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1959-02-27 第31回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十七日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 中曽根康弘君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       池田正之輔君    菊池 義郎君       椎熊 三郎君    千葉 三郎君       前尾繁三郎君    松田竹千代君       森下 國雄君    大西 正道君       帆足  計君    穗積 七郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (大臣官房長) 内田 藤雄君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君  委員外出席者         外務参事官   藤崎 万里君         郵政事務官         (郵務局次長) 曽山 克巳君         専  門  員 佐藤  敏君     ――――――――――――― 二月二十四日  委員高田富之辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月二十五日  通商に関する日本国ハイティ共和国との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国パキスタンとの間  の条約締結について承認を求めるの件(条約  第三号)(予) 同月二十三日  在日朝鮮人帰国に関する請願(帆足計君外十七  名紹介)(第一六四八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十三日  在日朝鮮人帰国促進に関する陳情書外六十三  件(第三三八  号)  同外五件  (第三五三号)  同  (第三六六号)  同(第三六七号)  同(第三六八号)  同(第三六九  号)  同  (第四〇八号)  日ソ平和条約締結促進に関する陳情書  (第三五〇  号)  日ソ漁業交渉早期妥結に関する陳情書  (第三五八  号)  核武装禁止宣言等に関する陳情書  (第三九五号)  沖縄、小笠原及び千島諸島日本復帰に関する  陳情書(第  四〇六号)  在日朝鮮人の北朝鮮への帰還反対に関する陳情  書(第四〇  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第七九号)  日本国アメリカ合衆国との間の小包郵便約定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  通商に関する日本国ハイティ共和国との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国パキスタンとの間  の条約締結について承認を求めるの件(条約  第三号)(予)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会に関してお諮りいたします。ただいま本委員会において審査中の外務省設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会より連合審査会開会申し入れがあります。本案について連合審査会を開会することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議ないと認め、内閣委員会連合審査会を開会することに決しました。  なお連合審査会開会の日時は、後刻内閣委員長と協議の上決定いたしたいと存じますので、御了承を願います。     —————————————
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約締結について承認を求めるの件を議題とし、政府側より趣旨説明を聴取いたします、竹内政務次官。     —————————————
  5. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国パキスタンとの間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  御承知のようにわが国さきアメリカ合衆国及びスエーデンとの間に二重課税防止条約締結しておりまして、引き続きアジア諸国その他の諸国ともこの種条約締結を促進しようとしておりましたが、まずパキスタンとの間に交渉妥結いたしまして、昨年十二月十日に仮調印を行いまして、パキスタン側で所要の国内手続をとるのを待った上本年二月十七日に署名調印いたした次第であります。  この条約内容は、基本的にはわが国さき締結した二重課税防止条約にならうものでありますが、わが国アジア諸国との間のこの種の条約の最初のものでありまして、単に両国間の経済及び文化関係緊密化に貢献するだけでなく、他のアジア諸国とのこの種の条約締結を促進するものと考えている次第であります。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本件についての質疑は後日に譲ります。     —————————————
  7. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に国際情勢に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。大西正道君。
  8. 大西正道

    大西委員 在外公館のことについて一つだけ聞いておきますが、れはラオスのことです。昨年私はラオスに行って参りまして、向うの事情をつぶさに見聞して参ったのでありますが、今回専任大使が任命されるようでありまして、この点につきましては私もまことにけっこうなことと思うのであります。向う大使館建物を見ますと、まことに貧弱きわまるものであります。メコン川に面するところの古ぼけた寺院のすぐそばにあるその建物は、少くとも一国の在外公館としてああいうものが今なお存在しているということは、これはもうただ単なる事務の遂行以外に、面子の上からいっても非常に残念なことだと思うのであります。聞くところによれば、適当な建物もあって、それといろいろと話合いを進めておるというようなこともあるのでありますが、何分にも経費の点でこれまでは思うようにいかなかったということであります。この際若干の経費はさいても、専任大使が任命されるに際して、あのラオス大使館建物をもう少し面目の保つものにしてはどうか、こういうことを思うのでありますが、外務次官いかがでございましょう。
  9. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 官房長より御説明いたします。
  10. 内田藤雄

    内田政府委員 われわれも全く御説のように感じておりましたので、せっかく努力いたしました結果、大体四月のうちくらいに、別府大使の着任に間に合うかどうか少し心配しておりますが、とにかく近くある程度のものができる予定でございます。
  11. 大西正道

    大西委員 それからこの前も私が質問したのですが、向う外務省調査員として派遣された人の報告によりますと、これは付随的な報告でありますが、大使館の車が途中でえんこしたりしてばかりいるというようなことを書いておるのであります。建物のみではありません。そういうことについても十分配慮を願いたい、こういうふうに考えます。  それからこれはラオスだけではないと思うのですが、為替レート関係でむずかしい問題もあろうかと思うのでありますが、ああいうふうな国に対しての職員給与はどういうふうな額になっておるのか。これは普通の給与が支払われておるのか。それを補う何らかの措置が講ぜられておるのか。私の接した範囲では、なかなかもらう給料だけでは苦しいということを言っておりました。こういう点はどうでしょうか。
  12. 内田藤雄

    内田政府委員 在勤俸考え方を一般的に御説明申し上げますと、この在勤俸というのは昭和二十九年だったと思いますが、当時アメリカに在勤する者の費用をきめまして、それに対しまして物価等を勘案しながら、ある程度増したり減らしたりというやり方できめたものでございます。たとえば共産圏のごときは確かに物価などは非常に高い。あるいは生活環境どもよくないということで、平均いたしまして大体三割増しくらいにしてございますが、ことに下級職員の場合には五割増しくらいにいたしております。そういったような角度でいろいろ勘案してできておりますが、確かにその間に物価などはいろいろ変動いたしますし、その瞬間をとりますと必ずしも公平にいっていない場合があるということは、われわれ自身も承知をいたしております。しかしながらこれを根本的に改正いたすということになりますと、なかなか資料なども容易ではございませんし、また現在のところ在勤俸の問題を根本的に改正する時期に達しておるとはわれわれ考えておりません。しかしただいま申し上げましたように、実際上のいろいろ不均衡があることは事実でございますので、そういう場合には在勤俸そのものはやむを得ませんが、その他の館の費用などにつきまして適当な勘案をいたしまして、なるべくそういう不均衡をなくすように努力いたしておるつもりでございます。
  13. 大西正道

    大西委員 ラオスのようなところは外交官としても行く希望者がない、こういうことを聞いております。まさにその通りであろうと思うのでありますが、こういうところに長く同一人をとどめておくということは、これは本人のためにも非常にお気の毒なことであろうと思うのですが、こういうふうなことにつきましては、やはり適当に栄転の道を講ずるべきであると思いますが、そういう御配慮はございませんか。
  14. 内田藤雄

    内田政府委員 その点は全くわれわれ同様に感じておりまして、これに対しては、一つ休暇制度というようなもの、たとえばかりに満四年なり三年在勤しなければ休暇がとれないというような場合に、ああいうような場所では二年くらいで——その後も続いて在勤いたすような場合二年くらいで一ぺん休暇を与えて、さらに次の在勤を考える。できますならば二年を越さない限度において他に適当な場所に転勤するというようなことをまぜ合せまして、ただいま大西委員のおっしゃいましたような線で考えたいと思っております。それからまた、これは旅費の問題ともからむのでございますが、旅費ができましたならば、非常に陽気の悪い時期にはどこか適当なところに館員合同避暑地と申しますか、休養地と申しますか、そういう施設を設けて、なるべく健康の維持にあやまちのないようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  15. 大西正道

    大西委員 この問題はそれで終りまして、次に日韓問題について次官、アジア局長にお尋ねいたします。赤十字井上外事部長がジュネーブへ行っていろいろと折衝をしておりまするが、新聞の報ずるところによりますと、それは北鮮帰国あっせんの問題と、それから釜山抑留されている日本人漁夫送還の問題とに対しまして、何か釜山抑留者帰還の問題の方が先に扱われるべきであるというような意味のことを述べたとかいうふうに報じておるのでありまするが、この点は外務省としてはどのように理解をされておられますか。
  16. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 北鮮帰還の問題と釜山に収容されておる邦人漁夫の返還の問題と、二つの要請を赤十字国際委員会に持っていったことは、その通り事実でありまして、いずれが従いずれが主という問題ではございません。ただ井上外事部長がそのことに関して感想を述べた。日本漁夫向う抑留されておる場合には、全く自由を束縛されておるのだが、北鮮人日本におる限りは、まあ自由の国におるのだから、そこに考え方として軽重があるように思うという井上外事部長感想を述べただけだとわれわれは了承しておりまして、決してその二つにどちらが従どちらが主ということはないのでございまして、両方とも国際赤十字委員会において考えていただく、こういう申し入れをいたしたのであります。
  17. 大西正道

    大西委員 これも新聞の報ずるところによりますと、北鮮帰還の問題につきましては、当初こちらで想像したようには簡単にはいかない、かなりその決定までには時間がかかるのではないか、こういうふうなことが報ぜられておるのでありまするが、その辺の情勢はいかがでございますか。
  18. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 赤十字国際委員会が慎重な態度で臨んでおりますことは新聞の報ずる通りであります。しかしながら本質として、この問題について熱心な態度を示しておることもまた事実でございますから、慎重ではありますが、われわれとしては順調に運ばれていくものと了承いたしております。
  19. 大西正道

    大西委員 釜山抑留者をこちらに帰せ、おそらくこういう訴えであろうと思うのでありますが、釜山抑留者を帰せという問題についての、日本政府赤十字を通じての交渉依頼内容はどういうものでありますか。もう少しこまかく申しますれば、たとえば現在百五十数名の者が抑留されておりますが、それはあの李承晩ラインという、国際法上無法な主張によって拿捕されておるのである。だからそれは全員帰すべきだ、そういうふうな訴えであるのか、あるいはあの中には、もう大半の者が韓国の言うところの刑を終了して不法な抑留をされておる、この者をまず帰せというのか、その間に若干の差別をつけて話をしておるのかどうか、この問題であります。
  20. 板垣修

    板垣政府委員 日本政府外務大臣の名をもちまして、正式に赤十字国際委員会のプレジデントに依頼しましたときには、あくまで日本政府といたしましては、李ラインそのものを認めておりませんので、釜山に、日本側から見ますれば不法に抑留されておる日本人漁夫全員を帰せという建前で赤十字の方へあっせんを依頼しております。しかしながら、李ラインが適法であるかどうかという法律問題、政治問題の判定は、国際赤十字ではできません。またやらない立場をとっております。従って、現実に、韓国政府国際赤十字委員会が働きかける場合は、どういうふうになりますかは、これは国際赤十字にまかせるしかございません。しかしあくまでわれわれといたしましては、この法律的、政省的、日本側主張は堅持しておりまするし、その点の阻害のないようなやり方国際赤十字委員会に活動してもらうことは書面にも出ておりまするし、なお口頭で井上赤十字部長十分先方側に徹底しておりまして、この点は向う側が了承しておるという電報が入っております。
  21. 大西正道

    大西委員 わが党は、この北鮮帰還の問題については、もうすでにこの委員会におきましても、たびたび政府方にその決断を迫ったのでありますが、幸いにして、岸政府外交は何一つ成功したことのない中でようやくこの問題だけは何とかよい結果が得られそうな見通しが立っておるのであります。この点、外務大臣決断に対しましても、かつまた外務省の幹部の諸君の処置に対しましても、私どもは非常に賛成の意を表し、今後これの推進のためにいろいろな妨害が出てこようと思いまするが、これはあくまで排除して目的を達するように進めてもらいたい、こういうように考えておるのであります。しかし考えようによれば、むしろ私はおそきに失したと思うのであります。私はたびたびこの委員会におきましても、これは人道問題であるから、人道問題は政治問題から切り離して解決すべきではないか、こういうことを主張しましたのに対しまして、これは岸総理外務大臣も、その他たしかアジア局長も、これは人道問題であると同時に政治問題だ、だから日韓会談進行工合等を見合してからこの問題について処理したい、こういうことを言っておられる。人道問題であるけれども政治問題だ、こういうことをたびたび言って、われわれの人道問題を貫けという主張に対して一応の逃げを打ったわけでありますが、今日これが人道問題として踏み切ったわけであります。これは大臣に聞くべき問題ではあるけれども事務当局の私は見解も聞いておきたいのでありまするが、一体この政治問題としての取り上げ方を、どういう政治的な判断のもとに今回この北鮮帰還に踏み切ったのか、こういうことであります。人道問題というなれば、これはそれだけで事は簡単なんだが、政治問題だというので、日韓会談交渉の経過を見てからでなければやれぬということを再三言った。ところが今回この問題を断行するに当って、それではこの政治問題としてどのように日韓交渉判断し、政治的な立場からこの結論を出してこの帰還に踏み切ったか。こういうことはぜひともここで聞いておかなければならぬ重大な問題であろうと私は思うのであります。答えられる範囲でけっこうですから、一つお答え願いたい。
  22. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 この問題は今大西委員の申された通りに、外務大臣からお答えするのが適当だと思います。十二時半ごろ大臣おいでになりますから、その際にもう一ぺん御質問願いたいと思います。
  23. 大西正道

    大西委員 あなた方も答えてもらいたいと思うのです。私からいえば、それではもう日韓交渉は今後継続したところで見込みがない、こういう判断に立ってこの問題をこの際割り切ったのかどうか、こういう問題であります。北鮮送還を断行すれば、日韓交渉の問題にいろいろとむずかしい問題が出てくるということは、だれもその当時から予想しておったのです。しかもそれをこの際思い切ったということは、どういうふうな意図によるのか。この際もう日韓交渉を継続しても意味がない、そういう判断でやったのか、こういうふうな問題であります。もしお答えができれば、一つお答え願いたい。
  24. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 その限りにおいてはお答えできると思いますが、日韓会談の今後の交渉の経緯に関係なくこの問題を決定したのであります。と申しますのは、今大西委員の仰せられた通り、人道問題ではありますが、政治的な関連も持つということは、これは言うまでもないところであります。しかしながら十一万七千人の朝鮮人が帰りたいということが、総連の調査の結果、表われてきまして——その調査そのものに対しても、その内容等にいろいろの批判がありますことは御承知通りでありますが、批判があっても、そういう事実が出てきた以上は、これは一つの事実として政府としては考えなければならぬ、こういうことになりまして、それが一番の動機になったことは事実であります。そこでしからば、その内容を、十一万七千あるが、実際はそんなに帰るのではないのだということを、政府は軽々に予断すべきではないのであります。そういう事実から考えて、会談がうまくいくいかないにかかわらず、いずれは手をつけなければならない問題でありますから、この際に踏み切ったというのが政府考え方であります。日韓会談の将来に対してどういうふうに影響するかということも考えないではないが、そこで人道的な立場で踏み切った、こういうことであります。
  25. 板垣修

    板垣政府委員 事務当局から補足的に御説明申し上げますが、私ども判断では、確かに北鮮帰還の問題なりあるいは釜山におりまする日本人漁夫の問題は、人道問題であると同時に政治問題であるという意味は、事の本質そのものは人道問題である、このことは、従来から日本政府は一回も態度を変えておりません。ただ政治問題であるというのは、韓国側が政治問題だというから政治問題になっているわけで、日韓間の話し合いによってこの問題が解決すれば一番よろしいし、またその方向で、過去一年間努力して参ったわけであります。しかし過去の経験から見まして、どうしてもこれは日本政府の本来の立場に立ち返って、人道問題——しかもこれは日韓当事者だけの話し合いでは片がつきませんので、中立機関である国際赤十字の力をかりて、人道問題として片づけ得るものなら片づけようというところまで参ったのであります。  次に御質問の政治問題、いわゆる日韓交渉との関係をどう判断したかという点につきましては、私どももちろんこの北鮮帰還をやれば、日韓交渉に非常な影響があるだろうということは、織り込んではおりました。しかしながらわれわれがこれを決定いたします際は、日韓交渉妥結を断念してやったということではございません。確かに問題はありましようし、あるいは数カ月間日韓交渉が途絶するということもありましょうけれども、この問題を何らかの形で人道問題として片づけてしまえば、あとの問題につきましては、純然たる両国間の懸案なり政治問題として交渉は継続し得るし、また継続したいという日本政府の意思はあるわけでありますから、国際世論の力によりまして、この人道問題を日韓交渉の問題と切り離して解決し得れば、ある時期がきますれば、また韓国側も冷静になって、本来の政治問題を継続するだろう、する可能性もあるという見通しの上に立っております。
  26. 大西正道

    大西委員 この問題はそれ以上追及はいたしません、確かに、あなたも言われるように、北鮮送還を実現するということは、日韓会談に非常な問題を投げかけておるのであります。しかし、私が申しましたように、そういうことにはおかまいなく、あくまでも北鮮送還の実現するようにやってほしい、このことははっきりと、誤解のないように申し上げておきまするが、これに関連して、韓国内の閣議決定だとか、その他いろいろ重要な決定新聞に次々に報道されておるのであります。あまりにも次々と出て参りますので、どれがほんとうかわからぬような、例によって報道がされておるのでありますが、外務省としましては、この問題を契機といたしまして、韓国内の対日政策というものにつきまして、どういうふうな動きがあり、どういうふうな決定がなされておるか、外務省として的確な情報のもとにお話を願いたいと思います。
  27. 板垣修

    板垣政府委員 御承知のように、この北鮮帰還問題につきまして、日本政府閣議決定をいたします前までは、相当いろいろなことが伝えられ、また、現実日本におります代表部人たち大臣なり次官なり、あるいは私のところにも参りまして、いろいろと新聞記事に伝えられたような激しいことを言ったことは事実であります。しかしながら一たび決定がありましたあとにおきましては、急にそういうような申し出もなくなりましたし、事実そのうちの一つ日韓交渉を打ち切るという点につきましても、正式に沢田代表のところに打ち切りをやるということを言いながら、事実やらずに今日まできております。従って私ども日韓交渉そのものが正式に打ち切られたかどうかということは、まだ明確になっておらないというふうに考えております。それからその後韓国側におきまして、いろいろ重大な決定閣議で行われたということが伝えられておりますが、これにつきましては私どもはその真相はわかりません。一昨日、柳公使も東京で、非常に重大な決定をしているのだから、日本側にもう一回反省の機会を与えるというような声明をしております。その裏にどういう決定が行われているかわかりませんが、しかし現実の事態は、今日までのところ韓国側態度は非常に穏和であります。御承知のように李ライン関係におきましても、そう大きな変化は起っておりませんし、貿易の関係につきましても別に断絶というような形はとっておりません。とにかく現在までのところは比較的穏健な態度をとっております。私ども判断では、韓国側としては第一次的には日本側に対して北鮮帰還措置に対してもう一ぺん反省させ、翻させることの努力をしばらく続けるのではないかと考えます。
  28. 大西正道

    大西委員 もう一回日本政府態度の転換を求めてそれまでは、重大な決定をしておるが態度としては非常に穏健だ、こういうことになるのではなかろうかと思うのでありますが、しかし日本政府態度はもはや不変である、そうしますと、おそかれ早かれ新聞に伝えられるがごとき態度決定が表明されて、それが行動に移される危険が私は十分あると考えるのでありますけれども新聞に報ずるような五カ条か六カ条にわたるところの重大決定につきましては、正式の表明はなくとも、その辺の事情についての外務省の把握はいかがですか。
  29. 板垣修

    板垣政府委員 それは表に現われなければ、われわれとして手段をとることもできませんし、また仮想にそういうことを予測して手段をとること自体が、事態をさらに悪化させることでありますから、日本政府といたしましては仮想な手段はとらないような考えでやっております。しかしながらあそこにおける漁業とか、そういう問題につきましては、十分に注意しながら事態の推移を見守るという態度をとっております。
  30. 大西正道

    大西委員 その一つとして、朝鮮海峡における李承晩ライン付近におけるところの拿捕が激発されるであろう、こういうことが普通いわれているのであります。今のところこれに対しては変った動きはないということでありますが、しかし予想されるこの危機に対して、十分の対策がなければならぬと思うのでありまして、あの方面に出漁するところの漁船に対して、外務省あるいは海上保安庁その他において、さらに一そう十分な対策が講じられなければならぬと思うのでありますが、その点についての対策はどういうことになっておりますか。
  31. 板垣修

    板垣政府委員 今度の決定がなされます前後から、水産庁、海上保安庁とも十分相談いたしまして、万全の予防措置をとる方法を講じております。現在におきましても、海上保安庁が中心になりまして、十分の予防措置をとっております。今後とるべき措置あるいはとりつつある措置につきまして、あまり表立って今から申し上げることは、先ほど申しましたように、かえって事態を悪化させるおそれがありますので、その辺につきましては詳細な説明は差し控えたいと考えまするが、ともかく万全の予防的措置をとって進んでいくというのが、現在の日本政府態度でございます。
  32. 大西正道

    大西委員 万全の予防的な措置といっても、具体的に一つ聞きたいのでありまするが、これはきょうは略しておきます。この際、巡視艇の活動につきまして、この前明らかになったところでは、あの辺に出向くところの巡視艇は、他の海域に出る場合と違った状態でおるようであります。それは過般の閣議決定の線によってそうしたのである、こういうふうに出ておるのでありまするが、非常な事態に対応して、海上における日本人の生命、財産を保護するという建前から、閣議決定に対して何らかの検討を加えるべき段階ではないかと思うのでありますが、次官、あなたのお考えはどうですか。
  33. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 この問題は閣議決定において、あまり大砲のような兵器は巡視船に乗せないという決定をいたしておるわけであります。今アジア局長から御説明申し上げました通り李ラインにおける当方側の予防措置につきまして、そういう点を今詳しく御説明申し上げることはあまり適当でないと考えますのでいずれかの機会にお答えいたします。
  34. 大西正道

    大西委員 たびたびのことでありますが、抑留されておる留守家族に対しての援護対策は、これは十分お立てを願いたいと思います。それから補償に対してはこれまでよりもさらに一そうの進んだ措置を講じてもらいたい、こういうことについては御異議はなかろうと思うのであります。この漁業界の要望の一つには、韓国における不法の裁判に対しても、これが不法だからといってほうっておくわけにいかぬから、一応これに対して弁護士をこちらから送って、また日本人が不可なれば米人弁護士に依頼して、その衝に当らせたい、こういうふうな希望もあるやに聞いておりますが、これらに対しまして、そういうふうなことのできるように外務省としては配慮できますかどうか。
  35. 板垣修

    板垣政府委員 釜山における裁判に弁護士を立ち会わせる問題につきましては、二、三年前に一回韓国側の弁護士を頼んでやったことがあるわけでありますが、あまり効果がなかったために、その後業界の強い要望もなく、弁護士なしでやっておるわけであります。最近になりまして、この方面についてもっと弁護士をつけて、裁判にも立ち会わせ、ことに米人の弁護士でも雇えば相当効果的じゃないかということで、真剣に今検討しております。あるいは近く実現の運びになろうと思います。
  36. 大西正道

    大西委員 国際赤十字に頼むということは、これは向う抑留されておる漁夫を帰す、このことが主であろうと思うのであります。しかし根源はやはり李承晩ラインの存在なのであります。従って、これは私がたびたび申し上げておるように、この機会に、抑留者を帰すために国際赤十字あっせんを依頼するという以外に、やはり李承晩ラインそのものを国連に持ち込んで、そして世界の世論の前にこの解決をはかるということ、このことがやはり行われなければ、北鮮送還に伴うところの釜山抑留者帰還に対して国内の世論に一応こたえるという単なる言いわけ以外の何ものでもないと私は思うのであります。やはり李ラインそのものの不法性、そこから起きるところの予想される紛争に対して、国連に持ち込んでいくという一歩進んだ態度をとる必要が今あるのではないかと思うのです。そうしないと、幾らこの問題を国際赤十字に持ち込みましても、その抜本的な対策にもならないし、当面の解決策にも何らの力がないものではないかという懸念を抱くのでありますが、この私の前からの主張に対しまして、外務次官は一体どういうふうな信念をお持ちか。
  37. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 日韓会談が打ち切られたという考えを政府は持っていないのであります。日韓会談は継続してやりたい。しかも日韓会談の最大の問題は今御指摘になった李ラインの問題でありますから、日韓会談の場においてこれを解決したいという政府の方針は、今のところ変っていないわけであります。日韓会談の結果いかんによっては、今御指摘になったようなことも、どういう手続をどうとり、いかなる時期にやるかということは別でありますが、そういうことも考えなければならないだろうと私は思っております。
  38. 大西正道

    大西委員 日韓会談はまだ継続中だなんていうことを形式的におっしゃっても、そんなことは実態に即したものじゃないということは明らかなんです。そういう御答弁をしておられるようでは、この問題に対してもなかなか解決の見通しはないと私は思いますが、政府の腹の底もそこで読めたと思う。しかし大臣じゃないから、そういうことを申し上げてもしようがないと思うけれども、まあそういうような答弁はなさらぬ方がよかろうと思う。  もう一つ安保条約についても聞いておきます。藤山試案は藤山外務大臣に聞かなければならぬと思うのですが、この際、次官に聞いておきます。解消条項、つまり廃棄条項と申しますか、条約の期間の問題であります。この問題について初めの案では、今の安保条約は日米双方が合意の上でなければ条約の効力を失わぬということになっておる。こういうような例は国際的に非常に少いわけです。だからこれを普通の諸外国の例にならって直していく、こういうのが政府主張なんですね。そのために今度の案ではこれが十年間というふうな期限付になっている。これも一つ考え方でありましょうが、一番大事なことは、この一方が、すなわち日本が、この条約はもう必要がないといって解消を申し入れた場合には、普通ならば半年とか一年の後には、一方が合意をしなくても条約の効力を失う、こういうのがこの種の条約の普通の例である、こういうふうに理解して間違いないと思うのでありますが、どうも最近の政府の答弁を見ますと、ただ十年間期限をつけるということのみにこの答弁が終っているように思うのであります。これではほかの条約並みのものにするということには私はならないと思うのだが、外務当局としては、他の米韓、米比、米台の条約と同じように、一方が解消を主張すれば一定の期間をおいて自動的にその効力を失うというふうに改めるべきが私は当然のことだと思うのであります。これについて私はあなた方も異議はなかろうと思うのでありますが、いかがでありますか。
  39. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 安保条約全体の構想がまだ決定していないのでありますから、期限の問題等も決定しておるわけではありませんが、考え方としては、今大西委員が御指摘になったように、期限を十年として、十年後には一年前に通告すれば双方廃棄のことを申し入れることができるという考え方で進んでいるわけであります。それが妥当かどうかということについてはいろいろ御議論があろうかと思いますが、日米双方が安定した形においてある期間この条約を保っていきたいという考え方からすれば、十年くらいがまあ常識的に適当なところではないかという考え方を基礎にして、そういうことを今考えておるわけでありまして、何もこれはきまったことではありませんから、世論その他を聞いて今後きめていきたいというのが今の考え方であります。
  40. 櫻内義雄

    櫻内委員長 森島守人君。
  41. 森島守人

    ○森島委員 だいぶ古い問題でして、私もその当時御質問したいと思ったのですが、今日まで機会がなかった。情報文化局長の御出席も海外出張やその他でなかったので、今日機会を得まして御質問するのですが、実はブラウン記者に対する岸首相の記者会見の問題です。私は会見の内容についてきょう御質問するわけではございませんが、一つは外務行政運営上における根本的な問題だと思いますし、また一昨日か穗積委員が質問のうちに言及されまして、岸首相は中華人民共和国を金門、馬祖両島の問題に関連して侵略者だと断定したというのが、ブラウン記者の発表したものなのです。これは岸首相は国会において全面的に否定しておるわけです。しかしその会見談を見ますと符節を合したごとく岸首相の言ったことをそのまま引用しておりますので、岸首相が国会においてこれをいかに否定されましても、国際間には依然として疑問が残っておると思うのであります。私は将来ともこの種のあやまちを犯さないために、外務省としてどういう措置をおとりになっているかということをお聞きしたい。岸首相はその当時従来の慣行に従って外人記者との会見を行なったということを国会において述べておられる。従来の慣行とは一体いかなるものであるか、これを情報文化局長にお伺いしたいと思います。
  42. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 ただいま森島委員の従来の慣行とはどういうことであったかということにつきましてまず御説明いたしますと、従来東京に駐在し、あるいは外国から東京に一時的に参ります特派員、こういうものが総理大臣に会見を申し入れますときのまず最初に手続でございますが、これは直接総理官邸の方に申し込むもの、また外務省情報文化局を通じて申し込むもの、窓口が必ずしも一本となっていなかったのでございます。ただいまのお話のブラウン記者の問題でございますが、これはたまたま私のところにブラウン記者自身電話をかけて参りまして、アメリカへ帰る直前、相当日が迫っていたようでございますが、会見のあっせんをしてほしいということで、私が総理の秘書官に通じまして総理の方へお話になりまして、それでは会ってやろうということになりまして、あの会見になったわけでございます。  そこでその次の問題は、しからば会見をする場合に、質問の内容を事前に出すことになっていたか、あるいは会見をした後にその記者が記事とするようなものを事後に総理大臣ないしは総理官邸の方で確認をするような慣行があったかどうかという点になりますと、従来はそういう慣例ではなかったわけでございます。ブラウン事件のような問題が起りません前は、そういうことで何ら支障なく会見が行われてきたわけであります。そこでブラウン事件が起りまして以来、やはり将来また同種の問題が起ったようなときには、ただいま森島委員の申されましたごとく、対外関係においても支障を来たすおそれがあるのではないかという点から、総理秘書官と連絡協議をいたしまして、まず手続の問題といたしましては、外務省情報文化局を通じて、すべて会見のあっせんを申し込むという窓口を一本化しようということにしてございます。  次に第二の質問事項の事前の提出、事後におけるその記者の会見内容の報道の確認、これもそういうふうに念を入れてやろうというような話し合いになっておるのが現状でございます。
  43. 森島守人

    ○森島委員 ただいまの御答弁で大体明らかになりましたので、私は今後そのような慣行を確立されて、これを厳守されんことを要望せざるを得ない。従来とも外務省としては長年の御経験もあるのに、あまりにずさんなやり方だったと批判せざるを得ない。  同時にもう一つは、総理の会見ですから、相当重要性があることはもちろんです。しかし外務省からは当時どなたも立ち会っておらなかったと聞いておりますが、この点はどうなんですか。
  44. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 セシル・ブラウン記者が会見いたしましたときには、外務省からは立ち会っておりませんし、外務省から通訳も出しておりませんでした。これまた従来の慣例と申しますとおかしい話でございますが、従来故人の松本滝蔵さんのごとき優秀な方がおいでになりましたので、そういう必要もなかった場合があったわけでございます。セシル・ブラウン記者の場合は、通訳といたしましては総理官邸に外務省から参っておる語学の達者な秘書官がおりましたので、その人が通訳するということをわれわれは期待しておりまして、特に向うから御要求もなかったわけでございますから、通訳も出さなかったわけでございます。しかしながらこの点も手続的な問題について今後遺憾なきを期すと同様に、今後におきましては通訳は外務省からしっかりしたものを出して、また私なりその他適当な人が立ち会うようにいたしたい、こう考えております。
  45. 森島守人

    ○森島委員 語学の達者な方が通訳されるということなら一応信頼し得ると思いますけれども、あなたもすぐおわかりのように、物理とか化学とかでいかに英語の達者な人でも重要な外交問題に関しては通訳としては不適任なのは当然です。当時あなたの方から通訳が出なかったということは、外務省の非常に大きな手落ちだった。そして外務省の手落ちから、その真偽は別としても、国際間にあれほど波紋を投げるような大きな問題を起したことは、これは外務省事務当局として非常に大きな責任だ、こう思っております。今後は十分そういう手落ちのないように一つ要望したいと思います。同時に今後会見をされる場合には、今のお話でわかったのですが、クエスチョネーアをあらかじめ提示させるということははっきりお約束できますか。
  46. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 ただいま森島委員の御注意もありましたように、事前の質問を必ず出させるように手配をいたします。
  47. 森島守人

    ○森島委員 もし先方が発表する場合には大体原文を提示されて、これに〇Kをとるということも今後の慣行として確立しておきたいと私は思っておりますが、これもその通りだと思いますが、念のために御質問いたします。
  48. 近藤晋一

    ○近藤政府委員 今後の手続といたしましては、事前の質問書の提出並びに事後の確認の条件も受諾いたしません記者に対しましては、会見を許さないということになると思います。
  49. 森島守人

    ○森島委員 この問題については、近藤局長もアメリカに滞在されてよく知っておられると思うが、アメリカの大統領の新聞記者会見のときには、大統領の言葉はディレクトリーに引用しないということが慣行になっている。特に許可を受けなければいかぬことになっております。もう一つ私が経験したのでは、松岡外務大臣が京都で会見いたしましたときには、あらかじめ打電する内容を提示するという約束になっておったにかかわらず、何らかの手落ちで提示しなかった。これは非常に大きな波紋を投げて、当時の日米関係の根本にも影響した問題なんですが、こういうふうな非常な波紋を描くこともあり得る。特に日中問題とか安全保障条約の問題等は、内閣の土台をゆすぶる大きな問題なんです。私はこの点について外務省としてもしっかりした方針をおきめになってこれをぜひとも順奉されんことを切望いたしまして質問を終ります。     —————————————
  50. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、日本国アメリカ合衆国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を行います。  質疑の通告がありますのでこれを許します。床次徳二君。
  51. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの日米小包条約関係する問題につきまして、二、三お尋ねをしたいと思うのですが、それは沖縄と内地との郵便の取扱いの問題であるのであります。ここにアメリカとの協定ができるわけでありますが、沖縄に関してはわれわれがかねがね施政権の返還に対して強く要望いたしておりますことは御承知通りであります。その施政の中におきましても、郵便ということに対しましては、これはきわめて特殊な事柄でありますので、むしろこういうものに関しましては、ある程度まで施政権の返還の最初のものとして取り扱うことがきわめて容易じゃないかと思うのですが、こういうようなことに関しまして今日までどのような交渉が日米間で行われておったか、伺いたいと思うのであります。
  52. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 現在までのところは、沖縄は日米間の小包約定の適用地域になっておりません。と申しますのは、日本側の地域としてもあるいはアメリカ側の地域としても入っていないということでございます。それでは実際どういう工合に行なってきたかと申しますと、事実上は日本としてはほとんど内国並みに扱って参っております。現在は御指摘のように立法、司法、行政の三権が及んでおりません。従いまして、郵便行政に関する権限も日本にないわけでございまして、条約上等で表向きに取り扱うと、日米双方とも困難な問題になるわけでございますので、実際上の取扱いとしてさように処理して参ってきている次第でございます。
  53. 床次徳二

    ○床次委員 そういたしますと、実際問題におきましては大体内地並みに取り扱うことも可能じゃないかと思うが、こういう関係の意向に対して、アメリカ側はいろいろ意見もあろうかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。今日までの経緯がありますれば伺いたいと思います。
  54. 曽山克巳

    ○曽山説明員 ただいま床次先生のお尋ねの件につきましては、私ども先生のおっしゃる通りだと思います。ただ形式的には非常にむずかしい問題もあろうかと思われますので、実質的には今先生のおっしゃいましたような方針、つまり沖縄と日本との間の郵便交換を全く内地と同じようにしたいというつもりで、従来とも努力して参ったわけでございます。ただ、今も申しましたような法形式の困難な問題もございますので、一応外国郵便という範疇に入れてございますけれども、外国郵便の中で特別な取扱いをいたしまして、たとえば沖縄あての郵便は一般の外国郵便と違いまして料金も国内と同じにする、あるいは向うから参りました小包にかかりますところの通関料、税関を通過いたしますときの料金でございますが、通関料といったものも全然免除して、これを取っておりません。その他これに類するような行為をいたしまして、沖縄の方々の便宜をはかるように努力いたしております。なお先生の御指摘になりましたような線に沿いましてただいまの点につきましては今後とも全く内地と同じような扱いに持っていきたいと考えておりますので、御了承願いたいと存じます。
  55. 床次徳二

    ○床次委員 今お話のように、実際問題として内地と同じに取り扱われているということはけっこうなことでありますが、できるだけこれを確立した制度的なものにしていただくことを要望いたしたいのであります。なお事務の連絡等につきましては、従来恩給とか戸籍とかいろいろ内地と共通なものに対しましては、相互の職員の訓練あるいは事務処理の機構等につきまして共通な立場においてやるために互いに交換するとか、あるいは先方からこちらへよこさして訓練するというようなことも、その他の事務においてはやっておるのでありまするが、郵政事務に対しましては現在いかように取り扱っておるか伺いたいのであります。
  56. 曽山克巳

    ○曽山説明員 お答えいたします。ただいまの点につきましても、私ども先生のおっしゃる点に全く同感でございまして、教育の面におきましても、ただいま御指摘の通り向うから教員を招きましてこちらで内地同様の訓練を施すという方針をとっておるそうでございますが、郵政の面におきましても、目下のところ政府としまして、先方から年に約十名の研修職員を招きまして、郵政省の研修所において訓練をいたしております。今後ともその人員の拡大につきまして努力いたしますとともに、研修職員の待遇の問題につきましても、内地職員以上の待遇をいたして参りたいと思っております。
  57. 床次徳二

    ○床次委員 なおこれは郵政に関係あることでありまするが、先般来沖縄の関係、特に南方同胞援護会等におきまして、郵政省に内地におけるお年玉はがきに対する寄付金を沖縄における社会事業その他の施設に対して配分あるべきことを要望しておったのでありまするが、この要望に対して、今日郵政省はどういうふうにこれを決定せられましたか報告願いたいと思うのであります。
  58. 曽山克巳

    ○曽山説明員 お答えいたします。お年玉年賀はがきの配分金につきましては、ただいまのところちょうど六億の寄付金が三十三年度において集まりましたので、その配分金額の配付の仕方につきまして目下事務的にいろいろと立案しております。近い機会におきまして——来月になるかと思いますが、正式に郵政大臣の諮問機関であります郵政審議会にかけてこれを決定いたすことになっております。私ども、現在の事務的な段階におきましては、先生の御指摘のありましたように、沖縄同胞に対する援護の手を積極的に差し伸べたいという意味におきまして、共同募金、日本赤十字社に次ぎまして大きな金額を配分いたす予定であります。ただこれは今申し上げましたように審議会におきまして郵政大臣に答申いたし、郵政大臣決定することになっておりますので、今のところ金額は申し上げられませんが、一番大きな金額を配分するということになっております。
  59. 床次徳二

    ○床次委員 沖縄の事情につきましても一つできるだけ理解を持って配分をお願いしたいと思います。  なお、この機会にもう一つ伺っておきたいのは、郵便協定その他まだ協定ができておらないところの国に対する取扱いが実際どうなっておるかという点であります。すでに話題となっておりますが、たとえば日中関係におきまして、郵便協定を結ぶことも貿易に次ぐ次の一つの段階のようにも聞いておりまするが、かかる協定があるとないとの間においていかような差があるか、また郵便協定を結ぶことによってどういう意義を生ずるのか、これは外務関係かと思うのですが、あるいは郵政関係、どちらでもけっこうですから御答弁いただきたい。
  60. 藤崎万里

    ○藤崎説明員 郵政省の係官から御説明申し上げますが、大ざっぱに言いまして万国郵便連合の加盟国同士の間では、二国間の協定がなくても国際協定によって処理できるわけでございます。そういうものに入っていない国あるいはある国が入っていない事項、たとえば日米間の小包のようなもの、そういうものについては二国間協定の必要が生ずるわけでございます。実際にある国が万国郵便連合にも入っておりませんし、日米の小包郵便約定みたいなような二国間協定がない場合でありましても、隣接国からサービスとして郵便物を届けてこられるというような関係もございますが、具体的に詳しいことは郵政省の係官から説明していただくことにします。
  61. 曽山克巳

    ○曽山説明員 具体的な問題についてお答えいたします。ただいま床次先生から御指摘のありました郵便の行かぬ地域についてはどういう地域であるかという点でございますが、通常郵便につきましては、今外務省の藤崎次長から今御説明がございましたように、万国郵便条約にほとんどの国、ほとんどと申しましても、ブータンを除きまして、世界のすべての国が加盟しておりますので、問題はないわけでございます。ただ小包郵便につきましては、料金につきましての不満な点とか、あるいは国内法制等のきわめて大きな差があり過ぎて困るというような国におきましては、万国郵便連合の小包約定に加入しておらない国がございます。たとえば今お話しになりましたアメリカとかフィリピンとかオーストラリアとか、そういう国々がございます。しかしそういう国との間におきましては、ただいまもお話のありましたように、相互約定を作りまして郵便を交換しているわけでございますが、フィリピンにおきましては、今のところ日本との間には相互約定がございませんので、先生の御指摘になりました最も困っております国としてはフィリピンがございます。ただフィリピンにつきましては目下向うとの間に条約締結方を交渉中でございまして、これも次の国会あたりにおいては御承認を得られる段取りになろうかと思います。また小包郵便の回らない国につきましては、北朝鮮あるいは中国本土さらにラオス、イエーメンといったような国もございますが、ラオス、イエーメン等は特殊の事情がございまして、向うで引き受けておりませんけれども、中国本土につきましては、先生の御指摘のありましたように、私ども郵便の世界におきましては、いかなる政治的制約にもかかわらず、できるだけ円滑な流通をはかることが万国郵便連合の目的であると存じておりますので、外務省とも相談して、一般の政治的な判断もございましょうが、それらとの関連におきまして一刻も早く、むしろ私も貿易の先駆といたしまして郵便の送達をはかることが大事かと思いまして目下寄り寄り協議中でございます。
  62. 床次徳二

    ○床次委員 中共との取扱いの問題でございますが、万国郵便条約の取扱いで現在行なっているわけでございますが、これが二国間協定になりました場合には、何か非常に有利なところがあるのか、あるいはどういう改善状態が起るか、そういうことがありますれば、伺いたい。
  63. 曽山克巳

    ○曽山説明員 中国本土との関係におきましては、現在のところ香港郵政庁を中継ぎといたしまして、通常郵便物、たとえば書状とかはがきとかといったような通常郵便物を送達しております。従って今申し上げましたような問題はないわけでございますが、小包につきましては、香港郵政庁が中継ぎを認めておりませんので、と申しますのは、向うの郵政庁の郵送のキャパシティーと申しますか、量が限られておりますために、引き受けないと申しておりますので、直接中国本土と交流する以外に方法はない段階でございます。もちろん直接送達いたしました方が日数も少く済みますので、その方が私ども国民、業者の方々にとって便利かと思いますので、香港に依頼せず、中国本土に直接送りつけたいという念願は持っているわけでございます。  しからばどういう点がよくなるかと申しますと、ただいまもちょっと指摘しましたように、中国本土との間に直接小包郵便を交換するということになりますと、あるいは通常郵便物を送達するということになりますと、従来に比べまして日数が非常に早くなるということでございます。もちろん今日まで行っておらない郵便物のほかに、書留郵便物は送れないのでございますが、たとえば小包も送れるという便宜もございますし、すべての文化、経済の交流面において便利かと思うのであります。  なお、法律的に中国本土と日本との間においてどういう取りきめをする必要があるか、あるいはその取りきめの性格はどうかという問題につきましては、具体的に向うの方と折衝しましたあと決定するということにつきまして、外務省と合意ができておりますので、その辺で御了解願いたいと思います。
  64. 櫻内義雄

    櫻内委員長 しばらく休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後零時三十六分開議
  65. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、両件を一括議題となし、審査を行います。両件について質疑はありませんか。——別に質疑がなければ、これにて両件に対する質疑は終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、これにて両件に対する質疑は終了いたしました。  両件については別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  まず、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案を可決すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって本案は可決すべきものと決しました。  次に、通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。本件承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって本件承認するものと決しました。  なお両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければさよう取り計らいます。
  70. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に国際情勢に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。戸叶里子君。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 明日は岸首相もお見えのようでございますけれども、私都合があって参れませんので、きょうわずかな時間で二、三点藤山外務大臣に質問を申し上げておきたいと思います。  まず、昨日外交関係の閣僚懇談会で、日米安保条約の問題が出たようでございますけれども新聞報道によりますと、藤山さんはあくまでも四月を含めて、大体そこら辺を目途にして改定を行うというようなお考えのようでございます。ところが新聞によりますと、たとえば池田さんのごときは、とうてい四月は無理だ、五月も六月も無理だというようなことを言っていらっしゃるようですけれども、この辺の調整をおとりになって、なお四月に改定を推し進めようとされるのかどうかをまず伺いたいと思います。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保条約の改定問題は、すでに昨年の十月から取り上げておる問題でございまして、若干党内の意見の調整等について時間がずれておりますことは、御承知通りであります。ただしかし、交渉当事者としての私としましては、できるだけ早い機会に調印をいたし、妥結に行くという方針で参らなければ、こうした二国間の交渉というものは、ただ延ばしておいていいというのでは、相手方に対する礼儀もございます。交渉自体によりまして延びることはやむを得ないと思います。当然二国間の交渉でありますから、日本の言ったことをすぐ聞いてくれるか、あるいはアメリカの言ったことを日本が聞くかということはわかりません。しかし交渉そのものはできるだけ早い機会に進めるように努力するのが当然だと思っております。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると藤山さんのお考えは、やはり今までおっしゃっておったような時期になるべく改定をするように努力をする、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、そうすると行政協定の改定でございますけれども、行政協定の改定についてはごく簡単に改定をするだけで、そのときに出していくというふうなお話もございますし、また党内においては、行政協定は非常に重大な問題だから、全般的にこれを改定するというふうに言われている方もいられるようでございますけれども、この点藤山外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  74. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 行政協定の重要な点につきましては改定をすることが必要だと思います。しかし全面的に改定をいたしますのは、相当長期間にわたりますし、また、たとえば現行行政協定の中にも、両者が合意をすればそれを改定していくことができることになっておりますので、一応ある程度現行協定を若干の修正のもとに採用いたすことにいたしましても、あとで逐次直していくことができるのであります。問題が事務的になります場合がありますから、相当検討を要する必要のある問題もあろうと思います。従ってそういうふうに私は考えております。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 安保条約改定に対しまして、私ども政府の考えは、もちろん根本的に違っておりますけれども、しかし行政協定などの点につきましても、もし安保条約を改定されるとすれば、この前の安保条約は、行政協定に全部白紙委任の形でゆだねられておりますから、当然一カ所、二カ所をいじるという形でなくして、行政協定は全般的にこの際改めていかなければ、非常に不合理なものになるように思うのでございますけれども外務大臣はやはり安保条約の改定をお急ぎになるあまり、一、二点だけを改正したままでいこうとする御意思は、どこまでもお変りないのかどうか、もう一度確かめておきたいと思います。
  76. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 行政協定の問題につきましては、重要な改廃を要するところは手をつけて参りますが、全面的に行政協定そのものを再検討して参りますのは、相当時間もかかりますし、また慎重を要することでもあると思います。また一ぺん締結した後でも当然改定ができるわけでありまして、そうした事務的な問題につきましては情勢の推移等も見ながら、十分な検討の上でやっていくのが適当ではないか、こう考えております。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣自身も非常に重要な問題を含んでいるということをお認めになります以上、やはり十分検討した上でこの協定を改定すればいいのであって、そうだとするならば、急いでいいかげんな一、二点だけを改定するという、こそくな手段でなしにいった方がいいと思いますけれども、この点は外務大臣と私どもは違うわけですから、私は先へ進んでいきたいと思います。  そこでお伺いいたしたいことは、私は十月三十一日に岸首相に防衛区域の問題について質問したことを覚えておりますが、そのときの御答弁と、それからその後における内閣委員会においての御答弁との間に、どうもすっきりしないものがございますので、私はいつの日か岸首相にその点をはっきりさせておきたいと思っておりましたが、その機会がございませんでした。そこでこの点はあらためて岸首相にお聞きすることにいたしまして、きょうは外務大臣に、その防衛区域の問題について一、二点だけを伺っておきたいと思います。  そこで第一点は、今までの安保条約日本にいる軍隊が、「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」というふうなことが書いてあるわけでございますけれども、今度改定される場合に、その中に極東のとか、あるいはまた太平洋の平和と安全の維持というようなことを対象にしての改定であるか、それとも日本の安全と平和を考えてというふうな形の改定であるか、この点を伺っておきたいと思います。
  78. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約改定に当りましてわれわれの考えておりますことは、むろんアメリカに日本防衛の義務を背負ってもらうことが第一の点であります。しかし同時に日本が侵略されますこと、あるいはまた日本が極東の平和と安全に寄与し得る立場にあることも事実なのでありまして、極東の平和というような字が条約文の中にあるかどうかということは、今申しかねますけれども、しかしわれわれとしてはやはり極東の平和と安全ということは、日本が他国からの侵略ということとともに非常に重要なことだと思っておりますので、そういう意味では重要だと考えております。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、条約の共同防衛の問題になるわけでございますけれども、この防衛範囲につきましては、条約区域というような名前で日米の共同防衛の区域をきめられるように新聞で拝読いたしております。その場合藤山さんの考え方は、日本の行政権の及ぶ範囲内というふうにいわれているわけでございますけれども、この点は岸首相が十月三十一日の委員会で私の質問に対しましてお答えになったのと同じでございますけれども、そのときにさらに岸首相が言われましたことは、在日米軍活動の範囲は、日米共同防衛と離れてあり得るということを答えておられますが、そういうふうになった場合に——もちろん在日米軍が独自な形で活動するというような場合に、一体条約の中にどういうふうな形でそれを織り込もうとされるのか、この点を伺いたいと思います。
  80. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本以外の地域にもし出動することがありますれば、それは協議事項として日本の承諾を得なければ在日米軍は使えない関係にあると考えていきたい、こう思っております。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この安保条約の改定の中に、条約区域といたしまして、日本の行政権の及ぶ範囲内の区域、日本の本土といいますか、そういうことを一つ規定をしておきまして、そのほかに在日米軍が独自の形で活動をする、その範囲というものは別にきめずに、そういう場合には事前協議をするという形で条約を改定なさるのかどうか、この点も伺いたい。もっと詳しく申しますと、日米共同防衛をするところの条約区域はこうであって、さらに在日米軍が活動をする防衛区域というものもあり得るという形においてなさるのかどうか、この点も伺いたいと思います。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 防衛区域とか条約区域とかいう言葉は何か非常に誤解を生む言葉のように思うのでありますけれども、ただいま申し上げましたように、日本を守るためにありますアメリカ軍が、他の作戦に使用されるというような場合には協議をしてもらいたい。平常の移動は別であります。作戦等に使う場合には、それが条約区域と防衛区域の違いだというふうに言葉の上で申しますことは、まだ疑問があると思います。防衛地域と条約区域ということは、相当混淆される言葉だと思いますので、それらの問題点の使用についてはよほど注意して参らなければならぬ、こう考えております。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、結局共同防衛をする地域以外に、アメリカ軍の出動の場合には事前協議をするというふうな形で条約の中に現わすのであって、共同防衛の地域と米軍の活動する地域というふうなはっきりした表現様式は用いられない、こういうふうに了解するのですが、いかがですか。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体前段のような考えで折衝して参りたいと私は考えております。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、その場合に事前協議ということになるわけでございますけれども、事前協議をされた場合に、もしも同意をされなかった場合は一体どういうことになるのでしょうか。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 同意をしない場合にはそれが成立しない、そういう話が進行しないということだと思います。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 成立しないということは、アメリカは日本の同意なくしては必ず独自の活動はしないというふうにお考えになるのでしょうか。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そう考えております。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 それだけの自信をお持ちになっていらっしゃればいいのですけれども、もしも協議が成り立って合意をして、在日米軍が日本の共同防衛地域以外に独自の形で活動に出て、その在日米軍に対する報復手段として他からの日本に対する攻撃があった場合に、日本はやはりその事前協議に参加したという形で共同責任を負わされる可能性が非常にあると思いますけれども、この点はいかがでございましょう。いかに日本はそういう点には触れないのだ、独自の形でアメリカが活動したのだと言いましても、合意に達したということで結局共同責任を負わされる場合が出てくると思いますけれども、これに対してどうお考えになるでしょう。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 協議をした場合、ノーと言う場合、イエスと言う場合があるのは協議ですからもちろんでありますが、日本が侵略を受けるというような、何らかそうした非常の事態がある場合には、あるいはそのときの国民の判断によってイエスと言う場合があるでしょうし、そのときの判断によってノーと言う場合もあろうと思うのであります。そういうふうに私は考えております。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 今ちょっと聞きそこなったのですが、私の伺っておりますのは、もしもイエスと言った場合に、在日米軍が出動いたしますが、その場合報復手段を受けたような場合には、日本は当然共同防衛をしない建前の場合でありながらも、共同防衛をさせられる結果になるということを私は心配しますし、またそういうふうな場合には当然日本がアメリカと共同の責任を負わされるという結果になることは火を見るよりも明らかでございますが、この点を外務大臣はどうお考えになりますか。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 イエスと言った場合に、日本がイエスと申したのですから共同の責任があると思います。共同の責任が発生するような事態は、どういう場合の事態だって、そこにはおそらく日本の本土の侵略にひとしいような、あるいはその前提としてどうしてもそういうことをやらなければならぬというような日本国民の判断が、イエスと言う場合にはあると思うのでありまして、そういう場合に日本国民がイエスと言って責任をとることは当然のことだと私は考えております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 たとえば沖縄、小笠原を日本の主権の及ぶ範囲内にないからというので条約区域の中に含まないにいたしましても、在日米軍が沖縄の方に行くということは、今までの外務大臣の御答弁からしてあり得るのじゃないかと私は思うのですけれども、そうなって参りますと、沖縄、小笠原を条約区域の中に含めないと言っておりましても、結果的には含めた結果になると思う。従って在日米軍の独自な活動というものを許すということは、その条約考え方をゆがめるものではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 たとえば今御指摘のように、沖縄島あるいは小笠原島に何か起りまして在日米軍が出ていかなければならぬというアメリカの考え方がありましたときに、それは二つ考えられると思います。一つは、それがすでに日本侵略の前提であって、次の段階では日本に兵火が及ぶというようなときには、あまり在日米軍が日本から出てもらっては困るという場合もあり得ると思います。そういう場合にはノーと言う場合もあろうかと思うのであります。あるいはすぐ今侵略が起らぬけれども、しかし次の侵略が日本にかかってくるのだからそれを防がなければならぬという意味で、在日米軍に出てもらう場合もあろうかと思います。そしてイエスと言う場合もあろうかと思います。それらの問題はそのときの情勢による判断だと私は思うのでありまして、いずれも日本がイエスかノーかを言うことでございますから、言う以上は日本自体それだけの責任を持って言わなければならぬことだ、こう考えております。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 在日米軍の独自の活動の範囲というものと、それから日米共同の防衛地域というものとを区別しておいても、結論的に言いますと同じ結果になると私は考えるのですけれども、この点はいかがでございましょうか。言葉が足りないかもしれませんが、外務大臣今までの質疑応答でおわかりになったと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私今申し上げたように、戸叶委員の言われますように全部が同じだというふうには考えないのであります。ただイエスと言った場合に責任が発生する、それはイエスと言ったから発生する。またノーと言う場合にも、ノーと言うだけの責任は日本が持つ、これは当りまえのことだと思います。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 私この問題でもう少し他の角度から質問したいのですが、実は汽車に乗る時間がありませんので聞いておられませんけれども、岸首相はこういうことを言われました。日本がどんな方法によって防衛に当るかということは、言うまでもなく憲法の規定の範囲内で義務を負うのでございますと言っておられます。これは当然のことですけれども、在日米軍の行動いかんによっては、ほかの国から攻撃を受けたときに日本が自衛権ということを名目といたしまして共同防衛の形をとらざるを得なくなる。そうすると、非常に戦争に巻き込まれるおそれがあるのでありまして、第三者から見れば共同責任をとったというふうに考えるのは当然のことでございます。いかに日本の方から日本の国の安全を守るための条約であるということを言っても、ほかの国から見るならば戦争の渦中に巻き込まれる条約だというふうに考えるのは当然だと思うのです。今申し上げましたような形から言えば、日本が戦争に巻き込まれる可能性の多い条約だというふうに考えるのは当然だと思います。従って私どもはこれを廃棄すべきだということを言っているわけでありますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今の安保条約よりも、そういう意味において協議をすることでありますから、巻き込まれる場合も巻き込まない場合も日本の独自の見解でいくわけであります。ただ廃棄論は別なんでありまして、私どもは廃棄論をとっておりませんが、現行の安保条約よりは、その意味において日本考え方によってやっていくというので、巻き込まれる場合も巻き込まれない場合も日本自身の判断によると思います。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 この協議事項の点だけを考えてみましても、いろいろな例があるわけでありますから、私はこの次にゆっくり時間をかけてあの例この例をあげて伺ってみたいと思います。  そこでもう一つ伺いたいことは、日米安保委員会というものは、この協定が改定されたあとも残してお置きになるのか。これが結局アメリカと日本との間の共同防衛の場合に協議をする機関になるのか、それとも新しく違う形の委員会を設けられるのかどうか。この点を念のために伺いたいと思います。
  100. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだ日米安保委員会の運営も条約改定もどうするかということは考えておりません。ただ協議をいたす場合の方法論というものは何かつけて参らなければならぬと思いますけれども、現在の安保委員会をその揚にすることも考えられますし、あるいは現在の安保委員会を解消して、他の方法をとることも考えられましょう。これらの点につきましては、米国側とも十分相談した上でなければ、今どうということは申し上げられません。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう問題は、米国側と十分相談の上というお話でございますけれども、藤山外務大臣自身は大へん改定を急いでおられまして、すぐにでも改定できるようなことを言っておられますのに、そういう重大な問題はこれから話し合うということでは、やはりこの改定はとても四月にはできない、このことだけ考えてみてもできないのではないかということを私は考えます。そこで新聞でちょっと見たのですけれども、軍事委員会というようなものが構想としてあげられたということを伺っておりますけれども、これはいかがでございましょうか。
  102. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 特に軍事委員会というものは、構想にまだ出ておりません。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと大体今のままの日米安保委員会で話を進めていって、これから協議した上でどういう形かにする、こういうふうに了承したわけでございます。あとの点は私は他の機会に伺いたいと思いますが、これはもう一点、全然安保条約の問題と離れて一つ伺っておきたいことは、フィリピンのルバング島に二人の日本の兵隊さんがおられて、この方の身体の問題が問題になっており、きょうの本会議でおそらく救出のための決議案が出ると思います。この問題が起きましてから相当の時間がかかっておるわけでございますけれども政府として一体どんなことを今までにおやりになりましたか、そして今後どういうことをおやりになるか、念のために伺っておきたいと思います。
  104. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 政府といたしましてもこの二人の人を救出するということには十分関心を持って今日まで来ておるのであります。詳しいことはアジア局長からお答えします。
  105. 板垣修

    板垣政府委員 ルバング島におりまする日本元兵士の救出につきましては、過去二回努力をいたしました。しかし御承知のような地形でもありまするし、兵隊は出て参りませんので、成功に至りませんでした。今般また、まだ確認をいたしておりませんが、村の人に少し死傷を負わしておるというような事件が起りました。どうしても、できるだけ早くこれを無事に救出する方策を考えなければならぬということで、幸い国会の方面におきましてもこの問題を取り上げられまして、連日引揚特別委員会の方で御審議になりまして、本日、本会議でも決議案が出るそうでございますが、政府といたしましても厚生省とも相談をいたしまして、万全の措置を至急とるように今手配をしております。さしあたり現地におきまして、二回日本大使館員が現地に出張いたしまして、現地の警備隊とも連絡をいたしましていろいろな方法をとっております。さしあたって考えておりますのは、連絡箱を山の中に設けますとか、場合によりましてはヘリコプターでビラをまく、これは過去においてもやったわけでありますが、そういう措置を今とる手段にしておりまして、必要な経費も最近至急送りました。しかしいろいろ過去の経験者のお話を伺ってみますと、どうもそれだけではうまくいかないような情勢でもございまするので、第二段の措置といたしまして二人の兵士の親戚なり、あるいは知人なり、日本人だけのグループで山の中へ入って、これを引っぱり出すということも考えてみなくちゃならぬと思います。ただいま厚生省ともその時期方法等につきまして打ち合せ中でございます。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 こういうふうな方に対する最終的な責任は、やはり戦争に導いた日本政府に責任があるわけでございまして、当然この二人の命ということに対しては十分考えてあげなくちゃいけないと思うのでありますけれども、そこでフィリピン大使館とこれまで交渉された限りにおきましては、フィリピン大使館もそういうふうな人の身柄については相当理解ある態度を示していてくれられたかどうか、こういう点についてはよほどの御尽力を願わなければならないと思いますが、この点だけを伺いまして私の質疑を終えたいと思います。
  107. 板垣修

    板垣政府委員 その点につきまして、二人の兵士の生命の安全問題につきましては、従来特に問題はなかったのでありますが、最近の新聞の報道によりまして、何か現地の警備隊長が場合によっては射殺命令を出すというような報道がありましたので、この点につきましては至急に東京におりますフィリピン大使館を通じ、また湯川大使を通じて確かめましたところ、それは誤報のようでございます。そういう命令を出した事実はございません。しかし念のために、出て参りましても射殺とかそういうことのないように無事安全に本人が日本帰還できるような措置を十分申し上げておるのでございます。その点につきましてはフィリピン政府も十分理解を示されております。
  108. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時六分散会