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1959-02-13 第31回国会 衆議院 運輸委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 天野 公義君 理事 木村 俊夫君    理事 長谷川 峻君 理事 堀内 一雄君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 土井 直作君       川野 芳滿君    小泉 純也君       關谷 勝利君    高橋清一郎君       前田  郁君    河野  正君       菊川 君子君    島口重次郎君       杉山元治郎君    館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  出席政府委員         運輸政務次官  中馬 辰猪君         運 輸 技 官         (港湾局長)  中道 峰夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 二月十二日  委員高橋英吉君辞任につき、その補欠として三  木武夫君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 二月十一日  特定港湾施設整備特別措置法案内閣提出第一  四三号)  同月十日  国鉄管理所設置反対に関する請願前田郁君紹  介)(第一二一一号)  同(小川平二紹介)(第一二九二号)  鹿児島海上保安部航空機配置に関する請願(  池田清志紹介)(第一二九〇号)  同(前田郁紹介)(第一二九一号)  信越本線改良及び中央線電化に関する請願(小  川平二君紹介)(第一二九三号)  中央線準急列車小渕沢駅停車に関する請願(  下平正一紹介)(第一二九四号)  失業駐留軍要員によるタクシー事業免許認可に  関する請願川野芳滿紹介)(第一三四六  号)  国鉄福島輸送派出所存続に関する請願八田貞  義君紹介)(第一三四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定港湾施設整備特別措置法案内閣提出第一  四三号)  日本国有鉄道経営志免鉱業所の問題)に関  する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  特定港湾施設整備特別措置法案議題とし、審査に入ります。  まず政府当局より提案理由説明を聴取いたします。中馬政務次官
  3. 中馬辰猪

    中馬政府委員 ただいま議題となりました特定港湾施設整備特別措置法案につきまして、その提案理由について御説明申し上げます。  この法律案は、現下のわが国における躍進的な輸出貿易の伸長と工業生産の拡大の傾向にかんがみまして、すでにその隘路となっている主要港湾の重要な港湾施設を、これら経済発展の速度に対応して緊急に整備いたすことにより、わが国経済基盤の強化に資することをその目的といたしております。このため、今回次のような特別の措置を講じた次第であります。すなわち、今回の特別措置は、大別して三つ事項に分たれますが、まず第一点は、輸出貿易工業生産との関連におきまして国家的に重要な港湾特定施設を、国が特別会計を設けて、直轄で緊急に整備することであります。第二点は、右の特別会計において、工事費用の一部につき借入金をもってその財源とすることができるようにいたしたことであります。この借入金は、資金運用部より借り入れるものとし、港湾管理者負担分に充てることといたしております。第三点は、工事費用の一部の財源として、民間資金活用をはかることといたしたことであります。その活用方法といたしましては、一は、企業合理化促進法規定により産業関連工事申請事業者から国が受益者負担金を徴収すること、その二は、完成した特定施設利用者から港湾管理者特別利用料を徴収することであります。  以上述べました特別措置の対象となる港湾は、経済的要請の別に従いまして、輸出港湾石油港湾鉄鋼港湾及び石炭港湾各種別に分つことができます。輸出港湾横浜、名古屋、大阪神戸下関門司の六港、石油港湾横浜川崎四日市、松山の四港、鉄鋼港湾は室蘭、千葉、川崎、姫路、尼崎、和歌山下津、洞海の七港、石炭港湾は苫小牧、横浜、衣浦、四日市大阪神戸、洞海、苅田、唐津の九港であります。これらの諸港のうち、企業合理化促進法規定により受益者負担金を徴収して工事を行うものは、石油港湾及び鉄鋼港湾であり、完成後の施設利用者からこの法律規定により特別利用料を徴収するものは、石炭港湾輸出港湾中、門司セメント埠頭下関肥料埠頭及び大阪鋼材埠頭であります。  右の諸港湾の諸施設は、おおむね四カ年を目途として整備することといたし、昭和三十四年度においては約七十七億の事業費を予定いたしております。  この法律案は、以上の特別措置を実施いたします場合に必要な事項について所要の特例規定を設けたものでありまして、そのうち最も重要な事項は、国と港湾管理者との費用負担割合特例を定めたことであります。すなわち、さきに申し上げました受益者負担金または特別利用料を徴収する場合には、これらの収入金工事費用の総額より差し引き、その残額について港湾法等規定により負担割合を適用することといたしております。また港湾管理者負担分は、借入金によってとりあえず支弁いたします関係上、その借入金利子相当分もあわせて港湾管理者負担額に算入することといたしております。  右のほか、特別利用料徴収手続の緩和その他について必要最小限度措置を定めたのが、この法律案内容であります。  以上がこの法律案提案いたします理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  4. 塚原俊郎

    塚原委員長 法案に対する質疑は、次会より行うことといたします。     —————————————
  5. 塚原俊郎

    塚原委員長 次に、国鉄経営に関する件、特に志免鉱業所の問題について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  6. 久保三郎

    久保委員 国鉄総裁志免鉱業所の問題でお尋ね申します。  まず第一に、一月の十日に大臣から上申書に対する内諾書というようなものが参ったようでありますが、この内容総裁はどういうふうに御解釈いただいているか、その点をお伺いします。
  7. 十河信二

    十河説明員 志免処分につきましては、志免鉱業所調査委員会というものを設けまして、青山博士委員長として慎重審議いたしてもらいまして、その答申が出ておりますので、その答申の線に沿うて処分をしたいというので運輸大臣に御承認を願い出たのであります。これに対して運輸大臣から、承認はするが、分離譲渡をする方法としては指名競争入札によれ、なお譲渡については慎重に処理し、特に従業員の問題は円満に処置をするようにという大臣からの、監督官庁からの強い希望がついて承認せられた、こう解釈いたしております。
  8. 久保三郎

    久保委員 それで、この分離を了承するという内諾書ですか、承認書ですか、これに対してどういう作業を今日まで進められたか、その点をお伺いします。
  9. 十河信二

    十河説明員 大臣承認の中にありまするように、まず従業員との間の円満な了解を得ることが大切だ、こう思いまして、従業員に対して、大臣からこういう承認があったということを通告すると同時に、団体交渉をいたしたいということを、東京においては組合の本部に対し、現地においては現地本部に対し、そういう申し入れをいたしております。不幸にしてまだ今日まで団体交渉に入ることができないでおるのであります。なおそのほかに今日まで長い間に譲渡申し出がありました三井三菱住友武内上田というような会社方々にも、こういうふうな承認を得たから、こういうふうにその承認通りに扱いますからということを、ごあいさつをいたしております。
  10. 久保三郎

    久保委員 今まで予算委員会等における大臣答弁を聞いておりますと、分離に際しては指名競争入札にする、これはまあ御理解になっておると思うのでありますが、特に所属職員の処遇については円満に措置をするようにという強い要望があった。これはいわゆる前提条件分離前提条件のようにとられるわけですか。総裁はどういうふうにこれをとっておりますか。
  11. 十河信二

    十河説明員 これはたしか前回の当委員会でも大臣から御答弁があったと思いますが、条件ではない。条件ではないが、私は従業員希望なり意思なりをできるだけ尊重したい、従業員を仕合せにして、安定した職場で愉快に働けるようにすることが私の任務である、こう考えております。これを譲渡することによって、そういう従業員ほんとうの安定した職場が得られるようになるんだ、こう思いますから、従業員は必ずや私の意思を了承してくれることと、こう考えております。そういうふうにしてこの処置を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  12. 久保三郎

    久保委員 円満に措置ができなかったら、分離指名競争入札とか、そういう方法でできるとお考えでしょうか。
  13. 十河信二

    十河説明員 私は、従業員は円満に了承してくれることと信じております。現にこの前も答弁したと思いますが、昨年、三十二年度は五十一万五千トン出炭したのでありますが、今年度、三十三年度は最初四十八万五千トンの計画を立てて進んで参ったのであしますけれども、どうもその出炭ははなはだおぼつかない、相当出炭量が減るんじゃないか、あるいは四十万トンを割りはしないか、これはその後いろいろな事情もありましたが、そういうことも影響しておりましょうが、そういうふうな状態になるんじゃないだろうか、これからだんだん年々出炭量が減ってくる、そうすると、それだけ人が余ってくる、炭鉱経営が非常に困難になってくる、何とかしなければならなくなるというふうなことを考えますと、どうしても統合して、総合的の開発する必要があるということを従業員も了承してくれることと思います。そうして統合については、先般来たびたび問題がでましたように、答弁のありましたように、非常に困難でできないから、私は従業員も円満に了承してくれることと信じております。
  14. 久保三郎

    久保委員 了承してくれると思うという観測でございます。それからもう一つ出炭がだんだん減ってくるのは、何か志免鉱業所埋蔵量、そういうものが原因のようにおっしゃいますが、この二、三年特に去年一年、分離するという基本方針を立てて、調査委員会などをお作りになって、そういう結論を出させて、大臣からまたそういう承認をもらった、こういうことをやっているさなかでは、これは当然出炭量が減るのは当りまえだと思うのです。これは志免鉱業所埋蔵量とか能率というようなものではなくて、そういう不安に陥れていることが原因じゃないでしょうか。そういうふうにお考えにならないで、どうも今でも減ってきたからこれは将来性がないのだという断定は、少し従業員に対して酷な話ではないか、あるいは処分問題に対する正鵠を失う方向だと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  15. 十河信二

    十河説明員 多少その従業員の不安で出炭が減るういうこともあったかと思います。しかしながら坑内の条件が、ある坑道はもう隣の鉱区境界線にぶつかっておる、だんだん炭鉱の層の幅が薄くなってくる、そういうふうないろいろな条件から判断いたしますと、当然炭量緩ってくるのであります。それでありますから、出炭量が減るということは、これはもうやむを得ない運命だ、どうすることもできない状況にあると私は考えております。
  16. 久保三郎

    久保委員 今の御説明は、もう一つ原因があると思う。それはここ二、三年来、特に三十三年度は志免鉱業所設備投資といいますか、あるいは即発投資といいますか、そういうものは既定予算をさらに削っておやりになっておる。だから当然出しておやりになれば出炭量は減ることはないはずなんです。そういう点はお減らしになっておることは事実でしょう。当初予算を立てましても予算通りはやっておらぬ、あるいはその予算の立て方もずいぶん縮めてお立てになっておるということじゃないですか、この点はどうですか。
  17. 十河信二

    十河説明員 この志免の問題は、御承知のように昭和二十九年にこの臨時公共企業体合理化審議会、その政府の設けられました審議会でいろいろな方が国鉄経営をお調べになった結果そういう答申をお出しになった、そのときからもう問題になっておるのであります。従ってそういう問題がどういうふうに解決されるかというあれを見ないと、従業員も不安になりましょうし、投資もどういうふうに投資するか、投資方法もまた違ってくると思います。それからあそこの炭鉱は、御承知のように盤圧が非常に強くて、そしてガスが非常に多いのであります。最下層のごときはこれをボーリングをやって調査しょう、できると思って調査しかけたのでありますが、あまりにガス湧出量が多くてついに中止したというような事情もありまして、予定の、希望通り投資をしなかったということは事実であります。そういうふうな事情に基くものであります。
  18. 久保三郎

    久保委員 これは、投資という言葉が少しまずかったのでありますが、既定工事経費すら削減している。当然分離するなり何なり形態が変るまでは、本来ならば忠実に既定経費によってやるべきはずのものであります。売るという前提に立ったらそういうものをやらぬ方がいいというので、この前提に立って予算を削ったということが相当あるはずだと思う。これは一つ、国会で議決された実行予算工事経費はどう違っておるか、これをあとで出していただきたい。きょうは結論をつけませんが、どうかお願いいたします。  さらに進んで、総合開発ということが前提だと思いますが、調査委員会答申も、それから先ほど総裁お話も、総合開発前提にしてこれと分離する、こういうことのようでありますが、その点間違いがございませんか。
  19. 十河信二

    十河説明員 乏しい国家資源を最も有効に開発し、また施設を有効に利用するためには総合開発をしなければならぬ。また総合開発をすれば、志免の現在の規模大手炭鉱規模で採掘をし得る期間が長くなる。これは従業員にとっても地方にとってもねらうところ、仕合せになることだ、こう考えて、これは国鉄としても経営上有利であります。総合開発ということを希望するのが当然じゃないかと思うのであります。私どももそういうふうに総合開発のできるようにしたいということを念願いたしております。その点は少しも変りはありません。
  20. 久保三郎

    久保委員 総合開発前提なので調査委員会からの答申も、従来の一般指名競争入札ですか、そうではなくて、見積り合せ随意契約ということでやったらいいだろう、こういう答申が出て、それに対して運輸大臣は、それはいけない、これは一般競争入札によれ、こういう返事があったわけですね。そうしますと、総裁大臣内諾書といいますか、承認書に基いて分離する場合はこの競争入札によっておやりになるのでありますか。
  21. 十河信二

    十河説明員 私はこの調査委員会答申に従って、答申通りにやりたいと考え運輸大臣申請をしたのであります。しかし監督官庁から諸種の事情を勘案せられまして指名競争入札でやれという御指示でありますから、私としてはその監督官庁の御指示に従って最善を尽す——まあ非常な困難があると思います。困難があるとは思いますけれども、最善を尽してやってみるというほかはないと思います。
  22. 久保三郎

    久保委員 それで一月の二十二日ですか、先ほどお話があった三井三菱住友あるいは武内礼蔵氏あるいは上田清次郎氏ですか、そういう方を総裁お呼びになって今までの経過を御説明になって、こういう内諾書承認書がきた、こういうお話をしたそうでありますが、指名競争入札にお入りになる業者はその業者ですか。どういう業者ですか。
  23. 十河信二

    十河説明員 出願のあったのはそれらの方々であります。指名競争入札の相手方は調査委員会答申によりますと、三井三菱住友の三社が適格者であるという答申でありますから、この三社の間で指名競争入札をやってもらいたい、こう思っております。
  24. 久保三郎

    久保委員 出願者先ほどあげた五社といいますか、五人ですか。
  25. 十河信二

    十河説明員 そうです。
  26. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、武内あるいは上田のお二人の方は指名からはずされるわけでございますね。そうしますと指名範囲は確定したわけでございましょうね。
  27. 十河信二

    十河説明員 指名範囲調査委員会でいろいろなたくさんの選定基準を想定いたしまして、その基準に照らしてしさいに勘案せられた結果、三井三菱住友、この三社が適格者であるということになっておりますから、その三社の間で指名競争入札をやってもらいたい、こう考えております。
  28. 久保三郎

    久保委員 入札価格決定条件等のことは、調査委員会に諮問しておりますね。いかがですか。
  29. 十河信二

    十河説明員 価格につきましては、どういうふうにして価格をきめたらいいかというきめ方を調査委員会に諮問いたしておりますが、まだその答申が出ておりません。
  30. 久保三郎

    久保委員 その諮問はいつお出しになっているのですか。
  31. 十河信二

    十河説明員 三十三年の五月八日であります。
  32. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、最初のころ分離が適当であろうという中間報告が出てから間もなくこれは一括しておやりになったわけですか。
  33. 十河信二

    十河説明員 委員会の第一回の答申が四月の十九日にありまして、その後に五月の八日に第二回の中間答申がありまして、そのあと諮問した次第であります。
  34. 久保三郎

    久保委員 それで先ほど三社というお話がございましたが、こういうお話御存じなんでしょうね。もう古い話なんですが、三菱鉱業権をとって販売の方は三井にやらせて、住友には三菱のある鉱区譲渡する、こういう話は古い話なんですが、最近またそういうルートができたというふうにうわさされておりますが、これは御存じになっておりますか。
  35. 十河信二

    十河説明員 そういうことは私存じません。これらの三社、四社は無条件願書を撤回したいから了承してくれ、下げてくれという申し出がありました。その申し出に従って願書を下げたわけであります。そういう会社会社の間でどういう話し合いが行われているか、私は存じません。無条件に撤回したいという申し出を、私はそのまま信じております。
  36. 久保三郎

    久保委員 それではこの間お呼びになったのは、撤回したのだからもう白紙であったわけですが、なぜそういう方をお呼びになったのですか。その理由は何ですか。
  37. 十河信二

    十河説明員 それらの人は撤回の申し出をするに当り、業界の常識としては隣接鉱区三菱が一番適格者である、だから譲渡する際には——国鉄譲渡するかしないか知らぬが、譲渡する際には、われわれとしては——その三社ですか四社ですか、としては三菱譲渡するのが至当であると思うから、われわれは無条件にこれを撤回いたしますということの申し出があったのであります。後に書面が出まして、その書面に従って、願書をお返しいたしたのであります。
  38. 久保三郎

    久保委員 ただいまのような業者がこぞって三菱隣接鉱区を持っているから払い下げるのが至当であろうというお話があったのはいつでございますか。
  39. 十河信二

    十河説明員 たしか三十二年の二月二十日前後であったかと思います。
  40. 久保三郎

    久保委員 そうですね。大体三十二年の二月ごろお話し合いができたそうであります。そうしますと先ほど指名される業者三つである。ところが三十二年二月二十日ごろの——これは大体二月の中旬か下旬に話し合いができたのですが、そのころ話し合いができていて、今度お呼びになって指名するというのでありますが、これは指名競争入札が成り立ちますか。
  41. 十河信二

    十河説明員 私は成り立つと思います。成り立たないという理由はないように思います。
  42. 久保三郎

    久保委員 すでに住友三井の二業者は辞退をされる意思を二年前に表されておるわけですね。そうしますと三菱一人でありますから、指名をしても入札に加わらぬ場合があるでしょう。大体そうでしょうね。加わっても形式的でしょう。そうしますと、運輸大臣がどういう意図か知らぬが、指名競争入札にすべしということを政治的におやりになっても、中身は同じだということなんですが、どういうふうにあなたはお考えになっておりますか。
  43. 十河信二

    十河説明員 そういうふうな譲渡する場合には三菱譲渡するのが至当だという無条件のお申し出がありました。その経過にかんがみて、私は運輸大臣から指名競争入札にしろという、こういう指令があったから、どうか御了承を願いたい、今後もいろいろな困難があると思うけれども御協力を願いたいということを、私はごあいさつをし、お願いをいたしたのであります。了承してくれると思いますが、会社のことですから、私は必ず入札をさせるという強制をする手段は何ら持っておりません。それは会社の自由でありますから何とも言えませんが、私は筋道として何らできないことではない、こう考えております。
  44. 久保三郎

    久保委員 大体辞退されるものは指名に加わっても意味のない話なんです。談合以外に方法はございませんね。それともう一つは、調査委員会があなたに答申された中で——これは去年の中ごろですね。七月か八月でしょう。三井三菱住友、これの見積り合せというか、そういうことで答申があったわけですね。その答申をそのまま運輸大臣に上申したわけですね。そうしますとあなた自体も、調査委員会はそういう業者話し合いを知ってか知らないか知りませんが、当然三十二年二月に、あなたに対してその業者が、三菱に払い下げるのが至当であるからわれわれはそういう申請を取り下げる、こういうお話があったとすれば、当然その調査委員会に向って、総裁であるあなたは、大体業者関係はこうなっています、だからこれは三菱一社でございますというふうにお話を申し上げていくのがほんとうではなかったのか。お話を時間的に繰ってみますと、何か既成事実が先にできているのに、体裁を作るために、調査委員会も三社を指定した。それから今度は、運輸大臣からの返事は、指名競争入札にしよう。中身はちっとも二十二年の二月と変りない、三菱一社ということが既定事実でずっと流れている、こう思うのですが、こういう点についてわれわれは疑問を持っているわけです。国鉄総裁はりっぱな方でございまして、そういう変なきたないところへはまぎれ込まないと私は信じておりますが、何かどうも裏の方でそういうのが出ているのじゃないか、こう思うのです。これはこの志免鉱業所の問題の一番大きい問題点だと思います。ところで、たとえば逆に三社指名した場合に、指名競争入札総合開発というものが両立する場合もあるし、しない場合もあるだろうと思う。実際仮定でありますが、極端なことを言えば、これは業者間の今のような業界の流れでは可能かもしれない。厳格な意味総合開発と必ずしも一致しないものである、これについては総裁はあまり御心配なさらないのですか、いかがですか。
  45. 十河信二

    十河説明員 三社から先刻申し上げましたような申し出があって、なお書面が出て願書を下げたのであります。その後に運輸大臣からそういう指名競争入札によれという指令がありましたので、またそれらの会社の方においでを願って、皆様御一緒に、こういう運輸大臣指令が出たから、さきにああいうお申し出があり、皆さんにお返ししたが、今度は指名競争入札によるのほかないと思うから、こういうふうにやりたい、ついてはさっきも申し上げたようないろいろな困難がある、どうか皆様の御協力を願いたいということをお願いいたしたのであります。皆さんの間でも、さきには無条件に撤回して三菱にやるのが至当だ、こう言うたけれども、今度はそういうなにがあれば喜んで私たちも指名競争入札に参加いたします、こういうことを三社が異口同音に答えられた。それでありますから、さっき申し上げたように、これは可能である、三社が入札をしてくれるものと私は思います。しかしながらそれは将来のことで、三社がどういう態度に出るかということは、これは何とも私から申し上げかねるのであります。そういうふうにして指名競争によりますことは、総合開発をするについて今お話のような困難が増してくると思います。それは私も重々承知しております。従って私は調査委員会答申通り処置したい、こう思ったのでありますが、監督官庁ではいろいろな事情を勘案せられて、指名競争によれ、こういうことでありますから、私は非常に困難を増す、果してうまくいくかどうかということを確信をいたしませんけれども、ベストを尽してやってみるのほかはない、こう考えております。
  46. 久保三郎

    久保委員 業者お呼びになって御協力を願いたい、こういうことをお申し出になったそうでありますが、その御協力という中身は、指名競争入札に御参加願いたいという意味でありますか。あるいはそれと総合開発というものをからんでの御協力を願ったのでしょうか。どちらでしょうか。
  47. 十河信二

    十河説明員 この炭鉱従業員の生活の安定するように、つまり大手の規模で長く持続していくことのできるようにしたいということは、かねてから私の念願しておるところであります。三社、四社の方々皆さんよく知っておって下さるのであります。それゆえに私は指名競争にも参加してもらいたいし、今後もそういう面において協力してもらいたい、いろいろな困難があると思うが、国のために皆さん一つ協力していただきたい、あらゆる面において協力をしてもらいたいということをお願いいたしまして、皆さんも快く御了承下さっております。そういうことであります。
  48. 久保三郎

    久保委員 そうしますと総合開発ということを前提にいたしますれば、この間の予算委員会お話があったようでありますが、さらにその業者の三十二年二月のお話を総合しますと、これは三菱が買い受けるということによって総合開発が可能である、こういうふうに筋道はできておるように思いますが、いかがでしょう
  49. 十河信二

    十河説明員 調査委員会答申の中に、「総合開発の便宜を有する」というふうな文句があったと思います。三菱なら一番それの便利が多いわけです。三井住友でも、大会社でありますし、そういう隣接鉱区を買収する資力もありましょうし、技術もありましょうし、また従業員の待遇も国鉄の待遇と大体同じような待遇をしておりますから、従業員も三社ならばよかろう、こういうふうに考えておる次第であります。
  50. 久保三郎

    久保委員 端的に申し上げますと、大体コースは三菱ということに、業者間も総裁考え方もそういうふうになってずっと進んでこられた、こういうふうに聞くのです。そうしたならば、なぜ端的に三菱に払い下げてほしいということを出せなかったか、われわれは不思議に思うのですが、いかがですか。なぜいわゆる総合開発から資格要件に欠けたというふうにとられる三井住友を入れたのだろうか、こう思うのですが、その点どうでしょう
  51. 十河信二

    十河説明員 資格要件に全然欠けているのではないのでありまして、多少その総合開発の便宜が多いとか少いとかいうことはあると思いますが、大体調査委員会の検討の結果もこの三社ならばよかろう、総合開発の便宜がある、こういうふうにお認めになったのであります。三菱が一番その便宜が多いということは、私もそう考えますし、皆さんもそうお考えだと思います。しかしながら、これは国の財産であり国民の財産でありますから、できるだけ手を尽してできるだけ有利にこれを処分するということが必要ではないか、私がそう思っても、私一人の考えでやらないで、皆さんの意見をなるべく聞いてそれで適当な線に進んでいくのがいいじゃないか、こう考えまして、国のためにできるだけ有利になるようにということで指名競争にしろという大臣からの指令もあったのであります。それでそれに従った次第であります。
  52. 久保三郎

    久保委員 国民の財産だから、譲渡するとすれば極力有利に譲渡しなければいかぬ、その通りだと思うのです。ところが指名競争入札といいましても、業者間では話ができて、お呼びになって御協力というのは、今までの話をずっと総合しますと、その話し合いをそのまま延長してもらうことだと私は思うのです。そうしますと一社に限定される。一社に限定した場合、国民の財産を有利に譲渡するということは、まず自主的に財産をきめて、その値段以下では絶対に売らぬという心がまえでなくてはいかぬと思う。ところが巷間伝えるところによりますれば、そういう事情が三十二年からあるからこれはたたきにたたいて買われるだろう、こういうことが予測される。私はここで別に結論はつけません。一つあなたに念を押しておきたいのは、国民の財産だから、万が一売るような場合があってもこれはそういう今お話しの線を必ず貫いていただかなければならぬ、こう思います。これは要望しておきます。  それから、続いてお尋ねしますが、大臣からきた書面では、職員の処遇等については強く要望されておる。この問題が、先ほどお話によりますと団体交渉も開かれないというふうな状態にありまして、これは円満に解決する見通しは今のところないわけですね。それて片方ではどんどん業者を呼んで手順をきめていかれるということは、どうも話が少し前後してないかと私は思うのです。この考えはどうでしょう。
  53. 十河信二

    十河説明員 私は運輸大臣からの指令がありましたので、直ちに常務理事現地に派遣し、それから東京の組合の本部へ直接にお話をし、こういう事情になったからどうか了承してもらいたい、団体交渉をやってもらいたいということを申し入れまして、一方においてはそういうふうな出願をしてこられた方々の、そういう先刻から申し上げますような次第で願書を取り下げたのであります。これに一応あいさつし、御報告をしておくことが至当だ、こう考えましてやったことであります。私としては別にあと先順序を誤まったとも考えておりません。
  54. 久保三郎

    久保委員 大臣がおらないので、大臣に質問ができないので残念でございますが、この次にします。  とにかく前提となる人間の問題をやはりある程度のめどをつけないで、三十二年二月以来のコースをずっと歩いておられることは、どうも国民の財産を有利に譲渡するあるいは分離するということにはならぬのじゃないかと私は思っております。  それから、続いてお尋ねしますが、分離という文字はどういうふうに解釈すればいいのでしょう。分離ということは離すということでしょう。離すのにはいろいろな形態があると思うのですが、分離というもののその離し方ですね、離し方はどういう仕方があるでしょう。大へん日本語は不便なので、この分離だけではちょっとわかりかねるのでありますから、総裁一つ考えをお尋ねします。
  55. 十河信二

    十河説明員 分離には今お話のようにいろいろあると思いますが、とにかく国鉄は本来の輸送業務に専念しなさい、炭鉱というような特殊の技術、特殊の技能を必要とする、業態の全然変ったものは、なるべく一緒にやろうといっても、人の関係いろいろなことでなかなかうまくいかぬと思うのであります。それを切り離して別な企業体でやるのがいいということだと思います。それはいろいろな方法があろうと思います。     〔委員長退席、木村(俊)委員長代   理着席〕
  56. 久保三郎

    久保委員 いろいろな方法があるとおっしゃいますが、そのいろいろな方法とはどんな方法でしょう。
  57. 十河信二

    十河説明員 調査委員会でもたしか二つか三つ考えたと思います。国鉄から切り離してり独立の会社にして独立の企業体にしてやったらどうか、あるいは民間の会社にまかせたらどうかというような、そういう分離方法を検討せられたのであります。しかしながら調査委員会では、たとい独立の企業体を作っても、それはたった一つ志免炭鉱だけをやるのでは、どうも一つ経営ということはいろいろな点においてうまくいかぬ、だから国鉄が出資をして、何か外郭団体というか子会社というか、そういうものを作ってやってもそれはうまくいかぬ、根本的解決ではない、だから民間に譲渡するがよろしいというのが調査委員会結論であったと思います。
  58. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、今の時点で考え分離とは、どういうふうに解釈しますか。今の時点で分離とはいかなる形態であるか。
  59. 十河信二

    十河説明員 そういう次第でありますから、私は先刻来申し上げまするように、調査委員会答申に従って三社に指名競争入札でやることが国有財産の本来の譲渡方法であるけれでも、それは困難だから、この精神を取り入れた他の方法で三社に見積り合せをして随意契約でやるとかなんとかいう方法によることが適当である、こういう答申でありますから、それで大臣にはそういうことを申請したのであります。三社に指名競争の精神を取り入れた見積り合せによる随意契約によって分離し、譲渡したいという申請をいたしたのであります。大臣の方から指名競争入札でやれ、こういう指令がきたのであります。私はこれを三社に指名競争入札で売却しろという指令だと解釈しております。
  60. 久保三郎

    久保委員 大臣がこの間予算委員会での答弁の中で、三菱中心でも国鉄中心でもない方法があるというお話をしておるようであります。総裁も御同席であったようですが、あの答弁をどうお聞きになっておりますか。大臣は、三菱中心でも国鉄中心でもない方法がある、こういう意味のことを答弁されておる。あなたはどういうふうに御解釈になりましたか。
  61. 十河信二

    十河説明員 私は、私が申し上げることと同じようにしか解釈ができない。さっきお話のあったように、日本語は不完全ですからいろいろに表現せられますけれども、結局は指名競争入札分離するということは指名競争入札で売却しろ——分離するのにただ指名競争入札で分けるといっても分けようがないと思う。だから大臣のお言葉は私の言葉と多少違っておりますけれども、私は同様の意味である、こういうふうに解釈いたしております。
  62. 久保三郎

    久保委員 今の総裁お話だと、民間へ譲渡しろというふうにお考えのようでありますが、それではなぜ分離という文字を使って、片方は譲渡するときには、売却するときにはというふうに二様に使っておるのでありますが、この辺どうも政治家らしい文章でありますが、あなたも政治家でありましょうが、あなたがおっしゃる通り大臣はお考えだと、こう確信しておられますか。
  63. 十河信二

    十河説明員 どうも私は政治家の神経はよくわかりませんが、大臣分離という言葉を使い、われわれもよく分離という言葉を使うのでありますが、それは一番最初の合理化審議会か、行政管理庁の勧告か何かにそういう言葉があったのであります。それでつい無意識にその言葉を使っているのじゃないかと思うのであります。別に政治家の何とかというふうな深い意味があって使っておるわけじゃないと思っております。
  64. 久保三郎

    久保委員 大臣が出席されておりませんので、並べてどっちが正しいかお聞きすることができません。次回に譲りますが、とにかくこれは口幅ったいい言分かもしれませんが、御忠告だけは私も申し上げておきたいと思います。少くとも今日の経営は、資本も必要でしょうし、経営者も必要でしょうが、生産の土台はやはりそれをになうところの労働者だと思うのです。たとえば一つの財産を処分する場合も、やはり人間を先に片づける、と言っては語弊がありますが、これの始末をつけないではその他の問題は進行できない問題だと私は思う。ところが先ほどの私の質問に対して、別に順序は狂っておらない、こういうお話でございますが、そういうふうにお考えでありましょうけれども、そうじゃなくてむしろ従業員の問題が片がつかないのにそういうことをやること自体、何か三十二年の二月ころからの動きがどうも尾を引いている、こういうふうにわれわれは考えるのです。よって私は申し上げますが、従業員の問題を運輸大臣書面通り円満に措置できるようにまず御努力なさるのが先決ではなかろうかと思います。  そこで第二点は、先ほども申し上げましたが、とにかく国有財産は国民の財産でありますから、極力有利に——有利というのは、損もしないが得もしないというのではなく、得をするということなんであります。付加価値ということがございますが、付加されたもの、そういうものを含んでおると思う。将来性あるいは総合開発によるところの付加価値ということがございます。今の志免と、三菱鉱区を入れた総合開発とでは、そこに価値がずっと違ってくるわけです。そういう意味総裁は極力有利という文字をお使いになったと思うのであります。そういうことを考えますれば、今までのような指名競争入札というような指令大臣からきても、事実はそうじゃない。もしそうなった場合に国民の財産の処分に対して不当に安くなる、こういう矛盾をあなたは一つ清潔な手で解決されることを私は期待しております。大へんむずかしい問題だと思うが、長いことかかっているのでありますからコンクリートは溶解ができているわけです。三十二年度から練りに練って大体準備ができているのでありますから、そういうわなにかからぬように一つ御配慮をいただくのがまず必要じゃないかと思います。きょうは大臣がおりませんので、私はこの辺で質問をやめておきます。
  65. 十河信二

    十河説明員 さっきの分離譲渡の文字の使い分けでありますが、昭和三十四年一月十日に運輸大臣から私あてにきた指令の中に、「志免鉱業所譲渡について」と書いてありまして、中身に「分離にさいしては、指名競争入札方法による外、」こういうことが書いてある。従って分離という意味大臣譲渡という意味に解釈しておられることはこの書面からも判断ができると思います。先刻私に対して御忠告がありました、国に対して有利であるということと従業員の納得のいくようにということと、これを調和させることはなかなか困難なことであります。私は最善を尽してこれを調和することに努力いたしたいと考えております。
  66. 館俊三

    ○館委員 今のお話関連してお聞きしたいのですが、さっき労働条件譲渡条件でないというお話がありました。十日の申請に対する回答をいただいたわけですが、総裁はどういうような申請をなさったかということをお話し願いたい。そうしてそれに対して運輸大臣はどういう認可こいうか同意書を与えたか、そういうことについて簡単にお述べ願いたい。
  67. 十河信二

    十河説明員 私から運輸大臣あての申請書は昭和三十三年十月四日、こういう文句で出ております。    志免鉱業所譲渡について   日本国有鉄道志免鉱業所措置については、さきに設置方の御了承を得ました志免鉱業所調査委員会から別紙の通り答申がありましたので、その答申の趣旨を尊重し、更に慎重審議を重ねた結果、下記の処理方針を決定しましたので、御承認願います。    記  1 志免鉱業所日本国有鉄道経営から分離する。  2 譲渡先については、調査委員会答申の趣旨を尊重し、三井鉱山株式会社三菱鉱業株式会社住友炭鉱業株式会社の三社のうちから、競争入札の精神にのっとる   なんらかの方法(たとえば、見積り合せ随意契約)によって選定する。  3 志免鉱業所所属職員については、日本国有鉄道が必要と認める者以外は、全員引き継ぐものと   し、引継職員は日本国有鉄道法第二十九条により退職させるものとする。こういう書面出したのであります。それに対しまして、昭和三十四年一月十日運輸大臣から私あてにこういう書面がきております。    志免鉱業所譲渡について   昭和三十三年十月四日付総文第二二二三号を以て上申のあった志免鉱業所の処理方針については、志免鉱業所日本国有鉄道経営から分離することを了承するが、分離にさいしては、指名競争入札方法による外、譲渡方法等について十分慎重を期し、特に所属職員の処遇については、円満に措置するよう強く要望する。   なお、譲渡するときは、日本国有鉄道法第四十五条に定める許可申請の手続をとるよう念のため申し添える。これが私の申請書と運輸大臣指令であります。
  68. 館俊三

    ○館委員 そこで総裁はそれをどう受け取ったかということを私は聞きたいのです。その運輸大臣の回答というものは分離だけを認めたという返事予算委員会でやっておられる。しかも分離だけを認めたのであって、許可権あるいは同意権というもの、これは侵害をされておらないのだということを言っておられる。そうするとこの問題は分離だけを認めたのであって、これからの処置についてはまだ認可も同意も得られない、こういうふうに考えてよろしいですか。
  69. 十河信二

    十河説明員 分離方法につきましては、先刻もお答えいたした通りであります。譲渡をするにつきましてはいろいろな手続が必要であります。その手続を進めるに当って、重要な財産の処分でありまするから、前もって監督官庁の認可を必要とするんだ、それゆえに認可を申請したのであります。いよいよ指名競争入札の結果はこうなりました、こういう会社にこれこれの価格でこういう条件譲渡いたしたいということをあらためて最後に運輸大臣の決裁を経ることになっております。それは今の運輸大臣指令の最後に、「なお」というなお書きで書かれてある事柄であります。そこでほんとう分離譲渡が決定するのであります。それまでは分離譲渡の手続であります。
  70. 館俊三

    ○館委員 今の久保委員最初の質問で、労働者のいろいろな解決の問題は条件でないと言っていらっしゃったはずです。今のあなたの読んだ申請書からしますと、労働者の問題を円満に解決するということが書いてある。やはり条件のうちに入っておると私は見ておる。あなたの出し申請書の中に、随意契約もしくは競争入札の件が調査委員会からあったからこれを承認してくれ、従業員の問題は円満に解決したいという、そういうものをつけて申請していらっしゃる。そうすると従業員の問題と競争入札の問題とがやはり条件になっておると私は見ておる。さらに予算委員会ではこういう条件をつけられておるようであります。これは運輸大臣の返答の末尾でありますが、「この十月の申請はともかく一応切り離すということに基本方針を認めてもらいたい、」これはあなたから運輸大臣にきたことをこういうふうに運輸大臣が表現しておられるのです。それから「そのあとどうするかということは、その問題を具体的に考えるときに慎重に考えたいというような申請でもあり、」こういうことになっておるわけであります。そうすると条件はそう書いて出されたのだが、一応切り離すことだけを申請を受けたと、こう大臣は言っておられる。「私どももそういうふうに了承いたしましたので、とりあえず分離するという方針だけは認めるという回答をいたしたのであります。」申請書と内諾書を読んで聞かせてもらったのですが、その骨子は今大臣が言っておられるような骨子が主なんであります。そうしてとりあえず分離するということだけを認めるという大臣の回答なんです。さらに「その次に、国鉄の方からはできれば随意契約方法が一番いいという希望が述べられてありましたけれども、かりにこれを処分いたしますときには、多少それが不便があっても、ぜひ競争入札にしてもらいたいということと、従業員には十分な了承を得てもらいたいという二つの希望を強く申し述べて、分離基本方針を了承したのであります。」こう書いてある。そこでその競争入札をしてくれというのは、分離して最後の仕上げをする場合の運輸大臣希望条件である。また労働者の方を円満に解決してもらいたいということも運輸大臣のそのときの希望条件一つになっておる。これをしっかり覚えておいてもらいたいと思います。個人的な会談を申し上げては恐縮でありますが、去年の八月末に運輸大臣は私に対してこういうことをはっきりと言っておられる。売上価格の決定と従業員の問題、鉱害の問題、それが完全に備わらなければ調印をしない、こういうことを個人的な会談で言っておられる。今最初久保君の質問のときに労働条件の解決が条件ではない、こういうことを言っておられる。そこであなたの頭の中にある売却に対する条件というのは、これは総合開発のみが頭にあって、労働条件の解決なり鉱害の解決なり、それは条件ではないというふうに受け取られるような言明をされたというのは、私は非常に遺憾であると思う。そうしてしかも運輸大臣は今のあなた方の申請に対する認可にはこういうふうに言っておられる。「分離はいたしますけれども、それは国鉄中心でもなければ三菱中心でもない方法考え得るのであります。しこうして運輸大臣といたしましては、国鉄に対する許可権と申しますか、同意権と申しますか、これは一つも傷ついておらないのであります。」という明快な返事をしておられる。分離だけは許可した、だけれども、これを許可するか同意するかということは、一つ運輸大臣としては、一つも権利が侵害をされておらない、こう言っておられる。そうすると、私たちは運輸大臣が内意を示されたことは、分離することだけの内意であって、その後におけるものについては確定しておらないということなんです。先ほど久保君は分離するということはどういうかとお聞きになりましたが、運輸大臣がいらっしゃらないで工合が悪いのですが、分離だけを同意をして、あるいは認可をして、あと志免鉱業所がどうなるかということを私は考えたい。そうするとまたあなたはそれは労働問題の解決だ、鉱害の解決だ、あるいは総合開発の問題だ、こういうふうにお話しになる。そうしますと、結局労働問題の解決、鉱害の解決、あるいは総合開発の解決、あるいはその価値評価の解決というものはどういうふうになるか、かいもく行く先がわからない。そういう際でありますから、私一言だけここに述べておきますが、十分に今のあなた方の立場をそこに限定しておいていただきたいということを言って、私の関連質問を終ることにいたします。
  71. 十河信二

    十河説明員 大臣がお見えになりましたから、大臣のおっしゃったことについては私からお話をすることは差し控えます。ただ総合開発ということと従業員との関係のことを一言申し上げておきたい。  先刻も申し上げましたように、三十二年度は五十一万五千トンの出炭があったのでありますが、三十三年度は四十八万五千トンの計画を立ててみましたが、この計画はというてい実行できない、四十四、五万トンになるのじゃないか、あるいは今では四十万トンを割るんじゃないか、こういうふうな実情であります。それは坑内の条件がだんだん悪化いたしまして、抗道がもう境界線にぶつかるとか、炭層がだんだん薄くなるとかいろいろな不利な条件が出て参りますので、出炭量がだんだん減って参ります。出炭量が減って参りますと、だんだん人が余ってくるんであります。過去においてもこの余ってきた従業員を配置転換をするのに非常な困難をいたしております。従業員も十分満足を得られないで、がまんしてもらっておる。出る方の人も、また受ける方でも、十分満足を得られないでいるのをがまんしてもらっておる。そういう状態でありますから、こういうふうにだんだん坑内の条件が悪くなって、人が余ってくるというふうな状態に相なりますると、どうしてもこれを総合開発をやって、そうして現在の大手の規模でもっと長く採炭を継続していくということが、従業員のためであり、国のためであり、地方の関係町村のためで——繁栄になるからためであるということを考えまして、私はそのうちでも特に私の部下、従業員の幸福を絶えず苦慮いたしておるのであります。五十一万トンが四十万トン前後になるというふうなことでは、このままで炭鉱経営を継続していくということはできないのであります。それでありますから、早く総合開発のできるような状態にしたいということで、実はその面から最も私は急いでおるような次第であります。従業員のことを考えるがゆえに、そういうふうに急いでおるのであります。決して従業員の将来のことを考えなくて、おろそかにしておるのではないのであります。
  72. 館俊三

    ○館委員 わかりました。私の言うところは、そいうところがやはり私の言いたいところなんだが、この条件の中に——私は条件であると見ておる。労働者と円満な解決をしようという条件がついておると私は見ておる。その円満なる解決ということは、労働者の求める円満なる解決ということもあるし、総裁の求める円満な解決もある。その円満な解決が条件のうちへ入っておる、こう見ておるから、その円満な解決ができるまでは、あるいは鉱害に対してできるまでは、運輸大臣としてはまだ侵害されておらない同意権あるいは売却権、こういうものは発動できないはずだと私は見ておる。そういうことをあなたに吟味をしておる。あなたの言う労働者に対する取扱い方、経営者から見た労働者に対する取扱い方、あるいは鉱害被害者に対する取扱い方というものと、鉱害を受けておる人たちの立場の要求、労働者の要求というものはなかなか一致をしないのが普通の状態だ。そして今もってその労働者の了解あるいは鉱害被害者の了解のための団体交渉もやっておらないということは、円満なる解決がなかなか途上に上っておらない、条件一つが上っておらないということ。もう一つは、最初三菱譲渡という話もあったり、その次には競争入札という話も出たり、予算委員会で追及しましたところが、永野運輸大臣は非常にうまいことをおっしゃる。そういう国鉄経営でもなければ、あるいは三菱経営でもなければ、しかも民間に譲渡した上で何かの経営の構成を作ってそれでやる方法もあると言っていらっしゃる。そういうことになりますと、この総合開発の面ですが、こういう総合開発の計画を立てるのもまだまだ前途遠遠だということである。そういうことはしろうとの私たちが考えてもなかなか達成が困難なことだ。それにもかかわらず、あなたはもうすでに早く分離を請求されておる。そうして今もって、運輸大臣からそういう内輪の回答がありながら、その条件であるところの総合開発にしましても、入札のことにしましても、鉱害のことにいたしましても、それから労働者の問題にいたしましても、いつらちがあくやらわけがわからぬということを私は感じておる。そのときに、分離はしたものの、分離をすることの承諾を得たものの、その前途がきわめてあやふやで、分離後の経営の主体性に対する見通しがない。そういう見通しがあってもそれが常にふらついておる。そういう立場から申請を急いでおられるというのは、きわめて軽率しごくだと私は見ておる。私はきょうは関連質問ですからこれだけにいたしておきますけれども、その点は私は非常におかしいと思っておる。石炭界が非常に不景気である、そして運輸大臣が石炭合理化審議会ですか、そういうものをこしらえて山の出炭量を規制しておるような時代に買い手があるかということを、私はいつも質問しておった。ところがにわかに買い手がふえてきた。九州の炭山が非常に老朽化してきた、その老朽化してきた炭山の持ち主は、それを補てんするために、生かすための志免鉱山がほしくなってきたという話も出ておる。そういう業界に対して総合開発を持ち込んでみたいという政府の意図、運輸大臣の意図、そういうものが一体条件として売買のときにつけられるのかどうか。売買の条件というのは、結局鉱害をどういうふうにして引き受けてくれるか、労働者をどういうふうにして引き受けてくるか、あるいは総合開発の企画を述べて、こちらの仕方通りに引き受けてくれるか、そういう根本的なものが成立しないうちには、分離しただけで——分離してもやはり操業をやっておるのでしょうが、その分離した結末がめんどうなことになってくると私は思う。そういう見通しを持って質問したり考えて参りましたが、今そういう見通しもほとんど途中でぐらぐらしておるという状態になってきた、そういうときに、十月の初めに分離なり処分なりというものを申請された十河総裁の軽率さを私はここで認めないわけにはいかない、こう思います。そのために鉱害被害なり労働者の不安の状態というものは、あなたがいつも言われる労働者がかわいいとかそういう話とは非常に違った結果を生じておる。その責任は十河さん非常に重大だと私は考えます。それだけを申しておきます。
  73. 久保三郎

    久保委員 大臣がおいでになりましたから、端的に簡単にお尋ねします。  大臣国鉄に対する回答の中で、分離というのと競争入札との関係はどういうことですか。
  74. 永野護

    ○永野国務大臣 この山の性質から分離はやむを得ぬと私は考えております。ただし分離した後にどうこれを処置するかということにつきましては、実はこれは国鉄総裁には一言も言ったことのない私の心づもりであったのであります。従いまして国鉄側がどう受け取るかというようなことについては、全然無関係で、私の腹づもりを言うのでありますけれども、私はどうしても分離するのには、どちらにいたしましてもいろいろな困難がある。ここでもたびたび申し上げましたように、私は国鉄を中心にしてこれを総合開発することは望ましいと考え、またそれの可能性を具体的に言ったのであります。ところがこれができない。しかしその方法は、すぐこれを競争入札にして売ってしまうということの前に、私の事業経営の感覚から申しますとまだ考える余地があるのじゃあるまいか、こういう場合よくあることであります。関係者がみんな持ち分を出して、そうしてできればこういう国家本位の重大なる山でありますから、これをあるいは公団とかあるいは営団とか、あるいは一種の国策会社的のもの、あるいは鉱業連合会、石炭連合会というものですか、そういうものにみんなで経営してもらうというような案も考えなければならぬのです。それができるということを確信を持って申し上げておるのではありません。ありませんが、少くともすぐ入札する前に、売る前にそれができるかできぬかということを検討し、それがどうしてもできない場合に、こいつを売る方の処分にかかってもらいたい、私はこう考えておるのであります。
  75. 久保三郎

    久保委員 先ほど大臣のおらない席で総裁から御答弁があったのですが、総裁はすでに指名競争入札に三社を限定し、その手順を進められておるわけです。分離とはいかなるものであるかということを申し上げたところが、御答弁は、いわゆる三十二年の二月ころからのお話で、大体三井住友は御辞退なさる、三菱にこれを払い下げるのが至当だということで話がずっと進んできておる、そういうコースをたどられて今国鉄総裁譲渡の方を考えておる。結局今大臣がおっしゃるお言葉は、分離には大きく分けて二つある。先ほどお話がありましたが、先般の予算委員会でもそのお話が食い違いがあった。これは、私が認めましたのは分離するという基本原則であります、これはずっと一貫して変らない。総裁はそれだけは大体おわかりのようです。しかしこれを売るとも、あるいは現物出資をする、総合開発計画をやるというようなことがまだ残っておりますが、今の答弁と大体同じです、こういう御答弁をなさった。総裁考えは形ばかりの指名競争入札で売るということ、そのコース以外はないというお話があった。あなたはそれ以外に——以外にというよりもその前に、いわゆる共同出資というのですか、そういう方法もあるではないか、こういうことでありますが、大臣指令を中途半端に解釈されている総裁ではちょっとお困りだと思うのですが、その矛盾はどうして解決しますか。
  76. 永野護

    ○永野国務大臣 ただいまも申しましたように、実は総裁には全く抜き打ちの話だろうと思うのであります。というのは、私は総裁とは立場が違うのであります。総裁は、はなはだ失礼ですけれども、国鉄本位でお考えになるけれども、私は、はなはだ失礼ですけれども、もう一つ高い観点からこの問題を考えなければならないと思っておりますから、立場の差にある程度の食い違いが起るのはやむを得ぬかもしれません。こういうときには売るでもなし買うでもなし、関係者がみんな出し合ってやるということが、私の過去のこういう場合の事業体験にあるのであります。決して空論を言っておるのではございません。ただしそういう問題を出します前には、非常にこれは割った話ですけれども、タイミングが非常にむずかしい。いいことならいつ言い出しても通るというものではないのであります。そこで極端なことを言いますと、国鉄でやるのもなかなかむずかしい。さればといって三菱にもなかなか渡しにくい。といってこの山は打ち捨てておけない。どうしてもそれは早くやらなければいけません。関係者がみなくたびれたときに出すと通る案が、みながびんびんしているときにやると通らぬことがよくあるのであります。そこでタイミングの問題はなかなかむずかしい問題であります。実はこの席でこんなことを言ってしまったら、タイミングの問題がすこぶる意義が薄くなるのでありますが、少くとも案の一つとしては考えてみたい案だ、これは私は今でも考えております。それから立場が違いますから、国鉄総裁は、その場合には、その案に対する反対論者になるかもしれません。しかしそれじゃ困るんじゃないかといって、ここに説得工作が行われなければならぬと思いますけれども、私の腹では、それも案の一つだと考えるべきだ、こう考えております。
  77. 久保三郎

    久保委員 なるほど政治家としての立場と国鉄総裁としての立場と、これはものの解釈、考えようの違うことは、私も認めます。しかしこれは一つの事実としてこの中に出て参りましたから、その事実の内容の解釈あるいはその方針、そういうものに、大臣の意図が正確に許可したものに対して反映しなかったならば、これはとんだことになるじゃないかと私は思う。そこで、これはなるほどタイミングの問題もあるから今まで言わなかったのだ、こうおっしゃるけれども、タイミングというが、だんだん、だんだん指名競争入札の方にこれは向いていくという。みながくたびれるというが、大体三十二年の二月に業者間では話がついておりますから、これはくたびれていない。ぴんぴんしておる。くたびれません。これは大体コースはきまっておるような話を伺います。三菱にいくだろう、というより、いくのが既定事実だということで、ただ単にそれを合法化し、あるいは体裁化し、そうして持ってきたというふうに今日われわれは見ておる。そこで政治家である大臣は、せめてこの辺でそういうものを打ち消すために指名競争入札によれ、こう言ったが、実際は、先ほど総裁からいろいろお尋ねするというと、それはやれというから仕方がない、やる、御協力を願いますと言ったが、話は三十二年の二月にできておる。そうするとこれはほんとうの政治家としての腹といいますか、ゼスチュアによる指名競争入札だと私は思うのです。その指名競争入札だけとってもそうだ。ところが今度この分離の仕方、これにはあなたがおっしゃる、まず民間に譲渡する前に、それ以前の考えをすべきである——そうだとするならば、それ以前の話をタイミング、タイミングとおっしゃっても、それはこの回答書をやるときに、文面には現われてないが、その前にやることがある、民間譲渡に一致したが、そうではなくてその前にやることがある、こういうことをつけ加えて指令されるのが大臣としての任務ではなかろうかと思うのです。また逆に、そういうものは聞かないということになれば、最後には日鉄法の四十五条でもって、きたときに判こを押さないということであなたは拒否権を打てばいいと思う。せめてその前に、国鉄総裁に対して、指令内容を、滞りなくすみからすみまで、明確に間違いのないように指令を出すべきだと思うが、どうですか。
  78. 永野護

    ○永野国務大臣 最初にはっきり申し上げておきたいことは、私のこの一月十日の指令は、私の認可権、許可権には寸毫の傷もついてない、完全なものが残っておると、こう御了承願いたいのであります。もっと早くそういう案があるなら言ってやるべきではないかというお話があるのでありますけれども、これはこういうときに事柄をまとめるいろいろな体験から、潮どきがあるということを、そういう体験を持っております私は痛感しておるのでありまして、話の切り出し方、時期、方法というものはいろいろと考えないといけない——国鉄総裁を前に置いてはなはだ失礼ですけれども、今私がそう言いましてもおそらくすぐ国鉄がその方策によかろうとは言わない——これは観測ですけれども、そう思うのであります。そこでもう少し総裁がくたびれないとだめだ、生きがよすぎる、こう私は観測しておるのであります。従いまして観測の違いであります。もう総裁くたびれているか、今ごろ出したって飛びつくかもしらぬという、あなたの観測と私の観測とは少し違うのであります。これはあなたや館さんの言われる通りなかなかいかないと私も観測しておる。そこで、現地の人も何とかしてくれという気持になる。三菱——今、三菱という具体的な名前が出ましたからですけれども、三菱も、これはなかなかおれのところだけじゃとれぬぞとあきらめ、国鉄総裁の方も、これはやりきれぬから何とかいい方法があれば、いわゆる分離するという方法でやる以外に方法がないということ、すべてがずっと、つけものがつかったような時期があると思うのであります。その時期にこれを持ち出すと、みんな割合にスムーズに乗ってくる、こう私は観測しておるのであります。
  79. 久保三郎

    久保委員 なるほど総裁がくたびれるのを待っておられる。総裁はくたびれませんで、大体業界もくたびれません。先ほど申し上げたような総裁のコースで行っても、これは大体三十二年二月に結論出しておるようでありまして、三菱さんがお払い下げになったらいいでしょうということで業者間で話し合いがついておるそうですから、それでたまたまあなたの方で指名競争入札ということでお呼びになって、こういうことになったから御協力願いたいということでお話があったそうです。大体協力ということになるのでしょうが、そうしますと、その前の方法は結局地元の労働者、そういうものの問題が残るわけですね。そのときだと思うのですが、これはちょっと別にします。しかし運輸大臣はやはり政治家だと先ほどから感心しているのです。どういう点かというと、大体石炭業界は不況だし、九州の大手筋も大体薄くなってきたというのが通説になっております。そういうときに三菱一社ではこれはとても払い下げる資格はない。それから三井住友指名競争入札になったのだから、業界の仁義だからこれは三菱でやるというのもいいけれども、何かここで一枚という話が、これは政治家の住んでいる日本ですからなかなか複雑だと思うのです。そうなった場合、金を出さぬで現物出資——先ごろ予算委員会でもそういう答弁をされておりますが、現物出資なら銭が要らぬで簡単にできる。そうなった場合にいろいろな問題がまた出てきやしないか、こう少し身辺を用心された方が、大臣よろしいかと私は思います。現金を出すよりは現物を出せばそれで済むものなら一番手っとり早い総合開発になる。起死回生の妙薬だ。最近、経済基盤の強化とかあるいは体質改善というのがはやり言葉になっておりますが、大体それは二つは、業界からいえばそろってしまうのであります。これは少し御研究いただかぬと大へんなことになると思うのです。その思想全体が悪いわけではございません。ございませんけれども、ただここであなたと総裁に申し上げるのは、先ほど言ったようにあなたのこの回答に対する考えと、総裁が受け取った考えとがまるきり違うと言っては語弊があるが、まるきり違う。前後した話、作業をやっておる。前後した手続をやっておることについて、私はこれは一つの責任がありはしないか、こう思うのであります。それからもう一つは、あなたが指名競争入札ということを独断に回答の中でしたのはどういう意味でございましょうか。
  80. 永野護

    ○永野国務大臣 考え方によりますと、信用のできる業者にこういう問題は特命でやるのも、私はそういう考え方もあると思っておるのであります。国鉄の当事者は、そのごくアカデミックな考え方でそれを希望されておったのでありますけれども、私は事のよい悪いを問わず、あるいはそれはまずいかもしれませんけれども、こういう天下の大問題になったときには、少々ほかの不便があっても、ぜひこれを競争入札にしてもらいたいと私が特に懇請したのであります。それは指名競争入札にすると非常に不便のあることは承知しながら、それよりもっと大きい要素がありましたら、これはどうしても競争入札にしてもらわなければならぬ。しかし、先ほど申しますように、いよいよどこかに売らなければならぬということになった場合に競争入札にしろというのであって、その前に問題のあることは、そのときの私の腹にあるのであります。そうして九州の炭況がだんだん悪くなっております今日、あの粕屋炭田というものは、私は残された宝庫だと思っております。従って、ある一会社経営するよりは、その具体的の方法はいろいろありますけれども、しかし石炭業界だとか、あるいは今入札指名した人がみな寄り合ってどうとか、いろいろな形があると思いますけれども、ともかく一社でなしにやるのがいいのではないか、こう考えておるのであります。そうすれば先ほど申しましたように、これは借金の一文もない新しい会社ができます。それは会社であるか公団であるかは別として。そうしますとそれの開発資金は、全く借金のない会社だから、開発銀行でもどこでも非常に作りやすい。ほかの石炭会社が、みな何十億という会社があるときに、日本でただ一つの、一文も借金のない、りっぱな鉱区を持っておる会社経営資金が調達できないはずはない、こう考えておるのであります。
  81. 久保三郎

    久保委員 総裁、今の大臣お話を聞いてあなたはどういうふうに考えられますか。
  82. 十河信二

    十河説明員 大臣が政治家としてどういうことを頭の中、腹の中でお考えになっておるか、それは私の関係しないところであります。私のうかがい知ることのできないところであります。私はただ大臣にお伺いを立てて、大臣から書面でもって指名競争入札にしろ、こうおっしゃるから、私は監督官庁の命令に従って指名競争入札にする手続を進めておるだけであります。大臣がいつ、どういうことを言われるか、言われたらまたそのときに、大臣の命令ですから、私はそれに服従せざるを得ないのであります。私としては、現在出ておる書面で明瞭に指名競争入札にしろということが指令されておりますので、これに従って手続を進めるほかないと考えております。
  83. 久保三郎

    久保委員 なるほど書面通りだ、こうおっしゃるが、ここは国会の公式の場所でございます。公式の場所で、国鉄財産の処分の問題について、しかも志免鉱業所の問題についてお話を私は承わっておるのであります。だから大臣が言っておることは、頭の中にあること、あるいは心の奥底にあることはおわかりにならぬということではなくて、大臣のお考え、方針というものはおわかりの通りです。そうしますと私は今大臣答弁はあなたに出し書面の解釈だと存じております。内容の分析といいますか、内容説明だと私は思っております。私はその説明を求めておるのです。そうしますと私という媒介体を通じて、あなたはそう解釈さるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  84. 十河信二

    十河説明員 私としては、大臣がこの書面のほかに別にお考えになってそうしろとおっしゃるならば、そういう指令をいただかなければ、国会でどういう答弁がありましても、大臣からの命令はこういう系統でくるのでありますから、大臣から書面でそれぞれの手続を経てきておる命令に服従するのほかない。その解釈が違っておるなら違っておるで、別の手続でこれを修正してもらうのほかないと思います。
  85. 久保三郎

    久保委員 これは国務大臣同士なら閣内不統一なんです。ところが大体親子関係になっているから、家内不統一です。こういう不統一では、われわれはこういう問題はなかなか審議できない。国鉄の全体、あるいは運輸行政全体を審議できないです。あなたの指令が中途半端に解釈されている。こういうことでは、これは問題だと思うのです。これはどう解釈したらいいですか、もう一ぺん……。
  86. 永野護

    ○永野国務大臣 私の出しました指令に関する限り、中途半端ではないと思います。私は売るときには指名競争入札にしろという指令以外に出しておらないのであります。先ほど申しましたような別の考え方があるということは、まだ片りんも示しておりません。従いまして、国鉄総裁がそれに対する何らの意見を持たないということも、必ずしも責められないのではないかと思うのであります。この間の委員会のときに、いろいろな情勢から、ある意味からいうと非常に歪曲された考え方がある、もうあれはさまっているのだ、あとは指名競争入札とかなんとかいうことは、まあしまいといえば語弊があるかもしれませんけれども、実際は落ちつくところは大体きめて、やっているのじゃないかというような懸念のある御質問がありましたから、私は、そうじゃないのだ、ほんとうに何もきまっていやしないのだということのために、私の最も好ましいと思う形態——これはなかなか困難であります。非常にうまい話で、現物出資によって、そうして何十億という財産を持った借金の一文もない会社にしておいて、これを国策に沿うて開発するという案は、ちょっと一見うまそうですけれども、現実の問題のときにはなかなか困難があると思います。あると思いますが、私は少くともできるだけこの案を第一案として取り上げたい、こう考えておるのであります、それを言っておりませんから、国鉄総裁は、この私が文書に出した案だけについて国鉄総裁の立場において善処されておる、こう了解しております。
  87. 久保三郎

    久保委員 それは大臣、少し話がおかしいのじゃないですか。というのは、なるほど上申書の件名は「志免鉱業所譲渡について」、だから回答も「志免鉱業所譲渡について」ということでお出しになったと思う。こういうふうにあなたはおっしゃるようですが、分離を了承するというからには、あなたの解釈によれば、譲渡ばかりではないということです。そうだとすれば、譲渡の方に重点を置いたこの回答を出しておいて、分離のもう一つの問題をそのまま今日まで黙って指令も何もしないというのは、大臣としておかしいじゃないですか。
  88. 永野護

    ○永野国務大臣 これは、なまじっか私がこういう事業経営の経験があるものですから、私の過去の経験によりますと、案を持ち出します場合に、最初に持ち出した案は、大ていつぶれます。そこでいろいろの案を練って、どうにもならぬから、それじゃこの案がいいだろうというようなところに落ちつく場合が多いのでありますから、とりあえず分離をきめておきまして、そうしてこれは、売るとすれば競争入札でなくちゃいかぬ、こういうことを申しておるのであります。ぜひ売れという指令は、この指令の中には出てこないと思います。
  89. 久保三郎

    久保委員 大臣のお考えはそうだと思うのですが、書面は、「分離にさいしては、指名競争入札方法による外、譲渡方法等について」云々と、こう書いてありますね。これはあなたは幅広く解釈されておられるのですか。そうだとすればこれは国鉄総裁の解釈がおかしい。おかしいところは直さなければいかぬ。それからあなたは、この書面のほかに今も申し上げたがもう一つ方法があるのだが、それは大てい最初のものはだめなので、その次にくるものは大体いいのだ、それを待っておられるというのだが、先ほどあなたがおいでにならないときからずっと総裁から聞いておりますが、総裁は、そういうことではなくて、譲渡のコースを今どんどん歩いておられる。譲渡のコースを歩いていくということは、結局三十二年から業者間に話があるのですから、もう二年もかかっているのですから、これはコンクリートができておるのです。だからそうなればあなたのせっかくのその案が、譲渡の場合の案というのは大体実現できないのです。そうなったときにあなたはせっかくの考えだがだめになってしまう、こう思います。これが一つ。  もう一つ先ほど指名競争入札ということにしたのは、もっと大きな要素があったからというのですが、その大きな要素というのは何でしょう
  90. 永野護

    ○永野国務大臣 順序が逆になりますが、あとの方から申し上げます。私は競争入札の方が明朗だと考えたからであります。これは国鉄総裁というよりは、政治家の立場からそういうふうに考えたのであります。その方の要素が大きいと考えたのであります。  それから今の競争入札の手続はずんずん進んでおるから、早くやらぬとそのまま固まってしまうじゃないか、こういう御心配がある。かりに私が何か案を持っておってもその案を出すチャンスを失うのではないかというような御心配があるようでありますけれども、これは一番最初に申し上げましたように、最後まで私の許可権というものが完全に残っておりますから、そうして私が申し上げておきたいのは、必ずしもそれのみに限るのではなくて、従業員が全部満足し、鉱害地の人が満足して、みんなが喜ぶ案ができるものならば、必ずしも先ほどから私の申しましたような案を出さなくてもいい。ただこれは観測であります。観測でありますけれども、なかなかむずかしい。全部の従業員に心からなる協力を得、鉱害地の人がみんな賛成するような案は、これは今国鉄の当局に交渉はしてもらわなければなりませんけれども、これはなかなかむずかしいので、先ほど申しましたような私の腹中にある案を出すチャンスは十分にあると私は観測しておるのであります。私の観測であります。
  91. 久保三郎

    久保委員 今お話の中で、指名競争入札がまとまればよいが、こういうお話ですが、そうしますと先ほどお話の熱エネルギーの総合開発といいますか、そういうものはある特定の民間会社にやらせるべきではないという御思想、考え方、これと指名競争入札がまとまるということは、これは矛盾ですね。
  92. 永野護

    ○永野国務大臣 矛盾でありません。それはどういう会社がやるといたしましても、そういう国家的の要請にこたえるような規模において、あるいは組織においてやるとすれば、必ずしも私が最初に申しましたような営団組織とかあるいは組合組織とかいうものでやらなくとも、国家の要請に応ずることもあり得ると思います。
  93. 久保三郎

    久保委員 あとに待っておりますから、私はもう一つだけお尋ねいたします。総裁の出された上申書に対する回答の中での条件というか、総裁からの上申書に対して違った点が二点ある。一点は今の指名競争入札によってという点、もう一つ所属職員の処遇については云々という点、これは結局分離前提条件だと思うのです。そう解釈してよろしいのですか。
  94. 永野護

    ○永野国務大臣 いわゆる法律上の条件ではございません。しかしこれを正式にどこどこへ売るといわれたときに、先ほどから繰り返し申しますように、私の同意権は完全に残っておりますから、私の希望を十分に明記してあるのに、それを全然無視したような解決がされましたら私は私の持っておる権限でそれに同意しないだけのことであります。
  95. 久保三郎

    久保委員 もう一つ念を押してお聞きしますが、そうすると指名競争入札は、それはその時期になれば総裁がやるかもしれない。あるいはあなたの案が出てくるかもわからない。しかしいずれにしても分離前提になるような法的な条件でないにしても、今お話のような条件という解釈でいけば、残りは所属職員の処遇の問題が解決しなかったならばこれは判こを押さない、こういうことになりますね。
  96. 永野護

    ○永野国務大臣 読んでごらんの通りであります。強く要望しております運輸大臣の要望がわかっておるのに、その要望に反した解決は、私に同意の判を求められても私はその同意はできないことは当然だと思います。
  97. 木村俊夫

    ○木村(俊)委員長代理 河野正君。
  98. 河野正

    ○河野(正)委員 私はただいま大臣から御答弁いただいたところから質疑を開始いたしたいと思います。  ただいま大臣から、分離後の経営のあり方について、いろいろ出資会社であるとかあるいは別会社であるとかいうふうな御意見が出たわけでございますが、そういった御意見だけを切り離して考えますと、あるいはそういうことも当然あり得ると思いますけれども、しかしながら私どもは今日いろいろ論議する過程の中では今日までの経緯というものを決して無視しては相ならぬと考えます。そこで大臣も御承知のように、一月十日に国鉄総裁に対して、分離承認書を渡されました。この分離承認書一つの大きな前提は、この書面の中に明記してございますように「指名競争入札方法による外、譲渡方法等について十分慎重を期し、特に所属職員の処遇については、円満に措置するよう強く要望する。」ということでございまして、この分離の最大の前提指名競争入札によるのだということでもございますし、なおまたその点に対しては大臣が胸を張って私どもに公言をされておることは御承知通りでございます。そういたしますと少くとも一月十日国鉄総裁に渡されましたこの分離承認書の大きな背骨というものは、競争入札によるということが非常に大きな背骨になっておるというふうに私は考えます。そこで先ほどからいろいろ承わりますと、大臣の将来に対する構想もけっこうでございますが、そういう過程を無視した大臣の構想はあり得ぬと思うのです。大臣の構想だけ切り離してみますればそれでもけっこうだと私は思いますけれども、しかしながら今日までの過程を無視してそういう構想はあり得ぬと思う。そこで少くともこういうことははっきり言えると思うのですが、一月十日渡されました分離承認書の大きな背骨は、競争入札による、そのほかいろいろ職員処遇の問題もございますけれども、最大の前提競争入札によるということでございますから、その点を無視した一月十日の分離承認書というものは存在の価値はない、かように私は考えるわけです。そこで、もし大臣がそういう別な構想でこの問題を処理されようとするならば、一月十日渡されました分離承認書というものは当然キャンセルされたものだ。いみじくも国鉄総裁は所轄官庁でございます運輸大臣指示に従うのだ、そこで、もし大臣がそういう構想であるならば当然修正されなければならぬというふうな意見がたまたま出て参りましたが、私は大臣の構想は別としても、少くともそういった構想でございますならば、一月十日国鉄総裁に渡されました分離承認書というものは一応キャンセルされるというふうに了解することが当然と考えますが、いかがでございますか。     〔木村(俊)委員長代理退席、委員   長着席)
  99. 永野護

    ○永野国務大臣 私は必ずしもそうは考えません。私が今のような構想を腹に持っておるから一月十日の指令書はキャンセルされたものだとは考えないのであります。というのは、いよいよ困った場合の救済策としてはこういうことも考えておるということを申し上げたのでありまして、このすべての条件、つまり従業員も満足し、地方民も満足し、そうしてその条件をのむ引受手がここに出てくればけっこうなんです。ただし、それはなかなかむずかしい。これは観測です。将来の観測だけれども、そのときに何もできないというのでは、従業員に対しても気の毒だし、地方民に対しても気の毒だから、何か対案を考えておかなければならぬと思いまして、こういうことも考えておること、そのときの控えの案として持っておるということを申し上げたのでありますから、私がそういうことを考えておるからといってこの一月十日の指令がキャンセルされたものとは思いません。
  100. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで重ねてお尋ね申し上げておきたいと思いますが、それは一応一月十日国鉄総裁に明示したこの分離承認書ですが、これがもし行き詰まるような事態が起ったならば、第二案と申しますか、そういう構想でいきたいというふうに理解をいたします。そういたしますればもし第二の構想である別会社なり出資会社でいくというふうな方針が出て参りました場合には、一月十日の分離承認書というものは当然キャンセルされるというふうに理解してもよろしゅうございますか。
  101. 永野護

    ○永野国務大臣 そういう場合にこれをキャンセルされたと見るか、繰り返して申しまするように、これを売るという処分方法がきまったときには競争入札にしろというのでありまして、この文句によって売却以外の方法はできないんだぞという要素は、この文句の中にはない、こう私は読んでいるのであります。
  102. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣大臣の立場から勝手な御解釈をされておりますけれども、これは大臣国鉄総裁とが一体になってやらなければできない仕事なんです。そこで国鉄総裁も言っておりますように、もし先ほど大臣が示されましたような構想でいくとすれば、当然修正した書類が出てきて、そこで初めて国鉄当局としてはそれに対応するような処置をしなければならぬということになるのです。そこで私はそのような第二の構想が出て参る場合には、当然修正した承認書というものが国鉄当局にいかなければ、国鉄当局はそれに対応するところの処理ができぬということは当然なことと思いますし、なおその点については、先ほど国鉄総裁がいみじくもそういった意見を表明しておるわけです。そこで一応今日の時点では競争入札でやるという方針でございましょうし、なおそういう方針に基いて国鉄当局も逐次それぞれ対応する方策を立てられておると思いますが、しかし行き詰まれば一応一月十日の分離承認書を取り消してあらためて別の承認書が出されなければならぬというふうに私どもは理解するわけですが、その点はそれでけっこうですか。
  103. 永野護

    ○永野国務大臣 これは単に一片の承認書の問題ではございません。今私がこういう方法もあり得ると申しました案はなかなか困難が伴います。先ほど国鉄総裁が、もっとやせなければこんな案はできぬと言いましたくらいになかなかむずかしい問題であります。だから承認書の文句の訂正というような簡単なことではなくて、国鉄総裁はその利害得失をるる説いて、これでやろうじゃないかというような非常に困難なる交渉過程を経なければ私の考えている案はなかなか実行がむずかしい。これは国鉄だけではないのでありまして、関係の、総合開発をするに必要なる鉱区を持っている人には、これが一番いいのだから賛成してくれということを力説する非常なる努力が加わる仕事だ、こう考えております。
  104. 河野正

    ○河野(正)委員 考え方としては大臣がおっしゃる通りかもわかりませんが、現実の問題としては国鉄総裁が実際に業者話し合いをし、あるいは現地従業員と話をし、あるいは鉱害被害者でございまする農民と話し合いをする。結局いろんな方針を実際に運んでいく窓口というのは国鉄当局だと思うのです。そこで大臣の方針に従って国鉄当局はいろいろ善処していくということでございますし、なおまたそういう建前から今日国鉄当局は一月十日出されました大臣の方針に従ってそれぞれ対応するところの処置をやっておるというふうに当然理解しなければならぬと思うのです。そこで大臣の構想なり考え方は別といたしましても、具体的に現実の問題としてはもし第二の構想、いわゆる別会社、出資会社ということになりますれば、私は当然そのような処置がなされなければ国鉄当局はいろいろ窓口で対処することはできないというふうに判断しますし、これは常識的に考えても当然だと思います。そこで考え方は別としましても、手続上の問題としてはやはり第二の構想という場面が出て参りますれば当然別の趣旨、修正した趣旨が出されなければならぬ。別の趣旨が出されることは当然一月十日のこの内諾書が一応キャンセルされて、そして別な趣旨の形に変っていくというふうに理解するわけでございますが、さように理解してけっこうでございますか。
  105. 永野護

    ○永野国務大臣 私の申します最後の案というのは、この一月十日の指示を取り消すとかなんとかいうことではなくて、事実上全く不可能になるという場合を想定しておるのであります。人為的にあれをできるのだけれども、工合いいすべての条件を満足した案ができたけれども、こっちの方がマッチ・ベターだからやれというような扱い方をするつもりはございません。従いまして、取り消す必要のない程度に明瞭に行き詰まったというときに初めて出る案でありますから、そのときに——それは取り消してもいいですよ、取り消してもいいのだけれども、取り消す必要もないくらい明々白々たる事実が起るときにそれが問題になる。しこうして残念ながら今のところどうもそういう場面が起るのではないかという懸念がありますから、本来は今申しましたような案はまだ早いのであります。言っちゃいけない。いよいよ行き詰まってしまって、みんな手をあげて何かないかというときに私が救済案を案としてこの座敷に出すべき案なのであります。少し時期が早いのであります。ただ、追い詰められてそういうことを言わざるを得ないような場合が出てきたから申し上げたのであります。
  106. 河野正

    ○河野(正)委員 再三再四申し上げますように、考え方としては大臣がおっしゃるような考え方でしょうけれども、しかしながら、少くとも一月十日運輸大臣から国鉄総裁に渡されました承認書というものは権威ある承認書だと考えます。そういたしますれば、その承認書の非常に大きな柱となっておる諸条件がくずれますれば、私はこの書類は一応キャンセルをして、あらためて国鉄当局に指示するのが当然だと考えます。その点について大臣も全くその通りだと肯定したいようなしたくないようなニュアンスの御答弁でございますけれども、私は形式的にはそうならざるを得ないと思うのです。そのように理解してけっこうでございますか。
  107. 永野護

    ○永野国務大臣 その通りであります。
  108. 河野正

    ○河野(正)委員 その点は大臣が私の意見に賛成していただきましたので、次の問題に移って参りたいと思います。  そこで、ただいま申し上げましたようないろいろな疑問もその一端でございますけれども、今年の一月二十八日の朝日新聞の「今日の問題」において、このような点を強く指摘をいたしております。それはどういうことかと申しますと、「問題は、国有財産でもあり、反対者も相当あることだから、払下げに当っては、反対者の納得を得るよう、あくまで考慮しかつ努力することが必要である。たとえば、社会党は、志免炭鉱は今後十年以上も合理的経営が可能であると言い、あと二、三年で限界にくるという国鉄当局や調査会の意見と対立しているのであるが、どちらが正しいのか。これも国民の前に明らかにしなければならぬ。」と言っております。これは一例でございますけれども、端的に率直に国民の世論を代表しておる適切な指摘だというふうに考えるわけでございます。ところがまことに残念なことには、今日までこのような点に対して国民の前にその事実が明らかにされない。いろいろ国民が疑惑を抱き、あるいはまた国民が誤解をしておる、そういった点が今日まで解明されない。そこに私は今日この問題が世間に強くアッピールされている非常に大きな原因があると考えるわけでございますが、その点に対する大臣総裁の御所見をまず承わっておきたいと思います。
  109. 永野護

    ○永野国務大臣 朝日新聞の記事は私も読みました。私はもっともな記事だと思って読みました。社会党の方ではそう心配は要らぬ、相当期間掘れる、こういう御意見のあることもよく了承しておるのであります。一方三十三年度中に早く案を立てないとこれは大へんなことになるという青山博士の診断書のあることも事実でございます。私はごく公平な立場から、偏見を持たないで社会党の対案も読んだんであります。ところが読んだ結果は、河野さんはお医者さんだから申しますと、河野さんはガンじゃない、切らなくてもなおる、しばらくおれにまかしておけという診断をお下しになる、ところが大学病院に行ったら、これはすぐ切らなければならぬ、うっちゃっておくと手おくれになるというようなケースが起った場合に、親類縁者が寄って切るべきか、河野先生の診断によって切らないでなおそうかという相談をする。こういうケースはよくあるのであります。それに似たような感じをもちまして私はこれを判断したのでありますけれども、私は残念ながら河野先生の案よりは大学病院の診断の方をとろうと思いまして、これは手術をしなければならぬとり決意したことが分離をしなければならぬ手術であります。(「こっちも大学病院ですよ」と呼ぶ者あり)例ははなはだ悪いけれども、それでは同じ大学病院で、九州の大学病院では切らなくてもいいと判断し、東京の大学病院では切れといったときに、さてどうしようかというときに、私はやはり東京の大学病院の方の説に従って早く切ろう、こういう気持になったのであります。これは判断であります。
  110. 河野正

    ○河野(正)委員 釈迦に説法でございますから、いろいろ名説を承わりました。ところが私ども専門家であるほんとうの医者というものはそういうふうに判断しないのです。どういうことかと申しますと、要するに十河さんの言によると、志免の寿命というものはあと二、三年しかない。これは病人にたとえて申し上げますと、非常に危険な状態、瀕死の重症な状態にあるわけです。そのような状態でございますから、家族が悩み、あるいはまた本人が自分の将来に対して非常に不安を持つということは当然だと思います。その場合に考えられますことは、Aという医者に診断を請い、Bという医者に診断を請い、そこでたまたま診断が一致しなかった。病名が一致しなかったということがありました場合には、当然第三者の意見を聞くと思います。しかもその第三者というものは単に意見を聞くのみではなくて、人命の問題、人道上の問題でございますから、実際にその人の脈をとって初めて適切な処置を与えると思います。私ども専門でございます医師というものは当然人道上の立場からもそういうことを強く考えるわけです。ところが、なるほど大臣の名医論はどちらの名医論かわかりませんけれども、私どもの立場から申し上げますならば納得することのできない名医論だ、迷っておる方の迷医論で、はなかろうかというふうな感じを強く持つわけです。それは少くとも私が単に試見を述べるだけでなくて、今までの経緯というものがよくその事実を物語っておると思います。というのは、たまたま大臣から名医の話が出て参りましたから、私もそれになぞらえて申し上げますが、それは私ども社会党の診断と、それから国鉄当局の診断とが、不幸なことでございますけれども一致しなかったというのは事実でございます。そこでおそらく十河国鉄総裁としては第三者なる青山調査委員会の意見を聞くということであったろうと思いますけれども、そこに私が指摘しますように非常に重大な問題がございます。と申し上げますのは、青山調査委員会は一応国鉄の資料は十分検討したかもわかりません。しかしながら一方私ども社会党の医師の診断書、資料というものはほとんど検討いたしておりません。そこで、これはこの前も御指摘を申し上げた通りでございますが、それは最初国鉄当局が諮問をいたしまして、そして十日前後で志免鉱業所分離すべきだという答申を示しておりますことはすでに御承知通りでございます。このような事実を見て参りますと、私は必ずしも第三者が適正な判断をしたかどうかというようなことについては非常に大きな疑問を持たざるを得ないと思うわけでございます。しかもそのような誤まった第三者の判断に基いて大臣が政治的な判断をされるということは、私はまことに残念でございますけれども、大臣みずからも軽率のそしりを免れないのじゃないかと思いますし、その軽率のそしりというものがひいては三千二百名の従業員あるいはこの志免鉱業所を中心といたしまする八万の住民に対して非常に甚大な影響を及ぼすということでございますから、従って一人の生命の重大であることは当然のことでございますが、単にそれのみならず、ただいま申し上げますように、非常に広い範囲にいろいろ重大な影響を与えると思うのでございますが、そのような経緯からながめて大臣はどのように判断されまするか、一つ率直にお答え願います。
  111. 永野護

    ○永野国務大臣 河野委員お話のように、医者の診断が違ったときにはまた多数のほかの医者の意見を多くの場合聞くのだというお話ごもっともであります。東京じゅうの病院をみんな迷った、ガンなんかの人は大てい病院を何軒も診察してもらって歩くのが常則であります。しかしながら必ずしもそうじゃないのであって、これはたとえば、例が悪いかもしれませんが、東京の帝大で信頼する医者がガンだ、これはすぐ切らなければいけないと言ったら、迷わないですぐ手術をする決意をする人もないじゃありません。私は後者の例をとったのであります。私が信頼する青山博士以下のあの委員会というものは、私には東京の帝大病院でガンだと診察されたというのと同じくらいの影響力を私に対して持ったのであります。それをあんなへぼ医者の言うことを聞いて、おれの方の医者の言うことを信用しないのが悪いのじゃないかということは、それは私にまかせていただきたい。私はあの医者を信用する、皆さんああいう場合、迷った場合に、みんなその人が日本で一番信頼できる医者とお考えになるんだけれども、それは自分が、当事者があの医者の言うことならほんとうだと思う、その治療方法にまかせていただく以外に方法がない、こういうように考えるのです。
  112. 河野正

    ○河野(正)委員 それではこういう事実に対して大臣はどのように判断されますか。それは青山調査委員会大臣は非常に権威ある医師だというようにお考えのようでございますが、その青山調査委員会が発足いたしましたのは、御承知のように三十三年の四月八日のことでございます。そうして第一回の答申を行いましたのがこれまた御承知の四月十九日のことでございます。そこで算術計算でいきますと、十一日目に志免鉱業所分離した方がよろしいという答申がなされたということでございます。けれども実質的には九日前後でこの答申がなされておる。こういう事実に対して大臣はどのように御判断願うのか、一つ率直に御回答願いたいと思います。
  113. 永野護

    ○永野国務大臣 青山委員会は青山さん一人ではございません。この山のことを非常によく知っておる人が加わっております。従いまして全くしろうとの、初めての人が十日で結論出したというと、あるいは軽率という常識的のそしりがあるかもしれませんけれども、かねて相当にこの山を知っておる人たちの意見でありますと、単に時間が十日であるとか二十日であるとかいうことでその診断書の価値を判断することはできないと思います。これもこの前河野さんを医者と知らぬで医者の例を持ち出したのでありますけれども、かりに私のような者が医者だったら、三年かかってもほんとうの病気がわからぬが、大学の非常なエキス。ハートに見てもらったら、一ぺん見てもらっただけで、ぱっとガンだと言う人もあるのであります。でありますから、あれは何分かかって診断したから信頼できるとか、この人は時間が短かかったからだめだということにはならぬのじゃないかと思います。要するに技術、手腕、それをどの程度に信用するかという問題になるかと考えます。
  114. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは具体的にお尋ねしますが、青山調査委員会は御承知のように青山委員長以下八名の委員で構成されています。大臣は、この委員方々志免鉱業所の実態というものは十分承知しておるのだ、そこでこの青山調査委員会答申なり診断に対しては、自分も一つの自信を得て政治的判断をしたのだということでございましたが、それではこの青山調査委員会の八名のメンバーの方々がどういうふうに志免の実態を知っておられるのか。たとえば志免鉱業所というものは福岡市の東南方十二キロのところにあるという意味で知っておられるのか、あるいは志免鉱業所の坑内の実態というものはどういう実態なのかということを知っておられるのか、その辺を一つ。この点は小さいことのようですけれども、非常に重大な意味を持っておりますので、その辺の事情一つ明らかにしていただきたい。
  115. 永野護

    ○永野国務大臣 実は私は個々の人がどれだけ志免鉱業所に対する具体的な知識を持っておるかということを、八名の委員に一々メンタルテストをしたわけではございません。しかし私の信頼しておりますように、運輸省、国鉄の人に一々聞いてみますと、これは十分よく知っている人であります、こういう報告をしましたから、私はそれを信用したのであります。
  116. 塚原俊郎

    塚原委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  117. 塚原俊郎

    塚原委員長 速記を始めて。
  118. 河野正

    ○河野(正)委員 まことに残念ですけれども。——その点は、国鉄総裁がそのような意見を大臣に具申したことによって大臣が判断をされたということでございますならば、その具申の内容というものはきわめて重要でございますから、従って総裁の方から一つ明快に御説明願いたい。
  119. 十河信二

    十河説明員 委員の中には、政府が整備事業団というものを作りまして炭鉱の整備をやっておるわけであります、その整備事業団の理事長あるいは理事、あるいは鉱害の理事長ですか、そういうふうなことをやっておられる方々が参加しておられる。私自身は炭鉱についてはしろうとでありまして、何もわからないでくの坊でありますが、委員の方にはそういう方々がおられるのであります。この青山委員会委員長青山博士が新聞記者に話したことにこういうことがあります。「委員は大なり小なり志免を研究されたことのある人ばかりであって、技術的に又経営的によく承知せられていたし、三、三の人以外は志免現地をこの問題が起る以前によく見ている人達である。従って、志免現地を一度もみないで短時日に結論出したとはいえない。」こういうことを青山博士が新聞記者に話したのであります。
  120. 河野正

    ○河野(正)委員 まことに小児病的な御発言だと思うのですが、御承知のように委員長が採鉱技術の権威者であり、あるいはまたその他の方々がそれぞれ技術なり経営の権威者であるということであるから、志免の実態を完全に掌握しておられる、志免の実態に完全に通じておられるということには相ならぬと私は思うのです。というのは、私は医者であり、脳神経の専門ですから脳神経はわかりますが、それだからといって総裁の動脈硬化がどういう状態であるかということはわからぬわけです。それと同じように、たといいかに斯界の権威者であるといえども——一般的にそうでしょう、学問的にはそうでしょう、でしょうけれども、それでは志免についての権威者であるということは私は言えぬと思います。それからまた第二点として指摘したい点は、それは一度か二度か現地志免鉱業所に行って、志免の実態を知った人だ、こうおっしゃいますけれども、これもまた私は、先ほど大臣から医者の話が出て参りましたから、自分が専門家でありますから、一言つけ加えて申しますが、十河総裁を私が十年前に見たといたします。十年前に見ているから、今日全然十河総裁のからだを脈もとらぬで、あなたの病気がわかるかということは、これは科学的にも現実の問題としても不可能だということは常識上判断できるわけです。そこで青山調査委員会委員長が、志免をすでに見たことがあるので、しかも権威者であるので、そこから割り出し結論というものは正しいんだ、それでこういう政治的な判断をしたとするならば、私は全く軽率のそしりを免れないと思います。それでは一体青山調査委員長以下が、いつの志免の実態を見ておったのか。これは私は永野運輸大臣からも、しばしば炭鉱経営お話を聞くわけです。地下の状態というものは刻々に変っていくのだ。たとえば、これも運輸大臣が私どもに講義されたわけですが、三池炭鉱が一時将来見込みがないということであったが、結局やってみたところが、今日の三池の隆盛を来たした、こういう状態なので、炭鉱の坑内の実情というものは、断層の状態あるいは基盤の状態、いろいろな状態で刻々と変化していくものである。それをいつ見たかわからぬけれども、かつて見たことがある。そこで志免の問題については自分が最も権威者であるというふうな理論は、私は成り立たぬと思いますから、そういう子供のような、小児病的な理論によってこの問題が措置されたとするならば、これはやはり私は軽率のそしりを免れないというふうに判断するわけですが、いかがでありますか。
  121. 永野護

    ○永野国務大臣 これは御判断におまかせする以外に方法はありませんけれども、私は軽率でないと存じます。
  122. 河野正

    ○河野(正)委員 それで一つ総裁どうですか、いつごろ青山調査委員長以下現地の状態を調査されたのか、それを一つ具体的に言って下さい。それは私、納得いきません。
  123. 十河信二

    十河説明員 私はいつ視察せられたか、その事実は存じません。
  124. 河野正

    ○河野(正)委員 この青山調査委員会答申というものが、今日の大臣の政治的判断になり、それが今日非常に大きな世間の関心を呼び起しておる。この答申というものが非常に重大な基礎になっておるわけですから、そこでこの答申については、総裁としてもこれは重大な責任を持っていただかなければならぬということなんです。問題は、この問題に端を発して、そうして今日の政治上の問題が起ってきているわけですから、従ってこの答申内容については、総裁は非常に大きな責任があると思う。総裁の態度というものが、ひいては今日の運輸大臣の態度の追及となり、措置の追及となるということになっておるのですから、私は少くともその答申内容については、総裁は確固たる自信を持っておられると思うのです。ところが国会においては、現地へ行って志免の実態を見ておるのだ、それならばいつごろ見て、どういう事情であったのかということを、当然明らかにしてもらわなければ、私は納得いきません。
  125. 十河信二

    十河説明員 私自身は炭鉱のことはさっき申し上げたようによくわからぬのですが、これはさっき大臣からお話のあったように、信頼する人、政府でも信頼しておる人、そういう人がこの問題の起る前にこの炭鉱——この問題が起ってからは、この炭鉱を見ることは非常に困難なんです。それでこの問題の起る前に見て、それから後のことは、現に炭鉱経営しておる技術者から報告になった、こういうふうになった、こういうふうに進んでいたんだという実情を、図面や数字で検討せられた結果出た結論でありますから、それで私はこれを信頼して、運輸大臣にもこの志免調査委員会経過は絶えず報告をいたしておりますし、その申請書を出す前に、運輸大臣とはしばしば連絡いたしまして、親しくお目にかかってその状況を報告して参った次第であります。それゆえに運輸大臣もそういうふうな結論をお出しになったことと存ずるのであります。
  126. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど私が朝日の論説を指摘して大臣の御所見を承わったのですが、大臣も全く同感です、こう言っておられることは、やはりいろいろ意見の対立があるならば、お互いにそれを納得するように努力すべきだということだと思うのです。そこで私は納得できませんから、一つ納得させてもらいたいということでございますから、この点は大臣も十分御理解のできるところだろうというふうに考えます。ところがただいま申し上げますように、青山調査委員会の資料というものが決定的な要素になってきた、ところがその決定的になってきた青山調査委員会志免鉱業所の実態の捕捉というものについては、私どもは全く了解できない。いつ行ったことなんだか——大臣が言われるように、あの状況というものは刻々と変るのだ、断層あるいは基盤の状態が変るのだ、それをいつ行ったかもわからないような状態で、しかもこういった重大な政治的な要素を持ってくる判断の資料を作ったということは、とうてい私どもは理解できません。そこでこれは今大臣がわからぬならば、後ほど機会を見つけてその辺の事情を明らかにしてもらって、私どもに納得させて下さい。納得できません。  それからそれと関連して一点尋ねておきたいと思いまする点は、青山委員長以下の八名の委員方々は、最近志免鉱業所の実態を見られたわけではないのですから、従ってただいま総裁も言われましたように、われわれは現地の技術者や現地関係者がやっておることについて尊重をしたのだというお話でございますが、その点は間違いございませんか。
  127. 十河信二

    十河説明員 これらの委員の方が問題の起る前に志免炭鉱を親しく見られて、それから後に現在どういうふうに変ってきたか、どういうふうに進行してきたか、どういう状態が起っておるかということについては、現地で仕事をしておる技術者から刻々書面委員会に詳細に報告させてあります。専門家でありますから、前に見た知識と、それからそれらの技術者の報告を聞かれて、それで判断されたものでございますから、私は正確な判断と信用したのであります。
  128. 河野正

    ○河野(正)委員 この点は大臣にもお聞き取り願いたいと思うわけですが、現在現地においては、志免鉱業所三千二百名の従業員諸君が営々として生産に努力しておるということでございます。そこで私は、現在の志免鉱業所の実態というものは、当然現地の生産に従事いたしております従業員においてまとめられた資料というものが中心になり、判断の資料にならなければならぬというふうに判断いたします。その場合に、あるいは青山調査委員会のお歴々が、現在の実態というものを十分に理解せずに、いろいろ現地から出てくる資料というものについては問題があるというような判断をやるべきではないと私は考えます。青山調査委員会の八名の方々が、今日の志免鉱業所の実態というものを十分御理解いただいておりますならば、これもけっこうだと思います。経営者ですから、そういう今日の実態に基いてのいろいろな御所見はけっこうだと思います。ところが、いつ志免の坑内の状況を見たかもわからぬというような人が、今日現地で作業に従事し、生産に従事しておる皆さん方、技術者の方々、当局側のいろいろな資料に対して、いろいろ判断を下すということが適切な処置であるかどうか、この点は大臣はどのように御判断になりますか。
  129. 永野護

    ○永野国務大臣 青山委員会調査報告のウエートの問題でありますが、どういう方法でこの報告書を作ったということは総裁も今御存じないようであります。案外早く見ておるのかもしれない、見ていないということもないのでありますから、これは少し時間をかしていただいて、青山調査委員会がどういう方法でいつ作ったかということをよく取り調べましてから御返事いたします。
  130. 塚原俊郎

    塚原委員長 ちょっと速記をやめて下さい。     〔速記中止〕
  131. 塚原俊郎

    塚原委員長 速記を始めて下さい。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散