○
久保田(豊)
委員 今
現行法を中心にしてのお答えがあったわけです。
現行法でそういうことがむずかしいということは私
どもも百も
承知であります。百も
承知でありますが、
基本をもう少し掘り下げて再
検討する必要があるということを申し上げているわけです。いろいろの
ケースを取り上げてこれもあれもと言えば、ますます
立法論としては困難になるにきまった話です。しかし、とにかく今日の国の
政治なり何なりの
あり方の
一つの重点的な穴については重点的に考えていくということがやはり必要だろうと思います。そうでなくても、大きな力を持っている者については、たとえば旧
軍人等についてはいろいろの
措置がとられているわけです。あの
人たちと比べて、今の
災害でもって死んだ、あるいは
孤児になった、あるいは身寄りのない
老人になった、こういうことを考えた場合に、どういう
均衡論がそこに成り立つのか、これはもう一歩深く国の
基本の
政治の
あり方として考えるべき問題である、こう考えるわけでして、その点はここであなたと議論を戦わそうとは思いませんが、
厚生省としてはそういう点を
一つ深く掘り下げて、重点的な施策あるいは
立法措置というものをぜひこの際立てていただきたいということをお願いして、まだ
衛生施設とかその他についての
高率補助の問題等ありますけれ
ども、
厚生省関係は一応これでもって打ち切っておきます。
すぐ
農林省に移ってよろしゅうございますか。
——それじゃ
農林省関係で、これはいずれ大臣が見えましたら、
基本的な問題ですから、お
伺いいたしたいと思いますが、今度の伊豆の
災害、あるいはそれと同じような、非常に局部的ではありますけれ
どもひどい
災害のありました場合の、これに対する
農林省の、農業
関係におきまする営農復活とでも言いますか、こういうことに対する
基本的な方策というものについて、もう一度
基本的に考え直していただきたいということであります。と申しますのは、私は事実を
一つ申し上げてみたいと思うのでありますが、今度の私の方の
災害の
実情を見ますると、家族もなくなった、家も流れてしまった、農機具も全部流れてしまった、それから
たんぼも全部だめになってしまったというふうな例、それに近いようなものが全体で約千五百戸ないし二千戸近くあるのではないかと私は思っています。県の方に聞いてみますると、重
災害と思われるものが約六千戸だと言っております。この
調査が果して正しいかどうかはわかりませんけれ
ども、六千戸近くの農家がいわゆる重
災害を受けておるのです。そのうちには、家が残ったものはありますけれ
ども、農機具とか家畜とか
たんぼとか、そして一年間の
収入というものをほとんどなくなしてしまった。しかも、農地の
災害復旧その他を早くやっていただきましても、まず来年度食糧の植付ができればいいところであります。下手にまごつきますと、二年ないし一番悪いところは三年くらい、ほとんど営農
収入のめどは立たないというのが今日の
実情であります。そこで、これに対する営農復活ということにつきましては、今の
制度では融資という道しかないわけであります。これには
天災融資法に基く融資なり、公庫の
災害融資なり、あるいは自作農創設資金の融資なり、この三つが大体おもなものでありましょう。ところが、実際それで成り立つかというと成り立たないのであります。私の方で一番おもなものを約二千戸について大体推定をしてみますると、これが一人前になるには
借金してやるとどういうことになるかといいますと、農地
関係が大体
——高率
適用になった場合とならぬ場合ではだいぶ違って参りますが、
地元負担が
——これは結局農民負担になります。農民負担になるものが、高率
適用になった場合には約七万円であります。高率
適用にならぬ場合には約十三、四万円の農地の復旧
関係の負担がどうしても出て参ります。さらに、家屋の復旧に、これも最大限借りられたとして二十二万円かかります。それから、
天災融資法による営農のいわゆる当用資材とでも言いますか、こういうものの復旧に、どうしてもこれはぎりぎり借りられるとして十五万円かかる。さらに、公庫の
災害の指定融資を受けたといたしまして、これが現在は十五万円のようですが、この点についてはあとでただしますが、かれこれ二十万円、これは農畜舎とか農機具とか、あるいは家畜とかいう農業の再
生産の
基本資材であります。これに主として回るべきものと私は考えます。こういうものがかかる。さらに、自作農創設資金がかりに二十万円借りられるとしても、これは、今
厚生省にもお尋ねしました
通り、
生活の方法がないのであります。これは土方以外には実はあまりない、こういうことであります。それから旧債が相当あります。この旧債の借りかえの分にこの二十万円はほとんど消えてしまいます。そうしますと、これだけ、今の
制度のぎりぎり一ぱいを借りたといたしまして、一戸当りが大体において九十二万円になります。これはぎりぎり限度まで借りられたとしてこうであります。そのうち、農協の預金だとかあるいは
保険だとかあるいは共済だとかいうものをとって、かりに二十万円を埋めたといたしましても、七十万円の
借金はどうしてもこの際しなければ実際には再建ができないのであります。その七十万円に対して、これは大ざっぱな計算をいたしまして、年利が五分五厘、五年据え置きの十五年返還ということを一応の目途にして勘定しましても、据え置き
期間におきまする利子がどのくらいになるかというと、年々三万八千五百円になります。それから、償還期に入りまして、均等償還をするといたしまして、元本が四万六千六百円であります。それに利子が約二万であります。従いまして、六万六千六百円というものを年々
災害後に返していかなければならぬということになるわけであります。こういう
状態に置かれておる農家が概括しまして伊豆の場合は約六千戸出ております。そのうちこれに
ほんとうに該当するものというのは私は二千戸かと考えます。しかし六千戸も似たり寄ったりの
状態になる。これで今の融資
制度でやっていけますか。私はこの点はおそらく伊豆だけの実例ではないと思う。今までも、たとえば九州の諌早におきましても、あるいは二十八災当時の状況におきましても、どこでもひどいところの
災害地はおそらくこういう
状態が実際は出て参っておると思うのであります。これではやっていけません。再
生産のための
最低限のものが年々これだけかかるのであります。大体農家の一戸当りの資産というのは普通五百万円と言われておりますけれ
ども、五百万円の資産を使ってやるのに、これに対して少くとも九十万円から百万円の資金が要る。
ほんとうにひどい
災害をこうむって、そのうちで二十万円は
借金なしに
自分の従来の蓄積でしたとしてもこれだけかかります。約七万円というものは年年返していかなければならぬ。一町歩以下の経営で、このことが他の農民の農業の
生産力と今の農産物価格その他の状況のもとでできると
農林省はお考えになっておるのかどうか、この点を私は
基本的な問題としてお
伺いをしたい。
もう
一つ、これに対する
農林省の考え方は私は矛盾しておると思いますので、
一つその点を申し上げたい。それは、たとえば開拓地の営農類型を考えてごらんなさい。東海地区は御
承知の
通り畑作と畜産との混同地帯です。これに対して新しい類型では全体で一戸当り大体において二百十万円の投資を予定しております。そのうち、実際にはどうかというと、融資部分が約六十万円です。それから、大ざっぱな勘定をいたしまして、補助金部分が大体五十万円です。はっきり申しましてあとは全部
国家負担です。これでもなかなか立っていかないというのが今日の開拓の
実情ではないか。この二つの事実を考え
出してみる場合において、こういう特にひどい
災害の場合においては
農林省が本気に
災害地の復旧ということを考えるならば、二つの結論を出さざるを得ない。その
一つは何かというと、御
承知の
通り農地については相当の国庫補助をやっております。しかし、少くとも営農の
基本資材の再整備ということについては、私は相当大幅の補助金政策をとらざるを得ないと思う。それが欠けております。今の段階ではこれが全然ない。少くともこれに対して
農林省としては相当大幅の、少くとも開拓並み
程度のただの金をやるというくらいの腹がなければ、年々七十万町歩もやられ、そしておそらく年々数千戸ないしは一万戸の農家がこれと同じ
状態に陥っていくのを救うことはできないと思うのです。この点を
農林省としては深刻に反省していただきたいと思う。この点から問題を出発させなければ営農再建なんてできません。
もう
一つは、今の
天災融資法にいたしましても、公庫の指定融資にいたしましても、あるいは自作農創設資金にしましても、もう一度こういう観点から利子その他手続等についても根本的に再
検討する時期が来ているのではないかと思うのです。さらに、私は、こういったひどい
災害をこうむった部落あるいは村全般の再建計画というものに対して、もっと
基本的に掘り下げた計画がなければならぬ、方針がなければならぬと思う。これが今のところでは何にもない。しかも今の状況下では年々こういった
災害が次々と起ってくる。一方においては開拓とかあるいは農地造成とかいって金をつぎ込んでおるが、これもなかなか成果が上らない。一方においてはこういうことでたくさんの耕地がつぶれ、そして相当多数の農民が全くやっていけないような
状態に放置されるということになる。ですから、少くとも営農の
基本資材については補助政策をとるべきではないか。また、融資
制度につきましても
基本的に考えをもう一度再
検討する必要がありはしないか。さらに、再建にしても、できるだけちょびちょび手続を
めんどうにして、そしてできるだけ金を出さない算段ばかりしておる。少くとも受け取る側ではそう取らざるを得ない。意図はどうであれ、今の
制度がそうなっております。そうではなくて、もっと
基本的な、こういった
災害を食った部落は、その
程度に応じて、そのいろんな
条件に応じて、村全体、部落全体が希望を持っていけるような新しい村の再建計画
——新農村計画というものがありますけれ
ども、こういう点を結びつけて
基本的に
検討すべきだと考えますが、この三点が、こういう事実から見て私はどうしても出てくると思う。これは私は決してはったりで申し上げておるわけではありません。この点について私は実は大臣に十分にお聞きいたしたいと思っておりますが、当面の次官のお考えをお聞きしたいし、同時に
局長からも、融資
制度その他経済局
関係からもこういう点について
基本的な考え方なり何なりをお
伺いしたいと思うわけです。