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深水参考人 本日は今度の
放送法の
改正につきまして、衆議院の
委員の
方方から、私
たちが
考えておりますことを聞いていただく
機会を与えていただきましたことを厚く
お礼を申し上げます。
民間放送連盟といたしましても、今までいろいろな御
意見を申し上げておったのでございますが、この際本法案に対してと同時に、若干
考えておりますことをつけ加えて、
皆様方の御
参考にしていただけば、なお幸いと存ずる次第でございます。
ただいまの
放送法は、終戦直後、当時まだ
民間放送というものが成り立ち得るかどうかというような非常に懸念があった時代にできたのでございまして、またこの
放送の
発達ということにつきましても、私
たち当時予期しないような事態がきておるのでございます。当時の
放送法でも御承知のように、この
法律ができて、五年以内にその
改正または存続、廃止といいますか、そういうことについて
内閣総理大臣は
意見を聞いてこれを処理しなければならないというような
意味のことを実はつけ加えてあった
条文があったと記憶をいたしております。それはあとで成立しました
放送法には削除されておりますけれ
ども、原案にはそういうのがあったということを私は記憶しておるのでございます。それもおそらくこの
民間放送が
発達し、また
放送全体が非常な
発達をするという予見のもとに、そういう場合には根本的な
改正をするかどうかということが一応
考えられておったのではないかというふうに
考えるのでございますけれ
ども、そういう
意味からいたしましても、私
たちは現在の
放送全体がここまで
発達して参りました現
段階におきましては、すでに根本的な
改正を
考えていかなければならないのではないかということを常々
考えて、御
意見も申し上げておるような次第でございます。その根本的な問題とは何かと申しますと、私は
NHKの
性格と
任務をはっきりこの際うたっていただきたいということでございます。どういうふうにうたうかという問題はいろいろございましょうが、とにかくその
性格と
任務というのをはっきりした上で、
民間放送との
調和というのが
ほんとうになって、
国民のすべての
方方に
調和のとれたいい
放送を聞いていただく、あるいはいい
放送を見ていただくことができるのではないかということを
考えておるのでございます。
次に第二点は、この
聴取料の問題でございます。いわゆる
受信料の問題でございますが、この問題も、現在
民間放送ができて、
NHKと相待って、
聴取者が非常にふえて参っておる。
民間放送は
NHKの開拓した
分野にのっとりはいたしましたけれ
ども、しかし
民間放送ができたために、非常にこの
放送の
受信者、
聴取者、
聴視者というものがふえて参ったという事実もまた見のがすべからざることでございますので、この際この
受信料の問題をどういうふうに解決するか。私
たちの
考えといたしましては、これを税にするか、
税的性格を帯びたものにするかということについては、まだはっきりした
結論は得ておりませんけれ
ども、大体そういうような
考えで、
受信料の一部は
放送全体の
発達のために使うべきではないかというような
考え方も持っておるわけでございまして、そういう
方法にのっとって根本的な
改正をしていただきたいということが第二点であります。
それから、
放送をよくするいい
番組を
国民の
皆さん方に提供するということは、われわれ
民間放送の
立場からいたしますと、これは
経営の安定という基盤にのっとらなければ、決していい
番組はできない。少くとも私個人の
考えを申しますならば、
経営が非常に安定して参ったということならば、いろいろな問題は別といたしましても、少くとも
サス番組その他におきましても、われわれ
ローカル放送局といたしましては、
地方文化の
ほんとうにいい
意味の
発達のためになる
サス番組も作って参ることができるというような
考えを持っておるわけでありまして、
経営の
合理化、
安定化ということをしていただきたい。それには現在の
置局計画及び免許ということについての、
ほんとうに正しいあり方としての
基本計画を作っていただきたいということが第三点でございます。
いろいろこまかい点はございますが、
放送の
根本的改正として私
たちがし常々申し上げておりますのは、ただいま申し上げましたような
NHKの
性格及び
任務を明らかにしていただきたいということと、
現行の
受信料問題について再検討をしていただいて、その一部を
放送全体の
向上発展のために使用する道を作っていただきたいということと、そうして置局の
基本的計画というのを作っていただきまして、いろいろな問題のために、
一般にいわれておりますところの
乱設置というのがないようにしていただきたい、そうして
経営の
合理化をして、
経営の安定ということを来たさして、その上でいい
番組を奉仕させていただきたいというのが、私
たちの
考えている根本的問題でございます。
今度の一部
改正の問題につきまして若干の
意見を申しますならば、たとえば第五条でございますが、これは削除してございます。そうしますと、
国際放送はもっぱら
日本放送協会でやるということに
結論づけられるわけでございますが、これは
国際放送は今後
民間放送には認めないという原則が確立されるのではないかと思うのございます。将来
民間放送による
国際放送の必要がないということは必ずしも断言できないと思いますので、こういう重要な問題は少くともしばらくは留保していただいて、慎重に検討していただきたいということを申し上げたいと思うのでございます。
それから、さっき申し上げましたのに関連しまして、第九条の
放送協会の
業務というのも一応見送っていただきたい。と申しますのは、第七条の
協会の
目的の
改正が一番先決問題でありますにかかわらず、これには現在何も触れておられません。第七条を根本的に
改正せずして、
業務の面だけを
改正されるということは、いささか不合理ではないかと思うのでございまして、法全体の
根本的改正の時期に、第七条の
改正とともに、この第九条の
改正はされていいのではないかというふうに
考えておるわけでございます。
それから第四十四条でございますが、これも一応見送っていただいてはどうかと思うのでございます。第七条及び第九条の根本的な
改正を待ってということをただいま申し上げましたが、これがなければ合理的な
改正はあり得ないと思うのでございまして、もしもどうしてもこれをしなければならぬというならば、これは
NHKだけに適用されて、
民間放送への準用については、その
範囲を
現行通り四十四条の三項の
内容だけに限定するようにしていただきたいというふうに
考えておるわけでございます。
それと第五十一条の二の、
民間放送に
放送番組審議機関を
設置するという
規定でございますが、これはいい
番組を作れということの
趣旨でございましょうし、その
趣旨そのものとしては私は
賛成でございますけれ
ども、しかし
放送番組審議会というものは、私
たち現在
各社の自主的の
設置にまかせております。
設置しておるところもあるし、まだ
設置していないところもございますが、おおむね
設置の方向に向っておるのでございます。ただ
各社で持っていないところもありますけれ
ども、
民間放送連盟では一流の各界の名士の
方々、権威ある
方々を
構成委員として、たとえば
委員長に
前田多門さん、副
委員長には
渋沢秀雄さんというような方をお願いいたしまして、
民間放送の全
放送番組について公平な
審議を行なっておるのでございまして、
本条が
目的としておりますことは、この
審議会によっても私は十分に上げ得ると信じておるのでございまして、これを
法制化までする必要はないのではないかというふうに
考えておるのでございます。だから、もしどうしてもこれを設けなければならぬということになりますならば、五十一条の二の「
一般放送事業者」の次に「又はその
団体」ということを加えていただきまして、
一般の
放送事業者の
団体でありますすなわち
民間放送連盟が
審議会を
設置するならば、
各社は必ずしも
設置しなくてもよろしいというふうに改めていただければ、一番現状に沿い、また
放送の
自主性ということからも、私は一番いい
方法ではないかと
考えておるのでございます。
また
報告義務でございますが、これも私は
NHKと同様な
報告義務を課されるということはどうかと思っておるわけでございます。
NHKと違いまして、何らの財政的な保障も
助成策も講じられていない
民間放送に対しまして、
NHKと全く同等な
報告義務を課されるということは不均衡であり、かつ不適当であると思うのであります。この際この
規定を新たに設けなくても、現在までも
民間放送は
当局に対しまして必要な
資料や
報告書は提出しておる次第でございまして、これも根本的な
改正をやられる
機会に慎重に検討されていいのではないかというふうに
考えておるのでございます。
それから四十四条の七の
放送内容についての
事後措置の問題でございますが、これはおそらく
趣旨そのものは、
事後措置をされることで非常にいいことでありますけれ
ども、しかし実際問題といたしまして、これは非常にむずかしい問題ではないかと思うのでございます。たとえば
本条の中に「
放送番組の
内容」ということがございますが、その
内容とは何をさすのかということは非常に問題であると思うのでございます。あるいは
録音テープあるいは
録像フィルムを含んでおるのかどうか、あるいは
放送日誌でいいのかどうか等の点が非常に不明確であると思うのでございますが、もしこれが
録音テープや
録像フィルムを含むといたしますならば、本来
電波は
放送すればすぐに消えてしまうという性質のものでありますから、これが
保存を義務づけられていることは、非常に不合理であるばかりでなく、経済的にも技術的にもきわめて困難な
措置でございます。ことに
録像フィルムの場合は、たとい一日分といえ
ども、私
たちといたしましては、とうてい実行が不可能ではないか、かように
考えておるのでございます。
本条の
目的に必要でありますことは、そういうことについての
資料、たとえば脚本とか
放送原稿、
放送日誌等によりまして
各社が
保存しておる。そういうのは
各社が現在
保存しておる
実情でございますので、私は
本条は撤回されまして、
各社の良識的な
措置にまかせられてしかるべきではないかと思うのでございます。今までもいろいろ調べましたけれ
ども、単なるコマーシャルの問題だとかその他はございますが、今まで人権の侵害というような重要な問題は一件もなかったということを確信しておるのでございます。
それから第五十二条の三に「
一般放送事業者は、
特定の者からのみ
放送番組の
供給を受けることとなる
条項を含む
放送番組の
供給に関する協定を締結してはならない。」という
条文がございますが、これは一応
政府当局にもお尋ねしてみたいと思う点があるのでございますけれ
ども、たとえば「
特定の者」というのは、
特定の一社という
意味であるのかどうか、あるいは二社ないし三社、すなわち複数の
特定でもいけないのかどうか、あるいはその「
供給を受けることとなる
条項」というのは、いつでも地の社からとれるということであれば、結果的には一社になってもそれは差しつかえないのかどうかといういろいろな問題がございますし、また
民間放送では
経営上の非常に重要な問題もそれにからまって参りますし、またネット・ワークの問題もございます。あるいはマイクロウェーブの技術的な問題ということがどうなるか、こういう点については、はっきりした
見通しがややつきかけておる状態でございますので、これは一部
改正でありましても、
根本的改正のときに
考えられてもいいのではないかと思います。そういうように五十二条の三の
条項は、私
たちまだはっきりしたそういう点の
見通しということについて、ただいま今ごろからテレビなんかもできるところもございますし、いろいろな重要な問題も含むと思いますし、ただいま申し上げましたような「
特定の者」という
意味がどうであるか、あるいはその
条項がどうかということもございますので、これも
根本的改正のときに譲っていただくということがいいのではないかというふうに
考えておる次第でございます。
これを要約して申しますならば、現在のこの一部
改正につきましては、私は必ずしも積極的な
賛成をいたしませんけれ
ども、少くとも
NHKの項だけにつきましては
賛成でございます。ただ
民間放送の
関係につきましては、ただいま申し上げましたように、
根本的改正の際に譲っていただくようにして、今後慎重に検討していただく方がよろしいのではないかというような
結論を持っておる次第でございます。