○田中(稔)委員 次に、安保
改定のことについてちょっと触れますが、藤山試案などを見ましても、たとえば
期限をつけるとか
内乱条項を省くだとかいろいろあります。それだけとれば改善だと
考える人もある。
国民の中にはもっぱらそういう
政府の宣伝か伝わっておりますから、
改定は改善を
意味するというふうにとっている人もある。ところが中国側では、盛んに安保
改定というものは中国に対する敵視政策をさらに強化するんだといって、向うは非常に抗議しておりますね。私
どもは何も中国がそういうからこれに共鳴しているわけじゃないんです。実は私
どもこの
改定は改善であってほしいのです。しかし、私
ども十分冷静に
考えましても、これは重大な改悪であって、いささかの改善でもないと思うのです。それは今申し上げたような点には問題はない。問題は、
日米共同
防衛、
日米相互の
防衛義務をこの新
条約がはっきりうたおうという点です。この点に問題がある。今までの
安保条約は、御
承知の
通りに
アメリカが
日本を
防衛する義務もはっきり
規定してないかわりに、また
日本側の義務も基地を提供することであって、
アメリカ軍を
防衛するとか、あるいは
日米共同
防衛をやるとかいうようなことは何も書いてないわけですね。ところか今度は、
アメリカの
日本に対する
防衛義務を明確にすると同時に、反対給付として、
日本は、
在日米軍に加えられた攻撃は自国に対して加えられた攻撃とみなして
在日米軍を
防衛するということをはっきり義務づける、こういうのでしょう。そうなりますと、
米軍というのは
日本国内だけで行動しているんじゃないのです。極東各地に基地を持っております。米韓、米台、米比の相互
防衛協定が結ばれておる。台湾海峡からあるいは朝鮮の三十八度線からもう一ぺん火を吹くようなことになりまして、もう一ぺん戦争が起る、少くとも武力的紛争が起るということになって、
米軍が作戦行動をやりますと、当然
日本におる
米軍もその全体の一環として行動するわけでしょう。その
在日米軍に対して中国から攻撃が加えられたら、これを
日本が
防衛しなければならぬということになれば、その相手国から見れば
日本も
アメリカと一緒に戦えることになるでしょう。
日本の現在の
憲法というのは、民主
憲法といわれますけれ
ども、また平和
憲法ともいわれる。この平和
憲法第九条によっては、実は自衛のためにも
防衛力は設けてはいけないということになっている、私
どもはそう解釈するのですが、この
日本の
憲法によっては、他国と一緒に
防衛義務を負うなどということは絶対不可能なんです。さっき
総理は安保
改定をやる場合には、あくまでも
現行憲法の許す
範囲内においてやるとおっしゃられたけれ
ども、
日米で共同
防衛の義務を負うということ自体が
憲法第九条の
精神に著しく違背している。そうでしょう、一緒にやるんですからね。そうして武器のごときも、向うは核兵器を持ってくる、こっちは通常兵器たけでやりますといっても、共同作戦となりますと、そんなはっきりとした兵器の区別なんというものはできやしません。まず一体になるのですから、そういう区別は初めから問題にならぬ。そのことはしかし何も私
どもは今の自衛隊を認めるわけではないのですよ。自衛隊の存在も
憲法違反だと思いますけれ
ども、かりに今の自衛隊の存在を
前提として
考えても、その自衛隊が——自衛隊は、おっしゃるところによれば、ただ
日本の安全を守る単なる自衛だけだとおっしゃるでしょう。ところが
アメリカの軍隊はただ自衛だけの軍隊でないということは明らかです。これは防御のためにも攻撃のためにもどっちにも使える軍隊でしょう。大体そういう
言葉の分け方がおかしいのですが、かりに観念として
考えれば、
日本は自衛隊、
米軍は自衛もできるが攻撃もできる、戦争のできる軍隊ですよ。それと一緒にやるのです。二人三脚みたいなものです。一方は力道山みたいで一方は小学校の生徒みたいなものだから、一緒に二人三脚をすれば向うに引っぱられていってしまう。だからそもそも
日米共同
防衛ということをやるならば、バンデンバーグの決議から申しましても、
日本はどうしても
アメリカに引きずられていって、初めは国内だけを守るといっておっても、つい
米軍と共同行動をするために引っぱっていかれるということになるんですね。だから
小笠原、
沖縄を
防衛範囲に
入れないといったってそんなことは本質的な問題ではない。
入れないでただ国内だけの問題だといっても、
在日米軍に対する攻撃を
日本国に対する攻撃とみなして一緒にやるというなら、その
在日米軍は朝鮮にも飛んでいき、台湾にも飛んでいき、フィリピンから入ってくるのです。当然
日本は
在日米軍を守るというそれだけの約束によって
海外派兵の義務を論理的に負わなければならぬということになるんですよ。、だから中国が、その
意味においてこの安保
改定は改善でなくして改悪である、中国に対する敵視政策の強化であると言っている。中国がそう言うから私はそう言うのではない。われわれ社会党でも十分
検討して、
政府に対して悪意を持たず冷静に
検討してもそうなる。しかもこれは、かりに
政府が善意であっても、
アメリカがそんなことは許さない。
アメリカがこの安保
改定に応ずるゆえんのものは、
日米共同
防衛の義務を強化するために
日本に対してそういう義務を押しつけるためにやっているのですから。この点について
一つ総理の御所見をはっきり聞きたい。