○
久保田(豊)
委員 治山治水や
災害対策に対する
政府の御
答弁は今
総理から
お話があったようであります。まだ足りません。これから本気にやります、これだけであります。しかし実際にそういうふうにやられたことはほとんどない。それですからただ単に言い回しでもってそういうふうに言われるのでなく、私はもっと
具体策を持った
お話をいただきたいのであります。そこで私はそれに到達しまするよすがとしまして、
岸総理は今日の
治山治水事業なり
災害復旧なりという
事業というものを、国の
政治の全体の中でどういう
位置づけをされておるのか、こういうことについてはっきりお聞きしておきたいと思う。それについては私は二、三、今岸さんが
政治上一番
重点を置いておられる問題との連関において特に
首相の
考えをはっきりお聞きしておきたい。
それはざっくばらんに言いますと、建設省で出しました
経済白書の中でも、今日の
災害が非常に大きくなった
根本の
原因は、戦時中から戦後の大体二十四、五年までかけて
治山治水事業というものをほとんど犠牲にしてしまった、やらなかった。それが今日
災害を大きくする
根本の
原因であるということをはっきり役所の文書に書いてある。これにはあなたの責任が私は一部あると思う。戦争中の
閣僚としましてあると思う。そこで私はそういう点から見てはっきり
首相にお聞きをしたいのは、大体あなたがよく強調されまする
民主政治と
治山治水問題をどういうふうにお
考えになっているかということであります。あなたは今度政界に帰られるに当りましては、
民主政治をあくまで守るということをいろいろの
機会に強調されておる。
民主政治には
議会政治であるとか、あるいは多数決であるとか、あるいはその他いろいろの
基本的な
要素がありましょう。その
基本はやはり
基本的な人権でありますが、私はもっと深いものがあると思う。それは何かというと、
国民の
生活の
基礎的安定であります。その
基礎的安定というものは私がくだくだ言うまでもなく、御
承知の
通り社会関係から来る貧乏とか、あるいは失業とかいう問題がありましょう。同時に自然と
人間の
関係から来る地震とか火災とか、あるいは
水害というような問題によって、いわゆる
国民の
生活の
基盤が大きく
破壊されるという二面がある。
日本ではさっき言いましたような数字から明らかなように、年々二百万もの
国民が、大
なり小なり
水害によって
生活の
基盤をこわされておる。そうして一千万人以上の者が年々
水害が来やしないか、来やしないかといっておびえておる。そうして
国土の
相当の
部分というものが年々
水害によって
破壊をされておる。こういう事実を
根本的に
手当をせずに
民主政治というものは成り立つかどうか、この点を私は
首相にはっきりお聞きをしておきたい。あなたはいろいろな
意味において
社会関係におけるあなた一流の解釈によって
民生の安定というものを
考えられておる。しかしその
社会関係の一番
土台をなすものは
自然関係である。この
自然関係において
手当をせずに、不十分にしておいて、そこから年々多数の人が
国民生活の
基礎的安定というものが
破壊をされておる。これをほうっておいて私は
民主政治というようなものは
意味をなさぬと思う。こういう
状態において国会でえらそうなことをお互いに言ってみたところでしょうがない。こういう点を
首相はどうお
考えになるかということが第一点。
もう
一つは、今問題になっているのは
警察力の問題、あなたはちょうど暗やみから牛を引っぱり出すような
やり方で警職法の一部改正を持ち出して、
警察官の
権限を不当に拡大されようとしておる。同時にその裏には次の
機会においては
警察力をさらに
増強しようというお
考えを持っておいでのようであります。その目的とするところは、あなたのおっしゃるところでは、これは
公共の安全と
秩序を守ること、その
通りでしょう。その
通りでしょうが、
公共の
秩序というその
公共というのは
国民生活だと思う。
国民生活の
秩序ということだと思う。その
秩序が年々
災害によってこれが大きく
破壊をされておるのが今日の
実情です。この
実情をそのままにしておいて、いかに
警察力を強化して
民主政治、
生活の安定なりをやろうとしても私は無理だろうと思う。私の方の
災害地でも、このごろは私は土曜、日曜、月曜にはいつも各
部落を回って、何とかみんなの
災害者の立ち上りの手助けをやろうと思って歩いておりますが、日一日と人心は非常にとがって参ってきております。これは私は決してアジるわけでも何でもない。このままでいってわれわれは生きられるだろうか、立ち直れるだろうか、こういう点から非常なあせりが出ておると思う。その中からかなり乱暴な
言葉もずいぶん出て参ってきております。
議会政治を否定するような
言葉も出てきておる。
政治を信頼しないという
言葉も
百姓流なり、あるいは
勤労者流の
言葉でどんどん出てきておる。
役場等にはもっと強くこういう問題について大衆で押しかけるというような問題も出てきております。こういう
状態を十分に
手当をせずに、
警察力の
権限を拡大して、強くして押えようとしても、私は
ほんとうの正しい
意味においての
公共の安全なり
秩序というものは保持ができるものではないと思う。少くとも
日本の特殊の
気象条件なりあるいは地勢
条件なり、その他のいろいろな
条件から見て、まず
警察力の
増強なり何なりというものを
考えるより、こういう自然的な
条件からの
国民生活の
基礎的安定というものに最も力を入れるべきじゃないか、これが私は
民主政治の常道だと思う。こういう点について、
警察力の
増強なりあるいは
権限拡大なりと、
治山治水なり
災害復旧の問題について、
総理はもう一度お
考え直しをいただく必要があるのじゃないか、私はこう思う。
もう
一つは、あなたは御
承知の
通り有名ないわゆる再
軍備論者です。そう言っちゃ失礼かもしれませんが、そうだ。そして盛んに
自衛隊を
増強しよう、
自衛隊じゃ足りないから、
アメリカと手を握って、
国土と
国民の安全を
外敵から守る措置をとろうということに、あなたの
政治的生命を打ち込んでおられるようです。しかしながら守らるべき
国土が年々さっき申しましたように
荒廃に
荒廃を重ねてきておる。そうして守らるべき
国民はどうかというと、年々二百万という
人たち大きく
生活の
基礎を破られ、
破壊せられる、
国土はどんどん
荒廃しておる。こういうことであって、あなたの昨日の
答弁で言われたように、
国民の間に
ほんとうの
国防観念というものが出て参りますか。あなたの言うように、
軍事力によって
外敵から
国土あるいは
国民を守っていただくより、
水害という内敵から、自然の敵から、
国土、
国民を守っていただく方を、
ほんとうに働く
人間は私は強くあなたに期待しておると思う。
こういう点で、これらの三点から見て、私はあなたの今の
政治は本末を転倒して、実際にはさか立ちしているのじゃないかと思う。こういうことを言っては失礼かもしれませんけれ
ども、少くとも年々
災害をこうむる二百万近くの
罹災者は、大
部分がこういう感じを持っていると思います。私のところあたりでも、ずっと回って歩きますと、このことをだれ言うとなく言っております。それはグラマン一機分あればあの
狩野川の
放水路ができるじゃないか、三機分もらえばあの
狩野川の
放水路はできてしまうじゃないか、しかもそれに汚職がくっついたり、そういうにおいがしておる、あれを何とかわしらの方に回して、長年の
願望でありますところのあの
狩野川の
放水路を早くやってくれるという
政治はないものかということを、だれ言うとなく
罹災者はささやき合っております。これは私
どもが知恵をつけたわけではありません。こういう点から見て、私はあなたの今やっておられるところのいろいろの仕事、こういう点からもう一度、
基本的に反省をして、
治山治水問題と
災害復旧問題というものを、もっと深く国政の上でしっかりした
位置づけをしていただきたい、私はこう思うのであります。年々
内閣がかわり、
政策の
重点が変り、その場その場でもって次々に変るような
治水計画、
災害復旧対策では
日本の
国土と
国民は守られません。軍隊を幾ら作ったって、
警察を幾ら強くしたってだめだ。外国の例を
岸首相に申し上げて、これを強制するつもりはありません。しかし御
承知の
通り、
アメリカにはいわゆる
世界最高の
治水事業といわれるテネシー・ヴアレー・オーソリティというものがりっぱにできております。これらの
実情も
岸首相はよく御
承知のはずだと思う。また、
岸首相はあまりお好きでないようですが、お隣の
中国ではどうかといいますと、
中共政権はいわゆる
政権の座につくと同時に、御
承知の
通り治水問題というもの、これは
中国六億の
国民の長年の
願望でありましたが、これをまっ先に取り上げました。そうして
毛澤東主席みずから六十数日の
間実地踏査をされて、御
承知の
通り今揚子江、黄河に大
治水計画を立てておる。これはすべての
計画、すべての
国策事業に
優先する
基礎的な第一義的な
国策事業として今日実行されておるのが
実情であります。もちろんまだこれは完成していないようでありますが、この
予算については、
中国政府は、いろいろの他に
政策重点があったにしても、決してこれを変えるということはしていないようであります。その結果が、御
承知の
通りいわゆる
三門峡のダム、こういう大きな、おそらく
世界でも
考えられないような問題ともすでに取っ組んで、開封に
開発事務所を作ってやっていることも
総理はよく御
承知のはずであります。こういう
実情であります。私は決してこういういろいいろな
アメリカや
中国のまねをあなたにしていただきたいというわけじゃない。この
日本の特殊の地勢
状況なり、
気象状況なりがこれと結びついておる、密着しておる
日本の
国民生活の
基礎的安定というためには、どうしても
治山治水事業と
災害復旧ということは、すべての
政策に
優先をする第一次的な
政策として、
保守党内閣であろうと、
社会党内閣であろうと、どんなに
内閣がかわろうと、これだけは、というものを打ち立てて、そうしてこれを
内閣が
政策重点に置いて、変ることなく
予算も第一次的の
優先として、そうしてこの
予算だけは最低限の国の
予算として確保してやっていく、こういう
程度のことが
民主政治下において行われないはずはないと私は思うし、そうするのが
ほんとうだと思う。私は欲は言いませんが、せめて
首相御
承知の一兆八千億、国の経費の負担が大体一兆一千七百億、あの二十八年の苦い経験から得たこの
治山治水の
基本政策、これを十カ年くらいのあれでもってやり抜く、こういうことをはっきりこの際
国策の第一次的な
要素として打ち立てることは、保守、革新を問わず、私は
日本では必要だと思いますが、こういう以上あげました諸点について、
首相の明快なる御
答弁をいただきたいと思うのであります。