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政府委員(坂根哲夫君) 今回、衆議院の商工
委員会、参議院の商工
委員会に付託になっておりまする
独占禁止法の一部の
改正法案について、御
説明を申し上げたいと思います。
独占禁止法は、皆様すでに御承知のように、昭和二十二年に、企業の公正かつ自由な競争を
促進することによって
国民の
経済の健全な
発達をはかることを目的として制定され、二十四年に第一回の大幅な
改正が行われました。それは、当時の証券民主化、株式の消化という点と、それから外資導入、外国との技術提携を
促進しようというような点に重きを置きまして、二十四年に第一回の大幅
改正が行われまして、その後占領中にはさしたる
改正も行われませんで、占領後、昭和二十八年に非常に大きな
改正が行われまして、それが現在の
現行法となっておるわけであります。
二十八年の
改正は、非常に大きな
改正と申し上げましたのは、従来の
独占禁止法では
カルテル行為を一切禁止しておったのでございますが、二十八年の
改正におきまして、不況の場合に対処する
カルテル、
合理化のために対処する
カルテルということを
独占禁止法の本法の中に認めたということで、大きな
改正の意義を持っておったのであります。しかしながら、二十八年に
改正をいたしまして、すでに五年近くの年月を経まして、わが国
経済も著しく変貌を遂げ、しかも、その間二度も大きな景気変動を経験しております。これは、わが国の産業構造といいますか、企業の数が非常に多い、そのために過当競争に陥りやすい、またわが国の
経済の基盤が特殊でございまして、非常に弱い、そういうようなために国際的な景気変動に
影響されやすいというような事情に基くものでありまして、同時に、世界のとうとうたる技術革新の大勢を見まして、これはどうしても企業の
合理化を
促進し、国際競争力の培養をはからなければならないというような
経済政策の観点が強く打ち出されて参りまして、そういう点と
独占禁止政策との調整という面が、二、三年前からひどく問題になりました。
そこで、わが国のこの産業構造と
独占禁止政策との関連においていろいろ問題がございますが、
独占禁止法は何分にもわが国の
経済秩序に関する基本法としての
性格を持つものでありまして、この
法律の
あり方というものは今後の産業
経済並びに
国民生活に非常な大きい
影響を与えるものでありまするから、これをごく簡単に事務的に処理するのは大へんであるというので、
政府は昨年十月、特に
独占禁止法
審議会を内閣に
設置いたしまして、一橋大学の中山教授が会長になられまして、そのほか
学識経験者十四名が委嘱をいたされまして、十月十八日に第一回の会合が催されまして、その際、内閣総理大臣から、わが国
経済の実情に照らし
独占禁止に関する法制はいかにあるべきであるかという
諮問がなされたのであります。この問題に関しまして、今申し上げましたように、私どもの事務的な場におきまして、
関係官庁におきましては、二年有余の間にわたりまして、いろいろ研究を重ねておったわけでありますが、その
関係官庁の研究の結果を
審議会にも提供いたしまして、この
独占禁止法
審議会はこういうような研究の成果をあらためて
検討されまして、そうして昨年七回ばかり会合を催され、今年に入りまして三回、それから公聴会が二回ございまして、約十三、四回の会合の結果、二月の四日に、
政府に対して
独占禁止法
審議会から
答申がなされたのであります。
その
答申は、
趣旨におきましては、この独禁法というのはわが国戦後の
経済の復興と民主化に寄与してきたという効果は非常に高く評価すべきものであるが、しかし、わが国
経済の現状においては、本法のもとでかえって過当競争に悩む事実がある、あるいは今後の国際競争場裏においてわが国
経済が安定的成長をはかるため、こういう安定的成長をはかるという長期的な要請を
考えますれば、この現行
独占禁止法の
規定は必ずしもわが国
経済の適正な
運営に即応しているとはいいがたい。特に、
独占禁止法で
考えておりまするところの、自由競争秩序が公共の利益に合致するという
考え方は、わが国の
経済の現状から見るとやや狭きに失しているのではないか。従って、
生産者、
消費者を含めた広い
国民経済全般の利益という、より高い見地からも
一つ今後は判断していくべきである、こういう問題をまず前後において議論いたしまして、そしてこういうような問題、
独占禁止法の根本的な
あり方というものは、非常に
経済の秩序をきめる、
日本経済の体制をきめる根本の問題であるから、これにはなお幾多解決すべき問題があるからして、これは引き続いて
政府が
検討してほしい。しかし、同時に、現在目前
国民経済の運行のじゃまになっておる点だけをとりあえず
改正してほしいということで、
改正のポイントが五つ上っておりまして、第一のポイントは、不況に対処する共同行為、不況
カルテルの緩和をしようということ。第二は、
合理化のための共同行為、
合理化カルテルを、
現行法で認めておる範囲以上に、特に最近の産業の
合理化の観点からして、幅広く認める必要があるということ。その中に、たとえば二重投資の
弊害を避けるために、過剰投資のための
合理化カルテルを認めていくというようなこと、あるいはこれは輸出入
取引法に入りましたけれども、輸出振興のために特に必要がある場合には、特定の商品について共同行為を認可制によって認めるというようなことを、
合理化カルテルで
答申しております。
それから、合併、
営業の譲り受けの制限。
現行法では、その合併あるいは
営業の譲り受けの結果が一定の
取引分野における競争を実質的に制限する、いわゆる
市場支配を生ずるような場合は、認めてはいけないという
建前になっておりまするが、しかし、御承知のように、
経済の技術革新が非常に進んで
経済の情勢が変ってきた、そのためにどうしても企業規模の大きいものが必要であるということ、すなわち
生産過程の
合理化のために企業規模が大きくなるということは、
一つ今後は認めていくべきであるということを言っております。それが要するに、不況
カルテルの緩和、
合理化カルテルの
改正、それから合併、
営業譲り受けの制限をやや緩和する、こういう
三つの
答申をしておりますが、こういうことに対処して、逆に、
独占禁止法制を強めるという観点から
答申しておるのは、不公正な
取引方法についてはこれを強化すべきであるということを
答申で言っておるわけであります。それから、第五のポイントといたしましては、こういう工合に
独占禁止法を修正するけれども、しかし、今後もし
カルテルあるいはトラスト等の
弊害が出てくる場合、あるいはまた不公正な
取引方法を十分取り締らなければなりませんから、そういう点からいたしまして、
公正取引委員会及び同事務局の機構、人員等を拡充整備しよう。それから第二には、本法の
規定の重要問題に関しては、それがわが国
経済の実態に即応して適切に処理されるよう、民間有識者の
意見を十分に聴取する体制を整備してほしい。こういう五つの点が、二月四日に総理大臣に
答申されたわけであります。
この
答申を受けまして、
政府各
機関においていろいろ協議いたしました結果、今回の
国会に御
審議をお願いしておりまする
独占禁止法の一部
改正法案として、その内容を皆様のお手元に差し出しておるわけであります。
そこで、この
改正法案のポイントを御
説明申し上げますが、お手元に
法律案要綱が参っていると思います。この
法律案要綱に従ってごく簡単に申し上げますと、第一の株式所有に関する
報告書の
提出、第二の役員兼任届出書の
提出、これは
答申にはございませんでしたけれども、
現行法におきまして
会社が所有する株式に関する
報告書を公取に出すことになっておりまして、その
条件といたしまして、総資産が一億円をこえる
会社が
提出するということになっておるのでございますが、これを、最近の
経済事情の変化その他から
考えまして、総資産が五億円をこえる
会社、こういうことに改めたのであります。第二の、役員兼任の場合もこれにならいまして、役員兼任、一方の
会社の総資産が一億円をこえるという場合には届け出ることになっているのを、これを五億円に改めるということで、これはきわめて
経済の情勢に即応した
改正で、技術的な
改正とも言えるわけであります。
それから、その次は、第三、合併等に関する
規定でございますが、これはお読みいたしますと、「第十五条の
規定を整備するとともに合併によって一定の
取引分野における競争が実質的に制限されることとなる場合であっても、当該合併が左の各号に掲げる要件に適合する場合には排除措置を命じてはならない旨の例外
規定を置くものとする。」、こうなっておりますが、先ほど申し上げましたように、
現行法におきましては、合併の結果が一定の
取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、あるいはまた、
営業の譲り受けの結果が、その一定の
取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、いわゆる
市場支配、独占的な
会社ができるという場合には、一切これを禁止しておるのでございます。しかしながら、先ほども申し上げまたしように、世界におきまする技術革新の趨勢に対処しまして、企業の
合理化を推進することが必要で、国際競争力の培養をしなければならないということ、こういう
一つの
考え方の前提に立ちまして、今度の
改正法案では、たとえ一定の
取引分野におきまする競争を実質的に制限することとなる場合であっても、
市場支配になる
会社ができる場合であっても、技術の
合理化、新技術の工業化であるとか、あるいは大量
生産方式の採用、この
生産技術、
生産方式の改善、こういう
生産過程における
合理化を遂行するということが特に必要である場合、しかも、他のいろいろ
方法をやってみてもそういうことはできない、合併の結果でなければ
生産技術の改善、
生産技術の
合理化ができないという場合に限って、そういう除外の合併を認めていきたい、こういう
考え方でございます。ここで御注意願いたいのは、この場合の
合理化というのは、要するに
生産過程の
合理化、
生産技術の
合理化につながらないような
合理化は、この場合に入らない。大てい、われわれが引用いたしておりましても、
会社の合併というのは、必ず経費の節約というような流通部門や経営の
合理化を言っておりますが、その場合はここの
条件に入ってこない。それからもう
一つは、そういうことが必要であっても、この合併によって
一般消費者及び関連中小企業者、関連
農林漁業者、それからその他の関連事業者に不当にその利益を害するというような場合には、これを認めてはならない、こういう
建前をとっておるわけであります。これはやはりこういう独占体あるいは準独占体を認めることになりますから、
公正取引委員会が中正な
立場で慎重に取り扱いたいということの結果、こういう表現を用いておるわけであります。
また、その二にございまするが、この合併が容認されたあとにおきまして、合併した
会社が一定の期限までに、正当な
理由がないのに、その
合理化の計画を実施しない場合、こういうことがあり得るかもしれませんので、そういう場合も考慮いたしまして、もしそういうことであるならば、その
会社に対しまして
営業の一部の譲り渡しその他
会社が独占的な地位を利用していろいろやっている行為を、
独占禁止法の手続によって、その状態を排除するということを
考えておりまして、あくまで、こういう合併、
営業の譲り受けを認可申請し、そしてやる場合には、慎重に認可をし、さらに認可をした
会社は十分その計画
通りにやっていただきたい、こういうことを
法律で表現しておるわけであります。
その次は、不公正な
取引方法の
規定でございます。これは
答申で、先ほども申し上げましたように、不公正な
取引方法の
規定の強化をうたっておるわけでありますが、現在の
法律では、不公正な
取引方法を用いた場合にはその当該行為の差しどめをするという
規定があるのでございますが、実はこれを
運営してみますると、当該行為の差しどめということになりますと、ある
会社が不公正な
取引方法を用いておりますと、その行為だけを差しどめすることができまして、そういうような行為を類似してやる場合、こういう場合は
法律的にはなかなかその排除がむずかしいのであります。それから、同時に、そういう不公正な
取引方法を用いようということをお互い同士が話し合いをしておりますと、その契約というものがございますが、その契約自体を排除するということが非常に困難でございます。そういう不公正な
方法が行われる根本を断つという
意味において、
現行法の「当該行為の差止」という言葉の下に、「その他当該行為を排除するため必要な措置」を加える、こういう工合に改めておるわけであります。
それから、その次の二の方は、これは技術的な
規定でございまして、これは
現行法に、二十四条の小規模
協同組合の
規定のただし書き中に、やや、他の
法律条文とにらみ合せてみますと、抜けている点がございますから、これを追加しておるわけであります。
それから次は、
公正取引規約、これが今度の
改正では
一つの新しい観点でございますが、これは「事業者等が認定を受けてする不公正な
取引方法を用いないことを内容とする協定又は健全で合理的な
取引慣行を確立するための
取引条件(給付の対価又は
数量を除く。)若しくは
営業方法の制限に関する協定については違反手続を開始しないこととする。」、こう書いてございます。この
公正取引規約というのは二つの面から成り立っておるわけであります。
その
一つは、不公正な
取引方法を用いないことを内容とする協定。これは、現在
独占禁止法で不公正な
取引方法を用いてはならないという
規定がございまして、この運用の仕方が、不公正な
取引方法を
一般的に
公正取引委員会が告示で指定したやり方と、それから、ある業界で特別にその業界における不公正な
取引方法として指定したやり方と、二つの行き方をやっておりますが、たとえば、皆様御承知と思いますが、
新聞業界におきまして、
新聞の販売で非常に競争が激しい。そこで、正当な販売競争ではなくして、いたずらに景品をつけていく、なべかま合戦といわれておりましたが、そういうような販売の過剰サービスというようなことを、
新聞業界自体が自粛したいのでありますが、それがなかなかできない。従って、それを
公正取引委員会に、
新聞業界としてこういうものを独禁法による不
公正取引方法として指定してもらいたいということでございます。そうすると、
法律の手続に従いまして、公聴会を開いて、その
新聞業界における販売
方法を不公正な
取引方法として指定するわけであります。そうすると、その指定された行為を
新聞発行業者あるいは
新聞販売業者が行えば、独禁法違反として問題になるわけでありますが、そういう指定された各業界で、お互いに不公正な
取引方法を用いないということを
一つ話し合いをする、協定を作ろうというようなことを、今回新たにこれを認めていこうということであります。
それから、「健全で合理的な
取引慣行を確立するための
取引条件」、これは、最近の業界のサービス過剰によりまして、不当競争自粛であるとか、あるいはまた商
取引条件の適正化、その他公正競争
方法を
一つ話し合いをする。たとえば小売店同士も休日をきめている。休日協定をやる、あるいはまたむだな自動車の送迎はやめましょうというような、そういうようなことを行うことが、実は商
取引の健全化であるというようなことにおきまして、そういう
取引条件の公正化の規約、あるいはまた
営業方法の公正化をしようとする話し合いを業界の方々がされたやつを、これを
公正取引委員会が認定して認めていこう、こういう
建前をとっておるわけであります。
ところで、この
公正取引規約は、しかし、業界の方々が自分でお
考えになって、大体間違いないところでございましょうが、それでもなおかつ、問題によりましては注意しなければならない点がある。それはそこに、二の(一)に書いてございますように、「
一般消費者及び関連中小企業者、関連
農林漁業者その他の関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」、こういう不公正な
取引をしないという協約、あるいはまた
公正取引を推進しようとする規約にいたしましても、そういう弱小企業者にしわ寄せがあってはならない。それから、その話し合いの中に入っておる弱小の人に差別的であるとか、自分の方はそういうことをやっては困るというのを無理やりにやったということのないように、「不当に差別的でないこと。」、あるいはまた、この規約なり協定は自由加入でなければならない。強制的なものではいけない。そうして、これはまたあくまで
取引条件であるとか、あるいは
営業方法でありまして、その結果がすぐ値段であるとか品物を制限をする、
数量を制限するというようなことがあって、いわゆる不況
カルテルとかいうようなことになっては困る。こういうような
条件を見まして、
公正取引委員会がその協定なり規約を認定いたしまして、認定いたしたものについては、これについて独禁法のいわゆる違反手続をとらない。これはやってよろしいということにしておるわけであります。
そこで、しかし、認定を受けました
公正取引規約が、その後の情勢によりまして、この要件に適合しなくなったときには、その変更を命じ、または認定を取り消すことにしておるわけでございます。
それから、その次のポイントが、いわゆる独禁法
審議会で一番問題になりました
カルテル行為でございます。その第一は、不況
カルテルの
規定でございます。これは、
現行法の不況
カルテルの
規定によりますと、商品の需給がアンバランスになる、そうしてその
価格が現実に平均
生産費を下る、かつ、その平均
生産費を下っている業界の
相当部分の事業者が倒産するに至るおそれがある場合に、初めて不況の
カルテルを認めている。これは、いわゆるその業界がほとんど葬式を出すといいますか、死にかけた
段階において、
カルテル結成行為を認めてやるということで、非常に要件が厳重でございまして、二十八年にこういう
規定ができまして今日まで、不況
カルテルを認めておるのは二件ございます。
一つは麻糸紡績の不況
カルテル、もう
一つはイースト業の不況
カルテル、この二件を認めておるわけでございまして、
条件がきびしいということが
一つの原因ではないかと思います。それに対して今回の
改正は、不況
カルテルを行い得る事態を、「商品の
価格が著しく低落し、当該事業者の
相当部分について当該商品の
生産に係る事業の遂行が著しく困難となり、又はなるに至るおそれがある場合」、こういう工合に改める。従って、ある業界の、ある産業の商品の値段が著るしく下る。これが
一つ。または下るおそれがある場合、そうしてその商品を
生産している事業の
相当部分の経営が事業の遂行、これが困難になる。これは、ですから、
現行法の倒産の「おそれがある」というふうなものと比べると、
相当ゆるやかになるわけです。ここで、要するに、不況の事態、それから不況のおそれがある事態、こういうことをいずれも
カルテルを認め得る
条件として認めてきたわけです。
それから、第二は、不況
カルテルとして行い得る共同行為の態様といいますか、姿、これはまたずいぶん変りまして、
現行法では、
生産もしくは販売の
数量の制限、
生産数量カルテル、販売
数量カルテル、それから設備を制限しようという
カルテル、または一段
条件をきびしくしておりまするが、対価の
カルテル、対価を決定する値段の
カルテル、これだけができるわけでございますが、今度の
改正法におきましては、こういう限定列挙、いわゆる限定しているやり方を改めまして、共同行為の態様としては大体どういうものでもできるということになりました。しかし、その反面、対価の協定、
価格の協定、それから独占的に販路協定をするとか、あるいはまた一手買い取り
機関を
設置する、こういうことは関連事業者、
一般消費者、関連農林業者というものに与える
影響が非常に大きいものでございますから、第一次的に、初めからこういう協定は認めるということをいたしませんで、そういう対価の協定とか買い取り
機関を結ぼうとする
カルテルの、これの
数量制限もやることが初め非常に困難である、初めから
数量制限をやることは、非常に困難であるというような場合であるとか、あるいはまた
数量制限をやりましてその結果が効果があがらないというときに認めるという、二段がまえといいますか、こういう
消費者その他に
相当影響のある
カルテル行為は、非常に慎重な配慮で認めていこうということになっております。
それから、
現行法では、販売業者の
カルテルは認めておりませんが、今回の
改正法案におきましては、
生産業者が
カルテル行為を行いまして不況を克服しようとしても、なかなか不況克服が困難だ、
生産業者のみの
カルテルでは不況克服が困難だ、こういうような場合におきまして、それを補完する限りにおいて、販売業者の
カルテルの協力を必要とする場合がありますので、こういう場合にのみ販売業者の
カルテルを認可制によって認めていくということにしております。
それから、この不況
カルテルの認可の手続でございますが、これは
答申では一部事前届出制をうたっておったのでございますが、
法案では全部認可制を原則としております。しかしながら、その
カルテルの共同行為の内容が、
生産数量、販売
数量または設備の制限、いわゆる量、ボリュームの制限の
カルテルにかかわるものでありまして、かつ、その
カルテル行為の期間が三カ月をこえない、三カ月で大体不況の克服ができるという見通しのもとに申請されるわけでありまして、その三カ月をこえないというものにつきましては、これを二十日の期限付き認可制で認める。二十日間
公正取引委員会がだまっておれば、当然これは認可されるということになるわけであります。
その次に、
カルテル行為の
合理化のための共同行為でございます。これは、
現行法で認めておりまするところの、標準化または規格の統一というようなことを目的としておりまする技術、品種もしくは規格の制限にかかわるという共同行為、それから品物を保管するとかもしくは運送をする施設の共同利用、副産物、くず、もしくは廃物の共同利用というものは
現行法で認可制で認めておりますが、運用してみて、これは
弊害の少いということからいたしまして、これは三十日の事前届出制に変えまして、事前届出制によってこれを認めることにしたのであります。
また、こういう
現行法の共同行為の中で、保管もしくは運送の施設の利用というようなことは、
生産業者ばかりでなく、販売業者にとってもその
合理化に役立つ場合もありますので、新たにこれは販売業者についても認めることにしたのであります。
次に、新しく入った面は、現在の
経済情勢でどうしても
合理化促進の必要があるというために、まず専門
生産の
生産分野協定を認めておる。こういう品種の制限といいますか、この専門
生産の分野協定を認めておる。それから「品種別の
生産数量の制限」とそこに書いてございますが、これは結局専門
生産分野協定を認めますと、すぐ、甲と乙の
会社がA、B、Cという品物をおのおの作っておって、甲はいずれAを零にし、Bを少し作りCを少し作る、それから乙はAだけ作りたいということを、実は専門
生産分野協定で
考えても、すぐ初めからそこに計画して持っていくと非常に摩擦の生ずるような場合もありまするから、甲乙間に専門
生産という
一つの
目標を立てながら、専門
生産別に
一つの分野協定をやるという
目標を立てながら、ある種の、そこに至るまでの
段階において、
生産数量もかみ合せて
カルテルをする。こういう
考え方で、専門
生産分野協定の問題が
一つ。それから「
生産設備の制限若しくは処理」、これは、設備の制限というのは、いわゆる投資過剰をお互いに避けよう、設備を今後お互いに制限し合おうということで、過剰投資、二重投資ということを避けまして、そうして
国民経済の安定的発展をはかりたいというための
カルテルでございます。
生産設備の処理というのは、繊維とか生糸で皆様がよく御存じのように、設備の
合理化のために設備を処理していく協定でございます。それから「販売又は購入の制限その他政令で定める事項に係る共同行為をしようとするときは、認可制により、これを認めることとする。」これは、
合理化のためのたとえば販売の
カルテルを結ぶ必要がある、あるいは購入の
カルテルを結ぶ必要がある。しかしながら、
合理化のための販売または購入の
カルテルが不況の場合に認められたように、独占的な買取
機関、あるいはまた独占的な販路協定は認められない。それから、販売あるいは購入にいたしましても、販売
数量または販売
価格の
合理化のための
カルテルというのは、あくまで、不況の場合のようにすべての商品に認めるわけではなくて、供給の弾力性が乏しい商品である、あるいはまた
価格の変動が著しい商品である、こういうものに限る。
それから、原材料の購入
数量または購入
価格の制限の
カルテルは、それもやはり供給の弾力性が乏しいとか、
価格の変動が著しい原材料に限る、こういうことにしておるわけであります。しかも、原材料の購入の
カルテルという場合には、これは、原材料の購入の
カルテルを結ぶことによって、原材料の
生産業者のためにならぬようでは困るということで、特に
法律の中に一項入れまして、「当該原材料の
生産業者の事業の健全な
発達に資するものに限ることとする。」、こういうことにしておるわけであります。これは、例をもって申し上げまするならば、パルプ・メーカーがパルプの原料である木材を買うというようなときに、原材料の購入
カルテルを結ぶということで木材業者に迷惑をかけてはいけない。しかし、そのパルプの購入
カルテルの結果、木材の値段がかなり長期に安定していって、木材業者にも都合がいいということであれば、認めて差しつかえないのではないか、こういうことにしておるわけであります。
こういうことが
合理化カルテルの大体の
規定でございます。
あとは、そこに書いてございますのは、共同行為に関する手続についての敏速化の問題でございますが、これは、認可または不認可の処分は行政処分でやる。現在は、不認可の処分のときは、独禁法の準司法的な手続で、認可申請却下の審決ということをやるわけでありますが、そういうことをやっておりますと時間がかかるから、これはやめる。それから、この
カルテルの共同行為に関する処分について不服がある利害
関係人は、処分があった日から三十日以内に不服の申し立てをすることができる。そして、この不服の申し立てについて処分をしようとするときは、これは
一つ慎重な手続で、審決によってやる。要するに、独禁法の準司法的な手続でやっていく、こういうことであります。それから、届出をしまたは認可を受けて実施しておる共同行為が、その認可の要件なり事情の変更によってもう必要ないというときには、取り消しまたは変更命令をいたしますが、これは行政処分をもってやる、こういうことであります。
それから、もう
一つの点は、その
法案要綱にはございませんが、こういう共同行為の届出または認可申請、これはいずれも
公正取引委員会が決定の官庁でございます。しかしながら、当該事業の主務大臣を経由官庁といたしておるわけであります。それは、業界の実情に明るく、こういう共同行為を結成するというような経緯等についても主務大臣が十分承知しておりまするから、その主務大臣を窓口といたしまして、その手続の円滑化をはかることにしたのであります。もちろん、申請書の送付等の場合には、その主務大臣が産業政策遂行の
責任者としての
立場から、この
カルテルの
国民経済に占める地位などについて所要の
意見を付し得ることとしたのでございます。しかしながら、あくまで認可官庁は
公正取引委員会でございますから、
公正取引委員会はこの主務大臣の
意見を尊重しつつ、その中立
機関、独立
機関としての地位に立ちまして、最終的に
カルテルの是非を判断し決定するという
建前になっております。
それから、最後に、これは独禁法の方をこういう工合に改めましたから、中小企業
団体組織法の方で独禁法と少し歩調の合わぬ点が出て参っておりますから、その点を二点ばかり改めました。
一つは、先ほど御
説明いたしましたように、
生産数量、販売
数量、設備の処理に関する協定で、三カ月以内のものは二十日以内にこれを期限付認可をするということが、中小企業
団体組織法の方にはございませんので、それと同様の
趣旨を中小企業
団体組織法の中に入れるということと、それから、中小企業
団体組織法の
カルテル調整
規定の調整行為の内容が限定列挙になっておりますから、それをその他の必要な事項ということで広げたわけでございます。
こういうことが、
独占禁止法のこのたび
国会に御
審議を願っておりまする
改正法案の
趣旨でございますが、この
改正法案との関連におきましていろいろ問題がございますが、特に
農林漁業との
関係におきましては、今申し上げましたように、今回の
改正は、
国民経済全体の健全な発展に資するために、わが国
経済が直面しておりまする不況の回避、また技術革新の趨勢に対処するための
合理化カルテルの結成ということで、わが国
経済の必要な事情に即応した
改正でございます。従って、今回の
改正は、
カルテルの原則、
独占禁止法のいわゆる
カルテル行為を禁止し得るという原則は、これは堅持しておるわけでございます。しかしながら、必要最小限度現在の
経済情勢に即応するという
意味で
改正をいたしたわけでございます。この
改正の結果、
政府が
カルテルの結成を指示したり奨励したり、あるいはまたアウトサイダーの規制をするということはないわけでございます。そこで、こういう
改正独禁法において、
農林漁業者との
関係はどういうことになっておるかということは、今私が独禁法の内容を大体御
説明して、もうすでにおわかりのことと思いますが、こういう共同行為は公正中立な独立
機関でございまする
公正取引委員会が
弊害がないと認めた場合に限って認可する。
現行法ではこういう
農林漁業者とか中小企業者という言葉はございませんが、そういうものをわざわざ入れまして、
農林漁業者、中小企業者、
一般消費者の利益を不当に害するおそれがある
カルテルは
法律上認可してはならないという
建前をとっております。さらにまた、
合理化カルテルの
規定をお読みになればおわかりになると思いますが、技術の進歩改善を妨げる
カルテルは認めないことにしているわけであります。それから、
カルテルを認めたといっても、認めっ放しということは今後いたしませんで、その
カルテルが、
経済情勢の変化とにらみ合せて、
カルテルの認可要件に適合しておらぬというようなときには、直ちにその
カルテルを取り消すというような排除措置を設けております。
それから、これはすでに御承知かとも思いますが、肥料等の
農林漁業の
生産資材あるいはまた農林水産物に関する
カルテルにつきましては、これは今申し上げましたように、主務大臣が窓口になって
意見を付して持ってくるわけでありまして、こういう点、あるいはまた実際上の運用の
建前上十分に
農林大臣と協議することになっておりまして、また
合理化カルテルの場合には、先ほども申し上げましたように、原材料購入というときには、原材料
生産業者の利益にも資しなければならないという条項がございまして、こういう点からいたしましても、また、その原材料の
生産業者にそれが資するかどうかということは、十分
農林大臣の
意見を聞かなければならないというような点からいたしましても、これは十分な配慮をしておるわけであります。
それから、独占的な販路協定、あるいは独占的な一手買取
機関というものは、これは先ほども御
説明いたしましたように、非常に慎重な
法律的な
規定になっておりまして、
数量制限にかかる共同行為をした後において、なお不況の克服ができないという場合におきまして、それを認めるということになっております。
合理化カルテルの場合は、独占的な販路協定、独占的な一手買取
機関というものは、一切認めておらないわけであります。
こういうような点で、
独占禁止法の
改正法案の骨格は、以上御
説明申し上げたところでございます。なお、
農林漁業との
関係も、最後に結論的に申し上げましたように、
法律の中で十分に配慮しておる次第でございます。