○小林(進)
委員 ただいま
政府提案によりまする
国民健康保険法案及び
国民健康保険法施行法案に対し、日本社会党を代牽いたしまして、反対の意思を表明するものでございます。
ただし、その反対は、警職法に対する反対とかあるいは再軍備等に対する反対とはいささか違いまして、
同一の方向に足先を向けながらも、わが日本の現在置かれている政治情勢、経済情勢あるいは社会情勢からながめて、この社会保障
制度というものはもっと前進することが可能であるにもかかわらず、
政府のいまだ
医療制度に対する認識の足りなさ、あるいはサボタージュあるいは誤まれる再軍備政策等々によって、われわれが考えておりますほどに前進をしていない点において、われわれは反対をいたすのでございますので、その点
一つ御了承を待たいと思うのであります。
申し上げるまでもなく、わが日本の憲法第二十五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と明確に
規定をせられておるのでございまして、特にこの条項に当てはめて、今国民が最も要望いたしておりますることは、貧乏の苦しみそれから病気の苦しみ、死の苦しみからのがれたい、こういう大きな望みを託しておるのでございます。その貧乏の追放と病気の苦しみからのがれたいという、その病気に関する医療保障の問題がこの
国民健康保険によって左右せられるのでございまするが、残念ながらこの法律は、いまだ国民が熱望いたしておりまする病気の苦痛、不安からの解放というものは全然満たされておらないのでございます。現在わが日本の置かれておりまする
医療制度の現状をどうしても理想に向って前進をしなければならないのでございますけれ
ども、その前進への顕著なる意欲、努力というものが現われていないのでございまして、たとえて申し上げますならば、まず被
保険者の立場からわれわれがこの
法案を見ましても、
療養給付費の五割は依然として被
保険者が
負担しなければならない。住民は義務として
保険料を
支払いながらも、一たん自分が病魔に冒されて、さて
一つ診療を受けたいというときには、
半額の
負担を持たなければならない。
政府の誤まれる施策によりまして、これは私が言うまでもなく、
厚生省みずからの厚生白書に示されておる
通りでございまして、終戦後十三年の歳月を経過しながら、貧富の差がいよいよ激しくなり、働きながら食えないという階層は――これは私の主張ではございませんよ、厚生
大臣、あなたの発表であります。あなたの発表によって、食えない階層が日に月にふえて、
ボーダー・ラインと称するものが一千万人をとにかくオーバーしておるという、そういう
人たちが
保険料
支払いの義務を持ちながらも、一たん病気になればその五割のいわゆる
半額の
負担が要るということから、みすみす早期治療すれば容易に健康体になり得るものが、その時期を失して死を早めて死んでいく、こういうような形が全国に現われておるのでございまして、言いかえれば現在のこの
国民健康保険は、比較的豊かな者が最も貧乏なる者の犠牲において命を長らえ治療を受けておるという形が現われておる。社会保障
制度、
医療制度というものは、国民の最下層を目当てにして、貧しい者を救済するという立場からこの法律というものが実施されなければならないのに、そういう一番貧しい階層が放棄せられて、より豊かな階級の
方々のみその恩典に浴するような、そういう形が少しもこの
法案には是正せられておらないのでございまして、こういう点はわれわれはどうしても賛意を表するわけには参りません。
なおまた五人未満の事業所の問題でございますが、これもわが社会党は数年来この改正を要望いたしておりますにかかわらず、これもまた社会
保険のいわゆる
健康保険の中からはみ出されて、ただ国保にのみ依存するという、同じ雇用
関係にありながらも、むしろ俸給も安いあるいは
基準法の適用も完全に受けていないという人々の中、これまた最低階層のこれら一番困っている
方々に何らの救済の手が差し伸べられておらないような、こういう
法案には、われわれは断じて賛意を表するわけにはいかないのでございます。このように被
保険者の立場からも、まずわれわれは反対をしなければならないのでございます。
それで今度は
保険者の立場からはどうかと申し上げますならば、これもわれわれがしばしば申し上げますように、国民皆
保険の声は、すでに国民年金の要望とともに、非常に高まっておりまするけれ
ども、実際はむしろ地方財政の
負担を強からしめており、国保を実施しておる町村にあっては、その九割までが地方自治体の犠牲においてこれが行われているというのが現状でございます。厚生
大臣は御就任の演説の中にも、福祉国家を建設するというふうな非常に大きな理想論をお掲げになりましたけれ
ども、その現実は国家が放任の形で、地方住民、地方自治体の犠牲において、いたずらに福祉国家の名を
政府が私して、ほしいままにしておるというような現状でございまして、私はこの
意味におきましても、どうしても自治体の
負担を軽くいたしまして、福祉国家を
政府の
責任において実行するという言葉の
通りであるならば、どうしても
政府の
責任においていま少しこの国保というものを前進をしていただかなければならない。二割の
負担とただ五分の調整金を加えたというだけであっては、断じて地方財政の
負担を技本的に解決をいたしたということにはなりませんので、われわれはこの点においても、
一つ政府のたゆまざる御努力を要望してやまないのであります。なお、今後自治体にさらに国保の義務設置を要求するということになりまするならば、
政府はもっと自己の
責任の重大さを自覚していただかなければならないと思うのであります。
今港でございまするが、厚生
大臣は、軍事費を犠牲にしても社会保障費を
増額すべきであるという、非常に当を得た、りっぱな声明を発表せられました。それは国民年金予算に関する問題でございましたが、あの
大臣の御声明、新聞発表、これは社会保障全部に
関係する御声明であると私は拝聴いたしました。私は
大臣を見直しました。非常に心から敬愛をする
気持になったのでございますけれ
ども、しかし言明ははなやかなりといえ
ども実質これに伴わずで、(笑声)この点私はまことに残念にたえない次第であります。
今さらわれわれが申し上げるまでもなく、今決算
委員会はもめております。グラマンとかロッキードとかの例の機械の問題でございます。グラマンの飛行機一台が三億一千万から四億というのでございますが、それがいかにむだな再軍備であるかということは、われわれが申し上げるまでもなく、あなたの党に所属いたしております有力者山本猛夫君が、これも新聞紙上に発表をいたしました。私は政党人であるとともに国民の代表である。今まさに大陸間弾道弾などの最終兵器の段階において、こういうむだなグラマンやロッキードというがごときものを二百台、三百台も買って、国民の税金を浪費することは、私はこれを聞くにたえず、見るにたえない。しかるがゆえに、国民の立場から私は、決算
委員会においてそういうむだな飛行機を買うべきではないということを言うたのである。それが気に入らないということで私を除名あるいは離党せしめるのであれば、私は甘んじてその離党を受けますということを、彼は堂々と新聞に声明を発しておりましたが、この
気持は私は厚生
大臣に通ずる
気持じゃないかと思うのです。
大臣、願わくば、再軍備よりも社会保障というあの新聞の声明発表をさらに具体的に、グラマン、ロッキードなどのそういうむだな飛行機を買わないで、どうか
一つ国保の
費用をいま少し
増額し、国民年金
保険をさらにやるべきであるというふうな主張を堂々とやっていただきたい。そのときにはわれわれ微力ではありまするけれ
ども、
大臣の驥尾に付して、あくまで社会保障完備のために
一つ犬馬の労をとることを決して惜しむものではございません。そういう
意味におきまして、どうしても地方
市町村の財政をむしろ根本的に破壊しつつあるというのが今日の現状でございまするので、五分というがごとき涙金の
増額をもって、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売るというような形になっておる、こういう改正には、われわれは
保険者の立場からも、やはり御賛成を申し上げるわけにはいかないのであります。
なお第三番目の医療
担当者の側からもいろいろの問題が起きておりますることは、わが党の
滝井委員その他によって言い尽されておることでありまするので、私はそれをまたここで重複して申し述べることは避けたいと思いまするけれ
ども、たとえていえば、診療費をめぐる紛争の問題も、これも根本的に何ら解決を見ておりません。あるいは診療報酬の
支払い期日の問題、これは
大臣の今の
答弁で
政令その他の規則でありますか、それに含めるというお言葉がございましたけれ
ども、こういうこともやはり法文の上に明確に示して、
療養担当者の不安を取り除くというふうな親切な立法態度がなければならないと思いまするし、あるいはまた
保険医の取り消しの問題とか、あるいは
機関の取り消し等の問題も、一方的とは申し上げませんけれ
ども、やはり取り消しを受ける側の弱さがそのまま放置せられて、これに対する苦情処理というふうな救済の
機関がやはり法文に明確にされていない点も、われわれが賛成をできない点でございます。
なおそのほか条文の体裁といたしましても、至るところに不備な点が発見されるのでありまして、たとえていえば、
療養の
機関とか医療の
機関とかいうふうな言葉が至るところに使用せられておりまするが、一体
機関という言葉は、従来憲法上に用いられた
機関という法律用語、あるいは民法、商法等に用いられるそういう
機関とは全く概念を異にした、まことにあいまいもこたる
便宜的な言葉として用いられておるのでございまして、この
医療機関が、あるいは解釈によって開設者であったり、あるいは
管理者であったり、ときには病院等の建物であったり、あるいは場所であったり等々、実に不明瞭なごまかしの形ができ上っておるのでございまして、こういう法文としての形式、体裁の上においても多くの欠陥があることもまたわれわれはとうていこれを見のがしておくことができないのでございまして、社会保障の完全なる理想に至る一里塚といたしまして、われわれはあくまでも被
保険者もあるいは
保険者も、そして
療養の
担当者も、それは若干の不満はありましょうけれ
ども、三者いずれもがやはり心から協力をいたしまして、そしてその理想に向って喜んでともに手を携えて進んでいけるような立法
措置といいますか、それが
法案の中に脈々とみなぎっていなければならないと私は思うのでありますけれ
ども、残念ながらそういうようなあたたかい
気持が見えていない。
療養担当者の立場からも
保険者の立場からも、あるいは被
保険者の立場からも、どうも不満足きわまるような安易な安上りの
法案でございまするので、その
意味においても、われわれは残念ながら賛意を表するわけにはいかないのであります。
この
意味において、願わくば、
政府におかれましても、わが社会党が提出いたしております国庫
負担三割、
給付率七割というような、こういう現実に即してさらに前進の形体を備えておりまする主張に一日も早く御賛成あられんことを願いまして、私の討論を終りたいと存じます。(拍手)