○江藤智君 先ほど来、
私鉄の十三社の
運賃改定については、同僚議員から十分御
質問がありましたし、また
大臣も、
不合理是正については全力を傾けて
努力をするという御確約がありましたので、時間の都合もあり、私はもうきわめて詰めまして、要するに、ただいま
鉄道政策として最も重要な問題の大
都市交通をどうするかという面から、一つ
大臣に、さらにこの問題について決意を新たにしていただく意味で
質問いたしたいと思います。
申し上げるまでもなく、戦後の
鉄道輸送で非常な問題になりましたのは、大
都市における
通勤輸送の問題でございます。これは御
承知のように、戦後いろいろな
事情から
通勤輸送というものが逼迫して参りました。とにかくもう殺人的な
輸送をやっておる、これではどうにもならないというので、この
私鉄の
運賃改定よりも、はるかに影響の大きい
国鉄の
運賃改正というものも、五ヵ年
計画によって
輸送力をつける、その中では
通勤輸送対策というものが最も大きな一つの柱になっておるわれなのでございます。幸いにいたしまして
国鉄の方では
運賃改正の結果、現在の二〇〇%余りのいわゆる乗車効率というものも、できるだけ早い
機会に一五〇%までには低下させるという目的で、着々と今東京付近あるいは大阪付近の
通勤輸送対策が実行に移されておるわけなんであります。ところが、この
国鉄とちっともウェートにおいては違いません東京、大阪、あるいは名古屋、北九州というようなところで、
通勤輸送に対しましては
国鉄と同じような役割を果しておりますこの十三社に対しましては、そういう処置は何ら見通しがついておらない。ここに運輸省でお出しになった資料がございますけれ
ども、この
ラッシュ・アワーのときの乗車効率というものは、みな二〇〇%を超えております。京浜のごときは二七二%、これなんか
国鉄でもこんな
ラッシュの
状態は呈しておらない。しかも現在のように、
昭和二十八年以来
運賃はストップせられ、しかも人キロ当りの指数というものが戦前に対して百四十倍、とにかくこの百四十倍というような
程度の
運賃で、しかも、これに要する材料費と申しますか、車両にいたしましても線路にいたしましても、これはおそらく平均の卸売
物価指数よりもはるかに高い、おそらく五十倍ぐらいもの資材を投入しなければ、車両も
整備できませんし、線路も増備できないのでございますからして、今のような
運賃のままで、しかも、われわれが
国鉄のときにも問題にしたような
交通地獄を
緩和させるということは、これはできないことは当然でございます。
いろいろ
運賃のアン・バランスということを言っておられましたけれ
ども、とにかく、現在の
私鉄のような
ラッシュというものはいけないというので、すでに
国鉄の
運賃改正もやっておるのでございますからして、しかもそれと同じような使命を果しておる
私鉄を、先ほどのようなお話だけで、とにかくこの上さらに据え置くということは、ますます
私鉄が
通勤輸送に対する使命が全うされないということに私はなるのではないか。でありますから、どうしても、少くとも
国鉄で考えておるくらいの
程度にはやはり、これは
私鉄、
国鉄を問わず、同じバランスで、やはり増備してやらなければならぬということは、これは
都市交通の面から考えられることでございますから、そういう面で一つ、ぜひこの際、
運賃改定ということも考えていただきたい。
この際、
大臣として非常に御心配になっております
閣議決定の問題もあり、あるいはそれが
物価にはね返って
連鎖反応を起すだろうという御心配もあるのでございますが、ここにきょう配られた資料がございます。これは参議院の運輸調査室の資料でございますが、運輸省でも、もちろんこれと同じような資料をお持ちなのでございますが、たとえばこれで小田急を見ましても、新宿—小田原間が百七十円、
国鉄では二百円。新宿—藤沢間が百十円、
国鉄が百三十円。結局のこの
国鉄並みぐらいに
運賃を上げたから、それが
物価に
連鎖反応を起すであろうということは、これは少し考え過ぎるのではないか。むしろ
物価に対する
連鎖反応というものを心配したのは、この
国鉄の
運賃値上げのときにこそ、これは非常な検討をしたのでございますけれ
ども、一応そのときに検討済みであり、しかも、そのときのわれわれの結論というものは、非常に無理な
運賃に据え置いて、そうして悪いサービス、極端に言えば危険なサービスをするくらいなかば、早期に
運賃を改定して、そうして
輸送力をつけ、サービスを向上した方が、むしろ国民は喜ぶのじゃないかというような結論でありますから、
運賃改定ができたものと私は信じますし、その後の結果を見ましても、十分とは申しませんが、相当に
国鉄の設備や車両な
ども改良されてきておるのでございまして、これは国民の要望にある
程度沿っているのじゃないか。でございますから、これと同じようにやはり
私鉄に対しても、どうしてもこの際
責任者としての
運輸大臣は、一つ腹をきめてやっていただく必要がある。
それからまた、
運賃の体系から申しましても、これはアメリカあたりのたくさんの
私鉄があるところを見ましても、所から同じ所に行くというようなところは、ルートは違いましても、
運賃というものは同じにきめております。そうして、それぞれの特徴を生かし、あるいはサービスを生かして競争をするというのが、これが
鉄道のやはり
運賃政策の原則であると思えるのであります。そういう意味から申しましても、また同じ貴重な投資をした場合に、一方だけに偏するというようなことがないようにバランスをとって、そういうような投資の効果を上げるという意味におきましても、ある
程度の
運賃調整を考えなければいけない。こういう事柄を考えますというと、やはり
主管大臣として、一つ
閣議においても強力に
発言をなさり、できるだけ早く
通勤輸送というものの
対策が立てられるように一つ御
努力を願いたいと思います。