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1958-10-31 第30回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月三十一日(金曜日)     午前十一時五一分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 井手 以誠君 理事 小平  忠君    理事 田中織之進君       井出一太郎君    小澤佐重喜君       大平 正芳君    岡本  茂君       加藤 高藏君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       周東 英雄君    田中伊三次君       田村  元君    綱島 正興君       床次 徳二君    保利  茂君       水田三喜男君    南  好雄君       八木 一郎君    山口六郎次君       山崎  巖君  早稻田柳右エ門君       阿部 五郎君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    今澄  勇君       岡  良一君    加藤 勘十君       北山 愛郎君    久保田 豊君       黒田 寿男君    小松  幹君       佐々木良作君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    中澤 茂一君       成田 知巳君    西村 榮一君       森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         食糧庁長官   渡部 伍良君         建設技官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月三十一日  委員塚田十一郎君、岡良一君及び佐々木良作君  辞任につき、その補欠として大平正芳君、中澤  茂一君および加藤勘十君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員久保田豊君及び中澤茂一辞任につき、そ  の補欠として佐々木良作君及び岡良一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)      ————◇—————
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十三年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。  質疑を続行いたします。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は御承知通り伊豆を地盤にしておりまする代議士であります。同時にこの災害の最も中心地でありました韮山に住んでおりまして、みずから身をもって今度の大災害を経験したものであります。そういう立場から、まずこの機会に、総理並びに与党の皆さんにおかれましても、また野党のわれわれ社会党におきましても鈴木委員長、あるいは岸総理あるいは大野副総裁等が親しく諸所の現地を見ていただきまして、激励をいただきましたし、またいろいろとお世話になりましたことに対して、被災者約八万五千を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第であります。  これから私が御質問を申し上げようとする事項は、昨日までの当委員会におきまする論議のはなばなしさといいますか、そういうことに比較いたしますると、きわめてじみな問題が多いわけであります。しかし、御承知通り、第二十二号台風による災害被災者だけでも、全国で五十五万九千人おるわけであります。その大部分というのは、今冬空を控えまして、そしてほとんどが大きな災害を受けまして、これからどう生きていこうかということに悩み切っているのが今の実情であります。特に災害の激甚でありました私ども静岡ないしは伊豆の地帯におきましては、政府施策がはっきりしない、あるいはその他の点がはっきりしないために、ようやっと死体処理を終りまして、町村もあるいは被災民もこれからどうしていこうかというところに立ち直ろうとしておりますけれども、そのめどがつかぬで実は悩み切っておるのが実情であります。そういう立場から、私は一つ岸総理以下各関係閣僚被災者立場から御質問申し上げたいと思います。従いまして事はきわめてじみであります。あまりむずかしい、岸さんのお得意のそつのない御答弁をいただかなくてもけっこうであります。事実を土台にいたしまして、はっきりやるかやらないか、こういう点を明確に一つお答えをいただきたいということをあらかじめお願いをいたしまして、まず質問に入りたいと思います。時間の関係もありますので、当初に大体岸総理に主として重要な事項についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  その第一は、岸総理は今の治山治水事業なり災害復旧事業実態をどのように御認識になっておるのか。もっとはっきり言いますと、現在のようなやり方でいいと思っておられるのか、これで十分と思っておるのか、悪いのか、これでは足りないと思っておるのかという点を、まず第一にお聞きをいたしたいのであります。  私がくどくど言うまでもなく、総理もよく御承知のことと思いますが、わが国の地勢というのは、平地が少くて山が多い、しかも急峻だ、従ってこれから出る川は非常に長さが短かくてそして急流だ、しかもその上に土砂の排出量といいますか流す量は世界でもって一番高い、こういう状態であります、しかもこれに対して、年の平均商量は千六百ミリというのでありまして、大体世界各国平均の倍であります。しかも台風の進路に当っております関係上、年の平均台風瀕度というものは二・六、つまり年に三回は必ず台風を受ける、こういう特殊な自然条件なりあるいは気象条件のもとにあるわけであります。ですから、これに対する対策というものは、よほどしっかり立ててもらわなければ困る。ところが、戦後の今日までの大体の状況を見るとどうかというと、一言に言えば、歴代保守党政府と言っては言い過ぎかもしれませんけれどもやり方はどうかというと、まあ金のかかる厄介者扱いであります。これは昔もそうであります。私どもは長い間災害部落中心に住んでおりまして、これを何回か経験しておる。災害のあった当初は、政府も何も相当大騒ぎをしてくれる、しかしその次の年から知らぬ顔だ、こういうのが大勢であります。しかも、政治家のこれに対する態度も、選手の票集め程度にしか考えておらない、これが実情であります。古い例を申しますと、私どもの父祖の代から、この治水の問題については私どもは実に苦労をして参りました。ある時期には三千名の農民が全部その当時の憲政会に入党したことがあります。また、内閣がかわったというので、結局またその当時の政友会に入党し直した、そういうふうな苦労を重ねましたけれども治水事業というものはなかなかうまく参りません。今日はそれほどではありませんけれども票集めのためには、事のよしあしにかかわらず、治水の問題をもてあそぶ人が決して少くない、これが今日の政治実情であります。  しかも、これは単に歴代政府政治家態度だけではないと思う。現実に政治の上にもそういうふうに現われておると思います。さっき申し上げましたような状況から、御承知通り、戦後十年間の大体の被害状況を見ると、大体年々五十四、五万戸の人たちがこの水害によってやられております。大なり小なりやられておる。これによって生活基礎破壊されておる人が二百万以上、しかも水はつかなくても、水がつきはせぬかといってびくびくするのは、年に一千万以上の人が毎年びくびくしているのであります。これによる被害も、農地はどうかといえば、平均いたしまして七十万町歩以上が毎年やられる。そうしてそのうちで大体において五万町歩近くが流失、埋没、そうしてその被害の総額は平均いたしますと二千四百億、こういう実態であります。  こういう実態に対して、それでは政府施策はどうかといいますと、さっき言いましたようなところから推して、私どもから見るときわめて不十分であります。御承知通り、あの二十八年の大災害がありまして、これで当時の保守党政府が大宣伝をいたしまして、治山治水対策協議会というものを内閣に作られた。そして御承知の一兆八千億という基本政策というものを立てられた。ところが、これは閣議にもかけられないで葬り去られた。二十九年の大体三千五百億の総事業費を持った第一次の五カ年計画というものはどうかというと、これも閣議にもかけられておらぬ、こういう実情であります。しかも、これは二年間で立ち消えになってしまった。そして三十一年、今日やっております総事業費が三千二百億の第二次のいわゆる治水振興五カ年計画、これの進捗状況は今日どうかというと、三年目の今日わずかに三四・二%であります。こういう状態であります。しかも一兆八千億の基本計画といえども、これは日本治山治水を完成するものではありません。ごく一部の重要な点だけを大体において完成するというような内容のものであります。不十分なものであります。そのごく一部を実行するやつが今のような状態であります。この状態でいけば日本治山治水が完成をするというのは何年先か見当がつかない、こういう実情であります。災害に対してはどうかというと、前に申しました大きな災害があるにかかわらず、災害復旧費はいろいろの意味でしぼりまして少いために、大体昨年度末でまだ四百二十億の災害復旧残事業がある。二十六年の災害はまだ終っておりません。今度伊豆災害等におきましても、私は現地をくまなく歩いておりますけれども、それによりますと、まだ二十八年災の始末のつかないのが各所に散見をしておる、こういう状態であります。全体の予算の中で大体年に八百億くらいの金を治山治水ないしは災害復旧に使っておられるようですが、大体それは総予算額のたった六%足らずである、こういう実情であります。こういう実情をあなたはよく御承知だと思う、あなたはこれでいいと思うのか、これでは足りないのか、これでは悪いと思うのか、私はこの点を罹災者にかわって総理の口から直接にはっきりお聞きしておきたいと思う。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 年々災害を受けておりまして、これに対しての実情並びに対策等について久保田委員実地に即しての御質問でございます。日本の特殊の地理から見まして、治山治水ということが国土の保全の上からいいましても、あるいは民生の上からいっても、あるいはさらに産業基盤を確立する上から申しましても、きわめて重大な意義を持っていることは今さら申し上げるまでもない。しかも年々こういうものが繰り返されておるというところに、非常に従来の施策の欠陥が私はあると思うのです。今お話通り、この前の二十八年の災害の際に治山治水対策協議会を作り、一応の計画はできております。しかしそれの実行状況は今久保田委員の御指摘のあった通りであります。きわめて不十分であると私は思います。従いましてこの治山治水の問題をさらに計画的にしてこれを強力に推進することは最も必要である、かように考えて検討をいたしておるところでございます。今までの足らざるところ、また今までの不十分なところにつきましては、今後の施策においてこれを十分に強くして参りたい、かように考えております。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 治山治水災害対策に対する政府の御答弁は今総理からお話があったようであります。まだ足りません。これから本気にやります、これだけであります。しかし実際にそういうふうにやられたことはほとんどない。それですからただ単に言い回しでもってそういうふうに言われるのでなく、私はもっと具体策を持ったお話をいただきたいのであります。そこで私はそれに到達しまするよすがとしまして、岸総理は今日の治山治水事業なり災害復旧なりという事業というものを、国の政治の全体の中でどういう位置づけをされておるのか、こういうことについてはっきりお聞きしておきたいと思う。それについては私は二、三、今岸さんが政治上一番重点を置いておられる問題との連関において特に首相考えをはっきりお聞きしておきたい。  それはざっくばらんに言いますと、建設省で出しました経済白書の中でも、今日の災害が非常に大きくなった根本原因は、戦時中から戦後の大体二十四、五年までかけて治山治水事業というものをほとんど犠牲にしてしまった、やらなかった。それが今日災害を大きくする根本原因であるということをはっきり役所の文書に書いてある。これにはあなたの責任が私は一部あると思う。戦争中の閣僚としましてあると思う。そこで私はそういう点から見てはっきり首相にお聞きをしたいのは、大体あなたがよく強調されまする民主政治治山治水問題をどういうふうにお考えになっているかということであります。あなたは今度政界に帰られるに当りましては、民主政治をあくまで守るということをいろいろの機会に強調されておる。民主政治には議会政治であるとか、あるいは多数決であるとか、あるいはその他いろいろの基本的な要素がありましょう。その基本はやはり基本的な人権でありますが、私はもっと深いものがあると思う。それは何かというと、国民生活基礎的安定であります。その基礎的安定というものは私がくだくだ言うまでもなく、御承知通り社会関係から来る貧乏とか、あるいは失業とかいう問題がありましょう。同時に自然と人間関係から来る地震とか火災とか、あるいは水害というような問題によって、いわゆる国民生活基盤が大きく破壊されるという二面がある。日本ではさっき言いましたような数字から明らかなように、年々二百万もの国民が、大なり小なり水害によって生活基盤をこわされておる。そうして一千万人以上の者が年々水害が来やしないか、来やしないかといっておびえておる。そうして国土相当部分というものが年々水害によって破壊をされておる。こういう事実を根本的に手当をせずに民主政治というものは成り立つかどうか、この点を私は首相にはっきりお聞きをしておきたい。あなたはいろいろな意味において社会関係におけるあなた一流の解釈によって民生の安定というものを考えられておる。しかしその社会関係の一番土台をなすものは自然関係である。この自然関係において手当をせずに、不十分にしておいて、そこから年々多数の人が国民生活基礎的安定というものが破壊をされておる。これをほうっておいて私は民主政治というようなものは意味をなさぬと思う。こういう状態において国会でえらそうなことをお互いに言ってみたところでしょうがない。こういう点を首相はどうお考えになるかということが第一点。  もう一つは、今問題になっているのは警察力の問題、あなたはちょうど暗やみから牛を引っぱり出すようなやり方で警職法の一部改正を持ち出して、警察官の権限を不当に拡大されようとしておる。同時にその裏には次の機会においては警察力をさらに増強しようというお考えを持っておいでのようであります。その目的とするところは、あなたのおっしゃるところでは、これは公共の安全と秩序を守ること、その通りでしょう。その通りでしょうが、公共秩序というその公共というのは国民生活だと思う。国民生活秩序ということだと思う。その秩序が年々災害によってこれが大きく破壊をされておるのが今日の実情です。この実情をそのままにしておいて、いかに警察力を強化して民主政治生活の安定なりをやろうとしても私は無理だろうと思う。私の方の災害地でも、このごろは私は土曜、日曜、月曜にはいつも各部落を回って、何とかみんなの災害者の立ち上りの手助けをやろうと思って歩いておりますが、日一日と人心は非常にとがって参ってきております。これは私は決してアジるわけでも何でもない。このままでいってわれわれは生きられるだろうか、立ち直れるだろうか、こういう点から非常なあせりが出ておると思う。その中からかなり乱暴な言葉もずいぶん出て参ってきております。議会政治を否定するような言葉も出てきておる。政治を信頼しないという言葉百姓流なり、あるいは勤労者流言葉でどんどん出てきておる。役場等にはもっと強くこういう問題について大衆で押しかけるというような問題も出てきております。こういう状態を十分に手当をせずに、警察力権限を拡大して、強くして押えようとしても、私はほんとうの正しい意味においての公共の安全なり秩序というものは保持ができるものではないと思う。少くとも日本の特殊の気象条件なりあるいは地勢条件なり、その他のいろいろな条件から見て、まず警察力増強なり何なりというものを考えるより、こういう自然的な条件からの国民生活基礎的安定というものに最も力を入れるべきじゃないか、これが私は民主政治の常道だと思う。こういう点について、警察力増強なりあるいは権限拡大なりと、治山治水なり災害復旧の問題について、総理はもう一度お考え直しをいただく必要があるのじゃないか、私はこう思う。  もう一つは、あなたは御承知通り有名ないわゆる再軍備論者です。そう言っちゃ失礼かもしれませんが、そうだ。そして盛んに自衛隊増強しよう、自衛隊じゃ足りないから、アメリカと手を握って、国土国民の安全を外敵から守る措置をとろうということに、あなたの政治的生命を打ち込んでおられるようです。しかしながら守らるべき国土が年々さっき申しましたように荒廃荒廃を重ねてきておる。そうして守らるべき国民はどうかというと、年々二百万という人たち大きく生活基礎を破られ、破壊せられる、国土はどんどん荒廃しておる。こういうことであって、あなたの昨日の答弁で言われたように、国民の間にほんとう国防観念というものが出て参りますか。あなたの言うように、軍事力によって外敵から国土あるいは国民を守っていただくより、水害という内敵から、自然の敵から、国土国民を守っていただく方を、ほんとうに働く人間は私は強くあなたに期待しておると思う。  こういう点で、これらの三点から見て、私はあなたの今の政治は本末を転倒して、実際にはさか立ちしているのじゃないかと思う。こういうことを言っては失礼かもしれませんけれども、少くとも年々災害をこうむる二百万近くの罹災者は、大部分がこういう感じを持っていると思います。私のところあたりでも、ずっと回って歩きますと、このことをだれ言うとなく言っております。それはグラマン一機分あればあの狩野川放水路ができるじゃないか、三機分もらえばあの狩野川放水路はできてしまうじゃないか、しかもそれに汚職がくっついたり、そういうにおいがしておる、あれを何とかわしらの方に回して、長年の願望でありますところのあの狩野川放水路を早くやってくれるという政治はないものかということを、だれ言うとなく罹災者はささやき合っております。これは私どもが知恵をつけたわけではありません。こういう点から見て、私はあなたの今やっておられるところのいろいろの仕事、こういう点からもう一度、基本的に反省をして、治山治水問題と災害復旧問題というものを、もっと深く国政の上でしっかりした位置づけをしていただきたい、私はこう思うのであります。年々内閣がかわり、政策重点が変り、その場その場でもって次々に変るような治水計画災害復旧対策では日本国土国民は守られません。軍隊を幾ら作ったって、警察を幾ら強くしたってだめだ。外国の例を岸首相に申し上げて、これを強制するつもりはありません。しかし御承知通りアメリカにはいわゆる世界最高治水事業といわれるテネシー・ヴアレー・オーソリティというものがりっぱにできております。これらの実情岸首相はよく御承知のはずだと思う。また、岸首相はあまりお好きでないようですが、お隣の中国ではどうかといいますと、中共政権はいわゆる政権の座につくと同時に、御承知通り治水問題というもの、これは中国六億の国民の長年の願望でありましたが、これをまっ先に取り上げました。そうして毛澤東主席みずから六十数日の間実地踏査をされて、御承知通り今揚子江、黄河に大治水計画を立てておる。これはすべての計画、すべての国策事業優先する基礎的な第一義的な国策事業として今日実行されておるのが実情であります。もちろんまだこれは完成していないようでありますが、この予算については、中国政府は、いろいろの他に政策重点があったにしても、決してこれを変えるということはしていないようであります。その結果が、御承知通りいわゆる三門峡のダム、こういう大きな、おそらく世界でも考えられないような問題ともすでに取っ組んで、開封に開発事務所を作ってやっていることも総理はよく御承知のはずであります。こういう実情であります。私は決してこういういろいいろなアメリカ中国のまねをあなたにしていただきたいというわけじゃない。この日本の特殊の地勢状況なり、気象状況なりがこれと結びついておる、密着しておる日本国民生活基礎的安定というためには、どうしても治山治水事業災害復旧ということは、すべての政策優先をする第一次的な政策として、保守党内閣であろうと、社会党内閣であろうと、どんなに内閣がかわろうと、これだけは、というものを打ち立てて、そうしてこれを内閣政策重点に置いて、変ることなく予算も第一次的の優先として、そうしてこの予算だけは最低限の国の予算として確保してやっていく、こういう程度のことが民主政治下において行われないはずはないと私は思うし、そうするのがほんとうだと思う。私は欲は言いませんが、せめて首相承知の一兆八千億、国の経費の負担が大体一兆一千七百億、あの二十八年の苦い経験から得たこの治山治水基本政策、これを十カ年くらいのあれでもってやり抜く、こういうことをはっきりこの際国策の第一次的な要素として打ち立てることは、保守、革新を問わず、私は日本では必要だと思いますが、こういう以上あげました諸点について、首相の明快なる御答弁をいただきたいと思うのであります。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 治山治水の問題の重要性については、今久保田委員がいろいろな設例をもって御説明になったことにつきまして、私全然同感であります。今度の伊豆地方水害の現状を見たり、あるいは昨年の諌早の状況を見まして、私も強く痛感しておるところであります。それにはもちろん国の予算はいろいろな点において御承知のように考えていかなければならない問題でありますが、しかし治山治水の問題を重要な国策として、これを一そう計画化し、そうして今御指摘になりましたように、そのときどきの政治情勢やその他のもので変更されるということのないような一つ計画的な、はっきりしたここに根拠を置いて、そうしてこれを力強く推進するということは、私どもも必要であるということを私自身も痛感をいたしております。十分にそういう御趣旨のような点について私は今後努力をする決心でおります。
  7. 楢橋渡

    楢橋委員長 久保田君の質疑災害関係の問題でありますが、大蔵大臣が参議院本会議に出席しておりまして、間もなく出席する予定であります。どうしても久保田君の大蔵当局に対する災害地の深刻な話等もありますので、この際このまま暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後零時十九分開議
  8. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。久保田豊書
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今岸首相から、われわれも根本的にやるつもりだ、こう言われる。それでは具体的にお聞きしますが、今の第一次五カ年計画さえ進捗率はわずかに三四・二%だ。これはことしの末でですよ。これはなぜかというと、金がついていないからです。来年からこれは金をつけます、また建設省では新しく三千五百億の総事業費の新しい五カ年計画をやろうとする、こういう計画を立てておられるようです。私はこんなものは——まああとで建設大臣に詳しくお聞きしようと思いますが、予算の裏づけや措置がなければ何にもなりません。今すべての治水事業災害復旧がうまくいかないのは、この予算がないからです。私はさっきのお話のように、一兆八千億、国費負担が一兆一千七百億の基本政策をやるというならば、来年度からこれを具体的に計画化して、予算化して、来年予算をつけるということをはっきり御明言いただけるかどうか、この点をはっきりしていただきたい。今のような抽象的な御答弁では、もういつもそれでごまかされてきておる。はっきりこの点を現行計画に、少くとも三年目ですから現在は七〇%かそのくらいはついていなければだめです。ところが今のところは予算関係は三四・五%です。これを補強するのか、新計画についてはっきり五カ年計画ができるなら、これに対する予算は最優先でつけるというのか、私があなたにお尋ねをしておる一兆八千億というのは十カ年計画でやるという観点から予算をつけるのか、これを首相からはっきりお伺いしたい。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほどお答え申し上げましたように、この重要性と、それからこれを一そう計画化してぜひ実現する、それに必要な予算を裏づけしなければならぬことは言うを待たないのであります。ただ私、具体的の計画内容及び具体的の数字というようなものはなお検討をいたして、今申しましたところの方針に従ってこれに臨んでいきたい、かように思っておるのでありまして、今五カ年計画や十カ年計画をどうするということをここで申し上げるわけには参りませんけれども、十分に一つこれを検討して、そしてさっきも申したような方針で、重点を置いて、しかも時の政治情勢においてその計画が中途にして変更されるとか、あるいは行き悩むということがないように推進をしたい、これが私の考えであります。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点お聞きしますが、一つ計画の内容を検討してできるだけやるという御趣旨だけれども、そんなことではできませんよ。今までいつの機会にもそんなことを言われてできなかった。そうして歴代の担当大臣も計画は作っても、その実行は結局予算関係でできませんでしたと逃げておられる。私はこれはやはり建設大臣に責任を負わしても無理だと思う。どうしても総理大臣がみずからこういう問題についてしっかり取り組んで、そうしてさっきの御答弁のようにやるならば、これに対する予算はたとい、例をとって言いますならば再軍備を削ったってこれをやるだけの腹がなければ実際にできませんよ。ほかの方のあなたがおやりになろうとする経費を先にとつちゃってそれでやりますと言ったって、そんな経費は残りません。それでみんなだめになっておる。私はあとで具体的ないろいろ本年度当面の問題について大蔵大臣質問しようと思っておりますが、これはこまかいことですからあとにいたしまして、少くとも首相の決意としては、みずからこの問題を第一義的な重要な国策としてやる、それについては現行五カ年計画であれ、あるいは新五カ年計画であれ、さらにそれを一歩総合いたしましたところの一兆八千億の基本計画を十カ年でやるというこの基本方針を立てて、これの必要予算は何にも優先してとるという決意がなければ、今のようなお話では私は満足できない。具体的にいえば再軍備を削ってもやるかどうか。これは私が言うだけじゃない。自民党の中でもこういう意見をはっきり言っておる人がある。これは過般の建設委員会におきまする皆さんの方の議員の御発言等を見ても明らかです。この点について重ねて首相のはっきりした御答弁をお伺いしておきたい。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、これは相当な年次計画を定めて実行しなければならぬ問題であります。従って日本の財政全般も見通しをして、やはり計画というものは今までのようなことでなしに、閣議で決定をして、そうして実行するというふうに、検討を加えた上で最後の結論を出したいと思います。趣旨は先ほど来十分に申し上げておる通りでございます。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がありませんから、まだ食い足りませんけれども、次の問題に移ります。  その次は特別立法の問題であります。今度の災害は、まあ今までの大体二十八年災、あるいは熊木災、諌早災、そういうところよりも部分は狭いが非常に深刻であります。従いまして今日の法律のワク内では片のつかない問題が続出いたしておるのであります。そこで特別立法をすることが当初から現地の方からも大きな要望であり、総理現地を視察された際に、そのことを新聞記者等に話されておる。山口国務相も盛んに現地においてはそれを言われておる。自民党の現地を御視察いただきました皆さんも、大体の場合において特別立法をやる、こう言っておられる。ところが東京に来ましていよいよ具体的に自民党の皆さんと折衝いたしますと、当初のうちは特別立法はなるべくやらない、そうして現行法の行政運用でもって片づけるというようなお話です。最近においては少し風向きが変ってきて、最低限の特別立法をやろうというふうなことになりまして、私どもが自民党との交渉の過程において承知をしておるものは、現在やろうとするのは——私どもの党では御承知通り、もう二十四の特別立法を作り、九つの特別の行政措置をとる、こういうことを党議できめまして、これを基礎にして自民党の皆さんと今まで折衝を重ねて参ったのであります。その過程で自民党側がほぼ納得をして、おれの方でやろうというふうなことを、確約とまでは言いませんけれども、私どもと話し合いをいたしまして現在までまとまった点は、わずか六つであります。その一つ被害農民に対する米の安売り並びに代金延納に関する法律、それから被害の地方公共団体の起債の特例についての特別立法、それから農林災害復旧事業の国庫負担の暫定措置法の一部を改正する、この内容は御承知の過り、農地については現在十五万円限度で、これに対して八〇%で頭打ちでありますが、これをさらに一ランク設けて九〇%にしようということ、さらに一般林道について、これは千二百円限度で、これは七五で頭打ちでありますから、これを八五に新しいランクを設けよう、こういう内容であります。これはけさのラジオによりますと、本日あたりすでに閣議の決定をして実施されるようですが、この問題、それからさらに炭害地区の公立学校義務教育施設の災害旧復の国庫負担についての特別措置法、これは今の三分の二補助を四分の三に改めるという内容のもので、それから住宅金融公庫法の一部改正、これは北海道を中心にして償還年限を延ばそうという内容のものであります。さらに公共農林の小災害復旧の起債のための特別措置法を作ろう、こういう大体六つのことだけを、自民党側としては大体私どもに対しましては了承しておるというふうに私どもは理解をしておるのであります。政府としまして、この六つだけでもよろしゅうございます。私どもは不満でございますけれども、とにかく事は早く処理しなければなりません。この六つだけはここではっきり特別立法をするというお約束をいただけるかどうか、これが第一点。これはもし特別立法をするのであれば、事は急ぎますからこの国会に出さなければだめである。この国会に旧すのか出さないのか、この点が二点。それから本国会で成立させるという気なら早く出さなければだめじゃないか。どうも一部巷間に伝えられるところによりますと、政府は今の問題の警職法を通するためにこの特別立法をえさにして、これによって国会の会期延長をはかろう、そうすれば社会党の方もこれは断わり切れなかろう。だからできるだけおそく出した力がいいんじゃないか、こういうことを考えている向きもあるようでありますが、ほんとうかうそかわかりません。しかし、もしかりにそういうことを政府なり自民党なりがお考えになっておるとするならば、私はこれは不届きしごくだと思います。今寒空を前にして生活のめどを失っておる、おそらく百万人の罹災者を犠牲にして、政治的取引の道具にしてこういうことをやろうとする。そのにおいが今までの交渉の経過の中でないわけではない。首相はこの点についてどうお考えになるか。今申しました最低限六つの特別立法をやるかやらないか、これをいつまでに国会に出すのか、この国会で成立させるつもりかどうか、そのために会期延長するのかしないのか、これを利用して会期延長等はしないということを、はっきりここで御言明をいただきたいのであります。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました六つの特別立法は、これを政府としても本国会に提案する考えを持って準備を進めております。提案もなるべく急いでやるように督励をいたしております。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 なるべく急いでと言いましても、御承知通りもうきょうは三十一日です。この会期はあと七日です。いつ出されるのか。そしてこの国会で成立させるならこの七日までに上げなければなりません。それでなければ、あとで予算のときにお聞きしますけれども、実際に予算措置だってできない。今の予算措置はそんなことは何もありません。ですから、総理ははっきりこの際いつまでに出される気持か。この六つだけはやるという御書明があったわけですから、この点は信用します。しかしいつ出されるのか。この会期中に七日までに必ず上げるのか。またこれを理由に会期延長はしないということをはっきり御言明をいただきたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げたように、私は、この法案の特別立法の性格から申しまして、先ほど久保田委員がいろいろ実情お話しになりましたように、ぜひともこの国会において成立せしめなければならぬ法律であると思います。そういう意味におきまして、私は今申し上げておる通り、急いで出すように督励をいたしております。ただ事務的の関係におきまして、いつということを私にここで言えとおっしゃることは、これはむずかしいと思います。ぜひこの国会において成立せしめるように急いで提案するように督励をいたします。  それから会期延長の問題につきましては、これは国会でいろいろな案件についてどういうふうにお扱いになるか、御決定を願う問題でありまして、私どもはあくまでも会期内にすべて出しておるものを成立せしめるようにあらゆる努力をいたします。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間の関係がありますから、次の問題に移りたいと思います。そこで、単に静岡だけではなくて、今まで起った、また今後起り得る相当深刻な激甚な被害地の災害復旧について、私は特に首相に二点だけお伺いをいたしたいと思う。  それは具体的な問題ですが、その一つは、現在の法律では、御承知通り災害復旧公共土木も農地関係も大体緊急なものは当年度を含めて三年で完成することになっております。そういう建前から予算事業費並びに予算の配分も初年度は、三、二年度に五、三年度に二、こういう予算配分を大体においてとられておる。これがなかなか守られておらないのが実情でありますが、とにかく建前はそうなっております。しかし私はこの際特に被害の激甚な地帯においてはこれを改める、当年度を含めて大体において二年でやるという原則をここで打ち立てていただきたいと思うのであります。と申しますのは、それは工事能力、その他から見て無理じゃないかという御議論もありましょう。しかし私どもの今度経験をした現状から見ますと、今の建設省の計画では、本川部分は大体において応急復旧は二年間でやる。それから準用河川から上の方は大体三年計画、農地も大体それに応じたような計画が立っております。これはあとで航空写真等をごらんいただけばわかりますけれども、これではほとんど災害対策になりません。山の方がもう総くずれであります。従いまして今のようなやり方でいっては、下の方はできても、上の方からどんどんくずれて参ります。大体、大きな山くずれだけが九百個所、中くらいのやつが大体において二千、これだけはわかっております。あとのやつはわかっておりません。わかっておらぬが、大体の推測では四万から五万あります。ほとんど山は総くずれであります。しかもこれは、山は火山灰土であります。少し雨が降れば、三年もかかっておれば全部下は埋まってしまいます、そういう実情であります。私は現地を踏査して参りましたから、ある程度わかっておる。詳しくはわかりませんけれども、そういう実情であります。こういう点と、もう一つは、伊豆の特性かもしれませんが、これは単に伊豆だけではない、ひどいところはそうなると思いますが、農地も全部やられてしまっておる。そうして家もなくなった、食うものもなくなった、家族もなくなった、こういう連中であります。しかもこれを何とかして、百姓がおもでありますが、これを生かしていくには、少くとも来年の植付までに、せめて自家用の食糧の植付のできるまで農地の復旧をしなければならぬ、せめてですよ。完全にできればなおいいのですけれども、その程度まではしなければ生きていけません。しかもこれは全部河川の改修とひっかかっておる。しかもそれが復旧工事全体とからみ合っております。こういう差し迫った災害の深刻な地帯においては、今、政府のお考えになっておるように、初年度三、そうして二年度に五、三年度に二、こういう行き方では復旧はできません。私は住民の、被災者立場と、今のああいうひどい災害地の復旧の実情、それがあとこのまま三年たっておったらどうなるかという二点から、この際ぜひ私はこの点については総理みずからが先頭に立って、単にこれは建設当局なり、農村当局に事務的に検討させる、こういう問題ではありません。災害復旧基本に関する問題ですから、この点をぜひそういうふうにしていただきたいと思うが、それに対する政府の、総理のお考えはどうかという点。それからもう一点、やや技術的になりますが、特に首相は今後の災害復旧についてお考えをいただきたい。これは何回も言われることでありますが、今の災害復旧の原則は、御承知通り原形復旧であります。そうして、それが困難とか、あるいは著しく効率の少いという場合には、大体において改良復旧を認める。なお、やむを得ない場合には関連の工事を認める、こういう三段がまえのかまえになっておることは、総理もよく御承知のところだと思います。ところがこれではだめであります。今度の災害を見ますると、原形復旧部分というものは、農地についても、河川についてもほとんどありますまい。ほとんどが改良復旧でなければ用をなさぬ。それでなければ、またこれを原形復旧をやったりなにかすれば、今度また一時にあれだけの雨が降らなくても、おそらくすぐやられてしまいます。こういうのは伊里だけではないと思います。被害の激甚地はこのごろ至るところに局部的に出ておりますが、こういうところはみなそうだと思います。ですから、こういうところは思い切って私は改良復旧をやるのが必要だと思います。そうして同時に思い切って関連事業を取り入れて、再びこういう災害が、あるいはこれより少し少いくらいの雨量その他があっても、これはやられないということをしませんと、全くさいの川原みたいな結果になりはせぬか、これは大きな意味では国帑を非常にむだに使うことになります。ぜひこの被害激甚地については、原形復旧の原則から改良復旧の原則、それがさらにこれに関連事業を大幅に認める、そしてこれに対する補助率は今五〇%ですが、これをさらに六〇なりあるいは六五なりに引き上げて、そうして完全なものを作る、こういうことをぜひこの際私にやってほしい、こう思うのであります。この二点について首相の——専門的なことはおわかりにならぬでしょうから、これはやむを得ませんが、しかしそういう点について私は首相から聞いておきたい。これはどうせいずれ関係の大臣には、私はあとでもっと具体的に突っ込んでお聞きします。原則の問題ですから、私は首相に特にはっきりお聞きしたい。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 専門的なことは、技術的なことは私お答えをすることができませんが、しかし私自身従来もいろいろな災害地を見まして、いわゆる原形復旧ということが原則であって、今お話のような例外的な扱いも実は戦後においてほとんどないような状態、全部原形復旧だということを各地に見まして、これは今御指摘になるように、非常に実情に合わぬじゃないか、年々さいの川原を繰り返すようなことであって、国帑をむだに使うのみならず、実際の効果は上らない。むしろその災害実態をきわめて、そうして将来ないようにするにはどういうことをやったらいいかという案を立てて、そうしてやるということでなければ、この前こうなっておったからその通りに復旧するんだということは、意味をなさぬじゃないかということをかねがね実は私も痛感をしておりました。そのことを今お話のように、ひどい災害地ばかりじゃなしに、災害復旧治山治水の先ほどからのお話、われわれの問答等から見ましても、そういう点についても十分一つ根本的に検討しなければならぬ点があるということを、私は従来も実は感じておったわけであります。従いまして、今回の復旧につきまして、十分実情を調査して、技術的なあるいは専門的な適当な方法で、将来に対する十分な考慮を置いた上でこれをやらなければならぬ、かように思っております。なおそういうことを技術的にどの程度にどうするかというようなことにつきましては、一つ所管の大臣からお聞き及びを願いたいと思います。  それから復旧のなにを三年の原則でやっておるけれども、これについていろいろのなにをおあげになりました。私もそのうち、たとえば農地の復旧等につきまして、農民にも、ああいうような伊豆状況みたいに全部流されておって、ほんとうに将来に対する希望もどうしたらいいかというような気持を持っておられる人々を考えてみると、生活基礎になり、また将来に一つの希望の持てるような基礎のものをできるだけ早く作り上げるということは、私は必要だと思います。あるいは農地の問題であります、あるいは住宅の問題であります、あるいは基礎的なその辺の問題であるというようなことについては、原則を変えてどうするかということよりも、そういう災害地における現状を、また実情ほんとうに適して、同情をもって弾力的に、こういう原則やあるいは執行の方法とかいうことは、これを実行していくことが必要だろうと思います。十分一つ関係の当局とも御趣旨のような意味において検討いたして参りたい、かように思います。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今総理からは、この原形復旧か改良復旧かという問題、あるいは特に災害のひどい地帯においては、二年を原則にするか三年にするか、それは実情によるというお話でした。ところがそれでだめなんです。そういう御答弁でうまくいくならば、私ども何も文句は言わない。ところが実態はどうかということをあとで私が詳しく申しあげますが、金がついておりません。予算がついておりません。現地で実際の査定なり設計をやっておる連中は、そういう考えではありません。現在の役人というものは、やはり何といったって法律で縛られるのは当然であります。あなたは常に法を守れ、法を守れと言う。役人は法を逸脱してもいいからどんどんやれといってもやるわけがない。私がずっと各土曜、日曜等に現地を回って歩いて、現地の村や部落で問題になったのはこれであります。部落民としては、あるいは村としては、こう変えなければ、どうしてもこの次にはこういう災害がきたらやられるということを言っておりますが、査定管、設計官はそうはとっていない。おれの方はこういう法律があって、法律の第何条の規則によってこうやる、こういうやり方でごたごたしておるのが今の実情であります。そういう点から見て、この際伊豆災害だけではなくて、特に被害激甚な場合には、原則を政府みずから変えていかなければだめだ。それでなければうまく実行できません。出たとこ勝負で実情によってうまくやっていけばいいのではないか。現地や末端の行政は、中央で担当の大臣や何かと話せば話はよくわかるが、現地に行くとそうはいっておらぬ。ですから、政府としては、ここでこれはどの程度にしぼるか、その他いろいろ技術問題はありましょうが、原則を変えるというお気持があるかどうか。これはどうしても必要だと思いますが、こういう点についての首相の御所信をあらためてもう一度伺っておきたいと思います。
  20. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまの質問のうち、技術的な面についてお答え申し上げます。原形復旧と改良復旧の問題でありますが、狩野川実情などは、上流部におきましては原形復旧はほとんど意味をなさない。でありますから、今回の計画の砂防その他全部改良復旧になってしまいます。そういう方針で進めておるわけであります。  なお現地の査定官との間に、その計画についてなかなか意見が合わないという点もおそらくあると思いますが、実はこういう考え方で進めておったのであります。それはこの次の工事までの間に小さな洪水が出てすぐまた大被害を起すようなことがあってはいけないから、多少むだになってもとにかく応急の工事をやりなさい、そうして根本的な工事を引き続いてやる、こういう建前の指令を出しておりまして、そうして根本的な改修をやる場合には、川の幅の狭いところはもう少し広げなければならぬ。従って用地買収というような大きな問題が出て参ります。同時に堤防等も今までの常識ではとうていまかないきれなかったのでありますから、一メートルないし一メートル五十かさ上げをして、四百ミリや五百ミリの雨にも耐えられるようなそういう工事をやりたい、こういうことで現地の査定官にそれを言いつけて進めておるわけであります。多少現地の査定官との間の意見の食い違いはあるかもしれませんけれども根本方針としてはそういう方針でやっておることを一つ御了承いただきたいと思います。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 建設大臣から今かわってお答えがありましたが、建設省と私どもはそういう点の意見を調整しまして、現地で一生懸命やっておるのですが、なかなかうまくいかない。どうしても基本は、原則を変えなければ、今の三年原則なり、原形復旧原則で、これの適用でやることは、なかなかうまくいかない。ですから、この点をここではっきり首相から言明がとれなければ、一つまじめに御研究いただきたい。私は、これをどこもかしこも全部やれというのではない。特に被害の激甚な地帯においては、その程度のことをやらなければならぬ情勢になってきております。そういう点について、一つまじめに早急に必要な法律改正なり何なりの措置をとってもらいたいと思います。  次の問題に移りますが、これは詳しいことはあとで大蔵大臣とやりますけれども、何といっても今度出されましたこの補正予算では、どうにもしようがありません。どの程度どもの方の伊豆にくるかわかりませんけれども、この点はあとで詳しく検討して大蔵大臣の御意見等を承わりたいと思いますが、首相ですから今あまり詳しいことは申し上げませんが、はっきり申し上げまして、これではやれません。少くとも今言ったように緊急な改良復旧なり、あるいは農地、その他の農民を食わしていく最低限の復旧を二年間でやるということは、この予算ではとうていだめであります。そういう点から、この予算政府としては組み直すお考えはないのかどうか。もしそういうことがないとしたならば、これに落ちております点はどういうふうに今後措置するのか。もっと具体的な点については私は大蔵大臣にこれから御質問いたしたいと思いますが、とにかく大綱だけは、もし足りないものがあったら、次の補正予算、年末にはどうせまた第二次補正が出るでしょうが、それでいくのか、あるいは来年度の予算でいくのか、あるいはその間の工事を進めるための資金繰りや利子補給というものはどうするつもりか。こういう点ぐらいは一つ首相から大局についての御答弁をいただきたいのであります。時間がありませんが、私が今申しましたように、この予算では、これは他の府県にも回るものもあるでしょうから、伊豆だけにそんなにたくさんくるとは私は考えないのですが、私どもが大体今まで政府から出された資料によって検討したところでは、伊豆に回ってくると思われるものではとてもやれません。やれませんので、これに対する善処方をお願いしたいということです。もしこの予算で足りない場合に、予算措置なりあとの復興資金の融通については、首相としてはどんなふうにお考えになっておるか。大局についての御答弁をいただきたいと思います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 私どもこの補正予算を提案いたしますにつきましては、できるだけ被害地の状況等を正確に把握して、そしてこれに対する対策として必要なものを計上するという意味で検討してこの案が出たわけであります。われわれとしては、そういう意味においてこれを今取り下げて組みかえるというような考えは持っておりません。しかしこういう問題でありますから、正確に実情を調べるといっても、久保田君自身ずいぶんお歩きになっておるようでありますけれども、もちろん全部がそれでわかるというわけにいきませんから、あるいはこれで不十分であり、さらに施策をしなければならぬというような点があるとするならば、政府としてはそれに対する処置を、あるいは金融の面、あるいは予算の面に組む必要があるならばさらに考えることは、これは当然であろうと思います。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 首相のお約束の時間が一時でありますから、まだ二、三お聞きしたいことがありますがやめておきます。しかしぜひ首相一つ今の被災者立場を真剣に考えて、私がいろいろ申し上げました点を真摯にお考えになって、今までのように、口ではうまいことを言うがあとはむだ金を食う厄介者扱い、こういうことではなく——治山治水事業だけは私は民主政治の一番基礎的な要件だと思う。私は国民生活基礎的安定の第一要件は、日本ではこの治山治水災害復旧事業だと思います。どうかそういう意味において、政策重点は情勢によっていろいろ変りましょうが、しかし治山治水だけは、一定の計画を立てたらこれだけは予算の面でも最優先して取る、そして一定の計画で、しかも今のように五十年もたたなければだめだというふうなばかげたことでなく、本気になって一つこの問題と首相みずからが取っ組んで、関係閣僚等を督励されて、少くとも来年度はこの点についてはっきりめどの立つように、格段のお骨折りをいただきたい、こういうことを要望いたしまして、約束の時間でありますから、あとの首相に対しまする質問はこれでやめておきます。  次に、大蔵大臣にお伺いをいたします。政府の今度の補正予算を見ますると、災害関係は総額で大体において九十一億、大ざっぱに見まして九十一億。そのうち、干害と霜雪部門、これはもうすでにきまったことを実行して、その跡始末でありますから、この二十億と予備費十億を取りますと、大体六十一億というのが大体のあれであります。ところが、せんだっての本会議におきまする大蔵大臣の御答弁では、全体で、予備費等を含めて百三十億を回しているのだ、こういう大蔵大臣の御答弁があったわけですが、私はこれを第一にはっきりしていただきたい。第一にこの点をお伺いいたすと同時に、私どもの計算では、従来の政府のとって参りましたいわゆる査定方針といいますか、予算編成方針からいきましても、これでは不十分であります。これではやれません。こういう点についてあとで詳しく具体的に私はお伺いしましょうが、大局においてこれでやれるとお考えになっているのか、あるいは百三十億と言われた根拠はどこにあるのかという点をまず第一にお伺いをいたしたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回提出いたしております補正予算九十一億、これは全部が災害対策費であることは、これはもう御指摘通りであります。これまで予備費で措置済みのもの並びに措置することが確定されているもの、並びに今後の見込み等を合計いたしますと百三十億になるのであります。それをもう少し小分けにいたして御説明いたしますと、予備費で措置済み並びに確定を含むものといたしまして、風水害等二十九億という金が出ております。今回もまた補正予算の九十一億のうち風水害対策として六十五億、今後の見込みとして、風水害対策に約十億、計百四億という風水害対策費が一応考えられるのであります。緊急治山、砂防の費用といたしまして、今回補正いたしまする中から五億が計上されております。干害対策費といたしまして二十億程度考えております。霜雪害に対して一億、かように考えて参りますと、合計して百三十億という金になるのであります。私はいろいろの資料等を伺っておりますが、社会党の方でも風水害対策に対しては百四億というような数字が出るような基礎的な計算をされたやに伺っております。大体これは風水害対策と申しますか、被害総額として、七百二十二億というただいままでの報告済みの金額から在来の災害対策費を計算して参りますと、そういう金額になるのであります。しかし、風水害ばかりでなく、ただいま申しますように、緊急治山、砂防の対策であるとか、あるいは干害対策であるとか、あるいは霜雪害対策等考えて、合計いたしますと、ただいま申し上げるように百三十億という概算の数字になるのでございます。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは多少の資料の数字の違いはあると思いますが、今度いただきました予算書を私どもの方で分析してみますと、既定予算で処理をした対策費が大体二十四億であります。それから既定予備費の中で今後やるものが、大体もうすでに予定をしている分が六億、合計して、この予算説明書によりますというと三十億が災害関係に出るわけでございます。あなたのおっしゃるのは、なるほど干害対策、霜雪害対策について約二十億はこの予算に組んであります。しかし今の七百二十二億、政府の別の調査によりますとこれが七百三十九億、約七百四十億、これに見合うものではありませんよ。この七百二十二億といい、七百四十億というのは、政府の出しました資料によりましても土木関係——これは公共土木、それから農業関係、港湾関係その他の公共施設でありまして、いわゆる干害ないしは霜害の分はこの中には入っておらないのです。そういうものを引きますと——既定予備費の処理済みの分、それから既定予備費の大体予定分、さらにこの補正予算におけるものの六十一億、さらにその中から干害、霜害の分の二十億を引いて、新予備費を含めまして、今まで出したもの、今度の予算で組んだものは全体で百一億にしかならぬのです。あなたは干害、霜害も含めて二十億もあるから、なるほどそう言えば百二十一億になりますよ。が、これは七百二十二億、大蔵省の言われる予算とは見合わないのであります。ここに大きなギャップがきておるのであります。この点を私はこれ以上、あなたを突っ込んでどうこうというより、もう少し具体的な問題に入りたいと思います。  今度の七百二十一億に見合うところの政府予算は、今申しましたように百一億である。問題は、足りないという点は何かというと、政府関係資料としてちょうだいをいたしました昭和三十三年度の発生災害復旧事業費所要見込額調というのがございます。これを分析してみると、いかに政府が締めたか、大蔵省が締めたかということか一目瞭然であります。大体において七百二十二億の報告額があり、これにおいて約二十億ばかり締められております。これはほかの報告によりますと七百四十億でありますから二十億は締めておる。そうして今度はこれに対する事業費の査定であります。これは佐藤さんに申し上げていいのかどうかわかりませんが、事業費の査定はどうなっておるかといいますと、これに対する事業費の査定が四百六十六億であります。四百六十六億というのは被害総額に対して六四%であります。今までは、少くともこういうものに対しては七二%から、多いときには七五%というのが常識であります。今度特にこういうふうに低い事業費の査定をされた根拠はどこにあるのかお聞きしたい。もっと突っ込んで言いますと、たとえば農地関係については二十八億という事業費を出しております。これは現在の暫定法による最低基準をとっても五〇%ですが、これは災害額に対しましては四七%しかとっておりません。数字を出してみれば明らかです。それから農業用施設については最低の国の補助率が六五%、これに対して六二%しかとっておりません。それから治山関係については、これはどういう数字で出されたかしらぬが、被害額が三億三千万、これに対してわずかに三六%を見ております。これもうなずけない。大体において六割補助のはずであります。こういう点もうなずけない。それから一番大きな河川等についてはどうなっているか。今まで少くとも七二ないし三とっておるのを、今度はかっきり七〇で切っておる。こういう操作をされた結果が、全体としては六四%。本年度の災害を大体分析してみますと、いわゆる傷あとの浅い災害じゃありません。非常に深い災害であります。従って農地あるいは農業施設、河川等についても、いわゆる現行法の相当高率の適用のあることはいうまでもないことであります。それをなぜ落したか。そしてこういう今までの査定の基準から、一番常識をはずれたような低い基準でとられておる点は何か。承わるところによりますと——これはわからぬ、わからぬが承わるところによると、政府の方では財源に苦労をして、何とかして予算づらを小さくしようというので、この被害額の査定を従来は最低大体において七三ぐらい、それを変えるために大体三十年、三十一年、三十二年という災害の最も軽微なる年を平均して、いわゆるその査定額を持ってきてこれでおっつけたという話です。私はここら辺に大きなインチキがありはしないか。これは財源に苦しまぎれに大蔵大臣はやられたことだと思いますが、こういう点から見て、私はこの予算基礎になっているこういう災害査定では私はやれないということを申し上げておるわけですから、この査定の基準をなぜこういう例年やるより低い基準をとられたのか、これを明確に御答弁いただきたい。
  26. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大へんしろうとの大蔵大臣だからこの辺わからぬだろうという御遠慮もあったらしいのですが、しかし、この災害につきましては、七百二十二億という報告済みの全額は、おそらく社会党でも一応了承されたと思います。報告を受けまして、この報告をそのままはとってはおりません。またこの予算を編成いたします際に、私の方が一応つかんだ報告済み金額では、被害総額が七百二十二億でございます。その後の数字がややふえておることは、私ども承知いたしております。だからこそ先ほども百三十億の予算が計上してあるのは、今後の未確定分に対してもまかない得る財源を持っておるということを御説明申し上げたのでございまして、いわゆる七百四十数億を特別に七百二十二億に圧縮したというようなことは、これは当らない。また財源がないから特にきつい査定をしたのではないかとおっしゃいますが、私どもは財源はいろいろ工夫いたしまして、かき集めてまかないました。しかし今回の災害に対しましては、ひとり二十二号ばかりではなく、二十一号、その前の災害等をも全部見まして、比較的よく対策がとれたのではないかという感じを持っております。特に最も被害のはなはだしかった伊豆地方につきましては、狩野川の復旧工事等についた、先ほど総理に対してもいろいろのお話がございましたが、特にこれを二年で直轄河川の改修を終ろう、こういう考え方から特に初年度七割を計上いたしました。普通でありましたならば建設省の考え方だと五割五割、あるいは大蔵省もそういう考え方をとっておるかわかりませんけれども、今回は特に七割を計上して、来年の雨季前に大筋の河川改修ができるようにということで、農地その他の災害復旧にも資する、こういう考え方を実はとっております。また治山治水、砂防等についてのいろいろなお話がございましたが、これなども特に天城山に対しましては緊急砂防、緊急治水、こういう意味で総額五億三千万円をもうすでに決定し、出すことにいたしております。こういうふうにして建前もいわゆる原形復旧という考え方もございますし、あるいは三、五、二というような比率のこともございますが、必要に応じましては応急の措置をとって参ったつもりでございます。先ほど御指摘になりました、金額が特に少いじゃないか、農地災害に対する事業費の計上が少いじゃないかというおしかりでございましたが、これは私どもが大体三年平均でとった金額でございまして、在来の方針に沿ってとったのでございます。特に被害のはなはだしい地区に対しましては皆様方の御要望もございますので、先ほどお話いたしましたような狩野川の改修であるとかあるいは治山治水、またその他は特別立法等で対処していく考え方でございます。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大蔵大臣から御答弁があったが、それはこの数字が変なのです。というのは、農地やあるいは農業施設についての相当高率補助を見込んで大体組んである、こういうお話だ。それなら数字が五〇以上とかあるいは六五以上にならなければならぬと思う。ところがこれはそれ以下です。三年の平均にいたしましても四七とか六二という数字が出てくるはずがない。最低をとっても五〇と六五です。高率適用が相当あるとすれば、これより相当上回らなければならぬが、そうなってないのであります。河川についてもそうでありまして、これは七〇しかとっておりません。少くとも最低限七三程度にはいかなければうそである。ところがこういう点がなっておらないから私は言っておるのであります。伊豆に対していろいろ御配慮いただいておることは私も承知しております。それはわかっておりますが、こういう点で手落ちがあるのではないかということをはっきり申し上げておるわけでありますから、あらためてもう一度なぜこういう低い——三年でやったということは聞いておりますが、三年であっても常識からいいましてこういう数字が出るはずがありません。それをお聞きしておるわけです。
  28. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その点は大へん技術的な説明を要するようですから、ただいま私に耳打ちをされましたけれども、私が答えるよりも主計局長に答えさせた方がはっきりすると思います。
  29. 石原周夫

    ○石原政府委員 久保田委員の御指摘の点は御配付を申し上げました資料で被害報告額と事業費の割合でございます。これは久保田委員承知でありますように、被害報告に対しまして申請をいたしますときに毎年若干の減額をいたしております。これが一つ。もう一つ実地の査定をいたしまして、その結果査定減があります。この両者の実績の線で、先ほど佐藤大臣から御答合弁申し上げましたように、三カ年間の実績比率でありまして、御指摘のように、農地におきまして四七・四%の比率であります。これは今申し上げました報告に対します申請の歩どまり、並びに査定歩どまり、その両者の実績率でありまして、補助率の方の問題は事業費の次の総国費でございますね、その三番目の欄との比率になります。これは農地につきましては五八でございますし、次の御指摘のありましたように農業施設については六五でありまして、これはいずれも率は国費の負担率を前提とした数字になります。従いまして、私どもの計算は三カ年問の平均の率を、農地から各項目について見ましてそれをおのおのの数に乗じて出しておる次第であります。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私もちょっと勘違いしておりましたが、なるほど事業費の査定は今言ったようなあれでしょうが、それにしてもこれは低過ぎる。なぜかというと、これは別のところから得た資料でありますが、農林関係では大体五十四億円予算を要求した。大体従来の事業費査定のことからいって、国費分だけで五十四億円要求をしたようであります。建設省関係は六十八億円要求をしたようであります。その両方を合せまして、補助費、——予備費等もありますけれども、これはもうすでに出たものは抜いてあるようであります。それにしましても、これは両方合せても百二十二億であります。それに対して六十一億と十億、合せて七十一億しかないわけです。これらにも相当無理があるのではないかという点も感じるわけであります。さらに国費分について今主計局長からお話がありましたが、これを分析してみますと、農地は大体において五〇%です。それから農業施設は六五です。それから河川については七〇、ほかのこまかいものは別にしまして、そうなっておる。ところがさっき大臣がおっしゃった通り、ことしは相当災害程度が深い、従って当然これは高率適用ということが予想されなければならぬ。これを特に落してこういう低い率にされた点を、これは大臣がもしなんでしたら主計局長でもよろしゅうございますが、この点を特に私はもう一度御説明をいただきたいと思うのであります。
  31. 石原周夫

    ○石原政府委員 久保田委員の御指摘に相なりましたように、お手元にお配りをいたしました資料は高率の補助が入っておりません。これは従来から当該年度におきましては、高率補助は御承知のように標準収入というような刻みがあるものでありますから、推定が非常に困難でありますので、当初額といたしましては標準の補助率をもってはじきまして、翌年度以降金額が確定しますに従いまして載せるという行き方でございますから、従って従来の例に従いましてこの際も標準率によります数字を計上したわけであります。
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それで大体わかたりました。わかりましたが、そこで私は今後の問題として具体的に一つ、これは特に大臣にお伺いしたい。これによりますと大体農地、農業施設、その他河川等についても高率適用の分は入っておらないということが明らかになりました。高率適用分については入っておらない。それからもう一つはまだ未調査分その他が相当あるわけです。伊豆あたりにしましても相当あります。特に小災害についてはほとんど調査がついておりません。非常に多いのであります。この小災害の分についても、まだいろいろほかに問題がありますが、これも調査がついておらぬ。ここにあげた費目以外の、いろいろの要するに何と申しますか対策費というものがあるわけです。こういうものについてもこれも予算外には計上されていないということが明らかになったわけです。そこで高率補助の、あるいは小災害の、あるいはこれの費目にないいろいろの国の補助に関する問題が相当たくさんあります。こういうものの始末は今後どうするのかという点であります。私は具体的にお伺いをいたしますが、これは予備費の中で既定分というのがこの資料をいただいたのにありますが、もうすでに決定したのが予備費の中から出すものも、既定予備費の中から出すものは六億二千万とか、あるいは補正予算による追加の予備費の中から出すものが四億七千万と大体きまっておるわけであります。こういう程度でおさまればよろしいのでありますが、私はなかなかおさまるいと思う。そうすると大体高率分その他についてはまず予備費で払われるものかどうかという点、予備費でもってこれをくっつけていくのかどうか、こういう点が一点。それからまだこれに落ちておるものとか、その他いろいろのものがありますが、これはもし予備費でまかなえない場合には——私はまかなえないと思うのですが、予備費でまかなえない場合には、これは第二次の補正予算、つまりおそらくこれは年度末にでも第二次の補正予算を出されるのではないか、これはわかりませんが、その補正予算で穴埋めをするのか。あるいは来年度の本予算にこれを組むのか。来年度の本予算に組むとすれば、いつまでにこういう問題の固まりができなければならぬかということであります。ところが大体本査定は十一月から大蔵省はかかられるということであります。これをやっていったって十二月に予算はできない。十二月までに資料は整わないと思います。そうすると当然これは三十四年度でなくて三十五年度予算でなければ載らない、こういう結果になりはしないか、こう思う。そうなった場合は現地では仕事はできませんですよ。ですからこの点についてどういう方針か、私は明確に聞いておかなければ、これはどうにもなりません。この点の具体的なことをお答えいただきたい。
  33. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど主計局長からお答えをいたしましたように、高率補助につきましての予算は本年度中に組むものでなくて、来年度で組むわけでございます。また小災害等で単独起債で処理するものにつきましても、これも来年度予算で見ていくわけであります。それが今御指摘になりましたように、事前に話がつかなくて、あるいは話がつくというよりも調査を完了しないで、編成の時期におくれたら一体どうなるのかというお話でありますが、そういう場合には前例等によりまして推定で計上していくということをいたしておるのでございます。災害工事の遂行には支障を来たさないように取り計らう考え方であります。ただいま御指摘になりましたような心配、これがおそらく罹災者の諸君としてはおありに違いないと思います。こういう機会にこの点は明確にいたして、災害復旧に支障のないようにいたしたいと思っております。また、今日まで確定した分は、もうすでに先ほど申した通りでございますが、未確定の分につきまして、私どもの見込みでは、今回の補正予算に計上しております十億円の予備費でまかない得るという考え方をいたしております。これは今後のいろいろの査定等で明らかになることだと思います。別に予備費がわずか十億だから何でもかんでもその中に押し込む、こういうような考え方は絶対いたすつもりはございません。ただいまのところでは、財源的にはこれで十分だという気持でおりますが、もし不足を生ずれば、先ほど総理からも申しましたように、それに対する対策はもちろん講じます。しかし、ただいまのところ、さような心配はないように思っております。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点に連関して、もう一点大蔵大臣からお答えをいただきたい。さっき一言いましたように、非常に被害の激甚だった地帯の災害復旧は、土木関係にしましても、農地関係にしましても、その後の災害防止というふうな意味からいいましても、また罹災者特に農民の生活を維持させるという点からいいましても、どうしても三年では困るわけです。二年くらいでやらなければ、相当程度までやらなければどうにもならぬ。しかもこの二つがからみ合っておるから、片方だけやって片方はだめだというのじゃ困るわけです。その場合にはどうするのか。予算は大体三〇%という予算をつけておる。ところが、これは繰り上げでどうしても実施しなければならぬというふうに私は思う。そういう場合の措置をどうするか。私も村長を長くやりましたから承知しておりますが、従来の小さな災害なら、現地で一応資金繰りをいたしてやっておいて、それからあとの補助をもらうなり何なりということはできますが、今度のような場合は、町村自体が全くそういう能力を失っております。また土地改良区や農協等もそういう能力がない。県も相当窮屈になっておる。こういう状態の中で、この予算編成の基本方針ではどうしても現地実情に合わない問題が出てくる。まあ本川部分については七割程度予算をつけていただきましたから、これは済むでしょうが、あとの分については、それがないわけであります。こういう場合には、国としては特にどういう措置をおとりになるつもりか。普通の場合なら、起債分についてはつなぎ融資がつくということがありますが、繰り上げの場合につなぎ融資をつけるのかどうか。またこの利子負担等についても、とても現在の町村や県では困難だと私は思う。県は少しくらいかつがしてもいいと思いますが、非常に困難だ。こういう利子負担等についても、中央として相当程度これを具体的に見るかどうか。資金繰り、特につなぎ融資でやるのかやらないのか。そしてまたそうでない場合も含めて、利子負担等については特別の措置をとるつもりかどうか。この点をはっきりお聞きしたい。
  35. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 工事ことに農地の災害復旧等につきまして、いわゆる三・五・二というようなことでは困る、これはまあ御指摘通りであります。耕作第一に考えて参ります。そういう意味で、いわゆる平均率よりもやや高目、これは率が十分であるかどうかはまた別でございますが、耕作に非常な支障を来たさないように、初年度におきましても、その配意をした工事を進めていくつもりでございます。そこで、問題になりますのは、起債分について、どういう措置をとるか、起債をどの程度認めるかといったような問題になります。もちろん起債はこの前西村委員からお尋ねもございましたので、十分お答えをいたしたつもりでございますが、もちろん一〇〇%の起債を場所によりましては考えておる。また次年度等につきましても、きょうの閣議で了解を取りつけましたが、この工事を進捗するために、次年度以降についての起債を特に手かげんするというようなことはしないで、この工事を完成していく、それに必要な資金の確保に万全を期する、きょう閣議でこういうような出し合せをいたした次第でございます。そういう措置をとります。また現地におきましては、おそらく今回のような災害になりますと、国の補助あるいは起債だけではなかなかいかない部分があります。そこで在来からやっております施越し工事と申しますか、こういうものにつきましては、やはり従前通り融資の方法を講じていくとか、特別な考えられるものをいろいろ考えまして、復旧を促進し、同時にまた耕作等に支障を来たさないように、十分注意して参るつもりでございます。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点はそういうふうに実行していただければ、大体どうやら解決がつくのじゃないかと私ども思いますから、これ以上質問することを省きますが、この前から問題になりました小災害の処理であります。これについては、あなたのこの前西村委員に対するお話は、要するに公共については県の場合は十万円以上十五万円までのもの、市町村の場合は五万円以上十万円までのものについては起債を一〇〇%認める、これは間違いありませんか。この点を確めます。それからこれについては大体三分の二の交付税をつける、この交付税は、あなたの考えでは、今の自治庁の交付税のワク内で片づけるというのですが、自治庁に聞いてみますと——私はあとで自治庁の長官が来れば聞いてみようと思うのですが、私が少くとも自治庁の事務担当者と折衝した範囲においては、そういうことを言われても私の方ではできない。それならばあとほかのところをつままなければ財源はできない、こういっておられます。あなたの方は自治庁の方に押しつけようとする。自治庁の方ではそれは財源はありませんという。これではいつまでたっても話はつきません。農地の方についても大体において同じであります。農地の方は、小災害についても、今度の財政補助の一覧ができましたが、地元負担分についても起債を一〇〇%認めるのかどうか。認めたものについては、今自民党と話ができて、皆さん方で言っているように、農地については五〇%、農業施設については六五%の交付税をつけるのかどうか。その交付税は普通交付税でつけるのか、あるいは特別交付税でつけるのか。このワク外というのでありますから、別個に別ワクとしてはっきりこれを出すのかどうか。この点をはっきりしてくれなければ意味がありませんよ。だからそういうものについて、起債を一〇〇%認めるのかどうか。あとは、自治庁の方ではもう普通交付税も特別交付税もワクはやれません、やればほかの方をつまむよりほかにないといっておる。ですから、現在の既定のあれでなくて、別ワクでよこすようにしてもらわなければ困るというのであります。あななの方はそうではなくして、そのワクでもって、あとはほかの方をみなつまんで出そうというのでしょうが、その結果はどうなるかといえば、起債も頭打ちになる。それで実際は七〇とか六五で押えられる。交付税の方もいいかげんなつまみでくる。現地ではやれない、こういうことになりますが、この点を明確にもう一度御答弁をいただきたい。
  37. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 第一番の、起債を一 〇〇%認める。これはその通りだと申し上げていいと思います。起債で処理いたしまして、その次の段階の問題につきましては、まだ大蔵当局と自治庁との間で話し合いが一致いたしておりません。しかし工事の進捗には支障を来たさないようにということで、起債で、小災害単独起債としてこれを扱っていく、同時にこれに対する元利の償還等について特別の考え方をする。これはただいま三分の二という表現でお話しになりましたが、大体五七%というものを、在来土地の沈下やなんかに対してとっておりますが、それと同じような考え方で処理していこう、こういう気持でございます。問題は、ただいま申す財源をどちらにするかという問題を早急にきめないと、あるいは起債を起す場合におきましても、将来のことを考えて十分やるとかやらないとかいう問題も起るだろうと思います。きょう特に閣議で、現地罹災者の方も早急の対策を明示してほしいに違いないから、政府としてもその点において早急に意見をまとめて、そうしてこれを明確に皆さん方に発表し得るように取り計らおうじゃないかということで、内閣にただいまその処置を一任いたしております。従いまして他の災害立法の処置と同様に、これも他の災害立法を提案いたします際には、どういう処置になるか明確にするつもりでございます。今結論を急いでおる、こういう状況でございます。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まあこれは現在の交付税のワクでやれといったって、これは大蔵省の言い分が少し無理じゃないかと私は思う。これはやはり別ワクで、こういうものについては、特に災害のひどいところについては、元利償還の処理をするのが当然の建前だと思う。あなたの方はしぼればいいかもしれないが、しぼられる方は、結局最後は町村や何かに移ってくるのですから、この点を特に一つ善処していただきたいと思う。私がこの点を詳しく申し上げると、皆さんはこまかいことを言うといって笑われるでしょうが、私はこの点について、自治庁長官はまだ見えておりませんが、一言実情を訴えておきたいと思う。  というのは、大体現在から言いますと、これは査定によって相当違ってきましょうけれども、これは実際には町村がやれなくなるのであります。というのは、具体的に申しますと、県の分析を見ますと、土木関係で静岡の場合は、大体町村でやらなければならないものが十五億であります。これはかりに地元負担分を二〇%としても四億になります。さらに農業関係が、これは大体において小災害等が、従来は一二・三%という説もあるし、一六%という説もあります。伊豆の場合はおそらくその上の方になる。かりにこれを一〇%に切ってみても、これによります負担分が約五億になります。これは農地関係の十万円以上のものです。それから十万円以下のものはどうかということになりますと、土木と両方入れますと、私どもの推定では、どうしても現行法では約六億くらいの負担になるのであります。減税分その他によりますあれが大体において二億二、三千万になる、こういうことになります。それからいろいろこれから復興をやりますと、どうしても経費がふえてくる。これがどうしても一億六千万円。こう勘定しますと、あの伊豆の地帯だけで、町村ないしは地元民の負担分が十五億以上になります。これを幾つの村で負担をするかといいますと、大体において現在のところでは十九であります。その十九というのは、伊東市を除いては、大体予算の規模が南伊豆とかその他大きいところで一億、そうして実際の自己財源というのはどうかというと、そのうちの二千万ないし三千万程度。ところが大部分が四、五千万円の予算規模であって、自己財源が大体において千万から千五百万、こういうものが、今言ったような十五億を負担をしてやれるかといってもやれません。かといって、これはまたあとでも触れますけれども、それじゃ農民が負担できるかというとこれまたできない。実情はこういう深刻な問題にぶつかっておるのであります。ですから、小災害については、特にこういう点についてもその他の点についても、私はくどくお尋ねをしておるわけであります。どうか大蔵大臣におかれましても、単に従来の例ということでなくて、こういう点を十分考えて、これは伊豆だけの特性ではございません、ひどいところはおそらくどこでもこういうことになると思いますが、新しい意味においてお考えをいただきたい、こう思うわけであります。  時間がありませんから次に移りますが、その次は、これは私から特に念を押さなくてもいいことでありましょうけれども、土木あるいは農業関係等の起債のワクの残が非常に私どもは小さいように聞いております。起債分については今後相当にふやさなければならぬと思うが、これについてはどういうふうに処理をされるつもりか、この点をお伺いしたいのであります。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど小災害について私結論だけを申し上げたのでございます。これはいろいろ議論があると思います。もうちょっと詳しく申し上げますと、西村委員に私はお答えしている。私の方の考え方を一応申し上げております。しかしただいま結論が内閣でどうきまるかという段階でございますから、この結論についての見通しなどは申し上げません。ただ、今御指摘になりましたように、非常に災害の大きい町村、特にこれが赤字公債を発行というか、起債をせざるを得ないような状況になってる、そういうところに対する交付税の配分は、これは一般に災害の有無にかかわらず、非常に大きいものが起債されるということでございますから、その点は交付税の分配の際に考慮していただくということを申し上げて、私の方もそれには協力するつもりでございます。  またその次の問題でございますが、これは具体的な問題となりました場合に、ただ起債のワクがどうとかこうとかいうようなことでこれに制限を加えるというようなことはしたくございませんので、よく実情に即した処置をとって参りたい、かように考えております。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がないものですから、実はまだいろいろお聞きしたいのでありますが、端折りとしてもう一つだけ大蔵大臣に、これは特に御所見を聞いておきたいと思う。それは、農業関係災害あるいは罹災者災害融資に対する利子の問題であります。これは御承知通り、農業関係では、天災融資は特別指定の場合は三分五厘になる。それから公庫の特別融資は七分になる。それから自作農創設資金は五分である、こういうことになっております。しかしこれでも実は返せないのであります。私どもの計算だというと、どうしても家を流されたり、たんぼを流された連中が大体二千戸あります。それに準ずる者が他に約五千戸あります。この連中はどうしても今の限度額を借りなければやれない。この限度額を借りると約七十万になります。農地の負担がかりにゼロとして七十万、これを平均しまして十五カ年年賦で返して、そうして五分五厘で計算しましても、一年の償還額はどのくらいになるかというと、元金が大体三万六千六百円、それから利子が約二万円、合せまして大体において約六万円以上のものになります。これを四反や五反の農民が、しかも復興期にある者が返していけるかというと、返していけないのであります。これが実情であります。こういう点を考えて、これは農林大臣と十分お考えをいただいて、この災害関係融資全体に対する利子の再検討をお願いしたい。このことを一つお願いしておきます。これは今の金利水準がどうだとか、コストがどうだとかいえば、当然こんなことはできないことは承知しておるのでありますが、実情がそうであります。  それからなお、商工業者に対しましても、二十一日の閣議で御承知通り罹災者と同様に、三十万円を限度にいたしまして六分五厘を適用された。これはけっこうであります。しかしなぜ三十万円を限度とするのか。私はそんなことは理由がないと思う。中小企業金融公庫や国民金融公庫のあれについては三十万円に限度を切る必要はない。そうではなくて、私はもう少しこれは全般として、商工業者も零細なものでありまして、大きいものについては必要はないでしょうが——大きいものにいたしましても、今の九分六厘じゃ高過ぎる。ですから、特に百万円以下程度のものについては、全体にこの六分五厘を適用するような特別措置を私はぜひ講じてもらいたいと思うが、この点についての御所見はどうですか。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま金利のお話が出ました。私の出ておるところも、いわゆる台風常襲地帯といわれたところでございまして、過去においてもずいぶんひどい災害を何度も受けております。従いまして今回の災害に対しましても、私心から御同情申し上げて、罹災者の方々が何を一番希望しておられるか、どういうことを一番心から願っておられるかということにつきましては、私もいささか経験から感ずるところも実はあったのでございます。従いまして、先ほど来災害の復旧等につきましての構想も申し上げましたし、またただいま御指摘になりました金利の扱い方というものがいかにきついものであるか。何もかも失った人たちほんとうに立ち上るというような気力すら失ったような方々に対しまして、金利の負担が高い、これについては私どもも心から御同情申し上げております。ただ、在来の災害対策等におきましても、特別措置として講じて参ったり、あるいは災害融資法等において御審議を得て大体きまっております金利などがやはり基準になって、そうして今回の災害におきましてもその範囲内でまかなって参りたいと実は考えております。別に、いわゆる金利体系がどうだとかいうようなことを申し上げるつもりはございません。これはすでに国会等において御審議をいただいたこの法でやっていただく。特にまた、政府関係の公庫等の資金もそういう意味では増額することが必要だろう、かように考えまして、年末融資の問題とあわせて災害等も考えて、国民金融公庫その他の資金も災害あてのものを実は一応予定しておるような次第であります。  それから三十万の限度の問題でございます。これは商工業等の一般の状況から見ますと、この方は割に回転が早いとでも申しますか、そういう意味で、在来からいわゆる零細な融資というものを対象に考えまして、私どもは三十万が実は適当な金額ではないだろうか。もちろん金を借りて参りましても、あとで返すということになると、これは非常な負担にもなりますし、いわゆる零細金融というものを建前にして、特に三十万という金額を実は予定しておるような次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がだいぶ経過しましたので、大蔵大臣に対してはまだお聞きしたいのですが、あとは省きます。  建設大臣にも私はいろいろお聞きしたいのですが、二つ三つだけ重点についてお聞きしたい。あなたは、今後、大体来年度から新しい五カ年計画を作る、それの裏づけとして治水促進法というものを作られるという、これはけっこうだと思います。そこで私は、今度の災害とまた最近の全国の災害の実況から見て、特に御所見を承わりたいと思うのは、治山関係の仕事をどれだけ重要視するかということであります。私はこれが一つのポイントになりはせぬかと思う。もちろん現在でもあれですが、現在の状況はあまりに貧弱であります。御承知通り基本計画では大体三千八百億程度の国費を投じて、全体としては五千二百億くらいになりましょうが、その程度のものでやってやるという、それでも一応の完成であります。しかし不十分であります。ところが現在までそれが何パーセント行われたかというと、現在までのところはわずかに四・二、三%であります。     〔委員長退席、西村(直)委員長代   理着席〕 これでは百年河清を待つがごときものであります。緊急の問題も十分にいっておりません。こういう点では幾ら下の方を、なるほど災害の目につくところは平野部の方が大きい、大きいけれども、こういう点について特別に想を新たにしなければ、私は今後の治水の完成ということはできないと思う。ですから、第一の問題は、私はいろいろ問題があると思います。現在の基準の雨量の問題を、従来のように三百ないし三百五十ミリ程度になっておるのをもっと改める問題であるとか、あるいは直轄河川と準用河川とさらに普通河川の関係を改めるとかいう問題であります。私は特にこの治山関係について、もっと想を全く新たにした観点から、農林省とも十分相談をされて、この点を根本的に改めることを、次の基本計画には入れてもらいたいということ。それからもう一つは、とにかく最近の災害のひどいところの状況を見ますと、山がくずれて、それから普通小河川がやられて、それから準用河川がやられて、そうして本川がやられる、こういう関係であります。下の方ばかり、今までのようにずっとしりからやっていったのじゃ追っつかない。ですから、この点については特に準用河川のうちの重要な部分は、これは私は直轄河川に繰り入れてもらいたい。特に準用河川並びに普通小河川について、これは地方が負担をしておりますけれども、ほとんど金がないから、小河川については今補助が何もない。町村にまかせっきりです。これでは小河川が直るわけがありません。従って、災害のときにやった。行ってみれば、たいがい根石がだめになっておる。こういう状態の中で、下の方を幾らやったって、上の方はそのままで、中間が歯が抜けたようになっておる。下だけきれいなものを作ったってこれはいくはずがありません。私はこの点についても——ダム等もいろいろありましょうけれども、何としても上流で砂をとめ、そして水をとめる工夫をしなければ、治水の完成はできないと思う。この点に特に一つ配慮をしていただいて、新計画を立てる場合にはやっていただきたいと思いますが、この点に対する御所見はどうですか。
  43. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 治水事業が従来あまり進んでおらなかったという点につきましては、御指摘のように私は率直にこれを認めるにやぶさかでありません。しかしお話のように、治水事業がきわめて重要なことは申し上げるまでもないのであります。しかしざっくばらんに申し上げますが、従来五カ年計画というものを立てて進めて参りました。昭和二十八年のあの大災害の経験から、基本計画というものを定めて、一兆八千億の投資をするならば大体の工事が完成する、こういう計画を立てて、そうしてそのうちの急を要するものを五カ年間にやっていこうという計画であった。ところがその五カ年計画も財政上の理由その他の関係でなかなか思うように進まなかった。しかし、こういうことをいつまでも繰り返しておりますと重大なことであるということを考え、私はどうしてもこの治水事業についての新しい体制を作っていかなくちゃならぬということを痛感いたしまして、従来の五カ年計画に対して、その後の情勢の変化あるいは御承知のように小河川のはんらんがここ二、三年来多かったのでありますが、この小河川の方の事業計画というものもやや欠けるところがございます。さらには、御指摘のように奥地の山地砂防の問題、砂防事業も非常に重要であるということがだんだん強く認識されてきております。あるいはまた今回の旱害によりまして、潮どめをするような工事も必要であるということになって参り、かつまた河川の汚濁防止の問題等も出て参りまして、そういう新しい情勢に即応するような五カ年計画を改定して、新しい五カ年計画一つ作っていきたい。しかもその五カ年計画は、単に計画を立てるということだけでなくして、はっきりした裏打ちのある五カ年計画を立て、そうして年次別に計画的に予算をつけていかなくちゃならぬ、そういうことを考えて、今その準備を進めておるような次第でございます。年次別の計画を立てて参りましても、相当自大きな予算が必要であります。その予算の捻出について、あるいは特別会計を作るとかあるいは財政投融資を考えるとか、あるいは場合によっては治水公債を出すということを考えるとか、いろいろな角度から検討して参りまして、そしてこの五カ年計画が実際実行のできるような財政的の裏打ちをすると同時に、法制的にもこの裏打ちをするための治水事業促進法のようなものを作って、この大きな問題になっておる治水事業の完成を期したい。一挙に一兆八千億円の工事をやるということは、日本の財政状況から見て不可能でありますが、確実に年次計画によって実行ができる見通しがはっきりつけば、そういう計画を進めて参りたい、そういうことで今一生懸命準備しているわけであります。でき得れば次の通常国会までに法案の整備をいたしまして、通常国会に御審議を願って、治水事業推進法の成立を期したい、そういうことを考えておる次第でございます。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それは私もよくわかるわけですが、その際に特に私は今までのような治山関係についての考え方ではなく、これを徹底的に改めてもらいたいということをお願いしているわけです。というのは、今までの基本計画からいってもわずかに四%足らずであります。年の予算の総額のごときは大体において三百何億の中で、治山関係についてはこれが三四%くらいしか出ていない。これでは今の山の状況から見て私はだめだと思う。こういう点を改めてもらいたいということと、それから小河川について、普通河川や準用河川に対する手当をもっと国が本気に考えなければ、幾ら下の直轄部分だけりっぱに作ったって意味がない。そうして下をりっぱにすればするほど、上をほったらかしにすればするほど災害になったときにひどいんです。こういうことを考えて——あれもこれもやらなければならぬわけですが、特にこういう点に重点を置いてやっていただきたいということをお願いしているわけです。  時間がありませんから、その次にもう一点だけお伺いしておきます。  それは災害住宅対策を思い切って再検討願いたい。特に農民関係から言いまして今の第二種公営にいたしましてもたった八・五坪、これで百姓がやれるはずがありません。また災害の住宅にいたしましても、今標準が九坪だ。自分で二十坪の家を建てろといったって、金がありませんから、これについては少くとも農民がやれるには最低限十五坪は要ります。十五坪を基準にして、利子も今のように七分六厘なんという高い利子でなく、もっと五分とか、あるいは三分五厘とかいうことにして、償還年限も少くとも現在の据置を含めて十八年ということから二十五年くらいに改めて、災害用の新しい住宅政策というものをぜひ作る必要がある。これをどうお考えになっておるか。  それから今伊豆で問題になっておるのは、この取扱いが私どもに言わせるとけしからぬと思う。というのは、あなたは御承知かどうか知らぬが、現地ではどういうことになっておるかというと、災害を受けている農民はほとんどこの資金を借りられません。なぜ借りられないかというと、大体において農民で一戸当りの固定収入が月に一万五千円だという。農民で四反や五反作っているのでは、この固定収入というのは農業収入だけだ。農業収入だけが一万五千円ある農家が伊豆あたりでありますか。大きいところはありましょう。しかし小さな山地になって、大体において土方だとか山林労働で食っているのが多い。そういうのは借りられませんよ。あれだけの災害を食って借りられない。しかも保証人は二万円以上の固定収入がなければだめだ、こんなばかなやり方がありますか。これは大臣はおそらく御存じないだろう。住宅局長あたりがぼやぼやしておるからこういうことになると思う。ですから農民は全部借りに行って借りられない、こういう状態であります。ですからこれは法律できまっているわけでありませんので、おそらく取扱いだと思いますから、この最後の点は早急に改めて、あるいは町村長の証明なり保証なりがあればそれでいいとか、あるいはもう少し楽に借りられるような具体的な措置を早急にとっていただきたい。今現地で問題になっているのはこの問題であります。実際問題としてはあの応急仮住宅の五坪の家では冬は過されません。ですからこういう点について今の住宅政策基本的に災害住宅特に農業向けの新しいタイプを作ってやる、これと今のさしあたった問題、これは基本的な改良はなかなか間に合いますまいから、さしあたってこの固定収入なり保証人の問題を具体的に解決する、今ここですぐどうしますということはいいですが、善処するという御言明がいただければ、非常にけっこうです。
  45. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 災害地の住宅問題が非常に大きな問題になっておることはよく承知しております。そこで今度この国会へ住宅金融公庫法の改正案を提案いたしまして、今までの坪数で足りなかったものを拡大するとか、あるいは償還年限を延ばすとか、あるいは用地の費用も出すとかいうような点の改正をやって参りまして、そうしてできる得る限り罹災者の要望にこたえるようにしたいと思っております。  なお、実際の取扱いについて非常にうまくない点があるようでありますが、これはよく実情を聞いてみまして、取扱いの改正できるものは改正して取扱いを簡便にしていきたいと思っております。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ぜひ今の点は災害住宅政策基本的な変更をしていただきたいが、さしあたっての問題は、今の固定収入の問題や、保証人は二万円以上でなければだめだというのでは、幾らワクだけ割り当ててもらってもどうにもならぬ。これは一つ責任を持って具体的に解決していただきたいと思います。  なお、ほかにいろいろ建設大臣にお伺いしたいことがたくさんあるのでありますが、時間が超過いたしましたから、今度は農林大臣に三点だけお伺いいたします。  それは一つは……。
  47. 西村直己

    西村(直)委員長代理 久保田さん、一括して質問して下さってもけっこうです。
  48. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それではそうしましょう。  第一の点は、こういうことです。被害激甚地の農民の立ち直り策といいますか、救済策の問題をもう一度考え直していただきたいというのであります。改めていただきたいというのであります。それはなぜかといいますと、今度のような場合、ほかの場合にも激甚地においては同様な状態が出ると思いますが、家を流された、たんぼを流されてしまった、そうしてしかも食うものも何もない、全部新しくしなければならない、こういうものに対して今の政策は全部融資です。融資以外にありません。個人には補助とかなんとかをしないという建前です。これでありますと、どうしても最低限度立ち直るのでも大体において七十万は要ります。そういう人が伊豆では二千名おるのであります。東海の開拓農家一戸、投資から何から入れて二百十万です。そのうち六十万は補助であります。こういうことになっております。そうして実際の借金はどのくらいかというと、五十万です。こういう状態で、それよりもっとひどい状態になっておるのに対して、今のような手続のめんどうな融資だけでやっていけといったって無理です。さっきも言いました通り、年々の借金が六万円なり七万円あります。これを復興期にやっていけといったって、立ち上れといったってできないのですから、たんぼや川を復興しましても、このままのやり方でいけば、農民は数年後においては借金で自分のたんぼを売らなければならない。こういう結果になることは明らかです。私どもはそれに近い苦い経験を過去において何回かなめてきた。だからこの点については、今の天災融資あるいは公庫融資あるいは自作農創設資金、こういうものを災害地に適用する場合には、今の最低の三分五厘程度の利子に統一する必要がある。その研究をされる意思があるかということが一点。それからもう一つ、農地について政府が補助する以上は、これに準ずる農業の再生産の基本資材である農畜舎であるとか、大農機具とか、あるいは大家畜、こういうものについて、この際特に被害激甚な地帯においては相当大幅な補助政策をとってもいいのではないかと思うのです。この二点をどうお考えになっておるか、これを一つ明らかにしていただきたいということが一点。  それからもう一つは、二の災害地の復旧ということですが、これはまだほとんど何もありません。今農林省にいろいろお願いして、あなたにもいろいろお願いしておるわけですが、ぜひこの災害地の復旧に、新農村体制の体系を作ってもらう。そしてこれの大体の内容は、私に言わせると大体部落計画とでもいいますか、こういうものとか、あるいは土壌の改良の問題、あるいは共同施設の問題、あるいは中小家畜の問題、こういうものを内容として、しかも今の補助率が平均して四割でありますが、これを少くとも六割ないし七割に引き上げる。それから一村に対する補助なり融資のワクを今のように八百万円とかなんとかで切らずに、もっと実情に合わして、少くとも三千万円程度のワクにして、こういう全く元も子もなくやられたような村が村として全体が立ち上れるような新しい類型を作ってやる必要がある。少くともこれに該当するような村が、農林省の説明によりますと年々八十は出ているのですから、その八十の村を一つ一つこういう新農村の新しい類型によって政府が作っていく、立ち上らしていくということがぜひ必要だと思う。この点をどうお考えになっておるか、これについてお伺いをしたい。  最後にもう一つの点は、早場米の期間延長の問題です。これは内容はよく御承知通りです。しかし、農林省にもいろいろの言い分はあるでしょう、特に大蔵省のごときはぜにを出したくないものですから文句ばかり言うでしょう。言うでしょうが、少くともことしの実情から見ると、私は災害政策の一環として第四期を少くとも五日ないしは七日くらいは大体延ばす必要がある、こう思いますが、この点についても特に農林大臣のお考えをお聞きしたい。  まだたくさんお聞きしたい点がありますけれども、以上三点だけにしぼってお伺いいたしますので、お答えいただきたいと思います。
  49. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 御指摘になりましたような形態の被害農家に対しましては、現在はいわばフラグメンタルな、同時にまた統括した制度がございません。これは開拓地における自作農創設のような形式に持っていくかどうかというようなことにつきましては、一面においては非常に有利な点もありますから、久保田さんの御指摘になるようなことは好ましいことはよくわかるのでございますけれども、いろいろな関係が深い、ことに現在では農地までは個人の財産でありますけれども、その重要な要素でありますから、これに対して手厚い保護を政府は加えておるわけであります。しかしながら一般的には私人の財産等に対します被害は、ことごとくこれを助成の対象にしておらぬ、こういう現況でもございますので、これらは開拓地における自作農創設のような方式をとるべきかどうか、これは十分に研究さしていただきたいと思います。  それから第二問の各種資金の問題でございますが、今回具体的には激甚地に対しましては天災融資法の特別の指定がございますので、これは最低の三分五厘の方はいくと思うのでございます。これが所要の資金を全部三分五厘に統一するということにつきましては、各制度上の関係がございますので、直ちに取り得ないと考えております。  第三番目には、被害の非常に激甚な町村等に対しましてのいわゆる新農村建設計画等との関連でございますが、これは一つ考えさせていただきたいと思います。新農村建設計画は、立地上非常に不利なもの、あるいはその関係災害等によりまして打ちひしがれたところを回復するという場合にも、これはもちろん考えられることでございますので、なお実行上の問題として十分に考慮させていただきたいと考えております。  最後に早場米の問題でございますが、これは過半来全国にわたってこの要望の声が強いのでございますが、予約米の集荷の状況を見ますならば、順調に集荷が促進されております。昨日までの集計を見ましても百六十一万トン、石数にいたしまして千七十六万石程度すでに集荷をしておりまして、これを一昨年に比べますならば一五八%、昨年のときに比べましてもすでに一一〇%に近いことになっておりまして、所要の計画からいきますと計画に即応しておる、こういう現況でございます。従いまして早場米の集荷の状況は、ただ単に集荷面から申しますならば、所要の計画はすでに達成しておる、こういう状況でございます。しかしながら全体として考えてみます場合にはそうでございますが、一部の地帯におきましては、秋以来の天候が悪い点と災害を受けまして、ことに倒伏、冠水等の事情があり、作業のおくれておる点もあります。これらにつきましては、実際その方面の事情もくんでやらなければならぬと思いまして、今検討を重ねておるわけでございますが、今明日をもって大体出てくるわけでございますので、この点は考えてみたい。一般的には今申し上げるような事情でありますから、この点は一つ御了承を得たいと思います。
  50. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がありませんので、農林大臣になお二、三の点についてお聞きしたいと思うのですが、きょうは省いておきます。  最後に厚生大臣にお伺いをいたしたい。今度の災害の経験からいたしまして、ああいう特にひどい災害の際は今の災害救助法では不十分であります。たとえば食糧の単価が一日に五十円——一番精神的にショックを受けて労働も過重で疲れ切ったときに、握り飯にこうこうだけでやれということは実際にどうかしておると思うのです。こういう点とかあるいはその他の、少くとも衣食住のまず一応安定するまでの期間や補助の限度を延ばすというか、広げる必要がぜひあると思う。それでないとどうにもならぬ。現在は災害救助法の欠陥を、全国の皆さんの御同情によるいろいろの物資、その他の救援物資によって、辛うじて間に合せておるというのが実情であります。こういう点については、現在の救助法の建前も承知しておりますが、しかし政府としてもこれをもっと深く掘り下げて検討願いたいということが一点。  それからつもう一つは、罹災者保護の特別立法をぜひやってもらいたいと思う。その内容はどうかといいますと、まず死亡者や重傷者——私どもの方では死亡者ないしは行方不明者が約千名、重傷者が四百名もございます。四百名のうち百二、三十名はかたわになるのではないかと思います。全部見ておるのではありませんが、私が二、三接した者はそういう状態であります。これに対して政府が何の弔慰金も出さぬ、見舞金も出さぬというのはどうかしておる。全国の同情に甘えて——政府政治の貧困によって起った、最も重点になる犠牲者に対しては、ある程度国が弔慰金なりあるいは見舞金を出すのが当然のことだ。こういう人情の機微に触れた政治をやらないから、あなた方が警察力をふやしたり、あるいは軍隊をふやしたりして、住民を非常に押えつけるということになる。こういう際にこそ、人情の機微に触れた制度を作り生かしていくことが必要だと思いますので、この点を一つ考慮をお願いしたいと思います。  それからもう一つの点は、調査はいたしておりませんけれども、これによってたくさんのみなしごができたり、あるいは老人ができたり、あるいは母子家族ができております。私の親戚にも八十の老人が一人残りまして実は始末に困っておる——始末に困っておるというと不人情な話でありますが、実際はそうであります。こういう者に対して、やれ養老院に行けとかなんとかいうことでなくて、月額四千円程度の特別保護費というものを出して、子供の場合は成年になるまで、あるいは老人の場合は死ぬまで、これを政府として見てやって当然ではないか、こう考えます。この点も御考慮をいただきたい。  もう一点は、生活保護の特別適用ということを特にその道を開いていただきたいということであります。罹災者の大部分は何とかして立ち上ろうとしております。しかしたとえば農民について見れば家族も一部なくしてしまった、それで家もない、たんぼもない、食うものもない、農機具もない、全くどうにもしようのないところから出発するのであります。従って中にはなかなかこれに耐え切れないでくじける者もあり、そのくじけた者は大体生活保護の適用になってしまいます。私の近くの部落でも区長が逃げ出したところがございまして、現在その村はてんやわんやであります。こういう実情から、特にこういうひどい災害の場合、特にそのうちでもって立ち上りの困難な者については、一年間とか二年間とか期間を切って生活保護の適用をしてもらいたい。同時にその場合には今のように資産があったってこれは何の実果も生まない資産であります。金を食う資産であります。こういう不動産があるからといって生活保護をしなかったり、あるいは多少の労賃収入をとりましょうけれども、それによって保護費を差っ引かれては、再建資金をためることができません。そういう点もそういうことをしないように、また学校等にやっているのに、災害のためにやめるというのは非常に惜しいことだ。保護を受けたために高等学校以上には行けないというようなことのないように、特に災害地罹災者の立ち上りのために必要な生活保護法の特別適用の道を開いていただくということが、国民年金制度までしかれようとする今日、私はぜひ必要ではないか。いかに片方において国民年金制度を作りましたなどといったって、今のような災害程度で年間二百万人ずつも被害をこうむって、そのうちから今申しましたようなひどいのが相当数出てくる。そういうふうでは国民年金制その他の社会保障制度を作っておきながら、片方においてはそういう連中をどんどん作って、しかも立ち上る必要のあるのをほっておくばかな手はないと思う。私はこの点については特に厚生大臣においては考えられて、新しいこういう生活保護の道を開いていただきたい。何か新聞等で拝見しますると、厚生省におかれましても、こういう点の研究に着手されるそうでありますが、ぜひこういう点について格別の御考慮をいただきたいということを考えておるものですが、この点に対する御所見はどうですか、一つ伺っておきます。
  51. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 お答え申し上げます。いつの災害でもそうでございますが、今度の伊豆災害も非常に深刻でございまして、災害を受けられた方々に対しましてはできるだけ御同情を申して、法の許す限りの運用をやっておるわけであります。  ただいま御指摘のございました第一点の災害救助法の問題でありますが、これは前々からも災害のあるたびにこれだけでよろしいかという意見があったのであります。私今回の災害に当りまして、どうもこれでは不十分ではないかということを痛感をいたしまして、何分にも古い法律でございますので、ただいま御指摘のようないろいろな問題がございます。そこでこれはやはり厚生省だけでもいけませんので、省内で責任者をきめて、関係の向きとも御意見を承わって善処する必要があろうかと考えまして、具体的に、どうこう結論を出しますよりも、虚心にどういう要望があるか聞いて善処する方策を立てることが大事だと思いまして、さっそく省内に災害救助法を再検討いたします委員会のようなものを設置をいたしまして、次官を主にいたしまして、関係の向きも入れまして、あまり時間をかけてもいけませんので、来年の産月末までに一研究終えて、その結論に従って善処の方策を別に考えたいと思っております。  それから第二の罹災者保護の特別立法、特に弔慰金の問題でございます。この点につきましては、今回の災害のあと、いろいろ御意見も出て参り、考えても見たのでございますが、ただいま申し上げましたような、災害救助法の見直しなどで、何かその間における特別な手当みたいなものが要るかどうかということが問題になってくると思いますが、弔慰金というようなことに相なりますと、災害救助法の適用を受けるほどでない小災害あるいはまたその他のいろいろな災害といったようなものを受けられる方々も非常に数が多いのでありまして、やはりそうした人たちとの権衡等も考えまして、大災害のときには特にお気の毒な状況が多いのでございますが、国として弔慰金を出すのはいかがなものかと現在では考えております。  なお特別な手当等を考えたらどうかという御意見でございます。一般的には、厚生省としてこうした際に考ますことは、災害を受けましてから当座の処置と、それからその後の立ち直りへのつなぎということが主体でございまして、やはり災害後の生活をささえ、そうして将来への立て直りを考えるという点につきましては、ただいまお話のありましたように、農家の新築をどういうふうにいたすとか、あるいは農地の回復について金利の安い金を出すとか、あるいは農業とそのほかの職業によって違いましょうけれども、やはり住宅とか営業用財産の復旧等に関します本格的な金融措置によって、あるいはその間における補助もあるかもしれませんが、考えていただくのが筋じゃないか、災害救助法なりあるいはそのほかのものでそこまで出るのは、これは現在のところではどうかと考えております。  それから生活保護法の適用についてでございますが、これも一般論といたしましては、生活保護は国民一般に最低生活基準を維持するという意味からいたしまして、災害の場合の特別保護基準というのを設けるということは、よほど考えものだと思いますが、現実の適用の問題といたしましては、今回もあまりめんどうな審査等をせずして、とにかくみんな困っておられるのだから、生活保護法の適用を急速にやる指令をすることであります。そのほかの手配もできるだけいたしておるわけであります。  それから高校への進学の問題等につきましては、これも一般的には保護を受けている者が教育を受けるというところに問題がございますけれども、これは現在すでに便法を設けまして、高校進学それから特別に英才の場合の大学進学等につきましては、世帯を分つ等の方法によりまして、生活保護の適用を怠らないような手配をいたしておるわけであります。今回の伊豆災害等につきましても、ここで保護基準を特に高めるということはちょっと考えものだと思いますけれども、現行生活保護法の許します限り、現在やっております限りの便法をできるだけ講じて参りたいと考えておる次第でございます。  それからなお御老人や孤児の方々、これもほんとうにお気の毒でございまして、現在のところでは特別に補助をいたす必要のある御老人は三十名程度発見されたのでございまして、今日福祉事務所でいろいろ手配をしておるわけであります。この三十名は身寄りの方々ではなかなか骨の折れる事情にある方のようであります。養老施設への入所等の問題につきましても、特に配慮いたして参りたいと存じます。  なおまた十八才未満で孤児となった者は三十五名でございまして、これらの人は現在のところ、近隣の親戚、知人等に預けられておるのであります、これらの孤児につきましては、今後の方針として親戚知人等の養育にゆだねるか、あるいは厚生省で前々から制度として設けておりまする里親のどなたかいい方に委託をするか、あるいは養護施設に収容保護するか等につきましては、個々の児童の事情につきまして最も適切な方法をとりたいと考えて、御相談をいたしておるところでございます。
  52. 久保田豊

    久保田(豊)委員 なお自治庁の長官並びに文部大臣に対しても御質問いたしたいのでありますが、時間を大へん超過して、委員会の運営等にも御迷惑をかけるようでありますからこれで打ち切りますけれども、どうか一つ政府の方におかれましても、被害程度はいろいろありましょうが、それに応じてもう少し深めた、立体的な、総合的な対策というものをぜひ作っていただきたいし、特に今度の予算では、さっきも言いました通りこれはやれないので、党といたしましても組みかえの予算を要求しておるわけであります。これは決して見せ場だけではございません。私どもほんとうにそう思っておる。長い間の町村長の経験や現在のあれからいって、この程度予算では、政府がいかに弁明をされても実際の災害地はやっていけません。復興はできません。どうかそういう点を十分に一つ考えて、政府としては特に善処をしていただくようにお願いをいたしまして、これで質問を打ち切りにいたします。
  53. 西村直己

    西村(直)委員長代理 午後三時より再開することといたしまして、暫時林憩いたします。     午後二時二十二分休憩      ————◇—————     午後三時九分開議
  54. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎秀二君。
  55. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 文部大臣に対しまして、文教政策あるいは文化政策といった方が適当でありましょうけれども、二、三お伺いをしてみたいと思うのであります。昨日、私は、ここのところずっと問題になっておりますオリンピック後援会の清算をするための会議に招集を受けたわけであります。私はオリンピック後援会の理事をいたしているそうであります。そうでありますというのは、実は昭和二十九年以来招集を受けておらぬという驚くべき会合であるわけでありますが、昨日に至って、不正事件の跡始末をするために、昨日の午後二時から東京丸の内の丸の内ホテルで清算人の報告を受ける評議員会、こういう名目で会合が行われたのであります。予算委員会等重要な国会の審議がありますものですから、私は出席がおくれまして、午後の四時半過ぎに委員会にはせつけたわけでございます。ところが、この会合のしょっぱなから取扱いが非常に荒れまして、本日各新聞一斉に報道いたしておりますように、この会合は成立しないのではないかという疑義を出した者があるわけであります。すなわち、参議院議員の河野謙三君は、同じ理事をいたしておるのでありますけれども昭和三十九年一月に、自分はオリンピック後援会の理事ということに国会関係者として雄鷹を受げた、これは何も政府から委任されたような権威ある機関でもなければ、民間の財団法人でもない、単に任意団体の理事ではあったけれども、長くスポーツに深い関係を持つ者として、国会関係者として委任を受けたものだと思っておった、ところがその後何ら理事会というものの通告も受けない、一度理事会の招集を受けたけれども、その後オリンピック後援会がどういう組織と方法で募金の計画をしておるのかということについては、何ら承知をしておらなかった、ところが今回のごとき、少くとも体協スポーツ関係者の間で作られたる清算人の会合において明らかになっただけでも、一千九十二万円という驚くべき不正事件が出て、神聖なるべきスポーツ界の将来に非常な汚点を投げたということであった。話は非常に長くなりますけれども、文部大臣もあまり了解しておらないかもしれないので、説明をしつつ、かつ今後の対策を伺いたいから、かように初めから申し上げておるわけであります。そうして、二十九年の二月に理事を引き受けて、そして理事の任期は規約によるならば三十一年二月、すなわち二年間で切れるはずであったが、その後解任されたのか、あるいはそのままであるのか、理事会が開かれない、通告も受けないから知らないでおったらこういう大事件が起きた、そこで招集されてみたところで、自分が役員であるのか、単に不正事件が起ったからその当時の関係者として招集をされておるのか、この会合の性格に疑義がある、われわれは報告を受けておったところで、一体役員であるのかどうかわからないという非常に爆弾的な動議を河野謙三氏は出したわけなんです。そこで、もし資格がないならば、選んだ清算委員会も無効だ。それからオリンピック後援会というものは、今日存在していないものがどうしてこういうことをやるのか。やるならば振り出しへ戻って、清算委員会には公平な第三者を入れるべきだ。すなわち今清算人をやっているのは、仲間でやっているわけです。体協や今まで関係のあった理事が数名入って、そうして使い込みをした佐藤事務局長も清算人の一人に入って、どこまでが不正でどこまでが正当かということをお互いでやっておるのです。そこに非常な問題があるので、将来ほんとうに公正なる措置をとるとするならば、その清算委員会には、スポーツの関係者以外、すなわちオリンピック後援会以外の者を入れた清算委員会を作って、それによって公正に、これまでは公正な費用の使い方だ、これは不正だというように分けてもらって、もう一回、われわれ役員も合理的な役員に直してもらって、報告を受けようじゃないかという、きわめて具体的な提案をしたわけです。このことを、われわれの方も抜かっておった、質問をしておる私も、それから河野君も抜っておったが、幸い河野謙三書が気がついた。そこで、柳田秀一君と田原春次君と櫻内義雄君、この五人がやっておるわけですが、先生らみな国会の方の対策をやっておられて忙しいから、ほかの三人は知らないわけだが、私と河野君は気がついて、そういうことできのうは幕を閉じたわけですけれども、これを文部省は知っていましたか。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日までのオリンピック準備委員会の仕事の進め方については、問題となりましてから後のことでありますけれども、なるべくすみやかに解決をつけるようにという意味で指示をいたしておりましたが、今の役員の任期が切れておったとかおらなかったとかいうことは、少くとも私は全然承知をいたしておりません。
  57. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 そこで私は、文部省が体育局がなかったならば、つまり昔の体育課時代では人数も足りなかったでしょうし、多少事情をしんしゃくすべき余地があったかと思うけれども、体育局ができて、そうしてこの問題が勃発をしてもう四カ月ほどになるわけです。その間に知らなかったということは、文部大臣としても手落ちだし、非常に重大な問題に発展しはしないかというふうに私は考えるのであります。現在この問題については、東体育協会長が東京都知事選の候補者にならんとしておるように見受けられるので、その関係から追及の手が非常用に鈍い。私の見るところでは、東体育協会長そのものは、直接オリンピック後援会の役員もやっておらぬようだし、顧問か何かで、常中務理事ではないから、直接執行部の責任というものはないと思うのです。それならば、政党人の立場からしても、もっと堂々とやるべときだ思っておりますし、それから不正事件そのものについては徹底的に国民の前に問題を明らかにして、そしてこれが刑事事件に該当するものであるとするならば、そのような措置もとるような状態に導かなければならぬ。警察は、まだだれも告発をしておらぬものだから、手を入れないような状態にもあるのでしょう、あるのだが、こういう任意団体の不正というものが今後続発をすることになると、非常に重大なことになりはしないかというふうに私は考えるのであります。  そこで、文部大臣に伺いたいと思いますけれども、この体協の関係のいろいろな、たとえばオリンピック招致に対する実行委員会とかあるいは招致委員会とか、アジア大会ならアジア大会に対する委員会とかがずいぶんありますが、あれは、初めのうちは何でも各界を集めるために、ことに政界などは有力な発言権を持っておりますから、政界のスポーツの関係者を入れるのだけれども、いつの間にか、まあわれわれは忙しい関係もあって、もちろんこんな中心人物になり得る立場でもないし、なってもわれわれは多忙で困るわけです。こういう非常に任意的な団体が多くて、そして文部省の監督も行き届かない。そこにこういう不祥事か勃発するところの非常な温床があるように私は考えるので、今後文部省は、ひとりオリンピック協会の不正事件だけではなしに、一般に体協の扱っておるものが社会的にも——主として社会的ですけれども、非常に影響力が多いということに対して、もっと何か監査の方法をとる手段に出たらどうか、こう考えるのです。そういう点で、体育協会やこれと類似のスポーツ団体の運営についてやや今までにルーズな傾向があり過ぎはしなかったかという点について、まず文部大臣のお考えを承わっておきたいと思うのであります。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回のオリンピック準備委員会は、川崎さんのお言葉にもありましたように、これは純然たる任意団体であります。従って、文部省といたしましても、何ら監督とか指導とかというような関係を持たない団体として今日まで来ておりましたわけであります。そういうような関係上、準備委員会の内情等につきましても、文部省はこれをつまびらかにしていなかったわけでございます。あの問題が起りましたので、その影響するところは決して少くない、かような考えのもとに、関係者に対しまして、すみやかに善後措置を講じ、解決をするという意味でお勧めして参っておったようなわけでございます。昨日の問題について、私もけさ新聞を見まして実は驚き入ったような始末であります。かって理事であられた川崎さんすら御承知なかったようなことでありますので、全く驚き入ったことでございますが、それにつきましては、すみやかに体制を整備いたしまして、この問題の解決を一日もすみやかにするようにということを強く申したいと思っております。  なお体協等の団体に対する指導、監督の問題でございますが、もちろん重要な団体でございますし、そのなすところは各方面にかなり大きな影響を与えることでありますので、十分注意して参らなければならぬと思うのでございます。御承知のように、財団法人なら財団法人に対しましては、その方針に対する監督の道がございます。ただ一面から申しまして、現在社会教育法等によりますと、社会教育関係団体に対しましては、干渉がましいこととか、統制がましいことをしてはならぬというような制約もございますので、もっぱら自主的にその団体において仕事の発展をはかっていくように、側から援助するような立場に立っておるわけでございますが、今申しましたようにいろいろな問題が生じておることでございますし、今後十分注意して参りたいと思っております。
  59. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 今回不正事件を起した、あるいは経理上の不始末を起したと言われるものは、オリンピック後援会の佐藤事務局長である。佐藤事務局長は自分一身で責任を負う。それは実際に理事長の判こを預っているし、そして遊興費に大部分のものを消費したということが明らかになってきたものですから、本人が責任を負うのは当然です。当然であるが、どうも私の見たところでは、一緒にいろいろな会合に出たりあるいは宴会に出たりした者の中には、単に招待されたというだけではなしに、数十回あるいは百回以上にわたってそういう会合に出ておる数人の常務即事がおるようなんです。それはどういう費用でそういう会合が持たれておるかということを知らなかったように今日では言っておるようですけれども、私は、毎日々々佐藤事務局長と顔を合わせておる体協から出ておる常務理事が、その間の事情を何も知らなかったというふうには考えられない。     〔委員長退席、町田委員長代理着席〕 現在戦闘機械の問題で追及されておる大蔵省の吉村主計官、これもふらちな話であって、数十回も業者また天川なる者と会合しておるということでありまして、この間には相当利権的なものが動いている、不正だという感じを受ける。それと同じような事態がオリンピック後援会の佐藤事務局長と行動をともにしたという体協の理事者に対する非常な非難があるわけです。もし体協の理事者と会長が、そのことの事情を知っておったとすれば、東龍太郎君にも非常な責任があるわけですが、東君は現在までの調査によると、ほとんど会合に出ておらぬということがわかっておるわけです。ですから、結局これは体協の専務理事をしておる者と、あるいはその下に常務理事としてオリンピック後援会に関係をしておる者、これが事件の一角に全然関係がないことは言えないのではないかとも私は見ておるのです。これが調べられて、文教委員会でもいろいろ専門的に今後お調べをいただいて、もとよりこれは刑事事件になるかならないかは別ですから、それほど詳細に尋問もできないでしょうけれども、しかし、そういうことになって、私はやはり体協から出ているオリンピック後援会の理事には、今回の責任があると見ているのです。文部政務次官は、先ごろの文教委員会答弁では、体協の理事者には道義的責任があるという言明をされたと思っているのです。大臣はそのことを知っておられると思うのでありますが、この際あらためて伺いたいのですけれども、一体不始末を起したところの本人だけの責任のものか、これを取り締るべき理事長平山君にも当然責任はあるけれども、実際に募金の実情を知っておった体協の理事者というものは、私は責任があるのではないかと思う。またこういうオリンピック後援会を作らしたのは体協の知恵による、体協の考え方による。だから常務理事のうちの過半数というものは、体協の理事者によって構成されている。ここに問題の焦点があるように思うのですが、文部大臣としてはいかようにお考えになりますか。ぜひ伺っておきたいと思うのであります。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 責任の問題でございますが、果してどういうような関係になっておるかということを、われわれとしても一応のことは話を聞くことはできますけれども、それ以上のことは、文部省といたしましては、オリンピック後援会に対しまして指算する権限もありませんし、監督する権限もない。従って、向うの言うところを聞く以外にはわからないわけであります。従って、ほんとうのところがどうなっておるかということは、確信を持って申し上げるわけには参らない。そういう状態でございます。  今の責任の問題でございますけれども、体協とオリンピック準備会というものは別個のものであります。最初の成立につきまして体協関係が大いに努力いたしまして、そしてこの準備後援会ができたという事情であったろうと思うのでありますが、団体としては別個な関係でございますので、責任問題から申しますれば、オリンピック準備会の関係者としての責任があるかないか、こういう点ではないかと思うのでございます。またその責任にも、あるいは法律上の責任もございましょうし、道義上の責任もあろうかと思うのであります。果して法律上の責任があるかどうかということにつきましては、私はこれはお答え申し上げるわけには参りません。道義的に申しますれば、関係の深かった役員にはやはり道義的な責任がある、かように考えておりします。
  61. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 今の前般の御答弁で多少不満なのは、オリンピック後援会には自分たちの監督の責任もなければ指導上の責任もない。任意団体だからというのですが、私は直接の監督の責任はなくても、やはり文教行政全般を統括しておる文部大臣が、体育協会と表裏一体となっているオリンピック後援会なるものが活発に動いているときにはこれは放任しておればいいのだ、何も知らぬでもいいのだ、そんな無責任な答弁は成り立たないと思います。それは形式的には直接の関係はない。しかし、文教行政全般の目から見れば、体育協会が補助金を出しておるわけです。その体育協会が募金をするのは工合が悪いからといって、まあ兄弟団体あるいは応援団体みたいなものを作って、全国に信用のある藤山さんを会長にして募金を開始した、こういうことです。そこで募金を開始したが、オリンピック後援会には実際の職員というものは五、六人しかいない、手足になる者が五、六人しかいない。それもオリンピック後援会を設立したときに集めたしろうとばかりだから、実際にはスポーツ界全般の事情を知っておる体育協会から人を貸さなきゃならぬというので、多くの者がそこに入り込んで、仕事は佐藤事務局長がいろいろ指令して、ここヘ金をもらいに行け、この会社にはどのくらいの額がもらえるだろうというので、やはり一々指図をしたものらしい。その指図をした者の不正がとにかく千万円、佐藤事務局長だけが起したからといって、実際にそれを指導した者に責任がないとは私は思えないので、その点あなたに伺っておるのです。というのは、そのオリンピック後援会に出かけて行っておる、つまり体育協会と二重人格ですが、体育協会に本拠を置きつつも、募金中には、むしろオリンピック後援会に行っておった日数と時間の方が多いと見られる常務理事に責任がないとはいえないので、それは体協を通して、やはりあなたが監督をしなきゃならぬ立場にあったと思う。してみると、今のお言葉というものは、私はそのままではいただきかねるわけであります。やはりこういう不正事件が起れば、なおさら文部省は天下にこの実情を明らかにするために、問題の解決を急ぐ方策を示さなきゃならぬ。私は今度は少し建設的にお尋ねしますが、きのうはああいう結論になった。これに対しては自主的に解決をしようとしておるときでありますから、この方法をとるがいいと思います。思いますが、ここでやはり文部省が見て、きのうの結論については自分たちも同感だから、急いで天下の不安をなくすように——ことにきのうあたり集まってみると、非常に痛切なのは、地方から出てきた評議員ですね。神奈川だとかあるいは北海道だとかあるいは新潟だとかいうようなところから出てきた評議員は、自分のところで小学校、中学校、高等学校の生徒から一人頭十円以下の募金を集めたというのですね。その集めた金を自分はそのままにして持っていった。それが今日スポーツ界の仲間が調べただけでも一千万円不正支出をされておるということでは、もう将来、新潟だのあるいは北海道だののスポーツ界の指導者として自分たちは大きな顔をするわけにはいかぬし、表を歩けないという非常に痛切な話をしておりました。これは地方へ行くほど深刻だと思う。東京では大体大会社に寄付命をもらったのと、銀座あるいは浅草で何か藤山さんや東龍太郎君が演説をして、そして紙箱を持って募金をしただけであって、東京の小、中学校、高等学校などは割合に少いのです。ところが特定の県、北海道とか神奈川とかいう地方の評議員は、そのために心魂をすり減らして歩いておったのに、こういう不正事件が起った。しかもその解決の方法さえ明示をされないというのでは、はなはだ残念だ。この事態に立ち至れば、文部省はいろいろ統制をするとか指導をするとかいうことをいわれて——あまりスポーツの指導に文部省が容喙することは元来好むべき筋合いではないけれども、この段階になれば、やはり文部省のような権威のあるものが、社会情勢を見て、早く処置をしろということを言うべき立場であって、形式的な議論というものは許されないんじゃないかというふうに感ずるのであります。その意味で文部大臣にもう一度今後どうしてこれをスポーツ界の再建のために活用するかということの基本的なお考えを伺っておきたいと思うのであります。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ごもっともなお尋ねだと思います。今回のオリンピック準備委員会のことは、私はスポーツ界における一つの不祥事だと考えております。すみやかにその善後措置を講じ、解決策を立て、これを天下に公表すべきであると思います。従来もそのつもりで進めて参っておるのであります。事情にうとい者といたしましては、昨日あたり、大よその結論が出るのじゃないかというように考えておりましたが、ああいうふうな状況でございます。まことに遺憾でございます。従いまして、できるだけ早く調べるところは調べ、またいろいろ法律上の問題もあるようにも思うのでありますが、そういう点も十分検討の上で、すみやかに跡始末をつけることについて努力するようにということは、実は私の方の事務当局から昨晩申し入れをさせておるのであります。なるべく早く解決させたいと思って私も努力したいと思います。  なおお話の中の、地方から募集いたしました金の点についての御心配でございます。これは地方の人からいえば、ああいうふうなことが新聞紙上に出れば、非常に憤慨することだろうと思う。特に私が気にいたしましたのは、その点でございます。この点につきましては、われわれの調べましたところによりますれば、地方募金については特別の口座を設けて整理いたしておるようであります。そのものにつきましては、そっくりそのまま体協の方に送っておる、かように承知いたしておりますので、やや胸をなでおろしておるようなわけでございますが、いずれにいたしましても、今回のあの事件の始末というものは、急速にやってもらいたいと思っております。また将来こういうふうなスポーツの後援団体というふうなものを作ります際には、今度のような間違いの起らないように、われわれといたしましても十分注意して参りたいと思います。
  63. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 ただいまから質問せんとすることは、体協内部のことでありますが、最近世界のスポーツ界における指導的な団体の組織をずっと見て参りますと、アマチュアの団体といえども中心的な立場にある者、すなわち名誉的な会長だとかあるいはそれに類似する者は別にして、政党でいえば幹事長、会社でいえば専務理事というような立場に立つ者は、だんだんアメリカでも有給になってきておるようです。それは、アマチュア・スポーツといえども、片手間ではできない。やはり中心人物は正当な報酬をもらって有給の者がよいのではないか。AAUというのはアメリカの体育協会ですが、ダニエル・J・フェリスという男が、ここ三十年も有給の専務理事として内外の信用を非常に高めておる。イギリスでも、体育協会の主事だけは、有給ということになっていかなければとうていまかない切れない状態なんです。日本の体育協会では、田畑君にしても、東俊郎君にしても、ほかにれっきとした仕事を持っていて、そのかたわらスポーツのために尽力をしてくれておるのですが、そういう組織では今後また不祥事が起り得るような要素があるのじゃないか。全責任を負わない、おれらこうやって手弁当で愛するスポーツのためにやっておるのだとたんかを切ることがあります。あるなら、それなら一から十まで全責任を持ってやるような体制になっておるかというと、少しいろいろなことを検討して見ると、それは知らぬというようなことが非常に多い。これでは将来国民体育大会とかアジア大会とかオリンピック大会というような行事を次から次に控えて、そうしてそれをうまく運営していくのに、その中心棒となる者が無給だ。無給はいいけれども、それがために、無給だから少しは飲み食いぐらいはしてもいいだろうというようなことで始まったのがこの事件ですぞ。私は大体その心理を知っておるから申し上げたんですが、それでは、これから先のスポーツ団体というものはうまくいかぬじゃないかという意味では、やはり文部省は、これは勧告するわけにもいかぬでしょうけれども、将来スポーツ界の総本山である体協の中心人物だけは有給で、そして全責任を持ってやるように変えるようにしたらどうか、こう私は思うのです。そういうような点で、文部大臣はどういうふうにお考えでしょうか。あなたはしょっちゅう、いろいろ接触される機会もあるわけですが、今のような形で、果して責任体制というものがとり得ることができるかどうか。ことに、来年、もしオリンピック大会が東京にくるということになって、そして組織委員会などというものもできる。組織委員会はおそらく有給制になるでしょう、中心人物は。しかし、それとタイアップする体育協会も、やはり同じような繁忙に悩まされる事態がくると思うのです。そういうときに、今日のようなあり方でよいかどうかということについて一つ承わっておきたい。そうして、不祥事を防ぎたいというのが私の切なる願望であるわけであります。
  64. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に参考になる御意見を承わったのであります。体育協会は、日本のアマチュア・スポーツの中心団体といたしまして、だんだん仕事も大きくなって参る。また、オリンピック招致というふうな問題も控えておるわけでございますので、いよいよ繁忙を加えることだろうと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、体育協会の事務組織と申しますか、業務を執行する組織について、十分しっかりしたものにしなければならぬということについては、全く同感でございます。どういうふうな仕組みにしたらよろしいかということについては、もちろん体育協会が中心になって考えなければならぬ問題だと思いますけれども、われわれといたしましても、今後の体協の発展という立場に立ちまして、お話しになりましたような点も十分参考にいたしまして、検討さしていただきたいと思います。
  65. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 このような不正な事件とは、事は違いますが、これから私が法務大臣にちょっとお尋ねをいたしたいのは、不正な事件とは違いますけれども、一昨日西村君から指摘のありました共産圏からの資金の流入という問題が、非常にこれまた世間の注目を浴びております。二十六年以降今日までに、総額九億四千四、五百万円のものが、公安調査庁の調査によれば入っておる。その内訳は、ソ連から二億一千万円、中共から二億六千万円、北鮮から四億二千万円、その他約四千万円ということがこの間御発表にたった数字だと思っておるのであります。で、私は、この中で多少、まあ共産党だとか、あるいは在日朝鮮人総連合とか、在日朝鮮人関係というようなものは別にしまして、原水爆の禁止協議会に約一億五百万円入っておるということを見まして、原水爆の禁止をするということの運動というものは、政党政派を問わず、平和への願いでありますから、大いに活発にやらなければならぬことだと思いますけれども、それが非常に思想的に偏向して、何か、一方の陣営のみを非難をする。たとえば、アメリカ、イギリスの原水爆はいけない、ソ連のは——もとより原水爆の禁止の立場からいえば、これを実施をしようとするものに対する考え方は同等でなければならぬ、罪を鳴らすならば、双方ともに向って、われわれはこの非を訴えなければならぬのですが、今までやってきたいきさつを見ると、その当時は米英側がよけい原爆、水爆を実験した点があります。しかし今日は、ソ連の方が激しく実施をしておるようないきさつもあって、これはやはり絶対平和主義者の立場からすべきなのが私は原水爆禁止の——そうしてまた社会党にしても自民党にしても政党政派をこえてこれに協力するというのが建前なら、明らかに今日まで思想的な偏向があったとみられる節が非常に多い、その原因一つにもしこの一億五百万円の外国からの資金というものが一方的に流れておるということであるとすると、事はきわめて重大だと私は思うのであります。これは見のがせないことであって、資金的な関係からもそういう重大な問題が出ておるとするならば、われわれこれを見のがすわけにはいかない、そこでお伺いしたいのは、このことに関して、一体原水爆禁止協議会というのは任意団体であるのか、あるいは何か、法律的にはどういう許可になっておるのか、その資金は国内からはどういう形で寄付がされておるのか、そういうことに対する調査はありませんか。
  66. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのお尋ねの件につきましては、昨日田中委員からも重ねてお尋ねがございました通り、公安調査庁におきまして御承知のようにいろいろの調査はいたしておりますが、その調査というものは、本件については主として情報の判断ということが中心になっております。従って一昨日私が申し上げました数字は、こういうような国あるいは地域から入ってきておると認められる——認められるというよりは、情報の上においてそういうふうに想察されるものを総計いたしましたものの中で、しかも比較的に総体的に確度が高かろうと思われるものを申し上げたわけでありまして、政府として具体的に、直接そのものに当って調査したものではないわけであります。その点をまず御了承を願いたいと思うのであります。  それから、原水協の関係でございますが、私今考えておりますというか、私の承知しておりますところでは、法律的にはこれはいわゆる任意団体ではなかろうと思います。特定の財団法人だとか社団法人だとかいうような、法規によって所要の手続を経て設立されたものではなかろうと思いますが、この点、正確なところは、調べましてお答えをいたしたいと思います。
  67. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 これは別にさっきの会計上の問題とか何とかいう問題ではありませんけれども、この数字を見ておると、われわれとしては、思想上の偏向という問題が起ったことの基礎というものに対して、非常に疑惑を招く点が多いのじゃないかというふうに思うのです。そういう意味では昨日御発表になった数字の中で、最も注目すべき問題だと私は思っておる。今の御答弁ではずいぶんあやふやなところもあって、何ですけれども、たとえば、税金関係なんかはどうなっておるか御承知ですか。
  68. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま税金はどうなっておるかというお尋ねでございますが、この点は、つい私としてはうっかりいたしまして、そこまでは調査をいたしておりません。つまり原水爆禁止協議会に対する税金の関係というお尋ねと思いましたが、その点は遺憾ながら今ちょっとお答えいたしかねます。
  69. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 いずれにしても、この問題は単に一億五百万円という数字で、これはこういうものがあったということだけで見のがしておけるものではないようにもわれわれは思うのです。その意味では、これは原水爆禁止協議会の代表者を呼んで調べなければならぬことになるかもしれぬ、非常に重大な問題が私は起るのではないかと思う。もとよりこれは、しかし所管はわれわれのところと直接な問題ではありませんから他の問題に移りますけれども、しかしこれは今日までの傾向を見ておると、この資金とも相当な連関があったものとみなさざるを得ない状況であることを指摘をしておきたいと思うのであります。  次に文部大臣に一つ、二つ伺いたいと思いますのは、これは超党派でやりましたことで、大団円に近くなりました国立劇場の建設の問題であります。現在は大蔵省で国有財産審議会の答申を待って決定をするというところまでいっておると思いますけれども、文部大臣の知られている範囲では、現在の段階はどういうことになっておるか、十分御承知であると思いますので、この際御発表いただきたいと思います。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国立劇場の問題につきましては、その敷地の問題についていろいろ検討が重ねられておったわけでございます。どうやら目鼻がつきまして、近く大蔵省の関係の審議会で決定せられるところまで参っておると思いますが、そう遠からざるうちに敷地は決定することと思います。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 ただいま非常に抽象的なお話でありましたが、これを推進しておる者からいたしますれば、パレス・ハイツということに大蔵省でも方針をきめたし、私ども関係者も寄りまして、あそこのパレス・ハイツに最高裁判所の庁舎と国立劇場が一緒に建つ。しかし三宅坂寄りを両方が希望して、そのために敷地決定が長引くということではいけないので、文化財保護委員会も、また国会の国立劇場を推進しておる着たちも、大蔵省の意向に一任するという非常に大乗的な態度に出ておるわけですから、必ず実施をされるものと思うのですが、その意味で今一番大切なのは、来年度の予算の編成の時期を控えて、これが時期はずれになるということになりますれば、せっかく敷地が決定しても予算に間に合わなかったということがありますので、そういうことがありますので、そういうことのないように手順をお願いしたいと思うのです。その意味では、十一月中にでもすべての案件を決定する、敷地も決定するし、これに対する予算の要求というものもはっきりと決定をして、そして出していただきたいと思うのですが、そういう手順で運んでおりましょうか。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 敷地が決定いたしますれば、今度は建設の方に移ってくるわけでございます。そういうふうな関係でございますので、私は敷地も近く決定することと思いますし、従って次の段階に踏み込んで参る。その意味において、必要な予算は来年の予算にぜひお願いしたいものと考えております。
  73. 川崎秀二

    ○川崎(秀)委員 私どもは、国立劇場の敷地決定ということにつきましては、もう国会関係者あげまして犠牲的な努力をして今日まで来たわけです。幸い決定ということになったのですけれども、世間には、国立劇場がいよいよできるということになることについては、大方の世論の支持もありますが、その内容については、もうたくさんの議論があるわけです。特にその内容について、今文化財保護委員会が出しているような案では、スケールが小さ過ぎるのではないかというのがまず第一の点です。たとえば、客席の収容能力が少いというようなことを指摘する者もありますし、ないしは、最近の舞踊関係のものから、歌舞伎、雅楽ないしはその他のものを一切あげて国立劇場でやるような計画をしておるということは間違っていはしないか、やはり第一には、日本古来の音楽、技芸で非常に没落をしようとしておるというようなものを保護することによる伝統芸術に対する保護であり、それを中核をして、一方には日本に従来ないバレーとかあるいはオペラとかいうものの本舞台を設けることが必要であって、今何かもうあらゆるものを国立劇場の中でやれるように期待しておるような雰囲気もありますけれども、そういう意味でもっと真剣な検討をしてみる必要があると思う。従来の文化財保護委員会が作ったようなものでは、やはり各界各層の意見というものが十分反映しておらないので、この際いよいよ国立劇場の敷地が決定すれば、世間が非難をする余地のないほど各方面の意見というものを入れて、慎重に建設計画を進めてほしいと私は考えるのであります。そういう意味で、国立劇場建設審議会というようなものを内閣に設置されるお考えはないか、これをお伺いいたしまして、文部大臣に対する質問を終りたいと思います。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私も、今の問題については、川崎君と同じような考え方をいたしておるものであります。いよいよ建設というふうなことを考えますにつきましても、内容をどうするかということが非常に大きな問題であります。この問題につきまして一応の案はできておるわけでありますけれども、なおこれは十分検討を要する。またそういうがっちりした計画に基いて建設のことも進めていかなければならぬと考えております。従いまして、現在の計画につきましては、さらに衆知を集めて検討するということは私も同様に考えておる次第であります。今直ちに審議会を設置するというところまでお管えするまでに至っておりませんが、心持につきましては私全く同感でございますので、一つ十分考慮さしていただきたいと思います。
  75. 楢橋渡

    楢橋委員長 阿部五郎君。
  76. 阿部五郎

    ○阿部委員 私は、農業問題について二、三点伺いたいと思っておったのでありますが、過日来の警職法関係の問題を聞いておりまして、ぜひただしておきたい点がございますので、青木公安委員長初め、この警職法が提案されるに至った理由として伝えられておる関係の大臣にお尋ねをいたしたいのであります。大へんお忙しいようでありますから、簡潔にお尋ねいたします。  青木さんに伺いたいのですが、敗戦後において社会の状態が今日よりはるかに混乱しておって、大衆行動なども、労働運動にいたしましても、今日よりもはるかに盛んに行われ、ずいぶん行き過ぎもあり、場合によったならば生産管理などというところまでも発展した時代があったわけでありますが、そういう時代においても、案外死人、けが人は少なかったようでありますにもかかわらず、最近においては、逆に世の中はよほど平穏になってきたにもかかわらず、何か事が起ると警察側もまた大衆行動をとっておる方も、大へん犠牲者が多いようであります。一体こういう事態の変化はどこに原因があって起ってきたとお考えになっておるのでございましょうか。
  77. 青木正

    ○青木国務大臣 お話のように、最近のいろいろ集団の運動につきまして、いわゆる不法越軌の行為等が頻発して参ってきておるということ、その原因につきましては、私はいろいろあると思うのであります。全般的な社会情勢の問題とかいろいろあろうと思うのでありますが、私どもはそういう原因を突き詰めて、そうしてそういうことのないようにすることの必要であることはもちろんでありまして、そういうためには、根本的には教育の問題あるいは社会の環境をよくする問題等いろいろあると思うのであります。しかしながら、現実にそういうような事態が頻発してくるということになりますれば、やはりそれに対処して、警察立場においてもできるだけそういうことを未然に防止することができるようにすることが、私は社会の静穏な生活を守るために必要である、かように考えるのであります。
  78. 阿部五郎

    ○阿部委員 事態が起って参れば、それに対処しなければならないというお答えでございますが、それは当然だろうと私も思います。しかし、今よりもはるかに国民生活状態も悪く、すべての条件がはるかに悪い時代よりも、この平穏になってきた今日において、逆にそういう問題で犠牲者を出すという深刻な問題になって現われてくるのでありますから、その原因をはっきり突きとめなかったならば、それに対応したと申しましても、適切なる対応策はないのではないかと思うのであります。そこで、私の観察を申し上げてみますと、憲法に保障されました基本的人権というものは、これが侵害される場合、二つの方面があると思います。一つは人民相互間に相手方の権利を侵害するわけでありますが、もう一つの場合は、国家が侵害をするという場合であります。おそらく青木さん御自身も警察に絶対に行き過ぎがないとはおっしゃらぬだろうと思います。ところで戦後には、いわゆるあの解放時代でありまして、重苦しい政治から解放されて、お互い同士の間の人権侵害はありましたでしょう。汽車にちょっと乗りましても目に余る事態がありましたし、配給の行列に参加しましても、あとから来て先へ行くというような混乱もあったようでありますが、しかし国の手によるところの人民に対する人権侵害というのはほとんどなかったと思います。ところが、事態はその後よほど変って参って、私の記憶しておるところによりますと、その当時の、敗戦直後の大衆行動などにはほとんど死人、けが人はなくて、たしか食糧メーデーか何かの時分に一人だけ死人が出たということが大問題になったことがありますが、それが、何年でありましたか、皇居前広場をメーデーに使わせないという処置を政府がおとりになったときに、初めてけが人、死人の相当数の者が出たと記憶しております。それが一例として示しておるように、だんだん世の中が平穏になるとともに政府も強くなり、その強くなったということが、一面では国民基本的人権を侵す、あるいは侵されるおそれがあると人民側でおそれる、こういうような問題も起ってきたし、また労働運動におきましても、資本家側、経営者側もよほど腰が強くなって、争議においても、あるいは団体交渉を避けたり、拒否したり、あるいは逃げてしまって会わなかったり、あるいは中労委や地労委の調停あっせんを拒否する、こういうふうな法律で認められたところの権利を無視し、あるいは侵害するというような場合も起ってくるし、教育関係におきましてもまたそれに似たようなことがぼつぼつ起るようになった。それと相比例して、だんだんこういう深刻な争いになって参り、何か事があると平穏には済まないで、負傷者、死者が出てくる、こういうようなことになったのではなかろうかと思うのでありますが、関係大臣各位の御意見、御観察はいかがでございましょうか。
  79. 青木正

    ○青木国務大臣 いろいろ原因もあろうと思うのでありますが、一つは、終戦直後の情勢を見ておりますと、明らかに違法行為であることが常識的に看過されておったということもあると思うのであります。今日社会がここまで平穏になって参りますれば、当然にやはり法秩序の確立ということをしなければならない。たとえば、一つの例をとって申し上げますれば、地方公務員法で定められておりますように、やはり何と申しましても公務員はストライキ的なことをやってはいかぬことになっておるのであります。ところが、そういうふうなことが従来はややもすれば看過されておったというか、そういう事態もあったと思うのであります。しかし私どもは、もう今日の国民生活も安定して参っておりますので、やはり法秩序はあくまでも守って、そうして平穏な社会を作っていくようにしなければならぬ、こう考えるのであります。終戦直後の情勢と比較されましてのお話でありますが、私は、終戦直後はややもすればそういう傾向があったのじゃないか、こうも考えられるのであります。今日私どもは法秩序確立について真剣に考えていかなければならぬ、法治国家として当然そうなければならぬ、かように考えておるのであります。
  80. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私ども立場から見ますと、戦後労働運動というものはたんだんと健全になってきておると思います。組織されておる労働者大衆は特にそうで、従って、日本の労働運動というものは、特にこれを利用して偏向した言的にでも変えようとする者の立場から見ればどうであるか存じませんが、いわゆる労働運動として組織されておる大衆は、だんだんと健全な労働運動の方向をとりつつある、こういうふうに思っております。
  81. 阿部五郎

    ○阿部委員 文部大臣にも御観察をお述べ願います。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部行政の範囲内におきまして、いろいろ教員組合との間に問題がございまして、そのために教育界が混乱しておるということをいなむわけに参らないのであります。この問題の中心をなしておりますのは、少くとも近ごろは、いわゆる勤務評定の問題、あるいはまた道徳教育講習会、こういうふうなものが主たる争いの的になっておるのであります。私は、勤務評定の問題につきましては、申すまでもなく、人事の公正を期して勤務能率を上げようという意図に出ておるものであり、実際問題としてこれは必要なことと存じます。同時にまた、このことは法に規定されておることでもあるわけであります。また道徳教育講習会の問題は、これも道徳教育の徹底強化ということが世論であり、文部省といたしましてもこの要望にこたえまして、道徳教育の強化徹底をはかっていく、こういう考えのもとにいろいろな施策考えて参りました。その趣旨を徹底いたしますために道徳教育の講習会をやろう、こういうことにすぎないのであります。これらの事柄に対しまして教員組合の諸君がまっこうから反対をしておる。反対の意見があるということをかれこれ申すわけではございませんけれども、今日までの状況から申しますと、勤務評定の実施を頭から阻止する、あるいは道徳教育の講習会の実施を、妨げる場合によっては実力を行使する、こういうふうなことにつきましてまことに遺憾に存じておる次第でございます。私は、事柄は、すなおに受け入れられてよろしい問題じゃないかと思うのであります。そういうふうな問題について、なぜああいう反対をするのかということについては、十分理解がいかない。いずれにいたしましても、昨今かような状態にあるということは、私のきわめて遺憾とするところでございます。教育界の混乱が平静に帰し、教育行政が秩序を保たれるようにということを念願といたしまして、私は仕事を進めて参りたいと思います。
  83. 阿部五郎

    ○阿部委員 お答えはございましたけれども、事態がかくのごとく変化しておって、通常ならば穏やかにならなければならぬにもかかわらず、逆に激化するという事態を招いている原因については、明確なお答えがなかったわけであります。  そこで私が思いますのには、これは国民相互間の基本的人権の侵害というものは、多く犯罪となり、あるいは犯罪にならなくとも、警察の予防ないし逮捕の目的になるから、そういう意味においては国家権力は大いに強くなってもらわなければならぬとは思います。しかしながら、一面で、国の方の力が強くて、国自身が国民の人権をそこなうというような事態が起りましたならば、国民側もこれに対して若干の反抗は試みざるを得ないのであります。よく総理大臣は、法律に定めたものであるから法律の通りにしろ、こういうことを言われますけれども、御存じの通りに、法律というものは国会の過半数の同意があればできるものでありますが、基本的人権というものは、かりに国民の九九%までが同意しても、絶対に奪うべからざる権利であります。そこで、それをもし法律の制定によって奪われでもしたならば、国民として救われる道がない。反抗するよりほかに道がないのであります。かりに法律はそう憲法に反しておらなくても、基本的人権には反しておらなくても、それの執行の行き過ぎによってもし基本的人権が奪われるとしたならば、その奪われる人は、ほかに救済の道がないのであります。同じ国民同士の間で侵害された場合においては、国が保護してくれるということがありますけれども、国自身から侵害される場合においては、救われる道がないのであります。そこで、そこに反抗か起って参り、こういう事態が起ると思うのであります。労働大臣は、平穏になった、健全になったとおっしゃいますけれども、これは部分的にはよほど変ったものであることは、労働大臣御自身も御存じだろうと思います。というのは、経営者側が強くなったという結果から、団体交渉権などが尊重されない、また第三者の公平なるあっせん、仲裁、調停というようなものもあまり尊重されないという事態が起って——これは別に違法でも何でもありますまい。団体交渉権の侵害は違法でありましょうけれども、あっせんに応じないというのは直接には違法ではありますまい。しかし、これが争議を激化させて、そこに暴行というものを発生させる原因をなしておると思います。そこで私は、一例として、今文部大臣がおっしゃった勤務評定の問題を取り上げてみたいのであります。私はうかつで、その内容をあまり詳しく知らなかったのでありますが、過日、選挙区の方の教育委員会から内容を送って参って、意見を聞かしてくれ、こういう話がありましたので、これを見てみますと、いろんな項目をあげて評定をするようになっております。大体その項目を八つにしぼっておるようでありまして、学級管理の状態はどうか、学習指導の様子はどうか、生活、研究、修養、校務の処理、こうあるのでありますが、そのほかに教育意欲、指導力、責任感、公正、協調性、こういうものを評定の題目にあげておるのであります。そして、その内容に立ち至ってみますると、教養や情操が豊かであるかどうか、生徒、児童、PTA、地域社会から親しまれあるいは信頼されているかどうか、困難な事態に際会したとき責任を持てるかどうか、あるいは人に差別扱いをしたりえこひいきをしたりすることはないかどうか、迎合的であるか、正しいことを主張する勇気があるかどうか、生活態度が清廉であり、公私の区別をわきまえているかどうか、こういう問題に一一評定を加えることになっておるわけであります。こうなって参りますと、これはむしろその人格に対する評定と言わねばなりません。そしてこれを、A、A′、B、B′、C、こう五通りに評定することになっております。もしこういう全人格に対する評定とも受け取られる問題について最劣等と、評定を下されたとしたら、その人たち本人の身になってみましたならば、著しく名誉を棄損されたという感じを持つのが当然ではあるまいか、持つなと言うのが無理ではなかろうかと思うのであります。もし公衆の面前で公然とこういう人格的な問題について、お前は劣等だとやられた場合に、それは名誉棄損罪にもなる疑いがあろうかと思います。そういう問題について評定が下されようとしておるのでありまして、これは考え方によりましたら、憲法に定めてあるところの「すべて国民は、個人として尊重される。」という、この個人の尊厳を規定したところの基本的人権を侵すものではないか、こういう疑いが持たれるのであります。そして、それはわれわれ第三者が見ての話でありますが、それをやられるところの本人にとっては、抵抗感を持つのは当然でなかろうかと思うのであります。これが今日のような事態を引き起しておるのであって、それに対して、単に警察官の職務執行によって防ごうとすることは大へんな間違いではなかろうかと思うのでありますが、文部大臣の御意見はいかがでありますか。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 勤務評定の内容についてただいまお話がございました。お手元にお持ちのものは、多分教育長の協議会で作りました試案ではないかと思うのであります。その試案に基きまして、その試案を参考として、各地方の教育委員会においてそれぞれ具体的に決定いたしておるわけであります。必ずしもその通りにいっておるわけではありません。各地方の教育委員会において、それぞれの事情によって適当と認めるところを決定いたしておるようであります。今お話しになりました問題は、勤務評定としましては、本人の勤務の状況なり、また勤務に関しての特性、あるいは能力なり、そういうようなところを測定しようというのであります。いろいろな事項を観察して、その観察事項の結果として数項目について評価をする、こういうような形に多くなっておるだろうと私は思うのであります。これが一般に公開せられるとかいうことになれば、あるいは御心配の点もあるかと思いますが、勤務の成績あるいは特性、能力等を公正に評価して、そして人事の公正を期するという見地からいえば、私は、必ずしもこれが人格に関するとかいうふうにおとりになる必要はないのじゃないかと思います。問題は、今警職法との関係において御質問がございましたが、勤務評定そのものと申しますよりも、これに反対する闘争、その闘争の仕方が、場合によりますと行き過ぎておる、あるいは非常な暴力ざたになっておる、こういうふうな事態が往々にしてある。そのことがやはり警察官の職務執行上考えなければならぬという一つの理由にはなり得るものと私は考えるのであります。
  85. 阿部五郎

    ○阿部委員 ただいま文部大臣からお答えがありましたが、それでは私もう一ぺんお聞きしたいのですが、教員の人格を評定するというように受け取られるような条項は、この私が持っておる資料、すなわち徳島県教育委員会の資料だけであって、ほかにはそういうものはないと承わっていいのでありますか。
  86. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 人格ということをどういうふうに考えるかという点にも関係するであろうと思いますが、私は、勤務評定をやります上におきまして、本人の性質、性行というようなことも観察事項として取り入れまして、そしてこれによってその特性、能力等を評定するということが、直ちに人格に関する問題というふうには考えておりません。
  87. 阿部五郎

    ○阿部委員 もとより私も、相当たくさんの人を使う場合に、その任命権者が、一人々々の人柄のいかん、いわば重さをはかる必要があるということについては十分認めます。認めますが、教養や情操が豊かであるかいなか、しかもそれが、もし悪くすれば一番劣等と評価されるかもしれない、あるいは生徒や地域の人々から親しまれておるかあるいはきらわれておるか、こういうような問題、これらはなるほどそれを知る必要があるかもしれません。おそらくあるでありましょう。しかしながら、これを評定して、文書の上で評価する——なるほどそれを秘密にするのだとはおっしゃいますが、秘密にしたところで、これは秘密にする方が外部に公表されるよりもその人の給与とか地位とかそういうものに直接関係してくるものであることは明らかなのでありますから、そういう重大な評価をされるのは、これは公衆の面前にさらされるより以上の深い利害関係のある問題であります。そして、それ自身には問題はないが、これに対して反対運動をした場合においては、場合によっては警察官の職務執行に関係をするといいますが、一体人間としてその基本的人権、名誉を侵害されたというような場合に、怒らない人間がよいのであるか、腹を立てるのがほんとうであるか、その点いかがでございますか。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、今回の勤務評定につきまして、県教育委員会計画に基きまして評定が行われる、そのこと自体が人権を侵害するものというふうには考えません。従ってまたお尋ねのようなことに対するお答合えもできないのでありますが、かような問題につきまして評定の仕方がいいとか悪いとかいう意見は、いろいろあろうと思います。そういう内容等につきましてもいろいろな見解もあろうと思うのであります。反対の意見があれば、意見を表明することを私はかれこれ申し上げようとは思っておりません。ただ、反対するにいたしましても、おのずからその仕方があろうと思うのであります。今回の教職員組合のこの勤務評定実施に対する反対というものは、評定の実施そのものを頭から否定しておるのであります。そうしてその反対をやりますために、ときにはいわゆる実力行使に訴える、その結果警察ざたを生ずる、こういうふうなことになって参りまして、穏かにお互いに意見を交換するとか希望を申し述べるとかいうようなことをかれこれ言おうとは思っておりません。今日までの経過につきましては全面的に拒否する、かような体制のもとに反対運動が行われておりますことは、私はまことに残念であります。
  89. 阿部五郎

    ○阿部委員 その点が文部大臣と私と考えの違う点でありまして、文部大臣は、正当な理由があったならば理由をあげて反対したらいいじゃないかとおっしゃる。なるほど一応はそうであります。ところが、これは国会の多数によって、いかんともできることであります。そして国会の多数できまれば、これは従うほかはないじゃないかとおっしゃる。しかし、事基本的人権という問題になりましたならば、多数決でできるものではないはずであります。これはたとい国民の九九%までが同意をいたしましても、国民のうちの一人でも基本的人権を奪われる者があってはならぬはずであります。もし多数決で何でもしてよいのでありましたならば、それはたとえばあなた方が一番おきらいになっております、私たちも決して好きではありませんが、共産党を法律で禁止することはもちろんできます。キリスト教や天理教を法律で禁ずることもできます。しかしそれはみな憲法に違反することなくしてはできないことであります。そして、人格の尊厳というものは、これは侵されてはならぬものであります。法律をもって侵されてもならないものであります。そして、文部大臣は別に人格を侵すものではないとおっしゃいますけれども、もしあなた自身が、お前の教養や情操ははなはだ貧弱である、劣等である、こう言われて、これを侮辱と考えない者がおりましょうか。これは教育関係における一例でありますが、労働関係におきましても、これだけ明確ではありませんけれども、法律によって認められておるところの労働者の権利はややもすれば侵害される。これは国家によって侵略されるところは今まで割合少いようでありますが、経営者側によって侵害される場合は相当ひんぱんに起りつつあります。しかも、昨年一つ労働争議が激化して暴力行為になった事件に立会ったことがございますが、それなども経営者が団体交渉を拒否しあるいは逃げて会わない。あげくの果には、第三者の仲裁、地方労働委員会の仲裁あっせんが出てきましても、これを拒否する、こういうようなところから激化したようであります。それはあくまで経営者側における団体交渉権の侵害であります。そういうところから問題は発生してくるのであって、これを、警察官の職務執行によって是正しようとしましたならば、さらにこれを激化させること、あたかもあのメーデーが皇居前の広場を使わせなかったためにあれだけ多数のけが人、死人を出した、器物の毀棄も起ったというようなものではなかろうかと思うのでありますが、青木公安委員長いかがお考えになりますか。
  90. 青木正

    ○青木国務大臣 警察官職務執行法の考え方等に関連してのお話でありますが、申し上げるまでもなく、基本的人権を尊重することは現行憲法の一番大きな柱であります。このことは、私は、御指摘のごとく、いかなる場合でもそのことは破ってはいかないと思うのであります。しかしながら同時に、憲法十二条、十三条の規定もあります通り、個人の基本的人権は尊重することは当然でありますが、同時に個人の集団である社会の全体の人権、自由というものも尊重せんければならないことは当然のことと思うわけであります。従いまして、基本的には個人の人権の尊重でありますが、しかしその個人の集団である社会の人権あるいは自由、これの尊重との調和点を見出していかなければならないと思うのです。そういう意味におきまして、私どもは労働運動あるいは勤評反対闘争、そういう運動それ自体に対しまして警察権が介入するとかどうとか、こういうことがあってはならないことは当然であります。ただしかし、そのことがいわゆる不法越軌にわたり、暴力を伴うということになり、その結果として他の善良なる国民の人権あるいは自由を侵害するということになりましては、これは憲法十二条、十三条の考えからいたしまして、やはりそういう労働者あるいは学校の先生方の基本的人権も尊重いたさなければなりませんが、同時に他のそれ以外の方々の人権あるいは自由を侵害することのないように、やはり静穏な状態あるいは正常な運行、こういうことが穏かに保たれるようにすることをまたしなければならない、かように私は考えておる次第であります。
  91. 阿部五郎

    ○阿部委員 権利が乱用されてならないのは申すまでもございません。私は全く青木さんと同意見であります。しかしながら、今問題になっておるのは、そういう個人々々が権利の乱用をするとかしないとかいう問題ではないのでありまして、相当多数の人間基本的人権を侵害され、あるいは侵害するおそれがある。しかもそれが国家の手によってなされるおそれがあるというような場合には、これに対してどうしても反抗せざるを得ない。そこで青木さんにお尋ねいたしますが、あなたも国家権力の執行において行き過ぎが絶対にないとはおっしゃらないであろうと思います。行き過ぎがあって、そのために人民の基本的人権が侵害された場今において、その侵害された人々に一体どういう救済があるでありましょうか。どうしてそれを防いだらいいか、またどうしてそれの回復をはかったらいいでしょうか、それの方法があるのでしょうか。
  92. 青木正

    ○青木国務大臣 職権乱用によってこうむる国民側の救済の問題と思うのですが、もちろん言うまでもなく、いやしくも職権乱用にわたるようなことがあってはなりませんけれども、その点につきましては、いろいろな点からそういうことのないように最善の配慮をいたしておるのであります。しかしながら、実際問題といたしまして、御指摘のようにそういう事態が、警察官の暴行等において起ることが絶無とは申せないのであります。そのために人権擁護局というものもありますし、また警察官がそういうことをやったことに対しましては、行政的な処分の問題、あるいは刑事上の処分の問題、こういう問題もありますし、また民法上の賠償、あるいは国家賠償法等による賠償、こういう問題もありまして、そういう場合の救済と申しますか、配慮をいたしておるわけであります。
  93. 阿部五郎

    ○阿部委員 おっしゃるようなことはだれも知っておることでございましょう。しかしながら、国の手によって相当多数の者が権利を侵害されたとき、一々それの国家賠償の訴訟を提起し、あるいは行き過ぎをやった人に対して訴訟を提起し、判決を待つというようなことができないのは、これはだれにも明らかなことであります。そういうおそれがあり、しかもそのおそれたるや、お互い同士の国民相互間における権利の侵害ではないのでありまして、絶大な権力を持っておる国家の手によってやられるのでありますから、国民側にとっての恐怖ははるかに大きいのであります。そこで、おのずからそういうおそれがある場合においては反抗の態度に出る。これに対して警察官職務執行法をもって鎮圧を試みる。それをお互いに繰り返しておりましたならば、いわゆる暴力の世の中になってしまうわけであります。健全なる新聞紙の論説などにも、その先をおそれるということを書いてありますが、私もその先が一番おそろしいのじゃないかと思います。世の中が混乱してしまえば、その混乱しておる以上の実力をもってしなければおさまりをつけることはできない。勢いフアッショ化せざるを得ない。せっかく成立しかけておるところの、健全に発達せんとしておるところの日本の民主主義政治というものは、そこでこわれてしまう、こういうことをおそれるのであります。そこでこれはどちらかが終止符を打たなければならない問題であろうと思います。その場合に、国民側よりもはるかに高所に立っておる国家権力が、これと対等の立場におって、民衆側に行き過ぎがあるからこれに対しては同じく実力をもって鎮圧するという態度に出ることは、はなはだこれは政治としてまずいものではないかと思うのであります。  そこで青木さんに伺いますが、一体この警察官職務執行法ができた場合に、果して現在ありますところの、警察官側にも人民側もたくさん負傷者が出てきておるような事態が減るとお考えになりますか。逆にふえるとお考えになりますか。
  94. 青木正

    ○青木国務大臣 まず基本的な考え方として、私どもは、現在の警察官というものが、昔の警察官と根本的に違うという点を考えなければいかぬと思うのです。国家権力の末端機構としてのというお話もありましたが、そういう言葉が適当であるかどうかわかりませんが、ある意味におきまして、昔の警察官は上からの秩序と申しますか、そういうような立場に立っていろいろ仕事をやっておったのであります。しかし、現在の警察官は、申し上げるまでもなく主権は国民にあるのでありますので、国民全体に対する奉仕者としての立場に立って、当然その仕事をやらなければならぬのでありますので、そういう点から考えますと、昔のようなあり方というものは当然許さるべきでもなし、また現在の警察というものはそうでない、こう申し上げたいのであります。  それから、この法律が通ったならば一体どうかという御質問でありますが、私ども考え方は、これはいろいろ御批判もあろうかと思うのでありますけれども、少くとも私自体のあの法律に対する考え方として、基本的には最近のいろいろな血なまぐさい事態、こういうものに対しまして、警察国民に対する奉仕者として、できるだけそういう事態に至る一歩手前で、国民同士そういうことのないように私は勧告もし、そういうことを制止して、そういう事態に立ち至らないようにすべきじゃないか、つまり予防という点に重点を置くべきじゃないか、こういう考えに立っての改正でありますので、私はこの法律が通るならば、従来のような事態にいくことを防ぐことができるのじゃないか、そこまで衝突するような事態にいく一歩手前で防ぐことが可能になってくるのじゃないか、かように考えております。
  95. 阿部五郎

    ○阿部委員 青木さんの御意図と御観察は承わりましたが、私はなかなかさようなわけにはいかぬのではないかと思います。言論機関などで心配しておるように、ますます双方が刺激をせられて、激化する方向に行くのではないかと心配しておるのでありますが、これは水かけ論でありますから、やめておきます。一体、その根本になる国の力による人民の人権侵害というもの、これについてよほどお考えか違うのではないかと思われるのであります。これは国民の多数によって奪うことができるものでもなければ、国の力によって奪ってもならないものであって、たとい一人でも、国家の力によって人権を侵害されるようなものがあってはならない。そういう前提のもとに政治をするのが、民主主義の精神でなければならぬと思います。ここに私参考のために写してきたのでありますが、世界の民主主義が発達した根本はいろいろありましょうが、まずその一番顕著なるものが、アメリカの独立であろうと思います。アメリカの独立宣言には、いかなる政府形態も、自由の保障という政治目的を侵す場合には、これを変更しまたは廃止し、人民の安全と幸福をもたらすために新政府を創立することは、人民の権利である。こういう文句があるわけであります。すなわち政府国民基本的人権を侵す場合、かりにその政府が多数決に支持されておるところの政府でありましても、国民基本的人権を侵す場合においては、これは国民にも反抗する権利がある、こういうことを認め、それを前提において、そんなことをなからしむるような政治をするのが民主主義の政治でなければならぬと思います。政府は共産主義を大へんおそれておられますが、欧州各国におきましては、私は自分で行ったことはありませんけれども、そういう意味では少しもおそれておらないようであります。現にフランスもイタリアも戦後は共産主義が比較多数を、一番多数党を制したようでありますが、何のことも大したことは起っておりません。政府を倒そう、あるいは反抗する、これは決してそうやすやすとできるものではありません。いわんや窮鼠ネコをかむものである。そこで、こういう政府の侵害に対しては、国民が反抗する権利があるということを認めた上で政治をするのが、私は民主主義の政治根本でなければならぬと思うのであります。御見解はいかがでございますか。
  96. 青木正

    ○青木国務大臣 民主政治のもとにおきましては、思思のことはもちろん自由てあります。しかしながら、実力をもってこれに反抗するということは、私は許さるべきものではないと思うのであります。そして、国民の皆さんが、そういう政府の作った法律その他に対して不満があるという場合におきましては、これは民主政治のルールによりまして、当然そのときの政府と申しますか、政党は選挙を通じて批判されるのでありまして、あくまでそういうものの是正というものは、民主主義政治のもとにおきましては、選挙を通してやるということでなければならぬ。実力をもってこれを阻止する、あるいは反抗する、こういうあり方は許されない、かように考えるのであります。
  97. 阿部五郎

    ○阿部委員 先ほどからたびたび言うのでありますが、選挙というのは、過半数で決するものであります。法律というものもまた過半数で決するものであります。過半数の支持があれば、総数の国民基本的人権を奪ってもかまわない、そういうものを民主主義とお考えになっておるのでございますか。
  98. 青木正

    ○青木国務大臣 言うまでもなく、主権者は国民でありますので、過半数をとった政党がそういうことをやれば、次の選挙の機会において必ず国民からそれは批判され、そして是正されると思うのであります。これはあくまで民主政治のもとにおきましては、その国会を通してこれを行うということでなければならぬと思うのであります。
  99. 阿部五郎

    ○阿部委員 押し間答しても仕方がありませんからやめますが、法務大臣にお尋ねいたします。昨日公安調査庁の会議に出席せられて、国際共産主義、日中国交回復、安保条約改定、勤評実施、警職法改正などの諸問題に対する運動を利用して、強力な統一行動なり積極的な大衆動員を推進するものと認められる、こういうごあいさつをなさったそうでありますが、そうでありますか。
  100. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨日から本日にかけまして、地方公安調査局長の会議を行なっております。その冒頭におきまして、私が出しましたところの要旨は、国内の極左勢力は、国際情勢を自己に有利なものと判断をいたしまして、当面国内に展開しておる日中国交回復、日米安全保障条約の改定、教職員に対する勤務評定の実施、警察官職務執行法の一部改正法律案等の諸問題に対する各種の運動を利用して、ますます広範かつ強力な統一行動を推し進めつつあるように思われるというような趣旨の情勢判断を申したわけでございます。
  101. 阿部五郎

    ○阿部委員 そうおっしゃれば、なるほど別に何ともないように見えますけれども、あなたがそういうことをおっしゃいましたならば、警察官などは、こういう日中国交回復とか、あるいは安保条約改定、勤務評定などというものに対する大衆活動の中には、国際共産主義の手が伸びておるかいなかということについての探知をして、それを突きとめ、発見しようというような努力をしようという気持をかき立てられるに違いないということは、おそらく御想像になるだろうと思います。その人々の気持の、その職務熱心のあまり、あるいはさらにまた、こういう運動の中にスパイを入れたり、あるいは国民の通信の秘密をあばいてみたり、あるいはその運動にまぎれ込んでみたり、こういうふうな人権を侵害するところの行為を起すところの人が出ないとは限らない。むしろそれを刺激する。こういうふうなことの御心配はございませんか。
  102. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その御心配は絶対にございません。公安調査庁といたしましては、破壊活動防止法の規定するところに従いまして調査活動をやっておるのでございまして、公安調査庁の活動が、いやしくも人間基本的人権を侵すというようなことはとんでもないことでございまして、絶対にさようなことはいたさせません。
  103. 阿部五郎

    ○阿部委員 法務大臣はさようにおっしゃいますけれども、従来も実例のあったことであります。これは、法務大臣の御言動というものは、よほど慎重で注意深いものでなければならぬと思います。私はその危険があると思うのであります。一体共産主義が、もちろん個人の基本的人権を侵すところの政治をするという点においては、私もあなた方もそれに対する意見は同じだろうと思います。しかしながら、それにもかかわらず、相当国内で若干の魅力を持っておるということは認めなければなりません。そして、どこにその魅力があるかといえば、そういう基本的人権を侵す、たとえば最近の、自国の小説家が外国からの賞をもらうに当っても、それに干渉するというような、こういう人権を侵す政治をやっておりながらも、その政治が経済建設において能率的であって、さらに重要なのは、その政治家政治を行うに当って清潔であり、きれいな手で行なっているということ、こう信ぜられている点であります。もちろん制度が違うのでありますから、(「血の粛清はどうだ」と呼ぶ者あり)それは人権侵害でありまして、それとは別であります。少くとも清廉であるということは言えるのであります。人権侵害と清廉という意味とは違うのであります。そしてこれに対抗する道は決して一般人——党派を超越して活動しておる者にまで入ってきておる、それまで探す、こういうようなものではなくて、むしろ日本自身の政治を清廉ならしめ、清潔ならしめることでなけばれならぬと思うのであります。今、政府は戦闘機械の問題で国民の疑惑を招いている。これは公知の事実であります。おそらく法務大臣の職責としては、あくまでこれを調査して、これこそ職権を用いて調査して、政府並びに政界の国民からこうむっているところの疑惑を一掃するのが任務ではなかろうかと思うのでありますが、昨日の御答弁においてそういう御決意が聞かれなかったのは、まことに遺憾に思います。この点いま一度承わりたいのでありますが、いかがでございましょうか。御調査の上で真相を御発表になり、政界が国民からこうむっているところの疑惑を一掃なさる御決意がございますか。
  104. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨日も申し上げましたよに、検察権の発動は最も厳正公平でなければならない。これによりまして、あらゆる場合におきましても、国民の信頼をわが検察陣に対して強く高めていくようにしたいというのが私の念願でもあり、また検察庁の諸君はそのつもりて大いに健闘いたしているわけであります。ただ昨日も申し上げましたように、ただ単なる、いわゆる情報といいますか、うわさと申しますか、あるいは記事というようなものだけによって右往左往するような検察陣営であっては、これはかえって検察官の信頼をかち得ないことでもございますし、この運営につきましては、独自の中立的な、公正な立場で活動いたすべきであると考えております。
  105. 阿部五郎

    ○阿部委員 もちろんへんぱな立場で検察が動かれては困るのでありますが、事は重大であって、政界が国民から疑われている。これをあくまで公平な中立的な立場から真相を調査する——もちろんこれは犯罪捜査ではございませんから、職権を用いることは、強制力を用いて調べるということは絶対にできますまいけれども、御調査をなさるおつもりはないのでございますか。
  106. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 他の行政権の運用と違いまして、ただ単なる調査ということは、私は検察庁の立場においてやって、そうしてその結果を御報告するというような筋合いのものではないと思うのでありますが、これらの点につきましては、わが検察行政の運営というものについて絶対的な御信頼をいただきたいと思います。
  107. 阿部五郎

    ○阿部委員 もうこれでこの問題は打ち切りまして、本来私が伺いたいところの農業問題についてお伺いいたしたいと思うのでありますが、農林大臣のお顔が見られませんが……。
  108. 楢橋渡

    楢橋委員長 農林大臣は今すぐ来ますから、どうですか、大蔵大臣を先にやってもらって……。
  109. 阿部五郎

    ○阿部委員 それでは大蔵大臣に先にお伺いいたしますが、最近数年来、日本の国は年ごとの豊作でありまして、長年食糧不足のために、外国からの輸入をやむなくされておりましたが、よほど回復されて参ったと思います。それで私がまず伺いたいのは、日本の国は食糧自給態勢を固めることができる見込みが立ったかどうか、現にもう三年、四年も豊作でありますから、貿易上は、よほど特別なもの——砂糖など特別なものは別としまして、食糧の論入はよほど減ったはずでありますが、これが為替管理の上においてどういう結果をもたらし、将来どういう見込みがあるか、よほどこれはプラスの影響があったはずであろうと思いますが、その点いかがですか。
  110. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 食糧が増産されて、外国からの食糧の輸入がなくなったから、非常に国際収支の面でよくなったのではないかというお尋ねの趣旨であったかと思います。御指摘通りでございます。過去におきましては、食糧を外国に依存している度合いが非常に強かった、従いまして、輸入の大宗を占めるものが食糧であった、こういう事態が最近の豊作の結果解消されてきた。これが国際収支の面に好影響をもたらしておることは申すまでもございません。
  111. 阿部五郎

    ○阿部委員 私はもう少し詳しいことをお伺いしたいのであります。従来食糧輸入のために支払い勘定をどれくらい必要とし、それが食糧問題好転のためにどれくらい改善されたか、そしてそのために為替管理上も、国際貸借上もよほど余裕ができたと思いますが、それについてはおのずからまたその外資のドルの使用の仕方についても御計画の変更もあったであろうと思います。それらについての詳細を承わりたいと思います。
  112. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま数字を手元に持っておりませんので、数字について御説明できないことを申しわけなく思います。ただ、今年の下半期の外貨予算におきまして、食糧の輸入に割り当てましたものがわずか二十万トン分であったと思います。ところが、ただいま国際収支の面において食糧が入ってこない。これはなるほどけっこうなことでございますが、東南アジア諸地域等からわが国が輸入するものとしては、過去において、食糧が東南アジア諸地域における唯一最大の実は産物であった。ところが最近のような状況になって参りますと、輸入をする必要がなくなる。そういう意味で、国際収支上逆にある程度とらざるを得ないのじゃないか、とういうような困った状態も実は起きておるのであります。さらにまた御承知のように、過去におきましてはアメリカから余剰農産物として相当多額の輸入をいたしておりました。これなどももちろん今年などはその必要を感じない、こういうような状況になっております。これが国際収支の面に非常に幸いしておる、これは申すまでもないところでございます。
  113. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 輸入数量は、米につきまして昭和三十年の豊作以降の数字を申し上げますと、昭和三十年に外米の輸入が百二十九万トン、三十一年に五十六万トン、三十二年は四十三万トン、三十三年は大体これよりも多少減るという見込みでございます。  それから小麦の輸入は、三十年が二百十七万トン、三十一年が二百十八万トン、三十二年が三百二十一万トン、三十三年は二百十万トン余りになる予定であります。大、裸の数量は、三十年が六十八万トン、三十一年が九十三万トン、三十二年が七十九万トン、三十三年が六十万トン余りになる予定であります。
  114. 阿部五郎

    ○阿部委員 農林大臣に伺いますが、今のお答えによりまして、大体豊作の結果ではあるが、小麦その他の麦類の輸入はあまり減っておらないということを聞いたのでありますけれども、全体といたしまして、日本の国は食糧自給を目ざして農業関係は鋭意努力して参ったと思うのでありますが、今のところでのお見込みはいかがでございますか。
  115. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 お説の通り、農林当局としましては、自給度を高めて参りたい、終始一貫こういう考え方で進んでおるわけであります。
  116. 阿部五郎

    ○阿部委員 一時は食糧自給というものは、目標にはするけれども、それは空想のごとき感もあったのでありますが、最近の二、三年でよほどそれは実現に向ったように思います。これは砂糖のごとき特別の物資は別として、主食といわるべきものについては、将来自給自足ということを目ざし、しかも近い将来にそれが達成できるというようなお見込みでございますか。
  117. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 自給度を高めて参りたいということは農政の基本的な考え方でございますが、さて日本の人口を養うために、お説の通り、完全とは申せませんけれども、ほぼ自給自足の域に達するかどうかは、現在の段階では、計数的に見まして、私はまだ困難であろうと思うのであります。従いまして、一面において自給度を高め、同時に海外からの輸入を極度に減らして参りたい、かように、個々の政策としては、中心考えていきたい、こう考えております。
  118. 阿部五郎

    ○阿部委員 ただいま農林大臣からお聞きの通りのお答えがございましたが、大蔵大臣に伺います。先ほどのお話で、食糧の自給はけっこうであって、外貨の使用も減ったのであるが、一面そのために東南アジアから輸入することをやめたがために、逆にこちらの輸入に対して向うの決済すべきものがない、それで輸出も減退する、こういうおもしろからざるところもある、こういうようなお話でありました。それについてもちろん対策をお考えになっておられると思いますが、どういうお考えでございますか。
  119. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 貿易の事柄についてのお尋ねだと思います。国内において自給度を高めていくということ、これはもうわが国の伝統的な農業政策の根幹をなすものでございます。大蔵当局ももちろんこれに賛成でございますし、またその方向でいろいろ予算編成等にも協力いたしておるわけでございます。  ところで、貿易の面におきしまして、決済の面からやや困難な状況を生じておることを私どもただいま申し上げましたが、その通りの実損が出ております。後進諸国に対しての貿易の問題でございますが、これはやはり長期にわたってその国の経済を開発していく、こういう観点に立った長期の貿易拡大、こういうことを考えていくべきだろうと思います。今日の当面している状況のもとにおいて国際決済上非常な不便があり、相手の国が日本からの輸入を制限するというような事態も起りがちでございます。こういう面に対しまして、円クレジットを設定するとか、あるいはまた延べ払い方式によるとか、こういうことで後進国の経済開発に協力することによって、この経済を発展さし、これを拡大し、そうして双方の貿易拡大という方向に持っていこう、こういう考え方でございます。
  120. 阿部五郎

    ○阿部委員 食糧の輸入が減ったがために、東南アジア方面に対する外貨の支払いがそれだけ減ったのでありますが、それだけにまたそれらの東南アジア諸国に対してクレジット、それから延べ払いなどというようなことをする余力もできたと思います。しかし、それはもとより私もけっこうだと思います。元来日本の国の貿易は、アメリカとの関係においては片貿易に近いものがあるのであって、そうして東南アジア方面とはまたこれは輸出においては需要はあるのであるが、決済がむずかしい、こういうふうに聞いております。そういう場合に、輸入が減った関係から、対米貿易の品目の中には、東南アジア貿易に転換することのできるところの輸入物資があるのではないか、もしそれがあるならば、それは東南アジア方面に転換すべきではないかと思うのであります。それによってまた先方側に支払い手段も供与することになるのではなかろうか、こう思うのでありますが、そういうお考えはございませんか。
  121. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 日米間の貿易について、アメリカから輸入するものが非常に多い、こういうことでございます。これは片貿易になっているということで、いつも問題になっております。従いまして、アメリカから輸入する品物のうち、転換し得るものがあれば、もちろん転換を計画すべきでございます。今日までアメリカから参りますものが大きく、食糧であるとか、あるいは綿花であるとか、あるいは機械であるとかいうようなものになっておると思いますが、機械類などは、これは他に転換する方法はない。食糧の面におきましては、余剰農産物資これ自身が、先ほど申しますようにもうよほど減っております。先ほど農林省からのお話のように、麦、小麦というような問題は、これはカナダ、北米地域からなお入ってきておりますが、その他はよほど変ってきておる。綿花借款等についても、在来からの金額もそのままでございますし、内容的にこれを変え得るというように考えますならばこれは変える、こういうような方法をとっております。ちょうど日米間において片貿易がやかましいように、東南アジアの諸国においても、日本側からの輸入が非常にふえて、その国から出ていくことが少いと、やはり東南アジア諸国もこの片貿易を是正しろ、こういう国民的な要望がある。それは先ほどから申しますように、後進国の経済を開発することによって、長期において貿易を拡大する、こういうことを実は考えておるわけであります。
  122. 阿部五郎

    ○阿部委員 私は転換すべき物資は相当まだあると思いますが、それに深入りしておりましても時間がありませんので、農林大臣にお伺いいたしたいと思います。  元来、日本の農業は、ほかの産業と同じような進み方をすることができない、取り残されて進歩がおそい、こういうことが日本国民経済の重大なる弱点にたっておると思うのであります。農林省がお出しになっておるところの白書などによりましても、ほかの鉱工業と比較いたしましたならば、その成長の伸びははなはだしく悪い、そしてしかもその五カ年計画によりましても、鉱工業に比べましたならば、最後の到達点においてもまた非常に低いものがある、こういうことになっておるようであります。その一番大きな原因が、日本の農業は、農家人口に比例して農地が狭い、しかもその農業経営なるものが、いかにも零細経営、零細農業である、こういう点に原因があるとせられております。この点はだれも異存のないところだろうと思います。ところがそれに対して農林省から、一番重大なる農業の弱点について、農業政策としてこれにいかに対処するかということについては、不幸にしてまだ明確なものを聞いておらぬのであります。そういうものがございましたら、一つお話を願いたいと思います。
  123. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 農業の進度と工業の進度との比較でございますが、これは総生産量をかりに評価しまして、金銭等に見積るような方法で現在とり行われておるのでありますけれども、そういうところから見ますならば、日本の農業の生産力は、日本の近代的な工業方面の飛躍した姿に比較する場合においては、御説の通りと思います。ただしかし、日本のヘクタール当りの生産力等を見ます場合には、これは相当に進んで参っております。しかし一戸当りの収入等から見ますならば、これまた阿部さんの御指摘通り、まだ十分ではないと思っております。  しからば、この狭小な土地しか持たぬ日本の農業を将来どうするかという問題でございますが、基本的にはやはり農業生産の基盤をなすところの土地の改良、さらに耕地の改良、拡張、こういうようなことと、同時にまたこれに投じますところの肥料、農薬等の施用によって生産力を高める。それからさらにまた農業技術の面におきましても、あらゆる力を尽してその高度の生産性を高めるということに持っていかなければならぬと思うものでありまして、目新しいことを申し上げるわけではございませんが、これがつまり基本的な考え方であろうと思うのであります。すなわち北海道、東北等に対しまする各般の開拓政策を推進することもその一環でありまするし、御承知通り日本全土にわたりまして、耕地の改良、拡張、干拓等を進めますのもその一環の仕事であります。同時にまた、今後展開いたして参りたい畑地農業等につきましては、土壌の改良等につきましても数歩を進めて参りたい、これがつまり日本の農業の進度を高める方策の中核的なものと考えておる次第であります。
  124. 阿部五郎

    ○阿部委員 今、農林大臣がおっしゃったことは、これは従来とも何十年も昔から営々として努力しておるところでありまして、それのみをもってしては農業生産力の向上を鉱工業並みに、あるいはそれに近づけることすら不可能であるということは、従来の実績が示しておるわけであります。それで私たちは、今、農林大臣がおっしゃったようなことをますます盛んにやるべきであるとは思うのであります。それは基本的な問題でありますから、やらなければならぬと思います。しかしながら、農業生産力の発展をはばんでおるところのものは、農家経営が小さいというところにあるのであって、すなわち今日の進んだ科学技術を取り入れて高い生産能力をあげるためには、どうしても一つの経営に対して大きな投資をしなければならぬ、機械を入れるとかあるいは高度の農薬、肥料を入れるとか、とにかく一経営当りに多くの投資をしなければならぬのであります。御存じの通りに、現在の農村においては、非常な零細農であります、その零細農ですら自動耕転機を持っており、三輪車など持っておるのでありますが、それを効率的に使用するわけにいかない。経営が小さいものですから、フルに活用することができない。それで進んだ生産力、科学技術を取り入れることが、逆に農業経営を圧迫しておる。完全に使うことができないもんですから、金利負担においても何においても、資本の負担という上からいきましたならば、逆に農業経営を圧迫しておる。これが進んだ科学技術を農業に取り入れることを妨げておる原因でもあるし、またせっかく取り入れても十分効力を発揮させることのできない原因であると思うのでありますが、その点いかがでしょうか。
  125. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 日本におきまする農業経営の様相を見ますと、たとえば土地改良でありますとかあるいは開拓等につきまして、御承知通り、近ごろでは、大規模なものは機械方等を使っておるわけであります。この場合には、国家がみずからやります場合と、それから関係者の共同組織のもとにこれを推進していく、こういうことになっておりまして、これは相当日本農業の何を高めておる、こう思うのであります。ただ経営面におきまして、あるいは共同する、もしくは国営もしくは組合でもってやるという程度までは進んでおりませんけれども、これは日本の特殊事情と申しますか、一面においては過大な人口をひかえておりまして、これを組合もしくは国営の組織をもってやるということにつきましては、なおわれわれとしましては踏み切れないわけであります。従いまして、基本的な土地改良とかあるいは基本的な施設を拡充する場合には、今のような方向を取り入れて、そして経営は個個にやらせるということの状態は、日本の特性上なおこれはとらざるを得ないと考えておるのでありまして、この実態が必ずしも農業の生産力をはばんでおるとは考えておりません。
  126. 阿部五郎

    ○阿部委員 それでは、日本の農業の経営規模が小さいことは、日本の農業の生産性を高めることには障害となっておらない、かようにおっしゃるのでございますか。
  127. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 もとより相当な規模に持って参りまして、そして経営の弾力を持つことは好ましいことではございますけれども、そういう意味では、小規模のものについては思わしからざることと考えております。
  128. 阿部五郎

    ○阿部委員 国営の開拓とか干拓とかという方面において、大機械などを使っておられることは、私も存じております。しかし、私が申し上げているのは、そういうことではないので、すでに現在存在しておるところの全国の農家——北海道だけは別といたしましても、全国の農家においてはあまりに経営規模が小さいがために、進んだ科学技術を取り入れて、世の中の進歩に適応したところの生産性向上を行うことができない。それはなるほど農林大臣もおっしゃったように、一単位面積当りの生産力は世界の農業に比べてあまりひけはとらぬでしょうけれども、しかし、農家あたり——農民も国民でありますから、経営がやはり楽にならなければいけません、生活が豊かにならなければいけません。単位当りで幾らたくさんとってみたところで、三反や五反の面積から幾らたくさん収穫をあげたところで、その農家は裕福になることはできぬのであります。それからまた、日本全体の農業生産という立場から考えましても、それだけでは満足できぬと思うのでありますが、依然として農林大臣は、日本の自作農主義というこの零細農をあくまで守っていこう、こういうお考えなんてございますか。
  129. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 阿部さんのお尋ねの趣旨は、だんだんわかって参りましたが、私ども考えでは、どうもソホーズ、コルホーズの形態は経営上とり得ない、こう考えております。同時にまた日本の農家の規模が小さいことは御承知通り、われわれもよく事情はわかっておりますが、これをなるべく拡大して参る。同時にまた質的にも生産力を高めるということに現在進んでおりますが、これをたとえば、あるいはこちらの了解が足りぬのかもしれませんが、法人だとかあるいは会社経営というふうな方向に持っていくというお考えかもしれませんけれども、これはただ単に経営面だけを考えるわけに参りません。私たちとしましては、やはり農業はもともと自作農が本義だろうと思います。しかし、土地を広大に持ち、さらにまた利用し得るならば、組合員の経営もよろしかろうと思いますし、国営の組織をとるのもよかろうかと思います。わが国の農業の進め方といたしましては、どこまでも共同組織による各般の改良施設等は進めて参りますけれども、やはり現在のところは、自作農主義を中心にして、これに最善の力を注ぎたいということの進み方をとらざるを得ないと考えております。
  130. 阿部五郎

    ○阿部委員 まことに保守党という名にふさわしい御意見を承わりました。しかしながら、日本の農業の生産力の発展は、経営規模の小さいことによってほぼ限度に近づいているのではないかと思うのであります。もしこれ以上の発展をしようと思う場合、さらにまた農村に存在する余剰労力を生かそうとする場合には、やはり経営形態に対して何らか新しい工夫が必要なのではないかと思うのであります。私は何もソ連のまねをしてコルホーズをしてもらいたいとか、あるいは中国のまねをして合作社といいますか、近ごろは人民公社というのも実現に移されているということでありますが、何もそのまねをしてもらいたいと言うのではありません。ことに日本の農業は諸外国とは違って、これらの国々とは違った伝統と特質を持っていることは私もわかっております。しかしながら、それはそれなりに、何らかの工夫をして、経営の規模を大きくする共同の方法を免れることはできますまい。しかし経営の規模を大きくしており、長年農林省が奨励してきた多角経営のごときものも、この小さい規模の農家において多角経営をしてもたかが知れております。長年奨励したことをほんとうに実現するためにも、経営規模を大きくするという工夫がなければならぬと思うのでありますが、それでもやはり自作農主義を固執なさるお考えでございますか。
  131. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 経営規模を拡大し、農家の生産と収益を高めるということにつきましては、われわれも最善を尽して参りたい、そういう考えであります。
  132. 阿部五郎

    ○阿部委員 どうもはっきりしないお答えを承わりました。先ほど大臣から会社経営というお話が出ましたが、私はかって、自然発生的に会社経営の農家ができた場合に、前の大臣の時代でありましたが質問したことがありました。とにかく自作農というこの零細農業では、限度に来ていることは疑う余地はないと思うのであります。そこで、自然発生的にも、何らかの動きが起ろうとしております。過般会社経営が起りましたのは、これは税金の関係から起ったものではありますけれども、その中には、やはり実地に当ってみますと、経営規模が小さいために、消毒も肥料の施しもあるいは機械方の使用も妨げられておる。こういうようなことも意識の中にはひそんでいるようであります。それに対して、農林省では、会社経営が法律に反するものであるかいなかという点について、はっきりした御見解が示されませんでした。しかるに、いち早くそれよりも先に国税庁においては、それは法律違反である、こういう建前から、これを不定なさったのであります。元来、その違法であるか合法であるかの分岐点は、農地法の解釈上違法であるかいなか、こういう点にあったのであります。農地法は、本来、当然これは農林省の解釈すべきものである。まず優先して解釈すべきものであろうと思うのでありますが、農林省はそれに対して疑義があるというような態度であった。そういう農林省の態度でありますから、国税庁の方でいち早くそれに対し、断定を下した、こういうようなことであります。これは、私は、農林省において、この経営規模という日本の農業のガン、桎梏に対して、御認識が足らぬのではないかと思うのであります。その点農林大臣はいかがにお考えになりますか。
  133. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 経営規模を拡大し、農業の改善をはかる各般の態様につきましては、今、阿部さんの仰せになりました形態も一つでありましょう。また新農村建設等の一つの現われとして出て参ってきましたが、共同の事業として、土地の分合等もあります。同時にまた、病虫害の防除の共同施設も拡大している、こういうことで、従来小規模な経営ではできなかったことも打開して、これに即応さしておるような事例もあるのでありまして、これらはわれわれとしましてはどこまでも取り進めて参りたい、こう考えております。ただ会社形態によって経営しますことは、おのずから、そうしますと、会社の形式におきましては使用人ということになり、その場合に受ける報酬等は、小作料等の関連においてこれをどう見るか、その賃金をどう見るかということ等があるものでございますから、現行の農地法の建前としましては、やはり一つの疑問を持つわけでございます。しかしながら、自然発生的にだんだん出て参る、こういう阿部さんの御意見でございますが、これに対応しましては、われわれは十分にこの情勢に対処して考えて参らなければならぬ、こう思う次第でございます。
  134. 阿部五郎

    ○阿部委員 この点はとくと農林省において御研究下さるように希望しておきます。  時間がありませんから、ごく簡単にお尋ねいたしたいのですが、農地を広くするということは、土地の狭い日本にとっては非常に重大だと思います。そして、政府も開拓、干拓に力を入れておることは存じております。ところが、実際農村に行ってみますと、現在の農家は、自分の農地をふやそうとする、いわゆる増反開墾をやりたいという意欲が相当強いことを実見するのであります。そして若干裕福な、資力のある者はやっております。しかしながら、最大のガンは——これは耕地そのものもないとはいえないと思います。私は二、三の村に当ったにすぎませんけれども、もしそれから推定が許されるとしたならば、全国には相当な面積、おそらく百万町歩にも及ぶのではないかと思われるのであります。ところが、一番のガンになっておるのは、その土地を、山林とか原野とかを買い入れる資金がないということ、これなんであります。それで、その買い入れる土地を担保にして融資の道が開かれるとしましたならば、単に今までのように十町以上の小団地がどうだとか、あるいは何百町以上でなければいかぬとかいうのではなくて、個々の農家が増反開墾をしたい、そのために山林、原野を買い入れるという場合に融資の道を講じてやったならば、これは相当農地の面積の拡大ができると思うのでありますが、そういう御意思はございませんか。
  135. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 お説の通り、土地の造成等につきましては、大規模な計画のもとによって進めるというのももとよりでございますが、農村の実態を見ますると、小規模のものでございましても、だんだん積って相当の耕地が得られることはお説の通りであります。現在は、御承知通り、土地改良区その他の団体によりまして進めておるし、同時に開墾等もその線で奨励しておるのでございますが、個々の農家にありましても、小開墾等を進める場合におきましては、今後それらに資金の手当をするということにつきましては、もっと組織的なものにいたしたい。考究を重ね、実現し得るように検討を重ねて参りたい、こう考えております。
  136. 阿部五郎

    ○阿部委員 もう一つだけお尋ねしておきます。最近農林省が畑作振興に乗り出されるようになったのはまことにけっこうであります。私たちも敬意を表しておるのでありますが、さてその振興の方策であります。それは先ほど農地農業一般について農林大臣がおっしゃったように、土地の改良とかいろいろあるのでありますが、それだけでは畑作の振興にはなかなか困難ではなかろうかと思うのであります。と言いますのは、畑作農産物は、第一、米と違って国際商品が多いのであって、外国の品物と値段の競争をしなければならぬというのが一つ。さらにまた、国内で需要がどの程度まで開けるかという面において、非常な隘路が最近特に出てきておることであります。これは、たとえば畑地において新たに作るとすれば、一番有利な作物としては桑を作って養蚕をやるとか、あるいはくだものを作るとか、あるいは酪農をやるとか、こういうものでありますが、これはいずれももう壁に突き当っております。それで、単に農業の畑作の基礎を固めるという土地改良その他の施策のみをもってしては、畑作振興は困難ではないかと思うのでありますから、この消費開拓面において格段の方策を講じなければなりませんし、また養蚕業のごときはすでに減産をしなければならないものになっております。減産はやむを得ないといたしましても、次にそれにかわるべき作物を何にしたらよいのであるかということは、まことにこれは困難な問題であります。それでこういう問題につきまして、農林省はどうお考えになっておるのでありますか。需要開拓の面並びに作物の種類について、前途あるものを御研究にならなければならぬでありましょうし、御研究になっておるとすれば、御発表願いたいと思います。
  137. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 畑作の問題でございますが、いずれも困難でありますことは御説の通りです。現在日本の畑作の主要作物としての何は、申すまでもなく麦作が第一、それからカンショ等でございます。うち、大麦、裸麦等は、御承知通り食糧に供するものが大部分を占めておるわけであります。ところが、現在大麦等におきましても、海外から輸入しておるような現況でございます。しかしながら、事情を伺ってみますと、これらの大麦等は、日本に出すために、ニュージーランド、豪州等では増産計画までしておる、かようなことを聞くのであります。私たちとしましては、国際商品としての値幅が違うために逆ざやになる関係がありますが、できるだけ国内の裸麦あるいは大麦等の増産をいたしまして、これを国内の需要に充てるという方策も取り進めたいと考えております。さらにまた、その場合には逆ざやの関係がありますので、困難がありますけれども、その方策はやはり進めたいと考えております。同時にまた、麦作は近年だんだん減って参りましたけれども、今年等の統計に見ますると、幸いにも減少の事態はとまったようであります。むしろこれはもっとふやすように考えなければならないと存ずるのでございます。  それからカンショの問題でございますが、これとても澱粉等をかかえておりまして、相当壁にぶつかっておることも御説の通りでございますけれども、これらは新規用途をだんだん拡大しまして、その方面に対応の措置を講じたい。同時にまた、寒冷地のみならず、暖地におきましても、家畜の飼料作物としてのビート等も相当高く評価されるようになったし、余地もあるのでございますから、これらを取り上げまして、畑作振興の方途を見出して参りたい、かように考えております。
  138. 阿部五郎

    ○阿部委員 御答弁ははなはだ不満な点が多いのでございますが、時間も過ぎましたので、これで私の質問を打ち切っておきます。(拍手)
  139. 楢橋渡

  140. 中澤茂一

    中澤委員 通産大臣がエアハルトさんのために時間がないそうですから、いずれあなたには農林委員会に御出席を願って伺いたいと思いますけれども根本的に、繭糸の対策については、通産省が根本的な方策を講じてくれない限りは、どうにもならない段階にきている。しからば海外需要は伸びないかといえば、絹業大会での話、あるいは議員諸公が海外を回ってきた話、どの話を聞いても、伸びるのです。それについてはいずれ時間をかけて農林委員会一つ十分論議をしたいと思うのであります。本日はそういう事情があるそうでございますから、簡単に大綱だけお尋ねいたしておきますが、大体生糸の輸出振興対策としては、一体どの程度通産省としてお考えになっておるかということでございます。
  141. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 生糸の輸出の問題につきましては、従前農林省が主体となってやっておったわけでありますけれども、だんだん近ごろの情勢を判断いたしますと、ほかの繊維製品とのつながりが非常に多いということ、もう一つは従前生糸の輸出量は、綿製品に対して非常に多かったわけでありますが、これがだんだん変化して参りまして、御承知の昨年度のごときは、大体生糸と絹製品とが半々に近くなっております。本年のごときは、特に生糸が比較的伸びないにもかかわらず、綿製品の方がよく伸びておる。こういうような関係からいたしまして、どうしても日本の特産物である絹というものにつきましては、特殊の方法で、もっと強くやってみる必要があるということは、通産省といたしましても非常に痛感しておる次第でございます。
  142. 中澤茂一

    中澤委員 絹業大会に行ってきた方方の意見も私いろいろ聞いてみましたがイタリアなどでは生糸の産出国でありながら、逆に原糸を買っておる。この事実はどこにあるかといえば、これは織物によって世界市場に出しておる。しかも聞くところによると、ほかにも兼ねてやっておるでありましょうが、ほとんど絹織物専門といっていいくらいの職員を派遣いたしまして、そしてその職員がことしの春の織り柄はこういう柄がはやる、染色はこういう色がはやる、それを本国に通報する。本国は直ちにそれに対して、こういう方向で業者は織って出せ、こういうことでやっておるということを現地に行ってきた方から聞いておる。織物にすれば伸びるということは、もう明らかな事実なんです。これはどこの会社か知りませんが、イタリアから織物の技術者と染色の技術者を入れて、一つ織物輸出を大いにやろうという技術交換の話をしたところが、これが断わられた。こういう話を私は聞いておるのですが、これは会社がやり、業者がやればそういうことになるが、政府自体が本気になってイタリアの織物技術と染色技術の導入をして、そして織物として現在の困難な情勢を打開していく、こういう方策が私は絶対に必要だと考えております。それについて通産大臣として今後そういう方向での絹織物についてどの程度の御決意を持っておられるか、承わりたい。
  143. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま中澤委員の御指摘になったごとく、イタリアの絹織物というものが非常な勢いで米国の市場に進出をしておる。私どもも、織物の業態から見まして、どうしてもやはり織物にして出す以上は、デザインといものが非常に必要である、こういうようなことのために、ディオールのような人も呼びまして、デザインということもやるということで、大阪のデザイン・センターにおいて織物のデザインをどうするかというようなことも、一方に考慮していきたい。同時に一方から申しまして、混織するということがまた非常に大事な点だと思います。これは絹だけの純絹ということよりも、ほかの繊維との混織をするというふうな点も研究する必要があると思います。これはイタリアといわず、どこからでもできるだけそういう方面の専門の技術者を導入いたしたい、こう存じておるわけでありますが、これは今おっしゃる通り、向うの連中は自分の秘密をとられるということのために、なかなか出したがらないわけであります。それを政府から言うていって果して出すだろうかということも問題でございますが、できるだけあの手この手を使って、あるいは政府がやった方がよければ政府がやるというようなことで、今通産省としても考えておるわけであります。
  144. 中澤茂一

    中澤委員 どうもわれわれ農民の関係から通産行政を見ておりますと、どうしても農産物の輸出に対しては通産省が非常に消極的である、あるいは場合によればほとんどやっていない、こういうふうに見える。たとえばソ連貿易の問題にいたしましても、現在カリの五万トン輸入の話し合いを進めておるのは、私の方の長野県経済連とソ連大使館とが進めておる。それの見返りとして本県のリンゴを送り出してやろう、あるいはジャガイモを送り出してやろうかというようないろいろな交渉を進めておる。通産行政全体を農林関係から見渡しておると、どうも農産物に対しては、第二義的ならいいが、第五義的くらいにしか考えていないのじゃないか、こう思うのですが、大臣はどうお考えですか。
  145. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説は、私はごもっともだと思います。従前は単に生糸といわず水産物あるいは農産物の輸出につきましては、農林省は手厚い保護を加えております。通産省もこれに対しては非常な関心を持っておるわけでありますが、早い話が、農産物は二人の親があるわけです。二人の親があるから、一人の親がいつかめんどう見るだろうからというので、両方がかえって見られないというふうな結果もあると存ずるわけでありますから、今後は農林省と通産省とはよくその間の連携をとって、そして両方が力を合してこれをやっていくというふうに持っていきたい。この問題につきましては、私は痛感しております。これは今後十分農林大臣とも打ち合せまして、また事務的にも折衝して、両方が手を携えて、二人の親が一人の子を十分よくするということにつきたいと思います。両方がどちらかやるだろうというので、両方から見られないというような結果になっておることを痛感しておりますから、その点十分心得たいと思います。
  146. 中澤茂一

    中澤委員 大臣がそうお考えならどうですか、二人の親を一人にしようじゃないですか。農産物の輸出に関する限りは、行政は農林省一元化をとる。そうして二人の親がどっちか見るだろう、こっちが見るだろうからじゃなく、農産物輸出に関する限りは、農林省の中に農産物の輸出の部門を設けて、これにやらしたらどうですか。
  147. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 本来から申しますれば、生産に関する範囲におきましてはこれは農林省が十分めんどうを見る、少くとも輸出貿易ということになればこれは通産省が見るというふうな形式で進むことが正しいと思っております。けれども、御承知のごとく、生糸のごときは従前日本の最大輸出品として、従来から農林省が手厚い保護を講じておったわけであります。そういうようなことの伝統があるものでありますから、にわかにこれを変えるということはどうかと思いますが、その点やはりよく虚心たんかいに今後話し合って進めたいと思っております。
  148. 中澤茂一

    中澤委員 どうも大臣までが何か縄張りかセクショナリズムがあるような感じを受けるのです。少くとも大臣は通産行政全体をやるんだから、農産物は農林省に離した方がいいとなれば、閣僚が話してお離しになったらいい。二人の親で農民をあっちこっち迷わせないで、これは農林省に一元化してしまう。ところが今までのいきさつを見ると、ジェトロの問題にしても、逆に通産省が全部巻き上げるという形です。そして、今度は巻き上げていって、あとは第五義的にしか農産物を見てないという形が端的に出たのが、私は生糸の問題だと思うのです。だからそのジェトロについて、一体農産物に対してウェートを通産大臣はどの程度まで置くお考えですか。
  149. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはもちろん輸出品としての将来性なりと考えまして、ジェトロとすればどれが何だ、農産物であるとかあるいは鉱産物であるとか、そういうふうなことにとらわれないで、十分一視同仁にこれを持っていきたいと思っております。
  150. 中澤茂一

    中澤委員 いずれ農林委員会でこの問題はじっくり時間をかけて掘り下げなければならない問題がまだ山のようにあるのでございますから、きょうはそういう御事情だそうですから、ちょっと触れてだけおきます。農林委員会へほかの大臣さんにおいで願おうといって出席要求すると、みな農林委員会はうるさくていやだと断わるんだそうですが、今度一つ農林委員会へも御遠慮なく出てきてもらって、じっくりこの問題を掘り下げたいと思うのであります。きょうはその程度でけっこうであります。  そこで大蔵大臣にお伺いいたすのでありますが、九月の七日の日、大蔵大臣は長野県の岡谷市へおいでになった。そこで蚕糸の問題について記者会見で御発表なさっておる。いろいろなことを言っておりますが、結論としては、この中で、百五十億は夏秋蚕を含めたものだ、こういう御発言をなさっておる。百五十億という春繭措置というものは、夏秋蚕を含めたものなんですか。
  151. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 九月の上旬ですか、岡谷市に参って記者会見をしたことはございます。同時に、どういう話をしたか、その記事通りではないと思いますが、百五十億は、春繭の対策として措置したということを申したはずでございます。ただ、その際に、春の生糸に対する対策を立てますが、同時に、生糸として百億、繭として五十億というものを就任早々出したわけでございます。当時から予想される夏秋蚕というものに対する対策は、別途話し合ったつもりでございます。その記事そのものに夏秋蚕をも含めての百五十億と出ておったとしたら、これは私の真意を伝えたものではございません。
  152. 中澤茂一

    中澤委員 この九月七日というのは、われわれ農林委員会としては、休会中もずっと続けて、七回にわたり、繭糸、酪農審議をやっておるのです。この当時まだ農林大臣には何らの見解もなければ、何らの対策もなかった。そのとき、あなたがこういうことをおっしゃったから、自今私は、農林大臣はあなたであると考えておるわけです。三浦農林大臣はこのごろ若干ノイローゼぎみでございまして、これはいかにお話をしてもとても話にならぬもので、実は九月の二十九日、十月の九日、十九日、二十一日、二十七日、この五回にわたって大蔵大臣の出席要求をしたわけであります。あなたがおいでにならなければ、もはやだめだということで、これは与党の委員諸君も一致した意見なんです。そこで要求をしても、あなたは拒否して出てこない。これだけの要求をしたら、あいそにも一回くらいは出てくるべきだと思うのです。なぜおいでにならぬのか、その理由を明らかにしていただきたい。
  153. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大へん失礼したようでございますが、私別に農林大臣ではございません。大蔵大臣でございます。どうかその点を誤解のないように願います。  今お話しになりますように、たびたび農林委員会に出てきたらどうかというお話を伺ったことはございます。別に拒否したわけではございませんが、そのつど何らかの故障が実はあったように思っております。そうして、その故障をお話しいたしまして、それなら今回はよろしいというようなことで、次々に延びて参った。別に拒否するつもりは毛頭ございません。御了承願います。
  154. 中澤茂一

    中澤委員 そうすれば、十九日の委員会のことを覚えておりますが、この日あなたは朝大蔵省へ出かけておるのです。その後与党の理事諸君が連絡した。ところが、どうもどこへ行ったかわからないと言うのです。一体官房や大蔵省のあなたのおつきの人が、どこへ行ったかわからないと言う話はないでしょう。これは明らかに拒否ととったのです。一体何か特別な御理由があって行ったのか……。
  155. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 十九日とおっしゃるのは、今月の十九日のことでございましょうか。
  156. 中澤茂一

    中澤委員 九月です。
  157. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 どうも私記憶がはっきりいたしておりません。私の耳に入っている場合と——あるいは秘書官その他が大臣が今見つからぬということを申したことがあるかもわかりません。もし私が拒否したというようにお考えでありましたら、そういう意思は毛頭ないのでありますから、どうか御了承いただきたいと思います。
  158. 中澤茂一

    中澤委員 当初から申し上げたように、農林大臣にまだ対策も見解もないのに、あなたが九月七日にこういう御発表をなさったのだから、本日はあなたを農林大臣としてお伺いしているので、あらかじめ御了承を願いたい。  繭糸価格安定の問題であるが、一体大蔵省としては、この対策についてどういうお考えを持っているか。
  159. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今実勢力は非常に動いて起る。これはもう御承知通りだと思います。今年の春繭当時の実勢力等から見ますと、価格を維持することが非常に困難な状況にあったと思います。需要を喚起するいろいろの方法をとりましても、また外国市場に対するいろいろの措置をとりましても、当時あの価格を維持することは、需給のバランスの上から見て、非常に困難ではないかということを実は感じたわけでございます。私就任早々ではございますし、皆様方からの強い御要望もございました。ことに選挙の直後でございますし、いろいろ約束している事項もあるやに伺いましたので、今まで前例のないほど多額のものを買い上げまして、当時価格の安定に協力をいたしたのでございます。その九月七日の新聞記事にどういう方策が出ておるかわかりませんが、その当時養蚕団体その他等と話し合いましたところでは、こういう状況では、夏秋蚕においてまた価格維持の困難な場面が生ずるだろう、そういう場合に一体どうするか、やはりもう少し減産というか操短することによって、需給のバランスをとるべきが筋ではないか、そういうことは一応了承される、こういう民間の意向でもありますので、そういう措置がとれるとするならば、春繭について特段の措置をとろうということで、特段の措置をとったわけでございます。この百五十億の支出をすることにいたしました際の民間団体との話し合いの結果を岡谷において話したように思っております。大蔵大臣にあらずして農林大臣と言われることは、私ちょっとふに落ちない。春繭の対策を立てる際にそういう意向であることは——特別国会におきましても、夏秋蚕については減産計画を立てる、こういうことが言われておりました。その点は非常にはっきりいたしておった、かように私は考えております。
  160. 中澤茂一

    中澤委員 大蔵大臣は経過を知らないからそういうことを言っておるのです。民間が二割生産制限をするという自主的な話し合いのもとにということはうそなんです。あなたの耳へうそが入っている。これは政府が二割制限しなければいけないといって、農林省が割当てをやったのです。民間が自主的にこれをやったものではないのです。ところが、二割制限というものは実際やったのです。政府は今になれば二割制限をやって、——あなたもここにそういう放言をしておるので、民間がやると言ったのだけれども、やってないから、あとは民間が悪いんだ、養蚕団体が悪いんだ、農民が悪いんだという文句を言っておるのです。しかし、それは民間が自主的にやるのじゃない。公聴会を開きまして、参考人として全養連の田原君、梶原参事など五人の参考人を呼んで、一体この経過はどうしたと言ったところが、政府が二割制限をしろということで、割当表を作ってよこしたのだということをはっきり言っておる。だからその辺はもう少しはっきりしてもらいたいのです。
  161. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 民間団体が自主的に二割制限をしたということを私申したわけではございません。民間との話し合いの上ということを申しております。それは力の関係で、民間は押しつけられたと言われるかわからないし、また同時に民間の方のうちにも、こういう状況で需給のバランスはとれない、こういうことをお感じになる向きもあります。ずいぶん無理だけれども、そうしようかというお気持もあったかと思います。とにかく全然一方的な政府だけの意思でないということだけは言えると思います。
  162. 中澤茂一

    中澤委員 それは無理とか無理じゃないとかいう問題じゃなくして、民間がそれをのんだという理由は、民間といっても全養連ですが、養蚕団体が、県養連合会長会議を開いてのんだというのは、政府は十九万円をことしは維持してくれるという信頼があったからのんだんです。それが現況はどうですか。
  163. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そこで、今の減産というか、需給の状況が問題になるのでございます。計画通り果していったかいかないか、今なるほど種紙は二割程度落した。しかしお話を聞いてみると、ことしは非常に天候に恵まれて、桑のできがよかったとか、種紙を減らしたので非常に蚕をかわいがったとか、そういう意味で、繭がよけいできた。こういうわけで、私が申しますのは、別に種紙を二割減らすということじゃない。生産される繭の量が二割程度は減らなければならない。そういうことで初めて需給のバランスがとれるということで、これでは計画がそのまま実行されなかったということで、今日二割の数量が果して減産されているかどうか、これはいろいろの見方があるようですが、あるいは九分、あるいは七分といわれ、減産の数量も一割以上にはもちろん達してない、こういう状況であります。そういたしますと、需給についての計画のアンバランスというものがそこに出てくる。こうなって参りますと、それはなかなか価格維持ができるものではなく、今日のような非常な混乱状態を引き起した、そういうことに相なったと私は考えております。
  164. 中澤茂一

    中澤委員 それはだから責任の問題になるのですが、これは政府が明らかに見通しを誤まったということでしょう。政府は見通しを誤まった。政府はそして二段立てでしぼったのですから、農民には責任は何もない。種の二割の廃棄をやりました。あとは製糸工場の生糸の生産量で二割しぼろうという、二段立ての二割をやっているのですから、それだけ政府が強硬に策をとった以上、責任は公平な目で考えれば、政府にあると思いますが、どうでしょうか。
  165. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 政府の責任というか、あるいは養蚕家の責任というか、その責任の所在を明確にすることが、あとの処置の面でいろいろ議論があるだろうと思いますが、私どもはこの責任がどこにあろうと、とにかく零細農家なり養蚕家の収入が激減するようなことは避けなければならない、あらゆる方法で価格の維持には協力しなければならない。かように考えております。しかし、その基本的な考え方は持ちましても、国際市場の価格の下落であるとか、あるいは国内における需要が非常に弱い、こういう点からいたしますとなかなか価格の維持は困難な状況になっておる。こういうのが今日まで推移した経過でございます。
  166. 中澤茂一

    中澤委員 しかし、責任の所在云々と私が言うのは、少くとも二割制限に対して、夏秋蚕千四百万貫という見通しを立ってやったわけなんですね。だから、その責任云々ということは、それを完全に実行したんですよ。実行したんだが、あなたがさっきおっしゃるように、天候に恵まれたわけだ。だからそれを実行したということは、農民とすれば、政府は、なかなか佐藤さんは金をよく農民のためには出してくれるから、十九万は維持してくれるであろうという信頼のもとにやったことなんですよ。そうして信頼のもとにやったことが、政府の見通しの誤まりからはぐれたとすれば、当然政府が責任を持って——私は三浦農林大臣にも農林委員会でさんざん言っておる。本年だけは政府が責任を持つべきである。しかも増産計画の年次中じゃないか。いかに経済の事情が急変したとはいえ、そのしわ寄せを全部農民にかぶせ、われ関せずえんでは、あまりにも冷酷ではないか。そうお思いになりませんか。
  167. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 全然ほうっておいたとすれば、まことに冷酷きわまる処置だと思います。しかし、私が先ほど来由しますように、零細農民、ことに養蚕家の利益の確保につきましては、及ばずながら努力して参っておるつもりでございます。問題は、実勢力を一体どこへとめるような努力を払ったかという点に尽きるだろうと思います。ただいまいわれますように、とにかく本年中は適当な価格のところにこれを維持しよう、千四百円に繭を維持しよう、こういうような御議論もあったと伺っておりますが、本来、農民の努力にしろ、あるいは天候に恵まれようが、いわゆる需給の面から見まして、価格が変動することはやむを得ない、こういう実情にある。これは経済の取引の原則と申してもいいだろうと思います。こういう意味からこの実勢力は無視はできない。これを一体どの程度にわれわれの努力によってとめていくかということを実は考えたいと思うのであります。過日もお話をいたしたのでございますが、ただいま三百万貫について千二百円で買う。おそらくこれは今の実勢力から申せば、千二百円というような価格にはならないでしょう。これはやはり千二百円で買うというところに、私どもが、幾ら変動をするにいたしましても、零細農民、ことに養蚕家に、本年の期待等から見て、非常な損失を与えることはまことにお気の毒だ、かように考えまして、ただいまのような処置を実はきめた次第であります。私どもはやはり需給のバランス、供給と需要のバランスを考えていかなければならないと思います。ただいま申し上げるような金額は、不足だとは申せ、今日の実勢相場から申せば、やや高いところで買い上げて、何とかその程度には価格を維持したい。この私どもの努力の存するところも御了承願いたいのであります。
  168. 中澤茂一

    中澤委員 過ぎたことですが、繭糸価格安定法は、大蔵大臣のおっしゃるようなことを申せば、一体何のための法律かという議論になる。繭糸価格安定法を作った当時、あの中に予算の範囲内という文句はあります。予算の範囲内という文句はあるが、とにかく農民の最低繭価を保証してやろう。繭糸価格安定法の議論の過程においては、直接保証という議論もだいぶあったのです。農民の繭だから、直接保証したらどうか。ところが、それは保管その他ロス、いろいろな問題で政府が困るから、生糸で間接安定にしてくれないか。こういう意見であの繭糸価格安定法ができた。大臣の今の意見をそのまま言うならば、繭価格を保証して、当時はえらい勢いで輸出が伸びていた、これは日本の外貨を働くためには、農民をおだて上げて、繭の値を安定させて、うんと外貨を働かせなければいかぬという考え方であれが作られた。そうすると、需給々々ということを大臣は言われるけれども、需給が崩れたらどうなってもいいのかという議論になる。だからそれはちょっと責任のない話だと思う。われわれ社会党としても、決してわからないことを言っておるのじゃないのです。本年だけはとにかく千四百円をいかなる形でもいいから農民にやれ、来年からは具体的に二割なり、三割なり、四割なりの制限をやるのなら、これに対する農林省の指導方針をどう立てるか、助成対策をどうするか、そういうものは通常国会で論議して決定すればいいことであって、本年だけは政府が責任を持てというのがわれわれ社会党としての考え方で、決してわからないことを言っておるのじゃないのです。  そこで問題は、幾らそれを繰り返しても仕方がありませんから、少しあと実のある答弁を願いたい。大臣、お忙しいようですが、実のある答弁を願えれば、十分くらいでも解放いたします。実のない答弁ならば七時半でも八時半でもやります。早くお帰りになりたかったら、実のある答弁をお願いいたします。(笑声)  そこで大蔵大臣に申しますが、一文惜しみの百失いという言葉がある。蚕糸政策は去年から失敗の連続ですよ。もう全部政府が後手々々を引いていくところに問題がある。本年の予算編成のときにあの大騒ぎをしたときは、もはや糸価の低落は必至の勢いだということは明らかにわかっておった、あの当時は私は大蔵大臣でなかったから知らないと言われればそれまでです。去年の下半期からアメリカヘの輸出が六千俵台であったのが半分の三千俵台に、内需の五千俵台も二千俵台に落ちるという月がずっと続いてきたので、このままいけばえらいことになる。そこで私も実はほかの問題で上京したときに、その話を蚕糸局長にして、これはどうしても百億を本年度の通常予算で組まなければ大混乱が起きるぞということで、そういう折衝も主計局長にしてあったはずです。ところがそれを削り削りして、最後は残と合せて四十億というところに失敗の第一歩があった。あのとき百億と組んでおけば、春繭の混乱は起きなかった。ここに政府の責任としての失政の第一歩があった。その次に一体どこでまた失敗をしたかと言えば、春繭の百五十億が明らかに失敗をした。そのときわが党から二百億——これは自民党の蚕糸特別委員からも二百億を出さなければ、夏秋蚕がまた問題になるということは、あなたの耳に入っておったはずだと思う。あのとき二百億をのむなら、今出す五十億をあのとき出しておるならば、夏秋蚕の混乱はなかった。わが党としてはこれに対してどうしても七万俵のたな上げをやって、百三十億をこれにとれと主張した。これは計数から出てくるのです。最後の生産量から明らかに出てくるのです。そしてあとの七十億は乾繭保管の助成と金利、倉敷の助成と、年度末買い上げ資金に回せという要求をわが党としては出した。これはただ何でもというめちゃくちゃな要求じゃない、計数の上に立った要求をしたわけです。自民党の蚕糸特別委員会の諸君とも連日連絡をとって、二百億の線をくずさないということでのんで、党内では認められたというのが、あなたのところでは五十億切ったというところに、この夏秋蚕の大混乱を起したという失敗の問題がある。  そこで今回はどういう方策をとられたかと言えば、あとは知らぬで百姓好きにしろという方策だと私は言いたい。だからこれも一文惜しみをやって百失いをして蚕糸政策そのものに対する見通しが全然なかったということです。それに対してはあなたが当時大蔵大臣じゃなかったですが、一体来年度も蚕糸対策について今具体的にどうお考えになっておるか、これは何らかの構想がないと、もう予算の概算請求が出て、お宅の方でもなたをふるい始めている。しからば蚕糸対策そのものに対してどういう方向をとっていくかということが明確にならなければ、また来年も農民に不安と混乱を与えるでありましょう。それについてのあなたの予算編成上の蚕糸政策についてのお考えを伺いたい。
  169. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 基本的な問題といたしまして、生糸対策というものを樹立しなければならない時期に来たと私は考えます。ただいまの買い上げ資金そのものの多寡についても、いろいろの御批判があろうと思います。しかし私どもが今情報として握っておりますものから考えてみますと、必ずしも非常に下落するというか、先行きがまっ暗だというふうに考えるべき筋はないように考えます。製糸業界、製糸家あるいは輸出業者あるいは生産の面を担当される養蚕家、こういうものがもっと三位一体になると申しますか、あるいはまた外国の商社との提携であるとか、いろいろ工夫をしたり、先ほども高碕通産大臣に対していろいろ御意見を述べておられましたが、もっと織物としてこれを伸ばすとか、いろいろのことを考えるべき段階に実はきておるのじゃないかと思います。アメリカ筋の話によれば、やはり価格が変動することが一番困る、価格の安定の方が第一である、ぜひとも政府としてはそういう面に特に意思を用いなければならぬ、これはもう一致した意見のように考えるのであります。農林大臣としての三浦君も、そういう意味では非常に苦心をされておる最中であります。私どもも農林省と大蔵省とで話し合いまして、過日ようやく閣議決定に一応持って参りました線は、今回夏秋蚕について三百万貫、千二百円でこれを買い上げるという措置、さらにまた来年度に対しましては、減産の計画を進めていく。桑園の整理といいますか、これを相当整理していく。それから第三の問題としては、もちろん政府も価格安定に対する積極的な支持をいたしますが、民間団体におきましても資力を一つ持ってその機関が新しいものを作って、この民間機関による自主的な価格安定方策を講ずべきではないか。一応とりあえずの案といたしまして、三つの基本的な考え方を実はいたしております。  ただいま申し上げます三百万貫の買い上げということにつきましては、これは具体的にきまっておるわけでありますが、その他の二つの問題、桑園の整理並びに新しい機関を設置するということにつきましては、なお具体的に内容を検討する段階になっておると考えます。しかし、私がこれを考えてみますのに、一部においては中共生糸の圧迫が非常にあるというような話も聞きますけれども、外国筋の話から見ますならば、今日これに基本的な対策を講ずることにより、また価格を安定させることができますならば、今年あったような混乱も起さなくて済むであろうし、またかような混乱を重ねていくようなことがあっては相ならぬ。この点ことに養蚕家の立場にある農家の実情から考えてみますと、これはいわゆる零細農家が非常に多いのであります。それらの方々の収入に激変を与えるようなことは、政府といたしましても、また農林省当局といたしましても、農業政策の根幹から申しまして、また繊維の今後のあり方から考えましても、ほっておくわけには参らぬ。こういう意味基本的に取り組んでいく、こういう考え方であります。
  170. 中澤茂一

    中澤委員 三浦農林大臣非常に苦心しておるということを今大蔵大臣が言われましたが、金を出す方は大蔵大臣だが、あなたは今どういう御苦心をなさって来年の蚕糸対策予算要求をどれだけ確保し、そうしてどの線で来年は糸価安定をはかるのか、こういう決意はもう持っておられると思いますが、その御苦心のほどを御披露願いたいと思います。
  171. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 まず第一に、養蚕の合理化、健全化をはかりたいということであります。これは先ほど来大蔵大臣も仰せになりましたが、すでに養蚕家の方におきましても、桑園の転換であるとか、改植であるとかいうようなことがだんだん出て参っております。これらは十分にこちらでもめんどうを見て、養蚕の合理化に協力していきたいと思います。  第二の問題は、先ほどいろいろお話がありましたが、われわれといたしましては、従来養蚕家の方では繭を売る場合には、売り手といたしましていわば非常に力がない。今日組織もなければ団結もない。同時にまたそれを裏づけるところの経済的な力もないものでありますから、今度は養蚕家を中心とし、同時に関係のものを網羅した一つの新しい機構を設けまして、この機関で共同出荷であるとか、また共同乾繭保管等に対する強力な経済的方策をやる、そういうような方策をするために一つの法人を作りたいということでございまして、さらにまた新しい糸価の安定的なものが出ましたならば、これを基礎にして改訂しました糸価の支持価格制度をとるということにして、これに応じた予算の編成をいたしたい。そうして改訂した線に沿うて養蚕家も保護し、そうして日本の糸価の安定をはかりたい、かような考えでおります。
  172. 中澤茂一

    中澤委員 それは農林大臣の言うことはおかしいんだ。だからさっきノイローゼだといったけれども、失礼だけどほんとうにノイローゼだ。僕はそういうことを聞いているんじゃないですよ。あなたにお聞きしたことは、来年の蚕糸対策としては糸価の安定をどこにはかるかということ、千五百円にするか千四百円を守るのか千三百円にするのか、それが一点。  いま一点は、それを守るために需給状況から見て、どれだけの金を佐藤大蔵大臣の方からもらわなければいかぬか、この二つをお聞きしているんですよ。
  173. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 支持価格の新しい決定は今即断するわけには参らぬと思いますが、現在の十九万円という高水準は維持できないと思います。しかしこれを下げるということは必ずしも得策ではないのでございますから、一つの健全な価格を選定いたしたい、これが第一点であります。従いましてこの価格は仮定を加えるわけには参りませんから何ですが、現在の糸価を見ておりますと大体十左万七千円前後にだんだん高まってきておる、これをさらに高めた水準にし、それを最低の糸価とする場合には、それよりも低めなものににらんで、その場合にはこれを支持して一つの安定のものに持っていきたい、こういう構想でございます。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  174. 中澤茂一

    中澤委員 だからその構想はいいんですよ。構想はいいんだけど、またここで後手を引くとまた去年の二の舞を踏むことをおそれているんですよ。むしろどうやって安定するかという基本的なものをあなたがお考えになって、そうしてこの安定をするためにはどれだけの安定資金が必要だ。今あなたの話を聞いていると投げやりということなんです。だからあなたに幾ら聞いてもだめだからあなたに言わないと言ったが、農林大臣でおいでになれば言わないわけにはいかないが、あなたの言っていることは政策じゃないですよ。政策としてこうするんだという基本的なものがないと、この予算編成で——昨年百億組んでおけば春繭の混乱も起きなかった。それからこの際臨時国会で二百億組んでおけば問題がなかった。こういうふうにいつも後手々々を引いているから、むしろ私はあなたに教えているんですよ。だからまた後手を引く轍をこの予算編成であなたが踏んだならば、来年また混乱しちゃうんですよ。だからそれは下げるんなら下げるではっきり十六万円に安定させるんだ、こういう基本的な信念があなたになければいかぬですよ。その信念の上に立って十六万円に安定させるなら、千六百万に対してどれだけの需給状況のバランスが出てくるから、どれだけたな上げになるから来年度の生産量を制限したものと見合って、どれだけ資金が必要だということを大蔵省の方へあなたの方から話をしなければだめなんです。だからその基本というものをあなたはどこにお考えになるかということです。  時間がなくてあと早場の問題がありますし、また山のように問題があるのだが、あなたは三百万買い上げしたという基礎は一体どこにあったのか。これでどこで安定するという確信をお持ちになったんですか。三百万という数字の基礎は、あなたの腹の中にこれだけ買い上げればここに安定するであろうという、たとい仮定でも何らかの信念があって三百万という数字が出たと思うんです。どこに基礎があったんですか。
  175. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 三百万を市場からたな上げしますと、ここに需給のバランスがとれる。従いまして十五万円ないし十六万円程度で糸価が安定できる、こういうめどのもとにいたしたのでございます。
  176. 中澤茂一

    中澤委員 だからそれであなたは十五万ないし十六万で安定ができるという考えなんですね。それじゃその十六万円という線にあなたは安定するという確信と信念がおありですか。
  177. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これを直ちに支持価格にする、価格を決定する段階ではございません。しかしこれをにらんで最低の支持価格を決定し、所要の予算は組みたい、こういう考えであります。
  178. 中澤茂一

    中澤委員 農林大臣にはもうさんざん言ったんたが、これじゃとても格好がつかないんです。大蔵大臣に伺いますが、一体三百万買い上げすればどこで安定するという大体のめどを持って政策としてやっているのですか。
  179. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 三百万貫たな上げすることで需給のバランスが一応とれるという実は見当でございます。この買い上げを、なるほど糸価安定法といいますか、価格安定法があるから、その価格安定法の十九万というもとの数字がありますが、今の実勢力が非常に下っております。おそらくどのくらいにごらんになりますか、私どもあの相場等から見れば千円が適当じゃないか、あるいは千百円になる、こういうような十五万を割っておるような状況すら出てきた当時の様相から見ますと、その実情そのものは非常に悲観的状態だったと思います。先ほど来いろいろお話が出ておりますように、今回の買い上げの千二百円で決定いたしますにつきましては、これは一体あの相場そのものを基礎にして最低のところで価格をきめるという考え方は毛頭いたしたつもりはありません。これは先ほど来御指摘になりましたように、本年の養蚕家に対しては、特に私どももこれが収入が激変しないようにというところで、千二百円程度にこれを買いますならば、大体十六万円というような価格が一応考えられるのではないか。これは相場の面から見ますと、やや高いように思いますが、今の実情なり本年の夏秋蚕ということを考えますならば、少くともこの程度の支持といいますか、支援は政府としても当然すべきではないか。農林大臣自身からただいま価格を云々することは非常に問題だと思います。ことに今の糸価が絶えず変動しておる際に、一体幾らから幾らの間の価格安定帯を考えるかというお尋ねは、今の状況では私は無理だろうと思います。しかし私どもは今申し上げますように貫当り一千二百円で買うといたしますれば、これは糸に換算して直ちに金額がくろうとにはじき出せるところであります。そういうところをまず政府はねらっておるだろうということは容易に想像がつくことだろうと思います。しかし基本的な法律そのものの価格改訂、十九万ないし二十三万というものを今後どんなに改訂するか。これは今回の処置をとった後にしかるべく私ども考えなければならぬ点だ、かように思っております。
  180. 中澤茂一

    中澤委員 問題は山積しておるのですが、時間がもうないようですから、簡単に答弁を願います。  一体本年政府が一割制限をやって、汽車で歩いてごらんになればわかるように、至るところに桑が繁茂して残っておる。政府は種繭の買い上げで種屋には、一千九百円の補償をしたのです。そうして農民には二割を制限したための残桑処理について補償措置を少くとも今までには考えていない、とっていない。きょうこれからあなたの実のある谷弁をというのは、それじゃ何とかこのくらいしましょう、こういう御答弁を私は願いたいのです。
  181. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今お尋ねの点は、私にどうもぴんとこないのでございますが、種屋に補償したというのはどういうことですか。
  182. 中澤茂一

    中澤委員 二割切った種繭を買い上げたのです。
  183. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回生産いたしました三百万貫を千二百円で買うというところが今の養蚕家に対する一つ対策であり、同時に残りの繭の値段を一定のところでとめたいとう一つの現われとして、その面の金融措置等も考慮いたしたい、こういうように御了解願いたいと思います。
  184. 中澤茂一

    中澤委員 時間がありませんから、まだ重要な問題があるが、とにかく残桑補償は、大蔵大臣考えなければいかぬですよ。種繭は廃棄した。二割に対して貫二千九百円で政府は買い上げたんです。種屋は補償されたんですよ。ところが農民の方の残桑というものに対しては全然補償措置がとられてない。養蚕農民としては、政府は無責仕だと非常に憤慨しておるのです。だからこれは、今ここであなたと幾ら議論をしても結論の出る問題じゃないのですが、二割制限したために桑が残ってしまったんですね。その残り桑に対する補償措置です。
  185. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今後桑園の廃止ということを実は考えて参りたい。そういう場合に桑園整理に対しましては適当な処置を考えたい、かように思っております。
  186. 中澤茂一

    中澤委員 そこでもうほかの問題は一切飛ばしまして、政府は、養蚕農家のため自主的に繭価格安定を行うために、機関の設置について必要な措置を講ずる、こういう閣議決定をしておりますね。そしてなおその附則みたいなもので、その閣議決定は両大臣に委任したという形になっておりますね。一体この必要な措置を講ずるというのはどういう措慣を講ずるのですか。
  187. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 私からお答えいたします。立法的の措置と財政的な措置、この二つを含めております。
  188. 中澤茂一

    中澤委員 これがまた後手を引くのですよ。現在三百万の買い上げである程度十五万六、七千円へ来ておるのです。糸価は十六万台へ迫ってきておるのですよ。それをここですぐやるならやるで、すぐこういう調整機関を作って、そこでコントロールしない限り、また糸価は下ってきますよ。それをきょうやるかあしたやるか、一日によってこれはまた大混乱が起ってくるのです。現にもはや千二百円という政府の数字か出ても、あとの千三百万貫に対する団協が各県でもめているのです。製糸と養蚕団体が、千二百円なんか出せるか、乾繭保険でそれを差し引けとか、いろいろな理屈をつけて今もめているのですよ。それでまた政府がここで後手を政策的に引かないように、すぐその必要な措置として、たとえば二十億なら二十億大蔵省から出しましょう、そしてその二十億を基礎政府補償を五倍なら五倍つけましょうということになるならば、百億の資金でその調整をやるといえば現在の糸価維持が可能なんですよ。これは今必要な措置を緊急にやらぬとまた大へんなことになる。だからそれに対してどうです。両大臣に委任されたような形になっておりますが、大蔵大臣、農林大臣お二人の間で、どういう形で幾ら出して、それからこれに対する補償をどれだけにやって、総額どれだけの資金によって調整をさせようという構想がもうあっていいはずなんです。これがなければ、この出した五十億がまた一文惜しみの百失いになってしまうのですよ。どうですか。その二人から答弁を願いたい。
  189. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 取り急ぎ決定いたしたいつもりです。
  190. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今農林省でいろいろ考えておられると思いますが、新しい機関を一体どうするか。今言われるように二十億出せというお話も伺っておりますし、二十億にして五倍というので百億ということも言われます。十億で十倍というのも考えられる。いろいろありますので、相当多額の資金融資方法の可能な処置をとらないと、せっかくのものを作りましても効果が少いだろう、農林省において具体的な案、とりあえずの処置をして、あるいは来年度予算編成の際に、資金そのものはまた動かしていいことだと思います。これは御指摘通りにできるだけ早く動き出すことが望ましいと思います。
  191. 中澤茂一

    中澤委員 これは至急にやらぬと、せっかくここまで、今十五万六、七千、十六万台に迫る糸価で維持しているのです。今三百万買い上げて、仏作って魂入れずになるのですよ。一体この期間の設置についての構想も、聞いてみるとまだあまりはっきりしてない。農林大臣はさっそく善処しますなんて、そういう白ばくれたことは言わぬ方がいいですよ。さっそく善処するなら、もはやこの構想はこうこうこういうことになっているのだ、大蔵大臣は二十億、こういうふうな話し合いになっているのだというようなところまでやったら、あなたの善処しますということは私は認めますよ。さっそく善処しますと言ったって、構想さえまだまとまっていないじゃないですか。そういう無責任なことではだめですよ。私はこれは政府に教えているんですよ。なぜこれを早くやらないか。臨時国会から私はどのくらいあなたに教えたか。それをいつもその手を次々打っていかないために、混乱から混乱を続けているでしょう。  もう時間がございまませんから、蚕糸の問題はまたいずれ農林委員会で——これは大蔵大臣必ず出てきてもらいたい。あなたが農林委員会へ出てこないと、三浦農林大臣と百万たらものを言ったって話がつかないのだから。今後は大蔵大臣は農林委員会へ必ず出てもらいたい。そうすると政策的に先手さえ打てば、金は少くて効果の上る方法が幾らでもあるんですよ。歴代大蔵大臣というものは非常に農政を軽視しておると私は思う。——軽視してないと首を振ったが、軽視してなければ予算削減の状況を伺いたい。昭和二十八年は当初どういう農林予算の削減をやってきたか。明らかに軽視しておる。去年が千四百億といって、千億台を乗っけたと自民党の農林関係議員諸君がわしに大きな口をきいていた。内容を洗ってみればそうじゃないじゃないですか。歴代大蔵大臣というものは農民の実態がわからぬから軽視しておる。あなたは、零細農などと言うところをみると、農林予算の編成に対してだいぶ理解があるようだ。あなたの目は非常に大きくて澄んでおります。その目の大きいように、一つ農林予算に対して少し財布の口を広げましょう。どうですか。農林予算編成上の心がまえをちょっとお聞きしておきたい。
  192. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど農業政策基本についてのいろいろなお尋ねもございましたし、食糧政策についてのお話もございました。私自身が実はいなかの出でございます。私自身の方があるいは百姓に近いかもわかりません。そういう意味で、私農村の実態には十分気をつけておるつもりであります。もうすでに三十三年度予算は一千億を上回る予算が実は編成してある。こういうところで農民に非常に期待されたような予算額になったと実は伺っておるのであります。来年度予算を編成するに当りましても、来年はなかなか困難な事情が多いのでございます。大へん自然増収が減るとか、あるいはまた剰余金が少いとか、あるいは新しい公約したものがあるとか、非常に予算編成で困難なものが今日から予想されるのであります。しかしわが国人口の半分を占める農民、さらにまた経済において最も強い力を持つ農村経済、こういうところにも意を用いまして、そうして予算編成に当りましては大いに工夫をしてみたい、かように考えております。
  193. 重政誠之

    ○重政委員長代理 中澤君に申し上げます。お約束の時間がそろそろ参りましたから結論を一つお急ぎを願います。
  194. 中澤茂一

    中澤委員 それじゃこれはもう結論で、蚕糸の問題は後日委員会大蔵大臣にも伺ってやるといたしまして、あと酪農の問題も実は重大な段階にきている。時間さえ許すならば、酪農の基本的なことについて大蔵大臣の見解も伺わなければならぬのですが、時間がありませんからやめます。第四期の早場二百円の問題がきょうで締め切りなんです。ところが御承知のようにこの早場米そのものの根本的な考え方、これは大蔵大臣よりむしろ僕林大臣は、早場米の時期別格差の奨励金に対してどういうお考えなのか。
  195. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 早場米に対しまする奨励金等の問題でございますが、これは従前の米の沿革的な理由もあります。すなわち従前でございまするならば、端境期に早場米を市場に出すということが重大な要素になって、早場米の値というものが出て参ったのであります。同時に統制時代になりましても、やはり端境期における米の操作上必要なものでございますから、早場米の奨励をいたしまして、集荷に努めて参ったのでございます。現在の段階にいたしましても、やはりこの点は必要でありますので、そこで数段階を設けまして、奨励金等を区分けをいたしまして、そして集荷の十全を期す、これがつまり現在の早場米でございまして、食管の運用上から見ますならば非常に大切なことでございますので、その適正を深く期しておる、かように考えております。
  196. 中澤茂一

    中澤委員 一体日本の今の政府に——今の政府ばかりじゃない、歴代政府ですが、私は食糧政策というものはなかったと思う。食糧政策があるならば、今ごろはもう日本の食糧自給体制というものは八割完成しているはずです。そこで食糧政策全体からいって、豊年だ、豊年だといって新聞で太鼓ばかりたたいて、消費者に一体どれだけの恩恵を与えておりますか。千五百万石以上のやみ米を今全国に横行さしておいて、これで食糧政策と言えますか。私は食糧管理事務はあると思う。しかし日本の現在の状態において、食糧政策はないという考えを持っておる。もしほんとうに食糧政策というものがあるならば、いかにして——本年などはおそらく集めるならば、私は大体五千万石近い数字はいくと思う。そうなれば現在の十五日配給を二十二、三日の配給まで引き上げられるんです。だから、そういうことについては、いかに米を集めるか、今大臣は早場米は食いつなぎを早く集めることだ、こういう御答弁である。これも私はわかっておる。しかしながらここでこれらを契機にして、一つ大きく日本のやみ米を一粒ものがさないという食糧政策を立てる段階に来ていると思う。それについては農民がこの豊作に一体どれだけ出すかという施策をアドバルーンを上げてやってみなければいけない。そのアドバルーンを上げて、どれだけ農民が出してくれるかという施策をやるには、今年ぐらい時期に恵まれたときはないと思います。しからばそれにはどういう施策があるかといえば、まず第一点は、この早場米奨励金の四期分のきょうの期限を五日なり、十日延期してみるということが一つの手なんです。これが一つの手。これに対して災害地の、特に東北関係の農民は非常に陳情に来ておる、困る。御承知のように、宮城、岩手などは一 〇%、二〇%という去年対比の数字しか出ていない。それでどうにもならぬから一つ何とかしてくれというのが、現在農民の非常に強い要求になってきている。だからこれに対して農林大臣からお聞きしても仕方がないから、大蔵大臣どうです、あまり国民の喜ばないような警職法なんというああいうよけいなものを出さずに、この際善政を施してやろう、よろしい早場米奨励の時期は本日であるが、五日まで全国延ばしてやろうというような御答弁はどうですか、大蔵大臣
  197. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 まず私から申し上げます。ただいま全国五日延ばせ、こういうことでございますが、ただこれを延ばしただけでは、五千万石等の集荷はとうていできないことはお説の通りです。同時に端境期におきまする早場米の集荷でございますが、やはりわれわれは現行の食管制度を運用するに当りましては、御承知通り一定の制約を受けているわけです。予算上の関係あるいはその他の制約を受けているのでございます。ところが今回の早場米の集荷は非常に順調でございまして、すでに百六十二万トン、石数にいたしますと、千七十二万石程度はすでに集荷を終っています。さようでございますから、操作上からいきますと、この点もおおむね所期の首的を達しておる、こういうことでございます。しかしながら同時にまた率直に申し上げまして、一部非常に悪いところもございます。これらは若干の考慮はいたすべきものと思いますけれども、現在の食管の管理上から言いまして、これをのんべんだらだらに延ばすわけに参りませんから、一応われわれといたしましては整理をつけまして、実施をこれで打ち切りたい、こう考えておるような次第でございます。
  198. 中澤茂一

    中澤委員 それは食管会計の管理上、管理上と言うけれども、食管会計の管理上、一体これだけ赤字が出ますか。私は出ないと思う。出ないということは、ことしは非常に気候が不順であった。そのために、御承知のように食管会計の三等基準になっておるが、三等以上にとまる米なんというものは、そのパーセンテージを出したら知れたものなんです。そうすると、この面で食管会計の中で浮いてくるものがあるのですよ。食管会計の管理上だ、管理上だということは、私は赤字が出るから困る、こういう意味に理解しているのですよ。それならば、三等以上の、基準以上の一、二等米の出方というものは、去年のパーセンテージをとってみなさいよ、問題になっていないのですよ。そうすると、そこで食管会計の中では黒字が出てくるにとは明らかなんです。みな三等以下なんだから。それがまず一つ私が食官会計の管理上余裕があると言う理由。それから一期、二期がああやって地域指定をやって延ばしたけれども、あれだってあの出方は、延ばしただけで、大した延びを示していないでしょう。この面の、一期、二期の八百、六百円の格差奨励金の黒字があると私は見ておる。この二点を考えるならば、食管の管理上早場米のきょうの期日を全国的に延ばすことはできないという理論は私は成り立たないと思う。どうですか。
  199. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 第二回目の十月の十日の分は、これは延期されたことは御承知通りです。いわゆる早場米の地帯に対して五日間、中旬のなには三日間、これは早場米地帯のなにを延長いたしました。これによって相当の量が出て参ったということも事実であります。同時にまた、このために、品等格差のために余裕が生ずる、こういうお見込みでございますが、西南地方の方におきましては、ことしは非常に米の質がよろしい、こうこいようなことでありますから、そうそう中澤君の計算する通りには参らぬと思う。現に、これらの延長をしたために、予定のよりは相当な質も出ておるのでございまして、この制約下におきましてはそうむやみに増額できぬということも御了承を願いたいと思うのでございます。
  200. 中澤茂一

    中澤委員 そういうことをおっしゃるなら、西南暖地がよくて、一、二等が去年より歩どまりよく出たかどうか、そういう数字をこまかに並べて、こういう状況で食管管理上赤字になって困るのだという理由を明らかにしてもらいたい。
  201. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現在早場米のために予定しておりまするのは六十二億程度でございますが、これをすでにはるかに超過しておりますから申し上げたような次第でございます。
  202. 中澤茂一

    中澤委員 六十二億というのは、あなた何言っているんです。それは今まで出す——赤字の問題じゃないんた。ここに数字が明らかに出ているけれども、赤字の問題じゃないのですよ。これはきのうまでの、二十日締め切りの第三期賢い上げ……。
  203. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 六十二億は早場米奨励金の予算でございますから、それを申し上げたわけでございます。それを延長等によってすでにオーバーしている、こういうことであります。
  204. 重政誠之

    ○重政委員長代理 中澤君に申し上げますが、結論を急いで下さい。
  205. 中澤茂一

    中澤委員 これは結局農林大臣に幾ら言ったって効果のないことは最初からわかっておるのだが、しかし主管大臣だから、お義理に私は聞いておるのです。  そこで大蔵大臣は、ここで少し、どうです。善政を施すという御意思かあるかどうか。
  206. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま農林大臣から言われますように、この早場米奨励といいますか、第四期の日数をさらに延長することは私は反対でございます。これは初期の一期、二期という時期でございますれば、あの時期的な格差を設けましたことも意味があるのでございますが、最終期の第四期、とのことを考えてみますと、また同時に今日までの納入の状況等を考えてみますと、総体から見まして非常に数量的にはふえております。先ほど来お話のように、この食糧の問題についても基本的な考え方がございましょう。ことしの米価を決定する際におきましても、時期的格差をこの程度設けることの可否につきまして、いろいろ議論があったと思うのでございます。私どもはやはり急速にこれを変更することはあまり当を得たことじゃないと思いまして、一応一期、二期、三期、四期、こういうように分けて参ったのでございます。これが非常に端境期なり早期供出に支障を来たしておるというような状況でありますならば、もちろん考えなければならないと思います。そういう意味で過去において、今回も相当五日ないし三日というような延長をしたのでございます。先ほども延長はもうこれより以上反対だという声もございますので、私どもは、第四期の問題でございますだけにもうこれより以上は延長はしたくない。しかしながら、おそらく農林大臣といたしましては、今日までの供出状況を見まして、非常に供出の悪いところについては特段の考慮を払いたい、こういうことを言っておられるのだと思います。この考え方には私どもも賛成いたしておりますが、全般的に先ほどお尋ねになりましたように、五日延期というような考え方には私反対でございます。
  207. 中澤茂一

    中澤委員 まだ問題が山積しておるのですが、酪農の問題が急速に、もうまた十月の第六次値下げを計画しておる。この問題について農林委員会へ一度大蔵大臣もぜひおいでを願って根本的な討議をしたいと思います。本日の質疑はこの程度にいたします。
  208. 重政誠之

    ○重政委員長代理 明一日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。  なお政府側に対して特に委員長から申し入れをいたしたいと思いますが、明日は関係大臣並びに政府委員は時間を厳守せられまして午前十時に御出席あらんことをお願いいたします。     午後六時五十三分散会