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説明員(
松隈秀雄君)
専売公社の場合には、特に監督官とか、監察官とかというものはおいておりません。一般職員の身分なり行動なりをあるいは
局長とし、あるいは部長とし、あるいは支局、出張所長というような形において、上司が下僚を指揮し、監督する、こういうような制度で実行しておるわけでありますが、ただいまもお話ありましたように、指導員と農民との
関係におきまして、かなり深入りし過ぎておると、こういうのが従来の実情だったわけであります。
これは非常に弁護をするようになって恐縮でありまするが、ある時期においては、まあそういう形をとることもやむを得なかったと、それも少し、まだ弁解が入っておりまするが、そういった時期もあったのでありまして、非常に
葉タバコが足りない。だから、ぜひ
葉タバコをよけい作ってもらわなくては困る。しかも、その時期においては、肥料とか資材も乏しい、であるから、ぜひ、これらの農民が、自由に獲得するだけでは不足するし、それではいい
葉タバコもできず、量もできない、こういうことから、農民と一体となって資材を獲得し、肥料を獲得し、耕作の仕方を教えていくと、こういうふうで、非常に接近をするわけであります。そうすると、つい人情が移りまして、ときによっては、酒食をともにする。農民の場合でありますから、特に料理屋へまで行くという
程度でなくて、家にある酒をふるまうとかいうようなことが出てくるということになりますし、また、そうまでして、いいものができた、そして優等とか一等になったというような場合には、つい感謝の気持を起すということから、反物を贈るとかなんとかいうようなふうなことが発生しがちであります。
これはまあ終戦後の混乱時であり、また
葉タバコの不足時代に、
公社が
たばこ事業を確立するために、過渡的にやむを得ない時代であったといたしまして、まあ
幾らか弁解の余地があると思うのでありまするが、その後の
状況は、全然変って参りまして、今日では
葉タバコが増産されまして、
公社は必要以上の
在庫を持っております。
そういうことから耕作反別の方も拡張しないで、新規の
耕作農民は認めない、むしろ従来の人にも、減反をがまんしてもらう、こういうようなことになれば、大体耕作も、今では落ちついておって、耕作
技術も相当進歩しておる。それから買おうと思う肥料、買おうと思う資材も、今では自由に獲得できる、こういう状態になっておるのですから、もう今日は、そんなに手とり足とりして、農民に接して指導する必要はない。ちょうど小さな子供が、一々着物を着ることから、脱ぐことから、教えてやらなければ病気になる、こういう時代は過ぎて、もう自分で、暑ければ脱ぐ、寒ければ着ると、こういう年ごろになったのに、まだ、おばあさんが一々世話をやく、こういうような状態は、もう時代が変ったということで、耕作指導方法を変えるべきである。
従って個々の耕作指導はできるだけ避けるようにして、やむを得ず病虫害が出たとか、特定の状態が発生したから、ぜひ見回ってほしいというような場合は例外ですけれ
ども、そうでない場合においては、集団指導をする、組合と連絡して。そして
公社の事務と、農民の耕作とを事務的に割り切って仕事をする。一体になっているということは、まあ俗な言葉で言えば、少しウエットじゃないか。そうじゃなくて事務は事務で、ドライに割り切っていくと、こういうことにすれば、一体になっておることからくる公私の混同といったようなことも避けられるのであって、それから肥料をどこから買うというようなこと、資材をどこから買うというようなことも、一体になると、ついそういうことまで教えてやりたいとか、指図したくなるけれ
ども、集団指導するというようなことになれば、そういう必要はない。それから大ぜいの前では、また特定の会社なんか推薦すれば、また、どういう告げ口が起るかもしれぬということになるから、そういうことも勢い慎しむであろう。そういうことから指導
方針を漸次方向を変えまして、
公社の本来の事務と、それから農民といいますか、耕作者に対する仕事のやらせ方を、はっきり一線を画して混同しないようにする。また、そういうことをさせるのには、ある
程度、戦後、惰性がついておる耕作指導員だから、その耕作指導員を集めて教育する必要がある。それから耕作指導員を一定の耕作指導期間中、何回もと申しますか、できるだけ多く出張所なり支所なりに集めて、そうして趣旨を伝達し、それから耕作指導方法なんかも、今までは、かなり各人の奥の手と申しますか、
技術を公開しないで、各人の特色を発揮するということになっておったんですけれ
ども、これも必要ではありまするけれ
ども、むしろ普遍化した共通的な耕作指導要領というようなものを作って、それによって指導のあり方を画一的にして特定の耕作者に特定の教え方をして、そのものから、特定の感謝を受けるというような方法でない方がいい。こういうふうに耕作指導員の教育なり指導の仕方なり、それから一定の場所に、一定時に集まって監督を受けるというふうに、指導方法について、世間の非難もありましたにかんがみまして、かなりの改善を加えるということは、昨年から今年にかけて行なっておるわけであります。
ただ、先ほ
ども申し上げましたように、何と申しましても、この惰性の強い
耕作農民と、それからそれに接触しておる指導員でありまするので、百八十度の転回ということは急に望めない。しかし、もう
公社としては、そう、たびたび世間から指弾を受けるということでは、何とも弁解のしょうがない。ほとんど国会に出るたびに、指摘されるではないか。高砂商事のお話が出ましたけれ
ども、この会社の名前なんか、速記録に何回載ったか、勘定できないというくらいなんで、われわれも、また、あのことを言われると、こんなにまで、あの問題が出てくるのは、どういうわけだ、こういうふうに、本社の方では
考えておるようなわけでございます。少し時間はかかるかもしれませんけれ
ども、御趣旨の点が、早急に実現するように、本社としては希望し、できるだけの手は打っておるつもりでありますので、御了承を得たいと思います。