぬわけでございます。制度によっては十分に積み立てをしてきたという制度もありまするし、また制度によりましては非常な積み立て不足のままできておる制度もございます。これが単純に合体するということになりますると、完全な積み立てをしてきた制度が非常に損をし、そうでない制度が得をする、こういうことになりますので、統合という道をとります場合には、当然そういうことのないような用意をしてかかる、かようなことになると思います。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 非常にむずかしい大きな問題が残っておるわけでございまして、私はやはりこの点を一番案じておるわけですけれども、ただ審議会の諮問にまかせるというにとだけで処理ができるかどうかということですね。
  72. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 私の申し上げ方がやや控え目であいまいであったのでございますが、大体こういうふうにお考えいただいて間違いないと思います。国民年金制度とほかの制度との扱いにおいては、一応ほかの制度国民年金制度が並存するという建前で調整が行われる。しかしその場合にはどうしても通算の道は考えなければいかぬ。通算の道につきましては、社会保障制度審議会が一応案を提示しておりますので、今度はこれを参考にいたしまして、政府部内で早急に技術的な検討を終えまして、実施可能な案にまとめ上げまして、これを社会保障制度審議会に諮問をしてさらに検討してもらう。その結果到達いたしましたものをもとにして、三十六年の四月一日にそれが実施できるように法的な措置を講じていく。  それからもう一つの問題でありますところの、公的年金制度の適用を受けている人々の妻で無業であります人とか、あるいは被扶養者であります人々の扱いをどうするかという問題につきましては、仰せの通り社会保障制度審議会はまだ積極的な対案を示しておりません。しかしこれは非常な問題でございますので、私どもとしては今度はわれわれの側から問題を一つ持ちかけまして相談をして、これもでき得るならば三十六年四月一日に間に合うようにいたしたい、かように考えている、こういうことでございます。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今小山さんが配偶者の問題、被り扶養者の問題のところにいかれたわけでございますから、そこに進みたいと思いますが、その前に大臣一つ念を押しておきたいと思いますことは、今小山さんがおっしゃいましたように、ほんとう保険料を納めさせる期日までにこれをちゃんと通算して、調整がつく自信のあるものにして、国民責任を持って呼びかける準備ができるかどうか、その信念のほどをちょっと聞いておきたいと思います。
  74. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほど来私が申し上げております通りに、この年金制度がうまくいくかいかないかというそのかぎは、実を申し上げますると、この通算の制度がうまくいくかいかないかにかかっていると思うのでございまして、私はこの三十六年度から徴収を開始いたしますまでには、自信を持って皆さん方の御納得のいくような調整の道を講ずることができると信じております。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃできなんだときには大へんですから……。  その次に、今の小山さんがお触れになりました配偶者と、この間八木さんもちょっとこれにお触れになりましたけれども、被扶養者の問題でございます。ことに配偶者の問題です。任意とする、そういたしますると、私たちの常識で考えますと、任意に入れる人々任意にしておいて入れる配偶者というものを考えますと、これはやはり入る人というのが保険料を納める余裕のある人ということになってくると思うのです。そうすると、やはり老後の保障にいたしましても、いろいろな面から考えて、余裕のないぎりぎりの生活をしておる人たちが、任意の形であるならば入れないことになってしまって、ほんとう対象としたい人々がならない。しかも二十才以上の全国民対象とするのならば、一人前と奥さんを見るならば、これじゃ少し憲法にさえ抵触するのではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  76. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 まず憲法との関係でございますが、この扱いは決して女性に限られているわけではなくて、男女平等でございまして、もし男性が被扶養者である場合には同様に、公的年金の面においては女性が表に現われて、男性が陰に隠れる、こういうことになるわけであります。  次に、憲法の問題は別といたしましても、確かに仰せの通り問題があるわけでございます。現在の公的年金制度において被扶養者というものが年金制度の中では常に陰の存在になっておる。それをどうするかという問題があるわけでございます。ただこれは単純に、それじゃ一つ全部国民年金の中に入れてしまうことが絶対に正しいのだ実は私どもはどちらかというと、入れることが適当だという判断を今でもしているものでございますが、それじゃそういう考え方が絶対に正しいのかといわれると、そうとも言い切れないという反省もしているわけでございます。これは堤先生よく御存じのように、既存の公的年金制度の方面で解決するということになりますと、そのもとになります保険料におきましては、半分だけ事業主の負担がある。従ってその面からいいますならば、むしろ公的年金制度の適用を受けている人々の配偶者とか、あるいはその他の被扶養者の問題の年金的な保護は、公的年金制度調整するという方がよろしいという議論もあり得るわけでございます。そこらの点をどうするかということにつきまして、先生御存じの通り、文字通り同じくらいの意見があるわけでありまして、学者の中にも意見は分れておりまするし、実際家の中にも意見が分れております。そこらはもう少し時期をかけて討議をして、機の熟するのを待っていかなくちゃいかぬ、こういう事情になっておるわけでございます。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 なかなかむずかしい問題でございまして、御苦心のほどはよくわかるのでございますけれども、しかし私は、先はども申し上げましたのでくどいようですけれども、こうした場合に一人でも振り落していくという考えに立つか、一人でも大ぜい連れていくという精神に立つかによって、非常に結論が早く出る場合と出ない場合とあると思うのです。営利を目的とするものでございましたら、一人でも振り落していって、取り立てることを中心とするというような考え方に立ってしぶるのもよろしいですけれども、一人でも大ぜい連れていかなければならない建前のものならば、そちらの方に踏み切ってもらった方がいいと思うのです。そういう考え方に立って今後一つ考えていたたきたいと存じますが、大臣いかがでございましょうか。
  78. 坂田道太

    坂田国務大臣 大体年金制度を打ち立てますことが、一人の貧乏人の方もなからしめるという精神に立っておるわけでございますから、国民年金とほかの年金とを通算する場合におきましても、お説のような考え方でもっていかなければならない、そういうふうに考えております。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これはこの問題だけでなしに、国民年金法案に一貫した精神でございまして、これを貫かれたら今小山さんの言っていらっしゃるような微妙な点、ちょっとのところで、当然救わなければならないところを振り落していくというようなところにはいかないと思うのです。これは調整、整理の場合にも出てくると思うのです。今公的年金扶助を受けておる人たちだって、決してゆうゆう楽々とやっておる人たちじゃありませんし、どれもこれも完全なものじゃない。ですからできるならば、今のこういう制度が、こういう形であったときにほんとうに理想的であったろうにといえるところまでに見立ててあげて、貧しい制度をよりよいものにしておいてから、国民年金制度の中にその理想に近いものを整理、調整してあげるというような親切があるのと、不完全なものをやっているついでに、一つごまかしてしまえという行き方と、非常に変ってくると思うのです。ややもすれば官僚の方々、と申し上げると小山さんに悪いですけれども、今までのあらゆる制度を運営していきなさる精神なり実際の事務上のあり方というものを拝見しておりますると、なるべく国民を悪いものと見て、そうしてできるだけ過酷に過酷にと持っていきなさることが多いのです。それの端的なのが、何べんも申し上げますけれども遺族援護法なり復活した恩給法というものを見るとわかりますが、同じ村に同じような例があるのに、ちょっぴり違うだけでその子が捨てられておる、そういうのがいまだに私どものところに、月に十や二十は来るのです。恩給法を復活しますときの精神そのものが、私たち何べんも言わしてもらったのですが、いけないのです。目に見えたもの、当然捨ててはいけないものを捨てなければならぬ経済事情に迫られて、遺族というものを切っていったのです。ですから何べんか改正をして拾い上げても、まだ戦争のために犠牲になった遺族が残っておる、孤児が残っておる、年寄りが残っておる、というような問題が一ぱいあるのでして、これとよく似た問題でございますので、一つ整理、調整をなさる、そしてこの配偶者の問題なんかをお考えになりますときは、重ね重ねではございますけれども、そうしたあたたかい方にものを考えていただきたい、こう思うわけです。  次にお尋ねいたしたいのは、八木さんが全部触れておられますから二回になりますけれども、ところがそれが片がついておらないのです。というのは、母子と遺児の問題でございます。これは私たち子供を持っておりますからよくわかりますが、坂田さんもお子さんをお持ちだろうと思います。それは貧しいお宅じゃございませんから、そういう悲惨な話はいかがかと思いますけれども、男の方は妻子を持っていらっしゃいますと、みんな未亡人世帯の候補者でございまして、御主人がいつ何どきひっくり返らないとも限らない。どんな偉い大臣であろうが、線路工夫であろうが、炭鉱夫であろうが、御主人に先立たれるということは妻子が考えておかなければならぬ問題です。従って候補者になるんです。そのとき実際問題として、これはあとから援護年金で触れなければなりませんが、十六才以上の子供があったらやらないというようなことをおっしゃいますが、お宅のお子さんが十六才になられて、そのお子さんが残ったとき、妻子が一体生活ができる、やっていけるとお考えですか。援護年金の場合に出てきますが、両親の場合、父親に先立したれてお母さんが残ってる万がましだ、それじゃ父親も母親もなくなったところの、おばあさんや兄弟しかいない場合を検討して参りますと、母子のあるところの世帯に、たとえば二千円なり三千円なりのものを差し上げるとすれば、それの一・五倍や二倍のものを差し上げないとやはり食えていかないというのが、その子の実態だと思うんです。ところが目に見えておりながら、親類縁者をたよりとして、はたの制度で救っていけばいいんだから、今度の建前からはずして母子世帯と見ないというような苦しい答弁をしていられますし、大臣は、これを拾うつもりはないかと言いましたら、拾わぬとおっしゃった。これはむごいお父さんばかり三人そろっておられると思って私は聞いておりましたが、そういうことが突発したときに、お互いの家庭を考えてどうですか。わずかのことですから親類縁者にたよらせることを建前とするとか、それをはたの公的制度で救うとかおっしゃいますが、そうした孤児が公的制度で完全に救われておりますか。たとえば義務教育制度で中学までは何とかなるといたしましても、しかしはたの施設なり、それからあらゆるものが完備しておりまして、その孤児に対して公的な責任があらゆる角度から完全に打ち立てられて予算の裏づけがある現在であるというならば、政府の言いのがれはできるでしょうけれども、ネズミのようにあちらこちらから引っぱってきたものをつけたして、辛うじてその子が成長期を送らなければならぬということが目に見えておって、あらゆる公的扶助で今救えておらない現状の中で親類縁者をたよってやれとか、兄弟がかせぐだろうとか、おばあさんがどこからかもらうだろうというようなことを当てにして、その子供を国家が見ないで捨てていくということになりますと、これは国民年金から取り残されたお気の毒な人だと思いますが、どう思いますか。
  80. 坂田道太

    坂田国務大臣 今仰せの通りに、両親をなくした子供さんという非常にかわいそうな立場に置かれておるということの認識につきましては、私堤委員と同感するものでございます。しかしながら年金制度そのものが、ことに今度の拠出年金の建前といたしましては、あくまで所得保障という一つの限界がございまして、所得ある者から保険料を取り上げて、そうして所得ある人の老齢になった場合、あるいはまた障害を受けられた場合、あるいは母子家庭になられた場合に対して、その生活の一部を保障していくという、この建前から申し上げまするならば、やはり両親をなくされた子供さんそのものにつきまして、少くともほかの老齢者であるとか、あるいは未亡人であるとか、あるいは障害を受けられたその人と同じようにまでやらなければならないかというところに、やはり建前としまして問題があるのではなかろうかという——私はやはり出すべきだとは思いますけれども、しかしその額をどういうふうにきめるかというところには多少問題が残ってるというふうに、私ども考えておるわけでございます。それらの点につきましては、あるいは弁解がましくお聞き取りになるかもしれませんけれども、やはりその他のいろいろの公的制度の中において、公的扶助等においてこれを守っていくということでなければならないと思うのでありまして、むしろ欠陥があるとするならばそこの体制が完備しておらない。しかしその欠陥も完備していくということが社会保障制度を進めていきます場合において必要欠くべからざるものであるというふうに私たち考えるわけでございまして、実を申しますと、日本のような貧乏な経済の中においては、むしろいわゆる保険料を納めて社会保障制度をやっていくというような所得保障拠出年金というようなものを一面において推し進め、あるいはその前提としての医療保障という意味において国民保険というものの柱を打ち立てていくということも必要であるけれども、それと同時にやはり日本のような貧乏な経済の中においては、そうしてもなおかつ転落していく、あるいは貧乏になっておるというこの現実というものを無視するわけにはいかないので、たとえば生活保護法であるとかあるいは身体障害者福祉法であるとか、そういう社会福祉三法というものの重実整備ということがやはり社会保障制度の中において大きいウェートを持ってくる。さらにまた言葉を継いで言うならば、それを包むところの日本経済というものの成長をはかっていく、こういうことでなければならないというふうに、冒頭に申し上げた意味は実はここにあったわけでございます。
  81. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 所得保障という建前がじゃまをしておって法的にろれつが合わないのだというお考えでございますけれども、私はそれならそれで拾っていくところの言葉を挿入することができると思うのです。今の日本のような近代国家でありながら、ほんとう子供たち保障できない貧しい制度ですね。どれもこれもみんな短かいんです。少々ありましてもつ不十分なんです。そういうものは目に見えておるのですから、親に付随した子供たちというものは、やはりこういうものの中で拾っていくという精神になっていただくことがいいんじゃないか。それこそ面子にとらわれないで一つ助けていったらいいでしょう。大臣、そういうことはどうですか。
  82. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 ただいま大臣お答えいたしましたように、額をどうきめるかということについてはいろいろの考え方があろうと思います。この案をまとめます場合の前提になりましたのは、繰り返して申し上げましたように、社会保障制度審議会の答申でございます。答申は御承知の通り老齢年金母子年金障害年令の三つしか設けていないのでございます。なぜ設けていないかといえば、これは社会保障制度審議会の方々がいろいろ御検討になった場合に、まずさしあたりの国民年金としてはこの三つだけくらいしかねらえないだろうというようなことであったわけであります。この基本的な点は私どももそう判断せざるを得ない、こう考えておったわけでありますが、しかし何とか将来伸びるための芽を作っておきたいという考えからいたしまして、遺児年金と寡婦年金を入れたわけでございます。そういう事情がございますので勢い額等の点が不十分なものになったということにつきましては、御指摘の通りと思いますけれども、これは将来条件が許すようになりましたならば、そのときに考えるようにして参りたい、またそうすべきものだ、かように考えているわけでございます。
  83. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちょっと私の順序が不同で、質問の性質が変っておそれ入りますが、特別会計の積立金の用途については、これも先ほどの整理調整と同じように、抽象的な言葉で、明白に書いてありません。こうした零細な人たちのふところから集めた金は——今までの政府が使うていらっしゃる郵便預貯金だとか厚生年金積立金のたぐいを見ておりますと、私たち社会党はいつも使い近について御忠告申し上げたり質問をしたりしておるのですが、ああいうものと将来の行き方を照し合せてみますと、今後これをどういうふうにお使いになるかということに対して危惧を持ちますとともに、国民はこれを非常に有効に使ってほしいという希望を持っておると思うのです。それに対して大臣の頭の中では今日もはや具体的な考えがなければいかぬと思いますが、いかがでございますか。
  84. 坂田道太

    坂田国務大臣 国民の零細な保険料並びに国庫補助によりまして積み立てられた金というものは、今後相当膨大なものになるかと思うのであります。この膨大になりました金をどう使うかということは、われわれといたしまして最も関心を寄せなければならない点だと存じます。従いましてこれを全部が全部私たちが意図しておりますところの保険料を納められた方々に、直接還元をしていくということは望めないといたしましても、少くとも保険料分——保険料を積み立てられましたその上に、保険料の半分を国旗負担をするわけでございますが、国民の一人々々が積み立てられました保険料分についてだけは、少くともこれを還元するということは、私たち考えなければならない点ではなかろうかと実は思っておるわけなのです。この点についてはっきりしたことをこの機会に申し上げることはできませんけれども、私どもの頭の中にありますることは、やはりそれは地方におけるところの養老施設であるとか、あるいは傷害を受けられた方々に対する施設であるとか、あるいはまた母子家庭の寮であるとか、あるいは病院であるとかいうようなものに、還元融資をしていくということでなければならないと考えております。
  85. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 ただいまお答えを申し上げたようなことでございますが、なお若干補正させていただきたいと思います。政府が毎年保険料に見合って出します分は、現在の預金都資金と同じ方法で運用いたします。それから保険料として集めましたものの全都を自主運用をいたしたい。預金部にそのまま投入するということでなくて、しかるべき運用機関を設けましてその運用の機関によって全額を被保険者のために最も有利であり、かつ安全で確実な方法で運用していきたい、かような考えでございます。運用の用途といたしましては、これは何分相当巨額の金でございますから、おそらく保険料として納められました金の半額もしくは七割程度は、やはり預金部資金が運用するであろうような方面のうちで、最も有利なものに有利な条件で投資をする。残りの部分につきましては、そのうちの一部を還元融資というような形で、大臣が今御説明申し上げたような運用をしていく。なお一部については、たとえば株式その他ある程度実質的な価値を維持し得るような用途に運用したい、こういうもくろみを持っておるわけでございますが、これらはすべて特別会計法を制定いたします場合に、特別会計法とそれからそれと別の法律をもってきめるということになりますので、おそらくこの問題について結末がはっきりいたします時期は、おそい場合は三十六年度の国会の際、でき得るならばもう少し早い機会にその点をはっきりいたしたい、こういうようなことで現在大蔵省その他と折衝しているというような事情でございます。
  86. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今の御答弁で大体大臣並びに厚生省の御意向を二拝聴したわけでございますけれども、しかし在来の大蔵省の行き方を見ておりますと、厚生大臣並びに厚生省自体はそういう考えをお持ちになっておりましても、大蔵省自体が握ってしまって放さないという考えの上に立って従来やられてきたことが多いと思う。一応御答弁をいただいて、それならけっこうで、まあまあということが言えるようにも思うのでございますけれども、実際の場合に厚生省がそれをやれるかどうかということに、失礼でございますけれども、疑問を持つわけでございます。国民保険料としてかけますからには、長期に積み立てるのでございますから、巨額の金であります。しかももう米代の次にと思ってこれは納める金でございますから、やはりその運用については納得がいかないと、これまた協力しないということになってくると思う。三十年も四十年もの間どんどん積み立てさせておいて、その金が大蔵省の意向によって、厚生省を無視して、一部特定の資本家に回されるということがございますと、これはもう何しておるやらわからないのであって、しかもあげくの果てに給付年がおそくて、早く死んでしまった人が案外多くて、やらなくてもいい人がたくさんできてしまい、積み立てた金が逆に取り立て得みたいになってしまう。そうして思ったよりも金がたくさん残ったというようなことで、強制貯金をしいたという形になって、実際はこの年金の恩典にみんなが浴さないで、そして集めた金で大蔵省がほくそえんで、思わぬところに大衆の零細な金が利用されることになってきますと、これは問題だと思う。ですから、今お答えになりました運用自体については、必ずしも小山さんの今の説明を聞いて私たち満足とはいきませんけれども、その精神においては一応承わりまして、そういう気持でいてもらうならばという気持にとどめておきたいと思います。この点は一つしっかりがんばっていただきたい。将来国民が世論を起してこれを取り返せということにならないとも限らないと思いますので、そこは厚生省一つしっかりしていただきたいということをこの際念を押しておきたいと思います。  次に私は援護年金の方にちょっと移らしていただきたいと思います。援護年金の給付は、年寄りを対象にしたものは、七十才を対象として月千円、母子世帯が千円、これは十六才未満の子供をかかえた者、それから身体障害者千五百円、こういう案をお出しになっているのでございますけれども、このたび政府の出しておいでになりました援護年金の援護という言葉に対して、国民保険料一律と同時に、自民党内閣の出された社会保障制度に対して疑問を持っている、これは果して援護という言葉を使うべきものかどうか。社会保障制度の中に、過渡的なものとして暫時これを支給するといたしましても、私はこういう援護というような言葉をお使いにならなかった方がいいのではないかと考えるわけでございますが、その辺厚生大臣並びに厚生省のお考えとして、どういうわけで受ける人々がいやがるような言葉、あまり感心しない言葉をお使いになったのか、お聞きしておきます。
  87. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 仰せの通り援護という吉葉がどうも気になるというような御意見もあるわけですが、こういうふうな名称を用いましたのは、無拠出年金ということが一般の人には非常にわかりにくい雷葉でございます。同様に拠出制年金という言葉もわかりにくいと言葉でございます。そういう意味におきまして、何かわかりやすい言葉を考えていきたいということでいろいろ考えました結果、現在行われます年金に最もふさわしいという意味合いにおいて、援護年金という言葉を使ったわけでございます。問題は実態がどうであるかということでございまして、私ども援護という言葉にせよ、あるいは保護という言葉にせよ、それは言葉としてそう卑下すべき言葉ではなく、りっぱな言葉だというような考え方を持っておるわけでございます。
  88. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まあ援護というその言葉からくる響きはあまりよくないと思います。従ってこれはできたらもう少し違う言葉にお変えになったらいいのではないかと思いますが、大臣どうでございましょうか。
  89. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま小山審議官から御答弁を申し上げましたようなことでございまして、私どもといたしましては、拠出年金基本といたしまして無拠出制年金というものを経過的にまた補完的にこれを考えておるわけでございまして、そういう意味におきまして、これは援護年金という形で無拠出制年金を呼んでおるわけでございます。あるいはこれを特別年金というふうに呼んでも差しつかえないのではないかというふうに考えますが、そうこだわる必要はないのではないかというふうに私ども考え援護年金という言葉にいたしたような次第でございます。
  90. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 老齢、母子、身体障害者、こういうさしずめ今保障しなければならない人の立場は、これは個人の責任ではなしに、国家の政治の貧困であるということを考えましたときに、お前たちは落ちぶれているから援護してやるというようなおっかぶせのような言葉をもってこれに臨むということは、私は政府の精神としてよくないと思う。従ってこれは政治の貧困が生んだところの老齢者、母子世帯身体障害者に対して、国家が責任を持って国民の要望にこたえていく制度の中に、この人たちを一緒に連れていくべきだという気持の上に立って、一つ援護という言葉をおとりになると同時に、身体障害者対象としてところどころに廃疾という言葉が使ってある、これはお互いに私たち身体障害者になりました場合に、不具廃疾ということを言われると、からだに障害があると言われるのと、三百六十五日足が片一方ないとか目が見えないという人たちにとっては、自分たちが不具廃疾であるということに非常に精神的な一つのひがみを持つ。そこへ持ってきて今度できたのが援護年金であって、その援護年金の中に身体障害者対象として常に不具廃疾、不具廃疾ということを言葉の上に出しておっかぶせてきておるということになりますと、ますますお前たちは要らない者だからというので、困った者として救ってやるというような気持で千五百円出してくるというような気持になりまして、同じできたものでも受ける方の気分からいいますと、やはりばかにされている、失礼なという言葉の中に入ることになると思うのでありまして、こういう援護という言葉と一緒に不具廃疾という言葉は根本的に除いていかなければならぬのではないかと思いますが、そういう要望がなかったか、いかがですか。
  91. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 仰せの通りそういう言葉はできるだけ避けることが望ましいという考えは持っております。ただこれはいろいろ法文を練ってみますと、やはり客観的な概念内容としてある一定の障害の状態が廃疾ということになりますので、どうも廃疾という言葉を使わないと、表わそうとする実態が表われないというようなことがありますので、そういうやむを得ない場合にその言葉を使いまして、原則的にはそういう言葉を避ける。この点については公けにいろいろの案が出ましたうちで、現在政府の案が一番初めに障害という言葉で努めて置きかえるというふうにしたわけでございまして、なお今後とももし適当な言葉があり、概念内容が乱れるということでないようでありますならば、御趣旨の線に沿って考えるべきものだというふうに考えております。
  92. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これはやはり全国民対象として公平な制度を作っていこうというのですから、その人たちが持っておるマイナスというものは、まともな人、マイナス以上の人がやはり手を引いていくのですから、こういう言葉を極力避けていただいて、近代的なものにしていただきたい。どうしても廃疾というような言葉を法的にとらざるを得ないというようなことになってくるとおっしゃいますけれども、それはやはり明治、大正、昭和の初めにかけてできた既存の古い法律というものを参考にして、できるだけ古いものに準拠しようという精神をお持ちになるから、こうした言葉が自然出てくるのだと思うのでございまして、これは戦後十四年目でございますから、頭を切りかえて一つ今日の思想にマッチしたものに法案のスタイルというものを考えていかなければならないのだ。その切りかえができておらないから、従ってこの不具、廃疾、援護というような言葉が平気で出てくるのだと思います。一つこの点はくれぐれも、数多い方々でございますので、同じ作るならば気持のよいものを作っていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います  それから援護年金という言葉が使われておりますので、援護年金という言葉を使って質問するより仕方がございませんが、八木委員もお触れになりましたけれども母子世帯千円、老齢千円それから身体障害者千五百円というこの月々の金額は、いかにしても常識を割っておる。これは社会保障制度審議会の答申案を拝見し、政府の千円になりました根拠というものを拝見いたしますると、これは私も承知しておりますように、農村において生活保護の対象となっておるとにろの老人一人暮しの基準が二千円であった。それの半額とみなして千円というものを出した、こうおっしゃておりますけれども、実際大臣なり小山さんが七十になられて、農村で身寄りのないところの一人の老人となって暮らされたときに——よそへ寄宿している場合は別だと言っておりますが、そういう場合に千円のおくれおくれの生活保護の金をもらって生活してみたときに、その生活程度はどんなものかという御想像をしていらっしゃるかということを、一ぺん聞いてみたいと思うのです。千円をよりどころとしておられますけれども、もし千円の生活保護をもらっている——二千円の半額としてお考えになっているのですが、二千円の生活保護の生活というのはどういうものか。自分がなったとしてお考えになったときに、そんなよりどころにしなければならぬ二千円だと思っていらっしゃるのだろうかという疑問を私は持っているわけです。一つそれはどうでございますか。
  93. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま堤先生の最初の段のお話でございますが、障害の方は千五百円でございます。それから確かに生活保護法の基準といたしまして、大体それが二千円、それの半額だ。一体君は二千円で老人になった場合にそれをどう思うかというような御質問でございますが、確かに今日の生活状況の中において二千円で暮らしていくということが大へんなことは、堤さんが御指摘になられたと同じような考えを持っておるわけでございます。ただ私どもといたしましては、全都これでもって生活する、全部をまかなうのだという考え方ではなくて、やはりその生活の足しにする、こういう考え方でございます。そういうような考え方からいたしまして、拠出年金の場合においても三千五百円というふうにきめたわけでございまして、そのいわば経過的あるいは補完的な考え方から無拠出制というものをわれわれが打ち立てたわけで、それを七十才から実は千円ということにいたしたわけでございます。もちろんこの額をもう少し高くするということは望ましいことではございます。しかしながらこれはやはり日本の置かれております経済等も考え合せまして、このような額にいたしたわけでございますが、社会保障制度審議会の御答申におきましても、やはりこの額は千円ということになっておるようなわけでございます。
  94. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 二千円が生活保護費の基準でございますから、私もその支給される千円が生活費の全都であるのかどうかという質問をしておるのではないのでございますけれども、私は、今日政府が実施しておる生活保護は、農村における老人一人暮しの二千円というものに基準を置かれたけれども、その二千円というものは非常にひどいものであって、決して長生きしてよかったと言って年寄りが喜ばなければならぬようなありがたいものにはなっておらないということを言っておるわけです。従ってこれを基準として出されては困る。この老齢に準じて母子世帯子供があるのに千円、これを基準として身体陣雲者をきめられておるということになりますと、政府支給なさる七十才の老齢ということになりますと、これは必ず七十才以上になりますと、何どき一人ころりといかれるかわかりませんから、やはりだれかがそばにおって、しょっちゅう気をつけておらなくちゃならぬ立場の人だと思います。それから子供は十六才の年齢を切りまして母子世帯ということを出して、そうして第一子は勘定をしない。第二子から子供の額をあれしております。     〔八田委員長代理退席田中(正)委員長代理着席〕 しかしこれも千円ということに準じてきめられておるということになりますと、これは身体障害者にいたしましても、必ず常時介添えを要する人たちというものがいるということを考えますときに、常にこの人たちを一人と勘定してあげることはお気の毒なんです。母子世帯にいたしましても、老齢にいたしましても、身体障害者にいたしましても。私はどうしてもこれはやはり年齢を六十五才なり六十才なりに引き下げる親切がほしいと同時に、その金額につきましては自民党さんも政府も面子を捨てて、どっかから金をやりくりをして、どうぞせめて社会党案の三千五百円というものに歩み寄っていくのでなければ、二千円なりせめて二千五百円というところまできてもらわなければ——生活保護基準費の半額といわないで、そこまで持っていってもらわなければ、憲法の精神に近い保障というものはできないのではないか、こう思うのでございます。これは八木さんも繰り返し繰り返し言われましたが、政府はやわらかくおっしゃっていましても、厚生大臣はがんとして、この年齢の修正をしたり額を訂正したりなさるようなお気持があるようには見受けられません。しかしそれだけになお重ねて、何とか一つ社会党案に歩み寄ってもらいたいという気持を持って——一番大きな点でございますが、これは一つ何とかならぬでしょうか。これを一つ何とかなさいましたら、大臣はもう任期中何もなさらなくても、私はこれだけでも大臣を見上げたものだと思うのです。遊んでいらっしゃってもいいくらい、たくさんの人が感謝すると思います。これは一つ何とかなりませんか。
  95. 坂田道太

    坂田国務大臣 大体私たちといたしましても望ましくはあるわけでございまして、何とかしてこの給付内容を改善していきたいという気持でおりますが、ただいまのところはこの程度でわれわれは参りたいと考えておるようなわけでございます。しかしながらこのわずかな千円でございまして、私は今日農村の家庭をあちこち行ってみました場合において、どちらかと申しますと、終戦後いろいろものの考え等も違って参りましたし、また個人主義のいい意味における成長もございますが、また同時に悪い面の傾向も強まっておりまして、いわば老人をないがしろにするというような気持もないわけではございません。しかしその中におきまして、国の保障としてこの千円の額が、少くとも老人の個人のふところに入っていくということでございますと、その老人をまかなうだけのすべてのお金ではないといたしましても、この千円の金というものによって、たとえばお孫さんにいろいろお小づかいをやるとかなんとかいうことで、いわば昔の日本のいい意味における家族制度の、老人が子供をかわいがる、あるいはまた子供たちが、係たちがおじいさんに対して非常にやさしい気持を持って信頼していくというような、あたたかい気持がかもし出されていくのではないか、こういうようなことが、わずか千円でございますけれども日本の農村社会におきまして明るい光を投げかけていくものであると信じておるわけでございます。ただこれが都市の場合におきまして、ことに勤労世帯におけるところの千円ということがむしろ問題じゃなかろうかと私ども考えておるわけでありまして、会後ともわれわれはこの点につきまして最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  96. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そのものずばりとはっきり答えていただきたいのですけれども、なかなかそれが言えないので、いろいろとてんぷらのように衣をつけて大臣が逃げていらっしゃる点は、お気の毒だと思いますけれども一つ何とか良心的にこの増額の方法はお考えにならないと、この法案に対してないよりはましだという声があるのをご存じですか。これは最後にお聞きしたいと思っておったのですけれども、私たち社会党が出しておりまする案は、将来のことをいろいろ考えて、最後の最後にはこう持っていくという見通しをつけて、相当良心的な案でございます。だからいろいろ御質問もあるだろうと思いますし、手落ちもあるだろうと思います。完全なものとは申しませんけれども、しかし今御質問申し上げたような諸点——ほかの方々がまだたくさん質問しなければならぬ点を盛り込んで、社会党は良心的にこれらの問題を片づけながら、党案の中に盛っていっておるつもりでございます。  この国民年金法案がこの国会にかけられるという段階に入りましてから、希望を持っております国民の中から、いろいろこれに対する意見がございますけれども、今の日本の社会における三大新聞——朝日、毎日、読売だとか、あらゆるいろいろな新聞の論調、それから卓越した識見を持っていらっしゃる学者の方々とかベテランの方々が、いろいろな角度から政府案というものを論じていらっしゃいますけれども、先ほど申し上げたように、まあまあないよりはましだから、あれでも作らせるよりしようがないなというようなところへ大体の論調がいっていると思います。そう言われても、金がないから、ないそでは振れないのだからしょうがない、こういうふうにおっしゃるだろうと思うのですけれども、私たち社会党立場からいってみれば、良心的な理念の上に立って、完全な骨組を立てて発足しようと思えばできるのです。それから金にいたしましても、社会党の言うところの再軍備廃止、警察力に縮小してそこから金を出せという経済的な裏づけの論争以外にでも、もっともっと財源をこしらえる方法はあると思うのです。たとえば専売公社は、たばこから千四百二十億という収益をあげておりまして、これが大蔵省に入っております。もしこれを独占資本家に経営させておりましたならば、二割、三割の税金をとったとしても、千億くらいは独占資本家のふところに入る。しかしこれを大蔵省の手に入れて国民のふところに還元しておるというたばこ事業一つを取り上げてみましても、これに類似した仕事政府が良心的にやって、国民年金のための財源をこしらえようと思ったら、できる仕事はいっぱいその辺にころがっているのです。それを、資本主義政党である自由民主党は、わざと資本家の手の中にこれを渡しておいて、権力によってこれを守りながら、国民のふところの中にこれを公平に分配していこうとしない政策をとっておるわけなんです。従って財源がないということになって参ります。少くとも酒やたばこからあげておりますような収益方法を国家事業として考えますならば、もっともっとセメントや砂糖や石炭、おおよそ大衆が必要とする事業の中から大衆のふところの中に利益を返していくという方式をとって、国民年金を、初めからないよりはましだなどと言われないでもっとよいものから発足していける方法はあると思うのですけれども、これはわざとおやりにならない。これは厚生大臣坂田さんだけを責めるのはいけないかもしれませんし、自民党の在来のやり方でありますから、これをやると社会党と同じような考え方で、社会主義政党と変らないような政策を強要されるというような気持をお持ちになるでしょうから、これ以上は申し上げませんけれども、しかし気がまえといたしまして、国民年金と初めから正しい理念の上に立って取っ組んでいくというところの政府の気がまえがないということであります。それがないよりはましだという今日の論調を生んだ結果になったと思っております。ですからこれは一政党の選挙政策のためだとか、また人気取りのためだとか、また反対党をやっつけんがためだというような、ささいな問題ではなしに、国民年金の問題はいかなる政党が天下を取りましても、これから二大政党でいきます将来にわたっては、両党が交互に政権を担当いたしましても、両者のよいところを集めながらほんとうによいものにしていって、国民の要望にこたえなければならない非常に大切なものでございますので、私はいたずらに政府をやっつけようとは思いませんけれども、しかしせめて今日社会党が譲って考えたくらいの案のところまで、きわめて真剣に財源を求めて、真剣に公約を実現してみせるという岸内閣の気がまえがほしかったと思うのであります。そこまでいっておらないところに、いろいろな質疑を社会党が長時間にわたって取り上げなければならない問題が残されておるのじゃないか。従ってないよりはましだなどと言っておられないで、国会審議の途中において政府が反省して、かくかくしかじかの問題がこのように改められ、修正され、よくなったことはけっこうだと一言でも言ってもらい、国民ほんとうに待っておった国民年金に少しでも近いものになるように——まだ日がございますので、八木さんと同じようなことを申しますけれども一つもっともっと反省をしていただきたい。私の質問は二人目でございまして、解決がつかないので同じようなことを聞くより仕方がないのでございますけれども、私が長くやっておりますのも同僚に対して失礼でありますから、私は勉強しております同僚に私の質問を譲りますが、しかし私の質問に対して明確な答えが与えられておらない以上、私たちの次の質問者は同じようなことを質問して、できるだけ政府に歩み寄っていただきたいという努力はいたすでありましょうから、どうか一つその点は十分お考えになっていただいて、なるべく早いうちに修正の御決意をなさったり、増額の御決意をなさるように、厚生大臣に御忠告を申し上げ、私の質問はまだ大蔵大臣総理大臣、労働大臣などにもあわせて聞きたいことがたくさんございますので、そのときにまた厚生大臣に残りを質問するといたしまして、一応ここで他の質問者に譲ります。
  97. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 滝井義高君。
  98. 滝井義高

    滝井委員 国民年金法案に対する質疑八木さんと堤さんとで大体おもなところをずっとやられたので、私は少し角度を変えて、年金の背景、それから年金の財政的な根本的な計数上の問題等、五、六時間くらいかかるかと思いますが、質問させていただきたいと思います。きょうは本会議の時間がありますので逆に最後から、次会は総論的なことからやらしていただきますが、きょうはだれもまだやらぬ年金事務機構からやらしてもらいたいと思います。  今度の政府の案によりますと、まず厚生省にその本部的な年金局ができ、それから都道府県に年金課ができ、その下に現在の健康保険や厚生年金を、取り扱っておる社会保険出張所が、市町村の指導や監督をやるきわて重要な役割を演じ、その下にいわば末端の組織として、市町村と郵便局がわれわれ国民大衆の窓口となる、こういう形になっておるのっでございます。そこでその予算の面を見てみますと、市町村に配分される予算が一億五千五百万円、郵便局に配分される予算は七千五百万円でございます。これらの問題についてはすでに本会議自治庁長官なり郵政大臣質問いたしましたところ、大体これだけの金があればやっていけるだろうということでございました。単に言葉の上でやっていけるだろうということだけでは、どうも私は過去のいろいろの実例から考えて、今後の年金実施の上に不安の念なきを得ないのでございます。従って、それらの年金事務を遂行していく上において、やはり何といっても一つの法律ができるならばそれを動かすのは人であります。人がそれを動かす足場というものが機構になるわけです。従ってその足場というものが一体どういう工合に今後運営せられていくかという根本的な点について、政府意見を聞いてみたいと思うのです。  まず一億五千五百万円の金が、御存じの通り現在市町村合併によって一万有余あった市町村が多分三千九百そこそこに非常に減少しておる。それにしても一億五千五百万円は、被保険者一人当り五十円ずつ配分することで一億五千五百万円というものが出ておると思うのですが、全国三千九百有余の市町村に一億五千五百万円の金を配分しますと、一市町村当り五万円を下るのです。それで画期的な国民待望の年金というものができることになる。私はそこではがきを一枚拾ったのです。二階堂進さんにきたはがきなんですが、無拠出国民年金を完備して下さい、どかどかときのうもきょうも富士のすそ野であのいまわしい戦争の音がしております、あの自衛隊費、軍人恩給をやめて、弱い貧しい国民に平等に支給される無拠出年金によって、病める者も弱い貧しい者も楽しく暮せる平和文化国家を待っております、国会での御奮闘をお祈りいたします、保守党の代議士にこういうものがきておるくらいに国民はこの年金を待っておるわけです。そしてそういうように待っておる国民に、一番サービスをし接触をする場面というものは市町村と郵便局なんです。そこでその市町村と郵便局に、一市町村当りが五万円を割る金が配付されるということになると、第一年度は、国民年金を扱う課であり係であるという看板と国民年金の判こを作らなければならぬ。役所には、課長以下係長の判こがたくさん要ります。私はこの判この代で消えてしまうのではないかと思うのです。そこで、この一市町村当り五万円を割る金でやっていけるだけの自信があるのかどうか、まずこの点をお聞きしておきたい。
  99. 坂田道太

    坂田国務大臣 われわれといたしましては、この額でやれると考えております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 われわれとしてはやっていけるということでございます。そこで私は実例を示します。大臣も御存じの通り、今から二回か三回同前の国会で、あの全国的に問題になった引揚者の給付金というものをそれぞれ引揚者にやることになりました。この今年度予算は幾らかというと、五千五百六十二万四千円の事務委託費が地方団体にやれることになった。これは一億五千五百万円ですから、その三倍の額が配分されるわけです。そこで一体引揚者の給付金の対象になる人の数と、この年金事務の数とどういうことになっておりますか、これはわかっておりますか。     〔田中(正)委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕
  101. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 ただいま手元に資料がございませんので、取り調べて後刻お答え申し上げます。
  102. 滝井義高

    滝井委員 常識的に言って、引揚者の事務よりっかさらにこれはむずかしい事務になってくると思います。年金は非常に複雑な調査をやらなければならぬ。これはあとで触れますが、実は私はこれを調べてみたのです。人口十万ある都市において、引揚者が二千五百人、これに対して幾らの予算が配分されたかというと三万円です。ところが二千五百人の引揚者の実態を調査して、あなたは確かに引揚者でございます、あなたは引揚者給付金の対象になります、こういう認定をしてやって、そして書類をそろえてだんだん中央に送ってくるのです。そうすると交付公債がいくことになる。その事務のために三万円の金がきたのです。ところが三万円では二千五百人の人たちの事務を順当に遂行していくことができなかったのです。できなかったので市町村はどういう措置をとったか。非常に不満が起ってきました。交付公債のくるのがおそい、金のくることがおそいのだといって非常に不満が起ってきた。それでやむなくその人口十万の、三万円きて二千五百人対象者がいる都市は、五人の専属職員を福祉事務所に置いた。だれの金で置いたかというと、市町村の一般財源で置いた。市町村は持ち出しです。これでやってどうにか引揚者の不満を緩和しているというのが今の姿です。それで御存じの通り今度の年金というものは、少くとも国民の三千万人程度対象にしているわけです。その中で、今度はその保険料を順当に納め得る人と納め得ない人とセレクトしなければならぬ。納め得ない人は三割あるといいますが、これはあとでまた聞くとして、あなたは納め得る部類、あなたは納め得ない部類、こういう明白な区別をつけていかなければならぬ。それだけの事務ならばまだいいけれども、今度は市町村は年金の手帳に切手が張られているかどうかということを見なければならぬだろうし、それから年金手帳を一々渡すこともしなければならぬかもしれません。そういうものとか、そのほかいろいろな基礎的な調査をやらなければならぬ。こうなってきますと、五万円の金で、これがたとい無拠出のものであっても、御存じの通り拠出年金のにとしの対象者は老齢だけでも三百万をこえております。その中でやるのは百九十八万でしょう。しかしそれぞれ障害にしても母子にしても、十八万とか四十万よりかはるかに多い数がいるわけです。対象者だけでも二百五十七万ある。そういう人たちを一々選択して、適格者である無資格者であるという認定をして無拠出年金、いわゆる援護年金をやる事務をやっていかなければならぬ、まず第一年度においては。その以降においてはだんだん基礎的な調査もやることになりましょうが、ともかく第一年度においてもそういうことをやることになるのっだが、それで今引揚者給付金の例を引いても、すでに市町村が手出しをしなければならぬ。一体これを手出しをしなくてやれるとお考えになっているのかどうか、手出しをしなくてもやれるという自信があるなら、手出しをしなくてもやれますと言って下さい。それでやれなければ、そのときにはどうするのかあとで尋ねますから。
  103. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 国民年金の事務の遂行において、市町村が非常に大きい役割をするというようなこと及びこのためには事実上相当の費用が必要であるということにつきましては、滝井先生仰せの通りだと思っております。ともすれば世の中に、岡がやれば金がかかって、市町村にまかせれば金がかからぬような考え方があるようでございますが、これは間違いでございまして、国の官吏がやりましても、市町村にまかせるにいたしましても、やはり要るだけのものは要る。その意味合いにおきまして、今回の法案におきまして、市町村にある程度のことをまかせるという態度をとりまする以上は、当然これに伴って必要なだけは国の万で負担をしていくという態度は堅持さるべきものである、かように考えまして、この点は法案にも明記されているわけでございます。  ところで、今滝井先生が具体的な例をあげてお話しになった問題でありますが、そういう全体の役割のうちで、明年度市町村にしてもらいます仕事は、実は比較的軽少なものでございます。滝井先生は、引揚者給付金の仕事の方が楽で、この方がむずかしくはないかというようなお気持で言っておられましたけれども仕事の内容から見ますと、明年度の分は比較的市町村にお願いする仕事は少いのでございます。  最後に、一体それでは市町村に対して一人当り五十円の費用でやってもらえるかどうかという点でございますが、この五十円が出ましたのは、現在の国民健康保険の実績等から割り出したものでございまして、明年度行なってもらいまする市町村の年金に関する仕事は、給付事務の一部でございます。これが国民健康保険の事務に占める割合を見ますと、全体の事務量のうちの一二%程度になっております。ところが国民健康保険の給付事務とそれから援護年金の給付事務とを比べますと、これは先生御推察の通り援護年金の給付事務の方がやや事務量が多くなる予想でございます。そういう点を考慮いたしまして、実績に三倍いたしましたものを頭に置き、さらに国民健康保険の事務量のうちで、庶務に類するものがおよそ一二%程度ありますので、合せて一二%程度の四倍、五〇%程度のものをめどにおきまして、現在の国民健康保険の事務費一人当り九十五円というものから五十円を割り出したものでございます。従って現状においては、大体これならばやってもらえる、かように考えてきめたものでございますけれども、なお実施の結果を見まして、明後年以降において、さらに必要があれば十分調整考えていきたい。なお拠出制年金制度の準備なり、あるいは実施が始まるという場合の市町村の事務量に応ずる事務費につきましては、これはもうおっしゃるように、援護年金の場合とは比較にならぬ重要度を持ち、それから事務量もふえますので、これは全然別個に検討すべき問題と考えております。
  104. 滝井義高

    滝井委員 まず第一に国民健康保険の一人当りの事務費が九十五円、その五刑程度、従って五十円、こういうことでございましたが、小山さんはもと保険局の次長をされておったので御存じの通り国民健康保険の事務費一人当り九十五円というものが少いというにとは、ことしでももはや定説になっておるわけです。あなた方の要求は今年度百十五円であったはずです。百十五円をばっさり削られて九十五円になった。われわれがあれだけ村上次長を呼んで百十五円出さなければいかぬということを強く要請をして、ようやく昨年より五円ふえた、こういう実態です。従って、本来ならば百十五円でも少いのだが、百十五円くらいならば大蔵省が認めてくれようという、そういうことでしたにもかかわらず九十五円に削られて、そのまた五割の五十円ということになると、これはもう少いことは当りまえなんです。そこで私が大臣要求をいたしたいのは、事務費というものは全額国が見ることになっているわけだ。従って事務費にもし赤字が出た場合には、国があとで見てくれるかどうかということなんです。けんかというものは、制度が実施されたあとにけんかしたって、これはもうわれわれの負けです。だから制度をやる前にこれはやらなければならぬ。まず私はあなたの御意見を聞いておいて、この次大蔵省を呼びます。今言ったように、この国民健康保険は、あなたの要求は百十五円だったのです。これは百十五円でも少いんだ。実際は百四十五円とか百五十円かかっているんです。ところが、市町村の職員で、税務の取り立てと保険料の徴収とを兼ねておる者がある。そういう者は、大蔵省はこれを税務が四割、それから国民健康保険の事務が六割、こういうように分けて、一人の人間を四、六に分けてやっておるというような予算査定をやっておるので、百四、五十円のものを、あなたは良心的に百十五円要求したものだと思う。ところが、それをさらに九十五円に削られた。削られた実績をもって今度は五十円、こういうことになった。現在、御存じの通り市町村の国民健康保険の赤字の大きな原因は事務費である。そうしますと、同じ社会保障でまたこの年金で市町村に赤字の原因を作らせるということ、これはいけないことなんです。だからこれは大蔵省とのけんか——われわれがあなた方与党とけんかするときには、法案のできるときにけんかをしておかぬと、できてしまってからではわれわれ少数党の負けなんです。そこでこれは、事務費にもし不足が出たならば、補正予算でも出すという言明ができるかどうか。先の、三十六年以降のことはまた今から尋ねますから、どうです、その点。
  105. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもといたしましては、一応これでやれるものというふうに考えておるわけでございますが、もし将来におきまして、どうしてもこれでいけないというにとでございましたならば、来年度予算要求の場合においてそのことを考えて参りたい。ただいまのところはまあこれで大体いけるものだと考えております。
  106. 滝井義高

    滝井委員 いや、大体これでいけると思うからおそらく五十円で出されたと思います。しかし過去の実績というものが、その基礎にした九十五円というものがすでに赤字が出ておるということが現実なんですよ。だからその上に、今度はその赤字の出ておるものを基礎にして五十円を出したのでは、これは赤字が出るだろう。しかしそのときに赤字が出てもかまいません。私はかまわぬが、法律には、事務費は全額国が持ちますとなっているんだから、そのときにはその赤字のしわを市町村財政に寄せずに、国が補正をしてくれますか、こういうことなんです。だから補正要求を来年度予算にやってくれますかということなんです。あるいはさ来年になるかもしれません、これは翌々年になりますか、そのときやってくれるかということなんです。そのときにはあなたはおられないかもしれませんが、きょうあなたが言っておいてくれさえすれば、われわれはおるかもしれぬから、坂田さんがこう言ったんだ、こう言ってわれわれがやりますから、これが一番大事なことなんです、どうです。
  107. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま私御答弁申し上げた通りでございまして、どうしてもこれでいけないというようなことがございますれば、将来のことはお約束はできませんけれども、国で見るということになっている以上は、要求を出さなければならないのではないかと考えておるわけでございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 それでよろしいです。とにかく全額国庫負担だから、将来赤字が出たときには、当然やらなければならぬことになる、これでよくわかりました。  そうしますと、今度はさいぜんの小山さんの答弁に関連するのですが、実は小山さんたちが大蔵省に要求したものは国民年金二百十九億だったわけですね。ところが、それが何だかんだと洗濯板みたいにもまれて、百十億に減っちゃったわけです。そこで、今あなたが堤さんの質問に対して、私たち予算要求をした二百十九億と今度百十億五千二百万になったものとの違いは、所得制限一つと、もう一つの違いは世帯の収入をどう考えるかという二つの違いなんだ、こうおっしゃったわけです。ところがその当時、昨年十月以来あなた方が巷間に宣伝といってはおかしいが、出しておった事務機構を見ると、その事務機構の人員というものは四千七百一人だったわけです。当時本省には九十九人、地方には四百三十二人、連絡所に五百七十人と、年金事務所に三千六百人ですか、こういう案があなたの方にあったわけですね。年金局、八ブロック地方監理局、監理局なき都道府県三十八カ所へ監理局地方連絡部、それから末端四百五十カ所年金事務所、こういうことがあったわけです。そうしますとおそらく人数も大して変らぬのだ、対象人員も大して変らぬから、今言った所得制限とか世帯の収入の違いだけだ、こうおっしゃたわけなんです。ところが今度の予算では年金高六十人と都道府県の年金課等千七百四十人で千八百人になったわけです。三分の一になったわけですね、四千七百だったのですから。これで見ると、あなた方は、あなた方の二十年の長い役人生活の経験と勘から、二百十九億の仕り事をやるためには大体四千七百人くらいは要るだろうと言っておったのが、すぽっと三分の一になちゃった。金も半分になっちゃった。私はこれだけではやれそうにないと断定しておきますが、一体三十六年からあなた方がいよいよ拠出制をおとりになるときには、今の千八百人の人数がどういう形でふえていくことになりますか。これはもうおわかりになっておるはずだと思うのです。どういう形で増加をしていきますか。これは財政だけの問題じゃなくて、動かすのは人間ですから、人間のふえ方を私は知っておきたいのです。
  109. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 まず最初の問題にお答え申し上げたいと思いますが、仰せの通り九月に要求いたしました内容はただいま先生がおあげになった通りのものでございます。その当時の私どものもくろみといたしましては、無拠出年金支給明年度、つまりことしの十月一日から開始をする、つまり半年分をことし支給する、それから拠出制年金保険料の徴収を三十五年度早々からしたい、こういう考え方であったわけであります。従って明年度予算におきましてすでに拠出制に備えるための陣容その他を相当備えなくちゃいかぬ、かような考え方を持ちましたので、そういった要求になったわけでございます。現在進んでおりますものと違って参りましたのは、拠出制による保険料の徴収が三十六年の四月一日からというふうに延びたことと、もう一つは当時期待しておりました国から地方まで一貫する事務組織は適当ならずという各方面の判断でこれを取りやめにいたしまして、都道府県、市町村という既存の段階をできるだけ活用していく、また積極的な協力を求めていくというようにしたために違って参ったものでございます。  それから第一の点については、仰せのように明年度予算に出て参りますものはごく一部でございますが、現在予定しておりますものとしては都道府県本庁段階は大体これをそのまま拠出に移していけば足りるというふうに考えております。今後の補給といたしましては、先ほどお触れになりました都道府県本庁と市町村との間に立ちましていろいろの現業事務をしていきます社会保険出張所の整備充実をはかっていくということを計画的にいたしたい、こういう考えでございます。これをどの程度増設していくか、あるいはどの程度の人間を充てていくかということについては、まだ政府として最終的に固まった案として申し上げるものを持っておるわけではございませんが、およそ事務的な見当といたしましては、現在百程度あります社会保険出張所をさらに百ないし百五程度増設をしていく。これまでは都会地の工場、事業場等の多くあります地域だけに設けられておりました社会保険出張所を、今後は逐次しからざる地域にも計画的に整備をしていく、既存の社会保険出張所に対して、ある程度の人員の増強を行うとともに、新設の社会保険出張所には人間を置いていく。大体どのくらいな人間になるかということについては、今の段階ではっきりした数を示して申し上げることは、多少差し控えたいのでありますが、見当だけを申し上げますと、大体私どもの見当では三千五百から四千程度の補強を今後三年くらいの間に逐次計画的にやっていくことができれば、という希望を持っております。それから市町村に対しては今後は事務的な経費の負担を十分にいたしまして、それぞれ必要なだけの陣容を整備していってもらう、かように考えておるのでございます。
  110. 滝井義高

    滝井委員 きわめて重大なところまできたわけですが、そうしますと今小山さんが言われたように、現在百カ所ある社会保険出張所が倍になるわけですね。二百ないし二百をちょっとこえるという社会保険出張所になるわけです。そしてそれに対して——現在社会保険出張所にどの程度の人数がいるか、予算書を向うに置いてあるので、ちょっとわかりかねますが、とにかく現在ある百の社会保険出張所の人員に、さらに三千五百ないし四千加わるわけです。従ってここ二、三年のうちにそれだけふえるわけですから、一カ年間に平均して千人から千五百人程度の増員を必要としてくるわけです。ことし千八百人ふやすのに、他の事務費が九億七、八千万円、十億くらい要ったと思うのです。事務費だけでもここ二、三年のうちに三倍から四倍程度のものが必要になってくるし、それからこれは国の事務ですから市町村の手持ちでやるというわけにいかない。市町村も自己の住民の福祉増進の仕事でありますから、ある程度は出すでしょうが、引揚者給付金というものは短期の見通しのついた仕事ですが、これはむしろ国家とともに無限、永遠に続いていく仕事なのです。従って当然財政というものは国が見なければならない、こういうことになる。拠出制は三十六年から強制適用なのです。強制適用で滞納整理その他を積極的にやりながら、財政的な裏打ちを固めるというのは、社会保険出張所と市町村段階なのです。この二つがうまく有機的な連絡がとれない限りにおいては、日本国民年金というものは絵にかいたもちになることは明らかです。そこで坂田さんは、今も小山さんの長い役人としての経験と勘とを希望的な意見として述べられましたが、ほんとにやろうとするならば、最小限今の程度のものはやらなければいけないと私は見ております。あなたはその長い小山さんの勘と経験をあなたの政治的な良識と政治力で裏づけをして、来年度予算からそれを積極的に徐々に推進をしていくだけの確信と自信を持っておるかどうか、これを一つ聞いておきたいのです。あとで大蔵省にも聞きますし、総理にも聞きますから、あなたの意見を聞かしていただきたい。
  111. 坂田道太

    坂田国務大臣 私どもといたしましては、事務当局でこの程度はどうしても必要である、こういうような数字に対しましては、大蔵大臣に対しまして要求をいたしたいと考えております。
  112. 滝井義高

    滝井委員 それで大脳と手足が一致したわけですから、一つぜひ厚生省一体になって推進をしてもらいたいと思うのです。  そうしますと、今度は、その社会保険出張所や県の民生部の保険課で働いておる人々の身分の問題です。この人たちの身分というものは一体どうなるのかということです。
  113. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 現在の被用者保険の事務に従事しております者たちと同様に、国家公務員となることにいたしております。
  114. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、予算書の国民年金の経費百億七千八百二十九万六千円を見てみますと、本省の経費と、それから附則八条の経費に分れておるわけです。現在御存じの通り日本には国家公務員の中で十万をこえる臨時職員がおるわけです。そういう者を一体今のままにしておいて、この大事な仕事をやらせるのかどうかということなんです。御存じの通り、税務署の職員なりあるいは徴税に当る人たちは、それぞれ特別の手当がつきます。これは厚生大臣、ここらあたりよく知っておいてもらわぬといかぬところですが、税務署の職員あたりには全部徴税の手当がつくわけです。他の国家公務員と給料表も区別して、大体よろしいんです。ところが、現在健康保険やあるいは厚生年金や失業保険保険料を徴収する事務に当っておるこれらの都道府県なり社会保険出張所におる職員というものは、それらの恩典がないのです。おそらく民生部の保険課に所属するのであろう。今度国民年金課ができますが、おそらく民生部長のもとでしょう。だから保険課と同じです。社会保険出張所に行く限りにおいては、おそらく同じだろうと思いますが、当然、日本における社会保障というものがそれほど大事になったからには、これらの職員の待遇というものについても考えておかないと、これは大へんなことになる。あなた方が机上で涼しい頭を働かして、りっぱな案を作っても、それが下部機構に行った場合、血が通わない。一体こういう問題をどうするかということです。私は制度というものは人間が動かすと思う。だから一体どういう工合に末端の人間を政府が待遇していくか、見ていくかということが一番大事だと思いますので、まずそういう健康保険とかの保険料の徴収事務に当る者は、税務署の職員あるいは都道府県の徴税吏員というものと同じにしなければならない。現在同じにされていないのです。これは一体どうするつもりなのか。今度の年金制度を機会にして、思い切ってこれらの諸君の徴収手当というようなものもやるようにするのかどうか。
  115. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 これは現在の被用者保険のものについても、私ども非常に苦しんでいる問題の一つでございまして、年来関係方面といろいろ折衝いたしております。いまだ目ぼしい成果を得ないわけでございますが、折衝において一つどもが悩んでおります問題は、社会保険出張所における保険料徴収事務に当っております人々は、その期間について税と同じだということで手当をつけるところまでは比較的強く主張ができるのでありますが、同時に、あまりに長く一人の人間にその仕事をやらせることは避けねばならぬというような事情があって、ある程度仕事をかえるわけでございます。そうすると、そことの関係でまたがくんと落ちるようになる。ところが実際上、所内の事情としては、保険料の徴収というような仕事は、名目上担当しております者のほかに、特定の時期等においては、所内全員が出かけていって徴収をするというようなことをやるわけでございますので、それらの点もうまく解決のいくようにいたしたい。これは悩みを述べたわけでございますが、そういうような事情がありますので、保険料の徴収に当っている者だけでなくて、それ以外のそういう仕事を応援するような者についても、あわせて考えていきたいということで折衝を続けているというような事情でございます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 希望的なことでは私は困ると思うんです。今後社会保険料を徴収するということと、あるいは国民年金保険料を徴収することと税金を取り立てるということとはちっとも変らないと思う。なぜならば、全部国税徴収法で処分してしまうわけでしょう。そうしますと、本質的なものは変らない。ところが、これらの社会保険料の徴収に当る諸君の身分というものを考えてみると、給料は一般職とちっとも変らない。そこには手当が支給されていない。しかも給料表というものは、一般の職員と税を徴収する者とは差がある。そしてしかも徴収手当を片一方は支給されている。わが方にはそれがない。こういう不均衡なことでは、ほんとにこの社会保障の一番下働きのところで差別待遇されるということになれば、これは集まりませんよ。国が年々自然増収千億をこえる税収があるというのは、やはりそこに税務職員、税務官吏に何か待遇があるというところにもよると思うんです。それは金ばかりではなかなか人は動きません。しかし、やはり物質的な裏づけと精神的な士気の高揚というものが相待って私はそういうことができると思います。この点は一体保険局長の方はどうお考えになっておるのかということです。最近はあなたの方の健康保険というものは黒字を謳歌しておる。三十二年度の決算では七十九億円の黒字、百三十三億の積立金ができるという。こういうときにこそ私はこういうものをやらなければならぬと思うのだが、あなたの方は一体どう考えているか。これは車の両輪で、両方とも関係がある。
  117. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私まだ就任して年月が浅うございますので、詳しいことはお答えできないと思いますが、お話のように、社会保険出張所で第一線に働いている人たちは、もともとから申しますれば、非常にオーバー・ソークになっているような働き方でございます。人の増員ということもなかなか思うようにいかないような現状であります。そういう場合におきまして、私どもといたしては、まずそういう方面についての努力を、従来なされてきておったところでありますけれども、さらにこれは今後とも大きく考えていかなければならない、あるいは制度の運営というようなことにまでも思いをいたしていかなければならぬことも、場合によってはあるかと思うのであります。そういう点について考えていきますと同時に、ただいまお話のありましたような他の同じような職種の職員との関係でございますが、これは主として財政当局との話し合いのほかに、やはり人事院というような人事管理当局との話し合いというものがあろうかと思うのでありまして、そういう面につきましては御趣旨の点などをよく承わりまして、まだ私も勉強の不十分な点もございますので、そういう点も実情をよく調べて、できるだけ、努力いたしたいと思います。
  118. 滝井義高

    滝井委員 まだ今からいろいろ質問しますけれども、この職員の問題については、次会までに大臣一つ御研究を願いたいと思うのです。  そこでこの厚生省予算書に、附則八条の職員というのがある。そして部長というのがあるのです。本省は局長、課長、参事官、課長補佐、係長、一般職員で、これはわかります。附則八条というのは何ですか。
  119. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 附則八条というのは、附則八条に基く政令に列挙されておりますような国の事務を都道府県の知事の指揮下にあって処理する国家公務員のにとでございまして、地方事務官とか地方技官とかいっているものがそれでございます。
  120. 滝井義高

    滝井委員 その場合、部長一人というのは、これは何ですか。
  121. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 これは東京都の場合、部を設けまして一部二課にいたしますので、その部の部長でございます。
  122. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、東京都だけは部長を置いて、各道府具には、課長、こういうことになるのですが、東京都だけどうして部長を置かなければならないのか。
  123. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 これは滝井先生御承知のように、地方自治法にきめられておりまする内部組織が、各府県は部を単位にしてきめられております。東京都は局を単位にしております。そういう事情からいたしまして、いわば一段ずつずれておる格好になりますので、府県に課を置く場合には東京都には部を置く、こういうつり合いになるわけでございます。
  124. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この附則八条の千七百四十名の部長以下の職員というものは、これは地方自治法附則八条の「当分の間、なお、これを官吏とする。」こういう職員に当るわけですね。そうすると、当分の間官吏であって、本来のいわゆる国家公務員とはならないわけなんです。問題はここにあるのです。国がほんとうに今後社会保障行政というものを推進して、国家が責任を持って、名実ともに社会保障の精神のあふれるものにするためには、当分の間官吏とするというような不安定なものではいかぬと思うのです。やられるならば、国のものにしてしまうか、あるいは徹して地方自治体の職員にしてしまうか、そしてその金を国が出すとか、何かそういうふうにしないと、中途半端なものでは身分が安定しない。簡単にいうと、出世の道も閉ざされるのです。立身出世主義はよくないかもしれないけれども、まあ役人になったら課長になり、部長になり、局長になり、次官になりたいというのが、やはりみんなの望みだろうと思うんですよ。そうすると、当分の間官吏だということではやはり困ると思うのです。この点は、一体なぜ新しいこういう制度ができるのに、そういうことにしなければならぬのかということなんです。現在すでに現実にある社会保険出張所なり、あるいは県の保険課におる諸君が、これがあるために不満だということは、小山さんなり局長は知っておるはずなんです。ところが新しい紙の上に今から描こうとするその職員さえも、今までにも不満のある形に持っていくということは、私はよくないと思うのです。許すならば国の官吏にするか、あるいは都道府県の職員にしたらいいと思うのです。なぜそこを徹しなかったかということです。
  125. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 結論はもう先生おっしゃる通りでございまして、非常に中途半端な姿に置かれているということが問題でありますことは、私どもも痛感しておるところでございます。ただ現在の段階におきましては、市町村の姿はどういう角度から議論されても非常用にはっきりきまっておりますけれども、府県をどういうふうにするかということについてはいろいろ議論がございまして、府県をどういうふうな姿にするかということが最終的にきまります場合においては、どうしても地方事務官なり地方技官の制度をどちらかにケリをつけなくちゃならぬ。その場合におそらく方向としては、やはり国の責任に基く制度であるという建前を貫く意味合いにおきまして、ほかの国の公務員と同様にすべきものであろう、かように考えておりますけれども、現在の段階におきましては、先ほど来申し上げておりまするように、被用者保険仕事に従事しておる人々が、地方事務官になり地方技官になっておる、これと実施上関係の深い仕事でもありまするので、一つ現在の段階では両者そのように扱っていこう、こういうことになったのでございます。
  126. 滝井義高

    滝井委員 今小山さんが言った通り大臣、これはきわめて中途半端なものになっておるのですよ。国家公務員では俸給表を一等級から八等級まで分け、一般職と特別職とに分けておるわけなんです。ところが今言ったように、新しく制度を作るのに、そこにわざわざ昔ながらの地方事務官、あるいは事務官、そのほかに雇用人というものがあっる。こんなばかなことはないのですよ。二十世紀の後半に、新しい制度を作ろうというのに、昔の封建的な臭気ふんぷんたるものをまた持ってきて、いやがるものを押しつけようというのですよ。こういうニュー・フェースの政策をやるならば、その制度の中に働く人の身分的な規定も、国家公務員と同じよらな形にするか、地方公務員と同じような形にしてやることが、私は必要だと思うのです。国家公務員であるがごとくなきがごとき姿ではいかぬと思うのです。そういう形のところで働くと、超過勤務手当ももらえなければ、あるいは女子職員の生理休暇等もなかなかうまくいかないということになっちゃうのです。それは中途半端だからです。まだいろいろこまかいことがたくさんあるのですが、この身分の問題だけは大事ですから言います。今後社会保険出張所をもう百くらいふやす、こういうことなんです。ところが現在職業安定所や社会保険出張所に三千人近くの臨時職員がおるわけです。しかもその臨時職員の中にまた二つの段階がある。社会保険関係でも千三百人おります。千三百人の臨時職員がおるのですよ。それは一つは常勤労務者と呼んでおる。社会保険の方では事務補佐員、職安では専務補助員と呼んでいる。同じ常勤労務者ですけれども、呼び方が違う。もう一つは庁費職員、社会保険では賃金職員、職安では事務補佐負と呼んでおります。こういう二段階に分けて、そして賃金の単価は多分二百四十円か二百六十円です。二カ月ごとに身分が更新されていく、やる仕事はみんな同じ仕事をやっている。保険料の徴収もやっておるのです。ところが定員の関係というので、こういうことがやられている。ところが実際に今から年金をやって、ことし千八百人も人をふやす。そして同じ社会保険出張所に入れていくのですね。ところが一方こういうものを置いておる。そして新しく入ってくる千八百人の人と同じことをやるのです。これらの諸君の賃金というのはなんぼかというと、月額七千円である。本俸、暫定手当、扶養手当と一切の給与をこの七千円でまかなう。こういう社会党の出した最低賃金以前の状態に、日本の国家機構の中の一番末端の大衆に接触をして、貧しい零細な人々社会保障を推進しようとするその第一線の賞史が置かれているということです。これはあなた方が八千円の最低賃金制度賛成するはずなんです。こういう姿なんです。そしてこれらの人に今から援護年金政策をやらせようということなんです。これでは木によって魚を求めるのたぐいでしょう。これでは年金というものに魂が入らない。まずやはり年令制度を取扱わせる第一線のそれらの社会保険出張所なり町村の機関の職員の生活安定という道を政府考えずして、どうしてその手続をする相手方の生活の安定をこの第一線の官吏がやることができますか。法律が通れば、この法律に血を通わせてだれが運営をするかというと、第一線のこれらの七千円の給料をもらっておる人が運営するのです。こういう制度をこのまま放置して、その上に年金制度というものを積み上げて、そしてその末端に一千八百人を織り込んだって、年金は生きません。こういう状態が放置されている今、そうしてそれらの職員が税務職員と同じようなことをやっているけれども、税務職員と同じ手当さえもらえぬ。七千円で全部ですよ。こんなばかげたことがありますか。こういう制度をそのまま置いておって、ここでいかに高遠な理想を唱えても、それはだめです。だから私は、年金法をやるならば、現実の第一線で働いておる社会保険出張所のこれらの臨時職員の下三百人の待遇をまず第一に大臣は直せということです。これが直せずして他の者を救えといっても無理です。まず救わなければならぬ者は、あなたの足元の千三百人です。これを一体どうしますか。
  127. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 中身が少し違っておりますから、私から御答弁申し上げます。滝井先生仰せの通り、現在社会保険の業務に従事している者の中に、あるいは常勤労務者なり賃金職員というものが相当数おりまして、十分所を得ていないという点は、実は私どもも同様に悩みとしておる点であります。この点については、御承知の通り、昨年以来計画的に、常勤労務者につきましては逐次これを定員に繰り入れるという措置を進めているのでございます。いずれそう遠くないうちに常勤労務者を定員化するという作業がおそらく完了することであろうと思っております。今回地方に設けます国民年金仕事に従事します者は、すべて定員に基くものでございます。従って常勤労務者等は入れておりません。それでこの人間を充足します場合におきまして、脱在社会保険仕事に従事している者で常勤労務者がありますならば、資格のある限り努めてこれは取り入れていきたい、こういうことにいたしておるのでございます。それから賃金職員の問題については、この問題はやや別でございまして、これはほんとうの臨時の人々でございます。こういう意味合いにおける賃金職員は、どういう状態のもとにおいてもあり得る。ただ、賃金職員であってはならない者を賃金職員という形で抱え込むというようなことがありますと、これはおっしゃるような問題を残しますので、そのあたりの点は将来とも十分留意をいたしまして、恒久的な形の貧金職員は入れない、かようにいたしておるわけでございます。なお、内部事務のある程度のものを常勤労務者なりあるいは賃金職員にさせておりますことは仰せの通りでございますが、保険料の徴収とかあるいは給付の決定というような責任を伴います仕事は、一切させておりません。全く補助的な責任を伴わない仕事だけを手伝わせるという使い方をしておるのでございます。
  128. 滝井義高

    滝井委員 賃金職員はあるいは全く臨時的なものかもしれません。しかし私の調べてみたところでは、賃金職員といえどもやっている仕事は大体同じです。特に常勤労務者。常勤的な職員の力はもう一般職員と何ら変らない。保険料の徴収実務、これはある程度やらしていないようである。しかしそのほかの給与決定業務、運用決定業務、徴収簿の計算及び記入業務というものは全部やっている。しかもあなたはだんだん計画的にやっておると言うが、どういう計面で千三百人を何年までに完了しますか、これはほんとうはあなたの所管でなくなっておる。保険局長の所管になっているが、千三百人は一体何年間計画でやってしまうのですか。三十三年は大体全般的に見て二七%くらい定員化したのです。ところが三十四年度は一人の定員化の予算も計上していない。だからあなたは計画すると言うけれども、ことしは予算を計上していないから、計画ができないはずです。そこで年金へ千八百人をやって同じところで働かせるのですよ。一体どうしてこういうことになるかというと、結局社会保険出張所のいわゆる臨時職員の諸君仕事が多くて——人事院が三十年の八月二十三日付で人事院規則を制定しているので、試験に合格した者でなければだめなんです。ところが社会保険出張所というのは、今まで赤字でもう朝から晩まで牛か馬のように職員を使ったんです。その結果、赤字だ赤字だと言われながらも、実際は赤字が出ずに、三十年に四億の黒字が出、三十一年には四十八億の黒字が出、三十二年には七十九億の黒字がでるというように黒字が出たのは、保険料の徴収が上ったからなんです。もちろんこれは日本の経済というものがずっとよくなっということも意味します。神武以来の好景気になったということも意味しますが、しかしこれはやはりある程度涙ぐましい職員の働きというものによって、それは多くはなかったかもしれぬが、そうなったと思うのです。そうすると、それらの職員は朝から晩まで事務に携わって、試験を受けるための勉強をするひまがない。仕事はさしておる。三十年の九月一日以前の者ならば試験がなくても身分を切りかえて本職にしてやろう、しかしそうでない者は試験を受けずにはだめだとしてしまった。そうするとそこに不満が出る。同じ仕事をやっておって、一ぺんの試験を受けなかったらだめだというのです。それは高級官僚の試験がありまして、みな不満だった。マルカケをやらせられて、局長でも落ちるようなものが出てきた。しかし少くともこれに社会保険仕事をやらせようと見込んで入れたからには、これはもうある程度あなた方が責任を持って入れたんですから、長く八年も十年も働けば、これはもうみな本雇いにしてやらなければいかぬというのが人情なんです。それを今度人事院の試験を通らなければだめだ、仕事は一ぱいしなければいかぬ、これでは、今の役所の機構の中で勉強までして試験がどんどん通っていくというのは、よほどの人以外にはない。だからそういう点にこれは一つの欠陥がある。それらの臨時職員は三年も四年も勤めているのがある。はなはだしいのは臨時の常勤職員として十五年以上も勤めているというのが運輸省におる。全国では十万もおります。社会保険も大事だが、今度年金もやはりへますると同じことが起ってくるのですよ。小山さんの言うように、ことしは千八百人だが、来年、再来年になるとずっとたくさん入れる。そうしてそれが今の倍の六千、八千とふえてくるということになると、やはりとるときにある程度きちっととっておいて、それから先は将来めんどうを見てやるということにしないと、これを七千円でほうり出すというのではどうにもならぬ。臨時職員の給与は七千円です。しかも業務の内容は一般と同じだ。徴税吏員と同じような仕事をしておってもだめだ。そうして三十三年度は二割七分の定員化を行うと言ったが、今年は一人の定員化も行われないでは、社会保険の士気が上らぬ。士気が上っていないところに新しい政策の集金を持っていくんです。そうして今度無拠出の調査なんかやるということになったら、ここで言ったように、その仕事の飛ばっちりはどこにいくかというと、会社で社長から部長が怒られると、部長が今度課長を怒る、課長は課員を怒り、課員はうちへ帰って奥さんを怒る、奥さんは女中を怒る、女中はネコを怒る、ネコは怒るところがないから障子を破ることになる。その飛ばっちりはどこへ行くかというと、必ず援護年金を受ける貧しい大衆に、第一線の不服というものが行くんです。だから血の通った政治というものは、われわれがここで理想論を述べることでなくして、一番下積みの大衆に接着する役所の機構と、そこに働いている人間の気持というものが、一体どこにあるかということをくみ取るのが政治だと思う。それが今の社会保険ではくみ取られていない。だからことしは定員化の予算もない。これで今から事務機構を動かそうと思っても、これは薄氷を踏む思いですよ。私はあえてきょうは逆に言ったんです。広遠な年金の理想を説くよりも、一番末端から上に積み上げていこうという行き方をとったわけです。坂田さんおわかりになったと思いますが、まだ十万人もおるんですけれども、あなたの所管のもとでは千三百人おる。労働省にもまだおります。そしてことしは定員化も行われていない。こういうことなんです。今後この上に国民年金制度を積み重ねていくわけですが、社会保険出張所というものはどういうことをやるかというと、こういうことをやるんです。第一には、適用関係事務のうち国民年金番号管理及び国民年金手帳作成、徴収開始事務のうち保険料徴収停止の最終的決定及び保険料強制徴収の最終的処理、経過的援護年金の裁定事務、市町村の指導監督、いわばこの年金業務の一番大事なところをやるんですよ。保険料の停止をこの人にやってよろしいというようなこういう決定権を持つところなんです。それをやる人たちが七千円の給料なんですよ。もらう額は社会党の一カ月の年金より少いでしょう。これでは血が通うわけはないと思う。一体こういうものをあなたはどうお考えになって、どうこれを打開していかれるのか、これについて一つ大臣のお説を拝聴しておきたい。
  129. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 簡単に二つだけ補足させていただきたいと思います。明年度行います援護年金の実施につきましては、都道府県本庁と市町村というルートで行います。従って出張所は関係ありません。  それから第二に、先生が仰せになった問題は、実は私ども非常に悩んでいる問題でございまして、現在常勤労務者である人々について、これを定員の中に繰り入れていく場合、三十年の八月一ぱいまで引き続き勤めている者は、定員の中にかなり楽に繰り入れていける。ところがそれ以後については試験を受けて合格しなければならぬ、こういうことになっております。しかも現在行われております試験なるものは、ある一定の年令制限を設けておりまして、ある種の年令を越えますと、初級試験であろうと中級試験であろうと上級試験であろうと、すべて受けることができないというようなことになっているわけでございます。従って私どもは情実採用をおそれるという現在の人事行政の建前は十分わかりますし、これは尊重して参るべきだと考えておりますけれども、何か現在の常勤労務者を定員に繰り入れていくについては、もう少し実情に即した扱いがいたしたいということで、人事院出局と近く折衝いたしたい、かように考えているところでございます。
  130. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま小山審議官から申し述べましたように、われわれといたしましても、ただいま御指摘がありましたような千三百人の人たちに対しまして、その資格のある方につきましては、今度千八百人の定員があるわけでございまして、これに対しまして相当程度これを繰り入れていくことを考えておるわけでございます。  さらに常勤労務者の問題は、ひとりわが省の問題だけでなく、農林省、建設省等にも問題がございますし、しかも聞くところによりますと、さきの国会におきましても、この定員化のことが指摘され、そうしてまた政府としては何とかこれをやるというようなことも申しておったと聞いておるわけでございますが、そこでわれわれ閣僚の中におきましても、この問題に対しまして大いに折衝をいたしたわけでございますが、少くとも山口長官のお話によれば、三十五年度内にはこの定員化を行いたい、こういうようなことを申しておりましたことを申し添えておきたいと思います。
  131. 滝井義高

    滝井委員 今小山さんから御説明がありました通り、初級なり中級の試験を受けるのに、すでに年令制限もあるという大きな隘路があるわけです。ところがこれを、年令制限があるというので、試験を受けずに永久下積みということになると、そこで働く気がしないということになるわけでありますから、一つこの際坂田さんの政治力を発揮して人事院総裁とも十分に折衝の上、国民年金制度の発足に当たってまず第一線の職員に不満のないような姿を作ってもらう、これを一つお願いいたしておきます。  次は市町村の関係です。一億五千五百万円、被保険者一人当り五十円の金をやる、一市町村当り平均五万円の金を出して、いよいよ末端の市町村というものが住民に対する窓口の事務をやることになるわけであります。都道府県に属する以外の適用関係者のじ務、それから徴収関係事務、これも都道府県関係に属するものを除きますが、そういう事務をやるわけです。一体これはどこでやることになるのですか。市町村でやるとすれば福祉事務所というわけにはいかないでしょうから、市町村のどういう部局でやることになるのですか。新しく市町村に国民年金課というものをあなた方は作らせてやることになるのか。それとも、現在の国民健康保険というものが九十五円の事務費をもらってやっておる、従って大体これを基礎にして五十円というものを組んだのだから、国民健康保険課にくっつけてやることになるのか。そこらの市町村に対するあなた方の行政指導を一体今後どういう方針でおやりになるのか。これは一番大事なところです。これはおわかりになっておると思います
  132. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 先生が例におあげになった国民健康保険をやるところで行うか、あるいは生活保護なり、あるいは児童福祉という仕事をやっておるところで行うかという点まで指定することは考えておりませんが、少くとも大きく見まして、税を取り扱う総務部系統ではなくて、民生部系統、つまり民生関係の仕事を扱っておる系統のところで処理してもらう、かように考えております。
  133. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、健康保険課、社会課のようなところになるわけです。そうしますと、国民健康保険をやるだけでも、大体あなた方の方では被保険者何人について吏員が何人という基準をお出しになっておるでしょう。それはどうしてかというと、被保険者一人当り事務費を何ぼやる、九十五円あげます、それから被保険者一人当りの医療費はおよそどのくらいのものが計算の基礎になるということは指導されておるわけです。従って当然国民年金においても、民生部関係の部課でこれをやるとすれば、一体それらの部課にはどの程度の職員が必要かということの示唆はやはりある程度与える方が親切だと思います。大体被保険者一人当りにどの程度の事務量が当るかということは、あなた方の長い経験とその勘に基いたものを指示してやることの方が間違いがなくていいと思うのですが、そういう点は何も指示せず、ただ平均五万円ばかりの金をやってよきにあしらえ、こういうことなんですか。
  134. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 どうも先生によきにあしらえと言われてお答え申し上げると、非常にお答えしにくいのでありますけれども拠出制年金については、私ども基準を示して流すようにいたしたい、かように考えておりますけれども、さしあたり明年度行います無拠出のものについては、そこまでは立ち入らないという考えでございます。
  135. 滝井義高

    滝井委員 これから少し具体的なところに入りますから、一応これで中断しておいて次会にいたします。
  136. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 明十一日午前十時より公聴会を開会することとし本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十一分散会      ————◇—————