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1959-03-04 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月四日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       小川 半次君    亀山 孝一君       藏内 修治君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       二階堂 進君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君       中村 英男君    八木 一男君       山口シヅエ君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         労働政務次官  生田 宏一君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         参  考  人         (日本経営者団         体連盟専務理         事)      早川  勝君         参  考  人         (全日本金属鉱         山労働組合連合         会委員長)   原口 幸隆君         参  考  人         (労働問題懇談         会元国際労働条         約関係小委員         長)      前田 多門君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十七日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  岡田春夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 二月二十六日  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一六八号) 三月三日  食肉販売業者環境衛生同業組合連合会設立認  可促進に関する請願臼井莊一君紹介)(第一  八三五号)  同(山口好一紹介)(第一八九四号)  同(小平久雄紹介)(第一九五九号)  同(野澤清人紹介)(第一九六〇号)  同(木村武雄紹介)(第二〇一四号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(大  坪保雄紹介)(第一八三六号)  同(小金義照紹介)(第一八三七号)  同(小坂善太郎紹介)(第一八三八号)  同(高橋禎一紹介)(第一八三九号)  同(赤澤正道紹介)(第一八七二号)  同(前田郁紹介)(第一八七三号)  同(川野芳滿紹介)(第一八七四号)  同(福家俊一紹介)(第一八七五号)  同(内海清紹介)(第一八七六号)  同(井伊誠一紹介)(第一九四九号)  同(石田宥全君紹介)(第一九五〇号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一九五一号)  同(島上善五郎紹介)(第一九五二号)  同(永山忠則紹介)(第一九五三号)  同(前田郁紹介)(第一九五四号)  同(吉川兼光紹介)(第一九五五号)  同(赤澤正道紹介)(第二〇〇二号)  同(新井京太紹介)(第二〇〇三号)  同(岩本信行紹介)(第二〇〇四号)  同(臼井莊一君紹介)(第二〇〇五号)  同(金子岩三紹介)(第二〇〇六号)  同(瀬戸山三男紹介)(第二〇〇七号)  同(内藤隆紹介)(第二〇〇八号)  同(中澤茂一紹介)(第二〇〇九号)  同(野田武夫紹介)(第二〇一〇号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第二〇一一号)  同(飯塚定輔紹介)(第二〇三五号)  同(正力松太郎紹介)(第二〇三六号)  同(清瀬一郎紹介)(第二〇三七号)  同(中馬辰猪紹介)(第二〇三八号)  同(中井一夫紹介)(第二〇三九号)  同(中川俊思君紹介)(第二〇四〇号)  同(柳谷清三郎紹介)(第二〇四一号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(亀  山孝一紹介)(第一八四〇号)  同(小金義照紹介)(第一八四一号)  同(橋本龍伍紹介)(第一八四二号)  同(竹内俊吉紹介)(第一八七七号)  同(津島文治紹介)(第一八七八号)  同外一件(福井順一紹介)(第一八七九号)  同(坊秀男紹介)(第一八八〇号)  同(粟山博紹介)(第一八八一号)  同(山下春江紹介)(第一八八二号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第一八八三号)  同(關谷勝利紹介)(第一九四四号)  同(園田直紹介)(第一九四五号)  同(高橋清一郎紹介)(第一九四六号)  同(増田甲子七君紹介)(第一九四七号)  同(渡邊良夫紹介)(第一九四八号)  同(櫻内義雄紹介)(第二〇一二号)  同(中馬辰猪紹介)(第二〇四八号)  同(南好雄紹介)(第二〇四九号)  看護婦、準看護婦等職域確保に関する請願(  菅野和太郎紹介)(第一八四三号)  同(藤枝泉介紹介)(第一八四四号)  同(安倍晋太郎紹介)(第一〇三四号)  職業安定法による紹介手数料改正等に関する請  願(藤枝泉介紹介)(第一八四五号)  同(菅野和太郎紹介)(第一八九三号)  はり、きゆう及びマッ号ージ保険取扱いに関  する請願平井義一紹介)(第一八四六号)  国立箱根療養所戦傷者入所料国庫負担に関す  る請願今井耕紹介)(第一八八四号)  同(小川半次紹介)(第一八八五号)  同(大久保武雄紹介)(第一八八六号)  同(竹内俊吉紹介)(第一八八七号)  同(坊秀男紹介)(第一八八八号)  同(山下春江紹介)(第一八八九号)  同(大橋武夫紹介)(第一九三三号)  同(亀山孝一紹介)(第一九三四号)  同(永山忠則紹介)(第一九三五号)  同(長谷川四郎紹介)(第一九三六号)  同(藤枝泉介紹介)(第一九三七号)  同(亘四郎紹介)(第一九三八号)  同(平野三郎紹介)(第二〇五〇号)  国立伊東別府保養所重度戦傷病者看護料  徴収反対に関する請願今井耕紹介)(第一  八九〇号)  同(大久保武雄紹介)(第一八九一号)  同(竹内俊吉紹介)(第一八九二号)  同(淺香忠雄紹介)(第一九三九号)  同(亀山孝一紹介)(第一九四〇号)  同(始関伊平紹介)(第一九四一号)  同(福井順一紹介)(第一九四二号)  同(三田村武夫紹介)(第一九四三号)  同(櫻内義雄紹介)(第二〇一三号)  原爆被害者救援に関する請願茜ケ久保重光君  紹介)(第一九五六号)  消費生活協同組合法の一部改正に関する請願(  栗原俊夫紹介)(第一九五七号)  脳卒中患者療養所設立に関する請願櫻井奎夫  君紹介)(第一九五八号)  失業対策事業就労日数増加等に関する請願(  本島百合子紹介)(第一  九六一号)  日雇労働者健康保険法等の一部改正に関する請  願(本島百合子紹介)(第一九六二号)  国立らい療養所入所患者の無きよ出障害年金支  給に関する請願和田博雄紹介)(第一九六  三号)  酒癖矯正院設立等に関する請願清瀬一郎君紹  介)(第二〇二九号)  奄美大島戦災家財国家補償に関する請願(保  岡武久紹介)(第二〇三二号)  保健所の強化に関する請願宇田國榮紹介)  (第二〇四二号)  同外一件)小島徹三紹介)(第二〇四三号)  同外二件(高石幸三郎紹介)(第二〇四四  号)  同外一件(八田貞義紹介)(第二〇四五号)  同外一件(南好雄紹介)(第二〇四六号)  同外一件(保岡武久紹介)(第二〇四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業退職金共済法案内閣提出  第一一六号)  国際労働条約第八十七号に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  去る二月三日付託になりました中小企業退職金共済法案議題とし、審査に入ります。まず趣旨説明を聴取いたします。倉石労働大臣。     —————————————
  3. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま議題となりました中小企業退職金共済法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。  中小企業従業員は、大企業と比べて恵まれない条件に置かれていることは御承知の通りであります。これを改善するためには、もとより中小企業経営基盤強化をはかることが必要であるので、政府といたしましては、各般の施策の推進に努めて参ったのでありますが、これらの施策と相まって直接労働政策におきましても、これが改善のための対策を行う必要があることは申すまでもありません。  本国会に提案いたしました最低賃金法案は、その重要なる施策一つでありますが、ここ二、三年来、全国各地商店街等を中心にいわゆる共同退職金積立制度が急速に普及して参りました。申すまでもなく、大企業におきましては、すでに内容の充実した退職金制度が普及しているのに対しまして、中小零細企業等におきましては、制度そのものすらないものがはなはだ多い実情にあります。この共同退職金積立金制度は、個個の企業では実施することの困難な退職金制度を多数の企業が力を合せることによって可能ならしめようとする努力の現われであります。政府といたしますしては、かかる趨勢にかんがみ、より安全確実な退職金共済制度を確立することが従業員福祉の向上と雇用の安定に役立ち、ひいては中小企業振興に資するものであると考え、この法案を提案いたした次第であります。  次に法案内容について概略御説明申し上げます。  この法案は、中小企業従業員福祉の増進と中小企業振興に資するため、中小企業退職金共済制度を創設することとし、これに関し必要な事項を定めるとともに、その運営に当る中小企業退職金共済事業団について、組織財務その他所要の事項を定めたものであります。すなわち、第一に、従業員のために事業団退職金共済契約を締結することのできる事業主範囲を、常時雇用する従業員の数が商業またはサービス業を主たる事業とする事業主については三十人以下、その他の事業主については百人以下のものといたしております。なお、退職金共済契約の締結につきましては、任意といたしております。  第二に、掛金につきましては、事業主負担といたし、その月額は、従業員一人につき二百円以上千円以下とし、その間を百円刻みとして、事務簡素化をはかることといたしております。  第三に、退職金につきましては、給付を確実ならしめるため、直接従業員に対して支給することとし、その額につきましては、掛金納付月数に応じて定めることといたしております。なお、掛金月額の二百円にに対応する部分につきましては、給付につき掛金納付月数が七年以上十年未満の場合は五%、十年以上の場合は一〇%の国庫補助を行うことといたしております。  第四に、この制度実施主体につきましては、退職金長期給付であることにかんがみ、制度永続制積立金の管理の安全性並び労働者に対する確実な給付を保障するため、中小企業退職金共済事業団を設置することとし、その組織財務等について必要な規定を設けることといたしております。なお事業団は、積立金運用によって、保健、保養のための施設その他の福祉施設経営を行うことができることといたしております。  第五に、事業団余裕金運用につきましては、その安全かつ効率的な運用を害しない範囲内で、できるだけ中小企業に還元融資されるよう配慮いたすこととしております。  その他、既存の共同退職金積立事業を、希望により、引き継ぐために必要な規定を設けることといたしております。なお、別途掛金についての全額免税措置退職金等退職所得と見なす等必要な税法上の減免措置が講ぜられることとなっております。  最後に、法案内容につきましては、特に、本件に関する学識経験者十五人を臨時中小企業労働福祉対策委員に委嘱し、その懇談会において慎重に御審議を願い、その御意見を十分尊重して作成いたしましたことをつけ加えて申し上げておきます。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 園田直

    園田委員長 以上で趣旨説明は終りました。  なお本案についての質疑は、後日に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 園田直

    園田委員長 次に、国際労働条約第八十七号に関する問題について調査を進めます。  本問題につきましては、参考人として日本経営者団体連盟専務理事早川勝君、全日本金属鉱山労働組合連合会委員長原口幸隆君、労働問題懇談会国際労働条約関係小委員長前田多門君、以上三君が出席されております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はお忙しい中をおいでいただき、まことにありがとうございました。去る二月十八日労働問題懇談会からILO第八十七号条約批准に関し答申がなされましたのを機会に、政府におきましても、本件につき種々検討が行われておるようであります。本問題につきましては、かねて労使ともに強い関心を示しておりますが、一方、国会におきましても、しばしば質疑が行われて参っております。本委員会におきましても、この機会に、本問題に直接御関係をお持ちになられます各位からの忌憚のない御意見を伺い、調査参考といたしたいと存じます。  なお議事の整理上、一応一人十五分程度に要約してお述べ願い、御意見を開陳された後に委員質疑にもお答え願いたいと存じます。なお議事規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさいます際には、委員長の許可を得ていただくことになっております。また参考人方々は、委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、以上お含み置き願いたいと存じます。また御発言の順序につきましては、勝手ながら委員長におまかせを願いたいと存じます。  なお質疑をされる委員の諸君に申し上げておきますが、参考人はお三名とも非常に御多忙でございますが、特に早川参考人前田参考人は、一方は健康のため、一方は予定の行事のために、正午までに退出したいとの希望でございまするから、そのおつもりで御質疑をお願いいたします。  それでは早川参考人よりお願いをいたします。早川勝君。
  6. 早川勝

    早川参考人 私、早川でございます。使用者立場から私の意見を申し上げたいと存じます。その私の申し上げまする意見は、従前使用者がこの問題についてどんなふうに考えておったかという、従前考えを一応申し上げます。それから現在持っております基本的な態度及びそれに関連する、その内容をなすところの意見を申し上げます。  従前使出者態度といたしましては、実はこの問題は、一口に申し上げますれば、てんで話にならないという考えでございます。その理由は、御案内のように問題になっておりまする国内法、すなわち公労法では別段現在のところ、そう結社の自由ということと矛盾しないのじゃないかと思っておりました。そのわけは、実は御承知のように一般の産業につきましては、結社の自由というものは何ら問題がないわけでございまするが、この公労法において問題になるところ、すなわち公労協関係労働組合、たとえば国鉄労組だとか全逓労組などの規約を見ますると、その第一条にちゃんと、この組合国鉄従業員をもって組織する、あるいはこの組合全逓従業員をもって組織するというふうになっておりまして、ほかの人間は、すなわち国鉄組合については国鉄以外の人が入るというふうになっていない、全逓従業員組合についても全逓以外の人が入るようになっていないというわけでございます。そこで公労法四条三項といいますのは、このようにそのことをきめておるのであります。すなわち職員でなければその組合に入れない、あるいは役員になれないということになっておりまするので、その間矛盾はないと思っておりました。  ところが、五、六年前でございましょうか、公労協組合の中で争議行為がありまして、そのために責任者解雇処分を受けまして、解雇になりました者の地位が問題になったのであります。この解雇になりました者は職員でなくなるわけでありますから、従って役員でも、また組合員でもなくなるという使用者側考え方に対しまして、反対があったわけでございます。そして組合側におきましては、規約を変更するのではなく、規約はやはりそのままにして、取扱いのための確認事項として、そういう不当な処分を受けた役員身分は、決着を見るまでは組合の籍を続けるということにきめたわけです。そこに問題が起りました。そのために四条三項というものがじゃまになってくる。それを廃止せねばならぬということが起ったのだと思います。従って問題は、議争行為公労協組合が行い、そのために解雇された役員身分をめぐって、いわばこれの復職を問題としたために起つた争いでございまして、結社の自由、団結権の擁護という立場から、ずっと平らに問題が起ってきたのでないというふうに思っておりましたので、従って今度の条約の問題からは起っていないのだというふうに考えておりましたもので、実は話にはならぬと思っておったわけであります。  ところが一年半ばかり前に、この問題が労働問題懇談会に正式に諮問がありました。この懇談会によってたびたび研究をいたしました結果、条約の効力や国内法との関係やその他諸般の実際問題が整理検討されました。その結果、使用者としては次に申し上げるような基本態度をきめました。その基本態度は、第一は、このILO条約は原則として批准が望ましいということをきめたのであります。ただ現実の問題として考えてみますと、やはり残念なことには、公労協関係では法律で禁じられておるにもかかわらず、争議行為が行われる傾向にありましたり、また現に行われたりしておるわけでありますが、そういうものがある。そういたしますとここに問題となるのは、この八十七号条約自体においてこういう規定がございます。この条約に定める権利を行使するに当っては、その国の法律を順守しなければならないということを、八条一項にきめておるわけであります。この条約内容として、そういうふうにその国の法律を順守すべきものということをきめておりますのに、その国の法律が守られていない状態では、私どもはこの批准という問題については、そのまま無条件に是認するわけにはいかない。この条約批准するということを、特に労働側が主張されるわけでありますが、その労働側が、批准さるべき対象になるもの、条約の中にあります条項、すなわちその国の法律を順守するということに抵触しているわけでありますから、そこに自己矛盾があるのじゃないかと思うのであります。従って使用者といたしましては、直ちに無条件でこれを批准することは是認できない、こういう立場をとっておるわけであります。  そこで、それではどういう内容になるかということでありますが、それは実情の問題と法制の問題とに分れると思います。  実情の問題としては、今申し上げましたように、どうしてもやはり平らにこの条約批准して、世界水準で、結社の自由ということも何らどこにもわだかまりのないようにしていくためには、少くとも違法な状態が起らないように、現在違法な状態があるようでございますが、それをないようにして、また将来においても、そういう違法な状態がない見通しが立つようにしていく必要があり、それが前提であろうと考えます。  それから法制的な問題でありますが、この考え方は、実はこの四条三項というのは、御存じでございましょうが公労協労使関係については現在別の意味を持ってきておるわけであります。その別の意味と申しますのは、その職員でなければ組合員になれない、組合役員にもなれないというそれだけの組織上の規定が、いわば不当な争議行為を抑えるための唯一対抗手段になっておるわけであります。と申しますのは、不当な争議行為のために役員解雇され、四条三項があるから解雇された役員が入っておる相手とは団交がやれないというようなわけで、使用者としては押されていながら、この条項によって団交を拒否することによって、やっと違法争議をそこで食いとめようとするかんぬきになっておるというのが実情であろうと存じます。従ってこの実情におきまして、この状態唯一担保としておりますところの規定四条三項をもしはずすといたしますならば、それにかわるべき担保規定が要る、こういう立場をとるわけであります。その担保されております状態といいますのは、現在でよいというわけには参りませんけれども、まずまず現在のところこれで労使関係が曲りなりにも一応の均衡がとれておるかと存じますが、その均衡がとれておりますことをくずさないという立場で、かわるべき担保が要るというふうに思うわけであります。この場合、特にきついことをきめようという考えもございませんし、また特に後退するという考えでもございません。この条約批准するということはそのことでございますから、現在あるがままの状態の中で批准を成立させるという立場をとるわけであります。従ってその具体的な内容は、事務的にいろいろ処置する点もございますけれども、たとえば公労法十七条の後段の規定によりまして、争議行為の共謀、教唆、扇動などは禁止されておるわけでありますが、今度は四条三項をはずせば、よその者が入ってくる関連において、その対象となるものの範囲をその部分だけ広げないと穴があくというふうに考えますので、組合組合員及び役員というふうに範囲を書き直す必要があろうかと思います。  それからもう一つ均衡を保つということを申し上げましたが、今申しましたように、実はこの四条三項が唯一担保規定になっております。その担保規定は、争議行為が行われた場合には、十八条の規定によって、個々の行為者解雇をされることとなるわけでございますが、団体としては別段の制限を受けないわけでございますので、そこに四条三項をはずすかわりに、そういう組合側において違法な争議行為があったという場合には、そういうものを相手には団体交渉はできぬという手も不当なことにならぬという、法制上の保証がほしいというわけでございます。個人々々が争議行為をやってはいかぬということについては十七条、十八条にございますけれども、団体としてはそれを制約する規定がございませんので、現在四条三項で事実上その効果を果しておる。その効果のある四条三項がはずれますので、かわるべきものとしてそういう規定がほしいというわけであります。そしてそれはさきにも申し上げましたが、条約八十七号の八条一項にございますように、この権利の行使に当ってはその国の法律を順守しなければならないとなっておるのでございます。でありますのに、その国の法律を順守せず、争議行為を行なったのでありますから、そういうことをやりました組合は、この条約による権利の保護を受けないわけでございますので、そういう役員を持つ、あるいはそういうものの入ってくる組合は、団体交渉が、よし話がありましても、場合によれば使用者がこれを拒否することにしても、これは正当な事由であるということにしたいわけでございます。  なお、この条約批准せられ、四条三項が廃止せられるといたしますと、組合規約は場合によっては変り得るわけであります。従いまして先ほど来申し上げました公労協関係組合に全然関係のない者も入り得るわけであります。でございますから、従前この仕事として関係のない者が入ってきた場合に、これに対する処置につきましては、現在の公労法では何らないわけでございます。すなわち事業に使用されておりません関係上、解雇をもって云々するわけにもいきません。懲戒にも当りません。従ってこういったことは各事業法においてきちんとするというようなことが出て参ると思います。その事業法におきましても、いろいろな、国鉄事業法、鉄道営業法とか、郵便、逓信とかの各事業法との間にアンバランスがありましたり、特に国鉄の営業法のごときは五十何年も前の法律でございますので、こういう機会にきちんとしていただくことが必要であろう、こういうことを考えて、自分たちの意見としておるわけでございます。  なお、先般労働問題懇談会の総会におきまして意見として答申をされましたその最後の項に、こういうものが取り扱われた機会に、労使団体の自主運営なり、相互不介入の原則の趣旨を徹底させるように、現在あります労使関係法につきましても検討を加えていることについては賛成でございます。そういう立場を現在の使用者としては持っておるわけでございます。  なお、一つつけ加えまするが、これらの意見は先般の労働問題懇談会の総会の席上でも述べられたわけであります。そして懇談会総会としては、かなり包括的にかつ抽象的にこれらの意見の個々については判断を下すことをせずに、しかし包括的に適当な法制上の処置がとられることになるであろうという見解をおとになりまして、そういうふうに答申をなされておりますので、私どもの意見意見として、そういう意見を持っているということを申し添えておきます。  使用者側意見として一括して申し上げます点は、以上の通りでございます。
  7. 園田直

    園田委員長 早川前田参考人が十二時までに退出されたい御希望でありますから、原口参考人の御意見の開陳はあとに回しまして、まず前田参考人にお願いいたします。前田多門君。
  8. 前田多門

    前田参考人 委員長からこの問題についての意見を述べるという御趣旨でございますが、それに先立ちまして一応簡単に経過を申し上げますと、私が本日お呼びをいただきました資格は、労働問題懇談会条約批准についての小委員会委員長としてということでお示しがございました。その小委員会のことから始めましてごく簡単に経過を申し上げまして、それから私の意見を申し上げることにいたしたいと思います。  昨年の二月にこの小委員会が設けられまして、ここにおいでになります早川さんも原口さんもその委員にお加わりになっておられますが、この委員会は、条約批准すべしとか、すべからずというような批准の可否を審査する委員会ではなくて、条約と現行制度との関係、現行制度との間に矛盾があるかないかというような点をしさいに検証せよというように仕事の範囲がきめられておりましたので、その意味におきまして九回会合を打ちまして、熱心に諸君は御研究になりました。その結果小委員会といたしましては、資料もお手元にございますから、一々これを読んだり何かすることを省きたいと存じますが、一口に申しますると、結局条約公労法四条の三項とはどうしても矛盾をする、その他のことをいろいろ書いてございますが、一番主要な点はそれでございます。そうして、その報告を昨年の九月の労働問題懇談会の総会においていたしまして、それに基いていろいろの論議がございましたのですが、ちょうどそのとき私ヨーロッパの方へ旅行いたしましたので、その後の総会の模様は人様から伺って知っておるので、また聞きに属するところもございますが、結局この総会におきまして、私どもの小委員会の中にお加わりになっております東大の教授の石井さんに、この条約批准するという場合においてはどういうような措置が必要であるかということをもう一ぺん研究してもらって報告してもらおうじゃないかということになりまして、そうして石井さんの御報告が本年の一月の十九日の総会でございました。そうしてそれをもとにいたしましていろいろな論議がございました結果、結局先月の二月十八日に答申がございまして、労働問題懇談会として労働大臣に提出いたします答申になったわけでございます。  それで、私の意見を簡単に申し上げますと、私は、答申に書いてありますことと全然意見が一致しておるわけでございます。すなわち、八十七号の条約というものは批准すべきものである、それからそれを批准するためには、公労法四条三項、地公労法の五条三項を廃止しなければならない、この二点に要約されておるわけであります。ただそれに付随いたしまして、こういう意見が答申に盛ってあるのでございますが、これも私は全然同意見でございます。「廃止しなければならない。この廃止にあたっては、関係諸法規等についての必要な措置が考慮されることになるであろうが、」……。先刻早川さんからいろいろお話のございましたように、公労法四条三項、地公労法五条三項の廃止に伴いまして、いろいろ考慮しなければならない法規上の問題があると思うのでございます。この法規上の改廃については、注意すべき点を石井報告には相当羅列しておられるわけでありますが、懇談会の全体の結論といたしましては、一々その諸法規について、これはこう直さなければならぬ、これはこうしなければならぬというようなことはあえてしない。そのことはむしろ今後の問題として当局なりまた国会一つの見識に基いてされるのである。しかし、いずれそういうような法規の調整は必要になってくるだろう。けれども、その調整をする場合においては、要は労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにあるのだ、特に事業の公共性にかんがみて、関係労使国内法規を順守してよき労働慣行の確立に努めることが肝要である、こういう態度、心構え、法規的よりはむしろ倫理的と申しますか、そういうような一つ態度が必要なんであるということで、この答申を結んでおるのでありまして、これは全然私の意見と合致しておるわけでございます。  私考えますのに、八十七号の条約というものは、すみやかに批准する方が日本のためにも非常に利益であると思うのです。昨年私は三度もヨーロッパに参りましたが、そのたびごとに感を深ういたしますのは、日本においては労働団体の自由ということについては相当の程度保障がなされておりまして、よその国に比べて決して遜色がないのでございますが、しかし、これが非常におくれておるような感を外国人が持っておる。それは何であるかというと、この八十七号条約をまだ批准をしておらないということのために、実際以上に何か悪いことが行われておるように外人が考えておる。またそれを口実といたしまして、今の日本の輸出の進出に伴いますところのいろいろの向うの抵抗に対して一つ理由を与えるというようなこともございますから、これは早く批准した方が日本のために利益があるというように常に考えておるものでございます。従って、その批准にじゃまになるものであるならば、四条三項というものを廃止したらよろしいだろう。しかしその廃止する場合において、諸法規の調整をするという事柄については、精神的態度は何であるかというならば、こういう条約批准というような場合を契機といたしまして、何か労使の間に明朗な空気が醸成せられるということが最も望ましいのではないか。こういうことを契機として、一面においては政府もいさぎよく条約批准する、またそれにじゃまな法規は廃止する、この気持を受けて、労働界においても一つ順法的にやる、過去において順法的な態度に違背している点があるとするならば、とにかくこれを是正するというような気持で自主的にやってもらう。そういうような一つの気持が醸成せられてきて、政府の方も明朗な気持でこの条約批准する、その気持を受けて、労働界においてもノーマルな正しい労働慣行を樹立する、順法的にやっていこう、こういうような気持が発露せられるということになりましたならば、ただに一条約批准以上の、労使関係の上におきまして得るところが非常に多いというように考える次第なのでございます。そういう意味におきましてこの答申がせられておるということを私は考えまして、これに全然同感いたしておるような次第でございます。
  9. 園田直

    園田委員長 時間の関係原口参考人にお待ちを願って、まず前田参考人早川参考人に対する質疑を行います。通告がありますので順次これを許しますが、質疑をされる委員の各位も時間の点を考えられて、五名質疑がありますから、よく話し合いの上、能率的に質疑をお願いいたします。赤松勇君。
  10. 赤松勇

    ○赤松委員 二年にわたりましてこの重大な国際条約の問題をいろいろあらゆる角度から審議をしていただきまして、今回答申を出していただきました労働問題懇談会委員の皆さんの御苦労に対しまして心から敬意を表したいと思います。なお本日は非常に御多忙のところ御出席をいただきまして貴重な御意見をば聞かしていただくということは、大へん私ども国会の者にとりましては有益なことでございまして、時間がありませんので簡単に一つお尋ねをしたいと思うのであります。実は早川参考人にも原口参考人にもいろいりお尋ねをしたいと思うのでありますけれども、すでに十一時をはるかに回っておりますので、主として前田参考人に私お伺いしたいと思うのであります。  私がお尋ねしたいと思います点は、これは言うまでもなく委員個人に対する質問ではなくて、今回答申をされましたその答申の精神につきましてお尋ねをしたい、こういうふうに考えております。ただいま前田参考人から非常に明快に御発言がございまして、自分の考えは答申の通りである、八十七号条約はすみやかに批准すべきである、なおこれに関連して公労法改正を行われるべきだ、こういう御意見でございました。非常に簡明率直でけっこうであると思います。なおこの答申にありまするこれに関連する諸法規の措置については、政府及び国会においてしかるべく調整されるだろうが、自分としてはむしろ法律をいじるよりも、これは倫理的な問題であって、労使のよき慣行の成熟を期待する、こういうような御発言であったと思いますが、その通りでございますか。
  11. 前田多門

    前田参考人 これは私の意見を申し上げるのでございますが、私の意見としてはその通りでございます。
  12. 赤松勇

    ○赤松委員 そこで総会における石井委員の御発言を見ますと、十八条を検討することの意味について、次のような見解を述べられておるのであります。「第三の公労法十八条について、公労法十七条に違反する行為をした職員に対しては、公共企業体等が解雇以外の処分をもなし得るようにすることについて検討することということにいたしております。これは12を御覧になりまして、少し含みがあるわけでありまして、「検討すること。」と書きました意味は、現行法のままでもやれないことはないけれども、このようにすることも、一つのこの際考え方ではないかという意味で、「検討すること。」という文字を使ったわけでございます。趣旨といたしましては、十七条違反行為につきましては、現行法ではご存じのように十八条で職員解雇ということを書いておるだけでございます。しかし現実のこれまでの法の運用を見て参りますと、解雇以外に、やはり国有鉄道の日本国有鉄道法その他の公社法等に基く就業規則等によりまして停職等の処分をも、一つの懲戒的処分として扱っておるのであります。その事実を、別に変えようという意見は持っておらないのであります。結局、こういう十七条違反行為も、いろいろの模様があるので、態様があるので、一律に解雇をもって律するのは、むしろ適当ではないので、現に各公社法や国家公務員法で取扱っておられるような停職等の処分をもなし得ることを、公労法自体に明かにする方が、すっきりとするのではないかというだけの意味でありまして、そういう意味で、公労法自体のうちに、解雇以外の処分をなし得るということを書くだけのことでありまして、現在の実情を変更しようという意思はないのであります。そうしますと、先ほど留保いたしましたところの職員以外の者、すなわち、組合の「組合員及び役員」が、十七条で禁止してあるところの共謀、教唆、煽動をなしたときにはどうなるかという問題でありますが、これは何も書いておりませんが、従来でも解釈としては同じではないかと思われることでありまして、いわゆる第三者の債権侵害による不法行為による損得賠償責任が出るだけのことではないかと考えておるだけであります。  そこで、公務員の場合と比較して考えますならば、国家公務員の場合には、何人たるとを問わず広く書き、かつそれを独立犯として、懲役または罰金に処しておるのでありますが、これは公務執行妨害になるという考え方でやっておるわけでありますが、従来、公労法関係においては、当然にこれを公務執行妨害と考えて、罰則を課することに、していないその事実を変更する意思はないということを示しておるものでございます。」こういうふうに申されまして、結局この間、政府の方で閣議でもってこの批准をする場合、公労法改正及びこれに伴うところの関連法規の改正をやらなければならぬという政府の見解と異なった見解をここにいたしておるわけであります。こういう点につきましてはむろんこれは石井委員から総会に報告をされまして、総会で了承を得ておるわけでありますけれども、こういう考え方が今度の答申の精神であるということに解して間違いはないのでございますか、いかがでございます。
  13. 前田多門

    前田参考人 私の記憶が間違っておりませんければ、石井報告を受けましたときの懇談会の総会の模様はこういうわけでございます。石井さんから非常に詳細なまた学者らしい御報告があったわけでございますが、しかしこれを懇談会といたしましては容認して可決するという意志表示は少しもなかったのでございます。この報告につきまして、自然と委員の間からいろいろの御論議はあったようでありますけれども、これを一々承認してその上に立って答申をするという態度ではなくて、これを開いて、聞いた上でもって結局一つ答申を作ろうじゃないかということになったように私は記憶いたしておるのでございます。従って私の理解が間違っていないといたしまするならば、この答申にございます「関係諸法規等についての必要な措置が当然考慮されることになるであろうが」という、その措置が考慮されるという中に、この石井さんの御報告にございまする2、3、4、5というようなものが皆含まれておるというように考えておるわけで、このことを一々こうしなければならぬ、ああしなければならぬということを総会は少しも意思を決定いたしておらない、また、石井さんそれ自身もたしかどこかで発言されておりますが、考慮すべき点、すなわち問題点をここに掲げただけであって、石井さんとしてこれはこうしなければならぬということは少しも意味を含んでいないのだということをおっしゃっておいでになっております。
  14. 赤松勇

    ○赤松委員 先ほど前田参考人から、私どもは条約批准とそれに伴う公労法改正だけでけっこうなんだ、そういう考えであるという御発言がございました。私もやはりそうだと思うのであります。ただこの答申の中で、この廃止に当っては関係諸法規等について必要な措置が当然考慮されなければならぬ、こう言っておるのであります。当然考慮されなければならぬところの必要な措置とは一体何であるかということは、石井さんの総会における報告を見ますると、政府考えておるような郵便事業法とか鉄道事業法とかを変えて、罰則規定強化していくということではなくて、公労法第十八条によって今解雇処分以外にないが、もっとゆるやかなものを置いてもいいのではなかろうか、こういうような御意見だと思うわけです。従ってこの点は、政府はどう考えておるか、まだ質問はしておりませんけれども、あるいはこの間の閣議決定も私どもは新聞報道だけしか見ておりませんから、これはまた労働大臣などの御見解を聞きたいと思っておりますけれども、少くとも閣議決定の新聞報道によりますと、そういうように理解——あるいは誤解かもわかりません。おそらく政府はそんなばかなことを考えていないと思います。誤解ならばけっこうですが、そういうように理解される点がありますので、特に小委員長でありました前田参考人の御意見をば、この際聞いておきたいと思うのであります。重ねて聞いておきますけれども、石井さんが総会においてされましたこの報告、まだあとにもございますが、この点はぜひ聞いておきたいと思うのであります。要するに答申の中の第二項の、関係諸法規等について必要な措置が当然考慮されなければならぬというのは、これは刑罰規定をば強化することを意味していないということだけは事実でございましょうね。
  15. 前田多門

    前田参考人 刑罰規定をどうするかということは、先刻申し上げました通りに、すべてこれは必要なる措置として今後政府国会考えるところにおまかせするよりしようがない。がしかし、それについて一つ注文がある。注文は何だといえば、「要は」伝々ということで、労働問題懇談会として重きをおいておりまするところは、「要は」以下にあるわけでございます。「必要な措置が当然考慮されることになるであろうが」と書いてあります。多分考慮されることになるのだろうが、しかしその場合にはこうしてくれろという、「要は」以下が主眼でございます。
  16. 赤松勇

    ○赤松委員 答申のあとの処理につきましては、御指摘のように国会でもって、私ども自身の手でいろいろまたこの問題は取り扱っていきたい、こう考えております。ただきょう参考人の御出席をお願いいたしましたのは、私ども、この答申の内容が十分理解されておりませんので、その理解を深めるために来ていただいたのでございますから、事後の措置については私どもにまかしていただきます。  ただ答申の精神だけを聞いておきたい、こういうように思います。なお総会の中におきまして、今の問題に関連して、岩井総評事務局長の質問に対して石井さんはこう言っておられます。すなわち岩井事務局長がずっと質問して参りまして、「そこはよくわかりましたが、ただ「不均衡等」という「等」がくっ付いていることによって、ごく常識的にその辺のことを整理しろという程度にとられるか、もっと大上段にかぶっているように、「業務の適正な運営を確保するため」、もっと積極的な処置が必要だということも、「等」ということの使いようによっては、幾らでも生きてくるわけですね。石井先生の理解によれば、それほど積極的な要素でなくて……。」そうすると石井さんは、「私はたとえば争議的な行為を禁止してある。それをやればすぐ刑罰をかけるというような——そういうことは考えておりません。従って、それについては業務の停廃にすぐ罰を科することは、たとえば強制労働にならないかということは、十分そういう論議が出てくるように思われますので、そういうことを考えているのじゃありません。」こういうように明快に総会の中で述べておられるのですけれども、やはりこういう空気が支配的てあったと思うのでございますけれども、その点はいかがでしょう。
  17. 前田多門

    前田参考人 支配的かどうかということは、これはごめいめいの御判断でいろいろ違うと思いますが、そういう問答のありましたことは事実でございます。
  18. 赤松勇

    ○赤松委員 そこで前田参考人としては、どのようにお考えでございましょうか。
  19. 前田多門

    前田参考人 私ははなはだ申しわけがないのですが、研究が十分でございません。しろうとで近ごろこの労働問題に飛び込んできただけで、いろいろの問題はまだ研究中でございます。そういうこまかい問題について、実はまだ定見がございません。
  20. 赤松勇

    ○赤松委員 前田さんはわれわれ以上になかなか政治家でありまして、今の答弁はまさに副総理級ですね。(「総理級だよ。」と呼ぶ者あり)いや、総理といえば岸さんが困るから、総理とは言いません。(笑声)  そこで続いてお尋ねをいたしますけれども、それは決して小さな問題ではないのであります。つまり閣議決定でなくて閣議了承というように新聞に報道されておりますけれども、閣議了承では、公労法事業法等の整備と全逓労使関係の正常化とを批准の前提条件としている、こういうように政府の方は理解しているようであります。このことは非常に重要でありまして、特に全逓労使関係の正常化云々ということは、とりもなおさず条約の精神に反する考え方ではないか、こういうように思うのでありますけれども、こういうことが総会の中あるいは小委員会の中で、議論になったのでございましょうか。全逓労使関係の正常化が批准の前提になるかならないかということは、議論になったのでございましょうか。
  21. 前田多門

    前田参考人 労使関係が安定して、それが非常に正常化されることが必要だということは、おそらくは労働問題懇談会委員の多くの方が、同じように抱いておられる意見ではないかと私は考えております。
  22. 赤松勇

    ○赤松委員 政府の方は、全逓労使関係の正常化を批准の前提条件にする、こういっておるわけでありますけれども、そういうことが総会や小委員会で問題になったのでございましょうか、こうお聞きしているのです。
  23. 前田多門

    前田参考人 先ほど私が申したのと同じことでございます。この答申の中には、全逓というような字は使っておりません。しかしこの答申を作るについて、これか御賛成になった方々のお心の中には、それは前提条件としなければならぬとお考えになって御賛成になった方もございましょうし、また前提条件というように固く考えなくてもいいとして御賛成になった方もあろうと思います。要するに、全逓という字はこの答申の中にはございません。
  24. 赤松勇

    ○赤松委員 いろいろ意見があることはよくわかります。これはいろいろな階層から委員が出ておられるのでございますから、いろいろな意見があることは私ども十分承知しております。承知しておりますけれども、少くとも総会は全体の最大公約数でまとめた意見、その答申というものは総会の意見であるべきなんですね。そこで私が先ほどから何度もお尋ねしているように、関係諸法規の整備をしなければならぬその内容については、前田参考人が明確にお答えになりましたように、自分の考えとしては批准をする、批准をするために公労法改正をやる、そしてあとは何も法律をいじめるじゃなくて、道義上の問題、倫理的な問題としてよき労使の慣行の成熟を期待するのだ、こういうお話でございます。重ねてお伺いしますが、それが今度の答申の精神でございますね。
  25. 前田多門

    前田参考人 これは先にお断わりいたしております通りに、私の考えであります。私としてはそういうような意味においてこれに賛成いたしたわけでございます。
  26. 赤松勇

    ○赤松委員 いろいろ質問したいのでございますけれども、これはあとで理事会で御相談願えばけっこうなんですが、前田委員の御理解あるいは考え方というものは十分わかりまして、私ども非常に感謝いたしております。できればこの次には懇談会の会長に来ていただきまして、懇談会を代表する会長としていろいろ御意見をお伺いしたいと思います。  私の前田さんに対するお尋ねはこれでけっこうです。またあらためまして懇談会の代表に質問したい、こういうように思います。他の方はよろしいです。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず第一に前田さんにお尋ねしたいことは、この答申と石井報告あるいは条約委員会の報告というのは、答申の前提であるのかどうか、この点伺いたいと思います。先ほど前田さんのお話によりますと、承認をして可決をするというものではなかった、たとえば石井報告につきましても、いろいろ議論はありました、しかし委員の方は一応聞いて、まとまった結論を出す、そして答申を作る、こういう態度であった、こうおっしゃっておるわけです。そういたしますと、石井報告なりあるいは条約委員会報告というものは、私は、必ずしも前提条件ではなかった。そういうものは一応経過的には出てきたけれども、結論としては答申だ、こういうように理解してよろしいでしょうか。
  28. 前田多門

    前田参考人 先刻申し上げましたように、私の記憶でははっきりと石井報告を可決するとか、承認するとかいう措置はとっておりません。それは聞いた上で、また各委員が討論した上で、今度のような答申が出たものと理解いたしております。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、別に答申案の前提条件ではないわけなんですね。一応経過的には石井報告なりあるいは条約委員会の報告をなさったけれども、それを一応委員方々は聞いて、そして答申案を作られたんですから、これは前提条件というものではない、こう理解してよろしゅうございますか。
  30. 前田多門

    前田参考人 前提条件という文字の定義いかんにもよると思うのでございますが、それならば石井報告というものはまるでなかったと同じようなものか、聞きっぱなしで、それきりのものであったかというようにお尋ねになりますと、私はそれに対しては返答に困るのでありまして、むろんその石井報告というものは、考慮に対しての非常に有力な資料になっていたことは疑いないと思うのであります。その意味においてはあるいは一つの前提になっておるかと思いますが、法律的な意味においては私は前提条件にはなっておらなかったように理解いたしております。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では経過的にはそういうことは出ておるけれども、答申案の中でこの点が必ずしも石井報告のここに当るんだというような前提ではない、こういうように理解してよろしゅうございますね。
  32. 前田多門

    前田参考人 さようでございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次にお尋ねを申し上げたいのですが、それは前田さん自体も先ほどお話になりましたが、批准をするについて公労法並びに地公労法四条三項並びに五条三項の規定を廃止しなければならぬということが、要約すればその結論である、ただ付随といたしまして倫理的な態度、こういう態度が必要であろう、こういった程度にすぎない、こうおっしゃっておるわけですから、私たちは、批准するということと業務の正常な運営というのは直接関係はないんだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  34. 前田多門

    前田参考人 私はやはり両者については、前提条件などというかた苦しい考えでなくて、同時的に起る一つの好ましき現象、こういうように考えておるのです。これは私見でございますが、一面においては条約批准する、そういう現象が起る、これと同時に、あととか先とかそういうことを離れて、同時に、これを機会として労使間の最も望ましいところの慣行が樹立される、こういう現象が起る、二つの現象がコンカーレント、同時的に起る、こういうところが要点だというように私は理解いたしております。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、望ましい姿で同時的に起るということをわれわれは考えておるのだ、こういうことですから、批准の前提条件ではないわけですね。
  36. 前田多門

    前田参考人 つまり、前提条件という定義いかんによるわけでありますが、厳格に法律的に申しますると、前提条件というわけではないように考えております。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 前田さんにお尋ねいたしますが、公務員法との関係は全然ございませんか。
  38. 前田多門

    前田参考人 公務員法との関係は、私が委員長をいたしておりまする小委員会の報告の中にも出ておりますが、結論的に申しますると、現行の公務員法そのままでも条約批准できる、条約とは衝突しない、こういう見解をとっております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現行法をすなおに読みますと、確かにお説のように条約とは衝突しないとわれわれも考えております。しかし、現実扱われております人事院規則なりその他は、たとえば公労法四条三項に規定しておりますようなことを現実に扱っておる。そうしてそういった職員組合規約のあるところ、すなわち従業員でなくとも組合員になれるという規約のあるところは、職員団体としての登録の拒否をしておる。こういうことが現実に扱われておるわけですね。その扱いはやはりこの八十七号に抵触する、こういうふうに考えられますかどうですか。
  40. 前田多門

    前田参考人 私はしろうとでよく法律関係がわからないのですけれども、その当時小委員会で皆さんが議論していらっしゃるその議論の要点をお取り次ぎいたしますると、公務員という場合においては相当規律のきびしいものであったからして、規定によっては、たといどういうものがあっても——お手元にございます小委員会の報告に、たしかその通り出ておると思いますが、それの(ニ)の具体的な問題点についてというところに、「職員は、組合その他の団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができるものと解せられるので、規定そのものとしては条約との関係において問題はないと考えられる。またこれらの条文が職員以外の者の団体結成及び加入を禁止する意味に取扱われる場合においては、問題となる余地もあるが、行政事務に従事する公務員の地位の特殊性並びに諸外国におけるこれが取扱いの事例に鑑み必ずしも」現在のやり方というものは「条約に抵触するものとは考えられない。」こういう点では、小委員会に関する限りはすべての人の意見が一致いたしたわけでございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公務員法九十八条の二項とかあるいは地方公務員法の法律規定としては、私は条約違反の点はないと思いますけれども、人事院規則あるいは人事院規則による登録拒否という点は、確かに私はその精神から逸脱をしておるのじゃないかというように思うわけです。しかし本日は、答申にはそのことが触れてありませんから、私は問題点だけあげて終りますけれども、そういう点は確かに取扱いとして問題になるのじゃないか、こういうふうに考えます。  そこでもう一つお尋ね申し上げたいのですが、現在全逓で行われております被解雇者を含む役員状態、これを白紙に返さなければいけない、こういうことを言っておるわけでありますが、このことを前提として、すでにILO条約に基く結社の自由委員会あるいは理事会、そういうところで日本政府にその事態において勧告がなされておる、あるいは勧告が決議されておる、こういうことですから、その勧告を順守しないで、それを直さなければ条約批准をしないという態度は、私はILO機関というものを非常に無視した考えじゃないか、こういうように考えるわけで、その点個人の意見でもけっこうですからお聞かせ願いたい。
  42. 前田多門

    前田参考人 私は自由委員会のその勧告の文字というものは詳しく見ておりませんので、この場でもってはっきりお答えすることはできません。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 非常に残念ですけれども……。日本国が八十七号を批准していない状態においてあえて勧告をしておるのですから、その勧告をされたこと自体を問題として、政府が改めないで、むしろそれを逆に利用して、ILO条約批准の前提条件にするというのは、本来間違ったやり方ではないか、こういうように私は考えるわけですが、御答弁がありませんからいたし方がございません。  そこで最後に早川さんにお尋ねいたしたいのですが、経営者としての意見をいろいろおっしゃいました。そうして公企労法の十七条あるいは十八条の改正、たとえばそういった組合員については、団体交渉権拒否も不当ではないのだ、正当な事由になるのだ、こういうことをおっしゃっておるわけです。私はこのこと自体を考えてみると非常にむずかしい法律関係になる、こういうように考えるわけですが、本来争議権を禁止しておるところに非常に複雑な法律関係が出てきておる。あるいは実態においても、順法闘争であるとか職場大会であるとか、いろいろな形の闘争が行われておる。そこで本来率直に考えて、労使関係の安定は争議権を許した方が安定するのじゃないか。そうして公益事業でありますから、一般の公益専業並みに緊急調整を発動してそういう争議の調整をしたらどうか。これを全然禁止しておるところにこういう状態が出てきて、それを何とかして取り締ろうとするといろいろな問題を派生する、その問題を何とか糊塗せんとするめたにさらに法律改正をする、こういうことが事態をますますこんがらかすゆえんではないかと思うのです。いっそ争議行為を正当化して、争議権を与えて、その上に立ってその労使の調整をやる制度を確立して、そうして労使間の安定をはかった方が賢明じゃないかと私は思うのです。このことは石井あるいは吾妻教授を含めた労働学会におきまして、すでに関西におきましても関東におきましても、それぞれたしか一昨年でしたか声明をしたところであると思うのです。私はこの方がむしろ労使関係の安定になると考えるのですが、早川さんはどういうようにお考えですか。ことに早川さんは経営団体方々としては非常に良識ある、非常に進歩的な人であると伺っておるわけでありますから、個人でけっこうですから御意見を伺いたいと思います。
  44. 早川勝

    早川参考人 今お話しのような考え方も、考え方としてはあると存じます。ただ公企体とか現業等の特別の任務と申しますか、特殊性から考えまして、公共に大へん影響がありますので、利用者とかそういう大衆の方に迷惑を及ぼしたくないというために、争議の禁止ができておることと存じますので、それを今取っ払うということについては私としては自信がございません。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 お言葉を返すようですが、これは大衆に影響があるということの理由で争議権を禁止されておるわけではないですね。争議権を禁止されておるのは、いわば政府機関であるからというところに争議権の禁止の理由がある。これは事業自体がそういう大衆性を持っておるということに私は争議権の禁止の意義があるのじゃないと思います。これは公共企体であるから、いわば政府が金を出しておるから、こういうところに問題があると思うのですから、それならばそれで別の法律で、大衆に影響がある場合には別の法律で調整をするということが、むしろ望ましいのではないか。私企業であると公企業であるとの理由で、争議権を禁止するということは本来間違いじゃないか、こういうようにも考えるわけです。さらに政府機関であるというならば、国家公務員にした方が、元に戻した方がすっきりするじゃないか。公企体労働関係法というものを特に作ったゆえんのものは、そういう状態ではないのじゃないか、こういうように考えるのですが、その点一つお聞かせ願いたい。
  46. 早川勝

    早川参考人 私は民間で労働争議に対抗したような任務をかなり長くやっておりましたが、争議権を持っておる労働組合使用者というものが対抗しまして、ぶつかり合って相手の欠点をついて、国民の大ぜいの前でどちらが正しいかということを争うわけでございますが、その両方の主張になっております内容と、それから両方がお互いに、労働者は労務を提供しない、企業家の方はよって起る損失をがまんするということで、お互いの力関係が並行して、主張がどちらが正しいかということによって問題が収拾される、こういうことだろうというふうに経験上存じております。ところが先生がおっしゃいましたように、片方が政府ないし政府機関であるとすれば、政府及び政府機関の方は、経済上の損失のためにしんぼうするというふうなことは起らないだろうと思いますので、そういう民間の仕事との間の力関係の並行ということは、おそらく起り得ないのだろうと思いますので、そういうやり方によるところの労使関係の安定、均衡ということは少し無理でないかと思います。政府機関が争議行為を禁止するということは、そういう必要があって行われることと存じますので、私からちょっとそれ以上のことは申し上げられません。
  47. 園田直

    園田委員長 次に滝井義高君。時間がございませんから要約して御質問願います。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 早川さんにお尋ねをしたいのです。実は早川さんは冒頭に、使用者側としては従前考え方とそれから現在の基本的な考え、こういうことをお述べいただいたわけです。従前考え方としては問題の国内法、特に公労法は現在の結社の自由とは矛盾をしない、いわゆる八十七号とは矛盾をしない、こういうことだった。ところが最近に至りましてILO条約の八十七号の原則はこれを批准すべきである、こういう基本的な態度に変ってこられたわけです。これは結局諸般の情勢を考慮して変えられたんだと思うのですが、その変えられた根本的な理由というのは一体どこにあったのか、これを一つ説明願いたい。
  49. 早川勝

    早川参考人 冒頭に申し上げましたように、一部組合の不当争議による解雇、その解雇された役員の復職運動という立場でこの問題を取り上げられておりましたものですから、それはてんで話にならぬという立場を実はとっておりました。しかし労働問題懇談会で、そういうことでなく、結社の自由、団結権の擁護という平たい堂々たる立場からの理論究明なり、実例の整理が行われまして、そういうことであれば、われわれとしては基本的な態度として批准するということが望ましいということになったわけであります。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 従って今の御答弁から、現在違法状態にあると早川さんたちがお考えになっておる全逓労組の問題などというものは、当然そういう正統的なものの考え方からいえば、これは大きく批准態度に踏み切ったことについては別に問題でなかったわけですね。いわゆる土俵の上で四つに組んだ形でその問題を御討議せられた、こういう百八十度の態度の変更があったのですか、その点どうでしょう。
  51. 早川勝

    早川参考人 さほどの具体的な問題についてまで論議検討したわけではございませんでしたけれども、今度そういうふうに態度をきちんといたしました。しかし使用者というものは実際家でございますから、実際問題ということを考えますと、現在やはり違法なことが行われたり、行われてきたということから考えまして、即時無条件には批准ということについては容認できない、こういう立場をやはりつけ加えておるわけでございます。従って純理論的には、そういう今お話のようなある一部組合の動き、そのことは一応抜きにしまして、純理論的には批准することが望ましい。しかしそれをほんとうに実行するためには、やはりそういう違法状態がないように、あるいは今後もそういうことがないようにという保証は取りつけたい、こういう立場をとっておるわけであります。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ純理論的に議論をしてみますと、早川さんの立場前田先生の立場とは、さいぜん多賀谷委員あるいは赤松委員前田先生との討議の過程を通じてみると、大体ものの考え方の基本と申しますか、それは全く同じだという感じがするのです。そこでこのILOの八条一項について「他の個人又は団体化された集団と同様にその国の法律を尊重しなければならない。」という点を非常に早川さんは強調せられたわけです。ところがその次の二項に、「その国の法律は、この条約規定する保障を害するようなものであってはならず、」こう書いてある。そうしますと、日本における憲法二十八条の労働三権、労働基準権との関係ですね、この八条二項の関係を今度のあなたのおっしゃるように、わずか一、二の組合が何か違法状態があった。そのために八十七号を批准をするという大きな問題に手かせ足かせをはめて、結局、結果は八十七号を批准しなかったと同じ結果が出るということになると、このILO条約八条二項の関係というものをあなた方はどうお考えになるかという点です。
  53. 早川勝

    早川参考人 さきに前田先生と全く一致しているというお話でございましたが、一つ違っておりまするのは、労使関係が安定して、今後違法状態が起らぬということの保証の取りつけについては、それを前提条件としてという点で、先生のお話とは食い違っておるかもしれませんですが、かたく前提条件というふうに私ども使用者としては思っておるわけです。  それから今のILO条約八条の二項でございまするが、御案内のように、この八十七号条約は争議権のことには触れておらないわけでございますので、それ以外のことで、現在あります法制は、別段八十七号八条二項に抵触している部分はないかと存じます、この四条三項をはずしさえいたしますれば。そういうふうに思いますので、八条一項を私どもは大事と思っておりますが、しかし二項によって別段そう差しつかえが起るようにも思っておらぬのでございます。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 それは少し議論になりますから、時間がありませんので先へ進みます。  そうしますと、早川さん方は、このILO八十七号批准に関する答申の中における「諸法親等についての必要な措置」ですね。この「必要な措置」というものは、私たちは公労法四条三項と地公労法五条三項だけをやればいいのだ、こう考えておったのですが、あなた方のこの「必要な措置」というものは、そのほかに、抽象的なものでもかまわぬですが、一体どういうものがお含まれになっておるのですか。
  55. 早川勝

    早川参考人 先ほども申し上げましたが、実態的には労働組合が十七条違反のような争議行為をやらないという状態が私どもは前提条件と思います。それは好きでやっておられるわけじゃないでしょうけれども、ぜひとも十七条違反のような争議行為は、公労協関係組合ではおよしになっていただきたいと思うのであります。そういうための保証をやはり国としてしていただきたいと思います。  それから法制的には先ほど来申し上げましたように三、四の点がございまするが、それとて考え方としては、唯一担保規定であるところの四条三項をはずすのでございますから、それにかわるべきものがほしいというわけで、特にこの際大きくかせごうという気もございません。あたりまえの現在ありまするところの安定した状態、現在ありまするところの労使関係の実態をそのままくずさないで、八十七号問題を解決するというふうにいきたいという考えでございます。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四条三項の廃止というものは並行して、同時にそういう法律上の措置がいわば労使関係均衡のとれるような、現状をくずさぬような措置が批准ということに先行して、四条三項の廃止と同時にとられなければいかぬというのがあなた方の主張なんですか。
  57. 早川勝

    早川参考人 私どもの主張としてはそうでございます。そうして労働問題懇談会の答申が出されましたときにも、少し表現が問題になっておるようでございまするが、当時の議事録がございまするので、それによって十分お確かめ願いましたろうと思います。これを四条三項廃止しっぱなしということを労働者委員が主張されまして、使用者側は前提条件だということを主張いたしまして、結局最後のところでああいう表現でまとまったわけでございますが、そのことにつきましては会長からも補足説明がございまして、これは切り離すという主張もあるが、切り離せない。切り離すような状態に成熟していないということでございました。内容は、一々の条件論争ということに入っていったら切りがないからということでございましたけれども、全部切り離して「要は」というところの基礎において当然必要な措置がとられる。当然ということの中には、法的措置がとられるべきであるということも含まっている、こういう御説明でございました。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 その点はさいぜん前田先生の赤松さんや多賀谷さんに対する御答弁と幾分二ユアンスが違う感じがするのです。その点前田先生、もう一回念のために、同時にかどうか、当然というものの中には今言った法律的な措置が当然同時にとられるという意味も含まれるという、こういう意味の御説明があったのですが、その点はどうでしょうか。
  59. 前田多門

    前田参考人 この点につきましては中山会長が御答弁になるのが最も妥当だと考えるのですが、私だけの考えを申しますると、先刻申し上げました通り、この答申というものは全会一致でもって決議されたわけでございます。経営者側の方も全然無条件四条三項を廃止する、それきりでいいのだという主張になっております。労働組合側の方の方も公益委員と一緒になってこの答申を御賛成になりましてできたわけでございますから、従ってその解釈につきましてはいろいろ違いがあるだろうと思うのであります。これを御賛成になりつつ、厳格に、やはり前提条件でなければならないのだという意味でもって御賛成になった方もあるし、そうでない意味において御賛成になった方もあると思います。全体がどうかとおっしゃられますと私はどうも苦しむわけであります。これ以上は一つ中山会長にお尋ね願いたいと思います。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、これは早川さんと前田さん両方に最後にお尋ねしたいのですが、この答申の中に「業務の正常な運営を確保する」こういうことがあるわけです。公労法の一条にもそういうことがあるのです。公労法の一条にも「公共企業体及び国の経営する企業の正常な運営を最大限に確保し、もって公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。」これはもう公共企業体等労働関係法第一条の目的及び関係者の義務になっておるわけです。そうしますと、この答申のの中に出ておる「業務の正常な運営を確保する」というその基準ですね、これは一体どうお考えになるのですか。「労使関係を安定し、業務の正常な運営を確保することにある」要はここにあるのですね。その扇のかなめになる正常な運営の基準というものを、答申の精神は一体どこに置いておるかということです。これはいろいろあると思うのです。どこに置かれておるのか。これは公労法一条にもすでにそういうことがある。ところがそれを、早川さんはかなめを抜かれたということで、言われるが、かなめを抜かれたかわりにまたこれをここへ持ってきておれば、さいぜん——言われたように、八十七号は批准をしてもらったけれども、あとに手かせ足かせをはめられてしまったら同じことだ、こういうことにもなり得るので、少なくともこれは経営者側も大きく百八十度転換したからには、今までと同じ姿であってはいかぬと思うのです。そうしますと業務の正常な運営を確保する基準といいますか、そういう法的な措置をとらなければならぬという考え方の基準と申しますか、そういうことはどうここは討議をされたのですか。
  61. 早川勝

    早川参考人 私としましては、答申の方にありまする「業務の正常な運営を確保する」ということにつきましては、一言で申せば争議行為をやるな、やらぬようにということのように了解いたします。公社側としましてはロック・アウト、作業所を閉鎖するな、公労協組合側としましては掲げておりますような争議行為はするな、そういうことのないようにするような法上の措置をとる、こういうふうに考えております。
  62. 前田多門

    前田参考人 具体的なことは私にわかりませんけれども、一番最初に私が申したと思いますが、私の考えでありますが、こうなんです。この八十七号条約というものは非常に有名になりまして、少し実際よりも有名になり過ぎたような問題になったので、内外ともこれは人の視聴をそびやかしておる問題であります。この条約批准のときを一つつかまえて、一つのステーツ・マンシップでもって、これを契機として一つ政府経営者側も明瞭な態度をとる、労働組合の方もやはり労使の正常な慣行が今できておるかできていないかということを自問自答するならば、それはほんとうに公平に考えれば、その正常な慣行ができておるとはこれは断言できないと思うのであります。この機会においてやはり正常な慣行を一つ樹立しよう、そのためには一部忍びがたいことも忍ぼう、こういう気持を持たれる、その気持と政府経営者の側の気持とを相映発してここに新しい、これは私の夢みたいなものかもしれませんが、条約批准を機として大体一つ労使の話し合いが、一つ地ならしができるようにしたい、こういう気持でこれに賛成しておるわけでございます。それ以上具体的のことは私は無知でわからないのであります。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 早川さんにもう一つお尋ねしておきたいのは、ILOの百五号ですね、強制労働の廃止に関する条約、日本は批准をしておりませんが、あの精神で、労働規律や、ストに参加する、それに対する制裁としては強制労働は禁止しておるわけですね。今度あなたの方で法律的な必要な措置というものが整備せられることが前提条件だ。鉄道営業法その他は今から五十年前にできたものなんだから、こういうものは郵便法その他と均衡をとらさなければいかぬという御意見があったわけですね。その場合にあなたは、禁錮や罰金と申しますか、こういうものは強制労働を一応常識的に伴っていない、そういうものはやるべぎだ、こういうお考えなんですか。そういうものを四条三項の担保としてかわりにとるべきだと、こういう意味なんですか。
  64. 早川勝

    早川参考人 百五号の条約につきましてはあまりよく知らないのでございますけれども、同盟罷業をやったからといって体刑を加えてはいかぬ、強制労働を加えてはいかぬということの趣旨のようでございます。従っていわゆる正当な職場放棄と申しますか、正当な労務提供拒否は、これはもちろんそんな強制労働の対象とすべきでないというように思います。しかし不当な問題については、これはまた話は別になるかとも思います。それから今の刑務所における何といいますか、懲役というものが果してここにいう強制労働を意味するかどうかということは、実はまだよく研究しておりませんので私よくわからないのでございますが、お尋ねの罰金とか禁錮ということならどうだということでございますけれども、それらも実はちょっとあまり具体的過ぎまして、専門家でございませんのですから、どんなふうにしたらいいかということは、実はただいまは意見を持っておりませんです。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の問題に関連しまして百五号条約ですが、ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。それは使用者団体は百五号条約には賛成しておるわけですね。日本の労働者使用者団体が賛成して、政府は総会から抜けて棄権をした、こういう状態です。政府はこの百五号条約の第一条の(d)項、同盟罷業に参加したことに対する制裁、これを削りたい、こういうわけで日本政府とインドとが一結になって修正案を出して、その修正案が否決をされたという経緯がある。そこで政府は修正案が否決されたものですから、参加されなかった。使用者団体は参加されて賛成をされておる。ですから同盟罷業に参加したことに対する制裁ですから、私はこれはやはり公企体等の場合に争議をやったからといって刑事罰を課す、刑事罰の内容の今のお話がありましたけれども、その前提としての刑事罰を課す、こういうことになりますと、やはりこの条約に違反するのではないか、こういうように考えるわけですが、この点をお聞かせ願いたい。
  66. 早川勝

    早川参考人 正当な労務提供拒否を罰即でもって律するという考えはよくないと思います。正当な争議行為、正当な労務提供拒否というものは、これは罰則の対象ではないと思います。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 正当な争議行為は罰せられませんから、これは問題ないと思いますが、問題は同盟罷業をやったことに対して正当であるという場合と、同盟罷業そのものが不当である、付随事項として暴力事件とかいう場合は別でございますが、争議そのものを不当として罰する、こういうことはやはりこの条約違反ではないか、それがゆえに日本政府は削除するという修正案を出されたのではないか、こういうように考えるのですが、その点どうでしょうか。早川さんのお話は前提が正当であるとおっしゃいますが、正当であれば国は罰しませんから問題はないのですが、そういった場合でない、政府がそれは不当だ、こう考える、しかも争議そのものであって付帯事項ではない、こういう場合、政府の修正案を出された趣旨から考えても、公労法違反を刑事罰をもって罰する、こういう場合にはこの条項に当てはまるのじゃないか、こういうように私は考えるわけです。
  68. 早川勝

    早川参考人 政府のそのことについてのお立場はよく承知しておりません。それから争議行為でも正当な争議行為がある、争議手段にも正当なものと不正当なものがあるかと思います。それで法律に違反するということになれば、それによってまたそれぞれの措置があるかと思います。
  69. 大原亨

    ○大原委員 それでは、今までいろいろと御質問になりましたので、一点だけ御質問いたしますが、早川参考人の方から前提条件の中で、違法な状態が解消するということが前提条件だというお話がありました。それからILO審議をめぐりまして予算委員会等においてもいろいろと議論があったところですが、一つは具体的に全逓の問題であります。この件について私は前田参考人にまず一つだけお聞きしたいと思うのですが、解雇された者と解雇されない者、つまり従業員とそうでない者との間における法律上の差別扱いをすることによってやはりいろいろな労使間の混乱があったので、批准に対する一つの問題が起きてきておると思うのであります。というのは、たとえばこういうことを一つ例をとって前田参考人の御見解をお伺いしたいと思うのですが、全逓解雇された職員、たとえば野上委員長が一度委員長から退いてILO条約批准後にまた再選される、そういうこともあり得るわけであります。これは例の話でありますが、そういう早川参考人が言われた違法な現状が解消されるということが前提条件だという問題を取り上げましたら、そういうふうにやたらに私は混乱をすると思うのです。政府の見解の中にもそういう見解があるわけです。労懇の総会の答申については、ここに書いた以上でも以下でもない、こういう前田参考人のお話でありますし、私どもそう思うわけです。早川参考人の御意見はわかっておりますけれども、早川参考人のいわゆる違法な、たとえば全逓の場合を含んだ状況が解消されなければ、そういう前提条件が満たされなければ批准すべきではない、こういう一つの見解に対しまして前田参考人はどういうお考えを持っておられるか、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  70. 前田多門

    前田参考人 今日においては違法なものも、法が改正せられますならばそのことが適法になることが予見せられるわけであります。けれども、それだからといって違法のままずっとすわり込んでしまって、法律が直ってそれが適法になるまでそのままでおるということは、私どもしろうとの正義感がやっぱり許さない。いわゆる悪法も法なりということを考えると、今日において違法なものはやっぱり違法でないようにこれを改める。しかしながら将来において法律改正の結果、同じ事柄が適法になった場合においては、これは大手を振ってまたその法律によって新たな状態が作り出される、こういうふうに私は考えておるのであります。
  71. 大原亨

    ○大原委員 私は中山会長に聞きましても、やはり総会は総会であると思うし、小委員会は小委員会であると思うのです。あとで原口参考人のお話もあるはずでありますけれども、総会にはいろいろな意見が集まりまして総会の結論になっておると思うのです。その中で前田参考人のお示しにになりました御見解というのは、多賀谷委員も御質問いたしましたが、きわめて明快であって、四条三項等、そういう廃止の問題は法律的にきわめて明快な批准に伴う措置でありますけれども、その他の問題は倫理的な要請である。つまりたびたび先生のお話のように、労働運動というのは自主的なものでありますから……。その問題について法的に規制をすべきだ、こういう早川参考人の御見解がありますけれども、前田委員はその御見解に立っておられない。労働者委員は、あとからはっきりすると思いますけれども、その点については明快な意見を持っておる。それらが合体いたしまして総会の答申になったと思います。批准の問題自体が労働者の正しい権利の要求から起きておるのでありますし、それを抑圧しておる四条三項と五条三項がいろいろな労使間の紛争、安定を妨げておる原因になっておるのでありますから、そういう法律的な措置と、それから倫理的な規定を分離した考え方をもってはっきり踏み切っていかないと労使間の安定はない、これが前田先生の御見解であるというふうに確信をいたしておったのでありますけれども、その点についてちょっと御所信を伺わしていただきたい。
  72. 前田多門

    前田参考人 御質問の趣旨を私は十分そしゃくできなかったかもしれないと思うのでありますが、大体今まで申し述べたことで私の考えておることはおわかりをいただけたんじゃないかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  73. 大原亨

    ○大原委員 それでは最後に一つ、答申の前につけてあります前文があります。二月十八日の前文です。これに付随いたしまして中山会長が労働大臣とお話しになっておることがいろいろあるわけです。これは私時間がないので申し上げませんが、その前文は総会において御審議になったものではないですね。
  74. 前田多門

    前田参考人 ちょっと私記憶が薄れておりますが、前文とおっしゃるのはこれでございますね。
  75. 大原亨

    ○大原委員 この資料の二十一ページです。
  76. 前田多門

    前田参考人 これはやはり会長が読まれております。そうしてみんなが了承したのだと思いますから、前文もやはり含まっておると考えております。
  77. 大原亨

    ○大原委員 これは前文を持っていかれた際におけるいろいろなお話は関係ないと思いますが、そういうふうにお伺いいたしました。私の質問を終ります。
  78. 園田直

    園田委員長 早川前田参考人には、種々参考意見をお述べいただき、本問題の調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼を申し上げます。時間が超過して申しわけありません。ありがとうございました。(拍手)  次に、お待たせいたしましたが、原口参考人より御意見を伺います。原口幸隆君。
  79. 原口幸隆

    原口参考人 原口でございます。お二人の方が話されましたので、簡単に申し上げます。私は労働組合立場、並びにILO理事会の一員の仕事をしておりますので、そういう立場からもあわせて意見を申し上げたいと思います。  この八十七号の条約は、御承知のようにすでに世界の三十五カ国において批准が完了されております。しかも日本は十大工業国、あるいは最近は五大工業国の一つに数えられるというような中で、この問題が発生いたしましたために、先ほど前田参考人が言われたように、必要以上に日本の立場については結社の自由に対する国際的批判というものがきわめて強いという状態の中に置かれておると思います。さらに外国の、特に組合の連中等から言わせれば、一国の中で労働者が不満を持っているときに、それを組織的に言えない、あるいは、組織的に行動できないような状態に置かれて、製品が作られ、それが貿易によって輸入されてくるという場合には、そういうことを大きな問題としてわれわれは受け取る。最低生活の保障がなされず、また労働者が抑圧されて文句の言えない状態の中で、商品が出されているということに対するきわめて常識的な批判というものがあるわけであります。そういう立場からも、私は単に労働組合結社の自由という問題だけではなくて、この問題を考えていただきたいというように思うわけです。  さらに昨年秋の理事会においては、結社の自由の委員会の結論として、日本政府に対するILOとしての注意が勧告されております。その骨子は、組合が自由に代表者を選んで、その組合団体交渉相手として拒否されておるという事実が、結社の自由に反しておるという注意の勧告であります。このことはILOが言ったからすぐどうのこうのというふうな感情をまじえれば、いろいろな受け取り方もございましょうけれども、日本の国際的な立場から言っても、そのことは相当重大に国内の問題とそれを結びつけて受け取っていかなければならないのではないかというように考える次第であります。国内的な問題にいたしましても、日本の労使関係というものは、私の立場においてもきわめて安定をしているというふうには言えません。むしろ非常に悪い方向をたどるのではなかろうか、そうして残念なことには、今の労働対策というものが、法規あるいは権力によって抑えることによって、労使の安定を築き上げていこうというような大きな背景というものがあるように感じます。こういうことではほんとうの労使関係は安定できない。結局法律で押えてみても、労働組合運動の歴史から申し上げましても、労働争議というものがかりに禁止されていても、どうしても抑圧された側の労働者としてはそれに対抗する手段というものをどこかで見出さなければならない。そのことがかえって、じめじめした陰惨な労働争議を呼び、ひいては社会的な不明朗な混乱を起す大きな要因となっている歴史を持っております。従ってそれを直すためにはどうしても労使対等の原則というものをここで確立していく、あるいは労使の相互の不介入という方針を明らかにする、また最近の世の中で、組合運動が獲得いたしました組合運動の政府使用者からの自由という点について、これが確立されない場合には、今申し上げたような非常に陰惨なじめじめした労働争議が必ずどこかで行われざるを得ないということになるだろうと思います。しかも日本はこのILOに復帰する際に、一九五一年ですか、少くともILOの側における労働側グループに対して、正式に復帰した際には、結社の自由の基本的な原則というものを守りますということを明らかにしております。そういう政府態度について、昨年秋のILO理事会においては、日本政府に対して、日本がILOに復帰した際の態度を強く喚起をして、日本が早急にこの問題に対する解決をしてくれるであろうことを確信するという旨の発言も行われておるわけでありまして、非常な大きな期待を持たれているということを申し上げたいと思います。  以上のような背景から、答申案について申し上げるわけですけれども、労働問題懇談会の答申案というものについて、労働側の私といたしましては、大筋については賛成をいたします。ただこの問題で若干心配というか問題点として考えたいのは、第一は公労法改正する、四条三項を削除したあとの穴埋めというか担保というか、保証というものを、現行の公労法がねらっておると同じようにしなければならないのかどうかという点であります。つまり結社の自由の条約批准するに当って、さしあたり四条三項ははずさなければならない。しかし四条三項をはずすことによって生ずるであろう問題点をほかの形によって補っていく、あるいは強化していくというような考え方の上に立つのか、あるいは結社の自由の条約に示されておる精神というものに重点的に立脚してこの条約批准考えていくのかという点の態度で、私は大きな変化がくるのではなかろうかというふうに考えるわけです。それでわれわれとしては、少くとも結社の自由の条約批准するからには、四条三項をはずすことによって、可能であるということが明らかにされた以上、まず批准をすべきである。そのことが条約の精神に合致するのであって、四条三項をはずして、それに大きな担保をほかに求めていくという考え方は、ほんとうの結社の自由の条約批准するということには当らないというふうに考えるわけです。その中で懲戒規定というか刑罰規定をしなければならないというような抽象的な問題も含まれておるのではないかと思われますけれども、この点については、一昨年のILOの総会で、日本政府の代表の方が、非合法の労働争議に従事した者については刑事罰を加えてよろしいんだという除外例を総会の席上出しました。これは他のいかなる人たちからも賛成を得られないで、日本の提案だけで否決をされたわけですけれども、そういう常識というものを私はこの際想起をしたい。たといそれが非合法の労働争議であったとしても、特別に法律を作って刑事罰を加えるというような考え方は、今の世界の労働慣行の中では全く考えられていないということであります。そういうような雰囲気というか、常識というものが、工業国といわれている日本の労使関係の中にも生かされるということが私たちとしては大へん大切なことなるではなかろうかというように思うわけです。  もう一つの問題点は、公共の安寧あるいは正常な業務の運営という点が強くうたわれているように思いますが、この点も、条約の精神というものは結社の自由であって、公共の安寧、正常な業務ということがこの中心ではない。従って、結社の自由の条約批准するに当って、形式的に四条三項をはずすけれども、公共の安寧ということにより重点がかかっていって、そうして正常な業務、公共の安寧という名目によっていろんな保証規定を設けることが正しいんだという考え方は、われわれとしてはとっていないところであります。組合としても正常な業務、公共の安寧ということについてはもちろん真剣に考えていかなければならないところでありまして、そのためにはやはり先ほど申し上げた法律や権力によって押えられて、われわれがそれをはねのけようとしていくことによる争いではなくて、労使の対等の原則に立って、組合の基本権というものを与え、その行使についての制限規定等についてはわれわれも容認するところでありますけれども、組合の良識と社会国民の世論とによってこの問題が保たれていくということでなければ、真の意味労使関係はこないというように考えるわけでありまして、そういう点から、答申案の大筋については支持をいたすわけでございますけれども、二、三の問題点について述べさせていただいたわけであります。  非常に簡単でございますが、以上をもって私の意見といたします。
  80. 園田直

    園田委員長 次に、原口参考人に対する質疑を許します。多賀谷真稔君。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 原口参考人にお尋ねいたします。聞くところによりますと、政府では全逓の幹部を入れかえなければ批准しない、こういうことが伝わっておるわけであります。そういたしますと、結社の自由委員会の決定、さらにその自由委員会において決定されたことを理事会で認めましたこの問題はどうなるのか。すなわち日本政府に対して、「公共企業体若しくは国営事業経営者から解雇された労働組合役員または執行委員は、単にその雇用を失うのみでなく、同時にその労働組合の運営に参加する権利をも失うという事実は、完全な自由の下にその代表者を選出できるという労働者権利、つまり、結社の自由の最も本質的な側面の一つである権利に対する経営者の介入であるという委員会の見解に対し政府の注意を喚起する。」こういう勧告がなされておるわけでありますが、この勧告に違反しはしないか。これは単に日本政府批准をするという問題だけでなくて、批准をする前提に全逓役員の入れかえをしなければならぬということになりますと、二重にその罪を犯すことになりはしないか、こういうように考えるわけです。それについて各国ではどういうように判断されるでしょうか。これは近く理事会に出席される原口さん、よくおわかりになると思うのてすが、その点をお聞かせ願いたい。
  82. 原口幸隆

    原口参考人 まだ批准をしていない八十七号条約についてILO当局としては今申されたような勧告を出しておりますし、今の全逓の問題等については明らかにその趣旨に反するというように思います。私は、政府がほんとうに正式にそういう態度をきめたというふうには信じておりませんが、もし全逓の問題がこれの一つの条件というふうにかりに考えられるとすれば、これはやはりILOの場では全く議論の対象としては考えられないのではなかろうか、むしろそういうことはそういう席上で言えるような筋のものではないというように思います。また八十七号条約の中に国内法を尊重しなければいかぬということが書いてあるということが指摘されておりましたけれども、その前提として、この条約規定する権利を行使するに当っては、国の法律を守れということが明記されておるのでありまして、まだ全逓はこの条約規定する権利を行使するところまでいっていないわけであります。従って、今のような全逓、かつての国鉄、機労というような状態がいけないから、日本政府考え直した方がいいですよという注意なのでありますから、全逓の問題を前提にするということは全く議論としては考えられない、これは政策的な問題に属することだというふうに考えております。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、もう問題外だということになると思うのですが、ことに国際労働条約八十七号の第八条の二項「法律を尊重しなければならない。」しかし「その国の法律は、この条約規定する保障を害するようなものであってはならず、また、これを阻害するような方法で適用してはならない。」こういうことで、四条三項のような法律を順守せよというのではなくて、四条三項のような法律は問題にならない。四条三項をのけると、そののけた場合の状態において法律は尊重されなければならぬ、こういうような意味でありまして、法律を尊重するといっても、その法律というのは四条三項のようなものがくっついた法律ではない、こういうように今お話しになったように受け取ったのですが、それでよろしいでしょうか。
  84. 原口幸隆

    原口参考人 その通りです。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は、聞くところによりますと、労働者グループへ英国労働組合の書記長の方から提案されて、この六月にILO理事会の議長候補としてわが国の川崎公使が立候補する、その立候補については、条約批准をしないような、しかも自由の権利を侵害するような日本国の代表はボイコットしようじゃないか、こういう話があると聞いておるのですが、そういう事実がありますか。
  86. 原口幸隆

    原口参考人 若干違うわけですが、労働者グループの中で労働者グループの議長であり責任者である英国TUCのサー・アルフレッド・ロバートという人が、ILOの場ではグループ会議というものが正式に認められてそれぞれの立場を話し合いながら会議に列席をいたします。そのグループ会議の中で、私の方からは事前には何もその人には言いませんでしたけれども、日本政府結社の自由の問題で国際的に批判されている限りILO理事会の議長としてふさわしくないと判断されるから、議長に推薦する用意がないことを明らかにしたいということを労働側に諮って、労働側の同意を得、その旨をそれぞれのグループに伝えました。そういう経緯があります。
  87. 園田直

    園田委員長 齋藤邦吉君。
  88. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 私は一、二の点につきましてお尋ねをいたしたいと思うのでございますが、その前に一言私、釈明をさしていただきたいと思うことがあるのでございます。先般の本会議でも社会党の方の御発言がありまして、ILOに再加入になりました当時の日本政府の代表は、加入後はILO条約の八十七号を批准するかのごとき約束をしたかのごとき御発言がありました。さらにまた、ただいまは原口参考人からILO理事会の方々ILO再加入の際に、この八十七号を批准するかのごとき話をされたような趣旨の御発言があったわけでございますが、私は実は当時政府代表として、ILO再加入に使いいたしました関係上、その点をまず明確にさしていただきたいと思う次第でございます。その当時ILO再加入の際の話がありましたときのセレクション・コミッティにおいて、各国の労使政府側代表の方々といろいろ質問のやりとりをいたしたのでありますが、その際におきましては、条約批准問題については何一つ質問もありませんでしたし、私もお答えをいたしたことは一つもありませんということをはっきり申し上げておきたいと思います。ただ再加入になりましたときの本会議の席上で、私が感謝の演説をいたしました。その演説の際には、日本は将来国会の承認を得てILOに再加入いたしました暁におきましては、ILOの精神に協力し、ILOの精神に即して、日本政府としては努力していくつもりであるという話は、これは当然いたして参りました。そのあとにこの条約の話のありましたのは、ILO事務法律顧問のゼンクスという人がいますが、このゼンクスとILOの分担金の問題について個人的な話し合いをいたしましたときに、ゼンクスの話のありましたのはこういう点であります。日本は幸いにILOの再加入が許された、従って日本政府としてはできればILO条約の中の最もファンダメンタルな条約批准ということに努力をいたされるならば、日本の国際労働社会における立場は非常に強化せられるであろう、そういうお話がありました。そのときにファンダメンタル・トリーティというものはどういうものをお考えでございますかと尋ねました際に申し述べられましたのが、三つの条約が例示されたのであります。その例示されました条約三つを申し上げますと、それはILO条約第八十一号、工業及び商業における労働監督に関する条約、これが第一であります。第二は、第八十八号、職業安定組織の構成に関する条約、これが第二であります。第三は、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、第九十八号であります。この三つの条約を例示されまして、かかるファンダメンタルな条約批准していただければ日本の国際的地位はきわめて高まるであろうということのお話がありました。そこで私は帰りましてから、政府にも御相談申し上げ、できるだけ御希望に沿うように努力いたしましょうと政府代表の立場において発言をいたしたのであります。しこうしてこの三つの条約は、ILO条約再加入についての国会の承認を得ましたあとの通常国会だったと思いますが、国会において批准の手続がとられておったのでありまして、私は政府代表で参りました当時、この八十七号の条約ILO再加入後直ちに批准するかのごとき約束は絶対いたしたことがなかったということをこの機会に釈明さしていただきたいと思います。  それはそれといたしまして、この際原口参考人に二つお尋ねいたしたいのであります。第一点は、先ほど前田参考人全逓の問題に触れられまして、今日こういうような状態全逓組合国内法に触れている、そこで将来ILO条約批准されるであろうことを予測してこのままのような状態を続けていく、法律改正を予測して、これはこうではないんだから、守らぬのだ、このままでいいんだ、こういうことは常識的にどうも正義感が許さぬのではなかろうかという御意見がありましたが、私も前田参考人の御意見は非常に常識的な御意見だと思って拝聴させていただいたのでありますが、この問題について原口参考人はいかようにお感じになられていますか、この点を一つお尋ねさせていただきたいと思います。
  89. 原口幸隆

    原口参考人 全逓の問題ですけれども、私は、先ほど申し上げましたように、全逓のような状態のあることが結社の自由の条約に違反をしているんだ、だから日本政府に対して正式に注意が喚起されているという事実から考えても、今全逓がとっている態度が間違っておる、ないしは常識的でないというふうには考えておりません。  それから参考までに申し添えたいと思いますが、ILOの場での議論の対象として、国鉄はすでに直っているじゃないか、あるいは機関車労組はすでに直っているからもういいじゃないかというような問題点について、ILOとしては、直っているとかいないとかいうことは問題ではない、問題は、そういう状態にさせたこと、そういう拒否の状態がかつてあったということ、そうして直ったということは、組合が喜んで直したのではなくて、それはいろいろの圧力によって直さざるを得なかった、そういうことが問題になるのではなくて、その以前のことが問題だということで、議論が結社の自由の委員会で中心にされておることから考えましても、私は全逓の今の状態がこの問題と直接結びつく大きな条件と考えることは間違いであるというふうに思っている次第です。
  90. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 国際労働社会におきましては、国内のいろいろな問題につきましてはお互いが関与しないのが原則でもありましょうし、確かに国際労働社会においては全逓がどうあろうとか国鉄がどうあろうとかいうことは、私も大した問題でないと思います。国内法的な立場において私が原口参考人にお尋ねいたしたいと思いますのは、われわれ国内において議論をしているときに、ILOの場において議論をするものではない。国内においてお互いに議論をするときに、日本はこうじゃないんだ、日本としてILO条約もそのうち政府はいやいやながらも批准するであろう、だからそれまで待っているんだ。こういうことは国内法ですよ。日本国内においてのお互いの常識でどうであろうかということを前田参考人は言われたわけです。国内的な場においてはわれわれの常識的な何と申しますか、正義感としては好ましくないのではないかということを言われたわけですが、やはり原口参考人も同様に考えているかということをお尋ねいたしているわけであります。
  91. 原口幸隆

    原口参考人 法律は守るべきだと思います。しかし悪い法律は守ろうと思ってもなかなか守りにくいのが今までの経過だったと思います。
  92. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 非常に苦しいようなお答えになりましたが、これ以上私もお尋ねいたしません。  ただもう一つILO条約八十七号についてお尋ね申し上げたいのですが、これは多少法律的かもしれません。私はやはり理念的には労使がお互いに自主的にやっていく。そうして相互不介入、この原則は私は天下の公道だと思います。そうあるべきものだと私も思います。そういう意味から考えて、この組合法によりますユニオン・ショップですね、ユニオン・ショップの協定というものは、どうも相互の自主的運営、相互不介入という建前からどうであろうかという感じを私は持っておるものです。お互いに……(「よけいとるんだ」と呼ぶ者あり)よけいとるというヤジが飛んでおりますが、私はそういう意味じゃありません。まじめな意味において労使が相互に自主的に運営する、相互不介入は何といっても天下の公道ですよ。そういう観点であるならば、やはりユニオン・ショップあるいはチェック・オフの問題はよほど考えておくべき問題ではなかろうか、私はそういう感じを持っておるのですが、多年労働運動について非常な経験を持たれ、りっぱな指導の役割を果しておいでになる原口参考人から、こういう機会にそういう点について御高見を一つお聞かせいただけばはなはだ仕合せだと存じます。
  93. 原口幸隆

    原口参考人 ユニオン・ショップの問題は、労働問題懇談会の小委員会においても、経営者側の方から問題が提供されました。で、若干論議をいたしました。結論としては結社の自由の条約とは直接の関係がない。従って、これは将来の問題として残そうということで、同じく問題を出された独占禁止法は結社の自由の、使用者側に関する限り違反ではないかという論議と同時に、直接の関係がないということで整理をされました。そうしてユニオン・ショップ自体の問題はこの条約の問題とは関係なしに今後考えていきたい。私は現行法でいいのではないかというふうに考えております。
  94. 園田直

    園田委員長 原口参考人には種々参考意見をお述べいただき、本問題の調査に多大の参考となりましたことを厚くお礼を申し上げます。御苦労さんでした。  次会は明後日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時五十三分散会