○成瀬幡治君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題になりました
公職選挙法の一部を
改正する
法律案につきまして、
岸総理に主として
質問を申し上げ、
関係閣僚にはあらためて委員会で
質疑いたしたいと存じます。
民主主義の原則が議会主義であり、議会が公正にして自由な民意の反映による
選挙によって選出された議員によってのみ構成されますことが、民主主義の大きな柱であることは、今さら申し上げるまでもないことと存じます。
政府が最も力を注ぐべきことは、
日本の民主主義を伸長させることであり、
選挙においては、主権者である者はだれでもが自由に
選挙活動ができるようにすることであります。
選挙を自由に公正にするためには、まず何よりも
選挙に金のかからないようにすることであります。政界の汚職が跡を断たない根源は、
選挙に金がかかり過ぎることにあります。
選挙に金を使うことを投資と
考え、議員になったらその穴埋めをしなければならないというところに問題があります。汚職追放を題目に終らしめないためにも、金のかからない
選挙のできるようにすべきであります。わが党が多年主張して参りました
選挙公営の拡大ということは、ここにその主張根拠があるのであります。
そこで、
岸総理にお伺いいたしますが、たとえば立会演説を義務制にして回数をふやすなどして、文字
通り選挙公営を拡大するのが当然であると思いますが、何ゆえ今回の
改正にこの点を盛り込まなかったのか、お伺いをいたします。
次にお伺いいたします点は、いわゆる高級官僚の横すべり立候補についてであります。最近特に目に余るものに各省の高級官僚の
事前運動がございます。これらの人たちは、公然と職務執行に便乗をして、各
方面にあらゆる手段方法を用いて
事前運動を行なっていることは、私がここで指摘するまでもないことであります。まことに、にがにがしいことであります。かつて、ある知事が、任期の途中、知事をやめて衆議院選に打って出ようとしたことがあります。このことに対して、横すべりは禁止すべきであるという
趣旨の発表が自民党の幹部からなされ、その知事はついに衆議院選への立候補を断念して、現に知事にとどまっておられることは御承知の
通りであります。知事が任期を捨てて横すべりすべきでないことはもちろんであります。今まで都道府県知事及び市町村長が、任期満了の
選挙にのみ限り、在職のままで立候補ができましたものを、公務の執行と
選挙運動との区別があいまいになり、その弊害があるというので、今回
改正がなされております。この
考えをさらに発展前進をさせて、高級官僚の横すべりこそ禁止すべきであります。公費で出張をし、公務の遂行と票との引きかえが公然と現に行われております。綱紀粛正の上から見ましても断じて許すことのできないことでございます。このような不心得者があったら厳重に取り締るとか、厳罰に処するとかいうような、
言葉の上の
答弁ではなくて、退職後一定期間を経過した者でなければ立候補できないように、はっきりと禁止
規定を設けるべきと思いますが、
お答えを承わりたい。
第三点は、知事並びに五大市長などの四選の是非についてであります。独任制の知事、市長などが十二年以上続けてその座を占めることは、多分に間違いの生ずる危険があることであります。なるほど、四年ごとに
選挙を通じて信任を受けておるのであり、民意がそうなればやむを得ないではないか、悪ければ
選挙民が批判するからという意見もありましょうが、特権的な座にいて、権力を振り回しておれば、公正な民意もゆがめられて反映されるものであります。首長
選挙を前にして、知事、市長間において三選以上はやるべきでないという意見が圧倒的で、現に四選を避ける動きが表面化しておりますが、これは良識の現われと言うべきであります。四選に対する
総理の所見を伺います。
次に、青木長官に伺いますが、要するに、
選挙は自由にするのが原則であり、制限すべきは、公正なる民意を、金力をもって、権力をもってゆがめるものを制限すべきであります。今回、
改正案として提出されているような政治連盟の活動の自動車の台数などを制限すべきではありません。民主団体の政治活動を認めておきながら、他面において、実質的に
選挙活動ができないように、政連車を制限することは、民主団体の政治活動の禁止であり、革新政党の躍進を抑圧するものであって、党利党略に基く
改正であって、断じて承服のできない点であります。労働組合、民主団体におけるところの政治活動の実質的禁止にならないかどうかを
お答えを願いたいのでございます。
改正すべきは、世論が圧倒的に支持をし、期待をしている連座制の強化とか、政党への寄付、政治献金を明確にするなど、政治資金規正法を厳格にすることであります。かかる点に一切触れられないのは何ゆえでありますか。
次に、新たに町村長
選挙に供託金制度を設けるとともに、全体の供託金額を大幅に引き上げられた点でありますが、これは一体どういうことでありますか。「最近の
選挙の実情によると、いわゆる泡沫候補と称せられるような立候補がしばしば見受けられるので、この際、金額を二倍程度に引き上げ、町村長
選挙にも新設する」というのでありますが、供託金制度は、大正十四年わが国で初めて普選が施行されたときに新設されたものでありまして、供託金制度を設けた
趣旨は、普選に伴う候補者の乱立を防止しようとしたものであり、そして実質的には、当時の無産政党の進出を押えるところにねらいがあったのであります。供託金制度は、供託金を負担することのできない、資産的にゆとりのない候補者を締め出すことになりました。従って、これは財産による被
選挙権の制限であり、他面、間接的には
選挙民の選択
範囲を
選挙に先だって制限することになります。たとえ候補者のある程度の乱立があっても、いわゆる泡沫候補は
選挙民が整理すべきものであって、供託金制度によって重大なる基本的人権である被
選挙権を制限すべきではありません。供託金制度は撤廃の
方向に進むべきであり、今日の
改正は、民主国家の
選挙法規としては原則的にふさわしくない措置であります。町村長
選挙で泡沫候補が乱立して混乱を来たしたという例は過去にないのであります。それよりも、問題にし、憂うべき点は、今から三年前の
昭和三十年四月の町村長
選挙で、改選定数千六百六十三名中、実に六百十九名の無投票当選者があったことであります。
政府は
選挙の意義を常時啓発して、無投票地区のないように努力すべきであります。供託金制度の強化拡充は民主主義の原則に反し、公職の利権化を促進し、政治を腐敗に導くものであります。撤廃さるべきである供託金制度を強化拡充されたその理由を伺います。
壇上の
岸総理の明るい笑顔にわれわれはしばしば接しているのでありますが、どうも腹の中は反対ではないでしょうか。と申しますのは、この臨時
国会にも現われておりますように、経済民主化の柱である独禁法を
改正したり、オイコラ式の警官、すなわち警察国家への復活を思わせる警察官の職務執行法の改悪を企図したり、また、
NBC記者には「
憲法廃棄の時期が来た」と、つい
本音を出して
国民に衝撃を与えてみたりするなど、どうも戦前への逆戻りを意図しておられるものではないでしょうか。このことは、
岸総理の戦前の実績からの推定であり、解釈であり、あるいは誤まっているかもしれませんが、残念ながら
国民は、やはり疑いと不信と不安の眼をもって見ていることは確かであります。今回の
改正案は、それ自体大した
改正ではないと強弁されるかもしれませんが、夕に一城、朝に一城式で、最後には、
岸総理の念願である
憲法改悪のための小
選挙区制の実施、全国区制の廃止と、
選挙によらない推薦議員の任免まで持っていくのではないかというおそれであります。
岸総理は、小
選挙区制実施の理由の一つに、二大政党であるからと言われますが、二大政党は人為的に作り出されたものであって、天の声、地の声ではありません。また、いつまでも二大政党であるかどうかもわからない問題であります。これを小
選挙区制と結びつけるのは誤まりであります。また、小
選挙区制が党内派閥解消のために必要であるというがごときは、事の是非をわきまえない議論であります。小
選挙区制は少数の民意を
否定し、比較多数の民意が絶対多数の民意にすりかえられ、独裁を来たすおそれが十分にあります。小
選挙区制について、次期通常
国会に提案の意思があるのかないのかをお伺いいたします。衆議院
選挙区を小
選挙区にしたから、そのバランス上、参議院の全国区制を廃止し、ブロック制にするとか、地方区に一本化するなどの
考えがあるのか。また、推薦議員を生み出す
考えがあるのかないのか。
選挙を通さない議員は存在しないはずでありますが、念のため
岸総理の御
答弁をお伺いいたしまして、私の
質問を終ります。