○大西
委員 あなたが最後に言われたように、なかなかむずかしい
見通しであるということは、私も同感であります。
わが国の暫定案に対しまして、
向うの責任者が新聞記者発表などをやっておるのを見ますと、やはり李承晩ライン内における漁業管轄権ははっきりと放さない、その上で何か特例を認めて魚をとらせるというようなことなのでありまして、こういうことでありますれば、これはもう
わが国の主張とは全然相いれないものでありますから、そういう根本的な対立がある以上、私は他の文化財の返還だとか、あるいは財産請求権の放棄だとか、その他いろいろな問題について譲歩を重ねましても、なかなかその一番の問題の解決に至らぬということについては、たびたび警告を発してきたのです。だからすべからく
政府は、そういう根本的な問題を見破って、そして抜本的な
対策を立てなければならぬということを警告してきたのだけれ
ども、いまだに友好的な雰囲気だとか何とか変なことばかり言って、一向事件は進展しておらぬ。まことにこれは遺憾です。
そこで今
政府は、もうこの段階にきたら、相手の出方を見るとか、
向うがどういうふうに出てくるかという区々たる出方を見守るとか、そういう問題でなしに、韓国内におけるところの李承晩
政府の対日政策というものの本質をはっきりと
見通して、そして政策の転換をやらなければならぬと私は
考える。そういう意味から申しまして、韓国内におけるところの政治
情勢、李承晩の政治というものに対して、どのようにこれを認識し、評価しておるかということが一番大事な前提になると思うのです。そういう意味におきまして、私は
アジア局長に、あなたの韓国内における李承晩
政府の本質、もっと具体的に申せば、李承晩の政治のあり方について、どのような見解を持っておられるかということをお聞きしたいと思うのであります。これは内政干渉になるとか何とかいう問題ではないのであります。すでに御
承知のように、新国家保安法というような法案が、ちょうど
わが国の警職法をさらに上回るような反動的な内容を持つ新国家保安法が、これまた
日本の国会と国じように、野党をカン詰めにしてしまって、そしてあっという間に
委員会を通過させ、そのあげくの果てに乱闘騒ぎになってこれが通過したということの事実を見ても、私はその一斑がうかがえると思う。さらにそのほかに
地方自治法によって、
日本の町や村などに相当する自治体の長も、新しく全部
政府が任命するというような、そういう極端な中央集権的な
方向に持ってきているということ、さらに、近く行われんとするとするところの参議院の選挙に対しましても、李承晩は
反対党の勢力の伸張を押えるために、参議院の選挙法を
改正しようとしている。こういうふうな一連の動きを見ますと、韓国内における政治
情勢というものは、これはまさに完全に民主主義に逆行した動きであるということは、万人の認めるところである。アイクの親書にもこれに類似したような、国民の自由尊重の大切なことを伝えていると申します。あるいはまた国務省の見解にも、あの新国家保安法制定のいきさつは、民主主義的な手続によらないああいうやり方は、まことに遺憾だというふうに言っておりますし、あるいはまた、韓国におけるところの民主的発展の阻害なきょうにというような、非常に傾聴すべき意見を、
アメリカの国務省も吐いておるのであります。こういうように見ますと、韓国内の政治
情勢というものは、これは
日本国民の想像を絶したところの反動的な、おそるべき
状態が現出していると私は思うのです。さらにこれのみではありません。
経済的にもインフレは高進し、非常な苦しみに追い込まれておるといわれております。農民は青田売りで、もうその日の暮しに困っておるということは、確実な
資料によってわれわれはこれを知っている。もう韓国においては、今では生きられないという言葉がはやり言葉になっている、こういわれておる。こういうふうな韓国の政治
情勢、李承晩政権のもとにおける政治の実態というものをよく見きわめて、そしてそのような好ましくない政治に対する韓国民の反感というものを、反共抗日という
外交政策に転嫁することにおいて、その責任を糊塗しているというのが、政治評論家の一致した見解であります。私
どもは李承晩政権に対して、まことに遺憾の意を表せざるを得ない。韓国民の率直なる感情は、
日本国民に対して、昔のいきさつを忘れて、そして
お互いに手を取り合って新しい発展をしようという、非常に親日的な空気に燃えているということを、私は確信をいたします。韓国内を見るときに、韓国民の親日的な意思と、民主的な発展を願うところの希望と、それに全く反するところの李承晩政権のあり方、こういうものを私は峻別して
考えなければならぬ、こういうように
考える。従って今李承晩が、
日本政府とのいろいろな問題に対しましても無理難題を重ねてきて、そしてそれに対して
日本の
政府が、譲歩に譲歩を重ねているということは、これは李承晩のためには役に立っても、決して韓国民のためには役に立たぬということを、私はここではっきりと知らなければならぬと思う。こういうような認識の上に立って
日本政府は対韓国とのもろもろの折衝においても、言うべきことは堂々と言う態度がなければならぬと思う。李承晩ラインが国際法を無視したところの暴挙であることは、これは
日本政府が言うのみではありません。民主党の最高
委員である趙炳玉氏が、李承晩ラインの問題は、すべからく国際司法裁判所に提訴して解決すべきだということを主張しておる。民主党は御
承知の
通り親日的であります。こういうような空気をはっきりとつかんで、そして
交渉を進めなければならぬということが私の主張でありますが、こういう意味におきまして外務
大臣から、こういう点について説を聞きたいのでありますけれ
ども、
アジア局長から、あなたの握っておられるところの韓国内における政治の
情勢、こういう点について
一つ詳しく御意見を聞かしてもらいたいと思う。