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安部キミ子君 私は、山口
大学における不当処分について、この問題は
緒方局長も、去る十月の二十八日の
文教委員会で、いろいろわが党の
委員から質問がありましたので十分御承知であると思うし、またその後もいろいろ詳しいことを調査しておられると思いますが、このことについていささか質問したいと思います。
今、勤評に関連してという言葉がありましたように、一番この処分を問題にしているのは、
大学の
学長なりあるいは
理事者の方で処分しようとするところの先生たちのいわゆる勤評ですね、勤評が正しいものであったかどうかということに基礎を置いてこの問題が発展していると思うのです。そういう意味で、この問題の概略について、
緒方局長は御存じでありますが、他の
委員は、参議院においては全然御承知ないと思いますし、他日は、証人なりあるいは陳情の形でもよろしいですが、いずれは参議院にも来ていただいて、正しい事実審理に基いて結論をするためには、そうすることが必要だと思いますので、概略のことについて私はお話をし、かつまた質問をしたいと思うのです。と申しますのは、事件の経緯について申しますと、山口
大学の工
学部の
教授で加賀見という方がおられます。この方は、三年来非常に問題になった方でありまして、山口
大学の
教職員組合では、この先生に対する処分について、前
学長、これは松山基範先生でございましたが、偶然にこの先生が、ことし春なくなられましたので、この三年来交渉を続けていた加賀見
教授の処分については決定されなかったのです。されど新
学長の田中晃
教授が
学長においでになりまして、ぜひとも善処を、前の
学長との契約、これは口頭ではありますが、契約があったわけでございます、で、その契約に基いて
要望しておったのであります。で、その加賀見
教授というのはどういう方かと申しますと、私は人権の問題にも関するので、この席であまり詳しく申し上げたくはございませんが、新聞やその他の問題などでるる山口県の人たち、県民なりあるいは識者の間では
議題になった方でありまして、その人柄についての概略を申しますと、とにかく、どう言いますか、非民主的な態度で、まあ、学生にもまた相当学内でも喜ばれない存在であったらしいのであります。そういうことで、たまたま組合側は以前の
学長に申し入れたいきさつもありまして、何とか早くこの回答を得たいというので、工
学部長に前からその御返答を承わるように話がしてあったそうです。ところが、
学長の方でもいろいろとほんとうの誠意を見せられないで、話が延び延びになって、その返事をして交渉に入ろうという日が、三月の二十二日であったわけです。そこで、その日は組合側でも早く話をまとめたいと思って、工
学部長の帰られるのを待って、その返事を聞こうとしましたら、帰られたときには実はお酒を相当召し上っていて、ぐでんぐでんになって、こちらの話の返答に満足した答えができなかった、そうこうしているうちに、話が深刻になって参りました。時間もたっうちに、いよいよわれに返つたという形で、夕方の五時ごろから初めて本格的な話になったわけです。そうこうしているうちに、時間がたちまして、夜中を通して二十三日の朝になったわけですね。御承知でもありますように、二十三日というのは、
大学の入学試験
施行日なんでございます。ところが、話の核心に触れることができなくて——すべて交渉などというものはジグザグの過程をとるものでありまして、なかなかはっきりした満足のいく答えが得られなかった。そうこうするうちに、すでにもう入学試験を始める時間になったということで、それらの組合なり
職員なりの交渉
委員の人たちは、どうしようかと、きょう話を聞くように、もう話がだいぶ進んでいて、もうすでに結論が出ようとしているところであったので、どうしようかということになって、
学長とも話をしたところが、それは僕が話を聞くから、それに対する試験監督者としてしなければならないところの事務のことについては、補導課と連絡をとってしたらいいということで、これは補導課とそれから
学部長との了解のもとに、こういう態勢がとられたということでありました。ところが、試験は問題なく順調に進められて、終りましたところが、このことを知った
学長は、この問題を契機として、交渉
委員全員の処分を考えて、組合運動の圧力を考えたわけだと思うのです。それは四月以降昇給該当者であり、また十月当然昇給しなければならない人たちに対して、事件の調査中であるから停止するということで、調査中にもかかわらず、七名の昇給停止者を出してきた。続いて十月の二十三日には、
関係者十二名中
事務職員を除いて助手二名、助
教授四名計六名の行政処分を行なったわけであります。今回処分されなかった
事務職員も、
大学自体で処分ができるので、近く処分されるものと考えられているわけでございます。で、その人たちの名前を申しますと、前山大職組工
学部分会長谷岡源二郎、五十四、前山大職組工
学部理事川上暢夫、五十六、同じく
理事藤井雄二郎、三十四、同じく
理事山岡義人、四十六、以上は助
教授で減俸五分の一、二ヵ月であります。また、山大職組書記長の工
学部助手吉野隆、これは三十四、前者と同様減俸五分の一、二ヵ月に処せられておるのであります。なお、当時山大職組執行
委員長の工
学部助手新井敏正、四十一は、停職一ヵ月に処せられておるのであります。この事件の最高責任者である樋口工
学部長及び田中
学長は何ら処分されていない、こういう形になってきているのであります。そこで、私どもはこの問題をつくづく考えてみますに、一番
問題点となるところは、樋口
学部長と補導部員が事前に打ち合せを行い、入試事務に影響のないよう処置している。これは先ほどお話しましたように、合意の上でこういうことになっておる。しかも組合側からも交渉途中に受験に支障のないように配慮すべきことを発言して協力しておるのであって、
大学本部から応急のために来た
職員は何ら実際的な援助はしていなかったくらいであります。入試に影響がなかったことは、
大学長も十月二十二日の日教組の代表と顧問弁護士の方に言明されて、はっきりもう何も影響はなかったと、こうおっしゃっていることであります。このことは、直接処分の対象に当日の交渉がならないのではないか。もし処分されるのであれば、交渉に応じ、交代を認めたところの工
学部長から切るべきである。あるいは業務執行命令を出すべきであったと思うのでありますが、工
学部長は、そういう行政的な責任はちっとも果されていない。そして合意の上で、いわばもしこれが処分されると考えるならば、当然私は共犯だと思うのであります。それにもかかわらず、一方的に職組の人たちだけに責任を負わしておる。
二番目に考えることは、交渉の日程を組合側が一方的に決定したのではなくて、工
学部長の指定した日にそれをやった。工
学部長がもし二十三日が試験だから二十二日はいけないと、もっと誠意をもって早く命じたならば、こういう結果にはならなかったと思うのです。それも工
学部長が二十二日だとおっしゃって、そしてその日は夕方まで組合の人は早くから詰めかけて待っているのに、ぐでんぐでんに酔って、ろくな交渉ができなかったという事実から考えましても、これは
国家公務員法第九十八条に定める交渉権を否定することになるのではないか。もう少し工
学部長にそういう法的な観念があったならばこういうことにはならなかったと思う点が二点でございます。
第三点に、特に交渉
委員のうち、四月、十月の当然昇給該当者に対して、
勤務成績不良とか何とかいう判定なくして、調査中であるということで昇給を停止し、
大学側は保留と言っているが、これは今調査している最中だからと言っていながら、また一方では昇給ストップをしている。このことは
給与法の
建前からも不当ではないか。わけても昇給は公務員の期待権といわれているのでありますから、このような処置は許されるものでないと私ども考えるのであります。
前に申しましたように、樋口
学部長と補導部員が合意の上でそういう
措置をとったということ、それから二番目は、組合側が一方的にその日をきめたのじゃなくして、
学校長からそういうふうな日にちをきめたということ、この二つの
理由で交渉中であったこと及びその間業務命令は出されていないことが明らかであるのに、こういうふうな処分をしたということは、これは不利益処分である、こういうふうに考えるわけであります。
第四点は、公務員の処分については、それぞれ法文で明らかにされているように確固たる事実、根拠がなければならないのであります。そうしてまた、処分は
法律に定める手続を経なければならない。このことは、今回の処分は当然
教育公務員特例法第九条、これは懲戒の項になると思いますが、該当するのであって、同条文及び第五条第二項から第五項までの
規定は準用されると思うのです。この法を
建前にしても、当然公務員としての権利は認められなければならないと思うのであります。従って、この手続によらず処分がなされている場合は、その処分は手続上誤まりがある、無効であるというふうに考えているわけであります。
第五番目に、処分された者の中には停職処分者、減俸者まで出しているし、一方当然責任をとるべき工
学部長と
学長は何ら処分がなされていないということは一方的であり、この事件の経緯から見て明らかに過酷である。と同時に、本事件に対しては文教
当局は何も指導監督ということは、また、事実調査はなされなかったのかどうか。私が二十八日の
文教委員会の
速記録を見ますと、
緒方局長もいろいろ答えをちゃんと出されておって、そうしていろいろの櫻井
委員や西村力弥
委員などの質問に対してもお答えをはっきり
一つの
目的に持っていこう、持っていこうとしておられるということを私は読んだのです、しかし、それではやはり片手落ちではなかろうか。もっと事実を正しく知るということによって、それは文部省の方が
大学自治を乱すような強力な圧力はいけないけれども、それなりの正しい指導は当然なさっていいのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。まして文部省というものが権力機構であってはならないし、しかもこのように被害を受けているあわれな立場に立った人たちの味方になってそれらの先生を守っていくという、こうした善意がなければほんとうの文教政策、文教行政はスムーズにいかないのではなかろうか、私はこういうふうに感じたわけであります。またこのほか、特に今回の組合側の処分は、学内はもちろん県民に対しても非常に疑惑と不信を持たして
大学自治
運営についても批判が出ております。今後は、文部省はこの問題をどういうふうに収拾してこれらの国民の疑惑を解かれようとするのか。いろいろ私がこの質問をする以前に、二十八日の衆議院の議事録を見ますと、
局長だけでなくて、法制局の方も、人事院の方からもそれぞれの
専門家の方がお答えしておられまして、これを読めばもうあらためて質問しなくてもいいようにも思われますが、しかし、その質問をしなくてもいいということは、もうそれできめてどうにもならないのだというふうな考えであれば質問する必要もないのですけれども、それではほんとうの
大学の自治も文教政策も進展しないのじゃなかろうか。どうしても事実をもう少しすなおに見ていただいて、文部
当局は一体、どちらの味方ということはなされなくとも、勤評に関するこの評価あるいは処分についての根拠というものがどこにあるかという、認識というこの問題については、私は今
議題になっております勤評の問題とも関連して重大な問題であり、基本的に人権を根底からくつがえすようなことであってみれば、しかも
大学の
教授とか助
教授とかいう
教育の座にある人たちの名誉というものは、非常に
教育に対しては重大な問題であると思いますから、以上の経過につきましてあらまし申しましたが、この問題をどういうふうに解決しようとしておられるのか、どういうふうに考えておられるのか、
局長の御
意見を承わりたいと思うのであります。