○大橋
説明員
日本電信電話公社の最近の事業概況につき御
説明申し上げます。
まず
昭和三十二
年度の決算について申し上げます。御
承知のごとく三十二
年度の一般
経済界は、いわゆる神武景気も終りまして、景気は下降の一途をたどり、公社としても収入の見通しについては必ずしも楽観を許さないものを感じたのでありますが、幸いに
年度内におきましてはその
影響を受けるところ比較的少く、設備の拡張、サービスの改善等を順調に実施することができました。すなわち事業収入は一千四百七十三億円の
予定に対し実績は一千五百八十八億円、事業支出は一千二百九十七億円の
予定に対し実績は一千三百十三億円となり、この結果、収支差額は
予定の百七十六億円に対し実績は二百七十五億円でありまして、
予定よりも九十九億円
増加いたしましたが、その大部分は三十三
年度の建設資金に充当いたしました。建設勘定につきましては、成立予算額は六百三十四億円でありましたが、前
年度よりの繰越額四十五億円、加入者開通の
増加に伴う弾力
条項の発動五十億円、その他損益勘定よりの流用等二十七億円を加えまして三十二
年度の総額は七百五十六億円となりましたが、これに対しまして
年度内決算額は六百九十三億円で九二%を消化し、その予算残額の六十三億円は三十三
年度に繰り越しました。建設工程のうち、サービス工程につきましては、加入電話は
予定の十八万七千に対し二十四万一千、
公衆電話は
予定の一万一千七百に対し一万二千、市外回線増設は
予定の四十七万キロに対し六十二万キロをそれぞれ増設しましたが、いわゆるなべ底景気にもかかわらず、需要は
増加の一途をたどり、三十二
年度末におきまして約五十八万の積滞申し込みを残している
状況であります。
次に、先般の
日本電信電話公社法の一部
改正によりまして公社に監事を置くことになりましたが、五月二十八日二名の任命を終り、さらにそのスタッフとしての
調査役以下七名の監事室を設けました。また三十二
年度の決算について監事が監査
報告書を作成しましたが、この中で次の三点について再検討の必要があることを指摘いたしております。その一つは、現在の固定資産の耐用年数あるいは減価償却
方法を再検討する必要があること、その二つは、公社の負担する諸税公課は年々
増加いたしておりまして、
財務諸表の明瞭性の原則から見ても、これを現在の管理費の中から取り出し、単独の費用勘定として表示することが正しいのではないかということ、その三として、国庫予託制度とも関連して資金の効率的
運用について再検討の必要があること、以上の三点でありますが、公社といたしましては、これらの
意見につき検討の上、
関係方面にもいろいろ御相談を申し上げ、またお願いして早急に具体的に改善をはかるよう
努力いたしたいと考えております。
次に、第一次五カ年計画におきまして、五カ年間に毎年二十万余の加入電話を増設して参りましたが、その需要充足率ほ平均三二%にとどまり、ことに最近における新規需要の発生
状況は、まことに目ざましいものがありまして、ここ両三
年度の一年間の新規需要の発生数、過去におきましてかってその例を見ない三十三万余の多きに及び、三十二
年度末の需要は見込みよりも約十万
増加いたしており、需要の充足率も第一次五カ年計画発足当時よりも悪化いたしております。また市外回線も五カ年間に二百二十万キロを増設いたしましたが、即時区間はわずかに六%にすぎず、即時区間の拡大の要望はきわめて大きいものがあります。しかもサービスの
向上に伴いまして市外通話は当初の
予定を大幅に上回ってきておりますので、現在のサービスを維持するためだけにも大幅な回線増設を行わねばならない
状況であります。また大半の都市は待時サービスでありますが、この場合市外通話の待合時間は長く、大都市周辺や同一市町村内ですら交通
機関を
利用して出かけた方が早いという区間も相当存在している
実情であり、
国民経済活動の効率化を阻害いたしておるありさまであります。従いまして三十三
年度より実行に着手いたしました第二次五カ年計画も、第一次五カ年計画の
規模を四〇%も上回る総額四千百億円の計画で発足いたしましたが、当初
予定いたしました加入者増設百三十五万、市外回線増設四百三十万キロの工程ではこのような
国民の熾烈な要望にこたえるためには過少であり、その他合併市町村対策並びに農山漁村電話普及特別対策、テレビ中継網整備等に対する要望もまた熾烈なものがあり、当初計画を拡大
修正する必要があると考えられますので、既定計画を改定いたしたいと考えております。
次に、三十三
年度予算の執行
状況について申し上げます。三十三
年度の予算
規模は、損益勘定千六百九十三億円、建設勘定七百五十億円でありますが、事業収入につきましては、景気の低迷に伴いまして、昨年後半に至り現われて参りました収入の下降傾向が顕著となり、七月末現在の実績は五百五十八億五千万円で、予算における
予定額五百五十六億三千万円をようやく維持いたしている
状況でありまして、この傾向が持続するものといたしますと、予算収入確保につきましては一段の
努力を要するものと存じております。建設勘定につきましては、成立予算額は前に申しましたように七百五十億円でございますが、三十二
年度からの繰り越し六十三億円、余裕資金を原資とする弾力発動三十億円を合計いたしまして、総額は八百四十三億円となっておりますが、七月末までに二百四十四億円の支出を行い、進捗率は二九%となっております。この結果、サービス工程につきましては、七月末までに加入電話は八万六千、
公衆電話は三千二百を増設いたし、年間
予定のそれぞれ三三%及び二三%の進捗を示しており、また市外回線も十九万キロを増設し、進捗率は二八%になっております。基礎工程につきましては、新電話局の建設は百五十五局の計画でありまして、そのうち
年度内サービス開始を
予定しているものは六十一局でありますが、七月末までに九局がサービスを開始いたしております。その他市外伝送路増設、電報の中継機械化、合併市町村対策及び農山漁村電話普及特別対策につきましても、それぞれ鋭意進捗をはかっております。
次に、先般成立いたしました
公衆電気通信法の一部
改正によりまして、加入電信及び地域団体加入電話を本実施することになりました。加入電信につきましては、東京、大阪、名古屋、横浜、神戸及びその近郊都市に対しまして現在サービスを開始しており、七月末までに年間計画三百五十加入の三四%に当る百十九加入の増設を行い、開通数は合計五百五十九加入になっております。
年度内にはさらに福岡、小倉及び札幌においてもサービスを開始する
予定であります。また地域団体加入電話につきましても、百カ所の選定をほとんど終りまして、
年度内に全部開通する
予定であります。また電話加入権質に関する臨時特例法につきましても、
関係方面と十分連絡の上八月五日より
施行いたしております。なお、郵便為替法の一部
改正に伴って、公社におきましても
郵政省より委託を受けて通信文付電信為替を取り扱うことになり、十月十日より実施することになっております。
最後に、九月二十六日東日本を襲いました第二十二号台風の通信施設に与えました被害
状況とその復旧
状況について申し上げます。被害は、近畿、東海以東の全区域にわたって発生いたしました。まず電信につきましては、九百四十三回線の電信回線が不通となり、特に東京都内の江東地区、埼玉県川口市、静岡県伊東市におきましては回線不通と見舞電報の
増加が重なりまして、千七百通から四千三百通の電報の遅配が生ずるに至りましたが、他局よりの応援、臨時者の雇い上げ等の
措置によって、東京については三十日夜、川口市については二日夕刻、伊東市については一日夜までにほぼおくれを取り戻しました。電話につきましては、加入電話七万六千百二十三回線、市外回線三千八百五十一回線が不通となり、特に伊豆地方並びに川口市の電話は壊滅的被害をこうむりましたが、長距離回線につきましては、直ちに他の施設に切りかえ、ほとんどサービスに支障は来たさぬように手配いたしました。近距離回線につきましては、濁流を乗り越えて行なった仮線の架渉、移動無線機の
利用、あるいは臨時回線の作成等によって極力通話の確保をはかりました。加入電話につきましても、まず人名救助並びに罹災者救恤のため必要な官公
機関、警察等の電話を優先的に復旧いたし、引き続き川口電話局の急速な復旧を初め、一般加入者の復旧に努めました結果、十月二日までには伊豆
方面を除いてはほとんどの通信施設は一応の回復を見ました。伊豆
方面につきましても一週間以内には大部分が復旧する
予定であります。被害総額は復旧費を含めまして約四億円に達する見込みであります。なお、台風によります公社の職員の罹災
状況は、死亡二名のほか、家屋の被害は五千三百十七件に達しておりますが、これら罹災者に対しましては直ちに罹災見舞金を支給し、万全の
措置をとっております。
以上をもって最近の事業概況に関する
説明を終ります。