○池田(禎)
委員 ちょっと私はこの際お尋ねしますが、志免炭鉱の払い下げの問題をめぐっていろいろ世上に議論が流れておる。しかし今
総裁の話によると、価格の点については私と大臣との間以外には話をしておらない、こういうようなお話もあったようでありますが、あなた方のお
考え方というものが私は少し解せないのです。もしかりにあなた方の考えていることが客観的に見て正しいことであったとしても、あの周囲の人が町ぐるみ村ぐるみこぞって反対をしておるこの事実についてあなた方が謙虚にどれほどお考えになったか。あなた方自身は当事者としてこれが妥当なりと思っても、第三者である者がこれに対して猛烈な反対をする、これをどの程度あなた方はごしんしゃくなさったか。あなた方も神でない以上はあなた方のやっていることが絶対不変であるということは私は断言することはできないと思う。ともすれば大臣であるとか
総裁であるとか官僚たる地位の者が、自分のものを押し通そうとするためには、これに対する妨害があれば権力をもってしても、警察官を使ってでも排除する、そういうような権力一辺倒なやり方ではいけないのです。あなた方が人民に号令するのではない。主権は国民にあるのです。そういう謙虚な姿がどこにあったでありましょうか。たとえて言うならば、運輸大臣のごときに至っては軽率不謹慎のそしりを免れない。あなたは伴食大臣で、ただしてもらったのだからありがたいというならこれは仕方がないが、いやしくも一国の国務大臣として、あなたは閣僚として加判する以上は、永野護君から引き継ごうがだれから引き継ごうが、あなたは大臣としての権威をもってこれは払い下ぐべきものである、払い下ぐべきにあらずという、みずからの信念とみずからの政治家としての責任においてこれを行うべきである。前大臣から引き継いだからこれはやらなければならぬ、これは無定見、無節操きわまる政治家であると思う。そういうことはあなたの新聞談話を見れば明らかです。あなた方のやっていることはもうきめたんだから一定不変である、こういうことはないのです。幾多の内閣においても、閣議できまったことでも取り消したこともあれば変更したこともあります。やはりそれはよく国民の声を聞いて、ほんとうに実際を
調査してみて、しかる後に聞くべきものがあるなら十分反省していくことが役人である者の務めです。もちろんこれは政治家にも当てはまることです。あなた方はきめたんだからこれを強行するのだ、こういうようなやり方で事に臨まれるならば、世の中に紛争が起ることは当然です。警察は出動を要請されたから行ったんだ、そうすると、日本の国民同士がなぐり合いをしてけがをして仕方がないじゃないか、そういうことは政治家なりあるいは公けの機関に奉仕する人々の言うべき言葉じゃないのです。あなたほどの人はもう少し謙虚にやらなければならない。かって森烙君のごとき人といえ
ども、塔連炭鉱事件に連坐して幾多の問題を起したことは、日本に古き例がある。国有財産を払い下げるときには三思四思幾たびか考え直して国民に疑惑なきようにすることが当然の道であります。しかるところ、きめたんだからこれをやるのだ、私は繰り返しはいたしませんが、二十九年の
行政管理庁の勧告、
国鉄の
経営調査会の答申——なるほど当時は赤字であった、赤字であった志免炭鉱は今日黒字になった、
経営事情がよくなっても払い下げなければならぬ、いわく
国鉄は輸送に専念するためにこれをするのだ、これも
一つの理屈でしょう。しかし一番最初問題が起ったのは
国鉄の赤字をどうするか、運賃の値上りその他によって国民の負担にこれがかかってくるのだから、
国鉄は本来の業務に専念をして、さようなものは整理しようというのが当時の
行政管理庁の勧告であり、
国鉄の
経営調査会の答申であったと私は承わっておる。それを新しき事態がきても、依然として
方針が何年にきまったからこれはやるのだ。それではあなた方の
考え方というものは、常に世論に耳を傾けるということはない、新しき事態の発生ありといえ
ども、これに対して傾聴すべき誠意を示しておらないと言われても仕方がないのです。私は、この点について世上いわれておる問題は、
総裁なり運輸大臣の——そういうことはないと言うかもしれないけれ
ども、世間に伝わっておることは事実です。この事実を目をおおうということはできません。いわんやこの中には自由民主党の諸君もたくさんおるが、自由民主党の中におけるところの人々の発言を見てもさようなものがたくさん散見されるのです。これは危険きわまると私はいわなければならない。政府与党の中においてすらかような発言がいろいろ行われるということは、議会政治のためから見ても私
どもは無視できません。そういう観点にあるときに当って、払い下げをいつにきめるのだ、大体どう考えてもあなた方は強行しようとしておる、自分の
方針をどこまでも押し切ろうとする
考え方を堅持して譲らないとしか受け取れないのです。その
考え方は変りませんが、どうですか。もう少しこういう疑惑に対して、あるいは世論に対してもっと慎重に考えて、そして何月何日までにやらなければならぬという
方針があるのかどうか。そのことについて運輸大臣なり
国鉄総裁の所見をまず伺いたい。