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政府委員(関之君) お答えいたします。
お尋ねの要点が、最近の文教の諸施策において学生が非常に矯激な運動をしておる。その背景にある全学連あるいは社会主義学生同盟、社学同と申しますか、これらが一体根本的にどういうような性格を持っておるか、それと共産党との
関係いかんというような御趣旨かと拝聴いたしたのであります。それで、すべて最近の新聞紙をにぎわし、あるいはこの席でも、
文部省の方からお答えになりました各種の文教施策における学生の運動の背面には、全学連ないしは社会主義学生同盟の一群の指導者がおりまして、それらが私
どもから見ますると、やや矯激な思想をもって、これらのものを、実はある
方向に引っぱって行っておる、こう判断されるのであります。
それで、まず
お話の基礎といたしまして、この全学連とは一体どういうものであるかという問題につきまして、その規約等に基きまして、若干御
説明を申し上げたいと思うのでございます。
全学連は、御承知のごとく約百二十余りの全国の大学の自治会の連合自治会という、各大学における
一つの組織団体が、連合的にこれに参加して、
日本的に作っている
一つの団体であります。それで、これらの各大学の自治会が作っておる全
日本学生自治会総連合というものの性格でありまするが、これはその規約の第二条を見てみますると、次のようなことが書いてあるわけでございます。少し長いのでございまするが、読んでみることにいたします。
「この連合は、
日本学生の自主的な自治会の全国的単一連合組織であり、学生戦線を統一し、内外の民主勢力と提携して次の目的を達成するために努力する。」といたしまして、
1 われわれは、恒久平和の実現のため国際緊張緩和と
日本の完全独立のため闘う。
2 われわれは、民主主義の擁護と学問の自由、学園の自治のため闘う。
3 われわれは、民主的
教育を擁護し、
文化、科学の創造的発展のため、学生生活の向上のため闘う。
これが第二条で一応この目的を書いたのでありますが、続いて第三条といたしまして、
この連合は右の目的を達成するため、左の諸活動を行う。これらの活動は全国大会の決議に基き、中央執行
委員会及び中央
委員会の指導のもとにこの連合の各組織によって遂行される。
1 基本方針に基き、大衆運動を展開する。
2 学生戦線を統一し、国内諸民主勢力と提携する。
3 国際学連のもとに、各国学生組織と提携し、平和愛好諸国民との連帯を強める。
4 内外情勢の分析、
調査とその周知徹底。
5 学生運動に関する情報、経験の交換。
6
教育制度及び学生生活に関する
調査情報の蒐集とその交換。
7 機関紙、誌その他の印刷物の発行。
8 その他目的達成のため必要な諸活動を行う。
その目的と、そうしてそのために行う行動の概要というものは、この二条と三条にこのように書いてあるわけでございます。それで、こうやってみますと、これは学生とすれば、やや幅広い社会運動的なことをなす、そしてまた単に学生だけの学生生活の向上のほかに、広くこの国際緊張とか、あるいは民主主義の擁護とか、ないしは大衆運動、国内民主勢力との提携というような、そういう幅広い、いわば社会運動的なことをなすというようなことが、これから見られるわけであります。
そういたしまして、今一方の社会主義学生同盟、これはもとは反戦学生同盟と申しておりまして、最近これが社会主義学生同盟と、こういうように名前が変ったのであります。この綱領を見てみますると、次のようなことが書いてあるわけであります。
社会主義の権威の全世界的な拡大と学生運動の力量の増大という条件の上に立って、この
日本反戦学生同盟の革命的な伝統を受けつぎ、学生運動の活動家を社会主義の旗のもとに結集し、学生運動をさらに発展させ、それを労働者階級の解放運動と結びつけ、全世界の人民とともに社会主義の実現を勝ちとることを目的とする。
(一) 戦争と搾取と抑圧の原因である帝国主義に反対し、労働者階級の解放の闘いを支持し、
日本と世界における社会主義の実現のために闘う。
(二) 全世界の労働者階級を中心とする人民の解放
闘争を支持し、これと固く団結してその発展のために闘う。
(三) 帝国主義の戦争と搾取と抑圧の政策に反対する人民の反戦民主的権利擁護、生活擁護の闘いを支持し、その発展のために闘う。
(四) 労働者階級の諸
闘争と結びつき、その発展のために闘う。
(五) 社会主義の理論を研究し、その発展、普及のために闘う。
(六) 社会主義を目ざす
日本の青年戦線の統一のために、特に労働青年との統一のために闘う。
こういうことになっておるわけであります。この社会主義学生同盟の今読みました綱領では、前の全学連のそれよりは、よほど思想的と申しましょうか、ある
方向において発展していっているものでありまして、特に全般の調子が非常に高い。全世界の人民とともに社会主義の実現を勝ちとる、そうしてそのために労働者と結ぶ、あるいは人民の解放
闘争を支持するとか、階級
闘争的な色彩が綱領において非常に強く出ておるわけであります。これが両者の綱領的な規定の色彩なのであります。
さて、そこで基本的な彼らの持っておる規約とか、綱領というものを見てみますと、こういうふうに書いてあるのでありまするが、私
どもは、たとえば全学連は今申し上げたように、非常に多くの団体の自治会の連合体でありまして、その傘下の学生は全部で約二十九万と言っておるわけであります。ところで、その二十九万の学生側の結合体が、こういうような一応綱領を示しておるのでありますが、こちらの
日本社会主義学生同盟は、総員が約千八百前後、二千近くのもの、こう判断されるのでありまして、それらがこのような、かなり階級
闘争的な綱領を掲げておるわけであります。そこで、見ておりまして、問題になりまするのは、実はこの中におりまする学生の党員がどうも問題でありまして、これらの者がその同調者と締結して、そうしてこのような団体をこういう
方向に引っ張っていっている、こういうふうに大体の趨勢が感知されるのであります。そこで、しからば、この中における学生の共産党員はどのくらいいるかと申しますと、全学連の中において、これが約二千前後と推定されるわけであります。それで反戦学生同盟の方は、約千八百のうち一千人くらい、こう推定されるわけでありまして、両者合しまして現在の学生全体の中の共産党党員は約二千前後というふうに踏んでいるわけであります。問題になりますのは、これらの学生党員、そしてこれらに同調するその何倍かのある一群の学生の人々、こういう者が、これらの学生運動をある
方向に引っ張っていっている、こういうふうに
考えられるわけであります。
そこで、一群のこれらの学生の党員が、現実にこれらの綱領、規約に基いてどういうことを
考えているか、こういう問題でありまするが、これは、彼らがそのときどきに出すいろいろな資料、ないしはいろいろな会議における彼らの議論、あるいは
日本共産党内における各種の論争というようなものに現われているのでありまして、たとえて申しますと、社会主義学生同盟の機関紙に「反戦旗情報」というのがありまして、その昨年の十二月、本年の一月号に、「プロレタリア世界革命の戦術としての核兵器実験停止を
要求する
闘争」と、こういう題目で杉田信雄という反戦同盟学生がこれに執筆された。その論文は相当長いものでありますが、要するに、その要旨とするところは、現在の
日本においては、およそ革命は流血を伴わないものは
考えることはできない。すでに今日は、国際的には社会主義陣営が圧倒的な優位に立った。自由主義陣営の米国を筆頭とするそれらに対して確かに優位に立った。そういうような国際的背景のもとにおいて、われわれは国内において流血の惨事、すなわち流血を伴って革命をかりにやったとすれば、その社会主義の国際的優位の
立場からアメリカは出てこない。それであるからして、われわれは内戦を勝ち取ることによって
日本の革命は達成することができるのではないか、こういうような議論がここに表われてきておるわけであります。まあ、そこまでとにかく問題を
考えておる一群の学生党員を中心としたものがおるのであります。そういうような基本の
考え方のもとに、党員の綱領といたしまして、さまざまなことを言っておるわけであります。もちろん学生連中が革命ということをすでに
考えて、これらの連中が革命を
考えて運動はしておりますが、直ちにそれが今日実現すると
考えておる者は、もちろんいないのでありまして、はるかかなたに、そういうような意味においての革命を目途とし、そうしてあらゆる努力を、それに一歩でも近ずくすべての活動を、その踏み石として、
一つあるいは二つ、これに対する踏み石として漸次重ねていって、その目的達成の実現をはかる、こういうことのように
考えておるのであります。そこで、当面のわれわれは、こういうふうな綱領を掲げて戦わなければならない。目的ということの中には、次のようなことが書いてあるわけであります。「反戦学生同盟は、
日本プロレタリアートの諸階級政党
——社会党、共産党
——及びすべての進歩的組織に対して、右の展望についての認識の調整と統一を
要求し、統一戦線
政府綱領として、次の諸スローガンを大衆の前に提示すべきである。」とありまして、「右の展望についての認識の調整と統一」というのが、ただいま申し上げたように、現在、世界においては共産主義社会国家群の方が圧倒的優位になった。そうしてそれがますます優位を獲得し、そうして自由主義社会が没落するのは当然のことである。そうしてその前提のもとにおいてのいろいろな展望をなして、そういうことの現状認識についての統一と調整を
要求する。これは
社会党や共産党に向ってわれわれは
要求する、こういうような意味のことなのであります。そこでその次に、当面の統一戦線
政府、すなわちこれは
社会党、共産党その他の進歩的革新的諸党派の統一戦線
政府の綱領として、次の諸スローガンを大衆の前に提示すべきであるということにしておる。その中のおもな若干の例を抜いて見ますると、4といたしまして、「自衛隊、現存警察諸組織の解体、労働者階級の武装、これを基礎とする民主的民族的国防軍及び警察組織の創設、交戦権の回復」、こういうようなことがここにあるわけであります。また5の、「勤労者階級、階層の民主主義的諸権利の徹底的拡大」のA、B、CのCといたしまして、「言論、集会、結社、政治ストライキ、武装街頭デモの自由」、こういうようなことがここに掲げてあるわけであります。
要するに、これらのところに示されておるものが、この現在の全学連、社学同などを牛耳っておる学生共産党員の
考えておるところかと思うのであります。まあ、これらのことが示しておる
通りに、これらの学生党員が、とにかく現実的に武装的方法によって政権を奪取する、そうしてその
方向に向ってあらゆる
闘争を組み立てて、そうして一歩々々そっちの
方向に近づいていく。しかも学生は、これらの党員の
考え方というものは、学生の社会における役割というものを非常に高く評価しているわけであります。これは要するに、学生は意識的にきわめて理論的に深め得る、大いに勉強をして、そして理論的に大いに高める、そこで、それらの高まった理論水準によって労働者その他を引っぱっていく、要するに、理論的指尋という面は学生が当る。また次に、行動面においてきわめて敏捷でありまするからして、多くのプロレタリアその他の行動的に敏捷でないものを引っぱっていく。理論面と行動面において多くの大衆の運動、大衆の行動の先端に立ってどんどん引っぱっていく、こういうような
考え方が彼ら学生自身の社会における役割、特にこのような革命運動の役割、こういうようなふうに規定しておるわけであります。
さて、これらのこの学生の
考え方というものは、これはもちろん大ワクを申し上げますと、
日本共産党の党員でありしまて、共産党の中の
一つの学生分子としての
考え方なのであります。ところで、この
一つの
日本共産党といたしましても、その中にはいろいろな
考え方があるのでありまして、まあ今日におきましては、この学生の
考え方も、
日本共産党内における革命遂行の
一つの
考え方なのであります。ところが、これは共産党の中においても、きわめて、きわめてじゃない、最左翼でありまして、この点が代々木の本部の主流派、現在の宮本書記長以下の主流派のとっておる
考え方とは相当の開きがあるのであります。先の七月末の第七回の
日本共産党の大会におきまして、革命方式について、なかり論争を戦わされまして、結局、党中央が出しましたものはしばらくお預け、もう少し論議を重ねようということで、未
決定に終ったのでありますが、その案は代々木本部派の出したものでありまして、要するに、要旨とするところは、今日の
日本はアメリカに占領されているからして、これをまず独立を回復するために人民、民衆革命を起し、さらに、これを急速に社会主義革命に発展させる。社会主義革命というのは、すなわちプロレタリアの独裁、そしてあらゆる搾取形態を排除する革命に迅速に発展させる、こういう形態を一応とっておるわけであります。ところが、その革命の方法、手段といたしまして、まあ昨年のフルシチョフの言うたことなどを取り入れて、平和的ということも
考えられないではないけれ
ども、要するに、武力を用いるか、暴力を用いるかいなかは、相手方の出方いかんである。相手方が軍をもち、あるいは警察をもって武装すれば、やはり武力をもち、暴力をもってこれに対抗しなければなるまいと、こういう
考え方なのであります。今のこの申し上げた代々木本部の
考え方と学生の
考え方とは、革命の形態、そして武力を遂行して、そして流血の惨もいとわないというような点において相当開きがある。どうもこの学生の
考え方の方がさらに左側の方にきている。暴力を使い、流血の惨などはいとわない。大小にかかわらず、つまり流血の惨などは当然のことであると割り切って
考えているところが学生の思想の特徴なのであります。かような
考え方、これらの思想は、党内でやや批判されておりまして、中には党内の長老から、学生、君
たちばかりで革命はできるもんじゃないから、あんまり元気を出すなとか、あまり突拍子もないことを
考えてはいかぬというようなことも注意を受けているような次第でありまするが、今申し上げたように、学生の社会的役割、このような革命運動における彼らの役割ということを固く堅持して、とかく過激な
方向に走っている。ここらの点を共産党におきましてはトロッキストといって、少し原則的に、まあ理論を単純に割り切るというふうにいって非難し、その反省を求めている点なのであります。そういうような
考え方にこの全学連及び反戦学生同盟が導かれている。そういうような
考え方を持った人が指導者でありまして、そうしてこれに導かれている。全学連のごときは約三十人の執行
委員のうち、たしか一人かそこらが党員でないだけで、
あとは全部党員であります。そうして社会主義学生同盟においても、かなり多くの者が党員であるのであります。
そこで、この社学同と全学連との
関係でありますが、これは全学連というのが、今申し上げたような非常に幅広い
一つの学生自治会の連合体であって、社学同と申しますのは、その中の、全学生層の中の活動分子が結集して、そうして全学連を初めとする学生運動を推進する
一つの個人加入の結集体であるというふうに、まあ
考えてよかろうと思うのであります。そういうようなわけでありまして、基本的にそういうような
考え方をもって、彼らがもって利用し得るあらゆる社会運動に乗り出して来て、そうして今申し上げたような学生の先進性、学生の指導性というものを発揮して出てくると、こういう点がいろいろの活動の面になって現われて来ておる、このように
考えているわけであります。