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政府委員(
賀屋正雄君) ただいま
議題となっております
国家公務員のための
国設宿舎に関する
法律の一部を
改正する
法律案につきまして、その
内容を御
説明申し上げたいと存じます。
改正の第一点は、
宿舎審議会を廃止いたしました点であります。この点につきましては、過般
大蔵大臣の
提案理由の
説明の中におきまして詳細に御
説明をいたしておりますが、時間もたっておりますので、もう一度繰り返して申し上げたいと存じます。
宿舎審議会は、もともと、この
法律が制定せられました昭和二十四年、占領中でございますが、その当時におきましては、多年にわたりまして不統一に放置されて参りました宿舎
制度に関しましてのいろいろな問題を一挙に解決することが困難でありましたために、本来でありますれば、当然
法律に
規定を設くべき事項、たとえば宿舎の維持管理の基準でありますとか、有料宿舎の使用料の基準その他の重要事項を、まずこの
宿舎審議会で
審議をいたしまして、その調査
審議の結果を待って
決定するという建前をとらざるを得なかったために、設置せられたものであります。しかしながら、その後宿舎
制度もおおむね確立せられました今日におきましては、これらの重要事項は当然
法律に
規定を設けるべきであるという
考えのもとに、今回の
改正案に織り込むことにいたしましたので、
宿舎審議会の設けられました大きな目的はもはや達成されたと
考えるのであります。のみならず、ただいま
政府において
考えております行政簡素化の趣旨にも即応いたしまして、この際これを廃止し
ようとするものでございます。
第二の点は、宿舎を貸与いたします
対象となる
国家公務員の範囲につきまして明確化をはかった点であります。すなわち、
現行法におきましては、すべての
国家公務員を
対象といたしておりますが、このいわゆる
国家公務員の範囲というものは、法令上必ずしも明確ではございません。人事院の解釈によりますれば、単純な労務に服する人夫の
ような者でも、一日限り雇用される者につきましても、
国家公務員法の全面的な
適用があるとされておるのでございます。しかしながら、宿舎設置の目的、あるいは現在の宿舎の不足の
状況等から
考えますと、宿舎貸与の
対象は、原則として常時かつ恒久的な服務
関係にある
職員に限るべきでありまして、いわゆる非常勤の
職員、あるいは臨時
職員という
ような者は含まない
ようにするのが妥当ではないかと
考えた次第であります。現在も運用上は、この
ような取扱いをいたしておるのでありますが、法規上この点が必ずしも明確になっておりませんので、この際
改正法におきまして、その点を明らかに法定化いたした次第でございます。ただ、非常勤
職員の中には、法令の
規定によりまして、職務に専念する義務を免除されておる者がございます。たとえば休職者、あるいは停職者、それから
組合の専従
職員、こういう人たちはその事由でもって直ちにこの宿舎を与えないということは、生活の本拠を奪って、酷に失しますので、これらの者に対しましては、引き続き認めるということにいたしました。さらに、定員その他の
関係からやむを得ず臨時
職員として採用しておる者のうちでも、継続的に雇用
契約の
期間が更新せられまして、勤務の実態を見ますと、一般
職員と変らない
ような者もあるのでございますが、そういった者には、職務の性質上宿舎を貸与するのが適当であろうと
考えておりまして、実情に即してこれらの点は政令で定めるということにいたしておる次第でございます。
第三は、宿舎の意義を明確にした点でございます。
現行法上、宿舎の意義は不明確でありますので、これを、家屋のみならず、家屋の部分でありますとか、そのほか付帯施設あるいは共同施設、それから宿舎を建てます土地、こういったものも宿舎の概念に含むことにいたしまして、取扱いの統一をはかることにいたしました。なお、家屋の部分と申しますのは、
一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができる
ように完全に区画されました家屋の一部分というのでありまして、通常、アパートの各世帯ごとの一居住がこれに該当するわけでございます。
第四は、宿舎の設置、維持及び管理並びに総括の
機関を明確に
規定いたしますとともに、これらの
事務の委任に関する
規定を整備いたした点でございます。すなわち、宿舎の設置
機関は宿舎の設置を統一的、一元的に行うことによりまして、必要度に応じ適正な設置を確保するとともに、予算の効率的な使用をはかりますため、原則として、
現行法通り大蔵大臣がこれに当るということにいたしますとともに、いわゆる
各省各庁の省庁別宿舎の一部について、五
現業関係のもの、それから宿舎を、転用だとか交換、寄付といった
ようなことによりまして設置いたす場合、その他特別の事情があります場合は、それぞれの
各省各庁の長が設置する、こういう建前にいたした次第でございます。
さらに、宿舎の維持、管理の
機関は、省庁別の宿舎につきましては当該
各省各庁の長、それから合同宿舎につきましては、総合
調整的な
立場から、
大蔵大臣が当ることにいたしたのでございます。この点は、現在でも政令に同じ
ような
規定が設けられているのであります。
次に、宿舎の総括の
機関でございますが、これにつきましては、現在政令で
規定されておりますところを
法律に
規定し、宿舎総括
大臣としての
大蔵大臣の権限と
事務内容を明確にいたしました。それから、
事務の委任につきましては、現在
規定がございませんで、国有財産法の
規定に基いて委任をいたしておるのでございますが、国有財産法では国有財産に限っております。従いまして、借り上げ宿舎になりますと、この委任ができない
関係もございますので、この点を整備いたしたわけでございます。
次は、宿舎の設置に関してでございますが、宿舎は、すべてこの設置計画に基いてのみ設置するということにいたしてあるのでございまして、その設置計画の作成、あるいは変更の手続を明確に
規定いたしました。これによって宿舎の設置は一元的に規制されまして、その
適用と効率性が確保されることとなるものと
考えております。
次に、公邸でございますが、これにつきましては、たとえば備品でありますとか、光熱水料等につきましては、
費用の
負担区分が明確でなかったのでございますが、この際は、もっぱらこの公邸に住んでおられます居住者の私の用に供せられるものの
費用は、これはその居住者に御
負担を願う、国が
負担いたさないということに、法文上明確にいたした次第でございます。
さらに、無料宿舎を貸与する者の範囲につきまして、非常勤勤務者あるいは実験研究者、あるいは管理
責任者等について、その官署施設に近接した場所に居住する必要がある者に限定いたしました。これは、その官署から遠隔の地に居住して差しつかえない者に対しましては、その職務の遂行上、居住地を拘束するわけでもございませんので、特にこの無料宿舎を貸与する必要がないと
考えたからでございます。その他宿舎設置の方法につきまして、現在
法律に
規定がなく、政令に
規定されておりますので、同じ
ような趣旨を今回の
改正法に
規定いたしまして整備をいたしております。
第六は、宿舎の維持、管理に関してであります。まず、現行の有料宿舎の使用料でございますが、
審議会の議を経た政令の
規定によりまして、地代家賃統制令の算定方法に準じて計算した額に基くことになっておるのであります。この方式に準拠することは、しかしながら必ずしも合理的とは
考えられませんので、今回の
改正法におきましては、宿舎の設置並びに維持、管理に実際に要しました
費用、すなわち建設
費用、地代、修繕費、それから火災
保険料相当額、こういったものを宿舎料によりまして回収するという建前をとりまして、これに宿舎の居住の条件等を考慮いたしまして、その算定方法を詳細に政令で定めることにいたしております。この場合に、建設
費用の利子が問題でありますが、これは、公務員の宿舎は国が収益事業として設置するわけではございませんので、利子は算定いたさないことにいたしました。それからまた、管理事業費も、国の
事務、事業のために宿舎を設置、維持、管理しているのでありますから、これは一種の行政コストと
考えまして、宿舎料の中には算入いたさないことにいたしております。
次に、宿舎を貸与せられる者の宿舎使用上の義務につきまして、善良な管理者としての注意義務を課し、あるいは転貸、あるいは模様がえといった
ようなことを禁止する
規定を置きましたほか、宿舎を滅失、毀損いたしました場合の
責任、修繕費の
負担区分等について明確化をはかっております。この場合に、軽過失による失火に対しては、国が
責任を追及しないことといたしておりますが、これは、ただいま申しました
ように、使用料の中に火災
保険料相当額を算入いたしまして、自家保険の
考え方に立っておるからでございます。
次に、宿舎の明け渡し事由につきまして、宿舎の老朽化等によりまして、その宿舎を移転する必要が生じた場合、あるいは有料宿舎の居住者が義務違反をいたしまして、これに対して是正要求をいたしましても、これに従わない、あるいはその違反
内容が宿舎の維持、管理に重大な支障を及ぼす場合、この
ような場合も明け渡しの事由として追加をいたしております。
次に、宿舎の貸与を受けております者が、明渡猶予
期間について一定
期間を
規定いたしておりますが、この
期間を経過いたしましてもなお明け渡さないという
ような場合におきましては、損害賠償金を支払わなければならないことといたしまして、その最高限度を使用料相当額の三倍というふうに
規定をいたしました。この三倍といたしましたのは、使用料算定
基礎から除外いたしました建設
費用の利子、利息、それから管理
事務費を、こうした明け渡さない人方に対しましては、免除する必要はないと
考えまして、これを加えて計算いたしますと、おおむね使用料の三倍相当額になるわけでございます。
第七の点は、この
改正法の施行期日でございます。これは昭和三十四年四月一日といたした。新しい年度の当初からこの
法律によることといたしたのでございますが、これはこの
法律を
関係各
方面に十分周知徹底をはかります必要があろうかと
考えたのでございます。
以上が簡単でございましたが、
内容の概略でございます。何とぞ御
審議の上、すみやかに御賛成をいただきたいと存ずる次第でございます。