○三浦義男君 私は、自由民主党を代表して、ただいま提案されております
昭和三十三
年度一般会計及び特別
会計予算補正について、若干の
質問をいたすものであります。
わが国は、戦後十三年間、
国民各位の
わが国再建のために注がれた、たゆまざる
努力と、
政府の自由諸国との緊密なる連絡のもとにとられた諸
施策によりまして、今日の隆盛の
状態にまでこぎつけて参りました。ただ、作春以来の
世界的
不況の
影響を受けて、
わが国の
経済界にも
不況の波が立ったのでありましたが、当時とられました緊急
対策と、米国を初めとする西欧諸国の景気回復のきざしに歩調を合せまして、一部
産業においては若干の問題を残しておりますが、一般的に見て、
不況も底をつき、どうやらこの
状態を切り抜けることができるのではないかというような段階にまで参ったと思うのであります。しかるに、この重大なる時期に突如として起りましたのが、本
年度の
干害と相次ぐ
台風の
災害であります。
わが国の
台風禍は宿命的とも申すべきものでありますが、今次二十一号、二十二号
台風は、局地的とは申しながら、伊豆地区におきましては数百の生命を一瞬にして奪い、全部落あげて罹災者となるような惨状を呈しました。また、
公共事業施設の
被害額、農林産、水産物の
被害額等を
合計いたしますというと、七百数十億にも相なる大規模のものとなって参りました。天災とは申せ、まことに、遺憾のきわみでございます。この
災害の
復旧は一日もゆるがせにすることができないことは明らかでございますので、緊急的な処置としては十分とられて参ったのでありますが、
政府はさらに
補正予算を計上して恒久的の
復旧をやろうというのでございますので、まことに、ただいまといたしましては当を得たるものと思うのでございます。
私は、主として
災害補正予算について、具体的に
質問をいたします。
まず、治山治水、国土保全の根本方策について、関係
大臣に伺いたいのであります。
政府は、
経済基盤強化策として、道路、港湾、鉄鋼、電力、石炭等の基幹
産業につき、その整備拡充に
努力して参りましたが、ここ数年来、比較的天災が少かったためか、治山治水、国土保全の
対策には、十分な配慮が払われなかったのじゃないかと思われる節がございます。すなわち、二十八年の大
災害の後、
政府は治山治水
基本計画を立てて、十カ年間に一兆八千億円の
事業費を投入するという
計画を立てました。さらに、三十一年から三十五
年度に至る五カ年
計画といたしまして、この五カ年間に国費で三千三百三十億円を要するというような
計画を立てたわけでありますが、三十一
年度から三十三
年度までの実績は、国費
予算額は千百三十六億円を計上いたしたにすぎません。この三カ年間の進捗率は、わずかに三四・四%というきわめて低い率にとどまっておるのであります。また、各
年度別の治山治水
事業費の
予算額を見ますと、三十一
年度が三百六十三億円、三十三
年度が三百八十七億円と、ほとんど横ばいの
状態であります。
一般会計の
予算規模が三〇%近くも膨張しているのに比較いたしまして、こんな消極的
予算ではどうであろうかというふうに思われるのであります。これはもちろん、財政の都合によることとは申しながら、国土の保全、治山治水というような
基本的な国策が、財政の都合だけでかくのごとく左右されることは、私は、これは政治ではない、こう思うのであります。また、
政府みずから決定いたしましたこの長期
計画が机上プランで終るというようなことは、政治に対する
国民の信頼を失うというような結果にもなりまして、まことに、私は、今までとった策がまずかったと、こう思うのであります。よって
政府は、今次の
災害に顧みて、在来の観念を捨てて、
経済基盤強化の一環として抜本的な総合
計画を立てて、これに裏づけする
財源措置については特別の工夫考慮を払わなければならないと思います。先般、多目的ダムについては特別
会計による借入金の道が開かれましたが、同じような
考え方が一般治山治水
事業に取り入れられないものだろうか、私は取り入れてしかるべきものと思うのでありますが、関係
大臣のお
考えはいかがでございますか、承わりたいのであります。
次に、
災害の三カ年間
復旧の確実な実施について、
大蔵大臣に承わりたいのであります。
災害復旧は三カ年で実全
復旧をするという建前であることは御
承知の通りであります。しかるに、現実には、二十八
年度災害はまだ
復旧が相当残っております。(「利根川が残っている」と呼ぶ者あり)
災害額の最も少かった三十一
年度の
災害でさえも、本
年度中に完了するということはないという
状態であると思います。このたびの
災害についても、在来通り、初
年度三、次
年度五、第三
年度二というような比率で
予算配賦が
考えられておるのでありましょうが、この九十一億円弱という
予算ではどうなるかというような気持がするのであります。聞くところによりますと、伊豆地方における
災害の
復旧については、初
年度は七、次
年度は三の比率で、
明年度にはあの地区の
災害が
復旧するということを言われておりますが、さようなことになりますというと、他の地区におきますところの、先ほど申し上げた三・五・二の比率が破れるのではないかというような心配をいたしておる向きがあるのでありますが、これはいかがでございますか、伺いたいのであります。
次に、
特別立法につきまして大蔵、農林、建設の諸
大臣に伺いたいのであります。今回の
災害は総額において二十八
年度災害には及ばないのではございますが、局地的に見ますというと、人畜の
被害はもちろんのこと、物的
被害もきわめて甚大でございます。これら特定の
災害地については
特別立法を講じ、
復旧、救助の万全を期すべきと思いますが、
政府はこの問題に対してどう用意されておりますか、承わりたいのであります。
また、小
災害の
復旧の助成につきまして、農林、建設
大臣に伺いたいのであります。九月の
台風の
災害は、特徴として、中小河川の部分に、大きな水害も小
災害も非常に多かったのであります。ところが、現行制度におきましては、小
災害、すなわち
公共土木
災害では、都道府県分で十五万円未満、市町村分で十万円未満、農地及び農林水産施設では十万円未満の
災害復旧費については、国の直接補助はなく、地方交付税の交付団体の行う
復旧事業だけに対して、これに要した地方債の元利償還額の一部を普通交付税の算定基準に算入するということになったのでありますが、前に申した通りに、今次の
災害は局地的に見て非常に大きなものがございますので、この地域に対しましては、二十八
年度災害の例にならって、特別に
復旧補助を行うことが望ましいのであります。もし、この
特別立法が非常にむずかしいという御事情がございますならば、これにかわる実質的な援助
措置を講ずることが必要と思いますが、その御方策を承わりたいのであります。
次に、干拓地の問題につきまして、
農林大臣に、一部は御要望を申し上げ、一部は御所見を承わりたいのであります。今次の
災害が非常なる長雨と豪雨のために、在来の干拓地は湛水のために農作物の
被害が非常に大きかったというのが一つの特質であります。在来の干拓地は、
計画の当初におきましてのその点の地勢、あるいは降雨量の算定の過小あるいは近来、施設の荒廃もございましたでありましょうが、そういうことのために、この異常な湛水を来たしたとは存じますが、今次の
災害に顧みて、恒久的な策として根本から
考え直すべきものが相当あるというふうに私は現地その他において見て参ったのであります。また、応急策としては、ポンプ場を多数に作るとかいうような
考えもございましょう。しかも、現在は大規模の干拓地が盛んに工事が行われております。こういうときでございますので、新しきものにつきましては、さらに構想を練って、万全の策を講じていただきたいと思うのでございますが、
大臣はこれに対してしてどういうお
考えを持っておりますか、伺いたいのであります。
また、この秋の収穫時におきまする長雨が在米の早場米地帯に続きましたので、罹災地の米の乾燥が非常におくれ、従って、供出もおくれて参りました。この供出のおくれましたことにつきまして、いわゆる早場米の奨励金を取ることができません。そういうことからして供出期の延長を希望する声が非常に熾烈なんであります。罹災地農民の救済にも相なることでございますから、この点はぜひ
大臣に
考えていただきたいのでございますが、
大臣はどうお
考えになっておりますか、伺いたいのであります。
次に、
災害地におきます
中小企業者及び農漁民等に対する救援の
対策として、
大蔵大臣、建設
大臣、
農林大臣に承わりたいのでありますが、それは、まず第一は、
中小企業に対する問題でございます。昨春来の
不況を最も端的に受けましたのは、
中小企業者でございます。しかも、罹災地におきます
中小企業者は、水害に痛めつけられ、やがては年末を控えている
状態でございます。この
中小企業者に対する救助の手段は、先ほど来、
大臣が申されましたように、
金融の道がございましょう。また、税の減免ということもございましょう。こういうことが、先ほど申されました百億の金でもって、在来の
中小企業のために出された
金融を、この百億でもっておまかないになるということでございます。さらに水害という問題が起って参りましたので、私はこれでは十分ではないのではないかというような
考えがいたしますが、この点につきましても御所見を承わりたいのであります。また、これらのものにつきましては、先ほど申し上げましたような
金融の道、減免税の道でもって、法の許す限り、財政の許す限り十分な処置をとっていただきたいのであります。
また、罹災地帯の農漁民の中には、極端に申せば、明日の飯米にも困る、現金
収入はないというような者が相当あるのであります。その救済の一環として、いわゆる救農土木
事業というようなものを起していただいて、急場をしのぐことが私は適切じゃないかと思いますが、今度の
補正予算の中には、そういうものがどんな
考えでもって、どれだけのものが入っているか、承わりたいのであります。
最後に、特別
会計の
補正予算について
大蔵大臣に伺います。
産業投資特別会計の歳入として百八億円に相当する外債を計上しているのでありますが、これは金額は少のうございますが、
わが国の対外信用の表われとして
考えてみた場合に、まことにけっこうなことだと
考えます。しかし、これは、かねて
わが国が希望しておりました
国際復興開発銀行からの
借款の外と
考えるべきものでありますか、また、その内と
考えるべきものでありましょうか。また、この借り入れ状況はどういうことになっているのか、承わりたいのであります。この種の外債は条件がそう悪くなく、かつ、
わが国のインフレの要因とならない限度でございますれば、私は基幹
産業の強化
資金として充てるために重ねて募集することがよろしいのではないかと思いますが、今後このような外債につきまして、
大臣は募集されるお
考えを持っておりますかどうか、承わりたいのであります。
以上をもって私の
質問を終りますが、どうぞ簡明直截な御答弁をお願いして、私は降壇いたします。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕