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1958-12-19 第31回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十三年十二月十日)(水曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 山村治郎君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       池田正之輔君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    小林 絹治君       椎熊 三郎君    千葉 三郎君       中曽根康弘君    平塚常次郎君       福家 俊一君    福田 篤泰君       前尾繁三郎君    松田竹千代君       森下 國雄君    大西 正道君       片山  哲君    田中 稔男君       高田 富之君    帆足  計君       穗積 七郎君    森島 守人君       八百板 正君    和田 博雄君     ————————————— 昭和三十三年十二月十九日(金曜日)     午前十一時五十一分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       小林 絹治君    千葉 三郎君       前尾繁三郎君    松田竹千代君       大西 正道君    勝間田清一君       田中 稔男君    帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十二月十二日  委員片山哲辞任につき、その補欠として勝間  田清一君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員松田竹千代辞任につき、その補欠として  保科善四郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員保科善四郎辞任につき、その補欠として  松田竹千代君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員大西正道君及び高田富之辞任につき、そ  の補欠として横路節雄君及び松浦定義君が議長  の指名委員に選任された。 同 日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として大  西正道君が議長指名委員に選任された。 十二月十九日  理事岡田春夫君十二月九日委員辞任につき、そ  の補欠として森島守人君が理事に当選した。 同 日  理事山村治郎君同日理事辞任につき、その補  欠として中曽根康弘君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件について、お諮りいたします。本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。——異議なければさよう決定いたしました。     —————————————
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に理事補欠選任についてお諮りいたします。理事岡田春夫君が去る九日に委員辞任いたしました結果、理事が一名欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、慣例によりまして委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、理事森島守人君を指名いたします。  また、理事山村治郎君より、理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認め、同君理事辞任を許可いたします。  なお同君理事辞任に伴う補欠選任については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、委員長より中曽根康弘君を理事指名いたします。     —————————————
  7. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢等に関し、調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐々木盛雄君。
  8. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は、本日主として日米安全保障条約をめぐる問題につきまして外務当局見解を明らかにいたしたいと思うのであります。最近藤山外相安保条約問題等につきまして広く民間の有識者各位に対し、あるいはまた一般人々に対して啓蒙と申しますか、了解運動などをおやりになっておりますことはまことにけっこうなことだと思うのであります。ややともすれば従来外交独善秘密外交のそしりを免れなかった旧套を破って、広く国民とともに外交を推し進めていくという傾向に対して私は心から敬意を表しておるわけであります。そこで本日私は私の所見を申し上げることよりも、むしろもう交渉も相当進んで参ったのでありますから、ある程度交渉がまとまった段階にきておると私は考えます。従って先刻申し上げましたように広く国民事態真相を明らかにするという意味におきまして、問題点になっております点を逐条的に承わりますので、簡単でけっこうでありますから、どういう結果になったかということを一つお知らせ願いたいと存じます。  まず第一には、今度の条約改定しなければならないという一番根本の問題でありますところのアメリカ日本に対する防衛義務の問題でございます。現行安保条約におきましては、日本は基地を提供する義務があるが、アメリカは必ずしも日本防衛すべき義務がない、こういうことになっておったわけでございますが、今回の条約改定におきましては、明確にアメリカ側防衛義務を規定しようというようなお考えのようでありますが、この点につきましてはすでに了解ができたかどうかという点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまの日米安保条約交渉は、御承知のように十月四日にマッカーサー大使と私とが顔合せをいたしまして、その後十月中に一回会いまして、そうして問題点をしぼったわけであります。その後諸般の情勢のために十分正式の交渉をいたす段階になっておりません。従いまして数日前に第三回のマッカーサー大使と私との交渉をいたすことにいたしたわけであります。その際にわれわれとしては条約そのものの全体の構成等につきまして一応の話し合いをし、なお一番簡単であります国連憲章に準拠する問題等につきまして話し合いをいたしたのであります。でありますから、ただいま御指摘のように交渉が何かすでに具体的に解決しつつあるという段階には至っておりません。従いまして今御質問のありました防衛義務等につきましても、向う側と正式のはっきりした交渉にはまだ移っておりません。しかし私がワシントンにおいてこの問題については私ども意向を申し述べて、そうしてアメリカ防衛義務をはっきりさせてもらいたい、条約上には明記することが望ましいことであるということを申しておるのでありまして、特にわれわれとしてはその点を十分主張して参るつもりでございます。まだ今の交渉段階ではそういうことでございますので、はっきり合意に達しておるという段階ではございません。
  10. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 いまだ正式の合意という段階でないようでありますが、原則的にはアメリカ側も了承したものと考えます。  次にこれはよく今度の条約改定に当って懸念されることでありますが、日本にありますアメリカ軍日本領域外において作戦行動をするときに、日本との事前協議の問題でありますが、これらにつきましても私はすでにアメリカ側も原則的な了承を得ておるやに承わるわけでありますが、最終的結論にはもとよりまだ到達していないと思いますが、原則的にはアメリカもこれに対して同意をいたしておるような状態でありましょうか。これもこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申しましたように、それらの問題につきましては、いまだ実質的交渉に入っておりませんので合意に達しておるということはむろんないわけであります。ただ交渉段階から考えまして、われわれとしては日本側国内的な意向をとりまとめながらその線に沿って進めて参りたい、こう存じております。
  12. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 多分アメリカ側もこの事前協議の問題についてはさしたる反対はないように承わっております。またそのように了解をいたしたいと思います。  次に日本に駐留いたします米軍装備の問題でありますが、これは原子兵器核武装等の問題もあって、いろいろ複雑な問題もあることでありますが、重大な問題でございます。この装備の点についても事前協議をいたしたいということを日本から申し入れられると思いますが、そういう御意向か、あるいは先方のそれに対するところの反応というような点もできるだけ明らかにしていただきたいと思います。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ワシントン話し合いましたときに、装備というものを協議事項にしてもらいたい、また同時に日本国内核兵器等に対する世論の動向を申し述べておきました。私どもはそれらのものを承知した上でこの交渉に入ってきておるのでありまして、むろん具体的交渉にまだいずれもなっておりませんので、アメリカ側最終的意向がどうきまっておるかということを申し上げかねますけれども、私どもとしてはこの点については最大の努力を払うつもりでおります。
  14. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 外務大臣のおっしゃること、大体了承いたすのでありますが、この間も外務大臣安保条約改定問題につきまして去る十五日でありますか、東京会館における懇話会の席上におきましてお話になった際にはかなり詳細におっしゃっておるようであります。私たち外務大臣片言隻句をとらえて、あげ足をとろうというものの考え方をして質問をしておるのではありませんが、できるだけこういう機会を通して、国民とともにこの安保条約改定を進めていきたい、こういう考え方に立っておるわけでありますから、できるだけアメリカ側意向についても、言い得る点につきましてはおっしゃっていただきまして、一般国民にも事態真相を知らせるようにしていただきたいことをお願いを申し上げておきます。  それから国連憲章と新しく改定されまする安保条約との関係でありまするが、これは私は当委員会におきまして、現在の安保条約におきましては、国連憲章との関係がぎわめて不明確である点を指摘して、新しい条約におきましては、ぜひともこの項目を明らかにする必要があるじゃないかということを強調いたしたわけでありますが、最近の総理の御演説によりますと、この国連憲章との関係を明記するようなことが出ておるようなわけでありますが、この点につきましてはいかがでありますか。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の交渉に当りまして、条約作成国連憲章に準拠する点を明確にいたしますことは当然のことと考えておりますので、この点についてはアメリカ側も異存はないと存じております。
  16. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それから期限の問題は、もとより現行安保条約が無期限である、これはまた日本の負わされておる片務性一つとも言い得るわけでありますが、この期限の問題につきましては、どのような御見解をお持ちになっておりますか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は安保条約交渉に入ります前から期限をつけてもらいたいということをはっきり申しております。アメリカ側も今日までその点については否定をいたしておりません。ただ問題は、どの程度期限をつけるかということが最終的には論議になるだろう、こう考えております。
  18. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次にこれは社会党というよりも、むしろわが党内においてもかなり問題のある点でありますが、現行安保条約に規定されておりまする、日本において大規模内乱騒擾第三国教唆干渉によって引き起された場合におけるアメリカに助けを求めるという規定でありますが、これはもとより国民感情からいって、日本に暴動が起ったときに、アメリカ軍によって鎮圧をしてもらうというようなことは、われわれの民族的誇り考え方からいたしましても、まことに情ない次第でございます。従ってこの点につきましては、当然この条項削除しなければならぬ。むしろ今回の安保条約改定主眼点一つであるとも私たち考えておるわけでありますが、また一面におきましては、しからば今日の日本自衛力現状、あるいは治安力現状からして、第三国の大規模教唆干渉背景として、日本内乱騒擾が起ったときに果してこれでいいかどうかというような点につきましては、まじめに国の将来を考え人々にとっては、一まつの憂いなきを得ない問題であると思うわけであります。従ってこの内乱騒擾の場合の条項は、もとよりこれを削除されるという方針であると思いますが、その御方針と、また同時に日本国内治安防衛の体制の強化と申しますか、整備と申しますか、とも不可分の問題としてお考えを願いたい問題であると思いますが、これらの点について御意見を承わりたいと思います。
  19. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この条約問題点を私がアメリカ側に解明いたしますときに、内乱条項等につきましては、過去一年半の私の経験から申して当然問題になるし、削除の必要もあるのではないかということを申したのでありますけれども、その後相当国内にも強硬な意見もおありのようであります。そうした議論帰一するところを待って交渉に入りたいと思います。
  20. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 しかし外務大臣としては、原則的にはこの条項削除するというお考えじゃございませんか。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたようにこれは重要な問題点でありまして、削除されるべきではないかという意向アメリカ側には私としては問題点として伝えております。しかし現在非常に強硬な御意見もあるようでありまして、どこに世論帰一するかを見ながら私は交渉に当って参りたい、こう思っております。
  22. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 本日は私の見解を申し上げないということにいたしておったのでありますけれども、ちょっと簡単に申し上げますならば、国内治安力やあるいは自衛力整備ということとは不可分の関係ではありますけれども外交交渉そのものは別の問題であろうと思います。従ってやはり私はこの条項国民感情の点から申しますと、削除すべきが当然の筋道じゃなかろうかと考えます。しかしこれと不可分の関係において、内閣政策としては同時に、これは別の面において治安やあるいは防衛の問題を考えるべきではなかろうかと考えるわけでありまして、この条項削除ということは安保条約改定の大きな眼目をなしていることでありますから、もしこれが藤山外務大臣の所期の目的通り進まなかったならば、安保条約の改正のまさに画龍点睛を欠くと私は思うわけであります。しいて外務大臣所見を承わろうとは思いませんが、外務大臣とされてもこりの条項は削った方がいいという、当初はお考えのようであったと思いますが、どうでございますか。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は個人としては今でも佐々木君の意見と全く同じであります。しかし外交世論背景をもってやることが必要でありますので、それらの帰一を待って進めて参りたいと思います。
  24. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 党内意見を聞くことも必要でありますし、また国民意見を聞くことも必要であります。同時にまた言わない国民の声や、見えない国民の姿というものもやはりお考えになる必要があると考えます。ややもすると最近どうもわが岸内閣もそういう声におびえて、一つの幻影におびえていないとも言えないような状態でありますが、私はやはりこういうときにはきぜんたる態度をもって臨まれることが必要でなかろうかと思います。そこでもう一点、これは今度の条約改定のそれこそ一番大きな問題点でありますところの防衛区域条約適用区域の問題でありますが、私はかって総理大臣がこの国会において言明なさった当時は、沖縄小笠原は当然適用区域の中に包含するというお考えを表明されたやに承わっておりますし、また外務大臣も当初にはそのお気持であり、そういう意味のことを表明されたように私たち考えておるわけでありますが、最近の藤山さんのお説によりますと、沖縄小笠原は除外するのだというような方向に固まりつつあるように承わるわけであります。私はここであなたとこの問題について議論しようとは思いませんが、少しこの問題について後退してきたという形のように思われますが、いかがなものでありますか。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は非常に重要な問題でありますので、おそらく総理大臣も私といたしましても、この問題について特定の意見を申し上げたことはないと思っております。今日各方面においていろいろの議論があります。その点は両方の議論を私も承知しております。それらがおのずから議論の末において帰一していくものではないか、こう考えておりますので、また何らかの形で帰一しなければならぬと思っておりますので、そういう面がきまりました上で、交渉はいたしたいと思っております。
  26. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は記憶いたしておりますが、それはかつて岸総理大臣沖縄小笠原を新しい防衛条約区域の中に包含することは、防衛に関する限り施政権の一部が日本に返還されたものと見るべきであるとおっしゃったようであります。私はそういう議論はやや三百代言的であるということを申したのでありますけれども法制局長官もその席にお見えになっておりまして、私の説には反対で、むしろ総理大臣の説を主張されておったことを私は記憶いたしております。その当時からの総理気持は、沖縄小笠原は当然約条改定の際には含まれるものというお考えではなかったのでありましょうか。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 委員会等において、入れた場合にどう、あるいは入れない場合にどうという御議論があったかと思います。そういうことに関連して、入れた場合にはこういうことも起るのじゃないかというような点で総理大臣が答弁されたのではないかと思うのでありまして、われわれとしては、この問題は重要な問題でありますので、今日まででも、入れる、入れないについて私見を申し述べたことはないつもりであります。
  28. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 外務大臣はこの沖縄小笠原の問題については今までの日米交渉におきましては、今の段階においてはどういうことになっておるのでございましょうか。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は、交渉での一番大きな一つ問題点だと存じております。従ってこの問題点を扱いますのには、外務大臣独走という非難のないように世論帰一を持って交渉を開始したい、こう考えております。
  30. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 この沖縄小笠原の問題について、アメリカ側は何か意思表示はいたしましたですか。
  31. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特別な意思表示はいたしておりません。
  32. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 これは沖縄小笠原を入れても入れなくても、条約は妥結されるお見通しでございましょうか。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交渉のことでありますから妥結するかしないかということをここで申し上げることは困難だと思いますが、困難な交渉でありましょうとも、帰一されました国論に従いまして、私としては全力を上げて参りたい、こう考えております。
  34. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 この交渉は今のところいつごろ妥結にいって、そしていつごろ国会への批准の手続等をなさるようなお手はずでありましょうか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては今日でもなお予定されておりましたような方針のもとに、通常国会の再開を目途として努力をして参りたいと思っております。ただ先般来の議会正常化その他の関係上、これらの問題につきまして十分一般的な討議が尽されておらぬし、おのずから帰結されている点も明瞭でないのでありますから、従ってそういう点の進行状態とにらみ合わして参りますと、若干おくれるのではないかというような予想を感じておる次第であります。
  36. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 日米交渉結論は、いつごろまでにあげるような考えでございますか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては取り上げました問題のことでありますから、この交渉につきましてもむろん全力を上げて、できるだけ早く予定通りやって参りたいと思っております。ただ問題点等につきまして種々御議論もあります、ある場合には白熱的な御議論もあるのではないかと思うのであります。そうした問題点等につきましてのある程度の御意見がきまり、またそれが内閣において採用される時期等の問題もございますので、今私からどの程度になるかということは今日の段階では申し上げかねると思いますが、私としては予定通り努力を続けて参りたい、こう思っております。
  38. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私がこれから承わりますことにつきましては——今までの話はまだ外交交渉段階でもありますから、私もいろいろ御遠慮申し上げて私見をあまり申し上げなかったのでありますが、外務大臣並びに政府所見をきわめて明確にしていただきたいと思います。  ということは、最近中共並びにソ連日本に対する一種の内政干渉がましい発言がしきりに行われております。そして安保条約改定をめぐって、日本中立政策をとるべきであるというようなことを表明いたしております。われわれとしましては、内政干渉もはなはだしいことでありますし、まことにけしからぬ次第てあると考えているわけでありますが、この中共ソ連日本に対して中立化を押しつけて参ります政策に対しまして、外務当局は一体いかなる所存でもってこれに対処されるか、その考え方一つ明らかにしていただきたいと思います。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本防衛問題自体は、日本国民みずからが決定することでありまして、他国からの干渉によってこれを決定すべきものでないということは当然のことであります。私ども外務当局もその信条のもとに対処いたしているわけであります。従っていささかもそういう意味において御心配御無用かと存じております。
  40. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 その中ソ両国日本に対する中立の押しつけがましい態度に対しまして、もとより一国の政府内政干渉がましいことに承服するわけがないことは、きわめて明らかなのでありますが、一体中立政策というようなものが日本の今日の段階において考えられるというようなお考えがございますでしょうか。そういう考えはもとよりないと私は考えますけれども、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中立政策というのはどういうものであるか、はっきりした点もわからぬと思いますが、私どもは逆の面からいいまして、日本の将来のために自由主義陣営と手を握っていく、しかも自由主義陣営の中の一番有力なアメリカとほんとうに緊密な連絡の基礎の上に立って手を握っていくということにおいて、われわれの方針は変っておらぬのであります。従って安保条約改定にあたりましても、その心がまえをもってこの問題を取り扱っているわけであります。
  42. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 社会党におきましては、日米安全保障条約の廃棄と申しますか解消と申しますか、そういう軍事的な条約というものはない方がいいというお説であります。その根拠は現在の中ソの軍事同盟、これもなくする、そのかわり日本アメリカとの間にも一切の軍事的な取りきめをなくしてしまって、そして日本中立的な政策をとった方がいいのだ、こういうふうなお考えのようでありますが、社会党考えておりますような日米安保条約解消論、こういう考え方に対します外務大臣のお考え——国民の中にもそういうことを考えている者もあるわけでありますから、一つこの際これにつきまして所信を明確にしていただきたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は現在の国際情勢下におきまして日米安保条約解消するということは、日本のためにならぬと考えております。従いまして安保条約をもっと改善する必要があるのだということを考え、その点について努力をいたしておるのでございまして、アメリカソ連との間に今日のような不信感があります時期には、われわれとしてはたとえば四カ国の安全保障に関する取りきめというようなことは不可能だと考えております。
  44. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私ももとよりそう思いまするし、社会党の中にも、きわめて良識派に属する西尾末廣君のごときは、いち早くこの安保条約解消論のごときは暴論である旨を指摘いたしておるのであります。従ってこの新しい、日、米、ソ連中共の四ヵ国間に、日本中立を保障するような条約ができようとはわれわれは夢にも考えておりませんが、そういうことに事情のわからぬ人は迷う向きもないわけではないわけであります。この間の外務大臣の懇談会におきまする演説内容におきましては、そういう点につきましてもかなり明確な態度を表明されておる。私はどうも今まで物足りなかったのは、保守党としての外交政策というものに、そういう社会党のものの考え方とは根本的に対立した考え方のあることを何らかの機会に表明していただきたいとかねがね考えておったわけでありますが、今度の安保条約改定をめぐって、保守党としての進むべき外交の路線がやや明らかになってきたことを私はうれしく思っておるわけであります。  そこで最後に、一つ外務大臣に所信を承わって、私の時間が参りましたので質問を終りたいと思いますが、どうかそういう考え方に立って、この安保条約考えていただきたい。現に現行日米安全保障条約の前文の中にも、極東において無責任な軍国主義があるということの前提に立っております。また昨年六月、岸総理大臣アメリカ訪問の際にアイゼンハワー大統領との間にかわされました共同コミュニケにおきましても、日本がアジアにおいて共産主義の脅威の前に立っておるという意味のことを述べられております。先般の藤山外務大臣とダレス国務長官との間に行われました会談の際の報告におきましても、同じような趣旨のことをうたわれておるのを私は知っております。そういうわけでありまして、現に中ソ両国の間には厳然として中ソ軍事同盟というものがあるのです。そしてそれが日本アメリカというものを仮想敵国として想定をいたしておるわけでありまするから、従って今度の安保条約改定に当りましても、当然そういう危機に日本が立っておるということを前提としてものを考えなければならぬと思います。従ってこれから予想されますところの新しい日米間の安保条約と申しますか、その軍事的な取りきめにおきましては、多分に共産主義侵略に対して防壁を作るのだという、ものの考え方に立つべきものであると、かように私は考えて、そういう構想に立って安保条約交渉に臨むべきである、かように考えておるわけでありますが、この際それらについての御見解を承わって私の質問を終ることにいたします。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私といたしましては、今御指摘のありましたように、国際共産主義の脅威が現在あるということは事実だと思っております。またそういうことを考えながら外交をやっております。国際共産主義の脅威ということと、共産国それ自身とは若干違うのであります。共産国であっても親善関係を続けていくという点においては、外交は変りないわけであります。共産国でも国際共産主義をモットーとしておらぬユーゴのごときもあるわけであります。そういう点を見分けながら、しかし国際共産主義の脅威のある事実は、私は厳然として認めていかなければならぬと思うのであります。
  46. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そういう共産主義の脅威があるという前提に立って、そういうものの考え方に立ってこの安保条約改定というものを考えるべきであると私は考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんただいま申し上げましたように、国際共産主義の脅威があるのであります。それがやはり日本の外部からの侵略、あるいは安全を守る一つの大きな理由であると思います。
  48. 櫻内義雄

  49. 大西正道

    大西委員 私の質問問題点は、安保条約とそれから日韓問題であります。時間が三十分余りですから、十分突っ込んだ質問もできないのは残念ですが、かいつまんで申し上げます。  外務大臣は、これまでいつも機会あるごとに、年内に安保条約改定交渉はまとめて通常国会再開劈頭に出したい、出すのだということを非常に自信を持って言っておられたようでありますが、どうやらこのごろは警職法を契機として自民党の内部が大ゆれにゆれておるようであります。この安保条約改定の問題につきましても異論百出して収拾がつかないようでありますが、外務大臣は依然として初めの既定方針通りこの交渉を続けられる考えか、あるいはまたその見通しがあるか、この点であります。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私といたしましては、この条約改定に当りまして、初めに予定しておりました努力は、今もって続けておるわけであります。従ってできるだけ世論帰一を待って、そして一日も早く妥結するように、私としては努力をして参りたいと存じております。ただ非常に重要な問題点もあることでありますから、いろいろ各方面で議論のあるのもまた当然だと思うのでありまして、それらの問題に対して一日も早くまとまりまして、交渉を進めるように努力をして参りたい、こういうように考えております。
  51. 大西正道

    大西委員 世論帰一ということを言われますけれども、この交渉が停頓しておるというその原因の一番のありかは、これは与党内政府、閣僚内にもこの問題についての意思の統一がないということ、このことは自明のことなんです、天下公知のことなんです。これについて世論帰一を待つというようなことを言われますけれども世論帰一ということを言われる前に、まず与党内世論の統一がなければならぬと私は思うのであります。今回のこの交渉の遅延、そして醜を天下にさらしておるこの原因は、自民党内世論の不統一である、こういうように私は見るのであります。もちろんそれのみとは言いませんが、それが最大の原因であると考えますが、外務大臣いかがですか。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は、御承知のように重要な問題でありますから、閣僚におきましても党におきましても、いろいろ議論のあることは当然であります。民主主義の政治の上において、お互いに議論を尽していくということもまた当然だと思いますが、しかしながら外国との交渉のことでありますから、やはり結論をなるべく早くつけていきますこともまた必要なんでありまして、いたずらに議論を楽しむことによって遅延して参るということは、好ましいことだとは思っておりません。従って私といたしましては、できるだけそれらの議論が進められて、そして最終的帰一を見ますように、努力をしておる次第でございます。
  53. 大西正道

    大西委員 議論を戦わすことはこれはもちろんけっこうなことであります。しかしながら、政府としては交渉を始める前に、一定の方針が確定していなければ、何を根拠にして、何を目的にして対米交渉を開始したのです。この点はつとに、私はこの交渉が始まったときにあなた方に申し上げておるのです。当時はあなたと総理大臣との方針は明らかにされないけれども、一応きまっておったようであります。ところがいよいよこれが交渉段階になり、警職法につまずきを見せると、異論百出してきた。あなたのようなことを言われるならば、交渉は一体何を目的にして進めるかということがわからなくなります。私はそういうことを申し上げたい。私は藤山外務大臣国内国民の意思というものに対するつかみ方、あるいはアメリカの対日政策というものに対する理解、こういうものが非常に甘かったと考える。ただ国民はこの安保条約改定してくれという希望がある、だから私は話をしたところが、向うが応じてくれたといって、あなたがにこにこ顔で帰ってきて、さっそくこの交渉にかかった。私は、そのときに警告したのです。アメリカ安保条約改定に応ずるというゆえんのものは、決して日本に同情的なとか、あるいはあなたが言われるような日本の自主性を大いに認めていこうとかいうような、そういう面のみではない。明らかにソ連、中国に対する戦略上の理由から、特にもっと具体的に申せば、台湾海峡を隔てたあの緊張のために、この日米安保条約改定に米国が積極的に乗り出してきた。だから政府としてはかなりこれは腹をきめてかからなければ、これを機会に安保条約改定していこう、よい方向に改めていこうという国民気持を受けて交渉に入ったが、結果するところは、かえってアメリカの対ソ連の戦略上の一つの手先に使われておる。こういう危険が十分あるからということを私は警告した。ところがあなたはそれに対して、非常な安易な気持でこの交渉に入られた。出てきたアメリカのいろいろな態度を見ますと、沖縄をこの防衛区域に含めろ、あるいは極東に対するところの安全と平和の維持のために、軍隊を勝手に出動することができるというのを、さらに範囲を広げて西太平洋まで含めようという、いろいろの問題が出てきておるわけであります。そういうように考えますと、与党内の無統一ということと、それからアメリカの意図に対する把握の浅さということと、国民の批判というものに対するあなたの反省というものは、私は実に甘かったと考えるのであります。今日この安保条約が停頓しておる、そして醜を天下にさらしておる、対外的だけではありません、対内的にもそうであります。私どもは初めからこういう交渉を進めることは不可なりという立場に立っておりますけれども、保守党並みに考えましても、こういう渋滞というものは、まさにこれは醜を天下にさらしておるのであります。この責任は私は政府にあると思う。特に外交の責任者でありますところの藤山外務大臣が十分これは反省していただかなければならぬと思うのでありますが、私はこの際、藤山外務大臣の心境を聞いておきたいと思います。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題を取り上げましたことは、日米間の緊密な関係をさらに一そう強化していくということにあることはむろんでありまして、ただその緊密な関係を強化して参るためには、あくまでも日本の自主性を認めて、そうして日本が相ともに手を握っていけるような状態のもとに安保条約改定する必要があるという立場からであります。この点については、私は、党内に異論があろうとも思っておりませんし、それに反対する議論も聞いておりません。ただこうした問題を扱って参ります場合に、いろいろな議論党内で出ることは、これは私は具体的な問題を扱います場合には当然だと思います。従ってそれらの問題については、条約交渉に入ってから、個々の問題として、いろいろ意見のある方の意見を聞いていき、またそのいろいろな意見が調整さるべきであろうと思うのでありまして、そういう意味において、党内が現在安保条約改定そのものに反対しているということは私はないと思っております。同時に、アメリカ側考え方につきましても、アメリカがこれを機会に、何か日本にさらに大きな自分たち考えを押しつけていこうというような気持を持っておらないということは、私は確信を持っていたしておる次第であります。ただやはり日本国民の願望に従って、これらの問題を解決していきますこと自体が、アメリカ自身の大きな意味における日米関係の調整にもなるということを、私は、アメリカも確信しておると思うのであります。そういう見通しのもとに、私がやって参ったことでありまして、ただいろいろな政治上の、議会運営その他のために若干時日がおくれましたことは、私としてはまことに遺憾でありまして、そういう点についての見通しが甘かったといわれれば、あるいは私も政界初年生でありますから甘かったかもしれぬと私は思っております。
  55. 大西正道

    大西委員 ふざけた態度がしまいにちらっと見えて、私は非常に遺憾に思うのであります。交渉の混乱しておるのは国会運営の正常化云々というようなことを言っておられますが、これはおよそ本質と離れた問題です。国会運営の正常化のためにこの安保条約の問題がつまずいたというわけではないでしょう。私はそういうことのためにあなたの責任を転嫁されるという態度は、非常に残念であります。今やこの交渉を始める前に、それは国民の中からいろいろな批判が出ることは明らかだ。しかし閣内においてもこの問題に対して全く相対立しておる考えが出ておるじゃないですか。これは民主主義の一つの討論の過程だからといって、これでもって責任を回避することは全く卑怯だと私は考えます。こういうことでは何のために交渉するか、目的はどこかということが全くわからなくなってしまう。そういう意味において、私は、外務大臣はもっと真剣に責任を考えられなければならぬと思う。私はこういうことを外務大臣が言っておられるのを聞いた。いろいろ異論が出て困るけれども、これで打ち切るわけにはいかぬ、それから日本から改定を申し込んだのだから、こういうことを言っておられました。新聞にも出ております。しかしもうここまできた以上、そういう行きがかりにとらわれず、どっちが申し込んだのであろうが、話がまとまらなければ仕方がないから、いさぎよくこの交渉を打ち切るべし、こういうことも一つ考えておくべき点ではないかと思うのでありますけれども外務大臣は今日までの事態の推移の経過を見て、またその見通しの上に立って、この際この交渉を打ち切るべし、そうしてあなたは責任を感ずべきだ、私はこう思うのでありますが、これを一つ最後に聞いておきます。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私の言葉が足りなかったから、何か国会に責任を押しつけるような形にお聞き下すったら、それは誤解でありますから、お許しをいただきたい。そういうような国会におけるいろいろな問題がありましたために、党内その他にも相談をする機会がなかったわけでありまして、そういうことを私は意味しておったのであります。国会自身の正常化云々で国会に責任があるということを申し上げたわけではないのでありますから、その点は御了解願いたいと思います。  私は現在までこの交渉を、ただいま申し上げましたように、正式には三回の交渉をいたしております。その三回の交渉で、これからいよいよ問題点に入っていくわけでありまして、私としてはぜひともこの安保条約改定をやりますことが、日米間のきずなをかたくする上におきましても、国民の自主独立の気風から考えましても、当然やっていくべきものであるという信念をもって現在やっております。従いましてこの交渉が、日本国民の問題によってわれわれの考えておりますことがアメリカ側にいれられなかった場合には、当然交渉を打ち切るということもあり得ましょうけれども、まだ交渉の過程において、それらもはっきりしておりませんうちに交渉をやめるというような考え方は、私は毛頭持っておりませんし、また私が申し出た以上、当然それは最善の努力を尽して、交渉はやってみるべきだという確信を持っております。
  57. 大西正道

    大西委員 この問題にあまり長く時間をかけるわけには参りません。与党内での意見の対立する問題点がいろいろあるようでありますから、それらについてもあなたの考えと、そうして問題点を一応聞きたいのでありますが、私の方から一つ申し上げます。  それは今、佐々木委員もお触れになりました問題であります。国内に大規模内乱騒擾が起きた場合に、政府の要請によって米軍が出動することができるということはまさに屈辱的な、例のない条項でありますが、これが現行安保条約であります。自主性の確立、あるいは双務的というような立場を貫く以上、こういう屈辱的な条項というものは削除するのが理の当然だと私は思う。ところが自民党内外交調査会のこの問の話し合いの結果は、これを依然として置いておくべきだという意見が圧倒的に強かったと聞いて、私は新聞の記事の間違いではないかと思って見たのでありますが、どの新聞にもそう書いてある。これほど国民の感情と離反した考え方はないと思う。感情のみではありません。一体今、日本国内アメリカの軍隊に手伝って鎮圧してもらわなければならないような暴動の起きる可能性があるかという問題である。警察は数十万整備されております。自衛隊は二十万になんなんとする力を持って、そうして鎮圧できないような暴動の起る懸念がありますか。私はそういうことは断じてないと思う。これに対して、今佐々木委員質問に対しまして、まああなたのかよわき考えらしきものが表明されました。しかしあなたは、こういうものは当然もう削除すべきだということを前もって言っておられたのであります。私は当然のことであると思うが、与党内の事情を見ますと、存置すべしというような意見が強かったという。これはまさに国辱的なことだ。国会内において自民党は三分の二を占めておるといっても、国民の九九%は、こんなものが現行条約にあるということになれば驚くでありましょう。外務大臣は勇気を持って、ここに確信をもって、こういう条項はいの一番に削除するということをはっきり言っていただきたい。与党内のそういう暴論に迷わされる必要はありません。この際その点を明言願いたい。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど佐々木委員に対してお答えしました通り、私はこの点を問題点としてワシントンでも持ち出して話をいたしておるわけであります。同時に、私個人としては、佐々木委員にお答えしました通り、この条項削除すべきじゃないかという考え方を持っております。
  59. 大西正道

    大西委員 あなたが考えるのみならず、いやしくもこういう議論が与党の中から出てくるということについては、私は悲しむべきことであると思う。  それから沖縄の問題であります。これもあなたがおっしゃる通り、まことに重大な問題でありますが、初めの政府、与党の考えは、沖縄小笠原防衛区域に入れるという動きに傾いておった。ところが世論の反撃にあって、このごろどうやらぐらついてきて、最近あなたもやはりこの国民世論に耳を傾けて、それはこの際防衛区域に含めることができない、含めるということは法規の上からも違反であるし、軍事的に見ても非常に危険なものである、こういうふうな賢明なる判断から、沖縄適用区域に入れないというふうに考えを固めておられると思うのでありまするが、今のお話を聞きますと、またぐらぐらしておるようであります。それが党内の派閥に対する説得工作なれば、私は了といたしますけれども国民にそういう事情はわかりません。やはりこの委員会を通じて明らかにしていただかなければなりません。そういう意味におきまして、私はもはや沖縄小笠原防衛区域に含めるということについては、政府は賢明なる判断のもとに思いとどまったというふうに見てよろしいのではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題はまことに重要な問題でありまして、たとえば沖縄議会等は含めてもらいたいという決議を私のところに持ってきております。そういうようなことで、党内ばかりでなく、国民にもいろいろな考え方があろうと思います。従ってわれわれとしてはそうした考え方帰一するところを待って、そして交渉に応じて参りたい、こう思っております。
  61. 大西正道

    大西委員 沖縄の議会が防衛区域に含めてくれという、そういうあなたの受けられた陳情は私は知りませんが、私はそうではないと思います。この間の沖縄の議会の決議では、むしろこの機会に施政権の返還を強くアメリカに出すべきだ、こういうふうに私は決議していると見ておるのであります。沖縄防衛区域に含めるという問題につきましても、あるいは日本内地と同じような形で防衛区域に含めるというような考え方もありましようし、あるいは今のままで日本がこの防衛義務を負うというふうな考え方、これはやや違っておりまするが、こういうふうな考え方があるわけであります。もしあなたのところに参っておりまする陳情が、沖縄防衛区域に含めてくれという陳情であるなれば、私はその趣旨をよく御理解願わなければならぬと思う。私ども理解する範囲では、沖縄防衛区域に含めてくれというその理由は、ただ単に今のままで沖縄防衛区域に含めてくれ、こういうことをいってきているのじゃないと理解しております。沖縄施政権の返還、これは沖縄の議会が前に決議したことであり、あるいは日本国会に対しても、政府に対しても強く要請してきたことは、あなたも御承知の通り。日本国会沖縄施政権返還を決議しておる。施政権の返還と時を同じゅうして並行的に考えていくということになれば、私はわかる。こういう考え方から施政権の返還、そうして沖縄防衛区域に含める、こういう考え方沖縄住民の真意であると私は考えております。今のままにしておいて、住民の基本的人権を拘束し、そういうような状況のもとで沖縄防衛区域に含めてくれといっておるものではないと考える。もちろん一部の人にはそういう考え方の人があるかもしれませんけれども、それはほんとうに沖縄住民のためでもない、こういうことを十分に考えまして、今申されたように、沖縄のそういう住民の考え方というものに皮相な解釈をしてはならぬと考えるのであります。  この問題につきましてもう一つ私が聞いておきたいのは、初めに沖縄防衛区域に含めるというときに、今佐々木委員も触れられましたが、岸総理大臣はあなたと列席の上で、防衛区域に含めるということになれば、それはそこに日本施政権の一部であるところの軍事行動権というものが認められる、それはイコール沖縄施政権がそれだけへこむことになるんだという——へこむという言葉は非常にしろうとくさい表現でありましたけれども、それだけ施政権がへこむことになるんだ、だからこれは潜在主権を持っておる日本が将来施政権を返還させるための一歩前進の体制を作るのである、こういう積極的な意味があるということを言われて、どうやら沖縄防衛区域に含めるという根拠にしておられたように私は考えるのでありますが、こういう考え方は私は間違っておると思う。これは国際法学者も政治学者も、こういうことは成り立たないということが定説になっておりますが、こういう間違った、以前の岸総理の、それだけ米国の施政権がへこむんだというような考え方外務大臣は肯定なさいますかどうか、当然肯定なさらぬと思いますが、危険でありますから念のために聞いておきます。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の岸総理の答弁もいろいろ仮定の上に立った御質問があったのでありまして、その上で若干の法律的な解釈等について言及されたことだと思うのでありまして、沖縄を入れるとか、あるいはそれによって法制上どうなるとかいう最終的なことを言われたとは私は考えておりません。私はこの問題は、沖縄を入れる入れないにかかわりませず、施政権の問題と安保条約の問題とか防衛上の問題とかを混淆されることは適当でないと思うのでありまして、従いまして施政権の返還というものは、入れる入れないにかかわりませず、外交交渉をもって常時いつでもアメリカ側に要請していくべきものだと考えております。
  63. 大西正道

    大西委員 次に内容の問題で、あまり触れられておらない問題で非常に重要な問題は、いわゆる駐留米軍が極東の安全と平和の維持のために寄与するということでもって、日本区域以外に自由に出ていくことができるのであります。この問題は非常に重大な問題でありますが、従来あまり論議されておりませんから、私は外務大臣見解を聞きたいのでありますが、この種の安全保障条約あるいは相互防衛条約等の条約におきましては、共同防衛区域以外に一方的に軍事活動区域というものを認めて、しかも広範な極東とか西太平洋というところにかってに駐留米軍が出ていくことができるというような規定は、私はこの種の条約には例のないものだと考えるのでありまするが、外務大臣いかがですか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題については当然われわれとしては、協議事項の中に入れてもらいたいということを主張するわけであります。
  65. 大西正道

    大西委員 協議事項の中に含めるというその日本政府の主張は、どういうことでありますか。新しい観点に立ってこういう異例の条項削除するのが当然である、こういう御主張で交渉なさるという意味であると思いますが、いかがですか。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の精神から申しまして、当然第一には日本本土を侵略から共同で守るということが本旨だと私は思います。従ってここにおります駐留米軍がどこかにかりに出ていって、他の作戦その他に関与するということについては、当然協議をしてもらいませんければ、日本自身の侵略に対しても欠陥を生ずることになろうかと思います。
  67. 大西正道

    大西委員 そうしますと、あなたは、この問題に対しては事前に協議をしてくれ、こういう主張であると私は了解するのであります。しかし私どもは、たびたび申しておりますように、こういうふうな条項があると、これは日本の関知しないところの極東における紛争に日本は自動的に関与する、すなわち不幸なる戦争に巻き込まれるという根拠がここにある、こういうことを指摘してきておるのであります。私は、こういう意味から申しましても、すべからく日本の安全を保障するという意味なれば、それを主に置くならば——米国の手先になるというならば別ですよ。あくまでも日本防衛、安全ということを第一に置くならば、この条項は、新しい交渉におきましては、事前協議というようななまぬるいことでなく、これは当然この種の条約の通例に従って削除すべきであると私は考える。  私はそれを根拠づける一つの歴史的な資料を申し上げます。たしかこれは朝日新聞の座談会であったと思いますが、前の条約局長の西村さんがいろいろと他の学者と話をしておられる。そこにはこの安保条約を作るに至ったいろいろな経緯が述べられております。その中にどういうふうに書いてあるかと申しますと、「「在日米軍はもっぱら日本に対する外部からの武力攻撃に対して、日本の安全維持に寄与するため使用する」という文句になっていた点です。交渉の終りの方の段階になってから、この点について、米側から違った考えが出された。」こういうふうに言っておるのであります。この違った考えがどこから出てきたかということは後に述べます。しかしこの安保条約締結当時——当時の首相は吉田さんでありますが、われわれから申せば、ずいぶんつまらぬことをしてくれたと思っております。この吉田さんさえも、駐留米軍ははっきりとこの日本だけを守る、もっぱら日本防衛に任ずる、こういうふうに大きく制限しておるのであります。今のように日本におるところのアメリカの軍隊はどこへ行ってもいい、フリー・ハンドだ、こういうことでなしに、あくまでも当時の日本の主体的な立場というものは、もっぱら日本防衛のためにだけ、この米軍を使うようにしてもらいたい、こういう主張をしておるのであります。私は、これこそ、われわれと立場は違うけれども、しかしもし日米の間に日米安全保障を作るとすれば、この立場を貫かなければならぬと考えるのでありますが、この昔の事実とかんがみて、今の外務大臣のこの問題に対する決意のほどを聞きたいと思うのであります。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はこの点も問題点としてあげておるわけでありまして、われわれとしてはただいま申し上げたようなことで、交渉に臨んで参りたいと存じております。
  69. 大西正道

    大西委員 ただいまというのは、あなたは事前の協議をするということを話し合いのテーマにしておられる。それには安保条約締結当時の日本態度よりも大きく後退しているということは私は認めなければならぬ。そういうことで、どうして日米安保条約改定ということになりますか。交渉のスタートからして数段退歩しているじゃないですか。そういうふうに思いませんか。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は後退しているとは思っておりませんが、特に現行安保条約を改正する意味からいいますれば、協議をいたすことによって前進するのだと考えております。
  71. 大西正道

    大西委員 全く便宜主義の安易主義で、言うべき言葉もないです。私はそういう意味から、少し吉田さんにも見習いなさいと言いたいと思うのです。それから何がゆえにそういう日本の主張が葬り去られたか、そしてその条項が入ったかということは、言わずと知れた、当時の朝鮮事変の問題であります。それから今回の安保条約改定も、ちょうどその当時の朝鮮事変と同じく、今は台湾海峡の問題があったのであります。ですからこの問題について改定の趣旨というものはおのずから明確であるから、政府はよほど心してかからなければならぬ。ただ交渉に応じたからといって浮き浮きしておってはだめなんですよ。ということを私は先ほどから言っておるのである。今後とも一つ決意を新たにして交渉していただかなければならぬと思うのであります。  それからもう一つ防衛分担金の問題でありますけれども、過般の新聞によりますと、予算の編成について大蔵大臣は昨年度と同じく特別削減の方式をとりたいと言っておるのに、外務大臣はどうしたことか、一般方式によっていきたい、こういうことを言って、意見がまとまらなかったといっておるのでありますが、これは外務大臣としてはどういう見解でこういうことを言われるのであるか。防衛分担金それ自体が根本的に検討すべき段階にきておるということは、この前申し上げた通りである。しかも昨年から在日米軍はたくさん帰還しておるのである。そういう事情から考えましても、どうして外務大臣は少くとも大蔵大臣の主張に同調して特別削減の方式に大きく踏み切らないのか、私は理解に苦しむのであります。どういう御心境でありますか。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましてはまだ大蔵大臣とも協議をいたしておりません。また大蔵大臣が現在すぐに交渉をしてくれということをまだ言っておらぬのであります。われわれとしてはそれらの問題を待って交渉すべきものは交渉し、交渉すべからざるものは交渉しないという態度をとっているだけでございます。
  73. 大西正道

    大西委員 それは予算の編成ということになりますれば、まず大蔵大臣の意思決定が先でありましょうけれども、事外交の問題について、特にこの防衛分担金の問題は、日米安保条約行政協定に基くところの問題であります。こういう問題に対して外務大臣は、定見を持って、むしろ大蔵大臣をリードし、指導するという立場に立つことが、私は必要であろうと考える。しかもそれに対して意見が不一致である。こういうことで、大蔵大臣の決定を待ってからとるべきはとり、とるべからざることはとらないということでは、私は何としても自主性がないと思うのであります。もう少しこの問題に対するあなたの見解を聞きたい。私に言わせますれば、この種の防衛分担金というものはこの機会に——条約改定が実現すればむろんのことでありますが、この機会に全廃すべきものだ。根拠薄弱であります。防衛分担金が設定された、あるいはその額が決定されたいきさつは、外務大臣はよく御承知の通りであります。こういうことはまことにもって不合理であります。諸外国においては、むしろアメリカが軍事基地を置くためにたくさんの金を現地に出しているのじゃないか。その反対のことをここでやっておる。だから私どもの立場は、防衛分担金それ自体に対して一つ再検討を要すると思うけれども、少くとも削減の方式において外務大臣がそういう消極的な態度であることはまことに遺憾であります。もう少し積極的な態度に出られることを、私は望みたいのであります。  最後に日韓問題について触れます。日韓問題は、この前も私がたびたびこの委員会において取り上げました。政府の明確なる態度、その決断を要望して参った。ところが岸総理大臣もあなたも、今は友好な雰囲気のうちにあるからもう少し粘り強く努力していきたい、こういうことを言われて、はっきりした態度を示されなかったのであります。しかし私は、今回の交渉も必ずうやむやのうちに、何ともならないままで終ってしまう、解決の見通しはないということを予言をしておいた。不幸にしてこの予言はまた的中いたしました。まことに残念なことであります。私はこの間この日韓会談の問題の推移について精細に見守っておりました。日本政府は暮れも近づくようになりますと、いろいろなことを裏から表から手を打ったように聞いておるのでありますが、外務大臣にお聞きいたしまするけれども、日韓交渉に対して私がここで質問申し上げました以後、どのような打開の方策、努力が講じられましたか、一つ要点だけをお伺いしたいと思います。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談の進行が遅々としておりますことは、まことに遺憾でありまして、その点は御同感なんでありますが、しかし相手のある交渉のことでありますから、最大の努力をしながらできるだけ粘り強くあきらめないでやって参りますことも、必要なことだと私は考えております。日韓交渉の現在の段階は、御承知のように各種の委員会が開かれておりますが、一番大きな、主点となる委員会というものは、漁業委員会だと思います。漁業委員会の進行を見なければ、他のいろいろな問題だけを解決して参るということは、私は必ずしも適当なことではないと思う。従って漁業委員会につきまして、できるだけの努力を払ってきております。先般日本といたしましては、魚族保存の趣旨から申しまして、ある地区を限りまして、魚族保存のために適当な話し合いをしていきたいというような案を提出しておりますけれども、まだそれに対して返答をいたして参っておりませんし、その基礎の上に立って交渉をするという段階にも至っておりません。年末にはなりましたので、年末年始にかけて休会し、なお粘り強くこれらの問題については努力をして参ることが、必要だと考えております。
  75. 大西正道

    大西委員 粘り強くと言ったって無為無策、何にも効果がない、私はそのことをたびたび言っておるのであります。しかし聞くところによると、政府の方から、これは裏口からであろうと私は思うのでありますけれども、何か今の日韓会談とは違ったハイ・レベルで一つ交渉を持ちたい。岸・李承晩会談、あるいはまたそれが消えると大野副総裁の派遣、こういうことがいろいろと取りざたされたのでありますが、そういう動きがあったのでありますか。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談が、現在のような非常に遅々とした進行状態でありまして、従ってそれに対して打開の道をこうもしたらいい、ああもしたらいいといういろいろな議論がありますことは、これまた事実だと思います。しかしながら政府といたしまして、ただいま御指摘になりましたようなことを正式に取り上げたことはまだございません。
  77. 大西正道

    大西委員 なおまたその際に、今のような停頓状態を打開する一つの方策として、日ソ方式でまず平和の回復をやる、国交の回復をやる、問題はあとに回すんだ、こういうことを私は聞いておるのですがいかがですか。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御議論としてはそういう議論もございます。しかし政府としてそういう申し入れをいたしたことはございません。
  79. 大西正道

    大西委員 あなたはこの前に、矢次何がしというものが岸総理の特使として向うに行ったことについても、最後の最後まで御存じなかった人のいい方でありますが、あるいは今回のこの交渉でも、私が質問申し上げたようなことも、あなたの御存じないところで、いろいろと黒幕の暗躍があったのかもしれないと私は思う。むしろその方が私は事実に近いのではないかと考える。と申しますのは、朝鮮の政府筋の新聞の報ずるところによりますと、やはり向うの外交部の長官、それから金次官、こういう責任ある人が、こういうふうな交渉には応ずることができないということをはっきり言っておるのであります。これは私は、単なるこちらの新聞報道によってこういうような言明をしたとは考えられない。このように見て参りますと、あなたの知らないところの例の黒幕によって、何かこういう動きがあったのではないかと考える。外務大臣がこれを知らぬということは、まことに人よしの幸いであります。しかしこれは国際的に見ますと、まことに困ったことであります。政府として正式にそういう形の会談を申し入れたことはなかったとしても、ある筋からそういう話し合いを持ったらどうかという打診があって、あっさりと断わられてしまっておるということは、まことにもって外交上失態だ、醜態だと私は思うのです。こういう態度をとっているから、いつまでたっても断固とした処置がとれないから、日韓会談の進展はあり得ないのである。私はこういう意味からいって、外務大臣は特使派遣の問題につきましても見解を異にせられて、ややわれわれに近い考えを持っておられたので意を強うするのでありますが、こういう態度に対しても、十分監視をせられて、そうして黒幕外交、二元外交のないように努力をしていただきたいと思うのであります。  それからもう一つの問題は、また年の暮れを迎えまして、釜山に抑留されておるところの抑留者が帰ることができないような状態になっておるのであります。これに対しまして政府は何ら効果ある手を打っておりません。例年のごとく若干の見舞の資金ぐらいを用意した程度にとどまるのであります。ここに抑留されておる人たちは、全くゆえなきゆえをもって抑留をされておる。異国の地で、しかも劣悪なる条件のもとに苦しい年を越さなければならぬ、こういうことに対して私ども政府は人道的な立場からも、政治的な立場からももっと思いやりのある配慮をして、この問題の打開のためにもっともっと努力すべきではないかと思うのでありまするが、これに対するあなたの見解を聞いておきます。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 釜山の抑留漁民の問題につきましては、まことにお気の毒であることは申すまでもないのであります。われわれとしてもこの問題につきましては、当然努力して参らなければならぬわけであります。ただ御承知のように日韓会談とも関係しておりますので、日韓会談の席上その他において、いろいろな解決方法を講じて参らなければならぬのでありまして、そういう点については、できるだけの努力を払っていくこと申すまでもございません。
  81. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大西君、お約束の時間がきておりますからどうぞこの程度に……。
  82. 大西正道

    大西委員 わかりました。  国会におけるあなたのお気の毒だという言葉だけでは抑留者は満足しないのでありまして、その言葉だけで一向政治的な手が打たれない、効果が現われないということは、まことにもって政府の無能と申しますか、外交というものが今の自民党のもとでは八方ふさがりであるという一つの証左である。それからもう一つの問題は、釜山におる抑留者の帰還の問題と同時に、すでに御承知のごとく、国内における朝鮮人の帰国の問題であります。ほうはいとしてこの運動が展開されております。いろいろと李承晩からの横やりがありましたけれども外務大臣も再三言われておりまするように、この問題は人道的な立場から、好むところに帰してあげるということこそ、われわれの責任であると考える。在日朝鮮人で北鮮への帰国希望者は、今日すでに十万をこえておる。この問題が新聞に取り上げられて、あなたの誠意ある言葉の端々かが新聞に伝えられますと、今にも帰国が実現するのかというので、在日朝鮮人は首を長くして持っておるのであります。かつまた今日まで全国各地の都道府県、市町村、その長であるとか、議会であるとかは、続々とこの朝鮮人の帰国の問題についてすみやかに、これを促進してくれという決議が上ってきております。私はここに今日までの数字を見ますと、計七十四県市町村の決議が出ておる。東京都議会はきのう決議をいたしております。こういう情勢に立ちまして、人道的な立場からの外務大臣見解を伺いましたが、これに政治的な判断を加えましても、すべからくこの帰還をすみやかに実施する、そうして李承晩などから横やりが入りましても、こういう問題は断固断ち切って、この実現のために努力をしていただきたいと思いまするが、これについての一つ積極的な熱意を聞きたいのであります。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北鮮帰国の問題につきましても、ただいまお話のありましたように人道上の問題でもありますし、また各都道府県の議会等においても決議もいたしております。また各方面の商工会議所その他等も建議をいたしてきております。従って、そういうことにつきまして、できるだけすみやかにそういう処置をとることに努力していくことは、まことに必要なことだと思います。
  84. 大西正道

    大西委員 これで最後ですが、そういうふうな具体的な問題と同時に、やはり日韓交渉を推し進めるためには、私が再三ここで申し上げておりますように、何らかの打開の策を講じなければならぬのであります。私はその一つとして、この前申し上げましたように、いわゆる李承晩ライン、漁業問題につきましては、これは日韓交渉本来の問題と違うのでありますから、日韓間のお互いの話し合いは、もう見通しがないのであるから、一つ国連の場にこれを持ち込んで、国際世論の注視の中で、この問題の解決を見出したいということを私は申し上げた。それも考えるが、まだ時期が早いとかいうようなことをおっしゃっておったのでありますけれども、私は今こそこの決意をされる時期であると考えるのであります。時あたかも、この情報によりますと、韓国におけるところの民主党代表、最高委員の趙炳玉氏は、十一月二十五日、李ライン問題は、国際司法裁判所に提訴すべきだ、こういうふうに言って、韓国政界に一大波紋を巻き起しております。もちろん自由党は、これに対して、これまた容共だとか、国賊だとか、聞いたことのあるようなことを言って、これに反対をいたしておりますけれども、まさに韓国内におきましても、この李承晩ラインの問題、漁業問題、こういう問題でいつまでも両国家の国民の意思が相反するということは、日韓親善のためには憂うべきことである、こういう良識論に立って、趙炳玉氏がこのことを大胆に韓国内においても主張しているということを、私はこの際注目願いたいのであります。私は再三申し上げておりますように、韓国国民国民感情国民の意思と、李承晩政府に現われたところの政治というものとは、大きな隔たりがあるということを私は信じております。この点は、過般この外務委員会におきましても、多数の参考人が出て述べた通りであります。われわれは李承晩に対しては憤りを感ずるけれども、韓国人民、朝鮮人民に対しては限りない信愛を持っておるわけです。その両国民の信愛を阻害するようなこういう李承晩ラインというものは、すべからく国連等に提訴して、国際舞台の上において、世界の世論の上に立ってその白黒を決すべきだ、この機会だと私は考えるのであります。年の末に当って、一つ外務大臣——党内のごたごたばかりで、外務大臣外交を忘れて内交ばかりやっておる、こういわれておりますが、一つ思いを新たにして、本然の姿に返って、たくましい外交政治力を発揮してもらいたいと思う。きょうもあなたの御出席がおそいので、何であろうかと言ったら、佐々木君は解散だと言う。もちろん冗談だが、それがまことしやかに言われるような世の中になってきたのであります。どうぞ外務大臣——責任の追及は追及として、この際外交問題について、さらに勇気をふるわれることを私は期待をいたすのであります。与党内における外務大臣の立場に対しましては、私どもはいささか了解と支持を持っておるつもりであります。以上であります。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 二国間の外交問題につきましては、できるだけ二国間の外交交渉のルートを通じて解決すべきものであることは当然でありまして、その努力を最大限にやりまして、しかもどうしてもいかぬ場合には、それは国連なり何なりの諸般の機関の判断を求めることも必要であるという場合もあろうかと思います。しかし、現在日韓会談を続行いたしておるのでありまして、まだ最終的に決裂しておるわけでもございませんし、向うが最終的に、李承晩ライン、漁業委員会の問題を破滅に導くところまで持っていっているわけでもございませんので、それについては、現在として最大の交渉をやってみることが必要だと考えております。
  86. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次会は来る十二月二十二日午前十時より開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十五分散会