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1958-10-27 第30回国会 衆議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十七日(月曜日)     午後三時十四分開議  出席委員    委員長 鈴木 善幸君    理事 内田 常雄君 理事 亀山 孝一君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君    理事 中井徳次郎君 理事 門司  亮君       相川 勝六君    天野 光晴君       飯塚 定輔君    加藤 精三君       金子 岩三君    田中 榮一君       高橋 英吉君    津島 文治君       富田 健治君    中島 茂喜君       野原 正勝君    山崎  巖君       猪俣 浩三君    太田 一夫君       片山  哲君    加賀田 進君       佐野 憲治君    阪上安太郎君       下平 正一君    北條 秀一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 青木  正君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁長官官         房長)     原田  章君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      原 文兵衛君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 十月二十七日  委員矢尾喜三郎君及び安井吉典君辞任につき、  その補欠として片山哲君及び猪俣浩三君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 十月二十七日  風俗営業取締法の一部を改正する法律案内閣  提出第二四号)(参議院送付) 同月二十五日  中小企業事業税撤廃に関する請願大島秀一君  紹介)(第九九三号)  同外一件(大野市郎紹介)(第九九四号)  同(中垣國男紹介)(第九九五号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第九九六号)  同(江崎真澄紹介)(第一〇五三号)  同(大森玉木紹介)(第一一二九号)  同(大久保武雄紹介)(第一一三〇号)  同(塚田十一郎紹介)(第一一三一号)  同(西村直己紹介)(第一一三二号)  同(鳩山一郎紹介)(第一一三三号)  同(福田篤泰紹介)(第一一三四号)  同(粟山博紹介)(第一一三五号)  地方財政再建等のための公共事業に係る国庫  負担等臨時特例に関する法律有効期限延長  に関する請願羽田武嗣郎紹介)(第九九八  号)  同(小川平二紹介)(第一〇五四号)  同(原茂紹介)(第一〇五五号)  地方公務員居住地手当制度の創設に関する請  願(羽田武嗣郎紹介)(第九九九号)  同(小川平二紹介)(第一〇五六号)  同(原茂紹介)(第一〇五七号)  行政書士法の一部改正に関する請願亀山孝一  君紹介)(第一〇六〇号)  警察官職務執行法の一部を改正する法律案撤回  に関する請願志賀義雄紹介)(第一一三八  号)  深夜喫茶取締りに関する請願倉石忠雄君紹  介)(第一一三九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  警察官職務執行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)      ————◇—————
  2. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、警察官職務執行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を継続いたします。片山哲君。
  3. 片山哲

    片山委員 私は、これより岸総理大臣に対しまして、本警職法憲法関係を質問いたしたいのであります。この両者は、きわめて密接な関係を持っておるのであります。何となれば、現行憲法国民主権憲法民主憲法と俗に言われておりますのは、国民主権憲法。こういう討議の際においては、はっきりそういう表現を用いた方がいいと思います。そうして近代的な様相に切りかわっておるのにもかかわらず、警察法は依然として国家主権か、あるいはしからずんば天皇主権の旧憲法のもとにおける警察法の域を、いまだ脱していないと思うのであります。そのために非常な矛盾が起る、今日の混乱を来たしつつあるゆえん考えてみまするならば、警察法は旧態依然である、憲法は近代的な感覚を持って、国民主権に切りかわっておる、こういうところに原因があるのでありまするから、その国民主権のもとにおける警察制度はいかにあるべきかということを、ぜひとも考えなくてはならないのであります。私は、そういう意味から、この憲法問題、特に基本的人権中心といたしまする現行憲法の本質を考えつつ、これに関する総理大臣の所見を伺いつつ、この改正案幾多の不合理を、幾多矛盾を質問いたしたいのであります。つきましては、順を追うてこれより説明しつつ、その質問の要点に触れてみたいと思います。  第一に、岸首相は、社会党のわれわれの提案いたしましたる本案撤回決議案否決後においても、さらに世論の反対が非常に高まりつつある。本案反対する声はすでに国論、民論とでも申すべき状態に、各方面に上りつつあるということにかんがみまして、政府みずからの手をもってこれを撤回するか、さらにこれをどうするかを考え直すの要があると思うのであります。ことに、今まで政治に関係のなかった学術会議学者諸君、あるいはまたキリスト教関係の信仰の自由を叫ぶ立場から本法案に対して反対決議をいたしておる人、芸術家その他一般のいわゆる常に出てくる人でない人たちも立ち上って、時代錯誤法案であるということを叫んでおるのであります。すなわち多くの文化人芸術家婦人団体一切がもう各方面において反対決議をいたしまして、そうしてこの法案撤回、この法案時代錯誤であることを大いに主張しておる。社会党決議案否決になりました後においても、かような情勢が現われておるのに対しまして、この情勢の変化、この情勢の動きを総理大臣はいかに考えておるか、いかに観察しておるか、これらをやはり聞かないで猪突するのであるか、強行策をとって、依然として進む考えを持っておるのであるか、まずその点を伺いたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、今御指摘のありましたように、新憲法のもとにおける警察制度またはその運営というものが、いわゆる人民主権の上に立って考えられなければならない。従って旧憲法のようなことを考えてはならないというお考えに対しましては、私も全然同感であるのみならず、新憲法のもとにおける新しい警察制度、その管理運営というものが公安委員会に属していることも、よく御承知通りであります。従来旧憲法時代のように、内務大臣のもとに命令一下動くというような制度と、この新憲法のもとにおける新しい警察制度あり方というものは全然違っておりまして、これがいわゆる人民主権のもとにおける警察権あり方を、そこに根本的に変えておるゆえんであると思うのであります。  しこうして本案のできますについては、一年余にわたって公安委員会中心となって、各国の立法例等も十分参酌して、その結論を得たもので今回提案されておるものの内容でございます。私は最近の状況を見ますると、ずいぶんこの内容が正当に理解され、正当に検討されずして、あやまっていろいろ内容が曲げられ、もしくは故意にこの改正案関係しない、たとえば表現の自由を制限するごときこと、あるいは過去におけるところの人権の抑圧であるとか、あるいは臨検であるとか検束であるとかいうようなことが行われるごとき誤まった宣伝や解釈が、今日国民にこの法案を正当に理解せしめんとする上において非常な妨げとなっておると思います。従って国会のこの審議を通じて、正しくこの内容とこれに対する支持、反対議論というものを国民の前に明らかにして、そうして国民審判を問うということが私は正しいあり方であり、また政府としてはそういう方向で進んで参りたい、かように思っております。
  5. 片山哲

    片山委員 ただいまのお話によりますと、公安委員会が一年余り研究して、その結論を見出してこういうことになったのであるというようなお話なんですが、政府においてはこれに関与しておったのですか、あるいはまた突如としてこれを——公安委員会研究を知らずして、その結論の報告を受けて、政府が今回出すようになったのでありますか、いかにもその出し方が唐突でありまして、これも本会議で問題となりましたが、あなたの施政方針の中にもなかった、一向警察制度については考えが及んでないようにも思われたのでありますが、その公安委員会との関係政府との研究の連鎖と申しまするか関連について、伺いたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、公安委員会というものは中正な立場をとっておりまして、政府の指示や命令によって動くものでないことは言うを待たないのであります。しこうして警察庁がその管理のもとにありまして、事務的には警察庁公安委員会にいろいろな資料も出しましょうし、研究も進めて参ることは当然であると思います。  しこうして、そういう問題でありますから、政府としましても関心を持ち、わが自由民主党といえども、やはり政局を担当しておる与党として関心を持ちまして、いろいろな方面から研究をしたことは事実でございます。しかしながらわれわれはあくまでも公安委員会のこの研究なり公安委員会意見というものは、こういう制度の何から申しまして、先ほど申しましたいわゆる人民主権のもとにある警察権あり方運営からいうと、一番尊重すべきものである、かように考えておるのであります。
  7. 片山哲

    片山委員 人民主権のもとにおける警察制度と旧憲法下における警察制度とは非常に違っておるのであります。これは申すまでもないことであります。すでにあなたの前の内閣におきまして、自治警察を廃止しまして、人民主権のもとにおける警察制度が後退をいたしました。中途半端なものになっておるのであります。現憲法下においての警察制度根本的に調査をしないで、いかにあるべきか、地方分権的で進むべきであるか、自治警察制度へ進むべきであるか、これはまたあとでお尋ねをいたしますが、これらに対して真剣な検討をなさずして、触れずして、枝葉末節のようなほんの一部分をいじくって、しかもそれがあとじさり、あと戻りの古い時代戦前に戻るような、基本的人権を脅かす改悪の方向に進んでおるとわれわれは認定するわけでありますが、非常なこれは差があると思うのであります。  つまりお尋ねしたい点は、人民主権のもとにおける警察制度と、それから天皇主権のもとにおける警察制度と、その相違点。現警察法はもう限界に来ておる、これ以上妥協は許さない、これ以上あと戻りをしてはならないにもかかわらず、今度の改正あと戻りして、旧時代へ接近をしたわけなんですが、根本的に研究をしておると言いながら、その枝葉末節、こまかいところをいじくるだけであって、どうしてあと戻りをしたのであるか。こういう点について警察制度に対する基本的な、人民主権的なあなたのお考えがさっぱりわからぬわけであります。基本的人権を擁護する建前警察制度改正し、警察制度を建て直すということでなくちゃならないわけなんですが、その人民主権のもとにおける警察制度の進み方、あり方というものをもっと明白にお示し願いたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 片山委員は、何か警察法改正警察官職務執行法改正が、民主警察人民主権のもとにおける警察から、戦前天皇主権のもとにおける警察あと返りしようというような前提に立っておいでのようでありますが、私どもは全然そう考えていない。警察法の精神や、この警察官職務執行法観念は、新憲法制定とともに全然根底が変ったわけであります。従って建前から申しましても、運営から申しましても、人事の上から申しましても、すべてこの旧憲法時代と現在の警察制度は違っておるのであります。そうして警察法改正が御承知のように二十九年にされたのでありますが、これが何か民主主義といいますか、人民主権警察あり方を逆戻りさせたようにお話しになりますが、その当時の改正の論議から見ましても、警察というものは、言うまでもなく、あくまでもその運営人民主権の上に立っておるわけでありますから、一部の人々やあるいは政治的特殊の政見を持っている者の意図でもってこれを動かすことはいけないのであります。あくまでも中正な立場、しこうしてその中正な立場を保持するためには、各界の広範な立場からの見解を持ち、見識を持っている人を入れた公安委員会管理のもとに置いた警察運営によってやっていく。しかしながらその目的は、言までもなく、今おあげになりました個人の生命、身体、財産というものを守ることであると同時に、犯罪を予防する、及び公共安全秩序を守る、この三つのことが警察本来の——どこの警察でもそうである、日本警察だけじゃなしに、すべての警察というものはそういうものである。しかもそれで効果的に、また経済的に有効に行われるということが国民の願うところであり、すべての者の考えておる警察根本観念ではなかろうか。ただ問題はそういうものが乱用されるとか、あるいは逸脱した場合はどうだということの議論がずいぶん出ておりますが、いかなる法律といえども乱用逸脱は許せないことである。私は戦後におけるところの現行法におきましても、逸脱乱用をしようと思うとずいぶんひどいことができるじゃないかという議論も出ようと思います。しかし幸いに戦後の警察は民主的な警察として、百パーセントじゃありませんけれども、大体において私は民主的な運営が今日まで行われてきておる、この基礎の上に立ってのわれわれの議論でないとならないと思います。決して私どもは過去に立ち返るようなことを考えておるわけではございません。
  9. 片山哲

    片山委員 しかしながら、首相憲法改正論者であります。改正論を平気で——内容はこれから伺いたいと思うのでありまするが、自分憲法改正論者であるということを、過般のブラウン記者に対する談話弁明の際においても、本会議の席上においてまことに事もなげに表明されたのであります。憲法改正しようとする考えを持ってこの警職法改正しておるというところに、国民の非常な疑惑と不安があるわけでありまするから、これからその改正のことについて伺いたいと思いまするが、意見の表示は自由であります。  しからばお尋ねしたい。改正改正と言われるその改正は、一体どういうふうにあなたは憲法改正しようとお考えになっておるのでありまするか。こまかい条文のことは聞きません。基本的な問題で、戦後現われましたる、この憲法が行き過ぎであるとか、いろいろ議論がありまするが、その議論のうちどれをあなたがおとりになって憲法改正論者である——いかにも周知のごとく自分改正論者であるということを表明されたのでありまするから、この席上においてその荒筋を、大体の方向だけは明らかにしてもらわなくちゃならぬと思うし、またあなたも明らかにすべき責任があるのではなかろうかと思うのであります。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 御承知のように私はかって自由党内におけるところの憲法調査会長という地位にありまして、当時憲法改正問題について党として研究をいたして参ったのであります。自来私が憲法改正論者であるということは、実は天下周知の事実であって、いかなる場合におきましても、私自身意見として憲法改正しなければならぬという考えを持っておる、憲法改正論者だということは、すでに世間で認められておることでありますから、私はこれを包み隠そうとか、あるいはこれを粉飾しようとは考えておりません。しかしその内容、どういう点をどういうふうに改正するかという点につきましては、これは実は非常に重大な問題でありまして、われわれとしては十分に一つ権威者の慎重なる調査研究に待とうということで調査会ができたことも御承知通りであります。私自身は、言っておることは、この憲法基本観念であるところの民主主義平和主義及び基本的人権を守るという三大原則は、将来の日本憲法改正されたなにでも貫かなければならない。しかしながらわれわれがこの憲法全体を見るときにおいて、この制定の経緯にもかんがみて、またその後におけるところのわれわれが憲法を施行した結果にもかんがみて、日本の民族の気持にぴったりとくるような、またその考えから生まれ出るところの憲法を作り上げたいというのが私の基本的な考えであります。各条文についての問題については、十分に一つ調査会において研究して、さらに各方面の批判、最後には国民審判に仰がなければならない、かように考えております。
  11. 片山哲

    片山委員 平和主義民主主義基本的人権主義とは変えない、しからば何を変えるのでしょうか。この憲法は先ほどから私も言うし、首相も言う国民主権憲法である。国民主権に最も必要なることは、国民基本的人権を擁護するという裏づけのないことには、主権者がその地位を保つことはできない、これはうらはらになっておりますということは言うまでもないのであります。従って民主憲法を擁護するということは、国民主権をどこまでも守り通す、基本的人権を擁護するということは、これは昔からいわれる天賦人権説やあるいは自由民権論などの議論は別といたしましても、いずれにしてもこれは絶対の権利である。制限を許して半分だけ基本的人権を認める、半分だけ主権を認めて、国民天皇と持ち合いっこするというようなあいまいもこな説は許すべきものではないということは、万々御承知のことと存ずるのであります。従って絶対的とでも申すべき主権の存在、これは制限なしにはっきりと天皇にあるのか国民にあるのか。これが国民主権というふうにすでになっておるのでありますから、これは変えない。その国民主権たる基本的人権をも擁護する。この間のブラウン記者談話弁明において、第九条も含めて憲法改正する考えを持っておるような意味お話がありましたが、どうも改正々々といいながらさっぱり何をどこに持っていくかというようなる点について実にあいまいであります。一般国民あるいは評論家が言うなれば、それはあれで差しつかえないわけでありまするが、総理大臣地位におられる方が改正論者である、これはごまかしも隠しもしないと言いながら、方向すら国民に明らかにしないということは、はなはだ国民を迷わすものであると思います。憲法の規定は厳として存在する国家の基本的な準則でありますから、国民はこれに従って行動しなければならない、国の方針も海外に向ってこれを表明する、いわゆる国民宣言とでもいうべきこの憲法でありまするから、改正するというだけで言いっぱなしでは許されないと思います。ほんとうにわれわれは国民の一人として、また議会に列する者といたしまして、改正すると言われるならば、すでにその改正ということを言われて年あるのでありますから、その方向、大体の見当を明示するということは、あなたの義務でなければならないと思うのであります。その意味においてその一端を、その大綱をぜひ明らかにしてもらいたいと思います。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、私の根本考え方は申し上げた通りであります。しこうして具体的の内容については、権威のある憲法調査会結論を持つべきものであるというのが私の考えでございます。
  13. 片山哲

    片山委員 しからば、その憲法調査会なるものは改正をさすための調査会ですか。どういう意味調査会ですか。一つこれもはっきりしてもらいたいと思います。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 これは、憲法調査会法の一条にはっきり書いてありますように、この日本国憲法を再検討いたしまして、改正する必要ありやいなや、改正の要ありやいなや、改正するとすればどういう点に、どういうふうにするかという全般にわたっての検討をいたすのが、この会の任務であります。     〔発言する者あり〕
  15. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  16. 片山哲

    片山委員 そこで、過日の本会議においては、あなたは、はしなくも、この改正内容は、調査会結論を待って明らかにするというような意味のことを言われたと思うのであります。これは、私だけじゃなしに、大ぜいの人も聞いておるし、明らかになっておりまするが、内容は言わないが、一に調査会そのもの改正のためにできておる調査会である、こういう印象を深く与えたのであります。第一条はほんの形式的な表明にすぎないのであって、実際においては、この調査会なるものは、今は内容は言わないでおいておっかぶせてしまって、そうして調査会結論によって改正はこう出たんであるというようなやり方をしようとしておるということは、はなはだどうも公明ではないように思うのであります。国民は非常な疑惑を持ちまするから、簡明率直に、調査会改正のために設けてあるならば、調査会結論を待って改正をしようとするのである、つまり、これは改正を要する憲法か、あるいはまた十年、二十年このまま続けてもいい憲法考えるのか、一体その改正せざるを得ない、こういう状況に立ち至っておる憲法でありやいなやということの点を明らかにしてもらいたいのであります。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 憲法改正前提としてこの調査会を設け、またこれを運営しておらないという証拠は、私ども憲法改正反対をされておるということ、これまた天下周知である社会党の方々に、これに参加してもらいたいということを心からお願いもし、またそのための地位もあけてあります。また、この委員会が多数決でもってこれをきめる委員会でないということも、これまた委員会において決定されておるのでありまして、従って、これをもってごらん下されば、憲法調査会というものは決して憲法改正することを前提としてその案を練らしているものでないということは、きわめて明瞭であると思います。     〔発言する者あり〕
  18. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  19. 片山哲

    片山委員 あなたは改正論者であるということが明らかであります。しこうして、改正内容は今日言わないが、しからば、幾多欠陥幾多時代に合わない点があるという点は、内容は言わないでも、そういう欠陥があるという点は認めるのですか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 私は、私が憲法改正論者であるということにつきましては、その大きな理由は、言うまでもなく、憲法制定の由来から申しましても、また、その当時の日本状況から見ましても、やはり日本人が、一番大事なこの憲法については、日本人が自由な意思で判断し、自由な意思でこれを討議して、日本にふさわしい憲法を持ちたいというのが基本的な考えの根拠でございます。さらに、十年間の、この十年余にわたるところの憲法の施行の状況に見まするというと、各条章につきましても、相当に今の時勢、また、日本の国情からいって、こうもありたい、ああもありたいというところは相当にあると考えます。
  21. 片山哲

    片山委員 この憲法には「最高法規」という条項があります。これは最高法規である。そうして、その中の一項目に、国務大臣は「この憲法を尊重し」、尊重しなければならぬということになっております。果してあなたに尊重の意思ありやいなや。今伺いますると、改正をしたいというのでありますから、現在において、その内部において、これは押しつけられた憲法であるとか、あるいはこれは時代に合わないとか、この点は気に食わないとか、この点は文章がおもしろくないとか、いろいろの意味において改正しようとしておるに相違ないのであります。しからば、この九十九条でありまするが、「尊重する」、国務大臣は尊重する大きな責任を持っておる。尊重をしていないではないですか。尊重するというならば、とにかく学問的にこういう点を改正したいという誠意を披瀝して、そうしてこの憲法をもっとよりよいものにしようとする総理大臣としての所信を表明することが、この警職法審議に当って最も必要なることと存ずるのでありまするから、その点を伺います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 私は、憲法改正論者であるということを申しましたが、憲法を、現行憲法が効力を持っている限りこれを尊重し、これを順守しなければならないということにつきましては、あえて私は人後に落つるものでないということを明確に申し上げます。
  23. 片山哲

    片山委員 それだけではまことに不十分であって、満足をいたしません。何となれば、第九十九条の、その次には、これを「擁護する義務を負ふ。」と書いてあります。政府並びに閣僚諸公が擁護しないものでありますから、国民の側からわれわれ擁護しているのであります。擁護運動を展開しているゆえんというものは、憲法の条章に基き、国民の責任として、あるいは議員の責任としてやっているのでありまして、厳として存在する限りにおいては、やたらに、いや、これは改正すべきものであるとか、いや、その内容は言わないけれども調査会に一任したのであるとか、そういうことはこの条項に反するものであると思うのであります。果してこれを尊重し、さらに進んで積極的に擁護するというようなることをおやりになったことがありまするか。果して擁護の精神をお持ちになっておりまするか。持っておられるならばこれらのことについて伺いたいのであります。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 御承知のように、九十六条には、改正に関する手続についての規定がございます。私は、これは万古変えられないという意味において改正されないということでなしに、この憲法というものは、今改正するかしないかという議論については、順法の義務や、尊重の義務や、あるいは擁護の義務と何ら違反しないものである、私自身がこの憲法に対して、この憲法のある限りにおいて、この憲法を尊重し擁護するところの気持におきましては、決して人後に落ちないということを先ほど申し上げたことを繰り返して申し上げます。
  25. 片山哲

    片山委員 改正ということは国会に与えられたる権限であります。改正の発議は国会がこれをなし、しこうして国民の投票を求める、国民投票にこれを付する、つまり、国会と国民とが、このあなたのあげられた改正についての発議権なり発動権なりを持っておるのであって、政府は持っておるわけじゃないのであります。政府は尊重し、擁護して、これを忠実に行なっていく責任を負わされておるのであります。私のことを申し上げて恐縮でありまするが、私が施政方針の最初の演説において、自分はこの憲法を誠実に行う責任を自覚しておるのであって、この憲法の命ずるままに動いていきたいということを明らかにいたしたのでありまするが、その後保守内閣は、施政方針の演説を注意して聞いておりましても、この憲法を尊重し、これを擁護する責任を自覚して施政に当られておった方はなかったのであります。あるいはなしくずしでこれを変えていったり、あるいはまたいろいろの勝手な解釈をつけましてごまかしていったり、今まではいわゆるごまかし再軍備、なしくずし再軍備というのがありましたが、今回の警職法改悪は、まことに基本的人権に関するなしくずし侵害である、なしくずし憲法侵害である、私はさように思うのであります。従って、あなたの改正論というものは、この条項に照らしますると、不謹慎であると思います。ちっともこれは遠慮することはない、おそるることはないと、先ほどからおっしゃっておりまするけれども、よく考えてみますると、尊重し、かつ、これを擁護する義務が、国務大臣に負わされておる。天皇、摂政、国務大臣、国会議員、司法官、その他公務員、すべてこれを尊重し、擁護する義務を負わされておるのにもかかわらず、改正をすることは、順法の精神にもとることはなはだ大きいものであると思います。これは単に精神的に、いや尊敬する考えを持っておるのだ、あるいは抽象的に擁護しておるのだというのでは、どうも国民は納得いたしません。もっと憲法に忠誠を誓う、誠実を誓うと言ってこそ、国の秩序は保たれていくのであります。治安の上において、憲法の尊重ということが最も大事であります。憲法にいろいろの疑惑を起し、あるいはこれに対して尊敬の念を払わなかったり、いやどうもこれは変えるべき点が多々あるのだというようなることを政治の責任者が言う、その考えこそが、秩序を乱す大きな原因になっておるのであると私は考えるのでありまするから、この点においては、ほんとうに国家のために、国民生活幸福のために、いま一度その態度とお考えを明らかにしてもらいたいと思います。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り憲法を守り、憲法を尊重しこれを擁護するということが、治安の上から、その基礎をなすということのお考えにつきましては、私も全然同感であります。しこうして私が申し上げているのは、われわれが職務を執行するに当りましても、すべて憲法の規定をあらゆる面において守るということは、決して私は人後に落ちないということを先ほどから申し上げております。しかしこれを改正するかしないか、改正の必要ありやいなやということについて、いろいろと意見を持つことは、私はみんなに許されておるところの権利であると思います。その改正も、もちろん憲法の規定があります。この改正に関する規定を順守して、これに基いて改正をしようというものでありまして、決して私はこれがために憲法を軽視するとか、あるいは尊重の念が欠けているとかいうべき精神のものでは絶対にないと思います。
  27. 片山哲

    片山委員 それらの問題について、積極的な政府憲法擁護の活動を、尊重の意思表明を願わなくちゃならないのでありますが、それらはおしまいに、一まとめにして総理大臣の所信を伺うことにいたします。ただいまのお話はまことに不十分であって、満足をするわけにはいきません。  進んで今度は、基本的人権の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。先にも申しました通り主権在民、国民主権国民主権者である。これには根底がなくてはなりません。からっぽで主権者であるというわけではありません。その根底、その背景、うらはらになっておりますものは、言うまでもなく基本的人権の擁護であります。国民主権は、国民基本的人権を擁護することによって保障されておるのであります。基本的人権は、主権の存在についての一つの保障であります。よってわが憲法も、他の世界の憲法と原理を同じゅういたしまして、人権の尊重を基本として戦後初めて組み立てられたる民主憲法、こういうわけであります。この人権擁護の世界歴史的な経過、歴史的な発展ということが、やはりこの憲法のうちに表われて、その歴史の流れ、世界における人権擁護の発展の順序に応じて、わが憲法も作られたものであるということがはっきり記載せられてあるのであります。  長いこと申し上げることを避けまして、要点だけ申してみたいと思いますが、それはこの憲法の中に表われている前文であります。この前文の中の一節に「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、」とあります。わが国全土、日本全土にわたってもたらす自由のありがたさを、自由の恵沢を確保し、さらに、中略をいたしまするが、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起らざるようにすることを決意して、主権国民にあることを定めて、この憲法を確定すると書いてあります。この憲法の確定の根底は、自由の恵沢、自由の恩恵、ありがたさを十分に確保いたしまして、そして主権国民にあることをここに確認した憲法でありますから、基本的人権の擁護というものは、非常に絶対的なものである。制限をつけてはいけない。半分だけ与えるというようなことはいけない。円満で、全部的なものでなくてはならない。しこうして、「これは人類普遍の原理」であるとまで書いてあります。人類普遍の原則としてこの民主主義、しこうして民主主義が、政治の具体性を持って国民主権となり、国民主権基本的人権の上に安定をするのである、これが人類普遍の原則である、こういうふうに明瞭に書いてあるのであります。これをくつがえしてはならない、あと戻りさせてはならないということで、この憲法はさらに進んで、あらゆる努力を払ってこれを擁護し、支持し、その基本的人権の後退を防止しようと努めておるのであります。ややともすればこれが後退される。今度の警職法改正案というものは、基本的人権の後退であるということは、もう世論の一致しておるところであります。後退して切りくずされる。切りくずされることを防止するために、あらゆる努力を払わなくてはならない。つまり国民全体が主権者であって、取り締られる客体ではないのであります。自分たちが国家の秩序を保って、公共の福祉を念願して、国民の幸福を実現しようとするために不断の努力を払う、こういうふうになっておるのであります。これを一々条文に当てはめてみますならば、きわめてこの考え方の正しいことが、そういう順序で努力していることが、よくわかるわけであります。  ごく顕著なものだけをあげてみたいと思います。先ほど申し上げました通り、第十章の「最高法規」、これは他の国の立法例に少い個所であります。非常に格上げをいたしております。他の法規よりも一段と高き国家の基本方針である、中外に向っての国民方針である、宣言である。私はこれを国民宣言なりと考えるのであります。こういう最高法規という点を掲げて、そうして侵すことのできない大きな権利であるということを、その内容にうたっておるのでありますが、まず第一段に第十章として、三カ条からなりまするきわめて重要なる、後退を防止し、基本的人権はどこまでも完全に傷のつかないように守り通していかなければならないということを明らかにいたしておるのであります。  さらに「この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」侵すことのできない——不可侵の永久権利であるということを、憲法の条章「国民の権利及び義務」の中に書いておるのであります。第九条は御承知通り「戦争の放棄」、その次の第十条からは、他の国の立法例と違いまして、驚くなかれ三十一カ条からなりまする人権保障です。そんなに書かぬでもいいじゃないか、訴訟法に譲ってもいいじゃないかというような議論が、立法当時あったほどでありまするが、しかしながら、じゅうりんされて土下座させられておりまする、あるいはつんぼさじきにほうり込まれておりまする国民の権利を十分擁護して、しかもこれを後退せしめないように、あとじさりを防止する国民の努力を要求するために、格上げしただけじゃなく、永久の権利として現在及び将来の国民に与えられたるものであるということを明記して、その確保をはかっていかなくてはならないという意味から書かれたのであります。  第三には、これは「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」今度は「信託」という言葉を使って二度繰り返しておるのであります。法規において二度同じことを繰り返すということは珍しいことであります。重複を避けて、一ぺんでわかっておるじゃないか、一回きりでいいじゃないかといって、繰り返して書くことは立法例においては避けて、一回で明白にしておるのにもかかわらず、重要事項であるという意味で、しかもなおこれをエンフアサイズするために、過去幾多の試練に耐えて、弾圧を食った、幾多のイバラの道を通らなければならなかった人権擁護のために、その「試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」不可侵の永久の権利ということを二度書いておりますることを、大いに、注目をしなければならないわけであります。  さらにまた第四番目におきましては、今度は国民主権者である建前から、その建前を保持するために、国民の不断の努力によってこの権利を保持しなければならない。国民に責任を負わせる、人権擁護の責任があるのである。人権擁護の第一の責任は、国民不断の努力である。国民は、これは自分のものだから守り通そう、こういう心持を持って動いておるのであります。そうして、さらに、言葉を続けて憲法の条章は、「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」国民に責任がある。公共の福祉は警官の責任以前に、国民自身公共の福祉のためにこれを利用する。これが天皇主権制における警察制度と書き方の違っておるところであります。根本的に構想が違っております。思想が違っております。国民主権者となって自分たちの福利を自分で増進しよう。そのために必要なものは何かというならば、基本的人権である。かくしてこそ国民主権がその地位を安定させて国家の秩序が保たれていくのである、こういうふうに書いてあるのであります。  もう一度これを二言で要約して申しますならば、国民がみずからのものとして不断の努力で育て上げていかなければならない基本的人権である。公共の福祉のために基本的人権を利用しなければならない。活用していかなければならない。そうして公共の福祉を実現しよう。元来この公共の福祉あるいは公共の利益、安寧維持とかいうことについては、いろいろの学説があります。私の乏しき研究でありますけれども、これを言い出したのは徹底的な国民主権論者でありますルソーであるといわれております。ルソーは、天賦人権説、民約論で、もう徹底的な国民主権論者であることは御承知通りであります。それゆえ彼はこの言葉を出しまして、基本的人権を最大限度に尊重する建前で、福祉を利用してよき社会を作りたい——社会保障とまでは行かなかったのでありますが、彼は「公共の福祉」という言葉を最初に使った学者であると今日いわれておるのであります。そういう意味から申しますならば、公共の福祉は国民の不断の努力と国民の利用とによって、国民の責任においてこれを大いに発揚する。しこうしてそのために基本的人権は守り通していかなくてはならない、そのために国民主権を実現する、こういう段階で進んでくると思うのであります。  元来、基本的人権なるものは、たなからぼたもち式にひょこっとくるものではないのであります。わが憲法もこれを承認いたしまして、多年の試練に耐えて不断の努力で、与えられたものではなくして、自由を求める人間の最大の奮闘と努力によって獲得されたものであるということを明らかにいたしております。一応これが成立をいたしたといたしましても、常にこれを擁護していかなければならない。常にこれを育て上げてこれを活用して努力を払っていかなければならない。こういうように絶えず育て上げていかなければならない責任を国民自身が持っておるという書き方が、国民主権憲法、従ってこれから来たる警職法でなくてはならないわけでありますにもかかわらず、今回お出しになっております警職法は明らかに矛盾しておるのであります。わが憲法は、国家主権論または天皇主権論の立場から基本的人権を規定したものではなくして、主権在民の観念を明らかにいたして、そうしてすべての法規に対して指令を出しておるわけであります。そういう建前でありますから、もうこの警職法現行法が限界です。これ以上いじくり回して改正をして、警察官の権限を拡大しないことにはどうもつかまえられない、あるいは治安の維持ができないというような糊塗的な枝葉末節的なものではないと私は思うのであります。  さらに理屈ではなくして、従ってわが国の憲法制定も、世界の歴史がこれに当てはまるわけでありますけれども、この基本的人権というのは、人類多年の不断の努力の集積であり、積み重ねであるということは、今ここで申し上げるまでもなく、すでに御存じの通りであります。もうくどくど説明の要はありません。まず、一つの例だけをとってみますならば、一二一五年にできましたマグナ・カルタでございます。人民の権利を保障する、人民の権利を確保する、弾圧はしない、じゅうりんはしない、マグナ・カルタに署名をする、一六〇〇年英国における権利請願なり権利章典、これらの幾多国民の努力の積み重ねた成果が、今日の常識の法典といわれるコンモン・ロウの原則が不文法として英国においてはでき上っておりまするということは周知の事実であります。でありまするからして、一言一句よくこれを翫味してむだなことは書いていないのであります。ただ形容的な美文を連ねておるわけじゃないのでありまして、不断の努力、福祉の利用、人類多年の試練に耐えて侵すことのできない永久の権利としてこれが確保せられておるという基本的人権は、どうしてもこれは国政の上で尊重していかなければならないのであります。  今回のこの警職法は、国民を取締りの客体と見て、最大の尊敬どころの話じゃない。つまり警察官の認定で疑惑と不信を国民に投げつけて、犯罪の嫌疑の名によって国民の自由を拘束せんとするものであります。まことにわが日本における多くの先覚者が獲得いたしましたこの自由の権利を、基本的な人間の権利を、単なる一片の疑惑を持ってじゅうりんする。学術会議が立ち上ったのもこのゆえんでありましょう。キリスト教団体が信仰の自由を叫んで立ち上ったのもこのゆえんでありましょう。そういうわけ合いでありますから、この改正法は旧明治憲法下における思想をそっくりそのまま出したものである。人権擁護、基本的人権の尊重を土台としてでき上っておりまする国民主権下においては、こんな改正法は出すべきものじゃない。もう筋が根本的に違っておる、構想が違っておるのでありまするから、私はそういう意味をもちまして、ここに憲法違反の理由をもちましてこの警察改正法というものは撤回すべきものである。のみならず公共の安全と秩序という名のもとに勝手な解釈をして、国民の自由、幸福追求の権利を侵害し、集会、言論、結社の自由を侵害し、あるいは勤労者の団結や団体交渉権の侵害をするということりを決議するのも無理はないと思うのであります。  これらの各団体の決議を要約してみますと、こういう表現を用いております。本法は国民基本的人権、特に身体の自由、集会、結社の自由、居住及び所持品に対する不可侵の原則に対し、重大なる侵害を与えるおそれがある、よってもってこれに反対を表明する。本法は国民主権立場に立つわが憲法基本的人権を侵害するものであって、違憲なりと断ぜざるを得ないのであります。首相のこれに対する弁明あるならば伺いたいし、これに対して押し切ろうとする考えの那辺にあるかを明らかにしていただきたいのであります。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 基本的人権及び国民の自由、国民主権である以上はそれが絶対なものであり、それを尊重しなければならぬという趣旨につきましては、今片山委員お話にあった通りでありす。ただ考えなければならぬことは、言うまでもなく基本的人権とか自由というものは、一部の人の基本的人権、自由を守るということじゃない。自分のこれを主張する人は他人の基本的人権、他人の自由というものが確保されなければならない。国民全体が平等に基本的人権及びその自由が確保されるということが、私は基本の観念であると思います。そこに……。     〔発言する者あり〕
  29. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 抵触する場合に、どうそれを調整するかというところに、いわゆる公共の福祉という問題が出てくるのであると思います。憲法人権の行使につきまして、利用、活用については、これが、公共の利益に合するように利用しなければならない。また憲法十三条にありますように、公共の利益に反せざる限り云々ということが、基本的人権について、私はやはり当然考えなければならぬことであると思う。これはすべての人が平等にその大事な基本的人権、自由を享受するためには、そういう制約をもって調整するということが絶対に必要になってくる。  今お話を聞いておりますと、あるいはすでに今限界に来ておる、警察そのものを設け、どういう内容のものであっても取り締るとか、あるいはそういうことを未然に防ぐとかいうこと、もう警察そのものが適当でないじゃないかという議論のように思うのでありますが、今度のこの警察官職務執行法改正案内容を御検討下さるなら、要するに最近のいろいろな事象を見るというと、あるいは集団的な一つの実力行使によって、平和な多数の市民の自由、基本的人権が脅かされておるような事態を未然に防いで、そうして公共の福祉に合せしめ、ここに調整をとろうというのが、私どもの今回の改正内容であります。従いまして、今お話がありましたように、このことに対して十分な理解がまだいかない方面もありまして、反対議論もあることは私はよく承知いたしております。先ほど申しましたように、十分に審議を通じて、こういう論議を十分に尽して、国民にこの改正案内容を正当に理解してもらって、これによって初めて国民全体のこの大事な基本的人権や自由が平等に保護できるんだという確信を持ってもらうように審議を進められんことを私は望んでおるのであります。
  31. 片山哲

    片山委員 しからば、さらに進んで伺いたいのであります。  警察制度の構成がいけない。つまり国民主権下における警察制度あり方検討し直さなければならぬということをいうのであります。すなわち、国民主権下における警察制度は、中央集権的のものであってはならない。地方分権制度、すなわち自治警察なるものを認めて、最初わが国において、この憲法制定せられた直後、自治警察があって、そうして警察権を行使する中枢機関を官僚によらないで、一般国民から選ばれた、今日の公安委員じゃない、もっとしっかりした、もっと民衆的な、もっと公共の福祉を考えております公安委員的な合議体とすべきものである。警官は政治家ではないのであります。官僚政治すべからず、警官政治に関与すべからず、国民が政治をするのであります。国民に選ばれた総理大臣が政治をする、あるいは国会議員が国会において政治を主張する、論ずる、こういう建前と同じように、警察制度もこれに準じなければならない。にもかかわらず、中央集権的に戦前よりもさらにこれを強化しておるとは一体何事ですか。前には警保局長が内務省の一角において全国の警官を指揮する程度でありましたが、今日においては閣僚が公安委員長となったり、あるいは警察の全指揮官となったりしておるということは、まさに逆行であると言わなければなりません。こういう意味から、わが国においては実に中途半端であります。自治警察を廃止にしたのはだれでしょうか。これはわが国において教育委員の選挙制を廃止にいたしまして、今日の勤評問題の混乱を招いておると同じように、憲法を尊重せざる結果でありまして、ゆゆしき大事であります。今また本改正案を提出いたしまして、基本的人権をなしくずしに侵害しようとする、三本立でじりじり押してきておるのでありますから、国民はたまらないわけであります。こういう意味から申しまして、警察制度は明治憲法下警察制度あと戻りしつつあることをわれわれが憂えるわけであります。すなわち一般に言われておりまする警察国家の再現というのはこれなんです。自治警察を廃止にしたこと、中央集権化したこと、これが逆戻りであって違憲である、こういうことを私は申し上げたいのであります。  この民主憲法下においては最初にでき上った自治警察と並行してきたのがぎりぎりだ。それ以上にこれを中央集権化したり、公安委員を骨抜きにしたり、あるいはこれは公安委員の構想で一年以上も研究したのであってというような逃口上をするようなことでは、国民は納得をいたしません。国民不断の努力によって基本的人権を守られるようにしていかなければならないのであります。反対決議反対闘争もみな国民不断の努力の現われであると見て、これに対する慎重なる対策が望まれてやまないのであります。  今日まで築き上げてきた、過去の幾多の試練に耐えたその成果でありまするから思えばまことに感慨無量でありまするが、警察の誤まったる判断のもとにずいぶん迷惑をいたしましたわが国の実例をあげる煩瑣にたえないのでありまするけれども、二、三だけあげてみまするならば、美濃部博士の天皇機関説という学説がいけないというわけで、博士が弾圧を食らったということは顕著な事実であります。われわれの友人でありまする森戸辰男君がクロポトキンの研究を大学の経済学部の機関雑誌に出したことがいけないというわけで、森戸君に禁固二カ月、しかも実刑を喰らわしておるのであります。ホーリネス教会の中田監督が天皇の上にも神の祝福あれと、こういう祈りをして、天皇の上に神を置いたのが不敬であるというわけで弾圧を食らったのであります。しかもその一線に立つ警察官が誤まった幼稚な判断で事を断ずるものでありまするから、たまらないのであります。ごく卑近な例でありますけれども、こっけいしごくと笑うにはあまりにも悲劇だと思いまする一例でありますから申し上げたいのでありますが、ある演説会において弁士が、日本の社会はだんだんと改造されていかなくてはならない、民主的な改造が必要であるということを説いて、最後に、自分は反共産主義であるということを言ったのであります。これを聞いておりました警官は直ちに中止を食らわしたのであります。どうもおかしい、反共産主義であると言ったのに中止を食らわすとはおかしいと詰め寄って聞いてみますると、「反」というのは反対の反じゃなしに、半分の「半」と解釈したのであります。半分の共産主義と解釈した。そういうことはこういう席で申し上げるのも変でありますけれども、まことにわれわれは悩まされた事例にたくさんぶつかっておるのでありますから、警官の判断ということは実に危険であります。そういう意味から申しまして警職法改正は第九十八条——ちょっとこれは見ていただきたいのであります。この九十八条の条項に違反するものではないか、私はかように感ずるのであります。これは政府委員じゃなしに簡単でありますから、首相ごらんになってお答えを願いたいのであります。「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律命令、詔勅」これはおそらく明治憲法下、つまり以前の残っておりまする法律命令、詔勅のことを言うのでありましょう。その次に「及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」こう書いてあるのです。われわれはこれを解釈してこの憲法の条章に反する、精神に反する、国の最高法規に反する、逆行する、人権をじゅうりんする。基本的人権を擁護して、地方分権的な自治警察をやって、公安委員を選挙して、公安委員国民の手にゆだねて、警察は治安維持のために政治から切り離して、そうして国民の保護者になっていく、こういう建前でいく。国務を遂行しなければならない、そういっておる。「国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」こういう九十八条の条項がありますることは、とかくどうもおろそかにせられておると思うのであります。私はそういう意味から申しまして、この基本的人権を擁護する建前から申しましても、絶対性でありまするいろいろの自由を制限する、男女平等ということを不平等にするというようなことは、みんなこの基本的な人権を侵害することになるわけであります。基本的人権を侵害する法規、国務、その他政府の行為、こういう考えを持ってくる行為の全部また一部はその効力を有しない、こういう規定があります。この規定に当てはめて、この警職法改正案は違憲なり、時代におくれた違憲のものである、基本的人権をじゅうりんし、侵害するものであるから違憲なりと解釈するのでありまするが、首相のこの法規に対する考え、並びに違憲なりという説に対する所見を伺いたいのであります。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 今いろいろ事例をおあげになりましたが、これは明治憲法時代の事例であることは言うを待たないのであります。あるいは治安維持法であるとかあるいは出版法あるいは新聞紙法あるいは刑法にも不敬罪のあった時代のことでありまして、そういう実体法は今日においては全然なくなっております。従ってそういう事例が起るということをお考えになること自体が私は非常に跳躍しておると思うのであります。しこうして基本的人権の守られなければならぬということにつきましては、先ほども私お答え申し上げた通り国民全体の基本的人権、自由というものを平等に守っていく上において、憲法が明らかに規定しておるこの公共の福祉に反せざる限りとか公共の福祉に従ってどうする、この考え方を取り入れて国民全体の基本的人権や大事な自由というものをわれわれはこれによって確保しよう、こういうことでありますから、憲法違反でないのみならず、憲法の精神にもわれわれは決してもとっておるものではないと思うのであります。従ってこれを今の九十八条の規定によって違憲のものであるというふうな考え方は、私ども全然とらないのであります。
  33. 片山哲

    片山委員 そこでこの憲法を誠実に守っていく考えであるならば、今までの方針と変えなくてはならない点が幾多あるのです。今までのやり方はすこぶる軽視いたしております。尊重しあるいはこれを擁護するという現われが一つもないわけであります。ことに前文のおしまいにはなかなかいいことを教えてくれておるのであります。「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」誓っておるのでありまするから、この誓いに忠実でなくてはならない、誠実でなくてはならない、この誓いに応じて行動を開始しなければならない、その責任者であります。でありまするからして、まずあらためて警察官のみならず、官吏・公務員にこの国民の教科書法典ともいうべき国民主権憲法をよく教え込むこと、天皇主権憲法との相違、これから来たりまする諸法規の精神、こういうことを教え込まなくてはならないのであります。教育勅語が今日問題となっておりまする際に、これにかわるものは何かというならば、この憲法の前文であるといってもいいわけです。人類普遍の原則と国際間の道義を非常に高い程度で、崇高なる理想と目的を達成する日本国民あり方を示すという意味でありまするから、私は提案をいたしたい、進言をいたしたい。憲法前文をもって国民の教科書にすべきであります。自由と平等と平和を教える、そうしてほんとうに国民の手によって公共の福祉の実現をはかろうと思うならば、口で言うだけではないのであります。ここでお答えをするだけではなしに、実行に移してもらいたい。実行に移すまず第一段といたしましては、国民教科書法典としてのこの憲法、しかもこの憲法の前文を国民に十分に教え込むという方針をとらなくてはならないのであります。そうして人間の尊重すべきゆえんを明らかにしなければ、戦後初めてわが国に現われたルネッサンスともいうべき人間の発見、自然の発見ともいうべき、初めて人間が生まれ変った、初めて平等の取扱いを受けるようになった、初めて自由を獲得することができたという、この発見でありまするこの憲法を、国民にいま少しく普及徹底して知らしめるということは、治安の維持から申しましても、秩序保持の上から申しましても、国民主権下における政治のあり方としては、最も必要なことと存じます。よろしく教育勅語にかわるものといたしまして、そうして国民の下からわいてくるこの国民精神として、上から文部大臣が押しつけるそんなものでなしに、自発的に国民の人間性を発見した、この憲法の前文の趣旨を国民にいま少しく普及徹底せしめる行動を開始する意思ありやいなや、その点を伺います。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 憲法の前文に盛られておるところの考えが、崇高な理念を持って国際的にも、国内的にもわれわれ国民が将来国家をなし、社会を作っていく上の基本的な考え方を明確に定めておるということは、私も同感であります。ただこれをあるいは教育勅語にかわるところのものとして、一つ日本の教育の中心としたような形でどうするかという問題に関しましては、言うまでもなくこれはまた教育の基本に関する問題でございますから、今片山委員もそういうお話でありましたが、政府がどうするという問題とは違うだろうと思います。私はその精神が日本の教育にも十分に、将来を担うべき国民に徹底するということは非常に望ましいことだと思います。それをどう扱ってやるかという、教育勅語にかわるものとして云々というお話でありましたが、決して言葉じりをとらえるわけではございませんけれども、扱いについては、非常に考えなければならぬ問題があって、上から押しつけるという形のものでは教育の立場からないと思います。一つその精神の透徹するような方途について真剣に考えてみたいと思います。
  35. 片山哲

    片山委員 前文の精神とこの憲法に流れる崇高にして理想的なる国民あり方を、何らかの方法で明示することについて政府は十分に便宜をはかったり、あるいはまたこれに対して、その運動に対して援助を与えるなり、好意的な立場をとるということに聞いてよろしいのですか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 そういう心持ちを持っております。
  37. 片山哲

    片山委員 しからばさらに進んで、この警察制度自治警察を復活する意思ありやいなや、これは復活しなければならぬと思うのです。地方分権制は必要であります。中央集権、従ってそれは政治の中に巻き込まれるのです。警察の政治化です。警察国家再現であるとして、私どもは憤慨をし、かつまたおそれておるゆえんは、自治体警察をぶっつぶしたということにあるのであります。よろしく自治警察を復活すべきであります。金が足りないとか、どろぼうをつかまえるのにおそいとか、そんな枝葉末節におそるる必要はないのでありまして、ほんとうに民主的なる国民主権的なるものと相呼応する自治警察をこの機会に復活をすべきであります。これに関する首相の所信を伺います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この前の警察法改正自治警察がなくなったことが、中央集権的な云々というお話がありましたが、そういう趣旨を持っておるものではなくて、府県の自治警察にしたのですが、これはごらんになりますとはっきり法文に書いてあります。従って今の自治警察というものをやめた理由は、実際にやってみて、いろいろな能率の上から、あるいは財政的理由から、あるいはその本来の目的、機能を果す上から、いろいろと検討されてこれが廃止されたのでありまして、今自治警察を復活するところの意思は持っておりません。しかしそれは決して中央集権的に考えておるという意味ではないということを御了解願いたいと思います。
  39. 片山哲

    片山委員 中央集権的でない新しい警察制度ということはちょっと理解できないのですが、自治警察でもない、中央集権的でもない、そうすればいかなる警察制度を構想しておるのでしょう、この点を伺います。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 今の警察制度は御承知通り、中央においては国家公安委員のもとに警察庁というものが管理監督されております。しこうして府県には府県の公安委員会があり、府県の警察というものがあります。     〔発言する者あり〕
  41. 鈴木善幸

    鈴木委員長 御静粛に願います。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 決して中央がこれを指揮監督したりするのではなく、それの人事のなににつきましても、それぞれ地方の公安委員会が権限を持っておるのであります。中央集権であるとか何か明治時代の旧憲法時代のなにとは全然違っておるのであります。
  43. 片山哲

    片山委員 しからば公安委員制度根本的に改革する意思ありやいなや、改革しなければならないと思います。理想的に申しますならば、公安委員は民選でなくてはならない。教育委員の選挙と相並んで公安委員の選挙も行なってよろしいわけでありますが、あまり煩瑣過ぎるという意味で、最初は教育委員の選挙だけにいたしまして、公安委員は委嘱と申しますか任命のような形になったのであります。それが今日の禍根を来たしておると思いますから、公安委員制度をもう少しじゃない、思い切ってこれを切りかえまして、民主的なるものにして、そして真に国民の保護者であるという信頼を博するに足る警察制度の根幹としての公安委員制度にする、そして自治警察と相待ってわが国における基本的人権を擁護し、国民主権の新しき民主政治を全からしめる、こういう方向に進んでいくことが現下最も必要なりと私は感ずるのでありますが、公安委員に対する首相の改革の意見、あるいはこれをどう扱うか、この点を明示していただきたいのであります。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 現在の公安委員に任命すべき者の資格やあるいは職務執行について中正な立場を持たなければならないというようないろいろな規定から申しましても、中正な公安委員会のもとに警察というものを置くのであるという趣旨が明瞭になっておると思います。しこうして選任の方法としては、御承知のように国家公安委員につきましては、衆参両院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するということになっております。また都道府県につきましては、それぞれその議会の承認を得て知事が任命する。そして実際のなにを見ましてもあらゆる方面から広く中正な人が選ばれておりまして、私は今日においてそれを改正する必要を認めておりません。
  45. 片山哲

    片山委員 公安委員が公正であって——政府の言いなりになったり、あるいはまた古い思想に取りつかれておったりしたのではだめでありますが、真に国民主権下における公安委員——基本的人権の不断の擁護者、この代表が公安委員である、こういう意味においてこれを切り変えることが絶対に必要であります。これを変える意思がない、さらにまた憲法改正しなければならないというのでは、国民疑惑を受けるのはもう当りまえなのです。国民の反撃を食うのも、これもまたやむを得ないと思います。しかしながら公安委員についてはそういうお考えを持っておるならばいたし方がない。われわれはこの自治警察と公安委員によって中央集権化を防いで、真に国民の保護者である警官たらしめたい、こういうことを強く首相に要望するものであります。  さらに最後にこういう点を伺いたいのであります。首相はこの前の国会において平和問題についてなかなか思い切った答弁をされておったのを聞いておったのであります。それは与党の鶴見祐輔君、川崎秀二君らの質問に対する答えで、世界連邦まで進みたい、その内容についてはよく承知いたしませんが、結論だけを承知したのであります。世界連邦まで進んでいこう、世界連邦は理想としていいものであるというようなお考えをお持ちのようでありまするが、重ねてそれを聞きたいのであります。基本的人権とこの憲法の精神を浸透させる意味から申しまして、世界連邦案というものは関連を持つものであります。ただ宙に、与党の人が言ったからそれに賛意を表したというのでは困ります。野党の質問に対しましても、世界連邦というものは、あなたのお考えではそう遠くない、高き理想として賛意を表しておるならば、どういう理由で賛意を表しておるか、こういう点を明らかにしていただきたい。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 私は国際連合中心の外交を展開しておることは御承知通りであります。しこうして国際連合というものの発達を見ますと、従来の会議体の云々というのと違い、一つの国際民主主義のなにを代表しておる、いわばまだそれだけの地位内容は持っておりませんが、一種の国際的な、民主主義の議会的な意義をだんだん加えてきているように思うのであります。私はこの傾向は非常にいい傾向であり、国際的に今日相対立し、相互いに戦争の危険をかもしているような国々が、そういうものを離れて一つの国際連合のあの崇高な憲章の精神のようなものにのっとって結合されるということは、世界の平和をもたらす上からいって、非常に望ましい形であると私はかねがね思っておるのであります。  今日世界連邦というこの考え方につきましては、内容的にはまだいろいろ検討を要すべきことがあると思いますが、基本的な考えとして、世界が一つの連邦になって、それの民主的な国会がおのおののステートを民主的に代表してきて、それが民主的に運営されてくるということであるとするならば、世界平和を実現するのに一番望ましいことである。それは私は単なる空想とは実は考えてないのでありまして、そういう意味において世界連邦の考え方に賛成だということを申しておる、今日もそう思っております。
  47. 片山哲

    片山委員 世界の平和を実現するために世界連邦をよき構想なりとして、そう架空のものではない、近き将来において世界連邦の実現をも望む。こういう意味であるならば、わが憲法一つの特色でありまする第九条は、世界連邦と一連の関係において非常に価値あるものである。国際紛争を解決するに武力を行使しない、これを実践するためにみずから戦力を放棄する。戦力を放棄したということは実践なんです。そうして話し合いで解決をしていこう。これを、第九条を制定して世界に宣言をした。国民宣言、フランス革命の人権宣言に続く平和宣言、非武装宣言、まことにこれは世界的な歴史的な価値あるものであると私は思うのであります。  こういう意味から申しまして、この第九条と、そうして先ほどから申しました基本的人権擁護の構想と国民主権とは三位一体の関係で、不可分、有機的につながっておるのであります。先ほど申しました前文の中に、政府の行為によって戦争の惨禍が再び起らないようにするために、主権国民にあることを宣言してこの憲法を確定すると書いておりますることは、つまり戦争から平和なる生活に国民を保護しよう、平和なる生活を保障しよう、これはやっぱり基本的人権擁護の一つなんです。はがき一本でちょっと来い、警察でも人相が悪いからちょっと来いというのは、みんなそういう官僚的一連の人権じゅうりんのつながりなんですが、わが憲法では平和主義に徹するということと、人権を尊重するということと、しこうして国民主権の実を上げるということは、三位一体の関係で不可分、有機的、一を欠いてはならないわけなんです。一つでも欠けない。みんな連鎖関係、有機的な不可分の関係に立っておるのであります。でありまするからして、これを崇高にして高遠なる理想、人類の原則である、国際間の道義であるとまでたたえておるのであります。この憲法に流るる精神は、人類不変の原則である国際の道義、国際信義——国際信義があってこそここに話し合いができる。こういう理想を実現しようとする世界連邦を是なりと主張される首相は、当然基本的人権を擁護しておるこの憲法をどこまでも尊重し、これを擁護する責任があるのじゃないかと思うのです。でありまするから、抽象的な言いのがれはやめて、ほんとうに今日日本の進むべき道は、この憲法によって日本の平和国、文化国を育て上げていく以外に道はないと思うのです。日本が世界に向って中立的な立場をとって、そうして東洋の平和、ひいては世界の平和、人類の幸福、文化高揚をはかりまするその土台は、日本の科学を盛んにし、文化を高揚し、平和国として育て上げていくという材料は、この憲法をたてにして、この憲法を土台として、国民の立ち上りを要求する以外には、もう道はないと私は信ずるのであります。武力をもって進むというようなることは拙の拙なるものでありまするから、この機会に、尊重と擁護、重ねて最後に世界連邦についての考えと同様に、日本の進むべき道は、この国民主権基本的人権の擁護と、さらには第九条に流るる精神たる国際紛争を解決するに断じて武力を用いない、国際紛争を解決するに話し合いでやっていく、これはもう一貫する精神であります。でありますから、一つを取り上げるが一つは認めないというのではだめであります。どうぞそういう意味を持ちまして、この憲法を尊重し憲法を擁護する大なる責任のあることを総理大臣一つ自覚をして、国民の前に自分もこれを尊重し、擁護する意思あるならば、その点を明白にしてもらいたいのです。私は切に、この態度を明らかにすることが内閣総理大臣としての最大の責任であるということを申し上げる次第であります。(拍手)憲法に対して態度あいまいは断じてとるべきではない、明白に憲法の条章の命ずるところを自分は忠実に誠実にやっていく政治の方針であることを明らかにされんことを望む次第であります。所見をお伺いいたします。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り憲法を誠実に順守し、これを擁護すべきことは、私は決してこれに対して何らの疑いも持っておりませんし、また私自身の行動においてもこれを示す考えでおります。ただ問題は警察官職務執行法の提案が基本的人権を侵すものであり、憲法違反である、そういうものを提案するようでは、お前の憲法を順守し擁護するところの精神というものは、口先だけじゃないかという御非難があるかと思いますが、その点につきましては先ほど来申しておるように、この警察官職務執行法改正は、どこにもそういう憲法違反の点はないのであります。私は国民基本的人権を平等に擁護するためには、現在の何ではこれはいけない。たとえば私は一つの例を申し上げます。きわめて明白な例だと思います。道徳教育講習会を妨害するために、これらの講習を受ける人々が多数いる宿屋を包囲して、ほとんど夜を徹して大きな声で労働歌やその他のものを歌って喧騒している。これがいかに善良なる宿屋の人の……。     〔発言する者あり〕
  49. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 人権を妨げているか、あるいはまた宿屋に泊っておるところの多数の国民の人々の人権や自由を妨害しているかということを見るというと、やはりそういうことを制止して、そういうことが起らないようにすることが、私は真に基本的人権を擁護し、自由を擁護するゆえんである、かように考えております。従って憲法違反とは私ども思っておらないということだけを、私明白に申し上げます。     〔「九条はどうした」と呼ぶ者あり〕
  51. 片山哲

    片山委員 不十分であります。ただいまも九条という声がありましたが、私もその点はぜひ首相から明らかにしてもらいたいと思います。九条と基本的人権国民主権は不可分である。九条をどう考えるかということになって、基本的人権に対するあなたの信念の程度も考えられるわけであります。その点を明らかにして下さい。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 九条の規定は、私は独立国の自衛権を否定しているものだとは思いません。これは何人もさように考えております。従ってその自衛権というものを裏づけるに足る一つの実力である自衛隊を持つということは、私は憲法違反ではないと思っております。しかるに世間ではこれを憲法違反であるというふうに九条を基礎にして言われる人々もあるのであります。しかし独立国がその祖国を守る、他から不当なる侵略を受けないような形において一つの実力を持ち、これを守るという立場に立っておる人々のことを考えると、その地位憲法違反であるかないかということが論争されるような状態では、私は規定そのものが非常に不完全であると思います。こういう点は十分に考えなければならない。しかしながら私は国際紛争を武力でもって解決しようというような考えを持っておりません。あくまでも国際紛争は話し合いで解決さるべきものである。たとえば最近における台湾海峡の問題についても、私どもはそれをいち早く明確にとらえたことは御承知通りであります。こういう意味において私は将来とも国際紛争を武力で解決しようというような考えは全然持っておりません。
  53. 片山哲

    片山委員 この九条の問題は本日の委員会の課題ではないわけでありますけれども、事人権に関し、国民の生命に関し、国民の生活に関する問題でありますから重ねて伺いたいのでありますが、九条の国際紛争を解決するのに武力を用いないという意味は、話し合い解決ということになるわけでありますが、日本を戦争の中に巻き込まれないようにする、日本は一切他国との戦争の材料に使われない、これにはあなたは熱心にやられるでありましょうか。その点の信念を伺います。断じていかなる場合においても戦争に参加しない、いかなる場合においても国民を戦場にかり立てて国民の平和なる生活を脅かすことはない、この点を明らかにしていただきたい。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私はあらゆる場合におきましてもそうありたいと思います。しかしわれわれが不当なる侵略を受けた場合に祖国を守るということは、われわれの当然に独立を守り民族を守るためにやらなければならないことであります。これがいわゆる世間で言っておる戦争であるか、武力を行使するという範疇に入るかどうかということは議論があろうと思いますが、私は国際紛争を武力で解決する意味において、戦争に巻き込まれることを欲せざるのみならず、それはしない。しかしながらわれわれが武力の侵略を受けた場合において、これを断固として排撃するところのことはしなければならないと思っております。
  55. 片山哲

    片山委員 その侵略を受けたという場合は、突如として山がくずれてきた、水が吹き出してきたというようなわけで今は平静であるが明日に侵略を受けた、そんなことはあり得ないことなんです。侵略を受けるについては、国際的な紛争が数カ月間とかあるいは半年の間とか、いろいろ長い間続くわけであります。折衝があるわけであります。これを解決するのが責任ではないでしょうか。つまり国際紛争ということがあってこそ侵略があるということを考えなくてはなりません。侵略をないように話し合いでこれを防衛する、つまり平和外交というものがそれであります。そのためには国内の民主主義を徹底的に充実をして、民主政治の確立をはかり、そうして基本的人権を擁護して、もってその背景をなしていく、こういう建前でいかなければならないわけであります。重ねて国際紛争なるものがうまく話し合いで解決をされる決意があるかどうか、侵略は突如としてあり得ないと思うのですが、これの態度を明らかにしてもらいたいと思います。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 私どもが平和外交を推進するということを強く申しておりますのも、今お話のように、国際的紛争なり国際的の問題を話し合いによって解決し、侵略が起らないようにすることが、何といっても前提であることは言うを待たないのであります。私は今度のこの警職法改正もそういうところに一脈相通じておると思います。事態が悪くなって現実に社会の不安を増すとか、あるいは実力行使によっていろんな事態が起るのを事前にそういうことをなくすることこそ、私は真に平和を愛する者の心持であろうと思います。
  57. 片山哲

    片山委員 私の質問はなお尽きないのであります。まだ満足を得ない点多々あるのでありまするけれども、特に憲法問題については他日を期したいと思います。あらためてこれの質問をいたしたいと思います。  しこうしてこの警職法改正本案が、憲法の精神、個々の条章について違反する個条をあげまして、これから追及する問題は、他の委員よりこれを行うことにいたしまして、私の質問はこれで終りたいと思います。(拍手)
  58. 鈴木善幸

    鈴木委員長 山崎巖君。
  59. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 私も主として、ただいま審議中の警察官職務執行法改正案現行憲法との関係につきまして、具体的に若干の質疑をいたしたいと存じます。  事は憲法に関する問題でございますがゆえに、主として岸首相に、首相においてお差しつかえのございまする場合には林法制局長官並びに青木国務大臣より御答弁をわずらわしたいと存じます。  現行憲法の基本原則が民主主義平和主義基本的人権の尊重、この三大原則でございますることは申すまでもございません。これは永久に順守せなければならぬ原則だと存じます。憲法改正につきまして限界点があるかどうかということは種々議論のあるところでございまするが、その議論は別といたしまして、国の内外の情勢の変化に伴いまして、将来憲法をかりに改正する場合がありといたしましても、ただいま申し上げました三大原則につきましては不動、不変のものでなければならぬと存じます。永久にわれわれが順守すべき原則だと確信をいたすのであります。この観点に立ちまして、憲法警職法改正案との関係を鮮明にいたしますることはきわめて重要なことであると確信をいたすのであります。  警職法改正案の審議に当りまして、特に検討を要しまする問題は、申すまでもなく国民の権利及び義務に関しまする憲法第三章の条章であろうと存じます。旧明治憲法におきましても、自由権は認められておったのであります。しかしながら、法律によって保障せられました自由権でありまして、すなわち法律の範囲内において居住、移転の自由を認める、あるいは法律によるにあらざれば逮捕、監禁、審問、処罰を受けることなしというような、すなわち法律の範囲内におきまする自由権であったことは御承知通りであります。しかしながら、現行憲法基本的人権は、この憲法そのものによって保障されました自由権でありまして、みだりに法律によって制限のできないことは当然であると存じます。ただ、先ほどからだんだんと質疑応答にも現われておりまするように、現行憲法におきまして、その第十二条におきまして、国民基本的人権乱用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任があるという旨を規定いたしておるのでありまして、生命、自由、幸福の追求に対しまする国民の権利は、公共の福祉に反しない限りにおいて、立法その他国政上尊重さるべきものであるということが憲法の明文に明らかに規定をされておるのであります。この観点から見まする場合に、本改正法案の随所に現われておりますところの質問、保護、犯罪の制止、立ち入り、武器の一時保管等の諸手段は、国民基本的人権制限にかかわるものであることは疑いをいれません。そこでまず私は、現行憲法の保障いたしまする基本的人権に関しまする確固たる政府のお考え方を伺いたいと存じますると同時に、本法案によって制限されておりまする国民の権利と公共の福祉との関係につきまして、きわめて概括的な御説明を伺っておきたいと存じます。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども片山委員の御質問にお答え申し上げましたように、この憲法における基本的人権の尊重ということは、これは動かすべからざる重大な問題でございます。しこうしてそれは同時に、すべての国民がひとしく享受しておる基本的人権でございます。従ってこれの間において、あるいは憲法の十二条をあげられましたが、乱用を許さない、また公共の福祉にかなうようにこれを活用する責任があるというふうな規定、また十三条に公共の福祉に反せざる限り云々という制限があります。これはこの憲法を貫いている一つの精神であって、要は、国民全体が平等に自由を享受し、基本的人権が擁護されるという立場を作り上げるためには、この公共の福祉という観念でこれを調整するというのが、憲法一つの基本的の考え方であると思います。従って今回の改正に当りましても、われわれは個人のどういう人の基本的人権につきましても、これをできるだけ尊重して、これを侵すようなことがあってはならないことは言うを待ちません。しかしながら同時に、それが多数の他の人々に迷惑を及ぼし、他の人々の自由なり、基本的人権を侵される危険がきわめて明白なような場合において、それを事前に阻止するということも、当然公共の福祉を基本としている憲法の精神からいって、やらなければならぬことでありまして、この点を、今度の警職法改正におきまして私どもは取り上げているわけでございます。従って、決してこの改正憲法の精神である基本的人権を侵害するとか、あるいはこれを無視するものであるというふうな非難は当らないものであって、これこそ真に国民全体の福祉と公共の福祉という観念で調整して、国民全体の自由と基本的人権が平等に保護されるようにわれわれは念願しているわけであります。
  61. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 世上往々にして、本法案をもって旧治安維持法または治安警察法の復活であると主張するものがあるのであります。(「その通り」)かかる法律が、現行憲法下においてその存在を許されざることは言を待たないところであると存じます。すなわち旧治安維持法は、一読いたしますればきわめて明瞭でございますように、国体の変革、私有財産制度の廃止を目的とする行動を取締る法律でございまして、明らかに現行憲法第十九条の思想の自由、あるいは第二十一条の結社の自由の違反といわなければならぬのでございます。警職法案は、何らかかる思想的なものを対象とせざることは明らかでございまして、旧治安維持法の復活なりという議論は、全然私どもは根拠のない議論であると断ぜざるを得ません。また、旧治安警察法は、結社、集会、言論を制限する法律であって、明らかに憲法二十一条の違反と思われるのでございまして、本改正案におきましては、これに類似するがごとき規定は、その片りんだも見出すことはできないのであります。さらにまた旧行政執行法は、身体の検束と自由を剥奪するものであって、本法案の保護の規定とは、全然その本質を異にするものと申さねばなりません。従いまして、あるいは治安維持法の復活であるとか、あるいは治安警察法の復活であるとか、行政執行法の復活であるという議論は、全然これは根拠のない議論であるということは、きわめて明瞭であると存じます。  以下、私は本法案に対します憲法違反論に対しまして、私の見解を述べながら政府の所信をただしたいと存じます。     〔「やめたらどうだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  62. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  63. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 違憲論の第一は、本法案中第三条及び第三条の二の保護、第四条の避難、第五条の予防制止の拡大は、憲法第十三条の自由と幸福追求権の侵害であり、第二十一条の集会、言論、表現の自由、及び第二十八条の勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権の侵害のおそれがあり、憲法違反なりという議論であります。この議論は、およそ三つに分析することができると思います。  その第一は、改正案の第三条及び第三条の二の保護の規定が、違憲の疑いがあるという点であります。これは保護の名のもとに検束され、自由の拘束を受けるおそれありとの論拠に立つものと思われるのであります。本法案におきましては、保護は、適当な保護者や社会福祉機関等に引き渡すまでの応急的の行政措置でございまして、しかも保護が二十四時間を越えますときには、裁判官の許可状を必要とし、虞犯少年の場合は直ちに許可状を請求しなければならぬ制限を加えまして、十分の注意を払っておることは、私どもは了解ができるのであります。ただ保護はあくまでも保護であって、身体の拘束や不当な自由の制限であってはならぬのでございます。もしもこれを逸脱するがごときことがありとしますれば、世上懸念せられるような憲法十三条違反の疑いを生ずることになるのでございますが、政府としては、かかる事態を断じて起さないというだけの確信を持っておられるかどうかを、まず青木国務大臣に伺いたいと存じます。
  64. 青木正

    ○青木国務大臣 ただいまの山崎委員の御質問につきまして、法律解釈上の問題につきましては、法制局長から答弁いたさせますが、最後のお話の、この法律が実施された場合、法の規定を逸脱して人権じゅうりんになるおそれがあるんじゃないか、憲法第十三条に違反するおそれがあるんじゃないか、こういう点につきまして、職権乱用にならぬようにどういう措置をする考えであるか、こういう御質問に対しまして、私から御答弁申し上げたいと思います。  全般の問題といたしまして、現在の警察制度というものが、先ほどお話のありましたように、各府県におきましては府県の公安委員会、中央におきましては国家公安委員会管理のもとにありますので、常に公安委員会警察の行き過ぎ等のないように、端的な言葉で申し上げますれば手綱をかけておりますので、全般的にそういうことのないような配慮が常に加えられておるわけであります。さらに個々の問題につきましては、言うまでもなく、警察官職務執行法の第一条に、職権乱用につきまして厳に戒めておるわけであります。さらにまた、万一そういうことがあった場合、行政上あるいは刑事上の処分をいたすことになっておることも御承知通りであります。なお、私どもは、この法律が通過した場合におきましては、万々一にもそういうことのないように、警察官に対しまして、この法律の正しい解釈、またこの法律の運用、こういう面につきまして最善の注意をするように十分の指示をいたしまして、いやしくも職権乱用ということのないように配慮をいたしていきたい、かように考える次第であります。
  65. 林修三

    ○林政府委員 お尋ねの、第三条あるいは第三条の二の保護の規定と憲法十三条との関係の点でございますが、御承知のように現在の第三条にも、すでに保護の規定はあるわけであります。これを多少、現行法で足りない点を今回加えたわけでございます。考え方の基本といたしましては、この三条及び三条の二の保護は、行政法的にいえば、いわば即時行政と申しますか、要するに本人自身が非常に危険の状態にある、あるいは本人自身の行動によって社会に迷惑を及ぼす状態にある、気違いとかよっぱらい、あるいは虞犯少年、触法少年と申しますか、そういうような公共の福祉維持上密接な関係のある行為について、目前急迫の状態を除去する意味でこういう保護を加える。これはまさに憲法十三条における公共の福祉の範囲内における行為であると考えております。憲法違反の点は、現行法と同様ないと思っております。
  66. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 次に、第四条の避難の規定の中に、改正案には、その場に来集する者を引きとめ、もしくは必要な措置をとることを命ずることができる規定を追加いたしております。これが、労働運動としてのデモ隊等の検束を意図するものなりとの議論であろうかと思われるのであります。私は、この改正案の趣旨は、危険な事態を例示し、危険な事態の発生するおそれある場合を加え、危険な事態の発生する予防措置をも警察官がとり得ることとした点にあると思うのでありまして、この規定によって、憲法二十一条の集会、言論、表現の自由、及び憲法二十八条の勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権の侵害に該当するがごときことは、断じてあり得ないと思うのでございますが、政府は、本改正案の趣旨にあわせて、具体的事例をあげて御説明願っておきたいと思います。
  67. 林修三

    ○林政府委員 この規定は、従来もございました避難の措置と大体同様な関係でございますが、多少加わりましたのは、危険な状態が発生している場所に他から来集する者を引きとめる、という点が加わった点でございます。これは結局、目前に迫っておる危険な状態を防止するために必要な範囲の制限とわれわれは考えておるわけでございます。いわゆる即時行政と申しますか、行政上の措置としての即時行政と認められる範囲のものだと考えております。これはもちろんおっしゃる通り、直接的に集会、結社の自由を取り締るという目的でできていないことは、また当然でございます。
  68. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 実例について説明せよというお話でございますが、たとえば昭和三十一年の一月に、大阪市内の某劇場におきまして、ある歌手が公演をいたしたことがございますが、その際に、多数の客が押しかけて参りまして、異常なる混雑を呈した次第であります。なおさらに、あとからあとから人が抑しかけてくるというようなことで、多数の死傷者を出した事例がございます。こういう際に、そこに居合せた者ばかりでなしに、来集する者につきましても避難等の措置をとらせるということが必要であります。これは一例として申し上げるのであります。
  69. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 さらに第三には、本改正案第五条において「公共の安全と秩序」を加えたことは、公共の安全と秩序という内容がきわめてばく然としており、見方、立場によって異なり、乱用のおそれがあり、ひいては違憲の疑いがあるという議論であろうかと思います。私の見解をもっていたしますならば、現行法が人の生命、身体の危険、財産の損害を受けるおそれがある場合のみに限定し、個人の法益のみに着眼し、近時各方面に見られる目に余る、丸太ん棒でとびらを破ったり、裁判所の執行命令を暴力で拒むような小型の暴動とも称すべき集団的違法行為や集団的犯罪を制止できないのでは、公共の法益の保護はじゅうりんせられておる状態であるのでございまして、本法案においてこの点を規定したことは、きわめて妥当かつ適切でございまして、これまでの法的欠陥を是正したものと信ずるのでございます。  なお「公共の安全と秩序」については、それが著しく乱されるおそれがあることが明らかであり、かつ急を要する場合に限定し、拡大解釈の余地なからしめたことも当然の措置だと存じます。また現行法において「犯罪がまさに行われようとするのを認めたとき」として、犯罪発生を待つことになっておるために、犯罪の予防は制止不十分であるのみならず、その被害を救済し得ないおそれも多分にあるのでございまして、これを是正せんとするものでございまして、本法案は、私はきわめて適当だと思います。すなわち現行法を明確化し、かつ予防及び制止の効果を上げんとする趣旨にほかならぬと思われるのであります。従ってこの規定によって、憲法の保障する集会、言論、表現の自由や、勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権の侵害ないし制限となることは断じてないと確信をいたすのでございます。ただ問題は、「公共の安全と秩序」という字句がきわめてばく然といたしております。従いまして、ここに疑問が生ずるのでございまするから、この際、政府はこの点につきまして、確固たる統一的の見解を表明せられていただきたいと考える次第でございます。
  70. 林修三

    ○林政府委員 この第五条は、従来とも犯罪の予防、制止ということでございまして、これは警察法第二条にございます警察の責務であります犯罪の予防あるいは公共の安全と秩序の維持、こういう任務からきておるものと考えます。その範囲において、いわゆる警察的な任務として、公共の福祉の要請上なし得る範囲のことをきめたものと考えます。その範囲において、憲法上違反の疑いはないと私ども思っております。  ただいまのお尋ねの公共の安全と秩序が乱される云々というところは、非常に解釈の幅があるんじゃないかということで、いろいろ疑問が提起されておると思いますが、私どもといたしましては、従来この言葉は、警察法第二条第一項に使っておる言葉でございますが、ここにこれが使われている意義といたしましては、一応かように考えておるわけでございます。つまり、法令あるいは慣習によって確立された平穏な社会公衆の共同生活、そういうものの安穏な進行が乱される、あるいはその正当な運行が阻害される、そういう状態を公共の安全と秩序が乱される、そういうふうに解釈すべきものではないかと思います。そこでなお補足して申し上げますれば、今申しました社会公衆の共同生活ということの中には、国あるいは公共の活動状態でありまして、それが正常に運行されることについて社会公衆の関心が持たれている、そういうようなものも含まれる。かように考えていいのではないかと考えております。
  71. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 第二点の違憲論は、本改正第二条の質問に関しまする権限拡大によりまして、善良なる子女または一般市民が、単に挙動不審ということのみで警察署に連行される危険があり、これは憲法第三十三条の「犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」条項に違反するという議論であろうかと思います。憲法第三十三条は、申すまでもなく刑事手続に関する保障規定でございまして、警察官職務執行法のごとく行政目的のための規定でないことはもちろんでございますが、その精神は、この場合においても尊重さるべきものでございます。いやしくもこの憲法の精神に反するような運用は厳に慎しむべきものであろうと存じます。しかしながら、本改正案の重点でありまする第二条第三項には、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断し、疑うに足りる相当な理由ある者のみに制限し、それが凶器等を所持している場合、これを提出させ、もしくは提示させて調べるのであって、さらに第四項には、刑事訴訟法の規定によらなければ連行や答弁を強要され、または差し押えや捜索されることのないことを規定いたしておりまして、現行憲法第三十三条の精神に反するものではないと確信をするのでございますが、この点に関しましても、政府の御所信を一応伺っておきたいと思います。
  72. 林修三

    ○林政府委員 憲法第三十二条の逮捕の規定、それ以下の規定が刑事手続いわゆる犯罪捜査手続に関するものであることは、大体通説が全部認めておるのでございます。従来の行政法規の立法も、すべてその見地からなされているわけでございます。従いまして今お説の通りに、この警察官職務執行法に規定してございます質問あるいは保護、こういう規定が、ある意味において人身の一時的な、あるいは多少継続的な拘束になる場合がございましても、これはあくまでも即時行政的なもので行われるものでございます。行政的なものでございまして、犯罪捜査として行われるものでないという点におきまして、憲法第三十三条の規定がこのまま適用されるものとは考えておりません。従いまして、特に裁判官の令状を要するものと考えてはいないわけであります。ただしかし、今おっしゃいました通りに、人身の拘束が慎重に行われなければならないことは当然でございます。こういうような人身の拘束がなされる場合あるいはやり方、これについては、公共の福祉との関連において十分慎重に規定を設ける必要があると思います。その精神によって規定をされている、かように考えております。
  73. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 第三点の違憲論としましては、本改正案に対する保護の解釈いかんによっては、保護の名のもとに旧行政執行法のごとく保護検束をされる危険があり、憲法第三十四条の保障の侵害となり、またはこれにより休業のための収益の減少は憲法第二十九条の財産権の侵害になるというような議論がございます。本法第三条及び第三条の二の保護の規定につきましては、さきに申し上げましたように、現行法の保護を受ける者の要件の規定の不備を補足是正したものでありまして、特に最近青少年犯罪増加の趨勢にかんがみ、虞犯少年等の保護規定を新設したものでございまして、これによって善良な学生等が保護検束されるごときことは、いかに拡大解釈をいたしましても考え得られないところでございます。従って、旧行政執行法の保護検束などとは全くその本質を異にし、憲法第三十四条に抵触するごときことは断じてないと確信をいたします。いわんや、これが憲法第二十九条の財産権の違反に及ぶというような議論に至っては牽強付会の説であり、きわめて妥当性を欠く見解だと断ぜざるを得ないのであります。この点につきましても政府の見解を伺っておきたいと思います。
  74. 林修三

    ○林政府委員 保護の規定につきましては、現行法にも大体保護の規定はあるわけでございます。今度の改正法案におきましては、その点が多少——いわゆる自殺をするおそれのある者、あるいは泥酔あるいは精神錯乱のために公共の施設に迷惑を及ぼすおそれのある者、あるいは十八才未満の少年で犯罪法令に触れるおそれのある者、こういう範囲にて多少拡大になったわけでございます。基本的な考え方は現在の考え方と同じでございます。いわゆる保護というのは、結局そういうことによって本人が非常な危険な状態にあり、また社会公共に非常な迷惑を及ぼすおそれのある者について一時そういう障害を除去するために人身を保護するわけで、その意味におきましては、いわゆる行政的な手続でございまして犯罪捜査の手続ではございません。従いまして憲法三十三条あるいは三十四条の適用はないものとわれわれは考えております。従来の学説も大体そういう考え方でできておると私ども確信しております。従いまして憲法三十三条、三十四条違反のことはないと考えております。また保護のやり方につきましても、従来から二十四時間を越えてやる場合には裁判所の許可状が要るというふうな規定もございます。今度の新しい少年についての規定におきましても直ちに許可状をもらうという配慮もしてございます。そういう意味において人身の拘束について万全の措置が講ぜられておる、かように考えるわけでございます。  それから二十九条の問題につきましては、今度の質問あるいは保護につきまして、凶器等の一時取り上げの規定がございますが、これはあくまで保管でございまして取り上げるわけではございません。従って原則としてあとで本人あるいは保護者に返す、返さないものについては公告をして売却するということもございますが、原則としてそういう一時保管の規定でございます。二十九条の問題はないものと考えております。これは銃砲刀剣類等所持取締法等にも大体同様な規定はたくさんあるものでございます。  それから休業による補償問題でありますが、これもそういうような危険な状態を除去するために必要な範囲で行われる行為でございます。これに対して直ちに憲法二十九条三項が働くものとは考えません。これは二項の問題になってくる。伝染病予防法等で一時病院に強制入院をするというような問題と同じような問題ではないか、かように考えております。
  75. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 第四点の違憲論は、本改正案の第二条の所持品の検査及び第六条の立ち入りの拡大は、憲法第三十五条の住居、捜索、押収に対する保障の侵害であるとの議論であります。本改正案第二条第三項の凶器その他の一時保管の規定の新設は、さきにも申し上げましたように、犯罪の予防と事故の未然防止のためのものであり、これを提示させて調べるだけでありまして、強制的に行うものではございません。こういう趣旨を明らかにしておるのでございまして、特に刑事訴訟法の規定によらない限りは、差し押えされまたは捜索されないという第四項の規定があるのでございまして、憲法三十五条の侵害でないことはきわめて明瞭であると存じます。  また凶器の提示等は銃砲刀剣類等所持取締法でできるので改正の必要はないじゃないかとの議論もあるのでございますが、これは所持の疑いある場合に間に合わないのみならず、刑事訴訟法では、逮捕以外の場合には身体捜査ができない不備もございまして、この不備を改正する必要があると認めるのでございます。  また本法案の第六条の立ち入りの規定でございますが、これもさきにも申し上げましたように、第五条の改正と同様、個人の法益のみならず、公共の法益の保護を全うせんとするものでございまして、ごうも憲法第三十五条の違反ではないと確信をいたすのでありますが、念のためにこの点につきましても政府の御見解を伺っておきたいと思います。
  76. 林修三

    ○林政府委員 純粋の憲法論といたしましては、先ほどもお答えいたしました通りに、第三十五条は、第三十三条、第三十四条等と同じく、一般に学説もあるいは従来の立法の考え方も全部これは犯罪捜査あるいは刑事手続に関する規定だと解釈されております。従って第三十五条の規定が、行政手続として行われます立ち入りあるいは今の物件の提示等に直接に適用になるものとは考えておらないわけでありまして、その点は憲法違反という点はないわけであります。国税徴収法による財産の差し押えあるいは財産の捜索等すべてこれは令状を要しない建前になっておりまして、これは憲法違反とは考えられておりません。全部行政手続のものは三十五条の適用は直ちにはない、かように考えられておるわけであります。ただし、それだからといって、そういうものを行政手続として広範にやっていいということにはもちろんならない。これはやはり人権の尊重あるいは財産権の尊重というところから、慎重にその場合を限定してやるべきであることは当然でございます。そういう配慮は、今度の立法にも当然されておるものと考えております。
  77. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 第五点の違憲論は、第四条の避難の措置及び第五条の警告または制止によって、労働組合や主婦連合会または中小企業団体、医師会等の、国会や官庁に対する陳情、請願が阻止せられるおそれがあって、憲法第十六条の請願の権利の侵害であるという議論でございます。警職法改正案の第四条及び第五条につきましては、すでに私の見解を申し上げましたように、暴力と不法行為を伴わない陳情、請願等が阻止せられることは、本法によりましては絶対にあり得ないことと思います。これは政府の御所見を問うまでもなく、憲法第十六条とは全然関係がないことを確信をいたします。  第六点の違憲論は、本改正案は、警察官独自の判断によって、憲法によって保障されておる基本的人権を侵害するものであり、この改正は法理上許さるべきものではないという説であります。特に憲法第十五条、警察法第二条第二項によって民主警察及び警察官のあり方を厳重に規定しておるので、この改正憲法違反なりという議論であります。先ほどの片山委員の御所見もこの点に重点があったように拝聴をいたしました。警察法第二条及び警職法第一条は、憲法第十五条の公務員に関します規定を受けて、警察官の責務が不偏不党、公正中立を旨とし、権限の乱用はしてはならないということは当然でございまして、今日の警察はますますこの基本原則にのっとって民主警察の実を上げつつあるものと私どもは思うのでございます。本改正案においても、何らこの基本精神を変更するものではなく、この改正案憲法ないし警察法に違反するところはどうもないと確信するのでございますが、この点につきまして異なった御見解があるならば、この際政府に伺っておきたいと思います。
  78. 林修三

    ○林政府委員 これは、警察法第二条第二項には、警察というものは不偏不党でなくてはならない、公正中立でなくてはならないということになっておりまして、憲法第十五条の公務員の性格、それから警察の性格を受けて規定されたものと考えております。今度の警察官職務執行法改正後におきましても、当然警察は、その責務の遂行の基本原則によってこの法律の執行はなされるべきものとわれわれは考えております。そういう意味におきまして、この改正案憲法第十五条の違反になるということあるいは警察法に違反するというようなことはあり得ないものと考えております。
  79. 山崎巖

    ○山崎(巖)委員 以上、世上現われております本法案に対します憲法違反論につきまして、私の見解を述べながら政府の御所信を伺ったわけでありますが、ただいままでの質疑応答によりまして、本法に対します違憲論が、あるいは感情論であり、あるいはまた反対のための曲解であることがきわめて明瞭になったと私は存じます。本改正案が、現行憲法の基本的原則であります基本的人権の尊重、すなわち憲法第三章の国民の権利及び義務の条章に何ら違反せざることはきわめて明瞭であると確信をいたすのであります。しかしながら、本改正案が施行の暁、万一警察官にして民主警察の本義に違背し、職権の乱用を見るといたしますならば、憲法の精神をじゅうりんすることともなるのでありまして、事はきわめて重大であると存じます。青木国務大臣以下警察当局の慎重かつ万全の準備を強く要望をいたしたいと存じます。  これと同時に、本法施行によりまして警察官の職務増大は当然でございます。しこうしてその責任はまことに重大に相なることと存じます。言うまでもなく、法の運用は人にあるのであります。警察官の教養の重要性につきましては、過日の渡海議員の質疑によりまして明瞭に相なっておりまするし、また政府の御所信も十分に拝聴をいたしましたので、ここで繰り返して質疑を重ねることを避けたいと存じます。警察は常に国民の信頼のもとにあるべきでありまして、民主警察の真髄も実に私はここにあると存じます。警察法制定以来、民主警察の実は漸次前進しつつあると私は思考いたすのでございまするが、果して現在の警察官の陣容をもって、さらに今回付加せられましたる重大なる責務を十分に果し得るやいなや、現に昭和二十九年警察法改正当時から、従前の自治体警察時代に比しまして一万数千名に上る減員を断行しているのでございます。にもかかわらず社会情勢はますます複雑多岐を加えつつある今日、一そうその感を深うするものでございます。私は最後に本法施行に関します青木国務大臣の確固不動の御決意を伺いまして、質疑を終りたいと存じます。
  80. 青木正

    ○青木国務大臣 まず第一に、お話のように警察官の仕事というものは直接には国民の権利やあるいは自由の問題に重大な関連があるのであります。そこで警察官の職責というものは、これは行き過ぎがあってはならぬこと当然であり、また法制上、法規的にも警察官の責務というものはそういう観点からいたしまして厳重にワクをはめまして、いやしくも人権のじゅうりんあるいは自由を阻害することのないようにせなければならぬ、こう考えるのであります。そこでこの改正案をいろいろ検討する過程におきまして、私どもはその点に最も配慮を加えまして、この改正法律案によって、いやしくも憲法に抵触し、あるいはまた単に憲法に抵触しないというばかりでなく、国民の権利あるいは自由、こういうものに悪い影響があるようなことであってはならぬ。こういう考えのもとにずいぶんその点には慎重な配慮を加えてこの案を決定いたしたのでありまして、お話のように私どもも、この法律の実施に当りましては、そういうことのないように十分の配慮をせなければならぬと存ずるのであります。  また警察官の増員の問題でありますが、こういう法律を作っても、果してこれを実施する警察官の現在の人員をもって足りるかどうか、こういう問題であります。この法律問題を離れて考えなければなりませんことは最近の交通の状態の変って参ったこと、たとえば自動車について見ますれば、自動車が昭和二十三年から比べまして現在は八倍ほどになっております。ところが人員につきましては、交通警察の人員がさまでふえていないようでありまして、頻発する交通事故、こういうものに対する対策におきましても非常に遺憾の点が少くないのであります。また、その後の人口移動によりまして集団的な居住の移動等もありまして、そういうようなことから考えますと、警察官の増員という問題をここでそういう新しい事態に対応して考慮する必要があるのじゃないか、こういう考えのもとにいろいろせっかく検討をいたしておる次第であります。     —————————————
  81. 鈴木善幸

    鈴木委員長 この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  警察官職務執行法の一部を改正する法律案は、一般関心及び目的を有する重要な法律案でありますので、本案について学識経験者等から意見を聞くため、十一月三日及び四日の両日公聴会を開会することとし、規則の定めるところによりまして、議長に対しその承認要求をいたしたいと存じます。つきましては、承認要求の手続及び公述人の選定、その他公聴会開会に関する手続等はすべて委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 鈴木善幸

    鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、公述人の選定に当りましては、理事会にお諮りすることを念のため申し添えておきます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十六分散会