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1959-02-18 第31回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十八日(水曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 松本 七郎君    理事 森島 守人君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       小林 絹治君    椎熊 三郎君       松田竹千代君    大西 正道君       田中 稔男君    帆足  計君       穗積 七郎君    和田 博雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (移住局長)  伊關佑二郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月十四日  委員森下國雄辞任につき、その補欠として井  出一太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井出一太郎辞任につき、その補欠として  森下國雄君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際捕鯨取締条約脱退に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関し調査を進めます。この際、国際捕鯨取締条約脱退に関し、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際捕鯨取締条約からの脱退通告をいたすことにいたしましたので、その御報告を申し上げておきたいと思います。  国際捕鯨取締条約は、減少しつつあります鯨類資源を保護しつつ、捕鯨産業を永続的に育成することを目標として、一九四六年ワシントンで作成されまして、一九四八年十一月から施行されておりますが、日本にとりましても、北太平洋沿岸地域及び南氷洋におきます捕鯨は重要な関心事であり、特に他の諸外国は主として鯨油の採取を目的として捕鯨するに対しまして、日本としては古くから鯨肉を食用としておりますので、動物蛋白質の有力な補給源として捕鯨を重視しておりますため、昭和二十六年三月国会の承認を得て、同年七月からこれに加入いたしておった次第でございます。しかるところ、現在南氷洋における捕鯨に参加している日、英、ノルウエーオランダソ連の五ヵ国の船団は二十を数え、条約によって認められております同水域での捕獲総頭数一万五千頭、白ナガスクジラで換算した頭数でございますが、一万五千頭のワク内で自由競争を行うとの条約建前については、関係各国間の協調が必ずしも順調ではございませんし、また南氷洋捕鯨に参加していない国が条約の中で十二ヵ国を占めておりますので、南氷洋捕鯨参加国の正しい主張が入れられないようなことも多いため、ノルウエー等は早くからこの条約運営ぶりにつきまして不満を抱いておったのでございます。最近におきまして、ソ連がその船団を著しく増強する計画を持ちましたので、このままで自由競争を続けるならば、資源捕鯨手段の不均衡によって、重大な事態が起るとも考えられましたので、英国の主唱によりまして、昨年十一月ロンドンにおきまして南氷洋捕鯨参加五ヵ国の会議が開かれました。そこでは、一、ソ連に総捕鯨頭数の二〇%を割り当てるかわりに、その増強計画を今後七カ年間に三船団にとどめること、二、他の四ヵ国は相互の譲渡以外には船団を増強しないこと、三、残りの八〇%は他の四ヵ国間でその割当について来る六月一日までに協議すること、等が各国政府に勧告されたのであります。  ノルウエーオランダは、この割当会議におきまして有利な地歩を占めようとの見地もあって、その後昨年末までにこの割当会議が成功すれば取り消すことを条件にこの条約からの脱退通告を行いました。条約第十一条の規定によりますと、その年の一月一日以前に通告された脱退は、その年の六月三十日に効力を発生することになっております。一国が脱退通告しますと、他の国もその通告について知らせを受けてから一カ月以内に、同様の通告をもって六月三十日以後脱退もできることになっておるのであります。ノルウエーオランダ通告は一月十三日通報されましたので、二月十二日までに通告すれば、右両国同一歩調をとれることになりますので、わが国態度をいかに決定するかにつきまして、政府といたしましては慎重な検討を続けて参ったわけであります。英国政府は、これに関しまして、去る一月三十日議会において、従来続けられてきた国際協調が続けられることを希望して、英国脱退通告は行わないが、その後の情勢いかんによっては再考すべきことを明らかにいたしております。  日本といたしましては、条約建前である自由競争が正当であると考えておりますので、右のような割当制度について政府間で協定することには、反対の立場をとってきたのでありますが、現状を放置することは不可能と考えられましたので、次善の策として、捕鯨業者間で自主的に割当につき協議決定することを主張して参ったのであります。このため、ノルウエーの要請もありまして、割当に関して、わが国関係業者がこのような会議のイニシアチブをとることまで考慮して参ったのでありますが、ノルウエーオランダ両国が、このような努力にもかかわりませず、ついに実際に脱退するに至りましたから、それによってわが国がこうむることあるべき不利益は、はかり知れないものがあると考えられます。かかる不利益を未然に予防するための措置をとっておくことが、この際必要であるとの結論に達しましたので、去る二月六日、今後の情勢の推移に照らして取り消すことあるべき旨を明らかにしつつ、所定の手続による脱退通告を行なったのであります。このわが国通告は、右のような意味から、全くの予防措置でありまして、わが国に対し不利益が与えられないことが判明するときは、発効前にいつでも取り消す用意があるのであります。わが国の真意とするところは、真の意味での国際協調によって、捕鯨量が永続的に維持せられることでありまして、いたずらに国際協調を破ったり、ほしいままな行動をするつもりは全くございません。従って、もしかりに不幸にしてこの通告を取り消すことのできないような状態が生じ、わが国脱退が実現したような際にも、わが国といたしましては、できる限りの範囲におきまして国際協調による鯨類資源の保存に努力をする所存でございます。  なお、去る二月十七日には、わが国業界の招きによりまして、ノルウエー捕鯨業界指導者が来日いたしましたので、これと協力して、割当制度についての会議を成功に導き、最悪の事態の発生を回避することにわが業界は全力を尽すよう期待して現在おるのでございます。その際政府といたしましても、十分協力を与えていきたいと考えております。  以上御報告を申し上げます。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、国際情勢に関し質疑の通告がありますので、順次これを許します。菊池義郎君。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 大臣にお伺いいたしますが、けさ日米安全保障条約に関し、総理と会見して協議されたようでありますが、その内容はすでに記者会見において発表されたことと存じますが、そのうち特に問題となった点あるいはまだ未定である点、そういう点をお漏らし願いたいと存じます。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約交渉を進めて参りませんければなりませんので、けさ九時から総理と打ち合せをいたしました。大体、今までのわれわれの事務的な交渉、その他の点を報告申しまして、そうして今後の党内調整その他につきまして、どういう順序で、また大体どういう日程で進めていくかというような問題について主として話し合いをいたしたわけであります。むろんそれらの過程において、若干内容の問題に触れて意見交換がございましたけれども、最終的に確定をいたしたというものではございません。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 その内容の重点をお伺いできればけっこうだと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまも申し上げましたように、大体今日まで議会等でも御説明申しておりますように、問題点その他について所在を明らかにし、同時にそれらについても今日まで事務的な検討をして参りました。その経過等を説明して参ったわけでありまして、いずれ最終的には総理もその上に立っていろいろな判断をされることになろうと思います。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 記者会見では具体的にお話しになったのじゃございませんか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特に具体的には話しておりません。ただ、そうした過程において若干意見交換があって、意見としては私も意見を述べてきたということを申しております。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 大臣福岡旅行先において、防衛区域について「日本国」という言葉を使えばいいじゃないか、沖縄小笠原、歯舞、色丹の施政権が返り、その領土が返ってきた場合には、条約を改正しなくても自然に入ってくるわけだから、それが一番適当であろうという意見を述べておられますが、この「日本国」という言葉の中には、施政権を持っておりますところの沖縄小笠原も当然に含まれると解釈をすべきであろうと思われるのでありますが、この点どうですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が福岡で申しましたのは、安保条約懇談会質問がございまして、沖縄小笠原を入れてはずすということと、初めから入れないということと、どういうふうに違うんだという質問があったわけです。私としては、入れる入れないをそのとき申したわけではないのであります。ただ、「日本国」というような表現を用いるならば、条約文作成上その他においては、入れないというような場合にはそれで適当なんじゃないか、一ぺん入れてまた抜くというようなことであれば、いろいろそこに条約作成上にも問題が起るということの事実を申し上げたわけでありまして、私がどちらの説に賛成しているかいないかということを答弁したわけではございません。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 その点は総理と話をきめましたのですか、どうですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 意見としては、私の意見総理に述べておきましたけれども、先ほど申し上げましたように、特に総理か確定的に何とも言われたわけではございません。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 「日本国」という言葉はわれわれも適当であると考えておりますか、そういたしますと、もしそう主張するとしますと、別に交換公文とか議定書とかを作る必要があると思いますか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いよいよ条約作成交渉をいたしますときに、今お話しのありましたような「日本国」という字句を使うのか、あるいはどういう字句を使いますかについては、その際の検討に譲らなければならぬと思いますし、そうした言葉を使うことによって交換公文が要るかどうかという問題も、今後の検討になろうかと思います。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 大臣のお考えとしては、結局条約適用地域防衛地域とは不可分のものにしたいというお考えなのですか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約適用地域とか防衛地域とかいう言葉は、実ははなはだあいまいと申しますか、あるきまったものではないのじゃないかと思うのでありまして、大体条約内容を持った地域になりますれば、それ自体は防備の地域ということになろうかと思います。何か特に分けて考えられることはないのではないか、こう考えております。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 内乱条項を削除するというのは大臣構想のようでありますが、これは総理もその通りの考えでありますか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理も先般、内乱条項等については削除することが適当ではないかと思うというようなことを議会でも発言されておると思うのであります。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 われわれが心配しておりまするのは、この二十数万の自衛隊は、普通の戦闘にはなれているかもしれませんが、まだ革命戦にはなれていないと思います。ところが左翼団体が数十万ある。これは常に革命の演習を争議とからんでやっておるのです。これはおそるべきであろうと思うのでありますが、そういう場合も予想いたしまして、そうして内乱条項はむしろ置いておいた方がよくはないかと考える人もたいぶ多いのでありますが、この点いかがでありますか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろ御意見もあると思います。ただ条約上、こういう条項を置くことは適当ではないのではないかと私は考えております。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 もちろん日本の体面から申しますると、それは置いてはならぬとわれわれも考えられるのでありますが、一面においてそういう心配が伴うのでございます。  それからアメリカ以外の国の駐兵を拒否する義務を規定してありまするが、これも彼らが希望しなければいいが、アメリカがこれを非常に熱望すれば、むしろ残しておいた方がよくはないか。何しろ防衛力のない日本を守ってくれるだけでも、日本にとっては大へんな役得でございまして、基地の提供くらいではこれを償うことはできぬと思うのです。それでありますから、向うが希望すればこれを残しておいたらいいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 向うが希望するかしないかは、正式交渉をやってみないとまだわからぬわけであります。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 ダレス長官病気で入院しておりますが、まだ外務省ではいいか悪いかの情報は参っておりますか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 朝海大使からダレス長官病気については情報が参っております。大体新聞紙上でも御承知のように、この前の手術のときにあったと思われるようなガンが今回はっきりわかってきた、そういうことで必ずしも今すぐに危険だという状況ではないのでありますけれども、やはりガンの性格を持った病気でありますれば、相当将来の病状というものは重大だと考えるべきだと思っております。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 この病気がもし長続きいたしますと、安保条約改定もおくれるのではないかという心配がありますが、その見通しはいかがでありましょうか。ところがそれについて、大臣は三、四月ごろまでには退院する、官房長官幹事長はとても問に合うまいというようなことを言っておりますが、どうでございますか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は、むろん払とダレス長官と話し合ったことでありますけれども、ダレス長官個人意見だと思いませんので、安保条約改定について支障かあろうとは思っておりません。私といたしましては、外交担当者として一定の目標を置いてそれに努力して参りますことは、当然のことと思うのであります。そういう意味努力目標を掲げて、そうして努力をして参りたいと思います。むろん二国間のこういう条約交渉でありますから、何月何日までと言っても、交渉経過は若干早まったりおそまったりすることは当然でありまして、ただ目標を置きませんでやりますことは適当でないと考えて、目標を置きながらやっております。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 朝鮮人の帰還問題について、これにからみまして、釜山に抑留されておりまする百五十三人の漁夫を人質みたように考えておるらしいのでありますが、これを救出するために外務省として当然に努力しておられることはよくわかっております。それで国際赤十字のその後の動きはどうでございましょう。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際赤十字は、この問題につきましてはさっそく日本赤十字からジュネーヴに人をよこしてもらいたいということでありまして、ごく数日のうちに井上外事部長ジュネーヴに行かれると思います。そうして十分そこで話し合いをされることになろうと思っております。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 昨日の農林水産委員会における政府側の答弁の中に、李ラインでつかまった者に対して国家が補償の義務があるかどうか問題だということを言われたそうであります。それでは日本政府李ラインを認めておるということになるわけです。これは実に重大だと思うのでありますが、大臣考え方はどうでございましょう。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、あくまでも李ラインを認めない立場において、日韓問題の処理に当っております。従いましてそういう意味において交渉のやりにくい点もございます。しかし、やはり李ラインを認めない立場交渉すべきは当然のことだと思っております。抑留漁夫家族の方の保護というものは、これは国民の感情の上からいいましても、また実際苦境に立っておらるる方の立場考えましても、そういう意味において十分考えて参らなければならぬことだ、そう考えております。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 日本漁夫李ラインのあの周辺でもって一番つかまっておるのでございますが、大臣防衛庁と緊密な連携をとってもらいたいと思うのです。李ラインはるか向うに、もとの日本の領海でありましたところに、監視艦艇を置くべきじゃないか。李ラインの手前にばがり監視艇を置いておるようでありますが、これはまことに不都合きわまることであると思うのであります。すべからく防衛庁と協議して完全に装備した艦艇李ラインはるかかなたに、日本ラインを敷いてもいいです、そうして監視せしむべきであると思うのですが、こういう構想については大臣はどうお考えですか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 李ラインを認めておりませんししますが、漁船拿捕という問題については、われわれは最善を尽して、漁船拿捕されないように努力して参らなければならぬ。ただ、できるだけ漁船拿捕されないようにすることのためには、必ずしも非常に勇敢な議論ばかりでなくとも、適当な処置をとって、できるだけ漁船拿捕を避け得る方法もあり得ると思うのであります。そういう意味においては、万全な処置をとるように、各省に外務省の得だ情報その他を伝えまして、お願いをいたしておるわけであります。
  35. 菊池義郎

    菊池委員 向うの方で発砲するのに、こちらの方では拳銃を入れた箱にかぎをかけておるんだそうですね。そういうように最初からいくさをしないという建前でいくから、ますますなめられてしまう。これはぜひ考えてもらいたいと思います。  さらにILO条約批准問題の解決が迫られております。これについて政府がどう対処せられるか、同じ労働運動でも、西ドイツその他西欧諸国労働運動日本労働運動とば、まるで様相が変っておりまして、日本はまことに熾烈な状態であります。そういうときに、日本政府としてどういう措置をとられますか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 かねて労働大臣の方針にありますように、労働問題懇談会の答申を待って、労働大臣としてはこの問題の実質的な内容の面における解決をされるだろうと思いますが、われわれとしては、そうした国内の問題を労働大臣がやられるのに歩調を合せて参りたいと考えております。
  37. 菊池義郎

    菊池委員 総評岩井事務局長中共から帰って、向う側の意見であるとして、日本中小企業貿易総評にまかせればいいのだ、そうすればわれわれはこれに応じて取引ができるのだ、特にウルシその他から始めたいということを言っておるそうでありますが、総評がもしこれに応じて乗り出すようなことがありました場合、政府としてはどういう態度をもって臨まれるか、お伺いしておきたい。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特定の物資をもって特定の制限をした何か通商関係を起すというようなことは、国内政治の上におもしろいとは思いません。従いまして、そういう特段の内政に関係するような問題については、政府としては、中共のそういう態度について好ましいとは考えておりません。
  39. 菊池義郎

    菊池委員 外務省の発案とし、計画として、日本人の移住地移住専門総領事館でも設けて世話をさせるという考え、これはわれわれ賛成でありますが、その内容、要点をちょっとお漏らし下さればけっこうだと思います。どなたからでもけっこうです。
  40. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 三十四年度の予算におきましては、南伯のポルトアレグレという所に総領事館を設けることになっております。そのほかにもまだ私たちとしては作りたい所がございますが、これは三十五年度以降に要求したい、こう考えております。
  41. 菊池義郎

    菊池委員 最近の新聞によると、フィリピンルバング島に二人の日本兵ゲリラ戦を続けておる、これはどうしても救い出してやらなければならぬと思う。笑いごとでも何でもない、これは重大だ。国民の思想の上にも大きな影響を及ぼすと思うのです。まだ終戦になったことを知らないで、ほんとうに彼らは軍人精神に徹して、降服することを知らずに、ただ戦いあるのみというような考えで戦い続けておるのでございますが、フィリピン諸君母国心かあるならば、この二人の兵隊行動にもむしろ同情すべきだと思うのです。それで、日本政府といたしましては、直ちに手を打って、フィリピン政府交渉せられて、この二人の日本兵を救い出すことに努力していただきたいと思うのでございます。これがためには、あちこちにいろいろな陳情の署名までもされておるということである。これを政府がもし捨てておいたならば、日本国民の愛国心にも冷水をかけるような結果になりますので、ぜひ適当な処置を至急講じてもらいたいと思いますが、いかがでございましょう。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まででも、フィリピン各地日本残存兵があって、山にこもっているというような事態がありますときには、できるだけ救出方法考え努力はしてきておりますが、ただいま御指摘の点につきましても、われわれとしては最善努力をして参りたい、こう思っております。
  43. 菊池義郎

    菊池委員 その具体的な措置をちょっとお漏らし願いたい。
  44. 板垣修

    板垣政府委員 今ルバング島におります二名の日本兵救出問題につきましては、過去少くとも二回にわたりまして救出運動をやったのでありますが、成功いたしませんでした。今般また新聞に報ぜられたような事件が起りましたので、急遽フィリピンにおります日本大使館員現地に派遣いたしまして、フィリピンの警察とも協力いたしまして、ただいまこの救出作業につきまして作業中でございます。その方法といたしましては、宣伝ビラあるいは家族からの通信などあらゆるものを用意いたしまして、現地でばらまいたり、あるいはその二人の兵隊が出てきそうなところに置くというような方法を講じて、これから大々的に救出運動をやろうというふうに考えております。
  45. 菊池義郎

    菊池委員 それでは私はこれで終ります。
  46. 櫻内義雄

  47. 穗積七郎

    穗積委員 久しぶりでございます。  言うまでもなく日本の当面の外交は、一つアメリカとの間における安保条約改定、これは政府の提案せられるところでありますが、われわれは反対しておるのです。これが日本の再軍備強化の道に進み、やがて戦争に進む危険を国民心配している。もう一つの対照的な当面の問題は、中国を初めとする大陸、特に共産主義諸国との貿易の再開の問題、これは平和な経済政策推進意味で、自民党を支持しておる国民諸君までこれを支持しておる。この二つの問題に対して、われわれ野党と違って、藤山さんは外交権を持っておる当面の責任者であるわけですが、その外務大臣としてこの二つの問題を駆使しながら、一方は三月末をめどにして調印まで持っていきたい、一方は国際情勢国内の空気も察知して、昨年来停滞しておる日中貿易を打開したい、こういうことについて、しかも大使級会談ないしは民間協定が行き詰まっておるから、場合によったら政府間協定に譲ってもよろしい、そういう準備と用意があるのだということの談話発表各地でなさっておられますが、これは一体あなたは本気で両方とも言っておられるのであるのか、ごまかしであるのか、最初にあなたの心底をちょっと伺っておきたいと思うのです。
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米安保条約改定交渉は、現に今やっております。この問題は御承知のように、われわれとしては日本国の安全を守り、他国からの侵略を排除するということのために、日本一国の力ではとうていできないことが予想されますので、友好国としてのアメリカと手をつないでやっていくという建前は、今日までわれわれ自民党のとってきた政策でございます。私もその政策が適当であろうと考えておりますので、従って安保条約の廃棄ということは考えておりません。しかし現在の安保条約そのものが、七年前に作りましたときよりも、今日の日本政治経済の諸般の情勢から見ましても、また国民感情から見ましても、当時あげて日本の防衛をアメリカ自身にまかしたというような立場で締結されております条約は、必ずしも現在適当ではないと考えますので、従って、これを日本の自主的な考え方も入れて運営できますように改定することでありまして、このこと自体は、私は決して中共等に対しまして、何と申しますか、反抗的というわけではないわけであります。現在の安保条約を、日本が自主性を持つということを含めた意味において改定するということは、非常に日本自体のためにけっこうであるわけであります。そういう意味において考えておりますので、従って中共に敵意を持って、これを改定していくということではないのでありますから、今後国民の希望を入れまして、貿易等の問題について中共交渉するのに、私は改定そのものがじゃまになるというような見方は、いささかもいたしておらぬのであります。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 安保条約改定は、岸内閣のくずれかかったのが立ち直るのかどうかということについて重大な関係があると思う。従って岸内閣の外務大臣としては本気でやろうと思って、言っているのかと思うのですが、特に問題になるのは、中国との行き詰まり状態の諸関係を打開する。こういうことを今外交権を持つ外務大臣として、現実の問題としてやるつもりで言っているのだ、こういうお話でございますが、われわれはそうはちょっと考えられない。仄聞するところによると、あなたはあの談話を発表した後に、あなたの親友であり、財界代表者の一人である商工会議所の足立さんから、あまり出過ぎたことを言ったりしては困るという注意を受けたときに、あれは何も本気の話じゃないのだ、大部分が実は参議院選挙を前にしの選挙対策なのだ、こういうことを言われた。それを足立さんがまた正直に新聞記者会見のときにおしゃべりになったということで、外に出たのです。私はこの一事はおそらくは真実だと思うのです。もし間違っておったら、あなたこの際釈明をなすったらいいと思うが、そういうような一事柄があったということでなく、て、あなたの内閣の、今のアメリカとの軍事相互協定を結ぼうととする政策、それから岸内閣全体の外交政策自民党党内における各派の外交に関する考え方を検討してみまして、一体あなたがその上に立って本気に中国との関係を打開する、大使級会談または政府間協定もやればやるんだというような状態につなってはいないと思うのです。従ってわれわれとして危惧することは、これは単にあなたを疑うわけではありませんが、それらの情勢検討してみまして、中国との関係打開のあなたの談話発表というものは、安保条約改定を本気に実行するために、国民の世論を緩和するための煙幕である、そういうふうに考えられる節が多々あります。  それからもう一つは、今あなたが語るに落ちるで足立さんに言われたように、来たるべき選挙に対する選挙対策、言いかえるならば国民にこういう希望を持たしめたり、あるいは世論の反撃のための煙幕を張って、それで安保条約改定だけを実行して、あとは食い逃げして不渡り手形だということになる危険が非常に多いと思う。あなたは外交権を持つ外務大臣として本気でやるということで、そういうことを談話発表なすったのか念のために聞いた。あなたはおやりになるとおっしゃいますが、それでは一体どういうふうにしておやりになるのか、この際あなたは今申しました通り、われわれ野党と違う。外交評論家でもない、財界代表の単なる希望を談話発表をするのではないのであって、岸内閣の外務大臣として外交権を持っておられるわけですね。しからばお尋ねいたしますが、中国との諸関係を打開するために一体どういう条件でとどめるならばこれが打開できるのか、あなたの構想を伺いたいと思います。私は実は安保条約に対する藤山試案のことについても、重要ですからお尋ねしたいと思っておりますが、順序といたしまして、中国との関係の方がタイミングに重要な点があると思いますから、これを先に伺い、あとで安保条約の重要な点について一、二お尋ねいたしたいと思っておりますから、そのおつもりで簡潔に、正直にお答えをいただきたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共貿易の問題につきましては、安保条約の煙幕であるとか、参議院選挙の便宜のためということで私が考えておるわけではございません。昨年末御承知のような事態に対して、政府は静観という態度をとって参ったわけであります。その静観というのは、たびたび申し上げておりますように、決して日中貿易をやらないのだという意味の静観ではなかったわけでありまして、いろいろ日本側が言ったり何かすることがかえって誤解を重ねていく。従って、この際は日本側としても静かにしている方がいいのではないかというような意味において、われわれは静観ということを言ってきたわけであります。ただその静観というような問題についてもだいぶん誤解がありまして、静観ということは、やらないのではないかというようなことをたびたび質問もされております。私どもはそうでない意味を答弁いたしておりますけれども、まだそれらの問題が払拭はしていないわけであります。従いまして、われわれといたしましては、中共日本との間でいろいろな誤解が解けて参りますれば、貿易問題あるいは事実上の郵便協定その他についても、今後処理して参らなければならぬことは当然のことでありまして、従ってそれは安保条約に対する煙幕であるとか、あるいは参議院議員選挙に対する選挙スローガンというものではないわけであります。ただ御承知のように二国間の問題というものは、日本側ばかり考えましても、相手のあることでございます。また相手がいろいろ考えましても、日本の事情等もございます。従いまして、やはりこうしたものは時期と機会とを見てわれわれとしても考えていかなければならぬのでありまして、今直ちに、どういうふうな機会にはどういう手を打つ、どういう時期にはどういうことをするというようなことまで申し上げかねるのは、おわかりいただけると思うのであります。ただわれわれとしては、中共日本との間に貿易関係を復活し得る時期には復活する。そうして過去の民間協定等の場合の経緯を見まして、民間協定で必ずしも十分でない、初めからもう少し注意をしていけば、ああいう五月の第四次協定の結末のような事態にならない場合もあり得るのではないか。従って今後は、民間協定の場合にはできるだけ政府も指導、協力していくし、また必要があり、適当な機会があれば、そうした問題についても大使級会談等で話をしてみるということも適当であろうかと思うのであります。そういう意味を申し述べたわけであります。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 日中の現状打開については、日本国民もそれを願っております。中国の人民並びに指導者も、あげて願っております。ところが中国側の態度は、昨年の第四次民間協定ができましたのを岸内閣がこれをつぶして、そのときから今日に至るまで一貫いたしております。そこで、やるおつもりだというのなら伺いますが、これを打開するためには大使級会談であるとか、あるいは民間協定によるか、政府間協定によるか、あるいはまた協定にいたしましても、気象協定、海難協定、漁業協定あるいは郵便協定というようなものでやっていくか、いろいろなお考えを放送されておられるわけだが、それらの一切の前提は、第一番に、岸内閣が中国政府に対する敵視画策を転換しなければいけない、これが第一の前提条件になっていると思うのです。このときに、あなたは国際関係の東西の緩和をも勘案しながら、国内の世論をも勘案しながら、やろうというおつもりでほんとうに談話発表をなすったのなら、そのおつもりがあろうと思うのです。あなた方は敵視政策ではないと言っておられるわけだが、向うは敵視政策と見ておる。われわれが客観的にながめても、岸内閣の敵視政策というものはこの一、二年来積み重ねられて参っております。そこで、やるおつもりがあるのなら具体的にお尋ねいたしますが、その敵視政策を氷解する、そのためには少くとも私は——岸さんが一昨年台湾へ行かれたときに、蒋介石の本土武力反攻政策を支持するかのごとき談話を発表なすった。これは次の国会において問い詰められて、そういうことを言った覚えはないと言っておりますが、そのときの談話だってこれは国際的に新聞にも出、ずっと報道せられたのに対して、岸さんは、われわれの質問に対してそれは誤解だと言っておられますけれども、国際的において、また中国に対しては、それはわれわれの真意ではない、われわれの真意はこの通りだ、蒋介石の反攻政策に対して私は賛成をしなかったどころか反対をした、そう言うような声明をむろん出すべきだと思うのです。これが第一。それから第一は、昨年十月のブラウン記者との談話、これは明らかに中国を侵略者として規定している。台湾の戦争を国際共産主義の侵略に対する国際戦争だという規定をしておられます。そういう点で、これは明らかに中国に対する敵視政策、むしろこっちの方が中国の真意を曲解しておるのですが、これも取り消さなければならない。さらにことしの正月においては、伊勢参拝されたときに、中国の内政干渉をやめなければ貿易打開はできないという、そういうような何かひっかかったような談話を逐次今日に至るまで発表しておられる。また国会におきましては、台湾政府との関係を尊重しこれを持続するということで、中国との国交回復に水をさし、または二つの中国を認めるかのごときうらはらになる言葉を出しておられますが、敵視政策をまず撤回することが一切の交渉の始まりであるとするならば、これを取り消す必要があると思うのです。私は今具体的に例をあげました、それらを頭の中に置いて、あなたは中国との関係を打開するためにまずそれらのことをすべき話し合いを岸さんとの間にされたかどうか。実は私はきょうは岸総理もここに一緒に御出席を要求しておったのですが、おいでにならないので、岸総理に対しては次の機会にお尋ねをいたしますが、あなたは外務大臣という責任の地位において中国との関係を打開しようとするならば、以上のことについては当然相手の誤解を解くために——誤解であるならば誤解を解くために、こちらが誤まりであるならば進んでその誤まりを正して、そうして政策の転換をはかるべきだ、こう思うのです。具体的に積極的にそういう措置をおとりになるべきだと思いますが、どうでございますか。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま穗積君からお話がありましたが、総理議会でただいまお話のありましたような台湾における蒋介石との談話なり、あるいはセシル・ブラウンとの会見等につきまして、詳細に総理の発言をお答え申し上げて、そうしてそういう意味において敬視政策にそれがなっているのでないことをすでにお答えをいたしているわけであります。これは国会を通じて総理の言われたことであります。私は、総理が今敵視政策をとっておるとは考えておりません。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 私は、国会における岸総理の答弁を言っているのではありません。岸総理は、それは言った覚えはないと言っている。言った覚えが事実ないならば、なぜ一体外に向ってまた中国に向って友好的に、私の言ったのはそういうことではなくてこういうことですということを積極的に御説明にならないのか、それを説明する必要があると思うのです。それを伺っている。国旗問題についてもそうです。長崎事件について遺憾の意を昨年の予算委員会で表された。しかし相手に対しては何ら表しておりません。国会のわれわれ野党の議員に対する答弁を言っているのではありませんから、それは間違いであり、または首相の言ったことと違うということであるならば、誤まりを正し、これをはっきり相手に積極的に説明するだけの態度をとることが、友好的態度を表明するのに好ましいと私は思うのです。外務大臣はどうお考えになるかと伺っているのです。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理が国会を通じてその意思を表明されておりますことは、これは当然世界の各国にも通じるわけであります。私はそれで適当な措置だ、そう考えております。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、やる意思はないということですね。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特に中共に対して、そうした意味のことを釈明するというのはかえっておかしいことでありまして、国会を通じて総理の意思がはっきりしておれば、それはおのずから世界にわかっておることだ、こう考えております。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 中国に対して、中国政府または人民に対して直接やるのが最も望ましいと思うが、そうでなくても、それでは内閣の外交方針を宣明する機会に、政府の方針として、態度として、それらのことも織り込みながら、友好的な精神を表明する、そういうことは当然だと思うのです。国際的な意味を持つ記者会見でけっこうですから、それを当然やるべきで、国会で問い詰められて、私はそう言った覚えはないという消極的な否定でなしに、積極的に中国との友好関係を望んでおる、たとえば過去におけるこれこれの事件については、あるいは私の談話については、これは真実ではない、あるいは真実であるならば、それを取り消す、こういうことを明瞭率直になさることが私は必要だと思う。それなくして、一体中国との関係が氷解できるとお考えになっておられるかどうか。そのことを全然しないで、国際情勢や、相手から折れてくるだろうと思っているような考え方であるからして、私がさっき言ったように、本気でやるつもりで言っているのじゃなかろうという証明になると思うのです。いかがでございますか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、総理はそうした機会に、国会等を通じて、それらの点について、はっきり総理御自身の考え方を述べております。また施政方針の演説その他にも、決して中共を敵視しているのじゃないということは言っておられるわけでありますから、私は、それ自身がもうはっきりした総理の声明だ、こう考えております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 その態度は、従来の態度と何ら変らないのであって、そういう言いのがれというか、相手の誤解に転嫁する、これは非常に卑怯な、不愉快な、これこそが私は相手を友好的に信頼してない態度の表われだと思うのです。そういうことでは日中関係の打開は、現在の岸内閣の続く限りできない、こういうふうに私は思うのです。従って日中関係を少くとも今年じゅうには再開するのだというようなあなたの談話は、これは明らかにあなたの意識、無意識あるいはあなたの今の口先の弁解いかんにかかわらず、明瞭に、やる気がなくて放送しているものだとわれわれは解釈せざるを得ない。  それをさらに証明するものとして、次にお尋ねいたしますが、われわれの国際情勢の見方を長くやっておりますと時間がかかりますから、結論を申し上げれば、中国の国連加盟の問題は、もう遠くないと思うのです。最近の南アメリカあるいはアフリカの動勢等を見ましても、明らかに従来の英米の帝国主義的な桎梏から解放されて、どんどん国連加盟の情勢が前へ進んできておる。従って、核兵器禁止の会議一つとってみても、さらに強大である中国が国連に加盟していなかったり、中国政権を認めないということになりますと、これは実行が困難になってきている。従って国連加盟の問題は遠くないと思います。そのときに藤山さんは、日本外交として中国の国連加盟に対する日本態度検討なさっておられると思うが、われわれは当然これに対して承認するだけでなくて、積極的に努力すべきだと思うのです。それこそが友好的な態度の表明だと思う。どうお考えになっておられるか、国連加盟に対する政府態度をお尋ねいたします。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際間の諸般の問題というのは、御承知のように歴史的ないろいろな経緯があるわけでありまして、現実の外交を預かっております場合に、すべてを理想主義だけで飛躍して参るわけにはいかない。現実の事態、その現実の事態が起ってきておりますいろいろな過去の経緯というものを、われわれは十分考え、尊重して参らなければいかぬのであります。そうしたものを見ながら、同時に現在の世界の動きというものもあわせて考えていく必要があるのでありまして、われわれといたしましてはやはり現実に即した立場から、そうした問題の起るたびに、その問題を現実的に処理していくという考え方でいるのでありまして、今ここで国連加盟の問題等についても、そうした立場でもってわれわれは外交案件を処理していくということを申し上げれば十分だと思います。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 これについても、私が最初に疑ったことが疑いでなくて、国連加盟問題についても何らの努力も腹もきまっていなくて、中国との関係を打開しようなんでいうことはおこがましいと思う。単なる業界あるいは野党からの要求であるというなら別ですよ。あなたはさっき言ったように執行権を持っている、外交権を持っている。外務大臣は、国際情勢を勘案し、国民の世論を考えて日中関係を打開するのだ、大使級会談政府間協定を準備さしているのだということを言いながら、それを打開する前提条件である中国人民共和国政府の国連加盟問題、これに対して国際情勢の動きを待っているのだ、あなたまかせだというような態度では、日本が隣国の友好国としてつき合うわけにいかない。そういうことではやっぱりあなたの声明は、全く単なる国民をごまかす声明にすぎないことの証明になると思うのです。  それでは次にお尋ねいたしますが、二つの中国の問題であります。御承知の通り中華人民共和国は、この問題については非常に厳格な態度で臨んできている。それから台湾の蒋介石政権も二つの中国にはまっ向から反対をいたしております。われわれ国民、平和を愛する者、アジアの独立を愛する者は、すべて二つの中国は認めない、そしてあの大陸と六億の人民の統治権を持っている中華人民共和国を、中国の代表政権として認めるべきだという態度をとっております。ところが一体政府は、この二つの中国問題に対する最近の動きをごらんになり、それに対してどういう態度をおとりになろうとしているのか、これも明らかにしていただきたいと思います。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題も、御承知のように歴史的な過去のいろいろな事態の上に立って起っておるわけでありまして、私どもとしては、そうした現実の面を見ながら将来の問題として考えて参らなければならぬことは当然でありますけれども、しかし非常にデリケートな問題であるだけに、外交責任者としての私から今何らの意見を申し上げるわけには参りません。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 これは、日中の関係を打開するための大きな前提条件の一つでございます。そこで立ち入ってお尋ねいたしますが、現在アメリカを中心とする外交では、やがて中国を承認しなければならなくなる。だがしかし台湾は軍事基地として確保したいということで、苦肉の策でございますけれども、たとえば蒋介石政権を消滅せしめ、台湾地域を国際管理にしたいという考え方、これについて外務大臣は賛成なさいますか、反対でございますか。われわれは、日本としてはこれは当然アジアの独立と平和のために反対をしなければならない、こう考えますが、外務大臣のお考えはどうであるか。それからもう一つは、蒋介石政権は今日は中国と同様に二つの中国というものを認めていない。ところが二つ地域、台湾地域に限定された中国でもかまわないというかいらい政権を作ろうとしておる。国際管理案がうまくいかなければ第二案としてこれを考えておる。これもわれわれは全く大国の誤まった植民地主義の考えから現われたものであって、日本外交として反対しなければならぬと思っております。第三には、台湾の島民による独立政権、独立の名による独立政権、これによって台湾地域を確保する。こういう実にアジアをアメリカの軍国主義の政策の犠牲にしようとする動きがあろわけです。これに対しては外務大臣は御承知の通りだと思う。この三つの問題というのは、二つの中国問題に関連した誤まった動きでございますが、これらすべて、われわれ日本外交としては当然反対をして、これを阻止しなければならぬと思いますが、外務大臣はどういう御所見を持っておられるか。この三つの、二つの中国政策に対してお考えを伺っておきたいと思います。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そうした具体的な問題について、私が当面の外交責任者として意見を申し述べることは、差し控えたいと思います。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 おかしいじゃありませんか。それこそがアジアの独立と平和のために非常な重要な問題だと思うのです。それを日本外交的にリードしないで、積極的な意見を述べないで、それではおかしいじゃありませんか。そんなことで中国との国交を回復しようの、あるいは関係を打開しようの、貿易、文化の交流をやろうのなんということは、これは信ぜられないことです。それに対する態度をもはっきり持てないで、大使級会談をやって一体何を話すのですか。国連加盟問題についても何も意見が述べられない。二つの中国問題に対するアメリカの陰謀に対しても、ノーコメントで何ら意見を述べられないというようなことで、大使級会談とはおこがましいです。何を話をしようとするのですか、はっきりしていただきたい。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これらの問題について、私どもが現在むろん意見を申すことはできないと思います。しかし外交のことでありますから、われわれとしてはどういうふうに今後こうした問題について考えていかなければならぬか。そうした問題についてむろん外務大臣として世界の情勢なり、あるいは両国考え方なりそうしたものを見なから、また知りながら考えていくということは当然なことでありますが、しかしそうした問題について、今意見を申すということは、私は適当だとは思っておりません。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 それは場合によっては交渉によってどちらかの道を選ばなければならぬとか、あるいは妥協しなければならぬということならば、それはやはり交渉相手のあることだから、交渉になってから話し合いをしようということですが、これはアジア外交の基本点ですよ。それに対して日本政府並びに国民が国をあげて、こういう二つの中国を作り上げる陰謀に対しては賛成できないという態度が表明できなくて、アジアの外交なんというのは一体何でございましょう。岸内閣のアジア外交の看板は内容は何でしょう。私は大いに疑問を持つ。最近あなたは岸外交から少し足を踏み出して、独自の外交政策をとっていきたいという強気を出してきたとの風評がある。それが一体何の片りんもないじゃありませんか。こういうことは討議によって、相手の交渉によってきまることではない。われわれの基本的な態度です。それを明らかにしていただきたい。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、これらの問題というのは、いろいろ議論はございますし、われわれもそれらの議論についてどういう議論が行われているかということを十分承知し、また将来それらの問題について態度をきめる場合もあろうと思います。しかしながら、現在の段階において、外交責任者としてそういうことを申すのは適当でないと私は考えております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 この二つの中国問題について、私は要望とともにあなたのお考えを聞きたい。今北京も台湾も、両方とも二つの中国の陰謀には反対の態度をとっておる。同時に、実際は台湾問題以後、中国人民共和国の働きかけである平和的国境合作、これは一昨年来、われわれが中共を訪問いたしましたときから毛沢東によって明瞭にされた方針でございます。国内問題をできるだけ平和的に解決する、それは第三次永久国境合作である、こういうことでございますが、その後の情勢を見ておりますと、私はこれも前へ進んでおると思うのです。われわれとしてはまことに好ましいことであって、台湾問題が武力で解決するかしないかは、国内問題でありますけれども、それが同時にアジアの平和に関係いたしますから、われわれも強く年来要望しております。政府外交権を持っておられ、いろいろな情報を持っておられるわけですから、この国境合作に対して、この動きに対して、日本政府外交政策としてこれを歓迎し、これを希望する、そういう態度で臨むべきだと思いますが、これに対する外務大臣のお考えはどうでございますか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 台湾と中共との関係が、両国の間でもって解決話し合いがつく、つきますこと自体は、われわれとしても喜ばしいことだと思います。がしかしながら今われわれとしてそうした内政の上の問題についてとかくの発言をすることは、私は適当ではないと考えております。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 かって鳩山内閣当時に、鳩山さんが参議院の委員会におきまして、国境の平和的合作というものは望ましいことである。同時にわれわれとしてはできるだけ努力をしたいという意味の発言をされたことがあります。これはすでに三年前の話なんです。今日になりますと、中国との関係を打開しようとする国際情勢はもっと緩和しておるし、アジアにおいてはこの時期をつかんで、日本外交が独自の、ほんとうのアジアの平和政策をとるならば、私は非常な働きができると思うのです。そのときに取り上ぐべき一つの問題であると思う。それに対して今のあなたのような、非常に消極的な、いわばアメリカ態度がきまらなければ、日本態度かきまらないというような態度では、アジア外交はきまらないし、中国との国交回復あるいは貿易再開の方策というものは、私はできないと思うのです。あなたの言っておられるその最初のことは、内容を聞いて見れば何もない、一歩も前進しておりません。  最後にお尋ねするのは、国交回復についての考え方はいかがでございますか。これは今日はできないにしても、友好的な交流をやろうとする以上は、やがては国交回復を願うのは当然な方針でなければならない、そう思いますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在まだ国交回復をしておりませんし、また現在国交をすぐ回復するという状況にはないと思っております。総理も言われておりますように、百年の後に国交回復をしないとまで総理は言っておらないのでありまして、そういう意味でならばお説の通りだと思います。
  73. 櫻内義雄

    櫻内委員長 穗積君、だいぶ時間が経過いたしましたから……。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 時間がきましたからここで打ち切りまして安保条約の問題については時間がないのでこの次の機会にいたしますが、最後に、中国問題で先ほどの菊池君の質問に対して重大なことがありますから、一つ明らかにしておきたいと思います。  昨夜総評岩井事務局長が帰って参りまして、発表の通り、これは外務大臣としてまたよく事情を直接お聞き取りいただきたいと思います。たとえば、新聞発表の通りであるとするならば、好ましくないということでありますが、そうするとそういう貿易に対して政府は協力しない、こういう意味でございますか。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだ岩井事務局長の談話の内容等について、はっきり私どもは承知しておりませんけれども、伝えられるように特定の思想的団体なり何かに貿易を限る、あるいは社会的団体なりに限るということでありますと、私は適当でない、こう思います。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 思想的にではありません。思想的ではなくて、今言ったように中国との貿易再開は、友好的な態度をとる、二つの中国を認めない、国交回復を妨害しないという原則に立つ国とのみ商売をしたい、だから今日本とはできないんだ、ただし中小企業諸君は気の毒だから臨時の特別措置としてやる、やるけれども、中国に対して敵意を持っているものと取引をするわけにはいかない、先ほどの原則があるから。それからもう一つは、取引においては信用を持ってできるようなものでなければ困るからというので、そういう信用保証の意味なんですね。総評なり、その窓口をのみオフィシャルなものにして、二重政権を認めるというようなそんなものでないことは明瞭なんです。友人としての信用保証を言っているのは当りまえなんです。思想的ということをおっしゃるのはどういう意味か知らぬが、社会主義または共産主義の思想を持っていないものと取引をしないというのではない。少くとも友好的精神を持って、そうして二つの中国の陰謀に加担しない、国交回復に妨害を加えない、そういう友好的精神を持って信用のできるものと取引をしたいということは当りまえのことなんであって、これは当然歓迎すべきなんですね。従って私の考えでは、日本政府は中国のこの特別の措置に対して率直に、高碕さんが談話発表しているように、私は外務省を通じて謝意を表すべきだと思う。同時に、その取扱い方が国内問題に影響するところがあるというならば向うとよく打ち合せて、そうして前へ進んで協力すべきだと思う。それを好ましくないからといって、この民間取引に協力をしない。協力をしなければできません。妨害です。そういう態度をとるということを、ここで外務大臣から聞くということは、はなはだ私は遺憾ですが、どういうお考えでございますか。もう少し具体的に……。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 もちろん岩井事務局長からよく伺わなければ、私もこの際とかく、の答弁はできないわけでありますが、しかし私どもの常識といたしまして、日本の人が全部中共に対して敵意を持っているというふうには考えませんし、また先ほど来申しておりますように、岸政府も敵意を持っているわけではないのでありまして、そういう意味において、このグループなら敵意を持っていない、このグループは敵意を持っているというようなことは、私は日本の常識としてないと思います。  なお、商業上の信用という問題になりますれば、私は総評が必ずしも商業上の信用があろうとは考えないのでありまして、物産その他の貿易会社等が、商業上の信用という意味からいえば、そうしたものがあるんじゃないか、こう考えております。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 重大な点ですから最後にもう一問だけ……。この周恩来の好意ある特別の取りはからいに対して、ここで岸内閣藤山外相が、この問題を一体どういうふうに受け取って処理するかということが、今度日中関係の糸口をつかむために重要な意味を持っているのですが、今おっしゃったような態度では、友好的前向きの態度ではないという印象をわれわれも持ちます。こういうことでは、あなたが言っておられるところの日中関係を打開しよう、促進しようということに非常な障害になるわけです。非友好的態度だと思う。もし日本政府として内政上その取扱い上に支障を来たす点があるならば、進んでこれは向う話し合いをすべきなんです、向う政府責任者ですから。そうして日本の全体の原則の態度としては、向うのとってくれた友好的な態度に対しては、これを歓迎し、謝意を表し、これが前に進むようにできるだけの努力をしなければならぬと思うのです。そのお考えはどうですか、はっきりしておいて下さい。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本のウルシが不足であって、それをぜひどの方面からか輸入したいというようなことに対して、中共側の、今まで貿易は途絶していたけれどもウルシを出してやろうという好意に対しては、それはわれわれ感謝をいたします。が、しかしそれをどういうルートで出すかという問題になりますと、今お話の穗積さんのお考えとは違って、私は総評が非常に商業上の信用があるものとも思いませんし、そうしたことは当然日本側からも、中共にそういう態度についての誤解を解いてもらわなければならぬのじゃないかということは、これは私どもはアメリカに対してもものを言っておりますし、中共に対してもそういう点は率直に言うことこそ、私は中共との間の将来の友好関係ができるもとだと思うのでありまして、こちらがこういうことを考えているから——それはしかし中共を刺激する意味から言わないというのでなくて、むしろ率直に、そういう点は、中共がとっていることはあまり適当ではないのじゃないかということは言っても差しつかえないのじゃないか、それ自体か決して友好を害するものではない、私はこう考えます。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、その貿易の実務の進め方について、貿易を進めることは歓迎する、感謝する、そこで、あとのためにも貿易の実務をどういうふうに処理するかということについては、政府間で話し合いをすべきだと思うが、そういうお考えはありませんか。北京または東京において話し合いをするのが適当だと思うのです。
  81. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この具体的な取扱いについては、あるいは商社と向うと話をしますか、あるいは政府がそれに介入しますか、そこらの問題は、具体的事実として検討してみなければ、今直ちにどういうふうにやりますということは申し上げかねると思います。
  82. 櫻内義雄

    櫻内委員長 田中稔君。
  83. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私もいずれあらためて総理と御一緒のときに本格的な質問をいたしたいと思いますが、二十分ほどの時間、中間的な質問をしたいと思います。  外務大臣外交演説で中国問題に触れております。その場合に、日中関係の今日の不幸な事態が起った責任を一方的に中国側に転嫁して、外務大臣自身としては何らの反省のお言葉がないのです。私はこの点を非常に遺憾といたします。誤解だ、誤解だとおっしゃいますけれども、岸内閣のこれまでの言動において、確かに中国を敵視する態度が具体的に現われている。その事例を一々申し上げる必要はないが、ただ今日安保条約改定交渉が行われておりますけれども、安保条約改定は、結果においては日米軍事同盟を強化するということになる。従って、日本アメリカに対する防衛義務が強化される、こういうことになる。これはきょうの新聞に載っております。藤山試案の中にはっきり書いてある。「日本国にある米軍に武力攻撃が加えられたときは、これを自国に対する脅威と認めて米市と共同防衛のため必要な措置をとる」これをはっきり明文の上にうたおうというのでありますから、今よりもっと悪くなる。中国側は、安保条約がなくならなければ日中関係の再開に応じない、こうは言っていない。しかしながら、政治と経済というものは、これは決して分離できないものでありまして、その政治という意味は、両国の友好関係、少くともこの友好関係が伴わなければ、貿易だけの復活はできない、そういう意味の政治と経済不可分という関係であります。ところが安保条約改定して、中国に対する日米軍事同盟をさらに強化するということは、とりもなおさず従来の敵視政策を改めないどころか、さらにそれを強めるという効果を来たす。さらにまた台湾において日華平和条約がある。そういう条約がありますために、日華協力委員会というものもできて、経済面でも経団連の会長石坂氏その他が行きまして、そうして先方との間にいろいろ会談をして、申し合せ事項を発表しておりますが、その申し合せ事項のごときは、もう非常にひどいものです。これは明らかに中国を打倒するという日・台双方の決意をここで誓い合ったということ、こういうことを政府が黙認しておる、あるいは陰でエンカレッジしておる。これも具体的な事実なんですね。そういうわけでありますから、誤解だ、誤解だとおっしゃるが、こういう具体的ないろいろな事実を指摘して、岸内閣の敵視政策は少しも変っていないのじゃないかということについては、私はこれは向う側としてはりっぱな根拠があると思う。だから、日中貿易の打開といっても、岸内閣の政策に転換がない限り、百年たってもだめだ、こういうことを向う側で言っておるわけであります。そこで、私は具体的にお聞きしますが、安保条約改定というのは、これは党内の御事情その他でなかなか簡単にできないと思いますが、外務大臣は、社会党が従来たびたび申し上げておるように、改定交渉をやめるというようなお考えはお持ちにならないかどうか。つまり現状よりも結果において日中関係は悪くなるのですから、これはやめる、現在の状態で一応ストップしておく、こういうふうなお考えはないか。それとも、あくまでこれは改善するんだという気持で、事実においては改悪になることを強行しようという決意であるかどうか。外務大臣として、あるいは面子問題ですけれども、その点について、一つあらためてお伺いいたします。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はこの問題は別に面子にとらわれてやっているわけではないのですが、私は確信をもって、今度の安保条約改定というものは、現行の安保条約よりもよくなる。また日本の自主性を持ったものになるということは、確信を持っておるのであります。ただ何十%までそれが達成せられるかどうかは、外交交渉のことでありますから、私はえらそうなことを申し上げかねるのでありますが、しかしそれにしても、よくなることは事実なんでありまして、たとえば期限の条項一つ入れることでも、私は改善だと思います。決して改悪だとは思わないのであります。そういう意味からいいまして、私は中共側がこの問題について何か非常に悪くなって、そうしてそれは現行の安保条約よりもさらに悪く、いわゆる今度私がやっておりますものは、中共を敵視するというものにプラスされるのだというふうには私は考えておりません。
  85. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 なるほど内乱条項を削除するとが期限をつけるとが、部分的に見れば改善だと言えないこともないようでありますけれども、問題の核心はそんなことじゃない。日本の防衛義務を強化し、全体として日米軍事同盟を強化する。しがもそれを今まではアメリカから強制され、脅迫されてやむを得ずこういう条約を結んでおった、基地の提供というような義務を負っておった。ところが今度は日本が自主的な立場で積極的にアメリカと軍事同盟を結ぶという形になるのでありますから、その意味においてこれは改悪だ。少くとも中国はそう受け取る。私どももそう考える。だから私はこういう改定交渉はやめて、そうしてむしろ安保条約は、これを廃棄する方向に向って政策を進めていただきたいと思いますが、今の御答弁でこれは無理だと思う。そうすると中国の態度もまた変らないということになる。  次に日華平和条約について申し上げますが、日華平和条約は、条約の名称だけから考えますと、何かこれは中国との戦争状態を終結した条約で、これは当然の条約のように思うのでありますけれども、私どもはこの条約の実体は平和条約じゃないんだ、むしろアメリカが台湾を占領している、そういう関係に相応して、日本がその台湾におるアメリカのかいらい政権を援助し、そうしてその大陸反攻を援助するための条約にすぎない、こう思う。だから平和条と申しましても、にせの平和条約。もし蒋介石が中国本土に大総統として厳として存在しておって、中国六億五千万の人民に対してほんとうに支配権を持っておった時代に、この平和条約が結ばれたものでありますならば、その後蒋介石か台湾に逃げ込んで残存政権となり、アメリカのかいらい政権となっても、日華平和条約そのものの条約上の効果は、私は存在していると思う。しかしながらこの日華平和条約はいつ結ばれたかといいますと、御承知のように、サンフランシスコ講和会議の直後において——そのときは蒋介石はもう大陸のいくさに負けて台湾に逃げ込んで、アメリカのかいらい政権に成り下っておる。こういうときにこの蒋介石の政府を唯一の正統政府としてこういう平和条約を結んでいる。だからこれは平和条約を結ぶ要件を欠いている。だから私どもはこの日華平和条約を結んでおるということが、中国の統一を妨げてきている、二つの中国を作り出している。その意味においてこれは中国に対する内政干渉であります。中国に対する内政干渉を根本的になくするためには、日華平和条約を廃棄するということ、そういう行動において日本の誠意を私は示されるものと思うのでありますが、このことについての外務大臣の御所見を聞きたい。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 田中君の意見を承わりましたが、私は必ずしも田中君の意見に賛成するわけには参らない点が多々あるわけであります。そういう意味において現在日華平和条約を廃棄しようという考え方は持っておりません。
  87. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうすると、日華平和条約についての御意見は承わりましたが、岸内閣といえども、中国本土に支配権を打ち立てている中華人民共和国といずれは国交を回復しなければならぬということを、お考えになっておるでしょうか。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、いろいろな歴史的な積み上った状態があるわけでありまして、われわれとしてはそれらの問題を十分に念頭に置かなければならぬことは、実際外交の衝をやっておるものとしましては、当然のことだと思います。しかしながら、世の中が動いて参るわけでありますから、永久にどうだ、こうだということは断定的に申せないこと、これまた当然でありまして、動いていく中におのずから新しい歴史的事実が発展して参りますれば、それらの問題はやっぱり現実を直視していくということであろうかと思うのでありまして、そうした意味において、今日われわれとしてはそうしたことを考えながら問題を扱っていく以外には方法はないと考えております。
  89. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いろいろおっしゃって、婉曲な表現でよくわからないのですが、私の聞きたいのは、いずれは中華人民共和国という国と国交の回復をしなければならぬだろう、そういうことを念願する、希望するというお言葉を聞きたいのです。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、過去においていろいろ歴史的な事実がありまして現状というものが起っておるわけなんです。今後歴史の発展に伴いまして、それらのものがいろいろ変化をしてくるということも、またあり得るわけであろうと思います。そうした現実の問題をながめながら、われわれが考えていく問題であるということを申しておるわけであります。
  91. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも非常に婉曲な表現で真意がつかめないのでありますが、今おっしゃったことは、要するに万物は流転するというだけのことです。そこで佐多報告の中で、中国側が岸内閣に対して要求している幾つかの事項があるわけですね。その中でも、岸内閣が直ちに安保条約を廃棄しなはれば日中関係の再開に応じないとか、あるいは日華平和条約についても、今直ちにこれを廃棄しなければ日中関係の再開に応じない、こういうことを言っているのではないので、やはり岸内閣の外交政策が転換するということについての保証があればいいわけです。その場合に、そのことについて岸内閣が国会その他で正式に一つの声明を発表してもらいたい。その声明についての向うの希望の案は、中華人民共和国との国交の回復を念願し、政府はそのために努力する、これだけの文字でいいというわけですよ。ところが、その国交の回復を念願するということについても、今私が御質問申し上げましても婉曲な表現でからだをかわされておる。そういうことでは、私は全く外務大臣の誠意というものはないのじゃないかと思うのです。  そこで私は、今の日華平和条約についてさらに御質問したいのは、日華平和条約が今直ちに廃棄できないとしても、これは私どもはにせの平和条約と思いますから、たとえばイギリスの例にならって、台湾に駐在しておった大使を引き揚げて、領事をあとに置いておく。そうして北京の方に大使を派遣する。これは代理大使でありましょうが、要するに大使の資格のある人です。イギリスがそういう中国の支配者の交代、事実上の政権の交代というものに即応して、そういう外交措置を現実にとっておるのですね。そのくらいのことは、これはやろうと思えば私はできると思うのです。イギリスがやっていることなんです。何かそういうふうなことをやる。あるいはまた、次に申し上げますが、日華協力委員会なんという、あれは政府がやったことじゃないにしても、経団連の会長まで出かけて行ってああいうことをやるでしょう。その申し合せ事項などは私は一々申し上げませんが、御承知の通りに全く中国を敵視する、むしろ中国の今日の政権を打倒するということを明らかに誓い合ったものです。ああいう日華協力委員会なんというものは解体すべきことを勧告されるくらいのことは、私はあってしかるべきじゃないかと思うのです。そういうふうないろいろな具体的措置があると思うのですが、日華平和条約が今直ちに廃棄できないならば、何か日華平和条約をだんだん弱めていく、こういうふうなことをお考えにならないかどうか、一つお伺いしたい。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな歴史的な過程がありますので、中共が現在六億の民を支配し、また世界からそれをだんだん認められているという歴史的な過程もながめておるわけなんです。現在中華民国との関係におきましても、これまた歴史的の関係もございます、経済的な重要な関係もあるわけでございまして、貿易その他の面からいいましても、やはり重要な土地であります。従って、現状をすぐ何か薄めていくというような形においてこれを考えていくということは、適当でないと思います。また民間団体等か各国友好増進のために、それぞれの国の関係においてできております。これは自由主義の中の各国ばかりでございません、共産国の間にも友好協会的なものは幾らもあるわけです。その一々についてわれわれ政府が干渉し、あるいはそういうものは解散をしろというようなことを言うことは適当ではない、こう考えております。
  93. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一つは、今のたとえばイギリスにならって大使を台北から引き揚げ、あと領事でも置いておくということ、そういうことはどうでしょう。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 イギリスは中共を承認いたしておりますし、日本はまだ承認いたしておりませんで、台湾との関係を維持しておるわけであります。そういう意味からいって、イギリス通りにやるわけには参らないと思います。
  95. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 時間もありませんが、政府大使級会談をやると言うが、一体何を目的にして、どういう題目について話し合うかさっぱりわからぬ。それは今穗積君の質問に対する御答弁で、全くこれはただ単なる宣伝にすぎないとしか受け取れないのです。  その次に、今度は貿易について政府間協定を結ぶということをおっしゃっておる。ところがウルシの問題その他で総評の事務局長が中国側から話を受けてきた。これは一般的な貿易の再開の問題と別に、日本中小企業者は非常に困っておる。ウルシのごときは、二十万の国民生活の問題に関係してくる。だからそういう窮境に同情して、これだけは特例として輸出したい、こう言っているわけでしょう。ところがそれについても何か思想関係などという妙なことをおっしゃって、好ましくない、こういうことを言われておる。そうすると、そういうお考えであれば、貿易について政府間協定を結ぶということは、日中間の貿易を促進するということよりも、むしろ日中間の貿易に対して政府が何か規制を与えて統制を加えるというようなお考えが、私は底意としてあるんじゃないか、自由な民間の貿易を促進するというお考えにはこれは反しているんじゃないかと思う。だからこのウルシの問題が一つのテストでありますが、せっかくそう言ってくれているものなら、高碕通産大臣のように、総評であろうかだれであろうが、その好意に対しては感謝する、中国側に対してもその好意に感謝するということで、積極的に一つこれを歓迎し、そのことの実現のために協力するという、こういう外務大臣の言明があってしかるべきだと思いますが、もう一度念のためにお伺いいたします。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本のウルシの事情が非常に困難がある、従ってまだ貿易は再開されてないけれども、そうした中小企業者のためにウルシを一つ出してやろうという、その点については私どもは決して反対をいたしておるわけではございませんし、またそうして出してくれることの好意に対しさは感謝をいたしております。ただそれが労働組合でありますとか何とかいうところを通じなければ出さぬというところに、私どもとしては何か中共考え直してもらわなければならぬ点があるんじゃないか。日本でも、御承知のように貿易上の問題になりますれば、やはり貿易商社も数あるわけであります。その中で、かりに日本国民のある部分が中共を敵視しておるとかいっても、敵視してない商社もございますし、何も労働組合を通じて出さなければならぬということはないのじゃないかというふうに考えるわけであります。そういう点を申すことが、何か中共に対する友好関係を害するような言辞だとは私は思わないので、率直に希望は申しても差しつかえないのじゃないか、率直にそういうことを言うこと自体がむしろ中共にもよくわかってもらっていくことではないか、こう考えるのであります。私はあまり間違っていないのではないか、こう思うのであります。
  97. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その総評は、もうこれは政治団体じゃなく、一種の経済団体です。組合というものは労働者の日常の労働条件や生活条件について、維持し改善する戦いをする団体、経済団体です。これが扱って仲介して何もおかしいことはない。それからまた総評が保証いたしますのは友好の保証であって、何も商業上の信用を保証するというのじゃない。それは取引になれば銀行その他が入ってくるのです。だから商業上の信用を保証するということはないので、その点は御心配ない。ただ一点、中国側と友好を希望し、友好のためにやはり努力しているというような個人なり商社なり、こういうものにウルシを一つ出したい、こういうだけのことでありまして、これはまた共産主義とか社会主義ということとは全然別です。その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。  いろいろまだ御質問したいことがたくさんありますが、佐々木君が待っておりますから、時間を割愛して、この辺で終ります。
  98. 櫻内義雄

    櫻内委員長 佐々木君、時間がありませんから、一、二問で……。
  99. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は外務大臣に、時間もお急ぎのようでありますから、三点だけきわめて素朴な国民的な疑問であるとか問題点についてお答えを願いたいと思うのであります。こういう安保条約改定の際に、むしろ進んで政府や与党の立場を明らかにしてほしいという気持で申し上げるわけですから、なるたけ簡明率直にお話し願いたいと思います。  まず第一に、今度安保条約改定されて、日米相互の間に新しい防衛をとりきめた条約ができると、それによって日本は何か戦争に一歩巻き込まれるような方向にいくのじゃないかということを先刻来社会党の方々は非常におっしゃっておられる、またそういうことを考えておる方もあるようでありますから、この点について、絶対さような心配は要らないということをこの際明確に言っていただきたいと思います。
  100. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもの今やっております安保条約改定交渉は、日本の自主的な立場を現行の安保条約に加えまして、そしてアメリカと諸般の問題に対して協議をしていくという条項を置いて参りたいと思いますので、現行の安保条約以上に、特に戦争に巻き込まれるということはないし、またむしろ巻き込まれない方向に進んでいる、こう考えております。
  101. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よくわかりました。むしろ今度の安保条約改定によって、かえって日本が戦争の危険からのがれていくんだというふうにお考えのようであります。  次に先刻来お話しになっておりました条約の適用区域と申しますか、俗にいえば防衛区域と申しますか、沖縄小笠原の問題でありますが、どうもただいまのところ大臣のお考えは、察するところ沖縄小笠原を適用区域の中に入れるべきでないというようなお考えのようでございます。その表現がたとえば日本区域としようとどういうふうな規定にいたしましょうと、現実には共同防衛区域の範疇には入らぬのだというようなお考えのようでありますが、一つその点につきまして、これを加えた場合とあるいは加えない場合との利害得失の問題等も、私は率直にこういう席を通じて国民の前に明らかにしてもらう必要がありはせぬかと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  102. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第一に申し上げておきたいことは、施政権の返還という問題が、沖縄小笠原を入れる入れないにかかわらず、これは別個の問題として外交交渉で取り扱っていくことでありまして、沖縄小笠原を入れたから何か施政権の返還の実体がある、入れないから実体がなくなったということではないことは、これは一つ御承認願っておきたいと思います。沖縄小笠原は御承知のように米韓、米比、米台防衛条約地域になっております。従いましてそういう意味から申しますと、米韓、米比、米台条約等が発動される場合に、沖縄地域がその危険にさらされますこともまた当然でありまして、そのこと自体は、日本の関係ない、日本に直接侵略のない場合にも日本が戦争に巻き込まれるような危険があり得るということが考えられるわけでありますが、同時に沖縄国民九十万の人たちのことも日本人のことでありまして、そうした国民感情というものも尊重していかなければならず、そういう点については、入れますことによってこの人たちの感情というものが満足される点もあろうがと思います。ただそれは、前段に申し上げましたような立場から申し上げて、私は施政権返還の問題とは別個に考えておりますから、よく了解をされるならばその点は解消していくのではないか、こういうように考えております。なお条約文作成その他につきましては、単純に入れて、そしてまた抜くというような問題につきまして相当いろいろな見地から検討を要する部面がございますし、困難な面もございます。そうしたことを考えていかなければならぬと思うのであります。入れる入れないについては、それらの利害得失を皆さん方に判断していただくようにお願いをしておるわけでありまして、私どもとしましては、最終的にはわれわれの意見もそれらの皆さん方の意見を聞いた上で申し上げる時期もあろうかと思います。
  103. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よくわかりました。それでは大体藤山さんのお考えでは、今御説明になりました前者の方の場合をおとりになって、防衛区域の中に沖縄小笠原が入ると戦争の飛ばっちりを受けるというような危険性もあるから、現実的には入れない方がいいだろうとお考えのようでありますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  104. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げたように、まだ最終的に入れる入れないを申すわけではございませんか、私の説明を聞いていられる方は、そうとっていられる方がだいぶあるようであります。
  105. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最後に一点だけ承わります。今度のこの条約改定に当りまして、少し外交問題を研究しております者はだれも気がつくことでありますが、アメリカの上院のバンデンバーグの決議案、これとの関連において今度の条約の中に、つまり日本の与える反対給付として、たとえば日本にあるアメリカ軍がある攻撃を受けた場合においては、これは日本に加えられた攻撃と考え日本も共同防衛をするというふうな、そういうことによってバンデンバーグの決議にはこたえ得るのじゃないかと思うのでありますが、このバンデンバーグの決議案に対してどういうふうなものがこの条約の中に織り込まれて、そしてアメリカに対する日本の防衛義務の反対給付としてこれに見合うものがあるかということを、一つ率直に御説明を願っておきたいと思うのであります。
  106. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のようにバンデンバーグ決議案は、単独もしくは共同で自衛力を増強するという意思をお互いに確認し合っておるわけでありまして、それらの問題について日本の憲法上の制約もございます。従ってそれらの点を十分考慮しながら、われわれとしては、日本がやはり他国から侵略されることを防ぐだけのことはして参らなければならぬと思います。ただいま御指摘のような点は必ずしもバンデンバーグ決議案とは関連してこないのではないかというふうに思っております。
  107. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これで終りますが、自己防衛はもとよりそれでありますが、相互防衛、ミューチュアルエイドの方で日本向うに与えるべきものは何であるかということは、今御説明がなかったのでありますが、たとえば日本にあるアメリカ軍が攻撃を受けたときには日本が攻撃を受けたと同様に考えて、共同で防衛をする、こういうふうな点もバンデンバーグに見合うものではないかと思います。向うに防衛の義務はあるけれども、それはアメリカ軍が攻撃を受けたときは日本が共同で守ることは当りまえのことであると思いますが、いかがでありますか。
  108. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点はそう考えておりますが、ただバンデンバーグ決議案とそれがすぐ直接関連してくるかどうかという問題については、今のバンデンバーグ決議案によってそれをこうするから、バンデンバーグ決議案はそれでいいんだというような御質問の趣意だと思いましたので、それを申し上げたわけです。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今のは、日本にあるアメリカ軍が攻撃を受けたときは、日本自身が攻撃を受けたと同様に考えて、日本アメリカ軍を助ける、つまり共同で防衛する義務かあるということになるのでございましょう。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それはその通りであります。
  111. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大西正道君。
  112. 大西正道

    ○大西委員 私はこの際、移民政策並びに東南アジア開発の問題について、若干関係局長に聞いておきたいと思います。  具体的に申しますが、先般外務省の調査員として森徳久氏がラオスのボロバン高原の調査に参られまして、その詳細な報告外務省に出ておるのでありますが、私もその写しを拝見いたしまして、ボロバン地方の開発が将来有望であるかどうか、この点についてあの調査をもとにし、かつはまたそれ以前のいろいろな研究の結果、外務省はどのように考えておられるかを承わりたいと思います。
  113. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 東南アジアに対する移住という問題の中では、ボロバン高原が最も有望であるというふうに考えております。私も森さんの御報告を受けましたのはつい四、五日前でありまして、詳細な計画につきましては事務当局として今検討中でありますので、具体的な点についてはまだ結論が出ておりませんけれども、東南アジアにおいては最も有望なところだというふうな印象は受けております。
  114. 大西正道

    ○大西委員 御調査が目にとまったのが数日前ということでありますけれども、あの報告はたしか昨年の暮れに出ていると私は思うのでありますが、その間あれを研究される機会がなかったのですか。
  115. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 従来はボロバン高原の問題は技術協力とか、あるいは経済協力という観点で外務省内の別の部門で扱っておる形でありましたが、森さんの今度の御報告の中に約三百六十名程度の単独移住者、青年を連れていきたいという具体的な計画が今度出て参りました。それが私の方に連絡が参りましたのが、約一週間か十日前であり、私が現にお目にかかったのが四、九日前というわけであります。
  116. 大西正道

    ○大西委員 東南アジアの中で、すでにカンボジアの方からもキリロム高原その他の土地を提供するということで、外務省としては調査の結果、私はその詳細は知りません、が、これに対して積極的に乗り出すというような態勢ではなかったようでありますが、今回の場合と、この以前のカンボジア等からの申し出の場合と、それではどういうふうなところが有利な条件であるとお考えになるのか、その点をお伺いしておきます。
  117. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 要するに今回の場合は、自然条件が非常によいということになっております。私はカンボジアの方の調査の詳細については存じませんか、ただ結論だけを聞いておりますが、自然条件、衛生環境、その他社会、教育各般の状況が満足すべきものではないという結論が出ております。今回森さんからお話を伺いますと、自然条件、それから衛生環境、その他現地住民との関係すべて非常によいように思っております。私の一応受けました印象では、南米に対します移民と比べまして、森さんの計画は非常に経費が高くついておるようであります。これはその中身をよく検討しないとわかりませんが、その点だけは——もちろん収支計画等を見ないとわかりませんが、何年間で回収できるものか。ただ南米と比べて最初の経費が非常に高くつくという感じを持っております。
  118. 大西正道

    ○大西委員 将来有望であるというお見込みのもとに具体的な調査その他に着手されるべきであると思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  119. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 目下移住の点につきまして森さんと御連絡いたしまして、具体策について検討いたしております。それでその結論として一緒に共同作業で案を作るということになるかもわかりませんが、ともかく積極的な意味検討いたしております。もちろん年度内の三月末までには結論が出ると思います。旅費の関係等もございますから、来年度早々に技術協力とそれから小規模な試験的な移住というものが一緒になった形でもってすみやかにスタートするのがよいのじゃないか。それにいたしましても、具体的にスタートいたします前にはもう一度政府といたしまして調査団を派遣したいと考えております。
  120. 大西正道

    ○大西委員 今おっしゃる通り雨季に入りますと、ほとんどの調査が不能になります。その雨季を過ごすということになりますと、これは時期的に非常におくれるわけでありまして、やはり雨李にかかる前に調査団を派遣する、そうしてあらゆる観点から調査の完全を期することが必要であろうと思います。今のお話ですとかなり積極的であるし、熱意が見られるので、まことにけっこうだと思うのであります。その点は私はなお希望いたしておきますが、計画は立てたが調査が雨季の後に回るということでは、こういうふうな企ての趣旨から見ましても十分ではないと思いますので、この点はすみやかに一つ仕事を進めていただきたい、こういうことをお願いしておきます。  この際一つ全般的な問題を伺いますが、政府は本年度の予算編成の際に問題になりました東南アジア開発基金で、輸出入銀行に対して五十億出資をいたしておりますが、私は今日までこの五十億の金が何ら具体的に有効な方向に使われていないのを非常に遺憾に思うのであります。一体この東南アジア開発基金を設けた趣旨というものは何か、これは大蔵当局に聞かなければならぬことでありますが、一応あなたから聞いておきたいと思います。
  121. 板垣修

    板垣政府委員 御承知のように、五十億円の東南アジア開発基金を設けました趣旨は、当時東南アジアの開発につきましては、日本だけの資金ではとてもできませんので、国際的な何らかの東南アジア開発基金というものができるために、日本としてはあらゆる努力をするという前提のもとに、それができました場合に、これに対する出資金の一部といたしまして、その用意のために東南アジア開発基金を設けたわけであります。しかしながら当時も幾分予測されておりましたし、今日になりますと、やや明らかになったわけでありますが、急速にこういうような国際的な規模における基金もそう簡単にはできない。そうすると、それができるまでの間その一部を、将来できることあるべき国際開発基金に振りかえ得るような性質の投資なら使ってもいいという法律にはなっております。しかしながらこの点現実に使うということになりますれば、やはりあらかじめこの使い方なり、どういう目的に使うかという点につきまして、政府としましても、内閣に設けられておりまする海外経済協力懇談会あたりではっきり討議しなければなりませんので、ただいまのところはまだ現実には動いておりません。しかし私どもの感じとしては、この開発基金を現実に有効な使い道があれば使っていくべきではないかという意見が、現在のところ政府部内で起っております。
  122. 大西正道

    ○大西委員 問題を起してまで計上したせっかくの五十億がいまだ眠っておるということは、これは国際的なそういう条件が満たされなかったとはいいながら、まことにもって不手ぎわなことであると私は思うのであります。しかしそういう点についての追及はいたしませんが、しからばせめてこの眠っておる五十億を、今回のこういうふうな一つの具体例でありまするが、ボロバン高原におけるところの開発等に使用し得るやいなや、これはひとりボロバンのみには限りません、この種の、今の移住局長のお話のように、やや複雑な性格を持つところのこういう開発、移住、技術協力といったような性格のものにこれを利用し得るやいなや、こういう点について見解をお尋ねします。
  123. 板垣修

    板垣政府委員 その点になりますと、私主管でございませんので、はっきりしたお答えはできませんが、私の考え得る範囲でお答えをいたしますと、どういう性質のものにこの金が使えるかにつきましては、相当法律解釈上から見ましてもいろいろ問題点はあると思います。御承知のように、通常のコマーシャル・ベースでは成り立たないような事業に投資するということになっております。しかし何といいましても、これは基金でございまして出し切りではございません。やはり回収ということも考えなければなりませんので、果してこういう移民事業のようなものに出すことが適当かどうかということは、現在の法律の解釈上問題はあります。しかし今後この使い方について議論を進めていきまして、そういう方向にも使った方がいいという結論が出ますれば、場合によっては法律を改正してもそういう方向にやっていくということは、検討を要すると思います。
  124. 大西正道

    ○大西委員 それではあなたの方の御見解では、今の法律のままではこの種の移民並びに開発には使用し得ない、こういうふうな見解でありますか。
  125. 板垣修

    板垣政府委員 正確にはお答えできませんが、私の知識の範囲では、直接移民事業そのものに使うのは非常に困難ではないかと思います。ただこの五十億から出ます利息について、この移民事業をやる前提となる、たとえば調査費とかそういうようなものには使えるわけでありまするから、一部は使えますが、移民事業そのものに使い切りにするということにつきましては、やや困難な点があるのではないかというふうに感じております。
  126. 大西正道

    ○大西委員 調査等に使えるということは、はっきりいたしましたが、それではなぜこの種の事業には使えないのでしょうか。もう少し突っ込んで申しますならば、移民というものをたとえば南米における今行われておる呼び寄せ移民のような形のものでやるということになりますと、若干——これは若干というよりもむしろ非常にむずかしいと思うけれども、一つの事業体として大規模にこういう事業を行うといった場合には、あえて私は法改正をしなくてもこれに使用し得るのではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
  127. 板垣修

    板垣政府委員 その点につきましては、私個人としてはいろいろ意見はございますが、私の答弁は実は権限上オーソリティではございませんので、これ以上深入りすることを避けたいと思います。
  128. 大西正道

    ○大西委員 もちろんあなたにそれに対する法律の解釈云々を聞いているのではないのですけれども、しかし現実に東南アジア開発基金という名目で出された基金である。その目的とするところも法律に書かれておる。この範囲内で今行わんとする東南アジアの移民に使用し得るなれば、私はこれは幸いだと思う。ですからむしろそういうところに対しては、積極的な一つの見解をあなたとしてお述べになって、なるべくこれが使えるようにできればいいのではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  129. 板垣修

    板垣政府委員 私個人の意見といたしましては、移民事業に出し得るかどうかは疑問があるとしましても、いい対象がございますれば、積極的に使っていくべきであるという私個人の見解は持っております。ただ現在の法律の解釈上できるかどうかはまだ非常に疑問がございまして、たとえば国際協力によって将来できるべき国際基金に振りかえるような場合の国際協力の解釈につきまして、日本と相手国だけでいいのか、もう一国入らなければいけないのかというような点につきましても、まだ政府部内において解釈が統一できていないというような状況でございまして、こういう点につきまして、今後積極的な意味においていろいろ法律の解釈をきめ、あるいは現在の法律の解釈で無理ということになれば、法律の改正もしようという議論がぼつぼつ起っておりますか、ただ現在のところでは、私からはっきり申し上げるほどまでの事態には進んでいないというのが現状でございます。
  130. 大西正道

    ○大西委員 それでは、一つ政府部内の解釈を有利な方向に統一するように努力を願っておきたい。そしてその上でまたお伺いをしたいと思うのでありますが、それに関連して今の移民の問題でありますけれども、移民ということになりますと、どうも個々別々に自分で費用を調達し、もちろん移住振興株式会社の融資を受ける、しかしその単位はやはり自己の個々の責任と負担においてやられるというような場合が、非常に私は多いのではないかと思うのです。南米の場合なんかは、そういう場合が非常に多いように思うのでありますが、新しいこの東南アジアに対するこの種の計画に対しましては、ただ単に個々の者が何人か何十人か集まって開拓事業をやっていくというようなことでなしに、やはりその地区を一つの単位として総合的な共同の仕事をやっていく、こういうことが、これは未開の地を開拓していく上にも必要であれば、あるいはまた新しい今後の農業経営の上にも必要であろうと思うのであります。これは移住局長アジア局長にお伺いいたしますが、今回のボロバン高原に対するその積極的な御意図の中には、どんな形でもって移住をさせ、そして向うにおけるところの農業経営をどういうふうにやっていくかということについての構想があるか、それを聞いておきたい。
  131. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 移住の形態といたしましては、ただいまお話のございました個々に参るという形態と、計画移住と申しまして、かなり計画性のある、移住振興会社が相当の土地を買いまして、それを造成しまして、そしてはっきりした将来の開発計画を立てて入れるという二つございますが、今度の場合は、その後者の計画移住という概念に該当いたしまして、それよりむしろもう少し進んでおりまして、森さんは三カ所の場所を考えられておられます。千町歩、千町歩、一万町歩、この三つを同時にやりますか、あるいは一つずつやっていくかは、それは経費の関係等にもよりますが、いずれにいたしましても最初に入ります独身青年の場合等は、当然何十名かが一体になりまして共同の作業をするというふうに考えております。そうして、そうした試験的なといいますか、二、三年たちまして見込みがつきましたときに、初めて今度は家族連れの個々の者が入っていく。そうしてその周辺の土地をまた手に入れるとか、買うとかもらうとかいうふうなことは将来の問題になります。最初は何十名かがまとまって一体となって開発していくという形をとることになります。
  132. 大西正道

    ○大西委員 アジア局長が急かれるようですが、今もお答えが移住局長アジア局長の両方からされるように、すでによく論じ尽されたことでありますが、この移民の問題については国内的な担当部門さらに国際的な機関においても、その管轄にいろいろ複雑なことがあって、このことが統一的な移民行政を非常に阻害している、こういうことが言われているようでありますが、これを私も今回痛感するのであります。この点について将来東南アジアに対して、さらに各地方におけるこの種の移民をやろうとするならば、やはり各省にわたったところの事務を統一した中央の機関の設置が必要ではないか、こういうことを考えるのでありますが、両局長を前にしてどうかと思いますけれども、一応の見解を聞いておきたいと思います。
  133. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 移住に関します限り現在の制度としましては、募集、選考、訓練等国内のことは、原則としてもっぱら農林省が、それから海外の受け入れ態勢は外務省がやっておりまして、南米等に関します限りは、今までのところこれでもって十分参っております。ただ今回の東南アジアの場合は純粋な移住ではなくて、そこに技術協力とか経済協力とかいう観念が入って参りまして、これは初めてやるケースになりますので、どういたしましてもこの技術協力を担当いたしております外務省内の部門と私の方とが一緒になってやる作業になると思います。
  134. 大西正道

    ○大西委員 もちろんそれはその通りなのでありますけれども、東南アジアの移民というのは、仰せの通り単なる移民ではない。技術協力、経済協力という特殊性を持っておるんだということになりますと、将来この方面に大きく仕事を進めていくということになりますと、担当部門の相談だけではなくして、絶えず統一的なそういう機関が必要ではないか、こういうことを私は申し上げておるのです。今問題にいたしましたのはボロバン高原の件だけでありますけれども、この際キリロムの場合についてもああいう結果になったのでありますが、日本人を迎えて土地を提供し、そしてそれの開発を期待するという希望は、東南アジア各地にずいぶん多いのでありますから、これは単なる移民ではない。さらに大きく言えば両国の親善、友好という意味もあるのでありますから、私はこれを大きく推し進めるべきだと考えるわけです。この点についての両局長の見解はいかがでしょうか。
  135. 板垣修

    板垣政府委員 お話の趣旨は、私も同感でございますが、ただ私見でございますけれども、アジア地域に対する移民ということになりますと、これはちょっと南米あたりとは事情が違うと思います。今お話になりましたボルバンは、その唯一の例でございます。なおカンボジアの移民は、確かに向うから非常な希望がありましたが、その後向うからの要望が立ち消えになりました。それからまたその他パキスタン、ビルマでは多少移民類似の申し出もありましたが、結局だんだん向うと話をしてみますと、やはり農業指導、技術指導という面が強い。従って一般常識に考えまして、人口過多の国であり、生活水準が非常に低い地域、そこへ日本の移民が流れ込むということは、ちょっと性質上からいって南米などとは比較にならない気がいたします。しかしそれにつきましても、ボロバン高原のような適地もあるわけでありますから、これの実施につきましては、確かに技術指導の面と移民の面と両方ありますので、この点は将来において緊密な連絡をとりながら進めていきたいと考えております。
  136. 大西正道

    ○大西委員 最後に一つだけ聞いておきますが、今日の新聞を見ますと、五カ年計画というものがいわれておるのであります。私はこういうものを、まだあなた方から新しい外交上のいろいろな施策として聞いたことはないのでありますが、これをお聞かせ願いたいし、何か文書になったものがありますれば提示を願いたいと思います。  もう一つ、この中に移住者への融資を円滑にするために開拓振興基金制度を設けることを考えているようだということも書いてあるのですが、こういうふうなお考えもございますか。
  137. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 移住五カ年計画と申しますものは、昨年秋外務省で策定いたしたものであります。今それに基きまして施策をいたしております。これはすぐ資料として差し上げることにいたします。今の開拓振興基金と申しますか、これは農林省所管の予算でもって来年度三千万円認められております。私も詳しいことは存じませんが、移住者が参ります前に国内で移住の決意をいたしまして、いろいろ手続をいたしましたり、出発いたします前にいろいろな経費がかかる、そういうものの金融を考えてやろう、そしていろいろ農業団体がございまして、それらが融資をいたすのでありますが、それの再保証という意味で中央に三千万円の予算がついております。今後ふやしていきたいということを農林省では申しております。所管は農林省でございます。
  138. 大西正道

    ○大西委員 大体わかりました。ラオスのこの問題につきましては、私も昨年向うへ行って参りまして、非常に友好な雰囲気に接してきたのでありますが、今回こういう企てが外務省の積極的な立場で進められていくということは、非常によろしいことでありますから、すみやかに具体的な手を打って、その実現ができるようにお願いをいたしておきます。われわれももちろんその立場から十分協力したいと考えている次第であります。
  139. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時十七分散会