運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-01-30 第31回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年一月三十日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       池田正之輔君    菊池 義郎君       福家 俊一君    前尾繁三郎君       大西 正道君    勝間田清一君       田中 稔男君    帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         海上保安庁長官 安西 正道君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 磯野 太郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 昭和三十三年十二月二十四日  委員松浦定義君辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 昭和三十四年一月二十八日  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第七九号) 昭和三十三年十二月二十五日  核武装禁止等に関する請願阿部五郎紹介)  (第三四八号)  同(大原亨紹介)(第三四九号)  同外一件(西村力弥紹介)(第三五〇号)  同(福田篤泰紹介)(第四一一号)  核武装禁止に関する請願西村関一紹介)(  第三五一号)  同(山中吾郎紹介)(第三七七号)  同(北山愛郎紹介)(第四一〇号)  核実験禁止及び安保条約改訂反対等に関する請  願(山下榮二紹介)(第三五二号) 昭和三十四年一月二十二日  在日朝鮮人帰国に関する請願岩本信行君外十  七名紹介)(第五一〇号)  同(松澤雄藏紹介)(第六〇五号)  原水爆実験及び核武装禁止に関する請願(栗原  俊夫君外一名紹介)(第五一一号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第六〇三号)  核武装禁止等に関する請願田中稔男紹介)  (第五一二号)  核武装禁止に関する請願帆足計紹介)(第  六〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 昭和三十三年十二月二十五日  在日朝鮮人帰国促進に関する陳情書外二件  (第一九号)  同外一件  (第六二号)  沖縄施政権返還等に関する陳情書  (第四七号) 昭和三十四年一月二十七日  原水爆実験禁止等に関する陳情書  (第一一八号)  在日朝鮮人帰国促進に関する陳情書外六件  (第一一九  号)  同外五件(  第一六一号)  沖縄日本復帰促進に関する陳情書  (第一六二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第七九号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。藤山外務大臣。     —————————————
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外務省設置法の一部を改正する法律案並びに在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げたいと存じます。  まず外務省設置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  アジア、中近東、中南米等諸国経済的、社会的発展に資するため、これらの諸国に対し、経済上の協力を行いますことは、わが国経済外交一環として、この数年来、とみに重要性を増しつつあるところであります。外務省におけるこの関係事務は、従来、アジア局アメリカ局欧亜局及び経済局で取り扱われてきたのでありますが、その量の急激な増加に応じまして組織を整備し、経済協力に関する事務を総合的かつ能率的に遂行し得るようにするため、この際、経済局経済協力を設置し、同部において関係事務を一括処理することといたしたいのであります。  なお、経済協力部を設置することは、外務省の権限を拡大するものではなく、また、同部は、他省庁の機機と何ら重複するものでもありません。すなわち、改正法律案には、所掌事務の規定を二項起す形式をとつておりますが、これは、新たな事務を追加するものでもなく、従来の経済局所掌事務整理した上、そのうちから経済協力関係事務を引き出して、これを新たな部に移すための措置にすぎないのであります  以上をもちまして、本法律案提案理由を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。  次に在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  まず在外公館新設につきまして申し上げますと、外務省といたしましては、昭和三十四年度におきまして、ハンガリー公使館を、ブラジルポルト・アレグレ総領事館アメリカ合衆国のヒューストン領事館新設したい考えであります。  第一にハンガリー公使館新設したい理由といたしましては、同国とは戦前相互に公使を交換しており、第二次大戦においては、わが国同盟国でもあり、ソ連軍占領外交関係が途絶し今日に至っておりますが、同国は、対日感情が伝統的に良好であり、外交関係の再開を切望しておりますので、この際相互公使館を開設して外交関係を復活することは有意義であると考えられるのあります。  第二にポルト・アレグレ総領事館新設したい理由といたしましては、同地は、ブラジル第五の都市であって、ブラジル南部のリオ・グランデ・ド・スール州の首府であるのみならず、わが国対伯輸出の重要な仕向地一つであるとともに、わが海外移住の好適地でありますので、市場調査貿易及び企業進出のあっせん、移住促進等のため、ここに総領事館を開設し、右諸事務の処理に当らせたいのであります。  第三にヒューストン領事館新設した理由でありますが、米国南部諸州は、最近特にその経済発展が目ざましいものがあり、輸出市場として重要性を増しつつありますが、この地方日本繊維品等に対する輸入制限運動の激しいところでありますので、ニュー・オルリンズ領事館とともに広範な南部十一州を分担管轄する在ヒューストン領事館新設し、同地域との貿易促進に資したいと思います。  次に公使館昇格でありますが、過去数年来、各国が交換している外交機関は、だんだん公使館から大使館に切りかえられていくことが国際的な趨勢となっておりまして、イラク、レバノンにある各国公使館も逐次大使館に切りかえられつつあります。わが方といたしましても、これにおくれることなく、この際大使館に切りかえ、外交上有利な地歩を確保したいと考えております。また、ポルトガルは、昨年十月すでに同国在京公使館大使館に切りかえた次第もありますので、この際、右三公使館大使館昇格せしめたいのであります。  さらにニュー・オルリンズ領事館及びカサブランカ領事館における館務は、最近特に重要性を増して参りましたことに伴い、右二館を総領事館昇格いたしたいと思います。  このような在外公館新設及び昇格を行うための法的措置といたしまして、在外公館名称及び位置を定める法律の一部の改正を行い、また、それに従いまして、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律にも改正を加える必要がありますので、ここに、右二法律の一部改正をうたった本法律案を提出する次第であります。  以上をもちまして、本法律案提案理由説明を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 両案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、国際情勢に関し、調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。岩本信行君。
  6. 岩本信行

    岩本委員 私は、特需産業基地問題の数点についてお尋ねをしたいと存じます。それがためには、あとで御質疑申し上げますけれども日本特需産業重大性を知るために、ただいまの現況、あるいは過去の状態でございますが、特需産業、結局は重車両自動車砲類修理再生等私企業をさしておるのでありますが、御承知通り朝鮮動乱を契機といたしまして、その後縮小の一途をたどって、昨年度におきましては、赤羽地区日本製鋼赤羽作業所、あるいはまた追浜基地閉鎖に伴いまして、富士自動車とか新日本飛行機等の会社が大量の人員整理を行なったことは、すでに周知の通りであります。ただいまこの種の企業で、二千名をこえる人員を擁して作業を続けておりますのは、私の住んでおります神奈川県の相模原地区にある相模工業と、いま一つ所沢、調布、府中に作業所を持っておりますビクターオートKK日本製鋼武蔵作業所の三社が残っておる。もともと十三社、にういうものが、今日は、ただいま申し上げましたようにわずか三社になってしまった、こういう状態でございます。そうしてこれらの特需私企業は、直接米国政府と契約しておりまする関係上、一般間接雇用のいわゆる駐留軍要員と違いまして、何らこれに対する保護措置がとられておりません。従って、契約は常に米国政府の一方的意思によって解除される、こういう状態であるわけでございます。しかしながら、これら特需産業が、終戦以降日本経済自立回復のために果しました役割は、重大なるものがあるわけでございます。御承知通りでございますけれども、これからの質問を申し上げます前に、どうしても前提としてお互い承知しておきたいことでございますが、たとえば一例をとりますと、昭和二十七年度の全部の日本外貨収入の三七%がこれらの特需であったという事実でございます。また輸出がひどく伸び悩みました二十八年、この年でさえ三六%を占めておったという実情であります  参考のために外貨収入の実績を見ますると、実に私ども調べ上げて驚くわけでございますけれども、大体昭和三十三年まででは四十億ドルに達するのじゃないか、これはお互いがこれほどあったかということを承知しないような事実でございますが、昭和二十六年度は五億九千百万ドル、二十七年度は八億二千四百万ドル、二十八年度では八億九千万ドル、二十九年度が五億九千六百万ドル、三十年度が五億五千六百万ドルで、その後三十一、三十二、三十三とずいぶん減りましたけれども、それらを合算するとおそらく四十億ドルではないか、こういうえらい、別の考え方からすれば日本に貢献されておるわけであります。その貢献というのは、外貨をかくのごとく獲得したということと、及び日本失業というものがこれによって救済された面は莫大であるわけであります。最盛期には四万七千九十六人の雇用がありまして、実は現在では八千五百二十二人となっておるのでございます。そこで現在残っておりまする特需三社のうち相模原地区にあります相模工業を例にとってみますると、二十六、七年には大体一万人おったわけでございます。正確には九千百十名でございますが、相次ぐところの作業縮小によりまして、大量の人員整理を余儀なくされ、従って社会問題にまで発展したわけでございます。しかしながら、つぶさにこの間の事情を見ますると、ばかな話でございまして、整理をやっているその道中において、また何名ふやせ、こういうようなこともありまして、不安定なること実におびただしい、こういう仕事であるわけであります。このように米軍作業計画と予算の配分なるものが一貫した計画性を持たなかったというところに、整理問題に対するところの不満が実はあるわけでございます。特需産業の問題につきましては、米国政府も、占領時代作戦行動という一環であるならこれは別でございますが、現在のような状態のもとにおきましては、かかる特需長期的見通し、あるいは計画というものを当然持っておらなければならないと思われるわけでありますが、われわれがこのごろ聞いたところによりますと、車両のようなたぐいは修理再生から新車の域外買付、こういう方向に移りつつある、これもまた事実のようでございます。すなわちこれを今日の言葉で申しますと新特需、こう言っておるのであります。この問題は単に特需産業の消長というばかりではなくして、基地貸与という安全保障条約改正の問題にもぶつかってくる、こういうふうに考えるわけであります。さらにもう一つは、この計画に見える予告期間の短かい人員整理を続けるならば、その整理該当者はもちろん、地区住民離米感情または反米感情を誘発することは疑いがない。そこでこれは、実際政党政派を別にして考える問題でありますが、今まで申し上げましたように四十億ドルにも達するところの特需日本に与え、そうして別の面では四万何千人という日本失業者を救っておったその結果が、今のような不安を続けさせるということにおいて、結果的に不安なるがゆえに非常な反米感情離米感情というものを起すのだが、こういうことについて政府外務当局が、米軍といいますか、米国国務省といいますか、そういうものに対して、ばかなことじゃないか、そういうことになるからこうだというようなことについて注意を与えられたことがあるかどうか。もし今までにはそういうことはないのだとするならば、実はこの問題については、そういうことになるぞということで、向うさまへ対して、政府として言ってもらいたい、こういうふうに考えるのでありますが、まずこの点についてそういうような方向をとったかどうかということを一つ尋ねておきます。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま岩本議員の御質問になりました特需産業が、今日まで日本済に対して、外貨面のバランスから言いましても、あるいは雇用人員の上から見ましても貢献して参りましたことはお話し通りでありまして、われわれもその点は十分認めております。ただ、朝鮮事変以後の状況その他から言いまして、特需産業が次第に縮小されつつあることもまた事実なんであります。同時に、お話しのありましたように、新特需というようなものに移りつつあることもまた事実であります。御指摘のありましたように、アメリカ軍特需計画に対しまして、比較的長期計画をわれわれに示して参りませんことは遺憾でありまするけれども外務当局といたしましても、この点については、ただいまのお話しのように強く要望をいたしております。最近、若干長期にわたる計画向う側でも一、二提示することになって参ってきております。従いまして、今後もこの点につきましては十分努力して参りたいと存じております。同時に雇用問題関係につきましても、お話しのように非常に時期が切迫して、解雇等の問題も起って参りまして、これらの点につきましては、われわれもアメリカ側に、計画があり得るならばそういう状況を前もって知らせてもらいたい、またそうすることによって日本失業問題に対する対策も立て得るのであるということも申しているわけであります。なお、これらの失業関係の問題につきましては、内閣において委員会を作りまして、各省で相集まって善後処置を講じて今日あるわけであります。大体御説のようなことについてできるだけ努力して参りたい、こう考えております。
  8. 岩本信行

    岩本委員 ただいまの私の質問に対して、政府としても、そういうふうになるから、そうでなく安定性を持たせるように、忠告というか警告というか、話し合いの上で進めたことがある、こういうお話でありますが、それに対して向うはどう言いましたか。どういうふうに答えたですか。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 向う側におきましても、日本のそうした失業問題等事情等についてはできるだけ考慮するつもりではおるようであります。しかしただ、向う側からすると、いろいろの軍の計画もあって、必ずしも普通の産業計画のように非常に長期にわたって計画を立てるわけにいかない場合もあるので、やむを得ない事情もあるからというようなことは言っております。しかし、ただいま申し上げましたように、向うとしても十分日本側の立場は了承して、今後長期にわたる計画もできる限り日本に示していくというようなことで、相当誠意を持って話し合いに応じてくるのではないかと考えております。
  10. 岩本信行

    岩本委員 相模基地などでは、修理再生するものはまだ相当あるわけでございます。それはあるのだが、それを分解して、今現にどんどん分解だけやっているわけでありますが、肝心の部品が補給されないために能率も上らないし、部品がこないから、従ってまた整理もしなければならぬ、こういう形にあるわけであります。そこで、地域外買付、すなわち新特需、こういうことに移行する形があるが、これは新特需に移ってしまって、いわゆる今までの特需というものがなくなるであろう、終止符を打つであろうという傾向にあるわけでございますが、これらを通じまして今までの一般特需というものは、一体政府見通しとしては、全然なくなりはしないでしょうが、どのくらいの規模が残って、あるいはまた新特需一本やりというような方向に移るのであろうかどうか、この見通しについて一つお尋ねをいたします。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 従来の特需が新特需に移る傾向ということは、先ほど申し上げましたようにあるわけであります。こまかい点についてはアメリカ局長から御答弁いたさせます。
  12. 森治樹

    森政府委員 岩本議員の申されました通りに、昭和三十二年度におきましては、大体特需の額は五億四千九百万ドル程度になっておる次第でございます。これは前年度に比しまして約七%強の減少になっております。三十三年度につきましては約四億八千万ドル程度じゃないか。だんだん減ってきておるわけでございまして、大体来年度におきましても、こういう減少傾向は続くのではないかという見通しを立てておる次第でございます。
  13. 岩本信行

    岩本委員 減少見通しということは、政府もそうでしょうし、私どももそう考えておるのだが、今尋ねたうちの新特需という方、今までいわれている特需じゃない方向へどのくらい移っていってしまうかという予想についてはわかりませんか。
  14. 森治樹

    森政府委員 先ほど大臣から御答弁ございましたように、大体米軍の方から、今後の長期的な一般的な見通しについては資料を入手いたしておりますけれども、特定の問題については私どもの方では入手いたしておらない次第でございます。あるいは通産省の方でそういう資料を入手しておられるかとも思いますが、外務省の方といたしましては、一般的な情勢についてのみ資料を入手いたしております。
  15. 岩本信行

    岩本委員 長期的な関係においてはやや数字がわかっておるということですが、それは、今でなくも、示していただけますか。
  16. 森治樹

    森政府委員 お話し申し上げます。
  17. 岩本信行

    岩本委員 もし特需というものに終止符を打つのであれば、当然現在使用しておりますところの修理再生工場、その建物付属施設あるいは周辺の敷地等が遊休化すということは、これは絶対であります。そこでこの施設を開放して有効に使用することが考えられなければならないわけであります。何となれば、幾ら総合補給基地だからといってみたところで、ただ単に米軍の倉庫に使っておるということは、あれだけりっぱにできております建物、りっぱな敷地というものが死んでしまう、こういうことになりまして、これは日本の国策上から考えても許せない、納得できないわけであります。     〔委員長退席佐々木(盛)委員長代理着席〕  従いまして、この堂々たる陸軍造兵廠の跡とかあるいは所沢基地の跡とか、そういう施設も私どもたびたび参りまして、その実情を見て知っておるのでありますが、これらの遊休化すると考えられる施設は、たとえばこういうことになろうと思います。一万人使っていたところが現在は千六百何人だということでございますので、そこは一万人の人が行っても働ける施設、こういうことになっておるものが、現在これがどうなっておるかというと、もと一万人使っていた施設の中で、百人おった所に五人置くとかいうことで、堂々たる建物ほんとうにわずかの人でゆうゆうしゃくしゃくとやっておる、こういうことでございますから、これを一つ建物の方へ、五つのところを二つの分へ持っていってしまう、こういうことに分離して、そうしてあいた方を日本民需産業貸し下げとか払い下げとか、そういう方向へ持っていきたいものだ、こう考えるわけでございますが、そういうことは可能かどうか、これは全国各地の問題でございますが、その点についてお考えを承わりたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特需等工場等につきまして遊休になりました場合、それが基地内のいろいろな設備でありますればできるだけ解除をしてもらうということを、われわれとしてはアメリカの方に話し合いをいたしております。またその問題につきましては個々条件等がございますので、全部一律に扱うわけにも参りません。従って個々状態を検討して、そしてアメリカ軍解除を要望することに相なろうと思います。それらの問題につきましては、内閣におきます特需等懇談会にそうした問題を持ち出しまして、事業転換その他の問題につきましては通産行政の方で十分御考慮を願って、やっていくように各省連絡協議をいたしておるような次第であります。
  19. 岩本信行

    岩本委員 そういう方向にあるということであっても、実際には一つも実現できない。ここが問題でありまして、たとえばこれは私の知っていることであり、私も少し尽力したのですけれども追浜のように一万人も整理されて、全然あいたところですら、何だかんだといってなかなか実施ができない。たとえば相模原におきましても、プラントテンという工場が完全にあいてしまった。そこでこれを払い下げもしくは貸し下げということで日本政府の各方面の了解はついて、日米合同委員会にも二度もかかって、ここもオーケーになった。ところが現実には、現地の軍の反対によってこれが実現しない。ずいぶんひまをかけたけれども、終局には一つも実現しておらない、こういうのが実情でございますが、しかし過去は仕方がないとして、今後そういう場合の願い出、あるいはまた願い出なくとも、政府自体といたしましてもそれを有効に使うということで、尽力しつつあるというのじゃなくて、尽力して、それを今申し上げますような民需産業に働かせる。なぜそういうことを私が強調するかと申しますと、たとえば追浜失業者ができましても、その失業者は静岡県に雇用主があるんだといっても、住居の本拠がすでに横須賀付近にある。だからだめでありまして、それれはうまくいきません。どうしてもその地方に大体が居住しておりますからして、そこをいかにして使う、こういうこと以外にはうまい失業対策ほんとうの意味の失業対策というものは成功しないわけでございます。だから繰り返しますけれども、尽力するというのでなくして、そういうふうに仕上げる態勢に政府は腹をかためて今後進む、こういうお答えができぬかどうか、この点についていま一つお尋ねします。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この解除の問題は、相当時間がかかるというお話であり、われわれもそういう交渉をしてみて時間がかかる。と実は思っております。ことにたとえば今お話追浜のようなところも解除していいという部分と、向う解除しないという部分が錯綜しておったりなにかして、かりに解除されても、使用方法が非常に具合の悪い状態解除されるというようなことで、そういうことでは困るから、もう少し使いいいように解除してもらいたいというような交渉にもなっておるようなわけでありまして、そういう意味においてはなかなか交渉は長引くことが往往にありますけれども、しかし今御指摘のように、そこにあります建物施設等が何か日本の産業に転換できますれば、お話のように追浜の労働者を静岡県に持っていくというよりも、よりベターでありますことは申すまでもないのであります。そういう線に沿って政府といたしましても、今後とも努力して参るということは、当然のことだと考えております。
  21. 岩本信行

    岩本委員 そこで一つ、私は今のやっております行き方というものが、安保条約あるいは行政協定、そういう諸条約に照らし合わして合法であろうかという疑念を持つ面があるわけでございます。と申しますことは、今この特需でやっております場所というものが、あるいは建物というものが、直接米軍が使用することであり、または日本の自衛隊用機材を修理再生すること、こういうことであると安全保障に役立つ、これは当然としていいと思うのでありますけれども、あそこの場所を使って韓国とかあるいは東南アジアとか、そういう方へ向けるところの兵器あるいは車輌類がこの基地内で再生修理されている、これが果して日米安全保障条約及び行政協定に、条約上合法であるかどうか、こういうことに一種の疑問を持つわけでありますが、この点は合法だ、こういうことに言えますかどうか。
  22. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。現在の日米安保条約及び行政協定からの解釈でございますが、安保条約はやはり何といいましても日本の防衛が主目的でございますから、その点から見ますれば、やはりその他の目的ということはいささか疑いがあるんじゃないか、こういうふうに考えております。しかし安保条約第一条は単に日本の防衛が主目的でございますが、また極東の平和と安全というふうな大きな目的ということも掲げておりますから、そういう点においても、必ずしも日本だけに限らなければならぬというようなことはないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  23. 岩本信行

    岩本委員 日本の安全保障が目的でございますから、あるいはまた極東という文句がありますから、そういう方面の安全保障に役立つために、そこを使って云々、こういうことは一応よろしいと思うわけでございますが、そうすると、極東とはどこからどこまでだ、その極東以外中近東、そうした方面へ出た場合は、これは条約外だ、こういうふうに解すわけでありますか。いわゆる極東、日本はむろんだが、極東、こういうことでその区域、それから先は違反だ、こういうふうに解するのですか、その点いかがですか。
  24. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。これは条約の解釈の問題にも触れてくるかと思いますが、御承知通り安保条約も日米行政協定も一般にばく然と極東平和の安全の維持のためということを申しております。従いまして、それほど厳密にここからが極東であり、ここからが極東でない、これは極東のためだ、これは極東のためじゃないというふうな厳密な書き方をしているような書き方でないことは、御承知通りでございます。従いまして一般的に極東の平和と安全のためだというようなことにつきましては、これはおそらく個々の具体的な問題が起りましたときの合理的な常識的な判断によって、われわれは解釈しなければならないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  25. 岩本信行

    岩本委員 いま一つお尋ねいたしますが、先ほど来申しまするように特需が不安定だ、このことはいたし方ございません。しかしながら不安定の中にも安心度をできるだけ求める、こういう方向でいかなければならぬからお尋ねしたわけでございますが、そのうち特に出し抜け解雇が行われ、予告なしに、予告なしといってもまあそれは一カ月後に首にするという予告ではありますが、あとは一年先か見通せないで、途中で百人、二百人あるいは大きなのは何千人と解雇になるわけでございますが、そういう場合において日本の労働三法の中にあるように、解雇の予告手当、こういうものを払うのは、これは世界的に一つような形に進めておるわけであり、日本もその線に沿ったわけでございますが、米軍が解雇する場合において、予告手当を払ってもらわなければいかぬ、こういうことが業者間から出て、政府も当然と認められまして、日米合同委員会で、三十二年にこの件について米軍が解雇する場合は、予告手当を払うべし、あるいは払ってもらいたいといったかどちらか知りませんけれども、予告手当を払えということで、日米合同委員会において、三十二年に勧告されたと聞いておるわけなんです。ところがその後各地で整理が行われたけれども、予告手当は一文も出しておらない。これでいいかを考えれば、承知するわけには参りませんが、この点はどういうふうになっておりましょうか。
  26. 森治樹

    ○森(治)政府委員 ただいま御指摘のように、予告手当の問題につきましては、御承知通り日本の労働関係の法規によりますと、三十日以内に予告しなければならない。予告しなかった場合には、一カ月以上の平均賃金を払わなければいけないという趣旨の規定になっておるのであります。アメリカ側との間にこの点に関して問題のありましたのは、米軍側からは三十日以前に通報があるからそれでいいじゃないか、それで法律は順守しておるのじゃないかというのが、米軍側の言い分でございます。しかしながら日本一般の労働慣行によりますというと、なかなかそういうわけにも参りませんので、一般に解雇予告手当というものが支払われておる、ここに問題があるわけであります。そこでただいま岩本議員も御指摘のように、昭和三十一年に合同委員会で労務者の解雇予告手当の支払いに関して生じた合法的コストの償還に関しては、将来の契約交渉において、米軍側の契約担当官が十分かつ完全な考慰を払うという合意が成立したわけでございます。ところが、この合法的コストという点で、ただいま申し上げましたようなことで双方の意見に食い違いがありまして、従って、さらにこの点でもみまして、三十三年の二月に、それではこの合法的コストというのはどういう意味であるかということをさらに検討するために、特別にまた分科委員会を新しく設置しまして、現在この特別分科委員会で、その点に関して二回にわたってすでに会議を開いておりまするが、遺憾ながら、まだ双方の意見が一致しておらないというのが現状でございます。
  27. 岩本信行

    岩本委員 双方の意見が一致しておらぬということであれば、この場合仕方がございませんが、先ほど来申し上げますように、世界的な労働慣行、特に日本法律、こういうことでその勧告の趣旨に基いて、今後強く要請してもらいたい、これは希望を申し上げておきます。  そこで、ただいままで申し上げましたような、たとえば遊休施設払い下げ、もしくは貸し下げ、こういう問題になると、これは大蔵省の所管になるのですか。たとえば外務省、通産省、それらはタッチはするでしょうけれども、責任の所在はどちらにありますか。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 森治樹

    ○森(治)政府委員 米軍の接収しております建物あるいは土地等につきまして、外務省といたしましては、行政協定の関係から、常にこれをなお米軍側で必要とするかどうかということを検討いたしまして、日米合同委員会において、これが解除を、まず調達庁を通じて、そしてその次に私どもの方で米軍側と交渉する。日本側に返ってきました財産につきましての処分は、これは大蔵省の所管でございます。特に国有財産についてそうでございます。
  29. 岩本信行

    岩本委員 外務大臣にちょっとお尋ねいたしますが、安保条約改定の見通しでございます。このことについては、私どもの同僚菊池君があとでお尋ねするそうでございますが、現在の進行状態からいたしまして、この国会に安保条約改定問題というものが提案できる見通しに今のところ進んでおるのかどうか、現在の状態をちょっとお聞かせ願いたい。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の交渉の過程でありますけれども、現在事務的な連絡をしながら進めておりますが、まだ正式の交渉に深く入っておりませんし従いまして、これは交渉のことでありますから、見通しを言いますことは、はなはだむずかしいことだと思いますが、大体私といたしましては、三月末ないし四月初旬ころまでにまとめ上げたいというような気持で進めて参りたい、こう思っております。従いまして、議会等のそのときの関係から、おそらく地方選挙その他が行われますような状況から見ては、あるいは本国会には提案することは無理かと考えております。
  31. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本七郎君。
  32. 松本七郎

    ○松本(七)委員 昨年から安保条約の改定に政府は乗り出したわけですが、警職法その他の情勢と、それから自民党内の意見の分裂、あるいは沖縄、小笠原を含めるということについての世論の反撃等で、一時政府も安保条約改定をあきらめるのではないかというようなことさえうわさされておりましたが、結局この前の施政方針でも述べられましたように、やはりあくまでこれはやるのだということが公けに明らかにされたわけでございます。今岩本議員質問に対しても、はっきりした日にちはわからないけれども、大体三月末には調印の運びになるように交渉を進めたいというお言葉でございましたが、新聞の報道するところによりますと、依然として自民党の中にも意見の対立がある。従って外務大臣がただばく然と今までのようにアメリカ側と話し合うのではなしに、今度は外相自身が何か具体的な私案のようなものを作成されて、これを中心に党内の意見を調整して、そうして交渉するのだ、こういうふうに新聞では伝わっておりまするが、そのような構想で進められるのかどうか、まずお伺いしたい。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろな事情で若干遅延しておりますことは申すまでもないことでありますが、しかし安保条約の改定は日本側が要望したことでもありますし、アメリカ側がそれを快諾したわけでありますから、私どもといたしましては極力これを進めて参り、締結に持っていきたいとこう考えておりますが、大きな問題でありますので、世論、世の中各方面にいろいろの御議論もありますので、私どもはその御議論も拝聴し、また問題点の所在等もできるだけ明らかにしながら進めて参っておるわけでありまして、政府においても、あるいは自民党においても、今後それらの問題について逐次話し合いが進められて参ろうかと思っております。むろん交渉当事者としての私が、交渉前にいろいろなことを申しますことは、交渉のじゃまになろうかと思いますが、しかしながらまた同時に意見のありますそれらの点について、いろいろな立場からそれらに対する利害得失等を説明していくということも必要でありまして、それらのことをやって進めて参りたい、こう存じております。
  34. 松本七郎

    ○松本(七)委員 従来も世論には聞きながら、あるいはいろいろな人の意見を聞きながら交渉されておったわけですが、非常に重要な問題については意見が分れておる、そういうときに、今まで同様な態度で、いろいろな意見を聞きながらアメリカとの話し合いをするというようなやり方でやられるのか、あるいは世間に伝わっておるように、藤山私案というような具体的な案を、政府独自の案を作って、これでいわゆるはっきりした交渉に入られるのか。そういう案はなしに、アメリカ側としきりに何回か話し合いを重ねていって、そうして調印のまぎわになって、その最終原案というようなものがいきなり出てくるのか。その交渉の仕方、特にその具体的な案についての扱い方はどういうふうにされるおつもりですか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん交渉のことでありますから、アメリカ側の意向等も聞きながら参ることは当然でありますが、同時に日本側がこの点は要求しなければならぬという点を堅持して参ることも、これまた当然だと思うのであります。それらにつきましていろいろな方面の世論を私も聞いておりますし、その世論の大多数の帰趨がこういう点にありはしないかというような私の感得いたしました点については、私案と申しますか、そういうコンクリートの形で出しますかどうかはわかりませんが、それらの討議の際には、今日までの過程から見まして出たような考え方というものは、持ち出す機会があろうかと思っております。
  36. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、もうしばらく各方面の意見を聞きながら、大臣御自身の一応最終的と言われる意見をまとめられる、それを中心に交渉する、こういうふうに理解していいでしょうか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話しのように、大体各方面の意向等も聞きながら、私も、初めから申し上げているように国民世論に聞いていく必要がありますから、それらの意向も体しながら交渉にも当り、あるいはいろいろ意見のあるところにはそれらの観点から意見を申し上げることもあり得るかと思います。
  38. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そこで、大体問題点というのは出尽しておりますから、それに対する意見は、相反する意見、いろいろある。それを広範囲にわたってこれから聞かれながら、藤山さん自身の大体の案がまとまったとします。自民党の中でも意見がなかなか調整がむずかしい問題だろうと思いますが、当然自民党でもそれぞれの機関で、藤山さんの一応でき上った構想というものを検討されるだろう。その場合、問題がこういうふうに公けになっている以上は、党の内部の調整ということだけでなしに、アメリカと正式に交渉に乗り出される前には一応この国会の審議に、藤山さんの大体の、最終的なものではないにしても固まりつつある構想というものを、問題点ごとに具体的に説明をされて、そして野党の意見も十分聞いて、それから交渉に乗り出すという順序をとられるのが、私は当然ではなかろうかと思うのですが、その点に対する考え方を伺っておきたい。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交渉のことでありますから、具体的にこれこれで必ず交渉するのだということまでは申し上げかねると思いますが、世論の動向を聞いた上での私の感じているというような傾向は申し上げられるかと思います。
  40. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その中でも条約適用範囲というか、特に具体的には沖縄、小笠原をどうするかということは、これはもう去年からの問題であったわけであるし、またアメリカでも国務省と国防省との間の一つの議論の中心点にもなっておるような状態ですが、これについて私どもは、今までは、一応沖縄、小笠原は条約から除くというふうに——一時はこれを含めるというような意見が強かったにかかわらず、世論の動向を見られた結果かどうか知りませんけれども、これを除くというふうに、大体の結論に到達しつつあるように推察しておった。これはもちろん最終的な決定ではないと思いますが、その大事な時期に、おとといですか、河野さんがマッカーサー大使に呼ばれたのかこっまらから行ったのか知りませんけれども、相当重要な話し合いをしておられる。あれはどういう資格で河野さんは話をされたのでしょうか。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 河野氏がどういう資格でマッカーサー大使と話をしたかということは私は存じませんが、私の推察するところによれば、河野氏は今一人の党員でありますから、一人の党員としての立場で面会されたことと思います。
  42. 松本七郎

    ○松本(七)委員 こういう重大な問題で、自民党の中の一人の党員が直接大使に会って話し合うということ自体が、これは一つの問題であります。けれども、いやしくも河野さんは単なる一党員ではない。国会議員でもあるし、また前大臣でもある。しかも世間は、どうかするというんな外交問題についても実力者とさえ評されておるような人物です。そういう方が、いやしくもこういう重要な問題でマッカーサー大使と会われるについては、たといその立場が一個の党員あるいは個人的な立場で意見の打診なり、意見の交換なりをされるにしても、当然これは担当者であり責任者である外務大臣とは一応打ち合せをしてやられたことだろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 マッカーサー大使をたずね、あるいはマッカーサー大使に会うという人について、一々その会う目的について打ち合せばいたしておりません。
  44. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは、河野さんは自分から進んで面会を求めたのですか、呼ばれたのですか、その点を伺いたい。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どちらでありますか、私は存じておりません。
  46. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それはいずれであっても、河野さんとしてはもし呼ばれたならばなおさらのこと、また自分で行くにしても問題が重要なときでありますから、当然外務大臣と打ち合せて、どういう限度まで話をするのが適当かということは相談されるのが当りまえなことだと思うのですが、大臣はそう思われませんか。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 河野氏がマッカーサー大使と会われたことにつきましては、安保条約の問題で会われたのか、あるいは中共問題で会われたのか、あるいは政党内部の問題で会われたのか、その他のことについては私は存じておりません。
  48. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それじゃあなたは新聞の報道は全然でたらめなものだと思うのですか。いやしくもあれだけの新聞報道をされている以上は、河野さんが何らかの発表をされたに違いない。大臣としては当然河野さんを呼ぶなり、どういう経過でマッカーサー大使と会い、どういう内容の話をしたかということは、問いただすべき責任があるじゃありませんか。それをいまだに放置しているのですか。知らないじゃ済みませんよ。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお答え申し上げましたのは、事前にそういうことを知らなかったということを申し上げたのであります。
  50. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それじゃ今日はどういうふうに知っておられるのですか。問いただされた結果がわかるでしょうか、それを明らかにしてもらいたい。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 河野氏がいろいろな方と会われる場合があるだろうと思います。私どもといたしましてむろん重要な問題であります場合に、またその発言をするときには事後において、適当な時期において、その意見を聞くことは当然あり得ると思います。
  52. 松本七郎

    ○松本(七)委員 事前には知らなかったけれども、事後においてどういう経過で、内容はどういう話をされたか、今知られたのでしょうか。それを正式に答弁して下さい。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては、適当な時期に河野氏から聞くつもりでおります。
  54. 松本七郎

    ○松本(七)委員 あなたは事前には知らなかったのだと言ったのだが、事後には知られたのでしょうか、まだ聞いていないのですか、河野さんに……。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、ただいま申し上げましたように適当な時期には、どういう話をされたか、あるいはどういう問題に触れたかということを伺う機会があるだろうと思っております。
  56. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それをすみやかに河野さんに問いただしていただきたい。当然ですよ、あなた。与党にささえられている政府ではないですか。その政政が重大な問題について外交交渉をやろうとしておるそのときに、与党の有力な議員が自分で、単独で大使に会う。しかもその会談の内容が新聞にも発表されておる。こういう事態になって、当然これは外務大臣としてはどういう経過で、どういう話をされたのかということを聞いておかなければ、これから自民党の党内の意見調整をしようというそのやさきに、それをいつまでも放置しておくという無責任な態度というものは、許すことができません。  そこで小笠原、沖縄の問題は、外務大臣としてはどういうふうに持っていきたいと考えておられますか。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、私としては問題点がありますところを、世論をいろいろ聞いておるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、適当な時期が参りますれば、世論を聞いた上で、大体世論というものはこういう点にあるのじゃないかということを私としては申し出ていきたいと思っております。
  58. 松本七郎

    ○松本(七)委員 まあ一ころはこれを含めるような御意見で、世論の動向を見てまたこれをやめる、また今後はこれを含めるというふうに、動揺しながら動いてくるだろうと思うのですが、私どもは今までのアメリカ側の意向、アメリカの国論の動向等から考えて、沖縄を含める含めないということ、そのことだけにはそうアメリカは特定の主張を固執しないのじゃないかと思うのです、これは見通しですけれども。ただ問題は、やはり在日米軍の行動範囲——先ほど極東がどういうところまでかという質問もちょっと出ましたけれども、これと関連してくるのじゃないか。小笠原、沖縄を条約適用からはずせば、当然在日米軍の単独行動の範囲というものをできるだけ広げるということを、代償といっては語弊がありますけれどもアメリカとしては必ず確保しなければならない。これが制限されるということになってくれば、そのかわりに沖縄を条約適用範囲——実際に日本が防衛を引き受けないまでも、少くとも条約適用範囲にはこれを入れるということと相関連した主張の仕方が必ず出てくると思うのですが、外務大臣としては、今までいろいろ世論も聞かれ、アメリカ側の意向も検討されて、これと全然関係なしに事が処理できるとお考えでしょうか。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日までの状況から申しまして、今松本議員の言われますように、暫定的には、アメリカがこういうことを主張しやしないかというふうには私は考えておりません。
  60. 松本七郎

    ○松本(七)委員 しかしアメリカ側は、在日米軍の行動範囲をできるだけ広げたいという意向は、すでに明らかにされておるのでしょう。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 在日米軍の配備、装備等につきましては、協議事項にしていくというのがわれわれの今日までの考え方でありまして、そういう点をできるだけ貫いて参りたい、こう考えております。
  62. 松本七郎

    ○松本(七)委員 配備、装備じゃないですよ。全体の条約の適用範囲が、かりに沖縄が除かれたとすれば、今の条約でいえば、極東の安全のために米軍が動けるのですから、今度は、これをどうするかという点です。極東の安全のために米軍が出動できるということを除いてしまうということは可能ですか。それは不可能でしょう、大臣見通しでは。その見通しを聞いているのです。その場合に、西太平洋にするか、——条約の前文でうたうところのアメリカの行動範囲、日本を防衛し、かつそのために必要な安全を維持する範囲というものをできるだけ広げようという傾向が、アメリカ側の主張には見えておるじゃありませんかと言うのです。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何かアメリカ側の主張が非常に大きく広がるようなお感じであるように思いますけれども、必ずしも私はそう考えておりません。ことに今度の安保条約の改定に当りましては、日本におります米軍というのは、日本を守るためにおるのだということを主眼として問題の進展をはかっていきたい、われわれとしてはこう考えております。
  64. 松本七郎

    ○松本(七)委員 日本を守るためということをしきりに言われますけれども、もちろん今の条約にも日本の防衛ということを中心にうたっておりますよ。けれども、極東の安全ということがここにうたわれておる。しかも去年の台湾海峡の問題その他もありまして、この前、昨年の十月十八日に、これは東京新聞に報道されておったのですが、米軍の高級将校が、談話として、在日米軍の任務というものを明らかにしている。その中にこういうことを言っているのです。われわれが持っているのは前進基地、これが侵されたらあらゆる攻撃手段がソ連に向って殺到するという前進基地なのだ、こういうふうに日本基地を、ソ連攻撃のための前進基地として評価している。ですから日本の防衛ということを中心に考えれば、しからば日本に対する攻撃あるいは在日米軍に対する攻撃ということが、当然安保条約の場合は問題になるでございましょうが、この場合の日本におる在日米軍というものはどういう定義になるか。これはまた重要な問題になってくるだろう。日本の本土におるアメリカ軍だけが在日米軍が、常時これにおるものが、外に出ておる場合に外国から攻撃を受けるというような場合も、やはりこの条約発動の条件になるのか、こういう点は非常に微妙な点ですけれどもアメリカの今主張してきているところを見ますと、必ずこれが非常に重要なポイントになってくるだろうと思うので、今から外務大臣としてはこういう点をどう規定するか、日本の本土に対する直接の攻撃の場合に限って条約を発動するということに限定するのか、そういう点について少しこの際あなたの考え方を述べておいていただきたい。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本以外の地域における戦争に、できるだけ巻き込まれない状況下に安保条約を持っていきたいというのが国民世論でもありますし、われわれの考え方であります。従いまして日本におります在日米軍の主たる目的は日本を防衛することであって、他の地区におけるいろいろな動乱に巻き込まれるためにおるのでない。従いましてそういうような状況が起ります場合には、協議事項等によりまして処していきたいというのが、先ほどから申しております私ども考え方であります。
  66. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると日本を防衛し、あるいは極東の平和を守るために、沖縄あるいはその他の地域で紛争が起きた、在日米軍が、直接日本の防衛のためではないけれども、極東の安全のために出動した、これが攻撃を受けたというような場合はどうなりますか。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども交渉の態度としては、在日米軍というものは日本を守るためにおるわけであります。従っていろいろな紛争が東ア各地に起りましたときに、いたずらにそれらの在日米軍日本から離れますことは、日本の防衛を全うするゆえんではないと思います。従いましてそういう場合には日本と協議してもらわなければならぬということに相なるかと思うのでありますが、自動的に出動するということに対して、われわれはそういうことを協議事項としていきたいということを貫いて参りたいというのが、初めから申し上げている改定の際におけるわれわれの態度であります。
  68. 松本七郎

    ○松本(七)委員 近代戦で一体協議の余裕があるかどうかということも問題でありますけれども、協議するということは、拒否し通すことができるかどうかは別問題として、一応理論的には拒否もできるかわりに、それを明示的に認めるということもあり得るわけでしょう。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 協議でありますから、むろん拒否する場合と応諾する場合とあろうかと思います。私はそう申しておりますが、そういう際に拒否するか応諾するかということは、国民がみんな判断して当時の政府を動かすべき問題であると思います。政府がいろいろ交代した場合にも起る問題であろうかと思うのであります。従って大きく国民の判断が結果してくるのではないか。必ず応諾するということは言えないと思います。
  70. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その協議の問題でもう一つ問題になるのは、核兵器、これも協議の対象にすると言われるけれども、今のところ政府はこれは持ち込みも断わる、みずからの核武装もしないということを言っておられるけれども、協議の対象になれば、これもやはり応諾するということが理論的にはあり得るわけですから、こういう大事な問題を——核武装反対ということは、ほとんど全国民一致した世論だということは、あなたもお認めになると思います。そういう世論に乗って、アメリカにも核兵器の持ち込みは反対だという意思表示をされたのだろうと思いますが、それを協議の対象にされるということは、将来事情によっては、政府もこれを認める可能性がここに出てくるのです。ですから、国民の憂慮しておる点をもう少しはっきりさせるためには、どうしても核非武装の協定を、日米で別個に結ぶということをここでやっていただかないと、この点について、国民は安心できないと思う。これは何回も言うことですけれども、別個の協定としてはっきり約束することを一つ検討していただきたいのですが、いかがでしょう。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本国民が、核武装をしない、また、核兵器を持ち込ませないという日本国民の現在の意思を貫いている限り、協議されても、おそらくいかなる時代のいかなる政府もノーと言うだろうと私ども考えております。少くも岸内閣は、総理が言われておりますように、ノーということを通していくつもりであります。
  72. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは何ではかりますか。世論は、その条件によってはあるいはもうこういう時勢になれば核武装を認めた方がいいという意見も出るかもしれない。今世論々々と言われるけれども政府が必ずしも世論を尊重してやるという保証はないんだから、今の政府が、現在の時点から考えて、核武装に対しては、絶対に入れるべきではないという確信があるならば、その確信に基いて具体的に対処するのが政府の責任なんです。それをただ協議の対象にするんだ、協議の対象にすれば、これは将来認める可能性がはっきり出てくるわけですから、それを今の国民が心配しておる以上、現在の時点においては全面的に核武装しないという日米の協定をここで結ぶことが、単に日米のこの核武装という問題だけではなしに、アジア諸国に対する日本の信用の問題にもかかわってくる大事な問題ではないか、そういう点を考えて、この問題をもっと積極的に外務大臣としてはお取り上げになってしかるべきだと思うのですが、いかがでしよう。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約におきましては、少くも協議で進めて参りたいと考えております。別個に何かそういうような協定を結ぶか結ばないかということは、今考えておりません。
  74. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私がこの問題をなぜこうしつこく言うかというと、核武装の心配ばかりではなしに、これは中国の問題と非常に関係があるからです。やはりアジア諸国、特に中国が今日本をどういうふうに見ているかということが、実は国民の非常な関心のまとであって、大事な問題であると思う。この前の陳毅外相の声明なりあるいはグロムイコ外相の日本政府に対する申し入れ、ああいうものを外務省では形式的な単なる内政干渉だというふうに言っておりますけれども、いやしくも大国、二大国が日本の基本政策なり外交政策をどういうふうに見ておるかということは、実は日本の国民にとっては非常に重大な問題である。それを、これは内政干渉だというようなことで問題の重要性をすり変える結果に陥るではないか。中国の問題については、再三向うでも言っておるし——岸内閣自身は中国側の誤解だ、こう言っておられますけれども、幾らこれを誤解だ、誤解だと言ってみても平行線で、問題の解決にはならない。今まで通り政府はあくまでも静観していくという態度ならば、それはそれでもよいかもしれない。しかし、この国会で明らかにされたように、今年は何とかして日中の問題を打開しようという政府の方針をはっきり打ち出された。しかも外務大臣は、談話においても、今年はどうしてもこれを解決しなければならぬ年だということさえ言われている。こういう時期に——この問題はあとでもう一度触れますけれども、核武装の問題は非常に大事な一つの要素になると思う。信頼を獲得する要素になると思うのですが、今まで静観の態度を持続されておった政府が、積極的にこれを打開しようという政策に切りかえられたのは、一体どういう理由に基くのでしょうか。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との貿易関係におきまして、われわれが静観と申しておりましたのは、決して中共貿易をやらぬという意味で静観をいたしておったわけではないのであります。中共貿易をやるためには、あの時期において静観をしている方が適当であろうかと考えておったわけであります。その後の状況から申しまして——むろんまだ中共側の誤解もあるかもしれません。が、しかしながら、漸次これは若干緩和されてきているようにも思えますし、また、一方から言えば、国際情勢その他から見ましても、本年はやはり各方面で話し合い状況が起って参るような時代にもなってきておるのではないかと思えるわけでありまして、それらの時期になって参りますれば、われわれは、中共と貿易の問題について話し合う機会があるのではないか。あった場合には、われわれとしてそれをつかんでいきたいということを申しておるわけであります。
  76. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その話し合いの機会は、どういうふうにしてきっかけを作るつもりですか。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは将来の外交上のテクニックの問題でありまして、今どういう機会にどういう手を用いてということまで申し上げるわけに参りません。そのときの情勢に応じましてしかるべき方法をわれわれは考えて参りたい、こう思っております。
  78. 松本七郎

    ○松本(七)委員 中国の問題を外交上のテクニックと考えられておるところに、すでにもう何ともいたしがたい病根があるのです。これは外交上のテクニックで解決できないのです。そういう日本の今の政府のやっておること、今の政府のとっておる方策の方向、その本質を中国がどう見ておるかというふうな点を考えたならば、外交上のテクニックでこれが打解できるなどという結論が出るはずがないのです。それはその敵視政策という一言ではっきり出ているじゃありませんか。彼らがどういうふうに見ておるか、それはやはり安保条約の改定とも関係が深いと思いますけれども、先ほどのアメリカ将校の言葉にもありましたように、中国なり、ソ連を攻撃する前進基地としての役を日本が果しておる。しかも安保条約の改定によって一そうその点が——あなた自身は、主観的にはどういうふうな考えでこれと取り組んでおられるか知らないけれども、客観的には帝国主義的な方向日本にだんだん強くなりつつある、こう見ておることにわれわれは十分関心を抱かざるを得ない。そんならば、そういうふうに相手が日本を見ておる場合に、どういう行動をもって、決してわれわれは帝国主義的な復活をやるんじゃないんだということを明らかに証明するかということが、これからの大事な問題じゃないかと思うのです。そうじゃないでしょうか。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま松本議員の御質問が、どういうきっかけでどういう方法をつかんでということでありましたから、私はテクニックと申したのであります。両国の貿易状態を改善して参りますためには、むろん根本的に両国の親善関係というものがあることは当然でありまして、その点についてお互い相互の理解をして参らなければならぬと思います。私どもとしては、今日本が帝国主義的な政策をとっているなどとは考えておりません。私自身帝国主義的な政策はとっておりません。従って、もしそういうことを考えておられるならば、若干誤解があるのじゃないかということを私は申したいと思うのであります。おのずからそういうことが氷解してくれば大きな基盤はできてくるのではないかと考えております。
  80. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本君にあらかじめお断わりしますが、外務大臣は二十分に所用で出られますのでお含みおきを願います。
  81. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは一部に伝えられておるように、いきなり大使会談を申し出るとか、そういうことを私は聞いておるのじゃないのです。そういうことじゃ解決できないだろう。やはり大使会談なり何なりやるについては、基本的な日本の態度というものが具体的に少し明らかにならなければならぬ。それは政府の声明ぐらいじゃだめだ。もちろん鳩山内閣、あるいは石橋内閣当時なら、これは中国との国交正常化を将来目標にするのだ、今すぐやらないまでも将来の目標にするのだ、こういうことを明らかに声明しただけでも、私は非常に大きな効果があったと思う。今日ではかりにわが政府としても、将来は国交正常化をやるんだということを明らかにいたしましても、事態はなかなか容易じゃない。そういう困難な事態を打開するのにはやはり具体的な行動をもう少し示す必要があるのじゃないか。たとえば国連において、ことしはおそらく中華人民共和国の代表権問題が盛り上ってくると思う。それをアメリカが承認するような時期になったら、一日でも二日でも先に日本が認めればいいんだというような、そんな消極的な態度ではなしに、日本が率先して国連でそういう運動を積極的に巻き起すというような行動に出る、あるいは先ほど申しますように、核非武装の協定をアメリカと結べるか、結べないか、これは相手のあることだから何ともわかりませんけれどもアメリカにこれを積極的に申し入れて交渉に乗り出す。そして将来は時期を見て、日中の国交正常化もやるんだという声明をこれにつけ加えるというような行動が出てくるならば、私は日中の問題の打開のきっかけは必ずできる。岸内閣でも私は可能性が出てくると思うのですが、そういう行動を今後とっていただくことはできないでしょうか。特に国連における代表権の問題で、もっと積極的な努力を本年はやるということを決意していただきたいのですが、いかがでしょうか。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話のようないろいろな問題というものは、過去のいろいろな歴史的過程もありますので、今後の世界の情勢その他にも対応しまして、われわれも考えて参るところでありまして、今にわかに何とも申し上げかねると思います。ただ日本が、御指摘のように、何か帝国主義的な政策をとっているというようなことのないことは、われわれ確信を持って、私自身も外交政策の上でそういう政策はとっていないということを申し上げられると思います。
  83. 松本七郎

    ○松本(七)委員 時間がないですから、それでは少し先を急ぎます。  この中国の問題では、大臣自身がやはり何か具体的な案を作って、そして党内でも検討する。安保条約ほど具体的な問題はすぐ出ないでしょうが、何らかあなた自身の案というものは作る御意思はございませんか。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御質問の要点がちょっとわかりかねますが、将来中共との貿易等の問題につきましては、私としては必ずしも今までのような民間協定が適当であるのか、民間協定の場合でも、政府が初めから入って、十分指導をしていく必要があるのではないかとも考えております。またさらに一歩進んで、政府間のレベルでなし得る場合もあり得るかと思いますが、それらの点につきましては、具体的にこの問題を取り上げるような時期になりますれば、むろん外交の衝に当っております者として、一つ考え方を示していくことは当然だと思うのであります。ただ現在ではまだそういう時期に至っておらぬ、こう考えております。
  85. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ばく然と民間協定を政府間協定に切りかえるというようなことでなしに、それをやるまでに、たとえば長崎の国旗事件にはどういうふうな態度をとる、それから中国に対する基本的な問題点についての外務大臣考え方を具対的に述べたものを、何らかの形で向うに伝えて、こういう態度でもって話し合いの開始ができるかどうかということを研究されるおつもりはないかとお聞きしたいのであります。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 貿易再開に当りましては、ただいま申し上げましたように、適当な時期がくれば、あるいは向う側から申し出があるのか、あるいはこちら側からチャンスをつかむか、そういう点につきましては、そうした適当な時期がくるような状況のもとに考えて参りたい、こう思っておるわけであります。ただ現在、日本が今日までとっております態度が、必ずしも御指摘のように中共を侮べっしたような態度は私どもとっておらぬつもりなのでありまして、それについて特別に何かわれわれが案を作るというようなことは現在考えておりません。
  87. 松本七郎

    ○松本(七)委員 あと二、三、まとめて質問しましてやめますが、一つはベトナム賠償ですが、これはいずれ予算委員会その他でわが党から詳細に質問するはずでございますから、一つだけ伺っておきたいのは、最恵国待遇問題が解決すれば、政府は調印されるおつもりでしょうかということ。聞くところによると、ベトナム側でも、この賠償はどうも日本の利益のための事業だ、ほんとうのベトナムに対する賠償の性格というものがぼけてきているというような意見さえ出ておるということが伝えられておるのですが、私どもとしては、それ以外に、ベトナムの統一問題、ジュネーヴ協定の問題、そういうあらゆる点から、これは今早急に実施すべきではないという態度で臨むことになっておるのでございますが、政府としては最恵国待遇問題さえ解決すれば直ちに調印の運びに持っていくつもりかどうか、その時期はいつになる予定かというえこと。  それからだいぶ前から問題になっております日ソ文化協定は、成立の寸前にまできておりながら、これがまだ成立の運びに至らないのは一体どういう理由か。その方針が変ったのかどうかということ。  それから朝鮮人の帰国問題ですが、これはきのうの本会議の答弁ではばく然と、できるだけ努力するということだったのですが、具体的に何かめどがついておるのか。きょうの新聞によりますと、何か日韓会談を犠牲にしてでもこればやるというようなことが報道されておるのですが、そのくらいの決意でもってやられるのかどうか、これだけお伺いしておきたいと思います。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ベトナムの賠償問題につきましては、大筋のところはだんだん固まって参っております。従って付属的な最恵国の将来の貿易関係の問題でありますとか、あるいは本条約におきましても、若干の字句の問題等について、まだ妥結を見るに至っておりません。ベトナム側もそういうような強い主張をしておりますから、そうした問題が妥結することになりますれば、むろん交渉を続けてきていることでありますから、交渉が具体的にいくだろうと思いますが、それがいつになるかということはまだ申し上げかねると思います。  第二点は、日ソ文化協定につきましては、これから交渉をいたす方針をきめておりまして、その方法論等につきまして今いろいろ検討をしております。従いまして、近く交渉を開始することに相なろうかと思っております。  北鮮人帰国の問題につきましては、これは日韓会談とは別な問題でありまして、日韓会談が成立するとかしないとかいう問題ではなしに、純人道的な立場から、ただいま関係省といろいろ具体的な協議をいたしております。近く成立する運びに至ると思っております。
  89. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大西正道君。
  90. 大西正道

    ○大西委員 きょうは大臣が不在ですから、事務当局に日韓問題の二、三の点と、それから保安庁長官に少し質問いたします。  まず保安庁長官にお伺いいたしますが、去る二十二日でありましたか、また朝鮮海峡における拿捕が始まったように聞いております。その辺の事情を、私ども調査をいたしておりまするが、少し説明をお聞きしたいと思います。
  91. 安西正道

    ○安西政府委員 二十二日に、地区といたしましては三百二十一区でございますが、第百八十三明石丸と第百八十五明石丸、この二隻が韓国の警備艇から停船を命ぜられまして、つかまっております。昨年の六月以来初めての事件でございます。ただいま申し上げました三百二十一区と申しますのは、いわゆる李承晩ラインと称しておりますラインの外でございます。以上でございます。
  92. 大西正道

    ○大西委員 場所はそれでわかりましたけれども、出漁に対しては巡視船が絶えずこれを警戒し、危険な場合は警戒警報を発し、また拿捕の場合にはこれに対して適切な処置をとっておるのでありまするが、今回の場合は、あなたの方としまして十分なる警戒態勢をとっておった状況のもとでありましたか、あるいはまた十分な警戒の態勢がとれなかったというふうな状況でありましたか、ここのところを一つ聞きたいと思います。
  93. 安西正道

    ○安西政府委員 当時は韓国の警備艇が相当あの区域に出勤をいたしておりまして、私の方としては厳戒警報を出して、漁船にできるだけ出漁しないように慫慂をいたしておりました状況下において行われた事件であります。想像いたしまするに、おそらくライン外であるからというので漁船は操業しておったのではないかと思います。
  94. 大西正道

    ○大西委員 そうすると、あなたの方の警戒警報は十分発せられておった、それを明石丸はおそらくは警戒警報中であるということを知りながら、場所が李ライン外であるからというので操業に従事しておったのではないか、こういうふうに見ておられるわけですね。
  95. 安西正道

    ○安西政府委員 その通りでございます。
  96. 大西正道

    ○大西委員 この拿捕については、前にも第二星丸の不幸な拿捕がありました。船と船員もろともに向うに連れていかれまして、いまだに釈放されておりません。これに対しまして外務省の方からは厳重な抗議をしたのでありまするが、何ら効果はない。今回の事件に対しまして外務省といたしましては、口上書をもって抗議の申し入れをされたとも伝えられておるのでありますが、外務省のこれに対する措置をお伺いいたしたい。
  97. 板垣修

    ○板垣政府委員 外務省といたしましては、一月二十二日の午前に、日本の漁船が二隻拿捕された通知を海上保安庁より受けましたので、当時は必ずしも韓国艇であったかどうかわかりませんでしたが、とりあえず口頭をもちまして直ちに韓国代表部に調査方を要求いたしました。その後大体において韓国艇であるということが確実になりましたので、ただいまお話し通り、一月二十六日に正式に口上書をもちまして厳重なる抗議並びに損害賠償請求の権利を留保する旨を通告いたしました。なお私自身も向うの崔参事官を招致いたしまして、この点について注意を喚起いたしたのでございます。ところが御承知通り二十七日に、韓国側から正式の回答がございました。拿捕された地点は、韓国側の言い分によれば、いわゆる李ラインの内側である、従って韓国の漁業資源法に違反したかどでもって拿捕されたのであって、今後日本側が李ラインを侵すようなことのないようにという抗議を受け取ったのであります。日本側の承知しております情報によりますれば、明らかに李ラインの外で拿捕されたものと信じておりまするが、しかし李ラインの内外を問わず、いずれにいたしましても、公海におきまして拿捕されたという事実というものをわれわれは重視いたしておる次第でございまして、それにつきましては重ねて韓国側に抗議をいたす所存でございます。
  98. 大西正道

    ○大西委員 抗議によって一応外交的な処置はとられたわけでありますけれども、この抗議が一向力のないものであるということは、もうこれまでの経験に徴して明らかなところである。第二星丸事件がいまだに解決されていないということが、雄弁にそのことを物語っておる。こういうことがたび重なっていくということにつきましては、これは重大な問題でありますから、ただ抗議に抗議を重ねるという以外に、この問題の打開のためにどういうふうな積極的な措置が講ぜらるべきか、この点についての見解を承わりたい。
  99. 板垣修

    ○板垣政府委員 御指摘のように、昨年全面会談が開始せられました以後も、そうひんぱんではございませんが、日本漁船の拿捕事件が起っております。ことに第二星丸の事件の際には、私ども強硬に抗議をいたしました。韓国側といたしましては、第二星丸の拿捕事件につきましては何ら実効的措置をとりませんでしたが、事実上今日まで一回も拿捕事件が起らなかったわけであります。今回不幸にも再びこの拿捕事件が起ったことにつきましては、われわれまことに遺憾に存じております。ただ従来拿捕漁船、拿捕漁夫の処理の問題につきましては、星丸あるいは今度の事件の個々の問題でなく、全体として解決を要する。御承知のように、現に釜山には百二十二人の漁夫が抑留されております。この問題を全体として解決する必要がございますので、せっかく全面会談も開始されておりますから、全面会談の交渉によりまして全般的に解決したいという方針で今日まで進んできたわけでございます。しかしながら、こういうような事件がまた現在起っておるということになりますれば、この問題の解決について何らか新しい措置考えざるを得ないのではないかということについて検討いたしておりまするが、今具体的ないかなる措置をとるかということについてまだ申し上げる段階にございません。
  100. 大西正道

    ○大西委員 具体的の適切な措置考えておるけれども、なお名案が浮ばないということでありまするが、おそらくそういうことであろうと思う。そうして本質的には日韓の全面会談においてこれを解決したい、こういうふうに言われたのでありまするが、それではこの日韓の会談の見通しはどうか。これはアジア局長に対する質問としては若干荷が重いと思いまするが、しかし大臣が不在でございますから、アジア局長として日韓会談の見通し、将来はどういうふうな方向に進むであろうかという、そういう見通し並びに政府の見解、これを一つお聞きしたいと思うのであります。
  101. 板垣修

    ○板垣政府委員 御承知のように、全面会談は四月十五日に開始され、途中で一時停頓いたしましたが、十月一日から再開をされております。彼我の根本的な主張の差は、結局韓国側は船舶の返還問題なり、あるいは文化財の問題なりにつきまして、これを先に解決せよ、そうすればほかの問題については、韓国側は考慮するという立場をとっておりまするし、日本側といたしましては日本側で最も重視いたしておりまする李ライン問題、漁業問題というものの解決の見通しがなければ、これは日韓会談の交渉全体につきまして、日本側がこれに対してかりに何らかの譲歩をするにいたしましても、非常に困難な事情があるというところに、彼我の主張の根本的な対立があるのであります。従いまして各委員会、多きは二十数回会合を重ねましたけれども、年末までには何ら進捗を見ずに、一時休会になったのでございます。ことしの一月二十六日からまた全面会談を再開することになっておりましたが、現在向う側の首席代表柳公使は本国に帰っておりまして、いろいろ韓国側といたしましても、新たなる交渉について議論しておるようでございます。ことに日本側の主張しております李ライン問題の解決につきまして、韓国側として新しい案を出すように、日本が主張しておりましたことに対しまして、何らか向う側考えておるような情報もございます。それが果していかなる案が出てくるか、まだ存じません。近いうちに柳公使も帰って参るようでございまするから、帰りまして韓国側の対案なるものを見た上でないと、今後の見通しというものははっきり申し上げられません。しかし率直に申し上げますと、なかなかこの交渉はむずかしい問題を含んでおるということだけは、申し上げられると思います。
  102. 大西正道

    ○大西委員 あなたが最後に言われたように、なかなかむずかしい見通しであるということは、私も同感であります。わが国の暫定案に対しまして、向うの責任者が新聞記者発表などをやっておるのを見ますと、やはり李承晩ライン内における漁業管轄権ははっきりと放さない、その上で何か特例を認めて魚をとらせるというようなことなのでありまして、こういうことでありますれば、これはもうわが国の主張とは全然相いれないものでありますから、そういう根本的な対立がある以上、私は他の文化財の返還だとか、あるいは財産請求権の放棄だとか、その他いろいろな問題について譲歩を重ねましても、なかなかその一番の問題の解決に至らぬということについては、たびたび警告を発してきたのです。だからすべからく政府は、そういう根本的な問題を見破って、そして抜本的な対策を立てなければならぬということを警告してきたのだけれども、いまだに友好的な雰囲気だとか何とか変なことばかり言って、一向事件は進展しておらぬ。まことにこれは遺憾です。  そこで今政府は、もうこの段階にきたら、相手の出方を見るとか、向うがどういうふうに出てくるかという区々たる出方を見守るとか、そういう問題でなしに、韓国内におけるところの李承晩政府の対日政策というものの本質をはっきりと見通して、そして政策の転換をやらなければならぬと私は考える。そういう意味から申しまして、韓国内におけるところの政治情勢、李承晩の政治というものに対して、どのようにこれを認識し、評価しておるかということが一番大事な前提になると思うのです。そういう意味におきまして、私はアジア局長に、あなたの韓国内における李承晩政府の本質、もっと具体的に申せば、李承晩の政治のあり方について、どのような見解を持っておられるかということをお聞きしたいと思うのであります。これは内政干渉になるとか何とかいう問題ではないのであります。すでに御承知のように、新国家保安法というような法案が、ちょうどわが国の警職法をさらに上回るような反動的な内容を持つ新国家保安法が、これまた日本の国会と国じように、野党をカン詰めにしてしまって、そしてあっという間に委員会を通過させ、そのあげくの果てに乱闘騒ぎになってこれが通過したということの事実を見ても、私はその一斑がうかがえると思う。さらにそのほかに地方自治法によって、日本の町や村などに相当する自治体の長も、新しく全部政府が任命するというような、そういう極端な中央集権的な方向に持ってきているということ、さらに、近く行われんとするとするところの参議院の選挙に対しましても、李承晩は反対党の勢力の伸張を押えるために、参議院の選挙法を改正しようとしている。こういうふうな一連の動きを見ますと、韓国内における政治情勢というものは、これはまさに完全に民主主義に逆行した動きであるということは、万人の認めるところである。アイクの親書にもこれに類似したような、国民の自由尊重の大切なことを伝えていると申します。あるいはまた国務省の見解にも、あの新国家保安法制定のいきさつは、民主主義的な手続によらないああいうやり方は、まことに遺憾だというふうに言っておりますし、あるいはまた、韓国におけるところの民主的発展の阻害なきょうにというような、非常に傾聴すべき意見を、アメリカの国務省も吐いておるのであります。こういうように見ますと、韓国内の政治情勢というものは、これは日本国民の想像を絶したところの反動的な、おそるべき状態が現出していると私は思うのです。さらにこれのみではありません。経済的にもインフレは高進し、非常な苦しみに追い込まれておるといわれております。農民は青田売りで、もうその日の暮しに困っておるということは、確実な資料によってわれわれはこれを知っている。もう韓国においては、今では生きられないという言葉がはやり言葉になっている、こういわれておる。こういうふうな韓国の政治情勢、李承晩政権のもとにおける政治の実態というものをよく見きわめて、そしてそのような好ましくない政治に対する韓国民の反感というものを、反共抗日という外交政策に転嫁することにおいて、その責任を糊塗しているというのが、政治評論家の一致した見解であります。私どもは李承晩政権に対して、まことに遺憾の意を表せざるを得ない。韓国民の率直なる感情は、日本国民に対して、昔のいきさつを忘れて、そしてお互いに手を取り合って新しい発展をしようという、非常に親日的な空気に燃えているということを、私は確信をいたします。韓国内を見るときに、韓国民の親日的な意思と、民主的な発展を願うところの希望と、それに全く反するところの李承晩政権のあり方、こういうものを私は峻別して考えなければならぬ、こういうように考える。従って今李承晩が、日本政府とのいろいろな問題に対しましても無理難題を重ねてきて、そしてそれに対して日本政府が、譲歩に譲歩を重ねているということは、これは李承晩のためには役に立っても、決して韓国民のためには役に立たぬということを、私はここではっきりと知らなければならぬと思う。こういうような認識の上に立って日本政府は対韓国とのもろもろの折衝においても、言うべきことは堂々と言う態度がなければならぬと思う。李承晩ラインが国際法を無視したところの暴挙であることは、これは日本政府が言うのみではありません。民主党の最高委員である趙炳玉氏が、李承晩ラインの問題は、すべからく国際司法裁判所に提訴して解決すべきだということを主張しておる。民主党は御承知通り親日的であります。こういうような空気をはっきりとつかんで、そして交渉を進めなければならぬということが私の主張でありますが、こういう意味におきまして外務大臣から、こういう点について説を聞きたいのでありますけれどもアジア局長から、あなたの握っておられるところの韓国内における政治の情勢、こういう点について一つ詳しく御意見を聞かしてもらいたいと思う。
  103. 板垣修

    ○板垣政府委員 韓国の政情につきまして、国家保安法等をめぐりまして問題があり、また経済的にもいろいろな問題があるということは、私ども承知しております。しかしながら、それ以上李承晩政権の本質とかどうかというような点につきましては、私どもも詳しくは情報を持っておりませんし、かりに持っておりましても、あるいは私見でも、日本政府当局といたしまして韓国内部の政情なり、ことに現在政権を握っておりまする李承晩政権そのものについて批評がましいことを申し上げることはできない、この点は御容赦願います。ただいま仰せになりました点で日韓交渉のやり方について、これはいろいろ韓国側の方にも問題があることは事実であります。しかしながら日本側としましては、従来自主的立場におきまして、言うべきことは十分に言っております。片や李承晩政権の方におきましても、必ずしも今大西委員の言われたように、今度の会談におきましてあくまで抗日とかいうような態度で進めるのでなくて、やはりできますならば、日韓の会談を成立させて、友好関係を樹立したいという気持に李承晩大統領自身が最近非常に変ってきているということも、私どもは認めざるを得ないと思います。しかし、いずれにいたしましても、われわれの交渉方針といたしましては、言うべきことは言い、その上で合理的な解決ができるならば解決をしたいという方針で進んでおります。
  104. 大西正道

    ○大西委員 あなたにこういう問題を答弁を求めても無理だったかもしれません。  それではもう一つ伺いますが、日韓の全面会談の場とは別に、かつては矢次何がしというえたいの知れない者が首相の特使として向うに派遣され、いろいろなうわさが飛んだのであります。また年末には会談が行き詰まりますというと、岸首相と李承晩大統領との会談説が飛び出す。さらにまたそれが失敗しますと、今度は大野伴睦が向うに参って交渉をするというようなうわさが出た。これはうわさだけではないのでありまして、向うの責任者の新聞発表を見ますると、確かにそのような打診がなされたということは、これは疑う余地のないことであります。私どもはこれまでも外務大臣にその真否をただしましたけれども、言を左右にしてはっきりした答弁が得られません。この辺の事情につきましては、これはもうだれしも、こういう裏交渉が二重、三重に不明朗な形でいろいろとやられているということは知っておることであります。この点について、これは今質問のあった安保条約の交渉の問題でもそうであります。外交折衝の当面の責任者である外務大臣を差しおいて、党内の有力者が直接マッカーサーのもとに行って、外務大臣とは異なった見解を堂々と述べて、そしてそれが大きく世論を左右して、それに対して外務大臣は知らぬとか、どうなったかわからぬとか言っておる。これはもう同じことであります。二元外交、三元外交、こういうことが日韓会談においても、行き詰まってくると不明朗なものがずんずん出てくるのであります。こういう点につきまして、あなた方、特に板垣アジア局長はどういうようにお考えですか。こういう事実があったということについてのなにがあればけっこうでありますが、なくてもこういううわさに対して、そういうことがあり得るということを考えますか。こういうことについての見解を聞きましょう。
  105. 板垣修

    ○板垣政府委員 年末からいろいろな動きが新聞に報道されました。私どもも実は事務局でありますので正確なことは存じません。しかしながら、これは離れて考えますると、そういうようなこともアイデアとしてはあり得るということも考えられると思います。しかしながら私どもとしましては、日韓交渉はあくまでも正規の筋でいくべきものだという点は変えておりません。ただ、こういうような他面に非常に政治的な複雑な問題を含んだ交渉でありますので、外交交渉において、もし話し合いができますならば、必ずしも政府の正規の線だけでなくて、裏面におきまして党の有力者がやるということは排撃すべきことではないと思います。ただそれをやりますには、正規の外交当局との間に緊密なる連絡がなければならぬと信じております。
  106. 大西正道

    ○大西委員 それが緊密な連絡なしにやられて、醜態をさらしておるのであります。私はその一つの例として、こういうことを聞いておるのであります。今保安庁長官が申されたように、またあなたも申されたように、最近拿捕されることがなかったのです。第二星丸の拿捕以来、ついこの間までなかった。しかもこの間は漁期のさ中であります。おそらく李承晩ラインすれすれと申しますか、李承晩ラインの向うに入らなければ十分なる漁獲がないということも明らかであります。それだのにこの拿捕がなかったということはこれは一体どういう理由であろうか。日本の船が李承晩ラインというものをはっきりと守って、そこより向うに行かなかったのか。これまでの経験から言うと、行かなくても拿捕されているのであります。あるいはまた、せっかくの会談中であるからというので、韓国がこれに対してあるいは考慮をしたのか。いずれにいたしましても、これは一つのなぞだ。わかっている人はわかっているのであろう。ところが私はこういうことを聞いたのであります。今言った正式の話し合い以外に、裏の話で、与党のこの方面のある責任者と韓国の出先の代表者との間にいろいろと話がされ、そうして李承晩ラインを越えた向うにおきましても、赤い旗を立てておる船だったらこれを認める。そしてその獲物は向うとこっちと折半だ。その金の行方があまりはっきりしない、こういうようなことがまこととしゃかにいろいろと話されております。私はそういうことはあり得ないことだと思いまするけれども、まことにもってこの日韓会談というもので漁業問題を解決しようという熱意に燃えておる者にとっては、聞き捨てならぬことであります。こういうことをアジア局長は耳にはさまれたことがございますかどうか、お聞きいたします。
  107. 板垣修

    ○板垣政府委員 会談進行中の漁船拿捕の問題につきましては、実は政府当局といたしましても正式にしばしば私と柳公使との会談等におきましても、交渉進行中に漁船拿捕などはしないようにということを申しておりますし、柳公使も正式ではありませんが、できるだけ努力するという約束もしておるのでありまして、今まで拿捕が少かったのは柳公使などの努力もあるのじゃないかと私は感じております。従って今お話のような裏面の話というのは、私どももちろん初耳でありますし、少しまことしやか過ぎまして信じがたいように感じております。
  108. 大西正道

    ○大西委員 そういういろいろな話が出てくるほどこの問題は奇々怪々なのでありまして、一つ政府の奮起を望むわけでありますが、もう一回確認をしておきたいのは、この二十六日でありましたか、李承晩が新聞記者会見をやって、李ライン変更の用意がある云云とか言っております。しかし新聞記事の範囲で見ますと、やはりこの李承晩ライン内におけるところの漁業管轄権ははっきりと主張する、そうしてその中における何かの妥協、こういうことでありますが、こういうことは私どもは事の根本に触れる問題でありますから、これはもう再三再四あなたの方の確認を求めておるところでありますが、こういう考え方は絶対に容赦できない、こういうふうな主張を私は貫いていただきたいと思うのであります。これを確認を求めたいと思います。
  109. 板垣修

    ○板垣政府委員 新聞の伝えるだけで判断するしかございませんが、かりにいわゆる李ラインの線を引き直す、その場合でも、その範囲内ではやはり広範な地域で漁業管理権を向うが留保するということならば、原則上の問題といたしまして日本としては容認することができないのは、もちろんのことであります。
  110. 大西正道

    ○大西委員 それからもう一つ二つ…拿捕された人が前に百二十二名おりましたが、今度拿捕された漁夫は二十五名だったと思いますが、間違いございませんか。
  111. 安西正道

    ○安西政府委員 間違いございません。
  112. 大西正道

    ○大西委員 そうしますと、さらに百四十七名という抑留者がおるわけでありまするが、これに対しまして今のアジア局長の話では、結局別途の何かの方策を講ずるとしても名案はなし、全面会談の帰結に待つほかはないということで、しかも全面会談も今申したような非常に見通しの暗い状況です。一体この人たちにどういうふうな措置を講じて、帰すことができなければ——まず帰すことが第一であります。しかし帰すことができなければ、この人たちの身分を十分に保護する、そういう措置が講じられるか、われわれはこの年を何とかかんとか言いながら越したのでありますが、この人たちはこの寒い冬をまたあそこで非常に苦しんでおるということを思いますときに、人道問題というならば、この問題を解決せずして何の人道問題だと言いたいのであります。北鮮の帰国の問題、これももちろん人道問題で、私も強くこの促進を要望しているところでありますが、それとこれとやはり同じ問題であります。ところがどうも政府のこれに対する熱意が足りない。一体どうしようというのか。全面会談は一向打開の見通しがないという今日、どうしようというのか。刑期を終えないというならば、刑期を終えた者は九十何名おるということを私は承知しておる。この点についてもアジア局長も御存じでしょうが、九十何名という刑期を終えた者、もともと刑期というもの自体が私どもには不合理であるけれども向うの何に従っても刑期を終えた者が九十何名おります。少くともこれを帰すだけの強力な交渉を何らやる必要がないのかどうか。私はただ留守家族の身の上のみならず、やはり大きな要素を含んだ政治問題であろうと思います。人道問題であると同時に政治問題である。これをどういうふうにされるのか。アジア局長の誠意ある見解を聞きます。
  113. 板垣修

    ○板垣政府委員 お話のようにまず釜山におります抑留漁夫を帰すことが第一、これが外務省の仕事といたしまして従来強力な交渉をやっております。ことに今御指摘の刑期を完了した者、まだ九十何名くらいには達しておりませんが、相当数に達しております。これに対しては、一年近くも随時機会あるごとに強くこれだけでも先に帰すということは、強力に主張しておりますが、いまだ実を結ばないことは遺憾に存じております。私どもとしましては、この刑期を完了した者はもちろん、でき得るならば、全体の問題といたしまして、新しく考え直す時期にも来ていると思います。これにつきましては名案がないとおっしゃいましたが、名案が必ずしもないわけじゃないのでございまして、ただいま申し上げる時期ではないわけでございます。しかしなおそれにつきましても相手のあることでありますから、あるいはもう少し期間が延びるかもしれない。その場合の国内における援護措置、抑留されておる者に対する差し入れの問題等につきましては、水産庁の方におきましても従来十分考えておりますし、現在までもある程度やっておりますが、今後の情勢いかんによりましては、この辺の援護措置の強化につきましては、私どもも水産庁と十分協議をして参りたいと考えております。
  114. 大西正道

    ○大西委員 援護措置が主ではないのでありまして、帰すことが主なんであります。帰すことができない上、さらにどんどん拿捕漁船がふえて抑留者が増加するという事態を強調しておるのです。今申し上げる時期ではない、成算のあるようなお答えでありましたから、私はそれに期待をいたしますけれども、私の期待倒れに終らないように、なるべく早くその機会の実現を希望いたします。  それからもう一つ、北鮮の帰国者の問題とこの日韓会談の問題とからめて考えるような考えをするものもあるが、しかしこの点につきましては、今外務大臣は明快に、北鮮の帰国の問題と日韓会談の問題とは切り離して考えるべきだ。北鮮帰国の問題は人道問題として当然これは推し進める、こういう明快なる態度が出たのであります。私は外務省事務当局におきましてもこういう態度に徹して、一方では北鮮の帰国を促進しながら一方では日韓の漁業問題の解決——少くとも抑留者の帰還だけは、同じくこれは人道的な立場から申しますと不即不離の問題でありますから、決してこれは相反する問題ではないのであります。人道的な立場に徹すれば、これは北鮮の帰国者もすみやかに帰す、同時に釜山の抑留者も帰す、こういうようなことになるわけでありますから、この点につきまして一そうの事務当局の奮起を望む次第です。これだけです。
  115. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十六分散会