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1959-02-13 第31回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 中曽根康弘君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       北澤 直吉君    小林 絹治君       福田 篤泰君    松田竹千代君       山村新治郎君    帆足  計君       和田 博雄君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (大臣官房長) 内田 藤雄君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     吉田 健三君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         運輸事務官         (大臣官房長) 細田 吉藏君         海上保安庁長官 安西 正道君  委員外出席者         外務審議官   三宅喜二郎君         農 林 技 官         (水産庁生産部         海洋第二課長) 中村 正路君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月十日  委員勝間田清一君及び高田富之辞任につき、  その補欠として岡田春夫君及び久保田豊君が議  長の指名委員に選任された。 同月十三日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 二月九日  通商に関する日本国ハイティ共和国との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)(予) 同月十日  在日朝鮮人帰国に関する請願今井耕紹介)  (第一二四九号)  同(濱地文平君外一名紹介)(一三一八号)  同(石野久男紹介)(第一三七三号)  三多摩在住朝鮮人帰国に関する請願細田義  安君紹介)(第一三一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第七九号)  通商に関する日本国ハイティ共和国との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)(予)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府側より趣旨説明を聴取いたします。竹内政務次官
  3. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいま議題となりました通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  ハイティ共和国は、戦前わが国繊維製品の好市場であって、わが国から年間平均八十万ドル程度輸出が行われた時期がありましたが、一九三五年ハイティ共和国政府は、貿易上の求償主役に基いて日本産局に最高税率を適用し、戦後においてもガット第三十五条を援用して同税率の適用を継続して参りました。このため、戦後における同国との貿易は、わが国輸入するハイティ糖等輸入額に比較して、わが国同国への輸出はきわめて低調であって、昭和三十一年においてはわが国輸出十万九千ドル、輸入百七万四千ドル、昭和三十二年においては輸出五万二千ドル、輸入九十万二千ドルという、わが国の著しい入超状況でございました。  政府といたしましては、昭和三十三年二月同国駐在公使を兼任する在米朝海大使信任状呈出のため同国に派遣しました際、同国大統領、外相、商工相等に対し、日本ハイティ間の通商関係発展双方にとり有利かつ緊要なるゆえんを説かしめますとともに、その前提としてガット第三十五条の援用撤回が要望される旨を強調せしめるところがありました。  このような状態の折から、同年十一月中旬に至りハイテイ共和国政府より在米朝海大使を通じ、通商協定締結交渉を行うため、ジャン・ダヴィッド同国上院財政委員長政府代表として派遣したい旨の提案がありましたので、これに対しわが方としてもこの機会をとらえ同国通商協定締結することを得策と考え東京において同代表との間に三週間にわたって交渉を行いました。その結果、双方の合意を見るに至りましたので、昭和三十三年十二月十七日東京において藤山外務大臣ダヴィッド代表との間で協定に署名を行った次第でございます。  この協定の骨子は、関税及び輸出入貨物に対する内国税並びに輸出入規制等に関して最恵国待遇を許与し、また船舶に関しても内国民及び最恵国待遇を許与すること等にあります。なおこの協定批准書交換の日から三年間効力を有することになっており、その後も三箇月の予告をもってこれを終了せしめない限り効力を存続することになっております。  今次協定関税及び輸出入制限等について最恵国待遇を確保しておりはすので、今後わが方の対ハイティ輸出は著しく増進するものと期待され、またこの協定により第三十五条援用撤回にもひとしい実質的効果を期待し得る次第であります。  よってこの協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本件についての質疑は後日に譲ります。     —————————————
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案議題として審査を行います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
  6. 松本七郎

    松本(七)委員 この在外公館名称及び位置を定める法律等の一部改正によりまして増加する人員はどのくらいの予定でしょうか。今度新設される公館別一つ
  7. 内田藤雄

    内田政府委員 たしかハンガリー公使館が四名、ポルト・アレグレが国名、それからヒューストン領事館が三名だったと思います。
  8. 松本七郎

    松本(七)委員 それから予算上の措置とその総額は……。
  9. 内田藤雄

    内田政府委員 予算額は、ハンガリーが三千五百九十一万八千円、ポルト・アレグレが二千百三十万三千円、ヒューストンが千七百六十二万四千円でございます。
  10. 松本七郎

    松本(七)委員 在外公館に勤務する外務関係公務員給与表と、それからそれぞれ該当する職務、どういう職務の者がどういう給与を受けているか、特に下級職員の現在の給与額を中心に、おわかりでしたら御説明を願います。もしすぐにわからなければ、資料ででも、あとでいいですが……。
  11. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまの御質疑ですが、あとで文書で提出することで御了承願いたいと思います。
  12. 松本七郎

    松本(七)委員 それは資料でけっこうなんですけれども、特に下級職員の現在の給与額についてはどう考えられるのですか。仕事と見合ってきわめて不足しておるのか。
  13. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまの御質問在外公館のことでございますか。
  14. 松本七郎

    松本(七)委員 そうです。
  15. 内田藤雄

    内田政府委員 結局給与の方は御承知のように一般の公務員と同じわけでございますが、在外公館として特に問題になりますのは在勤俸の問題だと思います。     〔委員長退席床次委員長代理着席在勤俸ではワシントン基準にして、大体それに何%多い場合、少い場合、両方ございますが、それでやっておるのでございますが、ワシントン在勤俸基準で申し上げますと、普通の大公使を除きまして一号から十二号までございまして、十号というのを一応の基準にとっておりますが、この十号で申しますと米ドルで二千七百五十米ドルというのが、一年の在勤俸になっております。大体二百二十ドルぐらいということになるわけでございます。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 これはワシントン基準にして考える場合に、社会制度の違ったソ連もすでに大使館があるわけですが、これからハンガリーもふえようとするとき、そういうところの同じ外交官生活なり活動でも、社会制度が違うためにかえってワシントン基準では、単なる生活状態とかそういうことだけでなしに、いろいろな面で金がかかる場合があるわけですね。アメリカなんかの向うのいろいろな人との広範囲にわったつき合い、そういうものと、それからソ連なんかにおける在外公館に勤務している外交官は、いろいろ学ぶためにもつき合いをしなければならない。そういうことにアメリカなんかと同じようなわけにいかない面がたくさんあるのではないか。そういうことからくる費用のかかり、そういうものを特に考慮されておるのかどうか、またする必要があるのかどうか、これを伺いたい。
  17. 内田藤雄

    内田政府委員 お説の通りでございます。従いまして在勤俸におきまして大体共産圏は平均して三割増し、ただいま申し上げました標準の三割増しになっておりますが、下級者におきましては五割増しくらいになっております。それからそのほか、ただいま申し上げましたのは在勤俸だけのことでございますが、館の維持費と申しますか、運転資金と申しますか、庁費とか渡し切り費交際費等におきましてもそういった具体的事情を勘案いたしまして、相当増額しております。
  18. 松本七郎

    松本(七)委員 官房長としては現在の増加分でまずまず充足しておるとお考えですか、なお足りないとお考えでしょうか。
  19. 内田藤雄

    内田政府委員 正権な物価の状況から見ますと、ほんとうはもう少し在勤俸などはふやした方が正当なのではないかという気持も持っております。しかし一般的にただいま申し上げましたように、在勤俸の以外の面でもいろいろ調節いたしておりますので、大体においてさしたる不都合ないしはその勤務している人に非常な不満があるということは、まずないと思っております。
  20. 松本七郎

    松本(七)委員 それから外国に勤務しておる外交官活動状況、これは日常行動を何かそのつど本省報告されておるものか、それとも何か事あるたびに大使を通じて報告されておるのか。特に下級職員日常活動状況はどのような方法で本省では把握されておりますでしょうか。
  21. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまの御質問意味が、たとえば任地を離れる、出張をする、あるいは国外に出るというのはもちろんでございますが、そういう場合には事前に承認を得て参りますので、わかるわけでございます。  それから日常勤務状況につきましては、これは特別なことがございますれば報告がございますし、そうでなければ年に二回の勤務評定と申しますか、報告が参りますから、それによって大体把握できるわけであります。
  22. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでその活動内容ですが、在外公館における仕事と、それからその職務によっては、その駐在しておる国のいろんな実情の調査、あるいは向う国民のいろんな層とのつき合いとか、いろんなものを通じて国情を把握しなければならない面があると思うのです。そういう職務に従事しておる人の日常つき合いというものが、これは公私区別はむずかしいと思うのですけれども、やはりある程度そういった面まで大公使もこれを把握し、本省でもそういう状況日常つかんでおかないと、ただ野放しでばく然とつき合いをやるということでまかせでおるのでは、今日の外国に勤務しておる外交官の任務は果せないと思うのです。そういう点は昔と今日とでは当然変ってしかるべきではないかと思うのですが、どういう状況でしょうか。
  23. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまおっしゃられました御趣旨は了解いたしますが、ただ各人の行動について、日常行動を二六町中監視するということは実際上困難だと思いますし、一応館長の良識ある監督、判断というものにまつより仕方なかろうかと思います。しかし、外交官在外におります場合には、実際上お説のようになかなか公私区別がむずかしいのでございますから、その点は、日本におけるよりは、人数も少いことですから、割合にやりやすいと思います。相当館長としては注意しておるものと思います。
  24. 松本七郎

    松本(七)委員 私は二六時中一々行動を監視せよということを言っておるのではないのです。そういうことはとうていできもしないし、やるべきことではないと思いますが、そこに勤務しておる何人かの中でそれぞれの担当をきめて、そうして国情を把握するためにどの人は政治界なら政治界財界なら財界、そのうちのどういうところにおもに接触を保ったらいいかということを大公使館全体で一定の方針をきめて、そうして分担をきめて、ある程度そういう方針にのっとって行動すべきではないかと思うのです。そうでないと、野放しにしておくと、これはいつか例にあったことだと聞いておるのですが、河野さんが経済問題でパリかなんかに行って通産大臣か何かに会おうとしたところが、大使が自分もまだ会っていないから一つ一緒に同行させて会わせてくれと言われて、河野さんはびっくりしたという話がある。通産大臣などには当然に大使なりあるいは担当の者は一応会っておかなければならないものなんです。それを日本大臣が行って、さて用があるとなると、大公使館ではまだ一つも連絡したことがないというようなことでは、われわれ非常に在外公館仕事ぶり効果について疑わざるを得ないわけです。そういう点をもう少し総合的に、計画的に活動すれば、もっともっと能率が上るのではないかという気がするのです。そういう点はどうなんでしょうか。
  25. 内田藤雄

    内田政府委員 その館の大きさなどにもよると思いますが、私は相当程度のスタッフを持っております大使館のような場合には、おのずから経済担当を主としてやる参事官とか書記官というものをおそらく配置されておると思います。従いまして、今御指摘のように、大体においてはそういう計画性を持った行動をしておるものと信ずるのでございますが、もしただいま御指摘のような事実がありましたとすれば、それは担当官と申しますよりは、やはり大使館長がふだんからもう少しそういう広い交際を心がけるべきじゃないかということに帰着するのではないかと思います。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 それは本省としてはそれを期待するという程度でなしに、何かやはりそういった点について指針を与えるとかいうようなことがあるのかないのか。ただそれぞれの大公使館にまかせっきりで、良識をもってやるようにまかせてあるものか、ある程度そういうものは指針を与えてあるにかかわらず、ときどきそういう事例が出るにすぎないのか、そこのところはどうですか。
  27. 内田藤雄

    内田政府委員 具体的にだれと交際しろというような指令は出しませんが、館長が赴任いたします場合には、一般的な大臣からの指針が出されます。その場合に相手国にもよりますが、国によりまして主として政治面において力を入れる場合、あるいは経済面において力を入れる場合というふうに、多少のニュアンスの差はございますが、大体いかなる場合においても、経済的な通商発展あるいは経済外交重要性というものは常に指摘されておりますから、それは大使の当然の判断として、そのために所要の向きには交際などをするべきものであると考えます。
  28. 松本七郎

    松本(七)委員 それから現在わが国とそれからハンガリーとの国際法上の関係は、どういうふうになっておりましょうか。
  29. 内田藤雄

    内田政府委員 私が了解しておりますところでは、これはハンガリーの場合には一度も戦争状態に入ったということはないので、ただ事実上交際がとぎれておったというにすぎないのではないかと考えております。
  30. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、大公使館相互設置によってもう全然過去と同じ状態に復する。事実関係さえ復活すれば、あとは問題ないと解していいんでしょうか。
  31. 内田藤雄

    内田政府委員 大体考え方としてはそれでよろしいと思いますが、ただ戦前に結びました条約などが、今日の状況から見まして、そのまま効力を持つというふうに解するのは、常識に反するというものもいろいろございますから、そういう点につきましては、ある程度調整というものは行わざるを得ないのではないかと考えます。
  32. 松本七郎

    松本(七)委員 その調整を要する条約というのは、どういう内容のものが幾つくらいあるのですか。
  33. 内田藤雄

    内田政府委員 ちょっと私、今条約内容をつまびらかにいたしませんのですが、おそらくことさら廃棄などを規定しなくても、ある程度常識的に条約はもう効力を失っておるものと解されるものが多いそうでありますから、あと相互に新しくつき合いを始めるについての、たとえば請求権をお互いに出さないとか、そういった多少の取りきめは必要かもしれませんが、議定書という程度のもので国交を開いていけるんじゃないか、こういうように考えます。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 今ハンガリーとの貿易関係は金額でどのくらいあるんですか。
  35. 内田藤雄

    内田政府委員 昭和三十一年のハンガリー動乱前まではかなり貿易も進捗いたしまして、日本ハンガリーに対しての輸出は一億八千九百万円、ハンガリーからの輸入が六百万円という時期があったのでございますが、その年の十月に動乱がありまして以後通商関係は減少いたしまして、現在のところほとんど数字としてあげるほどの額になっておらぬようであります。しかし前のそういう例もございますから、再び正常な国交が開かれますれば、ある程度貿易もなし得るのではないかというふうに考えております。
  36. 松本七郎

    松本(七)委員 日本の一部ではハンガリーはいわゆるチトー化したという観測が相当広く流れているようですが、外務省としてはこの点どういうふうに見通されておりますか。
  37. 内田藤雄

    内田政府委員 私、着任いたしましてそういう説を聞いたことがございません。外務省としてはおそらくそうは考えておらぬと思います。
  38. 松本七郎

    松本(七)委員 この際伺っておきたいのは、イラクレバノンの最近の岡内情勢がおわかりでしたら、一つ
  39. 内田藤雄

    内田政府委員 私はあまり専門家でございませんので、お答え申し上げる適格者であるかどうか存じませんが、私が省内におきまして常識的に聴取したことで申し上げます。  イラクにつきましては、最近御承知のようにアレフ一派統合派というんですか、エジプトのナセルなんかと一緒にいこうという派の連中がだいぶ押えられて、現在のところいわゆる左派共産党ももちろんのようでございますが、左派的な分子が非常に勢力を占めておるやに伝えられております。しかしそのいわゆる左派というのがほんとう共産党だという説もあり、また必ずしも共産党ではなく、やはり民族主義的な——これはどうも日本を例に出してははなはだ悪いんですが、共産党とはやはり一線を画している人々だというような説もございまして、必ずしもその辺は正確にはまだ申し上げられないのではないかと思います。また一部には現在のナセルなんかの統合派を押えるためには、イギリスあたりも一役買っておるというような説もございますが、いずれにしましても、最近この民族主義者といわれる一派連中が相当後退いたしまして、閣僚などはいわゆる左派と称せられる人々によって占められているというのが、大体事実ではないかと思います。  それからレバノンの方のことにつきましては、最近格別の情報もございませんので、先般の内乱と申しますか、内乱状態が一応平静に復しまして、大体漸次落ちつきを取り戻しつつあるのではないかというふうに考えます。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 イラクの、どちらかといえば左派的傾向が強いといわれる点は、即親ソ的になっておる、こういうふうに外務省では見ておられるんですか。
  41. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいま申し上げましたように、共産党がある程度地下において勢力を張りつつあるということも事実のようでございますので、その意味におきましてはある程度親ソ的ということを認めざるを得ないかと思いますが、しかしただいま申し上げましたように、いわゆる左派という人の中にも、必ずしも共産党あるいはモスクワの意のままに動くような連中ばかりではないという説もございますので、まだ確実に現在の政権がはっきり親ソ的な方向をたどっているというような断定は、下しかねるのではないかというふうに考えます。     〔床次委員長代理退席委員長着席
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 こういう傾向を、ダレス氏はいわゆるソ連侵略だというふうに規定しているわけですね。外務省としては、共産党とは一線を画しているし、親ソ的な色彩は幾らかあるけれども、これを直ちにソ連と一体となったものと見たり、あるいはソ連侵略考えるという見方ではないように、今の答弁では推測されるのですが、この点はどうでしょうか。ダレスなんか、根当はっきりこのレバノンの最近の傾向ソ連側侵略の結果だ、あるいはそのこと自体がソ連侵略だ、こういうふうにきめつけているのですが、その点はどうでしょうか。
  43. 内田藤雄

    内田政府委員 私が見ております資料などで了解いたします限りは、ただいまおっしゃいましたような——私はダレスがどういうことを言ったかよく存じませんが、イラクがすでにはっきり親ソ的な傾向をとっておるとか、あるいはソ連のかいらい的な人によって牛耳られておる状態にまで立ち至っておるとは、われわれの出先機関も見ておらぬと思いますし、またわれわれ外務省としてもそういうようには見ていないと考えます。
  44. 松本七郎

    松本(七)委員 あと留保しておきます。
  45. 櫻内義雄

  46. 戸叶里子

    戸叶委員 直接この法案と関係はないのですけれども、関連して伺いたいのです。基本的には、大使館なり公使館なり領事館というものは、国交が回復して作るわけでございますけれども、日本がまだ在外公館を持っておらない国々、たとえば大使館公使館領事館を出しておらない国々は、どういう国々がございましょうか。
  47. 内田藤雄

    内田政府委員 現在われわれが国交樹立の対策として考えておる国は八十六カ国あるのでございますが、そのうち八十カ国とは一応国交が開かれております。ただしそれじゃ八十カ国全部大使館公使館を持っておるかというと、そういう意味ではございません。現に実際に開かれている大使館の数は四十八、それから公使館が十一でございまして、総計いたしまして五十九でございますから、八十から見ればまだだいぶ数は少いわけでございます。しかしその中ですでに兼任というような形で、人は行っておりませんが、実際公館が開かれたのに準ずるような地位の国も相当ございます。そこで残りの六カ国のうち、一つ韓国でございますが、あとはアルバニア、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、イエーメン、この五ヵ国でございます。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 これはおそらく表になっているかと思いますけれども、ございましたらあとでその表をいただきたいと思います。
  49. 内田藤雄

    内田政府委員 承知いたしました。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 今韓国の問題が出たのですけれども、これはずっと前にも私はこの委員会質問したことがありますが、ともかく韓国からは日本代表部があるわけですけれども、日本からは向う代表部がないわけなんです。そういうふうな一方の国だけが代表部をよこして、こちらの国からはやれないような状態にあるところがほかにどこかあるかどうか、これを伺いたいと思います。
  51. 内田藤雄

    内田政府委員 私の知っております限りでは、ほかにはありません。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 外務省としては大へんにそれに対して困ったことで、何とかしたいというお考えをお持ちになって努力をされたことがございますかどうか、この点伺いたいと思います。と申しますのは、今大きな問題になっております北鮮へ人を返すというこの問題にいたしましても、結局韓国代表部日本に来ていて、そして日本政府と折衝をしてその関係韓国へ伝えているという形で、日本の方は向うにございませんから日本の直接の意思というものは伝えられない、その間にもいろいろないきさつがあって、かえって日本にとって不利なことが非常に多いのじゃないか、意思の疎通がうまく行われないような場合が多いのじゃないか、一方的に解釈されて、一方的にどんどんやられる場合が非常に多いのじゃないかということを心配いたしますので、この点を承わっておきたいと思います。
  53. 内田藤雄

    内田政府委員 私も大体戸叶委員と同じような感じを持っております。実際こういう一方だけが持っておって、片方の在外公館の設置を認めないということは、きわめて異例なことでございまして、おかしなことであると私自身考えております。ただ御承知のようにどうしてこうなったかと申しますと、戦後の占領時代の司令部に、そことの連絡機関という形で韓国代表部が置かれまして、それが平和条約の回復とともに、もちろんそのステータスの根底が失われたわけでございますから、当時あるいはもう少しほかの手段も取り得たかもしれないが、いずれにいたしましても、その当時諸般の関係を考慮して黙認する形で、韓国代表部が居すわってしまった。その後もちろん日本側としましては御指摘のような感じを持っておりましたので、私の知っております限り、再三にわたって日本公館を京城に置くように交渉いたしたようでございますが、韓国側ではいろいろな理由をあげましてこれを拒否しておるというのが、現状であろうかと存じます。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 外務省日の方でもたびたびそういうふうな申入れをされたようでございますけれども、こういうふうなへんぱな形を続けておりますと、どうしても日本の方が非常に不利になるということは、今おっしゃった通りでございまして、やはりこれは何らかの形で解決するような方法は全然ないのでしょうか。どこかの国に頼むとか、あるいは国連へ持っていくのはおかしなことでしょうけれども、どこかに仲介に入ってもらうとか、何かそういったふうな形ですることは、全然可能性のないものかどうか伺っておきたいと思います。
  55. 内田藤雄

    内田政府委員 私詳しくは存じませんが、おそらくそういういろいろな手段は試みてみたのではないかと思うのでございますが、遺憾ながら現在までのところその効果が現われておらぬということだろうと思います。一つ考えられますことは、もし置かないならお前の方も帰ってくれというふうなことを言うのも、一つの方法だとは思いますけれども、しかしこれはまたそれなりに相当大きな利害関係が伴いますので、現在までのところはそういうようなことは差し控えて、できる限り平和裏にこちらの公館を受け入れるような事態を作りたいということで、努力して参ったのではないかと思います。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと関連して。今国連の話が出ましたようですけれども、何か韓国側では、この帰国問題について国連に提訴するというようなことを言っているという新聞報道がありますが、これは、韓国としては、国連に入っていないので、提訴する場合にはどういう形で提訴することになりますか。
  57. 内田藤雄

    内田政府委員 私も新聞報道としては承しておりますが、それ以上のことはよく存じませんで、また韓国が法律的にどういう形でやりますのか、相手方の考えも私はよく承知しておりません。
  58. 松本七郎

    松本(七)委員 韓国側の考えじゃなく、今韓国が国際的に置かれておる立場、そのような国が提訴する場合にはどういったやり方でなし得ると考えられるかというのです。どういう道が予想されるかということです。
  59. 内田藤雄

    内田政府委員 あまり間違ったことを申し上げてはいけませんが、ただいまここで考え得るという方法は、事務総長に直接アッピールすること、あるいは他の加盟国を通じて、加盟国からアッピールしてもらうということが考えられるという話であります。
  60. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、たとえばアメリカに頼んで取り上げてもらうということが一番可能な、やりそうなことだということになりますね。
  61. 内田藤雄

    内田政府委員 アメリカかどうかわかりませんが、一番仲のいいということであれば、アメリカかもしれませんが、いずれにしましても、そういう国を通じてやるということが考えられるということであります。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 その問題は私ども新聞記事として読んだわけですけれども、実際に柳さんとの会談では、そのことは出てこなかったのでしょうか、どうでしょうか。責任のある方きょういらっしゃらないからわからないかもしれませんけれども、確かめておきたいと思います。
  63. 内田藤雄

    内田政府委員 私が聞いておりますこと、あるいは知っております限りでは、そういうことは日本の会談では出ておらぬと思います。     —————————————
  64. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢に関して調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。帆足計君。
  65. 帆足計

    ○帆足委員 本日の閣議で、在日朝鮮人の北鮮帰還のことが、ほぼ意思が固まったということで、まことに御同慶の至りでございます。実は朝の東京新聞で見ますと、外務大臣意思は確かに固いけれども、「岸首相ためらう」と大きく書いてありまして、しかも昨日の夕刻の談話でありましたから、非常に心痛いたしまして、またあの病気が出たかと思ってがっかりしたのでありますけれども、ただいま次官から伺いますと、もはや閣議は事なく済んだらしゅうございまして、邦家のために御同慶の至りでございます。そこでこの善後策をきわめてスマートに敏速に、そして順調にかつ実情に即して行うことが、私は賢明な方法であると思います。すべて聰明な人間は理想を持つと同時に、リアリストでなくてはなりませんから、複雑なことは整理整頓して、なるべく摩擦なく、論理的にかつ実際的に行うことが適当であると思います。それで逐次この重要な問題につきまして今後進行の過程に沿うて、これは超党派的課題でありますから、与党の先輩諸兄とも相談しながら運営の実施を円滑にするために、逐次今後も質問も行い、要望も申し上げますので、きょうはとりあえず重要な数点についてだけ政府当局の御考慮をわずらわしたいと思います。  第一はこれがきまることは当然のことであって、いわばよそから預かっておる貧乏な娘さんが里に帰りたい、こういう申し出をしたわけです。それは里に帰るのはあなたの自由であるし、親元が引き取るというならば帰しましょう。しかし帰りがけに雷なんか鳴ったり乳切りが現われたりしては困るからといって、やはり預かっている方の側も親心として心配したのでありましょう。がしかし、娘が帰りたいという以上、それは帰ることは当然であということをきょうまずきめたわけです。帰る途中の雷や雨や乳切り諸君に対する防護策などが今後問題になる。これは正しい手順だと思います。そこでまず第一に一番心配なのは、安全航路の問題であって、朝鮮では戦争状況がすでに国際連合によって解決して、ないのですから、いわゆる安導券などという事々しい問題ではなくて、李承晩政権のいやがらせをどうして防止して航路の安全をはかるか、こういう問題であろうと思いますが、外務省当局としては、この問題をどうお考えでしょうか。
  66. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 この問題はまだそこまで具体化していないわけでありますから、国際赤十字委員会の中立性と独立性に信頼して、そこでそういう方法を考えてもらうということになっておりまして、まだ具体的にどういう方法をとるかというとこもお答えはできない段階であります。
  67. 帆足計

    ○帆足委員 そこで私はこう思うのです。今までの送還の問題は、中国または朝鮮、ソ連における日本人の捕虜とか抑留者を、われわれが主人側になって連れて帰る問題です。すなわち船の用船もわれわれがするし、航路も決定する、保険にも入れる、関係国の了解も得る、これはこちら側が主人側であったからです。今度は北朝鮮の政府または北朝鮮の赤十字が日本におる彼らの同胞を自分が用船、配船、航路をきめて引き取るというのですから、里方の方が御主人役であって、われわれは好意的にそれに協力する、こういう筋道であろうと思うのです。これは疑う余地のない客観的事実です。そうだとすれば朝鮮側において自分で用船し、自分で航路をきめるのですから、朝鮮側としても航路の安全ということについては自分のことでございますから、当然それ相当の準備なり意見があろうと思うのです。従いまして、私は、日本政府が一般的了解を国際赤十字に求めることはもちろんよいことですけれども、それ以上の手続については、まず日本赤十字から朝鮮赤十字にお宅のお坊ちゃんや嬢ちゃんをお帰しします。ついてはあなたの方から船をこっちへ持ってくるといっておりますので、諸般の問題があろう、特に航路の安全ということは重要ですから朝鮮赤十字としてはどのようにお考えですか。御主人側の意見はどうですかということを聞くことが私は一番スマートでもあるし、順序だと思うのです。そうすると朝鮮赤十字側としては、滞在先の方の御主人の御好意はよくわかります。しかしこれは私の方のむすこや娘を連れて帰る問題ですから、実はこういう手順を整えております。たとえば船はどういうふうにする、あるいはまたソ連赤十字に頼んで、ソ連船を使うかもしれぬでしょう。そういうことになれば、まあ私の方ではこういう準備がありますから、御心配要りませんと言うてくれば、そうしてそれが常識にかなったことであれば、それでほとんど解決つきますし、私の方ではこういう準備がありますけれども、なお李承晩殿が多少いやがらせをいたしますについては、国際赤十字にもこの程度の了解を得たいと思っております。ついては日本側からもすでにお口添え下さった由、まことにけっこうで、ともにこの程度のことを赤十字に頼みましょう。私はこういうことも順序でありますから、きょう閣議で方針がきまった以上は、国際赤十字に一般的了解を求めるとともに、日本赤十字から主人役たる朝鮮赤十字の意向を一応確かめるということが、筋道の順序だと思うのですがいかがなものでしょう。
  68. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 閣議できめますことが、大体国際赤十字委員会にこの問題の調査並びに調査後のどういう方法をとるかということのあっせんをお願いするということが、閣議の了解事項として現われるのであって、その後の北鮮側と国際赤十字委員会とが十分交渉をし、どういう内容のことを相談するかということは、政府としては今のところは一切関与しないという方針だろうと思います。ただきょうどういうふうにきまりましたか、結果は聞いておりませんが、送還の場合に日本の船舶を使いたくないということの意思は、あるいは閣議でそういうことを加えたかもしれませんが、それ以外のことは一切あげて国際赤十字委員会のあっせんにおまかせをして運んでいただく、こういうことだろうと思います。
  69. 帆足計

    ○帆足委員 それも私は別に積極的に有害なこととは思いません。思いませんけれども、日本に預かっている坊ちゃん嬢ちゃんを里の方から取りにきて、里が配船するというのですから、しかもお里の方で用船し、航路をきめるというのですから、帰す以上は、里側の意見を聞くというのが、——里側に主たる責任もある。われわれは協力者の立場であるということだけは、これは一つ外務省当局においてよく理解しておいてもらいたい、そうして今の日本政府の問題につきましては、もう先方もその事情は知っておるように存じておりますが、こういう事情でありますので、われわれが用船するものでないことについてあまり深く立ち入ったことを申さなくても、北鮮側に責任を持ってもらえば、この不愉快な、航路安全ということが妨害されるということは、乳切り事件みたいなものですから、乳切り事件などにあまり深くわれわれは介入しないで、ただ里の方の主人側に責任があるだけじゃなくて、預かっている側にもやはり責任があるわけですね。これはやはり人道的な問題です。ですから口添えをしたり、御注意をする。坊ちゃんや嬢ちゃんを帰すのに主人側が引き取りに来るけれども、途中に乳切りという悪いやつがおるから私どももできるだけお手伝いしましょう、こういう政府の態度は私は正しいと思う。しかし主人役はあくまで北鮮赤十字なのですから、そのことを忘れないように、故意にそのことをぼやかして、ただ国際赤十字だけお考えになるといかぬ。日本側が責任の重点であって、日本側が主人役であったかっての中国、ソ連からの帰還船の問題と同じような錯覚を持つおそれがありますから、この主人役はあくまで朝鮮だということを忘れないように私はお願いしたいと思いますが、そういう道筋の考え方について外務次官は御了解願えますかどうか承わりたい。
  70. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまお答えいたしました通り、この事柄を運びますのは、実際の調査からどういうふうになりますか、どのくらいの人数が帰還を実際に希望しておるか等の調査に基いて方法もまたきまることだと思いますが、それはあげて国際赤十字委員会に仲介をお頼みするということであって、それ以上のことを政府は今どうこうということは考えていない次第であります。
  71. 帆足計

    ○帆足委員 また同じことを答えられたのですが、私が言うたのはそうじゃなくて、この送還問題の主人役はどこであるとお考えか、こういうことです。すなわちソ連の捕虜を連れて帰ったのはわれわれが連れて帰った、われわれが主人役、そのときはソ連側は介添役、今度の場合は朝鮮赤十字が主人役でわれわれは介添役、国際赤十字も介添役である。そういうことはだれが考えても客観的事実でしょう。その事実をことさらにぼやかさないでいただきたい、こう申しておるわけですが、私の申した内在的な論理は、御了承いただいておるかどうかをお尋ねしておるわけです。
  72. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 お尋ねの論理と申しましょうか北鮮側が主人だという解釈が適当かどうかは、私はにわかに同意できないと思います。これはあくまでも帰りたいという各個人の居住の自由ということが基本でありまして、それは北鮮に帰ろうともどこへ帰ろうとも、意思の持ち主である本人が主体だ、こういう考え方に立ってものの処理をいたしたいと考えております。
  73. 帆足計

    ○帆足委員 私の申し上げるのは、帰るか帰らないかきまらぬ人に対してじゃなくて、すでに帰るときまった人に対しては北鮮側が船を回して、その船の用賃は北鮮が払うのですよ。そして牧時保険をどのくらい払うか、生命保険をどのくらい払うか、航路をどういうところに選ぶかは、国際赤十字がするのではなくて、北鮮が銭を払うのです。国際赤十字がお金を払って連れていって下さるならいいでしょう。そうすれば介添役でなくて国際赤十字が主人公です。しかし船賃を払い、航路をきめ、そして保険料を払うものが主人役である。ただ安全について国際赤十字に介添役として了解を得、こういうことであると思いますから、私は次官がなぜそういう事実の論理をぼやかされるか、了解に苦しむわけです。それはどう考えますか。
  74. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまお尋ねのようなことを北鮮が申しておることは承知しております。しかしそれが事実になってそのまま現われるかどうかということは、国際赤十字委員会北鮮なり何なりに接触した上でなければきまらない問題でありますから、ただいまお答えしたようなことを申し上げておるわけであります、
  75. 帆足計

    ○帆足委員 手続上はそういう順序になっておる、それならばわかりますが、私の申し上げましたようなことでありますから、一つそれを念頭に置いていただきたいと思います。  それから第二には、まずこれをスマートにやりますために国際諸関係が円滑になることが望ましいし、諸外国日本の態度の公正で人道的であることを理解していただくことは非常によいことだと思います。私は今度の外務大臣の態度によって、日本もまた国連人権憲章並びにユネスコに加盟しておる一員として、国際正義を守る一環としての国家の名誉と独立心を持っておるということを世界に明らかにした点において、日本の道義的品位を高めた点における信用の増加は絶大なものがあると思って、慶祝しておる次第で、同時に外務大臣のこの勇気に対して、心から敬意を表する次第でございます。  それに対して、李承晩殿の方からこれにいろいろわるさをする。たとえばすでに釜山におる日本の船に出港停止を命ずる、あるいはこの人道問題と何ら関係のない、魚道問題ですか、魚道問題の方の漁船を拿捕する行為をもっと活発にする、すなわち海賊行為をもっと活発にするというようなことをもうすでに言い始めておりますが、まことにこれはけしからぬことであると思う。これは恥ずべきことである。これならばますます李承晩政権は世界からの軽べつを招くであろう。隣国のためにまことに私は悲しむものでございます。釜山の日本の船が出港停止を命ぜられたという報道は、ほんとうでしょうか。ほんとうだとすれば、ゆゆしきことであると私は思うのですが、これは商売をするために行っておる船です。商売人と赤十字の問題とは直接の関係はないわけです。しかも商売は韓国にとっても有利な商売であるし、われわれにとっても有利な商売である。その何の関係もない、何も知らないで陸揚げをしておる商船に対して出港停止を命じてくる。これは、そういうことなら直ちに柳公使を逮捕する必要が出てくるというような議論も出てくるということになるから、それは一つ情報を正確に調べておいていただきたい。
  76. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 昨夜午後九時までに私の聞いておるところでは、出港停止の事実はなく、出港したそうであります。  ただいまお尋ねのように、北鮮へ帰りたい方が帰るという問題と、その他の日韓間の問題とは全く別個の問題でありますから、そのような考え方に立って、たとえば、日韓会談等も継続してやりたいというのが当方の考え方で、そのことはいろいろの方法をもって韓国側にわれわれの意のあるところは数回にわたって通じてありますから、まだ完全な了解をしてはおりませんが、当方の意思は明らかにしております。
  77. 細田吉藏

    細田政府委員 釜山におりました東海丸が、十二日の十八時に出港した旨の電報が入っております。
  78. 帆足計

    ○帆足委員 新聞が誤報でありましたことは、わが商船のためにもいいことであるし、また韓国政府の名誉のためにも大へんよいことであって、これがきょうの新聞に報道されれば、国民の皆さんも安心するでしょう。大へんよいことでありました。  またもう一つよいことは、柳公使が、韓国政府は国連にこの問題を提訴するつもりであるということを言われましたが、私は韓国政府にも一抹の良心が残っていたとしてこのことを喜ぶものでございます。韓国政府が罪なき日本の漁船や商船に対して、夜討ち、朝がけのようなことをしたがる、森の石松君のまねをしたがるとすれば、民主主義社会においてはますます軽蔑の念を新たにせざるを得ないと思っておりましたが、国際連合に、提訴して下さある、まことに美しき心がけでございまして、私は国会議員としてこの態度を大歓迎いたすものでございます。しかし、そこまで問題がまだ至らなくとも、人道の常識として問題が解決すれば、一そうスマートであるわけでございますが、先日の新聞に、外務省当局は、これを国連に提訴することも研究中である。私は問題はそこまでいかないで済むんではないかと思っておりますけれども、しかし御研究なさるという、この用意周到なるお心組みに対しては敬意を表します。従いまして、その御研究の一端を聞かしていただく意味におきまして、国連に提訴するといえば大体筋道が、どういう委員会に、どういう情報で提訴されて、どういう手順になるものであるか、要点だけをお聞かせ願いたいと思います。官房長からでも……。
  79. 内田藤雄

    内田政府委員 実はまだ私が承知しております限りでは、現在の段階ですぐどうというのではなくて、韓国側のそういうことはないことを期待するわけでございますが、これが実施に移されました場合にとるかもしれないそのいろいろな措置に応じまして、場合によっては国連に提訴しなければならないかもしれない。そういうときのことを今研究し、準備しておるということではないかと存じます。
  80. 帆足計

    ○帆足委員 常に先を考えて旺盛なる研究心を発揮することは、これは美徳でありますから、いずれまた必要に応じましてその御研究の成果をお尋ねすることにいたしまして、ただ私がここで伺いましたのは、国連というものは、拿捕が一、二度起ってからでなければ問題を取り上げないであろうと新聞に書いてありまして、そういうことでは困るのであります。従いまして、国連提訴ということの御研究もけっこうですが、送還船に対して乳切り事件が起らないようにあらかじめ対策を講じておく必要があるということを私は指摘したいと思ったわけです。それににつきましてはいろいろ成算もございますから、逐次今後——私は協力会の幹事長としての情報も、各方面の情報も得る立場にありまするし、また与党議員諸君ともざっくばらんに御相談し得る立場にございますので、逐次御連絡したいと思っております。  次にお尋ねいたしますのは、柳公使がいたけだかになって、北鮮に在日朝鮮人を帰さないという秘密協定がある、その秘密協定を破ったからということを盛んに申しておりまして、日本政府はこれを否定しておりますけれども、この外務委員会の席において、柳公使がなぜそういうことを言うのか、どういう根拠でそういうことを彼が揚言しておるのか、次官から責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  81. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまのお尋ねの点ですが、柳公使がそういうことを言われたとすれば、どこにその真意があるのか、まだはっきりわれわれとしては承知いたしておりません。ただ今、柳公使が言ったようなそういう秘密協定はないというふうにわれわれは了承しております。
  82. 帆足計

    ○帆足委員 それからその次にお尋ねいたしたいのは、その他日本政府との間に秘密協定があるのを、これは全部ばらして見せる。これはよくごろつきが言う手でありまして、ごろつき諸君の拍手かっさいを得るかもしれませんが、紳士淑女諸兄からは、これはあまり好まれないことで、あろうと思いますから、あえてお尋ねするほどのこともありませんけれども、やはり新聞に大きく出ておりますから、何か人に聞かれて悪いような秘密協定、そして乳切り諸君がばらして大いに快哉を叫ぶような協定がございましょうかどうか、一つお尋ねしたいと思います。
  83. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 日韓会談は、御承知の通り回を重ねること何十回というふうにやっておりますから、その間にこの問題だけは双方公表しないでおこうといったようなことは多少あり得ると思いますが、秘密協定というふうなものは全くないと申上げてよろしいと思います。
  84. 帆足計

    ○帆足委員 世の中には夫婦の間でもこれはおじさん、おばさんに知らせない方がよかろうということもありますから、これはそうでございましょう。またそういうことを発表することは、発表する側の品位を低めるだけのことでございますから、私もそれは大した問題じゃないと思います。  そこで次の問題に移りますが、韓国赤十字はたしか万国すなわち国際赤十字に加盟していたと思いまするし、それから各国の外国在留の国民がおのれのふるさとを選び、離散家族がみずからの祖国に家庭を持つことの自由というニューデリーの決議に参加していたと私は記憶しておりますが、それはいかがでしょうか。
  85. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまお尋ねの経緯につきましては、私今承知しておりませんので、調べた上でお答えいたします。
  86. 帆足計

    ○帆足委員 これは私は一昨日葛西副社長からこのっ情を伺いましたから、それで申し上げますが、韓国赤十字もこれに参与いたしております。こういうことは非常に重要なことですから、官房長や次官は知っておいていただかねば困ると思います。しかしこれは、担当の局長はよく御存じであろうと思いますが、私は念のためにちょっとメンタルテストをいたしましてまことに恐縮でございました。これは趣味としては高尚な趣味ではございませんので、メンタルテストはなるべくいたさないことにいたします。まことに失礼申しました。  次にお尋ねいたしたいのは、国際赤十字に頼むというても、私は時間がかかることを心配する。ある一部の人が、それでいいんだよ、引き延ばしになるんだからと言うこともちらほら聞きまった。もちろん今日の藤山さんの人道的態度から見まして、引き延ばすために国際赤十字に頼んだなどという一部の言い方は、私は不謹慎であると思う。そういう人の腹を勘ぐるようなものの見方は、これはいわゆるアジア的な弊風の一つでありますから、よくない。私は率直に国際赤十字の了解を得ることは、事を円滑に運ぶためにいいことと考えておやりになっておると思いますけれども、何しろ万里離れたスイッツルのことでございますから、時間がかかるのではないかということを心配しております。この批評に対して外務政務次官はどのようにお考えでございましょうか。
  87. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 この問題は国際赤十字委員会に仲介をお順いすることが最も妥当な方法だ、もっと極言すれば、それが唯一の方法だという考え方から、この方法を選んだのでありまして、引き延ばしとかそういう雑念を入れた考え方ではないということを申し上げます。
  88. 帆足計

    ○帆足委員 外務政務次官からそういう御答弁がありましたから、私はすなおにそれを信ずるものでございますが、ただ御注意申し上げておきたいことは、国際赤十字はスローモーションである。すべて心やさしき者はスローモーションであるという、そういう格言があるかどうか存じませんが、そういう心理学的傾向があることは、われわれの経験によって察知することであって、心の荒い者は非常に事が早いのですけれども、心のやさしい者はとかくスローモーションである。そういうこともありますから、今の問題につきましてはあまり延引しないことと、それから国際赤十字は遠いところにあって、日本の実情とか日本におる朝鮮人の実情とか北鮮の実情とかに対してはうとい。その事情にうといことと、時間が延びること、この二つが欠点でありますから、どうぞ外務省の御努力によってその欠陥を補っていただくようにお願いいたしておきます。  時間がありませんから、結論に入りまして、次には李承晩殿が報復措置に出るおそれがあることを各方面で心配しております。これに対して日本側といたしましては、船が出港を当分見合せるように措置したというように新聞に出ておりますが、これは君子危うきに近寄らずという言葉もありますから、見通しがつきますまで多少そういう点を見合しておくということも、別に韓国政府に対して失礼な次第ではない。すなわち刺激を避けるために日本の船をしばらくとまっていただくということが妥当なことのように思いますが、そういう措置をなさいましたかどうか。すでに新聞に出ておることですから確かめておきたいと思います。
  89. 細田吉藏

    細田政府委員 私の方から船会社に対しまして、当分出港を見合せた方がよかろうという注意をいたしましたが、いかぬというふうには申しておりません。
  90. 帆足計

    ○帆足委員 まことに適切にしてスマートな御注意であると私は思います。それは決して無礼な行為でもなく、向うを刺激する行為でもなくて、また生物には自己防衛の本能がありますから、それを適切に警戒心を働かすということは、これは生理にかなった現象である。これは私は妥当な措置であると思っております。  その次にお尋ねいたしますが、李承晩ライン等に対して報復措置がありはしないかということを一応心配されております。この問題につきましては、この問題と関係なしでも漁業問題独自の問題としましても、なるべく摩擦を少くする対策をとらねばなりませんので、先般の外務委員会におきまして詳細にわれわれの要望を述べ、また超党派的に外務委員会から、李承晩ライン視察に参りましたときの報告書も差し上げてございますので、関係当局の各位においては、すでに十分に御了察下さっていることと思いますが、ただ結論を伺いたいことは、私どもはやはりこれ以上事態を紛糾させたくない、先日申し上げましたように、だらしない服装をして歩いていれば、つい暴漢に言いがかりをつけられるが、平素からきちんとした格好をしておればそういう摩擦も起さないで済むのでありますから、李承晩ラインに対する対策を整理、整頓しておくことが必要であるというので、たとえば受信機の装置をよくするとか、保健鉄板を整えておくとか、または巡視船を増強しておいて、それで漁船にあやまちなからしむるようにするとか、こういう着実な方針をとるために予算を惜しんではならぬ。大体二千人も三千人も漁民がつかまって大騒ぎをするよりも、そういうことのないようにするために、若干の経費をさいておくことの方が賢い人間のすることであるということをるるお話いたしました。昨年の暮れまでは海上保安庁当局の御努力、運輸省の御努力にもかかわらず、大蔵省が実情にうといためになかなか言うことをきかなかったということですから、先日の外務委員会に主計官殿に来ていただいて、よくわれわれの要望も聞いていただき、速記録を関係方面に回して下さるようにお願いしておきました。それでわからなければ主計官殿に、遺憾ながら多少寒いときですけれども、玄界灘に行って、現場で潮風に吹かれてもらいたいということをお話申し上げておきましたが、その後各方面においてこの問題をやはりスマートに善処することが必要だという認識が高くなりまして、解決方に向って進んだように承わっておりますが、この問題に対して、ことさら今後紛糾を起さないために必要な措置並びに予算につきまして、御満足のいくような進行状況になっておりますかどうか。保安庁長官並びに運輸省官房長から御回答願いたいと思います。
  91. 安西正道

    ○安西政府委員 帆足先生からいろいろあの水域で働いております巡視船につきまして御同情あるお話がございまして、私ども感激しておる次第でございます。もちろんいわゆる李承晩ラインの漁船の拿捕が今後どうなるであろうかということは、韓国側の出方いかんの問題でございまして、従って私たちといたしましてはできるだけ摩擦を起さないように行動をするように、巡視船に指令を出しておる次第でございます。ただ必要な場合に、御指摘のように向うからあるいは巡視船が銃撃を受けるというような場合が将来起るかもしれないという問題も考慮いたしまして、たびたび御説明申し上げましたように、約千七百万円の予算要求をいたしておりまして、できるだけ巡視船の防護措置につきまして万全を期して参りたいと考えております。この問題につきましてはただいま大蔵省に折衝中でございますので、漸次解決して参ると考えております。
  92. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまに必要な予算はもう通る見込みができましたか。  それからさらに水産庁の方で例の受信機についての補助金、これも水産庁長官がこれは大へんなことだといって最近大蔵省をしかって金を出させるようになった、こういうふうに聞いておりますが、その幾つかの状況について予算措置はできましたでしょうか。その結論だけでけっこうです。また大体できそうになっておるかどうか。
  93. 中村正路

    ○中村説明員 水産庁の方といたしましては、小型漁船に無線受信機をつけまして、巡視船、監視船との連絡を緊密にするということで、ただいま予算要求を大蔵省の方に持ち込みまして、折衝いたしておるわけであります。
  94. 帆足計

    ○帆足委員 それは聞いておりますが、有望ですか。向うががんこで話がわからぬかどうかということです。
  95. 中村正路

    ○中村説明員 決定的なことは一つもいわれておりませんし、私の方は有望だというふうに考えております。
  96. 帆足計

    ○帆足委員 大体有望であるという見通しを伺いましたので、有望であろうと信じますが、有望でなかった場合はうそをついたことになりますから、そのときは一つ大蔵省の主計官を連れてきてここで対決していただきます。そうしてもちろん私どもは正しい政策の方に賛成ですから、これはすでに外務委員会から報告書も出ておりまして、与党、野党の別なくこぞって賛成しておることですから、ぜひとも通していただきたい。通らないようなときには一つ委員長並びに関係議員に御連絡を願いたい。これはわれわれ行政に関与するわけじゃありませんけれども、外務委員会において満場一致の空気の問題でありますから、これはやっぱり通ることが正しいと思っております。
  97. 細田吉藏

    細田政府委員 ただいま御返事がおくれまして先生からさらに大蔵省に対しまして応援をしようというお話も承わったのでありますが、私どもの方では先ほど保安庁長官の話しました巡視艇の防護措置につきましては、予算は予備費から出してもらうように折衝中でございまして、私どもはものになると思っております。しかし相手のあることでありますから、最後的な返事は得ておりませんけれども、そういう先生のお言葉でいえば、有望であるというように考えております。
  98. 帆足計

    ○帆足委員 防護措置、それから受信機の問題、必要なことは備えあれば憂いなしということでやってもらいたい。私はもちろん柳公使の写真しか拝見しておりませんが、お人柄から見て、報復措置をするなどというようなことは、この外務委員会などで論議をしたわけではないのです。そうではなくて、霧深くして間違って船が迷ったり、また韓国側としてもやはり送還船問題でいろいろなことが報道されますから、下級乗組員などは興奮して、つい海賊まがいの行為に出たがる。これは人間の生物学的傾向としてそういうことをやりたがる。そういうことのないように受信機も備えておいて、あやまちなからぬことを期す。いわんや韓国側をこういう小さな問題で刺激するようなことはやっぱりよくないと思うのです。刺激しないで、そうしてなすべきことはきちんとしておく、こういう意味で申し上げたのでございますから、誤解のないようにお願いいたします。  それから、最後に厚生関係でお尋ねいたしたいことが三つございます。一つは、韓国に抑留されておる漁民が百四十七名と聞いておりましたが、きょうの新聞で見ますと、石五十何名ということです。何人になっておりますか。そして今日、遺憾なことですが、もしこの問題がからむということになりますと、一そう国策の犠牲ということで、外務委員会は人道上の見地で朝鮮人の諸君に同情して正しい理解を持った。では日本の漁民に対しては理解を持たないのかというようなお気持でも抱かれては、抑留漁民の方や、留守家族の方に対してまことに済まぬことである。われわれは、人道に対してやはり責任と義務を持ちますけれども、同時に、同胞が、たとえ一人でも二人でも不当な苦しみを受けているということに対しては、夜も寝られぬくらいの心配をするのが、議員としての務めでございますので、事ここに至りますれば、一つ水産庁、厚生省にお願いしたいことがある。第一は、抑留漁民についての援護措置ですけれども、これは中国に抑留されている者もいるし、ときとしては、ソ連にも航路を誤まって抑留されておる者があるから、一々それを援護すればもう限りがない。やはり画一的でなくてはならぬということをときどき聞くのですが、大体収容所というところは、どこでもそれほどいいところではない、一流のホテルじゃないのですから。しかし、生理的に苦痛を感ずるというほどの抑留所は、今のところ釜山だけなんです。釜山の抑留所で一番困っているのは、栄養失調と病気の問題です。これはたびたび申しましたが、日本に帰ってから五カ月もたてばもう半数以上就職していると思ったら、実は三、四割はまだ腰が抜けている、六、七割はまだ病院通いをしている、やっと一年たってどうにか普通の生活に戻れる、こういう状況です。たとえば食事をしている間にもう腹がすいてからだががたがたふるえてくる、ちょうど日本の戦争中の憲兵隊の地下室みたいなものです。従いまして、どこの抑留所も同じだから、画一的というのではなくて、生理的限界を越えているという以上は、第一に栄養物なり、書物なり、物心両面の栄養物を送ってもらいたい。人数が前のように二千人もあるときは、大へんな予算で手が届きませんけれども、今百数十名ということを伺いますと、中央でも、地方自治庁でも、また中央で出されなければ一つあっせんして、漁民団体も多少担当するというふうにして、現在送る費用を補助していただいておりますけれども、前は汽船で送っておったのを、それでは荷物がつかないというので、飛行機で送った。飛行機賃が高いためにそれに食い込んでいるわけです。そういう特殊の事情がありますから、やはり画一的にお考えにならずに、釜山の抑留者は栄養失調になっているという人道上の見地と、国策の犠牲に今ではなっているという特殊の問題、二つのことをあわせてお考え下さって、援護措置を強化していく。同時に心配なのは留守家族の問題です。留守家族の援護に対しても、これは国策の犠牲になっているという面がありますし、人数も少いですから、除外例の措置を講じていただきたい。現在の抑留者の状況、これに対して政府が御研究なさる意思があるかどうか、このことについては、特に戸叶さんが留守家族のおかみさんたちと会って、詳しく事情を現場で調べてきたんです。従いまして、画一的になさらずに、この問題について特別の御配慮をお願いしたい。御答弁をお願いいたします。
  99. 池田清志

    ○池田政府委員 海外に抑留されております邦人がいらっしゃいますことは私どもといたしましてもまことに申しわけなく思っているところであります。この帰還の問題は、厚生省に対するお尋ねの形で御発言になりましたが、政府といたしましては、外務当局で非常に御心配いただいている事柄でございますので、外務当局の方から詳しい御答弁を申し上げることにいたします。
  100. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 ただいまお尋ねの釜山の収容所に目下収容されております邦人の数は、現在百五十三名でございます。お尋ねの収容されている方々に対する直接の援護並びに留守家族に対する援護につきましては、前委員会においてもお答えいたしました通り、もちろん十分とは申せませんが、今までもやってきたところでありますが、今後これらの問題につきまして、各省と相談の上で予算措置等においても考えていきたい、こう思っております。もし今までのことを詳しく御必要であれば、事務当局からお答えいたします。
  101. 帆足計

    ○帆足委員 今までのことは存じております。今後のことを。
  102. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 そのことは、今申し上げました通り、各省と相談の上で予算措置等についても考えていきたい、こういう心組みで考えております。
  103. 帆足計

    ○帆足委員 そこで、もう一つだけ厚生省にお尋ねします。これは前回の速記録をも読んでいただきたいと思いますが、私は在日朝鮮人の事情を歴史的に詳しく述べておきました。特に次官に知っていただきたいことは、舞鶴あたりに千人なり二千人おる抑留者とか捕虜を送還する問題ではございません。それは伝票を示して帰国先を自由意思できめさして適当なときに送ればよいのですが、六十万の在日朝鮮人の諸君は、小さいながらも生活の殻を背負って生活しておるから、北鮮状況がよくわからない。また左右両翼で、一方では非常によく言うし、他方では地獄のようにも言います。私は現地でよく見てきました。私は少年時代十六年も平壌にいたのでよくわかっておりますが、諸説ふんぷんとしているところがございます。従いまして、第一船が行って半年もしてよく実情を見てきめよう、自分は家族持ちだから軽率なことはできないという人もありますし、子供の学校のこととか、借金のやりとりとか、家を片づけるとかいろいろ事情があります。また、一カ月の船の輸送能力はどのくらいとか、安全度とか、引揚荷物をどのくらい許すかという問題もありますから、ただ国勢調査員の巡査の古手などが戸別訪問して、鉛筆なめなめお前は赤い国へ帰るかなどといっては混乱が起ると思います。僻陬の地では朝鮮人の諸君で日本語のできない人もたくさんおる。そこに国勢調査員が赤十字の名をかりて行ったというようなことでは困るのであります。左右両翼の政治的圧力なしに冷静な判断で、みずからの自由意思で帰りたい人は帰る。ところを得ない人は帰るでしょう。ところを得た人は日本のよき隣人となって、日本の憲法と法律を尊重して日本で安らかに暮す。日本の政治の改革はわれわれ日本人がやりますから朝鮮人にやってもらわなくてもよろしいが、朝鮮人諸君の基本的人権は守らなければならぬ。そういうことは超党派的な道筋でこれを解決したいと思っておりますが、捕虜送還の問題とは違いますから、軽率な——きょうも東京新聞に出ておりましたが、ああいう軽率な調査方法をおとりになることのないように、あとの調査方法については専門家の意見とまた関係団体の意見を内面的に聴取せられて、最終的には赤十字のっ公認するルールで軌道に乗るでしょうが、機械的、官僚的調査をしないということだけきょうは厚生次官から御確認を願いたい。そのことを一言だけ。
  104. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまのお尋ねは、しごくごもっともなお尋ねでございます。今次の戦いによりまして戦争に参加した国の国民並びに参加しなかった国の国民も、その人の意思に沿わないところに住まされているという実情が、戦後十数年を経ました今日までありますことは、まことに残念でございます。今仰せの通り、わが内地におきまして朝鮮関係の方々が数十万お住みになっておりますが、その中には帰りたいと望郷の念に燃えていらっしゃる方もおありであると思うので、つきましては私どもといたしましては人道的な立場からいたしまして、その方々に少くとも精神的な安住の地に帰ってもらうように努めたいものと考えております。この問題につきましてはすでに御案内の通り、赤十字国際委員会等におきまして、相当積極的にお骨折りもいただいておりまするので、私どもといたしましても、そういう御趣旨に沿いまして、実現の日が早く参りますように努めたいものであります。つきましては、お尋ねの帰りたいという意思の確認の問題でありますが、これはほんとうに大事な問題でありまするから、今御指摘になり、お示しになりましたように、従来行いましたような単なる形式的な方法でなくして、ほんとうの真意がわかるような、真心からと申しますか、手を尽してと申しますか、そういう調査をいたしまして、御本人の意思に沿うように努力をさしていただきます。
  105. 帆足計

    ○帆足委員 それではその点につきましては、一つわれわれにも内面的に御連絡願いたい。それから一回きりできまることではありませんから、前の経験にかんがみて、またあとの人の帰る時期の問題もありますから、そういうことも御研究願いまして、最後に、帰りますときにどれくらいの外貨を持たせ得るか、どれくらいの荷物を持たせ得るか、これは過去において華僑の例などもありますけれども、華僑と在日朝鮮人とはまた生活体系が違っておる。すでに終戦後十三年にもなり、平和の民として住んでおりますし、朝鮮人は日本人と同様の取扱いを受けておった。かっては同一国民であったわけです。そういう事情もありますから、引き揚げの荷物などについても機械的でないようにしていただきたい。援護について費用がかかるではないかということが、東京新聞に出ておりましたが、現在生活保護費を十七億円も使っておりますし、また犯罪取締り等でも余分の費用がかかっておりますし、学生も十五万人もかかえておるような状況で、六十万朝鮮人のうち、二十才以下の青少年が三十万もおる。こういう状況でありますから、経費のことなどもあまりけちけちなさらぬでも、経済的にいえば、これは非常にあとが楽になるのでございます。従いましてそういうことももう少し実情に即した御研究をなさって、軽卒な発表をなさらないようにお願いいたしまして、私の質問を終りますが、もう一言その点、私は当然のことを申し上げたわけでありますから、もちろん御賛成でしょうが、一つ念のため今後の厚生省との御折衝を円滑にいたしますために、次官から御答弁を願いたいと思います。
  106. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまの御高見も全く御同感申し上げるところでありまして、先ほど来申し上げておりますように、人道的な高い立場からいたしまして、お帰りができるように努めたいと思っておる私どもでありますから、これにつきまする予算措置等の問題も今後のことでありまするが、遺憾のないように努めさしていただきたいと思います。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 関連質問ですが、先ほど帆足委員が御質問になりました漁船に対する防備装置とかあるいは探知機の予算は、大体見通しが明るいようなお話でございました。それに続いて帆足委員が抑留漁夫の生活がどんなにひどいものであるか、あるいは留守家族の生活等のことをちょっと触れられまして、それに対して考えておくようにというふうなお話でございましたが、外務政務次官も厚生と政務次官もおっしゃいましたことは、非常に人道上の重大な問題であるから、各省とも相談して何とかしたいというふうな御答弁でございまして、帆足さんそれで満足されたかどうかわかりませんけれども、私、非常に不満なんです。と申しますのは、私どもは九月に実は実情調査に行って参りまして、どんなに困っておられるか、あるいは小包を送るにいたしましても航空便で送るために、その航空便に費用をとられてしまうとか、あるいは向うで非常に栄養不良になって困るとか、そういった詳しい事情をこの委員会で何度も申し上げまして、しかるべきときに、なるべく早く何とかするというふうな答弁をいただいているわけです。それ以来もうすでに四カ月以上たっているわけで、しかも予算の編成どきですから何かの形で一歩前進していなければならぬと思うのです。そのときに両政務次官がこの委員会で各省と連絡して何とか計らうようくにいたしましょうというようななおざなりの答弁であっては、私は非常に残念ですし、またそれをそのままどうぞよろしくお願いいたしますだけでは済まされないように思うのですけれども、もう一つ何か予算の面で、小包の方はこういうふうにしてもう少し送れるようにしてあげるとか、留守家族に対してはもう少し何とかめんどうを見てあげるというような答弁が、もう出ていていいんじゃないかと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  108. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 外務当局としましては、これは外交上の重大な問題でもありますので、先ほどお答えいたしました通り、留守家族に対する従来の手当と申しますか、月一万円、それから収容所に入っております方々への差し入れが年額五万四千円、これでは十分ではないので、この増額方をお願いをしておるのですが、直接には予算は厚生省予算でありますので、三十四年度の予算で厚生省の予算がどうなりましたか、あとで厚生省の方からお答えがあると思います。お説のあるところはわれわれも同感でございますので、どういう方法で予算措置を講じたらよろしいかというような点についても、また各省と相談して進めていきたい、こういう意味でお答えいたしておるわけでございます。
  109. 池田清志

    ○池田政府委員 厚生政務次官を御指摘してのお尋ねでございますが、この問題は厚生省はタッチいたしておりませんので、外務当局並びに農林当局でお世話いただいておりますので、その方から御答弁申し上げます。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 この前の委員会で、今の外務政務次官のお話では、今出している援護手当だけでは十分でないからこれから相談をするということでございますけれども、その相談がこの予算に何とか盛り込まれるようにぜひしていただきたい。と申しますのは、すぐにでも手をつけていただきたいのは、ともかく年額五万四千円上げております小包なんですけれども、それだけではとても向うにいられる方の栄養にならないというふうな実情が訴えられているわけなんです。と申しますのは、それを送りましてもお金にかえて、そうして何か栄養分をとらなければならない。食べ物に非常に不自由しているのだというようなことを言われているわけなんです。留守家族の奥さんにしてみれば、何とかしてもう一つぐらい小包を送りたいというふうな希望を持っておられるのですが、政府から補助がなくてもいいから自分たちで送りたいのだけれども、それも二個以上送っても向うで渡してくれないというような、そういった問題がありまして、まだまだ手近にやれるような問題があるわけですから、そういう問題からだけでもせめて解決していっていただきたい、私はこういうふうに考えるわけでございますがいかがでございましょうか。  それからもう一つついでですから申し上げますが、たとえば航空郵便で送るわけですけれども、その輸送費が非常に高い、こういうものを赤十字を通してまとめて送っていただくというような方法を何かお考えになっていただきたいということで、私は二カ月ぐらい前の委員会で申し上げておきましたけれども、それに対する答弁もまだいただいておらないわけですが、それはその後どうなっておるか、これも伺いたいと思います。
  111. 三宅喜二郎

    ○三宅説明員 留守家族に対しまする差し入れが向うへ十分届かないので、つまり韓国側で、これを税関で差し押えたり、あるいは送り返したりしているということは、私どもも承知しておりますし、そのことにつきましては、たびたび韓国側に対して注意を喚起して参ったのでありますが、韓国側では自分らの方では収容所で十分食事その他を与えておる。それ以上必要はないのだというようなことを申しましたり、自分らの力でそれを差し押えて取ってしまっているというようなことはしていないというようなことを、いつも答弁しておる次第でございます。こちらとしてはもうそういうことはないので、われわれはつかまっておられる漁夫からの通信によってそういうことを知っておるのだから、韓国側の言うことは事実を曲解しているのだということで、いつも押し問答になっている次第でございます。なお従来のあれが不足でございましたので、昨年差し入れの手当というものが増額されたと私は承知しております。この予算の主管は水産庁でございますが、もちろんわれわれはいつも連絡を相互に密接にやりまして、予算折衝等においては情勢を大蔵省に話して、側面ではやっております。  なお今度の北鮮への帰還の問題が本日決定になりましたような方針で処理されることになりますと、われわれとしては好まないのでありますが、日韓関係は悪くなると思いますので、この差し入れの取扱い等につきましても韓国側で従来の取扱いを改善するどころか悪化させるのではないかというふうに危惧されますので、ただいま戸叶先生から御示唆がありましたように、この問題は、今後やはり赤十字にこういう問題も一括してお願いするということが必要じゃないかと思います。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 抑留者の方が帰ってこられれば問題がないのですけれども、現実の問題としていられるのですから、やはり最大の努力をしてあげなければならないし、また今の政府にしてあげるべき責任があると思うのです。それで今おっしゃったような事情もよくわかるわけでございますけれども、手のつけられるところから始めるという意味で、今おっしゃいましたように赤十字に間に入っていただきまして、少くとも一個だけの小包ではなくて、もう一個くらい送っても手元に届くということをぜひこの際実現させていただきたいということを重ねて要望いたします。
  113. 櫻内義雄

  114. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私も関連して数点だけ。私の主張は申し上げません。政府当局のお考えだけを伺っておきたいと思います。今度の北鮮帰国で帰りたいということを申し出ておる者は、どれほどあるとお考えになっておりますか。
  115. 三宅喜二郎

    ○三宅説明員 総連の方で申しておりますのは、帰りたいといって署名している者は現在まで十一万七千人あると申しております。
  116. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 十一万七千人が全部帰るとお考えでありますか。そう想像されての対策を練っておられるのですか。
  117. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 今お答えしたように、総連の調査では十一万七千人ということになっておりますが、これはわれわれの感じでありますが、おそらくそういう数字にはいきますまい。しかしながら現在の空気から察しますと、相当数に達するのではないか、こういう考え方で赤十字の国際委員会にその調査方をまずしていただきたい、こういう段取りにいたしたいと思います。
  118. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 送還の事務上の手続を赤十字社を通しておやりになることには私は賛成でありますがまずそういう何人が帰りたいかというような数字の調査等も、ことごとくこれから赤十字社に頼んで、そうしてその上で正確な数字を把握して送還問題をおきめになるというのでありますが、私は今度の政治的決定をするに当っては、大体どれくらいな人間が帰るのだというくらいな目安をつけないでこの送還問題に取り組むというのは、おかしいと思うのです。でありますから、このままいきますと、十一万七千名がすでに希望を申し出たと称してはおりますが、それは彼らの言う自称であって、果して十一万数千名がいざ正式の手続をとったときに希望を書類を通して申し出るかどうかということには、私は非常に疑問があると思うのです。そういうことにもしなりますと、先刻来政府当局がみずから認められておりますように、目下進行中の日韓会談というものはこわれてしまうわけであります。現に朝鮮送還の問題の政府方針がきまりまして以来、日韓会談は全くデッド・ロックに乗り上げておる。その意味でも、早くももう日本漁船の拿捕が始まっておるという現状であります。まごまごすると、十一万七千名が、日本全国津々浦々の朝鮮人が帰国を熱望しておるのだという空気に踊らされて、送還問題に政治的な決定を加えて送還するということにした。いざ現実に帰るとなったら、船一ぱいで二、三千名が帰って、あとは帰らないということになりはせぬか。それは想像でありますが、もしそういうことになった場合、政府はいかなる処置をなさる方針であるか承わりたい。
  119. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 今の佐々木委員のお話は、実際どのくらい帰るかという問題は、政府としてこれは軽々に予断を下してものを運ぶということは、人道上の居住の自由という点から取り運ぶ問題としては、それは私はいかがかと思う。いずれにしても十一万七千という数字が総連の一つの機関から出たのでありますから、そのままにいくとは思っておりませんが、実際にどれだけいくかということを国際赤十字委員会で調査をしてみて、その結果によって国内でどうはかるかというようないろいろな問題を考えていくのであって、今、それはそんなに帰らぬのだ、せいぜいこのくらいだろうというようなことを軽々に予断することも私は考えものだと思います。そこで、案外帰らないのではないかという場合に、政府はどういう処置をするかということでありますが、それは人数のいかんにかかわらず、事柄が人道上といいますか、居住の自由で帰りたいということを押える権利も義務もほんとうはないわけではないかと考えますから、そういう考え方でこの問題を処理すべきである、そういう考え方であります。
  120. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 重ねて確認しておきますが、それでは十一万何千名というようなその数字が示すように、この朝鮮人の非常な圧倒的な熱望にこたえるという政治的なものではなくて、極論するならば、ただ一人でも帰りたいというならば、自分の居住地選択の自由によって帰されるという方針で臨まれるのでありますか。
  121. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 確かに十一万七千という総連の調査の資料一つの動機になったことには間違いありません。間違いありませんが、そういう事実が一方にあるわけでありますから——その事実の内容のせんさくはこれは政府はいたしておりませんから、果してその通りかどうかということはわかりませんが、それが動機になったことは事実でありまして、事柄は、案外少いからどうこうという問題ではないのじゃないか、そういう事実が一方に現われたから、その事実をとらえて一つのチャンスが作られたということは間違いないと思います。
  122. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は論争しないと最初から言っているのだから私見を述べませんが、それでは赤十字社が調べた結果、帰国の申請者が非常に少数であっても、これは赤十字社を通して帰国の実現をするように取り計らわれるわけでありますか。
  123. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 われわれは今のところ相当数に達するもの、一応そういう考え方を持っております。御説の通り調査をしまして案外少くても送還はやるということで、方策を立てております。
  124. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はどうも政府のやり方に手抜かりがあると思うのです。またトリックに引っかかる可能性が非常にあると思うのです。ということは、やはりその帰国の問題を決定する前の段階において、どれだけの人間が現実に帰することを希望しておるかということを、赤十字社を通してもけっこうでありますが、権威ある筋から調査をして、その調査に基いての帰国問題を取り扱うということが筋じゃなかったかと思うのです。私の憂えますことは、確かに北鮮への帰国は人道上の問題である、その点においては異論はございません。しかし、この運動の背後にかなり思想的な、ないし国際謀略的な考え方がないとは否定できないと私は思う。まごまごすると、日本の外交がこのためにゆらいで、そうして日韓会談は御破算になったけれども、あれほど騒いでおった帰国がさつぱり実現しなかった、何だいということにならないとも限らないと思うのです。私はこれから先はお願いしておくのですが、今度は正式に申し出をして、届けを出して、届けを出した者は、政府はそれに従って、正式に申し出たのだから、今度は申し出に従って送還をすべきであって、途中になってやめますということでは私は困ると思う。この点に対しては、よほど政府は慎重にお考えにならなければ、非常な失態を演ずるということにならないとも限りませんので、私見をちょっと申し上げ、また皆さんの御意見を承わりたいと思います。
  125. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 一たん帰りたいといって登録し、途中で都合ができてやめたいという者を強制的に送還できるかどうか、するかどうかということは、ちょっとお答えしかねますが、その点については、事務当局ともよく法的な、あるいは実際上のことを相談しまして、あとでお答えいたしたいと思います。
  126. 三宅喜二郎

    ○三宅説明員 今回問題になっておりますのは、御説のように日本政府による送還ではありませんで、任意に北鮮を選んで帰国したいという者の取扱いの問題でございます。従いまして、現在は署名しておるけれども、しかしあとになって心境の変化を来たして帰らないという場合において、そういう者を日本政府が強制送還するということはできないことでありますし、またそんなことをするつもりではおりません。問題は、そういう任意帰国したいという者をとめるかとめないかの問題であります。それはとめないという方針がきまったわけであります。将来また帰りたい者があるときは帰れる道があけてある、こういうことになると思います。万一その一人も帰らない場合でもですね。
  127. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はどうもふに落ちないのですが、そういう人道上の問題であるならば、政府はなぜもっと早くこの問題を解決しなかったのですか。最近十一万七千名という数字にもある程度は動かされて、この運動が猛烈になったので、遂に閣議において決定の段階までに運んだのじゃないか。もし人道上の問題を言うならば、なぜこの問題は早急に——帰りたい希望者はたくさんあるのでしょう。なぜそれを扱わなかったのですか。
  128. 三宅喜二郎

    ○三宅説明員 それが先ほど政務次官からお答えになりましたように、十一万七千名も署名して帰りたいということを陳情もして参った具体的な事実が、現われてきた次第でございます。そこで政府としてもそれをどうするかという方針を早急に決定する必要が生じた次第であります。
  129. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 十一万七千名という数字に対しては、一体だれが責任を負うのですか。それでは、もしその通りに実現しなかったときの政府の責任はどこにあるのです。
  130. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 十一万七千名というのは、総連が、総連の機関を通してチェックした結果、そういう数字が出てきたということでありまして、政府へ総連からこういう事実があるという通達があったわけであります。それがこの問題の一つの動機になったことは、先ほどお答えした通り間違いありませんが、その責任云々ということで問題の処理の仕方があり得ようとは、考えていないわけです。それは総連の調査が疎漏であったか、あるいは政治的な陰謀が加わっておったか、そういうことは別といたしまして、各個人の帰りたいという意思の表明が十一万七千名あったということが、一つの動機になったということを申し上げております。
  131. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 十一万七千名が帰国を申請してきておるというわけでありますから、あなた方は、十一万七千名の帰国が実現できるように取り計らうのが、あたりまえでありましょう。そのことに対する責任は痛感されるでありましょう。言ってきている数字は一向に当てにならぬが、一人でもよいから帰してやるというお考えなんですか。
  132. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 先ほど来お答えいたしております通り、十一万七千名という数は日本政府の調査でもありませんで、朝鮮人の一つの団体がまとめた数字でありますから、これに対して政府が責任を負うということはあり得ないと思います。ただそういう個人が帰りたいという意思の表明をしたという事実が、今度の取り運びの一つの動機になったということを申し上げたわけでありまして、政府は十一万七千名に対して責任を負わなければならぬという性質のものではない。もちろん十一万七千名全都が帰りたいといえば、これに対する国内便益をどうはかるか、あるいは先ほどのお尋ねにもあった、向うへ行ってからの生活資金等の世話までするかどうか、こういう問題は今後出てくる問題であって、十一万七千名に政府が責任を負わなければならぬというふうには考えておらぬわけであります。
  133. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は論争はしませんが、しかし、この送還問題を決定したために、一面において日韓会談が暗礁に乗り上げたということは、現実の問題です。これに対しては政府は当然、好転しようと悪くなろうと、政治的責任のあることであります。従って、この送還問題を直接、間接の動機として日韓会談が決裂したとするならば、それに対するところの責任というものは、当然政府は負うべきであります。私は人道上問題として、朝鮮人を送還することは賛成なんであります。反対をいたしません。が、いざ現実に送還が取り運ばれたときに、差引すると、一向に帰らないで、日韓会談だけは決裂をしてしまって、逆に、日本人が向うでたくさん抑留されたという結果になりはせぬかということを心配するから、申し上げておるわけなんであります。そこで承わりますが、この送還問題が日韓会談に悪影響を及ぼすということは、お考えでありますか。そのことはあらかじめ想定に入れての送還問題の決定だったと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  134. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 この問題は、日韓会談で取り扱っている問題とは全然別な問題で、人道上の問題でありますから、そういう考え方で問題それ自体は処理しておるわけであります。しかしながら、実際において日韓会談に影響を及ぼす憂いが相当濃厚でありますので、先般来日本の真意を韓国側に伝えて、そういうことが起らないように理解を求めておるわけであります。お尋ねのように、政治的にはそういう影響があり得るとは考えます。
  135. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより当然、大影響があることは申すまでもありません。そこで水産庁か海上保安庁に承わりたいのです。外務当局も御承知でありましょうが、この朝鮮人送還問題に対する日本政府の態度が表明されまして以来今日まで、それが直接の原因であったか、間接か知りませんが、日本人の漁船が拿捕されたり抑留されたことは、どのくらいの数字に上っておりますか
  136. 中村正路

    ○中村説明員 この問題が新聞に出て以後の拿捕はどのくらいかというお尋ねだと思いますが、二月の四日に小型漁船が一ぱい拿捕されました。乗組員は六人でございます。それ以外はございません。
  137. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先刻どなたかも認めておられましたが、これは李承晩ラインとも直接関連してくる問題だと思うのです。そこで海上保安庁に伺いたいのでありますが、これは相当重大な影響を来たしてくると思います。朝鮮人の送還を人道的立場によって日本は実現したけれども、今度は逆に報復的な措置として、日本人が異境へ抑留されるということが必ず起ってくると思うのです。そこでこのことをあらかじめ想定して、海上保安庁におきましては何らかの対策をお考えでありまするか。
  138. 安西正道

    ○安西政府委員 この問題が起りましてから、漁船の拿捕が起りました件数は、ただいま水産庁から申し上げましたように一件でございます。海上保安庁としては、もちろん万全の措置を講ずる覚悟でおりますけれども、ただ韓国がどう出るかというような問題を十分見きわめた上で対処したい、もし必要があればさらに現在あの海域に出ております巡視船の数をふやしまして、漁船の防護に万全を期したい、そういうふうに考えております。
  139. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これは当然日本漁船の抑留や拿捕になって現われることは火を見るよりも明らかです。水産庁は、特に朝鮮人の送還問題が、今の李承晩ラインの問題などから見て、非常な悪影響を及ぼしてくる、日本の漁船が非常な危険に直面してくるだろうということはお考えでありませんか。
  140. 中村正路

    ○中村説明員 水産庁といたしましては、相当影響は出てくるというふうに考えております。
  141. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 影響というのは、抑留されるような可能性が多いだろうということだと思いますが、そこで私は、今海上保安庁長官に承わっておきますが、韓国側の出方いかんによっては、わが方としても、ときによっては警備艇の増強などの措置をとらなければならぬということでありますが、かりに警備艇などを増強いたしましても、従来通りの方針で、向う日本漁船の拿捕に来れば、警備艇が、みな逃げなさいということをマイクで放送して、しりに帆をあげて逃げて帰っておったのが今までの行き方でございます。やはりそういう方針を今後とも堅持をしてこの重大な局面に処しようというお考えでありますか。
  142. 安西正道

    ○安西政府委員 従来は海上保安庁といたしましては、向うの警備艇の動きを巡視船によりまして、できるだけ正確にキャッチして、漁船に伝えるという措置をとっておりまして、大体その措置でほとんど成功しておるように思うのです。最近拿捕されました漁船等につきましては、あの海域外でつかまったというようなものがほとんど大部分であります。今後どう対処するかという点につきましては、われわれとしてもも、もし必要ならば巡視船をさらに積極的に増加いたしまして、漁船と警備艇との間に割って入るというような必要も起るかと思いますけれども、これは今後の推移を見て考えていきたいというふうに考えております。
  143. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより韓国の領海内においで拿捕された場合はいたし方ないといたしましても、日本側の認めないいわゆる今の李承晩ラインとか、国際公法上認められた公海におきまして不法なる拿捕、抑留が行われたときに、今までのような海上保安庁の指導方針で、それ向うの船が来たから早く逃げなさいというようなことで、逃げるにしかずというような指導方針では、今日の段階ではもはやいけないのじゃないかと私は考える。今、そういう場合においては、向うの警備艇と日本の漁船の間に日本の警備艇が割って入るというふうなお話もございましたが、私はそれくらいの措置は当然とらなければならぬ、かように考えます。かりに向う側が不法なる発砲などをいたして参りましたときにおきましては、何ぼ発砲されても、日本の漁船が何べん撃沈されても、日本人がどれほど射殺されても、従来は日本はこれに対して一向に正当防衛の措置をとらないというようなお考えのようでありましたが、今後もやっぱりそういうふうなお考えでありますか。向うがかりに船を撃沈する、攻撃を加えてくる、人間に向ってねらい撃ちしてくるというようなときには、こちらにも正当防衛の権限があるということは、私はこれは決して憲法に抵触するわけではなく、あるいは国際通念に反するわけではない、かように考えるわけてありますが、どういう方針なんでありますか。
  144. 安西正道

    ○安西政府委員 私どもといたしましては、昭和二十七年に閣議決定がございます。それでできるだけ韓国側を刺激しないようにというような指導方針で従来参っておりますが、しかし正当防衛の必要がある場合においては、それぞれ必要の措置を講ずるように、というように申しております。
  145. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは確認しておきますが、かりにそういう不法なる砲撃等が行われたときにおいては、こちらも必要な場合においては応戦の措置もとるということでございますか。
  146. 安西正道

    ○安西政府委員 拿捕防止のためには必要なる措置をとって参りたいと思います。ただこれは外交上の問題等もございますので、外務省その他関係各省と十分に連絡をとって、慎重に処して参りたいというように考えます。
  147. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 外務当局の有能なる政務次官や、それから韓国問題を専門に扱っておられる方がお見えでありますが、それではさような場合において正当防衛の権利を発動する。不法なる攻撃に対して、日本も必要なる場合、万やむを得ざる場合においては、緊急不正の侵害に対して正当防衛の権利を発動するというお考えでありますか。
  148. 竹内俊吉

    竹内(俊)政府委員 法的には日本は交戦権がなたわけでありますけれども、そういう場合の正当防衛権は当然あると思います。それによって国際紛議が起ることをおそれるために従来の措置をとっておったのでありますが、この後の事態に対してどういう措置をとるかということは、十分政府の首脳部において御検討願ってきめていかねばならぬ問題でありますから、今外務省単独の意見を申し上げることを控えたいと思います。
  149. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 海上保安庁としては、少くとも公海上——もとより日本領海はそうでありますが、公海上におりますところの日本の船舶あるいは日本国民に対して、これを保護することは当然の義務であります。その日本人や日本の船が、今現実に重大な危険の前にさらされようとしておるときに、これから態度をきめてもらうというようなことで果して間に合うのですか。あなた方はあなた方として独自の見解というものはないのですか。何という情ないことなんです。
  150. 安西正道

    ○安西政府委員 この問題につきましては、従来韓国側はわが国の漁船を拿捕しております。これは事実でございますが、しかし向う韓国艦艇等を出動させるというようなことは控えて、十分慎重にやっておるように考えております。私どもといたしましても、必要な情勢に応じて、機動他に巡視船を働かせるという覚悟は十分にきめておりますけれども、ただこれはあくまで韓国側がどう出るかという問題に対処してきめらるべき事柄でございますので、ただいま私からそれ以上のお答えはできかねると思います。
  151. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 どう出るかといって、現実につかまってしまってから後対策を練るのですか。どう出るかということはわかっているじゃありませんか、拿捕にくるだろうということはわかっているじゃありませんか。そのとき韓国側は警備艇その他で発砲し威喝を加えながら拿捕したことは御承知の通りであります。もし引き続いて、いなそれにも増して、従前にも増してこれから激しいそういう不法なる砲撃や銃撃等が加えられて、日本漁船や日本人が抑留拿捕されるというときには、どういうようにするのだという対策を、出方を見てからなんてそんなとばけた話はないじゃありませんか、どうするのですか。
  152. 安西正道

    ○安西政府委員 従来におきまして私どもは警備艇の動きというものについては、相当程度その動静を把握いたしております。そうしてそのつど十分に漁船にはその動静について連絡しておるはずでございます。従いまして今後の問題をどうするかということは、先ほど政務次官もおっしゃいましたように、政府の方で最高方針をきめていただいて、そのもとでさらに考えて参りたい。それまでは、向うの警備艇の動きも従来と比較いたしましてまだそう活発でないように考えております。従って従来通りの方針で参って差しつかえないと私は考えております。
  153. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 従来通りの方針で、この警備艇が警告を与えて、そして韓国側の警備艇の行動については、十分漁船に知悉させるようにしておるのだ、それで十分だというのなら、どうしてつかまったのですか。海上保安庁の警備艇の活動が十分だったら抑留されるわけはないじゃないですか。しかしながら片っ端からつかまっているじゃないですか。そのことと考え合せますと、これから相談をして考えるなんというようなのんきなものじゃないです。少くともこれだけのことを、思い切ったことを、たといそれは人道上という美名のもとで行われる行為でありましても、これが今日の日韓会談にどれほどの政治的影響を及ぼすかということを頭に入れないで、こんなことをするばか者はございません。でございますから、これだけのことを政府が決意するというときには、それによって生ずる重大な問題について日本がいかに対処すべきかということを当然決定してから後やるべきことだと私は思うのです。あなたは国会答弁で妙なことの言質をとられては困ると思うかもしれないけれども、一体私たちは——社会党はきょう幸いおりませんけれども、保守党の人間の立場から申しましても、何という情ない答弁をなさるかと思って非常に私は心外に思っているのです。  それではあなたに伺いますが、今までの方針でよろしいというお考えですか。また今までの方針でよろしいとあなたがおっしゃったならば、今後発生することに対してあなた責任持ちますね。
  154. 安西正道

    ○安西政府委員 従来漁船が相当つかまっているじゃないかというお話でございます。これに対しましては、私どもとして漁船にはそのつど警報を出しております。たまたまつかまっておりまする漁船等の事情につきましては、非常に小船でありまして、従って通信施設を持たないとか、そういうような漁船がつかまっておるか、あるいはまた韓国側の申しますいわゆる李承晩ラインの外におるから自分たちは十分であるというように考えて操業をしておって、つかまっているというのが最近の実情であります。従いましてそういう点につきましては、さらに漁船等に水産庁の方から通信施設をつけてもらうというような御交渉を願っておりまして、その方面でわれわれとしては努力しておるわけでございます。またもう一つはわれわれの方で厳戒警報を出しているにかかわらず、あまりにその期間が長いのでどうしても貧乏な漁船としては出漁せざるを得ないというので、危険を侵して出てつかまったという例もございます。しかしわれわれとしては少くとも先ほどから申し上げておりますように、韓国の警備艇の動きについては相当把握しておるつもりでございます。ただ今後どう対処していくかという点につきましては、これはあくまで韓国側の動きいかんの問題でありますから、その情勢をわれわれとしては毎日見ております。従っていつでも急速にその事態に対処し得るように方針をきめていただくことが私は必要であるというように考えております。
  155. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 どのように決定すれば日本の漁船や日本人は安全でありますか。海上保安庁長官としてどういうことを政府決定してほしいとお考えでありますか。私はもはや従来のような、海上保安庁が通信屋の役割を演じて、来たら鼓をたたいてそれ逃げ出せといって、今まで逃げてきておったのです。逃げて参りましても、それでも逃げおくれてつかまったのがたくさんあるわけであります。そんなことを繰り返しておったらどうも仕方ないじゃありませんか。だからそういう緊急不正な侵害が加えられたときには、なぜ正当防衛の権利を発動することにちゅうちょされるのか。憲法にいうところの国際紛争を武力によって解決するということは、日本が進んでそういうことをしないというだけであって、日本人が目の前で殺されるのを憲法に抵触するからなんという、そんなおろかな解釈を海上保安庁はなさっておられるのでありますか。目の前で日本人の生命、財産が侵されているときに、海上保安庁はそれに通信を与えたらそれでよろしいのですか。一体どういう方針なんですか。
  156. 安西正道

    ○安西政府委員 われわれは従来巡視船に逃げ帰れというようなことは決して申しておりません。必要な場合には、その場所において適宜の措置をとらせるようにいたしております。現に昨年におきましても、巡視船が向うの警備艇の銃撃を受けて、漁船との間に割って入りまして、そうして逃がしておるというようなケースもございますから、そういう点については万遺憾なきを期しておるつもりでございます。
  157. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは具体的に指導方針を聞きまするが、日本の漁船がまさに拿捕される、まさに砲撃を加えられておるというときには、まず一つには、その中に日本の巡視船が割って入るのですか。
  158. 安西正道

    ○安西政府委員 その状況によりましてそういう措置をとらせております。
  159. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 必要に応じてさような措置をとらせておるということですね。——それではさらに、向うが片っ端から砲撃を加えてくる、日本人がばたばた倒れていくというときに、中へ割って入っただけではどうもならないというときにも、正当防衛権というものは発動できないというお考えなんですか。
  160. 安西正道

    ○安西政府委員 その点につきましては先ほど申し上げました通り、正当防衛の場合においては必要なる措置をとってよろしいということを申しております。
  161. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 たとえば不法なる砲撃に対しては、こちらも応戦してもよろしいということは、すでに訓令をしておるわけですか。
  162. 安西正道

    ○安西政府委員 従来におきましては、できるだけ相手方を刺激することは避けよということを申しております。また韓国の警備艇も国際関係のあることでございまするから、きわめて少数の例外を除きまして、巡視船に対して砲撃を加えるというようなことはいたしておりません。
  163. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより平和のうちに解決するということはそれは当然のことですよ。事前になすべき措置はたくさんあるのですよ。私の聞くのは、最後の段階に、現実に日本の船が砲撃を受けておる。また現実に日本人が射撃の目標になって打たれておるというときには、正当防衛の権利を発動して、必要な場合はこれに応戦してもよろしいというくらいの訓令を与えていないのですか。
  164. 安西正道

    ○安西政府委員 先ほど申しましたように、正当防衛という場合には必要な措置をとれということを申しておりまして、それ以上従来におきましてはその必要を見なかったわけであります。今後の問題につきましては、十分に上の方できめていただきまして対処して参りたいというように考えております。
  165. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はさらに具体的に聞くのですが、その正当防衛の必要なる措置ということの中には、具体的にいうならば、向うが不法なる砲撃を加えるという場合においては、こちら側も応戦するということも含まれておりますか。
  166. 安西正道

    ○安西政府委員 正当防衛上必要な措置であれば、相当の程度の、最小限度の措置はとってよろしいと考えております。
  167. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は当然なことだと思う。そういうことを言うのになぜちゅうちょされるのですか。あなた方はやっぱりまだ頭が古いですね。そういうような何か事なかれ主義というようなものの考え方から、政府に対する国民の非常な不信を買っておるわけです。私は進んで挑発的に日本韓国側に発砲しなさいとか応戦しなさいということを言っておるわけじゃ決してないのです。あくまでも平和のうちに、最後の最後の瞬間まで警告を与えたり、逃がしていいものは逃がしたりして保護することが最善の策です。しかし今後におきまして、そういう非常に不法な砲撃や銃撃というものが必ず起ってきはせぬか、それでもやはり逃げの一点張りではいけないから、さような場合においては、必要な場合においては、わが方もこれに正当防衛の権利を発動するのだという強い態度を指示することが必要であろう、かように考えたわけであります。幸いにして大体そういうふうな御意思であり、必要な場合においては警備艇が日本の漁船の間に割り込んでいって、みずから日本の警備艇がその渦中に飛び込んでいって、体当りでもって進んで日本の漁船を防衛する。それでも日本人の生命財産をカバーできないというときには、万やむを得ざる措置として、あるいは向うが応戦してくるならこれに対して日本が対戦するということもやむを得ないことである、こういうふうなお考えでございましょう。一応確認しておくわけです。
  168. 安西正道

    ○安西政府委員 できるだけ刺激しないような態度はとって参りたいと思いますけれども、情勢によりましてはまた機宜の処置をとって参りたいことは、先ほどから御答弁申し上げた通りでございます。
  169. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 機宜の処置ということは、私の今聞いたことに間違いありますか。
  170. 安西正道

    ○安西政府委員 先ほどから申し上げております通り、正当防衛の権利は行使するつもりでございます。
  171. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それは当然です。それをあまりちゅうちょして言う必要はない。日本は法治国であるのだから、国際法上当然認められておる正当防衛権利を発動することは当然です。憲法にいっておるところの国際紛争解決のため日本が武力を使うということは、日本が積極的に武力を使うということであって、侵略されたときにこれに対して応戦ができないということなれば、今日の自衛隊もことごとくこれは違法な存在ではありませんか。正当防衛の立場に立って今日自衛隊というものがある。なぜ海上保安庁がひとり古い頭にこびりついておるか。あなた方も国会の答弁要旨を少し変えなさい。終戦直後のような答弁要旨をこんなところで言っておってはだめです。言いにくかったと思いますけれども、あなたの決意は当然のことだと思う。そういうつもりで一つやっていただきたいと思います。不幸なことですが、これからはそういう拿捕、抑留事件が頻発してくると思うのです。でありますから、最後に関係当局におきましても出方を待っておるのじゃなくて、すみやかにそういうときにどうするかということをいろいろ御研究になって、日本人の生命財産の保護のために一段の努力、適切なる措置がすぐさまとれるように有能なる政府委員の諸君に特に私は期待をして、私は質問を打ち切っておきます。
  172. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十五分散会