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1959-02-28 第31回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十八日(土曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 中曽根康弘君 理事 松本 七郎君    理事 森島 守人君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       椎熊 三郎君    千葉 三郎君       福家 俊一君    前尾繁三郎君       松田竹千代君    森下 國雄君       大西 正道君    田中 稔男君       帆足  計君    穗積 七郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         通商産業大臣  高碕達之助君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      木村 行藏君  委員外出席者         警 視 総 監 小倉  謙君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。宇都宮徳馬君。
  3. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 当委員会における十月以来の質疑を通じまして、政府安保条約改定に関する大体の構想が明らかになってきております。それをコンファームする意味において総括的に政府の御見解をただしたい、かように存ずるものであります。  まず、大体先ほども申し上げました通り安保条約改定構想は、委員会質疑等を詳細に調べますと、政府がどういうことをお考えになったかということは大体わかるわけです。そして政府のお考えがわかればわかるほど、一体なぜ急いでおやりになるか。現在急いでおやりになる意思があるのかどうか。十月以来の御答弁によりますと、大体参議院選挙前には安保条約改定条約改正をやりたい。新条約であるとかあるいは条約改定であるとか、これもあとから質問したいと思いますが、とにかく内閣の権限に属している条約を結ぶ、権利に属する条約改定をやりたい、こういうことを言っておられますが、依然としてやはり急いでおやりになるお気持であるか、なぜ急いでおやりになる必要があるか、これを総理大臣質問申し上げたいと思います。
  4. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 現行安保条約は御存じの通り日本が全然防衛力を持たない時代において日本の安全をいかにして保障するか、平和条約の締結と同時にこれが結ばれたものでありますが、そういう性格でありますから、日本のその後の独立完成を認められると同時に、また日本自衛力を国力に応じて漸増するという方針をとってきて、漸次これが増強されてきた状況に応じまして、日本の自主的な立場をあくまでも基本とし、日米両国の間においてできるだけ対等な形においてこれを改定したいということは、日本国民の多年の願いであり、従って日米間においてその問題が話されたことは、相当に数年にわたってあらゆる機会にそのことが話されたわけであります。しかしそれが不幸にして実現を見るに至っておらなかったのでありますが、一昨年私がアメリカに行ってアイゼンハワー大統領と話をし、これに基いて両国の間に共同の委員会を作って、できるだけ日本自主性両国対等立場において、国民感情の合うようにこれが検討なりあるいは運営について努力をしてきたことは、御承知通りであります。そういう沿革をとっておりまして、ようやく昨年藤山外相が向うに参りまして、日本のそういった希望に応じてこれを改定しようという根本についてアメリカ側の了解を得たわけでありまして、そういう経緯にかんがみまして、私は、できるだけ早くこの安保条約というものが、日本自主性両国対等立場における形に改められていく。また内容的に言いましても、それにふさわしいようにこれを改定するということは、できるだけ早くやることが望ましいという考えのもとに、日米間のいろいろな折衝や交渉を続けて参ったわけであります。もちろん相手のあることでありますから、向う側の事情も、交渉の将来の成り行きというものも頭に置かなければなりません。また、いつまでに必ずやらなければならないという期限を付しているわけではございませんけれども、そういう見地に立って、できるだけ早い機会にこの改定が成立すること、われわれの長い問題望しておった日米の間の対等関係日本自主性というものの基礎が条約上もはっきりしてくるということは、われわれの独立完成の上から申しましても、また日本安全保障に対する国民の心がまえの上からいっても、望ましいことであるというように私は考えております。そういう意味におきまして、できるだけ早くこれが改定ができるように交渉を進めて参りたい、かように思っております。
  5. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 しばしば今までおっしゃっていることでございますが、とにかく現在の安保条約は、ああいう特別な敗戦後の事情のもとに結ばれた。個別的安全保障条約ではありますけれども、非常に不対等である、これは間違いないことでありまして、この不対等性対等にしたいということは国民の希望するところであって、これは疑うことができないと思います。しかしながらこれを改正するという以上は、十分に改正しなければなりません。中途半端な改正であったり、あるいは形式的な改正であったりしてはいけない。つまり言葉の上で相当自主的な粉飾を用いても実質的に非常に不対等であるというような改定をいたしますと、現在の安保条約は、条約自身内容において暫定性をうたっております。たとえば暫定措置として駐兵させる、条約自体に非常な暫定性がうたわれている。しかし、今度新条約にいたすなりあるいは改定するにしても、そう暫定性をうたうわけにはいかないと思う。でありますから、改定なりあるいは新条約をなさるにしても、日本自主性を回復するという点からいいましても、いいかげんな改定であってはならないと私は思う。これはどうお考えになりますか。
  6. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 抽象的に申しまして、私どももいいかげんな改定にするというようにはもちろん考えておりません。ただ御承知通り日本憲法は他国に例を見ない特殊な憲法でありますから、今回の改定に当りましても私どもアメリカとの話は、日本憲法特殊性範囲内においてこれを改定するということを大前提といたしております。そういうことにおきまして、あるいは他の同種の条約のように理論的に割れ切れないという点も出てこようかと思います。しかしながら、この立場及び精神的な意義におきましては、私どもはその範囲内において日本との対等性につきましても、いいかげんなところで妥結するというような考え方ではなしに、できるだけこれを徹底させたい、こう思っております。
  7. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 安保条約の不対等性ということが最も具体的に現われているのは、日米行政協定のいろいろな条項の中に現われておると思います。従って、日米行政協定安保条約改定の際に徹底的に改められる意思はございませんか。
  8. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 行政協定は、内容的に申しまして非常に多数の事項関係をいたしております。従いまして、これをこの安保条約と同時にすべて私どもの希望するように改定が行われるかどうかは、なお私ども両国の間で検討してみなければいけないと思いますが、少くとも大事な点におきましての、必要とする改定につきましてはもちろん同時に行い、さらにもしそれに間に合わないとするならば、それらのものについて検討して、改定する方法についても一つ話し合いをしたい、こう思っております。
  9. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 個々の問題につきましては、あとからやや詳細に質問いたしますけれども個々改定点質問に入る前に、その質問をする前提となる原則的な点について御質問したいのですが、まず今度改定と言われておりますけれども、これは改定なんですか。現行安全保障条約改定するのですか。それとも——あの条約の第四条で言っている、「個別的もしくば集団的の安全保障措置効力を生じたと日本国およびアメリカ合衆国が認めたときはいつでも効力を失うものとする。」こう終結規定が書いてありますが、この終結規定に基く新条約、つまり集団的安全保障措置効力を生じた、こう認めるという意味だと、これは新条約ができるということになりますが、総理もそういうふうに十月三十一日岡田委員質問に答えておられます。そういうことでございますか。
  10. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 改定という言葉は、法律的に申しますと、あるいは非常に不明確に響いているかと思います。現在ある安保条約先ほど来申しているような趣旨にできていますから、これを対等なものにしよう、こういう意味において改定ということを申しております。形式的には、私は新条約を締結するという形式をとりたい、こう思っております。
  11. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そうしますと、第四条の終結規定に基く終結であって、改定といわれるものは新条約ができるというふうに理解してよろしいわけですね。
  12. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  13. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そういうことになりますと、日米行政協定は、当然つまりこの条約終結と同時に終結する、これは当然だと思うのです。でありますから、日米行政協定も、形式的には新しいものをお作りになる、こういうことでございますね。
  14. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 そういうことになると思います。
  15. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そうするとその点はわかりました。新条約行政協定自身も旧条約終了と同時に終了する。だから少くとも形式的には行政協定も全く新しいものが作られる。つまり集団的自衛権に基く個別的安全保障措置が新条約によってできるのだというふうに理解していいわけでございますね。  そこでもう一つ、私は原則的な点を質問申し上げたいと思うのですが、この日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約、これはこの条文を見れば明らかなように、非常に暫定的性格をうたっているわけです。たとえば終結条項自身も、つまりこういう効力終了条約の書き方というものは珍しいのでございまして、これ自身条件変化によってはいつでも効力を失うのだということも、条約自体暫定的性格をうたっているものでございますが、特に明文で日本は当然個別的、集団的な自衛権を有する。この自衛権の行使の暫定的措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため云々というような、とにかく条約自身が非常に暫定的なものとして構成せられているわけでありますが、今度の新条約は、そういう暫定的性格は保存されますか。とられますか。
  16. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 現在の安保条約の持っております暫定的な性格というものは、今度の新しい条約ではこれをとらない考えであります。ただ条約有効期限その他につきましては、これを廃棄する手続等につきましては、別に条文を置いていきたい、こう考えております。
  17. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 これは非常に重要なことだと私は思うのです。なぜかと申しますと、現在の日米関係の実態というものは、決して正常な独立国独立国との関係とは言えない。これはやはりまず駐兵というようなことも、NATOなんかによる駐兵と違いまして、サンフランシスコ条約に基いてあの当時の占領軍をそのまま駐留せしめているというような、そういう事態を受け継いでいるのがこの安保条約であると思うのです。それでサンフランシスコ条約でも、安保条約は明らかにサンフランシスコ条約に基いているわけでございますが、サンフランシスコ条約の「第三章 安全」という条項に、日本の安全のために当然その個別的集団的な自衛権は認められているわけでございます。第五条の(iii)の(C)におきまして「連合国としては、日本国主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛個有権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」こういうことによって国連等安全保障措置日本がとれるという権利を与えているわけですが、その次に、占領終結すると同時に「連合国のすべての占領軍は、この条約効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。」これは占領終結と同時に起る当然の現象です。しかしながらただし書きがついている。「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくば締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊日本国領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」、でありますから占領という事態が桑港条約を結ぶ前にありまして、その事態を急変するわけにいかないから、そのためにこういう保留条項がついているわけです。日本の本来の自衛権、安全というものは第三章の(iii)の(C)において保障されなければならない。でありまするから、この安全保障条約はむしろ第六条を受けている。もちろん第三章の精神も受けていましょうが、第六条も受けている。そういう意味で、占領から完全な主権を回復する期間に至る暫定的措置という性格を非常に強く安全保障条約は持っているわけです。しかし、現行安全保障条約が暫定的であるという点にまた非常な意味がある。日本はこの条件変化によっては、つまり自衛力が大きく成長したり、あるいは国際関係が安定したり、あるいは国連のやる集団安全保障措置が有力になった場合には、これは当然変えていいのだという前提のもとに現在の安全保障条約が作られている。特に、占領後の暫定的な日米関係を合理化するという意味暫定性が強調される、こういうふうに思うのですが、今度はその暫定性を取るということになりますると、非常に事は重大でありまして、日米関係全体あるいは世界の安全保障体系全体の中における日本地位というものを十分考えてやらなきゃいかぬと私は思うのですが、この点はどうでございますか。
  18. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 御指摘のように現行安保条約というものが桑港の平和条約に基いて、また占領終結した後における日本の安全を保障するために日米の間に取りきめられたものであり、そういう意味における暫定性というものは相当強いと思うのであります。従って日本立場というものは、対等性やあるいは日本自主性というものが十分に認められておらないという欠点があったと思うのであります。今回、われわれが米国対等性を持ち、日本自主性を十分に明らかにしたところの、この二国間の安全保障に関する条約を結ぶに当りましては、御説のように日本立場及び国際的な情勢やその他のあらゆる面を十分に考えて、そうしてこれを締結する必要があり、また同時にその条約効力有効期間というもの及びこれを廃棄することにつきましても十分に考えて、これを締結する必要がある、かように思います。
  19. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 ただいまのお答えで期限のことを言われましたが、要するに今までより暫定的性格は少くなる、しかし、なお暫定的である、ですから期限というものはそう長いものであってはいけない、こういう意味でございますか。
  20. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 期限をどういうふうにつけるかということにつきましても、これも今お話のように、この条約性格考え、また国際情勢等の推移も考えまして、非常に長い期間にすることは適当でないし、また、しかし同時にある程度の安定した事態も、こういう条約において作る必要がありますから、そういうものを考慮して適当にきめたい、こう思っております。
  21. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 日米の新事態というようなことを言われますが、それでそういう関係現行安全保障条約が締結された当時とだいぶ違っておる、また日本自衛力も若干成長してきている、そういう点から変えるのである、しかし、特に日本国民感情を尊重して、条約もできるだけ自主的にしなければならぬ、こういう点からやられる、こういうことでございます。それで、政府の具体的な見解というものが、今までの外務委員会における同僚委員の非常に緻密な質問によって大体明らかになってきておるのでございますが、これを一つ個々質問して参りたいと思います。それは国連憲章との関係ですね。一般相互防衛条約にあるように国連憲章との関係を明らかにしたい、こういうことを言っておられますが、これはどういう意味でやれらるかどうか、これを御質問いたします。
  22. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 昨年の九月であったかと思いますが、日米の間に、安保条約国連憲章との関係につきまして、両国間に交換公文を交換いたしました。この趣旨の事柄を条約に明らかにする必要がある、こう思います。
  23. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それから在日米軍使用目的ですね。これは日本日米安保条約の、一般相互条約やそういう個別的な安全保障取りきめの一般的なものと非常に違う点です。つまり当時国が武力攻撃を受けなくとも、当時国である日本あるいは日本に駐留する米軍が、日本から出動するというような規定があるわけでありますが、在日米軍使用目的について、極東の国際の安全と平和のために在日米軍が使われるというような規定があるわけであります。この規定精神は残して、ただ出動する場合に事前に協議する、こういうことを今度の条約にはつけ加えるのだということを何度か総理大臣また外務大臣が述べておられまするが、その通りでありますか。
  24. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 その通り考えております。
  25. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 国際の安全と平和のためにという日本に駐留する米軍目的、そういう目的を今度の条約には書かれない、こういう御意思はありませんか。
  26. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 条約条約文にどういうふうにするかはなお検討は要すると思いますから、いずれにしても米軍の使用する場合において事前に協議をするということだけは明瞭にしたいと思います。
  27. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それからやはり在日米軍使用目的の中に、いわゆる間接侵略に対抗するものだと思いますが、外国の教唆に基く大規模内乱に対して日本政府の明示の要求に応じて出動させる、こういうようなあれがありますが、これは取る、こういう御意思を何度も示されておりますが、これはその通りですか。
  28. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 いわゆる内乱条項というものは私は条約の上からは日本自主性考えこれを取ることが適当である、ただそれによって非常に不安を感ずる面もあるようでありますが、第一段において日本の今日の自衛力をもってするならば、一応の内乱日本の力で制圧することができることは言うを待ちませんが、同時にいろいろな複雑な関係において、もしも海外から非常に大きな形において日本内乱を使嗾しこれとの間に非常な連絡をとってやるというような場合がありますと、いわゆる間接侵略と直接侵略というものの範囲というものは非常に不明確でございますが、やはり大規模の場合において日本が安全をもしも侵されるというような場合におきましては、私は方法はいろいろあると思いますから、内乱条項は取りたい、こう思っております。
  29. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それから第三条でございますが、何か第三国軍隊の通過その他には米軍の承認がいる、こういう条項はある意味では日本外交権の干渉にもなる、こういう意味にとれるのでありますが、そういうことも言っておられますが、これも取られるのですか。
  30. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 取るつもりでおります。
  31. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それから行政協定、これを自主的という見地から改められるというよりもこれは新協定になるわけですが、この中で非常に問題なのは、たとえばドル価表示軍票などを使う点にあるというようなことと、それから軍事郵便局を作るNATOなどにない規定があります。またフィリピンとの間の軍事協定にもないそういう規定がだいぶありますが、そういうようなものは十分に検討され取られますか。たとえば軍票なんかどうされますか。
  32. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 行政協定具体的内容につきましては、今おあげになりましたような事項もございますし、その他広範にわたっておりますから、十分一つ検討して新しい事態日本の状態に適応するようにこれを改めるというようにしたい、こう思っております。
  33. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 十分検討されるということになりますと、行政協定内容の問題は非常に重要だと思うのです。それで十分に検討されるということになりますと、私は相当時間を要すると思うのですが、とても参議院選挙前とかなんとかいうわけにはいくまい、こういうように思うのですが、相当に十分これから検討をされるのじゃなくて、すでにしておられるのですか、どうなんですか。
  34. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 もちろんある程度の日本だけとしては検討も従来もされておりますけれども日米の間におきましてこの条項改定するということについては、今後日米の合同の機関において十分に検討してやりたい。従いましてあるいは安保条約そのものの調印やなにかとは、ちょっとあとにさらにその検討をするというふうになる公算が私は多い、こう思っております。
  35. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そういたしますと、技術的にはいろいろな方法があるかもしれませんけれども安保条約改定いたします、改定というより新条約ができる、新条約ができると、すぐ行政協定というものは無効になるわけです。無効になるべき行政協定を存続させるような特別な条項を新安保条約の中にお入れになるという予定ですか。
  36. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 法律的に申しますと、御意見のように現在の安全保障条約が失効すれば、当然現在の行政協定も失効することになるわけであります。それで今われわれが望んでおるような新しい行政協定を作るのには相当の時日を要すでしょうから、その間の経過的の扱いについては十分適当な方法考えていきたい、こう思っております。
  37. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 宇都宮君、申し合せの時間が参っておりますから……。
  38. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それでは、この問題はこの程度にいたしますが、今度の条約双務性自主性と同時に相互性を強める、こういうことを言っておるわけです。米軍防衛義務どもはっきり規定せられる、こう言っておられますが、これはその通りですか。
  39. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 そういうふうに考えております。
  40. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 それから条約領域の問題でございますけれども、これはできるだけ小範囲にとどめ、それからこの条約に基く海外派兵日本憲法上できない、こういうお考えでありますが、その場合に沖縄とか小笠原とかの地位が問題になってくるわけでありますけれども沖縄小笠原は、もしお入れになる場合に日本領域としてお入れになるのですか。それとも相互主義と申しますか、日本の外に対しても何らかの防衛をするということが相互主義ということになるわけでありますが、米国統治権米国領域として沖縄とか小笠原というのはお入れになるのですか。日本地域としてお入れになるのですか、米国地域としてお入れになるのですか。どっちです。
  41. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 沖縄小笠原防衛地域の中に入れるかどうかということにつきましては、御承知のようにいろいろの議論がございます。十分国民世論の動向を考えて慎重にきめるべき問題であると思いますが、今かりにこれを入れるという考え方をとった場合におきましても、私は当然これらの地域における日本潜在主権というものを持っておるという立場から、これを考えていかなければならぬ、また一方入れないという場合におきましても、世間で議論されておるように、そのためにこれらの地域に対して日本潜在主権を持ち施政権の返還に対する従来の主張というものを、何らか弱めるというような考え方は、私どもは全然とっておらないのでありまして、いずれにいたしましても、これがどちらに入りましても、今申したような考えに立って処理したい、こう思っております。
  42. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そういたしますと相互主義立場から米国領域として考え入れるのじゃない、日本地域つまり日本潜在主権があるから日本地域として入れる、こういうお考えでございますか。
  43. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 そういう考えでございます。
  44. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 そういたしますと潜在主権のあるところはすべて日本地域に入る、従って歯舞とか色丹、それから国後、択捉、そういうところも当然潜在主権があると認めて、それも防衛地域入れなければならぬということになるのですか、日本地域として。
  45. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 いわゆる潜在主権を持っておる地域に、この防衛区域を全部に定めるかどうかということは、まだ先ほど申しましたように私ども研究中でございますが、今申し上げましたようにかりに入れるという考え方をとるとするならば、それは潜在主権を持っておる地域として沖縄小笠原をこれに入れるという考え方をとるのが適当である、こういうふうに私ども現在のところ考えておるわけでございます。そうしますと、今御指摘になりましたように、日本が、少くとも国民としてまた日本政府として主張しておりますところの地域が北方にあるわけであります。ただ沖縄小笠原の場合と北方におけるこれらの地域に対する場合とは少し私は違うと思いますのは、小笠原沖縄については潜在主権を持っておるという考え方は、その点については、日本アメリカとの間におきましては異論がないのであります。しかし北方の地域につきましては、私ども国民はそういう信念に立ち、そういう交渉を一貫してやっておりますが、御承知のように国後、択捉についてはソ連側は全然日本の主張を認めておりませんし、ただ歯舞、色丹については共同宣言において将来平和条約が結ばれたならば、これは日本に渡すということが明らかにされておるわけでありますから、その辺の事情が今申したように違っておるということを前提考えなければならぬと思います。
  46. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 宇都宮君、もう時間が参りましたから……。
  47. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 時間がありませんから、特に与党の議員ですから遠慮して切り上げますが、最後にちょっと質問したいのです。  この前赤尾敏という人が藤山外務大臣に対して暴行、脅迫をしたというような新聞記事が出ていましたが、これは事実でありますか。
  48. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 先般赤尾敏氏外何十名でございましたか、プラカード等を持って外務省に見えまして、私当時自宅におりまして、外務省に来なければ自宅に来るという、自宅に来られちゃ困るのでありまして、外務省に行きまして、そして代表者三名と会った事実はございます。
  49. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 この新聞記事の内容を読みますと、帰りぎわに何か押してあなたがひっくり返った。それからつばを吐きかけられたけれどもかからなかったとか書いてありますが、これは事実でありますか。
  50. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 私が話の途中でそれ以上聞く必要もないと思いまして、一言答えて立ったのであります。そのときに非常に脅迫して私のからだのそばに接近して参りましたので、私はうしろへ下りましたところが、うしろにいすがありまして、そして倒れたのであります。同時につばは吐きかけられました。
  51. 宇都宮委員(宇都宮徳馬)

    宇都宮委員 私はこれは非常に重要なことだと思う。赤尾敏という人は個人としてどういう人か知らぬけれども、その人の何というか、政治的な経歴みたいなものからいいますと、これは旧右翼ですね。この右翼というものは、現在われわれがこうやって外交問題を審議していても、領土問題にいたしましても、安保条約にいたしましても、これは非常に自主性がない、領土をなくなした、要するにあの敗戦の跡始末をわれわれは苦しんでやっておるわけです。そういう戦争に持ち込んでいった、つまり非合理な外交方針を脅迫によって日本に押しつけることを軍部と一緒にしていた人間たちだと私は思う。そういう人が現在またその活動を始めて、特に日本の外交方針に対して、その理性的な動きに対して制約を加えるというようなことになりますと——私は現在日本の国情が非常に違うからそう危険はないと思うけれども、やはり放置しておくと危険であると思うわけであります。そしてそれに対する何らの措置も警察ではしていないようであります。大体右翼というものに対しては、警察は歴史的にどうも寛大に失するところがある。今日は警視総監も来ておられますから、それについて一つ意見を伺いたい。
  52. 小倉説明員(小倉謙)

    ○小倉説明員 いわゆる右翼という団体あるいは個人、これが外交問題あるいは国内における左翼勢力の台頭といいますか、そういう問題について非常に関心を持っておることは御承知通りであります。最近も外交問題、ことにいわゆる共産圏諸国との外交問題に非常に関心と敏感さを持っておる。それから国内におけるいろいろな共産主義的なあるいは左翼的な動きが活発となるにつれて、これに対する右翼の動きも相当目立ってきておるのであります。中には直接的な暴行あるいは妨害という行為に出る者も出てきておるのであります。警察といたしましては左右いずれを問わず、暴行、妨害というような行動に対しましては厳重な取締りをしておるところでございます。先ほどお話のありました赤尾敏の藤山外相に対する暴行容疑、あるいは侮辱罪といいますかそういうような事柄に当ると思いますが、この問題につきましては、当日直ちに赤尾敏外二名の者に呼び出しをかけて、翌日の十時までに出てこいということで、取調べをいたしたのであります。現在のところ、その日に赤尾敏が相当興奮しておりまして、細部の点にわたってまだ十分供述するという点もありませんので、もう一度取調べをしたい。それから参考人といいますか、その部屋におられた方々の参考人としての取調べもまだ一部済まない点もありますので、この点もあわせて取調べをいたしたい、その上で暴行容疑という点でどういうふうに事件を処理するか、あるいは侮辱罪というのは、これは被害者側の告訴がなければならないわけであります。外務大臣の方におかれてはまあ別段問題にする気持はないというお気持でありますので、その点はどうかと思いますが、暴行容疑の点につきましては、外務省側の御意向がどうでありましょうとも、現実の実情に応じた措置をいたしたい、こう考えております。
  53. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 宇都宮君、この程度に一つお願いいたします。だいぶ時間が経過しましたから……。田中稔男君。
  54. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 わが社会党は、中国政策におきまして岸総理並びに岸内閣と根本的に所見を異にしておるのであります。これは私ども非常に不幸だと考えております。血は水よりも濃しという言葉があります。だからあなたにも私にも同じ民族の血が流れておるのでありますから、ひとしおこのことを不幸と感じるわけであります。わが社会党は中国政策についてあなたの内閣に勧告をしたい、さらにまた平和を愛する国民の名において要求をしたいと考えるものであります。そういう意味において以下若干中国問題を中心にいたしまして質問を申し上げたいと思います。  まず第一に今日の中国の情勢について、中国をめぐる内外の情勢について総理は一体どういうふうに判断されておるのか、これをお伺いしたいと思います。  政府の中には誤まった情報に基いて人民公社運動というものは中国人民の反対を受けて失敗をしているというような見方があったり、あるいはまた金門、馬祖の問題は中国側から攻撃をしかけて失敗に終って引っ込んだというような見方をしたり、あるいは中国とソ連との間に大きなギャップがあるんだというような見方をしたり、総じてそういうふうに中国の情勢を悪く判断して、だから中国は今弱い立場にある、日本として強い立場で臨むならば中国側が折れてくるのじゃないか、貿易だって向うの方から申し入れてくるのじゃないか、こういうふうな楽観論が生じるわけでありますから、情勢の判断というのがまず第一に必要だと思うのであります。総理は中国をめぐる内外の情勢について、特に今申し上げました人民公社の問題、金門、馬祖の問題、中ソ関係の問題等について具体的にどういうふうな判断をしておられるか、これを一つ承わりたいと思います。
  55. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 一国の外交方針を定める、あるいはこれを遂行していく上におきましては、各種の国際情勢の推移というものを正確に把握して、これを正しく分析、理解することが必要であることは言うを待ちません。こういう意味におきまして中国の情勢につきましてもあらゆる点からわれわれは検討をいたしております。しかし同時に中国の情勢につきまして、われわれが把握しておるいろいろな情報や情勢というものにつきましては、ああいう国柄でありますし、また日本と中国大陸との現在の関係から申しまして、あらゆる面について詳細な情報を把握するということは、今なかなか困難がございます。従いまして今おあげになりました人民公社の点につきましても、私どももあらゆる面から検討をいたしておりますが、これまた一方においては今おあげになるようなこれが非常に失敗であるというふうな情報なり意見もございます。またこれに相反するような何もございます。従いまして、私どもは中国の情勢の判断というものにつきましては非常に困難があることは言うを待たないのであります。しかしそれにもかかわらず今申しましたようにわれわれはあらゆる面からそれらの情報を集め、情勢の判断をできるだけ正しくしていきたいと思っておるのでございます。ただ今おあげになりましたような数種の点につきましては、なかなか総理大臣としてこれの意見を言うことは、今申しましたようにわれわれが得ておる情報そのものがまちまちであります関係上、私はこの席で申し上げることは適当でないと思います。たとえば毛沢東主席の辞任された問題に関しましては、いろいろ今おあげになりましたようなことと関連しての意見もございます。しかし同時に最も信頼すべき正式の発表というものもございません。こういうものから見ますと、今おあげになりましたような諸問題に関して、国内で行われておるいろいろの意見というものは、一つの意見としてわれわれは参考にすべきであるけれども、これをもって直ちに政府がどう考えておるということをこの際申し上げることは適当ではない、私はこう思っております。
  56. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 政策を策定いたしますためには、正確な情報をキャッチしなければならぬのでありますが、今の御答弁を通じて承わることは、中国に関する情報はまちまちであり、情勢の判断は困難であるという一語に尽きると思う。しかしそういうことでは日本政府の責任者として私は非常に欠くるところがあると思う。だからこの機会に特に要望したいのは、中国の内外の情勢について一つ正確にして詳細な情報を集められて、正確な政策をきめてもらいたい。そういうことになりますと、今の岸内閣のお考え、つまり中国側が少し弱っておるのじゃないか、だから強く押せば向うが折れるというような考え方が間違いであるということは、私はわかるだろうと思う。このことは私これ以上申しませんが、特に総理に希望しておきます。  次に先般佐多報告なるものが発表されました。その中に岸内閣に対する要求というような形で、いわゆる三原則、三措置というものが伝えられております。ところが岸内閣はこれに対して何ら答えていないのであります。具体的な行動によっては何ら答えていないのであります。総理の施政方針の演説の中にも、ほんの数言このことについて触れられております。どういうことかといいますと、貿易が中絶したことは非常に不幸である。双方が過去の経緯にとらわれることなく互いにその政治的立場を理解しつつ通商の再開を望むものであります。ただ貿易の問題だけしか取り上げられていないのであります。これでは通産大臣の施政方針ならいいかもしれませんが、内閣総理大臣の施政方針における中国問題についての言説としては、きわめて不十分である。しかもまたここに「いたずらに過去の経緯にとらわれることなく、」と言って逃げておるのでありますけれども、何といっても台湾における、あるいはアメリカにおける、あるいはインドにおける岸総理の言動、あるいはブラウン記者との例のインタービュー、そういうようなことが中国側に与えた深刻な印象はなかなか消し去ることができない。そういうことについては一言も触れないで、ただ過去のいきさつは水に流してとおっしゃる。これは佐多報告において伝えられた中国側の意向に対して、全く何ら誠意ある応答をしていないという態度であります。  それで私はこの際に承わりたいと思いますが、外務大臣の述べられたことでありますけれども総理も当然関知されておるだろうと思いますが、たとえば大使級の会談をやろう、あるいは貿易に関しては政府協定を結んでよろしい。こういうようなことが政府の意向として発表されておりますが、はっきりした中国に対する政策もなく、また態度もなくして、ただそういう形式的な手続的なことだけ述べてもこれは全くナンセンスなのでありますが、私の憶測するところによれば、要するに中国側が弱っておるからやがて貿易についても再開を申し入れるだろう、あるいは日中関係全般についても向うから何らかのゼスチュアがあるかもわからぬ。そのために、こちらで、その場合に応ずるというただゼスチュアだけ示しておこう、こういうのではないか。あるいはまた、こういうことをいうことによって、来たるべき参議院の選挙その他に有利な立場を得ようとしておるのじゃないか。どうもきわめて不可解な政府の意向の表明だと思いますが、こういうことについて、総理として一体どういうことをこれで意味しておられるのか、承わりたいと思います。
  57. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私が内閣組閣以来ずっと申し述べてきておることは、実はわが岸内閣だけではなくして、保守党内閣、自民党内閣一つの根本の考え方を忠実に述べておるのでございますが、中国大陸に関する関係におきましては、御承知のように歴史的にも地理的にも深い関係がございますから、これの間においてお互いが敵視するとか、あるいはお互いがお互いの反感を挑発するような言動をすべきものでないことは言うを待たないのであります。ただ私どもは、あくまでも現在の状態から見るならば、いわゆる経済、貿易の関係というものについては、これをできるだけ進めていく。また文化の交流等につきましても、あるいはその他技術的の方面におけるところの協力につきましても、そういうことは進めていくが、現在の状況においてはこの中国政府との間に国交を正常化して正常なる外交関係を開くということは、まだその時期でないという、いわゆる政治の問題と、貿易、経済の問題は、これを分けて考えるという立場をとってきておるのでございます。しこうして、過去においてわれわれはそういう考えのもとに中国大陸と日本との間の交渉やあるいは接触が行われてきたのであり、また現在の状況においてはそういうことを積み重ねていくことが将来の問題を解決する上の方法として適当であるという考えに立っておるわけでございます。この点については社会党のお考えとは確かに違っておるのでございます。しかしわれわれとしてはそういう立場できておりますから、敵視しておるとか、あるいは二つの中国の問題にわれわれが関与しておるというようなことは、全然ないわけでございます。従ってこの点において、貿易の再開ということについては、決して今田中委員がおあげになりましたようないいかげんな考え方ではなくして、真に日中両国のためにこの貿易を再開することは両国国民の繁栄とそして福祉に寄与するものである。またそれが両国の理解を深め、また両国との間における将来の正常な関係を作り上ける上においても必要なことである。こういう立場に立って、現在の状態を非常に遺憾とし、またこれが打開については、そういう意味においてあらゆる方法でこれを打開していきたい、こういう考えを持っておるわけでございます。
  58. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 総理のこの施政方針の演説の中に「互いにその政治的立場を理解しつつ、」という言葉かあります。これは中国側において毛異議はないと思う。つまり日本と中国とは今日社会体制が違う。従って政治体制が違う。それにまた安保条約とか日華平和条約とかいうような既存の条約もある、こういうふうなことを全部なくしなければ、日本と中国との貿易はできない、また日中関係の全般的な打開もできない、こういうことはいっていないのです。その意味においては政治と経済とは一応別というようなことも考えられます。しかしながら岸内閣が中国を敵視する政策、日中間の友好を妨げ、むしろこれを敵視するというような、そういう関係がなくならない限りは貿易もできない、これをいっておる。つまり政治と経済の分離といいましても、いわば二つの意味がある。しかし、少くとも両国間の友好は、これがなくならなければ貿易ができないということは確かです。そういう意味において政治と経済とは分離できない。ところが、総理はただ貿易だけやろう、しかも一方安保条約改定ということによりまして、日米の共同防衛体制を強化しよう、言いかえれば軍事同盟を強化しよう。片手にあいくちを持ちながら、ここにそろばんを出そうという政策が間違いだと言っておるのであります。  そこで、具体的にまず申しますが、たとえば日米安全保障条約をなくさなければ、日中の国交回復ができないとも言っていない。また日華平和条約のごときは、中国の内政干渉だと言っておりますけれども、これとても今直ちに廃棄しなければ、中国は岸内閣を相手にしないとも言っていない。それほど向うでは非常に幅のある態度です。しかしながら大事なことは友好なんです。友好な態度です。ところが、総理は過去の言動において非友好的な態度をたびたび露骨に示されておるということに問題がある。今中国との間にもいろいろ交渉はしたい、たとえば政府協定というようなことも、決してただいいかげんに言っておるのではない、誠意をもって貿易についてならやろうとおっしゃっておる。  ところがここに問題になることがある。というのは、一九五二年、昭和二十七年、日華平和条約の結ばれる前であったと思いますけれども、当時の総理である吉田茂氏とダレス国務長官との間に書簡の往復が行われておる。その書簡は相当長いものでありますが、その末尾にどういうことが書いてあるかというと、「わたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます。」こう書いてある。二国間条約であります。条約協定いろいろな約定の形式はあると思いますが、つまりこれはいわゆる中共、中華人民共和国は一切相手にしない、それとは条約は結ばぬ、協定は結ばぬ、こういうことが確言されておる。しかるに岸総理藤山外相は、貿易についてだけなら政府協定を結んでもよろしい、さらに参議院の何かの質問に答えて、外務大臣も郵便あるいは気象、いろいろなことについて政府協定を結んでいいということをはっきり言っておられる。それはほんとうにそういう真意であるとするならば、この一九五二年の吉田書簡はもう否定されたものと私どもは解釈しなければならぬと思いますが、それについて政府の御所見を伺いたい。
  59. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 もちろん外交上いろいろ責任を持っております内閣として、そのときの情勢に応じて二国間または数カ国の間にいろいろ書簡の交換やその他意見の交換などか行われることはあると思います。はっきりした条約等である限りにおきましては、これははっきり条約改正しなければ国際的の義務を免れることができないことは言うを待たない。しかし書簡であるとか、あるいはその内閣の意向、方針であるとかいうようなことは、情勢変化とともに改定され、改められていくことは当然だろうと思います。しかしながら全部をすべて無効にするとか、あるいは何か形式的にこれを否定するというようなことを申すことは適当でなかろうと思いますけれども、しかし、今おあげになりました一切の政府間の協定であるとか、あるいは条約というようなものは結ばないと吉田書簡にいっておりますことは、私は、今日の状況から見、また実際、時の一般の慣例、また中華人民共和国の自主性考えてみまして、藤山外務大臣が申しているように、あるいは必要がありまた両国の間にそういうことが合意されるならば、今日人道的立場あるいは技術的立場から、あるいは純経済問題としての協定あるいは取りきめというようなものはしてもいい、またする考えがあるという点については、吉田書簡の当時とは情勢が変って、今の新事態に対するわれわれの所信を述べておるわけでありますから、その点におきましては、その書簡の趣旨と違っていると言って差しつかえないと思います。
  60. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 中国問題について総理から承わったほとんど唯一の前向きの答弁だと思います。確かにそういう御答弁ならば、私はいいと思う。その方向に日本政府の政策が前進するということなら、私はけっこうだと思う。そこでこのことについて念のために藤山外務大臣の御所見を伺いたい。
  61. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 今総理が言われた通りだと思うのであります。そのときの事情によりましていろいろな問題が取り扱われていくべきじゃないかと考えております。
  62. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 次に、安保改定のことについてちょっと触れますが、藤山試案などを見ましても、たとえば期限をつけるとか内乱条項を省くだとかいろいろあります。それだけとれば改善だと考える人もある。国民の中にはもっぱらそういう政府の宣伝か伝わっておりますから、改定は改善を意味するというふうにとっている人もある。ところが中国側では、盛んに安保改定というものは中国に対する敵視政策をさらに強化するんだといって、向うは非常に抗議しておりますね。私どもは何も中国がそういうからこれに共鳴しているわけじゃないんです。実は私どもこの改定は改善であってほしいのです。しかし、私ども十分冷静に考えましても、これは重大な改悪であって、いささかの改善でもないと思うのです。それは今申し上げたような点には問題はない。問題は、日米共同防衛日米相互の防衛義務をこの新条約がはっきりうたおうという点です。この点に問題がある。今までの安保条約は、御承知通りアメリカ日本防衛する義務もはっきり規定してないかわりに、また日本側の義務も基地を提供することであって、アメリカ軍を防衛するとか、あるいは日米共同防衛をやるとかいうようなことは何も書いてないわけですね。ところか今度は、アメリカ日本に対する防衛義務を明確にすると同時に、反対給付として、日本は、在日米軍に加えられた攻撃は自国に対して加えられた攻撃とみなして在日米軍防衛するということをはっきり義務づける、こういうのでしょう。そうなりますと、米軍というのは日本国内だけで行動しているんじゃないのです。極東各地に基地を持っております。米韓、米台、米比の相互防衛協定が結ばれておる。台湾海峡からあるいは朝鮮の三十八度線からもう一ぺん火を吹くようなことになりまして、もう一ぺん戦争が起る、少くとも武力的紛争が起るということになって、米軍が作戦行動をやりますと、当然日本におる米軍もその全体の一環として行動するわけでしょう。その在日米軍に対して中国から攻撃が加えられたら、これを日本防衛しなければならぬということになれば、その相手国から見れば日本アメリカと一緒に戦えることになるでしょう。日本の現在の憲法というのは、民主憲法といわれますけれども、また平和憲法ともいわれる。この平和憲法第九条によっては、実は自衛のためにも防衛力は設けてはいけないということになっている、私どもはそう解釈するのですが、この日本憲法によっては、他国と一緒に防衛義務を負うなどということは絶対不可能なんです。さっき総理は安保改定をやる場合には、あくまでも現行憲法の許す範囲内においてやるとおっしゃられたけれども日米で共同防衛の義務を負うということ自体が憲法第九条の精神に著しく違背している。そうでしょう、一緒にやるんですからね。そうして武器のごときも、向うは核兵器を持ってくる、こっちは通常兵器たけでやりますといっても、共同作戦となりますと、そんなはっきりとした兵器の区別なんというものはできやしません。まず一体になるのですから、そういう区別は初めから問題にならぬ。そのことはしかし何も私どもは今の自衛隊を認めるわけではないのですよ。自衛隊の存在も憲法違反だと思いますけれども、かりに今の自衛隊の存在を前提として考えても、その自衛隊が——自衛隊は、おっしゃるところによれば、ただ日本の安全を守る単なる自衛だけだとおっしゃるでしょう。ところがアメリカの軍隊はただ自衛だけの軍隊でないということは明らかです。これは防御のためにも攻撃のためにもどっちにも使える軍隊でしょう。大体そういう言葉の分け方がおかしいのですが、かりに観念として考えれば、日本は自衛隊、米軍は自衛もできるが攻撃もできる、戦争のできる軍隊ですよ。それと一緒にやるのです。二人三脚みたいなものです。一方は力道山みたいで一方は小学校の生徒みたいなものだから、一緒に二人三脚をすれば向うに引っぱられていってしまう。だからそもそも日米共同防衛ということをやるならば、バンデンバーグの決議から申しましても、日本はどうしてもアメリカに引きずられていって、初めは国内だけを守るといっておっても、つい米軍と共同行動をするために引っぱっていかれるということになるんですね。だから小笠原沖縄防衛範囲入れないといったってそんなことは本質的な問題ではない。入れないでただ国内だけの問題だといっても、在日米軍に対する攻撃を日本国に対する攻撃とみなして一緒にやるというなら、その在日米軍は朝鮮にも飛んでいき、台湾にも飛んでいき、フィリピンから入ってくるのです。当然日本在日米軍を守るというそれだけの約束によって海外派兵の義務を論理的に負わなければならぬということになるんですよ。、だから中国が、その意味においてこの安保改定は改善でなくして改悪である、中国に対する敵視政策の強化であると言っている。中国がそう言うから私はそう言うのではない。われわれ社会党でも十分検討して、政府に対して悪意を持たず冷静に検討してもそうなる。しかもこれは、かりに政府が善意であっても、アメリカがそんなことは許さない。アメリカがこの安保改定に応ずるゆえんのものは、日米共同防衛の義務を強化するために日本に対してそういう義務を押しつけるためにやっているのですから。この点について一つ総理の御所見をはっきり聞きたい。
  63. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 今日日米間の安保条約かございますが、御承知のようにこれによって米軍は一方的に日本に駐在もできますし、いろいろな使用等も勝手にできることになっております。またその日本に駐留するところの米軍は、極東の安全と平和を維持するためにはこれを使用することができることも条約上はっきりされております。そうしてその場合において日本が何ら事前の協議を受けるものでないことも、これは条約上はっきりされておるのであります。こういう状態というものは従来もよくいわれておったのでありますが、もしも日本に駐留するところの米軍が、極東の安全と平和のために日本意思に反して出動した、米軍が駐留しておりますから、これに対する報復が日本の領土に加えられる、そうすると日本が当然直接侵略を受けることになるから、日本の自衛隊というものが動くことになる、そうすると日本日本意思にかかわらず、そういう侵略や戦争に巻き込まれるおそれがあるのではないかという議論が従来あったことは御承知通りであります。私どもが今度の新しい安保条約を作ろうという上におきましては、アメリカ日本防衛する義務を明確に負うと同時に、日本アメリカ軍の使用なりあるいは装備というものに対して事前の協議をして、日本意思に反して日本がそういうふうな事態に巻き込まれる、知らないうちにそういう事態になっておるというようなことが万一にも起るようなことのないようにすることが、日本の自主的な防衛意味からいっても必要であると考えて、この改正一つ条項にそういう条項を明らかにしようとするのでございます。今お話がありましたが、もちろん日本が新条約によって米軍に基地を供与する義務を負う場合におきまして、この基地の使用等につきましては、今言ったような日本意思に反しもしくは日本が全然知らない間にそういうことの事態か起らないような、事前協議の方法が講ぜられるように条約上するわけであります。現在の安保条約で起ってくる事態、それ以上の事態日本に来るわけではないのであります。しかも現在の安保条約においては、日本意思にかかわらず、また日本が全然関知しないうちにそういう事態が起るおそれがあることを、今度の条約におきまして明らかにそういうことのないようにしようという点が一つの点でございます。こういうことから申しまして、これができることによって、何か新しい安保条約が中国に対して脅威を与えるとかあるいはそれを敵視するということではなくして、むしろ日米両国の間におけるところの従来の不公正な、不対等関係対等にし、一切の義務というものは現在の安保条約以上に出ることはない、私はこう思っております。
  64. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 それで、なるほど藤山試案を見ましても、在日米軍の使用、装備、配備等については日米間で協議すると書いてある。しかしそれもさっき言いましたように、力道山と小学校の生徒みたいなものの軍事同盟では、そういうことをしてもなかなか日本側の拒否権なんていうものは行使できない。結果において米軍の意向によって日本が引きずられる、そういうことになるとどうなるかというと、協議したということでむしろ日本側が米軍の行動をオーソライズするということになる。そういうことも力関係から考えられる。しかし私は中国問題が主題ですから、安保問題はこのくらいにしておきます。ただその調印の時期でありますが、外務大臣は非常に早くお考えになっておったようだが、党内のいろいろな事情もあって少し延びそうですね。私はむしろ延びて延びて、やがてこの改定交渉が一応御破算になるということが望ましいと実は思うのです。むしろ私は積極的にやめてもらいたいと思うけれども、結果において流れればそれでもまあいいですが、つまり中国側としては現在より敵性視を強めてもらっては困る。今もよくないですけれども、しかしこれ以上敵性視が強化されることを真剣に憂慮しておるのでありますが、調印の時期は総理はいつとお考えになっておりますか、
  65. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 先ほど宇都宮委員の御質問にも私はお答えをしたのでありますが、われわれの保守党の考え方によりますれば、今の不平等な形をできるだけ早く対等な形にし、そして日本の自主的な立場を明確にすることが必要であるということは、長い間のわれわれの願望であります。また国民多数の願望であると思います。こういう意味において、日米の間に話がまとまれば、なるべく早くこれの調印をし、また国会の批准を求めることが適当である、こう思ってせっかく努力をいたしておるのでございますが、言うまでもなく国民の多数の世論の支持を得なければならぬ重大な問題でございますから、そういう点につきましては慎重に、われわれはあらゆる努力をいたしておるわけであります。いつまでに必ずやるとか、あるいは無期限にいつになってもいいんだというような考えはともにとらないのであります。私どもとしては、できるだけ早くこの国民多数の支持を得て、これを改定したい、こう考えておりまして、その時期がいつになるということは今日申し上げかねますけれども、できるだけ早くやりたい、こう思っております。
  66. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 以下一項々々申し上げまして簡単に御質疑いたします。政府でなく、自民党として代表団を中国に派遣するというような御意向もあるようですが、政府はどうお考えになりますか。池田勇人氏の見解として、安保条約改定をやりながら、一方中国に対してそういうゼスチュアをすることは間違いだ、立場は違うけれども非常に明確な見解だと思いますが、そういう際、党代表派遣というものはどういうふうにお考えになりますか。
  67. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 わが党の一部におきましてそういう意見がありますことは、確かに新聞等において報ぜられておる通りであります。しかし私どもは、今日党の代表を派遣するということを、党としてきめておるわけではございません。従って政府としても、現在のところにおきましてはそういう考えを持っておりません。ただこの問題につきましては、最初に申し上げましたような中国側のいろいろな情勢をできるだけ正確に把握して、われわれとしては、われわれの願望である貿易の再開を一日も早くしたいという線とにらみ合せまして、検討して参りたい、こう思っております。
  68. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 この間日華協力委員会の総会が台湾で開かれました。政治関係で非常にひどい申し合せ事項が行われております。その中にはたとえば、金門、馬祖の戦いは自由世界の安全に非常に貢献をしたということ、あるいはまた人民公社などというものは、中日両国の伝統的生活様式及び東方文化と絶対に相いれないという見解を示し、また中日両国の人民生活と国家の安全に対する脅威の来源は、中共政権の中国大陸占拠にあると認めると述べておる点がある。またいかなる政治的条件を含む貿易をも、中国とは行なっていけない。中国不承認の政策を固持しなければならぬというようなことを主張しております。こういうふうな点で、これは露骨な反中国、反共の立場で行われた申し合せ事項でありますが、経団連の会長の地位にある石坂氏が団長として行っておるし、石坂氏と総理とは、また非常にじっこんの間柄でもありますが、政府がこれは民間のやったことだといって黙って放置されてよろしいかどうか。この際中国との今後の関係を考慮して、こういうことは少しまずいとお考えになっておるのか。こういう点についての総理の態度表明も、過去のいろいろないきさつを打ち消すための一つの手じゃないかと思うのですがどうですか。
  69. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 政府としてはしばしば言明いたしておりますように、私は決して中華人民共和国に対して、敵視した政策あるいは考え方を持っておらないのであります。日華協力委員会は御承知のような民間同士におきまして、台湾と日本との経済交流を盛んならしめる意味におきまして、先年来、あるいは東京においてあるいは台北におきまして、開かれておるのでございますが、政府はこれに関与しておらないことは言うを待たないのでございますが、しかし相当有力な財界の人々もこれに参加いたしております関係上、私どもはできるだけそこにおけるところの会議なり、あるいは申し合せ等につきましては、日華協力委員会の本来の目的である日華両国間の経済交流なり、あるいは経済提携なりを深めるような問題に限って話し合われることが、私は適当であると思うのであります。今おあげになりましたこの前台湾で行われましたこの委員会における申し合せ等につきましては、あるいは現在の中国大陸に対する国民政府の側の考え方を多分に盛り込んでなされたものであろうと思うのでありますが、私どもはこの際中国大陸に対する感情的ないろいろの言動や、あるいは問題を刺激するような事柄についての言明等はできるだけ避けることが望ましい。これは政府がそういう方針をとっておるのでありますから、民間においてもそういう線において行動してもらいたいというのが、私ども考えでございます。
  70. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 申し合せの時間が参っておりますから、御注意しておきます。
  71. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 きょうの新聞によりますと、カナダの前の外務大臣のピアソンが、この秋の国連総会で中国の代表権の問題を取り上げたいというようなことを言っておるのであります。私は、中国代表権の問題は有利になりつつある、台湾の議席はだんだん否認されつつあると思いますが、外務大臣として、この秋の総会にこれが議題になった際に、日本政府は一体どういう態度をとられるのか、これをお尋ねしたい。
  72. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 国連代表権の問題は、過去の歴史的事実もいろいろございます。従いまして、現在まだ直ちにこれに賛成するという態度を表明する考えはありません。
  73. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 河野氏が私見として、何かアメリカが承認する一日前にというふうなことを言われたのですが、そういう不見識なことでなく、事は中国の問題、しかも国連においてもほとんど代表権の問題は中国側に有利に解決されるという世界の大勢ですから、こういうことについてはもう少し自主的な態度で対処していただきたいと思うのですが、重ねて一つ
  74. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 外交を扱っておる者といたしましては、決して自主性を失わない外交を展開して参りたいと思っておりますが、問題によりましてはいろいろ歴史的な点もございます。従って自主的にやって、それらのことも考えて現実の外交を展開したい、こういうふうに考えております。
  75. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 日華協力委員会の委員に加わって台湾に行かれた井口さんが台湾の大使に最近なられた。日華協力委員会は民間の仕事だ。しかしその協力委員会がああいうきわめて露骨な反中国的な、総理言葉で言えば刺激的な態度を示した際、それに主役を演じたような井口氏を今度はまた台湾に派遣するというようなことは、私はどうもおもしろくないと思うのです。これは政府でやり得ることですから、私どもはむしろこの際大使は引き揚げて代理大使くらい置いておいて、だんだん台湾との関係を事実上弱めていった方かいいと思うのですが、井口氏を特に任命された事情一つ外務大臣から聞きたい。
  76. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 堀内大使は御承知のように相当老齢でもありますし、長年台湾におられましたので、今回辞意を漏らしておられるので、われわれとしては帰任をされるように手続をいたしたわけであります。後任として台湾に行かれますのは、やはり有力な方が必要だと思います。そういう意味において井口君が適当だと思ってこれを起用することにいたしたわけであります。
  77. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 田中君、この程度で一つ
  78. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 中国の新華社その他の新聞記者を日本国内に入れることについて、政府は今まで一貫して反対の態度をとっておられるのであります。ところが今度社会党の使節団が中国に参りますについては、実に十一社の報道関係の記者が同行することになりました。これは、向うと交渉しました最初は、少し人数を制限してくれという話がありましたが、最後に全員歓迎するということになったわけであります。これはいかにも一方的な交通であります。向うから一人も入れない、こっちからは十一人も行くというようなこと。そこで、私は今後日中関係を打開していく一つの方便として、一つ方法として、中国の新聞記者、報道関係者の入国を許し、その生命と財産の安全を保障し、さらにその円滑な業務の遂行を妨げないというような政府の措置をぜひとるべきだと私は思うのであります。これについて外務大臣に聞きたい。
  79. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 従来とも中国から李徳全女史その他が来られました場合に、新聞記者の方がついて来た例はあるわけであります。今まで絶対に入れないというようにはなっておりません。御承知のように昨年五月から両国の人的交流が行われておりますが、今後再開した場合に、こうした問題はやはりレシプロカルに考えていく必要があると思います。今後そういうことが起れば、そういう意に沿って考えていきたいと思います。
  80. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 使節団が行く際に同行するだけじゃなく、相互主義で向うからもこちらに常駐する、こちらから向うにも常駐する。こういうことで報道関係者の人事交流については外務大臣よろしゅうございますね。
  81. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 過去においてもそういう話がなかったわけではございませんので、国内の新聞記者の人数もレシプロカルの関係で困難な事情かあったわけであります。そういうような具体的な問題をきめて参りませんと、具体的な解決は行えないと思いますけれども、人と人との交流が起って参ります場合に、新聞記者だからいけないという理由はないと思っております。
  82. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 最後に一問だけ許します。
  83. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 岩井事務局長がウルシ、甘グリを日本入れる話を持って帰ってきたのであります。そこでこのことについて外務大臣と通産大臣の御所見がいささか食い違っておるようでありますが、こる際御同席でそれぞれ御答弁願いたいのであります。私どもは、これが直ちに貿易の再開だとは思いません。むしろこれは一時的な救済措置かもしれません。しかしながら、こういうものが入ってきて、特にウルシのごときは、二十万、三十万の国民の生業に関係のある重大な問題でありますから、中国側に対してその好意を謝し、また岩井君の労を多として、これに対して何かこれが円滑に入ることを妨げるようなことはしないでいただきたいと思うのでありますが、どうも外務大臣の御見解は、いささかそういうふうなとげがあるようであります。これは高碕通産大臣のように、一つあっさりこれを受けていただきたいと思うのですが、御両所からそれぞれ御答弁願いたいと思います。
  84. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 通産大臣と違っておらぬと思っております。日本にウルシ業者が二十万人いるということの関係がありまして、ウルシの問題が相当必要である、これは通産大臣と同じように考えております。従って、これが日本に輸入されますことは、私どもも必要であり、輸入することについては、その道が開けますならば、これは感謝していいと思います。ただ問題は、総評というような団体に対してこれを与えるというようなこと自体は好もしいことではない。従って、今後友好関係を持していく上におきましては、どこの国に対しても、私は適当でないことに対しては適当でないと言うことの方が、かえって友好関係を持する上において必要なんであって、適当でないことまで適当であるかのごとき表現を用いることは、かえって中共側に対して誤解を与えると思います。従って、そういうことは適当でないということを私は申しておるのでありまして、これが単に情報程度でありまして、ほかの貿易商社がこれを取り扱うということに何も私は反対しておるのではありません。
  85. 高碕国務大臣(高碕達之助)

    ○高碕国務大臣 ただいま外務大臣がお答えいたしましたことと同様でありますが、日本のウルシ業者が、ウルシがなくて困っておるというときに、全面的の貿易はこれは別として、日本の業者が困っておればウルシをやったらいい、これだけの話になったということは、これは感謝していいと私は存じます。その情報を持って来られたということにつきましては、私は岩井さんに感謝いたしますが、これを取り扱うということになりますれば、これはおのずから別個の問題でありますから、その問題につきましては、ただいま藤山外務大臣がお答えした通りであります。
  86. 田中(稔)委員(田中稔男)

    ○田中(稔)委員 これで質問を終りますが、最後に総理に要望しておきます。今まで総理との応酬の間に、満足な答弁を一つも得ることができなかったことを私は非常に遺憾とします。しかし、聰明なる総理であります。君子豹変という言葉もありますから、一つ中国の内外の情勢をよく調べていただいて、正しい情勢判断に基いて、中国政策で少し思い切った転換をしていただきたい。君子豹変という言葉を特に一つ申し上げておきます。
  87. 櫻内委員長(櫻内義雄)

  88. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 私は総理大臣に、先刻来社会党の委員によって主張されておりますような考え方に、われわれは根本的に反対をしておるわけでありますから、一つそういう立場からわが保守党内閣性格を明確に出していただきたい。それから同時に、世の中にあります疑惑を一掃する、そういう意味において御答弁願いたのであります。  私もこの条約内容そのものにつきましては、少しく研究いたしておりますから、詳しい御説明はいりません。特に世の中の疑惑を一掃し、わが党の立場を明確にするという意味において、安保条約の締結を促進するという意味においてお答えを願いたいと思うのです。  まず第一に、今もここで新聞を見ておりましたが、今度の安保条約、新しい日米防衛条約のできることが、何らかバンデンバーグの決議案と関係があって従ってこれが日本憲法に違反する、こういうことを言っておる向きがあるのでありますが、私の知る限りにおきましては、さようなことはないと思います。ここで論議をする時間は不幸にしてございませんが、憲法違反でないという点もこの際一つ明らかにしていただきたい。またバンデンバーグの決議案に見合う、つまり向うの日本に対する防衛義務に対して、日本の提供すべきものは何かということに関連をして、それは決して憲法に違反するものでないということを明確にしていただきたい。
  89. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私ども、今度の安保条約改定につきましては、大前提として日本憲法範囲内であるということを、アメリカとの間におきましても十分話し合って、この改定に着手したわけであります。従いまして、問題のバンデンバーグ決議そのままにおきましては、あるいはそのままの字句を使う場合において、日本憲法との間の議論が起る余地があると私は思います。しかしわれわれとしては、このバンデンバーグ決議と、われわれが今度作ろうとする日米のこの安全保障に関する相互防衛条約との間におきましては、はっきり日本憲法と矛盾のない、抵触しないということを明瞭にする考えでおります。  それから、日本がこの新しい相互防衛規定において負う、もしくはアメリカ側に対して負うところの義務につきましては、決して憲法に違反して、海外に出兵というような義務を負うものでないことは、きわめて明瞭でありまして、そういうことは絶対にないことを明瞭にいたしておきます。
  90. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 本日の新聞報道によりますと、日本が基地を提供し、あるいはその他のいろいろな便宜を提供し、あるいはいろいろな補給をするということ自体が、何か日本憲法にも違反する。つまりこのバンデンバーグの決議ということを考慮して結ばれたこの条約に、国際的な防衛条約は、たとい日本が軍事的な海外出兵をしなくても、それが憲法に違反するのだ、こういうふうなことを言っている向きがあります。私はさようなことはないと思いますが、重ねてその点もう一回。
  91. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 あくまでも日本憲法範囲内の義務以上は負わないのでありまして、基地を提供するとか、あるいは基地に対して補給のことについて便益を与えるというような事柄は、憲法に違反するものではないと私は信じております。
  92. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 私は全くその点においては同感であります。  次に、今度の条約が締結されることによって、世の中には、むしろ日本は戦争に巻き込まれる危険性がふえてきたのだ。アメリカとの相互性によって、日本は非常に戦争への危険性に追い込まれたというようなことを言っている向きがあるのですが、むしろそうではなくて、先刻来総理が指摘しておりましたように、今まではアメリカ軍が勝手に行動できたことに対して、今度は事前協議という制約を与えたわけでありますから、まず戦争への危険性はこれによって減少するのだ、こういうことを一つ総理の口から明らかにしていただきたいと思う。
  93. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私はしばしば説明いたしておりますように、今度のこの新条約によりまして、日本が負うところの義務の範囲は、現在の安保条約以上に出るものではございません。むしろ対等立場において日本自主性を認めて、従来アメリカが一方的に、何ら日本意思にかかわらず行動し、その他装備するあるいは米軍が使用をするというようなことが、今後におきましては、事前日本と協議をするにあらざればできないということを明瞭にするわけでございますから、戦争の危険が増大するというようなことは、私は何ら根拠のない議論であると思います。
  94. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 一面またこれによって日本防衛体制は強化されなければならぬと思いますが、総理は今度の新しい条約によって日本自体の防衛は強化される、こういうようにお考えであろうと思いまするが、どういう点においてそういうことをお考えでありますか。
  95. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 日本自体の防衛につきましては、本来この日本の自衛隊を国力に応じて増強することにおいて、一次的には日本の安全を保障していく。しかし国際情勢から見ましてそれはできないわけでありますから、日米関係におけるところの新条約に基いて、今後は日本が他から侵略された場合において、自衛隊において防衛するのみならず、アメリカ日本の安全を保障し、防衛する義務を条約上明確にすることによって日本の安全は強化される。あくまでも日本侵略された場合、現在の安保条約におきましてはそういう義務が明定されておりません。これを明瞭にすることによって日本の安全感というものが非常に増大する、こう思っております。
  96. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 次に日本に起りました第三国の教唆もしくは干渉によって大規模内乱や騒擾が起ったというときに、現行安保条約規定によると、日本軍からの要請に応じてはアメリカ軍も出動することができるようになっておるわけなのでありますが、この項目が削られるということになりますといろいろな不安もあるということで、わが党内においてもだいぶ、ほんとうに日本の治安などを考える向きから真剣に考えている方もあるようでありますが、これは先ほど総理の説明によりますと、そういった第三国の援助とかあるいは干渉によって起った大規模内乱というものは、これはむしろ直接侵略と同様にみなすべきものであるというお考えのようでありましたが、私はもとよりそういう場合におきましては、安保条約の上において何らの規定がなくても、日本政府の要請に応じて、日米が友好関係を続けておる限りにおいては条約とは関係なく出動してくれると思います。しかしながら規行の安保条約においてはこの内乱出動の規定があるわけでありまするから、今後結ばれまするところの新しい条約におきましても、そういう場合の大規模なしかも第三国からの間接的な侵略を背景とした場合におきましては、直接侵略の場合と同様にみなすというような、たとえばNATOに対するアメリカの解釈のようなものを相互の間において、条約文そのものには明記しないまでも何らかのお互いのアンダスタンディングを持つということが必要ではなかろうか、たとえば文書を交換するとかあるいはその解釈を同じゅうするということは必要ではなかろうか、従ってぜひともそういう項目をどこかに設けていただきたい。条約の中にはなくても解釈を統一するというような点においての特別な配慮が必要ではなかろうか、また国の今日の治安状況などを私考えまして、一片国を憂える者ば当然考えなければならぬことだと思うのでありますが、いかがでございますか。
  97. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 国内の治安の問題に関しまして、現在の日本の治安状況やまた将来いろいろ起り得る場合を考えまして、治安態勢というものが完全であるかどうかにつきまして、これは日本内部の問題として研究すべき問題が多々あると思います。そうして日本独立国であり、一応のこれだけの国力に応じての自衛力を増強している現在から考えますと、一応国際条約の表面に内乱条項というようなものを、現行のような規定を置くことは、これは日本自主性あるいは独立国立場からいって適当でないと思います。この意味において内乱条項はこれを削除したいと考えております。しかしながら今お話の国際情勢を見ますると、また世界各地に起っている現実の事態を見ますると、この第三国なりあるいは外部からの侵略とその国内におけるところの内乱というものが結び合わされて、相当規模に行われるような事態も現在あるわけであります。こういう場合においてどういうふうに処していくかという問題に関しましては、これは十分に国民が納得し安全感を持つような仕組みを考えておく必要があることは、佐々木委員の御指摘の通りであります。これはそういう事態に関して、あるいは国際連合自身の働きもだんだん強化されていくことでざいましょうし、あるいは日米が友好関係の基礎に立っている以上は、過去におきまして中近東における事態を見ましても、何らの条約がなくても、その国の平和と安全を保持するためにいろいろな軍事的援助というようなことも行われております。こういうことを考えてみますと、私は決してこの条項を取ることによって国民が不安を考える必要はないと考えます。なお今佐々木委員の御指摘になっているような、あるいは解釈の問題であるとか、あるいはこの運営の問題についての了解事項等についてどういうふうにするかというような問題につきましては、十分一つ検討をして参りたいと思います。
  98. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 安保条約改定に対してわれわれ与党内部におきましてもいろいろ異論のあった点が、大体二つくらいにしぼられて参りました。一つは今申し上げました内乱出動の場合、これで日本は安全だろうかというような点と、もう一つ防衛区域の問題にだんだんと問題点がしぼられて参ったわけであります。そこでほんとうに日本の治安などを心配しておりまする諸君に、現行安保条約においてはそういう規定があるのだが、今度それがなくなってしまうことには一抹の不安があるのだという考え方があるのでありまするから、私はそういう第三国の援助による大規模内乱というものは、これは当然直接侵略とみなすべきである、こういう考え方に立っております。今度の条約を締結される場合におきましては、何らかのそういう双方の合意点に到達して、了解事項というものを明文に書こうと書くまいと、そういう了解事項に到達しておくということが、ぜひとも私は必要ではなかろうかと思う。その点は、ただ単にわが党委員を納得させるのみならず、日本全体の国民に対しても非常な安心感を与えるものであると思うのです。現在の安保条約がその平等性からいうならば、一面屈辱的な条項のように思われるかもわかりません。日本に起った動乱を第三国の軍隊によって鎮圧してもらうということは、民族的な感情からいったならば、これは確かに屈辱的なものでございますけれども、さりとてまた一面考えますると、万一の場合にアメリカが出てくれるのだということによって暴動の発生を未然に防いでいるということにもなるし、また国民もそれによって安堵しておるという向きもあるわけでありまするから、今度の新しい条約にはぜひともそういう了解事項というものを何らかの形において取りつけていただくように強くお願いしておきます。及びこれに対する御所見も承わっておきたいと思います。
  99. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、十分国民が安心するように国内の治安態勢を整備することとともに、安保条約改定に当りましても、あらゆる面から検討いたします。
  100. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 ぜひともそれはお願いいたしたいと思います。  次にもう一点は、いわゆる条約適用区域と申しますか、この問題でありまするが、私はここで今までの政府当局の御説明についてやや納得しかねるものがあるのであります。というと、ややもすると沖縄小笠原入れるか入れないかというようなことを非常に副次的、第二義的に考えているという傾向がありはせぬかと思います。私はこの間も沖縄に行って参りましたけれども沖縄九十万の国民もこれは日本人で、日本復帰を熱願いたしておる。しかも戦争の末期におきましてはあの「ひめゆりの塔」とかあるいは「健児の塔」によって象徴されるように、十数万の島民が血と肉を捧げて本土の防衛に尽したところなんです。それが今日もなお日本本土への復帰を熱願しておる。これらの人々の多くは、特に人民戦線派は別でありますけれども、大多数の者は当然この防衛区域に含まれることを期待しているのであります。そこで私は、単にこれを含めたなれば日本が戦争に巻き込まれるからいけないのだというような御説明では、ちょっと納得しかねるのです。一寸の領土といえども日本の領土であり、日本国民のおるところに対しては、場合によっては国家の運命を傾けてもその防衛の責任を負うということが独立国であります。でありますから、そういう観点からいうならば、私は今度の条約におきまするところの適用区域というものは少くとも日本の領土、日本領域、こういう大前提に立つべきであると考えます。しかしながら現実には北の方の歯舞、色丹、並びに択捉、国後の両島につきましては、これは今日のところまだ占領の継続中でありまして、最終的な領土権の決定を見ておるわけではありません。従って現実には日本主権が及んでいない。だからこれは日本防衛しようとしてすることのできない、やむを得ない事情にある。また南の力の沖縄小笠原につきましては、これは北の方とはだいぶ立場は違いまするが、平和条約第三条によって日本施政権アメリカにゆだねておる、こういう関係でありますから、潜在的な主権はあるといたしましても。現実的な日本主権は及んでいないのであります。原則的にいうなれば、この防衛条約におきましても、沖縄小笠原も千島も全部日本領土というものは、防衛の区域に含むべきであるという大前提に立つ。従って、いつの日にかかりに日ソの平和条約ができて、歯舞や色丹あるいは国後、択捉が日本に返るならば、当然新しい条約の中に含まれるべきである。また沖縄小笠原につきましても、アメリカ日本に対して施政権を返還した暁においては、当然新しい条約の適用区域の中に入るべきものである。こういうものの考え方に立って、日本国民を説得するという方向に進むべきであって、単なる利害、打算の関係から言うからして国民は納得しない。われわれも民族的共感を覚えない点があるわけなんで、この点は一つ総理大臣もよくお考えになって、今私が考えておりますような考え方に対しましては、いかようにお考えになっておるか、一つお願いしたいと思います。
  101. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 日本の領土につきましては、いわゆる沖縄小笠原が今、日本の完全なる領土としてわれわれが行政権を行うことができないことは非常に遺憾であります。この返還を常に求めておるわけであります。そういうことが、同時に北方の地域についても、少くとも歯舞、色丹あるいは国後、択捉に対して、日本は強くこれを日本国の領土として主張し、またわれわれも一貫してソ連側にそれを主張してきております。しこうして、今度の安保条約日本の領土に限る、いわゆる日本領土に対して直接侵略が加えられたときに、日米が共同してこれを防衛するという体制をはっきりする、この場合におきまして、将来これらの地域が完全なる日本の、われわれの願望しておるような日本領域に返ってきまするならば、この条約があります限り、条約で言う防衛地域となることは、これは当然だと思うのです。それをどういうふうに条約に表現するかということにつきましては、なお検討を要する点がございますので、研究をいたして参りたいと思います。
  102. 佐々木(盛)委員(佐々木盛雄)

    ○佐々木(盛)委員 これで終ります。最後にお願いしておきまするが、どうか私の今申し上げましたような考え方、大前提に立って、今度の条約改定の背骨をなすものは適用区域の問題であると考える。沖縄小笠原の問題は、この条約改定のアクセサリーではありません。むしろこれがバツク・ボーンであるというように私は考えております。そういう観点に立ちまして、りっぱな原則論を、社会党の諸君たちとは異なった観点から対決のできる大きな大黒柱というものを打ち立ててほしい。これなくしては、今度の安保条約改定につきましても、国民的な共感を得ることがむずかしいのじゃなかろうか。そういう点をぜひともお願しておきたい。  最後にもう一つだけ承わって、私の質問を終りますが、最近社会党の諸君も言っておられましたが、わが党内においても、あるいは大臣の間においても、中共政策というものに対しまして、いろいろ意見の不一致のようなところもあるようでありますか、私は社会党の諸君たちと見解を異にいたしまして、政治的な条項を含んで——その政治的条項とは、二つの中国を認めないという、つまり中共政権の承認、国民政府というものを否認するという、こういうことにつらなったところの政治的了解なくしては、中共側は日本との貿易や経済提携に応じないことは、日本の社会党の諸君も先刻来るる述べておりまするし、また中共側の首脳部もそのことを明確にいたしております。われわれ保守党の立場から申しまして、しかも今日の国際情勢、自由主義陣営との経済協力提携ということから申しましても、そういう政治的な条項を含んでまで中共の膝下にひざまずいて、一片のウルシをもらい、甘グリをもらわなければならぬという理由は少しもなかろうと私は思うのです。従って、われわれは社会党の諸君とは立場を異にし、政治的な条項を含んでの経済的な提携というものは、われわれは応じることができないのだという態度をむしろ明確にする必要がありはしないかと思いまするが、ついては、代表を送るとか大使を派遣するというようなことがありまするが、当面どういうような態度で臨むのだというわが党の態度というものをこの際明確にしてもらいたい、それで終ります。
  103. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 中共に対する考えは、従来わが党におきましても、あるいは政府におきましても、その根本は明瞭でありまして、決してわれわれはこれに対して非友好的な考え方、あるいはいわんや敵視するというような考え方をとるものでないことは、しばしば言明した通りであります。しかし現在の状況におきましては、貿易やあるいは文化の交流というようなものを、いわゆる政治的なその国の承認というようなものと切り離して、これらの問題は進めるけれども、政治的な承認問題というものについて、今日これを承認するとか、正式な外交関係を開くとかいうような政治的関係を開くべき段階ではないというこの考えに立って、両者を分けて進めていこうというのが、わが党が考えておる中心の問題であります。この点に関して、最近中共側におきましては、政治と経済は分離すべきものにあらず、一体としてなにするというような意見もいろいろとあるようでありますが、現に中華人民共和国が他の国々と交渉をしておる場合におきまして、政治と経済を、これは別のものだ、分けてやるのだというふうな交渉をいろいろよその国とはやっておるようであります。現にニュージーランドと中共との関係につきまして、ナッシュ首相の話によりますと、中共ははっきりニュージーランドに対しては政治問題と分けて貿易の関係を話を進めており、今日においてこれを不可分と思ってやる考えは持たないということを明瞭に中共からも言っておるようであります。私は実際問題として、この貿易を進め経済を進めるということは、日本国民も望んでおり、われわれも従来からそれをやってきておったのですが、しかしそのために政治的の関係を今日開くという段階ではない。従って、それと結び合せて不可分にもしも考えておるとするならば、この考えはぜひ私は中共側においても改めてもらいたい、こう思っております。
  104. 櫻内委員長(櫻内義雄)

  105. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 最初に岸総理にちょっとお願いしておきますが、外務委員会は久しぶりに重大な時期に、総理を迎えて熱心に討議しておるわけですが、実は与党の方が党内で論議すべきようなことを質問なすって、時間をとり、時間が足りなくなった。きょうは取りきめは二時間見当ということであったのですが、伺いますと、きょう午後は外交閣僚会議のようですから、藤山外務大臣、伊能長官もあとまた少し居残りしていただきたいと思っておりますし、総理も、こういうまたとない機会でございますから、少し時間を延長していただくことをお願いいたします。委員長、その点大体御了承のようですから……。
  106. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 なかなか時間は……。
  107. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 無限に延ばそうというのじゃないのですから、その点お含み置き下さるようお願いいたします。
  108. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 時間がないから……。
  109. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 現在懸案中の安保条約改定問題についてお尋ねをいたしたいのであります。内容についても後にお尋ねいたしたいと思いますが、最初に私は、条約または国際取りきめに対する政府の態度、それから改定の予想されておりまする条約内容憲法との関係について、政府の態度を先に明確にしておいていただきたい。その点について三点ばかり最初に総理にお考えをお尋ねいたしたいと思います。  最初にお尋ねいたしますのは、米軍の核兵器持ち込みに関する日米間の現在までの取りきめについてでございます。これは言うまでもなく、安保条約そのもの条項からいきますると、日本基地におるアメリカ軍が持ち込む兵器または装備について、日本がこれを拒否することばできない、制限を加えることはできない、すなわち同意は条件になっていない、こういうことになっているわけです。ところがそれに対して政府の最近の安保条約改定の必要を説かれる理申の一つに、そういうことであるから今後の新しい条約においては、協議事項の中に在日米軍の装備の問題も取り上げる、すなわち日本の核兵器持ち込みの同意なくしては、アメリカ日本に核兵器を持ち込まない、日本意思は核兵器を拒否する考えである、だから国民は安心しなさい、こういうことを言っておられるのでございます。実はこの核兵器持ち込み問題については今までも特に論議が行われまして、昭和三十年の外務委員会ほか国会におきまして論議されたところによると、当時の重光外務大臣が、これは向うと話し合っておるから、われわれはこれを拒否する権利を持っておる、すなわち同意を条件としてのみ持ち込むことになっておる、それに同意せざる以上は持ち込むことは絶対にないのだ、こういう説明をしておられるのです。ところが最近外務省の、特に外務大臣の説明によりますと、その点は非常にあいまいになっていて、現在の安保条約並びに日米間の取りきめだけでは核兵器持ち込みの危険があるんだ、これは拒否することができない、拒否することが非常に困難な内容になっておる、だからこそ今度の新しい条約で拒否権をつけた協議事項の中にこれを入れるんだ、こういう説明をしておられる。われわれはその点に対して、政府国際取りきめに対する所信が非常に御都合主義になっておることを憂えるものですが、その点についての総理のき然たる態度を一つお示しいただきますようにお願いいたします。
  110. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私は従来、日本の自衛隊を核装備しない、また米軍の核兵器持ち込みを認めないということをしばしば声明いたしております。ただそれが問題になりますのは、一体条約上どういう根拠かあるかという問題であります。これは条約上の根拠がないことは言うを待たないのであります。しかしながらかつて重光外相のときにも、口頭でそういうふうな問題については話し合いをするというふうなことが言われておったようでありますし、また私とアイゼンハワー大統領とのあの共同声明の中に盛られて、そして作られました日米共同委員会というものにおきましては、これらの問題について日本国民の感情なり利益というものを十分考えて、安保条約から生ずるところのあらゆる問題を検討するということになっておりまして、事実上は日本意思に反してアメリカが一方的に持ち込んだところの事実は、過去においてないのであります。しかしながら、これは国民のなにから申しますと、従来しばしば国会においても論議された通り政府がいかにそういうことを声明しても条約上の根拠がないじゃないかということは、これは否定できなかったと思うのです。従ってそういう点において、今度の改正において明確な条約上の協議事項入れることにおいて、これに対する国民の安心感なりまた日本の、私が声明しているような意思が十分に実現できるような条約上の根拠を作ろう、こう思っております。
  111. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そういう経過をお尋ねしているのではないのです。今までの原子兵器持ち込みに関する日米間の話し合い並びに合意は、条約と同様の効力を持っておるとお考えになっておるのか。そうではないと最近外務大臣は言っておられるから、そうではないと政府は解釈しておられるのか、どちらですかと聞いておるのです。あいまいな答弁は迷惑でございます。
  112. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私は条約上の権利義務というものは、条約にはやはり明定されなければならぬと思います。従いまして口頭であるとか、一時の声明であるとかいうものに盛られた内容条約そのものの内容と同様な権利義務を国際的に生ずるものでないと私は思います。
  113. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 昭和三十年の国会においてあなた方の継承されておる保守党の内閣の重光外務大臣は、こう言っておられるのです。国家代表間の合意が口頭によって成立し、かつそれが法的拘束力を持つことは、原理的には文書の場合と同様である、そういう実例も少くないということを明言しておられるわけです。すなわち口頭をもって合意に達した取りきめは、条約に何ら劣るものではない、不安定なものではない。実は当時われわれはその点は不安であるから、合意に達しておるなら交換文書にしておいたらどうだと言ったんですが、その必要なしということを言い切っておられるわけです。この考え方総理もお認めになるか、お認めにならないか。この重光外務大臣の答弁に対してあなたは賛成か反対か、これを修正しなければならぬものと考えておるのか、それをお伺いしたい。
  114. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 今お読みになりましたように、外交上権限ある二国間あるいは多数の国の代表者におきまして口頭できめられたもの、あるいは条約という形式をとらずにきめられたものであって合意の成立したというものについては、原理的にはそういう責任があるという重光外相の当時の言明というものは、外交的にそういうことが言えるだろうと思います。しかしながら私が申し上げておるように、それでもって国民的にあるいは形式的に考えますというと、実際問題からいえば、条約に明定したことと、そうしていわゆる原理的といわれる権利はそういう原理でありましょうが、実際問題としては私はおのずからそこに差異があると思います。
  115. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 まことに重大な発言でございます。わが国に例をとりますならば沖縄小笠原潜在主権の取りきめ、合意、これはどういうことですか。条約も文書も何もありません。平和条約第三条において明確にしておることは何かというと、国際信託統治に付する、これが終局的な決定です。それまでの間においてアメリカが暫時的にこれの行政権を行う、これだけのことなんです。潜在主権というようなことはどこにも認められていない。ところがあのサンフランシスコ条約のときに、吉田さんが一方的に演説をぶった。これに対する潜在主権があることを日本は信ずる。それに対して締約国である五十何カ国かの一国であるアメリカだけが、アメリカの代表ダレスがそのときに日本沖縄小笠原に対する潜在主権アメリカも認めたいと思うという演説をぶっただけの話。何も話していない。この場合においては昭和三十年にアリソンと重光さんがちゃんと話しておる。文書にはなっていないが、話しておる。そうすると沖縄小笠原における潜在主権の話合いはだれも疑わないとあなたはおっしゃいました。どこに根拠がございましょう。それは一片の重光・アリソンの合意に達した口頭の約束どころか、それよりはるかに下です。国際慣例からいっても何らの効力も持たない、吉田さんとダレスの希望的演説にすぎない。そんなものをもって潜在主権に対する疑いがないという。ところが核兵器持ち込みには疑いがある、だから安保条約改定に賛成しろ、そういうおどかしをして国民をだますというような、こういうことでは今後国際取りきめに対する政府の態度として、御都合主義でそのときそのときで勝手な解釈をいたしますと、信用を害するのみならず、内閣がかわりましたときに、はなはだしく迷惑をこうむる。どういうことですか。潜在主権に対する条約上の根拠、国際法上における取りきめの根拠。核兵器持ち込みの同意条件は、それ以上の効力があるとお考えになっておるか、あるとすればどこにあるか明確にしていただきたい。
  116. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 先ほど申し上げましたように、両国の権限ある者の間における合意に到達したものは、合意としての効力があり、原理的に国際的ななににおける権利義務というものは、到達した合意によって両国が誠実に行うべきものであると思います。ただ御承知通り、私形式的にという言葉を言い、実際問題ということを申し上げておるのは、条約に明らかに規定され、そうして二国間もしくは数カ国で結ばれた場合におきましては、おのおの大ていは批准というような形式を踏んで、そして国会の審議を経て承認するということになっております。そういう場合における条約上の権利義務とそういう両国の間で合意に達したところのものとの間における形式的な効力の差異は、依然としてあると私は思います。しかし合意として到達したところのものに対して、国際的に両国がその合意を尊重してこれを守っていくということは当然のことだろうと思う。沖縄……。
  117. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 私の質問に対する結論だけ明確にしていただきたい。
  118. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 沖縄潜在主権日本が持っておるということにつきましては、日米間においてしばしば両国の首脳部において、もしくはそれぞれ権限ある人々によってそういうことが論議され、その点について何らの異論を生じてきておりませんし、また過去におきましても現実にあのサンフランシスコ条約地域におきましては沖縄小笠原と同じにあったところの奄美大島を日本米国が返しておるという事態から見ましても、私はやはりこの点において何らの疑いがない、こう思っております。
  119. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 はなはだ三百代言的な御答弁で私は重要な御発言だと思うのです。しかもサンフランシスコ条約安保条約日米二カ国間——サンフランシスコ条約日米二カ国間ではありませんよ。黙認しているだけであって、反対の権利は放棄していないのです。つまり沖縄に対する潜在主権があるということを日本が希望の演説をぶち、ダレスがそれを認めるような演説をぶって、そこに合意の形式はない。それに対して今まで他の数十の締結国が黙っておるというだけであって、それに同意をするとか、またはそれに対する異議の申し立ての権利を放棄するという声明は行われていない。まして今おっしゃったように、明確なことは条約よりは下である。しかも核兵器持ち込みの合意の取りきめよりはさらに効力の薄いものであるということをあなたは証言しておられる。それ以上のものであるとするならば、あなたの方から反対の論拠をあげて説明をしていただきたい。
  120. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 一つの明確ななにとしましては、私とアイゼンハワー大統領の共同声明の中にもはっきり「大統領は日本がこれらの諸島に対する潜在的主権を有するという米国立場を再確認した。」ということを文書においても明らかにしておりますから、その点においては私は何ら疑いないと思います。
  121. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 この問題は大事ですから、時間がありませんのであとでまた外務大臣または外務当局にお尋ねすることにして前に進みたい。  次に問題になりますのは、今後予想される新条約におきましては共同防衛の義務を持とうとしておる。そうすると今までの自衛隊の性格が非常に変ってくる。日本国内だけを守るというものから領海または領域外にまで場合によれば出て戦闘行為に参加するということになる。そのときにアメリカ日本の間で話があった場合に、日本は単なる防衛の戦闘行為ではなくて、国と国との間における戦争状態、交戦状態に入らざるを得ないという判断をした場合、一体日本は交戦権、すなわち宣戦布告をする権利は現在の憲法では全然想定しておりません。ところがアメリカは宣戦を布告することがあるでしょう。アメリカは宣戦の布告をいたしますよ。ところが日本の軍隊は事実問題としては共同防衛の義務を負っておる。つながれておる。今度の予想される条約の中においては、おのおの自国の憲法の手続に従って云々と書いてある。特にアメリカが韓国との条約、台湾との条約等におきましてもこれを書いたのは、宣戦布告権はアメリカにおいては国会にある、それがその手続に従ってという意味であって、そのときに日本においては宣戦布告の権限はございません。おかしいじゃありませんか。そうであるならば、そういうことまで予想した、事実上の自衛戦闘行為でなくて、そういう戦争状態に入った場合に宣戦布告権を持たない交戦軍隊というものは、意味がなくなって参る。それはあとで伊能長官にもお伺いしたいが、宣戦布告権を持たない、交戦権を持たない国の軍隊の一体国際政治または国際法上における地位というものは非常に不安定であり、不利益になるのです。そうであるならば、憲法と抵触し、憲法改正が、こういうような相互防衛協定に調印する前の前提条件であると思いますが、どうですか。
  122. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私は、今後の安保条約改定において自衛隊の性格が少しも変るものではないと思います。従って日本が不当に侵害された場合において、日本は実際上その侵害を排除するために自衛隊が現在行動することが国際上どういう意義になるかということについては、いろいろな議論もあるようでありますが、それと同じ関係だと思います。ちっとも変りはないと思います。従って憲法改定などは必要はないと思います。
  123. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうするとお尋ねいたしますが、一方アメリカが宣戦布告をする、日本は布告できませんよ。布告ができなければ戦時国際法の特権が日本の軍隊だけないわけです。アメリカの軍隊はあります。アメリカの軍隊には戦時国際法の特別の権利がある。たとえば公海内における第三国の船を抑留する権利とか俘虜の権利とかいろいろ出て参ります。ところが日本の軍隊にはそれがない。それは一体どういうことになりますか。まるで論理矛盾したというか、支離滅裂の相互防衛協定になっておる。
  124. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 それは日本憲法の特異性からくるものでありまして、現在といえども日本が不当に侵害された場合に自衛隊がこれと事実上実力を行使し、交戦状態に入った場合において、いわゆる日本憲法規定において宣戦の布告ができない。そうすれば一体国際法上のいろいろな交戦に関する権限を持ち得るかどうかということは、日本憲法においても議論があるところでありますが、それとちっとも変らないですよ。あなたは何か今度の日米安保条約改定によってその地位が変るようなお話でありましたけれども、現在におきましても、日本が不当に侵害された場合においては自衛隊は立ってこれを防衛する。アメリカも今の安保条約規定に基いてやりますが、しかし日本の自衛隊の持っておる権限というものは、今の憲法で制約を受けておりますから、それは今度の改定においてちっとも変るわけではないのであります。
  125. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 穂積君、大西君が何かお約束で一、二お尋ねしたいというのですが、いかがですか。
  126. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 ちょっと総理に……。さっき言ったように不当に引き延ばしをやるのではないのですから、総理も重要な点ですから所信を明らかにしていただきたいと思います。この点は大へん大事だと思います。総理もそうお考えになるでしょう。今政府の解釈は、事実上侵害の行われた場合に、今の自衛隊で事実上の防衛行為はできる、それだけは当りまえでしょう、それに関する限りは変らない。ところがアメリカは交戦権を持っておる。ところが日本の軍隊は持っていない。宣戦布告の状態に入らなければならないような考えをお持ちになったときに、宣戦布告をして戦時国際法の特権を日本の軍隊が持つということができないで、それではおかしいじゃないですか。そうなると、その場合において現在の自衛隊においても交戦権としての戦時国際法の特権を持っているとお考えになっておられますか。
  127. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 今の問題は、穂積君一つよく考えていただきたいと思いますが、現在の日本の状態と、このわれわれが改定しようとする安保条約によって何ら事態は変らないのです。むしろ根本的に言って日本が不当に侵略された場合において、日本がそれを実力を行使して排除する、その場合において戦時国際法の特権も持たないというのはけしからぬじゃないかという議論は、おそらく憲法改正論者が言う議論です。現行憲法に対しての一つの議論であると思う。しかしそれは別の、憲法改正を必要とするかどうかという問題で解決されるのでありまして、現在の安保条約並びに自衛隊の持っておる事態と今度の安保条約の相互防衛の形にしました場合との間において、何らその間に差異は生じないということだけを明瞭にいたしております。
  128. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そこで問題は、あなたは語るに落ちるというか、条約改正すると、今の憲法がじゃまになってくる、抵触する内容があるからです。そこで憲法改正するてこ入れになる。そこで条約優先論というようなものが、改憲論者の一部から不当に出てくる。そういう危険がわれわれは感ぜられるわけです、政治的な含みとしては。こういう条約が出てくる。この内容を実行するためには、どうしても今の憲法改正しなければならぬということで、安保条約、この改正された新条約がてこになって、それをてこに使って憲法改正国民に迫る、こういう危険が感ぜられるからこそ、私は事前政府の方針なり条約憲法との関係について、確固たる考えを伺っておきたいという趣旨なのです。その点は誤解のないように願いたい。あなたがその当時まで永久に政権を持つ持たぬは別として、重要な問題ですから国民に対してちゃんと明確にしておいていただきたい。
  129. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 憲法改正の要否につきましては、憲法調査会におきましてあらゆる面から検討いたしております。私はこの安保条約改定というものをてこにして、日本憲法改正しようなんということをかつて考えたこともございませんし、そんな憲法改正というものは問題じゃないと思います。憲法改正の必要ありやいなや、及び改正するとして、どういう点をどう改正するかということは、広く日本国民考え方に問うてきめられるべきものでありまして、決して今お話しのような点は御懸念には及ばないのであります。
  130. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 この際大西正道君に一、二問発言を許します。
  131. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 もう一言だけ……。それではちょっと委員長に議事進行としてお願いしておきたいのでありますが、総理が済んだあとで、外相と長官が来ておられますからちょっと御質問したいと思います。
  132. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 いや、それば次会ということでお許し願います。大西正道君。
  133. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 白熱した論議で、私もそういう問題についてお聞きしたいのですけれども、時間がわずか十分そこそこですから、しごく簡単にきょうは申し上げてみたいと思います。  私のお伺いしたいのは、ちょっと問題が大きいのでありますが、世界連邦政府運動の問題と、それから安保条約の若干の問題、それから日韓問題、この三つに限定したいのであります。端的にお伺いいたしますが、現在の国連につきましては、国連中心主義をとっておられまする総理といえども、非常に問題点があるということをたびたび言っておられるのでありますけれども、この国連の憲章を改正して、そして世界連邦政府構想に近づけるというこの運動が、世界的にも国内的にもかなり高まっておるということは、総理は御承知通りでございます。あなたと笠信太郎氏との新年の新聞における座談会にもその片りんがうかがわれたし、また過般平和アッピール七人委員会、すなわぬ下中弥三郎、湯川秀樹等の一流の人たちのメンバーをもって構成するこの委員会との懇談でも、あなたはその席上におきましてこの趣旨に賛意を表されたと私は聞くのであります。まことにけっこうなことであると私は思いますけれども、この世界連邦政府運動についての岸総理の信念を端的に一つお伺いいたしたいと思います。
  134. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私は世界の恒久的平和を願う立場から、世界連邦という考え方、この思想に対しましては、賛意を表する次第であります。ただ現在のそれについて、国連というものの中心にそういう機運を盛り上げ、また実現をはかっていくことが望ましいと思いますが、今直ちに国連の憲章を改正するというまでは国際的な機運はまだ盛り上っておらぬと思います。方向として、私はそういう方向には賛成でございます。
  135. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 まだ盛り上っておらぬと言われるのは、若干認識が不足ではないかと私は思うのであります。すでに国連憲章の百九条によりまして、十年の後、すなわち一九五五年にはこの国連憲章を改訂するための全体会議を持つということが規定されております。それによって一九五五年に会議が持たれるための準備が進められたのだが、時期尚早として二年後に持ち越されて、一九五七年にまたもやこれが持ち越され、ことし一九五九年にこの全体会議を持つかいなかという討議が国連総会において問題にされるのであります。従いまして、この機会に、あなたの意思がさようであるならば、すぐ出先の国連大使を通じて、憲章を改正して、一方拒否権だとか旧敵国だとか、わが国にとってもまことに好ましからざる条項がありますから、これを修正すると同時に、さらに一歩を進めて世界連邦憲章の構想に近づけるための努力をすべきではないかと私は思うのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  136. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 先ほど私の根本的な考え方につきまして申し上げたのでありますが、具体的にどういうふうにこれを進めていくかという問題に関しましては、国際的の機運がそこまで盛り上っておらないということは、今お話のようにそういうことが数回延ばされて今年に至っておるという状況からも、私はそう思うのでありますが、そういう国際的の情勢等ともにらみ合せて、具体的にわが代表としては国連においての活動なり行動をすべきものだと思います。十分に情勢を見て、私としては、方向としてはそういうふうに進んでいきたいと思いますから、そういう機運を盛り上げることや、あるいはそういうことに協力し、もしくは努力するということは考えていかなければならぬと思います。ただ具体的に本年の国連総会においてどうするかという問題につきましては、なお検討を要るすと思います。
  137. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 言葉を重ねまするが、国際的にはそのようでありますが、国内的には御承知のごとくすでに岡山、長野等の五つの府県、それから姫路、岡山というような百四十五の都市が平和都市宣言をやっております。近くこの団体は全面的な署名運動を展開する、こういうふうな態勢が盛り上ってきておるような状況であります。こういう事情をよく把握なさいまして、ミサイルの発達の現段階において核兵器の飛躍的な発展のこの段階におきまして、私どもは大きな理想としては、やはり世界を一つの法の秩序のもとに置くというこの崇高なる世界連邦政府構想に対して熱意を傾ける必要があると私は考える。この点につきましてなお一そうの総理の研さんを望むわけであります。従いまして、このような各都道府県におきましても市町村におきましても、世界連邦都市宣言が着々と積み重ねられました暁には、日本国会におきましても平和国家宣言ということも必要によってやるべきじゃないか、そうして、世界においてただ一つの原爆の被害を受けた日本民族としては、一歩進んでこの構想に挺身する使命があると思う。また、その先頭に立つ岸総理の責任があると私は考えるのでありますが、簡単にその決意をもう一回お伺いしたい。
  138. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 私は、先ほど申し上げました通り理想としてそういう考えを従来持っておりますし、従ってそういう運動に関しましては常に共鳴をし、あるいはこれが推進については従来いささか努力はしてきております。今後におきましてそういう方向に進んでいくということは望ましいことだと思います。ただそのためにはまだいろいろな国内において、たとえば憲法改正も必要でありましょうし、いろいろな問題が起って参りますが、しかしあくまで世界人類の一つの悲願とし、希望としてそういう理想を持ってその方向に国際的な機運を盛り上げていくことは望ましいことだ、努力すべきことである、こう思います。
  139. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 次に安保条約に関して一点だけお伺いいたしておきます。  これは現行安保条約の第四条の解消条項であります。廃棄条項であります。この点につきましては、私ども現行法は国際的にも異例の形をとっておる。すなわち安保条約の前文においては、日本がお願いをしてアメリカの軍隊に来てもらっておる、こういう形をとっておるのに、この廃棄条項においては日本がこれを廃棄してくれと解消の意思表示をしましても、相手が応諾をしなければならぬ。双方合意の上でなければこの条約の解消ができないという仕組みになっておるのであります。これは条約全体の統一的な観点から見ましても、私はまことに矛盾であると思う。また他の例を見ましても、こういう例は私はないと思う。この点につきまして私がかつてあなたに質問をいたしましたところが、この質問に対してあなたはこういうふうに答えられた。現在の安保条約の廃棄条項は私は適当でないと思います。今度の新しい中におきましては、これを適当に、いろいろ他の例もございますし、国際慣例その他の例も考え、その立場を十分考慮して適当な条項にこれを改めたいと思います。こういうふうに言っておられるのであります。私どもは当然この新しい条約にはここが大きく改定せられるべきだと考えておりましたが、藤山外相の藤山試案なるものによりますと、これにつきましては期限を十年と限り、そして一年間の予告期間をもってこれが終了する、こういうふうに藤山構想なるものが発表されておるのでありまするが総理大臣はこういうふうな廃棄条項、解消条項において新しく条約を修正しよう、こういうふうに考えておられるのですか。
  140. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 大体現在の何につきましては、今御指摘のような解消条項というものが非常に異例になっておりますが、適当な有効期限を付し、そして一方の通告によってこれをなくする。他のこの種条約に見る例をとることが適当である。ただ期間を十年にすることの問題はあると思います。これはあまりにも長いことも適当でないし、またあまりに不安定にすることもこういう安全保障の性質上適当でないと思います。十年なんというのは一応常識的な一つの標準であろう、こう思っております。
  141. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 私は十年という期限を切られることに非常に不満であります。あなたが言われておるように、国際的な慣例を見ましても、米韓、米比、米台の各条約を見ましても、これは無期限になっておる。無期限ではあるけれども、一方が終了意思表示をすれば一年たてばその条約効力を失う。ですからこれは無期限であると同時にいつでもこれは解消できる、こういうふうなのが慣例であります。あなたはこの私への答弁にも、またたびたびの国会における答弁におきましても、やはり国際的な慣例に従いたい、こういうことを言っておられる。しかりとすれば十年という期限を切られるということは慣例に違反しております。やはり私どもは米韓、米比並みにでもして、いつでも日本側の意思表示によってこれが終了できるようにすることが、私は新しいこの条約改正する趣旨に沿うものであると考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  142. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 条約の何ににつきましては、大きくいうと期限を定める場合と今大西君の言われるような場合と二つがあるようであります。たとえばNATOでしたか、あるいはワルシャワ条約でしたか二十年とかいうふうな期限をはっきりつけたものもありますし、あるいは今お話のように一方的に一定の予告期間をもって廃棄できるというのもありますが、私は一応先ほど申し上げましたような見解を持っておるのであります。
  143. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 見解はよくわかっておるのでありますが、今のワルシャワ条約NATO条約であったかと思いますが、そういう例か若干はないことはございません。しかしNATOの例をとりますと再審議条項というのがあるのであります。当然この問題について審議する条項があるわけであります。そういうことを考えますと、これは何としてもあなたが新しい安保条約改定に対する立場から考えますと、これは私は大いに考えてもらわなければならない問題であると考えております。不安定だと申しますけれども、とにかく国際情勢は刻々変転しておるときに、私ども考えからいたしますと、このような安保条約それ自体が日本の危機を招くものである、こういう考えを持っておりますから、これは私どもは刻々変るところの国際情勢の変転に対処して、自主的にいつなりとも日本意思によってこれを解消するということこそ自主的な立場ではないかと考えるのであります。この点につきましてはもっと追及したいのでありますが、時間がございません。そこでもう一つまとめて申し上げます。  それは沖縄小笠原条約区域の問題であります。総理はたしか初めはあそこを条約区域に含めると日本防衛権があそこにできる。そうなると、これだけはアメリカ施政権がへこむのであるということを昨年の十月二十三日の内閣委員会において答弁されております。このことは安保条約改定施政権の返還とを関連づけて御答弁になっておるのです。このときの総理考えをそんたくいたしますと、沖縄小笠原防衛区域に含めたい、こういう考えからこういう論を立てられたのだと私は思う。しかし私どもはそういうことは国際法上まことに成り立たない理屈であるということを主張しておったのでありますが、その後情勢が変りまして、アメリカの意向も施政権の返還をこれにからますことには反対だということを明らかにアメリカの当路の人は言明するようになった。そうして最近ではどうやら岸総理も藤山外務大臣沖縄小笠原防衛区域に含めることはできないのではないかというふうに考えを変えてきておられるように思うのであります。それかあらぬか、この間の予算委員会の勝間田委員に対する答弁によりまして、いや、それ以前におきましても、明確に安保条約改定の問題と沖縄小笠原防衛区域に含めるという問題と施政権の返還の問題とは全然別である、こういうふうに態度を変えておられるのであります。  私はここで答弁を一つ聞いてから次に論を進めたいのでありますが、すわればやれませんからこのまま申し上げますが、これはまことに前の主張と今の主張と矛盾しておる。明らかに矛盾しておる。矛盾しておるということは、そこに総理考え方変化があったということになれば、一応それはそれでわかりますが、それならば私は防衛区域に含めるという安保条約改定の問題と、施政権の返還の問題とは別なりというこういう断定を下すならば、十月二十三日の内閣委員会におけるへこむ論というのは修正さるべきであると思います。また修正されなければならないと思う。そこでこいねがわくは沖縄小笠原防衛区域に含めるということは、どうしてもできない問題である、してはならない問題であるということをやはり強く申し上げたいのであります。と同時に私は最後に総理が言われたこの二つは別であるという考えについて重大な疑問を持つ。なるほど施政権の返還の問題は平和条約第三条に関する問題であります。また安保条約改定の問題は沖縄小笠原防衛区域に含めるという問題であります。形の上では別個の問題であります。いわゆる平和条約第三条、沖縄小笠原施政権云々の問題もまた安保条約改定の問題も、ひっきょうするところアメリカ側といたしますれば、極東における共産圏に対する戦略上の処置であることは、これはもう明らかであります。こういう観点から見ますと、両者は形の上ではもちろん区分されて考えるべきでありますけれども、その根底において私は同一の考えの上に立つものだと考える。従って総理はこの際、安保条約改定の問題に沖縄は含めず、しかして今も論議になりましたところの沖縄住民の日本復帰の要望、安保条約の中に含めてもらいたい、防衛区域の中に含めてもらいたいというような感情論、こういう問題につきましては、すべからく施政権の返還という問題をひっさげて、一挙に沖縄問題を解決すべきであると私は考えます。すでに御承知のごとく、沖縄小笠原がああいう形において条約後八年、いまだに過渡的な措置として放置せられておるのであります。米国国連に対して信託統治の申請をするまでにああいう形でもって施政権を持つということは、時期的に見まして八年間ああいう過渡的な措置が続けられるということは、これは何としても異例の措置であります。八年間もああいうふうな状態に放置されたのであるなれば、もはやアメリカに信託統治する意思なしと断定しても、私は決して無理ではないと考える。その意思なしとすれば、今日施政権をあのような形で握っておるということも、これまた事情変更の原則によって検討さるべき問題だと考える。私は何もこの安保条約改定のときに、安保条約それ自体に限定さるべきではない。あなたが新時代と言われるならば、新時代の原則によって、日米対等立場に立って安保条約改定をするというその趣旨は一応了とします。それならばなぜ沖縄小笠原をああいう形でもって——この形は体のいい占領であります。大西洋憲章やカイロ宣言のようなものに縛られてああいう形をとっておるのであります。こういうふうな沖縄に対しましても、堂々と施政権の返還を要求する運動を同時にやられることが、何よりも必要ではなかろうかと私は考えるのであります。この点につきましての詳細なことは、また後ほど私からも質問いたします。
  144. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 簡単に願います。どうぞ一問の趣旨にのっとって、また次会にしていただきたい。
  145. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 李ラインの問題に関連いたしまして、北鮮帰還の問題は。
  146. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 この程度にして下さい。
  147. 大西委員(大西正道)

    ○大西委員 それじゃ答弁を……。
  148. 岸国務大臣(岸信介)

    岸国務大臣 安保条約の問題と、この施政権返還の問題は別個の問題であることは、従来も私がしばしば申し上げた通りであります。しこうして沖縄及び小笠原、ことに沖縄の住民諸君があらゆる機会施政権日本に返還して、完全に復帰したいという希望を述べておられ、また国民全体も常にこの考えを持っているということは、私ども政府としても、あらゆる機会施政権の返還についての話し合いをアメリカといたしておるわけであります。先ほどちょっと申し上げましたが、一昨年のアイクとのなににおきましても、この問題について相当に論議をいたしましたが、アメリカ潜在主権は確認するけれども、現在の極東の情勢においては返せないということを言い張ったのでありまして、意見の一致を見なかった。しかし今後におきましても、この施政権の問題につきましては、あらゆる機会に、今お話のように、この国民の要望の実現のために努力をしなければならないと思っております。
  149. 櫻内委員長(櫻内義雄)

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時十五分散会