○
説明員(
佐薙毅君) 滑走路の問題につきましては、今のように
航空自衛隊は八千フィートの
飛行場といたしましては浜松
一つを持っておりまして、どうしてもわれわれは現在持っております
飛行場でなるべく使える
飛行機というものを選ぶことが
一つの要件になって参って参ります。
グラマンの方はしからばどうかと申しますと、
グラマンの方につきまして、これは私が実際に飛行
実験を午前午後にわたりまして、見ております。また、
米空軍のパイロットでたびたび
試験飛行をしました。パイロット、一人ならず二人、三人のパイットに私は聞きまして、どれだけ
グラマンの場合に滑走路が要るか、あなた方でなく、平均のパイロットがどのくらい、要るかということを聞きましたときに、六千フィートという人と七千フィートという人と両方でございます。大体におきまして普通のパイロットが六千フィートないし七千フィートで
着陸ができる。私が見ましたときは、
グラマンの
飛行機はドラッグ・シュートと申しまして、104あたりはほとんど
着陸のときにはうしろにパラシュートを引っぱって
着陸して、
速力をとめて、滑走距離を短かくするということをいたしますが、
グラマンの場合はドラッグ・シュートなしに、短かい滑走路で
着陸しております。このドラッグ・シュートを使う使わないということにつきましては、
日本の場合におきましては、短かい滑走路を使いますときに問題がございますのは、夜間の
着陸の場合と、それからもう
一つは横風が非常に強いときには、ドラッグ・シュートを使いますと、そのために
飛行機は
着陸してから急にかじを曲げられてしまって、横風が強ければ、ドラッグ・シュートを使っては
着陸できない。現在のジェット機時代になりましてからの滑走路と申しますのは、大体一本の滑走路、長い滑走路を持っておりまして、昔のように十字型の滑走路は持っておりません。従いまして、風の強いときはドラッグ・シュートなしで
着陸できるということが望ましいわけであります。この意味におきましては、
グラマンの
飛行機はドラッグ・シュートを使わないで、
比較的短かい滑走路で
着陸できるということも確認しております。従いまして、第一の地理的条件という点におきまして、私は、104という
飛行機は、全天候の天候の悪い、あるいは夜間に、普通のパイロットに、また
飛行場が雨にぬれて、滑走路がぬれておりますときはさらにすべりますので、よけい要る、いろいろな点を考えまして、
グラマンならば
日本の
飛行場に適する
飛行機である。104は非常に使うのに制限、あるいは使えない
飛行場がたくさんできるということから、第一の条件は、ロッキードの方が落ちるということになるわけであります。
第二は、
操縦性、運動性、安全性という問題でございます。この問題は、実際に操縦者が飛んでみませんとわからない問題でございます。あるいは事故の統計というものを見なければわからない問題でございまして、従来
飛行機のいろいろ論議をせられておりますのを見ますと、ただ
飛行機の
性能その他のよしあしをもって論じられているようでございますが、われわれが実際に搭乗員を養成し、搭乗員に任務を与えて
飛行機を飛ばしますに当りましては、
操縦性、運動性、またこれから来ますところの安全性ということを、きわめて重視する必要がございます。この問題につきましては、特に昨年
航空自衛隊におきまして航空機事故が
比較的相次ぎまして、私
どもといたしましても非常に頭を悩ました問題でございます。今後
飛行機を選びますにつきましては、十分この安全性の高い
飛行機を選びたいというのが、私
どもの切なる念願でございます。この点につきまして私は特に気を使いました。私は幸い
米空軍の。パイロットが
グラマンの
飛行機と
F—104の
飛行機、あるいはその他の
飛行機もいろいろテストしておりますので、実際飛びました。パイロットについて中正な意見を聞きまして、
飛行機の
操縦性、運動性、それから来る安全性がどうであるかということを私自身いろいろ当ってきました。また、上の方の人についても、これに対する意図を聞きました。
米空軍の、実際に両方飛びましたテスト・パイロットの申しますのに、
F—104という
飛行機は、すべての機能が非常に複雑な機能を持っておりますが、これは非常にすべてが満足にいくときには、すばらしいいい
性能の
飛行機である。
速力といい、上昇率といい非常にいい
飛行機である。しかしながら、すべてのものが満足に動くということは、なかなか望みにくいことが多い。ことに先ほどのようなフレーム・アウトということが起きた場合には、なかなか
日本ではこれは使えない
飛行機である。と申しますのは、一面先ほどのような滑走路の短い点ということがございます。沈下速度が大きいという点もございますが、
グラマンの
飛行機でございますと、沈下率が四万フィートぐらいからおりますときには、一分間に約三千フィートぐらいのスピードで落ちますが、ロッキードの
飛行機でございますと、四万フィートぐらいからおりますときに約一分間に八千フィートぐらい、二倍ぐらいのスピードで落ちてくる。また
エンジンがとまりましてからの滑走距離は、
グラマンの場合には二倍ぐらいの距離が出ますが、ロッキードの場合にはフレームの距離が、たとえば
グラマンの
飛行機の約半分であるという点で、問題はフレーム・アウト、すなわち空中で
エンジンのとまりました場合には、まずロッキードの
飛行機の場合には助からないので、パイロットはほとんど飛び出すほかはないということを。パイロットは言っております。これに比べまして
グラマンの
飛行機でありますと、
比較的安全に滑走路に
飛行機を持ってくることが可能である。これは
航空自衛隊におきましても、今まで何べんか
F—86が空中で
エンジンがとまりましてから、無事に
飛行場に
着陸しているということでございますが、ロッキードの場合でありますと、まずパラシュートで飛び出すことを第一にせざるを得ないという状況でございます。としますと、この
飛行機のパイロットの方は生命が助かりましても、高価な
飛行機、また
F—86でございますと、従来
日本でもパイロットが飛び出すときに大体下にこの
飛行機が落ちても、下の部落あるいは人家その他に危害がないことを大体見届けて、そうして飛び出す余裕をもって飛び出すことをやっております。104の場合になりますと、もうすぐ飛び出さなければならないということになりますと、従来パイロットが空中において飛び出すときでも、その点を
考慮して飛び出して、下の人に危害のないように配慮をしておりますが、
F—104の場合になりますと、もう下のことは考えておられずに飛び出す、
飛行機はどこに落ちるかわからない。
日本のように
比較的人家の込んでおりますところでは、部外に及ぶ危害ということも、われわれは
考慮に入れなければなりません。
また、その安全性という問題は、
着陸速力ということが非常に
関係をいたしております。ロッキードの
飛行機は、きょう持って参りませんでしたが、翼が非常に小さいために、
着陸いたしますのにも
着陸速度が非常に大きい。この
着陸速度の点におきましては、
グラマンとロッキードとは大体二十ないし二十五ノットの
速力差がございます。私
どもが
実験航空隊で
説明を聞きましたときに、この点を特に強調しておりまして、
着陸速度の大きい小さいということは、操縦者の操縦上に非常に大きな問題である。従って、この点をよく見きわめる必要があるということを
説明を受けましたが、実際の数におきまして二十ないし二十五ノットの差がございまして、これが昼間の視界のないときの操縦ならまだよろしゅうございますが、非常に視界の悪いときの
着陸操作と申しますのは、最近のジェット
戦闘機におきまして
速力が早いもの、しかも視界の悪いときには
自分一人でおりられるものではありませんので、下からGCAというものでいろいろ誘導されております。そのときいろいろ電波の切りかえでハンドルを持ち変えて、そしてスイッチを切りかえる、いろいろの操作がございます。昨年
航空自衛隊におきまして
F—86のジェット
戦闘機で事故を起しました中に、視界の悪いときに、天気の悪いときに、
着陸時におきますごく短時間のおくれによって事故を起した。もうちょっと時間があれば助かったという者が助からなかったというような事故もございます。すなわち
着陸速力が早いかあるいは
着陸速度がおそいか。従って、夜間あたりでも、空中でジェット・パイロットが両手を使い、また手を持ちかえてやるいろいろの操作がございますから、こういうことが余裕をもってやれるかやれないかということは、非常に安全性と
関係がございます。安全性すなわち操縦者の生命に関することでございますので、この点において操縦者が安心して、まず信頼して飛べるという
飛行機を選ぶことが大事なわけでございます。この点につきまして、
米空軍のパイロットの両方の
飛行機を飛びました者が申しますのに、
グラマンの
戦闘機は、実に信頼性のある、英語で申しますとオネストである。実に正直である。この
飛行機の
操縦性、信頼性につきましては、この
飛行機を飛んだだれもが、みんな非常に推奨している。すなわち、私
どもが一番重視しなければならない、特にパイロットの生命とする
飛行機の
操縦性につきまして、信頼のできる、安心して飛べるという
飛行機が一番大事な点でございまして、この点については、
日本のパイロットがこれを実際に確かめれば一番いいのでありますが、それができない状況にありましては、
米空軍の実際に各種の
飛行機を飛んだパイロットの実際の意見を尊重する以外にはないわけであります。私
どもは一人ならず数人の両方の
飛行機を飛んだ人から聞いて、そうしてこの
グラマンの
戦闘機の
操縦性、安全性というものがきわめて高い。また、この事故の点につきましては、昨年の
調査団が参りましたときにいろいろ
技術上の問題があって、それに基いて事故を起しておるということを聞きましたが、しかしながら、その後におきましていろいろ事故対策を講ぜられ、
飛行機の工合の悪いところは改善をされております。従いまして、過去においていろいろ事故のありましたことは、これは
実験時代にある
程度やむを得ませんので、これは別問題としまして、ロッキードの104が本年一月
米空軍に採用されましてから、なおかつ重大な事故が起きております。その例を申し上げますと、三月に新しく初めて
米空軍の一〇四部隊が編成されました最初の部隊長、非常に優秀な最初の部隊長が、普通の何でもない飛行のときに墜落して死んでおります。今のは三月でございます。二月には、ロッキードのテスト・パイロットが離陸直後になくなっている。六月にはロッキードのこれも同じテスト・パイロットでございますが、普通の
着陸操作をやっておりまして、滑走路から二千フィートぐらい来たときに、何でもない非常に順調な
着陸をしていると思ったときに落ちて死んでしまった。さらにことしの七月には、
米空軍で、最近に
新聞にも出ましたが、X—15という、宇宙飛行を実施いたします
飛行機のテスト・パイロットに選ばれました
米空軍における第一人者の一人でありますテスト・パイロットが104で飛んでおりまして、空中で
エンジンがとまりまして、
着陸できずに落ちて死んでおります。こういった
米空軍におきまして、テスト・パイロットあるいはきわめて優秀な第一人者といわれるパイロットですら、免れ得ない事故というものが、正式に採用されましてから後において起っております。これは私
どもが
新聞によって得ました致死事故の例を申し上げておるのでございますので、これ以外に致死事故に至らない事故とか、その他のものがあると思います。またロッキードの記事から聞いておりますところによりますと、—7という
エンジンにつけかえましてから七回ぐらい事故が起きておるということを聞いております。すなわち、あの
飛行機はすべてのものが順調に動いておるときには実にすばらしい
性能を持つ
飛行機でございまして、御承知のように世界高度記録あるいは世界
速力記録というものを出しております。しかしながら、これもあの
飛行機の機体の特殊性から起るところの、すなわち
飛行機の
操縦性、安全性ということに関連いたしましては、
飛行機の翼面荷重であるとか、あるいは揚抗比であるとか、最大揚力係数とか、失速速度であるとかいろいろ
技術上の問題がございます。これらから、われわれ、操縦者にいろいろ
研究させますと、この104の
操縦性、運動性というものは、
グラマンの
戦闘機と比べますと、どうしても落ちる。われわれ操縦者が飛ぶならば、やはりこの
グラマンを飛ぶということを、
航空自衛隊の現在のパイロットが、そういういろいろの
技術的要素を
検討いたしまして、
検討した結果においてそう申しております。
アメリカにおきましては、
機種は非常にたくさんございますし、パイロットも五万数千人というパイロットを擁しております。その中から
F—104というような
飛行機に乗れますパイロットは、選抜しました優秀な
戦闘機パイロットをこれに充てることができますが、
日本におきましては、ほとんど大部分のパイロットが、主力の
戦闘機としての
飛行機に乗れなきゃなりません。すなわち、ごく平均のパイロットが
次期戦闘機に乗るということになりますと、われわれといたしましては、安心して信頼のできる
飛行機、操縦者が、これならば安心して乗れますという
飛行機を選ばなければならない。この点がわれわれは、採用する
飛行機を選択いたしますときの
一つのきめ手である。
要求性能を満たす
範囲におきましては、われわれといたしましては、ここにきめ手を持たなければならないということを痛感いたしまして、私は
調査に当りましたときには、そういう点に十分重点を置いて
検討をして、私は、この
飛行機ならば、われわれの
あとについてくる若いパイロットを乗せる
飛行機として決して間違いはないという
確信を持って、あの
飛行機を
推薦いたしましたわけでございます。
次の問題に入りますが、次の問題といたしましては、これは
比較的な問題でございますので、これは絶対的な要素ではございませんが、次の問題といたしましては、
一つは、なるべく広い
範囲の用途に使える
飛行機を選びたいということでございます。われわれが
専門家といたしまして
日本の
防衛を考えますときには、積極的に進攻するということでなくて、純粋に自衛的に
日本を守るという場合におきましても、新しい新鋭の
飛行機を二
機種、三
機種、できるならば四
機種ぐらいの
飛行機がほしいのでございます。一
機種でこれを守るということは、なかなか困難なことでございます。しかしながら、私
どもが
日本の国力を考えましたときに、たくさんの
機種を持つことが不可能でございまして、せいぜい一
機種しか持てないということになりますと、私
どもといたしましては、なるべく一
機種で、われわれが
防衛上課せられております任務を広くできる
飛行機を持ちたいということを考えるわけでございます。すなわち、同じ
戦闘機におきましても、少くとも二
機種の
戦闘機が要る。すなわち、要撃
戦闘機と制空
戦闘機、すなわち、非常に急速度に上って来襲する爆撃機を阻止する要撃
戦闘機、あるいは制空
戦闘機と申しておりますが、これは必ずしも今の
飛行機ほど上昇
性能を必要といたしませんが、相当遠くへ出て、そうして来襲する
爆撃機あたりも阻止いたしますが、同時に敵の
戦闘機あたりとも取っ組んで、これを阻止することができる、俗に制空
戦闘機と申しておりますが、こういう
戦闘機の二
機種の組み合せがほしいのでございますが、それも
戦闘機としても二
機種くらいはほしい。さらに、われわれといたしましては、陸上自衛隊の戦闘に協力し、あるいは海上自衛隊の戦闘に協力する任務を与えられておりますので、これには地上攻撃を、陸上部隊の戦闘あるいは海上部隊に協力して、
比較的いろいろの多岐な運動をしなければならないことになりますが、これには
操縦性、運動性のいい
飛行機を持たなければならぬ。また、偵察ということも欠くことのできないものでございまして、こういう任務にも適する
飛行機、いろいろの任務を果す
飛行機がほしいのでございますが、われわれとしては一
機種しか得られないというときにおきましては、その一
機種で、こういう
飛行機がそういう任務を遂行することができるならば、非常に好都合でございます。この点は
比較的な問題でございまして、しからば
F11だけができて、
F—104ができないかというと、決して
F—104ができないというわけではございませんが、運動性その他から比べて、そういう任務を遂行する場合においては、
F11の方がよろしいということになるわけでございます。
もう
一つは、将来いろいろ航空戦の様相が変りまして、防空の任務に相当ミサイルというものが使われてくる時代が来ると思います。そういう場合におきまして、現在考えております非常に高高度に急速に上るという防空の任務は、相当誘導弾がこれを担当することになると考えられます。そうしました場合におきましても、先ほど申しました制空
戦闘機、すなわち中高度から以下、あるいは陸上戦闘に協力し、海上自衛隊に協力し、あるいは偵察というような
飛行機の任務というものは、当分長く残ることになります。従いまして、われわれがそういう任務に適する
飛行機を選んでおきますならば、その
飛行機も有人機として長く任務を遂行することができます。従いまして、長い目で見て非常に経済的であるということが言えるわけであります。こういうことは、これは私は絶対的な要素ではないと存じますが、
比較的な問題といたしまして、他
機種に比べて、この
グラマンがそういう点においてはよろしい、こういう点がございますので、私
どもが従来は、乏しい
資料で104がよろしいと思っておりましたが、いろいろ実際のものについて、また、われわれが飛べないかわりに、
米空軍のパイロットあたりに聞きまして、実際のパイロットの気持になって、どういう
飛行機を選ぶかということについて選びました結果、われわれは
次期戦闘機として、
日本の
国情に合う
飛行機として
グラマンの方がよろしい。
また、欠点がございます。すなわち、欠点といたしましては、先ほどから問題になっておりますように、これは
米海軍、
米空軍で制式機として多量生産して採用する
飛行機でないという欠点はございます。それからまた、生産をいたしますにいたしましても、
米空軍あるいは海軍で量産をしておりませんので、生産に至るまでの時期が、よけい、ほかの生産されておる
飛行機よりは、生産までに時間がかかる。あるいは補給面におきまして、従来相当
米空軍から
援助を受けておりますが、今度の
飛行機は
米空軍で採用しておりませんので、機体に関しましては、補給面におきまして、
日本側において自主的に努力しなければならないという点がございます。
発動機は、これは
米空軍で開発し、たくさん作られておることになっておりますので、
発動機に関しては問題はございませんが、機体
関係におきます部品につきましては、
日本側で大いに努力しなければならないという点がございます。また、今度作ります
飛行機は、
日本側の
要求によっていろいろ
米海軍で
実験いたしました
F11—1Fそのものでございませんので、これに伴う
実験をまだやらなければならない点も残っております。そういった不利な点もございます。
しかしながら、実際の問題につきましては、別の見方がございまして、われわれが外国でできました
飛行機を、レディメイドで買ってきますと、これの
実験研究とか、いろいろ中間において経験いたしましたことを、
日本側において体験することができませんが、ある
程度実験段階でこれからやるという
飛行機の場合に、
日本側からいろいろ
関係者を派遣することによって、その
飛行機の中間過程からこれが最終的になるまでのいろいろの
実験研究について、
米側の進歩したものを体得できるという利点もございます。しかしながら、これは付随的な問題でございますが、必ずしも欠点ばかりでなくて、非常にプラスの面もあることはございます。
そういったような欠点がございますが、先ほど申しましたように、すべての
飛行機が百パーセントということは望み得ませんので、それぞれ一長一短がありますが、それらの中で、どこが
日本にとって大事なところであるか、また長所と欠点とを比べ合わせてみてどうかということを合わせ考えて、私
どもは
グラマンがよろしいということに決定をしたわけであります。